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特表2023-536729ドライアイを治療するための眼科装置、システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ドライアイを治療するための眼科装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/04 20060101AFI20230822BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20230822BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20230822BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20230822BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61N1/04
G02C11/00
G02C7/04
A61N1/36
A61F9/007
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507222
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 US2021044383
(87)【国際公開番号】W WO2022031731
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/060,363
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/391,835
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520497472
【氏名又は名称】トゥウェンティ トゥウェンティ セラピューティクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】リー、フレッド シャンナン
(72)【発明者】
【氏名】アザール、ドミトリー
【テーマコード(参考)】
2H006
4C053
【Fターム(参考)】
2H006BC00
2H006CA00
4C053BB23
4C053BB24
4C053BB34
4C053BB35
4C053BB36
4C053JJ11
4C053JJ21
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 いくつかの観点において、ドライアイを治療するための電子コンタクトレンズが提供される。いくつかの観点によると、前記電子コンタクトレンズは、患者の眼球に適合するように構成された凹状面と、眼瞼の動きを表す信号を生成するように構成されたセンサと、前記眼球を刺激するために使用されるエネルギーを蓄積するように構成された少なくとも1つのコンデンサとを含む。前記電子コンタクトレンズは、さらに、前記少なくとも1つのコンデンサに接続された少なくとも2つの電極を含み、この少なくとも2つの電極は、前記凹状面に露出され、前記眼球を刺激するために前記少なくとも1つのコンデンサからの電力を供給するように構成されている。前記電子コンタクトレンズは、さらに、前記センサおよび前記少なくとも2つの電極に接続されたプロセッサを含む。前記プロセッサは、前記センサの出力から瞬目率を算出し、前記瞬目率に基づいて、前記少なくとも2つの電極を作動させて前記眼球を刺激するように構成されている。
【選択図】 図3A-3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイを治療するための電子コンタクトレンズであって、
患者の眼球に適合するように構成された凹状面と、
眼瞼の動きを表す信号を生成するように構成されたセンサと、
前記眼球を刺激するために使用されるエネルギーを蓄積するように構成された少なくとも1つのコンデンサと、
前記少なくとも1つのコンデンサに接続された少なくとも2つの電極であって、前記凹状面に露出され、前記眼球を刺激するために前記少なくとも1つのコンデンサからの電力を供給するように構成されているものである、前記少なくとも2つの電極と、
前記センサおよび前記少なくとも2つの電極に接続されたプロセッサであって、
前記信号を前記センサから受信し、
前記信号に基づいて瞬きが生じた時点を決定し、
検出された2若しくはそれ以上の瞬きの1セットから瞬目率を算出し、
前記瞬目率に基づいて、前記少なくとも2つの電極を作動させ、第1の刺激振幅によって前記眼球を刺激する
ように構成された、前記プロセッサと
を有する、電子コンタクトレンズ。
【請求項2】
請求項1記載の電子コンタクトレンズにおいて、前記プロセッサは、さらに、
前記少なくとも2つの電極によって最後に刺激が供給された時点から、1の刺激と次の刺激との間の所定期間を超過したかどうかを決定し、
前記決定に基づいて、前記少なくとも2つの電極を作動させ、第2の刺激振幅によって前記眼球を刺激する
ように構成されているものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項3】
請求項1記載の電子コンタクトレンズにおいて、前記第1の刺激振幅は前記第2の刺激振幅よりも大きいものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項4】
請求項3記載の電子コンタクトレンズにおいて、前記第1の刺激振幅は瞬目反射を刺激するように構成されており、前記第2の刺激振幅は反射性涙液の産生を刺激するように構成されているものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項5】
請求項1記載の電子コンタクトレンズにおいて、さらに、
電源を有し、この電源は、前記プロセッサに接続されて、前記プロセッサに電力を供給するように構成されているものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項6】
