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特表2023-536946石によって装飾された黒色のコンポーネント及びその製造方法
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  • 特表-石によって装飾された黒色のコンポーネント及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】石によって装飾された黒色のコンポーネント及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/06 20060101AFI20230823BHJP
   G04B 19/12 20060101ALI20230823BHJP
   G04B 19/10 20060101ALI20230823BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20230823BHJP
   G04B 1/08 20060101ALI20230823BHJP
   G04B 19/04 20060101ALI20230823BHJP
   G04B 29/02 20060101ALI20230823BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20230823BHJP
   A44C 17/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G04B19/06 R
G04B19/12 A
G04B19/06 A
G04B19/10 B
G04B45/00 Z
G04B1/08
G04B19/04 B
G04B29/02 B
A44C25/00 Z
A44C17/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507705
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2021070692
(87)【国際公開番号】W WO2022033839
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】20190566.8
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルノー,フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】キスリング,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ローペル,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マルロー デル,アニエス
(72)【発明者】
【氏名】ミコ,シラ
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114AA01
3B114AA21
3B114BB09
3B114BE01
3B114CC02
3B114HH04
3B114HH06
3B114HH08
(57)【要約】
本発明は、計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のコンポーネントに関し、前記コンポーネントは、部分的に黒色層(3)で被覆された基材(2)を含み、少なくとも1つの石(4)で装飾され、前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブ又は酸化アルミニウムを含み、前記基材(2)には、少なくとも石(4)に対向する部分において前記黒色層(3)がない。本発明は、さらに、この計時器又は宝飾品のコンポーネントを製造する方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のコンポーネントであって、
前記コンポーネントは、部分的に黒色層(3)で被覆された基材(2)を含み、少なくとも1つの石(4)で装飾され、
前記石(4)は、前記基材(2)又は前記基材(2)上に位置する支持体(11)に設けられたベッド(5)に配置され、
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブ又は酸化アルミニウムを含み、
前記基材(2)には、少なくとも前記ベッド(5)の面上において前記黒色層(3)がない
ことを特徴とするコンポーネント。
【請求項2】
前記黒色層(3)は、石のテーブル(4)と面一になるように存在する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項3】
前記石(4)は、セッティング要素(6)を用いて前記ベッド(5)の範囲内にセッティングされる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンポーネント。
【請求項4】
前記セッティング要素(6)は、さらに、前記黒色層(3)で被覆される
ことを特徴とする請求項3に記載のコンポーネント。
【請求項5】
前記コンポーネントは、複数の石(4)のアライメントを含み、
前記アライメントの間に前記黒色層(3)が配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項6】
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブを少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも10重量%、含むワニスであり、
前記カーボンナノチューブは、前記ワニスの範囲内にて配向がランダムである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコンポーネント。
【請求項7】
前記黒色層(3)は、前記基材(2)の平面に対して垂直に整列したカーボンナノチューブを少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、含み、
残りは他の形態の炭素を含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコンポーネント。
【請求項8】
前記黒色層(3)は、前記基材(2)の平面に対して垂直に整列したカーボンナノチューブを100重量%含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコンポーネント。
【請求項9】
カーボンナノチューブを含む前記黒色層(3)は、1~100μmの厚みを有する
