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特表2023-537001上腕骨近位部固定プレート及びその配置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】上腕骨近位部固定プレート及びその配置方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20230823BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61B17/80
A61B17/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507969
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 IB2021057030
(87)【国際公開番号】W WO2022029592
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】BE2020/5560
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039422
【氏名又は名称】ベスローテン・フェンノートシャップ・ベルトラーム
【氏名又は名称原語表記】BV BELTRAUM
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】プツェイス,ギー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL21
4C160LL33
4C160LL34
4C160LL42
4C160LL59
(57)【要約】
本発明は、上腕骨近位部に固定するための固定プレート(2)に関する。固定プレートは、上腕骨(25)の大結節(26)のフットプレートから遠位に取り付けるためのヘッド部(3)を備える。ヘッド部は、角度的に安定したねじ(24)用の内ねじ付き第1ねじ孔(5)と、複数の縫合孔(7)を有する。複数の第1のねじ孔のうち、軸部(4)から最も離れて配置された2つは、下向きねじ(29)の上部ねじ孔(11)として提供されている。複数の縫合孔(7)のうち一つは、縫合材(28)によって、上腕骨頭部(32)の頂部(31)に取り付けられた骨固定要素(9)と、上腕骨シャフト(27)に取り付けられるためにこの頭部分(3)に下部で隣接する軸部(4)とをそれに固定するための一つの固定縫合孔(10)である。さらに、本発明は、このような固定プレート(2)とサイドアーム(16)のセット、およびこのような固定プレート(2)を用いた肩の骨折の治療方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕骨(25)の近位部に固定するための固定プレート(2)であって、
ヘッド部(3)と、底部で前記ヘッド部(3)に隣接する軸部(4)とを備え、
前記ヘッド部(3)は上腕骨(25)の大結節(26)の脚板から遠位に取り付けられるようになっており、
角度的に安定したねじ(24)を挿入するための、内ねじ溝を有する第1のねじ孔(5);および
縫合材(28)を挿入するための縫合孔(7)を備え、
前記軸部(4)が前記上腕骨のシャフト(27)に取り付けられるように設計されており、そのために、固定ねじ(35)を挿入するための第2のねじ孔(8)が設けられており、
縫合孔(7)の1つが、上腕骨頭(32)の頂部(31)に取り付けられた骨固定要素(9)を縫合材(28)により固定するための固定縫合孔(10)として設けられ、
前記軸部(4)から最も遠い位置にある2つの第1ねじ孔(5)が、下向きのねじ(29)を挿入するための上部ねじ孔(11)として提供される、固定プレート(2)。
【請求項2】
前記固定縫合孔(10)は、前記縫合材(28)を調整可能に配置するために設けられている、請求項1に記載の固定プレート(2)。
【請求項3】
前記固定縫合孔(10)は、前記縫合材(28)を挿入することができるトンネル状の空洞(14)を有し、
前記トンネル状の空洞(14)内で前記縫合材(28)を調整可能に固定するための調整手段(15)を備えている、請求項2記載の固定プレート(2)。
【請求項4】
前記固定縫合孔(10)が、前記縫合材(28)を解放可能に配置するために設けられている、請求項1~3のいずれかに記載の固定プレート(2)。
【請求項5】
前記固定縫合孔(10)は、前記ヘッド部(3)の中心に配置されている、請求項1~4のいずれかに記載の固定プレート(2)。
【請求項6】
