IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アー・ベー・ベー・パワー・グリッズ・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特表-変圧器コアおよび変圧器 図1
  • 特表-変圧器コアおよび変圧器 図2a
  • 特表-変圧器コアおよび変圧器 図2b
  • 特表-変圧器コアおよび変圧器 図3
  • 特表-変圧器コアおよび変圧器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】変圧器コアおよび変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20230823BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H01F30/10 T
H01F30/10 A
H01F27/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507739
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021071617
(87)【国際公開番号】W WO2022029100
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】20189858.2
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ-メルカート,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョン-ミン
(57)【要約】
第1のヨークと、第2のヨークと、カラム主軸(8)を有し、第1のヨークと第2のヨークとの間に延在しているカラム(6)と、剛性部材主軸(14)を有する長尺状剛性部材(12)を備える長尺状クランピング構造(10)とを備える、変圧器コアが提供される。カラム(6)は、カラム主軸(8)に対して横断するように向けられた開口主軸(18)を有する長尺状開口(16)を含む。剛性部材(12)は、剛性部材主軸(14)が開口主軸(18)に平行に向けられるように長尺状開口(16)内に位置決めされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器コアであって、
第1のヨーク(2)と、
第2のヨーク(4)と、
カラム主軸(8)を有し、前記第1のヨーク(2)と前記第2のヨーク(4)との間に延在しているカラム(6)と、
剛性部材主軸(14)を有する長尺状剛性部材(12)を備える長尺状クランピング構造(10)とを備え、
前記カラム(6)は、前記カラム主軸(8)に対して横断するように向けられた開口主軸(18)を有する長尺状開口(16)を含み、
前記剛性部材(12)は、前記剛性部材主軸(14)が前記開口主軸(18)に平行に向けられるように前記長尺状開口(16)内に位置決めされ、
前記長尺状クランピング構造(10)は、第1の端部部分(20)と、反対側の第2の端部部分(22)とを備え、前記第1および第2の端部部分(20,22)は、前記クランピング構造(10)を取り囲む前記カラム(6)の一部を圧縮するように構成されており、
前記長尺状クランピング構造(10)の前記第1の端部部分(20)および/または前記第2の端部部分(22)は、円錐形状ヘッド部分(26,26′)を有する固定部材(24,24′)を備え、
前記変圧器コアは、前記固定部材(24,24′)の前記円錐形状ヘッド部分(26,26′)の周りに位置決めされた少なくとも1つのワッシャをさらに備え、
前記長尺状クランピング構造(10)は、前記剛性部材(12)と前記長尺状開口(16)の内面との間に位置決めされて、前記剛性部材(12)と前記カラム(6)との間の隔離を実現するように構成された絶縁管(32)をさらに備え、
前記ワッシャは、前記絶縁管(32)の一部として形成される、変圧器コア。
【請求項2】
前記長尺状開口(16)は、前記固定部材(24,24′)の前記円錐形状ヘッド部分(26,26′)に対応して成形された少なくとも1つの円錐端部部分(30,30′)を備え、前記変圧器コアは、前記固定部材(24,24′)の前記円錐形状ヘッド部分(26,26′)が完全に前記長尺状開口(16)内に位置決めされるように設計されている、請求項1に記載の変圧器コア。
【請求項3】
前記固定部材(24,24′)は、前記剛性部材(12)にねじ留め可能に接続されたねじを備える、請求項1または2に記載の変圧器コア。
【請求項4】
