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特表2023-536795元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20230823BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230823BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20230823BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20230823BHJP
   B01J 23/83 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C01G25/00
B01J37/08 ZAB
B01J37/03 B
B01J23/10 A
B01J23/83 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581504
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2021114932
(87)【国際公開番号】W WO2022057594
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】202010982979.2
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521180371
【氏名又は名称】河北雄安稀土功能材料創新中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】Rare Earth Functional Materials (Xiong’an) Innovation Center Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.97-1, Jianli Road, Gouxi Village, Chengguan Town, Rongcheng County, Baoding City, Hebei 071700, P.R.China
(71)【出願人】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黄 小衛
(72)【発明者】
【氏名】侯 永可
(72)【発明者】
【氏名】趙 政
(72)【発明者】
【氏名】張 永奇
(72)【発明者】
【氏名】楊 娟玉
(72)【発明者】
【氏名】崔 梅生
(72)【発明者】
【氏名】▲ざい▼ 志哲
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲やん▼
(72)【発明者】
【氏名】馮 宗玉
(72)【発明者】
【氏名】陳 士磊
【テーマコード(参考)】
4G048
4G169
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
4G169AA01
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA21C
4G169BA22C
4G169BA27C
4G169BA29C
4G169BA47C
4G169BB04C
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB08C
4G169BB10C
4G169BB12C
4G169BB16C
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4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC13A
4G169BC16A
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC41A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC44B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC52A
4G169BC62A
4G169BD01C
4G169BD06C
4G169BD12C
4G169BE07C
4G169BE08C
4G169BE19C
4G169CA02
4G169CA03
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC14X
4G169EC14Y
4G169EC15X
4G169EC15Y
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4G169EC16Y
4G169EC29
4G169FA01
4G169FB09
4G169FB27
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその製造方法、前記複合酸化物を用いた触媒システム、前記触媒システムを用いて空気浄化を行う触媒装置、及び自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼におけるこの触媒システム又は触媒装置の適用に関する。本発明は、段階的沈殿法により、この元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を調製し、まず、ジルコニウムリッチ成分を先に沈殿させることにより、熱安定が高い粒子構造と粒子堆積構造を形成でき、高温処理した後のジルコニウムの表面偏析を緩和し、粒子間の元素の移動を減少させる。セリウムリッチ成分を後に沈殿させることにより、粒子表層のセリウム含有量を高め、セリウム元素の利用率を向上させ、酸素貯蔵量と酸素貯蔵・排出速度を高めることができる。この方法により調製された複合酸化物は、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を含む触媒の長時間使用することによるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の熱安定性と酸素貯蔵・排出性能の要求を満たすように、高い熱安定性と高い酸素貯蔵・排出性能を兼ね備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物であって、
前記複合酸化物は、セリウム元素とジルコニウム元素を含み、セリウム元素とジルコニウム元素は、粒子の中で内部から外部に向かって勾配分布していることを特徴とする、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項2】
前記複合酸化物は、粒子表面の酸化セリウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化セリウムの含有量よりも高く、粒子表面の酸化ジルコニウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化ジルコニウムの含有量よりも低く、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々にセリウムの含有量が増加し、粒子の径方向において内部から外部に向かって徐々にジルコニウムの含有量が減少することを特徴とする請求項1に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項3】
前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物:
モル換算で10%~80%の酸化セリウム、
モル換算で15%~80%の酸化ジルコニウム、
モル換算で0%~20%の他の酸化物。
【請求項4】
前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物:
モル換算で30%~60%の酸化セリウム、
モル換算で30%~60%の酸化ジルコニウム。
【請求項5】
