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  • 特表-改良型の直線状腓骨髄内釘 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】改良型の直線状腓骨髄内釘
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20230823BHJP
   A61B 17/68 20060101ALI20230823BHJP
   A61B 17/88 20060101ALI20230823BHJP
   A61B 17/17 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61B17/72
A61B17/68
A61B17/88
A61B17/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563156
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021027464
(87)【国際公開番号】W WO2021211829
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/010,340
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523014809
【氏名又は名称】メダティス アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】MEDARTIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】ダリル,オーストン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL08
4C160LL29
4C160LL43
(57)【要約】
安定化のための経腓骨・経脛骨連結ねじを必要としない、遠位腓骨骨折を修復するための腓骨髄内釘が提供される。該髄内釘は、折れた腓骨の近位側部分及び遠位側部分の髄内釘への固定を可能にする横行開口部を提供する。該髄内釘は、骨折部の近位側及び骨折部の遠位側において腓骨を髄内釘に留め付けるための開口部を有する。場合により、該髄内釘は安定化のために脛骨に接続される場合もある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腓骨髄内釘であって、
遠位端部と;
拡張部分と;
近位側部分と;
移行部分と、前記拡張部分は前記遠位端部から前記移行部分まで伸び、前記拡張部分は第1の横断面を有し、前記移行部分は前記拡張部分から前記近位側部分へと移行し、前記近位側部分は第2の横断面を有し、前記第2の横断面は第1の横断面よりも狭い面積を有することと;
前記拡張部分の遠位側部分において前記腓骨髄内釘を通って伸びる第1の開口部と、前記第1の開口部は、前記腓骨髄内釘を腓骨の遠位側部分に固定するようになされた第1のコネクタを受承するようになされていることと;
前記第1の開口部よりも近位側で前記拡張部分を通って伸びる第2の開口部と、前記第2の開口部は、前記腓骨の近位側部分が骨折により前記腓骨の前記遠位側部分から離れている場合に前記腓骨髄内釘を前記腓骨の前記近位側部分に固定するようになされた第2のコネクタを受承するようになされていることと
を具備する腓骨髄内釘。
【請求項2】
前記腓骨髄内釘の前記近位側部分は、前記腓骨髄内釘の前記拡張部分と同軸である、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項3】
前記拡張部分は前記拡張部分を通って伸びる第3の開口部を有し、前記第3の開口部は、前記腓骨髄内釘を患者の脛骨に接続するようになされた第3のコネクタを受承するようになされている、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項4】
前記拡張部分は5センチメートルを超える長さである、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項5】
前記拡張部分はおよそ6センチメートルの長さである、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項6】
前記拡張部分を通って伸びる第3の開口部であって、前記第3の開口部は前記腓骨髄内釘を腓骨の前記遠位側部分に固定するようになされた第3のコネクタを受承するようになされており、前記第1及び第3の開口部は埋植時に前後方向に方向付けられるようになされている、第3の開口部と;
