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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】二重CAR-T細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230823BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230823BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20230823BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230823BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230823BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61K35/17
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505861
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2021071400
(87)【国際公開番号】W WO2022023529
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】PA202070509
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350465
【氏名又は名称】セレクティス ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チュリカ アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ポアロ ローラン
(72)【発明者】
【氏名】アランダ オルギジェス ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシャトー フィリップ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本発明は、2種類の異なる標的に指向する2種類のCARを発現する、操作された新規な免疫細胞、該免疫細胞を調製するためのポリヌクレオチド、該免疫細胞を含む薬学的組成物、およびがんの処置における該免疫細胞の使用に関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD22に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(CAR22)およびCD20に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR20)をその細胞表面に発現する、遺伝子操作された免疫細胞であって、
a) CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
b) CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、
遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項2】
CAR22がSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、かつCAR20がSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項3】
SEQ ID NO: 22などのリツキシマブ特異的ミモトープを含む安全スイッチを、CAR20およびCAR22のいずれの細胞外ドメインも含まない、請求項1または2に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項4】
CARが、免疫細胞のゲノムに組み込まれた外来性の核酸によってコードされ、かつ外来性の核酸が、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター(EF1αプロモーターなど)、
(ii) CAR20をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸、
(iv) CAR22をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項5】
・(ii)の核酸が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含み;かつ
・(iv)の核酸が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、
請求項4に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項6】
外来性の核酸が、SEQ ID NO: 32の核酸配列を含む、請求項4または5に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項7】
T細胞、NK細胞、およびマクロファージからなる群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項8】
T細胞である、たとえば細胞傷害性T細胞である、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項9】
細胞集団の中に含まれている、たとえば免疫細胞集団の中に含まれている、特に、T細胞集団、NK細胞集団、および/またはマクロファージ集団の中に含まれている、請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項10】
TCRネガティブであるT細胞である、請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項11】
操作されたT細胞が、
TCRの構成要素をコードするポリヌクレオチド配列に指向する、低分子ヘアピンRNA(shRNA)または低分子干渉(siRNA)
を発現する、請求項10に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項12】
操作されたT細胞が、そのTCRαアレルおよび/またはTCRβアレルにおいて変異している、請求項10に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項13】
操作されたT細胞が、
変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレル
を有する、請求項10または12に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項14】
操作されたT細胞が、
不活性化されている、β2m、PD1、CTLA4、dCK、CD52、および/またはGRより選択される少なくとも1つのアレル
を有する、請求項8~13のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項15】
操作されたT細胞が、不活性化されているCD52アレルを有する、請求項9~14のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項16】
操作された細胞、好ましくはT細胞が、初代細胞である、請求項1~15のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項17】
操作された細胞、好ましくはT細胞が、哺乳動物細胞である、好ましくはヒト細胞である、請求項1~16のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項18】
操作された細胞、好ましくはT細胞が、CAR22とCAR20以外のさらなるCARを発現しない、請求項1~17のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を含む、免疫細胞集団。
【請求項20】
請求項9~18のいずれか一項に記載の操作されたT細胞を含む、T細胞集団。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
請求項19または20に記載の免疫細胞集団および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項23】
請求項10~18のいずれか一項に記載の操作されたT細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項24】
請求項20に記載のT細胞集団および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項25】
a) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR22をコードする核酸;ならびに
b) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20をコードする核酸
を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
a)の核酸とb)の核酸が1つの核酸分子上にあり、かつ自己切断ペプチド(P2A、T2A、E2A、またはF2Aなど)をコードする核酸配列が、a)の核酸とb)の核酸の間に位置する、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
CAR22とCAR20以外のさらなるCARをコードする核酸を含まない、請求項25または26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
SEQ ID NO: 22のリツキシマブ特異的ミモトープをコードする核酸を含まない、請求項25~27のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
・a)の核酸が、CAR22の発現を制御するプロモーター(EF1αプロモーターなど)を含み、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;
・b)の核酸がCAR20をコードし、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;かつ
・自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸が、a)の核酸とb)の核酸の間に存在して、CAR20とCAR22の同時発現を可能にする、
請求項25~28のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
・b)の核酸が、CAR20の発現を制御するプロモーター(EF1αプロモーターなど)を含み、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;
・a)の核酸がCAR22をコードし、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;かつ
・自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸が、b)の核酸とa)の核酸の間に存在して、CAR22とCAR20の同時発現を可能にする、
請求項25~28のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
SEQ ID NO: 31の核酸配列(CAR22xCAR20構築物)を含む、請求項29に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項32】
SEQ ID NO: 32の核酸配列(CAR20xCAR22構築物)を含む、請求項30に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項33】
請求項25~32のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項34】
請求項33に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項35】
請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を調製する方法であって、請求項25~32のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項33に記載のベクターを、免疫細胞に導入する段階を含む、前記方法。
【請求項36】
医薬として使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項37】
CD20および/またはCD22の発現に関連するがんの処置に使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項38】
血液がん、具体的にはCD22および/またはCD20関連血液がん、より具体的には再発・難治性のCD22および/またはCD20関連血液がん、さらにより具体的にはアグレッシブ型のCD22および/またはCD20関連血液がんの処置に使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項39】
がんが、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、請求項37または38に記載の使用のための操作された免疫細胞。
【請求項40】
がんが、非ホジキンリンパ腫または急性リンパ性白血病である、請求項39に記載の使用のための操作された免疫細胞。
【請求項41】
がんが、CD20および/またはCD22の低発現に関連する、請求項37~40のいずれか一項に記載の使用のための操作された免疫細胞。
【請求項42】
がんが、再発性非ホジキンリンパ腫である、請求項37~41のいずれか一項に記載の使用のための操作された免疫細胞。
【請求項43】
CD20および/またはCD22の発現に関連するがんに罹患している患者を処置する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞または請求項19もしくは20に記載の免疫細胞集団の有効量を、患者に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項44】
がんが、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、請求項43に記載の処置方法。
【請求項45】
がんが、非ホジキンリンパ腫または急性リンパ性白血病である、請求項43または44に記載の処置方法。
【請求項46】
がんが、CD20および/またはCD22の低発現に関連する、請求項43~45のいずれか一項に記載の処置方法。
【請求項47】
がんが、再発性非ホジキンリンパ腫である、請求項43~46のいずれか一項に記載の処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、細胞免疫療法の分野に関連し、かつより具体的には、がんの処置に有用であって、2種類の異なる標的に指向する2種類のCARを発現する、新規の操作された免疫細胞に関連する。
【背景技術】
【0002】
背景
米国(US)では、およそ3分につき1人が血液がんと診断されている。米国では2020年に総計で推定178,520人が、白血病か、リンパ腫か、または骨髄腫と診断されると予想される。白血病、リンパ腫、および骨髄腫の新規症例は、2020年に米国で診断された推定1,806,590件というがんの新規症例のうちの、9.9パーセントを占めると予想される("Cancer Facts & Figures", 2020, American Cancer Society)。
【0003】
血液悪性疾患のためのキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の開発は、過去10年において最も目覚ましい治療法上の進展の1つとなっている(Holstein et al., 2020, Clin. Pharmacol. Ther. 107(1):112-122(非特許文献1))。実際、腫瘍学の分野が急速に発展するにつれて、CAR-T細胞の養子移植は、血液悪性疾患の管理において著しい有効性を示してきており、かつ、いくつかの臨床試験も報告されてきている。
【0004】
キメラ抗原受容体(「CAR」)を発現する免疫細胞とは、CARを発現するように遺伝子操作されている細胞であり、CARは通常、特定の腫瘍抗原を認識しそしてそれらの腫瘍抗原を発現するがん細胞を殺傷するように、設計される。CAR免疫細胞が、腫瘍を消失させるために免疫系を活性化することが可能であるという点も、検討から除外されるものではない。これらは一般的には、CARを発現するT細胞(「CAR-T細胞」)であるか、またはCARを発現するナチュラルキラー細胞(「CAR-NK細胞」)であるか、またはCARを発現するマクロファージである。
【0005】
CARは、1つの融合分子において1つまたは複数のシグナル伝達ドメインが結合しているターゲティングモエティからなる、合成受容体である。一般的には、CARの結合モエティは、モノクローナル抗体に由来する抗原結合ドメインからなり、該抗原結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)からなり、該単鎖可変断片(scFv)は、柔軟性のあるリンカーによって連結された、モノクローナル抗体の軽鎖可変断片および重鎖可変断片を含む。受容体ドメインまたはリガンドドメインに基づく結合モエティの使用もまた、成功している。第1世代のCARのシグナル伝達ドメインは、CD3ζ鎖またはFc受容体γ鎖の細胞質内領域に由来する。第1世代のCARは、T細胞の細胞傷害性をリダイレクトさせることに成功したことが示されているが、しかしながらこれは、インビボでの長期の増殖および抗腫瘍活性をもたらすことはできなかった。CARで改変されたT細胞の生存率を高め、かつその増殖を増大させるために、CD28、OX-40(CD134)、ICOS、および4-1BB(CD137)を含めた共刺激分子に由来する、シグナル伝達ドメインが、単独で(第2世代)、または組み合わせて(第3世代)追加された。CARは、リンパ腫および固形腫瘍を含めたさまざまな悪性腫瘍の腫瘍細胞の表面に発現する抗原に対して、T細胞をリダイレクトさせることを可能にすることに成功している(Jena, Dotti et al., 2010, Blood 116(7):1035-1044(非特許文献2))。