前記少なくとも1つのワッシャは、電気絶縁材料でできている、請求項1~3のいずれか1項に記載の変圧器コア。
【請求項5】
先述の前記長尺状クランピング構造10と同様に構築された少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造(10′,10″,10′″)をさらに備え、好ましくは、前記少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造(10′,10″,10′″)の前記長尺状剛性部材は、先述の前記長尺状クランピング構造(10)の前記長尺状剛性部材(12)に平行に向けられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器コア。
【請求項6】
前記カラム(6)に沿った長尺状クランピング構造の列が形成されるように少なくとも3つの長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)を備え、前記少なくとも3つの長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)は、第1の長尺状クランピング構造(10)と、第2の長尺状クランピング構造(10′)と、第3の長尺状クランピング構造(10″)とをその順序で備え、前記第1の長尺状クランピング構造(10)と前記第2の長尺状クランピング構造(10′)との間の第1の距離(d1)は、前記第2の長尺状クランピング構造(10′)と前記第3の長尺状クランピング構造(10″)との間の第2の距離(d2)とは異なる、請求項5に記載の変圧器コア。
【請求項7】
前記長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)の列は、前記長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)間の前記距離(d1,d2,d3)が前記第1のヨーク(2)から離れるに従って大きくなるように形成され、好ましくは、前記第1のヨーク(2)は底部ヨークであり、前記第2のヨーク(4)は上部ヨークである、請求項6に記載の変圧器コア。
【請求項8】
少なくとも1つのさらなるカラム(6′)をさらに備え、前記少なくとも1つのさらなるカラム(6′)の主軸(8′)および先述の前記カラム(6)の前記主軸(8)は、共通の平面内に位置決めされ、前記長尺状開口(16)の前記開口主軸(18)はさらに、前記平面に対して垂直に向けられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器コア。
【請求項9】
前記少なくとも1つのさらなるカラム(6′)は、先述の前記カラム(6)と同様に構築される、請求項8に記載の変圧器コア。
【請求項10】
先行する請求項のいずれか1項に記載の変圧器コアと、前記カラム(6)の周りに巻回された巻線とを備える、変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変圧器コアに関し、より特定的には、剛性が向上した変圧器コアに関する。さらに、本開示は、このような変圧器コアを備える変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変圧器は、一般に、強磁性材料からなるコアに取り付けられた巻線を備える。これらのコアは、その下端が底部ヨークに接続されており、その上端が上部ヨークに接続されている。これらのヨークおよびカラムは、一般に、磁気シート、たとえば方向性または非方向性磁気シートの積層体として組み立てられる。さらに、底部ヨークおよび上部ヨークをクランプして圧縮するためのフレームを使用することが知られている。
【0003】
しかし、動的荷重、たとえば地震活動によって引き起こされる振動荷重の特定の場合に、変圧器アセンブリの構造、すなわち「変圧器フレーム構造」は、アセンブリの重要部品に対して作用する高応力レベルが発生し得るように変位させられる場合がある。これは、疲労および亀裂伝播機構ならびに変圧器の故障を生じさせるおそれがある。たとえば変圧器が原子力産業、風力産業、海洋産業および他の産業の分野で使用される場合には、対応する荷重が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
変圧器の故障のリスクを低下させるための技術を向上させる必要がある。特に、変圧器フレーム構造における亀裂形成のリスクを緩和する技術が必要である。これらの目的は、独立請求項によって達成される。従属請求項は、好ましい実施形態を参照する。
【0005】
