IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニアの特許一覧

特表2023-536827遺伝子療法用途のためのイヌ及びネコ誘導性発現構築物
<>
  • 特表-遺伝子療法用途のためのイヌ及びネコ誘導性発現構築物 図1
  • 特表-遺伝子療法用途のためのイヌ及びネコ誘導性発現構築物 図2
  • 特表-遺伝子療法用途のためのイヌ及びネコ誘導性発現構築物 図3
  • 特表-遺伝子療法用途のためのイヌ及びネコ誘導性発現構築物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】遺伝子療法用途のためのイヌ及びネコ誘導性発現構築物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230823BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230823BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20230823BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N7/01
A61K48/00
A61K35/76
A61K31/436
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505878
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021043219
(87)【国際公開番号】W WO2022026411
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/056,985
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ヒンデラー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA44
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA33
4C084ZA34
4C086AA01
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA33
4C086ZA34
4C087AA01
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA52
4C087MA58
4C087MA59
4C087MA63
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZA33
4C087ZA34
(57)【要約】
本明細書では、誘導性遺伝子発現系を含む核酸分子、ベクター、及び組換えAAVが提供される。本系は、プロモーターを含む発現制御配列に作動可能に連結された遺伝子産物をコードする導入遺伝子と、イヌ又はネコトランス活性化ドメイン及びイヌ又はネコFKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを含む活性化ドメインと、ジンクフィンガーホメオドメイン(ZFHD)及び1、2、又は3個のFK506結合タンパク質ドメイン(FKBP)サブユニット遺伝子を含むDNA結合ドメインと、少なくとも8コピーのZFHDに対する結合部位(8XZFHD)、それに続く最小IL2プロモーターと、を含む。有効量のラパマイシン又はラパログの存在は、宿主細胞における導入遺伝子の発現を誘導する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性遺伝子発現系を含む核酸分子であって、前記系が、
(a)プロモーターを含む発現制御配列に作動可能に連結された遺伝子産物をコードする導入遺伝子と、
(b)イヌ(canine)又はネコ(feline)のトランス活性化ドメイン及びイヌ又はネコFKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを含む、活性化ドメインと、
(c)ジンクフィンガーホメオドメイン(ZFHD)及び1、2、又は3個のFK506結合タンパク質ドメイン(FKBP)サブユニット遺伝子を含むDNA結合ドメインと、
(d)少なくとも1コピーのZFHDに対する結合部位、それに続く最小IL2プロモーターと、を含み、
有効量のラパマイシン又はラパログの存在が、宿主細胞における前記導入遺伝子の発現を誘導する、核酸分子。
【請求項2】
5’AAV ITR及び3’AAV ITRを更に含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
FKBPサブユニット遺伝子配列が、互いに約85%未満の同一性を共有する、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記FKBPサブユニット遺伝子配列のうちの1つが、天然のFKBP遺伝子配列である、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記トランス活性化ドメインが、NF-κB p65の一部分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記トランス活性化ドメインが、イヌp65配列である、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記トランス活性化ドメインが、ネコp65配列である、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記プロモーターが、構成的プロモーターである、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記プロモーターが、組織特異的プロモーターである、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記プロモーターが、CMVプロモーターである、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
IRESを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項12】
少なくとも8コピーの前記ZFHDに対する結合部位を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
プロモーターと、イヌ又はネコp65トランス活性化ドメイン及びイヌ又はネコFKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを含む活性化ドメインと、ジンクフィンガーホメオドメイン(ZFHD
)及び3つのFK506結合タンパク質ドメイン(FKBP)サブユニット遺伝子を含むDNA結合ドメインと、8コピーのZFHDに対する結合部位と、治療用産物のコード配列と、を含む、核酸分子。
【請求項14】
前記FRBドメインが、配列番号1若しくは配列番号2と少なくとも90%、95%、96%、96%、98%、99%、若しくは100%の同一性を共有する配列を有し、かつ/又は
p65サブユニットが、配列番号4若しくは配列番号5と少なくとも90%、95%、96%、96%、98%、99%、若しくは100%の同一性を共有する配列を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項15】
分子が、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項16】
AAVカプシドを有する組換えAAV(rAAV)であって、前記カプシドが、その中に、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸分子をパッケージングしている、組換えAAV。
【請求項17】
請求項16に記載のrAAVと、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と、を含む、組成物。
【請求項18】
治療用産物の用量を調節するための治療レジメンであって、請求項17に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することと、有効量のラパマイシン又はラパログを送達して、前記対象の宿主細胞において前記治療用産物の発現を誘導することと、を含む、治療レジメン。
【請求項19】
前記対象が、イヌ又はネコである、請求項18に記載の治療レジメン。
【請求項20】
前記ラパマイシン又はラパログが、ラパマイシンである、請求項18又は19に記載の治療レジメン。
【請求項21】
前記rAAVが、硝子体内投与され、前記ラパマイシンが、眼に送達される、請求項18~20のいずれか一項に記載の治療レジメン。
【請求項22】
前記rAAVが、鼻腔内投与され、前記ラパマイシンが、局所的に送達される、請求項18~20のいずれか一項に記載の治療レジメン。
【請求項23】
前記rAAVが、筋肉内投与され、前記ラパマイシンが、経口で、局所的に、経皮パッチを介して、又は皮下注射によって送達される、請求項18~20のいずれか一項に記載の治療レジメン。
【請求項24】
前記rAAVが、静脈内投与可能であり、前記ラパマイシンが、経口で、経皮パッチによって、又は皮下注射によって、送達可能である、請求項18~20のいずれか一項に記載の治療レジメン。
【請求項25】
FRB配列が、配列番号1又は配列番号2である、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸分子、組成物、又は治療レジメン。
【請求項26】
トランス活性化ドメイン配列が、配列番号4又は配列番号5である、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸分子、組成物、又は治療レジメン。
【請求項27】
ZFHDホメオドメイン配列が、配列番号30である、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸分子、組成物、又は治療レジメン。
【請求項28】
前記FKBPサブユニット遺伝子配列が、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9である、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸分子、組成物、又は治療レジメン。
【請求項29】
8XZFHD配列が、配列番号31である、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸分子、組成物、又は治療レジメン。
【請求項30】
IL2最小プロモーター配列が、配列番号11又は配列番号12である、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸分子、組成物、又は治療レジメン。
【請求項31】
治療用遺伝子産物を、それを必要とする対象に送達するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸、請求項16に記載のrAAV又は請求項17に記載の組成物の、使用。
【請求項32】
遺伝子産物を、それを必要とする対象に送達するための医薬品の調製に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸、請求項16に記載のrAAV、又は請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
遺伝子療法の中心的な課題は、インビボでの導入遺伝子の発現の調節の困難さである。実質的に全ての遺伝子療法の前臨床及び臨床応用は、構成的プロモーターから導入遺伝子を発現するベクターを使用しており、これは、ベクターゲノムが持続する限り、一定のレベルで活性であることを意味する。しかしながら、遺伝子療法に適している多くの疾患は、導入遺伝子の発現を調節する必要がある場合がある。遺伝子発現を積極的に誘導するために、目的の遺伝子を薬物誘導性の操作された転写因子の制御下に置く一般原理に基づくいくつかの系が記載されている(Clackson et at.,1997,Curr
Opin Chern BioI,1(2):210-8、Rossi et at.,Curr Opin Biotechnol,1998.9(5):p.451-6)。ラパマイシン、又はラパログなどの小分子薬物の投与によって導入遺伝子の発現を誘導することができる系が以前に開発されている。
【0002】
ラパログ調節遺伝子発現系は、例えば、米国特許第6,015,709号、同第6,117,680号、同第6,133,456号、同第6,150,527号、同第6,187,757号、同第6,306,649号、同第6,479,653号及び同第6,649,595号に記載されている。ARIAD(登録商標)技術を採用する2つの主要な系は、ホモ二量体化に基づく系及びヘテロ二量体化に基づく系を含む(Rivera et
al.,1996,Nature Med,2(9):1028-1032、Ye et al.,2000,Science 283:88-91、Rivera et al.,PNAS,Vol.96(15):8657-8662,1999)。
【0003】
J.Naidoo and D.Young,Neurology Research
International,Vol 2012,Article ID 595410,10 pages,(2011)に要約されているように、ラパマイシン調節遺伝子調節系は、2つの転写因子間の相互作用に依存し、一方はDNA結合ドメインを組み込み、他方はDNA活性化ドメインを組み込む。転写因子の各々はまた、二量体化薬物ラパマイシンの存在下での相互作用を可能にして導入遺伝子の発現を駆動する異種リガンド結合ドメインを含有する。DNA結合は、3コピーのFK結合タンパク質(FKBP)に融合されたジンクフィンガーホメオドメイン-1(ZFHD1)DNA結合ドメインの、ヒトCMVプロモーターに駆動される産生を介して促進される。NFκB p65活性化ドメインに融合したFKBP-ラパマイシン関連タンパク質1(FRAP)からなる融合タンパク質とともに、このDNA結合タンパク質の二量体化を誘導するラパマイシンの存在下で、導入遺伝子発現が達成される。
【0004】
これらの系は、非ヒト動物の療法に有益であるだろうが、報告されている系の全ては、ヒト配列に基づいている。したがって、必要とされるのは、非ヒト療法に好適な調節可能な系である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、誘導性遺伝子発現系を含む核酸分子、ベクター、及び組換えAAVが提供される。
【0006】
第1の態様では、誘導性遺伝子発現系を含む核酸分子が提供される。本系は、プロモーターを含む発現制御配列に作動可能に連結された遺伝子産物をコードする導入遺伝子と、イヌ(canine)又はネコ(feline)トランス活性化ドメイン及びイヌ又はネコFKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシ
ン結合(FRB)ドメインを含む活性化ドメインと、ジンクフィンガーホメオドメイン(ZFHD)及び1、2、又は3個のFK506結合タンパク質ドメイン(FKBP)サブユニット遺伝子を含むDNA結合ドメインと、少なくとも8コピーのZFHDに対する結合部位(8XZFHD)、それに続く最小IL2プロモーターと、を含む。有効量のラパマイシン又はラパログの存在は、宿主細胞における導入遺伝子の発現を誘導する。
【0007】
別の態様では、核酸分子が提供される。本分子は、プロモーターと、イヌ又はネコp65トランス活性化ドメイン及びイヌ又はネコFKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを含む活性化ドメインと、ジンクフィンガーホメオドメイン(ZFHD)及び3つのFK506結合タンパク質ドメイン(FKBP)サブユニット遺伝子を含むDNA結合ドメインと、8コピーのZFHDに対する結合部位と、治療用産物のコード配列と、を含む。
【0008】
別の態様では、本明細書に記載される誘導性遺伝子発現系を含む核酸分子を含む、ウイルスベクターが提供される。
【0009】
別の態様では、本明細書に記載される誘導性遺伝子発現系を含む核酸分子を含む、組換えAAV(rAAV)が提供される。
【0010】
別の態様では、治療用産物の用量を調節するための治療レジメンが提供される。本レジメンは、本明細書に記載されるrAAV組成物を、それを必要とする対象に投与することと、有効量のラパマイシン又はラパログを送達して、対象の宿主細胞において治療産物の発現を誘導することと、を含む。一実施形態では、対象は、イヌ又はネコである。