請求項1記載の電子コンタクトレンズにおいて、前記凹状面は、少なくとも前記眼球の角膜を覆うように構成されており、前記少なくとも1つのコンデンサ、前記センサ、および前記プロセッサは、前記眼球および/または眼瞼と接触するのに適した包囲材料内に包囲されているものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項7】
請求項1記載の電子コンタクトレンズにおいて、前記プロセッサは、さらに、
前記少なくとも2つの電極を作動させ、標的瞬目率に基づいた周波数によって前記眼球を刺激するように構成されているものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項8】
請求項6記載の電子コンタクトレンズにおいて、当該電子コンタクトレンズは、前記眼球に視力矯正を提供するように構成されているものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項9】
請求項1記載の電子コンタクトレンズにおいて、前記プロセッサは、さらに、
前記少なくとも2つの電極を使用して涙液特性を測定し、
前記涙液特性の測定値に基づいて、前記少なくとも2つの電極を作動させるように
構成されているものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項10】
請求項1記載の電子コンタクトレンズにおいて、前記センサは、
第1の電極部分と第2の電極部分とを含む発振回路と、
駆動回路であって、前記発振回路を第2の信号で駆動して、前記第1の電極部分および前記第2の電極部分に当該電子コンタクトレンズから広がる電磁場を発生させるように接続されているものである、前記駆動回路と、
を有し、
前記信号に基づいて瞬きが生じた時点を決定することは、
前記発振回路の発振状態の閾値を監視することと、
前記発振状態の閾値の指標を決定することと、
前記発振状態の閾値の指標を瞬きと相関させることと
を含むものである、電子コンタクトレンズ。
【請求項11】
使用者の眼球上でスマートコンタクトレンズを使用する方法であって、このスマートコンタクトレンズは、
前記使用者の眼瞼の動きを表す信号を生成するように構成されたセンサと、
前記眼球を刺激するように構成された少なくとも2つの電極と
を有し、この方法は、
前記信号に基づいて、瞬きが生じた時点を繰り返し決定し、検出された少なくとも2若しくはそれ以上の瞬きの1セットを生成する工程と、
前記検出された少なくとも2若しくはそれ以上の瞬きから瞬目率を算出する工程と、
前記瞬目率に基づいて、前記眼球を刺激するために前記少なくとも2つの電極を作動させるどうかを決定する工程と
を有する、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記少なくとも2つの電極は、前記瞬目率が第1の閾値未満である場合、第1の刺激振幅によって前記眼球を刺激するものであり、
この方法は、さらに、
前記瞬目率が前記第1の閾値を超えたことを決定する工程と、
最後に刺激が供給された時点からの経過時間が第2の閾値を超えたことを決定する工程と、
前記第1の閾値および前記第2の閾値を超えたことを決定する工程に基づいて、第2の刺激振幅によって前記少なくとも2つの電極を作動させる工程と
を有するものである、方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、
前記第1の刺激振幅は前記第2の刺激振幅よりも大きいものであり、
前記第1の刺激振幅によって瞬目反射が刺激されるものであり、
前記第2の刺激振幅によっては瞬目反射は刺激されないものである、
方法。
【請求項14】
請求項11記載の方法において、前記第1の刺激振幅は、瞬目反射を刺激するために選択されるものであり、前記第2の刺激振幅は、反射性涙液の産生を刺激するように選択されるものである、方法。
【請求項15】
請求項11記載の方法において、前記眼球を刺激するために前記少なくとも2つの電極を作動させるどうかを決定する工程は、
前記瞬目率が所定の閾値未満であることを決定する工程と、
前記瞬目率が所定の閾値未満であるという決定に基づいて、前記少なくとも2つの電極によって前記眼球を刺激する工程と
を有するものである、方法。
【請求項16】
使用者の眼球に適合し、角膜と重なり合うように構成された眼科装置であって、
前記使用者の眼瞼の瞬きを表す信号を生成するように構成されたセンサと、
前記眼球を刺激するように構成された少なくとも2つの電極と、
前記センサおよび前記少なくとも2つの電極に接続されたプロセッサであって、
前記信号を前記センサから受信し、
前記信号に基づいて瞬きが生じる時点を推定し、
検出された2若しくはそれ以上の瞬きの1セットから瞬目率を算出し、
前記瞬目率に基づいて、前記少なくとも2つの電極を作動させ、前記眼球に瞬目反射を生じさせるのに十分な刺激を与える
ように構成された、前記プロセッサと
を有する、
眼科装置。
【請求項17】
請求項16記載の眼科装置において、さらに、
前記少なくとも2つの電極に接続され、前記瞬目反射を生じさせるのに十分な電力を前記少なくとも2つの電極に供給するように構成された少なくとも1つのコンデンサを有するものである、眼科装置。
【請求項18】
請求項17記載の眼科装置において、さらに、
前記プロセッサに接続され、前記プロセッサに電力を供給する電池を有するものである、眼科装置。
【請求項19】
請求項18記載の眼科装置において、さらに、
第1の外部装置と無線通信するように構成された送受信機と、
第2の外部装置から無線電力を受け取って前記電池を充電するように構成された無線充電装置と、
前記プロセッサと接続され、瞬目率および前記眼球に送達される刺激に関するデータを格納するように構成されたメモリと
を有し、
前記プロセッサは、さらに、前記送受信機を制御して、前記瞬目率、および前記眼球に送達される刺激に関するデータを前記第1の外部装置に通信するように構成されているものである、
眼科装置。
【請求項20】
請求項16記載の眼科装置において、当該眼科装置は、視力矯正を前記使用者に提供するように構成されているものであり、
前記プロセッサは、さらに、
最後に刺激が供給された時点からの経過時間を記録し、
算出された瞬目率が第1の閾値を超え、かつ前記経過時間が第2の閾値を超える場合、前記少なくとも2つの電極を作動させ、前記眼球に涙液を産生させるのに十分であるが、瞬目反射を生じさせるのには十分ではない刺激を与える
