(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】アルコール組成物を修復するためのシステム及び方法、並びに修復されたアルコール製品
(51)【国際特許分類】
C12G 3/08 20060101AFI20230823BHJP
C12H 1/16 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C12G3/08
C12H1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506052
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 US2021043272
(87)【国際公開番号】W WO2022026441
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522263323
【氏名又は名称】トレード シークレット チョコレーツ
(71)【出願人】
【識別番号】320009369
【氏名又は名称】ルビン マシュー ジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ルビン マシュー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B128
【Fターム(参考)】
4B128AC12
4B128AC14
4B128AG04
4B128AG05
4B128AG07
4B128AG09
4B128AP13
4B128AP14
4B128AP25
4B128AT07
4B128AT20
(57)【要約】
ある分量のアルコール組成物を圧力制御可能環境に入れる段階と、圧力制御可能環境の圧力を低減する段階と、アルコール組成物から1又は2以上の望ましくない同族体を除去して精製アルコール組成物をもたらす段階と、精製アルコール組成物を圧力制御可能環境から取り出す段階とを含むアルコール組成物から1又は2以上の同族体を除去する方法。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール組成物から酢酸エチルを除去する方法であって、
a)ある分量のアルコール組成物を圧力制御可能環境に入れる段階と、
b)前記圧力制御可能環境の圧力を80と40トルの間の圧力まで低減する段階と、
c)前記圧力制御可能環境の前記圧力を第1の予め決められた期間にわたって80と40トルの間に保持する段階と、
d)前記アルコール組成物から酢酸エチルを除去して第1の精製アルコール組成物をもたらす段階と、
e)前記第1の精製アルコール組成物を前記圧力制御可能環境から取り出す段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アルコール組成物は、3体積%エタノールから95体積%エタノールまでを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
f)b)の後でかつe)の前に前記圧力制御可能環境を冷却する段階、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力制御可能環境の温度が、セ氏-20度からセ氏80度に維持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力制御可能環境の温度が、セ氏10度からセ氏35度に維持されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の予め決められた期間は、5秒であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の精製アルコール組成物は、前記アルコール組成物の酢酸エチル濃度の3分の1、2分の1、又は3分の2を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の精製アルコール組成物は、前記アルコール組成物の酢酸エチル濃度の約3分の1を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の精製アルコール組成物は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に1ppmから400ppmの酢酸エチル濃度を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の精製アルコール組成物は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に5ppmから300ppmの酢酸エチル濃度を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
g)前記第1の精製アルコール組成物から1又は2以上の更に別の同族体を除去して第2の精製アルコール組成物をもたらす段階、
を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力制御可能環境は、
圧力制御可能チャンバを定める圧力槽と、
前記圧力制御可能チャンバを少なくとも部分的に取り囲んでそれと熱連通しているジャケットと、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体入口ポートと、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通しているガス出口ポートと、
前記ガス出口ポートと流体連通している真空ポンプと、
回収槽と、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体出口ポートと、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ジャケットは、水ジャケットであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
b)中に、前記圧力制御可能環境の前記圧力は、42トルの圧力まで低減され、
c)中に、前記圧力制御可能環境は、42トルの圧力に維持される、
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
アルコール組成物から酢酸エチルを除去するための装置であって、
圧力制御可能チャンバを定める圧力槽と、
前記圧力制御可能チャンバを少なくとも部分的に取り囲んでそれと熱連通しているジャケットと、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体入口ポートと、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通しているガス出口ポートと、
前記ガス出口ポートと流体連通している真空ポンプと、
回収槽と、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体出口ポートと、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項16】
前記ジャケットは、水ジャケットであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記液体入口ポートに作動的に接続されたアルコール組成物ソースと、
前記液体入口ポートと前記アルコール組成物ソースとに流体連通している第1の液体ポンプと、
前記液体出口ポートと前記回収槽とに流体連通している第2の液体ポンプと、
を更に備えることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記液体入口ポートから前記液体出口ポートまで前記圧力制御可能チャンバの周りに複数回巻き付く螺旋レース、
を更に備えることを特徴とする請求項15から請求項17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記圧力制御可能チャンバに位置決めされた攪拌器、
を更に備えることを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記圧力制御可能チャンバ内に作動的に接続され、圧力センサ、温度センサ、化学センサ、及びその組合せから構成される群から選択される少なくとも1つのセンサを更に備えることを特徴とする請求項15から請求項19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
それぞれの前記ポンプ、それぞれの前記ポート、及び前記ジャケットに作動的に接続された電子コントローラ、
を更に備えることを特徴とする請求項15から請求項20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
アルコール組成物から酢酸エチルを除去する方法であって、
a)圧力槽に部分真空を確立する段階と、
b)ある分量のアルコール組成物を前記圧力槽の中に流し込む段階と、
c)前記アルコール組成物から酢酸エチルを少なくとも部分的に優先的に除去して精製アルコール組成物をもたらす段階と、
d)前記圧力槽から前記精製アルコール組成物を抽出する段階であって、該圧力槽にある間は前記アルコール組成物が液体に留まる、前記抽出する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記部分真空は、40トルから50トルの範囲であり、
c)は、5から60秒にわたってセ氏10から35度の温度で実行される、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記部分真空は、約42トルであり、
c)は、約5秒にわたってセ氏約22度で実行される、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
アルコール組成物から導出された官能性改善飲料であって、
前記官能性改善飲料は、エタノールを備え、
前記官能性改善飲料がそこから導出された前記アルコール含有組成物は、該官能性改善飲料に見出せられない1又は2以上の望ましくない官能特性を保有する、
ことを特徴とする官能性改善飲料。
【請求項26】
前記官能性改善飲料の1又は2以上の望ましい官能特性が、前記官能性改善飲料がそこから導出された前記アルコール含有組成物の1又は2以上の対応する望ましい官能特性と少なくとも実質的に類似であることを特徴とする請求項25に記載の官能性改善飲料。
【請求項27】
