(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(54)【発明の名称】多層断面複合繊維及びその紡織品
(51)【国際特許分類】
D01F 8/04 20060101AFI20230822BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20230822BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20230822BHJP
D01F 8/12 20060101ALI20230822BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20230822BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20230822BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230822BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20230822BHJP
A41D 31/06 20190101ALN20230822BHJP
【FI】
D01F8/04 B
B32B1/08
B32B5/26
D01F8/12 Z
D01F8/06
D01F8/14 D
A41D31/00 502B
A41D31/00 503F
A41D31/00 503G
A41D31/00 503K
A41D31/02 A
A41D31/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505752
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2021111420
(87)【国際公開番号】W WO2022033412
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】202010793093.3
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512081018
【氏名又は名称】東レ繊維研究所(中国)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TORAY FIBERS & TEXTILE RESEARCH LABORATORIES(CHINA)CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.58,Xinkainanlu,Jingjijishukaifaqu Nantong,Jiangsu,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ル
【テーマコード(参考)】
4F100
4L041
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AA01C
4F100AA21A
4F100AA21B
4F100AA21C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100AK46
4F100AK48A
4F100AK48B
4F100AK48C
4F100AK51
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA08
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DA16
4F100DE01A
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100JL00
4F100JN06
4F100JN28
4L041BA03
4L041BA04
4L041BA09
4L041BA11
4L041BC06
4L041BC20
4L041CB05
4L041CB25
4L041CB28
4L041DD07
(57)【要約】
多層積層断面複合繊維であって、繊維の単糸横断面において、少なくとも2種類以上の成分が3~15層交互に積層された多層構造を有しており、前記多層断面構造の最外層は無機粒子含有率5.0wt%以下のポリマーBからなり、前記複合繊維における少なくとも1層は無機粒子含有率10~70wt%のポリマーAからなる。前記複合繊維及びその紡織品は良い製糸性、高次加工性が持つ、かつ優れる防透け性能、遮熱性能、紫外線防止性能、水濡れ後変退色防止性能もある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層積層断面複合繊維の単糸横断面において、少なくとも2種類以上の成分が3~15層交互に積層された多層構造を有しており、前記多層断面構造の最外層は無機粒子含有率5.0wt%以下のポリマーBからなり、前記複合繊維における少なくとも1層は無機粒子含有率10.0~70.0wt%のポリマーAからなり、かつ前記ポリマーAは複合繊維全体の10~70wt%であることを特徴とする多層積層断面複合繊維。
【請求項2】
前記複合繊維において、ポリマーAからの無機粒子の含有率が7.0~30.0wt%であることを特徴とする請求項1に記載の多層積層断面複合繊維。
【請求項3】
前記繊維の単糸横断面において、ポリマーAとポリマーBが3~9層交互に積層された多層構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の多層積層断面複合繊維。
【請求項4】
前記ポリマーAにおいて、無機粒子の含有率が15~60wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層積層断面複合繊維。
【請求項5】
前記多層積層断面構造の最外層面積が単糸断面総面積の5~30%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層積層断面複合繊維。
【請求項6】
前記複合繊維を構成するポリマーがポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン又はポリウレタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層積層断面複合繊維。
【請求項7】
前記複合繊維は乾湿状態で550ナノメートルの可視光の反射率差の絶対値が5.0%より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の多層積層断面複合繊維。
【請求項8】
前記複合繊維のタフネスが15.0以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層積層断面複合繊維。
【請求項9】
請求項1に記載の多層積層断面複合繊維からなる紡織品。
【請求項10】
前記紡織品は乾湿状態で550ナノメートルの可視光の反射率差の絶対値が5.0%より小さいことを特徴とする請求項9に記載の紡織品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層断面複合繊維に関し、具体的には、少なくとも2種類の無機粒子の含有率が異なっているポリマーが交互に積層された多層断面複合繊維、及びこの繊維により得られる紡織品に関する。