ように構成されているものである、眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月3日付で出願した米国特許仮出願第63/060,363号および米国特許出願第17/391,835号に対して優先権および利益を主張するものであり、その内容全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ドライアイを治療するための眼科装置に関し、特に(但し、限定的ではない)、眼球表面を刺激することによってドライアイを治療するスマートコンタクトレンズ(smart contact lenses)に関する。
【背景技術】
【0003】
コンタクトレンズの着用によって生じる眼球の乾燥の根本原因は多面的であるため、そのようなコンタクトレンズの着用による「ドライアイ」は、包括的な用語であると考えられる。酸素透過性の向上、ヒドロゲルの含水量の増加、ポリマー配合物の変更、および異なる表面コーティングの適用など、コンタクトレンズ材料の革新を通じてドライアイの問題を解決する試みが多数なされてきた。含水量の増加を目的とするヒドロゲルは、当該ヒドロゲルと眼球における液体濃度差のために、一部の着用者において眼球の乾燥度が高まる。
【0004】
多くの場合、(コンタクトレンズを全く着用しないことを除いて)ドライアイ疾患を有するうコンタクトレンズ着用者にとって最も快適な眼の環境は、蒸発によって生じた熱環境と涙液膜の濃度水準が眼を閉じ、眼瞼によって回復されるときである。
【0005】
基礎涙液産生経路は、主に閉ループの熱体系として理解されている。涙液膜における自然な蒸発によって角膜に温度差が検出されると、涙液膜と角膜の温度受容器との間の熱平衡を回復するために、涙腺によって涙液が産生されることが研究によって示されている。しかしながら、機械的な不快感を与えるほど乾燥しているにもかかわらず、レンズによって、(基礎涙液の分泌が誘発されず)依然として熱環境が維持される場合、ドライアイの状態が悪化することがある。したがって、コンタクトレンズの着用によってドライアイ症状がさらに悪化するため、軽度のドライアイ症状に患う着用者は、コンタクトレンズの着用を嫌悪する場合がある。
【0006】
例えば、各種点眼剤の形態の液状剤を外用することにより、症状を一時的に緩和することが可能である。しかしながら、このような症状の緩和は一時的なものであるため、点眼剤を繰り返し使用する必要があり、これはコスト高であるとともに不便である。
【0007】
したがって、コンタクトレンズ着用者のドライアイ症状を治療するための装置および/または技術に対する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ドライアイを治療するためのシステム、装置、および方法が提供される。いくつかの観点において、ドライアイを治療するための電子コンタクトレンズが提供される。いくつかの観点によると、前記電子コンタクトレンズは、患者の眼球に適合するように構成された凹状面と、眼瞼の動きを表す信号を生成するように構成されたセンサと、前記眼球を刺激するために使用されるエネルギーを蓄積するように構成された少なくとも1つのコンデンサとを含む。前記電子コンタクトレンズは、さらに、前記少なくとも1つのコンデンサに接続された少なくとも2つの電極を含み、この少なくとも2つの電極は、前記凹状面に露出され、前記眼球を刺激するために前記少なくとも1つのコンデンサからの電力を供給するように構成されている。いくつかの観点によると、前記電子コンタクトレンズは、さらに、前記センサおよび前記少なくとも2つの電極に接続されたプロセッサを含む。前記プロセッサは、前記信号を前記センサから受信し、前記信号に基づいて瞬きが生じた時点を決定し、検出された2若しくはそれ以上の瞬きの1セットから瞬目率を算出し、前記瞬目率に基づいて、前記少なくとも2つの電極を作動させ、第1の刺激振幅によって前記眼球を刺激するように構成されている。
【0009】
いくつかの観点において、本開示は、使用者の眼球上でスマートコンタクトレンズを使用する方法を説明する。このスマートコンタクトレンズは、前記使用者の眼瞼の動きを表す信号を生成するように構成されたセンサと、前記眼球を刺激するように構成された少なくとも2つの電極とを含む。前記スマートコンタクトレンズを使用する方法は、前記信号に基づいて、瞬きが生じた時点を繰り返し決定し、検出された少なくとも2若しくはそれ以上の瞬きの1セットを生成する工程と、前記検出された少なくとも2若しくはそれ以上の瞬きから瞬目率を算出する工程と、前記瞬目率に基づいて、前記眼球を刺激するために前記少なくとも2つの電極を作動させるどうかを決定する工程とを含む。
【0010】
いくつかの観点において、本開示は、使用者の眼球に適合し、角膜と重なり合うように構成された眼科装置を説明する。前記眼科装置は、前記使用者の眼瞼の瞬きを表す信号を生成するように構成されたセンサと、前記眼球を刺激するように構成された少なくとも2つの電極と、前記センサおよび前記少なくとも2つの電極に接続されたプロセッサとを含む。前記プロセッサは、前記信号を前記センサから受信し、前記信号に基づいて瞬きが生じる時点を推定し、検出された2若しくはそれ以上の瞬きの1セットから瞬目率を算出し、前記瞬目率に基づいて、前記少なくとも2つの電極を作動させ、前記眼球に瞬目反射を生じさせるのに十分な刺激を与えるように構成されている。
【0011】
本開示の追加の観点、特徴、および利点は、以下の詳細な説明によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面を参照して本開示の例示的な実施形態を説明する。
図1図1は、1実施形態による、スマートコンタクトレンズのブロック図である。
図2図2は、1実施形態による、コンタクトレンズのセンサのブロック図である。
図3A-3B】図3Aは、1実施形態による、コンタクトレンズの前部/眼瞼に面した/正面の図であり、図3Bは、コンタクトレンズの後部/角膜に面した/背面の図である。図3Cは、1実施形態による、使用者の眼に着用された状態の図3Aおよび図3Bのコンタクトレンズを示す。
