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特表2023-536655FLT3リガンド融合タンパク質及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-28
(54)【発明の名称】FLT3リガンド融合タンパク質及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230821BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230821BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230821BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230821BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230821BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230821BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230821BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230821BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K14/47
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 A
C07K16/18
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K39/39
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507882
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 US2021044586
(87)【国際公開番号】W WO2022031876
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/062,713
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リウ, イーチン
(72)【発明者】
【氏名】ムシオン, クリスティーン カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベインブリッジ, トラヴィス ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ, イーラジ
(72)【発明者】
【氏名】ラザー, グレゴリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】コーエン, シヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ケンバル, クリストファー チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】シャルトナー, ジル エム.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、エフェクターレス免疫グロブリンFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質のFlt3リガンドへの融合物、及びそれらを使用する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフェクターレスFcタンパク質を含むFc融合タンパク質であって、Flt3リガンド(Flt3L)タンパク質とエフェクターレスFcタンパク質とを含み、エフェクターレスFcタンパク質が残基配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であり、配列番号13の残基13~17がアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号13の残基76がグリシンである、Fc融合タンパク質。
【請求項2】
Flt3Lタンパク質が、PWSPRPLEATAPTAPQPP(配列番号48)、WSPRPLEATAPTAPQPP(配列番号49)、SPRPLEATAPTAPQPP(配列番号50)、PRPLEATAPTAPQPP(配列番号51)、RPLEATAPTAPQPP(配列番号52)又はPLEATAPTAPQPP(配列番号53)のアミノ酸配列を含まない、請求項1に記載のFc融合タンパク質。
【請求項3】
Flt3Lが、配列番号22と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項1又は2に記載のFc融合タンパク質。
【請求項4】
Flt3Lが、配列番号22のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質。
【請求項5】
Flt3Lが、配列番号21のアミノ酸27~167、27~168、27~169、27~170、27~171、27~172、27~173、27~174、27~175、27~176、27~177、27~178、27~179、27~180、27~181、27~182、27~183、27~184、又は27~185を含むタンパク質と少なくとも約90%同一であるタンパク質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質。
【請求項6】
エフェクターレスFcタンパク質のN末端が、ペプチド結合を介してFlt3Lタンパク質のC末端に連結されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質。
【請求項7】
融合タンパク質が、配列番号26と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号13と同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号12を含む野生型IgG1 Fc領域のFcエフェクター機能と比較して減弱されたFcエフェクター機能を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質。
【請求項9】
FcエフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質が、インビトロアッセイにおいて、抗体依存性細胞食作用(ADCP)を、野生型IgG1 Fc(配列番号12)に融合した野生型Flt3Lを含むFlt3L-Fc融合タンパク質によるインビトロアッセイにおける活性レベルの20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%以下の活性レベルで活性化する、請求項1~8のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質をコードする、単離された核酸。
【請求項11】
Fc融合タンパク質のN末端にシグナル配列をさらにコードする、請求項10に記載の単離された核酸。
【請求項12】
Flt3L-Fc融合タンパク質をコードする、単離された核酸であって、Flt3L-Fc融合タンパク質が配列番号45を含む、単離された核酸。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を培養することを含む、Fc融合タンパク質を産生する方法。
【請求項15】
宿主細胞が、真核細胞又は原核細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
宿主細胞が大腸菌である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
宿主細胞がCHO細胞である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬製剤。
【請求項19】
第2の治療剤をさらに含む、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
第2の治療剤が、アジュバント、樹状成熟因子及び/又はチェックポイント阻害剤である、請求項18又は19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
対象における樹状細胞(DC)の数を増殖させるための方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む、方法。
【請求項22】
約0.1mg/kg~50mg/kgの用量のFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~9のいずれか一項に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質又は請求項18~20のいずれか一項に記載の医薬製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、がんを治療するための方法。
【請求項24】
約0.1mg/kg~50mg/kgの用量のFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第2の治療剤を対象に投与することをさらに含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
第2の治療剤が、アジュバント、樹状成熟因子及び/又はチェックポイント阻害剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
DC成熟因子を投与することを含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
DC成熟因子が、ポリIC、ポリICLC、DC40、放射線療法及び化学療法から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
チェックポイント阻害剤が、FcエフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質の投与前、投与と同時、又は投与後に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
免疫チェックポイント阻害剤が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、BMS 936559、アテゾリズマブ、及びアベルマブからなる群から選択される、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、黒色腫、膵管腺癌(PDAC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、結腸直腸がん(CRC)、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
対象が、チェックポイント阻害剤で以前に治療された、請求項21~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
対象が、チェックポイント阻害剤の治療に応答しなかった、及び/又は、チェックポイント免疫療法の最後の用量を受けた後3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、1年、1.5年若しくは2年よりも長い間、チェックポイント阻害剤の治療に応答しなかった、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象におけるがんが、免疫砂漠腫瘍を含むと特徴付けられている、請求項21~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
残基配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、エフェクターレスFcタンパク質であって、配列番号13の残基13~17がアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含むか、又は配列番号13の残基76がグリシンである、エフェクターレスFcタンパク質。
【請求項37】
配列番号13の残基13~17がアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号13の残基76がグリシンである、請求項36に記載のエフェクターレスFcタンパク質。
【請求項38】
配列番号13と同一のアミノ酸配列を含む、請求項36又は37に記載のエフェクターレスFcタンパク質。
【請求項39】
配列番号2、4、5、6、13又は15と同一のアミノ酸配列を含む、エフェクターレスFcタンパク質。
【請求項40】
Fcタンパク質が、配列番号12を含む野生型IgG1 Fc領域と比較して減弱されている、請求項36~39のいずれか一項に記載のエフェクターレスFcタンパク質。
【請求項41】
請求項1~9のいずれか一項に記載のエフェクターレスFcタンパク質を含む、抗体。
【請求項42】
重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む、請求項40に記載の抗体。
【請求項43】
モノクローナル抗体である、請求項41又は42に記載の抗体。
【請求項44】
ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、請求項41又は42に記載の抗体。
【請求項45】
二重特異性又は多重特異性抗体である、請求項41又は42に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月7日に出願された米国仮特許出願第63/062,713号の優先権及び利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、2021年7月28日に作成されたASCIIコピーで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、P36298-WO_SL.txtという名称であり、サイズが128,413バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、Flt3リガンド融合タンパク質及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
多数の研究が、がんの進行における免疫系成分の差次的存在の重要性を裏付けている(Jochems and Schlom,Exp Biol Med,236(5):567-579(2011))。臨床データは、高密度の腫瘍浸潤リンパ球が臨床転帰の改善に関連することを示唆している(Mlecnik et al.,Cancer Metastasis Rev.;30:5-12,(2011))。腫瘍免疫浸潤物には、マクロファージ、樹状細胞(DC)、肥満細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナイーブ及びメモリーリンパ球、B細胞及びエフェクターT細胞(Tリンパ球)が含まれ、これらは主に、腫瘍細胞によって発現される抗原の認識及びその後のT細胞による腫瘍細胞の破壊を担う。
【0005】
がん細胞による抗原の提示及び腫瘍細胞に対して潜在的に反応し得る免疫細胞の存在にもかかわらず、多くの場合、免疫系は活性化されないか、又は肯定的に抑制される。腫瘍は、抗腫瘍免疫応答を回避するためのいくつかの免疫調節機構を発達させる。全体的な結果は、損なわれたT細胞応答及びアポトーシスの誘導又はCD8細胞傷害性T細胞の抗腫瘍免疫能の低下である。抗原提示機能及び樹状細胞(DC)の阻害は、抗腫瘍免疫の回避にさらに寄与する(Gerlini et al.Am.J.Pathol.165(6),1853-1863(2004)。
【0006】
さらに、腫瘍微小環境の局所免疫抑制性は、標的抗原を発現しないがん細胞亜集団の回避をもたらし得る。したがって、免疫系の抗腫瘍活性の保存及び/又は回復を促進するであろうアプローチを見出すことは、かなりの治療上の利益になるであろう。
【0007】
免疫チェックポイントは、抗腫瘍免疫の腫瘍媒介性下方制御に関与している。T細胞機能不全は、CD28ファミリー受容体のメンバーである阻害性受容体、CTLA-4及びプログラム死1ポリペプチド(PD-1)の誘導された発現と同時に起こることが実証されている。それにもかかわらず、近年の広範な研究にもかかわらず、臨床現場における免疫療法の成功は限られている。規制当局によって承認されている治療剤はほとんどなく、その中でも大多数の患者が恩恵を受けていない。近年、免疫チェックポイントは抗腫瘍免疫のダウンレギュレーションに関与しており、治療標的として使用されている。これらの所見は、がんに対する免疫系を利用するための新規な治療アプローチの開発の必要性を強調している。
【0008】
