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特表2023-536735圧電素子を有する溶解デバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(54)【発明の名称】圧電素子を有する溶解デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20230822BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20230822BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20230822BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230822BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G01N1/28 J
H04R3/00 330
H04R17/00 330K
G01N37/00 101
G01N33/49 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507392
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 US2021042953
(87)【国際公開番号】W WO2022031459
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/060,301
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・アール・ジャスパース
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・パウリカ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ベンソン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
5D019
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045BB01
2G045CA25
2G045JA07
2G052AA30
2G052AB16
2G052AD29
2G052AD49
2G052DA09
2G052FD09
2G052GA12
5D019FF04
(57)【要約】
試料ベッセル、少なくとも1つの圧電素子、およびコントローラを含む溶解デバイスが開示される。試料ベッセルは、内部に形成されたマイクロチャネルを有する。試料ベッセルは、表面を通ってマイクロチャネルに延びる少なくとも1つのポートを有する。圧電素子は、試料ベッセルの表面に取り付けられる。コントローラは論理を有し、論理によりコントローラは、一連の周波数を含む第1の信号を少なくとも1つの圧電素子に放出して少なくとも1つの圧電素子に、試料ベッセル内で超音波音響定在波を生成させ、少なくとも1つの圧電素子によって検出された試料ベッセルからの測定された振動信号を示す第2の信号を受信し、測定された振動信号を使用して試料ベッセルの共振周波数を決定する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解デバイスであって、
内部に形成されたマイクロチャネルを有する試料ベッセルであって、表面を通ってマイクロチャネルに延びる少なくとも1つのポートを有する試料ベッセルと、
試料ベッセルの表面に取り付けられた少なくとも1つの圧電素子と、
論理を有するコントローラとを含み、該論理により該コントローラは、一連の周波数を含む第1の信号を少なくとも1つの圧電素子に放出して少なくとも1つの圧電素子に試料ベッセル内で超音波音響定在波を生成させ、少なくとも1つの圧電素子によって検出された試料ベッセルからの測定された振動信号を示す第2の信号を受信し、測定された振動信号を使用して試料ベッセルの共振周波数を決定する、前記溶解デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの圧電素子は、試料ベッセルに超音波音響定在波を生成し、振動信号を測定するように構成された単一の圧電トランスデューサである、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項3】
マイクロチャネルは血液試料を含む、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの圧電素子は、圧電センサとは別個の圧電トランスデューサを含み、該圧電トランスデューサおよび圧電センサの少なくとも一方は、試料ベッセルに対してばね荷重されるように構成される、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項5】
圧電トランスデューサは、試料ベッセルの表面に接合され、圧電センサは、外部にあり、試料ベッセルとは別個である、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項6】
圧電トランスデューサは、試料ベッセルの表面に接合され、圧電センサは、試料ベッセルの表面に対してばね荷重されている、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項7】
圧電トランスデューサおよび圧電センサは、試料ベッセルの外面と嵌合係合する、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項8】
圧電トランスデューサは試料ベッセルの外面に嵌合係合し、圧電センサは、分離されており、試料ベッセルの外部にある、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項9】
超音波音響定在波は、圧電トランスデューサによって生成され、圧電センサは、試料ベッセルからの振動信号を測定する、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項10】
コントローラは、プロセッサに接続された非一時的なメモリを有し、該非一時的なメモリは論理を記憶し、該論理は、プロセッサによって実行されるときに、該プロセッサに、
第1の信号で少なくとも1つの圧電素子を駆動して、第1の持続時間にわたって第1の周波数掃引で超音波音響定在波を生成させること、
少なくとも1つの圧電素子を調節して、第1の信号の提供を停止すること、
少なくとも1つの圧電素子から、測定された振動信号を示す第2の信号を受信すること、
第1の信号と第2の信号とを比較して、試料ベッセルの共振周波数を決定すること、および
決定された共振周波数に基づいて少なくとも1つの圧電素子を駆動すること、
を行わせるコンピュータ実行可能命令である、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項11】
試料ベッセルはガラスで構成される、請求項10に記載の溶解デバイス。
【請求項12】
プロセッサは、ガラスの組成に基づいて推定共振周波数をさらに決定する、請求項11に記載の溶解デバイス。
【請求項13】
第1の周波数掃引は推定共振周波数を含む、請求項12に記載の溶解デバイス。
【請求項14】
分析器であって、
溶解デバイスを含み、該溶解デバイスは、
内部に形成されたマイクロチャネルを有する試料ベッセルであって、表面を通ってマイクロチャネルに延びる少なくとも1つのポートを有する試料ベッセルと、
試料ベッセルの表面に取り付けられた少なくとも1つの圧電素子と、
論理を有するコントローラとを含み、該論理により該コントローラは、一連の周波数を含む第1の信号を少なくとも1つの圧電素子に放出して少なくとも1つの圧電素子に試料ベッセル内で超音波音響定在波を生成させ、少なくとも1つの圧電素子によって検出された試料ベッセルからの測定された振動信号を示す第2の信号を受信し、測定された振動信号を使用して試料ベッセルの共振周波数を決定し、決定された共振周波数での信号で少なくとも1つの圧電素子を駆動させ、
分析器はさらに、
試料ベッセルに隣接して位置する送信機および受信機を含む吸光度分光光度計を含み、送信機は、マイクロチャネルを通して光媒体を放出するように位置し、受信機は、光媒体の一部がマイクロチャネルを通過した後に、光媒体の少なくとも一部を受信するように位置する、前記分析器。
【請求項15】
第1の信号は、少なくとも1つの圧電素子によって第1の周波数掃引で生成された超音波音響定在波を含み、第2の信号は、超音波音響定在波による試料ベッセルからの測定された振動信号を示す、請求項14に記載の分析器。
【請求項16】
圧電素子は、第1の信号を生成するように構成された第1の圧電素子と、第2の信号を測定するように構成された第2の圧電素子とを含む、請求項14に記載の分析器。
【請求項17】
コントローラは、プロセッサに接続された非一時的なメモリを有し、該非一時的なメモリは論理を有し、該論理はコンピュータ実行可能命令のセットであり、該コンピュータ実行可能命令は、プロセッサによって実行されるとき、該プロセッサに、少なくとも1つの圧電素子を駆動させて、第1の信号を生成し、第2の信号を測定する、請求項14に記載の分析器。
【請求項18】
コンピュータ実行可能命令のセットは、プロセッサに、第1の信号と第2の信号とを比較させて、共振周波数を決定し、決定された共振周波数に基づいて少なくとも1つの圧電素子を駆動する、請求項17に記載の分析器。
【請求項19】
試料ベッセルはガラスで構成され、コンピュータ実行可能命令のセットは、プロセッサに、ガラスの組成に基づいて推定共振周波数を決定させ、第1の信号は推定共振周波数にある、請求項18に記載の分析器。
【請求項20】
溶解デバイスを使用する方法であって、
少なくとも1つの圧電素子によって、第1の持続時間にわたって、第1の周波数掃引での超音波音響定在波の第1の信号を溶解デバイスの試料ベッセルに生成する工程と、
コントローラによって、少なくとも1つの圧電素子を調節して、第1の信号の提供を停止する工程と、
コントローラによって、第1の信号による試料ベッセルからの振動を示す第2の信号を受信する工程と、
コントローラによって、第1の信号と第2の信号とを比較して、試料ベッセルの共振周波数を決定する工程と、
全血試料を試料ベッセルのマイクロチャネルに通す工程と、
少なくとも1つの圧電素子によって、試料ベッセルのマイクロチャネル内の全血試料中の血球を溶解するための強度および持続時間での決定された共振周波数に基づいて超音波音響波を放出する工程と、
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月3日に出願された米国仮特許出願第63/060,301号の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。上記の特許出願の内容全体を、参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
本開示は、一般に、血液試料を検査するためのデバイス、システム、および方法に関する。より詳細には、本開示は、1つまたはそれ以上の特定の励起周波数または周波数範囲で駆動される音響トランスデューサによってベッセル内で生成される超音波音響波、せん断力、圧力、および/または流体運動を用いて試料ベッセル内の赤血球を溶解するように構成された溶解デバイスに関する。いくつかの非限定的な実施形態では、超音波音響波は、1つまたはそれ以上の音響トランスデューサによって生成される。溶解デバイスは、血液試料検査分析器と組み合わせて使用される。
