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特表2023-536935コロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】コロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20230823BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20230823BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230823BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230823BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
A23L33/17
A61P31/14
A61K39/395 D
A61K39/395 S
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507676
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 KR2021010460
(87)【国際公開番号】W WO2022031137
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/062,654
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2021-0104262
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523037495
【氏名又は名称】ノヴェルジェン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELGEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】(Suwon World Cup Stadium, Uman-dong) 4F, 310, World cup-ro, Paldal-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do 16230 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】キム, タイ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】オ, クァン ジ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ウォン クン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB02
4B018LB05
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD85
4B018MD94
4B018ME14
4C085AA13
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA01
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物に関し、より詳細には、配列番号1で表される重鎖CDR1(VH CDR1)、配列番号2で表されるVH CDR2、配列番号3で表されるVH CDR3、配列番号4で表される軽鎖CDR1(VL CDR1)、配列番号5で表されるVL CDR2、および配列番号6で表されるVL CDR3を含む抗体またはその断片を含むことにより、コロナウイルスに対して優れた抗ウイルス効果を示し、コロナウイルスによって引き起こされる疾患の予防、治療または改善効果を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表される重鎖CDR1(VH CDR1)、配列番号2で表されるVH CDR2、配列番号3で表されるVH CDR3、配列番号4で表される軽鎖CDR1(VL CDR1)、配列番号5で表されるVL CDR2、および配列番号6で表されるVL CDR3を含む抗体またはその断片を含むコロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物。
【請求項2】
前記抗体またはその断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項3】
前記抗体またはその断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項4】
前記断片は、一本鎖抗体、Fv、scFv、di-scFv、Fab、Fab’、F(ab’)およびダイアボディ(diabody)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項5】
前記断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含むscFvである、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項6】
前記抗体またはその断片は、ヒト化抗体またはその断片、若しくはキメラ抗体またはその断片である、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項7】
前記コロナウイルスは、アルファコロナウイルス属またはベータコロナウイルス属からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項8】
