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特表2023-536702電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物
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  • 特表-電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物 図1
  • 特表-電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物 図2
  • 特表-電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物 図3
  • 特表-電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物 図4
  • 特表-電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物 図5
  • 特表-電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物 図6
  • 特表-電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(54)【発明の名称】電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法、塗布装置、及び調製物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230822BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230822BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20230822BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230822BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230822BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230822BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20230822BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230822BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20230822BHJP
   B05D 1/34 20060101ALI20230822BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M4/04 Z
H01G11/86
H01G13/00 351A
B05C5/00 103
B05C11/10
B05D1/28
B05D1/34
B05D7/24 301K
H01G13/00 381
H01G13/00 391B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504238
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021070490
(87)【国際公開番号】W WO2022018190
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】20187223.1
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516091949
【氏名又は名称】イーティーエッチ チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】バーデ,ポール
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
5E078
5E082
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AC15
4D075AC76
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE23
4D075CA22
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB06
4D075DB07
4D075DC16
4D075DC19
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA10
4D075EA31
4D075EB24
4D075EB37
4D075EB51
4D075EB52
4D075EC01
4D075EC03
4D075EC05
4D075EC30
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA07
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA34
4F041CA07
4F041CA13
4F041CA16
4F041CA22
4F041CA25
4F042AA02
4F042BA04
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA25
4F042CB02
4F042CB10
4F042CB19
4F042ED02
5E078AA14
5E078AB01
5E078BB33
5E082BC38
5E082LL40
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ22
5H029CJ30
5H029HJ04
5H029HJ10
5H029HJ11
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA04
5H050HA10
5H050HA11
5H050HA12
(57)【要約】
本発明は、電気化学的貯蔵装置の機能層(110、120、130)を製造するための方法に関し、前記方法は:塗布装置(1)の第1のリザーバー(10)に第1の調製物(P1)を供給すること、前記塗布装置(1)の第2のリザーバー(20)に第2の調製物(P2)を供給すること、前記塗布装置(1)を基板(200)の上方に配置し、かつ前記塗布装置(1)を塗布方向(C)に沿って前記基板(200)に対して相対的に移動させること、前記塗布装置(1)の前記第1のリザーバー(10)から前記第1のスロット(11)を介して前記基板(200)の塗布面(210)に前記第1の調製物(P1)を吐出することであり、ここで前記第1のスロット(11)は、塗布方向(C)に垂直で、かつ塗布面(210)に平行な横軸(L)に沿って延在していること、及び前記塗布装置(1)の前記第2のリザーバー(20)から前記第2のスロット(21)を介して前記基板(200)上に前記第2の調製物(P2)を同時に吐出することであり、ここで前記第2のスロット(21)は横軸(L)に沿って延在していること、ここで前記第1の調製物(P1)と前記第2の調製物(P3)とは、前記塗布装置(1)と前記基板(200)との間にカーテン(310、320)を形成すること、及びここで前記電気化学的貯蔵装置の第1の機能層(110)が、前記第1の調製物(P1)から塗布面(210)上に形成され、かつ前記電気化学的貯蔵装置の第2の機能層(120)が、前記第2の調製物(P2)から前記第1の機能層(110)上に同時に形成されること、を含む。本発明はさらに、電気化学的貯蔵装置の機能層(110、120、130)を製造するための塗布装置(1)及び調製物(P1、P2、P3、P4)に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的貯蔵装置の機能層(110、120、130)を製造するための方法であって:
a. 塗布装置(1)の第1のリザーバー(10)内に第1の調製物(P1)を供給すること、
b. 前記塗布装置(1)の第2のリザーバー(20)内に第2の調製物(P2)を供給すること、
c. 前記塗布装置(1)を基板(200)の上方に配置し、かつ前記塗布装置(1)を塗布方向(C)に沿って前記基板(200)に対して相対的に移動させること、
d. 前記塗布装置(1)の前記第1のリザーバー(10)から第1のスロット(11)を介して前記第1の調製物(P1)を前記基板(200)の塗布面(210)上に吐出することであり、ここで前記第1のスロット(11)は塗布方向(C)に垂直で、かつ前記塗布面(210)に平行な横軸(L)に沿って延在していること、及び前記塗布装置(1)の前記第2のリザーバー(20)から第2のスロット(21)を介して前記基板(200)上に前記第2の調製物(P2)を同時に吐出することであり、ここで前記第2のスロット(21)は、横軸(L)に沿って延在していること、
e. ここで前記第1の調製物(P1)と前記第2の調製物(P3)とが、前記塗布装置(1)と前記基板(200)との間にカーテン(310、320)を形成することであり、ここで特に前記第1の調製物(P1)及び前記第2の調製物(P2)が、せん断減粘性挙動を示すこと、及び
f. ここで前記電気化学的貯蔵装置の第1の機能層(110)が前記第1の調製物(P1)から前記塗布面(210)上に形成され、かつ前記電気化学的貯蔵装置の第2の機能層(120)が第2の調製物(P2)から前記第1の機能層(110)上に同時に形成されること、
を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記第1の機能層(110)及び/又は前記第2の機能層(210)は、前記電気化学的貯蔵装置の固体電解質を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体電解質は、
a. 無機固体電解質、及び/又は
b. ポリマー電解質、特にポリマーと金属イオン塩との混合物を含むもの、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の機能層(110)及び/又は前記第2の機能層(210)は、
前記電気化学的貯蔵装置の
a. 正極又は負極、
b. 電子輸送媒体、特に集電体、及び/又は
c. 保護層、
を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の調製物(P1)及び/又は前記第2の調製物(P2)は、以下の成分:
i. 溶媒及び/又は重合性モノマー、
ii. 金属イオンホスト又は金属イオンホストを形成することができる前駆体、
iii. 固体イオン伝導体又は固体イオン伝導体を形成することができる前駆体、