骨髄細胞の増殖を刺激するI型膜貫通タンパク質であるヒトFlt3L(Fms様チロシンキナーゼ3リガンド)を1994年にクローニングした(Lymanら、1994)。可溶性hFlt3Lの使用は、骨髄移植の準備における幹細胞動員、樹状細胞の増殖などのがん免疫療法、並びにワクチンアジュバントを含む様々な前臨床及び臨床状況において検討されている。しかし、Flt3Lを利用した医薬組成物は、臨床において第2相を超えたものがない。
【0009】
1つの課題は、Flt3Lリガンドへの曝露を最適化し、有害な副作用又は潜在的な好ましくない免疫学的効果を最小限に抑えながら最適な投薬レジメンを同定することである。曝露の調節は、例えば、投与レジメンを変化させ、投与量を変化させ、又は治療分子の薬物動態特性及び/又は薬力学特性を変更することによって行うことができる。がん患者の免疫療法を増強するのに利益のある有益なPK/PD特性を有するFlt3L-Fc融合タンパク質が本明細書で提供される。
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明は、エフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質(エフェクターレス免疫グロブリンFcタンパク質に融合された活性Flt3リガンド(Flt3L)を含むFlt3リガンド融合タンパク質を含む)及びその使用方法を提供する。エフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、及びFlt3L-Fc融合タンパク質の使用のための方法は、がんの治療、特にチェックポイント免疫療法を受けている患者におけるがんの治療を含む。本発明はさらに、エフェクターレスIgG Fcタンパク質を提供する。
【0011】
一態様では、残基配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号13の残基13~17がアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含むか、又は配列番号13の残基76がグリシンである、エフェクターレスFcタンパク質が提供される。他の実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fc領域は、配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号13の残基13~17はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号13の残基76はグリシンである。さらに他の実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fc領域は、配列番号13と同一のアミノ酸配列を含む。明確性のために、いくつかの実施形態では、配列番号13の残基13~17がPVAGP(配列番号20)を含む場合、本明細書ではこれをPVA#バリアントを包含すると呼んでもよく、配列番号13の残基76がグリシンである場合、本明細書ではこれをN297G突然変異と呼んでもよく、297は抗体のEUナンバリングを指す。
【0012】
いくつかの実施形態では、エフェクターレスFcタンパク質は、配列番号2、4、5、6、13又は15のタンパク質配列を含む。
【0013】
さらに他の実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fcタンパク質は、配列番号12を含む野生型IgG1 Fc領域と比較して減弱されている。
【0014】
いくつかの態様では、残基配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号13の残基13~17がアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含むか、又は配列番号13の残基76がグリシンである、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体はFlt3L受容体に結合する。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体はチェックポイント阻害剤タンパク質に結合する。他の実施形態では、チェックポイント阻害剤タンパク質は、PD-L1、PD-1、及び/又はCTLA-4である。いくつかの実施形態において、抗体は、二重特異性抗体である。
【0017】
いくつかの態様では、本開示のエフェクターレスFcタンパク質及び第2のタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、エフェクターレスFcタンパク質及び第2のタンパク質は、互いに共有結合している。他の実施形態では、エフェクターレスFcタンパク質と第2のタンパク質とは、ジスルフィド結合によって連結されている。
【0018】
いくつかの態様では、本開示のエフェクターレスFcタンパク質をコードする、単離された核酸、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又は本明細書及び上記に記載のエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、配列番号2、4、5、6、13又は15のタンパク質配列をコードする。他の実施形態では、単離された核酸は、エフェクターレスFcタンパク質のN末端にシグナル配列をさらにコードする。好ましい例では、単離された核酸は、配列番号13のタンパク質配列をコードする。
【0019】
いくつかの態様では、本開示のエフェクターレスFcタンパク質をコードする核酸、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又は本明細書及び上記に記載のエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を含む、宿主細胞が提供される。
【0020】
いくつかの態様では、本開示のエフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を産生する方法であって、本開示のエフェクターレスFcタンパク質をコードする核酸、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を含む宿主細胞を培養して各タンパク質を産生することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本開示のエフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を宿主細胞から回収することをさらに含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は真核細胞又は原核細胞である。他の実施形態では、真核細胞はCHO細胞である。
【0021】
いくつかの態様では、本開示のエフェクターレスFcタンパク質をコードする核酸、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を含む、宿主細胞が提供される。
【0022】
いくつかの態様では、本開示のエフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を産生する方法であって、本開示のエフェクターレスFcタンパク質をコードする核酸、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を含む宿主細胞を培養して、本開示のエフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を産生することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本開示のエフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体、及び/又はエフェクターレスFcタンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質を宿主細胞から回収することをさらに含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は真核細胞又は原核細胞である。他の実施形態では、真核細胞はCHO細胞である。
【0023】
一態様では、エフェクターレスFcタンパク質(配列番号13又はそのバリアント)及び第2のタンパク質を含む、エフェクターレスFcタンパク質を含む融合タンパク質であって、第2のタンパク質が標的タンパク質に対するリガンドである融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、リガンドは、リガンドが標的タンパク質に結合すると、標的タンパク質を調節する。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質はFlt3Lである。他の実施形態では、標的タンパク質はFlt3L受容体である。好ましい実施形態では、第2のタンパク質は、エフェクターレスFcタンパク質のN末端である。
【0024】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号13と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるFcタンパク質を含み、配列番号13の残基13~17はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、又は配列番号13の残基76はグリシンである。他の実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fc領域は、配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号13の残基13~17はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号13の残基76はグリシンである。さらに他の実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fc領域は、配列番号13と同一のアミノ酸配列を含む。明確性のために、いくつかの実施形態では、配列番号13の残基13~17がPVAGP(配列番号20)を含む場合、本明細書ではこれをPVA#バリアントを包含すると呼んでもよく、配列番号13の残基76がグリシンである場合、本明細書ではこれをN297G突然変異と呼んでもよく、297は抗体のEUナンバリングを指す。
【0025】
一態様では、融合タンパク質は、Flt3リガンド(Flt3L)及びエフェクターレスIgG1 Fc領域を含み、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号12を含む野生型IgG1 Fc領域と比較して減弱されたエフェクター機能を有する。
【0026】
Flt3L-Fc融合タンパク質のいくつかの実施形態では、Flt3Lは、配列番号21の残基27~167と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。他の実施形態では、Flt3Lは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、1、2、又は3個のアミノ酸置換を有する。他の実施形態では、1、2又は3個のアミノ酸置換は、FcRnタンパク質に結合するFlt3Lの領域には存在しない。他の実施形態では、Flt3Lタンパク質は、配列番号22の配列を含む。
【0027】
Flt3L~Fc融合タンパク質のいくつかの実施形態では、Flt3Lは、配列番号21のアミノ酸27~167、27~168、27~169、27~170、27~171、27~172、27~173、27~174、27~175、27~176、27~177、27~178、27~179、27~180、27~181、27~182、27~183、27~184、又は27~185を含むタンパク質を含む。Flt3L-Fc融合タンパク質の好ましい実施形態では、Flt3Lは、配列番号21のアミノ酸27~167又は配列番号21のアミノ酸27~168からなるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質のFlt3Lは、配列番号21の168~235、169~235、170~235、171~235、172~235、173~235を含まない。さらに他の実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質のFlt3Lは、アミノ酸配列PWSPRPLEATAPTAPQPP(配列番号48)、WSPRPLEATAPTAPQPP(配列番号49)、SPRPLEATAPTAPQPP(配列番号50)、PRPLEATAPTAPQPP(配列番号51)、RPLEATAPTAPQPP(配列番号52)又はPLEATAPTAPQPP(配列番号53)を含まない。
【0028】
Flt3L~Fc融合タンパク質のいくつかの実施形態では、Flt3Lは、配列番号21のアミノ酸27~167、27~168、27~169、27~170、27~171、27~172、27~173、27~174、27~175、27~176、27~177、27~178、27~179、27~180、27~181、27~182、27~183、27~184、又は27~185を含むタンパク質と少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%同一であるタンパク質を含む。
【0029】
Flt3L~Fc融合タンパク質のいくつかの実施形態では、Flt3Lは、配列番号21のアミノ酸24~167、25~167、26~167、24~168、25~168、26~168、24~169、25~169、又は26~169を含むタンパク質と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるタンパク質を含む。
【0030】
Flt3L-Fc融合タンパク質のいくつかの実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fc領域は、配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号13の残基13~17はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含むか、又は配列番号13の残基76はグリシンである。他の実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fc領域は、配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号13の残基13~17はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号13の残基76はグリシンである。さらに他の実施形態では、エフェクターレスIgG1 Fc領域は、配列番号13と同一のアミノ酸配列を含む。明確性のために、いくつかの実施形態では、配列番号13の残基13~17がPVAGP(配列番号20)を含む場合、本明細書ではこれをPVA#バリアントを包含すると呼んでもよく、配列番号13の残基76がグリシンである場合、本明細書ではこれをN297G突然変異と呼んでもよく、297は抗体のEUナンバリングを指す。
【0031】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号26と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号26と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号26の残基154~158はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号26の残基217はグリシンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号25と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号25の残基155~159はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号25の残基218はグリシンである。
【0034】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号32と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号32の残基153~157はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号32の残基216はグリシンである。
【0035】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号33と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号33の残基152~156はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号33の残基215はグリシンである。