前記コロナウイルスは、サーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスOC43(hCoV-OC43)、および豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含むコロナウイルス感染症の予防または治療用の薬学組成物。
【請求項10】
前記コロナウイルスは、サーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスOC43(hCoV-OC43)、および豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含むコロナウイルス感染症の予防または改善用の食品組成物。
【請求項12】
前記コロナウイルスは、サーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスOC43(hCoV-OC43)、および豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス(Coronavirus)は、コロナウイルス科(Family Coronaviridae)に属するウイルスを指すものであり、一般に鳥類およびヒトを含む様々な哺乳類に見られる。コロナウイルスは、ウイルスの特性と宿主によって呼吸器及び/又は消化器の感染症を引き起こすことが知られている。
【0003】
コロナウイルス科に属するウイルスは、一般に長さ27~32kbの一本鎖の陽性(positive sense)RNAゲノムを有し、ゲノムの5末端にキャップ(cap)、3末端にポリAテール(poly A tail)が存在する。コロナウイルスの直径は約80~200nmであり、ウイルス粒子の表面に棍棒状のスパイク(Spike)が存在する。ウイルスは皮膜(Envelope)を有しており、スパイクタンパク質および皮膜タンパク質のような主な外膜(outer membrane)タンパク質が存在する。スパイクタンパク質は、中和抗体誘導、受容体結合、膜融合などのウイルスの感染と病原性に関与する。皮膜タンパク質は、ウイルス粒子の形態を形成するか、またはウイルス感染後の宿主の細胞間を移動するときにウイルスを保護する役割を果たす。
【0004】
コロナウイルスは、アルファ(Alpha)、ベータ(Beta)、ガンマ(Gamma)、デルタ(Delta)の4つの属に分類される。アルファコロナウイルス属はさらに1a型と1b型に分かれ、ベータコロナウイルス属は2a、2b、2c、2d型に分かれる。アルファコロナウイルス属とベータコロナウイルス属はヒトと動物に感染し、ガンマコロナウイルス属とデルタコロナウイルス属は動物に感染することが知られている。
【0005】
コロナウイルスは一般にヒトに風邪症状を引き起こす原因体として知られてきたが、最近では重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome:SARS)、中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome:MERS)およびコロナウイルス感染症-19(COVID-19)による新規の伝染性肺炎のように、ヒトで発生した新型感染症の主な原因体として注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、コロナウイルス感染症の予防または治療用の薬学組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、コロナウイルス感染症の予防または改善用の食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.配列番号1で表される重鎖CDR1(VH CDR1)、配列番号2で表されるVH CDR2、配列番号3で表されるVH CDR3、配列番号4で表される軽鎖CDR1(VL CDR1)、配列番号5で表されるVL CDR2、および配列番号6で表されるVL CDR3を含む抗体またはその断片を含む、コロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物。
【0010】
2.前記項目1において、前記抗体またはその断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、抗ウイルス用組成物。
【0011】
3.前記項目1において、前記抗体またはその断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗ウイルス用組成物。
【0012】
4.前記項目1において、前記断片は、一本鎖抗体、Fv、scFv、di-scFv、Fab、Fab’、F(ab’)およびダイアボディ(diabody)からなる群より選択される少なくとも1つである、抗ウイルス用組成物。
【0013】
5.前記項目1において、前記断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含むscFvである、抗ウイルス用組成物。
【0014】
6.前記項目1において、前記抗体またはその断片は、ヒト化抗体またはその断片;またはキメラ抗体またはその断片である、抗ウイルス用組成物。
【0015】
7.前記項目1において、前記コロナウイルスは、アルファコロナウイルス属またはベータコロナウイルス属からなる群より選択される少なくとも1つである、抗ウイルス用組成物。
【0016】
8.前記項目1において、前記コロナウイルスは、サーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスOC43(hCoV-OC43)、および豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からなる群より選択される少なくとも1つである、抗ウイルス用組成物。
【0017】
9.前記項目1~8のいずれか一つに記載の組成物を含むコロナウイルス感染症の予防または治療用の薬学組成物。
【0018】
