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特表2023-536755ガスの連続生成のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ガスの連続生成のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20230822BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230822BHJP
   C25B 9/30 20210101ALI20230822BHJP
   C25B 9/63 20210101ALI20230822BHJP
   C25B 9/40 20210101ALI20230822BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20230822BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20230822BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20230822BHJP
   C25B 11/042 20210101ALI20230822BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/30
C25B9/63
C25B9/40
C25B15/08 304
C25B11/052
C25B11/081
C25B11/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507989
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 IL2021050947
(87)【国際公開番号】W WO2022029777
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/060,818
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/105,599
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039514
【氏名又は名称】エイチ2プロ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】H2PRO LTD
(71)【出願人】
【識別番号】522413157
【氏名又は名称】テクニオン リサーチ アンド ディベロップメント ファウンデイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Technion Research and Development Foundation Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】グラダー,ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】ロスチャイルド,アヴナー
(72)【発明者】
【氏名】ドータン,ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ランドマン,アヴィゲイル
(72)【発明者】
【氏名】ケイ,アサフ
(72)【発明者】
【氏名】モシュコヴィッチ,モルデチャイ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA02
4K021CA05
4K021CA10
4K021CA13
4K021DB31
(57)【要約】
本発明は、ガスを連続的に生成するシステムを提供し、当該システムが、電気化学デバイスおよび活物質再生デバイスを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを生成するためのシステムであって、
-1または複数の電極アセンブリおよびレドックス活物質を含む電気化学デバイスであって、前記レドックス活物質が電極材料またはその分散液として提供される、電気化学デバイスと、
-前記電気化学デバイスの外部にあるレドックス活物質再生デバイスとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
-レドックス活物質の電極を含む1または複数の電極アセンブリを有する電気化学デバイスと、
-レドックス活物質再生デバイスとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
-レドックス活物質の分散液および少なくとも1の電極アセンブリを含む電気化学デバイスと、
-レドックス活物質再生デバイスとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスが、デバイスの動作中に、当該デバイスから当該デバイスの外部領域に酸化形態のレドックス活物質を出力するように構成されかつ動作可能な手段と、デバイスの動作中に、当該デバイスの外部領域から当該デバイス内に戻すように還元形態のレドックス活物質を入力するように構成されかつ動作可能な手段とを備え、それにより、当該デバイス内の還元形態のレドックス活物質の量が、デバイスの動作中にほぼ一定のままとされることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスが、外部閉ループシステムを備え、この外部閉ループシステムが、前記電気化学デバイスから当該デバイスの外部領域への物質の流れを許容する少なくとも1の入口と、閉ループから当該デバイス内に戻る物質の流れを許容する少なくとも1の出口と、前記入口と出口との間に位置する少なくとも1の再生デバイスとを有することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1~4の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスが、少なくとも1の入口と少なくとも1の出口とを有する外部閉ループシステムを備え、この外部閉ループシステムが、前記電気化学デバイス内のあるセグメントと、外部閉ループの長さ方向に延びる別のセグメントと有する移動電極の経路を規定し、前記外部閉ループシステムが、前記入口と出口との間に位置する少なくとも1の再生デバイスを備えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のシステムにおいて、
前記外部閉ループが、生成したガスが混合するのを防止する液体ベースのシールを備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1~4の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスが、動作中に、再生のために当該デバイスから当該デバイスの外部領域に電極を移動させるための手段を備えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記外部領域が、前記電気化学デバイスから任意の距離にあることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記活物質が、電極の表面領域上の材料膜の形態であるか、または電極材料であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスが、(i)活物質の少なくとも2の電極、または(ii)活物質の可動電極を含む電極アセンブリを備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスが活物質の2以上の電極を含む場合、任意の時点で、電極の1つが動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載のシステムにおいて、
電極を付けて、前記電気化学デバイスから前記再生デバイスに移動させるように構成されかつ動作可能な機械的システムを含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、
