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特表2023-536906体内の細胞への分子のパルス電場移行
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】体内の細胞への分子のパルス電場移行
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/32 20060101AFI20230823BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20230823BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61N1/32
A61N1/05
A61B18/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507568
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 US2021044469
(87)【国際公開番号】W WO2022031797
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/061,091
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/061,114
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/209,335
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244964
【氏名又は名称】ガルヴァナイズ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カステルビ,クイム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァチャニ,アルマアン,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ワードストライヒャー,ジョナサン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ガンディオンコ,イシドロ
(72)【発明者】
【氏名】パストーリ,キアラ
(72)【発明者】
【氏名】ニール セカンド,ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ティモシー ジョゼフ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ05
4C053JJ31
4C160KK47
(57)【要約】
分子、特に小分子及び/又は高分子を、身体内の細胞、特にそれらの分子の機能から直接、治療的恩恵を受ける標的細胞に送達するためのデバイス、システム及び方法が提供される。このような場合において、それらの分子は、所望の遺伝子が標的細胞内で所望の効果を発揮できるように、それらの分子をパルス電場の送達に対して所望の時点において所望の濃度でその標的細胞の細胞壁を通って送達するパルス電場(PEF)を用いて標的細胞内に送り込まれる。分子を細胞内に送り込むパルス電場エネルギーは、インビボ及びインサイチュにおいて標的細胞に送達される。したがって、ウイルスを使わずに、又はインビトロエレクトロポレーションなどのエキソビボの方法を用いずに、分子を細胞内に通す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体内の標的組織細胞に分子を移行させるためのシステムであって、
前記身体内の前記標的組織細胞の近くに位置づけられるように構成された少なくとも1つのエネルギー送達体を有するエネルギー送達デバイスと、
前記少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に通じている発生器であって、前記発生器は、前記分子のうちの少なくとも1つを前記標的組織細胞のうちの少なくとも1つの細胞に入り込ませるパルス電場エネルギーを伝達するために前記少なくとも1つのエネルギー送達体に送達可能な電気信号を提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを備えている、発生器と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記電気信号は、一連のパルスを含み、
前記一連のパルスは、正振幅を有する少なくとも1つのパルス及び負振幅を有する少なくとも1つのパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記一連のパルスが一体となって、正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより電荷のバランスを有している、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記一連のパルスが一体となって、前記身体内の筋刺激を回避するほど十分な電荷のバランスを正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより有している、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記一連のパルスが一体となって、前記標的組織細胞のアブレーションを回避するほど十分な電荷のバランスを正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより有している、請求項2から4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気信号は、振幅又はパルス幅が異なる少なくとも1つのパルスを含む一連のパルスを含む、請求項1から5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記電気信号は、一連のパルスを含み、
少なくとも1つのパルスは、10~500Vの範囲内の電圧を有する、請求項1から6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記電気信号は、一連のパルスを含み、
少なくとも1つのパルスは、0.5~200msの範囲内のパルス持続時間を有する、請求項1から7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記電気信号は、10ms~10sの範囲内の少なくとも1つのパルス間ディレイを有する一連のパルスを含む、請求項1から8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記電気信号は、一連のパルスを含み、
少なくとも1つのパルスは、前記身体内で筋刺激を引き起こすのに十分な長さの基本パルス幅を有し、
前記少なくとも1つのパルスは、前記筋刺激を少なくとも減少させるのに十分な区間ディレイを有する複数の区間パルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの区間パルスは、10μsを超えないオン時間を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのパルスは、10ms~10sのディレイによって隔てられた少なくとも2つのパルスを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも2つのパルスは、逆の極性を有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記一連のパルスの中の前記パルスの各々は、前記身体内で筋刺激を引き起こすのに十分な長さの基本パルス幅を有し、
前記一連のパルスの中の前記パルスの各々は、前記筋刺激を少なくとも減少させるのに十分な区間ディレイを有する複数の区間パルスを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記一連のパルスの中の前記パルスが一体となって、正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより電荷のバランスを有している、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記電気信号は、一連の二相性パルスを含み、
少なくとも1つの二相性パルスは、0.01~10μsというサイクル長を有し、
前記少なくとも1つの二相性パルスは、区間ディレイを有する複数の区間パルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記一連の二相性パルスは、パケット間ディレイを有するパケットにグループ化される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記電気信号は、一連のパルスを含み、
前記一連のパルスは、少なくとも1つの高電圧高周波パルスの後、少なくとも1つの低電圧低周波パルスを含み、
高電圧は、100~1000Vの範囲内であり、
高周波は、50ns~1msのパルス幅を有し、
低電圧は、5~100Vの範囲内であり、
低周波は、1ms~50msのパルス幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの低電圧低周波パルスは、逆の極性を有する少なくとも2つの低電圧低周波パルスを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの低電圧低周波パルスは、DC波形を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの高電圧高周波パルスは、二相性波形を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気信号は、一連のパルスを含み、
少なくとも1つのパルスは、少なくとも1つのスパイクを含む、請求項1から21の何れか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記少なくとも1つのパルスは、一次電圧を有し、
前記少なくとも1つのスパイクは、前記一次電圧付近での発振によって形成される複数のスパイクを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記エネルギー送達デバイスは、そこから伸長可能な1つ以上のタインを有するシャフトを備える、請求項1から23の何れか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1つのエネルギー送達体は、かご形電極を備える、請求項1から24の何れか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記エネルギー送達デバイスは、細長いシャフトを備え、
前記少なくとも1つのエネルギー送達体は、少なくとも2つの突起を備え、
各突起は、前記細長いシャフトから半径方向外向きに伸びている、請求項1から25の何れか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記発生器は、前記標的組織細胞の局部領域内において前記身体からの流体の血管外遊出を誘導するコンディショニングエネルギーを伝達するために、前記少なくとも1つのエネルギー送達体に送達可能な別の電気信号を提供するように構成された少なくとも1つの他のエネルギー送達アルゴリズムを備える、請求項1から26の何れか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記局部領域は、前記標的組織細胞の周りの間質腔を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記分子は、前記身体の脈管構造に送達され、
前記誘導された血管外遊出は、前記分子を前記脈管構造から前記局部領域に送達する、請求項27又は28に記載のシステム。
【請求項30】
前記別の電気信号は、複数の単相性パルスを含み、
各パルスは、500マイクロ秒を超える持続時間を有する、請求項27から29の何れか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記別の電気信号は、複数のパルスを含み、
前記複数のパルスのうちの少なくとも1つは、正振幅を有し、
前記複数のパルスのうちの少なくとも1つは、負振幅を有する、請求項27から29の何れか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記システムは、少なくとも1つのセンサを備える、請求項1から31の何れか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記少なくとも1つのセンサは、圧力、温度、インピーダンス、抵抗性、キャパシタンス、導電性、pH、光学特性、コヒーレンス、エコー輝度、蛍光、誘電率、光誘電率及び/又はコンダクタンスをモニタするセンサを含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記発生器は、前記標的組織細胞のうちの少なくとも1つを死滅させるアブレーションエネルギーを伝達するために、前記少なくとも1つのエネルギー送達体に送達可能なアブレーション電気信号を提供するように構成された追加のエネルギー送達アルゴリズムを備える、請求項1から33の何れか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記少なくとも1つの分子は、小分子及び/又は高分子を含む、請求項1から34の何れか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記少なくとも1つの分子は、プラスミド、DNA、合成DNAベクター、RNA、核酸ベースの分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オリゴマー分子、リボザイム、リボ核タンパク質、CRISPR、組換えタンパク質、タンパク質分解標的化キメラ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ若しくは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、細胞挙動の遺伝的変化若しくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料を含む、請求項1から35の何れか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記少なくとも1つの分子は、5kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項1から36の何れか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記少なくとも1つの分子は、10kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記標的組織細胞は、網膜の細胞を含む、請求項1から38の何れか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記標的組織細胞は、骨髄の細胞を含む、請求項1から38の何れか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記標的組織細胞は、肝臓、膵臓、腸及び/又は結腸を含む消化系の細胞を含む、請求項1から38の何れか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記標的組織細胞は、心臓の細胞を含む、請求項1から38の何れか一項に記載のシステム。
【請求項43】
患者の身体内の標的組織細胞を処置するためのシステムであって、前記システムは、
そこから伸びる1つ以上のタインを有するシャフトを備えるエネルギー送達デバイスであって、前記1つ以上のタインは、第1のエネルギー送達体及び第2のエネルギー送達体を備え、前記1つ以上のタインは、前記患者の身体内の前記標的組織細胞の近くに位置づけられるように構成されている、エネルギー送達デバイスと、
前記第1及び第2のエネルギー送達体と電気的に通じている発生器であって、前記発生器は、前記第1のエネルギー送達体に送達可能な第1の電気信号を提供するように構成された少なくとも第1のエネルギー送達アルゴリズム及び前記第2のエネルギー送達体に送達可能な第2の電気信号を提供するように構成された少なくとも第2のエネルギー送達アルゴリズムを備える、発生器と、
を備える、システム。
【請求項44】
前記第1の電気信号は、少なくとも1つの分子を前記標的組織細胞のうちの少なくとも1つに移行させるエネルギーを発生させる、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記第2の電気信号は、少なくとも1つの標的組織細胞のアブレーションを引き起こすエネルギーを発生させる、請求項43又は44に記載のシステム。
【請求項46】
前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つは、前記シャフトの遠位端から前記シャフトの縦方向軸に沿って遠位に伸び、
前記第2のエネルギー送達体は、それに沿って配置されている、請求項43から45の何れか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つは、前記シャフトから半径方向に伸び、
前記第1のエネルギー送達体は、それに沿って配置されている、請求項43から46の何れか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記1つ以上のタインは、前記標的組織細胞の第1の領域のアブレーション及び前記標的組織細胞の第2の領域への分子の移行を可能にするように構成されている、請求項43に記載のシステム。
【請求項49】
前記第2の領域は、前記第1の領域を少なくとも部分的に取り囲んでいる、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
エネルギー送達デバイスは、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つが複数の分子を送達できるように構成されている、請求項43から49の何れか一項に記載のシステム。
【請求項51】
患者の眼の一部分を処置するためのシステムであって、前記システムは、
前記眼の中、前記眼の上、又は前記眼の近くに位置づけられるように構成された少なくとも1つの電極体を有する器具と、
前記少なくとも1つの電極体と電気的に通じている発生器であって、前記発生器は、少なくとも1つの分子を前記眼の細胞に入り込ませるために、前記少なくとも1つの電極体に送達可能なパルス電場エネルギーの電気信号を提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを備える、発生器と、
を備える、システム。
【請求項52】
前記器具は、遠位端を有するシャフトを備え、
前記少なくとも1つの電極体は、前記シャフトの前記遠位端の近くに配置されている、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記シャフトは、前記眼の硝子体腔に挿入可能であるように構成されている、請求項51又は52に記載のシステム。
【請求項54】
前記少なくとも1つの電極体は、前記眼の内部の網膜下ブレブに挿入可能であるように構成されている、請求項51から53の何れか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記少なくとも1つの電極体は、双極対の電極体を含む、請求項51から54の何れか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記少なくとも1つの電極体が単極形式で機能するように、前記少なくとも1つの電極体からある距離に位置づけられるように構成されたリターン電極をさらに備える、請求項51から55の何れか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記リターン電極は、前記眼の外表面に接して又はその近くに位置づけられるように構成されている、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記リターン電極は、少なくとも部分的に眼球後腔に位置づけられるように構成されている、請求項56に記載のシステム。
【請求項59】
前記器具は、流体を送達するための内腔を備える、請求項51から58の何れか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記器具は、前記流体が少なくとも1つの前記電極体の近くに送達可能であるように前記内腔と流体連通した少なくとも1つの出口を備える、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記少なくとも1つの分子は、小分子及び/又は高分子を含む、請求項51から60の何れか一項に記載のシステム。
【請求項62】
前記少なくとも1つの分子は、プラスミド、DNA、合成DNAベクター、RNA、核酸ベースの分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オリゴマー分子、リボザイム、リボ核タンパク質、CRISPR、組換えタンパク質、タンパク質分解標的化キメラ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ若しくは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、細胞挙動の遺伝的変化若しくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料を含む、請求項51から61の何れか一項に記載のシステム。
【請求項63】
前記細胞は、前記眼の網膜内に配置されている、請求項51から62の何れか一項に記載のシステム。
【請求項64】
前記細胞は、前記網膜の杆錐状体層内に配置されている、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記細胞は、前記網膜の網膜色素上皮内に配置されている、請求項63に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、「Enhanced Transfer with Pulsed Electric Fields」と題する2020年8月4日出願の米国仮特許出願第63/061,114号、「Pulsed Electric Fields in the Eye」と題する2020年8月4日出願の米国仮特許出願第63/061,091号、及び「Induced Extravasation by Energy Delivery to Tissue」と題する2021年6月10日出願の米国仮特許出願第63/209,335号に対する優先権及びそれらの利益を主張する。前述のすべての出願の開示は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
[0002] 遺伝子は、細胞の生存、機能及び複製に不可欠な命令のヌクレオチドベースのストレージシステムを作り出している。各遺伝子は、生物内で特定の機能を有する特定のタンパク質をコードするヌクレオチド(DNAの小セグメント)の独特な配列で構成されている。酵素が、RNAの一本鎖分子を構築することによってDNAのセグメントを転写する。RNAは、DNAと同様に、ヌクレオチドの鎖である。この転写されたRNA(すなわち、メッセンジャーRNA又はmRNA)は、細胞の核を離れ、細胞質へと移動し、そこでリボソームがmRNAを翻訳して、DNAが指定するタンパク質を作る。これらのタンパク質は、生命の基本単位である。
【0003】
[0003] しかしながら、DNAの複製過程は、完全ではなく、複製の過程で突然変異が発生する。多くの場合、これらの変異は、取るに足らないものであるか、又はタンパク質形成の有効性を改善又は減少させ得る。しかしながら、時には、遺伝子の変異が、タンパク質の適正な機能を妨げることがある。これは、癌又は遺伝性障害、例えば、血友病、嚢胞性線維症などの多くの疾患を生じさせることがある。この遺伝子変異が、親の性染色体にハードコードされているとき、これらの形質は、遺伝できる。鎌状赤血球貧血など疾患が発生するためには、両親ともに損傷した遺伝子を有していなければならないこともある。また、癌形成につながり得る無制御の細胞分裂をもたらす癌原遺伝子から癌遺伝子への変換などの1本の染色体上の遺伝子の損傷が疾患を引き起こすこともある。
【0004】
[0004] このような突然変異によって影響を受けたタンパク質の生成を修正又は改善する試みとして、最近数十年の間にいくつかの遺伝子療法が開発された。いくつかの場合において、遺伝子療法は、適正なタンパク質が生成されるように正しいバージョンの遺伝子を移植する。例えば、血友病に罹患している患者には、凝固因子をコードする遺伝子が導入された。他の例では、遺伝子療法は、正しいタンパク質の細胞出力を強める特定分子の発現のアップレギュレーションを誘起する(例えば、癌などの疾患を処置するために、細胞が免疫賦活分子を産生するように誘起する)。
【0005】
[0005] しかしながら、細胞への遺伝物質の導入には課題がある。他の多くの生物学的分子及び治療用化合物とは異なり、DNA配列は、細胞膜を通過するように設計されていない。さらに、DNA配列は、細胞内への輸送の代替機構を誘導し得るエンドサイトーシス因子を欠く。ゆえに、すべての遺伝子療法が、コードされた治療用分子(DNA配列、遺伝子、siRNAなど)及び標的化細胞への投与経路という、少なくとも2つの特徴の組み合わせを必要とする。これを達成するためのアプローチがいくつか開発されている。
【0006】
ウイルスベクター
[0006] レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルスをはじめとしたウイルスが、遺伝物質の送達に適している。ウイルスは、その性質から、ウイルス材料を複製するためにウイルスDNA又はウイルスRNAを宿主細胞に送達することに依存しており、したがって、遺伝子療法の非常に有力な候補になっている。ベクターによって遺伝子又は他の遺伝物質を送達することを形質導入と呼び、感染した細胞は、形質導入されたと説明される。
【0007】
[0007] ウイルスを形質導入に利用するときは、ウイルス内の疾患を引き起こす遺伝子を除去し、所望の効果(例えば、糖尿病患者の場合はインスリン産生)をコードする所望の遺伝子で置き換える。これは、ウイルスが宿主に感染するのを可能にする遺伝子をそのまま残すようにして達成される。その所望の遺伝子は、プラスミドを用いてウイルスに導入される。プラスミドは、染色体DNAから物理的に離れた、細胞内の小さな染色体外DNA分子である。プラスミドは、細菌の中にある小さな環状の二本鎖DNA分子として見られるのが最も一般的であるが、遺伝子工学では、人工的に構築されたプラスミドがベクターとして使用される。目的の遺伝子は、通常、制限酵素ライゲーション、ライゲーション非依存的クローニング、Gatewayクローニング及びGibsonアセンブリなどの種々のクローニング方法によってベクターに挿入される。選択されるクローニング方法は、プラスミドに依存する。クローニングプロセスの後、目的の遺伝子を含む再構築されたベクターが生成される。
【0008】
[0008] 場合によっては、プラスミド自体が複製されず、プラスミドが分解するか、宿主細胞が分裂するか又は宿主細胞が死ぬと、時間の経過とともに遺伝子効果の効力は減衰する可能性がある。他の場合では、遺伝物質が、宿主細胞のDNAと一体化する。ウイルスベクターを用いて宿主のDNAに遺伝物質を永続的に組み込むことは、より強力な効果を有するが、既知と未知の両方のリスクを導入する恐れもあり、この遺伝子に問題があった場合、元に戻すことができない。ウイルスの疾患誘発の側面を不活性化することは、コストがかかり、不完全な場合もあり、遺伝子療法患者に感染リスクをもたらす。ウイルスは、標的化された部位の遺伝子療法を越えて移動することもある。ウイルスは通常、2以上のタイプの細胞に感染することができる。したがって、ウイルスベクターを用いて癌患者の身体内に遺伝子を運ぶとき、そのウイルスベクターは、癌細胞のみならず健康な細胞にも感染する可能性がある。同様に、組み込みの際にDNAの誤った位置に新しい遺伝子が挿入される可能性もあり、そのDNAにとって有害な変異又はさらには癌を引き起こす可能性もある。これは、X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)患者に対する臨床試験において生じており、レトロウイルスを用いて造血幹細胞に訂正用の遺伝子を形質導入したところ、20人中4人の患者においてT細胞白血病が発生した。さらに、病原性又はそうでないウイルスを意図的に導入することは、宿主の免疫系を発動させる。免疫系は、形質導入を妨げることによってウイルス遺伝子療法の有効性を低下させることがある。さらに、この誘導は、患者に対して重篤な副作用を引き起こす可能性があり、ウイルスベースの遺伝子療法による死亡もいくつか報告されている。結局のところ、ウイルスベースの遺伝子療法は、コストがかかり、リスクを伴い、特に標的部位の遺伝子療法では有効性の程度がまちまちである。
【0009】
エレクトロポレーション媒介性の遺伝子移入
[0009] エレクトロポレーションは、細胞膜の完全性を乱して懸濁液中の細胞に高分子を取り込ませる方法として、30年以上前から知られている。通常、エレクトロポレーションは、図1Aから図1Bに図示されているようなエレクトロポレーションキュベット10及びエレクトロポレーター12を使用して達成される。図1Aを参照すると、キュベット10は、ガラス又はプラスチックで構成されており、細胞Cの懸濁液を受け入れるためのレザバー14を含む。一対の電極板16a、16bは、レザバー14の反対側に既定の距離だけ離れて配置されている。細胞Cは、キュベット10にピペットで移された培地に懸濁される。次いで、図1Bに図示されているように、キュベット10をエレクトロポレーター12に載置する。エレクトロポレーター12は、高電圧で充電されるコンデンサーを含み、指示されると、コンデンサー内の蓄積電流をキュベット10内の細胞Cのサンプルに向かって放電する。容量放電回路は、ピーク電圧及び指数関数的な減衰波形を有する電気パルスを発生させる。電場強度は、電極板16a、16bの間にかかる電圧であり、電場強度=電圧/距離によって記載することができ、ここで、距離は、電極板16A、16bの間の距離である。電場強度及び細胞のサイズが、各細胞を横断する電圧降下を決定するので、エレクトロポレーションにおける電圧効果を決定する。したがって、通常、細胞型に特有のプロトコルが開発される。同様に、場の強度、時定数及び減衰パルスの幅などのパラメータも、プロトコルごとに変更することができる。したがって、インビトロの環境は、トランスフェクションの条件を非常に正確に制御することを可能にし、高すぎる比率の細胞を殺すことなく、高いレベルの遺伝子送達を可能にする。
【0010】
[0010] 全体的に見て、インビトロにおけるトランスフェクションは、遺伝子の作用の基礎的な理解の確立又はトランスジェニック実験動物モデルの作製に高い信頼性がある。しかしながら、実行可能な臨床上の遺伝子療法を提供することは難しい。培養液中の細胞をトランスフェクトする必要がある場合は、患者の治療につなげる際に追加の工程がいくつか必要となる。ほとんどの場合、アフェレーシスベースのアプローチを用いて遺伝子療法が行われる。これには、採血又は生検による患者の細胞のサンプリングが必要である。次いで、標的とされる細胞集団を単離し、濃縮する。多くの場合、その細胞集団は、かなりの集団サイズのトランスフェクト細胞を生成するために増幅される。細胞の準備が整ったら、それらの細胞に遺伝子療法用の分子をエレクトロポレートする。トランスフェクションの後、それらの細胞は、血液又は標的器官内の標的位置などの、患者における必要な部位に再分配される。これらの工程は、遺伝子療法の送達に実質的な負担、コスト、侵襲性、時間及びリスクを追加する。総じて、これらの数多くの実質的な欠点が、最も有望な治療法の選択肢としてパルス電場ベースの遺伝子療法を広く採用することを妨げている。
【0011】
[0011] 全体的に見て、遺伝子ベースの治療は、幅広い潜在的な用途を提供するが、高コストであり、時間がかかり、リスクを伴い、ある特定の疾患状態にとっては効果がない又は不適切であり、主に遺伝子送達の投与経路が限られていることに起因して、これらの治療の臨床への橋渡しは、まだ始まったばかりである。ゆえに、遺伝子療法の改善が望まれている。このような処置は、安全で、効果的であり、合併症の低減につながるものであるべきである。このような処置は、他のタイプの分子、特に高分子を細胞に移行することを必要とする治療にも適用できるはずである。これらの目的の少なくともいくつかは、本明細書中に記載されるシステム、デバイス及び方法によって達成されるであろう。
【発明の概要】
【0012】
[0012] 身体内の標的組織を処置するための装置、システム及び方法の実施形態が本明細書中に記載される。同様に、本発明は、以下の番号付き条項に関する。
【0013】
[0013] 1.患者の身体内の標的組織細胞に分子を移行させるためのシステムであって、
前記身体内の前記標的組織細胞の近くに位置づけられるように構成された少なくとも1つのエネルギー送達体を有するエネルギー送達デバイスと、
前記少なくとも1つのエネルギー送達体と電気的に通じている発生器であって、前記発生器は、前記分子のうちの少なくとも1つを前記標的組織細胞のうちの少なくとも1つの細胞に入り込ませるパルス電場エネルギーを伝達するために前記少なくとも1つのエネルギー送達体に送達可能な電気信号を提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを備えている、発生器と、
を備える、システム。
【0014】
[0014] 2.前記電気信号が、一連のパルスを含み、前記一連のパルスは、正振幅を有する少なくとも1つのパルス及び負振幅を有する少なくとも1つのパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【0015】
[0015] 3.前記一連のパルスが一体となって、正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより電荷のバランスを有している、請求項2に記載のシステム。
【0016】
[0016] 4.前記一連のパルスが一体となって、前記身体内の筋刺激を回避するほど十分な電荷のバランスを正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより有している、請求項2から3のいずれかに記載のシステム。
【0017】
[0017] 5.前記一連のパルスが一体となって、前記標的組織細胞のアブレーションを回避するほど十分な電荷のバランスを正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより有している、請求項2から4のいずれかに記載のシステム。
【0018】
[0018] 6.前記電気信号が、振幅又はパルス幅が異なる少なくとも1つのパルスを含む一連のパルスを含む、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【0019】
[0019] 7.前記電気信号が、一連のパルスを含み、少なくとも1つのパルスが、10~500Vの範囲内の電圧を有する、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【0020】
[0020] 8.前記電気信号が、一連のパルスを含み、少なくとも1つのパルスが、0.5~200msの範囲内のパルス持続時間を有する、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【0021】