2つ以上の前記上部ねじ孔(11)の各々の内ねじ溝が、水平面(X)に対して10°~35°の間の下向き角度(α)で配置されている長手方向軸(A)を含んでいる、請求項1~5のいずれかに記載の固定プレート(2)。
【請求項7】
2つ以上の前記上部ねじ孔(11)は、水平面(X)に対して10°から35°の間の上向き角度(β)で配置される第2の長手方向軸(B)を構成する第2の前記内ねじ溝をそれぞれ備えることを特徴とする請求項6に記載の固定プレート(2)。
【請求項8】
2つ以上の前記上部ねじ孔(11)は、それぞれ、上部入口開口(12)および下部入口開口(13)を有する8の字形状に実質的に設計されており、
前記上部入口開口(12)には第1の前記内ねじ溝が設けられ、
前記下部入口開口(13)には第2の前記内ねじ溝が設けられている、請求項6又は7に記載の固定プレート(2)。
【請求項9】
前記ヘッド部(3)から離れた側において、前記軸部(4)は、前記軸部(4)の下方に中心的に自由空洞を形成するように凹んでいる縁部(22)を備える、請求項1~8のいずれかに記載の固定プレート(2)。
【請求項10】
前記縫合材(28)及び第2の骨固定要素(33)によって小フットプレート(34)から内側にサイドアーム(16)を固定するために、前記ヘッド部(3)に解放可能に取り付けられ、第2の固定縫合孔(17)を備えるサイドアーム(16)を含む、請求項1~9のいずれかに記載の固定プレート(2)のセット。
【請求項11】
前記第2の固定縫合孔(17)は、前記縫合材(28)を調節可能に挿入するように設計されている、請求項10に記載のセット。
【請求項12】
前記サイドアーム(16)が、前記ヘッド部(3)に固定するための固定体(18)を備えている、請求項10または11に記載のセット。
【請求項13】
前記ヘッド部(3)には、前記固定体(18)を前記ヘッド部(3)に固定するために、前記固定体(18)が配置され得る凹部(50)が設けられている、請求項12に記載のセット。
【請求項14】
前記固定体(18)を前記ヘッド部(3)に固定するための取付孔(35)として構成された前記ヘッド部(3)の前記縫合孔(7)に挿入可能な取付ピン(20)を備える、請求項12または13に記載のセット。
【請求項15】
前記サイドアーム(16)は、前記固定プレート(2)に高さ調節可能に取り付けられる、請求項10~13のいずれかに記載のセット。
【請求項16】
肩の骨折を治療する方法であって、
請求項1から9のいずれかに記載の固定プレート(2)を上腕骨近位部(25)に取り付け、
ヘッド部(3)を上腕骨(25)の大結節(26)のフットプレートから遠位に配置し、
軸部(4)を、第2のねじ孔(8)の固定ねじ(35)によって、上腕骨シャフト(27)に取り付け、
角度的に安定して下方に向けられた2つのねじ(29)が、第1の上部ねじ孔(11)に挿入されて踵骨で終わり、
縫合材(28)を備えた骨固定要素(9)が上腕骨頭(32)の頂点(31)に軟骨下で取り付けられ、
縫合材(28)が上棘および下棘腱挿入部位(36)から導かれて固定縫合孔(10)に固定される、方法。
【請求項17】
固定プレート(2)が請求項10から13のいずれかに記載のセットの一部を形成し、
サイドアーム(16)は、これが脹脛溝(45)を橋渡しし、脹脛溝(45)の内側縁を越えて突き出るように固定プレート(2)のヘッド部(3)に取り付けられ、
縫合材(28)を備える第2の骨固定要素(33)が、フットプレート(34)、(45)から内側に軟骨下に取り付けられ、
縫合材(28)が、第2の固定縫合孔(17)において肩甲下筋腱を介して第2の骨固定要素(33)に固定される、請求項16の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上腕骨近位部に固定するための固定プレートであって、ヘッド部と、ヘッド部に下部で隣接する軸部とを有し、ヘッド部は、上腕骨の大結節のフットプレートから遠位に取り付けられるように設計されており、
そのために、
角度的に安定したねじを挿入するための第1のねじ孔、および
そこに縫合材を挿入するための縫合孔とを備え、
軸部が上腕骨シャフトに取り付けられるように設計されており、
そのために、そこに固定ねじを挿入するための第2ねじ孔が設けられている、固定プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
このような固定プレートは、肩の骨折を治療するために使用される。
【0003】