前記機械的システムが、移動ベルト、ロボットアーム、機械的リフトまたは変位機構の形態であるか、またはそれらを含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスが前記可動電極を含む場合、前記電気化学デバイスが、外部閉ループシステムを備え、前記電極が、前記電気化学デバイスと前記再生デバイスの両方に延びる連続ベルトとして構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、
電極活物質の一部分が酸化形態であり、他のものが還元形態であり、前記電気化学デバイス内を移動する電極の部分が酸化を受け、前記再生デバイス内を移動する部分が還元を受けることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記可動電極が、前記電気化学デバイスの媒体中に分散された活性粒子の形態であることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイス中の活性粒子の量または濃度が、実質的に一定のままとされることを特徴とするシステム。
【請求項19】
酸化形態および還元形態を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用してガスを生成するための電気化学デバイスであって、
デバイスの動作中、少なくとも1のレドックス活物質またはそれを含む媒体を当該デバイスから、外部閉ループに位置または関連する再生デバイスに出力するように構成されかつ動作可能な外部閉ループを備え、この外部閉ループがさらに、デバイスの動作中、少なくとも1のレドックス活物質またはそれを含む媒体を当該デバイス内に戻すように構成されかつ動作可能であり、それにより、当該デバイス内の還元形態の少なくとも1のレドックス活物質の量が、デバイスの動作中にほぼ一定のままとされることを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループシステムが、前記電気化学デバイスから前記再生デバイスへの物質の流れを許容する少なくとも1の入口と、閉ループからデバイス内に戻る物質の流れを許容する少なくとも1の出口とを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項19または20に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループが、前記電気化学デバイスの出口と前記再生デバイスの入口との間に配置された電解浴をさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
請求項21に記載のデバイスにおいて、
前記電解浴が、前記電気化学デバイス内の電解質媒体の温度よりも高く、前記再生デバイス内の電解質媒体の温度よりも低い温度に維持されることを特徴とするデバイス。
【請求項23】
酸化形態および還元形態を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用してガスを生成する電気化学デバイスであって、可動ベルト状電極と、この可動電極の経路を規定する外部閉ループシステムと、この外部閉ループシステムに位置または関連する再生デバイスとを備えることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項24】
酸化形態および還元形態を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用してガスを生成するための電気化学デバイスであって、活物質を持ち上げて、前記電気化学デバイスから生成デバイス内に移送するように構成されかつ動作可能な回転スクリューコンベヤを備え、前記電気化学デバイスおよび再生デバイスが、活物質の経路を規定する外部閉ループシステムを介して関連付けられ、前記再生デバイスが、前記外部閉ループシステムに一体的に配置され、または関連付けられていることを特徴とするデバイス。
【請求項25】
請求項24に記載のデバイスにおいて、
活物質を電気的に分離するようにそれぞれ構成された一対のバルブを備え、前記一対のバルブのうちの第1のバルブが、前記電気化学セルへの活物質の入口点に設けられ、前記一対のバルブのうちの第2のバルブが、前記電気化学セルからの活物質の出口点に設けられていることを特徴とするデバイス。
【請求項26】
請求項25に記載のデバイスにおいて、
前記バルブの各々が、ロータリーバルブであることを特徴とするデバイス。
【請求項27】
請求項25に記載のデバイスにおいて、
前記第1および第2のバルブが、直列に配置されていることを特徴とするデバイス。
【請求項28】
請求項23または24に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループシステムが、少なくとも1の入口と少なくとも1の出口を備え、この外部閉ループシステムが、前記電気化学デバイス内のあるセグメントと、外部閉ループの長さ方向に延びる別のセグメントと有する電極または活物質の経路を規定し、前記外部閉ループシステムが、前記入口と出口との間に位置する少なくとも1の再生デバイスを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項29】
請求項21~23の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループシステムが、当該デバイスに対する活物質の流出入を許容するように構成されかつ動作可能な少なくとも一対のバルブを介して、前記電気化学デバイスに関連付けられていることを特徴とするデバイス。
【請求項30】
請求項29に記載のデバイスにおいて、
前記少なくとも一対のバルブが、前記外部閉ループの入口および出口をそれぞれ規定する入口バルブおよび出口バルブを含み、前記電気化学デバイスの任意の2点に配置されていることを特徴とするデバイス。
【請求項31】
請求項21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループシステムが、前記電気化学デバイス内の電解質媒体を規定する条件と実質的に同一の条件下で維持される電解質溶液を含む連続的なチューブまたはパイプまたはチャネルの形態で提供されることを特徴とするデバイス。
【請求項32】
請求項21~30の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループシステムが、前記電気化学デバイス内の電解質媒体を規定する条件とは実質的に異なる条件下で維持される電解質溶液を含む連続的なチューブまたはパイプまたはチャネルの形態で提供されることを特徴とするデバイス。
【請求項33】
請求項30に記載のデバイスにおいて、
前記閉ループシステムが、閉ループ連続チャネルと一体であるか、またはそれに関連する1または複数の電解浴を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項34】
請求項21~33の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループが、前記電気化学デバイスからの流出と、前記閉ループシステムおよび再生デバイスから当該デバイス内に戻る流入の方向性のある移動を可能にするように選択された膜または選択的フィルタリングユニットを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項35】
請求項33に記載のデバイスにおいて、
前記外部閉ループが、1または2の選択的フィルタリングユニットを備え、それら選択的フィルタリングユニットの1つが、当該デバイスから前記外部閉ループおよび前記再生デバイスへの酸化された活物質の方向性のある流れを許容するように配置されかつ動作可能であり、第2の選択的フィルタリングユニットが、前記再生デバイスから前記電気化学デバイス内への再生された活物質の方向性のある流れを許容するように配置されかつ動作可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項36】
請求項35に記載のデバイスにおいて、
前記選択的フィルタリングユニットが、イオン選択膜または双極膜であることを特徴とするデバイス。
【請求項37】