iv. 固体電子伝導体、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の調製物(P1)と前記第2の調製物(P2)との界面で拡散が生じないように、前記第1の調製物(P1)及び前記第2の調製物(P2)は、同じ濃度で同じ溶媒及び/又は同じ重合性モノマー及び/又は同じ塩濃度を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の調製物(P1)及び/又は前記第2の調製物(P2)は、1000g mol-1~100000g mol-1の分子量を有する第1のポリマーと、300000g mol-1~1200000g mol-1の分子量を有する第2のポリマーとを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のリザーバー(10)及び前記第1のスロット(11)又は前記第2のリザーバー(20)及び前記第2のスロット(21)は、横軸(L)に沿って第1の部分(10a、20a)及び第2の部分(10b、20b)に分割され、前記第1の部分(10a、20a)と前記第2の部分(10b、20b)とは、物理的に互いに分離されており、特に前記第1の部分(10a、20a)は横軸(L)に沿って前記第1又は第2のリザーバー(10、20)の末端部分を形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の調製物(P2)は、第1の流量で前記第1の部分(10a、20a)に供給され、かつ前記第2の調製物(P2)は、第2の流量で前記第2の部分(10b、20b)に供給され、ここで前記第1の部分(20a)から吐出される前記第2の調製物(P2)によって形成された前記第2の機能層(120)が、前記第2の部分(20b)から吐出される前記第2の調製物(P2)によって形成された前記第2の機能層(120)より塗布面(210)に対して垂直方向に大きな厚さを備えるように、前記第1の流量及び前記第2の流量は設定されており、特に、前記第1の調製物(P1)によって形成された第1の機能層(110)は、前記第2の調製物(P2)によって形成された第2の機能層(120)によって埋め込まれるように、前記第1のスロット(11)は、前記第2の部分(20b)の幅(w)と等しい横軸(L)に沿って延びる幅(w)を備え、より特に、前記塗布装置(1)は、前記第1のスロット(11)から吐出される第1の調製物(P1)及び前記第2のスロット(21)から吐出される第2の調製物(P2)を受けるように構成された吐出面(2)を備え、特に、前記吐出面(2)は、それぞれの前記リザーバー(10、20)及びそれぞれの前記スロット(11、21)の前記第1の部分(10a、20a)の幅に対応して横軸(L)に沿う幅を備える凹部(2a)を備え、さらにより特に前記凹部(2a)は、塗布方向(C)において吐出面(2)全体に沿ってそれぞれの前記スロット(11、21)から延在している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1又は第2の調製物(P1、P2)及び前記さらなる調製物(P4)が前記基板(200)の塗布面(210)上に所与のパターンで配置されて前記第1又は第2の機能層(110、120)を共同で形成するように、前記第1又は第2の調製物(P1、P2)は、前記第1又は第2のリザーバー(10、20)の前記第1の部分(10a、20a)に供給され、かつ前記さらなる調製物(P4)は、前記第1又は第2のリザーバー(10、20)の前記第2の部分(10b、20b)に供給される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
電気化学的貯蔵装置の機能層(110、120、130)を製造するための塗布装置(1)であって、
a. 第1の調製物(P1)を受け入れるための第1のリザーバー(10)、
b. 前記第1の調製物(P1)が前記塗布装置(1)と塗布面(210)との間にカーテン(310)を形成するように、前記第1の調製物(P1)を前記第1のリザーバー(10)から基板(200)の前記塗布面(210)上に吐出するための第1のスロット(11)、
c. 第2の調製物(P2)を受け入れるための第2のリザーバー(20)、
d. 前記第2の調製物(P2)が前記塗布装置(1)と前記塗布面(210)との間にカーテン(320)を形成するように、前記第1の調製物(P1)と同時に、前記第2の調製物(P2)を前記第2のリザーバー(20)から前記塗布面(210)上に吐出するための第2のスロット(21)、
を備え、
e. ここで前記塗布装置(1)は、前記基板(200)の上方に配置するように構成され、かつ塗布方向(C)に沿って前記基板(200)に対して相対的に移動すること、
を含み、
前記電気化学的貯蔵装置の第1の機能層(110)が前記第1の調製物(P1)から前記塗布面(210)上に形成され、かつ前記電気化学的貯蔵装置の第2の機能層(120)が前記第2の調製物(P2)から前記第1の機能層(110)上に同時に形成されることが可能なように、前記第1のスロット(11)及び前記第2のスロット(21)は構成及び配置されていること、
を特徴とする、前記塗布装置(1)。
【請求項12】
前記第1のリザーバー(10)又は前記第2のリザーバー(20)は、横軸(L)に沿って第1の部分(10a、20a)と第2の部分(10b、20b)とに分割され、ここで前記第1の部分(10a、20a)と前記第2の部分(10b、20b)とは物理的に分離されており、前記第1又は第2のリザーバー(10、20)は、前記第1の部分(10a、20a)に接続された第1のポンプインレット(13a)、及び前記第2の部分(10b、20b)に接続された第2のポンプインレット(13b)を備え、前記第1のポンプインレット(13a)及び前記第2のポンプインレット(13b)は、前記第1の部分(10a、20a)及び前記第2の部分(10b、20b)にそれぞれの調製物を供給するためにそれぞれのポンプに接続するように構成され、特に前記第1の部分(10a、20a)は、横軸(L)に沿って前記第1のリザーバー(10)の末端部分を形成することを特徴とする、
請求項11に記載の塗布装置(1)。
【請求項13】
前記塗布装置(1)は、前記第1のスロット(11)から吐出される前記第1の調製物(P1)及び前記第2のスロット(21)から吐出される前記第2の調製物(P2)を受けるように構成された吐出面(2)を備え、特に前記吐出面(2)は、それぞれの前記リザーバー(10、20)及びそれぞれの前記スロット(11、21)の前記第1の部分(10a、20a)の幅に対応する横軸(L)に沿う幅を備える凹部(2a)を備え、より特に前記凹部(2a)は、塗布方向(C)において吐出面(2)全体に沿ってそれぞれの前記スロット(11、21)から延在していることを特徴とする、請求項11又は12に記載の塗布装置(1)。
【請求項14】
以下の成分:
i. 溶媒及び/又は重合性モノマー、
ii. 金属イオンホスト又は金属イオンホストを形成することができる前駆体、
iii. 固体イオン伝導体又は固体イオン伝導体を形成することができる前駆体、
iv. 固体電子伝導体又は固体電子伝導体を形成することができる前駆体、
のうちの少なくとも1つを含む、
電気化学的貯蔵装置の機能層(110、120、130)を形成するための調製物(P1、P2、P3、P4)であって、
特に前記調製物(P1、P2、P3、P4)は、せん断減粘性挙動を示し、前記調製物(P1、P2、P3、P4)が塗布装置(1)のスロット(11、21、31)から塗布面(210)上に吐出される場合に前記塗布装置(1)と基板(200)の塗布面(210)との間にカーテン(310、320、330)を形成することが可能である、前記調製物(P1、P2、P3、P4)。
【請求項15】
前記調製物(P1、P2、P3、P4)は、1000g mol-1~100000g mol-1の分子量を有する第1のポリマーと、300000g mol-1~1200000g mol-1の分子量を有する第2のポリマーとを含むことを特徴とする、請求項14に記載の調製物(P1、P2、P3、P4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための方法及び塗布装置、並びに電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための調製に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書が意味する範囲の電気化学的貯蔵装置とは、その化学組成物により電気エネルギーを蓄えることができる装置のことである。例えば、そのような装置は、電池(battery)であり得、特に固体電池、例えば固体リチウムイオン電池又は固体ナトリウムイオン電池、又はキャパシタ、例えばスーパーキャパシタであり得る。このような固体電池では、充放電時に電池の負極と正極との間を移動する充電種(例えば、リチウムイオン又はナトリウムイオン)が、固体電解質を形成する固体マトリックス(例えば、無機材料、ポリマー、又は無機材料とポリマーとの混合物を含むもの)に埋め込まれている。
【0003】
上記の電気化学的貯蔵装置は、電気化学的貯蔵装置において様々な機能を充足する機能層に構造化されていることが多い。機能層は、電気化学的能動層(活性層)であってもよく、すなわち、イオン又は電子などの荷電種を貯蔵又は輸送するように適合されていてもよく、又は電気化学的受動層(すなわち、荷電種を貯蔵又は輸送するように適合されていない)であってもよい。イオン貯蔵に適合した機能層は、負極層又は正極層などのインターカレーションホストであってもよい。さらに、イオン輸送用に構成される機能層は、例えば固体電解質であってもよく、電子輸送用に適合した機能層は、例えば集電体として機能してもよい。電気化学的受動層の非限定的な例は、活性層を例えば腐食又は劣化から保護するように適合された保護層(典型的には最外層に配置されるもの)である。
【0004】
固体電解質では、有機可燃性液体電解質の使用をせずに、液体の代わりに容易に燃焼しない固体に置き換える。これにより、そのような固体電気化学的貯蔵装置によって電力を供給される装置の使用中の火災の危険性が大幅に減少する。さらに、一部の固体電解質は、電気化学的により安定している。さらに、固体電解質電池は、固体電解質の構造的完全性が負極と正極との間の内部短絡を防ぐため、セパレーターを必要としない。活物質の一部の組み合わせ(すなわち、リチウム金属の使用を伴う)において、固体電解質電池は液体電解質を使用する最先端の電池よりもエネルギー密度を高くすることができる。
【0005】
これらの利点にもかかわらず、固体電解質を備える電気化学的貯蔵装置の製造コスト及び製造スループットは、従来技術の方法を用いた場合には最適とは言えない。そのため、固体電解質電池は、液体電解質を用いた電池と経済的競争ができないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、先行技術の方法と比較して製造時間及びコストを低減することができる、電気化学的貯蔵装置の機能層を製造するための方法(並びに塗布装置及び調製物)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の実施形態は、従属請求項に規定され、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に従う塗布装置の一部の塗布方向と平行な面における断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態による塗布装置の一部と、本発明による方法を実施する間に形成されるカーテン及び機能層の概略的な部分的切断透視図である。