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のコンポーネント。
【請求項10】
前記黒色層(3)は、酸化アルミニウムを少なくとも90重量%、好ましくは100重量%、含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコンポーネント。
【請求項11】
前記酸化アルミニウムは、アルミニウム含有量が、45~65重量%、好ましくは45~50重量%、である
ことを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項12】
前記黒色層(3)は、1~50μm、好ましくは2~10μm、より好ましくは4~7μm、の厚みを有する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載のコンポーネント。
【請求項13】
表盤、インデックス、針、アプリーク、振動錘、プレート及びブリッジからなる群から選択されるものである
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のコンポーネント。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のコンポーネントと、
計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品の別のコンポーネントとを備えるアセンブリーであって、
前記別のコンポーネントは、前記黒色層(3)で少なくとも部分的に被覆されている
ことを特徴とするアセンブリー。
【請求項15】
前記コンポーネントは、前記別のコンポーネントに対向するように配置され、前記別のコンポーネントに対して動くことができるように取り付けられる
ことを特徴とする請求項14に記載のアセンブリー。
【請求項16】
前記コンポーネントは針であり、
前記別のコンポーネントは表盤である
ことを特徴とする請求項14又は15に記載のアセンブリー。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載のコンポーネント、又は請求項14~16のいずれか一項に記載のアセンブリーを含む
ことを特徴とする計時器又は宝飾品。
【請求項18】
計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のために意図されたコンポーネントを製造する方法であって、
前記コンポーネントは、少なくとも部分的に黒色層(3)で被覆された基材(2)を含み、前記基材(2)内又は前記基材(2)上に設けられたベッド(5)に配置された少なくとも1つの石(4)で装飾され、
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブ又は酸化アルミニウムを含み、
前記基材(2)には、少なくとも前記ベッド(5)の面において前記黒色層(3)がなく、
前記方法は、
前記基材(2)を用意するステップa)を行い、
その後に、順不同で、
前記基材(2)上に黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記基材(2)内又は前記基材(2)上に前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記石(4)を前記ベッド(5)の範囲内に配置し固定するステップe)とを行い、
前記方法は、さらに、少なくとも前記ベッド(5)の面には前記黒色層(3)がないように、前記基材(2)上に既に堆積させた前記黒色層(3)を選択的に除去する付加的ステップd)を行う
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)において作った前記ベッド(5)から前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)であって、ステップc)とステップd)が同じ1つのステップである、ステップd)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内にて前記石(4)を配置し固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記ベッド(5)の面から前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置し固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前記石(4)がない面上を含む前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記石(4)がない面上に堆積された前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前記石(4)がない面上にマスク(8)を配置するステップf)と、
前記マスク(8)上を含む前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記マスク(8)を除去することによって前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記ベッド(5)の面上にマスク(8)を配置するステップf)と、
前記マスク(8)上を含む前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記マスク(8)を除去することによって前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置し固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
支持体(11)を形成するように前記基材(2)上に材料を成長させる材料成長ステップh)であって、これによって、前記基材(2)上の前記支持体(11)から前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)が行われる、材料成長ステップh)と、
前記基材(2)の上にて前記支持体(11)に設けられた前記ベッド(5)の範囲内にて前記石(4)を配置して固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記材料成長ステップh)は、付加製造、電鋳、又は選択的レーザー溶融によって行う
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
計時器の内部コンポーネントないしムーブメント又は宝飾品のために意図されたコンポーネントを製造する方法であって、
前記コンポーネントは、少なくとも部分的に黒色層(3)で被覆された基材(2)を含み、前記基材(2)に設けられたベッド(5)に配置された少なくとも1つの石(4)によって装飾され、