[0021] 9.前記電気信号が、10ms~10sの範囲内の少なくとも1つのパルス間ディレイを有する一連のパルスを含む、請求項1から8のいずれかに記載のシステム。
【0022】
[0022] 10.前記電気信号が、1~100パルスを有する一連のパルスを含む、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【0023】
[0023] 11.前記電気信号が、0.5~500msという持続時間を一体となって有する一連のパルスを含む、請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【0024】
[0024] 12.前記電気信号が、一連のパルスを含み、少なくとも1つのパルスが、前記身体内で筋刺激を引き起こすのに十分な長さの基本パルス幅を有し、前記少なくとも1つのパルスは、前記筋刺激を少なくとも減少させるのに十分な区間ディレイを有する複数の区間パルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【0025】
[0025] 13.前記基本パルス幅が、0.01~50,000μsの範囲内である、請求項12に記載のシステム。
【0026】
[0026] 14.前記基本パルス幅に複数の区間パルス及び区間ディレイが含まれていることに起因して、前記少なくとも1つのパルスが、1~100,000μsというパルス幅を有する、請求項13に記載のシステム。
【0027】
[0027] 15.前記複数の区間パルスが、最大10,000個の区間パルスを含む、請求項14に記載のシステム。
【0028】
[0028] 16.各区間パルスが、0.05~5μsの範囲内の持続時間を有する、請求項15に記載のシステム。
【0029】
[0029] 17.各区間ディレイが、0.001~10μsの範囲内の持続時間を有する、請求項15に記載のシステム。
【0030】
[0030] 18.各区間パルスが、0.05~50μsの範囲内の持続時間を有する、請求項14に記載のシステム。
【0031】
[0031] 19.各区間ディレイが、0.001~100msの範囲内の持続時間を有する、請求項14に記載のシステム。
【0032】
[0032] 20.前記少なくとも1つの区間パルスが、10μsを超えないオン時間を有する、請求項14に記載のシステム。
【0033】
[0033] 21.前記少なくとも1つのパルスが、10ms~10sのディレイによって隔てられた少なくとも2つのパルスを含む、請求項12に記載のシステム。
【0034】
[0034] 22.前記少なくとも2つのパルスが、逆の極性を有する、請求項21に記載のシステム。
【0035】
[0035] 23.前記一連のパルスの中の前記パルスの各々が、前記身体内で筋刺激を引き起こすのに十分な長さの基本パルス幅を有し、前記一連のパルスの中の前記パルスの各々は、前記筋刺激を少なくとも減少させるのに十分な区間ディレイを有する複数の区間パルスを含む、請求項22に記載のシステム。
【0036】
[0036] 24.前記一連のパルスの中の前記パルスが一体となって、正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより電荷のバランスを有している、請求項23に記載のシステム。
【0037】
[0037] 25.前記少なくとも1つのパルスが、10~250Vの範囲内の電圧を有する、請求項12から24のいずれかに記載のシステム。
【0038】
[0038] 26.前記電気信号が、一連の二相性パルスを含み、少なくとも1つの二相性パルスが、0.01~10μsというサイクル長を有し、前記少なくとも1つの二相性パルスは、区間ディレイを有する複数の区間パルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【0039】
[0039] 27.前記複数の区間パルスが、最大10,000個の区間パルスを含む、請求項26に記載のシステム。
【0040】
[0040] 28.各区間パルスが、0.004~0.4μsの範囲内の持続時間を有する、請求項27に記載のシステム。
【0041】
[0041] 29.各区間ディレイが、10~10,000μsの範囲内の持続時間を有する、請求項28に記載のシステム。
【0042】
[0042] 30.各区間パルスが、0.05~50μsの範囲内の持続時間を有する、請求項28に記載のシステム。
【0043】
[0043] 31.各区間ディレイが、0.001~100msの範囲内の持続時間を有する、請求項26に記載のシステム。
【0044】
[0044] 32.前記少なくとも1つの区間パルスが、10μsを超えないオン時間を有する、請求項26に記載のシステム。
【0045】
[0045] 33.前記一連の二相性パルスが、最大1000サイクルを含む、請求項26に記載のシステム。
【0046】
[0046] 34.前記一連の二相性パルスが、パケット間ディレイを有するパケットにグループ化される、請求項26から33のいずれかに記載のシステム。
【0047】
[0047] 35.前記少なくとも1つの二相性パルスが、500~2000Vの範囲内の電圧を有する、請求項26から34のいずれかに記載のシステム。
【0048】
[0048] 36.前記電気信号が、一連のパルスを含み、前記一連のパルスは、少なくとも1つの高電圧高周波パルスの後、少なくとも1つの低電圧低周波パルスを含み、高電圧は、100~1000Vの範囲内であり、高周波は、50ns~1msのパルス幅を有し、低電圧は、5~100Vの範囲内であり、低周波は、1ms~50msのパルス幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【0049】
[0049] 37.前記少なくとも1つの低電圧低周波パルスが、逆の極性を有する少なくとも2つの低電圧低周波パルスを含む、請求項36に記載のシステム。
【0050】
[0050] 38.前記少なくとも1つの低電圧低周波パルスが、DC波形を含む、請求項36に記載のシステム。
【0051】
[0051] 39.前記少なくとも1つの高電圧高周波パルスが、二相性波形を含む、請求項36に記載のシステム。
【0052】
[0052] 40.前記少なくとも1つの高電圧高周波パルスが、前記少なくとも1つの低電圧低周波パルスと100μs~2秒のディレイによって隔てられている、請求項36に記載のシステム。
【0053】
[0053] 41.前記電気信号が、一連のパルスを含み、少なくとも1つのパルスが、少なくとも1つのスパイクを含む、請求項1から40のいずれかに記載のシステム。
【0054】
[0054] 42.前記少なくとも1つのパルスが、一次電圧を有し、前記少なくとも1つのスパイクが、前記一次電圧付近での発振によって形成される複数のスパイクを含む、請求項41に記載のシステム。
【0055】
[0055] 43.前記発振が、前記一次電圧の1~25%の範囲内である、請求項42に記載のシステム。
【0056】
[0056] 44.前記発振が、前記一次電圧の1~10%の範囲内である、請求項43に記載のシステム。
【0057】
[0057] 45.前記少なくとも1つのパルスが、前記少なくとも1つのパルスに沿って均等に分布されていない複数のスパイクを含む、請求項41から44のいずれかに記載のシステム。
【0058】
[0058] 46.前記一連のパルスが、二相性である、請求項41から45のいずれかに記載のシステム。
【0059】
[0059] 47.前記エネルギー送達デバイスが、そこから伸長可能な1つ以上のタインを有するシャフトを備える、請求項1から46のいずれかに記載のシステム。
【0060】
[0060] 48.前記エネルギー送達デバイスが、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つを通じて前記分子を送達するように構成されている、請求項47に記載のシステム。
【0061】
[0061] 49.前記エネルギー送達デバイスが、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つを通じて、前記1つ以上のタインの少なくとも別のタインと異なる分子を送達するように構成されている、請求項48に記載のシステム。
【0062】
[0062] 50.前記少なくとも1つのエネルギー送達体が、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つを備える、請求項47から49のいずれかに記載のシステム。
【0063】
[0063] 51.前記少なくとも1つのエネルギー送達体が、個別に通電可能な前記1つ以上のタインのうちの少なくとも2つを備える、請求項50に記載のシステム。
【0064】
[0064] 52.前記少なくとも1つのエネルギー送達体が、かご形電極を備える、請求項1から51のいずれかに記載のシステム。
【0065】
[0065] 53.前記エネルギー送達デバイスが、細長いシャフトを備え、前記少なくとも1つのエネルギー送達体が、少なくとも2つの突起を備え、各突起は、前記細長いシャフトから半径方向外向きに伸びている、請求項1から52のいずれかに記載のシステム。
【0066】
[0066] 54.前記発生器が、前記標的組織細胞の局部領域内において前記身体からの流体の血管外遊出を誘導するコンディショニングエネルギーを伝達するために、前記少なくとも1つのエネルギー送達体に送達可能な別の電気信号を提供するように構成された少なくとも1つの他のエネルギー送達アルゴリズムを備える、請求項1から53のいずれかに記載のシステム。
【0067】
[0067] 55.前記血管外遊出が、前記患者の身体の脈管構造からのものである、請求項54に記載のシステム。
【0068】
[0068] 56.前記局部領域が、前記標的組織細胞の周りの間質腔を含む、請求項54から55のいずれかのようなシステム。
【0069】
[0069] 57.前記分子が、前記身体の脈管構造に送達され、前記誘導された血管外遊出が、前記分子を前記脈管構造から前記局部領域に送達する、請求項54から56のいずれかに記載のシステム。
【0070】
[0070] 58.前記別の電気信号が、複数の単相性パルスを含み、各パルスは、500マイクロ秒を超える持続時間を有する、請求項54から57のいずれかに記載のシステム。
【0071】
[0071] 59.前記別の電気信号が、複数のパルスを含み、前記複数のパルスのうちの少なくとも1つは、正振幅を有し、前記複数のパルスのうちの少なくとも1つは、負振幅を有する、請求項54から57のいずれかに記載のシステム。
【0072】
[0072] 60.前記複数のパルスの各々が、500マイクロ秒を超える持続時間を有する、請求項59に記載のシステム。
【0073】
[0073] 61.前記エネルギー送達デバイスが、少なくとも1つの圧力センサを備える、請求項54から60のいずれかに記載のシステム。
【0074】
[0074] 62.前記少なくとも1つの圧力センサが、前記血管外遊出の影響をモニタするように及びセンサのフィードバックデータを提供するように構成されている、請求項61に記載のシステム。
【0075】
[0075] 63.前記システムが、前記センサのフィードバックデータ又は前記センサのフィードバックデータに基づく情報をユーザーに提供する機構を備える、請求項62に記載のシステム。
【0076】
[0076] 64.前記発生器が、血管外遊出の誘引を調整するエネルギーを伝達するために、前記センサのフィードバックデータに基づいて前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを改変する又は異なるエネルギー送達アルゴリズムに切り替えるように構成されたプロセッサを備える、請求項62に記載のシステム。
【0077】
[0077] 65.前記システムが、少なくとも1つのセンサを備える、請求項1から60のいずれかに記載のシステム。
【0078】
[0078] 66.前記少なくとも1つのセンサが、圧力、温度、インピーダンス、抵抗性、キャパシタンス、導電性、pH、光学特性、コヒーレンス、エコー輝度、蛍光、誘電率、光誘電率(light permittivity)及び/又はコンダクタンスをモニタするセンサを含む、請求項65に記載のシステム。
【0079】
[0079] 67.前記発生器が、前記標的組織細胞のうちの少なくとも1つを死滅させるアブレーションエネルギーを伝達するために、前記少なくとも1つのエネルギー送達体に送達可能なアブレーション電気信号を提供するように構成された追加のエネルギー送達アルゴリズムを備える、請求項1から66のいずれかに記載のシステム。
【0080】
[0080] 68.前記少なくとも1つの分子が、小分子及び/又は高分子を含む、請求項1から67のいずれかに記載のシステム。
【0081】
[0081] 69.前記少なくとも1つの分子が、プラスミド、DNA、合成DNAベクター、RNA、核酸ベースの分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オリゴマー分子、リボザイム、リボ核タンパク質、CRISPR、組換えタンパク質、タンパク質分解標的化キメラ、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、細胞挙動の遺伝的変化もしくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料を含む、請求項1から68のいずれかに記載のシステム。
【0082】
[0082] 70.前記少なくとも1つの分子が、5kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項1から69のいずれかに記載のシステム。
【0083】
[0083] 71.前記少なくとも1つの分子が、10kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項70に記載のシステム。
【0084】
[0084] 72.前記標的組織細胞が、網膜の細胞を含む、請求項1から71のいずれかに記載のシステム。
【0085】
[0085] 73.前記網膜の細胞が、杆錐状体層の細胞及び/又は網膜色素上皮の細胞を含む、請求項72に記載のシステム。
【0086】
[0086] 74.前記標的組織細胞が、骨髄の細胞を含む、請求項1から71のいずれかに記載のシステム。
【0087】
[0087] 75.前記標的組織細胞が、肝臓、膵臓、腸及び/又は結腸を含む消化系の細胞を含む、請求項1から71のいずれかに記載のシステム。
【0088】
[0088] 76.前記標的組織細胞が、心臓の細胞を含む、請求項1から71のいずれかに記載のシステム。
【0089】
[0089] 77.患者の身体内の標的組織細胞を処置するためのシステムであって、前記システムは、
そこから伸びる1つ以上のタインを有するシャフトを備えるエネルギー送達デバイスであって、前記1つ以上のタインは、第1のエネルギー送達体及び第2のエネルギー送達体を備え、前記1つ以上のタインは、前記患者の身体内の前記標的組織細胞の近くに位置づけられるように構成されている、エネルギー送達デバイス、及び
前記第1及び第2のエネルギー送達体と電気的に通じている発生器であって、前記発生器は、前記第1のエネルギー送達体に送達可能な第1の電気信号を提供するように構成された少なくとも第1のエネルギー送達アルゴリズム及び前記第2のエネルギー送達体に送達可能な第2の電気信号を提供するように構成された少なくとも第2のエネルギー送達アルゴリズムを備える、発生器
を備える、システム。
【0090】
[0090] 78.前記第1の電気信号が、少なくとも1つの分子を前記標的組織細胞のうちの少なくとも1つに移行させるエネルギーを発生させる、請求項77に記載のシステム。
【0091】
[0091] 79.前記第2の電気信号が、少なくとも1つの標的組織細胞のアブレーションを引き起こすエネルギーを発生させる、請求項77から78のいずれかに記載のシステム。
【0092】
[0092] 80.前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つが、前記シャフトの遠位端から前記シャフトの長手方向軸に沿って遠位に伸び、前記第2のエネルギー送達体が、それに沿って配置されている、請求項77から79のいずれかに記載のシステム。
【0093】
[0093] 81.前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つが、前記シャフトから半径方向に伸び、前記第1のエネルギー送達体が、それに沿って配置されている、請求項77から80のいずれかに記載のシステム。
【0094】
[0094] 82.前記1つ以上のタインが、前記標的組織細胞の第1の領域のアブレーション及び前記標的組織細胞の第2の領域への分子の移行を可能にするように構成されている、請求項77に記載のシステム。
【0095】
[0095] 83.前記第2の領域が、前記第1の領域を少なくとも部分的に取り囲んでいる、請求項82に記載のシステム。
【0096】
[0096] 84.エネルギー送達デバイスが、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つが複数の分子を送達できるように構成されている、請求項77から83のいずれかに記載のシステム。
【0097】
[0097] 85.前記エネルギー送達デバイスが、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つを通じて、前記1つ以上のタインの少なくとも別のタインと異なる分子を送達するように構成されている、請求項84に記載のシステム。
【0098】
[0098] 86.前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つが、調整可能に伸長可能である、請求項77から85のいずれかに記載のシステム。
【0099】
[0099] 87.患者の身体内の標的組織の細胞に分子を移行させる方法であって、
前記患者の身体に複数の分子を送達する工程、
エネルギー送達デバイスの少なくとも1つのエネルギー送達体を、そこから送達されるパルス電場エネルギーを受け取るほど十分な標的組織の範囲内に位置づける工程、及び
前記分子のうちの少なくとも1つを前記標的組織の細胞のうちの少なくとも1つに入り込ませる様式で前記パルス電場エネルギーを前記標的組織に伝達するために前記パルス電場エネルギーを前記少なくとも1つのエネルギー送達体に送達する工程
を含む、方法。
【0100】
[00100] 88.前記標的組織細胞が、前記分子の機能から直接、治療的恩恵を受ける、請求項87に記載の方法。
【0101】
[00101] 89.直接の治療的恩恵が、障害の処置を含む、請求項88に記載の方法。
【0102】
[00102] 90.前記障害が、遺伝性障害を含む、請求項89に記載の方法。
【0103】
[00103] 91.前記少なくとも1つの分子が、小分子及び/又は高分子を含む、請求項87から90のいずれかに記載の方法。
【0104】
[00104] 92.前記少なくとも1つの分子が、プラスミド、DNA、合成DNAベクター、RNA、核酸ベースの分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オリゴマー分子、リボザイム、リボ核タンパク質、CRISPR、組換えタンパク質、タンパク質分解標的化キメラ、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、細胞挙動の遺伝的変化もしくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料を含む、請求項87から91のいずれかに記載の方法。
【0105】
[00105] 93.前記少なくとも1つの分子が、5kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項87から92のいずれかに記載の方法。
【0106】
[00106] 94.前記少なくとも1つの分子が、10kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項93に記載の方法。
【0107】
[00107] 95.前記身体に前記複数の分子を送達する工程が、前記分子を前記身体の静脈内に送達することを含む、請求項87から94のいずれかに記載の方法。
【0108】
[00108] 96.前記身体に前記複数の分子を送達する工程が、前記分子を前記身体の静脈内に及び前記標的組織に局所的に送達することを含む、請求項87から94に記載の方法。
【0109】
[00109] 97.前記複数の分子を送達する工程が、少なくとも、前記エネルギーを送達する前に行われる、請求項87から96のいずれかに記載の方法。
【0110】
[00110] 98.前記複数の分子を送達する工程が、複数の分子を標的組織内又は標的組織の近くの複数の位置に送達することを含む、請求項87から97のいずれかに記載の方法。
【0111】
[00111] 99.前記複数の位置が、前記標的組織の少なくとも1つの細胞の0.5mm~5cm以内である、請求項98に記載の方法。
【0112】
[00112] 100.前記複数の分子を複数の位置に送達することが、種々の濃度の分子溶液、種々の体積の分子溶液及び/又は種々のタイプの分子溶液を前記複数の位置のうちの1つ以上に送達することを含む、請求項98から99のいずれかに記載の方法。
【0113】
[00113] 101.前記複数の分子を複数の位置に送達することが、前記複数の位置のうちの少なくとも1つに、前記複数の位置の別の位置と異なる分子を送達することを含む、請求項87から99のいずれかに記載の方法。
【0114】
[00114] 102.前記エネルギー送達デバイスが、そこから伸長可能な1つ以上のタインを有するシャフトを備え、前記複数の分子を複数の位置に送達することが、前記1つ以上のタインのうちの1つ以上を通じて分子を送達することによって達成される、請求項87から101のいずれかに記載の方法。
【0115】
[00115] 103.前記複数の分子を送達することが、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つを通じて、前記1つ以上のタインの少なくとも別のタインと異なる分子を送達することを含む、請求項102に記載の方法。
【0116】
[00116] 104.前記エネルギー送達デバイスが、そこから伸長可能な1つ以上のタインを有するシャフトを備え、前記少なくとも1つのエネルギー送達体が、前記1つ以上のタインのうちの少なくとも1つを備え、前記エネルギーを送達することが、複数のタインのうちの少なくとも1つに通電することを含む、請求項102に記載の方法。
【0117】
[00117] 105.前記複数のタインのうちの少なくとも1つに通電することが、前記複数のタインのうちの少なくとも1つには通電せずに、前記複数のタインのうちの少なくとも1つに個別に通電することを含む、請求項104に記載の方法。
【0118】
[00118] 106.前記身体の局部領域内において流体の血管外遊出を誘導する工程をさらに含む、請求項87から105のいずれかに記載の方法。
【0119】
[00119] 107.血管外遊出を誘導する工程が、エネルギーを送達する前に行われる、請求項106に記載の方法。
【0120】
[00120] 108.前記血管外遊出が、前記標的組織への分子の送達を増加させる、請求項106から107のいずれかに記載の方法。
【0121】
[00121] 109.前記複数の分子を送達する工程が、前記身体の脈管構造に前記複数の分子を送達することを含み、前記血管外遊出が、前記脈管構造からのものである、請求項106から108のいずれかに記載の方法。
【0122】
[00122] 110.血管外遊出を誘導する工程が、前記標的組織の局部領域内において前記身体からの流体の血管外遊出を誘導する様式でコンディショニングエネルギーを身体に伝達するために前記少なくとも1つのエネルギー送達体にコンディショニングエネルギーを送達することを含む、請求項106に記載の方法。
【0123】
[00123] 111.前記コンディショニングエネルギーが、複数の単相性パルスを含む別の電気信号からのものであり、各パルスは、500マイクロ秒を超える持続時間を有する、請求項110に記載の方法。
【0124】
[00124] 112.前記コンディショニングエネルギーが、PEFエネルギーを含む、請求項110から111のいずれかに記載の方法。
【0125】
[00125] 113.前記パルス電場エネルギーを送達する前に、前記標的組織にコンディショニングエネルギーを送達する工程をさらに含む、請求項87に記載の方法。
【0126】
[00126] 114.前記コンディショニングが、最終的な細胞死に対する前記標的組織の細胞抵抗性を増大させる、請求項113に記載の方法。
【0127】
[00127] 115.前記エネルギーを送達する前に、前記標的組織を予熱する工程をさらに含む、請求項87から114のいずれかに記載の方法。
【0128】
[00128] 116.前記標的組織を予熱する工程が、前記標的組織にコンディショニングエネルギーを送達することを含む、請求項115に記載の方法。
【0129】
[00129] 117.前記パルス電場エネルギーが、一連のパルスを含む電気信号からのものであり、前記一連のパルスは、正振幅を有する少なくとも1つのパルス及び負振幅を有する少なくとも1つのパルスを含む、請求項87から116のいずれかに記載の方法。
【0130】
[00130] 118.前記一連のパルスが一体となって、正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより電荷のバランスを有している、請求項117に記載の方法。
【0131】
[00131] 119.前記一連のパルスが一体となって、前記身体内の筋刺激を回避するほど十分な電荷のバランスを正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより有している、請求項117に記載の方法。
【0132】
[00132] 120.前記一連のパルスが一体となって、前記標的組織細胞のアブレーションを回避するほど十分な電荷のバランスを正振幅オン時間と負振幅オン時間とにより有している、請求項117に記載の方法。
【0133】
[00133] 121.患者の眼の一部分を処置するためのシステムであって、前記システムは、
前記眼の中、前記眼の上、又は前記眼の近くに位置づけられるように構成された少なくとも1つの電極体を有する器具、及び
前記少なくとも1つの電極体と電気的に通じている発生器であって、前記発生器は、少なくとも1つの分子を前記眼の細胞に入り込ませるために、前記少なくとも1つの電極体に送達可能なパルス電場エネルギーの電気信号を提供するように構成された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを備える、発生器
を備える、システム。
【0134】
[00134] 122.前記器具が、遠位端を有するシャフトを備え、前記少なくとも1つの電極体が、前記シャフトの前記遠位端の近くに配置されている、請求項121に記載のシステム。
【0135】
[00135] 123.前記シャフトが、眼の硝子体腔に挿入可能であるように構成されている、請求項121から122のいずれかに記載のシステム。
【0136】
[00136] 124.前記少なくとも1つの電極体が、眼の内部の網膜下ブレブ(subretinal bleb)に挿入可能であるように構成されている、請求項121から123のいずれかに記載のシステム。
【0137】
[00137] 125.前記少なくとも1つの電極体が、眼の内部の脈絡膜上腔に挿入可能であるように構成されている、請求項121から123のいずれかに記載のシステム。
【0138】
[00138] 126.前記少なくとも1つの電極体が、双極対の電極体を含む、請求項121から123のいずれかに記載のシステム。
【0139】
[00139] 127.前記双極対の電極体が、網膜下ブレブ内に位置づけ可能であるように配置された第1の電極体を含み、第2の電極体が、網膜下ブレブの外側に位置づけ可能であるように配置されている、請求項126に記載のシステム。
【0140】
[00140] 128.前記双極対の電極体が、脈絡膜上腔内に位置づけ可能であるように配置された第1の電極体を含み、第2の電極体が、脈絡膜上腔の外側に位置づけ可能であるように配置されている、請求項126に記載のシステム。
【0141】
[00141] 129.前記双極対の電極体が、硝子体腔内に位置づけ可能であるように配置された第1の電極体を含み、第2の電極体が、硝子体腔の外側に位置づけ可能であるように配置されている、請求項126に記載のシステム。
【0142】
[00142] 130.前記双極対の電極体が、第1の位置に位置づけ可能であるように配置された第1の電極体を含み、第2の電極体が、第2の位置に位置づけ可能であるように配置されており、網膜の一部分が、前記第1の位置と前記第2の位置との間に配置されている、請求項126に記載のシステム。
【0143】
[00143] 131.双極対の電極体の極性が、可逆的である、請求項126に記載のシステム。
【0144】
[00144] 132.前記少なくとも1つの電極体が単極形式で機能するように、前記少なくとも1つの電極体のうちの少なくとも1つからある距離に位置づけられるように構成されたリターン電極をさらに備える、請求項121から125のいずれかに記載のシステム。
【0145】
[00145] 133.前記リターン電極が、眼の外表面に接して又はその近くに位置づけられるように構成されている、請求項132に記載のシステム。
【0146】
[00146] 134.前記リターン電極が、網膜電図電極、検鏡、コンタクトレンズ又はツイーザートロード(tweezertrode)電極を含む、請求項133に記載のシステム。
【0147】
[00147] 135.前記リターン電極が、少なくとも部分的に眼球後腔に位置づけられるように構成されている、請求項132に記載のシステム。
【0148】
[00148] 136.前記リターン電極が、少なくとも部分的に脈絡膜上腔に位置づけられるように構成されている、請求項132に記載のシステム。
【0149】
[00149] 137.前記器具が、流体を送達するための内腔を備える、請求項121から136のいずれかに記載のシステム。
【0150】
[00150] 138.前記器具が、前記流体が少なくとも1つの前記電極体の近くに送達可能であるように前記内腔と流体連通した少なくとも1つの出口を備える、請求項137に記載のシステム。
【0151】
[00151] 139.前記流体をさらに備え、前記流体は、小分子及び/又は高分子を含む、請求項137に記載のシステム。
【0152】
[00152] 140.前記少なくとも1つの分子が、小分子及び/又は高分子を含む、請求項121から139のいずれかに記載のシステム。
【0153】
[00153] 141.前記少なくとも1つの分子が、プラスミド、DNA、合成DNAベクター、RNA、核酸ベースの分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オリゴマー分子、リボザイム、リボ核タンパク質、CRISPR、組換えタンパク質、タンパク質分解標的化キメラ、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、細胞挙動の遺伝的変化もしくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料を含む、請求項121から139のいずれかに記載のシステム。
【0154】
[00154] 142.前記少なくとも1つの分子が、5kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項121から141のいずれかに記載のシステム。
【0155】
[00155] 143.前記少なくとも1つの分子が、10kbより大きい少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項142に記載のシステム。
【0156】
[00156] 144.前記細胞が、眼の網膜内に配置されている、請求項121から143のいずれかに記載のシステム。
【0157】
[00157] 145.前記細胞が、網膜の杆錐状体層内に配置されている、請求項144に記載のシステム。
【0158】
[00158] 146.前記細胞が、網膜の網膜色素上皮内に配置されている、請求項144に記載のシステム。
【0159】
[00159] 147.患者の眼を処置するための方法であって、
少なくとも1つの電極体を眼の中又は眼の近くに位置づける工程、
少なくとも1つの分子を前記眼の一部分に導入する工程、及び
前記少なくとも1つの分子を前記眼の内部の細胞に入り込ませるためにパルス電場エネルギーを前記少なくとも1つの電極体に送達する工程
を含む、方法。
【0160】
[00160] 148.前記パルス電場エネルギーが、一連の単相性パルスを含む、請求項147に記載の方法。
【0161】
[00161] 149.前記一連の単相性パルスが、一連の低電圧パルスを含む、請求項148に記載の方法。
【0162】
[00162] 150.前記パルス電場エネルギーが、一連の二相性パルスを含む、請求項147に記載の方法。
【0163】
[00163] 151.前記少なくとも1つの電極体を位置づける工程が、前記少なくとも1つの電極体を眼の硝子体腔内に位置づけることを含む、請求項147から150のいずれかに記載の方法。
【0164】
[00164] 152.前記少なくとも1つの電極体を位置づける工程が、前記少なくとも1つの電極体を眼の内部の網膜下ブレブ内に位置づけることを含む、請求項147から150のいずれかに記載の方法。
【0165】
[00165] 153.前記少なくとも1つの電極体を位置づける工程が、前記少なくとも1つの電極体を眼の内部の脈絡膜上腔内に位置づけることを含む、請求項147から150のいずれかに記載の方法。
【0166】
[00166] 154.前記少なくとも1つの電極体が、双極対の電極体を含み、前記少なくとも1つの電極体を位置づける工程が、第1の電極体を網膜下ブレブ内に位置づけ、第2の電極体を網膜下ブレブの外側に位置づけることを含む、請求項147に記載の方法。
【0167】
[00167] 155.前記少なくとも1つの電極体が、双極対の電極体を含み、前記少なくとも1つの電極体を位置づける工程が、第1の電極体を脈絡膜上腔内に位置づけ、第2の電極体を脈絡膜上腔の外側に位置づけることを含む、請求項147に記載の方法。
【0168】
[00168] 156.前記少なくとも1つの電極体が、双極対の電極体を含み、前記少なくとも1つの電極体を位置づける工程が、第1の電極体を硝子体腔内に位置づけ、第2の電極体を硝子体腔の外側に位置づけることを含む、請求項147に記載の方法。
【0169】
[00169] 157.前記少なくとも1つの電極体が、双極対の電極体を含み、前記少なくとも1つの電極体を位置づける工程が、第1の電極体を第1の位置に及び第2の電極体を第2の位置に位置づけることを含み、網膜の一部分が、前記第1の位置と前記第2の位置との間に配置されている、請求項147に記載の方法。
【0170】
[00170] 158.前記双極対の極性を逆転させる工程をさらに含む、請求項154から157のいずれかに記載の方法。
【0171】
[00171] 159.前記細胞が、眼の網膜の層の内部に存在し、前記少なくとも1つの分子を網膜の異なる層の内部の細胞に入り込ませるように前記少なくとも1つの電極体にエネルギーを送達する工程をさらに含む、請求項147に記載の方法。
【0172】
[00172] 160.前記少なくとも1つの電極体が単極形式で機能できるように、前記少なくとも1つの電極体からある距離にリターン電極を位置づける工程をさらに含む、請求項147に記載の方法。
【0173】
[00173] 161.前記リターン電極を位置づける工程が、前記リターン電極を眼の外表面に接して又はその近くに位置づけることを含む、請求項160に記載の方法。
【0174】
[00174] 162.前記リターン電極が、網膜電図電極、検鏡、コンタクトレンズ又はツイーザートロード電極を含む、請求項161に記載の方法。
【0175】
[00175] 163.前記リターン電極を位置づける工程が、前記リターン電極を少なくとも部分的に眼球後腔に位置づけることを含む、請求項160に記載の方法。
