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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(54)【発明の名称】浮体式風力発電機の係留システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20230822BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230822BHJP
   B63B 21/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
F03D13/25
B63B35/00 T
B63B21/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507327
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 NO2021050172
(87)【国際公開番号】W WO2022031175
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】2012075.4
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515339653
【氏名又は名称】エクイノール・エナジー・アーエス
【氏名又は名称原語表記】EQUINOR ENERGY AS
【住所又は居所原語表記】Torusbeen 50,4035 Stavanger,Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】スカーレ、ビョルン
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA20
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD12Z
3H178DD67X
(57)【要約】
風力発電システムは、回転非対称浮体式風力発電設備と、浮体式風力発電設備に接続された回転非対称係留システムとを備える。係留システムは、風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときに、風力発電設備に作用する風が±90度から吹いているときよりも低いヨー剛性を係留システムが有するように、浮体式風力発電設備に直接又は間接的に接続された複数の係留索を備える。風が0度から吹いていることは、風からもたらされる空力ロータ推力の水平成分が浮体式風力発電設備の重心に向いているときの風向と定義される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転非対称浮体式の風力発電設備と、前記風力発電設備に接続された回転非対称の係留システムとを備える風力発電システムであって、
前記係留システムは、前記風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときに、前記風力発電設備に作用する風が±90度から吹いているときよりも低いヨー剛性を前記係留システムが有するように、前記風力発電設備に直接又は間接的に接続された複数の係留索を備え、
風が0度から吹いていることは、前記風からもたらされる空力ロータ推力の水平成分が前記風力発電設備の重心に向いているときの風向と定義される、風力発電システム。
【請求項2】
前記係留システムは、前記複数の係留索のうちの少なくとも1つの第1の係留索と少なくとも1つの第2の係留索とを備え、前記少なくとも1つの第1の係留索及び前記少なくとも1つの第2の係留索のそれぞれは、前記風力発電設備に直接又は間接的に接続するための風力発電設備接続端部を有し、
前記少なくとも1つの第1の係留索の前記風力発電設備接続端部は、前記少なくとも1つの第2の係留索の前記風力発電設備接続端部よりも前記風力発電設備のロータに近い位置に配置され、
前記少なくとも1つの第2の係留索の前記風力発電設備接続端部は、前記少なくとも1つの第1の係留索の前記風力発電設備接続端部よりも前記風力発電設備から遠くに位置する、請求項1に記載の風力発電システム。
【請求項3】
前記複数の係留索のうちの少なくとも1つの係留索は、添え具を用いて前記風力発電設備に接続される、請求項1又は2に記載の風力発電システム。
【請求項4】
前記複数の係留索のうちの少なくとも2つまたは全ては、添え具を用いて前記風力発電設備に接続される、請求項1~3のいずれか1項に記載の風力発電システム。
【請求項5】
2つ以上の前記添え具は、少なくとも2つの異なる長さのものである、請求項4に記載の風力発電システム。
【請求項6】
前記係留システムの単数又は複数のより短い添え具は、前記係留システムの単数又は複数のより長い添え具よりも前記風力発電設備のロータに近い単数又は複数の位置において前記風力発電設備に接続される、請求項5に記載の風力発電システム。
【請求項7】
前記風力発電設備は、複数のカラムを備え、少なくとも1つの添え具は、前記複数のカラムのうちの1つ以上に少なくとも1つの係留索を接続するように配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の風力発電システム。
【請求項8】
少なくとも1つの係留索は、前記風力発電設備の支持構造体又はカラムに直接接続される、請求項1~7のいずれか1項に記載の風力発電システム。
【請求項9】
少なくとも1つの係留索が直接接続される前記カラムは、前記風力発電設備のロータを支持するカラムである、請求項8に記載の風力発電システム。
【請求項10】
2つの係留索は、前記風力発電設備のカラム又は支持構造体に直接接続される、請求項8又は9に記載の風力発電システム。
【請求項11】
前記係留システムは、3つの係留索を備え、前記係留索のうちの少なくとも1つは、添え具を用いて前記風力発電設備に取り付けられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の風力発電システム。
【請求項12】
前記3つの係留索のうちの第1の係留索及び第2の係留索は、前記3つの係留索のうちの第3の係留索よりも前記風力発電設備のロータの近くに配置される、請求項11に記載の風力発電システム。