請求項21~36の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
少なくとも1の電極アセンブリを含み、かつ水性(電解質)溶液を保持するように構成されたコンパートメント/容器の形態の少なくとも1の電気化学セルを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項38】
請求項37に記載のデバイスにおいて、
カソード電極上で水素ガスを発生させるように構成されかつ動作可能であり、アノード電極上でレドックス活物質の酸化が起こることを特徴とするデバイス。
【請求項39】
請求項38に記載のデバイスにおいて、
前記カソードが、金属または金属合金であるか、またはそれらを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項40】
請求項39に記載のデバイスにおいて、
前記カソードが、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ラネーニッケルまたはそれらの組合せであるか、またはそれらを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項41】
請求項38に記載のデバイスにおいて、
前記アノードが、金属および/または金属酸化物および/または金属水酸化物および/または活物質で被覆された導電性炭素またはポリマーであるか、またはそれらを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項42】
請求項41に記載のデバイスにおいて、
前記アノードが、ニッケル、マンガンまたは鉄であるか、またはそれらを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項43】
請求項42に記載のデバイスにおいて、
前記アノードが、水酸化ニッケルであるか、または水酸化ニッケルを含むことを特徴とするデバイス。
【請求項44】
請求項21~43の何れか一項に記載のデバイスを含むシステム。
【請求項45】
請求項44に記載のシステムにおいて、
双極方式で関連付けられた複数のデバイスを含むことを特徴とするシステム。
【請求項46】
請求項1または45に記載のシステムにおいて、
前記電気化学デバイスまたは/および再生デバイスの各々または当該システムに物理的または遠隔的に接続された制御ユニットをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項47】
電気化学デバイス内で水素ガスおよび任意に酸素ガスを生成する連続的なプロセスであって、
前記電気化学デバイスが、電極アセンブリおよびレドックス活物質を含み、当該プロセスが、
-前記電気化学セル内で水素ガスと酸化されたレドックス活物質とを連続的に生成するステップと、
-水素ガスの生成が継続している間、酸化されたレドックス活物質を前記電気化学セルの外部の領域に流すかまたは移送するステップであって、前記領域がレドックス活物質を再生するための手段を含む、ステップと、
-レドックス活物質を生成し、酸素ガスを生成するステップと、
-還元形態のレドックス活物質を流して前記電気化学セル内に戻すステップと、
-レドックス活物質を再生しながら、水素ガスを同時に生成するために、それらステップを1または複数回繰り返すステップとを備えることを特徴とするプロセス。
【請求項48】
請求項47に記載のプロセスにおいて、
水素ガスが、水酸化物イオンの生成をもたらす印加バイアスの存在下で、カソード電極上に電気化学ステップで生成されることを特徴とするプロセス。
【請求項49】
請求項47に記載のプロセスにおいて、
酸化されたレドックス活物質が、水酸化物イオンの存在下で還元形態のレドックス活物質の酸化によって生成されることを特徴とするプロセス。
【請求項50】
請求項47に記載のプロセスにおいて、
酸素ガスが、前記再生デバイスにおいて、バイアスが存在しない状態で、自然発生的な化学ステップで生成されることを特徴とするプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを連続的に生成するための電気化学セルおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスと酸素ガスを交互に製造することができる電気化学熱活性化化学セル(E-TAC)およびそのような電気化学セルを複数含むシステムが開発されている[特許文献1、2]。この技術によれば、水素ガスは、任意選択的には水の還元により、アノード電極を帯電させながら、カソード電極上に電気化学ステップで生成される一方、酸素ガスはアノードの再生中に自然発生的な化学ステップで生成される。ある水素製造ステップから別のステップに移行する際には、電源が切られ、アノードの再生中に酸素ガスが生成される。複数の電気化学セルを含むシステムでは、あるセルの運転を停止しているときに、別のセルの運転を継続することができ、それにより水素ガスと酸素ガスの連続生産が可能となっている。しかしながら、各セルは、バッチスイングモードで動作し、あるステップでH、次のステップでOを生成する。そのため、そのようなシステムは、HやOの生成における本質的な変動に悩まされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許出願公開 WO2016/079746
【特許文献2】国際特許出願公開 WO2019/180717
【発明の概要】
【0004】
本発明は、レドックス活物質を利用するとともに、特にデバイス全体にわたって異なる酸化状態のレドックス活物質の酸化還元および移動を制御することによって、水素ガスおよび/または酸素ガスの連続的な生成を可能にするように構成された電気化学デバイスの開発に基づくものである。
【0005】
本発明のシステムは、システムの連続運転を中断することなく、電極、アノードまたはカソードを再生することを可能にする。これは、2つのアクティブなセクションまたはデバイスを含むシステムを提供することによって達成され、1つのセクションまたはデバイスが、電極活物質(例えば、流れるレドックス活物質の形態)または少なくとも1のカソードおよび/または少なくとも1のアノードを含む電極アセンブリ、または移動する電極アセンブリを備える電気化学デバイスであり、第2のセクションまたはデバイスが、第1のセクションの外側または外部にあり、規定されるように電極活物質の酸化還元状態を再生する再生デバイスとして機能する。これらの2つのセクションは動作上区別されるが、典型的には同時に動作可能であり、任意の時点において、分散液または懸濁液の形態で、あるいは電極の一部として、電極活物質の少なくとも一部分または一部が、電気化学デバイスから再生セクションに移送され、運搬され又は流され、その間、デバイスの動作は継続される。
【0006】
レドックス活物質または活物質は、異なる条件、例えば異なる温度および/または異なる電気的バイアス下で、可逆的な酸化還元を受ける能力を有する物質である。活物質は、電極材料としてデバイスに提供することができ、その場合、活物質は、電極、例えば、アノードが作られる材料、または電極表面の領域を被覆する材料であり、または電解質水性媒体中の活物質の懸濁液若しくは分散液としてデバイスに提供することができる。代替的には、活物質は、流れるカプセルの形態で提供するようにしても、あるいはポリマー粒子などの導電性ポリマー担体または金属担体に含有されるようにしてもよい。レドックス活物質は、還元形態(酸化前)または酸化形態であってもよいし、任意の中間状態(例えば、部分的に酸化された状態、部分的に還元された状態)であってもよい。還元形態または部分的に還元された形態にあるとき、レドックス活物質は、酸化を受けて、酸化形態または部分的に酸化された形態に戻る(またはそのような形態を生成する)ことができ、その逆もまた同様である。
【0007】
本発明のシステムでは、活物質の再生を可能にするために、電気化学デバイスの各々が電極アセンブリを含み、活物質が以下の2つの選択可能な形態で提供される。
(i)電極アセンブリは、(a)少なくとも1のカソード電極および少なくとも1のアノード電極を含むか、または(b)移動電極を含み、活物質が、電極材料として、すなわち、1または複数の電極上の活性フィルムの形態で提供される。