前記他の酸化物は、セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素のうちの1種以上の元素の組み合わせであり、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算で2%~15%であり、前記他の酸化物において、セリウム以外の希土類元素酸化物は70%~100%を占めることを特徴とする、請求項3に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項6】
前記複合酸化物は、酸化ハフニウムの含有量がモル換算で0.05%~2%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項7】
前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素には少なくとも、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム、バリウム、マンガン及び銅のうちの1種以上の組み合わせが含まれることを特徴とする、請求項5に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項8】
前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びマンガンのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項5に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項9】
前記勾配分布には、セリウム以外の希土類元素及び/又はジルコニウム以外の非希土類元素のうち1種以上の元素の勾配分布をさらに含み、前記勾配分布は、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々に元素の含有量が減少するか徐々に増加することを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項10】
前記勾配分布は、セリウム以外の希土類元素の含有量を、粒子の径方向において内部から外部に向かって徐々に増加させる勾配分布をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項11】
前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びマンガンのうち1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項9に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項12】
前記複合酸化物は、
大気中1000℃で4時間熱処理した後の比表面積が55~65m/gであり、
大気中1100℃で4時間熱処理した後の比表面積が35~55m/gであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項13】
前記複合酸化物は2nm~100nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.1mL/gと0.5mL/gの間であり、静的酸素貯蔵量は≧500μmol O/gであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項14】
前記複合酸化物は、大気中1100℃で4時間焼成した後、10nm~30nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.03mL/gと0.2mL/gの間であり、静的酸素貯蔵量は≧400μmol O/gであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項15】
調製方法であって、
前記調製方法は段階的沈殿法であり、
(a)第1工程の沈殿:アルカリ性物質をセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩を含む混合液Aと混合し、撹拌、反応させて上記元素を含む沈殿物のスラリーを得、
(b)第2工程の沈殿:前記スラリーにセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩の混合液B及びアルカリ性物質を加えて沈殿させ、濾過・洗浄し、水を加えてスラリーを調整した後、セリウム、ジルコニウム、又はセリウム、ジルコニウム及び他の元素を含む沈殿物スラリーを得、
(c)前記ステップ(b)で得られたスラリーを加熱し、そこに改質剤を添加し、濾過した後、セリウム-ジルコニウム系複合沈殿物を得、600℃~950℃で焼成した後、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得るステップを含むことを特徴とする、元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法。
【請求項16】
前記混合液A中のジルコニウムの含有量が、モル重量換算で全体ジルコニウム含有量の50以上である、前記混合液B中のセリウムは、モル重量換算で全体セリウム含有量の50%以上を占めることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項17】
前記混合液A中のジルコニウムの含有量が、モル重量換算で全体ジルコニウム含有量の60%~80%である、前記混合液B中のセリウムは、モル重量換算で全体セリウム含有量の60%~80%を占めることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項18】
前記混合液A及び混合液B中のジルコニウム以外の塩は、硝酸塩、塩化塩、硫酸塩、酢酸塩のうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項19】
前記混合液A及び混合液B中のジルコニウム塩は、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウムのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項20】
前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、尿素、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項21】
前記混合液A及び混合液Bは、いずれもジルコニウム元素1モル当たり0.2~3モルの配位子イオンを含み、前記配位子イオンは硫酸アニオンであり、前記混合液A及び混合液Bに硫酸又は硫酸塩を添加することにより前記硫酸アニオンを提供することを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項22】
前記第1工程の沈殿におけるアルカリ性物質の使用量は、カチオンの沈殿に必要な理論使用量の0.8~1.5倍であり、前記第2工程の沈殿ではpHを予め設定された範囲内に制御する必要があることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項23】
前記配位子イオンとジルコニウムイオンの割合は0.5~2.5の間であることを特徴とする、請求項21に記載の調製方法。
【請求項24】
前記改質剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシ化合物系界面活性剤のうち1種以上を含むことを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項25】
触媒システムであって、
前記触媒システムは、請求項1~14のいずれか1項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、又は請求項15~24のいずれかに記載の製造方法により製造されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、及び酸化アルミニウム、遷移金属、貴金属、担体のうちの1種以上を含むことを特徴とする触媒システム。