【0011】
本発明の他の態様及び利点は、以下の発明の詳細な説明から容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】cTF.rhEpo.3w.rBG(イヌ誘導性カセット)を示すプラスミドマップである。
図2】fTF.rhEpo.3w.rBG(ネコ誘導性カセット)を示すプラスミドマップである。
図3】rhEPOのインビトロ発現を示すグラフである。HEK293細胞を、アカゲザルEpo(rhEpo)を発現するhTF.rhEpo.3w.rBG(ヒト誘導性カセット)、cTF.rhEpo.3w.rBG(イヌ誘導性カセット)、又はfTF.rhEpo.3w.rBG(ネコ誘導性カセット)でトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、細胞を0nM、4nM、又は40nMのラパマイシンで処理した。培養上清を回収し、ラパマイシン処理の48時間後にrhEpoを測定した。
図4】ネコ誘導性構築物、feFRB-p65(配列番号36)及びfeZFHD1-3xFKBP(配列番号37)、並びにイヌ誘導性構築物、caFRB-p65(配列番号38)及びcaZFHD1-3xFKBP(配列番号39)のアミノ酸配列を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の核酸、ベクター、及びウイルスは、遺伝子療法が対象に一度投与され、その後、経口誘導剤を投与することによって導入遺伝子がオンになることを可能にするように設計されている。これにより、生物学的薬物の頻繁な注射を定期的な経口薬に置き換えることができる。一実施形態では、対象は、イヌである。別の実施形態では、対象は、ネコである。
【0014】
以前の入手可能な全ての系は、ヒト又は他の種由来のタンパク質に基づいているが、本明細書で提供されるのは、完全にイヌ及びネコのアミノ酸配列からなるAAVパッケージングされた構築物であり、それは獣医用途において安全性プロファイルがより良好であり、免疫原性が減少している。
【0015】
「a」又は「an」という用語は、1つ以上を指すことに留意されたい。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0016】
本明細書の様々な実施形態は、「含む(comprising)」という言葉を用いて示されているが、他の状況では、関連する実施形態は、「からなる(consisting of)」又は「本質的にからなる(consisting essentially
of)」という言葉を用いて解釈及び記載されるべきことも意図される。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」という用語は、排他的ではなく包括的に解釈される必要がある。「なる(consist)」、「なる(consisting)」という用語、及びその変形は、包括的ではなく排他的に解釈される必要がある。
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別途指定されない限り、与えられた参照から10%の変動性を意味する。
【0017】
本明細書で使用される「調節」という用語又はその変形は、式(I)の化合物が生物学的経路の1つ以上の成分を阻害する能力を指す。
【0018】
「対象」は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、又はサル、チンパンジー、ヒヒ、若しくはゴリラなどの非ヒト霊長類である。一実施形態では、対象は、ネコである。別の実施形態では、対象は、イヌである。
【0019】
本明細書で使用される場合、「疾患」、「障害」、及び「状態」は、対象における異常な状態を示すために互換的に使用される。
【0020】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって、及び本明細書で使用されている多数の用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0021】
いくつかの例において、核酸分子に関して、以下の成分が記載される。核酸分子(又はベクター若しくはウイルス(例えば、rAAV))が言及される場合、別の実施形態では、ベクター又はウイルス(又は核酸分子)が本明細書に包含されることを理解されたい。
【0022】
成分
本明細書では、改良されたラパマイシン/ラパログで調節可能な発現系を含む核酸分子、ベクター、及びウイルスが提供される。本明細書で提供される場合、本明細書で提供されるベクターを介して送達される導入遺伝子産物の用量は、対象に送達される調節剤又は誘導剤(小分子)(時には「二量体化剤」とも称される)によって調節(制御)される。したがって、ラパマイシン又はラパログの送達は、導入遺伝子の発現を活性化するのに必要な2つの成分を一緒にする。
【0023】
本明細書で提供される誘導性遺伝子調節/発現系は、少なくとも以下の成分、目的の遺伝子産物をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター、活性化ドメイン、DNA結合ドメイン、及びジンクフィンガーホメオドメイン結合部位を含有する。他の
実施形態では、本明細書に更に記載されるように、追加の成分が発現系に含まれ得る。
【0024】
核酸分子は、活性化ドメインを含み、それは、好ましくは、DNA結合ドメインの上流に位置する。本明細書に記載の系は、活性化ドメインにおけるイヌ又はネコ配列を利用するように設計されている。一実施形態では、活性化ドメインは、NF-カッパBのp65サブユニットからのカルボキシ末端と、FKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインとの融合である。一実施形態では、FRBドメインは、イヌ配列である。別の実施形態では、FRBドメインは、ネコ配列である。
【0025】
一実施形態では、活性化ドメインは、ネコ由来のNF-カッパBのp65サブユニットからのカルボキシ末端に融合されたネコFKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインである。別の実施形態では、活性化ドメインは、イヌ由来のNF-カッパBのp65サブユニットからのカルボキシ末端に融合されたイヌFKBP12-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)のFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインである。
【0026】
一実施形態では、FRBドメインは、以下の配列番号1(イヌ)の配列を有する:atcctctggcatgagatgtggcatgaaggcctggaagaggcatctcgtttgtactttggggaaaggaacgtgaaaggcatgtttgaggtgctggagcccttgcatgctatgatggaacggggcccccagactctgaaggaaacatcctttaatcaggcctatggtcgagatttaatggaggcccaagagtggtgcaggaagtacatgaaatcagggaacgtcaaggacctcacccaagcctgggacctctattatcacgtgttccgacgaatctcaaag。
【0027】
一実施形態では、FRBドメインは、以下の配列番号2(ネコ)の配列を有する:atggactatcctgctgccaagagggtcaagttggactctagaatcctctggcatgagatgtggcatgaaggcctggaagaggcatctcgtttgtactttggggaaaggaacgtgaaaggcatgtttgaggtgctggagcccttgcatgctatgatggaacggggcccccagactctgaaggaaacatcctttaatcaggcctatggtcgagatttaatggaggcccaagagtggtgcaggaagtacatgaaatcagggaacgtcaaggacctcacccaa。
【0028】
比較のため、ヒトFRBドメイン配列は、以下の配列番号3(ヒト)に示される:atggactatcctgctgccaagagggtcaagttggactctagaatcctctggcatgagatgtggcatgaaggcctggaagaggcatctcgtttgtactttggggaaaggaacgtgaaaggcatgtttgaggtgctggagcccttgcatgctatgatggaacggggcccccagactctgaaggaaacatcctttaatcaggcctatggtcgagatttaatggaggcccaagagtggtgcaggaagtacatgaaatcagggaatgtcaaggacctcctccaa。
【0029】
他の実施形態では、FRBドメインは、配列番号1と少なくとも90%、95%、96%、96%、98%、又は99%の同一性を共有する配列を有する。別の実施形態では、FRBドメインは、配列番号2と少なくとも90%、95%、96%、96%、98%、又は99%の同一性を共有する配列を有する。
【0030】
一実施形態では、NF-カッパBのp65サブユニットは、イヌ配列である。別の実施
形態では、NF-カッパBのp65サブユニットは、ネコ配列である。
【0031】
一実施形態では、p65サブユニットは、以下の配列番号4(イヌ)の配列を有する:gaggaattcagccccatggtgttctctagcggccagatcagctctcagacaagcgcccttgcttctgcccctgctcctgctccaattctggctccagctcctcctgcaccagctccagcacctattctggcacctggactggctcaggctatggctccaccagcaccaaagacaacacaggccggcgagggaacactgacagaagctctgctgcagctccagttcgacgccgacgaggatctgggagccctgctgggcaattctgctgatcctgccgtgttcaccgatctggccagcgtggacaatagcgagttccagcagctcctgaaccagggcgttagtgtggcccctcatacagccgagcctatgctgatggaataccccgaggctatcaccagactggtcaccggctctcaaagacctccagatcctgtgcctgctccagtgggagcatctgggctccccaatggcctcctttcaggagatgaagacttctcctccattgcggacatggacttctcagccctgctgagtcagatcagctcc
【0032】
一実施形態では、p65サブユニットは、以下の配列番号5(ネコ)の配列を有する:gaggaattcagccccatggtgttccccagcggacagatcccatctcagacaccagctctggctccagctcctgctcctattcttgctcctgcaccagcctctgtgcctgctccagcacctgttccggcaccagcaccagctccggctccggctccagcaccaatacttgctccaggactggctcaggctgtggtgccgccagctcctaaaacaacacaagccggcgagggcacactgacagaagctctgctgcatctgcagttcgacgccgacgaggatctgggagccctgctgggcaattctgctgatcctgccgtgttcaccgatctggccagcgtggacaatagcgagttccagcagctcctgaaccagggcgttagtgtggctcctcatcctgccgagcctatgctgatggaataccccgaggctatcaccagactggtcaccggctctcaaagacctccagatccagcaccggcaccactgggagcatct
【0033】
比較のために、ヒトp65サブユニット配列は、以下の配列番号6(ヒト)に示される:gatgagtttcccaccatggtgtttccttctgggcagatcagccaggcctcggccttggccccggcccctccccaagtcctgccccaggctccagcccctgcccctgctccagccatggtatcagctctggcccaggccccagcccctgtcccagtcctagccccaggccctcctcaggctgtggccccacctgcccccaagcccacccaggctggggaaggaacgctgtcagaggccctgctgcagctgcagtttgatgatgaagacctgggggccttgcttggcaacagcacagacccagctgtgttcacagacctggcatccgtcgacaactccgagtttcagcagctgctgaaccagggcatacctgtggccccccacacaactgagcccatgctgatggagtaccctgaggctataactcgcctagtgacaggggcccagaggccccccgacccagctcctgctccactgggggccccggggctccccaatggcctcctttcaggagatgaagacttctcctccattgcggacatggacttctcagccctgctgagtcagatcagctcc
【0034】
他の実施形態では、p65サブユニットは、配列番号4と少なくとも90%、95%、96%、96%、98%、又は99%の同一性を共有する配列を有する。別の実施形態では、p65サブユニットは、配列番号5と少なくとも90%、95%、96%、96%、98%、又は99%の同一性を共有する配列を有する。
【0035】
DNA結合ドメインは、最大3コピーのFK506結合タンパク質(FKBP)に接合されたジンクフィンガーホメオドメイン1のDNA結合融合からなる。誘導剤、例えばラパマイシンなどのラパログの存在下で、DNA結合ドメイン及び活性化ドメインは、それらのFKBP及びFRBドメインの相互作用を介して二量体化され、導入遺伝子の転写活性化をもたらす。
【0036】
一実施形態では、誘導性発現系は、プロモーター及び治療用産物のコード配列と同じベクターに含有される。別の実施形態では、誘導性発現系は、2つ以上のベクターに含有される。
【0037】
本系は、目的の治療用産物のコード配列の上流に誘導性プロモーターを更に含む。
【0038】
一実施形態では、ジンクフィンガーホメオドメイン1は、配列番号16の配列を有する。別の実施形態では、ジンクフィンガーホメオドメイン1は、配列番号30と少なくとも90%、95%、96%、96%、98%、又は99%の同一性を共有する配列を有する。
【0039】
核酸分子は、1、2、又は3コピーのFKBP配列を有するように設計される。これらは、本明細書では、FKBPサブユニットと称される。一実施形態では、サブユニットは、組換えを最小限にするために、同じタンパク質を発現するように設計されるが、互いに異なる核酸を有するように設計される。好適なFKBP配列の例は、本明細書で提供される。一実施形態では、選択されたFKBPサブユニットは、互いに約85%未満同一であり、すなわち、少なくとも約15%異なる。別の実施形態では、FKBPサブユニット核酸配列は、同一である。
【0040】
好適なFKBPサブユニット配列の例は、本明細書で提供される。特定の実施形態では、FKBPサブユニットは、野生型FKBPコード配列と約60%~約80%同一である。しかしながら、他の好適な配列が設計されてもよい。
一実施形態では、FKBPサブユニットは、以下の配列番号7(FKBP)の配列を有する:
ggagtgcaggtggaaaccatctccccaggagacgggcgcaccttccccaagcgcggccagacctgcgtggtgcactacaccgggatgcttgaagatggaaagaaatttgattcctcccgggacagaaacaagccctttaagtttatgctaggcaagcaggaggtgatccgaggctgggaagaaggggttgcccagatgagtgtgggtcagagagccaaactgactatatctccagattatgcctatggtgccactgggcacccaggcatcatcccaccaaacgccactctcgtcttcgatgtggagcttctaaaactggaa
【0041】
一実施形態では、FKBPサブユニットは、以下の配列番号8(FKBPw1)の配列を有する:ggcgttcaggtggaaaccatcagtccaggggatggccgaacttttccaaagagagggcagacttgcgtcgtgcattatactggtatgctggaggatgggaaaaagttcgactcttccagagatcggaacaaaccattcaaattcatgctcgggaa