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブを含み、
前記基材(2)には、少なくとも前記ベッド(5)の面上において前記黒色層(3)がなく、
前記方法は、
前記基材(2)を用意するステップa)を行い、
その後に、順不同で、
前記基材(2)上にカーボンナノチューブを含む前駆体層(7)を堆積させアニールするステップb')と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置し固定するステップe)とを行い、
前記方法は、さらに、
少なくとも前記ベッドの前記面には前駆体層(7)がないように前記前駆体層(7)を選択的に除去する付加的ステップd')と、
前記前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを行う
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記ベッド(5)の面上を含む前記基材(2)上にカーボンナノチューブを含む前記前駆体層(7)を堆積させアニールするステップb')と、
前記ベッド(5)の面上に堆積された前記前駆体層(7)を選択的に除去するステップd')と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って、前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前駆体層(7)を前記基材(2)上に堆積させアニールするステップb')と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成し、これによって、前記ベッド(5)から前記前駆体層(7)を選択的に除去するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って、前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前記石(4)がない面上を含む基材(2)上に前駆体層(7)を堆積させアニールするステップb')と、
前記石(4)がない面上に堆積された前記前駆体層(7)を選択的に除去するステップd')と、
前記前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って、前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記前駆体は、ポリマーとカーボンナノチューブを含む
ことを特徴とする請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
カーボンナノチューブの割合は0.1~15重量%であり、ポリマーの割合は85~99.9重量%である
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーは、ポリアミド、ポリブテン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエポキシド及びポリウレタンからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記前駆体層(7)は、10~200μm、好ましくは100~200μm、の厚みを有する
ことを特徴とする請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記選択的除去ステップd)又は(d')は、機械的に又はレーザーアブレーションによって行う
ことを特徴とする請求項18~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
カーボンナノチューブを含む前記黒色層(3)は、スプレー、PVD又はCVDによって堆積される
ことを特徴とする請求項18~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
酸化アルミニウムを含む前記黒色層(3)は、PVD、CVD又はPECVDによって堆積される
ことを特徴とする請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記石(4)は、セッティングによって固定される
ことを特徴とする請求項18~36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のために意図されたコンポーネントに関する。本発明は、さらに、前記コンポーネントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒の「色」は、材料の塊に固有の色によって、又は材料に顔料又は染料を添加することによって、得ることができる。また、黒の「色」は、面においてのみ発生する。この面の色は、多くの方法によって達成することができ、典型的には、金属基材の酸化/硫化/炭化によって、又は基材上に酸化物/硫化物/炭化物を堆積させることによって、達成することができる。このように、炭素は、面を黒くするためによく知られている元素である。可視及び近赤外域において光吸収係数が99.96%に達する完全吸収性の黒体に似た材料を、ナノチューブの形態で細長く形成することによって、得ることができる。この黒色は、正面から見た物体の三次元の形をわからなくすることができるほどに完璧である。
【0003】
計時器業界において、黒色被覆を使用することは、よく知られている。欧州特許文献EP3327517は、携行型時計の風防に対向する第1の基材が黒色のナノチューブ層で被覆され、風防の反対側の面上の第2の基材が第1の基材に固定されているような表盤を開示している。第1の基材には、インデックスを形成するように意図された窓としてはたらく開口が形成される。第2の基材は、少なくとも開口に対向する領域において発光性の被覆を含み、これによって、第1の基材において、黒色層と照らされたインデックスの間にコントラストを発生させる。
【0004】
このように、異なる被覆を含む2つの基材を重ね合わせることによってコントラストを発生させることができる。この重ね合わせのおかげで、両方の被覆を同じ面上に選択的に堆積させて、特別に脆弱なナノチューブ層を必要以上に操作する必要性をなくすことができる。それにもかかわらず、この重ね合わせには、2つの基材を製造する必要があって製造コストを増加させてしまうという課題がある。
【0005】
スイス特許文献CH711141は、装飾、すなわち、インデックス、がカーボンブラック被覆に取り付けられるような表盤を製造する方法を開示している。この装飾は、表盤とは別に製造され、その後に単に表盤に付加される。このことによって、表盤の製造が非常に容易になる。しかし、この製造技術は、装飾の下にある黒色が装飾の審美性及び/又は輝きに悪影響を与えてしまうような特定のタイプの装飾には適さない。
