(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善、治療又は予防用、又は筋機能改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/738 20060101AFI20230823BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230823BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230823BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230823BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230823BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230823BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20230823BHJP
A23G 3/48 20060101ALN20230823BHJP
A23G 4/06 20060101ALN20230823BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20230823BHJP
A23K 10/30 20160101ALN20230823BHJP
【FI】
A61K36/738
A61P21/00 ZNA
A61K8/9789
A61P43/00 111
A61Q19/00
A61P17/00
A23L33/105
A23L2/52 101
A23L2/52
A23G3/48
A23G4/06
A23G3/34 101
A23G3/34 102
A23L2/00 F
A23K10/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507679
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2021003055
(87)【国際公開番号】W WO2022030719
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0096571
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0031726
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523037521
【氏名又は名称】エイエイティー コステク カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジェ クァン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘ リン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B014
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4B117
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、ローズヒップ粉砕物又は抽出物などのローズヒップの新しい用途に関し、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善、治療又は予防、又は筋機能改善用組成物に関する。本発明の組成物は、筋タンパク質の合成に関与するmTORの活性増加及び筋タンパク質の分解に関与するMuRF-1とatrogin-1のmRNA発現を減少させるという効果を有し、筋肉量を増加させ、筋機能を向上させ、筋減少症、筋萎縮症、筋異栄養症、緊張減退症、筋肉の退化、筋無力症、悪液質などの各種筋肉疾患の予防、改善又は治療に有用に利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物。
【請求項2】
前記ローズヒップは、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物。
【請求項3】
前記ローズヒップ抽出物は、水、炭素数1乃至6の有機溶媒、亜臨界流体及び超臨界流体からなる群から選ばれる一つ以上の溶媒でローズヒップを抽出して収得したことを特徴とする、請求項2に記載の筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒は、炭素数1乃至6のアルコール、アセトン、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロリド、ヘキサン、シクロヘキサン及び石油エーテルからなる群から選ばれる一つ以上の溶媒であることを特徴とする、請求項3に記載の筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物。
【請求項5】
前記筋肉疾患は、筋減少症、筋萎縮症、筋異栄養症、緊張減退症、筋肉の退化、筋無力症及び悪液質からなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物。
【請求項6】
ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患治療又は予防用薬学組成物。
【請求項7】
ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用化粧料組成物。
【請求項8】
ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用飼料添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉疾患改善、治療又は予防用、又は筋機能改善用組成物に関し、より詳細には、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップ(rose hip)を有効成分として含有する筋肉疾患改善、治療又は予防用、又は筋機能改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮(Muscle atrophy)とは、筋肉量の漸進的減少によって発生するものであって、筋肉の弱化及び退行を称する(Cell,119(7):907-910,2004)。筋萎縮は、非活動、酸化的ストレス、慢性炎症によって促進され、筋肉機能と運動能力を弱化させる(Clinical Nutrition,26(5):524-534,2007)。筋機能を決定づける最も重要な要素は筋肉量であり、これは、タンパク質の合成と分解の均衡によって維持される。筋萎縮症は、タンパク質の分解が合成よりも多く起こるときに発生する(The International Journal of Biochemistry and Cell Biology,37(10):1985-1996,2005)。
【0003】
筋肉の大きさは、筋肉内で起こる同化作用(anabolism)や異化作用(catabolism)を誘導する細胞内への信号伝逹過程(signaling pathways)によって調節される。筋タンパク質の分解よりも合成を誘導する信号伝逹反応が多く起こる場合、筋タンパク質の合成が増加するが、これは、筋タンパク質の増加による筋肉の大きさの増加(hypertrophy)や筋繊維数の増加(hyperplasia)で表れる(The Korea Journal of Sports Science,20(3):1551-1561,2011)。
【0004】
筋タンパク質の合成に関与する各因子は、筋細胞内でPI3K(phosphatidylinositol-3kinase(PI3K)/Akt経路(pathway)の刺激を起点にしてダウンストリームタンパク質(downstream proteins)をリン酸化させることによってタンパク質の合成を誘導する。PI3K/Akt信号伝逹によるmTOR(mammalian target of rapamycin)の活性は、細胞内で多様な成長信号を統合する中心成長信号伝逹因子として認められている。mTORは、mRNA翻訳(translation)を開始する二つの因子、4EBP1(4E-binding protein)とp70S6K(phosphorylated 70-kDa ribosomal S6 kinase)を活性化させることによって筋タンパク質の合成を誘導し、筋肉量の増加に寄与する(The Korea Journal of Sports Science,20(3):1551-1561,2011;The International Journal of Biochemistry and Cell Biology,43(9):1267-1276,2011)。その一方で、転写因子(transcription factor)であるFoxO(forhead box)が細胞質から核内に移動すると、タンパク質の分解に関与するE3ユビキチンリガーゼ(ubiquitin ligase)因子であるatrogin-1とMuRF1の発現を増加させる(Disease Models and Mechanisms,6:25-39,2013)。これらの発現量が増加すると、筋肉内でのタンパク質の分解が促進され、筋肉量が減少するようになる。したがって、mTORの活性促進及びatrogin-1とMuRF1発現の抑制は、筋肉タンパク質の量を増加させ、筋肉量を増加させる。