そのような固定プレートの例は、WO 2005/072285 A2、US 2012/0179208 A1、US 2006/0235402 A1、WO 2014/110421 A1、US 2018/0000496 A1、US 2016/0287297 A1 DE 10 2005 0743 281 A1、US 2016/0166297 A1及びUS 9,526,544 B1に記載及び描かれている。
【0004】
特定の肩の骨折では、固定プレートが上腕骨近位部に取り付けられる。
【0005】
ここでの固定プレートの軸部は、この軸部を上腕骨シャフトに固定するための前記第2ねじ孔を含んでいる。これらの第2ねじ孔の1つ以上は細長く、少なくとも部分的に内ねじを備え、および/または少なくとも部分的に内ねじを備えていないことがある。
【0006】
ヘッド部は、角度的に安定したねじを挿入するための内ねじが設けられた前記第1のねじ孔を含む。
【0007】
上腕骨に対する固定プレートの構造をさらに強化するために、典型的には、縫合糸が、上腕骨頭の周囲の腱を通して引かれ、この目的のために典型的には固定プレートの縁に配置されている前記縫合孔を介して固定プレートに固定される。
【0008】
このように十分に開発された固定システムにもかかわらず、これらの固定プレートが使用される手術手技には、多くの重大な合併症が存在する。
【0009】
このような合併症の第一の例は、手術後の上腕骨頭の後傾で、固定プレートはこの後傾を防ぐことができないことである。
【0010】
このような合併症の第二の例は、上腕骨頭がねじの上で徐々に沈下し、上腕骨頭ねじのねじ端が関節面を貫通して穿孔することである。これは、関節の破壊につながる可能性がある。
【0011】
このような合併症は主に高齢者に起こり、高齢者の弱い骨ではねじのグリップが弱くなる。
【0012】
既知の固定プレートを用いた既知の手術技術の問題は、例えば、Jonathan Barlow et al, Locking plate fixation of proximal humerus fractures in patients older than 60 years continues with a high complication rate, J Shoulder Elbow Surg (2020) 29, 1689-1694 に記載されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、前記合併症を制限することができる上腕骨近位部固定プレート、セット及び方法を提供することである。
【0014】
本発明のこの目的は、ヘッド部と、ヘッド部に下部で隣接する軸部とを有する固定プレートを提供することによって達成され、
ヘッド部は、上腕骨大結節のフットプレートから遠位に取り付けられるように設計されており、そのために
角度的に安定したねじを挿入するための、ねじ溝を有する第1のねじ孔、および
縫合材を挿入するための縫合孔であって、そのうちの1つは、上腕骨上腕骨頭の頂点に取り付けられた骨固定要素を縫合材によって固定するための固定縫合孔として設けられており、軸部から最も離れて配置された2つの第1ねじ孔は、下向きのねじをそこに挿入するための上部ねじ孔として設けられ、
軸部は、上腕骨軸に取り付けられるように設計されており、そのために、固定ねじを挿入するための第2のねじ孔が設けられている。
【0015】
前記角度的に安定なねじ、固定ねじ、縫合材及び骨固定要素と共に、固定プレートは、上腕骨近位部固定システムを形成する。
【0016】
上方、下方、水平及び垂直という用語は、前記固定プレートが典型的に上腕骨に取り付けられる前記固定プレートの位置において、対応する腕が垂れ下がった状態で立っている人を基準として見た固定プレートに関して用いられる。
【0017】
ここでの垂直面は、軸部が主に延びる面に実質的に対応し、上腕骨軸に対する軸部の理想的な支持面に実質的に一致する。
【0018】
水平面は、このような垂直面に対して横方向に、軸部に対して実質的に横方向に延びる。
【0019】
下向きねじとは、その始点が水平面から離れるようにねじ込まれたとき、その始点が水平面から最も下に位置するように、常にこの水平面のさらに下にねじ込まれるねじである。このため、ねじは水平面に対して下向きの角度を形成する。
【0020】
上向きのねじとは、その始点が水平面から離れるようにねじ込まれたとき、その始点が水平面から最も上に位置するように、常にこの水平面よりさらに上にねじ込まれるねじである。従って、ねじは、前記水平面に対して上向きの角度を形成する。
【0021】