【請求項26】
請求項25に記載の触媒システムを用いて排ガスの浄化を行うことを特徴とする、触媒装置。
【請求項27】
自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における、請求項25に記載の触媒システムの適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒及びその調製の関連分野に関し、特に、自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理及び触媒燃焼等の分野で使用できる元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々の環境空気の品質に対する要求がますます高まる中、自動車排気ガスや揮発性有機物排気ガスに対するガス排出法規の要求がますます厳しくなり、従来の化石エネルギー源の利用に対してもガス変換が求められており、そこで用いられるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物は、安定した構造と急速な酸素貯蔵・排出能力を備えている必要がある。ジルコニウムリッチ成分は、セリウムリッチ成分より熱安定性が優れており、セリウムリッチ成分はジルコニウムリッチ成分より酸素貯蔵・排出に優れていることが知られている。また、実際の使用過程において、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物が酸素貯蔵・排出作用を発揮する成分は、主に粒子の表層に分布している。
【0003】
良好な熱安定性と酸素貯蔵・排出能力を両立させるためには、段階的沈殿によるコアーシェル構造の構築が焼結防止能力の向上に有利であることが判明している。特許文献CN101091914Bには、まず、ジルコニウム塩と他のセリウム以外の希土類金属塩を沈殿させ、さらにセリウム塩を沈殿させる方法が提案されており、この方法によって、セリウム-ジルコニウム複合酸化物の高温下(1100℃/3h)での比表面積耐熱性を向上させることができる。しかし、外層にはセリウムしかなく焼結しやすいため、1100℃で3h熱処理した後、高温下での比表面積耐熱性は依然として好ましくない(20~22m/g)。特許文献CN102883808Aでは、まず、ジルコニウムとセリウム化合物、又はこれらの化合物とセリウム以外の希土類元素を沈殿させ、ここで、セリウム以外の希土類元素の量は所望の化合物を得る量よりも少なく、所望の化合物に含まれる残り量の元素を後で沈殿させ、この方法により1100℃で4時間焼成した後、比表面積が25m/g以上であるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得ることが提案されている。しかし、ドーピングされた元素のみを後で沈殿させるため、粒子内部の元素の偏析を遅らせるには不十分である。このセリウム-ジルコニウム系複合酸化物は、1000℃で4時間焼成した後に相分離が現れ、セリウム-ジルコニウム材料の高温熱安定性が大きく低下した。特許文献CN103962120Aにも、まず、セリウム-ジルコニウムを沈殿させ、イットリウム及び/又は希土類金属化合物を部分的に後で沈殿させる方法が提案されているが、セリウム酸化物の割合が3%~15%の間のジルコニウム、セリウム及びイットリウムに基づく酸化物に限られ、また、沈殿剤にジルコニウムが含まれておらず、高温での良好な熱安定性を有することは困難である。特許文献CN107427822Aには、コアーシェル担体の排気浄化触媒とその調製方法が提案されている。そのコアーシェル構造は負荷コーティング法を採用して、構造上はコアーシェル構造であり、元素は径方向に層状であり、元素の勾配分布が存在しないことを実現し、調製方法は、2段階合成であり、第1工程でコアを合成し、後にコア粒子に基づいて負荷コーティング法でシェル層を調製し、内外は層状のコアーシェル構造であるため、径方向に元素が不連続であり、元素の勾配分布が存在しない。特許文献CN103191711Aでは、まず、アルカリ性硫酸ジルコニウムの複合塩前駆体を合成し、さらにセリウム塩と希土類金属塩を混入して沈殿させ、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得ることが提案されている。この複合酸化物は、1100℃で3時間熱処理した後、比表面積が25m/g以下で、酸素貯蔵量が400μmol O/g以下であり、依然として低い。
【0004】
そのため、元素の勾配分布を有することによって、高温下での元素の偏析を遅らせ、セリウム元素の利用率を向上させ、1100℃で熱処理した後も安定した相構造とより高い酸素貯蔵量を維持する、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の上記事情に基づいて、元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法を提供することである。この調製方法により、内層ジルコニウムリッチ外層セリウムリッチな勾配元素分布構造を構築することができ、セリウム-ジルコニウム複合酸化物が高い熱安定性と酸素貯蔵・排出能力を発揮し、特に高温環境で使用した後も安定した粒子構造を維持することができ、大きな比表面積と高い酸素貯蔵量を維持し、自動車排ガスの浄化、揮発性有機物の浄化、天然ガスの触媒燃焼及び蒸気改質炭化水素類などの触媒分野に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、セリウム元素とジルコニウム元素を含み、セリウム元素とジルコニウム元素が粒子の中で内部から外部に向けて勾配分布している、元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を提供する。
【0007】
また、前記複合酸化物は、粒子表面の酸化セリウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化セリウムの含有量よりも高く、粒子表面の酸化ジルコニウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化ジルコニウムの含有量よりも低く、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々にセリウムの含有量が増加し、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々にジルコニウムの含有量が減少する。
【0008】
また、前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含む:
モル換算で10%~80%の酸化セリウム、
モル換算で15%~80%の酸化ジルコニウム、
モル換算で0%~20%の他の酸化物。
【0009】
また、前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含む:
モル換算で30%~60%の酸化セリウム、
モル換算で30%~60%の酸化ジルコニウム。
【0010】
また、前記他の酸化物は、セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素のうちの1種以上の元素の組み合わせであり、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算で2%~15%であり、前記他の酸化物において、セリウム以外の希土類元素酸化物は70%~100%を占める。
【0011】
また、前記複合酸化物は、酸化ハフニウムの含有量がモル換算で0.05%~2%である。
【0012】
また、前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素には少なくとも、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム、バリウム、マンガン及び銅のうちの1種以上の組み合わせが含まれる。
【0013】
また、前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びマンガンのうちの1種以上の組み合わせである。