本開示に従って、第1のヨークと、第2のヨークと、カラム主軸を有し、上記第1のヨークと上記第2のヨークとの間に延在しているカラムと、剛性部材主軸を有する長尺状剛性部材を備える長尺状クランピング構造とを備える、変圧器コアが提供される。上記カラムは、上記カラム主軸に対して横断するように向けられた開口主軸を有する長尺状開口を含む。上記剛性部材は、上記剛性部材主軸が上記開口主軸に平行に向けられるように上記長尺状開口内に位置決めされる。
【0006】
長尺状クランピング構造は、カラムの制御可能な剛性を実現することを可能にする。このようにして、カラムおよび変圧器コア全体の機械的特性を制御するまたは影響を及ぼすことができる。カラムの剛性は、変圧器コアの動的応答および振動荷重または衝撃荷重などの外部荷重に対する変圧器の動的応答に大きな影響を及ぼす。さらに、それは、このような荷重に応答して変圧器コアによって生成されるノイズの品質に影響を及ぼす。より具体的には、長尺状クランピング構造は、変圧器コアの剛性の拡大を実現することを可能にし、その結果、外部荷重に対する変圧器の応答挙動を向上させる。
【0007】
変圧器コアの剛性は、特に振動荷重に対する変圧器の動的応答において支配的な役割を果たす。変圧器コアの構造剛性は、変圧器コアの機械的共振挙動および対応する関連モード形状に直接影響を及ぼす。一般に、機械的全体共振周波数が低いと、振動中の構造の変位が大きくなるため、変圧器フレーム構造の重要部品に高応力レベルが生じる。コアのカラムの剛性およびコンパクトさは、コアの機械的共振が最低かつ支配的になることに関する主な要因である。これは、カラムの剛性と質量との比率がその限りにおいて好ましくないことに起因する。変圧器の側面図を示す図2aおよび図2bに概略的に描かれているように、最も重大な振動モードは、カラムの縦曲げを伴うものである。長尺状クランピング構造は、カラムの曲げ剛性の増大を実現し、このようにして変圧器コアの機械的共振周波数の増大を実現することを可能にし、その結果、応力レベルが減少する。したがって、変圧器の故障のリスクの低下を実現することができる。
【0008】
さまざまな実施形態は、好ましくは、以下の特徴を実現し得る。
好ましくは、上記カラムは、シート、たとえば方向性または非方向性シートの積層体を備える。上記長尺状クランピング構造は、互いに対するシートの移動を減少させることを可能にするので、このような場合に特に適している。
【0009】
好ましくは、上記長尺状クランピング構造は、第1の端部部分と、反対側の第2の端部部分とを備え、上記第1および第2の端部部分は、上記長尺状クランピング構造を取り囲む上記カラムの一部を圧縮するように構成されている。これは、上記カラムを圧縮するまたは締める力を実現することを可能にする。このようにして、上記カラムの剛性をさらに向上させることができる。
【0010】
好ましくは、上記長尺状クランピング構造の上記第1の端部部分および/または上記第2の端部部分は、円錐形状ヘッド部分を有する固定部材を備える。上記円錐形状ヘッド部分は、特に効果的な圧縮力を生成することを手助けする。
【0011】
好ましくは、上記固定部材は、たとえば、皿頭ボルトを備え、または皿頭ボルトによって形成される。
【0012】
好ましくは、上記長尺状開口は、上記固定部材の上記円錐形状ヘッド部分に対応して成形された少なくとも1つの円錐端部部分を備え、上記変圧器コアは、好ましくは、上記固定部材の上記円錐形状ヘッド部分が完全に上記長尺状開口内に位置決めされるように設計されている。したがって、上記カラムの周りに巻回された上記変圧器のコイルの巻線に対する上記固定部材の悪影響を排除または少なくとも緩和することができる。
【0013】
好ましくは、上記カラムは、上記カラム主軸に平行に延在する少なくとも1つの脚部プレートを備え、上記長尺状開口の上記少なくとも1つの円錐端部部分は、上記少なくとも1つの脚部プレートに形成される。
【0014】
好ましくは、上記固定部材は、上記剛性部材にねじ留め可能に接続されたねじを備える。これは、上記カラムに対して作用する制御可能な圧縮力を、特に好適で扱いやすい態様で実現することを可能にする。さらに、これは、変圧器コアの組み立てを容易にする。
【0015】
好ましくは、上記変圧器コアは、上記固定部材の上記円錐形状ヘッド部分の周りに位置決めされた少なくとも1つのワッシャをさらに備える。
【0016】
好ましくは、上記ワッシャは、絶縁材料からなる。これは、組み立て中に上記変圧器コアの部品に損傷を与えるリスクを緩和することを可能にする。
【0017】
好ましくは、上記長尺状クランピング構造は、上記剛性部材と上記長尺状開口の内面との間に位置決めされて、上記剛性部材と上記カラムとの間の隔離を実現するように構成された絶縁管を備える。上記絶縁管は、可撓性絶縁管であってもよい。