acaggaagttatccgcggatgggaggagggcgtggcccagatgtccgtgggccagcgcgccaagctaaccatctccccagactacgcctacggagccaccggacaccccggtatcatacccccaaacgccacccttgtgtttgacgtggaactgcttaagctagag
【0042】
一実施形態では、FKBPサブユニットは、以下の配列番号9(FKBPw2)の配列を有する:
ggcgtgcaggtcgagaccatcagccccggcgacggccgcacctttcccaagagaggccagacttgcgtggtccactacaccggcatgctggaggacggcaagaagttcgacagcagccgcgaccgcaacaagcccttcaagttcatgctgggcaaacaggaagtgatccgcggctgggaggaaggcgtggctcagatgagcgtggggcagcgggccaagctgaccatcagccccgactatgcctacggcgccaccggccaccccggcatcatcccccccaacgccaccctcgtgttcgacgtggagctgctgaagctggagtga
(FKBP(完全な全サブユニット)):配列番号10
ggagtgcaggtggaaaccatctccccaggagacgggcgcaccttccccaagcgcggccagacctgcgtggtgcactacaccgggatgcttgaagatggaaagaaatttgattcctcccgggacagaaacaagccctttaagtttatgctaggcaagcaggaggtgatccgaggctgggaagaaggggttgcccagatgagtgtgggtcagagagccaaactgactatatctccagattatgcctatggtgccactgggcacccaggcatcatcccaccaaacgccactctcgtcttcgatgtggagcttctaaaactggaaactagaggcgttcaggtggaaaccatcagtccaggggatggccgaacttttccaaagagagggcagacttgcgtcgtgcattatactggtatgctggaggatgggaaaaagttcgactcttccagagatcggaacaaaccattcaaattcatgctcgggaaacaggaagttatccgcggatgggaggagggcgtggcccagatgtccgtgggccagcgcgccaagctaaccatctccccagactacgcctacggagccaccggacaccccggtatcatacccccaaacgccacccttgtgtttgacgtggaactgcttaagctagagactagaggcgtgcaggtcgagaccatcagccccggcgacggccgcacctttcccaagagaggccagacttgcgtggtccactacaccggcatgctggaggacggcaagaagttcgacagcagccgcgaccgcaacaagcccttcaagttcatgctgggcaaacaggaagtgatccgcggctgggaggaaggcgtggctcagatgagcgtggggcagcgggccaagctgaccatcagccccgactatgcctacggcgccaccggccaccccggcatcatcccccccaacgccaccctcgtgttcgacgtggagctgctgaagctggagtga
【0043】
任意選択で、サブユニット配列のうちの1つは、野生型FKBP配列であり得る。一実施形態では、野生型FKBP配列は、操作されたFKBPサブユニット配列の上流に位置する。別の実施形態では、野生型FKBP配列は、操作されたFKBPサブユニット配列の下流に位置する。更に別の実施形態では、野生型FKBP配列は、2つの異なる操作されたFKBPサブユニット配列の間に挟まれている。別の実施形態では、野生型FKBPサブユニット配列は、本発明の組成物において使用されない。
【0044】
一実施形態では、核酸分子は、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9を含む。
【0045】
核酸分子は、ジンクフィンガーホメオドメイン結合部位を更に含む。核酸分子は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個のZFHDに対する結合部位を含有する。一実施形態では、核酸分子は、8つ(8)のジンクフィンガーホメオドメイン結合部位(結合パートナー)(8XZFHD)を含有する。しかしながら、本発明は、2~約12コピーのジンクフィンガー結合部位を有する核酸分子を包含する。一実施形態では、核酸は、8、9、10、11、又は12コピーのジンクフィンガー結合部位を包含する。一実施形態では、ZFHD結合部位は、配列番号31を含む。別の実施形態では、ZFHD結合部位は、配列番号32、33、34、又は35のうちの1つ以上を含む。ZFHD結合部位は、配列番号32、33、34、又は35のうちのいずれかの1コピーより多くを含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーホメオドメイン結合部位の下流に最小IL2プロモーターがある。一実施形態では、IL2プロモーターは、以下の配列番号11の配列を有する:aacattttgacacccccataatatttttccagaattaacagtataaattgcatctcttgttcaagagttccctatcactctctttaatcactactcacagtaacctcaactcctgccacaa。
【0047】
一実施形態では、IL2プロモーターは、以下の配列番号12の配列を有する:aacattttgacacccccataatatttttccagaattaacagtataaattgcatctcttgttcaagagttccctatcactctctttaatcactactcacagtaacctc
【0048】
一実施形態では、トランス活性化ドメインとDNA結合ドメインとの間にリンカーがあり、リンカーは、F2A又はIRESであり得る。一実施形態では、リンカーは、IRESである。
【0049】
本明細書で提供される場合、ベクターを介して送達される導入遺伝子産物の用量は、対象に送達される調節剤又は誘導剤(小分子)(時には「二量体化剤」とも称される)によって調節(制御)される。一実施形態では、誘導剤は、ラパマイシン又はラパログである。
【0050】
「ラパマイシン」は、高い親和性でFK506結合タンパク質、FKBPに結合して、ラパマイシン:FKBP複合体を形成する、Streptomyces hygroscopicusによって産生されるマクロライド抗生物質である。ラパマイシン:FKBP複合体は、高い親和性で大細胞タンパク質、FRAPに結合し、FRAPとともにFKBP/ラパマイシン複合体を形成する。ラパマイシンは、FKBPをFRAPに接合するための二量体化剤又はアダプターとして機能する。ラパマイシンは、シロリムスとしても既知である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ラパログ」という用語は、ラパマイシンに構造的に関連する類似体、ホモログ、誘導体、及び他の化合物を含むラパマイシンの構造変異体を含むことを意味する。ラパログは、FRAPの変異体であるFRAPに結合するように設計されているが、野生型FRAPには結合しない。かかる構造的変異体としては、C7、C42及び/又はC29でのメトキシの脱メチル化、除去又は置換、C13、C43及び/又はC28でのヒドロキシの除去、誘導体化又は置換、C14、C24及び/又はC30でのケトンの還元、除去又は誘導体化、6員ピペコレート環の5員のプロリル環での置換
、並びにシクロヘキシル環の代替置換、又はシクロヘキシル環の置換シクロペンチル環での置換などの修飾が含まれる。例えば、米国特許第6,187,757号、同第5,525,610号、同第5,310,903号及び同第5,362,718号を参照されたく、これらは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。例示的なラパログとしては、AP22594(28-エピラパマイシン)が挙げられ、これは、顕著に低い免疫抑制特性でラパマイシンの誘導活性を提供するため、特に好適である。この化合物は、Ti(OiPr)の存在下で、シロリムス(ラパマイシン)をメチレンクロルサイドと混合することによって合成され得る。60分間の反応後、粗生成物をメタノールに溶解し、メタノール/水混合物から再結晶する。精製後の典型的な最終収率は、約50%である。しかしながら、他の好適な方法が選択されてもよい。更に他の例示的なラパログとしては、例えば、テムシロリムス、エベロリムス、ABT578、AP23573、及びビオリムスが挙げられる。内因性FKBPとの相互作用を最小限に抑えるように設計された「バンプ」を有する、AP26113(Ariad)、AP1510(Amara,J.F.,et al.,1997,Proc Natl Acad Sci USA,94(20):10618-23)AP22660、AP22594、AP21370、AP22594、AP23054、AP1855、AP1856、AP1701、AP1861、AP1692、及びAP1889。
【0052】
「ラパマイシン調節プロモーター」は、その活性がラパマイシンの存在又は非存在によって調節されるプロモーターを指す。より具体的には、制御は、「オン」及び「オフ」よりも細かく調節され得、転写のレベルは、提供されるラパマイシンの濃度又は用量によって制御され得る。本明細書で提供される場合、導入遺伝子に作動可能に連結されるプロモーターは、本明細書に記載される誘導性遺伝子発現系に含まれる場合、調節されたプロモーターである。ラパマイシン誘導性プロモーターは、当該技術分野で既知である。例えば、WO2007126798、WO2001098507を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
一実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。一実施形態では、プロモーターは、以下の配列番号13の配列を有するCMVプロモーターである:acgcgttcgagctcgccccgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctcgtttagtgaaccgtcagatcgcctggagacgccatccacgctgttttgacctccatagaagacaccgggaccgatccagcctccgggggatcttggtggcgtgaaactcccg。
【0054】
好適なプロモーターの例としては、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択でRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択でCMVエンハンサーを有する)[例えば、Boshar
t et al,Cell,41:521-530(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1プロモーター[Invitrogen]が挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、組織特異的プロモーターが選択され得る。例えば、骨格筋での発現が所望される場合、筋肉で活性なプロモーターが使用される必要がある。これらには、骨格βアクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子由来のプロモーター、及び天然に存在するプロモーターよりも高い活性を有する合成筋肉プロモーターが含まれる(Li
et al.,Nat.Biotech.,17:241-245(1999)を参照されたい)。組織特異的であるプロモーターの例は、とりわけ、肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124-32(1997)、B型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002-9(1996))、アルファ-フェトプロテイン(AFP,Arbuthnot et al.,Hum.Gene Ther.,7:1503-14(1996))、骨オステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185-96(1997))、骨シアロタンパク質(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654-64(1996))、リンパ球(CD2、Hansal et al.,J.Immunol.,161:1063-8(1998)、治療産物重鎖、T細胞受容体鎖、神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターなどのニューロンの(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503-15(1993))、神経フィラメント軽鎖遺伝子(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611-5(1991))、及びニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,Neuron,15:373-84(1995))についてである。プロモーターには、任意の種に由来し得る網膜色素上皮(RPE)プロモーター又は光受容体プロモーターが含まれ得る。
【0055】
特定の実施形態では、プロモーターは、発現される遺伝子の天然プロモーターである。更に別の実施形態では、プロモーターは、RPGR近位プロモーターである(Shu et al,IOVS,May 2012、これは参照により本明細書に組み込まれる)。他の有用なプロモーターには、ロッドオプシンプロモーター、赤緑色オプシンプロモーター、青色オプシンプロモーター、cGMP-β-ホスホジエステラーゼプロモーター、マウスオプシンプロモーター(上に引用されたBeltran et al 2010)、ロドプシンプロモーター(Mussolino et al,Gene Ther,July 2011,18(7):637-45)、錐体形トランスデューシンのアルファ-サブユニット(Morrissey et al,BMC Dev,Biol,Jan 2011,11:3)、ベータホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター、網膜色素変性症(RP1)プロモーター(Nicord et al,J.Gene Med,Dec 2007,9(12):1015-23)、NXNL2/NXNL1プロモーター(Lambard et al,PLoS One,Oct.2010,5(10):e13025)、RPE65プロモーター、網膜変性遅延/ペリフェリン2(Rds/perph2)プロモーター(Cai et al,Exp Eye Res.2010 Aug;91(2):186-94)、及びVMD2プロモーター(Kachi et al,Human Gene Therapy,2009(20:31-9))が挙げられるが、これらに限定されない。光受容体特異的プロモーターの例としては、ロッドオプシンプロモーター、赤緑色オプシンプロモーター、青色オプシンプロモーター、光受容体間結合タンパク質(IRBP)プロモーター、及びcGMP-β-ホスホジエステラーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
核酸は、調節可能なプロモーターの制御下にある遺伝子産物のコード配列を更に含む。
導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質、又は他の産物をコードする導入遺伝子に隣接するベクター配列に対して異種の核酸配列である。核酸コード配列は、標的細胞中で導入遺伝子の転写、翻訳、及び/又は発現を可能にする様式で、調節成分に作動可能に連結される。異種核酸配列(導入遺伝子)は、任意の生物に由来し得る。核酸分子、ベクター、又はrAAVは、1つ以上の導入遺伝子を含み得る。
【0057】