【背景技術】
【0002】
服用分野では、視覚遮蔽性能は紡織品の1つの重要な性能であり、最も基本の身体遮蔽機能に関わる。装飾と軍事分野では、単方向透視、偽装などの特殊な視覚要求に関わる。また、世界的にフロンの大量使用及び環境汚染が日々深刻化するのに従い、大気におけるオゾン層が深刻に破壊されている。紫外線照射を長期間受けると、有機分子の寿命を低減させ、人体の免疫機能を低減させ、皮膚を損傷し、皮膚炎、紅斑、そばかす及び皮膚がんを引き起こすだけでなく、眼疾、白内障になる。また、特に夏には天気が熱く、ある程度の遮熱性能を有する服は消費者に人気がある。
【0003】
また、服用分野では、服装の変退色は紡織品の1つの重要な性能であり、人体から大量の汗が出た後或いは雨水により濡れた後、衣服が皮膚に密着し、汗或いは雨水により濡れた箇所が乾燥の箇所より濃くなり、美観に影響を与える。また、運動プロセスにおいて、競技相手が相手方の出た汗量により相手方の疲労度を判断し、これにより、合理的に競技手段の応用で試合に勝つ。このため、服装が濡れたときに変退色を生じないものは夏の消費者に人気がある。
【0004】
中国特許CN103628180Aには超高消光記憶繊維及び製造方法が開示されている。この繊維は、芯鞘複合構造であり、普通のフルダル繊維が製織プロセスに発生した糸切れ問題を克服するために、鞘に芯の酸化チタンより低い量を添加して、製織の通過性を向上させている。かつ、芯に大量の酸化チタン微粒子を添加して、防透け効果を達成する。しかしながら、この複合繊維の芯に添加された酸化チタン量は3%以上であり、大量に添加すれば、優れた防透け、紫外線防止効果を取得するが、紡糸性や原糸強度が低減し、製織プロセスで糸切れが顕在化し、かつコストも上昇する。逆に、芯に添加した酸化チタン量が低いと、普通のフルダルの性能を有するが、防透け、紫外線防止効果が添加量の低減により劣る。
【0005】
日本特許特開平11-269721、特開2008-223171、特開2013-44055には、同様に芯鞘複合繊維が開示されている。芯成分に酸化チタン粒子を添加することにより、防透け、紫外線防止の効果が得られている。同様に、複合繊維の芯に酸化チタンを大量に添加すれば、優れた防透け、紫外線防止効果を取得するが、紡糸性や原糸強度が低減し、製織プロセスで糸切れが顕在化し、かつコストも上昇する。逆に、添加した酸化チタン量が低いと、普通のフルダルの性能を有するが、防透け、紫外線防止効果が添加量の低減により劣る。
【0006】
日本特許特開11-181627には多層積層繊維が開示されている。開示された紡糸性、不透明性及び遮熱性能に優れるポリエステル複合短繊維は、白色顔料の含有率が異なる2種類のポリエステルにより構成され、そのうち、白色顔料が多いポリエステルにおける白色顔料含有率が1.5wt%~10.0wt%であり、白色顔料が少ないポリエステルにおける白色顔料含有率が0.5wt%以下であった。この特許に開示される芯鞘或いは同心円等の繊維断面に多層の実施形態が存在し、最内層として白色顔料が多いポリエステルを配置し、外層として白色顔料が少ないポリエステルを配置することで、紡糸性の悪化を回避することができた。このような実施方法により取得した繊維の防透け性能は普通のフルダルポリエステルに比べ上がったが、より高い防透け効果を達することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能、変退色防止性能に優れる多層積層断面複合繊維及びそれにより形成される紡織品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の技術的解決手段は、以下の通りである。
多層積層断面複合繊維であって、当該単糸横断面において、少なくとも2種類以上の成分が3~15層交互に積層された多層構造を有しており、前記多層断面構造の最外層は無機粒子含有率5.0wt%以下のポリマーBからなり、前記複合繊維における少なくとも1層は無機粒子含有率10.0~70.0wt%のポリマーAからなり、かつ前記ポリマーAは複合繊維全体の10~70wt%である。
【0009】
前記複合繊維において、ポリマーAからの無機粒子の含有率は、好ましくは7.0~30.0wt%、より好ましくは8.0~20.0wt%、さらに好ましくは12.0~15.0wt%である。
前記ポリマーAにおいて、無機粒子の含有率は15~60wt%であることが好ましい。
前記複合繊機単糸の横断面において、好ましくはポリマーAとポリマーBが3~9層交互に積層された多層構造を有しており、より好ましくはポリマーAとポリマーBが3~5層交互に積層された多層構造を有する。
前記多層構造の最外層面積が単糸断面総面積の5~30%であることが好ましい。
前記複合繊維を構成するポリマーがポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン或いはポリウレタンであることが好ましい。
前記複合繊維は乾湿状態で550ナノメートルの可視光の反射率差の絶対値、好ましくは5.0%より小さく、より好ましくは3.0%より小さいである。
前記複合繊維のタフネス、好ましくは15.0以上、より好ましくは19.0以上である。
本発明は前記多層積層断面複合繊維からなる紡織品を提供し、前記織物は乾湿状態で550ナノメートルの可視光の反射率差の絶対値、好ましくは5.0%より小さく、より好ましくは3.0%より小さいである。
【0010】
本発明は、多層積層断面の構造を通じて、無機粒子含有率が高いポリマーAと無機粒子含有率が低いポリマーBを交互して繊維に排列させる。得られた複合繊維は良好な防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能を有するとともに、良好な強伸度特性を保持できる。かつ、得られた複合繊維及びそれにより形成される紡織品は変退色防止性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】9層同心円複合断面構造繊維の横断面図である。
【
図2】3層同心円複合断面構造繊維の横断面図である。
【
図3】サイドバイサイド多層複合断面構造繊維の横断面図である。
図1~
図3において、1はポリマーAであり、2はポリマーBである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多層断面複合繊維の単糸横断面において、少なくとも2種類の成分が3~15層交互に積層された多層構造を有しており、前記多層断面構造の最外層は無機粒子含有率5.0wt%以下のポリマーBからなり、前記複合繊維における少なくとも1層は、無機粒子含有率10.0~70.0wt%のポリマーAからなる。
【0013】
本発明において、無機粒子含有率が高いポリマーAを多層断面複合繊維の内層に配置することにより、繊維加工プロセスでは、繊維が良好な通過性を有し、かつ、後続の製織プロセスでは、糸切れ等の問題を生じない。
【0014】