【0176】
[00176] 164.前記リターン電極を位置づける工程が、前記リターン電極を少なくとも部分的に脈絡膜上腔に位置づけることを含む、請求項160に記載の方法。
【0177】
[00177] 165.前記少なくとも1つの分子が、少なくとも1つの小分子及び/又は高分子を含む、請求項147から164のいずれかに記載の方法。
【0178】
[00178] 166.前記少なくとも1つの分子が、プラスミド、RNA、核酸ベースの分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、オリゴマー分子、リボザイム、リボ核タンパク質、CRISPR、組換えタンパク質、細胞挙動の遺伝的変化もしくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料を含む、請求項147から164のいずれかに記載の方法。
【0179】
[00179] 167.前記少なくとも1つの分子が、合成DNAベクターを含む、請求項147から164のいずれかに記載の方法。
【0180】
[00180] 168.前記細胞が、眼の網膜内に配置されている、請求項147から167のいずれかに記載の方法。
【0181】
[00181] 169.前記細胞が、網膜の杆錐状体層内に配置されている、請求項168に記載の方法。
【0182】
[00182] 170.前記細胞が、網膜の網膜色素上皮内に配置されている、請求項168に記載の方法。
【0183】
[00183] これら及び他の実施形態は、添付の図面に関連する以下の説明においてさらに詳細に説明される。
【0184】
参照による援用
[00184] 本明細書において言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により援用されると具体的且つ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
[00185] 必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない図面において、同様の数字が、異なる図において類似の構成要素を説明することがある。異なる文字接尾辞を有する同様の数字が、類似の構成要素の異なる例を表すことがある。図面は、本文書において論じられる様々な実施形態を例として、しかし限定することなく、広く説明するものである。
図1A】[00186] 従来のインビトロエレクトロポレーションシステムの一例を図示している。
図1B】[00186] 従来のインビトロエレクトロポレーションシステムの一例を図示している。
図2】[00187] 移行システムの実施形態を図示している。
図3A】[00188] 針を通じた標的組織へのプラスミドの直接注入を図示している。
図3B】[00189] 図3Aの針の所定位置に挿入されたエネルギー送達デバイスからのエネルギーの送達を図示している。
図4A】[00190] エネルギー送達体を通じた標的組織へのプラスミドの直接注入を図示している。
図4B】[00191] 図4Aのエネルギー送達体からのエネルギーの送達を図示している。
図5】[00192] エネルギーが局所的に送達されている間に、及び必要に応じて、同様にプラスミドも局所的に送達されている間に、限局的に送達されるプラスミドを図示している。
図6】[00193] 遠位端の近くにエネルギー送達体を有するシャフトを備えるエネルギー送達デバイスを図示しており、ここで、そのエネルギー送達体は、複数のタインを備えている。
図7】[00194] 標的組織を管腔内的に処置するように構成されたかご形状を有するエネルギー送達体を備えるエネルギー送達デバイスを図示している。
図8】[00195] 標的組織を管腔内的に処置するように構成された形状を有するエネルギー送達体を備えるエネルギー送達デバイスの別の実施形態を図示しており、ここで、そのエネルギー送達体は、少なくとも2つの突起を備え、各突起は、内腔の内側の壁に接触するように半径方向外向きに伸びている。
図9】[00196] 標的組織を管腔内的に処置するように構成された形状を有するエネルギー送達体を備えるエネルギー送達デバイスの別の実施形態を図示しており、ここで、そのエネルギー送達体は、電極がその上に装着されているか又はその中に組み込まれている拡張可能な部材(例えば、可膨張性バルーン)を備える。
図10】[00197] 送達体108が内腔の内側の壁に接触するように構成された指先の形状を有するエネルギー送達デバイス102の実施形態を図示している。
図11A】[00198] 血管外遊出手順の実施形態の様々な段階を図示している。
図11B】[00198] 血管外遊出手順の実施形態の様々な段階を図示している。
図11C】[00198] 血管外遊出手順の実施形態の様々な段階を図示している。
図12A】[00199] 血管外遊出を誘導するために使用される発生器のエネルギー送達アルゴリズムによって提供されるパルス電場(PEF)エネルギーの波形の例を図示している。
図12B】[00199] 血管外遊出を誘導するために使用される発生器のエネルギー送達アルゴリズムによって提供されるパルス電場(PEF)エネルギーの波形の例を図示している。
図13】[00200] PEFエネルギーを用いた、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードするプラスミドDNAの様々なタイプの送達によって生じたデータを図示している。
図14】[00201] 図13のデータを平均値として図示している。
図15A】[00202] エネルギー送達アルゴリズムによって提供されるDC電流に基づく波形の例を図示している。
図15B】[00202] エネルギー送達アルゴリズムによって提供されるDC電流に基づく波形の例を図示している。
図15C】[00202] エネルギー送達アルゴリズムによって提供されるDC電流に基づく波形の例を図示している。
図16】[00203] 極性が交番する特殊波形の実施形態を図示しており、ここで、そのパルスは、同じ位相の一連のパルスに「裁断される」か、分割されるか、又は区分される。
図17】[00204] パルスが同じ位相の一連のパルスに「裁断されている」か、分割されているか又は区分されている、二相性波形の実施形態を図示している。
図18A】[00205] 低くて長いパルスと組み合わされた高くて短いパルスの組み合わせを有する波形の実施形態を図示している。
図18B】[00205] 低くて長いパルスと組み合わされた高くて短いパルスの組み合わせを有する波形の実施形態を図示している。
図18C】[00205] 低くて長いパルスと組み合わされた高くて短いパルスの組み合わせを有する波形の実施形態を図示している。
図19】[00206] パケットにグループ化された一連のパルスを含むパケットを図示している。
図20】[00207] 一連の二相性パルス又はサイクルを含むパケットを図示しており、各二相性パルスは、スイッチ時間ディレイを有する。
図21】[00208] 一連の高電圧高周波パルスの後、一連の低電圧低周波パルスを有する波形の実施形態を図示しており、ここで、この組み合わせは、標的細胞への分子の移行を補助する。
図22】[00208] 一連の高電圧高周波パルスの後、一連の低電圧低周波パルスを有する波形の実施形態を図示しており、ここで、この組み合わせは、標的細胞への分子の移行を補助する。
図23】[00209] パルス波形の別の実施形態を図示している。
図24A】[00210] アルゴリズム152によって提供される波形の追加の実施形態を図示しており、パルスは、高周波の高速発振を含む。
図24B】[00210] アルゴリズム152によって提供される波形の追加の実施形態を図示しており、パルスは、高周波の高速発振を含む。
図24C】[00210] アルゴリズム152によって提供される波形の追加の実施形態を図示しており、パルスは、高周波の高速発振を含む。
図25A】[00211] エネルギー送達デバイスの遠位端に沿って種々の位置に配置された圧力センサを図示している。
図25B】[00211] エネルギー送達デバイスの遠位端に沿って種々の位置に配置された圧力センサを図示している。
図25C】[00211] エネルギー送達デバイスの遠位端に沿って種々の位置に配置された圧力センサを図示している。
図26】[00212] 心臓などの臓器の壁への直接的な設置及びエネルギー送達を容易にする、エネルギー送達体及び適切な操作性を備える管腔内的エネルギー送達デバイスの実施形態を図示している。
図27】[00213] 大動脈に対する冠状動脈の位置及び図26のエネルギー送達デバイスの位置を図示している。
図28】[00214] 視神経の近くの網膜の断面部分を図示している。
図29】[00215] 眼の部分にエネルギーを送達するよう構成されたエネルギー送達システムの実施形態を図示している。
図30】[00216] 網膜下ブレブを形成するための手順の実施形態を図示している。
図31】[00217] 電極体が網膜下ブレブ内に位置づけられるように、眼内へのエネルギー送達デバイスの位置づけの実施形態を図示している。
図32A】[00218] パルス電場エネルギーの印加の際に網膜色素上皮に入り込んだ分子を図示している。
図32B】[00218] パルス電場エネルギーの印加の際に網膜色素上皮に入り込んだ分子を図示している。
図33】[00219] 分子が網膜下ブレブに送達され、そこへの単極エネルギー送達のために電極体が網膜下ブレブ内に位置づけられている、実施形態を図示している。
図34】[00220] 分子が網膜下ブレブに送達され、そこへの単極エネルギー送達のために電極体が眼の硝子体腔内に位置づけられている、実施形態を図示している。
図35】[00221] 分子が硝子体腔に送達され、そこへの単極エネルギー送達のために電極体が硝子体腔に位置づけられている、実施形態を図示している。
図36】[00222] 網膜下ブレブ内に配置された分子及び2つの電極体を図示しており、その2つの電極体は、双極様式でエネルギーを一方から他方に送達するように眼に位置づけられている。
図37】[00223] 硝子体腔内に配置された分子及び2つの電極体を図示しており、その2つの電極体は、双極様式でエネルギーを一方から他方に送達するように眼に位置づけられている。
図38】[00224] 網膜下ブレブに配置された分子及び2つの電極体を図示しており、その2つの電極体は、双極様式でエネルギーを一方から他方に送達するように眼に位置づけられている。
図39】[00225] 眼への双極エネルギー送達を図示しており、ここで、1つの電極体は、硝子体腔に配置されており、もう1つの電極体は、眼球後腔に配置されており、分子は、網膜下ブレブ内に配置されている。
図40】[00226] 眼への双極エネルギー送達を図示しており、ここで、1つの電極体は、網膜下ブレブに配置されており、もう1つの電極体は、眼球後腔に配置されており、分子は、網膜下ブレブ内に配置されている。
図41】[00227] 眼への双極エネルギー送達を図示しており、ここで、1つの電極体は、網膜下ブレブに配置されており、もう1つの電極体は、眼球後腔に配置されており、分子は、硝子体腔内に配置されている。
図42】[00228] 眼への双極エネルギー送達を図示しており、ここで、1つの電極体は、網膜下ブレブに配置されており、もう1つの電極体は、眼球後腔に配置されており、分子は、網膜下ブレブ内及び硝子体腔内に配置されている。
図43】[00229] 分子が硝子体腔に送達され、第1の電極体が硝子体腔内に位置づけられており、第2の電極体が、角膜に接して位置づけられている、実施形態を図示している。
図44A】[00230] 溶液、例えば、分子を含む溶液を標的組織に送達するように構成されたエネルギー送達デバイスの実施形態を図示している。
図44B】[00230] 溶液、例えば、分子を含む溶液を標的組織に送達するように構成されたエネルギー送達デバイスの実施形態を図示している。
図45】[00231] その遠位端の接写像を示しているエネルギー送達デバイスの実施形態を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0186】
[00232] 分子、特に小分子及び/又は高分子を、身体内の細胞、特にそれらの分子の機能から直接、治療的恩恵を受ける標的細胞に送達するためのデバイス、システム及び方法が提供される。このような送達は、移行又は体内移行(biotransfer)とみなされる。分子の例としては、いくつかの例を挙げると、DNAプラスミド、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、細胞挙動の遺伝的変化もしくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料が挙げられる。このような場合において、それらの分子は、所望の遺伝子が標的細胞内で所望の効果を発揮できるようにその標的細胞の細胞壁を通ってそれらの分子を送達するパルス電場(PEF)を用いて、標的細胞内に送り込まれる。したがって、それらの分子は、本明細書中に記載されるように、最適な成果のために、パルス電場の送達に対して所望の時点において所望の濃度で身体内の所望の位置に送達されることになる。それらの分子は、全身性、限局的及び/又は標的細胞の領域への直接注射などの種々の方法によって身体に投与され得る。分子を細胞内に送り込むパルス電場エネルギーは、インビボ及びインサイチュにおいて標的細胞に送達される。したがって、ウイルスを使用せずに、又はインビトロエレクトロポレーションなどのエキソビボの方法を用いずに、分子を細胞内に通す。
【0187】
[00233] これらのデバイス、システム及び方法は、公知のウイルスベースの遺伝子療法であるアデノ随伴ウイルス(AAV)などの他の方法による送達よりも優れている。AAVは、ペイロード容量に制限がある。AAVは、4.4kbより小さい遺伝子しか収容できず、遺伝子調節領域(例えば、プロモーターなど)のための空間が限られている。AAVベースの遺伝子療法には大きすぎる疾患遺伝子は300を超える。これらには、比較的よく見られる多くの疾患、例えば、シュタルガルト病、アッシャー1B及び1D、レーバー先天黒内障-10(LCA10)並びに嚢胞性線維症を招く遺伝子が含まれる。対照的に、本明細書中に記載される非ウイルス性の送達は、10kbより大きい遺伝子を収容することができ、空間に制限がない。したがって、AAV送達での使用から除外されている遺伝子の多くを、本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法によって送達することができる。さらに、多くの患者が、既存の抗AAV抗体を有していることから、処置が妨げられており、ウイルスのタンパク質又は配列に対する免疫応答が再処置を妨げている。このような考慮すべき免疫学的事柄は、本明細書中に記載される非ウイルス性の送達方法には該当せず、通常、患者はパルス電場に対して十分耐容性を示す。さらに、AAV遺伝子療法は、既存のAAV血清型に適合する組織及び細胞型だけにしか標的化できない。パルス電場送達は、あらゆる細胞型及び組織に適用可能であるので、このような制限も、本明細書中に記載される非ウイルス性の送達方法には該当しない。
【0188】
[00234] これらのデバイス、システム及び方法は、インビトロの研究室手法によって予めトランスフェクトされた細胞を身体に送達することよりも優れている。先に述べたように、培養中の細胞のトランスフェクションを患者への治療につなげる場合、そのようなトランスフェクションには、追加の工程がいくつか必要である。これらの工程は、遺伝子療法の送達に実質的な負担、コスト、侵襲性、時間及びリスクを追加する。
【0189】
[00235] ウイルス性の送達及びアフェレーシスベースの送達の欠点は、本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法によって回避されるが、PEFを用いて身体内の細胞に分子を直接移行することは、いくつかの課題に直面している。そもそも、このような移行では、解剖学的及び生理学的な制約が当然ある身体内の標的位置に種々のデバイス及び成分を送達することが必要である。移行用の分子及び/又はPEFエネルギーの送達に関与するデバイスは、例えば内視鏡的に、身体内の標的組織にアクセスし、所望の構成要素を標的細胞に送達するように特別に設計されている。
【0190】
[00236] さらに、体内には、生理学的な反応、状態及びプロセスに直面して常に変化している非常に多様な標的組織及び局所環境がある。分子及びPEFエネルギーの送達に関与するプロトコルは、様々な状況において、及び変化しつつある環境に直面して、移行を最大化するように調整される。場合によっては、プロトコル、及びゆえに成果のためになるように環境の変化を誘導する。これは、特に、標的細胞に移行するために分子を身体内の所望の標的位置に送達し、濃縮する場合である。
【0191】
[00237] 他の課題としては、分子の移行を引き起こすが標的細胞自体及び/又は周囲の任意の細胞に対する潜在的な悪影響を最小限に抑える様式で身体内の標的細胞にPEFエネルギーを送達することが挙げられる。場合によっては、PEFエネルギーは、分子の移行ではなく、組織のアブレーションに使用することができる。アブレーションは、細胞死を伴うが、これは、遺伝子療法、及び移行された分子の治療効果をもたらす及び誘起するのに少なくとも十分長く細胞が生存することに依存する他の治療の望ましい成果とは実質的に逆である。場合によっては、PEFは、使用されるPEFの波形及びプロトコルに基づいて、一連の非熱的機構及び熱的機構を介して細胞を殺滅することができる。特に、高電圧を利用するとき、このことが関係する。ゆえに、より多くの移行を行うためには、単に電圧を上げることは有害であり、望まれない細胞死をもたらす恐れがある。したがって、死を招くことなく移行を達成するために、数多くの変数が慎重に最適化され、バランスが取られる。
【0192】
[00238] 場合によっては、身体内での移行というユニークな状況を制御するために、デバイスの設計が最適化される。エネルギーがデバイス上の電極から発せられる(例えば、遠隔リターン電極を使用した単極形式で)場合、電極に最も近い細胞が高いエネルギーレベルを受けることがあり、エネルギーレベルは電極からの距離に応じて指数関数的に低下する。したがって、エネルギー帯によって、電極に最も近い細胞は死滅する可能性があり得るが、離れた細胞は移行された細胞を受け取り、さらに離れた細胞は影響を受けない。これらの帯はすべて、電極から数ミリメートル以内に存在し得る。電圧の上昇は、このような細胞死を悪化させて、大量及び/又は多くの総細胞数の移行を困難にする可能性がある。これらの課題は、制御された距離でプレート電極を用いる研究室手法をめったに適用できない身体内での送達に特有である。
【0193】
[00239] さらに、身体内での送達では、全身の環境、及び送達手順に対する潜在的な反応に留意する必要がある。特に、インビトロの研究室手法用に設計された従来のトランスフェクション方法を用いるとき、望まれない筋収縮が起こる可能性がある。そのような手法では、トランスフェクションの手順の一部として、長い持続時間(例えば、数百μs~数百ms)の波形の送達を必要とする。インビボにおいて、これは、運動ニューロン及び骨格筋を活性化し、それは、患者の傷害(例えば、テーブルからの転落、患者の身体内のデバイスの移動など)を引き起こし得るか、疼痛(例えば、局所麻酔又は全身麻酔を必要とする)を引き起こし得るか、又は治療結果(例えば、処置の過程で電極を移すことを介して)に影響し得る。神経筋麻痺薬が、このリスクの低減を助けることができるが、これには全身麻酔が必要であり、収縮の十分な緩和には不十分であることが多い。
【0194】
[00240] 本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法は、これらのユニークな課題を克服して、身体内でのPEF移行を、臨床的に妥当であり、トランスレーショナルで有望な治療法の最先端にする。
【0195】
[00241] これらのデバイス、システム及び方法は、エネルギー送達システムを用いて細胞にエネルギーを送達する。一般に、エネルギー送達システムは、専用のエネルギー送達デバイス、波形発生器、及び少なくとも1つの独特なエネルギー送達アルゴリズムを備える。追加の付属物及び装置を利用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、エネルギー送達デバイスは、内視鏡、通常、それが使用される解剖学的位置に特有の内視鏡、例えば、胃鏡(胃、食道及び小腸(十二指腸)を含む上部消化管内視鏡検査)、結腸鏡(大腸)、気管支鏡(肺)、喉頭鏡(喉頭)、膀胱鏡(尿路)、十二指腸鏡(小腸)、腸鏡(消化系)、尿管鏡(尿管)、子宮鏡(子宮頸部、子宮)などを通じて送達される。他の実施形態において、エネルギー送達デバイスは、カテーテル、シース、イントロデューサ、針又は他の送達システムを通じて送達可能であることが理解されるであろう。
【0196】
[00242] 管腔内アクセスは、身体内の様々な管腔内から標的組織を処置することを可能にする。管腔は、身体内の管状又は中空の構造の内部の空間であり、いくつかの例を挙げると、通路、管、管路及び空洞が挙げられる。管腔構造の例としては、いくつかの例を挙げると、血管、食道、胃、小腸及び大腸、結腸、膀胱、尿道、尿路集合管、子宮、膣、ファロピウス管、尿管、腎臓、尿細管、脊柱管、脊髄及び全身のその他のもの、並びに肺、心臓及び腎臓などの臓器の内部の構造及びそれらの臓器を含む構造が挙げられる。いくつかの実施形態において、標的組織は、近傍の管腔構造を介してアクセスされる。場合によっては、エネルギー送達デバイスは、様々な管腔構造又は管腔系の分岐部を通って前進して、標的組織位置に到達する。例えば、血管を介して標的組織部位にアクセスするとき、エネルギー送達デバイスを遠くから挿入し、脈管構造の様々な分岐部を通って前進して標的部位に到達してもよい。同様に、管腔構造が、天然の開口部(例えば、鼻、口、尿道又は直腸)に由来する場合、その天然の開口部を通って入っていってよく、次いで、エネルギー送達デバイスは、管腔系の分岐部を通って前進して、標的組織位置に到達する。あるいは、血管切開又は他の方法を介して、標的組織の近くに管腔構造を入り込ませてもよい。これは、大きな系の一部でない管腔構造又は他の方法ではアクセスすることが困難な管腔構造にアクセスする場合に当てはまり得る。
【0197】
[00243] 種々の解剖学的位置が、本明細書中に記載されるシステム及び方法を用いて管腔内的に処置され得ることが理解されるであろう。例としては、管腔構造そのもの、管腔構造の近くに位置する全身の軟部組織、及び管腔構造からアクセス可能な実質臓器(肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓、前立腺、卵巣、リンパ節及びリンパ排出管、下層の筋系、骨組織、脳、眼、甲状腺などを含むがこれらに限定されない)が挙げられる。種々の組織位置が経皮的に又は他の方法によってアクセスできることも理解されるであろう。
【0198】
[00244] 全身の任意の位置における標的組織細胞を処置することができ、それらの細胞としては、いくつかの例を挙げると、消化系(例えば、口、腺、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、腸、結腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、肛門管など)の細胞、呼吸器系(例えば、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺など)の細胞、泌尿器系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、尿道など)の細胞、生殖系(例えば、生殖器、卵巣、ファロピウス管、子宮、子宮頸部、膣、精巣、精巣上体、輸精管、精嚢、前立腺、腺、陰茎、陰嚢など)の細胞、内分泌系(例えば、脳下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、副腎)の細胞、循環器系(例えば、心臓、動脈、静脈など)の細胞、リンパ系(例えば、リンパ節、骨髄、胸腺、脾臓など)の細胞、神経系(例えば、脳、脊髄、神経、神経節など)の細胞、眼(例えば、網膜、黄斑、杆錐状体層、網膜色素上皮、視神経、脈絡膜、強膜など)の細胞、筋系(例えば、筋細胞など)の細胞及び皮膚(例えば、表皮、真皮、皮下組織など)の細胞が挙げられる。
【0199】
[00245] エネルギー送達デバイスは、少なくとも1つの独特なエネルギー送達アルゴリズムに従って、波形発生器によって提供されるエネルギーを送達する。いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイスは、分子も送達することが理解されるであろう。しかしながら、他の実施形態では、分子は、IV、カテーテル又は針注射などの別個のデバイスによって送達される。必要に応じて、分子は、エネルギー送達デバイスと別個のデバイスとの両方によって送達され得る。専用のエネルギー送達デバイスの実施形態の例は、主に単極エネルギー送達に焦点を当てたものが本明細書中に提供されるが、双極又は多極の仕組みのものも使用され得ることが理解されるであろう。
【0200】
[00246] 図2は、専用のエネルギー送達デバイス102、リターン電極115及び波形発生器104を備えるエネルギー送達システム100の実施形態を図示している。この実施形態において、標的組織は、患者Pの肝臓L内に位置している。この実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、肝臓L内の標的組織まで管腔内的に前進させることができる遠位端を有する可撓性の細長いシャフトを備える。示されるように、送達デバイス102の遠位端は、口Mを通って、食道Eを下り、胃Sに前進し、胃壁を通り抜けて肝臓Lに入る。いくつかの実施形態において、遠位端は、胃壁及び/又は肝臓Lを貫通するように構成された遠位先端部103を有する。他の実施形態では、胃壁を貫く通路が、その後除去される別個の器具を用いて形成され、非侵襲的な先端部を有するエネルギー送達デバイス102が、その通路を通過することができる。
【0201】
[00247] この実施形態において、分子110は、IVバッグ112を用いて全身的に静脈内送達される。これにより、通常、肝臓L内の標的組織を含む患者Pの全身に分子110が分散される。他の実施形態では、分子110は、限局的に送達されることが理解されるであろう。このような実施形態では、分子110は、標的化器官又は標的化組織領域に至る動脈系の上流の脈管構造に送達されてもよい。次いで、分子110は、下流の動脈循環を通って標的化領域に移動する。分子110のボーラス注射が提供される場合、分子110の急激な増加が標的化組織に入り込むことになる。しかしながら、分子110が、輸液ポンプの使用などによって時間をかけて送達される場合、安定した持続的なレベルの分子110が標的化組織において達成され得る。他の実施形態では、分子110は、標的化組織への直接注射によって送達されることが理解されるであろう。このような実施形態では、注射デバイスは、標的化器官領域の実質組織内などの標的化組織の中又はその近くに挿入され、アフェクター遺伝物質を含む溶液が注入される。この分子の溶液は、一定時間、実質及び間質腔を通った分布が許容されることにより、移行の標的となる領域又は体積に到達し得る。全身送達、領域送達及び局所送達の任意の組み合わせが代替的に使用され得ることが理解されるであろう。
【0202】
[00248] パルス電場エネルギーは、送達デバイス102の遠位端を通じて標的組織に送達される。送達デバイス102の近位端は、波形発生器104と電気的に接続されている。いくつかの実施形態において、発生器104は、患者Pから感知された心臓信号と協調したエネルギーの送達を可能にするために、外部心臓モニタ(図示せず)とも接続される。
【0203】
[00249] この実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、単極であるように設計されており、送達デバイス102の遠位端は、送達電極として有し、リターン電極115は、体外の皮膚上、通常、大腿(示されているように)、腰又は背中に位置づけられる。
【0204】
[00250] パルス電場(PEF)は、発生器104によって提供され、標的化組織領域上、標的化組織領域の中、又は標的化組織領域の近くに設置されたエネルギー送達体108を通じて組織に送達される。いくつかの実施形態において、エネルギー送達体108は、同様に標的化組織と接触している導電性物質と接触して位置づけられることが理解されるであろう。このような溶液には、等張液又は高張液が含まれ得る。次いで、標的組織の近傍のエネルギー送達体108を通じて電気パルスが送達される。これらの電気パルスは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズム152によって提供される。アルゴリズム152は、波形の全体的な形状に寄与する信号の様々なパラメータ、例えばいくつかの例を挙げると、エネルギー振幅(例えば、電圧)並びにパルス数、パルス幅及びパルス間のディレイで構成される印加エネルギーの持続時間を指定する。いくつかの実施形態において、1つ以上のエネルギー送達体は、小さく、電極の周囲に大量のエネルギーを散逸させる傾向がある。ゆえに、エネルギーの最適な送達が望まれる。いくつかの実施形態では、このような場合に効率的な送達パルスを提供するために、トランジスタハーフブリッジによる大きなDCリンクキャパシタンスを利用する。場合によっては、電力増幅器(限定的なバンド幅)又は指数関数的減衰発生器によって送達されるパルス電圧に関して、これが好ましい。いくつかの実施形態では、センサ情報及びオートシャットオフ仕様に基づくフィードバックループなどが含まれ得る。
【0205】
[00251] 後の項で説明されるように、いくつかの実施形態では、二相性パルスが使用され得る。このような実施形態において、追加のパラメータには、二相性パルスにおける極性間の切り替え時間及び二相性サイクル間の不感時間が含まれ得る。二相性波形は、患者における筋刺激を低減するために使用され得る。これは、エネルギー送達体がわずかに動くだけで治療効果がなくなり得るか又は有害な結果を招き得る用途では特に重要である。二相性波形は、極性の交替時の神経の活性化を最小限に抑えるために信号の位相/極性の迅速な変更を必要とする。複数の高速スイッチング素子(例えば、MOSFET、IGBTトランジスタ)が望ましく、それらが採用され、例えば、Hブリッジ構造又はフルブリッジで構成される。
【0206】
[00252] 図1に戻って参照すると、この実施形態において、発生器104は、ユーザーインターフェース150、1つ以上のエネルギー送達アルゴリズム152、プロセッサ154、データストレージ/検索ユニット156(例えば、メモリ及び/又はデータベース)、及び送達されるエネルギーを生成し、貯蔵するエネルギー貯蔵サブシステム158を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のコンデンサーがエネルギーの貯蔵/送達に使用されるが、他の任意の好適なエネルギー貯蔵素子を使用してもよい。さらに、1つ以上の通信ポートが含められてもよい。
【0207】
[00253] いくつかの実施形態において、発生器104は、3つのサブシステムを備える。1)高エネルギー貯蔵システム、2)高電圧中周波スイッチング増幅器、並びに3)システムコントローラ、ファームウェア及びユーザーインターフェース。その発生器は、交流(AC)電源を取り込み、複数の直流(DC)電源に電力を供給する。発生器のコントローラは、エネルギー送達を開始する前に、DC電源に高エネルギーコンデンサー貯蔵バンクを充電させることができる。いくつかの実施形態において、エネルギー送達の開始時に、発生器のコントローラ、高エネルギー貯蔵バンク及び二相性パルス増幅器が同時に作動して、高電圧中周波の出力を生成することができる。
【0208】
[00254] エネルギー送達アルゴリズムを実行するために、多数の発生器電気的アーキテクチャーが採用され得ることが認識されるであろう。特に、いくつかの実施形態では、パルス電場回路を同じエネルギー貯蔵且つ高電圧送達システムからエネルギー送達電極に別々に向けることができる高度な切り替えシステムが使用されている。さらに、急速に変化するパルスパラメータ(例えば、電圧、周波数など)又は複数のエネルギー送達電極を用いる高度なエネルギー送達アルゴリズムにおいて採用される発生器は、モジュール式のエネルギー貯蔵及び/又は高電圧システムを利用することができ、高度にカスタマイズ可能な波形及び地理的パルス送達パラダイムを促進する。上記の本明細書中に記載された電気的アーキテクチャーは、単なる例であり、パルス電場を送達するシステムは、スイッチング増幅器の追加の部品を含んでもよいし、含まなくてもよいことがさらに認識されるべきである。
【0209】
[00255] ユーザーインターフェース150は、操作者が患者データを入力し、処置アルゴリズム(例えば、エネルギー送達アルゴリズム152)を選択し、エネルギー送達を開始し、ストレージ/検索ユニット156に格納された記録を閲覧し、且つ/又はその他の方法で発生器104と通信することを可能にする、タッチスクリーン及び/又はより従来のボタンを含み得る。
【0210】
[00256] いくつかの実施形態において、ユーザーインターフェース150は、操作者によって定義される入力を受け取るように構成されている。操作者によって定義される入力には、エネルギー送達の持続時間、エネルギー送達のパルス、電力及び/もしくは操作モードのうちの1つ以上の他のタイミングの側面、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。操作モードの例としては、システムの開始及び自己診断、操作者の入力、アルゴリズムの選択、前処理システムの状態及びフィードバック、エネルギー送達、エネルギー送達後の表示もしくはフィードバック、処理データの見直し及び/もしくはダウンロード、ソフトウェア更新、又はそれらの任意の組み合わせもしくは部分組み合わせが挙げられ得る(がこれらに限定されない)。
【0211】
[00257] いくつかの実施形態において、プロセッサ154は、他の作業の中でも、エネルギー送達アルゴリズムを改変し、且つ/又は切り替え、エネルギー送達及び任意のセンサデータをモニタし、フィードバックループを介して、モニタされたデータに反応する。いくつかの実施形態において、プロセッサ154は、計測された1つ以上のシステムパラメータ(例えば、電流)、計測された1つ以上の組織パラメータ(例えば、インピーダンス)及び/又はそれらの組み合わせに基づいて、フィードバック制御ループを走らせるための1つ以上のアルゴリズムを実行するように構成されている。
【0212】
[00258] データストレージ/検索ユニット156は、データ(例えば、送達される処置に関連するデータ)を格納し、必要に応じて、通信ポートにデバイス(例えば、ラップトップ又はサムドライブ)を接続することによってダウンロードすることができる。いくつかの実施形態において、そのデバイスは、情報(例えば、データストレージ/検索ユニット156に格納され、プロセッサ154によって実行可能な命令)のダウンロードを指示するために用いられるローカルソフトウェアを有する。いくつかの実施形態において、ユーザーインターフェース150は、操作者がデータを選択してそのデータをデバイス及び/又はシステム(例えば、コンピュータデバイス、タブレット、モバイルデバイス、サーバー、ワークステーション、クラウドコンピューティング装置/システムなどであるがこれらに限定されない)にダウンロードすることを可能にする。有線接続及び/又は無線接続を可能にできる通信ポートは、すぐ上で説明したデータのダウンロードだけでなく、データのアップロード(例えば、カスタムアルゴリズムのアップロード又はソフトウェアアップデートの提供)も可能にできる。
【0213】
[00259] 本明細書中に記載されるように、種々のエネルギー送達アルゴリズム152(例えば、メモリ又はデータストレージ/検索ユニット156に格納されたもの)が、発生器104にプログラム可能であるか、又は予めプログラムしておくことができる。あるいは、プロセッサ154によって実行されるように、エネルギー送達アルゴリズムをデータストレージ/検索ユニットに追加することもできる。これらのアルゴリズム152の各々は、プロセッサ154によって実行されてもよい。
