(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(54)【発明の名称】車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステム
(51)【国際特許分類】
G01M 11/06 20060101AFI20230822BHJP
B62D 65/16 20060101ALI20230822BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01M11/06
B62D65/16 B
G01M17/007 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572300
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 IB2021056595
(87)【国際公開番号】W WO2022023888
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】カンタドーリ,アンドリア
【テーマコード(参考)】
3D114
【Fターム(参考)】
3D114AA01
3D114BA40
3D114HA02
(57)【要約】
車両(100)の少なくとも1つのヘッドランプ(HL)をキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステム(1)は、支持体(2)と、支持体(2)から車両(100)の2つの前輪または後輪までの距離を検出するように構成されたレーザ測定器(3)であって、支持体(2)に取り付けられたレーザ測定器(3)と、支持体(2)に取り付けられた投影面(4)と、ヘッドランプ(HL)によって放射された光ビームの二次元投影によって生成されたパターンを表示するように構成されたスクリーン(12)と、スクリーン(12)に表示されたパターンの画像を取得するように構成されたカメラ(13)とを備えるヘッドランプビームセッター(10)と、レーザ測定器(3)から検出された距離を受け取り、カメラ(13)からパターンの画像を受け取り、それらに応じてヘッドランプ(HL)のアライメント角度を計算するように構成された制御ユニット(5)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)の少なくとも1つのヘッドランプ(H
L)をキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステム(1)であって、
支持体(2)と、
前記支持体(2)から前記車両(100)の2つの前輪または後輪までの距離を検出するように構成された検出手段(3)であって、前記支持体(2)に取り付けられた検出手段(3)と、
画像またはビデオを投影するための投影面(4)であって、前記支持体(2)に取り付けられた投影面(4)と、
少なくとも1つのヘッドランプビームセッター(10)であって、実質的に当該ヘッドランプビームセッター(10)の前に配置された前記ヘッドランプ(H
L)によって放射された光ビームの二次元投影によって生成されたパターンを表示するように構成されたスクリーン(12)と、前記スクリーン(12)に表示された前記パターンの画像を取得するように構成されたカメラ(13)とを備えるヘッドランプビームセッター(10)と、
前記検出手段(3)から前記2つの車輪について検出された前記距離を受け取り、前記カメラ(13)から前記パターンの前記画像を受け取り、それらに応じて前記ヘッドランプ(H
L)のアライメント角度を計算するように構成された制御ユニット(5)と、を備えるADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのヘッドランプビームセッター(10)は、前記支持体(2)に取り付けられ且つ前記支持体(2)上で水平にスライド可能である、請求項1に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項3】
前記支持体(2)は、水平バー(20)であって、それに対して前記ヘッドランプビームセッター(10)が第1の所定の方向(X)に沿ってスライド可能に取り付けられた水平バー(20)を備える、請求項2に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項4】
前記水平バー(20)は、前記第1の所定の方向(X)を横切る第2の所定の方向(Z)に沿ってスライド可能である、請求項3に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項5】
前記支持体(2)から分離した、前記ヘッドランプビームセッター(10)のためのさらなる支持体を備え、このことは、前記支持体(2)と前記さらなる支持体とが一体的に接続されていないことを意味する、請求項1に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項6】
前記支持体(2)に取り付けられた2つのヘッドランプビームセッター(10)を備える、請求項1に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項7】