前記官能性改善飲料の1又は2以上の望ましい官能特性が、前記官能性改善飲料がそこから導出された前記アルコール組成物の1又は2以上の対応する望ましい官能特性よりも実質的に改善されることを特徴とする請求項25に記載の官能性改善飲料。
【請求項28】
前記1又は2以上の望ましくない官能特性は、不快な後味、刺激味の後味、切れ味の後味、溶剤味の後味、渋味の後味、きつい後味、薄味の風味、ピーク及び/又は後味での溶剤味の含み味、口蓋上での無味乾燥的な味、1又は2以上の風味を覆い隠す不快なピーク、切れ味、喉の焼け付き感、苦味、金属味、長引く余韻、頭の動きの誘起、無意識の生理学的反応の誘起、催吐反射の誘起、及びその組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項25から請求項27のいずれか1項に記載の官能性改善飲料。
【請求項29】
エタノール含有組成物から導出された官能性改善飲料であって、
前記官能性改善飲料中の酢酸エチルの分量が、前記官能性改善飲料がそこから導出された前記エタノール含有組成物に存在する酢酸エチルの分量よりも少ない、
ことを特徴とする官能性改善飲料。
【請求項30】
前記官能性改善飲料中の酢酸エチルの前記分量と前記官能性改善飲料がそこから導出された前記エタノール含有組成物中の酢酸エチルの前記分量は、両方とも液相ガスクロマトグラフィー質量分析法を使用して測定されることを特徴とする請求項29に記載の官能性改善飲料。
【請求項31】
前記官能性改善飲料中の酢酸エチルの前記分量の前記低減は、前記エタノール含有組成物への部分真空の印加からもたらされることを特徴とする請求項29又は請求項30に記載の官能性改善飲料。
【請求項32】
前記部分真空は、42トルであり、かつ5秒にわたってセ氏22度で印加されることを特徴とする請求項31に記載の官能性改善飲料。
【請求項33】
前記部分真空は、63トルであり、かつ5秒にわたってセ氏22度で印加されることを特徴とする請求項31に記載の官能性改善飲料。
【請求項34】
前記部分真空は、5秒にわたるセ氏22度での53トルであることを特徴とする請求項31に記載の官能性改善飲料。
【請求項35】
前記官能性改善飲料中の酢酸エチルの前記量は、前記官能性改善飲料がそこから導出された前記エタノール含有組成物中の酢酸エチルの前記量の<1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、33と1/3%(すなわち、3分の1)、35%、40%、45%、50%(すなわち、半分)、55%、60%、65%、66.7%(すなわち、3分の2)、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%であることを特徴とする請求項25から請求項34のいずれか1項に記載の官能性改善飲料。
【請求項36】
前記官能性改善飲料中の酢酸エチルの前記量と前記官能性改善飲料がそこから導出された前記エタノール含有組成物中の酢酸エチルの前記量は、両方とも液相ガスクロマトグラフィー質量分析法を使用して測定されることを特徴とする請求項35に記載の官能性改善飲料。
【請求項37】
アルコール組成物から導出された官能性改善飲料であって、
3体積%から95体積%のエタノールを備え、
液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に1ppmから400ppmの量の酢酸エチルを備える、
ことを特徴とする官能性改善飲料。
【請求項38】
エタノールを備える組成物を閉鎖槽に入れる段階と、
前記組成物を平衡飽和状態に到達させる段階と、
前記閉鎖槽の内側で気相のサンプルを取得する段階と、
前記気相の前記サンプル中の1又は2以上の分子の濃度を決定する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項39】
エタノールを備える組成物を閉鎖槽に入れる段階と、
前記閉鎖槽内の温度及び/又は圧力を調節して前記組成物を平衡飽和状態に到達させる段階と、
前記閉鎖槽の内側で気相のサンプルを取得する段階と、
前記気相の前記サンプル中の1又は2以上の分子の濃度を決定する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項40】
前記サンプル中の1又は2以上の分子の前記濃度は、ガスクロマトグラフィーを使用して決定されることを特徴とする請求項38又は請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記サンプル中の1又は2以上の分子の前記濃度は、ガスクロマトグラフィー/質量分析法を使用して決定されることを特徴とする請求項38又は請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記1又は2以上の分子は、酢酸エチルであることを特徴とする請求項38から請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この特許出願は、2020年7月27日出願の現在特許出願中の米国特許出願第16/939,340号、及び同じく2021年3月4日出願の米国仮特許出願第63/156,517号及び2021年6月11日出願の第63/209,487号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明の開示は、一般的にアルコール飲料の分野に関連し、より具体的には、アルコール組成物から有害な同族体を除去するためのシステム及び方法に関する。本発明の開示の態様はまた、改善された官能(organoleptic)特性を有するアルコール組成物を含み、同族体の量が低減したアルコール組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
アルコール飲料は、何千年にもわたって人類の必需品であり続けている。ビールは、廉価であると共に労働者にとって楽しみな配給であるだけでなく、非飲用水を補水源に変える手段でもあるのでエジプトのピラミッドの建設に必須であった。しかし、アルコール飲料の発酵及び蒸留での何千年にもわたる経験にも関わらず、高品質のビール、ワイン、及び蒸留酒を一貫して生産することは依然として困難である。実際に、ワイン及び蒸留酒の品質は、特に、非常に希少で上質なものから辛うじて飲むことができる程度まで全域にわたっている。
【0004】
アルコール飲料の製造技術は、長年にわたって極秘の技能であり続けている。典型的には、最初に果糖で加糖された水溶液が発酵してエチルアルコール、並びに様々な同族体(微量化学成分)を生成する。これらの同族体のうちの一部は、風味のある一定の豊かさのような望ましい官能品質を提供するので望ましいが、メタノール、アセトアルデヒド、ブタノール、イソブタノール、及びメチルブタノールなどのようないくつかの他のものは、二日酔い症状を引き起こす及び/又はアルコール飲料に不快な風味を付与することが公知である。樽熟成酒は、より大きい同族体分子の一部を吸収し、すなわち、その酒の味を改善することが公知であるが、そのような処理は、極端に長い時間を費やし、多くの場合に数十年を要する。
【0005】
飲料品質は、製造業者毎に、並びに所与の製造業者によって生成される仕込み毎に大きく異なる場合がある。これは、一部には一貫しない処理に起因し、一部には原料のソース及び品質の変動に起因して生じる。飲料品質の変動の1つのソースは、発酵/蒸留処理の副次的効果として発生して飲料に対する悪い風味に寄与する飲料中の望ましくない化学種又は同族体の存在である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの化学種の多くは、標準圧力でエタノールに非常に近い沸点を有し、かつかなりの量のエタノール及び/又は他の望ましい同族体を同時に除去することなく蒸留によって除去することが困難である。すなわち、エタノール及び/又は望ましい同族体/香料を残したままでアルコール飲料から望ましくない同族体を迅速に除去する手段が依然として必要である。本発明の開示は、この必要性に対処するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の開示の第1の実施形態によるアルコール修復システムの斜視図である。
【
図1C】線A-A’に沿う
図1Bのシステムの切欠き図である。
【
図1D】内部装着攪拌器を示す
図1Aのシステムの切欠き図である。
【
図1E】2次開口容器がそこに位置決めされた
図1Aのアルコール修復システムの切欠き断面図である。
【
図2】本発明の開示の第2の実施形態によるアルコール修復システムの切欠き断面図である。
【
図3】本発明の開示の第3の実施形態によるアルコール修復システムの切欠き断面図である。
【
図4A】本発明の開示の第4の実施形態によるアルコール修復システムの第1の斜視図である。
【
図4B】
図4Aのアルコール修復システムの第2の斜視図である。
【
図4D】滑らかな内壁を有する
図4Aのアルコール修復システムの第1の切欠き図である。
【
図4E】レース付き内壁を有する
図4Aのアルコール修復システムの第2の切欠き図である。
【
図4F】
図4Aのアルコール修復システムの第3の斜視図である。
【
図5A】凹面内部側壁を有して流体入口本体(マニホルド)を特徴とする
図4Aの実施形態の圧力槽の切欠き図である。
【
図5B】入口ポートに作動的に接続された入口トラフを有する
図4Aの実施形態の圧力槽の切欠き図である。
【
図6A】本発明の開示の第5の実施形態によるアルコール修復システムの斜視図である。
【
図7】上述の実施形態の作動の根底にあるアルコールを修復する方法の概略図である。
【
図8】アルコール組成物(ラム酒)に対する処理圧力の関数としての同族体の質量パーセントのグラフである。
【
図9】時間の関数として風味/芳香強度の観点で風味均衡の官能特性をグラフィックに示す図である。
【
図10】エタノール含有量の関数として処理圧力によるアルコールのピーク口当たり良さをグラフィックに示す図である。
【
図11】80標準強度アルコール組成物(ウォッカ)に対する処理圧力の関数として切れ味をグラフィックに示す図である。
【
図12】ラムの処理済みサンプル中の酢酸エチル含有量と処理に使用された圧力との間で外挿された関係をグラフィックに示す図である。
【
図13】バーボンの処理済みサンプル中の酢酸エチル含有量と処理に使用された圧力との間で外挿された関係をグラフィックに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の開示の原理の理解を促進する目的で、ここで図面に例示する方法、飲料組成、及び実施形態を以下で参照し、これらを説明するために特定の文言を使用する。それにも関わらず、これらによる本発明の開示の範囲の限定を意図しておらず、本発明の開示が関係する当業者に普通に想起されると考えられる例示するデバイスでの変更及び更に別の修正、並びに図面に例示する本発明の開示の原理の更に別の適用を見込んでいることは理解されるであろう。
