(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ワクチン接種を改善するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230823BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/20 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/25 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/27 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/28 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/21 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/22 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/23 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/44 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/49 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/48 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230823BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20230823BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230823BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230823BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230823BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230823BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230823BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20230823BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230823BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230823BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230823BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230823BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230823BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20230823BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20230823BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230823BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230823BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20230823BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20230823BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230823BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230823BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/33
C12N15/31
C12N15/12
C12N15/20
C12N15/24
C12N15/25
C12N15/26
C12N15/27
C12N15/28
C12N15/21
C12N15/22
C12N15/23
C12N15/50
C12N15/44
C12N15/49
C12N15/48
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
A61K31/7105
A61K48/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P37/04
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/00 K
A61P31/10
A61P31/04
A61K35/76
A61K39/145
A61K39/215
A61P31/16
A61P31/18
A61K39/21
A61P31/06
A61K9/127
A61K35/761
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505988
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 US2021043975
(87)【国際公開番号】W WO2022035621
(87)【国際公開日】2022-02-17
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/019028
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520079913
【氏名又は名称】コンバインド セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Combined Therapeutics, Inc.
【住所又は居所原語表記】251 Little Falls Drive, Wilmington, Delaware 19808, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミコル,ロメイン
(72)【発明者】
【氏名】デュバル,ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA93
4C076BB11
4C076BB22
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C084AA13
4C084MA24
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB051
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4C084ZB092
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4C084ZB312
4C084ZB331
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4C084ZB351
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4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA03
4C085BA07
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4C085BA51
4C085BA55
4C085BA69
4C085BA71
4C085BB01
4C085CC07
4C085CC08
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG10
4C086AA01
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4C086ZB09
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4C086ZC75
4C087AA01
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4C087CA12
4C087MA24
4C087MA57
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4C087ZB05
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4C087ZB31
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC75
(57)【要約】
第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む第1のmRNAコンストラクトを含む組成物が提供され、第1のORFは抗原をコードし、第1のORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは少なくとも第1の器官保護配列(OPS)を含み、第1のOPSは少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている。ORFおよびOPSを含むmRNAコンストラクトを含むさらなる組成物であって、ORFが炎症性サイトカインをコードする、さらなる組成物、ならびにたとえば病原性疾患などの疾患の処置および予防のためのこれらの組成物の一方または両方を含む方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む第1のmRNAコンストラクトを含む組成物であって、前記第1のORFが抗原をコードし、
前記第1のORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが少なくとも第1の器官保護配列(OPS)を含み、前記第1のOPSが少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、組成物。
【請求項2】
前記第1のmRNAコンストラクトが、インビボ送達組成物内に含まれるか、または前記インビボ送達組成物に吸着される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗原が、病原性微生物タンパク質および腫瘍関連抗原、またはそのエピトープ含有フラグメントからなる群より選択される、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記病原性微生物タンパク質が、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、寄生体タンパク質、およびプリオンからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
第2のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む第2のmRNAコンストラクトをさらに含み、前記第2のORFが炎症性サイトカインをコードする、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記炎症性サイトカインが、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、およびGM-CSFからなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2のmRNAコンストラクトが、送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2のORFが、IL-12タンパク質、またはそのサブユニット、誘導体、フラグメント、アゴニスト、もしくはホモログをコードする、請求項5~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記第2のORFが、配列番号59と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のORFが第2の非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが第2の器官保護配列(OPS)を含み、前記第2のOPSが少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含む、請求項5~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも2つのmiRNA標的配列が、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のOPSが、前記第2のOPSに対して少なくとも1つの異なるmiRNA標的配列を含む、請求項10または請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のOPSおよび前記第2のOPSが、同じmiRNA標的配列を含む、請求項10または請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含む送達組成物を含む、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記第1のOPSが、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのmiRNA標的配列を含む、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記第1のOPSが、すべてが互いに異なる少なくとも3つのmiRNA標的配列を含む、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記第1のOPSが、筋肉、肝臓、脳、乳房、内皮、膵臓、結腸、腎臓、肺、脾臓、および皮膚、心臓、胃腸器官、生殖器、および食道からなる群より選択される1つ以上の器官または組織を保護するように選択されたmiRNA配列を含む、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記第1のOPSが、miRNA-122、miRNA-125、miRNA-199、miRNA-124a、miRNA-126、miRNA-98、Let7 miRNAファミリー、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-142、miRNA-148a/b、miRNA-143、miRNA-145、miRNA-194、miRNA-200c、miRNA-203a、miRNA-205、miRNA-1、miRNA-133a、miRNA-206、miRNA-34a、miRNA-192、miRNA-194、miRNA-204、miRNA-215、miRNA-30ファミリー、miRNA-877、miRNA-4300、miRNA-4720、および/またはmiRNA-6761に結合する1つ以上の配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項1~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記第1のOPSが、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、皮膚、心臓、胃腸器官、生殖器、および食道からなる群より選択される1つ以上の器官を保護するように選択されたmiRNA配列を含む、請求項1~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記第1のOPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/またはmiRNA-192と結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項1~19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記第1のOPSが、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含む、請求項1~20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記第1のOPSが、miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/またはlet7a/bと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項1~21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記第1のOPSが、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/またはmiR-203aと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項1~22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記第1のOPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記第1のOPSが、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項1~24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記第1のOPSが、let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項1~25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
前記第1のOPSが、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項1~26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
前記第1のOPSが、miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できるmiRNA標的配列、ならびにmiRNA122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含む、請求項1~27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
前記抗原が、ウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項1~28のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
前記抗原がコロナウイルススパイクタンパク質を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記抗原が変異体コロナウイルススパイクタンパク質を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記コロナウイルススパイクタンパク質がSARS-CoV-2スパイクタンパク質である、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗原が、インフルエンザタンパク質もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
前記インフルエンザタンパク質がヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリックス-2、および/または核タンパク質からなる群より選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記インフルエンザタンパク質が、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、またはA型インフルエンザのサブタイプのH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、もしくはH16から選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
前記抗原が、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)タンパク質、もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項37】
前記呼吸器合胞体ウイルスの前記タンパク質がF糖タンパク質またはG糖タンパク質である、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記抗原が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項39】
前記HIVタンパク質が、糖タンパク質120中和エピトープまたは糖タンパク質145である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記抗原が、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項1~28のいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来の前記タンパク質が、ESAT-6、Ag85B、TB10.4、Rv2626、および/またはRpfD-Bから選択される、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記抗原が、結腸直腸腫瘍抗原を含む腫瘍関連抗原である、請求項1~28のいずれかに記載の組成物。
【請求項43】
前記抗原が、MUC1である腫瘍関連抗原である、請求項1~28のいずれかに記載の組成物。
【請求項44】
前記抗原が、ネオ抗原である腫瘍関連抗原である、請求項1~28のいずれかに記載の組成物。
【請求項45】
前記第1のmRNAコンストラクトが第2のオープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含み、前記第2のORFがIFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードする、請求項1~4または14~44のいずれかに記載の組成物。
【請求項46】
前記第1のmRNAコンストラクトが、さらなるオープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含み、前記さらなるORFが、前記第1のORFによってコードされる前記抗原とは異なる抗原をコードする、請求項1~44のいずれかに記載の組成物。
【請求項47】
前記さらなるORFによってコードされる前記抗原が、細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、もしくは腫瘍関連抗原、またはそのエピトープ含有フラグメントから選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記第2のOPSが、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのmiRNA標的配列を含む、請求項10~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項49】
前記第2のOPSが、すべてが互いに異なる少なくとも3つのmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48のいずれかに記載の組成物。
【請求項50】
前記第2のOPSが、筋肉、肝臓、脳、乳房、内皮、膵臓、結腸、腎臓、肺、脾臓、および皮膚からなる群より選択される1つ以上の器官または組織を保護するように選択されたmiRNA配列を含む、請求項10~13または48~49のいずれかに記載の組成物。
【請求項51】
前記第2のOPSが、miRNA-122、miRNA-125、miRNA-199、miRNA-124a、miRNA-126、miRNA-98、Let7 miRNAファミリー、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-142、miRNA-148a/b、miRNA-143、miRNA-145、miRNA-194、miRNA-200c、miRNA-203a、miRNA-205、miRNA-1、miRNA-133a、miRNA-206、miRNA-34a、miRNA-192、miRNA-194、miRNA-204、miRNA-215、miRNA-30ファミリー、miRNA-877、miRNA-4300、miRNA-4720、およびmiRNA-6761と結合できる1つ以上の配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~50のいずれかに記載の組成物。
【請求項52】
前記第2のOPSが、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、皮膚、心臓、胃腸器官、生殖器、および食道からなる群より選択される1つ以上の器官を保護するように選択されたmiRNA配列を含む、請求項10~13または48~51のいずれかに記載の組成物。
【請求項53】
前記第2のOPSが、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含む、請求項10~13または48~52のいずれかに記載の組成物。
【請求項54】
前記第2のOPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/またはmiRNA-192と結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~53のいずれかに記載の組成物。
【請求項55】
前記第2のOPSが、miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/またはlet7a/bと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~54のいずれかに記載の組成物。
【請求項56】
前記第2のOPSが、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/またはmiR-203aと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~55のいずれかに記載の組成物。
【請求項57】
前記第2のOPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~56のいずれかに記載の組成物。
【請求項58】
前記第2のOPSが、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~57のいずれかに記載の組成物。
【請求項59】
前記第2のOPSが、let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~58のいずれかに記載の組成物。
【請求項60】
前記第2のOPSが、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~59のいずれかに記載の組成物。
【請求項61】
前記第2のOPSが、miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できるmiRNA標的配列、ならびにmiRNA-122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~60のいずれかに記載の組成物。
【請求項62】
前記第1のOPSが、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/またはmiR-203aと結合できるmiRNA標的配列を含み、
前記第2のOPSが、miRNA-122、miRNA-126、miRNA-192、および/またはmiRNA30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項10~13または48~61のいずれかに記載の組成物。
【請求項63】
少なくとも第3のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第3のmRNAコンストラクトをさらに含み、前記第3のORFが、前記第1のORFによってコードされる前記抗原とは異なる抗原をコードし、前記抗原が細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、もしくは腫瘍関連抗原、またはそのエピトープ含有フラグメントから選択される、請求項1~62のいずれかに記載の組成物。
【請求項64】
前記第3のORFが少なくとも第3の非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが少なくとも第3の器官保護配列(OPS)を含み、前記第3のOPSが複数の器官を保護し、前記第3のOPSが少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記第1のORFが、コロナウイルススパイクタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントをコードし、前記第3のORFが、インフルエンザタンパク質またはその変異体の全部または一部を含むウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントをコードする、請求項63または64に記載の組成物。
【請求項66】
前記組成物が、静脈内、皮下、筋肉内、鼻腔内、動脈内、および/または吸入による投与に好適である、請求項1~65のいずれかに記載の組成物。
【請求項67】
病原性疾患の予防または処置の方法における使用のための、請求項1~66のいずれかに記載の組成物。
【請求項68】
前記方法が、前記組成物を必要とする対象に投与することを含む、請求項67に記載の使用のための組成物。
【請求項69】
前記病原性疾患がコロナウイルスによって引き起こされる、請求項67または68に記載の使用のための組成物。
【請求項70】
前記病原性疾患が前記SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる、請求項69に記載の使用のための組成物。
【請求項71】
請求項8または9のいずれかに記載の組成物を必要とする対象に投与することを含む、Th1免疫応答を増加させる方法。
【請求項72】
少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトであって、前記第1のORFが、細菌タンパク質および/またはウイルスタンパク質から選択される抗原をコードする、少なくとも第1のmRNAコンストラクトと、
少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第2のmRNAコンストラクトを含む第2のコンストラクトであって、前記ORFがIFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードし、前記第2のORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、前記OPSが少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、第2のコンストラクト
と、
インビボ送達組成物とを含む組成物であって、
前記第1および第2のコンストラクトが、前記送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、組成物。
【請求項73】
前記ORFが、IL-12タンパク質、またはその誘導体、アゴニスト、もしくはホモログをコードする、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
前記送達組成物が、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含む、請求項72または73に記載の組成物。
【請求項75】
前記OPSが、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、および皮膚からなる群より選択される1つ以上の器官を保護するように選択されたmiRNA配列を含む、請求項72~74のいずれかに記載の組成物。
【請求項76】
前記OPSが、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含む、請求項72~75のいずれかに記載の組成物。
【請求項77】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/またはmiRNA-192と結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項72~76のいずれかに記載の組成物。
【請求項78】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/またはlet7a/bと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項72~77のいずれかに記載の組成物。
【請求項79】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/またはmiR-203aと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項72~78のいずれかに記載の組成物。
【請求項80】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項72~79のいずれかに記載の組成物。
【請求項81】
前記OPSが、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項72~80のいずれかに記載の組成物。
【請求項82】
前記OPSが、let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項72~81のいずれかに記載の組成物。
【請求項83】
前記OPSが、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項72~82のいずれかに記載の組成物。
【請求項84】
前記OPSが、miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できるmiRNA標的配列、ならびにmiRNA-122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含む、請求項72~83のいずれかに記載の組成物。
【請求項85】
前記抗原が、ウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項72~84のいずれかに記載の組成物。
【請求項86】
前記抗原がコロナウイルススパイクタンパク質を含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項87】
前記抗原が変異体コロナウイルススパイクタンパク質を含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項88】
前記コロナウイルススパイクタンパク質がSARS-CoV-2スパイクタンパク質である、請求項86または87に記載の組成物。
【請求項89】
前記抗原が、インフルエンザタンパク質もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項90】
前記インフルエンザタンパク質がヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリックス-2、および/または核タンパク質からなる群より選択される、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
前記インフルエンザタンパク質が、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、またはA型インフルエンザのサブタイプのH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、もしくはH16から選択される、請求項89に記載の組成物。
【請求項92】
前記抗原が、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)タンパク質、もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項93】
前記呼吸器合胞体ウイルスの前記タンパク質がF糖タンパク質またはG糖タンパク質である、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
前記抗原が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項85に記載の組成物。
【請求項95】
前記HIVタンパク質が、糖タンパク質120中和エピトープまたは糖タンパク質145である、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
前記抗原が、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項72~84のいずれかに記載の組成物。
【請求項97】
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来の前記タンパク質が、ESAT-6、Ag85B、TB10.4、Rv2626、および/またはRpfD-Bから選択される、請求項96に記載の組成物。
【請求項98】
病原性疾患の予防方法における使用のための、請求項72~96のいずれかに記載の組成物。
【請求項99】
請求項73に記載の組成物を必要とする対象に投与することを含む、Th1免疫応答を増加させる方法。
【請求項100】
少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトであって、
前記少なくとも1つのORFがIL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードし、前記ORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、前記OPSが少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、少なくとも1つのmRNAコンストラクトと、インビボ送達組成物と、を含む組成物であって、
前記mRNAコンストラクトが前記送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、組成物。
【請求項101】
前記ORFが、IL-12タンパク質、またはその誘導体、アゴニスト、もしくはホモログをコードする、請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
前記送達組成物が、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含む、請求項100または101に記載の組成物。
【請求項103】
前記OPSが、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、および皮膚からなる群より選択される1つ以上の器官を保護するように選択されたmiRNA配列を含む、請求項100~102のいずれかに記載の組成物。
【請求項104】
前記OPSが、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含む、請求項100~104のいずれかに記載の組成物。
【請求項105】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/またはmiRNA-192と結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項100~104のいずれかに記載の組成物。
【請求項106】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/またはlet7a/bと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項100~105のいずれかに記載の組成物。
【請求項107】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/またはmiR-203aと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む、請求項100~106のいずれかに記載の組成物。
【請求項108】
前記OPSが、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項107に記載の組成物。
【請求項109】
前記OPSが、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項100~108のいずれかに記載の組成物。
【請求項110】
前記OPSが、let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項100~109のいずれかに記載の組成物。
【請求項111】
前記OPSが、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できるmiRNA標的配列を含む、請求項100~110のいずれかに記載の組成物。
【請求項112】
前記OPSが、miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できるmiRNA標的配列、ならびにmiRNA-122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含む、請求項100~111のいずれかに記載の組成物。
【請求項113】
病原性疾患の予防方法における使用のための、請求項100~112のいずれかに記載の組成物であって、前記方法が、
前記組成物を必要とする対象に投与することと、
前記対象にワクチン組成物を同時投与することと、を含む、請求項100~112のいずれかに記載の組成物。
【請求項114】
請求項101に記載の組成物を必要とする対象に投与することを含む、Th1免疫応答を増加させる方法。
【請求項115】
請求項100~112のいずれかに記載の組成物と、
トキソイドワクチン、組み換えワクチン、コンジュゲートワクチン、RNAベースのワクチン、DNAベースのワクチン、生弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、組み換えベクターベースのワクチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるワクチンと、を含む、組成物。
【請求項116】
1つ以上の病原性疾患を処置もしくは予防するか、または免疫応答を改善する方法であって、前記方法が、
少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトであって、前記第1のORFが、細菌タンパク質、もしくはウイルスタンパク質、またはそのエピトープ含有フラグメントから選択される抗原をコードし、前記第1のORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが少なくとも第1の器官保護配列(OPS)を含み、前記OPSが複数の器官を保護し、前記第1のOPSが少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、少なくとも第1のmRNAコンストラクトと、インビボ送達組成物と、を含む組成物を、必要とする対象に投与することを含み、
前記mRNAコンストラクトが前記送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、方法。
【請求項117】
少なくとも第2のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトを含む組成物を前記対象に同時投与することをさらに含み、前記第2のORFが、IL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードする、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記第2のORFが、IL-12タンパク質、またはその誘導体、アゴニスト、もしくはホモログをコードする、請求項116または請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記第2のORFが、配列番号59と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項116~118のいずれかに記載の方法。
【請求項120】
前記第2のORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが複数の器官を保護する少なくとも第2のOPSを含み、前記第2のOPSが少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、請求項116~119のいずれかに記載の方法。
【請求項121】
前記第1のOPSが、前記第2のOPSに対してmiRNA標的配列の異なるセットを含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記第1のOPSおよび前記第2のOPSが同じmiRNA標的配列を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項123】
前記送達組成物が、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含む、請求項116~122のいずれかに記載の方法。
【請求項124】
前記病原性疾患がコロナウイルスによって引き起こされる、請求項116~123のいずれかに記載の方法。
【請求項125】
前記病原性疾患がSARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記抗原が、コロナウイルススパイクタンパク質の全部または一部を含むウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項124または125に記載の方法。
【請求項127】
前記抗原が、変異体コロナウイルススパイクタンパク質の全部または一部を含むウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含む、請求項124または125に記載の方法。
【請求項128】
前記コロナウイルススパイクタンパク質がSARS-CoV-2スパイクタンパク質である、請求項126または127に記載の方法。
【請求項129】
前記第1のmRNAコンストラクトが、さらなるオープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含み、前記さらなるORFが、前記第1のORFによってコードされる前記抗原とは異なる抗原をコードする、請求項116~128のいずれかに記載の方法。
【請求項130】
少なくとも第3のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む第3のmRNAコンストラクトを前記対象に同時投与することをさらに含み、前記第3のORFが、前記第1のORFによってコードされる前記抗原とは異なる抗原をコードする、請求項116~128のいずれかに記載の方法。
【請求項131】
1つ以上の病原性疾患を予防するか、または免疫応答を改善する方法であって、前記方法が、
ワクチン組成物を必要とする対象に投与することと、
少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトであって、前記少なくとも1つのORFがIL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードし、前記ORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、前記OPSが少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、少なくとも1つのmRNAコンストラクトと;インビボ送達組成物であって、前記mRNAコンストラクトが前記送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、インビボ送達組成物とを含むアジュバント組成物を、前記対象に同時投与することとを含む、方法。
【請求項132】
