(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】コーヒー豆を修復するためのシステム及び方法、並びに醸造コーヒー
(51)【国際特許分類】
A23F 5/10 20060101AFI20230823BHJP
A23F 5/16 20060101ALI20230823BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20230823BHJP
A47J 31/60 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A23F5/10
A23F5/16
A23F5/24
A47J31/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506053
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 US2021043269
(87)【国際公開番号】W WO2022026438
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522263323
【氏名又は名称】トレード シークレット チョコレーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ルビン マシュー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B027
4B104
【Fターム(参考)】
4B027FB21
4B027FB24
4B027FC03
4B027FE01
4B027FE06
4B027FK02
4B027FQ03
4B027FQ11
4B027FR03
4B027FR06
4B104AA16
4B104BA01
4B104CA02
4B104CA10
4B104EA30
(57)【要約】
ある分量のコーヒー溶液又は焙煎されたコーヒー豆を圧力制御可能環境内に入れる段階と、圧力制御可能環境の圧力を約75トルまで低減する段階と、圧力制御容器の圧力を第1の予め決められた期間にわたって約75トルに保持する段階と、コーヒー溶液又は焙煎されたコーヒー豆から酢酸エチルのような望ましくない同族体を除去して処理済みコーヒーをもたらす段階と、処理済みコーヒーを圧力制御可能環境から取り出す段階とを含むコーヒー豆又は醸造コーヒーを修復する方法。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒーを修復する方法であって、
a)未処理分量のコーヒーを圧力制御可能環境に入れる段階と、
b)前記圧力制御可能環境の圧力を第1の低圧まで低減する段階と、
c)前記圧力制御可能環境の前記圧力を第1の予め決められた期間にわたって前記第1の低圧に保持する段階と、
d)コーヒー溶液から少なくとも1つの望ましくない同族体を除去して第1の処理された分量のコーヒーをもたらす段階と、
e)前記第1の処理された分量のコーヒーを前記圧力制御可能環境から取り出す段階と、
を備え、
前記第1の低圧は、約60トルと約85トルの間であり、
前記第1の低圧は、±2トル以内に維持される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
f)b)の後でかつe)の前に、前記圧力制御可能環境を冷却する段階、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力制御可能環境は、セ氏約22度に維持され、前記第1の低圧は、約75トルであり、
前記少なくとも1つの望ましくない同族体は、酢酸エチルである、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め決められた期間は、約60秒であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理された分量のコーヒーは、前記未処理分量のコーヒーの前記望ましくない同族体濃度の約2分の1を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理された分量のコーヒーは、前記未処理分量のコーヒーの前記望ましくない同族体濃度の約3分の1を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理された分量のコーヒーは、水と蒸留留分の混合物であり、
前記蒸留留分は、約0.05重量パーセントの望ましくない最高同族体濃度を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理された分量のコーヒーは、水と蒸留留分の混合物であり、
前記蒸留留分は、約0.03重量パーセントの望ましくない最高同族体濃度を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
g)前記未処理分量のコーヒーから少なくとも2つの望ましくない同族体を除去する段階、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
h)前記処理された分量のコーヒーから少なくとも1つの異なる望ましくない同族体を除去して再処理された分量のコーヒーをもたらす段階、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記未処理分量のコーヒーは、複数のコーヒー豆であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力制御可能環境は、
圧力制御可能チャンバを定める圧力槽と、
前記圧力制御可能チャンバを少なくとも部分的に囲んでそれと熱連通している温度調整器と、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体入口ポートと、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通しているガス出口ポートと、
前記ガス出口ポートと流体連通している真空ポンプと、
回収槽と、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体出口ポートと、
を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記温度調整器は、水ジャケットであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コーヒーを修復するための装置であって、
圧力制御可能チャンバを定める圧力槽と、
前記圧力制御可能チャンバを少なくとも部分的に囲んでそれと熱連通している水ジャケットと、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体入口ポートと、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通しているガス出口ポートと、
前記ガス出口ポートと流体連通している真空ポンプと、
回収槽と、
前記圧力制御可能チャンバと流体連通している液体出口ポートと、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記液体入口ポートに作動的に接続されたコーヒー溶液ソースと、
前記液体入口ポートと前記コーヒー溶液ソースとに流体連通している第1の液体ポンプと、
前記液体出口ポートと前記回収槽とに流体連通している第2の液体ポンプと、
を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記液体入口ポートから前記液体出口ポートまで前記圧力制御可能チャンバの周りに複数回巻き付く螺旋レース、
を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記圧力制御可能チャンバに位置決めされた攪拌器、
を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記圧力制御可能チャンバ内に作動的に接続され、圧力センサ、温度センサ、化学センサ、及びその組合せを備える群から選択される少なくとも1つのセンサを更に備えることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項19】
それぞれの前記ポンプ、それぞれの前記ポート、及び前記水ジャケットに作動的に接続された電子コントローラ、
を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記真空ポンプと前記ガス出口ポートの間に作動的に接続され、望ましい真空チャンバ圧力を±2トルの精度範囲内に維持するように作動させることができる第1の圧力制御バルブを更に備えることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