前記支持体(2)は、前記2つのヘッドランプビームセッター(10)が取り付けられた水平バー(20)を備える、請求項6に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項8】
前記カメラ(13)は、前記ヘッドランプ(H
L)によって放射される前記光ビームに対して、前記スクリーン(12)の前または後ろに配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのヘッドランプビームセッター(10)は、前記スクリーン(12)に到達する前に前記ヘッドランプ(H
L)から来る前記光ビームを集束させるための少なくとも1つのレンズ(14)をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのヘッドランプビームセッター(10)は、前記スクリーン(12)、前記カメラ(13)および前記少なくとも1つのレンズ(14)を収容する箱(15)を備える、請求項9に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項11】
前記カメラ(13)は、前記少なくとも1つのレンズ(14)の光軸に対して低い位置または高い位置に配置される、請求項9または10に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項12】
前記検出手段(3)は、前記支持体(2)にスライド可能に取り付けられた2つのレーザ測定器(3)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項13】
前記検出手段(3)は、前記支持体(2)に取り付けられた2台のカメラを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項14】
前記投影面(4)はスクリーンまたはパネルである、請求項1から13のいずれか一項に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項15】
前記制御ユニット(5)はまた、前記車両に搭載された1つまたは複数の光学センサ(30)のキャリブレーションのための画像またはビデオの投影を命令するように構成されている、請求項1から14のいずれか一項に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【請求項16】
前記制御ユニット(5)は、無線またはケーブル接続を介して前記車両(100)のEOBD診断ソケットと通信するように構成されている、請求項1から15のいずれか一項に記載のADASキャリブレーションシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通における重要な安全面は、対向車へのグレアを最小限に抑えて道路を良好に照らすために、ヘッドランプを正しくキャリブレーションすることである。
【0003】
ヘッドランプビームセッターまたはテスターは、車検時に車両のヘッドランプが放射する光の配向および強度の両方をチェックするために使用される機器である。
【0004】
既知のヘッドランプビームセッターは、可動トロリーの形をしており、
平行光ビームを受け取るように、車両のヘッドランプと位置合わせされた垂直支柱にスライド可能に取り付けられた高さ調節可能な光学群と、
垂直支柱の上部に取り付けられたミラーまたはレーザ位置合わせシステムであって、セッターを車両の長手方向軸に位置合わせすることを可能にするミラーまたはレーザ位置合わせシステムと、を備える。
【0005】
光学群は、すべてのタイプのヘッドランプの光ビームを集束させるように構成された一連のレンズを備える。
【0006】
通常、トロリーは、チェックするヘッドランプの前にヘッドランプビームセッターを配置するために、3つの車輪を備えたT字型またはL字型のベースを有する。
【0007】
用途によっては、トロリーの車輪は、車両の前方で床に置かれたレール上をスライドできる。
【0008】
ここ数年のLEDヘッドランプの普及に伴い、ヘッドランプビームセッターの最近のモデルには、画像を取り込むためのカメラと、画像(光パターン)のデジタル処理、すなわち、フィルタ処理または解像度の向上のための電子ユニットとが装備されている。
【0009】
実際には、ヘッドランプからの光ビームはヘッドランプビームセッターのデジタルカメラに向けられ、電子ユニットは取得した画像を処理して光ビームの正確な指示位置および形状の表示を命令し、これにより、光ビームは点検およびキャリブレーションされ得る。
【0010】
既知の解決策の1つの問題は、整備士が位置合わせのターゲットとして車両の長手方向軸またはスラスト軸を経験的に使用することにより、ヘッドランプの調整を行うことである。これには、車体上のターゲットポイントを識別するためのレーザビームまたはポインタなどの追加のツールが必要である。
【0011】
さらに、既知の解決策は、車両の種々のモデルの仕様を含むデータベースを備えた高度なオペレーティングシステムおよびソフトウェアアプリケーションを想定している。
【0012】
さらに、ヘッドランプビームセッターの調整は、整備士にとって長時間の作業であり、当該作業は、位置決め誤差の影響をしばしば受ける。
【0013】