前記ワクチン組成物が、トキソイドワクチン、組み換えワクチン、コンジュゲートワクチン、RNAベースのワクチン、DNAベースのワクチン、生弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、組み換えベクターベースのワクチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記ワクチン組成物が、少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトであって、前記第1のORFが、細菌タンパク質またはその一部、ウイルスタンパク質またはその一部、およびネオ抗原またはその一部から選択される抗原をコードする、第1のmRNAコンストラクトと、インビボ送達組成物とを含み、前記mRNAコンストラクトが、前記送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、請求項131または132に記載の方法。
【請求項134】
同時投与することが、前記ワクチン組成物および前記アジュバント組成物を同時に、またはいずれかの順序で連続して投与することを含む、請求項117~133のいずれかに記載の方法。
【請求項135】
前記ワクチン組成物および/または前記アジュバント組成物が、静脈内、皮下、筋肉内、鼻腔内、動脈内、および/または吸入によって投与される、請求項116~134のいずれかに記載の方法。
【請求項136】
前記病原性疾患が細胞内病原体によって引き起こされる、請求項116~135のいずれかに記載の方法。
【請求項137】
前記病原性疾患が潜伏性感染症である、請求項116~136のいずれかに記載の方法。
【請求項138】
前記病原性疾患が活動性感染症である、請求項116~136のいずれかに記載の方法。
【請求項139】
前記病原性疾患がインフルエンザウイルスによって引き起こされる、請求項116~135のいずれかに記載の方法。
【請求項140】
前記病原性疾患がコロナウイルスによって引き起こされる、請求項116~135のいずれかに記載の方法。
【請求項141】
前記病原性疾患がSARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記病原性疾患が呼吸器合胞体ウイルス(RSV)によって引き起こされる、請求項116~135のいずれかに記載の方法。
【請求項143】
前記病原性疾患がヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる、請求項116~135のいずれかに記載の方法。
【請求項144】
前記病原性疾患が水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされる、請求項116~135のいずれかに記載の方法。
【請求項145】
前記病原性疾患が結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、請求項116~135のいずれかに記載の方法。
【請求項146】
癌を処置または予防する方法であって、前記方法が、
少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトであって、前記第1のORFが、腫瘍関連抗原またはそのエピトープ含有フラグメントをコードし、前記第1のORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが少なくとも第1の器官保護配列(OPS)を含み、前記OPSが複数の器官を保護し、前記第1のOPSが少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、少なくとも第1のmRNAコンストラクトと、インビボ送達組成物と、を含む第1の組成物を、必要とする対象に投与することを含み、
前記mRNAコンストラクトが前記送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、方法。
【請求項147】
前記腫瘍関連抗原が結腸直腸腫瘍抗原を含む、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記腫瘍関連抗原がMUC1である、請求項146に記載の方法。
【請求項149】
前記腫瘍関連抗原がネオ抗原である、請求項146に記載の方法。
【請求項150】
前記ネオ抗原が前記対象に対して個別化されている、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
少なくとも第2のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトを含む第2の組成物を前記対象に同時投与することをさらに含み、前記第2のORFが、IL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードする、請求項146~150のいずれかに記載の方法。
【請求項152】
同時投与することが、前記第1の組成物および前記第2の組成物を同時に、またはいずれかの順序で連続して投与することを含む、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
癌を処置または予防する方法であって、前記方法が、
癌治療用ワクチン組成物を必要とする対象に投与することと、
少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトであって、前記少なくとも1つのORFがIL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードし、前記ORFが少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、前記UTRが複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、前記OPSが少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、前記少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々が対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている、少なくとも1つのmRNAコンストラクトと;インビボ送達組成物であって、前記mRNAコンストラクトが前記送達組成物内に含まれるか、または前記送達組成物に吸着される、インビボ送達組成物とを含む組成物を、前記対象に同時投与することとを含む、方法。
【請求項154】
前記癌治療用ワクチン組成物が、前記対象に腫瘍関連抗原を送達する、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記腫瘍関連抗原が、ウイルスベクターを使用して前記対象に送達される、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
前記ベクターがアデノウイルスベクターである、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記アデノウイルスベクターがChAdOx1またはChAdOx2である、請求項156に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年7月31日に出願された米国仮特許出願第63/059,458号と、2021年2月22日に出願された国際出願PCT/US21/19028号に対する優先権の利益を主張する。その各々の内容は、その全体が引用により援用される。
【0002】
本発明は、メッセンジャーリボ核酸(mRNA:messenger ribonucleic acid)送達技術、ならびにこれらのmRNA送達技術をさまざまな治療、診断、および予防の適応症において使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の標的組織または器官において、たとえばポリペプチドなどの特定の遺伝子産物の発現を誘導する能力がしばしば所望される。多くの状況において、標的組織または器官は2つ以上の細胞型を含み、こうした場合には、異なる細胞型において異なる程度で遺伝子産物を発現すること、すなわち標的組織における異なる細胞型の間で遺伝子産物の示差的発現を提供することもしばしば所望される。たとえば遺伝子療法において、変異した遺伝子および/または機能しない遺伝子を標的細胞においてインタクトコピーで置換し得るが、近隣の細胞、組織、および器官におけるオフターゲットのタンパク質産生を最小化することも有用である。同様に、たとえばCOVID-19に対するスパイクタンパク質などのワクチン抗原に対する遺伝子産物は、最大の応答を確実にするために、好ましくは免疫系の樹状細胞の中または周囲で発現される。
【0004】
遺伝子療法は、コードポリヌクレオチドを標的細胞に導入するためにウイルスベクターに頼ることが多いが、ウイルスを使用せずにポリヌクレオチドを細胞に送達する他の技術も存在する。ウイルスの利点としては、トランスフェクション率が比較的高くなり得ること、およびウイルスが標的細胞に入るときの結合タンパク質の制御によってウイルスに特定の細胞型を標的とさせ得ることが挙げられる。対照的に、コードポリヌクレオチドを細胞に導入する非ウイルスの方法は、低いトランスフェクション率と、特定の器官および細胞型に対する標的化発現のための選択肢が限定されることとによる問題を有し得る。しかし、ウイルス介入の性質は毒性および炎症のリスクを有するが、導入された因子の発現の持続時間および程度に対する制御も限定される。
【0005】
生物学的アプローチに基づく腫瘍治療は、たとえば特に直接的な細胞溶解、細胞傷害性免疫エフェクター機構、および血管虚脱を介するものなど、多数の多様な機構を使用して、より正確に癌を標的にして破壊するため、従来の化学療法に対する利点を有する。結果として、こうしたアプローチの可能性に対する臨床研究の数が有意に増加している。しかし、治療活性の範囲が多様であるため、前臨床研究および臨床研究は複雑である。なぜなら、それらの治療可能性に複数のパラメータが影響し得るため、処置失敗の原因または治療活性を増強し得る方法の特定が困難であり得るからである。オンターゲット活性、腫瘍特異性を維持し、かつ副作用を低減することも、こうした実験的かつ有力な療法の主要な課題である。
【0006】
ウイルスに基づく療法は、疾患処置の多くの態様に対処するための有望なアプローチとして出現してきた。不活化または弱毒化ウイルスに基づく癌ワクチンは、難治性の癌に対するかなりの可能性を提供する。しかし、治療用ウイルスの有効性は、しばしば身体自体の免疫応答によって妨害されるため、全身投与を回避するために適用が限定される。よって、現在利用可能な治療用ウイルスのアプローチの範囲を改善および増強することができる新規の組成物および方法を提供することは有利であろう。
【0007】
ワクチンは、感染性疾患に対する非常に有効な予防的介入であることが多い。しかし、いくつかの適用およびいくつかの状況では、ワクチンの効力が最適でなくなり得る。たとえば、送達された抗原に対する有効な応答の発生は、対象の免疫系の能力に依存する。すべての対象において、免疫は経時的に失われる可能性があり、かつ/または特定の抗原に対する免疫応答は不十分であり得る。
【0008】
同様に、特定のタイプまたはクラスの病原体は、抗免疫適応、迅速な変異、または自然経過に起因して、ワクチン接種が困難であり得る。たとえばウイルス、細胞内細菌、または単細胞真核生物(たとえばマラリア寄生虫など)などの細胞内寄生体はしばしば、それに対するワクチンを提供することが困難であり得る。
【0009】
しばしば、生弱毒化ワクチンは改善された応答を提供し得るが、付随するリスクを有し、それは主に弱毒化病原体の再活性化のリスクである。既存のワクチン技術の他の欠点としては、ワクチンによって誘発される免疫応答による効果の低い病原体変異体が出現する(たとえば、標的抗原をコードする遺伝子に変異が生じたときなど)「ワクチンエスケープ」の可能性、経時的な免疫の喪失、および不完全な耐性が挙げられる。
【0010】
したがって、これらすべての理由から、ワクチンは、免疫応答を増加させるためのアジュバントと共に提供されることが多いが、これらのアジュバント自体が、たとえば症状の誘導および自己免疫攻撃のリスクなどのリスクを有する。したがって、特にワクチン接種することがより困難な病原体に関して、より有効かつ安全なワクチンおよび/またはアジュバントを提供する必要がある。
【0011】
特許文献1には、マイクロRNA結合部位を含む操作されたゲノムを有する組み換え腫瘍溶解性ウイルスが記載されている。
【0012】
特許文献2は、哺乳動物細胞または組織において目的のポリペプチドを発現させるための方法に関し、この方法は、前記哺乳動物細胞または組織を、目的のポリペプチドをコードする改変mRNAを含む製剤と接触させることを含む。特許文献3には、マイクロRNA結合部位を含み得る少なくとも1つの末端修飾を含む核酸の設計、調製、製造、および/または製剤化が記載されている。前述の先行技術は、同時投与される治療剤または因子で処置される対象の体内の単一または複数の器官タイプの有効な保護を確実にするという問題に取り組んでいない。
【0013】
特許文献4および特許文献5は、単数または複数の標的器官内の少なくとも第1および第2の細胞型におけるコード配列の示差的発現を可能にするmiRNA結合部位配列を含む、1つ以上の標的器官内での1つ以上のポリペプチドの発現のためのmRNA配列の送達のための組成物および方法を記載する。
【0014】
特定の器官および/または組織におけるたとえばmRNAなどのポリヌクレオチド配列の発現を調節するための、さらに改善され最適化された方法および組成物をさらに開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2017/132552(A1)号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/156849(A1)号公報
【特許文献3】国際公開第2016/011306(A2)号公報
【特許文献4】国際公開第2019/051100(A1)号公報
【特許文献5】国際公開第2019/158955(A1)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
さまざまな実施形態において、本発明は、たとえばワクチンおよび/またはアジュバント組成物などとして使用するための、たとえばmRNAコンストラクトなどのヌクレオチドコード産物を送達するために好適な組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態において、送達される組成物の1つ以上は、特に器官保護配列の提供によって、miRNA結合部位配列を含むことによって、制御された発現に適合される。本明細書に記載されるすべての態様において、「mRNAコンストラクト」は、翻訳されてタンパク質産物を産生できる環状または環状化RNAコンストラクトを含むことが予期される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様では、第1のオープンリーディングフレーム(ORF:open reading frame)を含む第1のmRNAコンストラクトを含む組成物が提供され、ここで第1のORFは抗原をコードする。第1のORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR:untranslated region)に機能的に連結されており、UTRは少なくとも第1の器官保護配列(OPS:organ protection sequence)を含み、第1のOPSは少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA:micro-RNA)標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている。
【0018】
第1のmRNAコンストラクトは、インビボ送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着されてもよい。抗原は、病原性微生物タンパク質および腫瘍関連抗原、またはそのエピトープ含有フラグメントからなる群より選択されてもよい。病原性微生物タンパク質は、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、寄生体タンパク質、およびプリオンからなる群より選択されてもよい。
【0019】
抗原は、ウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよい。抗原は、コロナウイルススパイクタンパク質、変異体コロナウイルススパイクタンパク質、適切にはSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含んでもよい。抗原は、インフルエンザタンパク質もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切にはインフルエンザタンパク質は、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリックス-2、および/または核タンパク質からなる群より選択される。インフルエンザタンパク質は、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、またはA型インフルエンザのサブタイプのH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、もしくはH16から選択されてもよい。抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV:respiratory syncytial virus)タンパク質、もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切には、呼吸器合胞体ウイルスのタンパク質はF糖タンパク質またはG糖タンパク質である。抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV:Human Immunodeficiency Virus)タンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切には、HIVタンパク質は糖タンパク質120中和エピトープまたは糖タンパク質145である。
【0020】
抗原は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切には、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質は、ESAT-6、Ag85B、TB10.4、Rv2626、および/またはRpfD-Bから選択される。
【0021】
抗原は、腫瘍関連抗原であってもよい。腫瘍関連抗原は、結腸直腸腫瘍抗原、MUC1、および/またはネオ抗原を含んでもよい。
【0022】
第1のmRNAコンストラクトは、さらなるオープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含んでもよく、さらなるORFは、第1のORFによってコードされる抗原とは異なる抗原をコードする。さらなるORFは、細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、もしくは腫瘍関連抗原、またはそのエピトープ含有フラグメントから選択されてもよい。さらなる抗原は、第1のORFによってコードされる抗原の同一性とは独立に、第1のORFによってコードされる抗原と任意の可能性で類似していてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のmRNAコンストラクトは、さらなるオープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含んでもよく、さらなるORFは炎症性サイトカインをコードする。炎症性サイトカインは、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択されてもよい。
【0024】
第1のOPSは、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのmiRNA標的配列を含んでもよい。第1のOPSは、すべてが互いに異なる少なくとも3つのmiRNA標的配列を含んでもよい。第1のOPSのmiRNA配列のいずれかが反復されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のOPSは、筋肉、肝臓、脳、乳房、内皮、膵臓、結腸、腎臓、肺、脾臓、および皮膚、心臓、胃腸器官、生殖器、および食道からなる群、より具体的には筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、皮膚、心臓、胃腸器官、生殖器、および食道からなる群より選択される1つ以上の器官または組織を保護するように選択されるmiRNA配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のOPSは、miRNA-122、miRNA-125、miRNA-199、miRNA-124a、miRNA-126、miRNA-98、Let7 miRNAファミリー、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-142、miRNA-148a/b、miRNA-143、miRNA-145、miRNA-194、miRNA-200c、miRNA-203a、miRNA-205、miRNA-1、miRNA-133a、miRNA-206、miRNA-34a、miRNA-192、miRNA-194、miRNA-204、miRNA-215、miRNA-30ファミリー(たとえばmiRNA-30a、b、またはc)、miRNA-877、miRNA-4300、miRNA-4720、および/またはmiRNA-6761に結合する1つ以上の配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む。いくつかの実施形態において、第1のOPSは、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/またはmiRNA-192と結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む。第1のOPSは、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含んでもよい。第1のOPSは、miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/またはlet7a/bと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含んでもよい。第1のOPSは、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/またはmiR-203aとの結合;miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aとの結合;miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aとの結合;let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aとの結合;miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aとの結合ができる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1のOPSは、miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できるmiRNA標的配列、ならびにmiRNA122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、組成物は第2のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む第2のmRNAコンストラクトをさらに含み、第2のORFは炎症性サイトカインをコードする。炎症性サイトカインは、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、およびGM-CSFからなる群より選択されてもよい。第2のmRNAコンストラクトは、送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着されてもよく、この送達組成物は第1のmRNAコンストラクトに関連するものと同じであっても異なっていてもよい。送達組成物は、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含んでもよい。
【0027】
第2のORFは、IL-12タンパク質、またはそのサブユニット、誘導体、フラグメント、アゴニスト、もしくはホモログをコードしてもよい。特に、第2のORFは配列番号59と少なくとも90%同一である配列を含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2のORFは第2の非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは第2の器官保護配列(OPS)を含み、第2のOPSは少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含む。少なくとも2つのmiRNA標的配列は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されてもよい。第2のOPSは、上記で考察された第1のOPSの任意の変形と同様に定義されてもよく、第1のOPSの同一性とは独立して変動し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2のOPSは、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのmiRNA標的配列を含む。第2のOPSは、すべてが互いに異なる少なくとも3つのmiRNA標的配列を含んでもよい。第2のOPSは、筋肉、肝臓、脳、乳房、内皮、膵臓、結腸、腎臓、肺、脾臓、および皮膚からなる群;より具体的には筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、皮膚、心臓、胃腸器官、生殖器、および食道からなる群より選択される1つ以上の器官または組織を保護するように選択されたmiRNA配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、第2のOPSは、miRNA-122、miRNA-125、miRNA-199、miRNA-124a、miRNA-126、miRNA-98、Let7 miRNAファミリー、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-142、miRNA-148a/b、miRNA-143、miRNA-145、miRNA-194、miRNA-200c、miRNA-203a、miRNA-205、miRNA-1、miRNA-133a、miRNA-206、miRNA-34a、miRNA-192、miRNA-194、miRNA-204、miRNA-215、miRNA-30ファミリー(たとえばmiRNA-30a、b、またはc)ファミリー(たとえばmiRNA-30a、b、またはc)、miRNA-877、miRNA-4300、miRNA-4720、および/またはmiRNA-6761に結合する1つ以上の配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のOPSは、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/またはmiRNA-192と結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含む。第2のOPSは、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含んでもよい。第2のOPSは、miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/またはlet7a/bと結合できる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含んでもよい。第2のOPSは、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/もしくはmiR-203aとの結合;miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aとの結合;miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aとの結合;let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aとの結合;ならびに/またはmiRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aとの結合ができる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2のOPSは、miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できるmiRNA標的配列、ならびにmiRNA122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含む。
【0031】
第1のOPSは、第2のOPSに対して少なくとも1つの異なるmiRNA標的配列を含んでもよい。第1のOPSおよび第2のOPSは、同じmiRNA標的配列を含んでもよい。一実施形態では、第1のOPSは、miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、およびmiR-203aと結合できるmiRNA標的配列を含み、第2のOPSは、miRNA-122、miRNA-192、および/またはmiRNA30aと結合できるmiRNA標的配列を含む。
【0032】
組成物は、少なくとも第3のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第3のmRNAコンストラクトを(第2のmRNAコンストラクトに加えて、またはその代わりに)さらに含んでもよく、第3のORFは、第1のORFによってコードされる抗原とは異なる抗原をコードし、その抗原は細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、もしくは腫瘍関連抗原、またはそのエピトープ含有フラグメントから選択される。第3のORFは少なくとも第3の非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されてもよく、UTRは少なくとも第3の器官保護配列(OPS)を含み、第3のOPSは複数の器官を保護し、第3のOPSは少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている。第3のOPSは、上記で考察された第1または第2のOPSの任意の変形と同様に定義されてもよく、第1または第2のOPSの同一性とは独立して変動し得る。
【0033】
一実施形態において、第1のORFは、コロナウイルススパイクタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントをコードし、第3のORFは、インフルエンザタンパク質またはその変異体の全部または一部を含むウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントをコードする。
【0034】
組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、鼻腔内、動脈内、および/または吸入による投与に好適であってもよい。
【0035】
第2の態様では、少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトと、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第2のmRNAコンストラクトを含む第2のコンストラクトとを含む組成物が提供され、ここでORFは炎症性サイトカインをコードし、第2のORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、OPSは少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている。
【0036】
この第2の態様の組成物の構成要素は、上記で定義された第1の態様の対応する因子の任意の変形と同様に定義されてもよく、上述のとおり、たとえばさらなるORFおよびさらなるmRNAコンストラクトなどのさらなる構成要素も含まれてもよい。たとえば、第1のmRNAコンストラクトのORFは、細菌タンパク質および/もしくはウイルスタンパク質から選択される抗原をコードしてもよく、かつ/または第1の態様について上述したとおりに定義されてもよい。組成物はインビボ送達組成物を含んでもよく、第1および/または第2のコンストラクトは、送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着されてもよい。送達組成物は、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含んでもよい。
【0037】
第2のmRNAコンストラクトのORFは、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択される炎症性サイトカインをコードしてもよく、かつIL-12タンパク質、またはその誘導体、アゴニスト、もしくはホモログをコードしてもよい。
【0038】
第2のコンストラクトのOPSは、上記の第1の態様について記載されたOPSのいずれかとして定義されてもよい。いくつかの実施形態において、OPSは、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、および皮膚からなる群より選択される1つ以上の器官を保護するように選択されたmiRNA配列を含む。OPSは、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含んでもよい。OPSは、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/もしくはmiRNA-192との結合;miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/もしくはlet7a/bとの結合;miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/もしくはmiR-203aとの結合;miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aとの結合;miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aとの結合;let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aとの結合;ならびに/またはmiRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aとの結合ができる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列を含んでもよい。一実施形態において、OPSは、miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できるmiRNA標的配列、ならびにmiRNA122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含む。
【0039】
第1のmRNAコンストラクトによってコードされる抗原は、病原性微生物タンパク質および腫瘍関連抗原、またはそのエピトープ含有フラグメントからなる群より選択されてもよい。病原性微生物タンパク質は、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、寄生体タンパク質、およびプリオンからなる群より選択されてもよい。
【0040】
抗原は、ウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよい。抗原は、コロナウイルススパイクタンパク質、変異体コロナウイルススパイクタンパク質、適切にはSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含んでもよい。抗原は、インフルエンザタンパク質もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切にはインフルエンザタンパク質は、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリックス-2、および/または核タンパク質からなる群より選択される。インフルエンザタンパク質は、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、またはA型インフルエンザのサブタイプのH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、もしくはH16から選択されてもよい。抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)タンパク質、もしくはその変異体、またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切には、呼吸器合胞体ウイルスのタンパク質はF糖タンパク質またはG糖タンパク質である。抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切には、HIVタンパク質は糖タンパク質120中和エピトープまたは糖タンパク質145である。
【0041】
抗原は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよく、適切には、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質は、ESAT-6、Ag85B、TB10.4、Rv2626、および/またはRpfD-Bから選択される。
【0042】
さらなる実施形態では、上記の任意の態様または変形において記載される組成物は、病原性疾患の予防または処置の方法における使用のためのものであり、この方法は、組成物を必要とする対象に投与すること;および/または記載されるさまざまなコンストラクトを必要とする対象に同時投与することを含んでもよい。病原性疾患は、SARS-CoV-2ウイルスであり得るコロナウイルスによって引き起こされてもよい。
【0043】
さらなる実施形態では、Th1免疫応答を増加させる方法が提供され、この方法は上記で定義された組成物を投与することを含み、この組成物には特にIL-12タンパク質、またはそのサブユニット、誘導体、フラグメント、アゴニスト、もしくはホモログをコードするORFが含まれる。
【0044】
第3の態様では、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトを含む組成物が提供され、ここで少なくとも1つのORFは炎症性サイトカインをコードし、ORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、OPSは少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化されている。
【0045】
再び、この第3の態様の組成物の構成要素は、上記で定義された第1または第2の態様の対応する因子の任意の変形と同様に定義されてもよく、特に第2のmRNAコンストラクトと同様に定義される。組成物はインビボ送達組成物をさらに含んでもよく、mRNAコンストラクトは送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着される。送達組成物は、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含んでもよい。炎症性サイトカインは、IL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択されてもよく、IL-12タンパク質、またはその誘導体、アゴニスト、もしくはホモログであってもよい。
【0046】
OPSは、上記の態様について説明されたOPSのいずれかとして定義されてもよい。いくつかの実施形態において、OPSは、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、および皮膚からなる群より選択される1つ以上の器官を保護するように選択されたmiRNA配列を含む。OPSは、配列番号44~57の1つ以上から選択される配列を含んでもよい。
【0047】
OPSは、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、miRNA-203a、let7b、miRNA-126、および/もしくはmiRNA-192との結合;miRNA-1、miRNA133a、miRNA206、miRNA-122、miRNA203a、miRNA205、miRNA200c、miRNA30a、および/もしくはlet7a/bとの結合;miRNA-1、miRNA-122、miR-30a、および/もしくはmiR-203aとの結合;miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aとの結合;miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aとの結合;let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aとの結合;miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aとの結合;miRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124との結合ができる配列から選択される少なくとも2つのmiRNA標的配列、ならびにmiRNA-122と結合できる2つのmiRNA標的配列を含んでもよい。
【0048】
一実施形態では、記載される組成物は、病原性疾患の予防方法における使用のためのものであり、この方法は、組成物を必要とする対象に投与することと、その対象にワクチン組成物を同時投与することとを含む。
【0049】
別の実施形態では、組成物は、トキソイドワクチン、組み換えワクチン、コンジュゲートワクチン、RNAベースのワクチン、DNAベースのワクチン、生弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、組み換えベクターベースのワクチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるワクチンをさらに含む。
【0050】
第4の態様では、1つ以上の病原性疾患を処置もしくは予防するか、または免疫応答を改善する方法が提供され、この方法は、少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトを含む組成物を必要とする対象に投与することを含み、ここで第1のORFは、細菌タンパク質、もしくはウイルスタンパク質、またはそのエピトープ含有フラグメントから選択される抗原をコードする。第1のORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは少なくとも第1の器官保護配列(OPS)を含み、OPSは複数の器官を保護し、第1のOPSは少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化され、およびインビボ送達組成物を含み、mRNAコンストラクトは送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着される。送達組成物は、たとえばポリマー粒子などの粒子、リポソーム、リピドイド粒子、およびウイルスベクターからなる群より選択される送達ベクターを含んでもよい。
【0051】
この第4の態様において使用される組成物の構成要素は、上記で定義された態様の対応する因子の任意の変形と同様に定義されてもよく、上記の態様、特に第1の態様に記載されたさらなる構成要素を含んでもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも第2のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトを含む組成物を対象に同時投与することをさらに含み、第2のORFは、IL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択され得る炎症性サイトカインをコードする。第2のORFは、IL-12タンパク質、またはその誘導体、アゴニスト、もしくはホモログをコードしてもよい。第2のORFは、配列番号59と少なくとも90%同一である配列を含んでもよい。
【0053】
第1のOPSは、第2のOPSに対してmiRNA標的配列の異なるセットを含んでもよい。第1のOPSおよび第2のOPSは、同じmiRNA標的配列を含んでもよい。第1および/または第2のOPSは、上述の態様におけるものと同様に独立して定義されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、病原性疾患は、SARS-CoV-2ウイルスであり得るコロナウイルスによって引き起こされる。抗原は、コロナウイルススパイクタンパク質または変異体コロナウイルススパイクタンパク質の全部または一部を含む、ウイルスタンパク質またはそのエピトープ含有フラグメントを含んでもよい。コロナウイルススパイクタンパク質は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1のmRNAコンストラクトは、さらなるオープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含み、さらなるORFは、第1のORFによってコードされる抗原とは異なる抗原をコードする。いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも第3のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む第3のmRNAコンストラクトを対象に同時投与することをさらに含み、第3のORFは、第1のORFによってコードされる抗原とは異なる抗原をコードする。
【0056】
第5の態様では、1つ以上の病原性疾患を予防するか、または免疫応答を改善する方法が提供され、この方法は、ワクチン組成物を必要とする対象に投与することと、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトを含むアジュバント組成物を対象に同時投与することとを含み、ここで少なくとも1つのORFは炎症性サイトカインをコードし、ORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、OPSは少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化され、アジュバント組成物はさらにインビボ送達組成物を含み、mRNAコンストラクトは送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着される。
【0057】
再び、この第4の態様において使用される組成物の構成要素は、上記で定義された態様の対応する因子の任意の変形と同様に定義されてもよく、上記の態様に記載されたさらなる構成要素を含んでもよい。
【0058】
炎症性サイトカインは、IL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、トキソイドワクチン、組み換えワクチン、コンジュゲートワクチン、RNAベースのワクチン、DNAベースのワクチン、生弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、組み換えベクターベースのワクチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトであって、第1のORFが抗原をコードする、第1のmRNAコンストラクトと、インビボ送達組成物であって、mRNAコンストラクトが送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着される、インビボ送達組成物とを含む。抗原は、任意の先行する態様と同様に定義されてもよい。
【0060】
同時投与することは、ワクチン組成物およびアジュバント組成物を同時に、またはいずれかの順序で連続して投与することを含んでもよい。ワクチン組成物および/またはアジュバント組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、鼻腔内、動脈内、および/または吸入によって投与されてもよい。
【0061】
第4または第5の態様のいくつかの実施形態では、病原性疾患は細胞内病原体によって引き起こされる。病原性疾患は、潜伏性感染症または活動性感染症であってもよい。病原性疾患は、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、SARS-CoV-2ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV:Varicella zoster virus)、または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされてもよい。
【0062】
