(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20230823BHJP
B60T 8/172 20060101ALI20230823BHJP
B60T 8/48 20060101ALI20230823BHJP
B60W 10/188 20120101ALI20230823BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T8/172 Z ZHV
B60T8/48
B60W10/188
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580105
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2021110803
(87)【国際公開番号】W WO2022028519
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202010787667.6
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521549408
【氏名又は名称】格陸博科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】康沛棟
(72)【発明者】
【氏名】劉兆勇
(72)【発明者】
【氏名】顧勤冬
(72)【発明者】
【氏名】吉杰
(72)【発明者】
【氏名】呉▲ヅェン▼
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241AA65
3D241AC26
3D241AD41
3D246AA08
3D246AA09
3D246BA02
3D246DA01
3D246EA05
3D246GA04
3D246GB39
3D246HA03A
3D246HA05B
3D246HA28A
3D246HA32A
3D246HA43A
3D246HC02
3D246JA03
3D246JB12
3D246KA15
3D246LA33Z
3D246LA57Z
(57)【要約】
電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータは、新エネルギー自動車のブレーキシステム分野に関する。ブレーキマスタシリンダ(1)の出口端に第1管路、第2管路を有し、前記第1管路のもう一端はその開閉を制御するための第4遮断弁(5)と接続され、第2管路のもう一端はその開閉を制御するための第5遮断弁(6)と接続される。第1管路に第1分岐路が接続され、第1分岐路のもう一端はアキュムレータ(7)に通じ、第1分岐路にその開閉を制御するための第1吸入弁(2)が接続される。第2管路にさらに第2分岐路が接続され、第2分岐路のもう一端もアキュムレータ(7)に通じ、前記第2分岐路にその開閉を制御するための第2吸入弁(3)が接続される。アキュムレータ(7)にさらに第3分岐路が通じ、第3分岐路のもう一端は第2管路に通じる。エネルギー消費を低下させることができるだけでなく、比較的良好なペダル操作フィーリングを有することができることを達成し、製品の快適性及び安全性の効果を高めた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法であって、前記制御方法で使用する電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータがブレーキマスタシリンダを含み、ブレーキマスタシリンダの出口端に第1管路、第2管路を有し、前記第1管路のもう一端がその開閉を制御するための第4遮断弁と接続され、前記第2管路のもう一端がその開閉を制御するための第5遮断弁と接続され;第4遮断弁及び第5遮断弁のもう一端がいずれもABS/ESCに通じ;
第1管路にさらに第1分岐路が接続され、第1分岐路のもう一端がアキュムレータに通じ、前記第1分岐路にその開閉を制御するための第1吸入弁が接続され;
第2管路にさらに第2分岐路が接続され、第2分岐路のもう一端もアキュムレータに通じ、前記第2分岐路にその開閉を制御するための第2吸入弁が接続され;
アキュムレータにさらに第3分岐路が通じ、第3分岐路のもう一端が第1管路又は第2管路に通じ、第3分岐路にその開閉を制御するための第3バイパス弁が接続され;
その動作状況には正常な状況も含まれ:エネルギー回収機能が停止しているとき、運転者がブレーキペダルを踏むと、各電磁弁はいずれも電源が停止された状態を保持し、ブレーキ液がマスタシリンダにより、第4遮断弁及び第5遮断弁を経過して直接ABS/ESCに進入し;