特定の実施形態では、本明細書で、エリスロポエチン(EPO)をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコのEPO遺伝子をコードする。かかる組換えベクターは、例えば、循環赤血球の量の減少を特徴とする対象における慢性腎疾患及び他の状態を治療するためのレジメンでの使用に好適である。
【0058】
特定の実施形態では、本明細書で、抗神経成長因子(NGF)抗体をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコの抗NGF抗体をコードする。かかる組換えベクターは、例えば、対象における変形性関節症疼痛を治療するためのレジメンで使用するのに好適である。例えば、Gearing et al,In Vitro and In Vivo Characterization of a Fully Felinized Therapeutic Anti-Nerve Growth Factor Monoclonal Antibody for the Treatment of
Pain in Cats,J Vet Intern Med.2016 Jul;30(4):1129-37.doi:10.1111/jvim.13985.Epub 2016 Jun 15、及びGearing et al,A Fully Caninised anti-NGF Monoclonal Antibody for
Pain Relief in Dogs,BMC Vet Res.2013 Nov 9;9:226.doi:10.1186/1746-6148-9-226を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み込まれる
【0059】
特定の実施形態では、本明細書で、抗CD20抗体をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコの抗CD20抗体をコードする。かかる組換えベクターは、例えば、対象におけるB細胞リンパ腫を治療するためのレジメンで使用するのに好適である。
【0060】
特定の実施形態では、本明細書で、抗GnRH抗体をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコの抗GnRH抗体をコードする。かかる組換えベクターは、例えば、イヌ又はネコの対象において滅菌するためのレジメンで使用するのに好適である。
【0061】
特定の実施形態では、本明細書で、抗IL-31抗体をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコの抗IL-31抗体をコードする。
【0062】
特定の実施形態では、本明細書で、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)及びその類似体をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコを標的とするGLP-1受容体アンタゴニストをコードする。かかる組換えベクターは、例えば、対象におけるII型糖尿病を治療するためのレジメンで使用するのに好適である。
【0063】
特定の実施形態では、本明細書で、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが
提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコを標的とするGM-CSFをコードする。
【0064】
特定の実施形態では、本明細書で、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)をコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコを標的とするG-CSFをコードする。
【0065】
特定の実施形態では、本明細書で、インスリンをコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコのインスリンをコードする。かかる組換えベクターは、例えば、対象におけるI型糖尿病又はII型糖尿病を含む代謝性疾患を治療するためのレジメンで使用するのに好適である。
【0066】
特定の実施形態では、本明細書では、例えば、抗体及び受容体-IgG融合タンパク質を含む、IgE、IL-32、又はIL-4/IL-13受容体のインターロイキン-4受容体アルファ(IL-4Rα)サブユニットのアンタゴニストをコードする配列を含む導入遺伝子を含む、核酸分子、ベクター、又はrAAVが提供される。特定の実施形態では、導入遺伝子は、イヌ又はネコのIgE、IL-32、又はIL-4Rαサブユニットのアンタゴニストをコードする。かかる組換えベクターは、例えば、対象におけるアトピー性皮膚炎を治療するためのレジメンで使用するのに好適である。
【0067】
導入遺伝子配列の組成は、得られたベクターが用いられる使用に依存する。例えば、あるタイプの導入遺伝子配列は、発現時に検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。かかるレポーター配列には、限定されないが、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強GFP(EGFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合タンパク質(例えば、CD2、CD4、CD8を含む)、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、及び当該技術分野で周知の他のもの(それらを対象とする高親和性抗体が存在するか、又は従来の手段によって産生され得るもの)、並びに融合タンパク質(中でも、ヘマグルチニン又はMyc由来の抗原タグドメインに適切に融合された膜結合タンパク質を含む)をコードするDNA配列が含まれる。
【0068】
これらのコード配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントに関連する場合、酵素、放射線、比色、蛍光又は他の分光学的アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、並びに免疫学的アッセイ(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む)を含む従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを有するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼである場合、シグナルを有するベクターは、ルミノメーターで色又は光生成によって視覚的に測定することができる。
【0069】
しかしながら、導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体、又は触媒RNAなどの、生物学及び医学において有用な産物をコードする非マーカー配列であることが望ましい。望ましいRNA分子は、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、siRNA、低分子ヘアピンRNA、トランススプライシングRNA、及びアンチセンスRNAを含む。有用なRNA配列の一例は、処置される動物において標的の核酸配列の発現を阻害又は失わせる配列である。典型的には、好適な標的配列には、腫瘍標的及びウイルス性疾患が含まれる。そのような標的の例については、免疫原に関連するセクションで後述する腫瘍標的及びウイルスを参照されたい。
【0070】
導入遺伝子は、遺伝子欠損を修正又は改善するために使用され得る。遺伝子欠損は、正常な遺伝子が正常レベルよりも低く発現する欠損、又は機能的な遺伝子産物が発現しない欠損を含み得る。代替的に、導入遺伝子は、細胞型又は宿主で天然に発現されない生成物を細胞に提供し得る。好ましいタイプの導入遺伝子配列は、宿主細胞で発現される治療用タンパク質又はポリペプチドをコードする。本発明は、複数の導入遺伝子を使用することを更に含む。ある状況では、異なる導入遺伝子は、タンパク質の各サブユニットをコードするために、又は異なるペプチド若しくはタンパク質をコードするために使用することができる。これは、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合(例えば、免疫グロブリン、血小板由来成長因子、又はジストロフィンタンパク質)に望ましい。細胞がマルチサブユニットタンパク質を生成するために、異なるサブユニットの各々を含む組換えウイルスを細胞に感染させる。あるいは、タンパク質の異なるサブユニットは、同じ導入遺伝子によってコードされていてもよい。この場合、単一の導入遺伝子は、各サブユニットのDNAが内部リボザイム進入部位(IRES)によって分離された、各サブユニットをコードするDNAを含む。これは、サブユニットの各々をコードするDNAのサイズが小さい場合(例えば、サブユニットをコードするDNA及びIRESの総サイズが5キロベース未満)に望ましい。IRESの代替として、翻訳後事象において自己切断する2Aペプチドをコードする配列によってDNAが分離されていてもよい。例えば、M.L.Donnelly,et al,J.Gen.Virol.,78(Pt 1):13-21(Jan 1997)、Furler,S.,et al,Gene Ther.,8(11):864-873(June 2001)、Klump H.,et al.,Gene Ther.,8(10):811-817(May 2001)を参照されたい。この2Aペプチドは、IRESよりも著しく小さく、スペースが制限因子である場合の使用に非常に好適である。より多くの場合、導入遺伝子が大きい場合、マルチサブユニットからなる場合、又は2つの導入遺伝子が同時送達される場合、所望の導入遺伝子又はサブユニットを有するrAAVを同時投与することで、インビボでそれらをコンカテマー化して、単一のベクターゲノムを形成することが可能になる。そのような実施形態では、宿主細胞での同時発現のために、第1のAAVは、単一の導入遺伝子を発現する発現カセットを有し得、第2のAAVは、異なる導入遺伝子を発現する発現カセットを有し得る。しかし、選択される導入遺伝子は、任意の生物学的に活性な産物又は他の産物(例えば、研究に望ましい産物)をコードすることができる。
【0071】
導入遺伝子によってコードされる有用な治療用産物には、ホルモン並びに増殖因子及び分化因子が含まれ、限定されないが、インスリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGFα)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、形質転換増殖因子βスーパーファミリーのうちのいずれか1つ(TGFβ、アクチビン、インヒビン)、又は骨形成タンパク質(BMP)BMP1-15のうちのいずれか、成長因子のヘレグルイン/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1つ、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン(NT-3及びNT-4/5)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのうちのいずれか1つ、ネトリン-1及びネトリン-2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ、チロシンヒドロキシラーゼが挙げられる。
【0072】
他の有用な導入遺伝子産物としては、免疫系を制御するタンパク質が含まれ、限定されないが、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)、IL-1~IL-25(例えば、IL-2、IL-4、IL-12、及びIL-18)、単球走化性タンパク質、白血病抑制因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子α及びβ、インターフェロンα、β、及びγ、幹細胞因子、flk-2/flt3リガンドなどのサイトカイン及びリンホカインが挙げられる。免疫系によって産生される遺伝子産物も本発明において有用である。これらには、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE、キメラ免疫グロブリン、イヌ化抗体、ネコ化抗体、単鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、単鎖T細胞受容体、クラスI及びクラスII MHC分子、並びに操作された免疫グロブリン及びMHC分子が含まれるが、これらに限定されない。有用な遺伝子産物としては、補体調節タンパク質、膜補因子タンパク質(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2、及びCD59などの補体調節タンパク質も含まれる。
【0073】
更に他の有用な遺伝子産物としては、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、制御性タンパク質、及び免疫系タンパク質に対する受容体のうちのいずれか1つが挙げられる。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体、及びスカベンジャー受容体を含む、コレステロール調節のための受容体を包含する。本発明はまた、糖質コルチコイド受容体及びエストロゲン受容体、ビタミンD受容体及び他の核受容体を含むステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーなどの遺伝子産物を包含する。加えて、有用な遺伝子産物としては、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP-1、AP2、myb、MyoD及びミオゲニンなどの転写因子、タンパク質を含むETSボックス、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF-4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン制御因子(IRF-1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質、例えば、GATA-3、並びに翼状螺旋タンパク質のフォークヘッドファミリーが含まれる。
【0074】
他の有用な遺伝子産物としては、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸シンテターゼ、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、α-1アンチトリプシン、グルコース-6-ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンβシンターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、β-グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H-タンパク質、T-タンパク質、嚢胞性線維症膜貫通制御因子(CFTR)配列、及びジストロフィン配列、又はそれらの機能的断片が挙げられる。更に他の有用な遺伝子産物としては、酵素補充療法に有用であり得るような酵素が挙げられ、これは酵素の不十分な活性に起因する様々な状態において有用である。例えば、マンノース-6-リン酸を含む酵素は、リソソーム蓄積症の療法に利用され得る(例えば、好適な遺伝子は、β-グルクロニダーゼ(GUSB)をコードする遺伝子を含む)。別の例では、遺伝子産物は、ユビキチンタンパク質リガーゼE3A(UBE3A)である。更に有用な遺伝子産物としては、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼファミリー1メンバーA1(UGT1A1)が挙げられる。
【0075】
他の有用な遺伝子産物としては、挿入、欠失、又はアミノ酸置換を含む非天然アミノ酸配列を有するキメラ又はハイブリッドポリペプチドなどの非天然ポリペプチドが含まれる。例えば、一本鎖操作された免疫グロブリンは、特定の免疫不全患者において有用であり
得る。他の種類の非天然遺伝子配列としては、アンチセンス分子及びリボザイムなどの触媒核酸が含まれ、標的の過剰発現を低減するために使用され得る。
【0076】