第6の態様では、癌を処置または予防する方法が提供され、この方法は、少なくとも第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも第1のmRNAコンストラクトを含む第1の組成物を必要とする対象に投与することを含み、第1のORFは腫瘍関連抗原またはそのエピトープ含有フラグメントをコードする。第1のORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは少なくとも第1の器官保護配列(OPS)を含み、OPSは複数の器官を保護し、第1のOPSは少なくとも2つのマイクロRNA(miRNA)標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化され、およびインビボ送達組成物を含み、mRNAコンストラクトは送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着される。
【0063】
いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも第2のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトを含む第2の組成物を対象に同時投与することをさらに含み、第2のORFは、IL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択され得る炎症性サイトカインをコードする。第2のmRNAコンストラクトは、任意の前述の態様で定義されるOPSを含んでもよい。同時投与することは、第1の組成物および第2の組成物を同時に、またはいずれかの順序で連続して投与することを含んでもよい。
【0064】
第7の態様では、癌を処置または予防する方法が提供され、この方法は、癌治療用ワクチン組成物を必要とする対象に投与することと、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む少なくとも1つのmRNAコンストラクトを含む組成物を対象に同時投与することとを含み、少なくとも1つのORFは、IL-12、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFから選択され得る炎症性サイトカインをコードする。ORFは少なくとも1つの非翻訳領域(UTR)に機能的に連結されており、UTRは複数の器官を保護する少なくとも1つのOPSを含み、OPSは少なくとも2つのmiRNA標的配列を含み、少なくとも2つのmiRNA標的配列の各々は、対応するmiRNA配列とハイブリダイズするために最適化され、およびインビボ送達組成物を含み、mRNAコンストラクトは送達組成物内に含まれるか、またはそれに吸着される。
【0065】
いくつかの実施形態において、癌治療用ワクチン組成物は、腫瘍関連抗原を対象に送達する。ウイルスベクターを用いて腫瘍関連抗原が対象に送達され、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターであってもよく、いくつかの実施形態ではChAdOx1またはChAdOx2である。
【0066】
第6または第7の態様のいくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、結腸直腸腫瘍抗原および/またはMUC1を含む。腫瘍関連抗原はネオ抗原であってもよく、これは対象に対して個別化されてもよい。
【0067】
本明細書に記載されるさまざまな実施形態および実施例において本発明をさらに例示しており、当業者によって理解されるであろうとおり、その特徴はさらに組み合わされて付加的な実施形態を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】本発明の実施形態による器官保護配列(OPS)を組み込んだmRNAコンストラクトの概略図(すなわち、縮尺どおりではない)を示す図である。
【
図2】本明細書に記載される組成物をさまざまな細胞型に投与した後のレポーター遺伝子mCherryの発現を決定するために行われたプロトコルを示す概略図であり、蛍光顕微鏡(テキサスレッド(Texas Red)およびDAPIフィルター)によって、Hoechst 33342で染色された細胞核によってmCherryシグナル分析が行われる。
【
図3】上記プロトコル後の3つの肝細胞型におけるmCherryシグナルを示す図であり、複数の器官保護配列(MOP)を含有するmRNAであるmCherry-3MOPまたはmCherry-5MOP mRNAをトランスフェクトしたときの正常マウスおよびヒト肝細胞の両方における細胞シグナルが、対照mCherry mRNAをトランスフェクトした後のヒト肝臓癌細胞(Hep3B)または正常マウス肝細胞(AML12)細胞において見出されるシグナルと比較して有意に低減することを実証するものである。画像は、テキサスレッドおよびDAPIフィルターによって取得された画像を重ね合わせたものであり、mCherry蛍光シグナルおよび細胞核染色を示す。
【
図4】Cytation機器(バイオテック(Biotek))を用いたトランスフェクト細胞におけるmCherry蛍光の定量化を示す図である。
【
図5】
図5A~5Bは、mCherry-3MOP処理細胞におけるシグナルの低減を示す図である。
図5Aは、本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた正常ヒト腎細胞におけるmCherryシグナルを示し、mCherry-3MOP処理細胞におけるシグナルの低減を示し、mCherry翻訳の低減を示す。画像は、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、mCherry蛍光シグナルおよび細胞核染色を示す。
図5Bは、Cytation機器(バイオテック)を使用した、トランスフェクトされた正常ヒト腎細胞におけるmCherry蛍光の定量化を示す。
【
図6】
図6A~6Fは、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた肝細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図であり、MOP配列がAML12マウス肝細胞における発現を抑制するが、肝臓癌細胞(Hep3B)では抑制しないことを実証するものである。写真の各セットについて、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図6A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照Hep3B細胞(肝臓癌)を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図6B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたHep3B細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図6C)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたHep3B細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図6D)mRNAでトランスフェクトされていない対照AML12細胞(正常肝臓)における細胞核染色、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図6E)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたAML12細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図6F)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたAML12細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル。
【
図7】
図7A~7Fは、Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた肝細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図であり、MOP配列がAML12マウス肝細胞における発現を抑制するが、肝臓癌細胞(Hep3B)では抑制しないことを実証するものである。写真の各セットについて、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図7A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照Hep3B細胞(肝臓癌)を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図7B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたHep3B細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図7C)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたHep3B細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図7D)mRNAでトランスフェクトされていない対照AML12細胞(正常肝臓)における細胞核染色、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図7E)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたAML12細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図7F)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたAML12細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル。
【
図8】
図8A~8Bは、1回(1*)、2回(2*)、または4回(4*)複製されたmiRNA-122に結合する完全一致多重MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた肝細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図であり、AML12正常肝細胞におけるmCherry発現の抑制にいくらかの用量依存性があるが(
図8A)、Hep3B癌細胞では用量依存性がはるかに低いことを示す(
図8B)。(
図8A)および(
図8B)の各々について、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。mRNAを注入していない対照、およびmCherryに対するmRNAであるがMOP配列を有さないものも含まれる。
【
図9】
図9A~9Dは、miRNA122に結合する不完全一致二重鎖(2*)MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされたAML12マウス肝臓肝細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図である。(
図9A)、(
図9B)、(
図9C)、および(
図9D)の各々について、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図9A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照AML12細胞(正常肝臓)における細胞核染色を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図9B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたAML12細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図9C)2*不完全一致miRNA-122 MOP配列(非最適化)を有するmRNAでトランスフェクトされたAML12細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、下のパネルはAML12細胞においてmCherryの検出可能な発現が存在することを示す、(
図9D)2*完全一致miRNA-122 MOP結合配列(最適化)を有するmRNAでトランスフェクトされたAML12細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、下のパネルはAML12細胞においてmCherryの検出可能な発現がほぼないことを示す。
【
図10】
図10A~10Fは、Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた腎細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図であり、MOP配列がヒト腎細胞(hREC)におけるmCherry発現を抑制するが、癌細胞(786-0)では抑制しないことを実証するものである。(
図10A)、(
図10B)、(
図10C)、(
図10D)、(
図10E)、および(
図10F)の各々について、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図10A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照786-0ヒト腎細胞腺癌細胞における細胞核染色を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図10B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされた786-0細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図10C)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされた786-0細胞における細胞核およびmCherryシグナルであり、これは発現の証拠を示す、(
図10D)mRNAでトランスフェクトされていない対照hREC細胞(正常混合腎上皮細胞)における細胞核染色、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図10E)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたhREC細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図10F)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたhREC細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、mCherryシグナルのみでは実質的に発現を示さない。
【
図11】
図11A~11Fは、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた腎細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図であり、MOP配列がヒト腎細胞(hREC)におけるmCherry発現を抑制するが、癌細胞(786-0)では抑制しないことを実証するものである。(
図11A)、(
図11B)、(
図11C)、(
図11D)、(
図11E)、および(
図11F)の各々について、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図11A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照786-0ヒト腎細胞腺癌細胞における細胞核染色を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図11B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされた786-0細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図11C)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされた786-0細胞における細胞核およびmCherryシグナルであり、これは発現の証拠を示す、(
図11D)mRNAでトランスフェクトされていない対照hREC細胞(正常混合腎上皮細胞)における細胞核染色、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図11E)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたhREC細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図11F)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたhREC細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、mCherryシグナルのみでは実質的に発現を示さない。
【
図12】
図12A~12Bは、一実施形態による実験の結果を示す図であり、ここではヒトPBMC細胞が本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされており、その組成物は(
図12A)ヒトIL-12を発現するmRNAを3つのレベルの投与量で含み、以下のmRNAによるトランスフェクションの6時間後にIL-12の発現が記録される:NC(単鎖由来の非コードヒト組み換えIL-12 - ATGコドンなし)、hdcIL-12(別個のIL12AおよびIL12B mRNAの1:1混合物からのヒト組み換えIL-12)、hscIL-12(単鎖由来のヒト組み換えIL-12)、およびhscIL-12-MOP(単鎖由来のヒト組み換えIL-12)、これはmiRNA-122 - miRNA-203a - miRNA-1 - miRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む単鎖組み換えIL-12発現mRNAである;(
図12B)ヒトGM-CSFを発現するmRNAを3つのレベルの投与量で含み、以下のmRNAによるトランスフェクションの6時間後にGM-CSFの発現が記録される:NC(非コードGM-CSF mRNA - ATGコドンなし)、hGM-CSF、およびhGM-CSF-MOP、これはmiRNA-122 - miRNA-203a - miRNA-1 - miRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含むhGM-CSF発現mRNAである。
【
図13】
図13A~13Fは、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた結腸上皮細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図であり、MOP配列が結腸上皮細胞における発現を抑制するが、結腸癌細胞(HCT-116)では抑制しないことを実証するものである。写真の各セットについて、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図13A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照結腸上皮細胞を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図13B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされた結腸細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図13C)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされた結腸細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図13D)mRNAでトランスフェクトされていない対照HCT-116細胞(結腸癌)における細胞核染色、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図13E)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたHCT-116細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図13F)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたHCT-116細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル。
【
図14】
図14A~14Fは、miRNA-Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた結腸上皮細胞におけるmCherryシグナルの比較を示す図であり、MOP配列が、miRNA-Let7b結合部位の存在に起因する、正常結腸細胞および結腸癌細胞の両方における発現を抑制することによる器官保護を提供することを実証するものである。写真の各セットについて、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図14A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照結腸上皮細胞を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図14B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされた結腸細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図14C)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされた結腸細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図14D)mRNAでトランスフェクトされていない対照HCT-116細胞(結腸癌)における細胞核染色、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図14E)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされたHCT-116細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図14F)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされたHCT-116細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル。
【
図15】
図15A~15Cは、miRNA-Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む本明細書に記載される組成物でトランスフェクトされた正常健常肺細胞(BEAS-2B)におけるmCherryシグナルを示す図であり、MOP配列が、miRNA-Let7b結合部位の存在に起因する、健常肺細胞における発現を抑制することによる肺に対する器官保護を提供することを実証するものである。写真の各セットについて、上のパネルは、テキサスレッドおよびDAPIフィルターキューブによって取得された画像を重ね合わせたものであり、細胞核染色およびmCherry蛍光を示す。下のパネルは、テキサスレッドフィルターキューブによって取得された画像を表し、mCherry蛍光のみを示す。(
図15A)上のパネルはmRNAでトランスフェクトされていない対照細胞を示し、下のパネルはmCherryシグナルを示さない、(
図15B)MOP配列を有さないmRNAでトランスフェクトされた細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル、(
図15C)MOP配列を有するmRNAでトランスフェクトされた肺細胞における細胞核染色およびmCherryシグナル。
【
図16】
図16A~16Bは、マウスにおけるインビボ体内分布実験の結果を示す図であり、(
図16A)本発明の組成物を投与してから3.5時間後(T3.5h)に、MOP含有コンストラクト(グループ2および3)およびMOPコンストラクトなしの対照群(グループ1)を含むすべてのグループにおいて、全身イメージングを通して高レベルのルシフェラーゼ発現を見ることができるが、24時間後(T24h)にはMOP含有組成物においてルシフェラーゼ発現の有意なダウンレギュレーションが見られることを実証するものである。(
図16B)において、24時間後の器官のエクスビボイメージングは、グループ1(MOPなし対照)と比較して、グループ2および3(MOP含有コンストラクト)のマウスの肝臓、肺、脾臓、および腎臓におけるルシフェラーゼ発現の減少を示す。
【
図17】
図17A~17Bは、皮下Hep3B腫瘍(ヒト肝臓癌)を有するマウスにおける体内分布研究のさらなる結果を示す図である。各マウスに、本発明の特定の実施形態による組成物を腫瘍内注射によって投与した。24時間後のエクスビボイメージングによってすべてのグループの腫瘍組織においてルシフェラーゼ発現を見ることができ、一方でグループ2および3についてはMOP配列によって肝臓の保護が提供される。溶媒群にはリン酸緩衝食塩水を投与した。グループ1にはルシフェラーゼを投与した(MOPなし対照)。
【
図18】マウスIL-12アジュバントの存在下または非存在下でのオボアルブミンに対する抗原特異的免疫応答の動物試験の結果を示す図である。mRNAの投与量をグラフの下の表に示す。応答は、免疫化の14日後に血清中で検出された抗オボアルブミンマウスIgGの量によって示される。
【
図19】筋肉内投与後のマウスにおけるインビボ体内分布実験の結果を示す図である。エクスビボイメージングの結果は、本発明の特定の実施形態の組成物を投与してから4時間後に、MOP含有コンストラクト(Luc-MOP1、Luc-MOP2、Luc-MOP3)を有したグループのマウスの複数の器官において、MOPなし対照(Luc)と比較してルシフェラーゼ発現が減少することを実証する。注射部位での発現は、Luc-MOP1を除くすべてのグループにおいて高いままであった。溶媒群にはリン酸緩衝食塩水を投与した。この結果は、筋肉内投与経路を介して本発明の組成物を使用して、有効な器官保護が達成され得ることを示す。
【
図20】静脈内投与後のマウスにおけるインビボ体内分布実験の結果を示す図である。エクスビボイメージングの結果は、本発明の特定の実施形態の組成物を投与してから6時間後に、MOP含有コンストラクト(Luc-MOP1、Luc-MOP2、Luc-MOP3)を有したグループのマウスの複数の器官において、MOPなし対照(Luc)と比較してルシフェラーゼ発現が減少することを実証する。溶媒群にはリン酸緩衝食塩水を投与した。この結果は、静脈内投与経路を介して本発明の組成物を使用して、有効な器官保護が達成され得ることを示す。
【
図21】マウスIL-12 mRNAアジュバントからの免疫刺激の存在下または不在下でのSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質特異的免疫応答の動物試験の結果を示す図である。
図21は、免疫化の42日後に生成された血清IgGに関するBalb/cマウスの応答を示す。
【
図22A】
図22A~22Bは、一実施形態による実験の結果を示す図であり、ここでは3つのレベルの投与量でヒトIL-12を発現するmRNAを含む本明細書に記載される組成物でヒトPBMC細胞がトランスフェクトされている。
図22aは、以下のmRNAによるトランスフェクションの24時間後に定量化されたIL-12の発現を示す:NC(単鎖由来の非コードヒト組み換えIL-12 - ATGコドンを欠く)、hscIL-12(単鎖由来のヒト組み換えIL-12)、およびhscIL-12-MOPV(miRNA-122 - miRNA-203a - miRNA-1 - miRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む単鎖組み換えIL-12発現mRNA)、hscIL-12-MOPC(miRNA-122 - miRNA-192 - miRNA-30aに結合する完全一致MOP配列を含む単鎖組み換えIL-12発現mRNA)。データは、ヒトIL-12の用量依存的発現を示す。
【
図22B】
図22A~22Bは、一実施形態による実験の結果を示す図であり、ここでは3つのレベルの投与量でヒトIL-12を発現するmRNAを含む本明細書に記載される組成物でヒトPBMC細胞がトランスフェクトされている。
図22bは、ヒトIL-12を発現するmRNAによってトランスフェクトされたPBMCにおけるインターフェロンガンマ(IFN-γ:interferon-gamma)のIL-12介在性誘導を示す。mRNAによるトランスフェクションの72時間後に、ヒトインターフェロンガンマを測定する。データは、自然免疫および適応免疫の両方に重要な免疫刺激性サイトカインであるインターフェロンガンマのIL-12介在性誘導を示す。
【
図23】一実施形態による実験の結果を示す図であり、ここではMOPを有するSARS-CoV-2スパイクmRNAを発現するmRNAと、MOPを有する(hscIL-12-MOPV)および有さない(hscIL-12)ヒト単鎖組み換えIL-12発現mRNAとの組み合わせを含む本明細書に記載される組成物でヒトPBMC細胞がトランスフェクトされている。MOP配列は、miRNA-122 - miRNA-203a - miRNA-1 - miRNA-30a)に対する完全一致結合配列を含む。この結果は、トランスフェクションの120時間後、インターフェロンガンマ(INF-γ)発現が、MOPを有するおよび有さないヒトIL-12を発現するmRNAの存在下で増加することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
別様に示されない限り、本発明の実施は、当業者の能力の範囲内である化学、分子生物学、微生物学、組み換えDNA技術、および化学的方法の従来の技術を使用する。こうした技術は、たとえばM.R.グリーン(Green)、J.サンブルック(Sambrook)、2012、「モレキュラー・クローニング:ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第4版、1-3巻、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、NY;オーズベル(Ausubel)、F.M.ら(「分子生物学の現行プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、オンラインISSN:1934-3647);B.ロー(Roe)、J.クラブツリー(Crabtree)、およびA.カーン(Kahn)、1996、「DNAの単離および配列決定:必須技術(DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ;J.M.ポラック(Polak)およびジェームス(James)O’D.マギー(McGee)、1990、「インサイツハイブリダイゼーション:原理および実施(In Situ Hybridisation:Principles and Practice)」、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press);M.J.ガイト(Gait)(編集者)、1984、「オリゴヌクレオチド合成:実践アプローチ(Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach)」、IRLプレス(Press);ならびにD.M.J.ライリー(Lilley)およびJ.E.ダルバーグ(Dahlberg)、1992、「酵素学の方法:DNA構造パートA:DNAの合成および物理的分析(Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA)」メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、アカデミック・プレス(Academic Press);「合成生物学、パートA(Synthetic Biology、Part A)」、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、クリス・フォークト(Chris Voigt)編、497巻、2-662頁(2011);「合成生物学、パートB、コンピュータ支援の設計およびDNAアセンブリ(Synthetic Biology、Part B、Computer Aided Design and DNA Assembly)」、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、クリストファー・フォークト(Christopher Voigt)編、498巻、2-500頁(2011);「RNA干渉(RNA Interference)」、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、デビッド(David)R.エンゲルケ(Engelke)およびジョン(John)J.ロッシ(Rossi)、392巻、1-454頁(2005)などの文献においても説明されている。これらの一般的なテキストの各々は、本明細書において引用により援用される。
【0070】
本発明を示す前に、本発明の理解を助けるであろういくつかの定義を提供する。本明細書において引用されるすべての参考文献は、その全体が引用により援用される。別様に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0071】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、列挙された要素のいずれかが必然的に含まれ、他の要素も任意選択で含まれてもよいことを意味する。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、任意の列挙された要素が必然的に含まれ、列挙された要素の基本的特徴および新規の特徴に実質的に影響し得る要素が除外され、その他の要素は任意選択で含まれてもよいことを意味する。「からなる(Consisting of)」は、列挙されたもの以外のすべての要素が除外されることを意味する。これらの用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0072】
ポリヌクレオチド配列に適用されるときの「単離された」という用語は、その配列がその起源である天然の生物から取り出されており、よって外来のまたは望ましくないコード配列または調節配列を含まないことを示す。単離された配列は、組み換えDNAプロセスおよび遺伝子操作されたタンパク質合成系における使用に適している。こうした単離された配列は、cDNA、mRNA、およびゲノムクローンを含む。単離された配列は、タンパク質コード配列のみに限定されてもよいし、たとえばプロモーターおよび転写ターミネーターなどの5’および3’調節配列、または非翻訳配列(UTR)も含み得る。本発明をさらに示す前に、本発明の理解を助けるであろういくつかの定義を提供する。
【0073】
「ポリヌクレオチド」は、各ヌクレオチドの3’および5’末端がホスホジエステル結合によって連結されている、ヌクレオチドの一本鎖または二本鎖共有結合配列である。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基から構成されてもよい。ポリヌクレオチドはDNAおよびRNAを含み、インビトロで合成的に製造されるか、または天然の供給源から単離されてもよい。ポリヌクレオチドのサイズは典型的に、二本鎖ポリヌクレオチドについては塩基対(bp:base pairs)の数として表されるか、一本鎖ポリヌクレオチドの場合にはヌクレオチド(nt:nucleotides)の数として表される。1000bpまたはntはキロベース(kb:kilobase)に等しい。約40ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチドは、典型的には「オリゴヌクレオチド」と呼ばれる。本明細書で使用される「核酸配列」という用語は、各ヌクレオチドの3’末端および5’末端がホスホジエステル結合によって連結されている、ヌクレオチドの一本鎖または二本鎖共有結合配列である。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基から構成されてもよい。核酸配列はDNAおよびRNAを含んでもよく、インビトロで合成的に製造されるか、または天然の供給源から単離されてもよい。本発明の特定の実施形態では、核酸配列はメッセンジャーRNA(mRNA:messenger RNA)を含む。
【0074】
核酸は、修飾されたDNAまたはRNA、たとえばメチル化されたDNAまたはRNA、あるいはたとえば7-メチルグアノシンによる5’-キャッピング、たとえば切断およびポリアデニル化などの3’-プロセシング、ならびにスプライシングなどの翻訳後修飾を受けたRNAなどをさらに含んでもよい。加えて核酸は、たとえばヘキシトール核酸(HNA:hexitol nucleic acid)、シクロヘキセン核酸(CeNA:cyclohexene nucleic acid)、トレオース核酸(TNA:threose nucleic acid)、グリセロール核酸(GNA:glycerol nucleic acid)、ロックド核酸(LNA:locked nucleic acid)およびペプチド核酸(PNA:peptide nucleic acid)などの合成核酸(XNA)を含んでもよい。
【0075】
本発明によると、本明細書に記載される核酸配列に対する相同性は、単なる100%の配列同一性に限定されない。これに関して、2つの配列に関する「実質的に類似する」という用語は、それらの配列が少なくとも70%、80%、90%、95%、または100%の類似性を有することを意味する。同様に、2つの配列に関する「実質的に相補的」という用語は、それらの配列が完全に相補的であること、または塩基の少なくとも70%、80%、90%、95%、もしくは99%が相補的であることを意味する。すなわち、ハイブリダイズすることが意図される配列の塩基間でミスマッチ(不一致)が発生する可能性があり、ミスマッチは塩基の少なくとも1%、5%、10%、20%、または最大30%の間で生じ得る。しかし場合によっては、互いにハイブリダイズできるが、いくつかのミスマッチを含有する2つの配列、すなわち「不正確な一致」、「不完全一致」、または「不正確な相補性」と、ミスマッチなしで互いにハイブリダイズできる2つの配列、すなわち「正確な一致」、「完全一致」、または「正確な相補性」とを区別することが望ましいことがある。さらに、ミスマッチの程度の可能性が考慮される。
【0076】
本明細書で使用される「器官保護配列」(「OPS」)という用語は、天然または合成起源の複数のマイクロRNA(miRNA:microRNA)標的配列と、任意選択の1つ以上の補助配列とを含む配列を示す。OPSが複数の器官に保護を与えるとき、それは複数(multiple)または「マルチ(multi-)」器官保護(MOP)配列と呼ばれることがある。「標的配列」という用語は、特定のmiRNAによる結合の標的とされる、mRNA配列内のたとえば非翻訳領域(UTR)内などに含まれる配列を示す。結合は、miRNA内に含まれる相補的塩基対と対応する標的配列との間の核酸ハイブリダイゼーションによって起こる。結合相互作用は、特定のmiRNAと標的配列との間にミスマッチが生じないように、またはミスマッチが標的配列の長さにわたって1塩基対以下のミスマッチに限定されるように最適化されてもよい。本発明の実施形態では、単一塩基ミスマッチは、標的配列の5’または3’末端に限定される。最適化された配列は、細胞中に存在する標的miRNAと完全一致させたものとも説明でき、野生型結合配列と2つ以上の塩基対が異なっていてもよい。3つ以上の天然に存在するミスマッチを含む野生型配列は、対応する相補的miRNA配列に対して完全一致でない、または不完全一致とみなされる。
【0077】
たとえば発現コンストラクトなどの核酸配列に適用されるときの「機能的に連結された」という用語は、配列が意図される目的を達成するためにそれらの配列が協働的に機能するように配置されることを示す。例として、DNAベクターにおけるプロモーター配列は転写の開始を可能にし、その転写は連結されたコード配列を通じて終結配列まで進行する。RNA配列の場合は、オープンリーディングフレーム(ORF)と呼ばれる連結されたポリペプチドコード配列に関連して1つ以上の非翻訳領域(UTR)が配置されてもよい。本明細書に開示される所与のmRNAは、2つ以上のORF、いわゆるポリシストロニックRNAを含んでもよい。当分野で公知であるとおり、mRNAは2つ以上のポリペプチドをコードしてもよく、結果として、複数の機能的産物の産生をもたらすために必要な切断部位または他の配列を含むことがある。UTRは、機能的に連結されたコード配列ORFに対して5’または3’に位置してもよい。UTRは、天然に見出されるmRNA配列に典型的に見出される配列、たとえばコザックコンセンサス配列、開始コドン、シス作用性翻訳調節エレメント、キャップ非依存性翻訳開始配列、ポリAテール、内部リボソーム進入部位(IRES:internal ribosome entry sites)、mRNAの安定性および/または寿命を調節する構造、ならびにmRNAの局在化を指示する配列などのうちの1つ以上を含んでもよい。mRNAは、同じまたは異なる複数のUTRを含んでもよい。1つ以上のUTRは、OPSを含んでもよいし、OPSに近接または隣接して位置してもよい。UTRは、たとえばコザック配列などのmRNAに対する翻訳または安定性制御を提供する直鎖状配列を含んでもよいし、加えてそれらは、特に5’UTR内の局在化二次構造の形成を促進する1つ以上の配列を含んでもよい。本発明の一実施形態では、平均未満のGC含量を有する5’UTRを使用して、mRNAの効率的な翻訳を促進してもよい。
【0078】
本発明の文脈における「ポリペプチドを発現する」という用語は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列がコードするポリペプチドの産生を示す。これは典型的に、配列が送達される細胞のリボソーム機構による、供給されたmRNA配列すなわちORFの翻訳を含む。
【0079】
たとえば「疾患細胞」および/または「疾患組織」などにおける、本明細書で使用される「疾患」という用語は、異常な、健常でない、または疾患の病理を示す組織および器官(またはその一部)および細胞を示す。たとえば、疾患細胞はウイルス、細菌、プリオン、真菌、もしくは真核生物寄生体に感染していてもよく;有害な変異を含んでもよく;かつ/または癌性、前癌性、腫瘍性、もしくは新生物性であってもよい。感染は、細胞に内在化されて自身の生活環のかなりの部分にわたって細胞内に存在する病原体を含んでもよい。疾患細胞は、他の点では正常な細胞またはいわゆる健常細胞と比較したときに、変化した細胞内miRNA環境を含んでもよい。特定の場合において、疾患細胞は、病理学的には正常であるが、疾患に対する前駆状態を表す変化した細胞内miRNA環境を含んでいてもよい。疾患組織は、別の器官または器官系からの疾患細胞によって浸潤された健常組織を含んでもよい。例として、多くの炎症性疾患は、他の点では健常な器官がたとえばT細胞および好中球などの免疫細胞の浸潤を受ける病理を含む。さらなる例として、狭窄または硬変病変を有する器官および組織は、健常細胞および疾患細胞の両方を近接して含んでもよい。
【0080】
本明細書で使用される「癌」という用語は、悪性腫瘍を含む組織中の新生物を示し、これは特定の組織において始まった原発癌であっても、他の場所からの転移によって広がった二次癌であってもよい。癌、新生物、および悪性腫瘍という用語は、本明細書において互換的に使用される。癌は、新生物内に位置するか、または新生物に関連する特性を有する組織または細胞を示してもよい。新生物は典型的に、正常組織および正常細胞と自身とを区別する特徴を有する。こうした特徴には、退形成の程度、形態の変化、形状の不規則性、細胞接着性の低下、転移する能力、および細胞増殖の増加が含まれるが、これらに限定されない。「癌」に関連し、しばしばそれと同義である用語は、肉腫、細胞腫、悪性腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、形質転換、および新生物などを含む。本明細書で使用される「癌」という用語は、前悪性および/または前癌性腫瘍、ならびに悪性癌を含む。
【0081】
たとえば「健常な細胞」および/または「健常な組織」などにおける、本明細書で使用される「健常な」という用語は、それ自体は疾患ではなく、かつ/または典型的に正常に機能する表現型に近い組織および器官(またはその一部)および細胞を示す。本発明の文脈において、「健常な」という用語は相対的なものであり、たとえば、腫瘍に冒された組織中の非新生物細胞は、絶対的な意味で完全に健常ではないであろうことが認識され得る。したがって「非健常細胞」は、それ自体は新生物性でも癌性でも前癌性でもないが、たとえば硬変性、炎症性、もしくは感染性、または別様の疾患であり得る細胞を意味する。同様に、「健常または非健常組織」とは、全体的な健常性にかかわらず、腫瘍、新生物、癌性、もしくは前癌性の細胞か、または上述の他の疾患を有さない組織またはその一部を意味する。たとえば、癌性組織および線維性組織を含む器官の文脈において、線維性組織内に含まれる細胞は、癌性組織と比較して相対的に「健常」であると考えられてもよい。「健常な」細胞についての正常に機能する表現型の近似のために使用されるモデルは、細胞機能および遺伝子発現のその他の点では本来の細胞に近い不死化細胞株を含んでもよい。
【0082】
代替的な実施形態では、細胞、細胞型、組織、および/または器官の健常状態は、miRNA発現の定量化によって決定される。たとえば癌などの特定の疾患タイプでは、特定のmiRNA種の発現が影響を受けて、影響を受けない細胞と比較してアップレギュレートまたはダウンレギュレートされ得る。miRNAトランスクリプトームにおけるこの差異を使用して、相対的な健常状態を識別すること、あるいは/または健常な細胞、細胞型、組織、および/もしくは器官の疾患状態への進行を追跡することができる。疾患状態には、新生物細胞への形質転換のさまざまな段階が含まれてもよい。本発明の実施形態では、異なる細胞型におけるタンパク質発現を制御するために、所与の器官または器官系内に含まれる細胞型のmiRNAトランスクリプトームの示差的変動が利用される。
【0083】
本明細書で使用される「器官」という用語は、「器官系」と同義であり、たとえば生理学的機能、解剖学的機能、恒常性機能、または内分泌機能などの生物学的機能を提供するために対象の体内で区画化され得る組織および/または細胞型の組み合わせを示す。適切には、器官または器官系は、たとえば肝臓または膵臓などの血管付きの内部器官を意味してもよい。典型的には、器官は、その器官に特徴的な表現型を示す少なくとも2つの組織タイプおよび/または複数の細胞型を含む。組織または組織系は協働することがあるが、公式に器官とはみなされない。たとえば、血液は一般に組織または液体組織ともみなされるが、使用される定義に応じて、厳密な意味で器官とはみなされないことがある。それにもかかわらず、特定の実施形態における本発明の組成物および方法は、血液、造血組織、およびリンパ組織を含む器官、組織、および組織系に関する保護効果を示す働きをしてもよい。
【0084】
本明細書で使用される「治療用ウイルス」という用語は、癌細胞に感染して死滅させることができるウイルスを示し、この死滅は宿主抗腫瘍応答の刺激による間接的な死滅を含む。治療用ウイルスは、ワクチン製剤において有用である弱毒化ウイルスまたは改変ウイルスも含んでもよい。
【0085】
【0086】
本発明の実施形態では、ウイルスは、ウイルスのボルチモア(Baltimore)分類の第I~VII群(ボルチモア(Baltimore)D(1971)。「動物ウイルスゲノムの発現(Expression of animal virus genomes)。」バクテリオロジカル・レビューズ(Bacterial Rev.)35(3):235-41)のうちのいずれか1つから選択されてもよい。本発明の特定の実施形態において、適切なウイルスは、二本鎖DNAウイルスゲノムを有することを特徴とするボルチモアの第I群、正の一本鎖DNAゲノムを有することを特徴とする第II群、二本鎖RNAウイルスゲノムを有することを特徴とする第III群、一本鎖の正のRNAゲノムを有する第IV群、および一本鎖の負のRNAゲノムを有する第V群から選択されてもよい。
【0087】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、天然で産生されるか、または合成手段によってインビトロで産生された、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマーである。約12アミノ酸残基長未満のポリペプチドは典型的に「ペプチド」と呼ばれ、約12~約30アミノ酸残基長のものは「オリゴペプチド」と呼ばれてもよい。本明細書において使用される「ポリペプチド」という用語は、天然に存在するポリペプチド、前駆体形態、またはプロタンパク質の産物を示す。加えてポリペプチドは、グリコシル化、タンパク質切断、脂質化、シグナルペプチド切断、プロペプチド切断、およびリン酸化などを含んでもよいがこれらに限定されない、成熟または翻訳後修飾プロセスを受け得る。本明細書において「タンパク質」という用語は、1つ以上のポリペプチド鎖を含む巨大分子を示すために使用される。