【0005】
筋肉細胞の分化と筋肉の形成は、多様な筋肉調節因子(muscle regulatory factors)によって調節される。そのうち、MyoDの活性によるミオゲニン(myogenin)発現の誘導は、筋原細胞の結合(fusion)に最も重要な要素であり、筋管細胞(myotube)の形成に関与する。このような過程を通じて形成された筋繊維は束をなし、最終的に筋肉を形成するようになる(Cellular and Molecular Life Sciences,70:4117-4130,2013)。
【0006】
ローズヒップは、バラ科(Rosaceae)に属する植物であって、学名はロサ・カニーナ(Rosa canina L.)と知られている。今までは、ローズヒップと関連して、抗老化効果(Clinical Interventions in Aging,19(10):1849-1856,2015)、抗酸化効果(Antioxidants,8(4):92,2019)、坑癌効果(Journal of Pharmaceutical Analysis 8,8(6):394-399,2018)、抗糖尿効果(Journal of Evidence-Based Complementary & Alternative Medicine,21(4):25-30,2016)、抗肥満効果(Preventive Nutrition and Food Science,18(2):85-91,2013)などの活性が報告されたことがある。
【0007】
しかし、本発明の以前には、ローズヒップの筋肉疾患予防及び治療、又は筋機能改善に関して知られたことがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2006-7008605号
【特許文献2】韓国公開特許第2016-0008200号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者等は、優れた筋機能調節活性を有し、安全に適用され得る天然物質を探索した結果、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップが筋肉疾患改善、治療又は予防用、又は筋機能改善活性を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患治療又は予防用薬学組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用化粧料組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用飼料添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患治療又は予防用薬学組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用化粧料組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、ローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用飼料添加剤を提供する。
【0018】
また、本発明は、筋肉疾患予防又は治療用医薬の製造のためのローズヒップを有効成分として含む薬学組成物の用途を提供する。
【0019】
また、本発明は、筋肉疾患患者にローズヒップを有効成分として含む薬学組成物を投与することを含む筋肉疾患の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るローズヒップは、筋タンパク質の合成に関与するmTORの活性を増加させ、筋タンパク質の分解に関与するMuRF1とatrogin-1のmRNA発現を抑制させるのに優れるという効果を有する。また、筋肉量を増加させ、筋機能を向上させ、各種疾病によって誘発される筋肉の機能低下、筋肉の損失などを予防、治療又は改善することができる。本発明は、天然物であるので、副作用がなく安全に使用することができ、医薬品、食品、化粧品又は飼料添加剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】L6筋肉細胞において、ローズヒップ熱水抽出物及びエタノール抽出物の処理によるmTORの活性増加効果を確認した結果を示す図である。
【
図2】L6筋肉細胞において、ローズヒップ熱水抽出物の処理によるp-mTOR、p-p70S6K及びp-4EBP-1のタンパク質の発現量増加効果を確認した結果を示す図である。
【
図3】L6筋肉細胞において、ローズヒップ熱水抽出物の処理によるatrogin-1及びMuRF1のmRNAの発現量減少効果を確認した結果を示す図である。
【
図4】筋萎縮を誘導したネズミにおいて、ローズヒップ処理による筋肉の体積増加効果を確認した結果を示す図である。
【
図5】筋萎縮を誘導したネズミにおいて、ローズヒップ熱水抽出物の処理によるp-mTOR、p-p70S6K及びp-4EBP-1のタンパク質の発現量増加効果を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を具体的に説明する。
【0023】
本発明は、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップを含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用食品組成物;ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップを含有する筋肉疾患治療又は予防用薬学組成物;ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップを含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用化粧料組成物;ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップを含有する筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用飼料添加剤;又はローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップをヒト、又はヒトを除いた哺乳動物に適用することを含有する筋肉疾患治療方法を提供する。
【0024】
本明細書において、「ローズヒップ」は、バラ科(Rosaceae)の植物、ロサ・カニーナ(Rosa canina L.)の実であり、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を使用することができる。
【0025】
本明細書において、「ローズヒップ粉砕物」は、乾燥したローズヒップの実を、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、ヒトを含む哺乳動物が容易に摂取できると共に、摂取後に腸で有効成分が乾燥粉砕物から容易に遊離され、結果的に哺乳動物の体内に容易に吸収され得る形態で準備されて使用され得る。このための乾燥粉砕物粒子は、その形状や大きさが制限されないが、粒子の表面が極大化されるほど前記記載の有効成分の遊離が容易になるので、可能な限り細かい粉の形態で製造することが好ましい。
【0026】
本明細書において、「ローズヒップ抽出物」は、乾燥したローズヒップの実を、適切な溶媒を使用して抽出して収得したものであって、抽出液、抽出液の希釈液又は濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物又は精製物の形態を全て含む。ローズヒップ抽出物の製造方法は、ローズヒップから水、炭素数1乃至6の有機溶媒、及び超高圧、亜臨界又は超臨界流体からなる群から選ばれた一つ以上の溶媒で抽出して収得できるが、これに限定されない。
【0027】
本発明のローズヒップ抽出物は、加熱抽出、冷浸抽出、超音波抽出法、ろ過法及び還流抽出法などの当業界で通常の抽出方法を使用して製造することができ、ローズヒップとしては、商業的に販売されるものを購入して使用したり、自然で採取又は栽培されたものを使用することができる。
【0028】
本発明に係るローズヒップ抽出物は、天然物から抽出物を製造する当業界に公知となった通常の方法によって、すなわち、通常の温度及び圧力の条件下で通常の溶媒を使用して分離することができる。
【0029】
本明細書で使用された「分画物」という用語は、多様な構成成分を含む混合物から特定成分又は特定グループを分離する分画方法によって得られた結果物を意味し、本発明では、前記のように製造されたローズヒップ抽出物から特定成分又は特定グループを分離する分画方法によって得られた結果物を意味する。
【0030】