【0214】
[00260] いくつかの実施形態では、エネルギー送達デバイス102は、いくつかの例を挙げると、温度、インピーダンス、抵抗性、キャパシタンス、導電性、pH、光学特性(コヒーレンス、エコー輝度、蛍光)、誘電率もしくは光誘電率及び/又はコンダクタンスを測定するために使用できる1つ以上のセンサを備える。いくつかの実施形態において、1つ以上の電極が、1つ以上のセンサとして作用する。他の実施形態では、1つ以上のセンサは、電極とは別個のものである。センサデータを用いることにより、治療を計画し、治療をモニタし、且つ/又はプロセッサ154を介して、その後、エネルギー送達アルゴリズム152を変更することができる直接的なフィードバックを提供することができる。例えば、インピーダンスの計測は、適用される初回量を決定するだけでなく、さらなるエネルギー送達が必要であるか否かを判定するためにも使用することができる。
【0215】
[00261] いくつかの実施形態において、システム100は、温度、様々な電圧もしくはAC周波数におけるインピーダンス、エネルギー送達パルスの持続時間もしくは他のタイミングの側面、処置電力及び/又はシステムの状態などの入力に動的に応答し、それらの入力に応じて送達を調整及び/又は終了させる自動化された処置送達アルゴリズムを備えることが理解されるであろう。
【0216】
デバイスの実施形態
[00262] エネルギーは、種々のエネルギー送達デバイス102によって送達され得る。通常、エネルギー送達デバイス102は、身体とともに標的組織まで前進させることができる遠位端を有する可撓性の細長いシャフト及びその遠位端の近くに配置された少なくとも一つのエネルギー送達体108を備える。エネルギー送達体108は、PEFエネルギーを標的組織に送達する1つ以上の電極を備える。
【0217】
[00263] 先に述べたように、いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、PEFエネルギーを送達し、分子110は、IV、カテーテル又は針注射などの別個のデバイスによって送達される。図3Aは、針500を通じた標的組織への分子110の直接注射を図示している。標的組織は、細胞Cとして図示されている(正確な縮尺ではない)。注射された分子110に標的組織が浸かることができるように、針500は、標的組織内又はその近くに挿入される。この実施形態において、その後、針500は、抜去され、分子110は、体内分布のために留まる。図3Bを参照すると、送達デバイス102の遠位端は、その後、エネルギー送達体108が標的組織内又はその近くに望ましく位置づけられるように、標的組織に挿入される。この実施形態において、エネルギー送達体108は、単一の電極で構成されている。次いで、波線502によって示されるようにエネルギー送達体108から標的組織にPEFエネルギーが送達される。このPEFエネルギーによって、分子110が細胞Cに移行する。
【0218】
[00264] いくつかの実施形態において、分子110及びエネルギーは、エネルギー送達デバイス102によって送達される。図4Aから図4Bは、針形状を有するエネルギー送達体108を有するエネルギー送達デバイス102を図示している。針形状の先端は、針と同様に貫通することができ、その内腔から分子110を送達することができる。さらに、エネルギー送達体108は、電極として作用する針状体の先端部を除いて、絶縁層504で電気的に絶縁されている。図4Aは、エネルギー送達体108を介した標的組織への分子110の直接注射を図示している。ここでも、標的組織は、細胞Cとして図示されている(正確な縮尺ではない)。注射された分子110に標的組織が浸かることができるように、及び必要に応じてその分子が体内分布のために留まるように、先端部は、標的組織に又はその近くに挿入される。図4Bを参照すると、その後、波線502によって示されているようにエネルギー送達体108から標的組織にPEFエネルギーが送達される。このPEFエネルギーによって、分子110が細胞Cに移行する。
【0219】
[00265] 図5は、エネルギーが局所的に送達される一方で、分子110は限局的に送達される様子を図示している(必要に応じて分子110は、追加的に局所的に送達される)。ここで、分子110は、標的組織領域を養う脈管構造V内に位置づけられたカテーテル501などの別個のデバイスによって送達される。したがって、分子110は、標的組織領域に限局的に送達される。エネルギー送達デバイス102は、異なるアプローチによって標的組織領域に挿入される。ここで、エネルギー送達デバイス102は、針形状を有するエネルギー送達体108を備える。針形状の先端部は、針と同様に貫通することができる。いくつかの実施形態では、その内腔から分子110を送達することができる。この実施形態において、エネルギー送達体108は、電極として作用する針状体の先端部を除いて、絶縁層504で電気的に絶縁されている。先端部は、標的組織に又はその近くに挿入され、次いで、波線502によって示されるようにエネルギー送達体108から標的組織にPEFエネルギーが送達される。このPEFエネルギーによって、分子110が標的細胞内に移行する。
【0220】
[00266] 図6は、遠位端の近くにエネルギー送達体108を有するシャフト106を備えるエネルギー送達デバイス102を図示しており、ここで、エネルギー送達体108は、複数のタイン600を備える。通常は、タイン600は、組織を貫通するように、尖った形状を有する。同様に、タイン600は、通常、シャフト106から横方向外側に伸び、いくつかの実施形態において、タイン600は、シャフト106の周りに円周方向に展開される。いくつかの実施形態において、タイン600は、一列に整列されるなど、シャフト106の側面から展開されることが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、タイン600は、シャフト106から同じ距離だけ伸び、他の実施形態において、タイン600は、さまざまな距離だけ伸びている。いくつかの実施形態において、シャフト106からのタイン600の少なくとも一部の伸長は、調整可能であることが理解されるであろう。
【0221】
[00267] 通常、各タイン600は、そこから分子110及び/又はエネルギーを送達する。いくつかの実施形態において、分子110は、タイン600の先端部601から送達され、他の実施形態において、分子110は、タイン600に沿った送達ポート602から送達される。いくつかの実施形態において、タイン600は、一斉に通電可能であるか(例えば、単一電極として作用するように)、又はタイン600の少なくともいくつかは、個別に通電可能である(例えば、双極対で作用するように、又はグループで作用することを含む選択可能な単一電極として作用するように)。いくつかの実施形態において、1つ以上のタイン600は、異なるエネルギー(例えば、異なるエネルギー送達アルゴリズム152から生成されるエネルギー)及び/又は異なるタイプの分子110を送達する。
【0222】
[00268] この実施形態において、シャフト106は、第1のセクション106a、第2のセクション106b及び第3のセクション106cという3つのセクションを有する。図6に図示されているように、第1のセクション106aは、第2のセクション106bより遠位であり、第2のセクション106bは、第3のセクション106cより遠位である。各セクション106a、106b、106cは、種々の異なる電極の組み合わせを作るように、絶縁されていてもよいし、絶縁されていなくてもよい。これにより、様々な電場の形状が可能になり得る、且つ/又は電場を所望の方向に向けられ得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのタイン600の少なくとも一部は、そこから発せられるエネルギーを方向づけるように絶縁されていることも理解されるであろう。全体的に見て、タイン600は、単一設置のエネルギー送達デバイス102によって、単一の針を備えるエネルギー送達デバイス108を有するデバイス102よりも大きな体積の標的組織に分子110及び/又はエネルギーを送達できることが多い。
【0223】
[00269] いくつかの実施形態において、第1のセクション106aは、エネルギー送達体108として作用し、1つ以上のタイン600も、エネルギー送達体108として作用する。異なるエネルギー送達体108の各々は、同じタイプのエネルギーを送達してもよいし、異なるタイプのエネルギーを送達してもよく、同様に、エネルギー送達体108は、グループで作用してもよい。いくつかの実施形態において、タイン600は、第1のセクション106aを越えて伸びる。いくつかの実施形態において、タイン600は、シャフト106から(第1のセクション106aを基準として)同じ距離だけ伸び、他の実施形態において、タイン600は、異なる距離(第1のセクション106aを基準として)だけ伸びている。いくつかの実施形態において、第1のセクション106aは、エネルギー送達体108として作用し、1つ以上のタイン600は、分子110の送達のための導管として作用する。
【0224】
[00270] 図7は、標的組織を管腔内的に処置するように構成されたかご形を有するエネルギー送達体108を備えるエネルギー送達デバイス102を図示している。ここで、標的組織は、身体内腔の壁W、特に身体内腔の周りを周方向に少なくとも部分的に包む壁の近くに配置された細胞Cを含む。この実施形態において、エネルギー送達体108は、電極として働く螺旋状のかごを形成する複数のワイヤー又はリボン120で構成されている。いくつかの実施形態において、エネルギー送達体108は、自己拡張型であり、折り畳まれた配置で標的化領域に送達される。この折り畳まれた配置は、例えば、エネルギー送達体108にシースを被せることによって達成することができる。シースを収縮させること、又はシースからエネルギー送達体108を前進させることにより、エネルギー送達体108の自己拡張が可能になる。他の実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、エネルギー送達体操作ノブを有するハンドルを備え、ここで、そのノブの動きが、かご形電極の拡張又は収縮/折り畳みを引き起こす。かご形電極は、身体内腔の壁Wの少なくとも一部に接触するように、身体内腔内又は通路(天然に存在するもの又は身体内で作られるもの)内で拡張可能である。分子110は、図7に図示されているように、かご形電極内などの、デバイス102のシャフト106に沿った遠位端ポート510及び/又は様々なサイドポート512を通じてなど、エネルギー送達デバイス102から送達される。標的組織は、分子110に浸かることができ、必要に応じて、分子110は、体内分布のために留まることができる。次いで、波線502によって示されるようにエネルギー送達体108から標的組織にPEFエネルギーが送達される。このPEFエネルギーによって、分子110が細胞Cに移行する。
【0225】
[00271] 図8は、標的組織を管腔内的に処置するように構成された形状を有するエネルギー送達体108を備えるエネルギー送達デバイス102の別の実施形態を図示している。この実施形態において、エネルギー送達体108は、少なくとも2つの突起514を備え、各突起は、内腔の内側の壁Wに接触するように半径方向外向きに伸びている。単一の突起が存在してもよいが、通常は2つの突起が、実質的に対抗する力を内腔の壁にかけることが理解されるであろう。図8の実施形態では、3つの突起部514が存在している。いくつかの実施形態において、各突起514は、ワイヤー又はリボンによって形成されており、それは、電極として作用し、送達デバイス102の縦方向軸又はシャフト106から半径方向外向きに曲がるか又は弓なりになる。この実施形態において、突起514は、1つの電極として一斉に作用する。しかしながら、他の実施形態では、1つ以上の突起514が、複数の電極として(例えば、1つ以上の双極対として)作用するように、独立して通電可能である。突起514は、電極として作用するように種々の好適な材料(例えば、ステンレス鋼、ばね鋼又は他の合金)で構成されてもよく、例えば、丸いワイヤー又はリボンであり得る。いくつかの実施形態において、突起514の一部は、ポリマー(例えば、PET、ポリエーテルブロックアミド、ポリイミド)などの絶縁のセグメントで絶縁されている。例えば、いくつかの実施形態において、エネルギー送達体108の近位端及び遠位端の少なくとも一部は、エネルギーを壁Wに向かって横方向に向けるように絶縁されている。
【0226】
[00272] いくつかの実施形態において、図8のエネルギー送達体108は、自己拡張型であり、折り畳まれた配置で標的化領域に送達される。突起は、身体内腔の壁Wの少なくとも一部に接触するように、身体内腔内又は通路(天然に存在するもの又は身体内で作られるもの)内での拡張の間、外向きに弓なりになる。分子110は、図8に図示されているように、エネルギー送達体108内のポート516を介してなど、エネルギー送達デバイス102から送達される。標的組織は、分子110に浸かることができ、必要に応じて、分子110は、体内分布のために留まることができる。次いで、波線502によって示されるようにエネルギー送達体108から標的組織にPEFエネルギーが送達される。このPEFエネルギーによって、分子110が細胞Cに移行する。
【0227】
[00273] 図9は、標的組織を管腔内的に処置するように構成された形状を有するエネルギー送達体108を備えるエネルギー送達デバイス102の別の実施形態を図示している。この実施形態において、エネルギー送達体108は、電極520をその上に装着しているか又はその中に組み込んでいる拡張可能な部材518(例えば、可膨張性バルーン)を備える。エネルギー送達体108は、折り畳まれた配置で標的化領域に送達される。この実施形態において、電極520は、比較的広い表面積及び薄い断面を有するパッドの形状を有する。そのパッド形状は、ワイヤー形状などの他の形状よりも広い表面積を提供する。各電極520は、電極520を発生器と電気的に接続している伝導ワイヤー522と接続されている。この実施形態では、3つの電極520が見えるが、拡張可能な部材518の周囲に追加の電極が存在してもよいことが理解されるであろう。任意の数の電極520が存在してよく、それらは、単一の電極として作用するか又は独立してもしくは組み合わせて作用することが理解されるであろう。電極520の配置及び/又は電極520の選択的な通電によって、特定の標的位置にエネルギーが向けられることがある。いくつかの実施形態において、電極520は、拡張可能な部材518に取り付けられた又は拡張可能な部材518に形成された、可撓性の回路パッド又は他の材料で構成されている。いくつかの実施形態において、電極520は、拡張可能な部材518の外周の周りに放射状に分布している、且つ/又は拡張可能な部材518の長さに沿って縦方向に分布している。このような設計により、展開及び収縮の質の改善が促され、ユーザーの操作及びイントロデューサの管腔との適合性が容易になり得る。
【0228】
[00274] 拡張可能な部材を拡張する際、1つ以上の電極520は、内腔の壁Wの少なくとも一部に接触するように位置づけられる。分子110は、図9に図示されているように、遠位端ポート510などを介して、エネルギー送達デバイス102から送達される。標的組織は、分子110に浸かることができ、必要に応じて、分子110は、体内分布のために留まることができる。次いで、波線502によって示されるようにエネルギー送達体108から標的組織にPEFエネルギーが送達される。このPEFエネルギーによって、分子110が細胞Cに移行する。
【0229】
[00275] 図10は、エネルギー送達デバイス102の別の実施形態を図示している。ここで、エネルギー送達体108は、内腔の内側の壁Wに接触するように構成された指先の形状を有する。この実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、細長いシャフト106及びその遠位先端部に配置された指先電極530を有する。指先電極530は、標的組織細胞Cの近くの内腔壁Wの一部分に接して位置づけ可能である。分子110は、任意の好適な方法によって、例えば、全身的、限局的又は局所的に、例えば、別個のデバイス又はエネルギー送達デバイス102を通じた注射によって、送達され得る。図10は、指先電極530を介した分子110の送達を図示している。指先電極530に通電すると、波線502によって示されるように、PEFエネルギーが細胞Cに向けられる。このPEFエネルギーによって、分子110が細胞Cに移行する。
【0230】
[00276] いくつかの実施形態において、PEFエネルギーは、標的組織と接触している導電性流体(例えば、血液、食塩水など)に送達されることが理解されるであろう。したがって、エネルギーは、移行のために、その導電性流体を通過して標的組織に至ることができる。他の実施形態において、導電性流体へのエネルギーの送達は、血液中の白血球への移行など、流体自体の細胞への遺伝物質の移行を促進する。
【0231】
分子
[00277] 先に述べたように、デバイス、システム及び方法は、分子110、特に小分子及び/又は高分子を身体内の細胞(例えば、それらの分子の機能から直接、治療的恩恵を受ける標的細胞)に送達するために提供される。このような治療的恩恵は、種々の障害の処置における恩恵であり得る。
【0232】
[00278] いくつかの実施形態において、その障害には、血友病(例えば、血友病A又は血友病B)、フォン・ヴィルブランド病、第XI因子欠乏症、フィブリノーゲン障害又はビタミンK欠乏症などの凝固障害が含まれる。その凝固障害は、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、第XI因子、第XIII因子もしくはそれらの翻訳後修飾に関与する酵素、又はビタミンK代謝に関与する酵素をコードする遺伝子における変異を特徴とし得る。いくつかの実施形態において、その凝固障害は、FGA、FGB、FGG、F2、F5、F7、F10、F11、F13A、F13B、LMAN1、MCFD2、GGCX又はVKORC1における変異を特徴とする。
【0233】
[00279] いくつかの実施形態において、障害には、神経障害、例えば、神経変性疾患が含まれる。いくつかの実施形態において、神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病又は多発性硬化症が含まれる。いくつかの実施形態において、神経変性疾患には、中枢神経系(CNS)の自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症、脳脊髄炎、腫瘍随伴症候群、自己免疫性内耳疾患又は眼球クローヌスミオクローヌス症候群が含まれる。神経障害は、脳梗塞、脊髄傷害、中枢神経系障害、精神神経障害又はチャネル病(例えば、癲癇又は片頭痛)であり得る。神経障害は、不安障害、気分障害、小児障害、認知障害、統合失調症、物質関連障害又は摂食障害であり得る。いくつかの実施形態において、神経障害は、脳梗塞、脳卒中、外傷性脳損傷又は脊髄傷害の症状である。
【0234】
[00280] いくつかの実施形態において、障害には、リソソーム性蓄積症、例えば、テイ・サックス病、ゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病、ニーマン・ピック病又はムコ多糖症(MPS)が含まれる。
【0235】
[00281] いくつかの実施形態において、障害には、心血管障害、例えば、変性心疾患、冠状動脈疾患、虚血、狭心症、急性冠症候群、末梢血管疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患又はアテローム性動脈硬化症が含まれる。心血管障害は、虚血性心筋症、伝導疾患及び先天性欠損からなる群より選択される変性心疾患であり得る。
【0236】
[00282] いくつかの実施形態において、障害には、免疫障害、例えば、自己免疫障害が含まれる。自己免疫障害は、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、狼瘡、脳脊髄炎、腫瘍随伴症候群、自己免疫性内耳疾患、又は眼球クローヌスミオクローヌス症候群、自己免疫性肝炎、ブドウ膜炎、自己免疫性網膜症、視神経脊髄炎、乾癬性関節炎、乾癬、重症筋無力症、慢性ライム病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、末梢神経障害、線維筋痛症、橋本甲状腺炎、潰瘍性大腸炎又は川崎病であり得る。
【0237】
[00283] いくつかの実施形態において、障害には、肝疾患、例えば、肝炎、アラジール症候群、胆道閉鎖症、肝臓癌、肝硬変、嚢胞性疾患、カロリ症候群、先天性肝線維症、脂肪肝、ガラクトース血症、原発性硬化性胆管炎、高チロシン血症、糖原病、ウィルソン病又は内分泌不全が含まれる。肝疾患は、肝臓癌、例えば、肝細胞過形成、肝細胞腺腫、限局性結節性過形成又は肝細胞癌であり得る。
【0238】
[00284] いくつかの実施形態において、障害には、癌、例えば、血液癌(例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫及び非ホジキンリンパ腫)又は固形組織癌(例えば、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、胃癌(gastric cancer)、食道癌、胃癌(stomach cancer)、腸癌、直腸結腸癌、膀胱癌、頭頸部癌、皮膚癌又は脳癌)が含まれる。
【0239】
[00285] いくつかの実施形態において、障害には、劣性遺伝の障害が含まれる。いくつかの実施形態において、その障害は、メンデル遺伝性障害である。
【0240】
[00286] いくつかの実施形態において、障害には、網膜ジストロフィー(例えば、メンデル遺伝性網膜ジストロフィー)である眼障害が含まれる。網膜ジストロフィーは、レーバー先天性黒内障(LCA)、シュタルガルト病、弾性線維性仮性黄色腫、杆体錐体ジストロフィー、滲出性硝子体網膜症、ジュベール症候群、CSNB-1C、加齢黄斑変性症、網膜色素変性症、スティックラー症候群、小頭症及び網脈絡膜症、網膜色素変性症、CSNB2、アッシャー症候群又はワーグナー症候群を含み得る。
【0241】
[00287] いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法によって送達される分子110には、合成DNAベクター、例えば、「Synthetic DNA Vectors and Methods of Use」と題する2019年3月15日出願の公開番号WO2019178500(あらゆる目的のためにその全体が本明細書中に援用される)に記載されているものが含まれる。このような合成DNAベクターには、非ウイルスDNAベクター、例えば、AAVベクターと類似の様式で静止細胞(例えば、有糸分裂後の細胞)への長期的な形質導入をもたらすベクターが含まれる。いくつかの実施形態において、このような非ウイルスDNAベクターは、等温ローリングサークル増幅及びライゲーション媒介性環状化(例えば、細菌の発現及び部位特異的組換えとは対照的に)によって環状のAAV様DNAベクター(例えば、DDエレメントなどの末端反復配列を含むDNAベクター)を合成的に生成するインビトロ(例えば、無細胞)の系による開発である。このような開発は、環状のAAV様DNAベクターの作製における拡張可能性及び製造効率の向上を可能にする。さらに、これらの方法によって作製されるベクターは、プラスミドDNAベクターに関連する問題、例えば、Lu et al.,Mol.Ther.2017,25(5):1187-98(その全体が参照により本明細書中に援用される)において論じられている問題の多くを克服するように設計されている。例えば、CpGアイランド及び/又は細菌プラスミドDNA配列(例えば、RNAPII停止部位)の存在を排除する又は減少させることによって、転写サイレンシングを低減する又は無くすことができ、異種遺伝子の残留性が向上する。さらに、免疫原性成分(例えば、細菌のエンドトキシン、DNA、RNA、又はCpGモチーフなどの細菌シグネチャ)の存在を排除することによって、宿主免疫系を刺激するリスクが低減される。このような利点は、網膜ジストロフィー(例えば、メンデル遺伝性網膜ジストロフィー)などのある特定の障害の処置において特に有益である。
【0242】
[00288] したがって、このようなベクターには、(i)細菌プラスミドDNA配列(例えば、RNAPII停止部位、複製開始点及び/又は耐性遺伝子)及び他の細菌シグネチャ(例えば、免疫原性CpGモチーフ)を実質的に欠いている、且つ/又は(ii)完全に試験管内で合成及び増幅され得る(例えば、細菌における複製が不要であり、例えば、細菌の複製開始点及び細菌の耐性遺伝子が不要である)、合成DNAベクターが含まれる。いくつかの実施形態において、これらのベクターは、AAVベクターに特徴的なダブルD(DD)エレメントを含む。これにより、ウイルスそのものを必要とすることなく、AAVウイルスDNAのように挙動する(例えば、転写サイレンシングが低く、残留性が高い)異種遺伝子を有するDNAベクターを標的細胞に形質導入することが可能になる。
【0243】
[00289] いくつかの実施形態において、分子110には、核酸ベースの分子、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、マイクロRNA(miRNA)、デコイDNA、リボザイム、モルホリノ及びプラスミドが含まれる。低分子阻害性RNA(siRNA)を使用したRNA干渉を用いることにより、siRNAとそれぞれのmRNA分子との間の配列相同性が検出されると活性化される細胞ヌクレアーゼによってmRNAレベルをダウンレギュレートすることができる。ゆえに、いくつかの実施形態では、siRNAを用いることにより、既知の遺伝的背景に関連する様々な疾患の病原に関与する遺伝子をサイレンシングする。いくつかの実施形態において、分子110には、遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシスを有する人々における多発ニューロパチーの処置のためにFDAが承認したsiRNAベースの薬物であるパティシランが含まれる。siRNAが機能するためには、そのsiRNAが、目的の標的細胞内に存在しなければならない。これは、標的細胞が存在する身体内の組織までsiRNAを輸送しなければならないこと、及びそれがその後、細胞膜を通過しなければならないことを意味する。これらの要件は、一般に、所望の位置へのsiRNAの「送達」と称される。siRNAは、負に帯電した分子であり、細胞の外膜を自然には通過しないので、従来の送達方法では送達が困難であることが判明している。本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法は、これらの送達の困難を克服し、標的細胞にsiRNAを送達する。
【0244】
[00290] いくつかの実施形態において、分子110には、マイクロRNA(miRNA)が含まれる。miRNAは、長さが約22ntの小さな非コードRNAの1クラスであり、その標的mRNAを分解すること及び/又はその翻訳を阻害することによって転写後レベルで遺伝子発現の制御に関与する。
【0245】
[00291] いくつかの実施形態において、分子110には、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が含まれる。ASOは、配列特異的様式で標的RNAにハイブリダイズする合成DNAオリゴマーである。いくつかの実施形態において、ASOは、遺伝子発現を阻害するため、前駆体メッセンジャーRNAのスプライシングを調節するため、又はマイクロRNAを不活性化するために送達される。ホスホロチオエート、2’-O-メチルRNA又はロック核酸などの化学修飾ヌクレオチドは、ヌクレアーゼ抵抗性を付与するので、ASOを核酸分解に対して安定化させるために、それらを使用してもよい。いくつかの実施形態において、ASOは、送達、特異性、親和性及びヌクレアーゼ抵抗性の強化が最適化された状態且つ低毒性で送達される。
【0246】
[00292] ASOの例としては、(1)AIDS患者のCMV網膜炎の処置用などのホミビルセン、(2)家族性高コレステロール血症の処置用などのミポメルセン、(3)肝静脈閉塞病の処置用などのデフィブロチド、(4)デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置用などのエテプリルセン、(5)血管新生加齢黄斑変性症の処置用などのペガプタニブ、及び(6)脊髄性筋萎縮症の管理用などのヌシネルセンが挙げられる。
【0247】
[00293] いくつかの実施形態において、分子110には、遺伝子発現を改変して遺伝子機能をノックダウンするために使用されるオリゴマー分子の1種であるホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)(別名モルホリノ)などのオリゴマー分子が含まれる。モルホリノは、通常、25塩基長であり、標準的な核酸塩基対形成によってRNA又は一本鎖DNAの相補的配列に結合する。モルホリノオリゴは、その選択されたDNA標的部位又はRNA標的部位に特異的に結合して、その部位への細胞成分のアクセスを阻止する。この特性を利用して、翻訳の阻止、スプライシングの阻止、マイクロRNA(miRNA)又はその標的の阻止及びリボザイム活性の阻止が可能である。その分子構造は、ホスホロジアミデート基を介して連結されたメチレンモルホリン環の骨格に付着したDNA塩基を含む。モルホリノオリゴの無電荷骨格は、酵素によって認識されないので、ヌクレアーゼに対して完全に安定である。いくつかの実施形態では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を引き起こすいくつかの変異の処置に使用され得るモルホリノベースの薬物であるエテプリルセンが送達される。他の実施形態では、モルホリノベースの薬物であるゴロディルセン(golodirsen)が、DMDの処置のために送達される。
【0248】
[00294] いくつかの実施形態において、分子110には、タンパク質酵素の作用と類似の、遺伝子発現におけるRNAスプライシングを含む特定の生化学反応を触媒する天然に存在するRNA分子であるリボザイム(リボ核酸酵素)が含まれる。いくつかの実施形態において、分子110には、疾患を引き起こすmRNAの特異的切断を通じてタンパク質の産生を阻害するように設計されたものなどの合成リボザイムが含まれる。リボザイム治療の別の応用としては、RNAベースのウイルス、例えば、HIV、C型肝炎ウイルス、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)、アデノウイルス並びにインフルエンザA及びBウイルスの阻害が挙げられる。
【0249】
[00295] いくつかの実施形態において、分子110には、リボ核タンパク質(RNP)が含まれる。RNPは、RNAとRNA結合タンパク質との間に形成される複合体である。例えば、精製されたCas9タンパク質をガイドRNAと組み合わせることにより、迅速且つ高効率なゲノム編集のために細胞に送達されるRNP複合体を形成することができる。RNPは、細胞内に短時間留まり、用量も最小限であるため、他の方法と比べて毒性が低く、オフターゲット部位での編集が少ない。また、RNP複合体は、DNAを含まないので、挿入性の突然変異誘発のリスクもない。
【0250】
[00296] いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法によって送達される分子110には、CRISPRと呼ばれる、クラスター化して規則的な配置の短い反復回文配列リピート(CRISPR)DNA配列が含まれる。これらのDNA配列は、もともと細菌において観察されたものであり、リピートの間に、ウイルス配列と完全に一致する「スペーサー」DNA配列が存在する。その後、ウイルスに感染すると、細菌がこれらのDNAエレメントをRNAに転写することが発見された。このRNAは、ヌクレアーゼ(DNAを切断するタンパク質)をウイルスDNAに導いてそれを切断することにより、ウイルスから保護する。このヌクレアーゼは、「CRISPR関連」を意味する「Cas」と命名されている。
【0251】
[00297] 2012年に、研究者らは、Casヌクレアーゼ(Cas9が最初に使用された)を任意のDNA配列に導くRNAを構築できることを実証した。このいわゆるガイドRNAは、その1つの配列にのみ特異的であるように作製することもできることから、DNAがゲノムの他のどこでも切断されず、その部位で切断されるという可能性を改善する。さらなる試験により、ヒト細胞を含むあらゆるタイプの細胞において、このシステムがかなりうまく働くことが明らかになった。
【0252】
[00298] CRISPR/Casを用いると、標的化された遺伝子を破壊することができ、混合物にDNA鋳型を加えれば、所望の正確な点に新しい配列を挿入することができる。この方法を用いて、特定のゲノム変化を有する動物モデルが開発された。また、嚢胞性線維症などの既知の変異を有するヒト疾患の場合、その変異を訂正するDNAを挿入することが理論上は可能である。しかしながら、ウイルスベクターなどの従来の方法を用いて、成熟した細胞にCRISPR/Cas材料を大量に送達することは困難であった。しかしながら、本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法は、CRISPR/Cas材料を含む分子110を細胞に送達することを可能にして、これらの困難を克服する。
【0253】
[00299] いくつかの実施形態において、分子110には、組換えタンパク質が含まれる。このような治療用タンパク質は、組換えDNA技術を用いて、癌、自己免疫/炎症、感染病原体への曝露及び遺伝性障害をはじめとした多種多様の疾患を処置するために開発されてきた。
【0254】
[00300] いくつかの実施形態において、分子110には、タンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)が含まれる。PROTACは、特定の望まれないタンパク質を除去することができる小分子である。PROTACは、共有結合的に連結された2つのタンパク質結合分子で構成されており、1つは、E3ユビキチンリガーゼと係合することができる分子であり、もう1つは、標的タンパク質と結合する分解用の分子である。E3リガーゼが標的タンパク質にリクルートされると、ユビキチン化が生じ、その後、プロテアソームによって標的タンパク質が分解される。現在、PROTACは、癌、ウイルス感染症、免疫障害及び神経変性疾患をはじめとした様々な疾患に関連する種々のタイプの標的タンパク質の分解において首尾よく使用されている。PROTACは、薬剤耐性の克服及び従来は「薬にならない」タンパク質標的の分解など、癌治療における様々な利点を有する。現在、従来の創薬技術を用いることによって、公知のタンパク質標的のうち20~25%しか標的化することができない。触媒活性を欠くタンパク質及び/又は触媒非依存的機能を有するタンパク質は、依然として「薬にならない」標的とみなされている。さらに、転写因子、クロマチン調節因子及び低分子量GTPaseなどの大量の腫瘍性タンパク質が、薬学的に直接標的にすることが困難である。PROTACは、内在性のE3リガーゼ及びユビキチンプロテアソームシステムを乗っ取ることによって、目的のタンパク質(通常、腫瘍性タンパク質)を分解のために標的化するように設計される。経口PROTAC薬の一例は、分解のためにアンドロゲンレセプターを標的化するために用いられるARV-110であり、2019年に転移性去勢抵抗性前立腺癌患者の処置における第I相臨床試験の承認を最近FDAから得た。
【0255】