【0014】
また、前記勾配分布には、セリウム以外の希土類元素及び/又はジルコニウム以外の非希土類元素のうち1種以上の元素勾配分布をさらに含み、前記勾配分布は、粒子の径方向において内部から外部に向かって徐々に元素の含有量が減少するか徐々に増加する。
【0015】
また、前記勾配分布は、セリウム以外の希土類元素の含有量を、粒子の径方向において内部から外部に向かって徐々に増加させる勾配分布をさらに含む。
【0016】
また、前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びマンガンのうち1種以上の組み合わせである。
【0017】
また、前記複合酸化物は、
大気中1000℃で4時間熱処理した後の比表面積が55~65m/gであり、
大気中1100℃で4時間熱処理した後の比表面積が35~55m/gである。
【0018】
また、前記複合酸化物は2nm~100nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.1mL/gと0.5mL/gの間であり、静的酸素貯蔵量は≧500μmol O/gである。
【0019】
また、前記複合酸化物は、大気中1100℃で4時間焼成した後、10nm~30nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.03mL/gと0.2mL/gの間であり、静的酸素貯蔵量は≧400μmol O/gである。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、以下のステップを含む、元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法を提供する。
ステップ(a):沈殿の第1工程は、アルカリ性物質をセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩を含む混合液Aと混合し、撹拌、反応させて上記元素を含む沈殿物のスラリーを得る。
ステップ(b):沈殿の第2工程は、前記スラリーにセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩の混合液B,同時に添加するアルカリ性物質を加えて沈殿させ、濾過・洗浄し、水を加えてスラリーを調整した後、セリウム、ジルコニウム、又はセリウム、ジルコニウム及び他の元素を含む沈殿物スラリーを得る。
ステップ(c):前記ステップ(b)で得られたスラリーを加熱し、そこに改質剤を添加し、濾過した後、セリウム-ジルコニウム系複合沈殿物を得、600℃~950℃で焼成した後、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得る。
【0021】
また、前記混合液A中のジルコニウムは、モル重量換算で全ジルコニウム含有量の50%以上を占め、前記混合液B中のセリウムは全体セリウム含有量の50%以上を占める。
【0022】
また、混合液A中のジルコニウムの、全ジルコニウム含有量に対する含有量はモル重量換算で60~80%であり、前記混合液B中のセリウムは、全体セリウム含有量の60~80%を占める。
【0023】
また、前記混合液A及び混合液B中のジルコニウム以外の塩は、硝酸塩、塩化塩、硫酸塩、酢酸塩のうち1種以上の組み合わせである。
【0024】
また、前記混合液A及び混合液B中のジルコニウム塩は、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウムのうち1種以上の組み合わせである。
【0025】
また、前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、尿素、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのうち1種以上の組み合わせである。
【0026】
また、前記混合液A及び混合液Bには、いずれもジルコニウム元素1モル当たり0.2~3モルの配位子イオンが含まれ、前記配位子イオンは硫酸アニオンであり、前記混合液A及び混合液Bに硫酸又は硫酸塩を添加することにより、前記硫酸アニオンを提供する。
【0027】
また、前記第1工程の沈殿において、アルカリ性物質の使用量はカチオンの沈殿に必要な理論量の0.8~1.5倍であり、前記第2工程の沈殿において、pHを予め設定された範囲内に制御する必要がある。
【0028】
また、前記配位子イオンとジルコニウムイオンの割合は0.5~2.5の間である。
【0029】
また、前記改質剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシ化合物系界面活性剤のうち1種以上を含む。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、上記本発明の第1の態様で提供されるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、または上記本発明の第2の態様で提供される調製方法を用いて調製されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、及び酸化アルミニウム、遷移金属、貴金属、担体のうち1種以上を含む触媒システムが提供される。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、上記本発明の第3の態様で提供される触媒システムを用いて排ガスの浄化を行う触媒装置が提供される。
【0032】
自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における上記本発明の第3の態様で提供される触媒システム、又は上記本発明の第4の態様で提供される触媒装置の適用である。
【発明の効果】
【0033】
要約すると、本発明は、元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその調製方法、前記複合酸化物を用いた触媒システム、前記触媒システムを用いて排ガスの浄化を行う触媒装置、及び自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における前記触媒システム又は触媒装置の適用を提供する。本発明は、段階的沈殿法により前記元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を調製することにより、第1に、ジルコニウムリッチ成分を沈殿させ、先に沈殿したジルコニウムリッチ成分は熱安定が高い粒子構造と粒子堆積構造を形成でき、高温処理後のジルコニウムの表面偏析を緩和し、粒子間の元素の移動を減少させ、第2に、セリウムリッチ成分を後に沈殿させ、粒子表層のセリウム含有量を高め、セリウム元素の利用率を向上させ、酸素貯蔵量と酸素貯蔵・排出速度を速める。この方法により調製された複合酸化物は、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を含む触媒を長時間使用することによる、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物の熱安定性と酸素貯蔵・排出性能の要求を満たすように、高い熱安定性と高い酸素貯蔵・排出性能を兼ね備える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法を示すフローチャートである
図2】本発明におけるセリウム-ジルコニウム勾配分布を有するセリウム-ジルコニウム系複合酸化物のHAADF-STEM-EDS図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確かつ明らかにするために、以下に具体的な実施形態を組み合わせて、添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。これらの説明は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。また、以下の説明では、本発明の概念が不要に混同されないように、公知の構造及び技術の説明は省略する。
【0036】
