(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】高活性の第2段階ナフサ水素化分解触媒
(51)【国際特許分類】
C10G 65/10 20060101AFI20230823BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230823BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230823BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230823BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230823BHJP
B01J 31/34 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C10G65/10
B01J37/04 102
B01J37/00 D
B01J37/08
B01J37/02 101Z
B01J31/34 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505993
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 US2021042950
(87)【国際公開番号】W WO2022026318
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジア、ジフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ビ - ゼン
(72)【発明者】
【氏名】ルイ、ウェイ、スン、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】アローラ、アルン
(72)【発明者】
【氏名】パレック、ジェイ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA01C
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA02C
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA07C
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA21C
4G169BB05C
4G169BB06C
4G169BB12C
4G169BB16C
4G169BB20C
4G169BC57A
4G169BC57C
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC65A
4G169BC65C
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC68C
4G169BC69A
4G169BC69C
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD01C
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD02C
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD04C
4G169BE08A
4G169BE08C
4G169CC05
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB14Y
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC21Y
4G169EC26
4G169ED10
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB16
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB67
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC08
4G169FC09
4G169ZA05A
4G169ZA05B
4G169ZD06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF09A
4G169ZF09B
4H129AA02
4H129CA09
4H129KA12
4H129KB03
4H129KB05
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC10X
4H129KC10Y
4H129KC15X
4H129KC15Y
4H129KD13X
4H129KD15Y
4H129KD16X
4H129KD18X
4H129KD21X
4H129KD23X
4H129KD24X
4H129KD37Y
4H129KD41X
4H129KD44X
4H129KD44Y
4H129MA01
4H129MA12
4H129MB20A
4H129MB20B
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA37
(57)【要約】
2段階式水素化分解プロセスの第2段階で使用するための新規触媒が提供される。本発明のプロセスは、第1段階で炭化水素原料を水素化分解することを含む。第1段階の触媒は、従来の水素化分解触媒である。次に、第1段階からの生成物を第2の水素化分解段階に移すことができる。本発明の水素化分解プロセスの第2段階で使用される触媒は、周期表の第6族及び第8族~第10族からの金属と有機酸を含浸させたベースを含む。本発明の第2の水素化分解段階で使用される触媒のベースは、アルミナ、非晶質シリカ-アルミナ(ASA)材料、及びUSYゼオライトを含む。改善されたナフサ生産が実現される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1の水素化分解段階において水素化分解条件下で炭化水素原料を水素化分解することと、
