(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】層状複合材料
(51)【国際特許分類】
B32B 15/04 20060101AFI20230823BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230823BHJP
C09J 1/00 20060101ALI20230823BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B32B15/04 B
B32B7/12
C09J1/00
C09J11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507691
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2021074068
(87)【国際公開番号】W WO2022053356
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】シーベル、マーカス
(72)【発明者】
【氏名】ミリック、アントン-ゾラン
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト、タマラ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA19
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4J040NA19
(57)【要約】
2つの外向きの金属層を含む層状構造体であって、n個の水硬無機セメント組成物の層と、n-1個の金属層とから構成される交互の介在層配列を有し、n=1、2又は3である、層状構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの外向きの金属層を含む、又は前記金属層からなる層状構造体であって、n個の水硬無機セメント組成物の層と、n-1個の金属層とから構成される交互の介在層配列を有し、n=1、2又は3である、層状構造体。
【請求項2】
前記金属層の層厚が、それぞれの場合において100~1500μmの範囲内である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記金属層の層厚が、下側を形成する前記金属層を除いて、それぞれの場合において100~1500μmの範囲内であり、下側を形成する前記金属層の層厚が、>1500~5000μmの範囲内である、請求項1に記載の層状構造体。
【請求項4】
2~700cm
2の範囲の表面寸法を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項5】
長方形形式である、請求項1~4のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項6】
エレクトロニクスの分野において基板として直接使用することができる、又はエレクトロニクスの分野において基板として直接使用することができる複数の小面積層状構造体のための大面積供給源として設計された、のいずれかである、請求項1~5のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項7】
前記金属層の縁部が、水硬無機セメント組成物の1個又は複数個の層の縁部を越えて突出していない、請求項1~6のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項8】
前記金属層が一致して配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項9】
前記金属層が、同じ又は異なる金属からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項10】
前記金属層の金属が、銅、銅合金、モリブデン、モリブデン合金、アルミニウム、及びアルミニウム合金からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項11】
n=2又は3であり、前記水硬無機セメント組成物の層が、それぞれの場合において同じ又は互いに異なる水硬無機セメント組成物からなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項12】
前記少なくとも1種の水硬無機セメント組成物が、水硬無機セメントからなるか、又は前記実際の水硬無機セメントに加えて、1種以上の更なる成分を0.5~98重量%の合計割合で含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項13】
