(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】電気化学システムおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20230823BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230823BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20230823BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20230823BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20230823BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/60
C25B15/02
C25B15/023
C25B15/00 303
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507974
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 IL2021050946
(87)【国際公開番号】W WO2022029776
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039514
【氏名又は名称】エイチ2プロ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】H2PRO LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドータン,ヘン
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC03
4K021CA10
4K021CA11
4K021CA13
4K021DA15
(57)【要約】
水素ガスと酸素ガスを同時に製造するためのシステムが記載されている。このシステムは、気体成分を個別に受け入れて保持するように構成された複数の気液分離器を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスおよび酸素ガスを製造するためのシステムであって、
-少なくとも2のリアクタセルと、
-複数の気液分離器とを備え、前記複数の気液分離器が、
-溶解した水素ガスおよび電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の水素気液分離器と、
-溶解した酸素ガスおよび電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の酸素気液分離器と、
-実質的にガスを含まない液体、または溶解した水素ガス、酸素ガスまたはそれらの混合物を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の残留気液分離器とを含み、水素ガス、酸素ガスまたはそれらの混合物の量が、4%(v/v)を超えることはなく、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、流体を排出するように構成されかつ動作可能な出口と、流体を流し込むための供給入口とを備え、
前記複数の気液分離器のうちの少なくとも1つが、リアクタ内容物を気液分離器に排出することに起因する圧力変動に応答して、少なくとも1の気液分離器内の圧力変化を低減するように構成されかつ動作可能な圧力作動デバイスまたは機械的デバイスを有するように適合されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、ガス含有内容物を同じガスを含む気液分離器に排出するように構成されかつ動作可能な供給出口と、前記1または複数の残留気液分離器からの残留液体でリアクタの全内容物を置き換えるために、残留液体をリアクタ内に流し込むための供給入口とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記酸素気液分離器の1または複数および前記水素気液分離器の1または複数が、前記圧力作動手段を介して前記残留気液分離器の1または複数と接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、前記1または複数の残留気液分離器からの液体でリアクタセルの全内容物を能動的に置き換えることによって、水素気液分離器に水素内容物を排出し、その後、リアクタセル内の残留液体を前記酸素気液分離器からの液体で置換するように構成されかつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、前記1または複数の残留気液分離器からの液体でセルの全内容物を能動的に置き換えることによって、酸素気液分離器に酸素内容物を排出し、その後、リアクタセル内の残留液体を前記水素気液分離器からの液体で置換するように構成されかつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、線形または非線形の圧力作動手段であることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、分離器内への入口流によって引き起こされる圧力を減少させるように構成されかつ動作可能な往復運動デバイスであることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、残留気液分離器と水素または酸素気液分離器とを接続するピストンであることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、リアクタまたはリアクタのセット内の電解液量に比例するように選択された容積を有することを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、そのサイズまたは容積を増加または減少させることによって圧力変動に反応することができる、サイズまたは容積を変更可能な気液分離器の形態であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、気液分離器を接続する配管またはチャネルの形態であることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記配管またはチャネルが、式1により、リアクタの容積またはリアクタのセットの多重度によって決定される容積を有することを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記配管またはチャネルが、分離器の各々からの一定量の液体を保持するとともに、分離器の1つにおける圧力の上昇時に、ピストンフローユニットまたはプラグフローユニットとして動作するように構成されかつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、