[00301] いくつかの実施形態において、分子110には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が含まれる。機構的に、1対のZFNモノマーは、通常、ヘッドトゥーヘッド配置で、逆の極性のDNA鎖と会合することによって、DNAに結合しなければならない。これは、DNAのDSB(二本鎖切断)を触媒する。TALENは、FokIヌクレアーゼドメインと融合した、モジュール式のTALEリピートから構成されるDNA結合ドメインで構成されている。各TALEリピートは、33~35アミノ酸から構成され、単一のヌクレオチドを認識する。特異性は、反復可変二残基(Repeated Variable Diresidue)(RVD)として知られる2つの超可変残基によって決定される。実際に、TALEリピートは、ヌクレオチドごとに所望のDNA配列と対になるように、かなり端的なやり方でアセンブルすることができる。ZFNと同様に、DSBを導入するためには、1対のTALENモノマーが必要である。ZFNは、Gリッチ配列を好むのに対し、TALENは、通常、厳密にT塩基で始まる低G含量の部位に結合するので、ZFN及びTALENは、標的化可能なDNA配列の範囲が限定されている。
【0256】
[00302] CRISPR/Cas9システムは、目的の配列に相補的なsgRNAを設計し、合成すればよいので、より柔軟であり、通常、標的化がより容易且つ高速であることが理解されるであろう。複数の配列を同時に標的化することができ、タンパク質の最適化も必要ない。その特徴から、場合によっては、CRISPR/Cas技術は、ZFN及びTALENよりも好ましい。
【0257】
体内分布
[00303] 身体内における分子移行の重要な特徴には、分子の体内分布がある。分子を細胞に首尾良く移行させるためには、移行のためのエネルギーの送達と関連して、分子が、所望の時点において身体内の所望の位置に所望の濃度で存在すべきである。
【0258】
[00304] いくつかの実施形態において、これは、専用の輸液法を用いて達成される。いくつかの場合において、輸液法は、ウイルスベースの遺伝子ベクター又はインビトロの研究室手法において通常使用されるよりもかなり高い濃度の分子110を標的細胞の近傍に提供するように設計されることが理解されるであろう。これは、種々の方法で達成され得る。場合によっては、標的細胞は、高濃度の分子を含む溶液とともに注入される。例えば、いくつかの実施形態において、溶液は、ウイルスベースの遺伝子ベクター又はインビトロの研究室手法において使用される分子の1~1000倍、例えば、100~500倍の分子を含む。いくつかの実施形態において、1~5mg/mlの分子が用いられる。これは、0.5~2mg/mlというより一般的な濃度とは大きく異なる。他の実施形態では、かなり大きな体積の溶液が標的細胞の近傍に提供される。これにより、送達される溶液の濃度を上げることなく、標的位置における分子の量を増加させることができる。例えば、ウイルスベースの遺伝子ベクター又はインビトロの研究室手法において使用される量の5~50倍、例えば、10~25倍の体積の溶液が使用され得る。いくつかの実施形態において、0.5~5mlの分子が用いられる。これは、1~2mlというより一般的な体積とは大きく異なる。いくつかの実施形態では濃度の上昇と体積の増加の両方が用いられ得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、標的細胞の近傍における溶液の体積の増加は、標的細胞の周囲又は近くの複数の位置に溶液を送達することによって達成される。いくつかの場合において、これは、図6に図示されているような、複数のタインを備えるエネルギー送達デバイス102の使用によって達成される。このような実施形態において、溶液は、標的組織領域を取り囲むように、個々のタインを通じて様々な位置に送達され得る。例えば、これらの位置は、標的組織領域から0.5mm~5cm、特に1~25mm、より詳細には5~20mmであり得る。いくつかの実施形態では、異なる濃度の溶液、異なる体積の溶液及び/又は異なるタイプの分子を含む溶液などの異なるタイプの溶液が、異なるタインを通じて送達されることが理解されるであろう。
【0259】
[00305] いくつかの実施形態において、分子110又は溶液の他の構成要素は、身体内の標的細胞への移行のための利用可能性を高めるように最適化される。例えば、いくつかの実施形態において、分子は、その溶解及びゆえに分布を改善するように変更される。いくつかの実施形態において、これらの分子には、細胞への移行を助け得る、直鎖化DNA、c3DNA又はスーパーコイル化DNAが含まれる。他の実施形態において、そのDNAは、特定の標的細胞集団に向かって(例えば、細胞上の抗原/タンパク質に向かって)引き寄せられるものなどの標的化型付加物とコンジュゲートされる。通常、裸のプラスミドDNAは、高い負の正味電荷、非常に大きな分子サイズ及び酵素分解に対する感受性のため、細胞取り込みは最小限である。しかしながら、コンジュゲーション及び類似の方法が、これを軽減することができる。場合によっては、脂質及びポリマーナノ粒子が、ヌクレアーゼ分解からの保護及び負電荷の中和のために、陽イオン基を利用してDNAプラスミドを埋め、凝縮させる。同様に、金ナノ粒子を用いることにより、負のリン酸骨格と電荷相互作用を生じさせる、金表面にコンジュゲートされたPAMAM(ポリアミドアミン)ポリマーを通じて、DNAプラスミドをヌクレアーゼ活性から保護することができる。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドをプラスミドの特定の部位に組み込んで、ナノ粒子の付着に使用できる特定のコンジュゲーションポイントを作り出す。その後、それらのナノ粒子は、様々なポリマーの多数の相互作用のプラットフォームとなり、細胞取り込みのためにアプタマーを特異的に標的化する。例えば、CD44-アプタマーとコンジュゲートしたプラスミド/ナノ粒子複合体は、細胞膜上にCD44を高発現している乳癌細胞へのプラスミドの標的化送達を促進する。プラスミドを特定の細胞型に向けるために、様々なアプタマーを使用することができる。
【0260】
[00306] いくつかの実施形態において、遺伝物質又は他の構成要素は、標的組織領域内に留まる能力を増大させる添加物と組み合わされる。例えば、いくつかの実施形態において、DNAなどの遺伝物質が、その遺伝物質の細胞内への通過を補助するポリエチレングリコールなどのポリマーと組み合わされる。他の実施形態では、遺伝物質又は他の構成要素は、その溶解を改善するか、又は組織の体積中に広がる能力を改善する溶液、例えば、界面活性剤、グリコール、ジメチルスルホキシド、リポフェクタミン、カチオン性鎮痛薬などのような流体の表面張力を変更する溶液と組み合わされる。
【0261】
[00307] いくつかの実施形態において、分子110の体内分布は、身体の局部領域内での流体の血管外遊出の誘導を用いることにより改善される。このような血管外遊出をもたらすデバイス、システム及び方法は、特定のタイプのパルス電場エネルギー又は他の好適なエネルギータイプなどのエネルギーの送達を含み得る。このような血管外遊出は、通常、近くの脈管構造、リンパ管、又はエネルギーを受け取る他の組織からのものである。場合によっては、血管外遊出は、毛細血管から周囲組織に流体が漏れ出す浮腫又は浮腫様のものである。浮腫は、細胞内(細胞性浮腫)又は間質に分布するコラーゲン-ムコ多糖マトリックス内(間質性浮腫)のいずれかの組織内に異常な体積の流体が蓄積するとき生じる。本明細書中に記載される血管外遊出の方法は、細胞外マトリックスの膨張又は間質性浮腫に焦点を当てている。自然発症型の間質性浮腫は、微小血管壁を越えて作用する圧力(静水圧及び膠質浸透圧)の異常な変化、透水係数及び血漿タンパク質の浸透圧反射係数の変化として現れる内皮壁の流体流束及び溶質流束に対するバリアを構成する分子構造の変化、又はリンパ流出系の変化の結果として生じ得る。しかしながら、本明細書中に記載される方法は、専用のエネルギーの送達によって浮腫又は血管外遊出を誘導する。
【0262】
[00308] 場合によっては、血管からの流体の血管外遊出によって、静脈内に送達された分子が標的組織領域に運ばれる。他の場合では、血管から流体が漏れ出し、注射などによって標的組織部位に限局的又は局所的に分子が送達される。さらに他の場合では、分子の送達なしで血管外遊出が単独で用いられる。処置療法の改善例としては、いくつかの例を挙げると、標的組織をコンディショニングすること、分子の利用可能性を高めること、分子の利用可能性の均一性を高めること、自然に制限されている標的組織へのアクセスを増大させること、処置領域をより大きくすること、及び潜在的な望ましくない副作用を低減させることが挙げられるが、これらに限定されない。
【0263】
[00309] 図11Aから図11Cは、血管外遊出手順の実施形態の様々な段階を図示している。この実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、細長いシャフト106、及び細長いシャフト106の遠位端の近くに配置されたエネルギー送達体108を備える。この実施形態において、エネルギー送達体108は、単一の電極で構成されており、遠位先端部101は、標的組織領域Tにおける組織又はその近くの組織の一部を貫通するように構成されている。他の実施形態において、エネルギー送達体108は、非侵襲的な先端部を有しており、組織を貫通することができる別個の器具を介して送達されることが理解されるであろう。図11Aに図示されているように、エネルギー送達体108は、毛細血管などの血管BVの近くの標的組織領域T内に位置づけられる。この実施形態において、分子110は、IV投与などによって、血管BVを通じて標的組織領域Tに送達される。このような分子110は、遺伝子移入のための遺伝物質などの提供される処置に特有のものである。
【0264】
[00310] 図11Aは、ほんのわずかな分子110が、標的組織領域に入り込んだが、かなりの量が血管BV内に残っていることを示している。次いで、図11Bに図示されているように、エネルギー送達体108から標的組織領域に少なくとも1回分のコンディショニングエネルギーが、波線113によって示されているように送達される。通常、コンディショニングエネルギーは、専用の形態のPEFエネルギーを含むが、他のタイプの専用のエネルギーが、所望の血管外遊出を引き起こすために使用され得ることが理解されるであろう。この実施形態では、専用のPEFエネルギーは、透水係数及び血漿タンパク質の浸透圧反発係数に影響を及ぼすことなどによって、血管BV内の内皮細胞の流体バリアの機能的完全性を可逆的に破壊する。この破壊により、そのバリアが血液から周囲組織の間質への流体及び高分子の移動を制限しにくくなる。これにより、図11Cに図示されているように、血管BVからの分子110を含む流体及び溶質が血管外遊出を起こし、標的組織領域に溢れ出る。PEFエネルギーは、標的化領域における細胞の破壊を最小限に抑えつつ、通常、毛細血管を破壊する。
【0265】
[00311] この血管外遊出のプロセスは、5秒、又は30秒から15分などの時間をかけて生じることがある。ゆえに、場合によっては、血流中の分子110の最高濃度及び利用可能性を確保するために、コンディショニングPEFエネルギーを送達する前に、脈管構造への分子110の送達を開始することが望ましい。血管外遊出及び浮腫の発生期間は、標的にされる器官、使用されるパラメータ及び治療の具体的な目的をはじめとした種々の因子に応じて長さが異なる場合がある。例えば、高い全身濃度で提供されない分子110は、治療手順の前に最大の血管外遊出効果を必要とする可能性がある。同様に、非常に生物学的に利用可能な分子110は、治療手順の前に、より少ない血管外遊出効果を必要とする可能性がある。通常、これらの血管BVを通過する分子110の濃度が最も高い期間中に血管BVが最も漏出性となることが望ましく、したがって、標的とされる組織領域の間質環境へ分子110の血管外遊出が最大になる。
【0266】
[00312] 血管外遊出の誘導により、種々の利点がもたらされる。利点の例としては、より大きな処置領域を作ること、処置領域が治療的処置をより受け入れられるようにコンディショニングすること、分子の利用可能性を高めること、分子の利用可能性の均一性を高めること、自然に制限されている位置への分子の送達(例えば、血液脳関門を越えた送達)を増加させること、処置の潜在的な副作用の可能性を低下させることが挙げられるがこれらに限定されない。
【0267】
[00313] この実施形態において、分子110は、標的処置領域の細胞に取り込まれるように意図されている。いくつかの実施形態において、誘導された血管外遊出のみで、標的組織領域の細胞による分子110の取り込みを増加させるのに十分である。他の実施形態において、分子110の取り込みは、本明細書中でさらに詳細に説明されるように、治療用エネルギーの送達によってさらに促進される。いくつかの実施形態において、治療用エネルギーは、コンディショニングPEFエネルギーとは異なる波形を有するPEFエネルギーで構成されることが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、治療用PEFエネルギーは、標的組織領域内に位置づけられた同じエネルギー送達体108を用いて送達されることが理解されるであろう。他の実施形態では、別のデバイスを用いて、治療用エネルギーが送達される。
【0268】
[00314] いくつかの実施形態において、コンディショニングPEFエネルギーは、単相性の長時間の(500μsより大きい)パルスを含む波形を有する。図12Aは、血管外遊出を誘導するために使用される発生器104のエネルギー送達アルゴリズム152によって提供されるそのようなPEFエネルギーの波形の一例を図示している。この実施形態において、波形は、それぞれがパルス幅402及び振幅(設定電圧404によって決定される)を有する一連のパルス400で構成されており、各パルス400は、ディレイ406によって隔てられている。この実施形態において、このパルス幅は、長時間とみなされ、500マイクロ秒を超える。この実施形態において、パルス400間のディレイ406は、10μs~10sの範囲内、例えば、1ms、500ms、1秒、2秒、5秒である。図12Aには、2つのパルス400が図示されているが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10パルス又は10を超えるパルスでコンディショニングが達成されてもよい。いくつかの実施形態において、このPEFエネルギーは、標的組織領域内の細胞による分子110の取り込みを誘導するように設計されておらず、ゆえに、一連のパルスパラメータ(例えば、電圧、周波数、パルス間ディレイなど)を利用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、処置エネルギー自体は、図12Aのものと同様であってもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、波形は、図12Bに図示されているような二相性である。ここで、各パルス400は、二相性であり、ディレイ406によって隔てられたパルス幅402を有する。この実施形態において、パルス幅402は、ここでも長時間とみなされ、500マイクロ秒を超える。この実施形態において、パルス400間のディレイ406は、1μs~1秒の範囲内、例えばいくつかの例を挙げると、1μs~10μs、10μs、1μs~100μs、100μs、1μs~250μs、250μs、1μs~500μs、500μs、1ms、2ms、5ms又は1~5msである。いくつかの実施形態において、いくつかのパルス400が正振幅を有し、いくつかのパルス400が負振幅を有するように、パルス400が極性を逆転させることが理解されるであろう。このような極性の逆転は、対称的であっても非対称的であってもよい。いくつかの実施形態において、パルス400は、極性によってグループ化されることも理解されるであろう。任意の好適な数のパルスが各グループに存在してもよく、各グループは、同じ数のパルスを有してもよいし、異なる数のパルスを有してもよいことが理解されるであろう。例えば、6つの正パルスの後に2つの負パルスが続いてもよいし、4つの正パルスの後に1つの負パルスが続いてもよい。したがって、様々な組み合わせが可能であり得る。このようなグループ化は、対称的であっても非対称的であってもよい。
【0269】
[00315] いくつかの実施形態において、最終的な細胞死に対する標的組織領域の細胞抵抗性を増大させるコンディショニングエネルギーが、標的組織領域に送達されることが理解されるであろう。致死量以下のストレスを受けた細胞は、ストレスに対する修復反応及び予防応答を起こして、その後の類似の又は異なる性質のストレスに対する抵抗性を実質的に発達させ、回復力を強化することが知られている。例えば、いくつかの実施形態において、コンディショニングエネルギーは、熱ショックタンパク質(HSP)を放出させる。HSPは、本明細書中に記載されるようなコンディショニングエネルギーなどのストレス条件への曝露に応答して細胞が産生するタンパク質のファミリーである。HSPは当初、熱ショックに関連して説明されたが、現在では、低温、UV光への曝露をはじめとした他のストレス及び創傷治癒又は組織リモデリングの際にも発現することが知られている。このグループの多くのメンバーは、新しいタンパク質を安定化させて正しいフォールディングを確保することによって、又は細胞のストレスで損傷したタンパク質の再フォールディングを助けることによって、シャペロン機能を発揮する。この発現の増加は、転写的に制御されている。熱ショックタンパク質の劇的なアップレギュレーションは、熱ショック応答の重要な部分であり、主に熱ショック因子(HSF)によって誘導される。
【0270】
[00316] いくつかの実施形態において、組織又は細胞の予熱(分子110の送達の前)は、細胞の傷害、修復及び生存において役割を果たす熱ショックタンパク質の発現を開始させることがある。このような実施形態において、温かい食塩水などの温かい溶液が、処置部位に注入されてもよく、ここで、分子110は、待機時間の後にエネルギーの送達とともに送達される。待機時間は、温かい溶液の送達後の数分間、数時間又は数日間であり得る。いくつかの実施形態において、待機時間は、5~30分間、1~2時間又は1~2日間である。
【0271】
[00317] 他の実施形態において、組織又は細胞は、エネルギー送達体108を用いて加温される。このような実施形態では、局所温度を特定の範囲内、例えば、10分未満の処置の場合は40~50Cに維持するように、制御された速度でエネルギーが送達される。いくつかの実施形態において、熱ショックタンパク質は、およそ41Cにおいて引き金が引かれることが理解されるであろう。したがって、致死量以下のパルス電場送達を用いることにより、より強い処置パルス電場の前に、熱ショックタンパク質及び他の損傷修復調製物のアップレギュレーションが促され得る。これにより、パルス電場による傷害に対する細胞の回復力が高まり、望まれない過剰な細胞死を起こすことなく、かなりの数の細胞に分子を移行させる能力が改善する。
【0272】
[00318] したがって、1つの実施形態において、処置領域の少なくとも一部における温度を例えば45℃まで上昇させるコンディショニングエネルギーが標的処置領域に送達される。これにより、その領域への流体の血管外遊出が誘導される。薬物、遺伝子又は他のタイプの分子が、注射によって送達され、本明細書中に記載されるような血管外遊出の利点の恩恵を受ける。次いで、治療用PEFエネルギーなどの治療が、標的処置領域に送達される。処置領域の細胞は、細胞死に抵抗するように予めコンディショニングされているので、より多数の細胞がこの処置プロトコルを生き延びる。これは、遺伝子治療又は細胞生存に依存する他のタイプの治療にとって有益である。
【0273】
[00319] このようなプレコンディショニング(例えば、血管外遊出に至るもの)を提供するデバイス、方法及びエネルギー波形のさらなる例は、「INDUCED EXTRAVASATION BY ENERGY DELIVERY TO TISSUE」と題する2021年6月10日出願の米国仮特許第63/209,335号(あらゆる目的のために参照により本明細書中に援用される)に提供されている。
【0274】
[00320] いくつかの実施形態において、分子の体内分布は、身体への分子110の送達に対する制御された組み合わせアプローチによって最適化される。いくつかの実施形態において、局所注射と組み合わせたIVによる分子110の送達は、IV単独又は局所注射単独よりも大きい相乗効果を移行の強化のために提供する。
【0275】
[00321] 例1:PEFエネルギーを用いたbalb/cマウスの腓腹筋後部筋への高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードするプラスミドDNAの送達。プラスミドDNAを3つのやり方でマウスに投与した。1)200μlという体積の食塩水中の20μgのプラスミド(1mg/kgに等しい)の全身注射(尾静脈における)、2)薬物送達用電気針を用いて腓腹筋に接種する、200μgのプラスミドDNAを含む200μlの食塩水の局所注射、3)最初に全身注射を行った後、エネルギー送達の前/それと同時の局所投与による、先の投与経路の組み合わせ。2つの異なるPEFエネルギー送達アルゴリズムを使用した。1)PEFアルゴリズムA(後の項で説明するような二相性の裁断サイクル)、及び2)PEFアルゴリズムB(後の項で説明するような交互DC)。使用されたエネルギー送達アルゴリズムに応じて、PEFアルゴリズムB(8秒長のプロトコル)の1分前、又はPEFアルゴリズムA(5分長のプロトコル)と同時にプラスミドDNAの局所送達を行うことにより、エネルギーを組織に蓄積させながらの緩徐且つ一定した材料送達を確保した。遺伝物質の一定した正確な送達を5分間にわたって達成するために、輸液ポンプを使用して0.04ml/分の速度で200μlを送達した。遺伝物質及びエネルギーを送達している間、イソフルランを用いたガス麻酔下にマウスを維持した。処置の際、マウスを回復させ、3日間生存させた後、安楽死させ、腓腹筋を収集した。筋組織を計量し、刃で機械的に切り刻み、RIPA緩衝液で溶解し、超音波処理して均質化プロセスを完了させた。超遠心分離後に、ホモジナイズした組織からタンパク質を抽出し、それを用いてELISAでEGFPタンパク質を計測した。結果を各組織の重量に対して正規化して、サンプル中のEGFPタンパク質のpg/mg濃度を得た。結果は図13に図示されている。IV+IM=静脈内に続く局所送達であることが理解されるであろう。PEFアルゴリズムAについて計測されたサンプルは5つ、PEFアルゴリズムBについて計測されたサンプルは9つであった。IM=局所筋肉内送達であることが理解されるであろう。PEFアルゴリズムAについて計測されたサンプルは5つ、PEFアルゴリズムBについて計測されたサンプルは10個であった。IV=静脈内全身送達であることが理解されるであろう。PEFアルゴリズムAについて計測されたサンプルは4つ、PEFアルゴリズムBについて計測されたサンプルは4つであった。図14は、図13の結果を平均値として図示している。このように、この例において、IV単独では、計測可能な移行がもたらされなかったが、IV+IMのプロトコルが、IV単独とIM単独との組み合わせによって予想されるものよりも大きな移行をもたらしたことがわかる。さらに、この例では、IV+IMのプロトコルを用いたPEFアルゴリズムBが、最も大きな移行レベルをもたらしたことがわかる。
【0276】
[00322] 細胞膜への侵入を可能にし、細胞膜と接触したDNAの電気泳動を引き起こす電気パルスの印加前にプラスミドDNAを添加すれば、遺伝子移入は通常最大になることが理解されるであろう。想定される別の遺伝子電気移入の機構は、電場送達中に、負に帯電したDNA分子が電気泳動力に起因して移動し、自由拡散に比べて細胞膜に多く接触するというものである。大きなプラスミドDNA分子は、電気パルス中に細胞膜上で凝集物を形成し、エンドサイトーシスを介して細胞内に侵入する。この追加の理由により、プラスミドを全身投与する場合は、より困難な移行部位にそのプラスミドを高濃度で存在させることが望まれる。
【0277】
エネルギー
[00323] 先に述べたように、エネルギー送達デバイス102は、少なくとも1つの独特なエネルギー送達アルゴリズム152に従って、波形発生器104によって提供されるエネルギーを送達する。身体内で行われる移行手順のために特別に設計された種々のエネルギー送達アルゴリズム152が提供される。いくつかの実施形態において、アルゴリズム152は、間にディレイを有する一連のパルスを含む波形を有する信号を規定する。そのような実施形態において、アルゴリズム152は、いくつかの例を挙げると、エネルギー振幅(例えば、電圧)、パルス幅、ディレイ期間及びパルス数などの信号のパラメータを指定する。エネルギー送達アルゴリズム152は、移行を最大化するが、悪影響、特に身体内での移行に特有の悪影響を回避する波形を発生させることが理解されるであろう。
【0278】
[00324] 電気的遺伝子移入(electrogenetransfer)のための従来のエキソビボ手法は、通常、非常に長いDC部分(例えば、1~100ms、例えば、2~50ms)を含むパルスを有する波形からのエネルギーを必要とする。ある極性の長いDCパルスを送達するか、又は一連のパルスをすべて同じ極性で送達すると、アブレーションのリスクが高まり、その結果として生じるアブレーション病変のサイズが大きくなる。これは、通常、電気分解、pHの不均衡及び組織に蓄積する正味電荷に起因する。生物学的物質を流れる電流は、移行及び潜在的なジュール加熱に加えて、電気分解、イオントポレシス及び電気浸透流などの種々の効果をもたらす。これらは、アブレーションの形成に寄与することができる。
【0279】
[00325] さらに、これらの釣り合いの取れていない波形が、身体において使用されると、種々の影響が体内で生じ得る。これらの釣り合いの取れていない波形は、運動ニューロン及び骨格筋を活性化し、それにより、患者の傷害、患者の疼痛を引き起こすことがあり、治療結果に悪影響を及ぼすことがある。その結果として、本明細書中に記載されるエネルギー送達アルゴリズム152は、これらの不釣り合いを回避することによって、これらの悪影響を回避するように構成されている。
【0280】
[00326] 図15Aは、エネルギー送達アルゴリズム152によって提供される波形の一例を図示している。この実施形態において、波形は、それぞれがパルス幅402及び振幅(設定電圧404によって決定される)を有する一連のパルス400で構成されており、各パルス400は、ディレイ406によって隔てられている。この実施形態において、3つのパルス400が図示されているが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10パルス又は10を超えるパルスで移行が達成されてもよい。いくつかの実施形態において、エネルギーは、このような単極形式で送達され、各パルスの振幅又は設定電圧404は、いくつかの例を挙げると、1~500V、1~250V、1~100V、10~100V、10~70V、10~50V、10~40V、10~30V、10~20V、10V、20V、30V、40V、50V、60V、70V、80V、90V、100Vである。使用及び考慮される電圧は、方形波形の頂点でもあってよいし、正弦波形又は鋸波形の頂点であってもよいし、正弦波又は鋸波形のRMS電圧であってもよい。
【0281】
[00327] いくつかの実施形態において、パルス幅は、いくつかの例を挙げると、1ms、2ms、5ms、10ms、20ms、30ms、40ms、50ms、60ms、70ms、80ms、90ms、100ms、1~20ms、1ms~50ms、1ms~100ms、2ms~100ms、1~2msである。いくつかの実施形態において、パルス間のディレイは、いくつかの例を挙げると、0.01~5秒、0.01~0.1秒、0.01~0.5秒、0.01~1秒、0.5秒、0.5~1秒、1秒、1~1.5秒、1~2秒、0.5~2秒、2秒、1~3秒である。いくつかの実施形態において、パルスの数は、いくつか例を挙げると、1パルス、2パルス、3パルス、4パルス、5パルス、6パルス、7パルス、8パルス、9パルス、10パルス、10パルス超である。
【0282】
[00328] 好ましい実施形態において、いくつかのパルス400が正振幅を有し、いくつかのパルス400が負振幅を有するように、パルス400は、極性を逆転させることが理解されるであろう。このような逆転は、上に記載されたようにアブレーション及び/又は筋収縮の増加につながり得る電荷の不均衡を減少させる。いくつかの実施形態において、極性が上、下、上、下の形式で交番することが理解されるであろう。例えば、図15Bは、アルゴリズム152によって提供される交番するDC波形を図示している。ここでは、正パルス400’の後、負パルス400”が続いて、その後、これが交互の形式で繰り返される。ここでも、各パルス400’、400”は、パルス幅402及び振幅(設定電圧404によって決定される)を有し、各パルス400’、400”は、ディレイ406によって隔てられている。各パルスは、様々なパルス幅402、振幅404及びディレイ405を有するなど、これらのパラメータが異なっていてもよいことが理解されるであろう。しかしながら、正のオン時間と負のオン時間とが時間の経過とともに釣り合うことが望まれる。いくつかの実施形態において、振幅404は、50~100Vなどの10~500Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、パルス持続時間402は、0.5~200ms、例えばいくつかの例を挙げると、1~100ms、2~50ms又は20~30msの範囲内である。いくつかの実施形態において、パルス間ディレイ406は、10ms~10s、例えば、200ms~3s又は500ms~2sの範囲内である。必要に応じて、パルス間ディレイ406は、患者のECGと同期させてもよい。いくつかの実施形態において、処置は、1~100パルス、例えば、1~20パルス又は1~10パルスを含む。これらにより、総処置時間は0.5~500ms(通常、20~200ms)となり得る。下記の表1は、分子110の移行を達成するための種々のパラメータの組み合わせ例を提供している。
【0283】
【表1】
【0284】
[00329] 図13から図14のアルゴリズムBが、図15Bの形状を有する波形を発生させたことが理解されるであろう。その実験では、アルゴリズムBが、筋肉内注射の単独と静脈内注射との併用の両方の条件下において、より高レベルの移行をもたらした。したがって、この波形は、PEFの潜在的な致死効果を低減又は排除しながら、患部細胞の有意な移行を保持すると実証している。
【0285】
[00330] いくつかの実施形態において、パルス400は、極性によってグループ化されることも理解されるであろう。例えば、図15Cは、2つのパルス400’が正の極性を有した後、負の極性を有する2つのパルス400”が続く、エネルギー送達アルゴリズム152によって提供される波形の一例を図示している。任意の好適な数のパルスが各グループに存在してもよく、各グループは、同じ数のパルスを有してもよいし、異なる数のパルスを有してもよいことが理解されるであろう。例えば、6つの正パルスの後に2つの負パルスが続いてもよいし、4つの正パルスの後に1つの負パルスが続いてもよい。したがって、様々な組み合わせが可能であり得る。このようなグループ化は、対称的であっても非対称的であってもよい。
【0286】
[00331] いくつかの実施形態において、1つ以上のパルス400が、同じ位相の一連の区間パルスに「裁断される」か、分割されるか、又は区分される。その結果として、各パルス400は、区間ディレイとみなされ得る区間パルス間のディレイを含んでいることに起因して、「裁断される」と、より長くなる。図16は、従来の単相波形に基づく波形(ゆえに、基本パルスを有する「基本」波形とみなされる)の実施形態を図示しているが、インビボ環境での移行を最適化するために大幅に変更されている。従来の遺伝子療法において用いられる単相波形は、DCパルスであり、1~50ms、通常は20msのパルス幅を通常有する。ここでは、単相波形と類似のパルス(すなわち、正パルス400’)が示されているが、ここでは、正パルス400’は、間に区間ディレイ405を有する複数の区間パルス401に裁断されるか又は分割される。ゆえに、この実施形態において、正パルス400’は、従来の遺伝子療法において用いられる単相DCパルスよりもかなり長い10~100,000マイクロ秒の範囲内のパルス幅を有する。しかしながら、パルス400’の「オン時間」は、区分することにより、追加のパルスではなくディレイが導入されるので、基本波形におけるものと同じである。図16は、ディレイ406によって正パルス400’から隔てられた負パルス400”も示している。この実施形態において、負パルス400”は、正パルス400’と似ているが、負の極性を有する。したがって、図16の波形は、全体的に、従来の単相波形とは大きく異なっている。筋肉の活性化を回避するために、区間パルスは、分子が細胞に移行する際の長い駆動力を細分化する。電気泳動は、分子110が細胞に移行する際に、分子を細胞に向かって及び細胞内へ駆動する重要な要素であることが理解されるであろう。通常、本明細書中に記載される分子110のサイズ及び分子量の分子において電気泳動の動きを駆動するタイムスケールは、これらの膜電位差が筋肉の活性化を誘導するタイムスケールより大きい。例えば、ニューロンの活性化は、10msのPEFエネルギー送達で生じることがあり、骨格筋の活性化は、40msのPEFエネルギー送達で生じることがある。このような活性化は、長い駆動力(パルス402)を、短い/短時間のパルス幅403を有する一連の区間パルス401に「裁断する」ことによって回避される。これにより、徐々に分子110が細胞内に送り込まれ、中断(区間ディレイ405)により、膜電位負荷の緩和が可能になり、それによって筋肉の興奮が妨げられる。したがって、小さな中断は、細胞内への分子110の駆動力は鈍らせず、筋肉の興奮を鈍らせる。
【0287】
[00332] いくつかの実施形態において、パルス400’、400”は、比較的長く、例えば、10~100,000μs又は100~50,000μsであり、100μs~10sの範囲内、例えばいくつかの例を挙げると、1ms~5s又は50ms~2sのディレイ406を有することが理解されるであろう。これらのパルス400’、400”は、複数の区間パルス401(例えばいくつか例を挙げると、最大10,000の区間パルス401、10~2,000の区間パルス401又は20~1000の区間パルス401)に裁断されることがあり、ここで、区間パルス403の持続時間は、0.05~50μs、例えばいくつかの例を挙げると、0.5~20μs又は1~5μsであり、区間ディレイ405は、1~100,000μs、例えば、1~10,000μs又は10~2,000μsである。いくつかの実施形態において、オン時間は、筋刺激の開始のための変曲点とみなされ得る10μsを超えない。そのような実施形態では、パルス400’、400”の間に10msのディレイ406が望まれる。したがって、図16のパルス400’400”及び区間パルス401は、単に波形の成分を強調するための説明用であり、数千の区間パルスの個々の図示は極めて困難であるので、多くの実施形態では一定の縮尺で描かれていない。図16に図示されているパルス400’、400”の対409は、サイクルとみなされることがあり、通常、例えばいくつかの例を挙げると、1~1000回、特に1~200回、より詳細には1~100回、より詳細には40~50回繰り返されることが理解されるであろう。反復回数は、筋収縮が一体化するほど小さくなく(E>250ms)、効果が蓄積しないほど大きくない(E<10s)限り、種々の反復を用いてよい。
【0288】
[00333] いくつかの実施形態において、電圧振幅は、10~250Vの範囲内、例えばいくつかの例を挙げると、50~250V又は50~100Vであることが理解されるであろう。
【0289】
[00334] 下記の表2に、分子の移行を達成するための種々のパラメータの組み合わせ例を提供している。
【0290】
【表2】
【0291】
