(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】核酸分子を固体支持体に載置するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20230823BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C40B40/06
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501826
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2020105621
(87)【国際公開番号】W WO2022021163
(87)【国際公開日】2022-02-03
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516122667
【氏名又は名称】深▲セン▼華大智造科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MGI Tech Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】Main Building and Second Floor of No.11 Building,Beishan Industrial Zone,Yantian District,Shenzhen,Guangdong 518083,China
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シャフト, ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドラマナク, ラドイェ
(72)【発明者】
【氏名】ドラマナク, スネザナ
(72)【発明者】
【氏名】スー, チョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン, メイファ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ピン
(72)【発明者】
【氏名】ロン, シャオジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ, フアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ホイ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, チアン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR82
4B063QR84
4B063QS26
(57)【要約】
核酸分子、例えば、核酸ナノボール(例えば、DNAナノボール(DNB))を固体支持体に載置するための方法、及び前記方法のためのキットが提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子を固体支持体に載置するための、又は固体支持体に固定された核酸ライブラリを構築するための方法であって、
(1)核酸分子を含む組成物と、前記固体支持体とを提供するステップ、
(2)前記組成物における前記核酸分子の第1の増幅を行って、前記核酸分子を含む増幅産物を得るステップ、
(3)前記第1の増幅を中断するか、又は遅らせるステップ、
(4)前記核酸分子を含む前記増幅産物を前記固体支持体に載置するステップ、及び
(5)前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の第2の増幅を行うステップ
を含み、
好ましくは、前記核酸分子を含む前記増幅産物が、核酸ナノボールであり、
好ましくは、前記固体支持体が、前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)を載置するための部位のアレイを有し、
好ましくは、前記部位が、所定のパターンで前記固体支持体に配置され、
好ましくは、前記核酸分子が、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はDNA若しくはRNAの類似体から成る群から選択され、
好ましくは、前記組成物が一本鎖環状核酸分子を含み、好ましくは、前記組成物が一本鎖環状DNA分子を含み、
好ましくは、前記組成物が、1個又は複数個の核酸分子、例えば、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも1000個、少なくとも10
4個、少なくとも10
5個、少なくとも10
6個、少なくとも10
7個以上の核酸分子を含み、好ましくは、前記核酸分子が一本鎖環状化DNAであり、
好ましくは、前記核酸分子が、長さが少なくとも100bp、少なくとも200bp、少なくとも500bp、少なくとも800bp、少なくとも1000bp、又は少なくとも2000bpの標的核酸断片を含む、
方法。
【請求項2】
ステップ(2)において、得られた前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)の大きさが、所定の大きさを超えず、
好ましくは、ステップ(2)において、得られた前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)が、直鎖状DNA等の直鎖状核酸分子であり、
好ましくは、前記所定の大きさが、前記固体支持体における単一の部位に収容され得るか、若しくは付着され得る前記核酸分子(例えば、核酸ナノボール)の最大の大きさ、又は前記固体支持体における隣接部位の間隔であり、
好ましくは、得られた前記核酸ナノボールの大きさが、前記最大の大きさ又は隣接部位の間隔の95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%を超えず、
好ましくは、ステップ(2)において、ローリングサークル増幅によって行われる、前記組成物における前記核酸分子の前記第1の増幅、
好ましくは、増幅(例えば、ローリングサークル増幅)の時間を制御することによって、前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)の前記大きさが前記所定の大きさを超えない、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(3)において、前記第1の増幅が、
(a)前記第1の増幅のための反応混合物におけるdNTPの量を制御するか、又は低減させること、及び/又は
(b)前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼの活性を阻害するか、又は前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼを不活性化すること
から成る群から選択される1つ又は複数の方法によって中断されるか、又は遅らせられ、
好ましくは、前記第1の増幅が、前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼの前記活性を阻害すること、又は前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼを不活性化することによって、中断されるか、又は遅らせられ、
好ましくは、前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼの前記活性が、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%低減するように阻害され、
好ましくは、
(a)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤を添加すること、
(b)前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去すること、
(c)前記第1の増幅のための反応混合物の温度を前記核酸ポリメラーゼの作用温度範囲から逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように調整すること、
(d)前記第1の増幅のための前記反応混合物のpHを前記核酸ポリメラーゼの作用pH範囲から逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように調整すること、
から成る群から選択される1つ若しくは複数の方法によって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され、
好ましくは、前記核酸ポリメラーゼが、DNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、例えば、Bst DNAポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼ及びエキソクレノウである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去することによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され、
好ましくは、前記補因子がカチオン(例えば、マグネシウムイオン)であり、
好ましくは、前記補因子が、カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)を添加することによって除去され、それによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され、
好ましくは、前記マグネシウムイオンキレート剤が、NTA、EDTA、HEDP、EDTMPS、DTPMPA、EDDHA、STPP、ナトリウムデキストロース及びメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択され、
好ましくは、マグネシウムイオンをキレート化するための前記試薬がEDTAである、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の増幅のための前記反応混合物の前記温度が、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように調整されることによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され、
好ましくは、前記反応混合物の前記温度が、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度の上限よりも高くなる、例えば、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃以上高くなるように調整され、又は、前記反応混合物の前記温度が、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度の下限よりも低くなる、例えば、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃以上低くなるように調整され、
好ましくは、前記反応混合物の前記温度を20℃以下、10℃以下、4℃以下の温度に低下させ、又は、前記反応混合物の前記温度を50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上の温度に上昇させる、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の増幅のための前記反応混合物の前記pHが、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pH範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように酸性又は塩基性の緩衝液を添加することによって調整されることによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され、
好ましくは、前記反応混合物の前記pHが、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pHの上限よりも高くなる、例えば、少なくとも1pH単位、少なくとも2pH単位、少なくとも3pH単位以上高くなるように調整されるか、又は前記反応混合物の前記pHが、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pHの下限よりも低くなる、例えば、少なくとも1pH単位、少なくとも2pH単位、少なくとも3pH単位以上低くなるように調整され、