図3図3は、分割されたマニホールド及び関連するポンプインレットを有する本発明の実施形態による塗布装置の概略的な透視図である。
図4図4は、本発明の実施形態による塗布装置と、本発明による方法の第1の実施形態で形成されたカーテン及び機能層の概略的な透視図である。
図5図5は、塗布方向に垂直な機能層の断面図であり、機能層は、図4に描かれた方法の実施形態に従って形成されたものである。
図6図6は、本発明の実施形態による塗布装置と、本発明による方法の第2の実施形態で形成されたカーテン及び機能層の概略的な透視図である。
図7図7は、塗布方向に垂直な機能層の断面図であり、機能層は、図6に描かれた方法の実施形態に従って形成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の態様は、電気化学的貯蔵装置の機能層を製造するための方法に関するものであり、前記方法は:
- 塗布装置の第1のリザーバーに第1の調製物を供給すること、
- 前記塗布装置の第2のリザーバーに第2の調製物を供給すること、
- 前記塗布装置を基板の上方に配置し、前記塗布装置を塗布方向に沿って前記基板に対して相対的に移動させること、
- 前記第1のリザーバーから前記塗布装置の第1のスロットを介して前記基板の塗布面上に前記第1の調製物を吐出することであり、ここで前記第1のスロットは、塗布方向に対して垂直で、かつ塗布面に対して平行な横軸に沿って延びていること、及び前記第2のリザーバーから前記塗布装置の第2のスロットを通して前記基板上に前記第2の調製物を同時に吐出することであり、ここで、前記第2のスロットは前記横軸に沿って延びていること、
- ここで前記第1の調製物及び前記第2の調製物が、前記塗布装置と前記基板との間にカーテンを形成すること、及び
- ここで前記電気化学的貯蔵装置の第1の機能層は、前記第1の調製物から前記基板の前記塗布面上に形成され、かつ前記電気化学的貯蔵装置の第2の機能層は、前記第2の調製物から前記第1の機能層上に同時に形成されること、
を含む。
【0010】
特定の実施形態では、第1の調製物と第2の調製物とは共同で塗布装置と基板との間にカーテンを形成する。
【0011】
特に、塗布装置は、少なくとも第1のスロット及び第2のスロット、並びに任意に第1及び第2のリザーバーを備える塗布ヘッド又はノズルを備えてもよい(あるいは、第1及び第2のリザーバーは、第1又は第2のスロットと流体接続されて塗布ヘッド又はノズルの外側に配置されてもよい)。例えば、第1のリザーバーと第2のリザーバーとは、塗布ヘッド又はノズルの空洞、あるいは塗布ヘッド又はノズルの空洞に挿入可能なマニホールドによって形成されてもよい。第1の調製物及び第2の調製物は、第1の調製物及び第2の調製物を別個の貯蔵リザーバーから塗布装置のそれぞれの第1又は第2のリザーバーに、例えばチューブ又は導管を介して輸送するポンプによって第1及び第2のリザーバーに供給されてもよい。もちろん、塗布装置は、電気化学的貯蔵装置の追加の機能層を堆積するために、特にそれを第1及び第2の機能層と同時に堆積するために、1つ又は複数の追加のリザーバー及び関連するスロットを備えてもよい。
【0012】
塗布装置は、特に、基板(例えば、フィルム又はウェブの形態のもの)をコンベアベルト上に置き、基板が塗布装置の塗布ヘッド又はノズルの下方に移動するようにコンベアベルトを駆動することによって基板に対して相対的に移動するが、ここで塗布装置は静止したままである。もちろん、基板を静止させたまま塗布装置の塗布ヘッド又はノズルを移動させることもまた本発明の範囲内であることが可能である。
【0013】
特に、塗布装置は、第1のスロットが第2のスロットよりも基板の塗布面の近くに配置されるように配置されている。このようにして、第1の機能層の上に第2の機能層が形成されることが確保される。
【0014】
特定の実施形態では、塗布装置の、特に塗布ダイの第1のスロット及び第2のスロット(及び任意に第3及び/又は少なくとも1つのさらなるスロット)から吐出される第1及び第2の調製物(及び任意に第3及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物)は、塗布装置の吐出面(「滑り部(スライド(slide))」とも称する)上で互いの上に層を形成し、かつ層状カーテンの状態で吐出面から基板の塗布面上に流れ落ちる。言い換えれば、第1の調製物と第2の調製物(任意で第3の調製物及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物)は、スライドカーテン塗布によって吐出される。このようにして、機能層を同時に生成することが可能である。
【0015】
あるいは、塗布装置(特に塗布ダイ)の底部側のスロットから第1及び第2の調製物を吐出させることも可能であり、ここではスロットの出口にて第1及び第2の調製物から層状カーテンが形成されるようにスロットは互いに隣接して配置されている。このような塗布装置には、特に吐出面(滑り部(スライド))は含まれない。この方法は「スロットカーテン塗布」としても知られ、対応する塗布ダイは「スロットダイ」と呼ばれる。スロット塗布とは対照的に、スライド塗布は、スロットの数、つまり生成される層の数が幾何学的な制約により制限されないという利点がある。
【0016】
第1の調製物及び第2の調製物は、塗布装置のそれぞれのスロットから吐出することができるように特に液体又はスラリーである。ここで、スラリーという用語は、液体の溶媒又はモノマーと、前記液体の溶媒又はモノマーに懸濁される粒子(特に1nm~500μmの直径を有する)とを含む組成物を表す。
【0017】
第1の調製物と第2の調製物とは、塗布装置のそれぞれのスロットから基板の塗布面上に吐出される間にカーテンを形成する。したがって、上記の方法は、カーテン塗布方法と表現することもできる。本明細書の範囲では、「カーテン」という用語は、液体材料又はスラリー材料の連続的な自由落下シートを表すものである。このようなカーテンを得るためには、それぞれの第1又は第2のスロットから吐出される第1又は第2の調製物の流量、基板が塗布装置に対して相対的に移動する塗布速度、及び第1及び第2の調製物のレオロジー特性(例えば粘度)(特に第1又は第2の調製物がせん断減粘性挙動、すなわち、せん断速度を上げると粘度が低下するような特性)を調節する必要がある。
【0018】
有利なことに、カーテン塗布は、流体力学的アシストと呼ばれる効果の恩恵を受ける:自由落下するカーテンは、基材の塗布面の衝突点に圧力場を作り、これにより、非常に速い塗布速度(例えば、約40m/分~2500m/分超過)でいずれの欠陥のない十分に薄い層(例えば、30μm以下、特に5μm以下)の形成が可能となる。
【0019】
さらに、本発明者らは、カーテン塗布によって、基板上に同時に複数の材料の層を塗布することが可能であることを見出した。そのため、別個の層を別々に加工(例えばドライプレス又はホットプレス)する必要がもはやなく、得られる電気化学的貯蔵装置の製造時間が大幅に改善される。
【0020】
特定の実施形態では、第3の調製物が塗布装置の第3のリザーバーに供給され、ここで第3の調製物は、第1の調製物及び第2の調製物と同時に塗布装置の第3のスロットを介して基板上に吐出され、第3の調製物は塗布装置と基板との間にカーテンを形成し、電気化学的貯蔵装置の第3の機能層は、第3の調製物から第2の機能層上に形成される。
【0021】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、及び第3の調製物は共同で、塗布装置と基板との間にカーテンを形成する。
【0022】
特定の実施形態では、少なくとも1つのさらなる調製物が塗布装置のさらなるリザーバーに供給され、ここで前記さらなる調製物が、第1の調製物、第2の調製物、及び第3の調製物と同時に塗布装置のさらなるスロットを介して基板上に吐出され、前記さらなる調製物が塗布装置と基板との間にカーテンを形成し、かつ電気化学的貯蔵装置のさらなる機能層が前記さらなる調製物から第3の機能層上に形成される。
【0023】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び少なくとも1つのさらなる調製物は共同で、塗布装置と基板との間にカーテンを形成する。
【0024】
特定の実施形態では、第1の調製物及び第2の調製物は(及び特に第3の調製物及び少なくとも1つのさらなる調製物もまた)、せん断減粘性挙動、すなわち、せん断速度の増加時に粘度が低下することを示す。
【0025】
特定の実施形態では、第1の調製物及び第2の調製物は(及び特に第3の調製物及び少なくとも1つのさらなる調製物もまた)、第1の調製物と第2の調製物と(特に、第1、第2、第3及び少なくとも1つのさらなる調製物のうちのいずれか)の界面で、特に電気化学的貯蔵装置の得られる機能層において拡散が生じないように同じ溶媒又は同じ重合性モノマーを同じ濃度で含んでいる。特定の実施形態では、第1の調製物及び第2の調製物は(及び特に、第3の調製物及び少なくとも1つのさらなる調製物もまた)、第1の調製物と第2の調製物と(特に、第1、第2、第3及び少なくとも1つのさらなる調製物のうちのいずれか)の界面で拡散が生じないように、同じ濃度の同じ塩組成を含んでいる。
【0026】
これにより、特に基板への堆積後に生成される機能層の拡散勾配を低減し、かつカーテン塗布時の層流と相まって、層間の混合を最小限に抑えるため、得られる機能層の界面の品質を向上させ、電気化学的貯蔵装置の品質を向上させる。
【0027】
特定の実施形態では、第1の機能層、第2の機能層、第3の機能層、及び/又は少なくとも1つのさらなる機能層は、電気化学的貯蔵装置の固体電解質を形成する。
【0028】
特定の実施形態では、固体電解質は、無機固体電解質、例えば、セラミック又はガラス材料を含む。このような無機固体電解質は、その化学量論的組成において、リチウム又はナトリウムを含んでいてもよい。
【0029】
特定の実施形態では、無機固体電解質は、LiPON、LiI、LiN、Li-β”-Al、Li3xLa2/3-x1/3-2xTiO(LLTO、ペロブスカイト)、LiOCl(反ペロブスカイト)、Li14ZnGe16(LiSICON),Li1.3Ti1.7Al0.3(PO(NaSICON型)、LiLaZr12(石榴石(ガーネット))、チオ-LiSICON、LiPSX(式中、Xは、Cl、Br又はIを示す)、アルジロダイト、及びLi10MP12(式中、Mは、Ge又はSnを示す)からなる群から選択される。
【0030】
特定の実施形態では、固体電解質はポリマー電解質を含み、特に固体電解質はポリマーと、金属イオン塩との混合物、より特にリチウム塩又はナトリウム塩との混合物を含む。
【0031】
特定の実施形態では、ポリマー電解質は、ポリマーと金属塩との混合物、異なるポリマーの混合物、ブロックコポリマー、又は単一イオン伝導性ポリマーの電解質を含み、特にリチウムポリマー塩を含む。
【0032】