10.前記項目9において、前記コロナウイルスは、サーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスOC43(hCoV-OC43)、および豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からなる群より選択される少なくとも1つである、薬学組成物。
【0019】
11.前記項目1~8のいずれか一つに記載の組成物を含むコロナウイルス感染症の予防または改善用の食品組成物。
【0020】
12.前記項目11において、前記コロナウイルスは、サーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスOC43(hCoV-OC43)および豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からなる群より選択される少なくとも1つである、食品組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の抗ウイルス用組成物は、コロナウイルスの感染および増殖を抑制する活性を有した抗体またはその断片を含むことにより、コロナウイルスに対して優れた抗ウイルス効果を示し、コロナウイルス感染症の予防、治療または改善効果を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、一実施形態による抗体またはその断片の配列を示す。
図2図2は、一実施形態における細胞内浸透活性を確認した結果を示す。
図3図3は、一実施形態におけるウイルス遺伝子を加水分解する効能を確認した結果を示す。
図4図4は、MTT分析により、一実施形態における濃度による細胞内毒性を確認した結果を示す。
図5図5は、NGS分析により、一実施形態における濃度による細胞内毒性を確認した結果を示す。
図6図6は、定量リアルタイムPCR(qReal-time PCR)により、一実施形態におけるSARS-CoV-2に対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
図7図7は、定量リアルタイムPCR(qReal-time PCR)により、一実施形態におけるSARS-CoV-2に対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
図8図8は、リアルタイムPCR(Real-time PCR)により、一実施形態における濃度によるSARS-CoV-2に対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
図9図9は、プラークアッセイ(Plaque assay)により、一実施形態におけるSARS-CoV-2に対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
図10図10は、定量リアルタイムPCR(qReal-time PCR)により、一実施形態におけるhCoV-OC43およびPEDVに対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
図11図11は、リアルタイムPCR(Real-time PCR)により、一実施形態における濃度によるhCoV-OC43およびPEDVに対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
図12図12は、プラークアッセイ(Plaque assay)により、一実施形態におけるhCoV-OC43およびPEDVに対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
図13図13は、イムノブロット(Immunoblot)により、一実施形態におけるhCoV-OC43およびPEDVに対する抗ウイルスの効能を確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明は、配列番号1で表される重鎖CDR1(VH CDR1)、配列番号2で表されるVH CDR2、配列番号3で表されるVH CDR3、配列番号4で表される軽鎖CDR1(VL CDR1)、配列番号5で表されるVL CDR2、および配列番号6で表されるVL CDR3を含む抗体またはその断片を含む、コロナウイルスに対する抗ウイルス用組成物を提供するものである。
【0025】
用語「相補性決定領域(complementarity determining region, CDR)」とは、抗原の認識に関与する領域であり、この領域の配列の変化によって抗体の抗原に対する特異性が決定される。本明細書において、「VH CDR」とは重鎖可変領域に存在する重鎖相補性決定領域を意味し、「VL CDR」とは軽鎖可変領域に存在する軽鎖相補性決定領域を意味する。
【0026】
用語「可変領域」とは、抗原に特異的に結合する機能を果たしながら配列の変異を示す領域を意味する。可変領域にはCDR1、CDR2およびCDR3が存在する。前記CDRの間にはフレームワーク領域(framework region, FR)部分が存在し、これはCDRを支持する役割を果たすことができる。フレームワーク領域とは無関係に、CDRは抗体またはその断片が特定の機能を発揮できるようにする重要な領域であり得る。
【0027】
抗体またはその断片は、配列番号1で表される重鎖CDR1(VH CDR1)、配列番号2で表されるVH CDR2、および配列番号3で表されるVH CDR3を含む重鎖可変領域;並びに、配列番号4で表される軽鎖CDR1(VL CDR1)、配列番号5で表されるVL CDR2、および配列番号6で表されるVL CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。
【0028】
抗体またはその断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むことができる。一実施形態によると、抗体またはその断片は、配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含むことができる。
