(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-28
(54)【発明の名称】GP130結合分子および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230821BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230821BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230821BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230821BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230821BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230821BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230821BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230821BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230821BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230821BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230821BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230821BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
C07K16/28
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K35/76
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507863
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 US2021044575
(87)【国際公開番号】W WO2022031869
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522232064
【氏名又は名称】シンセカイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カステライン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ロッカム ディプティ
(72)【発明者】
【氏名】ルパーダス パトリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴォナ サンドロ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトgp130の細胞外ドメインに特異的に結合するシングルドメイン抗体(sdAb)を含む生物学的に活性な分子、このような抗体を含む組成物、およびその使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
gp130の細胞外ドメインに特異的に結合する、gp130結合分子。
【請求項2】
シングルドメイン抗体(sdAb)を含む、請求項1記載のgp130結合分子。
【請求項3】
sdAbが、以下の表:
の横列に示されるように相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3を含む、請求項2記載のgp130結合分子。
【請求項4】
sdAbが、SEQ ID NO:2、3、4、5、6、および7のいずれか一つのポリペプチド配列に対して少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する、請求項2または3記載のgp130結合分子。
【請求項5】
sdAbが、以下の表:
の横列に示されるように相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3を含む、請求項2記載のgp130結合分子。
【請求項6】
sdAbが、SEQ ID NO:26~74のいずれか一つのポリペプチド配列に対して少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する、請求項2記載のgp130結合分子。
【請求項7】
sdAbが、ヒト化されているか、またはさもなくば、異種フレームワーク上にグラフトされたCDRを含む、請求項3または5のいずれか一項記載のgp130結合分子。
【請求項8】
標識化剤、画像化剤、および/または治療剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項記載のgp130結合分子。
【請求項9】
治療的有効量の、請求項1~8のいずれか一項記載のgp130結合分子またはその薬学的に許容される製剤を哺乳動物対象に投与することによる、哺乳動物対象における疾患、障害、もしくは状態の処置または予防のための方法。
【請求項10】
疾患が新生物疾患である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
生物学的試料からのgp130+細胞の単離、枯渇、または濃縮において使用するための、請求項1~8のいずれか一項記載のgp130結合分子。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項記載のgp130結合分子をコードする、核酸配列。
【請求項13】
請求項12記載の核酸を含む、組換えウイルスベクターまたは非ウイルスベクター。
【請求項14】
請求項12記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項15】
請求項13記載のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを含む、薬学的製剤。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項記載のgp130結合分子を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年8月5日に出願された米国仮出願番号63/061,562、2020年9月15日に出願された米国仮出願番号63/078,745、および2021年1月11日に出願された米国仮出願番号63/135,884に係る優先権を主張する。これらの仮出願の開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本開示は、gp130の細胞外ドメインに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含む生物学的に活性な分子、このようなシングルドメイン抗体を含む組成物、およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
糖タンパク質130(gp130)はIL6ST、IL6R-β、およびCDw130mとも知られ、IL6受容
体ファミリー内にある、1型サイトカイン受容体のサブユニットを形成する、高度に保存された膜貫通タンパク質である。gp130はヒト身体において遍在発現しており、IL6、IL27、カルジオトロフィン-1(CT-1)およびニューロポイエチン(NP)、オンコスタチンM(OSM)、白血病抑制因子(LIF)、IL11、毛様体神経栄養因子(ciliary neurotropic factor)(CNTF)およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)を含む少なくとも9種類のサイトカインに対する共通の受容体サブユニットである。これらの様々なサイトカインが極めて多様な生物学的プロセスを媒介し、従って、gp130は、様々なタイプの癌、心血管疾患、自己免疫疾患において役割を果たすことが示されてきた。適切な受容体複合体を形成することによってgp130は様々なサイトカインと相互作用することができ、その結果として、50を超える異なる細胞応答と関連付けられている。
【0004】
gp130の細胞外ドメインは、6つの連続したサンドイッチドメイン(D1--D6):N末免疫グロブリン様ドメイン(D1)の後ろに5つのフィブロネクチン3型ドメイン(D2-D6)を含む。リガンドの大多数は膜端部ドメインD1、D2、およびD3においてgp130と相互作用する。サイトカイン応答にはN末D1免疫グロブリン様ドメインが必要とされる。リガンド結合に応答して、細胞内ドメインはJanusキナーゼ(JAK)と相互作用して細胞内シグナル伝達をもたらす。
【0005】
gp130には膜結合型の他に3種類の可溶性アイソフォームsgp130-RAPS、sgp130-E10、および「完全長」sgp130がある。gp130の可溶型は膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインが無いが、細胞外リガンド結合ドメインを保持している。gp130の可溶型はIL6受容体の可溶型と相互作用する。sgp130の生理学的役割は完全に解明されていないが、sgp130の役割はgp130シグナル伝達の阻害による抗炎症性であると仮定されてきた。sgp130は、炎症促進性およびアテローム生成促進性のIL6トランスシグナル伝達経路を動かす複合体であるIL6:sIL6Rに対して高親和性(1mM)を有する。sgp130とIL6:sIL6Rが結合するとIL6:sIL6R複合体が中和され、その炎症活性が低下する。マウスでは、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosclerosis)のマウス実験モデルにおいて組換え型sgp130(sgp130Fc)が保護効果と関連付けられた。可溶性gp130はIL-6、OSM、LIF、およびCNTFの機能を阻害することも報告されている。
【0006】
gp130はヒト身体において遍在発現しているが、その発現は様々な臓器および細胞タイプの間で著しく異なり、胎児組織と比べて成人臓器の方が高発現している。gp130は複数のサイトカインシグナル伝達経路に関与するので、他の受容体サブユニットの発現の違いは、gp130が関与する受容体のリガンドに関連する別個であり、かつ広く変化に富む機能に寄与する可能性があると考えられている。例えば、IL-6Rは肝臓、好中球、および白血球において比較的高いレベルで存在する。LIF受容体は神経系および免疫系において高発現している。IL-11RはTリンパ球、心房、および大動脈において高発現している。
【0007】
組織タイプおよび臓器タイプの範囲の細胞シグナル伝達において中心的な役割があるために、gp130は非常に多様なヒト疾患状態における介入の標的として提唱されてきた。例えば、抗gp130抗体は、外傷、感染症、および傷害に関連する急性期炎症応答の調整について提唱されてきた。Harrison, et al. (1996) British Journal of Haematology 95(3):443-451。Harrisonらは、gp130の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体が急性期応答においてIL6急性期反応を下方制御するのに効果があることを証明した。Okamatoらは、抗gp130モノクローナル抗体がU1細胞においてIL-6誘発性HIV-1発現を阻害できることを観察し、このことから、gp130シグナル伝達遮断はHIV-1感染処置のために治療上の潜在能力を有する可能性があると示唆される。Okamato, et al (1997) Biochemistry and Molecular Biology International 43(4):733-740。
【0008】
gp130の活性をダウンレギュレートまたは阻害する剤は様々な癌タイプにおいて有用性を証明している。Xuらは、卵巣癌処置のための経口低分子gp130インヒビターを報告した。Xu, et al (2013) Mol Cancer Ther; 12(6); 937-49。Martinらは、gp130発現が高悪性度型の膀胱癌に関連付けられ、siRNAによってgp130を阻害すると腫瘍特異的応答が生じることを証明した。このことから、gp130遮断には腫瘍成長を制御するのに治療上の潜在能力があることが示唆される。Martin, et al (2019) Mol Cancer Ther; 18(2):413-420。さらに、Burgerらは、抗gp130抗体がミエローマ処置において抗IL6抗体よりも効果があり、gp130抗体で処置すると形質細胞腫の発症が完全に予防されたことを証明している。Burger, et al (2017) Haematologica 102(2): 381-390。
【0009】
モノクローナル抗体は、タンパク質の検出および定量に最も広く用いられている試薬であるが、モノクローナル抗体は約150kDaの大きな分子であり、そのことが、近接したエピトープ認識において競合する数種類の試薬を用いたアッセイにおいて、その使用を制限する場合がある。重鎖ドメインを含有し、軽鎖ドメインを欠くユニークな免疫グロブリンクラス(一般に「重鎖」抗体(HCAb)と呼ばれる)が、ヒトコブラクダ、フタコブラクダ、野生のフタコブラクダ、ラマ、アルパカ、ビクーニャ、およびグアナコを含むラクダ科の動物、ならびにサメなどの軟骨魚に存在する。HCAbの単離された可変ドメイン領域は、VHH(その構造を反映する「可変-重鎖-重鎖(variable-heavy-heavy)」の略称)またはNanobody(登録商標)(Ablynx)として知られる。シングルドメインVHH抗体は従来の哺乳動物IgGクラス抗体の分子量の約1/10であり、サイズが小さい(約12~14kD)という利点があり、そのため、これらのVHH分子と、従来のモノクローナルIgG形式が到達できない可能性があるgp130の抗原決定基との結合が容易になる(Ingram et al., 2018)。さらに、VHHシングルドメイン抗体は高い熱安定性を特徴とすることが多く、そのために、コールドチェーンの整備が難しいか、または不可能な地域への薬の配送が容易になる。これらの特性を、特に、(IgG抗体の場合のように)重鎖/軽鎖対形成を必要としない簡単なファージディスプレイ回収法と簡単な製造(例えば、細菌発現系における製造)と組み合わせて用いると、画像化剤および治療剤の開発を含む様々な用途においてVHHシングルドメイン抗体が役に立つ。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、gp130に特異的に結合するポリペプチドを提供する。
【0011】
本開示は、gp130の細胞外ドメインに特異的に結合するポリペプチドを提供する。
【0012】
本開示は、gp130(例えば、ヒトgp130)の細胞外ドメインに特異的に結合するgp130結合分子を提供する。
【0013】
一部の態様では、gp130結合分子は、ヒトgp130の細胞外ドメインに特異的に結合するシングルドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0014】
一部の態様では、gp130結合分子はsdAbであり、sdAbは、以下の表1の横列に示されるようにCDR1、CDR2、およびCDR3に対応する一組のCDRを含む。
【0015】
一部の態様では、gp130結合分子は、以下の表1の横列に記載されるようにCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、CDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれが独立して、以下の表1の横列に記載の配列と比べて少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を含んでもよく、0個、1個、2個、または3個のアミノ酸変化、任意で保存的アミノ酸変化を有してもよい。
【0016】
一部の態様では、gp130結合分子は、以下の表1に示すように、SEQ ID NO:2~7のいずれか一つのポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%(または任意で保存的置換である1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸以外は同一であるか)の同一性を有するか、または100%の同一性を有するシングルドメイン抗体(sdAb)からなるか、任意で、これから本質的になるか、または任意で、これを含む。
【0017】
【0018】
一部の態様では、前述の一組のCDRは、「ヒト化」sdAb gp130結合分子となるようにヒト化VHHフレームワークに組み込まれる。
【0019】
さらに、本開示は、本開示のgp130結合分子を調製するための化学プロセスまたは組換えプロセスの方法を提供する。
【0020】
さらに、本開示は、gp130結合分子をコードする核酸を提供する。以下の表2は、本明細書に記載のように、gp130結合分子をコードするDNA配列の例を示す。
【0021】
【0022】
一部の態様では、ILRbはマウスgp130である。
【0023】
一部の態様では、gp130結合分子は、マウスまたはネズミgp130(mgp130)の細胞外ドメインに特異的に結合するかヒトおよびマウスgp130両方の細胞外ドメインに特異的に結合する、シングルドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0024】
一部の態様では、gp130結合分子はsdAbであり、sdAbは、以下の表3の横列に示されるようにCDR1、CDR2、およびCDR3に対応する一組のCDRを含む。
【0025】
一部の態様では、gp130結合分子は、以下の表3の横列に記載されるようにCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、CDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれが独立して、以下の表3の横列に記載の配列と比べて少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を含んでもよく、0個、1個、2個、または3個のアミノ酸変化、任意で、保存的アミノ酸変化を有してもよい。
【0026】
一部の態様では、gp130結合分子は、以下の表3に示すように、SEQ ID NO:26~74のいずれか一つのポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%の同一性を有するか(または任意で保存的置換である1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸以外は同一であるか)、または100%の同一性を有するシングルドメイン抗体(sdAb)からなるか、任意で、これから本質的になるか、または任意で、これを含む。
【0027】
【0028】
一部の態様では、前述の一組のCDRは、「ヒト化」sdAb gp130結合分子となるようにヒト化VHHフレームワークに組み込まれる。
【0029】
さらに、本開示は、本開示のgp130結合分子を調製するための化学プロセスまたは組換えプロセスの方法を提供する。
【0030】
さらに、本開示は、gp130結合分子をコードする核酸を提供する。以下の表4は、上記の表3に記載のように、hgp130結合分子をコードするDNA配列の例を示す。
【0031】
【0032】
さらに、本開示は、本開示のgp130結合分子または本開示のgp130結合分子のCDRをコードする核酸を含む、組換えウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを提供する。
【0033】
本開示は、本開示のgp130結合分子または本開示のgp130結合分子のCDRをコードする核酸を含む組換えウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを宿主細胞をさらに提供する。
【0034】
本開示は、本開示のgp130結合分子または本開示のgp130結合分子のCDRをコードする核酸を含む組換えウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。
【0035】
本開示は、本開示のgp130結合分子をコードする核酸を含む組換えウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを含む薬学的製剤、ならびに哺乳動物対象における疾患、障害、または状態の処置または予防における、その使用方法をさらに提供する。
【0036】
本開示は、本開示のgp130結合分子を含むキットをさらに提供する。
【0037】
別の局面では、本開示は、gp130受容体発現細胞に治療剤を標的送達するための構築物であって、gp130結合分子が、1種類または複数種の治療剤に、任意で、化学リンカーまたはポリペプチドリンカーを介してコンジュゲートされている構築物を提供する。さらに、本開示は、対象におけるgp130発現に関連する疾患の処置における前述の使用方法であって、処置を必要とする対象に、治療的有効量の、治療剤にコンジュゲートされたgp130結合分子を単独で、または1種類もしくは複数種のさらなる治療剤と組み合わせて投与する工程を含む、方法を提供する。一部の態様では、処置の対象となる疾患は、gp130を含む受容体からのシグナル伝達に関連する疾患、障害、または状態である。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、調節不全のT細胞またはB細胞の活性に関連する疾患の処置において有用である。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は炎症疾患および自己免疫疾患の処置において有用である。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、gp130発現細胞における調節不全のシグナル伝達に起因する異常な細胞活性に関連する新生物疾患の処置において有用である。
【0038】
別の局面では、本開示は、gp130受容体発現細胞を特定するための構築物であって、gp130結合分子が1種類または複数種の画像化剤に、任意で、化学リンカーまたはポリペプチドリンカーを介してコンジュゲートされている構築物を提供する。さらに、本開示は、対象におけるgp130受容体発現細胞の特定における前述の使用方法であって、処置を必要とする対象に、有効量の、画像化剤にコンジュゲートされたgp130受容体を投与し、gp130結合分子にコンジュゲートされた画像化剤の存在について対象を評価する工程を含む、方法を提供する。
【0039】
一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、インビトロおよび/またはインビボでインターフェロンγの活性を阻害するのに有用である。一部の態様では、本開示のIFNgR1結合分子は自己免疫疾患の処置において有用である。さらに、本開示は、対象における自己免疫疾患の処置における前述の使用方法であって、治療有効量の本開示のgp130結合分子を対象に投与する工程を含む、方法を提供する。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は単独で使用されてもよく、1種類または複数種の補助治療剤と組み合わせて使用されてもよい。一部の態様では、処置の対象となる疾患は、gp130を含む受容体からのシグナル伝達に関連する疾患、障害、または状態である。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、調節不全のT細胞またはB細胞の活性に関連する疾患の処置において有用である。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は自己免疫疾患の処置において有用である。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は新生物疾患の処置において有用である。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、薬学的に許容される製剤に入れて対象に投与される。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、本開示のgp130結合分子をコードする核酸配列を含む組換えウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを含む組成物を対象に投与することによって投与される。
【0040】
別の局面では、本開示は、インビボで作用期間を延長するように改変されているgp130結合分子であって、gp130結合分子が1つまたは複数の担体分子にコンジュゲートされているgp130結合分子を提供する。
【0041】
本開示は、gp130の細胞外ドメインに特異的に結合するポリペプチド配列を含むgp130結合分子、および生物学的試料中にある、gp130発現細胞の単離、枯渇、または濃縮における、その使用方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
序論
本開示をさらに容易に理解するために、ある特定の用語および句が以下で、ならびに本明細書全体を通して定義される。本明細書において示される定義は非限定的であり、当業者が知っている知識を考慮して解釈しなければならない。
【0043】
本方法および組成物を説明する前に、本開示は、説明される特定の方法または組成物に限定されず、従って、もちろん、変化してもよいことを理解すべきである。
【0044】
値の範囲が定められている場合、その範囲の上限と下限との間の、間のそれぞれの値も、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り、下限の単位の1/10まで、詳細に開示されることが理解される。述べられた範囲内の任意の述べられた値または間の値と、その述べられた範囲内の他の任意の述べられた値または間の値との間のそれぞれの狭い範囲が本発明に包含される。これらの狭い範囲の上限および下限は独立してこの範囲に含まれても、排除されてもよく、狭い範囲において一方の限界を含む、またはいずれの限界も含まない、または両方の限界を含む、それぞれの範囲も、述べられた範囲においてはっきり限定して排除される任意の限界に応じて本発明に包含される。述べられた範囲が限界の一方または両方を含む場合、含まれる限界のいずれかまたは両方を排除する範囲も本発明に含まれる。
【0045】
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料に類似する、または等価な任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、いくつかの可能性のある、かつ好ましい方法および材料を今から説明する。本明細書において言及される全ての刊行物は、引用された刊行物に記載されている方法および/または材料を開示および説明するために参照として本明細書に組み入れられる。
【0046】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り複数の指示物を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「1個の細胞」についての言及は複数のこのような細胞を含み、「そのペプチド」についての言及は、1個または複数のペプチドおよび当業者に公知のその等価物、例えば、ポリペプチドなどについての言及を含む。
【0047】
本明細書において議論される刊行物は、本願の出願日前の刊行物の開示のためだけに提供される。本明細書から、先行発明によって本発明がこのような刊行物に先行する権利がないことが認められると解釈してはならない。さらに、提供された刊行物の日付は実際の発行日とは異なることがあり、実際の発行日を別途に確認する必要がある場合がある。
【0048】
本開示全体を通して、アミノ酸は一文字表記または三文字表記に従って言及されると理解されよう。読者の便宜を図って、アミノ酸の一文字表記および三文字表記を以下の表5に示した。
【0049】
【0050】
分子生物学における標準的な方法が科学文献に記載されている(例えば、Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;およびAusubel, et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vols. 1-4, John Wiley and Sons, Inc. New York, N.Y. を参照されたい。これらは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(第1巻)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(第2巻)、グリココンジュゲートおよびタンパク質発現(第3巻)、ならびにバイオインフォマティクス(第4巻)について述べている)。科学文献は、免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化、ならびに化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、およびタンパク質のグリコシル化を含むタンパク質精製方法について説明する(例えば、Coligan, et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vols. 1-2, John Wiley and Sons, Inc., NYを参照されたい)。
【0051】
定義
特に定めのない限り、以下の用語は、以下に示された意味を有することが意図される。他の用語は本明細書全体を通して他の箇所で定義される。
【0052】
活性化する:
本明細書で使用する「活性化する」という用語は、受容体または受容体複合体について、直接的に、および/またはアゴニストリガンドと、リガンド結合に応答する受容体との結合から生じた多成分シグナル伝達カスケードへの関与によって生物学的効果を反映するために用いられる。
【0053】
活性:
本明細書で使用する「活性」という用語は、分子について、試験系(例えば、アッセイ)に関する分子の特性、あるいは材料もしくは細胞の生物学的性質もしくは化学的性質(例えば、分子と別の分子の結合の程度)または物理的性質(例えば、細胞膜電位の改変)を説明するために用いられる。このような生物学的機能の例には、生物学的剤の触媒活性、細胞内シグナル伝達、遺伝子発現、細胞増殖を刺激する能力、炎症応答などの免疫学的活性を調整する能力が含まれるが、これに限定されない。「活性」は、典型的に、試験剤の単位あたりの生物学的活性レベル、例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]、[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、活性の国際単位(IU)、[STAT5リン酸化]/[mgタンパク質]、[増殖]/[mgタンパク質]、プラーク形成単位(pfu)などで表される。本明細書で使用する増殖活性という用語は、調節不全になった細胞分裂、例えば、新生物疾患、炎症性疾患、線維症、異形成、細胞トランスフォーメーション、転移、および血管形成において観察される、調節不全になった細胞分裂を含む、細胞増殖および複製を促進する活性を指す。
【0054】
投与する/投与:
「投与」および「投与する」という用語は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで対象の細胞、組織、臓器、または生物学的液体と、剤(例えば、gp130結合分子もしくはgp130結合分子を発現する操作された細胞、化学療法剤、抗体、または前述の1つまたは複数を含む薬学的製剤)との接触を含む、対象に接触する行為を指すために本明細書において同義で用いられる。剤の投与は、局部投与、血管内注射(静脈内注入または動脈内注入を含む)、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、頭蓋内注射、腫瘍内注射、経皮送達、経粘膜送達、イオントフォレーシス送達、リンパ内注射、胃内注入、前立腺内注射、膀胱内注入(例えば、膀胱)、吸入(例えば、ドライパウダー吸入器を含む呼吸器用吸入器)、眼内注射、腹腔内注射、病巣内注射、卵巣内注射、脳内注入または脳内注射、脳室内注射(ICVI)などを含むが、これに限定されない、当技術分野において認められている様々な方法のどれでも成し遂げることができる。「投与」という用語は、剤と細胞、組織、または臓器との接触、ならびに剤と、細胞、組織、または臓器と接触している液体との接触を含む。
【0055】
親和性:
本明細書で使用する「親和性」という用語は、第1の分子(例えば、リガンド)と第2の分子(例えば、受容体)との特異的結合の程度を指し、分子とその標的の解離速度定数(koff)と、分子とその標的の会合速度定数(kon)の比である平衡解離定数KDによって測定される。
【0056】
アゴニスト:
本明細書で使用する「アゴニスト」という用語は、第2の剤(「標的」)に特異的に結合し、標的と相互作用して標的の活性化の増加を引き起こすか、または促進する第1の剤を指す。場合によっては、アゴニストは、細胞活性化を調整する、活性化を強化する、第2の剤による活性化に対する細胞の感受性を増加させる、あるいは細胞増殖をもたらす可能性のある1つもしくは複数の遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、生物学的経路、または細胞周期停止もしくは細胞死、例えば、アポトーシスによる細胞死をもたらす経路の発現をアップレギュレートする、受容体タンパク質のアクチベーターである。一部の態様では、アゴニストは、受容体に結合し、受容体状態を変え、その結果として、受容体の内因性リガンドの効果を模倣する生物学的応答をもたらす剤である。「アゴニスト」という用語は、部分的アゴニスト、完全アゴニスト、およびスーパーアゴニストを含む。アゴニストは、このようなアゴニストが、研究中の受容体によって誘導される実質的に完全な生物学的応答(すなわち、天然リガンド/受容体結合相互作用に関連する応答)につながる時に「完全アゴニスト」と呼ばれてもよく、部分的アゴニストと呼ばれてもよい。「スーパーアゴニスト」は、標的受容体に対して内因性アゴニストを超える最大応答を生じることができ、従って、ネイティブリガンドの100%超の活性を有するアゴニストの一種である。スーパーアゴニストは、典型的には、比較可能なアッセイにおいて類似濃度で評価された時に、天然型分子の評価可能な定量パラメータまたは定性パラメータの応答の110%超、あるいは120%超、あるいは130%超、あるいは140%超、あるいは150%超、あるいは160%超、または170%超を示す合成分子である。完全アゴニストに関連する生物学的効果は、程度および/または種類の点で、部分的アゴニストまたはスーパーアゴニストの生物学的効果と異なる場合があることに留意すべきである。アゴニストとは対照的に、アンタゴニストは受容体に特異的に結合し得るが、シグナルカスケード、典型的には、受容体によって始まるシグナルカスケードを引き起こさず、その受容体におけるアゴニスト作用を改変してもよい。インバースアゴニストは、アゴニストの薬理学的応答とは向きが逆の薬理学的応答を生じる剤である。
【0057】
アンタゴニスト:
本明細書で使用する「アンタゴニスト」または「インヒビター」という用語は、アゴニストの作用に対抗する分子を指す。アンタゴニストはアゴニストの活性を阻止する、低減する、阻害する、または中和し、特定されたアゴニストがない場合でも、アンタゴニストは標的、例えば、標的受容体の構成的活性も阻止する、阻害する、または低減することもできる。インヒビターは、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、免疫チェックポイント経路を含む生物学的経路、または細胞の活性化を減少させる、ブロックする、阻止する、遅延するか、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、免疫チェックポイント経路を含む生物学的経路、または細胞を不活化する、脱感作する、またはダウンレギュレートする分子である。
【0058】
抗体:
本明細書で使用する「抗体」という用語は、ひとまとめにして、(a)標的分子に特異的に結合するグリコシル化免疫グロブリンまたは非グリコシル化免疫グロブリン、および(b)シングルドメイン抗体などの抗体断片を含むが、これに限定されない、その免疫グロブリン誘導体を指す。一部の態様では、免疫グロブリン誘導体は、標的分子との結合において、起源となった免疫グロブリンと競合する。抗体という用語は、任意の特定の種に由来する免疫グロブリンに限定されず、マウス、ヒト、ウマ、ラクダ科の動物、サメを含むがこれに限定されない軟骨魚の抗体を含む。「抗体」という用語は、抗原で免疫化した後に天然供給源または動物から単離することができる抗体、ならびにモノクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDRグラフト抗体、化粧貼り(veneered)抗体、または脱免疫化(例えば、T細胞エピトープを除去することを目的とする)抗体、ラクダ化(VHHの場合)、または非免疫グロブリンスキャフォールドに抗体の結合ドメイン(例えば、CDR)を含む分子を含む、操作された抗体を包含する。「抗体」という用語は、どの特定の合成手段にも限定されると解釈してはならず、天然供給源から単離することができる天然抗体、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子が導入されたトランスジェニック動物またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、抗体の発現をもたらす核酸構築物で形質転換された宿主細胞から単離された抗体、ファージディスプレイライブラリーを含むコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体を含む「組換え」手段によって調製された操作された抗体分子を含む。一態様では、「抗体」は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4クラスの哺乳動物免疫グロブリンである。一部の態様では、抗体は、結合およびエフェクター機能をもたらす可変ドメインおよび定常ドメインを含む「完全長抗体」である。本明細書で使用する「シングルドメイン抗体」(sdAb)という用語は、抗原に特異的に結合し、起源となった親抗体との結合において競合することができる単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を指す。「シングルドメイン抗体」という用語はscFvおよびVHH分子を含む。本明細書で使用する「VHH」という用語は、典型的に、ラクダ科の動物(ラクダ、ラマ、およびアルパカを含む)の免疫化から得られた、ラクダ科の動物の抗体に由来するシングルドメイン抗体を指す(例えば、Hamers-Casterman, et al. (1993) Nature 363:446-448を参照されたい)。VHHは重鎖抗体またはNanobodies(登録商標)とも呼ばれる。シングルドメイン抗体は、サメを含むがこれに限定されない軟骨魚のIgNAR抗体免疫化から得られたVHHなどの非哺乳動物供給源にも由来してよい。
【0059】
生物学的試料:
本明細書で使用する「生物学的試料」または「試料」という用語は、対象から得られた(または対象に由来する)試料を指す。例として、生物学的試料は、体液、血液、全血、血漿、血清、粘液分泌物、唾液、脳脊髄液(CSF)、気管支肺胞洗浄液(BALF)、眼の液体(例えば、硝子体液、眼房水)、リンパ液、リンパ節組織、脾臓組織、骨髄、腫瘍組織からなる群より選択される材料を、このような組織の1つまたは複数に由来する免疫グロブリンが濃縮された画分または細胞タイプ特異的な、濃縮された画分を含めて含む。
【0060】
gp130細胞:
「gp130細胞」、「gp130発現細胞」、「gp130陽性細胞」、および「gp130+」細胞という用語は、細胞膜の細胞外表面にgp130抗原を発現する、および示す細胞を指すために本明細書において同義で用いられる。同様に、「gp130陰性細胞」、「gp130-細胞」という用語は、細胞表面にgp130抗原を発現せず、示さない細胞を説明するために本明細書において同義で用いられる。
【0061】
CDR:
本明細書で使用する「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖免疫グロブリンポリペプチドと軽鎖免疫グロブリンポリペプチドの両方の可変領域内に見出される連続しない抗原結合部位を意味することが意図される。CDRは、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Kabat, et al.,「Sequences of proteins of immunological interest」という表題の米国保健・福祉省の刊行物(1991)(本明細書中では「Kabat 1991」または「Kabat」とも呼ばれる);Chothia, et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917(本明細書中では「Chothia」とも呼ばれる);およびMacCallum, et al. (1996) J. Mol. Biol. 262:732-745によって説明されており、定義は、互いに比較した時のアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体もしくはグラフトされた抗体またはその変種のCDRを指すために、どちらの定義の適用も、本明細書において定義および使用されるような用語の範囲内であると意図される。本開示の文脈では、特に定めのない限り、CDR位置の番号は、Kabatナンバリング規則、またはKabatとChothiaナンバリング規則のハイブリッドに従って付けられる。
【0062】
同等の:
本明細書で使用する「同等の」という用語は、評価可能な定量パラメータまたは定性パラメータの2つの測定値の違いの程度を説明するために用いられる。例えば、評価可能な定量パラメータの第1の測定値と、評価可能なパラメータの第2の測定値が、この状況で2つの結果の間で効果の統計的有意差を生じないと当業者が認識する範囲を超えて逸脱しない場合、2つの測定値は「同等」だとみなされるだろう。場合によっては、ある測定値が、別の測定値から35%未満、あるいは30%未満、あるいは25%未満、あるいは20%未満、あるいは15%未満、あるいは10%未満、あるいは7%未満、あるいは5%未満、あるいは4%未満、あるいは3%未満、あるいは2%未満、または1%未満逸脱すれば、測定値は「同等」だとみなされることがある。特定の態様では、ある測定値が標準品から15%未満、あるいは10%未満、または5%未満逸脱すれば標準品と同等になる。
【0063】
保存的アミノ酸置換:
本明細書で使用する「保存的アミノ酸置換」という用語は、ある特定のアミノ酸が、同様の生化学的特性(例えば、電荷、疎水性、およびサイズ)を有する別のアミノ酸に変化するアミノ酸交換を指す。例えば、以下の各グループにあるアミノ酸:(1)疎水性アミノ酸:アラニン、イソロイシン、ロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、およびグリシン;(2)極性アミノ酸:グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、メチオニン、およびシステイン;(3)塩基性アミノ酸:リジン、およびアルギニン;ならびに(4)酸性アミノ酸:アスパラギン酸およびグルタミン酸は互いの保存的アミノ酸とみなすことができる。
【0064】
~に由来する:
本明細書で使用する「~に由来する」という用語はアミノ酸配列の文脈では、ポリペプチドまたは核酸が、参照ポリペプチドまたは核酸の配列に基づいた配列を有することを示すことを目的とし、タンパク質または核酸が作製される供給源または方法に関して限定するものであることを目的としない。例として、「~に由来する」という用語は参照アミノ酸配列またはDNA配列のホモログまたは変種を含む。
【0065】
有効濃度(EC):
本明細書で使用する「有効濃度」という用語またはその略称「EC」は、試験系において、ある特定のパラメータを変えるのに十分な量の剤濃度を指すために同義で用いられる。略称「E」は、試験系が試験剤に暴露された時に、この試験系において観察された、ある特定の生物学的効果の大きさを指す。応答の大きさが試験剤の濃度(「C」)の因子として表される場合、略称「EC」が用いられる。生物系の文脈では、Emaxという用語は、活性化試験剤の飽和濃度に応答して観察された、ある特定の生物学的効果の最大の大きさを指す。略称ECが下付き文字と共に示された場合(例えば、EC40、EC50など)、下付き文字は、この濃度で観察された、生物学的応答のEmaxのパーセントを指す。例えば、このような試験剤に応答した、このような測定可能な生物学的パラメータの最大レベルの30%である、試験系において測定可能な生物学的パラメータを誘導するのに十分な試験剤の濃度は、このような生物学的パラメータについて試験剤の「EC30」と呼ばれる。同様に、「EC100」という用語は、このような剤に応答して、測定可能なパラメータの最大(100%)応答をもたらす剤の有効濃度を示すのに用いられる。同様に、(薬物動力学の分野で一般的に用いられる)EC50という用語は、測定可能なパラメータの最大半量(約50%)変化をもたらすのに十分な剤の濃度を指す。「飽和濃度」という用語は、温度および圧力の標準的な条件下で標準的な体積の特定の溶媒(例えば、水)に溶解することができる、試験剤の最大限の量を指す。薬物動力学では、薬物の飽和濃度は、典型的には、全ての利用可能な受容体が薬物によって占有されるような、薬物の十分な濃度を示すために用いられ、EC50は、最大半量効果を生じる薬物濃度である。
【0066】
濃縮された:
本明細書で使用する「濃縮された」という用語は、(a)関心対象の種(例えば、分子または細胞)が、出発試料、例えば、生物学的試料(例えば、分子が天然に存在する試料、もしくは投与後に存在する試料)中にある種の濃度よりも高い(例えば、少なくとも3倍、あるいは少なくとも5倍、あるいは少なくとも10倍、あるいは少なくとも50倍、あるいは少なくとも100倍、または少なくとも1000倍の)濃度で、または(b)分子が作られた環境(例えば、組換えにより改変された細菌細胞もしくは哺乳動物細胞)よりも高い濃度で存在するように非天然に操作された試料を指す。
【0067】
細胞外ドメイン:
本明細書で使用する「細胞外ドメイン」という用語またはその略称「ECD」は、細胞の原形質膜の外側にある細胞表面タンパク質(例えば、細胞表面受容体)の部分を指す。細胞表面タンパク質は、膜貫通タンパク質、細胞表面タンパク質、または膜結合タンパク質でもよい。
【0068】
同一性:
ポリペプチド配列またはDNA配列に関して本明細書で使用する「同一性」という用語は、2つの分子間のサブユニット配列同一性を指す。両分子のサブユニット位置が同じ単量体サブユニット(すなわち、同じアミノ酸残基またはヌクレオチド)によって占有される場合、この分子は、その位置で同一である。2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の類似性は、同一の位置の数の一次関数である。一般的に、これらの配列は最高次数のマッチが得られるようにアラインメントされる。必要に応じて、同一性は、公開された技法と、Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410およびAltschul, et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されているBLAST 2.0 アルゴリズムなどの広く利用可能なコンピュータプログラムを用いて計算することができる。BLAST解析を行うためのソフトウェアは米国バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のウェブサイトを通じて公的に入手することができる。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントした時に正の値の閾値スコア「T」にマッチまたは適合する、クエリー配列中の長さWの短いワードを特定することによって、高スコア配列対(high scoring sequence pair)(HSP)を特定することを伴う。Tは隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)(Altschul et.al.,前出)と呼ばれる。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むさらに長いHSPsを発見する検索を開始するためのシードとして働く。次いで、このワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加する限り、それぞれの配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータ「M」(一対のマッチ残基のリワードスコア;常に、>0)および「N」(ミスマッチ残基のペナルティースコア;常に、<0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合、累積スコアを計算するためにスコアリング行列が用いられる。(a)累積アラインメントスコアが、その達成される最大値から量Xだけ減少した時に;1つもしくは複数の負のスコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアが0もしくはそれ以下になった時に;または(b)いずれかの配列の端部に到達した時に、各方向でのワードヒットの延長は止まる。BLASTアルゴリズムパラメータ「W」、「T」、および「X」はアラインメントの感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は同じように機能するが、デフォルトとして、28のワードサイズ(「W」)、10の期待値(「E」)、M=1、N=-2、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff & Henikoff, (1989) PNAS(USA) 89:10915-10919を参照のこと)を使用する。
【0069】
応答をもたらすのに十分な量で:
本明細書で使用する「応答を引き起こすのに十分な量で」という句は、試験剤を試験系に適用する前に測定された指標のレベル(例えば、ベースラインレベル)と、適用した後に測定された指標のレベルの検出可能な変化をもたらすのに十分な試験剤の量に関して用いられる。一部の態様では、試験系は、細胞、組織、または生物である。一部の態様では、試験系は、蛍光アッセイなどのインビトロ試験系である。一部の態様では、試験系は、試験剤を細胞、組織、または生物に適用する前の生物学的機能と、適用した後の生物学的機能を反映する、細胞、組織、または生物のパラメータレベルの変化の測定を伴うインビボ系である。一部の態様では、指標は、ある量の試験剤の投与に応答した、アッセイにおいて評価された細胞の生物学的機能または発達状態を反映する。一部の態様では、試験系は、1種類または複数種の試験剤を細胞、組織、または生物に適用する前の生物学的状態と、適用した後の生物学的状態を反映する細胞、組織、または生物の指標レベル変化の測定を伴う。「応答をもたらすのに十分な量で」という用語は治療有効量で十分な場合があるが、治療有効量よりも多くてもよく、少なくてもよい。
【0070】
と組み合わせて:
本明細書で使用する「と組み合わせて」という用語は、対象への複数種の剤の投与に関して用いられる時には、対象への第1の剤、少なくとも1種類のさらなる(すなわち、第2、第3、第4、第5などの)剤の投与を指す。本発明の目的で、ある剤(例えば、gp130結合分子)は、第2の剤(例えば、免疫チェックポイント経路のモジュレーター)の投与時に、該第1の剤の投与に起因する生物学的効果が、第1の剤と第2の剤の治療効果が重複するように対象において持続しているならば、第2の剤と組み合わせて投与されるとみなされる。例えば、PD1免疫チェックポイントインヒビター(例えば、ニボルマブまたはペンブロリズマブ)は、典型的には、2週間毎または3週間毎にIV注入によって投与されるのに対して、本開示のgp130結合分子は、典型的には、もっと頻繁に、例えば、毎日、1日2回、または毎週投与される。しかしながら、たとえ第2の剤の投与時間からかなり遠い(例えば、数日または数週間の)時点で第1の剤が投与されていたとしても、第1の剤(例えば、ペンブロリズマブ)を投与すると長期間にわたって治療効果が得られ、第2の剤(例えば、gp130結合分子)を投与すると、その治療効果が、第2の剤が第1の剤と組み合わせて投与されたとみなされるように第1の剤の治療効果が継続している間、得られる。一態様では、第1の剤と第2の剤が同時に(互いの30分以内に)、同時期に、または連続して投与されるのであれば、ある剤は第2の剤と組み合わせて投与されるとみなされる。一部の態様では、第1の剤と第2の剤が互いの約24時間以内に、好ましくは互いの約12時間以内に、好ましくは互いの約6時間以内に、好ましくは互いの約2時間以内に、または好ましくは互いの約30分以内に投与されるのであれば、第1の剤は第2の剤と「同時期に」投与されるとみなされる。「と組み合わせて」という用語はまた、第1の剤と第2の剤が1つの薬学的に許容される製剤の中に共処方され、共製剤が対象に投与される状況に適用されることも理解されるものとする。ある特定の態様では、例えば、1種類または複数種の他の剤の前に、ある剤が投与される場合、gp130結合分子と補助剤は連続して投与または適用される。他の態様では、gp130結合分子と補助剤は同時に投与される。例えば、2種類以上の剤が同時に、またはほぼ同時に投与される場合、2種類以上の剤が2種類以上の別々の製剤の中に存在してもよく、1つの製剤(すなわち、共製剤)になるように組み合わされてもよい。剤が連続して、または同時に投与されるかどうかに関係なく、本開示の目的のために組み合わせて投与されるとみなされる。
【0071】
処置を必要とする:
本明細書で使用する「処置を必要とする」という用語は、対象が必要とするか、または処置から潜在的に利益を得る、対象に対して医師または他の介護者が下した判断を指す。この判断は、医師または介護者の専門知識の範囲内にある様々な要因に基づいて下される。
【0072】
予防を必要とする:
本明細書で使用する「予防を必要とする」という用語は、対象が必要とするか、または予防的ケアから潜在的に利益を得る、対象に対して医師または他の介護者が下した判断を指す。この判断は、医師または介護者の専門知識の範囲内にある様々な要因に基づいて下される。
【0073】
インヒビター:
本明細書で使用する「インヒビター」という用語は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、または細胞の活性化を減少させる、ブロックする、阻止する、遅延するか、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、または細胞を不活化する、脱感作する、またはダウンレギュレートする分子を指す。インヒビターはまた、細胞または生物の構成的活性を低減する、ブロックする、または不活化する分子と定義することもできる。
【0074】
細胞内ドメイン:
本明細書で使用する「細胞内ドメイン」という用語またはその略称「ICD」は、細胞の原形質膜の内部にある、細胞表面タンパク質(例えば、細胞表面受容体)の部分を指す。ICDは膜貫通タンパク質もしくは膜結合タンパク質の細胞質部分全体を含んでもよく、細胞内タンパク質を含んでもよい。
【0075】
単離された:
本明細書で使用する「単離された」という用語は、天然に存在するものであれば、天然に存在し得る環境とは異なる環境にある関心対象のポリペプチドに関して用いられる。「単離された」とは、関心対象のポリペプチドについて、かなり濃縮された、および/または関心対象のポリペプチドが部分的もしくは実質的に精製されている、試料中のポリペプチドを含むことが意図される。ポリペプチドが天然でない場合、「単離された」とは、ポリペプチドが、合成された環境から分離されていること、例えば、ポリペプチドを発現するように操作された細胞を含む組換え細胞培養物から単離されていること、または固相合成手段に起因する溶液によって単離されていることを示している。
【0076】
Kabatナンバリング:
本明細書で使用する「Kabatナンバリング」という用語は当技術分野において認められており、免疫グロブリンの重鎖領域および軽鎖領域において他のアミノ酸残基よりも変わりやすい(例えば、超可変)アミノ酸残基に番号を付ける体系を指す(Kabat, et al., (1971) Ann. NY Acad. Sci. 190:382-93; Kabat, et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。本明細書で使用する「Chothiaナンバリング」という用語は当技術分野において認められており、構造ループ領域の場所に基づいてアミノ酸残基に番号を付ける体系を指す(Chothia et al. 1986, Science 233:755-758; Chothia & Lesk 1987, JMB 196:901-917; Chothia et al. 1992, JMB 227:799-817)。本開示の目的のために、他で具体的に特定されない限り、抗体の可変領域にあるCDR2および3の位置はKabatナンバリング、または単に「Kabat」に従う。抗体の可変領域にあるCDR1の位置はKabatとChothiaナンバリングスキームのハイブリッドに従う。
【0077】
リガンド:
本明細書で使用する「リガンド」という用語は、受容体に特異的に結合し、受容体の活性、またはその受容体を発現する細胞の応答を変えるように受容体に変化を引き起こす分子を指す。一態様では、「リガンド」という用語は、受容体のアゴニストまたはアンタゴニストとして働くことができる分子またはその複合体を指す。本明細書で使用する「リガンド」という用語は天然リガンドおよび合成リガンドを包含する。「リガンド」はまた、低分子、サイトカイン、および抗体のペプチドミメティックも包含する。リガンドおよび受容体の複合体は「リガンド-受容体複合体」と呼ばれる。リガンドは、ポリタンパク質または融合タンパク質の1つのドメイン(例えば、抗体/リガンド融合タンパク質のいずれかのドメイン)を含む場合がある。
【0078】
調整する:
本明細書で使用する「調整する」、「調整」などという用語は、試験剤が、生物系を含む系または生化学的経路においてプラスもしくはマイナスの応答を引き起こすことができるか、または直接的もしくは間接的に引き起こすことができることを指す。モジュレーターという用語は、アゴニスト(部分的アゴニスト、完全アゴニスト、およびスーパーアゴニストを含む)とアンタゴニストを両方とも含む。
【0079】
核酸:
「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」などという用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、またはその類似体を指すために本明細書において同義で用いられる。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、直鎖核酸および環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、プライマーなどが含まれる。
【0080】
機能的に連結された:
「機能的に連結された」という用語は、成分分子の機能のそれぞれが保持されるように構築物内で並べられている分子、典型的にはポリペプチドまたは核酸の間の関係性を指すために本明細書において用いられるが、機能的に連結されることで構築物の個々の成分の活性をプラスまたはマイナスに調整することができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)分子を野生型タンパク質に機能的に連結すると、そのタンパク質の生物学的活性が野生型分子に対して減少した構築物が得られる可能性がある。しかしながら、それにもかかわらず2つは機能的に連結されているとみなされる。「機能的に連結された」という用語が、異なる機能をコードする複数の核酸配列の関係性に適用される時、複数の核酸配列が組み合わされて1本の核酸分子になった時に、例えば、この核酸分子が組換え技術を用いて細胞に導入された時に、細胞内で特定の核酸配列を転写および/または翻訳することができる核酸を提供する。例えば、ポリペプチドの分泌を容易にするシグナル配列をコードする核酸配列がプレタンパク質を発現するのであれば、ポリペプチドをコードするDNAに機能的に連結されているとみなされ得る。プロモーターまたはエンハンサーが配列の転写に影響を及ぼすのであればコード配列に機能的に連結されているとみなされる。または、リボソーム結合部位が翻訳を容易にするように配置されているのであれば、コード配列に機能的に連結されているとみなされる。概して、核酸分子の文脈では、「機能的に連結された」という用語は、連結されている核酸配列は連続しており、分子の分泌リーダーまたは結合されたサブドメインの場合では連続しており、かつリーディングフェーズ(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーなどの、ある特定の遺伝因子は、これらが効果をもたらす配列から離れて機能することがあり、その配列に対して連続している必要はないが、それにもかかわらず機能的に連結されているとみなされ得る。
【0081】
親ポリペプチド:
本明細書で使用する「親ポリペプチド」または「親タンパク質」という用語は、第1の「親」ポリペプチドに対して改変されている第2のポリペプチド(例えば、誘導体、ムテインまたは変種)の供給源を指定するために同義で用いられる。場合によっては、親ポリペプチドは野生型または天然型のタンパク質である。場合によっては、親ポリペプチドは、さらに改変された、天然タンパク質の改変型でもよい。「親ポリペプチド」という用語は、ポリペプチドそのもの、または親ポリペプチド(例えば、グリコシル化型もしくはPEG化型および/または親ポリペプチドを含む融合タンパク質)を含む組成物を指すことがある。
【0082】
部分的アゴニスト:
本明細書で使用する「部分的アゴニスト」という用語は、ある特定の受容体に結合し、活性化するが、完全アゴニストと比べて受容体の部分的活性化しか有さない、特異的に結合する分子を指す。部分的アゴニストはアゴニスト作用とアンタゴニスト作用を両方とも示すことがある。例えば、完全アゴニストと部分的アゴニストが両方とも存在する時に、部分的アゴニストは、受容体結合において完全アゴニストと競合し、その結果として、部分的アゴニストの非存在下での受容体と完全アゴニストとの接触と比べて受容体活性化を純減少させることによって競合的アンタゴニストとして作用する。不十分な量の内因性リガンドが存在する時に、部分的アゴニストは、対象において望ましい最大下応答を生じるように受容体を活性化するのに使用することができる。または、過剰量の内因性リガンドが存在する時に、部分的アゴニストは受容体の過剰刺激を低減することができる。部分的アゴニストによって生じる最大応答(Emax)は、その固有活性と呼ばれ、完全アゴニストが100%の応答を生じた場合のパーセントスケールで表されることがある。部分的アゴニストは、ある特定のアッセイ系において類似濃度で評価された時に、参照ポリペプチドの活性の10%超であるが100%未満、あるいは20%超であるが100%未満、あるいは30%超であるが100%未満、あるいは40%超であるが100%未満、あるいは50%超であるが100%未満、あるいは60%超であるが100%未満、あるいは70%超であるが100%未満、あるいは80%超であるが100%未満、または90%超であるが100%未満を有してもよい。
【0083】
ポリペプチド:
本明細書で使用する「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は本明細書において同義で用いられ、遺伝暗号で指定されたアミノ酸および遺伝暗号で指定されないアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾されたポリペプチドバックボーンを有するポリペプチドを含むことができる任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。ポリペプチドという用語には、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質;異種リーダー配列および同種リーダー配列を有する融合タンパク質;N末メチオニン残基を有するか、または有さない融合タンパク質;キレート化ペプチドなどの精製を容易にするアミノ酸配列を有する融合タンパク質;免疫学的にタグ化されたタンパク質を有する融合タンパク質;免疫学的に活性のあるポリペプチド断片(例えば、抗原性ジフテリアまたは破傷風毒素またはトキソイド断片)を有するペプチドを含む融合タンパク質などを含むがこれに限定されない、融合タンパク質が含まれる。
【0084】
予防する:
本明細書で使用する「予防する」、「予防すること」、「予防」などという用語は、一時的または恒久的に、(例えば、臨床症状の非存在によって確かめられる)疾患、障害、状態などを発症する対象のリスクを予防する、抑制する、阻害する、もしくは低減するか、または疾患、障害、状態などの発生を遅延するように、疾患、障害、状態、またはその症状の発生前に対象に対して始められる行動方針を指す。対象において疾患、障害、または状態を予防するための行動方針は、典型的には、特定の疾患、障害、または状態を発症する遺伝的要因、経験的要因、または環境要因のために疾患、障害、または状態を発症する素因のある対象の状況において適用される。ある特定の場合では、「予防する」、「予防すること」、「予防」という用語はまた、疾患、障害、または状態が既存の状態から、もっと有害な状態に進行するのを遅らせることも指すために用いられる。
【0085】
受容体:
本明細書で使用する「受容体」という用語は、リガンドに特異的に結合するドメインを有するポリペプチドであって、リガンドが結合するとポリペプチドの少なくとも1つの生物学的特性が変化するポリペプチドを指す。一部の態様では、受容体は、細胞外ドメイン(ECD)と、細胞表面にECDを固定するのに役立つ膜結合ドメインを含む細胞膜結合タンパク質である。細胞表面受容体の一部の態様では、受容体は、細胞内ドメイン(ICD)と細胞外ドメイン(ECD)が、膜貫通ドメイン (TM)と一般に呼ばれる細胞膜貫通ドメインによって連結された膜貫通ポリペプチドである。コグネイトリガンドと受容体が結合すると受容体のコンホメーション変化が起こり、その結果として、測定可能な生物学的効果が生じる。場合によっては、受容体が、ECD、TM、およびICDを含む膜貫通ポリペプチドである場合、リガンドとECDが結合すると、リガンドとECDとの結合に応答して、ICDの1つまたは複数のドメインによって媒介される測定可能な細胞内生物学的効果が生じる。一部の態様では、受容体は、細胞内シグナル伝達を容易にするための多成分複合体の成分である。例えば、リガンドは、単独では、どの細胞内シグナル伝達にも関連しないが、リガンドが結合するとヘテロ多量体(ヘテロ二量体、ヘテロ三量体などを含む)またはホモ多量体(ホモ二量体、ホモ三量体、ホモ四量体などを含む)複合体の形成を促進し、その結果として細胞内で測定可能な生物学的効果、例えば、細胞内シグナル伝達カスケード(例えば、Jak/STAT経路)を活性化する細胞表面受容体に結合することがある。一部の態様では、受容体は、ECD、TMおよびICDドメインを含む膜貫通単鎖ポリペプチドであり、ECD、TM、およびICDドメインは、同じ、または異なる天然受容体変種またはその合成機能的等価物に由来する。
【0086】
組換え:
本明細書で使用する「組換え」という用語は、組換えDNA技術を用いてポリペプチド、核酸、または細胞が改変された方法を指す形容詞として用いられる。「組換えタンパク質」とは、組換えDNA技術を用いて産生されたタンパク質であり、タンパク質が産生された方法を示すために、タンパク質名の前にある小文字の「r」を用いて略される(例えば、組換えにより産生されたヒト成長ホルモンは、通常、「rhGH」と略される)。同様に、細胞は、組換えDNA技術を用いた外因性核酸(例えば、ssDNA、dsDNA、ssRNA、dsRNA、mRNA、ウイルスベクターベクターまたは非ウイルスベクター、プラスミド、コスミドなど)の組み込み(例えば、トランスフェクション、形質導入、感染)によって改変されていれば「組換え細胞」と呼ばれる。組換えDNA技術のための技法およびプロトコール、例えば、Sambrook, et al.(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, N.Y.)および他の標準的な分子生物学の実験マニュアルに見られる技法およびプロトコールは当技術分野において周知である。
【0087】
応答:
例えば、細胞、組織、臓器、または生物の「応答」という用語は、評価可能な生化学的パラメータまたは生理学的パラメータ(例えば、濃度、密度、接着、増殖、活性化、リン酸化、遊走、酵素活性、遺伝子発現レベル、遺伝子発現速度、エネルギー消費速度、分化のレベルまたは状態)の量的変化または質的変化を包含し、この変化は、外因性作用物質もしくは遺伝プログラミングなどの内部機構による活性化、刺激、もしくは処理、または外因性作用物質もしくは遺伝プログラミングなどの内部機構との接触と相関関係がある。ある特定の状況では、「活性化」、「刺激」などという用語は、内部機構によって調節されるような、ならびに外部要因または環境要因によって調節されるような細胞活性化を指すのに対して、「阻害」、「ダウンレギュレーション」などという用語は反対の作用を指す。「応答」は、インビトロで、例えば、アッセイ系、表面プラズモン共鳴、酵素活性、質量分光法、アミノ酸またはタンパク質の配列決定技術を使用することによって評価されてもよい。「応答」は、インビボで、客観的な生理学的パラメータ、例えば、体温、体重、腫瘍量、血圧、X線または他の画像化技術の結果を評価することで量的に評価されてもよく、幸福、鬱状態、興奮、または疼痛の報告された主観的な感情の変化によって質的に評価されてもよい。一部の態様では、CD3活性化初代ヒトT細胞の増殖レベルは、Crouch, et al. (1993) J. Immunol. Methods 160: 81-8に記載のように培養中に存在する細胞数に正比例する、存在するATP量に比例するルミネセンスシグナルを発生する生物発光アッセイにおいて評価されてもよく、市販のアッセイ、例えば、Promega Corporation, Madison WI 53711からカタログ番号G9241およびG9681として市販されているCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Cell Viability AssayまたはCellTiter-Glo(登録商標)3D Cell Viabilityキットを用いて、製造業者により提供される説明書におおむね従って評価されてもよい。一部の態様では、試験剤の投与に応答したT細胞活性化レベルは、当技術分野において周知の方法に従ってSTAT(例えば、STAT1、STAT3、STAT5)リン酸化レベルによって確かめられた時に説明されたようにフローサイトメトリー法によって確かめられる場合がある。例えば、STAT5リン酸化は、Horta, et al. 前記、Garcia, et al., 前記に記載のようにフローサイトメトリー法を用いて測定されてもよく、製造業者によって提供される説明書におおむね従って行われる市販のキット、例えば、Phospho-STAT5(Tyr694)キット(部品番号64AT5PEGとしてPerkin-Elmer, Waltham MAから市販されている)を用いて測定されてもよい。
【0088】
有意に低減した結合:
本明細書で使用する「有意に低減した結合を示す」という用語は、第1の分子の親形態と比べて、第2の分子(例えば、受容体または抗原)に対する親和性の有意な低減を示す第1の分子(例えば、リガンドまたは抗体)の変種に関して用いられる。抗体変種に関して、変種が、変種の起源となった親抗体の20%未満、あるいは約10%未満、あるいは約8%未満、あるいは約6%未満、あるいは約4%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満、または約0.5%未満の親和性でネイティブ型の受容体に結合するのであれば、抗体変種は「有意に低減した結合を示す」。同様に、変種リガンドに関して、変種リガンドの親和性が、変種リガンドの起源となった親リガンドの20%未満、あるいは約10%未満、あるいは約8%未満、あるいは約6%未満、あるいは約4%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満、または約0.5%未満の親和性で受容体に結合するのであれば、変種リガンドは「有意に低減した結合を示す」。同様に、変種受容体に関して、変種受容体の親和性が、変種受容体の起源となった親受容体の20%未満、あるいは約10%未満、あるいは約8%未満、あるいは約6%未満、あるいは約4%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満、または約0.5%未満の親和性で結合するのであれば、変種リガンドは「有意に低減した結合を示す」。
【0089】
低分子:
「低分子」という用語は、約10kDa未満、約2kDa未満、または約1kDa未満の分子量を有する化合物(典型的には、薬学的に活性のある化合物)を指す。低分子には、無機分子、有機分子、無機分子を含有する有機分子、放射性原子を含む分子、および合成分子が含まれるが、これに限定されない。「低分子」という用語は、薬学分野の当業者によく理解されている用語であり、典型的には、有機化合物を生物製剤と区別するのに用いられる。
【0090】
特異的に結合する:
本明細書で使用する「特異的に結合する」という用語は、第1の分子が第2の分子に対して示す親和性の程度を指す。結合ペア(例えば、リガンド/受容体、抗体/抗原)の文脈では、結合ペアの第1の分子が、試料中に存在する他の成分に有意な量で結合しない時には、結合ペアの第1の分子は結合ペアの第2の分子に特異的に結合するといわれる。第2の分子に対する第1の分子の親和性が、試料中に存在する他の成分に対する第1の分子の親和性の少なくとも2倍、あるいは少なくとも5倍、あるいは少なくとも10倍、あるいは少なくとも20倍、または少なくとも100倍である時に、結合ペアの第1の分子は、結合ペアの第2の分子に特異的に結合するといわれる。特定の態様では、結合ペアの第1の分子が抗体である場合、抗体と抗原との間の平衡解離定数が、例えば、スキャッチャード分析(Munsen, et al. (1980) Analyt. Biochem. 107:220-239)によって求められた時に約106M超、あるいは約108M超、あるいは約1010M超、あるいは約1011M超、約1012M超であれば、抗体は抗原(またはタンパク質、抗原、リガンド、もしくは受容体の抗原決定基(エピトープ))に特異的に結合する。一態様では、リガンドがgp130結合sdAbであり、受容体がgp130を含む場合、gp130結合sdAb/gp130 ECDの平衡解離定数が、約105M超、あるいは約106M超、あるいは約107M超、あるいは約108M超、あるいは約109M超、あるいは約1010M超、または約1011M超であれば、gp130結合sdAbは特異的に結合する。特異的結合は、競合ELISAアッセイ、放射性リガンド結合アッセイ(例えば、飽和結合、スキャッチャードプロット、ノンリニアカーブイフィッティングプログラム、および競合結合アッセイ);非放射性リガンド結合アッセイ(例えば、蛍光偏光(FP)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET);液相リガンド結合アッセイ(例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)、および免疫沈降);ならびに固相リガンド結合アッセイ(例えば、マルチウェルプレートアッセイ、オンビーズリガンド結合アッセイ、オンカラムリガンド結合アッセイ、およびフィルターアッセイ))、ならびに表面プラズモン共鳴アッセイを含むが、これに限定されない、当技術分野において公知の技法を用いて評価することができる(例えば、Drescher et al., (2009) Methods Mol Biol 493:323-343と、市販の計測装置、例えば、Biacore 8K、Biacore 8K+、Biacore S200、Biacore T200(Cytiva, 100 Results Way, Marlborough MA 01752)を参照されたい)。一部の態様では、本開示は、hgp130アイソフォームに特異的に結合する分子(例えば、gp130結合sdAb)を提供する。本明細書で使用する、gp130に対するgp130結合分子の結合親和性、結合親和性は表面プラズモン共鳴(「SPR」)によって決定および/または定量されることがある。gp130に対するgp130結合分子の結合親和性を評価する際に、結合ペアのいずれかのメンバーが固定化され、結合ペアの他の要素が移動相の中に提供されることがある。一部の態様では、関心対象のタンパク質が表面に固定化されるセンサーチップは、関心対象のタンパク質の結合を容易にする物質、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)誘導体化表面プラズモン共鳴センサーチップ(例えば、カタログ番号BR100407としてCytiva Global Life Science Solutions USA LLC, Marlborough MAから入手可能なSensor Chip NTA)、抗Hisタグ抗体(例えば、Cytiva, Marlborough MAから市販されている抗ヒスチジンCM5チップ)、プロテインA、またはビオチンを用いてコンジュゲートされる。その結果、結合を評価するためにチップ表面にコンジュゲートされた物質に結合させるためにタンパク質を改変することが必要な場合が多い。例えば、チップ上での保持のためにポリヒスチジン配列(例えば、6xHisまたは8xHis)を含むキレート化ペプチドを組み込むことによって、評価しようとする結合ペアの一方のメンバーをNTAによりコンジュゲートした。一部の態様では、gp130結合分子はチップ上に固定化され、gp130(またはそのECD断片)は移動相中に提供されることがある。または、gp130(またはそのECD断片)はチップ上に固定化され、gp130結合分子は移動相中に提供されることがある。どちらの場合にも、コーティングされたSPRチップ上に固定化するために、一部のタンパク質を改変すると、SPRによって評価しようとする結合ペアの一方または両方の成分の結合特性が干渉される場合があることに留意しなければならない。このような場合、結合ペアの移動要素と結合要素を切り替えるか、または評価しようとするタンパク質の非干渉コンジュゲーションを容易にする結合剤を有するチップを使用することが必要な場合がある。または、SPRを用いて、gp130に対するgp130結合分子の結合親和性を評価する時に、gp130結合分子は、ポリHis配列(例えば、6xHisまたは8xHis)のC末付加によって誘導体化され、NTA誘導体化センサーチップ上に固定化されてもよく、gp130 VHH結合親和性が評価されているhgp130受容体サブユニットは移動相中に提供される。組換えDNA技術によって生成されたgp130結合分子のC末端にポリHis配列を組み込むための手段はバイオテクノロジーの関連分野の当業者に周知である。一部の態様では、実施例の開示におおむね従ってSPRを用いた、gp130に対するgp130結合分子の結合親和性。
【0091】
対象:
「レシピエント」、「個体」、「対象」、および「患者」という用語は本明細書において同義で用いられ、診断、処置、または療法が望ましい任意の哺乳動物対象、特に、ヒトを指す。処置の目的で「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物および家畜、および動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。一部の態様では、哺乳動物はヒトである。
【0092】
実質的に純粋な:
本明細書で使用する「実質的に純粋な」という用語は、組成物の一成分が、組成物の全含有量の約50%超、あるいは約60%超、あるいは約70%超、あるいは約80%超、あるいは約90%超、あるいは約95%超を構成することを示す。「実質的に純粋な」タンパク質は、組成物の全含有量の約50%超、あるいは約60%超、あるいは約70%超、あるいは約80%超、あるいは約90%超、あるいは約95%超を構成する。
【0093】
~に罹患している:
本明細書で使用する「~に罹患している」という用語は、対象が必要とするか、または処理から利益を得る、X線、CTスキャン、従来の診断臨床検査(例えば、血球数)、ゲノムデータ、タンパク質発現データ、免疫組織化学を含むが、これに限定されない、疾患、障害、または状態を特定するための分野において受け入れられている入手可能な客観的情報または主観的情報に基づいて対象に対して医師が下した決定を指す。に罹患している、という用語は、典型的には、特定の疾患状態と組み合わせて用いられ、例えば、「新生物疾患に罹患している」とは、新生物が存在すると診断された対象を指す。
【0094】
T細胞:
本明細書で使用する「T細胞」(「T-cell」または「T cell」)という用語は、胸腺内で分化し、特異的な細胞表面抗原受容体を有し、細胞性免疫および体液性免疫の開始または抑制を制御するものも含み、抗原を有する細胞を溶解するものも含むリンパ球を指すために従来の意味で用いられる。一部の態様では、T細胞には、ナイーブCD8+T細胞、細胞傷害性CD8+T細胞、ナイーブCD4+T細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1、TH2、TH9、TH11、TH22、TFH;調節性T細胞、例えば、TR1、Treg、誘導性Treg;メモリーT細胞、例えば、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、NKT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ならびにCAR-T細胞、組換え改変TIL、およびTCR操作細胞を含むが、これに限定されない、このようなT-細胞の操作された変種が含まれるが、それに限定されるわけではない。一部の態様では、T細胞は、gp130細胞、gp130+細胞、gp130 T細胞、またはgp130+T細胞)と同義で言及される、gp130アイソフォームを発現するT細胞である。
【0095】
末端(Terminus)/末(Terminal):
ポリペプチド構造の文脈において本明細書で使用する「N末端」(または「アミノ末端」)および「C末端」(または「カルボキシル末端」)は、それぞれ、ポリペプチドのアミノ最端部およびカルボキシル最端部を指す。これに対して、「N末」および「C末」という用語は、それぞれ、N末端およびC末端に対するポリペプチドアミノ酸配列中での相対位置を指し、それぞれ、N末端およびC末端にある残基を含んでもよい。「すぐN末側」とは、連続したポリペプチド配列中での第2のアミノ酸残基に対する第1のアミノ酸残基の位置を指し、第1のアミノ酸はポリペプチドのN末端に近い。「すぐC末側」とは、連続したポリペプチド配列中での第2のアミノ酸残基に対する第1のアミノ酸残基の位置を指し、第1のアミノ酸はポリペプチドのC末端に近い。
【0096】
治療有効量:
本明細書で使用する「治療有効量」という句は、単一用量で単独で、または薬学的組成物もしくは処置レジメンの一部として、あるいは一連の用量の一部として対象に投与された時に、疾患、障害、または状態の任意の量的または質的な症状、側面、または特徴に対してプラスの効果をもたらす、剤の量を指す。治療有効量は、関連する生理学的効果を測定することによって確かめることができ、投与計画と関連付けて、および対象の状態の診断分析に応答して調整されることがある。剤の治療的有効量を決定する評価のためのパラメータは、年齢、体重、性別、身体全体の健康、ECOGスコア、観察可能な生理学的パラメータ、血中濃度、血圧、心電図、コンピュータ断層撮影法、X線などの特徴を含むが、これに限定されない当技術分野において受け入れられている診断基準を用いて医師によって決定される。代わりに、またはそれに加えて、治療的有効量の剤が対象に投与されたかどうか確かめるために、臨床の場で一般的に評価される他のパラメータ、例えば、体温、心拍、血液化学の正常化、血圧の正常化、コレステロールレベルの正常化、または疾患、障害、もしくは状態の任意の症状、側面、もしくは特徴、バイオマーカー(例えば、炎症性サイトカイン、IFN-γ、グランザイムなど)、血清腫瘍マーカーの低下、固形癌効果判定基準(RECIST)の改善、免疫関連効果判定基準(irRC)の改善、生存期間の増加、無増悪生存期間の延長、無増悪期間の延長、治療成功期間の増加、無再発生存期間の延長、次治療開始までの期間(time to next treatment)の延長、客観的奏効率の改善、奏効期間の改善、腫瘍量の低下、完全寛解、部分寛解、安定病態などがモニタリングされることがあり、これらのパラメータは、剤の投与に応答した対象状態の改善を評価するための分野の臨床家によって決まる。一態様では、治療有効量は、単独で用いられた時に、または別の剤と組み合わせて用いられた時に、疾患、障害、または状態の任意の量的または質的な症状、側面、または特徴に対してプラスの効果をもたらし、哺乳動物対象への剤の投与の経過において不可逆的な重大な有害事象を生じない、剤の量を指す。
【0097】
膜貫通ドメイン:
「膜貫通ドメイン」または「TM」という用語は、膜貫通ポリペプチドが細胞膜と結合している時に、細胞膜に埋め込まれており、膜貫通ポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)および細胞内ドメイン(ICD)とペプチジル結合している膜貫通ポリペプチド(例えば、膜貫通受容体)のポリペプチドドメインを指す。膜貫通ドメインは細胞外ドメインおよび/または細胞内ドメインのいずれかまたは両方と同種であってもよく(天然で関連する)、異種であってもよい(天然で関連しない)。一部の態様では、受容体が、第1の親の受容体に由来する細胞内ドメインを含むキメラ受容体であり、第2の細胞外ドメインが、第2の異なる親受容体に由来する場合、キメラ受容体の膜貫通ドメインは、通常、キメラ受容体の起源となった親受容体のICDまたはECDのいずれかと関連する膜貫通ドメインである。
【0098】
処置する:
「処置する」、「処置すること」、「処置」などという用語は、対象が疾患、障害、もしくは状態、またはその症状に罹患しているという診断に応答して、対象に対して始められる行動方針(例えば、対象と、gp130結合sdAbを単独で、または補助剤と組み合わせて含む薬学的組成物との接触)を指し、行動方針は、(a)対象を苦しめている、このような疾患、障害、もしくは状態の根底にある原因;および/または(b)このような疾患、障害、もしくは状態と関連する症状の少なくとも1つの少なくとも1つを一時的または恒久的に排除する、低減する、抑制する、緩和する、または寛解させるように始められる。一部の態様では、処置することは、疾患に罹患している対象に対してとられる行動方針を含み、行動方針によって対象の疾患が阻害される(例えば、疾患、障害、もしくは状態の発達が抑えられるか、またはこれらに関連する1つもしくは複数の症状が寛解される)。
【0099】
Treg細胞または調節性T細胞:
「調節性T細胞」、「Treg細胞」、または「Treg」という用語は、エフェクターT細胞(Teff)を含むがこれに限定されない他のT細胞の応答を抑制することができるCD4+T細胞の一種を指すために、本明細書において同義で用いられる。Treg細胞は、典型的には、CD4(CD4+)、IL2受容体のCD25サブユニット(CD25+)、および転写因子forkhead box P3(FOXP3+)(Sakaguchi, Annu Rev Immunol 22, 531-62 (2004)の発現を特徴とする。場合によっては、「従来のCD4+T細胞」という用語は非Treg CD4+T細胞をCD4+Tregと区別するのに用いられる。
【0100】
変種:
「変種」、「タンパク質変種」、または「変種タンパク質」、または「変種ポリペプチド」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸改変、置換、または欠失により親ポリペプチドと異なるポリペプチドを指すために本明細書において同義で用いられる。親ポリペプチドは天然または野生型(WT)ポリペプチドでもよく、WTポリペプチドの改変バージョンでもよい。変種ポリペプチドという用語は、ポリペプチドそのもの、ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードする核酸配列を指すことがある。一部の態様では、変種ポリペプチドは、親ポリペプチドと比較した約1~約10、あるいは約1~約8、あるいは約1~約7、あるいは約1~約5、あるいは約1~約4、あるいは約1~約3、あるいは1~2個のアミノ酸の改変、置換、もしくは欠失、または1個のアミノ酸アミノ酸の改変、置換、もしくは欠失を含む。変種は、変種の起源となった親ポリペプチドに対して少なくとも約99%同一の、あるいは少なくとも約98%同一の、あるいは少なくとも約97%同一の、あるいは少なくとも約95%同一の、または少なくとも約90%同一でもよい。
【0101】
野生型:
本明細書において「野生型」または「WT」または「ネイティブ」とは、対立遺伝子バリエーションを含む、天然で見出されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。野生型タンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgGなどは、人の手によって改変されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。
【0102】
説明
本開示は、gp130の細胞外ドメインに特異的に結合するシングルドメイン抗体を含むgp130結合分子を提供する。一部の態様では、gp130はヒトgp130である。一部の態様では、gp130はネズミ(またはマウス)gp130である。
【0103】
ヒトgp130
一態様では、ヒトgp130受容体サブユニット(hgp130)の細胞外ドメインに特異的に結合する。hgp130は、22アミノ酸のN末シグナル配列を含み、N末シグナル配列が翻訳後に切断されて896アミノ酸の成熟タンパク質となる918アミノ酸前駆体として発現される。古典的な完全長酸hgp130前駆体(シグナルペプチドを含む)は、アミノ酸配列:
を有する918アミノ酸ポリペプチドである。
【0104】
本開示の目的のために、本明細書に記載のようなヒトgp130ポリペプチドのアミノ酸残基のナンバリングは、この古典的配列(UniProt参照番号P40189、SEQ ID NO:1)のナンバリングに従って付けられる。SEQ ID NO:1のアミノ酸1~22はhgp130のシグナルペプチドと突き止められ、SEQ ID NO:1のアミノ酸23~619は細胞外ドメインと突き止められ、SEQ ID NO:1のアミノ酸620~641は膜貫通ドメインと突き止められ、SEQ ID NO:1のアミノ酸642~918は細胞内ドメインと突き止められている。
【0105】
gp130のECDに結合する抗体を作製する目的のために、hgp130の細胞外ドメインを用いて免疫化を行うことができる。hgp130の細胞外ドメインは、配列:
の597アミノ酸ポリペプチドである。
【0106】
マウスgp130
一態様では、マウスまたはネズミgp130受容体サブユニット(mgp130)の細胞外ドメインに特異的に結合する。mgp130は、22アミノ酸のN末シグナル配列を含み、N末シグナル配列が翻訳後に切断されて895アミノ酸の成熟タンパク質となる917アミノ酸前駆体として発現される。古典的な完全長酸mgp130前駆体(22シグナルペプチドを含む)は、アミノ酸配列:
を有する917アミノ酸ポリペプチドである。
【0107】
本開示の目的のために、本明細書に記載のようなmgp130ポリペプチドのアミノ酸残基のナンバリングは、この古典的配列(UniProt参照番号Q00560、SEQ ID NO:279)のナンバリングに従って付けられる。SEQ ID NO:279のアミノ酸1~22はmgp130のシグナルペプチドであると突き止められ、SEQ ID NO:279のアミノ酸23~617は細胞外ドメインであると突き止められ、SEQ ID NO:279のアミノ酸618~639は膜貫通ドメインであると突き止められ、SEQ ID NO:279のアミノ酸640~917は細胞内ドメインであると突き止められている。
【0108】
gp130のECDに結合する抗体を作製する目的で、mgp130の細胞外ドメインを用いて免疫化を行うことができる。mgp130受容体の細胞外ドメインは、配列:
の595アミノ酸ポリペプチドである。
【0109】
gp130結合分子およびシングルドメイン抗体の特定
一部の態様では、本開示のgp130結合分子はシングルドメイン抗体(sdAb)である。本開示は、全てのgp130発現細胞上に見出されるヒトgp130アイソフォーム(hgp130)の細胞外ドメインに特異的に結合するシングルドメイン抗体(sdAb)を含むgp130結合分子に関する。
【0110】
シングルドメイン抗体(sdAb)とは、1つの単量体可変抗体ドメインを含有する抗体である。完全長抗体と同じように、sdAbは、抗原決定基に特異的に結合することができる。hgp130結合VHHシングルドメイン抗体は、hgp130の細胞外ドメインまたはその免疫学的に活性のある断片で免疫化されたラクダ科の哺乳動物(例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびグアナコ)から単離された重鎖抗体から操作することができる。sdAbおよびVHHの説明は、例えば、De Greve et al., (2019) Curr Opin Biotechnol. 61:96-101; Ciccarese, et al., (2019) Front Genet. 10:997: Chanier and Chames (2019) Antibodies (Basel) 8(1);およびDe Vlieger, et al. (2018) Antibodies (Basel) 8(1)において見られる。または、hgp130シングルドメイン抗体は、hgp130の細胞外ドメインまたはその免疫学的に活性のある断片で免疫化された軟骨魚から単離されたIgNAR重鎖抗体から単離された重鎖抗体から操作されてもよい。hgp130結合sdAbはまた、hgp130の細胞外ドメインまたはその免疫学的に活性のある断片で免疫化された、ヒト、ラット、ウサギを含む他の哺乳動物種に由来する免疫グロブリンG(IgG)アイソタイプに由来する二量体可変ドメインを分割することによって得られてもよい。現在、ほとんどのsdAb研究は重鎖可変ドメインに基づいているが、軽鎖に由来するsdAbも、抗原性免疫化配列を含む標的タンパク質に特異的に結合することが示されている。Moller et al., J Biol Chem. 285(49):38348-38361, 2010。
【0111】
一部の態様では、sdAbはVHHである。VHHは、1個の単量体重鎖可変抗体ドメインを有するsdAbの一種である。従来の抗体と同様に、VHHは特異的抗原に特異的に結合することができる。例示的なVHHは、2つの重鎖と2つの軽鎖で構成される従来の哺乳動物抗体(150~160kDa)よりもかなり小さな約12~15kDaの分子量を有する。VHHは、天然で軽鎖が無いラクダ科の哺乳動物(例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびグアナコ)において見出されてもよく、それらから産生されてもよい。
【0112】
実験