【0018】
好ましくは、上記ワッシャは、上記絶縁管の一部として形成される。言い換えれば、上記絶縁管は、好ましくは、上記固定部材の上記円錐形状ヘッド部分の外端まで延在している。好ましくは、上記絶縁管は、上記長尺状開口の上記円錐端部部分に直接的に隣接した上記カラムの周囲外面セクションと同一平面上で終了するように設計されている。代替的に、上記ワッシャは、好ましくは、上記固定部材の上記円錐形状ヘッド部分と上記絶縁管との間に位置決めされる。好ましくは、いずれの場合でも、上記絶縁管および上記ワッシャは、上記カラムの上記周囲外面セクションよりも上に突出しないように形成される。
【0019】
好ましくは、上記変圧器コアは、先述の上記長尺状クランピング構造と同様に構築された少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造を備える。好ましくは、上記少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造の上記長尺状剛性部材は、先述の上記長尺状クランピング構造の上記長尺状剛性部材に平行に向けられる。上記少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造は、上記カラムの剛性およびコンパクトさのさらなる向上を実現することを可能にする。
【0020】
たとえば、好ましくは、上記カラムに沿った長尺状クランピング構造の列が形成されるように少なくとも3つの長尺状クランピング構造が設けられ、上記少なくとも3つの長尺状クランピング構造は、第1の長尺状クランピング構造と、第2の長尺状クランピング構造と、第3の長尺状クランピング構造とをその順序で備え、上記第1の長尺状クランピング構造と上記第2の長尺状クランピング構造との間の第1の距離は、上記第2の長尺状クランピング構造と上記第3の長尺状クランピング構造との間の第2の距離とは異なる。これは、特に少ない数の長尺状クランピング構造によって上記カラムの特定レベルの剛性およびコンパクトさを実現することを可能にする。
【0021】
好ましくは、上記長尺状クランピング構造の列は、上記長尺状クランピング構造間の上記距離が上記第1のヨークから離れるに従って大きくなるように形成され、好ましくは、上記第1のヨークは底部ヨークであり、上記第2のヨークは上部ヨークである。
【0022】
好ましくは、上記変圧器コアは、少なくとも1つのさらなるカラムをさらに備え、上記少なくとも1つのさらなるカラムの主軸および先述の上記カラムの上記主軸は、共通の平面内に位置決めされ、上記長尺状開口の上記開口主軸はさらに、上記平面に対して垂直に向けられる。
【0023】
好ましくは、上記少なくとも1つのさらなるカラムは、先述の上記カラムと同様に構築される。好ましくは、上記少なくとも1つのさらなるカラムは、対応する長尺状開口を備え、対応するさらなる長尺状クランピング構造の剛性部材は、上記長尺状開口内に同様に位置決めされる。
【0024】
本開示のさらなる局面に従って、本開示に係る変圧器コアと、上記カラムの周りに巻回された巻線とを備える、変圧器が提供される。
【0025】
添付の図面に示される好ましい例示的な実施形態を参照して、本開示の主題についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示に係る、カラムとヨークとを備える変圧器コアの概略正面図である。
図2a】カラムの縦曲げを示す変圧器コアの概略側面図である。
図2b】カラムの縦曲げを示す変圧器コアの概略側面図である。
図3】本開示に係る、長尺状クランピング構造の概略断面図である。
図4】別に形成されたワッシャを備える図3の長尺状クランピング構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照して、本開示の例示的な実施形態について説明する。図中、同一または同様の参照符号は、同一または同様の要素を示す。実施形態の特徴は、特に断りのない限り、互いに組み合わせられてもよい。
【0028】
図1は、本開示に係る変圧器コアの概略正面図である。変圧器コアを備える変圧器は、たとえば配電変圧器であってもよい。変圧器コアは、第1のヨーク2と、第2のヨーク4と、カラム6とを備える。第1のヨーク2は下部または底部ヨークであり、第2のヨーク4は上部ヨークである。カラム6は、第1のヨーク2と第2のヨーク4との間に延在している。カラム6は、好ましくは少なくとも本質的に垂直に向けられたカラム主軸8を有する。カラム主軸8に対して垂直なカラム6の断面は、好ましくは、少なくとも一次近似で円形である。