前記拡張部分を通って伸びる第4の開口部であって、前記第4の開口部は第4のコネクタを受承するようになされ、前記第2及び第4の開口部は埋植時に外側内側方向に方向付けられるようになされている、第4の開口部と
をさらに具備する、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項7】
前記第4の開口部は、前記腓骨髄内釘を患者の脛骨に接続するようになされた第4のコネクタを受承するようになされている、請求項6に記載の腓骨髄内釘。
【請求項8】
前記第1及び第3のコネクタはねじである、請求項6に記載の腓骨髄内釘。
【請求項9】
前記第1及び前記第2の横断面は円である、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項10】
前記第4のコネクタは縫合材を含む、請求項6に記載の腓骨髄内釘。
【請求項11】
前記第1及び第2の開口部のうち一方はねじ山付きである、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項12】
近位端部及び遠位端部を有する腓骨髄内釘と;
遠位側固定ねじと;
近位側固定ねじと;
前記腓骨髄内釘を通る第1の開口部と;
前記腓骨髄内釘を通る第2の開口部と;
前記第1の開口部は前記遠位側固定ねじを受承するようになされていることと;
前記第2の開口部は前記近位側固定ねじを受承するようになされていることと;
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の開口部が骨折部の遠位側の腓骨に隣接するように、かつ前記第2の開口部が前記骨折部の近位側の腓骨に隣接するようになるように、間隔をおいて配置されることと
を具備する腓骨髄内釘システム。
【請求項13】
遠位端部に骨折部を有する腓骨を安定化する方法であって、
腓骨髄腔内に、第1及び第2の横行開口部を有する腓骨髄内釘を挿入するステップと;
前記腓骨髄腔内の腓骨髄内釘を、前記第1の横行開口部が前記骨折部の遠位側に、かつ前記第2の横行開口部が前記骨折部の近位側になるように、位置決めするステップと;
第1のコネクタを前記第1の横行開口部に挿入するステップであって、前記第1のコネクタが、前記腓骨髄内釘を、前記骨折部の遠位側の前記腓骨の第1の部分に対して回転方向かつ長手方向に固定する、ステップと;
第2のコネクタを前記第2の横行開口部に挿入するステップであって、前記第2のコネクタが、前記腓骨髄内釘を、前記骨折部の近位側の前記腓骨の第2の部分に対して回転方向かつ長手方向に固定する、ステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記第1及び前記第2のコネクタは前記腓骨に螺入される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第3のコネクタを前記腓骨髄内釘の第3の横行開口部に挿入し、かつ前記第3のコネクタが脛骨に係合することにより、腓骨髄内釘を前記脛骨に接続するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第3のコネクタは経腓骨・経脛骨連結ねじである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第3のコネクタは、前記腓骨の動きを、前記第3のコネクタの軸に沿って前記脛骨から離れる方向においてのみ防止する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のコネクタは前後方向に方向付けられる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のコネクタは外側内側方向に方向付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記腓骨髄内釘は、前記第1、第2及び第3の横行開口部が穿設された拡張遠位側部分と、近位側部分とを有し、前記拡張遠位側部分は第1の直径を有し;前記近位側部分は第2の直径を有し、前記第1の直径は第2の直径よりも大きく、前記拡張遠位側部分及び前記近位側部分は同軸である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1又は前記第2の横行開口部のうち一方はねじ山付きである、請求項13に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年4月15日に出願された米国仮特許出願第63/010,340号に基づく利益を主張するものであり、米国仮特許出願第63/010,340号の内容は全体が参照により本願に組込まれる。