【背景技術】
【0003】
ポイントオブケア検査とは、一般に、緊急治療室などの患者ケアの現場またはその近くでの医学検査を指す。そのような検査の望ましい結果は、多くの場合、患者ケアにおける次のアクション過程を決定するための迅速で正確な検査結果である。そのようなポイントオブケア検査の多くは、患者からの血液試料の分析を含む。これらの検査の多くは、全血、血漿、または血清を使用する。
【0004】
いくつかの検査では、ヘモグロビンを放出させるために、血液試料中の赤血球の細胞壁が破壊(溶解)される。赤血球の溶解は、溶血と呼ばれることがある。典型的には、溶血は化学的または機械的手段で行われている。
【0005】
いくつかのデバイスは、超音波を使用して赤血球を溶解する。いくつかのポイントオブケア検査デバイスは、全血試料のオキシメトリパラメータの決定に、分光光度計の吸光測定を使用する。これらのデバイスは通常、血液試料を検査するために患者の血液試料をスライドセル試料チャンバに位置させる流体システムである。例えば、2015年8月4日に発行された「Apparatus for Hemolyzing a Blood Sample and for Measuring at Least One Parameter Thereof」という名称の特許文献1に記載されている1つのシステムは、試料チャンバを対称的に取り囲む2つのバランスの取れた共振素子を有する2つの圧電素子を使用して、音響泳動力を使用して赤血球を溶解する。
【0006】
一般に、圧電トランスデューサは、最高の性能を実現するために最適な周波数および振幅で駆動される必要がある。例えば、最高の性能は、最短の時間量で所望の結果を得るために必要とされる周波数および/または振幅を含むことがある。そのような流体システムの場合、最適な周波数は、血管、血液試料、周囲のシステムなどの組成を考慮に入れることがある。そのような流体システムが最適でない性能で駆動される場合、血液試料は、過熱、凝固、変換の不一致などのリスクを受ける。さらに、異なる材料および部材の製造のばらつき、血液試料の一貫性(例えば、濁度、RBC密度、RBC体積)は、インピーダンスなどシステムの結果に影響を及ぼす広範囲の粘度および/または弾性を生成することがある。圧電トランスデューサに関する最適な周波数および/または振幅の決定は、例えば、最小の温度上昇で最短期間内に最適な結果を提供するのに役立つことがある。さらに、溶解システムの寿命全体にわたる較正が、結果を改善することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9,097,701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
音響泳動溶解デバイス、方法、およびシステムが開示される。特に、最適な周波数および/または振幅を有する音響泳動溶解デバイスが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に合致して、例示的な溶解デバイスは、外面と、外面の領域内のマイクロチャネルと、外面を通ってマイクロチャネルに延びる少なくとも1つのポートとを有する試料ベッセルを含むことがある。血液試料は、少なくとも1つのポートを通してマイクロチャネルに挿入可能でよい。少なくとも1つの圧電素子は、試料ベッセルの外面に隣接し、音響トランスデューサとして機能することがある。少なくとも1つの圧電素子は、マイクロチャネル内に超音波音響定在波を生成するように構成される。少なくとも1つの圧電素子はまた、試料ベッセルおよび/または流体試料から生成される振動信号を測定するように構成される。超音波音響定在波を、結果として得られる振動信号と比較することによって、共振周波数が決定される。次いで、圧電素子は、決定された共振周波数に基づいて(例えば、共振周波数を除外する、または共振周波数を含む)超音波音響定在波を生成することがある。超音波音響定在波は、流体試料中の細胞を溶解し、マイクロチャネル内でせん断力が誘発されるように試料ベッセルを曲げ、血液試料にキャビテーションを引き起こし、それによって血液試料中の細胞壁を破壊するためなどに使用される。
【0010】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す添付図面は、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の実装形態を示し、本説明と共にこれらの実装形態を説明する。図面は一律の縮尺で描かれることを意図されておらず、図の特定の構成および特定の図示は、明瞭かつ簡潔にするために、誇張して示されることも、一律の縮尺で示されることも、または概略的に示されることもある。すべての図面においてすべての構成要素に符号が付されているわけではない。図面中の同様の参照番号は、同一または同様の要素または機能を表し、それに言及することがある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本開示による例示的な音響泳動溶解デバイスの斜視図である。
図1B】本開示による別の例示的な音響泳動溶解デバイスの斜視図である。
図2】本開示による音響泳動溶解デバイスの上面図である。
図3】本開示による音響泳動溶解デバイスの底面図である。
図4】本開示による音響泳動溶解デバイスの第1の端面図である。
図5】本開示による音響泳動溶解デバイスの第2の端面図である。
図6】本開示による音響泳動溶解デバイスの第1の側面図である。
図7】本開示による例示的な音響泳動溶解デバイスの断面図である。
図8】本開示による例示的な音響泳動溶解デバイスの断面図である。
図9】本開示による別の例示的な音響泳動溶解デバイスの第1の側面図である。
図10】本開示によるさらに別の例示的な音響泳動溶解デバイスの第1の側面図である。
図11】本開示による例示的な試料ベッセルの構成要素の斜視図である。
図12】本開示による例示的な溶解デバイスの総変位のグラフ表現である。
図13】本開示による例示的な試料ベッセルのマイクロチャネル内での圧力分布の平面図である。
図14】本開示による例示的な試料ベッセルのマイクロチャネル内での流体速度の平面図である。
図15】本開示による例示的な分析器の斜視図である。
図16】本開示による例示的な分析器の構成要素の斜視図である。
図17】本開示による例示的な分析器の構成要素の斜視図である。
図18】本開示による例示的な分析器の構成要素の概略図である。
図19】本開示による吸収スペクトルの決定の概略図である。
図20】ヘモグロビン形態のスペクトルプロファイル係数を示す図である。
図21】圧電素子によって生成された第1の信号と、第1の試料ベッセルの振動から得られた第2の信号と、第2の試料ベッセルの振動から得られた第2の信号との周波数掃引を示す図である。
図22】圧電素子によって生成された第1の信号と、試料ベッセルの振動から得られた第2の信号とを示す図である。
図23】本開示に従って圧電素子を較正して音波を提供する例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、添付図面を参照する。異なる図面での同じ参照番号は、同一または同様の要素を識別することがある。
【0013】
本開示で提案される機構は、上述した問題を回避する。本開示は、溶解デバイス、分析器、および溶解方法を述べ、試料ベッセルに連結されて1つまたはそれ以上の特定の励起周波数または励起周波数範囲で駆動される少なくとも1つの圧電素子によって試料ベッセル内で生成される超音波音響波、せん断力、圧力、および/または流体運動を用いて試料ベッセル内の赤血球を溶解するように構成された溶解デバイスを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子は、音響波を生成するように構成され、本明細書で述べる振動信号を測定するように構成された単一の圧電トランスデューサである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子は、音響波を生成するように構成された第1の圧電トランスデューサ、および試料ベッセルからの振動信号を測定するように構成された第2の圧電センサでよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子は、音響波を生成するように構成された第1の圧電トランスデューサでよく、センサが、得られた振動信号を測定するために提供される。いくつかの実施形態では、振動信号を測定するように構成されたセンサは、溶解デバイスの外部にあり、溶解デバイスとは別個である。本開示はさらに、圧電素子を較正するかつ/または試料ベッセル内の試料を検査するために、溶解デバイスを受け入れて溶解デバイスと相互作用するように構成された分析器、ならびに使用方法を述べる。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図されている。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含むこともある。さらに、別段に明記されていない限り、「または」は、排他的論理和ではなく、包含的論理和を意味する。例えば、条件AまたはBは、次のいずれかによって満たされる:Aが真であり(または存在し)、かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)、かつBが真である(または存在する)、およびAとBとの両方が真である(または存在する)。
【0015】
さらに、不定冠詞「a」または「an」の使用が、本明細書での実施形態の要素および構成要素を述べるために採用される。これは、単に便宜的に、および本発明の概念の一般的な意味を与えるためにそうされている。そのような説明は、別異に解されることが明らかでない限り、1つまたはそれ以上を含むものとして読まれるべきであり、単数形は複数形も含む。
【0016】
さらに、「複数」という用語の使用は、別段に明記されていない限り、「1つまたはそれ以上の」を表すことを意図されている。
【0017】
本明細書で使用するとき、「約」、「ほぼ」などの修飾語、ならびにそれらの組合せおよび変形は、それらが修飾する正確な量または値だけでなく、そこからのいくらかのわずかな偏差も含むことを意図され、そのような偏差は、例えば、製造公差、測定誤差、摩耗および引裂き、様々な部材に及ぼされる応力、ならびにそれらの組合せに起因し得る。
【0018】
本明細書で使用するとき、「実質的に」という用語は、その後に述べるパラメータ、事象、または状況が完全に生成すること、またはその後に述べるパラメータ、事象、または状況が大きい範囲または程度で生成することを意味する。例えば、「実質的に」という用語は、その後に述べられるパラメータ、事象、もしくは状況が、少なくとも90%の時間、もしくは少なくとも91%、もしくは少なくとも92%、もしくは少なくとも93%、もしくは少なくとも94%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも96%、もしくは少なくとも97%、もしくは少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の時間にわたって生成することを意味し、または寸法もしくは測定値が、言及される寸法もしくは測定値の少なくとも90%、もしくは少なくとも91%、もしくは少なくとも92%、もしくは少なくとも93%、もしくは少なくとも94%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも96%、もしくは少なくとも97%、もしくは少なくとも98%、もしくは少なくとも99%以内であることを意味する。