b)前記第1の水素化分解段階からの流出物を第2の水素化分解段階に通過させることと、を含み、前記流出物が水素化分解条件下で水素化分解され、前記第2の水素化分解段階の触媒が、アルミナ、非晶質シリカ-アルミナ(ASA))材料、及びUSYゼオライトからなるベースであって、少なくとも1つの第6族及び少なくとも1つの第8~10族金属と有機酸とが含浸された前記ベースを含む、2段階式水素化分解プロセス。
【請求項2】
前記ベースが、0.1~40重量%のアルミナ、0.1~40重量%のASA、及び20~85重量%のUSYゼオライトを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルミナの量が約20~約30重量%の範囲である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ASAの量が、約15~約30重量%の範囲である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記USYゼオライトの量が、約30~約60重量%の範囲である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
180~347°F(82~175℃)の範囲の沸点を有するナフサ生成物の水素化分解プロセスからの選択性が、少なくとも50重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記選択性が、少なくとも60重量%である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
RCP=347°F(175℃)で、C
9の収率が少なくとも12重量%であり、C
10の収率が少なくとも4重量%である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の水素化分解段階からの流出物が、再循環塔底油(RBO)として前記第2の水素化分解段階に再循環される未転化油を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
質量分析によって測定されるパラフィン含有量が、前記RBO中、少なくとも30体積%である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
H NMRによって測定されるH含有量が、前記RBO中、少なくとも13.5重量%である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の水素化分解段階で従来の水素化分解触媒が使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2の水素化分解段階の前記触媒が、前記ベースに含浸された金属としてニッケル(Ni)及びタングステン(W)を含み、前記有機酸がクエン酸を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第2の水素化分解段階の前記触媒が、前記水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して約2~約10重量%のニッケル塩及び約8~約40重量%のタングステン塩を含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記有機酸がクエン酸を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第2の水素化分解段階の前記触媒が、
(a)前記触媒支持ベースを含む押出可能な塊を形成する工程と、
(b)前記塊を押出して成形押出物を形成する工程と、
(c)前記塊をか焼してか焼押出物を形成する工程と、
(d)少なくとも1つの金属硝酸塩または金属炭酸塩と、有機酸と、アンモニウム含有成分と、を含有する含浸溶液を調製し、水酸化物塩基を用いて前記含浸溶液のpHを1~5.5に調整する工程と、
(e)前記成形押出物を前記含浸溶液と接触させる工程と、
(f)前記含浸溶液の溶媒を除去して、乾燥した含浸押出物を形成するのに十分な温度で前記含浸押出物を乾燥させる工程と、を含む方法によって調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記含浸溶液が、炭酸ニッケル及びクエン酸を含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記有機酸がクエン酸を含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
少なくとも1つの第6族金属及び少なくとも1つの第8~10族金属と、有機酸と、を含浸させた、アルミナ、非晶質シリカ-アルミナ、及びUSYゼオライトのベースを含む水素化分解触媒。
【請求項20】
前記ベースが、0.1~40重量%のアルミナ、0.1~40重量%のASA、及び20~85重量%のUSYゼオライトを含む、請求項19に記載の水素化分解触媒。
【請求項21】
前記アルミナの量が、約20~約30重量%の範囲である、請求項20に記載の水素化分解触媒。
【請求項22】
前記ASAの量が、約15~約30重量%の範囲である、請求項20に記載の水素化分解触媒。
【請求項23】
前記USYゼオライトの量が、約30~約60重量%の範囲である、請求項20に記載の水素化分解触媒。