無機粒子の含有率が高いほど、繊維の防透け性能がよくなるが、無機粒子を大量添加すると、繊維の強伸度を著しく低減させる。繊維の強伸度などの特性を維持するために、無機粒子含有率が高いポリマーAの添加量を低減させる必要がある。この場合に、ポリマーAをできるだけ繊維横断面における外層に近寄る位置に置き、これによって、同じ無機粒子含有率の芯鞘繊維よりよい防透け効果を取得できる。
【0015】
他方、特定の強伸度を満たすために、繊維は、ポリマーAを多層の形態で繊維に分布させ、繊維横断面における外層に近寄るポリマーAの成分を低減させる。防透け性能はやや低減するが、多層構造によりポリマーAを繊維にさらに均一に分散できて、原糸の強伸度を向上させ、特定の応用条件を満たす。
【0016】
前記ポリマーAにおいて、無機粒子含有率が10.0wt%より低いと、ポリマーAの紡糸性、複合繊維の物性には問題がないが、少量の無機粒子が光線の反射や吸収に不利であり、複合繊維の防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能が大幅に低減し、必要なレベルに達することができない。ポリマーAにおいて、無機粒子の含有率が高いほど、複合繊維の防透け性能、紫外線防止能、遮熱性能、水浸潤後の変退色防止がよくなる。しかしながら、ポリマーAにおいて、無機粒子含有率が70.0wt%より高いと、ポリマーAの紡糸性に影響を与え、紡糸プロセスでは、糸切れ、単糸流れ現象が発生しやすく、かつ、得られる複合繊維の強伸度が劣れ、その後続使用に影響を与える。このため、複合繊維の防透け性能、紫外線防止能、遮熱性能及び生産可能性を総合的に考量すれば、前記ポリマーAにおいて、無機粒子の含有率が15.0~50.0wt%であることは好ましい。
【0017】
前記ポリマーAは複合繊維全体の10~70wt%である。複合繊維におけるポリマーAの含有率が10wt%より低いと、正常の複合多層断面構造を保証できなく、かつ、複合繊維における無機粒子の含有率も低くなり、繊維の防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能、水浸潤後の変退色防止性能はいずれも落ちる。ポリマーAの含有率が高いほど、複合繊維の防透け性能がよくなるが、無機粒子含有率が高いポリマー成分のコストが高いため、繊維全体のコストが上がる、かつ、無機粒子含有率が高くなった後、繊維の基本物性が低減する。本発明は、複合繊維におけるポリマーAの含有率が15~60wt%であることは好ましい。
【0018】
本発明は多層断面構造の形態を限定していない、同心円排列、平行排列、各層の間の垂直交差排列などでもよい。多層断面構造が同心円排列である場合、最内部の中心層はポリマー層でよく、中空層でもよい。
【0019】
ポリマーAにて形成した層とポリマーBにて形成した層が交互し、間隔をあけて排列すれば、繊維におけるポリマーAの含有率が低い時も、複合繊維の横断面がいずれか種類の多層断面構造になっても、複合繊維が優れた防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能、水浸潤後の変退色性能を実現できる。それとともに、交互排列構造にて最外層の肉厚がコントロールできる。
【0020】
本発明に記載の多層断面複合繊維において、ポリマーAからの無機粒子含有率が7.0~30.0wt%である。複合繊維において、ポリマーAからの無機粒子の含有率が低いと、繊維の防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能、水浸潤後の変退色性能はいずれも理想的でない。複合繊維において、ポリマーAからの無機粒子含有率が高いほど、複合繊維の性能がよくなるが、ポリマーAからの無機粒子含有率が特定の値に達すると、繊維全体の性能向上が徐々に少なくなり、かつ、無機粒子含有率が高いポリマー成分のコストが高いため、繊維全体のコストが上がる、かつ、無機粒子含有率が高くなった後、繊維の基本物性が低減する。したがって、本発明に記載の繊維において、ポリマーAからの無機粒子含有率が8.0~20.0%であることが好ましく、12.0~15.0%であることがより好ましい。
【0021】
本発明に記載の複合繊維の単糸は3~15層の横断面構造である。前記多層断面構造の層数が15層以上多すぎると、断面構造の成形に異常がよく発生し、それとともに、繊維の基本物性が劣る。繊維の基本物性と防透け性能、遮熱性能を両立させるために、本発明は、前記多層断面構造の層数が3~9層であることが好ましく、3~5層であることがより好ましい。
【0022】
紡糸設備に接触するポリマーにおける無機粒子含有率が高いと、無機粒子とガイドブロックなどが摩擦し、設備の寿命及びポリマーの紡糸性に影響を与える。ポリマーの紡糸性を保証するとともに、紡糸設備に対する無機粒子の影響を回避するために、本発明は、繊維表面に露出する無機粒子含有率が低いポリマーBであることが好ましく、即ち、前記多層断面構造の最外層は前記ポリマーBにより形成される。無機粒子含有率が低いポリマーBにより無機粒子含有率が高いポリマーAを覆い、紡糸時に大量の無機粒子が給油ノズル、紡糸機の各ガイドブロック、ローラ等に直接接触することを回避し、摩擦抵抗を低減させ、糸の良好な工程通過性を保証できる。かつ、含有率が高い無機粒子が紡糸機各部品に直接接触することによる脱落して、給油ノズル、ガイドブロック及びローラの汚染を回避できる。かつ、無機粒子脱落により多層断面複合繊維の防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能に対する影響を防ぐでき、後加工プロセスの糸切れ率も低減させる。
【0023】
さらに、複合繊維の防透け性能、紫外線防止性能、遮熱性能にあまり影響しないように、ポリマーBにより形成される最外層面積は、単糸断面総面積の5~30%であることが好ましい。ポリマーBにより形成される最外層の面積割合が大きすぎると、複合繊維全体の防透け性能に対する影響が大きく、複合繊維の防透け性能が劣る。ポリマーBにより形成される最外層の面積が小さいほど、複合繊維の防透け性能がよくなるが、この面積割合が特定比率以下まで下げった後、複合繊維防透け性能の向上幅が小さくなる。かつ、糸加工と使用中において、摩擦による表面摩耗が発生しやすい。このため、本発明は、ポリマーBにより形成される最外層の面積が断面総面積の10~20%であることがより好ましい。
【0024】
本発明に記載の無機粒子は酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化珪素或いは窒化ホウ素等でよく、そのうち、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム或いは酸化亜鉛が好ましい。前記ポリマーAと前記ポリマーBに含まれる無機粒子は同じでもよく、異なってもよい。より高い防透け性能と紫外線防止性能の複合繊維を取得するために、本発明に記載の無機粒子は、酸化チタンであることが好ましい。
【0025】
前記無機粒子の屈折率は1.6~3.0であることが好ましく、2.0~3.0であることがより好ましい。
【0026】