【0036】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号34と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号34の残基151~154はアミノ酸配列PVAGP(配列番号20)を含み、かつ配列番号34の残基214はグリシンである。
【0037】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号27~配列番号31及び配列番号35~配列番号44からなる群から選択されるタンパク質と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、インビトロアッセイにおいて、抗体依存性細胞食作用(ADCP)を、野生型IgG1 Fc(配列番号12)に融合した野生型Flt3Lを含むFlt3L-Fc融合タンパク質によるインビトロアッセイにおける活性レベルの約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%未満の活性レベルで活性化する。他の実施形態では、ADCPインビトロアッセイは、エフェクター細胞としての初代マクロファージ及び標的細胞としてのFlt3L受容体を発現する細胞株の使用を含む。さらに他の実施形態では、初代マクロファージは、健康なヒトドナー由来の単球由来マクロファージである。さらに他の実施形態では、標的細胞はヒト急性リンパ芽球性白血病細胞、任意に、SEM細胞株細胞である。いくつかの実施形態では、活性は、パーセント食作用(%ADCP)として測定され、食作用は、標的細胞からの視覚的マーカーの取り込みを測定することによって決定される。
【0039】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、融合タンパク質が投与された対象におけるDC増殖を活性化する。他の実施形態では、DC増殖は、対象の全血中で測定される。さらに他の実施形態では、DC増殖は、フローサイトメトリー又はFACSによって測定される。いくつかの実施形態では、DC増殖は、異種タンパク質に融合していないFlt3Lタンパク質の投与から生じるDC増殖の少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、2000倍、5000倍又は10,000倍である。他の実施形態では、異種タンパク質は、野生型ヒトIgG Fcタンパク質である。さらに他の実施形態では、野生型ヒトIgG Fcタンパク質は、野生型IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fcタンパク質である。いくつかの実施形態では、Flt3Lタンパク質は、野生型IgG1 Fcタンパク質又はヒト血清アルブミンタンパク質に融合されない。いくつかの実施形態では、対象は、げっ歯類、ウサギ、カニクイザル又はヒトである。他の実施形態では、げっ歯類はマウス又はラットである。
【0040】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号14を有するFlt3L-Fc融合タンパク質の熱安定性と比較して、増加した熱安定性を有する。他の実施形態では、熱安定性は、示差走査蛍光測定法を使用して測定される。さらに他の実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号14を有するFlt3L-Fc融合タンパク質のTmよりも少なくとも1.5℃、2℃、3℃、4℃又は5℃高い融解温度(Tm)を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、Flt3Lドメインに単一のアミノ酸置換を含む。他の実施形態では、置換はインビボ免疫原性を低下させるが、機能活性を10%、20%又は30%を超えて低下させない。他の実施形態では、機能活性アッセイは、動物における樹状細胞の増殖である。
【0042】
いくつかの態様では、本明細書及び上記に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質をコードする、単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、配列番号25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のタンパク質配列をコードする。他の実施形態では、単離された核酸は、Flt3L-Fc融合タンパク質のN末端にあるシグナル配列をさらにコードする。好ましい例では、単離された核酸は、配列番号45のタンパク質配列をコードする。
【0043】
いくつかの態様では、本明細書及び上記に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質をコードする核酸を含む、宿主細胞が提供される。
【0044】
いくつかの態様では、Flt3L-Fc融合タンパク質が産生されるように、エフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することを含む、Flt3L-Fc融合タンパク質を産生する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、宿主細胞からFlt3L-Fc融合タンパク質を回収することをさらに含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は真核細胞又は原核細胞である。他の実施形態では、真核細胞はCHO細胞である。
【0045】
いくつかの態様では、本明細書に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬製剤が提供される。
【0046】
幾つかの実施形態では、医薬製剤は、追加の治療剤をさらに含む。さらに他の実施形態では、追加の医薬品は、アジュバント、樹状細胞成熟因子、及び/又はチェックポイント阻害剤である。
【0047】
いくつかの態様では、Flt3L-Fc融合タンパク質を投与された対象における樹状細胞(DC)の数を増殖させるための方法が提供される。いくつかの実施形態では、DCはcDC1及び/又はcDC2細胞である。他の実施形態では、本方法は、本発明のFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、本方法は、約0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~40mg/kg、0.1mg/kg~25mg/kg、0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~15mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、1mg/kg~40mg/kg、1mg/kg~25mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~15mg/kg、又は1mg/kg~10mg/kgの用量のFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象にFlt3L融合タンパク質を約1日1回、週に1回、週に2回、2週間に1回、3週間に1回、月に1回、又は隔月に1回投与することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、本方法は、静脈内投与、非経口投与、筋肉内注射、又は皮下注射によってFlt3L融合タンパク質を対象に投与することを含む。
【0051】
いくつかの態様では、がんを治療するための方法であって、本明細書に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、治療有効量のFlt3L-Fc融合タンパク質を投与することと、治療有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することとを含む。他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1又はPD-L1の効果を抑制又は阻害する。さらに他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、BMS936559、アテゾリズマブ、又はアベルマブである。他の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、Flt3L-Fc融合タンパク質の投与前、投与と同時、又は投与後に投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本方法は、樹状細胞(DC)成熟因子を投与することをさらに含む。他の実施形態では、DC成熟因子は、ポリIC、ポリICLC、DC40アゴニスト、放射線療法及び化学療法から選択される。他の実施形態では、DC成熟因子は、Flt3L-Fc融合タンパク質の投与前、投与と同時に、及び/又は投与後に個体に投与される。特定の実施形態では、DC成熟因子は放射線療法である。いくつかの実施形態では、本方法は、対象がDC成熟因子を受けた後にFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む。他の実施形態では、本方法は、対象がDC成熟因子を受ける前にFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む。さらに他の実施形態では、本方法は、対象がDC成熟因子を受け取るのとほぼ同時にFlt3L-Fc融合タンパク質を対象に投与することを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、黒色腫、膵管腺癌(PDAC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、結腸直腸がん(CRC)、乳がん、膀胱がん、腎臓がん、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態では、対象は、チェックポイント阻害剤で以前に治療された。他の実施形態では、対象は、少なくとも又は約3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、1年、1.5年、又は2年間にわたって投与されたチェックポイント阻害剤の治療に応答しなかった。
【0055】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも又は約3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、1年、1.5年、又は2年の期間にわたって投与された放射線療法で治療された。
【0056】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも又は約3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、1年、1.5年、又は2年の期間にわたって投与された化学療法で治療された。
【0057】
いくつかの実施形態では、対象におけるがんは、免疫砂漠腫瘍を含むと特徴付けられている。他の実施形態では、がんは、応答性炎症腫瘍(「ホット腫瘍」)と比較して炎症が低減した腫瘍(「コールド腫瘍」)を含むものとして特徴付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、野生型又はバリアントFcドメインを有する抗Her2抗体による異なるレベルのADCP活性を示す。初代M1マクロファージをSkBr3標的細胞とインキュベートした。x軸は抗体濃度を示し、y軸はパーセント食作用を示す。
図2A-E】図2A図2Eは、野生型又はバリアントFcドメインを有する抗Her2抗体を初代M1マクロファージ及びSkBr3標的細胞とインキュベートした場合のマクロファージによるサイトカイン放出を示す。x軸は抗体濃度を示し、y軸はpg/mlサイトカインを示す。図2A:G-CSF;図2B:GM-CSF;図2C:IL-10;図2D:IL-1ra;図2E:IL-6。
図2F-J】図2F図2Jは、野生型又はバリアントFcドメインを有する抗Her2抗体を初代M1マクロファージ及びSkBr3標的細胞とインキュベートした場合のマクロファージによるサイトカイン放出を示す。x軸は抗体濃度を示し、y軸はpg/mlサイトカインを示す。図2F:IL-8;図2G:MIP-1α;図2H:MIP-1β;図2I:RANTES;図2J:TNFα。
図2K図2Kは、野生型及びバリアントFcタンパク質を有する抗CD20抗体のADCC活性を示す。
図2L図2Lは、野生型及びバリアントFcタンパク質を有する抗Her2抗体のADCC活性を示す。
図3A-C】図3A図3Cは、凝集及びジスルフィド結合特性に関するFlt3L-FcNG2LH融合タンパク質の異なる特徴を示す。CHO細胞及びHEK293細胞で発現されたタンパク質のhFLT3L.S163.no.hinge.hIgG1.NG.PVA#凝集及び二量体形成の分析をSDS-PAGEによって示す(図3A)及びSEC-HPLC(図3B:293細胞及び(図3C:HEK297細胞)。図3B~3Cに関して、x軸は時間であり、y軸はmAUである。
図3D-F】図3D図3Fは、凝集及びジスルフィド結合特性に関するFlt3L-FcNG2LH融合タンパク質の異なる特徴を示す。CHO細胞及びHEK293細胞で発現されたタンパク質のhFLT3L.P167.5aa.hinge.hIgG1.NG.PVA#凝集及び二量体形成の分析をSDS-PAGEによって示す(図3D)及びSEC-HPLC(図3E:293細胞及び(図3F:HEK297細胞)。図3E~3Fに関して、x軸は時間であり、y軸はmAUである。
図4図4A図4Bは、Flt3LがインビトロでOCI-AML5細胞の増殖を誘導することを示す。図4Aは、hFLT3L.P167.hIgG1.NG2LH及びgCDX-301の用量応答曲線を示す。示されるデータは、3連の値の平均±SDである。データを、最大(100%)応答としての10ug/mLのhFLT3L.P167.hIgG1.NG2LHに対して正規化した。図4Bは、hFLT3L.P167.hIgG1.NG2LH及びgCDX-301のEC50効力を示す。結果は、平均±SEMを示す線を用いて5回の独立した実験から示される。
図5図5は、0.1mg/kg、1mg/kg又は10mg/kgの融合タンパク質を投与した動物において検出されたFlt3L-Fc(配列番号28)融合タンパク質の血清濃度を示す。
図6図6A図6Bは、0.1mg/kg、1mg/kg又は10mg/kgの融合タンパク質を投与した動物における単球(図6A)及びDC(図6B)の用量依存的な細胞増殖を示す。抗gDは、陰性対照ヒト化IgG抗体である。
図7図7は、0.1mg/kg、1mg/kg又は10mg/kgの融合タンパク質を投与した動物におけるFlt3L-Fc(NG2LH)の血漿中濃度を示す。抗gDは、陰性対照ヒト化IgG抗体である。
図8図8A図8Cは、0.1mg/kg、1mg/kg又は10mg/kgの融合タンパク質を投与した動物における単球(図8A)、cDC1細胞(図8B)及びcDC2細胞(図8C)の用量依存的な細胞増殖を示す。抗IgDは、陰性対照ヒト化IgG抗体である。
図9A図9Aは、選択Fc含有タンパク質の免疫原性を示す。
図9B図9Bは、選択Fc含有タンパク質の免疫原性を示す。
図10図10は、種々のFlt3L-Fcタンパク質のADCP活性を比較した、実施例10に記載の1つの代表的なインビトロADCPアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明の実施形態の詳細な説明
I. 定義
「親和性」は、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一の結合部位の間の非共有性相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表され得る。親和性は、本明細書に記載するものを含め、当技術分野で一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的説明及び例示的な実施形態が以下に記載される。
【0060】
「Flt3L」とも呼ばれる「Flt3リガンド」という用語は、タンパク質がFlt3受容体(Flt3R)を標的化する際の診断及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性でFlt3受容体に結合することができるタンパク質を指す。一実施形態では、無関係の非Flt3Rタンパク質へのFlt3リガンドの結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合に、Flt3Lへのタンパク質の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、Flt3Rに結合するタンパク質は、≦1μM、≦100nM、≦10 nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、Flt3Lは、異なる種由来のFlt3R間で保存されているFlt3Rに結合する。