図3C図3Aは、1実施形態による、コンタクトレンズの前部/眼瞼に面した/正面の図であり、図3Bは、コンタクトレンズの後部/角膜に面した/背面の図である。図3Cは、1実施形態による、使用者の眼に着用された状態の図3Aおよび図3Bのコンタクトレンズを示す。
図4図4は、本明細書に記載のコンタクトレンズなどのコンタクトレンズの、1実施形態による動作方法である。
図5A図5Aおよび図5Bは、眼瞼の異なる位置に対して使用者の眼球上に配置された1実施形態による眼科装置を示す。
図5B図5Aおよび図5Bは、眼瞼の異なる位置に対して使用者の眼球上に配置された1実施形態による眼科装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の原理の理解を深めるために、次に、図面に示す実施形態を参照するとともに、当該実施形態を特定の用語を使用して説明する。但し、本開示の範囲に対する限定を意図しているものではないことを理解されたい。記載する装置、システム、および方法に対する任意の変更およびさらなる修正、ならびに本開示の原理のさらなる任意の適用は、本開示が関連する技術分野の当業者が通常行うように当然考えられ、また本開示の範囲内に含まれる。特に、1実施形態に関して記載された特徴、コンポーネント、および/または工程は、本開示の別の実施形態に関して記載された特徴、コンポーネント、および/または工程と組み合せることができることが当然考えられる。しかしながら、簡略化のため、これらの組み合わせについて、別途繰り返して説明しない。
【0014】
本明細書に記載の装置および方法は、(コンタクトレンズの着用または既存の軽度のドライアイ疾患によって妨げられる可能性がある)基礎涙液産生を反射性涙液(reflex tearing)によって補助することを目的とする。いくつかの実施形態では、反射性涙液は、コンタクトレンズの態様で眼球(例えば、角膜または強膜)を神経刺激することによって刺激され、それにより眼球上の求心性神経が刺激されて涙腺を通じて反射性涙液が産生される。
【0015】
コンタクトレンズの形状因子により視力のための屈折補正が維持されるとともに、瞬目率(blink rate)、瞬きのパターン、および/または瞬きの検出を追跡することが可能となり、アルゴリズムによって角膜を刺激するタイミングと頻度を決定することができる。瞬きを十分な速度で検出することによって、瞬きの間に刺激を同期させることが可能であり、その結果、より自然で使用者にとってより快適な刺激となる。
【0016】
多くの場合、ドライアイ疾患は、低瞬目率によって悪化する。これは、ビデオゲームをプレイしている間、または仕事をしている間に瞬きするのを忘れてしまう、若いゲーマー、または過度に集中している個人にとって特に問題である。したがって、刺激強度を(当然ながら安全範囲内で)増加させることで、使用者に瞬きを示唆する、または誘発するのに十分な強度の刺激を与え、コンタクトレンズを「瞬きペースメーカー」としても機能させることができ、それによってドライアイ治療の追加手段が提供される。
【0017】
図1は、1実施形態による、スマートコンタクトレンズ100の電子コンポーネントのブロック図である。コンタクトレンズ100は、ドライアイを治療するための電子機器/回路を含むとともに、使用者に視力矯正を提供するための従来のコンタクトレンズとして機能する。図示するように、コンタクトレンズ100は、少なくとも1つのセンサ104(または複数のセンサ)と、プロセッサ150と、電源160と、少なくとも1つのコンデンサ170(または複数のコンデンサ)と、少なくとも1対の電極180と、送受信機190と、無線充電装置194と、メモリ196と、アンテナ198とを含む。本明細書では、センサ104は単数形で言及されるが、複数のセンサが使用されてもよいことが理解される。
【0018】
センサ104は、コンタクトレンズ100が使用者の眼球上に配置された後に、使用者の瞬きを検出するように構成されている。少なくとも1つの実施形態では、センサ104は、「Device, System and Method for Detecting Overlap of an Ophthalmic Device by an Eyelid」と題する、Shungneng Leeらによる米国特許出願公開第2018/0031867号明細書に記載されているような眼瞼重なり畳検出センサ(eyelid overlap sensor)である。このようなセンサ104については、以下図2に関連して本明細書でさらに説明する。
【0019】
いくつかの実施形態において、図1のコンタクトレンズ100は電源160を含む。いくつかの実施形態において、電源は、再充電可能な電池などのエネルギー貯蔵装置を含む。いくつかの実施形態では、電源160は、センサ104、プロセッサ150、送受信機190、およびメモリ196のうちの少なくとも1つに電力を供給する。電源160は、数時間または一日中など、長時間にわたってこれらのコンポーネントに電力を供給するように構成されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、図1のコンタクトレンズ100はプロセッサ150を含む。プロセッサ150は、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または汎用プロセッサなどの、任意の既知のプロセッサの形態をとることができる。プロセッサ150は、本明細書でさらに説明する実施形態に従って、電力管理(電源160または環境発電による視力用無線充電(energy harvesting view wireless charging)の管理など)、瞬きの感知、瞬きのタイミング、または瞬目反射の刺激の任意の組み合わせを提供するように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態において、図1のコンタクトレンズ100は、コンデンサ(複数可)170と、電極180とを含む。コンデンサ(複数可)170は、眼球表面の刺激中に電力の一部を電極180に供給する。コンデンサ(複数可)170は、(単位時間当たりの電気エネルギー(電力)として供給される)電気エネルギーを刺激に必要とされるまで蓄電し、プロセッサ150は、コンデンサ(複数可)170の放電のタイミングを制御する。コンタクトレンズ100は、コンデンサ(複数可)170を電極180に接続する回路(図示せず)を含むこともでき、それにより、電極は、神経刺激の技術分野で公知である、所定のパルス振幅(すなわち、電圧または電流振幅)、パルス持続時間、パルス周波数、オン時間、オフ時間等を有する特定の波形を提供する。コンデンサ(複数可)170によって電極180に電力が供給され、任意の既知のタイプの刺激波形が提供される。コンデンサ(複数可)170は、眼球を刺激するために、電極180に所定の時間の間、適切な量の電力を供給するように、必要に応じて直列または並列に接続されたスーパーキャパシタなどの2若しくはそれ以上のコンデンサを含むことができる。いくつかの実施形態では、電源160は、放電の合間にコンデンサ170を再充電して、電極180に電力を供給するのに十分な充電状態を維持する。