【0002】
[背景]
腓骨骨折。多くの場合、腓骨骨折は腓骨の遠位端部付近に生じる。腓骨は、骨間靭帯、横脛腓靭帯、前下脛腓靭帯及び後下脛腓靭帯のような靭帯によって、遠位端部で脛骨に接続している。その結果生じる靭帯結合は、体重を支える脛骨と、様々な筋群の付着点としての役割を果たすが体重はほとんど支えていない腓骨との間に、強固であるが間接的な接続を作り上げる。靭帯結合による(syndesmodic)接続は硬直的ではなく、腓骨と脛骨との間の小さな動きを許容して足関節の可動域を広げている。腓骨骨折は多くの場合、靭帯結合を回復不能なほど損傷することはない。
【0003】
腓骨骨折は、観血的整復兼内固定術により修復されることが多い。そのためには、骨折片の直接的な整復が可能となる十分な腓骨の外科的露出が必要である。その露出域は、プレート固定に対応するために骨に沿って十分な長さに広がらなければならない。その結果生じる創部は広域となる場合があり、特に高齢患者又は糖尿病患者にとっては厄介なことになる場合も多い。
【0004】
腓骨骨折により腓骨が脛骨から転位する場合もあるので、外科的修復術には多くの場合、経腓骨・経脛骨連結ねじを用いた腓骨の脛骨への機械的固定が含まれる。別例として、スミス・アンド・ネフュー(Smith and Nephew)は、同社が「ウルトラテープ(ULTRATAPE)」縫合材と呼ぶ可撓性の縫合材を用いて腓骨を脛骨に取り付ける方法を開発した。ウルトラテープ縫合材は、脛骨と腓骨との間の微細な動きを可能とする、靭帯結合を模倣したINVISIKNOT(商標)システムの一部である。INVISIKNOTシステムは、腓骨骨折の修復に使用されるプレートと共に使用することができる。
【0005】
別例の既知の修復方法は、腓骨髄腔内への腓骨髄内釘の挿入を用いる。腓骨髄内釘は折れた腓骨を安定させるものであり、ある種の骨折パターン及びある種の患者集団にとって望ましい場合がある。腓骨髄内釘の挿入は、観血的整復兼内固定術の技法よりも生じる軟組織損傷が少ない。アキュメッド(Acumed)が販売する先行技術の腓骨髄内釘を図1に示す。図に見られるように、この髄内釘は、2本の前後方向遠位側連結ねじ及び経腓骨・経脛骨連結ねじを備えた拡張遠位端部(患者の視点で遠位側)を有している。
【0006】
多くの症例において、腓骨の骨折部は、腓骨の軸を斜めに横切って切れた平面に近くなる。折れた腓骨の近接側部分及び遠位側部分は多くの場合、斜めに走る骨折部を挟んで逆方向に摺動することになり、結果として折れた腓骨の長さは折れる前の骨よりも短くなる。この骨折部を修復するためには、腓骨を整列し直して元の長さに戻さなければならない。腓骨髄内釘が挿入されて、折れた腓骨の遠位側部分に前後方向遠位側連結ねじを用いて取り付けられる。ある先行技術のシステムでは、腓骨髄内釘を脛骨に硬直的に固定するために経腓骨・経脛骨連結ねじが挿入される。経腓骨・経脛骨連結ねじは、髄内釘を腓骨とともに確実に回転方向に固定し、腓骨の軸圧縮を防止する。別の先行技術のシステムでは、髄内釘の近接側端部に爪が設けられて、腓骨髄腔壁に係合して髄内釘を腓骨に対して軸方向かつ回転方向に固定する。
【0007】
先行技術の腓骨髄内釘は屈曲している。図1に示されるように、髄内釘の遠位側拡張部分の軸は、前方又は後方から見た場合、髄内釘のより細い近接側部分の軸に対して斜めになっている。この屈曲により、前後方向連結ねじの設置に利用可能な髄内釘の拡張部分の長さが制限されている。典型的には、髄内釘の拡張部分がおよそ4センチメートル延在した後に、テーパ状をなして髄内釘のより細い近接側端部に至る。さらに屈曲により、経腓骨・経脛骨連結ねじの方向及び位置がいずれも制限される。加えて、先行技術の腓骨髄内釘は、典型的には腓骨を脛骨に対して硬直的に固定することを必要とするが、これにより回復時に得られる可動域が制限される。
【0008】
修復される腓骨を回転及び移行しないように固定するための経腓骨・経脛骨連結ねじを要求しない、簡素な腓骨髄内釘が必要とされている。
【0009】
[発明の概要]
本発明は、修復される腓骨を脛骨に硬直的に固定することを要求しない髄内釘を用いて、遠位腓骨骨折の修復を容易にする。腓骨の遠位端部が脛骨から離れてしまった場合、本発明の態様により、靭帯結合によく似た非硬直的な、腓骨の脛骨への留め付けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】先行技術の腓骨髄内釘並びに結合された腓骨及び脛骨を示す図。
【0011】
図2】本発明の実施形態を前方から見た図。
【0012】
図3】本発明の実施形態を外側から内側に向かって見た図。
【0013】
[詳細な説明]