本発明では、以下に示す方法を用いて、各種の物性を測定する。
(1)比表面積、細孔径、細孔容積
比表面積は、BET法により、比表面積及び細孔径分析器(Quadrasorb Evo)を用いて測定する。
【0037】
(2)静的酸素貯蔵量(OSC)
等温酸素滴定法に基づいて、化学吸着計(ChemBET Pulsar TPR/TPD)を用いて酸素貯蔵量を測定する。より具体的には、0.03gの粉末を、5%の水素/アルゴンガス流中で800℃に加熱し、60分間維持することにより十分に還元する。ヘリウムガスの中で温度を500℃まで下げ、温度が安定した後、飽和するまで酸素のパルス滴定を行い、吸収された酸素量で静的酸素貯蔵量を計算する。
【0038】
(3)元素の勾配分布
元素の勾配分布は、X線蛍光分光法(XRF)、X線光電子分光法(XPS)、球面収差補正高角環状暗視野走査透過電子分光法(HAADF-STEM-EDS)線走査及び表面走査特徴分析を採用する。XRF分析では材料全体の元素含有量を得、XPS分析では粒子表面の元素含有量と割合を得、HAADF-STEM-EDSでは粒子径方向の全体の元素分布を得ることができる。
【0039】
本発明の第1の態様によれば、元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を提供し、当該複合酸化物は、セリウム元素及びジルコニウム元素を含み、セリウム元素とジルコニウム元素は、粒子の中において、内部から外部に向かって勾配分布を呈する。ここで、勾配分布を呈するとは、前記複合酸化物における粒子表面の酸化セリウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化セリウムの含有量よりも高く、粒子表面の酸化ジルコニウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化ジルコニウムの含有量よりも低く、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々にセリウムの含有量が増加し、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々にジルコニウムの含有量が減少することを意味する。ジルコニウムリッチ成分の熱安定性は、セリウムリッチ成分より優れているが、セリウムリッチ成分の酸素貯蔵・排出性能は、ジルコニウムリッチ成分より優れている。また、実際の使用過程において、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物が酸素貯蔵・排出作用を発揮する成分は、主に粒子表層に分布しているため、この複合酸化物の構造を勾配分布を呈するように設計し、この酸化物は高温熱安定性と高い酸素貯蔵・排出性能を両立することができる。
【0040】
また、前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含む:
モル換算で10%~80%の酸化セリウム、好ましくはモル換算で30%~60%の酸化セリウム、
モル換算で15%~80%の酸化ジルコニウム、好ましくはモル換算で30%~60%の酸化ジルコニウム、
及びモル換算で0%~20%の他の酸化物。
【0041】
ここで、前記他の酸化物は、セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素のうち1種以上の元素の組み合わせを意味する。前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算で0%~20%、好ましくは2%~15%である、前記他の酸化物において、セリウム以外の希土類元素酸化物の含有量は0%~100%、好ましくは70%~100%である。前記酸化ジルコニウムには、酸化ハフニウムがドーピングされてもよく、前記酸化ジルコニウムにおいて酸化ハフニウムが占める含有量はモル換算で0.5%~2%である。
【0042】
ここで、前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素には、少なくともランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム、バリウム、マンガン及び銅のうち1種以上の組み合わせ、好ましくはランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウムアルミニウム及びマンガンのうちの1種以上の組み合わせが含まれる。
【0043】
また、前記勾配分布は、セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素のうち1種以上の元素の勾配分布をさらに含み、この勾配分布は、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々に元素の含有量が減少するか徐々に増加することを意味する。
【0044】
また、前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素の勾配分布は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びマンガンのうち1種以上の組み合わせである。
【0045】
前記複合酸化物は、大気中1000℃で4時間熱処理した後の比表面積が55~65m/gであり、大気中1100℃で4時間熱処理した後の比表面積が35~55m/gである優れた比表面積性能を有する。
【0046】
前記複合酸化物は、2nm~100nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.1mL/gと0.5mL/gの間であり、酸素貯蔵量は≧500μmol O/gである。前記複合酸化物は、大気中1100℃で4時間焼成した後、10nm~30nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.03mL/gと0.2mL/gの間であり、酸素貯蔵量は≧400μmol O/gである。
【0047】
本発明の第2の実施例では、元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法が提供され、前記調製方法は段階的沈殿法であり、この方法のフローを示す図は図1に示され、以下のステップを含む。
【0048】
ステップ(a):第1工程の沈殿は、アルカリ性物質をセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩を含む混合液Aと混合し、撹拌、反応させて上記金属を含む沈殿物のスラリーを得る。ここで、前記混合液A中のジルコニウムは、モル重量換算でジルコニウム全体量の50%以上を占め、好ましくは60~80%であってよい。
【0049】
ステップ(b):第2工程の沈殿は、前記スラリーにセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩の混合液B,同時に添加するアルカリ性物質を加えて沈殿させ、濾過・洗浄し、水を加えてスラリーを調整した後、セリウム、ジルコニウム、又はセリウム、ジルコニウム及び他の金属を含む沈殿物スラリーを得る。ここで、前記混合液Bにおけるセリウムは、モル重量換算で全体セリウム量の50%以上を占め、好ましくは60%~80%であってよい。
【0050】
ステップ(C):前記スラリーを加熱して、そこに改質剤を添加し、濾過した後、セリウム-ジルコニウム系複合沈殿物を得、600℃~950℃で焼成した後、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得る。
【0051】
本発明の本実施例では、段階的沈殿法によりこの複合酸化物を調製し、まず、ジルコニウムリッチ成分を沈殿させることで、熱安定性が高い結晶構造と粒子堆積構造を形成でき、高温処理した後のジルコニウムの表面偏析を緩和し、粒子間の元素の移動を減少させることができる。セリウムリッチ成分を後で沈殿させることによって、粒子表層のセリウムの含有量を高め、セリウム元素の利用率を向上させ、さらに酸素貯蔵量及び酸素貯蔵・排出速度を高めることができる。従って、この方法により調製されたこの複合酸化物は、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を含む触媒を長時間使用することによるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の熱安定性と酸素貯蔵・排出性能の要求を満たすように、高い熱安定性と高い酸素貯蔵・排出性能を両立させる。