前記水硬セメントが、ポルトランドセメント、アルミナセメント、酸化マグネシウムセメント、及びリン酸セメントからなる群から選択される水硬性無機セメントの水硬によって形成されたものである、請求項12に記載の層状構造体。
【請求項14】
前記更なる1種又は複数種の成分が、充填剤、繊維、流動性向上剤、固化遅延剤、消泡剤、水混和性有機溶媒、疎水化剤、表面張力に影響を及ぼす添加物、湿潤剤、及び接着促進剤からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の層状構造体。
【請求項15】
水性の水硬性無機セメント調製物を、それぞれの場合において金属箔の間に均一な層厚さで適用すること、続いて、前記適用された水性の水硬性無機セメント調製物を水硬及び乾燥することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の層状構造体を製造するための連続的又は不連続的方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の層状構造体、又は請求項15に従って製造された層状構造体の、エレクトロニクス分野における基板としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの外向きの金属層と、水硬無機セメント組成物から作製された少なくとも1つの中間層とを含む層状複合材料(層状構造体)、当該構造体の製造方法、及びその使用に関する。
【0002】
本明細書で使用される用語「水硬」は、水の存在下又は水の添加後に固化することを意味する。
【0003】
回路担体として使用可能な基板は、エレクトロニクスの分野で公知である。そのような基板の例としては、リードフレーム;PCB(プリント回路基板);セラミック基板;金属セラミック基板、例えばDCB(銅直接接合)基板、AMB(活性金属被覆)基板、又はIMS基板(絶縁金属基板)などが挙げられる。
【0004】
本発明は、その基本設計において、金属セラミック基板と最も近く比較することができる新しい基板タイプを提供することにある。
【0005】
本発明による新しい基板タイプは、2つの外向きの金属層を含む、又は2つの外向きの金属層からなる層状構造体であって、n個の水硬無機セメント組成物の層と、n-1個の金属層とから構成される挟まれた交互の層配列を有し、n=1(タイプIの層状構造体)、2(タイプIIの層状構造体)又は3(タイプIIIの層状構造体)である、層状構造体である。
【0006】
好ましいタイプIの層状構造体における層配列は、「外側金属層/水硬無機セメント組成物で作製された層又は中間層/外側金属層」である。
【0007】
タイプIIの層状構造体における層配列は、「外側金属層/水硬無機セメント組成物で作製された層/金属層/水硬無機セメント組成物で作製された層/外側金属層」である。
【0008】
タイプIIIの層状構造体における層配列は、「外側金属層/水硬無機セメント組成物で作製された層/金属層/水硬無機セメント組成物で作製された層/金属層/水硬無機セメント組成物で作製された層/外側金属層」である。
【0009】
本明細書では、水硬性無機セメント(hydraulically curable inorganic cement)と、水性の水硬性無機セメント調製物(aqueous hydraulically curable inorganic cement preparation)と、水硬無機セメント組成物(hydraulically cured inorganic cement composition)とが区別される。水と混合することによって、水性の水硬性無機セメント調製物を、粉末形態で存在する水硬性無機セメントから製造することができ、この調製物は、特に、粘弾性の、例えばペースト様又は流動性の塊の形態であり、「セメントペースト」又は「セメントグルー」とも呼ばれる。水性の水硬性無機セメント調製物は、次に、水硬して、「セメントストーン」とも呼ばれる硬質固体の形態の水硬無機セメント組成物を形成し得る。このような水硬無機セメント組成物は、事実上水不溶性、すなわち実質的に又は完全に水不溶性である。
【0010】
本発明による層状構造体は、実質的に又は完全に平坦である。「実質的に平坦」とは、本発明による層状構造体が、耐容可能な本質的には望ましくない反りを、例えば、1000μm以下までで示し得ることを意味する。そのような反りは、別個の複数の層が異なる熱膨張特性を有することによって生じ得る。
【0011】
特に明記しない限り、本発明によるタイプIの層状構造体の好ましい実施形態の例を用いて、更なる説明を行う。本発明によるタイプII又はIIIの層状構造体については、層状構造体自体に関しても、それらの製造及び使用に関しても同じことが当てはまる。