【0006】
特に、この製造技術は、石、特にダイヤモンド、によって作られた装飾にはあまり適していない。黒色層で被覆された表盤上に石をセッティングすることは難しい。その黒色層は、石を完全に囲んで所望のコントラストを発生させつつ、石の位置において断絶していなければならず、そうでなければ石の輝きが低下してしまう。製造方法においては、カーボンナノチューブ層を損傷させないように特に配慮する必要がある。このカーボンナノチューブ層は、面を損傷させることなく接触することがほぼ不可能であるほどに脆い。この面を損傷させてしまうと、カーボンナノチューブの元の色に対してコントラストを発生させてしまうような輝きのある小さな点や穴が発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、黒色被覆され、石で装飾され、特に石とともにセッティングされるような、計時器又は宝飾品のコンポーネントを製造する方法を提供することを目的とする。この方法は、石の位置において黒色層が断絶されつつ、黒色被覆が損傷されないように開発された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明に係る製造方法は、従来技術におけるように単に被覆に、装飾、この場合は石、を加えることを伴うのではない。本発明によると、石によって形成される装飾は、黒色層が選択的に除去された基材上にて直接作られ、これによって、装飾の下に黒色層がない面を維持する。
【0009】
特に、本発明は、計時器の内部コンポーネントないしムーブメント又は宝飾品のために意図されたコンポーネントを製造する方法に関し、前記コンポーネントは、少なくとも部分的に黒色層で被覆された基材を含み、前記黒色層は、カーボンナノチューブ又は酸化アルミニウムを含み、被覆された前記基材は、前記基材に設けられたベッドに配置された少なくとも1つの石によって装飾され、前記基材には、少なくとも前記ベッドの面上において前記黒色層がなく、前記方法は、前記基材を用意するステップa)を行い、その後に、順不同で、前記基材上に前記黒色層を堆積させるステップb)と、前記基材において前記ベッドを形成するステップc)と、前記ベッドの範囲内に前記石を配置し固定するステップe)とを行い、前記方法は、さらに、少なくとも前記ベッドの前記面には黒色層がないように前記基材に既に堆積された前記黒色層を選択的に除去するステップd)を行う。
【0010】
黒色層がカーボンナノチューブを含む場合に適用可能な本方法の別の実施形態において、ステップb)は、カーボンナノチューブを含む前駆体層を堆積させるステップb')によって置き換えられる。したがって、付加的ステップd)は、少なくともベッドの面に前駆体層がないように前駆体層を選択的に除去する付加的ステップd')によって置き換えられる。この方法は、さらに、黒色カーボンナノチューブ層を露出させるように前駆体層に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行うステップf)を行う。
【0011】
選択的除去ステップd)又はd')は、機械的に、例えば、セッティング工具を用いて、又は、好ましくはレーザーアブレーションによって、行うことができる。また、選択的除去は、ベッドを形成するステップの間、又は付加製造操作、特にインクジェット付加製造、などを用いる、基材上に石の支持体を成長させるステップの間に、間接的に行うこともできる。
【0012】
本発明は、さらに、計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のコンポーネントに関し、前記コンポーネントは、部分的に黒色層で被覆された基材を含み、少なくとも1つの石で装飾され、前記石は、前記基材又は前記基材上に位置するベッドに配置され、前記黒色層は、カーボンナノチューブ又は酸化アルミニウムを含み、前記基材には、少なくとも前記石に対向する部分、すなわち、前記ベッドの面、において前記黒色層がない。
【0013】
カーボンナノチューブ被覆上におけるダイヤモンド装飾の場合、本発明は、面上に2つの炭素の同素体を含む計時器又は宝飾品のコンポーネントであって、一方の同素体が、カーボンナノチューブのおかげで非常に黒色であり、他方の同素体が、ダイヤモンドのおかげで非常に白色であり、非常に顕著なコントラストがあって輝いているものを製造することを提案するものである。
【0014】
添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の方法に係る、被覆され石で装飾された表盤を備える計時器を上から見た図を示している。拡大図においては、セッティング要素とともに石を示している。
図2】いくつかの順次的なステップを実行する本発明に係る方法の実施形態についての模式図である。
図3】いくつかの順次的なステップを実行する本発明に係る方法の実施形態についての模式図である。
図4】いくつかの順次的なステップを実行する本発明に係る方法の実施形態についての模式図である。
図5】いくつかの順次的なステップを実行する本発明に係る方法の実施形態についての模式図である。
図6】いくつかの順次的なステップを実行する本発明に係る方法の実施形態についての模式図である。
図7】いくつかの順次的なステップを実行する本発明に係る方法の実施形態についての模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のために意図されたコンポーネントに関する。このコンポーネントは、表盤、針、インデックス、アプリーク、振動錘、プレート及びブリッジなどからなる群から選択することができる。なお、これらがすべてを網羅しているわけではない。本発明によると、このコンポーネントは、少なくとも部分的に黒色層で被覆される。本発明は、さらに、少なくとも部分的に黒色層で被覆される前記コンポーネントを2つ含むアセンブリーに関する。
【0017】
以下、図1に示しているように、黒色層3で被覆された基材2によって形成される携行型時計の表盤1へと本発明が適用される場合に関連して、本発明について説明する。前記基材は、鋼、チタン、アルミニウム、チタン又はアルミニウム合金、黄銅又は他の銅合金のような金属材料によって作ることができる。前記基材は、さらに、セラミックス、サーメット、サファイア、複合材料又はポリマー材料によって作ることもできる。基材2は、一又は複数の石4が黒色層3の範囲内にて分布するように、装飾され、好ましくはセッティングされる。これらの石4は、ダイヤモンドのような貴石、半貴石、又はジルコニアのような合成石であることができる。本発明によると、前記基材の上に、少なくとも、石に対向する部分においては、黒色層がない。黒色層は、石のテーブルと面一になるように存在することができる。また、基材は、複数の石のアライメントを形成するように装飾され、基材は、これらのアライメントどうしの間に黒色層を含む。