【0019】
「少なくとも1つ」または「1つまたはそれ以上」という用語の使用は、1、および1よりも大きい任意の量を含むと理解される。さらに、「X、V、およびZのうちの少なくとも1つ」という語句の使用は、Xのみ、Vのみ、およびZのみ、ならびにX、V、およびZの任意の組合せを含むと理解される。
【0020】
序数の用語(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)の使用は、2つ以上の要素を区別することだけを目的としており、特に断りがない限り、他の要素に対するある要素の任意のシーケンスもしくは順序もしくは重要性、または任意の加算の順序を示唆するものではない。
【0021】
最後に、本明細書で使用するとき、「一実施形態」または「実施形態」への任意の言及は、その実施形態に関連して述べられる特定の要素、構成、構造、または特徴が少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所での「一実施形態での」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を表しているわけではない。
【0022】
ここで図面、特に図1~8を参照すると、本開示に従って、例示的な溶解デバイス10が示されている。一般に、溶解デバイス10は、試料ベッセル12と、試料ベッセル12に取り付けられた(例えば接合された、ばね荷重された、嵌合係合された)少なくとも1つの圧電素子14とを有する音響泳動溶解デバイスである。いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は、例えばエポキシなどの適切な接合材料を使用して一体に接合された試料ベッセル12と少なくとも1つの圧電素子14とによって形成されるものなど、モノリシック構造でよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、例えば音響波を生成して振動信号を測定するように構成された単一の圧電トランスデューサなど、単一の圧電トランスデューサでよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、本明細書でさらに詳細に述べるように、音響波を生成するように構成された第1の圧電トランスデューサと、振動信号を測定するように構成された第2の圧電センサとを含む複数の圧電素子でよい。いくつかの実施形態では、第1の圧電トランスデューサまたは第2の圧電センサの一方または両方が、試料ベッセル12に対してばね荷重される。いくつかの実施形態では、第1の圧電トランスデューサまたは第2の圧電センサの一方または両方が、試料ベッセル12に接合される。
【0023】
試料ベッセル12は、外面20と、外面20の領域内のマイクロチャネル22と、外面20を通ってマイクロチャネル22に延び、マイクロチャネル22と流体連通する第1のポート24と、外面20を通ってマイクロチャネル22に延び、マイクロチャネル22と流体連通する第2のポート26とを有する。いくつかの実施形態では、外面20は、少なくとも1つの圧電素子14のための1つまたはそれ以上の取付け領域を有することがある。いくつかの実施形態では、外面30は、複数の圧電素子14のための1つまたはそれ以上の取付け領域を有することがある。
【0024】
いくつかの実施形態では、試料ベッセル12は、上部40、底部42、第1の端部44、第2の端部46、第1の側部48、および第2の側部50を有し、第1の側部48および第2の側部50は、第1の端部44と第2の端部46との間、および上部40と底部42との間に延びる。いくつかの実施形態では、上部40および底部42は平面状でよい。いくつかの実施形態では、第1の側部48および第2の側部50は平面状でよい。いくつかの実施形態では、第1の端部44および第2の端部46は平面状でよい。いくつかの実施形態では、上部40、底部42、第1の端部44、第2の端部46、第1の側部48、および第2の側部50が合わさって、3次元の直方体を形成することがある。上述した各平面状構成は変更されることがあり、設計上の考慮事項に基づいて任意の想起される設計が使用されることがあることに留意されたい。
【0025】
試料ベッセル12は、部分的に、実質的に、または完全に透明でよい。例えば、いくつかの実施形態では、試料ベッセル12は、媒体9(例えば光)がマイクロチャネル22を通って試料ベッセル12を通過する、マイクロチャネル22内部の物質と相互作用する、かつ/または試料ベッセル12を通って出るもしくは通過することができるように、少なくともマイクロチャネル22の上下で透明でよい。
【0026】
試料ベッセル12は、部分的に、実質的に、および/または完全に透明にすることができる任意の材料で構成される。例えば、いくつかの実施形態では、試料ベッセル12は、ガラス、プラスチックなどで形成される。いくつかの実施形態では、試料ベッセル12の材料組成は、約50Gpaから約90Gpaの範囲内のヤング率を有することがある。いくつかの実施形態では、試料ベッセル12は、ガラスの剛性および/またはヤング率と同様の剛性および/またはヤング率を有するプラスチックで構成される。いくつかの実施形態では、試料ベッセル12は、アルカリホウケイ酸ガラスから構成される。アルカリホウケイ酸ガラスの一例は、「D 263 T ECO Thin Glass」という名前で販売され、Schott Advanced Optics(本拠は、米国ペンシルベニア州Duryea)によって流通されているものである。
【0027】
試料ベッセル12は、第1の端部44から第2の端部46までの長さLSV、第1の側部48から第2の側部50までの幅wSV、上部40と底部42との間の厚さtSV、および長さと幅との比例関係を定義するアスペクト比を有する。試料ベッセル12は、長さLSVに沿った長手方向軸と、幅wSVに沿った横軸とを有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、試料ベッセル12のアスペクト比は、約0.5から約3.0の範囲内でよい。いくつかの実施形態では、試料ベッセル12のアスペクト比は、約1.4から約1.9の範囲内でよい。いくつかの実施形態では、例えば、長さLSVは約22ミリメートルでよく、幅wSVは約12ミリメートルでよい。いくつかの実施形態では、例えば、長さLSVは約17ミリメートルでよく、幅wSVは約12ミリメートルでよい。いくつかの実施形態では、例えば、長さLSVは約17ミリメートルでよく、幅wSVは約6ミリメートルでよい。いくつかの実施形態では、例えば、長さLSVは約12ミリメートルでよく、幅wSVは約6ミリメートルでよい。
【0029】
図1~8および15を参照すると、マイクロチャネル22は、血液試料、「ブランク」試料、および/または洗浄溶液試料を含むがこれらに限定されない血液試料52を、第1のポート24および/または第2のポート26を通して受け取るように構成される。マイクロチャネル22は、長さ、幅、および高さを有する。典型的には、マイクロチャネル22の長さLは、試料ベッセル12の長手方向軸に沿って向けられ、マイクロチャネル22の幅wは、試料ベッセル12の横軸に沿って向けられる。しかし、マイクロチャネル22は、試料ベッセル12の長手方向軸および/または横軸からある角度に向けられる、またはオフセットされることもあることを理解されたい。
【0030】
マイクロチャネル22は、マイクロチャネル22の幅wと高さhとの比例関係を定義するアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の幅wと高さhとのアスペクト比は、例えば約0.04から約0.175の範囲内でよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の幅wと高さhとのアスペクト比は、例えば約0.04から約0.125の範囲内でよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の幅wと高さhとのアスペクト比は、例えば約0.05である。
【0031】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の幅wは、例えば約2ミリメートルでよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の幅wは、吸光度分光光度計102の光収集領域の照光幅よりも大きいことがある。照光幅は、吸光度分光光度計102からの光路に沿った光収集の断面の幅として定義され、光路はマイクロチャネル22と交差する。例えば、照光直径が1ミリメートルと1.5ミリメートルとの間であるとき、マイクロチャネル22の幅wは、少なくとも約1.6ミリメートルでよい。マイクロチャネル22の幅wは、マイクロチャネル22と光路との間の適切な機械的位置合わせを可能にするように決定される。例えば、1ミリメートルと1.5ミリメートルとの間の照光幅に関して、マイクロチャネル22の幅wは、約2ミリメートルでよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の長さは、約10ミリメートルと約12ミリメートルとの間でよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の長さLは、例えば、少なくとも約4ミリメートルでよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の長さLは、例えば、約4ミリメートルと約20ミリメートルとの間でよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の長さLは、マイクロチャネル22に生成予定の所定数の音響ノードに少なくとも一部基づくことがある。例えば、マイクロチャネル22の長さLは、約2ミリメートルの幅wに基づくことがあり、全血波伝播速度が約1500m/sであり、計算される単一の音響ノードは350kHzである。音響ノードは、マイクロチャネル22の長さ(例えば2×2mm=4mm)に沿って等間隔でマイクロチャネル22内に分布され、高圧が溶解血液の均一な分布を生み出す。例えば、所定数の音響ノードが、マイクロチャネル22の各側壁にある5つのノードである場合(図13参照)、マイクロチャネル22の長さLは約17ミリメートルに設定される。
【0034】
後述するように、マイクロチャネル22の高さhは変えることができる。マイクロチャネル22の高さhは、吸光度分光光度計102による光収集での溶解血液中の吸光量、および所望の吸光精度に基づくことがある。例えば、所望の吸光は、約1OD(光学密度)でよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の高さhは、例えば約100マイクロメートルでよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の高さhは、例えば約150マイクロメートルでよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の高さhは、例えば約250マイクロメートルでよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の高さhは、例えば約300マイクロメートルでよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の高さhは、例えば約80マイクロメートルと約300マイクロメートルとの間でよい。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22の高さhは、例えば約80マイクロメートルと約150マイクロメートルとの間でよい。
