(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】誤差軽減技術
(51)【国際特許分類】
G06N 10/70 20220101AFI20230823BHJP
【FI】
G06N10/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580943
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021068261
(87)【国際公開番号】W WO2022003134
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521088642
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイ,ゼニュー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン,シモン
(57)【要約】
量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法であって、前記方法が:キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行すること(S101)であって、前記演算が、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算とを包含する第1の演算を実行すること;または、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算とを包含する第2の演算を実行すること;を包含し、それにおいて前記第1と第2の基本演算は、基本演算のセットから選択される異なる基本演算であり;さらに、前記キュビットの前記状態を測定することを包含し;それにおいて前記第1の演算を実行する確率が第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率が第2の確率であるとする、前記演算を実行することと;前記対称性演算を使用し、前記演算の各実行の後に前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得すること(S102)であって、前記キュビットのグループが複数のキュビットを包含するものとすることと;を包含し、それにおいて前記対称性測定値は、前記誤差の数が偶数の場合の第1の対称性結果であるか、または前記誤差の数が奇数の場合の第2の対称性結果であり;さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得すること(S103)と;前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得すること(S104)と;前記第1の状態測定値を
【数25】
の形式を有する第1の曲線にフィッティングすること(S105)と;前記第2の状態測定値を
【数26】
の形式を有する第2の曲線にフィッティングすることと;を包含し、それにおいてnは誤差率であり、Aおよびγはフィッティングパラメータであり;さらに、フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外する(S106)こと;を包含し、それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法であって、
キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行することであって、前記演算が、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:
ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算とを包含する第1の演算を実行すること、または、
前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算とを包含する第2の演算を実行すること、
を包含し、それにおいて前記第1と第2の基本演算は、基本演算のセットから選択される異なる基本演算であり、
さらに、前記キュビットの前記状態を測定することを包含し、
それにおいて前記第1の演算を実行する確率が第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率が第2の確率であるとする、前記演算を実行することと、
前記対称性演算を使用する前記演算の各実行の後に前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得することであって、前記キュビットのグループが複数のキュビットを包含するものとすることと、
を包含し、それにおいて前記対称性測定値は、前記誤差の数が偶数の場合の第1の対称性結果であるか、または前記誤差の数が奇数の場合の第2の対称性結果であり、
さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得することと、
前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得することと、
前記第1の状態測定値を
【数20】
の形式を有する第1の曲線にフィッティングすることと、
前記第2の状態測定値を
【数21】
の形式を有する第2の曲線にフィッティングすることと、
を包含し、それにおいてnは誤差率であり、Aおよびγはフィッティングパラメータであり、
さらに、フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外することと、
それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低いとすることと、
を包含する、誤差を軽減する方法。
【請求項2】
前記第1および第2の基本演算は、パウリの基本演算を包含する基本演算のセットから選択される、先行するいずれかの請求項に記載の誤差を軽減する方法。
【請求項3】
前記第1の対称性結果は、パスであり、前記第2の対称性結果は、フェイルである、先行するいずれかの請求項に記載の誤差を軽減する方法。
【請求項4】
前記キュビットは、第1のキュビットであり、前記方法がさらに、
前記キュビットのグループ内の第2のキュビットの状態に対して前記演算を複数回にわたって実行することと、
前記第1の対称性結果のための前記第2のキュビットの平均の状態を決定することによって第3の状態測定値を獲得することと、
前記第2の対称性結果のための前記第2のキュビットの平均の状態を決定することによって第4の状態測定値を獲得することと、
前記第3の状態測定値を第3の曲線に、前記第4の状態測定値を第4の曲線にフィッティングすることと、
フィッティング済みの前記第3および第4の曲線を使用して前記第2の誤差率における前記第2のキュビットの前記平均の状態を補外することと、
を包含する、先行するいずれかの請求項に記載の誤差を軽減する方法。
【請求項5】
量子コンピューティング計算を実行するためのデバイスであって、
第1の確率を用いて基本演算のセットから第1の基本演算を選択し、かつ、
第2の確率を用いて基本演算のセットから第2の基本演算を選択するべく構成され、
それにおいて前記第1と第2の基本演算は、異なるものとする、
選択モジュールと、
キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行するべく構成され、それにおいて前記演算が第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が、
ゲート演算と、対称性演算と、前記選択された基本演算とを実行することを包含する、量子プロセッサと、
前記キュビットの前記状態を測定するべく構成された量子測定デバイスと、
前記対称性演算を使用する前記演算の各実行の後に前記キュビットのグループの前記対称性を測定するべく構成された対称性測定デバイスであって、それにおいて前記キュビットのグループは、複数のキュビットを包含し、
それにおいて、前記対称性測定値は、前記誤差の数が偶数の場合の第1の対称性結果であるか、または前記誤差の数が奇数の場合の第2の対称性結果であるとする、対称性測定デバイスと、
前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得し、かつ前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得し、
nを誤差率とし、Aおよびγをフィッティングパラメータとしたときに、
【数22】
の形式を有する第1の曲線に前記第1の状態測定値をフィッティング、
【数23】
の形式を有する第2の曲線に前記第2の状態測定値をフィッティング、かつ、
フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して、前記第1の誤差率より低いとする第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外するべく構成された古典的プロセッサと、
を包含する、量子コンピューティング計算を実行するためのデバイス。
【請求項6】
量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法であって、
キュビットの状態に対して第1の演算を実行することであって、前記第1の演算が、第1の誤差率を有するものとすることと、
前記キュビットの前記状態の第1の測定値を獲得することと、
前記キュビットの前記状態に対して第2の演算を実行することであって、前記第2の演算が、前記第1の誤差率を有するものとすることと、
前記キュビットの前記状態の第2の測定値を獲得することと、
前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算することと、
前記キュビットの前記状態に対して第3の演算を実行することであって、前記第3の演算が、前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第3の演算が、前記第1の演算と第1の基本演算を包含するものとすることと、
前記キュビットの前記状態の第3の測定値を獲得することと、
前記キュビットの前記状態に対して第4の演算を実行することであって、前記第4の演算が、前記第2の誤差率を有し、かつ前記第4の演算が、前記第1の演算と第2の基本演算を包含するものとすることと、
それにおいて、前記第1と第2の基本演算は、基本演算のセットから選択される異なる基本演算であることと、
前記キュビットの前記状態の第4の測定値を獲得することと、
前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算することと、
前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティングすることと、
前記フィッティング済みの曲線を使用して第3の誤差率における前記キュビットの平均のステージを補外することであって、前記第3の誤差率が、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとすることと、
を包含する、誤差を軽減する方法。
【請求項7】
前記第1の基本演算を選択する確率は、第1の確率であり、前記第2の基本演算を選択する確率は、第2の確率である、請求項6に記載の誤差を軽減する方法。
【請求項8】
前記基本演算のセットは、パウリの基本演算を包含する、請求項6または7に記載の誤差を軽減する方法。
【請求項9】
前記第2の演算は、第1の演算と同じである、請求項6乃至8のいずれかに記載の誤差を軽減する方法。
【請求項10】
前記キュビットは、キュビットのグループ内の複数のキュビットのうちの1つである、請求項6乃至9のいずれかに記載の誤差を軽減する方法。
【請求項11】
前記曲線は、指数関数的減衰曲線である、請求項6乃至10のいずれかに記載の誤差を軽減する方法。
【請求項12】
前記指数関数的減衰曲線は、Eを前記キュビットの前記平均の状態とし、nを誤差率とし、A
