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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】心臓弁アセンブリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508056
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2021111111
(87)【国際公開番号】W WO2022028564
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202010790457.2
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522406632
【氏名又は名称】山前(珠▲海▼)生物材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘニフォード、リャン
(72)【発明者】
【氏名】肖 家▲華▼
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC12
4C097DD01
4C097DD12
4C097EE09
4C097EE11
4C097EE17
4C097MM04
4C097SB02
(57)【要約】
心臓弁アセンブリ、人工弁装置及び心臓弁アセンブリの製造方法である。心臓弁アセンブリは、管状構造をしているスカート部(1)と、スカート部(1)の内壁に設けられる少なくとも2つの弁尖(2)と、スカート部(1)の外部に設けられる複数の統合式アンカーリング(3)と、を含み、統合式アンカーリング(3)は一端がスカート部(1)の外部に固設され、他端が自由端であり、スカート部(1)、弁尖(2)及び統合式アンカーリング(3)は一体式弁構造を構成する。該心臓弁部材は、弁部材をステント(13)に接続するための正確な縫合の必要性を明らかに低減させることで組み立て工程を簡素化し、現在の縫合技術の不確定性を低減させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁アセンブリであって、
管状構造をしているスカート部と、スカート部の内壁に設けられる少なくとも2つの弁尖と、スカート部の外部に設けられる複数の統合式アンカーリングと、を含み、前記統合式アンカーリングは一端がスカート部の外部に固設され、他端が自由端であり、前記スカート部、弁尖及び統合式アンカーリングは一体式弁構造を構成することを特徴とする心臓弁アセンブリ。
【請求項2】
前記統合式アンカーリングの一端は、前記スカート部の縁部、前記スカート部の外部の幅方向における任意の位置、又は前記スカート部と前記弁尖との交織領域に設けられることを特徴とする請求項1に記載の心臓弁アセンブリ。
【請求項3】
前記スカート部、統合式アンカーリング、弁尖の材質は同一又は異なり、前記材質は生体適合性重合体であり、
好ましくは、前記生体適合性重合体は超高分子量ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタンエラストマーゴム、ポリヒドロキシ酢酸、ポリ乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、ポリ乳酸、ポリL-ラクチド、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリセバシン酸プロピレントリオールポリウレタンのうちの1種又は複数種であり、
より好ましくは、スカート部、統合式アンカーリング及び弁尖の材質はいずれも超高分子量ポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の心臓弁アセンブリ。
【請求項4】
前記統合式アンカーリングの長さが2mm~50mmであり、
好ましくは、前記スカート部の上側と下側との距離が1mm~50mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の心臓弁アセンブリ。
【請求項5】
副弁シールリングをさらに含み、
スカート部、弁尖、統合式アンカーリング及び副弁シールリングは一体式弁構造を構成する請求項1~4のいずれか1項に記載の心臓弁アセンブリ。
【請求項6】
心臓弁アセンブリの製造方法であって、
有ひ細幅電子ジャカード織機を用いて織物を製造し、
前記織物は、スカート部を形成する第1織物層と、弁尖を形成する第2織物層と、リングである統合式アンカーリングを形成する第3織物層との3層の織物層で構成され、これらの層は予め設定された位置で織物の長手方向にシームレスに一体に交織されることを特徴とする心臓弁アセンブリの製造方法。
【請求項7】
第2織物層を形成する方法は、前記第1織物層の幅方向のある点で、公知の織製パータンのいずれかを利用して第2織物層を第1織物層に完全に織り込み、2つの織物層同士をシームレスに接続することであることを特徴とする請求項6に記載の心臓弁アセンブリの製造方法。
