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▶ ローデンストック.ゲゼルシャフト.ミット.ベシュレンクテル.ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】眼科用レンズの改善された計算
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
G02C13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508061
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021071710
(87)【国際公開番号】W WO2022029150
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】102020004840.4
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503279013
【氏名又は名称】ローデンストック.ゲゼルシャフト.ミット.ベシュレンクテル.ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】アダム、ムシーロク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート、アルトハイマー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、ケルナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、ツィンマーマン
(72)【発明者】
【氏名】レオ、シュミット
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006DA00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するための表面モデルを、少なくとも、レンズのためのオーダ・パラメータのセットから、および/または前記オーダ・パラメータに依拠した変数から決定するための方法に関する。本方法は、複数のオーダ・データ・セットを含むトレーニング・データ・セットを提供することと、前記トレーニング・データ・セット内の前記オーダ・パラメータ・セットの各々について、前記少なくとも1つのレンズの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの目標値を提供することと、モデル・パラメータによってパラメータ化された少なくとも1つの表面モデルを提供することと、モデル・パラメータの目標関数を、少なくとも前記モデル・パラメータおよび提供された目標値に依拠して最小化/最大化する目的で、例えばモデル・パラメータの値の最適化によって、提供された目標値を用いて表面モデルのモデル・パラメータの最適化値を決定することとを含む。オーダ・パラメータ・セットの各々のモデル・パラメータの目標関数は、前記それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための前記レンズの前記少なくとも1つの特性の前記提供された目標値が、対応するオーダ・パラメータ・セットのための前記表面モデルの前記モデル・パラメータの所与の値について前記表面モデルを用いて計算可能である少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小/最大を仮定する少なくとも1つの項を含む。本発明は、表面モデルの支援により眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するための方法、対応する製造方法、ならびに対応するコンピュータ・プログラム製品およびデバイスにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するための表面モデルを、少なくとも、前記少なくとも1つの眼科用レンズのためのオーダ・パラメータのセットから、および/または前記オーダ・パラメータに依拠した変数から決定するためのコンピュータ実施方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの眼科用レンズをオーダするのに必要なパラメータの少なくとも一部分の値をそれぞれ含む複数のオーダ・パラメータ・セットを含むトレーニング・データ・セットを提供することと、
前記トレーニング・データ・セット内の前記オーダ・パラメータ・セットの各々について、前記少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの目標値を提供することと、
モデル・パラメータによってパラメータ化された少なくとも1つの表面モデルを提供することであって、これを用いて、-前記モデル・パラメータの所与の値について-少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を、少なくとも、オーダ・パラメータ・セットから、および/またはオーダ・パラメータ・セットに依拠した変数から計算可能であることと、
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の前記計算のために前記表面モデルを取得することであって、
前記提供された目標値を用いて、前記少なくとも1つの表面モデルの前記モデル・パラメータの最適化値を決定することを含むことと、
を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの表面モデルの前記モデル・パラメータのための最適化値の前記決定は、
前記少なくとも1つの表面モデルの前記モデル・パラメータの目標関数を最小化または最大化する目的で、前記少なくとも1つの表面モデルの前記モデル・パラメータの値を最適化することを含み、前記目標関数は、少なくとも、前記モデル・パラメータと、前記提供される目標値とに依拠し、前記オーダ・パラメータ・セットのそれぞれについての前記モデル・パラメータの前記目標関数は、前記それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための前記少なくとも1つの眼科用レンズの前記少なくとも1つの特性の前記提供された目標値が、対応するオーダ・パラメータ・セットのための前記表面モデルの前記モデル・パラメータの所与の値について前記表面モデルを用いて計算可能であるかまたは計算される少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小または最大を仮定する少なくとも1つの項を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モデル・パラメータによってパラメータ化された少なくとも1つの表面モデルを前記提供することは、異なる複雑度の少なくとも2つの表面モデルを提供することを含み、表面モデルの複雑度は、以下の変数:
- 前記モデルにおいて用いられる前記オーダ・パラメータのタイプおよび/または数、
- オーダ・パラメータに依拠した前記変数のタイプおよび/または数、
- モデル・パラメータの数、
- 前記モデル・パラメータの前記最適化において用いられる前記目標関数の正則化のタイプおよび/または強度、
のうちの1つまたは複数を含み、
少なくとも1つの眼科用レンズをオーダするのに必要な前記パラメータの少なくとも一部分の値をそれぞれ含む複数のオーダ・パラメータ・セットを含む検証データ・セットを提供することと、
前記検証データ・セット内の前記オーダ・パラメータ・セットの各々について、前記少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの目標値を提供することと、
を更に含み、
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するために表面モデルを前記取得することは、