【0012】
本発明によるタイプIの層状構造体は、2つの金属層が互いに平行に配置され、水硬無機セメント組成物から作製された層によって互いに分離されている、サンドイッチ配置の形態で存在する。
【0013】
本発明によるタイプIの層状構造体を水平位置で見ると、2つの金属層の一方が層状構造体の上側を形成し、他方が下側を形成する。誤解を避けるために、エレクトロニクスにおける基板としての可能な使用に関して、上側は、実際の電子回路を担持することを意図した側(その上に電子部品が固定される側)として理解され;対照的に、下側は、電子回路の動作中の電力損失の結果として生じる熱を放散するために使用され、またこの機能のために保持されており;例えば、エレクトロニクスの分野において通常的であるヒートシンクに接続されること、又は実質的に結合された様式で(例えば、熱伝導性接着接合、焼結接合、又ははんだ接合によって)ベースプレートに接続されることが可能である。下側の金属層を直接ヒートシンクとして形成すること、又はこのようなヒートシンクで置き換えることも可能である。
【0014】
上側金属層への電気的接続の場合、タイプII及びIIIの層状構造体に見られる交互層配列の内部金属層は、電気的損失を最小限に抑える電流伝導のために使用することができる。金属層間の電気的接続は、以下に述べる電気伝導性スペーサ(ビアとも呼ばれる)によって実現することができる。
【0015】
本発明によるタイプIの層状構造体の全厚は、2つの金属層の個別の層厚と、水硬無機セメント組成物から作製された層の厚さと、存在する場合、1つ以上の追加の任意選択の層の層厚の寄与との合計から形成され;本発明によるタイプII又はIIIの層状構造体の場合、内部金属層及び対応する水硬無機セメント組成物層の層厚の寄与が追加される。任意選択の層は、金属層とは異なり、水硬無機セメント組成物の層とも異なる。上側を形成する金属層の層厚、並びに内部金属層の層厚は、例えば、100~1500μmの範囲内であり、一方、下側を形成する金属層の層厚は、例えば、100~1500μmの範囲内であってもよく、又は任意選択で更に大きく、例えば、5000μmまでであってもよい。金属層の層厚は、全て同じであってもよく、部分的に同じであってもよく、全てが互いに異なっていてもよい。下側の特に大きな層厚は、下側自体がベースプレートを形成する場合に生じ得る。水硬無機セメント組成物層の層厚は、それぞれの場合において、例えば50~1000μmの範囲である。金属層は、それぞれの場合において、以下に更に詳述するように、従来の金属箔から形成することができる。換言すれば、金属層の厚さは、そのような金属箔の厚さに相当する。
【0016】
後で説明するように、本発明による層状構造体は、連続的又は不連続的方法によって製造され得る。本発明に従って不連続的に製造された層状構造体の形式(輪郭及び表面寸法)は、広い範囲内で変動し得る。表面寸法は概ね2~700cm2の範囲である。概ね、層状構造体は長方形であり、例えば1cm×2cm~14cm×50cmの形式である。
【0017】
エレクトロニクスの分野において基板として直接使用することができる本発明による層状構造体の場合、表面寸法は、例として言及した値範囲の低い方の領域においてより大きくなり;例えば、2~100cm2の範囲で、好ましくは長方形であってもよい。
【0018】
しかしながら、本発明による層状構造体は、エレクトロニクスの分野において基板として直接使用できる本発明による複数の小面積層状構造体のための大面積供給源として設計することもでき、例えば、メタルセラミック基板の分野から知られ、所望の形式のより小さい複数の基板に分割することができるマスターカードに匹敵する。この場合、表面寸法は、上述の値範囲の高い方の領域においてより大きくなる。
【0019】
金属層の縁部は、水硬無機セメント組成物の1つ又は複数の層の縁部を越えて突出せず;上記縁部は、一緒に終端するか、又は水硬無機セメント組成物の層(複数可)が金属層よりもわずかに大きい表面積を有し、水硬無機セメント組成物の小さな突出(例えば、幅0.2~3mm)が金属層被覆なしで存在するように、その全縁部領域においては金属層によって被覆されていないかのいずれかである。金属層は、その縁部の縁部低減を有してもよく、すなわち、金属層は縁部領域において外向きに進行する層厚低減を有してもよい。金属層は、概して一致して、すなわち同じ形式で配置され、互いに対してずれない。
【0020】
金属層は、同じ金属からなっても異なる金属からなってもよい。特に、銅及び銅合金、モリブデン及びモリブデン合金、並びにアルミニウム及びアルミニウム合金を、好適な金属の例として挙げることができる。銅合金、モリブデン合金、及びアルミニウム合金は、概ね、少なくとも90重量%の銅、少なくとも90重量%のモリブデン、又は少なくとも90重量%のアルミニウムを含む。