【0018】
基材2には、図2に示しているベッド5があり、このベッド5は、石4、特に、石4のパビリオン4a、のための座としてはたらく。石4は、好ましくは、図1の拡大図に示しているセッティング要素6を用いて、セッティングによって座の範囲内に固定される。このセッティング要素6は、ベッドの範囲内に配置されるセッティングの爪、基材の構成部分を形成する粒子、又はバゲットや目に見えないセッティングのためのベッドにおけるアンダーカットなどであることができる。本発明によると、セッティングをユーザーに見えないようにするために、セッティング要素は、好ましくは、黒色層で被覆される。このセッティングは、視覚的に、表盤の黒色の背景に調和して目立たなくなる。代わりに、本発明は、石の輝きを劣化させない接着剤で石を座の範囲内にて接着することができ、このようなことを妨げるものではない。
【0019】
本発明の別の実施形態において、黒色層は、カーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブ層は、カーボンナノチューブを、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも10重量%、含む。前記カーボンナノチューブ層は、カーボンナノチューブを、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも10重量%、含むワニスであることができる。この割合が高いほど、暗部が暗くなる。カーボンナノチューブは、このワニスの範囲内にてランダムに分布する。このワニスは、スプレーなどによって堆積させることができる。代わりに、前記カーボンナノチューブ層は、基材の平面に対して垂直に整列したカーボンナノチューブを、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、含み、残りは他の形態の炭素を含む。好ましくは、前記カーボンナノチューブ層は、基材の平面に対して垂直に整列したカーボンナノチューブを100重量%含む。このようなナノチューブの垂直整列は、ワニスにおいてカーボンナノチューブの配向がランダムである場合よりも深い黒色を発生させるが、ワニスよりも機械的強度が低くなるという課題がある。この課題を解決すべく黒色層上に保護層を堆積させることができるが、これは光吸収係数を減少させてしまう。この保護層は、ワニス、又はAl23、TiO2又はSiO2のような材料の薄い層、又はALD(原子層堆積)によって堆積されるこれらの材料のうちの一又は複数の材料の積層体であることができる。垂直方向に配向したナノチューブは、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)、又はレーザーアブレーション合成のような真空法によって堆積される。カーボンナノチューブ層は、1~100μmの厚みを有する。
【0020】
別の代替的実施形態において、前記黒色層は、Al23のような酸化アルミニウムAlxyを主に含み、さらに、銅、亜鉛又はマンガンの酸化物のような非鉄金属酸化物を含む層である。この層は、Alxyを、少なくとも90%、好ましくは100%、含む。前記酸化アルミニウムのアルミニウム含有量は、45~65重量%、好ましくは45~50重量%、である。この層は、1~50μm、好ましくは2~10μm、より好ましくは4~7μm、の厚みを有する。この層は、PVD、CVD又はPECVD(プラズマ増強化学蒸着)によって堆積させることができる。
【0021】
本発明に係るコンポーネントは、図2~7に模式的に示している本方法のいくつかの実施形態に従って製造することができる。簡明性のために、図2~7には、石の座のためのベッドがある基材のみを示しており、セッティング要素を示していない。ベッドの形成を伴うステップはいずれも、必要に応じて、粒子のようなセッティング要素を機械的に準備することを伴うことができる。
【0022】
このコンポーネントを製造する方法は、ステップb)からステップe)までについて順不同で、
- 基材2を用意するステップa)と、
- 黒色層3を基材2上に堆積させるステップb)、又はカーボンナノチューブを用いる代替的実施形態において、カーボンナノチューブを含む前駆体層7をカーボンナノチューブ上に堆積させるステップb')と、
- 基材2中又は基材2上にてベッド5を形成するステップc)と、
- 少なくともベッド5の面に黒色層3又は前駆体層7がないように、黒色層3を選択的に除去するステップd)、又は基材2上に既に堆積させた前駆体層7を選択的に除去するステップd')と、
- 石4をベッド5の範囲内に配置し固定し、好ましくはセッティングする、ステップe)とを行う。
【0023】
図2~5に示している第1の実施形態において、このコンポーネントを製造する方法は、
- 基材2を用意するステップa)(図2~5)と、
- ベッド、ベッド5(図3)、又は石4の上面、すなわち、切石のテーブルとクラウン(図4~5)、を形成するように意図された領域(図2)を含む、基材2の全部又は一部に黒色層3を堆積させるステップb)と、
- ベッド5(図2)、ベッド5(図3)、又は石4の上面(図4~5)を形成するように意図された領域から黒色層3を選択的に除去するステップd)とを行う。
【0024】
この方法は、さらに、基材2においてベッド5を形成するステップc)と、基材2上に石4を配置して固定するステップe)とを行う。この固定は、セッティング、そして、接合のような他の固定技術を含む。
【0025】
図2に示している代替的実施形態において、ベッド5を形成する前に、黒色層3が基材2上に堆積される。そして、黒色層3は、ベッド5の形成中に除去される。すなわち、ステップc)及びd)は、同じ1つのステップである。最後に、ステップe)を行う。
【0026】
図3に示している代替的実施形態において、ベッド5を形成するステップc)の後に、黒色層3を基材2上に堆積させる。そして、黒色層3をベッド5から除去する。この除去は、機械的に行うことができ、特に、セッティング工具を用いて手動で行うことができる。好ましい実施形態において、この選択的除去は、レーザーアブレーションによって、好ましくは、ナノ秒、ピコ秒又はフェムト秒レーザーのようなパルスレーザーを用いて行う。最後に、ステップe)を行う。
【0027】
図4に示している代替的実施形態において、黒色層3は、石4で既に装飾された基材2上に堆積される。そして、石4上の黒色層3は、機械的に除去してもよいが、好ましくは、前の場合のようにパルスレーザーを用いたレーザーアブレーションによって除去する。図4のこの代替的実施形態が好ましいのは、黒色層が選択的に除去された後に、依然として基材が選択的除去ステップの後にセッティングされなければならない図3の代替的実施形態とは異なり、面を処理する必要がないからである。