【請求項24】
前記触媒が、前記ベースに含浸された金属としてニッケル(Ni)及びタングステン(W)を含む、請求項19に記載の水素化分解触媒。
【請求項25】
前記触媒が、前記水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して約2~10重量%のニッケル塩及び約8~40重量%のタングステン塩を含む、請求項24に記載の水素化分解触媒。
【請求項26】
前記触媒が、前記有機酸としてクエン酸を含む、請求項19に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
触媒水素化処理とは、望ましくない不純物を除去し、及び/または炭素状原料を改善された生成物に転化する目的で、そのような炭素状原料を高めの温度及び圧力で、水素及び触媒と接触させるプロセスを指す。水素化処理プロセスの例としては、水素化処理、水素化脱金属化、水素化分解(HCR)及び水素化異性化プロセスが挙げられる。
【0002】
水素化処理触媒は、通常、非晶質酸化物及び/または結晶性微孔質材料(例えば、ゼオライト)からなる支持体または担体上に付着された1つ以上の金属からなる。支持体及び金属の選択は、触媒が使用される特定の水素化処理プロセスによって決まる。
【0003】
水素化分解は、石油精製所で石油原油中の高沸点の炭化水素成分をガソリン、灯油、ジェット燃料、ディーゼル油などのより価値のある低沸点製品に変換するために用いられる特定の触媒化学プロセスである。このプロセスは、高温(500~800°F)かつ高圧(500~3000psi)の高水素雰囲気中で行われる。
【0004】
水素化分解プロセスの多大な経済的有用性のため、プロセスの改善及びプロセスで使用するためのより効果的な触媒の開発に多大な努力が費やされてきた。
【0005】
商業的な水素化分解プロセスは、通常、第1段階の水素化分解と第2段階の水素化分解の2つの部分を含む。第1段階と第2段階の水素化分解反応器の反応環境の主な違いは、第2段階におけるアンモニアと硫化水素の濃度が非常に低いことにある。第1段階の反応環境は、原料の水素化脱窒素及び水素化脱硫によって生成されるアンモニア及び硫化水素の両方に富んでいる。第2段階の水素化分解の原料は、通常、第1段階の水素化分解からの未転化油(UCO)である。
【0006】
最重質ナフサ用の現行世代の第2段階水素化分解触媒は、EBPが850°F未満の原料で良好に機能してきた。製油産業において第2段階の原料は重質化しつつある。最重質ナフサの第2段階水素化分解触媒は、しばしばEBPが1000°Fよりも高い重質の第2段階原料を転化する必要がある。現行世代の触媒は、もはや適当とはいえない。より高い選択性、ひいてはより高い収率で、より重質の原料をナフサに転化できる、より優れた第2段階水素化分解触媒の開発が強く求められている。
【発明の概要】
【0007】
2段階式水素化分解プロセスの第2段階において本プロセスの新規触媒を使用することで、ナフサ製造の改善が実現されることが見出された。プロセスは、第1段階において炭化水素原料を水素化分解または水素化処理することを含む。第1段階の触媒は、任意の適当な従来の水素化分解または水素化処理触媒とすることができる。次に、第1段階からの生成物を第2段階の水素化分解に移すことができる。本水素化分解プロセスの第2段階で使用される触媒は、周期表の第6族及び第8族~第10族から選択される金属を含浸させたベースを含む。クエン酸などの有機酸もベースに含浸される。本発明の第2の水素化分解段階で使用される触媒のベースは、アルミナ、非晶質シリカ-アルミナ(ASA)材料、及びUSYゼオライトを含む。
【0008】
他の要因の中でも、第2の水素化分解段階で本触媒を使用すると多くの利点が得られることが見出された。第2段階の触媒系は、所望のナフサ生成物における収率及び選択性の改善をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本プロセスは、2段階を用いた炭化水素原料の水素化分解に関する。商業的な水素化分解プロセスは、通常、第1段階の水素化分解と第2段階の水素化分解の2つの部分を含んでいる。第1段階と第2段階の水素化分解反応器の反応環境の主な違いは、第2段階におけるアンモニアと硫化水素の濃度が極めて低いことにある。第1段階の反応環境は、原料の水素化脱窒素及び水素化脱硫によって生成されるアンモニア及び硫化水素の両方に富んでいる。第2段階の水素化分解の原料は、通常、第1段階の水素化分解からの未転化油(UCO)である。UCOは、質量分析によって測定した場合に少なくとも30体積%のパラフィン含有量、及び/またはH NMRによって測定した場合に少なくとも13.5重量%のH含有量を含むことができる。本触媒は、第2段階の水素化分解用に設計されている。
【0010】
このプロセス及び触媒は、ナフサ(180~347°F)の収率と転化率を向上させるように設計されている。第1段階の水素化分解では従来の水素化分解触媒を使用するが、鍵は第2段階の触媒にある。第2段階では、アルミナ、非晶質シリカアルミン酸塩(ASA)、及びUSYゼオライトからなるベースを含む特定の触媒を使用する。ベースには、周期表の第6族及び第8族~第10族から選択される触媒金属、好ましくはニッケル(Ni)及びタングステン(W)、ならびに有機酸が含浸される。「周期表」とは、IUPAC Periodic Table of the Elements dated Jun.22,2007のバージョンを指し、周期表の族番号の付け方は、Chemical and Engineering News,63(5),27(1985)に記載されているとおりである。ベースはまた、触媒の調製においてクエン酸などの有機酸で含浸されなければならない。有機酸と金属及び本ベース成分との組み合わせは、第2段階の水素化分解におけるナフサの選択率を高めることが見出された。