[00335]図17は、二相性AC波形に基づく波形の実施形態を図示している。ここでは、ディレイ406によって隔てられている正パルス400’と負パルス400”の2つのパルスが示されており、これらの2つのパルスが、1サイクルを形成する。しかしながら、ここでは、正パルス400’は、その間に区間ディレイ405を有する複数の区間パルス401に裁断されている。同様に、負パルス400”も、その間に区間ディレイ405を有する複数の区間パルス401に裁断されている。図16の実施形態と同様に、これらの区間パルスは、筋肉の活性化を回避するために、分子が細胞内に移行する際の長い駆動力を細分化する。この場合も、小さな中断は、細胞内への分子110の駆動力は鈍らせないが、筋肉の興奮を鈍らせる。一般に、これらの実施形態は、図16の実施形態よりも頻繁に極性を変化させる。同様に、これらの実施形態において、サイクル409は、通常、パケットにグループ化され(その間にパケット間ディレイを有する)、処置中に1つ以上のパケットが送達される。
【0292】
[00336] いくつかの実施形態において、パルス幅402は、図16のパルス幅よりもいくらか短く、例えば、0.1~10,000μs、10~1,000μs又は5~500μsであるが、100μs~10sの範囲内、例えばいくつかの例を挙げると、1ms~5s又は50ms~2sの類似のディレイ406を有する。これらのパルス402は、複数の区間パルス401(例えばいくつかの例を挙げると、最大1,000の区間パルス401、5~100の区間パルス401又は10~50の区間パルス401)に裁断されることがあり、ここで、区間パルスの持続時間403は、0.05~50μs、例えばいくつかの例を挙げると、0.5~20μs又は1~5μsであり、区間ディレイ405は、1~100,000μs、例えば、1~10,000μs又は10~2,000μsである。同様に、図17のパルスは、単に波形の成分を強調するための説明用であり、数千の区間パルスの個々の図示は極めて困難であるので、多くの実施形態では一定の縮尺で描かれていない。図17に図示されているサイクル409は、通常、例えばいくつかの例を挙げると、1~1000回、特に1~100回、より詳細には1~10回、繰り返されることが理解されるであろう。反復回数は、筋収縮が一体化するほど小さくなく(E>250ms)、効果が蓄積しないほど大きくない(E<10s)限り、種々の反復を用いてよい。いくつかの実施形態において、サイクルは、パケット間ディレイを有するパケットにグループ化される。いくつかの実施形態において、パケットは、1~100サイクル、例えば、1~50サイクル、1~20サイクル、1~10サイクル、1~5サイクルなどを含む。いくつかの実施形態において、複数のパケットが、単一の処置中又は標的細胞への分子110の単一の移行中に送達される。いくつかの実施形態において、1~100パケット、例えば、1~50パケット、1~20パケット、1~10パケット、1~5パケットなどが送達される。
【0293】
[00337] いくつかの実施形態において、電圧振幅は、10~5000Vの範囲内、例えばいくつかの例を挙げると、10~1000V、10~50V、50~100V、50~200V、10V、50V、100V、200V、500V、1000Vであることが理解されるであろう。
【0294】
[00338] 下記の表3は、分子の移行を達成するための種々のパラメータの組み合わせ例を提供している。
【0295】
【表3】
【0296】
[00339] 図13から図14のアルゴリズムAが、図17の形状を有する波形を発生させたことが理解されるであろう。その実験では、アルゴリズムAが、筋肉内注射の単独と静脈内注射との併用の両方の条件下において、有意なレベルの移行をもたらした。したがって、この波形は、PEFの潜在的な致死効果を低減又は排除しながら、患部細胞の有意な移行を保持すると実証している。
【0297】
[00340] 述べたように、パルス400は、種々の振幅(設定電圧404によって決定される)及びパルス幅402などの種々の特色を有し得る。例えば、図18Aは、エネルギー送達アルゴリズム152によって提供される波形の一例を図示しており、ここで、第1の電圧404’及び第1のパルス幅402’を有する第1のパルス400’の後に、第2の電圧404”及び第2のパルス幅402”を有する異なる第2のパルス400”が続く。ここで、第1の電圧404’は、第2の電圧404”よりも高く、第1のパルス幅402’は、第2のパルス幅402”よりも狭い。したがって、第1のパルス400’は、低くて長いとみなされ得る第2のパルス400”に対して、高くて短いとみなされ得る。この実施形態において、その後、これらのパルス400’、400”が繰り返される。いくつかの実施形態において、短くて高いパルスは、100~1000Vの範囲内の電圧振幅404’及び50ns~1msの範囲内、例えば、50ns~100μs又は50ns~10μsのパルス幅402’を有する。低くて長いパルスは、5V~100Vの範囲内の電圧振幅404”及び1ms~50msの範囲内のパルス幅402”を有する。
【0298】
[00341] いくつかの実施形態において、このような波形は、多機能波形とみなされる。例えば、いくつかの実施形態において、短い高電圧パルスが、移行を可能にする条件を作り出し、長い低電圧パルスが、電気泳動などによって分子を細胞内に送り込む。場合によっては、電気泳動によってあるいは単に回転、振動又は揺れによって細胞の近くに移動することによって駆動されて細胞に近づく分子110は、細胞が膜の修復を行うとき、細胞に「くっつき」、細胞内に引き込まれる。したがって、いくつかの分子110が、修復中又は他の細胞状態の間に、エンドサイトーシスによって細胞に入り込み得る。いくつかの実施形態において、短い高電圧パルスは、単相性又は二相性である。また、いくつかの実施形態において、長い低電圧は、DC又は交番DCである。
【0299】
[00342] 図18Bは、類似の実施形態を図示しているが、ここでは、第2のパルス400”は、負である。したがって、第1の電圧404’は、第2の電圧404”よりも大きく、逆の極性である。これにより、電荷が釣り合う。いくつかの実施形態において、正パルスの振幅及びオン時間を負パルスの振幅及びオン時間と釣り合わせることが望まれる。これは、パルスの面積を等しくすることによって可視化され得る。例えば、正パルス400’の面積が、負パルス400’の面積と等しい場合、それらのパルスは、釣り合っているとみなされる。これにより、種々の形状のパルスが可能になる。このような釣り合わせにより、正又は負のいずれかの方向の正味電荷が減少し、それにより筋刺激が減少する。
【0300】
[00343] 図18Cは、別の類似の実施形態を図示しているが、ここでは、パルス400’、400”は、グループ又はセット内で同じ極性を有するが、次のパルスセットは、逆の極性を有する。それらのセットがディレイによって隔てられ得ることも理解されるであろう。そのようなディレイは、通常、1~3秒の範囲内であり、患者の心拍数と同期し得る。移行は、1つ以上のセットを送達することによって達成され得ることも理解されるであろう。いくつかの実施形態において、追加セットの送達は、事前に決定されるか、(1つ以上のセンサなどによって)引き金が引かれるか、又はユーザーの決定で適用される。
【0301】
[00344] いくつかの実施形態において、第1のパルス400’は、並進効果を伴わない純粋な回転などの、分子110の少なくとも一部の回転を引き起こす。いくつかの場合において、これは、1GHz以上のネイティブ周波数を有するような、50ns~1ms、例えば、50ns~100μs又は50ns~10μsのパルス幅402’を有する第1のパルス400’で達成される。そのような実施形態において、第2のパルス400”は、1kHz~999MHzの範囲内などの、1GHz未満のネイティブ周波数を有するような、1ms~50msのパルス幅402”を有する。第2のパルス400”は、並進効果と回転効果とが合わさったものを引き起こすか、純粋な並進効果を引き起こす。このパルス400’、400”の組み合わせにより、移行に向けた細胞への分子110の移動が加速される(例えば、処置開始時の回転効果を利用して、後の並進効果が後押しされる)。複数の第1のパルス400’及び/又は第2のパルス400”を組み合わせて使用して、それらの効果を調整してもよいことが理解されるであろう。
【0302】
[00345] 先に述べたように、いくつかの実施形態において、一連のパルス400は、パケットを単位として送達され、ここで、パケットは、パケット間ディレイによって隔てられている。図19は、一連のパルス400を含むパケット411を図示しており、この実施形態において、パケット411は、4つのパルスで構成されている。各パルスは、電圧404及びパルス幅402を有する。この実施形態において、各パルスは、ディレイ406によって隔てられており、同様に、各パケットは、パケット間ディレイ415によって隔てられている。パケット411は、一連の同一のパルスで構成されてもよいし、異なるパルスで構成されてもよいことが理解されるであろう。同様に、パルス間のディレイ415は、規則的であっても不規則であってもよい。図20は、一連の二相性パルスとみなされ得る交互の極性を有する一連のパルス400を含むパケット411を図示しており、各二相性パルスは、スイッチ時間ディレイ407を有する。ここで、各パケット411は、それぞれ極性が交番する4つのパルス、すなわち2つの二相性パルスで構成されている。
【0303】
[00346] 本明細書中に記載される各実施形態において、パルス(単相性パルス、二相性パルス、交番DCパルスなどを問わず)は、パケット411にグループ化され得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、パケットディレイは、最大20秒、例えば、0.1~20s、0.1~20s、10s、0.1~5s、0.1~2s、0.1~1s、0.5~1s、0.5~5s、0.1s、0.5s、1s、5s、10sなどである。いくつかの実施形態において、パケット間ディレイは、ECGと同期している。
【0304】
[00347] 図21から図22に図示されているようないくつかの実施形態において、一連の高電圧高周波パルスの後、一連の低電圧低周波パルスが続き、この組み合わせは、標的細胞への分子110の移行を補助する。例えば、図21に図示されているように、第1のパルスセット420が送達され、その第1のパルスセット420は、必要に応じてパケットを単位とする、複数の高電圧高周波パルスを含む。このようなパルスは、細胞を後の移行に向けて準備する可能性がある。
【0305】
[00348] このような高電圧高周波パルスの例は、いくつかの例を挙げると、「Methods, apparatuses, and systems for the treatment of pulmonary disorders」と題する米国特許第10,702,337号及び「DEVICES, SYSTEMS AND METHODS FOR THE TREATMENT OF ABNORMAL TISSUE」と題するPCT/US2020/028844(参照により本明細書中に援用される)に提供されている。このようなパルス420は、他の臨床適用におけるアブレーションのために使用され得るが、移行又は分子110の場合、このようなパルスは、移行に向けて細胞を準備するために適合される。これらのパルス420は、通常、二相性(正パルス及び負パルスを有し、これらが合わさって1サイクルを形成する)であり、サイクルは、パケットにグループ化される。サイクル数は、各二相性パケット内のパルス数の半分である。いくつかの実施形態において、サイクル数は、1パケットあたり1~100の間(その間のすべての値及び部分範囲を含む)で設定される。いくつかの実施形態において、サイクル数は、最大5サイクル、最大10サイクル、最大25サイクル、最大40サイクル、最大60サイクル、最大80サイクル、最大100サイクル、最大1,000サイクル又は最大2,000サイクル(その間のすべての値及び部分範囲を含む)である。パケット持続時間は、他の因子の中でもサイクル数によって決定される。通常、サイクル数が多いほど、パケット持続時間は長くなり、送達されるエネルギー量も大きくなる。いくつかの実施形態において、パケット持続時間は、およそ50~1000マイクロ秒の範囲内、例えばいくつかの例を挙げると、50μs、60μs、70μs、80μs、90μs,100μs、125μs、150μs、175μs、200μs、250μs、100~250μs、150~250μs、200~250μs、500~1000μsである。他の実施形態において、パケット持続時間は、およそ100~1000マイクロ秒の範囲内、例えば、150μs、200μs、250μs、500μs又は1000μsである。
【0306】
[00349] 通常、パケット間には既定の休止時間がある。しかしながら、計画的に休止時間を変化させるアルゴリズムがあってもよいし、パケット間に休止時間を適用しなくてもよい。表4は、そのようなパルス420のパラメータ値の例を提供している。
【0307】
【表4】
【0308】
[00350] いくつかの実施形態において、第1のパルスセット420の後に、ディレイ422(例えば、100マイクロ秒~2秒)が続き、次いで第2のパルスセット424が続く。この実施形態において、第2のパルスセット424は、複数の低電圧低周波パルスで構成されている。図21は、最大10マイクロ秒持続する第2のパルスセット424の第1のパルス426の後に、ディレイ406(例えば、最大1ms)が続き、次いで第2のパルス428が続いているのを図示している。この実施形態において、第2のパルス428は、第1のパルス426と逆の極性を有するので、ディレイ406は、スイッチ時間ディレイ407とみなされ得る。いくつかの実施形態では、パルス426、428の間にディレイ406/407が存在しないことが理解されるであろう。いくつかの場合において、第1のパルスセット420は、分子の移行に向けて細胞を準備し(例えば、細胞を分子又は移行プロセスに対してより受容性の状態にする)、第1のパルスセット420は、移行プロセスを開始する。次いで、第2のパルスセット424は、分子を細胞に移行すること(例えば、分子を細胞内に送り込む又は押し込むこと)を支援する。必要に応じて、これらのパルスセット420、424は、パターンとして繰り返されてもよい。
【0309】
[00351] 図22は、多様なセグメントを有する波形の別の例を図示している。ここで、第1のパルスセット420が送達され、ここで、その第1のパルスセット420は、必要に応じてパケットを単位として(例えば、図21に関連して上に記載されたもの)、複数の高電圧高周波パルスを含む。再度、このような高電圧高周波パルスの例は、いくつかの例を挙げると、さらに本明細書中の上記にも記載された、「Methods, apparatuses, and systems for the treatment of pulmonary disorders」と題する米国特許第10,702,337号及び「DEVICES, SYSTEMS AND METHODS FOR THE TREATMENT OF ABNORMAL TISSUE」と題するPCT/US2020/028844(参照により本明細書中に援用される)に提供されている。いくつかの実施形態において、第1のパルスセット420の後に、ディレイ422(例えば、100マイクロ秒~2秒)が続き、次いで、第2のパルスセット424が続く。この実施形態において、第2のパルスセット424は、複数の低電圧低周波パルスで構成されている。この実施形態において、第2のパルスセット424は、スイッチ時間ディレイを有しない一連の二相性パルスで構成され、その第2のパルスセット424は、およそ100マイクロ秒~5ミリ秒持続する。再び、いくつかの場合において、第1のパルスセット420は、分子の移行に向けて細胞を準備するか、又は移行プロセスを開始する。次いで、第2のパルスセット424は、分子を細胞に移行すること(例えば、分子を細胞内に送り込む又は押し込むこと)を支援する。必要に応じて、これらのパルスセット420、424は、パターンとして繰り返されてもよい。
【0310】
[00352] これらのパルス400は、方形波ではなく、正弦波であってもよいし、他の形状を有していてもよいことが理解されるであろう。例えば、図23は、パルス波形の別の実施形態を図示している。ここで、各パルスは、複数の増加電圧及び減少電圧で構成されることにより、ピラミッド型を形成している。
【0311】
[00353] 本明細書中に記載される実施形態のいずれかにおいて、設定電圧404は、エネルギーが単極形式で送達されるか双極形式で送達されるかに応じて変化し得ることが理解されるであろう。双極送達では、電場がより小さくより指向性となることに起因して、より低い電圧を使用することができる。治療において使用するために選択される双極電圧は、電極の間隙距離に依存するのに対して、1つ以上の離れた分散パッド電極を使用する単極電極配置は、カテーテル電極及び身体上に設置された分散電極の正確な配置をあまり考慮せずに送達され得る。単極電極の実施形態において、分散電極は、パッド又は他の任意の受取電極で構成され得る。通常、分散電極は、そのサイズ(設置された位置に局所的に影響を及ぼさない程度の大きさ)及び/又はその配置(局所的な影響を回避する程度及び電気アーク放電の危険を冒さない程度の距離)に起因して分散電極として機能する。しかしながら、いくつかの実施形態において、分散電極は、小型であり、その設置部位に何らかの影響を及ぼし得るが、そのような影響は、良性の付随的な影響であり得る。例えば、送達される分子が、移行を回避するほど分散電極の近くに存在しない可能性があるか、又はその領域での移行は、取るに足らないものである。単極電極の実施形態において、身体を通して送達されるエネルギーの分散挙動に起因して、およそ10cm~100cmの有効間隙距離の分散電極に到達するために、より大きな電圧が通常使用される。逆に、双極電極の配置では、1mm~1cmを含むおよそ0.5mm~10cmという比較的近い電極の活性領域により、電気エネルギー濃度、及びその間隙距離から組織に送達される有効量への影響がより大きくなる。
【0312】
[00354] エネルギーの送達は、エネルギー送達デバイス102上のボタン又は発生器104に動作可能に接続された足踏みスイッチの使用などの種々の機構によって作動され得る。このような作動により、通常、単一のエネルギー量が提供される。このエネルギー量は、送達されるパルスの数及びそのパルスの電圧によって定義される。
【0313】
[00355] 図24Aから図24Cは、アルゴリズム152によって提供される波形の追加の実施形態を図示している。ここでは、高周波の高速発振をパルスに加えて、パルスが全体として分子110を細胞に向かって追い込みつつ、分子110に追加のひと押し又は回転を提供する。これは、大分子110又は分子110の凝集物が細胞膜に接触したが細胞に入り込むのが困難なときに特に有益であり得る。このようなエネルギーの急上昇が、細胞に入り込むために必要とされるひと押しを提供し得る。図24Aを参照すると、この実施形態では、第1のパルス幅であるパルス幅402(例えば、20ms)を有する第1のパルス400’が提供された後、第2のパルス幅402(例えば、20ms)を有する第2のパルス400”が提供される。ここでは、パルス400’、400”は、5000μsのディレイなどのディレイ406によって隔てられている。この実施形態において、パルス400’、400”の各々は、正の向きであり、設定電圧又は一次電圧V1を有する。この実施形態において、電圧は、一次電圧V1付近で発振して、スパイク413を発生させる。このような発振は、通常、一次電圧の最大25%(例えば、0.1~25%又は1~25%)、より通常は、一次電圧の最大10%(例えば、0.1~10%又は1~10%、例えば、一次電圧の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又は一次電圧の15%、20%又は25%)である。例えば、10%の発振の場合、50Vの一次電圧V1を有するパルス400’は、55Vと45Vとの間で発振して、55Vのスパイク413を発生させ得る。同様に、1000Vの一次電圧V1を有するパルス400’は、10%の発振によって1100Vと900Vとの間で発振し得る。各スパイク413は、並進中に分子110に追加のひと押し又は回転を提供する。したがって、発振に起因するスパイク413によって、パルス400’、400”が王冠様として出現する。パルスは、図示されているように、パルスの長さ(すなわち、パルス幅402)全体にわたってスパイク413を含んでもよいし、スパイク413は、パルスの長さに沿った任意の時点において発生してもよいことが理解されるであろう。同様に、任意の数のスパイク413(いくつかの例を挙げると、100~10,000スパイク、100~5,000スパイク、500~5,000スパイク、500~1000スパイクを含む)が存在してよい。いくつかの実施形態において、発振は、並進効果を伴わない純粋な回転などの、分子110の少なくとも一部の回転を引き起こす1GHzを超える周波数における発振である。パルス400’、400”内のスパイク413のこの組み合わせは、分子110を標的細胞へ移行することを補助する(例えば、細胞への又は細胞内へのひと押しを増加させる)。
【0314】
[00356] 図24Bは、図24Aと類似の実施形態を図示している。ここで、パルス400’、400”の各々は、負の向きである。同様に、図24Cは、パルス400’、400”を逆向きで図示している。本明細書中に記載及び例証されている波形は、様々な波形の概念を例証するための単なる例であって、考えられるすべての波形の包括的なリストであると意図されていないことが理解されるであろう。同様に、これらの波形の概念は、変化し得る特定の波形の特徴とともに一連の例として示されている。ゆえに、波形の態様、特徴及び概念は、様々な組み合わせで利用されてよく、本明細書中に記載される組み合わせに限定されないことが理解されるであろう。例えば、「裁断された」波形の概念は、基本波形のいずれにも適用されてよく、その基本波形のパルスは、本明細書中に記載されるように裁断される。同様に、王冠様の発振の概念も、基本波形のいずれにも適用されてよく、その基本波形のパルスは、発振を含むように変更される。さらに、波形は、様々な組み合わせで組み合わされてよく、例えば、ある波形の実施形態の一部の後に別の波形の実施形態の一部が続いてもよい。同様に、血管外遊出を誘導する波形は、本明細書中に開示される波形のいずれか又はその変形と組み合わせて用いられ得る。
【0315】
エンハンスメント
[00357] 分子110を組織又は細胞に送達する能力は、種々のエンハンスメントを用いて変更され得る。例えば、いくつかの実施形態において、アジュバント材料が、分子を運ぶ溶液に加えられるなどして身体内に加えられ、ここで、そのアジュバント材料は、細胞を小分子又は高分子の輸送をより受けやすくさせる。アジュバント材料の例としては、高分子ナノ粒子、リポソーム、PEG化リポソーム、リポフェクタミン、細胞透過性ペプチド(CPC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、コレステロール、又は細胞膜の流動性及び力学と相互作用することが知られている他の材料が挙げられる。いくつかの実施形態において、アジュバント材料が注入され、注入圧は、細胞による分子110の取り込みを強化するように選択又は調整される。
【0316】
[00358] 他の実施形態では、分子110を首尾良く受け取る能力を変更するために、組織又は細胞を加温又は冷却する。例えば、いくつかの実施形態において、分子を運ぶ溶液110を加温又は冷却することなどによって、細胞を加温又は冷却して、より良い移行効率又はエネルギー送達後の細胞生存の可能性の改善を誘起する。いくつかの実施形態において、細胞の加温は、膜流動性を高めることがあり、ゆえに分子110の受け入れを増加させ得る。他の実施形態において、細胞の冷却は、剛性を高めることがあり、且つ分子110の受け入れを増加させる「ひび割れ」の形成の可能性を高めることがある。
【0317】
[00359] 他の実施形態において、組織又は細胞の予熱(分子110の送達の前)は、細胞の傷害、修復及び生存において役割を果たす熱ショックタンパク質の発現を開始させることがある。このような実施形態において、温かい食塩水などの温かい溶液を、処置部位に注入してもよく、ここで、分子110が、待機時間の後にエネルギーの送達とともに送達される。待機時間は、温かい溶液の送達後の数分間、数時間又は数日間であり得る。いくつかの実施形態において、待機時間は、5~30分間、1~2時間又は1~2日間である。
【0318】
[00360] いくつかの実施形態において、組織又は細胞は、エネルギー送達体108の使用により加温される。このような実施形態において、エネルギーは、局所温度を特定の範囲内(例えば、10分未満の処置の場合、40~50C)に維持するように、制御された速度で送達される。いくつかの実施形態において、熱ショックタンパク質は、およそ41Cで引き金が引かれることが理解されるであろう。したがって、致死量以下のパルス電場送達を用いることにより、より強い処置パルス電場の前に、熱ショックタンパク質及び他の損傷修復調製物のアップレギュレーションが促され得る。これにより、パルス電場による傷害に対する細胞の回復力が高まり、望まれない過剰な細胞死を起こすことなく、かなりの数の細胞に分子を移行させる能力が改善する。
【0319】
[00361] 先に述べたように、プロセッサ154は、他の働きの中でも、エネルギー送達アルゴリズムを改変し、且つ/又は切り替え、エネルギー送達及び任意のセンサデータをモニタし、フィードバックループを介して、モニタされたデータに反応する。いくつかの実施形態において、プロセッサ154は、1つ以上の計測されたシステムパラメータ、1つ以上の計測された組織パラメータ及び/又はそれらの組み合わせに基づいて、フィードバック制御ループを走らせるための1つ以上のアルゴリズムを実行するように構成されている。いくつかの実施形態において、そのパラメータには、温度が含まれ、温度は、エネルギー送達のケイデンスを制御することによって特定の範囲内に維持することができる。これは、細胞への取り込み、免疫応答、全体的な安全性などを高めるために有用であり得る。
【0320】
[00362] エンハンスメントは、分子110の送達前、送達中もしくは送達後、及び/又は処置エネルギーの送達前、送達中もしくは送達後に適用され得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、多機能波形の間の所望の間隔で(例えば、非対称波形の高くて短いパルスと低くて長いパルスとの間に)患者にアジュバント材料が投与される。これにより、細胞内へのアジュバント材料の送り込み又は押し込みを補助することができる。
【0321】
[00363] いくつかの実施形態において、等張又は高張の食塩水を処置部位に送達することにより、局所的な張度が調整されることが理解されるであろう。
センサ
【0322】
[00364] 先に述べたように、いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、いくつか例を挙げると、圧力、温度、インピーダンス、抵抗性、キャパシタンス、導電性、pH、光学特性(コヒーレンス、エコー輝度、蛍光)、誘電率もしくは光誘電率及び/又はコンダクタンスを測定するために使用され得る1つ以上のセンサを備える。いくつかの実施形態において、それらの電極の1つ以上が、1つ以上のセンサとして作用する。他の実施形態において、1つ以上のセンサは、電極とは別個のものである。センサデータを用いることにより、治療を計画し、治療をモニタし、且つ/又はプロセッサ154を介して直接的なフィードバックを提供することができ、その後、エネルギー送達アルゴリズム152を変更することができる。
【0323】
A.圧力感知
[00365] 細胞は通常、機械的刺激に応答することが理解されるであろう。このようなタイプの機械的刺激の1つが圧力である。一般に、静水圧は、間質液の体積及び標的化される組織間質の一般的なコンプライアンスによって決定される。一部の器官は、より硬い/より柔軟性のない構造に包まれている(例えば、脳、腎臓など)が、他の器官は、より自由に拡大/収縮する(例えば、肺、筋肉、皮膚など)ので、このことは、組織タイプによって異なることに注意することが重要である。静水圧が上昇すると、局所の細胞膜の透過性が高まり得るが、過剰な組織間質圧は、間違いなく組織損傷及び細胞死をもたらし得る。哺乳動物細胞は、200~300MPaの圧力で様々な形態のアポトーシスを起こし、300~400MPaの圧力ではより即時の細胞死に屈することが示されている。
【0324】
[00366] したがって、特に、局所的な注入圧が標的細胞に影響を与え得る分子110の注入中に、標的細胞が耐えている圧力に留意することが有益であることが多い。その結果として、いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、通常、局所注入圧をモニタするように設置された圧力センサを備える。
【0325】
[00367] いくつかの実施形態では、圧力センサからのフィードバックを用いて、有害な圧力に到達するのを防ぐ。例えば、センサからの圧力測定値が、ユーザーに表示されてもよく、1つ以上のアルゴリズム152が、測定値に基づいて変更されてもよく、且つ/又は圧力が所定の閾値に達すると警告もしくは遮断が生じてもよい。
【0326】
[00368] しかしながら、細胞膜の透過化には静水圧が重要な役割を果たす。場合によっては、望ましい細胞外圧の上昇は、細胞内への外来性DNAなどの分子110の移行を容易にする。さらに、静水圧は、注入された分子110の組織内分布に重要な役割を果たすことが多い。したがって、いくつかの実施形態において、圧力測定値(例えば、デバイス102の近位端において取られた外部圧力測定値)は、最適化された移行条件を確保するための尺度として、ユーザーによって利用され得る。このような実施形態において、圧力は、所望の所定の圧力範囲内に収まるように増加又は減少させることができる。いくつかの実施形態において、分子110を注入する前に(最小又はゼロの注射流速)圧力を計測して、基底細胞内圧(Pi=P1|Q1=0)を特定する。移行を達成するのに最適な定義された目標差圧(Pd=Pi-Pe)を考慮し、溶液に対するその系の静水圧(Rapplicator)を知って、圧力が所望の圧力差(P1=Pi+Pd+Q1Rapplicator)を増加させるまで流入速度(Q1)を調整する。このように、注入速度及び処置適用開始を最適化することにより、所望の結果を得ることができる。
【0327】
[00369] 送達方法が、上に記載されたように、誘導された血管外遊出を含むとき、圧力センサ測定値は、分子110及び処置エネルギーの注入前、注入中及び/又は注入後などに、浮腫レベルをモニタするために利用され得る。したがって、血管外遊出の誘引を調整することにより、処置プロトコル全体にわたる特定の時点において所望の浮腫レベルに達することができる。
【0328】
[00370] 種々の圧力センサ200を使用してよい。いくつかの実施形態において、圧力センサ200は、図25Aに図示されているものなど、エネルギー送達デバイス102の遠位先端部に沿って配置される。ここで、エネルギー送達デバイス102は、針形状を有するエネルギー送達体108を備え、そのエネルギー送達体108は、絶縁性スリーブ202によって少なくとも部分的に覆われている。図示されているように、分子110は、エネルギー送達体108を通って、近くの標的組織領域に到達する。これにより、圧力センサ200は、分子110の注入中及び処置エネルギーの印加中に圧力をモニタすることが可能になる。他の実施形態において、圧力センサ200は、図25Bに図示されているように、エネルギー送達デバイス102の遠位端に沿ってではあるが先端部の近位に配置される。ここで、圧力センサ200は、エネルギー送達体108を少なくとも部分的に覆う絶縁性スリーブ202に沿って配置される。組織レベルでの相対的な圧力測定値を手に入れることにより、注入された分子110の組織内分布をユーザーが把握することが可能になる。既知の圧力及び流速(デバイス102の近位端の近くで容易に計測できる値)で注入された溶液を考慮すると、遠位端での追加の相対測定は、経時的な圧力プロファイルのみならず、標的組織に沿った分子の空間分布を把握するための情報も提供する。
【0329】
[00371] いくつかの実施形態において、圧力センサ200は、ストレインゲージトランスデューサを備える。ストレインゲージトランスデューサは、通常、測定量(すなわち、ひずみ、電気抵抗又は波長)に応じて出力形態の変化を示すことを特徴とする。感度は、長さに対する抵抗の相対的な変化によって決定される。
【0330】
[00372] 他の実施形態において、圧力センサ200は、ダイヤフラム変位センサを備える。ダイヤフラム変位センサは、微小電気機械システム技術に基づいており、ここで、それらのセンサは、密閉された空洞の上に、曲げることのできる平面(ダイヤフラム)を有する。ダイヤフラムは、圧力の変化に応じて曲がるか又は変形する。結果として得られる出力形態は、キャパシタンスに基づき得るか、又は圧電トランスデューサに基づき得る。いくつかの実施形態において、センサ200は、エネルギー送達デバイス102の遠位先端部に設置される一方で、その対応するダイヤフラムは、センサ200の近位に配置されるので、それらの間の距離にわたる圧力降下の測定が可能になる。サイズの制約などに起因して、このようなセンサの配置が難しい場合は、圧力感知用光ファイバーが好ましいことがある。
【0331】
[00373] いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、図25Cに図示されているように、その遠位端に沿って配置された拡張可能な部材204を備える。ここで、拡張可能な部材204は、針形状を有するエネルギー送達体108を少なくとも部分的に覆う絶縁性スリーブ202の上に装着されている。拡張可能な部材204のこのような位置づけは、エネルギー送達デバイス102を挿入することによって形成された経路に戻る分子110の溶液の逆流の防止を支援することができる。これにより、標的組織内の圧力分布が改善され得るので、分子110が全体的に移行され得る。拡張可能な部材204は、PEFエネルギーの送達中に針状のエネルギー送達体108の移動も防止し得る。いくつかの実施形態において、拡張可能な部材204の上に装着された圧力センサ200が、拡張可能な部材204内の圧力をモニタする。これにより、拡張可能な部材204の適正な膨張が確保される。さらに、いくつかの実施形態において、圧力センサ200は、分子110の輸液中及び/又はPEFエネルギーの送達中に組織圧をモニタする。
【0332】
B.pH感知
[00374] 細胞は、通常、生物学的刺激にも応答することが理解されるであろう。細胞の生存において不可欠な役割を果たす生物学的刺激の1つがpHである。pHが安定していると仮定すると、そのpH内での比較的小さな変化は、潜在的に、代謝、膜電位、細胞成長、細胞膜を越えた物質の移動、細胞骨格の重合状態及び筋細胞の収縮能力をはじめとした実質的にすべての細胞プロセスに影響し得る。
【0333】
[00375] いくつかの実施形態において、局所pHをモニタするために、pHセンサが提供される(例えば、遠位先端部の近くなど、エネルギー送達デバイス102に沿って配置される)。pHの測定値を用いることにより、有害な酸性度/アルカリ度に達するのを回避するように、ユーザーに警告するか、又は1つ以上のアルゴリズム152が変更されるが、より重要なことには、最適な移行条件/設定のための尺度として最適化され、利用され得る。
【0334】
C.温度感知
[00376] 細胞の生存において不可欠な役割を果たす別の生物学的刺激は、温度である。比較的小さな温度変化は潜在的に、代謝、膜電位、細胞成長、細胞膜を越えた物質の移動、細胞骨格の重合状態及び筋細胞の収縮能力をはじめとした実質的にすべての細胞プロセスに影響し得る。いくつかの実施形態において、温度センサは、局所温度をモニタするためにエネルギー送達デバイス102に沿って配置される。これにより、エネルギー送達中の熱損傷を低減するか又は全く無くすのと同時に、局所温度をモニタし、正常な生理学的範囲内に維持することが可能になる。さらに、いくつかの実施形態において、温度感知は、標的部位への分子110の送達に関連する適度な冷却/加熱と組み合わせて使用され、先に記載したように、最終的には移行を改善する。熱電対、測温抵抗体センサ、光ファイバーなどの種々のタイプの温度センサを使用してよいことが理解されるであろう。
【0335】