【0028】
図5に示している代替的実施形態において、基材2は、ステップe)に従って石4で装飾される。そして、この方法は、さらに、マスク8を石4に適用する付加的ステップf)を行う。マスク8は、ラッカー、接着剤、感光性膜などであることができる。マスク8は、例えば、フォトリソグラフィー、ステレオリソグラフィー、デジタル印刷、又は接着剤又は膜の場合に手動で、堆積させることができる。そして、ステップb)にて、黒色層3は、マスク8上を含む、基材2上に、堆積される。最後に、ステップd)にて、マスク8がある領域の黒色層3が選択的に除去される。マスクは、レーザーアブレーションによって、又は機械的に、例えば、専用工具を用いて手動で、除去することができる。代わりに(図示せず)、石を配置する前に、マスクをベッドの範囲内に配置することができる。このように、石を配置する前に、黒色層を堆積させ、選択的に除去する。
【0029】
図6に示している第2の実施形態において、ステップb)を、ベッド5の面上を含む基材2上に前駆体層7を堆積させるステップb')によって置き換える。ステップb')は、前駆体層を堆積させて、前駆体を重合させるためにアニーリングを行う。この代替的実施形態は、カーボンナノチューブベースの黒色層に適用される。前駆体は、ポリマーとカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブの割合は0.1~15重量%であり、ポリマーの割合は85~99.9重量%である。ポリマーは、ポリアミド、ポリブテン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル及びポリメタクリル酸メチルのような熱可塑性物質、又はポリエポキシド及びポリウレタンのような熱硬化性物質から選択することができる。ポリマーとカーボンナノチューブの間の接着性を改善させるために、カーボンナノチューブを予め官能化することができる。例えば、ポリイミドマトリクスの場合、カーボンナノチューブは、酸性媒体、例えば硝酸、においてエッチングすることによって、予め官能化することができる。ポリイミドマトリックス中に分布するカーボンナノチューブの混合物を含む前駆体は、堆積され、150~350℃の温度で1~7時間重合される。
【0030】
そして、ベッド5において堆積された前駆体層7を選択的に除去するステップd)を行う。この選択的除去は、好ましくは、レーザーアブレーションによって行うが、適切な道具を用いて手動で行うこともできる。この後に、基材2のベッド5の範囲内に石4を配置し固定するステップe)を行う。最後に、ステップf)において、前駆体層7に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングをして、前駆体層の中のカーボンナノチューブを露出させて、黒色層3を形成する。化学的エッチングは、ポリマーマトリックスの性質に応じて、酸性媒体(例えば、ギ酸、酢酸、硫酸、硝酸、塩酸又はフッ化水素酸)又は適当な溶媒(例えば、m-クレゾール)中で行うことができる。このエッチングステップは、前駆体層のポリマーマトリックスを部分的に溶解し、面を粗くし、したがって、カーボンナノチューブに富み光をトラップするために適した微細構造を露出させる。また、パルスレーザー(例えば、フェムト秒又はピコ秒レーザー)を用いるレーザーエッチングも、このような面微細構造を作るために考えることができる。
【0031】
代わりに(図示せず)、ベッドを形成するステップc)の前にステップb')を行うことができ、したがって、ステップc)及びd')は、ベッドを形成し、ベッドから前駆体層を選択的に除去する単一の相伴うステップである。代わりに(図示せず)、前駆体層を、石がセッティングされた基材上に堆積させ、したがって、石上にて前駆体の選択的除去を行うことができる。
【0032】
図7に示している第3の実施形態において、この方法は、さらに、黒色層で被覆された基材2上に材料を成長させて、石4を受けるように意図された支持体11を形成する付加的ステップh)を行う。したがって、この方法は、
- 基材2を用意するステップa)と、
- 基材2上に黒色層3を堆積させるステップb)と、
- 黒色層3を選択的に除去するステップd)と同時に行う、被覆された基材2上に材料を成長させて支持体11を形成するステップh)と、
- 基材2上に支持体11において設けられたベッド5の範囲内に石4を配置し固定するステップe)とを順次的に行う。
【0033】
前記材料成長ステップh)は、デジタル印刷、電鋳、選択的レーザー溶融、又は任意の他の付加的方法のような付加製造によって行う。材料は、金属性、セラミックス又はポリマーの材料であることができる。このステップの間に、黒色層3は、支持体11から自動的に選択的除去され、したがって、セッティングされる石4に対向する基材2の部分には黒色層3がない。
【0034】
ベッド5は、成長ステップh)の間に直接作ることができ、又は後の段階であってステップe)の前に形成することができる。
【0035】
すべての実施形態は、表盤の背景と調和して目立たなくなるようにセッティング要素が黒色層で被覆されるものを示している。しかし、本発明は、ベッドからの黒色層の選択的除去が、セッティング要素からも除去することも含むことを排除するものではない。
【0036】
最後に、本発明は、さらに、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントとを備えるアセンブリーに関し、これらの各コンポーネントは、計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のためのものであるように意図されている。本発明によると、第1及び第2のコンポーネントは、黒色層で被覆された少なくとも1つの部分を含む。好ましくは、第1のコンポーネントは、第2のコンポーネントに対して動くことができ、第2のコンポーネントに対向するように取り付けられる。この第1のコンポーネントは、一又は複数の石で装飾される。例えば、第1のコンポーネントは、黒色層で被覆された針であって、この針の先端にセッティングされ又は接合された石によって装飾された針であり、第2のコンポーネントは、黒色層で被覆された表盤である。
【符号の説明】
【0037】
1 表盤
2 基材
3 黒色層
4 石
4a パビリオン
5 ベッド
6 セッティング要素
7 前駆体層
8 マスク
11 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のコンポーネントであって、
前記コンポーネントは、部分的に黒色層(3)で被覆された基材(2)を含み、少なくとも1つの石(4)で装飾され、