(ii)活物質は、セル媒体中に分散された活性粒子として提供され、電極アセンブリは、少なくとも1のカソード電極または少なくとも1のアノード電極および少なくとも1の不活性電極を含むか、またはカプセルの形態で提供されるか、または金属または導電性ポリマー担体(複数のそのようなカプセルまたは担体)内に封入される。
【0008】
活性粒子として提供される場合、粒子は、電極活物質の粒子である。典型的には、活性粒子は、ナノメートルからミリメートルの範囲のサイズであり得る。いくつかの実施形態では、粒子が、より大きなサイズおよび様々な形状の材料塊として提供される。いくつかの実施形態では、活物質が、金属または導電性カプセル(例えば、繊維材料の形態)内にカプセル化されて提供され、それによって、電解質材料がカプセルを通って流れるのを許容する一方で、摩擦および摩耗から活物質を保護する。
【0009】
何れの構成においても、活物質またはカプセル化された活物質は、再生のために再生デバイスに移動または流動または移送され、その後、電気化学デバイス内に戻るまたは還流するように移動または誘導される。活物質またはカプセルを1つのデバイスから他のデバイスに移動させるためにスクリューコンベヤを利用する実施形態では、流量が、少なくとも部分的に、スクリューが作動される回転速度に依存することとなり、それが速く回転するほど、活物質またはカプセルは速く、ある容器から持ち上げられて次の容器内に投入される。ポンプを使用する実施形態では、流量がポンプの動作パラメータに依存することとなる。
【0010】
したがって、最も一般的に言えば、本発明は、ガスを連続的に生成するシステムであって、電気化学デバイスおよび活物質再生デバイスという2つの別個の容器を備え、それぞれの容器が機能を提供するように装備された、システムを提供する。2つの容器は、互いに外側にあるが、本発明のシステム内で一体的に関連付けられている。
【0011】
第1の態様では、ガスを連続的に生成するためのシステムが提供され、このシステムが、
-1または複数の電極アセンブリおよびレドックス活物質を含む電気化学デバイスであって、レドックス活物質が電極材料またはその分散液として提供される、電気化学デバイスと、
-電気化学デバイスの外部にある(電気化学デバイスのセットアップ内に含まれていない)レドックス活物質再生デバイスとを備える(すなわち、活物質の再生が電気化学デバイス内で生じない)。
【0012】
電気化学デバイスは、ガスを生成するように配置および構成されたリアクタまたは複数のリアクタである。電気化学熱活性化化学セル(E-TAC)において、水素ガスは、レドックス活性アノード電極または活物質の帯電中に、カソード電極上に電気化学ステップで生成され、一方、酸素ガスは、別個の容器またはコンテナまたはデバイス、すなわち再生デバイスにおいてアノードまたは活物質の再生中に生成される。本明細書に記載の再生デバイスは、レドックス活物質の再生を可能にする温度で一定量の電解質溶液を保持するように構成される。再生中に発生したガスは、回収および保存することができる。このため、再生デバイスは、形成されたガスを回収するためのガス出口を備えることができる。
【0013】
本発明はさらに、ガスを連続的に生成するためのシステムを提供し、このシステムが、
-1または複数の電極を含む電気化学デバイスと、
-電荷再生のために提供されるか、または再生を受けたレドックス活物質を含むレドックス活物質再生デバイスとを含み、レドックス活物質が電極材料またはその分散液として提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、ガスを生成するためのシステムが、
-レドックス活物質の電極を含む1または複数の電極アセンブリを含む電気化学デバイスと、
-レドックス活物質再生デバイスとを備える。
【0015】
他の実施形態では、ガスを生成するためのシステムが、
-レドックス活物質の分散液および少なくとも1の電極アセンブリを含む電気化学デバイスと、
-レドックス活物質再生デバイスとを備える。
【0016】
本発明はさらに、酸化形態および還元形態を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用することによってガスを生成するための電気化学デバイスを提供し、このデバイスは、デバイスの動作中に、電気化学デバイスからデバイスの外部領域に酸化形態の少なくとも1のレドックス活物質またはそれを含む媒体を出力するように構成されかつ動作可能であり、かつデバイスの動作中に、電気化学デバイスの外部領域から電気化学デバイス内に戻すように還元形態の少なくとも1のレドックス活物質またはそれを含む媒体を入力するように構成されかつ動作可能であり、それにより、電気化学デバイス中の還元形態の少なくとも1のレドックス活物質の量がデバイスの動作中に実質的に一定のままとされるか、または電気化学デバイス中の還元形態の少なくとも1のレドックス活物質の量が連続的かつ適切な動作を可能にするのに有効である。
【0017】
本明細書において、本発明のシステムおよびプロセスは、「ガスの連続的な生成」を可能にする。これは、水素ガスと酸素ガスの両方が、システムの動作を停止することなく生成され得ることを意味する。水素ガスは、アノードが帯電する間、カソード上に電気化学デバイス内で生成され得るが、アノードの再生により、本明細書にさらに開示されるように、再生デバイスで酸素ガスが生成される。単一のセル内で両方のガスを生成するリスクが取り除かれ、よって、ガスの同時生成が可能になる。水素ガスの生成と酸素ガスの生成とを分離するために2つのデバイスが利用されるという事実にもかかわらず、電気化学デバイスは、水素ガスの効果的、連続的かつ適切な生成を可能にするのに十分な量のレドックス活物質の還元形態を常に含む。同様に、再生デバイスは、酸素の効果的、連続的かつ適切な生成を可能にするのに十分な長さの滞留時間を有する一定量の酸化されたレドックス活物質を常に含む。各デバイス中のこのレドックス活物質の量は、電極材料のタイプ、活物質の組成、リアクタの容積、それぞれの容器内の溶媒の量、望ましいガス生成速度、およびそれぞれの容器内の滞留時間によって調節される。ガス生成システムは、システム全体の活物質の流量が一定である定常状態で運転される。すなわち、活物質やそれを含むカプセルは、どのセクションにも蓄積しない。このため、この量は、「デバイスの効果的、連続的かつ適切な動作を可能にするのに十分」であるか、または「ガスの効果的、連続的かつ適切な生成を可能にするのに十分」な量である。
【0018】
レドックス活物質の量に言及する場合の「実質的に一定」という用語は、動作中、任意の時点において、一方または両方のデバイスにおける物質の量が同じままであるか、または±10wt%以内にあることを意味する。換言すれば、活物質は、一方の容器に蓄積せず、よって他方の容器で枯渇することはない。
【0019】
いくつかの実施形態では、電気化学デバイスが、電気化学デバイスからデバイスの外部領域への物質の流れを許容する少なくとも1の入口と、閉ループからデバイス内に戻る物質の流れを許容する少なくとも1の出口と、入口と出口との間に位置する少なくとも1の再生デバイスとを有する外部閉ループシステムを備える。
【0020】
いくつかの実施形態では、電気化学デバイスが、少なくとも1の入口および少なくとも1の出口を有する外部閉ループシステムを備え、この外部閉ループシステムが、電気化学デバイス内のあるセグメントと、外部閉ループの長さ方向に延びる別のセグメントと有する移動電極の経路を規定し、外部閉ループシステムは、入口と出口との間に位置する少なくとも1の再生デバイスを備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、電気化学デバイスが、動作中に、再生のために、デバイスからデバイスの外部領域に電極を取り除くための手段またはツールを備える。そのような実施形態では、外部領域が、電気化学デバイスから任意の距離にあることができ、それと関連性を有する必要はない。
【0022】