【0022】
いくつかの実施形態において、図1のコンタクトレンズ100は、送受信機190と、アンテナ198とを含む。送受信機190は、携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータなど、使用者の身体の外部にある装置と通信するための任意の既知のタイプの通信プロトコルおよび波形を利用することができる。送受信機190は、例えば、近距離無線通信(NFC)、無線周波数識別(RFID)、またはBluetooth(登録商標)Low Energy(BLE)を利用することができる。送受信機190は、アンテナ198と協動して電磁波を送受信する。
【0023】
いくつかの実施形態において、図1のコンタクトレンズ100は、メモリ196を含む。メモリ196は、データおよび/またはその他のコンポーネントのための命令を格納するために使用される半導体メモリである。メモリ196は、ランダムアクセスメモリ(RAM)(同期式ダイナミックRAMまたはSDRAMなど)、リードオンリーメモリ(ROM)(プログラマブルROMまたはPROMなど)、フラッシュメモリ、またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の適切な半導体メモリである。メモリ196は、プロセッサ150、および/または送受信機190を動作させるための命令を格納するために使用されてもよい。このように、コンタクトレンズ100は、メモリ196および/またはプロセッサ150を利用するソフトウェアおよびハードウェアの任意の組合せを含むことができる。極端な例では、コンタクトレンズ100はメモリを含まず、プロセッサ150はコンタクトレンズ100の様々なコンポーネントを制御するために有線化される場合もある。
【0024】
いくつかの実施形態において、図1のコンタクトレンズ100は、無線充電装置194を含む。例示的な無線充電装置194は、ループアンテナなどのアンテナである。アンテナは通常、誘導無線充電による無線充電をコンタクトレンズ100に対して実行する、任意の有効形態をとることができる。アンテナは、コンタクトレンズ100の表面上に配置されてもよく、若しくはコンタクトレンズ100の内部に配置されてもよい。
【0025】
図1に示すコンポーネントの多く、またはすべては、誘電性包囲材料(図示せず)によって包囲されている。したがって、コンタクトレンズ100は、眼球および眼瞼の表面と接触するのに適したヒドロゲル材料またはシリコーンヒドロゲル材料などを利用した外側被覆材によって被覆されてもよい。包囲材料は、使用者に視力矯正を提供する従来のコンタクトレンズとして機能するのに適した少なくとも一部分を含む。
【0026】
図2は、図1のコンタクトレンズ100のセンサ104のコンポーネントの一実施形態のブロック図を示す。センサ104は、コンタクトレンズ100の少なくとも一部分が使用者の眼瞼と重なり合っているかどうかを検出する回路を含む。この種の重なり合い(簡略化のため、本明細書では単に「眼瞼の重なり(eyelid overlap)」と呼ぶ)の検出は、例えば、遠隔装置との通信において、使用者の状態を評価する、および/または収容アクチュエータによって実行されるべき動作を決定するなどの目的のために使用することができる。このようなセンサ104に関する追加の詳細については、米国特許出願公開第2018/0031867号明細書に提示されており、また以下で説明する。
【0027】
眼科装置102は、(例えば、例示的な誘電性包囲材料110を含む)密閉包囲体(a sealed enclosure)を形成するレンズを含む実施形態の一例であり、密閉包囲体内に配置された回路は、使用者の眼瞼の眼科装置102に対する重なり量を検出するように動作可能である。少なくとも1実施形態によると、眼科装置102の密閉包囲体内に配置された回路の一部または全部は、センサ104を構成する。
【0028】
図示する例示的な実施形態では、このような回路は、眼科装置102の対応する領域に沿って様々に延長する第1の電極部分と第2の電極部分(図示せず)とを有する発振回路112を含む。第1の電極部分および第2の電極部分は、磁気誘導ループ構造の異なる部分であってもよい。代替的に、第1の電極部分は、当該電極部分の一端部のみにより第2の電極部分に接続されてもよい。発振回路112は、眼瞼重なり量検出センサの機能性を促進するために、様々な条件下において異なる時点で様々な動作が可能である。例えば、第1の電極部分および第2の電極部分は、誘電性包囲材料110を通して、眼科装置102の外部環境と電磁気的に相互作用するように構成することができる。このような外部環境は、使用者の眼の角膜の一部または全部、誘電性包囲材料110に隣接する涙液膜、および、一時的に眼科装置102に重なり合う眼瞼の一部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、発振回路112は、第1の電極部分および第2の電極部分により発振状態を誘導するように動作させることができる。
【0029】
例えば、眼科装置100の駆動回路118もまた、密閉包囲体内に配置することができる。駆動回路118は、第1の電極部分および第2の電極部分に電磁場を発生させる信号により発振回路112を駆動するように接続されている。電磁場とレンズの外部環境(図示せず)、例えば、レンズと接触する涙液膜および/または使用者の眼瞼を含む環境との間の相互作用は、発振回路112における信号発振状態、または発振応答に影響を与える。このような電磁的相互作用により、発振回路112は、眼瞼の重なり量を表す1若しくはそれ以上の信号特性を呈する。密閉包囲体内に同様に配置された発振検出回路(ODC)114は、発振回路112の発振閾値状態を監視するように接続される。本明細書において「発振閾値状態」とは、発振回路における第1の状態の摂動によって生じる発振応答を指すが、この第1の状態は、このような摂動によって当該発振応答が生じないと考えられる代替的な第2の状態に近接する状態を指す。
