(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】疾患の治療におけるBTK阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230823BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230823BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230823BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20230823BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P27/02
A61P25/02
A61K31/5025
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507702
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2021111726
(87)【国際公開番号】W WO2022033460
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】202010796482.1
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110295378.9
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523037783
【氏名又は名称】瑞石生物医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】REISTONE BIOPHARMA COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】Room 203, No.1 Building, No.298 Xiangke Road, Free Trade Pilot Zone, Pudong New Area, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】王 敏
(72)【発明者】
【氏名】呉 奕涵
(72)【発明者】
【氏名】周 玲
(72)【発明者】
【氏名】盧 再恋
(72)【発明者】
【氏名】李 保平
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA211
4C084ZA212
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC201
4C084ZC202
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA21
4C086ZA33
4C086ZC20
(57)【要約】
本開示は、疾患の治療におけるBTK阻害剤の使用に関する。具体的には、本開示は、視神経脊髄炎スペクトル障害の予防または治療のための医薬の製造における、BTK阻害剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視神経脊髄炎スペクトラム障害を予防または治療するための医薬の製造における、BTK阻害剤の使用。
【請求項2】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発を予防するための医薬の製造における、BTK阻害剤の使用。
【請求項3】
安定期の視神経脊髄炎スペクトラム障害を治療するための医薬の製造における、BTK阻害剤の使用。
【請求項4】
視神経脊髄炎スペクトラム障害が、AQP4-IgG陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
BTK阻害剤の投与量が、1~1000mgである、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
BTK阻害剤の投与頻度が、1日1回、1日2回、1日3回、2日に1回、3日に1回、および週に1回からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
BTK阻害剤の投与頻度が、1日1回であり、投与量が、毎回、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mg、または500mgである、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
BTK阻害剤の投与頻度が、1日2回であり、投与量が、毎回、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、または250mgである、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
BTK阻害剤が、イブルチニブ、アカラブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、BGB-3111、FIM71224、ザヌブルチニブ、ARQ531、BI-BTK1、ベカブルチニブ、および、式(I)
【化1】
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩、からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
BTK阻害剤が、式(I)
【化2】
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬の分野に属し、疾患を治療するためのBTK阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica)(NMO、デビック(Devic)症候群とも称される)は、視神経と脊髄に影響を与える、希少の慢性自己免疫性炎症性中枢神経系(CNS)脱髄疾患である。これは、同時にまたは独立して発生し得る、視神経炎および椎体の長さに及ぶ横断性脊髄炎(LETM)の再発性エピソードを特徴とする。
【0003】
NMOの臨床的特徴としては、失明につながる視力低下を伴う視神経炎、ならびに眼痛、視神経萎縮、および中心暗点が挙げられる。脊髄の関与としては、対麻痺または四肢麻痺、神経根痛、発作性緊張性けいれん、吐き気、難治性吃逆、嘔吐、めまい、膀胱機能障害、およびレルミット現象が挙げられる。視神経および脊髄病変以外の病変に関連する臨床的特徴としては、視床下部-下垂体軸不全、低ナトリウム血症および高プロラクチン血症、および可逆性後頭葉白質脳症に関連する、過度の眠気が挙げられる。NMO患者の最大90%は、単相性ではなく再発性の視神経炎(ON)と脊髄炎を患っている。60%の患者が発症後1年以内に、90%の患者が発症後3年以内に、再発する。
【0004】
従来、NMOは、NMOと重複する症状がある多発性硬化症(MS)のサブタイプと考えられていた。しかしながら、NMOは、現在、MSとは異なる独特の脱髄疾患であることが証明されている。MSとは異なり、NMOのエピソード間の回復は不完全であり、後続のエピソードごとに障害が増加する。抗原標的であるアクアポリン4(AQP4)は、2004年まで特定されていなかった。2つの疾患が、AQP4に対する抗体の検出によって、確実に区別することができた。その後、診断ガイドラインの更新により、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に、抗体陰性および抗体陽性のNMOが分類された。症例研究と観察研究は、患者が免疫療法の恩恵を受けることを示しているが、現在までに、NMOSDの治療に承認されているのは2つの治療剤(エクリズマブおよびサトラリズマブ)のみである。