特定の実施形態では、ポリマー電解質は、ポリエーテルを含み、特にポリエチレンオキシド(PEO)又はポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリニトリル、ポリアルコール、ポリアミン、又はポリ(ビス-(メトキシエトキシエトキシド)ホスファゼン(MEEP)を含む。
【0033】
特定の実施形態では、ポリマー電解質は、金属イオン塩を含み、特にLiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiCFSO(リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiTf))、又はLiN(CFSO(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI))を含む。
【0034】
特定の実施形態では、ポリマー電解質は、金属イオン塩を含み、特にNaBF、NaClO、NaPF、NaAsF、NaCFSO(トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム)、又はNaN(CFSO(ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を含む。
【0035】
特定の実施形態では、ポリマー電解質は、ポリマーと金属塩との混合物を含み、特に、ポリエチレンオキシドとLiBFとの混合物、ポリエチレンオキシドとLiClOとの混合物、ポリエチレンオキシドとLiPFとの混合物、ポリエチレンオキシドとLiAsFとの混合物、ポリエチレンオキシドとLiCFSOとの混合物、ポリエチレンオキシドとLiN(CFSOとの混合物、ポリプロピレンオキシドとLiClOとの混合物、ポリ(ビス-(メトキシエトキシエトキシド)ホスファゼンとLiCFSOとの混合物、又はポリシリコーンとLiN(CFSOとの混合物を含む。
【0036】
特定の実施形態では、ポリマー電解質は、5:1~50:1の官能基と電荷担体との比率(例えば、エチレンオキシドとリチウム)を具備している。換言すれば、ポリマーの官能基は、電荷担体である塩の金属イオンよりも5~50倍存在する。
【0037】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、ポリマーを含み、特にポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ゼラチン、でんぷん、寒天、アルギン酸塩、アミロース、アラビアゴム、カラギーナン、カゼイン、キトサン、(カルボニル-ベータ)シクロデキストリン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、ジェランガム、グアーガム、カラヤガム、セルロース、ペクチン、PEDOT-PSS、ポリ(アクリル酸メチル)(PMA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイソプレン(Plpr)、ポリアニリン(PANi)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、タラガム、トラガカントガム、TRD202A、又はキサンタンガムが含まれる。
【0038】
それぞれの調製物にポリマーを添加することで、結合剤の供給、調製物のレオロジー特性の調整を可能にし、特に固体電解質層を得るための固体イオン伝導体の提供を可能にする。
【0039】
特定の実施形態では、第1の機能層、第2の機能層、第3の機能層、又は少なくとも1つのさらなる機能層は、電気化学的貯蔵装置の正極又は負極を形成する。
【0040】
特定の実施形態では、第1の機能層、第2の機能層、第3の機能層、又は少なくとも1つのさらなる機能層は、電気化学的貯蔵装置の電子輸送媒体を形成し、特に集電体を形成する。
【0041】
特定の実施形態では、第1の機能層、第2の機能層、第3の機能層、又は少なくとも1つのさらなる機能層は、電気化学的貯蔵装置の保護層を形成する。特定の実施形態では、保護層は空気不透過性及び/又は水不透過性であり、特に保護層は機能層のスタックの最上層又は最下層である(すなわち、保護層は最初の(底部)機能層又は最後の(頂部)機能層として基板上に塗布される)。これは、他の機能層が湿気及び/又は空気から保護されるため、電気化学的貯蔵装置の誤動作を防ぎ、品質保持性を向上させるのに有利である。
【0042】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、溶媒を含む。この溶媒は、特に各機能層の形成後に蒸発し、その結果、電気化学的貯蔵装置の固形分が増加する。
【0043】
特定の実施形態では、溶媒は、水、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、アルコール、特にエタノール若しくはメタノール、又はテトラヒドロフランを含むか、又はそれらからなる。
【0044】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、重合性モノマーを含み、ここで特にモノマーの重合は金属イオンによって促進又は開始される。あるいは、モノマーの重合は、特定の波長の電磁放射によって(例えば、光重合)、又はラジカルの付加(ラジカル重合)によって開始することができる。重合性モノマーは、特に粒子を懸濁させてスラリーを形成するための溶媒として機能してもよいし、又はモノマーは溶媒の他に供給されてもよい。重合性モノマーを含む調製物は、その後の溶媒蒸発工程を省略し、電気化学的貯蔵装置の製造を大幅に加速できる重合工程で置き換えることができるという利点を有する。
【0045】
特定の実施形態では、重合性モノマーの重合は、基材の塗布面上に第1の機能層、第2の機能層、第3の機能層、及び/又は少なくとも1つのさらなる機能層を形成した後に開始される。
【0046】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、金属イオンホスト、特に変換材料又はインターカレーション材料を含む。特に、このような金属イオンホストを含む機能層は、電気化学的貯蔵装置の負極又は正極として機能することができる。
【0047】
特定の実施形態では、金属イオンホストは、正極活物質、特にリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(Li-NMC、例えば、LiaNiMnCo)、リン酸鉄リチウム(LFP、LiFePO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(Li-NCA、例えばLiNiCoAl)、リチウムコバルト酸化物(LCO、LiCoO)、又はリチウムマンガン酸化物(LMO、LiMn)を含むか、又はそれからなる。
【0048】
特定の実施形態では、金属イオンホストは、負極活物質、特にグラファイト、シリコン、チタン酸リチウム(LTO、LiTi12)、又は酸化チタン(TiO)を含むか、又はそれからなる。
【0049】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、金属イオンホスト、特に変換材料又はインターカレーション材料を形成することができる前駆体を含む。金属イオンホストは、カーテン塗布によって電気化学的貯蔵装置のそれぞれの機能層を形成した後に開始されるか、又は自動的に起こる化学反応によって前駆体から形成されてもよい。例えば、前駆体は、硝酸塩、炭酸塩又は水酸化物であってもよい。
【0050】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、固体イオン伝導体を含み、特に無機材料(例えば、セラミック又はガラス材料)又はポリマー電解質を含む。
【0051】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、固体イオン伝導体を形成することができる前駆体を含み、特に無機材料(例えばセラミック又はガラス質/非晶質材料)又はポリマー電解質を含む。固体イオン伝導体は、カーテン塗布によって電気化学的貯蔵装置のそれぞれの機能層を形成した後に開始されるか、又は自動的に起こる化学反応によって、前駆体から形成されてもよい。ポリマー電解質の場合、この化学反応は重合反応であってもよく、前駆体は重合によりポリマーを形成することができるモノマーであってもよい。あるいは、特に、前駆体は、硝酸塩、炭酸塩又は水酸化物であってもよい。
【0052】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、固体電子伝導体を含み、特に金属(例えばアルミニウム又は銅)又は炭素(例えばカーボンブラック)を含む。
【0053】
特定の実施形態では、固体電子伝導体は、導電性繊維、特にカーボンナノチューブを含む。これらの導電性繊維は、電子伝導体として同時に機能し、かつ調製物のレオロジー特性(粘性)を向上させ、その結果、塗布時のカーテンの安定性が向上する。
【0054】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、界面活性剤を含む。
【0055】
特定の実施形態では、第1の機能層は、電気化学的貯蔵装置の正極又は負極を形成し、第2の機能層は固体電解質を形成する。
【0056】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、1mPa秒~100000mPa秒、特に100mPa秒~1000mPa秒の低せん断粘度を具備している。
【0057】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、リチウムイオン又はナトリウムイオンを含む。
【0058】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、液体金属を含み、特に液体リチウム、液体ガリウム、又は液体リチウムと液体ガリウムとの混合物(合金が得られる)、又は金属粒子(特に金属ペーストが得られる)を含む。有利なことに、リチウム及びガリウムは、製造を容易にする比較的低い溶融温度を有する。金属は特に、集電体などの電子伝導体、及び金属イオンのホストを形成する(例えば、イオンが金属層上に堆積物を形成する)。本発明による方法によって集電体を形成することは、従来技術の方法とは対照的に、非常に薄い(例えば、5μm以下)集電体層を形成することができ、その結果、電気化学的貯蔵装置の品質が向上するという利点を有する。集電体と金属イオンホストとを組み合わせた場合、電気化学的貯蔵装置の厚さをさらに薄くすることができる。
【0059】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、液体金属を含み、特に液体リチウム、液体ガリウム、又は液体リチウムと液体ガリウムとの混合物を含み、ここで調製物は基板の塗布面への吐出の前及び/又は吐出中に加熱される。
【0060】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、1000g mol-1~100000g mol-1の分子量を有する第1のポリマーと、300000g mol-1~1200000g mol-1の分子量を有する第2のポリマーとを含む。特に、この二峰性サイズ分布により、最適なレオロジー特性を得ることができ、同時に、固体電気化学的貯蔵装置のポリマー電解質に最適な条件が提供される。また、調製物の固形分が多くなるため乾燥時間が短縮される。
