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2023-536961癌の検出および処置のための方法および薬剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】癌の検出および処置のための方法および薬剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20230823BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230823BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230823BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230823BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 31/409 20060101ALI20230823BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230823BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20230823BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/02
A61K31/409
G01N33/574 A
C07K14/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507727
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 US2021053867
(87)【国際公開番号】W WO2022032244
(87)【国際公開日】2022-02-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブレディ-カルネイ,スーザン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA13
4C084NA20
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB04
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA50
4H045EA28
4H045EA50
4H045FA20
(57)【要約】
癌細胞および/または癌細胞転移、遊走、分散、および/または浸潤を検出、モニター、および/または画像化する際の使用のための、および/または被験者における癌を処置するための薬剤は、標的化ペプチド、検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つ、および標的化ペプチドを検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つに直接的または間接的に結合するペプチドまたはペプチド模倣スペーサを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞の微小環境で癌細胞または別の細胞により発現されている免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに特異的に結合するおよび/またはそれと複合体化する標的化ペプチド;
検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つ;ならびに
前記標的化ペプチドを前記検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の前記少なくとも1つに直接的または間接的に結合するペプチドまたはペプチド模倣スペーサであって、前記タンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントへの前記結合した標的化ペプチドの結合親和性および前記結合した検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の前記少なくとも1つの活性を少なくとも維持または保全するのに有効な長さおよび構造を有する前記スペーサ
を含む、薬剤。
【請求項2】
癌細胞および/または癌細胞転移、遊走、分散、および/もしくは浸潤を検出、モニター、および/もしくは画像化する際に使用するための、ならびに/または被験者における癌を処置するための、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
被験者へのインビボ投与用または前記被験者の生体試料へのエクスビボ投与用に構成されている、請求項1または2に記載の薬剤。
【請求項4】
前記スペーサが、天然および/または非天然のアミノ酸を含む、請求項1から3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項5】
前記スペーサが、少なくとも3つの天然または非天然のアミノ酸を含む、請求項1から4のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
前記スペーサが、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30の天然または非天然のアミノ酸長を有している、請求項1から5のいずれかに記載の薬剤。
【請求項7】
前記スペーサが、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%のグリシンおよび/またはセリン残基を含む、請求項1から6のいずれかに記載の薬剤。
【請求項8】
前記スペーサが、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%のグリシン残基を含む、請求項1から7のいずれかに記載の薬剤。
【請求項9】
前記スペーサが、ポリグリシンまたはグリシン/セリンスペーサである、請求項1から8のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】
スペーサが、(GS)a、(GGS)b、または(GGGS)c、または(GGGGS)dの少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、a、b、c、およびdが、それぞれ独立して2、3、4、5、または6である、請求項1から9のいずれかに記載の薬剤。
【請求項11】
前記スペーサが、GGG(配列番号9)、GGGG(配列番号10)、GGGGG(配列番号11)、GGGGGG(配列番号12)、GGGGGGG(配列番号13)、GGGGGGGG(配列番号14)、GGGGGGGGG(配列番号15)、GSGS(配列番号16)、GSGSGS(配列番号17)、GSGSGSGS(配列番号18)、GSGSGSGSGS(配列番号19)、GGSGGS(配列番号20)、GGSGGSGGS(配列番号21)、GGSGGSGGSGGS(配列番号22)、GGGSGGGS(配列番号23)、GGGSGGGSGGGS(配列番号24)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号25)、GGGGSGGGGS(配列番号26)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号27)のアミノ酸配列を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項12】
さらに、前記スペーサを前記標的化ペプチドおよび/または前記検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の前記少なくとも1つに結合する少なくとも1つのカップリング剤を含む、請求項1から11のいずれかに記載の薬剤。
【請求項13】
前記細胞接着分子が、細胞表面受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)タイプIIbを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項14】
前記細胞外フラグメントが、配列番号2のアミノ酸配列および配列番号2に特異的に結合するおよび/またはそれと複合体化するポリペプチドを含む前記標的化ペプチドを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項15】
前記標的化ペプチドが、配列番号3の約10から約50の連続するアミノ酸と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項16】
前記標的化ペプチドが、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項1から15のいずれかに記載の薬剤。
【請求項17】
前記検出可能な部分が、キレート剤、造影剤、イメージング剤、放射標識、半導体粒子、ナノ粒子、ナノバブル、またはナノチェーンを含む、請求項1から16のいずれかに記載の薬剤。
【請求項18】
前記検出可能な部分が、核磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン断層法(PET)イメージング、コンピュータ断層法(CT)イメージング、ガンマイメージング、近赤外線イメージング、または蛍光イメージングの少なくとも1つにより検出可能である、請求項1から17のいずれかに記載の薬剤。
【請求項19】
前記セラノスティック剤または治療剤が、光増感剤、超音波増感剤、温熱増感剤、放射線増感剤、放射線療法剤、化学療法剤、または免疫療法剤の少なくとも1つを含む、請求項1から18のいずれかに記載の薬剤。
【請求項20】
それを必要とする被験者における癌細胞ならびに/または癌細胞転移、遊走、分散、および/もしくは浸潤を検出する方法であって:
請求項17または18に記載の薬剤の一定量を前記被験者に投与すること;および
前記癌細胞に結合したおよび/またはそれと複合体化した前記薬剤を検出し、前記被験者における前記癌細胞の位置および/または分布を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項21】
前記癌細胞が、神経膠腫、肺癌、メラノーマ、乳癌、または前立腺癌細胞の少なくとも1つを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、前記被験者に全身的に投与される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤が、被験者における腫瘍境界を定義するために検出される、請求項20から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする被験者における癌を処置する方法であって:
請求項1から19のいずれかに記載の治療的有効量を前記被験者に投与することを含む、
前記方法。
【請求項25】
前記治療剤またはセラノスティック剤が、光増感剤、放射線増感剤、または放射線療法剤であり、前記薬剤を結合または内在化する癌細胞を照射し、それによって、前記光増感剤または放射線療法剤の前記光増感効果または放射線増感効果、ならびに前記癌細胞のアポトーシスおよび/またはネクローシスを誘導することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記光増感剤が、ポルフィリン、トリカルボシアニン(tricarbocuyanine)、またはフタロシアニン化合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療剤またはセラノスティック剤がナノバブルであり、癌細胞の慣性キャビテーションおよびアポトーシスおよび/もしくはネクローシスを促進する、ならびに/または前記癌細胞に化学療法剤を放出するのに有効な超音波エネルギーを用いて、前記癌細胞に結合または前記癌細胞により内在化したナノバブルに超音波照射することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年8月6日に出願された米国仮出願第63/062,053号の優先権を主張し、その主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
癌の検出および処置は、癌細胞と正常細胞との間の区別を不能にすることにより、妨害される。癌または腫瘍のイメージングのためのより良好な検出ツールは、癌の早期診断にとって必要である。腫瘍細胞の分子認識は、ガイドされた外科的切除を容易にする。外科的切除を改善するため、標的イメージングツールは、主な腫瘍だけでなく、腫瘍の縁に沿って、また全身に分散した小さい腫瘍細胞クラスター内で腫瘍細胞を特異的に標識しなければならない。
【0003】
腫瘍の微小環境内に蓄積する分子を標識するようにデザインされた標的イメージングツールはまた、主な腫瘍細胞集団および腫瘍の再発に寄与する浸潤細胞を有する領域の両方を同定することができるので、治療標的剤として有利であり得る。腫瘍細胞および/またはその微小環境を直接標的化する能力は、現在の処置の特異性および感受性の両方を高め、そのため、全身の細胞に影響する化学療法の非特異的副作用を低減する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載の実施形態は、癌細胞および/または癌細胞転移、遊走、分散、および/または浸潤を検出、モニター、および/または画像化する際の、および/または被験者において癌を処置するための、薬剤およびその使用に関する。薬剤には、癌細胞の微小環境で癌細胞または別の細胞により発現されている免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに特異的に結合するおよび/またはそれと複合体化する標的化ペプチド;検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つ;ならびに標的化ペプチドを検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つに直接的または間接的に結合するペプチドまたはペプチド模倣スペーサが含まれ得る。ペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、タンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントへの結合した標的化ペプチドの結合親和性および結合した検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つの活性を少なくとも維持または保全するのに有効な長さおよび構造を有している。
【0005】
いくらかの実施形態において、薬剤は、被験者へのインビボ投与用または被験者の生体試料へのエクスビボ投与用に構成されている。
【0006】
いくらかの実施形態において、スペーサには、天然および/または非天然のアミノ酸が含まれる。
【0007】
他の実施形態において、スペーサは、少なくとも3つの天然または非天然のアミノ酸を含む。例えば、スペーサは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30の天然または非天然のアミノ酸長を有することができる。
【0008】
いくらかの実施形態において、スペーサは、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%のグリシンおよび/またはセリン残基を含む。
【0009】
他の実施形態において、スペーサは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%のグリシン残基を含む。
【0010】
いくらかの実施形態において、スペーサは、ポリグリシンまたはグリシン/セリンスペーサである。
【0011】
いくらかの実施形態において、スペーサは、(GS)a、(GGS)b、または(GGGS)c、または(GGGGS)dの少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、ここで、a、b、c、およびdは、それぞれ独立して2、3、4,5、または6である。例えば、スペーサは、GGG(配列番号9)、GGGG(配列番号10)、GGGGG(配列番号11)、GGGGGG(配列番号12)、GGGGGGG(配列番号13)、GGGGGGGG(配列番号14)、GGGGGGGGG(配列番号15)、GSGS(配列番号16)、GSGSGS(配列番号17)、GSGSGSGS(配列番号18)、GSGSGSGSGS(配列番号19)、GGSGGS(配列番号20)、GGSGGSGGS(配列番号21)、GGSGGSGGSGGS(配列番号22)、GGGSGGGS(配列番号23)、GGGSGGGSGGGS(配列番号24)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号25)、GGGGSGGGGS(配列番号26)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号27)のアミノ酸配列を有することができる。
【0012】
いくらかの実施形態において、薬剤は、スペーサを標的化ペプチドおよび/または検出可能な部分、治療剤、もしくはセラノスティック剤の少なくとも1つに結合する少なくとも1つのカップリング剤をさらに含む。
【0013】
いくらかの実施形態において、細胞接着分子には、細胞表面受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)タイプIIbが含まれ得る。
【0014】
いくらかの実施形態において、細胞外フラグメントには、配列番号2のアミノ酸配列が含まれ得、標的化ペプチドには、配列番号2に特異的に結合するおよび/または複合体化するポリペプチドが含まれ得る。
【0015】
いくらかの実施形態において、標的化ペプチドには、配列番号3の約10から約50の連続するアミノ酸と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれ得る。
【0016】
他の実施形態において、標的化ペプチドには、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれ得る。
【0017】
いくらかの実施形態において、検出可能な部分には、キレート剤、造影剤、イメージング剤、放射標識、半導体粒子、ナノ粒子、ナノバブル、またはナノチェーンが含まれ得る。検出可能な部分は、核磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン断層法(PET)イメージング、コンピュータ断層法(CT)イメージング、ガンマイメージング、近赤外線イメージング、超音波または蛍光イメージングの少なくとも1つにより検出可能であり得る。
【0018】
いくらかの実施形態において、セラノスティック剤または治療剤には、光増感剤、超音波増感剤、温熱増感剤、放射線増感剤(radiosenstizer)、放射線療法剤、化学療法剤、または免疫療法剤の少なくとも1つが含まれる。
【0019】
いくらかの実施形態において、薬剤で検出または処置された癌は、骨癌、膀胱癌、脳癌、神経芽細胞腫、乳癌、尿路の癌、癌腫、子宮頸癌、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、神経膠芽腫、神経内分泌腫瘍、NCS非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、CNS胚芽腫、CNS胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、腎腫瘍、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および他のタイプの白血病;ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ユーイング肉腫、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、軟部組織肉腫、ウィルムス腫瘍、結腸癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、肝細胞癌、肝癌、肺癌、リンパ腫および白血病、メラノーマ、卵巣癌、子宮内膜癌、膵癌、下垂体癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、肉腫、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、ならびに子宮癌を含むがこれらに限定されない任意のタイプの癌であり得る。
【0020】
いくらかの実施形態において、癌細胞は、例えば転移性、遊走性、分散型、および/または浸潤性の癌細胞、例えば転移性、遊走性、分散型、および/または浸潤性の脳癌細胞(例えば神経膠腫細胞、特に多形膠芽腫(GBM)細胞)、肺癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌、子宮内膜癌細胞、および/またはメラノーマであり得る。
【0021】
本明細書に記載の他の実施形態は、それを必要とする被験者における癌細胞および/または癌細胞転移、遊走、分散、および/または浸潤を検出する方法に関する。方法は、被験者に本明細書に記載の薬剤の一定量を投与することを含み、薬剤には、診断剤またはセラノスティック剤が含まれる。癌細胞に結合したおよび/または複合体化した薬剤を検出して、被験者における癌細胞の位置および/または分布を決定することができる。
【0022】
いくらかの実施形態において、癌細胞には、神経膠腫、肺癌、メラノーマ、乳癌、卵巣癌細胞、子宮内膜癌細胞、または前立腺癌細胞の少なくとも1つが含まれる。
【0023】
いくらかの実施形態において、薬剤は、被験者に全身投与され得る。
【0024】
いくらかの実施形態において、薬剤を検出して、被験者における腫瘍境界を定義することができる。
【0025】
本明細書に記載の他の実施形態は、それを必要とする被験者における癌を処置する方法に関する。方法は、治療剤またはセラノスティック剤を含む、本明細書に記載されるような薬剤の治療的有効量を、被験者に投与することを含む。
【0026】
いくらかの実施形態において、治療剤またはセラノスティック剤は、光増感剤、放射線増感剤、または放射線療法剤であり、方法は、薬剤を結合または内在化する癌細胞を照射することをさらに含むことができ、それによって、光増感剤または放射線療法剤の光増感効果または放射線増感効果、ならびに癌細胞のアポトーシスおよび/またはネクローシスを誘導する。光増感剤には、例えばポルフィリン、トリカルボシアニン、またはフタロシアニン化合物が含まれ得る。