移行及びアブレーション
[00377] いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法は、分子110の移行に加えてアブレーションを提供するように適合され得ることが理解されるであろう。これは、身体内の腫瘍を処置するとき、特に有用であり得る。このような例において、エネルギー送達デバイス10は、例えば経皮的又は管腔内的に、腫瘍にアクセスするように構成されている。発生器104は、標的組織内の特定の位置においてアブレーションを提供する波形であって、標的組織内の他の位置への分子の移行を提供する波形を有するPEFエネルギーを送達する1つ以上のアルゴリズム152を備える。いくつかの実施形態において、PEFエネルギーは、エネルギー送達体108から半径方向外向きに伸びる様々な処置ゾーンを作り出す。例えば、エネルギー送達体108に最も近いゾーン(すなわち、中心ゾーン)は、ネクローシスなどを介した即時の細胞死に耐え、中心ゾーンを囲むゾーン(すなわち、周辺ゾーン)は、遺伝子療法などのために分子110の移行を受ける。
【0336】
[00378] 本明細書中の上記に記載されたPEFエネルギー波形のいくつかは、分子110の移行に加えて、アブレーションを提供するように適合され得ることが理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態において、図15Bに図示されている交番DC波形は、様々なパラメータ値を改変することによって、分子110の移行に加えてアブレーションを提供するように構成されている。下記の表5は、中央ゾーンでのアブレーション及び周辺ゾーンでの分子110の移行を達成するための、種々のパラメータの組み合わせ例を提供している。
【0337】
[00379]
【表5】
【0338】
[00380] いくつかの実施形態において、極性が交番する図16の「裁断された」波形は、様々なパラメータ値を改変することによって、分子110の移行に加えて、アブレーションを提供するように構成される。下記の表6は、中央ゾーンでのアブレーション及び周辺ゾーンでの分子110の移行を達成するためにこの波形とともに使用される種々のパラメータの組み合わせ例を提供している。
【0339】
[00381]
【表6】
【0340】
[00382] いくつかの実施形態において、極性が交番する図17の「裁断された」二相性波形は、様々なパラメータ値を改変することによって、分子110の移行に加えて、アブレーションを提供するように構成される。下記の表7は、中央ゾーンでのアブレーション及び周辺ゾーンでの分子110の移行を達成するためにこの波形とともに使用される種々のパラメータの組み合わせ例を提供している。
【0341】
[00383]
【表7】
【0342】
[00384] 先に述べたように、いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、その遠位端の近くにエネルギー送達体108を有するシャフト106を備え、そのエネルギー送達体108は、複数のタイン600を備える。同様に、図6を参照すると、いくつかの実施形態において、第1のセクション106aは、エネルギー送達体108として作用し、1つ以上のタイン600も、エネルギー送達体108として作用する。異なるエネルギー送達体108の各々は、同じタイプのエネルギーを送達してもよいし、異なるタイプのエネルギーを送達してもよく、同様に、エネルギー送達体108は、グループで作用してもよい。特に、いくつかの実施形態において、第1のセクション106aは、組織を切除するエネルギーを送達し、1つ以上のタイン600は、組織の細胞に分子を移行させるエネルギーを送達する。他の実施形態において、特定のタインが、組織を切除するエネルギーを送達し、他のタインが、組織の細胞に分子を移行させるエネルギーを送達することが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、同じタインが、異なる時点において異なるタイプのエネルギーを送達するために使用されることも理解されるであろう。同様に、いくつかの実施形態では、同じタインが、異なる時点において分子110又はエネルギーを送達するために使用されることも理解されるであろう。そしていくつかの実施形態では、分子110とエネルギーとを同時に送達するために同じタインを使用することができる。これらの実施形態は、腫瘍などの望まれない組織を処置するときに特に有用であり得、腫瘍の完全な除去を確保するために、その腫瘍は切除され、分子110がその周囲に送達される。
【0343】
さらなる臨床適用
A.心臓組織への送達
[00385] 図26は、エネルギー送達デバイス102を使用して、心臓H内の細胞に分子110を送達する方法を図示している。この実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、細長いシャフト106及びその遠位先端部の近くに配置されたエネルギー送達体108を備える。さらに、シャフト106は、分子110を送達するエネルギー送達体108に対して近位の距離に位置する1つ以上の送達ポート702を備える。いくつかの実施形態において、1つ以上の送達ポート702は、エネルギー送達体108が左心室LV内に位置づけられたとき、大動脈弁AVの上方の大動脈A内に存在するように位置づけられる。図26の実施形態において、1つ以上の送達ポート702は、大動脈弁AVの上方、且つ冠状動脈分岐点の近傍に配置され、エネルギー送達体108は、左心室LVの壁の近くに位置づけられる。これにより、分子110は冠状動脈分岐点に送達されることが可能になり、分子110は、冠状動脈の循環に入ることができる。図27は、冠状動脈CAと、大動脈A及び大動脈弁AVに対する冠状動脈分岐点の位置とを図示している。このように、大動脈弁AVの上方の大動脈Aに分子110を送達することにより、分子110は、心臓H内の様々な組織に到達するように冠状動脈の循環に入ることが可能になる。大動脈弁AVは一方向弁であるため、分子110は、左心室LVに入ることが大きく妨げられている。左心室LV内などの心臓H内に位置づけられたエネルギー送達体108は、冠状動脈CAを通って近くを循環する分子110が心臓Hの壁の組織細胞に入り込むことができるように、心臓Hの壁にエネルギーを送達することができる。
【0344】
[00386] エネルギー送達デバイス102は、心臓Hにエネルギーを1箇所又は複数箇所において、同時に又はあるパターンで送達するように、種々の配置を有してもよいことが理解されるであろう。同様に、追加の送達デバイスを用いて、心臓H内又はその近くの様々な位置にエネルギー及び/又は分子110を送達してもよい。これは、様々なチャンバーから最もアクセスしやすい心臓Hの部分にエネルギーを送達する際に有用であり得る。
【0345】
[00387] いくつかの実施形態において、分子110は、エネルギーが送達される壁の近くに存在するように、例えば左心室LV内の、エネルギー送達デバイス102の遠位端から送達可能であるか、又はエネルギー送達前もしくはエネルギー送達中にその壁の中に分子110が送達されるようにその壁への貫通を通じて、エネルギー送達デバイス102の遠位端から送達可能であることが理解されるであろう。分子110とエネルギー送達との任意の組み合わせを用いてよいことが理解されるであろう。これらのシナリオのいずれにおいても、分子110は、エネルギー送達の際に細胞が分子110を取り込むことができるように、組織に送達される。
【0346】
B.髄外造血腫瘤への送達
[00388] 造血は、血液細胞の形成、発生及び分化を含む、あらゆるタイプの血液細胞を作ることである。造血は、出生前には卵黄嚢、次に肝臓、最後に骨髄において生じる。しかしながら、患者によっては、造血は、自然に又は病的に骨髄外で生じる(例えば、サラセミア、鎌状赤血球症及び骨髄増殖性障害などの慢性貧血状態において、古典的骨髄増殖性障害、特に慢性特発性骨髄線維症を有する患者において、並びに真性多血症及び稀に本態性血小板血症などの「続発性骨髄線維症」を伴う他の骨髄増殖性障害において)。それほど頻繁ではないが、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患(例えば、慢性骨髄単球性白血病)を有する患者又は骨髄異形成症候群でも見られることがある。これは、髄外造血(EMH)とみなされ、骨髄の外で生じる造血のことを指す。髄外造血は、脾臓及び肝臓において認められることが多いが、他の部位(例えば、リンパ節、肺、漿膜表面、胸部、副腎、泌尿生殖器系、皮膚並びに腹膜後腔及び傍脊椎腔)でも見られる。
【0347】
[00389] EMHは、血液を作る必要性が高まったことに対する代償性応答であると仮定されている。異常ヘモグロビン症を有する患者における無効な赤血球生成は、髄外造血(良性)腫瘍を形成させるか、又は身体のいくつかの部分に腫瘤をもたらす。このような腫瘤は、数センチメートルの寸法に達し得る。このような腫瘤は、一般に良性であるので、その腫瘤はめったに取り除かれない。いくつかの実施形態において、CD34+細胞(造血幹細胞、HSC)などのそのような腫瘤における細胞は、本明細書中に記載されるPEFエネルギー、デバイス及び方法を利用した分子110の移行の標的となる。そのような位置、特に肝臓内又は脾臓内は、比較的到達しやすく、遺伝子変異の編集などの処置後に作られた免疫細胞は、対応する疾患を直す又は緩和するために体内で放出され得る。
C.骨髄への送達
【0348】
[00390] いくつかの実施形態において、幹細胞への分子110の移行は、本明細書中に記載されるPEFエネルギー、デバイス及び方法を利用して、患者の骨髄において直接行われる。いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、骨髄自体にアクセスするように構成されており、他の実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、付属のデバイスがアクセスを提供した後に骨髄に前進するように構成されている。いくつかの実施形態において、造血幹細胞が移行の標的となる。このような実施形態では、骨髄内の標的細胞にアクセスするために腸骨稜(骨盤における)を穿孔する。腸骨稜は、造血幹細胞に富む骨であり、アクセスしやすく、骨髄提供のための骨髄へのアクセスに日常的に使用されている。PEFエネルギーを送達するために穿孔により孔が形成され、その孔を通ってエネルギー送達デバイス102が前進可能である。述べたように、分子110は、エネルギー送達デバイス102を通じて送達されてもよいし、他の様々な経路を通じて送達されてもよい。最終的に、分子110は、PEFエネルギーの助けを借りて標的細胞に移行する。したがって、遺伝子編集材料などの分子110を骨髄の造血幹細胞(HSC)に直接(インビボ)送達することにより、遺伝的血液疾患を治療する。
【0349】
[00391] 骨髄への分子110の直接送達は、エキソビボの方法よりも優れている。エキソビボの方法では、造血幹細胞(CD34+細胞)を動員末梢血から単離する。動員末梢血とは、動員剤で処置された全身を循環している血液である。用語「動員」とは、幹細胞が骨髄から末梢循環に遊走するのを促すプロセスのことを指し、ここで、その幹細胞は、白血球搬出法を介して回収され得る。動員剤は、骨髄から大量の造血幹細胞及び前駆細胞を動員させ、血流に血管外遊出させる。これらの作用物質の性質、並びにドナーの募集及び収集を取り巻く複雑さに起因して、ドナーの安全性と収集の成功の両方を確保するために、ドナーを厳重にモニタし、収集を継続的に管理しなければならない。
【0350】
[00392] さらに、成長因子を用いてインビトロで幹細胞を拡大させると、幹細胞が癌細胞に変化することがある。実際に、CRISPRの臨床試験において一部の鎌状赤血球症患者が、細胞の再輸液後に血液癌を発症した。編集した幹細胞を患者に再注入するには、免疫系を抑制して移植できるようにするために複数回の化学療法が必要であり、さもなければ身体がそれらの細胞を拒絶することになる。
【0351】
[00393] 骨髄では、CD34+のうちの5~10%だけしかHSCでない。エキソビボCD34+選択では、T細胞を完全に排除することはできず、移植片対宿主病(GvHD)を伴わない移植にはT細胞混入のない純粋なHSCが必要であるので、これは同種異形移植に影響を与える。内在性HSCの約95%は、細胞周期のG0期にある。古典的なシクロホスファミド/顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の動員の後、すべての骨髄HSCが、細胞周期に入って拡大し、マクロファージの「私を食べないで」シグナルであるCD47の発現をアップレギュレートする。骨髄HSCは、G0/G1において血流に入り、HSCインテグリンα4β1と類洞血管内皮細胞接着分子との相互作用を介して骨髄にホーミングし、マクロファージの領域を越え、HSC CXCR4レセプターを介してCXCL12ニッチにホーミングする。HSCを因子とともにインビトロで培養すると、それらは、細胞周期に入り、G1に入り、約30時間でS期に入る。S/G2/MにあるHSCを静脈内注射すると、それらのHSCは、骨髄にホーミングする能力を失う。培養の2~3日後、HSCの大部分は、自己複製できない前駆細胞になった。このように、そもそもほんの少数のCD34+細胞しかHSCではなく、それらのうちの周期に入っているHSCのホーミングは不十分である。
【0352】
[00394] さらに、HSCの生物学的作用及び環境は、ウイルスベクターによるHSCの遺伝子改変に影響を及ぼす。ウイルスベクターは、細胞とは異なり、血液から骨髄にホーミングできず、骨髄血管を通り抜けてHSCニッチに入ることができることはないであろう。現行の動員方法では、ベクターとG0/G1 HSCの両方が短い間隔の間しか血液中に存在せず、動員されたHSCでさえも希少な集団である。ウイルスのエンベロープタンパク質は、HSCとの融合を促進することができ、ウイルスベクターが細胞内にカーゴを放出することを可能にするが、遺伝子療法用のベクターは、HSC特異的結合部位及びオフターゲット送達も必要とし、なおもインテグレーションは問題であり得る。それにもかかわらず、HSC濃縮マーカーに結合するエンベロープ外部ドメインを有するレンチウイルスベクターが作製されれば、インビボでの遺伝子移入が可能になるであろうし、動員レジメンの実験的操作により、血中におけるHSCの滞留時間が長くなり、ベクターのアクセス性を高めることができるであろう。これらのストラテジーのいずれもが、分子110の送達及びその後の効果(例えば、遺伝子編集)を、本明細書中に記載されるように骨髄で直接行うことを企図していない。
【0353】
[00395] CRISPR/Cas9システムは、遺伝子編集のための好ましいシステムであることが理解されるであろう。CRISPR/Cas9システムは、本明細書中に記載されるPEFエネルギー、デバイス及び方法を用いて、骨髄をはじめとした身体内の様々な位置での遺伝子編集に利用され得る。これは、HSCにおける遺伝子編集の従来のツール(例えば、力価が低く、形質導入後のCas9発現が持続し、形質導入の達成が困難であるため、最適ではない、Cas9とガイドRNAの両方を発現するレンチウイルスベクター)とは対照的である。同様に、Cas9+ガイドRNAリボ核粒子を用いた従来のエレクトロポレーションも、インビトロでは効率的に機能するが、高い毒性レベルを伴うことがあり、インビボでの適用としては利用不可である。
【0354】
D.間葉系幹細胞への送達
[00396] いくつかの実施形態において、間葉系幹細胞への分子110の移行は、本明細書中に記載されるPEFエネルギー、デバイス及び方法を利用して、患者の骨髄又は脂肪組織などの身体内で直接行われる。間葉系幹細胞(MSC)は、多くの疾患、特に筋骨格系に関連する疾患にとって望ましい治療標的である。MSCは、骨芽細胞、軟骨細胞及び脂肪細胞をはじめとした中胚葉系列の細胞に分化することができる成体幹細胞である。MSCは、骨髄(BM)から初めて単離された珍しい非造血前駆細胞である。主にBM及び脂肪組織に見られるが、末梢血、臍帯血、滑膜、乳歯、羊水及び血管周囲領域から単離された例も存在する。
【0355】
[00397] MSCは、低免疫原性と免疫調節性の両方であり、損傷した組織にホーミングでき、修復プロセスにおいて治癒を開始するために生物活性分子の分泌に依存すると見出されている。MSCは、炎症性の傷害部位が産生するケモカイン誘引性勾配に応答して遊走を可能にするいろいろなケモカインレセプターを発現している。ゆえに、これらの細胞の遺伝的改変(例えば、本明細書中に記載されるデバイス及び方法の使用によるもの)は、癌から循環器疾患又は骨格疾患に至るまでの多様な疾患の処置に使用できるであろう。
【0356】
[00398] MSCへの分子110のインビボ移行は、エキソビボ移行の欠点の多くを克服する。まず、長期間の細胞培養が回避され、これにより、細胞集団の不均一性が高まるという結果的な影響が無くなる。細胞集団の多様性が高まることにより、検出可能な効果に関与する機能的集団及び機構を明確に定義することが難しくなる。さらに、長期培養は、CXCR4などの機能的な表面タンパク質のダウンレギュレーションにもつながることがあり、エキソビボで長期間拡大された細胞は、インビボでの遊走及びホーミングの能力の低下を示す。そのため、ベンチからベッドサイドへの結果の移行に関する任意の問題が回避される。最後に、ヒトに移植する場合の血清依存性成長の懸念があることに加えて、マウスで見られるような移植されたMSCからの肉腫の形成はよくあることだが、培養されたMSCが変異を獲得し、形質転換する可能性がある。これも、インビボ移行で回避される。
【0357】
[00399] MSCが存在する微小環境において分子110をMSCに移行することが望まれる。MSCが存在する微小環境は、それが血管周囲であるか、BMであるか、又は別の領域であるかを問わず、MSCのホーミング能力、分化能力及び再生能力に実質的な影響を及ぼす。周囲の細胞及び細胞外環境も、識別マーカーとして使用され得る表面タンパク質及びエピトープに影響するとみられる。
【0358】
[00400] 遺伝子編集又は遺伝子療法のためにMSCをインビボにおいて直接標的にしてもよいことが理解されるであろう。これらのMSCの操作は、以下の疾患のためになる。
【0359】
[00401] 造血幹細胞移植の生着を向上させる。MSCは、造血の重要な部位であるBMから初めて単離され、現在では造血において役割を果たすと考えられている。造血幹細胞(HSC)は、適正に分化するために、及びBMの骨内膜性ニッチ内で静止状態を維持するために、間質支持細胞が必要であり、この両方の支持機能は、MSCの子孫である骨芽細胞によって果たされ得る。これは、ドナーHSCの生着及び増殖を促進することを期待して、MSCをHSC移植と併用して用いることの根拠となっていた。移植部位に存在する遺伝的に改変されたMSCは、生着を向上させ得る。
【0360】
[00402] 低ホスファターゼ血症:低ホスファターゼ血症は、骨芽細胞及び軟骨細胞からの組織非特異的アルカリホスファターゼ(ALP)の不活性化変異に起因して、骨の石灰化の低下を特徴とする疾患である。移植されたMSCが骨芽細胞に分化することは、正常なALP酵素を産生できる細胞集団を送達するための有効な処置であり得る。低ホスファターゼ血症に罹患している乳児を処置するために、培養骨芽細胞と併用して全BM移植が用いられている。しかしながら、本明細書中に記載されるデバイス及び方法を用いれば、MSCへのALP酵素の局所(BM内)トランスフェクションにより、成果が改善されるであろう。
【0361】
[00403] 骨形成不全症:骨形成不全症(OI)は、不完全な骨の伸長及び高い骨折リスクにつながる骨疾患を特徴とし、重症度が様々である、少なくとも9つの遺伝性障害の一群である。ほとんどの罹患患者において、それは、I型コラーゲンの不足、すなわち合成の異常が原因である。主な処置は、骨密度を上昇させるための骨吸収抑制性のビスホスホネートによるものであるが、これは、根本原因に対処するものではない。MSCは、骨芽細胞に分化し、正常なコラーゲンIを供給することができるので、OIを有する患者の処置に有用であり得る。変異コラーゲンの標的化欠失に成功したMSCは、野生型細胞と類似のコラーゲン及びコラーゲン原線維を処理及び形成する。インビボにおいて、これらの細胞は、マウスにおいて異所性骨形成が可能である。
【0362】
[00404] 循環器疾患:この10年間で、MSC及び循環器疾患に関わる研究は、増加の一途をたどっている。具体的には、心筋梗塞では、動脈の閉塞に起因する心筋細胞の低酸素誘導損傷の後、作用し始める、MSCの可塑性、ホーミング及び炎症性調節はすべて、重要な特性である。心筋は、これらの細胞を効率的に置き換える能力を欠くので、いずれの処置の目標も、心筋細胞を置換することである。遺伝的に改変されたMSCの使用は、MSCのホーミング、生存及びパラクリン媒介性効果を改善しようと試みるものである。いくつかの実施形態において、骨髄中のMSCに分子110を送達するための本明細書中に記載されるデバイス及び方法は、その後心臓に移動するMSCにおいて治療用遺伝子を過剰発現させるために使用される。
【0363】
[00405] 肺高血圧症の予防:遺伝的に改変されたMSCは、肺高血圧症を予防することによって肺虚血を予防するために使用されている。本明細書中に記載されるデバイス及び方法は、骨髄中のMSCへの分子110の送達に使用され得る。
【0364】
[00406] 癌:MSCは、原発性及び転移性腫瘍の成長部位に優先的にホーミングすることができ、腫瘍周囲の非常に特異的なニッチに抗腫瘍剤を送達することができる。遺伝子ターゲティングの主要な2つのカテゴリーは、細胞傷害性、すなわちアポトーシス促進性の遺伝子、及び免疫賦活性の遺伝子である。アポトーシス促進性遺伝子TNF関連アポトーシス誘導性リガンドのレセプターは、多くのタイプの腫瘍上に発現されており、可溶型のリガンドを、MSCにおいて発現させたとき、並びにヒトの子宮頸癌及び乳癌及びグリオーマの異種移植マウスモデルにおいて適切に局在させたとき、増殖及び腫瘍サイズの減少並びにアポトーシスの増大及び生存時間の延長を引き起こした。誘導型一酸化窒素合成酵素も、遺伝的に改変されたMSCによってマウスにおける線維肉腫モデルに送達されたとき、腫瘍成長を低減した、潜在的に強力な抗腫瘍治療であると示されている。治療用導入遺伝子の第2のクラスは、免疫調節性の標的である。IL-2、-7、-12及び-18を発現するように操作されたMSCは、原発性腫瘍、確立された腫瘍及び転移性腫瘍のげっ歯類異種移植モデルにおいて腫瘍サイズを減少させた。IFN-α及び-β並びにCX3CL1/フラクタルカインなどの他の免疫サイトカインを有するMSCは、ナチュラルキラー細胞などの自然免疫活性又はT細胞の活性化増大による適応免疫応答の活性化を通じて、前立腺癌、肺癌、膵臓癌及び皮膚癌の腫瘍細胞のアポトーシスを増加させ、動物の生存時間を延長させる。
【0365】
[00407] I型糖尿病:1型糖尿病(T1D)は、膵臓のインスリン分泌β細胞の器官特異的な自己免疫介在性喪失に起因する。T1Dを有する人々は、外因性インスリン療法を用いて血糖値を管理しているが、これは、網膜症、腎症及びニューロパチーなどの長期的な糖尿病性合併症の発症をなくさない。現在、膵臓移植又は膵島移植が、唯一の治療法として残っているが、ドナー臓器の不足及び生涯にわたる免疫抑制が必要なため、これらの処置には制限がある。間葉系幹細胞(MSC)は、T1Dの自家及び同種異系の処置に対する魅力的な代替標的細胞である。
【0366】
[00408] 中枢神経系の標的化:間葉系幹細胞(MSC)は、そのホーミング特性のため、身体の様々な部位に移動し、ビヒクルとして作用して、静脈ラインからCNSへの修復を行うことができ、また、著しい免疫応答を喚起しないことが示されている。
【0367】
[00409] 本文書と参照により援用される任意の文書との間に矛盾した語法がある場合、本文書の語法が優先される。
【0368】
眼への送達
A.背景
[00410] 網膜は、目の後部を裏打ちしている薄い組織層である。網膜の目的は、水晶体が集光した光を受け取り、その光を神経信号に変換し、これらの信号を視覚認識のために脳に送ることである。したがって、網膜は、光を脳で解釈できる信号に変換する視覚のプロセスの中心である。
【0369】
[00411] 図28は、視神経ONの近くの網膜Rの断面部分を図示している。視神経ONの近くの網膜の中心領域は、黄斑と呼ばれ、高密度の色感受性光受容体(光を感じる)細胞を含む。錐体と呼ばれるこれらの細胞は、最も鮮明な視覚像を生み出し、中心視及び色覚を担っている。黄斑を取り囲む網膜の周縁領域は、より低い光レベルに反応するが色感受性ではない杆体と呼ばれる光受容体細胞を含む。杆体は、周辺視及び夜間視力を担っている。錐体と杆体の両方が、杆錐状体層(ヤコブ膜)LRC内に見られる。視神経ONは、光受容体(錐体及び杆体)から発生する信号を伝える。各光受容体は、小さな神経の枝によって視神経とつながっている。視神経は、脳の視覚中枢に信号を伝える神経細胞に接続されており、そこで視像として解釈される。
【0370】
[00412] 視神経ON及び網膜Rには、血液及び酸素を運ぶ血管が豊富に通っている。この血管の供給の一部は、網膜Rと強膜SCと呼ばれる眼の外側の白層との間にある血管の層である脈絡膜CHから来ている。網膜中心動脈(網膜へのもう一方の血液供給源)は、視神経ONの近くの網膜Rに達し、その後、網膜R内で枝分かれする。血液は、網膜Rから網膜中心静脈の支流に排出される。網膜中心静脈は、視神経ON内において眼から出る。
【0371】
[00413] 種々の疾患及び状態が、網膜の機能不全、最終的には失明に至ることがある。遺伝性網膜変性症(IRD)は、遺伝性網膜ジストロフィーとしても知られ、失明に至ることもある進行性の視覚衰弱疾患の多様なグループを代表する。IRDでは、網膜機能に極めて重要な遺伝子の変異により、光受容体の細胞死が進行し、それに伴う視力喪失が生じる。ほとんどの人において、IRDは、眼だけに影響する。しかしながら、いくつかのタイプのIRDは、他の健康問題と関係する。IRDは、遺伝的に不均一であり、現在までに260を超える疾患遺伝子が同定されている。IRDは、労働年齢の成人の失明原因の第一位である。まとめると、これらは、およそ4000人に1人又は全世界で200万人以上が罹患している。
【0372】
[00414] 疾患の進行速度を改変又は停止する処置及び治療法の開発は、これまで限定的であった。一連の遺伝的原因に起因する光受容体の変性を遅らせ得る治療法が研究されている。ビタミンA及びドコサヘキサエン酸は、網膜色素変性症(RP)の患者において、疾患の進行速度を緩やかに低下させると実証されている。経口バルプロ酸は、RP患者の症例シリーズにおいて視野の進行を遅らせると報告されたが、常染色体優性RPを有する患者におけるバルプロ酸処置の無作為化臨床試験は、バルプロ酸で処置された患者とプラセボで処置された患者との間に有意差を示さなかった。
【0373】
[00415] ハイスループットスクリーニングの進歩により、細胞標的及び神経保護薬候補の特定のペースが加速している。酸化ダメージは、光受容体の変性に関わっており、RPの前臨床試験において、N-アセチルシステイン(NAC)及びN-アセチルシステインアミド(NACA)が網膜変性症を予防すると示されている。毛様体神経栄養因子(CNTF)による非特異的な神経栄養因子療法は、いくつかの動物モデルにおいて光受容体の変性を遅らせると示されたが、初期又は進行型のRPを有する患者のヒト臨床試験では、視覚機能の利点は実証されなかった。
【0374】
[00416] さらに、特定の遺伝型のIRDに対する遺伝子増強療法の開発にも大きな力が注がれている。RPE65及びCHMに関連する網膜変性症に対する遺伝子増強療法の臨床試験の成功が報告されている。アンチセンスオリゴヌクレオチド、中途終止コドンリードスルーストラテジー、塩基編集及びRNA編集をはじめとしたゲノム編集及び遺伝子指向性薬理療法も、遺伝子増強療法に適さない可能性のある遺伝型の疾患に対する有望なアプローチであり得る。
【0375】
[00417] しかしながら、細胞への遺伝物質の導入には、先に述べたような課題がある。他の多くの生物学的分子及び治療用化合物とは異なり、DNA配列及び核酸は、細胞膜を越えて移動するように設計されていない。さらに、それらは、細胞内への輸送の代替機構を誘導するエンドサイトーシス因子を欠く。ゆえに、すべての遺伝子療法が、少なくとも2つの特徴、すなわち、コードされた治療用分子(DNA配列、遺伝子、siRNAなど)と、標的細胞への投与経路との組み合わせを必要とする。遺伝物質を細胞に送達するやり方の1つは、ウイルスベクターを用いるものである。ウイルスベクターの様々な欠点は、先に述べてきた。
【0376】
[00418] エレクトロポレーションは、細胞膜の完全性を乱し、懸濁液中の細胞に高分子を取り込ませる方法として、30年以上前から知られている。細胞の形態及び挙動に対する遺伝子の影響を試験するための多数のインビトロ研究が、細胞内への確実な送達方法としてエレクトロポレーションに頼っている。一般に、キュベットにピペットで移された培地に細胞を懸濁する。キュベットは、所定の距離だけ離れた2枚の平板電極で構成されている。その後、一連のパルス電場を細胞に送達することにより、遺伝物質がトランスフェクトされる。インビトロの環境は、トランスフェクションの条件を非常に正確に制御することが可能であり、高すぎる比率の細胞を殺すことなく、高いレベルの遺伝子送達が可能になる。多くの場合、異なる細胞株に対して特異的に最適化されたプロトコルが開発されている。全体的に見て、インビトロにおけるトランスフェクションは、遺伝子の作用の基礎的な理解の確立又はトランスジェニック実験動物モデルの作製に高い信頼性がある。しかしながら、実行可能な臨床上の遺伝子療法を提供することは難しい。培養液中の細胞をトランスフェクトする必要があるため、患者への治療につなげる際には追加の工程がいくつか必要である。ほとんどの場合、アフェレーシスベースのアプローチを用いて遺伝子療法が行われる。これには、採血又は生検による患者の細胞のサンプリングが必要である。次いで、標的とされる細胞集団を単離し、濃縮する。多くの場合、その細胞集団は、かなりの集団サイズのトランスフェクト細胞を生成するために増幅される。細胞の準備が整ったら、それらの細胞に遺伝子療法用の分子をエレクトロポレートする。トランスフェクションの後、それらの細胞は、血液又は標的器官内の標的位置などの、患者における必要な部位に再分配される。これらの工程は、遺伝子療法の送達に実質的な負担、コスト、侵襲性、時間及びリスクを追加する。総じて、これらの数多くの実質的な欠点が、最も有望な治療法の選択肢としてパルス電場ベースの遺伝子療法を広く採用することを妨げている。
【0377】
B.概要
[00419] 分子、特に小分子及び/又は高分子を、身体内の細胞、特に眼の内部の標的細胞、より詳細には、網膜の内部の標的細胞に送達するためのデバイス、システム及び方法が提供される。分子の例としては、いくつかの例を挙げると、プラスミド、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、細胞挙動の遺伝的変化もしくはエピジェネティックな変化を誘発するタンパク質及び/又は材料が挙げられる。そのような分子は、通常、種々の疾患及び状態(例えば、網膜色素変性症(RP)、杆体ジストロフィー又は杆体錐体ジストロフィー、アッシャー症候群(USH)、Bietti結晶性ジストロフィー(BCD)、バッテン病、バルデー・ビートル症候群(BBS)、アルポート症候群、レーバー先天黒内障(LCA)又は早期発症型網膜ジストロフィー(EORD)、錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー(CORD)、色覚異常、先天性停止性夜盲症(CSNB)、黄斑ジストロフィー、シュタルガルト病、ベスト病、パターンジストロフィー、ソースビー眼底変性症、ドインの蜂巣状ジストロフィー、コロイデレミア、X連鎖性網膜分離症(XLRS)などを含むがこれらに限定されない遺伝性網膜変性症(IRD))の処置において有益である。
【0378】
[00420] 分子は、硝子体腔(又は水晶体と網膜との間の領域)への注入、脈絡膜上腔(後眼部の周囲を横断する強膜と脈絡膜との間の潜在的空間)への注入、及び/又は網膜下ブレブ(杆錐状体層(LRC)を支持している網膜色素上皮(RPE)から杆錐状体層を分離することによって形成される小さな領域)への注入をはじめとした種々の機構によって眼に送達され得る。次いで、分子は、標的細胞に送達され、所望の効果を発揮できるように、パルス電場を用いて標的細胞の細胞壁を通じて送達される。したがって、遺伝子療法の場合、ウイルスを使わずに、分子によって送達された核酸が細胞にトランスフェクトされる。
【0379】
[00421] これらのデバイス、システム及び方法は、公知のウイルスベースの遺伝子療法であるアデノ随伴ウイルス(AAV)による送達よりも優れている。AAVは、ペイロード容量に制限がある。AAVは、4.7kbより小さい遺伝子しか収容できず、遺伝子調節領域(例えば、プロモーターなど)のための空間が限られている。AAVベースの遺伝子療法には大きすぎる疾患遺伝子は300を超える。これらには、比較的よく見られる多くの疾患、例えば、シュタルガルト病、アッシャー1B及び1D並びにレーバー先天黒内障-10(LCA10)を招く遺伝子が含まれる。対照的に、本明細書中に記載される非ウイルス性の送達は、10kbより大きい遺伝子を収容することができ、空間に制限がない。したがって、AAV送達での使用から除外されている遺伝子の多くを、本明細書中に記載されるデバイス、システム及び方法によって送達することができる。
【0380】
[00422] デバイス、システム及び方法は、エネルギー送達システム100を用いてパルス電場エネルギーを細胞に送達する。図29は、眼の一部にエネルギーを送達するように構成されたエネルギー送達システム100の実施形態を図示している。この実施形態において、エネルギー送達システム100は、波形発生器104に着脱可能に接続できる専用のエネルギー送達デバイス102を備える。この実施形態では、発生器104は、ユーザーインターフェース150、1つ以上のエネルギー送達アルゴリズム152、プロセッサ154、データストレージ/検索ユニット156(例えば、メモリ及び/又はデータベース)、並びに送達されるエネルギーを生成及び貯蔵するエネルギー貯蔵サブシステム158を備える。追加のアクセサリー及び機器を利用してもよい。エネルギー送達デバイス102は、1つ以上のエネルギー送達アルゴリズム152に従って、波形発生器104が提供するエネルギーを送達する。
【0381】
[00423] この実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、剛性シャフト106、電極体108及びハンドル105を備える。通常、電極体108は、1つ以上の電極を備える。シャフト106は、その遠位端が眼の内部部分に入り込むように、眼の表面を通過できるほど十分に剛性である。この実施形態において、シャフト106は、電極体108の少なくとも一部がシャフト106の遠位端を越えて伸びるように、電極体108が中を通るように構成された内腔を有する。この実施形態において、電極体108は、電極として作用する導電性ロッド又はワイヤーの形態であって、シャフト106内の内腔を通過するサイズであり、シャフト106内の内腔を通過するように構成されている、導電性ロッド又はワイヤーの形態を有する。この実施形態において、ハンドル105は、電極体108を操作するように操作可能なアクチュエータ132を備える。例えば、この実施形態において、アクチュエータ132は、電極体108をシャフト106の遠位端から前進及び後退させるボタンを備える。これにより、シャフト106が眼に挿入されている間は電極体108を後退させ、シャフト106が望ましく位置づけられたら電極体108を標的組織領域に向けて又は標的組織領域内に前進させることが可能になる。スライド、ラチェット、ノブ、ダイヤル、センサなどをはじめとした他のタイプのアクチュエータ132も使用され得ることが理解されるであろう。電極体108が、所望の位置に露出されたら、パルス電場エネルギーが、発生器104から電極体108を介して標的組織領域に渡される。この実施形態において、電極体108によって提供されるエネルギーが電極体108の露出部分から発するように、シャフト106は、非導電性であるか又は絶縁されている。