コーヒー溶液から望ましくない同族体を除去する方法であって、
a)圧力槽内に部分真空を確立する段階と、
b)ある分量のコーヒー溶液を圧力槽の中に流し込む段階と、
c)前記コーヒー溶液から少なくとも1つの望ましくない同族体を少なくとも部分的に優先的に取り出して処理済みコーヒー溶液をもたらす段階と、
d)前記処理済みコーヒー溶液を前記圧力槽から抽出する段階であって、該圧力槽にある間は、該コーヒー溶液が液体に留まる前記抽出する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記部分真空は、約65トルと約85トルの間であり、
段階c)は、約5秒にわたってセ氏約22度で実行され、
前記望ましくない同族体は、酢酸エチルである、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
コーヒー組成物から導出された官能性改善飲料であって、
前記官能性改善飲料が、コーヒーを備え、
飲料がそこから導出されたコーヒー含有組成物は、前記官能性改善飲料に見出されない1又は2以上の望ましくない官能特性を保有する、
ことを特徴とする官能性改善飲料。
【請求項24】
前記官能性改善飲料の1又は2以上の望ましい官能特性が、前記官能性改善飲料がそこから導出された前記コーヒー含有組成物の1又は2以上の対応する望ましい官能特性と少なくとも実質的に類似であることを特徴とする請求項23に記載の官能性改善飲料。
【請求項25】
前記官能性改善飲料の1又は2以上の望ましい官能特性が、前記官能性改善飲料がそこから導出された前記コーヒー組成物の1又は2以上の対応する望ましい官能特性よりも実質的に改善されることを特徴とする請求項23に記載の官能性改善飲料。
【請求項26】
前記1又は2以上の望ましくない官能特性は、不快な後味、刺激味の後味、切れ味の後味、溶剤味の後味、渋味の後味、きつい後味、薄味の風味、ピーク及び/又は後味での溶剤味の含み味、口蓋上での無味乾燥的な味、1又は2以上の風味を覆い隠す不快なピーク、切れ味、喉の焼け付き感、苦味、金属味、長引く余韻、頭の動きの誘起、無意識の生理学的反応の誘起、催吐反射の誘起、及びその組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項23から請求項25のいずれか1項に記載の官能性改善飲料。
【請求項27】
コーヒー含有組成物から導出された官能性改善飲料であって、
飲料中の酢酸エチルの分量が、前記官能性改善飲料がそこから導出された前記コーヒー含有組成物に存在する酢酸エチルの分量よりも少ない、
ことを特徴とする官能性改善飲料。
【請求項28】
飲料中の酢酸エチルの前記分量と前記官能性改善飲料がそこから導出された前記コーヒー含有組成物中の酢酸エチルの前記分量は、両方とも液相ガスクロマトグラフィー質量分析法を使用して測定されることを特徴とする請求項27に記載の官能性改善飲料。
【請求項29】
前記官能性改善飲料中の酢酸エチルの前記分量の低減は、前記エタノール含有組成物への部分真空の印加からもたらされることを特徴とする請求項27又は請求項28に記載の官能性改善飲料。
【請求項30】
前記部分真空は、75トルであり、かつ5秒にわたってセ氏22度で印加されることを特徴とする請求項29に記載の官能性改善飲料。
【請求項31】
前記部分真空は、70トルであり、かつ5秒にわたってセ氏22度で印加されることを特徴とする請求項29に記載の官能性改善飲料。
【請求項32】
前記部分真空は、5秒にわたるセ氏22度での45トルであることを特徴とする請求項29に記載の官能性改善飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この特許出願は、2020年7月27日出願の現在特許出願中の米国特許出願第16/939,340号、及び同じく2020年10月16日出願の米国仮特許出願第63/093,045号、2021年3月4日出願の第63/156,588号、2021年3月4日出願の第63/156,517号、及び2021年6月11日出願の第63/209,487号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書に開示する発明は、一般的にコーヒーの分野に関連し、より具体的には、コーヒー豆及びコーヒー溶液から望ましくない風味を除去するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コーヒーは、ほぼ世界中の至る所で500年にわたって貴重な飲み物であり続けている。しかし、コーヒーを発酵させ、焙煎し、コーヒー飲料を醸造することでの数百年もの経験にも関わらず、長引く苦味及び酸味の余韻のない高品質コーヒー飲料を安定して生産することは困難なままである。実際に、焙煎コーヒー飲料の品質は、非常に希少で上質なものから辛うじて飲むことができる程度のものまで特に広範にわたっている。
【0004】
コーヒー豆を焙煎して醸造する技術は、ここ50年で門外不出の奥義から確立された完全な標準技術に進化した。一般的に、多くの場合に生豆と呼ばれる生のコーヒー豆は、望ましい焙煎深さに依存して187℃と282℃の間のコーヒー焙煎対流焙煎器の中に10分から20分にわたって入れられる。焙煎状態は、まろやか味を保ちながらベリー、シトラス、チョコレート、又はフローラルのような様々な特質を有する風味を発現させるように慎重に制御されるが、これらの手法は、多くの場合に相反し、その結果、特徴として苦味又は非常に酸味のある製品がもたらされる。コーヒーのまろやか味は、少量のバッチ処理焙煎及び繊細な豆品質の場合であっても達成することが非常に困難である。
【0005】
豆は、望ましい温度に到達すると、いずれかの残存する豆殻を豆から分離しながら温度を迅速に下げるために冷却台の中に迅速に移し入れられる。十分な温度冷却されると、豆は、金属検出、水分確認、分粒、石抜きのような追加の品質管理段階に入り、最後に袋詰めが続く。
【0006】
コーヒー豆は、袋詰め処理中に計量され、一般的に、サイズが12オンスと5ポンドの間である広範な単層又は多層のタイプのパッケージの中に多くの場合に鮮度を保つために窒素のような不活性ガスの流れの下で詰め込まれる。一部の場合に、焙煎処理中に生成された副産ガスを豆の継続的な放出にわたって受け入れるためにコーヒー袋内に一方向性バルブを配置することができる。
【0007】
焙煎されたコーヒー豆は、低分子量の酸から高分子量の脂質及び蛋白質内にわたる数千種の分子から構成される。コーヒーの風味及び芳香は、焙煎中に硫黄アミノ酸、ヒドロキシアミノ酸、プロリン及びヒドロキシプロリン、トリゴネリン、キナ酸部分、カロテノイド、及び脂質などのメイラード反応、ストレッカー分解、及び分解のような複数の熱活性化機構から生成される。これらの複雑な反応は、カフェインのような不揮発性分子に加えて、硫黄化合物、ピラジン、ピリジン、ピロール、オキサゾール、フラン、アルデヒド及びケトン、アセタート、フェノール、アルコール、及びアミノ酸を含むいくつかの揮発性分子群の生成をもたらす。望ましい風味及び芳香に加えて、焙煎処理は、多くがスクロースのような炭水化物の熱分解及び酸化に起因して形成される蟻酸、酢酸、乳酸、クロロゲン酸、及びコーヒー酸などを含むいくつかの望ましくない酸の形成をもたらすことは公知である。現時点で、コーヒー焙煎器は、2-フランメタノール又は3-メチルブタノールのような望ましい風味分子と、酢酸、蟻酸、又はイソ吉草酸のような望ましくない風味分子との間で妥協しなければならない。
【0008】
コーヒーの特徴的な苦味及び酸味の特質を低減するための追加の手段は、コーヒーを作る際の醸造過程で発生する。醸造の温度及び時間の慎重な管理を用いて、長い醸造サイクルに起因する過抽出又は過度の水温に起因する過剰高温によって引き起こされる不快な苦味の特質を最小にしながら風味が抽出される。低温醸造は、不快な風味を最小にしながら濾濃厚度を高めるように設計された低速の低温抽出処理である。低温醸造技術を使用する場合であっても、コーヒー飲料の不快な風味は消えない。
【0009】
他のコーヒー豆加工技術は、コーヒー豆を焙煎する前又はした後の悪い風味付けに寄与する場合もある。一例として、カフェイン除去は、殆どの場合に未焙煎コーヒー豆からカフェインを選択的に除去するために溶剤抽出を使用する。最も一般的な技術は、バルク細胞構造に浸透してカフェインを選択的に溶解させるための極性非プロトン溶媒として酢酸エチルを使用するものである。
【0010】
飲料品質は、製造業者毎に、並びに所与の製造業者によって生成されるバッチ処理毎に大きく異なる場合がある。この違いの一部は、定まっていない加工に起因し、一部は、原材料のソース及び品質の変化に起因してもたらされる。飲料品質の変化の1つのソースは、焙煎及び風味発現中の副次的効果として発生し、コーヒー飲料に悪い風味に寄与する望ましくない焙煎副生成物の存在である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