【0030】
1実施形態において、駆動回路118は、発振回路112の複数の初期化状態を連続的に構成するように接続された初期化回路(図示せず)を含む。そのような実施形態では、駆動回路118は、複数の初期化状態の各々について、その初期化状態に摂動を与えるように接続されたパルス発生器(図示せず)をさらに有し、発振検出回路(ODC)114は、発振回路112を監視して、それぞれの摂動よって発生する所与の発振応答を検出する。発振検出回路(ODC)114は、発振回路112における1若しくはそれ以上の信号特性を決定するように接続することができ、例えば、発振検出回路(ODC)114は、涙液膜によって眼科装置100に対して部分的に生じる抵抗量、および異なる時点において眼科装置100の少なくとも一部に眼瞼が重なり合うことによって生じる抵抗量の変化を検出する。抵抗の検出は、発振回路112によって発振を開始するための閾値電流量を検出することを含んでもよい(ここで、入力電流量の閾値は、眼瞼の重なり量に少なくとも部分的に依存して変化する)。
【0031】
発振検出回路(ODC)114は、例えば、発振回路112の出力が対応する摂動に対する発振応答として有効であるかどうかを決定するために使用される基準情報を格納するメモリ資源(図示せず)を含むか、若しくはそのようなメモリ資源にアクセスすることができる。このような基準情報は、所定の時間内において、発振回路112からの出力によって生じる、閾値となる最小移行数を含むことができる。代替的にまたは追加的に、基準情報は、発振回路112からの出力によって生じる、閾値となる最小振幅を含んでもよい。発振検出回路(ODC)114は、この基準情報に基づいて、発振回路112の発振状態の閾値について監視する。例えば、そのような発振応答の検出は、発振検出回路(ODC)114によって、発振回路による出力の振幅が、閾値となる所定の最小振幅よりも大きいか(若しくは、いくつかの実施形態においては、等しいか)どうかを特定することを含むことができる。別の実施形態では、発振応答の検出は、発振検出回路(ODC)114によって、所定のサンプル期間中の発振回路112の出力における移行を(例えば、閾値電圧または電流レベルを通じて)を計数することを含む。次に、計数された移行総数は、発振応答として有効となる出力の閾値である最小移行数と比較される。
【0032】
密閉包囲体内に配置された眼科装置100の評価回路116は、発振検出回路(ODC)114に接続されて、閾値となる発振状態の指標を受け取り、その閾値となる発振状態の指標を眼瞼の重なり量に相関させることができる。例えば、眼科装置100のメモリ資源は、発振回路112の複数の初期化状態(および/または対応する発振応答)に対応する参照情報を格納することができ、各初期化状態はそれぞれ、異なる眼瞼の重なり量と関連する。このような実施形態では、発振検出回路(ODC)114は、発振応答を生成するための閾値となる初期化状態の指標を評価回路116に通信する。このような指標に基づいて、評価回路116は、例えば、参照情報のルックアップを含む評価を実行して、閾値となる初期化状態に対応する眼瞼の重なり量を特定することができる。次に、評価回路116は、眼瞼の重なり量を特定する1若しくはそれ以上の信号を生成する。
【0033】
発振回路112の閾値となる発振状態は、例えば、使用者の眼瞼が眼科装置100と重なり合う度合いを含む環境条件に基づいて、時間の経過とともに変化する可能性がある。1実施形態では、発振検出回路(ODC)114は、時間の経過とともに、連続的に複数回の試験を実行し、各試験において、発振回路112の対応する時点での閾値となる発振状態を検出する。各回の試験は複数のサンプリング周期を含んでもよく、各サンプリング周期は、発振回路112の異なる初期化状態に対応する。複数回の試験のうちの所与の回の試験について、当該所与の回の試験における複数のサンプリング周期の各々は、駆動回路118によって発振回路112に提供される、それぞれ異なる入力値に対応する。例えば、この入力は、駆動回路118の電流源によって提供される電流を含んでもよい。別の実施形態では、この入力は、発振回路112にバイアスをかける電圧を含む。所与の回の試験において、実行されるサンプリング周期のための初期化状態(例えば、入力レベル)を動的に選択する工程を含む工程が実行されるが、ここで、この選択する工程は、先行するサンプリング周期の結果および二分探索アルゴリズムに基づく。
【0034】
図5Aおよび図5Bは、1実施形態による、眼瞼134が異なる位置にあるときの使用者の眼球130上に配置された(眼科装置100などの)眼科装置140を示す。図5Aの挿入図120に示すように、1実施形態は、使用者の眼球130内または眼球130上に配置されるように構成された(眼科装置100などの)眼科装置140を含む(眼科装置14が、眼球130の虹彩132の一部分または全体を覆うコンタクトレンズである場合)。眼球130および/または使用者の眼瞼134の動きによって、眼瞼134は眼科装置140に対して異なる時点において異なる量だけ重なり合う可能性がある。1実施形態では、眼科装置140は、例えば、任意の重なりから生じる抵抗の変化に基づいて、眼瞼134による重なり量を検出するセンサ機構を含む。
【0035】
例示であって限定ではないが、このようなセンサ機構は、眼科装置140の光透過性および誘電性の包囲材料内に様々に延長する第1の電極部分142と第2の電極部分144とを含む(発振回路112などの)回路を含むことができる。電極部分142、144の各々は、眼科装置140上にわたる涙液膜(例えば、この場合、涙液膜の少なくとも一部は眼科装置140と眼瞼134との間にある)と電磁気的に相互作用する電極部分として機能するように構成することができる。電極部分142、144は、例えば、眼科装置140の少なくともいくつかの角度区分(例えば、少なくとも30°)にわたってそれぞれ弧状をなして様々に延長する電極部分として機能し、当該電極部分は互いに接続され、同じ単一電極のループ構造の少なくとも一部を形成する。弧状の電極部分は、使用者の視認に対する干渉を緩和するために、眼科装置140の周囲部の近傍(例えば、その中心から離れた位置)に配置される。例えば、電極部分142、144の一方または双方は、電極部分142、144の少なくとも一部が眼科装置140の中心よりも周縁部により近い位置に配置される。