前記それぞれの表面モデルの前記モデル・パラメータの所与の所定の最適化値について異なる複雑度を有する前記提供された表面モデルについて、前記検証目標関数の値、および/または前記検証目標関数から導出される前記変数の値を計算することであって、前記検証目標関数は、提供される目標値に依拠し、前記検証データ・セット内の前記オーダ・パラメータ・セットの各々について少なくとも1つの項を含み、前記項は、前記それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための前記少なくとも1つの眼科用レンズの前記少なくとも1つの特性の前記提供された目標値が、対応するオーダ・パラメータ・セットのための前記表面モデルの前記モデル・パラメータの所与の最適化値について前記表面モデルを用いて計算可能であるかまたは計算される少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小または最大を仮定することと、
前記検証目標関数の前記計算された値に基づいて、および/または前記検証目標関数から導出される前記変数の値を用いて、前記モデル・パラメータの前記最適化値を用いてパラメータ化される異なる複雑度を有する前記表面モデルから、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の前記計算のための前記表面モデルを選択または決定することと、
を更に含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記モデル・パラメータの前記目標関数および/または前記検証目標関数の前記少なくとも1つの項は、その少なくとも1つの表面がオーダ・パラメータ・セットのための前記表面モデルに従って計算可能であるかまたは計算される前記レンズの前記少なくとも1つの所定の特性の前記少なくとも1つの値と、同じオーダ・パラメータ・セットについてのこの特性の前記少なくとも1つの目標値との間の差、または前記差の凸関数もしくは凹関数を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記モデル・パラメータの前記目標関数および/または前記検証目標関数の1つまたは複数の項は、所与のオーダ・パラメータ・セットについての少なくとも1つの眼科用レンズの最適化または計算のための目標関数を形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
オーダ・パラメータが既知の既に製造された眼科用レンズの前記少なくとも1つの特性の測定値、または
既に製造された眼科用レンズの1つもしくは複数の測定値から決定されるかもしくは決定可能な値、または
オーダ・パラメータが少なくとも部分的に既知の、製造される眼科用レンズの公称値、
が、前記少なくとも眼科用レンズの前記少なくとも1つの特性の目標値として設定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記モデル・パラメータの前記目標関数および/または前記検証目標関数は、前記オーダ・パラメータ・セットの各々について評価される項の前記トレーニング・データ・セットおよび/または検証データ・セットにおける全てのオーダ・パラメータとの加重和または非加重和を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記オーダ・パラメータのセットは、それぞれ、以下のパラメータ:
少なくとも1つの屈折値、
前記眼科用レンズの少なくとも1つの幾何学的パラメータまたは材料パラメータ、
眼鏡フレームの少なくとも1つの幾何学的パラメータ、
前記眼科用レンズの少なくとも1つの意図される使用、
眼科用レンズの個別化および/または個人化のための少なくとも1つのパラメータ、
前記眼科用レンズの未来の装着者の少なくとも1つの生理学的特性、
前記眼科用レンズの前記未来の装着者の単数または複数の眼の少なくとも1つの生体特性、
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの所定の特性は、以下の特性:
前記少なくとも1つの表面の頂点奥行きおよび/またはその導関数、
前記少なくとも表面の表面パラメータ、または表面パラメータの組み合わせ、
前記眼科用レンズならびに/またはその勾配および/もしくは分布の光学特性、
前記眼科用レンズの良好な視界の少なくとも1つのゾーンの幅、
前記眼科用レンズの幾何学的特性、
前記表面モデルを用いて計算された前記眼科用レンズの装着者の視界の質および/または姿勢に関する不快感、
前記表面モデルを用いて計算された前記眼科用レンズの装着者の視知覚の特性、
前記オーダ・パラメータに含まれない前記眼科用レンズの幾何学的パラメータまたは材料パラメータ、
前記オーダ・パラメータに含まれない眼鏡フレームの幾何学的パラメータ、
のうちの1つである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの眼科用レンズは、一対のレンズのレンズのうちの一方であり、
前記複数のオーダ・パラメータ・セットは、前記一対のレンズをオーダするのに必要な前記パラメータの少なくとも一部分のそれぞれの値を含み、
前記少なくとも1つの特性は、前記一対のレンズの両眼特性を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面モデルによって生成される前記表面は、前記オーダ・パラメータ・セットにおける前記オーダ・パラメータの連続関数または連続的に導出可能な関数である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記表面モデルは、線形もしくは非線形回帰モデルであるかまたはこれを含み、前記回帰モデルの係数は、前記表面モデルの前記モデル・パラメータの少なくとも一部分を表し、および/または
前記表面モデルは、分類モデルであるかもしくはこれを含み、および/または
前記表面モデルは、ニューラル・ネットワークであるかもしくはこれを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記モデル・パラメータの前記値の前記最適化は、前記モデル・パラメータの前記最適化において用いられる目標関数の正則化を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、
複数のオーダ・データ・セットを含む試験データ・セットを提供することと、
前記試験データ・セット内の前記オーダ・パラメータ・セットの各々について、前記眼科用レンズの前記少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの目標値を提供することと、
前記試験データ・セットに基づいて少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算のために前記取得した表面モデルを試験することと、
を更に含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するためのコンピュータ実施方法であって、
前記少なくとも1つの眼科用レンズのオーダ・パラメータ・セットを提供することと、
前記少なくとも1つの眼科用レンズのオーダ・パラメータのセットから、および/または前記オーダ・パラメータに依拠する変数から、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するための関数を提供することであって、前記関数は、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法に従って決定された表面モデルであるか、または前記少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面へのオーダ・パラメータ・セットのマッピングを近似的に実施する関数であり、このマッピングは、請求項1~14のいずれか1項に従って決定された表面モデルを用いて実施可能であることと、
前記提供されたオーダ・パラメータ・セットから、前記提供された関数の支援により、前記少なくとも1つの眼科用レンズの前記少なくとも1つの表面の表面データを決定することと、
を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項16】
前記方法は、
前記表面モデルを用いて計算された前記少なくとも1つの表面の補正を実施することを更に含み、前記補正は、前記表面モデルを用いて計算された前記表面の最適化、および/または重ね合わせ表面との重ね合わせ、および/または前記表面のもしくは前記眼科用レンズの光学特性の製造に依拠したずれの補正、および/または製造の要求に応じた前記眼球用レンズの直径への前記表面の拡張を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、