【0036】
第1のポート24および第2のポート26は、マイクロチャネル22に流体連通され、マイクロチャネル22から試料ベッセル12の外面20を通って延びることがある。いくつかの実施形態では、第1のポート24は、マイクロチャネル22に流体連通され、マイクロチャネル22から試料ベッセル12の上部40、底部42、第1の端部44、第2の端部46、第1の側部48、および/または第2の側部50に延びることがある。いくつかの実施形態では、第2のポート26は、マイクロチャネル22に流体連通され、マイクロチャネル22から試料ベッセル12の上部40、底部42、第1の端部44、第2の端部46、第1の側部48、および/または第2の側部50に延びることがある。第1のポート24と第2のポート26とは、上部40、底部42、第1の端部44、第2の端部46、第1の側部48、および/または第2の側部50のうちの同じものまたは異なるものに延びることがある。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1のポート24および第2のポート26はそれぞれ、約0.5ミリメートル(500マイクロメートル)と約1.5ミリメートル(1500マイクロメートル)との間の直径を有する。いくつかの実施形態では、第1のポート24および第2のポート26はそれぞれ、約0.8ミリメートル(800マイクロメートル)の直径を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、試料ベッセル12は、材料の単一部片から形成されることにより、または統一された全体を形成するように相互連結された複数の部片から形成されることにより、モノリシック製造品でもよい。
【0039】
図4~8に示されるように、試料ベッセル12は、外面20によって画成され、内部にマイクロチャネル22を有する単一基板60と、マイクロチャネル22に流体連通され、外面20に延びる第1のポート24および第2のポート26とを含むことがある。例えば、試料ベッセル12は、3次元プリント基板(例えばガラス基板および/またはプラスチック基板)でよい。3Dプリントされる基板は、マイクロチャネル22、第1のポート24、および第2のポート26を含むようにプリントされる。
【0040】
図9は、溶解デバイス10の別の例示的実施形態を示し、試料ベッセル12が複数の基板を含むことがある。例えば、図9に示されるように、試料ベッセル12は、第1の基板70および第2の基板72を含む。第2の基板72は、モノリシック構造を形成するように第1の基板70と積層される。複数の基板が、互いにアニーリング、熱プラズマ接合などを施される。例えば、図9で、第1の基板70と第2の基板72とが互いにアニーリングされる。いくつかの実施形態では、第1の基板70および第2の基板72は、試料ベッセル12と同じ長さ対幅のアスペクト比を有する。
【0041】
マイクロチャネル22、第1のポート24、および/または第2のポート26は、複数の基板のうちの1つまたはそれ以上に位置する。例えば図9で、マイクロチャネル22は、第1の基板70に位置する、第2の基板72に位置する、かつ/または一部が第1の基板70に、一部が第2の基板72に形成される。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22、第1のポート24、および第2のポート26は、第1の基板70に位置する。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22は、第1の基板70および/または第2の基板72にエッチングされる。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22は第1の基板70に位置し、第1のポート24および第2のポート26の一方または両方が第2の基板72に位置する。いくつかの実施形態では、第1のポート24および第2のポート26の一方または両方が、第1の基板70および/または第2の基板72に位置する(かつ/またはそこを通って延びる)。
【0042】
図10および11を参照すると、いくつかの実施形態では、試料ベッセル12は、第1の基板70、第2の基板72、および第1の基板70と第2の基板72との間の第3の基板80を含むことがある。いくつかの実施形態では、第1の基板70、第2の基板72、および第3の基板80は、モノリシック構造を形成するように積層される。いくつかの実施形態では、第1の基板70、第2の基板72、および第3の基板80は、互いに熱プラズマ接合される。いくつかの実施形態では、第1の基板70、第2の基板72、および第3の基板80は、互いにアニーリングされる。第1のポート24および第2のポート26の一方または両方が、第1の基板に位置する。マイクロチャネル22は、第2の基板72に位置する。いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22は、第3の基板80を通して位置するスロットでよい。いくつかの実施形態では、第3の基板80は、マイクロチャネル22の高さとほぼ同じ厚さを有することがある。いくつかの実施形態では、第3の基板80は、約100マイクロメートルの厚さでよい。
【0043】
図1Aおよび1Bを参照すると、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、図1Aに示されるように試料ベッセル12に取り付けられた単一の圧電素子でよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、複数の圧電素子14を含むことがある。例えば、図1Bでは、第1の圧電素子14aおよび第2の圧電素子14bが試料ベッセル12に取り付けられる。本明細書でさらに詳細に述べるように、第1の圧電素子14aは音響トランスデューサとして構成され、第2の圧電素子14bはセンサとして構成される。いくつかの実施形態では、素子14bは、圧電素子である必要はなく、本開示による任意のタイプの振動センサ(例えば加速度計)でもよい。例えば、振動を測定するように構成された複数のセンサが、周波数応答を決定するために使用されることに留意されたい。以下の説明は、特に明記しない限り、単一の圧電素子14の実施形態と、複数の圧電素子(例えば第1の圧電素子14aおよび第2の圧電素子14b)を含む実施形態とを含むように、少なくとも1つの圧電素子14を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14が試料ベッセル12に取り付けられて、溶解デバイス10のモノリシック構造を形成する。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、図1Aおよび図1Bに示されるように、外面20の取付け領域に取り付けられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14の少なくとも一部分が、外面20の取付け領域に取り付けられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、外面20の取付け領域に取り付けるために構成された1つまたはそれ以上の取付け領域を有することがある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、試料ベッセル12の上部40に少なくとも部分的に取り付けられる;しかし、少なくとも1つの圧電素子14の1つまたはそれ以上の部分が、上部40、底部42、第1の端部44、第2の端部46、第1の側部48、および/または第2の側部50に取り付けられることを理解されたい。
【0045】
少なくとも1つの圧電素子14は、試料ベッセル12の上部または底部からマイクロチャネル22を通って光が進むのを妨げないように、マイクロチャネル22に対して構成および/または位置する。例えば、少なくとも1つの圧電素子14または少なくとも1つの圧電素子14の一部分が、試料ベッセル12の外部からマイクロチャネル22に光が入るのを可能にするように構成されるように、少なくとも1つの圧電素子14の少なくとも一部分がマイクロチャネル22からオフセットされる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、長さLを有し、長さLに沿った長手方向軸を有し、長手方向軸は、試料ベッセル12の長手方向軸に実質的に平行に向けられる。少なくとも1つの圧電素子14は、複数の圧電素子を含むことがあり、各圧電素子14は、長さL、幅w、および/または高さhの設計が実質的に同様である、長さL、幅w、および/または高さhの設計が異なる、またはそれらの組合せである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、少なくとも1つの圧電素子14の長さLよりも小さい幅wを有するように構成される。
【0046】
設計上の考慮事項に応じて、少なくとも1つの圧電素子14は、試料ベッセル12の第1のポート24および第2のポート26の一方もしくは両方と反対の側に、または第1のポート24および第2のポート26の一方もしくは両方と同じ側に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、複数の圧電素子(例えば図1Bの14aおよび14b)を含むことがあり、少なくとも1つは、試料ベッセル12の第1のポート24および第2のポート26の一方もしくは両方と反対の側に位置し、少なくとも1つが、試料ベッセル12の第1のポート24および第2のポート26の一方もしくは両方と同じ側に位置し、またはそれらの組合せである。