いくつかの実施形態では、活物質が、電極の表面領域上の材料膜の形態であるか、または電極材料そのものであってもよい。そのような構成では、デバイスが、(i)活物質の少なくとも2つの電極、または(ii)活物質の可動電極を含む電極アセンブリを備える。デバイスが、(i)活物質の2以上の電極を含む場合、任意の時点において、電極の1つがプロセスにおいて動作可能であり、一方、活物質の別の電極は、例えば、電極がアノードの場合には酸化形態にあり、電極がカソードの場合には還元形態にあり、電気化学デバイスから分離および除去されて再生され得る。その後、再生された電極がデバイスに戻され、別の電極が電気化学デバイスから取り出されて再生されるようにしてもよい。
【0023】
そのような電極のデバイスからの取り出しおよびデバイスへの再導入を可能にするために、電気化学デバイスは、上述したように、デバイスから電極を取り出すための手段またはツールを備えることができる。この手段またはツールは、電極を付けて、電気化学デバイスから再生デバイスに移動させ、かつ電気化学デバイス内に戻すように構成されかつ動作可能な機械的システムの形態で提供される。機械的システムは、移動ベルト、ロボットアーム、機械的リフト、回転スクリューコンベヤ、または当技術分野で知られている任意のそのような変位機構の形態であってもよい(またはそのような変位機構を備えることができる)。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明のシステムがロボットアームを備え、このロボットアームが、電極、すなわちアノードを電気化学デバイスまたはセルに出し入れするように構成されている。
【0025】
システムが活物質の可動電極を備える場合、デバイスが外部閉ループシステムを備え、電極が、電気化学デバイスと再生デバイスの両方に延びる連続ベルトとして構成される。デバイスの動作中の任意の時点において、電極活物質の一部分が酸化形態であり、他が還元形態であり、電気化学デバイスを通って移動する部分が酸化を受け(よって再生を必要とし)、再生デバイスを通る他の部分が、還元を受け、電気化学デバイス内に戻されることができる。
【0026】
代替例では、活物質が、電気化学デバイスの液体媒体中に分散または浸漬された活性粒子として、または活物質を含むカプセルまたは金属担体として提供される。そのような場合、デバイスが外部閉ループシステムを備え、このループシステムを介して活物質が、液体媒体とともに、または液体媒体無しで、移動または流動する。電気化学デバイス内の活物質の量は、電気化学デバイスの連続的かつ中断されない動作の間、有効かつ実質的に一定のままである。酸化を受けた活物質は、セルから流出して、再生デバイスを通り、そこで再生を受け、その後、電気化学デバイス内の活物質の量または濃度を実質的に一定に維持する流量または濃度で、電気化学デバイス内に再び流入する。
【0027】
ある実施形態では、活物質がカプセル内に提供される場合、流量が、ロータリーバルブの回転速度によって決定され、この回転バルブによって、カプセルが水素生成セクションに強制的に流出入する。ロータリーバルブは、本明細書でさらに詳述するように、電気化学セクション内のカプセルを外部のカプセルから電気的に分離して、カプセルの帯電を電気化学セクションに閉じ込める役割も果たす。
【0028】
以下にさらに説明するように、セル間を移動する帯電物質は、電気化学セル境界の外側でさらに帯電することを防ぐために、電気的に分離する必要がある。そのような電荷の分離を確実にするために、カプセル化された電極が、カプセル材料を電気的に分離する特別なバルブのセット、例えばロータリーバルブを通過するように構成されるようにしてもよい。図6Fには、1つのロータリーバルブが入口に、第2のロータリーバルブが電極出口に配置された例示的な実施形態が示されている。各電気化学セルは、任意選択的には、本明細書に開示するように、それぞれが活物質を分離するように構成された一対のバルブを備え、それらのうちの第1のバルブが、電気化学セルへの入口に配置され、第2のバルブが、前記セルからの出口点、例えば、閉ループシステムに入る前に設けられている。
【0029】
いくつかの実施形態では、バルブはそれぞれロータリーバルブである。各セルのバルブは、直列に、例えば、順々に配置されている。
【0030】
代替的には、一定量のカプセルのみの通過を可能にする傾斜レバーまたは分離ゲートバルブを利用することができる。
【0031】
このため、本発明はさらに、酸化形態および還元形態を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用してガスを生成するための電気化学デバイス(またはそれを含むシステム)を提供し、このデバイスは、デバイスの動作中、少なくとも1のレドックス活物質を電気化学デバイスから外部閉ループに位置または関連する再生デバイスに出力するように構成されかつ動作可能な外部閉ループを備え、この外部閉ループがさらに、デバイスの動作中、少なくとも1のレドックス活物質をデバイス内に戻すようにように構成されかつ動作可能であり、それにより、デバイス内の還元形態の少なくとも1のレドックス活物質の量がデバイスの動作中にほぼ一定のままとされるか、またはその量が連続的なデバイス動作を可能にするのに実質的に有効な量に維持される。
【0032】
いくつかの実施形態では、外部閉ループシステムが、電気化学デバイスから再生デバイスへの物質の流れを許容する少なくとも1の入口と、閉ループからデバイス内に戻る物質の流れを許容する少なくとも1の出口とを備える。
【0033】
また、酸化形態(または電荷を引き付けることができる形態)および還元形態(または電荷を引き付けることができない形態)を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用してガスを生成するための電気化学デバイス(またはそれを含むシステム)が提供され、このデバイスが、可動ベルト状電極と、可動電極の経路を規定する外部閉ループシステムと、外部閉ループシステムに一体的に位置または関連する再生デバイスとを備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、外部閉ループシステムが、少なくとも1の入口および少なくとも1の出口を備え、外部閉ループシステムが、電気化学デバイス内のあるセグメントと、外部閉ループの長さ方向に延びるその別のセグメントとを有する移動電極の経路を規定し、外部閉ループシステムが、入口と出口との間に配置された少なくとも1の再生デバイスを備える。
【0035】
外部閉ループシステムは、活物質の流れまたはベルト電極の電気化学デバイスへの出入りを可能にするように動作可能な少なくとも1対のバルブ(入口バルブおよび出口バルブ)を介して、電気化学デバイスに関連付けられている。外部閉ループの入口および出口を規定する入口バルブおよび出口バルブは、電気化学デバイス上の任意の2点に配置することができる。外部ループのサイズおよび形状は、特に、活物質の形態、例えば、可動電極上に設けられているか否か、または分散液として設けられているか否か、またはカプセルまたは金属担体に含有または封入されているか否か、電気化学デバイス(リアクタ)の容積、活物質の酸化速度、および他の変数に依存する。
【0036】
外部閉ループシステムは、リアクタ内の電解質媒体を規定する条件と実質的に同一の条件(例えば、温度、圧力および組成)下に維持される電解質溶液を含むまたは保持するように構成された連続チューブまたはパイプまたはチャネルの形態で提供される。閉ループシステムは、閉ループチャネルと一体的な部分である、または閉ループチャネルに関連付けられた1または複数の再生デバイスに関連付けられるように、または再生デバイスを備えるようにさらに構成されている。再生デバイスが外部の閉ループチャネルと関連付けられる位置、サイズおよび方法に関係なく、再生デバイスは、活物質(分散物質の形態またはベルト電極の形態)が再生デバイスを通って流れまたは移動し、プロセスにおいて再生を受けるように配置されている。温度、圧力および電解質を含む、再生デバイスで使用される条件は、閉ループチャネルで使用される条件と異なる場合がある。
【0037】
外部閉ループは、電気化学デバイスからの流出および閉ループシステムおよび再生デバイスからデバイス内への流入の方向性のある移動を可能にするように選択された選択的フィルタリングユニットを備えることができる。このため、外部閉ループは、1または2のそのような選択的ユニットを備えることができ、そのうちの1つは、デバイスから外部閉ループおよび再生デバイスへの酸化された活物質の方向性のある流れを可能にするように配置されかつ動作可能であり、第2の選択的ユニットは、再生デバイスから電気化学デバイスへの再生された活物質の方向性のある流れを可能にするように配置されかつ動作可能である。