本発明に係るローズヒップ分画物を得るために、当業界に公知となった通常の分画溶媒、例えば、水、エタノール、メタノールなどの炭素数1乃至4の無水又は含水低級アルコールなどの極性溶媒、及びヘキサン、ブタノール、エチルアセテート、クロロホルム、ジクロロメタンなどの非極性溶媒、又はこれらの混合溶媒が使用され得るが、これに制限されない。
【0031】
本発明のローズヒップ分画物は、精製過程を追加的に適用して得たものも含むことができる。例えば、本発明に係るローズヒップ抽出物を、一定の分子量カット-オフ(cut-off)値を有する限外ろ過膜(ultrafiltration membrane)に通過させて得た分画物、多様なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性又は親和性による分離のために製作されたもの)による分離などで追加的に実施された多様な精製方法を通じて得られた分画物も、本発明のローズヒップ抽出物に含まれる。
【0032】
本明細書において、「筋」は、筋肉、腱を包括的に称し、「筋機能」は、筋肉の収縮によって力を発揮する能力を意味し、筋肉が抵抗に勝つために最大限に収縮力を発揮できる能力である筋力、筋肉が与えられた重量にどれほど長い間又はどれほど多く収縮と弛緩を反復できるのかを示す能力である筋持久力、及び短時間内に強い力を発揮する能力である瞬発力を含む。本明細書の「筋機能改善」という用語は、筋肉量を増加させ、筋機能をさらに向上させることを言う。
【0033】
本発明は、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップを有効成分として含有する筋肉疾患改善及び予防用、又は筋機能改善用食品組成物;筋肉疾患予防及び治療用薬学的組成物;筋肉疾患改善及び予防用、又は筋機能改善用化粧料組成物;筋肉疾患改善又は予防用、又は筋機能改善用飼料添加剤を提供する。
【0034】
一具体例において、ローズヒップ抽出物は、熱水抽出物、エタノール抽出物、エチルアセテート抽出物、ヘキサン抽出物、超高圧抽出物、亜臨界抽出物、及び超臨界抽出物であり得るが、これに限定されない。
【0035】
一具体例において、ローズヒップ抽出物は、水、炭素数1乃至6の有機溶媒、亜臨界及び超臨界流体からなる群から選ばれる一つ以上の溶媒でローズヒップの実を抽出して収得することができる。ローズヒップは、100MPa以上の超高圧条件下で抽出して収得することもできる。必要な場合は、当業界に公知となった方法によってろ過及び濃縮段階をさらに含んで製造することができる。
【0036】
一具体例において、炭素数1乃至6の有機溶媒は、炭素数1乃至6のアルコール(alcohol)、アセトン(acetone)、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、エチルアセテート(ethyl acetate)、メチレンクロリド(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、シクロヘキサン(cyclohexane)及び石油エーテル(petroleum ether)からなる群から選ばれる一つ以上であり得る。
【0037】
本発明の具体的な実施例において、本発明者等は、乾燥したローズヒップの実の粉砕物を、エタノール、エチルアセテート及びヘキサンを溶媒にしてそれぞれ常温で繰り返して抽出したり、熱水抽出、超高圧抽出、亜臨界流体抽出、及び超臨界流体抽出を用いてローズヒップ抽出物を製造した。
【0038】
ローズヒップ抽出物をL6筋肉細胞に処理した結果、筋タンパク質の合成に関与するp-mTORの活性と筋タンパク質合成の生体指標であるp-mTOR、p-p70S6K、p-4EBP-1のタンパク質の発現量が有意に増加することを確認した(
図1、
図2、表1)。また、ローズヒップ抽出物をL6筋肉細胞に処理した結果、筋タンパク質の分解に関与するMuRF-1とatrogin-1のmRNA発現を有意に抑制させることを確認した(
図3、表2)。
【0039】
スキンステープラー(Skin stapler)を用いた不動化(immobilization)マウス動物モデルを用いてローズヒップ粉砕物、ローズヒップ熱水抽出物、ローズヒップエタノール抽出物、及びローズヒップ超臨界抽出物を処理した結果、筋萎縮群に比べて筋力、筋肉の体積及び筋肉の重さがそれぞれ有意に増加した(
図4、表3、表4)。また、ローズヒップ熱水抽出物の処理により、筋タンパク質合成の生体指標であるp-mTOR、p-p70S6K、p-4EBP-1のタンパク質の発現量が増加した(
図5)。
【0040】
本発明の筋肉疾患予防及び改善、又は筋機能改善用組成物が食品組成物である場合、筋肉の消耗又は退化による筋肉疾患の予防又は改善に使用され得る。筋肉の消耗及び退化は、遺伝的要因、後天的要因、老化などを原因として発生し、筋肉の消耗は、筋肉量の漸進的損失、筋肉、特に骨格筋又は隨意筋及び心臓筋肉の弱化及び退行を特徴とする。これと関連した疾患の例としては、筋減少症(sarcopenia)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋異栄養症(muscular dystrophy)、緊張減退症(atony)、筋肉の退化、筋無力症、悪液質(cachexia)などを挙げることができる。本発明の組成物は、筋肉量の増大効果を有し、筋肉の種類は制限しない。
【0041】
本発明の食品組成物は、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康機能食品(health function food)、食品添加剤(food additives)及び飼料などの全ての形態を含み、ヒト又は家畜を始めとした動物を取食対象とする。前記類型の食品組成物は、当業界に公知となった通常の方法によって多様な形態で製造することができる。
【0042】
前記類型の食品組成物は、当業界に公知となった通常の方法によって多様な形態で製造することができる。一般食品は、これに限定されないが、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例:果物缶詰め、瓶詰め、ジャム、マーマレードなど)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、コンビーフソーセージなど)、パン類及び麺類(例:うどん、そば、ラーメン、スパゲッテイ、マカロニなど)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズなど)、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例:味噌、醤油、ソースなど)などにローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を添加して製造することができる。また、栄養補助剤は、これに限定されないが、カプセル、タブレット、丸剤などにローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を添加して製造することができる。また、健康機能食品は、これに限定されないが、例えば、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物自体をお茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用(健康飲料)できるように、液状化、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取することができる。また、ローズヒップ、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を食品添加剤の形態で使用するためには、粉末又は濃縮液の形態で製造して使用することができる。また、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物と、筋肉疾患予防及び改善、又は筋機能改善効果を有すると知られている公知の活性成分とを混合し、組成物の形態で製造することができる。
【0043】
本発明の筋肉疾患改善及び予防、又は筋機能改善用組成物が健康飲料組成物として用いられる場合、前記健康飲料組成物は、通常の飲料と同様に、様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖などのモノサッカライド(monosaccharide);マルトース、スクロースなどのジサッカライド(disaccharide);デキストリン、シクロデキストリンなどのポリサッカライド(polysaccharide);キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコール(sugar alcohol)であり得る。甘味剤としては、ソーマチン(thaumatin)、ステビア(stevia)抽出物などの天然甘味剤;サッカリン(saccharin)、アスパルテーム(aspartame)などの合成甘味剤などを使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の組成物100mL当たり、一般的に約0.01g~5.0gで、好ましくは約0.1g~1.0gである。
【0044】
ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物は、筋肉疾患予防及び改善用、又は筋機能改善用食品組成物の有効成分として含有され得るが、その量は、筋肉疾患予防及び改善用、又は筋機能改善用作用を達成するのに有効な量として、特に限定されないが、全体の組成物の総重量に対して0.01重量%乃至100重量%であることが好ましい。本発明の食品組成物は、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物と、筋肉疾患予防及び改善、又は筋機能改善用組成物に効果を有すると知られている他の活性成分とを混合して製造され得る。
【0045】
また、本発明の筋肉疾患予防及び治療用組成物は薬学組成物であり得る。本発明の筋肉疾患予防及び治療用組成物が薬学組成物である場合、筋肉の消耗又は退化による筋肉疾患の予防又は治療に使用され得る。筋肉の消耗及び退化は、遺伝的要因、後天的要因、老化などを原因として発生し、筋肉の消耗は、筋肉量の漸進的損失、筋肉、特に骨格筋又は隨意筋及び心臓筋肉の弱化及び退行を特徴とする。これと関連した疾患の例としては、筋減少症、筋萎縮症、筋異栄養症、緊張減退症、筋肉の退化、筋無力症、悪液質などを挙げることができる。本発明の組成物は、筋肉量の増大効果を有し、筋肉の種類は制限しない。
【0046】
本発明の筋肉疾患予防及び治療用薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。
【0047】
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体をさらに含むことができる。経口投与用担体は、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸などを含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、適切なオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含むことができ、安定化剤及び保存剤をさらに含むことができる。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの抗酸化剤がある。適切な保存剤としては、ベンザルコニウムクロリド、メチル-又はプロピル-パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体としては、次の文献に記載されているものを参考にすることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0048】
本発明の薬学組成物は、ヒトを始めとした哺乳動物に如何なる方法でも投与することができ、例えば、経口又は非経口で投与することができる。非経口的な投与方法としては、これに制限されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下又は直腸内投与があり得る。
【0049】
本発明の薬学組成物は、上述した投与経路によって経口投与又は非経口投与用製剤に剤形化することができる。剤形化する場合は、一つ以上の緩衝剤(例えば、食塩水又はPBS)、抗酸化剤、静菌剤、キレート化剤(例えば、EDTA又はグルタチオン)、充填剤、増量剤、結合剤、アジュバント(例えば、アルミニウムヒドロキシド)、懸濁剤、濃厚剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、希釈剤又は賦形剤を使用して調剤され得る。
【0050】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液又はカプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の薬学組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉(トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉などを含む)、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース又はゼラチンなどを混ぜて調剤され得る。例えば、活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕し、適切な補助剤を添加した後、顆粒混合物で加工することによって錠剤又は糖衣錠剤を収得することができる。
【0051】
単純な賦形剤以外に、マグネシウムスチレートタルクなどの各潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤又はシロップ剤などがあるが、頻繁に使用される単純希釈剤である水又はリキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤又は保存剤などが含まれ得る。
【0052】
また、場合によって、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はナトリウムアルギネートなどを崩壊剤として添加することができ、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含むことができる。
【0053】
非経口的に投与する場合、本発明の薬学組成物は、適切な非経口用担体と共に、注射剤、経皮投与剤及び鼻腔吸入剤の形態で当業界に公知となった方法によって剤形化され得る。前記注射剤の場合は、必ず滅菌されなければならなく、バクテリア及び真菌などの微生物の汚染から保護されなければならない。注射剤の場合、適切な担体の例としては、これに限定されないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの混合物及び/又は植物油を含有する溶媒又は分散媒質があり得る。より好ましくは、適切な担体としては、ハンクス溶液、リンゲル溶液、トリエタノールアミンが含有されたPBS(phosphate buffered saline)又は注射用滅菌水、10%のエタノール、40%のプロピレングリコール及び5%のデキストロースなどの等張溶液などを使用することができる。前記注射剤を微生物の汚染から保護するためには、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの多様な抗菌剤及び抗真菌剤をさらに含むことができる。また、前記注射剤は、ほとんどの場合、糖又はナトリウムクロリドなどの等張化剤をさらに含むことができる。
【0054】
経皮投与剤の場合、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外用液剤、パスタ剤、リニメント剤、エアロール剤などの形態が含まれる。前記「経皮投与」は、薬学組成物を局所的に皮膚に投与し、薬学組成物に含有された有効な量の活性成分が皮膚内に伝達されることを意味する。
【0055】
吸入投与剤の場合、本発明によって使用される化合物は、適切な推進剤、例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切な気体を使用し、加圧パック又は煙霧機からエアロゾルスプレーの形態で便利に伝達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を伝達するバルブを提供して決定することができる。例えば、吸入器又は吹入器に使用されるゼラチンカプセル及びカートリッジは、化合物、及びラクトース又は澱粉などの適切な粉末化基剤の粉末混合物を含有するように剤形化することができる。非経口投与用剤形は、全ての製薬化学に一般的に公知となった処方書である文献(Remington’s Pharmaceutical Science,15th Edition,1975.Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania 18042,Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0056】
本発明の筋肉疾患予防及び治療用薬学組成物は、ローズヒップ抽出物を有効量で含むとき、好ましい筋肉疾患の予防及び治療効果を提供することができる。本明細書において、「有効量」とは、陰性対照群に比べてそれ以上の反応を示す量を言い、好ましくは、筋機能を向上させるのに十分な量を言う。本発明の薬学組成物にローズヒップ抽出物を0.01%乃至99.99%で含むことができ、残量は、薬学的に許容可能な担体が占めることができる。本発明の薬学組成物に含まれるローズヒップ抽出物の有効量は、組成物が製品化される形態などによって変わり得る。
【0057】