所望のまたは要求された特性を満たすために、前記表面モデルを用いて計算される前記少なくとも1つの表面をレビューすることと、
前記要求された特性を満たしているかまたは満たしていないかに関する情報を、前記表面データを決定するのに用いられる前記オーダ・パラメータ・セットの少なくとも一部分と共に、および/または前記表面モデルを用いて計算され、場合によっては補正された前記少なくとも1つの表面と共に、および/または請求項1~14のいずれか1項による前記表面モデルの決定中に目標特性値として提供することができる所望のもしくは要求された特性の少なくとも1つの値と共に記憶することと、
を更に含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、
前記表面モデルを用いて計算され、場合によっては補正された前記表面の各々を決定および/もしくは記憶した後に、または前記表面モデルを用いて所定の数の表面が計算され、場合によっては補正された後に、前記表面モデルの前記モデル・パラメータを適合させることを更に含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
コンピュータのメモリにロードされ、前記コンピュータ上で実行されると、前記コンピュータが請求項1~18のいずれか1項に記載の方法を実施するという効果を有する、コンピュータ・プログラム製品。
【請求項20】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するための表面モデルを、前記少なくとも1つの眼科用レンズのためのオーダ・パラメータのセットから、および/または前記オーダ・パラメータに依拠した変数から決定するためのデバイスであって、前記デバイスは、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法を実施するように設計されたコンピューティング・デバイスを備える、デバイス。
【請求項21】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するためのデバイスであって、前記デバイスは、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法を実施するように設計されたコンピューティング・デバイスを備える、デバイス。
【請求項22】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の表面データを含むデータ・セットであって、前記少なくとも1つの表面は、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法に従って決定された、データ・セット。
【請求項23】
眼科用レンズを製造するための方法であって、
請求項15~18のいずれか1項に記載の方法に従って、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定することと、
前記少なくとも1つの表面を有する前記眼科用レンズを製造することと、
を含む、方法。
【請求項24】
眼科用レンズを製造するためのデバイスであって、
請求項21に記載の眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するためのデバイスと、
前記少なくとも1つの表面を有する前記眼科用レンズを製造するための製造デバイスと、
を備える、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面モデルを決定するための方法、表面モデルの支援により少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するための方法、および対応する製造方法に関する。本発明は、コンピュータ・プログラム製品およびデバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズ等の眼科用レンズの計算において、1つの目的は、眼科用レンズまたはレンズ対の表面の形状、および互いに対するそれらの場所(すなわち、向きおよび位置)を計算し、それらが定義された幾何学的特性(例えば、レンズの定義された点における所定の厚み)および後の装着状況に対し適合された光学的特性(例えば、眼科用レンズを通して見る眼または両眼に対する、光学的および場合によっては更に生理学的な観点での適合)を有するようにすることである。
【0003】
眼科用レンズの例は、コンタクト・レンズおよび眼鏡レンズ、例えば単焦点レンズおよびコンタクト・レンズ、多焦点眼鏡レンズおよび多焦点コンタクト・レンズ、ならびに可変屈折力を有する眼鏡レンズ(例えば、可変焦点レンズ)である。
【0004】
従来の眼鏡レンズを仮定して、適合の方式は、眼の屈折異常、レンズに用いられる材料の屈折率、ならびに眼鏡レンズの縁部のサイズおよび/または形状に大部分が制限される。屈折異常は、球、円筒および軸、場合によってはアディションもしくは近見屈折、および/またはプリズム処方を含んでもよい。
【0005】
個別化された眼鏡レンズとして既知のものを仮定して、-(中心化パラメータにより与えられる)視認中の眼からの眼鏡レンズの向きおよび距離、レンズおよび/または互いに対する眼の回転中心の距離もしくは場所、眼鏡レンズにおける定義された観察点(例えば基準点)における個々の物体距離、ならびに、ガラスにおけるこれらの観察点の個々の位置等の-個々のパラメータが、追加のパラメータとして加えられる。
【0006】
個人化された眼鏡レンズを仮定して、追加のパラメータ、例えば、眼鏡レンズのために特に提供された視認状況、視認挙動(例えば、頭部および眼の偏向の相互作用)、眼を記述する生体パラメータ(例えば、異なる視認方向、目の長さ、眼の屈折表面の曲率および位置、媒体の屈折率を仮定した(例えばゼルニケ係数セットとして)より高い次数を含む波面誤差、瞳孔サイズ、および/または位置)、または提供される装着者に固有の他のパラメータが加えられてもよい。
【0007】
【0008】
オーダ・パラメータの例は、眼鏡レンズについて確立された規格に見られる(例えば、医薬品に関するEUガイドライン93/42/EWGを参照)。
【0009】
このため、全体として、オーダ・パラメータのセットからの眼科用レンズの計算を仮定して、眼科用レンズまたはレンズ対が製造されてもよい表面パラメータのセットを計算するという目的が存在する。
【0010】
従来の眼鏡レンズを仮定して、これは、表面パラメータの直接計算により(例えば、基準点または測定点における処方を調整するために、1つの製品について決定された、決定された表面を別の表面と重ね合わせることにより)行うことができる。個別化または個人化された眼鏡レンズを仮定して、開始表面の形状および場所、ならびに最適化される1つまたは複数の目標関数が必要な最適化が多くの場合に用いられる。
【0011】
そのような開始表面は、複数のオーダ・パラメータについて一定に保持されてもよく、または異なるオーダ・パラメータ・セットに属する複数の開始表面が補間および/もしくは外挿されてもよい。
【0012】
目標関数を用いた最適化方法の例は、例えば、EP 1 091 233、DE 10 2012 000 390、EP 2 384 479、EP 2 177 943に記載されている。
【0013】
直接的な計算による例示的な方法は、EP 0 654 692 A1またはUS 4 514 061 Aに記載されている。補間による計算の例はEP 2 449 420に記載されている。
【0014】
眼科用レンズのための従来の計算方法の不利点は、オーダ・パラメータの数の増大に伴い、(例えば、重ね合わせによる)直接的な計算がもはや可能でないかもしくは品質低下に結び付けられるか、または、最適化において評価される目標関数がより複雑になるため、最適化パスの計算時間が次第に長くなることである。
【0015】
実際には、低い計算コストを有するいくつかのパラメータのセットから眼科用レンズの表面を直接計算する方法、-例えばEP 0 654 692 A1またはUS 4 514 061 A(Winthrop)に記載の方法-が存在する。しかしながら、これらの方法を用いると、もはや最新でない判断基準(例えば、表面特性を用いるが使用位置特性を用いない多焦点レンズの最適化)を用いて最適な決定された表面群を計算することしか可能でないため、これらの方法は、最近一般的な眼科用レンズを計算するのに用いられ得ない。
【0016】