【0011】
したがって、第2段階の水素化分解用途で使用するための担持多金属触媒、及びそのような触媒を調製する方法が提供される。ベースには、アルミナ、Yゼオライト、非晶質シリカ-アルミナが含まれる。触媒は、少なくとも1つの第VIB族金属、少なくとも1つの第VIII族金属及び有機酸を含む触媒前駆体から調製される。
【0012】
触媒のベースは、ベースの乾燥重量に対して、約0.1~約40重量%のアルミナベース、または別の実施形態では、約20~約30重量%のアルミナを含むことができる。別の実施形態では、約25重量%のアルミナを使用することができる。触媒のベースは、ベースの乾燥重量に対して、約0.1~約40重量%のASA、または別の実施形態では、約15~約30重量%のASAを含むことができる。Yゼオライトは、ベースの乾燥重量に対して、ベースの20~約85重量%を構成することができる。別の実施形態では、Yゼオライトは、ベースの約30~約60重量%、または別の実施形態では、約40~約60重量%を構成することができる。
【0013】
アルミナは、触媒ベースでの使用が知られている任意のアルミナとすることができる。例えば、アルミナは、γ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ、χ-アルミナ、またはそれらの混合物とすることができる。
【0014】
触媒支持体のASAは、平均メソ孔径が概ね70オングストローム~130オングストロームの非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【0015】
一実施形態では、非晶質シリカ-アルミナ材料は、ICP元素分析によって測定した場合に担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量のSiO2を含有し、450~550m2/gのBET表面積、及び0.95~1.50mL/gの全細孔容積を有する。
【0016】
別の実施形態では、触媒支持体は、ICP元素分析によって測定した場合に担体のバルク乾燥重量の10~70重量%の量のSiO2を含有する非晶質シリカ-アルミナ材料、450~550m2/gのBET表面積、0.95~1.55mL/gの全細孔容積、及び70オングストローム~130オングストロームの平均メソ孔径を有する。
【0017】
別の実施形態では、触媒支持体は、0.7~1.3の表面対バルクシリカ対アルミナ比(S/B比)、及び約10重量%以下の量で存在する結晶性アルミナ相を有する高度に均一な非晶質シリカ-アルミナ材料である。
【数1】
【0018】
S/B比を決定するには、シリカ-アルミナ表面のSi/Al原子比をX線光電子分光法(XPS)を用いて測定する。XPSは、化学分析用電子分光法(ESCA)としても知られている。XPSの貫通深さは50オングストローム未満であるため、XPSにより測定されるSi/Al原子比は、表面の化学組成のものである。
【0019】
シリカアルミナの特性評価におけるXPSの使用は、W.Daneiell et al.in Applied Catalysis A,196,247-260,2000に公開されている。したがって、XPS技術は、触媒粒子表面の外層の化学組成を測定するのに有効である。オージェ電子分光法(AES)及び二次イオン質量分析法(SIMS)などの他の表面測定技術も、表面組成の測定に使用することができる。
【0020】
これとは別に、組成物のバルクSi/Al比は、ICP元素分析から決定される。次いで、表面Si/Al比をバルクSi/Al比と比較することによって、S/B比及びシリカ-アルミナの均一性が決定される。粒子の均一性がSB比によってどのように定義されるかは、以下のように説明される。1.0のS/B比は、材料が粒子全体にわたって完全に均一であることを意味する。1.0未満のS/B比は、粒子表面がアルミニウムで富化されている(またはシリコンが少ない)ことを意味し、アルミニウムは主に粒子の外面に位置している。1.0超のS/B比は、粒子表面がシリコンを高含量で含み(またはアルミニウムが少ない)、アルミニウムが主に粒子の内部領域に位置していることを意味する。
【0021】
「ゼオライトUSY」は、超安定化Yゼオライトを指す。Yゼオライトは、SARが3以上、例えば5~15の合成フォージャサイト(FAU)ゼオライトである。Yゼオライトは、水熱安定化、脱アルミニウム化、及び同型置換のうちの1つ以上によって超安定化することができる。ゼオライトUSYは、出発(合成された状態の)Na-Yゼオライト前駆体よりも高いフレームワークシリコン含有量を有するあらゆるFAU型ゼオライトであってよい。そのような適当なYゼオライトは、例えば、Zeolyst International、Tosoh Corporation、及びJGC Catalyst and Chemicals Ltd(JGC CC)から市販されている。
【0022】
本明細書に記載されるように、本プロセスの水素化分解触媒は1つ以上の金属を含み、これらの金属は、上記のベースまたは支持体に含浸される。本明細書に記載の各実施形態では、使用される各金属は、周期表の第6族及び第8族~第10族の元素、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、各金属は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態では、水素化分解触媒は、周期表の少なくとも1つの第6族金属と、第8族~10族から選択される少なくとも1つの金属とを含む。例示的な金属の組み合わせとしては、Ni/Mo/W、Ni/Mo、Ni/W、Co/Mo、Co/W、Co/W/Mo及びNi/Co/W/Moが挙げられる。