近年、自動車の安全性を向上させる人々の関心は、従来の受動的安全システム(エアバッグ、シートベルト、耐衝撃性など)から、専門家にADAS(先進運転支援システム)として知られる高度な能動的安全システムにまで広がっている。
【0014】
ADASシステムは、安全性および/または運転の快適性を高める目的でドライバをサポートする、車両用の電子的な運転支援システムである。
【0015】
例として、すでに普及しているADASシステムには、適応走行制御、自動全ビームヘッドランプ調整、自動ヘッドランプ配向、自動駐車システム、交通情報付きナビゲーションシステム、ナイトビジョンシステム、ブラインドスポットモニタ、前面衝突警告システム、自動緊急ブレーキなどが含まれる。
【0016】
技術レベルでは、ADASシステムは複数のセンサ(テレビカメラ、レーダー、ライダー(Lidar)など)に基づいており、当該複数のセンサは種々の情報を検出でき、当該種々の情報は、場合により、車両の自律性の程度を監視するスマートアルゴリズムの入力データとして使用され得る。
【0017】
車両が市場に投入される前に、これらのセンサは製造業者によって直接キャリブレーションされる。
【0018】
例えば、カメラの初期キャリブレーションは、製造業者が特別に提供するシミュレーション環境を通じて実行され、当該シミュレーション環境では、設定可能な動的シナリオ(道路を横断する歩行者など)が投影されるモニタの反対側にカメラが配置される。
【0019】
車両が市場に投入された後、上述のセンサは定期的に(車両の整備時など)、または例外的なイベント(不備、損傷または故障の警告に続くセンサの交換など)の後にキャリブレーションされる。
【0020】
出願人は最近、EP3588001として公開された欧州特許出願に開示されているように、車両に搭載された光学センサをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムおよび方法を開発した。このシステムは、スクリーンまたはパネルを使用して、キャリブレーション対象の特定の光学センサに関連付けられた画像/ビデオを投影するので、完全にデジタル化されている。
【0021】
また、アクティブLEDマトリックスによって形成された最新のヘッドランプは、光ビームの強度および/または配向を交通状況に適合されるために、車両のADASキャリブレーションシステム、特に車両に搭載された前面カメラに接続されている。
【0022】
文献EP3628996A1は、その要約によれば、車両ヘッドライト測定システム計装構造を開示している。当該構造は、支持構造と、支持構造によって支持され且つヘッドライト照準装置を含む車両キャリブレーション支援構造と、所定のグラフィック特徴が設けられた表面を有する位置決めターゲット要素であって、支持構造によって支持され且つサービスエリアに向かって前方方向に向けられた位置決めターゲット要素と、車両と車両キャリブレーション支援構造との間の相対的な位置決めを支援するように構成された位置決め装置と、位置決め装置に動作可能に接続された処理システムと、を備える。
【0023】
文献US2012/224171A1は、その要約によれば、垂直および水平トラックに沿って垂直および水平に調整可能なハウジングを含む車両ヘッドライト照準装置を提案している。ハウジングは、車両のヘッドライトビームを受けて集束させ、内部スクリーン上に画像を形成するレンズと、ハウジングに対して垂直方向および水平方向に回転可能な、ハウジングに取り付けられた制御ユニットとを含む。ハウジングおよび制御ユニットは各々、車両に対する装置の位置合わせを構成および評価するためにレーザビームを放射する。制御ユニットは、装置および/または車両の不均一な支持表面を補い、画像、車両および装置の構成並びに装置および/または車両の任意の不均一な支持表面の任意の補償に基づいて、選択された照準基準に従って、ヘッドライトが適切に照準を合わせられているかどうかを示す。
【0024】
文献GB2307312Aは、その要約によれば、車両に対して移動可能なフレームを含む標準画像パターンに車両ヘッドライトを向けるための装置および方法を開示している。垂直方向に調整可能なハウジングに支持されたハウジングは、ヘッドライトビームを反射スクリーンに集束させるレンズを含み、反射スクリーンはビーム画像をカメラに反射する。制御装置は、カメラから出力されたデジタル化された画像の領域を標準画像パターンと比較し、反射画像と標準画像との差に基づいて相関係数を生成する。この差に基づいて、制御装置は、ヘッドライト取付フレームと係合可能な調整装置への出力信号を生成し、取付フレームの位置を調整して差をゼロにする。
【発明の概要】
【0025】
これに関連して、本発明の目的は、上述の従来技術の欠点を上回る、車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムを提案することである。
【0026】
特に、本発明の目的は、既知の解決策よりも簡単且つ迅速に使用できる、車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムを提案することである。
【0027】
本発明の別の目的は、既知の解決策よりも信頼性の高い、車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムを提供することである。