本発明の薬学組成物の総有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与されてもよく、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)によって投与されてもよい。本発明の薬学組成物は、疾患の程度によって有効成分の含量を異ならせることができる。非経口投与時には、ローズヒップ抽出物を基準にして、1日に体重1kg当たり、好ましくは0.01mg乃至50mg、さらに好ましくは0.1mg乃至30mgの量で投与されるように、そして、経口投与時には、ローズヒップ抽出物を基準にして、1日に体重1kg当たり、好ましくは0.01mg乃至100mg、さらに好ましくは0.1mg乃至50mgの量で投与されるように1回投与したり、数回に分けて投与することができる。しかし、前記ローズヒップ抽出物においては、薬学組成物の投与経路及び治療回数のみならず、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率などの多様な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、このような点を考慮するとき、当分野で通常の知識を有する者であれば、前記ローズヒップ抽出物において、筋肉疾患の予防及び治療のための特定の用途による適切な有効投与量を決定することができる。本発明に係る薬学組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0058】
本発明の筋肉疾患予防及び治療用薬学組成物は、単独で使用したり、又は、手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療又は生物学的反応調節剤を使用する各方法と併用して使用することができる。
【0059】
また、本発明の筋肉疾患予防及び治療用薬学組成物は、ローズヒップ抽出物を有効成分として含有する外用剤の剤形に提供することができる。
【0060】
本発明の筋肉疾患予防及び治療用薬学組成物を皮膚外用剤として使用する場合、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型乳化剤、非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性活性剤、親油性活性剤、又は脂質小嚢などの皮膚外用剤に通常使用される任意の他の成分のように皮膚科学分野で通常使用される補助剤を含有することができる。また、前記各成分は、皮膚科学分野で一般的に使用される量で導入され得る。
【0061】
本発明の筋肉疾患予防及び治療用薬学組成物は、皮膚外用剤として提供される場合、これに制限されないが、軟膏、パッチ、ゲル、クリーム又は噴霧剤などの剤形であり得る。
【0062】
また、本発明の筋肉疾患予防及び改善用、又は筋機能改善用組成物は、化粧料組成物であり得る。本発明の化粧料組成物は、ローズヒップ抽出物を有効成分として含有し、皮膚学的に許容可能な賦形剤と共に、基礎化粧品組成物(化粧水、クリーム、エッセンス、クレンジングフォーム及びクレンジングウォーターなどの洗顔剤、パック、ボディーオイル)、メーキャップ化粧品組成物(ファンデーション、リップスティック、マスカラ、メーキャップベース)、頭髪製品組成物(シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアジェル)及び石鹸などの形態で製造され得る。
【0063】
前記賦形剤は、これに限定されないが、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含むことができ、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤及び保湿剤などをさらに含むことができ、物性の改善を目的として粘増剤、無機塩類、合成高分子物質などを含むことができる。例えば、本発明の化粧料組成物で洗顔剤及び石鹸を製造する場合は、通常の洗顔剤及び石鹸ベースにローズヒップ抽出物を添加することによって容易に製造することができる。クリームを製造する場合は、一般的な水中油滴型(O/W)のクリームベースにローズヒップ抽出物を添加して製造することができる。これに、香料、キレート剤、色素、酸化防止剤、防腐剤などと、物性の改善を目的としたタンパク質、ミネラル、ビタミンなどの合成又は天然素材をさらに添加することができる。
【0064】
本発明の化粧料組成物に含有されるローズヒップ抽出物の含量は、これに限定されないが、全体の組成物の総重量に対して0.001重量%乃至10重量%であることが好ましく、0.01重量%乃至5重量%であることがさらに好ましい。前記含量が0.001重量%未満である場合は、目的とする効果を期待することができなく、10重量%超過である場合は、安全性又は剤形の製造に問題があり得る。
【0065】
本発明の組成物は、筋肉疾患の予防又は改善を目的として飼料添加剤又はこれを含む飼料組成物に添加することができる。
【0066】
本発明において、「飼料添加剤」という用語は、栄養素補充、体重減少予防、飼料内の繊維素の消化利用性増進、乳質改善、繁殖障害予防、受胎率向上、夏期の高温ストレス予防などの多様な効果を目的として飼料に添加する物質を含む。本発明の飼料添加剤は、飼料管理法上の補助飼料に該当し、炭酸水素ナトリウム、ベントナイト(bentonite)、酸化マグネシウム、複合鉱物質などの鉱物質製剤、亜鉛、銅、コバルト、セレニウムなどの微量鉱物質であるミネラル製剤、カロチン、ビタミンA、D、E、ニコチン酸、ビタミンB複合体などのビタミン剤、メチオニン、リシンなどの保護アミノ酸剤、脂肪酸カルシウム塩などの保護脂肪酸剤、生菌剤(乳酸菌剤)、酵母培養物、カビ発酵物などの生菌、酵母剤などがさらに含まれ得る。
【0067】
本発明において、「飼料」という用語は、動物が食べ、摂取し、消化させるための、又は、これに適当な任意の天然又は人工規定食、1食など又は前記1食の成分であって、本発明に係る筋肉疾患予防又は改善用組成物を有効成分として含む飼料は、当業界に公知となった多様な形態の飼料に製造可能であり、好ましくは、濃厚飼料、粗飼料及び/又は特殊飼料であり得るが、これに限定されない。
【0068】
濃厚飼料には、小麦、燕麦、トウモロコシなどの穀類を含む種実類、穀物を精製して得る副産物として、米糠、麩、大麦糠などを含む糠類、豆、油菜、胡麻、亜麻仁、ココナッツなどを採油して得る副産物である油粕類、サツマイモ、ジャガイモなどから澱粉を除いた残りである澱粉粕の主成分である残存澱粉質類などの粕類、魚粉、魚粕、魚類から得た新鮮な液状物を濃縮させたものであるフィッシュソリュブル(fish soluble)、肉粉、血粉、羽毛粉、脱脂粉乳、牛乳からチーズ、脱脂乳からカゼインを製造するときの残液であるホエイ(whey)を乾燥した乾燥ホエイなどの動物質飼料、酵母、クロレラ、及び海藻類があるが、これに制限されない。
【0069】
粗飼料には、野草、牧草、青刈りなどの生草飼料、飼料用カブ、飼料用ビート、カブの一種であるルタバガなどの根菜類、生草、青刈り作物、穀実などをサイロに充填した後、乳酸発酵させた貯蔵飼料であるサイレージ(silage)、野草、牧草を刈って乾燥させた乾草、種畜用作物の藁、マメ科植物の木の葉があり、これに制限されない。特殊飼料には、牡蠣、岩塩などのミネラル飼料、尿素やその誘導体であるジウレイドイソブタンなどの尿素飼料、天然飼料原料のみを配合したときに不足しやすい成分を補充したり、飼料の貯蔵性を高めるために配合飼料に微量で添加する物質である飼料添加物、及び食餌補助剤があるが、これに制限されない。
【0070】
本発明に係る前記筋肉疾患の予防又は改善用飼料添加剤は、当業界に公知となった多様な飼料製造方法によって適切な有効濃度範囲でローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を添加して製造可能である。
【0071】
本発明に係る飼料添加剤は、筋肉疾患の予防又は改善を目的とする個体であればいずれにも制限なく適用可能であって、例えば、牛、馬、豚、山羊、羊、犬、猫、兎などの非ヒト動物、鳥類及び魚類などのいずれの個体にも適用が可能である。
【0072】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。
【0073】
ただし、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎなく、本発明の内容が下記実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0074】
[実施例1]ローズヒップ抽出物の製造
【0075】
<1-1>ローズヒップ熱水抽出物の製造
【0076】
乾燥したローズヒップの実をミキサーで粉砕した後、粉砕したローズヒップの実の試料10gを水100mLに入れ、80℃で3時間にわたって抽出した。抽出された試料は、ワットマン(Whatman)1番ろ過紙で減圧・ろ過し、ろ過された抽出液を真空回転濃縮器で濃縮し、溶媒成分を除去した後でローズヒップ熱水抽出物を得た。
【0077】
<1-2>ローズヒップエタノール抽出物の製造
【0078】
乾燥したローズヒップの実をミキサーで粉砕した後、粉砕したローズヒップの実の試料10gをエタノール100mLに入れ、40℃で3時間にわたって抽出した。抽出された試料は、ワットマン1番ろ過紙で減圧・ろ過し、ろ過された抽出液を真空回転濃縮器で濃縮し、溶媒成分を除去した後でローズヒップエタノール抽出物を得た。
【0079】
<1-3>ローズヒップエチルアセテート抽出物の製造
【0080】
乾燥したローズヒップの実をミキサーで粉砕した後、粉砕したローズヒップの実の試料10gをエチルアセテート100mLに入れ、40℃で3時間にわたって抽出した。抽出された試料は、ワットマン1番ろ過紙で減圧・ろ過し、ろ過された抽出液を真空回転濃縮器で濃縮し、溶媒成分を除去した後でローズヒップエチルアセテート抽出物を得た。