【0023】
水素化分解触媒中の金属材料の総量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して0.1重量%~90重量%である。一実施形態では、水素化分解触媒は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して2重量%~10重量%のニッケル材料、例えば酸化物、及び8重量%~40重量%のタングステン材料、例えば酸化物を含有する。
【0024】
水素化分解触媒の形成では、希釈剤を使用することができる。適当な希釈剤としては、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素、酸化チタン、粘土、セリア、及びジルコニア、ならびにそれらの混合物などの無機酸化物が挙げられる。水素化分解触媒中の希釈剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して0重量%~35重量%である。一実施形態では、水素化分解触媒中の希釈剤の総量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して0.1重量%~25重量%である。
【0025】
本発明の水素化分解触媒はまた、リン(P)、ホウ素(B)、フッ素(F)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の促進剤を含んでもよい。水素化分解触媒中の促進剤の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して0重量%~10重量%である。一実施形態では、水素化分解触媒中の促進剤の総量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して0.1重量%~5重量%である。
【0026】
本発明の第2段階水素化分解触媒はまた、有機酸も含む。有機酸は、酸性の性質を有する有機化合物である。最も一般的な酸はカルボン酸で、その酸性度はカルボキシル基-COOHに関連している。有機酸は金属とともに含浸溶液に添加することができる。任意の適当な有機酸を使用することができる。例としては、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸及び/または酒石酸が挙げられる。酸の混合物を使用することもできる。一実施形態では、クエン酸が有機酸である。
【0027】
第2の水素化分解段階用の水素化分解触媒の調製
一実施形態では、金属の付着は、少なくとも触媒支持体を含浸溶液と接触させることによって実現される。含浸溶液は、金属硝酸塩または金属炭酸塩などの少なくとも1つの金属塩、溶媒、有機酸を含み、1~5.5の範囲のpH(1≦pH≦5.5)を有する。一実施形態では、成形水素化分解触媒は、
(a)触媒ベースを含む押出可能な塊を形成することと、
(b)塊を押出して成形押出物を形成することと、
(c)塊をか焼してか焼押出物を形成することと、
(d)成形押出物を、少なくとも1つの金属塩、溶媒、有機酸を含み、1~5.5のpH(1≦pH≦5.5)を有する含浸溶液と接触させることと、
(e)含浸溶液溶媒を除去するのに十分な温度で含浸押出物を乾燥させて、乾燥含浸押出物を形成することと、によって調製される。
【0028】
別の実施形態では、成形水素化分解触媒は、
(a)触媒ベースを含む押出可能な塊を形成することと、
(b)塊を押出して成形押出物を形成することと、
(c)塊をか焼してか焼押出物を形成することと、
(d)成形押出物を、少なくとも1つの金属塩、溶媒、有機酸を含み、1~5.5のpH(1≦pH≦5.5)を有する含浸溶液と接触させることと、
(e)有機酸の分解温度よりも低いが含浸溶液溶媒を除去するのには十分な温度で含浸押出物を乾燥させて、乾燥含浸押出物を形成することと、によって調製される。
【0029】
別の実施形態では、成形水素化分解触媒は、
(a)触媒ベースを含む押出可能な塊を形成することと、
(b)塊を押出して成形押出物を形成することと、
(c)塊をか焼してか焼押出物を形成することと、
(d)成形押出物を、少なくとも1つの金属塩、溶媒、有機酸を含み、1~5.5のpH(1≦pH≦5.5)を有する含浸溶液と接触させることと、
(e)有機酸の分解温度よりも低いが含浸溶液の溶媒を除去するのには十分な温度で含浸押出物を乾燥させて、乾燥した含浸押出物を形成することと、
(f)乾燥した含浸押出物をか焼して、少なくとも1つの金属を酸化物に変換することと、によって調製される。
【0030】
一実施形態では、触媒ベースを含有する押出可能な塊を形成する際に弱酸が使用される。例えば、一実施形態では、0.5~5重量%のHNO3を含む希硝酸水溶液が使用される。
【0031】
一実施形態では、含浸溶液は、金属炭酸塩を含む。炭酸ニッケルは、本発明の触媒の調製に使用するうえで好ましい金属塩である。
【0032】
希釈剤、促進剤及び/またはモレキュラーシーブ(使用される場合)は、押出可能な塊を形成する際に担体と組み合わせることができる。別の実施形態では、所望の形状に成形する前または後で、担体と、(場合により)希釈剤、促進剤及び/またはモレキュラーシーブと、を含浸させることができる。
【0033】
本明細書に記載の各実施形態において、含浸溶液は、1~5.5のpH(1≦pH≦5.5)を有する。一実施形態において、含浸溶液は、1.5~3.5のpH(1.5≦pH≦3.5)を有する。
【0034】
含浸溶液は有機酸も含まなければならない。金属及びベース成分と組み合わせた有機酸の存在は、ナフサ生成物に対する好ましい選択性をもたらすことが見出された。本明細書に記載の各実施形態において、か焼前の水素化分解触媒中の有機酸の量は、水素化分解触媒のバルク乾燥重量に対して2重量%~18重量%である。