kおよびγ
kをフィッティングパラメータとするときに、
【数24】
の形式のマルチ指数関数的減衰曲線である、請求項11に記載の誤差を軽減する方法。
【請求項13】
量子コンピューティング計算を実行するためのデバイスであって、
第1の基本演算と第2の基本演算とを包含するが、それにおいて前記第1と第2の基本演算が異なるものとする基本演算のセットから基本演算を選択するべく構成された選択モジュールと、
第1の誤差率を有する第1の演算をキュビットの状態に対して実行し、
前記第1の誤差率を有する第2の演算を前記キュビットの前記状態に対して実行し、
前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第1の演算と前記第1の基本演算とを包含する第3の演算を、前記キュビットの前記状態に対して実行し、かつ、
前記第2の誤差率を有し、かつ前記第1の演算と前記第2の基本演算とを包含する第4の演算を、前記キュビットの前記状態に対して実行するべく構成された量子プロセッサと、
それぞれ前記第1、第2、第3、および第4の演算の実行の後に、第1、第2、第3、および第4の測定値を獲得するべく構成された量子測定デバイスと、
前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算し、
前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算し、
前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティング、かつ、
前記フィッティング済みの曲線を使用して、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとする第3の誤差率における前記キュビットの平均状態を補外するべく構成された古典的プロセッサと、
を包含する、量子コンピューティング計算を実行するためのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子コンピューティング、特に誤差軽減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、『オブザーバブル』、すなわち系特性の計算に使用することが可能である。オブザーバブルを測定するために、キュビットに対して量子演算のシーケンスを実行した後にキュビットの出力状態を測定することが可能である。通常、同じ量子演算のシーケンスが何度も反復され、測定された出力状態の平均を計算して、オブザーバブルの期待値を推定することが可能である。
【0003】
しかしながら、キュビットに対して実行される量子演算のシーケンス、つまりは推定される期待値は、誤差に左右される。量子コンピュテーションの目的は、これらの誤差を低減すること、さらには排除することである。しかしながら、近未来量子デバイスまたはNISQ(ノイズの多い中規模量子)時代の量子デバイスのためのより現実的なアプローチは、解析的アプローチを使用したこれらの誤差の軽減を目的とすることである。この方法においては、誤差のない、またはノイズのないオブザーバブルの期待値を推定することが可能である。
【0004】
誤差軽減技術は、ノイズの多い測定結果からノイズのない期待値を抽出する追加の測定を使用する。いくつかの既存の誤差軽減技術は、対称性検証、準確率、および誤差補外を含む。対称性検証は、系の既知の特性を使用して、キュビットの状態を測定すること(したがって、崩壊させること)を必要とすることなく誤差が生じているか否かを決定する。準確率は、回路内の構成要素と関連付けされる誤差をモデリングすることによって決定される追加ゲートを使用する。誤差補外は、ハードウエアを物理的に変更することによってノイズ・レベルを増加させ、より高いノイズ・レベルの測定値に基づいてノイズのない期待値を予測することを伴う。これらの誤差軽減技術のそれぞれは、異なるタイプのノイズの軽減に採用することが可能である。
【0005】
対称性検証はそのまま実行することができるが、誤差が結び付く可能性があり、包括的な誤差が対称性を利用して検出可能でなくなるため、対称性検証試験にパスした動作中の回路に誤差がないと捉えることはできない。
【0006】
準確率は、誤差を排除することが可能である。しかしながら、この誤差の排除は、非常に高いコストの下に得られ、多数の反復を必要とする。
【0007】
誤差補外は、実験者によるノイズ・レベルの増加を必要とする。増加されたノイズ・レベルの測定値に従ったノイズのないオブザーバブルの正確な予測は、追加のノイズがオリジナルのノイズと同じノイズ・モデルから生成されることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
より良好な誤差軽減技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法を提供する。前記方法は、キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行することを包含する。前記演算は、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が、第1の演算を実行することまたは第2の演算を実行することと、前記キュビットの前記状態を測定することと、を包含する。前記第1の演算は、ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算と、を包含する。前記第2の演算は、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算と、を包含する。前記第1と第2の基本演算は、基本演算のセットから選択される異なる基本演算である。前記第1の演算を実行する確率は、第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率は、第2の確率である。前記方法は、さらに、前記対称性演算を使用し、前記演算の各実行の後に前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得することを包含し、それにおいて、前記キュビットのグループは、複数のキュビットを包含し;前記対称性測定値は、前記誤差の数が偶数の場合の第1の対称性結果であるか、または前記誤差の数が奇数の場合の第2の対称性結果である。前記方法は、さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得することと、前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得することと、を包含する。前記方法は、さらに:nを誤差率とし、Aおよびγをフィッティングパラメータとしたときに、
【数1】
の形式を有する第1の曲線に前記第1の状態測定値をフィッティングすることと;
【数2】
の形式を有する第2の曲線に前記第2の状態測定値をフィッティングすることと;フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外することと、を包含し;それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低い。
【0010】
好都合なことに、この誤差を軽減する方法は、低減されたコストの下にオブザーバブルの改善された推定をもたらす結果に帰する。前記コストは、演算が実行される回数によって与えられる。前記方法は、準確率と、対称性検証と、誤差補外の誤差軽減技術を相乗的な態様で結び付ける。
【0011】
前記第1および第2の状態測定値は、それぞれ、第1および第2の曲線にフィッティングされる。前記第1および第2の状態測定値の組み合わせは、指数関数的減衰曲線によってモデリングすることが可能である。指数関数的減衰曲線は、オブザーバブルと誤差率の間における関係の良好なモデルとなることが明らかになっていることから、それを使用することは好都合である。オプションとしては、前記指数関数的減衰曲線を、2つ以上の指数関数の和を包含するマルチ指数関数的減衰曲線とする。マルチ指数関数的減衰曲線は、通常、単一指数関数的減衰曲線と比べるとより高いコストを有するが、誤差率の関数としてのオブザーバブルの期待値における変化の改善されたモデルを有益な形で提供することができる。
【0012】
通常、前記ゲート演算は、たとえば、パウリ・ゲート、アダマール・ゲート、SWAP(スワップ)ゲート、コントロール付きノット(CNOT)ゲート、またはコントロール付きZゲート等の任意の量子ロジック・ゲート演算を含むことができる。前記ゲート演算は、演算のシーケンスを包含することができる。前記第1の基本演算および前記第2の基本演算は、前記ゲート演算の後に実行することが可能である。通常、基本演算は、基本演算のセットから選択される。前記基本演算のセットは、16個の基本演算を包含することができる。好都合なことに、任意の単一キュビット演算(4×4行列として表すことが可能である)を16個の基本演算の一次結合として表すことが可能である。概して言えば、より多数のキュビットを適応させるために、前記基本演算のセット内の基本演算の数をより大きくすることができる。前記基本演算のセットは、パウリの基本演算を包含することができる。通常、n個のキュビットのために、基本演算のセットは、少なくとも4n個のパウリの基本演算を包含することができる。したがって、前記第1および第2の基本演算のそれぞれは、それらのパウリの基本演算のうちの1つとすることができる。
【0013】
前記演算の実行は、上記の代わりに、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第jの基本演算とを包含する第jの演算の実行を包含することができる。可能性のある演算のうちの実行することができる数は、前記基本演算のセット内の基本演算の数と好ましく関係する。たとえば、1つのゲート演算と、1つのキュビットと、セット内の3つの基本演算がある場合には、可能性のある演算のうちの実行することができる数を3つとすることができる。第jの演算を実行する確率は、第jの確率とすることができる。この方法においては、ランダムな基本演算を使用して、前記ゲート演算を修正することができる。これは、前記演算の実効誤差率を減じることができるという利点を有する。オプションとして述べるが、異なる実効誤差率を用いて前記方法を反復することができる。これは、前記第1の確率と前記第2の確率を変更することによって達成できる。
【0014】
前記対称性測定値は、前記対称性演算を使用して前記キュビットのグループについて獲得される。前記対称性測定値は、前記対称性演算および前記系に依存し得る既知のセットの対称性結果を好ましく有する。前記対称性測定値は、第1の対称性結果または第2の対称性結果である。オプションとして述べるが、2より大きいとすることができるkを用いれば、前記対称性測定値は、第kの対称性結果である。2つの対称性結果を伴う1つの例においては、前記第1の対称性結果がパスであり、前記対称性測定値が期待される対称性と揃う。この例においては、前記第2の対称性結果が、好ましくは、前記対称性が破られるフェイルである。第1および第2の状態測定値は、パスおよびフェイル両方の対称性結果について前記キュビットの前記平均の状態を決定することによって獲得される。オプションとして述べるが、第kの状態測定値は、第kの対称性結果について前記キュビットの前記平均の状態を決定することによって獲得される。この方法は、前記対称性試験にフェイルした前記測定値が、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を推定するときに建設的に使用されるという利点を有する。これは、誤差軽減演算を実行するコストを有益な形で低減する。
【0015】