眼科用レンズの計算、特に、個別化または個人化された眼鏡レンズの計算集約的最適化は、通例、眼科用レンズが同一のまたは非常に類似したオーダ・パラメータを有し、したがってそのように計算された眼科用レンズの表面が同一または類似である場合であっても、毎回新たに実施される。そのような計算は、通常、(眼科用レンズの設計の作成において、製造される表面を決定するため、または表面の幾何学的特性を用いて眼科用レンズを製造することが可能であるか否かをチェックするために)眼科用レンズの製造において実施される。これらは、そのようなレンズの未来の装着者の個別化または個人化された眼科用レンズの光学的および幾何学的特性(例えば、明確に見えるゾーンの位置および多焦点レンズを仮定した厚み)を明確にするために、(例えば眼鏡技師における)相談時にも用いられる。待機時間を短く保つために、この特定の用途において、計算は短時間で完結されなくてはならない。
【0017】
EP 2 449 420において、その方法の支援により、眼鏡レンズの表面の高速な計算が、オーダ・パラメータ空間において既に最適化された表面の補間によって実施され得る方法が開示される。しかしながら、この方法の場合、オーダ・パラメータに依拠した表面の変化が予め計算されなくてはならず、これにより高いストレージ要件につながるか、またはそうでない場合、全ての計算において繰り返されなくてはならず、ひいてはより長い計算時間につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、眼科用レンズの計算に必要な計算コストを低減させ、同時にストレージ要件を低減させることである。これにより、必要とする計算能力がより少なく、したがってより有利な、眼科用レンズのより高速な計算が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、表面モデルを製造するためのコンピュータ実施方法、対応するデバイスおよび対応するコンピュータ・プログラム製品と、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するためのコンピュータ実施方法、対応するデバイスおよび対応するコンピュータ・プログラム製品と、それぞれの独立請求項に示される特徴を有する眼科用レンズを製造するための方法および対応するデバイスとにより達成される。
【0020】
第1の態様によれば、少なくとも1つの眼科用レンズ(例えば、コンタクト・レンズまたは眼鏡レンズ)の少なくとも1つの表面を計算するための表面モデルを、少なくとも1つの眼科用レンズのためのオーダ・パラメータのセットから、および/またはオーダ・パラメータに依拠した変数(例えば、オーダ・パラメータから導出される変数等)から決定するためのコンピュータ実施方法が提供される。
【0021】
「眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算」は、本出願の意味において、表面または表面の一部の少なくとも一部分の計算を含む。異なる表現をすると、「眼科用レンズの少なくとも1つの計算」によって理解されるものは、表面の少なくとも1つの部分の計算、または表面全体の計算である。
【0022】
少なくとも1つの眼科用レンズは、個々のレンズであり得る。同様に、一対の眼科用レンズの一方または双方を計算することが可能である。例えば、人物の右眼および左眼のために指定されたレンズを含む眼科用レンズの少なくとも1つの対(レンズ対)は、表面モデルを用いて計算されてもよい。この事例において、レンズ対の双方のレンズのオーダ値(例えば、眼鏡レンズ対の左および右の眼鏡レンズ、ならびに双眼オーダ・データ等)がオーダ・パラメータのセット(オーダ・パラメータ・セット)に含まれてもよい。
【0023】
表面モデルに従って計算される少なくとも1つの表面は、少なくとも1つのパラメータによってパラメトリックに記述されてもよい。この事例における、表面モデルの支援による表面の計算は、オーダ・パラメータからのまたはオーダ・パラメータに依拠する変数(補助変数)(例えば、オーダ・パラメータから導出される変数等)からの表面の少なくとも1つのパラメータ(表面パラメータ)の計算を含む。
【0024】
表面は、例えば、少なくとも、1つの点、例えば眼科用レンズの基準点における、湾曲部または一次湾曲部によって、ならびに表面法線、および適用可能な場合、主断面の向きによって記述されてもよい。表面を、局所的表現、例えば、対応する係数を有するスプライン表現もしくは多項式表現、または例えば対応する係数を有するゼルニケ分解等の非局所的表現によって記述することも可能である。
【0025】
例えば、複数のラスタ点における隆起のセットにより、表面を直接提供することが同様に可能である。この事例において、表面モデルの支援による表面の計算は、オーダ・パラメータからのまたはオーダ・パラメータに依拠する(例えばオーダ・パラメータから導出される)変数(補助変数)からの複数のラスタ点における表面の隆起の計算を含む。
【0026】
1つの例において、眼科用レンズの表面のうちの1つ、および/または眼科用レンズの別の表面に対するこの表面の配置が、表面モデルの支援によりオーダ・パラメータ・セットから計算される。別の表面は、(例えば、既知の基本曲線システムを所与として)オーダ・パラメータに依拠する場合がある所定の表面、例えば所定の曲率を有する球面であり得る。別の例において、眼科用レンズの双方の表面、および/またはこれらの表面の互いに対する配置(すなわち、向きおよび/または位置)が、表面モデルの支援によりオーダ・パラメータ・セットから計算される。
【0027】
表面モデルの支援による眼科用レンズのオーダ・パラメータのセットからの少なくとも1つの表面の計算は、好ましくは、直接(すなわち、反復なしで)、または数回の反復ステップで、例えば30、25、15、10、5もしくは3回未満の反復ステップで行う。
【0028】
少なくとも1つの表面が、表面モデルの支援により決定されたオーダ・パラメータから計算される眼科用レンズは、本出願の範囲において、表面モデルに従ってこのオーダ・パラメータ・セットから計算されたレンズとして指定される。上述したように、表面モデルに従って計算されたレンズは、レンズ対のレンズのうちの1つであり得る。この例において、レンズ対の一方または双方のレンズは、表面モデルに従って計算されてもよい。眼科用レンズは、例えば、眼鏡レンズ、例えば、個別化および/または個人化された眼鏡レンズであり得る。眼鏡レンズの個別化、例えば、ユーザの眼の正面における眼鏡レンズの向きが、眼鏡レンズの計算または最適化において考慮に入れられる。眼鏡レンズの向きは、例えば、パントスコピック傾斜、面形成角、瞳孔距離、角膜頂点距離および/または更なるパラメータによって特徴付けられてもよい。個人化を仮定すると、例えば、1つの眼鏡の個人的な意図される使用を満たすために、知覚される設計の適合が行われてもよい。眼鏡レンズは、例えば、単焦点眼鏡レンズ、多焦点眼鏡レンズまたは累進多焦点眼鏡レンズであり得る。
【0029】
表面モデルは、パラメータ化されたモデルであり得る。表面モデルは、少なくとも1つの可変パラメータを含んでもよい。表面モデルは、少なくとも1つの定数パラメータ(例えば、レンズにおける評価点の位置等)も有することができる。
【0030】
表面モデルを決定するための方法は、
少なくとも1つの眼科用レンズをオーダするのに必要なパラメータの少なくとも一部分の値をそれぞれ含む複数のオーダ・パラメータ・セットを含むトレーニング・データ・セットを提供するステップと、
トレーニング・データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの目標値を提供するステップと、
モデル・パラメータによってパラメータ化された少なくとも1つの表面モデルを提供するステップであって、これを用いて、-モデル・パラメータの所与の値について-少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を、少なくとも、オーダ・パラメータ・セットから、および/またはオーダ・パラメータ・セットから導出される変数(初期表面モデルおよび場合によっては表面モデルの初期パラメータ化を提供する)から計算可能である、ステップと、
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算のために表面モデルを取得するステップであって、
提供された目標値を用いて、少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータの最適化値を決定することを含む、ステップと、