分離器の各々からの一定量の液体が、前記配管またはチャネルの長さ方向に沿って配置された可動固体バリアによって分離されることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、酸素ガスおよび水素ガスを生成するための改良されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気化学熱活性化化学セル(E-TAC)およびそのような電気化学セルを複数有するシステムが開発されている[特許文献1,2]。この技術によれば、バイアスが印加された状態で、任意選択的には水の還元によって、カソード電極上に電気化学ステップで水素ガスが生成される一方、バイアスがない状態で、自然発生的な化学ステップにより、またはシステムの温度を上昇させることにより、酸素ガスが生成される。また、酸素の生成中に、アノードが再生され、このプロセスが繰り返される。
【0003】
複数のセルにより構成されるシステムにおける動作を操作および制御することにより、一部のセルで水素ガスを生成し、他のセルで酸素ガスを同時に生成することができるが、その後、水素ガスを生成したセルで酸素ガスを生成し、その逆も同様に行うように、各ガスの製造を変更することも可能である。これにより、一部のセルで水素ガスを生成すると同時に、他のセルで酸素ガスを生成することができ、それにより、2種類のガスの混合を避けながら、水素ガスを連続的に生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2016/079746
【特許文献2】WO2019/180717
【発明の概要】
【0005】
電気化学熱活性化化学セル(E-TAC)システムでは、製造サイクルを完了するために、すなわち、水素ガスおよび酸素ガスの両方を生成するために、電解液交換が行われる。
図1に示すように、E-TACシステム(120)は、特定の実施形態において、2つのE-TACリアクタセル(リアクタ130、140)と、気液分離器(170)、(180)と、リアクタセルと分離器を接続する配管アセンブリとを備える。配管アセンブリは、3つの異なる配管回路(501)、(502)、(503)を含み、それぞれが気液分離器(170)、(180)に接続されている。また、システムは、同じ配管回路(図示せず)に接続される複数または(1以上)のコンテナまたは容器の形態の残留物分離器(190)または分離器のアセンブリを含む。気液分離器は、酸素(170)、水素(180)または両方の少量の残留物(190)を含む別個の電解液リザーバを提供する。電解液温度は、水素気液分離器の場合は60℃未満に、酸素気液分離器の場合は60℃を超える温度に維持される。
【0006】
本発明のシステムは、複数のセル、例えば、多数のセル、または少なくとも2のセル、または2以上のそのようなセルを含み、各々が、少なくとも1の電極アセンブリを含むコンパートメント/コンテナの形態であり、水溶液を保持するように構成されている。本発明のシステムにおけるセルの数は、特に、意図する動作、動作パターンなどに基づいて変化し得る。セルの各々は、1または複数のリアクタを含むことができ、セル内のすべてのリアクタは同じように動作する。異なるセット(各々が同じまたは異なる数のリアクタを含む)は、異なる動作をすることができる。
【0007】
各セルまたは「リアクタ」は、セルへの電気的バイアスの印加中(バイアスON)に水素ガスが生成され、バイアスの印加がない場合(バイアスOFF)に酸素ガスの自然発生が起こるという、二つの機能を有するように構成されている。リアクタは、典型的には、区画されていない。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示に係る2以上のセルが分離されて、それらの間に流体またはガスの連通を本質的に有していない。
【0009】
本明細書で詳述するように、2以上のセルの各々は、アノードおよびカソードを含む電極アセンブリを備え、よって、水素ガスおよび酸素ガスの両方を生成するように構成された単一の独立したユニットとして機能することができる。なお、2以上のセルの各々は、電極および電解液を含む半電池ではないことに留意されたい。いくつかの実施形態では、電極アセンブリが、単極アセンブリ、双極アセンブリ、平坦アセンブリおよびロールアセンブリのなかから選択される。
【0010】
電極アセンブリは、バイアスの存在下で、任意には水を還元することによって水素ガスを生成し、さらに水酸化物イオンの発生をもたらすカソードを備える。水素ガスの生成は、塩基性pH、酸性pHまたは自然pHの下で行うことができる。このため、水媒体は、酸性、中性または塩基性であってよく、水道水、海水、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液または溶液、電解質が豊富な水などから選択することができる。いくつかの実施形態では、カソードが、水分子の還元に影響を与えて、水素ガスおよび任意に水酸化物イオンを生成するように構成される。いくつかの他の実施形態では、カソードが、水溶液中の水素イオンを還元して水素ガスを発生させる。カソードは、当技術分野で使用される金属および電極材料のなかから選択された材料から作られたものであってよい。電極材料は、例えば、ニッケル、ラネーニッケル、銅、グラファイト、プラチナ、パラジウム、ロジウム、コバルト、MoS2およびそれらの化合物のなかから選択することができる。いくつかの実施形態では、電極材料がカドミウム(Cd)ではなく、またはカドミウムを含まない。いくつかの実施形態では、カソードが、ラネーニッケル、銅、グラファイトまたはプラチナからなる。
【0011】