コーヒーの風味プロファイル及びまろやか味を改善し、同時にコーヒー飲料の不快及び苦味特質を低減するために焙煎の時間及び温度を調節するための無数の方法が試られてきたが、現在の製品は、依然として望ましい風味の発現と不快な風味の発生との妥協を示している。従って、望ましい芳香及び風味を残しながらコーヒー豆の望ましくない不快及び苦味風味を除去するための手段への要求が残っている。新しい本発明の技術は、この必要性に対処するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の第1の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図1C】線A-A’に沿う
図1Bのシステムの切欠き図である。
【
図1D】内部装着攪拌器を示す
図1Aのシステムの切欠き図である。
【
図1E】2次開口容器がそこに位置決めされた
図1Aのコーヒー修復システムの切欠き断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態によるコーヒー修復システムの切欠き断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態によるコーヒー修復システムの切欠き断面図である。
【
図4A】本発明の第4の実施形態によるコーヒー修復システムの第1の斜視図である。
【
図4B】
図4Aのコーヒー修復システムの第2の斜視図である。
【
図4D】滑らかな内壁を有する
図4Aのコーヒー修復システムの第1の切欠き図である。
【
図4E】レース付き内壁を有する
図4Aのコーヒー修復システムの第2の切欠き図である。
【
図4F】
図4Aのコーヒー修復システムの第3の斜視図である。
【
図5A】凹面内部側壁を有して流体入口本体(マニホルド)を特徴とする
図4Aの実施形態の圧力槽の切欠き図である。
【
図5B】入口ポートに作動的に接続された入口トラフを有する
図4Aの実施形態の圧力槽の切欠き図である。
【
図6A】本発明の第5の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図7】上述の実施形態の作動の根底にあるコーヒーを修復する方法の概略図である。
【
図8】上述の実施形態の作動の根底にあるコーヒー豆を修復する方法の概略図である。
【
図9A】本発明の第5の実施形態によるコーヒー修復システムの前面図である。
【
図9B】本発明の第5の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図9C】閉蓋時の向きにある
図9Bの実施形態の切欠き図である。
【
図10A】本発明の第5の実施形態によるコーヒー修復システムの蓋の上面図である。
【
図10B】本発明の第5の実施形態によるコーヒー修復システムの蓋の斜視図である。
【
図11】二重固定ロックを用いたバッチ工程を示す本発明の第5の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図12A】傾斜充填を示す単一固定シールと回転混合パドルとを使用するバッチ処理チャンバを示す本発明の第6の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図13A】回転放出ロックを使用するバッチ工程を示す本発明の第7の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図14A】傾斜放出を用いたバッチ工程を示す本発明の第8の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図15A】不活性ガス吹き込みを使用する疑似連続傾斜チャンバを示す本発明の第9の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図16A】第1のロックを分注するように位置合わせされた疑似連続チャンバに関する本発明の第10の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図17】出口で不活性ガス洗浄を使用する疑似連続垂直軸線二重ロック回転入口及び出口に関する本発明の第11の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図18】疑似連続水平軸線回転チャンバに関する本発明の第12の実施形態によるコーヒー修復システムの斜視図である。
【
図19】風味/芳香強度の観点での風味均衡の官能(organoleptic)特性を時間の関数として例示するグラフである。
【
図20】焙煎されたコーヒー豆の逆まろやか味を処理圧力の関数として例示するグラフである。
【
図21】コーヒー飲料の逆まろやか味を処理圧力の関数として例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原理の理解を促進する目的で、ここで図面に例示する実施形態を以下で参照し、それを説明するために特定の文言を使用する。それにも関わらず、これらによる本発明の範囲の限定を意図しておらず、本発明が関係する当業者に普通に想起されると考えられる例示するデバイスの変更及び更に別の修正、並びに図面に例示する本発明の原理の追加の用途を見込んでいることは理解されるであろう。
【0014】
本発明の態様は、コーヒー組成から望ましくない同族体を除去する方法、及び低いレベルの望ましくない同族体のみを含むコーヒー組成物(例えば、飲料組成物)に関する。本明細書に使用する時に、「コーヒー組成物」は、コーヒーを含む組成物を意味する。例えば、コーヒー組成物は、コーヒー豆、挽砕されたコーヒー豆、又はコーヒー溶液を含むことができる。本明細書に使用する時に、コーヒー組成物から同族体を「除去すること」は、コーヒー組成物中の同族体の分量を低減することを意味する。本明細書に使用する時に、コーヒー組成物から同族体が「除去される」場合に、同族体の分量を同族体が除去される前のコーヒー組成物中に存在する同族体の量と比較して部分的、実質的、又は完全又は事実上完全に(すなわち、1又は2以上の分析技術によって検出不能な点まで)低減することができることは理解されるものとする。一部の実施形態では、コーヒー組成物から同族体が「除去された」後に、同族体は、コーヒー組成物中で1又は2以上の分析技術によって検出可能なままに留まる。一部の実施形態では、コーヒー組成物から同族体が「除去された」後に、同族体は、コーヒー組成物中で1又は2以上の分析技術によって検出不能である。
【0015】
コーヒー組成物中の望ましくない同族体の一部又は全ての除去は、望ましくない同族体が本質的に毒性を有するので、又は望ましくない同族体が(その現在濃度では)不快又は嫌な官能体験に寄与するので望ましいとすることができる。コーヒー組成物中で見つかる1つの同族体は、酢酸エチル(本明細書では「EA」とも呼ぶ)である。酢酸エチルは、エタノール(アルコール)及び酢酸(酢)のエステル化によって形成されるエステル分子である。酢酸エチルは、両親媒特性を有する極性非プロトン溶剤でもあり、生のコーヒー豆のカフェイン除去に一般的に、使用される。その結果、消費者は、雑味のあるピークと後味での激しい切れ味とをもたらす可能性がある嗅覚受容での酢酸エチル濃度の僅かな変化と、口腔の後部に溶剤味様の焼け付き感をもたらす可能性がある細胞平衡での酢酸エチル濃度の僅かな変化の両方に対して非常に高い感度を有する。実際に、発酵食品及び発酵飲料のピーク及び後味では知覚される「切れ味」特性を左右することは酢酸エチル濃度である。酢酸エチルは、消費中に極性非プロトン溶剤として働きもするので、他の風味分子の検出を助けることができる。その結果、過度に低い酢酸エチル濃度は、他の望ましい風味及び芳香を検出する消費者の機能を抑制する場合がある。
【0016】
食品及び飲料の官能特性を最適化するには、百万分率のレベル又は十億分率ものレベルでの酢酸エチル濃度の適正な均衡が必要である。例えば、非常に低い分量の酢酸エチルは、気持ち良いか又は改善した官能体験をもたらすように特殊G蛋白質結合嗅覚受容体間のある一定の組合せに対して作用し、それに対してより高い濃度の酢酸エチルは、不快又は嫌な官能体験を発生させるようにこれらの同じ受容体に対して作用する。そのような嫌な官能体験は、切れ味、喉の焼け付き感、苦味、金属味、長引く余韻、頭の反り、無意識の身震い、催吐反射の誘起、及びその組合せによって特徴付けることができる。酢酸エチルの低減又は除去は、これらの嫌な官能体験を排除することができ、ある一定レベルまでの酢酸エチル濃度の低減は、コーヒーの既に望ましい官能特性を真に改善することができる。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、ある分量の1又は2以上の望ましくない同族体が除去されたコーヒー組成物として本明細書で定める精製コーヒー組成物を生成するために適用される。例えば、一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、コーヒー組成物の酢酸エチル濃度をガスクロマトグラフィー質量分析法によって液相のコーヒー組成物中で測定して最初の未加工の濃度の10%から97%だけ低減するために適用される。