前記制御方法が以下の工程を含み、
工程1:電気油圧式制御装置は運転者がブレーキをかける意図を有するかどうかをリアルタイムで検出し、ADによりブレーキペダル変位センサの信号を収集することを含み、運転者がブレーキペダルを踏む深さ及び速度を判断及び計算し、その後車両のブレーキ特性に適合するパラメータ表に基づいて、このときの車両に必要なブレーキ減速度aの大きさを得る;
工程2:ペダルの開度及びペダルを踏む速さの程度に基づいて、運転者が急ブレーキをかけているかどうかを判断し;急ブレーキをかけている場合、エネルギー回収機能は停止する;
工程3:エネルギー回収機能が停止したとき、正常な状況の動作状態に入り、直接油圧ブレーキを行い;
エネルギー回収機能が作動するとき、装置が加圧過程の動作状態に入り、電気ブレーキトルク及び油圧ブレーキトルクの分配を行う;
工程4:運転者がすでにペダルを緩めたか、又は緩める過程において、装置は圧力逃し過程に入る;
その動作状態は加圧過程及び減圧過程を含み;
加圧過程:電気油圧式制御装置が、運転者がペダルを踏んだのを検出し、自動車全体が同時にエネルギー回収機能を作動させると、第1吸入弁及び第2吸入弁が開き、第4遮断弁及び第5遮断弁が閉じ、ブレーキ液はブレーキマスタシリンダにより、第1吸入弁及び第2吸入弁を経過してアキュムレータ中に進入し;
車輪におけるブレーキ力はすべて駆動モータの惰行により生成、提供され、自動車全体がブレーキエネルギー回収動作を行い、電気油圧式制御装置が常にペダルの開度を検出し、全体的なブレーキ力の要求及び惰行トルクの大きさを判断し;
惰行トルクが不十分なとき、第1吸入弁及び第2吸入弁が閉じ、第4遮断弁及び第5遮断弁が開き、油圧が不十分なブレーキ力を補い;モータの惰行力及び機械ブレーキがシリアル方式で連携して動作し、車両が減速効果を達成し;
圧力逃し過程:減圧段階で、運転者がすでにペダルを緩めたか、又は緩める過程において、このとき第1吸入弁及び第2吸入弁は電源が停止されて閉じ、第4遮断弁及び第5遮断弁は電源が停止されて開き、第3バイパス弁が管路の圧力強さに基づいて、通電して開き、このときブレーキペダルは踏まれていないか、又は主油圧回路の圧力が小さいため、ブレーキマスタシリンダに圧力が存在せず、圧力の作用下で、低圧アキュムレータ中のブレーキ液が内部スプリングの作用により第3バイパス弁を介してマスタシリンダに戻ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1管路に管路の圧力強さに反応する圧力センサが接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法。
【請求項3】
前記アキュムレータがスプリング式低圧アキュムレータであることを特徴とする、請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法。
【請求項4】
装置の各弁は電気油圧式制御装置EHCにより開閉が制御され、電気油圧式制御装置EHCがさらに高速CAN通信によりバッテリコントローラBCM及びモータコントローラMCUと接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法。
【請求項5】
工程2において、急ブレーキをかけていない場合、電気油圧式制御装置EHCが常にバッテリコントローラBCM、モータコントローラMCUの2つのシステムと通信を保持しており、これにより車両がエネルギー回収状態に入るのを許容するかどうかを判断し、駆動モータを含む惰行トルクの自動車速度に伴う絶え間ない変化に基づいて、動力電池のSOC、温度、電流、通信の故障を判断することを特徴とする、請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法。
【請求項6】
工程3において、ブレーキトルクの分配は以下の計算公式を参考にし、
Fe+Fh+f
roll+f
aero=Ma…(1)から
Fe=Ma-Fh-f
roll-f
aero…(2)がわかり、
式中:Feが駆動モータのブレーキ力、単位はN.mであり;Fhが電気油圧式のブレーキ力、単位はN.mであり;F
rollが車両の転がり抵抗、単位はN.mであり;f
aeroが空気抵抗、単位はN.mであり;aがブレーキ減速度、単位はm/s
2であり;Mが車両総重量、単位はkgであり;
このうち車両の転がり抵抗がf
roll=Mgμcosa…(3)で表すことができ、
式中:μは転がり抵抗係数であり;Mは車両総重量、単位はkgであり;aは傾斜角、iは傾斜率、a=arctan(i)であり;
車両の空気抵抗がF