図1は、アキュメッド(Acumed)製の先行技術の腓骨髄内釘10を示す。図1は、髄内釘が患者に対してどのように位置付けされることになるかを示す略図である。先行技術の腓骨髄内釘10は腓骨12に挿入されている。先行技術の腓骨髄内釘10は、その遠位端部に、前後方向遠位側連結ねじ16を受承する開口部を備えた拡張部分14を有する。脛骨18は、経腓骨・経脛骨連結ねじ20により先行技術の腓骨髄内釘10に接続されている。先行技術の腓骨髄内釘10は、先行技術の腓骨髄内釘10の拡張部分14から近接側端部23へと先行技術の腓骨髄内釘10が移行するテーパ状部22を有する。図に見られるように、先行技術の腓骨髄内釘10は屈曲部24を有して、前方又は後方から見た時に先行技術の腓骨髄内釘10の近接側端部23が先行技術の腓骨髄内釘10の拡張部分14に対して斜めになるようになっている。
【0014】
図2は、本発明の実施形態を前方から見た図である。直線状腓骨髄内釘30が、典型的な腓骨骨折を表す骨折線Aを有する腓骨12の中に示されている。直線状腓骨髄内釘30の遠位端部32から順に、延長拡張部分34、延長拡張部分34の近接側端部のテーパ状部36がある。直線状腓骨髄内釘30は中実であるが、当業者は、適正な材料を選択すれば髄内釘が中空であることも可能であることを認めるであろう。テーパ状部36は、直線状腓骨髄内釘30の延長拡張部分34から、延長拡張部分34よりも直径が小さい直線状腓骨髄内釘30の近接側部分38へと移行している。1つの実施形態では、延長拡張部分34が直線状腓骨髄内釘30の遠位端部32からおよそ6センチメートル延在した後に、テーパ状部36が始まる。当業者であれば、腓骨12の遠位端部内側の利用可能な空間が患者によって様々であることを認識しているであろう。6センチメートルは、大多数の患者に対して本発明を実施するのに十分な長さである。当業者はさらに、延長拡張部分34の長さを図の実施形態に示されたものを越えて効果的に長くするために、図示された緩やかなテーパ状部36以外の髄内釘の形状を使用することも可能であることを認識するであろう。
【0015】
直線状腓骨髄内釘30の延長拡張部分34は、遠位端部32の近くに2つの前後方向連結ねじ用開口部40を有する。延長拡張部分34において前後方向連結ねじ用開口部40よりも近接側には、3つの外側内側方向連結ねじ用開口部42がある。当業者は、別の実施形態において、前後方向連結ねじ用開口部40及び外側内側方向連結ねじ用開口部42の軸の方向付けが様々であってよいことを、認識するであろう。換言すれば、他の実施形態において、ねじの方向付けは、正確に前後方向又は外側内側方向である必要はない。
【0016】
実際には、折れた腓骨12をおおむね元の長さになるように整列し直す。折れた腓骨12を適切に位置決めするためにはクランプ(図示せず)を用いた整復が必要な場合もある。折れた腓骨が適切に再配置されたら、直線状腓骨髄内釘30を腓骨12の髄腔に挿入すればよい。前後方向連結ねじ44を前後方向連結ねじ用開口部40に挿入し、折れた腓骨12の遠位端部を直線状腓骨髄内釘30に固定する。図のように、前後方向連結ねじ44は、直線状腓骨髄内釘30を外側から内側の方向に見る図3においてより明白に示されるように、骨折線Aの遠位側にある。外側内側方向連結ねじ45は、折れた腓骨12の近位側部分を直線状腓骨髄内釘30に取り付け、これにより、折れた腓骨12の遠位側部分及び近位側部分が相互に回転方向かつ長手方向に固定される。
【0017】
別例の実施形態(図示せず)では、前後方向連結ねじ44及び外側内側方向連結ねじ45は直線状腓骨髄内釘30に螺合する。螺合することにより、直線状腓骨髄内釘30を腓骨の皮質骨の一方の側面に留め付けることが容易になり、これにより直線状腓骨髄内釘30から(外科医の視点で)遠い側の皮質骨に傷を作ることなく折れた腓骨12が十分に安定化される。別の実施形態では、前後方向連結ねじ44及び外側内側方向連結ねじ45の長さは、取り付け部位の腓骨12の直径よりもわずかに短くなるように選択される。使用時、これらの連結ねじは折れた腓骨12の反対側の外縁を越えて突出することはなく、これにより取り付け部位の反対側の軟組織が保護される。上記取り付け方法のいずれかを使用することにより、穿設作業又は突出するねじを原因とする接続部位の反対側の軟組織の外傷が回避される。
【0018】
先行技術の髄内釘とは異なり、靭帯結合に関わる靭帯が損傷していなければ、脛骨18の中まで穴を空けて脛骨18に傷を作る必要はない。先行技術とは異なり、折れた腓骨12の近位側部分を折れた腓骨12の遠位側部分に対して回転方向又は長手方向に固定するために脛骨18と腓骨12との間の硬直的な接続は必要ない。好都合なことに、靭帯結合に本来備わっている可撓性が損なわれない。