【0061】
本明細書で使用される「Flt3L」という用語は、切断された可溶性Flt3L(例えば、配列番号21のおよそ残基27~185)を指すが、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物供給源由来の任意の天然Flt3Lも指すことができる。この用語は、「完全長」の処理されていないFlt3L、並びに例えば、細胞内での処理(例えば、シグナルペプチド(リーダー配列)の除去又はTMドメインからの切断)から生じる任意の形態のFlt3Lを包含し得る。この用語は、Flt3Lの天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。内因性シグナル配列を有する例示的なヒトFlt3Lのアミノ酸配列は、配列番号21に示され、GenBankアクセッション記録P49771にも提供されるが、他の実施形態では、外因性リーダー配列を含まない成熟Flt3Lタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号21の残基27~167として提供される。少数の配列バリエーション、特にFlt3Lの機能及び/又は活性(例えば、Flt3受容体(GenBankアクセッション番号NP_004110)への結合)に影響しないFlt3Lの保存的アミノ酸置換もまた、本発明によって意図される。
【0062】
本明細書で使用される「Flt3L-Fc融合タンパク質」又は「FcエフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質」という用語は、Flt3LポリペプチドがバリアントIgG Fc領域に直接又は間接的に連結されている融合タンパク質を指し、バリアントFc領域は、その対応する野生型Fc領域と比較してエフェクター機能が減弱している。「エフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質」という用語の任意の使用について、「エフェクターレス」という用語は融合タンパク質のFc部分に適用されることに留意されたい。特定の好ましい実施形態において、本発明のFlt3L-Fc融合タンパク質は、ヒトIgG Fc領域に連結されたヒトFlt3Lタンパク質又はポリペプチドを含む。特定の実施形態では、ヒトFlt3Lタンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。しかしながら、本発明のFlt3L又はエフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質(例えば、配列番号26)の機能及び/又は活性に有意に影響しないFlt3L又はFcの挿入、欠失、置換、特に保存的アミノ酸置換などの小さな配列変異も本発明によって企図されることが理解される。本発明のエフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質は、Flt3受容体タンパク質(Flt3)に結合することができ、これはFlt3受容体下流シグナル伝達をもたらし得る。本明細書で使用される場合、CDX-301は、配列番号23のアミノ酸配列を有するFlt3Lを指す。
【0063】
「抗体」という用語は、ここでは最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めた(これらに限定されない)、様々な抗体構造を包含する。
【0064】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多特異的抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域の型を指す。抗体には、次の5種類の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、下位クラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAに更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0066】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域、単離されたFc領域、又は別のタンパク質に融合されたFc領域に起因する生物学的活性を指し、Fc領域は由来する抗体のアイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例には、以下:C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)、食作用、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、並びにB細胞活性化が挙げられる。特定の実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、エフェクター機能を、又は検出可能なエフェクター機能を示さない。特定の他の実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質は、配列番号12を有する野生型Fcタンパク質に融合された本発明のFlt3Lタンパク質を含む融合タンパク質と比較して、実質的に低下したエフェクター機能、例えば約50%、60%、70% 80%、又は90%低下したエフェクター機能を示す。
【0067】
本明細書で使用される「樹状細胞増殖」、「樹状細胞の増殖」又は「樹状細胞の数の増加」は、インビトロアッセイでの、又はインビボ実験で測定される樹状細胞の数の増加を指す。
【0068】
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するために必要な薬用量及び所要期間で有効な量を指す。
【0069】
用語「Fc領域」とは、本明細書では定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していてもよく、又は存在していなくてもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるような、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。
【0070】
本明細書で使用する「T細胞活性化」は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子の放出、細胞傷害性活性、及び活性化マーカーの発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の1つ又は複数の細胞応答を指す。本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子は、T細胞活性化を誘導することができる。
【0071】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、交換可能に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、これらは、継代数にかかわらず、初代の形質転換された細胞と、初代の形質転換された細胞から誘導された子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含有量の点で完全に同一でない場合があるが、突然変異を含んでもよい。本明細書では、最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体の子孫が、含まれる。
【0072】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、個体又は対象はヒトである。
【0073】
「単離された」タンパク質又はポリペプチドは、その自然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施形態では、タンパク質は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフ(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって決定される、95%超又は99%超の純度まで精製される。抗体精製の評価のための方法の総説としては、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0074】
「単離された」核酸は、その天然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、通常核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子が含まれるが、核酸分子は、染色体外、又は天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0075】
「Flt3L-Fcをコード融合タンパク質する単離された核酸」は、Flt3L-Fc融合タンパク質をコードする1つ以上の核酸分子を指し、それには単一のベクター又は別個のベクターにおけるかかる核酸分子(複数可)が含まれ、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0076】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列の同一性パーセント(%)」は、配列をアラインメントし、最大の配列同一性パーセントを達成するために、必要ならばギャップを導入した後、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合であると定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のための整列は、当技術分野における技術の範囲内にある種々の方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成している。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルし得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含め、UNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。
【0077】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有する又は含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述され得る)は、以下のように計算される:
100 × 分数X/Y
式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBのアラインメントにおいて同一のマッチとしてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、A対Bの%アミノ酸配列同一性は、B対Aの%アミノ酸配列同一性に等しくないことが理解されよう。特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての%アミノ酸配列同一性の値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載されているように得られる。
【0078】
「医薬製剤」という用語は、調製物中に含有される活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を全く含有しない調製物を指す。
【0079】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書で使用される場合、「治療」(及びその文法的な変形語、例えば、「治療する」又は「治療すること」)は、治療される個体の本来の経過を変える試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。治療の所望の効果としては、疾患の発症又は再発を予防すること、症候の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行率を低下させること、病状の寛解又は緩和、及び回復又は改良された予後が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の融合タンパク質は、疾患の発症を遅延させるために、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0081】
用語「治療的有効量」は、(i)特定の疾患、症状又は障害を治療又は予防する、(ii)特定の疾患、症状又は障害の1つ又は複数の症候を減弱、改善又は排除する、あるいは(iii)本明細書に記載の特定の疾患、症状又は障害の1つ又は複数の症候の発症を予防又は遅延する、本発明のタンパク質の量を意味する。がんの場合、本明細書に記載の治療有効量の治療剤又は薬剤の組み合わせは、がん細胞の数を低減し、腫瘍サイズを低減し、末梢臓器へのがん細胞浸潤を阻害し(すなわち、ある程度減速し、好ましくは停止する)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度減速し、好ましくは停止する)、腫瘍成長をある程度阻害し、及び/又はがんに関連する症候のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。本明細書に記載の治療有効量の治療剤又は薬剤の組み合わせは、既存のがん細胞の成長を予防し、及び/又はそれらを死滅させることができる程度まで、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であり得る。がん療法に関しては、有効性は、例えば、疾患の進行に対する時間(time to disease progression:TTP)の評価及び/又は応答速度(response rate:RR)の判定によって測定され得る。
【0082】
本明細書で使用される「がん」及び「がん性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的症状を指すか、又は説明する。「腫瘍」は、1つ以上のがん性細胞を含む。腫瘍には、固形腫瘍及び液状腫瘍が含まれる。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、骨髄腫及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。そのようながんのより具体的な例としては、扁平上皮細胞がん(例えば、上皮性扁平上皮細胞がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌腫を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer)(消化管がんを含む)、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、悪性脳腫瘍、黒色腫、子宮内膜又は子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん(kidney or renal cancer)、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、頭頸部がん、並びに急性骨髄性白血病(AML)が挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される「コールド腫瘍」又は「免疫砂漠」という用語は、低免疫原性であるか、又は腫瘍特異的免疫の不十分な誘発及び免疫原性細胞傷害に対する耐性を特徴とするがん性腫瘍を指す。
【0084】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、それが連結している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、及びベクターが導入された宿主細胞のゲノム内へと組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0085】
II. 組成物及び方法
A. エフェクターレスFcタンパク質
一態様では、本発明は、驚くべきことにエフェクター活性が低下した新規なエフェクターレスIgG1 Fcタンパク質を提供する。本明細書で設計及び記載されるFcタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、本明細書では「FcNG2LH」又は「Fc NG PVA#」とも呼ばれる。本明細書に示されるように、FcNG2LH Fcタンパク質は、野生型IgG1 Fcドメインを有するタンパク質と比較してADCP活性が有意に低下し(例えば、少なくとも実施例1及び10を参照)、マクロファージによるサイトカイン放出の活性化が低下し(例えば、実施例1を参照)、ADCC活性が低下している。また、注目すべきは、N297G突然変異のみを含有するIgG1 Fcドメインの熱安定性と比較した、FcNG2LHタンパク質の熱安定性の驚くべき増加である。
【0086】