通常、前記演算の実行は、前記対称性演算の実行を包含する。オプションとして述べるが、前記対称性演算を第1の対称性演算とする。前記演算の実行は、さらに、第2の対称性演算の実行を包含することができる。前記第2の対称性演算を使用する対称性測定値は、それぞれパスおよびフェイルとすることができる第3の対称性結果または第4の対称性結果とすることができる。前記第1の対称性演算は、前記系の第1の対称性の試験に使用することができ、前記第2の対称性演算は、前記系の第2の対称性の試験に使用することができる。この方法においては、前記キュビットのグループの複数の特性を同時に測定し、追加のデータを提供することができる。有益なことに、前記オブザーバブルの期待値のより良好な推定を提供するべく前記追加のデータを使用することができる。
【0016】
好ましくは、対称性演算および基本演算が、前記ゲート演算の後に実行される。オプションとして述べるが、前記対称性演算は、前記基本演算の前に実行される。それに代えて、前記対称性演算の前に前記基本演算を実行することができる。
【0017】
オプションとして述べるが、前記方法は、追加の誤差率において実行することができる。前記実効誤差率は、前記基本演算の選択および、基本演算のセット内の各基本演算が選択される確率によって決定することができる。一例においては、前記方法がさらに:前記キュビットのグループ内の前記キュビットの前記状態に対して別の演算を複数回にわたって実行することであって、前記別の演算が、第3の誤差率を有し、前記別の演算の各実行が:前記ゲート演算と、前記対称性演算と、別の第1の基本演算とを包含する別の第1の演算を実行すること;または、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、別の第2の基本演算とを包含する別の第2の演算を実行することと;前記キュビットの前記状態を測定することと;を包含し、それにおいて前記別の第1の演算を実行する確率が別の第1の確率であり、前記別の第2の演算を実行する確率が別の第2の確率であるとする、前記別の演算を実行することと;前記対称性演算を使用し、前記キュビットのグループについての別の対称性測定値を獲得すること;を包含し、それにおいて前記別の対称性測定値は、別の第1の対称性結果であるか、または別の第2の対称性結果であり;さらに、前記別の第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって別の第1の状態測定値を獲得することと;前記別の第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって別の第2の状態測定値を獲得することと;前記別の第1の状態測定値を別の第1の曲線に、前記別の第2の状態測定値を別の第2の曲線にフィッティングすることと;前記別の第1のフィッティング済みの曲線および前記別の第2のフィッティング済みの曲線を使用して第4の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外することと;を包含し、それにおいて前記第4の誤差率は、前記第3の誤差率より低い。
【0018】
好都合なことに、この方法は、基本演算のランダム選択を用いて前記ゲート演算を修正することによって、結果として異なる実効誤差率、すなわち前記第3の誤差率に帰する。通常、前記第1の基本演算と、前記第2の基本演算と、前記別の第1の基本演算と、前記別の第2の基本演算は、同一の基本演算のセットから選択される。この方法を使用すると、異なる関連付けされた確率を用いて前記基本演算のセットからランダムに基本演算を選択することによって、任意の第iの誤差率をもたらすことができる。基本演算を選択する確率は、好ましくは理論的に決定される。
【0019】
前記キュビットのグループ内の前記キュビットは、第1のキュビットとすることができ、前記量子コンピュテーションの一部として、さらなるキュビットの状態を演算することができる。好ましくは、前記方法が、さらに、前記キュビットのグループ内の第2のキュビットの状態に対して前記演算を複数回にわたって実行することと;前記第1の対称性結果のための前記第2のキュビットの平均の状態を決定することによって第3の状態測定値を獲得することと;前記第2の対称性結果のための前記第2のキュビットの平均の状態を決定することによって第4の状態測定値を獲得することと;前記第3の状態測定値を第3の曲線に、前記第4の状態測定値を第4の曲線にフィッティングすることと;フィッティング済みの前記第3および第4の曲線を使用して前記第2の誤差率における前記第2のキュビットの前記平均の状態を補外することと、を包含する。前記キュビットのグループ内には、任意の数のキュビットが存在することができ、各キュビットの前記状態は、類似の方法で演算することができる。好都合なことに、この方法は、全体として量子デバイス対して実行することが可能である。
【0020】
オプションとして述べるが、前記キュビットのグループ内の1つ以上のキュビットを、前記キュビットのグループ内の1つ以上のキュビットの状態の演算を実行する間にわたってアイドルのままに残しておくことができる。前記キュビットのグループ内の前記1つ以上のアイドル・キュビットは、一致ゲート演算を使用して演算することができる。前記1つ以上のアイドル・キュビットは、通常、前記一致ゲートの実行と関連付けされるデコヒーレンス誤差によって影響を受ける。前記演算の各実行の後に、前記対称性演算を使用して前記キュビットのグループについての対称性測定値が獲得される。前記対称性測定値が、好ましくは、演算が行われる前記キュビットのグループ内の前記1つ以上のキュビットと、アイドルのままに残された前記1つ以上のキュビットを含む。
【0021】
前記キュビット(または、複数のキュビット)は、電子スピン・キュビットとすることができる。好ましくは、前記キュビットが電子スピン・キュビットである場合に、前記キュビットの前記状態を電子スピンとする。好都合なことに、電子スピン・キュビットは、それらを操作すること、およびほかの電子スピン・キュビットと結合させることが容易に可能である。好ましくは、シリコン・ベースのデバイス内の電子スピン・キュビットが都合よく長いコヒーレンス時間を有し、かつ既存のテクノロジとの互換性があることから、前記キュビットをシリコン・ベースのデバイス内の電子スピン・キュビットとする。その種のデバイスは、NISQ(ノイズの多い中規模量子またはニスク)コンピューティング時代における使用に有益な形で適することができる。
【0022】
本発明の別の態様は、選択モジュールと;量子プロセッサと;量子測定デバイスと;対称性測定デバイスと;古典的プロセッサと、を包含する量子コンピューティング計算を実行するためのデバイスを提供する。前記選択モジュールは:第1の確率を用いて基本演算のセットから第1の基本演算を選択し;かつ、第2の確率を用いて基本演算のセットから第2の基本演算を選択するべく構成され;それにおいて前記第1と第2の基本演算は異なる。前記量子プロセッサは、キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行するべく構成され、それにおいて前記演算が第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:ゲート演算と、対称性演算と、前記選択された基本演算とを実行することを包含する。前記量子測定デバイスは、前記キュビットの前記状態を測定するべく構成される。前記対称性測定デバイスは、前記対称性演算を使用し、前記演算の各実行の後に前記キュビットのグループの前記対称性を測定するべく構成され、それにおいて前記キュビットのグループは、複数のキュビットを包含し;前記対称性測定値は、前記誤差の数が偶数の場合の第1の対称性結果であるか、または前記誤差の数が奇数の場合の第2の対称性結果である。前記古典的プロセッサは:前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得し、かつ前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得し;nを誤差率とし、Aおよびγをフィッティングパラメータとしたときに、
【数3】
の形式を有する第1の曲線に前記第1の状態測定値をフィッティング;
【数4】
の形式を有する第2の曲線に前記第2の状態測定値をフィッティング;かつ、フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して、第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外するべく構成され、それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低い。
【0023】
このデバイスは、オブザーバブルの測定された期待値におけるノイズの効果の軽減に都合よく使用することが可能である。前記選択モジュールは、前記ゲート演算の実行に続いて量子プロセッサによって実行されることになる第1または第2の基本演算を、対応する確率を用いて選択するべく構成される。この方法においては、前記キュビットの前記状態の前記測定値を、誤差軽減されたオブザーバブルの値を推定するべく再結合することができる。このデバイスを使用して推定された前記オブザーバブルの誤差のない値は、有益なことに正確かつ低コストである。
【0024】
好ましくは基本演算のセット内の基本演算の総数をJとするとき、好ましくは選択モジュールが、さらに、3≦j≦Jのために第jの基本演算を選択するべく構成される。前記基本演算のセットは、理論的に決定されたノイズ・モデル、ベンチマーク実験、および/または利用可能な実験的オプションの考察に基づいて決定することができる。
【0025】
本発明のさらなる態様は、インストラクションを包含するコンピュータ可読メモリ媒体を提供し、前記インストラクションは、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに:キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行するステップであって、前記演算が、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算とを包含する第1の演算を実行すること;または、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算とを包含する第2の演算を実行すること;を包含し、それにおいて前記第1と第2の基本演算は、基本演算のセットから選択される異なる基本演算であり;さらに、前記キュビットの前記状態を測定することを包含し;それにおいて前記第1の演算を実行する確率が第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率が第2の確率であるとする、前記演算を実行するステップと;前記対称性演算を使用する前記演算の各実行の後に前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得するステップであって、前記キュビットのグループが複数のキュビットを包含するものとするステップと;を包含し、それにおいて前記対称性測定値は、前記誤差の数が偶数の場合の第1の対称性結果であるか、または前記誤差の数が奇数の場合の第2の対称性結果であり;さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得するステップと;前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得するステップと;nを誤差率とし、Aおよびγをフィッティングパラメータとしたときに、前記第1の状態測定値を
【数5】
の形式を有する第1の曲線にフィッティングするステップと;前記第2の状態測定値を
【数6】
の形式を有する第2の曲線にフィッティングするステップと;フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外するステップであって、それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低いものとするステップと;を包含するステップの実行を量子コンピュータ上にもたらす。
【0026】
好都合なことに、このコンピュータ可読メモリ媒体は、低い推定誤差を有するオブザーバブルの誤差軽減値を決定するべく使用することが可能である。
【0027】