アノードは、カソードと同一の電極材料を含むことができ、または同一の電極材料から構成することができるが、アノードの材料は、本発明によれば、少なくとも1のレドックスサイクル(反応)、すなわち、酸化、還元を可能にする必要がある。換言すれば、本発明に係るアノードは、本明細書に記載の条件において、印加バイアスの存在下での酸化ステップ(アノード帯電)と、酸素ガスを生成する、バイアスの非存在下でのその後の還元ステップ(アノード再生)とを可逆的に受けることができる。その後、必要に応じて、更なるレドックスサイクルが続く場合もある。
【0012】
「気液分離器」は、気液混合物をその構成相に分離するために使用されるデバイスまたは容器である。分離容器は、鉛直方向または水平方向に向けられ、2相または3相の分離器として機能することができる。重力は、密度の高い成分または相(典型的には液相)を容器の底部に沈降させるために利用され、この底部からそれらが引き出される一方、密度の低い成分または相(気体)は容器の上部から引き出される。水素ガスを含む気液混合物を受け入れるように構成された分離器は、本明細書において水素気液分離器と称し、同様に、酸素ガスを受け入れるように構成された分離器は、本明細書において酸素気液分離器と称する。本明細書でさらに開示されるように、残留物分離器に言及する場合、分離器は、実質的にガスを含まない液相、または微量のガスを含む液相を受け入れて保持するように構成された容器である。
【0013】
したがって、水素ガスおよび酸素ガスを製造するための本発明のシステムは、少なくとも2のリアクタセルと、複数の気液分離器とを備える。複数の分離器は、
-水素ガスおよび溶解した水素および電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の水素気液分離器と、
-酸素ガスおよび溶解した酸素および電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の酸素気液分離器と、
-ガスを含まない液体、すなわち酸素および/または水素を含まない液体を受け入れて保持するか、または4%v/vを下回る量(またはそれ未満の量)の水素ガスおよび/または酸素ガスを含む液体を保持するようにそれぞれ構成された1または複数の残留気液分離器とを含む。
【0014】
図1に示すシステムから分かるように、E-TACセルの各々の入力と出力に存在するバルブは、1または複数のセルを異なる電解液回路に接続する。水素製造中、酸素製造中またはセルの洗浄中は、入力バルブと出力バルブの両方が、特定の電解液回路に接続される。すなわち、水素製造中、入力バルブと出力バルブは、電解液が水素分離器に出入りできるように設定され、酸素製造中、入力バルブと出力バルブは、電解液が酸素分離器に出入りできるように設定される。水素製造モードと酸素製造モードを直接切り替えると、リアクタ内の電解液が一方の回路から他方の回路に移動するため、回路間で電解液が混合されることになる。
【0015】
水素製造と酸素製造との間には、ガスの混合を避けるために洗浄ステップが含まれる。洗浄ステップでは、水素気液分離器で使用する温度と酸素気液分離器で使用する温度との間の温度に維持された電解質溶液が、1または複数のリアクタセルおよび回路配管に循環される。
【0016】
水素製造ステップ、酸素製造ステップおよび洗浄ステップの間の切り替え時には、各製造ステップまたは洗浄ステップの終了後の動作中のリアクタセルの内容物が、次の製造ステップの気液分離器内に押し出されるため、受け入れる分離器の状態に大きな影響を与え、多大な熱損失に繋がる。
【0017】
この切り替えに伴う熱損失を回避するために、本明細書に開示の技術の発明者等は、次のステップに関連する気体分離器からの電解質溶液を使用することによって、動作中のリアクタセルの内容物をリアクタから押し出し、実質的に同じ温度で維持され同じガスを含む分離器内に戻すようにプロセスを修正した。動作モード(水素製造、酸素製造または洗浄)に応じて、押し出されるセルの内容物は、それぞれの気液分離器に移され、その気液分離器内の液体の温度が維持される。セルの内容物を押し出す電解液の量は、製造または洗浄ステップの完了後にその分離器内に戻されるため、水素分離器、酸素分離器または洗浄分離器の何れかの温度に影響を与えることはなく、熱損失を低減することができる。
【0018】
本発明のシステムでは、リアクタがそれぞれ、配管アセンブリを介して分離器の各々に接続され、3つの異なる回路:リアクタが水素気液分離器に接続される水素回路と、リアクタが酸素気液分離器に接続される酸素回路と、リアクタが残留気液分離器に接続される残留物回路とを形成している。リアクタおよび分離器の各々には、リアクタに出入りする液体の流れを制御する入力バルブおよび出力バルブが装備されている。
【0019】
本発明に係る動作システムでは、(それぞれの回路を利用して)水素ガスまたは酸素ガスを生成する各ガス生成ステップの後、リアクタが残留物分離器からの残留液体で洗浄される。このため、ガス生成ステップの完了に続いて(簡潔にするために前の回路または先行回路とみなす)、1または複数の入力バルブは、その前の回路から残留物回路に切り替わり(残留物分離器からの液体の流れを可能にし)、一方、1または複数のリアクタ出力バルブは、前の回路に向けられたままである(前の回路を介して生成されたガスを含む分離器へのリアクタ内容物の流れを可能にする)。残留物回路からの電解液は、前の回路からの電解液をリアクタから押し出し、前の回路の分離器内に流入させる。このステップは、リアクタおよび回路配管内の電解液がすべて前の回路の分離器内に押し出されるまで続く。このステップが完了すると、1または複数の出力バルブは新たな回路(次のガス生成ステップ)に切り替わる。例えば、水素製造ステップの終了時には、リアクタ内は水素回路からの電解液で満たされる。この電解液を水素回路に戻すために、1または複数のリアクタ入力バルブが残留物回路に切り替わる。残留物回路からの電解液は、水素回路の電解液を押し出して、水素分離器内に流入させる。水素回路からの電解液がすべて押し出されると、出力バルブが残留物回路に切り替わり、リアクタの内容物が残留物分離器内に押し戻される。
【0020】
酸素生成モードでは、酸素分離器および回路と、残留物分離器および回路とを使用して、同じステップが繰り返される。
【0021】