【0047】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14または少なくとも1つの圧電素子14少なくとも一部分は、試料ベッセル12に付着されるまたは取り付けられる。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14または少なくとも1つの圧電素子14の少なくとも一部分は、試料ベッセル12の少なくとも一部分に接合またはばね荷重される。接合は、例えば、少なくとも1つの圧電素子14および/または試料ベッセル12の高さよりも小さいまたは実質的に小さい厚さを有する接合層を含むことがある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、例えば接着剤で試料ベッセル12の少なくとも一部分に付着される。接着剤は、低い音響波損失を伴う音響波伝播を可能にするように構成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14の少なくとも一部分に流体接着剤(例えば液体接着剤)が塗布される。少なくとも1つの圧電素子14の少なくとも一部分は、液体接着剤で試料ベッセル12に接着される。液体接着剤は、約350℃までの温度安定性、ガラスに対する優れた接着力を有するような構成、塗布時の高い硬度(剛性)の構成、超音波伝播を提供するような構成、約85のショアD硬度、またはそれらの組合せを有することがある。例示的な液体接着剤は、Epoxy Technology,Inc.(本拠は、米国マサチューセッツ州Billerica)によって流通されているEPO-TEK 353NDなどのエポキシ接着剤を含み、しかしこれに限定されない。液体接着剤の量(例えば5μl)は、設計上の考慮事項により異なることがある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は試料ベッセル12にクランプされ、液体接着剤が(例えば約150℃で)硬化される。いくつかの実施形態では、硬化後、接着剤の厚さは約100μmでよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、音響トランスデューサとして機能することがあり、電荷を、1つまたはそれ以上の周波数および/または周波数範囲を有する音波など別のエネルギー形態に変換するように構成される。そのために、少なくとも1つの圧電素子14は、そこに交流が印加されたときに振動し、それによって試料ベッセル12に導入される音波を生み出すように構成される。少なくとも1つの圧電素子14からの音波は、試料ベッセル12内の血液試料52中に1つまたはそれ以上の音響ノードを生み出すことがある。図1に示されるように、少なくとも1つの圧電素子14は、交流電源に接続するように構成された第1の電極90および第2の電極92を含むことがある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、圧電超音波トランスデューサでよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、1つまたはそれ以上の音響ノードを生み出すために試料ベッセル12に導入することができる音波を生み出すように構成された単一の圧電素子14でよい。さらに、単一の圧電素子14は、単一の圧電素子14によって生成された音波に応答して試料ベッセル12によって生み出される振動を受け取って測定するように構成されたセンサとして機能するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は複数の圧電素子でよく、例えば、少なくとも1つの圧電素子14aは、1つまたはそれ以上の音響ノードを生み出すために試料ベッセル12に導入することができる音波を生み出すように構成され、少なくとも1つの圧電素子14bは、例えば、圧電素子14aによって生成された音波に応答して試料ベッセル12によって生み出された振動を受け取って測定するためのセンサとして機能するように構成される。いくつかの実施形態では、各圧電素子14aおよび14bは、1つまたはそれ以上の音響ノードを生み出すために試料ベッセル12に導入することができる音波を生み出すように構成され、各圧電素子14aおよび14bは、試料ベッセル12によって生み出された音波を受け取って測定するためのセンサとして機能することもある。
【0051】
音響トランスデューサとして機能する少なくとも1つの圧電素子14は、電気周波数および電圧が印加されたときに伸長および収縮することによって、超音波活動を生成し、周波数を有する音波を生成するように構成される。図12は、音響トランスデューサとして機能する少なくとも1つの圧電素子14の例示的な動作における少なくとも1つの圧電素子14の総変位の一例のグラフ表現を示す。
【0052】
いくつかの実施形態では、音響トランスデューサとして機能する少なくとも1つの圧電素子14は、血液試料52中の赤血球の壁が破壊されるように試料ベッセル12のマイクロチャネル22内の血液試料52中で共振する共振周波数を有する超音波を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、音響トランスデューサとして機能する少なくとも1つの圧電素子14は、血液試料52にキャビテーションを引き起こし、それによって赤血球の壁を破壊する周波数を有する超音波(本明細書では超音波音響波とも呼ぶ)を生成するように構成される。
【0053】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、第1の共振周波数を有し、溶解デバイス10のモノリシック構造は、第1の共振周波数からスペクトル的に分離された第2の共振周波数を有し、第2の共振周波数は、少なくとも1つの圧電素子14によって生成されて試料ベッセル12に導入される音波の周波数であり、それによって血液試料52にキャビテーションを引き起こし、それによって赤血球の壁を破壊する。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2の共振周波数は、1つまたはそれ以上の音響定在波を引き起こすことがあり、音響定在波は、力がほぼゼロであり、粒子の動きがほぼなく、マイクロチャネル22内で最高の液圧を有する試料ベッセル12のマイクロチャネル22内の領域(ノードと呼ぶ)で生じ、図13および14に示されるように血液試料52中の赤血球の壁が破壊される。定常波としても知られている音響定在波は、時間軸で振動するが、空間軸では動かないピーク振幅プロファイルを有する波である。
【0055】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、単一の圧電素子として、音波を生成し、さらに試料ベッセル12によって生成された得られた音波を測定するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は複数の圧電素子でよく、少なくとも1つの圧電素子は、音響音波を生成するように構成され、少なくとも1つの圧電素子は、試料ベッセル12によって生成された得られた音波を測定するように構成される。
【0056】
いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は、少なくとも1つの圧電素子14の少なくとも一部分に接合された試料ベッセル12を含むことがある。試料ベッセル12は、ガラスなどで形成される。マイクロチャネル22は、0.05から0.125のアスペクト比で約2ミリメートルの幅wを有することがある。試料ベッセル12は、1.4から1.9のアスペクト比で約12ミリメートルの幅wSVを有することがある。少なくとも1つの圧電素子14は、330kHzから350kHzの範囲内の超音波を、(図13に示されるように)マイクロチャネル22内での5MPaのピーク圧力および(図14に示されるように)8m/sまでのピーク速度で生成するように構成される。図13および14は、少なくとも1つの圧電素子14が起動されるときのマイクロチャネル22内の血液試料52の例示的な圧力分布(図13)および例示的な流体速度(図14)を示す。
【0057】
マイクロチャネル22の幅は、少なくとも血液試料52中での音響波伝播速度(例えば約1500m/s)に基づいて、望まれる所定数の音響ノードをマイクロチャネル22の中央での1つのノードとして使用して決定され、周波数は約330kHzから約350kHzである。式1は、少なくとも一部、マイクロチャネル22内の第1の音響ノード(例示的な2000μmの幅および100μmの深さを有する)を決定するために使用され、微小の反射または他のミラーリングを考慮に入れない。
【0058】
【数1】
ここで、fは周波数であり、vは流体中の波速度であり、λは波長である(例えば、波長λは、マイクロチャネル22の幅の1/2である)。
【0059】
マイクロチャネル22および/または少なくとも1つの圧電素子14内の超音波は、システム内での望ましくない熱および/またはマイクロチャネル22内の血液試料52中での望ましくない熱を生成することがある。システムおよび/または血液試料52の過熱を回避するために、少なくとも1つの圧電素子14が、所定の期間tにわたって特定の周波数で超音波を生成するように作動される。例えば、少なくとも1つの圧電素子14は、約1秒から約2秒にわたって第2の共振周波数を有する音波を生成するように作動される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、約1.5秒未満にわたって第2の共振周波数を有する音波を生成するように作動される。例えば、溶解デバイス10は、99.99%の赤血球溶解をもたらすために、1.5秒以下にわたって、少なくとも1つの圧電素子14を音響トランスデューサとして作動するように構成される。一例では、溶解デバイス10は、約10秒以下にわたって、少なくとも1つの圧電素子14を音響トランスデューサとして作動するように構成される。
【0060】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネル22内の超音波は、血球および細胞壁を破壊して微細粒子にし、そのような微細粒子は、血液試料52の光学測定中、より大きい粒子よりも少ない光散乱を生成する。
【0061】
いくつかの実施形態では、音響トランスデューサとして機能する少なくとも1つの圧電素子14は、ある周波数範囲内の超音波を生成するように構成され、第2の共振周波数は、その周波数範囲内でよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、約300kHzよりも大きい周波数範囲内の超音波を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、約300kHzよりも大きい周波数範囲内の音波を測定するように構成される。
【0063】
共振周波数および/または周波数範囲は、試料ベッセル12のサイズ、形状、および材料;試料ベッセル12のマイクロチャネルのサイズおよび形状;血液試料52中の流体の量;および/または少なくとも1つの圧電素子14のサイズ、形状、および材料を含む1つまたはそれ以上の因子に基づいて決定される。
【0064】
例えば、試料ベッセル12がガラスで作られているとき、マイクロチャネル22は約0.05から約0.125のアスペクト比を有し、試料ベッセル12は、約1.4から約1.9のアスペクト比を有し、少なくとも1つの圧電素子14は、約330kHzから約350kHzの範囲内の超音波を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14はまた、約330kHzから約350kHzの範囲内の超音波を測定するように構成される。
【0065】
図1A、1B、および21を参照すると、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14によって生成される音波を較正するために、試料ベッセル12および/または血液試料52に関する共振周波数が決定される。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、第1の持続時間tの間、周波数fから周波数fまで駆動される第1の周波数掃引302での超音波音響定在波の第1の信号300を試料ベッセル12に生成することがある。第1の周波数掃引302は、構成公差を包含することがある周波数掃引範囲である。例えば、第1の周波数掃引302は、ガラスの既知の共振、例えば300~350kHz付近での約40~50kHzの範囲内でよい。いくつかの実施形態では、第1の周波数掃引302は、例えば約5秒の持続時間tにわたって、約300kHzから約350kHzの範囲を含むことがある。いくつかの実施形態では、第1の周波数掃引302は、例えば約5秒の持続時間tにわたって、約350kHzから約360kHzの範囲を含むことがある。いくつかの実施形態では、第1の信号300は、低駆動でスペクトル的に純粋な正弦波、方形波、三角波などでもよい。