好ましくは、前記酸性又は塩基性の緩衝液が、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液及びTris塩酸緩衝液から成る群から選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤若しくは変性剤を添加することによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され、好ましくは、前記核酸ポリメラーゼの前記活性阻害剤又は変性剤が、例えば、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween-20、NP-40及びTritox-100から成る群から選択される界面活性剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記固体支持体が、ラテックスビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレン表面、ポリプロピレン表面、ポリアクリルアミドゲル、金表面、ガラス表面、チップ、センサ、電極及びシリコンウェーハから成る群から選択されること、
(b)前記固体支持体が、平面、球状又は多孔性であること、
(c)前記固体支持体における単一の部位に収容され得るか、又は付着され得る前記核酸分子(例えば、核酸ナノボール)の最大の大きさが、5000nm以下、2000nm以下、1000nm以下、700nm以下、500nm以下、300nm以下、又は100nm以下であること、
(d)ステップ(2)において、前記組成物における前記核酸分子の前記第1の増幅が、ローリングサークル増幅によって行われること、
(e)ステップ(5)において、前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅が、ローリングサークル増幅によって行われること、
(f)前記第1の増幅及び前記第2の増幅が、同じ又は異なる(好ましくは、同じ)核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)を使用すること、
(g)前記固体支持体が、ステップ(4)を行う前に前処置に供されること、例えば、前記固体支持体が、ポロキサマー、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、phi29 DNAポリメラーゼ)、T4リガーゼ、BSA)又はそれらの任意の組合せを使用することによって前処置されること、
(h)ステップ(5)において、前記第2の増幅によって得られた前記増幅産物が、直鎖状DNA等の直鎖状核酸分子であること、
(i)ステップ(5)で得られた前記産物が、核酸配列決定ライブラリとして使用されること、
(j)前記方法が、ステップ(5)の後、前記固体支持体に載置された前記核酸分子を配列決定することを更に含むこと、
から成る群から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(5)において、前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅が、核酸増幅のために必要とされる試薬を添加することによって行われ、
好ましくは、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が、前記核酸ポリメラーゼの通常の活性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上に回復され、
好ましくは、前記試薬が、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)、dNTP、核酸ポリメラーゼのための作用緩衝液及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(5)において、前記第1の増幅をステップ(3)において中断させるか、又は遅らせる条件を排除することによって、前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅が行われ、
好ましくは、ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記第1の増幅のために使用された前記核酸ポリメラーゼの前記活性を阻害することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記第2の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの前記活性を回復することによって(例えば、前記核酸ポリメラーゼの前記活性を阻害する条件を排除することによって)行われ、
例えば、ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤を添加することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記活性阻害剤を除去して、前記核酸ポリメラーゼの前記活性を回復し、前記第2の増幅が行われ、
例えば、ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が、前記補因子を添加することによって回復され、前記第2の増幅が行われ、
例えば、ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように前記反応混合物の前記温度を調整することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が、前記反応混合物の前記温度を前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度範囲に調整することによって回復され、前記第2の増幅が行われ、
例えば、ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pH範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように前記反応混合物の前記pHを調整することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が、前記反応混合物の前記pHを前記核酸ポリメラーゼの前記作用pH範囲に調整することによって回復され、前記第2の増幅が行われ、
例えば、ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼを変性させることによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記第2の増幅が、前記核酸ポリメラーゼを添加することによって行われる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
核酸を増幅するための試薬と、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための試薬と、前記核酸分子を固体支持体に載置するための試薬とを含むキットであって、
好ましくは、核酸を増幅するための前記試薬が、核酸ポリメラーゼ、前記核酸ポリメラーゼのための作用緩衝液(濃縮又は非濃縮)、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子、dNTP又はそれらの任意の組合せを含み、
好ましくは、前記核酸ポリメラーゼが、DNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、例えば、Bst DNAポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼ及びエキソクレノウであり、
好ましくは、前記補因子がカチオン(例えば、マグネシウムイオン)であり、
好ましくは、前記作用緩衝液が濃縮されており、例えば、前記作用緩衝液が、少なくとも2倍、少なくとも5倍又は少なくとも10倍濃縮されており、
好ましくは、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための前記試薬が、
(1)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤、
(2)前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる前記補因子を除去することが可能な試薬、
(3)前記溶液のpHを調整することが可能な酸性又はアルカリ性の緩衝液
から成る群から選択される1つ又は複数を含んでもよく、
好ましくは、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための前記剤が、前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤を含んでもよく、
好ましくは、前記核酸ポリメラーゼの前記活性阻害剤又は変性剤が、例えば、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween-20、NP-40及びTritox-100から成る群から選択される界面活性剤であり、
好ましくは、核酸増幅を中断するか、又は阻害する前記試薬が、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去することが可能な試薬を含み、
好ましくは、前記補因子がカチオン(例えば、マグネシウムイオン)であり、
好ましくは、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる前記補因子を除去することが可能な前記試薬が、カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)であり、
好ましくは、前記カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)が、NTA、EDTA、HEDP、EDTMPS、DTPMPA、EDDHA、STPP、ナトリウムデキストロース及びメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択され、
好ましくは、前記カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)がEDTAであり、
好ましくは、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための前記試薬が、前記溶液の前記pHを調整することが可能な酸性又は塩基性の緩衝液を含み、
好ましくは、前記酸性又は塩基性の緩衝液が、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液及びTris塩酸緩衝液から成る群から選択され、
好ましくは、前記核酸分子を前記固体支持体に載置するための前記試薬が、クエン酸三カリウム、クエン酸、phi29ポリメラーゼ、Pluronic F68を含み、
好ましくは、前記キットが、前記固体支持体を前処置するための試薬を更に含み、
好ましくは、前記固体支持体を前処置するための前記試薬が、ポロキサマー、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、phi29 DNAポリメラーゼ)、T4リガーゼ、BSA)又はそれらの任意の組合せから成る群から選択される、
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、核酸検出の分野に関する。特に、本出願は、核酸ナノボール(例えば、DNAナノボール(DNB))などの核酸分子を固体支持体に載置するための方法、及び前記方法のために使用されるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハイスループット配列決定において、遺伝子チップ又はDNAマイクロアレイが広く使用されている。前記遺伝子チップ又は前記DNAマイクロアレイは、DNAマイクロアレイがコーティングされた規則的アレイスライド又は単なる特殊ガラススライドから成り、数千又は数万の核酸プローブが数平方センチメートルの領域に設置されており、大量の遺伝子配列関連情報が1つの試験において提供され得、したがって、前記遺伝子チップ又は前記DNAマイクロアレイは、ゲノム学及び遺伝学の研究における重要な用具である。
【0003】