【請求項8】
統合式アンカーリングを形成する方法は、具体的には、緯糸を前記第1織物層の耳部との交織点から第1織物層の幅方向である横方向に2mm~50mmである所定距離だけ延ばし、予め設定された点で、強く引っ張られている1本の経糸と緯糸を交織し、統合式アンカーリングを形成することであることを特徴とする請求項6又は7に記載の心臓弁アセンブリの製造方法。
【請求項9】
前記緯糸は第1織物層の耳部との交織点から横方向に2mmである所定距離だけ延びることを特徴とする請求項8に記載の心臓弁アセンブリの製造方法。
【請求項10】
人工弁装置であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の心臓弁アセンブリ又は請求項6~9のいずれか1項に記載の製造方法で製造された心臓弁アセンブリを含み、
前記心臓弁アセンブリに装着されたステントをさらに含むことを特徴とする人工弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医療器械の分野に関し、具体的には、心臓弁アセンブリ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、1)機械弁、2)生体弁、3)合成高分子弁という3種類の心臓弁が存在している。
【0003】
機械弁は、偏心軸に取り付けられ、心臓筋肉における安全弁シートに固定される1つ又は複数の弁から構成される。これらの機械弁は操作信頼性が非常に高いが、血流障害を引き起こしやすく、血栓形成のリスクを高める。そのため、機械弁を植え込むには患者が終生抗凝固薬を服用する必要があり、また、機械弁の弁アセンブリはカテーテルの中に十分に圧縮できず、さらにカテーテルによる低侵襲植え込み方式で装着位置に送達することができないため、機械弁は侵襲性の極めて強い心内植え込み手術を必要とし、それが原因で、合併症を抱えているために使用できない高齢者が多い。
【0004】
生体弁は、ヒトの臓器組織(同種移植片)又は動物由来の組織(自家移植片)から作られた弁修復体である。これらの弁修復体の生体組織は、一般に心臓とよく結合することができ、カテーテルによる送達をサポートするという付加的な利点を有するので、機械弁に存在する上記の欠点を克服し、より多く応用されることが可能である。しかし、生体弁は有機組織で構成されているため、自然に老化・劣化しやすく、自然に老化・劣化しないようにするためには、このような生体組織は、生体適合性を確保し、表面の石灰化を防ぐために多くの化学的処理が必要となることが多い。また、これらの生体組織が心臓内に効果的に固定されるためには1つのベースに取り付けられる必要があり、このベースの設置は生体弁内部に不利な流動条件を生じさせる可能性もある。
【0005】
合成重合体弁は、合成材料を使用して弁プロテーゼ全体を作製し、通常はポリウレタン又はシリコーンゴムを使用して成形する。これらの成形される弁は、自然な血液の流れを維持しながら、材料疲労に関連する問題を効果的に解消することができる。しかしながら、これらの合成重合体弁は、時間の経過とともに、循環応力のために曲げ部で破裂する危険性がある。近年、3次元プリント技術の発展により、様々なプリント可能な重合体を用いて、自然な心臓弁の形状をより正確に再現する試みがさらに増えている。しかし、これまでは、製品設計や構造材料の制約から、これらの弁は臨床的にも商業的にもほとんど成功していなかった。循環応力に基づいて、織製技術を用いて「フルテキスタイル」の心臓プロテーゼを製作することが何度も試みられてきたが、従来技術に開示されているフルテキスタイルの心臓プロテーゼでは、曲げ部の過度の疲労によりプロテーゼが故障したり、材質や形状が需要を満たしていなかったりするという問題が依然として存在していた。
【0006】
現在の心臓弁技術のもう1つの課題はステントに弁葉材料を接続することが困難であることにあり、通常は手動で縫合される。この方法では、ステント又はフレームへの心臓弁のさまざまな部品(弁葉、縫合リング、副弁シールリングなど)の接続を行うために、高度な訓練と熟練した技術者が必要である。縫製技術者の違いや組み立て工程の固有の主観性のため、この工程には固有の不確定性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、従来技術において人工心臓弁が老化しやすく、弁葉材料をステントに接続するのが困難であるということを解决するために、本願は心臓弁アセンブリ、人工弁装置及び心臓弁アセンブリの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、管状構造をしているスカート部と、スカート部の内壁に設けられる少なくとも2つの弁尖と、スカート部の外部に設けられる複数の統合式アンカーリングと、を含み、前記統合式アンカーリングは一端がスカート部の外部に固設され、他端が自由端であり、前記スカート部、弁尖及び統合式アンカーリングは一体式弁構造を構成する心臓弁アセンブリを提供する。
【0009】