本明細書では、残留物電解液を利用するステップの各々を「プッシュステップ」という。このため、2つの異なる「プッシュステップ」が存在する。一方の「プッシュステップ」は「ポジティブ」とみなされ、他方の「プッシュステップ」は「ネガティブ」とみなされる。「ポジティブ」のプッシュステップでは、残留物分離器からの液体がリアクタ内に押し込まれ、それによってリアクタの内容物が前の回路(水素または酸素)の分離器に押し出される。このため、前の回路が水素であり、リアクタが水素電解液で満たされている場合、1または複数の入力バルブは、リアクタから1または複数の出力バルブを介して水素回路および水素分離器への水素電解液の押し出しを可能にするように向けられる。このプッシュステップは、本明細書では、水素ポジティブプッシュステップと称する。同様に、前の製造モードが酸素製造である場合、本明細書では、このプッシュステップを酸素ポジティブプッシュステップと称するものとする。
【0022】
「ネガティブ」プッシュステップでは、リアクタは残留電解液で満たされ、次の動作モードの電解液を受け入れる準備が整っている。次の動作モードが水素製造の場合、1または複数のリアクタ入力バルブは、水素電解液がリアクタ内に流れ込み、それによりリアクタの内容物を残留物分離器内に押し込むように向けられる。1または複数の出力バルブは、電解液が残留物分離器内に流れ込むことができるように向けられる。このプッシュステップは、本明細書では、水素ネガティブプッシュステップと称する。同様に、次の製造モードが酸素製造である場合、このプッシュステップは、ここでは酸素ネガティブプッシュステップと称する。
【0023】
4つのプッシュステップを表1にまとめ、
図2A~
図2Dに示している。
【0024】
単純化した循環システム動作では、H2生成→H2ポジティブプッシュステップ→残留物洗浄→O2ネガティブプッシュステップ→O2生成→O2ポジティブプッシュステップ→残留物洗浄→H2ネガティブプッシュステップの順序で循環的に続き、それが繰り返される。システムが複数のリアクタおよび洗浄容器を含む場合、動作シーケンスは、実質的に同じ原理に基づくものであるが、さらに後述するように、より複雑なものとなる。
【0025】
各プッシュステップは、電解液の混合を防ぎ、洗浄ステップでの熱損失を抑えながら、回路内の電解液量を時間的に変化させることになる。分離器の何れかにおける電解液量の増加は、回路圧力および分離器内の電解液レベルの上昇に繋がり得る。そのような圧力や液体レベルの上昇は、電解液の流速、異なる分離器間の電解液レベルの差、回路間の圧力差に影響を与え、結果としてシステムの誤動作を引き起こす可能性がある。
【0026】
それらの時間的変化を克服するために、システムは、体積および液体レベルのそのような変化に反応し、圧力変動を効果的に低減または減少させ、システムの誤作動を回避するように構成されかつ動作可能な機械的デバイス、例えば、往復運動デバイスを有するように構成される。機械的手段は、分離器における変化を減少させるような任意の手段、および/または分離器のサイズまたは容積の変化(減少または増加)を引き起こすような任意の手段であってもよい。機械的手段は、それら手段を動作から外すか、または機能的に無効にすることを可能にするバルブまたはバルブアセンブリを備えることができる。
【0027】
圧力およびレベルの変化を低減するために、分離器の各々は、圧力の増加に反応するとともに、分離器内への入口流によって引き起こされるそのような圧力変化および変動を低減するように構成されかつ動作可能である、外部ループまたは補助部材または線形または非線形の圧力作動デバイスまたは機構を備えることができる。圧力作動デバイスまたは機構は、当技術分野において知られている任意の形態であってよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、外部部材または補助部材は、分離器内に含まれる一定量の液体を受け入れて保持することができるコンテナまたは容積部材の形態であってよい。部材のサイズおよび形状は、一定量の液体を受け入れて保持し、必要に応じてその量を空にすることができるように設計され得る。
【0029】
他の実施形態では、圧力作動デバイスまたは機構は、
図3Aに示すように、残留気液分離器(電解液リザーバである)と酸素および水素分離器(または電解液リザーバ)とを接続することができる。また、
図3Bに示すように、複数の残留気液分離器の間に複数の圧力作動デバイスを使用することもできる。
図3Cに示す残留気液分離器と水素気液分離器との間を接続する外部ループは、そのような圧力作動機構の一例である。
【0030】
他の実施形態では、圧力作動デバイスまたは機構は、(電解液リザーバである)残留気液分離器と酸素および水素分離器(または電解液リザーバ)とを接続するピストンの形態の往復運動デバイスまたは圧力平衡器であってよい。ピストンは、
図4および
図5に示すように、分離器の上部、気相が占める分離器の領域、または液相が占める分離器の下部に配置することができる。
【0031】
プッシュステップ中に電解液量と圧力が変化すると、ピストンが圧力の方向に移動して、分離器間の圧力差を打ち消す。また、
図5に示す設計では、結果として生じ得る電解液レベルの差を打ち消すことも可能である。ピストンは、システムのプッシュステップ(すなわち、規定したポジティブとネガティブ)の間に起こる体積変化に合わせて、その位置を調整することができる必要がある。したがって、ピストンの容積は、リアクタ内の電解液量と、同時に行われるポジティブとネガティブのプッシュステップの最大数とに比例するように選択される。
【0032】
他の実施形態では、リアクタが、
図6に示すように、それらの入力および出力で接続されたリアクタのセットとして編成され得る。それらリアクタは、単一のユニット(1つの大きなリアクタ)として動作する。
【0033】
概略的には、本明細書に開示の圧力作動デバイスまたは機械的デバイスの容積は、以下の式1にしたがって計算することができる。いくつかの構成では、所与のシーケンスにおけるポジティブおよびネガティブのプッシュステップの体積が同じであることにより、プッシュシーケンスによって体積が実質的にゼロになり得ることに留意することが重要である。
[式1]
体積(H2またはO2-残留物)=||"+"(H2またはO2)-|"-"(H2またはO2)||×セットまたはリアクタの容積
ここで、デバイスがピストンである場合、上記で求められる体積はピストンの容積である。
【0034】