【0027】
他の実施形態において、治療剤またはセラノスティック剤は、ナノバブルであり、方法は、癌細胞の慣性キャビテーションおよびアポトーシスおよび/もしくはネクローシスを促進する、ならびに/または癌細胞に化学療法剤を放出するのに有効な超音波エネルギーを用いて、癌細胞に結合または癌細胞により内在化したナノバブルに超音波照射することをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、異所性異種移植片脇腹U87腫瘍インプラントを有するマウスに投与されたペプチドスペーサがない第1の薬剤、ペプチドスペーサを有する第2の薬剤、およびペプチドスペーサを有する対照の薬剤のインビボ平均放射効率を示すプロットを例証する。
図2図2は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスまたはPTPmuを過剰発現する異所性異種移植片脇腹U87腫瘍インプラントを有するマウスに投与されたペプチドスペーサを有する第2の薬剤および異なるペプチドスペーサを有する第3の薬剤のインビボ平均放射効率を示すプロットを例証する。
図3図3は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスまたはPTPmuを過剰発現する異所性異種移植片脇腹U87腫瘍インプラントを有するマウスに投与されたペプチドスペーサを有する第3の薬剤および異なるペプチドスペーサを有する第4の薬剤のインビボ平均放射効率を示すプロットを例証する。
図4図4は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第1の薬剤および対照の薬剤の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
図5図5は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第2の薬剤、第3の薬剤、および対照の薬剤の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
図6図6は、PTPmuを過剰発現する異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第2の薬剤、第3の薬剤、および対照の薬剤の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
図7図7は、PTPmuを過剰発現する異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第3の薬剤、第4の薬剤、および対照の薬剤の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
図8図8は、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍を有するマウスへのインビボ投与後の、対照の薬剤と比較した第1の薬剤の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
図9図9は、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍を有するマウスへのインビボ投与後の、対照の薬剤と比較した第3の薬剤の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
図10図10は、第3の薬剤、第4の薬剤、および対照の薬剤のマウスへのインビボ投与後の、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍または同所性異種移植片LN229頭蓋内腫瘍のエクスビボ画像を例証する。
図11図11は、第3の薬剤、第4の薬剤、および対照の薬剤のマウスへのインビボ投与後の、脳の白黒写真に重ねられたエクスビボマエストロ画像を例証する。
図12図12は、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍を有するマウスへのインビボ投与後の、第3の薬剤、第4の薬剤、および対照の薬剤の最大シグナル強度を示すグラフを例証する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
従来の分子生物学技術に関与する方法は、本明細書に記載されている。そのような技術は、一般に当技術分野において既知であり、方法論的論文、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel et al.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York,1992(定期的更新あり)に詳細に説明されている。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本出願が関係する当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。分子生物学の用語の一般に理解されている定義は、例えばRieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,第5版,Springer-Verlag:New York,1991、およびLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994に認めることができる。
【0030】
冠詞「a」および「an」は、1つまたは1つ以上の(すなわち少なくとも1つの)冠詞の文法目的を指すために本明細書で使用される。例として、「an element」は1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0031】
用語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「有する(have)」、および「有している(having)」は、包括的でオープンな意味で使用され、追加の要素が含まれる可能性があることを意味する。本明細書で使用されるような用語「例えば(such as)」、「例えば(e.g.,)」は限定されず、例証目的のみである。「含んでいる(including)」および「含んでいるが限定されない(including but not limited to)」は、交換可能に使用される。
【0032】
本明細書で使用されるような用語「または(or)」は、文脈が明らかにそうでないことを示唆していない限り、「および/または(and/or)」を意味すると理解されるべきである。
【0033】
用語「薬剤(agent)」は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生物材料で作られた抽出物を示すために本明細書で使用される。
【0034】
用語「癌」または「腫瘍」は、初期腫瘍および任意の転移を含む、被験者における任意の新生物増殖を指す。癌は、液体腫瘍または固形腫瘍のタイプであり得る。液体腫瘍には、例えば骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)、白血病(例えばワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ性白血病、他の白血病)、およびリンパ腫(例えばB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)を含む血液由来の腫瘍が含まれる。固形腫瘍は、臓器内に発生する可能性があり、肺、脳、乳房、前立腺、卵巣、子宮、結腸、腎臓および肝臓の癌が含まれる。
【0035】
用語「癌細胞」または「腫瘍細胞」は、異常な(すなわち増加した)速度で分割する細胞を指すことができる。癌細胞には、扁平上皮癌、非小細胞癌(例えば非小細胞肺癌)、小細胞癌(例えば小細胞肺癌)、基底細胞癌、汗腺癌、皮脂腺癌、腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支原性肺癌、メラノーマ、腎細胞癌、肝-肝臓細胞癌、胆管癌、胆管細胞癌、乳頭癌、移行上皮癌、絨毛癌、セミノーマ(semonoma)、胎児性癌、乳癌(mammary carcinoma)、胃腸癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌、および頭頸部領域の扁平上皮癌;肉腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫(chordosarcoma)、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、滑膜肉腫および中皮肉腫(mesotheliosarcoma);血液の癌、例えば骨髄腫、白血病(例えば急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ球性白血病)、リンパ腫(例えば濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫、またはホジキン病)、ならびに神経膠腫、多形膠芽腫、髄膜腫(meningoma)、髄芽腫、神経鞘腫および上衣腫(epidymoma)を含む神経系の腫瘍などの癌腫が含まれるがこれらに限定されない。
【0036】
用語「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、ポリペプチドをコードする第1のアミノ酸配列の、第1のポリペプチドのいずれのドメインとも異質であり、実質的に相同ではないドメイン(例えばポリペプチド部分)を定義する第2のアミノ酸配列との融合体である。キメラタンパク質は、(異なるタンパク質ではあるが)生物に認められ、第1のタンパク質も発現する外来ドメインを提示する可能性があるか、異なる種類の生物により発現されたタンパク質構造の「種間」、「遺伝子間」などの融合体である可能性がある。
【0037】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンに特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有している。
【0038】
用語「遺伝子」または「組換え遺伝子」は、エクソンおよび(場合によっては)イントロン配列の両方を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸を指す。
【0039】
用語「相同性」および「同一性」は、全体を通じて同義的に使用され、2つのペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的のために整列される可能性がある各配列における位置を比較することにより決定することができる。比較された配列内の位置が同じ塩基またはアミノ酸で占められている場合、その分子はその位置で相同であるか同一である。配列間の相同性または同一性の度合いは、配列が共有する一致または相同な位置の数の関数である。
【0040】
用語「突然変異体」は、生物の遺伝物質における任意の変化、特に野生型ポリヌクレオチド配列における変化(すなわち欠失、置換、付加、もしくは変更)または野生型タンパク質における任意の変化を指す。用語「変異体」は、「突然変異体」と交換可能に使用される。遺伝物質における変化が、結果としてタンパク質の機能の変化となると多くの場合推定されるが、用語「突然変異体」および「変異体」は、変化がタンパク質の機能を変更する(例えば向上させる、低下させる、新規機能を付与する)かどうか、または変化がタンパク質の機能に全く影響しない(例えば突然変異または変異がサイレントである)かどうかに関わらず、野生型タンパク質の配列における変化を指す。
【0041】
用語「核酸」は、ポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)および必要に応じてリボ核酸(RNA)を指す。その用語はまた、等価物として、ヌクレオチド類縁体から作られたRNAまたはDNAのいずれかの類縁体、および記載されている実施形態に適用可能な場合、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖のポリヌクレオチドを含むことが理解されるべきである。
【0042】
成句「非経口投与」および「非経口で投与された」は、技術的に認識された用語であり、注射などの経腸および局所投与以外の投与様式が含まれ、限定されないが、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、皮膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内(intrastemal)注射および注入が含まれる。
【0043】
本明細書で使用されるような成句「全身投与」、「全身投与された」、「末梢投与」および「末梢投与された」は、処置される被験者の特定の組織、器官、または領域(例えば脳)への直接的な投与以外の化合物、薬剤または他の物質の投与を意味し、そのため、動物の系統に入り、したがって代謝および同様のプロセス、例えば皮下投与を受ける。
【0044】
用語「患者」、「被験者」、「哺乳動物宿主」などは、本明細書において交換可能に使用され、ヒトおよび獣医学的被験体を含む哺乳動物を指す。
【0045】
用語「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書において交換可能に使用される。本明細書で使用されるように、「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合により互いに結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質(すなわちペプチド異性体)を指す。「ポリペプチド」は、一般にペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短鎖、および一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指す。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」もまた、本明細書において交換可能に使用される。
【0047】
本明細書で使用されるような「組換え体」は、タンパク質が原核生物または真核生物の発現系に由来することを意味する。
【0048】
用語「治療剤」、「薬物」、「医薬品」および「生物活性物質」は技術的に認識されており、疾患または状態を処置するために患者または被験者において局所的または全身に作用する生物学的、生理学的、または薬理学的に活性な物質である分子および他の薬剤を含む。用語は、薬学的に許容されるその塩およびプロドラッグを含むがこれらに限定されない。そのような薬剤は、酸性、塩基性、または塩であり得る;それらは中性分子、極性分子、または水素結合することができる分子複合体であり得る;それらは、患者または被験者に投与される場合、生物学的に活性化されているエーテル、エステル、アミドなどの形状のプロドラッグであり得る。
【0049】
成句「治療的有効量」または「薬学的有効量」は技術的に認識された用語である。ある特定の実施形態において、用語は、任意の医療的処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比でいくらかの所望の効果を生じる治療剤の量を指す。ある特定の実施形態において、用語は、特定の治療計画の標的を排除、低減または維持するのに必要または十分なその量を指す。有効量は、処置されている疾患または状態、投与される特定の標的コンストラクト、被験者のサイズまたは疾患もしくは状態の重症度などの要因によって変更される可能性がある。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効量を経験的に決定することが可能である。ある特定の実施形態において、インビボ使用のための治療剤の治療的有効量は、ポリマーの化学的および物理的特徴に一部依存している、ポリマーマトリクスからの薬剤の放出速度;薬剤の同一性;投与の様式および方法;ならびに薬剤に加えてポリマーマトリクスに組み込まれた任意の他の物質を含む多数の要因に依存すると思われる。
【0050】
用語「野生型」は、インビボで通常存在するように、それぞれタンパク質、もしくはその一部をコードする自然発生ポリヌクレオチド配列、またはタンパク質配列、またはその一部を指す。
【0051】
明細書全体を通じて、組成物が、特定の構成要素を有する、含有するまたは含むものとして記載されている場合、組成物はまた、列挙された成分から本質的になる、またはそれからなることが企図される。同様に、方法またはプロセスが、特定のプロセスステップを有する、含有する、または含むものとして記載されている場合、プロセスはまた、列挙されたプロセスステップから本質的になる、またはそれからなる。さらに、本明細書に記載の組成物および方法が実施可能なままである限り、ステップの順序またはある特定の動作を実行するための順序が重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2つまたはそれ以上のステップまたは動作は、同時に実行することができる。
【0052】
本明細書に記載の実施形態は、被験者における癌細胞および/または癌細胞転移、遊走、分散、および/または浸潤の検出、モニタリング、および/またはイメージングにおける使用のための薬剤、被験者における癌細胞および/または癌細胞転移、遊走、分散、および/または浸潤を検出、モニター、および/または画像化する方法、それを必要とする被験者に投与された癌治療薬および/または癌療法の有効性を検出および/またはモニターする方法、ならびに薬剤を使用してそれを必要とする被験者における癌を処置する方法に関する。
【0053】
本明細書に記載の薬剤には、癌細胞または内皮細胞により発現されている、癌細胞の生存を支持する癌細胞の微小環境で免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに特異的に結合するおよび/またはそれと複合体化する標的化ペプチド、検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つ、ならびに標的化ペプチドを検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つに直接的または間接的に結合するペプチドまたはペプチド模倣スペーサが含まれる。
【0054】
ペプチドまたはペプチド模倣スペーサが、タンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントへの結合した標的化ペプチドの結合親和性および結合した検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つの活性を少なくとも維持または保全し、干渉しないために有効な長さおよび構造を有しているように、標的化ペプチドを検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つに直接的または間接的に結合するペプチドまたはペプチド模倣スペーサを選択することができることがわかった。検出可能な部分またはセラノスティック剤の活性とは、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン断層法(PET)イメージング、コンピュータ断層法(CT)イメージング、ガンマイメージング、近赤外線イメージング、超音波イメージング、蛍光イメージング、または他の検出手段により、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで検出または画像化される検出可能な部分または治療剤の能力を意味する。治療剤またはセラノスティック剤の活性とは、例えば疾患または状態を処置する(例えば癌を処置する)ための、治療剤またはセラノスティック剤の生物学的、生理学的、または薬理学的活性を意味する。
【0055】
例えば、薬剤が、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサにより標的化ペプチドに直接的または間接的に結合している検出可能な部分を含む場合、薬剤は、組織切片および腫瘍「辺縁」試料中、腫瘍細胞を明確に区別することが分かっており、薬剤を転移性、分散性、遊走性、または浸潤性の癌または腫瘍境界の分子イメージングのための診断ツールとして使用することができることを示唆する。本明細書に記載されるような薬剤の全身導入は、結果として数分内に側腹部腫瘍および頭蓋内腫瘍の迅速で特異的な標識化となった。標識化は主に腫瘍内で発生したが、腫瘍境界での薬剤の勾配も観察された。細胞外フラグメントが経時的に蓄積するため、シグナル増幅効果もある。
【0056】
薬剤は、被験者に全身投与することができ、転移性、遊走性、分散性、および/または浸潤性癌細胞などの免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに関連する癌細胞を容易に標的とすることができる。いくらかの実施形態において、全身投与後の薬剤は、血液脳関門を通過して、被験者における癌細胞の位置、分布、転移、分散、遊走、および/または浸潤、ならびに腫瘍細胞の境界を定義することができる。他の実施形態において、全身投与後の薬剤は、癌細胞の生存、増殖、および遊走を阻害および/または低減することができる。
【0057】
そのため、本明細書に記載の薬剤は、癌細胞および/または癌細胞転移、遊走、分散、および/または浸潤を検出する方法、ならびにそれを必要とする被験者における癌を処置する方法において使用することができる。方法は、被験者に、癌細胞または腫瘍細胞の微小環境におけるIgスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに結合するおよび/またはそれと複合体化する標的化ペプチド、少なくとも1つの検出可能な部分、ならびに標的化ペプチドを検出可能な部分の少なくとも1つに直接的または間接的に結合するペプチドまたはペプチド模倣スペーサを含む薬剤を投与することを含むことができる。癌細胞に結合したおよび/またはそれと複合体化した薬剤を検出して、被験者における癌細胞の位置および/または分布を決定することができる。
【0058】