を含む。
【0031】
少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータの最適化値を決定することは、
少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータの目標関数を最小化または最大化する目的で、少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータの値を最適化する(表面モデルのパラメータ化を最適化する)ことを含み、上記目標関数は、少なくとも、モデル・パラメータおよび提供された目標値に依拠する。
【0032】
オーダ・パラメータ・セットの各々のモデル・パラメータの目標関数は、それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の提供された目標値が、対応するオーダ・パラメータ・セットのための表面モデルのモデル・パラメータの所与の値について表面モデルを用いて計算可能であるかまたは計算される少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小または最大を仮定する少なくとも1つの項を含む。
【0033】
少なくとも1つのレンズが一対のレンズのレンズのうちの一方である場合、複数のオーダ・パラメータ・セットは、一対のレンズをオーダするのに必要なパラメータの一部分のそれぞれの値を含んでもよい。少なくとも1つの特性は、一対のレンズの両眼特性であり得る。
【0034】
例えば、人物の右眼および左眼のために決定されたレンズを含む少なくとも1つのレンズ対は、表面モデルを用いて計算されてもよい。この事例において、オーダ・パラメータ・セットは、それぞれ右レンズおよび左レンズのためのオーダ・パラメータを含む。目標値が提供された特性は、左レンズおよび右レンズの表面データに依拠して少なくとも1つの両眼特性も含んでもよい。少なくとも1つの両眼特性の目標値は、その計算に、レンズ対の第1のレンズの第1の点における少なくとも1つの特性(例えば表面特性)、および同じレンズ対の第2のレンズの第2の点における同じ特性を入力する値を含んでもよい。
【0035】
任意選択で、表面モデルの初期複雑度も提供されてもよい。例えば、モデル・パラメータの初期数は所定であってもよい。
【0036】
任意選択で、表面モデルの複雑度も、表面モデルのパラメータ化に加えて最適化または設定されてもよい。表面モデルの複雑度の最適化は、例えば、モデル・パラメータの数の変動および/または正則化を含んでもよい。
【0037】
例えば、モデル・パラメータによってパラメータ化された少なくとも1つの表面モデルを提供することは、異なる複雑度の少なくとも2つの表面モデルを提供することを含み、表面モデルの複雑度は、以下の変数のうちの1つまたは複数を含む:
- モデルにおいて用いられるオーダ・パラメータのタイプおよび/または数、
- オーダ・パラメータに依拠した変数のタイプおよび/または数、
- モデル・パラメータの数、
- モデル・パラメータの最適化において用いられる目標関数の正則化のタイプおよび/または強度。
【0038】
本方法は、
少なくとも1つの眼科用レンズをオーダするのに必要なパラメータの少なくとも一部分の値をそれぞれ含む複数のオーダ・パラメータ・セットを含む検証データ・セットを提供することと、
検証データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の少なくとも1つの目標値を提供することと、
を更に含んでもよい。
【0039】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するために表面モデルを取得することは、
それぞれの表面モデルのモデル・パラメータの所与の予め決定された最適化値について異なる複雑度を有する提供された表面モデルについて、検証目標関数の値、および/または検証目標関数から導出される変数の値を計算することであって、検証目標関数は、提供される目標値に依拠し、検証データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について少なくとも1つの項を含み、項は、それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の提供された目標値が、対応するオーダ・パラメータ・セットのための表面モデルのモデル・パラメータの所与の最適化値について表面モデルを用いて計算可能であるかまたは計算される少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小または最大を仮定する、計算することと、
検証目標関数の計算された値に基づいて、および/または検証目標関数から導出される変数の値を用いて、モデル・パラメータの最適化値を用いてパラメータ化される異なる複雑度を有する表面モデルから、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算のための表面モデルを選択または決定することと、
を更に含んでもよい。
【0040】
本出願の意味における用語「提供する」は、「確立する」、「送信する」、「取得する」、「読み出す」、「メモリ、データベースおよび/またはテーブルから抽出する」、「受信する」等を含む。
【0041】
用語「定義する」は、本出願の意味において、「確立する」、「計算する」、「決定する」等も含む。
【0042】
オーダ・パラメータ・セット
表面モデルを決定するために、少なくとも2つの追加の異なる眼科用レンズまたは一対のレンズを計算するのに必要なオーダ・パラメータ・セットが提供される。表面モデルの決定において、追加の眼科用レンズの計算に必要な10、100、1000、10000、100000または1000000個超のオーダ・パラメータを用いることが有利である。
【0043】
オーダ・パラメータ・セットは、好ましくは、大きな範囲、好ましくは範囲全体をカバーし、この範囲内で後に眼科用レンズがオーダされてもよい(例えば、眼科用レンズの製造者によって挙げられる屈折限界、眼鏡レンズ・オーダにおける個々のフレーム・パラメータ、自由に選択可能な物体距離等のレンズの他のパラメータ、および他のオーダ・パラメータを参照)。例えば、オーダ・パラメータ・セットは、例えば、球体の場合、-20dpt~+20dpt、円筒の場合、-8dpt~+8dptの屈折値の範囲内にあってもよい。
【0044】
それによって、オーダ・パラメータ・セットは、単一の外科用レンズまたは一対の外科用レンズをオーダするのに必要な1つのオーダ・パラメータ、複数のオーダ・パラメータまたは全てのオーダ・パラメータを含んでもよい。オーダ・パラメータの例は、眼鏡レンズについて確立された規格にも見られる(例えば、医薬品に関するEUガイドライン93/42/EWGを参照)。
【0045】
このため、オーダ・パラメータ・セットは、以下のオーダ・パラメータのうちの少なくとも1つを含んでもよい:
- 例えば、(任意選択で、レンズの屈折率を有する)材料、レンズの所望の厚み、コーティング等の眼科用レンズのパラメータ、
- 例えば、球、および/または軸を有する円筒、および/またはアディション、および/または近見屈折、および/または基底を有するプリズム等の屈折値、
- 眼鏡フレームの幾何学的パラメータ、
- 例えば、読書、コンピュータでの作業、スポーツ等のための、眼科用レンズの意図される使用、
- 眼科用レンズの未来の装着者の生理学的パラメータまたは特性、
- 例えば、眼の回転中心の場所、眼の個々の構造、瞳孔直径、波面の個々の測定値等の、未来の装着者の単数または複数の眼の生体パラメータまたは特性、
- 未来の装着者の好ましい視認挙動、
- 眼科用レンズの個別化および/または個人化のための他の既知のパラメータ。眼科用レンズの個別化のためのパラメータは、例えば、レンズ装着者の眼の正面における眼科用レンズの向きを特徴付けてもよい。眼科用レンズの個人化のためのパラメータは、例えば、1つの眼鏡の個人的な意図される使用を満足するために、知覚される設計の適合を特徴としてもよい。眼科用レンズの個人および/または個人化に関するこれらのパラメータは、例えば、設計特性、基準点の場所、累進長等において表されてもよい。
【0046】
オーダ・パラメータに依拠する変数(例えば、オーダ・パラメータから導出される変数等)は、例えば、材料の屈折率、材料の機械的特性、コーティングの機械的特性、眼科用レンズの厚み分布、使用位置における残余非点収差の所望の分布、使用位置における屈折誤差の所望の分布等であり得る。