【請求項13】
前記ロータのより近くに配置される前記第1の係留索及び前記第2の係留索は、前記ロータを支持する前記風力発電設備のカラムに直接又は間接的に接続される、請求項12に記載の風力発電システム。
【請求項14】
前記第3の係留索は、添え具を用いて前記風力発電設備に取り付けられる、請求項12又は13に記載の風力発電システム。
【請求項15】
前記第1の係留索及び前記第2の係留索の風力発電設備接続端部は、前記第3の係留索の風力発電設備接続端部よりも前記風力発電設備の近くに配置される、請求項12~14のいずれか1項に記載の風力発電システム。
【請求項16】
回転非対称の風力発電設備を係留する方法であって、
複数の係留索を備える回転非対称の係留システムを準備することと、
前記係留システムが、前記風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときに、前記風力発電設備に作用する風が±90度から吹いているときよりも低いヨー剛性を有するように、前記複数の係留索を前記風力発電設備に直接又は間接的に接続することと、
を含み、
風が0度から吹いていることは、前記風からもたらされる空力ロータ推力の水平成分が前記風力発電設備の重心に向いているときの風向と定義される、方法。
【請求項17】
前記風力発電設備及び前記係留システムは、請求項1~15のいずれか1項に記載の風力発電システムを形成する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式風力発電機の分野に関する。特に、本発明は、浮体式風力発電設備の係留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の係留システムを有する回転非対称半潜水型浮体式風力発電設備1の概略平面図である。風力発電設備1は、3つのカラム、すなわち、2つのエンプティカラム2と、風力発電機自体を支持する第3のカラム3とを有する浮体を備えている。3つのカラム2、3は、3つの接続部材4によって三角形に連結されて浮体を形成している。風力発電設備1は、3つの係留索5を備える係留システムによって係留されている。1つの係留索5は、図1に見られるように、風力発電設備1の中心の周りに回転対称の配置で各カラム2、3に直接接続されている。
【0003】
図1の係留システムは、通常、ロール-ヨーにおいて力学的に安定している。しかしながら、ロール運動及びヨー運動が比較的大きいため、運動特性は、不利であると考えられている。これは、特に、風が図1に示すy軸の正方向又は負方向に沿った向きであるときに当てはまる。このとき、大きな静的オフセットに加えて、大幅な動的ロール運動及び動的ヨー運動が引き起こされる。
【0004】
図2は、別の従来の係留システムを有する回転非対称半潜水型浮体式風力発電設備1の概略平面図である。図1の係留システムと同様に、図2の係留システムも3つの係留索5’を備えている。ただし、係留索5’は、風力発電設備のカラム2、3に直接接続されていない。その代わりに、各係留索5’は添え具(bridle)6に接続され、添え具自体が風力発電設備1に接続されている。各添え具6は2つの添え索(bridle line)6aを備える。各添え索6aは、風力発電設備のカラム2、3に接続される。したがって、図2に示すように、各カラム2、3に接続された(隣接する添え具6からの)2つの添え索6aが存在する。図1の係留システムと同様に、図2の係留システム(すなわち係留索5’及び添え具6)は、図2に見られるように、風力発電設備1の中心の周りに回転対称に配置されている。
【0005】
図1の係留システムと比較して、図2の係留システムでは、添え具6が存在することから、ヨー剛性が大幅に増強される。これは、図2の係留システムからの抵抗力が、風力発電設備1の半径ではなく、係留索5’への添え具6の接続点の水平半径において得られるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2の回転対称係留システムは、ほとんどの風向について、図1の単一索係留システムと比較して運動特性が改善される。しかしながら、風が図2に示すようなx軸の負方向に流れている場合には、この浮体式風力発電設備は力学的に不安定になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、回転非対称浮体式風力発電設備と、浮体式風力発電設備に接続された回転非対称係留システムとを備える風力発電システムであって、係留システムは、風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときに、風力発電設備に作用する風が±90度(すなわち、90度又は270度)から吹いているときよりも低いヨー剛性を係留システムが有するように、浮体式風力発電設備に直接又は間接的に接続された複数の係留索を備え、風が0度から吹いていることは、風からもたらされる空力ロータ推力の水平成分が浮体式風力発電設備の重心に向いているときの風向と定義される、風力発電システムが提供される。
【0008】
浮体式風力発電設備及び係留システムのそれぞれが回転非対称であると言うとき、これは、垂直軸(例えば、それぞれ浮体式風力発電設備又は係留システムの中心点を通る垂直軸)の周りに回転非対称であることを意味する。
【0009】
回転非対称浮体式風力発電設備は、ロータを有する浮遊支持構造体(又は浮体)を備えることができ、ロータは、この浮遊支持構造体(の残部)から上に延びるカラム又はタワーの上端において支持される。ロータを支持するカラム又はタワーは、風力発電設備が垂直軸の周りに回転非対称となるように、(例えば水平面の上方から見たとき/水平面において見たときに)浮体式風力発電設備の中心でない位置に配置することができる。浮遊支持構造体は、接続部材によって(例えば三角形に)接続された複数(例えば3つ)のカラムを備えることができる。接続部材は、全て同じ長さとすることができる。
【0010】
係留システムは、浮体式風力発電設備に直接又は間接的に接続された複数の係留索を備える。係留システムは、好ましくは、実質的に安定した位置に浮体式風力発電設備を係留するように配置される。例えば、浮体式風力発電設備から最も遠い各係留索の端部は、海底(又は浮体式風力発電設備が位置する別の水域の水底)に接続又は係留することができる。係留システムは、例えば、風、流れ又は波に起因した浮体式風力発電設備のいくつかの小さな動きを許容することができる。