非限定的な例として、1リットルの電解液量をそれぞれ有する8つのリアクタを有する本発明によるシステムにおいて、システム動作が同時に最大4回の水素ポジティブプッシュステップを必要とし、かつネガティブプッシュステップがない場合に、水素残留物と関連する機械的デバイス、例えば、ピストンは、少なくとも4リットルの容積が必要である。ポジティブプッシュステップとネガティブプッシュステップの回数が同じである場合、容積はゼロであってもよい。このため、ピストンまたは同等のデバイスなどの機械的デバイスは必要ない場合がある。
【0035】
ネガティブプッシュステップがポジティブプッシュステップとともに含まれる場合、機械的デバイス、例えばピストンの容積を減らすことができる。例えば、200個のリアクタを有し、各リアクタが10リットルの電解液容量を有するシステムにおいて、システム動作が最大25回の水素ポジティブプッシュステップを必要とし、同時に20回の水素ネガティブプッシュステップを必要とする場合、水素残留物機械的デバイス、例えばピストンは、少なくとも50リットルの容積が必要である。同様の例では、200個のリアクタが40セットで組み立てられ、各セットに5個のリアクタが含まれる。この場合、動作には最大で5回の水素ポジティブプッシュステップと、同時に4回の水素ネガティブプッシュステップが必要となり、水素残留物機械的デバイス、例えば、ピストンは、前の例と同様に、少なくとも50リットルの容積が必要である。
【0036】
この概念は、ポジティブおよびネガティブのプッシュステップが同時に行われるマルチリアクタ(またはリアクタのセット)の動作シーケンスを計画することによって拡大することができる。4つのリアクタ(またはリアクタのセット)によるそのような動作シーケンスの例を以下の表2に示している。このシーケンスは、4つのリアクタを連続的に中断することなく動作させて、水素ガスと酸素ガスの両方を同時に生成することを示している。水素ガスはバイアス下で発生し、酸素はバイアスのない状態で発生し、各水素生成サイクルの終わりに残りの量の水素を回収するために、各セルはバイアスのない状態で、水素電解質溶液で循環される(いわゆるH
2循環)。
【0037】
このようなシーケンスにより、本明細書で説明するように、デバイスまたは手段、例えばピストンの「容積」を無視できるようにすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、ピストンは、スプール型の可動要素またはポペット型の可動要素の形態であってよい。
【0039】
圧力作動デバイスまたは機械的デバイスは、代替的には、上述したように、気液分離器を接続する配管またはチャネルの形態であってもよい。配管またはチャネルは、リアクタの液体の全容積の変位を生じる圧力に反応するように選択された十分に大きな容積のものであってもよい。配管またはチャネルは、分離器の各々からの一定量の液体を保持し、分離器の1つにおける圧力の上昇時に、ピストンフローユニットとして、またはプラグフローユニットとして動作するように構成されかつ動作可能であってもよい。2種類の液体を分離する場合、配管またはチャネルに可動固体バリアを設け、圧力に応答して配管またはチャネルの長さ方向に沿った位置を変えることができる。
【0040】
分離器の各々の圧力およびレベルの変化を低減するための圧力作動デバイスまたは機構を分離器に設ける代わりに、上述したように、任意の2つの分離器を、少なくともリアクタ容量を含むのに十分な容積およびサイズの一対のコンテナまたは容器と関連付けることができる。
【0041】
1または複数の分離器に減圧弁、例えばピストンを設ける代わりに、1または複数の分離器は、そのサイズまたは容積を変えることによって、圧力変化または体積変化または液体レベルの変化に反応するように構成されかつ動作可能であってもよい。換言すれば、そのサイズ(およびその有効容積)または内部容積(およびその有効容積)を変更することができる1または複数の分離器を利用することによって、圧力変動および/または液体レベルの影響を低減または減少させることができる。1または複数の分離器のサイズまたは容積は、分離器の圧力差を打ち消すように、増加または減少させることができる。
【0042】
すなわち、その一態様において、本発明は、水素ガスおよび酸素ガスを製造するためのシステムを提供し、このシステムが、
-少なくとも2のリアクタセルと、
-複数の気液分離器とを備え、この気液分離器が、
-水素ガスおよび溶解した水素および電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の水素気液分離器と、
-酸素ガスおよび溶解した酸素および電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の酸素気液分離器と、
-ガスを含まない液体、すなわち水素および/または酸素を含まない液体を受け入れて保持するか、または4%v/vを下回る量(またはそれ未満の量)の水素ガスおよび/または酸素ガスを含む液体を保持するようにそれぞれ構成された1または複数の残留気液分離器とを備え、
少なくとも2のリアクタセルの各々が、流体を排出するように構成されかつ動作可能な出口と、流体を流し込むための供給入口とを備え、
複数の気液分離器のうちの少なくとも1つが、(例えば、リアクタ内容物を気液分離器に排出することに起因する)圧力変動に応答して、少なくとも1の気液分離器内の圧力変化を低減するように構成されかつ動作可能な機械的手段を有するように適合されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、少なくとも2のリアクタセルの各々が、同じガスを含む気液分離器にガス含有内容物を排出するように構成されかつ動作可能な供給出口と、1または複数の残留気液分離器からの残留液体でリアクタの全内容物を置き換えるために、残留液体をリアクタ内に流し込むための供給入口とを備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、酸素気液分離器の1または複数および水素気液分離器の1または複数が、機械的手段を介して残留気液分離器の1または複数に接続されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、少なくとも2のリアクタセルの各々が、1または複数の残留気液分離器からの液体でリアクタセルの全内容物を能動的に置き換えることによって、水素および液体内容物を水素気液分離器に排出し、その後、リアクタセル内の残留液体を酸素気液分離器からの液体で置換するように構成されかつ動作可能である。