【0029】
変圧器コアは、少なくとも1つのさらなるカラム6′,6″、たとえば2つのさらなるカラム6′,6″をさらに備え、少なくとも1つのさらなるカラム6′,6″の主軸8′,8″および先述のカラム6の主軸8は、共通の平面、たとえば垂直平面内に位置決めされる。少なくとも1つのさらなるカラム6′,6″は、好ましくは、先述のカラム6と同様に構築されている。変圧器は、本開示に係る変圧器コアと、カラム6,6,6″の各々の周りに巻回された巻線とを備える。
【0030】
変圧器コアは、長尺状クランピング構造10をさらに備える。図3は、長尺状クランピング構造10およびカラム6の周囲部分の概略断面図である。なお、図3は、単に認識性の向上のために、対応する部品間の距離を拡大して示している。図3の断面図は、カラム6,6′,6″の主軸8,8′,8″が位置決めされた共通の平面に垂直に、すなわち図1の図面平面に垂直な平面において、とられている。
【0031】
長尺状クランピング構造10は、剛性部材主軸14を有する長尺状剛性部材12を備える。剛性部材12は、好ましくは、金属、特に鋼を含む材料でできている。剛性部材12は、好ましくは管形状、たとえば中空コアボルトの形状をしている。たとえば、剛性部材12は、中空コアボルトの形状の鋼管である。
【0032】
カラム6は、カラム主軸8に対して横断するように、たとえばカラム主軸8に対して垂直に向けられた開口主軸18を有する長尺状開口16を含む。好ましくは、開口主軸18は、水平に向けられている。剛性部材12は、剛性部材主軸14が開口主軸18に平行に向けられるように長尺状開口16内に位置決めされる。
【0033】
図2aおよび図2bは、変圧器コアに対して作用する荷重の影響を一般的に示す先行技術の変圧器コアの概略的に示された側面図である。変圧器コアは、底部ヨーク200と、カラム600と、上部ヨーク400とを備える。図2aは、荷重が変圧器コアに対して作用していない変圧器コアの状態を示しており、図2bは、矢印によって示されるように荷重が変圧器コアに対して作用している状態を示している。荷重は、図2bに示されるような変圧器コアの変形を生じさせ、この変形は、上記のように、亀裂機構のリスクの増大を伴い、場合によっては変圧器の故障を生じさせるので、一般に望ましくない。本開示によれば、変圧器コアの対応する望ましくない変形を防止することができるように、長尺状クランピング構造の使用下で、カラムおよび変圧器コアの剛性を好適に高めることができる。
【0034】
好ましくは、長尺状剛性部材12は、長尺状開口16の長さの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%にわたって延在するように設計されている。好ましくは、長尺状剛性部材12の両端は、カラム6の外面を越えて突出していない。
【0035】
長尺状クランピング構造10は、第1の端部部分20と、反対側の第2の端部部分22とを備える。第1および第2の端部部分20,22は、長尺状クランピング構造10を取り囲むカラム6の一部を圧縮するように構成されている。この目的のために、長尺状クランピング構造10の第1の端部部分20および/または第2の端部部分22は、円錐形状ヘッド部分26,26′を有する固定部材24,24′を備える。好ましくは、固定部材24,24′は、皿頭ボルトである。好ましくは、固定部材24,24′は、剛性部材12にねじ留め可能に接続されたねじ、たとえば中空コアボルトの形状を有する剛性部材12にねじ込まれたねじを備え、またはそのようなねじで形成されている。これにより、変圧器コアの組み立て中に長尺状クランピング構造10をカラム6に容易に接続することができる。
【0036】
長尺状開口16は、固定部材24,24′の円錐形状ヘッド部分26,26′に対応して成形された少なくとも1つの円錐端部部分30,30′を備える。これは、長尺状剛性部材12と組み合わせて固定部材24によって生成される、カラム6に対して作用する圧縮力の容易な微調整を可能にする。
【0037】
カラム6は、好ましくは、カラム主軸8に平行に延在する少なくとも1つの脚部プレート66を備え、この少なくとも1つの脚部プレート66に少なくとも1つの円錐端部部分30,30′が形成されている。たとえば、脚部プレート66は、カラム6の外面を形成する。特に、カラム6は、シートの積層体を備え、このシートの積層体に少なくとも1つの脚部プレート66の内面が当接している。たとえば、図3に示されるように、カラム6は、カラム主軸8に対してカラム6の両側に配置された2つの脚部プレート66を備える。
【0038】