【0028】
述べられた技術的課題および特定された目的は、車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムによって実質的に達成され、ADASキャリブレーションシステムは、
支持体と、
支持体から車両の2つの前輪または後輪までの距離を検出するように構成された検出手段であって、支持体に取り付けられた検出手段と、
画像またはビデオを投影するための投影面であって、支持体に取り付けられた投影面と、
少なくとも1つのヘッドランプビームセッターであって、実質的にヘッドランプビームセッターの前に配置されたヘッドランプによって放射された光ビームの二次元投影によって生成されたパターンを表示するように構成されたスクリーンと、スクリーンに表示されたパターンの画像を取得するように構成されたカメラと、を備える少なくとも1つのヘッドランプビームセッターと、
検出手段から2つの車輪について検出された距離を受信し、カメラからパターンの画像を受信し、それらに応じて、ヘッドランプのアライメント角度を計算するように構成された制御ユニットと、を備える。
【0029】
一実施形態によれば、ヘッドランプビームセッターは支持体に取り付けられ且つ支持体上で水平にスライド可能である。
【0030】
本発明の一態様では、支持体は、ヘッドランプビームセッターが第1の所定の方向に沿ってスライド可能に取り付けられた水平バーを備える。
【0031】
好ましくは、水平バーは、第1の所定の方向を横切る第2の所定の方向に沿ってスライド可能である。
【0032】
別の実施形態によれば、ヘッドランプビームセッターは、支持体から分離したさらなる支持体に配置され、このことは、支持体およびさらなる支持体が一体的に接続されていないことを意味する。
【0033】
別の実施形態によれば、支持体に取り付けられた2つのヘッドランプビームセッターがある。
【0034】
好ましくは、2つのヘッドランプビームセッターは支持体の水平バーに取り付けられている。
【0035】
一実施形態によれば、カメラは、ヘッドランプによって放射される光ビームに対してスクリーンの前に配置される。
【0036】
別の実施形態によれば、カメラは、ヘッドランプによって放射される光ビームに対してスクリーンの後ろに配置される。
【0037】
一実施形態によれば、ヘッドランプビームセッターは、スクリーンに到達する前にヘッドランプから来る光ビームを集束させるための少なくとも1つのレンズをさらに備える。
【0038】
一実施形態によれば、スクリーン、カメラおよびレンズ(存在する場合)は、箱に収容される。
【0039】
本発明の一態様によれば、カメラは、レンズの光軸に対して低い位置または高い位置に配置される。
【0040】
一実施形態によれば、検出手段は、支持体にスライド可能に取り付けられた2つのレーザ測定器を備える。
【0041】
別の実施形態によれば、検出手段は、支持体に取り付けられた2台のカメラを備える。
【0042】
本発明の一態様によれば、制御ユニットはまた、車両に搭載された1つまたは複数の光学センサをキャリブレーションするための画像またはビデオの投影を命令するように構成される。
【0043】
例えば、投影面はスクリーンまたはパネルである。
【0044】
好ましくは、制御ユニットは、無線またはケーブル接続を介して車両のEOBD診断ソケットと通信するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面に示されるように、車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムの好ましいが排他的ではない実施形態の非限定的な説明からより完全に明らかになるであろう。
【
図1】本発明による、車両の少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムを概略的に示す。
【
図2】
図1のシステムのヘッドランプビームセッターを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図を参照すると、番号1は、車両100の少なくとも1つのヘッドランプHLをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムを示す。
【0047】
特に、車両100は試験ステーション50に配置され、試験ステーション50は静止した車両100が駐車される水平または傾斜した床からなる。
【0048】
車両100は、例えば乗用車、バス、大型トラック、ロードトラクター、トラクタートレーラー、農機具、作業車、自走車等の自動車である。
【0049】
ADASキャリブレーションシステム1は、試験ステーション50に配置された車両100の前に配置されるために、支持体2、好ましくは移動可能、つまり車輪によって移動可能な支持体2を備える。
【0050】
ADASキャリブレーションシステム1は、少なくとも1つのヘッドランプビームセッター10を備える。
【0051】
一実施形態によれば、ヘッドランプビームセッター10は、支持体2に取り付けられ且つ支持体2上で水平にスライド可能である。実際には、ヘッドランプビームセッター10は、ヘッドランプHLの指向方向Yに対して実質的に横方向である第1の所定の方向Xに沿ってスライドできる。