【0088】
本明細書で使用される「遺伝子産物」という用語は、本明細書に記載される本発明のmRNAコンストラクト内に含まれる少なくとも1つのコード配列またはオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされるペプチドまたはポリペプチドを示す。ポリシストロニックmRNAコンストラクトが使用されてもよく、これは同じポリ核酸鎖上に位置する複数のORFによってコードされる複数の遺伝子産物の産生をもたらす。複数のORFが、機能的に協働し得るか、または多様な生物学的な治療的であり得る効果を有する複合体および/もしくは多量体タンパク質を形成し得る、たとえばタンパク質、ペプチド、またはポリペプチドなどのさまざまな産物のインサイツでの産生をもたらしてもよいことが認識されるだろう。
【0089】
mRNAによってコードされる遺伝子産物は、典型的にはペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である。特定のタンパク質が2つ以上のサブユニットからなるとき、mRNAは、1つ以上のORF内に1つ以上のサブユニットをコードしてもよい。代替的な実施形態において、第1のmRNAは第1のサブユニットをコードしてもよく、一方で第2の同時投与されたmRNAは、インサイツで翻訳されたときに、マルチサブユニットタンパク質遺伝子産物のアセンブリをもたらす第2のサブユニットをコードしてもよい。標的細胞内での遺伝子産物の翻訳は、適用される細胞型に対する適切な局在化された翻訳後修飾を可能にする。こうした修飾は、遺伝子産物のフォールディング、局在化、相互作用、分解、および活性を調節してもよい。典型的な翻訳後修飾には、切断、リフォールディング、および/またはたとえばメチル化、アセチル化、もしくはグリコシル化などの化学修飾が含まれてもよい。
【0090】
(本明細書の他の箇所に記載されるとおり)別々のmRNAコンストラクト上に存在し、送達粒子と会合するように製剤化されるとき、これらは、異なるmRNAコンストラクトが同じ個々の送達粒子と会合され得るように共製剤化されてもよいし、異なるmRNAコンストラクトが異なる送達粒子と会合され得るように別々に製剤化されてもよい。
【0091】
mRNAを細胞に直接送達することによって、細胞におけるたとえばポリペプチドおよび/またはタンパク質などの所望の遺伝子産物の直接的かつ制御可能な翻訳が可能になる。mRNAの提供は、たとえばmiRNA介在性制御(以下の特定の実施形態において詳述される)などの細胞発現調節機構の使用を特定的に可能にするだけでなく、エピソームまたはゲノムに挿入されたDNAベクターが提供するであろう標的細胞のトランスクリプトームに対する永続的となり得る変化ではなく、産物の有限かつ枯渇性の供給も行う。
【0092】
本発明の実施形態において、核酸配列全体に組織特異性および安定性を付与し得る1つ以上の非翻訳領域(UTR)と機能的に組み合わされた少なくとも1つのポリペプチドをコードする配列を含むmRNA配列が提供される。「組織特異性」とは、mRNAによってコードされるタンパク質産物の翻訳が、UTRの存在によって調節されることを意味する。調節は、mRNAからタンパク質への検出可能な翻訳を可能にすること、低減させること、または遮断することをも含んでもよい。UTRはシスで、すなわち、同じポリヌクレオチド鎖上でmRNAに直接連結されてもよい。代替的な実施形態では、遺伝子産物をコードする第1の配列が提供され、核酸配列全体に組織特異性を付与する1つ以上のUTRを含む、第1の配列の一部にハイブリダイズするさらなる第2の配列が提供される。この後者の実施形態において、UTRは、遺伝子産物をコードする配列にトランスで機能的に連結している。
【0093】
本発明の特定の実施形態によると、たとえば健常な肝細胞、CNS、筋肉、皮膚などの非疾患組織における遺伝子産物の発現を防止または低減させるために必要であるとおりにmRNAに機能的に連結された、こうした関連核酸配列を含むmRNAが提供される。以後、このmRNAを「コードmRNA」と呼ぶ。したがって、5’キャップと、リボソーム動員ならびに組織および/または器官特異的発現に必要なUTR(排他的ではないが典型的にはORFの3’側に位置する)と、1つ以上のORFをそれぞれ規定する開始コドンおよび終止コドンとを含む、このコードmRNAコンストラクトまたは転写物が提供される。コンストラクトが全身的に導入されるか、または非疾患肝臓、肺、膵臓、乳房、脳/CNS、腎臓、脾臓、筋肉、皮膚、および/もしくは結腸消化管への局所的投与を介して導入されるとき、遺伝子産物の発現は防止または低減される。対照的に、前述の器官内に含まれる新生物細胞またはその他の疾患細胞は、典型的に、正常な非疾患細胞の発現パターンに従わず、まったく異なるmiRNAトランスクリプトームを有する。mRNAによってコードされるポリペプチドは、これらの異常細胞において特異的に翻訳されるが、隣接する健常細胞または非疾患細胞においては翻訳されないか、またはより低い程度に翻訳される。上述の器官へのmRNAコンストラクトの送達は、本明細書に記載される微粒子送達プラットフォームを介するか、または当技術分野で公知の任意の適切なやり方で達成されてもよい。細胞型特異的発現は、以下により詳細に記載されるものなどのマイクロRNA調節機構によって介在され得る。
【0094】
本発明のさらなる実施形態によると、たとえば肝細胞、CNS、筋肉、皮膚、腎臓など、抗原に対する免疫応答を生じさせるのに必要とされない組織または器官における遺伝子産物の発現を防止または低減させるために必要であるとおりにmRNAに機能的に連結された、こうした関連核酸配列を含むmRNAが提供される。5’キャップと、リボソーム動員ならびに組織および/または器官特異的発現に必要な1つ以上のUTR(排他的ではないが典型的にはORFの3’側に位置する)と、1つ以上のORFをそれぞれ規定する開始コドンおよび終止コドンとを含んでも含まなくてもよいコードmRNAコンストラクトまたは転写物が提供される。コンストラクトが対象に全身的にまたは局所投与を介して導入されるとき、遺伝子産物の発現は、典型的に免疫応答に必要とされない細胞および組織において防止または低減される。対照的に、体内または上記器官に含まれる免疫細胞、たとえばT細胞、B細胞、または異なるタイプの樹状細胞(DC:dendritic cells)を含む抗原提示細胞(APC:antigen presenting cells)などは、異なるmiRNAトランスクリプトームを有する。mRNAによってコードされるポリペプチドは、これらの免疫細胞において特異的に翻訳されるが、隣接する健常な細胞および組織においては翻訳されないか、またはより低い程度に翻訳される。上述の細胞および組織へのmRNAコンストラクトの送達は、本明細書に記載される微粒子送達プラットフォームを介するか、または当技術分野で公知の任意の適切なやり方で達成されてもよい。
【0095】
本明細書で定義される「治療成分」または「治療剤」は、治療介入の一部として個々のヒトまたは他の動物に投与されたときに、その個々のヒトまたは他の動物に対する治療効果に寄与する分子、物質、細胞、または生物を示す。治療効果は、治療成分自体によって引き起こされても、治療介入の別の成分によって引き起こされてもよい。治療成分は、コード核酸成分、特にmRNAであってもよい。コード核酸成分は、以下に定義されるとおりの治療増強因子をコードしてもよい。治療成分は薬物も含んでもよく、任意選択でたとえば小分子またはモノクローナル抗体(またはそのフラグメント)などの化学療法薬を含んでもよい。本発明の他の実施形態では、治療剤は、たとえばウイルスベクターなどの治療用ウイルスを含む。
【0096】
「治療効果」という用語は、対象に投与された物質、分子、組成物、細胞、または生物を含む薬理学的または治療的に活性な薬剤によって引き起こされる、動物の対象、典型的にはヒトにおける局所的または全身的な効果を示し、「治療介入」という用語は、こうした物質、分子、組成物、細胞、または生物の投与を示す。よってこの用語は、動物またはヒト対象における疾患の診断、治癒、緩和、処置、もしくは予防、または望ましい身体的もしくは精神的な発達および状態の増強における使用が意図される任意の薬剤を意味する。「治療有効量」という語句は、任意の処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で所望の局所的または全身的効果を生じるこうした薬剤の量を意味する。特定の実施形態では、薬剤の治療有効量は、その治療指数および溶解性などに依存する。たとえば、本発明の特定の治療剤は、こうした処置に適用可能な妥当な利益/リスク比を生じるために十分な量で投与されてもよい。感染性疾患または癌を含む疾患の処置の特定の状況において、「治療効果」は、感染性病原生物力価の減少、有益な細胞バイオマーカーの増加(例、白血球数の増加)、固体腫瘍体積の低減、癌細胞数の減少、観察される転移数の減少、平均余命の増加、癌細胞増殖の減少、癌細胞生存の減少、腫瘍細胞マーカーの発現の減少、および/または状態に関連するさまざまな生理的症状の寛解を含むがこれらに限定されないさまざまな手段によって明らかにされ得る。たとえばワクチン接種による予防などによるウイルス、細菌、または寄生虫感染の処置の特定の状況において、「治療効果」は、病原体チャレンジに対する完全もしくは部分的な耐性、ヒトもしくは動物対象における病原体に対する循環抗体の存在、またはワクチン効力のその他の公知の尺度によって示されてもよい。
【0097】
一実施形態では、治療が投与される対象は、哺乳動物(例、げっ歯類、霊長類、非ヒト哺乳動物、家畜動物(domestic animal)または家畜(livestock)、たとえばイヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ウシ、ウマ、ヒツジ、およびヤギなど)であり、適切にはヒトである。さらなる実施形態では、対象は、たとえば癌などの疾患の動物モデルである。たとえば、動物モデルは、ヒト由来の癌、適切には肝臓、肺、膵臓、乳房、脳、腎臓、筋肉、皮膚、および/または結腸消化管の癌の同所性異種移植動物モデルであり得る。さらなる実施形態では、対象は感染性疾患の動物モデルである。たとえば、動物モデルは1つ以上のウイルス、細菌、真菌、プリオン、または真核生物寄生体に感染していてもよく、またはこうした病原体に感染することとなる。
【0098】
本発明の方法の特定の実施形態において、対象はたとえば治療用ウイルス療法、化学療法、放射線療法、標的療法、ワクチン接種、および/または抗免疫チェックポイント療法などの治療的処置をまだ受けていない。さらに別の実施形態において、対象はたとえば上記の治療などの治療的処置を受けたことがある。なおさらなる実施形態において、対象はたとえば上記の治療などの治療的処置を受けている。
【0099】
さらなる実施形態では、対象は、癌性または前癌性組織を除去するための手術を受けたことがある。他の実施形態では、癌性組織は除去されておらず、たとえば癌性組織は、外科的介入を受けたときに対象の生命を危険にさらすおそれがある組織もしくは器官、または外科的手技が永続的な害もしくは致死性の相当なリスクをもたらし得る領域など、身体の手術不可能な領域に位置することがある。
【0100】
いくつかの実施形態において、提供されるコードmRNAコンストラクトは「治療増強因子」をコードしてもよい。本発明によると、治療増強因子は、所与の細胞、適切には標的細胞に対して治療効果を発揮するために別の同時投与された治療剤の能力を増強または促進し得る遺伝子産物またはポリペプチドである。標的細胞内またはその近傍に導入されるとき、治療増強因子の発現は、同時投与された治療剤と協働することによって、薬剤の治療活性を可能にするかまたは増強してもよい。他の実施形態において、治療増強因子は、同時投与または連続的に投与されるワクチンのアジュバントとして作用してもよい。アジュバントは、対象の自然免疫系を活性化するために使用され得る薬理学的または免疫学的物質である。アジュバントはこのやり方で、対象の自然免疫系が病原体からの感染に対してより迅速に応答することを可能にする。加えてアジュバントは、たとえばウイルス感染または細菌感染などの特定の感染病原体に特異的な適応免疫応答を刺激するように働いてもよい。加えていくつかのアジュバントは、有効な抗原提示を指示すること、ならびにTヘルパー1型(Th1:T helper type-1)免疫応答を刺激および増強することに効果的であってもよい。代替的に、治療増強因子は、同時投与または連続的に投与される弱毒化または改変ウイルス、たとえばワクチン製剤において使用される改変アデノウイルスなどに対するアジュバントとして作用してもよい。不活化ウイルスまたは生弱毒化ウイルスワクチンは典型的に、免疫応答を促進するためにアジュバントを必要とする。加えて、組み換えタンパク質ベースのサブユニットワクチンの固有の免疫原性も比較的低く、アジュバントが同時投与されることが望ましい。よって本発明の特定の実施形態において、アジュバント組成物の役割は、提示された抗原に応答して免疫細胞によって産生される中和抗体のレベルを増加させることである。
【0101】
本発明の特定の実施形態による組成物において、複数の治療増強因子が組み合わされてもよい。こうした実施形態では、各治療増強因子のコード配列は、別々のmRNA分子中に存在してもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上の治療増強因子に対する配列が同じmRNA分子上に存在してもよい。こうした場合、ポリシストロニックmRNA分子は、たとえば内部リボソーム進入部位(IRES)などのすべてのコード配列の発現に必要な配列をさらに含む。
【0102】
複数の異なるmRNA分子が1つ以上の送達系に含まれる実施形態では、たとえば粒子、リポソーム、ウイルスベクター系などの各送達系は、「ペイロード」として1つ以上のタイプのmRNA分子を含み得ることが予期される。すなわち、特定の実施形態におけるすべての送達ペイロードが、前記実施形態において提供されるmRNA分子のすべてを必ずしも含むわけではない。このようにして、本明細書に記載の標的化剤によって、異なる送達系およびそれらの関連配列を異なる標的細胞に向けることも可能であると考えられる。
【0103】
同様に、(本明細書の他の箇所に記載されるとおり)別々のmRNAコンストラクトが提供され、それらが送達粒子と会合するように製剤化される任意の実施形態において、これらは、異なるmRNAコンストラクトが同じ送達粒子と会合され得るように共製剤化されてもよい(すなわち、異なるmRNAが同じプロセスで一緒に送達粒子とパッケージングされてもよい)し、異なるmRNAコンストラクトが異なる送達粒子と会合され得るように別々に製剤化されてもよい。
【0104】
本発明の特定の実施形態のmRNAコンストラクトは、ポリヌクレオチド発現コンストラクトから合成されてもよく、これはたとえばDNAプラスミドなどであってもよい。この発現コンストラクトは、mRNAコンストラクトの転写が起こり得るように、転写の開始に必要な任意のプロモーター配列および対応する終結配列を含んでもよい。こうしたポリヌクレオチド発現コンストラクトは、それ自体で本発明の実施形態を含むことが予期される。
【0105】
サイトカイン
本発明の実施形態において、mRNAコンストラクトは、たとえばアジュバントとして作用するサイトカインなどのサイトカインに対する遺伝子産物をコードしてもよい。
【0106】
サイトカインは、細胞シグナル伝達において重要な小タンパク質の広範なカテゴリーである。サイトカインは、免疫調節剤として、自己分泌、パラ分泌、および内分泌シグナル伝達に関与することが示されている。サイトカインとしては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が挙げられる。サイトカインは、たとえばマクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、および肥満細胞などの免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞、およびさまざまな間質細胞を含む広範囲の細胞によって産生され、所与のサイトカインが2つ以上の細胞型によって産生されてもよい。サイトカインは細胞表面受容体を通じて作用し、免疫系において特に重要である。サイトカインは、液性免疫応答と細胞ベースの免疫応答とのバランスを調節し、特定の細胞集団の成熟、増殖、および応答性を調節する。サイトカインは、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子、およびケモカインとして分類されている。
【0107】
インターロイキン(IL:Interleukins)は、最初に白血球(white blood cells)(白血球(leukocytes))による発現が見られたサイトカイン(分泌タンパク質およびシグナル分子)のグループである。免疫系の機能は大部分がインターロイキンに依存しており、いくつかのインターロイキンのまれな欠損が記述されており、そのすべてが自己免疫疾患または免疫不全を特徴とする。インターロイキンの大部分は、ヘルパーCD4 Tリンパ球によって合成され、加えて単球、マクロファージ、および内皮細胞を通じて合成される。インターロイキンは、TおよびBリンパ球ならびに造血細胞の発生および分化を促進する。インターロイキンとしては、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン14(IL-14)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン16(IL-16)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン18(IL-18)、インターロイキン19(IL-19)、インターロイキン20(IL-20)、インターロイキン21(IL-21)、インターロイキン22(IL-22)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン24(IL-24)、インターロイキン25(IL-25)、インターロイキン26(IL-26)、インターロイキン27(IL-27)、インターロイキン28(IL-28)、インターロイキン29(IL-29)、インターロイキン30(IL-30)、インターロイキン31(IL-31)、インターロイキン32(IL-32)、インターロイキン33(IL-33)、インターロイキン35(IL-35)、およびインターロイキン36(IL-36)が挙げられる。
【0108】
IL-1アルファおよびIL-1ベータは、免疫応答、炎症反応、および造血の調節に関与するサイトカインである。IL-2は、応答性T細胞の増殖を誘導するリンホカインである。加えてIL-2は、いくつかのB細胞に対して、受容体特異的結合を介して、成長因子および抗体産生刺激因子として作用する。IL-3は、顆粒球およびマクロファージの産生、分化、および機能を制御することによって造血を調節するサイトカインである。IL-4は、B細胞の増殖および分化ならびにT細胞増殖を誘導する。IL-5は好酸球の増殖および活性化を調節する。IL-6は、B細胞の免疫グロブリン分泌細胞への最終分化、ならびに骨髄腫/形質細胞腫の増殖、神経細胞分化、および肝細胞における急性期反応物質の誘導において必須の役割を果たす。IL-7は、B細胞およびT細胞系統の両方の初期リンパ系細胞の成長因子として働くサイトカインである。IL-8は好中球走化性を誘導する。IL-9は、ヘルパーT細胞のIL-2非依存性およびIL-4非依存性増殖を支援するサイトカインである。IL-10は、活性化マクロファージおよびヘルパーT細胞によって産生されるIFN-ガンマ、IL-2、IL-3、TNF、およびGM-CSFを含むいくつかのサイトカインの合成を阻害するタンパク質である。IL-11は巨核球形成を刺激し、血小板の産生増加をもたらし、加えて破骨細胞を活性化し、上皮細胞増殖およびアポトーシスを阻害し、マクロファージメディエーター産生を阻害する。IL-12は、さまざまな細胞内病原体に対する正常な宿主防御を含むTh1細胞性免疫応答の刺激および維持に関与する。IL-13は、炎症および免疫応答の調節において重要であり得る多面的なサイトカインである。IL-14は、B細胞の生育および増殖を制御し、Ig分泌を阻害する。IL-15はナチュラルキラー細胞の産生を誘導する。IL-16はCD4+化学誘引物質である。IL-17は、活性化メモリーT細胞によって産生される強力な炎症性サイトカインである。IL-18は、IFNgの産生およびナチュラルキラー細胞活性の増加を誘導する。IL-20は、ケラチノサイトの増殖および分化を調節する。IL-21は、CD8+T細胞の活性化および増殖を共刺激し、NK細胞傷害性を増大させ、CD40がもたらすB細胞の増殖、分化、およびアイソタイプスイッチを増大させ、Th17細胞の分化を促進する。IL-22は、上皮細胞からのデフェンシンの産生を刺激し、STAT1およびSTAT3を活性化する。IL-23は、IL-17産生細胞の維持に関与し、血管新生を増加させるが、CD8 T細胞浸潤を低減させる。IL-24は、細胞生存、炎症性サイトカイン発現に影響を及ぼすことによって、腫瘍抑制、創傷治癒、および乾癬において重要な役割を果たす。IL-25は、好酸球増殖を刺激するIL-4、IL-5、およびIL-13の産生を誘導する。IL-26は、IL-10およびIL-8の分泌、ならびに上皮細胞上のCD54の細胞表面発現を増強する。IL-27は、Bリンパ球およびTリンパ球の活性を調節する。IL-28は、ウイルスに対する免疫防御において役割を果たす。IL-29は、微生物に対する宿主防御において役割を果たす。IL-30はIL-27の1本の鎖を形成する。IL-31は、皮膚の炎症において役割を果たす可能性がある。IL-32は、TNF-α、IL-8、およびCXCL2を分泌するように単球およびマクロファージを誘導する。IL-33は、2型サイトカインを産生するようにヘルパーT細胞を誘導する。IL-35は、Tヘルパー細胞活性化の抑制を誘導する。IL-36はDCおよびT細胞応答を調節する。
【0109】
リンホカインは、リンパ球として知られるタイプの免疫細胞によって産生されるサイトカインのサブセットである。リンホカインは、典型的にはT細胞によって産生されるタンパク質メディエーターであり、その細胞間のシグナル伝達によって免疫系応答を指示する。リンホカインは、マクロファージおよびその他のリンパ球を含む他の免疫細胞の感染部位への誘引、ならびにその後それらの免疫細胞が免疫応答を開始できるようにそれらを活性化することを含む、多くの役割を有する。リンホカインは、B細胞が抗体を産生するのを助ける。Tヘルパー細胞によって分泌される重要なリンホカインとしては、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF:granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)、およびインターフェロンガンマ(IFNγ)が挙げられる。
【0110】
GM-CSFは、顆粒球(好中球、好酸球、および好塩基球)および単球を産生するように幹細胞を刺激する。単球は循環から出て組織内に移動し、そこで成熟してマクロファージおよび樹状細胞になる。よってこれは免疫/炎症カスケードの一部であり、このために少数のマクロファージの活性化によって、感染と戦うために重要なプロセスであるマクロファージ数の増加を迅速にもたらすことができる。GM-CSFは好中球遊走も増強し、細胞表面上に発現される受容体の変化を引き起こす。IFNγは、感染に対する自然免疫および適応免疫に重要なサイトカインである。IFNγはマクロファージの活性化因子であり、主要組織適合性複合体クラスII分子発現の誘導因子である。免疫系におけるIFNγの重要性は、それがウイルス複製を直接阻害できることに部分的に由来し、最も重要なことは、それが免疫刺激効果および免疫調節効果を有することである。
【0111】
モノカインは、主に単球およびマクロファージによって産生されるタイプのサイトカインである。いくつかのモノカインとしては、IL-1、腫瘍壊死因子アルファ、アルファインターフェロンおよびベータインターフェロン、ならびにコロニー刺激因子が挙げられる。腫瘍壊死因子(TNF:Tumor necrosis factor)は、細胞シグナル伝達のために免疫系によって使用される小タンパク質のサイトカインである。TNFは、感染に対する炎症応答の一部として他の免疫系細胞を動員するために放出される。インターフェロン(IFN)は、いくつかのウイルスの存在に応答して宿主細胞によって作製および放出されるシグナル伝達タンパク質のグループである。IFN-αタンパク質は、主に形質細胞様樹状細胞(pDC:plasmacytoid dendritic cells)によって産生され、主にウイルス感染に対する自然免疫に関与する。IFN-βタンパク質は、線維芽細胞によって大量に産生され、主に自然免疫応答に関与する抗ウイルス活性を有する。コロニー刺激因子(CSF)は、造血幹細胞の表面の受容体タンパク質に結合することによって細胞内シグナル伝達経路を活性化することで、細胞を増殖させて血液細胞に分化させることができる分泌糖タンパク質である。
【0112】
ケモカインは、近傍の応答性細胞における指向性走化性を誘導する能力を有する小サイトカインのファミリーである。ケモカインは、機能的に恒常性であるものと炎症性であるものとに分けられる。恒常性ケモカインは、特定の組織において構成的に産生され、基底白血球遊走を担い、CCL14、CCL19、CCL20、CCL21、CCL25、CCL27、CXCL12、およびCXCL13を含む。炎症性ケモカインは、病理学的条件下で形成され、免疫細胞を炎症部位に誘引する炎症応答に能動的に関与し、CXCL-8、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CXCL10を含む。
【0113】
インターフェロン(IFN)は、いくつかのウイルスの存在に応答して宿主細胞によって作製および放出されるシグナル伝達タンパク質のグループである。IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、およびIFN-ωは、IFN-α/β受容体複合体に結合し、かつ標的細胞上の特異的受容体に結合して、ウイルスが自身のRNAおよびDNAを産生および複製するのを妨げるタンパク質の発現をもたらす。IFN-γは、細胞傷害性T細胞および1型Tヘルパー細胞によって放出されるが、IFN-γは、2型Tヘルパー細胞の増殖を妨げる。
【0114】
成長因子は、細胞増殖、創傷治癒、および時には細胞分化を刺激できる、天然に存在する物質である。成長因子としては、アドレノメデュリン(AM:Adrenomedullin)、アンジオポエチン(Ang:Angiopoietin)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(Bone morphogenetic proteins)(BMP1、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8、BMP9、BMP10、BMP11、BMP12、BMP12、BMP14、およびBMP15)、毛様体神経栄養因子(CNTF:Ciliary neurotrophic factor)、白血病阻害因子(LIF:Leukemia inhibitory factor)、インターロイキン6(IL-6)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、上皮成長因子(EGF:Epidermal growth factor)、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3、エリスロポエチン(EPO:Erythropoietin)、線維芽細胞成長因子1(FGF1:Fibroblast growth factor 1)、線維芽細胞成長因子2(FGF2)、線維芽細胞成長因子3(FGF3)、線維芽細胞成長因子4(FGF4)、線維芽細胞成長因子5(FGF5)、線維芽細胞成長因子6(FGF6)、線維芽細胞成長因子7(FGF7)、線維芽細胞成長因子8(FGF8)、線維芽細胞成長因子9(FGF9)、線維芽細胞成長因子10(FGF10)、線維芽細胞成長因子11(FGF11)、線維芽細胞成長因子12(FGF12)、線維芽細胞成長因子13(FGF13)、線維芽細胞成長因子14(FGF14)、線維芽細胞成長因子15(FGF15)、線維芽細胞成長因子16(FGF16)、線維芽細胞成長因子17(FGF17)、線維芽細胞成長因子18(FGF18)、線維芽細胞成長因子19(FGF19)、線維芽細胞成長因子20(FGF20)、線維芽細胞成長因子21(FGF21)、線維芽細胞成長因子22(FGF22)、線維芽細胞成長因子23(FGF23)、ウシ胎仔ソマトトロピン(FBS:Fetal Bovine Somatotrophin)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF:Glial cell line-derived neurotrophic factor)、ニュールツリン、ペルセフィン、アルテミン、増殖分化因子-9(GDF9:Growth differentiation factor-9)、肝細胞成長因子(HGF:Hepatocyte growth factor)、肝臓癌由来成長因子(HDGF:Hepatoma-derived growth factor)、インスリン、インスリン様成長因子-1(IGF-1:Insulin-like growth factor-1)、インスリン様成長因子-2(IGF-2)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、ケラチノサイト成長因子(KGF:Keratinocyte growth factor)、遊走刺激因子(MSF:Migration-stimulating factor)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP:Macrophage-stimulating protein)、ミオスタチン(GDF-8)、ニューレグリン1(NRG1:Neuregulin 1)、ニューレグリン2(NRG2)、ニューレグリン3(NRG3)、ニューレグリン4(NRG4)、脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain-derived neurotrophic factor)、神経成長因子(NGF:Nerve growth factor)、ニューロトロフィン-3(NT-3:Neurotrophin-3)、ニューロトロフィン-4(NT-4)、胎盤成長因子(PGF:Placental growth factor)、血小板由来成長因子(PDGF:Platelet-derived growth factor)、レナラーゼ(RNLS:Renalase) - 抗アポトーシス生存因子、T細胞成長因子(TCGF:T-cell growth factor)、トロンボポエチン(TPO:Thrombopoietin)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-α::Transforming growth factor alpha)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、血管内皮成長因子(VEGF:Vascular endothelial growth factor)、およびWntシグナル伝達経路タンパク質が挙げられる。
【0115】
上述したとおり、インターロイキン12(IL-12)は、T細胞およびNK細胞を含む免疫細胞に対する免疫刺激性サイトカインである。IL-12は、食細胞および抗原提示細胞によって特異的に産生され、抗腫瘍免疫応答を増強するヘテロ二量体サイトカインである。IL-12の強力な免疫刺激特性の結果として、全身投与すると重篤な副作用がもたらされ得るため、患者におけるその臨床適用が制限される。操作されたNK92による腫瘍部位でのIL-12の発現は、キメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)改変T細胞の抗腫瘍活性を増加させることが示されている(ルオ(Luo)ら、フロンティアズ・イン・オンコロジー(Front Oncol.)(2019)12月19日;9:1448)。腫瘍におけるIL-12誘導性IFNγ蓄積は、Tリンパ球またはその他の宿主免疫細胞(例、NK細胞)の腫瘍への浸透も促進し、それによって治療効果が増強されると考えられている(チナサミー(Chinnasamy)D.ら、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Cancer Res)2012:18/フミェレフスキ(Chmielewski)M.ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)2011;71/ケルカー(Kerkar)SP.ら、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J Clin Invest)2011;121/ジャクソン(Jackson)HJ.ら、ネイチャー・レビューズ・クリニカル・オンコロジー(Nat Rev Clin Oncol)2016;13)。
【0116】
本発明の実施形態において、本発明の組成物は、機能的IL-12またはその類似体もしくは誘導体をコードする少なくとも1つのORFを含むmRNAを含む。野生型IL-12は、35kDaのIL-12Aサブユニットおよび40kDaのIL-12Bサブユニットのヘテロ二量体を含むため、ORFはこれらのサブユニットの一方を含んでもよく、かつ他方のサブユニットをコードする別のmRNAと組み合わせて投与されることによって、細胞における機能的IL-12のアセンブリを可能にしてもよい。代替的に、機能的IL-12は、単一のORF内に両方のサブユニットを含むIL-12の改変された単鎖バージョンの形態であってもよい(たとえば、配列番号59を参照)。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態において、コードmRNAは、腫瘍微小環境において一過性に発現される。他の実施形態において、コードmRNAは、たとえば活性化T細胞およびNK細胞などのAPCまたは免疫細胞の生存、増殖、および/または分化の調節に関与するサイトカインまたはその他の遺伝子産物をコードする。非限定的な例として、コードmRNAは、本明細書に開示される任意のサイトカイン、より具体的には、たとえばIL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-17、IL-33、IL-35、TGFベータ、TNFα、TNFβ、IFNα、IFNβ、IFNガンマ、およびそれらの任意の組み合わせなどのサイトカインをコードし得る。
【0118】
マイクロRNA
マイクロRNA(miRNA)は、各々が約20~25ヌクレオチドを含有する非コードRNAのクラスであり、そのいくつかは、標的mRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)中の相補的標的配列に結合することによって遺伝子発現の転写後調節に関与し、そのサイレンシングをもたらすと考えられている。これらのmiRNA相補的標的配列は、本明細書においてmiRNA結合部位またはmiRNA結合部位配列とも呼ばれる。特定のmiRNAは、発現が高度に組織特異的であり、たとえばmiRNA-122およびその変異体は、肝臓に豊富に存在し、他の組織ではまれにしか発現されない(ラゴス-キンタナ(Lagos-Quintana)ら、カレント・バイオロジー(Current Biology)、2002;12:735-739)。
【0119】
したがってmiRNA系は、細胞に導入された核酸が標的組織中の選択された細胞型においてサイレンシングされ、他の細胞型において発現され得る強固なプラットフォームを提供する。特定の所与のmiRNAに対する標的配列を、標的細胞に導入するmRNAコンストラクトの特にUTR内に含めることによって、特定の導入遺伝子の発現をいくつかの細胞型では低減または実質的に排除する一方で、他の細胞型では残存させることができる(ブラウン(Brown)およびナルジニ(Naldini)、ネイチャー・レビューズ・ジェネティクス(Nat Rev Genet.)2009;10(8):578-585)。
【0120】
本発明の特定の実施形態に従って、複数のこうしたmiRNA標的配列を器官保護配列内に含ませ、次いでそれをmRNAコンストラクトに含ませ得ることが予期される。複数のmiRNA標的配列が存在するとき、この複数とはたとえば3つ以上、4つ以上、典型的には5つ以上のmiRNA標的配列を含んでもよい。これらのmiRNA標的配列は、mRNAコンストラクト内の特定のUTR内で連続的に、タンデムに、または予め定められた位置に配置されてもよい。複数のmiRNA標的配列は、器官保護配列全体の機能を支援または促進するように働く補助配列によって分離されてもよい。例として、適切な補助配列は、リンカーまたはスペーサー配列からなっていてもよく、この配列はランダム化されていてもよいし、たとえば「uuuaaa」などの特定の配列を含んでもよいが、他のスペーサー配列も使用され得る。スペーサー長は変化でき、かつスペーサー配列の反復を含むことができ、たとえばスペーサー「uuuaaa」は、連結されるべき任意の標的配列の各々の間に1回(すなわち、「uuuaaa」)、2回(すなわち、「uuuaaauuuaaa」 - 配列番号1)、3回、4回、5回、または6回含まれ得る。いくつかの実施形態では、結合部位配列間にスペーサー配列が存在しなくてもよい。
【0121】
miRNA-122は、健常な非疾患肝臓組織には豊富に存在するが、大部分の肝臓癌および疾患細胞において低減する(ブラコーニ(Braconi)ら、セミナーズ・イン・オンコロジー(Semin Oncol.)2011;38(6):752-763、ブラウンおよびナルジニ、ネイチャー・レビューズ・ジェネティクス(Nat Rev Genet.)2009;10(8):578-585)。上記の方法により、標的組織が肝臓であるとき、miRNA-122標的配列(たとえば、配列番号1)をmRNA配列の3’UTRに含めることによって、導入されたmRNA配列の翻訳を癌性肝細胞において促進でき、かつトランスフェクトされた健常細胞において低減または実質的に排除できることが見出された。
【0122】
同様にして、他のmiRNA標的配列を使用することによって、他の器官における癌細胞と健常細胞との間でもこうしたmRNAの示差的翻訳が可能である。適切な候補としては、miRNA-1、miRNA-125、miRNA-199、miRNA-124a、miRNA-126、miRNA-Let7、miRNA-375、miRNA-141、miRNA-142、miRNA-143、miRNA-145、miRNA-148、miRNA-194、miRNA-200c、miRNA-34a、miRNA-192、miRNA-194、miRNA-204、miRNA-215、およびmiRNA-30ファミリー(たとえば、miRNA-30a、b、またはc)に対する標的部位が挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0123】
表2は、miRNA配列のさらなる(非限定的な)例を示し、これは特定の器官および/または組織における発現が実証されており、かついくつかの場合には健常細胞と疾患細胞との間の示差的発現が実証されているものである。
【0124】
miRNA-1、miRNA-133a、およびmiRNA-206は、筋肉および/または心筋特異的miRNAの例として記載されている(センペーレ(Sempere)ら、ゲノム・バイオロジー(Genome Biology)、2004;5:R13;ルドウィグ(Ludwig)ら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)、2016;44(8):3865-3877)。miRNA-1は疾患において調節不全であることも実証されており、たとえば梗塞心臓組織においてmiRNA-1のダウンレギュレーションが検出されており(ボスチャンシック(Bostjancic)E、ら、カルディオロジー(Cardiology)、2010;115(3):163-169)、一方では横紋筋肉腫細胞株においてもmiRNA-1の劇的な低減が検出されている(ラオ(Rao)、プラカシュ(Prakash)Kら、FASEBジャーナル(FASEB J.)2010;24(9):3427-3437)。miRNA-1、miRNA-133a、およびmiRNA-206の使用は、特に本発明による組成物が筋肉内投与されるときに、所望であれば局所的な正常筋細胞における発現を低減させるように考慮されてもよい。
【0125】
miRNA-125は、表2に示されるとおりいくつかの組織において発現され、たとえば肝細胞癌(コッポラ(Coppola)ら、オンコターゲット(Oncotarget)2017;8);乳癌(マティー(Mattie)ら、モレキュラー・キャンサー(Mol Cancer)2006;5)、肺癌(ワン(Wang)ら、FEBSジャーナル(FEBS J)2009)、卵巣癌(リー(Lee)ら、オンコターゲット(Oncotarget)2016;7)、胃癌(シュー(Xu)ら、モレキュラー・メディシン・レポーツ(Mol Med Rep)2014;10)、結腸癌(トング(Tong)ら、バイオメディシン・アンド・ファーマコセラピー(Biomed Pharmacother)2015;75)、および子宮頸癌(ファン(Fan)ら、オンコターゲット(Oncotarget)2015;6);神経芽細胞腫、髄芽細胞腫(フェレッティ(Ferretti)ら、インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(lnt J Cancer)2009;124)、神経膠芽細胞腫(コルテス(Cortez)ら、ジーンズ・クロモソームス・アンド・キャンサー(Genes Chromosomes Cancer)2010;49)、および網膜芽腫(チャン(Zhang)ら、セル・シグナル(Cell signal)2016;28)などのいくつかの固形腫瘍においてダウンレギュレートされる。
【0126】
いくつかのmiRNA種は、多形神経膠芽腫細胞(チャン(Zhangh)ら、J Miol Med 2009;87/シャイ(Shi)ら、ブレーン・リサーチ(7Brain Res)2008;1236)においても非疾患脳細胞(例、ニューロン)と比較して示差的に発現され、miRNA-124aは最も調節不全のものの1つである(カルシ(Karsy)ら、ジーン・キャンサー(Gene Cancer)2012;3;リディック(Riddick)ら、ネイチャー・レビューズ・ニューロロジー(Nat Rev Neurol)2011;7;ガウアー(Gaur)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)2007;67/シルバー(Silber)ら、BMCメディシン(BMC Med)2008;6)。
【0127】
肺癌において、近年のメタ分析により、非小細胞肺癌におけるLet-7(ならびにmiRNA-148aおよびmiRNA-148b)のダウンレギュレーションが確認された(ラミチャネ(Lamichhane)ら、ディジーズ・マーカーズ(Disease Markers)2018)。
【0128】
同様に、miRNA-375発現は、健常な膵臓細胞と比較して、膵臓癌細胞においてダウンレギュレートされることが見出されている(シヅオ(Shiduo)ら、バイオメディカル・レポーツ(Biomedical Reports)2013;1)。膵臓において、miRNA-375発現は正常な膵臓細胞において高いが、疾患組織および/または癌性組織において有意に低いことが示されている(ソン(Song)、ゾウ(Zhou)ら、2013)。この発現は癌のステージに関連することが示されており、より進行した癌では発現がさらに低下する。miRNA-375は、3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ-1(PDK1:3-phosphoinositide-dependent protein kinase-1)mRNAを標的とし、したがってPI3-キナーゼ/PKBカスケードに影響を及ぼすことによって、膵臓β細胞におけるグルコース誘導性の生物学的応答の調節に関与すると考えられている(エル・オウアマリ(El Ouaamari)ら、ダイアベティス(Diabetes)57:2708-2717、2008)。miRNA-375の抗増殖効果は、この推測される作用様式に関係しており、これは癌細胞におけるそのダウンレギュレーションを説明してもよい。
【0129】
表2は、本発明の実施形態において使用され得る、特定の器官および/または組織に関連するmiRNAの非限定的な例を考察するものである。本発明は、所与のmiRNAまたはmiRNAのクラスが所与の器官または器官系内の第2の細胞型に対して第1の細胞型においてダウンレギュレートされる場合のみに限定されないことが認識されるだろう。反対に、たとえば器官もしくは器官系内に含まれるものなどの細胞型の間か、または異なる器官もしくは器官系の間に調節miRNAの示差的発現パターンが存在することのみが必要とされる。細胞間のタンパク質産物の対応する示差的翻訳を可能にすることによって望ましくないオフターゲット副作用を低減するために、本明細書に記載される組成物および方法を使用して、miRNA系の示差的発現を活用できる。これは、細胞型または組織間でのmRNAの示差的発現が所望される実施形態において、特に有用である。たとえば、アジュバントとして使用される場合に、炎症性サイトカインをコードするmRNAを、炎症の増加が所望されないたとえば皮膚、肝臓、腎臓、または結腸などの1つ以上の健常な組織では発現させずに、主に免疫細胞において発現させることが有利であってもよい。
【0130】
癌と隣接する健常組織との間のmiRNAの示差的発現によって、mRNAのmiRNAサイレンシングの使用を識別および特徴付けできるモデル系が表される。健常細胞と癌細胞との間の同様の示差的miRNA発現について証拠が見出されている癌の例としては、乳癌(ニガード(Nygaard)ら、BMCメディカル・ゲノミクス(BMC Med Genomics)、2009年6月9日;2:35)、卵巣癌(ワイマン(Wyman)ら、プロス・ワン(PloS One)、2009;4(4):e5311)、前立腺癌(ワタヒキ(Watahiki)ら、プロス・ワン(PloS One)、2011;6(9):e24950)、および子宮頸癌(ルイ(Lui)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2007年7月1日;67(13):6031-43)が挙げられる。特許文献1には、さまざまな癌細胞における発現レベルが異なる広範囲のmiRNAが記載されている。皮膚では、健常組織と隣接する黒色腫細胞との間の示差的発現miRNA発現も観察される。
【0131】
【0132】
免疫療法で患者を処置することは、オフターゲット効果の可能性に起因する安全性の問題を有することがある。コードmRNA配列の提供による特定のポリペプチドの発現であっても、特定の器官に対する負の影響を有し得る。したがって、たとえば肝臓、脳、乳房、肺、膵臓、結腸/胃腸管、皮膚、筋肉、および腎臓などの健常な組織を保護することは、臨床応用の成功のために最重要である。上記のものなどのmiRNAを使用して、特定の細胞、組織、および/または器官のタイプにおいて投与されたmRNAの発現を低下させて、それらの細胞、組織、および/または器官を任意のオフターゲット効果から保護できる。たとえば、特定の組織において高度に発現される特異的miRNAに対する標的配列を用いて健常細胞を保護することができ、たとえばmiRNA-1、miRNA-133a、および/またはmiRNA-206を用いて、健常な筋肉および/または心筋組織を保護できる。結果として、疾患細胞および健常細胞における示差的発現と必ずしも関連しないmiRNA標的配列を使用することが所望されてもよい。たとえば、miRNA-142およびmiRNA145は膵臓組織において発現し、一方でmiRNA-9は脳および肺において高発現するため、これらの組織の保護に使用できる。
【0133】
2つ以上の組織を保護するときは、複数のmiRNA標的配列の組み合わせが使用される。たとえば、miRNA-122、miRNA-203a、miRNA-1、およびmiRNA-30aに対する標的配列は、肝臓、皮膚、筋肉、および腎臓組織の細胞を保護するために一緒に使用される。
【0134】
よって本発明の組成物は、これまでの「実験的な」細胞療法またはウイルス療法の採用の成功を増強および促進するための実現可能な技術プラットフォームを表してもよい。
【0135】
本開示から明らかであるとおり、本発明は、治療、送達プラットフォーム(たとえば異なるナノ粒子組成物など)、治療剤(たとえば薬物、ワクチン、および/またはウイルスなど)、コードされたポリペプチドおよび標的細胞、組織、または器官のいくつかの可能な組み合わせに関係することが想定される。これらの可能性の各々およびすべては、mRNA配列によって供給されるコードポリペプチドの最適な発現に対する関係を有する。
【0136】
miRNA標的配列の1つ以上の特徴の最適化は、示差的発現を促進することによって健常な器官の保護を行うことに特定の効力をもたらし得ることが見出されている。同様に、特定の状況に従って、特定の器官、組織、または細胞型において得られる示差的発現を増加または減少させるように、こうした特徴を制御できる。さまざまな異なる細胞型においてさまざまな発現レベルが所望される状況が存在することがあり、本明細書に記載される1つ以上の特徴を変化させることによって、こうした結果を可能にするように標的配列が改変され得ることが意図される。加えて、miRNA標的部位配列は、同じ組織内または異なる組織内で2つ以上のmiRNAによる調節を受けるように改変され得る。
【0137】