前記石(4)は、前記基材(2)又は前記基材(2)上に位置する支持体(11)に設けられたベッド(5)に配置され、
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブ又は酸化アルミニウムを含み、
前記基材(2)には、少なくとも前記ベッド(5)の面上において前記黒色層(3)がない
ことを特徴とするコンポーネント。
【請求項2】
前記黒色層(3)は、石のテーブル(4)と面一になるように存在する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項3】
前記石(4)は、セッティング要素(6)を用いて前記ベッド(5)の範囲内にセッティングされる
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項4】
前記セッティング要素(6)は、さらに、前記黒色層(3)で被覆される
ことを特徴とする請求項3に記載のコンポーネント。
【請求項5】
前記コンポーネントは、複数の石(4)のアライメントを含み、
前記アライメントの間に前記黒色層(3)が配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項6】
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブを少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも10重量%、含むワニスであり、
前記カーボンナノチューブは、前記ワニスの範囲内にて配向がランダムである
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項7】
前記黒色層(3)は、前記基材(2)の平面に対して垂直に整列したカーボンナノチューブを少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、含み、
残りは他の形態の炭素を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項8】
前記黒色層(3)は、前記基材(2)の平面に対して垂直に整列したカーボンナノチューブを100重量%含む
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項9】
カーボンナノチューブを含む前記黒色層(3)は、1~100μmの厚みを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項10】
前記黒色層(3)は、酸化アルミニウムを少なくとも90重量%、好ましくは100重量%、含む
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項11】
前記酸化アルミニウムは、アルミニウム含有量が、45~65重量%、好ましくは45~50重量%、である
ことを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項12】
前記黒色層(3)は、1~50μm、好ましくは2~10μm、より好ましくは4~7μm、の厚みを有する
ことを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項13】
表盤、インデックス、針、アプリーク、振動錘、プレート及びブリッジからなる群から選択されるものである
ことを特徴とする請求項1に記載のコンポーネント。
【請求項14】
請求項1に記載のコンポーネントと、
計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品の別のコンポーネントとを備えるアセンブリーであって、
前記別のコンポーネントは、前記黒色層(3)で少なくとも部分的に被覆されている
ことを特徴とするアセンブリー。
【請求項15】
前記コンポーネントは、前記別のコンポーネントに対向するように配置され、前記別のコンポーネントに対して動くことができるように取り付けられる
ことを特徴とする請求項14に記載のアセンブリー。
【請求項16】
前記コンポーネントは針であり、
前記別のコンポーネントは表盤である
ことを特徴とする請求項14に記載のアセンブリー。
【請求項17】
請求項1に記載のコンポーネント、又は請求項14に記載のアセンブリーを含む
ことを特徴とする計時器又は宝飾品。
【請求項18】
計時器の内部部品ないしムーブメント又は宝飾品のために意図されたコンポーネントを製造する方法であって、
前記コンポーネントは、少なくとも部分的に黒色層(3)で被覆された基材(2)を含み、前記基材(2)内又は前記基材(2)上に設けられたベッド(5)に配置された少なくとも1つの石(4)で装飾され、
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブ又は酸化アルミニウムを含み、
前記基材(2)には、少なくとも前記ベッド(5)の面において前記黒色層(3)がなく、
前記方法は、
前記基材(2)を用意するステップa)を行い、
その後に、順不同で、
前記基材(2)上に黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記基材(2)内又は前記基材(2)上に前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記石(4)を前記ベッド(5)の範囲内に配置し固定するステップe)とを行い、
前記方法は、さらに、少なくとも前記ベッド(5)の面には前記黒色層(3)がないように、前記基材(2)上に既に堆積させた前記黒色層(3)を選択的に除去する付加的ステップd)を行う
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)において作った前記ベッド(5)から前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)であって、ステップc)とステップd)が同じ1つのステップである、ステップd)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内にて前記石(4)を配置し固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記ベッド(5)の面から前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置し固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前記石(4)がない面上を含む前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記石(4)がない面上に堆積された前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前記石(4)がない面上にマスク(8)を配置するステップf)と、