【0038】
外部閉ループシステムは、代替的には、可動ベルトに加えて、特にレドックス活物質の温度を上昇または低下させることを目的とする少なくとも1の電解浴を収容するように構成されるようにしてもよい。例示的な構成では、システムが、電気化学デバイスおよび再生デバイスを備えることができ、両者が2つの外部閉ループシステムを介して接続され、その一方が、電気化学デバイスの出口から再生デバイスの入口に延び、他方が、再生デバイスの出口から電気化学デバイスの入口に延びている。このため、2つの外部閉ループシステムの各々は、レドックス活物質を一方のデバイスから他方に、任意選択的には電解浴に移動させる手段(例えば、本明細書に開示のベルトまたは回転スクリューコンベヤ)を備えることができる。電解浴の各々は、レドックス活物質をそこから再生デバイスまたは電気化学デバイスの何れかに移動させるための手段をさらに含むことができる。このため、本明細書に詳述するように、本発明のシステムは、電気化学デバイス、再生デバイス、1または2の電解浴、および一方または両方のデバイスから他方にレドックス活物質を移動させるための複数の機械的要素、例えば、ベルトまたは回転スクリューコンベヤを備えることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、外部閉ループを介して1つのデバイスから他のデバイスにレドックス活物質を運搬または移動または移送するための機械的要素が、本明細書にさらに開示されるように、ベルトまたは回転スクリューコンベヤの形態であってよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、外部閉ループを介して1つのデバイスから他のデバイスにレドックス活物質を搬送または移動または移送するための機械的要素が、生成したガスが混合するのを防止する水シールを含むことができる。
【0041】
さらに、酸化形態(または電荷を引き寄せることができる形態)および還元形態(または電荷を引き寄せることができない形態)を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用してガスを生成するための電気化学デバイス(またはそれを含むシステム)が提供され、このデバイスが、回転スクリューコンベヤと、回転スクリューコンベヤの経路を定める外部閉ループシステムとを備え、コンベヤが、デバイスから外部閉ループシステムに位置または関連するデバイスに少なくとも1のレドックス活物質を移送するように適合されている。
【0042】
また、酸化形態および還元形態を有する少なくとも1のレドックス活物質を利用してガスを生成するための電気化学デバイスが提供され、このデバイスが、活物質を持ち上げて、電気化学デバイスから生成デバイス内に移送するように構成されかつ動作可能な回転スクリューコンベヤを備え、電気化学デバイスおよび再生デバイスが、活物質の経路を規定する外部閉ループシステムを介して関連付けられ、再生デバイスが、外部閉ループシステムに一体的に配置され、または関連付けられている。
【0043】
回転スクリューコンベヤは、電気化学デバイスの表面に対して垂直に、または斜めに配置することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、外部閉ループデバイスに位置および関連するデバイスが、再生デバイスである。
【0045】
いくつかの実施形態では、回転スクリューコンベヤを収容する外部閉ループが、回転スクリューコンベヤの外部端部(すなわち、電気化学デバイスのコンベヤの端部)と再生デバイスの入口との間に配置された電解浴をさらに含むことができる。電解浴は、典型的には、電気化学デバイス内の媒体の温度よりも高いが、再生デバイス内の媒体の温度よりも低い温度で維持される(すなわち、中間温度を有する)。
【0046】
このため、いくつかの実施形態では、外部閉ループシステムが、電気化学デバイスからレドックス活物質を運び出すように構成された回転スクリューコンベヤと、少なくとも1の電解浴とを備える。電解浴から再生デバイスへの少なくとも1のレドックス活物質の移送を可能にするために、電解浴は、更なる回転スクリューコンベヤを備えることができ、その近位端が電解浴に関連付けられ、その上部出口が電解質レベルの上にあり、再生デバイスに関連付けられている。同様に、再生デバイスも、回転スクリューコンベヤを備えることができ、その下端が再生デバイスに関連付けられ、その上端が更なる電解浴に関連付けられ、ここでは、再生デバイス内の温度よりも低いが、電気化学デバイス内の温度よりも高い温度を維持する。更なる電解浴は、少なくとも1のレドックス活物質を電気化学デバイス内に戻すためにさらに追加的な回転スクリューコンベヤを収容する外部閉ループシステムを介して、電気化学デバイスに関連付けられることができる。
【0047】
電極アセンブリの何れの電極も、本発明のシステムおよび方法にしたがって再生を受けることができる。
【0048】
本発明に係る例示的な電気化学デバイスにおいて、デバイスは、少なくとも1の電極アセンブリを含み(各電極アセンブリが、カソード電極およびアノード電極を含む)、水性(電解質)溶液を保持するように構成されたコンパートメント/容器の形態の少なくとも1の電気化学セルを備える。デバイスの動作中(すなわち、電気的バイアスの印加中)、水素などのガスがカソード電極上で発生し、一方、レドックス活物質の酸化がアノード電極上で起こる。このため、いくつかの実施態様では、カソードが、水素発生触媒であるか、または水素発生触媒を含む。カソードは、当技術分野で使用される金属および電極材料から選択された材料で形成することができる。いくつかの実施態様では、カソードが、金属または金属合金であるか、または金属または金属合金を含む。他の実施形態では、カソードが、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ラネーニッケルおよびそれらの組合せであるか、またはそれらを含む。電極が金属合金であるか、または金属合金を含む場合、その材料は、ニッケル-コバルト、ニッケル-モリブデン、ニッケル-マンガンなどから選択され得る。代替的には、電極は、導電性炭素または金属複合材料からなるものであってもよい。
【0049】
一方、アノードは、レドックス活物質の酸化を可能にするように、すなわち、酸化物質の生成を可能にするように構成される。いくつかの実施形態によれば、アノードは、活物質でコーティングされた、金属および/または金属酸化物および/または金属水酸化物および/または導電性炭素またはポリマーであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、アノードが、ニッケル、コバルト、マンガンまたは鉄であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、アノードが、様々な含有量の添加物を含むまたは含まない水酸化ニッケルであるか、またはそれを含む。
【0050】
酸化された物質は、本明細書で詳述するように、電気化学デバイスから再生デバイスに移送され、そこで、酸素ガスの発生をもたらす自然発生的な(バイアスが印加されていない)還元を受けることができる。したがって、そのような場合、再生デバイスは、酸素生成デバイスとして機能し、ガス生成条件下で提供され得る。このため、いくつかの実施形態では、再生デバイスが、ガス収集デバイスと関連付けられる。
【0051】
酸素生成デバイスとして動作する再生デバイスは、電気的バイアスがない状態で、例えば、電圧なしで、または電圧または電流検出デバイスの検出限界よりも低い電圧または直流電流で動作することができる。いくつかの実施形態では、電気的バイアスがないことは、(単極構成に関して言及し、それに対応して、双極構成について上で定義したように)1.23V未満の任意のバイアス、または1.23Vまでの任意の値であるか、または実質的に同様または機能的に同等である任意の値である。
【0052】