【0035】
含浸溶液を形成するために使用される金属塩、有機酸、及び他の成分に応じて、塩基性成分を添加する前の含浸溶液のpHは、一般的に1未満のpH、より一般的には約0.5のpHを有する。含浸溶液に塩基性成分を加えてpHを1~5.5(1≦pH≦5.5)に調整することにより、酸濃度は消失するか、またはか焼時に水素化分解触媒に有害な影響を与えるだけの十分な速さでの硝酸アンモニウムの分解を酸触媒しないレベルにまで低下する。一実施形態では、酸濃度は、消失するか、またはか焼時に水素化分解触媒のバルク乾燥重量の10重量%超に有害な影響を与えるだけの十分な速さでの硝酸アンモニウムの分解を酸触媒しないレベルにまで低下する(例えば、か焼後の水素化分解触媒のバルク乾燥重量の10重量%超を占める微粉末または破砕押出物を生成しない)。
【0036】
塩基性成分は、含浸溶液用に選択された溶媒に溶解することができ、触媒の形成または触媒の水素化分解性能に大きな悪影響を及ぼさない、つまり、塩基が水素化分解触媒の性能に及ぼす影響が測定できない程度であるか、または重大な不利益を与えない程度であるような任意の塩基とすることができる。触媒の形成に大きな悪影響を及ぼさない塩基は、pH補正を行わない水素化分解触媒の性能に対して、触媒活性を10°F(5.5℃)以上低下させない。
【0037】
本発明の水素化分解プロセスで水素化分解触媒を使用する場合、適当な塩基の1つに水酸化アンモニウムがある。他の例示的な塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0038】
押出し後の塊のか焼は異なり得る。通常、押出し後の塊は、752°F(400℃)~1200°F(650℃)の温度で1~3時間か焼することができる。
【0039】
適当な溶媒の非限定的な例としては、水及びC1~C3アルコールが挙げられる。他の適当な溶媒としては、アルコール、エーテル、及びアミンなどの極性溶媒が挙げられる。水は好ましい溶媒である。各金属化合物が水溶性であり、それぞれの溶液を形成するか、または両方の金属を含む単一の溶液を形成することも好ましい。改質剤は、適当な溶媒、好ましくは水中で調製することができる。
【0040】
これら3つの溶媒成分は、任意の順序で混合することができる。つまり、3つすべてを同時に混合しても、任意の順序で順次混合してもよい。一実施形態では、改質剤を添加するよりも、最初に1つ以上の金属成分を水性媒質中で混合することが好ましい。
【0041】
含浸溶液中の金属前駆体及び有機酸の量は、乾燥後の触媒前駆体中の有機酸に対する金属の好ましい比率が得られるように選択する必要がある。
【0042】
か焼後の押出物は、一般的には1時間~100時間(より一般的には1時間~5時間)、室温~212°F(100℃)で、押出物を転動させながら、初期湿潤度が得られるまで含浸溶液に曝露された後、0.1~10時間、一般的には約0.5~約5時間エイジングされる。
【0043】
乾燥工程は、含浸溶液溶媒を除去するのには十分であるが、改質剤の分解温度よりも低い温度で行われる。別の実施形態では、乾燥した含浸押出物を、その後、改質剤の分解温度よりも高い温度、一般的には約500°F(260℃)~1100°F(590℃)で、有効な長さの時間でか焼する。本発明では、含浸押出物をか焼する際、温度が目的のか焼温度に上昇または勾配される間に含浸押出物が乾燥することを想定している。この有効な長さの時間は、約0.5時間~約24時間、一般的には約1時間~約5時間の範囲である。か焼は、空気などの流動する酸素含有ガス、窒素などの流動する不活性ガス、または酸素含有ガスと不活性ガスの組み合わせの存在下で行うことができる。
【0044】
一実施形態では、含浸押出物は、金属が金属酸化物に変換されない温度でか焼される。さらに別の実施形態では、含浸押出物は、金属を金属酸化物に変換するのに十分な温度でか焼することができる。
【0045】
本発明の乾燥及びか焼後の水素化分解触媒を硫化することで活性触媒を形成することができる。触媒を形成するための触媒前駆体の硫化は、触媒を反応器に導入する前に行う(したがって、エクスサイチューでの前硫化)ことができ、または反応器内で行う(インサイチューでの硫化)こともできる。
【0046】
適当な硫化剤としては、硫黄元素、硫化アンモニウム、アンモニウムポリスルフィド([(NH4)2Sx)、チオ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O3)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、チオ尿素CSN2H4、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド(DMDS)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジブチルポリスルフィド(DBPS)、メルカプタン、t-ブチルポリスルフィド(PSTB)、t-ノニルポリスルフィド(PSTN)、水性硫化アンモニウムが挙げられる。
【0047】
一般に、硫化剤は、硫化触媒を形成するのに必要な化学量論量を超える量で存在する。別の実施形態では、硫化剤の量は、硫化触媒を生成するために少なくとも3:1の硫黄:金属のモル比を表す。
【0048】
触媒は、150°F~900°F(66℃~482℃)の温度で10分~15日間、101kPa~25,000kPaのH2含有ガス圧下で硫化剤と接触させることで活性硫化触媒に変換される。硫化温度が硫化剤の沸点よりも低い場合、プロセスは一般に大気圧下で行われる。硫化剤/任意成分の沸点よりも高い温度では、反応は一般に加圧下で行われる。本明細書で使用する場合、硫化プロセスの完了とは、各金属を例えばCO9S8、MoS2、WS2、Ni3S2などに変換するのに必要な化学量論的な硫黄の量の少なくとも95%が消費されたことを意味する。