本開示のシングルドメイン抗体は、gp130受容体の細胞外ドメインで免疫化することによってラクダから入手した。実施例の開示におおむね従って本開示の本開示のgp130VHH分子を作製した。簡単に述べると、ヒトgp130およびマウスgp130のECDを用いて、組換えにより産生された、gp130の細胞外ドメイン、ヒトIgG1ヒンジドメインドメイン、およびヒトIgG1重鎖Fcを含む融合タンパク質を含有する皮下アジュバント添加組成物によってラクダを数週間にわたって連続して免疫化した。免疫化後に、適切なサイズのVHH-ヒンジ-CH2-CH3種の血液試料から抽出したRNAを転写してDNA配列を作製し、消化して、VHHドメインをコードする核酸配列を含む約400bp断片を特定して、単離した。hisタグをコードする配列とインフレームになるようにファージミドベクターに挿入するのを容易にするために、単離された配列を制限エンドヌクレアーゼで消化し、形質転換によって大腸菌(E.coli)に導入してファージライブラリーを作製した。複数回のファージライブラリーバイオパニングを行って、gp130(適宜、ヒトまたはマウス)のECDに結合したVHHを特定した。96ウェルプレート形式におけるペリプラズム抽出物(periplasmic extract)ELISA(PE-ELISA)と、比色測定により確認される選択結合のために個々のファージクローンを単離した。gp130抗原に対して特異的結合を示したgp130結合分子を単離し、配列決定および配列分析して、VHH配列、CDRを特定し、ユニークなVHHクロノタイプを特定した。本明細書で使用する「クロノタイプ」という用語は、同じ生殖系列ファミリーに属する抗原結合分子の特定のコレクションの中にある、同じB細胞前駆細胞から生じた結合分子のコレクションを指し、同じCDR3長を有し、CDR3配列において70%以上の相同性を有する。hgp130 ECD抗原に対して特異的結合を示したVHH分子(抗ヒトgp130VHH)と、このようなVHHから単離されたCDRを表1に示した。ngp130 ECD抗原に対して特異的結合を示したVHH分子(抗マウスgp130VHH)と、このようなVHHから単離されたCDRを表3に示した。表1および表3のVHHをコードする核酸配列を、それぞれ、表2および表4に示した。
【0113】
前述に従って作製されたVHH分子の結合特性をさらに完全に特徴付け、その結合親和性を評価するために、本明細書中の実施例5の開示におおむね従って、それぞれのヒトおよびマウスVHHクロノタイプの代表例を表面プラズモン共鳴による分析に供した。これらのSPR実験の結果を以下の表6および7にまとめた。
【0114】
(表6)抗hGP130モノFc VHH(リガンド)とhGP130-hisとの結合
(抗原: Sino Biological, カタログ番号10974)
【0115】
(表7)抗mGP130モノFc VHH(リガンド)とhGP130-hisとの結合
(抗原: Sino Biological, カタログ番号10974)
【0116】
上記の表6および7に示したデータにより証明されるように、本開示の開示に従って作製されたgp130結合分子は、gp130の細胞外ドメインに対して特異的結合を示し、gp130の細胞外ドメインに対して、ある範囲の親和性を示した。
【0117】
場合によっては、様々な哺乳動物種に由来するgp130受容体の細胞外ドメイン間で配列類似性または構造類似性があるために、第1の哺乳動物種のgp130に由来する抗原(例えば、hgp130-ECD)で免疫化すると、1つまたは複数のさらなる哺乳動物種のgp130受容体に特異的に結合する抗体が生じることがある。このような抗体は「交差反応性」があると呼ばれる。例えば、ラクダ科の動物をヒト由来抗原(例えば、hgp130-ECD)で免疫化すると、マウス受容体およびヒト受容体に対して交差反応性のある抗体が生じることがある。他の哺乳動物種に由来する受容体に対する抗体の交差反応性の評価は、例えば、本明細書中の他の場所で述べた結合親和性および/または特異的結合の評価に関連する方法、例えば、フローサイトメトリーまたはSPRを用いて当業者によって容易に確かめることができる。その結果、「ヒトgp130VHH」または「hgp130VHH」という用語の使用は、VHHの起源となったラクダ科の動物の免疫化に用いられたgp130抗原の種がヒトgp130(例えば、hgp130、ECD、SEQ ID NO:278)だったことを示しているのにすぎず、他の哺乳動物種のgp130分子に対するVHHの特異的な結合親和性に関する限定であると理解してはならない。同様に、「マウスgp130 VHH」または「mgp130 VHH」という用語の使用は、VHHの起源となったラクダ科の動物の免疫化に用いられたgp130抗原の種がマウスgp130(例えば、mgp130 ECD、SEQ ID NO:280)だったことを示しているのにすぎず、他の哺乳動物種のgp130分子に対するVHHの特異的な結合親和性に関する限定であると理解してはならない。
【0118】
本開示は、SEQ ID NO:2~7のいずれか一つのポリペプチドに対して少なくとも75%、または80%、または90%、または95%、または98%、またはまたは99%、または100%の同一性を有するポリペプチドを含むgp130結合分子を提供する。
【0119】
本開示は、SEQ ID NO:26~74のいずれか一つのポリペプチドに対して少なくとも75%、または80%、または90%、または95%、または98%、またはまたは99%、または100%の同一性を有するポリペプチドを含むgp130結合分子を提供する。
【0120】
本開示は、本明細書において提供される表1の横列に記載のように、CDR1、CDR2、およびCDR3を含むgp130結合分子を提供する。一部の態様では、CDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれが、独立して、本明細書において提供される表1の横列に記載の配列に対して、少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を含んでもよく、0、1、2、または3個のアミノ酸変化、任意で保存的アミノ酸変化を有してもよい。
【0121】
本開示は、本明細書において提供される表3の横列に記載のようにCDR1、CDR2、およびCDR3を含むgp130結合分子を提供する。一部の態様では、CDR1、CDR2、およびCDR3はそれぞれが、独立して、本明細書において提供される表3の横列に記載の配列に対して少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)の配列同一性を含んでもよく、0、1、2、または3個のアミノ酸変化、任意で保存的アミノ酸変化を有してもよい。
【0122】
シングルドメイン抗体の改変型
CDRグラフトsdAb
一部の態様では、本開示のgp130結合sdAbは、CDRグラフトgp130結合sdAbである。CDRグラフトsdAbを作製するために、抗体、重鎖抗体、およびそれらに由来するsdAbから入手したCDRが、Saerens, et al. (2005) J. Mol Biol 352:597-607に記載のように別のフレームワークにグラフトされてもよい。一部の態様では、本開示は、CDRグラフトgp130結合sdAbを含むgp130結合分子を提供し、前記CDRグラフトgp130結合sdAbは、上記の表1Aの横列に示したように一組のCDR1、2、および3を含む。一部の態様では、本開示は、CDRグラフトgp130結合sdAbを含むgp130結合分子を提供し、前記CDRグラフトgp130結合sdAbは、上記の表2の横列に示したように一組のCDR1、2、および3を含む。
【0123】
キメラおよび ヒト化sdAb
本明細書に記載のようなCDRと一緒に任意のフレームワーク領域を使用することができる。一部の態様では、gp130結合sdAbはキメラsdAbであり、キメラsdAbでは、CDRは、ある種(例えば、ラクダ)に由来し、フレームワークおよび/または定常領域は別の種(例えば、ヒトまたはマウス)に由来する。特定の態様では、フレームワーク領域はヒトまたはヒト化配列である。従って、hgp130結合VHHに由来するヒト化gp130結合sdAbは本開示の範囲内にあるとみなされる。ラクダ科の動物のシングルドメイン抗体をヒト化する技法は当技術分野において周知である。例えば、Vincke, et al. (2009) General Strategy to Humanize a Camelid Single-domain Antibody and Identification of a Universal Humanized Nanobody Scaffold J. Biol. Chem. 284(5)3273-3284を参照されたい。
【0124】
一部の態様では、本明細書に記載のVHHはヒトフレームワーク領域を含有するようにヒト化することができる。ヒト化VHHを作り出すのに使用できるヒト生殖系列の例には、VH3-23(例えば、UniProt ID: P01764)、VH3-74(例えば、UniProt ID: A0A0B4J1X5)、VH3-66(例えば、UniProt ID: A0A0C4DH42)、VH3-30(例えば、UniProt ID: P01768)、VH3-11(例えば、UniProt ID: P01762)、およびVH3-9(例えば、UniProt ID: P01782)が含まれるが、これに限定されない。
【0125】
N結合型グリコシル化部位の排除
一部の態様では、gp130結合sdAbのアミノ酸配列(特に、CDR配列)は、グリコシル化モチーフ、特に、配列Asn-X-Ser(N-X-S)またはAsn-X-Thr(N-X-T)のN結合型グリコシル化モチーフを含有している可能性がある。式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である。このような場合、グリコシル化を阻止するように、このようなN結合型グリコシル化モチーフの配列を改変することによってN結合型グリコシル化モチーフを排除することが望ましい。一部の態様では、Asn-X-Ser(N-X-S)N結合型グリコシル化モチーフの排除はAsn-X-Ser(N-X-S)N結合型グリコシル化モチーフのAsn(N)残基および/またはSer(S)残基の保存的アミノ酸置換を組み込むことによって成し遂げることができる。一部の態様では、Asn-X-Thr(N-X-T)N結合型グリコシル化モチーフの排除はAsn-X-Thr(N-X-T)N結合型グリコシル化モチーフのAsn(N)残基および/またはThr(T)残基の保存的アミノ酸置換を組み込むことによって成し遂げることができる。一部の態様では、原核生物発現系を使用して組換えgp130結合sdAbを産生する時に、原核宿主細胞が組換えタンパク質のグリコシル化機構を提供しないので、N結合型グリコシル化部位を排除するような配列の改変が不要になる場合がある。
【0126】
さらなる剤を含むgp130結合分子
一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、治療剤、化学的に活性な剤、光学的に活性な剤、または放射性物質の組み合わせを含む、治療剤、化学的に活性な剤、光学的に活性な剤、または放射性物質を含むがこれに限定されない1つまたは複数のさらなる生物学的に活性な剤にコンジュゲートされたgp130シングルドメイン抗体(sdAb)を含む。少なくとも1種類のこのような生物学的に活性な剤、化学的に活性な剤、光学的に活性な剤、または放射性物質のコンジュゲーションは、さらなる生物学的特性または化学的特性をgp130結合sdAbに付与し、この組み合わせは、さらなる有用性、または別の有用性を有するgp130結合分子をもたらす。
【0127】
例えば、さらなる剤は、免疫調節物質(例えば、免疫原);水溶性を改善する分子(例えば、水溶性ポリマーおよび親水性分子、例えば、糖);インビボ半減期を延ばす担体分子(例えば、PEG化、Fc融合、またはアシル化);検出アッセイにおいて使用するための(例えば、エピトープタグ)、精製の容易さを高めるための(例えば、キレート化ペプチド、例えばポリHisタグ)、抗体の作製;gp130結合分子を特定の細胞または組織タイプに選択的に標的化する標的化ドメイン;治療剤(例えば、低分子またはポリペプチド剤を含む治療剤);光学センサーまたは電磁気センサーに対して見えやすくする剤(例えば、ラジオヌクレオチドまたは蛍光物質)の1つまたは複数より選択される分子でもよい。一部の態様では、リンカーは切断可能なリンカーまたは切断不可能なリンカーである。本明細書において意図されるように、gp130結合分子において切断可能なリンカーを用いると、gp130結合分子の内部移行時に細胞内細胞質への治療剤の放出が容易になる。切断不可能なリンカーを用いると、gp130結合分子の消化時の放出が可能になるだろう。または、切断不可能なリンカーは、抗体からの放出を必要としない剤(例えば、画像化剤)と一緒に使用できるだろう。
【0128】
一部の態様では、gp130結合分子は、リンカーを介してつなげられた、さらなる剤と安定して結合されているgp130結合sdAbを含む。リンカーは、gp130結合分子の2つの要素(例えば、hgp130結合VHHおよびPEGポリマー)の間の共有結合である。リンカーは、共有結合、化学リンカー、またはペプチドリンカーでもよい。適切なリンカーには、一般的に、gp130結合sdAbと、連結された剤との間である程度動くのに十分な長さの「可動性リンカー」が含まれる。化学リンカーの例には、アリールアセチレン、2~10単量体ユニットを含有するエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二塩基酸、アミノ酸、またはその組み合わせが含まれる。一部の態様では、リンカーはペプチドリンカーである。適切なペプチドリンカーは容易に選択することができ、任意の適切な長さのリンカー、例えば、1個のアミノ酸(例えば、Gly)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、30~50個、または50個超のアミノ酸のペプチドリンカーでよい。適切なペプチドリンカーは当技術分野において公知であり、例えば、グリシンおよびセリンなどの可動性のあるアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーを含む。可動性リンカーの例には、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および他の可動性リンカーが含まれる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは比較的、構造不定であり、従って、成分間の中立テザー(neutral tether)として役立つ場合がある。可動性リンカーのさらなる例には、グリシンポリマー(G)n、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、グリシン-セリンポリマーが含まれる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは比較的、構造不定であり、従って、成分間の中立テザーとして役立つ場合がある。異種アミノ酸配列を、本明細書において開示されるgp130結合sdAbにコンジュゲートするのに使用され得る可動性リンカーを提供するために、このようなリンカー配列の多量体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、または30~50)が一緒に連結されてもよい。一部の態様では、リンカーは、式(GGGS)n、(GGGSG)n、(GGGGS)n、(GGS)nG、または(GGSG)nを有し、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10より選択される整数である。
【0129】
免疫調節剤
一部の態様では、本開示のgp130結合分子は免疫調節剤(イムノコンジュゲート)を含む。本開示のhgp130結合sdAbにコンジュゲートされ得る免疫調節剤には、不活化ウイルス粒子、不活化細菌毒素、例えば、ジフテリア、破傷風、コレラからのトキソイド、またはロイコトキシン分子、不活化された細菌および樹状細胞が含まれるが、これに限定されない。このようなイムノコンジュゲートは、gp130またはgp130を発現する細胞に対する免疫応答の促進において有用である。
【0130】
Flagタグ
一態様では、本開示は、FLAG配列などの抗原性タグを含むgp130結合分子を提供する。FLAG配列は、本明細書に記載のようなビオチン化された、高度に特異的な抗FLAG抗体によって認識される(例えば、Blanar et al. (1992) Science 256:1014およびLeClair, et al. (1992) PNAS-USA 89:8145を参照されたい)。一部の態様では、gp130結合sdAbポリペプチドはC末c-mycエピトープタグをさらに含む。
【0131】
キレート化ペプチド
一態様では、本開示は、1つまたは複数の遷移金属キレート化ポリペプチド配列を含むgp130結合分子を提供する。1986年2月11日に発行されたSmithらの米国特許第4,569,794号に記載のように、このような遷移金属キレート化ドメインを組み込むと固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)による精製が容易になる。本gp130結合分子の実施において有用な遷移金属キレート化ポリペプチドの例は、Smithら、前記および1995年5月10日に発行された、Dobeliらの米国特許第5,320,663号において説明される。これらの全開示が参照により本明細書に組み入れられる。本gp130結合分子の実施において有用な特定の遷移金属キレート化ポリペプチドは、3~6個の連続したヒスチジン残基を含むポリペプチド、例えば、6ヒスチジン(His)6ペプチドであり、当技術分野では「Hisタグ」と言及されることが多い。Andersonら(1995年8月8日に発行された米国特許第5,439,829号)およびHale, J.E (1996) Analytical Biochemistry 231(1):46-49の開示におおむね従って、組換えタンパク質用の精製「ハンドル(handle)」を設けることに加えて、またはSPRセンサーチップ上での固定化を容易にすることを目的として、このようなキレート化ペプチドへのhgp130結合分子のコンジュゲーションは、動力学的に不活性な、または動力学的に不安定な錯体として遷移金属イオンをgp130発現細胞に標的送達するのを容易にする。遷移金属イオンは、レポーター分子、例えば、蛍光化合物または放射線画像化剤であり、放射性物質または治療剤を含む。
【0132】
担体分子
一部の態様では、本開示のgp130結合sdAbは1つまたは複数の担体分子とコンジュゲートされてもよい。担体分子は、典型的には、このような分子を、以下で説明されるような薬学的製剤の調製において用いられる従来の担体分子と区別する、インビボで安定化および/または長期の作用期間をもたらす大きな、ゆっくりと代謝される高分子である。gp130結合分子に組み込まれ得るインビボ担体の例は、タンパク質(ヒト血清アルブミンを含むが、これに限定されない);脂肪酸(アシル化);多糖類((N結合型およびO結合型)糖、セファロース、アガロース、セルロース、またはセルロースを含むが、これに限定されない);ポリペプチド(polypeptdie)アミノ酸コポリマー;、アシル化、またはポリシアリル化、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーがあるが、これに限定されない。
【0133】
水溶性ポリマー
一部の態様では、gp130結合sdAbは1つまたは複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートされる。本gp130結合分子の実施において有用な水溶性ポリマーの例には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、多糖類(ポリビニルピロリドン、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリオレフィンアルコール、多糖類、ポリα-ヒドロキシ酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフォスファーゼン、ポリオキサゾリン(POZ)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはその組み合わせが含まれる。
【0134】
ポリエチレングリコール
一態様では、担体分子はポリエチレングリコール(「PEG」)ポリマーである。タンパク質へのPEGポリマーのコンジュゲーション(PEG化)は、生物学的剤の血清半減期を延長するための、よく確立された方法である。さらに、PEG化ポリペプチドは、1、2、3(またはそれより多い)PEG部分がそれぞれポリペプチドに取り付けられたポリペプチドを指すためにモノPEG化、ジPEG化、トリモノPEG化(など)と呼ばれることがある。一部の態様では、PEGは、sdAbに(例えば、リジン側鎖、システインのスルフヒドリル基、またはN末アミンを介して)直接、共有結合により取り付けられてもよく、任意で、PEGとsdAbとの間にリンカーを使用する。一部の態様では、gp130結合分子は複数のPEG分子を含み、PEG分子のそれぞれが異なるアミノ酸残基に取り付けられている。一部の態様では、sdAbは、部位特異的PEG化を容易にするために非天然アミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を組み込むことによって改変されてもよい。他の態様では、システインスルフヒドリル側鎖を介した部位特異的PEG化を容易にするために、sdAbの中の1つまたは複数の位置にあるシステイン残基が置換されてもよい。
【0135】
場合によっては、本開示のgp130結合分子はN末グルタミン(「1Q」)残基を有する。N末グルタミン残基は、生理学的条件下では、または生理学的条件の付近では自然に環化してピログルタメート(pE)を形成することが観察されている(例えば、Liu,et al (2011) J. Biol. Chem. 286(13): 11211-11217を参照されたい)。一部の態様では、ピログルタメートが形成すると、N末PEGコンジュゲーションは、特にアルデヒド化学がN末PEG化に用いられる時に複雑化する。その結果、本開示のgp130結合分子をPEG化する時に、特に、アルデヒド化学が用いられる時に、位置1にアミノ酸(例えば、1Q)を有するgp130結合分子の位置1は代替アミノ酸で置換されるか、位置1は欠失される(例えば、des-1Q)。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、Q1EおよびQ1Dの群より選択されるアミノ酸置換を含む。
【0136】
ポリペプチド配列へのコンジュゲーションに適したPEGは一般的に室温で水に溶け、一般式
R(O-CH2-CH2)nO-R
を有し、式中、Rは、水素または保護基、例えば、アルキル基またはアルカノール基であり、nは1~1000の整数である。Rが保護基である時、一般的に、1~8個の炭素を有する。PEGは直鎖でもよく分枝鎖でもよい。分枝PEG誘導体、「スターPEG」、およびマルチアームドPEGが本開示によって意図される。
【0137】
gp130結合分子において用いられるPEGの分子量は、どの特定の範囲にも限定されない。gp130結合分子のPEG成分の分子量は、約5kDa超、約10kDa超、約15kDa超、約20kDa超、約30kDa超、約40kDa超、または約50kDa超でもよい。一部の態様では、分子量は、約5kDa~約10kDa、約5kDa~約15kDa、約5kDa~約20kDa、約10kDa~約15kDa、約10kDa~約20kDa、約10kDa~約25kDa、または約10kDa~約30kDaである。約2,000~約80,000ダルトン、あるいは約2,000~約70,000ダルトン、あるいは約5,000~約50,000ダルトン、あるいは約10,000~約50,000ダルトン、あるいは約20,000~約50,000ダルトン、あるいは約30,000~約50,000ダルトン、あるいは約20,000~約40,000ダルトン、あるいは約30,000~約40,000ダルトンの分子量を有する直鎖PEG分子または分枝鎖PEG分子。gp130結合分子の一態様では、PEGは、2つの20kDアームを含む40kD分枝PEGである。
【0138】
本開示はまた、複数のPEG部分を含むgp130結合分子であって、PEGが異なるサイズ値を有し、従って、様々な異なるPEGが特定の比で存在するgp130結合分子も意図する。例えば、PEG化gp130結合分子の調製において、一部の組成物は、モノPEG化、ジPEG化、トリPEG化、およびクアドラPEG化sdAbコンジュゲートの混合物を含む。一部の組成物では、モノPEG化種のパーセントは18~25%であり、ジPEG化種のパーセントは50~66%であり、トリPEG化種のパーセントは12~16%であり、クアドラPEG化種のパーセントは5%までである。このような複合組成物は、当技術分野において公知の反応条件および精製方法によって生成することができる。コンジュゲート画分を分離するのにクロマトグラフィーが用いられることがあり、次いで、例えば、望ましい数のPEGが取り付けられているコンジュゲートを含有する画分が特定され、修飾されていないタンパク質配列および他の数のPEGが取り付けられているコンジュゲートから精製される。
【0139】
PEG化は、ポリペプチドのN末端にあるα-アミノ基、リジン残基の側鎖にあるεアミノ基、およびヒスチジン残基の側鎖にあるイミダゾール基において最も頻繁に行われる。ほとんどの組換えポリペプチドは1個のαアミノ基と多数のεアミノ基とイミダゾール基を有するので、リンカー化学に応じて非常に多くの位置異性体を作製することができる。
【0140】
2つの広く用いられている第一世代の活性化モノメトキシPEG(mPEG)は、スクシンイミジルカーボネートPEG(SC-PEG;例えば、Zalipsky, et al. (1992) Biotehnol. Appl. Biochem 15:100-114を参照されたい)およびベンゾトリアゾールカーボネートPEG(BTC-PEG;例えば、Dolenceら、米国特許第5,650,234号を参照されたい)であり、これらは、リジン残基と優先的に反応してカルバメート結合を形成するが、ヒスチジンおよびチロシン残基と反応することも知られている。PEG-アルデヒドリンカーの使用は、還元的アミノ化を介してポリペプチドN末端にある1つの部位を標的とする。
【0141】
PEGは、ポリペプチド配列の1つまたは複数の遊離アミノ基またはカルボキシル基とポリエチレングリコールとの間の結合を媒介する末端反応基(「スペーサー」)を介して本開示のgp130結合分子に結合することができる。遊離アミノ基に結合することができるスペーサーを有するPEGにはN-ヒドロキシスクシニルイミドポリエチレングリコールが含まれ、これは、ポリエチレングリコールのコハク酸エステルをN-ヒドロキシスクシニルイミドで活性化することによって調製することができる。
【0142】
一部の態様では、sdAbのPEG化は、部位特異的PEG化を促進するようにユニークな側鎖を有する非天然アミノ酸を組み込むことによって容易になる。このようなポリペプチドの部位特異的PEG化を実現するために、非天然アミノ酸をポリペプチドに組み込んで機能的部分を設けることは当技術分野において公知である。例えば、2018年8月3日に出願され、国際公開番号WO2019/028419Alとして2019年2月7日に公開されたPtacin, et al., PCT国際出願番号PCT/US2018/045257を参照されたい。
【0143】
PEG化gp130結合分子のPEG部分は直鎖でもよく分枝鎖でもよい。分枝PEG誘導体、「スターPEG」、およびマルチアームドPEGが本開示によって意図される。本開示の実施において有用なPEGの特定の態様には、10kDaの直鎖PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-100AL, NOF America Corporation, One North Broadway, White Plains, NY 10601 USA)、10kDa 直鎖PEG-NHS エステル(例えば、Sunbright(登録商標) ME-100CS、Sunbright(登録商標) ME-100AS、Sunbright(登録商標) ME-100GS、Sunbright(登録商標) ME-100HS, NOF)、20kDa直鎖PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標) ME-200AL, NOF、20kDa直鎖PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)ME-200CS、Sunbright(登録商標)ME-200AS、Sunbright(登録商標)ME-200GS、Sunbright(登録商標)ME-200HS, NOF)、20kDa 2アーム分枝PEG-アルデヒド、2つの10kDA直鎖PEG分子を含む20kDA PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-200AL3, NOF)、20kDa 2アーム分枝PEG-NHSエステル、2つの10kDA直鎖PEG分子を含む20kDA PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-200TS、Sunbright(登録商標)GL200GS2, NOF)、40kDa 2アーム分枝PEG-アルデヒド、2つの20kDA直鎖PEG分子を含む40kDA PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-400AL3)、40kDa 2アーム分枝PEG-NHSエステル、2つの20kDA直鎖PEG分子を含む40kDA PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-400AL3、Sunbright(登録商標)GL2-400GS2, NOF)、直鎖30kDa PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-300AL)、および直鎖30kDa PEG-NHSエステルが含まれる。
【0144】
Fc融合
一部の態様では、担体分子はFc分子またはその単量体サブユニットである。一部の態様では、二量体Fc分子は「ノブイントゥホール(knob-into-hole)改変」を有するように操作されてもよい。ノブイントゥホール改変は、Ridgway, et al. (1996) Protein Engineering 9(7):617-621、ならびに1998年3月24日に発行された米国特許第5,731,168号、2010年1月5日に発行された米国特許第7,642,228号、2010年4月13日に発行された米国特許第7,695,936号、または2012年7月10日に発行された米国特許第8,216,805号においてさらに十分に説明される。ノブイントゥホール改変は、CH3ドメインにある2つの免疫グロブリン重鎖間の境界面にある改変を指し、i)第1の重鎖のCH3ドメインにあるアミノ酸残基が、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)を有するアミノ酸残基と交換され、表面から突出部(「ノブ」)が作り出され、ii)第2の重鎖のCH3ドメインにあるアミノ酸残基が、より小さな側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、アラニンまたはスレオニン)と交換され、それによって、第2のCH3ドメインにある境界面の内部に空洞(「ホール」)が作られ、第1のCH3ドメインの突出している側鎖(「ノブ」)が第2のCH3ドメインにある空洞に収容される。一態様では、「ノブイントゥホール改変」はアミノ酸置換T366Wを含み、任意で、アミノ酸置換S354Cが一方の抗体重鎖にあり、アミノ酸置換T366S、L368A、Y407V、任意でY349Cが他方の抗体重鎖にある。さらに、Fcドメインは、一方の鎖の位置S354に、もう一方の鎖のY349にシステイン残基を導入することによって改変されてもよく、その結果として、Fc領域にある2つの抗体重鎖間の安定化ジスルフィド結合が生じる(Carter, et al. (2001) Immunol Methods 248, 7-15)。ノブイントゥホール形式は、ヘテロ二量体ポリペプチドコンジュゲートの発現を容易にするために「ノブ」改変を有する、第1のFc単量体上にある第1のポリペプチド(例えば、gp130結合sdAb)と、「ホール」改変を有する、第2のFc単量体上にある第2のポリペプチドの発現を容易にするために用いられる。