結晶形態により、前記酸化チタンはアナターゼ型酸化チタン及びルチル型酸化チタンに分けられる。通常、よく使われるアナターゼ型酸化チタンの結晶は、構造が不安定であり、ラジカルが生じやすい。ラジカルは、特定の量まで蓄積するとき、ポリマーの耐光堅牢度に影響を与える。このため、繊維に大量のアナターゼ型酸化チタンが含まれるとき、繊維の耐光性が劣る。繊維がよりよい耐光堅牢度を有するために、本発明に記載のポリマーAに含まれる無機粒子は、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。
【0027】
本発明は、ポリマーAを構成するポリマー成分に対して特に限定しない、様々な熱可塑性ポリマーを含む。ポリエステル類ポリマー或いはポリアミド類ポリマーでよく、ポリオレフィン類ポリマー、ポリウレタンでもよい。具体的には、前記ポリエステル類ポリマーは、ポリエチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリマーでよく、それらの共重合体でもよい。前記ポリアミド類ポリマーは、ポリアミド6、カチオン染料可染性ポリアミド6、ポリアミド66などでよく、前記ポリオレフィン類ポリマーはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどでもよい。
【0028】
本発明は、ポリマーBを構成するポリマー成分に対して特に限定しないが、様々な熱可塑性ポリマーを含む。ポリマー原料により、ポリエステル類ポリマー或いはポリアミド類ポリマーでよく、ポリオレフィン類ポリマーでもよく、ポリウレタンでもよい。具体的には、前記ポリエステル類ポリマーは、ポリエチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリマーでよく、それらの共重合体でもよい。機能により、前記ポリエステル類ポリマーは、分散染料可染性ポリエステル、カチオン染料可染性ポリエステル、易溶解性ポリエステル、導電性ポリエステル、帯電防止性ポリエステル、吸湿性ポリエステル、低摩擦ポリエステルなどでよい。前記ポリアミド類ポリマーはポリアミド6、カチオン染料可染性ポリアミド6、ポリアミド66などでよい。前記ポリオレフィン類ポリマーはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどでよい。ポリマーBにおける無機粒子含有率により、鞘成分はブライトポリマー、セミダルポリマー、フルダルポリマー、例えば、ブライトポリエステル、セミダルポリエステル、フルダルポリエステルなどが挙げられる。
【0029】
繊維最外層とするポリマーBは、その様々な機能を与えられた後、紡糸性が劣り、後続使用中、相応機能の持久安定性が劣るとき、最外層の内に機能性ポリマー成分を添加し、単独の層としてポリマーAやポリマーBと交替排列させることにしてもよい。この場合、ポリマーBは、5.0wt%以下の無機粒子のみを含むポリマーを選択してもよい。前記機能性ポリマーは、繊維全体の吸湿性率を向上させる吸湿性ポリマー、繊維全体の抗菌性を向上させる抗菌性ポリマー、難燃性ポリマーなどでよい。
【0030】
本発明は、繊維の形態に対して特に限定しなく、長繊維でよく、短繊維でもよい。
繊維が液体に浸潤されるとき(濡れた状態)、液体層が存在するため、通常乾燥状態下の繊維に比べて、光の屈折と反射効果が変化する。光の屈折と反射効果が変化しすぎると、濡れた状態と乾燥状態下の繊維の色調差が大きすぎることとなり、特に、夏場向けの服装に使用すると、汗により浸漬される箇所の色調と浸漬されない箇所の色調差異が大きく、美観に影響を与える。本発明において、繊維断面層数、ポリマーAとポリマーBにおける無機粒子含有率、及びポリマーAとポリマーBの複合繊維における含有率が繊維が濡れた状態と乾燥状態で光の屈折や反射効果の変化程度に関わる。前記変化程度は、複合繊維が乾、湿状態で波長550ナノメートルの可視光の反射率差の絶対値により表わし、絶対値が小さいほど、乾湿状態での複合繊維の色が近寄り、夏場装着の美観性がよくなる。本発明に記載の複合繊維は、乾湿状態で、波長550ナノメートルの可視光の反射率差の絶対値が5.0%より低いであることが好ましい。
【0031】
本発明に記載の多層断面複合繊維の原糸タフネスは15.0以上である。繊維使用において、良好な紡糸、製織、製品使用プロセス通過性と耐引き裂き性を保証するために、原糸のタフネスは特定の程度を満たす必要がある。原糸タフネスが15.0以下であるとき、製織プロセスに糸切れが発生し、通過性が不良の可能性が高い、かつ製造した製品もよい耐破裂強度を持たず、使用寿命に影響を与える。
【0032】
本発明の複合繊維は、紡織品を製造することに用いられ、紡織品に本発明の多層断面複合繊維を一部或いは全部用いることができる。前記紡織品は、織物、編物、第3紡織品、不織布製品、多方向紡織品、立体紡織品、複合紡織品などを含む。本発明の複合繊維を一部として使われる紡織品を製造する場合、その他の繊維は普通ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維などでよい。紡織品乾湿状態下で波長550ナノメートルの可視光反射率差が5.0%以下であることを保証する前提で、夏服の生地として幅広く使用することができる。
【0033】
本発明に係るそれぞれのパラメータの測定方法は以下の通りである。
(1)防透け性能
D65光源を用い、基準色の白板、黒板にそれぞれ照射し、そのL*値を測定して、L*値はそれぞれL(白)とL(黒)とする。そして、紡織品布帛サンプル(10×10cm)を作製し、それぞれを基準色の白板、黒板に乗せって、D65光源でサンプルを照射し、そのL*値を測定し、L*値はそれぞれL(白+布)、L(黒+布)とする。そして、以下の式で光線防透け性能のデータを算出する。得られた光線防透け性能のデータが大きいほど、サンプルの防透け性能がよくなることが現る。それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。
光線防透け性:(1-(L(白+布)-L(黒+布))/(L(白)-L(黒))×100%。
【0034】
(2)UPF(紫外線防止性能)
紫外線防止パラメータであるUPFは、標準GB/T 6529に準じて評価される。それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。UPF値は50以上であると、「〇」と判定し、UPF値は40以上、50より小さいであると、「△」と判定し、UPF値は40より小さいであると、「×」と判定する。
【0035】
(3)紡織品における無機粒子の種類と含有率
紡織品を約4g取り、溶融してサンプルを作製し、X射線蛍光分析器(メーカ:Rigaku、型番:ZSX PrimusIII+)により金属元素の含有率を測定する。そして、燃焼灰分法により、繊維における無機粒子の重量を測定して、金属元素含有率と無機粒子重量により、紡織品における無機粒子種類と含有率を推定する。それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。
【0036】
(4)繊維における各成分の断面比率及び最外層面積割合