【0018】
一部の実施形態では、精製コーヒー組成物は、開始コーヒー豆組成物から調製されたコーヒーを含む官能性改善飲料(organoleptically improved beverage)である。すなわち、一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始コーヒー組成物からコーヒーを含む官能性改善飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、飲料を取り出す元であり、官能性改善飲料中には見つからない1又は2以上の望ましくない官能特性を有する開始コーヒー組成物からコーヒー豆溶出物を含むコーヒーを含む官能性改善飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、上述の1又は2以上の望ましくない官能特性は、不快な後味、刺激味の後味、切れ味の後味、溶剤味の後味、渋味の後味、きつい後味、薄味の風味、ピーク及び/又は後味での溶剤味の含み味、口蓋上での無味乾燥的な味、1又は2以上の風味(例えば、1又は2以上の繊細な風味)を覆い隠す不快なピーク、切れ味、喉の焼け付き感、苦味、金属味、長引く余韻、頭の動き、例えば、頭の反り、頭の振り、頭の傾き、又は頭の張りの誘起、無意識の生理学的反応、例えば、身震いの誘起、催吐反射の誘起、及びその組合せから構成される群から選択される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始コーヒー組成物からコーヒー豆溶出物を含む官能性改善飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始コーヒー組成物から、コーヒー溶液を含む官能性改善飲料であって、飲料を取り出す元であるコーヒー含有組成物の少なくとも1つの対応する望ましい官能特性と少なくとも実質的に類似の1又は2以上の望ましい官能特性を有する官能性改善された上記飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、本明細書に開示する方法は、開始コーヒー組成物から、コーヒー溶液を含む官能性改善飲料であって、飲料を取り出す元であるコーヒー組成物の1又は2以上の対応する望ましい官能特性を上回って実質的に改善された1又は2以上の望ましい官能特性を有する官能性改善された上記飲料を生成するために適用される。一部の実施形態では、これらの1又は2以上の望ましい官能特性は、まろやか味の後味、濃厚味の後味、均衡した味の後味、爽快味のピーク、風味豊かな味のピーク、均衡した味のピーク、微妙な彩りの風味を引き立たせる均衡した味のピーク、及びその組合せから構成される群から選択される。
【0019】
多くの場合に、消費者は、風味の過渡的な体験を味、匂い、残留物検出、及び分子分解の対応する知覚機構を辿る「先味」、「ピーク」、及び「後味」を含む3つの独特のフェーズで表している。各フェーズは、特定の知覚源によって支配され、各態様中の風味及び芳香の過小発現と過剰発現は、食品の全体的な望ましさを決定することができる。消費者は、最初に舌の上で食品又は飲料を味わい始め、そこで甘味、酸味、苦味、香味、脂味、及び塩味を含むことができる複数の味覚特質の組合せを体験することができる。味覚特質は、主として舌の上に見られる複数の型及び変形の受容体(一般的に、味蕾と呼ばれる)によって検出される。いくつかの味覚特質は、単一受容体型によって決定付けられるが、苦味のような他の味覚特質は、25個よりも多い受容体変形の組合せ信号を通して知覚することができる。受容体のうちのいずれか1つの過剰発現又は過小発現は、消費者への警報をもたらすことができ、これは、知覚される食品のポジティブ官能特性が低下する。その結果、多くの場合に、消費者は、官能的に望ましい食品を「均衡した」と呼ぶ。
【0020】
消費中に、味覚のほぼ直後に、揮発性の芳香が喉を逆行して嗅覚腔の中に入る時に、多くの場合にピークで表す匂いが続くことができる。揮発性化合物が口腔から嗅覚腔まで進行するのに必要とされる追加の時間が、消費者体験の先味とピークとの間で知覚される時間遅延を発生させる。匂いは、主としてG蛋白質結合嗅覚受容体を通して伝達され、各々が特定の分子に対して高い感度を有するほぼ千個の異なる嗅覚受容体が匂いを受け持つ。嗅覚受容体は、消費者が多くの場合に「エキス」と呼ぶある一定の部類の有機分子である酢酸エチルのようなエステルに対して特に選択性を有する。味覚と臭覚は、その感度では異なる。比較すると、味覚は、一般的に百分率の濃度変化を判別することができ、それに対して臭覚は、十億分率程度の細かい濃度変化を判別することができる。味覚の場合と同様に、食品又は飲料の官能特性は、受容体間の組合せによって体験される匂いの均衡によって決定することができる。いずれか1つの受容体の過剰発現又は過小発現が、食品又は飲料の知覚均衡を低減し、その結果、それ程望ましくない製品がもたらされる。
【0021】
食品及び飲料の後味は、先味又はピークよりも複雑である。後味中に、口腔内の分子は、加水分解及び触媒作用のような様々な機構によって分解し始め、口腔内の熱及び対流によって増加する揮発性化合物は、口腔から蒸発して嗅覚腔に進行し続け、口腔自体の細胞平衡は、食品又は飲料の結果として変化し始める。消費中に口腔を急激に変化させる食品又は飲料は、多くの場合に「刺激味」、「辛味」、又は「切れ味」(例は、辛味ソース、常温保存可能調味料、又は高濃度蒸留酒を含む)として表す後味を有する。低濃度では、これらの望ましくない体験を「雑味」、「きつい」、渋味、又は濃いタンニンなどとして表すことができる。その一方で口蓋上で希薄になる時に味、匂い、及び細胞平衡を維持する食品及び飲料は、多くの場合に「新鮮な味」、「香味」、「切れ味」、「まろやか味」、「繊細な味」、又は「上品な味」の後味を有するといわれ、一般的により望ましいものと見なされる。
【0022】
酢酸エチルの蒸気圧及び知覚濃度は、所与の食品又は飲料での複雑な分子間相互作用に起因して分子濃度に直接対応しない。従って、均衡は、単純に測定及び滴定を通して制御することができない。それとは逆に、適正均衡の食品又は飲料は、酢酸エチル平衡(本明細書では「EAE」とも呼ぶ)を異なる濃度の下で摂動させ、再確立することができる状態を発生させることができる。本発明の技術は、食品又は飲料の複雑な立体障害を使用することによって他の望ましい分子(例えば、エタノール)の濃度を変化させることなくこの目標(異なる濃度の下でコーヒー組成物の酢酸エチル平衡を摂動させて再確立すること)をもたらす。このようにして、初期コーヒー組成物中に存在する酢酸エチル及び他の発酵副生成物から一般的に消費者が体験する切れ味及び雑味の均衡を得られる官能性改善飲料では官能的により好ましい状態に再調整することができる。この処理を通して消費者体験のピークでの匂いは、酢酸エチルと相反しないので、多くの場合により爽快で明確な味として知覚されることになり、後味は、多くの場合に「よりまろやか」でより「上品な」味として知覚され、それによって得られる官能性改善飲料ではより望ましい官能特性を発生させることになる。
【0023】
以上の考えに沿って、本発明の開示の更に別の態様は、コーヒー組成物中の気相酢酸エチル濃度を測定する方法、及びコーヒー組成物の官能特性を最適化することへのこれらの方法の使用に関する。コーヒー、ワイン、ビール、高濃度蒸留酒、並びに天然酢又は蒸留酢のような発酵副生成物のような飲料組成物中の同族体濃度(例えば、酢酸エチル濃度)を測定する従来の方法は、液相サンプルの直接赤外線HPLC及び/又はガスクロマトグラフィー質量分析法を利用する。従来の考え方は、化学組成物が同じか又は少なくとも非常に同様である場合に風味が同じか又は少なくとも非常に同様であるはずだというものである。これらの方法は、飲料中の絶対同族体濃度を測定するには非常に良好であるが、非常に大まかにしか風味に相関しないことが見出されており、コーヒー組成物の官能特性を予想するほど十分な一貫性があることは見出されていない。理論はさておき、相関性及び/又は一貫性の欠如に関する1つの理由は、風味の消費者体験が、多感覚相での複雑な分子間相互作用結果であることにあると考えられる。舌の上の味覚感覚器は、飲料の基本的な風味を決定するのに重要であるが、風味の微妙な彩り及び芳香の複雑さの殆どが嗅覚を通して体験される。消費者風味体験の独特の性質を決定するためのこれらの精緻な測器の利用は、多くの場合に不正確であることが見出される。