【0029】
抗体またはその断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことができる。一実施形態によると、抗体またはその断片は、配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことができる。
【0030】
抗体の断片は、一本鎖抗体、Fv、scFv、di-scFv、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、LC、dAb、CDR、scFv-Fc、およびダイアボディ(diabody)からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0031】
抗体の断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含むことができる。一実施形態によると、抗体の断片は、配列番号9のアミノ酸配列からなるものであってもよい。一実施形態によると、抗体の断片は、配列番号9のアミノ酸配列からなるscFvであってもよい。
【0032】
抗体またはその断片は、ヒト化抗体またはその断片;若しくは、キメラ抗体またはその断片であってもよい。ヒト化抗体は、当業界で公知の方法で製造することができる。
【0033】
実施形態によると、抗体の断片は、配列番号9のscFvのCDR配列を含むヒト化scFvであってもよい。
【0034】
本発明の抗体またはその断片は、ヌクレアーゼ活性を有し、ウイルスのRNAおよびDNAを分解することができる。抗体またはその断片は、さらなる処理を行わなくてもウイルスが感染した宿主細胞の細胞質に浸透することができる。抗体またはその断片の細胞質への浸透効果は、カベオラ依存的エンドサイトーシス(Caveolae mediated endocytosis)によるものとみることができる。
【0035】
本発明の抗体またはその断片は、コロナウイルスに感染した宿主の細胞質へ浸透することができ、感染した細胞からネイキッドウイルスRNA(naked viral RNA)を除去することにより、ウイルスの遺伝子の複製量の低下およびウイルスタンパク質の低下を誘導し、ウイルス治療の効果を持つことができる。
【0036】
コロナウイルスは、アルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属およびデルタコロナウイルス属からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0037】
コロナウイルスは、アルファコロナウイルス属またはベータコロナウイルス属からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0038】
コロナウイルスは、ヒト、またはヒトを除く動物コロナウイルスであってもよく、例えば動物は豚、牛などであってもよい。
【0039】
コロナウイルスは、犬コロナウイルス(CCoV)、猫コロナウイルス(FeCoV)、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、七面鳥コロナウイルス(TCoV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、ラットコロナウイルス(RCV)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(NL)、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、サーズコロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-Cov)、およびサーズコロナウイルス2(SARS-CoV-2)からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0040】
一実施形態によると、コロナウイルスは、サーズ-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、ヒトコロナウイルスOC43(hCoV-OC43)および豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0041】
また、本発明は前述の抗ウイルス用組成物を含むコロナウイルス感染症の予防または治療用の薬学組成物を提供するものである。
【0042】
抗ウイルス用組成物、抗体またはその断片、コロナウイルスについては前述の通りであるので、具体的な説明を省略する。
【0043】
用語「予防」とは、ウイルスによって引き起こされる疾患を抑制するか、または疾患の発症を遅らせるすべての行為を意味する。
【0044】
用語「治療」とは、ウイルスによって引き起こされる疾患の症状を改善または有益に変化させるすべての行為を意味する。
【0045】
コロナウイルスは、犬コロナウイルス(CCoV)、猫コロナウイルス(FeCoV)、豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、七面鳥コロナウイルス(TCoV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、ラットコロナウイルス(RCV)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(NL)、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、サーズコロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-Cov)、およびサーズコロナウイルス2(SARS-CoV-2)からなる群より選択することができる。
【0046】