【0009】
本発明の開示の態様は、アルコール組成物から望ましくない同族体を除去する方法及び低いレベルの望ましくない同族体のみを備えるアルコール組成物(例えば、飲料組成物)に関連する。本明細書に使用する時に「アルコール組成物」は、エタノールを備える組成物を意味する。疑問回避の目的で、アルコール組成物は、エタノール以外のいずれのアルコール(例えば、メタノール)も実質的に不在であると理解されるものとする。例えば、アルコール組成物は、エタノール以外のアルコールを全量で1重量パーセント未満、0.50重量パーセント未満、0.25重量パーセント未満、0.10重量パーセント未満、0.05重量パーセント未満、0.01重量パーセント未満、又は0.005重量パーセント未満のみを備える場合がある。例えば、アルコール組成物は、エタノール以外のアルコールを全量で1体積パーセント未満、0.50体積パーセント未満、0.25体積パーセント未満、0.10体積パーセント未満、0.05体積パーセント未満、0.01体積パーセント未満、又は0.005体積パーセント未満のみを備える場合がある。本明細書に使用する時に「アルコール組成物」は、人間の消費に適するビール、ワイン、蒸留酒、又は他のエタノール含有組成物を意味することができる。本明細書に使用する時に、アルコール組成物から同族体を「除去すること」は、アルコール組成物中の同族体の分量を低減することを意味する。本明細書に使用する時に、アルコール組成物から同族体が「除去される」場合に、同族体の分量は、同族体が除去される前のアルコール組成物に存在する同族体の量と比較して部分的、実質的、又は完全又は事実上完全に(すなわち、1又は2以上の分析技術によって検出不能な点まで)低減することができることは理解されるものとする。一部の実施形態では、アルコール組成物から同族体が「除去された」後に、同族体は、アルコール組成物中で1又は2以上の分析技術によって検出可能なままに留まる。一部の実施形態では、アルコール組成物から同族体が「除去された」後に、同族体は、アルコール組成物中で1又は2以上の分析技術によって検出不能である。
【0010】
アルコール組成物中の望ましくない同族体の一部又は全ての除去は、望ましくない同族体が本質的に毒性を有するので又は望ましくない同族体が(その現在濃度では)不快又は嫌な官能体験に寄与するので望ましいとすることができる。アルコール組成物中で見つかる1つの同族体は、酢酸エチル(本明細書では「EA」とも呼ぶ)である。酢酸エチルは、エタノール(アルコール)及び酢酸(酢)のエステル化によって形成されるエステル分子である。酢酸エチルは、両親媒特性を有する極性非プロトン溶剤でもある。その結果、消費者は、雑味のあるピークと後味での激しい切れ味とをもたらす可能性がある嗅覚受容での酢酸エチル濃度の僅かな変化と、口腔の後部に溶剤味様の焼け付き感をもたらす可能性がある細胞平衡での酢酸エチル濃度の僅かな変化との両方に対して非常に高い感度を有する。酢酸エチルは、エタノールのものに非常に類似した沸点を有する。その結果、酢酸エチルは、多くの場合に高濃度蒸留酒の蒸留中に除去されるのではなく濃縮され、それによって切れ味とアルコール濃度又は標準強度との間で消費者による間違った相関を招いている。実際に、発酵食品及び発酵飲料のピーク及び後味で知覚される「切れ味」特性を左右することは酢酸エチル濃度である。酢酸エチルは、消費中に極性非プロトン溶剤としての働きもするので、他の風味分子の検出を助けることができる。その結果、過度に低い酢酸エチル濃度は、他の望ましい風味及び芳香を検出する消費者の機能を抑制する場合がある。
【0011】
食品及び飲料の官能特性を最適化するには、百万分率レベルでの酢酸エチル濃度の適正な均衡が必要である。例えば、非常に低い分量の酢酸エチルは、気持ち良いか又は改善した官能体験をもたらすように特殊G蛋白質結合嗅覚受容体間のある一定の組合せに対して作用し、それに対してより高い濃度の酢酸エチルは、不快又は嫌な官能体験を発生させるようにこれらの同じ受容体に対して作用する。そのような嫌な官能体験は、切れ味、喉の焼け付き感、苦味、金属味、長引く余韻、頭の反り、無意識の身震い、催吐反射の誘起、及びその組合せによって特徴付けることができる。酢酸エチルの低減又は除去は、これらの嫌な官能体験を排除することができ、ある一定レベルまでの酢酸エチル濃度の低減は、アルコール飲料の既に望ましい官能特性を真に改善することができる。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、ある分量の1又は2以上の望ましくない同族体が除去されたアルコール組成物として本明細書で定める精製アルコール組成物を生成するために適用される。例えば、一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、アルコール組成物の酢酸エチル濃度をガスクロマトグラフィー質量分析法によって液相アルコール組成物中で測定して1ppm(百万分率)から400ppmに低減するために適用される。
【0013】
一部の実施形態では、精製アルコール組成物は、開始アルコール組成物から調製されたエタノールを備える官能性改善飲料(organoleptically improved beverage)である。すなわち、一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始アルコール組成物からエタノールを備える官能性改善飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、飲料を取り出す元であり、官能性改善飲料に見出せられない1又は2以上の望ましくない官能特性を有する開始アルコール含有組成物からエタノールを備える官能性改善飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、上述の1又は2以上の望ましくない官能特性は、不快な後味、刺激味の後味、切れ味の後味、溶剤味の後味、渋味の後味、きつい後味、薄味の風味、ピーク及び/又は後味での溶剤味の含み味、口蓋上での無味乾燥的な味、1又は2以上の風味(例えば、1又は2以上の繊細な風味)を覆い隠す不快なピーク、切れ味、喉の焼け付き感、苦味、金属味、長引く余韻、頭の動き、例えば、頭の反り、頭の振り、頭の傾き、又は頭の張りの誘起、無意識の生理学的反応、例えば、身震いの誘起、催吐反射の誘起、及びその組合せから構成される群から選択される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始アルコール組成物からエタノールを備える官能性改善飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始アルコール組成物から、エタノールを備える官能性改善飲料であって、飲料を取り出す元であるアルコール含有組成物の少なくとも1つの対応する望ましい官能特性と少なくとも実質的に類似の1又は2以上の望ましい官能特性を有する官能性改善された上記飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始アルコール組成物から、エタノールを備える官能性改善飲料であって、飲料を取り出す元であるアルコール組成物の1又は2以上の対応する望ましい官能特性を上回って実質的に改善された1又は2以上の望ましい官能特性を有する官能性改善された上記飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、これらの1又は2以上の望ましい官能特性は、まろやかな味の後味、濃厚味の後味、均衡した味の後味、爽快味のピーク、風味豊かな味のピーク、均衡した味のピーク、微妙な彩りの風味を引き立たせる均衡した味のピーク、及びその組合せから構成される群から選択される。
【0014】
消費者は、多くの場合に、風味の過渡的な体験を味、匂い、及び残留物検出、及び分子分解の対応する知覚機構を辿る「先味」、「ピーク」、及び「後味」を含む3つの独特のフェーズで表している。各フェーズは、特定の知覚源によって支配され、各フェーズ中の風味及び芳香の過小発現と過剰発現は、食品の全体的な望ましさを決定することができる。消費者は、最初に舌の上で食品又は飲料を味わい始め、そこで甘味、酸味、苦味、香味、脂味、及び塩味を含むことができる複数の味覚特質の組合せを体験することができる。味覚特質は、主として舌の上に見られる複数の型及び変形の受容体(一般的に、味蕾と呼ばれる)によって検出される。いくつかの味覚特質は、単一受容体型によって決定付けられるが、苦味のような他の味覚特質は、25個よりも多い受容体変形の組合せ信号を通して知覚することができる。受容体のうちのいずれか1つの過剰発現又は過小発現は、消費者への警報をもたらすことができ、これは、知覚される食品のポジティブ官能特性が低下する。その結果、多くの場合に、消費者は、官能的に望ましい食品を「均衡した」と呼ぶ。
【0015】
消費中に、味覚のほぼ直後に揮発性の芳香が喉を逆行して嗅覚腔の中に入る時に、多くの場合にピークで表す匂いが続くことができる。揮発性化合物が口腔から嗅覚腔まで進行するのに必要とされる追加の時間は、消費者体験の先味とピークとの間で知覚される時間遅延を発生させる。匂いは、主としてG蛋白質結合嗅覚受容体を通して伝達され、各々が特定の分子に対して高い感度を有するほぼ千個の異なる嗅覚受容体が匂いを受け持つ。嗅覚受容体は、消費者が多くの場合に「エキス」と呼ぶある一定の部類の有機分子である酢酸エチルのようなエステルに対して特に選択性を有する。味覚と臭覚は、その感度では異なる。比較すると、味覚は、一般的に、百分率の濃度変化を判別することができ、それに対して臭覚は、百万分率程度の細かい濃度変化を判別することができる。味覚の場合と同様に、食品又は飲料の官能特性は、受容体間の組合せによって体験される匂いの均衡によって決定することができる。いずれか1つの受容体の過剰発現又は過小発現は、食品又は飲料の知覚均衡を低減し、その結果、それ程望ましくない製品がもたらされる。
【0016】