ハイスループット配列決定技術としては、DNA配列決定及びRNA配列決定が挙げられる。概して、試験されるDNA試料又はRNA試料は、一本鎖環状ライブラリ又は直鎖状ライブラリ等のライブラリに構築されることが必要であり、次いで、ライブラリは、配列決定のための遺伝子チップに、直接、又はある特定の方法で(例えば、DNBに調製される)、載置され、その結果、数十万~数百万のDNA分子は、一度に並行して配列決定され得る。中でも、載置技術は、配列決定のスループット及び質にとって非常に重要である。効率的で、安定した載置技術は、配列決定のスループット及び質を大きく向上させることができる。更に、載置されたDNB又はDNAによって生成されたシグナルが充分であるかどうかも重要である。シグナル-ノイズ比が充分に大きいことによって、識別率がより高くなる可能性があり、その結果、シグナル抽出が容易になり、配列決定の質が向上する。
【0004】
配列決定又は研究のための鋳型としてDNBを使用する場合、DNBを対応するベクターに載置することが必要である。例えば、DNB配列決定は、DNBを配列決定スライドに載置し、次いで、配列決定スライドにおけるオンボード検出を行うことを概して必要とする。現在、一般的プロセスは、一本鎖環状ライブラリを調製すること、ローリングサークル増幅を行って核酸分子のある特定のコピーを含むDNBを形成すること、次いで、DNBを配列決定スライドへ直接載置すること、並びに配列決定及びデータの収集及び解析を最後に行うことを含む。しかし、各DNBは可変数のコピーを含み、一部はコピー数が少なくてもよく、一部はコピー数が多くてもよく、結果として、異なる大きさの多くのDNBが生じる。異なる大きさのこれらのDNBは、載置プロセスの間のブラウン/熱運動及び剪断の影響によって限定されることになるが、結果として、大きいDNBがスライドにおける2つの隣接する部位に載置される可能性があり(すなわち、2つの部位を占める)、幾つかの小さいDNBが同時にスライドにおいて同じ部位で載置される可能性があり、個別のDNBも溶液において失われる可能性があり、それによって載置がなくなることになる。特に、超高密度スライドにおいて、上述の現象は、より明らかであり、これらの現象は、スライドの利用率をある程度低減させ、結果として、データの無駄が生じる。
【0005】
ハイスループット配列決定又は検出のプロセスにおいて、限定量の幾つかの貴重な試料又はライブラリ(例えば、PCRによらないライブラリ、stLFRライブラリ、大きい挿入物、腫瘍、血漿を有するライブラリ等)のために、精確な載置の必要性がより高く、スライドの利用率だけでなく、各DNBによって生成されたシグナルが均一であるか、及びシグナルが充分に強いかどうかを考慮することが必要であり、とりわけレーザー出力が非常に低い場合、シグナルが容易に検出されることが必要である。したがって、DNBを、スライド又は他の支持体用具に、効率的に、安定して載置することができる方法を開発する必要性があり、載置されたDNBは、均一で、検出のために充分に強いシグナルを生成することができる。
【発明の概要】
【0006】
本発明において、特に明記されない限り、本明細書において使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。更に、本明細書において使用される実験室作業ステップは、対応する分野において広く使用される全てのルーチン的ステップである。一方、本発明のより良好な理解のために、関連する用語の定義及び説明が以下に示される。
【0007】
用語の定義
「核酸」という用語は、本明細書において使用される場合、任意の型の核酸であることができる。例えば、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又は、例えば、ヌクレオチド類似体から作製されたDNA若しくはRNAの類似体であることができる。核酸は、一本鎖であることが可能であるか、二本鎖であることが可能であるか、又は一本鎖配列及び二本鎖配列の両方を含むことが可能である。核酸分子は、二本鎖DNA(dsDNA)形態(例えば、ゲノムDNA、PCR及び増幅産物等)から誘導され得るか、又はDNA(ssDNA)若しくはRNA等の一本鎖形態から誘導され得る。更に、核酸分子は、直鎖状又は環状であることができる。ある特定の実施形態において、核酸分子は、一本鎖環状化核酸分子(例えば、一本鎖環状化DNA)であることができる。
【0008】
「ナノボール」という用語は、本明細書において使用される場合、コンパクトな(ほぼ)球状の形状を有する高分子又は複合体を概して指す。通常、ナノボールの内径は、例えば、1~10nm、10~20nm、20~50nm、50~100nm、100~200nm、200~500nm、500~1000nm等の約1nm~約1000nmの間の範囲であり、好ましくは、約50nm~約500nmの間の範囲である。
【0009】
「核酸ナノボール」という用語は、本明細書において使用される場合、核酸分子の複数のコピーを含む複合体又はコンカテマーを概して指す。ある特定の典型的な実施形態において、これらの核酸コピーは、ヌクレオチドの連続的線状鎖において順々に配置されてもよい。このタンデム反復構造は、核酸(例えば、DNA)の一本鎖の性質と共に、ナノボールが折り畳まれる原因となる可能性がある。核酸ナノボールにおける核酸分子の複数のコピーの各々は、知られた配列を有するアダプター配列を含む可能性があり、前記核酸分子の増幅又は配列決定が容易になることが容易に理解される。各核酸分子についてのアダプター配列は、通常同じであるが、異なってもよい。核酸ナノボールとしては、本明細書においてDNBとも称されるDNAナノボールが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0010】
「固体支持体」という用語は、本明細書において使用される場合、核酸を付着させ得るラテックスビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレン表面、ポリプロピレン表面、ポリアクリルアミドゲル、金表面、ガラス表面、チップ及びケイ素ウェーハ等の任意の不溶性の基質又はマトリックスを意味する。固体支持体の表面は、特定用途のために、適宜、例えば、平面、球状又は多孔性等の任意の所望の形状であることができる。例えば、固体支持体は、平坦なガラス表面であることができる。固体支持体は、固定化されて、例えば、フローセルの内部に取り付けられて、試薬含有溶液との相互作用を生じさせる。別の場合、固体支持体は、異なる反応容器における溶液との接触を容易にするために着脱可能とされてもよい。
【0011】
典型的には、固体支持体は、各部位が核酸分子(例えば、核酸ナノボール)を個別に付着させるか又は収容することが可能である、所定のパターンで配置された部位のアレイを含むことができる。付着させた核酸分子(例えば、核酸ナノボール)の大きさが、単一の部位によって収容され得る最大の大きさを超えるか、又はアレイにおける隣接する部位の間の距離を超える場合、核酸分子(例えば、核酸ナノボール)は、2つ以上の部位を占める可能性があり、それによって、アレイ部位の利用が減少する可能性があり、配列決定の効率性及び配列決定の質に影響を及ぼす可能性がある。
【0012】
「核酸ポリメラーゼ」という用語は、本明細書において使用される場合、当業者によって一般に理解される意味を有し、DNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼを含む。特定の好ましい実施形態において、核酸ポリメラーゼはDNAポリメラーゼである。
【0013】
「鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ」という用語は、本明細書において使用される場合、核酸鎖を下流に伸長/合成するプロセスにおいて、核酸二本鎖が下流に存在する場合、新しく合成された核酸一本鎖を使用して、既存の下流の核酸一本鎖を置換することによって、下流の核酸一本鎖を取り除き、遊離一本鎖を生成するDNAポリメラーゼを指す。鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼは、各種の増幅技術、例えば、鎖置換増幅、ローリングサークル増幅(RCA)、多置換増幅、ループ媒介等温増幅において使用されてきた。鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとしては、Bst DNAポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼ及びエキソクレノウ(exo-Klenow)が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0014】
「phi29 DNAポリメラーゼ」という用語は、本明細書において使用される場合、枯草菌(Bacillus subtilis)のファージphi29におけるクローニングによって得られた鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを指す。phi29 DNAポリメラーゼがローリングサークル増幅のために使用される場合、phi29 DNAポリメラーゼのC末端ドメインは、重合機能を行い、phi29 DNAポリメラーゼのN末端ドメインは、3’~5’エキソヌクレアーゼプルーフリーディング及び鎖置換機能を行う。phi29 DNAポリメラーゼの具体的な適用は、Lieberman、K.R.、G.M.Cherf.Processive replication of single DNA molecules in a nanopore catalyzed by phi29 DNA polymerase.J Am Chem Soc.2010.132(50):17961~72に見出され得る。phi29 DNAポリメラーゼは、商業的に入手可能であり、例えば、New England Biolabs、カタログ番号M0269Lを参照すること。
【0015】
「Bst DNAポリメラーゼ」という用語は、本明細書において使用される場合、5’~3’DNAポリメラーゼ活性を有するが、5’~3’エキソヌクレアーゼ活性を有さず、ゆえに、エラー修正機能を有さない、バシラスステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)のクローニングによって得られた鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを指す。Bst DNAポリメラーゼは、商業的に入手可能であり、例えば、New England BiolabsのBst DNAポリメラーゼシリーズ、例えば、Bst1.0、Bst2.0、Bst3.0を参照すること。
【0016】
核酸に関して使用される場合における「載置」、「固定」及び「付着」という用語は、本明細書において使用される場合、共有結合又は非共有結合を介して固体支持体に直接的又は間接的に付着させることを意味する。本開示のある特定の実施形態において、本発明の方法は、共有結合的付着を介して固体支持体に核酸を固定化することを含む。しかし、典型的には、核酸は、固体支持体の使用が所望される(例えば、核酸の増幅及び/又は配列決定を必要とする適用における)条件下で固体支持体に固定化されたままであるか、又は付着されたままであることが必要であるだけである。別の場合、載置は、塩基対ハイブリダイゼーション又は他の手段、例えば、上記の通りの共有結合的付着によって起きてもよい。固体支持体への核酸の付着の手段の非限定的な例としては、核酸ハイブリダイゼーション、ビオチンストレプトアビジン結合、チオール結合、光活性化結合、共有結合的結合、抗体-抗原、ヒドロゲル又は他の多孔質ポリマーによる物理的限界等が挙げられる。固体支持体に核酸を固定するための各種の例示的な方法は、例えば、G.Steinberg-Tatmanら、Bioconjugate Chemistry2006、17、841~848;Xu X.ら、Journal of the American Chemical Society128(2006)9286~9287;米国特許又は米国特許出願の米国特許第5639603号、米国特許第5641658号、米国特許第2010248991号;国際特許出願の国際公開第2001062982号、国際公開第2001012862号、国際公開第2007111937号、国際公開第0006770号に見出され得、全ての目的のために、特に、核酸が固定される固体支持体の調製のために、全ての関連する教示は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
「チップ」及び「スライド」という用語は、本明細書において使用される場合、同じ意味を有し、交換可能に使用される。
【0018】