【0036】
いくつかの実施形態では、電極部分142、144の一方または双方は、さらに、眼科装置140の下方(例えば、眼球130と眼科装置140との間)にわたる別の涙液膜と電磁気的に相互作用するように構成される。図5Bの挿入図122に示すように、眼瞼134および/または眼球140は時間とともに移動し、その結果、眼瞼134が電極部分142、144の一方または両方と重なり合う量が変化する。眼瞼134による重なり量の変化は、電極部分142、144と眼科装置100の外部環境との電磁的相互作用に関連付けられた1若しくはそれ以上の信号特性に影響を与える可能性がある。
【0037】
さらに、図5Aおよび図5Bでは、電極142、144は、瞳孔を周回する連続導体の一部であるように図示されていないが、代替的に、電極142、144は、例えば図3Aおよび図3Bに示すように、瞳孔を周回する連続導体の一部として接続されてもよい。
【0038】
図1のプロセッサ150は、包囲体110内に延長する回路構造(図示せず)の発振特性に基づいて、眼瞼の重なり量を決定するように動作する。例えば、プロセッサ150は、発振検出回路(ODC)114および/または評価回路116のような機能性を提供してもよく、センサ104は、発振回路112と駆動回路118とを含むことができる。センサ104およびプロセッサ150は、協動して瞬きを検出することができる。例えば、センサ104の出力に基づいてプロセッサ150が、使用者の眼瞼の重なり量が閾値を超えることを検出した場合、プロセッサは、瞬きが発生したと決定する。
【0039】
図3Aおよび図3Bは、1実施形態によるスマートコンタクトレンズ100の異なる視点を示す。具体的には、図3Aは、コンタクトレンズ100の正面図、すなわち眼瞼に面した前側の図を提示し、図3Bは、コンタクトレンズ100の背面図、すなわち角膜に面した、後側の図を示す。本図面は二次元であるが、通常のコンタクトレンズと同様に、コンタクトレンズの背面/角膜に面した表面は、眼球に適合するように凹状であり、前面/眼瞼に面した表面は、対応する眼瞼に適合するように凸状である。
【0040】
図3Aおよび図3Bを参照すると、コンタクトレンズ100は、プロセッサ150と、電池160と、1若しくはそれ以上のコンデンサ170(本明細書では単数形でコンデンサと称する)とを含む。コンタクトレンズ100は、通信または無線充電またはその双方に使用することができる無線周波数アンテナ198を含む。
【0041】
コンタクトレンズ100は、1対の電極180を含む。電極180は、強膜または角膜の一部などの眼球の表面を刺激するために使用される。図示するように、電極180は、コンタクトレンズ100の眼球に面した側から電気的刺激を与えることができるように、当該コンタクトレンズ内またはコンタクトレンズ上に配置される。上述したように、眼球の刺激中に電極180にピーク電流の支援を行う。刺激が与えられていないとき、電極180は、コンタクトレンズ100と眼球との間の涙液膜の性質を感知するために使用することができる。例えば、電極180は、涙液のモル浸透圧濃度(osmolarity)の尺度として使用される、涙液の導電率またはインピーダンスを測定するために使用することができ、プロセッサ150は、測定された導電率をモル浸透圧濃度値に変換するためにルックアップテーブルまたは公式を利用することができる。1実施形態において、コンタクトレンズ100は、瞬目率および/または涙液膜値の測定値を使用して、電極180に対する刺激信号を生成するタイミングを決定する。
【0042】
コンタクトレンズは、センサ104を含む。上述したように、センサ104は、瞬きを検出する。1実施形態によれば、センサ104は、涙液膜と眼瞼を区別することができる。例えば、涙液膜は、センサ回路104によって誘導される電流に対して導電性がある。センサ回路の動作特性に対するそのような導電性の影響は、外部環境の変化、例えば、涙液膜と接触する(眼瞼などの)生体物質の任意の追加的な導電性によって、時間の経過とともに変化する。また、眼瞼がセンサ回路と重なり合う度合いによって、涙液膜と並行する電流路の抵抗率が変化する場合がある。(眼瞼の重なりから生じるものと組み合わせて)涙液膜の生体導電性/生体抵抗を効率的に測定するために、いくつかの実施形態では、例えば、レンズの静電容量と涙液の抵抗との直列の組み合わせと並列に接続される誘導素子を様々な態様で提供する。センサ回路が共振状態にある間、このような誘導素子は、レンズの静電容量に伴うインピーダンスを相殺、若しくは大幅にオフセットする。したがって、センサ回路が共振状態にある場合、発振周波数は、誘導素子とレンズの静電容量の組み合わせによる共振として自動的に決定され、それにより、涙液膜と眼瞼(眼瞼が存在する場合)によってもたらされる抵抗の総量が効果的に顕在化される(例えば、このような抵抗は、レンズの静電容量に伴うインピーダンスによって不明瞭になることなく感知される)。この抵抗は、センサー回路の発振を開始するのに必要な最小限の電流量を決定することに直接相関し、またそのような決定によって感知される。
【0043】
回路のコンポーネントの多くまたはすべては、誘電性包囲材料310によって包囲される。例示的な誘電性包囲材料310によって表される包囲材料は、光透過性レンズ材料として機能し、コンタクトレンズ100の回路のための密閉包囲体を少なくとも部分的に形成することができる。誘電性包囲材料310は、ポリマー材料、ヒドロゲル、PMMA、シリコーンベースのポリマー(例えば、フルオロシリコンアクリレート:fluoro-silicon acrylate)等、ヒトの眼と直接接触するのに適合した種々の材料で作製することができる。誘電性包囲材料310は、眼/眼球の表面に取り付けるように構成された凹状の曲率を有する円形レンズの形態であってよい。