エフェクターレスIgG1 Fcドメインタンパク質の設計は、本明細書に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質におけるその使用に加えて、多くの治療分子に関連して有用性を有する。例えば、分子の2つ以上を一緒に架橋することによって分子(例えば、細胞表面受容体)に結合して活性化するように設計された抗体、チェックポイント阻害剤を標的とする抗体、結合してADCC及び/又はADCP活性を誘導する少なくとも1つのアームを有する二重特異性抗体又は多重特異性抗体。当業者は、融合タンパク質の生成のための本明細書に記載のエフェクターレスFcタンパク質の使用であって、エフェクターレスFcタンパク質が、第2のタンパク質のN末端及び/又はC末端に、それぞれエフェクターレスFcタンパク質のC末端及び/又はN末端に、(例えば、アミノ酸結合を介して)連結されている使用を理解するであろう。第2のタンパク質は、所望の治療機能を有するものであることが好ましい。エフェクターレスFcドメインは、IgG Fc受容体の結合によって引き起こされる好中球増加症などの有害反応を防止することができる。治療用タンパク質の分野では、Fcエフェクター機能の制御を改良する方法を継続的に開発する必要がある。
【0087】
一態様では、本発明は、重鎖定常ドメインが配列番号2のFcNG2LHタンパク質を含む、抗体を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質は、免疫グロブリン及び抗体を含む。当業者は、NG2LH突然変異の存在及び結果として生じるエフェクター機能の欠如又は減少に適応し、それらから利益を得ることができる様々な抗原特異的抗体のフォーマットを容易に想像することができる。例えば、本開示のヒトIgG1 FcNG2LHは、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体又は多重特異性抗体の一部であり得る。換言すれば、IgG1 Fcドメインを含むか又は含み得る任意の免疫グロブリン構造である。
【0088】
B. 例示的なFlt3L-Fc融合タンパク質
一態様では、本発明は、Flt3受容体(Flt3R)に結合するFlt3L-Fc融合タンパク質であって、Fcタンパク質が野生型Fcタンパク質と比較して、エフェクター機能をほぼ有さないか、又はエフェクター機能が大幅に低下している、Flt3L-Fc融合タンパク質を提供する。これらの融合タンパク質は、特に患者がチェックポイント阻害剤免疫療法に応答しないか、又はチェックポイント阻害剤免疫療法に対する応答が限られている場合に、様々ながん免疫療法治療プロトコルによるがんの治療に有用である。「コールド腫瘍」又は「免疫砂漠」における抗腫瘍免疫応答の欠如は、少なくとも部分的には、抗腫瘍T細胞応答の不十分又は欠如に起因すると考えられる。効果的な抗腫瘍T細胞応答には、樹状細胞(DC)による腫瘍抗原の交差提示が必要である。
【0089】
したがって、がん免疫療法の有効性を高める1つの手段は、腫瘍内の抗原提示DCの数を増加させることである。Flt3Lは、前駆細胞の増殖、分化、発達及び動員を通じて、対象においてDCを増加させるように部分的に機能することが周知である。健康な対象に投与されたFlt3Lタンパク質が実際にDC及び造血幹細胞を増殖させることができるという証拠があるが(例えば、Anandasabapathy et al.,2015,Bone Marrow Transplant.,50:924-930)、1つの懸念は、血液中の組換えFlt3Lの半減期が比較的短いことであり、治療効果が低下する可能性があり、及び/又は投与頻度が高すぎる必要性がある。
【0090】
治療用タンパク質の血清半減期を延長するための十分に確立された戦略は、それを免疫グロブリンFcドメイン(例えば、ペプチド結合を介して、好ましくはFcタンパク質のN末端に)に連結又は融合することである(例えば、Czajkowsky et al.,2012,EMBO,4:1015-1028;Ha et al.,2016,Front Immunol,7:394)。しかし、例えばがん免疫療法に使用するためのFlt3L-Fc融合タンパク質の場合、多くの予測不可能な免疫学的又は炎症性プロセスをインサイチュで活性化し得る機能的Fcドメインを有することは不利であり得る。実際、サイトカインストーム又はサイトカイン放出症候群(CRS)をもたらす投与のリスクを最小限に抑えることが重要である。さらに、Flt3L-Fc融合タンパク質ドメインの野生型Fcと免疫エフェクター細胞上のFc受容体との間の相互作用は、Flt3L-Fc融合タンパク質によって結合されたDCの食作用性破壊をもたらし得る。Fc領域によって与えられる利点を維持しながら、Flt3L-Fc融合タンパク質のFc領域の効果を最小化し、それによって制御することが重要であり得る。本明細書に記載されているのは、本明細書で「Fc-NG2LH」又は「Fc-PVA# N297G」と呼ばれる新しいエフェクターレスIgG Fc領域であり、これは特に、例えば野生型IgG1 Fc、IgG1 Fc-N297G及びIgG4 Fc領域と比較した場合、驚くほど低いエフェクター機能(例えば、実施例7を参照)を有することが示された。さらに、実施例8に示すように、NG2LHバリアントの導入は、Fcドメインの熱安定性の予想外の増加並びに動物の血清中半減期への影響をもたらした。
【0091】
Flt3L-Fc融合タンパク質バリアントのさらなる特徴付けは、Flt3L W144を置換することがインビトロT細胞増殖アッセイで決定されるように免疫原性を有意に増加させることを示し、Flt3L(配列番号21)の位置149における潜在的な酸化傾向を除去することが治療的エフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質産物に有害であり得ることを示唆している。しかしながら、対照的に、実施例9は、149及び151の位置での潜在的なグリコシル化部位の置換がインビトロT細胞増殖アッセイによって決定されるように免疫原性を増加させなかったことを示しており、これらの位置及び他の位置での突然変異がFlt3L-Fc融合タンパク質の製造に適している可能性があることを示唆している。
【0092】
重要なことに、本明細書に開示されるエフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質の様々な用量のインビボ投与は、樹状細胞の大きな増殖をもたらした(例えば、実施例5を参照)。さらに、DC増殖のレベルは、同等の用量のCDX-301で観察されたものよりもはるかに大きいことは間違いない。
【0093】
Flt3L-Fc融合タンパク質は、IgG1 Fc領域に連結されたFlt3リガンド(Flt3L)タンパク質を含み、IgG1 Fcは、野生型IgG1 Fc Fcに融合された同じFlt3Lと比較してエフェクター機能が低下しているか、又はエフェクター機能を有しない。Flt3L-Fc融合タンパク質のFlt3L部分は、細胞表面Flt3受容体(Flt3R)に結合することができる。Flt3Lタンパク質の配列は、およそ残基1~26に伸長するシグナルペプチド及びおよそ残基185~205に伸長する膜貫通ドメインを有する、235アミノ酸長のタンパク質としてGenBankアクセッション番号P49771(本明細書において配列番号21として提供される)に記載されている。残基29~159は、Flt3リガンドとしてGenBank記録に記載されているが、Savvidesら(Nat Struct Bio,7:486-491)は、残基27~160が単独で生物活性に十分であることが示されていると述べている。いくつかの実施形態では、本開示は、N末端が配列番号21の24~30の任意のアミノ酸残基であり、C末端が配列番号21の167~190位の任意のアミノ酸残基である、配列番号21の残基を含むFlt3リガンドドメインを想定する。Savvidesら(同上)は、残基27~160のみを含む(及び二量体として構成された)ポリペプチドがリガンドの機能活性に十分であることを示したが、以下の実施例2に記載される研究は、配列番号21の残基167のN末端を終結させ、例えば、(配列番号13の)Fc N末端残基に共有結合的に連結されるFlt3Lタンパク質を使用することを示す。配列番号21残基27~167に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するタンパク質配列を含む成熟Flt3Lタンパク質などのFlt3Lのバリアントも本開示に想定されることが理解される。ここでは(例えば、以下の実施例3)、Fcタンパク質に融合されたFlt3の断片サイズが、融合タンパク質の凝集に有意な影響を及ぼし得ることが示された。
【0094】
一態様では、本発明は、配列番号21の残基27~167と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むFlt3Lタンパク質と、配列番号13と少なくとも95%同一であるIgG Fc分子とを含むFlt3L-Fc融合タンパク質を提供する。IgG Fc分子は、野生型IgG1 Fcポリペプチド(配列番号12)と比較してFcエフェクター機能が減弱しており、Fcエフェクター機能はCDC、ADC、ADCC及び/又はADCPから選択される。いくつかの実施形態では、IgG Fc分子は、野生型IgG1 Fcポリペプチドと比較してADCP活性が減弱している。理論に拘束されるものではないが、Fc(NG2LH)タンパク質のエフェクター機能が低い~無いことは、Fc(NG2LH)タンパク質の下側ヒンジにN297G突然変異(配列番号13の位置76において)とアミノ酸PVAGP(配列番号13の残基13~17)の両方の固有の組み合わせが存在することに起因すると考えられる。
【0095】
a) 置換、挿入、及び欠失バリアント
特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質バリアントが提供される。保存的置換は、表1において「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化を表1に「例示的置換」の見出しの下に示し、またアミノ酸側鎖クラスに関して下に更に記載する。目的の融合タンパク質中にアミノ酸置換を導入し、その産物を、所望の活性、例えば、減少した免疫原性、又は減少したADCPについてスクリーニングすることができる。
【表1】
【0096】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0097】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0098】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに1個以上のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有するFlt3L-Fc融合タンパク質が含まれる。Flt3L-Fc融合タンパク質分子の他の挿入バリアントには、Flt3L-Fc融合タンパク質のN末端又はC末端と酵素(例えば、ADEPTの場合)又はFlt3L-Fc融合タンパク質の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合が含まれる。
【0099】
b) グリコシル化バリアント
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるFlt3L-Fc融合タンパク質は、Flt3L-Fc融合タンパク質のFc部分がグリコシル化されている程度を増加又は減少させるように変化する。Fcドメインへのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が作成又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって簡便に達成することができる。
【0100】
Fc領域に関して、それに結合している炭水化物は変化し得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本発明のFlt3L-Fc融合タンパク質中のオリゴ糖の改変は、特定の改良された特性を有するエフェクターレスFcバリアントを作成するために行われてもよい。
【0101】
一実施形態では、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有するFc融合バリアントが提供される。例えば、フコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定されたように、Asn297(例えば、複合体構造、ハイブリッド構造、及び高マンノース構造)に付着した全ての糖鎖構造の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEuナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体内のわずかな配列変異のため、297位から約±3アミノ酸上流又は下流に、すなわち、294位と300位との間に位置し得る。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠乏」抗体バリアントに関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。デフコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損するLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108号A1,Presta,L;及び国際公開第2004/056312号A1,Adams et al.,特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)。
【0102】
例えば、融合タンパク質のFc領域に付着した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有するFcバリアントが更に提供される。そのようなFcバリアントは、減少したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を持つFlt3L-Fc融合タンパク質バリアントも提供される。そのようなFlt3L-Fc融合タンパク質(したがって、Fc)バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel et al.);国際公開第1998/58964号(Raju,S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載されている。
【0103】
c) タンパク質誘導体
特定の実施形態では、本明細書中に提供されるエフェクターレスFcタンパク質、エフェクターレスFcタンパク質を含む抗体又は融合タンパク質、又はFlt3L-Fc融合タンパク質は、当該分野で公知であり、容易に入手可能なさらなる非タンパク質性部分を含有するようにさらに改変され得る。Flt3L-Fc融合タンパク質の誘導体化に適した部位には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例:グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が含まれる(但しこれらに限定されない)。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。Fc融合タンパク質に結合したポリマーの数は様々であり、複数のポリマーが結合している場合には、同じ分子であっても異なった分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定するものではないが、改良されるFlt3L-Fc融合タンパク質の特定の特性又は機能、Flt3L-Fc融合タンパク質誘導体が定義される条件下で治療に使用されるかどうか等を含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0104】
別の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得るFlt3L-Fc融合タンパク質及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非保護性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は任意の波長であってよく、通常の細胞に害を及ぼさないが、非タンパク質性部分を、融合タンパク質-非タンパク質性部分に近接する細胞が死滅する温度まで加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
C. 組換え方法及び組成物