【0052】
また、前記混合液Aと混合液B中のジルコニウム以外の塩は、硝酸塩、塩化塩、硫酸塩、酢酸塩のうち1種以上の組み合わせである。前記混合液Aと混合液B中のジルコニウム塩は、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウムのうち1種以上の組み合わせである。前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、尿素、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのうち1種以上の組み合わせである。
【0053】
【0054】
また、前記第1工程の沈殿におけるアルカリ性物質の使用量は、カチオンの沈殿に必要な理論量の0.8~1.5倍であり、前記第2工程の沈殿では、pHを6~12の範囲内に制御する必要がある。
【0055】
また、前記改質剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシ化合物系界面活性剤のうち1種以上を含む。
【0056】
図2は、本発明の元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の典型的な球面収差補正高角度環状暗視野走査透過電子分光法(HAADF-STEM-EDS)の図であり、同図には粒子の元素分布状況が示されている。赤色点はジルコニウム元素の信号、緑色点はセリウム元素の信号を示す。図2により、緑色の信号が粒子表面に濃縮されており、赤色の信号が粒子の内部に濃縮されていることが分かる。これは、セリウム元素とジルコニウム元素は、粒子の内部と粒子の表面での含有量が異なり、粒子の内部から外部に向かってセリウムの含有量が増加し、粒子の内部から外部に向かってジルコニウムの含有量が減少していることを示している。これは、段階的沈殿法により元素の勾配分布を有するセリウム-ジルコニウム系複合酸化物が合成されたことを示している。
【0057】
本発明の第3の実施例は、上記第1の実施例で提供されるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、又は上記第2の実施例で提供される調製方法を用いて調製されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、及び酸化アルミニウム、遷移金属、貴金属、担体のうちの1種以上を含む触媒システムを提供する。
【0058】
本発明の第4の実施例は、上記第3の実施例で提供される触媒システムを用いて排ガスの浄化を行う触媒装置を提供する。
【0059】
本発明の第5の実施例は、自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における上記本発明の第3の実施例で提供される触媒システム、又は上記第4の実施例で提供される触媒装置の適用を提供する。
【0060】
以下、本発明を具体的な実施例によりさらに説明する。
【0061】
<比較例1>
本比較例は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンを酸化物のモル分率を基準とした複合酸化物の調製に関し、ここで、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンのモル分率は4:5:1である。
【0062】
塩化セリウム、オキシ塩化ジルコニウム及び塩化ランタンを含む混合液を予め構成する。
混合液を過剰の水酸化ナトリウムに加えて沈殿させ、沈殿物を濾過・洗浄する。得られた濾過ケーキをスラリー化して加熱し、そこにCTABを加え、1時間撹拌した後、濾過・洗浄した。得られた生成物を800℃で3時間焼成し、この成分のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た。この複合酸化物は、1100℃で4時間焼成した後、比表面積が15.6m/g、細孔容積が0.028mL/g、細孔径が2~20nm、酸素貯蔵量が355μmol O/gであった。
【0063】
<比較例2>
本比較例は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンを酸化物のモル分率を基準とした複合酸化物の調製に関し、ここで、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンのモル分率は4:5:1である。
【0064】
2種類の塩素塩溶液を予め構成し、1種は、塩化セリウムとオキシ塩化ジルコニウムを含む混合液Aであり、他の1種は、塩化ランタンを含む液Bである。沈殿させるカチオンに対する化学量論的に過剰の水酸化ナトリウムを反応器に注入する。混合液Aを反応器に45分以内に注入し、さらに液Bを反応器に15分以内に注入し、沈殿物を得て水熱処理を行った。得られた懸濁液にラウリン酸を添加し、1時間撹拌した後、濾過・洗浄した。得られた生成物を800℃で3時間焼成し、この成分のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た。この複合酸化物は、1100℃で4時間焼成した後、比表面積が20.8m/g、細孔容積が0.025mL/g、細孔径が2~10nm、酸素貯蔵量が380μmol O/gであった。
<比較例3>
【0065】
本比較例は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンを酸化物のモル分率を基準とした複合酸化物の調製に関し、ここで、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンのモル分率は3:6:1である。
【0066】
2種類の硝酸塩溶液を予め構成し、1種は、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ランタンを含む混合液Aであり、他の1種は、塩化セリウムを含む液Bである。混合液Aを過剰の水酸化ナトリウムに加え、沈殿物を濾過・洗浄してジルコニウム、ランタンを含む複合水酸化物を得た。この水酸化物を水の中に分散させて、そこに液Bを加え、さらに過剰のアンモニア水を加え、沈殿物を濾過・洗浄して、セリウム、ジルコニウム及びランタンを含む複合水酸化物を得た。得られた複合水酸化物を800℃で3時間焼成し、この成分のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た。この複合酸化物は、1100℃で4時間焼成した後、比表面積が21.9m/g、細孔容積が0.033mL/g、細孔径が2~25nm、酸素貯蔵量が430μmol O/gであった。
【0067】
<実施例1>
本実施例は、酸化物のモル分率を基準として50mol%の酸化セリウム及び50mol%の酸化ジルコニウムを含む複合酸化物の調製に関する。
【0068】
2種類の混合塩素塩溶液を予め構成し、1種は、全体量22mol%のセリウム及び28mol%のジルコニウムを含む塩素塩混合液Aである。他の1種は、設計配合物における残りのセリウム及びジルコニウムを含む塩素塩混合液Bである。混合液Aを適量の水酸化ナトリウムに加えて沈殿させた。混合液Aを加えた後、そこに液Bを加え、同時に水酸化ナトリウム溶液を加えて沈殿させ、沈殿過程ではpH=9に制御した。沈殿物を濾過・洗浄して、セリウム、ジルコニウム又はセリウム、ジルコニウム及び任意にCe以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属を含む複合水酸化物の沈殿物を得た。得られた沈殿物に水を加えてスラリー化して、加熱し、そこに改質剤を加え、継続してしばらく撹拌した後、濾過した。得られた濾過ケーキを任意に600℃で3時間焼成し、この成分のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た。この複合酸化物は、1100℃で4時間焼成した後、比表面積が36.2m/g、細孔容積が0.038mL/gの間、細孔径が0~30nmを含み、酸素貯蔵量が521μmol O/gであった。