【0145】
標的化ドメイン
一部の態様では、gp130結合分子は、ポリペプチド配列(「標的化ドメイン」)に特異的に結合する細胞表面分子を発現する特定の細胞タイプまたは組織に対する選択的結合を容易にするために、このような標的化ドメインを有する多価(例えば、二価)融合タンパク質の成分として、任意で、融合タンパク質のgp130結合sdAb配列と標的化ドメインの配列との間にリンカーを組み込んで提供される。
【0146】
一部の態様では、gp130結合分子は、gp130結合分子に対する標的化ドメインに機能的に連結されることによって、特定の細胞タイプ細胞に標的化されることができる。本明細書で使用する標的化ドメインという用語は、標的細胞表面に発現している分子を特異的に結合する部分を指す。標的化ドメインは、標的細胞表面に発現している1つまたは複数の細胞表面分子(例えば、T細胞受容体)に特異的に結合する任意の部分でよい。一部の態様では、標的細胞はT細胞である。一部の態様では、標的細胞はgp130+T細胞である。
【0147】
一部の態様では、標的化ドメインは、受容体に対するリガンドである。一部の態様では、標的化ドメインは、T細胞の表面に発現している受容体に対するリガンドである。一部の態様では、リガンドはサイトカインである。一部の態様では、サイトカインには、インターロイキン、インターフェロン、およびその機能的誘導体からなる群が含まれるが、これに限定されない。一部の態様では、サイトカインには、IL2、IL3、IL4、IL7、IL9、IL12、IL15、IL18、IL21、IL22、IL23、IL27、IL28、IL34、およびT細胞の表面に発現しているコグネイトリガンドに結合する、その改変されたバージョンまたは断片からなる群が含まれるが、これに限定されない。一部の態様では、サイトカインには、インターフェロンα、インターフェロンa2b、インターフェロンγ、またはインターフェロンλ、およびT細胞の表面に発現しているコグネイトリガンドに結合する、その改変されたバージョンまたは断片からなる群が含まれるが、これに限定されない。
【0148】
別の局面では、本開示は、(a)gp130結合分子と、(b)第2の細胞表面分子の細胞外ドメインに特異的に結合する第2の結合分子を含む多価結合分子であって、gp130結合分子と第2の結合分子が機能的に連結されている、任意で、化学リンカーまたはポリペプチドリンカーを介して機能的に連結されている多価結合分子を提供する。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、2018年10月4日にWO2018/182935A1として公開された、Gonzalez, et al. PCT/US2018/021301に記載の多価結合分子の調製において有用である。Gonzalezらの開示によれば、第2の結合分子は、(i)gp130がその天然リガンドに応答してシグナル伝達複合体を形成する受容体以外の、細胞のJAK/STAT経路を活性化するサイトカイン受容体の成分;(ii)受容体型チロシンキナーゼ;または(iii)TNFRスーパーファミリーメンバーの細胞外ドメインに特異的に結合する。一部の態様では、第2の表面分子は、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、InsR、IGF1R、InsRR、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R/Fms、cKit、Flt-3/Flk2、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、PTK7/CCK4、TrkA、TrkB、TrkC、Ror1、Ror2、MuSK、Met、Ron、Axl、Mer、Tyro3、Tie1、Tie2、EphA1-8、EphA10、EphB1-4、EphB6、Ret、Ryk、DDR1、DDR2、Ros、LMR1、LMR2、LMR3、ALK、LTK、SuRTK106/STYK1より選択されるチロシンキナーゼである。一部の態様では、第2の表面分子は、TNFR1(TNFRSF1A)、TNFR2(TNFRSF1B;TNFRSF2)、41-BB(TNFRSF9);AITR(TNFRSF18);BCMA(TNFRSF17)、CD27(TNFRSF7)、CD30(TNFRSF8)、CD40(TNFRSF5)、デスレセプター1(TNFRSF10C)、デスレセプター-3(TNFRSF25)、デスレセプター4(TNFRSF10A)、デスレセプター5(TNFRSF10B)、デスレセプター-6(TNFRSF21)、デコイレセプター-3(TNFRSF6B)、デコイレセプター2(TNFRSF10D)、EDAR、Fas(TNFRSF6)、HVEM(TNFRSF14)、LTBR(TNFRSF3)、OX40(TNFRSF4)、RANK(TNFRSF11A)、TACI(TNFRSF13B)、Troy(TNFRSF19)、XEDAR(TNFRSF27)、オステオプロテジェリン(TNFRSF11B)、TWEAKレセプター(TNFRSF12A)、BAFFレセプター(TNFRSF13C)、NGFレセプター(TNFRSF16)より選択されるTNFRスーパーファミリーメンバーである。
【0149】
一部の態様では、標的化ドメインは、GD2、BCMA、CD19、CD33、CD38、CD70、GD2、IL3Ra2、CD19、メソテリン、Her2、EpCam、Muc1、ROR1、CD133、CEA、EGRFRVIII、PSCA、GPC3、Pan-ErbB、およびFAPからなる群より選択される、腫瘍細胞と関連する細胞表面分子(例えば、腫瘍細胞受容体のコグネイトリガンド)に特異的に結合するポリペプチドである。
【0150】
一部の態様では、gp130結合分子の標的化ドメインは、抗体(分子、例えば、VHH、scFvなどの分子を含むと上記において定義された)である。gp130結合分子の標的化ドメインとして組み込まれ得る抗体の例には、抗GD2抗体、抗BCMA抗体、抗CD19抗体、抗CD33抗体、抗CD38抗体、抗CD70抗体、抗GD2抗体およびIL3Ra2抗体、抗CD19抗体、抗メソテリン抗体、抗Her2抗体、抗EpCam抗体、抗Muc1抗体、抗ROR1抗体、抗CD133抗体、抗CEA抗体、抗PSMA抗体、抗EGRFRVIII抗体、抗PSCA抗体、抗GPC3抗体、抗Pan-ErbB抗体、および抗FAP抗体からなる群が含まれるが、これに限定されない。
【0151】
前記抗体またはその抗原結合断片を別の抗体に連結して、例えば、二重特異性抗体または多重特異性抗体を形成することができる。
【0152】
標識
一部の態様では、本開示のgp130結合分子は1つまたは複数の標識に機能的に連結される。一部の態様では、標識は、画像化剤、診断剤としての使用を容易にするために、または細胞選別手順において使用するために組み込まれる。標識という用語には、蛍光標識、生物学的に活性な酵素標識、放射性同位体(例えば、放射性イオン)、核磁気共鳴活性標識、ルミネセンス標識、または磁性化合物が含まれるが、これに限定されない。一態様では、画像化標識と安定して会合(例えば、共有結合、配位共有結合)しているgp130結合sdAb(例えば、gp130結合VHH)分子。画像化標識という用語は、診断手順を用いたgp130結合sdAb(またはその代謝産物)の特定、追跡、および/または位置の測定を容易にするシグネチャーである、任意の様々な化合物を説明するために用いられる。画像化標識の例には、蛍光化合物、放射性化合物、および画像化方法(例えば、X線、超音波)を通さない化合物が含まれるが、これに限定されない。画像化標識として有用な放射性化合物の例には、テクネチウム-99m(99mTc)、インジウム-111(111In)、ヨウ素-131(131I)、ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-125(125I)、ガリウム-67(67Ga)、およびルテチウム-177(177Lu)、リン(32P)、炭素(14C)、トリチウム(3H)、イットリウム(90Y)、アクチニウム(225Ac)、アスタチン(211At)、レニウム(186Re)、ビスマス(212Biまたは213Bi)、およびロジウム(188Rh)が含まれるが、これに限定されない。
【0153】
治療剤
一部の態様では、本開示のgp130結合分子は治療剤に機能的に連結される。治療剤の例には、本明細書においてさらに完全に説明されるような、抗体、細胞傷害性化合物または細胞分裂停止性化合物、放射性同位体、植物由来、真菌由来、または細菌由来の分子、あるいは生物学的タンパク質(例えば、タンパク質毒素)または粒子(例えば、ナノ粒子もしくは組換えウイルス粒子、例えば、ウイルスコートタンパク質を介した組換えウイルス粒子)、治療抗体抗体、化学療法剤を含む、治療用低分子(例えば、化学療法剤)または生物治療剤が含まれる。
【0154】
一部の態様では、本開示のgp130結合分子に機能的に連結される治療剤は、例えば、短距離、高エネルギーa-放射体を含む短距離放射線放射体である。このような放射性同位体の例には、α放射体、β放射体、γ放射体、またはβ/γ放射体が含まれる。治療剤として有用な放射性同位体には、イットリウム90(90Y)、ルテチウム-177(177Lu)、アクチニウム-225(225Ac)、アスタチン-211(211At)、レニウム-186(186Re)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、およびロジウム-188(188Rh)が含まれる。
【0155】
一部の態様では、gp130結合分子は、細胞傷害剤(またはその誘導体)、このようなマイタンシノールまたはDM1マイタンシノイド)、タキサン、またはカリチアマイシン、シュードモナス属エキソトキシンA、デブーガニン、リシン毒素、ジフテリア毒素、アマトキシン、例えば、a-アマニチン、サポリン、マイタンシン、マイタンシノイド、アウリスタチン、アントラサイクリン、カリチアマイシン、イリノテカン、SN-38、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、インドリノベンゾジアゼピン、およびインドリノベンゾジアゼピン二量体、またはその変種)に機能的に連結される。
【0156】
gp130結合分子の合成:
一部の態様では、本開示のgp130結合分子はポリペプチドである。しかしながら、一部の態様では、gp130結合分子の一部だけがポリペプチドであり、例えば、gp130結合分子は非ペプチジルドメイン(例えば、PEG gp130結合sdAbコンジュゲート、ラジオヌクレオチドgp130結合sdAbコンジュゲート、または低分子gp130結合sdAbコンジュゲート)を含む。以下は、本開示のgp130結合分子のポリペプチド部分(ドメイン)の固相合成および組換え合成を可能にするための指導を提供する。gp130結合分子の一部だけがポリペプチドである態様では、gp130結合分子のペプチジルドメインは、望ましいgp130結合分子の合成を完了するためにさらなる処理を受ける可能性がある、プロセスの中間体であると理解されよう。gp130結合分子のポリペプチドドメインは、下記でさらに詳細に説明されるような組換え合成または固相合成を含む、ポリペプチド構築のための従来の方法論によって産生されてもよい。
【0157】
化学合成
組換え分子生物学的技法によって変えられている核酸分子の発現を介して変異ポリペプチドを作製することに加えて、gp130結合分子のポリペプチドドメインを化学合成することができる。化学合成ポリペプチドは当業者によって日常的に作製される。化学合成には、説明された特性を示すgp130結合分子のポリペプチドドメインの化学的手段による直接的なペプチド合成が含まれる。この方法は、特定の分子(例えば、PEG)の連結を容易にする望ましい位置に天然アミノ酸および非天然アミノ酸を組み込むことができる。
【0158】
一部の態様では、本開示のgp130結合分子のポリペプチドドメインは化学合成によって産生することができる。gp130結合分子のポリペプチドドメインの化学合成は液相を介して進行してもよく、固相を介して進行してもよい。固相ペプチド合成(SPPS)を用いると、非天然アミノ酸および/またはペプチド/タンパク質バックボーン改変の組み込みが可能になる。本開示のgp130結合分子のポリペプチドドメインを合成するために様々な種類のSPPSを利用することができ、当技術分野において公知である(例えば、Ganesan A. (2006) Mini Rev. Med. Chem. 6:3-10;およびCamarero J.A. et al., (2005) Protein Pept Lett. 12:723-8)。アミド結合を連結する条件下で安定しているが、形成したペプチド鎖を損なうことなく容易に切断することができる酸不安定基または塩基酸不安定基によって、化学合成中にα官能基および任意の反応性側鎖が保護されることがある。
【0159】
固相合成では、N末アミノ酸またはC末アミノ酸のいずれかが適切な支持体材料に結合され得る。適切な支持体材料は、合成プロセスの段階的な縮合反応および切断反応のための試薬および反応条件に対して不活性であり、かつ使用されている反応培地に溶解しないものである。市販されている支持体材料の例には、反応基および/またはポリエチレングリコールを用いて修飾されているスチレン/ジビニルベンゼンコポリマー;クロロメチル化スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー;ヒドロキシメチル化またはアミノメチル化スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーなどが含まれる。ペプチド合成、典型的には自動ペプチド合成機における従来の方法に従って保護アミノ酸の連続結合を行うことができる。
【0160】
固相合成の終了時に、側鎖保護基が同時に切断されながら、ペプチドが支持体材料から切断される。得られたペプチドは、疎水性吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー(distribution chromatography)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)および逆相HPLCを含むがこれに限定されない様々なクロマトグラフィー法によって、精製することができる。
【0161】
組換え産生
または、本開示のgp130結合分子のポリペプチドドメインは組換えDNA技術によって産生されてもよい。ポリペプチドの組換え産生の典型的な実施では、望ましいポリペプチドをコードする核酸配列が、発現が行われる宿主細胞に適した発現ベクターに組み込まれ、この核酸配列は、ベクターによってコードされる1つまたは複数の発現制御配列に機能的に連結され、標的宿主細胞において機能する。組換えタンパク質は、宿主細胞を破壊することによって回収されてもよく、分泌リーダー配列(シグナルペプチド)がポリペプチドの中に組み込まれているのであれば細胞培地から回収されてもよい。組換えタンパク質は、組み込みを含むさらなる使用のために精製および濃縮されてもよい。
【0162】
gp130結合分子をコードする核酸配列の合成
一部の態様では、gp130結合分子のポリペプチドドメインは、gp130結合分子のポリペプチドドメイン(またはgp130結合分子のポリペプチドドメインを含む融合タンパク質)をコードする核酸配列を用いた組換え方法によって産生される。gp130結合分子の望ましいポリペプチドドメインをコードする核酸配列はオリゴヌクレオチド合成機を用いて化学的手段によって合成することができる。
【0163】
核酸分子は、ポリペプチドをコードする配列に限定されない。コード配列(例えば、gp130結合分子のポリペプチドドメインのコード配列)から上流または下流にある非コード配列の一部または全ても含まれる場合がある。分子生物学の当業者は、核酸分子を単離するための日常的な手順に精通している。例えば、核酸分子は、ゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで処理することによって、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって作製することができる。核酸分子がリボ核酸(RNA)である場合、分子は、例えば、インビトロ転写によって産生することができる。
【0164】
gp130結合分子のポリペプチドドメイン(およびその融合)をコードする核酸分子は天然配列を含んでもよく、天然で生じるものとは異なるが、遺伝暗号縮重のために、同じポリペプチドをコードする配列を含んでもよい。これらの核酸分子は、RNAまたはDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、もしくは合成DNA、例えば、ホスホルアミダイトベースの合成によって生成されたもの)、またはこれらのタイプの核酸の中にあるヌクレオチドの組み合わせもしくは修飾からなってもよい。さらに、核酸分子は二本鎖でもよく、一本鎖(すなわち、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれか)でもよい。
【0165】
gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードする核酸配列は、核酸配列のカスタム合成を提供する様々な商業的供給業者から得られる場合がある。本開示のヒトgp130結合分子のアミノ酸配列変種は、適切なヌクレオチド変化を、当技術分野において周知の遺伝暗号に基づいてコード配列に導入することによって調製される。このような変種は、言及されたように残基の挿入、置換、および/または指定された欠失である。最終構築物に到達するために挿入、置換、および/または指定された欠失の任意の組み合わせを加えることができる。但し、最終構築物が、本明細書において定義されるように望ましい生物学的活性を有する。
【0166】
gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードするDNA配列を構築するための方法、および適切に形質転換された宿主において、これらの配列を発現するための方法には、PCR支援による変異誘発法の使用が含まれるが、これに限定されない。gp130結合分子のポリペプチドドメインに対するアミノ酸残基の欠失または付加からなる変異も標準的な組換え法を用いて加えることができる。欠失または付加の場合、任意で、適切な制限エンドヌクレアーゼによって消化される、gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードする核酸分子。結果として生じた断片は直接発現されてもよく、例えば、第2の断片に連結することでさらに操作されてもよい。核酸分子の2つの端部が、互いに重複する相補的ヌクレオチドを含有すれば、連結は容易になるかもしれないが、平滑末端化された断片も連結することができる。様々な変異配列を作製するために、PCRにより作製された核酸も使用することができる。
【0167】
本開示のgp130結合分子のポリペプチドドメインは組換えにより直接産生されるだけでなく、異種ポリペプチド、例えば、シグナル配列、または成熟gp130結合分子のN末端もしくはC末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドと一緒に融合ポリペプチドとして産生されてもよい。一般的に、シグナル配列はベクターの成分でもよく、ベクターに挿入されるコード配列の一部でもよい。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識および処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。一部の態様では、シグナル配列は、gp130結合分子と天然で関連するシグナル配列(すなわち、ヒトgp130シグナル配列)である。シグナル配列の組み込みは、gp130結合分子が作られる組換え細胞からgp130結合分子を分泌させることが望ましいかどうかによって決まる。選択される細胞が原核生物であれば、一般的に、DNA配列はシグナル配列をコードしないことが好ましい。選択される細胞が真核生物であれば、一般的に、シグナル配列がコードされ、最も好ましくは、野生型IL-2シグナル配列が使用されることが好ましい。または、同じまたは関連する種の分泌ポリペプチドに由来するシグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルなどの異種哺乳動物シグナル配列が適している場合がある。組換え宿主細胞がサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母細胞である場合、Singh,米国特許第7,198,919B1号に記載のように、培養培地にgp130結合分子を細胞外分泌させるためにα接合因子分泌シグナル配列が使用されることがある。
【0168】
発現させようとするgp130結合分子のポリペプチドドメインがキメラ(例えば、gp130結合分子と異種ポリペプチド配列を含む融合タンパク質)として発現される場合には、キメラタンパク質は、gp130結合分子のポリペプチドドメインの全てまたは一部をコードする第1の配列と、異種ポリペプチドの全てまたは一部をコードする第2の配列を含むハイブリッド核酸分子によってコードされてもよい。例えば、本明細書に記載のgp130結合分子のポリペプチドドメインは、細菌により発現されたタンパク質の精製を容易にするためにヘキサヒスチジンタグと融合されてもよく、真核細胞内で発現されたタンパク質の精製を容易にするために血球凝集素タグと融合されてもよい。第1および第2は、融合タンパク質のエレメントの方向に対する限定と理解してはならず、異種ポリペプチドはgp130結合分子のポリペプチドドメインのN末端および/またはC末端のいずれにも連結することができる。例えば、N末端は標的化ドメインに連結されてもよく、C末端はヘキサヒスチジンタグ精製ハンドルに連結されてもよい。
【0169】
発現させようとするgp130結合分子(または融合/キメラ)のポリペプチドドメインの完全アミノ酸配列を用いて、逆翻訳された遺伝子を構築することができる。gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、望ましいポリペプチドの一部をコードする、いくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成することができ、次いで、連結することができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には、相補的に組み立てるために5'オーバーハングまたは3'オーバーハングを含有する。
【0170】
一部の態様では、gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードする核酸配列は、特定の宿主細胞タイプにおける発現を容易にするように「コドン最適化」されてもよい。哺乳動物宿主細胞、酵母宿主細胞、および細菌宿主細胞を含む多種多様な発現系においてコドン最適化するための技法は当技術分野において周知であり、様々な宿主細胞タイプにおいて発現させるためにコドン最適化配列を提供するためのオンラインツールがある。例えば、Hawash, et al., (2017) 9:46-53、およびMauro and Chappell in Recombinant Protein Expression in Mammalian Cells: Methods and Protocols, David Hacker編 (Human Press New York)を参照されたい。さらに、コドン最適化核酸配列の調製を助けるために自由に利用できる様々なウェブベースのオンラインソフトウェアパッケージがある。
【0171】
発現ベクター
(合成、部位特異的変異誘発、または別の方法によって)組み立てられたら、gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードする核酸配列は発現ベクターに挿入される。様々な宿主細胞において使用するための様々な発現ベクターが利用可能であり、典型的には、発現用の宿主細胞に基づいている。発現ベクターには、典型的に、以下:複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列の1つまたは複数が含まれるが、これに限定されない。ベクターには、ウイルスベクター、プラスミドベクター、組み込みベクターなどが含まれる。プラスミドは非ウイルスベクターの例である。組換えポリペプチドの効率的な発現を容易にするために、発現させようとするポリペプチド配列をコードする核酸配列は、選択された発現宿主において機能する転写調節制御配列および翻訳調節制御配列に機能的に連結される。
【0172】
発現ベクターは、典型的に、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有する。この遺伝子は、選択培養培地中で増殖させた形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターで形質転換されなかった宿主細胞は培養培地中で生存しない。代表的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求性の欠陥を補うタンパク質、または(c)複合培地から利用できない重要な栄養分を供給するタンパク質をコードする。
【0173】
本開示のgp130結合分子のポリペプチドドメイン用の発現ベクターは、宿主生物によって認識され、gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードする核酸配列に機能的に連結された調節配列を含有する。「調節制御配列」、「調節配列」、または「発現制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を指すために本明細書において同義で用いられる。例えば、Goeddel (1990) in Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185 (Academic Press, San Diego CA USAを参照されたい。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を誘導する調節配列、およびある特定の宿主細胞でしかヌクレオチド配列の発現を誘導しない調節配列(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現レベルなどの要因に左右される場合があることが当業者により理解されよう。発現制御配列の選択において、当業者により理解される様々な要因を考慮しなければならない。これらには、例えば、配列の相対強度、その制御性、および特に、潜在的な二次構造についていえば、本gp130結合分子をコードする実際のDNA配列との適合性が含まれる。
【0174】
一部の態様では、調節配列はプロモーターであり、プロモーターは、例えば、発現が求められている細胞タイプに基づいて選択される。プロモーターは、機能的に連結された特定の核酸配列の転写および翻訳を制御する、構造遺伝子の開始コドンの上流(5')に位置する(一般的に、約100~1000bp以内にある)非翻訳配列である。このようなプロモーターは典型的には2つのクラス、誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターに分けられる。誘導性プロモーターは、培養条件の何らかの変化、例えば、栄養分の存在もしくは非存在または温度変化に応答して、誘導性プロモーターの制御下にあるDNAから高レベルの転写を開始するプロモーターである。様々な潜在的な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。
【0175】
T7プロモーターは細菌において使用することができ、ポリヘドリンプロモーターは昆虫細胞において使用することができ、サイトメガロウイルスまたはメタロチオネインプロモーターは哺乳動物細胞において使用することができる。同様に、高等真核生物の場合、組織特異的プロモーターおよび細胞タイプ特異的プロモーターが広く利用することができる。これらのプロモーターは、体内にある、ある特定の組織または細胞タイプにおいて核酸分子の発現を誘導する能力に因んでこのように命名された。当業者は、核酸発現を誘導するのに使用することができる非常に多くのプロモーターおよび他の調節エレメントをよく知っている。
【0176】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ウイルス、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、ヒトアデノウイルス血清型5)、ウシパピローマウイルス、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス幹細胞ウイルス)、B型肝炎ウイルス、最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)のゲノムから得られたプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、または免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターから得られたプロモーターが宿主細胞系と適合するのであれば、このようなプロモーターによって制御されてもよい。好都合なことに、SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として得られる。
【0177】
高等真核生物による転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加することが多い。エンハンサーは、通常、約10~300bpのシス作用DNAエレメントであり、転写を増加させるようにプロモーターに作用する。エンハンサーは、比較的、方向と位置に依存せず、転写単位に対して5'側および3'側、イントロン内、コード配列そのものの内部にあることが見出されている。今や、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインシュリン)に由来する多くのエンハンサー配列が知られている。しかしながら、通常、真核細胞ウイルスに由来するエンハンサーが使用される。例には、複製起点の後期側にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーはスプライスされて、発現ベクターのコード配列の位置5'側または3'側に入れられてもよく、好ましくは、プロモーターから部位5'側に配置される。真核生物宿主細胞において用いられる発現ベクターは、転写終結に必要な配列およびmRNAの安定化に必要な配列も含有する。このような配列は、一般的に、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5'非翻訳領域、場合によっては3'非翻訳領域から入手することができる。上記で列挙した成分の1つまたは複数を含有する適切なベクターの構築では標準的な技法を使用する。
【0178】
挿入された核酸分子の転写を容易にする配列に加えて、ベクターは、複製起点、および選択マーカーをコードする他の遺伝子を含有してもよい。例えば、ネオマイシン耐性(neoR)遺伝子は、ネオマイシン耐性(neoR)遺伝子が発現された細胞に対してG418耐性を付与し、従って、トランスフェクトされた細胞の表現型選択を可能にする。マーカーまたはレポーター遺伝子のさらなる例には、βラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(β-ガラクトシダーゼをコードする)、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)が含まれる。当業者は、ある特定の調節エレメントまたは選択マーカーが、特定の実験状況での使用に適しているかどうか容易に確かめることができる。発現ベクターが正しく組み立てられていることは、ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および適切な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。