前記骨固定要素は、様々な実施形態で知られており、実施されている。それは、典型的には、インサータに取り付けられる。ここでの骨アンカー要素は、典型的には、骨にしっかりと係合し、軟骨下骨の下に係合する。このような骨固定要素は、例えば、ねじまたはくさび、または結び目に巻き付くねじなどの形態で知られている。様々な可能な実施形態において、骨アンカー要素は、常にバーブとして骨内に取り付けられる。アンカーは、腱挿入部位から内側に軟骨下に取り付けられ、軟骨に最小限の孔をあける。この孔は、骨アンカー要素の大きさを制限することによって、できるだけ小さく保たれる。
【0022】
このような骨固定要素には、これを固定するために必要な縫合材が付属している。骨固定要素が上腕骨の頂部に配置されると、縫合材が棘上腱および棘下腱の挿入部から案内され、固定用縫合孔に固定される。
【0023】
従来、固定プレートを固定する縫合糸は、上腕骨頭周囲の腱に配置されていた。本発明によれば、上腕骨頭の骨に固定し、固定プレートに縫合することができる骨固定部材が提供される。このようにして、上腕骨頭の傾きをよりよく回避することができる。
【0024】
先行技術では、スクリューの穿孔のリスクは、最も近位の角度的に安定したスクリューで最大である。本発明によれば、踵骨も補強するために、これらの2つ以上の近位の角度的に安定したねじを非定型的に下方に向けることが提供されるようになった。これはまた、ねじが関節面を穿孔することを回避する。また、先行技術のように、水平または下方の位置から踵骨に到達するために、さらなる角度的に安定なねじを設けることもできる。
【0025】
好ましい実施形態では、固定用縫合孔は、そこに縫合材を調整可能に配置するために設けられている。
【0026】
縫合材を固定縫合穴に調整可能に挿入できるようにすることで、この縫合材をより制御可能な方法で取り付けることができる。
【0027】
具体的な実施形態では、この発明による固定プレートの固定縫合孔は、縫合材を挿入することができるトンネル状の空洞を含んでいてもよく、固定プレートは、縫合材をトンネル状の空洞に調整可能に固定するための調整手段を備えていてもよい。
【0028】
従って、例えば、トンネル状の空洞内に縫合材を止めねじによって調節可能に固定するために、トンネル状の空洞内に開口するねじ孔が固定プレートに設けられることがある。この固定プレートは、このトンネル状の空洞に縫合糸を調整可能に固定するために、ねじ孔に挿入することができる止めねじを含むセットで提供されることができる。
【0029】
あるいは、例えば、バヨネットシステムまたは偏心システムが、このようなトンネル状のキャビティ内に縫合材を調節可能に固定するために提供されてもよい。
【0030】
固定縫合穴は、さらに好ましくは、その中に縫合材を解放可能に配置するために設けられており、この縫合材を固定縫合穴の中に可逆的に配置することができるようになっている。
【0031】
この固定縫合穴は、好ましくは、ヘッド部の中心部に配置される。
【0032】
より具体的には、この固定縫合穴は、好ましくは、固定プレートの上縁で中心的に開口する第1の入口開口と、固定プレートのヘッド部で中心的に開口する第2の入口開口とを有するトンネル状のキャビティを構成する。そして、前記止めねじのためのねじ孔は、好ましくは、ヘッド部のこれら2つの入口開口部の間の中央に設けられ、ここでトンネル状の空洞に開口する。
【0033】
角度的に安定なねじのための2種類のねじ孔が知られている。
【0034】
第一のタイプは、角度的に安定したねじが可変的かつ調整可能に配置されるねじ孔に関するものであり、ここで、角度は、通常、各方向に最大15°調整することができる。
【0035】
第二のタイプは、角度的に安定したねじが、ある特定の固定された角度にのみ配置できるねじ孔に関するものである。
【0036】
本発明による固定プレートの前記上部ねじ孔を製造するために、原則として、両方のタイプのねじ孔を使用することができる。しかし、好ましくは、これらの上部ねじ孔は、第2の前記タイプに従って設計される。角度的に安定なねじの利点は、実際には、高い製造コストを相殺しない。そのような可変角度安定スクリューはまた、信頼性が低いかもしれない。したがって、衝突の危険性があり、最初の可変角度安定ねじの挿入時に、その正確な位置が十分に正確に知られておらず、次に挿入されるねじのためにねじ孔を開けるときに、既に挿入されているねじに触れる可能性がある。ドリルが損傷し、さらには破損する可能性がある。別の欠点は、衝突の場合に第2の経路を穿孔する必要があることである。
【0037】
2つ以上の上部ねじ孔の各々の内ねじ溝は、好ましくは、水平面に対して10°から35°の間、より好ましくは15°から25°の間、さらに好ましくは15°から20°の間の下方角度で配置されている長手軸を有する。さらに好ましくは、この角度は、約16°に達する。
【0038】