【0046】
いくつかの実施形態では、少なくとも2のリアクタセルの各々が、1または複数の残留気液分離器からの液体でセルの全内容物を能動的に置き換えることによって、酸素気液分離器に酸素および液体内容物を排出し、その後、リアクタセル内の残留液体を水素気液分離器からの液体で置換するように構成されかつ動作可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、機械的手段が、分離器内への入口流によって引き起こされる圧力を減少させるように構成されかつ動作可能な圧力均等化デバイスである。
【0048】
いくつかの実施形態では、圧力均等化デバイスが、残留気液分離器と水素または酸素気液分離器とを接続するピストンである。ピストンは、水素または酸素気液分離器内または残留物分離器内の圧力変化に反応し、前記圧力を平衡させるように適合されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書で規定される機械的デバイス、例えばピストンの容積が、リアクタ内の電解液量および入力および出力サイクルの数に比例するように選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、機械的手段が、そのサイズまたは容積を増加または減少させることによって圧力変動に反応することができる、サイズまたは容積を変更可能な気液分離器の形態である。
【0051】
本明細書で使用されるように、本発明のシステムで使用される気液分離器は何れも、気体成分、すなわち、水素、酸素または両方の混合物と、液体成分、すなわち、可溶性の電解質と一定量の気体成分を溶解した形で含む水などの液体担体とを含む。気体成分と液体成分の分離は重力を利用して行われ、プロセスで使用される鉛直容器では、混合物中の液体は容器の底部に沈降し、気体成分は分離容器の上部に上昇する。液体成分は、分離容器の底部または液体と直接接触する分離器の任意の領域に配置されたバルブまたは配管アセンブリを介して取り出すことができる。気体成分は、容器の上部に配置された出口バルブから取り除くことができる。
【0052】
他の構成の気液分離器が使用される場合、バルブの位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本明細書に開示の主題をよりよく理解し、それが実際にどのように実施されるのかを例示するために、添付の図面を参照しながら、単なる非限定的な例として実施形態を説明する。
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係るシステムの概略図である。
【
図2】
図2A~
図2Dは、表1に要約された4つのプッシュステップの各々の概略図であり、
図2AはH
2ポジティブプッシュ、
図2BはH
2ネガティブプッシュ、
図2CはO
2ポジティブプッシュ、
図2DはO
2ネガティブプッシュをそれぞれ示している。
【
図3】
図3A~
図3Cは、体積および液体レベルの変化に反応するように構成されかつ動作可能であり、圧力変動を効果的に低減または減少させて、システムの誤動作を回避することを目的としたな機械的デバイスの概略図である。
図3Aは、そのようなシステムの概略図を示し、
図3Bは、本発明のシステムにおけるそのようなデバイスのアセンブリの非限定的な例を示している。
図3Cは、外部ループの形態のデバイスの非限定的な例を示している。
【
図4】
図4は、気相によって占められる分離器の領域である分離器の上部に配置されたピストンの概略図である。
【
図5】
図5は、液相によって占められる分離器の下部に配置されたピストンの概略図である。
【
図6】
図6は、単一セルユニットとして機能するリアクタのセットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明に係る例示的なシステム(120)は、
図1に例示されている。このシステム(120)は、特定の実施形態では、2つのE-TACリアクタセル(リアクタ130、140)と、気液分離器(170)、(180)と、リアクタセルと分離器を接続する配管アセンブリとを備える。配管アセンブリ(150)は、3つの異なる配管回路(501)、(502)、(503)を含み、各々が気液分離器(170)、(180)に接続されている。また、システムは、同じ配管回路(図示せず)に接続される複数(1または複数)のコンテナまたは容器の形態の残留物分離器(190)または分離器のアセンブリを含む。気液分離器は、酸素(170)、水素(180)または両方の少量の残留物(190)を含む別個の電解液リザーバを提供する。電解液温度は、水素気液分離器の場合は60℃未満に、酸素気液分離器の場合は60℃より高い温度に維持される。
【0055】
ここで、
図1のシステム(120)を拡大して示す
図2A~
図2Dも参照する。動作中の例示的なシステムでは、(それぞれの回路を利用して)水素ガスまたは酸素ガスを生成する各ガス生成ステップの後、リアクタは、残留物分離器(190)からの残留液体で洗浄される。このため、ガス生成ステップの完了後、
図2Aおよび
図2Cに示すように、1または複数の入力バルブは、その前の回路から残留物回路に切り替わり(残留物分離器からの液体の流れを許容し)、一方、1または複数のリアクタ出力バルブは、前の回路に向けられたままである(前の回路を介して生成したガスを含む分離器へのリアクタ内容物の流れを許容する)。残留物回路からの電解液は、前の回路からの電解液をリアクタから押し出し、前の回路の分離器に流入させる。このステップは、リアクタと回路配管内のすべての電解液が前の回路の分離器に押し出されるまで続く。このステップが完了すると、1または複数の出力バルブは、新たな回路(次のガス生成ステップ)に切り替わる。例えば、水素製造ステップの終了時には、リアクタは、水素回路からの電解液で満杯になっている。この電解液を水素回路に押し戻すために、1または複数のリアクタ入力バルブは、残留物回路に切り替わる。残留物回路からの電解液は、水素回路からの電解液を押し出し、水素分離器内に流入させる。水素回路からのすべての電解液が押し出されると、出力バルブは残留物回路に切り替わり、リアクタの内容物は、
図2Bおよび