【0081】
<1-4>ローズヒップヘキサン抽出物の製造
【0082】
乾燥したローズヒップの実をミキサーで粉砕した後、粉砕したローズヒップの実の試料10gをヘキサン100mLに入れ、40℃で3時間にわたって抽出した。抽出された試料は、ワットマン1番ろ過紙で減圧・ろ過し、ろ過された抽出液を真空回転濃縮器で濃縮し、溶媒成分を除去した後でローズヒップヘキサン抽出物を得た。
【0083】
<1-5>ローズヒップ超高圧抽出物の製造
【0084】
乾燥したローズヒップの実をミキサーで粉砕した後、粉砕したローズヒップの実1gと18%のエタノール76mLをポリエチレンパックに入れて密封した後、超高圧抽出装置(Frescal MFP-7000;Mitsubishi Heavy Industries)を用いて抽出した。超高圧抽出条件は、抽出圧力が320MPaで、抽出時間が5分であった。抽出された試料は、ワットマン2番ろ過紙でろ過し、ろ過された抽出液を真空回転濃縮器で濃縮し、溶媒成分を除去することによってローズヒップ超高圧抽出物を得た。
【0085】
<1-6>ローズヒップ亜臨界抽出物の製造
【0086】
乾燥したローズヒップの実をミキサーで粉砕した後、粉砕したローズヒップの実50gを1Lの水と共に亜臨界抽出装置(Biovan,Gyeonggi,Korea)の亜臨界水反応器に入れて密閉した。密閉後、反応器の温度を200℃に上昇させ、反応器の温度が200℃に到逹すると加熱を中断し、前記温度を20分間維持しながら抽出を行った。20分後、抽出物を、冷却水が供給される貯蔵タンクに移送し、30℃まで急速冷却させた後、浮遊残渣を分離するために3,600rpmで30分間遠心分離することによって上澄み液のみを取得した。凍結乾燥器(Ilshin Lab Co.Ltd.,Seoul,Korea)を用いて溶媒を全部除去することによってローズヒップの実の亜臨界抽出物を得た。
【0087】
<1-7>ローズヒップ超臨界抽出物の製造
【0088】
乾燥したローズヒップの実をミキサーで粉砕した後、粉砕したローズヒップの実10gを試料カートリッジに充填し、超臨界流体抽出装置(SFX 3560,Isco Inc.,Lincoln,NE,USA)を用いて抽出した。超臨界抽出条件は、抽出圧力が300barで、抽出温度が50℃で、超臨界二酸化炭素の流速が60mL/minで、抽出時間が2時間であった。超臨界流体の抽出が完了すると、抽出装置の圧力を低下させ、超臨界流体状態を解除することによってローズヒップの実の超臨界抽出物を得た。
【0089】
[実施例2]ローズヒップ熱水抽出物及びエタノール抽出物の筋タンパク質合成の生体指標mTOR活性の増加効果
【0090】
mTORタンパク質は、リン酸化されて活性化されたとき、筋肉細胞内のPI3K/Akt信号伝達経路で筋タンパク質の合成及び筋肉量の増加に関与するタンパク質の活性化を誘導できることが知られている。そこで、ローズヒップ抽出物の筋肉生成誘導活性を確認するために、mTORサンドイッチELISAキット(Cell Signaling Technology,Beverly,MA,USA)を用いてmTORの活性を確認した。
【0091】
L6筋芽細胞(ATCC;Manassas,VA,USA)を10%のFBS(fetal bovine serum)(Hyclone,Logan,UT,USA)が含有されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s media)(Hyclone)と共に、6-ウェルプレートに1×105cell/wellになるようにシーディングした後で24時間にわたって培養した。培養後、ウェルにある培地を除去し、2%のHS(horse serum)(Hyclone)が含有されたDMEM(Hyclone)に交換し、6日間さらに培養することによってL6細胞を筋管細胞(myotube)に分化させた。次に、前記実施例1-1のローズヒップ熱水抽出物を40μg/mLの濃度で、そして、実施例1-2のローズヒップエタノール抽出物を5.0μg/mLの濃度でDMEM(Hyclone)に溶かし、細胞に処理した後で12時間にわたって培養した。培養後、細胞溶解緩衝溶液(cell lysis buffer)を処理することによって細胞を溶解させた。収得した細胞溶解物内のタンパク質をブラッドフォード(Bio-Rad Laboratories Inc.,Hercules,CA,USA)を用いて1mg/mLの濃度で定量した。抗-mTOR抗体が付着したマイクロウェルに細胞溶解物を50μLずつ分注し、37℃で2時間にわたって放置した。結果物を洗浄緩衝溶液(Washing buffer)で合計4回洗った後、確認用抗体(detection antibody)を処理し、37℃で1時間放置した。続いて、結果物を再び洗浄緩衝溶液で合計4回洗った後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)が接合された2次抗体を入れ、37℃で30分間放置した。最後に、結果物を洗浄緩衝溶液で合計4回洗った後、TMB基質を各ウェルに入れ、37℃で10分間放置し、停止緩衝溶液(stop solution)を加えながらTMBの反応を停止させた。2分後、450nmの波長で吸光度を測定し、ローズヒップ抽出物を処理した筋管細胞内のmTORレベルを測定した。実験は、合計3回繰り返して進行し、それぞれ得た測定値は、対照群に対する百分率(%)を計算し、平均±標準偏差で表した。群間の差は、SPSS25.0統計パッケージ(SPSS Inc.,Chicago,IL,USA)を用いて一元配置分散分析(one-way analysis of variance)によるダンカン(Duncan)多重範囲分析を通じて確認した。このとき、p値が5%未満である場合、統計的に有意性があると表記した。
【0092】
その結果、
図1に示したように、ローズヒップ熱水抽出物を40μg/mLの濃度で処理することによって、対照群に比べてmTORの活性が有意(
*p<0.05)に増加し、ローズヒップエタノール抽出物を5.0μg/mLの濃度で処理することによって、対照群に比べてmTORの活性が有意(
**p<0.01)に増加したことを確認することができた。これは、本発明のローズヒップ熱水抽出物とエタノール抽出物が、筋肉細胞内で筋タンパク質の合成を促進させる能力に優れることを意味する。
【0093】
[実施例3]ローズヒップ抽出物の筋タンパク質合成の生体指標mTOR活性の増加効果
【0094】
実施例1-3乃至実施例1-7のローズヒップ抽出物をそれぞれ5.0μg/mLずつ処理したことを除いては、前記実施例2と同一の方法でmTOR活性を測定した。
【0095】
その結果、表1に示したようにローズヒップ抽出物を処理することによって、抽出物を処理していない対照群に比べてmTORの活性がいずれも有意(**p<0.01)に増加したことを確認することができた。これは、本発明のローズヒップ抽出物が、筋肉細胞内で筋タンパク質の合成を促進させる能力に優れることを意味する。
【0096】
【0097】
[実施例4]ローズヒップ熱水抽出物の筋タンパク質合成の生体指標の発現量増加効果
【0098】
筋肉細胞であるL6筋芽細胞(myoblast)(ATCC)を、10%のFBS(Hyclone)が含有されたDMEM(Hyclone)と共に、6-ウェルプレートに1X105cell/mLになるように入れた。細胞密度が約80%~85%になったとき、ウェルにある培地を除去し、2%のHS(Hyclone)が含有されたDMEM(Hyclone)を細胞に処理し、筋管細胞(myotube)の分化を誘導した。2日に1回ずつ新しい培地に取り替え、合計6日間分化を進行した。分化後、50ng/mLのTNF-α(tumor necrosis factor alpha)(PeproTech,Rocky Hills,NJ,USA)が含有されたDMEM(Hyclone)に、前記実施例1-1で製造したローズヒップ熱水抽出物を40μg/mLと80μg/mLの濃度で溶かした後、細胞に処理し、12時間にわたって培養した。培養後、タンパク質の加水分解酵素抑制剤カクテル(Sigma-Aldrich St.Louis,MO,USA)が含まれたNP-40緩衝溶液(ELPIS-Biotech,Daejeon,Korea)で細胞を溶解させ、細胞溶解物を収得した。収得した細胞溶解物は、13,000rpmで10分間遠心分離することによって上澄み液を取得した。上澄み液内のタンパク質の濃度をブラッドフォード(Bio-Rad Laboratories Inc.)で定量した後、タンパク質を5分間加熱し、10%のSDS-PAGE(sodium dodecyl sulphate-polyacrylamide gel electrophoresis)ゲルに展開し、タンパク質を分離した。分離されたタンパク質はニトロセルロース膜に伝達した。その後、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-4EBP1、4EBP1、又はα-チューブリン(tubulin)抗体(Cell Signaling Technology)をそれぞれ2.5%のBSA(bovine serum albumin)に1:1000の比率で希釈し、ニトロセルロース膜に伝達されたタンパク質と20時間にわたって常温で反応させた。1次抗体を反応させた後、TBST(Tris-buffer Saline Tween20)を用いてニトロセルロース膜を10分間3回洗浄した。1次抗体を認知するHRP(horseradish peroxidase)が接合された2次抗体(Bethyl Laboratories,Inc.,Montgomery,TA,USA)を2.5%のBSAに1:5000になるように希釈し、ニトロセルロース膜と2時間にわたって常温で反応させ、TBSTを用いて10分ずつ3回にわたって洗浄した。タンパク質バンドは、ECLウェスタンブロット検出試薬(GE Healthcare,Piscataway,NJ,USA)を使用して発色し、G;BOX EFイメージングシステム(imaging system)(Syngene,Cambridge,UK)を用いて発色されたタンパク質バンドを確認した。