SEMによりこの複合繊維の横断面写真を撮り、横断面写真を紙にプリントして、面積計により、無機粒子含有率が少ないポリマーB成分断面面積S1、無機粒子含有率が多いポリマーA成分断面面積S2を測定し、ポリマーB成分割合=S1/(S1+S2)、ポリマーA成分割合=S2/(S1+S2)となる。
SEMで撮ったこの複合繊維横断面に対して、最外層面積と断面総面積を測定して、最外層断面面積割合=最外層面積/全体繊維面積となる。それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。
【0037】
(5)各成分における無機粒子含有率
特定の重量(N1)の繊維サンプルを取り、X射線蛍光分析器(メーカ:Rigaku、型番:ZSX PrimusIII+)により金属元素重量(無機粒子重量M1を推定)を測定する。断面写真により、繊維におけるポリマーAとポリマーBの複合比率及び最外層面積割合(測定方法4に参考)を確定し、全体繊維に対する最外層の割合を算出する。そして、アルカリ溶液を用いて溶出処理を行い、減耗率を制御し、最外層のポリマーBを除去する。溶出処理後に残った繊維(重量N2)について、X射線蛍光分析器(メーカ:Rigaku、型番:ZSX PrimusIII+)により、残った部分における金属元素の重量(無機粒子重量M2を推定)を測定する。それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。
【0038】
【0039】
(6)可視光の反射率
GB/T3291.2とGB/T3291.3における標準と専門用語により、繊維を未染色紡織品形態にする。無シワ、無キズを保証し、紡織品を5cm*5cmサイズに切って、サンプルを作製する。積分球光度計を用い、装着するとき皮膚から離れた紡織品の面を光源に向いて、その反射率を測定して、波長550ナノメートルの反射率R1を記録する。
液体浸潤状態下の反射率を測定する場合、まず、サンプルを三級水に浸潤させ、サンプルの含水率を100%(水浸潤後の重量が浸潤前の2倍である)に調整する。無シワ、無キズを保証する状態で、装着するとき皮膚から離れた紡織品の面を光源に向いて、その反射率を測定し、波長550ナノメートルの反射率R2を記録する;
乾湿状態反射率差=|R1-R2|。
それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。
【0040】
(7)乾湿状態変退色判定
JIS L 0804:2005変退色・グレーカード判定基準に準じて、乾湿状態(液体が水に限られない)の紡織品に対して変退色を判定して評価する。それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。4級:変退色がほぼない、「〇」とする;3-4級:ややの変退色、「△」とする;3級及び以下:著しい変退色、「×」とする。
【0041】
(8)繊維のタフネス
標準GB/T14344-2008に準じて、繊維の強度と伸度をそれぞれ測定し、以下の計算式で繊維のタフネスを算出する。
タフネス=強度×(伸度)1/2。
それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。
【0042】
(9)耐光堅牢度
標準JIS L0842に準じて、20時間耐光照射を行い、照射処理後のサンプルと未照射の対比サンプルと比較させ、標準対比グレーカードで判断を行い、耐光堅牢度のレベルを測定する。それぞれ10個のサンプル繰り返し測定を実施して、平均値を取る。耐光堅牢度が4級以上であると、「○」と判定し、耐光堅牢度が3級以下であると、「△」と判定する。
【0043】
(10)ルチル型酸化チタン
取得した繊維は溶融によりフィルムを作製し、X線回折装置により結晶ピーク位置を測定し、それとともに、通常ルチル型酸化チタンの結晶ピーク位置を測定し、両者の結晶ピーク位置を比較により酸化チタンの晶型を判断する。
【0044】
(11)紡糸性
紡糸プロセス中の単糸流れ、糸切れを統計する。単糸流れ、糸切れ回数が1回/t以下であると、紡糸性を「〇」と判定し、単糸流れ、糸切れ回数が1回/tより大きいとき、紡糸性を「×」と判定する。
以下、実施例を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0045】
実施例1
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが17.3である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.8%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.2%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0046】
実施例2
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の30%である。原糸タフネスが17.5である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.1%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が2.3%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0047】
実施例3
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の10%である。原糸タフネスが17.7である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.9%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.1%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0048】
実施例4
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)60重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)40重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが16.3である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が95.1%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が0.9%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0049】
実施例5
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)70重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)30重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが15.5である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が95.3%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が0.8%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0050】