Flt3L融合タンパク質は、当業者に容易に知られている組換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態では、本明細書に記載のFlt3L-Fc融合タンパク質をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、Flt3L-Fc融合タンパク質のFlt3L部分及びFc部分を含むアミノ酸配列をコードし得る。さらなる実施形態では、そのような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態では、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態では、宿主細胞は以下を含む(例えば、以下を用いて形質転換されている):(1)本発明のFlt3Lポリペプチド及びFcポリペプチドをコードする核酸を含むベクター。好ましい実施形態では、Flt3Lポリペプチドをコードする核酸は、Fcポリペプチドをコードする核酸の上流にある。さらに、2つの核酸は単一のオペロンにある。一実施形態では、宿主細胞は、真核生物のもの、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態では、Flt3L-Fc融合タンパク質の作製方法が提供され、方法は、上記で提供するような、Flt3L-Fc融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を、Flt3L-Fc融合タンパク質の発現に好適な条件下で培養し、任意に、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)からFlt3L-Fc融合タンパク質を回収することを含む。
【0106】
Flt3L-Fc融合タンパク質の組換え産生のために、例えば、上記に記載されるFlt3L-Fc融合タンパク質をコードする核酸が単離され、1つ以上のベクター内に挿入されて、宿主細胞内で更にクローニング及び/又は発現される。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、融合タンパク質をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離し、配列決定することができる。
【0107】
エフェクターレスFcタンパク質、Fcタンパク質を含有する抗体若しくは融合タンパク質、又は例えばFlt3L-Fc融合タンパク質をコードするベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞には、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、Flt3L-Fc融合タンパク質は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能を必要としない場合には、細菌中で産生され得る。細菌でのポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号明細書、同第5,789,199号明細書、及び同第5,840,523号明細書を参照されたい(E.coliにおける抗体断片の発現を記載するCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい)発現後、Flt3L-Fc融合タンパク質を細菌細胞ペーストから可溶性画分に単離し、さらに精製することができる。
【0108】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、Flt3L-Fc融合タンパク質をコードするベクターのクローニング又は発現宿主として適しており、その中には、グリコシル化経路が「ヒト化」された菌株及び酵母株が含まれ、その結果、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有するFlt3L-Fc融合タンパク質が産生される。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0109】
グリコシル化Flt3L-Fc融合タンパク質の発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株が同定されており、昆虫細胞と組み合わせて使用することができ、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用することができる。
【0110】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照されたい。
【0111】
脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胎児腎臓系統(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載の293細胞又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載のTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載のTRI細胞;MRC 5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFRCHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、並びにY0、NS0、及びSp2/0等の骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)、
【0112】
D. アッセイ
本明細書で提供されるDCの増殖を促進することができるFlt3L-Fc融合タンパク質は、当技術分野で公知の様々なアッセイによって、その物理的/化学的性質及び/又は生物活性について同定、スクリーニング、又は特徴付けすることができる。
【0113】
E. イムノコンジュゲート
本発明はまた、化学療法剤若しくは化学療法薬、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、若しくはそれらの断片)、又は放射性同位体等の1つ以上の細胞傷害性薬剤とコンジュゲートされた本明細書におけるFlt3L-Fcタンパク質を含む、イムノコンジュゲートを提供する。
【0114】
一実施形態では、Flt3L-Fcタンパク質のイムノコンジュゲートは、抗体が、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第第5,416,064号及び欧州特許EP0425235B1を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部位DE及びDF(MMAE及びMMAF)等のオーリスタチン(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号及び同第5,877,296号;Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993);及びCancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシン又はドキソルビシン等のアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006);Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358-362(2006);Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005);Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000);Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002);King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002);及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル及びオルタタキセル等のタキサン;トリコテセン;及びCC1065を含むが、これらに限定されない1種又は複数の薬剤にコンジュゲートされた抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の生成と同様の様式で生成される。
【0115】
別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、並びにトリコテセン(tricothecene)を含むがこれらに限定されない酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載されるFlt3L-Fcタンパク質を含む。
【0116】
別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載されるFlt3L-Fcタンパク質を含む。放射性コンジュゲートの生成には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位元素が挙げられる。検出のために用いられる場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフ検査用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、あるいは核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても知られる)のためのスピン標識(ここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄等)を含みうる。
【0117】
Flt3L-Fcタンパク質と細胞傷害剤とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲートのための例示的キレート剤である。国際公開第94/11026号を参照。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用してもよい。
【0118】
本明細書における免疫コンジュゲートは、限定されないが、市販(例:米国イリノイ州ロックフォードのPierce Biotechnology社から)されている、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されたコンジュゲートを明確に意図している。
【0119】
F. 医薬製剤
本明細書に記載されるFlt3L-Fc融合タンパク質の医薬製剤は、所望の程度の純度を有するかかるタンパク質と、1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第16版、Osol,A.編(1980年))とを混合することによって、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製される。薬学的に許容される担体は一般的に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含む、ある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と組み合わせる。
【0120】
本明細書における製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な1つを超える、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有してもよい。例えば、樹状細胞成熟因子及び/又はアジュバントをさらに提供することが望ましい場合がある。かかる有効成分は、意図される目的に有効な量で組み合わせて好適に存在する。
【0121】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。そのような技術が、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0122】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例としては、Fc融合タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。
【0123】
インビボ投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌は、例えば滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成され得る。
【0124】
G. 治療方法及び組成物
本明細書で提供されるFlt3L-Fcタンパク質のいずれも、治療方法に使用することができる。
【0125】
一態様では、医薬として使用するためのFlt3L-Fcタンパク質が提供される。さらなる態様では、がんに使用するためのFlt3L-Fcタンパク質が提供される。ある特定の実施形態では、治療方法において使用するためのFlt3L-Fcタンパク質が提供される。ある特定の実施形態では、本発明は、有効量のFlt3L-Fcタンパク質を個体に投与することを含む、がんを有する個体を治療する方法に使用するためのFlt3L-Fcタンパク質を提供する。このような一実施形態では、本方法は、例えば以下に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、本発明は、樹状細胞の増殖に使用するためのFlt3L-Fcタンパク質を提供する。特定の実施形態では、本発明は、樹状細胞を増殖させるために有効なFlt3L-Fcタンパク質を個体に投与することを含む、個体において樹状細胞を増殖させる方法に使用するためのFlt3L-Fcタンパク質を提供する。上記の実施形態のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0126】
さらなる一態様では、本発明は、医薬品の製造又は調製におけるFlt3L-Fcタンパク質の使用を提供する。一実施形態では、医薬は、がんの治療のためのものである。さらなる実施形態では、医薬は、がんを治療する方法であって、がんを有する個体に有効量の医薬を投与することを含む方法における使用のためのものである。このような一実施形態では、本方法は、例えば以下に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、医薬は、樹状細胞を増殖させるためのものである。さらなる実施形態では、医薬は、個体において樹状細胞を増殖させる方法に使用するためのものであり、樹状細胞を増殖させるのに有効な量の医薬を個体に投与することを含む。上記実施形態のいずれかに従った「個体」は、ヒトであってもよい。
【0127】
さらなる態様では、本発明は、がんを治療するための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、かかるがんを有する個体に有効量のFlt3L-Fcタンパク質を投与することを含む。そのような一実施形態では、本方法は、以下に記載されるように、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体へ投与することをさらに含む。上記実施形態のいずれかに従った「個体」は、ヒトであってもよい。
【0128】
さらなる態様では、本発明は、個体において樹状細胞を増殖させるための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、樹状細胞を増殖させるために有効量のFlt3L-Fcタンパク質を個体に投与することを含む。一実施形態では、「個体」は、ヒトである。
【0129】
さらなる一態様では、本発明は、例えば、上記の治療方法のいずれかに使用するための、本明細書に提供されるFlt3L-Fcタンパク質のいずれかを含む、医薬製剤を提供する。一実施形態では、医薬製剤は、本明細書に提供されるFlt3L-Fcタンパク質のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態では、医薬製剤は、本明細書に提供されるFlt3L-Fcタンパク質のうちのいずれかと、例えば、以下に記載される少なくとも1つの追加の治療剤と、を含む。
【0130】
本発明のFlt3L-Fcタンパク質は、単独で、又は他の薬剤と組み合わせて治療に用いることができる。例えば、本発明のFlt3L-Fcタンパク質は、少なくとも1つの追加の治療剤と共投与され得る。
【0131】
上述のかかる併用療法は、併用投与(同じ又は別個の製剤中に2つ以上の治療剤が含まれる)及び別個の投与を包含し、別個の投与の場合、本発明のFlt3L-Fcタンパク質の投与は、追加の治療剤(複数可)の投与前、投与と同時に、及び/又は投与後に行われ得る。一実施形態では、Flt3L-Fcタンパク質の投与及び追加の治療剤の投与は、互いに約1か月以内、又は約1、2、3週間以内、又は約1、2、3、4、5、若しくは6日以内に発生する。本発明のFlt3L-Fcタンパク質は、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。
【0132】