本発明の1つの態様は、量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法を提供する。前記方法は、キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行することを包含する。前記演算は、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が、第1の演算を実行することまたは第2の演算を実行することと、前記キュビットの前記状態を測定することと、を包含する。前記第1の演算は、ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算と、を包含する。前記第2の演算は、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算と、を包含する。前記第1の演算を実行する確率は、第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率は、第2の確率である。前記方法は、さらに、前記対称性演算を使用して前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得することを包含し、それにおいて前記対称性測定値は、第1の対称性結果であるか、または第2の対称性結果である。前記方法は、さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得することと、前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得することと、を包含する。前記方法は、さらに、前記第1の状態測定値と前記第2の状態測定値とを結び付け、前記キュビットの前記平均の状態を推定することを包含する。
【0028】
好都合なことに、この誤差を軽減する方法は、低減されたコストの下にオブザーバブルの改善された推定をもたらす結果に帰する。前記コストは、演算が実行される回数によって与えられる。前記方法は、準確率と対称性検証の誤差軽減技術を相乗的な態様で結び付ける。準確率は、前記対称性演算の使用では検出可能でない誤差を取り除くことができるような方法で前記誤差の形式を変更するべく有益な形で使用することが可能である。さらにまた、それぞれ前記第1および第2の対称性結果を獲得する相対的確率の知識を用いて、前記誤差のないオブザーバブルの改善された推定を提供するべく、前記第1および第2の状態測定値を再結合することが可能である。
【0029】
本発明の別の態様は、選択モジュールと;量子プロセッサと;量子測定デバイスと;対称性測定デバイスと;古典的プロセッサと、を包含する量子コンピューティング計算を実行するためのデバイスを提供する。前記選択モジュールは:第1の確率を用いて基本演算のセットから第1の基本演算を選択し;かつ、第2の確率を用いて基本演算のセットから第2の基本演算を選択するべく構成される。前記量子プロセッサは、キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行するべく構成され、それにおいて前記演算が第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:ゲート演算と、対称性演算と、前記選択された基本演算とを実行することを包含する。前記量子測定デバイスは、前記キュビットの前記状態を測定するべく構成される。前記対称性測定デバイスは、前記対称性演算を使用して前記キュビットのグループの前記対称性を測定するべく構成され、それにおいて、前記対称性測定値は、第1の対称性結果または第2の対称性結果である。前記古典的プロセッサは:前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得し、かつ前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得し;かつ、前記第1の状態測定値と前記第2の状態測定値とを結び付け、前記キュビットの前記平均の状態を推定するべく構成される。
【0030】
このデバイスは、オブザーバブルの測定された期待値における誤差の効果の軽減に都合よく使用することが可能である。前記選択モジュールは、前記ゲート演算の実行に続いて量子プロセッサによって実行されることになる第1または第2の基本演算を、対応する確率を用いて選択するべく構成される。前記キュビットの前記状態の測定値は、前記対称性測定値の結果に従って分類される。この方法においては、前記第1および第2の状態測定値を、第1および第2の対称性結果の前記確率の知識を用いて、誤差軽減されたオブザーバブルの値を推定するべく再結合することができる。
【0031】
本発明のさらなる態様は、インストラクションを包含するコンピュータ可読メモリ媒体を提供し、前記インストラクションは、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに:キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行するステップであって、前記演算が、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算とを包含する第1の演算を実行すること;または、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算とを包含する第2の演算を実行することと;前記キュビットの前記状態を測定することと;を包含し、それにおいて前記第1の演算を実行する確率が第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率が第2の確率であるとする、前記演算を実行するステップと;前記対称性演算を使用し、前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得するステップと;を包含し、それにおいて前記対称性測定値は、第1の対称性結果であるか、または第2の対称性結果であり;さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得するステップと;前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得するステップと;前記第1の状態測定値と前記第2の状態測定値とを結び付け、前記キュビットの前記平均の状態を推定するステップと;を包含するステップの実行を量子コンピュータ上にもたらす。
【0032】
好都合なことに、このコンピュータ可読メモリ媒体は、オブザーバブルの誤差軽減値をより正確に決定するべく使用することが可能である。
【0033】
本発明の1つの態様は、量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法を提供する。前記方法は:キュビットの状態に対して第1の演算を実行することであって、前記第1の演算が、第1の誤差率を有するものとすることと;前記キュビットの前記状態の第1の測定値を獲得することと;前記キュビットの前記状態に対して第2の演算を実行することであって、前記第2の演算が、前記第1の誤差率を有するものとすることと;前記キュビットの前記状態の第2の測定値を獲得することと;前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算することと;前記キュビットの前記状態に対して第3の演算を実行することであって、前記第3の演算が、前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第3の演算が、前記第1の演算と第1の基本演算を包含するものとすることと;前記キュビットの前記状態の第3の測定値を獲得することと;前記キュビットの前記状態に対して第4の演算を実行することであって、前記第4の演算が、前記第2の誤差率を有し、かつ前記第4の演算が、前記第1の演算と第2の基本演算を包含するものとすることと;それにおいて、前記第1と第2の基本演算は、基本演算のセットから選択される異なる基本演算であることと;前記キュビットの前記状態の第4の測定値を獲得することと;前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算することと、を包含する。前記方法は、さらに:前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティングすることと;前記フィッティング済みの曲線を使用して第3の誤差率における前記キュビットの平均のステージを補外することであって、前記第3の誤差率が、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとすることと、を包含する。
【0034】
好都合なことに、この誤差を軽減する方法は、低減されたコストの下にオブザーバブルの改善された推定をもたらす結果に帰する。前記方法は、準確率と誤差補外の誤差軽減技術を相乗的な態様で結び付ける。
【0035】
前記第1の基本演算と前記第2の基本演算は、基本演算のセットから選択される。好ましくは、前記選択が特定の基本演算を選択する重み付け確率を用いてランダムに行われる。オプションとして述べるが、前記第1の基本演算を選択する確率は、第1の確率であり、前記第2の基本演算を選択する確率は、第2の確率である。前記基本演算のセットは、さらに、選択される対応の確率をそれぞれ伴う追加の基本演算を包含することができる。この方法においては、ランダムな基本演算を使用して、前記第1の演算を修正することができる。これは、前記第1の誤差率から前記第2の誤差率へ前記演算の実効誤差率を減じることができるという利点を有する。前記第2の誤差率は、前記基本演算のそれぞれの前記選択確率に依存し得る。
【0036】
前記第1および第2の演算は、両方ともに前記第1の誤差率を有する。前記第1の平均値は、前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって計算される。好ましくは、前記第2の演算を前記第1の演算と同一とする。さらにまた、前記第1の演算が、通常は複数回にわたって反復され、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値は、結果として得られる測定値のそれぞれを平均することによって計算することが可能である。各測定値は、前記キュビットの前記2つの状態のそれぞれに対応する+1または-1のいずれかである。前記第1の演算を複数回にわたって実行することは、前記第1の誤差率における前記オブザーバブルの期待値の不確実性が低減されるという利点を有する。
【0037】
前記第3および第4の演算は、それぞれ第1および第2の基本演算を、前記第1の演算に加えて包含する。オプションにおいては、前記第1および第2の基本演算がパウリの基本演算である。前記パウリの基本演算は、通常、一致演算を含む。さらに修正された演算を、さらなる基本演算を使用して実行することができる。前記第1、第2、および任意の追加の基本演算のそれぞれは、基本演算のセットからランダムに選択することができる。この方法においては、修正された演算のランダム・サンプリングを伴わない前記第1の演算の実行と比べて実効誤差率を有益な形で低減することができる。
【0038】
好ましくは、前記キュビットをキュビットのグループ内の複数のキュビットのうちの1つとする。前記キュビットのグループ内の各キュビットの前記状態は、1つの演算または演算のシーケンスを実行することによって変換することができる。好都合なことに、この誤差軽減方法は、複数のキュビットを包含する量子デバイスに適用することが可能である。
【0039】
前記キュビットは、電子スピン・キュビットとすることができる。好ましくは、前記キュビットが電子スピン・キュビットである場合に、前記キュビットの前記状態を電子スピンとする。前記キュビットの前記状態の測定は、通常、スピン・アップ|↑>またはスピン・ダウン|↓>のいずれかを返す。好都合なことに、電子スピン・キュビットは、それらを操作すること、およびほかの電子スピン・キュビットと結合させることが容易に可能である。好ましくは、前記キュビットを、都合よく長いコヒーレンス時間を提供し、かつ既存のテクノロジとの互換性があるシリコン・ベースのデバイス内の電子スピン・キュビットとする。