さらに、前記統合式アンカーリングの一端は、前記スカート部の縁部、前記スカート部の外部の幅方向における任意の位置、又は前記スカート部と前記弁尖との交織領域に設けられる。
【0010】
さらに、前記スカート部、統合式アンカーリング、弁尖の材質は同一又は異なり、前記材質は生体適合性重合体であり、
前記スカート部、統合式アンカーリング、弁尖の材質は同一又は異なり、前記材質は生体適合性重合体であり、
前記生体適合性重合体はUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、TPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマーゴム)、PGA(ポリヒドロキシ酢酸)、PLGA(ポリ乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体)、PLA(ポリ乳酸)、PLLA’s(ポリL-ラクチド)、PDO(ポリジオキサノン)、PHA’s(ポリヒドロキシ脂肪酸エステル)、PGSU(ポリセバシン酸プロピレントリオールポリウレタン)であり、好ましくは、前記スカート部、統合式アンカーリング及び弁尖の材質はいずれも超高分子量ポリエチレンである。
【0011】
さらに、前記統合式アンカーリングの長さが2mm~50mmである。
【0012】
前記スカート部の上側と下側との距離が1mm~50mmである。
【0013】
心臓弁アセンブリは副弁シールリングをさらに含み、スカート部、弁尖、統合式アンカーリング及び副弁シールリングは一体式弁構造を構成する。
【0014】
さらに、スカート部、統合式アンカーリング、弁尖及び副弁シールリングの材質は同一又は異なり、
さらに、前記スカート部の形状は円筒形又は略円筒形である。
【0015】
本発明の一態様によれば、上記の心臓弁アセンブリを含み、前記心臓弁アセンブリに装着されたステントをさらに含む人工弁装置を提供する。
【0016】
本発明の一態様によれば、有ひ細幅電子ジャカード織機を用いて織物を製造し、
前記織物は、スカート部を形成する第1織物層と、弁尖を形成する第2織物層と、リングである統合式アンカーリングを形成する第3織物層との3層の織物層で構成され、これらの層は予め設定された位置で織物の長手方向にシームレスに一体に交織される心臓弁アセンブリの製造方法を提供する。
【0017】
第2織物層を形成する方法は、前記第1織物層の幅方向のある点で、公知の織製パータンのいずれかを利用して第2織物層を第1織物層に完全に織り込み、2つの織物層同士をシームレスに接続することである。
【0018】
さらに、前記有ひ細幅電子ジャカード織機はMEGEBA SSLMV(ドイツ語)である。
【0019】
さらに、第2織物層を形成する方法は、第1織物層の幅方向のある点で、多くの公知の織製パータンの1つを利用して第2織物層を第1織物層に完全に織り込み、2つの織物層同士をシームレスに接続することであり、前記公知の織製パータンは2層平織組織直交織製パータンであってもよい。
【0020】
さらに、統合式アンカーリングを形成する方法は、具体的には、緯糸を第1織物層の耳部との交織点から第1織物層の幅方向である横方向に2mm~50mmである所定距離だけ延ばし、予め設定された点で、強く引っ張れている1本の経糸と緯糸を交織し、統合式アンカーリングを形成することである。
【0021】
さらに、前記緯糸は第1織物層の耳部との交織点から横方向に2mmである所定距離だけ延びる。
【0022】
上記の一体式弁構造は紡績方式によるものである。
【0023】
さらに、第1織物層の縦方向(第1織物層の長手方向)の2つの端部は任意の縫合方法で接続されてもよく、前記縫合方法は縫合、超音波溶着や熱接着などを含み、アセンブリは円筒形の形状又は略円筒体の形状として形成され、
前記強く引っ張れている1本の経糸は結合糸であり、結合糸は、統合式アンカーリングの形成を補助する役割を果たし、心臓弁をステントに固定する際には、結合糸によって各アンカーリングがステントフレームの所定のアンカー位置に操作され、このように、接続工程が簡素化される。
【0024】
さらに、前記ステントは外科用心臓弁ステント、自己拡張型カテーテル送達心臓弁ステント、又はバルーン拡張型カテーテル心臓弁ステントである。
【0025】
さらに、第2~4織物層の糸の繊度が5~100デニールである。
【発明の効果】
【0026】
本願の技術的解決手段は以下の利点がある。
【0027】
1、本願の心臓弁部材は、弁部材をステントに接続するための正確な縫合の必要性を明らかに低減させることで組み立て工程を簡素化する。現在の縫合技術の不確定性を低減させることも可能となる。
【0028】
2、本願の心臓弁アセンブリ及びその製造方法は、外科や経カテーテル心臓弁における人工合成材料の使用を促進する。
【0029】
3、本願の心臓弁部材を用いることにより、動物由来の組織を用いた心臓弁の耐用年数を延ばすことができる。
【0030】
4、アンカーリングをスカート部の外部にシームレスに統合することは、組み立て工程を簡素化し、弁の製造に必要な総時間を減少させることに有利であるため、製造装置の総コストを潜在的に低減する。
【0031】