【0021】
本発明によるタイプIの層状構造体の中間層、又は本発明によるタイプII及びIIIの層状構造体の金属層の間の層は、水硬無機セメント組成物からなる。2又は3個の水硬無機セメント組成物層を有する本発明によるタイプII及びIIIの層状構造体の場合、水硬無機セメント組成物層は、同じ又は互いに異なる水硬無機セメント組成物からなってもよい。
【0022】
水硬無機セメント組成物(複数可)は、水硬無機セメントからなってもよく、又は実際の水硬無機セメントに加えて、すなわちマトリックスを形成する水硬無機セメントに加えて、1つ以上の更なる成分を、例えば0.5~98重量%の合計割合で含んでもよい。いずれの場合も、水硬無機セメント組成物は、特に、水硬性無機セメントに任意選択で少なくとも1種の更なる成分を加えたものを水と混合して水性の水硬性無機セメント調製物を形成し、その適用、その後の水硬(すなわち固化)及び乾燥によって形成され得る。
【0023】
水性の水硬性無機セメント調製物は、例えば6~25重量%の含水量を有していてもよい。
【0024】
新たに調製された(完成後5分以内)水性の水硬性無機セメント調製物の粘度は、例えば、0.5~20Pa・sの範囲であってもよい(回転式粘度計による測定、プレート-プレート測定原理、プレート直径25mm、測定ギャップ1mm、試料温度20℃の場合)。
【0025】
水硬無機セメント組成物が、実際の水硬無機セメントに加えて、1種以上の更なる成分を含む場合、水性の水硬性無機セメント調製物は、実際の水硬性無機セメント及び水に加えて、1種又は複数の更なる成分、特に同じ1種又は複数の成分も含む。そのような更なる成分は、水硬性無機セメントに既に添加又は混合されていてもよい。最初に水硬性無機セメントを、水を添加せずに全ての更なる成分と混合し、次いで水と混合して水性の水硬性無機セメント調製物を形成することも可能である。しかしながら、更なる1種又は複数の成分が、水の添加の前、最中、及び/又は後に別々に添加されるように作業することも可能である。量的割合及び添加の時間又は添加の順序は、水性の水硬性無機セメント調製物の製造中に、その均一性及び管理可能性に関して、関連する化学的及び物理的特性に従い;実務的な観点から、この場合、当業者は、特に、混合挙動及び加工挙動、例えば、ポットライフとして知られるものによって適応する。
【0026】
前述の更なる1種又は複数の成分は、水性の水硬性無機セメント調製物に対して、例えば、0.1~92重量%の合計割合で含まれてもよい。
【0027】
水硬性無機セメントは、それ自体、注入可能な粉末である。水硬性無機セメントは、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、酸化マグネシウムセメント、リン酸セメント、例えば、リン酸亜鉛セメント又は好ましくはリン酸マグネシウムセメントであってもよく、これらは当業者に公知である。
【0028】
水硬性無機セメントに含有される粒子、及び微粒子形態で含有され得る更なる成分は、水硬無機セメント組成物の層厚よりも小さい粒径を有する。
【0029】
前述の更なる成分の例としては、充填剤、繊維、流動性向上剤、固化遅延剤(ポットライフ延長剤)、消泡剤、水混和性有機溶媒、疎水化剤、表面張力に影響を及ぼす添加物、湿潤剤、及び接着促進剤が挙げられる。
【0030】
充填剤の例としては、ガラス;硫酸カルシウム;硫酸バリウム;ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄及び/又はジルコニウムを含む単塩及び複塩のケイ酸塩;カルシウム、マグネシウム、及び/又はジルコニウムを含む単塩及び複塩のアルミン酸塩;カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、バリウム及び/又はジルコニウムを含む単塩及び複塩のチタン酸塩;カルシウム、アルミニウム及び/又はマグネシウムを含む単塩及び複塩のジルコン酸塩;二酸化ジルコニウム;二酸化チタン;酸化アルミニウム;二酸化ケイ素、特にシリカ及び石英の形態のもの;炭化ケイ素;窒化アルミニウム;窒化ホウ素;及び窒化ケイ素が挙げられる。本明細書では、単塩及び複塩のケイ酸塩、アルミン酸塩、チタン酸塩及びジルコン酸塩を区別する。複塩が表すものは、例えば錯化合物ではなく;むしろ、2種以上のカチオンを有するケイ酸塩、アルミン酸塩、チタン酸塩及びジルコン酸塩、例えばケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸カルシウムアルミニウム、チタン酸ジルコン酸鉛などが意図される。このような充填剤の存在は、水硬無機セメント組成物の熱伝導率及び/又は熱膨張挙動に有利な効果を有し得る。
【0031】