前記マスク(8)上を含む前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記マスク(8)を除去することによって前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記ベッド(5)の面上にマスク(8)を配置するステップf)と、
前記マスク(8)上を含む前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
前記マスク(8)を除去することによって前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置し固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)上に前記黒色層(3)を堆積させるステップb)と、
支持体(11)を形成するように前記基材(2)上に材料を成長させる材料成長ステップh)であって、これによって、前記基材(2)上の前記支持体(11)から前記黒色層(3)を選択的に除去するステップd)が行われる、材料成長ステップh)と、
前記基材(2)の上にて前記支持体(11)に設けられた前記ベッド(5)の範囲内にて前記石(4)を配置して固定するステップe)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記材料成長ステップh)は、付加製造、電鋳、又は選択的レーザー溶融によって行う
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
計時器の内部コンポーネントないしムーブメント又は宝飾品のために意図されたコンポーネントを製造する方法であって、
前記コンポーネントは、少なくとも部分的に黒色層(3)で被覆された基材(2)を含み、前記基材(2)に設けられたベッド(5)に配置された少なくとも1つの石(4)によって装飾され、
前記黒色層(3)は、カーボンナノチューブを含み、
前記基材(2)には、少なくとも前記ベッド(5)の面上において前記黒色層(3)がなく、
前記方法は、
前記基材(2)を用意するステップa)を行い、
その後に、順不同で、
前記基材(2)上にカーボンナノチューブを含む前駆体層(7)を堆積させアニールするステップb&apos;)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置し固定するステップe)とを行い、
前記方法は、さらに、
少なくとも前記ベッドの前記面には前駆体層(7)がないように前記前駆体層(7)を選択的に除去する付加的ステップd&apos;)と、
前記前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを行う
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記ベッド(5)の面上を含む前記基材(2)上にカーボンナノチューブを含む前記前駆体層(7)を堆積させアニールするステップb&apos;)と、
前記ベッド(5)の面上に堆積された前記前駆体層(7)を選択的に除去するステップd&apos;)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って、前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前駆体層(7)を前記基材(2)上に堆積させアニールするステップb&apos;)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成し、これによって、前記ベッド(5)から前記前駆体層(7)を選択的に除去するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って、前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記基材(2)を用意するステップa)と、
前記基材(2)において前記ベッド(5)を形成するステップc)と、
前記基材(2)の前記ベッド(5)の範囲内に前記石(4)を配置して固定するステップe)と、
前記石(4)がない面上を含む基材(2)上に前駆体層(7)を堆積させアニールするステップb&apos;)と、
前記石(4)がない面上に堆積された前記前駆体層(7)を選択的に除去するステップd&apos;)と、
前記前駆体層(7)に対して化学的エッチング又はレーザーエッチングを行って、前記基材(2)上に前記黒色層(3)を形成するステップf)とを順次的に行う
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記前駆体は、ポリマーとカーボンナノチューブを含む
ことを特徴とする請求項26~29に記載の方法。
【請求項31】
カーボンナノチューブの割合は0.1~15重量%であり、ポリマーの割合は85~99.9重量%である
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーは、ポリアミド、ポリブテン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエポキシド及びポリウレタンからなる群から選択される
ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記前駆体層(7)は、10~200μm、好ましくは100~200μm、の厚みを有する
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記選択的除去ステップd)又は(d&apos;)は、機械的に又はレーザーアブレーションによって行う
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項35】
カーボンナノチューブを含む前記黒色層(3)は、スプレー、PVD又はCVDによって堆積される
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項36】
酸化アルミニウムを含む前記黒色層(3)は、PVD、CVD又はPECVDによって堆積される
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項37】
前記石(4)は、セッティングによって固定される
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【国際調査報告】