aero=0.5ρkA
fV
2…(4)で表すことができ、
式中:kが空気抵抗係数であり;A
fが前面面積、単位はm
2であり;Vが自動車速度、単位はkm/hであり;ρが空気密度で、1.3kg/m
2を採用することを特徴とする、請求項5に記載の電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法。
【請求項7】
工程3において、充電可能な電力はトルクを生成し、
【数1】
式中:Pcが充電可能な電力、単位はKwであり;nがモータの回転速度、単位はrpmであり;
電池の最大許容充電電力に基づいて、対応する電池の最大許容ブレーキトルクを算出し、モータの最大許容ブレーキトルクより小さい場合、エネルギー回収機能を停止するか、又は電池の最大許容ブレーキトルクを最大電気ブレーキトルクとして要求することを特徴とする、請求項6に記載の電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新エネルギー自動車のブレーキシステム分野に関し、特に電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の自動車市場において、新エネルギー自動車は次第に多くなっており、バッテリー式電気自動車又はハイブリッド車に関わらず、人々が最も関心を寄せる問題の一つが自動車の走行可能距離である。市場のほとんどすべての新エネルギー自動車はエネルギー回収機能を備えている。ブレーキエネルギー回収システムは、走行可能距離を延長させるために講じる1つの方法であり、ブレーキにより機械エネルギーを電気エネルギーに変換するのが主な作用である。しかし、ブレーキエネルギー回収により、運転者はブレーキペダルのストロークが一致していない感覚を容易に感じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータを提供することである。車両のエネルギー回収機能を起動及び停止した2つの状況において、同じペダルストロークは車両の減速度が同じであり、運転者が踏むブレーキペダルのストロークが一致している。エネルギー消費を低下させることができるだけでなく、比較的良好なペダル操作フィーリングを有することもでき、製品の快適性及び安全性を高めた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記技術的目的は、以下の技術案により実現することができる。
電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータはブレーキマスタシリンダを含み、ブレーキマスタシリンダの出口端に第1管路、第2管路を有し、前記第1管路のもう一端はその開閉を制御するための第4遮断弁と接続され、前記第2管路のもう一端はその開閉を制御するための第5遮断弁と接続される。第4遮断弁及び第5遮断弁のもう一端はいずれもABS/ESCに通じる。
第1管路にさらに第1分岐路が接続され、第1分岐路のもう一端はアキュムレータに通じ、前記第1分岐路にその開閉を制御するための第1吸入弁が接続される。
第2管路にさらに第2分岐路が接続され、第2分岐路のもう一端もアキュムレータに通じ、前記第2分岐路にその開閉を制御するための第2吸入弁が接続される。
アキュムレータにさらに第3分岐路が通じ、第3分岐路のもう一端は第1管路又は第2管路に通じ、第3分岐路にその開閉を制御するための第3バイパス弁が接続される。
【0005】
さらに、その動作状態は加圧過程及び減圧過程を含む。
加圧過程:電気油圧式制御装置が、運転者がペダルを踏んだのを検出し、自動車全体が同時にエネルギー回収機能を作動させると、第1吸入弁及び第2吸入弁が開き、第4遮断弁及び第5遮断弁が閉じ、ブレーキ液はブレーキマスタシリンダにより、第1吸入弁及び第2吸入弁を経過してアキュムレータに進入する。
車輪におけるブレーキ力はすべて駆動モータの惰行により生成、提供され、自動車全体がブレーキエネルギー回収動作を行う。電気油圧式制御装置は常にペダルの開度を検出し、全体的なブレーキ力の要求及び惰行トルクの大きさを判断する。
惰行トルクが不十分なとき、第1吸入弁及び第2吸入弁は閉じ、第4遮断弁及び第5遮断弁が開き、油圧が不十分なブレーキ力を補う。モータの惰行力及び機械ブレーキはシリアル方式で連携して動作し、車両は減速効果を達成する。
圧力逃し過程:減圧段階で、運転者がすでにペダルを緩めたか、又は緩める過程において、このとき第1吸入弁及び第2吸入弁は電源が停止されて閉じ、第4遮断弁及び第5遮断弁は電源が停止されて開き、第3バイパス弁は管路の圧力強さに基づいて通電して開く。このときブレーキペダルは踏まれていないか、又は主油圧回路の圧力が小さいため、ブレーキマスタシリンダに圧力が存在しない。圧力の作用下で、低圧アキュムレータ中のブレーキ液は内部スプリングの作用により第3バイパス弁を介してマスタシリンダに戻る。