繊維の例としては、ガラス繊維、バサルト繊維、ホウ素繊維、及びセラミック繊維、例えば炭化ケイ素繊維及び酸化アルミニウム繊維、ロックウール繊維、ワラストナイト繊維、及びアラミド繊維が挙げられる。繊維の存在は、水硬無機セメント組成物の引張応力耐性及び熱衝撃耐性に有利な効果を有し得る。
【0032】
本発明によるタイプIの層状構造体は、上述の水性の水硬性無機セメント調製物を2枚の金属箔の間に均一な層厚で適用し、続いて、適用された水性の水硬性無機セメント調製物を水硬及び乾燥させることによって製造することができる。本発明によるタイプII及びIIIの層状構造体は、同一の又は異なる水性の水硬性無機セメント調製物を、それぞれ3枚又は4枚の金属箔の間に均一な層厚で適用し、続いて適用された水性の水硬性無機セメント調製物を水硬及び乾燥することによって、ほぼ同様に製造することができる。本発明は、この点において、本発明による層状構造体の製造方法にも関する。可能な製造方法は、連続的であっても不連続的あってもよい。様々な適用方法、例えば印刷、ブレードコーティング、噴霧、分注、刷毛塗り、又は注入が可能であり、注入は真空支援あり又はなしである。水硬又は固化は、周囲条件下で、例えば20~25℃の範囲の周囲温度で実施されてもよく、それによって、例えば1分~6時間の持続時間を必要とする。固化時間を短縮しようとする場合、高温で作業することが可能であり;例えば、固化は30℃から100℃未満の物体温度で実施されてもよく、その場合、固化は例えば数秒から1時間以内に既に終了している。脱水のために使用される乾燥の後に固化が起こり、これは例えば80~600℃の物体温度で0.5~6時間を必要とし、場合によっては複数の温度段階を経ることが好都合である。乾燥は、真空補助を用いて実施されてもよい。
【0033】
不連続的方法として設計された実施形態では、本発明によるタイプIの層状構造体の製造方法は、
(1)本発明による層状構造体の形式を画定するモールドと、前述のように製造された水性の水硬性無機セメント調製物とを準備する工程と、
(2)金属箔をモールド内に予め配置する工程と、
(3)予め配置した金属箔に、水性の水硬性無機セメント調製物を適用する工程と、
(4)適用された水性の水硬性無機セメント調製物に、更なる金属箔を適用する工程と、
(5)水性の水硬性無機セメント調製物を水硬及び乾燥する工程と、
を含んでもよく、
工程(2)~(4)は、外向きの金属箔を含む層状構造体が、水性の水硬性無機セメント調製物の介在層と共に形成されるように実施される。本発明によるタイプII又はIIIの層状構造体のための対応する不連続的製造方法は同様であり、工程(3)及び(4)がそれに応じて繰り返される。
【0034】
工程(1)では、本発明による層状構造体の形式を画定するモールドが準備される。モールドは、工程(2)及び(4)で受け取られる金属箔の収容、並びに工程(3)において金属箔間に受け取られる水性の水硬性無機セメント調製物の収容を可能にする。更に、工程(1)では、工程(2)で適用される水性の水硬性無機セメント調製物が準備される。上記調製物の製造は、上述のように実施されてもよい。
【0035】
工程(2)では、工程(1)で準備したモールド内に金属箔が配置される。
【0036】
工程(2)と工程(3)との間にスペーサを適用してもよい。スペーサは、特に熱伝導性であってもよい。スペーサは、金属層間の距離、又は水性の水硬性無機セメント調製物若しくは当該調製物から製造される水硬無機セメント組成物から作製される中間層の層厚を画定するのに役立ち得る。スペーサは、上側金属層から下側金属層までの中間層内の特に有効な熱伝導経路としても機能し得る。本発明によるタイプII又はIIIの層状構造体の場合、スペーサは電気伝導性であってもよい。
【0037】
工程(3)では、工程(1)で準備された水性の水硬性無機セメント調製物が、モールド内に配置された金属箔に適用される。様々な適用方法、例えば印刷、ブレードコーティング、噴霧、分注、刷毛塗り、又は注入が可能であり、注入は真空支援あり又はなしである。適用のために到達する量は、形成しようとする水硬無機セメント組成物から作製される中間層の所望の層厚に従う。当業者は、工程(3)の実行中、工程(5)中に材料に起こり得る体積変化、例えば体積収縮挙動を考慮に入れることを理解されたい;換言すれば、それに応じて湿潤層の厚さを選択する。
【0038】
工程(4)では、適用された水性の水硬性無機セメント調製物上に、第2の金属箔が適用又は配置される。工程(4)の実施において、振動、超音波、又は例えばスタンプ若しくは重りによる押圧力の作用などの補助手段をとることが好都合になり得る。
【0039】
工程(2)~(4)は、外向きの金属箔を含む層状構造体が、水性の水硬性無機セメント調製物の介在層と共に形成されるように実施される。この場合、金属箔が平坦であり、この点に関して意図的に変更又は損傷されないことを確実にすることが好都合である。