【0179】
宿主細胞
さらに、本開示は、gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードする核酸分子を含有および発現する原核細胞または真核細胞を提供する。本開示の細胞は、トランスフェクトされた細胞、すなわち、核酸分子、例えば、gp130結合分子のポリペプチドドメインをコードする核酸分子が組換えDNA法によって導入されている細胞である。このような細胞の子孫も本開示の範囲内であるとみなされる。
【0180】
宿主細胞は、典型的には、選択された発現ベクターとの適合性、このgp130結合分子のDNA配列によってコードされる産物の毒性、分泌特性、ポリペプチドを正しく折り畳む能力、発酵または培養の要件、およびDNA配列によってコードされる産物の精製のしやすさに従って選択される。本明細書においてベクター中のDNAをクローニングまたは発現するための適切な宿主細胞は原核生物、酵母、または高等真核細胞である。
【0181】
一部の態様では、gp130結合分子の組換えポリペプチドドメインまたはその生物学的に活性な変種は酵母またはヒト細胞などの真核生物でも作製することができる。適切な真核宿主細胞には、昆虫細胞(培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)中でのタンパク質発現に利用可能なバキュロウイルスベクターの例には、pAcシリーズ(Smith et al. (1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers (1989) Virology 170:31-39)が含まれる);酵母細胞(酵母S.セレビシエ(S.cerevisiae)における発現用のベクターの例には、pYepSecl(Baldari et al. (1987) EMBO J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88 (Schultz et al. (1987) Gene 54:113-123)、pYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)、および pPicZ (Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)が含まれる);または哺乳動物細胞(哺乳動物発現ベクターには、pCDM8(Seed (1987) Nature 329:840) および pMT2PC (Kaufman et al. (1987) EMBO J. 6:187:195)が含まれる)が含まれる。
【0182】
有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、マウスL細胞(L-M[TK-], ATCC#CRL-2648)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293細胞または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされたHEK293細胞;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO);マウスセルトリ細胞(TM4);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76, ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562, ATCC CCL51);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーム株(HepG2)である。哺乳動物細胞では、発現ベクターの制御機能はウイルス調節エレメントによって提供されることが多い。例えば、一般的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40に由来する。
【0183】
gp130結合分子のポリペプチドドメインは、細菌大腸菌などの原核生物宿主において産生されてもよく、昆虫細胞(例えば、Sf21細胞)または哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、NIH3T3細胞、もしくはHeLa細胞)などの真核生物宿主において産生されてもよい。これらの細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas, Va.)を含む多くの供給元から入手可能である。当業者は、このような決定を下すことができる。さらに、発現系を選択する際に案内が必要であれば、当業者は、Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, New York, N.Y., 1993)およびPouwels et al. (Cloning Vectors: A Laboratory Manual, 1985 Suppl. 1987)を調べることができる。
【0184】
一部の態様では、gp130結合分子の組換えポリペプチドドメインは、gp130結合分子を産生するのに用いられる宿主生物に応じてグリコシル化されてもよく、グリコシル化されなくてもよい。細菌が宿主として選択される場合、産生されるgp130結合分子のポリペプチドドメインは脱グリコシル化され得る。一方、真核生物細胞は、gp130結合分子の組換えポリペプチドドメインをグリコシル化し得る。
【0185】
原核細胞および真核細胞の両方の他のさらなる発現系については、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, N.Y.)の第16章および第17章を参照されたい。Goeddel (1990) in Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185 (Academic Press, San Diego, Calif.)を参照されたい。
【0186】
トランスフェクション
発現構築物を宿主細胞に導入して、本明細書において開示されるgp130結合分子の組換えポリペプチドドメインを産生するか、またはその生物学的に活性なムテインを産生することができる。従来の形質転換またはトランスフェクション法によってベクターDNAを原核細胞または真核細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, N.Y.)および他の標準的な分子生物学の実験マニュアルにおいて見られる。
【0187】
標的細胞のトランスフェクションを容易にするために、標的細胞は、非ウイルスベクターの取り込みを容易にする条件下で、非ウイルスベクターを用いて直接暴露されてもよい。哺乳動物細胞による外来核酸の取り込みを容易にする条件の例は当技術分野において周知であり、化学的手段(例えば、Lipofectamine(登録商標), Thermo-Fisher Scientific)、高塩、および磁場(エレクトロポレーション)を含むが、これに限定されない。
【0188】
細胞培養
細胞は、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または望ましい配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜変更される従来の栄養培地中で培養されてもよい。哺乳動物宿主細胞は様々な培地中で培養することができる。宿主細胞を培養するには、市販の培地、例えば、Ham'sF10(Sigma)、最小必須培地((MEM),Sigma)、RPMI1640(Sigma)、およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM), Sigma)が適している。これらのどの培地にも、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、インシュリン、トランスフェリン、または上皮細胞増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオシド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質、微量元素、ならびにグルコースまたは等価なエネルギー源を加えることができる。他の任意の必要なサプリメントも当業者に公知の適切な濃度で含めることができる。培養条件、例えば、温度、pHなどは、発現のために選択された宿主細胞と共に以前に用いられたものであり、当業者に明らかである。
【0189】
組換えタンパク質の回収
分泌リーダー配列が用いられれば、組換えにより産生されたgp130結合ポリペプチドは分泌ポリペプチドとして培養培地から回収することができる。または、gp130結合ポリペプチドはまた宿主細胞溶解産物からも回収することもできる。精製中にタンパク質分解を阻害するために、細胞溶解産物からの回収期にフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)などのプロテアーゼインヒビターが用いられる場合があり、外因性の汚染物質の増殖を阻止するために抗生物質が含まれる場合がある。
【0190】
精製
様々な精製工程例えば、アフィニティクロマトグラフィーが当技術分野において公知であり、利用される。アフィニティクロマトグラフィーでは、通常、生物学的高分子に存在する高度に特異的な結合部位を利用し、特定のリガンドに結合する能力がある分子を分離する。リガンドがタンパク質試料に明白に提示され、それによって、ある分子種の天然特異的結合を用いて、混合物から第2の種が分離および精製されるようなやり方で、共有結合によってリガンドが不溶性の多孔性支持媒体に取り付けられる。アフィニティクロマトグラフィーでは抗体が一般的に用いられる。サイズ選択工程も用いられる場合があり、サイズに応じてタンパク質を分離するために、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィーまたは分子ふるいクロマトグラフィーとも知られる)が用いられる。ゲル濾過では、半透性の多孔性樹脂が充填されたタンパク質溶液がカラムに通される。半透性樹脂は、カラムによって分離することができるタンパク質のサイズを決定する、ある範囲の孔径を有する。
【0191】
形質転換宿主によって産生されたgp130結合分子の組換えポリペプチドドメインは任意の適切な方法に従って精製することができる。gp130結合分子は、陽イオン交換、ゲル濾過、およびまたは逆相液体クロマトグラフィーを用いて、大腸菌内で生じた封入体から単離されてもよく、ある特定のgp130結合分子を産生する哺乳動物または酵母培養物のいずれかに由来する条件培地から単離されてもよい。
【0192】
実質的に精製された形態の組換えポリペプチドを、例えば、本明細書に記載のように治療剤として使用することができる。
【0193】
前述に従って産生されたgp130結合分子の組換えポリペプチドドメインの生物学的活性は、競合ELISA、放射性リガンド結合アッセイ(例えば、飽和結合、スキャッチャードプロット、ノンリニアカーブフィッティングプログラム、および競合結合アッセイ);非放射性リガンド結合アッセイ(例えば、蛍光偏光(FP)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、および表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、Drescher et al., Methods Mol Biol 493:323-343 (2009)を参照されたい)と、GE Healthcare Bio-Sciencesから市販されている計測装置、例えば、 Biacore 8+、Biacore S200、Biacore T200 (GE Healthcare Bio-Sciences, 100 Results Way, Marlborough MA 01752));液相リガンド結合アッセイ(例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)、および免疫沈降);ならびに固相リガンド結合アッセイ(例えば、マルチウェルプレートアッセイ、オンビーズリガンド結合アッセイ、オンカラムリガンド結合アッセイ、およびフィルターアッセイ)を含むがこれに限定されない当技術分野において周知の手順を用いたgp130結合によって、確認することができる。
【0194】
使用方法
一部の態様では、gp130結合分子を含む組成物は、自己免疫性および炎症性の疾患、感染症、ならびに新生物疾患を含むヒト疾患の処置において有用である。一態様では、本開示は、gp130を含む受容体の活性を妨害するのに十分な量でgp130結合分子を対象に投与することによって、gp130発現細胞の活性を調整する方法を提供する。さらに、本開示は、混合された細胞集団においてgp130発現細胞の活性を調整する方法であって、前記細胞集団を、インビボおよび/またはエクスビボで、gp130を含む受容体の活性を妨害するのに十分な量で本開示のgp130結合分子または複合体と接触させる工程を含む、方法を提供する。一部の態様では、本開示のgp130結合分子は、gp130がサブユニットを形成する受容体(例えば、IL6)の活性のインヒビターである。gp130はIL6受容体のサブユニットを形成し、以前に議論されたように、IL6インヒビターは、自己免疫疾患および炎症疾患、感染症、ならびに新生物疾患の処置において有用性を立証している。
【0195】
自己免疫疾患および炎症疾患
本開示のgp130結合分子(gp130結合分子、および/または、このようなgp130結合分子をコードする組換えウイルスを含む、gp130結合分子をコードする核酸分子を含む薬学的に許容される製剤を含む)による処置の対象となる障害には、臓器拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫性甲状腺疾患、多発性硬化症、アレルギー、喘息、アルツハイマー病を含む神経変性疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己炎症疾患、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、1型糖尿病または2型糖尿病を含む糖尿病、炎症、自己免疫疾患、アトピー性疾患、腫瘍随伴性自己免疫疾患、軟骨炎症、関節炎、関節リウマチ、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、若年性関節リウマチ、多関節型若年性関節リウマチ、全身型若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性腸炎性関節炎、若年性反応性関節炎、若年性ライター症候群、SEA症候群(血清陰性・腱付着部症・関節症症候群(Seronegativity Enthesopathy Arthropathy Syndrome))、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性硬皮症、若年性全身性エリテマトーデス、若年性脈管炎、少関節型関節リウマチ、多関節型関節リウマチ、全身型関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸炎性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、SEA症候群(血清陰性・腱付着部症・関節症症候群)を含むが、これに限定されない炎症疾患または自己免疫疾患が含まれる。
【0196】
本開示のgp130結合分子(gp130結合分子、および/または、このようなgp130結合分子をコードする組換えウイルスを含む、gp130結合分子をコードする核酸分子を含む薬学的に許容される製剤を含む)による処置の対象となる増殖性および/または分化性障害の他の例には皮膚障害が含まれるが、これに限定されない。皮膚障害は、真皮層、表皮層、または皮下組織層にある細胞または一群の細胞または層の異常活動を伴ってもよく、真皮-表皮接合部における異常を伴ってもよい。例えば、皮膚障害は、ケラチノサイト(例えば、過剰増殖性の基底ケラチノサイトおよび基底のすぐ上にあるケラチノサイト)、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞、免疫細胞、および表皮層、例えば、基底層(胚芽層)、有棘層、顆粒層、淡明層、または角質層の1つまたは複数に見出される他の細胞の異常活動を伴ってもよい。他の態様では、障害は、真皮細胞、例えば、真皮内皮、線維芽細胞、真皮層、例えば、乳頭層または細網層に見出される免疫細胞(例えば、マスト細胞またはマクロファージ)の異常活動を伴ってもよい。
【0197】
炎症障害または自己免疫性皮膚障害の例には、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎(湿疹)、例えば、剥脱性皮膚炎またはアトピー性皮膚炎、毛孔性紅色ひこう疹、バラ色ひこう疹(pityriasis rosacea)、類乾癬、苔癬状ひこう疹(pityriasis lichenoiders)、扁平苔癬、光沢苔癬、魚鱗癬様皮膚症、角皮症(keratodermas)、皮膚症、円形脱毛症、壊疽性膿皮症、白斑、類天疱瘡(例えば、眼瘢痕性類天疱瘡または水疱性類天疱瘡)、じんま疹、汗孔角化症(prokeratosis)、関節包を裏打ちしている上皮関連細胞の過剰増殖および炎症を伴う関節リウマチ;皮膚炎、例えば、脂漏性皮膚炎および日光皮膚炎;角化症、例えば、脂漏性角化症、老人性角化症、日光角化症、光誘発性角化症、および毛包性角化症;尋常性座瘡;ケロイドおよびケロイド形成に対する予防;母斑;疣贅を含む、いぼ、コンジロームまたは尖圭コンジローム、および性病いぼなどのヒトパピローマウイルス(HPV)感染症;白斑症;扁平苔癬;ならびに角膜炎が含まれる。皮膚障害は、皮膚炎、例えば、アトピー性皮膚炎もしくはアレルギー性皮膚炎または乾癬でもよい。
【0198】
本開示の組成物(gp130結合分子、および/または、このようなgp130結合分子をコードする組換えウイルスを含む、gp130結合分子をコードする核酸分子を含む薬学的に許容される製剤を含む)はまた、乾癬または乾癬障害に罹患している(または罹患する可能性のある)患者にも投与することができる。「乾癬」という用語は、その医学的な意味、すなわち、主として皮膚に罹患し、膨れた、肥厚した、鱗屑の、非鱗屑の病変部を生じる疾患を有することが意図される。病変部は、通常、重なり合った、光沢のある鱗屑で覆われた、はっきりと境界が定まっている紅斑性丘疹である。鱗屑は典型的に銀白色であるか、または若干、オパールのような光彩を発する。爪の合併症は頻繁に起こり、その結果として、くぼみ、爪の分離、肥厚、および変色が生じる。乾癬は関節炎に関連することもあり、ひどく有害になる場合がある。ケラチノサイトの過剰増殖は、表皮炎症およびケラチノサイト分化の低下と共に乾癬性表皮過形成の重要な特徴である。乾癬を特徴とするケラチノサイト過剰増殖を説明するために複数の機構が引き合いに出されてきた。細胞免疫の障害も乾癬の発病に結び付けられてきた。乾癬障害の例には、慢性定常性乾癬(chronic stationary psoriasis)、尋常性乾癬(plaque psoriasis)、中程度から重度の尋常性乾癬、尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)、発疹性乾癬(eruptive psoriasis)、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬、環状膿疱性乾癬、または限局性の膿疱性乾癬が含まれる。
【0199】
補助治療剤との組み合わせ
本開示は、1種類または複数種のさらなる活性剤(「補助剤」)と組み合わせた本開示のgp130結合分子の使用を提供する。このようなさらなる組み合わせは「補助組み合わせ」または「補助併用療法」と同義で呼ばれ、本開示のgp130結合分子と組み合わせて用いられる治療剤は「補助剤」と呼ばれる。本明細書で使用する「補助剤」という用語は、別々に投与もしくは導入することができる、例えば、(例えば、キットに入れて提供される場合があるように)別々に投与するために別々に処方することができる剤、および/またはgp130結合分子と組み合わせて投与もしくは導入することができる療法を含む。
【0200】
本明細書で使用する「と組み合わせて」という用語は、対象への複数種の剤の投与に関して用いられる時、対象への第1の剤、少なくとも1種類のさらなる(すなわち、第2、第3、第4、第5などの)剤の投与を指す。本発明の目的で、ある剤(例えば、gp130結合分子)は、該第1の剤の投与に起因する生物学的効果が、第2の剤(例えば、免疫チェックポイント経路のモジュレーター)の投与時に、第1の剤と第2の剤の治療効果が重複するように持続しているならば、第2の剤と組み合わせて投与されるとみなされる。例えば、PD1免疫チェックポイントインヒビター(例えば、ニボルマブまたはペンブロリズマブ)は、典型的には、2週間毎または3週間毎にIV注入によって投与されるのに対して、本開示のgp130結合分子は、典型的には、もっと頻繁に、例えば、毎日、1日2回、または毎週投与される。しかしながら、たとえ第2の剤の投与時間からかなり遠い(例えば、数日または数週間の)時点で第1の剤が投与されていたとしても、第1の剤(例えば、ペンブロリズマブ)を投与すると長期間にわたって治療効果が得られ、第2の剤(例えば、gp130結合分子)を投与すると、その治療効果が、第2の剤が第1の剤と組み合わせて投与されたとみなされるように第1の剤の治療効果が継続している間、得られる。一態様では、第1の剤と第2の剤が同時に(互いの30分以内に)、同時期に、または連続して投与されるのであれば、ある剤は第2の剤と組み合わせて投与されるとみなされる。一部の態様では、第1の剤と第2の剤が互いの約24時間以内に、好ましくは互いの約12時間以内に、好ましくは互いの約6時間以内に、好ましくは互いの約2時間以内に、または好ましくは互いの約30分以内に投与されるのであれば、第1の剤は第2の剤と「同時期に」投与されるとみなされる。「と組み合わせて」という用語はまた、第1の剤と第2の剤が1つの薬学的に許容される製剤の中に共処方され、共製剤が対象に投与される状況に適用されることも理解されるものとする。ある特定の態様では、例えば、1種類または複数種の他の剤の前に、ある剤が投与される場合、gp130結合分子と補助剤は連続して投与または適用される。他の態様では、例えば、2種類以上の剤が同時に、またはほぼ同時に投与される場合、gp130結合分子と補助剤は同時に投与される。2種類以上の剤が2種類以上の別々の製剤の中に存在してもよく、1つの製剤(すなわち、共製剤)になるように組み合わされてもよい。剤が連続して、または同時に投与されるかどうかに関係なく、本開示の目的のために組み合わせて投与されるとみなされる。
【0201】
炎症性または自己免疫性の障害の処置において有用な補助剤
一部の態様では、前記方法は、本開示のgp130結合分子を、コルチコステロイド、Janusキナーゼインヒビター、カルシニューリンインヒビター、mTorインヒビター、IMDHインヒビター、生物製剤、ワクチン、および治療抗体からなる群より選択される1種類または複数種の補助剤と組み合わせて投与する工程をさらに含む。ある特定の態様では、治療抗体は、BLyS、CD11a、CD20、CD25、CD3、CD52、IgE、IL12/IL23、IL17a、IL1β、IL4Rα、IL5、IL6R、インテグリン-α4β7、RANKL、TNFα、VEGF-A、およびVLA-4からなる群より選択されるタンパク質に結合する抗体である。
【0202】
一部の態様では、補助剤は、コルチコステロイド(プレドニゾン、ブデソニド、プレドニリゾンを含むが、これに限定されない)、Janusキナーゼインヒビター(トファシチニブ(Xeljanz(登録商標)を含むが、これに限定されない)、カルシニューリンインヒビター(シクロスポリンおよびタクロリムスを含むが、これに限定されない)、mTorインヒビター(シロリムスおよびエベロリムスを含むが、これに限定されない)、IMDHインヒビター(アザチオプリン、レフルノミド、およびミコフェノール酸を含むが、これに限定されない)、生物製剤、例えば、アバタセプト(Orencia(登録商標))またはエタネルセプト(Enbrel(登録商標))、ならびに治療抗体からなる群より選択される1種類または複数種の剤である。
【0203】
自己免疫疾患の処置において、本開示のgp130結合分子と組み合わせて補助剤として投与され得る治療抗体の例には、抗CD25抗体(例えば、ダクリズマブおよびバシリキシマブ)、抗VLA-4抗体(例えば、ナタリズマブ)、抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ、オクレリズマブ)、抗TNF抗体(例えば、インフリキシマブ、およびアダリムマブ)、抗IL6R抗体(例えば、トシリズマブ)、抗TNFα抗体(例えば、アダリムマブ(Humira(登録商標))、ゴリムマブ、およびインフリキシマブ)、抗インテグリン-α4β7抗体(例えば、ベドリズマブ)、抗IL17a抗体(例えば、ブロダルマブまたはセクキヌマブ)、抗IL4Rα抗体(例えば、デュピルマブ)、抗RANKL抗体、IL6R抗体、抗IL1β抗体(例えば、カナキヌマブ)、抗CD11a抗体(例えば、エファリズマブ)、抗CD3抗体(例えば、ムラモナブ)、抗IL5抗体(例えば、メポリズマブ、レスリズマブ)、抗BLyS抗体(例えば、ベリムマブ);ならびに抗IL12/IL23抗体(例えば、ウステキヌマブ)が含まれるが、これに限定されない。
【0204】
自己免疫疾患に対する臨床使用のために多くの治療抗体が承認されている。指示された自己免疫疾患の処置のために本開示のgp130結合分子(と任意で、さらなる補助剤)と組み合わせて補助剤として投与されてもよい、自己免疫疾患に罹患している対象における自己免疫疾患処置における使用のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された抗体の例を以下の表に示した。
【0205】
(表4)自己免疫疾患および炎症疾患の処置における補助剤として有用な抗体
【0206】
本開示の方法の実施における補助剤として有用な表4の前述の抗体は単独で投与されてもよく、抗体と、リンカーと、1種類または複数種の薬物(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、または8種類の薬物)を含む任意の抗体薬物コンジュゲート(ADC)の形で投与されてもよく、改変された形態(例えば、PEG化)で投与されてもよい。
【0207】
新生物疾患の処置
本開示は、治療的有効量の、本明細書に記載のようなgp130結合分子(またはgp130結合分子をコードする組換えベクターを含む、gp130結合分子をコードする核酸、ならびにgp130結合分子を発現するように改変された真核細胞および原核細胞)の投与による、新生物性の疾患障害または状態に罹患している対象の処置におけるgp130結合分子の使用方法を提供する。
【0208】
処置の対象となる新生物:
本開示の組成物および方法は、良性新生物および悪性新生物を含む新生物の存在を特徴とする新生物疾患、ならびに新生物疾患に罹患している対象の処置において有用である。
【0209】
本開示の組成物および方法を用いた処置の対象となる良性新生物の例には、腺腫、線維腫、血管腫、および脂肪腫が含まれるが、これに限定されない。本開示の組成物および方法を用いた処置の対象となる前悪性新生物の例には、過形成、異型、化生、および異形成が含まれるが、これに限定されない。本開示の組成物および方法を用いた処置の対象となる悪性新生物の例には、典型的には骨、脂肪、筋肉、血管、または結合組織に由来する、癌腫(皮膚または内臓を裏打ちする組織などの上皮組織から生じた癌)、白血病、リンパ腫、および肉腫が含まれるが、これに限定されない。新生物という用語には、ウイルス誘発性の新生物、例えば、いぼ、およびEBV誘発性の疾患(すなわち、伝染性単核球症)、瘢痕形成、内膜平滑筋細胞過形成を含む過剰増殖性血管疾患、再狭窄、ならびに血管閉塞なども含まれる。
【0210】
「新生物疾患」という用語は、乳癌;肉腫(骨肉腫および血管肉腫および線維肉腫を含むが、これに限定されない)、白血病、リンパ腫、尿生殖器癌(卵巣癌、尿道癌、膀胱癌、および前立腺癌を含むが、これに限定されない);胃腸癌(結腸癌、食道癌、および胃癌を含むが、これに限定されない);肺癌;ミエローマ;膵臓癌;肝臓癌;腎臓癌;内分泌癌;皮膚癌;ならびに神経膠腫および神経芽細胞腫、星状細胞腫、骨髄異形成障害を含む、脳または中枢神経および末梢神経(CNS)系の腫瘍、悪性または良性;子宮頸部上皮内癌;腸ポリープ症;口腔白板症;組織球症、ケロイド瘢痕を含む過剰増殖性瘢痕、血管腫;過剰増殖性動脈狭窄、乾癬、炎症性関節炎;過角化症、および関節炎を含む丘疹鱗屑性発疹を含むが、これに限定されない固形腫瘍および非固形腫瘍を特徴とする癌を含む。
【0211】
新生物疾患という用語は癌腫を含む。「癌腫」という用語は、呼吸器系癌腫、胃腸系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、およびメラノーマを含む、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。新生物疾患という用語は腺癌を含む。「腺癌」とは、腺組織に由来する癌腫、または腫瘍細胞が、認識できる腺構造を形成する癌腫を指す。
【0212】
本明細書で使用する「造血性新生物障害」という用語は、造血由来の、例えば、骨髄球系列、リンパ球系列、もしくは赤血球系列、またはその前駆細胞から生じた過形成/新生物細胞を伴う新生物疾患を指す。
【0213】
骨髄性新生物には、骨髄増殖性腫瘍、好酸球増加を伴う骨髄球障害およびリンパ球障害、骨髄増殖性/骨髄異形成性新生物、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病および関連する前駆新生物、ならびに不明瞭な系列の急性白血病が含まれるが、これに限定されない。本開示に従う処置の対象となる例示的な骨髄障害には、急性前骨髄球性白血病(acute promyeloid leukemia)(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)が含まれるが、これに限定されない。
【0214】
リンパ系新生物には、前駆リンパ系新生物、成熟B細胞新生物、成熟T細胞新生物、ホジキンリンパ腫、および免疫不全関連リンパ増殖性疾患が含まれるが、これに限定されない。本開示に従う処置の対象となる例示的なリンパ系障害には、B系列ALLおよびT系列ALLを含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞性白血病(HLL)、ならびにワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)が含まれるが、これに限定されない。
【0215】
場合によっては、造血性新生物障害は、低分化急性白血病(例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病)に起因する。本明細書で使用する「造血性新生物障害」という用語は、非ホジキンリンパ腫およびその変種、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病、ならびにリード・スターンバーグ病を含むが、これに限定されない悪性リンパ腫を指す。
【0216】
対象が「新生物疾患に罹患している」かどうかの決定とは、対象が処置を必要とするか、または処理から利益を得る、X線、CTスキャン、従来の臨床診断検査(例えば、血球数など)、ゲノムデータ、タンパク質発現データ、免疫組織化学を含むが、これに限定されない、疾患、障害、または状態を特定するための分野において受け入れられている入手可能な情報に基づいて対象に対して医師が下した決定を指す。