配列一致:標的配列が相補的miRNA配列と正確に一致する程度(すなわち、miRNA配列と結合部位配列との間のミスマッチの数)は、結果として生じる発現サイレンシングの効力に影響を与えることが示されている。たとえば、正確な一致または完全一致は、miRNA結合部位配列を有する配列のより迅速な分解をもたらすことが示されている(ブラウンおよびナルジニ、ネイチャー・レビューズ・ジェネティクス(Nat Rev Genet.)2009;10(8):578-585。したがって、特定の細胞型において特定のポリペプチド産物の完全または完全に近いサイレンシングが必要とされるとき、その細胞型に関連するmiRNA配列と正確に一致するか、または最大で1塩基対ミスマッチ以下を有するmiRNA標的配列を選択することが所望されてもよい。同様に、特定の細胞型において発現の欠如ではないが低減が所望されるときは、ミスマッチの数が増加したmiRNA結合部位配列を選択して、これを可能にできる。最終的にプロセシングされた成熟5Pまたは3P miRNAを有するステムループpre-miRNAの配列、および下線を引いたpre-miRNA中の成熟miRNAと二重鎖を形成する配列、ならびに成熟miRNA配列および二重鎖形成配列自体を含む、本明細書で言及されるいくつかのmiRNA配列の例を以下の表3に示す。細胞において有意なレベルで発現された成熟miRNA(5P鎖および3P鎖のいずれかまたは両方であり得る)をマークしている(*)。表4は、pre-miRNAにおいて二重鎖を形成する元の不完全一致の標的配列、続いて成熟miRNA配列、および過剰発現された成熟miRNA配列と完全一致するように設計された改変相補的標的配列の開発を示す。従来の5’から3’方向の改変標的配列を太字で示す。
【0138】
【0139】
【0140】
miRNA配列の変異体および多型が見出され得ること、ならびに類似の特性を有するmiRNAファミリーが存在することが公知である。本発明では、特定のmiRNA配列および関連する結合部位のすべての適切な変異体およびファミリーメンバーが適切なときに使用され得ることが想定される。他方で、明らかに密接に関連するmiRNA配列が、異なる発現プロファイルを有し得る(サン(Sun)ら、ワールド・ジャーナル・オブ・ガストロエンテロロジー(World J Gastroenterol)。2017年11月28日)ため、場合によっては文献を参照することによって、特定の置換が適切かどうかを決定することが必要となろう。たとえばLet-7は、いくつかの関連する変異体を有するより広いファミリーの一部であり、それらの変異体はLet-7aからLet-7kなどと示され得る。上記で考察したとおり、こうした変異体および多型は、miRNA介在性サイレンシングを可能にする自身の効力が異なることがあり、したがって特定の細胞型における所望のレベルのサイレンシングを可能にするために特定の選択を行い得ることが意図される。
【0141】
mRNAコンストラクト中の複数のmiRNA標的配列の存在は、供給される単数または複数のポリペプチドの示差的発現の効力の改善を可能にする。理論に結び付けられるものではないが、標的部位の数が増加すると、miRNAによる翻訳阻害の可能性が増加すると考えられる。複数のmiRNA標的部位は、実質的に同じ標的配列の複数のコピーを含むことができ、それによって冗長性が導入される。代替的または付加的に、複数の標的配列は、実質的に異なる配列を含むことができ、それによってmRNAコンストラクトが2種以上のmiRNAに標的にされることを可能にする。上記の器官およびそれらの関連する特異的miRNA発現の考察から明らかであるとおり、このようにして、2つ以上の細胞型について、および/または2つ以上の器官において、供給されたmRNAコンストラクトの示差的発現が達成され得る。両方のアプローチが、同じ配列または複数の配列内で可能であると考えられる。同じmiRNA配列に対する標的であることが意図されるが、たとえばLet7などの同じファミリーの異なるmiRNA変異体に結合するために差異を有する標的部位が含まれる、中間のアプローチも想定される。
【0142】
複数の標的部位の使用に関連するいくつかの利点には、単一の器官内で本発明のmRNA配列によって供給されるポリペプチドの示差的発現の効率の増加が含まれる。異なる結合部位配列、または2つ以上の組織もしくは器官のタイプに適用可能な配列を使用することによって、2つ以上の器官または組織における異なる細胞型において示差的発現を達成することを可能にできる。これは、本発明による組成物の全身投与が使用され、2つ以上の器官におけるオフターゲット効果を回避する必要があるときに望ましいことがある。
【0143】
局所化または標的化した投与であっても、供給されたmRNAコンストラクトは、それらが意図されていない器官、組織、および/または細胞に遭遇または蓄積する可能性がある。特に、肝臓および脾臓組織は、これらの器官の生理学的機能のために、投与された組成物を蓄積することがある。これらの場合、オフターゲット効果を回避するために、供給されるコンストラクトが、これらの組織における発現の低減を可能にするmiRNA標的配列を含むことが有利であってもよい。逆に、いくつかの器官、組織、および/または細胞型においては発現が促進されるが、他のものでは促進されないことが望ましいことがあり、これはそれに応じたmiRNA標的配列の選択によって達成できる。
【0144】
miRNA標的部位の特定の組み合わせは、標的器官の特定の組み合わせに関連でき、これは異なる状況において特に有効であってもよい。たとえば、投与された組成物は肝臓および脾臓に蓄積する可能性があるため、それらの器官に関連するmiRNA標的配列を使用することによって、組成物と接触し得る健常細胞に指向された保護を与えることができる。たとえば、結合部位配列は、miRNA-122およびmiRNA-142の各々、または肝臓および脾臓関連miRNA配列の任意のその他の組み合わせ、たとえば表2においてこれらの器官について列挙されるものの任意の組み合わせなどに対する1つ以上の標的を提供し得る。こうした組み合わせは、たとえばmiRNA-122、miRNA-125、およびmiRNA-199(肝臓)から選択される少なくとも1つの標的部位の少なくとも1つのコピー;miRNA-192、miRNA-194、miRNA-204、miRNA-215、およびmiRNA-30a、b、c(腎臓)から選択される少なくとも1つの結合部位配列の少なくとも1つのコピー;ならびにmiRNA-142(脾臓)に対する結合部位の少なくとも1つのコピーなどを含み得る。
【0145】
こうしたアプローチは、特定の種類の送達ナノ粒子に特に有利であってもよい。たとえば、リポソームベースのナノ粒子は、肝臓、腎臓、および脾臓に蓄積する傾向があるかもしれない。他のナノ粒子タイプまたは代替的な投与アプローチは、異なる器官または組織に蓄積することがあり、あるいは組成物の標的化によって特定の器官または組織の発現調節が特に必要となることがある。たとえば、筋肉内投与は筋肉組織における蓄積をもたらすことがあり、皮下投与は皮膚組織における蓄積をもたらすことがあり、その影響に対する保護からそれらの細胞型は利益を受けるだろう。したがって、複数の器官における望ましくない発現からの広範な保護を与えるmiRNA結合部位配列を含む、一般的な、おそらくはより長い配列を選択するか、またはより短い配列および/もしくは反復結合部位配列の包含を可能にし得る、特定の状況において必要とされる1つ以上の器官における特異的保護を可能にする特定のmiRNA結合部位配列を選択することが可能である(下記参照)。このようにして、送達されるmRNA配列を送達様式に関して最適化できる(またはその逆も同様である)。
【0146】
いくつかの場合には、器官保護配列において使用されるmiRNA標的配列は、処置される組織または器官と関連していなくてもよく、前記組織および器官内の健常細胞と疾患細胞との間の示差的発現をもたらすように設計されていなくてもよい。むしろmiRNA結合配列は、処置することが意図されない器官におけるオフターゲット効果を防止するように選択されてもよい。たとえば、本発明による組成物および方法は、たとえば黒色腫の処置などの皮膚の処置のために設計され得る。皮膚への組成物の適用は、たとえば腫瘍への直接注射または腫瘍に直接つながる血液供給への注射などによって、局所的または腫瘍内(IT:intratumoral)に行われ得る。しかしこうした場合、組成物は、血流、リンパ系によって取り込まれる可能性があり、またはこれらの手段もしくはその他の手段によって、たとえば肝臓、腎臓、および/もしくは脾臓などの皮膚以外の器官に接触および/もしくは蓄積し得る。こうした場合、miRNA標的配列は、望ましくない体内分布に適応し、こうしたオフターゲット器官内でのコードmRNAの発現を防止するように選択されてもよい。たとえば、肝臓、腎臓、および脾臓に関連するmiRNA標的配列の使用が選択されてもよく、それによってこれらの器官内に含まれる健常細胞内での発現が防止されてもよい。これを可能にし得るmiRNA標的配列の可能な組み合わせの例が上記に示される。
【0147】
結合部位配列とmiRNA配列との間の完全一致は、miRNA介在サイレンシングを起こすために必要とされず、かついくつかのmiRNA配列(特に類似の細胞型内に存在する配列)はかなりの類似性を有するので、2つ以上のmiRNA配列に対する標的を提供し得る配列を考案できる可能性があることも想定される。たとえば、miRNA-122およびmiRNA-199は類似の結合部位配列を有し、たとえばmiRNA-122結合部位配列をわずかに改変することなどによって、両方のmiRNAに実質的に相補的である配列を設計してmiRNA標的配列として含ませることができる。このようにして、miRNA-122およびmiRNA-199の両方がこうした配列に結合し、mRNAの分解を増加させ得る。同様に、Let-7 miRNAに対する標的配列は、Let-7ファミリーの他のメンバーに対する標的配列として働き得る。異なるmiRNAの結合部位配列を、任意の適切なアラインメント技術によってアラインメントして、共有ヌクレオチドについて比較することができ、それによってそれらの共有ヌクレオチドを含む結合部位配列を設計できる。
【0148】
本発明の特定の実施形態において、特定の標的部位配列がmRNA内で反復される回数は、結合部位配列が介在するサイレンシングの効力に影響することがある。たとえば、1つのmiRNA標的部位の反復数を増加させることによって、関連miRNAがそれに結合する可能性を増加させることができ、よって翻訳が起こる前の翻訳阻害または分解の可能性を増加させることができる。結果として、特定の細胞型においてより完全なmiRNA介在性サイレンシングが必要とされるとき、それらの細胞において発現されるmiRNAに適した標的配列のより多くの反復が使用され得る。同様に、本明細書において考察される他のアプローチのいずれかを伴うか、または伴わずに、より少ない結合部位配列を含ませることによって、低減するが欠如しない発現が達成され得る。したがって、mRNA中に同じ結合部位配列を1回、2回、3回、4回、5回、またはそれ以上提供することができ、かつそれを単独で提供するか、または他のmiRNAの標的部位配列と組み合わせて提供できる。
【0149】
特定の実施形態によると、mRNA配列内に含まれるmiRNA標的部位の順序は、得られる器官保護効力に影響することがある。たとえば、miRNA-122、let7b、miRNA-375、miRNA-192、miRNA-142(肝臓、肺、乳房、膵臓、腎臓、および脾臓細胞に存在する)に対する標的配列は、この順序で提供することもできるし、たとえば以下などのいくつかの他の順列で提供することもできる。
miRNA-122 - miRNA-375 - Let7 - miRNA-192 - miRNA-142;
miRNA-122 - miRNA-375 - Let7 - miRNA-142 - miRNA-192;または
miRNA-122 - Let7 - miRNA-375 - miRNA-142 - miRNA-192。
【0150】
別の例として、miRNA-122、Let7a、miRNA-142、miRNA-30a、miRNA-143(肝臓、肺/結腸、脾臓/造血細胞、腎臓、および結腸細胞に存在する)に対する標的配列は、この順序で提供することもできるし、たとえば以下などのいくつかの他の順列で提供することもできる。
miRNA-122 - Let7a - miRNA-142 - miRNA-30a - miRNA-143;
miRNA-122 - miRNA-142 - Let7a - miRNA-143 - miRNA-30a;または
miRNA-122 - miRNA-30a - Let7a - miRNA-143 - miRNA-142
【0151】
以下により詳細に記載される本発明の特定の実施形態において、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30a(肝臓、結腸、および腎臓に存在する)に対する標的配列は、たとえば以下などのさまざまな組み合わせで提供することができる。
miRNA-122 - miRNA-192 - miRNA-30a;
miRNA-122 - miRNA-30a - miRNA-192;または
miRNA-192 - miRNA-122 - miRNA-30a
【0152】
以下により詳細に記載される本発明のさらなる実施形態において、Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30a(肝臓、結腸、脾臓、肺、および腎臓に存在する)に対する標的配列は、たとえば以下などのさまざまな組み合わせで提供することができる。
Let7b - miRNA-126 - miRNA-30a;
Let7b - miRNA-30a - miRNA-126;または
miRNA-126 - Let7b - miRNA-30a
【0153】
本明細書において考察されるとおり、こうした組み合わせは、特定の癌の処置、またはワクチンもしくはアジュバント発現系における使用のために設計された組成物の投与によって影響を受けやすい組織を保護するのに有用であり得る。
【0154】
さらなる例として、miRNA-122、miRNA-203a、miRNA-1、miRNA-30a(肝臓、皮膚、筋肉/心筋、および腎臓に存在する)に対する標的配列は、この順序で提供することもできるし、たとえば以下などのいくつかの他の順列で提供することもできる。
miRNA-122 - miRNA-203a - miRNA-1 - miRNA-30a;
miRNA-122 - miRNA-1 - miRNA-203a - miRNA-30a;または
miRNA-122 - miRNA-30a - miRNA-1 - miRNA-203a
【0155】
ワクチン、アジュバント、および類似のアプローチに関連して以下に考察されるとおり、こうした組み合わせは、免疫応答を誘導するように設計された組成物の投与によって影響を受けやすい組織を保護するのに有用であり得る。
【0156】
したがって本発明は、mRNAによって送達されるコード配列、およびどの細胞型に送達するかによって調整可能な異なるアプローチを選択することを可能にする。言い換えると、本発明によって可能になる示差的発現は、必要とされるいかなる発現レベルまたは発現低下も可能にするために「構成可能」である。
【0157】
別の実施形態において、送達されたmRNAは、免疫刺激タンパク質または抗免疫抑制タンパク質をコードしてもよいし、別のやり方で免疫応答を誘導するように作用してもよい。こうした場合、標的疾患細胞におけるコード産物の最大限の発現が所望されてもよいが、標的器官の周囲の健常組織における発現を低減させるがなおも存在させることも所望されてもよい。他方で、オフターゲット免疫応答および起こり得る全身反応を防止するために、特定の組織(たとえば脳または他の神経組織など)におけるこうした免疫刺激産物の発現を完全に回避すること、および/または組成物が蓄積しやすい細胞、組織、および器官における発現を低減させることが望ましいことがある。したがって一例では、miRNA標的配列は、標的疾患細胞における完全な発現を可能にし、標的器官における健常細胞での発現を部分的に低下させ、一方で神経組織および蓄積部位における発現をより完全に低下させるように、上記で考察したアプローチの1つ以上によって決定され得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるmRNA配列を単一の組成物中に提供してもよい。これらの異なる配列は、異なるポリペプチドおよび/または異なるmiRNA標的部位をコードし得る。このようにして、単一の組成物が複数の異なるポリペプチドの発現を可能にし得る。別々のmRNA配列においてmiRNA標的配列の異なる組み合わせを使用することによって、所望の目的に従って、異なる細胞型または標的器官が特定のポリペプチドを発現するか、または特定のポリペプチドの発現から保護されることが可能となる。たとえば、肝臓および脳の健常細胞をポリペプチド「A」の発現から保護する必要があるが、健常な脳においてポリペプチド「B」を発現し、肝臓では発現しないことが所望されるとき、第1のmRNA配列は、「A」の配列と共にmiRNA-122、miRNA-125a、およびmiRNA-124aに対する標的部位を含んでもよく、一方で第2のmRNA配列は、「B」の配列と共にmiRNA-122およびmiRNA-125aに対する結合部位を含み得る。
【0159】
当業者は、器官および細胞型の所与のセットにおける発現の任意の組み合わせを達成するために、miRNA標的部位、ポリペプチド配列、および複数のmRNA配列の組み合わせを考案できることが認識され得る。これらの配列に関係する関連器官および組織のタイプは、上記および表2で考察されている。
図1は、本発明のいくつかの実施形態によるmRNAコンストラクトの概略図を示す。ORFは開始コドンに先行され、終止コドンで終結し、その後の3’UTRに一連の最大5つ以上の結合部位配列が存在する。
図1に示すとおり、OPSを規定するmiRNA標的部位(BS1~BS5)は、スペーサーによって分離されていてもよいし、好ましいときはスペーサーがまったくなくてもよい。ORFは、たとえば本明細書に記載のポリペプチドなどをコードし得る。任意の実施形態において終止コドンの可変性が想定され、すべての実施形態において、ORFと結合部位配列との間に終止コドンが存在しないことがある。
【0160】
本発明によって供給されるmRNA配列のUTRは、標的器官内の細胞型の1つにおいて発現されるUTR配列の一部または全部に対する類似性、たとえば90%を超える類似性などを有するように選択され得る。特定の細胞型は、発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる遺伝子を有することがあり、UTR配列は、たとえば関連するmRNA配列の安定性または分解を促進することなどによって、この制御に介在できる。
【0161】
一例として、癌細胞においてアップレギュレートされることが公知である遺伝子に関連するUTRは、これらの癌細胞における自身の安定性および翻訳を促進するたとえばmiRNA結合部位配列などの1つ以上の特徴を有してもよい。供給されるmRNA配列に類似の配列を組み込むことによって、安定性および翻訳が癌性細胞において改善されるが、非癌性細胞または健常細胞においては改善されないようにできる。
【0162】
特定の状況において、標的組織における異なる細胞型において示差的発現を示すmiRNA配列に対する2つ以上の候補が存在し得る可能性がある。こうした場合には、mRNAコンストラクトに複数のmiRNA標的配列が含まれること、およびこれらの配列が実質的に異なる配列であり得ることが有利であってもよい。しかし、複数のmiRNA標的配列の各々が実質的に同じ配列であり得ることも想定される。
【0163】
サイトカインとの組み合わせ
本明細書に記載される組成物および方法は、病原生物からの疾患または感染に対する免疫応答を誘導するように作用し得ることが予期される。特に、癌細胞に対して免疫応答が誘導されてもよい。発癌のプロセスはしばしば、癌細胞が免疫系を逃れようとするやり方を含み、それはこれらの細胞によって産生および提示される抗原に対する変化を伴う。
【0164】
いくつかの実施形態では、本発明によって提供されるmRNAは、二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE:bispecific T-cell engager)、抗免疫抑制タンパク質、または免疫原性剤であるタンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される「抗免疫抑制タンパク質」という用語は、免疫抑制経路を阻害するタンパク質である。
【0165】
本明細書で使用される「免疫原性剤」という用語は、炎症性または免疫原性免疫応答を増加させるタンパク質を示す。特定の実施形態では、抗免疫抑制および免疫原性剤は、抗腫瘍免疫応答を誘導する。こうした薬剤の例としては、免疫チェックポイント受容体(例、CTLA4、LAG3、PD1、およびPDL1など)に結合してそれを阻害する抗体もしくはその抗原結合フラグメント、炎症性サイトカイン(例、IFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSFなど)、または活性化受容体(例、FcγRI、FcγIIa、FcγIIIa、および同時刺激受容体など)に結合してそれを活性化するタンパク質が挙げられる。特定の実施形態では、タンパク質はEpCAM、IFNβ、抗CTLA-4、抗PD1、抗PDL1、A2A、抗FGF2、抗FGFR/FGFR2b、抗SEMA4D、CCL5、CD137、CD200、CD38、CD44、CSF-1R、CXCL10、CXCL13、エンドセリンB受容体、IL-12、IL-15、IL-2、IL-21、IL-35、ISRE7、LFA-1、NG2(SPEG4としても公知である)、SMAD、STING、TGFβ、VEGF、およびVCAM1から選択される。
【0166】
本発明は、細胞ベースの治療において使用される標的細胞集団に、機能的巨大分子をコードするmRNAを供給する組成物を包含する。いくつかの実施形態では、標的細胞集団は、遺伝子操作されたT細胞集団である。
【0167】
コードmRNAを使用して、免疫細胞の集団または免疫細胞集団の組み合わせを対象の特定の部位に誘引してもよい。いくつかの実施形態では、コードmRNAおよび送達粒子は、免疫細胞を腫瘍微小環境に誘引するために使用される。いくつかの実施形態において、コードmRNAおよび送達粒子は、腫瘍微小環境への免疫細胞の不十分な遊走を克服するために使用される。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、B細胞、たとえばマクロファージもしくは樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、コードmRNAおよび送達粒子は、T細胞を腫瘍微小環境に誘引するために使用される。
【0168】
コードmRNAは、腫瘍微小環境へのT細胞の不十分な遊走を克服するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、送達粒子は、腫瘍微小環境を特異的に標的とし、コードmRNAは、腫瘍微小環境にT細胞を誘引するか、または別様に動員する遺伝子産物をコードする。いくつかの実施形態では、コードmRNAはケモカインを発現する。非限定的な例として、コードmRNAは、T細胞を誘引するケモカイン、たとえばCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL20、CCL22、CCL28、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、XCL1、およびこれらの任意の組み合わせなどをコードし得る。たとえば自己免疫疾患など、逆の効果が所望される状況において、コードmRNAは、上記因子のブロッカー、アンタゴニスト、および/または阻害剤を発現し得る。
【0169】
コードmRNAは、腫瘍微小環境に送達され、その中で一過性に発現されてもよい。いくつかの実施形態において、コードmRNAは、たとえば活性化T細胞およびNK細胞などの、腫瘍応答における免疫細胞の生存、増殖、および/または分化の調節に関与するサイトカインまたはその他の遺伝子産物をコードする。非限定的な例として、コードmRNAは、たとえばIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-17、IL-33、IL-35、TGFベータ、およびそれらの任意の組み合わせなどのサイトカインをコードし得る。再び、たとえば自己免疫疾患など、逆の効果が所望される状況において、コードmRNAは、上記因子のブロッカー、アンタゴニスト、および/または阻害剤、たとえばTGFベータの阻害剤などを発現し得る。
【0170】
mRNAを供給する組成物は、特定の細胞サブタイプを標的とし、それらに結合すると、受容体介在性エンドサイトーシスを刺激することによって自身が運搬する合成mRNAを細胞に導入することで、その細胞が合成mRNAを発現し得るようにするように設計されてもよい。導入遺伝子の核輸送および転写は必要とされないので、このプロセスは迅速かつ効率的である。
【0171】
いくつかの実施形態では、コードmRNAは、免疫細胞(たとえば共刺激物質など)もしくは免疫経路に関連する受容体もしくはその他の細胞表面タンパク質、またはこうした受容体を標的とする分子をコードしてもよい。たとえば、コードmRNAは、次のうちの1つ以上から選択される以下の細胞受容体およびそれらのリガンドを標的とする分子をコードしてもよい。CD40、CD40L、CD160、2B4、Tim-3、GP-2、B7H3、およびB7H4。同様に、コードmRNAは、GM-CSF、TLR7、およびTLR9のうちの1つ以上から選択される樹状細胞活性化因子をコードしてもよい。一実施形態では、コードmRNAは、1つ以上のT細胞膜タンパク質3阻害剤をコードする。一実施形態では、コードmRNAは、NF-κBの1つ以上の阻害剤をコードする。
【0172】
Toll様受容体(TLR:Toll-like receptor)ファミリーは、病原体認識および自然免疫の活性化に関与する。特にTLR8は、一本鎖RNAを認識でき、したがって転写因子NF-κBの活性化および抗ウイルス応答によるssRNAウイルスの認識において役割を果たす。したがって、コードmRNAがたとえばTLR8などのTLRファミリーのメンバーをコードする実施形態は、抗ウイルス応答が所望されるときに考慮される。
【0173】
いくつかの実施形態では、mRNA送達系を使用して、T細胞を所望の表現型に向けてプログラムする1つ以上の薬剤をコードするmRNAを送達してもよい。いくつかの実施形態では、mRNAナノ粒子送達組成物を使用して、所望のT細胞表現型の特徴であるマーカーおよび転写パターンを誘導してもよい。いくつかの実施形態では、mRNAナノ粒子送達組成物を使用して、CD26L+セントラルメモリーT細胞(Tcm:central memory T cells)の発生を促進してもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、標的細胞集団における細胞分化を制御するために、1つ以上の転写因子をコードするmRNAを供給する。いくつかの実施形態では、転写因子は、CD8 T細胞における発生のエフェクターからメモリーへの移行を制御するFoxo1である。
【0174】
いくつかの実施形態では、mRNA送達組成物は、たとえばT細胞上に見出される表面抗原などのT細胞マーカーに特異的な表面アンカー標的化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、表面アンカー標的化ドメインは、ナノ粒子をT細胞に選択的に結合し、受容体誘導性エンドサイトーシスを開始してmRNAナノ粒子送達組成物を内部移行させる抗原に対して特異的である。いくつかの実施形態において、表面アンカー標的化ドメインは、CD3、CD8、またはそれらの組み合わせに選択的に結合する。いくつかの実施形態において、表面アンカー標的化ドメインは、CD3、CD8、またはそれらの組み合わせに選択的に結合する抗体であるか、またはそれに由来する。
【0175】
送達プラットフォーム
標的細胞へのコードヌクレオチド配列の導入は、細胞外空間から細胞内環境へ所望の物質を移動させるために、送達剤または「インビボ送達組成物」の使用を必要とすることが多い。こうした送達剤/組成物は、しばしば送達粒子を含んでもよい。送達粒子は、食作用を受け、かつ/または標的細胞と融合することがある。送達粒子は、封入によって、またはマトリックスもしくは構造内に物質を含むことによって、所望の物質を含有してもよい。
【0176】
本明細書で使用される「送達粒子」という用語は、封入、マトリックス内での保持、複合体の形成、表面吸着、またはその他の手段によって治療成分を含み得る粒子を含む薬物または生物学的分子送達系を示す。これらの系は、たとえばコード核酸配列などの治療成分を標的細胞に送達できる。分子または物質の直接投与と比較して、送達粒子の使用は、作用部位に送達される物質の量、時間、および/または放出動態を制御することによって、送達の効力だけでなく安全性も改善してもよい。送達粒子系は、物質または薬物が所望の治療標的位置に到達することを可能にするために生物学的膜を横断することにも熟達している。送達粒子はマイクロスケールであってもよいが、特定の実施形態では、典型的にはナノスケール、すなわちナノ粒子であってもよい。ナノ粒子は、典型的には直径が少なくとも50nm(ナノメートル)、適切には少なくとも約100nm、典型的には最大で150nm、200nmのサイズであるが、任意選択的には最大で300nmである。本発明の一実施形態では、ナノ粒子は、少なくとも約60nmの平均直径を有する。これらのサイズの利点は、これが、粒子が細網内皮系(単核食細胞系)クリアランスの閾値未満であること、すなわち粒子が身体の防御機構の一部として食細胞によって破壊されないほど十分に小さいことを意味することである。これは、本発明の組成物のために静脈内送達経路を使用することを容易にする。送達粒子内に含まれる活性物質をそれらの標的組織に投与および送達するために使用される経路は、疾患、特に感染性疾患を処置するときに非常に重要な因子である。これらの経路は、それらがどのように適用されるかに依存して、異なるレベルの効力を有することがある。本発明の特定の実施形態では、送達粒子の投与は通常、たとえば皮下、静脈内、または動脈内投与などによる全身的なものである。時折、疾患のタイプまたは重篤度によって、送達粒子は、罹患した器官または組織に、たとえば腫瘍内投与などによって直接適用されてもよい。
【0177】
ナノ粒子の組成物の代替的な可能性としては、ポリ乳酸(PLA:polylactic acid)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA:poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリカプロラクトン、脂質またはリン脂質ベースの粒子、たとえばリポソームまたはエキソソームなど;タンパク質および/または糖タンパク質に基づく粒子、たとえばコラーゲン、アルブミン、ゼラチン、エラスチン、グリアジン、ケラチン、レグミン、ゼイン、ダイズタンパク質、およびたとえばカゼインなどの乳タンパク質など(ロチャロエンカル(Lohcharoenkal)ら、バイオメッド・リサーチ・インターナショナル(BioMed Research International);2014巻(2014));コロイド状ナノ粒子;ならびにたとえば金、銀、アルミニウム、銅酸化物、金属有機サイクルおよびケージ(MOC:metal-organic cycles and cages)などの金属または金属化合物に基づく粒子などが挙げられる。特定の実施形態において、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)は、高い生体適合性および生分解性を有するため、本発明の送達粒子において使用されてもよい。PLGAは、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)によって1989年に臨床使用が承認された。それ以来、広範囲の薬物および生体分子の持続放出製剤に対してPLGAが好まれてきた。PLGAは、同様にミセルベースのナノ粒子を作製するために、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)と共製剤化されてもよい。加えて、PLGAおよびPEGのジブロックコポリマー、またはPEG-PLGA-PEGトリブロックコポリマーを使用してミセルが調製されてもよい。
【0178】
特に、核酸の送達のためにポリエチレンイミン(PEI:polyethyleneimine)を含むポリマーが研究されている。ポリ(β-アミノエステル)(PBAE:poly(β-amino esters))から構成されるナノ粒子ベクターも、特にポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)との共製剤化において、核酸送達に適していることが示されている(カチュマレク(Kaczmarek)JCら、アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション・イングリッシュ(Angew Chem Int Ed Engl.)2016;55(44)13808-13812)。デンドリマーも使用が予期される。こうした共製剤の粒子は、mRNAを肺に送達するために使用されてきた。
【0179】
たとえばセルロース、キチン、シクロデキストリン、およびキトサンなどの多糖類およびそれらの誘導体に基づく粒子も考慮される。キトサンは、キチンを部分的に脱アセチル化して得られるカチオン性の直鎖状多糖であり、この物質を含むナノ粒子は、たとえば生体適合性、低毒性、および小サイズなどの薬物送達のために有望な特性を有する(フェルト(Felt)ら、ドラッグ・ディベロプメント・アンド・インダストリアル・ファーマシー(Drug Development and Industrial Pharmacy)、24巻、1998-11号)。上記の構成要素の組み合わせが使用されてもよいことが想定される。本発明の特定の実施形態において、ナノ粒子は、粘膜における持続放出生体分子送達のために理想的となる優れた粘膜接着および浸透特性を示すキトサンを含む。
【0180】
送達粒子は、たとえばニオソームまたはリポソームなどの脂質ベースのナノ粒子送達系を含んでもよい。脂質ナノ粒子は、典型的にはリン脂質、イオン化可能な脂質、コレステロール、およびPEG化脂質を含有する多成分脂質系である。粒子表面上のPEG化脂質は、インビボで粒子凝集を低減し、循環時間を延長させるのに役立ち得る。適切なリポソーム製剤は、L-α-ホスファチジルコリンおよびPEG-DMG(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(1,2-dimyristoyl-rac-glycero-3-methoxypolyethylene glycol))を含んでもよい。核酸の送達に特に適したイオン化可能な脂質を含む代替的なリポソーム製剤は、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine))およびDlin-MC3-DMA(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコント-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエートを含んでもよい。脂質ベースのナノ粒子の効力の別の決定因子は、脂質pKaである。mRNAカーゴの送達のために最適な脂質pKaは、6.6~6.8の範囲である。
【0181】
送達粒子は、アミノアルコールリピドイドを含んでもよい。これらの化合物は、核酸の送達に特に適したナノ粒子、リポソーム、およびミセルを含む粒子の形成に使用されてもよい。本発明のいくつかの実施形態によるアミノアルコールリピドイド粒子を含むナノ製剤の製造の例示的な例が実施例に見出されてもよい。本発明の実施形態では、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC:dipalmitoylphosphatidylcholine)、コレステロール、およびジオレオイルグリセロホスフェート-ジエチレンジアミンコンジュゲート(DOP-DEDA:dioleoylglycerophosphate-diethylenediamine conjugate)を含む脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticles)は、pH6.0で正に帯電し、pH7.4で中性であり、pH8.0で負に帯電する。血漿タンパク質による分解を最小化し、封入されたmRNAカーゴを保護するために、この送達系は血流中で中性である。インビボで送達されるとき、これらのLNPビヒクルは、自身の疎水性脂質領域でアポリポタンパク質(例、apoE3)に結合し、これによって特に腫瘍細胞による細胞取り込みを促進できる。
【0182】
送達粒子は、標的組織の細胞に対して標的化されてもよい。この標的化は、送達粒子の表面上の標的化剤によって介在されてもよく、標的化剤はタンパク質、ペプチド、炭水化物、糖タンパク質、脂質、小分子、核酸などであってもよい。標的化剤は、特定の細胞または組織を標的とするために使用されてもよいし、粒子のエンドサイトーシスまたは食作用を促進するために使用されてもよい。標的化剤の例としては、抗体、抗体のフラグメント、低密度リポタンパク質(LDL:low-density lipoproteins)、トランスフェリン、アシアリコタンパク質(asialycoproteins)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immunodeficiency virus)のgp120エンベロープタンパク質、炭水化物、受容体リガンド、シアル酸、アプタマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、活性標的化リガンドによって改変された標的化リポソームは、たとえばmRNAなどのカーゴを他の部位に放出することなく、標的組織/器官/細胞における蓄積を増加させることによって、リポソームの能力を有意に改善できる。
【0183】
脂質ベースのナノ粒子は、それ自体がアジュバントとしても有利に作用してもよい。広範囲の脂質が、強力な固有のアジュバント活性を有することが報告されている。たとえばジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA:dimethyldioctadecylammonium bromide)などのカチオン性脂質は、注射部位での抗原の沈着および細胞の抗原内在化の増強を示す。DDAによって構造化された固体脂質ナノ粒子は、高い抗原吸着効率、インビトロ抗原輸送、インビボ分布、および高い抗体応答を示す(アンダールッジ(Anderluzzi)ら、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J.Control Release)2020、330、933-944)。結果として、送達系としてLNPを使用するmRNA送達ワクチンにおけるアジュバント活性を改善する努力は、ナノ粒子に使用される脂質を操作することに集中する傾向がある。しかし上述したとおり、脂質特性と、カーゴとしてのmRNAの封入に対する適合性との間、ならびに体内分布、放出動態、および細胞取り込みに関して、トレードオフが存在する。
【0184】
対象に投与されるとき、治療成分は、インビボ送達組成物の一部として適切に投与され、かつ医薬組成物を作製するために薬学的に受容可能な溶媒をさらに含んでもよい。受容可能な薬学的溶媒は、たとえば水および油などの液体であってもよく、それは石油、動物、植物、または合成に由来するもの、たとえばピーナッツ油、大豆油、鉱油、およびゴマ油などであり得る。薬学的溶媒は、食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、および尿素などであり得る。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、および着色剤を使用してもよい。対象に投与されるとき、薬学的に受容可能な溶媒は、好ましくは滅菌される。本発明の化合物が静脈内投与されるとき、水は適切な溶媒である。食塩水ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、液体溶媒として、特に注射可能な溶液に対して使用され得る。適切な薬学的溶媒は、たとえばデンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどの賦形剤も含む。医薬組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、または緩衝剤も含有できる。
【0185】
本発明の薬物および医薬組成物は、液体、溶液、懸濁物、ゲル、放出調節製剤(たとえば徐放または持続放出など)、エマルジョン、カプセル(たとえば、液体またはゲルを含有するカプセルなど)、リポソーム、マイクロ粒子、ナノ粒子、または当技術分野で公知の任意のその他の適切な製剤の形態を取り得る。適切な薬学的溶媒の他の例は、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、アルフォンソ(Alfonso)R.ジェナロ(Gennaro)編、マック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)イーストン(Easton)、Pa.、第19版、1995に記載されており、たとえば1447~1676頁などを参照されたい。
【0186】
本明細書に記載される任意の化合物または組成物について、インビトロ細胞培養アッセイによって治療有効量を最初に決定できる。標的濃度は、本明細書に記載される方法または当技術分野で公知の方法を用いて測定される、本明細書に記載される方法を達成できる活性成分の濃度となる。
【0187】
当技術分野において周知であるとおり、ヒト対象に使用するための治療有効量を動物モデルから決定することもできる。たとえば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることが見出されている濃度を達成するように製剤化され得る。上記のとおり、ヒトにおける投与量は、化合物の有効性をモニターし、投与量を上方または下方に調整することによって調整できる。上記の方法およびその他の方法に基づいてヒトにおける最大効力を達成するように用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0188】
本発明の実施形態は、医薬における使用のために製剤化された組成物を含んでもよいことが予期される。したがって、組織内または患者もしくは動物の体内の細胞上の位置に標的化され得る組成物を形成するために、本発明の組成物は生体適合性溶液中に懸濁されてもよい(すなわち、組成物はインビトロ、エクスビボ、またはインビボで使用され得る)。適切には、生体適合性溶液は、リン酸緩衝食塩水または任意の他の薬学的に受容可能な担体溶液であってもよい。1つ以上の追加の薬学的に受容可能な担体(たとえば希釈剤、アジュバント、賦形剤、または溶媒など)を、医薬組成物中で本発明の組成物と組み合わせてもよい。適切な薬学的担体は、E.W.マーティン(Martin)によって「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。本発明の医薬製剤および組成物は、規制基準に適合するように製剤化され、経口、静脈内、局所、腫瘍内、もしくは皮下で、またはその他の標準的な経路を介して投与され得る。投与は、全身または局所または鼻腔内または髄腔内であり得る。特に、本発明による組成物は、静脈内、病巣内、腫瘍内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内、動脈内で、および/または吸入によって投与され得る。
【0189】
さらに意図されるのは、本発明のいくつかの実施形態の組成物が、代替的な抗腫瘍成分またはその他の抗癌治療成分と別々に、または組み合わせて投与される実施形態である。これらの成分としては、腫瘍溶解性ウイルス、小分子薬物、化学療法剤、放射線治療剤、治療用ワクチン、または生物学的薬剤が挙げられ得る。これらの成分は、本発明の組成物と同時に投与されてもよく、かつ送達粒子内に含まれてもよいし、任意の適切な手段によって、本発明の組成物の投与の前または後に別々に投与されてもよい。
【0190】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、たとえば実験室設定などのインビトロおよび/またはエクスビボ方法において使用されてもよいことも予期される。インビトロ方法の例においては、本明細書に記載されるmRNA配列を含む送達系を含む組成物が標的インビトロ細胞に投与され、mRNA配列に含まれるmiRNA結合部位配列が、標的インビトロ細胞内の異なる細胞型におけるmRNAのコード配列の示差的発現を可能にする。同様に、本明細書に記載される送達系およびmRNA配列を含む組成物が、動物から採取された標的エクスビボ試料に投与され、mRNA配列に含まれるmiRNA結合部位配列が、標的試料内の異なる細胞型におけるmRNAのコード配列の示差的発現を可能にする方法が予期される。
【0191】
ワクチン
本明細書に記載されるmRNAコンストラクトおよび組成物は、ワクチン療法において、従来のワクチンの効力の増強のために、ならびに/あるいはたとえばウイルス、細菌、真菌、原虫、プリオン、および蠕虫(寄生虫)などの感染性病原体に対する使用のため、またはたとえば癌などの疾患の処置における使用のための新規ワクチン形態として使用され得る。記載されるmRNAコンストラクトは、5’および3’末端の(直接的または間接的)連結によって環状化され得ることが予期され、こうした環状または環状化RNAコンストラクトは、本明細書で使用される「mRNAコンストラクト」という用語に含まれると考えられる。こうしたコンストラクトは、たとえばSARS-CoV-2などに対するRNAベースのワクチンとして有効であり得ることが示されている(クー(Qu)L.ら、バイオアーカイブ(bioRxiv)2021.03.16.435594;https://doi.org/10.1101/2021.03.16.435594)。結果として、本明細書に記載されるmRNAコンストラクトは、細胞内で翻訳され得る環状または環状化RNAコンストラクトを含む。
【0192】
よって、本発明の組成物は、ワクチン製剤中に含ませるか、またはワクチンと組み合わせて投与される(例、適切なサイトカインを有する)アジュバントの形態にすることによって、感染性病原性疾患の予防または処置に使用されてもよい。
【0193】
感染性細菌病原体の例としては、アセトバクター・オウランティウス(Acetobacter aurantius)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、アクチノミセス・イスラエリイ(Actinomyces israelii)、アグロバクテリア・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、アゾリゾビウム・カウリイノダンス(Azorhizobium caulinodans)、アゾトバクター・ビネランディイ(Azotobacter vinelandii)、ビリダンス・ストレプトコッカス(viridans streptococci)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・フスフォルミス(Bacillus fusiformis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・ジンジバリス(Bacteroides gingivalis)、バクテロイデス・メラニノジェニクス(Bacteroides melaninogenicus)、プレボテラ・メラニノジェニカ(Prevotella melaninogenica)、バルトネラ・ヘンセレ(Bartonella henselae)、バルトネラ・キンタナ(Bartonella quintana)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、ボルデテラ・パーツシス(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブルセラ・アボルツス(Brucella abortus)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis)、バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)、バークホルデリア・セパシアン(Burkholderia cepacian)、カリマトバクテリウム・グラヌロマティス(Calymmatobacterium granulomatis)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・フェタス(Campylobacter fetus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・ピロリ(Campylobacter pylori)、クラミジア(Chlamydia)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ウェルチ(Clostridium welchii)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム・フシフォルメ(Corynebacterium fusiforme)、コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetiid)、エールリヒア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エールリヒア・エウィンギ(Ehrlichia ewingii)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)、エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)、エンテロコッカス・マロラタス(Enterococcus maloratus)、大腸菌(Escherichia coli)、フソバクテリウム・ネクロフォーラム(Fusobacterium necrophorum)、フソバクテリウム・ヌクレアツム(Fusobacterium nucleatum)、ガルドネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・ペルツッシス(Haemophilus pertussis)、ヘモフィルス・バギナリス(Haemophilus vaginalis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania 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tularensis)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・メラニノジェニカ(Prevotella melaninogenica)、バクテロイデス・メラニノジェニクス(Bacteroides melaninogenicus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、リゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter)、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・シッタシ(Rickettsia psittaci)、リケッチア・キンタナ(Rickettsia quintana)、リケッチア(Rickettsia)、リケッチア・トラコーマ(Rickettsia trachomae)、ロチャリマエア・ヘンセラ(Rochalimaea henselae)、ロチャリマエア・キンタナ(Rochalimaea quintana)、ロチア・デントカリオサ(Rothia dentocariosa)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、シゲラ・ジセンテリア(Shigella dysenteriae)、スピリルム・ボルタンス(Spirillum volutans)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アビウム(Streptococcus avium)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス・クリセタス(Streptococcus cricetus)、ストレプトコッカス・フェシウム(Streptococcus faceium)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・フェラス(Streptococcus ferus)、ストレプトコッカス・ガリナルム(Streptococcus gallinarum)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・ミチ