遺伝子の発現の低減及び/又は調節は、癌及び乾癬と同様に、過増殖細胞を特徴とする過増殖状態の治療に特に望ましい。標的ポリペプチドとしては、正常細胞と比較して、過剰増殖細胞において排他的又はより高いレベルで産生されるポリペプチドが含まれる。標的抗原としては、myb、myc、fynなどの癌遺伝子、並びに転座遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trk、及びEGRFによってコードされるポリペプチドが含まれる。標的抗原としての癌遺伝子産物に加えて、抗癌治療及び保護レジメンのための標的ポリペプチドは、B細胞リンパ腫によって作製された抗体の可変領域及びT細胞リンパ腫のT細胞受容体の可変領域を含み、いくつかの実施形態では、自己免疫疾患の標的抗原としても使用される。他の腫瘍関連ポリペプチドは、モノクローナル抗体17-1A及び葉酸結合ポリペプチドによって認識されるポリペプチドを含む腫瘍細胞中でより高いレベルで見出されるポリペプチドなどの標的ポリペプチドとして使用することができる。
【0077】
他の好適な治療用ポリペプチド及びタンパク質としては、細胞の受容体及び「自己」指向性の抗体を産生する細胞を含む自己免疫に関連する標的に対して広範な防御免疫応答を付与することにより、自己免疫性の疾患及び障害に罹患している個体を治療するために有用であり得るものが含まれる。T細胞媒介性自己免疫疾患としては、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、クローン病、及び潰瘍性大腸炎が含まれる。これらの疾患の各々は、内因性抗原と結合し、自己免疫疾患に関連する炎症カスケードを開始するT細胞受容体(TCR)を特徴とする。
【0078】
更に他の有用な遺伝子産物としては、血友病B(第IX因子を含む)及び血友病A(第VIII因子及びそのバリアント、例えばヘテロ二量体及びB-欠失ドメインの軽鎖並びに重鎖を含む;米国特許第6,200,560号及び米国特許第6,221,349号)を含む血友病の治療に使用されるものが含まれる。いくつかの実施形態では、ミニ遺伝子は、10個のアミノ酸シグナル配列をコードする第VIII因子重鎖の最初の57塩基対、並びにヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化配列を含む。代替的な実施形態では、ミニ遺伝子は、A1及びA2ドメイン、並びにBドメインのN末端からの5個のアミノ酸、かつ/又はBドメインのC末端の85個のアミノ酸、並びにA3、C1、及びC2ドメインを更に含む。更に他の実施形態では、第VIII因子重鎖及び軽鎖をコードする核酸は、Bドメインの14個のアミノ酸をコードする42個の核酸によって分離される単一ミニ遺伝子内に提供される[米国特許第6,200,560号]。
【0079】
rAAVを介して送達され得る更なる例示的な遺伝子にとしては、限定されないが、グリコーゲン蓄積症又は1A型欠乏症(GSD1)に関連するグルコース-6-ホスファターゼ、PEPCK欠乏症に関連するホスホエノールピルビン酸-カルボキシキナーゼ(PEPCK)、発作及び重度神経発達障害に関連するセリン/スレオニンキナーゼ9(STK9)としても知られるサイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5)、ガラクトース血症に関連するガラクトース-1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、フェニルケトン尿症(PKU)に関連するフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、ヒドロキシ酸オキシダーゼ1(GO/HAO1)及びAGXTを含む原発性高シュウ酸尿症1型に関連する遺伝子産物、メープルシロップ尿症に関連する分枝鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ(BCKDH、BCKDH-E2、BAKDH-E1a、及びBAKDH-E1bを含む)、チロシン血症1型に関連するフマリルアセト酢酸ヒドラーゼ、メチルマロン酸血症に関連するメチルマロニルCoAムターゼ、中鎖アセチルCoA欠乏症に関連する中鎖アシルCo
Aデヒドロゲナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症に関連するオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、シトルリン血症に関連するアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症、アメチルマロン酸血症(MMA)、ニーマン・ピック病(C1型)に関連するNPC1、プロピオンアカデミア(PA)、トランスサイレチン(TTR)関連遺伝性アミロイドーシスに関連するTTR、家族性高コレステロール血症(FH)に関連する低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質、WO2015/164778に記載のLDLRバリアント、PCSK9、認知症に関連するApoE及びApoCタンパク質、クリグラー・ナジャー病に関連するUDP-グルコウロシルトランスフェラーゼ、重症複合免疫不全症に関連するアデノシンデアミナーゼ、痛風及びレッシュ・ナイアン症候群に関連するヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ビオチミダーゼ欠損症に関連するビオチミダーゼ、ファブリー病に関連するα-ガラクトシダーゼA(a-GalA))、GM1ガングリオシドーシスに関連するβ-ガラクトシダーゼ(GLB1)、ウィルソン病に関連するATP7B、ゴーシェ病2型及び3型に関連するβ-グルコセレブロシダーゼ、ツェルウェーガー症候群に関連するペルオキシソーム膜タンパク質70kDa、異染性白質ジストロフィーに関連するアリールスルファターゼA(ARSA)、クラッベ病に関連するガラクトセレブロシダーゼ(GALC)酵素、ポンペ病に関連するα-グルコシダーゼ(GAA)、ニーマン・ピック病A型に関連するスフィンゴミエリナーゼ(SMPD1)遺伝子、成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)に関連するアルギニノコハク酸シンターゼ、尿素サイクル障害に関連するカルバモイルリン酸シンターゼ1(CPS1)、脊髄性筋萎縮症に関連する生存運動ニューロン(SMN)タンパク質、ファーバー脂肪肉芽腫症に関連するセラミダーゼ、GM2ガングリオシドーシス及びテイサックス病及びサンドホフ病に関連するβ-ヘキソサミニダーゼ、アスパルチル-グルコサミン尿症に関連するアスパルチルグルコサミニダーゼ、フコシドーシスに関連するα-フコシダーゼ、α-マンノシドーシスに関連するα-マンノシダーゼ、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)に関連するポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、α-1アンチトリプシン欠損症(気腫)の治療のためのα-1アンチトリプシン、サラセミア又は腎不全による貧血の治療のためのエリスロポエチン、虚血性疾患の治療のための血管内皮増殖因子、アンジオポエチン-1、及び線維芽細胞増殖因子、例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、又は塞栓症に見られる閉塞した血管の治療のためのトロンボモジュリン及び組織因子の経路の阻害剤、パーキンソン病の治療のための芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)及びチロシンヒドロキシラーゼ(TH)、うっ血性心不全の治療のためのβアドレナリン受容体、ホスホランバンに対するアンチセンス又はその変異体、筋小胞体(小胞体)アデノシントリホスファターゼ-2(SERCA2)、及び心臓アデニル酸シクラーゼ、様々な癌の治療のためのp53などの腫瘍抑制遺伝子、炎症性障害及び免疫障害及び癌の治療のための様々なインターロイキンのうちの1つのようなサイトカイン、筋ジストロフィーの治療のためのジストロフィン又はミニジストロフィン及びユートロフィン又はミニユートロフィン、並びに糖尿病の治療のためのインスリン又はGLP-1が挙げられる。
【0080】
代替的に、又は更に、本発明のベクターは、選択された免疫原に対する免疫応答を誘導するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をコードする導入遺伝子を含有し得る。例えば、免疫原が、様々なウイルスファミリーから選択され得る。免疫応答が望まれる望ましいウイルスファミリーの例としては、ピコルナウイルスファミリーが挙げられ、感冒の症例の約50%を担うライノウイルス属、ポリポリオウイルスオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びA型肝炎ウイルスなどのヒトエンテロウイルスを含むエンテロウイルス属、並びに主に非ヒト動物における口蹄疫を担うアプトウイルス属が含まれる。ウイルスのピコルナウイルスファミリー内で、標的抗原は、VP1、VP2、VP3、VP4、及びVPGを含む。別のウイルスファミリーとしては、カルシウイルスファミリーが挙げられ、流行性胃腸炎の重要な原因病原体であるノーウォークウイルス群を包含
する。ヒト及び非ヒト動物における免疫応答を誘導するための標的化抗原で使用するための望ましい更に別のウイルスファミリーは、トガウイルスファミリーであり、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、及びベネズエラ、東部、及び西部ウマ脳炎ウイルス、並びに風疹ウイルスを含むルビウイルスを含むアルファウイルス属を含む。フラビウイルス科には、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎及びダニ媒介性脳炎のウイルスが含まれる。他の標的抗原は、C型肝炎又はコロナウイルスのファミリーから生成され得、それらは、伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸内コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)、及びその他のコロナウイルスなどの多くの非ヒトウイルスを含み、これらは、感冒及び/又は非A型、B型、又はC型肝炎を引き起こし得る。一実施形態では、標的抗原は、SARS-COV-2由来である。コロナウイルスファミリー内で、標的抗原としては、E1(M又はマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(S又はスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HE又はヘマグルチン-エルテロースとも呼ばれる)糖タンパク質(全てのコロナウイルスに存在しない)、又はN(ヌクレオカプシド)が挙げられる。更に他の抗原は、ラブドウイルスファミリーを標的にしてもよく、これには、ベシクロウイルス属(例えば、小胞性口内炎ウイルス)、及び一般的なリッサウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)が含まれる。ラブドウイルスファミリー内で、好適な抗原は、Gタンパク質又はNタンパク質に由来し得る。フィロウイルス科には、マールブルグウイルス及びエボラウイルスなどの出血熱ウイルスが含まれ、抗原の好適な供給源であり得る。パラミキソウイルスファミリーには、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫ウイルス、麻疹ウイルス、及びイヌジステンパーを含むモルビリウイルス、並びに呼吸器合胞体ウイルスを含むニューモウイルスが含まれる。インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルスファミリー内に分類され、抗原(例えば、HAタンパク質、N1タンパク質)の好適な供給源である。ブニヤウイルスファミリーには、ブニャウイルスブニヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス属(リフトバレー熱)、ハンタウイルス属(ピュレマラはヘマハギン熱ウイルス)、ナイロウイルス属(ナイロビヒツジ病)、及び様々な未分類のブンガウイルスが含まれる。アレナウイルスファミリーは、LCM及びラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルスファミリーには、レオウイルス属、ロタウイルス属(小児に急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス属、及びカルチウイルス属が含まれる。
【0081】
レトロウイルスファミリーには、ネコ白血病ウイルス、HTLVI及びHTLVII、レンチウイラナエ(lentiviranae)(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、及びスプマウイルス亜科を含む)などの獣医学的疾患を包含するオルソレトロウイルス亜科が含まれる。HIVとSIVとの間には、多くの好適な抗原が記載されており、容易に選択することができる。好適なHIV及びSIVの抗原の例としては、限定されないが、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、及びRevのタンパク質、並びにそれらの様々な断片が挙げられる。更に、これらの抗原に対する様々な修飾が記載されている。この目的のための好適な抗原は、当業者に既知である。例えば、他のタンパク質のうち、gag、pol、Vif及びVpr、Env、Tat、並びにRevをコードする配列を選択してもよい。例えば、米国特許第5,972,596号に記載されている修飾gagタンパク質を参照されたい。また、D.H.Barouch et al,J.Virol.,75(5):2462-2467(March 2001)、及びR.R.Amara,et al,Science,292:69-74(6 April 2001)に記載されているHIV及びSIVタンパク質も参照されたい。これらのタンパク質又はそのサブユニットは、単独で、又は別個のベクターを介して若しくは
単一のベクターからの組み合わせで送達され得る。
【0082】
パポバウイルスファミリーには、ポリオーマウイルス亜科(BKU及びJCUウイルス)並びにパピローマウイルス亜科(癌又はパピローマの悪性進行に関連する)が含まれる。アデノウイルスファミリーには、呼吸器疾患及び/又は腸炎を引き起こすウイルス(例えば、EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。パルボウイルスファミリーには、ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコパンロイコペニアウイルス、イヌパルボウイルス、及びブタパルボウイルスが含まれる。ヘルペスウイルスファミリーには、シンプレックスウイルス属(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス属(仮性狂犬病、水痘帯状疱疹)を含むアルファヘルペスウイルス亜科、及びサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス)を含むベータヘルペスウイルス亜科、並びにリンホクリプトウイルス属、EBV(バーキットリンパ腫)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルス、及びラジノウイルスを含むガンマヘルペスウイルス亜科が含まれる。ポックスウイルスファミリーには、オルソポックスウイルス属(痘瘡(天然痘)及びワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス、トリポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルスを包含するコードポックスウイルス亜科、及びエントモポックスウイルス亜科が含まれる。ヘパドナウイルスファミリーには、B型肝炎ウイルスが含まれる。抗原の好適な供給源であり得る1つの非分類ウイルスは、デルタ型肝炎ウイルスである。更に他のウイルス源には、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス及びブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスが含まれ得る。アルファウイルスファミリーには、ウマ動脈炎ウイルス及び様々な脳炎ウイルスが含まれる。
【0083】