食品及び飲料の後味は、先味又はピークよりも複雑である。後味中に、口腔内の分子は、加水分解及び触媒作用のような様々な機構によって分解し始め、口腔内の熱及び対流によって増加する揮発性化合物は、口腔から蒸発して嗅覚腔に進行し続け、口腔自体の細胞平衡は、食品又は飲料の結果として変化し始める。消費中に口腔を急激に変化させる食品又は飲料は、多くの場合に「刺激味」、「辛味」、又は「切れ味」(例は、辛味ソース、常温保存可能調味料、又は高濃度蒸留酒を含む)として表す後味を有する。低濃度では、これらの望ましくない体験を「雑味」、「諄味」、渋味、又は濃いタンニンなどとして表すことができる。その一方で口蓋上で希薄になる時に味、匂い、及び細胞平衡を維持する食品及び飲料は、多くの場合に「新鮮な味」、「香味」、「切れ味」、「まろやか味」、「繊細な味」、又は「上品な味」の後味を有すると言われ、一般的により望ましいものと見なされる。
【0017】
酢酸エチルの蒸気圧及び知覚濃度は、所与の食品又は飲料での複雑な分子間相互作用に起因して分子濃度に直接対応しない。従って、均衡は、単純に測定及び滴定を通して制御することができない。それとは逆に、適正均衡の食品又は飲料は、酢酸エチル平衡(本明細書では「EAE」とも呼ぶ)を異なる濃度の下で摂動させ、再確立することができる状態を発生させることができる。本発明の技術は、食品又は飲料の複雑な立体障害を使用することによって他の望ましい分子(例えば、エタノール)の濃度を変化させることなくこの目標(異なる濃度の下でアルコール組成物の酢酸エチル平衡を摂動させて再確立すること)をもたらす。このようにして、初期アルコール組成物に存在する酢酸エチル及び他の発酵副生成物から一般的に消費者が体験する切れ味及び雑味の均衡を得られる官能性改善飲料での官能的により好ましい状態に再調整することができる。この処理を通して消費者体験のピークでの匂いは、酢酸エチルと相反しないので、多くの場合により爽快で明確な味として知覚されることになり、後味は、多くの場合に「よりまろやか」でより「上品な」味として知覚され、それによって得られる官能性改善飲料でのより望ましい官能特性を発生させることになる。
【0018】
上述の考えに沿って、本発明の開示の更に別の態様は、アルコール組成物中の気相酢酸エチル濃度を測定する方法、及びアルコール組成物の官能特性を最適化することへのこれらの方法の使用に関する。ワイン、ビール、高濃度蒸留酒、並びに天然酢又は蒸留酢のような発酵副生成物のようなアルコール組成物中の同族体濃度(例えば、酢酸エチル濃度)を測定する従来の方法は、液相サンプルの直接赤外線HPLC及び/又はガスクロマトグラフィー質量分析法を利用する。従来の考え方は、化学組成が同じか又は少なくとも非常に同様である場合に風味が同じか又は少なくとも非常に同様であるはずだというものである。これらの方法は、飲料中の絶対同族体濃度を測定するには非常に良好であるが、非常に大まかにしか風味に相関しないことが見出されており、アルコール組成物の官能特性を予想するほど十分な一貫性があることは見出されていない。理論はさておき、相関性及び/又は一貫性の欠如に関する1つの理由は、風味の消費者体験が、多感覚相での複雑な分子間相互作用結果であることにあると考えられる。舌の上の味覚感覚器は、飲料の基本的な風味を決定するのに重要であるが、風味の微妙な彩り及び芳香の複雑さの殆どが嗅覚を通して体験される。消費者風味体験の独特の性質を決定するためのこれらの精緻な測器の利用は、多くの場合に不正確であることが見出されている。
【0019】
本発明の開示の態様は、これらの問題に対処する。一部の実施形態では、飲料の嗅覚体験は、閉鎖系条件下で平衡飽和に達した飲料の液相サンプル及び/又は固相サンプルと流体連通している雰囲気から採取された揮発性分子成分の分圧を測定することによって正しく相関させることができる。雰囲気の相平衡は、周囲圧及び周囲温度の下で空気及び/又は不活性ガスの気相環境を用いて確立することができる。一部の実施形態では、サンプル及び/又は雰囲気の温度を飲料の好ましい消費条件に整合するように調節することができる。本方法では、液相及び/又は固相の飲料サンプルでの複雑な分子間相互作用を気相との疑似平衡飽和状態を確立することによって制御することができる。酢酸エチルのような分子組成物の液相濃度は飲料毎に変わる場合があるが、雰囲気相濃度は、比較的一定のままに留まり、従って、飲料の嗅覚体験、従って、官能特性の正確な表現に表すことができる。
【0020】
本発明の開示の方法の実施形態では、1mLから5mLのサンプルが、サンプル体積の0.5倍から5倍の全体積を有するバイアル内に入れられ、次に、このバイアルが、隔離雰囲気を形成するように別個のキャップで密封される。密封されたサンプルを外乱のないままに放置にすることができ、又はこれに代えて、例えば、5秒から5分の期間にわたって又は雰囲気相とサンプルの間に平衡飽和状態が確立されるまで撹拌することができる。既知の体積の気相の一部分が槽から取り出され、ガスクロマトグラフィー質量分析法を使用して分析され、気相の分子の特定の濃度に関して調べられる。これに代えて又はこれに加えて、この既知の体積の気相の一部分は、平衡雰囲気のサンプルとの流体連通状態に置かれた1又は2以上の化学選択性センサを用いて分析される。実時間分析では、化学選択性センサを隔離環境との直接雰囲気連通状態に置くことができ、選択分子の分圧濃度を相関信号及び較正信号を通して検出することができる。一部の実施形態では、化学選択性センサは、酢酸エチルの検出及び測定に特化することができる。そのような酢酸エチル専用センサが採用される時に、アルコール飲料の官能特性、特にまろやか味の実時間分析を飲料サンプルの上方の気相平衡の酢酸エチル分圧を測定することによって予想することができる。
【0021】
本発明の開示の更に別の態様は、装置及びアルコール組成物中の1又は2以上の望ましくない同族体の分量を低減することへのこれらの装置の使用に関する。例えば、
図1A~
図8に示すように、本発明の開示の態様は、ビール、ワイン、蒸留酒、及び類似の飲料のようなアルコール組成物からある分量の1又は2以上の望ましくない予め決められた同族体(一般的には発酵副生成物)、例えば、酢酸エチルを優先的に除去するための装置20に関する。一実施形態では、装置20は、液体入口ポート30と、蒸気出口ポート35と、液体出口ポート40とを有する圧力槽25を含み、これらの全てのポートが圧力槽20によって定められる内圧制御可能チャンバ45と流体連通している。一般的に、圧力槽25は、圧力チャンバ45を少なくとも部分的に包囲してそれと熱連通している水ジャケット50又は類似の温度コントローラを含む。一般的に、液体入口ポート30は、パイプ55などを通して液体ポンプ60と流体連通状態で接続される。ポンプ60は、アルコール飲料ソース65と流体連通状態で接続される。典型的には、アルコール飲料ソース65と液体入口ポート30の間であるライン内に少なくとも1つのバルブ70が作動的に接続される。バルブ70は、入口ポート30とポンプ60の間、ポンプ60とアルコール飲料ソース65の間に接続することができ、又はこれら両方の位置に接続することができる。
【0022】
一般的に、蒸気出口ポート35は、真空ポンプ75と流体連通状態で接続され、真空ポンプ75は、回収槽80と流体連通状態で接続される。一般的に、真空ポンプ75は、圧力槽25から放出された蒸気を除去し、回収に向けて回収槽80内に望ましい圧力で誘導するように、更に、圧力制御可能チャンバ45の中に部分真空を確立するように作動する。回収槽80は、冷却捕捉又は圧力制御槽などとすることができる。一般的に、少なくとも1つのバルブ70が、回収槽80と蒸気出口ポート35の間であるライン内に作動的に接続される。バルブ70は、槽45とポンプ75の間、ポンプ75と出口ポート35の間に接続することができ、又はこれら両方の位置に接続することができる。回収槽80は空にし、もたらされた蒸留物を取り出すことができる。
【0023】
特に、液体出口ポート40は、ポンプ85と流体連通状態で接続され、ポンプ85は、アルコール飲料回収槽90と流体連通状態で接続される。一般的に、少なくとも1つのバルブ70が、アルコール飲料回収槽90と液体出口ポート40の間であるライン内に作動的に接続される。バルブ70は、槽45とポンプ85との間、ポンプ85と回収槽90の間に接続することができ、又はこれら両方の位置に接続することができる。典型的な槽45の収量は、1リットルのチャンバ体積当たり約0.025リットル毎分から1.0リットル毎分であり、より一般的には1リットルのチャンバ体積当たり0.1リットル毎分と0.8リットル毎分との間、より一般的には1リットルのチャンバ体積当たり0.25リットル毎分と0.6リットル毎分の間である。
【実施例1】
【0024】
図1A~
図1Eに一般的に示すように、上述したアセンブリ20は、仕込み毎のベースでアルコール組成物を処理するように具現化することができる。圧力槽25は、上述したポート30、35、40、並びに熱連通状態で圧力チャンバ45を被包する水ジャケット50又は類似の温度制御機構を含む。圧力チャンバ45の中に、そこに含まれる一定体積のアルコール飲料の撹拌/振動/発泡を容易にするための攪拌器95が配置される。圧力チャンバ45内の部分真空は、真空ポンプ75の付勢によって確立することができる。
【0025】
図1Eでは、開口容器43に含まれたアルコール組成物は、圧力チャンバ45に位置決めされる。次に、真空蓋46が真空チャンバ45に係合し、それによって真空チャンバ環境が周囲の外部環境から隔離され、真空チャンバ45内の圧力は、蒸気出口ポート35との作動連通している真空ポンプ75の付勢によって下降される。真空チャンバ圧は、指定レベルに達すると、次に、大気圧まで増大され、蓋46が取り外され、その後に、容器46は、この時点では真空処理されたアルコール組成物を含む。
【実施例2】
【0026】
図2に示すように、上述したアセンブリ20は、アルコール組成物を連続流れ処理として処理する実施形態を取ることができる。液体入口ポート30は、スプレーヘッドとして構成され、ソースタンク65からポンプ給送されたアルコール組成物を既に望ましい部分真空圧までポンプ減圧された圧力チャンバ45の中に噴霧するように位置決めされる。アルコール組成物の噴霧は、圧力チャンバ45を通って進んで圧力槽25の底部に集まり又は溜まり、そこで出口ポート40を通してポンプ排出することができる。一部の実施形態では、入口ポート30はノズルとして構成され、それに対して他の実施形態では、流入する液体を加速して誘導するための別個のノズルが入口ポート30に作動的に接続される。
【実施例3】
【0027】
図3に示すように、上述したアセンブリ20は、アルコール組成物を連続流れ処理として処理する実施形態を取ることができる。液体入口ポート30は、傾斜板100の一端で空とすることができ、そこでソースタンク65からポンプ給送されたアルコール組成物が薄層又はシート状に拡散し、傾斜板100の他端に滑り落ちてそこに溜まる。真空ポンプ75が付勢されている時に流れているエタノールシートから圧力チャンバ45の内側の部分真空環境の中に同族体を放出することができる。処理されたアルコール組成物は、圧力チャンバ45から回収槽90の中にポンプ排出することができる。