いくらかの実施形態において、Igスーパーファミリー細胞接着分子には、同種親和性様式で結合することができるか、被験者における同種親和性結合に関与することができる細胞外同種親和性結合部分が含まれ得る。一例において、Igスーパーファミリー細胞接着分子には、RPTP型IIb細胞接着分子が含まれる。別の例において、Igスーパーファミリー細胞接着分子には、PTPμ様サブファミリー、例えばPTPμ、PTPK、PTPρ、およびPCP-2(PTPλとも呼ばれる)のRPTPが含まれ得る。PTPμ様RPTPは、MAM(メプリン/A5-タンパク質/PTPμ)ドメイン、Igドメイン、およびFNIIIリピートを含む。PTPμは、ジェンバンク受入番号AAI51843.1により同定されている配列番号1のアミノ酸配列を有することができる。PTPμのアミノ酸配列が配列番号1とは異なることができるようにPTPμ遺伝子がスプライス変異体を生成することができることが理解されるであろう。いくらかの実施形態において、PTPμは、ジェンバンク受入番号AAH51651.1およびジェンバンク受入番号AAH40543.1により同定されたアミノ酸配列を有することができる。
【0059】
癌細胞生存を支持し、Igスーパーファミリー細胞接着分子を発現し、検出可能な細胞外フラグメントを生成するためにタンパク質分解的に開裂することができる癌細胞および/または内皮細胞には、例えばそれらの生存を促進する幹細胞、内皮細胞、間質細胞および免疫細胞などの腫瘍の微小環境内の癌細胞および/または他の細胞が含まれ得る。
【0060】
本明細書に記載の薬剤により検出および/または処置された癌には、以下:白血病、例えば限定されないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、例えば骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤血白血病ならびに骨髄異形成症候群;慢性白血病、例えば限定されないが、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病;真性多血症;リンパ腫、例えば限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病;多発性骨髄腫、例えば限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌型骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫および髄外性形質細胞腫;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症;良性単クローン性ガンマグロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織の肉腫、例えば限定されないが、骨肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(angiosarcoma)(血管肉腫(hemangiosarcoma))、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫;脳腫瘍、例えば限定されないが、神経膠腫、星状細胞腫、神経膠芽腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫、非グリア系腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、原発性脳リンパ腫;乳管癌、腺癌、小葉(小細胞性)癌、乳管内癌、髄様乳癌、粘液乳癌、乳腺管状乳癌、乳頭状乳癌、パジェット病、および炎症性乳癌を含むが限定されない乳癌;副腎癌、例えば限定されないが、褐色細胞腫および副腎皮質癌;甲状腺癌、例えば限定されないが、乳頭様または濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌および組織非形成性甲状腺癌;膵癌、例えば限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは膵島細胞腫瘍;下垂体癌、例えば限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、末端肥大症、および尿崩症(diabetes insipius);眼癌、例えば限定されないが、虹彩メラノーマ、脈絡膜メラノーマ、および毛様体(cilliary body)メラノーマなどの眼メラノーマ、ならびに網膜芽細胞腫;膣癌、例えば扁平上皮癌、腺癌、およびメラノーマ;外陰癌、例えば扁平上皮癌、メラノーマ、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病;子宮頸癌、例えば限定されないが、扁平上皮癌、および腺癌;子宮癌、例えば限定されないが、子宮内膜癌および子宮肉腫;卵巣癌、例えば限定されないが、卵巣上皮癌、境界型腫瘍、胚細胞腫瘍、および間質性腫瘍;食道癌、例えば限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、メラノーマ、形質細胞腫、疣状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌;胃癌、例えば限定されないが、腺癌、菌状(ポリープ状)、潰瘍形成、表在性拡大性、びまん性拡散性、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫;結腸癌;直腸癌;肝癌、例えば限定されないが、肝細胞癌および肝芽腫;胆嚢癌、例えば腺癌;胆管細胞癌、例えば限定されないが、乳頭状、結節状、およびびまん性;肺癌、例えば非小細胞肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺癌;精巣癌、例えば限定されないが、胚細胞腫瘍、セミノーマ、未分化、古典的(典型的)、精母細胞性、非セミノーマ、胚性癌腫、奇形腫癌、絨毛腫(卵黄嚢腫瘍)、前立腺癌、例えば限定されないが、前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫;腎癌(penal cancer);口腔癌、例えば限定されないが、扁平上皮癌;基底癌;唾液腺癌、例えば限定されないが、腺癌、粘表皮癌、および腺様嚢胞癌;咽頭癌、例えば限定されないが、扁平上皮癌、および疣状;皮膚癌、例えば限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮癌およびメラノーマ、表在拡大型黒色腫、結節性メラノーマ、悪性黒子型メラノーマ、末端黒子型メラノーマ;腎癌、例えば限定されないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫(hypemephroma)、線維肉腫、移行上皮癌(腎盂および/または尿管);ウィルムス腫瘍;膀胱癌、例えば限定されないが、移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫が含まれ得る。さらに、癌には、粘液肉腫、骨肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendothelio sarcoma)、中皮腫、滑膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性肺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌および乳頭状腺癌が含まれる(そのような疾患のレビューについては、Fishman et al.,1985,Medicine,第2版,J.B.リピンコット社,フィラデルフィアおよびMurphy et al.,1997,Informed Decisions:The Complete Book of Cancer Diagnosis,Treatment,and Recovery,Viking Penguin,Penguin Books U.S.A.,Inc.,アメリカ合衆国を参照されたい)。
【0061】
薬剤はまた、多種多様の癌または(限定されないが)以下:膀胱、乳房、前立腺、直腸、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、子宮、膵臓、胃、頸部、甲状腺および皮膚のものを含む癌腫;扁平上皮癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫を含むリンパ系の造血腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病(promyclocytic leukemia)を含む骨髄系の造血腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫(rhabdomyoscarcoma)を含む間葉由来の腫瘍; メラノーマ、セミノーマ、奇形癌腫(tetratocarcinoma)、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscarama)、および骨肉腫を含む間葉由来の腫瘍;ならびにメラノーマ、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ(keratoactanthoma)、セミノーマ、甲状腺濾胞腺癌および奇形癌腫を含む他の腫瘍を含む他の異常増殖性疾患を検出および/または処置するために使用することができる。アポトーシスの異常により引き起こされる癌もまた、本発明の方法および組成物により処置されることも企図される。そのような癌には、濾胞性リンパ腫、癌腫、乳房、前立腺および卵巣のホルモン依存性腫瘍、ならびに前癌病変、例えば家族性大腸腺腫症、および骨髄異形成症候群が含まれ得るがこれらに限定されない。特定の実施形態において、悪性または増殖異常(dysproliferative)変化(例えば化生および異形成)、または過剰増殖性疾患は、皮膚、肺、結腸、直腸、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、膵臓、卵巣、または子宮において検出、処置または予防される。他の特定の実施形態において、肉腫、メラノーマ、または白血病は、検出および/または処置される。
【0062】
さらに他の実施形態において、検出および/または処置される癌細胞には、神経膠腫細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、およびメラノーマ細胞が含まれ得、例えば浸潤性、分散性、運動性または転移性癌細胞には、神経膠腫細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、前立腺癌細胞、およびメラノーマ細胞が含まれ得る。癌細胞の生存を支持し、Igスーパーファミリー細胞接着分子を発現し、タンパク質分解的に開裂して、検出可能な細胞外フラグメントを生成することができる他の癌細胞および/または内皮細胞が、例えば癌細胞または内皮細胞により発現されたIgスーパーファミリー細胞接着分子を検出する免疫測定法を使用することにより同定または決定することができる。
【0063】
いくらかの実施形態において、標的化ペプチド(または標的化ポリペプチド)には、Igスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに結合するおよび/またはそれと複合体化するポリペプチド(または標的化ポリペプチド)が含まれ得る。標的化ペプチドは、約10から約50のアミノ酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなることができ、Igスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントの同種親和性結合部分またはドメインの約10から約50の連続したアミノ酸と実質的に相同または同一であるアミノ酸配列を有することができる。実質的に相同であるとは、標的化ポリペプチドが、Igスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントの結合部分のアミノ酸配列の一部と少なくとも約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または約100%同一であるアミノ酸配列を有することを意味する。
【0064】
一例において、Igスーパーファミリー細胞接着分子の同種親和性結合部分には、例えば、細胞接着分子のIgドメインが含まれ得る。Igスーパーファミリー細胞接着分子がPTPμである別の例において、同種親和性結合部分には、Ig結合ドメインおよびMAMドメインが含まれ得る。
【0065】
別の態様において、標的化ペプチドは、PTPμのIg結合ドメインおよび/またはMAMドメインの約10から約50の連続したアミノ酸(例えば配列番号1)と実質的に相同であり、被験者に全身投与される場合、容易に血液脳関門を横断するアミノ酸配列を有することができる。PTPμ標的化ペプチドの開発は、大量の構造的および機能的データに基づくことができる。PTPμ媒介同種親和性接着に必要な部位は、十分に特徴づけられている。さらに、PTPμの結晶構造は、各機能的ドメインのどの領域が外部環境に曝露される可能性が高く、そのため同種親和性結合、したがってペプチドによる検出に利用可能であるかに関する情報を提供することができる。
【0066】
いくらかの実施形態において、PTPμのタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメント(例えば配列番号1)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むことができ、IgおよびMAM結合領域は、配列番号3のアミノ酸配列を含むことができ、ポリペプチドは、配列番号2または配列番号3の約10から約50の連続したアミノ酸と実質的に相同であるアミノ酸配列を有することができる。配列番号2または配列番号3を特異的に結合することができ、配列番号2または配列番号3の約10から約50の連続したアミノ酸配列と実質的に相同であるアミノ酸配列を有するポリペプチドの例は、配列番号4、配列番号5(SBK2)、配列番号6、および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。配列番号4、5、6、または7を含むポリペプチドは、MAM、Igドメイン、またはFNIIIリピートを認識することができるかそれに結合することができる。特定の実施形態において、標的化ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含むSBK2ポリペプチドである。
【0067】
他の実施形態において、癌細胞の微小環境において癌細胞または別の細胞により発現されるIgスーパーファミリーCAMまたはその受容体のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに結合するおよび/またはそれと複合体化するポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列を有することができる。配列番号8は、配列番号1または配列番号2の一部と実質的に相同であり、配列番号2または配列番号3に特異的に結合することができる。
【0068】
標的化ペプチドは、種々の変更、置換、挿入、および欠失に供される可能性があり、この場合、そのような変更は、その使用において、ある特定の利点を提供する。この点について、Igスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外部分と結合するおよび/またはそれと複合体化する標的化ペプチドは、列挙されたポリペプチドの配列と同一であるよりも実質的に相同である可能性があり、この場合、1つまたは複数の変更がなされ、Igスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外部分に特異的に結合するおよび/またはそれと複合体化するように機能する能力を保持している。
【0069】
標的化ペプチドは、アミド、タンパク質とのコンジュゲート、環化ポリペプチド、重合ポリペプチド、レトロ-インベルソペプチド、類縁体、フラグメント、化学修飾ポリペプチド、およびそのような誘導体を含む、ポリペプチド誘導体の多種多様な形態のいずれかであり得る。
【0070】
用語「類縁体」は、本明細書に具体的に示されている配列と実質的に同一のアミノ酸残基配列を有する任意のポリペプチドを含み、1つまたは複数の残基が、機能的に類似の残基で保存的に置換されており、本明細書に記載されるようにIgスーパーファミリーCAMのタンパク質分解的に開裂された細胞外部分に特異的に結合するおよび/またはそれと複合体化する。保存的置換の例には、1つの非極性(疎水性)残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンの別のものへの置換、アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、グリシンとセリンの間など、1つの極性(親水性)残基の別のものへの置換、1つの塩基性残基、例えばリジン、アルギニンもしくはヒスチジンの別のものへの置換、または1つの酸性残基、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸の別のものへの置換が含まれる。
【0071】
成句「保存的置換」はまた、そのようなペプチドが必要な結合活性を提示するという条件で、非誘導体化残基の代わりに化学的に誘導体化された残基の使用を含む。
【0072】
「化学誘導体」は、官能基側鎖の反応により化学的に誘導体化された1つまたは複数の残基を有する対象のポリペプチドを指す。そのような誘導体化された分子には、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されてアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成しているそれらの分子が含まれる。遊離カルボキシル基は誘導体化されて、塩、メチルおよびエチルエステルまたは他のタイプのエステルまたはヒドラジドを形成する可能性がある。遊離ヒドロキシル基は誘導体化されて、O-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成する可能性がある。ヒスチジンのイミダゾール窒素は誘導体化されて、N-im-ベンジルヒスチジンを形成する可能性がある。また、化学誘導体として、20の標準アミノ酸の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含む、それらのポリペプチドも含まれる。例えば:4-ヒドロキシプロリンは、プロリンの代わりである可能性がある;5-ヒドロキシリジンは、リジンの代わりである可能性がある;3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンの代わりである可能性がある;ホモセリンは、セリンの代わりである可能性がある;およびオルニチンはリシンの代わりである可能性がある。本明細書に記載のポリペプチドにはまた、1つまたは複数の付加および/もしくは欠失を有する任意のポリペプチドまたは必要な活性が維持される限り、その配列が本明細書に示されているポリペプチドの配列に関連する残基が含まれる。
【0073】
レトロ-インベルソペプチドは、アミノ酸配列が逆転しており、アミノ酸サブユニットのα中心キラリティも同様に反転している直鎖ペプチドである。これらのタイプのペプチドは、元のL-アミノ酸ペプチドのものと同様の側鎖トポロジーを維持するのに役立ち、タンパク質分解に対してそれらをより抵抗性にするために逆配列にD-アミノ酸を含めることによりデザインされる。D-アミノ酸は、生物系に存在する天然のタンパク質に発生する天然のL-アミノ酸の立体構造的胸像を表す。D-アミノ酸を含むペプチドは、L-アミノ酸のみを含むペプチドよりも利点を有する。一般に、これらのタイプのペプチドは、タンパク質分解を受けにくく、医薬品として使用した場合の有効期間が長くなる。さらに、D-アミノ酸のみを含む、またはL-アミノ酸間の配列ブロックとして選択された配列領域へのD-アミノ酸の挿入は、生物活性があり、タンパク質分解に対して抵抗性であることに加えて向上したバイオアベイラビリティを保持する薬剤に基づくペプチドのデザインを可能にする。さらに、適切にデザインされた場合、レトロ-インベルソペプチドは、L-ペプチドと同様の結合特性を有することができる。
【0074】
用語「フラグメント」は、アミノ酸残基配列が本明細書に示されているポリペプチドのものよりも短いアミノ酸残基配列を有する任意の対象のポリペプチドを指す。
【0075】
任意のポリペプチドまたは化合物はまた、薬学的に許容される塩の形状で使用される可能性もある。ポリペプチドと塩を形成することができる酸には、トリフルオロ酢酸(TFA)塩酸(HCl)、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、桂皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸などの無機酸が含まれる。
【0076】
ポリペプチドと塩を形成することができる塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;ならびにモノ-、ジ-およびトリアルキルおよびアリール-アミン(例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミンなど)ならびに場合によっては置換されたエタノールアミン(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミンなど)などの有機塩基が含まれる。
【0077】
標的化ペプチドは、組換えDNA技術を含むペプチドの分野において当業者に既知である任意の技術により合成することができる。合成化学技術、例えば固相メリフィールド型合成は、純度、抗原特異性、望ましくない副産物がないこと、生産の容易さなどの理由で使用することができる。利用可能な多くの技術の概要は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれている、Steward et al.,「Solid Phase Peptide Synthesis」,W.H.Freeman Co.,サンフランシスコ,1969;Bodanszky,et al.,「Peptide Synthesis」,ジョン・ウィリー&サンズ,第2版,1976;J.Meienhofer,「Hormonal Proteins and Peptides」,第2巻,p.46,アカデミック・プレス(ニューヨーク),1983;Merrifield,Adv.Enzymol.,32:221-96,1969;Fields et al.,int.J.Peptide Protein Res.,35:161-214,1990;および固相ペプチド合成については米国特許第4,244,946号,および古典的溶液合成についてはSchroder et al.,「The Peptides」,第1巻,アカデミック・プレス(ニューヨーク),1965に見つけることができる。そのような合成で使用可能な適切な保護基は、上記の本文および参照により本明細書に組み込まれている、J.F.W.McOmie,「Protective Groups in Organic Chemistry」,Plenum Press,ニューヨーク,1973に記載されている。