【0217】
gp130結合分子と抗新生物性補助剤の組み合わせ:
本開示は、新生物疾患を処置するための、1種類または複数種のさらなる活性抗新生物剤(「補助剤」)と組み合わせた本開示のgp130結合分子の使用を提供する。このようなさらなる組み合わせは「抗新生物性補助組み合わせ」または「抗新生物性補助併用療法」と同義で呼ばれ、本開示のgp130結合分子と組み合わせて用いられる治療剤は「抗新生物性補助剤」と呼ばれる。本明細書で使用する「抗新生物性補助剤」という用語は、別々に投与もしくは導入することができる、例えば、(例えば、キットに入れて提供される場合があるように)別々に投与するために別々に処方することができる抗新生物剤、および/またはgp130結合分子と組み合わせて投与もしくは導入することができる療法を含む。
【0218】
化学療法剤:
一部の態様では、抗新生物性補助剤は化学療法剤である。一部の態様では、補助剤は複数の化学療法剤の「カクテル」である。一部の態様では、化学療法剤またはカクテルは1つまたは複数の物理的方法(例えば、放射線療法)と組み合わせて投与される。「化学療法剤」という用語には、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロスホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパ;エチレンイミン、およびアルトレタミンを含むメチルアメラミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファオラミド、およびトリメチローロメラミン;ナイトロジェンマスタード、例えば、チオラムブシル、クロルナファジン、クロロフォスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン、フェネストリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、例えば、ブレオマイシンA2、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンおよび誘導体、例えば、デメトキシ-ダウノマイシン、11-デオキシダウノルビシン、13-デオキシダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、N-メチルマイトマイシンC;ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ユベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート、ジデアザテトラヒドロ葉酸、および葉酸;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリニック酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポプロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、およびドキセタキセル;クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金および白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT11;トポイソメラーゼインヒビター;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;タキサン、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル;カルミノマイシン、アドリアマイシン、例えば、4′-エピアドリアマイシン、4-アドリアマイシン-14-ベンゾエート、アドリアマイシン-14-オクタノエート、アドリアマイシン-14-ナフタレンアセテート;コルチシン、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれるが、これに限定されない。
【0219】
「化学療法剤」という用語はまた、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように働く抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン、およびトレミフェンを含む抗エストロゲン、ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、およびゴセレリン、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も含む。
【0220】
一部の態様では、抗新生物性補助剤は、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト、例えば、IL-12、INFα、または抗上皮増殖因子受容体、イリノテカン;テトラヒドロ葉酸代謝拮抗物質、例えば、ペメトレキセド;腫瘍抗原に対する抗体、モノクローナル抗体と毒素の複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、または抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法)、抗腫瘍ワクチン、複製能力のあるウイルス、シグナル伝達インヒビター(例えば、Gleevec(登録商標)またはHerceptin(登録商標))もしくは腫瘍成長の相加的抑制もしくは相乗的抑制を実現するための免疫調節剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)インヒビター、ステロイド、TNFアンタゴニスト(例えば、Remicade(登録商標)およびEnbrel(登録商標))、インターフェロン-β1a(Avonex(登録商標))、ならびにインターフェロン-β1b(Betaseron(登録商標))を含むが、これに限定されない、当技術分野において新生物疾患の処置において有用であると突き止められた1種類または複数種の化学的剤または生物学的剤、ならびにTAC、FOLFOX、TPC、FEC、ADE、FOLFOX-6、EPOCH、CHOP、CMF、CVP、BEP、OFF、FLOX、CVD、TC、FOLFIRI、PCV、FOLFOXIRI、ICE-V、XELOX、および当業者によって容易に理解されるその他のものを含むが、これに限定されない、公知の化学療法処置レジメンにおいて実施されるような前述の1つまたは複数の組み合わせである。
【0221】
一部の態様では、gp130結合分子は、BRAF/MEKインヒビター、キナーゼインヒビター、例えば、スニチニブ、PARPインヒビター、例えば、オラパリブ、EGFRインヒビター、例えば、オシメルチニブ(Ahn, et al. (2016) J Thorac Oncol 11:S115)、IDOインヒビター、例えば、エパカドスタット、および腫瘍退縮性ウイルス、例えば、タリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)と組み合わせて投与される。
【0222】
補助剤としての抗腫瘍性抗原抗体治療剤
一部の態様では、「抗新生物性補助剤」は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE)、二重親和性リターゲティング(DART)構築物、および三重特異性キラーエンゲージャー(TriKE)構築物)を含むが、これに限定されない、1種類または複数種の腫瘍関連抗原に結合する治療抗体(二重特異性抗体および三重特異性抗体を含む)である。
【0223】
一部の態様では、治療抗体は、HER2(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アドトラスツズマブエムタンシン)、ネクチン-4(例えば、エンホルツマブ)、CD79(例えば、ポラツズマブベドチン)、CTLA4(例えば、イピルムマブ)、CD22(例えば、モキセツモマブパスードトクス)、CCR4(例えば、マガムイズマブ)、IL23p19(例えば、チルドラキズマブ)、PDL1(例えば、デュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ)、IL17a(例えば、イキセキズマブ)、CD38(例えば、ダラツムマブ)、SLAMF7(例えば、エロツズマブ)、CD20(例えば、リツキシマブ、トシツモマブ、イブリツモマブ、およびオファツムマブ)、CD30(例えば、ブレンツキシマブベドチン)、CD33(例えば、ゲムツズマブオゾガマイシン)、CD52(例えば、アレムツズマブ)、EpCam、CEA、fpA33、TAG-72、CAIX、PSMA、PSA、葉酸結合タンパク質、GD2(例えば、ジヌンツキシマブ)、GD3、IL6(例えば、シルツキシマブ)GM2、Ley、VEGF(例えば、ベバシズマブ)、VEGFR、VEGFR2(例えば、ラムシルマブ)、PDGFRa(例えば、オラルツムマブ)、EGFR(例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、およびネシツムマブ)、ERBB2(例えば、トラスツズマブ)、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKLRAP、テネイシン、インテグリンαVβ3、およびインテグリンα4β1からなる群より選択される少なくとも1種類の腫瘍抗原に結合する抗体である。
【0224】
一部の態様では、治療抗体は、対象における新生物疾患、ならびに新生物疾患に関連する疾患、障害、または状態を処置および/または予防するための免疫チェックポイントモジュレーターである。「免疫チェックポイント経路」という用語は、抗原提示細胞(APC)上に発現している第1の分子(例えば、PD1などのタンパク質)が、免疫応答を調整する、免疫細胞(例えば、T細胞)上に発現している第2の分子(例えば、PDL1などのタンパク質)に結合することで、免疫応答を刺激(例えば、T細胞活性のアップレギュレーション)または阻害(例えば、T細胞活性のダウンレギュレーション)することによって誘発される生物学的応答を指す。免疫応答を調整する結合ペアの形成に関与する分子は一般に「免疫チェックポイント」と呼ばれる。一態様では、免疫チェックポイント経路モジュレーターは、PD1とPDL1および/またはPDL2との結合を阻害する、負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「PD1経路インヒビター)である。PD1経路インヒビターという用語は、PD1とPDL1および/またはPDL2との結合を妨害するモノクローナル抗体を含む。新生物疾患処置における補助剤として有用な市販のPD1経路インヒビターの例には、ニボルマブ(BristolMyers Squibb, Princeton NJから市販されているOpdivo(登録商標)、BMS-936558、MDX1106)、ペンブロリズマブ (Merck and Company, Kenilworth NJから市販されているKeytruda(登録商標)MK-3475、ランブロリズマブ)、およびアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Genentech/Roche, South San Francisco CA)を含むが、これに限定されない、PD1とPDL1および/またはPDL2との結合を妨害する抗体が含まれる。デュルバルマブ(MEDI4736、Medimmune/AstraZeneca)、ピディリズマブ(CT-011、CureTech)、PDR001(Novartis)、BMS-936559(MDX1105、BristolMyers Squibb)、およびアベルマブ(MSB0010718C、Merck Serono/Pfizer)、およびSHR-1210(Incyte)を含むが、これに限定されない、さらなるPD1経路インヒビター抗体が臨床開発中である。さらなる抗体PD1経路インヒビターは、2012年7月10日に発行された米国特許第8,217,149号(Genentech, Inc); 2012年5月1日に発行された米国特許第8,168,757号(Merck Sharp and Dohme Corp.)、2011年8月30日に発行された米国特許第8,008,449号(Medarex)、2011年5月17日に発行された米国特許第7,943,743号(Medarex, Inc)に記載されている。
【0225】
FDAにより承認され、かつ新生物疾患の処置において使用するための補助剤として使用され得る抗体治療剤の例には、アテゾリズマブ、オララツマブ、イキセキズマブ、トラスツズマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、エドレコロマブ、ダラツムマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、ジヌツキシマブ、ニボルマブ、ブリナツモマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ブレンツキシマブベドチン、イピリムマブ、オファツムマブ、セルトリズマブペゴル、カツマキソマブ、パニツムマブ、ベバシズマブ、ラムシルマブ、シルツキシマブ、エンホルツマブベトチン、ポラツズマブベドチン、[fam]-トラスツズマブデルクステカン、セミプリマブ、モキセツモマブパスードトクス、モガムイズマブ、チルドラキズマブ、イバリズマブ、デュルバルマブ、イノツズマブ、オゾガマイシン、アベルマブ、オビヌツズマブ、アドトラスツズマブエムタンシン、セツキシマブ、トシツモマブ-I131、イブリツモマブチウキセタン、ゲムツズマブ、およびオゾガマイシンが含まれる。
【0226】
物理的方法
一部の態様では、抗新生物性補助剤は、1種類または複数種の非薬理学的モダリティ(例えば、局所放射線療法もしくは全身放射線療法または外科手術)である。例として、本開示は、放射線の段階の前または後に、gp130結合分子と1種類または複数種の抗新生物性補助剤を含む処置レジメンによる処置が行われる処置レジメンを意図する。一部の態様では、さらに、本開示は、外科手術(例えば、腫瘍切除)と組み合わせてgp130結合分子を使用することを意図する。一部の態様では、さらに、本開示は、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、または他のタイプの移植療法と組み合わせてgp130結合分子を使用することを意図する。
【0227】
一部の態様では、本開示の方法は、新生物疾患、自己免疫疾患、または炎症疾患を処置するための、gp130結合分子と、細胞療法の形をとる補助剤の投与の組み合わせを含んでもよい。本開示の方法と組み合わせた使用の対象となる細胞療法の例には、1種類または複数種の活性化CAR-T細胞を含む操作されたT細胞製品、操作されたTCR細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、操作されたTreg細胞が含まれるが、これに限定されない。
【0228】
本発明の実施において有用なCARは、当技術分野において周知の原理に従って調製される。例えば、2010年6月22日に発行されたEshhaar et al., 米国特許番号7,741,465 B1; Sadelain, et al (2013) Cancer Discovery 3(4):388-398; Jensen and Riddell (2015) Current Opinions in Immunology 33:9-15; Gross, et al. (1989) PNAS(USA) 86(24):10024-10028; Curran, et al. (2012) J Gene Med 14(6):405-15を参照されたい。市販のCAR-T細胞製品の例には、アキシカブタゲンシロルユーセル(Gilead Pharmaceuticalsから市販されているYescarta(登録商標)として販売されている)およびチサゲンレクロイセル(Novartisから市販されているKymriah(登録商標)として販売されている)が含まれる。一部の態様では、CAR-Tは、GD2、BCMA、CD19、CD33、CD38、CD70、GD2、IL3R□2、CD19、メソテリン、Her2、EpCam、Muc1、ROR1、CD133、CEA、EGRFRVIII、PSCA、GPC3、Pan-ErbB、およびFAPからなる群より選択される、腫瘍細胞に関連する細胞表面分子に特異的に結合するCARを有する。
【0229】
製剤
さらに、本開示は、本開示のgp130結合分子の薬学的に許容される製剤を提供する。好ましい製剤は、意図された投与方法および治療用途によって決まる。本明細書に記載のgp130結合分子の薬学的剤形は、本質的に無毒であり、かつ治療に役立たない生理学的に許容される担体を含む。このような担体の例には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、およびPEGが含まれる。ポリペプチドの局所形態用またはゲルベース形態用の担体には、多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、PEG、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集物(例えば、油滴またはリポソーム)が含まれる。
【0230】
薬学的組成物はまた、薬学的に許容される、無毒の担体、賦形剤、安定剤、または希釈剤も含んでよく、これらは、動物またはヒトへの投与のための薬学的組成物を処方するのに一般的に用いられるビヒクルと定義される。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度ではレシピエントに無毒であり、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、オクタデシジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0231】
インビボ投与に使用される製剤は典型的には無菌である。本開示の組成物は無菌濾過膜による濾過によって容易に滅菌することができる。
【0232】
典型的に、組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかの注射液として調製される。注射前に液体ビヒクルに溶解または懸濁するのに適した個体形態も調製することができる。調製物は乳化されてもよく、上記のように、リポソーム、またはマイクロ粒子、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、もしくはアジュバント効果を高めるためのコポリマーの中に包まれてもよい(Langer, Science 249: 1527, 1990 and Hanes, Advanced Drug Delivery Reviews 28: 97-119, 1997)。本開示の剤は、活性成分を徐放または拍動放出するように処方することができるデポー注射剤または移植片調製物の形で投与することができる。薬学的組成物は、一般的に、無菌であり、実質的に等張性であり、かつ米国食品医薬品局の全ての優良製造規則(GMP)の規定を完全遵守している。
【0233】
ポリペプチドgp130結合分子のベクター送達
gp130結合分子がポリペプチドである態様では、このようなgp130結合分子はまた、対象の組織の細胞において、発現制御配列に機能的に連結された、ペプチジルgp130結合分子をコードする核酸配列を含む組換えベクターを投与することで対象に送達されてもよい。
【0234】
発現ベクターはウイルスベクターでもよく非ウイルスベクターでもよい。「非ウイルスベクター」という用語は、正常ゲノムとは異なり、かつ標的細胞においてコード配列を発現することができる非選択条件下での細胞生存に不必要な、自己複製性の染色体外環状DNA分子を指す。プラスミドは非ウイルスベクターの例である。標的細胞のトランスフェクションを容易にするために、標的細胞は、非ウイルスベクターの取り込みを容易にする条件下で、非ウイルスベクターを用いて直接曝露されてもよい。哺乳動物細胞による外来核酸の取り込みを容易にする条件の例は当技術分野において周知であり、化学的手段(例えば、Lipofectamine(登録商標), Thermo-Fisher Scientific)、高塩、および磁場(エレクトロポレーション)を含むが、これに限定されない。
【0235】
一態様では、非ウイルスベクターは非ウイルス送達系に入れて提供されてもよい。非ウイルス送達系は典型的には標的細胞に核酸カーゴを形質導入するのを容易にする複合体であり、この場合、核酸は、剤、例えば、カチオン性脂質(DOTAP、DOTMA)、界面活性剤、生物製剤(ゼラチン、キトサン)、金属(金、磁鉄)、および合成ポリマー(PLG、PEI、PAMAM)と複合体形成される。脂質ベクター系(Lee et al.(1997) Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 14:173-206); ポリマーコーティングリポソーム(1993年5月25日に発行された、Marin et al., 米国特許第5,213,804号;1991年5月7日に発行された、Woodle, et al., 米国特許第5,013,556号); カチオン性リポソーム(1994年2月1日に発行された、Epand et al., 米国特許第5,283,185号; 1996年11月26日に発行された、Jessee, J. A., 米国特許第5,578,475号; 1994年1月18日に発行された、Rose et al, 米国特許第5,279,833号; 1994年8月2日に発行された、Gebeyehu et al., 米国特許第5,334,761号)を含む、非常に多くの非ウイルス送達系態様が当技術分野において周知である。
【0236】
別の態様では、発現ベクターはウイルスベクターでもよい。本明細書で使用するウイルスベクターという用語は、タンパク質合成機構もエネルギー発生機構もない任意の絶対細胞内寄生生物を指すために従来の意味で用いられ、普通、外因性トランスジーンを哺乳動物細胞に送達するのに一般的に用いられる任意のエンベロープ動物ウイルスまたは非エンベロープ動物ウイルスを指す。ウイルスベクターは複製能力があってもよく(例えば、実質的に野生型である)、条件付きで複製してもよく(ある特定の条件下で複製するように組換えにより操作されている)、複製欠損であってもよい(ウイルスの欠失された機能を補完することができる細胞株の非存在下では実質的に複製することができない)。ウイルスベクターは、「特異的に複製する」ように、すなわち、ある特定の細胞タイプまたは表現型細胞状態、例えば、癌において優先的に複製する、ある特定の改変を有してもよい。本gp130結合分子の実施において有用なウイルスベクター系には、例えば、天然ウイルスベクター系または組換えウイルスベクター系が含まれる。本gp130結合分子の実施において有用なウイルスの例には、組換えにより改変されたエンベロープまたは非エンベロープのDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれる。例えば、ウイルスベクターは、ヒトまたはウシのアデノウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、シンドビスウイルス、およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスを含むが、これに限定されない)、ならびにB型肝炎ウイルスのゲノムに由来してもよい。典型的に、遺伝子構築物のパッケージングを可能にするために、典型的には付随するウイルスゲノム配列と共に、このようなベクターに関心対象の遺伝子を挿入し、感受性のある宿主細胞に感染させて、関心対象の遺伝子(例えば、標的抗原)を発現させる。
【0237】
発現ベクターは標的抗原の他に1種類または複数種のポリペプチドをコードしてもよい。本gp130結合分子の実施のように複数のポリペプチドを発現する時に、それぞれのポリペプチドが発現制御配列に機能的に連結されてもよく(モノシストロニック)、複数のポリペプチドが1つの発現制御配列の制御下で発現されるポリシストロニック構築物によって複数のポリペプチドがコードされてもよい。一態様では、標的抗原をコードする発現ベクターは、任意で、1種類または複数種の免疫学的モジュレーターをさらにコードしてもよい。本gp130結合分子の実施において有用な免疫学的モジュレーターの例にはサイトカインが含まれるが、これに限定されない。このようなサイトカインの例には、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-l2、TNF-α、インターフェロンα、インターフェロンα-2b、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、GM-CSF、MIP1-α、MIP1-β、MIP3-α、TGF-β、および免疫応答を調整することができる他の適切なサイトカインの1つまたは複数を含むが、これに限定されないインターロイキンである。発現されるサイトカインは細胞内発現するように向けられてもよく、細胞外提示または分泌のためにシグナル配列と共に発現されてもよい。
【0238】
発現ベクターは、任意で、「レスキュー」遺伝子をコードする核酸配列を含む、さらなる発現カセットを提供してもよい。「レスキュー遺伝子」は核酸配列であり、発現すると細胞は、外因子による死滅に対して感受性を示すか、または細胞が死滅するように細胞内で毒性状態が引き起こされる。レスキュー遺伝子を設けると、形質導入された細胞の選択的な細胞死滅が可能になる。従って、前記構築物が哺乳動物対象の細胞に組み込まれた時に、レスキュー遺伝子は、形質導入された細胞の望ましくない伝播または複製能力のあるベクター系の効果を阻止するための、さらなる安全策を提供する。一態様では、レスキュー遺伝子はチミジンキナーゼ(TK)遺伝子(例えば、1997年5月20日に発行された、Woo, et al. 米国特許第5,631,236号、および1997年2月11日に発行された、Freeman, et al. 米国特許第5,601,818号を参照されたい)であり、TK遺伝子産物を発現する細胞はガンシクロビル投与により選択的死滅を受けやすくなる。
【0239】
投与量
さらに、本開示は、疾患、障害、もしくは状態に罹患している対象、または疾患、障害、もしくは状態を発症するリスクのある対象に対する、治療的または予防的に有効な用量のgp130結合分子、またはポリペプチドgp130結合分子をコードする核酸配列を含む組換えベクターもしくは細胞の投与を提供する。前記のgp130結合分子、ベクター、または細胞を含む薬学的組成物の投与量は、投与経路、処置しようとする疾患、および対象の身体的特徴、例えば、年齢、体重、身体全体の健康を含む要因に左右される。典型的に、単一用量の中に含まれるgp130結合分子の量は、重大な毒性を誘発することなく疾患を効果的に予防する、遅延する、または処置する量でもよい。本開示の薬学的組成物は、0.01~500mg/kg(例えば、0.01~450mg、0.01~400mg、0.01~350mg、0.01~300mg、0.01~250mg、0.01~200mg、0.01~150mg、0.01~100mg、0.01~50mg、0.01~10mg、0.01~1mg、0.1~500mg/kg、1~500mg/kg、5~500mg/kg、10~500mg/kg、50~500mg/kg、100~500mg/kg、150~500mg/kg、200~500mg/kg、250~500mg/kg、300~500mg/kg、350~500mg/kg、400~500mg/kg、または450~500mg/kg)、特定の態様では、約1~約100mg/kg(例えば、約1~約90mg/kg、約1~約80mg/kg、約1~約70mg/kg、約1~約60mg/kg、約1~約50mg/kg、約1~約40mg/kg、約1~約30mg/kg、約1~約20mg/kg、約1~約10mg/kg、約10~約100mg/kg、約20~約100mg/kg、約30~約100mg/kg、約40~約100mg/kg、約50~約100mg/kg、約60~約100mg/kg、約70~約100mg/kg、約80~約100mg/kg、または約90~約100mg/kg)の投与量の本明細書に記載のgp130結合分子を含んでもよい。一部の態様では、本開示の薬学的組成物は、0.01~20mg/kg(例えば、0.01~15mg/kg、0.01~10mg/kg、0.01~8mg/kg、0.01~6mg/kg、0.01~4mg/kg、0.01~2mg/kg、0.01~1mg/kg、0.01~0.1mg/kg、0.01~0.05mg/kg、0.05~20mg/kg、0.1~20mg/kg、1~20mg/kg、2~20mg/kg、4~20mg/kg、6~20mg/kg、8~20mg/kg、10~20mg/kg、15~20mg/kg)の投与量の本明細書に記載の結合タンパク質を含んでもよい。疾患の程度および対象の様々なパラメータなどの従来の要因に従って医師が投与量を合わせることができる。
【0240】
本明細書に記載のgp130結合分子を含有する薬学的組成物は、それを必要とする対象に、例えば、1回または複数回(例えば、1~10回またはそれより多く)毎日、毎週、毎月、年2回、毎年、または医学的に必要な時に投与することができる。投与量は1回または複数回の投与計画で提供されてもよい。医学的状態が改善した時に投与間のタイミングは減少してもよく、患者の健康状態が低下した時には投与間のタイミングは増加してもよい。療法の過程は単回投与でもよく、ある期間にわたって複数回投与でもよい。一部の態様では、単回投与が用いられる。一部の態様では、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、21日、28日、30日、60日、90日、120日、または180日の期間にわたって投与される2つ以上の分割用量が用いられる。このような分割用量プロトコールにおいて投与される各用量は投与ごとに同じでもよく、異なってもよい。当業者(例えば、医師)が投与をモニタリングすることによって、処置の副作用を含む処置に対する対象の応答、および前記で議論したような副作用の調整を考慮して、ある期間にわたって複数日の投薬プロトコールが提供される場合がある。
【0241】
予防用途のために、薬学的組成物または医用薬剤は、疾患になりやすいか、または他の点で疾患のリスクのある患者に、疾患を排除するか、もしくは疾患のリスクを下げるか、疾患の重篤度を小さくするか、または疾患の生化学的、組織学的、および/もしくは行動学的な症状、その合併症、ならびに疾患の発達中に呈する中間の病理学的表現型を含む、疾患の始まりを遅延するのに十分な量で投与される。
【0242】
一部の態様では、処置しようとする状態は、慢性状態(例えば、慢性感染症、すなわち、1週間まで、2週間までなどの期間内に宿主免疫系によって一掃されない感染症)である。場合によっては、慢性状態は、宿主ゲノム、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、B型肝炎ウイルスなどへの病原体遺伝因子の組込みを伴う。他の場合では、慢性感染症、例えば、ある特定の細胞内細菌または原生動物病原体は、宿主細胞内にある病原体細胞に起因する。さらに、一部の態様では、感染症は、ヘルペスウイルスまたはヒトパピローマウイルスと同様に潜伏期にある。このような場合、療法の経過は、慢性状態またはその症状の再発を予防するための、慢性状態症状の実質的な非存在下での連続投与を含む、長期間にわたるgp130結合分子の投与を伴うことがある。
【0243】
予防用途では、比較的少ない投与量が長期間にわたって比較的まれな間隔で投与されることがある。患者の中には、この先、処置を受け続けるものもいる。他の治療用途では、疾患の進行が弱まるまで、または終わるまで、好ましくは、患者が疾患症状の部分寛解または完全寛解を示すまで、比較的短い間隔で比較的多い投与量が必要とされる時もある。その後に、本特許を予防方式で投与することができる。
【0244】
投与経路