【0061】
特定の実施形態では、塗布装置、特に塗布ヘッド又はノズルは、塗布装置の第1及び第2のスロット(及び任意に第3及び/又は少なくとも1つのさらなるスロット)から吐出された第1及び第2の調製物(及び任意に第3及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物)を受け取るように構成された吐出面を備え、特に第1の調製物及び第2の調製物(及び任意に第3の調製物及び少なくとも1つのさらなる調製物)が吐出面上に互いの上に層を形成し、これらの層が塗布装置と基板の塗布面の間に層状のカーテンを形成する。
【0062】
特定の実施形態では、第1のリザーバーと第1のスロット、第2のリザーバーと第2のスロット、第3のリザーバーと第3のスロット、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーと少なくとも1つのさらなるスロットとは、横軸に沿って第1の部分と第2の部分とに分けられ、第1の部分と第2の部分とは物理的に分離されて、第1と第2の部分間のそれぞれの調製物の流動を防止している。特に、第1の部分は、前記横軸に沿ったそれぞれのリザーバーの末端部分を形成する。
【0063】
特定の実施形態では、第1のリザーバーと第1のスロット、第2のリザーバーと第2のスロット、第3のリザーバーと第3のスロット、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーと少なくとも1つのさらなるスロットとは、第1の部分及び第2の部分から物理的に分離されている第3の部分をさらに備え、特に第2の部分は第1の部分と第3の部分の間に配置されており、第1の部分及び第2の部分は横軸に沿ってそれぞれのリザーバーの対向する末端部分を形成する。
【0064】
例えば、塗布ヘッド又はノズルの一体型壁がそれぞれのリザーバーのこれらの部分を分離することによって、塗布ヘッド又はノズルの凹部のそれぞれの部分に別々のマニホールドを配置することによって、又はそれぞれのリザーバーにセパレーターを挿入することによって、部分間の物理的分離が実現可能である。
【0065】
特定の実施形態では、それぞれのスロットの第1の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層が、それぞれのスロットの第2の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層より塗布面に垂直な方向に大きな厚さを備えるように、特に第1の流量が第2の流量より大きくなるように、第1、第2、第3、又は少なくとも1つのさらなる調製物は、第1の流量でそれぞれのリザーバーの第1の部分に供給され、第2の調製物は、第2の流量でそれぞれのリザーバーの第2の部分に供給される。
【0066】
特定の実施形態では、吐出面は、それぞれのリザーバー及びそれぞれのスロットの第1の部分の幅に対応する横軸に沿った幅を構成する凹部を備え、特に前記凹部は、それぞれのスロットから吐出面全体に沿って塗布方向に延在している。特に、吐出面に垂直な凹部の深さは、第1の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層と、第2の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層との厚さの差に相当する。
【0067】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、又は少なくとも1つのさらなる調製物は、第3の流量でそれぞれのリザーバーの第3の部分に供給され、それにより、それぞれのスロットの第3の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層が、それぞれのスロットの第2の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層よりも塗布面に垂直な方向に大きな厚さを備えるようにし、特に、第3の流量が第1の流量と等しく、かつ第3の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層の厚みが、第1の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層の厚みと等しい。
【0068】
特定の実施形態では、吐出面は、それぞれのリザーバー及びそれぞれのスロットの第3の部分の幅に対応する横軸に沿った幅を備える凹部を備え、特に前記凹部は、それぞれのスロットから吐出面全体に沿って塗布方向に延在している。特に、吐出面に垂直な凹部の深さは、第3の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層と、第2の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層との厚さの差に相当する。
【0069】
特定の実施形態では、第2の調製物が、第1の部分に第1の流量で供給され、かつ第2の調製物が第2の部分に第2の流量で供給され、それにより、第2のスロットの第1の部分から吐出される第2の調製物によって形成された第2の機能層が、第2のスロットの第2の部分から吐出される第2の調製物によって形成された第2の機能層よりも塗布面に垂直な方向に大きな厚さを備えるようにする。特に、第1のスロットは、第2のスロットの第2の部分の幅と等しい横軸に沿って延びる幅を備え、特にそれにより、第1の調製物によって形成された第1の機能層が、第2の調製物によって形成された第2の機能層によって埋め込まれるようにする。
【0070】
特定の実施形態では、第2の調製物が、第3の流量で第2のリザーバーの第3の部分に供給され、それにより、第2のスロットの第3の部分から吐出される第2の調製物によって形成された機能層が、第2のスロットの第2の部分から吐出される第2の調製物によって形成された機能層よりも塗布面に対して垂直な方向に大きな厚さを備えるようにし、特に第3の流量は第1の流量と等しく、かつ第3の部分から吐出される第2の調製物によって形成された機能層の厚さが第1の部分から吐出される第2の調製物によって形成された機能層の厚さと等しくなるようにする。
【0071】
上記のとおり、それぞれのリザーバーの異なる部分に異なる流量で調製物を供給することは、別のスロットを介して適用される隣接する機能層を横方向に埋め込むためか、又は機能層間に相互接続を形成するために用いることが、特にこのスロットが第2(中間)の部分の幅と等しい幅を備える場合に可能である。所与の厚みを実現するために必要な流量は、横軸に沿ったスロットの幅に依存する。第1及び/又は第3の部分の幅に対応する吐出面の任意の凹部によって、上部層の平坦な表面を維持しながら下部の機能層を上部の機能層によって埋め込むことができ、これは上部層にさらなる層を堆積させるために有利である。
【0072】
特定の実施形態では、第1又は第2の調製物、及びさらなる調製物は、電気化学的貯蔵装置の第1又は第2の機能層を共同して形成するために、基板の塗布面上に所定のパターンで配置されるように第1又は第2の調製物は第1の部分から吐出され、かつさらなる調製物は第2の部分から吐出される。
【0073】
例えば、固体電解質電池の固体電解質を、例えば活物質の層(負極又は正極)又は保護層によって横方向に埋め込むため、あるいは層間の相互接続を単一の製造工程で形成するために適用することができる。
【0074】
もちろん、機能層の特定のパターンを得るため、及び層間の相互接続を可能にするために、リザーバーと関連するスロットとを追加の部分(第1、第2、及び第3の部分以外)に分割することができる。
【0075】
特定の実施形態では、機能層は、化学的、熱的、光学的、又は機械的に励起されて、機能層の組成及び/又は構造が変化する。
【0076】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、溶媒を含み、この溶媒を、基板の塗布面上に機能層を形成した後に蒸発させる。
【0077】
特定の実施形態では、機能層を、基材の塗布面上に機能層を形成した後に乾燥させる。
【0078】
特定の実施形態では、機能層を乾燥させる間、機能層を電界及び/又は磁界に曝露させる。特に、この結果、固体電解質機能層中に、形態及び方向性が規定された伝導性ネットワークが形成され(例えば、リチウムイオンチャネルの形成)、これにより電気化学的貯蔵装置の品質が向上する。
【0079】
特定の実施形態では、少なくとも2つの隣接する機能層を、基材の塗布面上に機能層を形成した後に架橋する。言い換えれば、隣接する層の界面は、層の化学基間の化学反応によって連結され、その結果、機械的安定性が向上し、特に層間の後続の化学反応が低減され、及び/又は層の界面を介したイオン伝導性が改善される。
【0080】
特定の実施形態では、基板の塗布面に機能層を形成した後に、圧力及び/又は熱が機能層に適用される。
【0081】
特定の実施形態では、機能層は、基板の塗布面上に機能層を形成した後にカレンダー処理される。カレンダー処理は、機能層のスタックを、さらなる加熱のあり又はなしで、小さな隙間で隔てられた2つのローラーの間を通過させることで実施することができ、その結果、層が圧縮される。
【0082】
特定の実施形態では、基板の塗布面上に機能層を形成した後に、機能層の少なくとも1つにおいて化学反応が生じ、特にこの化学反応は、モノマーの重合、前駆体からの金属イオンホストの形成、前駆体からの固体イオン伝導体の形成、又は前駆体からの固体電子伝導体の形成を引き起こす。
【0083】
特定の実施形態では、機能層は、基材の塗布面上に機能層を形成した後に、特に熱、放射線(例えば赤外線放射、光、例えばレーザー光又はマイクロ波)を適用することによって、焼結される。
【0084】
特定の実施形態では、基板は、基板の塗布面に機能層を形成した後に機能層から除去される。換言すれば、基板は犠牲層として使用され、電気化学的貯蔵装置の機能層をカーテン塗布した後、剥離又は除去される。これは、電気化学的貯蔵装置の総重量が減少するという利点を有する。さらに、剛性基板を除去することにより、電気化学的貯蔵装置の機能層スタックの形状を適合させることを可能にし、又は機能層の使用される成分に応じて柔軟な電気化学的貯蔵装置を実現することさえ可能になり、例えば電気化学的貯蔵装置をテキスタイル又はウェアラブルな装置に統合することが可能になる。
【0085】
特定の実施形態では、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、又は少なくとも1つのさらなる調製物は、ポリマーを含み、第1の調製物及び/又は第2の調製物は、ポリマーの融点を超える温度で基板の塗布面上に吐出される。ここでは、特に、第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物は、溶媒を含有しない。このような無溶媒調製物を用いると、溶媒を蒸発させる代わりに冷却する(ポリマーの固化をもたらす)ことで固形分の高い機能層を形成できるため、製造方法でのスピードが向上する。
【0086】