オル(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ラッタス(Streptococcus rattus)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、トレポネーマ(Treponema)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・コンマ(Vibrio comma)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、およびエルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis)が挙げられる。
【0194】
ウイルス感染病原体の例としては、アデノ随伴ウイルス;アイチウイルス、オーストラリアコウモリリッサウイルス;BKポリオーマウイルス;バンナウイルス;バーマフォレストウイルス;ブニヤムウェラウイルス;ブニヤウイルスラクロス;ブニヤウイルスカンジキウサギ;オナガザルヘルペスウイルス;チャンディプラウイルス;チクングニアウイルス;コサウイルスA;牛痘ウイルス;コクサッキーウイルス;クリミア・コンゴ出血熱ウイルス;デングウイルス;ドーリウイルス;ダグベウイルス;ドゥベンヘイジウイルス;東部ウマ脳炎ウイルス;エボラウイルス;エコーウイルス;脳心筋炎ウイルス;エプスタイン-バーウイルス;ヨーロッパコウモリリッサウイルス;GBウイルスC/G型肝炎ウイルス;ハンタンウイルス;ヘンドラウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;E型肝炎ウイルス;デルタ肝炎ウイルス;馬痘ウイルス;ヒトアデノウイルス;ヒトアストロウイルス;ヒトコロナウイルス;ヒトサイトメガロウイルス;ヒトエンテロウイルス68、70;ヒトヘルペスウイルス1;ヒトヘルペスウイルス2;ヒトヘルペスウイルス6;ヒトヘルペスウイルス7;ヒトヘルペスウイルス8;ヒト免疫不全ウイルス;ヒトパピローマウイルス1;ヒトパピローマウイルス2;ヒトパピローマウイルス16、18;ヒトパラインフルエンザ;ヒトパルボウイルスB19;ヒト呼吸器合胞体ウイルス;ヒトライノウイルス;ヒトSARSコロナウイルス;ヒトスプマレトロウイルス;ヒトTリンパ球向性ウイルス;ヒトトロウイルス;インフルエンザAウイルス;インフルエンザBウイルス;インフルエンザCウイルス;イスファハンウイルス;JCポリオーマウイルス;日本脳炎ウイルス;ジュニンアレナウイルス;KIポリオーマウイルス;クンジンウイルス;ラゴスコウモリウイルス;ビクトリア湖マールブルグウイルス;ランガトウイルス;ラッサウイルス;ローズデールウイルス;跳躍病ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;マチュポウイルス;マヤロウイルス、MERSコロナウイルス;麻疹ウイルス;メンゴ脳心筋炎ウイルス;メルケル細胞ポリオーマウイルス;モコラウイルス;伝染性軟属腫ウイルス;サル痘ウイルス;流行性耳下腺炎ウイルス;マレーバレー脳炎ウイルス;ニューヨークウイルス;ニパウイルス;ノーウォークウイルス;オニョンニョンウイルス;Orfウイルス;オロポーシェウイルス;ピチンデウイルス;ポリオウイルス;プンタトロフレボウイルス;プーマラウイルス;狂犬病ウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;リフトバレー熱ウイルス;ロサウイルスA;ロスリバーウイルス;ロタウイルスA;ロタウイルスB;ロタウイルスC;風疹ウイルス;サギヤマウイルス;サリウイルスA;シチリア型サシチョウバエ熱ウイルス;サッポロウイルス;SARSコロナウイルス2(COVID);セムリキフォレストウイルス;ソウルウイルス;サル泡沫状ウイルス;シミアンウイルス5;シンドビスウイルス;サザンプトンウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;ダニ媒介ポワッサンウイルス;トルクテノウイルス;トスカーナウイルス;ウークニエミウイルス;ワクシニアウイルス;水痘帯状疱疹ウイルス;痘瘡ウイルス;ベネズエラウマ脳炎ウイルス;水疱性口内炎ウイルス;西部ウマ脳炎ウイルス;WUポリオーマウイルス;ウエストナイルウイルス;ヤバサル腫瘍ウイルス;ヤバ様疾患ウイルス;黄熱病ウイルス;およびジカウイルスが挙げられる。
【0195】
真菌感染病原体の例としては、以下が挙げられる。ギムノプス(Gymnopus)種、ロドコリビア・ブチラセア(Rhodocollybia butyracea)、ニガクリタケ(Hypholoma fasciculare)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、塊茎種、ボチア・カスタネラ(Bothia castanella)、リゾスフィア(Rhizosphere)種、ヘルポトリキエラセアエ(Herpotrichiellaceae)種、アナイボゴケ(Verrucariaceae)種、マーチャンジオミセス(Marchandiomyces)種、ミニメデューサ(Minimedusa)種、マーチャンジオバシジウム・オーランチアクム(Marchandiobasidium aurantiacum)、マーチャンジオミセス・コラリヌス(Marchandiomyces corallinus)、マーチャンジオミセス・リグニコラ(Marchandiomyces lignicola)、ブルゴア(Burgoa)種、アテリア・アラクノイデア(Athelia arachnoidea)、アルテルナリア・アルテルナタ(Alternaria alternata)、アルテルナリア(Alternaria)種、ヤマドリタケ(Boletus edulis)、アカエノキンチャヤマイグチ(Leccinum aurantiacum)、トラメテス・ベルシカラー(Trametes versicolor)、トラメテス(Trametes)種、シンポディオマイコプシス(Sympodiomycopsis)種、コガネエイランタイ属ニバリス(Flavocetraria nivalis)、アンペロミセス(Ampelomyces)種、ギムノプス・ビフォルミス(Gymnopus biformis)、ギムノプス(Gymnopus)種、ギムノプス・コンフルエンス(Gymnopus confluens)、ギムノプス・スポンギオサス(Gymnopus spongiosus)、コリビア・レアディ(Collybia readii)、マラスミエルス・ステノフィラス(Marasmiellus stenophyllus)、マラスミエルス・ラメアリス(Marasmiellus ramealis)、マラスミエルス・スコロドニウス(Marasmius scorodonius)、カレバタケ(Collybia marasmioides)、ミクロンフェール・ブラシコレンズ(Micromphale brassicolens)、カリピア・モンタグネイ(Caripia montagnei)、ロドコリビア(Rhodocollybia)種、アンスラコフィルム・ラテリチウム(Anthracophyllum lateritium)、アンスラコフィルム・アルチェリ(Anthracophyllum archeri)、アンスラコフィルム(Anthracophyllum)種、ファネロケテ(Phanerochaete)種、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス(Aspergillus)種、アカゲシメジ(Tricholoma imbricatum)、キシメジ(Tricholoma flavovirens)、トメンテラ・サブリラシナ(Tomentella sublilacina)、リゾポゴン(Rhizopogon)種、ラカリア(Laccaria)種、アセタケ属(lnocybe)種、ワカフサタケ属(Hebeloma)種、フウセンタケ属(Cortinarius)種、クラブリナ(Clavulina)種、アワタケ属(Xerocomus)種、テングタケ属(Amanita)種、ユーロティウム・ハーバリオルム(Eurotium herbariorum)、エデュイリア・アテシア(Edyuillia athecia)、ワルクピエラ・スピヌロサ(Warcupiella spinulosa)、ヘミカーペンテレス・パラドクサス(Hemicarpenteles paradoxus)、ヘミカーペンテレス・アカンソスポラス(Hemicarpenteles acanthosporus)、ヘミカーペンテレス(Hemicarpenteles)種、シェトサートリア・クレメア(Chaetosartorya cremea)、ペトロミセス(Petromyces)種、グラフィウム・テクトネ(Graphium tectonae)、ジプロライメロイデス(Di plolaimelloides)種、ラブドライムス(Rhabdolaimus)種、ツチヒラタケ(Hohenbuehelia petalodes)、グロメレラ・グラミニコラ(Glomerella graminicola)、クリプトコッカス・アルボリフォルミス(Cryptococcus arboriformis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クリプトコッカス(Cryptococcus)種、ガムシレラ・パルビコリス(Gamsylella parvicollis)、モナクロスポリウム・ハプトチルム(Monacrosporium haptotylum)、モナクロスポリウム・シチュアネンス(Monacrosporium sichuanense)、モナクロスポリウム(Monacrosporium)種、モナクロスポリウム・ゲフィロパガム(Monacrosporium gephyropagum)、モナクロスポリウム(Monacrosporium)種、ドレチスレレラ・コエロブロチャ(Drechslerella coelobrocha)、ドレチスレレラ・ダクチロイデス(Drechslerella dactyloides)、ドレチスレレラ(Drechslerella)種、アルツロボトリス・ムシフォルミス(Arthrobotrys musiformis)、アルツロボトリス・フラグランス(Arthrobotrys flagrans)、アルツロボトリス・ヘルツィアナ(Arthrobotrys hertziana)、アルツロボトリス・オリゴスポラ(Arthrobotrys oligospora)、アルツロボトリス・ベルミコラ(Arthrobotrys vermicola)、アルツロボトリス(Arthrobotrys)種、モナクロスポリウム・ドレクスレリ(Monacrosporium drechsleri)、ベルミスポラ(Vermispora)種、シュードアレシェリア・ボイジイ(Pseudallescheria boydii)(スケドスポリウム・アピオスペルムム(Scedosporium apiospermum))、スケドスポリウム・インフラツム(Scedosporium inflatum)、ジオスミシア(Geosmithia)種、イチゴ炭疽病菌(Glomerella cingulata)、ロフォデルミウム・ピセアエ(Lophodermium piceae)、フザリウム・アシアチカム(Fusarium asiaticum)、フザリウム(Fusarium)種、エリンギ(Pleurotus eryngii)、シントラクチア・ソルギ-ブルガリス(Cintractia sorghi-vulgaris)、カンタロサイブ・グルベリ(Cantharocybe gruberi)、ブールドチア(Bourdotia)種、キクラゲ属(Auricularia)種、プッチニア・バーソロマエイ(Puccinia bartholomaei)、プッチニア属(Puccinia)種、ジアポルテ・ファセオロルム(Diaporthe phaseolorum)、メランコニス・スチルボストーマ(Melanconis stilbostoma)、キシラリア(Xylaria)種、トリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophytum violaceum)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophytum rubrum)、トリコフィトン・インタージギタレ(Trichophytum interdigitale)、トリコフィトン・シェーンレイニ(Trichophytum schoenleinii)トリコフィトン(Trichophyton)種、クロロフィルム・アガリコイデス(Chlorophyllum agaricoides)、ケノコッカム・ゲオフィルム(Cenococcum geophilum)、ビョウタケ目(Helotiales)種、リゾシファス・エリカエ(Rhizoscyphus ericae)、シロカラハツタケ(Lactarius pubescens)、チチタケ属(Lactarius)種、ピロダーマ・ファラックス(Piloderma fallax)、ヌメリイグチ(Suillus luteus)、ベニテングタケ(Amanita muscaria)、キシメジ属(Tricholoma)種、オオキツネタケ(Laccaria cf bicolour)、カワムラフウセンタケ(Cortinarius purpurascens)、セイリジウム(Seiridium)種、アピオスポラ・モンタグネイ(Apiospora montagnei)、ムラサキウロコタケ(Chondrostereum purpureum)、ボトリオバシジウム・サブコロナタム(Botryobasidium subcoronatum)、トゲミノヒメイグチ(Boletellus shichianus)、キクバナイグチ属(Boletellus)種、ヒポクレア・ファリノス(Hypocrea farinose)、ボタンタケ属(Hypocrea)種、サルコストロマ・レスチオニス(Sarcostroma restionis)、サルコストロマ(Sarcostroma)種、トランカテラ・ベツラエ(Truncatella betulae)、トランカテラ(Truncatella)種、ペスタロチオプシス・マチルダエ(Pestalotiopsis matildae)、パラコニオチリウム(Paraconiothyrium)種、フォーマ(Phoma)種、カニングハメラ・バイニエリ(Cunninghamella bainieri)、カニングハメラ・ベルトレチアエ(Cunninghamella bertholletiae)、アンズタケ(Cantharellus cibarius)、アピオスポラ・バンブサエ(Apiospora bambusae)、アピオスポラ(Apiospora)種、ジスコストロマ・ボタン(Discostroma botan)、セルコフォラ・カウダーテ(Cercophora caudate)、グノモニア・リビコラ(Gnomonia ribicola)、フォーレリナ・エロンゲート(Faurelina elongate)、ミコリザ・フンギ(Mycorrhiza fungi)、ゲオミセス・パノラム(Geomyces pannorum)、コプリヌス(Coprinus)種、アクレモニウム(Acremonium)種、クロノスタチス(Clonostachys)種、フォマ・ユーピレナ(Phoma eupyrena)、テトラクラディウム(Tetracladium)種、モルティエレラ(Mortierella)種、ツラスネラ・カロスポラ(Tulasnella calospora)、エプロリザ(Epulorhiza)種、ツラスネラ・カロスポラ(Tulasnella calospora)、アンタークトミセス・シクロトロフィクス(Antarctomyces psychrotrophic
us)、アンフィスフェリアセアエ(Amphisphaeriaceae)種、ホモプシス属(Phomopsis)種、トリコデルマ(Trichoderma)種、ペスタロチオプシス(Pestalotiopsis)種、ペスタロチオプシス(Pestalotiopsis)種、マユハキタケ科(Trichocomaceae)種、コニオケータ目(Coniochaetales)種、シロキクラゲ目(Tremellales)種、ドチデアレス(Dothideales)種、フィラコラセアエ(Phyllachoraceae)種、サッカロミケス目(Saccharomycetales)種、ヘルポトリキエラセアエ(Herpotrichiellaceae)種、ユリ綱(Liliopsida)種、トリコスポロナレス(Trichosporonales)種、トリコスポロン・ミコトキシニボランス(Trichosporon mycotoxinivorans)、トリコスポロン(Trichosporon)種、ドチオラセアエ(Dothioraceae)種、ボタンタケ目(Hypocreales)種、ミコスファエレラセアエ(Mycosphaerellaceae)種、スポリディオボラレス(Sporidiobolales)種、バッカクキン科(Clavicipitaceae)種、プレオスポラ目(Pleosporales)種、ウスチラガナ科(Ustilaginaceae)種、フィラコラセアエ(Phyllachoraceae)種、ケカビ科(Mucoraceae)種、ソルダリアレス(Sordariales)種、フィロバシディウム目(Filobasidiales)種、カロスフェリアセアエ(Calosphaeriaceae)種、バッカクキン科(Clavicipitaceae)種、ムコラレス(Mucorales)種、ヘルポトリキエラセアエ(Herpotrichiellaceae)種、ミクロドキウム(Microdochium) 種、フィラコラセアエ(Phyllachoraceae)種、ゾプフィアセアエ(Zopfiaceae)種、
ボトリオスフェリアセアエ(Botryosphaeriaceae)種、ビョウタケ科(Helotiaceae)種、ビオネクトリア科(Bionectriaceae)種、ラクノクラディウム科(Lachnocladiaceae)種、ディポダスカセアエ(Di podascaceae)種、カウレルパセアエ(Caulerpaceae)種、ミクロストロマタレス(Microstromatales)種、アフィロフォラレス(Aphyllophorales)種、モンタグヌラセアエ(Montagnulaceae)種、ジムノアスカセエ(Gymnoascaceae)種、クリフォネクトリアセアエ(Cryphonectriaceae)種、マメザヤタケ目(Xylariales)種、モンタグヌラセアエ(Montagnulaceae)種、カエトミアセアエ(Chaetomiaceae)種、オオロウソクゴケモドキ(Xanthoria elegans)、リゾプス(Rhizopus)種、ペニシリウム(Penicillium)種、サンゴエイランタイ(Cetraria aculeate)、ネフロモプシス・ラウレリ(Nephromopsis laureri)、タッカーマンノプシス・クロロフィラ(Tuckermannopsis chlorophylla)、セトラリア・エリセトルム(Cetraria ericetorum)、エイランタイ属(Cetraria)種、ウスキエイランタイ(Flavocetraria cucullata)、カエルネフェルティア・メリリイ(Kaernefeltia merrillii)、アモロシア・リトラリス(Amorosia littoralis)、クアンバラリア・シアネセンス(Quambalaria cyanescens)、ベニイロクチキムシタケ(Cordyceps roseostromata)、ノムシタケ属(Cordyceps)種、ベニタケ属(Russula)種、クラブリナ(Clavulina)種、ツバー・クエルシコラ(Tuber quercicola)、ジムノミセス(Gymnomyces)種、テトラカエツム・エレガンス(Tetrachaetum elegans)、アングイロスポラ・ロンギシマ(Anguillospora longissima)、ヒポクレア(Hypocrea)種、シロコッカス・コニゲヌス(Sirococcus conigenus)、ショウロ(Rhizopogon roseolus)、リゾポゴン・オリバセオチンクタス(Rhizopogon olivaceotinctus)、ショウロ属(Rhizopogon)種、ピソリサス・ミクロカルプス(Pisolithus microcarpus)、リゾシファス・エリカエ(Rhizoscyphus ericae)、アオアシフウセンタケ(Cortinarius glaucopus)、ヒダハタケ属(Paxillus)種、スイルス・バリエゲーテス(Suillus variegates)、ピロバクルム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum)、ツラスネラ(Tulasnella)種、ヒメムキタケ属(Hohenbuehelia)種、コクリオボルス・ルナタス(Cochliobolus lunatus)、チヂレタケ(Plicaturopsis crispa)、ボンダルセボミセス・タクシ(Bondarcevomyces taxi)、イチョウタケ(Tapinella panuoides)、タピネラ(Tapinella)種、オーストロパキシルス(Austropaxillus)種、オウギタケ(Gomphidius roseus)、ハンノキイグチ(Gyrodon lividus)、フィロポルス・ペレティエリ(Phylloporus pelletieri)、シャモニキシア・カエスピトース(Chamonixia caespitose)、ポルフィレルス・ポルフィロスポラス(Porphyrellus porphyrosporus)、トランココルメラ・シトリナ(Truncocolumella citrina)、ニワタケ(Tapinella atrotomentosa)、スクレロダーマ・リーブ(Scleroderma leave)、スイルス・バリエゲーテス(Suillus variegates)、ヌメリイグチ属(Suillus)種、ポルフィレルス・ポルフィロスポラス(Porphyrellus porphyrosporus)、ピソリウス・アルヒツス(Pisolithus arrhizus)、フェオジロポルス・ポルテントサス(Phaeogyroporus portentosus)、メラノガスター・バリエゲーテス(Melanogaster variegates)、ヒメシワタケ(Leucogyrophana mollusca)、ヒドノメルリウス・ピナストリ(Hydnomerulius pinastri)、オウギタケ(Gomphidius roseus)、ハンノキイグチ(Gyrodon lividus)、アイゾメイグチ(Gyroporus cyanescens)、コショウイグチ(Chalciporus piperatus)、シャモニキシア・カエスピトース(Chamonixia caespitose)、ボンダルセボミセス・タクシ(Bondarcevomyces taxi)、デンドリフィエラ・トリチシコラ(Dendryphiella triticicola)、グイグナルディア(Guignardia)種、シライア(Shiraia)種、クラドスポリウム(Cladosporium)種、ホモプシス属(Phomopsis)種、ジアポルサレス(Diaporthales)種、ペスタロチオプシス属(Pestalotiopsis)種、ロフィオストーマ(Lophiostoma)種、ベルチシリウム・クラミドスポリウム(Verticillium chlamydosporium)、ペシロマイセス・リラシヌス(Paecilomyces lilacinus)、ペシロマイセス・バリオティ(Paecilomyces varioti)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)種、セラトリザ・オリザエ-サチバエ(Ceratorhiza oryzae-sativae)、ジオスミシア・パリダ(Geosmithia pallida)、ジオスミシア(Geosmithia)種、ゲオシフォン・ピリフォルミス(Geosiphon pyriformis)、ツブゴケ属(Agonimia)種、エントツゴケ(Pyrgillus javanicus)、エクソフィアラ・デルマチチジス(Exophiala dermatitidis)、エクソフィアラ・ピシフィラ(Exophiala pisciphila)、エクソフィアラ(Exophiala)種、ラミクロリジウム・アンセプス(Ramichloridium anceps)、ラミクロリジウム(Ramichloridium)種、カプロニア・ピロセラ(Capronia pilosella)、コナサナギタケ(Isaria farinose)、ポチョニア・スクラスポリア(Pochonia suchlasporia)、レカニシリウム・プサリオタエ(Lecanicillium psalliotae)、クロイボタケ綱(Dothideomycete)種、レオチオマイセート(Leotiomycete)種、ウスチラギノイデア・ビクセンス(Ustilaginoidea vixens)、ハイホザイマ・リグニコラ(Hyphozyma lignicola)、コニオカエタ・マラコトリチャ(Coniochaeta malacotricha)、コニオカエタ(Coniochaeta)種、トルビエラ・コンフラゴサ(Torrubiella confragosa)、イサリア・テヌイペス(Isaria tenuipes)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・アウドウイニイ(Microsporum audouinii)、ミクロスポルム属(Microsporum)種、エピコッカム・フロコスム(Epicoccum floccosum)、ギガスポーラ・ロゼア(Gigaspora rosea)、ギガスポーラ(Gigaspora)種、ガノデルマ(Ganoderma)種、シュードペロノスポラ・クベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、ヒアロペロノスポラ・パラシチカ(Hyaloperonospora parasitica)、プレクトフォメラ(Plectophomella)種、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)、キカイガラタケ属(Gloeophyllum)種、ドンキオポリア・エクスパンサ(Donkioporia expansa)、アントロジア・シヌオサ(Antrodia sinuosa)、フェオアクレモニウム・ルブリゲルム(Phaeoacremonium rubrigenum)、フェオアクレモニウム(Phaeoacremonium)種、アルベルチニエラ・ポリポリコラ(Albertiniella polyporicola)、セファロセカ・スルフレア(Cephalotheca sulfurea)、フラゴスフェリア・レニフブルミス(Fragosphaeria renifbrmis)、フラゴスフェリア(Fragosphaeria)種、フィアレモニウム・ジモルホスポルム(Phialemonium dimorphosporum)、フィアレモニウム(Phialemonium)種、ピキア・ノルベゲンシス(Pichia norvegensis)、ピキア属(Pichia)種、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ(Candida)種、ゴンダワナミセス(Gondawanamyces)種、グラフィウム(Graphium)種、アンブロシエラ(Ambrosiella)種、ミクログロッサム(Microglossum)種、ニカワチャワンタケ(Neobulgaria pura)、ホルワヤ・ムシダ(Holwaya mucida)、クロロビブリッセア(Chlorovibrissea)種、クロロシボリア(Chlorociboria)種、タクステロガスター(Thaxterogaster)種、フウセンタケ属(Cortinarius)種、セチェリオガスター(Setchelliogaster)種、チムグロベア(Timgrovea)種、デスコミセス(Descomyces)種、マメツブタケ(Hymenogaster arenarius)、クアドリスポラ・ツベルクラリス(Quadrispora tubercularis)、クアドリスポラ(Quadrispora)種、プロトグロッスム・ビオラセウム(Protoglossum violaceum)、セラトストメラ・ピレナイカ(Ceratostomella pyrenaica)、セラトスフェリア・ランパドフォラ(Ceratosphaeria lampadophora)、フォンセセア・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、チャシワウロコタケ(Phlebia acerina)、シワウロコタケ属(Phlebia)種、ペスタロチオプシス・ジセミナタ(Pestalotiopsis disseminata)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ラコスペルミセス・コアエ(Racospermyces koae)、エンドラエシウム・アカシアエ(Endoraecium acaciae)、ウロミクラジウム・テッペリアヌム(Uromycladium tepperianum)、ウロミクラジウム(
Uromycladium)種、マッシュルーム(Agaricus bisporus)、ハラタケ属(Agaricus)種、サイロシベ・クエベセンシス(Psilocybe quebecensis)、カワリコシワツバタケ(Psilocybe merdaria)、シビレタケ属(Psilocybe)種、ジムノピルス・ルテオフォリウス(Gymnopilus luteofolius)、チャツムタケ(Gymnopilus liquiritiae)、チャツムタケ属(Gymnopilus)種、ハイフォロマ・ツベロスム(Hypholoma tuberosum)、メラノタス・ハルティイ(Melanotus hartii)、パナエオルス・ウリギノサス(Panaeolus uliginosus)、サケツバタケ(Stropharia rugosoannulata)、アカヒダササタケ(Dermocybe semisanguinea)、デルモシベ(Dermocybe)種、ヘリコマ・マンス*パス(Helicoma month* pes)、ヘリコマ(Helicoma)種、ツベウフィア・ヘリコミセス(Tubeufia helicomyces)、ツベウフィア(Tubeufia)種、レオフミコラ・ベルコサ(Leohumicola verrucosa)、レプトスファエルリナ・チャルタルム(Leptosphaerulina chartarum)、マクロフォマ(Macrophoma)種、マルソニナ・ロサエ(Marssonina rosae)、ボトリオチニア・フケリアナ(Botryotinia fuckeliana)、ペスタロチオプシス属(Pestalotiopsis)種、クリソスポリウム・カルミチャエリイ(Chrysosporium carmichaelii)、クリソスポリウム(Chrysosporium)種、ダクチレラ・オキシスポラ(Dactylella oxyspora)、ダクチレリナ・ロバタム(Dactylellina lobatum)、ウリ科(Cucurbitaceae)種、クリソフィルム・スパルシフロルム(Chrysophyllum sparsiflorum)、オーガストノキ属(Chrysophyllum)種、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)、サワダエア・ポリフィダ(Sawadaea polyfida)、サワダエア(Sawadaea)種、パラウンチヌラ・セプタタ(Parauncinula septata)、エリシフェ・モリ(Erysiphe mori)、エリシフェ属(Erysiphe)種、チフロチャエタ・ジャポニカ(Typhulochaeta japonica)、ウドンコ病菌(Golovinomyces orontii)、ゴロビノミセス(Golovinomyces)種、ポドスファエラ・キサンチイ(Podosphaera xanthii)、ポドスファエラ(Podosphaera)種、アースロクラジエラ・モウゲオティイ(Arthrocladiella mougeotii)、ネオエリシフェ・ガレオプシジス(Neoerysiphe galeopsidis)、カキウドンコ病菌(Phyllactinia kakicola)、フィラクチニア(Phyllactinia)種、シフェロフォラ・ラシニアタ(Cyphellophora laciniata)、スフェログラフィウム・テヌイロストルム(Sphaerographium tenuirostrum)、ミクロスファエラ・トリフォリイ(Microsphaera trifolii)、スファエロテカ・スピラエラエ(Sphaerotheca spiraeae)、スファエロテカ(Sphaerotheca)種、ウンシヌリエラ・オーストラリアナ(Uncinuliella australiana)、アブシジア・コリンビフェラ(Absidia corymbifera)、ユミケカビ(Absidia)種、ゲオトリクム属(Geotrichum)種、ネクトリア・クルタ(Nectria curta)、アカヒダヒメムサシタケ(Anamika lactariolens)、ヘベロマ・ベルチペス(Hebeloma velutipes)、ストロファリア・アンビグア(Stropharia ambigua)、フミヅキタケ(Agrocybe praecox)、イタチハリタケ(Hydnum rufescens)、カノシタ属(Hydnum)種、メリニオミセス・バリアビリス(Meliniomyces variabilis)、リゾシファス・エリカエ(Rhizoscyphus ericae)、クリプトスポリオプシス・エリカエ(Cryptosporiopsis ericae)、ヒアロデンドロン(Hyalodendron)種、レプトグラフィウム・ルンドベルギイ(Leptographium lundbergii)、レプトグラフィウム(Leptographium)種、テルミトミセス(Termitomyces)種、コクシジオイデス・ポサダシイ(Coccidioides posadasii)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ホモプシス属(Phomopsis)種、メタリジウム菌(Metarhizium anisopliae)、ノムシタケ属(Cordyceps)種、チレチオプシス・ワシントネンシス(Tilletiopsis washingtonensis)、ミダレアミタケ(Cerrena unicolor)、スタキボトリス・カルタルム(Stachybotrys chartarum)、フェオコッコミセス・ニグリカンス(Phaeococcomyces nigricans)、ガノダーマ・フィリピイ(Ganoderma philippii)、マンネンタケ属(Ganoderma)種、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)、シストセカ・ラネストリス(Cystotheca lanestris)、レベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、フィラクチニア・フラキシニ(Phyllactinia fraxini)、バリコスポリウム・エロデアエ(Varicosporium elodeae)、リノクラジエラ・バシトヌム(Rhinocladiella basitonum)、メランクレヌス・オリゴスペルムス(Melanchlenus oligospermus)、クラビスポラ・ルシタニアエ(Clavispora lusitaniae)、クモノスカビ(Rhizopus)種、フィゾムコール(Phizomucor)種、ケカビ(Mucor)種、コニディオボラス・コロナツス(Conidiobolus coronatus)、コニドボラス(Conidobolus)種、バシディオボルス・ラナルム(Basidiobolus ranarum)、バシディオボルス(basidiobolus)種、オクロニス(Ochronis)種、ヒストプラズマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)、ヒストプラズマ属(histoplasma)種、ウィルコクシナ・ミコラエ(Wilcoxina mikolae)、ラシオジプロディア(Lasiodiplodia)種、フィシア・カエシア(Physcia caesia)、ムカデゴケ属(Physcia)種、ブラキコニジエロプシス(Brachyconidiellopsis)種、キコガサダケ(Conocybe lacteal)、ガストロサイブ・ラテリチア(Gastrocybe lateritia)、ガストロサイブ(Gastrocybe)種、アグロサイブ・セミオルビクラリス(Agrocybe semiorbicularis)、タフリナ・プルニ(Taphrina pruni)、タフリナ(Taphrina)種、ナガエノヤグラタケ(Asterophora parasitica)、アステロフォラ(Asterophora)種、エレモセシウム・アシュビイ(Eremothecium ashbyi)、トリクラジウム・スプレンデンス(Tricladium splendens)、ラマリア・フラバ(Ramaria flava)、ホウキタケ属(Ramaria)種、ラカリア・フラターナル(Laccaria fraternal)、スクテロスポラ(Scutellospora)種、イロスポリウム・カルネウム(Illosporium carneum)、ホブソニア・クリスチアンセニイ(Hobsonia christiansenii)、マーチャンジオミセス・コラリヌス(Marchandiomyces corallinus)、フシコックム・ルテウム(Fusicoccum luteum)、ボトリオスフェリア・リビス(Botryosphaeria ribis)、シュードザイマ・アフィジス(Pseudozyma aphidis)、シュードザイマ(Pseudozyma)種、ペソツム・エルベセンス(Pesotum erubescens)、バタレア・ステベニイ(Battarrea stevenii)、バタレア(Battarrea)種、ハーポスポリウム・ヤヌス(Harposporium Janus)、ハーポスポリウム(Harposporium)種、ヒルステラ・ロシリエンシス(HirsuteIla rhossiliensis)、アルスロデルマ・シフェリイ(Arthroderma ciferrii)、アルスロデルマ(Arthroderma)種、プチニアストルム・ゴエッペルチアヌム(Pucciniastrum goeppertianum)、クロナルチウム・オシデンタレ(Cronartium occidentale)、クロナルチウム・アリゾニクム(Cronartium arizonicum)、クロナルチウム(Cronartium)種、ペリデルミウム・ハルクネシイ(Peridermium harknessii)、ペリデルミウム(Peridermium)種、クリソミクサ・アルクトスタフィリ(Chrysomyxa arctostaphyli)、ホレヤ・シネカウダ(Holleya sinecauda)、ホレヤ(Holleya)種、ズーフソラ・ラジカンス(Zoophthora radicans)、スミチウム・クリセタエ(Smittium culisetae)、アウクサルスロン・ズフィアヌム(Auxarthron zuffianum)、レニスポラ・フラビシマ(Renispora flavissima)、クテノミセス・セラタス(Ctenomyces serratus)、およびスポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)。
【0196】
感染病原体としての寄生生物種の例は、蠕虫(helmiths)(寄生虫(worms))を含んでもよく、それは以下から選択されてもよい。条虫(cestodes):例、アナプロセファラ(Anaplocephala)種;ジピリジウム(Dipylidium)種;裂頭条虫属(Diphyllobothrium)種;エキノコックス(Echinococcus)種;モニエジア(Moniezia)種;タエニア(Taenia)種;吸虫(trematodes)、例、ジクロコエリウム(Dicrocoelium)種;カンテツ属(Fasciola)種;パラムフィストマム(Paramphistomum)種;住血吸虫属(Schistosoma)種;または線虫(nematodes);例、鉤虫属(Ancylostoma)種;アネカトル(Anecator)種;アスカリディア(Ascaridia)種;回虫(Ascaris)種;ブルギア(Brugia)種;ブノストムム(Bunostomum)種;カピラリア(Capillaria)種;チャベルチア(Chabertia)種;クーペリア属(Cooperia)種;シアトストムム(Cyathostomum)種;シリコシクルス(Cylicocyclus)種;シリコドントホルス(Cylicodontophorus)種;シリコステファヌス(Cylicostephanus)種;クラテロストムム(Craterostomum)種;ディクチオカウルス(Dictyocaulus)種;ジペタロネマ(Dipetalonema)種;ジロフィラリア(Dirofilaria)種;ドラクンクルス属(Dracunculus)種;エンテロビウス(Enterobius)種;フィラロイデス(Filaroides)種;ハブロネマ(Habronema)種;ヘモンクス(Haemonchus)種;ヘテラキス(Heterakis)種;ヒオストロンギルス(Hyostrongylus)種;メタストロンギルス(Metastrongylus)種;メウレリウス(Meullerius)種、ネカトール(Necator)種;ネマトジルス属(Nematodirus)種;ニッポストロンギルス(Nippostrongylus)種;オエソファゴストムム(Oesophagostomum)種;オンコセルカ(Onchocerca)種;オステルタギア(Ostertagia)種;オキシウリス(Oxyuris)種;パラスカリス(Parascaris)種;ステファヌルス(Stephanurus)種;ストロンギルス(Strongylus)種;シンガムス(Syngamus)種;トキソカラ(Toxocara)種;ストロンギロイデス(Strongyloides)種;テラドルサギア(Teladorsagia)種;トキサスカリス(Toxascaris)種;トリキネラ属(Trichinella)種;鞭虫属(Trichuris)種;トリコストロンギルス属(Trichostrongylus)種;トリオドントフォロウス(Triodontophorous)種;ウンシナリア(Uncinaria)種、および/またはウシェレリア(Wuchereria)種。
【0197】
感染病原体としての寄生生物種の例は、以下から選択される原虫を含んでもよい。トリパノソーマ(Trypanosoma)、ドノバン・リーシュマニア(Donovan Leishmania)を含むリーシュマニア(Leishmania)種、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を含むがそれに限定されないマラリア原虫(Plasmodium)種;ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carini)、クリプトスポリジウム・パルム(Cryptosporidium parum)、ランブル・フラゲラテ(Rumble flagellate)、シゲラ・アメーバ(Shigella amoeba)、およびシクロスポランガ・カネテネンシス(Cyclosporanga canetenensis)。
【0198】
本明細書において考察されるワクチン組成物および方法は、特に有効な免疫原性タンパク質が公知であるときの、ワクチン接種に感受性であることがすでに公知であり得る疾患、処置および予防に対して非排他的に予期される。
【0199】
表5(以下)は、本発明の組成物および方法において使用するために選択される、それに対する免疫応答が所望される抗原の例示的な例を提供する。当業者は、公開データベースおよび刊行物から類似の抗原/標的を容易に入手し、本発明の組成物を生成できる。たとえば感染前の予防および活動性感染症などの疾患の状態に依存して、2つ以上の抗原が対象に送達されてもよいことが理解されるべきである。例として、活動性結核疾患を有する対象については、活動期(例、ESAT6 Ag85B)、潜伏期(Rv2626)、および/または蘇生期(RpfB-D)由来のTBタンパク質をコードするTB抗原を送達してもよい。このようにして、特にTh1応答を誘発するアジュバントを投与することが所望されるときに、活動性の結核が処置され得る。
【0200】
本発明の一態様において、本明細書に記載される組成物は、標準的な治療と組み合わせて投与され、たとえば、活動性の細菌感染またはウイルス感染に対しては、こうした疾患を処置するための当分野で公知の抗菌剤または抗ウイルス剤が投与され得る。こうした薬剤は、本発明の組成物による処置の前か、それと同時(単独で、または固定用量の組み合わせとして)か、またはその後に投与され得る。
【0201】
いくつかの実施形態において、コードmRNAは、免疫応答が望まれる抗原をコードし得る。こうした抗原の送達は、上記で考察された局所的免疫応答を誘導するために使用されるか、または抗原自体に対する適応免疫応答を誘発するため、すなわちワクチンと同様に、その抗原に対する免疫を誘導するために使用され得る。こうした場合、本発明による組成物をアジュバントと組み合わせて、免疫応答の発生を促進させてもよい。適切には、1つ以上の炎症性サイトカインをアジュバントとして使用してもよく、それはたとえばIFNγ、IFNα、IFNβ、TNFα、IL-12、IL-2、IL-6、IL-8、およびGM-CSF、またはそれらのアゴニストおよびホモログなどから選択される。任意選択で、1つ以上の炎症性サイトカインは、特にIL-2、IL-12、IFNγ、TNFα、およびGM-CSFから選択される。特定の実施形態では、1つ以上の炎症性サイトカインはIL-12、IFNγ、およびGM-CSFから選択される。特定の実施形態において、炎症性サイトカインは、同時投与または連続投与されるワクチン組成物のアジュバントとして作用する。
【0202】
感染性疾患の予防または病原体感染症の予防のための予防ワクチン
たとえば、コードmRNAは、それに対する全体的または部分的な免疫反応が所望される細菌、ウイルス、またはその他の微生物のタンパク質をコードし得る。こうしたコードされた産物は、この考察において「抗原産物」または「抗原」と呼ばれる。いくつかの場合に、細菌、ウイルス、またはその他の微生物のタンパク質の一部(「エピトープ」または「抗原決定基」)のみに対して免疫を生成でき、よってそれらの部分のみをコードすることも想定される。特に、外部に提示される微生物タンパク質の部分は、免疫認識のための有望な標的として選択され得る。結果として、コードされる抗原は、細菌、ウイルス、またはその他の微生物のタンパク質であり得るが、その部分配列、一部、またはフラグメントであってもよく、特にその「エピトープ含有フラグメント」であり得る。同じまたは異なるmRNAコンストラクトにおいて、特定の微生物または病原体に対する2つ以上の抗原が提供され得ることが想定される。