【0006】
養子免疫療法は、エクスビボで作製された自家のまたはアロジェニックな抗原特異的T細胞の移植を伴うものであるが、これは、米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)によって承認されたCAR-T細胞の種類数の増加によって裏付けられるように、ウイルス感染およびがんを処置するための有望な戦略である(たとえば、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病の処置のための、Novartis社の抗CD19 CAR-Tであるチサゲンレクルユーセル(Kymriah(商標))や、成人患者におけるいくつかの型の大細胞型B細胞リンパ腫の処置のための、Kite Pharma社の抗CD19 CAR-Tであるアキシカブタゲンシロルユーセル(Yescarta(商標)))。
【0007】
CAR-T細胞療法の研究および開発は進展してきたものの、広範囲のがんを標的とし得る、および再発がんを標的とし得る、ならびに/または、がん関連抗原の発現が極めて変化しやすく、かつ該発現が経時的に変化する、または処置の間もしくは処置の後に変化するがんを標的とし得る、改善されたCAR-T細胞に対する必要性は、依然として存在し続けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Holstein et al., 2020, Clin. Pharmacol. Ther. 107(1):112-122
【非特許文献2】Jena, Dotti et al., 2010, Blood 116(7):1035-1044
【発明の概要】
【0009】
概要
本発明者らは、CD20抗原およびCD22抗原を標的とする、新規のCAR-T細胞を開発し、該CAR-T細胞は、CD20およびCD22の発現レベルが変化する腫瘍細胞によって活性化されることが可能であり、かつ、先行技術を上回るCAR-T細胞の改善をもたらす。
【0010】
第1の局面は、CD22に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(CAR22)およびCD20に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR20)をその細胞表面に発現する、遺伝子操作された免疫細胞に関連し、ここで、
a) CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 12の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
b) CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 16の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む。
【0011】
特定の1つの局面において、遺伝子操作された免疫細胞は、TCRネガティブT細胞である。
【0012】
別の局面は、操作された免疫細胞と、または操作された免疫細胞を含む細胞集団と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連する。
【0013】
さらなる他の局面は、以下を含む単離されたポリヌクレオチドに関連する:
a) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 12の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR22をコードする核酸;ならびに
b) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 16の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20をコードする核酸。
【0014】
他の局面は、ポリヌクレオチドを含むベクターに関連し、かつポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞にも関連する。
【0015】
よりさらなる1つの局面は、操作された免疫細胞を調製する方法に関連する。
【0016】
他の局面は、医薬として使用するための、操作された免疫細胞、または細胞集団に関連する。
【0017】
別の局面は、がんまたは炎症性障害、特に、CD20および/またはCD22の発現に関連するがんまたは炎症性障害の処置に使用するための、操作された免疫細胞を利用する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】CD20xCD22 CARまたはCD22xCD20 CARの検出。実施例に記載されるプロトコルを用いた、形質導入なしのT細胞(NT)における、または、CD22 CAR構築物、もしくはCD22xCD20 CAR構築物、もしくはCD20xCD22 CAR構築物を形質導入されたT細胞における、CAR CD20またはCAR CD22の検出を示すフローサイトメトリー解析。
図2】CD20およびCD22についてのTALEN(登録商標)処理、ならびに細胞ソーティングの後で得られた、種々のRaji細胞のフローサイトメトリー解析。
図3】CD20抗原および/もしくはCD22抗原を発現するRaji細胞か、またはそれらを発現しないRaji細胞に対する、2人の異なるドナー由来のCD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞の溶解パーセンテージ。
図4】(A) CD20およびCD22を発現するRaji細胞、(B) CD22のみを発現するRaji細胞、または(C) CD20のみを発現するRaji細胞のいずれかに対する、CD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞の経時的な溶解パーセンテージ。
図5】生物発光によって測定された、示される用量のCD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞での処置を受けた際の、インビボ腫瘍量の用量依存性の制御。
図6】B細胞リンパ腫の播種モデルにおける、示される用量のCD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞での処置を受けた動物の生存曲線。
図7】B細胞リンパ腫の皮下モデルにおける、示される用量のCD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞での処置を受けた動物の生存曲線。
図8】Daudi細胞に関して、CD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、CD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞によるIFNγの放出。
【0019】
本明細書によって、および実施例において使用される、関連する用語は、以下のとおりである:
抗CD20 CAR = CAR20 = CD20CAR であり、
抗CD22 CAR = CAR22 = CD22CAR であり、
抗CD20 CAR/抗CD22 CAR = CAR20x22またはCAR22x20 = CD20xCD22 CARまたはCD22xCD20 CARである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本明細書において具体的に定義されない限り、使用される全ての技術用語および科学用語は、遺伝子療法、生化学、遺伝学、および分子生物学の分野における当業者が通常理解しているものと、同じ意味を有する。
【0021】
本発明の実施または試験においては、本明細書において記載されるものと同様のまたは同等の、あらゆる方法および材料を使用することが可能であり、好適な方法および材料が本明細書に記載されている。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み入れられる。不一致のある場合には、本明細書が、定義を含めて優先されるであろう。さらに、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、かつ、別途指定されない限り、これらは限定することを意図するものではない。
【0022】
本発明の実施には、別途指定されない限り、当業者の技能の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の、慣用の技術が利用されるであろう。そのような技術は、文献において十分に説明されている。たとえば、以下を参照されたい:"Current Protocols in Molecular Biology"(Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA);"Molecular Cloning: A Laboratory Manual" 第3版(Sambrookら、2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);"Oligonucleotide Synthesis"(M. J. Gait編、1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;"Nucleic Acid Hybridization"(B. D. HarriesおよびS. J. Higgins編、1984);"Transcription And Translation"(B. D. HamesおよびS. J. Higgins編、1984);"Culture Of Animal Cells"(R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);"Immobilized Cells And Enzymes"(IRL Press, 1986);B. Perbal, "A Practical Guide To Molecular Cloning"(1984);連続出版物である"Methods In ENZYMOLOGY"(筆頭編者J. AbelsonおよびM. Simon, Academic Press, Inc., New York)、特に154巻および155巻(Wuら編)ならびに185巻 "Gene Expression Technology"(D. Goeddel編);"Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells"(J. H. MillerおよびM. P. Calos編、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);"Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology"(MayerおよびWalker編、Academic Press, London, 1987);"Handbook Of Experimental Immunology" 第I巻~第IV巻(D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編、1986);ならびに"Manipulating the Mouse Embryo"(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)。
【0023】
定義
本明細書において使用される場合、「病態に関連する抗原」とは、所与の疾患において存在しているかまたは過剰発現している抗原を指す。抗原がCD20またはCD22である場合、「CD20関連疾患」または「CD22関連疾患」とは、がんまたは炎症性障害のような疾患であって、腫瘍細胞または炎症反応を誘発する細胞(特にB細胞)にCD20抗原またはCD22抗原が概して存在する、疾患を指す。病態ががんである場合の、病態に関連する抗原、すなわち「がんに関連する抗原」は、本明細書において定義されるような腫瘍抗原であり得る。
【0024】
本明細書において使用される場合、「CD20」との用語は、B細胞において検出可能であることが知られている、ある抗原決定基を指す。ヒトCD20は、膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1(membrane-spanning 4-domains, subfamily A, member 1)(MS4A1)とも呼ばれる。ヒトおよびマウスのアミノ酸配列および核酸配列は、公共のデータベース、たとえば、GenBank、UniProt、および Swiss-Prot等において見いだすことが可能である。たとえば、ヒトCD20のアミノ酸配列は、アクセッション番号NP_690605.1およびNP_068769.2に見いだすことが可能であり、かつヒトCD20の転写バリアント1および3をコードする核酸配列は、それぞれアクセッション番号NM_152866.2およびNM_021950.3に見いだすことが可能である。1つの局面において、CARの抗原結合部分は、CD20タンパク質の細胞外ドメイン内の抗原を認識し、かつ該抗原に結合する。1つの局面において、CD20タンパク質は、がん細胞において発現している。本明細書において使用される場合、「CD20」には、変異を含むタンパク質が含まれ、該変異はたとえば、全長の野生型CD20の、点変異、断片、挿入、欠失、およびスプライスバリアントである。
【0025】
本明細書において使用される場合、「CD22」との用語は、白血病前駆細胞において検出可能であることが知られている、ある抗原決定基を指す。ヒトおよびマウスのアミノ酸配列および核酸配列は、公共のデータベース、たとえば、GenBank、UniProt、および Swiss-Prot等において見いだすことが可能である。たとえば、ヒトCD22のアイソフォーム1~5のアミノ酸配列は、それぞれアクセッション番号NP 001762.2、NP 001172028.1、NP 001172029.1、NP 001172030.1、およびNP 001265346.1に見いだすことが可能であり、かつヒトCD22のバリアント1~5をコードする核酸配列は、それぞれアクセッション番号NM 001771.3、NM 001185099.1、NM 001185100.1、NM 001185101.1、およびNM 001278417.1に見いだすことが可能である。1つの局面において、CARの抗原結合部分は、CD22タンパク質の細胞外ドメイン内の抗原を認識し、かつ該抗原に結合する。1つの局面において、CD22タンパク質は、がん細胞において発現している。本明細書において使用される場合、「CD22」には、変異を含むタンパク質が含まれ、該変異はたとえば、全長の野生型CD22の、点変異、断片、挿入、欠失、およびスプライスバリアントである。
【0026】
「腫瘍抗原」との用語は、「腫瘍特異的抗原」および「腫瘍関連抗原」を包含することが意図される。腫瘍特異的抗原(TSA)は、概して、腫瘍細胞のみに存在し、かついかなる他の細胞にも存在しないものであり、一方で腫瘍関連抗原(TAA)は、何種類かの腫瘍細胞に存在し、かつ何種類かの正常細胞にも存在するものである。本明細書において意図される腫瘍抗原は、あるタンパク質の変異型であって、腫瘍においてのみ該変異型が出現する一方で、非腫瘍組織では非変異型が観察される、という変異型をも指す。
【0027】
「細胞外抗原結合ドメイン」との用語は、本明細書において使用される場合、ある特異的な抗原に結合することが可能なオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。好ましくは該ドメインは、細胞表面分子と相互作用することが可能であろう。たとえば、細胞外抗原結合ドメインは、ある特定の病態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用する抗原を認識するように、選択され得る。特定の一例において、細胞外抗原結合ドメインは単鎖抗体断片(scFv)を含み、これは、柔軟性のあるリンカーによって連結された、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体の軽鎖可変断片(VL)および重鎖可変断片(VH)を含む。本明細書に記載される操作された免疫細胞の細胞表面に発現するCARの抗原結合ドメインは、標的抗原に結合し、かつ、たとえば、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびそれらの機能的な断片などに由来する、任意のドメインであってよい。
【0028】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、一般的には、1つの融合分子において1つまたは複数のシグナル伝達ドメインが結合しているターゲティングモエティを含む、合成受容体を意味する。本明細書において定義されるように、「キメラ抗原受容体」との用語は、単鎖CARとともに、複鎖CARをも包含する。一般的には、CARの結合モエティは、単鎖抗体の抗原結合ドメイン(scFv)からなり、これは、柔軟性のあるリンカーによって連結された、モノクローナル抗体の軽鎖および可変断片を含む。受容体ドメインまたはリガンドドメインに基づく結合モエティの使用もまた、成功している。第1世代のCARのシグナル伝達ドメインは、CD3ζ鎖またはFc受容体γ鎖の細胞質内領域に由来する。第1世代のCARは、T細胞の細胞傷害性をリダイレクトさせることに成功したことが示されている。しかしながらこれは、インビボでの長期の増殖および抗腫瘍活性をもたらすことはできなかった。CARで改変されたT細胞の生存率を高め、かつその増殖を増大させるために、CD28、OX-40(CD134)、および4-1BB(CD137)を含めた共刺激分子に由来する、シグナル伝達ドメインが、単独で(第2世代)、または組み合わせて(第3世代)追加された。CARは、必ずしも鎖1本のポリペプチドだけではなく、複鎖CARもまた可能である。複鎖CARの構造に関し、たとえばWO2014039523に記載されるように、シグナル伝達ドメインと共刺激ドメインは、別々のポリペプチド鎖に配置される。そのような複鎖CARはFcεRIに由来し得、これは、FcεRIのα鎖の高親和性のIgE結合ドメインを、たとえばscFvなどといった細胞外リガンド結合ドメインと置き換える一方で、FcεRIのβ鎖および/またはγ鎖のN末端テールおよび/またはC末端テールを、それぞれ、シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインと融合させることによるものである。細胞外リガンド結合ドメインは、細胞標的に向けてT細胞の特異性をリダイレクトさせる役割を有し、一方でシグナル伝達ドメインは、免疫細胞応答を活性化させる。