【0078】
一般に、企図された固相合成法は、成長するペプチド鎖への1つまたは複数のアミノ酸残基または適切に保護されたアミノ酸残基の連続付加を含む。通常、第1のアミノ酸残基のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかは、適切に、選択的に除去可能な保護基により保護される。異なる、選択的に除去可能な保護基は、リジンなどの反応性側鎖を含むアミノ酸に利用される。
【0079】
一例として固相合成を使用すると、保護または誘導体化されたアミノ酸を保護されていないカルボキシル基またはアミノ基を介して、不活性な固体支持体に結合することができる。その後、アミノ基またはカルボキシル基の保護基を選択的に除去することができ、適切に保護された相補的(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列における次のアミノ酸は混合され、固体支持体にすでに結合している残基とアミド結合を形成するのに適した条件下で反応する。アミノ基またはカルボキシル基の保護基を、その後、この新規に付加されたアミノ酸残基から除去することができ、その後、次の(適切に保護された)アミノ酸が追加されるなどである。すべての所望のアミノ酸が適切な配列で結合された後、任意の残りの末端および側鎖保護基(および固体支持体)を順次または同時に除去して、最終的な直鎖状ポリペプチドを得ることができる。
【0080】
標的化ペプチドがPTPを除いて他のIgスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントの同種親和性結合ドメインに結合するおよび/またはそれと複合体化することができることが理解されるであろう。例えば、本明細書に記載の同様の分子検出戦略は、リガンド結合部位が既知である同種親和性結合細胞表面タンパク質を有する任意の他のIgスーパーファミリーCAMで使用することができる。他のホスファターゼを含む、非常に多様な細胞表面タンパク質が細胞表面で開裂される(Streuli M,Saito H(1992)Expression of the receptor-linked protein tyrosine phosphatase LAR:proteolytic cleavage and shedding of the CAM-like extracellular region.EMBO J 11:897-907;Anders L,Ullrich A(2006)Furin-,ADAM 10-,and gamma-secretase-mediated cleavage of a receptor tyrosine phosphatase and regulation of beta-catenin’s transcriptional activity.Mol Cell Biol 26:3917-3934;Haapasalo A,Kovacs DM(2007)Presenilin/gamma-secretase-mediated cleavage regulates association of leukocyte-common antigen-related(LAR)receptor tyrosine phosphatase with beta-catenin.J Biol Chem 282:9063-9072;Chow JP,Noda M(2008)Plasmin-mediated processing of protein tyrosine phosphatase receptor type Z in the mouse brain.Neurosci Lett 442:208-212;Craig SE,Brady-Kalnay SM.Tumor-derived extracellular fragments of receptor protein tyrosine phosphatases(RPTPs) as cancer molecular diagnostic tools.Anticancer Agents Med Chem.2011 Jan;11(1):133-40.Review.PubMed PMID:21235433;PubMed Central PMCID:PMC3337336;Craig SE,Brady-Kalnay SM.Cancer cells cut homophilic cell adhesion molecules and run.Cancer Res.2011 Jan 15;71(2):303-9.Epub 2010 Nov 17.PubMed PMID:21084269;PubMed Central PMCID:PMC3343737;Phillips-Mason PJ,Craig SE,Brady-Kalnay SM.Should I stay or should I go?Shedding of RPTPs in cancer cells switches signals from stabilizing cell-cell adhesion to driving cell migration.Cell Adh Migr.2011 Jul 1;5(4):298-305.Epub 2011 Jul 1.PubMed PMID:21785275;PubMed Central PMCID:PMC3210297)。これらのタンパク質は、癌を処置するために使用することができる治療用ポリペプチドを形成するために当業者が容易に使用することができるさらなる標的を表す(Barr AJ,Ugochukwu E,Lee WH,King ON,Filippakopoulos P,Alfano I,Savitsky P,Burgess-Brown NA,Muller S,Knapp S(2009)Large-scale structural analysis of the classical human protein tyrosine phosphatome.Cell 136:352-363)。
【0081】
いくらかの実施形態において、本明細書に記載の標的化ペプチドには、ポリペプチドがペプチドまたはペプチド模倣スペーサに慣習的に結合することができるおよび/または固定することができる「リンカー」を提供する目的で、ポリペプチドのいずれかの末端で付加することができる追加の残基が含まれ得る。結合に使用される典型的なアミノ酸残基は、グリシン、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸などである。さらに、対象のポリペプチドは、末端NH2アシル化、例えばアセチル化、またはチオグリコール酸アミド化により、末端カルボキシルアミド化により、例えばアンモニア、メチルアミンなどの末端修飾を用いて修飾されている配列により異なり得る。末端修飾は、周知であるように、プロテイナーゼ消化による感受性を低下させるのに有用であり、そのため溶液、特にプロテアーゼが存在し得る生体液中のポリペプチドの半減期を延長するのに役立つ。この点について、ポリペプチド環化はまた、有用な末端修飾であり、また環化により形成された安定構造のため、および本明細書に記載されるそのような環状ペプチドについて観察される生物活性の観点からも特に好ましい。
【0082】
標的化ペプチドを検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つに直接的または間接的に結合するペプチドまたはペプチド模倣スペーサには、標的化ペプチド(またはリンカーペプチドを有する標的ペプチド)のいずれかの末端で付加された追加の天然および/または非天然のアミノ酸残基が含まれ得る。ペプチドまたはペプチド模倣スペーサには、少なくとも3つの天然または非天然のアミノ酸が含まれ得、結合した標的化ペプチドのタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントへの結合親和性を少なくとも維持または保全するのに有効な構造および結合した検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つの活性を有している。スペーサにおける使用のために使用された典型的なアミノ酸残基は、グリシン、セリン、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸などである。
【0083】
いくらかの実施形態において、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、その所望の用途に応じて、一部、性質を変更する(例えば薬剤をより親水性または疎水性にする)その能力に基づいて選択される。
【0084】
いくらかの実施形態において、スペーサは、標的化ペプチドを他のポリペプチド、タンパク質、および/または分子、例えば検出可能な部分、標識、治療剤、セラノスティック剤、固体マトリクス、または担体に直接的または間接的に結合するフレキシブルペプチドまたはペプチド模倣スペーサであり得る。フレキシブルペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、例えば少なくとも約3から約30またはより少ない天然または非天然のアミノ酸長であり得る。例えば、スペーサは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30の天然または非天然のアミノ酸長を有することができる。スペーサがペプチドスペーサである場合、ペプチドスペーサは従来の分子生物学/組換えDNA法を使用して単一の組換えポリペプチドとして生じる可能性がある。
【0085】
いくらかの実施形態において、スペーサは、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%のグリシンおよび/またはセリン残基を含む。
【0086】
他の実施形態において、スペーサは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%のグリシン残基を含む。いくらかの実施形態において、スペーサの残りには、セリン残基が含まれる。
【0087】
いくらかの実施形態において、スペーサは、純粋にグリシン残基またはグリシンおよびセリン残基からなるポリグリシンまたはグリシン/セリンスペーサである。グリシン残基の小さいサイズは、柔軟性を提供し、接続している標的化ペプチドおよび検出可能な部分、治療剤、またはセラノスティック剤の少なくとも1つの可動性を可能にする。セリンの組み込みは、水分子との水素結合を形成することにより水溶液中のスペーサの安定性を維持することができ、そのため、スペーサと標的化ペプチドとの間の好ましくない相互作用を減少することができる。
【0088】
いくらかの実施形態において、スペーサは、(GS)a、(GGS)b、または(GGGS)c、または(GGGGS)dの少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、a、b、c、およびdは、それぞれ独立して2、3、4、5、または6である。例えば、スペーサは、GGG(配列番号9)、GGGG(配列番号10)、GGGGG(配列番号11)、GGGGGG(配列番号12)、GGGGGGG(配列番号13)、GGGGGGGG(配列番号14)、GGGGGGGGG(配列番号15)、GSGS(配列番号16)、GSGSGS(配列番号17)、GSGSGSGS(配列番号18)、GSGSGSGSGS(配列番号19)、GGSGGS(配列番号20)、GGSGGSGGS(配列番号21)、GGSGGSGGSGGS(配列番号22)、GGGSGGGS(配列番号23)、GGGSGGGSGGGS(配列番号24)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号25)、GGGGSGGGGS(配列番号26)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号27)のアミノ酸配列を有することができる。
【0089】
いくらかの実施形態において、スペーサは、リンカーペプチドがあるまたはない標的化ペプチドのN末端またはC末端残基に直接連結している標的化ペプチドの連続した部分であり得る。
【0090】
例えば、配列番号5を有するSBK2標的化ペプチドに連結したポリグリシンまたはグリシン/セリンスペースは、以下のアミノ酸配列を有することができる。
【0091】
【化1】
【0092】
他のペプチドまたはペプチド模倣スペーサが、標的化ペプチドのN末端またはC末端部分でSBK2または本明細書に記載の他の標的化ペプチドに結合することができることが理解されるであろう。
【0093】
いくらかの実施形態において、連続スペーサを有する標的化ペプチドは、組換えポリペプチドとして産生され得る。組換えポリペプチドの産生のため、多種多様の宿主生物を使用することができる。宿主の例には:大腸菌などの細菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞および哺乳動物細胞が含まれるがこれらに限定されない。当業者は、組換えポリペプチドを産生するのに適した宿主を選択する際に、ある特定の基準をどのように考慮するかを理解するであろう。宿主の選択に影響を及ぼす因子には、例えばリン酸化およびグリコシル化パターンなどの翻訳後修飾、ならびに一般的な予想収量および精製の容易さなどの技術的因子が含まれる。インビボで使用されている標的化ペプチドまたはスペーサペプチドの宿主特異的翻訳後修飾は、ある特定の翻訳後修飾が高度に免疫原性であることが既知であるので慎重に検討する必要がある。
【0094】
他の実施形態において、スペーサは、カップリング剤またはコンジュゲート剤を介して標的化ペプチドに間接的に連結またはコンジュゲートしている標的化ペプチドの非連続部分であり得る。「非連続部分」とは、標的化ペプチドおよびスペーサが、本質的に連続しており、リンカーとして機能する標的化ペプチドまたはスペーサの一部および/またはペプチド残基ではない追加の要素を介して接続されていることを意味する。
【0095】
カップリング剤および/またはコンジュゲート剤には、例えばチオール基に結合するために使用することができるマレイミジルバインダ、遊離アミン基に結合することができるイソチオシアネートおよびスクシンイミジル(例えばN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS))バインダ、フェノールに結合するために使用することができるジアゾニウム、ならびにカルボジイミド活性化を使用してカルボキシレート基などの遊離酸で結合するために使用することができるアミンが含まれ得る。有用な官能基は、存在している特定のアミノ酸に基づくペプチドまたはペプチド模倣スペーサ上に存在することができ、追加の基をデザインすることができる。多種多様の二官能性または多官能性試薬、ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方(Pierce Chemical Co.、ロックフォード、Illのカテゴリに記載されているものなど)をカップリング剤として使用することができることは、当業者に明らかであろう。カップリングは、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基または酸化された炭水化物残基を介して達成することができる。
【0096】
カップリング剤および/またはコンジュゲート剤の例は、Means and Feeney,CHEMICAL MODIFICATION OF PROTEINS,Holden-Day,1974,pp.39-43に記載されている。これらの試薬の中には、例えば3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸J-スクシンイミジル(SPDP)またはN,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド(両方ともスルフヒドリル基に高度に特異的であり、不可逆的結合を形成する);N,N’-エチレン-ビス-(ヨードアセトアミド)または6から11の炭素メチレン架橋を有する他のそのような試薬(スルフヒドリル基に比較的特異的である);ならびに1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(アミノおよびチロシン基と不可逆的結合を形成する)がある。他のカップリング剤またはコンジュゲート剤には:p,p’-ジフルオロ-m,m’-ジニトロジフェニルスルホン(アミノおよびフェノール基と不可逆的結合を形成する);アジプイミド酸ジメチル(アミノ基に特異的である);フェノール-1,4-ジスルホニルクロリド(主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネートまたはジイソチオシアネート、またはアゾフェニル-p-ジイソシアネート(主にアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(いくらかの異なる側鎖と反応する)およびジスジアゾベンジジン(主にチロシンおよびヒスチジンと反応する)が含まれる。
【0097】
カップリング剤およびコンジュゲートは、ホモ二官能性、すなわち同じ反応を実行する2つの官能基を有する可能性がある。ホモ二官能性架橋剤の例は、ビスマレイミドヘキサン(「BMH」)である。BMHは、穏やかな条件(pH6.5~7.7)下でスルフヒドリル含有化合物と特異的に反応する2つのマレイミド官能基を含む。2つのマレイミド基は、炭化水素鎖により接続されている。そのため、BMHは、システイン残基を含むポリペプチドの不可逆的結合に有用である。
【0098】
カップリング剤またはコンジュゲート剤はまた、ヘテロ二官能性であり得る。ヘテロ二官能性カップリングまたはコンジュゲート剤は、2つの異なる官能基、例えば遊離アミンおよびチオールを有する2つのタンパク質をそれぞれ架橋する、アミン-反応性基およびチオール反応性基を有する。ヘテロ二官能性架橋剤の例は、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル(「SMCC」)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(「MBS」)、および4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミド(「SMPB」)、MBSの伸長鎖類縁体である。これらの架橋剤のスクシンイミジル基は、主にアミンと反応し、チオール反応性マレイミドは、システイン残基のチオールと共有結合を形成する。
【0099】
多くのカップリング剤またはコンジュゲート剤は、細胞条件下で本質的に非開裂性であるコンジュゲートを生じる。しかし、同じ薬剤は、細胞条件下で開裂可能であるジスルフィドなどの共有結合を含む。例えば、Traut’s試薬、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオン酸)(「DSP」)、および3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(「SPDP」)は周知の開裂可能な架橋剤である。開裂可能なカップリングまたはコンジュゲート剤の使用は、標的細胞に送達された後、標的化ペプチド、スペーサ、および/または検出可能な部分、治療剤、および/またはセラノスティック剤の分離を可能にする。直接ジスルフィド結合もまた有用であり得る。
【0100】
上述したものを含む多数のカップリング剤は、市販されている。それらの使用についての詳細な説明は、商用供給者から容易に入手可能である。タンパク質架橋剤およびコンジュゲート製剤に対する一般的な参照は:Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING,CRC Press(1991)である。
【0101】
いくらかの実施形態において、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、例えば本明細書に記載のカップリング剤またはコンジュゲート剤を使用して、検出可能な部分、治療剤、および/またはセラノスティック剤に直接的または間接的に連結することができる。
【0102】
いくらかの実施形態において、検出可能な部分には、標的化ペプチド、スペーサ、およびIgスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントへの検出可能な部分および/もしくはセラノスティック剤を含む薬剤の結合により形成された複合体の可視化を可能にすることにより診断法もしくは治療法の検出ステップを容易にする任意の造影剤または検出可能な標識が含まれ得る。検出可能な部分は、測定することができ、その強度が分析される組織に結合した薬剤の量に(好ましくは比例的に)関連するシグナルを生成するように選択することができる。ポリペプチドなどの生体分子を標識する方法は、当技術分野において周知である。
【0103】
多種多様な検出可能な部分はいずれも、本明細書に記載のペプチドまたはペプチド模倣スペーサにより標的化ペプチドと結合することができる。検出可能な部分の例には:種々のリガンド、放射性核種、蛍光剤および色素、赤外および近赤外剤、化学発光剤、微小粒子またはナノ粒子(例えば量子ドット、ナノ結晶、半導体粒子、ナノ粒子、ナノバブル、またはナノチェーンなど)、酵素(例えばELISAにおいて使用されるもの、すなわち西洋わさびペルオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、比色分析標識、磁気標識、キレート剤、ビオチン、ジオキシゲニンまたは抗血清もしくはモノクローナル抗体が利用可能である他のハプテンおよびタンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
【0104】