【0040】
前記第1および第2の平均値は、曲線にフィッティングされる。オプションにおいては、前記曲線が指数関数的減衰曲線である。指数関数的減衰曲線は、通常、オブザーバブルと誤差率の間における関係の良好なモデルであることから、それを使用することは好都合である。オプションとしては、前記指数関数的減衰曲線を、2つ以上の指数関数の和を包含するマルチ指数関数的減衰曲線とする。好ましくは、前記マルチ指数関数的減衰曲線を
【数7】
の形式とし、それにおいてEは、前記キュビットの平均の状態であり、nは、誤差率であり、A
kおよびγ
kはフィッティングパラメータである。マルチ指数関数的減衰曲線は、通常、単一指数関数的減衰曲線と比べるとより高いコストを有するが、誤差率の関数としてのオブザーバブルの期待値における変化の改善されたモデルを有益な形で提供することができる。
【0041】
本発明の別の態様は、選択モジュールと;量子プロセッサと;量子測定デバイスと;古典的プロセッサと、を包含する量子コンピューティング計算を実行するためのデバイスを提供する。前記選択モジュールは、第1の基本演算と第2の基本演算とを包含するが、それにおいて前記第1と第2の基本演算が異なるものとする基本演算のセットから基本演算を選択するべく構成される。前記量子プロセッサは:第1の誤差率を有する第1の演算をキュビットの状態に対して実行し;前記第1の誤差率を有する第2の演算を前記キュビットの前記状態に対して実行し;前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第1の演算と前記第1の基本演算とを包含する第3の演算を、前記キュビットの前記状態に対して実行し;かつ、前記第2の誤差率を有し、かつ前記第1の演算と前記第2の基本演算とを包含する第4の演算を、前記キュビットの前記状態に対して実行するべく構成される。前記量子測定デバイスは、それぞれ前記第1、第2、第3、および第4の演算の実行の後に、第1、第2、第3、および第4の測定値を獲得するべく構成される。前記古典的プロセッサは:前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算し;前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算し;前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティング;かつ、前記フィッティング済みの曲線を使用して、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとする第3の誤差率における前記キュビットの平均の状態を補外するべく構成される。
【0042】
好都合なことに、このデバイスは、オブザーバブルの測定された期待値における誤差の効果の軽減に使用することが可能である。このデバイスを使用して推定された前記オブザーバブルのノイズのない値は、有益なことに正確かつ低コストである。
【0043】
本発明のさらなる態様は、インストラクションを包含するコンピュータ可読メモリ媒体を提供し、前記インストラクションは、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに:キュビットの状態に対して第1の演算を実行することであって、前記第1の演算が、第1の誤差率を有するものとするステップと;前記キュビットの前記状態の第1の測定値を獲得するステップと;前記キュビットの前記状態に対して第2の演算を実行するステップであって、前記第2の演算が、前記第1の誤差率を有するものとするステップと;前記キュビットの前記状態の第2の測定値を獲得するステップと;前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算するステップと;前記キュビットの前記状態に対して第3の演算を実行するステップであって、前記第3の演算が、前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第3の演算が、前記第1の演算と第1の基本演算を包含するものとするステップと;前記キュビットの前記状態の第3の測定値を獲得するステップと;前記キュビットの前記状態に対して第4の演算を実行するステップであって、前記第4の演算が、前記第2の誤差率を有し、かつ前記第4の演算が、前記第1の演算と第2の基本演算を包含し、かつそれにおいて前記第1と第2の基本演算が、基本演算のセットから選択される異なる基本演算であるとするステップと;前記キュビットの前記状態の第4の測定値を獲得するステップと;前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算するステップと;前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティングするステップと;前記フィッティング済みの曲線を使用して、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとする第3の誤差率における前記キュビットの平均のステージを補外するステップと;を包含するステップの実行を量子コンピュータ上にもたらす。
【0044】
好都合なことに、このコンピュータ可読メモリ媒体は、低い推定誤差を有するオブザーバブルの誤差軽減値を決定するべく使用することが可能である。
【0045】
本発明の別の態様は、量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法を提供する。前記方法は、キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行することを包含する。前記演算は、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が、第1の演算を実行することまたは第2の演算を実行することと、前記キュビットの前記状態を測定することと、を包含する。前記第1の演算は、ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算と、を包含する。前記第2の演算は、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算と、を包含する。前記第1の演算を実行する確率は、第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率は、第2の確率である。前記方法は、さらに、前記対称性演算を使用して前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得することを包含し、それにおいて前記対称性測定値は、第1の対称性結果であるか、または第2の対称性結果である。前記方法は、さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得することと、前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得することと、を包含する。前記方法は、さらに、前記第1の状態測定値を第1の曲線に、前記第2の状態測定値を第2の曲線にフィッティングすることと;フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外することと、を包含し、それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低い。
【0046】
本発明のさらなる態様は、選択モジュールと;量子プロセッサと;量子測定デバイスと;対称性測定デバイスと;古典的プロセッサと、を包含する量子コンピューティング計算を実行するためのデバイスを提供する。前記選択モジュールは:第1の確率を用いて基本演算のセットから第1の基本演算を選択し;かつ、第2の確率を用いて基本演算のセットから第2の基本演算を選択するべく構成される。前記量子プロセッサは、キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行するべく構成され、それにおいて前記演算が第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:ゲート演算と、対称性演算と、前記選択された基本演算とを実行することを包含する。前記量子測定デバイスは、前記キュビットの前記状態を測定するべく構成される。前記対称性測定デバイスは、前記対称性演算を使用して前記キュビットのグループの前記対称性を測定するべく構成され、それにおいて、前記対称性測定値は、第1の対称性結果または第2の対称性結果である。前記古典的プロセッサは:前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得し、かつ前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得し;前記第1の状態測定値を第1の曲線に、前記第2の状態測定値を第2の曲線にフィッティング;かつ、フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して、第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外するべく構成され、それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低い。
【0047】
本発明の別の態様は、インストラクションを包含するコンピュータ可読メモリ媒体を提供し、前記インストラクションは、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに:キュビットのグループ内のあるキュビットの状態に対する演算を複数回にわたって実行するステップであって、前記演算が、第1の誤差率を有し、前記演算の各実行が:ゲート演算と、対称性演算と、第1の基本演算とを包含する第1の演算を実行すること;または、前記ゲート演算と、前記対称性演算と、第2の基本演算とを包含する第2の演算を実行することと;前記キュビットの前記状態を測定することと;を包含し、それにおいて前記第1の演算を実行する確率が第1の確率であり、前記第2の演算を実行する確率が第2の確率であるとする、前記演算を実行するステップと;前記対称性演算を使用し、前記キュビットのグループについての対称性測定値を獲得するステップと;を包含し、それにおいて前記対称性測定値は、第1の対称性結果であるか、または第2の対称性結果であり;さらに、前記第1の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第1の状態測定値を獲得するステップと;前記第2の対称性結果のための前記キュビットの平均の状態を決定することによって第2の状態測定値を獲得するステップと;前記第1の状態測定値を第1の曲線に、かつ前記第2の状態測定値を第2の曲線にフィッティングするステップと;フィッティング済みの前記第1および第2の曲線を使用して第2の誤差率における前記キュビットの前記平均の状態を補外するステップであって、それにおいて前記第2の誤差率は、前記第1の誤差率より低いものとするステップと、を包含するステップの実行を量子コンピュータ上にもたらす。
【0048】