【0049】
一実施形態では、硫化は、水素とH2Sに分解可能な硫黄含有化合物を用いて気相中で完了するまで行うことができる。例としては、メルカプタン、CS2、チオフェン、DMS、DMDS、及び適当な硫黄含有精製所出口ガスが挙げられる。H2と硫黄含有化合物とのガス状混合物は、各工程で同じであっても異なっていてもよい。気相中での硫化は、固定床プロセス及び移動床プロセス(触媒が反応器に対して移動する、例えば、懸濁気泡プロセス及び回転炉)を含む任意の適当な方法で行うことができる。
【0050】
触媒前駆体と水素及び硫黄含有化合物との接触は、68°F~700°F(20℃~371℃)の温度、101kPa~25,000kPaの圧力で1時間~100時間で1工程で行うことができる。一般的には、硫化は、温度を徐々に上昇させるかまたは勾配させ、完了まで一定時間保持しながら、一定時間にわたって行われる。
【0051】
別の実施形態では、硫化は気相中で行うことができる。硫化は2工程以上で行われ、最初の工程は次の工程(複数可)よりも低い温度で行われる。
【0052】
一実施形態では、硫化は液相中で行われる。最初に、触媒前駆体を、触媒全細孔容積の20%~500%の範囲の量の有機液体と接触させる。有機液体との接触は、周囲温度~248°F(120℃)の範囲の温度で行うことができる。有機液体を取り込ませた後、触媒前駆体を水素及び硫黄含有化合物と接触させる。
【0053】
一実施形態では、有機液体は、200°F~1200°F(93℃から649℃)の沸点範囲を有する。有機液体の例としては、重油などの石油留分、鉱物性潤滑油などの潤滑油留分、常圧軽油、減圧軽油、直留軽油、ホワイトスピリット、ディーゼル、ジェット燃料、灯油などの中間留分、ナフサ、及びガソリンが挙げられる。一実施形態では、有機液体は、10重量%未満の硫黄、好ましくは5重量%未満の硫黄を含有する。
【0054】
本発明の触媒は、中間段階分離の有無にかかわらず、また、再循環の有無にかかわらず、2段階式水素化分解ユニットの第2段階で用いられる。2段階の水素化分解ユニットは、完全転化形態(すなわち、水素化処理と水素化分解のすべてが再循環によって水素化分解ループ内で行われる)を使用して運転できる。この実施形態は、第2段階の水素化分解工程の前、または蒸留残液を第1及び/または第2段階に再循環する前に生成物をストリッピングする目的で、水素化分解ループ内で1つ以上の蒸留ユニットを使用することができる。
【0055】
2段階式水素化分解ユニットは、部分転化形態で運転することもできる(すなわち、さらなる水素化処理に受け渡される1つ以上の流れをストリッピングする目的で、1つ以上の蒸留ユニットが水素化分解ループ内に配置される)。このような方式で水素化分解ユニットを運転することにより、多核芳香族、窒素及び硫黄種(水素化分解触媒を不活性化する場合がある)などの望ましくない原料成分を、これらの成分の処理により適した、例えばFCCユニットなどの装置による処理を行うために水素化分解ループから取り出すことによって、製油所は、極めて不都合な供給原料の水素化処理を行うことができる。
【0056】
2段階式水素化分解ユニットは、部分転化形態で運転することもできる(すなわち、さらなる水素化処理に受け渡される1つ以上の流れをストリッピングする目的で、1つ以上の蒸留ユニットが水素化分解ループ内に配置される)。このような方式で水素化分解ユニットを運転することにより、ワックス状基油などの望ましい生成物成分を、これらの成分の処理により適した例えば異性化ユニットなどの装置による処理を行うために水素化分解ループから抜き取って取り出すことで製油所は高価値の基油を生成することができる。
【0057】
水素化分解条件は、一般に、温度範囲175℃~485℃、水素:炭化水素の仕込み量のモル比1~100、圧力範囲0.5~350バール、液空間速度(LHSV)範囲0.1~30を含む。
【0058】
第2の水素化分解段階の触媒として本発明の触媒を使用することで、従来の第2水素化分解段階の触媒の使用に比べて、所望のナフサ生成物の選択性及び収率が大幅に向上する。例えば、第2段階で本発明の触媒を使用する本発明のプロセスは、少なくとも50重量%の沸点範囲180~347°F(82~175℃)のナフサ生成物の選択性を与えることができる。別の実施形態では、実現される選択性は、少なくとも60重量%となり得る。ナフサ製品におけるこのような改良は重要であり、当業界で現在求められているナフサ製品を提供する一助となろう。
【0059】
実施例1
市販の同等の水素化分解触媒を、以下の手順に従って調製した。
(1)44.0重量部の擬ベーマイトアルミナ粉末(Sasol製)と、56.0重量部のゼオライトY(Zeolyst JGC,Tosoh製)とをよく混合した。
(2)混合粉末に希硝酸水溶液(3重量%)を加えて、押出し可能なペーストを形成した。
(3)ペーストを1/16”の非対称な四葉形で押出し、250°F(121℃)で一晩乾燥した。
(4)余分な乾燥空気をパージしながら、乾燥した押出物を1100°F(593℃)で1時間か焼し、室温にまで冷却した。
(5)酸化モリブデン、炭酸ニッケル、及びリン酸からなる溶液を、完成後の触媒のバルク乾燥重量中、3.6重量%のNiO及び18.0重量%のMoO3の目標金属充填量となるまで使用してNi及びMoの含浸を行った。触媒を212°F(100℃)で2時間乾燥し、950°F(510℃)で1時間か焼した。この触媒を、以下の実施例で「市販の競合触媒」と呼ぶ。
【0060】
実施例2
本プロセスの例示的なベース(触媒試料A用)は、以下の方法で調製される。