「プライマー」という用語は、本明細書において使用される場合、適切な緩衝液において、適切な条件下における適切な温度で(すなわち、4つの異なるヌクレオシド三リン酸及び重合のための試薬、例えば、DNAポリメラーゼ若しくはRNAポリメラーゼ又は逆転写酵素の存在下で)、核酸合成の出発点の役割を果たし得るポリヌクレオチドを指す。したがって、プライマーは、標的核酸(鋳型)にハイブリダイズする標的結合領域を含む。プライマーは、概して、オリゴヌクレオチドであり、一本鎖である。しかし、プライマーは、二本鎖のセグメントを有するポリヌクレオチド(例えば、部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチド)を指してもよい。プライマーの標的結合領域の適切な長さは、プライマーの用途によって決まる。短いプライマー分子は、鋳型を有する充分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、より低い温度を概して必要とする。プライマーは、核酸鋳型の正確な配列を反映する必要はないが、核酸鋳型にハイブリダイズするために充分に相補的である必要がある。
【0019】
第1の態様において、本発明は、核酸分子を固体支持体に載置するための、又は固体支持体に固定された核酸ライブラリを構築するための方法であって、
(1)核酸分子を含む組成物と、前記固体支持体とを提供するステップ、
(2)前記組成物における前記核酸分子の第1の増幅を行って、前記核酸分子を含む増幅産物を得るステップ、
(3)前記第1の増幅を中断するか、又は遅らせるステップ、
(4)前記核酸分子を含む前記増幅産物を前記固体支持体に載置するステップ、及び
(5)前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の第2の増幅を行うステップ
を含む方法を提供する。
【0020】
ある特定の実施形態において、前記核酸分子を含む前記増幅産物は、核酸ナノボールである。
【0021】
ある特定の実施形態において、前記固体支持体は、前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)を載置するための部位のアレイを有する。ある特定の実施形態において、前記部位は、所定のパターンで前記固体支持体に配置される。
【0022】
ある特定の実施形態において、前記核酸分子は、任意の型の核酸であることができる。例えば、前記核酸分子は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はヌクレオチド類似体から作製されたDNA若しくはRNAの類似体であることができる。前記核酸分子は、一本鎖であることが可能であるか、二本鎖であることが可能であるか、又は一本鎖配列及び二本鎖配列の両方を含むことが可能である。前記核酸分子は、二本鎖DNA(dsDNA)形態(例えば、ゲノムDNA、PCR及び増幅産物等)から誘導され得るか、又はDNA(ssDNA)若しくはRNA等の一本鎖形態から誘導され得る。更に、前記核酸分子は、直鎖状又は環状であることができる。ある特定の実施形態において、前記核酸分子は、一本鎖環状化核酸分子(例えば、一本鎖環状化DNA)であることができる。ある特定の実施形態において、前記組成物は一本鎖環状核酸分子を含む。ある特定の実施形態において、前記組成物は一本鎖環状DNA分子を含む。
【0023】
ある特定の実施形態において、前記組成物は、1個又は複数個の核酸分子、例えば、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも1000個、少なくとも104個、少なくとも105個、少なくとも106個、少なくとも107個以上の核酸分子を含む。ある特定の実施形態において、前記核酸分子は一本鎖環状化DNAである。ある特定の実施形態において、前記核酸分子は、長さが少なくとも100bp、少なくとも200bp、少なくとも500bp、少なくとも800bp、少なくとも1000bp、少なくとも2000bpの目的の核酸断片を含む。
【0024】
ある特定の実施形態において、ステップ(2)において、得られた前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)の大きさは、所定の大きさを超えない。ある特定の実施形態において、ステップ(2)において、得られた前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)は、直鎖状DNA等の直鎖状核酸分子である。
【0025】
ある特定の実施形態において、前記所定の大きさは、前記固体支持体における単一の部位に収容され得るか、若しくは付着され得る核酸分子(例えば、核酸ナノボール)の最大の大きさ、又は前記固体支持体における隣接部位の間隔である。
【0026】
ある特定の実施形態において、得られた前記核酸ナノボールの大きさは、前記最大の大きさ又は前記固体支持体における前記隣接部位の間の距離の95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%を超えない。
【0027】
ある特定の実施形態において、ステップ(2)において、前記組成物における前記核酸分子の前記第1の増幅は、ローリングサークル増幅によって行われる。ある特定の実施形態において、増幅(例えば、ローリングサークル増幅)の時間は、前記増幅産物(例えば、核酸ナノボール)の前記大きさが前記所定の大きさを超えないように制御される。
ある特定の実施形態において、ステップ(3)において、前記第1の増幅は、
(a)前記第1の増幅のための反応混合物におけるdNTPの量を制御するか、又は低減させること、及び/又は
(b)前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼの活性を阻害するか、又は前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼを不活性化すること
から成る群から選択される1つ又は複数の方法によって中断されるか、又は遅らせられる。
【0028】
ある特定の実施形態において、前記第1の増幅は、前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼの前記活性を阻害すること、又は前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼを不活性化することによって、中断されるか、又は遅らせられる。
【0029】
ある特定の実施形態において、前記第1の増幅において使用された前記核酸ポリメラーゼの前記活性は、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%低減するように阻害される。
【0030】
ある特定の実施形態において、
(a)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤を添加すること、
(b)前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去すること、
(c)前記第1の増幅のための反応混合物の温度を前記核酸ポリメラーゼの作用温度範囲から逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように調整すること、
(d)前記第1の増幅のための前記反応混合物のpHを前記核酸ポリメラーゼの作用pH範囲から逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように調整すること、
から成る群から選択される1つ若しくは複数の方法によって、
前記核酸ポリメラーゼの前記活性は阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼは不活性化される。
【0031】
ある特定の実施形態において、前記核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、例えば、Bst DNAポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼ及びエキソクレノウである。
【0032】
酵素(核酸ポリメラーゼ)の生物活性及び安定性が、温度、pH、タンパク質濃度、塩条件、溶媒又は他の因子等の多くの因子に影響されることを理解することは容易である。当業者は、実際の必要性によってこれらの因子を変化させることによって、酵素(核酸ポリメラーゼ)の活性に影響を及ぼす(例えば、低下させるか、又は回復させる)ことが可能である。したがって、本発明の方法は、各種の適切な手段によって酵素活性に影響を及ぼす(例えば、酵素活性を低下させるか、又は回復させる)ことが可能であり、上記の例示的なプロトコール又は手段に限定されるものではない。例えば、核酸ポリメラーゼの活性は、核酸ポリメラーゼの作用条件(例えば、作用温度及び作用pH)を変化させることによって影響され(例えば、低下又は回復され)得る。核酸ポリメラーゼについての適切な作用条件は、当業者によって容易に決定され得る。例えば、phi29 DNAポリメラーゼについての適切な作用条件は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Nelson J.R.phi29 DNA polymerase-based methods for genomics applications[J].Journal of Clinical Ligand Assay、2002、25(3):276~279、に見出され得る。
【0033】
ある特定の実施形態において、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去することによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性は阻害され得るか、又は前記核酸ポリメラーゼは不活性化され得る。ある特定の実施形態において、前記補因子はカチオン(例えば、マグネシウムイオン)である。ある特定の実施形態において、前記補因子は、カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)を添加することによって除去され、それによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化される。ある特定の実施形態において、前記マグネシウムイオンキレート剤は、NTA、EDTA、HEDP、EDTMPS、DTPMPA、EDDHA、STPP、ナトリウムデキストロース及びメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択される。ある特定の実施形態において、マグネシウムイオンをキレート化するための前記剤はEDTAである。
【0034】
ある特定の実施形態において、前記第1の増幅のための前記反応混合物の前記温度は、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように調整されることによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化される。ある特定の実施形態において、前記反応混合物の前記温度は、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度の上限よりも高くなる、例えば、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃以上高くなるように調整され、或いは、前記反応混合物の前記温度は、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度の下限よりも低くなる、例えば、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃以上低くなるように調整される。ある特定の実施形態において、前記反応混合物の前記温度を20℃以下、10℃以下、4℃以下の温度に低下させ、或いは、前記反応混合物の前記温度を50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上の温度に上昇させる。
【0035】
ある特定の実施形態において、前記第1の増幅のための前記反応混合物の前記pHは、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pH範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように酸性又は塩基性の緩衝液を添加することによって調整されることによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され得る。ある特定の実施形態において、前記反応混合物の前記pHは、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pHの上限よりも高くなる、例えば、少なくとも1pH単位、少なくとも2pH単位、少なくとも3pH単位以上高くなるように調整されるか、又は前記反応混合物の前記pHは、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pHの下限よりも低くなる、例えば、少なくとも1pH単位、少なくとも2pH単位、少なくとも3pH単位以上低くなるように調整される。ある特定の実施形態において、前記酸性又は塩基性の緩衝液は、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液及びTris塩酸緩衝液から成る群から選択される。