【0047】
表面モデルを決定するのに必要なオーダ・パラメータ・セットは、既に提供されたか、既に計算されたかまたは既に製造された眼科用レンズに-必ずしも必須ではないが-関係してもよい。表面モデルの実施形態に依拠して、眼科用レンズが既に提供、計算または製造されていることが有利であり得る。したがって、オーダ・パラメータ・セットが、オーダ・パラメータの許容限界内にのみ位置することも可能である。このため、屈折は、眼科用レンズの供給範囲内にあり得るが、レンズ自体は、決してオーダも、計算も製造もされていない場合がある。
【0048】
(例えば、非常に頻繁にオーダされる影響を仮定して、)データ・セット数を低減するために、オーダ・データ・セット内の冗長なオーダは、任意選択で、定義前に除去されてもよい。代替的にまたは加えて、同じ理由から、オーダセットは層化されてもよいが、それにもかかわらず、オーダ・データ・セットでのオーダ・パラメータ範囲の高い対象範囲を確保する。
【0049】
特性および目標値
トレーニング・データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について表面モデルを決定するために、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの目標値も提供される。異なるオーダ・パラメータ・セットの目標値は、少なくとも、オーダ・パラメータ・セットの一部分について、異なっていても同一であってもよい。
【0050】
本出願の意味における用語「目標値」は、眼科用レンズ、例えば、眼鏡レンズまたはコンタクト・レンズの少なくとも一つの特性の所望のまたは要求された値を含む。目標値は、複数の値または複数の値の組み合わせを含んでもよい。目標値は、例えば、データベースから学習されてもよく、かつ/または所定の最適化アルゴリズムを用いて計算されてもよい。
【0051】
眼科用レンズの少なくとも1つの所定の特性は、眼科用レンズのまたは眼科用レンズを含むレンズ対の光学特性または幾何学的特性であり得る。少なくとも1つの所定の特性は、例えば、隆起、湾曲、またはそこから導出される、例えば表面非点収差、表面屈折率等の変数等のレンズの物理的特性であり得る。また、少なくとも1つの所定の特性は、「間接的」特性、すなわち、少なくとも1つのモデル(例えば、物体距離モデル、眼モデル、使用位置モデル等)と併せて現れる特性であり得る。間接的な特性の例は、残余非点収差、屈折誤差等である。
【0052】
例えば、特性は、以下の特性のうちの1つであり得る:
- (例えば、直交方向における)少なくとも1つの表面の隆起および/または隆起の導関数、
- 例えば、少なくとも1つの視認位置、例えばスプライン関数または多項式関数等の、表面を記述するパラメトリック関数の係数等の、少なくとも1つの表面の表面特性または表面パラメータ、
- 例えば、平滑性、連続分化能力、製造能力等の少なくとも1つの表面の特性、
- 例えば、(好ましくは使用位置における)屈折率または屈折誤差、(好ましくは使用位置における)非点収差または残余非点収差、(好ましくは使用位置における)垂直および/または水平プリズム、(好ましくは使用位置における)高次撮像誤差等の、少なくとも1つの表面のまたは眼科用レンズの光学変数または特性。光学変数または特性は、例えば、パワー・ベクトル形式で指定され得る、
- 例えば、(残差)非点収差および/または屈折率もしくは屈折誤差の勾配等の、少なくとも1つの表面のまたは少なくとも1つの眼科用レンズの光学変数または特性の勾配、
- 例えば、屈折誤差の、ベクトル成分の、ならびに/もしくは使用位置における非点収差または残余非点収差の大きさのおよび/もしくは軸の、プリズムの、プリズムベースの、プリズムのベクトル成分の分布、またはそこから導出される分布等の、少なくとも1つの表面のまたは眼科用レンズの光学変数もしくは特性および/またはそれらの勾配の分布。「分布」によって理解されるのは、眼科用レンズ上の空間位置(例えば(x,y)位置)の関数の意味における光学的特性またはその勾配と、確率分布の意味におけるこれらの変数の周波数分布との双方である、
- 良好な視界のゾーン(例えば、残余非点収差および/または屈折誤差が1dps未満であり、好ましくは0.75dptまたは0.5dpt未満であるゾーン)の幅、
- 例えば、レンズの中心の厚み、レンズの縁部の厚み、コーティングの厚み、レンズの直径、レンズの質量等の、眼科用レンズの(オーダ・パラメータに含まれない)幾何学的パラメータまたは特性、
- 外科用レンズの(オーダ・パラメータに含まれない)材料パラメータまたは材料特性、
- 眼鏡フレームの(オーダ・パラメータに含まれない)幾何学的パラメータ、
- レンズの製造能力(例えば、表面のアンダーカットの欠如)、
- 双眼特性、または眼科用レンズを含むレンズ対の特性。両眼特性は、その計算が、レンズ対(例えば、一対の眼鏡レンズ等)の第1のレンズの第1の点における少なくとも1つの特性(例えば、表面特性、幾何学的特性、光学特性、視知覚の特性等)、および同じレンズ対の第2のレンズの第2の点における同じ特性を伴う特性であり得る。レンズ対の少なくとも1つの両眼特性は、例えば、レンズ対の第1のレンズと第2のレンズとの間の少なくとも1つの光学変数または特性のずれまたは差であり得る。レンズ対の双眼特性の例は、レンズ対の右レンズと左レンズとの間の対応する視認場所(例えば、少なくとも、例えばプリズム基準点におけるような1つの基準点等)における水平および/または垂直プリズムのずれまたは差(から規定のプリズム差を減算したもの)、左レンズおよび右レンズにおける倍率の差、左レンズと右レンズとの間の基底湾曲差、設計点の場所またはそれらの差、表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの未来の装着者の視知覚の特性等である。レンズ対のパラメータまたは特性は、例えば、中心厚み、縁部厚み、コーティングの厚み、前面の曲率のずれ等のような、レンズ対の第1のレンズと第2のレンズとの間の少なくとも1つの幾何学的パラメータのずれも含んでもよい。
- 表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの装着者の視界の質および/または姿勢に関する不快感、
- 表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの未来の装着者の視知覚の特性。
【0053】
他の関連特性を検討することも可能である。
【0054】
目標値は、既知の方法に従って(例えば、反復最適化方法において既知の目標関数を最小化もしくは最大化することによって)既に計算されたかもしくは計算される、またはオーダ・パラメータの異なるセットについて生成される、レンズの少なくとも1つの眼科用特性の値(例えば、公称値等)であり得る。同様に、既に製造された眼科用レンズの測定値を用いて目標値を得ることも可能である。既に製造されたかまたは製造されるレンズのオーダ・パラメータは、好ましくは、既に少なくとも部分的に既知である。
【0055】
例えば、既に製造された眼科用レンズの少なくとも1つの特性の測定値、または既に製造された眼科用レンズの1つもしくは複数の測定値から決定されるかもしくは決定可能な値は、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の目標値として設定されてもよい。同様に、製造される眼科用レンズの公称値を目標値として設定することも可能である。
【0056】
例えば、眼科用レンズの表面の平均表面屈折率の目標値は、(表面の平均曲率を介した)ガラス表面の隆起測定値からの既知の屈折率を所与として、レンズの位置に依拠して決定されてもよい。使用位置における眼鏡レンズの非点収差の目標値(同様に位置に依拠する)は、隆起測定値、パントスコピック傾斜、面形成角、ガラス長およびガラス高さ(オーダ値)、ならびに眼の回転中心の位置(オーダ値またはモデル仮定)から決定されてもよい。
【0057】
表面モデルの決定において、複数の眼科用レンズ(基本レンズ)のオーダ・パラメータ・セットに加えて、オーダ・パラメータ・セットに属するこれらのレンズの1つまたは複数の表面が用いられてもよい。表面モデルの決定に用いられる眼科用レンズは、本出願の範囲内で基本レンズとも呼ばれる。基本レンズは、既知の方法に従って計算および最適化され、ならびに任意選択で製造されたレンズであり得る。
【0058】