【0044】
図3Cは、図3Aおよび図3Bのコンタクトレンズ100が使用時において使用者の眼に配置されている図を示す(コンタクトレンズの外側境界を破線を用いて示す)。コンタクトレンズ100の電極のみが、例示の目的で示されている。
【0045】
図4は、1実施形態による、本明細書に記載のコンタクトレンズ100などのコンタクトレンズを動作させる方法400を示す。方法400は、工程410において、使用者がコンタクトレンズを眼に配置することから開始される。コンタクトレンズは、眼に配置される前に、動作の源となる電源またはその他のエネルギー貯蔵装置を充電する収納ケースに収納されている。
【0046】
コンタクトレンズが眼に配置された際に、使用者は、ハンドヘルドデバイス(図示せず)を用いて公称刺激振幅および増加刺激振幅との間で調整を行うオプションを有する。例えば、上述したように、コンタクトレンズは、眼を刺激するための電極を含むことができる。公称刺激振幅は、眼を刺激して反射性涙液を生成するために使用され、例えば、小さなゴミのような何かが「眼に入った」かのような軽微な感覚を使用者にもたらす。反射性涙液は、基礎涙液の交換の一形態となり得る。また、瞬目反射を刺激するために、増加した刺激振幅を使用することができる。増加刺激振幅は通常、公称刺激振幅よりも大きい。ハンドヘルドデバイスは、無線通信を介して刺激パラメータをコンタクトレンズに通信することができる。例えば、コンタクトレンズは、上述した送受信機およびアンテナを含むことができる。
【0047】
次に工程420において、コンタクトレンズは、例えば、上述したセンサ104などのセンサを使用して瞬きを検出し、瞬きと瞬きとの間の時間を追跡して瞬目率を決定し、さらに、瞬きの間の時間を使用して、以下に説明するように、公称刺激を与えるべきかどうかを決定する。
【0048】
工程430において、コンタクトレンズは、(例えば、所定の期間の間に計算された)瞬目率が、ドライアイを軽減、防止、または場合によってはドライアイを治療するのに十分であるかどうかを決定する。1実施形態では、コンタクトレンズは、瞬目率を閾値と比較することによって、瞬目率が十分であるかどうかを決定する。この閾値は、患者依存した閾値であってもよいし、時間帯に依存したものでもよく、若しくはその他の数多くのパラメータのうちのいずれかに依存してもよい。瞬目率が十分でない(例えば、所定の閾値より小さい)場合、方法は工程440に移行し、コンタクトレンズは、本明細書に記載した電極180などの電極を使用して刺激波形を適用する。刺激波形では、瞬目反射を誘発し、刺激率を増加させるために、第1の電流または電圧振幅値による増加刺激が使用される。設定された期間にわたって一定の規則性または周期性を有する刺激波形を適用することで、コンタクトレンズは瞬きペースメーカーとして機能し、これによって十分な瞬目率が担保される。
【0049】
工程430において、瞬目率が十分であると決定された場合、次に工程450が実行される。工程450において、コンタクトレンズは、1の刺激と次の刺激との間の所定期間(inter-stimulation period)に達したかどかを決定する。1の刺激と次の刺激との間の所定期間に達した場合(例えば、最後の刺激の時点からの経過時間が所定の閾値を超えた場合)、工程460において、電極から供給される、第2の電流または電圧振幅値による公称刺激を使用して刺激波形が適用される。1実施形態において、公称刺激は、反射性涙液を生じさせるのに十分な強度であるが、瞬目反射を生じさせるのに十分な強度ではない。工程460において公称刺激が適用された後、方法400は工程420に戻り、工程が繰り返される。方法400の工程は、コンタクトレンズが眼に着用された状態である限り、繰り返される。使用者は、任意時点でコンタクトレンズを眼から取り外すことで、方法400を終了することができる。
【0050】
コンタクトレンズは、眼から取り外された後、ケースに戻される。異なる期間の平均瞬目率、涙のモル浸透圧濃度の測定値、刺激が加えられた頻度に関するデータなどのデータが、コンタクトレンズ使用時に収集される。
【0051】
通常、本明細書に開示された方法、装置、および/またはシステムに関連する使用者データの作成、格納、処理、および/または交換はすべて、様々なプライバシー設定、およびセキュリティプロトコル、および現行のデータ規制を遵守するように構成されており、これは、使用者データの機密性および完全性を重要事項として取り扱うことと一貫している。例えば、コンタクトレンズ100などの装置および/またはシステムは、多数の規格および/または他の協定に準拠するために情報セキュリティ制御を実施するモジュールを含むことができる。いくつかの実施形態では、モジュールは、使用者からプライバシー設定の選択を受信し、選択されたプライバシー設定に準拠するための制御を実施する。別の実施形態では、モジュールは、機密とみなされるデータを特定し、当該技術分野における任意の適切かつ周知の方法に従ってデータを暗号化し、機密データを、当該データを仮名化するコードで置き換え、このような工程が実行されない場合、選択されたプライバシー設定およびデータセキュリティ要件および規制への準拠を保証する。このようなモジュールは、一例として、プロセッサ150、またはプロセッサ150とメモリ196の組み合わせを使用して実装することができる。
【0052】
当業者であれば、上述した装置、システム、および方法を様々な態様で変更できることを認識すると考えられる。したがって、当業者であれば、本開示によって包含される実施形態は、上述した特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解すると考えられる。この点について、例示的な実施形態を示し、また説明してきたが、上述の開示において、広範囲の修正、変更、および代替が考えられる。本開示の範囲から逸脱することなく、そのような変更を上述の実施形態に対してなすことができることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、広範囲に、本開示と一致するように解釈されることが適切である。
図1
図2
図3A-3B】
図3C
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】