【0036】
ある特定の実施形態において、前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤若しくは変性剤を添加することによって、前記核酸ポリメラーゼの前記活性は阻害され得るか、又は前記核酸ポリメラーゼは不活性化され得る。ある特定の実施形態において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性阻害剤又は変性剤は、例えば、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム(sodium lauryl sarcosinate)、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween-20、NP-40及びTritox-100から成る群から選択される界面活性剤である。
【0037】
ある特定の実施形態において、上記の手段のうちの1つ若しくは複数によって、核酸ポリメラーゼの活性は阻害されてもよいか、又は核酸ポリメラーゼは不活性化されてもよい。
【0038】
ある特定の実施形態において、前記固体支持体は、ラテックスビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレン表面、ポリプロピレン表面、ポリアクリルアミドゲル、金表面、ガラス表面、チップ、センサ、電極及びシリコンウェーハから成る群から選択される。ある特定の実施形態において、前記固体支持体は、平面、球状又は多孔性である。ある特定の実施形態において、前記固体支持体における単一の部位に収容され得るか、又は付着され得る前記核酸分子(例えば、核酸ナノボール)の最大の大きさは、5000nm以下、2000nm以下、1000nm以下、700nm以下、500nm以下、300nm以下、又は100nm以下である。ある特定の実施形態において、前記固体支持体における隣接部位の間隔は、5000nm未満、2000nm未満、1000nm未満、700nm未満、500nm未満、300nm未満、又は100nm未満である。
【0039】
ある特定の実施形態において、ステップ(2)において、前記組成物における前記核酸分子の前記第1の増幅は、ローリングサークル増幅によって行われる。ある特定の実施形態において、ステップ(5)において、前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅は、ローリングサークル増幅によって行われる。ある特定の実施形態において、前記第1の増幅及び前記第2の増幅は、同じ又は異なる(好ましくは、同じ)核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)を使用する。
【0040】
ある特定の実施形態において、前記固体支持体は、例えば、ポロキサマー、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、phi29 DNAポリメラーゼ)、T4ライゲーション酵素、BSA)又はそれらの任意の組合せを使用することによって、ステップ(4)を行う前に前処置される。
【0041】
ある特定の実施形態において、ステップ(5)において、前記第2の増幅によって得られた前記増幅産物は、直鎖状DNA等の直鎖状核酸分子である。ある特定の実施形態において、ステップ(5)で得られた前記産物は、核酸配列決定ライブラリとして使用される。ある特定の実施形態において、ステップ(5)の後、前記固体支持体に載置された前記核酸分子は、配列決定される。
【0042】
ある特定の実施形態において、ステップ(5)において、前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅は、核酸増幅のために必要とされる試薬を添加することによって行われる。ある特定の実施形態において、前記試薬は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)、dNTP、核酸ポリメラーゼのための作用緩衝液及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0043】
ある特定の実施形態において、ステップ(5)において、前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅は、前記第1の増幅をステップ(3)において中断させるか、又は遅らせる条件を排除することによって行われる。
【0044】
ある特定の実施形態において、ステップ(3)において、前記第1の増幅は、前記第1の増幅のために使用された前記核酸ポリメラーゼの前記活性を阻害することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記第2の増幅は、前記核酸ポリメラーゼの前記活性を回復することによって(例えば、前記核酸ポリメラーゼの前記活性を阻害する条件を排除することによって)行われる。ある特定の実施形態において、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性は、前記核酸ポリメラーゼの通常の活性の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上に回復される。
【0045】
ある特定の実施形態において、ステップ(3)において、前記第1の増幅は、前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤を添加することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性は、前記活性阻害剤を除去することによって回復され、前記第2の増幅は行われる。
【0046】
ある特定の実施形態において、ステップ(3)において、前記第1の増幅は、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性は、前記補因子を添加することによって回復され、前記第2の増幅は行われる。
【0047】
ある特定の実施形態において、ステップ(3)において、前記第1の増幅は、前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように前記反応混合物の前記温度を調整することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性は、前記反応混合物の前記温度を前記核酸ポリメラーゼの前記作用温度範囲に調整することによって回復され、前記第2の増幅は行われる。
【0048】
ある特定の実施形態において、ステップ(3)において、前記第1の増幅は、前記核酸ポリメラーゼの前記作用pH範囲を逸脱する(例えば、上回る又は下回る)ように前記反応混合物の前記pHを調整することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼ活性は、前記反応混合物の前記pHを前記核酸ポリメラーゼの前記作用pH範囲に調整することによって回復され、前記第2の増幅は行われる。
【0049】
ある特定の実施形態において、ステップ(3)において、前記第1の増幅は、前記核酸ポリメラーゼを変性させることによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記第2の増幅は、前記核酸ポリメラーゼを添加することによって行われる。
【0050】
第2の態様において、本発明は、核酸を増幅するための試薬と、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための試薬と、前記核酸分子を固体支持体に載置するための試薬とを含むキットを提供する。キットが上記に記載の本発明の方法を実施するために使用され得ることは、容易に理解される。例えば、キットは、核酸分子を固体支持体に載置するために、又は固体支持体に固定された核酸ライブラリを構築するために使用され得る。
【0051】
ある特定の実施形態において、核酸を増幅するための前記試薬は、核酸ポリメラーゼ、前記核酸ポリメラーゼのための作用緩衝液(濃縮又は非濃縮)、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子、dNTP又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。ある特定の実施形態において、前記核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、例えば、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ、例えば、Bst DNAポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼ及びエキソクレノウである。ある特定の実施形態において、前記補因子はカチオン(例えば、マグネシウムイオン)である。ある特定の実施形態において、前記作用緩衝液は濃縮されている。例えば、前記作用緩衝液は、少なくとも2倍、少なくとも5倍又は少なくとも10倍濃縮され得る。
【0052】
ある特定の実施形態において、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための前記試薬は、
(1)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤、
(2)前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる前記補因子を除去することが可能な試薬、
(3)前記溶液のpHを調整することが可能な酸性又はアルカリ性の緩衝液
から成る群から選択される1つ又は複数を含んでもよい。
【0053】
ある特定の実施形態において、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための前記試薬は、前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤を含んでもよい。ある特定の実施形態において、前記核酸ポリメラーゼの前記活性阻害剤又は変性剤は、例えば、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween-20、NP-40及びTritox-100から成る群から選択される界面活性剤である。
【0054】
ある特定の実施形態において、核酸増幅を中断するか、又は阻害する前記試薬は、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる前記補因子を除去することが可能な試薬を含んでもよい。ある特定の実施形態において、前記補因子はカチオン(例えば、マグネシウムイオン)である。ある特定の実施形態において、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる前記補因子を除去することが可能な前記剤は、カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)である。ある特定の実施形態において、前記カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)は、NTA、EDTA、HEDP、EDTMPS、DTPMPA、EDDHA、STPP、ナトリウムデキストロース及びメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択される。ある特定の実施形態において、前記カチオンキレート剤(例えば、マグネシウムイオンキレート剤)はEDTAである。
【0055】
ある特定の実施形態において、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための前記試薬は、前記溶液の前記pHを調整することが可能な酸性又は塩基性の緩衝液を含んでもよい。ある特定の実施形態において、前記酸性又は塩基性の緩衝液は、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液及びTris塩酸緩衝液から成る群から選択される。