いくらかの実施形態において、本明細書に記載の検出可能な部分を含む薬剤は、薬剤のインビボイメージングのための非侵襲的イメージング(例えばニューロイメージング)技術、例えば核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)またはイメージング(MRI)、またはガンマイメージング、例えばポジトロン放出断層撮影(PET)または単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)と併せて使用することができる。用語「インビボイメージング」は、上述したように標識された薬剤の検出を許可する任意の方法を指す。ガンマイメージングについては、検査されている臓器または領域から放出された放射線が測定され、総結合として、または同じインビボイメージング手順の間に1つの組織における総結合を同じ被験者の別の組織の総結合に対して正規化した(例えば割った)比のいずれかとして表される。インビボでの総結合は、標識されていないが化学的に同一の化合物の大過剰と一緒での同量の薬剤の2回目の注入により修正する必要なしで、インビボイメージング技術により組織内で検出された全シグナルとして定義される。
【0105】
インビボイメージングの目的として、利用可能な検出機器のタイプは、所与の検出可能な部分の選択において主要な因子である。例えば、使用される機器のタイプは、安定同位体の選択を案内される。半減期は、標的による最大の取り込み時に依然として検出可能であるように十分に長い必要があるが、宿主が有害な影響を受けないように十分に短い必要がある。
【0106】
一例において、検出可能な部分には、一般的な有機化学技術を使用して、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサと直接的または間接的に結合(または結合または複合体化)する放射性標識が含まれ得る。放射性標識は、例えば、68Ga、123I、131I、125I、18F、11C、75Br、76Br、124I、13N、64Cu、32P、35Sであり得る。そのような放射性標識は、内容が参照により本明細書に組み込まれているPOSITRON EMISSION TOMOGRAPHY AND AUTORADIOGRAPHY(Phelps,M.,Mazziota,J.,およびSchelbert,H.編)391-450(Raven Press,NY 1986)において、Fowler,J.およびWolf,A.により記載されたものなど、PET技術により検出することができる。検出可能な部分はまた、SPECT用の123Iも含む。123Iは、当業者に既知であるいくらかの技術のいずれかによりペプチドスペーサに連結することができる。例えば、内容が参照により本明細書に組み込まれているKulkarni,Int.J.Rad.Appl.&Inst.(Part B)18:647(1991)を参照されたい。さらに、検出可能な部分には、131I、125I、または123Iなどであるがこれらに限定されない任意の放射性ヨウ素同位体が含まれ得る。放射性ヨウ素同位体は、ジアゾ化アミノ誘導体のヨウ化ジアゾニウムによる直接ヨウ素化により(Greenbaum,F.Am.J.Pharm.108:17(1936)を参照されたい)、または不安定なジアゾ化アミンの安定なトリアゼンへの変換により、またはその後当技術分野で周知のいくらかの方法によりヨード化合物に変換することができる、非放射性ハロゲン化前駆体の安定なトリアルキルすず誘導体への変換により、ペプチドスペーサに連結することができる。
【0107】
検出可能な部分には、テクネチウム-99m(99mRc)、153Gd、111In、67Ga、201Tl、82Rb、64Cu、90Y、188Rh、T(トリチウム)、153Sm、89SR、および211Atなどの既知の金属放射性標識がさらに含まれ得る。そのような金属イオンを結合するリガンドを導入する標的化ペプチドの修飾は、放射性標識技術の当業者が過度の実験を行うことなく達成することができる。金属放射性標識剤は、その後、被験者のGBMなどの癌を検出するために使用することができる。Tc99mの放射性標識された誘導体の調製は、当技術分野において周知である。例えばZhuang et al.,「Neutral and stereospecific Tc-99m complexes:[99mTc]N-benzyl-3,4-di-(N-2-mercaptoethyl)-amino-pyrrolidines(P-BAT)」Nuclear Medicine&Biology 26(2):217-24,(1999);Oya et al.,「Small and neutral Tc(v)O BAT,bisaminoethanethiol(N2S2)complexes for developing new brain imaging agents」Nuclear Medicine&Biology 25(2):135-40,(1998);およびHom et al.,「Technetium-99m-labeled receptor-specific small-molecule radiopharmaceuticals:recent developments and encouraging results」Nuclear Medicine&Biology 24(6):485-98,(1997)を参照されたい。
【0108】
いくらかの実施形態において、検出可能な部分には、キレート剤(キレート化放射性標識金属基ありまたはなし)が含まれ得る。例示のキレート剤には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第7,351,401号に開示されたものが含まれ得る。いくらかの実施形態において、キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)である。
【0109】
蛍光標識剤または赤外剤には、当技術分野で既知であるものが含まれ、その多くは、一般に市販されており、例えばALEXA350、PACIFIC BLUE、MARINA BLUE、アクリジン、EDANS、クマリン、BODIPY 493/503、CY2、BODIPY FL-X、DANSYL、ALEXA488、FAM、OREGON GREEN、RHODAMINE GREEN-X、TET、ALEXA430、CAL GOLD(商標)、BODIPY R6G-X、JOE、ALEXA532、VIC、HEX、CAL ORANGE(商標)、ALEXA555、BODIPY 564/570、BODIPY TMR-X、QUASAR(商標)570、ALEXA546、TAMRA、RHODAMINE RED-X、BODIPY 581/591、CY3.5、ROX、ALEXA568、CAL RED、BODIPY TR-X、ALEXA594、BODIPY 630/650-X、PULSAR 650、BODIPY 630/665-X、ALEXA647、IR700、IR800、インドシアニングリーン(ICG)、TEXAS RED、またはQUASAR670などのフルオロフォアである。
【0110】
蛍光標識剤にはまた、他の既知のフルオロフォア、または当技術分野で既知のタンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質も含まれ得る。開示された標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、蛍光標識剤に直接的または間接的に連結され、被験者または試料に投与され、被験者/試料を蛍光分光法またはイメージングにより検査して標識された化合物を検出することができる。
【0111】
いくらかの実施形態において、検出可能な部分には、蛍光染料が含まれる。代表的な蛍光染料には、フルオレセインイソチオシアネート、Cy5、Cy5.5およびそれらの類縁体(例えばスルホ-シアニン5NHSエステルおよびCy5.5マレイミド)などのシアニンが含まれる。また、参照により本明細書に組み込まれている、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,第6版,Agents,Inc.,Eugene Oregを参照されたい。
【0112】
検出可能な部分は、近赤外イメージング基をさらに含むことができる。近赤外イメージング基は、例えばそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Tetrahedron Letters49(2008)3395-3399;Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,8998-9001;Anal.Chem.2000,72,5907;Nature Biotechnology vol 23,577-583;Eur Radiol(2003)13:195-208;およびCancer67:1991 2529-2537に開示されている。適用には、NIRF(近赤外)イメージングスキャナの使用が含まれ得る。一例において、NIRFスキャナは、手持ち式であり得る。別の例において、NIRFスキャナは、小型化され、装置に組み込まれ得る(例えばマイクロマシン、メス、脳神経外科的細胞除去装置)。
【0113】
量子ドット、例えば半導体粒子はまた、技術全体が参照により本明細書に組み込まれている、Gao,et al「In vivo cancer targeting and imaging with semiconductor quantum dots」,Nature Biotechnology,22,(8),2004,969-976に記載されているような検出可能な部分として使用される可能性もある。開示された標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、量子ドットに連結され、被験者または試料に投与され、被験者/試料を蛍光分光法またはイメージングにより検査して標識された化合物を検出することができる。
【0114】
ある特定の実施形態において、検出可能な部分は、MRI造影剤を含む。MRIは、磁気双極子の変化に依存して、詳細な解剖学的イメージングおよび機能研究を実行する。MRIは、イメージング方法として動的定量T1マッピングを利用して、高周波パルスによる励起後の磁場におけるプロトンの縦緩和時間、T1緩和時間を測定することができる。T1緩和時間は、対象領域内で薬剤の濃度を算出するために同様に使用することができ、それによって薬剤の保持またはクリアランスを定量化することを可能にする。これに関連して、保持は、分子造影剤の結合の尺度である。
【0115】
多数の磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤は、当技術分野で既知であり、例えば陽性造影剤および陰性造影剤である。開示された標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、MRI剤に連結され、被験者または試料に投与され、被験者/試料をMRIまたはイメージングにより検査して標識された化合物を検出することができる。陽性造影剤(通常、MRIでは主に明るく見える)は、典型的には、不対外殻電子スピンを有する活性元素、例えばガドリニウム、マンガン、酸化鉄などをキレート化するか含む低分子量有機化合物を含むことができる。典型的な造影剤には、大員環構造化ガドリニウム(III)キレート、例えばガドテル酸メグルミン(ガドテル酸)、ガドペンテト酸ジメグルミン、ガドテリドール、マンガフォジピル三ナトリウム、ガドジアミド、および当技術分野で既知である他のものが含まれる。ある特定の実施形態において、検出可能な部分は、ガドテル酸メグルミンを含む。陰性造影剤(通常、MRIでは主に暗く見える)は、超常磁性材料、例えば超常磁性酸化鉄(SPIO)の粒子から構成される小さい粒子凝集体を含むことができる。陰性造影剤にはまた、MRIイメージングにおけるシグナルと関連する水素原子を欠く化合物、例えばパーフルオロカーボン(パーフルオロケミカル)が含まれ得る。
【0116】
いくらかの実施形態において、標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、大環状キレート剤DOTA、および単一金属放射性標識などのキレート剤に連結または結合することができる。
【0117】
他の実施形態において、標的化ペプチドおよびペプチドもしくはペプチド模倣スペーサまたは複数の標的化ペプチドおよびペプチドもしくはペプチド模倣スペーサは、診断および/または治療的用途のためのナノバブルに連結または結合することができる。ナノバブルは、少なくとも1つのガスを含む内部空隙を規定する脂質膜を含むことができる。標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサに連結することができるナノバブルの例は、例えば、米国特許第10,375,575号、第10,434,194号、および第10,973,935号、ならびに米国特許出願公開第2029/0061220号および第2021/0106699号に記載されており、すべて、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0118】
本明細書に記載の検出可能な部分を含む薬剤は、例えば全身に、局所的に、および/または非経口的な投与方法により被験者に投与することができる。これらの方法には、例えば注射、注入、沈着、移植、もしくは局所投与、または薬剤による組織へのアクセスが望まれる任意の他の投与方法が含まれる。一例において、薬剤の投与は、被験者への薬剤の静脈内注射によるものであり得る。単回または複数回のプローブの投与を行うことができる。本明細書で使用されるような「投与された」は、被験者における癌細胞を標識するのに有効な量および期間の薬剤の提供または送達を意味する。
【0119】
検出可能な部分を含む本明細書に記載の薬剤は、薬剤またはその薬学的に許容される水溶性の塩を含む医薬組成物を検出可能な量で被験者に、患者に投与することができる。
【0120】
投与される薬剤の処方は、選択された投与経路にしたがって変更される(例えば溶液、乳濁液、カプセルなど)。適切な薬学的に許容される担体は、化合物の生物活性を過度に阻害しない不活性原料を含む可能性がある。薬学的に許容される担体は、生体適合性である、例えば非毒性、非炎症性、非免疫原性である必要があり、被験者への投与で他の望ましくない反応を欠いている。Remington’s Pharmaceutical Sciences、同書に記載されているものなど、標準の薬学的処方技術を使用することができる。非経口投与のための適切な医薬担体には、例えば、滅菌水、生理食塩水、静菌性生理食塩水(約0.9%mg/mlベンジルアルコールを含む生理食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、乳酸リンゲル液などが含まれる。
【0121】
溶解または分散された有効成分をその中に含む薬理学的組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されている。典型的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射剤として調製されるが、使用前に液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態も調製することができる。製剤は、選択された投与経路にしたがって変更される(例えば溶液、乳濁液、カプセル)。
【0122】
「検出可能な量」は、投与される検出可能な化合物の量が、癌細胞への化合物の結合を検出することができるのに十分であることを意味する。「イメージング有効量」は、投与される検出可能な化合物の量が、癌細胞への薬剤の結合のイメージングを可能にするのに十分であることを意味する。
【0123】
被験者に投与される検出可能な部分を含む薬剤は、患者の臓器または体部、例えば被験者の少なくとも1つの対象領域(ROI)で、癌細胞、すなわちIgスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂されたフラグメントと会合した癌細胞の存在、位置、および/または分布を検出および/または決定する方法において使用することができる。ROIは、被験者の特定の領域または部分、いくらかの場合、被験者全体にわたって2つまたはそれ以上の領域または部分を含むことができる。ROIは、診断および治療の目的両方について画像化される領域を含むことができる。ROIは、典型的に内部である;しかし、ROIがさらにまたは代わりに外部である可能性があることが理解されるであろう。
【0124】
動物の組織、例えば脳組織内の薬剤の存在、位置、および/または分布は、(例えば上述したインビトロ画像診断法を用いて)視覚化することができる。本明細書で使用されるような「分布」は、領域または体積にわたって散乱している空間的特性である。この場合において、「癌細胞の分布」は、動物の組織、例えば脳組織に含まれる領域または体積にわたって散乱している癌細胞の空間的特性である。薬剤の分布は、その後、組織における癌細胞の有無と相関する可能性がある。分布は、癌細胞の有無について手がかりをもたらす可能性があるか、遊走するか分散する癌細胞の有無、癌転移を確実に検出または被験者における腫瘍境界を定義するために当業者により他の要因および症状と組み合わせられる可能性がある。画像診断法が組成物の投与前にベースライン画像を生成するために使用することができることが理解されるであろう。この場合において、ベースラインおよび投与後の画像を比較して、特定の疾患または状態の存在、不在、および/または程度を確認することができる。
【0125】
一態様において、検出可能な部分を含む薬剤は、被験者における癌細胞の分布を評価し、分布を特定の位置に関連付けるために被験者に投与することができる。外科医は、外科的切除において定位技術および術中MRI(iMRI)を定期的に使用する。これにより、腫瘍辺縁または腫瘍中心など、腫瘍の別個の領域からの組織を明確に同定しサンプリングすることを可能にする。頻繁に、それらはまた、腫瘍辺縁の外側にあり、肉眼的には正常に見えるが、組織学的検査では腫瘍細胞を分布させることにより浸潤している腫瘍境界上で脳の領域をサンプリングする。例えば、神経膠腫(脳腫瘍)手術において、薬剤は術前定位局在MRIの約24時間前に静脈内投与することができる。薬剤は、神経膠腫に局在する造影剤としてグラジェントエコーMRI配列で画像化することができる。
【0126】
検出可能な部分を含み、特に細胞と会合したタンパク質分解的に開裂されたIgスーパーファミリー細胞接着分子(PTPμ)に結合するおよび/またはそれと複合体化する、本明細書に記載の薬剤は、術中イメージング(IOI)技術を使用して外科的切除を導き、外科医による腫瘍境界の位置の「知識に基づいた推測」を排除することができる。以前の研究は、より広範な外科的切除が患者の生存率を改善することを決定する、Stummer W,Novotny A,Stepp H,Goetz C,Bise K,Reulen HJ(2000)Fluorescence-guided resection of glioblastoma multiforme by using 5-aminolevulinic acid-induced porphyrins:a prospective study in 52 consecutive patients.J Neurosurg 93:1003-1013。Fluorescence-guided resection of glioblastoma multiforme by using 5-aminolevulinic acid-induced porphyrins:a prospective study in 52 consecutive patients.Stummer W,Novotny A,Stepp H,Goetz C,Bise K,Reulen HJ(2000)Fluorescence-guided resection of glioblastoma multiforme by using 5-aminolevulinic acid-induced porphyrins:a prospective study in 52 consecutive patients.J Neurosurg 93:1003-1013。したがって、診断用分子イメージング剤として機能する薬剤は、患者の生存率を高める可能性を有している。
【0127】
いくらかの実施形態において、癌細胞の除去を同定および促進するため、顕微鏡術中イメージング(IOI)技術は、本明細書に記載の全身投与または局所投与された薬剤と組み合わせることができる。薬剤は被験者に投与されると、患者の臓器または体部で、癌細胞、すなわちIgスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントと会合した癌細胞の存在、位置、および/または分布を標的化および検出および/または決定することができる。一例において、薬剤はIOIと組み合わせて、浸潤している、および/または脳腫瘍境界で浸潤し始めている悪性細胞を同定することができる。方法は、脳または他の手術中にリアルタイムで実行することができる。方法は、検出可能な部分、例えば蛍光またはMRI造影部分を含む、本明細書に記載の標的薬剤の局所または全身適用を含むことができる。その後、画像診断法を使用して、画像データを検出し、その後収集することができる。画像診断法は、薬剤を視覚化することができる既知のイメージング技術の1つまたは組み合わせを含むことができる。得られる画像データを使用して、外科的および/または放射線学的処置を少なくとも一部決定する可能性がある。代わりに、画像データを使用して、自動化手術装置(例えばレーザ、メス、マイクロマシン)を少なくとも一部制御する可能性があるか、手動の手術案内を支援する可能性がある。さらに、画像データを使用して、(例えばマイクロ電子マシンまたはマイクロマシンにより)治療剤の送達を計画および/または制御する可能性がある。
【0128】
一例において、蛍光検出可能部分に結合した標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサを含む薬剤は、手術中に必要に応じて局所的に適用され、外科医および/または手術機器を残りの異常な細胞に相互作用的に案内することができる。薬剤は、低濃度で局所的に適用され、薬理学的に適切な濃度に達する可能性が低くなる可能性がある。一例において、過剰の物質は、一定期間(例えばインキュベーション期間)後に除去される(例えば洗い流される)可能性がある。
【0129】
本明細書に記載の別の実施形態は、被験者に投与された癌治療または癌療法の有効性をモニターする方法に関する。本明細書に記載の方法および薬剤は、投与中、または治療計画後、癌治療または癌療法の投与前に被験者における癌の浸潤、遊走、分散、および転移をモニターおよび/または比較するために使用することができる。