【0006】
さらに、その動作状況には正常な状況も含まれる。エネルギー回収機能が停止しているとき、運転者がブレーキペダルを踏むと、各電磁弁はいずれも電源が停止された状態を保持し、ブレーキ液はマスタシリンダにより、第4遮断弁及び第5遮断弁を経過して直接ABS/ESCに進入する。
【0007】
さらに、前記第1管路に管路の圧力強さに反応する圧力センサが接続される。
【0008】
さらに、前記アキュムレータはスプリング式低圧アキュムレータである。
【0009】
さらに、装置の各弁は電気油圧式制御装置EHCにより開閉が制御され、電気油圧式制御装置EHCはさらに高速CAN通信によりバッテリコントローラBCM及びモータコントローラMCUと接続される。
【0010】
本発明の目的は、電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法をさらに提供することである。車両のエネルギー回収機能を起動及び停止した2つの状況において、運転者が踏むブレーキペダルのストロークは一致しており、エネルギー消費を低下させることができるだけでなく、比較的良好なペダル操作フィーリングを有することもでき、製品の快適性及び安全性を高めた。
【0011】
電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータの制御方法は、以下の工程を含む。
工程1:電気油圧式制御装置は運転者がブレーキをかける意図を有するかどうかをリアルタイムで検出し、ADによりブレーキペダル変位センサの信号を収集することを含み、運転者がブレーキペダルを踏む深さ及び速度を判断及び計算する。その後車両のブレーキ特性に適合するパラメータ表に基づいて、このときの車両に必要なブレーキ減速度aの大きさを得る。
工程2:ペダルの開度及びペダルを踏む速さの程度に基づいて、運転者が急ブレーキをかけているかどうかを判断し;急ブレーキをかけている場合、エネルギー回収機能は停止する。
工程3:エネルギー回収機能が停止したとき、正常な状況の動作状態に入り、直接油圧ブレーキを行う。
エネルギー回収機能が作動するとき、装置は加圧過程の動作状態に入り、電気ブレーキトルク及び油圧ブレーキトルクの分配を行う。
工程4:運転者がすでにペダルを緩めたか、又は緩める過程において、装置は圧力逃し過程に入る。
【0012】
さらに、工程2において、急ブレーキをかけていない場合、電気油圧式制御装置EHCは常にバッテリコントローラBCM、モータコントローラMCUの2つのシステムと通信を保持しており、これにより車両がエネルギー回収状態に入るのを許容するかどうかを判断し、駆動モータを含む惰行トルクの自動車速度に伴う絶え間ない変化に基づいて、動力電池のSOC、温度、電流、通信の故障を判断する。
【0013】
さらに、工程3において:ブレーキトルクの分配は以下の計算公式を参考にする。
Fe+Fh+froll+faero=Ma…(1)から
Fe=Ma-Fh-froll-faero…(2)がわかる。
式中、Feは駆動モータのブレーキ力、単位はN.mであり;Fhは電気油圧式のブレーキ力、単位はN.mであり;Frollは車両の転がり抵抗、単位はN.mであり;faeroは空気抵抗、単位はN.mであり;aはブレーキ減速度、単位はm/s2であり;Mは車両総重量、単位はkgである。
このうち車両の転がり抵抗はfroll=Mgμcosa…(3)で表すことができる。
式中:μは転がり抵抗係数であり;Mは車両総重量、単位はkgであり;aは傾斜角、iは傾斜率、a=arctan(i)である。
車両の空気抵抗はFaero=0.5ρkAfV2…(4)で表すことができる。
式中:kは空気抵抗係数であり;Afは前面面積、単位はm2であり;Vは自動車速度、単位はkm/hであり;ρは空気密度で、1.3kg/m2を採用する。
【0014】
さらに、工程3において、充電可能な電力はトルクを生成する。
【0015】
【0016】
式中:Pcは充電可能な電力、単位はKwであり;nはモータ回転速度、単位はrpmである。
電池の最大許容充電電力に基づいて、対応する電池の最大許容ブレーキトルクを算出し、モータの最大許容ブレーキトルクより小さい場合、エネルギー回収機能を停止するか、又は電池の最大許容ブレーキトルクを最大電気ブレーキトルクとして要求する。
【発明の効果】
【0017】
上記をまとめると、本発明は以下の有益な効果を有する。