【0029】
「免疫細胞」とは、造血系起源の細胞であって、自然免疫応答および/または適応免疫応答を開始および/または実行するのに機能的に関与する細胞を意味し、これはたとえば、典型的にはCD45陽性細胞、CD3陽性細胞、またはCD4陽性細胞などである。本明細書に記載される免疫細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、サイトカイン誘導性キラー細胞(CIK細胞)であってよく、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球またはヘルパーTリンパ球、γδT細胞、ナチュラルキラーT細胞(「NKT細胞)からなる群より選択される、B細胞またはT細胞であってもよい。
【0030】
「アロジェニック」とは、細胞がドナー起源であること、または、異なるハプロタイプを有する患者への注入を考慮した上で、細胞を、幹細胞から作製するおよび/または分化させることを意味する。
【0031】
そのような免疫細胞は、一般的には、アロ反応性を低下させるように、および/またはその患者宿主に関してより持続性となるように、操作される。より具体的には、アロジェニックな免疫細胞を操作する方法は、T細胞の、またはT細胞を生じさせようとする幹細胞の、TCR発現を低下させるかまたは不活性化する段階を含み得る。これは、さまざまな配列特異的試薬によって、たとえば、遺伝子サイレンシングまたは遺伝子編集の技術などによって、達成可能である(ヌクレアーゼ、塩基編集、shRNA、RNAi等)。
【0032】
「ドナー起源である」とは、T細胞が、新鮮細胞として直接的にドナーに由来する必要は必ずしもなく、処置を受ける患者ではない(すなわち、異なるハプロタイプである)当初のドナーから得られた、幹細胞または細胞株に由来し得ることを意味する。
【0033】
「初代細胞(primary cell)」または「初代細胞(primary cells)」とは、生きている組織(たとえばバイオプシー材料)から直接採取され、かつ、ある限られた時間のみ、インビトロでの生育が確立された細胞を意図し、これは、それら細胞に、限られた回数の集団倍加しか経験させないことを意味する。初代細胞は、持続性の腫瘍形成性細胞株、または人工的に不死化された細胞株と対比されるものである。そのような細胞株の非限定的な例は、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH 3T3細胞; NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;Jurkat細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;Molt 4細胞である。
【0034】
初代免疫細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織を含めた、多数の非限定的な供給源から得ることが可能であり、かつ、腫瘍から、たとえば腫瘍浸潤リンパ球から、得ることも可能である。いくつかの態様において、免疫細胞は、健康なドナーに由来し得、がんを有すると診断された患者に由来し得、または感染を有すると診断された患者に由来し得る。別の態様において、該細胞は、表現型上の別々の特徴を示す免疫細胞の混合集団の、たとえば、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞、およびCD56陽性細胞を含む免疫細胞の混合集団などの、一部である。初代免疫細胞は、当技術分野において公知のさまざまな手法によって、ドナーまたは患者から提供され、該手法は、たとえば、Schwartz J.らによってレビューされている("Guidelines on the use of therapeutic apheresis in clinical practice-evidence-based approach from the Writing Committee of the American Society for Apheresis: the sixth special issue" (2013) J Clin Apher. 28(3):145-284)ような、白血球アフェレーシス技術によるものである。
【0035】
幹細胞に由来する免疫細胞もまた、本発明における初代免疫細胞とみなされ、これは具体的には、人工多能性幹細胞(iPS)に由来するものである[Yamanaka、K. et al. (2008). "Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells Without Viral Vectors". Science. 322 (5903): 949-53]。リプログラミング因子のレンチウイルスによる発現が、ヒト末梢血細胞から複能性細胞を誘導するために使用されている[Staerk, J. et al. (2010). "Reprogramming of human peripheral blood cells to induced pluripotent stem cells". Cell stem cell. 7 (1): 20-4]、[Loh, YH. et al. (2010). "Reprogramming of T cells from human peripheral blood". Cell stem cell. 7 (1): 15-9]。
【0036】
免疫細胞は、当技術分野において周知の、ヒト胚の破壊を伴わない技術による、ヒト胚性幹細胞に由来し得る[Chung et al. (2008). "Human Embryonic Stem Cell lines generated without embryo destruction". Cell Stem Cell 2(2):113-117]。
【0037】
「遺伝子操作」とは、細胞に遺伝学的物質を導入する、細胞の遺伝学的物質を改変する、および/または細胞から遺伝学的物質を除去することを目的とする、任意の方法を意味する。「遺伝子編集」とは、ゲノム上のある特定の位置(遺伝子座)において、遺伝学的物質を付加するか、除去するか、または変化させることを可能にする、遺伝子操作を意味し、これは点変異を含む。遺伝子編集は、一般的には配列特異的試薬を必要とする。
【0038】
「同一性」とは、2つの核酸分子間の、または2つのポリペプチド間の、配列同一性を指す。比較を目的としてアラインされ得るそれぞれの配列において、ある位置を比較することによって、同一性を決定することが可能である。比較された配列におけるある位置が、同じ塩基で占められている場合、該分子は、該位置において同一である。核酸配列間またはアミノ酸配列間の、類似性または同一性の程度は、該核酸配列が共有する位置において同一であるかまたはマッチングするヌクレオチドの数の、関数である。2つの配列間の同一性を計算するために、GCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)、マディソン市、ウィスコンシン州)の一部として利用可能であるFASTAまたはBLASTを含めた、さまざまなアラインメントアルゴリズムおよび/またはアラインメントプログラムが使用可能であり、かつそれらは、たとえば、デフォルトの設定を用いて使用可能である。たとえば、本明細書に記載される特定のポリペプチドに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドであって、かつ、好ましくは、実質的に同じ機能を示すポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、意図される。別途指定されない限り、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドと同じ機能を有するポリペプチドおよびポリヌクレオチドであって、かつ、本明細書に記載されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドと少なくとも80%が同じである、一般的には少なくとも85%が同じである、好ましくは少なくとも90%が同じである、より好ましくは少なくとも95%が同じである、およびさらにより好ましくは少なくとも97%が同じである、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを包含する。
【0039】
本明細書における「患者」または「対象」、および「ドナー」との用語は、非ヒト霊長類およびヒトを含めた、動物界の全てのメンバーを含む。
【0040】
本発明は、低レベルのCD20抗原と低レベルのCD22抗原とを発現する腫瘍細胞であって、CD20またはCD22のいずれかを標的とするCAR-T細胞を効果的に活性化することができない腫瘍細胞が、驚くべきことに、CD20を標的とするCARとCD22を標的とするCARとの両方を発現する二重CAR-T細胞を活性化することができたという、驚くべき観察に基づいている。
【0041】
この理論に拘束されることを意図するものではないが、これらの条件において、腫瘍部位あたりのCD20抗原分子およびCD22抗原分子の総数は、それを上回ると、二重CAR-T細胞が活性化されるが一重CAR-T細胞は活性化されないという、閾値を表す。
【0042】
これは、以下のように表され得る:
X = 抗CD20 CAR(CAR20)によって認識される、腫瘍の表面上のCD20抗原分子の密度;
Y = 抗CD22 CAR(CAR22)によって認識される、腫瘍の表面上のCD22抗原分子の密度;
X + Y = Z = 腫瘍の表面上のCD20抗原分子とCD22抗原分子の密度;
T = T細胞の活性化を引き起こす、T細胞に結合した抗原分子の密度 = T細胞の活性化に必要な閾値
Z > Tである場合、T細胞の活性化が生じる。
【0043】
(表1)CAR T細胞の活性化と、標的抗原であるCD20およびCD22の発現レベルとの間の関係性を表す概略図
【0044】
このように、本発明の、CAR20およびCAR22の両方を発現するT細胞(二重「CAR20x22-T細胞」または二重「CAR22x20-T細胞」)の利点の1つは、さまざまな発現レベルのCD20抗原および/またはCD22抗原を有する広範囲な腫瘍細胞集団を標的とする免疫療法に有用である点である。したがって、CD20抗原を低レベルで発現し、かつCD22抗原を高レベルで発現する腫瘍細胞のみならず、CD20抗原を高レベルで発現し、かつCD22抗原を低レベルで発現する腫瘍細胞もまた、本発明の二重CAR22x20-T細胞によって標的とされ得る(かつしたがって殺傷され得る)ものであるが、驚くべきことに、CD20抗原およびCD22抗原を低レベルで発現する細胞もまた、標的とされ得、かつしたがって殺傷され得る。
【0045】
本発明の二重CAR-T細胞の別の利点は、経時的にまたは処置の間に、CD20抗原およびCD22抗原をより多くまたはより少なく発現することによって変化する腫瘍を処置するための免疫療法における、該二重CAR-T細胞の有用性を利用するものである。
【0046】
本発明の二重CAR-T細胞の別の利点は、CD20抗原およびCD22抗原が低発現している点によって特徴付けられるがんを処置するための免疫療法における、該二重CAR-T細胞の有用性を利用するものである。
【0047】
本発明の二重CAR-T細胞のさらなる他の利点は、2種類のCARの相乗効果に関連するものであり、これは、T細胞とその標的腫瘍細胞との間の免疫シナプスを支援しかつ強化することによる可能性があり、これは、より高いレベルのエフェクターサイトカインの産生を可能にする可能性がある。
【0048】
上述の利点に加えて、本発明の二重CAR-T細胞はまた、CD20関連がんおよびCD22関連がんの、再発および/または抗原逃避を回避するためにも有用である。
【0049】
上に詳述したように、本明細書において観察かつ記載されているものは、広く適用可能であり得、したがって、2種類の異なる腫瘍関連抗原を標的とする二重CAR-T細胞は、さまざまな発現レベルの腫瘍関連抗原を有する広範囲な腫瘍細胞集団を標的とする免疫療法に、有用であり得る。
【0050】
本発明の1つの局面の、さらなる驚くべき効果は、ある免疫細胞についての、本発明者らによってなされた観察に関連するものであり、該免疫細胞は、CAR20およびCAR22をその細胞表面に発現し、かつ該細胞のゲノムに組み込まれた外来性の核酸を有する免疫細胞であって、該外来性の核酸が、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター、
(ii) CAR20をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチドをコードする核酸、
(iv) CAR22をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する、免疫細胞であり;
上記の免疫細胞は、以下の免疫細胞と比較して、インビボにおいてより強力な腫瘍の低減を示す;
CAR20およびCAR22をその細胞表面に発現し、かつ該細胞のゲノムに組み込まれた外来性の核酸を有する免疫細胞であって、該外来性の核酸が、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター、
(ii) CAR22をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチドをコードする核酸、
(iv) CAR20をコードする核酸
を含む、免疫細胞。
【0051】
抗CD20 CARおよび抗CD22 CARを発現する免疫細胞
本明細書に記載される免疫細胞には、CD20抗原およびCD22抗原をそれぞれ標的とする、2種類の合成キメラ抗原受容体(CAR)が付与されている。
【0052】
- 抗CD22 CAR(CAR22)および抗CD20 CAR(CAR20)
本明細書に記載される免疫細胞には、2種類の合成CARが付与されており、これらは、ある細胞に対する、たとえば、CD20抗原および/もしくはCD22抗原を発現する細胞を含む腫瘍などに対する、またはCD20抗原および/もしくはCD22抗原を発現する炎症性細胞に対する、より高い特異性を、該免疫細胞に付与する。
【0053】
一般的には、組換えキメラ抗原受容体は外来性のポリヌクレオチドによってコードされており、該ポリヌクレオチドは、本出願の他の箇所において言及される形質導入段階の1つのようにして、ウイルスベクターを用いて細胞内に導入される。外来性のポリヌクレオチドによってコードされる組換え受容体はまた、プラスミドまたはPCR産物の形でも、細胞に導入され得る。
【0054】
一般的には、CARポリペプチドは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、ここで細胞内ドメインは、共刺激ドメインおよび/または主たるシグナル伝達ドメインを含み、抗原結合ドメインは、病態に関連する抗原に結合する。
【0055】
本明細書に記載される抗CD20 CARおよび抗CD22 CARは、特定のCAR構造に限定されるものではないが、免疫細胞を遺伝子操作するために使用可能な核酸は、一般的には、以下を含むCARをコードする:病態に関連する抗原に結合する、細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、ならびに、刺激ドメインおよび/または主たるシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン。一般的には、細胞外抗原結合ドメインは、リンカーを介して連結された、ある特異的な抗原(たとえば腫瘍抗原)に結合する抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含む、scFvである。膜貫通ドメインは、たとえば、CD8αの膜貫通ドメイン、または4-1BBの膜貫通ドメインであり得る。刺激ドメインは、たとえば、4-1BBの刺激ドメインであり得る。主たるシグナル伝達ドメインは、たとえば、CD3ζのシグナル伝達ドメインであり得る。
【0056】
1つの態様において、同一のドメインを含む2つのCARをコードするポリヌクレオチドを含む構築物内での、何らかの組換えイベントを回避するために、構築物において2つ存在する同じアミノ酸配列(たとえば、同じ膜貫通ドメイン、同じ刺激ドメイン)をコードするために使用されるヌクレオチド酸配列は、それらのヌクレオチド配列が異なるものとなるようなコドン使用およびコード縮重を用いて最適化される。
【0057】
(表2)CARに典型的に存在する種々のドメインの配列
【0058】
1つの局面において、CD20に対して特異的な抗原結合ドメインは、リンカーによって連結された可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、ここでVH鎖は、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含み、かつVL鎖は、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む。
【0059】
たとえば、CD20に対して特異的な抗原結合ドメインは、リンカーによって連結された可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み(SEQ ID NO: 17のscFvを形成している)、ここでVH鎖およびVL鎖は、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDR、ならびにSEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む。
【0060】
本明細書に記載される抗CD20 CARは、以下を含み得る:
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%の同一性、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン。
【0061】
特定の1つの局面において、腫瘍細胞に存在するCD20抗原を標的とするCARであって、本明細書に記載される遺伝子操作された免疫細胞が発現するCARは、表3および4に記載されるようなものである。
【0062】
(表3)本明細書に記載されかつ実施例のセクションに示される抗CD20 CARのscFvに含まれる、VHおよびVLの配列
【0063】
(表4)本明細書に記載されかつ実施例のセクションに示される抗CD20 CARの構造
【0064】
1つの局面において、CD22に対して特異的な抗原結合ドメインは、リンカーによって連結された可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、ここでVH鎖は、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含み、かつVL鎖は、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む。
【0065】
たとえば、CD22に対して特異的な抗原結合ドメインは、リンカーによって連結された可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み(SEQ ID NO: 13のscFvを形成している)、ここでVH鎖およびVL鎖は、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDR、ならびにSEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む。
【0066】
本明細書に記載される抗CD22 CARは、以下を含み得る:
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%の同一性、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン。
【0067】
特定の1つの局面において、腫瘍細胞に存在するCD22抗原を標的とするCARであって、本明細書に記載される遺伝子操作された免疫細胞が発現するCARは、以下の表5および6、ならびに実施例のセクションに記載される。
【0068】
(表5)本明細書に記載されかつ実施例のセクションに示される抗CD22 CARのscFvに含まれる、VHおよびVLの配列
【0069】
(表6)本明細書に記載されかつ実施例のセクションに示される抗CD22 CARの構造
【0070】
- CAR20およびCAR22を発現する免疫細胞
本明細書に記載される操作された免疫細胞には、本明細書に記載されるように、CD20抗原およびCD22抗原をそれぞれ標的とする、2種類の合成キメラ抗原受容体(CAR)が付与されている。
【0071】
特定の一例において、免疫細胞は、CD20とCD22以外の別の抗原を標的とする他のCARを、一切発現しない。より具体的には、免疫細胞は、本明細書に記載されるCAR22とCAR20以外の他のCARを、発現しない。
【0072】
免疫細胞は、たとえば、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、マクロファージ、NK細胞、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞であってよく、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球またはヘルパーTリンパ球、γδT細胞、NKT細胞、および腫瘍浸潤リンパ球(TILL)からなる群より選択される、B細胞またはT細胞であってもよい。
【0073】
特定の一例において、2種類のCARを発現するように操作された免疫細胞は、T細胞、NK細胞、およびマクロファージからなる群より選択される。
【0074】
より具体的な一例において、2種類のCARを発現する免疫細胞は、T細胞であり、たとえば細胞傷害性T細胞である。
【0075】
包括的な一例において、免疫細胞は、細胞集団の中に含まれており、たとえば免疫細胞集団の中に含まれており、特に、T細胞集団、NK細胞集団、および/またはマクロファージ集団の中に含まれている。
【0076】
特定の一例において、免疫細胞は、オフザシェルフ免疫療法に使用するためのT細胞である。
【0077】
特定の一例において、遺伝子操作された免疫細胞は、TCRネガティブである(その細胞表面にTCRαを発現しない)T細胞である。
【0078】
特定の一例において、操作されたT細胞は、
TCRの構成要素をコードするポリヌクレオチド配列に指向する、低分子ヘアピンRNA(shRNA)または低分子干渉(siRNA)
を発現する。
【0079】
別の特定の一例において、操作されたT細胞は、そのTCRαアレルおよび/またはTCRβアレルにおいて変異している。
【0080】
特に、操作されたT細胞は、
変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレル
を有し得る。
【0081】
よりさらなる一例において、操作されたT細胞は、
不活性化されている、β2m、PD1、CTLA4、dCK、CD52、および/またはGRより選択される少なくとも1つのアレル
を有する。
【0082】
よりさらなる一例において、操作された免疫細胞は、SEQ ID NO: 22のリツキシマブ特異的ミモトープを発現しない。
【0083】
特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞に関連し、ここでCAR22は、SEQ ID NO: 11のVHおよびSEQ ID NO: 12のVLを含み、かつCAR20は、SEQ ID NO: 15のVHおよびSEQ ID NO: 16のVLを含む。
【0084】
さらにより具体的には、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞が提供され、ここでCAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、かつCAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む。
【0085】
特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞に関連し、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 11のVHおよびSEQ ID NO: 12のVLを含み、CAR20はSEQ ID NO: 15のVHおよびSEQ ID NO: 16のVLを含み、かつ操作されたT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する。
【0086】
特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞に関連し、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 11のVHおよびSEQ ID NO: 12のVLを含み、CAR20はSEQ ID NO: 15のVHおよびSEQ ID NO: 16のVLを含み、かつ操作されたT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有し、かつ、不活性化されている、CD52およびβ2mより選択される少なくとも1つのアレルをも有し、ここで特定の場合には、操作されたT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRαおよび/またはTCRβ、ならびにCD52を有する。
【0087】
さらにより具体的には、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞が提供され、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、CAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含み、かつ操作されたT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する。
【0088】
さらにより具体的には、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞が提供され、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、CAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含み、かつ操作されたT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有し、かつ、不活性化されている、CD52およびβ2mより選択される少なくとも1つのアレルをも有し、ここで特定の場合には、操作されたT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRαおよび/またはTCRβ、ならびにCD52を有する。
【0089】
さらに、上述のように、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞もまた、本明細書において提供され、ここでCARが、免疫細胞のゲノムに組み込まれた外来性の核酸によってコードされ、かつ外来性の核酸が、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター(EF1αプロモーターなど)、
(ii) CAR20をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸、
(iv) CAR22をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する。
【0090】
より具体的には、上述のように、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞もまた提供され、ここで外来性の核酸が、5'から3'に向かって:
(i) CAR20の発現を制御するプロモーター(EF1αプロモーターなど);
(ii) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、CAR20をコードする核酸;
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸;
(iv) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、CAR22をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する。
【0091】
あるいは、上述のように、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞もまた、本明細書において提供され、ここでCARが、免疫細胞のゲノムに組み込まれた外来性の核酸によってコードされ、かつ外来性の核酸が、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター(EF1αプロモーターなど)、
(ii) CAR22をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸、
(iv) CAR20をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する。
【0092】
より具体的には、上述のように、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞もまた提供され、ここで外来性の核酸は、5'から3'に向かって以下を含む:
(i) CAR22の発現を制御するプロモーター(EF1αプロモーターなど);
(ii) CAR22をコードする核酸配列であって、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、CAR22をコードする核酸配列;
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸;
(iv) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、CAR20をコードする核酸。
【0093】
遺伝子操作された免疫細胞の調製方法
本明細書に記載されるように、CAR20およびCAR22を発現するように遺伝子操作されようとする免疫細胞は、該CARをコードする1つまたは複数の外来性のポリヌクレオチドを導入することによって、調製され得る。ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターを用いて、形質導入により細胞へと導入され得る。ポリヌクレオチドはまた、プラスミドまたはPCR産物の形としても、細胞へと導入され得る。
【0094】
上述の免疫細胞における、CARの、特に本明細書に記載されるCAR20およびCAR22の、安定な発現は、たとえば、ウイルスベクター(たとえば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター)を用いて、またはトランスポゾン/トランスポザーゼシステムを用いて、またはプラスミドもしくはPCR産物の組み込みを用いて、達成され得る。他のアプローチは、mRNAを直接エレクトロポレーションすることを含む。
【0095】
両方のCARを同時に細胞へと送達するために、本明細書に記載される、抗CD22 CAR(CAR22)および抗CD20 CAR(CAR20)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、たとえば以下のような、さまざまな構造を有し得る:
(a) 2つの転写ユニットの両方が、唯一のプロモーターによって制御されており、同じ転写方向を有しており、かつ、たとえば2Aペプチド(たとえば、P2A、T2A、E2A、F2A)などといった「自己切断」ペプチドによって隔てられている、ポリシストロニックな配置、
(b) 2つの転写ユニットのそれぞれが、頭-頭という構成において、独立したプロモーターによって制御され、かつ反対方向に転写される、2方向性の配置、および
(c) 両方のscFV転写物がゲノムのスペーサーによって隔てられている、モノシストロニックな配置。
【0096】
本明細書において使用される場合、「ポリシストロニックな」mRNAとは、2つ以上のコーディング配列(すなわちシストロン)を含み、かつ複数のタンパク質をコードする、1本のメッセンジャーRNAを指す。ポリシストロニックなmRNAは、同じmRNA分子から2つ以上の遺伝子を翻訳することを可能にする、当技術分野において公知の任意のエレメントを含んでよく、これは、P2Aエレメント、T2Aエレメント、E2Aエレメント、およびF2Aエレメントのような自己切断ペプチド、またはIRESエレメントを含むが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドに含まれる自己切断ペプチドは、2Aペプチド、2A様ペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、F2Aペプチド、T2Aペプチドより選択されてよく、具体的には2Aペプチドであってよく、より具体的には、SEQ ID NO: 19のP2Aペプチド、SEQ ID NO: 38のT2Aペプチド、SEQ ID NO: 39のE2Aペプチド、またはSEQ ID NO: 40のF2Aペプチドであってよく、さらにより具体的には、SEQ ID NO: 19のP2Aペプチドであってよい。
【0098】
IRESとは、「配列内リボソーム進入部位」であって、本明細書において使用され得る遺伝子に挿入されたコーディング配列の転写およびその後の翻訳を可能にする、任意のIRESを示す。たとえば、本明細書に記載されるポリヌクレオチドに含まれるIRESは、SEQ ID NO: 37を有してよい。
【0099】
本明細書に記載されるように、CAR20およびCAR22は、2つの核酸によってコードされ得、ここで:
1) 1つの核酸がCAR20をコードし、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
2) 別の核酸がCAR22をコードし、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む。
【0100】
一例において、CAR22およびCAR20は、独立した2つの核酸であるa)およびb)によってコードされ、ここで:
(1) 核酸a)がCAR22をコードし、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 12の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
(2) 核酸b)がCAR20をコードし、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 16の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む。
【0101】
特定の一例において、以下を含む単離されたポリヌクレオチドが提供される:
a) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 12の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR22をコードする核酸;ならびに
b) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 16の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20をコードする核酸。
【0102】
さらなる一例において、a)の核酸とb)の核酸は1つの核酸分子上にあり、かつ単離されたポリヌクレオチドは、a)の核酸とb)の核酸の間に位置する、自己切断ペプチド(たとえば、P2A、T2A、E2A、またはF2Aなど)をコードする核酸配列を含む。
【0103】