コロナウイルス感染症は、インフルエンザ、風邪、咽頭炎、気管支炎、または肺炎を含むことができるが、ウイルス感染によって引き起こされる疾患であれば特に制限はない。コロナウイルス感染症は、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)であってもよい。
【0047】
本発明の薬学組成物は、疾患の予防および治療のために、単独でまたは手術、薬物治療および生物学的応答調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0048】
薬学組成物は、ウイルス感染に効果のある追加成分を含むことができ、追加成分は、化合物、天然物、タンパク質、ペプチド、核酸などを含むウイルス感染に対する効果が知られているあらゆる成分であってもよい。
【0049】
薬学組成物は、さらに組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤を含むことができる。担体、賦形剤および希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、でん粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などであってもよい。
【0050】
本発明の薬学組成物は、通常の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型製剤、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態で製剤化することができ、この製剤化は、薬剤学の分野で通常使用される方法によって行うことができる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤をさらに使用して調製することができる。
【0051】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、この固形製剤は少なくとも1つ以上の賦形剤、例えばでん粉、炭酸カルシウム(Calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製する。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁液、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられるが、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどを用いることができる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを用いることができる。
【0052】
本発明の薬学組成物は、患者の状態および体重、疾患の程度、薬物形態、投与経路および期間によって適切に投与することができる。例えば、本発明の薬学組成物は、1日あたり約0.1~1,000mg/kg、具体的には100~300mg/kgの量で投与することができる。
【0053】
本発明の薬学組成物に含まれる抗体またはその断片の濃度は、40μM未満、39μM未満、38μM未満、37μM未満、36μM未満、35μM未満、34μM未満、33μM未満、32μM未満、31μM未満、30μM未満、29μM未満、28μM未満、27μM未満、26μM未満、25μM未満、24μM未満、23μM未満、22μM未満、21μM未満、20μM未満、19μM未満、18μM未満、17μM未満、16μM未満、15μM未満、14μM未満、13μM未満、12μM未満、11μM未満、または10μM未満であってもよい。本発明の薬学組成物に含まれる抗体またはその断片の濃度は0μM超であってもよい。
【0054】
また、本発明は前述の抗ウイルス用組成物を含むコロナウイルス感染症の予防または改善用の食品組成物を提供するものである。
【0055】
抗ウイルス用組成物、抗体またはその断片、コロナウイルスおよび疾患については前述の通りであるので、具体的な説明を省略する。
【0056】
用語「改善」とは、ウイルスによって引き起こされる疾患の症状を軽減するすべての行為を意味する。
【0057】
食品組成物は他の食品または食品成分と共に使用することができ、通常の方法に従って適切に使用することができる。
【0058】
食品組成物に含まれる有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって適宜決定することができる。具体的には、食品組成物に含まれる抗体またはその断片の濃度は、40μM未満、39μM未満、38μM未満、37μM未満、36μM未満、35μM未満、34μM未満、33μM未満、32μM未満、31μM未満、30μM未満、29μM未満、28μM未満、27μM未満、26μM未満、25μM未満、24μM未満、23μM未満、22μM未満、21μM未満、20μM未満、19μM未満、18μM未満、17μM未満、16μM未満、15μM未満、14μM未満、13μM未満、12μM未満、11μM未満、または10μM未満であってもよい。本発明の食品組成物に含まれる抗体またはその断片の濃度は0μM超であってもよい。
【0059】
食品組成物の種類は特に制限されず、例えば肉、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤などであってもよい。
【0060】
食品組成物は通常の食品のように、有効成分の他に、香味剤または天然炭水化物などの追加の成分をさらに含むことができる。天然炭水化物はブドウ糖、果糖などのモノサッカライド;マルトース、スクロースなどのジサッカライド;およびデキストリン、シクロデキストリンなどのポリサッカライド;キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤;およびサッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを使用することができる。
【0061】