【0052】
好ましくは、支持体2は、ヘッドランプビームセッター10がスライド可能に取り付けられた水平バー20を備える。水平バー20は、第1の所定の方向Xに沿って、またはそれに平行に延在する。
【0053】
水平方向のスライドにより、ヘッドランプビームセッター10は、車両100のフロントヘッドランプのいずれか一方の前に配置され得る。
【0054】
水平バー20は、好ましくは、第1の所定の方向Xおよび指向方向Yに対して横方向である第2の所定の方向Zに沿ってスライド可能である。特に、水平バー20は、支持体2の台に対して垂直にスライド可能である。
【0055】
支持体2は、好ましくは、第2の所定の方向Zに平行に延びる1つまたは2つの支柱21を備える。水平バー20は、1つまたは2つの支柱21に対して横方向に配置され且つそれらにスライド可能に取り付けられる。
【0056】
図1に示される別の実施形態によれば、支持体2に取り付けられた2つのヘッドランプビームセッター10がある。特に、2つのヘッドランプビームセッター10は、車両100の対応するフロントヘッドランプの前に配置されるように間隔を空けて配置される。
【0057】
支持体2には、画像またはビデオを投影するための投影面4も取り付けられる。好ましくは、投影面4は、支持体2の支柱21に取り付けられる。
【0058】
本発明の一態様によれば、投影面4はスクリーン、例えばコンピュータまたはテレビのディスプレイである。
【0059】
本発明の別の態様によれば、投影面4は、マルチメディアインタラクティブホワイトボードのディスプレイである。
【0060】
本発明の別の態様によれば、投影面4は、パネル、例えば高コントラストPVC生地で作られたパネルである。
【0061】
支持体2から車両100の2つの前輪または後輪までの距離を検出するための検出手段3も支持体2に取り付けられる。
【0062】
一実施形態によれば、検出手段3は、水平バー20にスライド可能に取り付けられた2つのレーザ測定器3を備える。
【0063】
特に、一方のレーザ測定器3は(
図1に見えており、W
Lで示された)左前輪の距離を検出するように構成され、他方のレーザ測定器3は(図示されていない)右前輪の距離を検出するように構成されている。左後輪および右後輪に関して同様の検出が行われ得ることに留意されたい。
【0064】
図1に示される実施形態では、各ヘッドランプビームセッター10は、2つのレーザ測定器3のうちの1つに近接して配置される。
【0065】
あるいは、検出手段3は、水平バー20に取り付けられた2台のカメラを備える。
【0066】
車両100には、キャリブレーションが必要な場合がある1つまたは複数のセンサが搭載されている。例えば、
図1では、車両100に搭載された前方カメラ30の光学センサが示されている。
【0067】
支持体2は、センサ30が投影面4上に投影された画像またはビデオを取得できるように、試験ステーション50の前に配置される。
【0068】
各ヘッドランプビームセッター10は、スクリーン12およびカメラ13を備える。例えば、スクリーン12は、支持構造によって、すなわち円錐台形または角柱形を有することによってカメラ13に取り付けられる。
【0069】
スクリーン12は、対応するヘッドランプによって放射された光ビームの二次元投影によって生成されたパターンを表示するように配置される。
【0070】
カメラ13は、ヘッドランプHLによって放射される光ビームに対して、スクリーン12の前または後ろに配置される。言い換えれば、カメラ13がスクリーン12とヘッドランプHLとの間に配置されてもよいし、スクリーン12がカメラ13とヘッドランプHLとの間に配置されてもよい。
【0071】
例えば、スクリーン12は、PMMAまたは同様の材料で作られている。スクリーン12は、特にカメラ13がスクリーン12の前にあるときに、知覚可能なコントラストでパターンの投影を可能にするために不透明であってもよい。
【0072】
あるいは、カメラ13がスクリーン12の後ろにあるとき、スクリーン12は半透明である。
【0073】
例えば、30cm×30cmのスクリーンを使用することができる。
【0074】
カメラ13は、スクリーン12上に表示されたパターンの画像を取得するように向けられる。
【0075】
好ましくは、ヘッドランプビームセッター10は、車両100の対応するヘッドランプから来る光ビームを集束させるために、レンズ14または一連のレンズも備える。
【0076】
カメラ13は、好ましくは、スクリーン12とレンズ14との間に配置される。ヘッドランプから来る光ビームを妨げないために、カメラ13は、好ましくは、レンズ14の光軸に対して低い位置または高い位置に配置される。
【0077】
ヘッドランプから来る光ビームは、レンズ14によって平行にされ、パターンの形でスクリーン12上に投影され、カメラ13によって取得される。
【0078】
スクリーン12、カメラ13およびレンズ14はまた、
図2の番号15で示される箱において統合されてもよい。
【0079】
ADASキャリブレーションシステム1は、制御ユニット5であって、
レーザ測定器3によって(または一般的には検出手段によって)検出された距離を受信して、
カメラ13によって取得されたパターンの画像を受信して、
距離および画像に応じて、ヘッドランプのアライメント角度を計算するように構成された制御ユニット5を備える。