したがって、包括的な1つの局面において、あるポリヌクレオチドが本明細書に開示され、該ポリヌクレオチドは、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター(EF1αプロモーターなど)、
(ii) 本明細書に記載されるCAR20をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸、
(iv) 本明細書に記載されるCAR22をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する。
【0104】
さらに、あるポリヌクレオチドもまた、本明細書に開示され、該ポリヌクレオチドは、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター(EF1αプロモーターなど)、
(ii) 本明細書に記載されるCAR22をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸、
(iv) 本明細書に記載されるCAR20をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する。
【0105】
特定の一例において、本明細書に記載される単離されたポリヌクレオチドは、CAR22とCAR20以外のさらなるCARをコードする核酸を、含まない。
【0106】
特定の一例において、本明細書に記載される単離されたポリヌクレオチドは、SEQ ID NO: 22のリツキシマブ特異的ミモトープをコードする核酸を含まない。
【0107】
一例において、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22をコードする単離されたポリヌクレオチドは:
a) CAR20の発現を制御するプロモーター(たとえばEF1αプロモーターなど)であって、その後にCAR20をコードする核酸が続き、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20の発現を制御するプロモーター;ならびに
b) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR22をコードする核酸
を含み、
ここで、a)の核酸とb)の核酸は1つの核酸分子上にあり、かつ自己切断ペプチド(たとえば、P2A、T2A、E2A、またはF2Aなど)をコードする核酸配列が、a)の核酸とb)の核酸の間に位置する。
【0108】
別の一例において、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22をコードする単離されたポリヌクレオチドは:
a) CAR22の発現を制御するプロモーター(たとえばEF1αプロモーターなど)であって、その後にCAR22をコードする核酸が続き、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
から構成される、CAR22の発現を制御するプロモーター;ならびに
b) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20をコードする核酸
を含み、
ここで、a)の核酸とb)の核酸は1つの核酸分子上にあり、かつ自己切断ペプチド(たとえば、P2A、T2A、E2A、またはF2Aなど)をコードする核酸配列が、a)の核酸とb)の核酸の間に位置する。
【0109】
よりさらなる一例において、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22をコードする単離されたポリヌクレオチドは、以下を含む:
a) CAR22の発現を制御するプロモーター(たとえばEF1αプロモーターなど)を含む、CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成される、核酸;
b) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成される、核酸;ならびに
c) a)の核酸とb)の核酸の間に配置されて、CAR20とCAR22の同時発現を可能にする、自己切断ペプチド(たとえば、SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸。
【0110】
よりさらなる一例において、本明細書に記載されるCAR20およびCAR22をコードする、以下を含む単離されたポリヌクレオチドが提供される:
a) CAR20の発現を制御するプロモーター(たとえばEF1αプロモーターなど)を含む、CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成される、核酸;
b) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成される、核酸;ならびに
c) a)の核酸とb)の核酸の間に配置されて、CAR22とCAR20の同時発現を可能にする、自己切断ペプチド(たとえば、SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸。
【0111】
よりさらなる一例において、CAR20およびCAR22をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、これは、SEQ ID NO: 31の核酸配列(CAR22xCAR20構築物)を含む。
【0112】
別の特定の例において、CAR20およびCAR22をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、これは、SEQ ID NO: 32の核酸配列(CAR20xCAR22構築物)を含む。
【0113】
さらに、本明細書に記載される、単離されたポリヌクレオチドの任意のものを含むベクターもまた、本明細書において開示される。
【0114】
さらに、本明細書に記載されるベクターを含む宿主細胞もまた、本明細書において開示される。
【0115】
操作されようとする免疫細胞集団は、一般的には、アフェレーシスによって患者のまたは健康なドナーの血液から抽出され、そして、それらの表面にキメラ抗原受容体を発現するように、さらに操作される。あるいは、操作されようとする免疫細胞集団は、臍帯血細胞または幹細胞に由来してよく、該細胞は、それらの表面にキメラ抗原受容体を発現するように、さらに操作される。
【0116】
CAR発現免疫細胞は、患者の免疫細胞または適合性のドナーの免疫細胞に由来してよく、該細胞は、それらの表面に特異的なCARを発現するように操作されている。
【0117】
CAR発現免疫細胞はまた、そのような患者起源であるかもしくは適合性のドナー起源である幹細胞に、たとえばiPS細胞などに、由来してもよく、または腫瘍浸潤リンパ球(TILL)に由来してもよい。
【0118】
他の局面において、CAR発現免疫細胞は、いわゆる「オフザシェルフ」免疫細胞組成物であり、これは、処置を受けようとする患者に特異的に属するものではない免疫細胞が、CARを発現するように、かつアロジェニックな治療的処置に使用するために適したものとなるように、操作されていることによるものである。
【0119】
「アロジェニック」とは、細胞がドナー起源であること、または、異なるハプロタイプを有する患者への注入を考慮した上で、細胞を、幹細胞から作製するおよび/または分化させることを意味する。
【0120】
そのような免疫細胞は、一般的には、アロ反応性を低下させるように、および/またはその患者宿主に関してより持続性となるように、操作される。より具体的には、アロジェニックな免疫細胞を操作する方法は、T細胞の、またはT細胞を生じさせようとする幹細胞の、TCR発現を低下させるかまたは不活性化する段階を含み得る。これは、さまざまな配列特異的試薬によって、たとえば、遺伝子サイレンシングまたは遺伝子編集の技術などによって、達成可能である(ヌクレアーゼ、塩基編集、RNAi等)。
【0121】
以前に本出願人は、特に、極めて安全でありかつ特異的なエンドヌクレアーゼ試薬をTALEヌクレアーゼ(TALEN(登録商標))の形で提供することによって、アロジェニック治療グレードのT細胞をPBMCから作製するための堅固なプロトコルおよび遺伝子編集戦略を利用可能にしている。ドナー由来の[TCR]ネガティブT細胞である、いわゆる「ユニバーサルT細胞」の作製は達成されており、かつ患者に注入されて、移植片対宿主病(GVhD)を低減させることに成功している(Poirot et al. 2015, Cancer. Res.75 (18): 3853-3864;Qasim et al., 2017, Science Translational 9(374))。また、たとえば、一例としてWO2014184744に記載されるように、初代T細胞における構成要素のTCRまたはβ2mの不活性化は、チェックポイント阻害剤タンパク質をコードする、さらなる遺伝子の不活性化と組み合わせられ得る。
【0122】
さらなる例において、操作された免疫細胞は、少なくとも1種の免疫抑制剤への耐性が付与されるように、さらに改変され得、これはたとえば、一例としてWO2013176915に記載されるように、抗CD52抗体(たとえば:アレムツズマブ)の標的であるCD52を不活性化することによってなされる。
【0123】
さらなる例において、操作された免疫細胞は、および/または化学療法剤への、特にプリンアナログ剤への耐性が付与されるように、さらに改変され得、これはたとえば、WO201575195に記載されるように、DCKを不活性化することによってなされる。
【0124】
さらなる例において、操作された免疫細胞は、患者中でのその持続性またはその寿命が改善されるように、さらに改変され得、これは特に、たとえばWO2015136001に記載されるように、またはLiuら(2017, Cell Res 27:154-157)によって記載されるように、MHC-Iの1つまたは複数の構成要素、たとえばHLAまたはβ2mなどをコードする遺伝子を、不活性化することである。
【0125】
よりさらなる例においては、操作された免疫細胞を、そのCAR依存性の免疫活性化が改善するように変異させる、特に、WO2014184744に記載されるように、免疫チェックポイントタンパク質および/またはそれらの受容体の発現を、たとえばPD1またはCTLA4の発現を、低下または抑制するように変異させる。
【0126】
薬学的組成物
1つの局面は、本明細書に記載される、CD22に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(CAR22)およびCD20に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR20)をその細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連する。
【0127】
さらに、本明細書に記載される、CD22に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(CAR22)およびCD20に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR20)をその細胞表面に発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む、免疫細胞集団と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物もまた、開示される。
【0128】
特定の1つの局面は、本明細書に記載される遺伝子操作されたT細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連する。
【0129】
さらなる特定の1つの局面は、本明細書に記載される遺伝子操作されたT細胞を含む、T細胞集団と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連する。
【0130】
別の特定の局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連し、ここでCAR22は、SEQ ID NO: 11のVHおよびSEQ ID NO: 12のVLを含み、かつCAR20は、SEQ ID NO: 15のVHおよびSEQ ID NO: 16のVLを含む。
【0131】
さらにより具体的には、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物が提供され、ここでCAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、かつCAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む。
【0132】
さらなる特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞を含む、T細胞集団と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連し、ここでCAR22は、SEQ ID NO: 11のVHおよびSEQ ID NO: 12のVLを含み、かつCAR20は、SEQ ID NO: 15のVHおよびSEQ ID NO: 16のVLを含む。
【0133】
さらなる特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞を含む、T細胞集団と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連し、ここでCAR22は、SEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、かつCAR20は、SEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む。
【0134】
別の特定の局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連し、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 11のVHおよびSEQ ID NO: 12のVLを含み、かつCAR20はSEQ ID NO: 15のVHおよびSEQ ID NO: 16のVLを含み、かつ、T細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/もしくはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する、ならびに/または、操作されたT細胞は、不活性化されている、β2mおよびCD52より選択される少なくとも1つのアレルを有する。
【0135】
さらにより具体的には、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物が提供され、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、CAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含み、かつT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する。
【0136】
さらにより具体的には、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物が提供され、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、CAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含み、かつ、T細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/もしくはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する、ならびに/または、操作されたT細胞は、不活性化されている、β2mおよびCD52より選択される少なくとも1つのアレルを有する。
【0137】
さらなる特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞を含む、T細胞集団と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連し、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 11のVHおよびSEQ ID NO: 12のVLを含み、かつCAR20はSEQ ID NO: 15のVHおよびSEQ ID NO: 16のVLを含み、かつ、T細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/もしくはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する、ならびに/または、操作されたT細胞は、不活性化されている、β2mおよびCD52より選択される少なくとも1つのアレルを有する。
【0138】
さらなる特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞を含む、T細胞集団と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連し、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、CAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含み、かつT細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する。
【0139】
さらなる特定の1つの局面は、CAR22およびCAR20をその細胞表面に発現する遺伝子操作されたT細胞を含む、T細胞集団と、薬学的賦形剤とを含む、薬学的組成物に関連し、ここで、CAR22はSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、CAR20はSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含み、かつ、T細胞は、変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/もしくはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する、ならびに/または、操作されたT細胞は、不活性化されている、β2mおよびCD52より選択される少なくとも1つのアレルを有する。