この下向きの角度は、最も近位のスクリューが踵にできるだけ最適に確実に到達できるようにするために設けられる。
【0039】
2つ以上の上部ねじ孔は、さらに好ましくは、それぞれ、水平面に対して10°から35°の間、好ましくは15°から25°の間、より好ましくは20°から25°の間の上向き角度で配置される第2の縦軸を含んでなる第2の内ねじ溝を備える。さらに好ましくは、この角度は、約24°に達する。
【0040】
上部ねじ孔が第1の前記内ねじ溝および第2の内ねじ溝の両方を備える場合、この同じ固定プレートは、前記合併症のリスクがある手術において、これらの合併症を回避するために最も近位のねじを下方に向けることができるように、また、これらの合併症を期待せず、最も近位のねじを従来の方法で上方に向けることができる手術において、使用できる。
【0041】
前記内ねじ溝は、好ましくは、円錐状に収束するように構成される。
【0042】
特に好ましい実施形態では、2つ以上の上部ねじ孔はそれぞれ、上部入口開口と下部入口開口とを有する実質的に8の字形に設計されており、上部入口開口は第1の前記内ねじ溝を備え、下部入口開口は第2の内ねじ溝を備えている。場合によっては、逆に、上部入口開口には第2の内ねじが設けられ、下部入口開口には第1の内ねじが設けられることもある。
【0043】
この発明の目的は、さらに、縫合材および第2の骨固定要素によってサイドアームを小フットプレートから内側に固定するために、この発明による固定プレートと、ヘッド部に解放可能に取り付けられ、第2の固定縫合孔を備えるサイドアームのセットを提供することによって達成される。
【0044】
サイドアームは、ここでは、靭帯溝を橋渡しし、靭帯溝の内側縁を越えて突出している。二頭筋溝に位置する二頭筋腱は、妨げられることなく残される。場合によっては、縫合糸と靭帯腱との間に衝突がない限り、サイドアームは靭帯溝の上方で終了することもできる。
【0045】
サイドアームは、好ましくは、1つの前記固定用縫合孔のみを備えている。このサイドアームは、ここでは、典型的には縫合糸などの縫合材をそこに固定するために設けられており、ここでは、好ましくは、この機能を果たすために最小限の設計となっている。
【0046】
第2の固定縫合孔は、固定プレートのヘッド部に設けられた上述の固定縫合孔と同様の方法で設けることができる。この第2の固定縫合孔も、好ましくは、そこに縫合材を調節可能に挿入するように設計される。
【0047】
サイドアームは、固定プレートの前部またはこの固定プレートの後部のいずれかに取り付けることができる。
【0048】
サイドアームは、好ましくは、当該サイドアームをヘッド部に固定するための固定体を備えている。
【0049】
より具体的には、固定プレートは、そのヘッド部に、固定体をヘッド部に固定するために固定体が配置される凹部を備えていてもよい。
【0050】
好ましくは、サイドアームは対称的に設計され、これは、固定プレートに対して突出する第1の直立した側で最初に取り付けられ、また、固定プレートに対して突出する第2の直立した側で180°ねじれることができる。このようにして、同じサイドアームを、左肩の肩の骨折を治療するためと、右肩の肩の骨折を治療するためとの両方に使用することができる。好ましくは、固定プレートは、直立した側面の各々に対応する前記凹部を備える。
【0051】
代替的または追加的に、固定本体は、ヘッド部の完全な幅にわたって延在するように設けられていてもよい。
【0052】
より具体的には、固定本体は、固定本体をヘッド部に固定するために、取付孔として構成されたヘッド部の前記縫合孔に挿入可能な取付ピンを備えていてもよい。
【0053】
さらに具体的には、1つまたは複数の固定ねじによって固定体をヘッド部に固定するために、固定体には1つまたは複数の固定ねじ孔が設けられ、ヘッド部には対応する1つまたは複数の固定ねじ孔が設けられていてもよい。固定体がヘッド部の完全な幅にわたって延びる場合、固定体がヘッド部上に配置されて当該ヘッド部の両側で取り付けられるように、例えばヘッド部のかかる固定ねじ孔は、より具体的にはヘッド部の反対側の側縁部に設けられることがある。
【0054】
特定の実施形態では、サイドアームは、固定プレートに高さ調節可能に取り付けられることができる。
【0055】
上述の第2の骨固定要素および上述のサイドアームは、先行技術による固定プレートにおいて、上部のねじ孔が、そこに下方に向けられたねじを挿入するために設けられていない場合にも有益である。それらはまた、固定プレートのヘッド部に第1の前記骨固定要素および固定用縫合孔が設けられていない固定システムにおいても有益であり得る。
【0056】