本発明の1つの態様は、量子コンピューティングにおける誤差を軽減する方法を提供する。前記方法は:キュビットの状態に対して第1の演算を実行することであって、前記第1の演算が、第1の誤差率を有するものとすることと;前記キュビットの前記状態の第1の測定値を獲得することと;前記キュビットの前記状態に対して第2の演算を実行することであって、前記第2の演算が、前記第1の誤差率を有するものとすることと;前記キュビットの前記状態の第2の測定値を獲得することと;前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算することと;前記キュビットの前記状態に対して第3の演算を実行することであって、前記第3の演算が、前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第3の演算が、前記第1の演算と第1の基本演算を包含するものとすることと;前記キュビットの前記状態の第3の測定値を獲得することと;前記キュビットの前記状態に対して第4の演算を実行することであって、前記第4の演算が、前記第2の誤差率を有し、かつ前記第4の演算が、前記第1の演算と第2の基本演算を包含するものとすることと;前記キュビットの前記状態の第4の測定値を獲得することと;前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算することと、を包含する。前記方法は、さらに:前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティングすることと;前記フィッティング済みの曲線を使用して第3の誤差率における前記キュビットの平均のステージを補外することであって、前記第3の誤差率が、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとすることと、を包含する。
【0049】
本発明の別の態様は、選択モジュールと;量子プロセッサと;量子測定デバイスと;古典的プロセッサと、を包含する量子コンピューティング計算を実行するためのデバイスを提供する。前記選択モジュールは、第1の基本演算と第2の基本演算とを包含する基本演算のグループから基本演算を選択するべく構成される。前記量子プロセッサは:第1の誤差率を有する第1の演算をキュビットの状態に対して実行し;前記第1の誤差率を有する第2の演算を前記キュビットの前記状態に対して実行し;前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第1の演算と前記第1の基本演算とを包含する第3の演算を、前記キュビットの前記状態に対して実行し;かつ、前記第2の誤差率を有し、かつ前記第1の演算と前記第2の基本演算とを包含する第4の演算を、前記キュビットの前記状態に対して実行するべく構成される。前記量子測定デバイスは、それぞれ前記第1、第2、第3、および第4の演算の実行の後に、第1、第2、第3、および第4の測定値を獲得するべく構成される。前記古典的プロセッサは:前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算し;前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算し;前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティング;かつ、前記フィッティング済みの曲線を使用して、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとする第3の誤差率における前記キュビットの平均の状態を補外するべく構成される。
【0050】
本発明のさらなる態様は、インストラクションを包含するコンピュータ可読メモリ媒体を提供し、前記インストラクションは、コンピュータによって実行されたときに、前記コンピュータに:キュビットの状態に対して第1の演算を実行するステップであって、前記第1の演算が、第1の誤差率を有するものとするステップと;前記キュビットの前記状態の第1の測定値を獲得するステップと;前記キュビットの前記状態に対して第2の演算を実行するステップであって、前記第2の演算が、前記第1の誤差率を有するものとするステップと;前記キュビットの前記状態の第2の測定値を獲得するステップと;前記第1の測定値と前記第2の測定値を平均することによって、前記第1の誤差率における前記キュビットの前記状態の第1の平均値を計算するステップと;前記キュビットの前記状態に対して第3の演算を実行するステップであって、前記第3の演算が、前記第1の誤差率より低い第2の誤差率を有し、かつ前記第3の演算が、前記第1の演算と第1の基本演算を包含するものとするステップと;前記キュビットの前記状態の第3の測定値を獲得するステップと;前記キュビットの前記状態に対して第4の演算を実行するステップであって、前記第4の演算が、前記第2の誤差率を有し、かつ前記第4の演算が、前記第1の演算と第2の基本演算を包含するものとするステップと;前記キュビットの前記状態の第4の測定値を獲得するステップと;前記第3の測定値と前記第4の測定値を平均することによって、前記第2の誤差率における前記キュビットの前記状態の第2の平均値を計算するステップと;前記キュビットの前記状態の前記第1の平均値および前記キュビットの前記状態の前記第2の平均値を曲線にフィッティングするステップと;前記フィッティング済みの曲線を使用して、前記第1の誤差率および前記第2の誤差率より低いとする第3の誤差率における前記キュビットの平均のステージを補外するステップと;を包含するステップの実行を量子コンピュータ上にもたらす。
【0051】
以下、次に挙げる添付図面を参照し、本発明の実施態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】第1の実施態様に従った誤差軽減方法を示したフローチャートである。
【
図2】第2の実施態様に従った誤差軽減方法を示したフローチャートである。
【
図3】実施態様に従った量子コンピュテーションを図解した概略図である。
【
図4】誤差率の関数としてオブザーバブルの値を図解したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、実施態様に従った誤差軽減方法を図示したフローチャートである。この実施態様においては、準確率、対称性検証、および誤差補外の組み合わせが使用される。
【0054】
量子コンピュテーションは、通常:キュビットのグループの初期化と;そのキュビットのグループに対する量子演算のシーケンスの実行と;キュビットのそれぞれの出力状態の測定とを伴う。測定は、全体としてのキュビットのグループに対して実行することも可能である。量子演算のシーケンスは、関連付けされる誤差を有する。
【0055】
ステップS101においては、量子プロセッサを使用してキュビットのグループ内のキュビットの状態に対する演算が実行される。この演算は、第1の誤差率を有し、複数回にわたって実行される。第1の誤差率n1は、演算が実行される回毎に生じることが期待される誤差の数である。各回に生じる誤差の実際の数は変動するが、複数の演算にわたる平均の誤差の数は、概略でn1に等しい。位相緩和誤差および脱分極性誤差を含めた誤差は、可能性のある多数の誤差ロケーションMにおいて生じ得る。可能性のある誤差ロケーション数が大きいこと、および第1の誤差率が1程度であること、すなわちM>>1かつ、n1~1を仮定する。
【0056】
毎回、演算が実行される都度、その演算に続くキュビットの状態が、量子測定デバイスを使用して測定される。複数回の演算の実行後に、キュビットの状態の期待値を、古典的プロセッサを使用して個別の測定値を平均することによって獲得することが可能である。この期待値は、位置またはモーメンタム等の、またしばしばオブザーバブルと呼ばれる系の物理量にマップすることが可能である。
【0057】
ステップS101において実行される演算は、ゲート演算および追加の演算を含む。ゲート演算は、1つ以上の量子ロジック・ゲート演算を含む。任意の量子ゲートまたは一連の量子ゲートは、実験の要件に従って選択することができる。追加の演算は、ゲート演算の後に実行され、ゲート演算の実行から生じる誤差の軽減に使用される。これらの追加の演算は、対称性検証を使用した誤差軽減に使用される対称性演算と、準確率を使用した誤差軽減に使用される基本演算を含む。対称性検証および準確率誤差軽減技術については、以下に論じる。
【0058】
誤差軽減を伴わなければ、ノイズの多いオブザーバブルの測定値を、ゲート演算を使用して獲得することが可能である。ゲート演算は、測定されることになるオブザーバブルに基づいて実験者によって選択される。誤差軽減技術のねらいは、ノイズレスな、またはノイズのないゲート演算が行われたオブザーバブルの値を推定することである。ノイズの多いゲート演算Unは、ノイズ演算Mが後に続くノイズのない演算U0として、すなわちUn=MU0によって表すことができる。
【0059】
準確率誤差軽減技術においては、ノイズの逆数M
-1を、基本演算のセット内の各基本演算B
jの関数として表すことができ、それにおいて1≦j≦Jであり、Jは、セット内の基本演算の数である。この実施態様においては、パウリの原理が使用され、それにおいては、セット内に4つの異なる基本演算がある(J=4)。キュビットの状態sに作用するパウリの基本演算B
jは、
【数8】
と書くことが可能であり、それにおいて
【数9】
、および
【数10】
であり、
【数11】
は、b
jの転置複素共役である。ノイズの逆数は、M
-1=a
1B
1+a
2B
2+a
3B
3+a
4B
4として表すことができ、それにおいてa
jは、数値係数である。
【0060】
ノイズのない演算の効果を推定するために、ゲート演算の後に基本演算を実行することが可能である。基本演算は、選択モジュールによってランダムに選択される。この場合においては、1つのゲート演算および3つの基本演算のための可能性のある演算が:B1Un、B2Un、B3Un、およびB4Unである。第jの基本演算は、|aj|に比例する確率を用いて選択モジュールによって選択される。
【0061】
代替実施態様においては、追加ゲート演算を実行することが可能であり、かつ基本演算のセットから異なる基本演算を選択することができる。これは、選択モジュールによって選択が可能な、可能性のある演算の数を増加させる。したがって、準確率を使用するノイズのない演算の効果の軽減は、通常、非常に多くの数の演算の実行を必要とする。
【0062】
この実施態様においては、準確率が使用されて、誤差を排除すると言うよりは、むしろそれを低減する。自然の誤差率nから第1の誤差率n
1まで誤差率を低減するための準確率の使用のコストCは、約
【数12】
である。したがって、誤差の低減が小さい場合のコストは、誤差の低減が大きいか、または完全に排除する場合のコストより有意に低い。
【0063】
誤差を排除すると言うよりは、むしろそれを低減する準確率の使用は、コストを都合よくより低くし、したがって、必要とする演算の反復をより少なくする。ノイズの多いゲート演算Unを、第1の誤差率を伴うゲート演算Un1に変換することが可能であり、それにおいて当該第1の誤差率は、ノイズの多いゲート演算の誤差率Unより低い(n1<n)。オリジナルと低減誤差の演算の間の関係は、Un=NUn1として表すことが可能である。
【0064】
変換N-1は、基本演算の関数、N-1=p1B1+p2B2+p3B3+p4B4として表すことが可能であり、各基本演算は、j=1,2,3,4についての|pj|に比例する確率を用いる演算の実行に含めることが可能である。たとえば、p1=0.1、p2=-0.2、p3=0.8およびp4=0.3であり、かつ140回の演算が実行されるとすると、第1の演算B1Unが約10回実行されることになり、第2の演算B2Unが約20回実行されることになり、第3の演算B3Unが約80回実行されることになり、第4の演算B4Unが約30回実行されることになる。
【0065】
したがって、ステップS101において実行される各演算は、ゲート演算に続く第jの基本演算を含む。第jの基本演算を使用して修正される演算は、第jの演算と呼ぶことができる。その演算は、複数回にわたって実行され、それぞれの可能性のある修正演算が、確率|pj|に従って複数回にわたって実行される。通常、ステップS101は、キュビットのグループ内の各キュビットの状態に対して実行する1セットの修正演算を含む。
【0066】
対称性検証誤差軽減技術においては、対称性演算が実行され、対称性測定が行われる。量子コンピュテーションにおいては、系のいくつかの特性が既知であり、検証することが可能である。たとえば、各電子の特定の状態とは無関係に、系内の電子の数が固定されたまま残される必要がある。誤差が生じた場合には、それが、電子の減少または増加として現れることができる。