本発明はまた、細菌、真菌、寄生微生物、又は非ヒト脊椎動物に感染するか、若しくは癌細胞若しくは腫瘍細胞由来の多細胞性寄生虫を含む他の病原体に対して、非ヒト動物を免疫化するのに有用な免疫原を包含し得る。細菌病原体の例には、病原性グラム陽性球菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、及び連鎖球菌が含まれる。病原性グラム陰性球菌には、髄膜炎菌、淋菌が含まれる。病原性腸内グラム陰性桿菌には、腸内細菌科;シュードモナス、アシネトバクテリア、及びエイケネラ;類鼻疽;サルモネラ;シゲラ;ヘモフィルス;モラクセラ;H.ducreyi(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ;Franisella tularensis(野兎病を引き起こす);エルシニア(パスツレラ属);ストレプトバチルスモニリフォルミス、及びスピリラムが含まれる;グラム陽性桿菌には、Listeria monocytogenes;Erysipelothrix rhusiopathiae;Corynebacterium diphtheria(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(炭疽病);ドノヴァン症(鼠径肉芽腫);及びバルトネラ症が含まれる。病原性嫌気性細菌によって引き起こされる疾患としては、破傷風、ボツリヌス症、他のクロストリジウム、結核、ハンセン病、及び他のマイコバクテリアが挙げられる。病原性スピロヘータ疾患には、梅毒、トレポネーマ症(いちご腫、ピンタ、及び地方病性梅毒)、及びレプトスピラ症が含まれる。高病原性細菌及び病原性真菌によって引き起こされる他の感染症としては、放線菌症、ノーカルジオーシス、クリプトコッカス症、ブラストミセス症、ヒストプラズマ症、及びコクチジオイデス症、カンジダ症、アスペルギルス症、及びムコール症、スポロトリクム症、パラコクシジオイデス症、ペトリエリジア症、トルロプシス症、マイセトーマ、及びクロモミセス症、並びに皮膚糸状菌症が挙げられる。リケッチア感染症には、チフス熱、ロッキー山紅斑熱、Q熱、及びリケッチア痘が含まれる。クラミジア属マイコプラズマ及びクラミジア感染症の例としては、マイコプラズマ肺炎、性病性リンパ肉芽腫、オウム病、及び周産期クラミジア感染症が挙げられる。病原性真核生物は、病原性原虫及び蠕虫、並びにそれによって生じる感染症を包含し、アメーバ症、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、Pneumocystis carinii、トリチャン、Toxoplasma gondii、バベシオーシス、バベシア症、ジアルジア症、旋毛虫症、フィラリア症、住血吸虫症、線虫、吸虫又はフルーク、及び条虫(サナダムシ)感染症が挙げられる。
【0084】
これらの生物及び/又はそれによって生成された毒素の多くは、疾患管理センター[(CDC)、保健福祉省、米国]によって、生物攻撃で使用される可能性がある病原体として特定されている。例えば、これらの生物学的薬剤病原体の一部には、以下が含まれる:Bacillus anthracis(炭疽病)、Clostridium botulinum及びその毒素(ボツリヌス症)、Yersinia pestis(ペスト菌)、大痘瘡(天然痘)、Francisella tularensis(野兎病)、及びウイルス性出血熱は、現在、これらの全てがカテゴリーA病原体に分類されており、Coxiella burnetti(Q熱)、Brucella種(ブルセラ症)、Burkholderia mallei(鼻疽)、Ricinus communis及びその毒素(リシン毒素)、Clostridium perfringens及びその毒素(イプシロン毒素)、Staphylococcus菌種及びその毒素(エンテロトキシンB)は、現在、これらの全てがカテゴリーB病原体に分類されており、並びに二パンウイルス及びハンタウイルスは、カテゴリーC病原体に分類されている。更に、このように分類されるか、又は分類が異なる他の生物は、将来的にかかる目的のために特定及び/又は使用され得る。本明細書に記載のウイルスベクター及び他の構築物が、これらの生物、ウイルス、それらの毒素、又は他の副産物由来の抗原を送達するのに有用であり、これらの生物学的病原体による感染又は他の有害反応を予防及び/又は治療することが容易に理解されるであろう。
【0085】
T細胞の可変領域に対して免疫原を送達するための本発明のベクターの投与は、それらのT細胞を排除するためのCTLを含む免疫応答を誘発する。関節リウマチ(RA)では、疾患に関与するT細胞受容体(TCR)のいくつかの特定の可変領域が特徴付けられている。これらのTCRには、V-3、V-14、V-17及びVα-17が含まれる。したがって、これらのポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達は、RAに関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘発するであろう。多発性硬化症(MS)では、疾患に関与するTCRのいくつかの特定の可変領域が特徴付けられている。これらのTCRには、V-7及びVα-10が含まれる。したがって、これらのポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達は、MSに関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘発するであろう。強皮症では、疾患に関与するTCRのいくつかの特定の可変領域が特徴付けられている。これらのTCRには、V-6、V-8、V-14、並びにVα-16、Vα-3C、Vα-7、Vα-14、Vα-15、Vα-16、Vα-28、及びVα-12が含まれる。したがって、これらのポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする核酸分子の送達は、強皮症に関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘発するであろう。
【0086】
一実施形態では、導入遺伝子は、光遺伝学療法を提供するように選択される。光遺伝学療法では、人工光受容体は、残りの網膜回路における生存細胞型への光活性化チャネル又はポンプの遺伝子送達によって構築される。これは、かなりの量の光受容体機能を失ってはいるが、神経節細胞及び視神経への双極細胞の回路がそのまま残っている患者に特に有用である。一実施形態では、異種核酸配列(導入遺伝子)は、オプシンである。一実施形態では、オプシンは、ロドプシン、フォトプシン、L/M波長(赤/緑)-オプシン、又は短波長(S)オプシン(青)である。別の実施形態では、オプシンは、チャネルロドプシン又はハロロドプシンである。
【0087】
別の実施形態では、導入遺伝子は、遺伝子増強療法で使用するため、すなわち、欠損している又は欠陥のある遺伝子の置換コピーを提供するために選択される。この実施形態では、導入遺伝子は、必要な置換遺伝子を提供するために、当業者によって容易に選択され得る。一実施形態では、欠損/欠陥遺伝子は、眼障害に関連する。別の実施形態では、導入遺伝子は、NYX、GRM6、TRPM1L、又はGPR179であり、眼障害は、先
天性停止性夜盲症である。例えば、Am J Hum Genet.2013 Jan 10;92(1):67-75を参照されたい。Epub 2012 Dec 13を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。別の実施形態では、導入遺伝子は、RPGRである。
【0088】
別の実施形態では、導入遺伝子は、遺伝子抑制療法における使用のために選択され、すなわち、1つ以上の天然遺伝子の発現が、転写又は翻訳のレベルで、中断又は抑制される。これは、ショートヘアピンRNA(shRNA)又は当該技術分野で周知の他の技術を使用して達成することができる。例えば、Sun et al,Int J Cancer.2010 Feb 1;126(3):764-74及びO’Reilly M,et al.Am J Hum Genet.2007 Jul;81(1):127-35を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。この実施形態では、導入遺伝子は、サイレンシングされることが望まれる遺伝子に基づいて、当業者によって容易に選択され得る。
【0089】
別の実施形態では、導入遺伝子は、2つ以上の導入遺伝子を含む。これは、2つ以上の異種配列を担持する単一のベクターを使用して、又は各々が1つ以上の異種配列を担持する2つ以上のベクターを使用して達成され得る。一実施形態では、ベクターは、遺伝子抑制(又はノックダウン)及び遺伝子増強の併用療法に使用される。ノックダウン/増強併用療法では、目的の遺伝子の欠陥コピーがサイレンシングされ、非変異コピーが供給される。一実施形態では、これは、2つ以上の同時投与ベクターを使用して達成される。Millington-Ward et al,Molecular Therapy,April 2011,19(4):642-649を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。導入遺伝子は、所望の結果に基づいて、当業者によって容易に選択され得る。
【0090】
別の実施形態では、導入遺伝子は、遺伝子修正療法での使用のために選択される。これは、例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)誘導DNA二本鎖切断を、外因性DNAドナー基質と併せて使用して達成され得る。例えば、Ellis et al,Gene Therapy(epub January 2012)20:35-42を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。導入遺伝子は、所望の結果に基づいて、当業者によって容易に選択され得る。
【0091】
特定の実施形態では、rAAVは、遺伝子編集システムで使用され得、システムは、1つのrAAV又は複数のrAAV系統の共投与を伴い得る。例えば、rAAVは、SpCas9、SaCas9、ARCUS、Cpf1(Cas12aとしても既知)、CjCas9、及び他の好適な遺伝子編集構築物を送達するように操作され得る。特定の実施形態では、rAAVベース遺伝子編集ヌクレアーゼ系が、本明細書で提供される。遺伝子編集ヌクレアーゼは、疾患関連遺伝子、すなわち、目的の遺伝子における部位を標的とする。
【0092】
別の実施形態では、本明細書で有用な導入遺伝子は、発現時に検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。かかるレポーター配列には、限定されないが、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合タンパク質(例えば、CD2、CD4、CD8を含む、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、及び当該技術分野で周知の他のもの(それらを対象とする高親和性抗体が存在するか、又は従来の手段によって産生され得るもの)、並びに融合タンパク質(中でも、ヘマグルチニン又はMyc由来の抗原タグドメインに適切に融合された膜結合タンパク質を含む)をコードするDNA配列が含まれる。
【0093】
これらのコード配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントに関連する場合、酵素、放射線、比色、蛍光又は他の分光学的アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、並びに免疫学的アッセイ(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む)を含む従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを有するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼである場合、シグナルを有するベクターは、ルミノメーターで色又は光生成によって視覚的に測定することができる。
【0094】
導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、又は触媒RNAなどの、生物学及び医学において有用な産物をコードすることが望ましい。望ましいRNA分子は、shRNA、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、及びアンチセンスRNAを含む。有用なRNA配列の一例は、処置される動物において標的の核酸配列の発現を失わせる配列である。
【0095】
タンパク質又は核酸を参照して使用される場合、「異種性」という用語は、タンパク質又は核酸が、天然では互いに同じ関係で見出されない、2つ以上の配列又は部分配列を含むことを示す。例えば、新規の機能的核酸を作製するために配置された関連のない遺伝子からの2つ以上の配列を有する核酸は、典型的に、組換えにより産生される。例えば、一実施形態では、核酸は、異なる遺伝子由来のコード配列の発現を指向するように配置された、ある遺伝子由来のプロモーターを有する。したがって、コード配列に関して、プロモーターは、異種性である。
【0096】
「外因性」という用語は、典型的には、同じ供給源ではない、すなわち、異なる細菌又はウイルス起源のものである、2つのエレメントを指すために使用される。
【0097】
本明細書では、本明細書に記載の核酸分子を含むベクター及び組換えAAVを提供する。一実施形態では、核酸分子は、ベクターゲノム内に含まれる。rAAVウイルス粒子の文脈で使用される場合、「ベクターゲノム」という用語は、rAAVカプシドにパッケージングされる核酸配列を指す。典型的には、rAAVのベクターゲノムは、約3.5kb~約5.2kb、より好ましくは約3.7kb~5kb、又は約4kb~約4.7kbである。ベクターゲノムは、ベクターにパッケージングされる核酸配列(例えば、発現カセット)の5’末端及び3’末端にAAV ITR配列を含む。
【0098】
かかる核酸配列は、AAV逆位末端反復配列(ITR)を含む。本明細書の例では、ベクターゲノムは、少なくとも、5’から3’へ、AAV 5’ITR、コード配列、及びAAV 3’ITRを含有する。特定の実施形態では、ITRは、カプシドとは異なる供給源AAVであるAAV2由来であるか、又は別の完全長ITRが選択され得る。特定の実施形態では、ITRは、産生中にrep機能を提供すAAV又はトランス相補性AAVと同じAAV供給源由来である。更に、他のITRが使用され得る。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、外部Aエレメントが欠失している、130塩基対の短縮AAV2 ITRを含む。短縮ITRは、内部Aエレメントを鋳型として使用して、ベクターDNA増幅中に145塩基対の野生型の長さに戻される。更に、ベクターゲノムは、遺伝子産物の発現を指向する誘導性遺伝子発現系を含む。ベクターゲノムの好適な成分が本明細書でより詳細に考察される。ベクターゲノムは、本明細書では「ミニ遺伝子」と称されることがある。
【0099】
本明細書で使用される場合の「組換えAAV」又は「rAAV」という用語は、天然に存在するアデノ随伴ウイルス、当業者に利用可能な、及び/又は本明細書に記載の組成物