本発明のFlt3L-Fc融合タンパク質(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、鼻内を含む任意の適切な手段によって投与されてもよく、所望な場合、局所治療では、病変内投与によって投与されてもよい。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が挙げられる。投薬は、投与が短時間であるか、又は慢性的であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路によるもの、例えば、静脈内注射又は皮下注射等の注射によるものであり得る。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス輸注を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
【0133】
本発明の使用のためのFlt3L-Fc融合タンパク質は、良好な医療行為と一致する方法で調合され、投薬され(dosed)、そして投与される(administered)であろう。これに関連して考慮すべき要因としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。Flt3L-Fc融合タンパク質は、当該疾患を予防又は治療するために現在使用されている1つ又は複数の試薬と一緒に製剤化されている必要はないが任意に製剤化される。そのような他の試薬の有効量は、製剤中に存在するFlt3L-Fc融合タンパク質の量、障害又は治療のタイプ、及び上記の他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投薬量及び投与経路によって、又は本明細書に記載の投薬量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に判断される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0134】
疾患の予防又は治療のために、本発明のFlt3L-Fc融合タンパク質の適切な投与量(単独で又は1つ又は複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、Flt3L-Fc融合タンパク質の種類、疾患の重症度と経過、融合タンパク質が予防目的又は治療目的のどちらで投与されるか、以前の治療、患者の病歴とFlt3L-Fc融合タンパク質への反応、及び主治医の裁量に依存することになる。Flt3L-Fc融合タンパク質は、一度に又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)のFlt3L-Fc融合タンパク質は、例えば、1回以上の個別投与によるか、持続注入による患者への投与のための最初の候補投与量であり得る。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、症状に応じ、治療は通常、疾患症候の所望の抑制が生じるまで続けられる。Flt3L-Fc融合タンパク質の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲内である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、又は10mg/kg(又はこれらの任意の組合せ)のうちの1つ以上の用量が、患者に投与され得る。このような用量を、断続的に、例えば、毎週、又は3週間ごとに投与してもよい(例えば、患者は、約2~約20回、又は例えば約6回の融合タンパク質の投薬を受ける)。最初の多めの投与量、それに続く1回以上の量の少ない用量を投与してよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。
【0135】
上の製剤又は治療方法のうちのいずれも、Flt3L-Fc融合タンパク質の代わりに、又はそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを使用して行われ得ることが理解される。
【0136】
H. 製造物品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器に挿入されるか、又は容器に付随するラベル又はパッケージ添付文書とを備えている。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、症状を治療、予防、及び/又は診断するのに有効な別の組成物と単独で又は組み合わせて使用される組成物を保持し、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明のFc融合タンパク質である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される症状を治療するために使用されることを示す。さらに、製造物品は、(a)中に組成物が入っており、組成物が、本発明のFc融合タンパク質を含む、第1の容器と、(b)中に組成物が入っており、組成物が、更なる細胞毒性剤又はその他の治療剤を含む、第2の容器とを備えていてもよい。本発明のこの実施形態における製造物品は、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示すパッケージ添付文書を更に含んでいてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、製造物品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、注射器等、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
【0137】
上記の製品はいずれも、Flt3L-Fc融合タンパク質の代わりに、又はそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを含み得ることが理解されよう。
【実施例
【0138】
III. 実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。先に提供した一般的な説明を考慮すると、種々の他の実施形態が実施されてもよいことが理解される。
【0139】
実施例1.エフェクターレスFcタンパク質の設計
「NG2LH」という用語は、IgG1 N297G置換を含み、IgG1の下側ヒンジ残基233~236(ELLG、配列番号19)をヒトIgG2の残基233~236(PVA;位置236のアミノ酸なし、本明細書では「PVA#」とも呼ばれる)と「スワップ」するヒトIgG1 Fcドメインを指し、位置はKabatに記載されているEUインデックスに従って番号付けされている。NG2LH Fcバリアントタンパク質(本明細書では「PVA# NG」とも呼ばれる)のエフェクターレス性は、完全長抗体に関連して、野生型、N297G及び他のFcバリアントIgG1、並びにIgG2及びIgG4抗体と比較して、以下の表2で定義されるように最初に示された。
【表2】
【0140】
抗Her2抗体(トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech,Inc.,South San Francisco,Calif.,USA)(米国特許第6,407,213号及びLee et al.,J.Mol.Biol.(2004),340(5):1073-93でも言及されており;本明細書では配列番号47として言及される)の軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインをコードする、表2に列挙される重鎖定常領域(CH1-CH3)を含む完全長抗体を構築した。これらの抗Her2抗体の軽鎖は、天然のヒトCカッパ定常領域を含んでいた。完全長軽鎖及び様々な完全長重鎖をコードする核酸をpRK哺乳動物発現ベクター(Eaton et al.,1986,Biochemistry 25:8343-47)にクローニングした。軽鎖及び重鎖核酸ベクターをCHO細胞で共発現させ、抗体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィー、引き続いてサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。
【0141】
次いで、抗体を、Her2を過剰発現する初代マクロファージ及びSK-BR-3ヒト乳がん細胞株(ATCC(登録商標)HTB-30)を使用して、抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び抗体依存性サイトカイン放出(ADCR)に対するそれらの効果について試験した。陰性対照抗体として抗gD抗体を用いた。単球をドナーPBMCから単離し、25ng/mlのヒトMCSF-1で刺激し、T-175組織培養フラスコ中で5~7日間マクロファージに分化させた。ADCP及びサイトカイン放出実験の前日に、全てのマクロファージを50ng/ml IFNγ(R&D Systems 285-IF-100/CF)で刺激して、M1マクロファージに分化させた。マクロファージ及びSK-BR-3 GFP細胞をアキュターゼ(Millipore SCR005)処理によって回収した。除去したマクロファージ及びSK-BR-3細胞を、それぞれ2x10及び0.5x10細胞/mlの濃度で培地(X-Vivo 10;Lonza 04-743Q,10% HI FBS;Gibco 10438-026)に再懸濁した。試験条件(抗体バリアント及び治療濃度)を決定するために、96ウェルプレートマップを設計した。各抗体バリアントの2倍段階希釈物を培地中で調製した(6点10倍希釈系列:2000、200、20、2、0.2、0.02ng/ml)。プレートマップに従って、50ulのマクロファージ及び50ulのSK-BR-3を各ウェルに添加し、各ウェルに100kのマクロファージ及び25kのSK-BR-3細胞を得た。プレートマップに従って、100uLの2倍抗体連続希釈溶液を96ウェルプレートのウェルと合わせた。最終抗体処理濃度は1000、100、10、1、0.1、0.01ng/mlであった。100uLの培地を、マクロファージ及びSK-BR-3細胞を含む3つのウェルに「培地のみ」対照処理として加えた。96ウェルプレートを20×gで2分間遠心分離し、次いで、37℃で約24時間インキュベートした。細胞を400×gで4分間遠心分離し、Luminex Reader Millipore Multiplexによって分析されるADCRのために上清を回収した。細胞をアキュターゼ処理によってウェルから除去した。各ウェル中の細胞を200ulのFACSバッファー(BD、554657)で一回洗浄した。Alexa 647(Invitrogen、Alexa Fluor 647 Antibody Labeling Kit、A20186)とコンジュゲートした抗CD11b(BD、555385)及び抗CD14(BD,555396)を用いて染色溶液を調製した(FACS緩衝液中1:100抗体コンジュゲート)。50uLの染色溶液を全てのウェルに添加し、4℃で30~60分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液(200ul/ウェル)で2回洗浄した。各ウェル中の細胞を50ulのFACS緩衝液に再懸濁した。細胞の1つのプレートをADCP効率についてFACSによって分析した。FACSデータをソフトウェアFlowJoで分析した。細胞をForward and Side Scatterプロットでゲートし、次いで、Y軸上にGFP発現及びX軸上にAlexa647をプロットした。各象限における細胞パーセンテージを計算した。SK-BR-3細胞は主に象限1(Q1、GFP陽性)にあり、マクロファージは主に象限3(Q3、Alexa647陽性)にあった。各ウェルの食作用%を計算した:
食作用%=100%-(各ウェルのQ1)/(培地のみの対照ウェル3つの平均Q1)
【0142】
グラフ上にプロットされた抗体処理濃度に対する抗体バリアントの食作用%。
【0143】
2つのプレートをLuminex(Luminex Corp)によって分析した。図1に示すように、漸増濃度のLALAPG又はNGLH2 Fc抗Her2抗体の存在下では、食作用はほぼ観察されなかった。IgG1野生型及びIgG4抗体バリアントでは、最高レベルのADCPが観察された。IgG2野生型Fc及びIgG1 PVA#Fcについて中間レベルの食作用が観察された。したがって、図1は、IgG1 NG2LH及びIgG1 LALAPG FcドメインがインビトロアッセイにおいてADCP活性を欠くことを示す。実験は、IgG1 NG PVAG及びIgG1 NG PVA# GSSの存在下でのADCP活性の同様の欠如を示す(データは示さず)。
【0144】
ADCPアッセイからのサイトカイン放出プロファイルの結果を図2A図2Jに提供する。食作用データと一致して、これらの結果は、天然のIgG1、IgG4と対照的に、及びより少ない程度にN297Gと対照的に、NG2LHバリアントが標的細胞の存在下でマクロファージによるADCRを媒介しないことを実証している。
【0145】
これらのデータは、野生型IgG1 Fcと比較してバリアントのADCCレポーターアッセイからのデータとは対照的である。オクレリズマブ(抗CD20)又はトラスツズマブ(抗Her2)由来の可変ドメインを上記の野生型及びバリアントのドメインに融合し、ADCCアッセイで試験した。このアッセイでは、NK細胞をNFAT-RE-ルシフェラーゼレポーター細胞として操作し、RcγRIIIa結合を読み取り、次いで、WIL2S CD20+細胞又はSkBr3 Her2+細胞の存在下でアッセイした。野生型又はバリアントのドメインを有する抗CD20及び抗Her2構築物の両方について、全ての非野生型Fc分子は、野生型IgG1 Fcと比較して最小の活性を有していた(図2K及び図2Lを参照)。
【0146】
実施例2.Flt3L Fc融合タンパク質の設計
Flt3L-Fc融合タンパク質は、日常的な核酸クローニング、タンパク質発現及びタンパク質精製技術を使用して生成された。
【0147】
PCRを使用して、所望のキメラFlt3L-Fcタンパク質(表3、配列番号10~31を参照)のFlt3L及びFc部分をコードするヌクレオチド配列を含むcDNAを増幅した。表3に記載のFlt3L-Fcタンパク質(配列は表10に提供)の発現及び産生のために、ヒトFlt3Lの天然シグナル配列(GenBankアクセッション番号P49771;配列番号21の残基1~27)を含むようにcDNAを生成した。一例として、hFLT3L.P167.5aa.hinge.hIgG1.NG.PVA#タンパク質の発現のために生成されたcDNAは、配列番号45として表10に提供されるFlt3Lシグナル配列との融合タンパク質をコードするcDNA配列を含んでいた。
【表3】
【0148】
Flt3L-Fc融合物をコードするcDNAを哺乳動物発現ベクターpRK5(Gorman,et al.,DNA and Protein Engineering Techniques 2:1(1990);米国特許第6,232,117号)にサブクローニングし、CMVプロモーターの制御下で発現させた。
【0149】
CHO又はHEK293細胞のいずれかを所望の発現構築物で一過性にトランスフェクトし、適切な培養培地中でそれぞれ10又は6日間増殖させ、精製のために回収した。
【0150】
Flt3L-Fc融合構築物の精製は、HiTrap MabSelect SuReアフィニティーキャプチャークロマトグラフィー(GE)、続いてSuperdex 200 SEC、最後に透析による濃縮及び緩衝液交換を用いて達成した。
【0151】
実施例3.Flt3L-Fc融合タンパク質の特徴付け
実施例2に記載されるように生成された融合タンパク質を、溶液中での凝集に対する感受性並びにジスルフィド結合の減少及び喪失に関して特徴付け、そのそれぞれをSDS-PAGE(3~5ug/ウェル)及びHPLC SEC(SuperDex 200;平衡化緩衝液:200mMアルギニン、137mMコハク酸、pH5.0)によって分析した。CHO細胞培養物から精製されたFlt3L-Fc融合タンパク質を使用して行われた実験からのデータを以下の表4に要約し、CHO細胞及びHEK293細胞において発現されて精製されたFlt3L-Fc融合構築物hFLT3L.S163.no.hinge.hIgG1.NG.PVA#(配列番号41)からの例示的なデータを図3A図3Cに示し、CHO細胞及びHEK293細胞において発現されて精製されたFlt3L-Fc融合構築物hFLT3L.P167.5aa.hinge.hIgG1.NG.PVA#(配列番号26)からのデータを図3D図3Fに示す。
【表4】
【0152】
上記の表4に要約されたバリアントのデータ分析は、Flt3L分子の最後のシステインとFc(NG2LH)分子の最初のシステインとの間に存在するアミノ酸残基の数(結合長)が凝集及び/又はジスルフィド結合形成のレベルに影響を及ぼし得ることを示した。結合長が14残基未満である場合、各構築物の最大30%が分子間ヒンジジスルフィドを欠くようである。5アミノ酸残基以下の結合長は非常に高い凝集をもたらした。配列番号24、26、32、33及び34の融合タンパク質について、最も低いレベルの凝集が観察された。配列番号25、26及び32の融合タンパク質について、最低レベルの不完全なヒンジジスルフィド結合が観察され、配列番号33及び39も比較的低レベルの不完全なヒンジジスルフィドを有する。Flt3L及びFcタンパク質の両方の構造が十分に特徴付けられ、独立したドメインとしてフォールディングすることができることが示されていることを考慮すると、ここで観察されたデータは幾分予想外であった。しかしながら、各タンパク質ドメインは、ジスルフィド結合及び構造的完全性に重要なシステイン残基を含むことに留意されたい。したがって、データは、Flt3L-Fc(NG2LH)融合分子の設計が、十分な共有結合Fc二量体化及び凝集の最小化又は欠如を確実にするためにタンパク質産物の慎重な評価を必要とすることを示す。