【0080】
制御ユニット5はまた、センサ30のキャリブレーションのために投影面4上に画像またはビデオの投影を命令するように構成される。
【0081】
また、カメラ13によって取得されたパターンの画像は投影面4に投影されてもよい。これにより、オペレータは投影面4から直接位置合わせの指示を受けることが可能である。
【0082】
センサ30をキャリブレーションするための画像またはビデオは、メモリに格納できるアーカイブから選択される。特に、メモリは、センサのタイプによって格納された複数の画像および/またはビデオを含む。
【0083】
本発明の一態様によれば、制御ユニット5は、画像またはビデオを投影面4のサイズに適合または変形させるように構成される。
【0084】
制御ユニット5は、好ましくは、無線またはケーブル接続を介して車両のEOBD診断ソケットに接続できる、この分野では一般に「スキャンツール」として知られる携帯装置に収容される。
【0085】
メモリはまた、同一の携帯装置に収容できる。
【0086】
あるいは、メモリは、コンピュータのメモリまたは外部メモリ、すなわち、テレビに直接接続可能なUSBメモリであってもよい。
【0087】
別の実施形態(図示せず)によれば、ヘッドランプビームセッター10は、ADASキャリブレーションシステム1の支持体2から分離したさらなる支持体に取り付けられる。好ましくは、支持体2およびさらなる支持体は、一体的に接続されていない。ヘッドランプビームセッター10のさらなる支持体は、既知のタイプのトロリーであり得る。
【0088】
本発明によるADASキャリブレーションシステムの機能を以下に説明する。
【0089】
車両100は試験ステーション50に配置され、支持体2は、投影面4が車両100の長手方向軸を実質的に横切るように配置されるように、車両100の前に運ばれる。
【0090】
オペレータは、携帯装置(スキャンツール)を車両100のEOBD診断ソケットに接続する。
【0091】
携帯装置は、オペレータがテキストまたは指示を入力できるように構成された、グラフィカルインタフェースが表示されるディスプレイを有する。
【0092】
特に、オペレータは、ブランド(製造業者)およびモデルに分けられた種々のタイプの車両から選択することによって、キャリブレーション対象の車両100を選択できる。車両100の認識はまた、スキャンツールによって自動または半自動で実行され得る。
【0093】
次にオペレータは、キャリブレーションが必要なセンサ、すなわち、車両100に搭載された前方カメラ30の光学センサを選択する。
【0094】
レーザ測定器3は、支持体2から2つの前輪または後輪までの距離を検出し、これらのデータを制御ユニット5に伝達する。
【0095】
ヘッドランプによって放射された光ビームは、レンズ14によって平行にされ、スクリーン12上にパターンの形で投影され、カメラ13によって取得され、カメラ13は、これらのデータを制御ユニット5に伝達し得る。
【0096】
これらのデータに応じて、制御ユニット5は、特にその光学センサのキャリブレーションを意図した、投影面4上への画像またはビデオの投影を命令する。特に、制御ユニット5は、キャリブレーション対象の光学センサのタイプに関連した画像またはビデオをメモリ内で検索する。
【0097】
さらに、ヘッドランプのアライメント角度が計算され、任意付加的に投影面4に表示される。
【0098】
本発明による、少なくとも1つのヘッドランプをキャリブレーションするためのADASキャリブレーションシステムの特徴および利点は、利点と同様に明らかである。
【0099】
ADASシステムの一部として機能するヘッドランプビームをキャリブレーションする場合、特に車線維持、衝突警告、適応走行制御などのために前方カメラをキャリブレーションする場合、ビームセッターは通常、車両の診断コネクタを介してECUに接続する適切な診断スキャンツールによってヘッドランプECUに送信されるコマンドによってキャリブレーションモードになる。そのようなキャリブレーションモードでは、ヘッドランプが特定のビームパターンを投影し、実際に、投影されるビームの形状が変化する。ヘッドランプビームセッターのカメラは、これらのパターンの位置を測定し、必要な補正係数を計算し、この補正係数はその後、スキャンツールによってヘッドランプECUに返される。
【0100】
ADASキャリブレーションステーションの支持体に単一の且つスライド可能なヘッドランプビームセッターまたは2つのヘッドランプビームセッターが取り付けられているので、それらの位置はADASキャリブレーションシステムによって制御される。
【0101】
車両に搭載された他のセンサを制御するADASキャリブレーションシステムにヘッドランプビームセッターを含めることにより、ヘッドランプビームセッターが、ヘッドランプの光学群、すなわち配向および/または強度を調整するための指示/情報を受信することを可能にする。これは、オペレータにとって安全な状態で迅速且つ簡単に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】EP3588001
【特許文献2】EP3628996A1
【特許文献3】US2012/224171A1
【特許文献4】GB2307312A
【国際調査報告】