【0203】
本明細書において考察されるワクチン組成物および方法は、表5に記載されるものなどの、特に有効な免疫原性タンパク質が公知であるときの、ワクチン接種に感受性であることがすでに公知である疾患、処置および予防に対して非排他的に予期される。結果として、本明細書中の組成物および方法は、以下に記載される免疫原性タンパク質またはその変異体のうちの1つ以上をコードするmRNAコンストラクトを使用し得る。
【0204】
【0205】
本明細書において考察されるワクチンは、適切には(排他的ではないが)、細胞質または小胞のいずれかの細胞内病原体に向けた方向性が想定される。これに関する細胞内細胞質病原体の例は、ウイルス、クラミジア(Chlamydia)種、リケッチア(Rickettsia)種、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、およびたとえばマラリア原虫(Plasmodium)種などの原虫寄生体である。小胞細胞内病原体の例としては、マイコバクテリア、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、リーシュマニア(Leishmania)種、リステリア(Listeria)種、トリパノソーマ(Trypanosoma)種、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、およびペスト菌(Yersinia pestis)が挙げられる。
【0206】
いくつかの実施形態において、コードmRNAは、たとえば重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2ウイルス(SARS-CoV-2:severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 virus)、すなわちCovid-19パンデミックの原因ウイルスなどの、重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの1つ以上のウイルスタンパク質をコードし得る。このウイルスは、S(スパイク(spike))、E(エンベロープ(envelope))、M(膜(membrane))、およびN(ヌクレオカプシド(nucleocapsid))タンパク質という4つの構造タンパク質を有する。いくつかの実施形態において、コードmRNAは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の全部または一部をコードする。いくつかの実施形態において、mRNAは、Sタンパク質外部ドメインの融合前形態(残基986および987にプロリン置換を有するアミノ酸1~1208;GenBank MN908947)をコードする。いくつかの実施形態では、mRNAは、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(Receptor Binding Domain)すなわちRBD(残基319~591;GenBank MN908947)をコードする。これはこのタンパク質の外側部分であり、免疫系によって認識され得るエピトープと考えられる位置である。いくつかの実施形態において、mRNAは、SARS-CoV-2の変異体のスパイクタンパク質、たとえばアルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、デルタ、カッパ、またはイータ変異体などのスパイクタンパク質の全部または一部をコードする。いくつかの実施形態において、mRNAは、以下の表6Aに列挙される配列(配列番号62~67)、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の類似性を有する配列のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、スパイクタンパク質またはその一部をコードするmRNAは、ヒトまたは他の哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されている。いくつかの実施形態において、mRNAにおいて使用されるヌクレオシドのうちの1つ以上は、その異性体によって置換されている。例として、mRNAコンストラクト中のウリジンヌクレオシドの1つ、複数、またはすべてが、プソイドウリジンヌクレオシドによって置換される。一実施形態では、mRNAは、SARS-CoV-2デルタ変異体のスパイクタンパク質をコードし、mRNAの器官保護MOP配列はmiRNA122、miRNA192、およびmiRNA30aの各々に対する標的部位を含み、別の実施形態ではmiRNA let7bに対する標的部位をさらに含む。以下により詳細に記載される本発明の他の実施形態において、mRNAは、MOP配列を有するかまたは有さない、非コドン最適化またはヒトコドン最適化ウーハン(Wuhan)株、ベータ変異体、またはアルファ変異体から選択される、SARS-CoV-2の融合前スパイクタンパク質をコードする。MOP配列は、miRNA結合配列の以下の組み合わせを含むものから選択されてもよい。miRNA122、miRNA192、およびmiRNA30a;ならびにlet7、miRNA126、およびmiRNA30a;miRNA122、miRNA1、miRNA203a、およびmiRNA30a。器官保護が必要とされる特定の状況に依存して、他のMOP配列が選択されてもよいことが認識されるだろう。本明細書に記載されるとおり、選択されるMOP配列は、体内のそれぞれの標的miRNA配列との完全一致ハイブリダイゼーションを確実にするためにさらに最適化されたmiRNA結合配列を含んでもよい。
【0207】
【0208】
いくつかの実施形態では、コードmRNAは、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)としても知られるヒトアルファ-ヘルペスウイルス3(HHV-3:Human alpha-herpesvirus 3)の1つ以上のウイルスタンパク質をコードし得る。特定の実施形態において、コードmRNAは、VZVの1つ以上の糖タンパク質、たとえば糖タンパク質E(VZVgE)などをコードし得る。
【0209】
いくつかの実施形態では、コードmRNAは、インフルエンザウイルス(流行性季節性インフルエンザを引き起こすA型およびB型)の1つ以上の免疫原性ウイルスタンパク質、たとえばヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、マトリックス-2、および/または核タンパク質などをコードし得る。ヘマグルチニンは、インフルエンザのグループ、型、さらにはサブタイプの間でも高度に可変性であり、これは汎用インフルエンザワクチンを開発することが困難である一要因である。ヘマグルチニンの頭部ドメインは高度に可変性であるが、ヘマグルチニンの膜近位ストークドメインはグループ内で比較的よく保存されているが、免疫サブドミナントである。したがって、いくつかのワクチン戦略は、頭部ドメインを有さない低減されたHAを使用し、したがって本発明の実施形態においてこうした低減されたHAが提供され得ることが予期される。
【0210】
インフルエンザの任意のグループ、型、またはサブタイプ由来の1つ以上の免疫原性ウイルスタンパク質を提供することが考えられ、それはたとえば、インフルエンザAグループ1:H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18サブタイプおよびN1、N4、N5、N8サブタイプ;インフルエンザAグループ2:H3、H4、H7、H10、H14、H15サブタイプ+N2、N3、N6、N7、N9サブタイプ;またはインフルエンザB由来のものなどである。インフルエンザBウイルスはサブタイプに分けられないが、代わりにB/ヤマガタおよびB/ビクトリアの2つの系列にさらに分類される。
【0211】
ノイラミニダーゼはヘマグルチニンよりもゆっくりとドリフトし、ノイラミニダーゼに対する抗体はサブタイプ内で交差防御的であることが示されている。ノイラミニダーゼは、ヘマグルチニンと比較すると免疫サブドミナントである。マトリックス-2および/または核タンパク質は、ヘマグルチニンよりも保存されているが、免疫サブドミナントである。
【0212】
毎年、WHOは予測に基づいて四価または三価インフルエンザワクチンを推奨している。結果として、広範な防御を提供するために、2つ以上のインフルエンザ抗原をコードする組成物およびコンストラクトを提供することが特に想定される。
【0213】
いくつかの実施形態において、コードmRNAは、たとえばF糖タンパク質および/またはG糖タンパク質などの呼吸器合胞体ウイルスの1つ以上の免疫原性ウイルスタンパク質をコードし得る。A2株由来のF糖タンパク質は、RSV A(ロング)株およびRSV B(18537)株に対する交差防御を誘導する、マクレラン(McLellan)ら、2013に記載される改変を使用した融合前コンフォメーションで安定化され得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、コードmRNAは、たとえば糖タンパク質120中和エピトープ(CD4BS 421-433エピトープなど)または糖タンパク質145の全長または一部などの、ヒト免疫不全ウイルスの1つ以上の免疫原性ウイルスタンパク質をコードし得る。たとえばgag、pol、env、およびnefなどのHIV由来の抗原は、ワクチン候補の可能性のあるものとしてさまざまなベクターにおいて発現されている(IPナシメントおよびLCCレイテ、ブラジリアン・ジャーナル・オブ・メディカル・アンド・バイオロジカル・リサーチ(Braz J Med Biol Res.)2012 doi:10.1590/S0100-879X2012007500142)。
【0215】
いくつかの実施形態において、コードmRNAは、マイコバクテリウム属由来の細菌の1つ以上の免疫原性細菌タンパク質またはその一部をコードし得る。特に、コードmRNAは、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)および/またはらい菌(Mycobacterium leprae)細菌由来の1つ以上の細菌タンパク質をコードしてもよい。いくつかの実施形態では、コードmRNAは、結核菌(M.tuberculosis)の活動期および/または潜伏期および/または蘇生期由来の1つ以上のタンパク質をコードしてもよい。たとえば、mRNAは、ESAT-6、Ag85B、TB10.4、Rv2626、および/もしくはRpfD-B、またはその一部から選択される結核菌(M.tuberculosis)タンパク質の1つ以上をコードしてもよい。
【0216】
以下の表6Bは、本発明において使用され得るいくつかの異なる可能な病原体に対する抗原をコードするORFの例を示す。本明細書中に記載されるとおり、これらのORFは、さらなるRNA配列、最も具体的にはOPSと共に存在でき、かつ/またはさらなるmRNAコンストラクトと組み合わせて使用され得る。上記の考察と同様に、いくつかの実施形態において、RNAは、以下の表6に列挙される配列(配列番号69~84)、またはそのエピトープ含有フラグメント、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の類似性を有する配列のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、抗原またはその一部をコードするmRNAは、ヒトまたは他の哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化されている。いくつかの実施形態において、mRNAにおいて使用されるヌクレオシドのうちの1つ以上は、その異性体によって置換されている。例として、mRNAコンストラクト中のウリジンヌクレオシドの1つ、複数、またはすべてが、プソイドウリジンヌクレオシドによって置換される。
【0217】
【0218】
たとえば2つ以上のSARS-CoV-2スパイクタンパク質由来のスパイクタンパク質をコードするなど、2つ以上の抗原をコードするmRNAを含む、医薬組成物を含む組成物を提供することが特に想定される。本明細書中の他の箇所に記載されるとおり、同じまたは異なるmRNAコンストラクトによって複数の抗原が提供されてもよい。1つの態様において、野生型SARS-CoV-2、ベータ(南アフリカ)変異体SARS-CoV-2、およびデルタ変異体SARS-CoV-2の少なくとも2つ、適切には3つすべてに由来するスパイクタンパク質をコードするmRNAコンストラクトを含む組成物が提供される。これらは、同じまたは異なるmRNAコンストラクト上に存在してもよい。本明細書中の他の箇所に記載されるとおり、これらの抗原をコードするmRNAコンストラクトは、OPSを欠いていてもよいし、それらの1つ以上、適切にはすべてがOPSを有してもよい。いくつかの実施形態において、OPSは、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aと結合できる配列;またはmiRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できる配列を含み得る。これらの実施形態のいずれかにおいて、以下でさらに考察されるとおり、組成物は免疫調節剤をコードするmRNAも含み得る。特に、本明細書中の他の箇所で考察されるとおり、組成物はIL-12をコードするmRNAも含んでもよい。本明細書中の他の箇所に記載されるとおり、免疫調節剤mRNAはOPSを欠いていてもよいし、OPSを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、OPSは、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aと結合できる配列;またはmiRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できる配列を含み得る。特定の実施形態において、記載されるとおり、抗原(たとえば、2つ以上の変異体SARS-CoV-2スパイクタンパク質)をコードするmRNAコンストラクトはOPSを欠いていてもよいが、免疫調節剤(たとえばIL-12)をコードするmRNAコンストラクトはOPSを含んでもよい。
【0219】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2(またはその変異体)およびインフルエンザの各々に由来するウイルスタンパク質をコードするmRNAを含む組成物を提供して、たとえば、これらのウイルスの一方または両方の季節性変異体、新規変異体、または新興変異体に対する多価ワクチン接種または共同ワクチン接種を提供し得ることが想定される。他の箇所に記載されるとおり、同じまたは異なるmRNAコンストラクト上に異なる抗原が提供されてもよく、他の箇所に記載されるとおり、これらのmRNAコンストラクトはOPSを欠いていてもよいし、OPS/MOPを含んでもよい。以下でさらに考察されるとおり、組成物は、たとえばIL-12などの免疫調節剤をコードするmRNAをさらに含んでもよい。記載されるとおり、このmRNAはOPSも含んでもよい。
【0220】
さまざまな実施形態では、抗原産物をコードするmRNAは、複数の器官を保護する少なくとも1つのOPS(すなわち、多器官保護配列または「MOP」)を付加的に含み、OPS配列は、少なくとも3つ(たとえば、少なくとも第1、第2、および第3)のマイクロRNA(miRNA)標的配列を含む。標的配列の1つは、miRNA-1と結合できる配列であり得る。標的配列は、miRNA-1、miRNA-133a、miRNA-206、miRNA-122、miRNA-192、miRNA-203a、miRNA-205、miRNA-200c、miRNA-30a/b/c、および/またはLet7a/bのうちの1つ以上、適切にはこれらのすべてと結合できる配列を含むことができる。
【0221】
任意の抗原をコードするmRNAのさまざまな実施形態において、OPSは、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30aと結合できる配列;Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aと結合できる配列;miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できる配列;またはmiRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できる配列、ならびにmiRNA122と結合できる2つの配列を含むことができる。本明細書に記載されるものなどの任意のOPSは、脳組織の保護のためにmiRNA-124と結合できる配列、および/またはLet7bと結合できる配列をさらに含んでもよい。OPS内の標的配列の順序(すなわち、それらの5’から3’への配置)は重要であるとは考えられず、任意の順列が考慮されてもよい。
【0222】
上記のアプローチは、細菌または他の生物によって産生された不活性化毒素に対する免疫応答が誘導される典型的な「トキソイド」ワクチンか、または標的微生物のフラグメントに対して免疫応答が誘導される「サブユニット」ワクチンと同様のワクチン治療組成物を調製するために特に適していることが認識され得る。
【0223】
本明細書に記載される本発明の任意の実施形態は、提案される標的組織として、血液またはその細区分(たとえば、造血細胞およびリンパ系細胞など)を有してもよいが、血液およびその細区分は、免疫応答を誘導することを目的とする実施形態、コードmRNAによってコードされる産物に対して免疫応答を誘導させる実施形態、および/または任意選択でワクチン療法を提供することを目的とする実施形態において、特に適切であり得ることが特に考えられる。こうしたアプローチに対する標的として特に予期されるのは、末梢血単核細胞(PBMC:Peripheral blood mononuclear cells)、および適切には抗原提示細胞(APC:antigen presenting cells)である。
【0224】
従来のワクチンは、病原体特異的抗原(外因性抗原)を免疫系に提示することによって、それに対する免疫反応が誘導され得るようにして、この外因性抗原に次に遭遇したときにそれを認識して迅速に対抗できるようにすることによって、少なくとも部分的に機能する。いわゆる抗原提示細胞(APC)がこのプロセスの鍵である。すべての有核細胞は細胞傷害性T細胞(CD8+)に内因性抗原を提示することができるが、樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞を含む特定の細胞は「プロフェッショナル」APCであり、外因性抗原を検出および提示する能力を有する。これらの細胞は、外因性抗原を内在化してプロセシングし、主要組織適合性複合体II型(MHC-II:major histocompatibility complexes type II)およびしばしば共刺激分子と会合して、それらの外因性抗原またはそれらのフラグメント(免疫優性エピトープ)を表面上に提示して、B細胞による抗体産生(適応免疫)を開始する際に中心的役割を果たすたとえばCD4+ヘルパーT細胞などの増強されたT細胞応答を形成する。
【0225】
過去の努力により、インフルエンザタンパク質をコードするmRNAを脂質ナノ粒子で投与して、免疫細胞の動員ならびに単球および樹状細胞によるmRNAの翻訳をもたらすことができることが実証されている(リャン(Liang)ら「アカゲザルにおける改変mRNAワクチン投与後のインビボでの抗原提示細胞の効率的な標的化および活性化(Efficient Targeting and Activation of Antigen-Presenting Cells In Vivo after Modified mRNA Vaccine Administration in Rhesus Macaques)。モレキュラー・セラピー(Mol Ther.)2017)。したがって、外因性抗原またはそのエピトープをコードする本明細書に記載のmRNAコンストラクトまたは組成物によるプロフェッショナルAPC(たとえば単球および樹状細胞など)のトランスフェクションは、抗原提示と、その抗原に対する長期にわたる適応免疫の誘導とを可能にすることが予期される。しかし、プロフェッショナルAPC内での抗原の発現は必要ではなく、他の組織による抗原の発現が、所望の免疫応答を誘導するのに有効となり得る。これは、産生された抗原が産生後に通常の方法でプロフェッショナルAPCによって取り込まれてプロセシングされ得るからである。
【0226】
これに加えて、またはその代わりに、本明細書に記載のmRNAコンストラクトまたは組成物を使用して、たとえばサイトカイン、ケモカイン、共刺激分子、または主要組織適合性複合体などのワクチン誘導免疫のプロセスに関連する産物を送達および発現させることができる。こうしたコードされた産物は、この考察のために「免疫刺激物質」、「免疫調節産物」、もしくは「免疫調節剤」と呼ばれるか、または同時投与されたワクチン組成物に対する応答を刺激するために使用されるときは「アジュバント」と呼ばれる。抗原およびさらなる(免疫調節)成分の両方をコードするmRNAが投与されるとき、上記のとおり、これらは別々のmRNAコンストラクトとして製剤化されるか、または同じポリシストロニックmRNA上に一緒に製剤化され得る。別々のmRNAコンストラクトがこれらの産物に使用されるとき、以下でさらに考察されるとおり、別々のコンストラクトの各々は、miRNA結合性部位配列の同じセットを含むことができ(すなわち、それらの各々が同じOPSを含んでもよい)、またはmiRNA結合部位配列の異なるセット(異なるOPS)を含んでもよい。場合によっては、mRNAコンストラクトのうちのいずれかが、miRNA結合部位配列を完全に欠いていてもよい。ワクチン誘導免疫のプロセスに関連する産物をコードするmRNAは、当業者に公知の任意のタイプのワクチンと組み合わせて、すなわち、タンパク質ベース(トキソイド、組み換え、コンジュゲートワクチン)、RNA、mRNA、およびDNAベースのワクチン(上記のとおりの環状または環状化RNAコンストラクトを含む)、生弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、または組み換えベクターベースのワクチン(例、MVAまたはアデノウイルスプラットフォーム)と組み合わせて使用できることが認識され得る。
【0227】
このようにして、同時投与されたmRNAコード抗原または他のタイプのワクチンに対する免疫応答を、制御可能な多用途のやり方で増強できる。このアプローチの別の利点は、免疫応答を増強するための免疫調節剤の投与によって、単一の組成物で複数のポリペプチドを提供できることが期待されることである。
【0228】
たとえば、マクロファージはMHC-IIを発現するために、インターフェロンガンマ(IFN-γ)のT細胞分泌による活性化を必要とする。したがって、記載されるmRNAコンストラクトおよび組成物でのトランスフェクションによるIFN-γ発現の誘導は、従来のワクチンアプローチか、または本明細書中に記載されるmRNAコンストラクトおよび組成物を使用するアプローチによって抗原発現を誘導したときのいずれでも、ワクチン誘導免疫応答の誘導を増強し得る。同様に、たとえばTLR、適切には上記で考察したTLR8などの免疫原性プロセスに関与する細胞受容体の誘導も、本明細書に記載のmRNAコンストラクトおよび組成物を用いて実施できる。
【0229】
Th1およびTh2免疫応答の主な相違点は、Th1免疫応答が、細胞内寄生体を殺し、かつ自己免疫応答を永続させる炎症誘発性応答であるのに対して、Th2免疫応答は、アトピーにおけるIgEおよび好酸球性応答を促進し、抗炎症性応答を生じることによって、蠕虫などの大きな細胞外寄生体を殺すことである。さらに、重要なTh1サイトカインはインターフェロンガンマ(IFN-γ)であるのに対し、Th2サイトカインはインターロイキン4、5、6、10、および13を含む。Th1免疫応答は、細菌およびウイルスなどの細胞内寄生体に対してTh1細胞によって生じる免疫応答である。一般的に、サイトカインIL-12は、Th1細胞を活性化することによってTh1免疫応答を引き起こすことを担う。さらに、活性化されたTh1細胞は、たとえばインターフェロンガンマ(IFN-γ)およびインターロイキン2(IL-2)などのサイトカインを分泌する。Th1免疫応答は、細胞性免疫をもたらす炎症誘発性応答である。したがって、Th1免疫応答はマクロファージならびにCD8 T細胞、IgG B細胞、およびIFN-γCD4 T細胞を活性化する。インターフェロンガンマ(INF-γ)、インターロイキン2(IL-2)、および腫瘍壊死因子ベータ(TNF-β)を含む、Th1細胞によって産生されるサイトカインはTh1免疫応答に介在し、一方、たとえばインターロイキン(IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、およびIL-13)などのTh2細胞によって産生されるサイトカインはTh2免疫応答に介在する。
【0230】
IL-12は、抗原刺激に応答して樹状細胞、マクロファージ、好中球、およびヒトBリンパ芽球細胞によって産生され、T細胞の刺激および増殖に関与する。IL-12は、ヘルパーT細胞のTh1サブセットの発生において重要な役割を有する、刺激性および炎症誘発性サイトカインである。IL-12は元々、インターフェロンガンマ(IFN-γ)産生、細胞増殖、ならびにナチュラルキラー細胞およびT細胞によって介在される細胞傷害性を誘導する能力を有することによって発見された。現在では、上記のとおり、IL-12がTh1応答の発生においても重要な役割を果たし、IFN-γおよびIL-2産生をもたらすことが立証されている。これらのサイトカインは、次いで細胞傷害性T細胞応答およびマクロファージ活性化を促進し得る。
【0231】
別の実施形態では、外因性抗原発現を誘導するために従来のワクチンアプローチまたは本明細書中に記載されるmRNAコンストラクトおよび組成物を使用するアプローチのいずれを用いたときにも、ワクチン効力を増強するかまたはワクチン誘導性免疫応答を増強するために、IL-12発現をもたらすmRNAコンストラクトおよび/または組成物を投与することが所望されてもよい。このようにして、IL-12は、同時またはほぼ同時に送達される抗原を特定的に標的とするレシピエントにおける免疫刺激応答を提供するためのアジュバントとして存在する。前述のとおり、Th1応答を誘導するIL-12の有利な生物学的活性は、IFN-γおよびIL-2産生を促進する。これらのサイトカインは共に、投与された抗原に応答して細胞傷害性T細胞免疫を促進できる。このタイプのワクチン療法のレシピエントにおける免疫原性応答は、たとえば数例を挙げるとSARS-CoV-2、インフルエンザ、HIV、およびRSVを含むウイルスなどの細胞内病原体;またはさらにはたとえば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)などの細胞内細菌病原体によってもたらされる感染性疾患の処置もしくは予防に特に適している。
【0232】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSFまたはCSF2;GenBank AAA52578)は、T細胞、B細胞、マクロファージ、肥満細胞、内皮細胞、線維芽細胞、および脂肪細胞を含むさまざまな細胞型によって産生される免疫調節剤である。加えてGM-CSFは、抗原提示細胞の機能を調節し、かつ樹状細胞活性化の増強および単核食細胞成熟の増強に関与する。GM-CSFは、過去にワクチンにおいて応答を刺激するために使用されている(ユー(Yu)ら「新規のGM-CSFベースのワクチン:GM-CSF遺伝子最適化における1つの小さなステップ、ヒトワクチンにとっての1つの大きな飛躍(Novel GM-CSF-based vaccines:One small step in GM-CSF gene optimization、one giant leap for human vaccines)。」ヒューマン・ワクチンズ・アンド・イムノセラピューティックス(Hum Vaccin lmmunother.)2016)。特にGM-CSFは、ジフテリア予防(グラッセ(Grasse)Mら「GM-CSFは多価ワクチン中のジフテリア成分に対する免疫応答を改善する(GM-CSF improves the immune response to the diphtheria-component in a multivalent vaccine)。」ワクチン(Vaccine)。2018)、および結核予防(ワン(Wang)ら「ウイルスベースのGM-CSF導入遺伝子アジュバント製剤の使用によるBCGワクチンの免疫原性の増強(Enhanced immunogenicity of BCG vaccine by using a viral-based GM-CSF transgene adjuvant formulation)。」ワクチン(Vaccine)。2002)を含むがこれらに限定されない細菌疾患または感染に対するワクチン応答を改善することが示されている。コロナウイルス、インフルエンザウイルス(リウ(Liu)ら「保存されたインフルエンザタンパク質およびGPIアンカーCCL28/GM-CSF融合タンパク質から構成されるインフルエンザウイルス様粒子は、同種および異種ウイルスに対する防御免疫を増強する(Influenza virus-like particles composed of conserved influenza proteins and GPl-anchored CCL28/GM-CSF fusion proteins enhance protective immunity against homologous and heterologous viruses)。」インターナショナル・イムノファーマコロジー(Int Immunopharmacol.)2018)、およびブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(porcine reproductive and respiratory syndrome virus)(ユー(Yu)ら「GM-CSFを発現する組み換え生弱毒化PRRSVの構築およびインビトロ評価(Construction and in vitro evaluation of a recombinant live attenuated PRRSV expressing GM-CSF)。」バイロロジー・ジャーナル(Virol J.)2014)を含むがこれらに限定されないウイルス性疾患またはウイルス感染症に対するワクチンアプローチにおけるGM-CSFの使用によって、同様の改善が発見または理論化されている。
【0233】
したがって、本明細書に記載のmRNAコンストラクトまたは組成物を用いたGM-CSFのコードmRNAの導入は、抗体および細胞性免疫応答の両方を通じてワクチン免疫原性を増強するために使用され得る。したがってこうしたアプローチは、ヒトおよびその他のレシピエントにおけるワクチンアジュバント、エンハンサー、または免疫学的ブースターとして、予防および治療用ワクチン型の両方において使用され得る。同様の効果は、たとえばマクロファージコロニー刺激因子(M-CSFまたはCSF1;GenBank BC021117)および顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor)(G-CSFまたはCSF3;GenBank BC033245)などの他のCSF型タンパク質についても見られ得る。
【0234】
上記で考察したとおり、IFN-αおよびIFN-βは、主にウイルス感染に対する自然免疫に関与し、記載されるとおり、本明細書中に記載されるmRNAコンストラクトまたは組成物を使用したこれらの薬剤の一方または両方の導入は、免疫原性を増加させるために使用され得る。
【0235】
IFN-γ合成は、適応免疫応答の強さおよび質に影響を及ぼすことが公知である。適応免疫応答の出現前に発生する、免疫化後のIFN-γの早期合成は、ワクチンに対する高品質免疫応答の徴候である。自然免疫細胞によるIFN-γのこの早期放出は、樹状細胞の成熟に影響を及ぼし、結果的にCD4+T細胞のTh1系列への極性化に影響を及ぼす。
【0236】
考察されたとおり、IFN-γおよびIL-2は活性化CD4+Th1細胞にも産生され、これらの薬剤の一方または両方の導入によって、関連する応答を増加し得ることが予期される。同様に、本明細書の他の箇所で考察されるTNFαは、感染に対する炎症応答の一部として他の免疫系細胞を動員するために放出され、したがって本明細書に記載されるmRNAコンストラクトまたは組成物を用いたTNFαの提供は、抗ウイルス免疫原性を増強するために使用され得る。
【0237】
IL-6は、B細胞の免疫グロブリン分泌細胞への最終分化に関与し、本明細書に記載されるmRNAコンストラクトまたは組成物を用いたその導入は、免疫原性を改善することが想定される。
【0238】
本明細書中に記載されるとおりに投与されるときのIL-8の導入は、好中球走化性を改善し、よって免疫原性を改善することが予期される。
【0239】
本明細書に記載されるmRNAコンストラクトまたは組成物を使用して誘導することができるワクチン誘導免疫のプロセスに関連する産物の他の例としては、核因子NF-κB経路のモジュレーターが挙げられ、これは結核菌(BCG)ワクチンに対するワクチン応答の発生に関与している(シェイ(Shey)ら「生後9ヵ月間にわたるマイコバクテリアに対する自然応答の成熟(Maturation of innate responses to mycobacteria over the first nine months of life)。」ジャーナル・オブ・イムノロジー(J lmmunol.)2014)。
【0240】
上記のものなどの同時投与のための特定の免疫調節剤を選択できることは、特定のタイプの免疫応答の促進を可能にし、これは特定の病原体に対する有効な免疫を誘導するために有益であり得る。例として、考察されるIL-12は、Th1応答の発生において重要な役割を果たし、IFN-γおよびIL-2産生をもたらすので、こうした細胞内病原体に対するワクチン接種をするときに、このサイトカインを同時投与することが有益であり得る。たとえばIFN-γ、TNF-β、IL-2、およびIL-10など、その他のTh1関連サイトカインも、こうした反応を促進するために付加的または代替的に有用であってもよい。
【0241】
上記の考察によるmRNAコンストラクトおよび組成物は、抗原をコードするか免疫調節剤をコードするかにかかわらず、本明細書に記載の任意の器官保護配列を含み得る。しかし、特定の実施形態では、器官保護配列は、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、および皮膚のうちの1つ以上を保護するように選択される(たとえば、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-192、miRNA-30a、および/またはmiRNA-203aに対する標的配列を使用する)。いくつかの実施形態では、miRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、およびmiRNA-203aの4つすべてに対する標的配列が器官保護配列に含まれる。こうした組み合わせは、筋肉組織(組成物は筋肉内投与され得るため)、ならびに肝臓および腎臓組織を保護するのに有効であると考えられる。筋肉組織の保護が所望される任意の実施形態においては、表2に従って、miRNA1の代わりまたはそれに加えて、miRNA133aおよび/またはmiRNA206に対する標的配列が含まれ得ることが特に考慮される。たとえば、こうしたOPSは、miRNA-133a、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30a;またはmiRNA-206、miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aに対する標的配列を含み得る。皮下または皮内投与も一般的であり、皮膚の細胞を保護するために、皮膚に関連する1つ以上のmiRNA標的配列(表2参照)も使用されてもよい。
【0242】
特定のワクチンは、内皮組織との相互作用に関連する副作用を有し得ると考えられている。ゴールドマン(Goldman)M、ハーマンス(Hermans)C(2021)PLoSメディシン(PLoS Med)18(5):e1003648.https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1003648では、以下の機構が示唆された。筋肉内注射後、ワクチンアデノウイルスは内皮細胞に感染し、自身のSARS-CoV-2スパイクタンパク質の産生を誘導する。ヘパラン硫酸PGは、内皮細胞の管腔側でスパイクタンパク質に結合するか、または損傷細胞によって放出され得る。スパイクタンパク質は、ACE2依存性機構およびACE2非依存性機構を介して血小板を活性化するだろう。活性化血小板によって放出されたPF4は、内皮細胞から脱落したヘパラン硫酸PGに結合した後に免疫原性になるだろう。
【0243】
したがっていくつかの実施形態では、内皮組織を保護するためにmiRNA標的配列を含ませることを所望されることがある。したがって、表2において考察されたとおり、miRNA-98および/またはmiRNA-126標的配列がOPSに含まれてもよい。このタイプの保護は、任意の投与様式に有用であると考えられ、特に血管内への投与(静脈内、動脈内など)または筋肉内投与が使用されるときに有用であると考えられる。
【0244】
他の実施形態では、標的配列は、上記の表3または4からの1つ以上の配列の任意の適切な組み合わせを含んでもよい。特定の実施形態では、免疫調節剤をコードするmRNAコンストラクト内に含まれるOPSは、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、およびmiRNA-30a;Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30a;miRNA-122、miRNA-192、およびmiRNA-30aと結合できる配列;またはmiRNA-192、miRNA-30a、およびmiRNA-124と結合できる配列、ならびにmiRNA122と結合できる2つの配列を含み得る。
【0245】
こうしたコンストラクトおよび組成物におけるmiRNA-142標的配列の使用を回避することも有利であると考えられる。なぜなら、このmiRNAは造血起源の細胞および免疫細胞において豊富であり、したがってワクチン介在性応答に介在すると予想される細胞における発現の低下をもたらし得るからである。
【0246】
抗原および免疫調節成分の両方をコードするmRNAが投与される実施形態において、これらを別々のmRNAコンストラクトとして提供することができ、それらのmRNAコンストラクトは共製剤化されても、別々に製剤化されてもよい。いくつかの実施形態において、mRNAコンストラクトのいずれかが、miRNA結合部位配列を完全に欠いていてもよい。他の場合には、本明細書に記載されるとおり、各mRNAコンストラクトは1つ以上の器官保護配列を含んでもよい。これらの器官保護配列は、各mRNAコンストラクトについて同じであってもよいし、異なっていてもよい。抗原および免疫調節産物の異なる目的およびオフターゲット効果の可能性を考慮すると、これらの産物の示差的発現の異なるパターンを支援すること、および/または各産物に対する異なる組織または細胞型に対する保護を拡大することのために、これらの産物の各々に対する異なる器官保護配列を使用することが有益であり得ると考えられる。
【0247】
たとえば、抗原成分を主に筋細胞およびAPCに発現させることが有利であってもよく、したがって、これらの産物をコードするmRNAに含まれる器官保護配列は、他の健常な組織を保護しながらこれらの細胞型における発現を可能にするように選択されてもよい。場合によっては、抗原成分が、miRNA-122、miRNA-192、および/もしくはmiRNA30a、またはこれらの3つすべてに対する標的配列を含む器官保護配列を有することが好ましいことがある。
【0248】
上記で考察したとおり、たとえばIL-12などの免疫調節剤は、オフターゲット効果を生じる可能性があるため、これらの因子をコードするmRNAは、(たとえばmiRNA-1、miRNA-122、miRNA-30a、および/もしくはmiRNA-203a、またはこれらの4つすべてに対する標的配列によって)筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、および/または皮膚に最大限の保護を提供するように選択されてもよく、一方で抗原成分をコードするmRNAは、発現の幅を増加させるために、より少ないmiRNA結合性部位配列を含んでもよい。
【0249】
一実施形態では、本発明の実施形態に従って投与される免疫調節剤は、タンパク質ベースのワクチン免疫原性を改善する。
【0250】
一実施形態では、本発明の実施形態に従って投与される免疫調節剤は、ウイルスベースのワクチン免疫原性を改善する。
【0251】
治療用ワクチン(または能動免疫療法)
従来の予防的(preventive)または予防的(prophylactic)なワクチン接種に加え、より新しい分野は、たとえば持続性感染または癌などの、体内にすでに存在する標的に対する免疫応答を誘発することを目的とした治療用ワクチンの分野である。こうした場合、免疫応答はしばしばダウンレギュレートされているか、そうでなければ正常な免疫応答から疾患を保護するように作用する耐性機構によって抑制されるため、治療用ワクチンははるかに困難であることが証明されている(メリーフ(Melief)ら「治療用癌ワクチン(Therapeutic cancer vaccines)」ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(JCI)2015)。
【0252】
したがって一実施形態では、腫瘍細胞における翻訳のために、腫瘍抗原をコードする本明細書に記載のmRNAコンストラクトが提供される。先に考察したとおり、これは癌細胞に対する免疫応答を誘導することを目的とする。これまでで明らかなとおり、本発明による器官保護配列の選択的使用によって、標的腫瘍組織以外の細胞型、組織、および/または器官における発現を低減させることができ、それは腫瘍を取り囲む同じまたは異なる組織タイプの組織中の健常細胞であるか、あるいは投与の使用または全身分散によって影響を受け得る他の器官であってもよい。
【0253】
こうした投与は、生じる免疫応答を改善するために治療用ワクチンと組み合わせて行うことができ、または腫瘍に対する応答を開始するために、導入されたエンハンサーに免疫系が反応するので、こうした投与自体が治療用ワクチンであってもよい。
【0254】
癌を処置するためのワクチンとしての治療用ウイルスとの組み合わせ(ウイルスベースの免疫療法としての治療用癌ワクチン)
治療用ワクチンとも呼ばれる癌処置用ワクチンは、免疫系をブーストして、健常細胞上には見出されない癌特異的抗原(腫瘍関連抗原および/またはネオ抗原)を保有する細胞を認識および破壊する免疫治療の一種である。たとえば、結腸直腸ネオ抗原はMUC1を含み、これは結腸直腸腫瘍細胞に一般的に見出される。他のネオ抗原は、患者の腫瘍に特異的であってもよい。この後者の場合、癌処置用ワクチンは、個別化されたネオ抗原ワクチンとなる。癌処置用ワクチンは、すでに癌と診断された患者に使用される。この療法は、癌細胞を破壊すること、腫瘍の成長および広がりを停止させること、または他の処置が終了した後に癌が再発するのを防止することができる。癌ワクチンは、それに対する免疫応答が所望される抗原と、免疫応答を強化するアジュバントとを含んでもよい。
【0255】
典型的な癌ワクチン接種戦略は、長期にわたる抗腫瘍免疫応答を生成できる、たとえば樹状細胞などの免疫系の主要な抗原提示細胞に腫瘍関連抗原を送達するための適切なベクターを選択することを含んでもよい。特定の実施形態では、アデノウイルス(Ad:adenovirus)ベクターは、高い効率を有し、かつ挿入変異誘発に対するリスクが低いことから、ネオ抗原遺伝子の送達のためのビヒクルとして使用されてもよい。たとえばChAdOx1またはChAdOx2ベクターなどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子産物およびAdカプシドタンパク質に対する強力な液性免疫応答および細胞免疫応答を迅速に誘発するので、有望な遺伝子ワクチンプラットフォームである。このことは、腫瘍ネオ抗原をコードするAdベクターに感染した樹状細胞を通じたインビトロおよびインビボの両方での抗腫瘍T細胞応答の生成によって実証されている。したがって一実施形態では、1つ以上の免疫調節剤をコードする本明細書に記載のmRNAコンストラクトを使用して、治療用癌ワクチンによって生成される細胞応答を誘引および活性化できる。本明細書に記載される適切な免疫調節剤は、IL-12ならびにその誘導体(例、単鎖形態)およびホモログを含んでもよい。こうしたmRNAコンストラクトは、たとえば筋肉、肝臓、腎臓、肺、脾臓、および皮膚のうちの1つ以上の保護などのために選択され得る、1つ以上の器官保護配列を含んでもよい(たとえば、miRNANA-1、miRNANA-122、miRNA-30a、および/もしくはmiRNA-203a;let7b、miRNANA-126、および/もしくはmiRNA-30a;またはmiRNA-122、miRNA-192、および/もしくはmiRNA-30aに対する標的配列を使用する)。
【0256】
GM-CSFは、以前に考察された予防(preventive/prophylactic)ワクチンにおける役割の可能性と同様に、治療用ワクチンに対するアジュバントの可能性もあるものとして同定されている(ヤン(Yanら「GM-CSFベースの癌免疫療法における最近の進展(Recent progress in GM-CSF-based cancer immunotherapy)。」イムノセラピー(lmmunotherapy)。2017;チャオ(Zhao)ら「治療用ワクチンのアジュバントとしてのGM-CSFの再調査(Revisiting GM-CSF as an adjuvant for therapeutic vaccines)。」セルラー・アンド・モレキュラー・イムノロジー(Cell Mol lmmunol.)2018)。同様に、癌に対する抗原特異的免疫を増強するためにウイルスベースのワクチンの一部として送達されるCD40リガンド(CD40L:CD40 ligand)は、免疫応答と、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化および増殖の誘導とを改善することが示されている(メディナ-エシェベルツ(Medina-Echeverz)ら「相乗的な癌免疫療法は、MVA-CD40Lが誘導する自然免疫および適応免疫と、腫瘍標的化抗体とを組み合わせる(Synergistic cancer immunotherapy combines MVA-CD40L induced innate and adaptive immunity with tumor targeting antibodies)。」ネイチャー・コミュニケーションズ(Nat Commun.)2019)。したがって、本明細書に記載のmRNAコンストラクトおよび組成物を使用して、癌処置用ワクチンの前、間、または後にGM-CSFまたはCD40Lの発現を誘導して、抗腫瘍免疫応答を増強できる。
【0257】
突然変異の結果として癌細胞によって産生される新規抗原である「ネオ抗原」を含む、患者特異的抗原に対する免疫応答を誘導することも所望され得る(リヒティ(Lichty)ら「癌免疫療法による拡散(Going viral with cancer immunotherapy)。」ネイチャー・レビューズ・キャンサー(Nat Rev Cancer)。2014)。したがって別の実施形態では、腫瘍関連抗原および/または患者のネオ抗原をコードするmRNAを含む、本明細書に記載されるmRNAコンストラクトおよび/または組成物を設計できる。いくつかの実施形態において、本発明のmRNAコンストラクトは、アルファフェトプロテイン(AFP:alphafetoprotein)、癌胎児性抗原(CEA:Carcinoembryonic antigen)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA:Epithelial tumor antigen)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE:Melanoma-associated antigen)、前立腺特異的抗原(PSA:Prostate-Specific Antigen)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2:human epidermal growth factor receptor 2)、rasの異常産物、またはp53のうちの1つ以上から選択される腫瘍関連抗原をコードしてもよい。
【0258】
これらは、同じまたは異なるmRNAコンストラクトのいずれかにおいて、上記で考察されたとおりに免疫調節剤、免疫エンハンサー、およびその他のエフェクター化合物をコードする任意の他のmRNAと共に存在し得る。こうしたアプローチは、効果が増強された抗原性タンパク質を産生するように腫瘍細胞を誘導して、免疫系がそれらの腫瘍細胞をよりよく認識できるようにすることを目的とする。腫瘍細胞に対するこの細胞応答は、癌細胞による免疫調節剤の発現をさらに誘導することでも増強され得る。予防ワクチンに対する上記の考察のとおり、別個のmRNAコンストラクトを使用して腫瘍関連抗原(またはネオ抗原)および免疫調節成分の両方を提供するとき、いくつかの実施形態では、mRNAコンストラクトのいずれかが、miRNA結合部位配列を完全に欠いていてもよい。他の場合には、本明細書に記載されるとおり、各mRNAコンストラクトは1つ以上の器官保護配列を含んでもよい。これらの器官保護配列は、各mRNAコンストラクトについて同じであってもよいし、異なっていてもよい。器官保護配列が異なるとき、これらの器官保護配列は、これらの産物の示差的発現の異なるパターンを支援すること、および/または各産物に対する異なる組織または細胞型に対する保護を拡大することのために選択されてもよい。