5、本願の心臓弁部材は、ステントを配置して、スカート部や弁葉部材に組み立てることを効率化し、これによって、精度を高め、再現性を向上させ、高度な訓練を受けた組立技術者の必要性を低減することができる。
【0032】
6、本願の心臓弁部材は、種々の組合せ材料を使用する場合に最適化されて理想的な流動力学を実現し得る任意の数及び幾何学的形状の葉を収容することができる。
【0033】
7、本願の製造方法は改良されると、心臓弁に加えて、医療器械の分野に必要な他の生物学的紡績材料の製造にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本願の具体的な実施形態又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、明らかに、以下の説明における図面は本願の一部の実施形態であり、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0035】
図1】実施例1における心臓弁アセンブリの構造概略図である。
図2】統合式アンカーリングを有する3層の織物層の断面図である。
図3】結合糸による統合式アンカーリングの形成補助の概略図であり、主としてアンカーリングをどのように形成するかを示すことを目的とし、9は多層の織物層であって、具体的には、第1織物及び/又は第2織物層及び/又は第4織物層であってもよく、具体的な織物層を区別することはしない。
図4】統合式アンカーリングを含む3層の織物である。
図5図4における統合式アンカーリングを含む3層の織物の横断面であり、8は3層の織物層の交織領域である。
図6】3層の織物(統合式アンカーリング付き)であり、第1織物層がステントの輪郭に適合し、11は第1織物層の裁断領域である。
図7】実施例2における4層織物層からなる織物(図6を基に、副弁シールリングが統合されているもの)であり、第1織物層がステントの外形に適合し、符号12は副弁シールリングである。
図8図7における織物の横断面であり、8は4層織物層の交織領域である。
図9】従来技術における典型的な外科心臓弁部材である。
図10】実施例3における人工弁装置の概略図であり、該図は、心臓弁アセンブリが全体としてステントに装着されたことを示すものであって、一部の部材を示していない。
図11図10のA部の拡大図である。
図12】実施例3におけるステントであり、丸はステントの構造ではなく、所定のアンカー点をより明確に示すために追加されるものであり、符号14は所定のアンカー点である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
上記の図面における「井」字形のものは織物を表す。
以下、図面を参照して本願の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明する実施例は本願の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者が本願の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実施例は、本願の特許範囲に属する。
【0037】
なお、本願の説明において、「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」などの用語により示される方位又は位置関係は図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本願を説明しやすく、説明を簡素化するために過ぎず、係る装置又は部品が必ずしも特定の方位を有したり、特定の方位で構成、操作されたりすることを指示又は示唆するものではなく、このため、本願を制限するものとして理解されるべきではない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」のような用語は説明の目的にのみ使用され、相対的重要性を指示又は示唆するものとして理解されるべきではない。
【0038】
なお、本願の説明においては、特に明確な規定や限定がない限り、「取り付ける」、「連結」、「接続」という用語は広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続、又は一体接続であってもよく、機械的接続であってもよいし、電気的接続であってもよく、直接連結であってもよいし、中間媒体を介した間接的連結、2つの部品の内部連通であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記の用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0039】
なお、以下で説明する本願の各実施形態に係る技術的特性は互いに矛盾しない限り、互いに組み合わられてもよい。
【0040】
実施例1、心臓弁アセンブリ
心臓弁アセンブリは、図1に示すように、管状構造をしているスカート部1と、スカート部1の内壁に接続される少なくとも2つの弁尖2と、スカート部1の外部に設けられる複数の統合式アンカーリング3と、を含み、スカート部1、弁尖2及び統合式アンカーリング3は一体式弁構造を構成する。