【0067】
しかしながら、全体としてのキュビットのグループに対称性演算が実行されるとき、対称性検証を使用して複数の誤差の発生を容易に見分けることは可能でない。上の例においては、対称性演算が、電子全体の数が奇数であるか、または偶数であるかを決定することが可能なだけであるとし得る。対称性演算の実行に続く対称性測定の結果は、電子の数が±1、±3、±5等だけ変化する場合にフェイルすることになる。フェイルした対称性試験は、少なくとも1つの誤差が生じたことの表示である。結果は、電子の数が変化しなかった場合にパスとなるが、数が±2、±4、±6等だけ変化した場合においてもパスする。対称性検証試験にフェイルした測定値は、通常、少なくとも1つの誤差が生じたことが既知であることから、既存の誤差軽減技術においては破棄されている。しかしながら、パスした対称性検証試験から、誤差が生じていないと結論することは可能でない。
【0068】
ステップS101において実行される各演算は、対称性演算Sを含む。ノイズの多いゲート演算Unは、選択された対称性演算を使用して検出することが可能でない形式の誤差を含むことがある。したがって、この実施態様においては、準確率技術が使用されて、対称性の使用ではローカルに検出可能でない誤差の成分を取り除く。上記の対称性検証技術の説明から、残りのローカルに検出可能な誤差が再び結び付いてグローバルに検出可能でない誤差を形成し得ることが注目される。対称性測定は、グローバルに実行される。
【0069】
ステップS101におけるゲート演算の後に実行される対称性演算および基本演算は、ゲート演算に続いていずれの順序で実行することも可能である。キュビットのグループのうちのあるキュビットに対して実行される第1の可能性のある演算は、ゲート演算Unと、それに続く対称性演算Sと、さらにそれに続く第1の基本演算B1の実行を含み、第1の基本演算は、|p1|に比例する第1の確率を用いて選択モジュールによって選択される。第1の基本演算は、系の対称性を変更し、かつ相応じて、対称性検証のパス/フェイル評価基準を修正することができる。キュビットの状態が、第1の演算における演算のシーケンスの実行に続いて、量子測定デバイスによって測定される。
【0070】
キュビットのグループ内のキュビットに対して実行される第2の可能性のある演算は、ゲート演算Unと、それに続く第2の基本演算B2と、さらにそれに続く対称性演算Sの実行を含み、第2の基本演算は、|p2|に比例する第2の確率を用いて選択モジュールによって選択される。同様に、キュビットの状態が、第2の演算における演算のシーケンスの実行に続いて量子測定デバイスによって測定される。
【0071】
キュビットの状態は、概して、第1の状態|0>と第2の状態|1>の重ね合わせである。しかしながら、測定時においては、キュビットの状態が第1の状態または第2の状態、すなわち0または1のいずれかであり、これは、それぞれ測定結果の-1または+1に対応する。
【0072】
第1および第2の状態は、キュビットのタイプに応じて異なる。したがって、測定されるキュビットの特性は、そのキュビットのタイプに依存する。量子測定デバイスは、キュビットのタイプに対応して選択される。たとえば、電子スピン・キュビットの第1および第2の状態は、スピン・アップおよびスピン・ダウンであり、それにおいてスピン・アップは、+1として記録され、スピン・ダウンは、-1として記録される。したがって、電子スピン・キュビットの測定は、電子スピンを測定することによって獲得され、量子測定デバイスは、電子スピンを測定するべく構成される。
【0073】
キュビットが電子電荷キュビットである場合には電子電荷が測定され、それにおいては、第1および第2の状態が、電子なしおよび1電子になる。キュビットが超電導相キュビットである場合には、励起状態が測定され、それにおいては、第1および第2の状態が、グラウンド状態および第1の励起状態になる。第1および第2の測定可能な状態を伴う任意の量子系は、キュビットとして使用することが可能である。第1および第2の状態を見分けることを可能にする適切な量子測定デバイスが、測定値を獲得するために使用される。
【0074】
ステップS101における演算を複数回にわたって実行することによって、キュビットの平均の状態を決定することが可能である。オリジナルの演算Unと低減誤差演算Un1の間の関係、すなわち、N-1Un=Un1を使用し(ただし、N-1=p1B1+p2B2+p3B3+p4B4)、キュビットの状態に対する低減された誤差演算の効果を決定するべく、|pj|に比例する確率を用いて異なる基本演算Bjがサンプリングされる修正演算の実行に続いて獲得された測定値を計算的に再結合することが可能であることがわかる。これらの測定値には、係数pjの符号に応じて±1のパリティが割り当てられる。たとえば、p2=-0.2であり、SB2Unの実行に続くキュビットの状態が1であると測定された場合には、その測定値が-1として記録される。
【0075】
ステップS102においては、対称性演算を使用し、キュビットのグループについての対称性測定値が対称性測定デバイスを使用して獲得される。キュビットのグループは、複数のキュビットを包含する。対称性測定値は、演算S101の各実行の後に、S102において獲得される。対称性測定値は、誤差の数が偶数の場合の第1の対称性結果の『パス』、または誤差の数が奇数の場合の第2の対称性結果の『フェイル』のいずれかとなる。対称性検証試験の実行に使用することが可能な系特性の例には、パリティ、粒子の数、およびエネルギが含まれる。既存の対称性検証技術においては、対称性試験にフェイルした測定値が破棄される。しかしながら、この実施態様においては、いずれの測定値も維持され、それの対称性結果に従って分類される。これは、この実施態様の誤差軽減技術のコストを低減する。対称性検証試験にフェイルした測定値は、それにもかかわらず、以下に述べる方法および解析を使用して建設的に使用することが可能である。
【0076】
この実施態様においては、単一の対称性演算が、ゲート演算に続いて実行される。代替実施態様においては、1を超える数の対称性演算が使用される。通常、系の異なる性質の対称性の検証に各対称性演算が使用され、パスまたはフェイルの結果が返される。
【0077】
ステップS103においては、第1の状態測定値Epassが獲得される。ステップS102における対称性分類に続いて『パス』として分類された、ステップS101における演算の実行に続くキュビットの状態の測定値が、古典的プロセッサを使用して平均される。平均された測定値は、実行された第jの演算のセットから獲得される。決定済みの係数pjに従った、可能性のある基本演算Bjの重み付けされたサンプリングは、理論的に決定された変換N-1を実験的に再現する。
【0078】
ステップS104においては、第2の状態測定値E
failが獲得され、それにおいては、ステップS102において『フェイル』として分類された測定値が、古典的プロセッサを使用して平均される。これらの第1の状態測定値および第2の状態測定値は、偶数の誤差が生じる確率と奇数の誤差が生じる確率が異なることから、異なるものとなる。第1の誤差率n
1において偶数の誤差の生じる確率は、
【数13】
である。第1の誤差率において奇数の誤差の生じる確率は、
【数14】
である。ステップS102、S103、およびS104において獲得される測定値は、同時に獲得され得る。
【0079】
1を超える数の対称性演算が実行される代替実施態様においては、追加の状態測定値を獲得することができる。たとえば、2つの対称性演算が実行され、かつそれぞれがパスまたはフェイルの結果を有する場合には、パス-パス、パス-フェイル、フェイル-パス、およびフェイル-フェイルに対応する4つの状態測定値が測定されることになる。
【0080】
ステップS105においては、従来的なコンピュータの古典的プロセッサを使用して第1および第2の状態測定値が、それぞれ、第1および第2の曲線にフィッティングされる。これは、補外法の誤差軽減技術である。オブザーバブルの期待値、すなわちキュビットの状態の個別の測定値の平均は、ノイズのレベルに依存する。オブザーバブルの期待値とノイズ・レベル、または誤差率の間における関係が傾向線に従うと仮定すると、測定された状態測定値を傾向線にフィッティング、より低いノイズにおけるオブザーバブルの期待値の予測に使用することが可能である。
【0081】
この実施態様においては、オブザーバブルの期待値が、誤差率の増加に伴って指数関数的に減衰すると仮定する。第1および第2の状態測定値は、ステップS101において実行された演算から第1の誤差率を伴う結果としてもたらされたが、対称性検証試験をパスする確率またはフェイルする確率が異なることから、これら2つの状態測定値は、測定された期待値が異なる結果に帰することになる。第1の状態測定値のフィッティングに使用される第1の曲線は、
【数15】
の形式を有し、それにおいてAおよびγは、フィッティングパラメータであり、nは、誤差率である。第2の状態測定値のフィッティングに使用される第2の曲線は、
【数16】
の形式を有する。
【0082】
第1の誤差率においては、キュビットの状態の期待値をEn1=PevenEpass+PoddEfailとして表すことが可能である。代替実施態様においては、キュビットの状態の期待値のこの推定を、第1および第2の対称性結果の確率Peven、Poddと、第1および第2の状態測定値Epass、Efailの組み合わせを使用して、オブザーバブルの誤差軽減値の提供に使用することが可能である。
【0083】
この実施態様においては、オブザーバブルの値が誤差率の増加に伴って概略で指数関数的に減衰するとの仮定とともに誤差の補外を使用して、誤差がさらに軽減される。単一の誤差率において獲得される測定値の2つのカテゴリ、すなわちパスおよびフェイルの測定値は、指数関数的減衰曲線が単一の指数関数的減衰、すなわち、En=Ae-γnであると仮定し、ノイズのない期待値の決定に使用することが可能であり、それにおいてEnは、キュビットの平均の状態であり、nは、誤差率であり、Aおよびγは、フィッティングパラメータである。
【0084】
代替実施態様においては、曲線がマルチ指数関数的減衰曲線であり、2つ以上の指数関数の和、すなわちK>1についての
【数17】
を包含する。フィッティングパラメータがオブザーバブルの期待値と誤差率の間における関係を適切に反映していることを確保するために、充分なデータ・ポイントがある必要がある。たとえば、K=2であるデュアル指数関数的減衰曲線は、4つのフリーフィッティングパラメータA
1、A
2、γ
1、およびγ
2を決定するために最小限4つの測定値を必要とする。これは、上に述べられているとおり、2つの対称性演算と4つの状態測定値を使用して達成することが可能である。それに代えて、またはそれに加えて、異なる修正演算の下にキュビットの状態の追加の測定値を獲得するべく、別の誤差率において演算を実行することができる。
【0085】
ステップS106においては、古典的プロセッサを使用して、キュビットの平均の状態が、第1の誤差率より低い第2の誤差率において補外される。この実施態様においては、ノイズのない期待値の推定が可能となるように、第2の誤差率がゼロの誤差率となるように選択される。
【0086】
ステップS105からの第1および第2のフィッティング曲線を使用し、次に示す方程式を使用して第1および第2の状態測定値EpassおよびEfailをそれぞれ結び付けることによってノイズのない期待値E0を決定することが可能である。
【0087】
【0088】
図2は、別の実施態様に従った誤差軽減方法を図示したフローチャートである。ステップS201においては、量子プロセッサを使用してキュビットの状態に対して第1の演算が実行される。第1の演算は、第1の誤差率n
1を有し、この実施態様においてはそれが、通常、量子コンピューティング・システムの軽減されていない誤差率である。通常、軽減されていない誤差率は、もっとも低い実験的に達成可能な誤差率である。しかしながら、ハードウエアの変動およびそのほかの環境因子が、その誤差率に影響を与え得る。
【0089】
第1の演算は、実験者によって選択されるゲート演算である。第1の演算の実行後、量子測定デバイスを使用してキュビットの状態の第1の測定値が、ステップS202において獲得される。測定結果は、