図2Dに示すように、残留物分離器に押し戻される。そのような一連の動作は、酸素生成モードにおいて、酸素分離器および回路と残留物分離器および回路を利用して繰り返され得るものであり、本明細書でさらに説明するように、生成したリアクタが混合されないようにし、ガス収率を増加させ、エネルギー損失を減少させる。2を超えるリアクタを含むシステムでは、上述した考え方が、リアクタと分離器の各セットについて繰り返される。
【0056】
図6に示すように、また本明細書で説明するように、各電気化学セルは、単一の動作セルとして配置された1または複数のリアクタを含むことができ、単一のセル内のすべてのリアクタは、同じであり、同じ条件下で動作する。
【0057】
図3A~
図3Cは、
図1に示すような気液分離器システムを示している。分離器の液体体積、気体体積および圧力の変動に応答する圧力作動デバイスまたは機械的機構は、本明細書に開示されるように、有効な変化を低減または縮小するための解決策を提供する。圧力作動デバイスまたは機械的機構は、
図3Aに示すように、残留気液分離器(電解液リザーバである)と酸素または水素分離器(または電解液リザーバ)との間に設けることができる。
図3Bに示すように、複数の残留気液分離器の間に、そのような圧力作動デバイスまたは機械的要素を複数使用することができる。
図3Cに示す残留気液分離器と水素気液分離器との間を接続する外部ループは、そのような圧力作動機構の一例である。この外部ループユニットは、圧力変動または体積変動に対応できるよう、予め設定された長さまたは容積を備える。ユニットの容積は、本明細書で説明したように決定することができる。
【0058】
本発明のシステムのいくつかの態様では、ピストンを圧力作動デバイスとして利用することができる。ピストンの使用は、
図4および
図5に示されている。ピストンは、体積または圧力の変動に応答することができる他の任意の圧力作動デバイスまたは機械的要素またはデバイスと置き換えることができることに留意されたい。デバイスまたは要素は、
図4または
図5に示すように配置することができる。ピストンが使用される特定の例では、ピストンを、
図4に示すように、気液界面の上方に配置することができ、よって、分離器が液体でオーバーフローする場合に、気体体積または液体体積を排出することによって気体の体積または圧力の変化に応答することができる。代替的には、
図5に示すように気液界面の下方に配置し、同様の方法でその変化に対応することもできる。
【0059】
したがって、
図1~
図6をすべて考慮すると、水素ガスおよび酸素ガスを製造するための本発明のシステム(
図1、120)は、
-少なくとも2のリアクタセル(
図1、130、140、セルAおよびセルB)と、
-複数の気液分離器(
図1、170、180、190)とを備え、前記複数の気液分離器が、
-溶解した水素ガスおよび電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の水素気液分離器(
図1、180)と、
-溶解した酸素ガスおよび電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の酸素気液分離器(
図1、170)と、
-実質的にガスを含まない液体、または溶解した水素ガス、酸素ガスまたはそれらの混合物を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の残留気液分離器(
図1、190)とを備え、(3以上の異なる配管回路(501)、(502)、(503)を含む一連の配管(150)を通る)水素ガス、酸素ガスまたはそれらの混合物の量が、4%(v/v)を超えることなく、
少なくとも2のリアクタセル(
図1、130、140、セルAおよびセルB)の各々が、流体を排出するように構成されかつ動作可能な出口(
図1、136、146)と、(例えば、上述したプッシュシーケンスに従って)流体を流し込むための供給入口(
図1、132、142)とを備え、
複数の気液分離器のうちの少なくとも1つが、(
図3A~
図3C、
図4および
図5に示すように)リアクタ内容物を気液分離器に排出することに起因する圧力変動に応答して、少なくとも1の気液分離器内の圧力変化を低減するように構成されかつ動作可能な圧力作動デバイスまたは機械的デバイスを有するように適合されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスおよび酸素ガスを連続的に生成するシステムであって、
複数のリアクタセルと、複数の気液分離器とを備え、
前記リアクタセルの各々が、水溶液を保持するとともに、少なくとも1の電極アセンブリを備えるように構成され、かつセルの1または複数に電気的バイアスが印加されている間に水素ガスを生成する一方、セルの1または複数にバイアスが印加されていない間に酸素ガスを生成するという、二つの機能を有するように構成され、
前記複数のリアクタセルの各々が分離され、それらの間に流体またはガスの連絡は実質的になく、
前記複数の気液分離器が、
-水素ガスおよび溶解した水素および電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の水素気液分離器と、
-酸素ガスおよび溶解した酸素および電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の酸素気液分離器と、
-ガスを含まない液体を受け入れて保持するか、または4%v/v未満の量の水素ガスまたは酸素ガスを含む液体を保持するようにそれぞれ構成された1または複数の残留物分離器とを含み、
前記リアクタセルがそれぞれ、配管アセンブリを介して分離器の各々に接続されて、3つの異なる回路として、前記複数のリアクタセルの各々が水素気液分離器に接続される水素回路と、前記複数のリアクタセルの各々が酸素気液分離器に接続される酸素回路と、前記複数のリアクタセルの各々が残留気液分離器に接続される残留物回路とを形成し、