変圧器コアは、好ましくは、固定部材24,24′の円錐形状ヘッド部分26,26′が完全に長尺状開口16内に位置決めされるように設計されている。したがって、カラム6の周りに巻回されたコイルの巻線と長尺状クランピング構造10との干渉を排除または少なくとも緩和することができる。
【0039】
長尺状クランピング構造10は、好ましくは、剛性部材12と長尺状開口16の内面との間に位置決めされて、剛性部材12とカラム6との間の隔離を実現するように構成された絶縁管32をさらに備える。たとえば、絶縁管32は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む材料でできている。好ましくは、絶縁管32は、PTFE管である。
【0040】
変圧器コアは、固定部材24,24′の円錐形状ヘッド部分26,26′の周りに位置決めされた少なくとも1つのワッシャをさらに備え得る。好ましくは、少なくとも1つのワッシャは、固定部材26,26′のヘッド部分26,26′と長尺状開口16の円錐端部部分30,30′との間に配置される。
【0041】
少なくとも1つのワッシャは、絶縁管32に関連付けられるか、または絶縁管32の一部として形成され得る。代替的に、図4の断面図に示されるように、ここでは参照符号34によって示される少なくとも1つのワッシャは、ヘッド部分26,26′と長尺状開口16の円錐端部部分30,30′の面との間に配置された絶縁ワッシャであってもよい。これは、組み立て中、たとえば固定部材26,26′を締めている最中に絶縁管32に損傷を与えるリスクを低下させる。
【0042】
図1に例示的に示されるように、変圧器コアは、好ましくは、先述の長尺状クランピング構造10と同様に構築された少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造10′,10″,10′″をさらに備える。少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造10′,10″,10′″の長尺状剛性部材は、好ましくは、先述の長尺状クランピング構造10の長尺状剛性部材12に平行に向けられる。
【0043】
たとえば、変圧器コアは、カラム6に沿った長尺状クランピング構造の列が形成されるように少なくとも3つの長尺状クランピング構造10,10′,10″,10′″を備え、少なくとも3つの長尺状クランピング構造10,10′,10″,10′″は、第1の長尺状クランピング構造10と、第2の長尺状クランピング構造10′と、第3の長尺状クランピング構造10″とをその順序で備える。第1の長尺状クランピング構造10と第2の長尺状クランピング構造10′との間の第1の距離dは、第2の長尺状クランピング構造10′と第3の長尺状クランピング構造10″との間の第2の距離dとは異なる。示されている実施形態によれば、長尺状クランピング構造10,10′,10″,10′″の列は、長尺状クランピング構造10,10′,10″,10′″間の距離d,d,dが第1のヨーク2から離れるに従って大きくなるように形成されている。たとえば、距離dは、di+1=d(i=1,2,3,...、1.05≦x≦1.5およびxi+1>x)であるように選択されてもよい。
【0044】
図面および上記の説明において本発明について詳細に説明してきたが、このような説明は、限定的ではなく説明的または例示的であるように考えられるべきである。開示されている実施形態に対する変更は、図面、本開示および添付の特許請求の範囲を検討することによって、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解および実行されることができる。特許請求の範囲において、「備える」という単語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除するものではない。特定の要素またはステップがそれぞれの請求項に記載されているという単なる事実は、これらの要素またはステップの組み合わせを有利に使用できないことを示すものではなく、具体的には、実際の請求項の従属関係に加えて、いずれのさらなる意味のある請求項の組み合わせも開示されていると考えられる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器コアであって、
第1のヨーク(2)と、
第2のヨーク(4)と、
カラム主軸(8)を有し、前記第1のヨーク(2)と前記第2のヨーク(4)との間に延在しているカラム(6)と、
剛性部材主軸(14)を有する長尺状剛性部材(12)を備える長尺状クランピング構造(10)とを備え、
前記カラム(6)は、前記カラム主軸(8)に対して横断するように向けられた開口主軸(18)を有する長尺状開口(16)を含み、