【0024】
本発明の態様は、これらの問題に対処する。一部の実施形態では、飲料の嗅覚体験は、閉鎖系条件下で平衡飽和に達した飲料の液相サンプル及び/又は固相サンプルと流体連通している雰囲気から採取された揮発性分子成分の分圧を測定することによって正しく相関させることができる。雰囲気の相平衡は、周囲圧及び周囲温度の下で空気及び/又は不活性ガスの気相環境を用いて確立することができる。一部の実施形態では、サンプル及び/又は雰囲気の温度を飲料の好ましい消費条件に適合するように調節することができる。本方法では、液相及び/又は固相の飲料サンプルでの複雑な分子間相互作用を気相との疑似平衡状態を確立することによって制御することができる。酢酸エチルのような分子組成物の液相濃度は飲料毎に変わる場合があるが、雰囲気相濃度は、比較的一定のままに留まり、従って、飲料の嗅覚体験、従って、官能特性の正確な表現に表すことができる。
【0025】
本発明の方法の実施形態では、1mLから5mLの液体サンプル又は.5グラムから5グラムの固体のコーヒー豆が、サンプル体積の0.5倍から5倍の全体積を有するバイアル内に入れられ、次に、このバイアルは、隔離雰囲気を形成するように別個のキャップで密封される。密封されたサンプルを外乱のないままに放置にすることができ、又はこれに代えて、例えば、5秒から5分の期間にわたって又は雰囲気相とサンプルの間に平衡条件が確立されるまで撹拌することができる。既知の体積の気相の一部分が槽から取り出され、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて分析され、気相の分子の特定の濃度に関して調べられる。これに代えて又はこれに加えて、この既知の体積の気相の一部分は、平衡雰囲気のサンプルとの流体連通状態に置かれた1又は2以上の化学選択性センサを用いて分析される。実時間分析では、化学選択性センサを隔離環境との直接雰囲気連通状態に置くことができ、選択分子の分圧濃度を相関信号及び較正信号を通して検出することができる。一部の実施形態では、化学選択性センサは、酢酸エチルの検出及び測定に特化することができる。そのような酢酸エチル専用センサが採用される時に、コーヒー飲料の官能特性、特にまろやか味の実時間分析を飲料サンプルの上方の気相平衡の酢酸エチル分圧を測定することによって予想することができる。
【0026】
図1A~
図20に示すように、新しい本発明の技術は、低温醸造コーヒー、パーコレータ抽出コーヒー又はドリップ抽出コーヒー、エスプレッソ抽出コーヒー、及び類似の飲料のような本明細書でコーヒー溶液及び/又はコーヒー飲料とも呼ぶ、コーヒー豆(生豆及び/又は焙煎された豆)、コーヒー抽出溶液、及び/又は加工されたコーヒー粉としてコーヒーからある分量の1又は2以上の望ましくない予め決められた同族体を優先的に除去するための装置20に関する。一実施形態では、装置20は、入口ポート30と、蒸気出口ポート35と、出口ポート40とを有する圧力槽25を含み、これらの全てのポートが圧力槽20によって定められる内圧制御可能チャンバ45と流体連通している。入口ポート30及び出口ポート40は、コーヒー飲料の場合は液体ポートとし、コーヒー豆又はコーヒー出し殻の場合は固体生成物ポートとすることができる。システム20は、固体、液体、又はこれらの両方に対して使用するのに適するように構成されたポート30、40を有して液体(抽出液)形態及び/又は固体(豆)形態のコーヒーを処理するのに使用することができるが、簡略化の目的で、以下の例は、液体コーヒー抽出処理に重点を置く。
【0027】
圧力槽25は、圧力チャンバ45を少なくとも部分的に包囲してそれとの熱連通している水ジャケット50又は類似の温度コントローラを含むことができる。一般的に、液体入口ポート30は、パイプ55などを通して液体ポンプ60と流体連通状態で接続される。ポンプ60は、コーヒーソース65と流体連通状態で接続される。一般的に、コーヒーソース65と液体入口ポート30の間であるライン内に少なくとも1つのバルブ70が作動的に接続される。バルブ70は、入口ポート30とポンプ60の間、ポンプ60とコーヒーソース65の間に接続することができ、又はこれら両方の位置に接続することができる。
【0028】
脂質の酸化を最小にし、長期にわたる有効保存寿命を改善するために未挽砕及び挽砕されたコーヒーの保存に向けてバルク真空ストレージが開発されてきたが、真空ストレージは、水分、風味、及び芳香の有意な消失をもたらし、製品品質の劣化をもたらすことは公知である。その結果、真空ストレージは、一般的に、低品質及び低価格の事前挽砕されたコーヒーに使用され、この場合の製品劣化は、消費者の行動では重要な因子ではない。
【0029】
一般的に、蒸気出口ポート35は、真空ポンプ75と流体連通状態で接続され、真空ポンプ75は、回収槽80と流体連通状態で接続される。一般的に、真空ポンプ75は、放出された蒸気を圧力槽25から除去し、回収に向けて回収槽80内に望ましい圧力で誘導するように、更に、圧力制御可能チャンバ45の中に部分真空を確立するように作動する。回収槽80は、冷却トラップ又は圧力制御式槽などとすることができる。一般的に、少なくとも1つのバルブ70が、回収槽80と蒸気出口ポート35の間であるライン内に作動的に接続される。バルブ70は、槽45とポンプ75の間、ポンプ75と出口ポート35の間に接続することができ、又はこれら両方の位置に接続することができる。回収槽80は空であり、生じた蒸留物を回収することができる。
【0030】
特に、液体出口ポート40は、ポンプ85と流体連通状態で接続され、ポンプ85は、コーヒー回収槽90と流体連通状態で接続される。一般的に、少なくとも1つのバルブ70が、コーヒー回収槽90と液体出口ポート40の間であるライン内に作動的に接続される。バルブ70は、槽45とポンプ85の間、ポンプ85と回収槽90の間に接続することができ、又はこれら両方の位置に接続することができる。
【実施例1】
【0031】
図1A~
図1Eに一般的に示すように、上述したアセンブリ20は、バッチ処理単位でコーヒー豆又はコーヒー飲料を処理するように具現化することができる。圧力槽25は、上述したポート30、35、40、並びに熱連通状態で圧力チャンバ45を封入する水ジャケット50又は類似の温度制御機構を含む。圧力チャンバ45の中に、そこに含まれる一定体積のコーヒー飲料の撹拌/振動/発泡を容易にするための攪拌器95が配置される。圧力チャンバ45内の部分真空は、真空ポンプ75の活性化によって確立することができる。
【0032】
図1Eでは、開口容器43に含まれたコーヒー溶液が、圧力チャンバ45内に入れられる。次に、真空蓋46が真空チャンバ45に係合し、それによって真空チャンバ環境が周囲の外部環境から隔離され、真空チャンバ45内の圧力が、蒸気出口ポート35との作動連通している真空ポンプ75の活性化によって低下される。真空チャンバ圧力は、指定レベルに達すると、次に、大気圧まで増大され、蓋46が取り外され、その後に、容器46は、この時点では真空処理されたコーヒー溶液を含む。
【実施例2】
【0033】
図2に示すように、上述したアセンブリ20は、コーヒー豆又はコーヒー溶液を連続流れ処理として処理する実施形態を取ることができる。液体入口ポート30は、スプレーヘッドとして構成され、ソースタンク65からポンプ給送されたコーヒー溶液を既に望ましい部分真空圧までポンプ減圧された圧力チャンバ45の中に噴霧するように配置される。コーヒー溶液の噴霧は、圧力チャンバ45を通って進んで圧力槽25の底部に集まり又は溜まり、そこで出口ポート40を通してポンプ排出することができる。一部の実施形態では、入口ポート30はノズルとして構成され、それに対して他の実施形態では、流入する液体を加速して誘導するための別個のノズルが入口ポート30に作動的に接続される。
【実施例3】
【0034】
図3に示すように、上述したアセンブリ20は、コーヒー溶液を連続流れ処理として処理する別の実施形態を取ることができる。液体入口ポート30は、傾斜板100の一端で空とすることができ、そこでソースタンク65からポンプ給送されたコーヒー溶液が薄層又はシート状に拡散し、傾斜板100の他端に滑り落ちてそこに溜まる。真空ポンプ75が活性化されている時に流れているコーヒー溶液のシートから圧力チャンバ45の内側の部分真空環境の中に同族体を放出することができる。処理されたコーヒー溶液は、圧力チャンバ45から回収槽90の中にポンプ排出することができる。
【実施例4】
【0035】
図4A~