【0041】
前記スカート部1の上側と下側に耳部を有し、前記弁尖2の対向する両側はそれぞれ交織側と自由側であり、前記交織側は織製方法でスカート部1の2つの耳部の間に固定され、前記自由側は耳部である。前記統合式アンカーリング3の対向する両側はそれぞれ交織側と自由側であり、前記交織側は織製方法でスカート部1の外部の2つの耳部の間に固定される。
【0042】
本実施例の弁尖2の数は3つに設定される。
【0043】
スカート部1はリーフレットのための安全なアンカー点を提供し、弁周囲の漏出を防止しながら、弁周辺にある心臓組織が弁の内部まで成長し弁尖の機能に悪影響を与えることを回避することができる。
【0044】
統合式アンカーリング3は弁アセンブリをステントにアンカーする役割を果たす。
【0045】
本実施例では、スカート部1、弁尖2及び統合式アンカーリング3の材質はいずれも生体適合性重合体UHMWPEである。
【0046】
前記心臓弁アセンブリの製造方法(図1-6参照)は以下のとおりである。
【0047】
1)有ひ細幅電子ジャカード織機(MEGEBA SSLMV)を用いて織物を形成する。前記織物はスカート部1を形成する基層(第1織物層)と、弁尖2を形成する第2織物層と、ステントアンカー部品のリングであるアンカーリング3を形成する第3織物層との3層の織物層で構成される。これらの層は予め設定された位置で織物の長手方向にシームレスに一体に交織される。
【0048】
合成された弁尖2は前記織物基層(第1織物層)に接続され、第1織物層を形成する過程では、緯糸が第1織物層の2つの縁部に沿って切断されずに通り、耳部が形成される。
【0049】
該第1織物層の幅は1mm~50mmであり、スカート部に形成された接続箇所の長さ(弁尖2と第1織物層との接続領域の長さ)に依存し、第1織物層に使用される糸の繊度は5~100デニールであり、第1織物層に必要な厚さや密度に依存する。本実施例では、第1織物層の幅は50mmであり、第1織物層に使用される糸の繊度は100デニールである。
【0050】
2)第1織物層の幅方向のある点で、多くの公知の織製パータンの1つ、本実施例では2層平織組織直交織製パータンを利用して、第2織物層を第1織物層に完全に織り込み、2つの織物層同士をシームレスに接続する。
【0051】
第2織物層は合成弁尖2(リーフレット)となり、弁尖2は経糸と緯糸を交織することにより形成されたものである。
【0052】
第1織物層の長手方向のある点で、第2織物層が第1織物層全体に接続されて、付着点が形成される。これらの点は、任意の数の幾何学的図形を形成して、弁葉の最適な性能を実現するために、織製中に変更してもよく、本実施例では、図4及び図6に示すように、当該図形は直線状である。
【0053】
本実施例の第1織物層及び第2織物層の形状は図4に示されるとおりであり、すなわち、第1織物層は長方形であり、1つの代替実施例の形態として、図6に示すように、第1織物層はステントの形状に適合する特定の形状に裁断されることにより変更してもよく、また、変更したスカート部1も弁尖2と接合することを満たすことができる。
【0054】
3)第1織物層及び第2織物層に加えて、構造上、緯糸を用いて形成した統合式アンカーリング3である第3織物層を増設し、これらの緯糸ループは第1織物層の1つの耳部に沿って第1織物層と第2織物層との交織領域と交織するか、又は、これらの緯糸ループは第1織物層の1つの耳部に沿って第1織物層と交織してもよい。また、第1織物層の幅方向の異なる点に沿って交差して織製してもよい。このような緯糸は、第1織物層及び/又は第2織物層と交織する交点から横方向(本明細書に係わる横方向は第1織物層の幅方向)に所定の長さまで延伸し、このようなループはステント表面のアンカー点にアンカーされることができる。
【0055】
本実施例では、統合式アンカーリング3を形成する具体的な方法は以下のとおりである。緯糸は第1織物層の耳部との交織点から横方向に2mmである所定の一距離だけ延伸する。所定の点では、緯糸は強く引っ張れている1本の経糸と一体に交織し、統合式アンカーリングが形成され、図2及び図3に示すように、強く引っ張れている1本の経糸は結合糸5と称され、上記のステップを繰り返すと複数の統合式アンカーリングが形成されることができる。結合糸の材質は繊維、糸又は鋼線であってもよいが、本実施例では繊維である。
【0056】
1つの代替実施形態として、緯糸が第1織物層の耳部との交織点から横方向に延伸する距離は2mm~50mmである。
【0057】
個別の結合糸5は第1織物層の長手方向に沿って所定の点で緯糸と交差する。これらの結合糸5は統合式アンカーリングの形成を補助することに用いられ、統合式アンカーリングの長さは、最終的には対応するステントにおけるアンカー点の位置、つまり人工弁がステントに装着された最終的な位置によって決定される。
【0058】
第1層、第2層及び第3層の織物層(アンカーリング)同士の界面がシームレスで統合された弁アセンブリが形成され、後で、該弁アセンブリは素早くかつ再現可能にステントフレームにアンカーされ得る。