【0056】
ある特定の実施形態において、前記核酸分子を前記固体支持体に載置するための前記試薬は、クエン酸三カリウム、クエン酸、phi29ポリメラーゼ、Pluronic F68を含む。
【0057】
ある特定の実施形態において、前記キットは、前記固体支持体を前処置するための試薬を更に含む。ある特定の実施形態において、前記固体支持体を前処置するための前記試薬は、ポロキサマー、酵素(例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、phi29 DNAポリメラーゼ)、T4リガーゼ、BSA)又はそれらの任意の組合せから成る群から選択される。
【0058】
有益な効果
本発明によって提供される、核酸ナノボール(例えば、DNB)を固体支持体に載置するための方法は、従来技術と比較して、載置密度及び載置安定性がより高い。同時に、本発明の方法は、核酸ナノボール(例えば、DNB)における標的核酸分子を2回増幅し、標的核酸分子のより多くのコピーをスライドに形成し、それによって、より強固で、より安定なシグナルが生成され得ることによって、検出が容易になる。
【0059】
本発明の方法は、高密度アレイに載置されたDNBの質を向上させることができ、アレイ部位の配列決定標的コピー数を増加させることができ、アレイ部位のシグナル-ノイズ比を向上させることができ、より長いリード長及びより短いイメージング露光時間並びにより良好な全体的なデータの質を可能にすることができる。このことは、ハイスループット配列決定のために特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】DNBをスライドに載置するための概略の手順を示す。例示的な実施形態において、一本鎖環状化DNAライブラリを使用して、DNBは、適切な条件下で、プライマー、dNTP及びphi29 DNAポリメラーゼ、又は鎖置換活性を有する他のポリメラーゼによるローリングサークル増幅を行うことによって得られ、ローリングサークル増幅が完了した後、DNBを配列決定スライドに直接載置する。各DNBは、核酸分子の異なる数のコピーを含んでもよいので(一部のDNBはより多くのコピーを含み、一部のDNBはより少ないコピーを含む)、異なるDNBの大きさは変化する。載置プロセスの間、Brown/熱運動及び剪断等の影響のため、大きいDNBは、スライドにおける2つ以上の隣接する部位に載置されてもよいが、一方で、複数の小さいDNBは、スライドにおける同じ1つの部位に載置されてもよく、少しのDNBが溶液に消えて、載置されないことも可能である。このことは、後続の配列決定結果(配列決定の効率性及び配列決定の質)に著しい影響を及ぼす。
【
図2】本発明の方法を使用して、DNBをスライドに載置する手順を示す。例示的な実施形態において、一本鎖環状化DNAライブラリを使用して、DNBは、適切な条件下で、プライマー、dNTP及びphi29 DNAポリメラーゼ、又は鎖置換活性を有する他のポリメラーゼによる第1のローリングサークル増幅を行うことによって得られる。第1のローリングサークル増幅の条件及び時間を制御して、適切な大きさのDNBが得られる。好ましい実施形態において、DNBの大きさがスライドにおける隣接する部位の間隔を超えないことによって、DNBをスライドに効率的に載置することが可能であり、それによって、同じ部位への複数のDNBの同時の載置、又はスライドにおける2つ以上の隣接する部位への1つのDNBの載置が回避される。例えば、チップの部位間隔が700nmである場合、20分間以下のローリングサークル増幅時間を使用することが可能であり、チップの部位間隔が500nmである場合、10分間以下のローリングサークル増幅時間を使用することが可能であり、部位間隔が更に低減する場合、適切な大きさのDNBを得るために、より短いローリングサークル増幅時間を使用することが可能である。
【0061】
所定の期間のローリングサークル増幅の後、第1のローリングサークル増幅を中断するか、又は遅らせるために各種方法を使用することができる。例えば、使用することができる方法は、(1)ある特定の濃度のEDTAを反応混合物に添加して、マグネシウムイオンをキレート化し、phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を弱めるか、又は停止し、DNBの成長を停止するか、又は遅らせるステップ、(2)反応混合物の温度を低温(例えば、4℃等の20℃未満)に調整して、phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を弱めるか、停止し、DNBの成長を停止するか、又は遅らせるステップ、(3)反応混合物のpHを酸性に調整して(例えば、クエン酸三カリウム及びクエン酸のpH=4.7の混合物を使用して)、phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を弱めるか、又は停止し、DNBの成長を停止するか、又は遅らせるステップを含むが、それらに限定されるものではない。
【0062】
続いて、DNBを配列決定スライドに載置し、次いで、スライドにおいて第2のローリングサークル増幅を行って、DNBに含まれる核酸分子のコピーの数を増加させる。第2のローリングサークル増幅を行うために、各種方法を使用することができる。ある特定の実施形態において、phi29 DNAポリメラーゼ活性を阻害する条件を排除することによって、ローリングサークル増幅を再開することができる。例えば、前のステップにおいてEDTAを使用して、マグネシウムイオンをキレート化し、phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を弱めるか、又は停止する場合、DNBを配列決定スライドに載置した後、適切な濃度のマグネシウムイオン緩衝液を添加して、phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を回復することによって、スライドにおけるローリングサークル増幅を継続することができる。例えば、前のステップで低温(例えば、20℃未満、例えば、4℃)を使用して、phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を弱めるか、又は停止する場合、DNBを配列決定スライドに載置した後、反応系の温度を上昇させて(例えば、30~37℃)、phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を回復することによって、スライドにおけるローリングサークル増幅を継続することができる。例えば、酸性緩衝液(例えば、pH=4.7のクエン酸三カリウム及びクエン酸の混合物)を使用して、前のステップにおけるphi29 DNAポリメラーゼの重合能力を弱めるか、又は停止する場合、DNBを配列決定スライドに載置した後、反応系のpHを上昇させて(例えば、phi29 DNAポリメラーゼの作用緩衝液を使用するか、又はアルカリ性緩衝液を添加することによって)phi29 DNAポリメラーゼの重合能力を回復することによって、スライドにおけるローリングサークル増幅を継続することができる。
【0063】
本発明の上記の載置スキームを使用することによって、載置プロセスにおいて使用されたDNBの不適切な大きさによって引き起こされる低載置効率の問題(例えば、大きさがあまりに大きい)が効果的に回避され、各部位が1つのDNBに対応することが効果的に保証され、更に、各部位において載置されたDNBに含まれる核酸分子のコピーの数がより多く、それによってシグナルがより強くなる。したがって、本発明の方法は、チップ(高密度アレイ)における各部位の、DNBを載置する効率性及びDNBを載置する質を向上させることができ、各部位のシグナル-ノイズ比を向上させることができ、より長いリード長及びより短いイメージング露光時間並びにより良好な全体的なデータの質を可能にすることができる。
【
図3】実験群1のチップ、実験群2のチップ、及び対照群のチップの第1の配列決定サイクルの塩基シグナルを示す。
【
図4】対照群のチップ(
図4A)、実験群1のチップ(
図4B)、及び実験群2のチップ(
図4C)における隣接する部位におけるDNB重複率(すなわち、1つのDNBがスライドにおける2つの部位を占める確率)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、実施例を参照して、本発明の実施形態を詳細に記載するが、当業者は、以下の実施例が、本発明を例示するために使用されるだけであり、本発明の範囲を限定するものと考えられているべきでないことを理解するであろう。具体的な条件が実施例で示されない場合、実施例は、慣用の条件又は製造業者によって示唆される条件に従って実施される。製造業者の指示なしで使用される試薬又は器具は、市場から得ることができる慣用の製品である。
【0065】
本出願の実施例で使用される主要な機器は、以下の通りだった。DNBSEQ-T7RS配列決定装置(MGI Co.,Ltd.(MGI)から購入)、MGIDL-T7RS(MGIから購入された)、DNBSEQ-T7RSチップ(700nm、MGIから購入された)、キュービット(Qubit)(登録商標)3.0蛍光定量機器(Thermoから購入)、PCR機械(Trobotから購入された)、高速度遠心分離機(Eppendorfから購入)。
【0066】
本出願の実施例で使用した主要な試薬を以下の表1に示した。
【0067】
【0068】
実施例1:DNBの増幅、及び載置
本実施例において、実験群1、実験群2及び対照群を設定した。
【0069】
(1)実験群1のプロトコールを
図2に示したが、具体的な実験プロセスは、以下の通りだった。
1.1 第1の増幅
製造業者の指示書に従って、MGIEasy(商標)DNAライブラリ調製キット(MGI Co.,Ltd.)を使用して、300bpの主要挿入断片を有する大腸菌(E.coli)一本鎖環状DNAライブラリを調製した。使用したライブラリアダプターの2つの核酸鎖の配列は、5’-AGT CGG AGG CCA AGC GGT CTT AGG AAG ACA ATC CTT TTG TAC AAC TCC TTG GCT CAC A-3’(配列番号1)、及び5’-TTG TCT TCC TAA GGA ACG ACA TGG CTA CGA TCC GAC TT-3’(配列番号2)であった。次いで、DNB迅速調製キット(MGI Co.,Ltd.)の指示書に従って、2fmol/uLの一本鎖環状DNAライブラリを取り、次いで、20uLのDNBプライマー混合溶液(具体的な式を表2に示した)を添加したが、RCAプライマー配列は、5’-GCC ATG TCG TTC TGT GAG CCA AGG-3’(配列番号3)であった。PCR機械でプライマーハイブリダイゼーションを実施し(95℃、1分間→65℃、1分間→40℃、1分間→4℃、1分間)、次いで、40uLのDNAポリメラーゼ混合溶液(具体的な式を表3に示した)及び4ulのphi29 DNAポリメラーゼ(MGI Co.,Ltd.)を添加し、PCR機械でローリングサークル増幅を実施した(30℃、20分間)。調製されたDNBをDNBSEQ-T7チップにおける後続の載置のために使用した(チップにおける隣接する部位の間隔は700nmであり、単一の部位に収容され得たか、又は付着され得た核酸ナノボールの最大の大きさは220nmであった)。
【0070】
【0071】
【0072】
上記の時間、ローリングサークル増幅を行った後、増幅反応混合物を氷箱に直ちに配置し、8μLの0.5mMのEDTAを添加し、広口ピペットで5~8回徐々に混合して、振盪及び激しいピペット操作を回避した。次いで、2μLのDNBを取り、キュービット(登録商標)ssDNA Assay Kit(Thermo Fisherから購入、art.No.Q10212)及びキュービット(登録商標)3.0Fluorometerを使用して、濃度検出を行った。検出結果は、核酸濃度が15ng/ulであることを示した。20分間のローリングサークル増幅によって、形成されたDNBの大きさは、約200nmであった。DNBSEQ-T7チップ(MGI Co.,Ltd.)の載置量によって、合計5つのチューブのDNBを調製した。
【0073】
1.2 DNB載置系を調製すること:
DNBSEQ-T7RS DNB Rapid Loading Kit(MGI Co.,Ltd.)の指示書に従って、上記で調製された400ulのDNB混合物を取り、100ulのPBSを添加し、広口ピペットで5~8回徐々に混合した。遠心分離、振盪及び激しいピペット操作が回避されることになった。
【0074】
1.3 配列決定スライドの前処置、及び載置