前記剛性部材(12)は、前記剛性部材主軸(14)が前記開口主軸(18)に平行に向けられるように前記長尺状開口(16)内に位置決めされ、
前記長尺状クランピング構造(10)は、第1の端部部分(20)と、反対側の第2の端部部分(22)とを備え、前記第1および第2の端部部分(20,22)は、前記クランピング構造(10)を取り囲む前記カラム(6)の一部を圧縮するように構成されており、
前記長尺状クランピング構造(10)の前記第1の端部部分(20)および/または前記第2の端部部分(22)は、円錐形状ヘッド部分(26,26′)を有する固定部材(24,24′)を備え、
前記変圧器コアは、前記固定部材(24,24′)の前記円錐形状ヘッド部分(26,26′)の周りに位置決めされた少なくとも1つのワッシャをさらに備え、
前記長尺状クランピング構造(10)は、前記剛性部材(12)と前記長尺状開口(16)の内面との間に位置決めされて、前記剛性部材(12)と前記カラム(6)との間の隔離を実現するように構成された絶縁管(32)をさらに備え、
前記ワッシャは、前記絶縁管(32)の一部として形成される、変圧器コア。
【請求項2】
前記長尺状開口(16)は、前記固定部材(24,24′)の前記円錐形状ヘッド部分(26,26′)に対応して成形された少なくとも1つの円錐端部部分(30,30′)を備え、前記変圧器コアは、前記固定部材(24,24′)の前記円錐形状ヘッド部分(26,26′)が完全に前記長尺状開口(16)内に位置決めされるように設計されている、請求項1に記載の変圧器コア。
【請求項3】
前記固定部材(24,24′)は、前記剛性部材(12)にねじ留め可能に接続されたねじを備える、請求項1または2に記載の変圧器コア。
【請求項4】
前記少なくとも1つのワッシャは、電気絶縁材料でできている、請求項1~3のいずれか1項に記載の変圧器コア。
【請求項5】
先述の前記長尺状クランピング構造10と同様に構築された少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造(10′,10″,10′″)をさらに備え、好ましくは、前記少なくとも1つのさらなる長尺状クランピング構造(10′,10″,10′″)の前記長尺状剛性部材は、先述の前記長尺状クランピング構造(10)の前記長尺状剛性部材(12)に平行に向けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の変圧器コア。
【請求項6】
前記カラム(6)に沿った長尺状クランピング構造の列が形成されるように少なくとも3つの長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)を備え、前記少なくとも3つの長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)は、第1の長尺状クランピング構造(10)と、第2の長尺状クランピング構造(10′)と、第3の長尺状クランピング構造(10″)とをその順序で備え、前記第1の長尺状クランピング構造(10)と前記第2の長尺状クランピング構造(10′)との間の第1の距離(d1)は、前記第2の長尺状クランピング構造(10′)と前記第3の長尺状クランピング構造(10″)との間の第2の距離(d2)とは異なる、請求項5に記載の変圧器コア。
【請求項7】
前記長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)の列は、前記長尺状クランピング構造(10,10′,10″,10′″)間の前記距離(d1,d2,d3)が前記第1のヨーク(2)から離れるに従って大きくなるように形成され、好ましくは、前記第1のヨーク(2)は底部ヨークであり、前記第2のヨーク(4)は上部ヨークである、請求項6に記載の変圧器コア。
【請求項8】
少なくとも1つのさらなるカラム(6′)をさらに備え、前記少なくとも1つのさらなるカラム(6′)の主軸(8′)および先述の前記カラム(6)の前記主軸(8)は、共通の平面内に位置決めされ、前記長尺状開口(16)の前記開口主軸(18)はさらに、前記平面に対して垂直に向けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の変圧器コア。
【請求項9】
前記少なくとも1つのさらなるカラム(6′)は、先述の前記カラム(6)と同様に構築される、請求項8に記載の変圧器コア。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の変圧器コアと、前記カラム(6)の周りに巻回された巻線とを備える、変圧器。
【国際調査報告】