前記の他に、本発明の健康食品は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。その他に、天然のフルーツジュース、フルーツジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。
【0062】
また、本発明は前述の抗ウイルス用組成物を対象体に投与するステップを含むコロナウイルス感染症の予防または治療方法を提供するものである。
【0063】
対象体は、ヒト及び/又はヒトを除いた動物であってもよく、具体的には発明の薬物等を用いた治療によって有益な効果を示すことができる哺乳動物である。
【0064】
対象体には、コロナウイルス感染症の症状(例えば、発熱、倦怠感、咳、呼吸困難、肺炎、痰、咽喉痛、頭痛、喀血、悪心または下痢)を有するか、またはそのような症状を有する危険性がある対象体がすべて含まれ得る。コロナウイルスについては前述の通りであるので、具体的な説明を省略する。
【0065】
コロナウイルス感染症を予防または治療するのに有効な量とは、治療を必要とする対象体において所望の効果を達成できる量、または治療を必要とする対象体に客観的または主観的な利点を提供できる量を意味する。
【0066】
コロナウイルス感染症を予防または治療するのに有効な量は、単一または多重用量であってもよい。コロナウイルス感染症を予防または治療するのに有効な量は、本発明の薬物を単独で提供する場合の量であってもよいが、1以上の他の組成物(例えば、他の呼吸器疾患治療剤など)と組み合わせて提供される場合の量であってもよい。
【0067】
本明細書に記載の数値は、断りのない限り、均等範囲まで含むものと解釈されるべきである。
【0068】
また、本発明は、コロナウイルス感染症の予防または治療のための前述の抗ウイルス用組成物を含む薬学組成物の用途を提供するものである。
【0069】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明することとする。
【0070】
1.抗体またはその断片の製造
E.coli BL21細胞をホスト(host)として用いて、下記表1の配列番号9のアミノ酸配列を有する組換えタンパク質であるNVG308(scFv)を生産した(図1を参照)。下記表1に、NVG308関連の配列(scFv配列;そのVH、VL、CDR配列;及びその遺伝子配列)を示す。
【0071】
CaClを処理した大腸菌(E.coli)BL21細胞に、配列番号10の塩基配列を含むプラスミドを42度で1分間熱処理した後、37度で1時間安定化させた。その後、抗生剤が入った選択培地に塗抹して形質転換されたコロニーを選別し、scFvを発現させるために細胞を培養した。E.coli BL21細胞の培養器への適応を容易にするために、20%のグリセロール(glycerol)の濃度で-80℃でバンキング(banking)されている細胞を30mlのLB broth培地中で8~9時間前培養(preculture)した。このときのセル濃度は(A600nm)OD5~7であった。本培養においてもLB north培地を使用し、培養液の体積は3Lであった。前培養されたシード(seed)を本培養に接種する前に、選別マーカーであるカナマイシンとクロラムフェニコールをそれぞれ50mg/ml、25mg/mlとなるように添加した。次いで、準備されたシード30mlを接種し、本培養液の体積に対して1%の接種量となるようにした。シードの接種後、温度は37℃に維持し、pHは25~30%の濃度のアンモニア水を用いて6.8に維持した。また、好気性環境を維持するために、DOは40%以上になるようにした。シードを接種して3~4時間経過した後、細胞の濃度が(A600nm)OD0.7~0.9に達すると、1mMのIPTG(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside)で誘導(induction)を開始し、13~15時間後に細胞の濃度が(A600nm)OD7~8に達すると、培養を終了した。
【0072】
【表1】

【0073】
2.細胞内浸透活性の確認
免疫細胞染色(Imunocytochemistry)法を用いて、抗体またはその断片の細胞内への浸透能を確認した。具体的には、Vero-E6細胞に5μMのNVG308を処理した後、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle's medium))+10%FBS+1%P/S抗生剤培地で37℃および5%COの条件で培養した。その後、Alexa Fluor 488二次抗体とscFv抗体で免疫蛍光染色法を用いて染色し、処理後経過した時間別にscFvの細胞内浸透活性を確認した。細胞核は、DAPIとともに退色防止封入剤(Antifade mounting medium with DAPI)を用いて染色した。
【0074】
その結果、タンパク質処理後24時間までscFv(緑色蛍光で標識)が細胞内に存在することを確認した。また、4~8時間の間に細胞内で最も多くのscFvが存在することを確認した(図2を参照)。
【0075】
3.ウイルス遺伝子を加水分解する効果の確認
抗体またはその断片のコロナウイルスのスパイクジーン(spike gene)(NA、HA)の加水分解活性を確認した。具体的には、hCoV-OC43、PEDVおよSARS-CoV-2のスパイクジーン(NA、HA)をRT-PCRを用いて合成した。下記表2にRT-PCRに用いたプライマーを示す。
【0076】
【表2】
【0077】
1.0μgのバイラルジーン(viral gene)と0.5μgのNVG308とを混合し、37℃で1時間反応させた。対照群として、1.0μgのバイラルジーンと0.5μgのBSAとを混合し、37℃で1時間反応させた。
【0078】
その後、電気泳動法により核酸加水分解能を確認したところ、NVG308がコロナウイルスのバイラルジーンを分解する効能を示した(図3を参照)。
【0079】
4.細胞内毒性の確認
4-1.MTT分析