実施例6
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)30重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)70重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが17.5である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が95.4%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が0.7%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0051】
実施例7
60.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)20重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)80重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが19.1である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が96.3%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が0.4%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0052】
実施例8
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するナイロン6(N6)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルナイロン6(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが21.5である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.3%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.4%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0053】
実施例9
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリプロピレン(PP)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリプロピレン(PP)(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが21.6である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.3%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.5%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0054】
実施例10
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、2.7wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが15.2である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.6%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.1%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0055】
実施例11
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、5.0wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが15.0である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.9%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.0%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0056】
実施例12
15.0wt%の酸化亜鉛粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが15.6である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.2%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が3.2%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0057】
実施例13
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が5層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが18.5である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.4%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.4%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0058】
実施例14
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が9層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが19.2である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.2%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.8%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0059】
実施例15
30.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)45重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)45重量分と、0.1wt%抗菌粒子を含有するポリマーC10重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施し、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーCが最内層にあり、ポリマーAが中間層にあり、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが15.1である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が95.8%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が0.7%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0060】
実施例16
15.0wt%のアナターゼ型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが17.5である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.4%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.4%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0061】
実施例17
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層中空同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが16.2である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.4%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.8%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0062】
実施例18
10.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)70重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)30重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが15.1である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.1%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が2.7%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0063】
実施例19
70.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)10重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)90重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが19.7である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.8%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.9%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0064】
実施例20
15.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が15層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが17.1である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.0%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が2.8%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0065】
実施例21
60.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)20重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)80重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の40%である。原糸タフネスが19.2である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が94.3%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.8%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0066】
実施例22
50.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の3%である。原糸タフネスが17.1である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が95.0%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が1.0%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0067】
実施例23
70.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は、多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが15.0である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が97.3%であり、550ナノメートル波長で乾湿反射率差が0.2%であり、紫外線抵抗性能を有し、耐光堅牢度が合格した。
【0068】
比較例1
7.5wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)70重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)30重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ、最外層面積が断面総面積の20%であり、原糸タフネスが15.3である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が86.9%であり、550ナノメートル波長での乾、湿反射率差が6.3%であり、紫外線防止性能を有しなく、水浸潤後の変色が著しく、耐光堅牢度が合格した。ポリマーAにおける無機粒子含有率が10.0wt%より低いとき、複合繊維におけるポリマーAの含有率が70wt%に達しても、複合繊維の防透け効果が劣り、取得した紡織品の紫外線抵抗性能と乾湿変退色が劣る。