ヘッド部から離れた側において、この発明による固定プレートの軸部は、軸部の下方に中心的に自由空洞を形成するように凹状に設計された端部を備えていることが好ましい。
【0057】
この端部の凹状の設計は、そこに位置する腱の挿入部位との衝突を最小限に制限し、必要に応じて、固定プレートを配置するために、最小限の腱のみを挿入解除する必要があるようにする。このように、端部は、三角筋腱を必要なだけ挿入できるルージンとして機能する。これは、まず別のルージンを使って挿入を解除し、それからプレートを取り付ける現在の方法とは対照的です。適切な端部があれば、固定プレートを既存の固定プレートよりも短く設計できるため、この段階は回避され、より少ない挿入が必要となる。
【0058】
このような凹状の端部は、上部のねじ孔が下方に向いたねじをそこに挿入するために設けられていない先行技術による固定プレート、および固定プレートに前述の骨固定要素および固定縫合孔が設けられていない固定システムにおいても有益である。
【0059】
好ましくは、この発明による固定プレートの軸部において、少なくとも1つのねじ孔がスロットとして形成されている。このようなスロット状のねじ孔により、第1の固定ねじを挿入することができ、その後、必要に応じて、固定プレートを上腕骨に対してより正確に位置決めすることができる。
【0060】
軸部のねじ孔は、さらに好ましくは、互いに対して千鳥状に配置される。これらのねじ孔は、互いに上の1つの垂直線上に配置されるのではなく、この垂直線に対して少なくとも部分的にオフセットされている。このようにして、軸部は、シャフトが分裂し始めることなく、上腕骨シャフトにしっかりと取り付けられることができる。
【0061】
次に、本発明による固定プレートおよび方法を備えた上腕骨近位部固定システムのいくつかの実施形態の以下の詳細な説明を参照して、本発明をより詳細に説明する。この説明の目的は、専ら、明確な例を示し、この発明の更なる利点及び特徴を示すことであり、したがって、決して、この発明の適用領域又は特許請求の範囲に記載された特許権の制限として解釈してはならない。
【0062】
この詳細な説明では、参照符号によって、添付の図面を参照することにする。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1図1は、上腕骨に取り付けられたこの発明による固定システムを正面から見た図である。
図2図2は、固定システムおよび図1の上腕骨を側面から見た図である。
図3図3は、図1の固定装置と上腕骨を、上腕骨と固定プレートの中心を通るように切断した縦断面で示す。
図4図4は、図1からの固定システムの固定プレートを縦断面で別々に示す図である。
図5図5は、図1からの固定システムの固定プレートを背面図で別々に示す。
図6図6は、上部のねじ孔に挿入された角度的に安定したねじを備えた、図1からの固定システムの固定プレートを側面から見た図である。
図7図7は、固定システムと図1の上腕骨を上から見た図である。
図8図8は、サイドアームを中心的に切断した断面で、図1の固定システムと上腕骨を示す図である。
図9図9は、図1からの固定システムのサイドアームを別々に透視して示す図である。
図10図10は、図1からの固定システムのサイドアームを上面図で別々に示す。
図11図11は、図1からの固定システムのサイドアームを別々に正面図で示したものである。
図12図12は、図14からの固定システムからのサイドアームの第2の実施形態を、左側からの透視図で別々に示す。
図13図13は、図12からのサイドアームを後方から透視して示す図である。
図14図14は、この発明による固定システムの第2の実施形態を、前方左側からの視点で示す図である。
図15図15は、図14からの固定システムからの固定プレートを別々に、前方からの透視図で示す。
図16図16は、図14からの固定システムを左後方からの視点で示す図である。
図17図17は、図14の固定システムの一部を、分解状態で、頭部分のレベルで示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図示された上腕骨近位部固定システム(1)は、固定プレート(2)、それに解放可能に取り付けられるサイドアーム(16)、骨固定要素(9、33)、ねじ(24、35)、および縫合材(28)を有する。
【0065】
固定プレート(2)はまた、ヘッド部(3)と、このヘッド部(3)に底部で隣接する軸部(4)とを有する。
【0066】
図1図3から分かるように、軸部(4)は、上腕骨シャフト(27)に取り付けられるように設計されている。
【0067】