車両エネルギー回収機能を起動及び停止した2つの状況下で、運転者にとって、同じペダルストロークは車両の減速度が同じであり、運転者が踏むブレーキペダルのストロークが一致している。ペダルフィーリングは信頼でき、安全であると同時に、一部の部品を単独で取り外すこともできる。乗っている車両におけるエネルギー回収の実現は、このようにエネルギー消費を低下させることができるだけでなく、比較的良好なペダル操作フィーリングを有することもでき、製品の快適性及び安全性を高めた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を組み合わせて、本発明の具体的な実施形態についてさらに説明する。本実施例は本発明を制限しない。
【0020】
電気油圧式ブレーキシステムに用いるバイパスアキュムレータは、
図1に示すように、ブレーキマスタシリンダ1を含み、ブレーキマスタシリンダ1の出口端に第1管路、第2管路を有し、第1管路のもう一端はその開閉を制御するための第4遮断弁5と接続され、第2管路のもう一端はその開閉を制御するための第5遮断弁6と接続される。第4遮断弁5及び第5遮断弁6のもう一端は、いずれもABS/ESCに通じる。
図1に示すように、第1管路にさらに第1分岐路が接続され、第1分岐路のもう一端はアキュムレータ7に通じ、第1分岐路にその開閉を制御するための第1吸入弁2が接続される。第1管路に管路の圧力強さに反応する圧力センサ8が接続され、圧力センサ8は第1分岐路及びブレーキマスタシリンダ1の間に位置する。
【0021】
第2管路にさらに第2分岐路が接続され、第2分岐路のもう一端もアキュムレータ7に通じ、アキュムレータ7はスプリング式低圧アキュムレータ7である。第2分岐路にその開閉を制御するための第2吸入弁3が接続される。
アキュムレータ7にさらに第3分岐路が通じ、第3分岐路のもう一端は第2管路に通じ、第3分岐路にその開閉を制御するための第3バイパス弁4が接続される。
【0022】
図1に示すように、本実施例において、第1吸入弁2、第2吸入弁3、第3バイパス弁4はいずれも常時閉型2位置2方弁であり、第4遮断弁5、第5遮断弁6はいずれも常時開型2位置2方弁である。
【0023】
図2に示すように、装置の各弁は電気油圧式制御装置EHCにより開閉が制御され、電気油圧式制御装置EHCはさらに高速CAN通信によりバッテリコントローラBCM及びモータコントローラMCUと接続される。コントローラを実行して電気油圧式制御装置EHCの制御信号を受信し、それ自体のパワーデバイスにより、独立して動作することができる各電磁弁を駆動し、さらにはブレーキ液管路の流通経路を制御する。自動車の蓄電池の電源又は直流-直流コンバータ(DC/DC)及びアクチュエータは直接つながり、電磁弁などに電力供給し、蓄電池の電源の正常動作電圧は9V~16Vである。リザーバ中に液量に反応する液位センサが接続される。
【0024】
バイパス装置システムの制御の基本的構想は、次の通りである。電気油圧式制御装置EHCが運転者のブレーキ要求を計算し、エネルギー回収条件は車両の安定性を満たしているかどうか、及び考慮しているかどうかである。フィードバックしたブレーキトルク要求をモータコントローラに送信すると同時に、バイパス装置を制御する。
【0025】
その具体的な制御方法は以下の工程を含む。
工程1:電気油圧式制御装置は運転者がブレーキをかける意図を有するかどうかをリアルタイムで検出し、ADによりブレーキペダル変位センサの信号を収集することを含み、運転者がブレーキペダルを踏む深さ及び速度を判断及び計算する。その後車両のブレーキ特性に適合するパラメータ表に基づいて、このときの車両に必要なブレーキ減速度aの大きさを得る。
工程2:ペダルの開度及びペダルを踏む速さの程度に基づいて、運転者が急ブレーキをかけているかどうかを判断し;急ブレーキをかけている場合、エネルギー回収機能は停止する。急ブレーキをかけていない場合、電気油圧式制御装置EHCは常にバッテリコントローラBCM、モータコントローラMCUの2つのシステムと通信を保持しており、これにより車両がエネルギー回収状態に入るのを許容するかどうかを判断し、駆動モータを含む惰行トルクの自動車速度に伴う絶え間ない変化に基づいて、動力電池のSOC、温度、電流、通信の故障を判断する。
工程3:エネルギー回収機能が停止したとき、正常な状況の動作状態に入り、直接油圧ブレーキを行う。
このうち、正常な状況は次の通りである。エネルギー回収機能が停止しているとき、運転者がブレーキペダルを踏むと、各電磁弁はいずれも電源が停止された状態を保持する。ブレーキ液はマスタシリンダにより、第4遮断弁5及び第5遮断弁6を経過して、直接ABS/ESCに進入し(車両がABS/ESCを備えていない場合、ブレーキ液は直接4つのホイールシリンダに進入する)、油圧ブレーキが全ブレーキ力である。