【実施例4】
【0028】
図4A~
図4Eに示すように、上述したアセンブリ20は、アルコール組成物を連続流れ処理として処理する更に別の実施形態を取ることができる。槽25は、直径が上部から底部に縮小する円形平面断面(この例では、平面断面プロファイルは、円錐部分の上に被さる円筒形部分を有する)と、シェブロン形の側面断面プロファイル(この例では、側面断面プロファイルは、矩形の上側部分と三角形の下側部分とを有する)とを有するどんぐり形である。一般的に、槽は、圧力制御可能チャンバ内部45を包む水ジャケット外部50を含む。槽25の上部の近くに位置決めされた液体入口ポート30は、タンク65からポンプ給送されたアルコール組成物を圧力チャンバ45の中に注入し、注入アルコール組成物は、圧力チャンバ45の内側に沿って螺旋経路を辿り、最終的に底部に溜まるほど十分に高速に移動するように注入時に十分な圧力下にある。一般的に、アルコール組成物は、槽25を複数回周回する薄い流れ又はリボンを定め、その間に槽25内の部分真空(槽25と流体連通状態で接続した真空ポンプ75の付勢によって与えられる)が、この流れ又はリボンから望ましくない同族体を放出して上記で定めた精製アルコール組成物をもたらす。精製アルコール組成物は、圧力チャンバ45の底部に溜まり、そこから液体ポンプ85によって回収槽90の中にポンプ排出することができる。一部の実施形態では、圧力チャンバ45の内壁105は、入口ポート30から出口ポート40に流れるアルコール組成物を螺旋経路で案内することを助ける溝又は輪郭110が付けられる。一般的に、内壁105は、入口液を入口ポート30から出口ポート40まで内壁を数周するように案内するための螺旋溝又は螺旋レース110を含むと考えられる。
【0029】
他の類似の実施形態では、槽25は、凸又は凹(
図5Aを参照されたい)の内部断面輪郭を有することができる。凹面状プロファイルは、入口ポート後の液体流れを緩慢にし、それに、液溜まり調整のために出口ポート40の近くに形成された深いキャビティ又はリザーバが続くことができる場合がある。
【0030】
複数の圧力チャンバ45を中心の真空ポンプ75及び流体ポンプ60、85から並列作動させることができるように、第1の圧力チャンバ45のポート30、35、及び40を他の類似の又は同じ圧力チャンバ45の他のポート30、35、及び40と流体連通状態で接続することができる。この実施形態では、流体を個々に調整すること、又は各それぞれの圧力チャンバ45と液体連通状態で接続した流体マニホルドで調整することができる。
【0031】
一部の実施形態では、液体出口ポート30の液溜まりの乾燥を防止し、最小液溜まりレベルを調整するために浮子バルブ91を使用することができる。作動下では、浮子バルブ91は、十分な液体がチャンバ45に流入した時に液体出口ポート40を開くことができる。液体放出ポンプ85が浮子レベルよりも小さくなるまで液体を低減するほど十分に高速に液体を除去する場合に、浮子バルブ91は、槽45と液体放出ポンプ85の間に圧力勾配を形成して更に別の液体の除去を防止することができる。浮子バルブ91の別の利点は、槽雰囲気が加圧され、液体出口ポート40から流出する清浄な処理された液体の中に戻ることを防止することである。
【0032】
液体出口ポート40の上方の正の体積を維持し、処理流体中で槽雰囲気の減圧を防止するために調整バルブ94にフィードバックを与えるためのセンサ93を使用することができる。センサ93は、光センサ、誘導センサ、又は音響センサ93の場合等には槽液溜まり液(一般的に、真空処理されたアルコール組成物)との直接連通状態にすることができ、又は流体出口ポート40の周りにある音響センサ、超音波センサ、又は熱センサ93が流体レベルを間接的にモニタすることができる。
【0033】
本明細書で議論する液体ポンプ60、85は、隔壁ポンプ又はピストンポンプの場合は可変変位ポンプとすることができ、又はタービンポンプの場合は固定変位ポンプとすることができる。出口ポート35、40と連通している流体ポンプ75、85は、13PSIから15PSIまでの負圧を受ける場合があり、十分な吸引力を与えるためには直列で組み合わせる必要がある場合があり、本明細書に使用する時に、「真空ポンプ」は、単一ポンプユニット又は作動可能に直列接続した複数のポンプユニットを意味することができる。複数の流体ポンプ60、85の間で中間再加圧チャンバ98を使用することができる。
【0034】
本発明の開示の真空ポンプ75は、ピストンポンプ、回転スクリューポンプ、回転翼ポンプのような可変変位ポンプとするか又は多段再生送風機の場合は固定変位ポンプとすることができる。本発明の開示の冷却捕捉も圧力勾配をもたらし、真空ポンプとして機能することができる。冷却捕捉は、電気的に循環させることができ、又はドライアイス又は液体窒素のような極低温媒体を用いて供給することができる。
【0035】
バルブの断面積を調整すること、又はバルブを繰り返し開閉することによって流体流れを調整することができる。自動バルブを空圧又は電気等によって付勢し、デジタル圧力計との作動連通しているPLCによって制御することができる。
【0036】
液体流れを槽45の中に誘導するために、流体入口ノズルを入口ポート30と流体連通状態で接続することができる。液体は、重力経路に沿って真っ直ぐに流れることができ、又は槽内壁を下方に進行する時に螺旋状に流れることができる。螺旋経路は、保持時間を長くし、流体の表面張力を破壊するのに使用することができ、狭まる狭路を有するノズル99が注入前に速度を増大させ、真空状態へのより長い露出に向けて長い保持時間をもたらすことで利益を達成することができる。液滴の形成及び飛散を防止するために、流体入口ノズル30の終端部を槽壁105に十分に近づけて位置付けることができ、槽壁105からの典型的な距離は15センチメートルよりも短く、一般的に、2センチメートルよりも短い。注入中に発生する飛散及び揮発を低減するために、層流入口口を使用することができる。これに代えて、1つ又は複数の液体入口開口部30が、疑似均一液体流れが液体出口ポート40まで槽45の内壁に沿ってシート状に広がることを可能にすることができる。
【0037】
注入の前に液体の蓄積を可能にすることによって圧力調整器と真空槽45の間の圧力降下を低減するために、液体入口本体97を使用することができる(
図5Aを参照されたい)。この場合に、液体は、槽45の上側リップを少なくとも部分的に取り囲む大きいチューブのような容積であるマニホルド97に流入する。入口本体97の断面積は入口バルブ31と比較して大きく、流体が槽45に流入する前に圧力を低減することを可能にし、それによってより低い液頭圧及び遅めの流れを可能にする。別の実施形態では、液体入口本体97は、槽の蓋の中に組み込んでも組み込まない場合がある両側部材を含むことができる。両側分離を用いて迅速な分解を可能にすることができる。
【0038】
一実施形態では、入口本体97は、約55トルに維持され、槽45は、55トル未満に維持される。この場合に、バルク槽容積に流入する前の液体組成をそれ程変化させることなく圧力を実質的に低減することができる。入口本体97は、760トル、700トル、500トル、400トル、200トル、100トル、75トル、又は類似のトルのような圧力に維持することができる。槽45は、50トル、46トル、45トル、42トル、40トル、又は類似のトルのような圧力に維持することができる。一部の実施形態では、槽は、40トルから80トル、例えば、40トルから60トル、40トルから50トル、45トルから65トル、50トルから70トル、50トルから65トル、又は50トルから60トルの圧力に維持される。一部の実施形態では、槽は、開始アルコール組成物のアルコールの体積パーセント(ABV)に基づいて選択される圧に維持される。例えば、槽は、50%ABVアルコール組成物に関して50トルの圧力、40%ABVアルコール組成物に関して40トルから50トルの圧力、30%ABVアルコール組成物に関して55トルから65トルの圧力、20%ABVアルコール組成物に関して55トルから65トルの圧力、10%から20%のABVアルコール組成物に関して50トルから60トルの圧力、又は1%から10%のABVアルコール組成物に関して65トルから75トルの圧力に維持することができる。
【0039】
槽45に流入する前の液体の圧力を徐々に降下させるために別個の圧力降下槽を使用することができる。一部の実施形態では、圧力降下槽を700トル、500トル、400トル、200トル、100トル、75トル、又は類似のトルのような50トル超の中間圧力に維持することが考えられる。
【0040】
別の実施形態(
図5B)では、液体は槽に流入し、トラフ98内に蓄積される。トラフ98が充満すると、液体は、トラフから溢出し、シート状に広がって側壁105を液溜まり49に向けて下ることになる。トラフ98は、液体がリップ99を越流して槽壁105を通して液体シートを形成するまでリップ99によって定められるレベルまで充満することができる。これに代えて、トラフは、側壁とのインタフェースに間隙を含み、液体がトラフの底部から流出する時に側壁に沿って形成される均一な液体シートをもたらすと考えられる「漏出性」トラフをもたらすことができる。
【0041】
槽25は、ステンレス鋼、銅、又はアルミニウムのような金属、ポリカーボナート又はPETGのようなプラスチック、又はその組合せを含むことができる。液体は、槽45の内壁105に直接接触することができ、又は槽壁105の中に位置決めされてそこから隔離され、又はそれに接するように位置決めされるかのいずれかの面ライナに接触することができる。
【0042】
水ジャケット50は、槽内壁と部分被包壁との間で単一熱区画を定めるバルク容積を含むことができ、又は複数の熱区画を含むことができる。多区画冷却部は、ステンレス鋼の場合は分割し又はピロー板の使用によって加工することができる。
【0043】
真空チャンバ45の内壁105は、平滑とするか又は研磨さえすることができ、又は気泡の放出を容易にするために意図的にエッチングし、粗化することができる。平滑な槽壁105は、螺旋周回中に液体流れを容易にすることになり、それに対して粗な面又はエッチング面は、液体が槽壁105に沿って重力軌道を辿る場合に液体流れを遅延させて長い液体保持時間をもたらすことができる。
【0044】
本発明の開示の別の実施形態では、液体流れは、槽壁105に接触することなく入口ポート30から液体溜まり49まで途切れることなく導入される。この場合に、液体は、妨害を受けることなく槽45を通って真っ直ぐに進行し又は落下し、降下中に脱気される。