【0066】
次いで、少なくとも1つの圧電素子14は、第1の信号300の提供を停止し、その後、第1の信号300による(例えば試料ベッセル12からの)振動信号を含む第2の信号304を受信することがある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、図1Aおよび図21に示されるように、第1の信号300を生成し、振動信号を含む第2の信号302を測定するように構成された単一のデバイスでよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、図1Aおよび図21に示されるように、2つ以上の別個のデバイスでよく、少なくとも第1の圧電素子14aが、第1の信号300を生成するように構成され、少なくとも第2の圧電素子14bが、(例えば試料ベッセル12からの振動信号を有する)第2の信号304を測定するように構成される。
【0067】
試料ベッセル12、血液試料52、周囲環境、溶解デバイス10、および/またはそれらの組合せの共振周波数を決定するために、第1の信号300と、振動信号を有する第2の信号304とが比較される。例えば、図21で、第1の信号300が試料ベッセル12に提供され、第2の応答信号304が、第1の信号300の下に示されている。第2の信号304は、相対最大値306で、より高い振幅を示す。相対最大値306は、例えば溶解デバイス10の共振周波数を示す。試料ベッセル12において、少なくとも1つの圧電素子14によって生成される音波に関する最適周波数は、共振周波数を含むことも、または除外することもある。決定された共振周波数は、分析され、最小の温度上昇を伴う最短時間で血液試料52中の血球を破壊するための最適な結果を提供するために使用される。そのために、血液試料52中の血球を溶解するために少なくとも1つの圧電素子14によって放出予定の信号を較正するために、決定された共振周波数が使用される。次いで、少なくとも1つの圧電素子14は、試料ベッセル12のマイクロチャネル22内の血液試料52中の血球を溶解するための強度および持続時間を有する決定された共振周波数を使用して、較正された信号を放出することがある。
【0068】
図21を参照すると、異なる試料ベッセルを使用する別の例では、第2の応答信号304aは、システムで使用するための最適な共振周波数を示す相対最大値308での振幅を有することがある。そのために、各試料ベッセル12および/または溶解デバイス10は、溶解デバイス10および/または試料ベッセル12で使用するための決定された共振周波数に基づいて較正される。さらに、各溶解デバイス10は、溶解デバイス10のライフサイクル全体にわたって較正される。次いで、少なくとも1つの圧電素子14は、試料ベッセル12のマイクロチャネル22内の血液試料52中の血球を溶解するための強度および持続時間を有する決定された共振周波数を使用して、較正された信号を放出することがある。
【0069】
図22は、少なくとも1つの圧電素子14によって使用予定の信号を較正するための共振周波数を決定するための別の例示的な方法を示す。一般に、第1の信号300を放出するために少なくとも1つの圧電素子14が駆動される。第1の信号300は、一連の周波数F~Fを含み、隣接する各対の周波数の放出の合間に観察期間がある。観察期間中、少なくとも1つの圧電素子14は駆動されず、高いZ値で維持される。圧電素子14は、試料ベッセル12からの振動を示す第2の信号304を生成する。特に、図22において、第2の信号は、試料ベッセル12の共振周波数を決定するために分析される各観察期間中の減衰エンベロープ310を有する。特に、観察期間中の減衰信号が比較されて、どの周波数F~Fが減衰エンベロープ310中で最も強い信号を提供するかを決定し、したがってどの周波数F~Fが試料ベッセル12の共振周波数であるかを示す。減衰信号から共振周波数が決定されると、少なくとも1つの圧電素子14は、試料ベッセル12のマイクロチャネル22内の血液試料52中の血球を溶解するための強度および持続時間を有する共振周波数(例えば共振周波数を含むまたは除外する)に基づいて、較正された信号で駆動される。
【0070】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、段階的に(例えば1kHzの周波数ごとに)、ある範囲内で第1の周波数掃引302を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、共振周波数をさらに較正することなく、第1の周波数掃引302を提供することがある。そのために、少なくとも1つの圧電素子14は、特定の周波数範囲にわたって第1の周波数掃引を提供することがあり、したがって、溶解デバイス10の幾何形状および材料のばらつきを考えても、溶解デバイス10および血液試料52に関して推定共振周波数が得られる。例えば、少なくとも1つの圧電素子14は、約330kHzと約350kHzとの間の周波数範囲を、約1kHzのステップ、1kHz未満のステップ、または1kH超のステップで掃引するように構成される。例えば、少なくとも1つの圧電素子14は、約330kHzから約350kHzの第1の周波数掃引302を提供するように構成され、および/または少なくとも1つの圧電素子14は、約350kHzから約330kHzの第1の周波数掃引302を提供するように構成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、ゼロ秒より大きく5秒未満、4秒未満、3秒未満、2秒未満、および/または1秒未満の持続時間tにわたって、ある周波数範囲で第1の周波数掃引302を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14は、約1秒と約2秒との間の持続時間tにわたって第1の周波数掃引302を提供するように構成される。
【0072】
いくつかの実施形態では、追加としてまたは代替として、溶解デバイス10は、試料ベッセル12のマイクロチャネル22内にせん断モードおよび曲げモードを誘発することによって、血液試料52中の血球を溶解することがある。少なくとも1つの圧電素子14(例えば剛性のおよび/または接合された)が変位され(例えば横方向変位)、試料ベッセル12の振動および/または移動をもたらす。例えば、起動されるとき、少なくとも1つの圧電素子14は、図12に示されるように形状を変え、収縮および/または伸長(例えば横方向変位)することがある。少なくとも1つの圧電素子14の動きは、試料ベッセル12に伝達される。そのような動きは、マイクロチャネル22の幾何形状および/または容積を変え、試料ベッセル12のマイクロチャネル22にせん断力および/または曲げを誘発することがある。図12は、少なくとも1つの圧電素子14の例示的な動作における少なくとも1つの圧電素子14の例示的な総変位のグラフ表現を示す。
【0073】
少なくとも1つの圧電素子14の変位は、試料ベッセル12内に曲げおよび/またはせん断力をもたらすことがある。試料ベッセル12内の曲げおよび/またはせん断力は、マイクロチャネル22内部での高圧、せん断力、および/または流体運動の組合せにより、試料ベッセル12のマイクロチャネル22内の血液試料52の溶解を引き起こすおよび/または溶解に寄与することがある。そのために、マイクロチャネル22内の血液試料52の溶解は、血液試料52中の音響定在波、圧力、せん断力、および/または流体運動の組合せによって引き起こされる。
【0074】
少なくとも1つの圧電素子14が起動されるとき、少なくとも1つの圧電素子14と試料ベッセル12との間の取付け部(例えば接合)にせん断力が生成される。せん断応力は、マイクロチャネル22の内部に高圧をもたらすことがある。例えば、いくつかの実施形態では、圧力は約5MPaでよい。いくつかの実施形態では、圧力は、約3MPaから約7MPaの範囲内でよい。いくつかの実施形態では、圧力は、少なくとも1つの圧電素子14の収縮および/または伸長のレベルによって制御される。少なくとも1つの圧電素子14の収縮および/または伸長のレベルは、少なくとも1つの圧電素子14の電界強度に依存することがある。
【0075】
マイクロチャネル22内の音響定在波と、試料ベッセル12のせん断力および/または曲げとの組合せは、マイクロチャネル22内の血液試料52にキャビテーションを引き起こすことがある。そのようなキャビテーションは、血液試料52中の細胞壁の破壊を引き起こすことがある。
【0076】
ここで、図15~18を参照すると、いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は、分析器100の構成要素でよい。分析器100は、溶解デバイス10、吸光度分光光度計102、流体分配システム104、および/またはコントローラ106を含むことがある。いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は、分析器100の他の構成要素から着脱可能および/または交換可能である。いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は分析器100に恒久的に取り付けられ、溶解デバイス10の1つまたはそれ以上の構成要素は着脱可能および/または交換可能である。いくつかの実施形態では、分析器100は、溶解デバイス10を受け取るかつ/または位置するように構成されたマウント108をさらに含むことがある。いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は、ある振動および/または動き範囲内で振動するかつ/または動くことができるように、マウント108内に保持(例えばクランプ)される。
【0077】
いくつかの実施形態では、分析器100のコントローラ106は、1つまたはそれ以上のプロセッサ140および1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ可読媒体142をさらに含むことがある。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のプロセッサ140および1つまたはそれ以上の非一時的なコンピュータ可読媒体142は、コントローラ106の一部でよい。しかし、プロセッサ140および/または非一時的なコンピュータ可読媒体142のうちの1つまたはそれ以上は、コントローラ106の外部および/または分析器100の他の構成要素の外部に位置することがあることを理解されたい。
【0078】
いくつかの実施形態では、吸光度分光光度計102は、試料ベッセル12に隣接して位置する送信機112および受信機114を含むことがあり、送信機112は、上部40、底部42、およびマイクロチャネル22を通して媒体116を放出するように位置し、受信機114は、媒体116の一部分が上部40、底部42、およびマイクロチャネル22を通過した後、媒体116の少なくとも一部分を受け取るように位置する。いくつかの実施形態では、送信機112は光源でよく、媒体116は光でよい。光源は、限定はしないが、1つもしくはそれ以上の発光ダイオード、1つもしくはそれ以上のチューブライト、1つもしくはそれ以上の電球、太陽光、および/またはそれらの組合せでよい。例えば、いくつかの実施形態では、光源は、約450~700ナノメートルの範囲内の波長を有する白色光を提供する1つまたはそれ以上の発光ダイオードでよい。
【0079】