scFvの細胞内毒性を確認するために、Vero-E6細胞を用いてMTT分析を行った。NVG308を1μM、2.5μM、5μM、10μMおよび40μMずつVero-E6細胞に処理し、約24時間後に毒性を確認した。その結果、10μMの濃度までは細胞生存率において大きな差が見られなかったが、40μMの濃度で処理した場合には細胞生存率が約35%低下した(図4を参照)。
【0080】
4-2.NGS分析
scFvの細胞内毒性を確認するためにNGS分析を行った。NVG308を0μM、5μM、10μM、40μMの濃度でA549セルラインに処理した。DEG分析により遺伝子変化を確認した。5μM及び10μMのNVG308を処理した群では、アップ(up)またはダウン(down)される遺伝子がほとんどなかったが、40μMのNVG308を処理した群ではアップされる遺伝子が1,194個、ダウンされる遺伝子が102個であり、かなりの変化が示された(図5の上側の図を参照)。また、ハウスキーピング(Housekeeping)遺伝子の変異を確認した結果、5μMのNVG308を処理した群ではR2の値が0.9912であり、10μMのNVG308を処理した群ではR2の値が0.997であったが、40μMのNVG308を処理した群ではR2の値が0.9588であった。これにより、40μMのNVG308を処理した群では、ハウスキーピングmRNAが不規則な分布を示すことを確認した(図5の下側の図を参照)。前記結果に基づいて、5μMと10μMのNVG308を用いて抗ウイルスの効果に関する研究を行った。
【0081】
5.SARS-CoV-2に対する抗ウイルスの効果の確認
5-1.定量リアルタイムPCR(qReal-time PCR)による抗ウイルスの効果の確認
本発明者らは、細胞にNVG308を処理した後にSARS-CoV-2ウイルスを感染させ、ウイルス感染の抑制効果を確認した。5μMの濃度のNVG308をVero-E6細胞に前処理してから24時間後、SARS-CoV-2ウイルスをMOI 0.02のタイター(titer)で48時間感染させた。ウイルスを感染させてから24時間後に抗ウイルスの効果を確認した。遺伝子増幅様相(qReal-time PCR)により、SARS-CoV-2ウイルスのN(nucleocapsid)、E(envelope)、およびRdRp(RNA依存性PNAポリメラーゼ(RNA dependent RNA polymerase))ウイルス遺伝子の増減を確認した。リアルタイム遺伝子増幅反応法(Real-time qPCR)により遺伝子の量を検出した。その結果、3つのウイルス遺伝子ともに、PBSのみを処理した群に比べてNVG308を処理した群で遺伝子増幅様相が99%以上低下した(図6を参照)。
【0082】
また、本発明者らは、細胞にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後にNVG308を処理し、ウイルス感染の抑制効果を確認した。Vero-E6細胞にSARS-CoV-2ウイルスをMOI 0.02のタイター(titer)で感染させてから2時間後に5μMのNVG308を処理した。タンパク質を処理して24時間経過した後、抗ウイルスの効果を確認した。リアルタイム遺伝子増幅反応法(Real-time qPCR)により遺伝子の量を検出した。その結果、N遺伝子の場合は、PBSのみを処理した群に比べてNVG308を処理した群でウイルス遺伝子増幅様相が66%低下した。E遺伝子の場合は、PBSのみを処理した群に比べてNVG308を処理した群でウイルス遺伝子増幅様相が63%低下した。RdRp遺伝子の場合は、PBSのみを処理した群に比べてVG308を処理した群でウイルス遺伝子増幅様相が64%低下した(図7を参照)。
【0083】
また、本発明者らは、ウイルスを感染させた後、NVG308の濃度を1μMから10μMまで変化して処理し、SARS-CoV-2ウイルスに対する抗ウイルスの効果を確認した。その結果、PBS処理群に比べて10μMのNVG308を処理した群でN遺伝子の発現量が約90%低下し、E遺伝子の発現量が約81%低下し、RdRp遺伝子の発現量が約89%低下した。また、PBS処理群に比べて5μMのNVG308を処理した群でN遺伝子の発現量が約73%低下し、E遺伝子の発現量が約73%低下し、RdRp遺伝子の発現量が約67%低下した(図8を参照)。
【0084】
qPCRに使用したプライマーを下記表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
5-2.プラークアッセイ(Plaque assay)による抗ウイルスの効果の確認
前記「5-1.」に記載の方法でVero-E6細胞に10μMのNVG308を処理した後にSARS-CoV-2ウイルスを感染させたサンプルと、Vero-E6細胞にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた後に10μMのNVG308を処理したサンプルから培養培地のスープ(soup)を取得した。取得したスープでプラークアッセイを行い、ウイルスの数を測定した。その結果、PBSのみを処理した後にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた群は1mlあたり2.6×10PFUを示し、10μMのNVG308を処理した後にSARS-CoV-2ウイルスを感染させた群は1mlあたり1.2×10PFUを示した。すなわち、NVG308をウイルス感染前に処理しても、無処理群に比べてSARS-CoV-2ウイルスの数が顕著に減少したことを確認することができた(図9の上側を参照)。また、SARS-CoV-2ウイルスを感染させた後にPBSのみを処理した群は1mlあたり7.0×10PFUを示し、SARS-CoV-2ウイルスを感染させた後に10μMのNVG308を処理した群は1mlあたり1.2×10PFUを示した。すなわち、NVG308をウイルス感染後に処理しても、無処理群に比べてSARS-CoV-2ウイルスの数が顕著に減少したことを確認することができた(図9の下側を参照)。