【0099】
その結果、
図2に示したように、TNF-αによって筋タンパク質の合成に関与するp-mTOR、p-p70S6K及びp-4EBP-1のタンパク質の発現レベルが有意(
##p<0.01)に減少した一方で、ローズヒップ熱水抽出物を処理することによって、p-mTOR、p-p70S6K及びp-4EBP-1のタンパク質の発現レベルが有意(
**p<0.01)に増加したことを確認することができた。これは、本発明のローズヒップ熱水抽出物が、筋肉細胞内で筋タンパク質の合成に関与する生体指標の発現を増加させる能力に優れることを意味する。
【0100】
[実施例5]ローズヒップ熱水抽出物の筋タンパク質分解の生体指標の発現量抑制効果
【0101】
筋肉細胞であるL6筋芽細胞(myoblast)(ATCC)を、10%のFBS(Hyclone)が含有されたDMEM(Hyclone)と共に、6-ウェルプレートに1X105cell/mLになるように入れた。細胞密度が約80%~85%になったとき、ウェルにある培地を除去し、2%のHS(Hyclone)が含有されたDMEM(Hyclone)を細胞に処理し、筋管細胞(myotube)の分化を誘導した。2日に1回ずつ新しい培地に取り替え、合計6日間分化を進行した。分化後、50ng/mLのTNF-α(tumor necrosis factor alpha)(PeproTech,Rocky Hills,NJ,USA)が含有されたDMEM(Hyclone)に、前記実施例1-1のローズヒップ熱水抽出物を40μg/mLと80μg/mLの濃度で溶かした後、細胞に処理した。12時間後、TRIzol試薬(Takara,Otsu,Japan)を使用して総RNAを分離した。分離した総RNAは、ナノドロップ(NanoDrop 1000;Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,MA,USA)を用いて定量した。定量された16μLのRNAを逆転写酵素プレミックス(Reverse Transcriptase Premix)(ELPIS-Biotech)とPCR機械(Gene Amp PCR System 2700;Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)を用いて42℃及び55分と70℃及び15分の条件でcDNA合成した。16μLの生成されたcDNAのうち1μLのcDNA、下記特定のプライマー(Bioneer,Daejeon,Korea)、及びPCRプレミックス(premix)(ELPIS-Biotech)を用いて95℃で30秒、60℃で1分、及び72℃で1分を30回繰り返してPCRを行った。
【0102】
MuRF1
【0103】
フォワードプライマー(Forward primer):5'-CCGGACGGAAATGCTATGGA-3'(配列番号1)
【0104】
リバースプライマー(Reverse primer):5'-AGCCTGGAAGATGTCGTTGG-3'(配列番号2)
【0105】
Atrogin-1
【0106】
フォワードプライマー:5'-GTTACTGCAACAAGGAGAATCTGTT-3'(配列番号3)
【0107】
リバースプライマー:5'-CCGTATGAGTCTTATGTTTTGCTGG-3'(配列番号4)
【0108】
β-アクチン(Actin):
【0109】
フォワードプライマー:5'-TGACAGGATGCAGAAGGAGATTAC-3'(配列番号5)
【0110】
リバースプライマー:5'-TAAAACGCAGCTCAGTAACAGTC-3'(配列番号6)
【0111】
PCR結果、増幅されたcDNAを1.5%のアガロースゲル(agarose gel)で電気泳動して分離し、G;BOX EFイメージングシステム(imaging system)(Syngene)を用いてcDNAバンドを確認した。
【0112】
その結果、
図3に示したように、TNF-αによって筋タンパク質の分解に関与するatrogin-1とMuRF1のmRNA発現レベルが有意(
##p<0.01)に増加した一方で、ローズヒップ熱水抽出物を処理することによって、atrogin-1とMuRF1のmRNA発現レベルが有意(
**p<0.01)に減少したことを確認することができた。これは、本発明のローズヒップ熱水抽出物が、筋肉細胞内で筋タンパク質の分解に関与する生体指標の発現を抑制させる能力に優れることを意味する。
【0113】
[実施例6]ローズヒップ抽出物の筋タンパク質分解の抑制効果
【0114】
実施例1-2乃至実施例1-7のローズヒップエタノール、エチルアセテート、ヘキサン、超高圧、亜臨界、超臨界抽出物をそれぞれ5μg/mLで処理したことを除いては、前記実施例5と同一の方法で合計3回繰り返して進行した。次に、Image Jプログラム(National Institute of Health,Bethesda,MD,USA)を用いてMuRF1及びatrogin-1 mRNAのバンド濃度(band density)を測定した後、各測定値は、対照群に対する百分率(%)を計算し、平均±標準偏差で表した。
【0115】
その結果、表2に示したように、TNF-αを処理することによって、対照群に比べてatrogin-1及びMuRF1のmRNA発現量が有意(##p<0.01)に増加したが、ローズヒップ抽出物を処理した場合、TNF-α処理群に比べてMuRF1及びAtrogin-1のmRNA発現量がいずれも有意(**p<0.01)に減少したことを確認することができた。これは、本発明のローズヒップ抽出物が、筋肉細胞内で筋タンパク質の分解を抑制する能力に優れることを意味する。
【0116】
【0117】
[実施例7]動物モデルにおけるローズヒップの筋機能及び筋肉量の増加効果
【0118】
<7-1>動物の飼育及び筋萎縮誘導
【0119】
実験動物として生後7週の雄ネズミ(C57BL/6J;DBL,Korea)を購入し、実験を進行した。全ての動物の飼育室環境は、温度を23±2℃に、相対湿度を55±10%に維持させた。実験の開始前、合計20匹のネズミを無作為に1群当たり5匹になるように分けた。1週間適応させた後、325mg/kgのトリブロモエタノール(tribromoethanol,Sigma-Aldrich)を腹腔注射し、麻酔を誘導した。麻酔後、筋萎縮群と試料投与群にあるネズミの右側後脚(hindlimb)の腓腹筋(gastrocnemius muscle)と右側足裏をスキンステープラー(skin stapler)(Unidus,Chungcheongbuk-do,Korea)を使用し、ステープラー針で筋肉を損傷させ、右側後脚が動くことを防止し、この状態を一週間維持させた。一週間後、腓腹筋と足裏に固定されていたステープラー針を除去し、再び一週間ローズヒップ乾燥粉砕物500mg/kg;実施例1-1のローズヒップ熱水抽出物200mg/kg;実施例1-2のローズヒップエタノール抽出物200mg/kg;実施例1-7のローズヒップ超臨界抽出物200mg/kgを毎日7日間経口投与した。このとき、正常群と筋萎縮群は、試料の代わりに食塩水で経口投与を実施した。
【0120】
<7-2>ローズヒップの筋力の向上効果確認
【0121】
経口投与期間が終了し、筋力測定器(Panlab,Barcelona,Spain)を用いてネズミの筋力を測定した。ネズミが筋力測定器のバーを放すまで一定の力でネズミの尻尾を引っ張り、一匹当たり合計5回の連続テストを実施した。
【0122】
その結果、表3に示したように、正常群に比べて筋萎縮群で筋力が有意(#p<0.05)に減少したが、ローズヒップ粉砕物及びローズヒップ抽出物を処理したとき、筋萎縮群に比べて筋力が有意(**p<0.01)に増加したことを確認した。これは、本発明のローズヒップ粉砕物及びローズヒップ抽出物が、筋萎縮によって減少した筋力を増加させる効果に優れることを意味する。
【0123】
【0124】
<7-3>ローズヒップの筋肉の体積増加効果
【0125】
犠牲する前に、マウスをイソフルラン(isoflurane)で呼吸麻酔し、microPET/CT/SPECT(positron emission tomography/computed tomography/single photon emission tomography)(Siemens Inveon,Knoxville,TN,USA)を用いて右側後脚の筋肉の体積及び密度を測定した。