まず、スライド前処置試薬1(具体的な式を表4に示した)をチップにポンプ移送し、室温で5分間静置し、次いで、スライド前処置試薬2(具体的な式を表5に示した)をチップにポンプ移送し、チップの前処置のために2つの試薬を使用したが、このことは、配列決定スライドへのDNBの効率的載置を補助するのに役立った。チップ前処置が完了した後、DNB載置試薬をMGIDL-T7RS機器に載置することによって、DNB載置を行った。載置を4℃で30分間行った。
【0075】
【0076】
【0077】
1.4 第2の増幅
載置が完了した後、終濃度が5mMのマグネシウムイオンとDNBポリメラーゼとの740ulの混合物、及びphi29 DNAポリメラーゼの1ulの混合物をチップにポンプ移送して、ポリメラーゼを再活性化し、温度を30℃に設定し、配列決定スライドにおいて第2の増幅を行ったが、増幅時間は30分間であった。増幅が完了した後、実験群1の配列決定チップを得た。
【0078】
(2)実験群2のプロトコールを
図2に示したが、具体的な実験プロセスは、以下の通りだった。
2.1 第1の増幅
製造業者の指示書に従って、MGIEasy(商標)DNAライブラリ調製キット(MGI Co.,Ltd.)を使用して、300bpの主要挿入断片を有する大腸菌(E.coli)一本鎖環状DNAライブラリを調製した。使用したライブラリアダプターの2つの核酸鎖の配列は、5’-AGT CGG AGG CCA AGC GGT CTT AGG AAG ACA ATC CTT TTG TAC AAC TCC TTG GCT CAC A-3’(配列番号1)、及び5’-TTG TCT TCC TAA GGA ACG ACA TGG CTA CGA TCC GAC TT-3’(配列番号2)であった。次いで、DNB迅速調製キット(MGI Co.,Ltd.)の指示書に従って、2fmol/uLの一本鎖環状DNAライブラリを取り、次いで、20uLのDNBプライマー混合溶液(具体的な式を表2に示した)を添加したが、RCAプライマー配列は、5’-GCC ATG TCG TTC TGT GAG CCA AGG-3’(配列番号3)であった。PCR機械でプライマーハイブリダイゼーションを実施し(95℃、1分間→65℃、1分間→40℃、1分間→4℃、1分間)、次いで、40uLのDNAポリメラーゼ混合溶液(具体的な式を表3に示した)及び4ulのphi29 DNAポリメラーゼ(MGI Co.,Ltd.)を添加し、PCR機械でローリングサークル増幅を実施した(30℃、20分間)。調製されたDNBをDNBSEQ-T7チップにおける後続の載置のために使用した(チップにおける隣接する部位の間隔は700nmであり、単一の部位に収容され得たか、又は付着され得た核酸ナノボールの最大の大きさは220nmであった)。
【0079】
【0080】
【0081】
上記の時間、ローリングサークル増幅を実施した後、増幅反応混合物を氷箱に直ちに配置し、広口ピペットを使用して5~8回穏やかに混合して、振盪及び激しいピペット操作を回避した。次いで、2μLのDNBを取り、キュービット(登録商標)ssDNA Assay Kit(Thermo Fisherから購入、art.No.Q10212)及びキュービット(登録商標)3.0 Fluorometerを使用して、濃度検出を行った。検出結果は、核酸濃度が15ng/ulであることを示した。20分間のローリングサークル増幅によって、形成されたDNBの大きさは、約200nmであった。DNBSEQ-T7チップ(MGI Co.,Ltd.)の載置量によって、合計5つのチューブのDNBを調製した。
【0082】
2.2 DNB載置系の調製:
DNBSEQ-T7RS DNB Rapid Loading Kit(MGI Co.,Ltd.)の指示書に従って、上記で調製された500ulのDNB混合物を取り、載置DNBチューブに配置し、後の使用のために氷に直ちに配置した。
【0083】
2.3 配列決定スライドの前処置、及び載置
まず、スライド前処置試薬1(具体的な式を表4に示した)をチップにポンプ移送し、室温で5分間の静置し、次いで、スライド前処置試薬2(具体的な式を表5に示した)をチップにポンプ移送し、チップの前処置のために2つの試薬を使用したが、このことは、配列決定スライドへのDNBの効率的載置を補助するのに役立った。チップ前処置が完了した後、MGIDL-T7RS機器を使用して、DNB載置を行うようにDNB載置系を載置した。載置を4℃で30分間行った。
【0084】
【0085】
【0086】
2.4 第2の増幅
載置を4℃で30分間行った後、phi29酵素を再活性化するように温度を30℃に設定し、配列決定スライドにおいて、30分間の増幅時間、第2の増幅を行った。増幅を完了した後、実験群2の配列決定チップを得た。
【0087】
(3)対照群のプロトコールを
図1に示したが、具体的な実験プロセスは、以下の通りだった。
【0088】
対照群で使用した試料は、実験群と同じ、すなわち、主に300bpの挿入断片を有する大腸菌一本鎖環状DNAライブラリであった。実験群と同じキット及び同じプロトコールを使用して、試料をローリングサークル増幅に供した。コピー数及び配列決定シグナルにおける配列決定プロトコールの要件のため、対照群における増幅時間を40分間に設定した。増幅産物の核酸濃度は35ng/ulであり、形成されたDNBの平均の大きさは約300nmであった。
【0089】
続いて、実験群と同じキット及び同じプロトコールを使用して、増幅産物(DNB)を配列決定スライドに載置したが、第2のローリングサークル増幅を行わず(すなわち、ステップ1.4を行わず)、それによって対照群の配列決定チップを得た。
【0090】
実施例2:配列決定
DNBSEQ-T7RSハイスループット配列決定キット(MGI Co.,Ltd.)及びDNBSEQ-T7RS洗浄緩衝液キット(MGI Co.,Ltd.)の指示書に従って、上記の実験群1、実験群2及び対照群で得られた配列決定チップをDNBSEQ-T7RS配列決定装置に配置し、それぞれPE100(対合末端100bp)配列決定を行った。配列決定プロセスにおいて使用した一本鎖配列決定プライマー(MGI Co.,Ltd.)の配列は、5’-GC TCA CAG AAC GAC ATG GCT ACG ATC CGA CTT-3’(配列番号4)であった。
【0091】
図3は、第1の配列決定サイクルにおける実験群1のチップ、実験群2のチップ、及び対照群のチップの塩基シグナルの比較結果を示す。結果は、実験群1及び実験群2のシグナルが対照群よりも高かったことを示した。表6は、本発明の実験群1、実験群2及び対照群のPE100配列決定報告を示す。結果は、本発明のプロトコールを使用した実験群1及び実験群2の総データ量(総読み取り)及び配列決定の質(Q30)が対照群よりも良好だったことを示した。
図4は、本発明の実験群1、実験群2及び対照群における隣接するDNBの重複率の値を示す。値が高ければ高いほど、1つのDNBが2つの部位位置を占めた現象がより重大であった。そのことは、
図4から認めることが可能であり、対照群の重複率(dup-rate)(
図4A)は10.09%であったが、一方で、実験群1の重複率(dup-rate)(
図4B)は1.14%であり、実験群2の重複率(dup-rate)(
図4C)は1.6%であった。結果は、本発明のプロトコールによる実験群の重複率が対照群よりも非常に低かったことを示した。
【0092】
【0093】
本発明の具体的な実施形態が詳細に記載されたが、当業者は、開示された全ての教示に鑑みて各種の改変及び変更が前記詳細に対して為され得、これらの変更が全て本発明の範囲内であることを理解するであろう。本発明の完全な範囲は、添付の特許請求の範囲及びその任意の均等物によって与えられる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子を固体支持体に載置するための、又は固体支持体に固定された核酸ライブラリを構築するための方法であって、
(1)核酸分子を含む組成物と、前記固体支持体とを提供するステップ、
(2)前記組成物における前記核酸分子の第1の増幅を行って、前記核酸分子を含む増幅産物を得るステップ、
(3)前記第1の増幅を中断するか、又は遅らせるステップ、
(4)前記核酸分子を含む前記増幅産物を前記固体支持体に載置するステップ、及び
(5)前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の第2の増幅を行うステップ
を含
む、方法。
【請求項2】
(1)前記固体支持体が、前記増幅産
物を載置するための部位のアレイを有
し、
任意選択的に、前記部位が、所定のパターンで前記固体支持体に配置され
ること、
(2)前記核酸分子が、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はDNA若しくはRNAの類似体から成る群から選択され
ること、
(3)前記組成物が一本鎖環状核酸分子を含
むこと、
(4)前記組成物が一本鎖環状DNA分子を含
むこと、
(5)前記組成物が
、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも1000個、少なくとも10
4個、少なくとも10
5個、少なくとも10
6個、少なくとも10
7個
又はそれ以上の核酸分子を含
むこと、及び
(6)前記核酸分子が、長さが少なくとも100bp、少なくとも200bp、少なくとも500bp、少なくとも800bp、少なくとも1000bp、又は少なくとも2000bpの標的核酸断片を含む
こと
から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、得られた前記増幅産
物が、直鎖状核酸分子であ
る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、得られた前記増幅産物の大きさが、所定の大きさを超えず、任意選択的に、前記所定の大きさが、前記固体支持体における単一の部位に収容され得るか、若しくは付着され得る前記核酸分子の最大の大きさ、又は前記固体支持体における隣接部位の間隔である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(1)得られた前記増幅産物の大きさが、前記最大の大きさ又は隣接部位の間隔の95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%を超えないこと、及び
(2)増幅の時間を制御することによって、前記増幅産物の前記大きさが前記所定の大きさを超えないこと
から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(3)において、前記第1の増幅が、
(a)前記第1の増幅のための反応混合物におけるdNTPの量を制御するか、又は低減させること、及
び
(b)前記第1の増幅において使用され
た核酸ポリメラーゼの活性を阻害するか、又は前記第1の増幅において使用され
た核酸ポリメラーゼを不活性化すること
から成る群から選択される1つ又は複数の方法によって中断されるか、又は遅らせられ
る、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
(a)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤を添加すること、
(b)前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去すること、
(c)前記第1の増幅のための反応混合物の温度を前記核酸ポリメラーゼの作用温度範囲から逸脱するように調整すること、及び
(d)前記第1の増幅のための反応混合物のpHを前記核酸ポリメラーゼの作用pH範囲から逸脱するように調整すること
から成る群から選択される1つ又は複数の方法によって、前記核酸ポリメラーゼの活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去することによって、前記核酸ポリメラーゼ
の活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され
る、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
(1)前記補因子がカチオンであること、
(2)前記補因子がマグネシウムイオンであること、
(3)前記補因子が、カチオンキレート剤を添加することによって除去され、それによって、前記核酸ポリメラーゼの活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化されること、
(4)前記補因子が、マグネシウムイオンキレート剤を添加することによって除去されること、及び