本発明の第2の態様は、
- 第1の調製物を受け入れるための第1のリザーバー、
- 塗布面に第1の調製物を吐出する間に塗布装置と基板との間にカーテンを形成するように、前記第1のリザーバーから基板の塗布面に前記第1の調製物を吐出するための第1のスロット、
- 第2の調製物を受け入れるための第2のリザーバー、
- 前記第2の調製物を塗布面に吐出する間に塗布装置と塗布面との間に第2の調製物がカーテンを形成するように、前記第1の調製物と同時に前記第2の調製物を前記第2のリザーバーから塗布面に吐出するための、第1のスロットと平行に延在する第2のスロット、
を含み、
- ここで前記塗布装置は、前記基板の上方に配置され、かつ前記基板に対して塗布方向に沿って相対的に移動すること、
を含む、
電気化学的貯蔵装置の機能層を製造するための塗布装置に関するものである。
【0087】
特定の実施形態では、第1のスロット及び第2のスロットは、電気化学的貯蔵装置の第1の機能層を第1の調製物から塗布面上に形成することができ、かつ電気化学的貯蔵装置の第2の機能層を第2の調製物から第1の機能層上に同時に(第1の機能層と共に)形成することができるように構成及び配置されている。
【0088】
特定の実施形態では、塗布装置は、第3の調製物を受け入れるための第3のリザーバーと、第3のリザーバーから基板の塗布面上に第3の調製物を吐出するための第3のスロットとを備え、それにより、第3の調製物を塗布面に吐出する間に塗布装置と基板との間に第3の調製物がカーテンを形成するようにし、特にここで該第3のスロットが、電気化学貯蔵装置の第3の機能層を第1及び第2の機能層と同時に第2の機能層上に形成することができるように構成及び配置されている。
【0089】
特定の実施形態では、塗布装置は、さらなる調製物を受け入れるための少なくとも1つのさらなるリザーバーと、さらなるリザーバーから基板の塗布面にさらなる調製物を吐出するための少なくとも1つのさらなるスロットとを備え、それにより、さらなる調製物を塗布面に吐出する間に塗布装置と基板との間にさらなる調製物がカーテンを形成するようにし、特にここで、電気化学的貯蔵装置のさらなる機能層を、第1、第2(及び任意に第3)の機能層と同時に、より特に第3の機能層上に、形成できるように少なくとも1つのさらなるスロットが構成及び配置されている。
【0090】
特定の実施形態では、塗布装置、特に塗布ヘッド又はノズルは、塗布装置の第1及び第2のスロット(及び任意に第3及び/又は少なくとも1つのさらなるスロット)から吐出される第1及び第2の調製物(及び任意に第3及び/又は少なくとも1つのさらなる調製物)を受け取るように構成された吐出面を備え、特に第1の調製物及び第2の調製物(及び任意に第3の調製物及び少なくとも1つのさらなる調製物)が吐出面上に互いの上に層を形成し、かつこれらの層が塗布装置と基板の塗布面との間に層状のカーテンを形成するように、吐出面を配置することが可能である。このようにして、機能層を同時に製造することが可能である。
【0091】
特に、塗布装置は、少なくとも第1のスロット、第2のスロット、第3のスロット、及び/又は少なくとも1つのさらなるスロットと、任意にまた第1のリザーバー、第2のリザーバー、第3のリザーバー、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーとを備える塗布ヘッド又はノズルを備えることができる(あるいは、第1、第2、第3、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーは、塗布ヘッド又はノズルの外側に配置され、かつそれぞれの第1、第2、第3、又はさらなるスロットと流体接続状態に配置されてもよい)。例えば、第1、第2、第3、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーは、塗布ヘッド又はノズルの空洞によって、又は塗布ヘッド又はノズルの空洞に挿入可能なマニホールドによって形成されてもよい。第1の調製物、第2の調製物、第3の調製物、及び/又は第4の調製物は、それぞれの調製物を別個の貯蔵リザーバーから塗布装置のそれぞれのリザーバーに、例えばチューブ又は導管を介して輸送するポンプによって、それぞれ第1、第2、第3又はさらなるリザーバー内に供給されてもよい。
【0092】
特定の実施形態では、塗布装置は、塗布装置と基板の塗布面との間のカーテンのネック形成を防止するように構成されたエッジガイドを備える。ここで、表面張力によって横軸方向に沿ってカーテンが薄くなることを「ネック形成」と呼ぶ。特に、エッジガイドは、吐出面の両方の側端から塗布面に向かって垂直方向に延びるタブ又はプレートを備えるか、又はそれからなる。
【0093】
特定の実施形態では、塗布装置は、コンベヤ機構、例えばコンベヤベルトを備え、これは塗布装置に対して、特に塗布ヘッド又はノズルに対して、塗布方向に逆らって基材(例えば、フィルム又はウェブの形態のもの)を移動させるように構成されたものであり、塗布装置、特に塗布ヘッド又はノズルは、静止したままである。特に、基材がウェブ、フィルム、又はホイルである場合、基材は追加のコンベアベルトなしで、それ自体で移動することができる。
【0094】
特定の実施形態では、塗布装置は、塗布方向に沿って基板に対して塗布ヘッド又はノズルを相対的に移動させるように構成されたアクチュエータを備える。
【0095】
特定の実施形態では、第1のリザーバー、第2のリザーバー、第3のリザーバー、及び/又はさらなるリザーバーは、ポンプによってそれぞれのリザーバー内に調製物が供給されるように、ポンプをそれぞれのリザーバーに接続するためのそれぞれのポンプインレットを備える。第1、第2、第3、及び/又はさらなるリザーバーのポンプインレットは、同じポンプに接続されてもよいし、又は別個のポンプに接続されてもよい。
【0096】
特定の実施形態では、塗布装置は、第1のリザーバー、第2のリザーバー、第3のリザーバー、及び/又はさらなるリザーバーのポンプインレットに接続される少なくとも1つのポンプを備える。
【0097】
特定の実施形態では、第1のリザーバー(及び第1のスロットも)、第2のリザーバー(及び第2のスロットも)、第3のリザーバー(及び第3のスロットも)、及び/又はさらなるリザーバー(及びさらなるスロットも)は、横軸に沿って(それぞれ)第1の部分及び(それぞれ)第2の部分に分割され、ここで第1の部分及び第2の部分は物理的に分離されている。ここでは、特に、第1のリザーバー、第2のリザーバー、第3のリザーバー、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーは、第1の部分に接続された第1のポンプインレット、及び第2の部分に接続された第2のポンプインレットを備え、ここで第1のポンプインレット及び第2のポンプインレットは、第1の部分及び第2の部分にそれぞれの調製物を供給するためにそれぞれのポンプに接続されるように構成される。特に、第1の部分は、横軸に沿って第1、第2、第3、又はさらなるリザーバーの第1の末端部分を形成する。言い換えれば、第1の部分は、横軸に沿ってそれぞれの第1、第2、第3、又はさらなるリザーバーの末端を形成する壁によって画定される。
【0098】
特定の実施形態では、第1のリザーバー、第2のリザーバー、第3のリザーバー、及び/又はさらなるリザーバーは、第3の部分を備え、ここで第2の部分は、横軸に沿って第1の部分と第3の部分との間に配置されている。特に、第3の部分は、第1の末端部分に対向するそれぞれのリザーバーの第2の末端部分を形成する。特に、それぞれのリザーバーは、第3の部分に接続される第3のポンプインレットを備える。
【0099】
特定の実施形態では、第2の機能層が第1の機能層に対して横方向に形成され、特にそれによって第1の機能層が埋め込まれ得るように、第2のスロットの第1の部分及び/又は第3の部分は、横軸に沿って第1のスロットを超えて延在する。換言すれば、第2のスロットは、第1のスロットよりも幅が広い。
【0100】
特定の実施形態では、塗布装置は、第1、第2、第3、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーの第1の部分に接続されている第1のポンプインレットに接続されている第1のポンプと、第1、第2、第3、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーの第2の部分に接続されている第2のポンプインレットに接続されている第2のポンプとを備える。特に、塗布装置は、第1、第2、第3、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーの第3の部分に接続されている第3のポンプインレットに接続されている第3のポンプを備える。
【0101】
このセットアップを使用して、リザーバーのこれらの部分に異なる調製物を供給し、関連するスロット部分からこれを吐出して、例えば特定の層を埋め込むか、又は層間の相互接続を形成するなど、所定の材料のパターンを構成する機能層を得ることができる。
【0102】
特定の実施形態では、塗布装置は、特にそれぞれのスロットの第1の部分から吐出されたそれぞれの調製物によって形成された機能層が、それぞれのスロットの第2の部分から吐出された調製物、特に第2の調製物によって形成された機能層よりも塗布面に垂直な方向に大きな厚さを備えるように、第1のポンプの第1の流量及び第2のポンプの第2の流量を設定するように構成されたポンプコントローラを備える。
【0103】
特定の実施形態では、吐出面は、それぞれのリザーバー及びそれぞれのスロットの第1の部分の幅に対応して横軸に沿って幅を備える凹部を備え、特に前記凹部は、それぞれのスロットから吐出面全体に沿って塗布方向に延在している。それぞれのスロットの第1の部分から吐出される機能層と、それぞれのスロットの第2の部分から吐出される機能層との厚さの差に凹部の深さが相当する場合、これにより、上部機能層の平坦な表面を維持しながら、下部機能層を埋め込む上部機能層を得ることが可能になる。
【0104】
特定の実施形態では、塗布装置は、第1、第2、第3、及び/又は少なくとも1つのさらなるリザーバーの第3の部分に接続されている第3のポンプインレットに接続されている第3のポンプをさらに備え、ここでポンプコントローラは、第3のポンプの第3の流量を設定するように構成されており、それにより、特に、それぞれのスロットの第3の部分から吐出されるそれぞれの調製物によって形成される機能層が、それぞれのスロットの第2の部分から吐出される調製物によって形成される機能層よりも塗布面に対して垂直な厚さを大きくするようにし、ここでは特に第3の流量は第1の流量に等しくする。あるいは、特定の実施形態では、第1のポンプは、第1、第2、第3、又は少なくとも1つのさらなるリザーバーの第3の部分に接続される第3のポンプインレットに、(第1の部分に接続される第1のポンプインレットに加えて)さらに接続され、それにより、特に、第1の部分及び第3の部分から吐出される調製物によって形成された機能層が同じ厚さを備えるようにする。
【0105】