【0011】
係留システムは回転非対称であるので、係留システムは、風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときに、風力発電設備に作用する風が±90度(すなわち、90度及び270度)から吹いているときよりも低いヨー剛性を係留システムが有するように配置することができる(好ましくは配置される)。
【0012】
風が0度から吹いているとは、その風からもたらされる空力ロータ推力の水平成分が浮体式風力発電設備の重心に向いているときの風向と定義される。
【0013】
係留システムは、風力発電設備に作用する風が(上記で定義したように)0度から吹いているときに、風が±90度(すなわち、90度及び270度)から吹いているときよりも低いヨー剛性を有するので、このことは、係留システムが、ロール-ヨー不安定性がリスクであり得るときに、より低いヨー剛性を有し、ロール-ヨー不安定性がリスクでないときに、より高いヨー剛性を有し、それによって、より安定したシステムが得られることを意味する。この理由については、以下で詳細に説明する。
【0014】
係留システムの実際のヨー剛性は、例えば、風力発電設備に使用される浮体のタイプ、水深、係留索のタイプ、係留索のプリテンション及び空力推力等の、特定の実施の形態に応じて変動し得る様々なパラメータに依存する可能性がある。一方、いくつかの実施の形態において、係留システムのヨー剛性は、風力発電設備に作用する風が90度又は270度から吹いているときに、風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときよりも約40%~約60%大きい場合がある。例えば、係留システムは、風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときは、約4000kNm/度~約5000kNm/度のヨー剛性を有することができ、風力発電設備に作用する風が90度又は270度から吹いているときは、約6000kNm/度~約7000kNm/度のヨー剛性を有することができる。
【0015】
係留システムは、少なくとも1つの第1の係留索と、少なくとも1つの第2の係留索とを備えることができ、少なくとも1つの第1の係留索及び少なくとも1つの第2の係留索のそれぞれは、浮体式風力発電設備に直接又は間接的に接続する(又は接続される)風力発電設備接続端部を有する。換言すれば、係留索の風力発電設備接続端部は、風力発電設備の最も近くに位置する係留索の端部である。ただし、この端部は、必ずしも風力発電設備に直接接続されるとは限らない(この端部は、風力発電設備に間接的に接続される場合がある)。
【0016】
少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部は、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部よりもロータに近い位置に配置することができる。ある場合には、そのような第1の係留索が2つ設けられる。ある場合には、そのような第2の係留索が1つ設けられる。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部は、浮体式風力発電設備からより遠くに、すなわち、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部よりも大きな距離を有する場所に配置される。換言すれば、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部と浮体式風力発電設備との間の距離は、好ましくは、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部と浮体式風力発電設備との間の距離よりも大きい。
【0018】
係留索の風力発電設備接続端部と浮体式風力発電設備との間の距離は、係留索の風力発電機接続端部と、浮体式風力発電設備への係留索の直接接続点又は間接接続点との間の距離であると理解される。例えば、係留索の風力発電機接続端部が(例えば、コネクタ又は固定手段を介して)浮体式風力発電設備に直接接続される場合には、係留索の風力発電設備接続端部と浮体式風力発電設備との間に距離は存在しない場合もあるし、無視できる場合もある。一方、係留索の風力発電機接続端部が、例えば添え具を介して、浮体式風力発電設備に間接的に接続される場合には、係留索の風力発電設備接続端部と浮体式風力発電設備への接続点との間には、0よりも大きい距離が存在し得る。
【0019】
少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部を、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部よりも浮体式風力発電設備から遠くに配置することによって(例えば、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部が、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部よりもロータに近い位置に配置される場合)、風力発電設備に作用する風が0度から吹いているときに、風が±90度から吹いているときよりも低いヨー剛性を有する係留設備を提供することができる。
【0020】
例えば、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部は、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部よりも浮体式風力発電設備から2倍~6倍、又は約4倍遠くに配置することができる。1つの実施の形態において、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部は、浮体式風力発電設備から約150m~約250m(例えば約200m)に配置され、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部は、浮体式風力発電設備から約40m~約60m(例えば約50m)に配置される。