図4Eに示すように、上述したアセンブリ20は、コーヒー溶液を連続流れ処理として処理する更に別の実施形態を取ることができる。槽25は、直径が上部から底部に縮小する円形平面断面(この例では、平面断面プロファイルは、円錐部分の上に被さる円筒形部分を有する)と、シェブロン形の側面断面プロファイル(この例では、側面断面プロファイルは、矩形の上側部分と三角形の下側部分とを有する)とを有するどんぐり形である。一般的に、槽は、圧力制御可能チャンバ内部45を包む水ジャケット外部50を含む。槽25の上部の近くに配置された液体入口ポート30は、タンク65からポンプ給送されたコーヒー溶液を圧力チャンバ45の中に注入し、注入コーヒー溶液は、圧力チャンバ45の内側に沿って螺旋経路を辿り、最終的に底部に溜まるほど十分に高速に移動するように注入時に十分な圧力下にある。一般的に、コーヒー溶液は、槽25を複数回周回する薄いストリーム又はリボンを定め、その間に槽25内の部分真空(槽25と流体連通状態で接続した活性真空ポンプ75によって与えられる)が、このストリーム又はリボンから望ましくない同族体を放出して処理された精製コーヒー溶液をもたらす。精製コーヒー溶液は、圧力チャンバ45の底部に溜まり、そこから液体ポンプ85によって回収槽90の中にポンプ排出することができる。一部の実施形態では、圧力チャンバ45の内壁105は、入口ポート30から出口ポート40に流れるコーヒー溶液を螺旋経路で案内することを助ける溝又は輪郭110が付けられる。一般的に、内壁105は、入口液を入口ポート30から出口ポート40まで内壁を数周するように案内するための螺旋溝又は螺旋レース110を含むと考えられる。
【0036】
他の類似の実施形態では、槽25は、凸又は凹(
図5Aを参照されたい)の内部断面輪郭を有することができる。凹面状プロファイルは、入口ポート後の液体流れを緩慢にし、それに液溜まり調整のために出口ポート40の近くに形成された深いキャビティ又はリザーバが続くことができる場合がある。
【0037】
複数の圧力チャンバ45を中心真空ポンプ75及び流体ポンプ60、85から並列稼働させることができるように、第1の圧力チャンバ45のポート30、35、及び40を他の類似の又は同じ圧力チャンバ45の他のポート30、35、及び40と流体連通状態で接続することができる。この実施形態では、流体を個々に調整すること、又は各それぞれの圧力チャンバ45と液体連通状態で接続した流体マニホルドでは調整することができる。一般的に、チャンバ45は、コーヒー溶液に関して1リットルのチャンバ体積当たり約0.025リットル/分から0.6リットル/分の加工体積を有し、豆に関して1リットルの加工チャンバ体積当たり0.043キログラムから0.38キログラムの豆の加工量を有する。
【0038】
一部の実施形態では、液体出口ポート30の液溜まりの乾燥を防止し、最小液溜まりレベルを調整するために浮子バルブ91を使用することができる。作動下では、浮子バルブ91は、十分な液体がチャンバ45に流入した時に液体出口ポート40を開くことができる。液体放出ポンプ85が浮子レベルよりも小さくなるまで液体を低減するほど十分に高速に液体を除去する場合に、浮子バルブ91は、槽45と液体放出ポンプ85の間に圧力勾配を形成して更に別の液体の除去を防止することができる。浮子バルブ91の別の利点は、槽雰囲気が加圧され、液体出口ポート40から流出する清浄な処理された液体の中に戻ることを防止することである。
【0039】
液体出口ポート40の上方の正の体積を維持し、処理流体中で槽雰囲気の減圧を防止するために調整バルブ94にフィードバックを与えるためのセンサ93を使用することができる。センサ93は、光センサ、誘導センサ、又は音響センサ93の場合等では、槽液溜まり液(一般的に、真空処理されたコーヒー溶液)との直接連通状態にすることができ、又は流体出口ポート40の周りにある音響センサ、超音波センサ、又は熱センサ93が流体レベルを間接的にモニタすることができる。
【0040】
本明細書に説明する液体ポンプ60、85は、隔壁ポンプ又はピストンポンプの場合は可変変位ポンプとすることができ、又はタービンポンプの場合は固定変位ポンプとすることができる。出口ポート35、40と連通している流体ポンプ75、85は、13PSIから15PSIまでの負圧を受ける場合があり、十分な吸引力を与えるためには直列で組み合わせる必要がある場合があり、本明細書に使用する時に、「真空ポンプ」は、単一ポンプユニット又は作動可能に直列接続した複数のポンプユニットを意味することができる。複数の流体ポンプ60、85の間で中間再加圧チャンバ98を使用することができる。
【0041】
本発明の開示の真空ポンプ75は、ピストンポンプ、回転スクリューポンプ、回転翼ポンプのような可変変位ポンプとするか又は多段再生送風機の場合は固定変位ポンプとすることができる。新しい本発明の技術の冷却トラップも圧力勾配をもたらし、真空ポンプとして機能することができる。冷却トラップは、電気的に循環させることができ、又はドライアイス又は液体窒素のような極低温媒体を用いて供給することができる。
【0042】
バルブの断面積を調整すること、又はバルブを繰り返し開閉することによって流体流れを調整することができる。自動バルブは、空圧又は電気等によって活性化され、デジタル圧力計との作動連通しているPLCによって制御することができる。
【0043】
液体流れを槽45の中に誘導するために、流体入口ノズルを入口ポート30と流体連通状態で接続することができる。液体は、重力経路に沿って真っ直ぐに流れることができ、又は槽内壁を下方に進行する時に螺旋状に流れることができる。螺旋経路は、保持時間を長くし、流体の表面張力を破壊するのに使用することができ、狭まる狭路を有するノズル99が注入前に速度を増大させ、真空状態へのより長い露出に向けて長い保持時間をもたらすことで利益を達成することができる。液滴の形成及び飛散を防止するために、流体入口ノズル30の終端部を槽壁105に十分に近づけて位置付けることができ、槽壁105からの典型的な距離は15センチメートルよりも短く、一般的に2センチメートルよりも短い。注入中に発生する飛散及び揮発を低減するために、層流入口口を使用することができる。これに代えて、1つ又は複数の液体入口開口部30が、疑似均一液体流れが液体出口ポート40まで槽45の内壁に沿ってシート状に広がることを可能にすることができる。
【0044】
注入の前に液体の蓄積を可能にすることによって圧力調整器と真空槽45の間の圧力降下を低減するために、液体入口本体97を使用することができる(
図5Aを参照されたい)。この場合に、液体は、槽45の上側リップを少なくとも部分的に取り囲む大きいチューブのような容積であるマニホルド97に流入する。入口本体97の断面積は入口バルブ31と比較して大きく、流体が槽45に流入する前に圧力を部分的に低減することを可能にし、それによってより低い液頭圧及び遅めの流れを可能にする。別の実施形態では、液体入口本体97は、槽の蓋の中に組み込んでも組み込まない場合がある両側部材を含むことができる。両側分離を用いて迅速な分解を可能にすることができる。
【実施例5】
【0045】
図9A~
図13は、個別の予め決められた量のコーヒー豆が、回転エアロックホッパー(
図9A~
図9B)又はトラップドアホッパー(
図10A~
図10C、
図12、及び
図13)などを通して槽の中に導入されることを示している。従来の例の場合と同様に、槽は、真空ソースに接続可能なガス出口ポートを通して圧力制御可能である。
【0046】
一部の実施形態では、槽の内容物が回転可能/ピボット可能出口エアロックホッパー(
図9A~
図9B、
図10A~
図10C、
図13、
図15A~
図15B、
図16A~
図16B、
図17、
図18)又はトラップドアホッパー(
図12、
図14A~
図14C)の中に移され、これらのホッパーは、処理されたコーヒー豆を回収に向けて放出する。
図13の実施形態では、槽の内容物は、回転台チャンバの中に移され、次に、回転台チャンバを回転させて、その内容物を受け入れ容器の中に移すことができ、同時に別のチャンバが、処理される次のバッチ処理のコーヒーを受け入れるために圧力槽との連通状態になる場所に回転され、圧力槽は、バッチ処理毎に部分真空を維持する。
【0047】
図11A~
図11Bは、処理に向けて豆の容器を中に配置することができる圧力槽を覆うヒンジ蓋を有するバッチ処理システムを示している。蓋は、閉鎖して密封することができ、槽及び真空ソースとの連通している真空ポートを通して槽を真空に引くことができる。処理の後に、処理された豆を梱包及び搬送に向けて取り出すことができる。
【0048】
焙煎された豆は多孔性が高いので、上述のバッチ処理実施形態では、コーヒーは、一般的に、予め決められた分量のコーヒー豆として導入されるが、コーヒー生豆としても導入することができる。
【0049】
一部の実施形態では、入口本体97は、95トルのようなより高い圧力に維持され、それに対して槽は、約35トルと90トルの間のようなより低い圧力に維持される。この場合に、バルク槽容積に流入する前の液体組成物をそれ程変化させることなく圧力を実質的に低減することができる。入口本体97は、760トル、700トル、500トル、400トル、200トル、100トル、95トル、又は類似のトルのような圧力に維持することができる。槽45は、一般的に、5秒の期間にわたって80トル、75トル、70トル、65トル、55トル、45トル、又は類似のトルのような圧力に維持することができる。