【0069】
<実施例2-11>
以下に特記しない限り、実施例1と同様の方法で行った。実施例の具体的なパラメータは、実施例のパラメータ表1に示す。
【0070】
本実施例は、酸化物のモル分率を基準とした酸化セリウム、酸化ジルコニウム、又は酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びセリウム(Ce)以外の希土類元素(RE)及びジルコニウム(Zr)以外の非希土類金属元素のうちの1種以上の元素の組み合わせを含む複合酸化物の調製に関する。複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含む:
モル換算で10%~80%の酸化セリウム、
モル換算で15%~80%の酸化ジルコニウム、
モル換算で0%~20%の他の酸化物。
【0071】
2種類の混合塩素塩溶液を予め構成し、1種は、セリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム(Ce)以外の希土類塩及びジルコニウム(Zr)以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩を含む混合液Aであり、ここでジルコニウムは、ジルコニウム全体の50mol%以上を占める。他の1種は、設計配合物における残りのセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にCe以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩を含む混合液Bであり、ここでセリウムは、セリウム全体の50mol%以上を占める。混合液Aを適量のアルカリ性物質に加えて沈殿させた。混合液Aを加えた後、そこにさらに液Bを加えると共に、アルカリ性物質を加えて沈殿させた。沈殿物を濾過・洗浄して、セリウム、ジルコニウム又はセリウム、ジルコニウム及び任意にCe以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属を含む複合沈殿物を得た。得られた沈殿物に水を加えてスラリー化して、加熱し、そこに改質剤を加え、継続してしばらく撹拌した後、濾過した。得られた濾過ケーキを任意に600~950℃で3時間焼成し、この成分のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た。この複合酸化物は、1100℃で4時間焼成した後、比表面積が35~55m/g、細孔容積が0.03~0.2mL/gの間、細孔径が10~30nmを含み、酸素貯蔵量が400μmol O/g以上であった。
【0072】
本発明により提供される実施例と比較例を比較することにより、本発明で合成されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物は、エージング後の比表面積、細孔容積及び酸素貯蔵量がいずれも比較例より優れており、かつエージング後の細孔径分布が10~30nmに集中しており、触媒性能の発揮により有利であることが分かる。具体的な性能の比較を表2に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
要約すると、本発明は元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物及びその製造方法、前記複合酸化物を用いた触媒システム、前記触媒システムを用いて空気浄化を行う触媒装置、及び自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼におけるこの触媒システム又は触媒装置の適用に関する。本発明は、段階的沈殿法により、この元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物を調製し、まず、ジルコニウムリッチ成分を先に沈殿させることにより、熱安定が高い粒子構造と粒子堆積構造を形成でき、高温処理した後のジルコニウムの表面偏析を緩和し、粒子間の元素の移動を減少させる。セリウムリッチ成分を後に沈殿させることにより、粒子表層のセリウム含有量を高め、セリウム元素の利用率を向上させ、酸素貯蔵量と酸素貯蔵・排出速度を高めることができる。この方法により調製された複合酸化物は、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を含む触媒の長時間使用することによるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の熱安定性と酸素貯蔵・排出性能の要求を満たすように、高い熱安定性と高い酸素貯蔵・排出性能を兼ね備えている。
【0076】
本発明の上記の具体的な実施形態は、本発明の原理を例示的に説明又は解釈するためにのみ使用され、本発明の制限を構成するものではないことを理解されたい。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われる修正、等価置換、改良等は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。さらに、本発明に添付された請求項は、添付された特許請求の範囲及び境界、又はその範囲及び境界の均等な形態内に含まれるすべての変更及び修正例を包含することを目的とする。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物であって、
前記複合酸化物は、セリウム元素とジルコニウム元素を含み、セリウム元素とジルコニウム元素は、粒子の中で内部から外部に向かって勾配分布しており、
前記複合酸化物は、粒子表面の酸化セリウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化セリウムの含有量よりも高く、粒子表面の酸化ジルコニウムの含有量が、前記複合酸化物全体における酸化ジルコニウムの含有量よりも低く、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々にセリウムの含有量が増加し、粒子の径方向において内部から外部に向かって徐々にジルコニウムの含有量が減少することを特徴とする、セリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項2】
前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含むことを特徴とする請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物:
モル換算で10%~80%の酸化セリウム、
モル換算で15%~80%の酸化ジルコニウム、
モル換算で0%~20%の他の酸化物。
【請求項3】
前記複合酸化物は、酸化物として表される以下のものを含むことを特徴とする請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物:
モル換算で30%~60%の酸化セリウム、
モル換算で30%~60%の酸化ジルコニウム。
【請求項4】
前記他の酸化物は、セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素のうちの1種以上の元素の組み合わせであり、前記複合酸化物において、前記他の酸化物の含有量はモル換算で2%~15%であり、前記他の酸化物において、セリウム以外の希土類元素酸化物は70%~100%を占めることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項5】
前記複合酸化物は、酸化ハフニウムの含有量がモル換算で0.05%~2%であることを特徴とする、請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項6】