(5)前記補因子が、NTA、EDTA、HEDP、EDTMPS、DTPMPA、EDDHA、STPP、ナトリウムデキストロース及びメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択されるカチオンキレート剤を添加することによって除去されること
から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の増幅のため
の反応混合物
の温度が、前記核酸ポリメラーゼ
の作用温度範囲を逸脱す
るように調整されることによって、前記核酸ポリメラーゼ
の活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され
る、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
(1)前記反応混合物の温度が、前記核酸ポリメラーゼの作用温度の上限よりも、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃又はそれ以上高くなるように調整され、又は、前記反応混合物の温度が、前記核酸ポリメラーゼの作用温度の下限よりも、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃又はそれ以上低くなるように調整されること、及び
(2)前記反応混合物の温度を20℃以下、10℃以下、4℃以下又はそれ以下の温度に低下させ、又は、前記反応混合物の温度を50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上又はそれ以上の温度に上昇させること
から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の増幅のため
の反応混合物
のpHが、前記核酸ポリメラーゼ
の作用pH範囲を逸脱す
るように酸性又は塩基性の緩衝液を添加することによって調整されることによって、前記核酸ポリメラーゼ
の活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され
る、請求項
6に記載の方法。
【請求項13】
(1)前記反応混合物のpHが、前記核酸ポリメラーゼの作用pHの上限よりも、少なくとも1pH単位、少なくとも2pH単位、少なくとも3pH単位又はそれ以上高くなるように調整されるか、又は前記反応混合物のpHが、前記核酸ポリメラーゼの作用pHの下限よりも、少なくとも1pH単位、少なくとも2pH単位、少なくとも3pH単位又はそれ以上低くなるように調整されること、及び
(2)前記酸性又は塩基性の緩衝液が、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液及びTris塩酸緩衝液から成る群から選択されること
から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤若しくは変性剤を添加することによって、前記核酸ポリメラーゼ
の活性が阻害されるか、又は前記核酸ポリメラーゼが不活性化され
る、請求項
6に記載の方法。
【請求項15】
(1)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤が、界面活性剤であること、及び
(2)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤が、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween-20、NP-40及びTritox-100から成る群から選択されること
から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)前記固体支持体が、ラテックスビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレン表面、ポリプロピレン表面、ポリアクリルアミドゲル、金表面、ガラス表面、チップ、センサ、電極及びシリコンウェーハから成る群から選択されること、
(b)前記固体支持体が、平面、球状又は多孔性であること、
(c)前記固体支持体における単一の部位に収容され得るか、又は付着され得
る核酸ナノボー
ルの最大の大きさが、5000nm以下、2000nm以下、1000nm以下、700nm以下、500nm以下、300nm以下、又は100nm以下であること、
(d)ステップ(2)において、前記組成物における前記核酸分子の前記第1の増幅が、ローリングサークル増幅によって行われること、
(e)ステップ(5)において、前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅が、ローリングサークル増幅によって行われること、
(f)前記第1の増幅及び前記第2の増幅が、同じ又は異な
る核酸ポリメラー
ゼを使用すること、
(g)前記固体支持体が、ステップ(4)を行う前に前処置に供されること、
(h)前記固体支持体が、ポロキサマー、酵
素又はそれらの任意の組合せを使用することによって前処置されること、
(
i)ステップ(5)において、前記第2の増幅によって得られ
た増幅産物が
、直鎖状核酸分子であること、
(
j)ステップ(5)で得られ
た産物が、核酸配列決定ライブラリとして使用されること、
(
k)前記方法が、ステップ(5)の後、前記固体支持体に載置された前記核酸分子を配列決定することを更に含むこと、
及び
(l)前記増幅産物が核酸ナノボールであること
から成る群から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
(a)ステップ(5)において、前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅が、核酸増幅のために必要とされる試薬を添加することによって行われ
ること、
及び
(b)前記第1の増幅をステップ(3)において中断させるか、又は遅らせる条件を排除することによって、ステップ(5)において、前記固体支持体に載置された前記増幅産物における前記核酸分子の前記第2の増幅が行われること、
から成る群から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
(a)核酸増幅のために必要とされる前記試薬が、核酸ポリメラーゼ、dNTP、核酸ポリメラーゼのための作用緩衝液及びそれらの任意の組合せから成る群から選択されること、
(b)ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記第1の増幅のために使用された核酸ポリメラーゼの活性を阻害することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記第2の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの活性を回復することによって行われること、
(c)ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記第1の増幅のために使用された核酸ポリメラーゼの活性を阻害することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記第2の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの活性を阻害する条件を排除することによって行われること、
(d)ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤を添加することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記活性阻害剤を除去して、前記核酸ポリメラーゼの活性を回復し、前記第2の増幅が行われること、
(e)ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子を除去することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの活性が、前記補因子を添加することによって回復され、前記第2の増幅が行われること、
(f)ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの作用温度範囲を逸脱するように反応混合物の温度を調整することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの活性が、反応混合物の温度を前記核酸ポリメラーゼの作用温度範囲に調整することによって回復され、前記第2の増幅が行われること、
(g)ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼの作用pH範囲を逸脱するように反応混合物のpHを調整することによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記核酸ポリメラーゼの活性が、前記反応混合物のpHを前記核酸ポリメラーゼの作用pH範囲に調整することによって回復され、前記第2の増幅が行われること、及び
(h)ステップ(3)において、前記第1の増幅が、前記核酸ポリメラーゼを変性させることによって中断されるか、又は遅らせられ、ステップ(5)において、前記第2の増幅が、前記核酸ポリメラーゼを添加することによって行われること
から成る群から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
核酸を増幅するための試薬と、核酸増幅を中断するか、又は阻害するための試薬と
、核酸分子を固体支持体に載置するための試薬とを含むキットであって、
好ましくは、
(1)核酸を増幅するための前記試薬が、核酸ポリメラーゼ、前記核酸ポリメラーゼのための作用緩衝
液、前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる補因子、dNTP又はそれらの任意の組合せを含
むこと、
(2)核酸増幅を中断するか、又は阻害するための前記試薬が、
(
a)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤、
(
b)前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる前記補因子を除去することが可能な試薬、
及び
(
c)溶液のpHを調整することが可能な酸性又はアルカリ性の緩衝液
から成る群から選択される1つ又は複数を含んでもよ
いこと、
(3)前記核酸分子を前記固体支持体に載置するための前記試薬が、クエン酸三カリウム、クエン酸、phi29ポリメラーゼ、
又はPluronic F68を含
むこと、
及び
(4)前記キットが、前記固体支持体を前処置するための試薬を更に含
むこと
から成る群から選択される1つ又は複数の特徴を有する、キット。
【請求項20】
(1)前記核酸ポリメラーゼが、DNAポリメラーゼであること、
(2)前記補因子がカチオンであること、
(3)前記作用緩衝液が濃縮されており、例えば、前記作用緩衝液が、少なくとも2倍、少なくとも5倍又は少なくとも10倍濃縮されていること、
(4)前記核酸ポリメラーゼの活性阻害剤又は変性剤が、界面活性剤であること、
(5)前記核酸ポリメラーゼが機能するために必要とされる前記補因子を除去することが可能な前記試薬が、カチオンキレート剤であること、及び
(6)前記固体支持体を前処置するための前記試薬が、ポロキサマー、酵素又はそれらの任意の組合せから成る群から選択されること、
から成る群から選択される1つ又は複数の特徴を有し、
好ましくは、
(1)前記DNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼであること、
(2)前記DNAポリメラーゼは、Bst DNAポリメラーゼ、phi29 DNAポリメラーゼ又はエキソクレノウから選択されること、
(3)前記カチオンはマグネシウムイオンであること、
(4)前記界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween-20、NP-40及びTritox-100から成る群から選択されること、
(5)前記カチオンキレート剤がマグネシウムイオンキレート剤であること、
(6)前記カチオンキレート剤が、NTA、EDTA、HEDP、EDTMPS、DTPMPA、EDDHA、STPP、ナトリウムデキストロース及びメタケイ酸ナトリウムから成る群から選択されること、
(7)前記酸性又は塩基性の緩衝液が、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液及びTris塩酸緩衝液から成る群から選択されること、及び
(8)前記酵素が、DNAポリメラーゼ、T4リガーゼ及びBSAから選択されること
から成る群から選択される1つ又は複数の特徴を有する、請求項19に記載のキット。
【国際調査報告】