特定の実施形態では、吐出面は、それぞれのリザーバー及びそれぞれのスロットの第3の部分の幅に対応して横軸に沿って幅を備える凹部を備え、特に前記凹部は、それぞれのスロットから吐出面全体に沿って塗布方向に延在している。凹部の深さがそれぞれのスロットの第3の部分から吐出される機能層と、それぞれのスロットの第2の部分から吐出される機能層との厚さの差に相当する場合、これにより、上部機能層の平坦な表面を維持しながら、下部機能層を埋め込む上部機能層を得ることが可能になる。
【0106】
特定の実施形態では、塗布装置は、第2のリザーバーの第1の部分に接続される第1のポンプインレットに接続される第1のポンプと、第2のリザーバーの第2の部分に接続される第2のポンプインレットに接続される第2のポンプとを備え、ここで塗布装置は、第1のポンプの第1の流量及び第2のポンプの第2の流量を設定するように構成されたポンプコントローラを備え、それにより、それぞれのスロットの第1の部分から吐出される第2の調製物によって形成された機能層が、第2の部分から吐出される第2の調製物によって形成された機能層よりも塗布面に垂直な方向に大きな厚さを備えるようにし、ここで特に第1のスロットが、第2のスロットの第2の部分の幅に等しい横軸に沿って延びる幅を備え、それにより、特に第1の調製物によって形成された第1の機能層が第2の調製物によって形成された第2の機能層に埋め込まれているようにする。
【0107】
分割されたリザーバー(及びスロット)を有する上述の実施形態は、電気化学的貯蔵装置の1つの機能層において異なる調製物を所定のパターンで適用することを可能にする。例えば、これは、固体電解質電池の固体電解質を、活物質の層(負極又は正極)又は保護層によって横方向に埋め込むため、又は1回の製造工程でさらなる層によって分離される2層間に相互接続を形成するために適用することができる。あるいは、異なる部分からの調製物を異なる流量で適用することが可能である。例えば、中央の(第2の)部分よりも外側の(第1及び/又は第3の)部分で、より高い流量が適用されてもよい。これは、別個のスロットを介して適用された先の機能層を横方向に埋め込むために使用することができ、特にこのスロットが第2の(中間の)部分の幅と等しい幅を備えている場合に使用することができる。
【0108】
本発明の第3の態様は、電気化学的貯蔵装置の機能層を形成するための調製物(すなわち、上記の第1、第2、第3、又は少なくとも1つのさらなる調製物)に関するものである。
【0109】
特定の実施形態では、調製物は、せん断減粘性挙動を示し、すなわち、せん断速度の増加時における粘度の低下を示す。
【0110】
特定の実施形態では、調製物は、液体又はスラリーである。
【0111】
特定の実施形態では、調製物は、溶媒を含む。
【0112】
特定の実施形態では、調製物は重合性モノマーを含み、特にモノマーの重合は、金属イオン、より特にリチウムイオンによって開始又は促進される。あるいは、モノマーの重合は、特定の波長の電磁放射によって(例えば、光重合)、又はラジカルの付加(ラジカル重合)によって開始することができる。
【0113】
特定の実施形態では、調製物は、特に変換材料又はインターカレーション材料を含む、金属イオンホスト又は金属イオンホストを形成することができる前駆体を含む。
【0114】
特定の実施形態では、調製物は、特に金属イオン、より特にリチウムイオン又はナトリウムイオンを含む無機材料を含む、固体イオン伝導体又は固体イオン伝導体を形成することができる前駆体を含む。
【0115】
特定の実施形態では、調製物は、特に金属若しくは炭素を含む、固体電子伝導体、又は固体電子伝導体を形成することができる前駆体を含む。
【0116】
特定の実施形態では、調製物が塗布装置のスロットから塗布面上に吐出される際に、塗布装置と基板の塗布面との間に調製物がカーテンを形成することができるように、調製物は、1mPa秒~100000mPa秒、特に100mPa秒~1000mPa秒の低せん断粘度を備える。
【0117】
特定の実施形態では、調製物は、1000g mol-1~100000g mol-1の分子量を有する第1のポリマーと、300000g mol-1~1200000g mol-1の分子量を有する第2のポリマーとを含む。特に、この二峰性サイズ分布により、最適なレオロジー特性を得ることができ、同時に、固体電気化学的貯蔵装置のポリマー電解質に最適な状態を提供する。また、調製物の固形分が多くなるため乾燥時間が短縮される。
【0118】
特定の実施形態では、調製物は、ポリマーを含み、特にポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ゼラチン、でん粉、寒天、アルギン酸塩、アミロース、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、キトサン、(カルボニル-β)シクロデキストリン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、ジェランガム、グアーガム、カラヤガム、セルロース、ペクチン、PEDOT-PSS、ポリ(アクリル酸メチル)(PMA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイソプレン(Plpr)、ポリアニリン(PANi)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、タラガム、トラガカントガム、TRD202A、又はキサンタンガムを含む。
【0119】
調製物にポリマーを添加することで、結合剤の供給、調製物のレオロジー特性の調整を可能にし、かつ特に固体電解質層を得るための固体イオン伝導体の提供も可能にする。
【0120】
特定の実施形態では、調製物は、溶媒を含む。この溶媒は、特に各機能層の形成後に蒸発し、その結果、電気化学的貯蔵装置の固形分が増加する。特定の実施形態では、溶媒は、水、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、アルコール、特にエタノール若しくはメタノール、又はテトラヒドロフランを含むか、又はそれらからなる。
【0121】
特定の実施形態では、調製物は重合性モノマーを含み、特にモノマーの重合は、金属イオンによって促進又は開始される。重合性モノマーは、特に粒子を懸濁してスラリーを形成するための溶媒として機能してもよく、又はモノマーは溶媒の他に提供されてもよい。重合性モノマーを含む調製物は、その後の溶媒蒸発工程を省略し、かつ電気化学的貯蔵装置の製造を大幅に加速できる重合工程で置き換えることができるという利点を有する。
【0122】
特定の実施形態では、調製物は、金属イオンホストを含み、特に変換材料又はインターカレーション材料を含む。特に、このような金属イオンホストを含む機能層は、電気化学的貯蔵装置の負極又は正極として機能することができる。
【0123】
特定の実施形態では、金属イオンホストは、正極活物質を含むか、又はそれからなり、特にリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(Li-NMC、例えば、LiNiMnCo)、リン酸鉄リチウム(LFP、LiFePO)、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物(Li-NCA、例えばLiNiCoAl)、リチウムコバルト酸化物(LCO、LiCoO)、又はリチウムマンガン酸化物(LMO、LiMn)を含むか、又はそれからなる。
【0124】
特定の実施形態では、金属イオンホストは、負極活物質、特にグラファイト、シリコン、チタン酸リチウム(LTO、LiTi12)又は酸化チタン(TiO)を含むか、又はそれからなる。
【0125】
特定の実施形態では、調製物は、金属イオンホスト、特に変換材料又はインターカレーション材料を形成することができる前駆体を含む。金属イオンホストは、カーテン塗布によって電気化学的貯蔵装置のそれぞれの機能層を形成した後に開始されるか、又は自動的に起こる化学反応によって、前駆体から形成されてもよい。例えば、前駆体は、硝酸塩、炭酸塩又は水酸化物であってもよい。
【0126】
特定の実施形態では、調製物は、固体イオン伝導体を含み、特に無機材料(例えば、セラミック又はガラス材料)又はポリマー電解質を含む。
【0127】
特定の実施形態では、調製物は、特に無機材料(例えば、セラミック又はガラス材料)又はポリマー電解質を含む、固体イオン伝導体を形成することができる前駆体を含む。固体イオン伝導体は、カーテン塗布によって電気化学的貯蔵装置のそれぞれの機能層を形成した後に開始されるか、又は自動的に起こる化学反応によって、前駆体から形成されてもよい。ポリマー電解質の場合、この化学反応は重合反応であり得、前駆体は重合によりポリマーを形成することができるモノマーであり得る。あるいは、特に、前駆体は、硝酸塩、炭酸塩又は水酸化物であってもよい。
【0128】
特定の実施形態では、調製物は、固体電子伝導体を含み、特に金属(例えば、アルミニウム又は銅)又は炭素(例えば、カーボンブラック)を含む。特定の実施形態では、固体電子伝導体は、導電性繊維を含み、特にカーボンナノチューブを含む。これらの導電性繊維は、電子伝導体として同時に機能し、かつ調製物のレオロジー特性(粘性)を向上させ、その結果、塗布時のカーテンの安定性が向上する。
【0129】
特定の実施形態では、調製物は、界面活性剤を含む。
【0130】
特定の実施形態では、調製物は、リチウムイオン又はナトリウムイオンを含む。
【0131】
特定の実施形態では、調製物は、液体金属を含み、特に液体リチウム、液体ガリウム、又は液体リチウムと液体ガリウムとの混合物、又は金属粒子(特に金属ペーストをもたらす)を含む。金属は、特に、集電体などの電子伝導体を形成する。本発明による方法により集電体を形成すると、先行技術の方法とは対照的に、非常に薄い(例えば30μm以下、特に5μm以下)集電体層を形成できるため、その結果、電気化学的貯蔵装置の品質が改善されるという利点を有する。
【0132】
本明細書において、1つの分離可能な特徴の代替形態が「実施形態」として記載されている場合、そのような代替形態は自由に組み合わせて、本明細書に開示される本発明の個別の実施形態を形成することができると理解されるものとする。
【0133】
本発明は、以下の実施例及び図によってさらに説明され、そこからさらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではない。
【0134】
図1は、本発明の実施形態に従う塗布装置1の塗布ヘッド4の塗布方向Cに平行な面における断面図であり、図2は、塗布ヘッド4の対応する透視図である。図1及び図2に示すとおり、塗布ヘッド4は、第1の調製物P1、第2の調製物P2、及び第3の調製物P3をそれぞれ受け入れるための第1のリザーバー10、第2のリザーバー20、及び第3のリザーバー30を備える。描かれた例では、リザーバー10、20、30は、塗布ヘッド4の本体内の円筒形の空洞により形成されており、この空洞は、本発明による方法を実行する際に塗布方向Cに対して垂直に配置されるべき横軸Lに沿って延在する。リザーバー10、20、30はそれぞれ、塗布ヘッド4の吐出面2又は滑り部(スライド)における関連するスロット11、21、31へ分岐している。吐出面2は、凸状湾曲部2aを備え、そこに図1及び図2に示す配置で塗布ヘッド4の底端を形成するリップ3が配置されている。
【0135】