【0126】
その結果、
図4に示したように、正常群に比べて筋萎縮群の筋肉の体積が有意(
##p<0.01)に減少したが、ローズヒップ粉砕物及びローズヒップ抽出物を処理したとき、筋萎縮群に比べて筋肉の体積が有意(
**p<0.01)に増加したことを確認した。これは、本発明のローズヒップ粉砕物及びローズヒップ抽出物が、筋萎縮によって減少した筋肉の体積を増加させる効果に優れることを意味する。
【0127】
<7-3>ローズヒップの筋肉の重さ増加効果確認
【0128】
筋力測定が終了した後、実験動物に325mg/kgのトリブロモエタノール(Sigma-Aldrich)を腹腔注射し、麻酔後、心臓採血を通じて犠牲させた。心臓搏動が停止したことを確認した後、右側後脚で損傷を負っていない前脛骨筋(tibialis anterior muscle)を摘出し、重さを測定した。
【0129】
その結果、表4に示したように、正常群に比べて筋萎縮群の前脛骨筋の重さが有意(##p<0.01)に減少したが、ローズヒップ粉砕物及びローズヒップ抽出物を処理したとき、筋萎縮群に比べて重さが有意(**p<0.01)に増加したことを確認した。これは、本発明のローズヒップ粉砕物及びローズヒップ抽出物が、筋萎縮によって減少した筋肉の重さを増加させる効果に優れることを意味する。
【0130】
【0131】
<7-4>動物モデルにおけるローズヒップ熱水抽出物の筋タンパク質合成の生体指標の発現量増加効果
【0132】
実施例7-3で摘出した前脛骨筋に、タンパク質の加水分解酵素抑制剤カクテル(Sigma-Aldrich St.Louis,MO,USA)が含まれたNP-40緩衝溶液(ELPIS-Biotech,Daejeon,Korea)で組織を粉砕し、筋組織溶解物を収得した後、13,000rpmで10分間遠心分離することによって上澄み液を取得した。次に、上澄み液を用いて前記実施例4と同一の方法で筋タンパク質合成の生体指標の発現量を測定した。
【0133】
その結果、
図5に示したように、不動化動物モデルにおいて、不動化によってp-mTOR、p-p70S6K及びp-4EBP-1のタンパク質の発現レベルが減少した一方で、ローズヒップ熱水抽出物を処理することによって、p-mTOR、p-p70S6K及びp-4EBP-1のタンパク質の発現レベルが増加したことを確認することができた。これは、本発明のローズヒップ熱水抽出物が、動物モデルで筋タンパク質の合成に関与する生体指標の発現を増加させる能力に優れることを意味する。
【0134】
以下、本発明に係るローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を有効成分として含有する医薬品、食品又は化粧品の製造例を説明するが、本発明は、これを限定しようとするものではなく、具体的に説明しようとするものに過ぎない。前記筋肉疾患改善、治療又は予防、又は筋機能改善効果に優れたローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を用いて、下記ような組成成分及び組成比によって製造例1乃至3の医薬品、食品又は化粧料組成物を通常の方法によって製造した。
【0135】
[製造例1]医薬品
【0136】
<1-1>散剤
【0137】
本発明のローズヒップ抽出物50mg及び結晶セルロース2gを混合した後、通常の散剤製造方法によって気密布に充填し、散剤を製造した。
【0138】
<1-2>錠剤
【0139】
本発明のローズヒップ抽出物50mg、結晶セルロース400mg及びステアリン酸マグネシウム5mgを混合した後、通常の錠剤製造方法によって打錠し、錠剤を製造した。
【0140】
<1-3>カプセル剤
【0141】
本発明のローズヒップ抽出物30mg、乳清タンパク質100mg、結晶セルロース400mg及びステアリン酸マグネシウム6mgを混合した後、通常のカプセル剤製造方法によってゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を製造した。
【0142】
[製造例2]食品
【0143】
<2-1>健康食品の製造
【0144】
本発明のローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物1000mg、ビタミンAアセテート70μg、ビタミンE 1.0mg、ビタミンB1 0.13mg、ビタミンB2 0.15mg、ビタミンB6 0.5mg、ビタミンB12 0.2μg、ビタミンC 10mg、ビオチン10μg、ニコチン酸アミド1.7mg、葉酸50μg、パントテン酸カルシウム0.5mg、硫酸第一鉄1.75mg、酸化亜鉛0.82mg、炭酸マグネシウム25.3mg、第一リン酸カリウム15mg、第二リン酸カルシウム55mg、クエン酸カリウム90mg、炭酸カルシウム100mg、及び塩化マグネシウム24.8mgを混合して製造することができ、その配合比を任意に変形して実施しても構わなく、通常の健康食品製造方法によって前記成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法によって健康食品組成物の製造に使用することができる。
【0145】
<2-2>健康飲料の製造
【0146】
本発明のローズヒップ抽出物1000mg、クエン酸1000mg、オリゴ糖100g、梅濃縮液2g、及びタウリン1gに精製水を加え、全体900mLの通常の健康飲料製造方法によって前記成分を混合した後、約1時間にわたって85℃で撹拌・加熱し、作られた溶液をろ過し、滅菌された2L容器に取得して密封・滅菌した後で冷蔵保管し、健康飲料組成物の製造に使用することができる。
【0147】
<2-3>チューインガム
【0148】
ガムベース20重量%、砂糖76.9重量%、香料1重量%及び水2重量%と、本発明のローズヒップ抽出物0.1重量%とを配合し、通常の方法でチューインガムを製造した。
【0149】
<2-4>キャンディ
【0150】
砂糖60重量%、水飴39.8重量%及び香料0.1重量%と、本発明のローズヒップ抽出物0.1重量%とを配合し、通常の方法でキャンディを製造した。
【0151】
<2-5>ビスケット
【0152】
薄力1級25.59重量%、中力1級22.22重量%、精白糖4.80重量%、食塩0.73重量%、ブドウ糖0.78重量%、パームショートニング11. 78重量%、アンモニウム1.54重量%、重曹0.17重量%、重亜硫酸ナトリウム0. 16重量%、米粉1. 45重量%、ビタミンB 0. 0001重量%、ミルク香0. 04重量%、水20. 6998重量%、全脂粉乳1. 16重量%、代用粉乳0. 29重量%、第一リン酸カルシウム0. 03重量%、散布塩0.29重量%及び噴霧油7.27重量%と、本発明のローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物0. 8301重量%とを配合し、通常の方法でビスケットを製造した。
【0153】
[製造例3]化粧品
【0154】
<3-1>栄養化粧水(ミルクローション)
【0155】
本発明のローズヒップ抽出物を下記表3の栄養化粧水の剤形比率にし、通常の方法によって栄養化粧水を製造した。
【0156】
【0157】
<3-2>柔軟化粧水(スキンローション)
本発明のローズヒップ抽出物を下記表4の柔軟化粧水の剤形比率にし、通常の方法によって柔軟化粧水を製造した。
【0158】
【0159】
<3-3>栄養クリーム
本発明のローズヒップ抽出物を下記表5の栄養クリームの剤形比率にし、通常の方法によって栄養クリームを製造した。
【0160】
【0161】
<3-4>マッサージクリーム
本発明のローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を下記表6のマッサージクリームの剤形比率にし、通常の方法によってマッサージクリームを製造した。
【0162】
【0163】
<3-5>パック
本発明のローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物を下記表7のパックの剤形比率にし、通常の方法によってパックを製造した。
【0164】
【0165】
<3-6>ジェル
本発明のローズヒップ抽出物を下記表8のジェルの剤形比率にし、通常の方法によってゲルを製造した。
【0166】
【0167】
前記表において、「適量」は、嗜好度によって適正量が添加され得ることを意味し、「to 100」は、合計100重量%から精製水を除いた残りの配合成分の重量%の和を除した後、残った重量%を精製水の重量%とし得ることを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0168】
以上で説明したように、本発明は、ローズヒップ粉砕物又はローズヒップ抽出物などのローズヒップを含有する筋肉疾患改善、治療又は予防用、又は筋機能改善用組成物を提供する。より詳細には、本発明のローズヒップは、mTORの活性を増加させ、MuRF1とatrogin-1のmRNA発現量を減少させることによって筋肉量と筋力を向上させ、筋肉疾患改善、治療又は予防用、又は筋機能改善に優れた効果を示す。よって、本発明は、筋肉疾患改善、治療又は予防用、又は筋機能改善に優れた効果を示す組成物を提供できるので、産業上の利用可能性が高い。
【配列表】
【国際調査報告】