【0021】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部は、風力発電設備から距離をおいて配置され、例えば、風力発電設備から約150m~約250m(例えば約200m)に配置される。一方、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部は、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部と風力発電設備との間に距離が存在しないか又は無視できるように、風力発電設備に(例えばコネクタを介して)直接接続することができる。したがって、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部は、浮体式風力発電設備から0m~100mに配置することができる。
【0022】
少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部は、例えば、添え具を用いて又は添え具を介して少なくとも1つの第2の係留索を浮体式風力発電設備に接続することによって、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部よりも浮体式風力発電設備から遠くに配置することができる。
【0023】
添え具は、係留索の風力発電機接続端部を風力発電設備から引き離す手段である。好ましくは、添え具は、係留索の風力発電機接続端部において(例えば、単一点において)係留索に接続し、2つ以上の異なる(間隔を空けた)点又は接続範囲にわたって、風力発電設備に接続する。
【0024】
添え具は、2つ以上の添え索を備えることができる。これらの添え索のそれぞれは、その第1の端部において、係留索の1つの端部(風力発電設備接続端部)に接続される。2つ以上の添え索は、それらの第2の端部において、2つ以上の異なる(間隔を空けた)接続点で風力発電設備に接続される(又は接続可能である)。
【0025】
添え具は、添え具又は係留索の平面において、この添え具(例えば、その添え索)が係留索に(例えば、係留索の風力発電機接続端部において)接続される点と、浮体式風力発電設備の中心点(例えば重心)との間の距離に対応する添え具半径を有すると言うことができる。
【0026】
いくつかの場合には、少なくとも1つの第1の係留索は、添え具を用いて又は添え具を介して浮体式風力発電設備に接続することもできる。そのような場合には、少なくとも1つの第2の係留索に接続される添え具は、少なくとも1つの第1の係留索に接続される添え具よりも長いものとすることができる(又は少なくとも1つの第1の係留索に接続される添え具の添え具半径よりも長い添え具半径を有することができる)。例えば、少なくとも1つの第2の係留索に接続される添え具は、少なくとも1つの第1の係留索に接続される添え具よりも約2倍~約4倍長いものとすることができる。
【0027】
好ましい実施の形態において、少なくとも1つの第2の係留索に接続される添え具は、少なくとも1つの第1の係留索に接続される添え具よりも約3倍長い添え具半径を有する。例えば、少なくとも1つの第2の係留索に接続される(より長い)添え具は、約100m~約500m(例えば、いくつかの実施の形態において約237m)の添え具半径を有することができるのに対して、少なくとも1つの第1の係留索に接続される(より短い)添え具は、約50m~約250m(例えば、いくつかの実施の形態において約79m)の添え具半径を有することができる。
【0028】
添え具は、係留索を風力発電設備に接続する任意の接続手段とすることができ、添え具は、単一の点において係留索の端部に接続するとともに、2つ以上の異なる点において風力発電設備に接続するように配置される。
【0029】
添え具は、係留索の端部を浮体式風力発電設備に接続する2つ以上の添え索を備えることができる。好ましい実施の形態において、各添え具は、2つの添え索を備える。特定の添え具の各添え索は、好ましくは、異なる位置において浮体式風力発電設備に接続される。2つ(又は3つ以上)の異なる添え具からの2つ(又は3つ以上)の添え索は、同じ又は共通の接続点において浮体式風力発電設備に接続されてもよい。
【0030】
1つの例において、単一の添え具からの一対の添え索が、約60mの間隔を有する位置において浮体式風力発電設備に接続される。ただし、この距離は、特定の風力発電設備、より詳細にはその浮体の設計に依存してもよい。
【0031】
少なくとも1つの第1の係留索に接続される添え具の2つ以上の添え索は、約50m~約80m、例えば64mの長さを有することができる。
【0032】
少なくとも1つの第2の係留索に接続される添え具の2つ以上の添え索は、約200m~約230m、例えば213mの長さを有することができる。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つの係留索(例えば、上記で定義したような少なくとも1つの第2の係留索)は、添え具を用いて浮体式風力発電設備に接続される。
【0034】
1つ以上の添え具(例えば、2つ以上の添え具が使用される場合には、異なる長さのもの)を使用して、複数の係留索のうちの1つ以上を浮体式風力発電機に取り付けることによって、負荷(例えば風)が異なる方向からシステムに作用するときに異なるヨー剛性をシステムに提供することができる。これによって、非対称浮体式風力発電設備の安定化を促進することができる。
【0035】
いくつかの実施の形態において、複数の係留索のうちの少なくとも2つ、場合によっては全てが、添え具を用いて浮体式風力発電設備に接続される。これによって、ロール-ヨーがより安定した風力発電システムを提供することができる。
【0036】
2つ以上の係留索が添え具を用いて浮体式風力発電設備に接続されるシステムにおいて、添え具は、少なくとも2つの異なる長さのものとすることができ、場合によっては、少なくとも2つの異なる長さのものであることが好ましい。これによって、負荷(例えば風)が異なる方向からシステムに作用するときに異なるヨー剛性を提供することができ、それによって、システムの安定化をはかることができる。そのような場合には、好ましくは、係留システムの単数又は複数のより短い添え具は、単数又は複数のより長い添え具よりもロータに近い単数又は複数の位置において風力発電設備に接続される。