【0045】
更に別の実施形態(
図6A及び
図6Bを参照されたい)では、圧力槽25は、第1の一般的に、高い端部107に液体入口ポート及びガス出口ポートを有し、反対端109に位置決めされた液体放出口40を有する螺旋チューブの形態を有する。一般的に、液体は、一端107から他方109に重力によって付勢されて進行する。作動時に、ビール(一般的に、炭酸飽充の前の)、ワイン、又は蒸留酒などのような予め決められた分量のアルコール組成物115が圧力チャンバ45の中に入口される。一般的に、アルコール組成物115は、液滴又は薄いシート又はリボンの形態等で圧力チャンバ45に存在する最中に高い面積対体積比に恵まれ、従って、予め決められた望ましくない同族体120をアルコール組成物115からより迅速かつ効率的に放出することができる。圧力チャンバ45内の雰囲気は、溶液115から1又は2以上の望ましくない同族体120の差別的な放出を助けるために雰囲気圧よりも小さい(すなわち、部分真空)。仕込み処理の場合に、液体アルコール組成物115は、圧力チャンバ45の中に充填され、圧力チャンバ45は、気密密封され、チャンバ内の圧力は、望ましい部分真空圧まで低減される。連続流れ処理の場合に、圧力チャンバ45内の圧力は、望ましい部分真空圧に維持され、アルコール組成物115は、チャンバを予め決められた望ましい速度で貫流する。
【0046】
一部の実施形態では、槽壁と槽雰囲気の間で25mmよりも小さい厚み、例えば、15mmよりも小さく、10mmよりも小さく、又は5mmよりも小さい厚みを有する薄い溶液層内に酢酸エチルが急激に形成される。
【0047】
一部の実施形態では、圧力槽でのアルコール組成物に関する目標雰囲気圧での滞留時間は、約60秒以下、約20秒以下、又は約5秒以下である。一部の実施形態では、圧力槽でのアルコール組成物に関する目標雰囲気圧での滞留時間は、5秒から60秒、例えば、5秒から10秒、5秒から15秒、5秒から20秒、10秒から50秒、10秒から40秒、10秒から30秒、15秒から30秒、15秒から25秒、又は15秒から20秒である。
【0048】
一部の実施形態では、流れるアルコール組成物115に関する目標雰囲気圧での滞留時間は、約60秒以下、約20秒以下、又は約5秒以下である。仕込み式組み立て装置の場合に、真空下でのアルコール組成物115に関する滞留時間は長めである場合がある。更に、真空分圧が低下すると、アルコール組成物115の滞留時間も同じく短縮する場合がある。
【0049】
一部の実施形態では、圧力チャンバ内の液体サンプルの温度は、例えば、セ氏-20度からセ氏80度、例えば、セ氏ゼロ度からセ氏60度、セ氏10度からセ氏35度、セ氏20度からセ氏30度、又はセ氏20度からセ氏25度に維持することができる。例えば、一部の実施形態では、圧力チャンバ内の液体サンプルの温度は、セ氏2一度、セ氏22度、セ氏23度、セ氏24度、又はセ氏25度とすることができる。
【0050】
一部の実施形態では、圧力チャンバの温度は、例えば、セ氏-20度からセ氏80度、例えば、セ氏ゼロ度からセ氏60度、セ氏10度からセ氏35度、セ氏20度からセ氏30度、又はセ氏20度からセ氏25度に維持することができる。例えば、一部の実施形態では、圧力チャンバの温度は、セ氏2一度、セ氏22度、セ氏23度、セ氏24度、又はセ氏25度とすることができる。一部の実施形態では、圧力チャンバの温度は、圧力チャンバを少なくとも部分的に包囲して圧力チャンバと熱連通しているジャケット又は類似の温度コントローラを用いて維持される(上述の温度のうちのいずれかに)。一部の実施形態では、このジャケットは水ジャケットである。一部の実施形態では、圧力チャンバ内の液体サンプルの温度は、圧力チャンバが維持される温度と同じである。一部の実施形態では、圧力チャンバ内の液体サンプルの温度は、圧力チャンバが維持される温度と異なる。従って、一部の実施形態では、圧力チャンバの温度(例えば、ジャケット又は類似の温度コントローラの温度)と圧力チャンバ内の液体サンプルの温度の間に温度勾配が存在する場合がある。
【0051】
一部の実施形態では、アルコール組成物115は、真空処理工程を通して更に圧力チャンバ45内の低圧環境への露出を通して液体のままに留まる。放出同族体120が液体から気体に相を変化させる間に、アルコール組成物は液体のままに留まり、すなわち、圧力チャンバでの処理中にアルコール組成物115の蒸留、及び/又は再凝縮又は再構成はない。
【0052】
本発明の開示は、溶液から1又は2以上の望ましくない同族体を優先的に放出するために低温及び低圧での発酵液中の複雑な分子間力を利用する。例えば、従来、標準の温度及び圧力(STP)でのアセトアルデヒドのより高い蒸気圧及びより低い沸点に起因して真空下ではアセトアルデヒドが酢酸エチルの前に除去されることが予想されると考えられる。本明細書に開示する方法の実施形態では、実際にはアセトアルデヒド及びイソブタノールの量は、本発明のシステム内では比較的不変のままに留まり、それに対して酢酸エチルは選択的に除去され、これは、沸点及び蒸気圧を単純に比較することでは理解することができない。本方法は、所与の保持時間に温度及び真空圧に基づいて除去される酢酸エチルの量に対する選択的な制御を可能にする。この選択性は、狭い圧力範囲にわたってしか発生しない。その結果、職人は、望ましい風味プロファイルを発生させるためにアルコール飲料中の酢酸エチルレベルを確実に調整することができる。本発明の開示の態様は、酢酸エチルの除去に関するが、真空処理の圧力及び温度の条件の有利な選択によって他の望ましくない同族体を同じく除去することができる。
【0053】
望ましくない同族体のこの放出は、そのような同族体が雰囲気圧でエタノールに非常に近い沸点を有するが、同じ同族体が、低圧ではエタノールと実質的に異なり、一般的に、それよりも低い沸点を有し、溶液中の複数の同族体の存在が他の同族体の相対的な沸点を生成することを利用する。従って、特定の温度範囲及び圧力範囲での低圧(部分真空)へのアルコール組成物の露出は、エタノールを変わらずにそれと共に溶液中のある一定の望ましいより低い沸点の同族体と共に残しながら酢酸エチルのようなある一定の同族体の差別的放出を可能にする。例えば、
図8は、80標準強度のラム酒サンプルに印加する圧力を変化させてアセトアルデヒド、酢酸エチル、及びイソブタノールの質量百分率を測定した実験の結果を描いている。
図8に示すように、圧力を低減すると(すなわち、高まる真空度を印加すると)、酢酸エチルの質量百分率は低下し、100トルよりも小さくなるまで圧力を低減した時に急勾配の低下が発生した。それとは対照的に、イソブタノール及びアセトアルデヒドの質量百分率は、圧力を低減した時に定常状態に留まり、酢酸エチルに関して観察された圧力を100トルよりも小さくなるまで低減した時に発生する急勾配の低下を示さなかった。これらの結果は意外で予想外であり、すなわち、上記で議論したように、従来、(少なくとも)アセトアルデヒド及び酢酸エチルを含有するアルコール組成物が真空に露出された時に、アセトアルデヒドは、酢酸エチルと比較して高い蒸気圧及び低い沸点を有する(STPでは)ので、酢酸エチルと比較して優先的に除去されると考えられる。それとは逆に、
図8は、反対の結果(アセトアルデヒドに優先する酢酸エチルの放出)を描いている。アセトアルデヒド及びイソブタノールの質量パーセントの見かけの増大は、理論はさておき、酢酸エチルの質量パーセントの急勾配の低下からもたらされた分析アーチファクトと考えられ、理論はさておき、物理的エンティティを反映するとは考えられない。
【0054】
周囲温度での圧力チャンバ内の雰囲気を低圧に維持し、溶液中で酢酸エチルの平衡を再確立することによってアルコール組成物115から酢酸エチルを部分的に除去し、この溶液115のエタノール含有量を実質的に低減することなくまろやか味の官能性改善飲料をもたらすことができる。非限定例として周囲温度での圧力チャンバ内の作動圧力は、アルコールが40%体積の飲料に関して22℃で90トルから15トル、例えば、65トルから15トル、55トルから35トル、45トルから40トル、又は42トルに維持することができる。一部の実施形態では、圧力チャンバ内の作動圧力は、所与の組成に関して官能性最適化されたアルコール飲料をもたらすと決定された圧力又はこの圧力の倍数である。一部の実施形態では、官能性最適化されたアルコール飲料をもたらすと決定された圧力を「ピーク口当たり良さ」をもたらす圧力と呼ぶ。
図10は、アルコールの体積パーセントの関数としてピーク口当たり良さに対応する例示的圧力のグラフを描いている。一部の実施形態では、作動圧力は、
図10を参照すると、ピーク口当たり良さに対応する圧力の約0.5倍から2倍であり、例えば、ピーク口当たり良さに対応する圧力の1倍から1.5倍である。例えば、作動圧力は、40%ABVアルコール組成物に関して42トルから63トルとすることができる。
【0055】
理論はさておき、飲料を低圧に露出することによって(例えば、ピーク口当たり良さをもたらすと決定された圧力に飲料を露出することによって)飲料の官能特性を改善する機能は、酢酸エチルとエタノールとが雰囲気圧で類似の沸点を有するが、40体積%のアルコール組成物に関して例えば20トルから55トルの圧力では酢酸エチルがより低い沸点を有することで異なる沸点を有することでもたらすことができると考えられる。従って、圧力チャンバ45内で20トルから55トルの圧力を維持し、圧力チャンバ内の温度を約22℃に制御することにより、40体積パーセントのアルコール組成物に関して酢酸エチル平衡濃度を優先的にシフトさせることができる。
【0056】
図10に示すように、一部の実施形態では酢酸エチルを選択的に除去することができる(例えば、官能性改善飲料をもたらすために)圧力範囲は、溶液のアルコール含有量がシフトすると非線形的にシフトする場合がある。理論はさておき、アルコールのピーク口当たり良さをもたらす圧力処理は、処理されるアルコール飲料のアルコール含有量の関数であり、同族体組成との関数関係はそれ程ない。この関数の関係は非線形である。室温で24体積パーセントと30体積パーセントの間のアルコール含有量を有する飲料では、58トルと67トルの間の処理圧力が、最もまろやかな味で最も良い官能性均衡の有望な飲料をもたらすことができる。55体積パーセントと65体積パーセントの間のアルコール含有量を有する飲料では、49トルと57トルの間の処理圧力が、最もまろやかな味で最も良い官能性均衡の有望な飲料をもたらすことができる。上述のように、40体積パーセントのアルコールを有する飲料では、40トルから45トルの圧力処理が、最もまろやかな味で最も良い官能性均衡の有望な飲料をもたらすことができる。一部の実施形態では、圧力処理は、呼び圧力を5秒にわたって保持する。