及び方法の観点において利用可能なアデノ随伴ウイルス、並びに人工AAVを指す。アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターは、AAVタンパク質カプシドを有するAAV DNase耐性粒子であり、その中にパッケージングされる発現カセットは、標的細胞に送達するためのAAVの逆位末端反復配列(ITR)に隣接している。AAVカプシドは、60個のカプシド(cap)タンパク質サブユニット、VP1、VP2、及びVP3からなり、選択されるAAVに応じて、およそ1:1:10~1:1:20の比で二十面体対称に配置される。上述のAAVウイルスベクターのカプシドの供給源として、様々なAAVが選択されてもよい。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV9カプシド又はそのバリアントである。特定の実施形態では、カプシドタンパク質は、rAAVベクターの名称で「AAV」という用語の後の数値又は数値と文字との組み合わせによって指定される。特に明記しない限り、本明細書に記載のAAVカプシド、ITR、及び他の選択されるAAV成分は、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVhu37、AAVrh32.33、AAV8bp、AAV7M8、及びAAVAnc80、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh74、AAV-DJ8、AAV-DJ、AAVhu68として特定されているAAVを含むがこれに限定されない任意のAAVの中から容易に選択され得る。例えば、米国特許出願公開第2007-0036760-A1号、米国特許出願公開第2009-0197338-A1号、EP1310571を参照されたい。WO2003/042397(AAV7及び他のサルAAV)、米国特許第7790449号及び米国特許第7282199号(AAV8)、WO2005/033321及びUS7,906,111(AAV9)、並びにWO2006/110689、及びWO2003/042397(rh.10)、WO2005/033321、WO2018/160582(AAVhu68)も参照されたく、これらは参照により本明細書に組み込まれる。他の好適なAAVには、AAVrh90[2020年4月28日に出願された、PCT/US20/30273]、AAVrh91[2020年4月28日に出願された、PCT/US20/30266]AAVrh92、AAVrh93、AAVrh91.93[2020年4月28日に出願された、PCT/US20/30281]が含まれ得るが、これらに限定されず、これらは参照により本明細書に組み込まれる。他の好適なAAVには、2019年10月21日に出願された米国仮特許出願第62/924,112号、及び2020年5月15日に出願された米国仮特許出願第63/025,753号に記載されるAAV3Bバリアントが含まれ、そこには、AAV3B.AR2.01、AAV3B.AR2.02、AAV3B.AR2.03、AAV3B.AR2.04、AAV3B.AR2.05、AAV3B.AR2.06、AAV3B.AR2.07、AAV3B.AR2.08、AAV3B.AR2.10、AAV3B.AR2.11、AAV3B.AR2.12、AAV3B.AR2.13、AAV3B.AR2.14、AAV3B.AR2.15、AAV3B.AR2.16、又はAAV3B.AR2.17が記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。これらの文書はまた、rAAVを生成するために選択され得る他のAAVカプシドについても記載されており、参照により組み込まれる。ヒト又は非ヒト霊長類(NHP)から単離又は操作され、十分に特徴付けられたAAVのうち、ヒトAAV2は、遺伝子導入ベクターとして開発された最初のAAVであり、種々の標的組織及び動物モデルにおける効率的な遺伝子導入実験に広く使用されている。
【0100】
本明細書で使用される場合、AAVに関して、「バリアント」という用語は、既知のAAV配列に由来する任意のAAV配列を意味し、保存的アミノ酸置換を有するAAV配列、及びアミノ酸配列又は核酸配列にわたって少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%以上の配列同一性を共有するAAV配列を含む。別の実施形態では、AAVカプシドは、任意の記載の、又は既知のAAVカプシド配列から最大約10%
のバリエーションを含み得るバリアントを含む。すなわち、AAVカプシドは、本明細書に提供され、かつ/又は当該技術分野で既知のAAVカプシドと、約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性、又は約97%~約98%の同一性を共有する。一実施形態では、AAVカプシドは、AAVカプシドと少なくとも95%の同一性を共有する。AAVカプシドの同一性パーセントを決定する場合、比較は、可変タンパク質(例えば、vp1、vp2、又はvp3)のうちのいずれかにわたって行われ得る。
【0101】
「発現カセット」という用語は、導入遺伝子配列及びそのための調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリA)を含む核酸分子を指し、そのカセットは、ウイルスベクターのカプシド(例えば、ウイルス粒子)にパッケージングされ得る。典型的に、ウイルスベクターを産生するためのそのような発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルに隣接する導入遺伝子配列、及び本明細書に記載のものなどの他の発現制御配列を含む。例えば、AAVウイルスベクターの場合、パッケージングシグナルは、5’逆位末端配列(ITR)及び3’ITRである。特定の実施形態では、「導入遺伝子」という用語は、「発現カセット」と互換的に使用され得る。他の実施形態では、「導入遺伝子」という用語は、選択された遺伝子のコード配列のみを指す。
【0102】
上述のように、「約」という用語は、別段の指定がない限り、数値を修正するために使用される場合、±10%の変動を意味する。
【0103】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される場合、「含む(comprise)」、「含有する(contain)」という用語、並びに他の変形の中で「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(contain)」及び「含有する(containing)」を含むその変形は、他の成分、要素、整数、ステップなどを含む。「からなる(consists of)」又は「からなる(consisting of)」」という用語は、他の成分、要素、整数、ステップなどを除外する。
【0104】
一実施形態では、少なくとも、活性化ドメインをコードする配列と、ジンクフィンガーホメオドメイン及び1、2又は3個以上のFK506結合タンパク質ドメイン(FKBP)サブユニット遺伝子を含むDNA結合ドメインと、DNA結合ドメインのジンクフィンガーホメオドメインに対する特異的結合パートナーであるジンクフィンガーホメオドメイン結合部位の少なくとも2~約12コピーと、ラパマイシン調節発現制御配列に作動可能に連結されたミニプロモーターと、少なくとも1つの導入遺伝子と、を含むパッケージングされたベクターゲノムを有するrAAV粒子を含むrAAVストックが提供される。有効量のラパマイシン又はラパログの存在下では、トランジェン(trangene)の転写は、調節可能な方法で誘導される。
【0105】
本明細書で使用される場合、rAAVの「ストック」は、rAAVの集団を指す。脱アミド化に起因するカプシドタンパク質の不均一性にもかかわらず、ストック内のrAAVは、同一のベクターゲノムを共有することが予想される。ストックは、例えば、選択されたAAVカプシドタンパク質及び選択された産生系に特徴的な不均一な脱アミド化パターンを有するカプシドを有するrAAVを含み得る。ストックは、単一の産生系から産生されてもよく、又は産生系の複数の実行からプールされてもよい。本明細書に記載されるものを含むが、これらに限定されない様々な産生系が選択され得る。
【0106】
本明細書に記載の調節可能なプロモーター系に加えて、発現カセット及び/又はベクターは、他の適切な転写開始配列、終結配列、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mR
NAを安定化させる配列、翻訳効率を増強させる配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を増強させる配列、及び必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強させる配列を含み得る。好適なポリA配列の例には、例えば、SV40、ウシ成長ホルモン(bGH)、及びTKポリAが含まれる。好適なエンハンサーの一例としては、例えば、CMVエンハンサーが挙げられる。
【0107】
これらの制御配列は、導入遺伝子配列に「作動可能に連結されている」。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、目的の遺伝子に連続している発現制御配列、及びトランスで又は離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列の両方を指す。
【0108】
一実施形態では、自己相補性AAVが使用される。このウイルスベクターは、Δ5’ITR及びAAV3’ITRを含有し得る。別の実施形態では、一本鎖AAVウイルスベクターが提供される。対象に送達するのに好適なAAVウイルスベクターを生成し、単離するための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第7790449号、米国特許第7282199号、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、及びUS7588772B2]を参照されたい。一系では、プロデューサー細胞株は、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物、並びにrep及びcapをコードする構築物で一過性にトランスフェクトされる。第2の系では、rep及びcapを安定的に供給するパッケージング細胞株は、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物で一過性にトランスフェクトされる。これらの系の各々では、AAVビリオンは、ヘルパーアデノウイルス又はヘルペスウイルスへの感染に応答して産生され、rAAVを汚染ウイルスから分離することを必要とする。より最近では、AAVを復元するためにヘルパーウイルスへの感染を必要としない系が開発されており、必要なヘルパー機能(すなわち、アデノウイルスE1、E2a、VA、及びE4、又はヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、及びUL29、並びにヘルペスウイルスポリメラーゼ)もまた、トランスで系によって供給される。これらのより新しい系では、ヘルパー機能は、必要とされるヘルパー機能をコードする構築物での細胞の一過性トランスフェクションによって供給され得るか、又は細胞は、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定的に含有するように操作され得、その発現は、転写レベル又は転写後レベルで制御され得る。更に別の系では、ITRに隣接する導入遺伝子及びrep/cap遺伝子は、バキュロウイルス由来のベクターによる感染によって、昆虫細胞に導入される。これらの産生システムに関するレビューについては、概して、例えば、Zhang et al.,2009,“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production,”Human Gene Therapy 20:922-929を参照されたい(その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される)。これら及び他のAAV産生系を作製及び使用する方法は、以下の米国特許にも記載されており、各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:5,139,941、5,741,683、6,057,152、6,204,059、6,268,213、6,491,907、6,660,514、6,951,753、7,094,604、7,172,893、7,201,898、7,229,823、及び7,439,065。
【0109】
いくつかの好適な精製方法が選択されてもよい。好適な精製方法の例は、例えば、国際特許公開第2017/100674号(AAV1)、同第2017/100676号(AAV8)、同第2017/100704号(AAVrh10)、及び同第2017/160360号(AAV9)に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
本明細書に記載の誘導性遺伝子発現系を含む核酸分子は、活性化ドメインとDNA結合ドメインとの間に位置する少なくとも1つの内部リボソーム結合部位、すなわち、IRESを含有し得る。代替的に、活性化ドメイン及びDNA結合ドメインは、フリン-2a自己切断ペプチドリンカーによって分離され得る[例えば、Radcliffe and Mitrophanous,Gene Therapy(2004),11,1673-1674を参照されたい]。
【0111】
一実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号14(又はnt184~4065)のもの、又はそれと少なくとも90%を共有する配列を含み、例示的なrhEPOのコード配列(nt4106~4684)は、目的の所望の導入遺伝子のコード配列で置き換えられる。一実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号22(又はnt184~3907)のもの、又はそれと少なくとも90%を共有する配列を含み、例示的なrhEPOのコード配列(nt4067~4645)は、目的の所望の導入遺伝子のコード配列で置き換えられる。
【0112】
別の態様では、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21のうちの1つ以上を含む融合タンパク質が、提供される。配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21のうちの1つ以上を含む融合タンパク質をコードする核酸も提供される。当該核酸を包含する組換えAAVもまた提供される。
【0113】
別の態様では、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、及び配列番号29のうちの1つ以上を含む融合タンパク質が、提供される。配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、及び配列番号29のうちの1つ以上を含む融合タンパク質をコードする核酸も提供される。当該核酸を包含する組換えAAVもまた提供される。
【0114】
使用及びレジメン
好適には、一実施形態では、組成物は、導入遺伝子産物及び選択された細胞におけるその導入遺伝子産物の発現を指向する調節配列をコードする核酸発現カセットを担持するAAVベクターを投与するように設計される。
【0115】
ベクターの投与後、誘導剤を使用して、インビボでの導入遺伝子産物構築物の発現を誘導する。一実施形態では、導入遺伝子発現レベルは、制御された投薬量の導入遺伝子産物を提供するように投与された誘導剤の用量によって用量依存的に制御され得る。
【0116】
組成物は、各ベクターストックが約1×10ゲノムコピー(GC)~約5×1013GCの量で存在するように(体重約4kgの平均的なネコ対象、又は約20kgの平均的なイヌ対象を治療するため)、2つ以上のrAAVを含有する投薬量単位で製剤化され得る。一例では、ベクター濃度は、約3x10GCであるが、約1x10GC、約3x10GC、約1x1010GC、約3x1010GC、約1x1011GC、約3X1011GC、約1x1012GC、約3X1012GC、約1.0x1013GC又は約3.0x1013GCなどの他の量である。これらのベクターの好適な濃度は、所望の体積の液体懸濁剤(例えば、送達経路に応じて、約250μL~100mL、又はそれよりも多い若しくは少ない範囲に基づいて容易に決定され得る。例えば、範囲の終わり、又は更に少ない体積は、鼻腔内送達に適している可能性があるが、他の経路(例えば、全身送達)は、より多い体積を使用してもよい。
【0117】
AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)の定量化を、製剤中に含有される用量の尺度として使用し得る。当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、本発
明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定することができる。AAVのGC数滴定を行うための1つの方法は、以下の通りである。精製されたAAVベクター試料は、まずDNaseで処理され、非カプシド化AAVゲノムDNA又は産生プロセスからの汚染プラスミドDNAを排除する。次いで、ヌクレアーゼ耐性粒子を熱処理に供して、カプシドからゲノムを放出させる。次に、ウイルスゲノムの特定の領域(通常はポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブセットを使用したリアルタイムPCRによって、放出されたゲノムを定量化する。ゲノムコピーを決定するための別の好適な方法は、定量的PCR(qPCR)、特に最適化されたqPCR又はデジタル液滴PCRである[Lock Martin,et al,Human Gene Therapy Methods.April 2014,25(2):115-125.doi:10.1089/hgtb.2013.131、2013年12月13日の編集前にオンラインで公開]。