【0050】
槽45に流入する前の液体の圧力を徐々に降下させるために別個の圧力降下槽を使用することができる。一般的に、圧力降下槽は、90トルのようなより高い圧力に維持されると考えられる。
【0051】
別の実施形態(
図5B)では、液体は槽に流入し、トラフ98内に蓄積される。トラフ98が充満すると、液体は、トラフから溢出し、シート状に広がって側壁105を液溜まり49に向けて下ることになる。トラフ98は、液体がリップ99を越流して槽壁105を通して液体シートを形成するまでリップ99によって定められるレベルまで充満することができる。これに代えて、トラフは、側壁との接合部に間隙を閉じ込め、液体がトラフの底部から流出する時に側壁に沿って形成される均一な液体シートをもたらすと考えられる「漏出性」トラフをもたらすことができる。
【0052】
槽25は、ステンレス鋼、銅、又はアルミニウムのような金属、ポリカーボナート、アクリル、又はPETGのようなプラスチック、又はその組合せを含むことができる。液体は、槽45の内壁105に直接接触することができ、又は槽壁105の中に配置されてそこから隔離され、又はそれに接するように配置されるかのいずれかの面ライナに接触することができる。
【0053】
水ジャケット50は、槽内壁と部分封入壁との間で単一熱ゾーンを定めるバルク容積で構成することができ、又は複数の熱ゾーンを備えることができる。多ゾーン冷却部は、ステンレス鋼の場合はバルクヘッド又はピロー板の使用によって製作することができる。
【0054】
真空チャンバ45の内壁105は、平滑とするか又は研磨さえすることができ、又は気泡の放出を容易にするために意図的にエッチングし、粗面化することができる。平滑な槽壁105は、螺旋周回中に液体流れを容易にすることになり、それに対して粗な面又はエッチング面は、液体が槽壁105に沿って重力軌道を辿る場合に液体流れを遅延させて長い液体保持時間をもたらすことができる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、液体流れは、槽壁105に接触することなく入口ポート30から液体溜まり49まで途切れることなく導入される。この場合に、液体は、妨害を受けることなく槽45を通って真っ直ぐに進行し又は落下し、降下中に脱気される。
【0056】
更に別の実施形態(
図6A及び
図6Bを参照されたい)では、圧力槽25は、第1の一般的に高い端部107に液体入口ポート及びガス出口ポートを有し、反対端109に配置された液体出口40を有する螺旋チューブの形態を有する。一般的に、液体は、一端107から他方109に重力によって付勢されて進行する。
【0057】
作動時に、コーヒー抽出液又はコーヒー豆のようなコーヒー115が圧力チャンバ45の中に注入される。一般的に、コーヒー115は、コーヒー抽出液の液滴又は薄いシート又はリボンの形態等で圧力チャンバ45に存在する最中に高い面積対体積比に恵まれ、従って、予め決められた望ましくない同族体120をアルコール115からより迅速かつ効率的に放出することができる。圧力チャンバ45内の雰囲気は、コーヒー115からの1又は2以上の望ましくない同族体120の優先的な放出を助けるために雰囲気圧よりも小さい(すなわち、部分真空)。本発明のシステム20は、低温及び低圧でのコーヒー豆及びコーヒー溶液中の複雑な分子間力を利用する。更に、酢酸エチルは、高濃度では不快であるが、低濃度では望ましい場合がある。本方法は、除去される酢酸エチルの量の選択的な制御を所与の保持時間にわたる温度及び真空圧に基づいて可能にする。この選択性は、非常に狭い圧力範囲にわたってしか発生しない。その結果、職人は、望ましい風味プロファイルを発生させるためにアルコール飲料中の酢酸エチルレベルを確実に調整することができる。本発明の開示は、酢酸エチルの除去に重点を置くが、真空処理の圧力及び温度の条件の有利な選択によって他の望ましくない同族体を同じく除去することができる。望ましくない同族体120のこの放出は、そのような同族体120が雰囲気圧でエタノールに非常に近い沸点を有するが、同じ同族体120が、低圧ではエタノールと実質的に異なり、一般的に、それよりも低い沸点を有し、溶液中の複数の同族体の存在が他の同族体の相対的な沸点を生成することを利用する。従って、特定の温度範囲及び圧力範囲での低圧(部分真空)へのエタノール溶液の露出は、エタノールを変わらずにそれと共に溶液中のある一定の望ましいより低い沸点の同族体と共に残しながら酢酸エチルのようなある一定の同族体120の優先的な放出を可能にする(
図8を参照されたい)。
【0058】
バッチ処理の場合に、コーヒー溶液115は、圧力チャンバ45の中に充填され、圧力チャンバ45は、気密密封され、チャンバ内の圧力は、望ましい部分真空圧まで低減される。連続流れ処理の場合に、圧力チャンバ45内の圧力は、望ましい部分真空圧に維持され、コーヒー溶液115は、チャンバを予め決められた望ましい速度で貫流する。
【0059】
上述の処理は、コーヒーの風味、酸味、芳香、及び特定の同族体への着目などの望ましい変化を得られるように処理の分圧、温度、最低圧時の時間、及び圧力勾配プロファイル(低下と増大の両方)などを変更することによって微調整することができる。一般的に、槽圧力は、±5トル、より好ましくは±3トル、より好ましくは±2トル、更により好ましくは±1トル、更に好ましくは±0.5トルの精度範囲に調整される。
図10A~
図10Bを参照すると、高精度圧力制御システムが例示されている。高精度圧力制御システムは、耐圧密封部を定める圧力槽への気密接続のための圧力槽蓋を含む。この蓋は、それが圧力槽に強固に接続された時に圧力槽との空圧連通状態での接続に適するように作動的に接続された圧力センサを有する。同様に、蓋は、コーヒーを圧力槽の中に通過させるための入口ポートと、槽と空圧連通状態で作動的に接続され、空気又は洗浄ガスのソースに接続可能な第1の粗/微可変制御バルブと、槽と空圧連通状態で作動的に接続され、真空ソースに接続可能な第2の粗/微可変制御バルブとを含む。これらのバルブは、電子コントローラに接続することができ、一般的に、圧力槽内の1又は2以上の圧力センサ及び/又は温度センサからの信号に応答して電子コントローラからの信号によって付勢することができる。
【0060】
同様に、処理中に槽温度をセ氏約-20度からセ氏約90度の間で変化させることができ、この場合の温度プロファイルは、一般的に、圧力プロファイルと共に変化し、未挽砕の豆に対する処理温度は、抽出液に対する処理温度よりも幾分高い。一般的に、所与の同族体に関して液体温度は、セ氏約-20度からセ氏約80度、より一般的にはセ氏約0度からセ氏約60度、更により一般的にはセ氏約10度からセ氏約35度変化することができ、固体の豆の処理では、約10度と15度の間のより高い類似の範囲オフセットが一般的である。
【0061】
一部の実施形態では、真空システムは、電子コントローラが予め決められた圧力プロファイルに従って槽内の圧力を維持することを可能にする粗真空制御と微真空制御の両方を可能にするバルブアセンブリを含む。圧力は、上記で議論した許容範囲に維持することができ、更に予め決められた圧力プロファイルに従って起動する、立ち下げる、及び/又は一定に保持することができる。同様に、ある期間にわたって予め決められた圧力/温度プロファイルを辿り、維持することができる。
【0062】
一部の実施形態では、圧力槽は、上述のように充填されたコーヒー原料の真空処理のより良好な均一化を可能にする回転及び/又は傾斜するドラムの真空システムとすることができる。槽を傾斜及び/又は回転させることにより、コーヒー原料はより良好に分散され、コーヒー原料の処理がより良好に均一化される。この実施形態は、大規模な(商業的な)分量のコーヒー豆を一度に処理するのに特に有利である。
【0063】
一部の実施形態では、真空処理の後に、処理されたコーヒーは、周囲圧まで戻るように吹き込まれた不活性雰囲気、例えば、窒素又はアルゴンなどに露出される。真空パージに続くそのような不活性雰囲気洗浄は、コーヒー豆にある孔に充満して真空処理後の同族体の意図しない酸化を防止する。
【0064】