【0057】
理論はさておき、周囲液体環境は、所与の化合物(上述の例では酢酸エチル)を選択的に除去する時に圧力範囲に影響を及ぼすと考えられる。アルコール蒸気環境では、上述の選択的圧力範囲(例えば、約18トルから55トル)は、別の液体から酢酸エチル濃度の均等な平衡シフトをもたらすのに必要とされる範囲よりも低く、更に別の液体から酢酸エチルの均等な平衡シフトをもたらすのに必要とされる範囲よりも高い場合がある。
【0058】
図11に示すように、アルコールが40体積%のウォッカのサンプルを処理する圧力と「切れ味」(「まろやか味」と逆の官能特性)との間の関係は非線形である。言い換えれば、処理されたアルコール組成物の切れ味は、ある点まで作動圧力の低下と共に弱くなるが、作動圧力が更に低減された時に、切れ味は再度強まり始める。
【0059】
以下の例は、本明細書に開示する処理を使用することによって達成されたアルコール組成物からの酢酸エチルの選択的変化を更に明らかにする。ある実験では、ラムのサンプルを雰囲気圧(760トル)に露出し、次に、一連の低圧に露出した。この実験では、圧力を真空ライン内で真空チャンバと流体連通しているが、それにも関わらず真空チャンバから離れた場所にある点で測定した。理論はさておき、真空チャンバ内の圧力は測定圧力よりも高いと考えられる。雰囲気圧及び各低圧への露出の後に、サンプルのエタノール分率をガスクロマトグラフィー質量分析法によって分析し、更に7つの検体(アセトアルデヒド、酢酸エチル、エタノール、イソブタノール、2-メチル-1-ブタノール、酢酸、及びフルフラール)の量(本明細書では「A%」と呼ぶ面積百分率を単位とする)を測定した。更に別の未知の検体も検出し、定量した。この分析では、30m×0.25mmID、0.25μmフィルムのStabilwax円柱(Restek)を用いてガスクロマトグラフィーを実行した。ガスクロマトグラフィー温度プログラムは、35℃を3分間にわたって保持して10℃/分で240℃まで上げるものであり、0.5μLのサンプルを50:1の分割比で注入した。Agilent5975C MSDを用いて質量スペクトルデータを取得した。結果を表1に集計している。酢酸エチルの量は、百万分率(ppm)としても説明する。この例では、ラムサンプル中の酢酸エチルの量(ppmを単位とする)を決定するために、最初に、これらのサンプルに関して既知の酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)のピーク面積を測定する段階を含む上述したものと同じガスクロマトグラフィー質量分析法法を用いてこの既知の酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)のサンプルを分析することによって較正曲線を発生させた。較正曲線は、ピーク面積と酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)の間の相関性を与えた。次に、較正曲線から取得したピーク面積と酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)との間の相関性を当て嵌めることによってラムサンプル中の酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)をラムサンプル中の酢酸エチルに関するピーク面積に基づいて計算した。疑問を回避するために、測定値がサンプルの含水量を無視していることは理解されるものとする。
【0060】
表1.表示圧力での処理に続いてラムサンプル中で検出した成分量
【0061】
表1に示すように、圧力低下時のラムサンプルの処理は、例えば、アセトアルデヒド及びエタノールの量をほぼ一定に留めたままで酢酸エチルの選択的変化をもたらしている。上記で議論したように、この結果は意外で予想外であり、すなわち、従来、(少なくとも)アセトアルデヒド及び酢酸エチルを含有するアルコール組成物が真空に露出された時に、アセトアルデヒドは、酢酸エチルと比較して高い蒸気圧及び低い沸点を有する(STPでは)ので、酢酸エチルと比較して優先的に除去されると考えられる。それとは逆に、表1は反対の結果(アセトアルデヒドよりも大きい酢酸エチルの支配的な放出)を例示している。更に、一部の実施形態では、酢酸エチルよりも低い分子量を有する分子だけではなく酢酸エチルよりも高い分子量を有する分子も含有する組成からバルクパラメータ、例えば、この場合は圧力を調節するだけで酢酸エチルを選択的に除去することができる点で意外かつ予想外である。
図12は、酢酸エチル含有量(ppmを単位とする)対処理圧力の外挿グラフであり、特に約50トルよりも低い圧力低下時の酢酸エチル含有量の急勾配の落ち込みを描いている。
【0062】
追加の実験では、バーボンのサンプルを雰囲気圧(760トル)に露出し、次に、2つの低圧に露出した。この実験では、圧力を真空ライン内で真空チャンバと流体連通しているが、それにも関わらず真空チャンバから離れた場所にある点で測定した。理論はさておき、真空チャンバ内の圧力は測定圧力よりも高いと考えられる。雰囲気圧及び各低圧への露出の後に、サンプルのエタノール分率をガスクロマトグラフィー質量分析法によって分析し、更に7つの検体(アセトアルデヒド、酢酸エチル、エタノール、イソブタノール、2-メチル-1-ブタノール、酢酸、及びフルフラール)の量を測定した(本明細書では「A%」と呼ぶ面積百分率を単位として)。更に別の未知の検体も検出し、定量した。この分析では、30m×0.25mmID、0.25μmフィルムのStabilwax円柱(Restek)を用いてガスクロマトグラフィーを実行した。ガスクロマトグラフィー温度プログラムは、35℃を3分間にわたって保持して10℃/分で240℃まで上げるものであり、0.5μLのサンプルを50:1の分割比で注入した。Agilent5975C MSDを用いて質量スペクトルデータを取得した。結果を表2に集計する。酢酸エチルの量を百万分率(ppm)としても説明する。この例では、バーボンサンプル中の酢酸エチルの量(ppmを単位とする)を決定するために、最初に、これらのサンプルに関して既知の酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)のピーク面積を測定する段階を含む上述したものと同じガスクロマトグラフィー質量分析法法を用いてこの既知の酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)のサンプルを分析することによって較正曲線を発生させた。較正曲線は、ピーク面積と酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)の間の相関性を与えた。次に、較正曲線から取得したピーク面積と酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)の間の相関性を当て嵌めることによってバーボンサンプル中の酢酸エチル濃度(ppmを単位とする)をバーボンサンプル中の酢酸エチルに関するピーク面積に基づいて計算した。疑問を回避するために、測定値がサンプルの含水量を無視していることは理解されるものとする。
【0063】
表2.表示圧力での処理に続いてラムサンプル中で検出した成分量
【0064】
表2に示すように、圧力低下時のバーボンサンプルの処理は、例えば、アセトアルデヒド及びエタノールの量をほぼ一定に留めたまま酢酸エチルの選択的変化をもたらしている。上記で議論したように、この結果は意外で予想外であり、すなわち、従来、(少なくとも)アセトアルデヒド及び酢酸エチルを含有するアルコール組成物が真空に露出された時に、アセトアルデヒドは、酢酸エチルと比較して高い蒸気圧及び低い沸点を有する(STPでは)ので、酢酸エチルと比較して優先的に除去されると考えられる。それとは逆に、表2は反対の結果(アセトアルデヒドよりも大きい酢酸エチルの支配的な放出)を例示している。更に、一部の実施形態では、酢酸エチルよりも低い分子量を有する分子だけではなく酢酸エチルよりも高い分子量を有する分子も含有する組成からバルクパラメータ、例えば、この場合は圧力を調節するだけで酢酸エチルを選択的に除去することができる点で意外かつ予想外である。
図13は、酢酸エチル含有量(ppmを単位とする)対処理圧力の外挿グラフであり、特に約50トルよりも低い圧力低下時の酢酸エチル含有量の急勾配の落ち込みを描いている。
【0065】
アルコール組成物に対する低圧処理の効果は、分留を通じた酢酸エチルの除去ではなく酢酸エチルの平衡濃度のシフトとしてより的確に理解することができるであろう。その結果、低圧での溶液保持時間は、酢酸エチル濃度をゼロまで降下させることができない。溶液は、所与の保持時間にわたって同族体濃度のシフトを受ける可能性があると考えられる。一部の実施形態では、アルコール組成物から少なくとも3分の1の酢酸エチルが優先的に除去されるか、又は少なくとも2分の1が優先的に除去されるか、又は少なくとも3分の2が優先的に除去されるか、又は実質的に全ての酢酸エチルが優先的に除去される。本明細書に使用する時に、酢酸エチルのような望ましくない同族体を優先的に除去することは、溶液の他の組成物の一部、多く、又は全てを実質的に除去することなく溶液から望ましくない同族体の一部又は全てを除去することを意味する。一部の実施形態では、約40トル及びセ氏22度では、アルコールが40体積パーセントのアルコール組成物から初期酢酸エチル含有量のうちの40パーセントと60パーセントの間の含有量が約5秒以内で除去される。
【0066】