【0382】
[00424] 本明細書全体を通して記載されるエネルギー送達デバイス102の多くは、単極エネルギー送達を提供するように構成されていることが理解されるであろう。このような場合、リターン電極は、患者の表面上、例えば、胴体、殿部又は下肢に位置づけられる。眼を処置するとき、リターン電極は、眼の表面上などの眼のより近くに位置づけられ得る。いくつかの実施形態では、エネルギー送達デバイス102は、双極配置又は多極配置でエネルギーを提供するように構成されることも理解されるであろう。そのような実施形態では、エネルギー送達デバイス102は、双極配置もしくは多極配置で一緒に作用する2つ以上の電極体108を備えるか、又は電極体は、双極様式もしくは多極様式で機能するように構成されており、例えば、2つ以上の電極もしくは電極体108の一部が、双極対もしくは多極セットとして作用する。同様に、いくつかの実施形態において、双極対又は多極セットの一部が、別個のデバイス上に位置される。その結果として、電流を送達する又は受け取る別個のデバイスが、電流を受け取るために使用されたとしても、エネルギー送達デバイス102として説明されることになる。同様に、エネルギー送達体108と電極体108とは、交換可能に使用される。双極対又は多極セットの極性の変化に伴って送達又は受け取りの機能が変わる可能性があるので、これは、命名を単純化するためのものである。エネルギー送達体及び電極体は、1つ以上の電極を備えてもよいことが理解されるであろう。
【0383】
[00425] いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、標的細胞によって取り込まれることになる分子も送達することが理解されるであろう。しかしながら、他の実施形態において、分子は、注射針などの別個のデバイスによって送達される。必要に応じて、分子は、エネルギー送達デバイスと別個のデバイスとの両方によって送達されてもよい。
【0384】
[00426] パルス電場(PEF)エネルギーなどのエネルギーは、発生器104によって提供され、少なくとも1つの電極体108を介して眼内の組織に送達される。これらの電気パルスは、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズム152によって提供される。いくつかの実施形態において、各エネルギー送達アルゴリズム152は、一連のパルスを含む波形を有する信号を規定する。アルゴリズム152は、信号のパラメータ、例えばいくつかの例を挙げると、エネルギー振幅(例えば、電圧)、並びにパルス数、パルス幅及びパルス間のディレイで構成される印加エネルギーの持続時間を指定する。いくつかの実施形態において、1つ以上の電極体は、小さく、電極の周囲に大量のエネルギーを散逸させる傾向がある。ゆえに、エネルギーを最適に送達することが望まれる。いくつかの実施形態では、このような場合に効率的な送達パルスを提供するために、トランジスタハーフブリッジによる大きなDCリンクキャパシタンスを利用する。場合によっては、電力増幅器(限定的なバンド幅)又は指数関数的減衰発生器によって送達されるパルス電圧に関して、これが好ましい。いくつかの実施形態では、センサ情報及びオートシャットオフ仕様に基づくフィードバックループなどが含まれ得る。
【0385】
[00427] いくつかの実施形態では、二相性パルスが使用され得る。このような実施形態において、追加のパラメータには、二相性パルスにおける極性間の切り替え時間及び二相性サイクル間の不感時間が含まれ得る。場合によっては、二相性波形は、患者における筋刺激を低減するのに都合がよい。これは、電極体がわずかに動くだけで容易に治療効果がなくなり得る用途では特に重要である。二相性波形は、極性間の移行時の神経の活性化を最小限に抑えるために信号の位相/極性の急速な変更を必要とする。複数の高速スイッチング素子(例えば、MOSFET、IGBTトランジスタ)が望ましく、例えば、Hブリッジ構造又はフルブリッジで採用及び構成される。
【0386】
C.網膜下ブレブ
[00428] 先に述べたように、分子は、硝子体腔(又は水晶体と網膜との間の領域)への注入、脈絡膜上腔(後眼部の周囲を横断する強膜と脈絡膜との間の潜在的空間)への注入、及び/又は網膜下ブレブ(杆錐状体層(LRC)を支持している網膜色素上皮(RPE)から杆錐状体層を分離することによって形成される小さな領域)への注入をはじめとした種々の機構によって眼に送達され得る。図30は、以下のように説明され得る網膜下ブレブRBを形成するための手順の実施形態を図示している。
【0387】
[00429] 手術の前に、眼Eの瞳孔を散大させ、外用の抗生物質点眼薬を適用する。手術は通常、局所麻酔剤が追加された全身麻酔下において行われる。
【0388】
[00430] この実施形態において、網膜下ブレブは、網膜下注入装置201を使用して形成されると説明される。このような装置201は、ブレブを形成するために、分子の溶液などの溶液を送達するように構成されている。このような実施形態において、エネルギーは、別個のデバイスであるエネルギー送達デバイス102によって提供される。しかしながら、この手順は、分子の溶液などの溶液を送達する能力を備えたエネルギー送達デバイス102を用いて行われてもよいことが理解されるであろう。このような場合、エネルギー送達デバイス102を用いてブレブが形成され、同じデバイスを用いてエネルギーが送達される。
【0389】
[00431] この実施形態では、無菌の手術野上で網膜下注入装置201を準備する。注入装置201及び任意の伸長管状材料を、分子(例えば、プラスミド、RNA、オリゴヌクレオチド、デオキシオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はタンパク質など)を含むシリンジ(図示せず)に固定する。注入に利用可能な分子の体積を確認する。
【0390】
[00432] 開瞼器(lid speculum)を設置し、標準的な3ポート経扁平部硝子体切除術を行う。輸液カニューレの先端部を瞳孔から直接視認して、硝子体内の位置を確認する。この時点において、手術が完了するまで輸液を流し続けるべきである。
【0391】
[00433] コア硝子体切除術は、高切断速度及び低吸引設定において行われる。可能な限り完全に硝子体を除去する。コア硝子体切除術が完了した後、完全な後部硝子体剥離(PVD)を確認する。この時点において、硝子体皮質は、黄斑領域に付着しなくなる。次いで、残りの動くようになった硝子体を、硝子体切断器具で可能な限り完全に除去する。
【0392】
[00434] 分子の網膜下注射の前に、網膜を検査する。網膜の破損が確認された場合は、処置する。分子の注入は、2段階で行われる。まず、網膜をへこませ、先端部が網膜で覆われるように装置の先端部を位置づける。その位置は、注入によって引き起こされる中心窩への機械的ストレスを最小にするためにその構造から十分に離れているべきである。少量の分子を注入して、先端部が閉塞していないこと、及び適切に位置づけられていることを確認する。次に、ブレブが盛り上がっている場合、分子を注入して、最大0.3mL又は任意の意図した体積(例えば、最大1mL)の総体積を送達する。試験注入の間にブレブが形成されない場合、又はさらに注入してもブレブのサイズが大きくならない場合は、カニューレ先端部を元の網膜切開部から離れた位置に再度位置づけ、この一連の操作を繰り返す。2回目の網膜切開は、注入された任意の追加材料が1回目の網膜切開部位と接続して逆流しないほど十分に離すべきである。シリンジの全内容物が吐出された後、注入装置201は、(シリンジの残りの内容物が送達されることを可能にするために)所定の位置に保持される。この後、注入装置201は、抜去される。
【0393】
[00435] 網膜下ブレブRBは、分子を網膜色素上皮細胞(RPE)及び杆錐状体層(LRC)の光受容体に隣接して置くため並びに/又はPEFエネルギーを送達するための電極体108を置くための空間を提供する。いくつかの実施形態において、この近接は、パルス電場エネルギーの送達の際に、細胞が分子を取り込む能力を増加させる。いくつかの実施形態において、パルス電場エネルギーの態様が、どの細胞が分子を取り込むか及び取り込みの量を決定する。取り込みは、種々の因子、例えば、信号パラメータの選択、信号の波形、電極の極性、電極の位置、分子のタイプ、解剖学的環境のインピーダンス特色などによって制御又は影響され得る。したがって、いくつかの実施形態において、LRCの光受容体が、分子を取り込む。そして、他の実施形態では、RPEが分子を取り込み、さらに他の実施形態では、光受容体とRPEの両方が分子を取り込む。同様に、他の実施形態では、他の網膜層、眼の組織又は周辺領域を標的としてもよい。いくつかの実施形態において、取り込みは、信号パラメータに基づいて選択的であり、例えば、1セットのパラメータが、解剖学の1つの部分(例えば、LRC)による取り込みを引き起こし、1セットのパラメータが、解剖学の別の部分(例えば、RPE)による取り込みを引き起こし、さらに別のセットのパラメータが、解剖学の2つ以上の部分(例えば、LRC及びRPE)による取り込みを引き起こすことが理解されるであろう。同様に、電極体の極性を逆転させるか又は変更することによっても、どの細胞が分子を取り込むかを変えることができる。
【0394】
[00436] 図31は、電極体108が網膜下ブレブRB内に位置づけられるように、エネルギー送達デバイス102の実施形態の眼Eへの位置づけを図示している。この実施形態において、シャフト106は、眼Eの表面及び網膜Rを通過して、ハンドル105は、眼Eの外側に存在する。エネルギー送達デバイス102は、注入装置201とは異なる位置で眼Eに入り込むように図示されているが、エネルギー送達デバイス102は、注入装置201の抜去の際に、同じ開口部を通って眼Eに導入されてもよいことが理解されるであろう。エネルギー送達デバイス102が望ましく位置づけられたら、発生器104から電極体108を介してパルス電場エネルギーが送達される。この例では、電極体108は、正の電荷を有し、眼の外側のリターン電極(例えば、遠隔リターン電極)は、患者の表面上に位置づけられ、負の電荷を有する。この実施形態において、電極体108は、単極形式で網膜下ブレブRBにエネルギーを送達し、そのエネルギーは、網膜下ブレブRBから流出して(矢印で示されている)、ブレブRB内の分子110を網膜R及び必要に応じて眼Eの他の構造に負に駆動する。エネルギーが分子110を駆動する向きは、いくつかの例を挙げると、分子110の電荷、電極の極性及び電極の位置に依存することが理解されるであろう。他の組み合わせ及び成果は、後の項で説明される。次いで、エネルギー送達デバイス102は、抜去される。
【0395】
[00437] 図32Aから図32Bは、パルス電場エネルギーの印加の際にRPEに入り込んだ分子110を図示している。特に、図32Aは、分子を含む網膜下ブレブRBが形成された(アスタリスク*で示されている)眼Eを図示している。網膜の細胞が分子を取り込むことができるように、エネルギーが印加される。図32Bは、RPEに存在する分子110を図示している。
【0396】
[00438] 輸液用強膜切開部を閉じる前に、脈絡膜上への輸液を防ぐために輸液ラインをクランプする。切開部を縫合して閉じる。次に、0.5mLの4mg/mLデキサメタゾン溶液(急性炎症用)及び0.5mLの抗生物質溶液の結膜下注射を行う。眼表面には軟膏をつけて眼帯をあて、網膜下注射を行った眼にはアイシールドを装着して護る。
D.送達オプションの例
【0397】
[00439] いくつかの例を挙げると、様々な位置の分子送達、様々な位置の電極配置、様々なタイプの電極配列、様々なタイプの波形及び様々な組み合わせのシグナルパラメータなどの種々の送達オプションを使用できることが理解されるであろう。少なくともいくつかの組み合わせが本明細書中に記載されるが、そのように限定されない。
【0398】
[00440] 表8は、送達オプションの例の種々の組み合わせを示している。ここで、分子110は、種々の位置、例えば、網膜下ブレブ、硝子体腔又は網膜下ブレブと硝子体腔との組み合わせに送達される。同様に、電極体108は、種々の位置に、例えば、網膜下ブレブに、硝子体腔に、角膜に接して、又は眼周囲空間(例えば、結膜下、テノン下又は眼球後)に位置づけられ得る。場合によっては、網膜下ブレブは、これらの組み合わせにおいて、そのように望まれるとき、脈絡膜上腔と入れ替えてもよいことが理解されるであろう。同様に、脈絡膜上腔は、分子及び/又はエネルギー送達のために1つ以上のブレブと組み合わせて利用されてもよい。脈絡膜上腔への10~50μLの注入は、眼の合併症のリスクが低く耐容性がよいことが実証されており、場合によっては1mLまで注入できる。網膜色素上皮を標的とするとき、脈絡膜上送達が特に有用であり得る。
【0399】
[00441] 脈絡膜上腔は、脈絡膜と強膜との間にある潜在的空間として長い間知られている。ブルッフ膜である脈絡膜の内側縁は、密であるが、外側縁は、厚さが様々ないくつかの線維状のラメラからなる移行帯である。脈絡膜上腔は、50歳を超える人のおよそ50%に存在すると示されている。脈絡膜上腔の存在は、遠視性屈折異常と相関があり、一般に若く健康な人の眼には存在しない。遠視では、強膜による渦静脈の圧迫により静水圧が上昇し、不顕性の脈絡膜上滲出が生じ、イメージングの際に脈絡膜上腔に少量の流体が見えるようになると理論づけられている。また、加齢に伴い、脈絡膜血管から脈絡膜上腔へのタンパク質の漏出が増加し、浸透圧も上昇することから、高齢者では検出率が高くなるとも提唱されている。脈絡膜上腔は、特定の状態を有する種々の患者にも存在する。ゆえに、場合によっては、送達のための位置として、脈絡膜上腔が利用されることがある。
【0400】
[00442]
【表8】
【0401】
[00443] これらの種々の組み合わせを、本明細書中でより詳細に説明し、例証する。多数の組み合わせが存在し、その一部のみが本明細書中に提供されることが理解されるであろう。同様に、1つの眼に2つ以上の網膜下ブレブが形成されることもある。ゆえに、分子及び/又はエネルギー送達デバイスが、さらなる組み合わせのために2つ以上のブレブに送達されることがある。表1に列挙された組み合わせでも、各双極対の電荷(正極及び負極)のバリエーションが2つあるなど、部分組み合わせ(subcombinations)が含まれている。同様に、分子110の位置及び/又は解剖学的位置内の電極体108の位置も成果に影響し得る。例えば、硝子体腔のある領域内に分子を位置づけると、硝子体腔の異なる領域内に位置づけられた分子とは異なる成果がもたらされる場合がある。又は、硝子体腔のある領域に濃縮された分子110は、硝子体腔全体に拡散した分子とは異なる成果をもたらすことがある。同様に、解剖学的特徴が、分子110の移動に影響し得る特定組織の天然のインピーダンスなどの成果に影響を及ぼし得る。さらに、種々のタイプの波形が、分子110が異なって動く(異なる速度及び軌跡で移動することを含む)ようにし得る。例えばいくつかの例を挙げると、いくつかの波形は、並進を誘導し、他の波形は、回転、揺れ又はこれらと並進との組み合わせを誘導する。したがって、本明細書中に提供される例は、一部であり、限定しているとみなされないことが理解されるであろう。
【0402】
[00444] 図33は、分子110が網膜下ブレブRBに送達され、電極体108がそこへの単極エネルギー送達のために網膜下ブレブRB内に位置づけられている、実施形態を図示している。ここで、分子は負に帯電し、電極体108は負に帯電し、遠隔リターン電極は正に帯電している。これにより、通常、分子は、電極体108から離れて、例えば、網膜色素上皮RPE及び杆錐状体層LRCに、送り込まれる。場合によっては、RPE又はLRCへの誘導は、網膜下ブレブRB内の電極体108の配置、波形の選択又は他の因子によって達成され得る。同様の実施形態において、分子110は、硝子体腔Vにも添加される。水晶体と網膜との間のこの領域は、この領域が硝子体液で満たされているか別の溶液で満たされているかを問わず、本明細書中では硝子体腔Vと称されることが理解されるであろう。硝子体腔110内の分子110は、通常、網膜下ブレブRBからより遠く離れた網膜の部分に送り込まれる。分子110は、網膜の特定領域に分子110が移動しやすくするために、硝子体腔Vに特異的に位置づけられてもよいことが理解されるであろう。
【0403】
[00445] 図34は、分子110が網膜下ブレブRBに送達され、電極体108が、そこへの単極送達のために眼Eの硝子体腔V内に位置づけられている、実施形態を図示している。ここでも、分子は負に帯電し、電極体108は負に帯電し、遠隔リターン電極は正に帯電している。これにより、通常、分子110は、電極体108から離れて、例えば、網膜色素上皮RPEに、送り込まれる。電極の配向及び極性に応じて、分子110は、網膜色素上皮RPE細胞に向かって及びその中に押し込まれ得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、パルス毎に又は複数のパルスの後にパルスの極性を変えること(二相性)(例えば、4アップ、4ダウン...2アップ、2ダウンなど)により、分子110が1つの方向に、その後別の方向に駆動され、これにより、網膜色素上皮RPE細胞と杆錐状体層LRCの両方の標的化が可能になり得る。同様の実施形態において、分子110は、硝子体腔Vにも添加される。このような実施形態において、硝子体腔110内の分子110は、通常、LRCに送り込まれる。分子110は、網膜の特定領域に分子110が移動しやすくするために、硝子体腔Vに特異的に位置づけられてもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施形態において、種々のタイプの分子110が、ブレブ及び硝子体腔に設置されることが理解されるであろう。
【0404】
[00446] 図35は、分子110が硝子体腔Vに送達され、電極体108が、そこへの単極送達のために硝子体腔Vに位置づけられている、実施形態を図示している。このような場合において、所望のアクセスは、硝子体腔Vへの直接的なアクセスであるので、網膜下ブレブRBは形成されない。ここでも、分子110は負に帯電し、電極体108は負に帯電し、遠隔リターン電極は正に帯電している。これにより、通常、分子は、電極体108から離れて、例えば、LRCの中に、送り込まれる。いくつかの場合において、分子110は、エネルギー送達の前に、特定領域又は硝子体腔Vの領域において濃縮されることが理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、分子110は、硝子体腔V内の特定の位置に、例えば、標的組織領域に近くなるように、並びに/又は標的細胞への分子110の強化された及び/もしくはより予測可能な送達を提供するために特定の濃度をもたらすように、送達される。このような場合において、電極体108は、送達を最適化するために、分子110の濃度との関係で硝子体腔V内に設置されるのが望ましいことがある。いくつかの実施形態において、これは、硝子体腔Vの同じ場所内であり、他の実施形態において、これは、分子110を特定の方向に導くためにそのような場所に隣接している。例えば、いくつかの実施形態において、分子110は、LRCに隣接して位置づけられ、電極体108は、電流のエネルギーが分子110を電極体108から離れてLRCに送り込むように分子110に隣接して位置づけられる。
【0405】
[00447] 他の実施形態において、エネルギーは、双極様式で、例えば、2つの別個のエネルギー送達デバイス102を使用して、又は1対以上の電極体を有する単一のエネルギー送達デバイス102を使用して、送達される。例えば、図36は、網膜下ブレブRB内に配置された分子110、及び眼Eに位置づけられて、双極様式でエネルギーを一方から他方に送達する2つの電極体を図示している。図36を参照すると、分子110は、網膜下ブレブRB内に示されており、第1の電極体108’が網膜下ブレブRB内に配置されるように眼Eに挿入された、第1の電極体108’を有する第1のエネルギー送達デバイス102’が示されている。この実施形態では、第2の電極体108”が眼Eの硝子体腔V内に配置されるように眼E内に挿入された、第2の電極体108”を有する第2のエネルギー送達デバイス102”が示されている。この実施形態では、電流が、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。両方の双極電極をこの配置で眼において用いるとき、負に帯電した分子(例えば、DNA)が、例えば、杆錐状体層LRCに向かって及びその中に押し込まれ得る。硝子体腔Vにおける第2の電極体108”の位置は、特定の効果(例えば、分子110をLRCの特定の部分に送り込むこと、又はその駆動の規模を増大させること)を引き出すように選択され得ることが理解されるであろう。同様の実施形態において、第2の電極体108”は、硝子体腔V内ではなく、角膜C上に位置づけられる。結果は、図36に関連して説明されたものと同様であり得る。しかしながら、エネルギー場は、RPEへの送達のわずかな増加を引き起こし得るが、分子110の大部分は、LRCに送り込まれ続けるであろう。
【0406】
[00448] 図37は、2つの電極体(1つは網膜下ブレブRBにおけるものであり、もう1つは硝子体腔Vにおけるものである)を利用している、図36と同様の実施形態を図示している。ただし、ここでは分子110は、硝子体腔Vに配置され、電極体の極性が入れ替わっている。したがって、第1の電極体108’が、硝子体腔V内に位置づけられおり、第2の電極体108”が網膜下ブレブRB内に配置されるように眼Eに挿入された、第2の電極体108”を有する第2のエネルギー送達デバイス102”が示されている。電流が、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。ここでも、分子は負に帯電し、第1の電極体108’は負に帯電し、第2の電極体108”は正に帯電している。これにより、通常、分子は、第1の電極体108’から離れて(例えば、LRC内へ)送り込まれる。再度、硝子体腔V内の電極体108’、108”及び分子110の位置は、特定の効果(例えば、分子110をLRCの特定の部分に送り込むこと、又はその駆動の規模を増大させること)を引き出すために選択され得ることが理解されるであろう。同様の実施形態において、第1の電極体108’は、角膜C上にある。結果は、図37に関連して説明されたものと同様であり得る。
【0407】
[00449] 図38は、図37と同様の実施形態を図示しているが、分子110は、網膜下ブレブRBと硝子体腔Vの両方に配置されている。この場合も、第1の電極体108’は硝子体腔V内に位置づけられ、第2の電極体108”は網膜下ブレブRB内に配置されている。電流が、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。いくつかの実施形態において、分子は負に帯電し、第1の電極体108’は負に帯電し、第2の電極体108”は正に帯電している。これにより、通常、分子110は、第1の電極体108から離れて駆動される。したがって、硝子体腔V内の分子110は、LRCに送り込まれ、網膜下ブレブRB内の分子は、電極体108’から離れて、例えば、LRC又はRPEに、送り込まれる。いくつかの実施形態において、種々のタイプの分子110が、ブレブ及び硝子体腔に設置されることが理解されるであろう。
【0408】
[00450] 図39も、眼への双極のエネルギー送達を図示している。ここでは、第1の電極体108’が硝子体腔V内に配置されるように眼Eに挿入された、第1の電極体108’を有する第1のエネルギー送達デバイス102’が示されている。この実施形態では、眼Eの眼球後腔RBSに挿入された、第2の電極体108”を有する第2のエネルギー送達デバイス102”が示されている。眼球後腔RBSは、眼Eの裏側の、筋錐MC内の視神経ONの近くにある。電流が、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。この実施形態において、分子110は、網膜下ブレブRB内に配置される。デバイス102’、102”をこの配置で用いるとき、負に帯電した分子(例えば、DNA)は、通常、RPEに向かって及びその中に押し込まれる。電極体108’、108”の極性が入れ替わった場合、負に帯電した分子は、LRCに向かって及びその中に押し込まれ得ることが理解されるであろう。同様の実施形態において、第1の電極体108’は、角膜C上にあり、第2の電極体108”は、眼球後腔RBSに位置づけられる。結果は、図39に関連して説明されたものと同様であり得るが、場合によっては、エネルギー場は、より均質化される。これにより、RPEへの分子110の移行がよりむらのないものになり得る。
【0409】
[00451] 図40を参照すると、分子110は、再び網膜下ブレブRB内に示されているが、ここでは、第1の電極体108’が網膜下ブレブRB内に配置されるように眼Eに挿入された、第1の電極体108’を有する第1のエネルギー送達デバイス102’が示されている。この実施形態では、眼Eの眼球後腔RBSに挿入された、第2の電極体108”を有する第2のエネルギー送達デバイス102”が示されている。電流が、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。デバイス102’、102”をこの配置で用いるとき、負に帯電した分子(例えば、DNA)は、例えば、RPEに向かって及びその中に押し込まれ得るが、少量はLRCに向かって及びその中に押し込まれ得る。
【0410】
[00452] 図41は、同様の実施形態を図示しているが、ここでは、分子110は、網膜下ブレブRBではなく硝子体腔V内に配置されている。この実施形態では、エネルギーが、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。デバイス102’、102”をこの配置で用いるとき、負に帯電した分子(例えばDNA)は、第1の電極体108’によって反発されるが、第2の電極体108”に向かう第1の電極体108’の周囲の電場に追従する。したがって、分子110は、網膜下ブレブRBの表面を覆っている網膜の部分に直接ではなく、網膜の側面に向かって送り込まれ得る。これは、これらの領域における網膜の特定部分の処置を望むとき、有益であり得る。
【0411】
[00453] 図42は、図40から図41と同様の実施形態を図示しているが、ここでは、分子110は、網膜下ブレブRBと硝子体腔Vの両方に配置されている。電流が、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。いくつかの実施形態において、分子は負に帯電し、第1の電極体108’は負に帯電し、第2の電極体108”は正に帯電している。これにより、通常、分子110は、第1の電極体108から離れて駆動される。したがって、硝子体腔V内の分子110は、LRCに送り込まれ、網膜下ブレブRB内の分子は、RPEに送り込まれる。いくつかの実施形態において、種々のタイプの分子110が、ブレブ及び硝子体腔に設置されることが理解されるであろう。
【0412】
[00454] 図43は、分子110が硝子体腔Vに送達され、第1の電極体108’が硝子体腔V内に位置づけられている、実施形態を図示している。このような場合において、所望のアクセスは、硝子体腔Vへの直接的なアクセスであるので、網膜下ブレブRBは形成されない。この実施形態では、第2の電極体108”が、角膜Cに接して位置づけられる。電極体を角膜Cに接して位置づけるために、種々の異なる設計が利用され得ることが認識される。種々の強膜タイプのコンタクトレンズ電極を利用してよい。例としては、網膜電図(ERG)を記録するために米国で最も頻繁に使用されている電極であるBurian-Allenコンタクトレンズ電極及びDTL(商標)(Diagnosys LLC)繊維電極が挙げられ、それらを用いて、本明細書中に記載される電流を送達することができる。他の例としては、金リング電極及びジェットコンタクトレンズ電極が挙げられる。他のタイプのデバイスとしては、眼の周りに使用されるツイーザートロード又は検鏡が挙げられる。
【0413】
[00455] 電流が、双極形式で第1の電極体108’に送達され、第2の電極体108”に流れる。ここでも、分子は負に帯電し、第1の電極体108’は負に帯電し、第2の電極体108”は正に帯電している。したがって、第1の電極体108’とLRCとの間に配置された分子110は、LRCに向かって第1の電極体108’から離れて駆動され、その後、第2の電極体108”に向かって曲がる電場に追従し得る。したがって、これらの分子110は、LRCに向かって及びその中に送り込まれる。分子110をLRCの近くに位置づけ、第1の電極体108’を分子110と第2の電極体108”との間に位置づけることにより、この効果が強められ得ることが理解されるであろう。同様の実施形態において、第2の電極体108”は、角膜C上ではなく、眼球後腔RBSに位置づけられることが理解されるであろう。この改変の場合も、分子110はLRCに送り込まれ、状況に応じてより強い駆動がもたらされる可能性がある。
【0414】
E.デバイスの例
[00456] エネルギーは、種々のエネルギー送達デバイス102によって送達され得る。通常、エネルギー送達デバイス102は、身体とともに標的組織まで前進させることができる遠位端を有する細長いシャフト及びその遠位端の近くに配置された電極体108を備える。電極体108は、PEFエネルギーを標的組織に送達する1つ以上の電極を備える。このようなデバイスは、眼E上又は眼E内の標的組織にアクセスするように構成されている。いくつかの実施形態において、そのようなデバイスは、網膜R内又はその近くの標的組織にアクセスするように構成されている。
【0415】
[00457] 先に述べたように、いくつかの実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、分子110を含む溶液などの溶液を標的組織に送達するように構成されている。図44Aから図44Bは、そのような実施形態を図示している。図44Aは、エネルギー送達デバイス102の実施形態を図示しており、剛性シャフト106、電極体108及びハンドル105を備える。シャフト106は、その遠位端が眼の内部部分に入り込むように、眼の表面を通過できるほど十分に剛性である。この実施形態において、シャフト106は、電極体108の少なくとも一部がシャフト106の遠位端を越えて伸びるように、電極体108が中を通るように構成された内腔を有する。この実施形態において、エネルギー送達デバイス102は、シャフト106の内腔に流体的に接続する注入ポート300を備える。いくつかの実施形態において、注入ポート300は、シリンジを取り付けるためのルアーフィッティング302を備える。通常、所望の溶液を含むシリンジが、ルアーフィッティング302に取り付けられる。溶液の送達が望まれるとき、電極体108は、シャフト106の内腔の通過を可能にするように後退される。この実施形態において、ハンドル105は、電極体108を操作するように操作可能なアクチュエータ132を備える。この実施形態において、アクチュエータ132は、シャフト106の遠位端から電極体108を前進及び後退させるスライドを備える。これにより、電極体108を後退させることができる。
【0416】
[00458] その後、溶液が注入され、シャフト106の遠位端を通って標的組織領域へ排出される。次いで、アクチュエータ132をスライドさせることによって、電極体108を、内腔を通って前進させる。いくつかの実施形態において、内腔は、電極体108が定位置にある間に溶液がそれを通って注入されることを可能にするようなサイズであることが理解されるであろう。これにより、溶液とエネルギーを同時に標的組織領域に送達することが可能になる。
【0417】
[00459] 図44Bは、シャフト106の内腔に流体的に接続する注入ポート300を有するエネルギー送達デバイス102の実施形態の追加図を提供している。この図では、ルアーフィッティング302に取り付け可能なシリンジ304が示されている。同様に、ハンドル105から伸びるケーブル310が示されており、ここで、ケーブル310は、発生器104に接続するように構成された継手312を有する。これにより、エネルギー送達デバイス102、特に電極体108に電気エネルギーが提供される。
【0418】
[00460] エネルギー送達デバイス102、特に電極体108は、種々の形態をとり得ることが理解されるであろう。図45は、その遠位端の接写像を示しているエネルギー送達デバイス102の実施形態を図示している。ここで、エネルギー送達デバイス102は、電極体108が伸びる内腔107を有するシャフト106を備える。この実施形態において、電極体108は、導電性ロッド又はワイヤー320を備える。この実施形態において、ワイヤー320は、組織を貫通するように構成された尖った遠位先端部を有するが、その遠位先端部は、鈍い形状又は丸い形状をはじめとした種々の形状を有し得ることが理解されるであろう。
【0419】
[00461] 本文書では、用語「a」又は「an」は、特許文書で一般的であるように、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」という他の任意の場合又は使用法とは無関係で、1つ又は1つより多いことを含めるために使用されている。本文書では、用語「又は」は、別段示されない限り、非排他的であるか、又は「A又はB」が、「Aを含むがBは含まない」、「Bを含むがAは含まない」、及び「A及びBを含む」ことを指すために使用されている。本文書では、用語「~を含む(including)」及び「ここで(in which)」は、「~を含む(comprising)」及び「ここで(wherein)」というそれぞれの用語の平易な英語の相当語として使用される。また、以下の請求項において、用語「~を含む(including)」及び「~を含む(comprising)」は、オープンエンドであり、すなわち、請求項中のこの用語の前に列挙された要素のほかに要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、製剤又はプロセスが、なおもその請求項の範囲内に含まれると見なされる。さらに、以下の請求項において、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単にラベルとして使用されているのであって、その対象に数値的な要件を課すことを意図しているものではない。
【0420】
[00462] 上記の説明は、例証を意図したものであって、限定を意図したものではない。例えば、上に記載された例(又はその1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。上記の説明を見直す際に当業者などは、他の実施形態を使用することができる。要約は、読み手が技術開示の本質を迅速に確認できるように米国連邦規則法典第37巻1.72(b)に準拠して提供されている。要約は、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないという了解の下で提出されている。また、上記の詳細な説明では、本開示を合理化するために、様々な特徴をまとめてグループ化することがある。このことは、開示された特許請求されていない特徴が、いずれの請求項にも必須であることを意図していると解釈されるべきではない。むしろ、開示された特定の実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴に発明の主題が存在することもある。したがって、以下の請求項は、例又は実施形態として詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、それ自体で別個の実施形態として成立し、そのような実施形態は、様々な組み合わせ又は順列で互いに組み合わされ得ることが企図される。本発明の範囲は、そのような請求項に権利が与えられる均等物の全範囲とともに、添付の請求項を参照して決定されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図25C
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44A
図44B
図45
【国際調査報告】