【0037】
いくつかの実施の形態において、風力発電設備は、複数のカラムを備えることができ、少なくとも1つの添え具は、少なくとも1つの係留索を複数のカラムのうちの1つ以上に接続するように配置することができる。いくつかの場合には、添え具は、係留索を2つ(又は場合によっては3つ以上)のカラムに接続することができる。
【0038】
いくつかの実施の形態において、少なくとも1つ(例えば1つ又は2つ)の係留索を浮体式風力発電設備の支持構造体又はカラムに(例えば添え具を用いずに)直接接続することができる。少なくとも1つの係留索を直接接続することができるカラムは、好ましくは、風力発電設備のロータを支持するカラムである。例えば、1つ又は2つの係留索を、風力発電設備のロータを支持するカラムに(例えば添え具を用いずに)直接接続することができる。
【0039】
係留システムは、3つの係留索を備えることができ、それらの係留索のうちの少なくとも1つは、添え具を用いて風力発電設備に取り付けることができる。いくつかの場合には、ちょうど1つ(1つのみ)の係留索を風力発電設備に添え具を用いて取り付けることができる(例えば、1つ以上の更なる係留索は、例えば添え具を用いずに風力発電設備に直接取り付けることができる)。
【0040】
係留システムが3つの係留索を備える場合、3つの係留索のうちの第1の係留索及び第2の係留索は、3つの係留索のうちの第3の係留索よりもロータの近くに配置することができる。ロータのより近くに配置される第1の係留索及び第2の係留索は、ロータを支持する風力発電設備のカラムに(例えば添え具を用いずに)直接又は(例えば添え具を用いて)間接的に接続することができる。ただし、ロータのより近くに配置される第1の係留索及び第2の係留索は、ロータを支持する風力発電設備のカラムに必ずしも接続される必要はない。例えば、そのような第1の係留索及び/又は第2の係留索は、風力発電設備の支持構造体の別の部分に接続することができる。いずれの場合にも、第3の係留索(例えば、ロータからより遠くの係留索)は、添え具を用いて風力発電設備に取り付けることができる(好ましくは取り付けられる)。第1の係留索及び第2の係留索の風力発電設備接続端部は、好ましくは、(例えば、第3の係留索の風力発電機接続端部を風力発電設備に接続する添え具、又はより長い添え具を使用することによって)第3の係留索の風力発電設備接続端部よりも風力発電設備の近くに配置される。
【0041】
添え具及び係留索は、係留チェーン、ワイヤロープ、ポリエステルロープ等を含む様々な材料から作製することができる。添え具及び係留索は、同じ材料で作製することもできるし、異なる材料で作製することもできる。
【0042】
係留索は、例えば、異なる材料を含む複数のセグメントから形成することができる。
【0043】
添え具及び係留索は、同じ太さを有することもできるし、異なる太さを有することもできる。
【0044】
添え索は、真空爆発溶接異材継手、例えばTriplate(登録商標)等の継手を用いて係留索に接続することができる。
【0045】
添え具及び/又は係留索は、フェアリード等のコネクタを用いて浮体式風力発電設備に接続することができる。
【0046】
更なる態様によれば、回転非対称風力発電設備を係留する方法であって、複数の係留索を備える回転非対称係留システムを準備することと、係留システムが、風力発電設備に作用する風が浮体式風力発電設備のロータに対して0度から吹いているときに、風が±90度から吹いているときよりも低いヨー剛性を有するように、複数の係留索を浮体式風力発電設備に直接又は間接的に接続することとを含む、方法が提供される。
【0047】
そのような方法において、風力発電設備及び/又は係留システムは、それらの任意選択の特徴又は好ましい特徴のいずれかを用いて、本明細書に説明するようなものとすることができる。したがって、風力発電設備及び係留システムは、その任意選択の特徴又は好ましい特徴のいずれかを用いて、本明細書に説明するような風力発電システムを形成することができる。
【0048】
更なる態様によれば、回転非対称浮体式風力発電設備と、この浮体式風力発電設備に接続される回転非対称係留システムとを備える風力発電システムが提供され、
-係留システムは、少なくとも1つの第1の係留索及び少なくとも1つの第2の係留索を備え、少なくとも1つの第1の係留索及び少なくとも1つの第2の係留索のそれぞれは、浮体式風力発電設備に直接又は間接的に接続する(又は接続される)風力発電設備接続端部を有し、
-少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部は、少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部よりもロータに近い位置に配置され、
-少なくとも1つの第2の係留索の風力発電設備接続端部は、少なくとも1つの第1の係留索の風力発電設備接続端部よりも浮体式風力発電設備から遠くに配置される。
【0049】
少なくとも1つの第2の係留索は、好ましくは、添え具を用いて風力発電設備に接続される。
【0050】
本発明の(例えば本明細書に説明されるような)実施の形態は、Fthrust(空力ロータ推力)が(図3図5における風力発電設備1の方位に対して)正であり、ロール-ヨー不安定性がリスクであり得るときに、より低いヨー剛性を有する係留システムを提供することができる。一方、ヨー剛性は、風が(図3における風力発電設備1の方位に対して)±90度から吹いており、ロール-ヨー不安定性がリスクでないときは、大幅に増加する。したがって、より安定した風力発電システムを提供することができる。
【0051】
特に、本発明の実施の形態は、ロール-ヨー不安定性に関する問題を引き起こすことなく、全体的に高いヨー剛性を達成するために1つ以上の添え具を有する(垂直軸の周りに)回転非対称の係留システムを含む。ロール-ヨー不安定性に関して最も不安定な環境負荷方向には、1つ以上のより短い添え具を使用することができる(又は添え具を使用しない)一方、ロール-ヨー不安定性に関して最も安定した環境負荷方向には、最も長い単数あるいは複数の添え具が使用されるべきである。