吸光度分光光度計102は、特に試料ベッセル12のマイクロチャネル22内の血液試料52中の特定の物質によって透過または放出される、スペクトルの一部での光の強度を測定するように構成される。吸光度分光光度計102は、光のビームが血液試料52または他の流体試料52を通過するときの光の強度を測定することによって、化学物質が光をどれだけ吸収するかを測定するように構成される。試料または溶液中の各化合物は、特定の波長範囲にわたる光を吸収または透過する。
【0080】
図16および17を参照すると、流体分配システム104は、溶解デバイス10の試料ベッセル12の第1のポート24に流体連通可能な入口120と、第2のポート26に流体連通可能な出口122とを有することがある。流体分配システム104は、ブランク試料または血液試料または洗浄溶液などの1つまたはそれ以上の流体試料52を、入口120を通し、第1のポート24を通して試料ベッセル12のマイクロチャネル22に移動させることがある。説明を簡単にするために、説明全体を通して血液試料52を使用する;しかし、当業者は、他の流体試料(例えば液体および気体)が本開示に従って使用されてもよいことを理解されよう。いくつかの実施形態では、流体分配システム104は、マイクロチャネル22を洗浄して、試料ベッセル12の第2のポート26を通して出口122からマイクロチャネル22内の物質を排出することができる。流体分配システム104は、自動、手動、または自動および手動の組合せで作動される。
【0081】
コントローラ106は、溶解デバイス10の少なくとも1つの圧電素子14に電気的に接続される。いくつかの実施形態では、コントローラ106は、少なくとも1つの圧電素子14に信号を提供するように構成され、この信号は、少なくとも1つの圧電素子14によって受信されるとき、少なくとも1つの圧電素子14に、1つまたはそれ以上の周波数および/または周波数範囲での超音波音響波を放出させる。
【0082】
図23は、超音波音響波を放出するように少なくとも1つの圧電素子14を較正するための例示的な方法の流れ図320を示す。工程322で、コントローラ106は、図21および23に示されるように、少なくとも1つの圧電素子14に1つまたはそれ以上の信号を提供して、少なくとも1つの圧電素子14に、第1の周波数掃引302にわたって超音波音響波を有する第1の信号300を放出させるように構成される。工程324で、コントローラ106は、少なくとも1つの圧電素子を調節して、第1の信号300の提供を停止することがある。工程326で、コントローラ106は、少なくとも1つの圧電素子から第2の信号304を受信することがあり、第2の信号304は、第1の信号300から生じる(例えば試料ベッセル12からの)振動信号を含み、試料ベッセル12を振動させる。試料ベッセル12は、血液試料52を含む、または血液試料52を含まないことがある。工程328で、コントローラ106は、第1の信号300を第2の信号304と比較し(例えば振幅、減衰エンベロープ)、第2の信号304中で共振周波数を識別することがある。工程330で、コントローラ106は、少なくとも1つの圧電素子14に1つまたはそれ以上の信号を提供して、少なくとも1つの圧電素子14に、決定された共振周波数に基づいて超音波音響波を放出させるように構成され、超音波音響波は、血液試料52中の血球を溶解するための強度および持続時間を有する。
【0083】
図1Aおよび16に示されているように、いくつかの実施形態では、コントローラ106は、第1の電気接点130および第2の電気接点132を有することがある。第1の電気接点130および第2の電気接点132は、溶解デバイス10の少なくとも1つの圧電素子14の第1の電極90および第2の電極92にそれぞれ電気的に接続可能でよく、それにより、少なくとも1つの圧電素子14に電位が提供される。
【0084】
マウント108は、送信機112と受信機114との間で溶解デバイス10を定位置に保持することがあり、流体分配システム104およびコントローラ106に動作可能に連結されるように溶解デバイス10を位置させることがある(図17参照)。マウント108は、溶解デバイス10のモノリシック構造の音響インピーダンスを大幅に変える力を加えることなく、溶解デバイス10を定位置で安定させるように構成される。例えば、マウント108は、約20N(ニュートン)以下のクランプ力を加える1つまたはそれ以上のクランプを含むことがある。
【0085】
いくつかの実施形態では、分析器100は、1つもしくはそれ以上のデジタル温度センサおよび/または1つもしくはそれ以上の熱制御素子(ペルチェ素子など)をさらに含むことがある。
【0086】
いくつかの実施形態では、血液の分析は、血液試料52を取得し、または受け取り;吸光度分光光度計102の送信機112と受信機114との間に溶解デバイス10を投入し;流体分配システム104を用いて、入口120および第1のポート24を通して試料ベッセル12のマイクロチャネル22に血液試料52を投入し;コントローラ106を起動して、少なくとも1つの圧電素子14に電気信号を提供して、第1の信号を生成し;第1の信号を、(例えば、少なくとも1つの圧電素子14(図1A)、圧電センサ14b(図1B)、および/または外部センサによって受信される)得られた振動信号を有する第2の信号と比較することによって、決定された共振周波数に基づいて少なくとも1つの圧電素子14を較正し;コントローラ106を起動して、少なくとも1つの圧電素子14に電気信号を提供し、電気信号は、少なくとも1つの圧電素子14によって受信されると、少なくとも1つの圧電素子14に、溶解デバイス10および/または血液試料52の決定された共振周波数に基づいて1つまたはそれ以上の周波数および/または周波数範囲で超音波音響波を放出させ、かつ/または少なくとも1つの圧電素子14を伸長および収縮させ、それによってマイクロチャネル22内の血液試料52にせん断力を生成し;それにより血液試料52にキャビテーションが誘発され、血液試料52の赤血球の壁が破壊され;吸光度分光光度計102を起動して、送信機112から溶解血液試料52を通して受信機114に媒体116を送信することを含む。
【0087】
さらに、血液の分析は、受信機114によって生成された電気信号を読み取って、吸光度分光光度計102の受信機114によって受信された光を示す信号に少なくとも一部基づいて、溶解血液試料52の1つまたはそれ以上のオキシメトリパラメータを決定することを含むことがある。
【0088】
図19に示されるように、吸収スペクトルは、液体媒体についての吸収に関する既知の計算に基づいて計算される。さらに、図20に示されるように、1つまたはそれ以上のオキシメトリパラメータの決定は、以下のものの1つまたはそれ以上など、ヘモグロビン形態のスペクトルプロファイル係数を分析することをさらに含むことがある:カルボキシヘモグロビン(COHB)、オキシヘモグロビン(O2HB)、メトヘモグロビン(METHB)、デオキシヘモグロビン(HHB)、新生児ビリルビン(NBILI)、シアンメトヘモグロビン(CN_MET_B)、スルフヘモグロビン(SULF_HIGH)、およびメチレンブルー色素(METH_BLUE_A)。
【0089】
1つまたはそれ以上のオキシメトリパラメータを決定することは、血液試料52中の成分による光の吸収である分光光度計の吸光の測定に基づくことがある。
【0090】
1つまたはそれ以上のオキシメトリパラメータの決定は、少なくとも総ヘモグロビン(THB)、および以下のようなヘモグロビン画分の1つまたはそれ以上を測定することを含むことがある:オキシヘモグロビン(O2HB)、メトヘモグロビン(METHB)、デオキシヘモグロビン(HHB)、カルボキシヘモグロビン(COHB)。
【0091】
血液の分析は、血液試料52をマイクロチャネル22に導入する前および/または後に、洗浄溶液を試料ベッセル12のマイクロチャネル22に投入および排出することを含むことがある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの圧電素子14が起動されて、音響波および/またはせん断力を生成し、マイクロチャネル22内の洗浄溶液を撹拌することがある。いくつかの実施形態では、試料ベッセル12が使用され、洗浄され、再使用される。いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は再利用可能でないことがあり、血液試料52ごとに交換される。そのために、いくつかの実施形態では、溶解デバイス10は、1回の使用後に廃棄される。
【0092】
分析器100を使用する方法は、分析器100をブランク試料で較正することをさらに含むことがある。いくつかの実施形態では、流体試料52は、分析器100を較正するために使用される「ブランク試料」として知られている検査試料でよい。ブランク試料は、媒体の透過の散乱を測定するために使用されるダイ溶液を含むことがある。
【0093】
いくつかの実施形態では、血液試料52は、体積が約12マイクロリットルでよい。血液試料は、典型的には、血漿および赤血球(血液試料の45%~60%を構成することがある)ならびに場合により脂質を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、血液試料52は、一定の温度に保たれる。いくつかの実施形態では、血液試料52の温度は、約37℃±約0.3℃でよい。いくつかの実施形態では、血液試料52の温度は、40℃未満、または血液試料52の損傷を避けるように構成された温度でもよい。いくつかの実施形態では、血液試料52は、1つもしくはそれ以上の温度センサおよび/または1つもしくはそれ以上の熱制御素子を利用して、実質的に一定の温度に保持される。
【0095】
次に、使用時の分析器100および溶解デバイス10の一例を述べる。一例では、試料ベッセル12はガラスで作られ、約1.4から約1.9の範囲内の長さ対幅のアスペクト比を有することがあり、マイクロチャネル22は、約0.05の高さ対幅のアスペクト比を有する(例えば、約100マイクロメートルの高さおよび約2ミリメートルの幅を有する)ことがある。試料ベッセル12は、吸光度分光光度計102の送信機112と受信機114との間で媒体が移動する経路に挿入される。分析器100は、媒体を経路に通すためにミラーおよび/または導波路を含む様々な器具を備えることがあることを理解されたい。流体分配システム104は、血液試料52を試料ベッセル12のマイクロチャネル22に挿入することがある。
【0096】
コントローラ106は、試料ベッセル12の少なくとも1つの圧電素子14に電気的に接続され、少なくとも1つの圧電素子14に電気信号を提供することがあり、少なくとも1つの圧電素子14に、持続時間t(例えば2秒)にわたる周波数掃引(例えば約330kHzから約350kHzの周波数範囲)による超音波を放出させる。いくつかの実施形態では、コントローラ106は、放出された超音波による振動信号の測定値を受信することがある。測定値は、少なくとも1つの圧電素子14(図1A)、圧電素子14b(図1B)、および/または外部センサから送信される。コントローラ106は、試料ベッセル12および/または血液試料52の共振周波数を決定するために信号(例えば振幅、減衰エンベロープ)を比較することがある。決定された共振周波数は、少なくとも1つの圧電素子14を較正するため、および/または決定された共振周波数に基づいて超音波を提供して血液試料52の血球を溶解するために使用される。
【0097】