【0019】
場合により、腓骨12が脛骨18から転位してしまった場合、スミス・アンド・ネフューのINVISIKNOTシステムのような非硬直的なコネクタにより直線状腓骨髄内釘30を脛骨18に留め付けることができる。図のように、INVISIKNOTの内側ボタン46が脛骨18に示されており、外側ボタン48は外側内側方向連結ねじ用開口部42のうちの隣り合った開口部である。腓骨12と脛骨18との間の空間にはINVISIKNOT縫合材49を見ることができる。縫合材49は、腓骨12を脛骨18に対して適切な配置状態に保つ、外側ボタン48と内側ボタン46との間の張力を維持する。腓骨12と脛骨18との間の硬直的な固定が望まれる場合は、外側内側方向連結ねじ用開口部42のうちの1つを、図1に示されるような経腓骨・経脛骨連結ねじ20の係合に使用することができる。
【0020】
図示されるように、延長拡張部分34は、折れた腓骨12の近接側部分を留め付けるために使用可能な外側内側方向ねじ45のための追加の場所を提供する。延長拡張部分34は、直線状腓骨髄内釘30が先行技術の髄内釘のようには屈曲していないので可能である。延長拡張部分34は開示された直線状腓骨髄内釘30の近接側部分38と同軸であるが、当業者は、近位側の固定のための追加の場所を有する髄内釘が完全に同軸の遠位側及び近接側部分を有する必要はないことを認めるであろう。当業者は、折れた腓骨12の近位側及び遠位側部分を本発明に従って固定する能力が、様々な形状を有する腓骨髄内釘を用いて達成されうること、及び本発明は開示された実施形態に限定されるようには意図されていないことを、認めるであろう。例えば、非円形の横断面を備えた腓骨髄内釘は特許請求の範囲の範囲内にあるように意図されている。加えて、当業者は、僅かな屈曲を備えた髄内釘について、その屈曲が、腓骨の中へ髄内釘を挿入して髄内釘の開口部が腓骨骨折部の遠位側及び近位側においてしっかりした骨に隣接するようにすることを可能とする場合は、特許請求の範囲に記載された発明を実行するために該髄内釘を使用することも考えられるということを認めるであろう。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腓骨髄内釘であって、
遠位端部と;
拡張部分と;
近位側部分と;
移行部分と、前記拡張部分は前記遠位端部から前記移行部分まで伸び、前記拡張部分は第1の横断面を有し、前記移行部分は前記拡張部分から前記近位側部分へと移行し、前記近位側部分は第2の横断面を有し、前記第2の横断面は第1の横断面よりも狭い面積を有することと;
前記拡張部分の遠位側部分において前記腓骨髄内釘を通って伸びる第1の開口部と、前記第1の開口部は、前記腓骨髄内釘を腓骨の遠位側部分に固定するようになされた第1のコネクタを受承するようになされていることと;
前記第1の開口部よりも近位側で前記拡張部分を通って伸びる第2の開口部と、前記第2の開口部は、前記腓骨の近位側部分が骨折により前記腓骨の前記遠位側部分から離れている場合に前記腓骨髄内釘を前記腓骨の前記近位側部分に固定するようになされた第2のコネクタを受承するようになされていることと
を具備する腓骨髄内釘。
【請求項2】
前記腓骨髄内釘の前記近位側部分は、前記腓骨髄内釘の前記拡張部分と同軸である、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項3】
前記拡張部分は前記拡張部分を通って伸びる第3の開口部を有し、前記第3の開口部は、前記腓骨髄内釘を患者の脛骨に接続するようになされた第3のコネクタを受承するようになされている、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項4】
前記拡張部分は5センチメートルを超える長さである、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項5】
前記拡張部分はおよそ6センチメートルの長さである、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項6】
前記拡張部分を通って伸びる第3の開口部であって、前記第3の開口部は前記腓骨髄内釘を腓骨の前記遠位側部分に固定するようになされた第3のコネクタを受承するようになされており、前記第1及び第3の開口部は埋植時に前後方向に方向付けられるようになされている、第3の開口部と;
前記拡張部分を通って伸びる第4の開口部であって、前記第4の開口部は第4のコネクタを受承するようになされ、前記第2及び第4の開口部は埋植時に外側内側方向に方向付けられるようになされている、第4の開口部と