【0140】
さらに、医薬として使用するための、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞もまた、本明細書において提供される。
【0141】
さらに、医薬として使用するための、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む、免疫細胞集団もまた、本明細書において提供される。
【0142】
処置方法
別の局面は、がんおよび/または炎症性障害の処置方法に関連し、該方法は、それを必要とする患者に、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞を投与する段階を含む。
【0143】
類似の1つの局面は、がんおよび/または炎症性障害の処置方法に使用するための、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞に関連する。
【0144】
類似の1つの局面は、がんおよび/または炎症性障害の処置方法に使用するための、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む、免疫細胞集団に関連する。
【0145】
類似の1つの局面は、医薬を調製するための、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞の使用に、または、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む、免疫細胞集団の使用に関連する。
【0146】
類似の1つの局面は、がんおよび/または炎症性障害を処置するための医薬を調製するための、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞の使用に、または、本明細書に記載される、CAR20およびCAR22を発現する遺伝子操作された免疫細胞を含む、免疫細胞集団の使用に関連する。
【0147】
処置はがんを処置するためのものであり得、がんは血液がんを含み、これはたとえば、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)(急性リンパ芽球性白血病としても知られる)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)より選択される血液がんなどであり、具体的にはCD22および/またはCD20関連血液がんであり、より具体的には再発・難治性のCD22および/またはCD20関連血液がんであり、さらにより具体的にはアグレッシブ型のCD22および/またはCD20関連血液がんである。
【0148】
処置は、CD20および/またはCD22に関連する炎症性障害の、予防または減弱に関連し得る。
【0149】
特定の1つの局面において、処置は、再発・難治性NHLを有する患者を処置するためのものである。
【0150】
さらなる特定の1つの局面において、処置は、CD20抗原およびCD22抗原の発現が低いがんに罹患している患者を処置するためのものである。
【0151】
特定の1つの局面において、処置は、リツキシマブ(NHLの処置における標準治療である、抗CD20抗体)を用いた処置を以前に受けている患者を処置するためのものである。
【0152】
「非ホジキンリンパ腫(NHL)」とは、多様な血液がんの一群であって、それら全てがリンパ球から生じる、という1つの特徴を共有する一群を指す用語である。60種類を超える個別のNHLサブタイプが同定されており、かつこれらには、「診断名」と呼ばれる名称が、世界保健機関(WHO)によって割り当てられている。
【0153】
特に、「非ホジキンリンパ腫(NHL)」との用語には、非ホジキンリンパ腫(NHL)に対する以下の診断名が含まれる:
1. 成熟B細胞リンパ腫(NHL症例の約85%~90%):
・アグレッシブ:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(31%)、マントル細胞リンパ腫(MCL)(アグレッシブまたはインドレントとして出現し得る)(6%)、リンパ芽球性リンパ腫(2%)、バーキットリンパ腫(BL)(2%)、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)(2%)、形質転換濾胞性リンパ腫および形質転換粘膜関連リンパ組織型(MALT)リンパ腫、ダブルヒットまたはトリプルヒット高悪性度B細胞リンパ腫(HBL)、原発性皮膚DLBCL(下肢型)、原発性中枢神経系DLBCL、中枢神経系(CNS)原発リンパ腫、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連リンパ腫
・インドレント:濾胞性リンパ腫(FL)(22%)、辺縁帯リンパ腫(MZL)(8%)、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)(6%)、胃粘膜関連リンパ組織型(MALT)リンパ腫(5%)、リンパ形質細胞性リンパ腫(1%)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)、節性辺縁帯リンパ腫(NMZL)(1%)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)
2. 成熟T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫(NHL症例の約10%~15%)
・アグレッシブ:末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)・非特定型(6%)、全身性未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)(2%)、リンパ芽球性リンパ腫(2%)、肝脾γδT細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫(SPTCL)、腸症型腸管T細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫
・インドレント:皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(4%)、菌状息肉症(MF)、セザリー症候群(SS)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫(ENK/TCL)・鼻型
【0154】
本発明についての上述の説明は、当業者であれば同じものを作製かつ使用できるように、本発明の作製および使用の様式ならびにプロセスを提供するものであり、作製および使用が可能であるというこの点は、原説明の一部を構成する、添付の特許請求の範囲の内容に関して、特に提供されている。
【0155】
本明細書において、数字を用いた限定または範囲が記載されている場合、端点が含まれる。さらに、数字を用いた限定内または範囲内の、全ての値および全てのより下位の範囲もまた、それらが明示的に記載されているものとして、明確に包含されている。
【0156】
本発明を大まかに記載してきたが、いくつかの具体的な実施例を参照することによって、さらなる理解が可能となる、そして実施例は、例示の目的のみのために、本明細書において提供しているのであって、特許請求する発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0157】
特定の態様
1. CD22に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(CAR22)およびCD20に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR20)をその細胞表面に発現する、遺伝子操作されたT細胞であって、
a) CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 12の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
b) CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 16の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
c) TCRネガティブである、
遺伝子操作されたT細胞。
2. CAR22がSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、かつCAR20がSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む、態様1に記載の遺伝子操作されたT細胞。
3. CAR20およびCAR22のいずれの細胞外ドメインも、SEQ ID NO: 22のリツキシマブ特異的ミモトープを含まない、態様1~2のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
4. TCRの構成要素をコードするポリヌクレオチド配列に指向する、低分子ヘアピンRNA(shRNA)または低分子干渉(siRNA)を発現する、態様1~3のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
5. そのTCRαアレルおよび/またはTCRβアレルにおいて変異している、態様1~3のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
6. 変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレルを有する、態様1~3および5のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
7. 不活性化されているCD52アレルを有する、態様1~6のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
8. 不活性化されているβ2mアレルを有する、態様1~7のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
9. 不活性化されているPD1アレルを有する、態様1~8のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
10. 不活性化されているCTLA4アレルを有する、態様1~9のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
11. 不活性化されているdCKアレルを有する、態様1~10のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
12. 不活性化されているGRアレルを有する、態様1~11のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
13. 操作された免疫細胞が細胞傷害性T細胞である、態様1~12のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
14. T細胞集団の中に含まれている、態様1~13のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
15. 初代細胞である、態様1~14のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
16. 哺乳動物細胞である、好ましくはヒト細胞である、態様1~15のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
17. CAR22とCAR20以外のさらなるCARを発現しない、態様1~16のいずれか1つに記載の遺伝子操作されたT細胞。
18. 態様1~17のいずれか1つに記載の操作されたT細胞を含む、T細胞集団。
19. 態様1~17のいずれか1つに記載の操作されたT細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
20. 態様18に記載のT細胞集団および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
21. a) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 12の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR22をコードする核酸;ならびに
b) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15の可変重鎖(VH)およびSEQ ID NO: 16の可変軽鎖(VL)を含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20をコードする核酸
を含む、単離されたポリヌクレオチド。
22. a)の核酸とb)の核酸が1つの核酸分子上にあり、かつ自己切断ペプチド(たとえば、P2A、T2A、E2A、またはF2Aなど)をコードする核酸配列が、a)の核酸とb)の核酸の間に位置する、態様21に記載のポリヌクレオチド。
23. CAR22とCAR20以外のさらなるCARをコードする核酸を含まない、態様21または22に記載のポリヌクレオチド。
24. SEQ ID NO: 22のリツキシマブ特異的ミモトープをコードする核酸を含まない、態様21~23に記載のポリヌクレオチド。
25. a)の核酸が、CAR22の発現を制御するプロモーター(たとえばEF1αプロモーターなど)を含み、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;
b)の核酸がCAR20をコードし、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;かつ
自己切断ペプチド(たとえば、SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸が、a)の核酸とb)の核酸の間に存在して、CAR20とCAR22の同時発現を可能にする、
態様21~24のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
26. b)の核酸が、CAR20の発現を制御するプロモーター(たとえばEF1αプロモーターなど)を含み、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;
a)の核酸がCAR22をコードし、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;かつ
自己切断ペプチド(たとえば、SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸が、a)の核酸とb)の核酸の間に存在して、CAR22とCAR20の同時発現を可能にする、
態様21~24のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
27. SEQ ID NO: 31の核酸配列(CAR22xCAR20構築物)を含む、態様25に記載の単離されたポリヌクレオチド。
28. SEQ ID NO: 32の核酸配列(CAR20xCAR22構築物)を含む、態様26に記載の単離されたポリヌクレオチド。
29. 態様21~28のいずれか1つに記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
30. 態様29に記載のベクターを含む、宿主細胞。
31. 態様1~17のいずれか1つに記載の操作されたT細胞を調製する方法であって、態様21~28のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドまたは態様29に記載のベクターを、免疫細胞に導入する段階を含む、前記方法。
32. 医薬として使用するための、態様1~17のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
33. CD20および/またはCD22の発現に関連するがんの処置に使用するための、態様1~17のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
34. 血液がん、具体的にはCD22および/またはCD20関連血液がん、より具体的には再発・難治性のCD22および/またはCD20関連血液がん、さらにより具体的にはアグレッシブ型のCD22および/またはCD20関連血液がんの処置に使用するための、態様1~17のいずれか1つに記載の操作されたT細胞。
35. がんが、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、態様33または34に記載の使用のための操作されたT細胞。
36. がんが、非ホジキンリンパ腫または急性リンパ性白血病である、態様35に記載の使用のための操作されたT細胞。
37. がんが、CD20および/またはCD22の低発現に関連する、態様33~36のいずれか1つに記載の使用のための操作されたT細胞。
38. がんが、再発性非ホジキンリンパ腫である、態様33~37のいずれか1つに記載の使用のための操作されたT細胞。
39. CD20および/またはCD22の発現に関連するがんに罹患している患者を処置する方法であって、態様1~17のいずれか1つに記載の操作されたT細胞または態様18に記載のT細胞集団の有効量を、患者に投与する段階を含む、前記方法。
40. がんが、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、態様39に記載の処置方法。
41. がんが、非ホジキンリンパ腫または急性リンパ性白血病である、態様39または40に記載の処置方法。
42. がんが、CD20および/またはCD22の低発現に関連する、態様39~41のいずれか1つに記載の処置方法。
43. がんが、再発性非ホジキンリンパ腫である、態様39~42のいずれか1つに記載の処置方法。
【実施例
【0158】