【0069】
比較例2
30.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)45重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)45重量分と、0.07wt%TiO2粒子を含有するポリマーC10重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は多層であり、層数が3層である。ポリマーAが最内層にあり、ポリマーBが中間層にあり、ポリマーCが最外層にある、かつ最外層面積が断面総面積の10%であり、原糸タフネスが16.4である。取得した繊維を使用して筒編物に作製し、取得した筒編物の防透け性能が90.8%であり、550ナノメートル波長での乾湿反射率差が5.9%であり、紫外線防止性能がなかった。水浸潤後の変色が著しく、耐光堅牢度が合格した。3層の断面構造であっても、通常の芯鞘繊維と同じく、無機粒子含有率が最高のポリマーAを繊維の最内層に配置している。同じ無機粒子含有率の実施例15と比べて、繊維の防透け性能が劣り、紡織品の紫外線防止性能と乾湿変退色効果も劣る。
【0070】
比較例3
70.0wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)8重量分と、0.3wt%TiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)92重量分をそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ、最外層面積が断面総面積の20%であり、原糸タフネスが19.9である。取得した繊維で筒編物を作り、取得した筒編物の防透け性能が86.4%であり、550ナノメートル波長での乾湿反射率差が12.4%であり、紫外線防止性能を有しなく、水浸潤後の変色が著しく、耐光堅牢度が合格した。複合繊維におけるポリマーAからの無機粒子の含有率が10wt%より低いとき、ポリマーAにおける無機粒子の含有率が70wt%に達しても、複合繊維の防透け効果が劣り、取得した紡織品の紫外線抵抗性能と乾湿変退色が劣る。
【0071】
比較例4
15wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、5.5wt%のTiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分とをそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、紡糸には糸切れ、単糸流れが発生した。かつ、取得したPOYが仮撚り加工を行う時、糸切れが発生し、かつガイドブロックを通る際、大量の白粉が積み上げで、長時間巻取ができなかった。得られた高防透け性能を持つ仮撚り長繊維は、繊維横断面が多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、且つ、最外層面積が断面総面積の20%であり、原糸タフネスが13.7である。取得した繊維を使用して筒編物に作製し、取得した筒編物の防透け性能が94.4%であり、550ナノメートル波長での乾湿反射率差が1.2%であり、紫外線防止性能を有し、水浸潤後の変色が著しくなく、耐光堅牢度が合格した。最外層にあるポリマーBにおける無機粒子含有率は5.0wt%より大きい場合、紡糸プロセスで糸切れが頻発し、紡糸性が劣る。
【0072】
比較例5
15wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)50重量分と、0.3wt%のTiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)50重量分とをそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は多層同心円構造であり、層数が20層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ、最外層面積が断面総面積の20%である。取得した繊維は断面形成異常が発生し、原糸タフネスが15.4であった。取得した繊維を使用して筒編物に作製し、取得した筒編物の防透け性能が86.4%であり、550ナノメートル波長での乾湿反射率差が9.4%であり、紫外線防止性能がなかった。水浸潤後の変色が著しく、耐光堅牢度が合格した。層数が多すぎることにより、繊維断面の成形に異常があり、防透け性能、紫外線防止性能、乾湿変退色効果が劣る。
【0073】
比較例6
80wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)10重量分と、0.3wt%のTiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)90重量分とをそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ、最外層面積が断面総面積の20%である。
【0074】
紡糸プロセスに、ポリマーAの流動性が劣るため、断面形成異常が発生し、紡糸中に糸切れ、単糸流れが発生した。かつ、取得したPOYが仮撚り加工を行うとき、糸切れが発生し、かつガイドブロックを通るとき、大量の白粉が積み上げで、長時間巻取ができなかった。原糸タフネスが17.2であり、取得した繊維を筒編物に作製した。取得した筒編物は、防透け性能が95.9%であり、550ナノメートル波長での乾湿反射率差が0.6%であり、紫外線防止性能を有し、水浸潤後著しい変色がなく、耐光堅牢度が合格した。ポリマーAにおける無機粒子含有率が70.0wt%より高いと、紡糸プロセスに、糸切れが頻発し、紡糸性が劣る。
【0075】
比較例7
10wt%のルチル型TiO2粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマーA)75重量分と、0.3wt%のTiO2粒子を含有するセミダルポリエステル(ポリマーB)25重量分とをそれぞれ予備結晶して、50ppm以下まで乾燥する。それぞれを紡糸機のA、Bチップ供給ホーパに投入して紡糸を行い、仮撚り加工を実施して、高い防透け性能を持つ長繊維を製造した。繊維横断面は多層同心円構造であり、層数が3層である。そのうち、ポリマーBが最外層にあり、かつ、最外層面積が断面総面積の20%である。原糸タフネスが12.7で小さい過ぎのため、紡糸プロセスに糸切れ、単糸流れが発生した。かつ、仮撚り加工プロセスにも、同様に糸切れが発生し、加工性が劣る。取得した繊維を筒編物に作製し、取得した筒編物は、防透け性能が94.9%であり、550ナノメートル波長での乾湿反射率差が1.2%であり、紫外線防止性能を有し、耐光堅牢度が合格した。複合繊維におけるポリマーAの含有率が70%より高いと、繊維のタフネスが小さく、正常使用の要求を満たすことができない。
【0076】
【0077】
【国際調査報告】