本発明によるカーテン塗布方法の一実施形態によれば、それぞれのポンプ(図示せず)に接続される、リザーバー10、20、30におけるそれぞれのポンプインレット(図1に図示せず、例えば図3を参照)を介して、第1の調製物P1が第1のリザーバー10に供給され、第2の調製物P2が第2のリザーバー20に供給され、第3の調製物P3が第3のリザーバー30に供給される。それぞれの調製物P1、P2、P3の流れを発生させることにより、調製物P1、P2、P3は、スロット11、21、31から吐出され、塗布ヘッド4の傾斜配置により、吐出面2上を湾曲部2a及びリップ3に向かって下方に流れる。
【0136】
第1のスロット11の位置にて、第2の調製物P2は、第1のスロット11から吐出される第1の調製物P1の上に層を形成する。第2のスロット21の位置でも同様に、第3の調製物P3は、第2のスロット21から吐出される第2の調製物P2の上に層を形成する。第1の調製物P1、第2の調製物P2、及び第3の調製物P3の組成及びレオロジー特性が適宜設定され、かつ層流が発生することを条件として、吐出面2の上に形成されたこれらの層は混合されず、第1の調製物P1による第1の部位310、第2の調製物P2による第2の部位320、及び第3の調製物P3による第3の部位330から構成される層状カーテンを形成し、このカーテンが塗布ヘッド4のリップ3から基板200の塗布面210上に流れ落ちる。
【0137】
基板200は、例えばコンベア機構によって塗布ヘッド4に対して相対的に塗布方向Cに対向して移動する。これにより、塗布面210上には、機能層110、120、130が互いに重なって形成される。
【0138】
特に、第1の調製物P1、第2の調製物P2、及び第3の調製物P3は、カーテン塗布に使用するのに適したレオロジー特性(すなわち、適切な粘度、好ましくは剪断減粘性挙動)を有するスラリーである。安定したカーテンを得るためには、調製物P1、P2、P3の流量、並びに基板200が塗布方向Cに対向して塗布ヘッド4に対して相対的に移動する塗布速度を適切に設定する必要がある。
【0139】
特に、塗布ヘッド4は、カーテン310、320、330の縁をガイドしてネック形成を防止するために、リップ3の両側縁から塗布面210に向かって垂直方向に延びるタブによって形成されるエッジガイド(図示せず)を備える。
【0140】
電気化学的貯蔵装置の機能層110、120、130は、例えば、固体金属イオン電池(例えば、固体リチウムイオン電池又は固体ナトリウムイオン電池)の正極110、固体電解質120、及び負極130であり得る。この例によれば、第1の調製物P1は、固体イオン電池の正極を形成するのに適した金属イオンホスト(変換材料又はインターカレーション材料)、例えば、NMC、LFP、NCA、LCO、又はLMOを含有する。第2の調製物P2は、固体イオン伝導体を含有し、例えば金属イオンを含有する無機マトリックス、ポリマーと金属イオン塩との混合物などのポリマー電解質、又は金属塩を含有する無機マトリックスとポリマー電解質との混合物を含有する。第3の調製物P3は、グラファイト、シリコン、LTO、TiOなど、固体イオン電池の負極を形成するのに適した金属イオンホストを含有する。
【0141】
あるいは、集電層などの固体電子伝導体を形成するために、吐出される調製物は、例えば、金属又はカーボンブラックを含んでもよい。
【0142】
第1の調製物P1、第2の調製物P2、及び第3の調製物P3のレオロジー特性を調節するために、これらの調製物は、ポリマー、特に分子量の異なる2つのポリマーの混合物を含有することができる。
【0143】
さらに、調製物P1、P2、P3は、溶媒又は重合性モノマー、及び任意に界面活性剤を含有することができる。
【0144】
記載のカーテン塗布方法は、電気化学的貯蔵装置の複数の非常に薄い層(例えば、30μm未満)を高速塗布速度(例えば、40m/分~2500m/分)で同時に形成することができるという利点があり、固体イオン電池などの電気化学的貯蔵装置の製造時間を大幅に改善することができる。
【0145】
固体電解質層を形成するための本発明によるスラリー調製物を製造するための例示的な手順は、以下のとおりである;2.67gのPEO(M 600000)を77gのアセトニトリルに溶解する。1.67gのLiTFSIを添加し、スパチュラで攪拌する。LLZO粉末(dmean 400nm)12gを添加し、再びスパチュラで攪拌する。これらの質量比は、特に、乾燥フィルム内のセラミックとポリマーとの体積比がほぼ等しい結果となるように選択される。EO:Liのモル比は10.4:1である。スラリー中の全固形分は17.5wt%であり、(m PEO+m LiTFSI+m LLZO)/m total。低せん断定常粘度は130mPas程度である。
【0146】
さらに、正極層を形成するための本発明によるスラリー調製物を製造するための例示的な手順は、以下のとおりである:6g アセトニトリル、0.25g PEO(M 35000)、0.167g PEO(M 600000)、0.27g LiTFSI、1.1g LFP(ホスト)(dmean 1ミクロン)、0.1375 カーボンブラック(60nm)。
【0147】
カーテン塗布の後、機能層のスタックに対していくつかの後処理工程を行うことができ、特に以下の工程を行うことができる:
1)溶媒の蒸発
2)乾燥
3)架橋処理
4)ホットプレス処理
5)カレンダー処理
6)機能層の成分間の化学反応の開始
7)焼結処理
8)機能層の成分間のさらなる化学反応の開始
9)圧迫処理
【0148】
図3図7は、電気化学的貯蔵装置の構造化した機能層110、120、130を製造するために使用することが有利である、本発明による塗布装置1及びカーテン塗布方法のさらなる実施例を示している。
【0149】
図3は、塗布ヘッド4の半透明透視図であり、簡単にするために1つのリザーバー10と関連するスロット11のみが描かれている(しかしながら、この配置は、3つ以上のリザーバーとスロットとを含む塗布ヘッドにおいて使用可能である)。図3による実施形態では、リザーバー10は、物理的に分離された3つのマニホールドによって形成され、その結果、第1の部分10a、第2の部分10b、及び第3の部分10cが得られ、これらは横軸Lに沿って配置され、第2の部分10bが中間部分を形成し、第1の部分10a及び第3の部分10cが対向する末端部分を形成する。第1の部分10aは第1のポンプインレット13aを備え、第2の部分10bは第2のポンプインレット13bを備え、第3の部分10cは第3のポンプインレット13cを備え、リザーバー10のそれぞれの部分10a、10b、10cにそれぞれの調製物P1、P2、P3、P4が供給可能なようにポンプにそれぞれ接続されるように構成されている。
【0150】
図4では、塗布ヘッド4が描かれており、第1のリザーバー10は、図3と同様に第1の部分10a(幅Xにわたって横軸Lに沿って延在)、第2の部分10b(幅Xにわたって横軸Lに沿って延在)、及び第3の部分10c(幅Xにわたって横軸Lに沿って延在)に分割されている。
【0151】
第1のスロット11の第1の部分10a及び第3の部分10cから第1の調製物P1が吐出され、かつ第1のスロット11の第2の部分10bからさらなる調製物P4が同時に吐出される。さらに、同時に、第1の調製物P1が第2のスロット21の幅X+X+X全体にわたって第2のスロット21から吐出される。
【0152】
図5に示すとおり、図4に描かれたカーテン塗布処理により、第1の調製物P1がさらなる調製物P4を横方向に埋め込む構造化された第1の機能層110と、第1の調製物から形成される均一な第2の機能層120とが得られる。例えば、第1の調製物P1は、電気化学的貯蔵装置の活物質を形成し、さらなる調製物P4は、活物質によって水分及び空気の侵入から保護される固体電解質を形成してもよい。
【0153】
図6は、塗布装置1のさらなる実施形態を示し、第2のリザーバー20及び対応する第2のスロット21は、横軸Lに沿って幅Xを有する第1の部分20a、横軸Lに沿って幅Xを有する第2の部分20b、及び横軸Lに沿って幅Xを有する第3の部分20cに分かれている。これは、例えば、図3に示すとおり別々のマニホールドによって実現することが可能である。部分20a、20b、20cはそれぞれ、図3に示す実施形態と同様に、スロット21と反対側の第2のリザーバー20の側面から分岐する関連するポンプインレット13a、13b、13c(図6には示せず)を備える。
【0154】
塗布装置1の吐出面2は、第2のスロット21の第1の部分20aと一列に並び、かつ第2のスロット21の第1の部分20aの幅Xに対応する横軸Lに沿う幅を備える凹部2bを備え、ここで凹部2bは塗布方向Cに第2のスロット21から吐出面2全体に沿って延びている。さらに、吐出面2は第3の部分20cと一列に並び、かつ第3の部分20cの幅Xに対応する横軸Lに沿う幅を備えるさらなる凹部(図示せず)を備える。
【0155】
第1のポンプインレット13a及び第3のポンプインレット13c(図3参照)に接続されたポンプ(複数可)によって、第2の調製物P2は第1の流量で第1の部分20a及び第3の部分20cに供給され、かつ第2のポンプインレット13b(図3参照)に接続されたポンプによって、第2の調製物P2は第2の流量で第2の部分20bに供給されて、それにより、第2の調製物P2のより厚い層が幅Xに沿うよりも幅X及びXに沿って基板200上に堆積されるようにする。同時に、第1のリザーバー10に接続された第1のスロット11から第1の調製物P1が吐出され、ここで第1のスロット11は、第2のリザーバー20及び第2のスロット21の第2の部分20bの幅Xと等しい幅wを有している。
【0156】
図6に描かれたカーテン塗布法によって基板200に堆積された材料の得られるパターンを図7に示す。図5に示す結果と同様に、第1の機能層110は、第2の調製物P2が(幅X及び幅Xに沿って)堆積した2つの部分によって横方向に挟まれた幅Xに沿う第1の調製物P1のコアからなる。第2の機能層120は、幅X+X+Xの全体にわたる第2の調製物P2の均一な層である。第2の機能層120の均一な上面は、吐出面2の凹部2bによるものであり、その深さ(吐出面2に垂直な方向)は、この場合、第1の機能層110の厚さに等しく、第2のスロット21の第1の部分20a及び第3の部分20cから吐出された第2の調製物P2の追加の体積を補償している。図5に示す上述の結果と同様に、第1の調製物P1は電気化学的貯蔵装置の活物質を形成し、第2の調製物P2は活物質により水分及び空気の侵入から保護される固体電解質を形成することができる。
【0157】
特に、横軸Lに垂直な方向に幅Xに沿って第1の調製物P1と第2の調製物との層の厚さの和に等しい厚さで第2の調製物Pが幅X及びXに沿って堆積することを確保するように、流量fP1,X2、fP2,X1、fP2,X2、及びfP2,X3を以下の式に従って設定することが可能であり:
【数1】
式中、fP1,X2は、幅Xに沿う第1の調製物の流れ(単位時間当たりの体積)を示し、fP2,X1は、幅Xに沿う第2の調製物の流れを示し、fP2,X2は、幅Xに沿う第2の調製物の流れを示し、fP2,X3は、幅Xに沿う第2の調製物の流れを示す。
【0158】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】