【0059】
4)所望数の弁、弁葉及びアンカーリングの製織が完了した後、結合糸5に十分な張力を維持したままで、製織構造体を織機から取り出し、これによって、統合式アンカーリング3が支持、保持されることを確保する。例えば、図1における接続箇所4のように、第1織物層の縦方向(第1織物層の長手方向)の2つの端部は任意の縫合方法で接続されてもよく、前記縫合方法は縫合、超音波溶着や熱接着などを含み、図1に示すように、アセンブリは円筒形の形状又は略円筒体の形状として形成される。
【0060】
実施例2
実施例1との相違点は以下のとおりである。心臓弁アセンブリは副弁シールリング12をさらに含み、前記副弁シールリング12、スカート部1、弁尖2及び統合式アンカーリング3は一体式弁構造を構成する(図7及び図8参照)。有ひ細幅電子ジャカード織機を用いて織物を形成し、前記織物は、スカート部1を形成する基層(第1織物層)と、弁尖2を形成する第2織物層と、ステントのアンカー部品を形成するリングであるアンカーリング3で構成される第3織物層と、縫製リング/又は副弁シールリング12を形成する第4層との4層の織物層で構成され、交織側と自由側を有し、図7に示すように、本実施例では、第1織物層と第2織物層との交織領域に沿って、多くの公知の織製パータンのうちの1つ、本実施例では、2層平織組織直交織製パータンを用いて、第4織物層の交織側を前記交織領域に完全に織り込み、4つの織物層同士をシームレスに接続する。前記第4織物層の形状は正方形である。これらの層は予め設定された位置で織物の長さに沿ってシームレスに一体に交織される。副弁シールリング12は、弁プロテーゼの周囲にある生物組織と押して接触することで、所望の位置へのインプラントの固定及び使用寿命にわたって弁周囲の漏出が生じないようにする役割を果たす。また、組織が副弁シールリング12内まで成長することを促進することができ、それにより漏出の可能性をさらに低減させ、経時的に弁のアンカー安定性を向上させる。
【0061】
本実施例では、図7に示すように、ステントの形状に適合する特定の形状にカットすることによって第1織物層を修正し、また、修正後のスカート部1も弁尖2との接合を満たすことができる。
【0062】
実施例3
人工弁装置は、実施例1又は実施例2で製造された心臓弁アセンブリを含み、前記心臓弁アセンブリに装着されたステント13をさらに含み、前記ステントは外科用心臓弁ステント(開胸手術用)、自己拡張型カテーテル送達心臓弁ステント(低侵襲手術/TAVR用)又はバルーン拡張型カテーテル心臓弁ステント(低侵襲手術/TAVR用)である。本実施例では、心臓弁アセンブリは、製造された後、最終的な幾何学的形状の構築のために、熱成形、埋め込み成形、超音波溶着、溶剤処理、精練(溶剤による洗浄)等の任意の後処理技術を経て処理されることができ、幾何学的形状の構築が完了した後にステントと固定すればよい。ステントを心臓弁アセンブリに固定する方法は、ステントの幾何学的形状及び心臓弁アセンブリの構造に依存し、一方、心臓弁アセンブリとステントとの間の固定はアンカーリングによって実現され(図10図12参照)、本実施例では、ステント13を心臓弁アセンブリに固定する方法は、アンカーリングの自由端をステントの所定のアンカー点14に掛け、結合糸を利用して、各統合式アンカーリングをステントフレームの所定のアンカー位置に操作してから、結合糸5を取り除くことであり、接続工程が簡素化される。
【0063】
本願に係る心臓弁アセンブリを用いることによって、ステントの位置合わせや位置決めがより容易になり、さらに装着がより正確かつ簡便になり、主観性がより低下することができる。
【0064】
心臓弁アセンブリがステントにアンカーされると、ステントを他の部材に固定する方法はステントの形状、所望の用途(すなわち大動脈弁、僧帽弁など)や外科的方法(すなわちカテーテルによる送達、開心術など)に依存する。残りの弁部材は複数種の方法で固定されてもよく、これらの方法には、縫合、溶接、粘着剤の所定位置への付与、スカート部に「ポケット」を設計してステントとのアンカーを強化することなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
もちろん、上記の実施例は明確に説明するための例に過ぎず、実施形態を限定するものではない。当業者にとっては、上記の説明に基づいてさらに様々な他の変化や変動を行うことができる。ここでは、全ての実施形態を一々例示することは必要がないし、不可能なことでもある。これらから導出する明らかな変化や変更も本願の特許範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 スカート部
2 弁尖
3 統合式アンカーリング
4 接続箇所
5 結合糸
6 緯糸
7 経糸
8 2層織物層又は多層織物層の交織領域
9 多層織物層
10 弁尖とスカート部との接続領域
11 裁断領域
12 副弁シールリング
13 ステント
14 所定のアンカー点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】