【0130】
本明細書で使用されるような「癌治療」または「癌療法」は、例えば癌細胞を死滅させる、癌細胞にアポトーシスを誘導する、癌細胞の増殖速度を減少させる、転移の発生もしくは数を低減する、腫瘍サイズを縮小する、腫瘍増殖を阻害する、腫瘍もしくは癌細胞への血液供給を低減する、癌細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進する、癌の進行を防止もしくは阻害する、または癌を有する動物の寿命を延長することにより動物の癌に悪影響を与えることができる任意の薬剤または処置計画を含むことができる。癌治療薬は、例えば限定されないが化学療法、放射線療法、ホルモン療法、および/または生物学的療法/免疫療法の1つまたは複数の療法を含むことができる。例えば被験者における癌の体積、増殖、遊走、および/または分散の低下は、所与の療法の有効性を示唆する可能性がある。これにより、癌治療の直接的な臨床効果エンドポイント測定を提供することができる。そのため、別の態様において、癌治療薬の有効性をモニターする方法が提供される。より具体的には、本出願の実施形態は、癌療法の有効性をモニターする方法を提供する。
【0131】
癌治療剤は、生物学的に活性があるリガンド、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、DNAフラグメント、DNAプラスミド、siRNAなどの干渉RNA分子、オリゴヌクレオチド、およびshRNAをコードするDNAの形状であり得る。
【0132】
癌治療薬の有効性をモニターする方法は、動物に本明細書に記載されるような薬剤をインビボで投与するステップ、その後動物における薬剤の分布を(例えば本明細書に記載されるようなインビボ画像診断法を用いて)視覚化するステップ、その後、薬剤の分布を癌治療の有効性と相関させるステップを含むことができる。選択した治療計画の有効性を判断するために、投与ステップが治療計画の前、その間、およびその後に行うことができることが企図される。癌治療薬の有効性を評価する1つの方法は、癌療法前後の薬剤の分布を比較することである。
【0133】
いくらかの実施形態において、Igスーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントに結合したおよび/またはそれと複合体化した薬剤は、被験者における癌細胞の位置および/または分布を検出および/または提供するために被験者において検出される。被験者における癌細胞の位置および/または分布は、その後、対照と比較して癌治療薬および/または癌療法の有効性を決定することができる。対照は、癌治療薬および/または癌療法の投与の前の被験者における癌細胞の位置および/または分布であり得る。癌治療薬および/または癌療法の投与の前の被験者における癌細胞の位置および/または分布は、被験者に薬剤を投与すること、および癌治療薬および/または癌療法の投与の前に被験者における癌細胞に結合したおよび/またはそれと複合体化した薬剤を検出ことにより決定することができる。
【0134】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法および薬剤は、転移、浸潤、または分散した癌を処置するために被験者に投与された治療薬の有効性を測定するために使用することができる。この実施形態において、薬剤は、治療計画の投与の前、その間、またはその後、被験者に投与することができ、癌細胞の分布を画像化して、治療計画の有効性を決定することができる。一例において、治療計画は、転移性癌の外科的切除を含むことができ、薬剤を使用して、術前および術後に転移性癌の分布を定義し、外科的切除の有効性を決定することができる。場合によっては、方法および薬剤は、上述したような術中の外科的処置、例えば外科的腫瘍切除で使用して、術中に癌細胞の塊または体積をより容易に定義および/または画像化することができる。
【0135】
他の実施形態において、標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサは、治療剤またはセラノスティック剤に直接的または間接的に結合することができる。一例において、標的化ペプチドおよびペプチドまたはペプチド模倣スペーサに結合したセラノスティック剤または治療剤を、癌または腫瘍(例えば脳癌または腫瘍)を処置する方法で使用することができる。一実施形態において、治療剤またはセラノスティック剤は、光増感剤および標的化ペプチド、スペーサを含む薬剤を含むことができ、光増感剤は、光線力学療法で使用することができる。
【0136】
光線力学療法(PDT)は、標的腫瘍を破壊するために光増感剤、光、および適切な量の分子状酸素の存在を必要とする部位特異的治療法である(Grossweiner,Li,The science of phototherapy.Springer:The Netherlands,2005)。照明時、光活性化増感剤は、エネルギーを分子状酸素に移して一重項酸素(O)および他の活性酸素種(ROS)の生成をもたらし、アポトーシスおよび癌細胞への酸化的損傷を開始する。セラノスティックPDT剤(暗所では非毒性)および光に同時に曝露されている細胞のみが破壊され、一方で周囲の健康な標的化されていない非照射細胞は、光損傷を免れる。さらに、光増感剤分子の蛍光は、PDT癌処置を案内するために使用することができる同時診断光学イメージングを可能にする。
【0137】
光線力学療法を実行するための方法は、当技術分野において既知である。例えば、Thierry Patrice.Photodynamic Therapy;Royal Society of Chemistry,2004を参照されたい。スペーサに直接的または間接的に結合した標的化ペプチド、スペーサ、およびセラノスティック剤を含む薬剤を含む医薬組成物は、PDTのステップとして臓器または組織に適用することができる。ある特定の実施形態において、組成物は、限定されないが、眼、食道、粘膜、膀胱、関節、腱、靭帯、嚢、胃腸、尿生殖器、肋膜、心膜、肺、または尿路上皮表面を含む、上皮、中皮、滑膜、筋膜、または漿膜の表面に適用される。
【0138】
スペーサおよび標的化ペプチドに直接的または間接的に結合したPDTのためのセラノスティック剤または治療剤は、静脈内投与などの全身投与により、癌を有する被験者に投与することができる。投与時、標的薬剤は、標的腫瘍または癌の部位で局在化および/または蓄積することができる。いくらかの実施形態において、癌細胞または癌細胞の微小環境内の別の細胞により発現される免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー細胞接着分子のタンパク質分解的に開裂された細胞外フラグメントの特異的結合および/または複合体化は、標的化ペプチド、スペーサ、およびPDT剤を含む薬剤が、例えばエンドサイトーシスにより標的細胞に結合する、それと複合体化する、および/または取り込まれることを可能にする。この結合および/または取り込みは、標的細胞に特異的であり、標的薬剤により被験者における癌細胞および/または癌細胞の微小環境内の細胞の選択的標的化を可能にする。
【0139】
標的癌細胞に、標的化ペプチド、スペーサ、およびセラノスティック剤または治療剤を含む薬剤の投与および局在化に続いて、標的癌細胞は、癌細胞の損傷および/または癌細胞増殖の抑制を引き起こす光の治療量に曝露される可能性がある。PDT剤を活性化することができる光は、例えば半導体レーザ、色素レーザ、光パラメトリック発振器などを使用して標的癌細胞に送達することができる。光が疎水性PDT剤を励起する限り、任意の光源光を使用することができることが理解されるであろう。
【0140】
例として、標的化ペプチド、スペーサ、およびPDT剤を含む薬剤は、神経膠腫腫瘍切除のための画像ガイダンスを提供することができ、後に続くPDTが切除不能または残りの癌細胞を排除することを可能にする。ある特定の実施形態において、標的化部分は、配列番号5を有するペプチドを含むことができる。
【0141】
本明細書に記載の薬剤で使用するためのPDT剤光増感剤化合物は、適切な光源により励起され、ラジカルおよび/または活性酸素種を生成する化合物を含むことができる。典型的には、十分な量の光増感剤が病変組織(例えば腫瘍組織)に現れる場合、光増感剤は、一定期間光に曝露されることにより活性化させることができる。光量は、光増感剤を刺激するのに十分であるが、隣接する健康な組織を損傷するには十分ではないエネルギーを供給する。光増感剤励起に続いて生じるラジカルまたは活性酸素種は、標的細胞(例えば癌細胞)を死滅させる。PDT剤が蓄積する組織の光処置はまた、免疫応答を誘導することができる。いくらかの実施形態において、標的組織を局所的に照射することができる。例えば、光は光ファイバに連結したアルゴンまたは銅励起色素レーザ、KTP(リン酸チタニルカリウム)/YGA(イットリウムアルミニウムガーネット)媒体からなる二重レーザ、LED(発光ダイオード)、または固体レーザを介して光増感剤に送達させることができる。
【0142】
セラノスティック剤または治療剤として使用するためのPDT増感剤には、第1世代光増感剤(例えば、フォトフリン(ポルフィマーナトリウム)、フォトジェム、ホトサン-3などのヘマトポルフィリン誘導体(HpD))が含まれ得る。いくらかの実施形態において、PDT増感剤には、ポルフィリノイド誘導体および前駆体などの第2世代および第3世代光増感剤が含まれ得る。ポルフィリノイド誘導体および前駆体には、ポリフィリンおよびメタロポルフィリン(例えば、メタ-テトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリン(m-THPP)、5,10,15,20-テトラキス(4-スルファナトフェニル)-21H,23H-ポルフィリン(TPPS4)、および内因性プロトポルフィリンIXへの前駆体(PpIX):5-アミノレブリン酸(5-ALA、ある程度の成功で、神経膠腫の光線力学療法(PDT)に使用されている(Stummer,W.et al.J Neurooncol.2008,87(1):103-9.).)、アミノレブリン酸メチル(MAL)、ヘキサアミノレブリン酸(HAL))、クロリン(例えば、ベンゾポルフィリン誘導体一塩基酸環A(BPD-MA)、メタ-テトラ(ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)、N-アスパルチルクロリンe6(NPe6)、およびエチルエチオプルプリンすず(SnET2))、フェオホルビド(例えば、2-(1-ヘキシルオキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド(HPPH))、バクテリオフェオホルビド(例えば、バクテリオクロロフィル(bacteriochlorphyll)a、WST09およびWST11)、テキサフィリン(例えば、モテキサフィンルテチウム(Lu-Tex))、ならびにフタロシアニン(PCs)(例えば、アルミニウムフタロシアニンテトラスルホン酸(AlPcS4)およびシリコンフタロシアニン(Pc4))が含まれ得る。いくらかの実施形態において、PDT増感剤には、カチオン性亜鉛エチニルフェニルポルフィリンが含まれ得る。ポルフィリノイド構造が光増感剤の大部分を構成するが、いくらかの非ポルフィリン色素原は、光力学的活性を示す。これらの化合物には、アントラキノン、フェノチアジン、キサンテン、シアニン、およびクルクミノイドが含まれる。代わりに、光増感剤は、インドシアニングリーン(ICG)を含むことができる。
【0143】
いくらかの実施形態において、本明細書に記載のセラノスティック剤または治療剤には、フタロシアニン化合物が含まれ得る。この後「Pcs」とも省略されるフタロシアニンは、フタロシアニン環系を有する光増感剤化合物の群である。フタロシアニンは、金属および半金属カチオンと安定キレートを形成する交互の炭素原子および窒素原子の16員環(すなわちC32H16N8)における窒素架橋により接続された4つのベンゾインドール基からなるアザポリフィリンである。これらの化合物において、環中心は、イオンに応じて1つまたは2つのリガンドを保持することができる金属イオン(反磁性または常磁性イオンのいずれか)が占めている。さらに、環の周囲は、非置換または置換のいずれかであり得る。フタロシアニンは、吸収ピークが約600nmから810nmにある臨床的に有用な赤色または近赤外線を強く吸収し、潜在的に光による深部組織への浸透を可能にする。光線力学療法における多種多様なフタロシアニンの合成および使用は、国際公開第2005/099689号に記載されている。
【0144】
いくらかの実施形態において、フタロシアニン化合物はPc4である。Pc4は、比較的光安定性が高く、実質的に無毒である。いくらかの実施形態において、フタロシアニン化合物は、被験者における癌の標的バイオイメージングおよび標的PDTに効果的であることが分かっているPDT光増感薬Pc4の類縁体である(例えば、内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第9,889,199号を参照されたい)。いくらかの実施形態において、Pc4類縁体には、Pc413が含まれ得る。
【0145】
他の実施形態において、治療剤またはセラノスティック剤は、標的化ペプチドに直接的またはペプチドもしくはペプチド模倣スペーサを介して間接的に結合しているナノバブルである。ナノバブルは、少なくとも1つのガスおよび場合によっては膜内に含まれるか、各ナノバブルの膜にコンジュゲートしている少なくとも1つの治療剤を含む少なくとも1つの内部空隙を規定する膜を有することができる。治療剤には、例えば、少なくとも1つの化学療法剤、抗増殖剤、殺生物剤、静生物剤、または抗菌剤が含まれ得る。
【0146】
標的化ペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、およびナノバブルを含む薬剤は、癌を有する被験者に投与することができる。標的化ペプチドは、標的癌細胞に結合することができ、ナノバブルは、標的化ペプチドの癌細胞への結合で、標的癌細胞による癌細胞標的ナノバブルの内在化を容易にするサイズ、直径、および/または組成を有することができる。標的ナノバブルの被験者への投与に続いて、標的細胞に内在化した細胞標的ナノバブルは、内在化ナノバブルの慣性キャビテーションならびに標的癌細胞のアポトーシスおよび/もしくはネクローシスならびに/またはナノバブルからの化学療法剤などの治療剤の癌細胞への放出を促進するのに有効な超音波エネルギーを照射され得る。
【0147】
他の実施形態において、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサおよび標的化ペプチドに結合した治療剤には、抗腫瘍、化学療法、抗ウイルス、抗有糸分裂、抗腫瘍形成、および/または免疫療法効果を発揮する、例えば新生細胞の発生、成熟、または拡散を、例えば、細胞増殖抑制または殺細胞効果により、腫瘍細胞上で直接防止し、生物学的応答の変更などのメカニズムを通じて間接的に防止しない抗癌剤または抗増殖剤が含まれ得る。商用利用、臨床的評価および臨床前開発に利用可能な多数の抗増殖剤がある。議論の都合上、抗増殖剤は、以下のクラス、サブタイプおよび種:ACE阻害剤、アルキル化剤、血管新生抑制剤、アンギオスタシン、アントラサイクリン/DNAインターカレーター、抗癌抗生物質または抗生物質型製剤、代謝拮抗物質、癌転移予防化合物、アスパラギナーゼ、ビスホスホネート、cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤、炭酸カルシウム、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DHA誘導体、DNAトポイソメラーゼ、エンドスタチン、エピポドフィロトキシン、ゲニステイン、ホルモン抗癌剤、親水性胆汁酸(URSO)、免疫調節薬または免疫剤、インテグリンアンタゴニスト、インターフェロンアンタゴニストまたはインターフェロン剤、MMP阻害剤、種々の抗新生形成剤、モノクローナル抗体、ニトロソウレア、NSAID、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、pBATT、放射線/化学増感剤/保護剤、レチノイド、内皮細胞の増殖および遊走の選択的阻害剤、セレン、ストロメリシン阻害剤、タキサン、ワクチン、およびビンカアルカロイドに分類される。
【0148】
いくらかの抗増殖剤が分類される主なカテゴリには、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質型製剤、ホルモン抗癌剤、免疫剤、インターフェロン型製剤、および種々の抗新生形成剤のカテゴリが含まれる。いくらかの抗増殖剤は、複数のまたは未知のメカニズムを通じて動作するため、1つより多くのカテゴリに分類することができる。
【0149】
本明細書に記載の薬剤にある標的化ペプチドに直接的または間接的に結合することができる抗癌治療剤の例には、タキソール、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン(ambomycin);酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ(benzodepa);ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシラート(bisnafide dimesylate);ビセレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド(caracemide);カルベチマー(carbetimer);カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン(carzelesin);セデフィンゴール(cedefingol);クロラムブシル;シロレマイシン(cirolemycin);クラドリビン;クリスナトールメシラート(crisnatol mesylate);シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン(dezaguanine);デザグアニンメシラート(dezaguanine mesylate);ジアジクオン(diaziquone);ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ズアゾマイシン(duazomycin);エダトレキサート;塩酸エフロミチン(eflomithine hydrochloride);エルサミトルシン;エンロプラチン(enloplatin);エンプロマート(enpromate);エピプロピジン(epipropidine);塩酸エピルビシン;エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオロシタビン(fluorocitabine);ホスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン(ilmofosine);インターロイキンII(組換えインターロイキンII、またはrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンαn1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン(iproplatin);塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン(metoprine);メツレデパ(meturedepa);ミチンドミド(mitindomide);ミトカルシン(mitocarcin);ミトクロミン(mitocromin);ミトギリン(mitogillin);ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル(mitosper);ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;ペグアスパルガーゼ;ペリオマイシン(peliomycin);ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン(plomestane);ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン(pyrazofurin);リボプリン(riboprine);ログレチミド(rogletimide);サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン(simtrazene);スパルホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル(sulofenur);タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート(vinglycinate sulfate);硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン(zeniplatin);ジノスタチン;塩酸ゾルビシンが含まれる。
【0150】