加えて、または代替的に、これらのオーダ・パラメータ・セットに依拠し、従来技術に従って眼科用レンズを計算するかまたは基本レンズを計算するのに必要な、表面に関する目標関数および/またはそれらの導関数も用いられてもよい。上記導関数は、例えば、隆起の変化を所与とした目標関数の変化として理解される。このため、目標値は、これらの目標関数に入力する公称値に対応してもよい。それによって、表面に関する目標関数および/またはそれらの導関数は、好ましくは、任意の表面についてこれらが評価され得るように存在することができる。それによって、目標関数およびそれらの導関数は、通常、眼科用レンズの表面の適切なパラメータ化に依拠して評価される。
【0059】
複数の基本レンズの表面が表面モデルを決定するのに用いられる場合、これらの表面が既に計算されていると有利であり得る。同様に、基本レンズも製造されている場合、それらの計算は既に目的を有し、追加の計算能力が消費されることなく表面モデルを決定するために再利用されるため、有利であり得る。
【0060】
また、ここで記載される方法は、計算された表面の代わりに、眼科用レンズの測定された表面での追加の尺度(および互いに対する表面の距離)なしで実施されてもよい。それに加えて、他の特性-例えば、屈折率-も測定されてもよい。
【0061】
上記の記述は、トレーニング・データ・セットに関する特性および目標値に関する。明らかに、特性および目標値も、他のオーダ・パラメータ・セット(例えば、検証データ・セットおよび試験データ・セット)について同一にまたは同様に決定または計算されてもよい。それによって、対応する目標値を有する同じ特性は、必ずしもデータ・セットをトレーニング、検証および試験するのに用いられる必要がない。しかしながら、様々なデータ・セットに関連して同じ特性の目標値を用いることが多くの場合により単純であり得る。
【0062】
表面モデル
表面モデルは、例えば機械学習に基づくモデル等の任意のモデルであり得る。機械学習のアルゴリズムは、例えば、例えば、Jeremy Watt, Reza Borhani, Aggelos Katsaggelos: Machine Learning Refined: Foundations, Algorithms, and Applications, Cambridge University Press, 2020に記載されている。
【0063】
表面モデルは、適切に決定されたモデル・パラメータによって記述されてもよく、モデル・パラメータは、オーダ・パラメータおよびそこから導出される変数の少なくとも一部分または最良の事例では全てと併せて、眼科用レンズの単数または複数の表面を計算するのに用いられる。
【0064】
1つまたは複数のオーダ・パラメータが、1つまたは複数の実数として妥当に表され得る場合、これらのオーダ・パラメータに対する眼科用レンズの設計の連続性を確保するために、表面モデルが、表面モデルによって生成される表面がオーダ・パラメータの連続関数または更に連続的に導出可能な関数であるように構築されると有利である。
【0065】
モデル・パラメータによって決定される表面モデルは、回帰モデルとして実行されてもよく、または回帰モデルを含んでもよい。回帰モデルは、オーダ・パラメータおよび/またはそこから導出される変数の少なくとも一部分、または好ましくは全てを入力変数として受信し、そこから、眼科用レンズまたは一対の眼科用レンズの1つまたは複数の表面を計算する。
【0066】
表面モデルまたはその一部分は、更にまたは代替的に、回帰モデルとして、および分類モデルとして設計されてもよく、または分類モデルを含んでもよい。例えば、眼鏡レンズの製造の範囲内でブランクにおいて決定されたガラス直径のみが利用可能であり、ガラス・ブランクの直径が選択されるべきである場合、これは、分類モデルによって行ってもよい。そのような分類モデルは、例えば、製造される眼科用レンズの利用可能なガラス・ブランク直径の適切性の確率を計算してもよく、それによって最終的に、最高の確率を有し、このため製造される眼科用レンズに最も適したガラス・ブランクが選択されてもよい。
【0067】
これに類似して、分類モデルも眼科用レンズ(例えば眼鏡レンズ)の製造において眼科用レンズ(例えば眼鏡レンズ)の最適基底湾曲および/または最適直径の計算に用いられてもよく、ここで、利用可能な基底湾曲の適切性の確率が計算され、最高の確率を有する基底湾曲が、眼科用レンズ(例えば眼鏡レンズ)の製造または計算のために選択される。
【0068】
最新の眼科用レンズの異なる設計を柔軟に表すことを可能にするために、表面モデルが十分に大きな数のモデル・パラメータ、例えば10、30、50、100、500、もしくは1000、10000、100000個超、または更に多くのモデル・パラメータを保有すると有利である。
【0069】
表面モデルが、例えば回帰モデルとして設計される場合、または回帰モデルを含む場合、表面モデルの決定は、オーダ・パラメータ・セット(例えば、基本レンズのオーダ・パラメータ・セット)から開始して、表面モデルのモデル・パラメータを調整することからなってもよく、それによって、単数または複数の表面を表面モデルの支援によりそれらのオーダ・パラメータ・セットから計算可能な任意の眼科用レンズが、所定の判断基準を用いて、従来技術による所定の方法によって同じオーダ・パラメータから計算可能であるかまたは既に計算された眼科用レンズと僅かにのみ異なる。
【0070】
表面モデルにおいてまたは表面モデルとして用いられる回帰モデルが線形回帰モデルであり得ることにより、モデル・パラメータは一次方程式系から決定され得るため、通常、表面モデルを決定するために必要な計算が容易になる。
【0071】
しかしながら、更なる尺度なしで、線形回帰モデルの代わりに非線形回帰モデルを用いることも可能である。そのようなモデルは、より柔軟性が高く、オーダ・パラメータと、眼科用レンズの単数または複数の表面との間のより複雑な相関を表してもよい。しかしながら、同時に、この目的で、モデル・パラメータの大域最適値において必ずしも収束しない非線形最適化アルゴリズムが一般的であるため、モデル・パラメータを適切に決定することがより困難である。例えば、その中にディープ・ニューラル・ネットワークもあるニューラル・ネットワークが、非線形回帰モデルとして用いられてもよいが、機械学習の分野から既知の他の非線形回帰モデルも用いられてもよい。これらの回帰モデル、例えば、ニューラル・ネットワークは、関連付けられた目標値と共に、トレーニング・データ内の提供されたオーダ・パラメータ・セットを用いてトレーニングされてもよい。
【0072】
表面モデルは、線形および/もしくは非線形回帰モデル、分類モデルならびに/またはニューラル・ネットワークの組み合わせでもあり得る。組み合わせにより、表面モデルの複雑度の低減、ならびに計算時間および/またはリソース消費の節減が想定される。組み合わせの例は以下の通りである。
- 例:回帰モデルおよび/またはニューラル・ネットワークの前の分類モデル:オーダ・データを用いて、依然として十分に良好な表面を生成する最小複雑度を有するモデルが、異なる複雑度を有する回帰モデルのセットから選択される。この手順の利点は、計算時間の可能な改善および/または僅かなリソースの利用である、
- 例:モデル回帰モデルおよび/またはニューラル・ネットワークの前の分類モデルの前の回帰モデル:オーダ・データを用いて、レンズの形状が、低複雑度の回帰モデルの支援により近似的に決定される。後続の分類モデルは、オーダ・データおよび近似の形状からガラス・ブランクを決定する。後続の回帰モデルは、オーダ・データおよびガラス・ブランクから最終レンズを決定する。この手順の利点は、レンズを決定するための回帰モデルの複雑度の低減である。
【0073】
同様に、オーダ・パラメータ・セットがトレーニング・データ・セットに含まれない眼科用レンズの表面を計算することができるように、表面モデルの複雑度を制御または最適化することが有利である。例えば、これは、正則化の支援により、ならびに/またはオーダ・パラメータの選択、ならびに/もしくはオーダ・パラメータから導出される十分多数の様々なタイプの変数(補助変数)の計算、ならびに/もしくはモデル・パラメータの数および/もしくはモデルのタイプの適切な選択により行うことができる。
【0074】
数値安定性の理由から、オーダ・パラメータおよび/またはそこから導出されるもしくはそれに依拠する補助変数を、これらを表面モデルに渡す前に変換し、それによって、それらがゼロの平均値と、例えば、モデル・パラメータの決定において用いられる眼科用レンズのオーダ・パラメータの分布にわたる1の標準偏差とを有するようにすることが同様に妥当である。