本明細書に提供される実施例は、CD20抗原およびCD22抗原を標的とする二重CAR-T細胞(「CD20xCD22」CAR-T細胞または「CD20xCD22」CAR-T細胞)をどのように作製するかについて記載し、かつ、CD22および/もしくはCD20を低発現する、またはCD22および/もしくはCD20を発現しない腫瘍細胞を溶解する、該二重CAR-T細胞の能力を証明する。
【0159】
実施例1 CD20およびCD22の二重CAR構築物の作製、ならびにそれらの制御
発現、活性、および能力を比較するため、2種類の配置の二重CARが設計され、そして組換えレンチウイルスベクター中に構築された。1つ目の構築物(CD22xCD20)は、第1のCD22 CARの発現を駆動するEF1αプロモーターを含み、第1のCD22 CARは、シグナルペプチド(SEQ ID NO: 1)、SEQ ID NO: 13のscFv、CD8αのヒンジドメイン(SEQ ID NO: 4)およびTMドメイン(SEQ ID NO: 6)、4-1BB共刺激ドメイン(SEQ ID NO: 8)、ならびにCD3ζシグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO: 9)から構成される。この第1のCARには、第2のCD20 CARの発現を可能にする自己切断ペプチドP2A(SEQ ID NO: 19)が続き、第2のCD20 CARは、シグナルペプチド(SEQ ID NO:1)、SEQ ID NO: 17の抗CD20 scFv、CD8αのヒンジドメイン(SEQ ID NO: 4)およびTMドメイン(SEQ ID NO: 6)、4-1BB共刺激ドメイン(SEQ ID NO: 8)、ならびにCD3ζシグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO: 9)から構成される。rLV構築物内での何らかの組換えイベントを回避するために、構築物において2つ存在する同じアミノ酸配列をコードするために使用されるヌクレオチド酸配列は、それらのヌクレオチド配列が異なるものとなるようなコドン使用およびコード縮重を用いて最適化された。2つ目の二重構築物(CD20xCD22)は全く同じ配列(ヌクレオチド酸およびアミノ酸)を含むが、CD20 CARが、EF1αプロモーターの直後に位置している。
【0160】
比較のため、CD22 CARまたはCD20 CARが、組換えレンチウイルスベクター中に構築された。それらの構築物は、CD22を標的とする一重CAR(SEQ ID NO: 14)、またはCD20を標的とする一重CAR(SEQ ID NO: 18)の発現を駆動する、EF1αプロモーターを含む。
【0161】
実施例2 CD20xCD22二重CAR-T細胞またはCD22xCD20二重CAR-T細胞の作製
少なくとも3人の異なるドナー由来の、凍結保存されたPBMCが使用された。37度において5% CO2インキュベーター内で一晩のインキュベーションを行うため、PBMCは37度で解凍され、AB型ヒト血清(5%)、組換えヒトインターロイキン-2(rhIL-2、350 IU/ml)を添加されたOpTmizer培地で洗浄され、そして該培地中に再懸濁された。その後、細胞は、AB型ヒト血清(5%)(増殖期の間は、これに5% CTS(商標)Immune Cell SRも追加)、および組換えヒトインターロイキン-2(rhIL-2、350 IU/ml)を添加されたOpTmizer培地中で、CO2インキュベーター内で3日間にわたり、抗CD3/CD28でコートされたビーズを用いて活性化された。増殖したT細胞には、その後、CD20xCD22 CARまたはCD22xCD20 CAR(それぞれSEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 32)を発現するレンチウイルス粒子が、Lentiboost(Mayflower bioscience社のSB-P-LV-101-12)の存在下で、MOI 15(MOIとは感染多重度を意味する)において形質導入された。増殖したT細胞には、CD20 CARのみ、またはCD22 CARのみ(SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 18)のいずれかを発現するレンチウイルス粒子もまた、MOI 5において形質導入された。形質導入の2日後、細胞には、AgilePulse Maxシステムを用いて4種類のmRNAがエレクトロポレーションされたが、このうちの2つはTRAC_T01 TALENアーム(SEQ ID NO: 23およびSEQ ID NO: 24)をコードするものであり、かつ、もう2つはCD52_T01 TALENアーム(SEQ ID NO: 25およびSEQ ID NO: 26)をコードするものであった。細胞は、培養培地に再懸濁され、30度で16~18時間インキュベートされ、そして新鮮な培養培地を添加した後、時おり細胞濃度を調節しながら37度で増殖させた。培養の最終日(解凍の18日後)に、T細胞は、種々のアッセイに使用されたか、または凍結用培地(FBS 90%、DMSO 10%)中で凍結された。細胞は、使用するまで-150度での凍結を維持した。
【0162】
実施例3 CD20およびCD22の二重CAR-T細胞の検出
CD20 CARを検出するため、Hisタグと融合させたCD20組換えタンパク質(Acro社の#CD0-H52H3、SEQ ID NO: 20)が、APC標識抗His抗体(BioLegend社の#362605)と組み合わせて使用された。CD22 CARの検出のため、CD22-Fcタンパク質(SEQ ID NO: 21)が、抗Fcγサブクラス1タグCy3(Jackson ImmunoResearch社の#115-165-205)と組み合わせて使用された。
【0163】
実施例1において作製された種々のCAR T細胞(形質導入なし、CD20xCD22 CAR、CD22xCD20 CAR、またはCD22 CAR)は、100 ngのCD22-Fcタンパク質および200 ngのCD20-Hisタンパク質とインキュベートされ、洗浄され、そしてさらに抗Fcγ(50 ng)または抗His(50 ng)とインキュベートされ、その後PFA 2%中で固定された。細胞はその後、フローサイトメトリーによって解析された。
【0164】
図1における結果は、CD22 CARのみの形質導入が、40%のCD22 CAR陽性T細胞を生じさせた一方で、CD22xCD20 CARまたはCD20xCD22 CARの形質導入が、それぞれ39%および25%の二重CAR陽性T細胞を生じさせたことを証明する。これらの結果は、3人の異なるドナーを用いても、再現性を有していた。興味深いことに、CD22xCD20は、CD22 CAR染色に関してより高いMFIをもたらした一方で、CD20xCD22は、CD20 CAR染色に関してより高いMFIをもたらした。
【0165】
実施例4 CD20およびCD22の二重CAR-T細胞を試験するために使用された細胞株
Raji細胞株は、高レベルのCD20およびCD22を発現する。この細胞株は、ルシフェラーゼ遺伝子を発現するように改変され、そして陽性対照として、すなわち、CD20およびCD22の両方を発現する標的細胞として、使用された。加えてRaji細胞株は、CD22 TALENおよび/またはCD20 TALENを用いて処理された。手短に述べると、Raji細胞には、CD22 TALENアーム(SEQ ID NO: 27およびSEQ ID NO: 28)をコードするmRNA、ならびにCD20 TALEN(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 30)をコードするmRNAが、AgilePulse Maxシステムを用いてエレクトロポレーションされた。細胞は、RPMI1640、10% ウシ胎児血清(FBS)、および1% ペニシリン/ストレプトアビジン(培養培地)中で、30度で16~18時間にわたりインキュベートされ、そしてソーティングまで、37度において% CO2インキュベーター内で新鮮培養培地中で増殖させた。i) CD20を発現するがCD22は発現しない、ii) CD22を発現するがCD20は発現しない、またはiii) CD20もCD22も発現しない、という種々の細胞集団を得るため、抗ビオチンマイクロビーズと、抗CD20-ビオチン、抗CD22-ビオチン、またはそれらの両方(Biolegend)のいずれかとを用いて、異なる細胞集団が精製された。図2は、これらの選択された集団の表現型を示す。
【0166】
実施例5 CD20およびCD22の二重CAR T細胞の細胞傷害性
実施例1において作製され、かつ3人の異なるドナーに由来する、CD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞は、実施例4において作製された種々のRaji細胞に対する、それらCAR T細胞の細胞傷害能力について試験された。
【0167】
T細胞は解凍され、そして生細胞が、NucleoCounter(登録商標)機器(Chemometec社のNC-250)を用いて計数された。種々のCAR T細胞は、ルシフェラーゼを発現する種々のRaji細胞(CD20+CD22+、CD20+CD22-、CD22-CD20+、およびCD20-CD22-)と種々のエフェクター/標的比で、96ウェルプレート中で4~16時間にわたり共培養された(37度において5% CO2インキュベーター内)。インキュベーション期間の最後に、One-Glo(登録商標)キット(Promega社の#E6110)を供給元のプロトコルにしたがって用いて、放出されたルシフェラーゼが測定された。図3は、用いられた全てのドナーに関して、CD22 CAR T細胞が、CD20+CD22+ RajiクローンおよびCD20-CD22+ Rajiクローンを効果的に溶解させることが可能であった一方で、CD22xCD20 CAR T細胞またはCD20xCD22 CAR T細胞も、CD22 CARと同レベルの溶解をもたらすことが可能であったことを示し、しかしながらCD22xCD20 CAR T細胞またはCD20xCD22 CAR T細胞はまた、CD20+CD22- Rajiクローンについても、上記と同レベルで溶解させることが可能であったことを示す。
【0168】
実施例1において作製されたCD20xCD22 CAR T細胞、CD22xCD20 CAR T細胞、およびCD22 CAR T細胞の殺傷能力はまた、再負荷アッセイまたは連続殺傷アッセイにおいても試験された。種々のCAR T細胞は解凍され、計数され、そしてCAR陽性T細胞/Raji細胞で 1:1の比で、種々のRaji細胞(CD20+CD22+、CD20-CD22+、CD20+CD22-)とインキュベートされた。3日間のインキュベーション後、ウェルの半分は、放出されたルシフェラーゼを、One-Glo(登録商標)キット(Promega社の#E6110)を用いて測定するために使用された、一方で他の半分は、さらなるインキュベーションのために、Raji細胞を含む新しいプレートへと移される。ルシフェラーゼの測定は、第7日、第10日、第14日、および第17日において繰り返された。
【0169】
図4は、CD22xCD20 CAR T細胞またはCD20xCD22 CAR T細胞が、試験された全てのRaji細胞を効果的に殺傷することが可能であった一方で、CD22 CAR T細胞は、CD20+CD22+ Raji細胞およびCD20-CD22+ Raji細胞のみを効果的に殺傷することが可能であったことを示す。驚くべきことに、CD22 CAR Tは、CD20+CD22- Raji細胞に対して低い活性を有していたが、これは、CD22の発現が、このクローンにおいては完全には破壊されていなかったことを示唆する。これはまた、両方の標的抗原が低発現している標的腫瘍細胞を、二重CARが効果的に殺傷することが可能であったことをも示唆する。
【0170】
(表7)使用されたTALENの一覧
【0171】
実施例6 B細胞リンパ腫インビボ播種モデルの腫瘍量制御
CD20およびCD22を発現するDaudi細胞は、ルシフェラーゼおよびGFPを発現するように改変された。Daudi細胞は、NSG免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ、Jackson laboratories社)へと静脈内注入された。腫瘍の移植から7日後、CD20xCD22 CAR T細胞(100万個および300万個)、CD22xCD20 CAR T細胞(100万個および300万個)、ならびにCD22 CAR T細胞(1000万個)が、個々のマウスへと静脈内注入された。D-ルシフェリンを注入した際の生物発光シグナル(BLI)は、CAR T細胞の注入後、第60日まで週2回モニターされた、そして値は図5に表される。試験されたCART細胞での処置の全条件に関し、BLIシグナルは、ビヒクル対照または形質導入なしのT細胞と比較して、減少した。驚くべきことに、100万個のCAR+ T細胞という低用量において、CD20xCD22 CAR T細胞は強力な殺傷活性を有していたが、これは、CD22xCD20 CAR T細胞のものよりも高かった。
【0172】
実施例7 B細胞リンパ腫インビボ播種モデルにおける治療有効性
実施例6において、Daudi細胞を注入され、そして続いて、CD20xCD22 CAR T細胞(100万個)、CD22xCD20 CAR T細胞(100万個)、およびCD22 CAR T細胞(1000万個)を静脈内注入された動物は、60日間にわたり生存率についてモニターされた。図6に示されるように、試験されたCAR T細胞のいずれかでの処置を受けた動物は、ビヒクルまたは形質導入なしのT細胞(NTD)のいずれかでの処置を受けた動物よりも長く生存した。加えて、かつ驚くべきことに、CD20xCD22 CAR T細胞での処置を受けた動物は、CD22xCD20 CAR T細胞での処置を受けた動物よりも長く生存した。
【0173】
実施例8 B細胞リンパ腫インビボ播種モデルにおける治療有効性
実施例2に記載されるRaji細胞株は、NSG免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ、Jackson laboratories社)へと皮下注入された。3種類全ての細胞株は、それぞれの動物個体に同時に注入された、具体的には、Raji WT細胞が脇腹の一方に注入され、Raji CD22-細胞が脇腹の他方に注入され、そしてCD20-細胞が脇腹の3か所目に注入された。腫瘍の注入から1週間後、CD20xCD22 CAR T細胞(300万個および800万個)、CD22xCD20 CAR T細胞(300万個および800万個)、ならびにCD22 CAR T細胞(800万個)が静脈内注入され、そして動物は、生存率についてモニターされた。図7に示されるように、CD22 CAR T細胞での処置を受けた動物は、疾患のために短期間で死亡したが、これは該動物が、CD22 CAR T細胞の標的になれない、CD22-腫瘍細胞を保持していたためであった。300万個および800万個の二重CAR T細胞を用いた処置により、両方の処置が有効である一方で、CD20xCD22での処置を受けた動物が、驚くべきことに、CD22xCD20での処置を受けた動物よりも長期間にわたり生存したことが示される。
【0174】
実施例9 CD20およびCD22の二重CAR T細胞のIFNγの放出
CD20およびCD22を発現するDaudi細胞は、ルシフェラーゼ遺伝子およびGFPを発現するように改変された。それらのDaudi細胞は、1:1(エフェクター・標的)の比で、CD20xCD22陽性CAR T細胞、CD22xCD20陽性CAR T細胞、CD22陽性CAR T細胞、またはCD20陽性CAR T細胞とともに一晩インキュベートされた。翌日、プレートは遠心分離され、そして上清が回収された。CAR T細胞とともに腫瘍をインキュベートした際に放出されたIFNγのレベルは、ヒトIFN-γ Quantikine ELISAキット(R&D systems社、DIF50C)を製造元の使用説明書にしたがって用いて定量された。陽性対照として、CAR-T細胞は、ホルボールミリスタートアセタート(PMA、Sigma Aldrich社のP8139)およびイオノマイシン(Sigma aldrich社のI0634)とともにインキュベートされた。IFNγ放出の最終的な値は、陽性対照の値に対して正規化された。図8は、二重CD20xCD22 CAR-T細胞および二重CD22xCD20 CAR T細胞が、腫瘍細胞での抗原認識にともなって活性化され、そして、一重CAR(CD20またはCD22)T細胞よりも高いレベルのIFNγを放出したことを示す。この観察は、CD20とCD22の二重CAR T細胞を使用することの、相乗的な恩恵を示すものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023536820000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD22に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(CAR22)およびCD20に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR20)をその細胞表面に発現する、遺伝子操作された免疫細胞であって、
a) CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
b) CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み、
CAR22およびCAR20が、免疫細胞のゲノムに組み込まれた外来性の核酸によってコードされ、かつ外来性の核酸が、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター(EF1αプロモーターなど)、
(ii) CAR20をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸、
(iv) CAR22をコードする核酸
を含み、それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する、
遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項2】
CAR22がSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、かつCAR20がSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項3】