図1に関連して説明したとおり、+1または-1のいずれかである。
【0090】
ステップS203においては、量子プロセッサを使用してキュビットの状態に対して第2の演算が実行される。第2の演算もまた、第1の誤差率n1を有する。この実施態様における第2の演算は、ステップS201において実行されたものと同じゲート演算である。第2の演算の実行後、量子測定デバイスを使用してキュビットの状態の第2の測定値が、ステップS204において獲得される。
【0091】
ゲート演算は、通常、複数回にわたって反復され、ゲート演算の各実行後にキュビットの状態の測定値が獲得される。その後、ステップS205において、古典的プロセッサを使用してキュビットの状態の第1の平均値が計算される。第1の平均値は、第1の測定値と第2の測定値と、獲得された任意の追加の測定値を平均することによって計算される。第1の平均値は、第1の誤差率におけるオブザーバブルの期待値を表す。
【0092】
ステップS206においては、量子プロセッサを使用してキュビットの状態に対して第3の演算が実行される。第3の演算は、第1の誤差率n
1より低い第2の誤差率n
2を有し、すなわち、n
2<n
1である。より低い誤差率は、
図1に関連して説明したとおり、準確率技術を使用して達成される。第3の演算は、第1の演算および第1の基本演算を含む。第1の基本演算は、基本演算のセットのうちの1つであり、選択モジュールを使用し、第1の確率を用いてランダムに選択される。第3の演算の実行に続き、ステップS207において、量子測定デバイスを使用してキュビットの状態の第3の測定値が獲得される。
【0093】
ステップS208においては、キュビットの状態に対して第4の演算が実行される。第4の演算は、第2の誤差率n2を有する。第4の演算は、第1の演算および第2の基本演算を含む。第2の基本演算は、基本演算のセットのうちの1つであり、選択モジュールを使用し、第2の確率を用いてランダムに選択される。第2の基本演算は、第1の基本演算と異なる。第4の演算の実行に続き、ステップS208においてキュビットの状態の第4の測定値が獲得される。
【0094】
修正ゲート演算、すなわちランダムに選択される基本演算が続く第1の演算が、通常、複数回にわたって反復される。ランダムに選択される基本演算は、第1の基本演算、第2の基本演算、およびさらなる、異なる基本演算を包含する基本演算のセットから選択される。この実施態様においては、使用される基本演算のセットが、パウリのセットであり、単一キュビット演算のための4つの異なる基本演算が存在する。基本演算のそれぞれの選択は、
図1に関連して説明したとおり、準確率を使用して決定された係数に従って重み付けされる。修正ゲート演算のそれぞれの実行後に、キュビットの状態の測定値が獲得される。この方法においては、ゲート演算に続いて追加の基本演算を実行することによって誤差率を低減することが可能である。
【0095】
ゲート演算は、通常、演算のシーケンスであり、パウリまたはアダマール・ゲート等の任意の典型的な量子ゲートを包含することができ、キュビットは、キュビットのグループのうちの1つである。選択モジュールは、キュビットのグループ内の各キュビットの状態に対して実行される各演算を修正するべく構成される。オプションとして、いくつかの演算が修正されず、ノーマルな形で実行される。この修正のランダムな性質は、キュビットの状態の期待値の、偏りのない統計的な表現を提供する。この実施態様においては、n個のキュビットのグループのために、選択モジュールが、4n個の基本演算のセットからランダムに基本演算を選択する。
【0096】
キュビットの状態の第2の平均値が、第3の測定値と、第4の測定値と、獲得された任意の追加の測定値を平均することによって、ステップS210において計算される。決定された係数pjに従った、可能性のある基本演算の重み付けされたサンプリングBjは、理論的に決定された変換N-1=ΣjpjBjを実験的に再現する。この実施態様においては、第1の誤差率を有する演算と第2の誤差率を有する演算が次のように関係付けられる:Un1=NUn2、ただし、n2<n1。第2の平均値は、第2の誤差率におけるオブザーバブルの期待値を表す。この実施態様においては、ノイズ・モデルが単純化されるように誤差の形式を変更するべくオペレータNが設計される。
【0097】
ステップS211においては、古典的プロセッサを使用して第1および第2の平均値が曲線にフィッティングされる。選択される曲線は、キュビットの状態の期待値と誤差率の間における関係の理論的な理解に依存し得る。この実施態様においては、その曲線が、単一の指数関数を包含する指数関数的減衰曲線、すなわちEn=Ae-γnであり、それにおいてEnは、キュビットの平均の状態であり、nは、誤差率であり、Aおよびγは、フィッティングパラメータである。
【0098】
代替実施態様においては、その曲線が、少なくとも2つの指数関数を包含するマルチ指数関数的減衰曲線、すなわちK>1についての
【数19】
である。マルチ指数関数的減衰曲線にフィッティングするために、キュビットの平均値のさらなる測定値を獲得することが通常は必要であり、全体的な傾向線ではなく、むしろローカライズされたノイズの表現に帰することになる曲線の過剰フィッティングとならないことが確保される。
【0099】
第1および第2の平均値のフィッティングによって曲線の形状が決定された後、ステップS212において、補外を使用して第3の誤差率におけるキュビットの平均の状態を推定することが可能である。第3の誤差率は、第1および第2の誤差率より低く、この実施態様においては、ゼロとなるように選択される。この方法においては、オブザーバブルのノイズのない値を、古典的プロセッサを使用して推定することができる。
【0100】
図3は、実施態様に従った第1の量子コンピュテーションの略図的な図解である。この実施態様においては、各キュビットが、測定される前に4つの演算のシーケンスを受ける。この図解では、3つのキュビットを包含するキュビットのグループのための演算が図示されているが、通常は、キュビットのグループ内に数十または数百のキュビットが存在する。
【0101】
第1の演算311、第2の演算312、および第3の演算313が、それぞれ第1、第2、および第3のキュビットの状態に対して実行される。この実施態様においては、第1、第2、および第3の演算311-313が同時に実行される。第1、第2、および第3の演算311-313のそれぞれは、単一キュビット演算である。その後に続いて第4の演算314および第5の演算315が実行される。この実施態様においては、第4および第5の演算314、315が同時に実行される。第4の演算314は、第1および第2のキュビットに対して実行される2-キュビット演算であり、第5の演算315は、第3のキュビットに対して実行される単一キュビット演算である。これに続いて、第6の演算316および第7の演算317が実行される。この実施態様においては、第6および第7の演算316、317が同時に実行される。第6の演算316は、第1のキュビットに対して実行される1-キュビット演算であり、第7の演算317は、第2と第3のキュビットの相互作用を伴う2-キュビット演算である。
【0102】
第1から第7までの演算311-317は、ゲート演算である。第1、第2、第3、第5、および第6の演算311、312、313、315、316は、キュビットのグループのうちの1つのキュビットに対して実行される1-キュビット・ゲート演算である。第1、第2、第3、第5、および第6の演算311、312、313、315、316のうちの1つ以上は、一致演算であるとすることができる。第4および第7の演算314、317は、キュビットのグループのうちの2つのキュビットに対して実行される2-キュビット・ゲート演算である。実験の要件に従って任意の1-キュビットおよび/または2-キュビット演算を選択することが可能である。
【0103】
上に述べられているとおりのゲート演算の実行に続いて、この実施態様においては、第1、第2、および第3のキュビットの状態に対して、それぞれ、第1の基本演算321、第2の基本演算322、および第3の基本演算323が実行される。第1、第2、および第3の基本演算321-323のそれぞれは、選択モジュールを使用して基本演算のセットからランダムに選択される。この実施態様においては、基本演算のセットがパウリのセットであり、セット内には3つの演算が存在する。このランダム選択は、第1、第2、および第3の基本演算321-323がすべて異なり得ること、またはそのうちの2つだけが互いに同一となり得ること、またはそれらすべてが同一となり得ることを意味する。
【0104】
演算のシーケンスの実行に続いて、測定値が獲得される。この実施態様においては、対称性測定デバイス330を使用して対称性測定値が獲得される。対称性測定デバイス330は、全体としての系特性を測定する。この実施態様における対称性測定は、キュビットのグループ内の各キュビットの状態の測定に影響を及ぼさないように設計される。たとえば、対称性測定デバイス330は、第1、第2、および第3のキュビットのいずれかにおける指定された状態の変化の検出時に状態を変更するべく構成される補助系キュビットの状態を測定することができる。補助系キュビットの状態の測定値は、キュビットのグループ内のキュビットの状態を崩壊させることなく有益な形で獲得することが可能である。
【0105】
説明した量子コンピュテーションは、複数回にわたって実行することができる。対称性検証を含むこの実施態様においては、対称性測定デバイス330を使用して、量子コンピュテーションの各実行後に対称性測定値が獲得される。対称性測定値は、誤差の数が偶数であれば第1の対称性結果となり、または誤差の数が奇数であれば第2の対称性結果となる。
【0106】
第1の量子測定デバイス331が、第1のキュビットの状態を測定する。第2の量子測定デバイス332が、第2のキュビットの状態を測定する。第3の量子測定デバイス333が、第3のキュビットの状態を測定する。
【0107】
対称性測定の使用はオプションであり、代替実施態様においては、演算に続いて各キュビットの状態だけが測定される。さらなる代替実施態様においては、キュビットのグループに対して実行される演算のそれぞれ、すなわち第1、第2、第3、第4、第5、第6、および第7の演算311-317を、ランダムに選択される基本演算を使用して修正することができる。
【0108】
図4は、実施態様に従ったフィッティングおよび補外プロセスの図解である。フィッティングおよび補外は、古典的コンピュータのプロセッサを使用して実行される。第1の誤差率42における第1の測定値41および第2の誤差率44における第2の測定値43が、上に述べられている方法を使用して獲得される。第1の誤差率42が第2の誤差率44より大きいことから、第1の測定値41は、第2の測定値43より小さい。
【0109】
古典的プロセッサを使用して、第1の測定値41および第2の測定値43にE=Ae-γnの形式の指数関数的減衰曲線45がフィッティングされる。フィッティングパラメータAおよびγが決定されると、古典的プロセッサを使用して第3の誤差率47まで曲線が補外される。ここでは、第3の誤差率47がゼロの誤差率、すなわちn=0である。オブザーバブルの誤差のない値46が、ゼロの誤差率までの補外によって推定される。代替実施態様においては、フィッティングパラメータの推定を向上させるべく追加の誤差率におけるさらなる測定を実行することが可能である。
【0110】
認識されるとおり、誤差のないオブザーバブルの推定が大幅に向上する改善された誤差軽減方法が提供される。述べられているとおりの誤差軽減技術の組み合わせは、低減されたコストにおいて誤差のないオブザーバブルの改善された推定をもたらす結果に帰する。
【符号の説明】
【0111】
41 第1の測定値
42 第1の誤差率
43 第2の測定値
44 第2の誤差率
45 指数関数的減衰曲線
46 誤差のない値
47 第3の誤差率
311-317 ゲート演算
321-323 基本演算
330 対称性測定デバイス
331-333 量子測定デバイス
【国際調査報告】