【0026】
エネルギー回収機能が作動するとき、装置は加圧過程の動作状態に入り、電気ブレーキトルク及び油圧ブレーキトルクの分配を行う。モータの惰行トルクは、モータコントローラ又は車輪速センサにより確定する。
【0027】
加圧過程:電気油圧式制御装置が、運転者がペダルを踏んだのを検出し、自動車全体が同時にエネルギー回収機能を作動させると、第1吸入弁2及び第2吸入弁3が開き、第4遮断弁5及び第5遮断弁6が閉じ、ブレーキ液はブレーキマスタシリンダ1により、第1吸入弁2及び第2吸入弁3を経過してアキュムレータ7中に進入する。
車輪におけるブレーキ力はすべて駆動モータの惰行により生成、提供され、自動車全体がブレーキエネルギー回収動作を行う。電気油圧式制御装置は常にペダルの開度を検出し、全体的なブレーキ力の要求及び惰行トルクの大きさを判断する。
惰行トルクが不十分なとき、第1吸入弁2及び第2吸入弁3が閉じ、第4遮断弁5及び第5遮断弁6が開き、油圧が不十分なブレーキ力を補う。モータの惰行力及び機械ブレーキはシリアル方式で連携して動作し、車両は減速効果を達成する。
充電可能な電力はトルクを生成する。
【0028】
【0029】
式中:Pcは充電可能な電力、単位はKwであり;nはモータの回転速度、単位はrpmである。
電池の最大許容充電電力に基づいて、対応する電池の最大許容ブレーキトルクを算出し、モータの最大許容ブレーキトルクより小さい場合、電池の最大許容ブレーキトルクを最大電気ブレーキトルクとして要求する。すなわちブレーキ力の要求、電池の最大許容ブレーキトルク及びモータの最大許容ブレーキトルクにおいて、最も小さいものをフィードバックするブレーキトルクとして要求し、EHCは該フィードバックしたブレーキトルクの要求をモータコントローラに送信する。ブレーキ過程において、モータコントローラはCAN通信により回生ブレーキシステムにおける現在最大の提供可能な惰行トルクを送信する。電気油圧式制御装置EHCはバッテリコントローラBCMの充電許容条件及び運転者の意図に基づいて、車両がエネルギー回収モードに入るのを許容するかどうか、及び充電可能なトルク指令値を決定する。
【0030】
ブレーキトルクの分配は以下の計算公式を参考にする。
Fe+Fh+froll+faero=Ma…(1)から
Fe=Ma-Fh-froll-faero…(2)がわかる。
式中:Feは駆動モータのブレーキ力、単位はN.mであり;Fhは電気油圧式のブレーキ力、単位はN.mであり;Frollは車両の転がり抵抗、単位はN.mであり;faeroは空気抵抗、単位はN.mであり;aはブレーキ減速度、単位はm/s2であり;Mは車両総重量、単位はkgである。
このうち車両の転がり抵抗はfroll=Mgμcosa…(3)で表すことができる。
式中:μは転がり抵抗係数であり;Mは車両総重量、単位はkgであり;aは傾斜角、iは傾斜率、a=arctan(i)である。
車両の空気抵抗はFaero=0.5ρkAfV2…(4)で表すことができる。
式中:kは空気抵抗係数であり;Afは前面面積、単位はm2であり;Vは自動車速度、単位はkm/hであり;ρは空気密度で、1.3kg/m2を採用する。
【0031】
工程4:運転者がすでにペダルを緩めたか、又は緩める過程において、装置は圧力逃し過程に入る。
【0032】
圧力逃し過程:減圧段階で、運転者がすでにペダルを緩めたか、又は緩める過程において、このとき第1吸入弁2及び第2吸入弁3は電源が停止されて閉じ、第4遮断弁5及び第5遮断弁6は電源が停止されて開き、第3バイパス弁4は管路の圧力強さに基づいて、通電して開く。このときブレーキペダルは踏まれていないか、又は主油圧回路の圧力が小さいため、ブレーキマスタシリンダ1に圧力が存在しない。圧力の作用下で、低圧アキュムレータ7中のブレーキ液は内部スプリングの作用により第3バイパス弁4を介してマスタシリンダに戻る。
【0033】
以上の記載は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するのに用いられない。当業者は本発明の本質及び保護の範囲内で、本発明に対して各種修正又は同等の置換を行うことができ、この種の修正又は同等の置換も本発明の技術案の保護範囲内にあると見なすべきである。
【符号の説明】
【0034】
1 ブレーキマスタシリンダ
2 第1吸入弁
3 第2吸入弁
4 第3バイパス弁
5 第4遮断弁
6 第5遮断弁
7 アキュムレータ
8 圧力センサ
【国際調査報告】