【0052】
以下の数学的処理は、浮体式風力発電機のロール-ヨー不安定性問題を論証し、本明細書に説明されるような本発明の実施の形態が、ロール-ヨー不安定性問題に直面することなく高いヨー剛性を提供することができる理由を論証するものである。
【0053】
以下の式では、スパータイプ浮体式風力発電設備20について検討するが、導出されるものは、半潜水型等の異なるタイプの浮体にも適用される。
【0054】
図6及び図7に概略的に示すように、スパータイプ浮体式風力発電設備20は、タワー21と、ナセル22と、ロータ23とを備える。
【0055】
風向に垂直なシステムの内外の正味の空力エネルギーは、ロール固有周波数ωで振動する調和ロール運動θrollを考慮することによって、以下のように計算することができる。
【数1】
ここで、Arollはロール運動の振幅であり、tは時間である。
【0056】
振幅Ayaw及び位相角φyawを有する同じ振動周波数ωで振動する調和ヨー運動θyawを更に考慮すると、以下の式が得られる。
【数2】
【0057】
図6は、浮体式風力発電設備20のヨー運動がロールモーメントの励起をどのように引き起こすことができるのかを示す浮体式風力発電設備20の概略平面図である。
【0058】
図6を参照すると、1つの振動サイクルにわたる風向に垂直な正味の空力エネルギー(Eaero,y)の式は、以下のように求めることができる。
【数3】
ここで、Fthrustは空力ロータ推力であり、zは、風力発電設備20のナセルレベルにおけるロール運動の有効アームである。
【0059】
式(1)及び式(2)を式(3)に代入すると、以下の式が得られる。
【数4】
【0060】
式(4)によれば、風向に垂直な空力エネルギーは、φyaw=0又はφyaw=πでない限り増大する。
【0061】
図6を再び参照すると、ヨー運動がロールモーメントの励起を引き起こせることがわかる。ロールモーメントは、以下のように表すことができる。
【数5】
ここで、Mroll,yawは、ヨー運動からのロール励起モーメントであり、zc1は、空力ロータ推力(Fthrust)のy成分の有効モーメントアームである。
【0062】
図7は、浮体式風力発電設備20のロール運動の結果生じる慣性力及び重力がヨーモーメントの励起をどのようにもたらすことができるのかを示す概略平面図である。
【0063】
図7を参照すると、ナセル22の重心がタワーの中心位置から外れることに起因して、浮体式風力発電設備20のロール運動の結果生じる慣性力及び重力がヨーモーメントを励起することがわかる。加えて、ロール運動と組み合わせて、空力推力Fthrustからの寄与が存在する。慣性力は、図示するようにロール加速度の反対方向に作用する一方、重力及び空力推力は、ロール運動の方向に成分を与える。
【0064】
ロール運動からのヨー励起モーメントは、以下の式となる。
【数6】
ここで、mはナセル22の質量であり、
【数7】
はロール加速度であり、zc2は、ナセル22の重心からの有効モーメントアームであり(スパーの場合にzc1≒zc2)、dCoGは、タワー21の中心からナセル22の重心までの水平距離である。
【0065】
さらに、ロール運動はほとんど減衰せず、この周波数範囲において、特に風力発電設備20の定格風速近くにエネルギーを有する励起メカニズムが存在するので、固有周波数ωを有する調和ロール運動を仮定することができる。
【0066】
調和運動の場合に、以下の式
【数8】
及び式(7)を式(6)に代入すると、以下の形のヨー励起モーメントMyaw,rollが得られる。
【数9】
この式から、ヨー励起モーメントは、ロール運動と同相であることがわかる。
【0067】
これは、ロール運動とヨー運動との間の位相角がヨー運動位相角φyawと等しいことを意味する。これについては、φ=φyaw、ω=ロールの固有周波数、及びω=ヨーの固有周波数である単一自由度のシステムのものが図8に示されている。図8は、単一自由度の動的システムの位相図であり、動的応答と動的システムの強制振動との間の位相角を、異なる相対減衰比ζの動的システムの励起周波数と固有周波数との間の比の関数として示している。
【0068】
上記の意味を式(4)と組み合わせると、浮体式風力発電機のロール-ヨーダイナミクスは、システムに存在するヨー減衰レベルに応じて、ロール及びヨーの固有周波数が互いに過度に接近しているときに不安定であることが示される。換言すれば、ヨーダイナミクスは、ロール-ヨーが安定した浮体式風力発電機を達成するために、完全に剛性が支配的でなければならないか又は完全に質量が支配的でなければならない。
【0069】
上述したように、式(8)は、回転対称スパータイプ浮体式風力発電機に適用される。これを回転非対称浮体に適用するには、以下の因子を考慮しなければならない。
1.距離dCOGは、浮体の重心からタワーロータナセルアセンブリの重心までの水平距離であること。
2.質量mは、タワーロータナセルアセンブリの質量であること。
3.zc1変数は、タワーロータナセルアセンブリの質量中心の垂直位置に対する有効モーメントアームであること(回転非対称浮体式風力発電機の場合にはzc1≠zc2である)。
4.空力推力Fthrustは種々の方向から生じること。一例として、正又は負のFthrustを考慮することができる。
a.Fthrustが正である場合に、式(8)における重力項及び慣性項は、回転対称浮体式風力発電機よりも大きくシステムを不安定化することに寄与する。これは、dCOG及びmがより大きいことに起因する。
b.Fthrustが負である場合に、式(8)における重力項及び慣性項は、システムの安定化に寄与し、これは、回転対称浮体式風力発電機には当てはまらない。
【0070】
本発明の係留システムは、因子4b、すなわち、Fthrustが負である場合に、式(8)における重力項及び慣性項がシステムの安定化に寄与することを利用する。
【0071】
回転非対称浮体のヨーダイナミクスは、通常、質量が支配的であるので、本発明は、Fthrustが負であるときと比較してFthrustが正であるときに大幅に低いヨー剛性を適用する。これによって、不安定性を引き起こすことなく、回転対称レイアウトを用いて可能であるものよりも大幅に大きい全体的な又は平均のヨー剛性が得られる。
【0072】