【0118】
好ましくは、生理学的に適合性のある担体に懸濁されたrAAVは、非ヒト哺乳動物患者、好ましくはイヌ又はネコに投与され得る。好適な担体は、導入ウイルスが指向される適応症の観点で、当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの好適な担体は、生理食塩水を含み、様々な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)とともに製剤化され得る。他の例示的な担体としては、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、マルトース、及び水が挙げられる。担体の選択は、本発明の制限ではない。任意選択で、本発明の組成物は、rAAV及び担体に加えて、防腐剤又は化学的安定剤などの他の従来の医薬成分を含み得る。
【0119】
例えば、全身、静脈内、腹腔内、皮下、髄腔内、眼内(例えば、硝子体内)、又は筋肉内投与を含む、ベクター組成物のための任意の好適な投与経路を選択し得る。一実施形態では、筋肉内投与が利用される。
【0120】
「二量体化剤」という用語は、ドメイン融合タンパク質の二量体化剤結合ドメインに結合し、融合タンパク質の二量体化を誘導し得る化合物(例えば、「薬理学的薬剤」とも称される小分子)を指す。本明細書に記載される構築物では、ラパマイシン又はラパログは、好ましい二量体化剤である。インビトロでアッセイされるように、転写因子のドメインを二量体化する任意の薬理学的薬剤を使用することができる。「ラパログ」と称される好適なラパマイシン及びその類似体の例は、本明細書の前半で特定されている。以下に記載される二量体化剤のうちのいずれかが使用され得る。米国公開第2002/0173474号、米国公開第2009/0100535号、米国特許第5,834,266号、米国特許第7,109,317号、米国特許第7,485,441号、米国特許第5,830,462号、米国特許第5,869,337号、米国特許第5,871,753号、米国特許第6,011,018号、米国特許第6,043,082号、米国特許第6,046,047号、米国特許第6,063,625号、米国特許第6,140,120号、米国特許第6,165,787号、米国特許第6,972,193号、米国特許第6,326,166号、米国特許第7,008,780号、米国特許第6,133,456号、米国特許第6,150,527号、米国特許第6,506,379号、米国特許第6,258,823号、米国特許第6,693,189号、米国特許第6,127,521号、米国特許第6,150,137号、米国特許第6,464,974号、米国特許第6,509,152号、米国特許第6,015,709号、米国特許第6,117,680号、米国特許第6,479,653号、米国特許第6,187,757号、米国特許第6,649,595号、米国特許第6,984,635号、米国特許第7,067,526号、米国特許第7,196,192号、米国特許第6,476,200号、米国特許第6,492,106号、WO94118347、WO96/20951、WO96/06097、WO97/31898、WO96/41865、WO98/02441、WO95/33052、WO99/10508、WO99/10510、WO99/36553、WO99
/41258、WO01114387、ARGENT(商標)Regulated Transcription Retrovirus Kit、Version 2.0(9109/02)、及びARGENT(商標)Regulated Transcription Plasmid Kit、Version 2.0(9/09/02)、これらの各々は、その全体が参照に本明細書に組み込まれる。
【0121】
一実施形態では、本発明の二量体化剤を含む医薬組成物の量は、約0.1~5マイクログラム(μg)/キログラム(kg)の範囲で投与される。この目的のために、本発明の二量体化剤を含む医薬組成物は、平均的な対象を治療するための治療をするために、約0.1mg~約350mgの範囲の用量で製剤化される。投与される本発明の二量体化剤を含む医薬組成物の量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10mg/kgである。製剤中の二量体化剤の用量は、7、8、9、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85 90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、又は750mgである(体重約4kgの平均的なネコ対象、又は体重約20kgの平均的なイヌを治療するために)。これらの用量は、好ましくは経口投与される。これらの用量は、1回又は毎日、隔日、毎週、隔週、若しくは毎月などの繰り返しで、投与され得る。好ましくは、医薬組成物は、約4~6週間の期間、週に1回投与される。いくつかの実施形態では、二量体化剤を含む医薬組成物は、1回の用量、又は2回の用量、又は3回の用量、又は4回の用量、又は5回の用量、又は6回以上の用量で対象に投与される。投薬量間の間隔は、例えば、導入遺伝子の発現によって引き起こされる症状、例えば、毒性を改善するために、導入遺伝子の発現の阻害の必要性があるという医師の決定に基づいて決定され得る。例えば、導入遺伝子アブレーションの必要性が急性であるいくつかの実施形態では、二量体化剤を含む医薬組成物の1日の投薬量が投与され得る。例えば、導入遺伝子アブレーションの必要性がそれほど急性でないか、又は急性ではない他の実施形態では、二量体化剤を含む医薬組成物の毎週の投薬量が投与され得る。
【0122】
本明細書に記載されるように使用するための医薬組成物は、懸濁剤及び希釈剤を含み得る1つ以上の生理学的に許容される担体又は賦形剤を使用して、従来の方法で製剤化され得る。二量体化剤並びにそれらの生理学的に許容される塩及び溶媒和物は、(口又は鼻のいずれかによる)吸入又は送気、経口、頬側、非経口、直腸、又は経皮投与によって投与のために製剤化され得る。非侵襲的な投与方法も企図される。
【0123】
経口投与の場合、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム)、又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤とともに、従来の手段によって調製される錠剤又はカプセル剤の形態をとり得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングされてもよい。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとり得るか、又はそれらは、使用前に水又は他の好適なビヒクルでの構成のための乾燥産物として提供され得る。かかる液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分画された植物油)、及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸又はソ
ルビン酸)などの薬学的に許容される添加剤とともに従来の手段によって調製され得る。調製物はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤及び甘味剤を含み得る。経口投与のための調製物は、二量体化剤の制御された放出をもたらすように好適に製剤化され得る。
【0124】
別の実施形態では、ラパマイシン(ラパログ)は、経皮パッチを介して送達される。かかる経皮パッチは、1日~数ヶ月間、及びその間の期間に適用され得る。
【0125】
頬側投与の場合、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤又はロゼンジの形態をとり得る。
【0126】
吸入による投与の場合、本発明による使用のための二量体化剤は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガスを使用して、加圧パック又は噴霧器からエアゾールスプレー提示の形態で好都合に送達される。加圧エアロゾールの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器又は注入器で使用するための、例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジは、二量体化剤と、ラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基材との粉末混合物を含有するように製剤化され得る。
【0127】
二量体化剤は、注射、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために製剤化され得る。注射のための製剤は、単位剤形で、例えば、添加された防腐剤とともに、アンプル中又は複数回用量容器中で提供され得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションなどの形態をとり得、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有し得る。あるいは、有効成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌の発熱物質を含まない水で構成するための粉末形態であり得る。
【0128】
二量体化剤は、例えば、ココアバター又は他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含有する坐薬又は保持浣腸剤などの直腸組成物中に製剤化され得る。
【0129】
前述の製剤に加えて、二量体化剤はまた、デポー調製物として製剤化され得る。かかる長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によって、又は筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、二量体化剤は、好適な高分子若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)若しくはイオン交換樹脂とともに、又は例えば、難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化され得る。
【0130】
組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得るパック又はディスペンサー装置において提供され得る。パックは、例えば、金属箔又はプラスチック箔、例えば、ブリスターパックを含んでもよい。パック又はディスペンサー装置は、投与のための説明書を伴ってもよい。
【0131】
また、本発明の二量体化剤と組み合わせた、又はそれと混合したアジュバントの使用も包含される。企図されるアジュバントとしては、ミネラル塩アジュバント又はミネラル塩ゲルアジュバント、粒子アジュバント、微粒子アジュバント、粘膜アジュバント、及び免疫刺激アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。アジュバントは、本発明の二量体化剤との混合物として対象に投与され得るか、又は本発明の二量体化剤と組み合わせて使用され得る。
【0132】
別の実施形態では、組成物は、イヌ又はネコ患者に対して、約1.0×10ゲノムコピー(GC)/キログラム(kg)~約3.0×1013GC/kg、好ましくは1.0
×1010GC/kg~3.0×1013GC/kgの量でrAAVを含有し得る。好ましくは、各rAAVは、約1.0×10GC/kg、5.0×10GC/kg、1.0×10GC/kg、5.0×10GC/kg、1.0×1010GC/kg、5.0×1010GC/kg、1.0×1011GC/kg、5.0×1011GC/kg、又は1.0×1012GC/kg、5.0×1012GC/kg、1.0×1013GC/kg、3.0×1013GC/kg、1.0×1014GC/kgの量で投与される。一実施形態では、rAAVは、約3.0×1011GC/kgの量で投与される。一実施形態では、rAAVは、約3.0×1010GC/kgの量で投与される。一実施形態では、rAAVは、約3.0×10GC/kgの量で投与される。一実施形態では、rAAVは、約3.0×10GC/kgの量で投与される。
【0133】
これらの用量は、1回又は毎日、隔日、毎週、隔週、若しくは毎月などの繰り返しで、又は患者において適切な導入遺伝子発現が検出されるまで、投与され得る。一実施形態では、複製欠損ウイルス組成物は、約4~6週間の期間、週に1回投与され、投与方法又は投与部位は、好ましくは、各投与で変化する。繰り返しの注射は、導入遺伝子発現の完全なアブレーションに必要である可能性が最も高い。1回以上の注射のギャップ後に、同じ部位が繰り返されてもよい。また、分割注射も投与され得る。したがって、例えば、半分の用量は、ある部位で、残りの半分は、同じ日に別の部位で投与され得る。
【0134】
一実施形態では、rAAV組成物は、約3.0×1012GC/kgの用量で、例えば、門脈の腸間膜支流の注射によって、肝臓を介して全身的に送達され得る。別の実施形態では、rAAV組成物は、約1.0×1010GC/kg~約3.0×1013GC/kgの用量で、例えば、大腿四頭筋又は二頭筋のいずれかに、最大20回の筋肉内注射によって、筋肉を介して全身に送達され得る。別の実施形態では、rAAV組成物は、頭蓋内に、例えば、マイネルト(NBM)の基底核を含有する脳の基底前脳領域に、両側の定位注射によって、約5.0×1011GC/kgの用量で送達され得る。別の実施形態では、rAAV組成物は、約1.0×1011GC/kg~約5.0×1011GC/kgの範囲の用量で、両側被殻内及び/又は黒質内注射によって、CNSに髄腔内送達され得る。別の実施形態では、rAAVは、関節に、例えば、関節内注射によって、炎症性関節炎の治療のために約1.0×1011GC/mLの関節体積の用量で送達され得る。別の実施形態では、rAAVは、心臓に、例えば、冠動脈内注射によって、約1.4×1011GC/kg~約3.0×1012GC/kgの範囲の用量で送達され得る。別の実施形態では、rAAV組成物は、例えば、約1.5×1010GC/kgの用量で網膜下腔に注射することによって、網膜に送達され得る。この情報を考慮して、これらの組織及び器官への他の送達手段及び他の用量は、当業者によって決定され得る。
【0135】
一態様では、本発明は、構成的又は組織特異的プロモーターの制御下にある転写因子を有するrAAVベクターを投与することによって、薬理学的に活性な治療用産物の用量を調節するための方法を提供する。
【0136】
以下の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0137】
実施例1:インビトロ発現
HEK293細胞を、アカゲザルEpo(rhEpo)を発現するhTF.rhEpo.3w.rBG(ヒト誘導性カセット)、cTF.rhEpo.3w.rBG(イヌ誘導性カセット)、又はfTF.rhEpo.3w.rBG(ネコ誘導性カセット)でトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、細胞を0nM、4nM、及び40nMのラパマイシンで処理した。培養上清を回収し、ラパマイシン処理の48時間後にrhE
poを測定した。図3は、ネコ及びイヌ誘導性構築物についてのrhEPOの用量依存的発現を示す。
【0138】
(配列表フリーテキスト)
以下の情報は、数値識別子<223>の下でフリーテキストを含む配列を提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0139】
本明細書において引用される全ての刊行物は、「20-9294PCT_Seq-Listing_ST25.txt」とラベル付けされた配列表と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。また、2020年7月27日に出願された米国仮特許出願第63/056,985号も参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されよう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023536827000001.app
【国際調査報告】