本明細書に記載のgp130結合分子の投与は、局部投与、血管内注射(静脈内注入または動脈内注入を含む)、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、頭蓋内注射、腫瘍内注射、節内注射、経皮送達、経粘膜送達、イオントフォレーシス送達、リンパ内注射(Senti and Kundig (2009) Current Opinions in Allergy and Clinical Immunology 9(6):537-543)、胃内注入、前立腺内注射、膀胱内注入(例えば、膀胱)、ネブライザーを含む呼吸器用吸入器、眼内注射、腹腔内注射、病巣内注射、卵巣内注射、脳内注入または脳内注射、脳室内注射(ICVI)などを含むが、これに限定されない様々な当技術分野において認められている任意の方法によって成し遂げることができる。対象への投与は静脈内投与によって成し遂げられてもよく、ボーラスとして成し遂げられてもよく、またはある期間にわたる連続注入によって成し遂げられてもよい。非経口投与経路の例には、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経皮(局部)投与、経粘膜投与、および直腸投与が含まれる。gp130結合分子は1回で投与されてもよく、連続して、例えば、連続ポンプによって連続投与されてもよく、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、またはそれより長く起こり得る、ある期間にわたって周期的な間隔(毎日、隔週、毎月)で投与されてもよい。gp130結合分子の複数の用量の望ましい時間間隔が当業者によって決定され得る。
【0245】
上記で議論したように、本開示の組成物は1種類または複数種のさらなる治療上活性な剤と組み合わせて用いられてもよい。本明細書で使用する「と組み合わせて」という用語は、対象への複数種の剤の投与に関して用いられる時には、対象への第1の剤、少なくとも1種類のさらなる(すなわち、第2、第3、第4、第5などの)補助剤の投与を指す。本発明の目的で、ある剤(例えば、gp130結合分子)は、該第1の剤の投与に起因する生物学的効果が、補助剤の投与時に、第1の剤と第2の剤の治療効果が重複するように対象において持続しているならば、補助剤と組み合わせて投与されるとみなされる。たとえ補助剤の投与時間からかなり遠い(例えば、数日または数週間の)時点で第1の剤が投与されていたとしても、第1の剤を投与すると長期間にわたって治療効果が得られる可能性があり、補助剤を投与すると、その治療効果が、補助剤が第1の剤と組み合わせて投与されたとみなされるように第1の剤の治療効果が継続している間、得られる。一態様では、第1の剤と第2の剤が同時に(互いの30分以内に)、同時発期に、または連続して投与されるのであれば、ある剤は補助剤と組み合わせて投与されるとみなされる。一部の態様では、第1の剤と補助剤が互いの約24時間以内に、好ましくは互いの約12時間以内に、好ましくは互いの約6時間以内に、好ましくは互いの約2時間以内に、または好ましくは互いの約30分以内に投与されるのであれば、第1の剤は補助剤と「同時期に」投与されるとみなされる。「と組み合わせて」という用語はまた、第1の剤と補助剤が1つの薬学的に許容される製剤の中に共処方され、共製剤が対象に投与される状況に適用されることも理解されるものとする。ある特定の態様では、例えば、1種類または複数種の他の剤の前に、ある剤が投与される場合、第1の剤と補助剤は連続して投与または適用される。他の態様では、第1の剤と補助剤が同時に投与される。例えば、2種類以上の剤が同時に、またはほぼ同時に投与される場合、2種類以上の剤が2種類以上の別々の製剤の中に存在してもよく、1つの製剤(すなわち、共製剤)になるように組み合わされてもよい。剤が連続して、または同時に投与されるかどうかに関係なく、本開示の目的のために組み合わせて投与されるとみなされる。
【0246】
キット
本開示はまた、gp130結合分子の薬学的組成物を含むキットも意図する。一部の態様では、さらに、キットは、gp130結合分子との併用療法における使用について前記で議論したような補助剤を含む補助薬学的組成物を備える。キットは、一般的に、以下で説明されるように様々な構成要素を収容する物理構造の形をとり、例えば、上記の方法の実施において利用することができる。キットは、使用の準備ができている対象に投与するのに適した薬学的組成物の形でgp130結合分子を含んでもよく、投与前に調製、例えば、解凍、再構成、もしくは希釈を必要とする形でgp130結合分子を含んでもよい。gp130結合分子が、使用者による再構成を必要とする形をとる場合、キットは、緩衝液、薬学的に許容される賦形剤などを含む再構成用媒体を提供する無菌の容器も備えてもよい。本開示のキットは、キットに収容される構成要素を適切に維持するのに必要な条件(例えば、冷凍または凍結)用に設計することができる。キットは、キットの中にある構成要素の識別情報を記載したラベルまたは添付文書と、使用のための説明書をさらに備えてもよい。キットの各構成要素が個々の容器に封入されてもよく、様々な容器が全て1個の包装容器の中にあってもよい。ラベルまたは添付文書には、ロット番号および有効期限などの製造業者の情報が記載されていてもよい。ラベルまたは添付文書は、例えば、構成要素を収容する物理構造の表面に一体化されていてもよく、物理構造内に別々に入れられてもよく、キットの構成要素(例えば、アンプル、注射器、またはバイアル)に貼られていてもよい。ラベルまたは添付文書は物理的形態またはコンピュータ可読媒体で提供されてもよい。一部の態様では、実際の説明書はキットに存在せず、キットは、政府の規制(例えば、HIPAA)に従って、パスワード(またはgp130結合分子の容器、または含むキットの表面にある、バーコードまたはQRコードなどのスキャン可能なコード)の提供によるセキュアなアクセスによって説明書を入手することを含めて、遠くの情報源から、例えば、インターネットサイトを介して説明書を入手するための手段を提供する。
【実施例】
【0247】
以下の実施例は、当業者に、本gp130結合分子を作製および使用するやり方を完璧に開示および説明するために示され、本発明者らがgp130結合分子とみなすものの範囲を限定することを目的とせず、以下の実験が実施されたことを表すことも、実施することができる実験の全てだと表すことも目的としない。現在形で書かれた例示的な説明は必ず実施されるとは限らないが、この説明は、説明の中に記載されるデータなどを得るために実施することができると理解しなければならない。使用される数値(例えば、量、温度など)について精度を保証するための取り組みがなされたが、いくらかの実験の誤差および偏差が占めるはずである。使用される詳細に説明される手順のバリエーションは当業者に明らかになる可能性があり、当業者は、このようなバリエーションを適宜使用することができると予想される。従って、gp130結合分子は、本明細書において詳細に説明されたものとは別の方法で実施され、本発明は、該当する法律によって許されるように、本明細書の後ろに付け加えられた特許請求の範囲において説明された主題(subject matter)の全ての変更および均等物を含むことが意図される。
【0248】
特に定めのない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏(℃)であり、圧力は大気圧であるか、または大気圧に近い。以下を含む標準的な略称が用いられる:bp=塩基対(s);kb=キロベース(s);pl=ピコリットル;sまたはsec=秒;min=分;hまたはhr=時間;aa=アミノ酸(s);kb=キロベース(s);nt=ヌクレオチド(s);pg=ピコグラム;ng=ナノグラム;μg=マイクログラム;mg=ミリグラム;g=グラム;kg=キログラム;dlまたはdL=デシリットル;μlまたはμL=マイクロリットル;mlまたはmL=ミリリットル;lまたはL=リットル;μM=マイクロモル濃度;mM=ミリモル濃度;M=モル濃度;kDa=キロダルトン;i.m.=筋肉内(筋肉内に);i.p.=腹腔内(腹腔内に);SCまたはSQ=皮下(皮下に);QD=1日1回;BID =1日2回;QW=週1回;QM=月1回;HPLC=高速液体クロマトグラフィー;BW=体重;U=ユニット;ns=統計的に有意でない;PBS=リン酸緩衝食塩水;PCR=ポリメラーゼ連鎖反応;NHS=N-ヒドロキシスクシンイミド;HSA=ヒト血清アルブミン;MSA=マウス血清アルブミン;DMEM=ダルベッコ変法イーグル培地;GC=ゲノムコピー;EDTA=エチレンジアミン四酢酸;PBMC=初代末梢血単核球;FBS=胎仔ウシ血清(fetal bovine serum);FCS=ウシ胎児血清(fetal calf serum);HEPES=4-(2-ヒドロキシエチル)-1ピペラジンエタンスルホン酸;LPS=リポ多糖;ATCC=アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション。
【0249】
実施例1. 免疫化プロトコール
抗hgp130 VHHを単離するためのプロセスは、ラクダを、hgp130(UNIPROT参照番号P40189)のアミノ酸23~619に対応するポリペプチドで免疫化することによって開始した。抗mgp130 VHHを単離するためのプロセスは、ラクダを、mgp130の201アミノ酸細胞外ドメイン、mgp130前駆体(UNIPROT参照番号Q00560)のアミノ酸23~617で免疫化することによって開始した。各抗原について、以下の方法論を用いてVHHを特定および単離した。
【0250】
抗原をコードする合成DNA配列をpFUSE_hIgG1_Fc2ベクター(Generay Biotechnology)に挿入し、発現のためにトランスフェクションによってHEK293F哺乳動物細胞宿主細胞に導入した。抗原は、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製されるFc融合タンパク質として発現する。抗原を1×PBSで希釈した(全部で約1mgの抗原)。純度が免疫化に十分(>80%)なことを保証するために、品質をSDS-PAGEによって評価した。ラクダを免疫化前に少なくとも7日間、施設で順化させた。抗原を用いた免疫化は、7週間にわたる週1回の抗原投与を用いて行った。初回免疫化のために、以下の通りに免疫原を調製した。10mLの完全フロイントアジュバント(CFA)を乳鉢に添加し、次いで、1×PBSに溶解した10mLの抗原を、乳棒で粉砕しながら乳鉢にゆっくりと添加し、抗原が乳化して乳白色になり、分散しにくくなるまで試料を磨砕した。その後、免疫化プロトコールにおいて6回、免疫化(2~7週目)するために、CFAの代わりに不完全フロイントアジュバント(IFA)を使用したこと以外は上記のように免疫原を調製した。ラクダの少なくとも6カ所の部位に、ラクダ1匹につき合計約10mLで約2mlの乳化抗原を皮下注射した。抗原を注射した時に、エマルジョンの漏れを避けるために、毎回の注射後に約10~15秒間、針を皮下空間に維持した。
【0251】
実施例2. ファージライブラリー構築
免疫化プロトコールにおいて最後に注射して3日後にラクダから血液試料を収集した。RNAを血液から抽出し、cDNAに転写した。VHH-ヒンジ-CH2-CH3種をコードする望ましい約700bpの断片から、VHH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3構築物をコードする約900bpの逆転写配列を単離した。精製された約700bp断片をネスティッドPCRによって増幅した。増幅配列をPst1およびNot1で消化した。VHHコード配列が、HA/His配列をコードするDNA配列とインフレームになるように、約400bpのPST1/Not1消化断片をPst1/Not1消化pMECSファージミドベクターに挿入した。PCRによって作製された配列と、pMECSファージミドベクターをPstIおよびNotIで消化し、その後に、pMECS/Nb組換えに連結した。連結後に、エレクトロポレーションによる形質転換によって産物を大腸菌(E.coli)TG1細胞に導入した。形質転換体を増殖培地中で濃縮した後に、2YT+2%グルコース寒天プレートに移した。
【0252】
実施例3: 抗原特異的VHHの単離
IFNgR1に結合するVHHを特定するためにファージライブラリーのバイオパニングを行った。96ウェルプレートをIFNgR1でコーティングし、プレート上にあるIFNgR1にファージ発現IFNgR1反応性VHHが結合できるように、各ウェル中でファージライブラリーをインキュベートした。非特異的に結合したファージを洗い流し、特異的に結合したファージを単離した。選択後に、IFNgR1反応性VHHを発現する、濃縮されたファージライブラリーをTG1細胞中で増幅した。IFNgR1反応性VHHについてライブラリーを濃縮するために、上記のバイオパニングプロセスを2~3回繰り返した。
【0253】
実施例4: IFNgR1に対して特異的結合を示す抗体の特定:
実施例3のバイオパニングが完了した後に、IFNgR1コーティングプレート上でペリプラズム抽出物ELISA(PE-ELISA)を行って、IFNgR1に選択的に結合した陽性のVHH結合剤を特定するために、個々のファージクローンの3つの96ウェルプレートを単離した。96ウェルプレートを同じ条件下でIFNgR1およびPBSでコーティングした。次に、ウェルを37℃で1時間ブロックした。次いで、100μlの抽出抗体を各ウェルに添加し、1時間インキュベートした。その後に、100μlのHRP結合抗tagポリクローナル抗体を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをTMB基質で発色させた。H2SO4を添加することによって反応を止めた。450nmでの吸光度をマイクロタイタープレートリーダーで読み取った。抗原コーティングウェルの吸光度がPBSコーティング対照の少なくとも3倍であった抗体が、IFNgR1に対する特異的結合を提供すると考えられた。陽性クローンを配列決定し、配列を分析してユニークなクロノタイプを特定した。
【0254】
実施例5. 表面プラズモン共鳴を介した結合親和性の評価
以下の通りにSPRを介して結合を評価するために、実施例1~3に従って作製した各hgp130 VHHおよびmgp130 VHHクロノタイプからの代表例を選択した。SEQ ID NO 2、3、4、5、6、および7に対応するhgp130結合分子の結合親和性の評価を、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、以下の手順におおむね従って行った。全実験を、10mM Hepes、150mM NaCl、0.05%(v/v)ポリソルベート20(PS20)、および3mM EDTA(HBS-EP+緩衝液)中で、プロテインA誘導体化センサーチップ(Cytiva)を備えたBiacore T200機器において行った。モノFc VHHリガンドを、以下の表に列挙したキャプチャーロードに到達する18~300秒の可変時間にわたって5μl/minで流した。リガンド捕獲後に、典型的には1μM~1nMの少なくとも5種類の濃度を含む、C末ポリHis配列を組み込むように改変されたIL2Rb受容体の細胞外ドメインの2倍希釈シリーズをハイパフォーマンスモードまたはシングルサイクルキネティクスモードで注入した。10mMグリシン-HCl、pH1.5(60秒、50μL/min)を流すことで表面再生を行った。緩衝液を差し引いたセンソグラム(sensogram)をBiacore T200 Evaluation Softwareで処理し、速度定数および親和定数(ka、kd、KD)を抽出するために1:1ラングミュア結合モデルを用いてグローバルフィットした(バルクシフトを0に設定した)。RMAX<100RUは、反応速度分析と適合する表面密度を示す。Rmax計算値は、式:Rmax=ロード(RU)xリガンドの結合価x(分析物の分子量/リガンドの分子量)を用いて作成した。表面活性はRmax実験値/計算値の比として定義された。
【0255】
本明細書に記載の実施例および態様は例示目的にすぎず、本明細書に記載の実施例および態様を考慮して様々な変更または変化が当業者に示唆され、本願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の中に含まれることが理解される。本明細書において引用された刊行物、配列アクセッション番号、特許、および特許出願は全て、その全体が全ての目的のために、参照により本明細書に組み入れられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
本開示は、gp130の細胞外ドメインに特異的に結合するポリペプチド配列を含むgp130結合分子、および生物学的試料中にある、gp130発現細胞の単離、枯渇、または濃縮における、その使用方法を提供する。
[本発明1001]
gp130の細胞外ドメインに特異的に結合する、gp130結合分子。
[本発明1002]
シングルドメイン抗体(sdAb)を含む、本発明1001のgp130結合分子。
[本発明1003]
sdAbが、以下の表:
の横列に示されるように相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3を含む、本発明1002のgp130結合分子。
[本発明1004]
sdAbが、SEQ ID NO:2、3、4、5、6、および7のいずれか一つのポリペプチド配列に対して少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する、本発明1002または1003のgp130結合分子。
[本発明1005]
sdAbが、以下の表:
の横列に示されるように相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、およびCDR3を含む、本発明1002のgp130結合分子。
[本発明1006]
sdAbが、SEQ ID NO:26~74のいずれか一つのポリペプチド配列に対して少なくとも80%、あるいは少なくとも85%、あるいは少なくとも90%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも98%、あるいは少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する、本発明1002のgp130結合分子。
[本発明1007]
sdAbが、ヒト化されているか、またはさもなくば、異種フレームワーク上にグラフトされたCDRを含む、本発明1003または1005のいずれかのgp130結合分子。
[本発明1008]
標識化剤、画像化剤、および/または治療剤をさらに含む、本発明1001~1007のいずれかのgp130結合分子。
[本発明1009]
治療的有効量の、本発明1001~1008のいずれかのgp130結合分子またはその薬学的に許容される製剤を哺乳動物対象に投与することによる、哺乳動物対象における疾患、障害、もしくは状態の処置または予防のための方法。
[本発明1010]
疾患が新生物疾患である、本発明1009の方法。
[本発明1011]
生物学的試料からのgp130+細胞の単離、枯渇、または濃縮において使用するための、本発明1001~1008のいずれかのgp130結合分子。
[本発明1012]
本発明1001~1008のいずれかのgp130結合分子をコードする、核酸配列。
[本発明1013]
本発明1012の核酸を含む、組換えウイルスベクターまたは非ウイルスベクター。
[本発明1014]
本発明1012の核酸を含む、宿主細胞。
[本発明1015]
本発明1013のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを含む、薬学的製剤。
[本発明1016]
本発明1001~1008のいずれかのgp130結合分子を含む、キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
特異的に結合する:
本明細書で使用する「特異的に結合する」という用語は、第1の分子が第2の分子に対して示す親和性の程度を指す。結合ペア(例えば、リガンド/受容体、抗体/抗原)の文脈では、結合ペアの第1の分子が、試料中に存在する他の成分に有意な量で結合しない時には、結合ペアの第1の分子は結合ペアの第2の分子に特異的に結合するといわれる。第2の分子に対する第1の分子の親和性が、試料中に存在する他の成分に対する第1の分子の親和性の少なくとも2倍、あるいは少なくとも5倍、あるいは少なくとも10倍、あるいは少なくとも20倍、または少なくとも100倍である時に、結合ペアの第1の分子は、結合ペアの第2の分子に特異的に結合するといわれる。特定の態様では、結合ペアの第1の分子が抗体である場合、抗体と抗原との間の平衡解離定数が、例えば、スキャッチャード分析(Munsen, et al. (1980) Analyt. Biochem. 107:220-239)によって求められた時に約106M超、あるいは約108M超、あるいは約1010M超、あるいは約1011M超、約1012M超であれば、抗体は抗原(またはタンパク質、抗原、リガンド、もしくは受容体の抗原決定基(エピトープ))に特異的に結合する。一態様では、リガンドがgp130結合sdAbであり、受容体がgp130を含む場合、gp130結合sdAb/gp130 ECDの平衡解離定数が、約105M超、あるいは約106M超、あるいは約107M超、あるいは約108M超、あるいは約109M超、あるいは約1010M超、または約1011M超であれば、gp130結合sdAbは特異的に結合する。特異的結合は、競合ELISAアッセイ、放射性リガンド結合アッセイ(例えば、飽和結合、スキャッチャードプロット、ノンリニアカーブイフィッティングプログラム、および競合結合アッセイ);非放射性リガンド結合アッセイ(例えば、蛍光偏光(FP)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET);液相リガンド結合アッセイ(例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)、および免疫沈降);ならびに固相リガンド結合アッセイ(例えば、マルチウェルプレートアッセイ、オンビーズリガンド結合アッセイ、オンカラムリガンド結合アッセイ、およびフィルターアッセイ))、ならびに表面プラズモン共鳴アッセイを含むが、これに限定されない、当技術分野において公知の技法を用いて評価することができる(例えば、Drescher et al., (2009) Methods Mol Biol 493:323-343と、市販の計測装置、例えば、Biacore 8K、Biacore 8K+、Biacore S200、Biacore T200(Cytiva, 100 Results Way, Marlborough MA 01752)を参照されたい)。一部の態様では、本開示は、hgp130アイソフォームに特異的に結合する分子(例えば、gp130結合sdAb)を提供する。本明細書で使用する、gp130に対するgp130結合分子の結合親和性、結合親和性は表面プラズモン共鳴(「SPR」)によって決定および/または定量されることがある。gp130に対するgp130結合分子の結合親和性を評価する際に、結合ペアのいずれかのメンバーが固定化され、結合ペアの他の要素が移動相の中に提供されることがある。一部の態様では、関心対象のタンパク質が表面に固定化されるセンサーチップは、関心対象のタンパク質の結合を容易にする物質、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)誘導体化表面プラズモン共鳴センサーチップ(例えば、カタログ番号BR100407としてCytiva Global Life Science Solutions USA LLC, Marlborough MAから入手可能なSensor Chip NTA)、抗Hisタグ抗体(例えば、Cytiva, Marlborough MAから市販されている抗ヒスチジンCM5チップ)、プロテインA、またはビオチンを用いてコンジュゲートされる。その結果、結合を評価するためにチップ表面にコンジュゲートされた物質に結合させるためにタンパク質を改変することが必要な場合が多い。例えば、チップ上での保持のためにポリヒスチジン配列(例えば、6xHis(SEQ ID NO:281)または8xHis(SEQ ID NO:282))を含むキレート化ペプチドを組み込むことによって、評価しようとする結合ペアの一方のメンバーをNTAによりコンジュゲートした。一部の態様では、gp130結合分子はチップ上に固定化され、gp130(またはそのECD断片)は移動相中に提供されることがある。または、gp130(またはそのECD断片)はチップ上に固定化され、gp130結合分子は移動相中に提供されることがある。どちらの場合にも、コーティングされたSPRチップ上に固定化するために、一部のタンパク質を改変すると、SPRによって評価しようとする結合ペアの一方または両方の成分の結合特性が干渉される場合があることに留意しなければならない。このような場合、結合ペアの移動要素と結合要素を切り替えるか、または評価しようとするタンパク質の非干渉コンジュゲーションを容易にする結合剤を有するチップを使用することが必要な場合がある。または、SPRを用いて、gp130に対するgp130結合分子の結合親和性を評価する時に、gp130結合分子は、ポリHis配列(例えば、6xHis(SEQ ID NO:281)または8xHis(SEQ ID NO:282))のC末付加によって誘導体化され、NTA誘導体化センサーチップ上に固定化されてもよく、gp130 VHH結合親和性が評価されているhgp130受容体サブユニットは移動相中に提供される。組換えDNA技術によって生成されたgp130結合分子のC末端にポリHis配列を組み込むための手段はバイオテクノロジーの関連分野の当業者に周知である。一部の態様では、実施例の開示におおむね従ってSPRを用いた、gp130に対するgp130結合分子の結合親和性。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
一部の態様では、gp130結合分子は、リンカーを介してつなげられた、さらなる剤と安定して結合されているgp130結合sdAbを含む。リンカーは、gp130結合分子の2つの要素(例えば、hgp130結合VHHおよびPEGポリマー)の間の共有結合である。リンカーは、共有結合、化学リンカー、またはペプチドリンカーでもよい。適切なリンカーには、一般的に、gp130結合sdAbと、連結された剤との間である程度動くのに十分な長さの「可動性リンカー」が含まれる。化学リンカーの例には、アリールアセチレン、2~10単量体ユニットを含有するエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二塩基酸、アミノ酸、またはその組み合わせが含まれる。一部の態様では、リンカーはペプチドリンカーである。適切なペプチドリンカーは容易に選択することができ、任意の適切な長さのリンカー、例えば、1個のアミノ酸(例えば、Gly)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、30~50個、または50個超のアミノ酸のペプチドリンカーでよい。適切なペプチドリンカーは当技術分野において公知であり、例えば、グリシンおよびセリンなどの可動性のあるアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーを含む。可動性リンカーの例には、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および他の可動性リンカーが含まれる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは比較的、構造不定であり、従って、成分間の中立テザー(neutral tether)として役立つ場合がある。可動性リンカーのさらなる例には、グリシンポリマー(G)n、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、グリシン-セリンポリマーが含まれる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは比較的、構造不定であり、従って、成分間の中立テザーとして役立つ場合がある。異種アミノ酸配列を、本明細書において開示されるgp130結合sdAbにコンジュゲートするのに使用され得る可動性リンカーを提供するために、このようなリンカー配列の多量体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、または30~50)が一緒に連結されてもよい。一部の態様では、リンカーは、式(GGGS)n(SEQ ID NO:283)、(GGGSG)n(SEQ ID NO:284)、(GGGGS)n(SEQ ID NO:285)、(GGS)nG(SEQ ID NO:286)、または(GGSG)n(SEQ ID NO:287)を有し、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10より選択される整数である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
キレート化ペプチド
一態様では、本開示は、1つまたは複数の遷移金属キレート化ポリペプチド配列を含むgp130結合分子を提供する。1986年2月11日に発行されたSmithらの米国特許第4,569,794号に記載のように、このような遷移金属キレート化ドメインを組み込むと固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)による精製が容易になる。本gp130結合分子の実施において有用な遷移金属キレート化ポリペプチドの例は、Smithら、前記および1995年5月10日に発行された、Dobeliらの米国特許第5,320,663号において説明される。これらの全開示が参照により本明細書に組み入れられる。本gp130結合分子の実施において有用な特定の遷移金属キレート化ポリペプチドは、3~6個の連続したヒスチジン残基(SEQ ID NO:288)を含むポリペプチド、例えば、6ヒスチジン(His)6ペプチド(SEQ ID NO:281)であり、当技術分野では「Hisタグ」と言及されることが多い。Andersonら(1995年8月8日に発行された米国特許第5,439,829号)およびHale, J.E (1996) Analytical Biochemistry 231(1):46-49の開示におおむね従って、組換えタンパク質用の精製「ハンドル(handle)」を設けることに加えて、またはSPRセンサーチップ上での固定化を容易にすることを目的として、このようなキレート化ペプチドへのhgp130結合分子のコンジュゲーションは、動力学的に不活性な、または動力学的に不安定な錯体として遷移金属イオンをgp130発現細胞に標的送達するのを容易にする。遷移金属イオンは、レポーター分子、例えば、蛍光化合物または放射線画像化剤であり、放射性物質または治療剤を含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0168
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0168】
発現させようとするgp130結合分子のポリペプチドドメインがキメラ(例えば、gp130結合分子と異種ポリペプチド配列を含む融合タンパク質)として発現される場合には、キメラタンパク質は、gp130結合分子のポリペプチドドメインの全てまたは一部をコードする第1の配列と、異種ポリペプチドの全てまたは一部をコードする第2の配列を含むハイブリッド核酸分子によってコードされてもよい。例えば、本明細書に記載のgp130結合分子のポリペプチドドメインは、細菌により発現されたタンパク質の精製を容易にするためにヘキサヒスチジンタグ(SEQ ID NO:281)と融合されてもよく、真核細胞内で発現されたタンパク質の精製を容易にするために血球凝集素タグと融合されてもよい。第1および第2は、融合タンパク質のエレメントの方向に対する限定と理解してはならず、異種ポリペプチドはgp130結合分子のポリペプチドドメインのN末端および/またはC末端のいずれにも連結することができる。例えば、N末端は標的化ドメインに連結されてもよく、C末端はヘキサヒスチジンタグ(SEQ ID NO:281)精製ハンドルに連結されてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】