本明細書で詳述するように、酸化物質の還元およびそれに伴う酸素ガスの生成は、高温で起こる。このため、いくつかの実施形態によれば、再生デバイスまたは酸素生成デバイスは、熱源または熱交換器を含むことができる。熱源および/または熱交換器は、再生デバイス内の温度を設定するために使用することができる。いくつかの実施形態によれば、使用される温度は、少なくとも50℃、時には少なくとも60℃、時には少なくとも70℃、時には少なくとも80℃、時には少なくとも95℃、時には少なくとも115℃、時には少なくとも135℃、時には50℃~135℃、時には60℃~135℃、または時には70℃~135℃である。
【0053】
本明細書で述べるように、レドックス活物質は、分散液の形態で提供され得る。この分散液は、典型的には、水分散液、または媒体としての水および異なる成分を含む水性分散液である。電解質溶液である水性媒体は、様々なアニオンまたは水酸化物の、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、SrおよびBaカチオンから任意選択的に選択される金属電解質を含む。いくつかの実施形態では、金属がアルカリ金属である。いくつかの実施形態では、電解質が金属水酸化物を含む。いくつかの実施形態では、金属水酸化物がNaOHまたはKOHである。いくつかの実施形態では、水溶液が炭酸塩-重炭酸塩緩衝電解質である。
【0054】
水溶液は、7を超えるpH、任意選択的には少なくとも8、任意選択的には少なくとも9、任意選択的には少なくとも10、任意選択的には少なくとも11、任意選択的には少なくとも12、任意選択的には少なくとも13、または任意選択的には14を特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、水溶液が、(7未満のpHまたは1~7のpHを有する)酸性溶液である。
【0055】
本発明のシステムは、1または複数の電気化学デバイスと、1または複数の再生デバイスとを含むことができる。いくつかの実施態様では、複数の電気化学デバイスを、1または複数の再生デバイスを備えた単一の外部閉ループと関連付けることができる。そのような場合、外部閉ループシステムは、複数の入口バルブを備えることができる。
【0056】
本発明のシステムは、電気化学デバイスおよび/または再生デバイスの各々に、またはシステム全体に物理的または遠隔的に(例えば、無線で)接続された制御ユニットをさらに備えることができる。そのような制御システムは、利用可能な電力入力または要求される水素および酸素の生成速度に応じて、帯電電流および活物質移動速度を設定するように構成される。
【0057】
本明細書で規定されるような2以上または複数のデバイスを含む本発明のシステムは、双極形態または単極形態で提供され得る。
【0058】
本発明はさらに、電気化学デバイスにおいて水素ガスおよび任意選択的には酸素ガスを製造するための連続プロセスを含み、このプロセスが、
a-電気化学セル内で水素ガスと酸化された活物質とを連続的に生成するステップと、
b-水素ガスの生成が継続している間、酸化された活物質を電気化学セルの外部の領域に流すかまたは移送するステップであって、前記領域が(還元された)活物質の再生に適している、ステップと、
c-活物質を再生し、酸素ガスを生成するステップと、
d-活物質を電気化学セル内に戻すステップと、
e-活物質を再生して酸素ガスを生成しながら、水素ガスを同時に生成するために、ステップa~dを1または複数回繰り返すステップとを備える。繰り返すステップにより、両方のガスの連続的な製造が規定される。
【0059】
いくつかの実施形態では、水素ガスが、水酸化物イオンの生成をもたらす印加バイアスの存在下で、カソード電極上に電気化学ステップで生成される。
【0060】
いくつかの実施形態では、酸化された物質が、水酸化物イオンの存在下での還元された物質の酸化によって生成される。
【0061】
いくつかの実施形態では、酸素ガスが、再生デバイスにおいて、バイアスのない状態で、自然発生的な化学ステップで(任意選択的には、還元された物質を生成するために、酸化された物質の還元と同時に温度を上昇させることによって)生成される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本明細書に開示の主題をよりよく理解し、それが実際にどのように実施されるのかを例示するために、添付の図面を参照しながら、単なる非限定的な例として実施形態を説明する。
図1図1は、いくつかの実施形態に係る電気化学熱活性化化学セルおよび再生デバイスを含むシステムの概略図である。
図2図2Aおよび図2Bは、分散レドックス活物質粒子の態様のいくつかの実施形態に係る電気化学熱活性化化学セルおよび再生デバイスを含むシステムの概略図である。
図3図3は、レドックス活物質アノードの態様のいくつかの実施形態に係る本発明のシステムの概略図である。
図4図4は、レドックス活物質アノードの態様のいくつかの実施形態に係る電気化学熱活性化化学セルおよび再生デバイスを示す、本発明のシステムの概略図である。この設計は、再生デバイス内に延びる交換可能なアノード電極を含む。
図5図5は、移動ベルトの態様のいくつかの実施形態に係る本発明のシステムの概略図である。
図6図6A図6Fは、連続分離E-TAC水分解システムのシステム設計を示している。図6Aは、システムを構成する4つのセルのうちの1つのセルを示す基本セル設計の概略図であり、図6Bは、ペレット化電極を移動させるために使用されるスクリューコンベヤ(図6AのコンパートメントBにも示されている)の概略図であり、図6Cは、充填された移動床を形成するペレット化電極の概略図であり、図6Dは、内部セル設計の細部を省略した、1つのペレットの移動を示す完全な4セルシステムの概略図であり、図6Eは、内部セル設計およびコンポーネントを示す電気化学セル(図6Dのセル1)を拡大した概略図であり、図6Fは、ペレットの電気的な分離機構を示す、Eの電気化学セルの入口/出口を拡大した概略図である。
図7図7Aおよび図7Bは、アルカリ電解における従来の双極設計(図7A)、および本発明に係る提案された4セルシステムにおける双極設計(図7B)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係る電気化学熱活性化化学セル20および再生デバイス30を含む本発明のシステム10の例示的な概略図である。このシステム10は、概して、電気化学デバイス100と、再生デバイス30が設けられた外部閉ループシステム200とにより構成されている。電気化学デバイス100は、特定の実施形態では、電気化学セル(またはリアクタ)20と、カソード電極70およびアノード電極80を含む電極アセンブリ60とを備える。電気化学デバイスには、外部閉ループチャネル(40)に対する出口24と、入口22とが設けられている。外部ループチャネル(40)は、入口32および出口34を介して、再生デバイスに接続されている。
【0064】
図2Aおよび図2Bは、本発明のシステムの更なる実施例を示している。図2Aにおいて、電気化学デバイス100は、図示のように再生デバイス200と関連付けられている。電気化学デバイスは、カソード電極700およびアノード電極800を備える。電気化学デバイスには外部閉ループシステム400が設けられ、この外部閉ループシステムが、ベルトのような形状を有するパイプシステムを集合的に形成するチャネル420、440を含む。パイプアセンブリは、チャネル420を介して、電気化学デバイスから再生デバイス(すなわち、酸素生成デバイス)への粒子の形態の酸化物質を含む水溶液520の移動と、還元物質を含む水溶液540の電気化学デバイスに戻る移動とを可能にする。
【0065】
図2Bにおいて、電気化学デバイス100および再生デバイス200は、熱交換ユニット460が設けられた外部閉ループシステムを備える。粒子の形態の酸化物質530は、電気化学デバイスから熱交換ユニットを介して再生デバイス(すなわち、酸素生成デバイス)に流される。再生デバイスからの還元物質(再生された活物質)550は、電気化学デバイス内に再び流される。
【0066】