他の抗癌治療剤には:20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン(abiraterone);アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン(ambamustine);アミドックス(amidox);アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド(andrographolide);血管新生抑制剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背側化形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン剤、前立腺癌; 抗エストロゲン剤;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシナート;アポトーシス遺伝子モジュレータ;アポトーシス調節物質;アプリン酸;アラ-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine);ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド(bisnafide);ビストラテンA;ビセレシン;ブレフラート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類縁体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類縁体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;シトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;9-ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロールニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類縁体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロドーノルニシン(fluorodaunorunicin hydrochloride);ホルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン(imidazoacridone);イミキモド;免疫賦活ペプチド;インスリン様成長因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;ヨーベングアン;ヨードドキソルビシン;4-イポメアノール;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB(isohomohalicondrin B);イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセタート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病抑制因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類縁体;親油性二糖類ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルートテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン(maitansine);マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類縁体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリア属(myobacterium)の細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多重腫瘍抑制因子1に基づく治療;マスタード抗癌剤;ミカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチプ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレータ;ニトロキシド酸化防止剤;ニトルリン;06-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導因子;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン(parabactin);パゼリプチン;ペグアスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノゲンアクチベータ阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質Aに基づく免疫モジュレータ;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe186;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド;ロキニメックス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフイトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレータ;一本鎖抗原結合タンパク質;シリコンフタロシアニン(PC4)シゾフラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプタート(sodium borocaptate);フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン(sonermin);スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作用性小腸ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン;スウェインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリンすず;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チロホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖抑制因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソール;ベラミン;ベルジン(verdin);ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);バイタクシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーが含まれるがこれらに限定されない。
【0151】
他の抗癌剤には、以下の市販の薬物および開発中の薬物:エルブロゾール(R-55104としても既知)、ドラスタチン10(DLS-10およびNSC-376128としても既知)、イセチオン酸ミボブリン(CI-980としても既知)、ビンクリスチン、NSC-639829、ディスコデルモライド(NVP-XX-A-296としても既知)、ABT-751(アボット、E-7010としても既知)、アルトルヒルチン(Altorhyrtin)類(例えばアルトルヒルチン(Altorhyrtin)Aおよびアルトルヒルチン(Altorhyrtin)C)、スポンギスタチン類(例えばスポンギスタチン1、スポンギスタチン2、スポンギスタチン3、スポンギスタチン4,スポンギスタチン5、スポンギスタチン6、スポンギスタチン7、スポンギスタチン8、およびスポンギスタチン9)、塩酸セマドチン(Cemadotin hydrochloride)(LU-103793およびNSC-D-669356としても既知)、エポチロン類(例えばエポチロンA、エポチロンB、エポチロンC(デスオキシエポチロンAまたはdEpoAとしても既知)、エポチロンD(KOS-862、dEpoB、およびデスオキシエポチロンBとも呼ばれる)、エポチロンE、エポチロンF、エポチロンB N-オキシド、エポチロンA N-オキシド、16-アザ-エポチロンB、21-アミノエポチロンB(BMS-310705としても既知)、21-ヒドロキシエポチロンD(デスオキシエポチロンFおよびdEpoFとしても既知)、26-フルオロエポチロン)、アウリスタチンPE(NSC-654663としても既知)、ソブリドチン(TZT-1027としても既知)、LS-4559-P(ファルマシア、LS-4577としても既知)、LS-4578(ファルマシア、LS-477-Pとしても既知)、LS-4477(ファルマシア)、LS-4559(ファルマシア)、RPR-112378(アベンティス)、硫酸ビンクリスチン、DZ-3358(Daiichi)、FR-182877(藤沢薬品工業、WS-9885Bとしても既知)、GS-164(武田薬品工業)、GS-198(武田薬品工業)、KAR-2(ハンガリー科学アカデミー)、BSF-223651(BASF、ILX-651およびLU-223651としても既知)、SAH-49960(リリー/ノバルティス)、SDZ-268970(リリー/ノバルティス)、AM-97(Armad/協和発酵)、AM-132(Arnad)、AM-138(Armad/協和発酵)、IDN-5005(Indena)、クリプトフィシン52(LY-355703としても既知)、AC-7739(味の素、AVE-8063AおよびCS-39.HClとしても既知)、AC-7700(味の素、AVE-8062、AVE-8062A、CS-39-L-Ser.HCl、およびRPR-258062Aとしても既知)、ビチレブアミド(Vitilevuamide)、チューブリシン(Tubulysin)A、カナデンソル(Canadensol)、センタウレイジン(NSC-106969としても既知)、T-138067(Tularik、T-67、TL-138067およびTI-138067としても既知)、COBRA-1(Parker Hughes Institute、DDE-261およびWHI-261としても既知)、H10(カンザス州立大学)、H16(カンザス州立大学)、オンコシジンA1(BTO-956およびDIMEとしても既知)、DDE-313(Parker Hughes Institute)、フィジアノライドB、ラウリマライド、SPA-2(Parker Hughes Institute)、SPA-1(Parker Hughes Institute、SPIKET-Pとしても既知)、3-IAABU(サイトスケルトン/マウントサイナイ医科大学、MF-569としても既知)、ナルコシン(Narcosine)(NSC-5366としても既知)、ナスカピン(Nascapine)、D-24851(Asta Medica)、A-105972(アボット)、ヘミアステルリン、3-BAABU(サイトスケルトン/マウントサイナイ医科大学、MF-191としても既知)、TMPN(アリゾナ州立大学)、バナドセンアセチルアセトナト(Vanadocene acetylacetonate)、T-138026(Tularik)、モンサトロール(Monsatrol)、イナノシン(Inanocine)(NSC-698666としても既知)、3-IAABE(サイトスケルトン/マウントサイナイ医科大学)、A-204197(アボット)、T-607(Tularik、T-900607としても既知)、RPR-115781(アベンティス)、エリュテロビン類(例えばデスメチルエリュテロビン、デスアエチルエリュテロビン(Desaetyleleutherobin)、イソエリュテロビンA、およびZ-エリュテロビン)、カリベオシド、カリベオリン、ハリコンドリンB、D-64131(Asta Medica)、D-68144(Asta Medica)、ジアゾナミド(Diazonamide)A、A-293620(アボット)、NPI-2350(ネレウス)、タッカロノリドA、TUB-245(アベンティス)、A-259754(アボット)、ジオゾスタチン(Diozostatin)、(-)-フェニルアヒスチン(NSCL-96F037としても既知)、D-68838(Asta Medica)、D-68836(Asta Medica)、ミオセベリン(Myoseverin)B、D-43411(ゼンタリス、D-81862としても既知)、A-289099(アボット)、A-318315(アボット)、HTI-286(SPA-110としても既知、トリフルオロ酢酸塩)(ワイス)、D-82317(ゼンタリス)、D-82318(ゼンタリス)、SC-12983(NCl)、リン酸レスベラスタチンナトリウム(Resverastatin phosphate sodium)、BPR-OY-007(国家衛生研究院)、およびSSR-250411(サノフィ)が含まれ得る。
【0152】
また他の抗癌治療剤には、アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(例えば、メクロロエタミン(mechloroethamine)、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファランなど)、エチレンイミンおよびメチルメラミン類(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル類(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア類(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンなど)、またはトリアゼン類(ダカルバジンなど)、代謝拮抗物質、例えば葉酸類縁体(例えば、メトトレキサート)、またはピリミジン類縁体(例えば、フルオロウラシル、フルオロウリジン、シタラビン)、プリン類縁体(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン類(例えば、エトポシド、テニポシド)、白金配位錯体類(例えば、シスプラチン、カルボブラチン(carboblatin))、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン、アミノグルテチミド)が含まれる。
【0153】
いくらかの実施形態において、細胞毒性化合物は、本明細書に記載の薬剤に含まれる。細胞毒性化合物には、小分子薬物、例えばドキソルビシン、ミトキサントロン、メトトレキサート、ならびにピリミジンおよびプリン類縁体が含まれ、本明細書では抗腫瘍剤と呼ばれる。
【0154】
本明細書に記載の標的化ペプチド、スペーサ、および治療剤を含む薬剤は、薬物投与の任意の従来の方法により、例えばカプセル、懸濁液もしくは錠剤で経口的に、または非経口投与により被験者に投与することができる。非経口投与には、例えば筋肉内、静脈内、脳室内、動脈内、髄腔内、皮下、または腹腔内の投与が含まれ得る。開示された化合物はまた、経口で(例えばカプセル、懸濁液、錠剤または飲食物内で)、経鼻的に(例えば溶液、懸濁液)、経皮的に、皮内に、局所的に(例えばクリーム、軟膏)、吸入で(例えば気管支内、鼻腔内、口腔内吸入または点鼻液)、経粘膜的に、または直腸的に投与することもできる。送達はまた、患者の脳もしくは体腔への注射による、または持続放出もしくは徐放性マトリックス送達システムの使用による、またはミセル、ゲルおよびリポソームを使用するオンサイト送達によるものであり得る。噴霧装置、粉末吸入器、およびエアロゾル化溶液はまた、そのような製剤を気道に投与するために使用することが可能である。送達は、インビボ、またはエクスビボであり得る。投与は、示唆されるように局所的または全身的であり得る。必要に応じて、1つより多くの経路を同時に使用することができる。好ましい投与様式は、選択された特定の開示された化合物に応じて変更することができる。特定の実施形態において、経口、非経口、または全身投与が、処置のための好ましい投与様式である。
【0155】
本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、および治療剤を含む薬剤は、単剤療法として単独で、または1つもしくは複数の追加の治療剤と併せて、またはそれと組み合わせて投与することができる。例えば、本明細書に記載の治療剤に結合した標的化ペプチドを含む薬剤は、追加の治療剤の投与の前、その間、またはその後に被験者に投与することができ、転移細胞の分布は、治療剤を用いて標的化することができる。薬剤は、その薬剤および薬学的に許容される担体または賦形剤、場合によっては、1つまたは複数の追加の治療剤を含む医薬組成物の一部として動物に投与することができる。本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、および治療剤ならびに追加の治療剤を含む薬剤は、別々の医薬組成物の成分であり得、投与前に一緒に混合すること、または別々に投与することができる。本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、および治療剤を含む薬剤は、例えば追加の治療剤を含む組成物で投与することができ、それによって薬剤と同時に投与することができる。代わりに、本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、および治療剤を含む薬剤は、混合なしで(例えば、治療剤も投与される静脈ライン上で薬剤を送達することにより、またはその逆により)同時に投与することができる。別の実施形態において、本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、および治療剤を含む薬剤は、別々に(例えば混合なしで)ではあるが、治療剤の投与の短い時間枠(例えば24時間以内)に投与することができる。
【0156】
本明細書に記載の方法は、同時または長期間にわたって与えられる、単回および複数回の投与を企図する。本明細書に記載の標的化ペプチドペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、および治療剤を含む薬剤(または薬剤を含む組成物)は、炎症性疾患の効果の性質および程度に応じて定期的に、そして継続的に投与することができる。本明細書に使用されるような「定期的」な投与は、治療的有効量が周期的に投与される(1回の投与と区別される)ことを示唆する。一実施形態において、薬剤および/または追加の治療剤は、周期的に、例えば定期的に(例えば隔月、毎月、隔週、毎週、週2回、毎日、1日2回または1日3回もしくは1日あたりより頻繁に)投与される。
【0157】
一個人用の投与間隔は、固定することができるか、その個体の必要に応じて経時的に変更することができる。例えば、身体の病気またはストレスの時、または疾患の症状が悪化する場合、投与間の間隔を短縮することができる。被験者における検出可能な部分、治療剤またはセラノスティック剤の半減期に応じて、薬剤は、例えば1日1回または週1回の間で投与することができる。
【0158】
例えば、薬剤および/または追加の治療剤の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、もしくは40日に少なくとも1回、または代わりに1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週もしくは20週に少なくとも1回、またはその任意の組み合わせで、60時間、48時間、36時間、24時間、12時間、8時間、6時間、4時間、もしくは2時間ごとにまたはそれらの任意の組み合わせの単回または分割用量を使用して行うことができる。投与は、1日のうちいつでも、例えば午前、午後または夕方に行うことができる。例えば、投与は、午前、例えば6:00a.m.から12:00正午;午後、例えば正午から6:00p.m.まで;または夕方、例えば6:01p.m.から真夜中までに行うことができる。
【0159】
本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドもしくはペプチド模倣スペーサ、および治療剤ならびに/または追加の治療剤を含む薬剤は、1日あたり例えば0.1mg/kgから100mg/kg、例えば0.5mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kgまたは100mg/kgの用量で投与することができる。内服に適した剤形(組成物)は、一般に、単位あたり有効成分を約0.1ミリグラムから約500ミリグラム含む。これらの医薬組成物において、有効成分は、通常、組成物の総量に基づいて重量で約0.5~95%の量で存在する。
【0160】
被験者に投与された、本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドもしくはペプチド模倣スペーサ、および治療剤ならびに/または追加の治療剤を含む開示された薬剤の量は、被験者の特徴、例えば健康全般、年齢、性別、体重および薬剤に対する抵抗性、ならびに拒絶反応の程度、重症度およびタイプに依存することができる。当業者は、標準の臨床技術を使用して、これらおよび他の因子に応じて適切な用量を決定することができる。
【0161】
さらに、インビトロまたはインビボアッセイを使用して、所望の用量範囲を同定することができる。使用される用量はまた、投与経路、疾患の重症度、および被験者の状況に依存することができる。有効量は、インビトロまたは動物モデル試験システムに由来する用量応答曲線から外挿することができる。本明細書に記載の標的化ペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣スペーサ、および治療剤を含む薬剤の量はまた、臨床因子および化合物の投与経路とともに病状または処置される状態に依存することができる。
【0162】
本明細書に記載の開示された薬剤および/または追加の治療剤は、治療用の医薬組成物の一部として許容される医薬担体または希釈剤と併せて被験者に投与することができる。投与される化合物の処方は、選択された投与経路(例えば溶液、エマルジョン、カプセルなど)に応じて変更される。適切な薬学的に許容される担体は、化合物の生物活性を過度に阻害しない不活性原料を含む可能性がある。薬学的に許容される担体は、生体適合性である、例えば非毒性、非炎症性、非免疫原性である必要があり、被験者への投与時に他の望ましくない反応を欠いている。Remington’s Pharmaceutical Sciences、同書に記載されているものなど、標準の薬学的処方技術を使用することができる。非経口投与のための適切な医薬担体には、例えば、滅菌水、生理食塩水、静菌性生理食塩水(約0.9%mg/mlベンジルアルコールを含む生理食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、乳酸リンゲル液などが含まれる。組成物を(例えばハードゼラチンまたはシクロデキストランのコーティング内に)カプセル化するための方法は、当技術分野において既知である(Baker,et al.,「Controlled Release of Biological Active Agents」,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ,1986)。
【0163】
溶解または分散された有効成分をその中に含む薬理学的組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されている。典型的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射剤として調製されるが、使用前に液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態も調製することができる。製剤は、選択された投与経路にしたがって変更される(例えば溶液、乳濁液、カプセル)。
【0164】