上述の例のうちの多くのものでは、目的は、絶対的な同族体レベルと、互いに対する同族体レベルの両方の調節である。これらの例では、圧力チャンバ内の雰囲気を周囲温度で低圧(例えば、60トルから85トル、より一般的には65トルから80トル、更により一般的には65トルから75トル、更に一般的には約70トル)に保持することにより、コーヒー溶液115から酢酸エチルをこの溶液115のコーヒー溶液含有物を実質的に低減することなく実質的に除去することができる。流れるコーヒー溶液115に対して一般的に約70トルである最高遭遇真空度での滞留時間(「処理期間」)は、一般的に、約90秒を超えず、より一般的には約60秒を超えず、更により一般的には約20秒を超えず、更に一般的には約5秒を超えない。バッチ処理式の組み立て装置の場合に、コーヒー(豆及び/又は溶液)115に対する最高真空度での滞留時間は、若干長い場合があるが、依然として数分を超えない。更に、真空分圧が低下する及び/又は温度が上昇すると、コーヒー溶液115の滞留時間は、同じく短縮することができる。一般的に、所与の同族体に関して温度は、セ氏約-20度からセ氏約80度、より一般的にはセ氏約0度からセ氏約60度、更により一般的にはセ氏約10度からセ氏約35度変化する場合がある。
【0065】
これらの実施形態のうちの多くのものでは、コーヒー溶液115は、真空処理工程を通して、更に圧力チャンバ45内の低圧環境への露出を通して液体のままに留まる。放出同族体120が液体から気体に相を変化させる間に、コーヒー溶液は液体のままに留まり、すなわち、圧力チャンバでの処理中にコーヒー溶液115の蒸留、及び/又は再凝縮又は再構成はない。
【0066】
雰囲気圧では、一般的に、望ましくない同族体のうちの多くは、望ましい同族体及びコーヒー溶液自体が有する沸点と非常に近い沸点を有するが、低圧では異なる沸点を有し、有意に低い沸点を示している。圧力チャンバ45内で60トルと85トルの間、一般的には75トル前後の圧力を維持し、圧力チャンバ45内の温度を制御する(一般的にセ氏約22度前後に)ことにより、実質的に全てのコーヒー溶液を圧力チャンバ45内に残しながら酢酸エチルのような望ましくない同族体をコーヒー溶液から優先的に又は実質的に完全に除去することができる。液体環境は、特に酢酸エチル、一般的には他の同族体を選択的に除去することを可能にする圧力範囲に影響を及ぼすことに注意しなければならない。一部の液体環境では、酢酸エチルのような同族体を除去するのにより低い圧力が必要とされ、それに対して他の実施形態では、酢酸エチルはより高い圧力で除去される。
【0067】
一般的に、コーヒー溶液から望ましくない同族体のうちの少なくとも3分の1が除去され、より一般的には少なくとも2分の1が除去され、更により一般的には少なくとも3分の2が除去され、更に一般的には実質的に全ての酢酸エチルが除去される。本明細書に使用する時に、望ましくない同族体を優先的に除去することは、溶液の他の組成物のうちのいずれをも実質的に除去することなく溶液から望ましくない同族体の一部又は全てを除去することを意味する。
【0068】
別の見方をすると、典型的なコーヒー溶液飲料は、0.05パーセントと0.25パーセントの間又はそれよりも多いいずれかの所与の望ましくない同族体を有する。瞬時コーヒー修復処理は、この望ましくない同族体の量を元の望ましくない同族体の含有量の約50パーセント又はそれ未満に低減し、時には約95パーセント程度も多く低減する。ターゲット量は、個人の味とコーヒー飲料のタイプとを含むいくつかの因子によって決定される。良好な経験則は、望ましくない同族体含有量を元の含有量の約2分の1又は40パーセントと60パーセントの間まで低減することである。全ての値は、重量パーセントとして提示したものであり、全ての値が全体のコーヒー溶液のうちのコーヒー溶液の蒸留留分に関連するように含水量を無視している。
【0069】
他の処理温度/圧力/滞留時間の組合せを選択することにより、他の同族体を同じく選択的に除去することができる。一部の実施形態では、温度センサ、圧力センサ、及び/又は化学センサ(又はその組合せ)は、槽25の内部、水ジャケット、及び/又は蒸気出口ポート(又はその組合せ)との熱連通状態で配置される。処理を予め決められたパラメータの範囲及び/又は予め決められた圧力/温度プロファイル内に維持するためのフィードバックに基づく処理制御を提供するために、これらのセンサを電子コントローラと作動可能に接続することができ、電子コントローラをポンプ60、75、85、ポート30、35、40、バルブ70、及び/又は攪拌器95(存在する場合)に同じく接続することができる。一部の実施形態では、複数の望ましくない同族体120を選択的にターゲットにして除去するために、アルコール溶液115の滞留中にチャンバ内の温度及び圧力を変化させることができ、この技術は、バッチ処理に最適に適合する可能性が高いと考えられる。他の実施形態では、1又は2以上の特定の同族体120をターゲットにするために、異なる予め決められた真空分圧及び温度によって特徴付けられた圧力チャンバ45を各々が有する複数の圧力槽25の中に順番にコーヒー溶液115を流すことができる。
【0070】
1つの典型的に望ましくない同族体は酢酸エチルである。酢酸エチルの沸点は、圧力が低下すると共にシフトする。図面に示すように、飲料から酢酸エチルを選択的に除去することを可能にする圧力範囲は、飲料溶液に対する環境圧と共に非線形にシフトする場合がある。圧力チャンバ45内で35トルと90トルの間の圧力を維持し、圧力チャンバ45内の温度をセ氏約22度に制御することにより、コーヒー溶液に関する酢酸エチル平衡濃度を優先的にシフトさせることができる。周囲液体環境が、所与の風味物質、上述の例では酢酸エチルが選択的に除去される圧力範囲に影響を及ぼすことに注意することは興味深い。所与の蒸気環境内で、上述の選択的圧力範囲(約40トルから80トル)は、別の液体から酢酸エチル濃度の均等な平衡シフトをもたらすのに必要とされる範囲よりも低く、更に別の液体から酢酸エチルの均等な平衡シフトをもたらすのに必要とされる範囲よりも高い場合がある。
【0071】
飲料溶液に対する低圧処理の効果は、分留による酢酸エチルの除去ではなく酢酸エチルの平衡濃度のシフトとしてより的確に理解することができると考えられる。その結果、低圧での溶液保持時間は、酢酸エチル濃度をゼロまで降下させることができない。溶液は、所与の保持時間にわたって同族体濃度の僅かなシフトしか受けない可能性があると考えられる。一般的に、飲料溶液から少なくとも3分の1の酢酸エチルが除去され、より一般的には少なくとも2分の1が除去され、更により一般的には少なくとも3分の2が除去され、更に一般的には実質的に全ての酢酸エチルが除去される。本明細書に使用する時に、酢酸エチルのような望ましくない同族体を優先的に除去することは、溶液の他の組成物のいずれをも実質的に除去することなく溶液から望ましくない同族体の一部又は全てを除去することを意味する。
【0072】
瞬時修復処理は、典型的には、酢酸エチルの量を元の酢酸エチル含有量の約50パーセント又はそれ未満まで低減する。ターゲット量は、個人の味とコーヒー飲料のタイプとを含むいくつかの因子によって決定される。良好な経験則は、酢酸エチル含有量を元の含有量の約2分の1又は40パーセントと60パーセントの間まで、一部の場合は元の含有量の約3パーセントまで低減することである。この段落内の全ての値は、重量パーセントとして提示したものである。
【0073】
他の処理温度/圧力/滞留時間の組合せを選択することにより、他の同族体を同じく選択的に除去することができる。一部の実施形態では、温度センサ、圧力センサ、及び/又は化学センサ(又はその組合せ)は、槽25の内部、水ジャケット、及び/又は蒸気出口ポート(又はその組合せ)との熱連通状態で配置される。処理を予め決められたパラメータの範囲及び/又は予め決められた圧力/温度プロファイル内に維持するためのフィードバックに基づく処理制御を提供するために、これらのセンサは、電子コントローラと作動可能に接続することができ、電子コントローラは、ポンプ60、75、85、ポート30、35、40、バルブ70、及び/又は攪拌器95(存在する場合)に同じく接続することができる。一部の実施形態では、複数の望ましくない同族体120を選択的にターゲットにして除去するために、コーヒー溶液115の滞留中にチャンバ内の温度及び圧力を変化させることができ、この技術は、バッチ処理に最適に適合する可能性が高いと考えられる。他の実施形態では、1又は2以上の特定の同族体120をターゲットにするために、異なる予め決められた真空分圧及び温度によって特徴付けられた圧力チャンバ45を各々が有する複数の圧力槽25の中に順番にコーヒー溶液115を流すことができる。
【0074】
新しい技術を図面及び以上の説明で詳細に図示及び説明したが、これらの図示及び説明を特徴において限定ではなく例示と考えられたい。以上の明細書では、最良のモード及び実現可能要件を満足する実施形態を示して説明したことは理解されるものとする。当業者は、上述した実施形態にほぼ無限数の推考上の変形及び修正を難なく加えることができると考えられ、本明細書で全てのそのような変形実施形態を説明するように試ることは実際的ではないと考えられることは理解されるものとする。従って、新しい技術の精神に収まる全ての変形及び修正が保護されることを望むことは理解されるものとする。
【符号の説明】
【0075】
20 装置
25 圧力槽
30 液体入口ポート
35 蒸気出口ポート
【国際調査報告】