図3を参照すると、本発明のシステムの別の実施形態が示されている。この例では、電気化学デバイス100が、カソード電極7000およびアノード電極8000を含む電極アセンブリ6000を備える。このシステムは、電気化学デバイスから再生デバイス200へのアノード8000の移動と、再生後に電気化学デバイスに戻るアノードの移動とを可能にする移送アセンブリ4000を備える。本明細書で述べたように、移送アセンブリは、アノードを付けて一方の容器から他方の容器に移動または移送することができる任意の機械的手段であってよい。代替例が図4に示されている。電気化学デバイス100は、カソード電極1700と、再生デバイス200内に延びる交換可能なアノード電極1800とを備える。交換可能なアノードは、本明細書に開示するように、適切な機構(1520、1540)、例えば、移動ベルト、ワイヤ、機械的アーム、コンベヤベルト、回転スクリューなどによって、容器100から容器200に、かつその逆に移動させることができる。
【0067】
図5は、本発明のシステムのさらに別の構成を示している。この構成では、電気化学デバイス100と再生デバイス200との間に延びる外部閉ループシステム2000は、閉ループシステムの長さ方向に延びる可動電極3000を含むように形成されている。このシステムは、別個のゾーンとして機能する容器、レセプタブルまたは他の物品の形態の水シールも含むことができ、このゾーンを通って(図示のように)可動電極が移動する。水シールは水を含み、よって活性粒子の移動を許容するが、シールの一端から他端へのガスの通過を阻止する。水シールは、本明細書に述べるように、各容器内の温度の中間点となる温度で維持され得る。
【0068】
本明細書には、別の機械的に循環させるシステムが提案されている。このシステムでは、溶液(電気化学デバイスの溶液と再生デバイスの溶液)の完全な分離を維持しながら、電極活物質を移動させる。この機械的システムは、図6に示されている。このシステムのいくつかの実施形態では、4つのセルを含み、各セルが、図6Dに示すように、2つのコンパートメントに分割されている。図6Aには、1つのセルが示されている。電解液を移動させることなく電極活物質の移動を容易にするために、活物質を電解液レベルより上に持ち上げて、あるセルから別のセルに移送する垂直スクリューコンベヤが使用されている。各セルにおいて、活物質はコンパートメントA内(図6A)に投入され、コンパートメントBは、活物質を持ち上げてセルから排出するスクリューコンベヤを含む。図6Bには代表的なスクリューコンベヤが示されている。活物質は、図6Cに示すように、スクリューコンベヤの回転速度、スクリューのピッチおよび直径によって設定される速度で、システム全体を連続的に循環する「粒子床」を形成する。
【0069】
特定の実施形態では、4つのシステムセル構成、すなわち、常温の電気化学セル、60~65℃の2つの中間温度セル、および95℃の化学反応セルが図6Dに示されている。図6Dは、システム内の活物質の動きを示している。電気化学セル(図6Dのセル1)は、電気コンポーネントを含む必要があるため、その設計が他のセルとは異なっている。図6Eには、セル1の詳細なスケッチが示されており、カソードと、活物質のための集電体(例えば、ニッケル)とを含み、集電体が活物質とともにアノードを形成している。カソードおよびアノードは電源に接続され、カソードとアノードとの間には導電材料からなるメッシュスクリーンが置かれ、活物質がカソードに接触してセルが短絡するのを防止している。セル1は常温(25℃前後)に保たれ、セル1のコンパートメントAに新鮮な活物質が投入される。物質は集電体に沿って移動する。物質がセル1のコンパートメントAを通って流れるとき、カソードで水素が生成される間に徐々に帯電する。セル1のコンパートメントBに運ばれた帯電した物質は、電気化学セルの境界を越えてさらに帯電するのを防ぐため、コンパートメントAの物質から電気的に分離する必要がある。これを確実にするために、電極は、コンパートメントAの物質を電気的に分離する特別なロータリーバルブを通過するように構成されることができる。図6Fに示すように、1つのロータリーバルブが入口に、2つ目が電極セクションの出口に配置されている。ロータリーバルブのセットは、活物質を含むアノードペレットの独立した経路を規定する。各経路は、カソード、集電体、および経路を通って移動する活物質を有する分離されたペレットを有することができる。電極は、図7Aおよび図7Bに示すように、双極動作を可能にするために直列に(アノードを隣接するカソードに)接続することができる。
【0070】
図6Dに戻ると、帯電した活物質は、次にコンパートメントBのコンベヤによって持ち上げられ、セル2に移され、任意選択的には約60℃に保たれる。このセル(およびセル4)は温度バッファーとして機能し、低温セルと高温セルの間の直接的な熱伝達を低下させる。また、それらセルは流体圧ロックも形成し、セル1で生成された水素が酸素生成セル(セル3)に入ること、またはその逆を防ぐ。セル2では、物質の温度がセル温度まで上昇し、その後、約95℃に保たれた高温化学リアクタであるセル3に移される。セル1では活物質が集電体に接触している間だけ帯電反応が起こり得るのに対し、セル3での放電反応は、セル内の高温に引き起こされる化学反応である。このため、それはセル3の両コンパートメントで発生し、セル4にも波及する可能性がある。しかしながら、化学反応速度は時間や温度とともに減少する。この挙動を利用して、ペレットがセル4に入るまでにOの放出がほぼ完了するようにセル3での物質の滞留時間を制御し、さらにセル4での低温によって反応を完全に停止させることで、セル4でのO生成を防ぐことができる。セル2とセル4との間で熱交換が行われ、両セルが60~65℃に維持される。最後に、活物質はセル4から上部分離ロータリーバルブを介してセル1に戻される。H、Oセクションの電解質上部の圧力を等しくするために、セル1のコンパートメントA、Bのヘッドスペースが共有され、同様にセル3でも共有される。さらに、セル1のHヘッドスペースは、セル2のA部分およびセル4のB部分に接続されている。同様に、セル3のOヘッドスペースは、セル2のB部分とセル4のA部分に接続されている。HおよびOヘッドスペースの出口には背圧レギュレータが設置され、それによりすべてのコンパートメント内の圧力を等しく保つことができる。このようにして、セル2、4のコンパートメントA、Bの液体レベルは均衡が保たれる。これは、セル2、4が安全な運転のための流体圧ロックとして重要な役割を担っていることを強調している。しかしながら、セル2、4のコンパートメントA、BのヘッドスペースにはH、Oがそれぞれ含まれるため、それらガスが電解液にいくらか溶解する可能性がある。溶解したHおよびOがセル2、4に蓄積するのを防ぐために、両方のセルに触媒(例えば、Pd)を加えて、溶解したHおよびOがHOに戻る反応を促進することができる。この場合、効率が僅かに低下するが、同時に運転の安全性が向上する。
【0071】
ロボットに搭載されたガス生成システム
電気化学デバイス、電解浴および再生デバイスを含むセットアップシステムを構築した。電極、すなわちアノード電極を電気化学セルから電解浴を介して再生デバイス内に引き込むために、ロボットアームを配置した。ガスの発生が観察された。
【0072】
作用電極は、デバイス間を移動するものであった。対電極および(任意の)参照電極は固定されていた。移動する(作用)電極は、各デバイス内で予め設定された時間滞留した。
【0073】
電極を電気化学セル内に完全に配置したときに、予め設定された電流を流した。温度も同様に制御した。温度、電流および電圧を監視および記録した。
【0074】
デバイス間を作用電極が移動するのに要した時間は、数秒であった。
【0075】
システム内の電極の移動には、ロボットアームを使用した。アームの操作は、NI LabVIEW専用ソフトウェアで管理した。
【0076】
電極は、3電極セルアセンブリ(Hg/HgO参照電極、Ni金属対電極(5MのKOH電解質))において、「Ivium」ポテンショスタットを使用して常温で試験した。サイクル試験レジームは、以下のステップを含んでいた。
-休止:OCV(開回路電圧)を10秒間。
-電気化学帯電(水素生成):50mA/cmの定電流を130秒間、または0.58Vのカットオフ電圧(対Hg/HgO)。
-休止:OCV(開回路電圧)を70秒間。
-熱化学放電(酸素生成):高温(95~100℃)の電解質の入った再生容器内に電極を130秒間移動させた。
-休止:OCV(開回路電圧)を70秒間。
【0077】
電極を300ETACサイクルで試験したところ、効率的で安定した再生効果と挙動を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】