上述したように、本発明の実施の形態は、例えば、1つの係留索に添え具を使用するか又は全ての係留索に異なる長さの添え具を使用することによって、係留索が浮体式風力発電設備に接続される箇所を調整することによって、異なるヨー剛性を提供することができる。或いは、異なる(固有の)剛性の係留索を使用することによって、異なる所望のヨー剛性を提供することができる。一方、係留索の疲労損傷は、それらのプリテンションに強く依存し、そのため、例えば、添え具を使用することによって、係留索のうちの少なくともいくつかが風力発電設備に接続される箇所を調整することによって、所望の異なる剛性を提供することが好ましい。
【0073】
次に、本発明の好ましい実施形態を単なる例として添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】従来の係留システムを有する浮体式風力発電機の概略平面図である。
図2】別の従来の係留システムを有する浮体式風力発電機の概略平面図である。
図3】1つの実施形態による係留システムを有する浮体式風力発電機の概略平面図である。
図4】別の実施形態による係留システムを有する浮体式風力発電機の概略平面図である。
図5】更に別の実施形態による係留システムを有する浮体式風力発電機の概略平面図である。
図6】浮体式風力発電設備のヨー運動がロールモーメントの励起をどのように引き起こすことができるのかを示す概略平面図である。
図7】浮体式風力発電設備のロール運動がヨーモーメントの励起をどのように引き起こすことができるのかを示す概略平面図である。
図8】単一自由度の動的システムの位相図である。
図9】環境負荷が0度から生じているときの種々の係留システムを有する風力発電設備のロール運動応答を示すグラフである。
図10】環境負荷が0度から生じているときの種々の係留システムを有する風力発電設備のヨー運動応答を示すグラフである。
図11】環境負荷が90度から生じているときの種々の係留システムを有する風力発電設備のロール運動応答を示すグラフである。
図12】環境負荷が90度から生じているときの種々の係留システムを有する風力発電設備のヨー運動応答を示すグラフである。
図13】2つの異なる係留システムの極角の関数としてのヨー剛性のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図3は、第1の実施形態による係留システムを有する回転非対称半潜水型浮体式風力発電設備1の概略平面図である。
【0076】
図1及び図2に関して上述したように、回転非対称浮体式風力発電設備1は、3つの接続部材4によって三角形に接合された3つのカラム2、3から形成される浮体を備えている。2つのカラム2はエンプティであり、第3のカラム3は風力発電機自体を支持している。
【0077】
図3の実施形態において、風力発電設備1は、3つの係留索15a、15bと3つの添え具16、17とを備える係留システムを用いて適切な位置に保持されている。
【0078】
2つの係留索15aは、添え具16を介して風力発電設備1(具体的には風力発電設備1の浮体)にそれぞれ接続されている。したがって、係留システムは、係留索15aに接続された2つの添え具16を備えている。各添え具16は、2つの添え索16aを備えている。各添え具16において、図3に示すように、1つの添え索16aが、風力発電機を支持するカラム3に接続されており、1つの添え索16aが(異なる)エンプティカラム2に接続されている。したがって、風力発電機を支持するカラム3に接続された2つの添え索16aと、2つのエンプティカラム2のそれぞれに接続された1つの添え索16aとが存在している。
【0079】
第3の係留索15bは、更なる添え具17を介して風力発電設備1に接続されている。添え具17は、2つの添え索17aを備えている。1つの添え索17aが各エンプティカラム2に接続されるように、添え索17aのそれぞれは、2つのエンプティカラム2のうちの1つに接続されている。
【0080】
図3からわかるように、エンプティカラム2に接続されている添え索17aは、2つが風力発電機を支持するカラム3に接続されている添え索16aよりも長い。したがって、図3の係留システムは、風力発電設備1の中心の周りに回転非対称である。
【0081】
長い添え具17の添え具半径は、短い添え具16の添え具半径の3倍である。より具体的には、長い添え具17の添え具半径は約237mであり、短い添え具16の添え具半径は約79mである。短い添え具16の添え索16aは約64mであり、長い添え具17の添え索17aは約213mである。
【0082】
他の実施形態において、短い添え具の添え具半径は、50m~250mの範囲内とすることができ、長い添え具の添え具半径は、100m~500mの範囲内とすることができる。ただし、係留索が接続されるどの添え具(特に最も長い添え具)の端部も、あらゆる環境条件の間において海底に接触すべきでない。
【0083】
図3の係留システムにおける係留索15a、15b及び添え具16、17のこの配置は、Fthrustの水平成分が浮体の重心(すなわち図3におけるx軸負方向)に向いているときに係留システムがより低いヨー剛性を有し、ロール-ヨー不安定性がリスクであり得ることを意味する。一方、風が(図3における風力発電設備1の方位に対して)±90度(すなわちy軸正方向又はy軸負方向)から吹いており、ロール-ヨー不安定性がリスクでないとき、ヨー剛性は大幅に増加する。
【0084】
図4は、第2の実施形態による係留システムを有する回転非対称半潜水型浮体式風力発電設備1の概略平面図である。
【0085】
図4の実施形態において、風力発電設備は、3つの係留索15b、25と、係留索15bに接続された1つの添え具17とを備える係留システムを用いて適切な位置に保持されている。
【0086】
図3の実施形態と同様に、係留索15bは、添え具17を介して風力発電設備1に接続されている。添え具17は、2つの添え索17aを備えている。1つの添え索17aが各エンプティカラム2に接続されているように、添え索17aのそれぞれは、2つのエンプティカラム2のうちの1つに接続されている。
【0087】
一方、2つの更なる係留索25は、添え具に接続されていない。その代わりに、2つの更なる係留索25は、風力発電機を支持するカラム3から延びる2つの接続部材4の中点に直接接続されている。1つの係留索25が、カラム3から延びる各接続部材4に接続されている。