この目的のために、各場合において、軸部(4)には、そこに固定ねじ(35)を挿入するための複数のねじ孔(8)が設けられている。このような固定ねじ(35)の挿入は、先行技術から知られており、第2の実施形態に図示されている。中央に配置されたねじ孔(23)は、ここでは、第1の固定ねじ(35)がそこに配置されても、上腕骨(25)に対する固定プレート(2)のある程度の遊びを許容するように細長く構成される。したがって、固定プレート(2)は、軸部(4)のさらなるねじ孔(8)にさらなるねじ(35)を挿入する前に、必要に応じて、上腕骨(25)に対してより正確に位置決めすることができる。これらのねじ孔(8)は、さらに、先行技術による固定プレートの軸部のねじ孔と同様に設計することができる。図5からより明確に分かるように、ねじ孔(8)は一列に配置されていないが、これらは垂直線に対してオフセットされている。このようにして、上腕骨シャフト(27)を分割することなく、複数の固定ねじ(35)を互いの上に配置することができる。
【0068】
ヘッド部(3)に背を向けるその側において、軸部(4)はまた、軸部(4)の下方に中心的に自由空洞が形成されるように凹んで設計された縁部(22)を備え、この空洞は固定プレート(2)の後側に向かって開き、好ましくは軸部(4)に対して横方向に延びる。固定プレート(2)の上腕骨への適用は、そこに存在する腱の挿入部によってできるだけ妨げられないようにされる。先行技術による固定プレートは、固定プレートを適用することができるようにするために、最小限の腱だけを切り離す必要があることを保証するために、同様に、このような凹状の端部を備えることができる。
【0069】
描かれた固定プレート(2)のヘッド部(3)は、図1図3に見られるように、大結節(26)のフットプレートからすぐ遠位に取り付けられるように設計されている。 したがって、ヘッド部(3)はフットプレートから約5~7mm遠位に取り付けられることができる。この目的のために、ヘッド部(3)には、角度的に安定したねじ(24)をそこに挿入するための複数のねじ孔(5)が設けられている。
【0070】
最も近位にある2つのねじ孔(11)は、8の字型に構成され、上部入口開口(12)と下部入口開口(23)とを備えている。上部入口開口(12)は、図6に見られるように、水平面(X)に対して約16°の下向き角度(α)で配置される第1の長手軸(A)を有する第1の内ねじ溝を備えている。下部入口開口(13)には、図6で分かるように、水平面(X)に対して約24°の上向き角度(β)で配置された第2の長手方向軸(B)を有する第2の内ねじ溝が設けられている。
【0071】
水平面(X)は、軸部(4)が主に延びる平面に実質的に対応し、上腕骨シャフト(27)上の軸部(4)の理想的な支持平面に実質的に一致する垂直面(Y)に対して横方向に配置される。
【0072】
図1図3、及び図6図8はそれぞれ、一方の最も近接したねじ孔(11)に配置された下方に向けられたねじ(29)を例示のために示し、他方の最も近接したねじ孔(11)には上方に向けられたねじ(30)が配置される。実際には、通常、図14および図16図17に示すような下向きねじ(29)または上向きねじ(30)のいずれかが、両方の最も近接したねじ孔(11)に配置される。
【0073】
代替実施形態では、前記8の字形状のねじ孔(11)の代わりに、下方に向けられたねじのための別個のねじ孔と、上方に向けられたねじのための別個のねじ孔も提供することができる。さらなる代替案として、2つ以上の近位ねじ孔のみが下向きねじのために提供されてもよく、その場合、この固定プレートは、上述の合併症が懸念される手術にのみ使用され、上向きねじ用の近位ねじ孔のみを有する代替固定プレートは、これらの合併症を予想しない手術に使用されるようにする。
【0074】
描かれた固定プレート(2)は、人体の左上腕骨または右上腕骨の両方に取り付けることができる。あるいは、先行技術と同様であり、左上腕骨に適用されるようにのみ設計された、または右上腕骨に適用されるようにのみ設計された、この発明による固定システム(1)用の固定プレート(2)を製造することも可能である。
【0075】
前記ねじ孔(5、8)と同様に、固定プレート(2)には、複数の縫合孔(7)も設けられている。これらの縫合孔(7)には、縫合糸(28)を配置することができる。
【0076】
複数の縫合孔(7)は、先行技術のように、縫合糸を通すために設けられており、これらは、固定プレート(2)を固定するために上腕骨頭の周りの腱を通して引っ張られる。
【0077】