前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素には少なくとも、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム、バリウム、マンガン及び銅のうちの1種以上の組み合わせが含まれることを特徴とする、請求項1又は4のいずれか1項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項7】
前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びマンガンのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項1又は4のいずれか1項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項8】
前記勾配分布には、セリウム以外の希土類元素及び/又はジルコニウム以外の非希土類元素のうち1種以上の元素の勾配分布をさらに含み、前記勾配分布は、粒子の径方向において、内部から外部に向かって徐々に元素の含有量が減少するか徐々に増加することを特徴とする、請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項9】
前記勾配分布は、セリウム以外の希土類元素の含有量を、粒子の径方向において内部から外部に向かって徐々に増加させる勾配分布をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項10】
前記セリウム以外の希土類元素及びジルコニウム以外の非希土類金属元素は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、イットリウム、ハフニウム、アルミニウム及びマンガンのうち1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項11】
前記複合酸化物は、
大気中1000℃で4時間熱処理した後の比表面積が55~65m/gであり、
大気中1100℃で4時間熱処理した後の比表面積が35~55m/gであることを特徴とする、請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項12】
前記複合酸化物は2nm~100nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.1mL/gと0.5mL/gの間であり、静的酸素貯蔵量は≧500μmol O/gであることを特徴とする、請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項13】
前記複合酸化物は、大気中1100℃で4時間焼成した後、10nm~30nmの細孔を含み、全細孔の体積は0.03mL/gと0.2mL/gの間であり、静的酸素貯蔵量は≧400μmol O/gであることを特徴とする、請求項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物。
【請求項14】
調製方法であって、
前記調製方法は段階的沈殿法であり、
(a)第1工程の沈殿:アルカリ性物質をセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩を含む混合液Aと混合し、撹拌、反応させて上記元素を含む沈殿物のスラリーを得、前記混合液Aにおけるジルコニウムの含有量が、モル比計で全体ジルコニウム含有量の60%~80%であるステップ、
(b)第2工程の沈殿:ステップ(a)で得られたスラリーにセリウム塩、ジルコニウム塩、又はセリウム塩、ジルコニウム塩及び任意にセリウム以外の希土類塩及びジルコニウム以外の非希土類金属塩のうち1種以上の金属塩の混合液B及びアルカリ性物質を加えて沈殿させ、濾過・洗浄し、水を加えてスラリーを調整した後、セリウム、ジルコニウム、又はセリウム、ジルコニウム及び他の元素を含む沈殿物スラリーを得、前記混合液Bにおけるセリウムは、モル比計で全体セリウム含有量の60%~80%を占めるステップ、
(c)前記ステップ(b)で得られたスラリーを加熱し、そこに改質剤を添加し、濾過した後、セリウム-ジルコニウム系複合沈殿物を得、600℃~950℃で焼成した後、前記セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得るステップを含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の元素が勾配分布したセリウム-ジルコニウム系複合酸化物の調製方法。
【請求項15】
前記混合液A及び混合液B中のジルコニウム以外の塩は、硝酸塩、塩化塩、硫酸塩、酢酸塩のうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項14に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物
【請求項16】
前記混合液A及び混合液B中のジルコニウム塩は、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸酸化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウムのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項14に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物
【請求項17】
前記アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、尿素、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのうちの1種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項14に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物
【請求項18】
前記混合液A及び混合液Bは、いずれもジルコニウム元素1モル当たり0.2~3モルの配位子イオンを含み、前記配位子イオンは硫酸アニオンであり、前記混合液A及び混合液Bに硫酸又は硫酸塩を添加することにより前記硫酸アニオンを提供することを特徴とする、請求項14に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物
【請求項19】
前記第1工程の沈殿におけるアルカリ性物質の使用量は、カチオンの沈殿に必要な理論使用量の0.8~1.5倍であり、前記第2工程の沈殿ではpHを予め設定された範囲内に制御する必要があることを特徴とする、請求項14に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物
【請求項20】
前記配位子イオンとジルコニウムイオンの割合は0.5~2.5の間であることを特徴とする、請求項18に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物
【請求項21】
前記改質剤は、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸及びその塩、並びにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシ化合物系界面活性剤のうち1種以上を含むことを特徴とする、請求項14に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物
【請求項22】
触媒システムであって、
前記触媒システムは、請求項1~13のいずれか1項に記載のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物、び酸化アルミニウム、遷移金属、貴金属、担体のうちの1種以上を含むことを特徴とする触媒システム。
【請求項23】
請求項22に記載の触媒システムを用いて排ガスの浄化を行うことを特徴とする、触媒装置。
【請求項24】
自動車排ガスの浄化、産業排ガスの処理又は触媒燃焼における、請求項22に記載の触媒システムの適用。
【国際調査報告】