【0153】
実施例4.Flt3L活性についてのインビトロ機能アッセイ
Flt3Lタンパク質(Fc融合なし;配列番号23)の機能と比較してFlt3L-Fc融合タンパク質の機能的特性を評価するためにインビトロアッセイを行った。本明細書に記載のように実施されるインビトロアッセイを使用して、Flt3受容体を発現するヒト細胞株の増殖を誘導するFlt3Lタンパク質の効力を測定することができる。
【0154】
Costar 96ウェル平底プレート(カタログ番号3610 Thermo Fisher)を室温で一晩、100uLのポリ-L-オルニチン(カタログ番号A-004-C EMD Millipore)でコーティングし、PBSで3回洗浄し、乾燥させた。ヒトOCI-AML5細胞(No.ACC 247、DSMZ)を、100uLのアッセイ培地(5%熱不活性化FBS、1×Glutamaxを含有するRPMI1640)中に3000細胞/ウェルで播種した。Flt3L試験品をアッセイ培地で20ug/mLに希釈し、1:10に連続希釈した。100uLの希釈した試験品を各ウェルに(三連で)添加して、10ug/mLの最終出発濃度を達成した。最大対照ウェル及び最小対照ウェルには、10ug/mLのhFLT3L.P167.hIgG1.NG2LH(配列番号26)又はアッセイ培地のみを含めた。アッセイプレートを37℃、5% COで7日間インキュベートした。100uLの上清を各ウェルから取り出し、次いで、100uLのCell Titer Glo(カタログ番号PR-G7572 Thermo Fisher)を各ウェルに加え、プレートを暗所で8~10分間インキュベートした。SpectraMax i3プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて発光を測定した。生の値を最大対照ウェル及び最小対照ウェルに対して正規化した。各試験品の用量応答をXLfit(IDBS)でプロットし、EC50値を4パラメータロジスティック曲線を用いて決定した。図4A図4Bに示すグラフは、GraphPad Prism7を用いて生成された。
【0155】
これらのデータは、hFLT3L.P167.hIgG1.NG2LH及びgCDX-301の両方がインビトロでOCI-AML5細胞の用量依存的増殖を誘導したことを示す。平均EC50効力の値は同等であった:hFLT3L.P167.hIgG1.NG2LHについて2.5±0.5pM;gCDX-301について2.3±0.5pM。さらに、hFLT3L.P167.hIgG1.NG2LH及びgCDX-301は、インビトロでOCI-AML5細胞の増殖を少なくとも同等の効力で誘導することができる。
【0156】
実施例5.マウスにおけるPKPD研究
免疫系の複雑さを考えると、このヒトFc分子についての情報を提供し得る哺乳動物対象において薬力学を示すことが重要であり得る。PK/PD研究を、本明細書中に記載されるようにマウスを用いて行った。
【0157】
この試験は、GenentechのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認され、SCIDマウスを使用して実施された。動物を3つの群に分けた。群1、群2及び群3の動物には、それぞれ0.1、1.0及び10mg/kgのFLT3L-Fc(配列番号37--Flt3L.Q159.Fc.NG)を与えた。全血を、FACSによる細胞集団計数のために選択された時点で収集した。血漿を収集し、huFlt3L ELISAを使用してアッセイして、各試料中の試験物の量を決定した。
【0158】
群平均PKパラメータを以下の表5に要約する。
【表5】
【0159】
表5に報告されたNCAパラメータには、Cmax(初回投与後に観察された最大血清濃度);Cmax/用量(用量正規化Cmax);AUCinf(0日目から無限大までの血清中濃度-時間曲線下面積);AUCinf/用量(用量正規化AUC);CL(血清中濃度-時間曲線を用いて算出したクリアランス)が含まれる。
【0160】
結果を図5にグラフで示す。
【0161】
群1~3において、Cmaxは、ほぼ用量比例的に増加した。AUCの用量比例を超える増加が観察され、標的媒介性薬物動態(TMDD)が全ての用量群でPKプロファイルに影響を及ぼしたことが示唆された。さらに、総クリアランス(CL)は用量依存的であることが観察され、標的媒介性CLを示唆した。
【0162】
末梢血試料からの平均単球及びDC数を図6A(単球)及び図6B(DC)に示す。3つ全ての群において、末梢血において0.1~10mg/kgで強い用量依存的な細胞増殖が認められた。DC増殖の初期動態は用量間で同様であったが、増殖の持続時間は用量/曝露に依存していた。
【0163】
実施例6.カニクイザルにおけるPKPD研究
カニクイザルに投与した様々な用量のFlt3L-Fc(NG2LH)タンパク質(配列番号26)を使用して、さらなるPKPD研究を行った。この試験は、Charles River Laboratories(Reno,NV)でナイーブ・カニクイザルを使用して行った。動物を4つの群(雄2匹及び雌1匹/群)に分けた。群1の動物には、10mg/kgの抗gD(N297G突然変異を有する抗糖タンパク質DヒトIgG1抗体)を与え、一方、群2、3及び4の動物には、それぞれ0.1、1.0及び10mg/kgのFLT3L-Fcを与えた。群2の動物には単回用量を投与し、他の群の動物には2回用量を投与した(試験1日目及び22日目)。全血を、FACSによる細胞集団計数のために選択された時点で収集した。血清を収集し、抗huFlt3L-huFc ELISAを使用してアッセイして、各血清試料中の試験物の量を決定した。
【0164】
以下の表6Aは、各動物群の投薬を詳述している。群平均PKパラメータを表6Bに要約する。
【表6A】
【表6B】
【0165】
結果を図7にグラフで示す。
【0166】
2~3群において、Cmaxの増加はほぼ用量に比例していた。抗薬物抗体(ADA)が14日目以降に全ての用量の動物で検出され、曝露は高いADA力価で動物に影響を与えた。初回投与後にAUC0-21の用量比例を超える増加が観察され、特に≦1mg/kgで、標的媒介性薬物動態(TMDD)がPKプロファイルに影響を及ぼすことが示唆された。さらに、総クリアランス(CL)は用量依存的であることが観察され、標的媒介性CLを示唆した。10mg/kgでは、抗GD群及びFLT3L-Fc群は類似のPKプロファイルを有し、FLT3L-Fcの総CLは4.92mL/日/kgであった。
【0167】
4つ全ての群の平均単球、cDC1及びcDC2数を図8A図8Cに示す。FLT3L-Fc治療動物については、0.1~1mg/kgで、1回目の投与後の末梢血において、強い用量依存的な細胞増殖(単球、cDC1及びcDC2)が認められた。10mg/kgでは、より少ない増殖が観察された。理論に束縛されるものではないが、可能な説明は、高濃度のFlt3リガンドが増殖及び分化に必要な受容体二量体化を妨げることであり得る。1~10mg/kgでは、2回目の投与後に、より低いが持続的な細胞増殖が観察される(おそらくADAの影響による)。
【0168】
実施例7.Fc(NG2LH)のFcγR及びFcRn結合
Fcドメインのエフェクター機能は、ドメイン内の特定のアミノ酸変化によって影響され得る。したがって、FcγR及びFcRn受容体へのFc(NG2LH)の結合をBiacoreによって測定した。これらのアッセイのために、FcγRを抗His抗体によってBiacoreチップ上に捕捉するか、又はFcRnをチップ上に直接固定した。注入終了時(会合期)にデータを収集し、試料の値を標準の値で除算して正規化することによって相対結合活性(%)を計算した。
【0169】
PTD Biocoreデータの概要を以下の表7に示す。値は、10ug/mlでの相対結合レベル(%)を示す。
【表7】
【0170】
実施例8.Fc(NG2LH)の熱安定性
FLT3Lリガンド融合タンパク質の熱安定性は、治療用生物製剤を開発する1つの重要な態様である。エフェクターレスFc(NG2LH)タンパク質の設計後、示差走査蛍光測定(DSF)を行って、Fcタンパク質の熱安定性に対するアミノ酸変化の影響を理解した。DSFは、蛍光色素の存在下でタンパク質の熱アンフォールディングを監視し、典型的にはリアルタイムPCR装置(例えば、Bio-Rad CFX)を使用して行われる。SYPROオレンジ色素(Invitrogen、カタログ番号S6650)をPBSで1:20に希釈する。ウェル内の24ulのFabタンパク質(約100ug/ml)に1ulの希釈色素を添加する。リアルタイムPCR装置(Bio-Rad CFX)において、20℃から100℃まで温度が上昇するに従って、蛍光強度をプロットし、例えばボルツマンの式を用いて、遷移曲線の変曲点(Tm)を算出する。Nature Protocols,2007,2:2212-2221を参照のこと。
【0171】
バリアントFcタンパク質を、完全長抗体に関連して、具体的には、オクレリズマブに由来する抗CD20抗体として、及びトラスツズマブに由来する抗Her抗体として分析した。これらのバリアント抗体の安定性データを以下の表8に提供する。さらに、バリアントFcタンパク質も、表2に記載の配列を含むがCH1ドメインを含まず、したがってヒンジ配列DKTHTでN末端が開始する単離されたFc領域の関連で試験した。これらのバリアントFcタンパク質の安定性データを以下の表9に提供する。
【表8】
【表9】
【0172】
データは、完全長IgG及び単離されたFcタンパク質の両方について、PVA#バリアントをN297G置換と組み合わせると、N297G突然変異のみを有するFc構築物の熱安定性と比較して約2℃の熱安定性の増加をもたらすことを示しており、これは予想外であった。
【0173】
実施例9.エフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質のバリアント
様々なFlt3L-Fc融合タンパク質の免疫原性を評価するために実験を行った。具体的には、特定のタンパク質の免疫原性をT細胞増殖アッセイで試験した。図9Aに示すように、Flt3L.P167.Fc.NG2LH(配列番号26)もFlt3L.L165.Fc.NG2LH(配列番号33)も、検出可能な免疫原性を有していた。予想外にも、Flt3L W144D突然変異の導入により有意な免疫原性が検出された(配列番号42)。
【0174】
別の実験では、Flt3Lタンパク質のグリコシル化バリアントの免疫原性を評価した。図9Aに示すように、N149E、S151D又はS151E突然変異の導入は、CD4 T細胞増殖の検出可能な増加を引き起こさなかった。N149E、S151D及びS151Eは、配列番号21に対するアミノ酸の変化及び位置を示す。
【0175】
実施例10.ADCPアッセイにおけるエフェクターレスFlt3L-Fc融合タンパク質
ヒト組換えタンパク質Flt3L-Fc構築物の3つのバリアントの抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性を比較する実験を行った:1)Flt3L-Fc野生型IgG1(配列番号27)Flt3LとhIgG1.NG2LHのFc(配列番号26)及び3)Flt3LとhIgG1.N297G(配列番号28)。抗Flt3モノクローナル抗体であるEB10.hIgG1(Piloto et al.,2006,Cancer Res.66:4843-4851)を陽性対照として使用した。健康なヒトドナー由来の初代単球由来マクロファージをエフェクター細胞及びSEMとして使用し、ヒト急性リンパ芽球性白血病細胞を標的細胞として使用して、ADCPアッセイを実施した。簡単に記載すると、初代ヒトマクロファージを、陽性選択(Miltenyi Biotec Inc、Auburn、California)によって健康なヒトPBMCからCD14陽性細胞を単離することによって生成し、5% COで加湿インキュベーターにおいて37℃でマクロファージ分化培地(RPMI1640、10% FBS、1% Glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び20ng/mL M-CSF(R&D Systems、Minneapolis、MN))中で培養した。3日目に、細胞を50ng/mLのM-CSFで刺激し、さらに4日間培養した。7日目に、マクロファージを10μMのCell Trace Violet(Thermo Fisher Scientific、Eugene、OR)で染色し、ADCPアッセイ培地(IMDM、10% FBS、1% Glutamax、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)で1×10細胞/mLに希釈し、50uL/ウェルで96ウェル低接着性U底プレート(Costar、Corning、NY)に添加した。標的SEM細胞をADCPアッセイ培地で2×10細胞/mLに希釈し、pHrodo(Thermo Fisher Scientific、Eugene、OR)で事前標識し、マクロファージを含むアッセイプレートに添加した(50uL/ウェル)。次いで、試験抗体の100uLの連続希釈物(表1)を、マクロファージ及びSEM細胞を含む各ウェルに添加し、続いて37℃で5%二酸化炭素と共に4.5時間インキュベートした。抗体の最終濃度は、試験抗体あたり合計11試料について、3倍連続希釈後に0.457~3000ng/mLの範囲であった。インキュベーション後、細胞を1200rpmで5分間遠心分離し、PBS中で洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド中で10分間、4℃で固定した。細胞をフローサイトメーター(BD Biosciences FACSCanto IVD 10)で分析した。食作用をFlowJo(Tree Star、Inc.;Ashland、OR)によって分析した。Cell Trace Violet蛍光を使用して、試料集団中のマクロファージをゲーティングした。食作用を、pHrodo Green陽性マクロファージのパーセンテージを測定することによって決定した。食作用の程度を、対照条件(抗体が存在しない)からpHrodo Green陽性マクロファージのパーセントを差し引くことによって正規化した。全てのデータ点を二連で収集した。食作用パーセント(%ADCP)を抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prism(LaJolla、CA)を用いて4パラメータモデルに当てはめた。この手順を、3人のドナーを用いた独立した実験で行った。
【0176】
この研究では、Flt3発現SEM細胞を標的細胞として使用した。SEM標的細胞を、酸性pHで明るく蛍光するpHrodo AMで事前標識した。標的細胞を含有するファゴソームが次第に酸性になるにつれて、pHrodo緑色蛍光シグナルが増加し、これはフローサイトメーターで検出することができる。Flt3LとhIgG1.NG2LHのFc(配列番号26、5.1mg/mL)、Flt3LとhIgG1.N297G(配列番号28、1.92mg/mL)、Flt3LとWT IgG1(配列番号27、2.5mg/mL)及びEB10.hIgG1(3.17mg/mL)によって誘導されるADCP活性を調べ、3人の異なるドナー由来の単球由来マクロファージを用いた3つの独立した実験で比較した。
【0177】
全てのデータ点を二連で収集し、%食作用(%ADCP)の平均を試験した分子の濃度に対してプロットした(薬物濃度(concertation):3ug/mL~0.457ng/mL)。データを4-パラメータモデルでフィッティングした。代表的な用量反応ADCP曲線を図10に示す。ADCPアッセイの固有の制限を受けて、3つ全ての実験において、Flt3LとWT IgG1及びEB10.hIgG1によって誘導されたADCP活性が、Flt3発現細胞において観察された。さらに、FLT3L-Fc-IgG-N297Gは比較的低いADCPを誘導したが、FLT 3L-Fc-IgG NG2LHではADCP活性がほとんど又は全く検出されなかった。
【0178】
Flt3L部分に1、2、又は3個のアミノ酸置換を含むFlt3L-Fc融合タンパク質などの、Fc NG2LH(配列番号13)を含む、追加のFlt3L-Fc融合タンパク質のADCP活性を測定するために、追加の研究を行うことができる。そのような研究は、ADCP活性をほとんど又は全く有さないがインビボでDCの増殖を活性化することができる追加のFlt3L-Fc融合タンパク質を示すことができる。
【表10】
【0179】
上述の発明を、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によって、ある程度詳細に説明してきたが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
図1
図2A-E】
図2F-J】
図2K
図2L
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
【配列表】
2023536655000001.app
【国際調査報告】