固定プレート(2)の中央には、固定縫合穴(10)が設けられている。この固定縫合孔(10)は、ヘッド部(3)の上縁に第1の入口開口部(40)があり、ヘッド部(3)の中心部に第2の入口開口部(41)があるトンネル状に設計されている。これら2つの入口開口部(40、41)の間の中央には、固定縫合孔(10)のトンネル状の空洞(14)に開口するねじ孔(15)がある。入口開口部(40、41)を介して、図3、14および17に見られるように、縫合糸(28)をトンネル状の空洞(14)内に導入することができる。ねじ孔(15)内の止めねじ(47)によって、この縫合糸(28)をこのトンネル状の空洞(14)内に調節可能かつ可逆的に固定することができる。
【0078】
描かれている固定システム(1)の前記骨固定要素(9、33)の第1の骨固定要素(9)は、上腕骨頭(32)の頂部(31)において、上腕骨上筋腱(36)および下腿骨下筋腱(36)が挿入される大結節の脚板から内側に軟骨下に固定されるようにそれぞれのケースで設けられている。縫合糸(28)は、この第1の骨固定要素(9)に取り付けられ、棘上・棘下腱(36)を通って挿入され、先ほどの固定縫合孔(10)に固定される。
【0079】
描かれている固定システム(1)の前記骨固定要素(9、(33)の第2の骨固定要素(33)は、それぞれの場合、肩甲下筋腱が挿入される小フットプレートから内側に、軟骨下に固定されるように設計されている。縫合糸(28)は、この骨固定要素(33)に取り付けられ、肩甲下筋腱挿入部(37)から挿入され、サイドアーム(16)の第2の固定縫合孔(17)に固定される。
【0080】
サイドアーム(16)は、このために、固定プレート(2)のヘッド部(3)に解放可能に取り付けられ、したがって、上腕二頭筋腱を妨げないままにするように、二頭筋溝(45)を橋渡しする。描かれている実施形態では、サイドアーム(16)は、固定プレート(2)に対して前部で取り付けられている。代替の実施形態では、このサイドアーム(16)は、固定プレート(2)に対して後方で取り付けられることもある。
【0081】
いずれの場合も、このサイドアーム(16)にはトンネル状の空洞(17)が設けられ、縫合糸(28)を挿入するための2つの入口開口(42,43)を有している。ねじ孔(44)は、このトンネル状空洞(17)に対して横方向に配置され、トンネル状空洞(17)内に開口している。入口開口部(42、43)を介して、図8、14、16および17に見られるように、縫合糸(28)をトンネル状空洞(17)内に導入することができる。ねじ孔(44)内の止めねじ(48)によって、この縫合糸(28)をこのトンネル状の空洞(17)内に調整可能かつ可逆的に固定することができる。
【0082】
サイドアームをヘッド部(3)に解放可能に取り付けるために、このサイドアーム(16)は、各場合に、固定体(18)を備えている。
【0083】
描かれている第1の実施形態では、この固定体(18)は、ヘッド部(3)の全幅にわたって延び、このヘッド部(3)のいずれかの側に取り付けられている。
【0084】
描かれている第2の実施形態では、このヘッド部(3)の前面には、固定体(18)に対応する凹部(50)が左右に設けられており、この凹部に固定体(18)を配置して固定プレート(2)に固定できるようになっている。この実施形態では、サイドアーム(16)は、これが図示のように固定プレート(2)に対して左側に取り付けられるか、または固定プレート(2)に対して右側に180°ひねって取り付けられるように対称に設計されている。
【0085】
固定体(18)を固定プレート(2)に取り付けるために、両実施形態におけるこの固定体(18)には、取付孔(35)として構成される縫合孔(7)に挿入可能な取付ピン(20)が設けられている。
【0086】
また、固定体(18)とヘッド部(3)の両方に、対応する1つ以上の固定ねじ孔(38、39)を設けることができ、この固定ねじ孔から、固定体(18)をヘッド部(3)にねじ止めするための1つ以上のねじを導入することができる。
【0087】
第1の実施形態では、ヘッド部(3)の固定ねじ孔(39)は、ここではヘッド部(3)の反対側の側縁に設けられている。第2実施形態では、このような固定ねじ孔(39)は、前記凹部(50)の各々に設けられている。
【0088】
第1の実施形態では、固定体(18)には、ヘッド部(3)において最も近位の角度的に安定したねじ(24)を妨げずに挿入できるように、切り込み(21)が設けられている。
【0089】
骨固定要素(9)は、先行技術から知られている任意の形態をとることができる。これに適したそのような骨固定要素の一例は、Lupine(登録商標) DePuy Synthesの名で知られている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】