一部の実施形態では、瞬時アルコール修復処理は、アルコール組成物中の酢酸エチルの分量をアルコール組成物中の元の酢酸エチル含有量の約50パーセント又はそれ未満まで、例えば、元の酢酸エチル含有量の約45パーセント又はそれ未満、元の酢酸エチル含有量の約40パーセント又はそれ未満、元の酢酸エチル含有量の約35パーセント、元の酢酸エチル含有量の約30パーセント又はそれ未満、元の酢酸エチル含有量の約20パーセント又はそれ未満、元の酢酸エチル含有量の約10パーセント又はそれ未満、又は元の酢酸エチル含有量の約5パーセント又はそれ未満まで低減する。酢酸エチル含有量低減の目標量は、個人の味覚と、3体積パーセントから95体積パーセントのエタノール含有量範囲にわたるアルコール飲料のタイプとを含むいくつかの因子によって決定される。例えば、アルコール飲料は、1体積パーセントから5体積パーセント、3体積パーセントから5体積パーセント、5体積パーセントから10体積パーセント、10体積パーセントから15体積パーセント、10体積パーセントから20体積パーセント、20体積パーセントから30体積パーセント、30体積パーセントから40体積パーセント、40体積パーセントから50体積パーセント、45体積パーセントから50体積パーセント、50体積パーセントから60体積パーセント、55体積パーセントから60体積パーセント、60体積パーセントから70体積パーセント、70体積パーセントから80体積パーセント、80体積パーセントから90体積パーセント、又は90体積パーセントから95体積パーセントのエタノール含有量を有することができる。一部の実施形態では、アルコール組成物の酢酸エチル含有量は、元の含有量の<1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、33と1/3%(すなわち、3分の1)、35%、40%、45%、50%(すなわち、半分)、55%、60%、65%、66と2/3%(すなわち、3分の2)、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%まで低減される。一部の実施形態では、アルコール組成物の酢酸エチル含有量は、元の含有量の20%から80%、例えば、元の含有量の25%から75%又は33と1/3%から66と2/3%に低減される。この段落で説明した実施形態を含むがそれらに限定されない一部の実施形態では、アルコール組成物の酢酸エチル含有量の低減は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法を使用して測定される。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、1ppmから400ppm、例えば、1ppmから350ppm、1ppmから300ppm、1ppmから250ppm、1ppmから200ppm、1ppmから150ppm、1ppmから100ppm、1ppmから75ppm、1ppmから50ppm、又は1ppmから25ppmに低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、10ppmから400ppm、20ppmから380ppm、25ppmから375ppm、30ppmから350ppm、35ppmから325ppm、40ppmから300ppm、45ppmから275ppm、50ppmから250ppm、55ppmから225ppm、60ppmから200ppm、65ppmから175ppm、70ppmから150ppm、75ppmから125ppm、又は80ppmから100ppmに低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、3ppmから300ppmに低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、3ppmから100ppm、3ppmから80ppm、3ppmから70ppm、3ppmから60ppm、又は3ppmから50ppmに低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、15ppmから200ppmに低減することができる。
【0068】
一部の実施形態では、40体積%から60体積%のエタノール含有量を有するアルコール組成物に関して本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、3ppmから250ppm、例えば、5ppmから100ppm、10ppmから250ppm、20ppmから225ppm、10ppmから80ppm、3ppmから100ppm、5ppmから75ppm、又は10ppmから60ppmに低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量を低減し、それによってアルコール組成物に開始アルコール組成物と比較して改善された官能特性を与えることができる。一部の実施形態では、40体積%から60体積%のエタノール含有量を有するアルコール組成物に関して本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、5から100ppmに低減され、それによってアルコール組成物に開始アルコール組成物と比較して改善された官能特性を与えることができる。
【0069】
一部の実施形態では、10体積%から20%のエタノール含有量を有するアルコール組成物に関して本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、3ppmから200ppm、例えば、3ppmから175ppm、3ppmから150ppm、3ppmから75ppm、3ppmから65ppm、3ppmから60ppm、10ppmから200ppm、10ppmから175ppm、10ppmから150ppm、10ppmから125ppm、10ppmから100ppm、10ppmから80ppm、12ppmから100ppm、12ppmから80ppm、12ppmから70ppm、12ppmから60ppm、15ppmから50ppm、15ppmから45ppm、20ppmから60ppm、20ppmから50ppm、25ppmから45ppm、30ppmから60ppm、30ppmから50ppm、又は20ppmから40ppmに低減することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量を低減し、それによってアルコール組成物に開始アルコール組成物と比較して改善された官能特性を与えることができる。一部の実施形態では、10体積%から20体積%のエタノール含有量を有するアルコール組成物に関して本明細書に開示する方法を適用してアルコール組成物の酢酸エチル含有量は、液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に、例えば、10から90ppmに低減され、それによってアルコール組成物に開始アルコール組成物と比較して改善された官能特性を与えることができる。
【0070】
追加の代表的ではあるが非限定的な例として、本明細書に開示する方法を例えば液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に55ppmから60ppmの酢酸エチルの初期含有量を有するラムサンプルに適用して酢酸エチル含有量を各々が液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時にある40ppm未満まで、例えば、35ppm未満、30ppm未満、25ppm未満、10ppm未満、5ppm未満、又は4ppm未満まで低減することができる。例えば、本明細書に開示する方法を液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に55から60ppmの酢酸エチルの初期含有量を有するラムサンプルに適用して酢酸エチル含有量を例えば各々が液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時にある50ppmから60ppm、25ppmから35ppm、15ppmから25ppm、5ppmから15ppm、又は1ppmから5ppmに低減することができる。追加の代表的ではあるが非限定的な例として、本明細書に開示する方法を例えば液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に210から230ppmの酢酸エチルを最初に有するバーボンに適用して、酢酸エチル含有量は、例えば各々が液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時にある100ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、又は25ppm未満まで低減することができる。例えば、本明細書に開示する方法を液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時に200から250ppmの酢酸エチルの初期含有量を有するバーボンサンプルに適用して、酢酸エチル含有量は、例えば各々が液相ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された時にある50ppmから75ppm、55から65ppm、15ppmから35ppm、又は15ppmから25ppmに低減することができる。
【0071】
他の処理温度/圧力/滞留時間の組合せを選択することにより、他の同族体を同じく選択的に除去することができる。一部の実施形態では、温度センサ、圧力センサ、及び/又は化学センサ(又はその組合せ)が、槽25の内部、水ジャケット、及び/又は蒸気出口ポート(又はその組合せ)との熱連通状態で配置される。処理を予め決められたパラメータの範囲及び/又は予め決められた圧力/温度プロファイル内に維持するためのフィードバックに基づく処理制御を提供するために、これらのセンサは、電子コントローラと作動可能に接続することができ、電子コントローラは、ポンプ60、75、85、ポート30、35、40、バルブ70、及び/又は攪拌器95(存在する場合)に同じく接続することができる。一部の実施形態では、複数の望ましくない同族体120を選択的にターゲットにして除去するために、アルコール組成物115の滞留中にチャンバ内の温度及び圧力を変化させることができ、この技術は、仕込み処理に最適に適合する可能性が高いと考えられる。他の実施形態では、1又は2以上の特定の同族体120をターゲットにするために、異なる予め決められた真空分圧及び温度によって特徴付けられた圧力チャンバ45を各々が有する複数の圧力槽25の中に順番にアルコール組成物115を流すことができる。
【0072】
新しい技術を図面及び以上の説明で詳細に例示及び説明したが、これらの例示及び説明は、特徴において限定的ではなく例示的ものと考えられたい。以上の明細書では、最良のモード及び実現可能要件を満足する実施形態を示して説明したことは理解されるものとする。当業者は、上述した実施形態にほぼ無限数の推考上の変形及び修正を難なく加えることができると考えられ、本明細書で全てのそのような変形実施形態を説明するように試ることは実際的ではないと考えられることは理解されるものとする。従って、新しい技術の精神に収まる全ての変形及び修正を保護することを望んでいることは理解されるものとする。
【符号の説明】
【0073】
20 酢酸エチルを優先的に除去するための装置
25 圧力槽
30 液体入口ポート
35 蒸気出口ポート
【国際調査報告】