(1)22.6重量部の擬ベーマイトアルミナ粉末(Sasol製)、21.0重量部のシリカアルミナ粉末、56.0重量部のゼオライトY(Zeolyst JGC,Tosoh製)をよく混合した。
(2)混合粉末に希硝酸水溶液(3重量%)を加えて、押出し可能なペーストを形成した。
(3)ペーストを1/16”の非対称な四葉形で押出し、250°F(121℃)で一晩乾燥した。
(4)余分な乾燥空気をパージしながら、乾燥した押出物を1100°F(593℃)で1時間か焼し、室温にまで冷却した。
メタタングステン酸アンモニウム及び炭酸ニッケルからなる溶液を、完成後の触媒のバルク乾燥重量中、3.6重量%のNiO及び18.0重量%のMoO3の目標金属充填量に等しい濃度で使用してNi及びWの含浸を行った。完成後の触媒のバルク乾燥重量の10重量%に等しい量のクエン酸をNiW溶液に加えた。溶液を120°F(49℃)以上に加熱して、溶液を透明に保った。ベース押出物を転動させながら、押出物に金属溶液を徐々に加えた。溶液の添加が完了した時点で、含浸された押出物を室温で少なくとも2時間エイジングした。次いで、余分な乾燥空気をパージしながら、押出物を400°F(205℃)で2時間乾燥した後、室温にまで冷却した。
【0061】
実施例3
下記表1は、本発明の触媒試料Aと市販の比較触媒との間の化学組成及び細孔径分布(PSD)の比較を示す。本発明の触媒試料A(NiW触媒)は、比較触媒(NiMo触媒)より約10重量%低い密度を有する。本触媒試料AがASA及び有機酸(クエン酸)を含むのに対して、比較触媒は含まない。
【0062】
試料A触媒及び比較触媒を、以下の一段階再循環(SSREC)HCR試験プロトコルに従って試験した。
全圧=2000psig
再循環H2/油=5000SCFB
液空間速度(LHSV)=1.0h-1または1.5h-1
1回通過当たりの転化率(PPC):70体積%
再循環カットポイント(RCP):347°Fまたは384°F
【0063】
原料:クリーンな減圧軽油(VGO)、例えば、第1段階の水素化分解プロセスから得られる未転化油(UCO)。
【0064】
クリーンなVGO原料の原料特性を表2に示す。UCOの最終沸点は1080°Fであり、ppmレベルの6+環重質多核芳香族(HPNA)化合物が含まれている。
【0065】
LHSV=1.0h
-1、RCP=384°F、及びPPC=約70体積%、ブリード速度=約6体積%であるICR215と試料Aとの間の生成物収率構造を表3で比較した。
【表1】
【表2】
【表3】
【0066】
この場合、試料Aは市販の比較触媒よりも49°F(27.2℃)活性が高かった。試料Aは、比較触媒よりも重質ナフサ選択的であり、180~347°F(82~175℃)の収率が約19重量%高く、これは47%超の増加であり、347~384°F(175~196℃)の収率が5.5重量%高く、これは3倍超の増加であった。さらに、C4ガス収率、C5-180°F液体収率、及びH2消費量は、試料Aの方が低かった。
【0067】
表4は、RCP=384°F及びPPC=70体積%を用いた市販の比較用触媒と試料Aとの間の生成物特性を比較したものである。試料AのSimdistT5~T90の再循環塔底油(RBO)生成物(384+°F)はいずれも比較用触媒よりも大幅に低く、試料AのASAが原料の重質留分(クリーンなVGO)を分解したことを示している。試料AのRBO生成物は、ナフテンと芳香族化合物の含有量が少なかったが、パラフィン含有量が多く、試料Aが水素化とナフテン環の分解に強いことを示している。試料AからのRBO生成物の6+環HPNAの量は、比較用触媒よりも大幅に少なく、試料Aが比較用触媒よりも精油装置内で大幅に長い寿命を有することを示している。
【表4-1】
【表4-2】
【0068】
LHSV=1.5h-1、RCP=347°F(175°C)、及びPPC=約75体積%、ブリード速度約5体積%を用い、市販の比較用触媒と試料Aとの間の生成物の収率構造及び特性を下記表5及び表6でそれぞれ比較した。
【0069】
表5のRCP=347°F(175℃)を用いた2つの触媒の収率結果の比較は、表3のRCP=384°F(196℃)で観察されたものと同じ傾向に従い、試料Aは市販の比較用触媒よりも活性が高く、重ナフサに対する選択性が高かった。
【0070】
表6のRCP=347°F(175℃)を用いた2つの触媒の生成物特性の比較は、表4のRCP=384°F(196℃)のものと同じ傾向に従った。試料AのSimdistT50のRBO生成物(347+°F)は市販の触媒よりも低かった。試料Aは、ナフテンと芳香族化合物の含有量が少ないがパラフィンの含有量はより大きい。その6+環HPNAの量は比較用触媒よりも少ない。
【表5】
【表6-1】
【表6-2】
表5の生成物収率構造は、表7に示されるC
1~C
12分子の異なる種類の収率構造として配列した。試料Aは市販の競合触媒よりも多くのC
9~C
12分子を生成したことが明らかである。
【表7】
【0071】
結論として、本発明の触媒、すなわち試料Aは、第2段階の水素化分解でしばしば使用される市販の比較用触媒よりも活性が高く、重質ナフサ選択性の第2段階の水素化分解触媒であり、H2消費量が少ない。C9の収率は少なくとも12重量%であり、さらには少なくとも15重量%であることが示されている。C10の収率は少なくとも4重量%であり、さらには少なくとも6重量%であることが示されている。これらは、市販の比較用触媒を使用して得られた収率よりもはるかに優れている。試料Aからの再循環塔底生成物は、ナフテンと芳香族化合物の含有量も少なく、特に6+環HPNAの含有量も少なく、これにより、試料Aは商用用途向けの寿命の長い水素化分解触媒とすることができる。再循環塔底生成物のT50も、比較触媒で得られるものより大幅に低い。
【国際調査報告】