【0087】
6.抗体またはその断片のhCoV-OC43およびPEDVに対する抗ウイルスの効果の確認
6-1.定量リアルタイムPCR(qReal-time PCR)による抗ウイルスの効果の確認
本発明者らは、hCoV-OC43ウイルスを感染させた後にNVG308を処理し、ウイルス感染の抑制効果を確認した。Vero-E6細胞にhCoV-OC43ウイルスをMOI 0.02及び0.002のタイター(titer)で感染させてから2時間後に5μMのNVG308を処理し、48時間後に抗ウイルスの効果を測定した。リアルタイム遺伝子増幅反応法(Real-time qPCR)により遺伝子の量を検出した。その結果、PBSのみを処理した群に比べてhCoV-OC43をMOI 0.02で処理した群では、N遺伝子が約73%低下し、hCoV-OC43をMOI 0.002で処理した群では、N遺伝子が約81%低下することを確認した(図10の上側を参照)。
【0088】
また、本発明者らは、PEDVウイルスに感染させた後にNVG308を処理し、ウイルス感染の抑制効果を確認した。Vero細胞にPEDVウイルスをMOI 0.002及び0.0002のタイターで感染させてから2時間後に5μMのNVG308を処理し、24時間後に抗ウイルスの効果を測定した。リアルタイム遺伝子増幅反応法(Real-time qPCR)により遺伝子の量を検出した。その結果、PBSのみを処理した群に比べて、PEDVをMOI 0.002で処理した群とMOI 0.0002で処理した群は、いずれもN遺伝子が約97%低下した(図10の下側を参照)。
【0089】
また、本発明者らは、ウイルスを感染させた後、NVG308の濃度を0.1μMから10μMまで変化して処理し、各ウイルスに対する抗ウイルスの効果を測定した。その結果、hCoV-OC43ウイルスの場合は、2.5μM、5μM及び10μMのNVG308を処理した群で抗ウイルスの効果を確認することができ、PBS処理群と比較して各群において82%、82%、98%のN遺伝子の低下効果を示した。PEDVウイルスの場合は、2.5μM、5μM及び10μMのNVG308を処理した群で抗ウイルスの効果を確認することができ、PBS処理群と比較して各群において95%、97%、99%のN遺伝子の低下効果を示した(図11を参照)。
【0090】
qPCRに使用したプライマーを下記表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
6-2.プラークアッセイ(Plaque assay)による抗ウイルスの効果の確認
前記「6-1.」に記載の方法でVero-E6細胞にhCoV-OC43ウイルスをMOI0.02で感染させた後に10μMのNVG308を処理したサンプルから得られた培養培地のスープ(soup)を取得した。取得したスープでプラークアッセイを行い、ウイルスの数を測定した。その結果、PBSのみを処理した群は1mlあたり1.3×10PFUを示し、NVG308処理群は2.2×10PFUを示した。すなわち、NVG308処理により、hCoV-OC43ウイルスの数が82%減少することを確認することができた(図12の上側を参照)。
【0093】
また、Vero細胞にPEDVウイルスをMOI 0.002で感染させた後、10μMのNVG308を処理したサンプルから得られた培養培地のスープを用いてプラークアッセイを行った。その結果、PBSのみを処理した群は1mlあたり5.2×10PFUを示し、NVG308を処理した群は1.0×10PFUを示した。すなわち、NVG308処理により、PEDVウイルスの数が81%減少することを確認することができた(図12の下側を参照)。
【0094】
6-3.イムノブロット(Immunoblot)による抗ウイルスの効果の確認
hCoV-OC43およびPEDVウイルスのスパイクタンパク質(spike protein)に対する抗体を用いて、各ウイルスのタンパク質量の変化を確認した。具体的には、hCoV OC43の場合、Vero E6細胞にhCoV-OC43ウイルスをMOI 0.02で感染させた後、NVG308を5uMの量で処理した。核酸加水分解活性のないscFvであるHW6を陰性対照群として使用した。それを48時間培養した後、ウエスタンブロット(Westernblotting)を行い、ウイルススパイクタンパク質の量を検出した。その結果、ウイルスのみを感染させた実験群に比べて、scFvを処理した実験群ではスパイクタンパク質の量が顕著に減少したことが確認された。一方、HW6を処理した実験群ではほとんど減少していないことを確認した。また、Vero細胞にPEDVウイルスをMOI 0.001で感染させた後、NVG308を5μMの量で処理し、48時間培養した後にウエスタンブロット(Westernblotting)を行い、ウイルススパイクタンパク質の量を検出した。その結果、PEDVもまた、ウイルスのみを感染させた実験群に比べてNVG308を処理した実験群ではスパイクタンパク質の量が顕著に減少したことを確認した(図13を参照)。
【0095】
前述の実験結果から、本発明の抗体またはその断片は、10μM以下の濃度で細胞に毒性を示さず、様々なコロナウイルス(SARS-CoV-2、hCoV-OC43、PEDV)に対して抗ウイルス効果を示すことを確認した。
【0096】
本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者には、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であるということが理解できよう。したがって、以上で記述した実施例はいずれの面においても例示的なものであり、限定的でないものとして理解すべきである。
【0097】
本発明の範囲は、後述の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023536935000001.app
【国際調査報告】