【0259】
よって、本発明の特定の実施形態によると、たとえば癌ワクチンなどの癌免疫療法薬と組み合わせて使用するための、たとえば免疫刺激または免疫調節タンパク質またはポリペプチドなどの治療増強因子をコードする本明細書に記載されるmRNAが提供される。癌ワクチンは、たとえば改変されたヒトまたは霊長類アデノウイルスなどの治療用ウイルスを含んでもよく、かつ免疫刺激または免疫調節タンパク質またはポリペプチドは、生物学的に活性なIL-12および/またはGM-CSFを含んでもよい。
【0260】
別の実施形態においては、全体を通して考察されるとおり、腫瘍細胞内での発現または腫瘍細胞による発現のために、NF-κB経路のモジュレーターおよび/または阻害剤をコードする本明細書中に記載されるmRNAコンストラクトおよび/または組成物が提供される。
【0261】
本発明の組成物および方法は、以下の実施例によって例示されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0262】
mRNAコンストラクト
すべてのmRNAコンストラクトは、生成されたDNA配列からトリリンク・バイオテクノロジーズ(Trilink Biotechnologies)(サンディエゴ(San Diego)、CA)によって合成される。これらのmRNAは、完全にプロセシング、キャッピング、およびポリアデニル化されたmRNAに類似しており、リボソームによる翻訳の準備ができている。
【0263】
製剤
すべてのmRNAコンストラクトを、イオン化可能な脂質様物質C12-200、リン脂質DOPE、コレステロール、および脂質アンカーポリエチレングリコールC14-PEG2000-DMPE混合物の多成分ナノ粒子に製剤化する。このC12-200:mRNAの特定の組成および特定の重量比(10:1)、ならびに脂質様物質、リン脂質、コレステロール、およびPEGのモル[%]組成は、インビボでの高いトランスフェクション効率のために最適化したものであり(カウフマン(Kauffman)K.J.、ナノ・レター(Nano Letter)。2015、15、7300-7306)、DMPCTx-mRNAと称される。製剤を作製するために、脂質成分をエタノールに溶解し、T接合部混合装置を使用して10mMクエン酸緩衝液(pH3)に希釈したmRNAと1:3の比で混合した。製剤を20kDa膜透析カセット中でリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline)(PBS、pH7.4)に対して室温で4時間透析した。必要なときは、次いでアミコン・ウルトラ(Amicon Ultra)遠心濾過ユニット(100kDaカットオフ)を用いて製剤を濃縮した。その後、製剤を特徴付けの準備ができた新しいチューブに移した。リボグリーン(Ribogreen)RNAアッセイ(インビトロジェン(Invitrogen))を製造業者のプロトコルに従って使用して、mRNA封入および濃度の効力を測定する。脂質ナノ粒子の多分散指数(PDI:Polydispersity Index)およびサイズ(Zave)を、動的光散乱(ゼータサイザーナノ-ZS(Zetasizer Nano-ZS)、マルバーン(Malvern))を使用して測定する。
【0264】
製剤を使用して、
図2に示されるとおりのマルチウェルプレートアッセイにおいて細胞をトランスフェクトする。約1.5pmol/ウェルのDMP
CTx-mRNAとなるように製剤を適切に希釈する。アッセイの読み出しは、Hoechst 33342染色(NucBlue Liver ReadyProbes試薬、ライフテクノロジーズ(Life Technologies))によって細胞核を染色して細胞密度を決定することによって、mCherry蛍光を介してmRNAの発現を検出するためのものである。mCherry蛍光は、蛍光顕微鏡(バイオテックのCytation Systemsまたはサーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermofisher Scientific)のEVOS FL Auto)を使用してトランスフェクションの24時間後に定量化した。
【0265】
これらの製剤は、インビボ動物研究において細胞をトランスフェクトするためにも使用される。
【0266】
細胞培養およびトランスフェクション
すべての細胞を、5%CO2の存在下で37℃で増殖させた。培養細胞(Hep3B、AML12、786-0、hREC、HCT-116)のインビトロ単一トランスフェクションを以下のとおりに実施した。トランスフェクションの1日前に、表7に列挙した推奨完全培地および細胞密度で96ウェル組織培養処理マイクロウェルプレートに細胞を播種した。翌日、必要に応じて培養細胞を穏やかに混合しながら、ウェル中の培地にmRNA-DMPCTxを直接添加することによって、200uLの血清減少培地(Opti-MEM培地、Gibco)中で1.5pmolのDMPCTx-mRNAで細胞をトランスフェクトした。4時間のインキュベーション後にOpti-MEM培地を除去し、完全培地で置換した。
【0267】
【0268】
ヒト正常肝細胞(シグマ(Sigma)製品参照番号MTOXH1000)のトランスフェクションのために、シグマ推奨の解凍、完全補充プレーティングおよび培養培地(参照記号MED-HHTM、MED-HHPM、MED-HHPMSP、MED-HHCM、MED-HHCMSP)を使用して、24ウェルコラーゲンコーティングプレートに250,000細胞/mLの細胞密度で細胞をプレーティングした。5%FBSを含有する培養培地中で、mRNA-DMPCTxのトランスフェクションを行った。4時間のインキュベーション後、mRNA混合物を除去し、完全補充培地をウェルに戻し加えた。
【0269】
正常成体上皮結腸細胞(セルアプリケーションズ社(Cell Applications、Inc.)、参照番号732Cn-05a)のトランスフェクションのために、GI上皮細胞解凍溶液およびGI上皮細胞規定培養培地(セルアプリケーションズ社、参照番号716DC-50および716T-20)を使用して細胞を解凍し、プレーティングし、培養した。96ウェルマイクロプレートウェルをGI上皮細胞コーティング溶液(セルアプリケーションズ社、参照番号025-05)で前処理し、ウェル当たり60,000細胞を播種した。翌日、必要に応じて培養細胞を穏やかに混合しながら、ウェル中の培地にmRNA-DMPCTxを直接添加することによって、200uLの血清減少培地(Opti-MEM培地、Gibco)中で1.5pmolのDMPCTx-mRNAで細胞をトランスフェクトした。4時間のインキュベーション後にOpti-MEM培地を除去し、培養培地で置換した。
【0270】
正常ヒト肺/気管支細胞(BAES-2B細胞、ATCC CRL-9609)のトランスフェクションのために、BEGM気管支上皮SingleQuotsキット(ロンザ(Lonza))によって補充したBEGM培地(ロンザ)中で細胞を増殖させた。細胞を、コラーゲンIコーティングマイクロウェルプレートに、1mL当たり75,000細胞の密度で播種した。翌日、必要に応じて培養細胞を穏やかに混合しながら、ウェル中の培地にDMPCTx-mRNAを直接添加することによって、200uLの血清減少培地(Opti-MEM培地、Gibco)中で1.5pmolのDMPCTx-mRNAで細胞をトランスフェクトした。4時間のインキュベーション後にOpti-MEM培地を除去し、培養培地で置換した。
【0271】
蛍光顕微鏡法
トランスフェクションの24時間後、Hoechst 33342色素(インビトロジェンのNucBlue(商標)Live ReadyProbes(商標)試薬)を用いて細胞核を染色した。蛍光顕微鏡(バイオテックのCytation機器またはサーモフィッシャーサイエンティフィックのEVOS(登録商標)FLイメージングシステム)を使用して、生細胞において核染色およびmCherry蛍光を検出した。フィルターキューブのテキサスレッドおよびDAPIならびに20倍対物レンズを用いて画像を取得した。
【実施例1】
【0272】
非最適化対最適化miRNA標的配列(不一致対一致)
本発明がコンストラクトmRNAで標的細胞を首尾よくトランスフェクトし、続いて非改変miRNA標的配列よりも良好なタンパク質示差的発現を駆動する可能性を調査するために、miRNA結合部位によって改変されたDMPCTxmRNAプラットフォームを、ヒト癌細胞株および各器官に対する正常初代細胞を用いたインビトロモデルにおいて最初に評価する。培養細胞におけるトランスフェクションおよび翻訳効率を追跡するために、精製mCherry mRNAを使用する。
【0273】
たとえば、miRNA-122は、豊富に存在する肝臓特異的miRNAであり、その発現は、ヒト原発性肝細胞癌(HCC:hepatocarcinoma)およびたとえばHep3BなどのHCC由来細胞株において有意に減少する。この実施例の研究の目的は、最適化されたmiRNA-122標的配列(たとえば変異体2)の挿入によるmRNA配列の3’非翻訳領域(UTR)の改変が、試験されたHCC細胞株ではなく、正常肝細胞において外因性mRNAのより高い翻訳抑制をもたらし得ることを実証することである。その目的のために、mCherry mRNAコンストラクトを、3’-UTRに少なくとも1つの最適化されていないmiRNA-122標的配列(変異体1)または少なくとも1つの最適化された完全一致標的配列(変異体2)を含むように改変した。このmRNAコンストラクトを、高レベルのmiRNA-122を発現することが公知であるマウスAML12正常肝細胞にトランスフェクトする。miRNA標的配列を有さないmCherry mRNAコンストラクトを陽性対照として使用した。mCherry蛍光は、蛍光顕微鏡(サーモフィッシャーサイエンティフィックのEVOS FL Auto)を使用して、mCherry mRNAコンストラクトの単一トランスフェクションの24時間後に検出した。送達されたコンストラクトの発現を確認するために、ウェスタンブロットまたはたとえば質量分析などのプロテオーム解析技術を含む、代替的な定量方法を使用できる。
【0274】
変異体1[配列番号4]:5’-AACGCCAUUAUCACACUAAAUA-3'(不一致miRNA-122標的配列)
変異体2[配列番号44]:5’-CAAACACCAUUGUCACACUCCA-3'(完全一致miRNA-122標的配列)
【0275】
結果
図9Bに示されるとおり、MOPなしのmCherry mRNAの発現は、AML12細胞において強い。3’UTRに単一の不完全一致miRNA-122標的配列(変異体1)が含まれるとき、mCherryの発現は明らかなままである(
図9Cを参照されたい。
図9D、右側パネルにおいてmCherry発現の大幅な低減が明らかなことから、変異体2を使用した完全一致の効果は明らかである。
【実施例2】
【0276】
miRNA標的配列の反復数の効果の比較
本発明がmRNAコンストラクト中の標的配列の数を増加させることによってより良好な示差的発現を駆動する可能性を調査するために、mCherry mRNAを、3’-UTRに1つ、2つ、または4つの最適化されたmiRNA-122 miRNA標的配列を含むように改変し、ヒトHep3B癌細胞株および対応する正常AML12初代細胞において、インビトロで翻訳効率を評価して比較した。miRNA標的配列を有さないmCherry mRNAコンストラクトを陽性対照として使用した。
図1に示されるとおり、特異的ヌクレオチド(uuuaaaなど)を使用してmiRNA-122標的配列を連結する。mCherry mRNAコンストラクトの単一トランスフェクションの24時間後に、蛍光顕微鏡(サーモフィッシャーサイエンティフィックのEVOS FL Auto)によってmCherry蛍光を検出した。送達されたコンストラクトの発現を確認するために、ウェスタンブロットまたはたとえば質量分析などのプロテオーム解析技術を含む、代替的な定量方法も使用できる。
【0277】
結果
結合部位配列を多重化した結果を
図8に示す。AML12正常肝細胞におけるmCherry発現の抑制には、ある程度の用量依存性があり(a)、結合部位配列の2回および4回の反復は、高レベルのmCherry抑制を示す。しかし、この効果はHep3B癌細胞ではあまり明らかではなく(b)、mCherry発現レベルは、miRNA結合部位の1回または2回の反復についてほぼ一貫したままであり、4倍多重配列に対する発現がわずかに低減するのみである。
【実施例3】
【0278】
インビトロでの多器官保護方法の概念の証明
本発明が複数の異なるレシピエント細胞型における特定のORFの示差的発現を実証する可能性を調査するために、mCherry mRNAを、3’UTRに3つまたは5つのmiRNA標的配列を含むように改変した。第1のmRNA配列において、miRNA-122、Let7b、およびmiRNA-192に対する標的配列が提供され(mCherry-3MOP)、第2のmRNA配列において、miRNA-122、miRNA-124a、Let7b、miRNA-375、およびmiRNA-192に対する標的配列が提供される(mCherry-5MOP)。miRNA標的配列を有さない対照mCherry mRNA配列も使用した。
【0279】
調製されたmRNA配列を上記のとおりにナノ製剤化した。調製されたナノ粒子を、ヒト正常肝細胞(シグマ製品参照番号MTOXH1000)、マウス正常肝細胞(ATCCのAML12)、およびヒト肝臓癌細胞(ATCCのHep3B)に対応する細胞株にトランスフェクトした(
図2)。加えて、正常ヒト腎細胞(ATCCのhREC)に対応する細胞株を、mCherry-3MOP mRNAおよび対照mCherry RNAでトランスフェクトした。細胞を24ウェルプレートに播種した。ウェル当たり0.5ugのmRNAをトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にCytation 5機器(バイオテック)を用いてイメージングを行った。
【0280】
図3は、3つの肝細胞型におけるmCherryシグナルを示しており、mCherry-3MOPまたはmCherry-5MOP mRNAをトランスフェクトしたときに、対照mCherry mRNAをトランスフェクトした後のヒト肝臓癌細胞(Hep3B)または正常細胞において見出されるシグナルと比較して、正常マウスおよびヒト肝細胞の両方における細胞シグナルが有意に低減することを実証している。これは、miRNA標的配列の包含の結果として、正常細胞におけるmCherry翻訳が低減したことを示す。
図4は、バイオテックのGen5イメージングソフトウェアを使用した、トランスフェクト細胞におけるmCherry蛍光の定量化を示す。バックグラウンドシグナルを差し引いている。値は、細胞当たりの蛍光シグナルの平均および標準偏差を表す。評価されたmRNAを対照と比較したときの統計的有意差は、
*P<0.05、
**P<0.005として示される。この結果は、3MOPまたは5MOP miRNA標的配列を使用したときに正常肝細胞(ヒトおよびマウス)におけるタンパク質発現が約80%低減するのに対し、腫瘍細胞ではより少ない低減が見られることを実証する。
【0281】
図5Aは、トランスフェクトされた正常ヒト腎細胞(hREC ATCC-PCS-400-012)におけるmCherryシグナルを示す。mCherry-3MOP処理細胞においてシグナルの低減を見ることができ、これはmCherry翻訳の低減を示す。
図5Bにおいて、バイオテックのGen5イメージングソフトウェアを使用してこれを定量化しており、これも同様に、mCherry-3MOPによるトランスフェクション後の正常腎細胞におけるmCherryシグナルの約60%の低減を示す。
図5Bでは、バックグラウンドシグナルが差し引かれており、値は細胞当たりの蛍光シグナルの平均および標準偏差を表す。評価されたmRNAを対照と比較したときの統計的有意差は、
*P<0.05として示される。
【0282】
図6は、3MOP配列の代替的な配置を用いた肝細胞における実験の結果を示す。この場合の3MOP配列は、miRNA122、miRNA192、およびmiRNA30aに完全一致したmiRNA結合部位を含む。認識可能な発現が見られない
図6(f)のマウスAML12肝細胞と比較したとき、
図6(c)においてHep3B癌細胞における発現が明らかに見られる。
【0283】
図7は、3MOP配列の別の代替的配置の結果を示す。この場合の3MOP配列は、Let7b、miRNA126、およびmiRNA30aに完全一致したmiRNA結合部位を含む。ここでも、認識可能な発現が見られない
図7(f)のマウスAML12肝細胞と比較したとき、
図7(c)においてHep3B癌細胞におけるmCherry発現が明らかに見られる。
【0284】
図10は、
図7の実験で使用したものと同じ3MOP配列(miRNAlet7b-miRNA126-miRNA30a)についての腎臓における組織および器官特異的保護の効果を実証する。mCherryの発現は、hRECヒト腎細胞においてほぼ完全に抑制される(
図10(f))が、786-0腎腺癌細胞では抑制されない(
図10(c))。
図11において、代替的な3MOP配列を試験している(miRNA122-miRNA192-miRNA30a)。
図10および
図11で試験したMOP配列は両方とも、腎臓を保護するmiRNA30aに対する完全一致結合配列を含むが、後者の3MOPは、腎臓保護の推定二重層を提供する完全一致miRNA-192結合部位をさらに含む(上記表2を参照されたい)。
図11において、mCherryの発現は、hRECヒト腎細胞では見えない(
図11(f))が、786-0腎腺癌細胞では明らかに明確である(
図11(c))。
【0285】
図13は、
図11の実験で使用したものと同じ3MOP配列(miRNA122-miRNA192-miRNA30a)についての結腸における組織および器官特異的保護の効果を実証する。mCherryの発現は、ヒト結腸上皮細胞においてほぼ完全に抑制される(
図13(c))が、HCT-116細胞においては抑制されない(
図13(f))。
図14において、代替的な3MOP配列を試験している(miRNAlet7b-miRNA126-miRNA30a)。
図14で試験したMOP配列は、結腸組織を広く保護するLet7bに対する完全一致結合配列を含む。
図14において、mCherryの発現は、結腸上皮細胞(
図14(c))およびHCT-116細胞(
図14(f))においても非常に低減している。
【0286】
図15は、miRNAlet7b、miRNA126、およびmiRNA30aに対する結合部位を含むMOP配列を使用した、肺における組織および器官特異的保護の効果を実証する。上記の他のアッセイと同様に、健常な非癌性ヒト肺組織の最も近い近似を表す気管支上皮細胞株であるBEAS-2B細胞株を選択した。BEAS-2B細胞は、複製欠損SV40/アデノウイルス12ハイブリッドによる感染を介して不死化されるが、これは取り扱いおよびクローニングの改善を可能にするためである。これらの細胞は、正常に機能する肺上皮のモデルとしての扁平上皮細胞の分化を研究するためのアッセイにおいて使用される。
図15(c)において、MOP配列の存在は、MOPの不在と比較して、mCherry発現の非常に高レベルの抑制をもたらす。
【0287】
図7(f)、10(f)、14(c)、および15(c)に示される結果は、miRNAlet7b-miRNA126-miRNA30a MOP配列の包含が、健常な肝臓、腎臓、結腸、および肺における関連ORF発現からの有効な保護を提供することを示す。
図6(f)、11(f)、および13(c)の結果は、miRNA122-miRNA192-miRNA30a結合配列を含む代替的なMOPが、健常な肝臓、腎臓、および結腸組織に対して有効な保護を提供することを示す。
【0288】
この実施例は、複数の異なるmiRNA標的配列を含む器官保護配列が、複数の異なる器官に由来する細胞において示差的発現を駆動するように作用することもでき、かつ複数の組織において正常細胞と腫瘍細胞とを区別できることを実証する。
【実施例4】
【0289】
IL-12およびGM-CSF mRNAによるヒトPBMCのトランスフェクション
IL-12および/またはGM-CSFは、たとえば治療用ウイルスと組み合わせた使用、またはワクチン組成物と同時投与されるアジュバントとしての使用など、抗腫瘍療法と組み合わせて使用され得る免疫調節サイトカインである。この実験では、MOP配列を有するかまたは有さない、DMPCTxhGM-CSF(ヒトGM-CSF)およびhdcIL-12(二本鎖ヒトIL-12 p70)またはhscIL-12(単鎖ヒトIL-12 p70)を、ヒトPBMCにある範囲の投与量でインビトロで投与した。hscIL-12 p70およびhGMCSFに対する非コードmRNAも陰性対照(NC:negative control)として使用した。細胞内のタンパク質の発現は、投与されたmRNAの用量に関連することが示された。
【0290】
LNP-免疫調節剤IL-12およびGM-CSFのインビトロトランスフェクション効率および毒性
5人の異なるドナー(18~55歳)由来のPBMC細胞をAllCellsから入手し、AIM V培地(Gibco)に懸濁して37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。丸底96ウェルプレートにおいてウェル当たり300,000のPBMC細胞を播種し、MOP配列を有するかまたは有さない、IL-12一本鎖もしくは二本鎖変異体またはGM-CSFのいずれかをコードするDMPCTx製剤化mRNAでトランスフェクトした(以下の表8を参照)。100ng/mLの最終濃度となるように培地に添加されたLPS(サーモフィッシャー(ThermoFisher)、00-4976)を伴う300,000PBMC細胞を含有するウェルによって、PBMCが正常に機能していることを検証するための陽性対照を実施した。PBMC細胞もLNPトランスフェクションも有さないウェル(BG-C)、150,000の非トランスフェクトPBMC細胞のみを有するウェル(LC)、および300,000の非トランスフェクトPBMC細胞を有するウェル(HC)によって、並行して陰性対照を実施した。
【0291】
トランスフェクションの4時間後、ヒトAB熱不活性化血清(シグマ)を最終濃度1%になるように添加した。トランスフェクションの6時間後、60μLの各ウェルの上清を新しい96ウェルプレートに移し、細胞を遠心分離によって除去し、上清をMSDアッセイのために-80℃で凍結した。トランスフェクションの21時間後、Tween-20を最終濃度1.1%になるようにHCウェルに添加した。トランスフェクションの24時間後、各ウェルからのすべての上清を遠心分離によって収集した。60μLの上清をMSDアッセイのために-80℃で凍結し、残りの130μLをLDHアッセイのために-80℃で凍結した。
【0292】
U-PLEXアッセイ(メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery))を使用し、製造業者の指示に従って、ヒトサイトカインIL-12p70およびGM-CSF分析のためのMSDアッセイを行った。グラフパッドプリズム(Graph Pad Prism)を使用してデータを棒グラフにプロットした。
【0293】
ロシェ(Roche)の細胞毒性検出キットPLUS(LDH)(4744926001)を使用し、製造業者の指示に従ってLDHアッセイを行った。
【0294】
結果
図12は、トランスフェクションの6時間後のMOP含有コンストラクトから検出可能なレベルのヒトIL-12 p70およびGM-CSFの両方を示す。mRNA中のMOPの存在によって、肝臓、皮膚、筋肉、および腎臓組織におけるオフターゲット発現が最小限になる。LDHアッセイは、IL-12一本鎖もしくは二本鎖変異体またはGM-CSFのいずれかをコードするDMP
CTxmRNAが、PBMCにおいて陰性対照を上回る有意な細胞傷害性を誘導しなかったことを示した。この結果は、24時間後に再度チェックしたときも一貫していた(データは示さず)。
【0295】
【実施例5】
【0296】
MOP配列を有するルシフェラーゼ発現mRNAのDMPCTxのインビボ体内分布
本発明がインビボでの特定のORFの示差的発現を実証する可能性を調査するために、ホタルルシフェラーゼ(FLuc:firefly luciferase)mRNAを、mRNAコンストラクトの3’UTRにおける3つのmiRNA標的配列の2つの異なる組み合わせを含むように、実施例3と同様に改変した。第1のmRNA MOP配列は、Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aに対する標的配列を含有する(グループ2)。第2のmRNA MOP配列は、miRNA-122、miRNA-192、miRNA-30aに対する標的配列を含有する(グループ3)。すべてのMOPコンストラクトは、対応するmiRNAに対する完全一致標的配列を含有した。コンストラクト中にMOP配列を有さない対照FLuc mRNA配列も使用した(グループ1)。溶媒群にはリン酸緩衝食塩水を投与した。
【0297】
製剤は上記のとおりに作製され、以下の特徴を有した。
【0298】
【0299】
動物。 すべての実験は、すべての現地の規則および規制に従って、クラウンバイオサイエンス(Crown Biosciences)、ノッティンガム(Nottingham)UKで実施した。すべてのマウスをチャールス・リバー(Charles River)から入手した。
【0300】
非腫瘍性体内分布研究。 7~9週齢の健常な雌balb/cマウスに、MOP配列を有するかまたは有さないホタルルシフェラーゼ(FLuc)をコードする1mg/kgの製剤(DMPCTx-mRNA)を、ボーラス尾部静脈注射によって注射した。全身画像を投与前(0時間)、ならびに投与後3.5時間および24時間に撮影し、リビング・イメージ・ソフトウェア(Living Image Software)(キャリパー(Caliper)LS、US)を使用してルシフェラーゼシグナルの量を定量化した。イメージングの15分前に、マウスに150mg/kgのd-ルシフェリンを(皮下)注射し、次いで10分後に麻酔し、発光検出のためのイメージングチャンバーに入れた(腹側および背側のビュー)。24時間の時点で、肝臓、腎臓、脾臓、および肺を取り出し、エクスビボでイメージングした。
【0301】
腫瘍体内分布研究。ヒト肝臓癌細胞(Hep3B細胞)(2×106細胞)を、8~10週齢のフォックス・チェイス(Fox Chase)SCIDマウスの左側腹部に皮下移植した。マウスを、腫瘍量のキャリパー測定に基づいて研究グループに分類し、約100mm3の腫瘍サイズを選択した。次いで、MOP配列を有するかまたは有さないホタルルシフェラーゼ(FLuc)をコードする製剤(DMPCTx-mRNA)を、1mg/kgの用量で腫瘍内注射した。全身画像を投与前(0時間)、ならびに投与後3.5時間および24時間に撮影し、リビング・イメージ・ソフトウェア(Living Image Software)(キャリパー(Caliper)LS、US)を使用してルシフェラーゼシグナルの量を定量化した。イメージングの15分前に、マウスに150mg/kgのd-ルシフェリンを(皮下)注射し、次いで10分後に麻酔し、発光検出のためのイメージングチャンバーに入れた(腹側および背側のビュー)。24時間の時点で、腫瘍、肝臓、腎臓、脾臓、および肺を取り出し、エクスビボでイメージングした。
【0302】
結果
図16(a)は、静脈内投与による投薬の3.5時間後に、MOP含有コンストラクト(グループ2および3)ならびにMOPコンストラクトなしの対照群(グループ1)を含むすべてのグループにおいて、全身イメージングを通して高レベルのルシフェラーゼ発現が見られ得ることを示す。しかし、2つのMOP含有コンストラクトではタンパク質発現が1~2桁少ない。この傾向は24時間後も残り、ここではすべてのグループにおいて全体的なタンパク質発現がわずかに少なくなっている。
【0303】
MOPの存在は、肝臓、肺、脾臓、および腎臓の組織におけるインビボのオフターゲット発現を最小化するのに驚くほど有効である。
図16(b)において、器官のエクスビボイメージングは、グループ1(MOPなし対照)と比較して、グループ2および3(MOP含有コンストラクト)のマウスについて、肝臓(miRNA-122)、肺(let7b、miRNA-126、miR30a)、脾臓(Let7b、miRNA-126)、および腎臓(miRNA-192、miRNA-30a)におけるルシフェラーゼ発現の減少を示し、両方のMOPコンストラクトがORFの発現からの有益な多器官保護を提供することが確認される。
【0304】
健常な組織におけるオフターゲット効果を最小限にすることが重要であるが、タンパク質発現がたとえば腫瘍などの標的組織において依然として生じることを確実にすることも重要である。表10は、Hep3B肝臓腫瘍が存在するときに、タンパク質発現が3つのグループすべてについて同じ桁の大きさで維持されたことを示す。加えて、腫瘍を有さないインビボ研究において見られたとおり、健常な肝臓におけるルシフェラーゼ発現は、いずれかのMOPが存在するときに2~3桁減少する。
【0305】
【0306】
図17は、投与の24時間後に、MOP含有コンストラクト(グループ2および3)およびMOPコンストラクトなしの対照群(グループ1)を含むすべてのグループの腫瘍組織において、エクスビボイメージングを通して高レベルのルシフェラーゼ発現が見られ得ることを示す。
図17(a)は、マウスにおける腫瘍体積が各グループにおいて類似していたことを示す。
図17(b)は、投薬の24時間後に、健常な肝臓組織(正常な肝臓)においてMOPコンストラクトなしの対照群(グループ1)について高いルシフェラーゼ発現が見られ、MOP含有コンストラクト(グループ2および3)を使用すると発現が2~3桁低減したことを示す。他の器官ではほとんど発現が見られない(データは示さず)。
【実施例6】
【0307】
筋肉内(IM:intramuscular)投与後のMOP配列を有するルシフェラーゼ発現mRNAのDMPCTxのインビボ体内分布
この実験は、実施例5で取ったアプローチと同様である。しかし、ほとんどのワクチン組成物は筋肉内注射(IM)を介して投与されるので、IM投与後にインビボでFLuc ORFの示差的発現をもたらす体内分布を実証することが必要であった。mRNAを実施例5と同様に改変したが、今回は、mRNAコンストラクトの3’UTRにmiRNA標的配列の3つの異なる組み合わせを含ませるように改変した。第1のmRNA MOP配列は、Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aに対する標的配列を含有する(Luc-MOP1)。第2のmRNA MOP配列は、miRNA-122、miRNA-192、miRNA-30aに対する標的配列を含有する(Luc-MOP2)。第3のmRNA MOP配列は、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、miRNA-30aに対する標的配列を含有する(Luc-MOP3)。すべてのMOPコンストラクトは、対応する細胞miRNAに対する完全一致標的配列を含有した。コンストラクト中にMOP配列を有さない対照FLuc mRNA配列も使用した(Luc)。mRNAカーゴを有さない対照群も含まれ、ここではマウスにリン酸食塩緩衝液(溶媒)を投与した。
【0308】
製剤は上記のとおりに作製され、以下の特徴を有した。
【0309】
【0310】
7~9週齢の健常な雌balb/cマウスに、MOP配列を有するかまたは有さないホタルルシフェラーゼ(FLuc)をコードする10ugの製剤(DMPCTx-mRNA)をIM注射によって注射した。イメージングの15分前に、マウスに150mg/kgのd-ルシフェリンを(皮下)注射し、次いで10分後に麻酔し、発光検出のためのイメージングチャンバーに入れた(腹側および背側のビュー)。4時間の時点で、肝臓、腎臓、脾臓、ならびに注射部位の筋肉および皮膚を取り出し、エクスビボでイメージングした。
【0311】
結果
図19において、器官のエクスビボイメージングは、すべてのグループについて肝臓(miRNA-122)におけるルシフェラーゼ発現の減少を示す。脾臓(Let7b、miRNA-126)では、Luc-MOP1が最も効果を示した。腎臓(miRNA-192、miRNA-30a)では、すべてのMOP含有mRNAが発現低下の傾向を示した。注射部位では、Luc-MOP1はルシフェラーゼの産生を低減させたが、他のMOPは低減させなかった。この結果は、異なるMOPコンストラクトが、必要に応じて変動され得るORFの発現からの有益な多器官保護を提供することを確認するものである。
【実施例7】
【0312】
静脈内(IV:intravenous)投与後のMOP配列を有するルシフェラーゼ発現mRNAのDMPCTxのインビボ体内分布
この実験は、実施例5で取ったアプローチと同様である。多器官保護を評価するために、本発明者らは、DMPCTx製剤を静脈内投与して、器官内の高い送達およびシグナルを確実にした。mRNAを実施例6と同様に改変した。第1のmRNA MOP配列は、Let7b、miRNA-126、およびmiRNA-30aに対する標的配列を含有する(Luc-MOP1)。第2のmRNA MOP配列は、miRNA-122、miRNA-192、miRNA-30aに対する標的配列を含有する(Luc-MOP2)。第3のmRNA MOP配列は、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、miRNA-30aに対する標的配列を含有する(Luc-MOP3)。すべてのMOPコンストラクトは、対応する細胞miRNAに対する完全一致標的配列を含有した。コンストラクト中にMOP配列を有さない対照FLuc mRNA配列も使用した(Luc)。mRNAカーゴを有さない対照群も含まれ、ここではマウスにリン酸緩衝食塩水(溶媒)を投与した。
【0313】
製剤は上記のとおりに作製され、以下の特徴を有した。
【0314】
【0315】
7~9週齢の健常な雌balb/cマウスに、MOP配列を有するかまたは有さないホタルルシフェラーゼ(FLuc)をコードする1mg/kgの製剤(DMPCTx-mRNA)を、ボーラス尾部静脈注射によって注射した。投与6時間後に全身画像を撮影し、リビング・イメージ・ソフトウェア(キャリパーLS、US)を使用してルシフェラーゼシグナルの量を定量化した。イメージングの15分前に、マウスに150mg/kgのd-ルシフェリンを(皮下)注射し、次いで10分後に麻酔し、発光検出のためのイメージングチャンバーに入れた(腹側および背側のビュー)。6時間の時点で、肝臓、腎臓、脾臓、心臓、膵臓、および肺を取り出し、エクスビボでイメージングした。
【0316】
結果
MOPの存在は、ここでも肝臓、肺、脾臓、膵臓、心臓、および腎臓の組織におけるインビボのオフターゲット発現を最小化するのに驚くほど有効である。
図20において、器官のエクスビボイメージングは、Lucグループ(MOPなし対照)と比較して、MOP含有コンストラクト(Luc-MOP1、Luc-MOP2、およびLuc-MOP3)を投与されたグループのマウスについて、肝臓(miRNA-miRNA-126、miR30a)、脾臓(Let7b、miRNA-126)、膵臓(miRNA-30ファミリー、Let7ファミリー、miRNA-122)、心臓(miRNA-30ファミリー、miRNA-126、Let7ファミリー)、および腎臓(miRNA-192、miRNA-30a)におけるルシフェラーゼ発現の減少を示し、すべてのMOPコンストラクトがORFの発現からの有益な多器官保護を提供することが確認される。
【実施例8】
【0317】
抗原特異的免疫応答のインビボ評価
本発明による組成物がワクチンとして作用する能力を調査し、同時投与されたサイトカインのアジュバント効果を実証するために、特定の外因性抗原、この場合は卵白タンパク質であるオボアルブミン(OVA:ovalbumin)に対する抗体応答を生じさせる研究をインビボで行った。
【0318】
この実験のために、先に記載したとおりのナノ粒子組成物DMPCTxにmRNAコンストラクトを封入した。使用した組成物は、オボアルブミンタンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物(DMPCTx-OVA)、およびMOP配列を有するマウス単鎖IL-12タンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物(DMPCTx-mscIL-12-MOP)であった。使用されるときのMOP配列は、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、miRNA-30aに対する完全一致結合部位を含んだ(配列番号68を参照)。
【0319】
【0320】
製剤は上記のとおりに作製され、以下の特徴を有した。
【0321】
【0322】
6~8週齢のBalb/c雌マウスを、試験-1日目に体重によって各々4つのグループに無作為化した。0日目に、マウスの左大腿部に以下のものを50μl筋肉内注射した。
3μgのDMPCTx-OVA(グループ2、LNP-OVA);
3μgのDMPCTx-OVAおよび5μgのIL-12コンストラクトの用量のDMPCTx-mscIL-12(グループ3;LNP-OVA+IL12);
10μgのDMPCTx-OVA(グループ4;LNP-OVA)(
対照グループ1には、試験0日目にのみ、左大腿に溶媒のリン酸緩衝食塩水50μlの筋肉内注射を行った。
【0323】
試験14日目に、末端心臓穿刺によって血液を採取し、遠心分離(90秒、RT、10.000×g)によって血清を単離し、アリコートを凍結した。製造業者の指示(コンドレックス(Chondrex))に従って、収集した血清をマウス抗OVA IgGの検出のために処理した。
【0324】
結果
図18は、実験の結果を示す。低用量の3μgのmRNAでは、DMP
CTx-OVA(オボアルブミン)は、1匹のマウスレスポンダーのみで弱い応答を誘導した。この応答は、mRNAの投与量を3倍を超える10μgまで増加させることによって実質的に増加する。しかし、アジュバントとしての炎症誘発性サイトカインIL12と一緒に低用量のオボアルブミンを同時投与した結果、レスポンダーの数が有意に改善した。これは、低用量の抗原応答が、同時投与されたIL-12の存在によってインビボでブーストされ得ることを示す。
【0325】
これらの結果は、所与の標的に対するIgG抗体応答が誘導され得ることを実証する。オボアルブミンが病原体特異的抗原でないことを考慮すると、これによって、この結果が介入の結果であり、任意の提供された外因性ポリペプチド抗原に適用可能なはずであることも実証される。IL-12のインビボ投与は全身投与ではなく、MOP配列によって制御されており、それによって炎症誘発性分子のオフターゲット発現が低減されていたため、この結果はさらに驚くべきものである。
【実施例9】
【0326】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質特異的免疫応答のインビボ評価
本発明による組成物が特定の病原性標的に対するワクチンとして作用する能力、すなわちウイルス抗原に対するインビボ免疫応答を誘発する能力をさらに調査するために、マウスに、SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物、および免疫調節サイトカインIL-12をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物を注射した(先の実施例8に記載したとおり)。組成物に対するマウスの液性免疫応答を試験した。
【0327】
この実験のために、先に記載したとおりのナノ粒子組成物にmRNAコンストラクトを封入した。使用した組成物は、抗原としての配列番号63に示されるSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物(DMPCTx-Spike CoV)、およびアジュバントとしての配列番号68に示されるマウス単鎖IL-12タンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物(DMPCTx-mscIL-12)であった。両方とも、3’UTRにMOPV(miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、miRNA-30a)配列を含む。
【0328】
製剤は上記のとおりに作製され、以下の特徴を有した。
【0329】
【0330】
Balb/c雌マウスを、試験0日目に体重によって各々3つのグループに無作為化した。0日目および14日目に、マウスの左大腿部に以下のものを50μl筋肉内注射した。DMPCTx-Spike CoV(0日目のLNP-スパイク用量1μgおよび14日目のブースト10μg - いわゆる1/10投与計画);
またはDMPCTx-Spike CoV(0日目のLNP-スパイク用量1μgおよび14日目のブースト10μg - いわゆる1/10投与計画)およびIL-12コンストラクトDMPCTx-mscIL12(0日目および14日目に1ug)。対照群には、試験0日目および14日目に、左大腿に溶媒のリン酸緩衝食塩水50ulの筋肉内注射を行った。
【0331】
試験42日目(プライム後42日およびブースト後28日)に、すべてのグループから末端心臓穿刺によって血液を採取し、遠心分離(90秒、RT、10.000×g)によって血清を単離し、アリコートを凍結して-80℃で保存した。採取した血清中の抗スパイク抗体を検出するために、マウス抗SARS-CoV-2 IgG抗体ELISAキット(アクロバイオシステムズ(AcroBiosystems)、カタログ#RAS-T023)を製造業者の指示に従って使用した。
【0332】
結果
図21は、IL12が添加された際にスパイクタンパク質に応答したIgG産生の明確な増加があることを示す。
【0333】
これらの結果は、アジュバントとしてのIL-12免疫調節サイトカインのインビボでの添加が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗原に対する免疫応答の発生に有利であることを実証する。この応答は、抗原およびアジュバントの両方が、抗原およびアジュバントの両方の全身性/オフターゲット産生を低減させるMOP配列の制御下でmRNAとして投与された場合でさえ、驚くほど良好に維持される。IL-12が投与からわずか6時間でヒトPBMCにおいて産生され得ることを示した、実施例4に示されるインビトロデータ(
図12(a)を参照)と組み合わせると、ワクチンおよびアジュバントの投与から比較的短時間で、MOP配列を含むワクチンおよびアジュバント組成物から防御免疫応答が生じ得ることが明らかにさらに示される。
【実施例10】
【0334】
ヒトIL-12によるヒトPBMCのインビトロトランスフェクション
本発明による組成物がワクチンアジュバントとして作用する能力をさらに調査するために、本発明者らは、MOPを有する/有さないDMPCTx-hscIL-12でヒト末梢血単核細胞(PBMC)をトランスフェクトし、インターフェロンガンマのIL-12介在性誘導を測定した。
【0335】
4人の異なるドナー由来のPBMC細胞をステムセルテクノロジーズ(StemCell Technologies)から入手し、AIM V培地(Gibco)に懸濁して37℃にて5%CO2雰囲気下で培養した。丸底96ウェルプレートにおいてウェル当たり300,000のPBMC細胞を播種し、MOP配列を有するかまたは有さないDMPCTx-hscIL-12単一でトランスフェクトした。第1のmRNA MOP配列は、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、miRNA-30aに対する標的配列を含有する(MOPV)。第2のmRNA MOP配列は、miRNA-122、miRNA-192、miRNA-30aに対する標的配列を含有する(MOPC)。すべてのMOPコンストラクトは、対応する細胞miRNAに対する完全一致標的配列を含有した。3用量の(MOPを有するかまたは有さない)DMPCTx-hscIL-12を使用した。トランスフェクトされていないPBMC、またはヒト単鎖IL-12非コードmRNA(hIL-12 NC-ATG開始コドンなし)でトランスフェクトされたPBMCによって、並行して陰性対照を実施した。プレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。
【0336】
製剤は上記のとおりに作製され、以下の特徴を有した。
【0337】
【0338】
トランスフェクションの4時間後、ヒトAB熱不活性化血清(バレーバイオメディカル(Valley Biomedical))を最終濃度5%になるように添加した。トランスフェクションの24時間後、100μLの各ウェルの上清を新しい96ウェルプレートに移し、細胞を遠心分離によって除去し、上清をヒトIL-12 ELISAアッセイ(インビトロジェン、カタログ88-7126)のために-80℃で凍結した。トランスフェクションの72時間後、100μLの各ウェルの上清を新しい96ウェルプレートに移し、細胞を遠心分離によって除去し、上清をインターフェロンガンマELISAアッセイ(バイオレジェンド(Biolegend)カタログ430116)のために-80℃で凍結した。ヒトIL-12p70およびヒトインターフェロンガンマのELISAアッセイを、製造業者の指示に従って行った。グラフパッドプリズム(Graph Pad Prism)を使用してデータを棒グラフにプロットした。
【0339】
結果
図22aは、DMP
CTx-hscIL-12産物でトランスフェクトしたヒトPBMCにおけるヒトIL-12の用量依存的発現を示す。
図22b(各ドナーを別々に示す)は、自然免疫および適応免疫の両方に重要な免疫刺激性サイトカインであるIFN-γのIL-12介在性誘導を示す。IL-12介在性IFN-γ発現の大きさはドナー間で変動するが、IL-12の存在とIFN-γ発現との間には明らかな相関がある。
【実施例11】
【0340】
ヒトIL-12およびSARS-CoV-2スパイクによるヒトPBMCのインビトロトランスフェクション
本発明による組成物が自然免疫応答および適応免疫応答を活性化する能力、すなわちインターフェロンガンマを誘導する能力をさらに調査するために、SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物、および免疫調節剤IL-12をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物を用いて末梢血単核細胞(PBMC)をトランスフェクトした。
【0341】
この実験のために、上記のとおりのナノ粒子組成物にmRNAコンストラクトを封入した。使用した組成物は、MOP配列を有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物(DMPCTx-SCoV-MOPV)、およびMOP配列を有するかまたは有さないヒト単鎖IL-12タンパク質をコードするmRNAを含むナノ粒子組成物(DMPCTx-hscIL-12)(DMPCTx-hscIL-12-MOPV)であった。使用されるときのMOP配列は、miRNA-122、miRNA-1、miRNA-203a、miRNA-30aに対する標的配列を含んだ(MOPV)。
【0342】
製剤は上記のとおりに作製され、以下の特徴を有した。
【0343】
【0344】
5人の健常なドナーのPBMCを、DMPCTx-SCoV-MOPで、DMPCTx-hscIL-12およびDMPCTx-hscIL-12-MOPVを伴うかまたは伴わずにトランスフェクトした。すべてのPBMCを抗CD3コーティングプレート上に播種し、可溶性抗CD28モノクローナル抗体で処理して、一般的なT細胞活性化を誘導した。トランスフェクションの5日後、ELISAによるIFN-γ定量のために上清を回収した。
【0345】
0日目に、PMBC(300 000細胞)を播種し、ナノ粒子組成物または滅菌PBSを添加した。プレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。10μlのヒトAB血清(hAb)を、総容量200μlおよび総hAb血清濃度5%となるように添加した。
【0346】
5日目に、上清を以下のとおりに回収した。プレートをRTで5分間、300×gで遠心沈殿させた。上清をV底96ウェルプレートに移し、RTで5分間、400×gで回転させた。上清を新しいV底96ウェルプレートに移し、-80℃で保存した。メソスケールディスカバリー(Meso-Scale Discovery)(MSDカタログK151TTK-2)によるIFNガンマ発現の読み出しを、製造業者の指示に従って行った。
【0347】
結果
図23は、インターフェロンガンマ(IFN-γ)発現が、MOPを有するおよび有さないヒトIL-12を発現するmRNAの存在下で同様に増加することを示す。適応免疫応答の出現前に発生する、免疫化後のIFN-γの早期合成は、ワクチンに対する高品質免疫応答の徴候である。なぜなら、その早期放出は、樹状細胞の成熟を助け、その結果としてCD4
+T細胞のT
H1系統への極性化を助けるからである。
【0348】
本明細書において本発明の特定の実施形態を詳細に開示してきたが、これは例として、例示のみを目的として行われたものである。前述の実施形態は、以下に添付される請求項の範囲を限定することを意図するものではない。請求項によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に対してさまざまな置換、変更、および修正を行ってもよいことが、本発明者らによって予期される。本発明の実施形態によるコンストラクトおよびベクターに含まれている任意の非ヒト核酸および/またはポリペプチド配列は、英国、米国および欧州連合内の供給源から得られたものである。本発明者の知る限りでは、アクセスおよび利益共有契約の対象となり得る遺伝的資源、または関連する従来の知識は、本発明の創出において使用されていない。
【配列表】
【国際調査報告】