医薬組成物用の薬学的に許容される担体はまた、抗癌剤などの薬物を同伴またはカプセル化するための当技術分野に既知である送達システムを含むことができる。いくらかの実施形態において、開示された化合物は、例えばリポソーム、ナノ粒子、ナノスフェア、ナノディスク、デンドリマーなどを含む、そのような送達システムで使用することができる。例えば、Farokhzad,O.C.,Jon,S.,Khademhosseini,A.,Tran,T.N.,Lavan,D.A.,およびLanger,R.(2004).「Nanoparticle-aptamer bioconjugates:a new approach for targeting prostate cancer cells」.Cancer Res.,64,7668-72;Dass,C.R.(2002).「Vehicles for oligonucleotide delivery to tumours」.J.Pharm.Pharmacol.,54,3-27;Lysik,M.A.,およびWu-Pong,S.(2003).「Innovations in oligonucleotide drug delivery」.J.Pharm.Sci.,92,1559-73;Shoji,Y.,およびNakashima,H.(2004).「Current status of delivery systems to improve target efficacy of oligonucleotides」.Curr.Pharm.Des.,10,785-96;Allen,T.M.,およびCullis,P.R.(2004).「Drug delivery systems:entering the mainstream」.Science,303,1818-22を参照されたい。この段落で引用された各参考文献の全教示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0165】
以下の実施例は、好ましい実施形態を実証するために含まれる。
【0166】
実施例
方法
ペプチド合成およびコンジュゲーション
SBK標的化ペプチド(例えばGEGDDFNWEQVNTLTKPTSD(配列番号5))およびスクランブル(GTQDETGNFDWPVSEDLNKT(配列番号47))ペプチドは、ケースウエスタンリザーブ大学での合成装置で合成されたか、PolyPeptide Group(サンディエゴ、CA)から購入された。N末端グリシンまたはグリシン/セリンスペーサを合成中にペプチドに付加した。合成後、各ペプチドスペーサのN末端グリシン残基は、N末端アミンに連結しているスクシンイミド基とフルオロフォアとの間に5炭素スペーサを有するTexas Red(TR)-X(単一異性体)と特異的に連結した。代わりに、ペプチドは、インドシアニングリーン(ICG)と連結した。種々の長さのアミノ酸スペーサもまた、ペプチド合成中に付加することができる。N末端システイン残基もまた、コンジュゲーションに使用することができる。
【0167】
細胞培養および異所性異種移植片脇腹腫瘍インプラント
ヒトU87-MGおよびLN-229神経膠腫細胞株をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(マナサス、VA、USA)から購入し、培養した。NIH無胸腺ヌードマウス(到着時、5~8週齢および20~25g;NCI-NIH)を、施設の方針にしたがってケースウェスタンリザーブ大学の無胸腺動物コア施設で維持した。すべての動物プロトコルは、施設内動物管理使用委員会(IACUC)により承認された。細胞をPBSおよびBD MATRIGELマトリックス(BDバイオサイエンス、フランクリンレイクス、NJ、USA)の1:1混合物で希釈し、ヌード無胸腺マウス(NCr-nu/+、NCr-nu/nu、各20~25g)の右脇腹に注射した。Matrigel細胞混合物を26ゲージ針が取り付けられた1mlシリンジにロードし、氷上で維持した。混合物をマウスの右脇腹領域で皮下に注射した。脇腹の腫瘍を2週間から3週間成長させた。各脇腹に1.4~2×10個の細胞を移植した。腫瘍の位置をGFP蛍光と関連付けるため、パーキンエルマーMAESTRO FLEXインビボイメージングシステムを使用してマウスを画像化した。インビボ分析のため、吸入イソフルラン/酸素でマウスに麻酔をかけて画像化した。エクスビボ分析のため、断頭によりマウスを犠牲にした。その後、脇腹腫瘍を切除して画像化した。
【0168】
脇腹の腫瘍のインビボイメージング
異所性(脇腹)腫瘍を有するヌードマウスを、通常、腫瘍の開始後3週間から6週間画像化した。同所性(頭蓋内)腫瘍を有するヌードマウスを、通常、腫瘍細胞移植後7日から14日間画像化した。フルオロフォア-コンジュゲートPTPμペプチドを100μM~200μMに希釈し、側方尾静脈を介して注射し、所望の用量の薬剤、一般に100nmol/kg~400nmol/kgを投与した。緑色蛍光タンパク質(GFP)発現腫瘍細胞を使用して腫瘍増殖および/または遊走をモニターするのを容易にする動物では、GFPに対して限定されたスペクトルの重なりを有するフルオロフォアを使用した。特定の組織のインビボおよびエクスビボ画像は、所与のフルオロフォアのためにメーカー推奨の励起および発光フィルタならびにビルトイン自動露出特徴を有するIVISスペクトルインビボイメージングシステム(パーキンエルマー、ウォルサム、MA、USA)を使用して取得された。以下は、異なるフルオロフォアのために使用されたいくらかのフィルタ対の例である:GFPについては、465/520;Texas Red、570/620;Cy5、640/680;IR800CW、745/800;インドシアニングリーン(ICG)、745/820。バックグラウンド画像は、ベースライン測定を可能にするため、すべての蛍光ペプチドを注射する前に獲得された。動物は、ペプチドを注射した後10分間、必要に応じて10分の間隔で2時間まで画像化された。いくらかの蛍光ペプチドについては、追加のインビボ画像を8時間から24時間で獲得した。最終のインビボ画像化に続いて、マウスを安楽死させた。脇腹腫瘍または頭蓋内腫瘍を有する無傷の脳は、目的の他の臓器と共に切除され、エクスビボで画像化された。画像分析のためにデータをLivingImageソフトウエア(パーキンエルマー)にインポートし、ビニングを1に設定した。対象領域(ROI)分析を使用して、定義されたサイズのROIを使用して特定の位置で、または体もしくは器官の輪郭を描くROIを使用してマウス全体または器官で得られた蛍光シグナルを調べた。LivingImageソフトウエアにより算出された平均放射強度単位は、各ROIについて得られた。各蛍光PTPμペプチドは、少なくとも3匹の担癌動物で試験された。マイクロソフトエクセルおよび独立したスチューデントのt検定を使用して統計解析を実行した。スペクトル蛍光画像も、GFPのための適切なフィルタを使用するMaestro FLEXインビボイメージングシステムを使用して得られた(腫瘍;励起=445nm~490nm、発光=515nmロングパスフィルタ、収集セッティング=10nmステップで500~720)、TR(ペプチド:励起=575nm~605nm、発光=645nm;収集セッティング=10nmステップで630~850)、またはAlexa-750(ペプチド;励起=671nm~705nm、発光=750nmロングパスフィルタ、収集セッティング=10nmステップで730~950)。収集セッティングは、GFPについては53ミリ秒であり、TRまたはAlexa-750標識ペプチドのいずれかについては1000ミリ秒であった。ペプチド注射の前、皮膚を通じてバックグラウンド画像を獲得し、自家蛍光スペクトルを提供した。ペプチド注射の後、蛍光画像を2時間から3時間、5分間隔から15分間隔で獲得した。マルチスペクトル蛍光画像は、Maestroソフトウエア(Cambridge Research&Instrumentation,Inc、ワーバン、MA)を使用してバックグラウンドを差し引き、混合を解除して、スペクトル的に自家蛍光動物シグナルをペプチドシグナルから分離した。対象領域(ROI)を腫瘍または非腫瘍皮膚で選択した。動物の表面で測定された光子でペプチドシグナルについてのピクセル値を、これらのROI内で決定した。より高いピクセル値は、腫瘍の存在に対応していた。腫瘍ROIにおけるピクセル値は、非腫瘍ROIおよびペプチド濃度に対して正規化され、その後プロットされた。脇腹腫瘍を含む少なくとも3匹の動物で各PTPμペプチドを試験した。マイクロソフトエクセルおよび独立したスチューデントのt検定を使用して統計解析を実行した。
【0169】
腫瘍のエクスビボイメージング
生きた担癌マウスにおけるSBKペプチド剤の注射後、エクスビボイメージングを実行し、非結合の薬剤のクリアランスを可能にした。非結合の薬剤のクリアランスについて種々の間隔の後、動物を犠牲にし、エクスビボ光学イメージングおよび組織学のために脳を切除した。スペクトルまたはMAESTRO FLEXインビボイメージングシステム(Cambridge Research&Instrumentation(CRi)、ワーバン、MA)のいずれかを用いるイメージングを以前記載されたように実行した。切除された脳全体を、記載されているようにGFP(腫瘍細胞)に適切なフィルタおよび種々のフルオロフォアを使用して画像化した。
【0170】
同所性異種移植片頭蓋内腫瘍
NIH無胸腺ヌードメスマウス(NCr-nu/+、NCr-nu/nu)を、施設内動物管理使用委員会承認の動物プロトコルにしたがってケースウェスタンリザーブ大学の無胸腺動物コア施設で繁殖させ、画像研究ケースセンターに収容した。ヒトU-87MG神経膠腫細胞をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから得た。CNS-1齧歯類神経膠腫細胞をMariano S.Viapianoから得た。SJ-GBM2細胞は、GBMを有する死後5年の女性患者に由来し、小児腫瘍研究グループ細胞株&異種移植片リポジトリから得た。示唆されている場合、細胞をレンチウイルスに感染させて緑色蛍光タンパク質(GFP)またはm-Cherryを発現させ、記載されているように、腫瘍細胞の頭蓋内移植を実施した。簡潔に言うと、6週齢から7週齢のマウスに麻酔をかけ、定位齧歯動物フレーム(David Kopf Instruments、タジャンガ、カリフォルニア)に固定した。ブレグマから前方0.7mmおよび側方2mmに小さい頭蓋穿孔を作った。頭蓋内移植のために細胞を採取し、10μLシリンジを使用して硬膜から-3mmの深さで右線条体に堆積させた。2×10のU-87MG細胞、4.5×10のCNS-1細胞、または3×10のSJ-GBM2細胞のすべてを注射した。針を徐々に引き抜き、切開部を縫合糸で閉じた。マウスを以下に記載されるように画像化し、腫瘍移植後8日~21日で犠牲にした。イメージングおよび組織学的処理のために脳組織を回収した。
【0171】
頭蓋内腫瘍のインビボラベリング
頭蓋内腫瘍を有するヌードマウスを、GBM細胞移植後9日間から12日に画像化した。フルオロフォアコンジュゲートPTPμペプチドを、尾静脈を通じて注射した。非結合のPTPμペプチドのクリアランスのための25分のインキュベーション後、動物を犠牲にし、脳を除去し、1mm間隔で全体または冠状断面にスライスしたもののいずれかを画像化した。腫瘍を含む各脳切片を黒いスライド上に配置し、上述したようにスペクトルまたはMaestro FLEXインビボイメージングシステムのいずれかを使用して調べた。頭蓋内腫瘍を含む未処理の脳を使用して、自家蛍光スペクトルを提供した。ROIを各脳スライスの腫瘍領域で選択した。スライスから測定した光子でペプチドシグナルについてのピクセル値を、これらのROI内で決定した。マルチスペクトル蛍光画像は、以前記載されたようにMaestroソフトウエアを使用してバックグラウンドを差し引き、分析した。マイクロソフトエクセルおよび独立したスチューデントのt検定を使用して統計解析を実行した。
【0172】
結果
図1から図7は、異所性異種移植片脇腹U87腫瘍インプラントを有するマウスに投与された種々のイメージング剤の結合およびインビボ平均放射効率を比較する。イメージング剤は、ポリグリシンもしくはグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているSBK標的化ペプチド、またはフルオロフォアに直接結合しているか、ポリグリシンもしくはグリシン/セリンスペーサを有する対照のスクランブルペプチドを含む。
【0173】
図1は、異所性異種移植片脇腹U87腫瘍インプラントを有するマウスに投与された第1の薬剤(ペプチドスペーサがないフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド1)、第2の薬剤(ポリグリシンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド2)、および対照の薬剤(ポリグリシンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル)のインビボ平均放射効率を示すプロットを例証する。マウスの脇腹腫瘍のインビボイメージングは、ポリグリシンペプチドスペーサを含む第2の薬剤が、スペーサがない第1の薬剤およびポリグリシンペプチドスペーサを含む対照の薬剤と比較して上昇した平均放射効率を有していることを示す。
【0174】
図2は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスまたはPTPmuを過剰発現する異所性異種移植片脇腹U87腫瘍インプラントを有するマウスに投与された第2の薬剤(ポリグリシンスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド2)および第3の薬剤(グリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)のインビボ平均放射効率を示すプロットを例証する。U87脇腹腫瘍およびPTPmuを過剰発現するU87脇腹腫瘍のインビボイメージングは、グリシン/セリンペプチドスペーサを含む第3の薬剤が、U87脇腹腫瘍およびPTPmuを過剰発現するU87脇腹腫瘍の両方でポリグリシンスペーサを有する第2の薬剤と比較して、上昇した平均放射効率を有していることを示す。
【0175】
図3は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスまたはPTPmuを過剰発現する異所性異種移植片脇腹U87腫瘍インプラントを有するマウスに投与された第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)および第4の薬剤(第2のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド4)のインビボ平均放射効率を示すプロットを例証する。
【0176】
図4は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第1の薬剤(ペプチドスペーサがないフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド1)および対照の薬剤(ペプチド1のポリグリシンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル1)の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
【0177】
図5は、異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第2の薬剤(ポリグリシンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド2)、第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)、および対照の薬剤(ペプチド2のポリグリシンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル2、ならびにペプチド3のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル3)の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
【0178】
図6は、PTPmuを過剰発現する異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第2の薬剤(ポリグリシンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド2)、第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)、および対照の薬剤(ペプチド2のポリグリシンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル2、ならびにペプチドを3のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル3)の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
【0179】
図7は、PTPmuを過剰発現する異所性異種移植片U87脇腹腫瘍インプラントを有するマウスへのインビボ投与後の第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)、第4の薬剤(第2のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド4)、および対照の薬剤(ペプチド3のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル3、ならびにペプチドを4のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル4)の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
【0180】
図8から図12は、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍を有するマウスに投与された種々のイメージング剤の結合およびインビボ平均放射効率を比較する。イメージング剤は、ポリグリシンもしくはグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているSBK標的化ペプチド、またはフルオロフォアに直接結合しているか、ポリグリシンもしくはグリシン/セリンスペーサを有する対照のスクランブルペプチドを含む。
【0181】
図8は、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍を有するマウスへのインビボ投与後の対照の薬剤(ポリグリシンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル)と比較した第1の薬剤(ペプチドスペーサがないフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド1)の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
【0182】
図9は、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍を有するマウスへのインビボ投与後の対照の薬剤(ペプチド3のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル3)と比較した第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)の平均放射効率を示すエクスビボ画像およびグラフを例証する。
【0183】
図10は、第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)、第4の薬剤(第2のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド4)、および対照の薬剤(ペプチド3のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル3、ならびにペプチド4のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル4)のマウスへのインビボ投与後の同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍または同所性異種移植片LN229頭蓋内腫瘍のエクスビボ画像を例証する。
【0184】
図11は、第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)、第4の薬剤(第2のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド4)、および対照の薬剤(ペプチド3のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル3、ならびにペプチド4のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル4)のマウスへのインビボ投与後の脳の白黒写真に重ねられたエクスビボマエストロ画像を例証する。
【0185】
図12は、同所性異種移植片U87頭蓋内腫瘍を有するマウスへのインビボ投与後の第3の薬剤(グリシン/セリンペプチドスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド3)、第4の薬剤(第2のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合したSBKを含む、ペプチド4)、および対照の薬剤(ペプチド3のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル3、ならびにペプチド4のグリシン/セリンスペーサを有するフルオロフォアに結合しているスクランブルペプチドを含む、スクランブル4)の最大シグナル強度を示すグラフを例証する。
【0186】
本発明が、その好ましい実施形態を参照して特に示され、説明されているが、添付の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲を逸脱せず、形態および詳細における種々の変更がなされ得ることは当業者により理解されるであろう。前述の明細書に引用されたすべての特許、刊行物および参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023536961000001.app
【国際調査報告】