前記リアクタセルの各々が、前記リアクタセル内への液体の流れおよび前記リアクタセルからの液体の流れを制御するための入力バルブおよび出力バルブを備え、それにより、前記複数のリアクタセルのうちの1または複数において水素生成ステップまたは酸素ガス生成ステップのうちの一方のガス生成ステップの完了後に、前記1または複数のリアクタセルの1または複数の入力バルブが、前記水素ガス回路または前記酸素回路の何れかのガス回路から前記残留物回路にそれぞれ切り替わって、前記残留物分離器から前記1または複数のリアクタセル内への液体の流れを可能にし、一方、前記1または複数のリアクタセルの1または複数の出力バルブが、前記1または複数のリアクタセルから水素ガスまたは酸素ガスを含む分離器への内容物の流れを可能にする向きを維持し、前記残留物分離器からの液体の流れが前記1または複数のリアクタセル内の電解液をガス回路のガス分離器内に押し出し、その後、前記1または複数の出力バルブが、水素ガス生成ステップおよび酸素ガス生成ステップのうちの他方を可能にするように切り替わることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記複数の気液分離器のうちの少なくとも1つが、リアクタ内容物を気液分離器に排出することに起因する圧力変動に応答して、少なくとも1の気液分離器内の圧力変化を低減するように構成されかつ動作可能な圧力作動デバイスまたは機械的デバイスを有するように適合されていることを特徴とするシステム。
【請求項3】
水素ガスおよび酸素ガスを製造するためのシステムであって、
-少なくとも2のリアクタセルと、
-複数の気液分離器とを備え、前記複数の気液分離器が、
-溶解した水素ガスおよび電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の水素気液分離器と、
-溶解した酸素ガスおよび電解液を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の酸素気液分離器と、
-実質的にガスを含まない液体、または溶解した水素ガス、酸素ガスまたはそれらの混合物を含む液相を受け入れて保持するようにそれぞれ構成された1または複数の残留気液分離器とを含み、水素ガス、酸素ガスまたはそれらの混合物の量が、4%(v/v)を超えることはなく、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、流体を排出するように構成されかつ動作可能な出口と、流体を流し込むための供給入口とを備え、
前記複数の気液分離器のうちの少なくとも1つが、リアクタ内容物を気液分離器に排出することに起因する圧力変動に応答して、少なくとも1の気液分離器内の圧力変化を低減するように構成されかつ動作可能な圧力作動デバイスまたは機械的デバイスを有するように適合されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項
2または3に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、ガス含有内容物を同じガスを含む気液分離器に排出するように構成されかつ動作可能な供給出口と、前記1または複数の残留気液分離器からの残留液体でリアクタの全内容物を置き換えるために、残留液体をリアクタ内に流し込むための供給入口とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項
2~4の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記酸素気液分離器の1または複数および前記水素気液分離器の1または複数が、前記圧力作動手段を介して前記残留気液分離器の1または複数と接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、前記1または複数の残留気液分離器からの液体でリアクタセルの全内容物を能動的に置き換えることによって、水素気液分離器に水素内容物を排出し、その後、リアクタセル内の残留液体を前記酸素気液分離器からの液体で置換するように構成されかつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも2のリアクタセルの各々が、前記1または複数の残留気液分離器からの液体でセルの全内容物を能動的に置き換えることによって、酸素気液分離器に酸素内容物を排出し、その後、リアクタセル内の残留液体を前記水素気液分離器からの液体で置換するように構成されかつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、線形または非線形の圧力作動手段であることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、分離器内への入口流によって引き起こされる圧力を減少させるように構成されかつ動作可能な往復運動デバイスであることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、残留気液分離器と水素または酸素気液分離器とを接続するピストンであることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、リアクタまたはリアクタのセット内の電解液量に比例するように選択された容積を有することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、そのサイズまたは容積を増加または減少させることによって圧力変動に反応することができる、サイズまたは容積を変更可能な気液分離器の形態であることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記圧力作動デバイスが、気液分離器を接続する配管またはチャネルの形態であることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項
13に記載のシステムにおいて、
前記配管またはチャネルが、式1により、リアクタの容積またはリアクタのセットの多重度によって決定される容積を有することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項
13に記載のシステムにおいて、
前記配管またはチャネルが、分離器の各々からの一定量の液体を保持するとともに、分離器の1つにおける圧力の上昇時に、ピストンフローユニットまたはプラグフローユニットとして動作するように構成されかつ動作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項
15に記載のシステムにおいて、
分離器の各々からの一定量の液体が、前記配管またはチャネルの長さ方向に沿って配置された可動固体バリアによって分離されることを特徴とするシステム。
【国際調査報告】