をさらに具備する、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項7】
前記第4の開口部は、前記腓骨髄内釘を患者の脛骨に接続するようになされた第4のコネクタを受承するようになされている、請求項6に記載の腓骨髄内釘。
【請求項8】
前記第1及び第3のコネクタはねじである、請求項6に記載の腓骨髄内釘。
【請求項9】
前記第1及び前記第2の横断面は円である、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項10】
前記第4のコネクタは縫合材を含む、請求項6に記載の腓骨髄内釘。
【請求項11】
前記第1及び第2の開口部のうち一方はねじ山付きである、請求項1に記載の腓骨髄内釘。
【請求項12】
近位端部及び遠位端部を有する腓骨髄内釘と;
遠位側固定ねじと;
近位側固定ねじと;
前記腓骨髄内釘を通る第1の開口部と;
前記腓骨髄内釘を通る第2の開口部と;
前記第1の開口部は前記遠位側固定ねじを受承するようになされていることと;
前記第2の開口部は前記近位側固定ねじを受承するようになされていることと;
前記第1の開口部及び前記第2の開口部は、前記第1の開口部が骨折部の遠位側の腓骨に隣接するように、かつ前記第2の開口部が前記骨折部の近位側の腓骨に隣接するようになるように、間隔をおいて配置されることと
を具備する腓骨髄内釘システム。
【請求項13】
遠位端部に骨折部を有する腓骨を安定化する方法であって、
腓骨髄腔内に、第1及び第2の横行開口部を有する腓骨髄内釘を挿入するステップと;
前記腓骨髄腔内の腓骨髄内釘を、前記第1の横行開口部が前記骨折部の遠位側に、かつ前記第2の横行開口部が前記骨折部の近位側になるように、位置決めするステップと;
第1のコネクタを前記第1の横行開口部に挿入するステップであって、前記第1のコネクタが、前記腓骨髄内釘を、前記骨折部の遠位側の前記腓骨の第1の部分に対して回転方向かつ長手方向に固定する、ステップと;
第2のコネクタを前記第2の横行開口部に挿入するステップであって、前記第2のコネクタが、前記腓骨髄内釘を、前記骨折部の近位側の前記腓骨の第2の部分に対して回転方向かつ長手方向に固定する、ステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記第1及び前記第2のコネクタは前記腓骨に螺入される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第3のコネクタを前記腓骨髄内釘の第3の横行開口部に挿入し、かつ前記第3のコネクタが脛骨に係合することにより、腓骨髄内釘を前記脛骨に接続するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第3のコネクタは経腓骨・経脛骨連結ねじである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第3のコネクタは、前記腓骨の動きを、前記第3のコネクタの軸に沿って前記脛骨から離れる方向においてのみ防止する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のコネクタは前後方向に方向付けられる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のコネクタは外側内側方向に方向付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記腓骨髄内釘は、前記第1、第2及び第3の横行開口部が穿設された拡張遠位側部分と、近位側部分とを有し、前記拡張遠位側部分は第1の直径を有し;前記近位側部分は第2の直径を有し、前記第1の直径は第2の直径よりも大きく、前記拡張遠位側部分及び前記近位側部分は同軸である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1又は前記第2の横行開口部のうち一方はねじ山付きである、請求項13に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
[背景]
腓骨骨折。多くの場合、腓骨骨折は腓骨の遠位端部付近に生じる。腓骨は、骨間靭帯、横脛腓靭帯、前下脛腓靭帯及び後下脛腓靭帯のような靭帯によって、遠位端部で脛骨に接続している。その結果生じる靭帯結合は、体重を支える脛骨と、様々な筋群の付着点としての役割を果たすが体重はほとんど支えていない腓骨との間に、強固であるが間接的な接続を作り上げる。靭帯結合による接続は硬直的ではなく、腓骨と脛骨と
の間の小さな動きを許容して足関節の可動域を広げている。腓骨骨折は多くの場合、靭帯結合を回復不能なほど損傷することはない。
【国際調査報告】