【0088】
図4からわかるように、1つの添え具17しか使用されていないので、図4の係留システムは、風力発電設備1の中心の周りに回転非対称である。
【0089】
図4の係留システムにおける係留索15b、25及び添え具17のこの配置は、Fthrustの水平成分が浮体の重心(すなわち図4におけるx軸負方向)に向いているときに係留システムがより低いヨー剛性を有し、ロール-ヨー不安定性がリスクであり得ることを意味する。一方、風が(図4における風力発電設備1の方位に対して)±90度(すなわちy軸正方向又はy軸負方向)から吹いており、ロール-ヨー不安定性がリスクでないとき、ヨー剛性は大幅に増加する。
【0090】
図5は、第3の実施形態による係留システムを有する回転非対称半潜水型浮体式風力発電設備1の概略平面図である。
【0091】
図5の実施形態において、風力発電設備は、3つの係留索15b、35と、係留索15bに接続された1つの添え具17とを備える係留システムを用いて適切な位置に保持されている。
【0092】
図3及び図4の実施形態と同様に、係留索15bは、添え具17を介して風力発電設備1に接続されている。添え具17は、2つの添え索17aを備えている。1つの添え索17aが各エンプティカラム2に接続されているように、添え索17aのそれぞれは、2つのエンプティカラム2のうちの1つに接続されている。
【0093】
一方、2つの更なる係留索35は、添え具に接続されていない。その代わりに、2つの更なる係留索35は、風力発電機を支持するカラム3に直接接続されている。
【0094】
図5からわかるように、1つの添え具17しか使用されていないので、図5の係留システムは、風力発電設備1の中心の周りに回転非対称である。
【0095】
図5の係留システムにおける係留索15b、35及び添え具17のこの配置は、Fthrustの水平成分が浮体の重心(すなわち図5におけるx軸負方向)に向いているときに係留システムがより低いヨー剛性を有し、ロール-ヨー不安定性がリスクであり得ることを意味する。一方、風が(図5における風力発電設備1の方位に対して)±90度(すなわちy軸正方向又はy軸負方向)から吹いており、ロール-ヨー不安定性がリスクでないとき、ヨー剛性は大幅に増加する。
【0096】
上述した添え索16a、17a及び係留索15a、15b、25、35は、係留チェーン、ワイヤロープ、ポリエステルロープ等を含む様々な材料で作製することができる。添え索16a、17a及び係留索15a、15b、25、35は、同じ材料で作製することもできるし、異なる材料で作製することもできる。
【0097】
いくつかの実施形態において、係留索15a、15b、25、35は、異なる材料を含む複数のセグメントから形成されている。
【0098】
添え索16a、17a及び係留索15a、15b、25、35は、同じ太さを有することもできるし、異なる太さを有することもできる。
【0099】
添え索16a、17aは、真空爆発溶接異材継手、例えばTriplate(登録商標)等の継手を用いて係留索15a、15bに接続することができる。
【0100】
添え索16a、17a及び/又は係留索15a、15b、25、35は、フェアリード等のコネクタを用いて浮体式風力発電設備1に接続することができる。
【0101】
以下の係留システムのシミュレーションからロール運動、ピッチ運動及びヨー運動の動的応答の比較を行った。
A.図1に示すような単一の係留索を有する係留システム、
B.図2に示すような添え具を有する回転対称係留システムを用いた係留システム、及び
C.図3に示すような添え具を有する回転非対称係留システムを用いた係留システム。
【0102】
システムCをシミュレーションして、無負荷状態におけるシステムBとほぼ同じ平均ヨー剛性を得た。さらに、システムCにおける添え具の長さは、長い添え具17の長さが短い添え具16の長さの3倍になるように選択された。
【0103】
2.0mの大きな波高と、7.5秒の特性ピーク周期と、11.5ms-1の乱流風速(乱流クラスC)とを有する有負荷の場合を、0度から(図1図5における上から、すなわちx軸負方向に)生じている環境負荷及び90度から(図1図5における右から、すなわちy軸正方向に)生じている環境負荷について検討する。
【0104】
環境負荷が0度から(すなわち図1図5に示すようなx軸負方向に)生じているときの上記係留システムA~Cを有する風力発電設備のロール運動応答及びヨー運動応答を図9及び図10に示す。これらのグラフから、以下のことがわかる。
-回転対称構成Bは、ロール-ヨーが力学的に不安定になること、
-ロール運動特性及びヨー運動特性は、単一索係留システムA及び回転非対称添え具係留システムCの双方について安定していること、並びに
-最も小さなロール運動及びヨー運動が、非対称添え具係留システムCについて観測されること。
【0105】
環境負荷が90度から(すなわち図1図5に示すようなy軸負方向に)生じているときの上記係留システムA~Cを有する風力発電設備のロール運動応答及びヨー運動応答を図11及び図12に示す。これらのグラフから、以下のことがわかる。
-大きなヨーオフセット角度(ヨー運動)と、最も大きなロール運動及びヨー運動との双方が、単一索係留システムAについて観測されること、並びに
-回転非対称添え具を有する係留システムCのヨーオフセット角度(ヨー運動)が、回転対称添え具を有する係留システムBとほぼ同程度の大きさであること。
【0106】
図13は、風が0度~360度から吹いている場合に、1700kNの一定の力が種々の風向から浮体の源に印加された場合の半径方向におけるヨー剛性(単位kNm/度)の極座標プロットである。
【0107】
ライン30は、図2の回転対称係留システムの角度の関数としてのヨー剛性を示している。図13からわかるように、図2の回転対称係留システムは、風向を問わずほぼ一定のヨー剛性を有する。
【0108】
ライン31は、図3の回転非対称係留システムの角度の関数としてのヨー剛性を示している。図13からわかるように、図3の回転非対称係留システムは、風が0度から吹いているときと比較して、風が約90度又は約270度から吹いているときにより大きなヨー剛性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】