【0005】
AQP4は、脳、脊髄および視神経で最も広く発現しているアクアポリンである。実験データでは、AQP4に対する抗体が、AQP4発現アストロサイトでインターロイキン6(IL-6)の産生を誘導し、内皮細胞へのIL-6シグナル伝達が、血液脳関門機能を低下させることが示された。AQP4に対する抗体が、AQP4受容体の外部ドメインに結合すると、グルタミン酸トランスポーターEAAT-2のインターナリゼーションを引き起こすだけでなく、補体および細胞媒介性アストロサイトの損傷も引き起こす。アストロサイトは、最終的にオリゴデンドロサイトやニューロンなどの周囲の細胞をサポートしなくなる。その後、オリゴデンドロサイトの損傷と脱髄を伴う顆粒球浸潤が起こる。
【0006】
免疫細胞は、通常、T細胞とB細胞に分けることができる。B細胞の主な機能は、体がさまざまな外来侵入に抵抗するのを助けるためにさまざまな抗体を分泌することである。ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は、チロシンキナーゼサブファミリーのメンバーの1つで、キナーゼのTecファミリーに属する。これは、主にB細胞に発現し、リンパ系、造血系、および血液系に分布している。B細胞受容体(BCR)は、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)のサブタイプ、マントル細胞リンパ腫(MCL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を含むさまざまなリンパ腫の増殖と生存の調節において、重要な役割を果たしている。さらに、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、およびその他の免疫疾患の病因におけるB細胞の役割は、臨床的に確認されている。ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は、BCRシグナル伝達経路において重要なプロテインキナーゼである。これは、正常なB細胞の成熟と分化を調節することができ、さまざまなB細胞リンパ組織障害とも密接に関連している。したがって、BTKを標的とする低分子阻害剤は、B細胞の悪性腫瘍および自己免疫疾患の治療に利益をもたらす可能性がある。
【0007】
WO2016007185は、式(I)の化合物、すなわち(R)-4-アミノ-1-(1-(ブト-2-イノイル)ピロリジン-3-イル)-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリダジン-7-オン、に関するものである。この化合物は、キナーゼ選択性、臨床有効性または適応性、および安全性が改良された新規のBTKキナーゼ阻害剤である。その構造は、以下のとおりである。
【化1】
【0008】
本開示は、疾患を治療または予防するためのBTK阻害剤の使用を提供し、良好な治療効果を示す。
【発明の概要】
【0009】
一態様において、本開示は、視神経脊髄炎スペクトル障害を予防または治療するための医薬の製造における、BTK阻害剤の使用を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、視神経脊髄炎スペクトル障害の再発を予防するための医薬の製造における、BTK阻害剤の使用を提供する。
【0011】
別の態様において、本開示は、安定期の視神経脊髄炎スペクトル障害を治療するための医薬の製造における、BTK阻害剤の使用を提供する。
【0012】
安定期の視神経脊髄炎スペクトラム障害とは、急性発作期において救助療法を行った後、視神経脊髄炎スペクトラム障害の状態が緩和したときの期を意味する。例えば、BTK阻害剤で治療する場合、免疫抑制剤(例えば、タクロリムス、アザチオプリン、ミコフェノール酸)および/または経口コルチコステロイドなどの維持薬の投与量は、安定しているか減少の過程にある必要があり、救助療法(例えば、IVグルココルチコイド、血漿交換、および/または静脈内免疫グロブリン)は、1ヶ月以上終了している必要がある。
【0013】
いくつかの実施形態において、BTK阻害剤は、イブルチニブ(ibrutinib)、アカラブルチニブ(acalabrutinib)、GS-4059、スペブルチニブ(spebrutinib)、BGB-3111、FIM71224、ザヌブルチニブ(zanubrutinib)、ARQ531、BI-BTK1、ベカブルチニブ(vecabrutinib)、および、式(I)
【化2】
で示される化合物または薬学的に許容されるその塩、からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、BTK阻害剤は、式(I)
【化3】
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0015】
本開示の化合物はまた、異なる互変異性体形態で存在することができ、すべての互変異性体形態は、本開示の範囲内である。「互変異性体」または「互変異性体形態」との用語は、低いエネルギー障壁を介して相互変換できる、異なるエネルギーの構造異性体を意味する。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)は、ケト-エノール異性化およびイミン-エナミン異性化などのプロトンの移動による相互変換を含む。ラクタム-ラクチム平衡の一例は、以下に示すAとBの間の平衡である。
【化4】
【0016】
いくつかの実施形態において、本開示の式(I)の化合物は、AタイプまたはBタイプとして示され得る。化合物の命名は、いかなる互変異性体も排除するものでない。本開示に記載の視神経脊髄炎スペクトラム障害の臨床症状としては、視神経炎、脊髄炎、最後野症候群、脳幹症候群、間脳症候群、大脳症候群などが挙げられる。
【0017】
いくつかの実施形態において、視神経脊髄炎スペクトラム障害は、AQP4-IgG陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害である。
【0018】
いくつかの実施形態において、BTK阻害剤の投与量は、1~1000mgであり、例えば、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mg、または500mgであり得る。投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、2日に1回、3日に1回、週に1回などであり得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、BTK阻害剤の投与頻度は、1日1回であり、投与量は、毎回、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mg、または500mgである。
【0020】
いくつかの実施形態において、BTK阻害剤の投与頻度は、1日2回であり、投与量は、毎回、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、または250mgである。
【0021】
本開示の薬物の薬学的に許容される塩は、塩酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、吉草酸塩、グルタミン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メシル酸塩、イセチオン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、バニリン酸塩、マンデル酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩などであり得る。
【0022】