【0040】
工程(5)では、金属箔の間に位置する水性の水硬性無機セメント調製物が、水硬及び乾燥される。これにより、本発明による層状構造体が得られる。少なくとも固化はモールド内で実施される。乾燥工程は、モールドの内側及び/又は外側で実施されてもよい。固化は、周囲条件下で、例えば20~25℃の範囲の周囲温度で実施してもよく、それによって、例えば1分~6時間の持続時間を必要とする。固化時間を短縮しようとする場合、高温で作業することが可能であり;例えば、固化は30℃から100℃未満の物体温度で実施されてもよく、その場合、固化は例えば数秒から1時間以内に既に終了している。脱水のために使用される乾燥の後に固化が起こり、これは例えば80~600℃の物体温度で0.5~6時間を必要とし、場合によっては複数の温度段階を経ることが好都合である。乾燥は、真空補助を用いて実施されてもよい。
【0041】
工程(1)~(5)は、工程順序を表す。しかしながら、任意選択で、中間工程及び/又は工程(5)に続く工程が実施されてもよい。このような中間工程の一例は、前述のスペーサ適用である。別の例は、工程(2)又は(4)を実行する前に、水性の水硬性セメント調製物に向く側に接着促進剤を有する1枚又は複数枚の金属箔を提供することである。したがって、例えば、前述の更なる任意選択の層を形成することも可能である。このようにして層状構造体に入る接着促進剤は、例えば拡散によって、中間層に部分的に又は完全に入る場合もある。
【0042】
連続的方法として設計された実施形態では、本発明による積層構造体の製造方法は、積層との関連で行われてもよく、この場合、金属層は、形式を画定するモールドを使用せずに水性の水硬性セメント調製物と共に積層され、その後、積層体として水硬及び乾燥プロセスに供給される。
【0043】
本発明による層状構造体は、特定の用途、例えばエレクトロニクスの分野で所望の形式を既に有しており、又は前述のように、従来の方法、例えばレーザー切断又は鋸引きによって、より小さい所望の形式に分割されてもよい。
【0044】
本発明による層状構造体の金属上側は、金属セラミック基板の分野において通常的である方法を使用して機械加工及び構造体化されてもよく;例えば、上側を形成する金属層の関連部分をフォトリソグラフィによりマスクし、エッチングによって除去することができる。
【0045】
既に上述したように、本発明による層状構造体は、エレクトロニクスの分野において基板として使用することができ;この点において、本発明による層状構造体は、エレクトロニクス基板であるか、又は本発明による層状構造体の形態のエレクトロニクス基板である。したがって、上側を形成する金属層を使用して、電子部品に接続することができる。水硬無機セメント組成物の中間層(複数可)は、金属層間の絶縁体として使用され、下側を形成する金属層への熱経路、及び場合によっては上記金属層に接続される1つ以上のヒートシンクへの熱経路を成立させるサーマルブリッジとして使用され得る。
【0046】
実施形態:
実施例1:最大粒径63μm(過大材料5%)のアルミナセメント粉末7重量部と、2-イミダゾリジノン6重量部と、最大粒径5μmのマイクロシリカ10重量部と、最大粒径100μmの酸化アルミニウム粉末65重量部と、水12重量部と、を混合して水性のセメント調製物を形成した。この水性のセメント調製物を、0.5mm厚の銅箔(形式5cm×3cm)の片側に、760μmの均一な層厚で刷毛により適用した。続いて、第2の同一の銅箔を、適用されたセメント調製物でコーティングされた側の上の第1の銅箔に一致させて配置し、20℃で4時間水硬した。続いて、このようにしてもたらされたサンドイッチ構成を、オーブン内で1K/分の加熱速度で90℃まで加熱し、この温度で1時間保持した。その後、加熱速度1K/分で160℃まで昇温し、1時間保持した。
【0047】
実施例2:最大粒径50μmの酸化マグネシウムセメント粉末5重量部と、2-イミダゾリジノン6重量部と、最大粒径5μmのマイクロシリカ11重量部と、最大粒径100μmの酸化アルミニウム粉末65重量部と、水12重量部と、を混合して水性のセメント調製物を形成した。この水性のセメント調製物を、0.5mm厚の銅箔(形式5cm×3cm)の片側に、760μmの均一な層厚で刷毛により適用した。続いて、第2の同一の銅箔を、適用されたセメント調製物でコーティングされた側の上の第1の銅箔に一致させて配置し、20℃で4時間水硬した。続いて、このようにしてもたらされたサンドイッチ構成を、オーブン内で1K/分の加熱速度で90℃まで加熱し、この温度で1時間保持した。その後、加熱速度1K/分で160℃まで昇温し、1時間保持した。
【国際調査報告】