いくつかの実施形態では、非一時的なコンピュータ可読媒体142は、コンピュータ実行可能命令を記憶することがあり、このコンピュータ実行可能命令は、コントローラ106の1つまたはそれ以上のプロセッサ140によって実行されるとき、1つまたはそれ以上のプロセッサ140に、血球および血漿を含む血液試料52を含むマイクロチャネル22を有する試料ベッセル12に連結された少なくとも1つの圧電素子14に信号を送信させ、少なくとも1つの圧電素子14に、血液試料52中の血球を溶解するための周波数、強度、および持続時間で試料ベッセル12内に超音波音響波を放出させることがある。
【0098】
いくつかの実施形態では、周波数範囲は、溶解デバイス10のモノリシック構造および血液試料52に関する共振周波数を含み、それによって血液試料52のキャビテーションを引き起こし、血液試料52中の血球の細胞壁を破壊する。追加としてまたは代替として、コントローラ106は、1つまたはそれ以上のプロセッサ140に、少なくとも1つの圧電素子14を伸長および収縮させることがある信号を少なくとも1つの圧電素子14に送信させ、それによってマイクロチャネル22内の血液試料51にせん断力を生成し、これが血液試料52中の血球の細胞壁を破壊する。
【0099】
いくつかの実施形態では、血球の細胞壁の大部分(50%超)が破壊される。
【0100】
吸光度分光光度計102の送信機112は、光などの媒体116を試料ベッセル12を通して溶解血液試料52中に送信するために起動される。受信機114は、溶解血液試料52および試料ベッセル12から退出する媒体116の少なくとも一部を受信することがある。受信機114は、例えば、媒体116の受信により電気信号を生成するための1つまたはそれ以上のフォトダイオードを含むことがある。
【0101】
分析器100、または1つまたはそれ以上のプロセッサ140は、吸光度分光光度計102の受信機114によって受信された光を示す信号に少なくとも一部基づいて、溶解血液試料52中に存在する1つまたはそれ以上の分析物を決定することがある。分析器100、または1つもしくはそれ以上のコンピュータプロセッサは、以下のものの1つまたはそれ以上など、ヘモグロビン形態のスペクトルプロファイル係数をさらに分析することがある:カルボキシヘモグロビン(COHB)、オキシヘモグロビン(O2HB)、メトヘモグロビン(METHB)、デオキシヘモグロビン(HHB)、新生児ビリルビン(NBILI)、シアンメトヘモグロビン(CN_MET_B)、スルフヘモグロビン(SULF_HIGH)、メチレンブルー色素(METH_BLUE_A)。
【0102】
分析器100、または1つもしくはそれ以上のプロセッサ140は、総ヘモグロビン(THB)および/または以下のようなヘモグロビン画分の1つもしくはそれ以上を測定することがある:オキシヘモグロビン(O2HB)、メトヘモグロビン(METHB)、デオキシヘモグロビン(HHB)、カルボキシヘモグロビン(COHB)。
【0103】
分析器100、または1つもしくはそれ以上のプロセッサ140は、分析の結果を出力することがある。出力は、1つまたはそれ以上のディスプレイ上に示される。出力は、患者の治療を決定するために使用される。
【0104】
終わりに
従来、血液分析は、患者のポイントオブケアでは利用可能でなかった、または時間および費用がかかるものであった。本開示によれば、患者のポイントオブケアにおいて所望の結果取得時間内で血液試料の測定パラメータの正確さおよび精度を改善し、より容易に製造され、より低コストである溶解デバイス10が開示され、ここで、溶解デバイス10は、分析器100と協働するように構成される。溶解デバイス10は、1つまたはそれ以上の特定の励起周波数または周波数範囲で駆動される単一の圧電素子によってベッセル内で生成される超音波音響波、圧力、流体運動、および/またはせん断力を用いて試料ベッセル内の赤血球を溶解するように構成される。単一の圧電素子によって生成される音波に関する最適な周波数は、圧電、試料ベッセル、血液試料、ならびに/または溶解デバイス10および/もしくは分析器100の周辺部材の自然共振周波数を含むまたは除外することがある。
【0105】
上記の記載は、例示および説明を提供するが、網羅的であること、または開示された正確な形態に発明の概念を限定することを意図するものではない。修正形態および変更形態は、上記の教示に照らして可能であり、または本開示に記載された方法論の実践から得られる。
【0106】
構成および工程の特定の組合せが特許請求の範囲に記載され、かつ/または明細書に開示されているが、これらの組合せは本開示を限定することを意図されていない。実際、これらの構成および工程の多くは、特許請求の範囲に特に記載されていない、および/または明細書に開示されていない方法で組み合わされることがある。以下に列挙する各従属請求項は、他の1つの請求項のみに直接従属することがあるが、本開示は、請求項セット内の他のすべての請求項と組み合わせて各従属請求項を含む。
【0107】
本出願で使用される要素、作用、または命令は、好ましい実施形態の範囲外に明示的に記載されていない限り、本発明にとって重要または不可欠であると解釈されるべきではない。さらに、「に基づく」という語句は、特に明記しない限り、「に少なくとも一部基づく」を意味することを意図されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解デバイスであって、
内部に形成されたマイクロチャネルを有する試料ベッセルであって、表面を通ってマイクロチャネルに延びる少なくとも1つのポートを有する試料ベッセルと、
試料ベッセルの表面に取り付けられた少なくとも1つの圧電素子と、
論理を有するコントローラとを含み、該論理により該コントローラは、一連の周波数を含む第1の信号を少なくとも1つの圧電素子に放出して少なくとも1つの圧電素子に試料ベッセル内で超音波音響定在波を生成させ、少なくとも1つの圧電素子によって検出された試料ベッセルからの測定された振動信号を示す第2の信号を受信し、測定された振動信号を使用して試料ベッセルの共振周波数を決定する、前記溶解デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの圧電素子は、試料ベッセルに超音波音響定在波を生成し、振動信号を測定するように構成された単一の圧電トランスデューサである、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項3】
マイクロチャネルは血液試料を含む、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの圧電素子は、圧電センサとは別個の圧電トランスデューサを含み、該圧電トランスデューサおよび圧電センサの少なくとも一方は、試料ベッセルに対してばね荷重されるように構成される、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項5】
圧電トランスデューサは、試料ベッセルの表面に接合され、圧電センサは、外部にあり、試料ベッセルとは別個である、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項6】
圧電トランスデューサは、試料ベッセルの表面に接合され、圧電センサは、試料ベッセルの表面に対してばね荷重されている、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項7】
圧電トランスデューサおよび圧電センサは、試料ベッセルの外面と嵌合係合する、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項8】
圧電トランスデューサは試料ベッセルの外面に嵌合係合し、圧電センサは、分離されており、試料ベッセルの外部にある、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項9】
超音波音響定在波は、圧電トランスデューサによって生成され、圧電センサは、試料ベッセルからの振動信号を測定する、請求項4に記載の溶解デバイス。
【請求項10】
コントローラは、プロセッサに接続された非一時的なメモリを有し、該非一時的なメモリは論理を記憶し、該論理は、プロセッサによって実行されるときに、該プロセッサに、
第1の信号で少なくとも1つの圧電素子を駆動して、第1の持続時間にわたって第1の周波数掃引で超音波音響定在波を生成させること、
少なくとも1つの圧電素子を調節して、第1の信号の提供を停止すること、
少なくとも1つの圧電素子から、測定された振動信号を示す第2の信号を受信すること、
第1の信号と第2の信号とを比較して、試料ベッセルの共振周波数を決定すること、および
決定された共振周波数に基づいて少なくとも1つの圧電素子を駆動すること、
を行わせるコンピュータ実行可能命令である、請求項1に記載の溶解デバイス。
【請求項11】
試料ベッセルはガラスで構成される、請求項10に記載の溶解デバイス。
【請求項12】
プロセッサは、ガラスの組成に基づいて推定共振周波数をさらに決定する、請求項11に記載の溶解デバイス。
【請求項13】
第1の周波数掃引は推定共振周波数を含む、請求項12に記載の溶解デバイス。
【請求項14】
分析器であって、
溶解デバイスを含み、該溶解デバイスは、
内部に形成されたマイクロチャネルを有する試料ベッセルであって、表面を通ってマイクロチャネルに延びる少なくとも1つのポートを有する試料ベッセルと、
試料ベッセルの表面に取り付けられた少なくとも1つの圧電素子と、
論理を有するコントローラとを含み、該論理により該コントローラは、一連の周波数を含む第1の信号を少なくとも1つの圧電素子に放出して少なくとも1つの圧電素子に試料ベッセル内で超音波音響定在波を生成させ、少なくとも1つの圧電素子によって検出された試料ベッセルからの測定された振動信号を示す第2の信号を受信し、測定された振動信号を使用して試料ベッセルの共振周波数を決定し、決定された共振周波数での信号で少なくとも1つの圧電素子を駆動させ、
分析器はさらに、
試料ベッセルに隣接して位置する送信機および受信機を含む吸光度分光光度計を含み、送信機は、マイクロチャネルを通して光媒体を放出するように位置し、受信機は、光媒体の一部がマイクロチャネルを通過した後に、光媒体の少なくとも一部を受信するように位置する、前記分析器。
【請求項15】
第1の信号は、少なくとも1つの圧電素子によって第1の周波数掃引で生成された超音波音響定在波を含み、第2の信号は、超音波音響定在波による試料ベッセルからの測定された振動信号を示す、請求項14に記載の分析器。
【請求項16】
圧電素子は、第1の信号を生成するように構成された第1の圧電素子と、第2の信号を測定するように構成された第2の圧電素子とを含む、請求項14に記載の分析器。
【請求項17】
コントローラは、プロセッサに接続された非一時的なメモリを有し、該非一時的なメモリは論理を有し、該論理はコンピュータ実行可能命令のセットであり、該コンピュータ実行可能命令は、プロセッサによって実行されるとき、該プロセッサに、少なくとも1つの圧電素子を駆動させて、第1の信号を生成し、第2の信号を測定する、請求項14に記載の分析器。
【請求項18】
コンピュータ実行可能命令のセットは、プロセッサに、第1の信号と第2の信号とを比較させて、共振周波数を決定し、決定された共振周波数に基づいて少なくとも1つの圧電素子を駆動する、請求項17に記載の分析器。
【請求項19】
試料ベッセルはガラスで構成され、コンピュータ実行可能命令のセットは、プロセッサに、ガラスの組成に基づいて推定共振周波数を決定させ、第1の信号は推定共振周波数にある、請求項18に記載の分析器。
【国際調査報告】