本開示のBTK阻害剤は、他の薬物と組み合わせて投与することもできる。併用投与様式は、同時投与、別々の製剤の共投与、および別々の製剤の逐次投与からなる群から選択される。
【0023】
本開示の薬物の投与経路は、経口投与、非経口投与、および経皮投与からなる群から選択される。非経口投与としては、これに限定されるものではないが、静脈内注射、皮下注射、および筋肉内注射が挙げられる。
【0024】
本開示はさらに、BTK阻害剤を患者に投与することを含む、視神経脊髄炎スペクトラム障害を治療する方法に関する。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、視神経脊髄炎スペクトル障害を治療する方法に関する。
【0026】
本開示はさらに、視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0027】
本開示はさらに、BTK阻害剤を患者に投与することを含む、視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発を予防する方法に関する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発を予防する方法に関する。
【0029】
本開示はさらに、視神経脊髄炎スペクトル障害の再発の予防に使用するための、BTK阻害剤に関する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本開示は、視神経脊髄炎スペクトル障害の再発の予防に使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0031】
本開示はさらに、BTK阻害剤を患者に投与することを含む、安定期の視神経脊髄炎スペクトラム障害を治療する方法に関する。
【0032】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、安定期の視神経脊髄炎スペクトラム障害を治療する方法に関する。
【0033】
本開示はさらに、安定期の視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療に使用するためのBTK阻害剤に関する。
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示は、安定期の視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0035】
本開示はまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤および希釈剤を含む、医薬組成物に関する。医薬組成物は、任意の薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。例えば、医薬組成物は、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、溶液、懸濁液、シロップ、注射剤(注射液、注射用滅菌粉末、および注射用濃縮液を含む)、坐剤、吸入剤、またはスプレーに製剤化することができる。
【0036】
本開示はまた、本開示の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の医薬組成物が包装された、医薬パッケージ品を提供する。
【0037】
「治療有効量」とは、投与されるための所望の効果をもたらす治療剤の量を意味する。いくつかの実施形態において、この用語は、疾患、障害および/または病気に罹患している、またはかかりやすい集団にレジメンに従って投与された場合に、疾患、障害および/または病気を治療するのに十分な量を意味する。いくつかの実施形態において、治療有効量は、疾患、障害および/または病気の1つ以上の症状について、発症率および/または重症度を低下させる、および/または発症を遅らせる、量である。当業者は、「治療有効量」との用語が、実際には特定の個体において治療の成功を達成する必要がないことを理解するであろう。逆に言えば、治療有効量は、そのような治療を必要とする患者に投与された場合に、多くの数の対象において特定の所望の薬理学的応答を提供する量であり得る。いくつかの実施形態において、治療有効量への言及は、1つ以上の特定の組織(例えば、疾患、障害または病気によって影響を受ける組織)または体液(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙、および尿など)で測定される量を意味し得る。当業者は、いくつかの実施形態において、治療上有効な量の特定の薬剤または治療剤を単回用量で製剤化および/または投与できることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、治療上有効な薬剤は、例えばレジメンの一部として、複数回用量で製剤化および/または投与することができる。
【0038】
平均年間再発率(ARR)=被験者の総エピソード数/(被験者数*観察時間)
【0039】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療における本開示の式(I)の化合物または薬学的に許容される塩により達成され得る効果は、ベースライン投薬後の被験者においてARR<2.1である。
【0040】
視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療における本開示の式(I)の化合物または薬学的に許容される塩により達成され得る効果は、ベースライン投薬後の被験者のARRが、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、および2.0からなる群から選択され得る。
【発明を実施するための形態】
【0041】
実施例1:視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療における式(I)の化合物の臨床研究
1.治験薬
式(I)の化合物の錠剤、仕様:100mg/錠。
【0042】
2.加入基準
1)18歳から75歳までの男性または女性(18歳および75歳を含む);
2)2015 IPND診断基準に従って、AQP4-IgG陽性のNMOSDと診断された患者;
3)再発歴の要件:ベースライン前の1年以内に救助療法を必要とするNMOSDの2回以上の再発。救助療法には、IVグルココルチコイド、血漿交換、および/または静脈内免疫グロブリン(IVIG)が含まれ得る;
4)以下に定義される試験薬による治療開始前1ヶ月以上安定した治療(ある場合)を受けている被験者。
免疫抑制剤(例えば、タクロリムス、アザチオプリン、ミコフェノール酸)および/または経口コルチコステロイドの量が安定しているか、減少の過程にある必要があり、急性期救助療法(例えば、IVグルココルチコイド、血漿交換、および/または静脈内免疫グロブリンなど)が、1ヶ月以上終了している必要がある。
【0043】
2.投与レジメン
試験薬は、資格のある被験者に、空腹時に朝1日1回、1錠あたり100mgを1度に1錠、投与した。
【0044】
3.実験結果
現在、全10名の被験者の登録が完了しており、登録前の全被験者の平均年間再発率(ARR=被験者の総エピソード数/(被験者数×観察時間))は、2.1であった。現在までに、ベースライン投薬後の既存の被験者の年間再発率は、0.7であることが観察されている。NMOSDの7年の病歴を有する42歳の女性患者は、試験に参加する前に重度の症状(立つことができない)を持っていた。式(I)の化合物を4週間投与した後、この患者は、有意に運動性が改善し、補助により立ち上がって数歩歩くことができた。投薬の7週目に、患者は、補助により20メートル以上歩くことができ、実質的に自分自身の管理をすることができた。
【国際調査報告】