外来性の核酸が、SEQ ID NO: 32の核酸配列を含む、請求項1または2に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項4】
T細胞、NK細胞、およびマクロファージからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項5】
TCRネガティブであるT細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項6】
操作されたT細胞が、
変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレル
を有する、請求項5に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項7】
操作されたT細胞が、
不活性化されている、β2m、PD1、CTLA4、dCK、CD52、および/またはGRより選択される少なくとも1つのアレル
を有する、請求項56のいずれか一項に記載の遺伝子操作された免疫細胞。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項9】
CAR20およびCAR22をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、
a) CAR20の発現を制御するプロモーター(EF1αプロモーターなど)であって、その後にCAR20をコードする核酸が続き、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20の発現を制御するプロモーターと、
b) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR22をコードする核酸と
を含み、
ここで、a)の核酸とb)の核酸は1つの核酸分子上にあり、かつ自己切断ペプチド(P2A、T2A、E2A、またはF2Aなど)をコードする核酸配列が、a)の核酸とb)の核酸の間に位置する、
単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
SEQ ID NO: 32の核酸配列(CAR20xCAR22構築物)を含む、請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項910のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞を調製する方法であって、請求項910のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項11に記載のベクターを、免疫細胞に導入する段階を含む、前記方法。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項14】
CD20および/またはCD22の発現に関連するがんの処置に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の操作された免疫細胞。
【請求項15】
がんが、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、請求項14に記載の使用のための操作された免疫細胞。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
別の局面は、がんまたは炎症性障害、特に、CD20および/またはCD22の発現に関連するがんまたは炎症性障害の処置に使用するための、操作された免疫細胞を利用する。
[本発明1001]
CD22に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(CAR22)およびCD20に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR20)をその細胞表面に発現する、遺伝子操作された免疫細胞であって、
a) CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含み;かつ
b) CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、
遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1002]
CAR22がSEQ ID NO: 14のアミノ酸配列を含み、かつCAR20がSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含む、本発明1001の遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1003]
SEQ ID NO: 22などのリツキシマブ特異的ミモトープを含む安全スイッチを、CAR20およびCAR22のいずれの細胞外ドメインも含まない、本発明1001または1002の遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1004]
CARが、免疫細胞のゲノムに組み込まれた外来性の核酸によってコードされ、かつ外来性の核酸が、5'から3'に向かって、
(i) プロモーター(EF1αプロモーターなど)、
(ii) CAR20をコードする核酸、
(iii) 自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸、
(iv) CAR22をコードする核酸
を含み、
それにより、CAR20およびCAR22の発現を同じプロモーターが制御する、
本発明1001~1003のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1005]
・(ii)の核酸が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含み;かつ
・(iv)の核酸が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、
本発明1004の遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1006]
外来性の核酸が、SEQ ID NO: 32の核酸配列を含む、本発明1004または1005の遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1007]
T細胞、NK細胞、およびマクロファージからなる群より選択される、本発明1001~1006のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1008]
T細胞である、たとえば細胞傷害性T細胞である、本発明1001~1007のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1009]
細胞集団の中に含まれている、たとえば免疫細胞集団の中に含まれている、特に、T細胞集団、NK細胞集団、および/またはマクロファージ集団の中に含まれている、本発明1001~1008のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1010]
TCRネガティブであるT細胞である、本発明1001~1009のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1011]
操作されたT細胞が、
TCRの構成要素をコードするポリヌクレオチド配列に指向する、低分子ヘアピンRNA(shRNA)または低分子干渉(siRNA)
を発現する、本発明1010の遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1012]
操作されたT細胞が、そのTCRαアレルおよび/またはTCRβアレルにおいて変異している、本発明1010の遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1013]
操作されたT細胞が、
変異によって不活性化されている、TCRα、TCRβ、および/またはCD3をコードする少なくとも1つのアレル
を有する、本発明1010または1012の遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1014]
操作されたT細胞が、
不活性化されている、β2m、PD1、CTLA4、dCK、CD52、および/またはGRより選択される少なくとも1つのアレル
を有する、本発明1008~1013のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1015]
操作されたT細胞が、不活性化されているCD52アレルを有する、本発明1009~1014のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1016]
操作された細胞、好ましくはT細胞が、初代細胞である、本発明1001~1015のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1017]
操作された細胞、好ましくはT細胞が、哺乳動物細胞である、好ましくはヒト細胞である、本発明1001~1016のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1018]
操作された細胞、好ましくはT細胞が、CAR22とCAR20以外のさらなるCARを発現しない、本発明1001~1017のいずれかの遺伝子操作された免疫細胞。
[本発明1019]
本発明1001~1018のいずれかの操作された免疫細胞を含む、免疫細胞集団。
[本発明1020]
本発明1009~1018のいずれかの操作されたT細胞を含む、T細胞集団。
[本発明1021]
本発明1001~1018のいずれかの操作された免疫細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
[本発明1022]
本発明1019または1020の免疫細胞集団および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
[本発明1023]
本発明1010~1018のいずれかの操作されたT細胞および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
[本発明1024]
本発明1020のT細胞集団および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
[本発明1025]
a) CAR22をコードする核酸であって、CAR22が、
i)・SEQ ID NO: 11に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 43のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 12に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD22に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR22をコードする核酸;ならびに
b) CAR20をコードする核酸であって、CAR20が、
i)・SEQ ID NO: 15に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49のH-CDRを含む、可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 16に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつアミノ酸配列SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、およびSEQ ID NO: 52のL-CDRを含む、可変軽鎖(VL)とを含み、任意でリーダー配列を含む、CD20に対して特異的な抗原結合ドメイン、
・CD8α由来のヒンジドメイン
を含む、少なくとも1つの細胞外ドメイン、
ii) CD8α由来の膜貫通ドメイン、ならびに
iii) 4-1BB刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメイン
を含む、CAR20をコードする核酸
を含む、単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1026]
a)の核酸とb)の核酸が1つの核酸分子上にあり、かつ自己切断ペプチド(P2A、T2A、E2A、またはF2Aなど)をコードする核酸配列が、a)の核酸とb)の核酸の間に位置する、本発明1025のポリヌクレオチド。
[本発明1027]
CAR22とCAR20以外のさらなるCARをコードする核酸を含まない、本発明1025または1026のポリヌクレオチド。
[本発明1028]
SEQ ID NO: 22のリツキシマブ特異的ミモトープをコードする核酸を含まない、本発明1025~1027のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1029]
・a)の核酸が、CAR22の発現を制御するプロモーター(EF1αプロモーターなど)を含み、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;
・b)の核酸がCAR20をコードし、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;かつ
・自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸が、a)の核酸とb)の核酸の間に存在して、CAR20とCAR22の同時発現を可能にする、
本発明1025~1028のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1030]
・b)の核酸が、CAR20の発現を制御するプロモーター(EF1αプロモーターなど)を含み、CAR20が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 17のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;
・a)の核酸がCAR22をコードし、CAR22が、SEQ ID NO: 1のシグナルペプチド、SEQ ID NO: 13のscFv、SEQ ID NO: 4のCD8αヒンジ、SEQ ID NO: 6のCD8α膜貫通ドメイン、SEQ ID NO: 8の4-1BB共刺激ドメイン、およびSEQ ID NO: 9のCD3ζシグナル伝達ドメインから構成され;かつ
・自己切断ペプチド(SEQ ID NO: 19のP2Aなど)をコードする核酸が、b)の核酸とa)の核酸の間に存在して、CAR22とCAR20の同時発現を可能にする、
本発明1025~1028のいずれかのポリヌクレオチド。
[本発明1031]
SEQ ID NO: 31の核酸配列(CAR22xCAR20構築物)を含む、本発明1029の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1032]
SEQ ID NO: 32の核酸配列(CAR20xCAR22構築物)を含む、本発明1030の単離されたポリヌクレオチド。
[本発明1033]
本発明1025~1032のいずれかの単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[本発明1034]
本発明1033のベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1035]
本発明1001~1018のいずれかの操作された免疫細胞を調製する方法であって、本発明1025~1032のいずれかのポリヌクレオチドまたは本発明1033のベクターを、免疫細胞に導入する段階を含む、前記方法。
[本発明1036]
医薬として使用するための、本発明1001~1018のいずれかの操作された免疫細胞。
[本発明1037]
CD20および/またはCD22の発現に関連するがんの処置に使用するための、本発明1001~1018のいずれかの操作された免疫細胞。
[本発明1038]
血液がん、具体的にはCD22および/またはCD20関連血液がん、より具体的には再発・難治性のCD22および/またはCD20関連血液がん、さらにより具体的にはアグレッシブ型のCD22および/またはCD20関連血液がんの処置に使用するための、本発明1001~1018のいずれかの操作された免疫細胞。
[本発明1039]
がんが、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、本発明1037または1038の使用のための操作された免疫細胞。
[本発明1040]
がんが、非ホジキンリンパ腫または急性リンパ性白血病である、本発明1039の使用のための操作された免疫細胞。
[本発明1041]
がんが、CD20および/またはCD22の低発現に関連する、本発明1037~1040のいずれかの使用のための操作された免疫細胞。
[本発明1042]
がんが、再発性非ホジキンリンパ腫である、本発明1037~1041のいずれかの使用のための操作された免疫細胞。
[本発明1043]
CD20および/またはCD22の発現に関連するがんに罹患している患者を処置する方法であって、本発明1001~1018のいずれかの操作された免疫細胞または本発明1019もしくは1020の免疫細胞集団の有効量を、患者に投与する段階を含む、前記方法。
[本発明1044]
がんが、リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、白血病、多発性骨髄腫(MM)、B-慢性リンパ性白血病(B-CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病(AML)からなる群より選択される、本発明1043の処置方法。
[本発明1045]
がんが、非ホジキンリンパ腫または急性リンパ性白血病である、本発明1043または1044の処置方法。
[本発明1046]
がんが、CD20および/またはCD22の低発現に関連する、本発明1043~1045のいずれかの処置方法。
[本発明1047]
がんが、再発性非ホジキンリンパ腫である、本発明1043~1046のいずれかの処置方法。
【国際調査報告】