【0075】
表面モデルのモデル・パラメータの決定、およびその複雑度の調整
モデル・パラメータの定義または決定
最初に、モデル・パラメータによってパラメータ化された少なくとも1つの表面モデルが提供または予め決定され、これを用いて、-モデル・パラメータの所与の値について-少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を、少なくとも、オーダ・パラメータ・セットから、および/またはオーダ・パラメータ・セットに依拠した変数から計算可能である。
【0076】
それによって、表面モデルの初期パラメータ化および初期複雑度が提供または決定されてもよい。表面モデルの初期パラメータ化の提供は、表面モデルのモデル・パラメータの初期値の提供を含んでもよい。表面モデルの初期複雑度の提供は、表面モデルのモデル・パラメータの初期数を決定または予め決定することを含んでもよい。最終モデル・パラメータ、および場合によっては複雑度が決定されるか、または適切な最適化方法によって決定される。このため、最終モデル・パラメータは、モデル・パラメータの最適セットを形成する。
【0077】
表面モデルのモデル・パラメータは、好ましくは、モデル・パラメータの所定の目標関数を最小または最大にするモデル・パラメータの最適なセットを表すように決定される。
【0078】
モデル・パラメータの最適なセットは、確立された算術的最適化アルゴリズム(例えば、単純な勾配降下、共役勾配降下、統計勾配降下または類似のアルゴリズム)を用いて得ることができる。ニューラル・ネットワークが回帰モデルとして用いられる場合、後方伝播アルゴリズム、-それ自体、このタイプのモデルに対し適合された唯一の勾配ベースのアルゴリズムである-が目標関数を最小にするために用いられてもよい。
【0079】
オーダ・パラメータ・セットの各々のモデル・パラメータの目標関数は、それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の提供された目標値が、表面モデルのモデル・パラメータの所与の値について対応するオーダ・パラメータ・セットの表面モデルを用いて計算可能であるかまたは計算される少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小または最大を仮定する少なくとも1つの項を含んでもよい。
【0080】
目標関数は、単一の項、複数の項の和、または複数の項の加重和を含んでもよい。例えば、(i)既に存在する表面(例えば、従来の方法に従って計算される表面)がオーダ・パラメータ・セットに対し存在するか否か、およびこれらの表面が目標関数において用いられるべきか否か、または(ii)オーダ・パラメータ・セットに対応する表面が最初に計算される必要があるか否か、または(iii)目的関数が表面の支援により決定されるべきでないか否かに依拠して異なる目標関数が用いられてもよい。
【0081】
さらに、目標関数の勾配が、例えば分析関数として表面モデルによって出力される表面のパラメータ化においてパラメータに関して迅速に計算可能である場合、有利である。
【0082】
パラメータ化の最適化、および適用可能な場合、表面モデルの複雑度の最適化は、少なくとも1つの表面が表面モデルの支援によりオーダ・パラメータのセットから計算される眼科用レンズの少なくとも1つの特性の値のずれ、およびこの特性の対応する(場合によってはオーダ・パラメータに依拠した)目標値が最小になるように行ってもよい。
【0083】
決定されたオーダ・パラメータ・セットから表面モデルに従って計算されるかまたは計算可能なレンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの値の、同じオーダ・パラメータ・セットについてのこの特性の少なくとも1つの目標値からのずれが、様々な方式で定量化され得る。表面モデルに従って、決定されたオーダ・パラメータ・セットから計算されるかまたは計算可能なレンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの値と、同じオーダ・パラメータ・セットについてのこの特性の少なくとも1つの目標値との間の差、または差の凸関数もしくは凹関数(例えば、二乗、大きさまたはその負値)が、このずれの尺度として用いられてもよい。
【0084】
したがって、モデル・パラメータの目標関数の少なくとも1つの項は、その少なくとも1つの表面が表面モデルに従ってオーダ・パラメータについて計算可能であるレンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの値と、同じオーダ・パラメータ・セットについてのこの特性の少なくとも1つの目標値との間の差、または差の凸関数もしくは凹関数を含んでもよい。凸関数は、特に、目標関数の最小化において用いられてもよい。目標関数の最大化を仮定して、凹関数が用いられてもよい。
【0085】
表面モデルに従って、決定されたオーダ・パラメータ・セットから計算されるかまたは計算可能なレンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの値と、同じオーダ・パラメータ・セットについてのこの特性の少なくとも1つの目標値との他の関数を、これらの値間のずれを記述または定量化するために用いることも同様に可能である。そのような関数は、例えば、表面モデルに従って、決定されたオーダ・パラメータ・セットから計算されるかまたは計算可能なレンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの値と、同じオーダ・パラメータ・セットについてのこの特性の少なくとも1つの目標値との比である。他の関数、例えば、比の対数関数も同様に可能である。
【0086】
少なくとも眼科用レンズの従来の最適化または計算において用いられる少なくとも1つの光学特性について目標関数を用いることも可能である。したがって、モデル・パラメータの目標関数の1つまたは複数の項が、所与のパラメータ・セットについての少なくとも1の眼科用レンズの最適化もしくは計算のための目標関数を形成してもよく、またはそのように理解されてもよく、目標関数は、様々なオーダ・パラメータ・セットについて評価される。目標関数は、既知の方式において、(決定されたオーダ・パラメータ・セット、および/または表面モデルに従ってそこから導出される変数から少なくとも1つの表面が計算されたかまたは計算可能な眼科用レンズについて評価される)少なくとも1つの光学特性の実際の値、および対応する目標値に依拠してもよい。同様に、異なるオーダ・パラメータ・セットについて異なる目標関数を用いることが可能である。この事例において、既に計算および/または製造された表面を用いて表面モデルを決定することは必須ではない。例として、そのような目標関数は、屈折誤差のずれの二乗の、およびオーダ・パラメータ・セットから直接計算されたそれぞれの目標値の非点収差の、複数の視認場所にわたる累積和、または-複数の視認場所にわたって計算された-平均値であり得、そしてこれがオーダ・パラメータ・セットにわたって合算または平均される。
【0087】
モデル・パラメータの目標関数は、異なる特性(例えば、光学および/または幾何学的特性、直接および/または間接特性)を用いて、表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの表面と、対応する目標値との間の差を定量化または記述する複数の項を含んでもよい。それによって、追加の特性(例えば、追加の光学的および/または幾何学的特性、直接および/または間接特性)は、オーダ・パラメータに依拠してもよい。特性の例は、使用位置における残余非点収差のベクトル成分または大きさ、使用位置における屈折誤差、ガラスの厚みの対応するオーダ値からの最小または最大ガラス厚みのずれ等である。
【0088】
加えて、目標関数は、2対の眼科用レンズ(表面モデルの支援により計算された1つの対、および従来技術による方法を用いて計算された1つの対)の双眼特性間の差を定量化または記述する項も含んでもよい。
【0089】
目標関数は、様々なオーダ・パラメータを有する眼科用レンズ間の設計差を含む少なくとも1つの項も含んでもよい。このため、そのような補助項は、もはや単一の眼科用のレンズのみに関係するのではなく、オーダ範囲において隣接する2つ以上の眼科用レンズ間の差に関係し、複数の眼科用レンズを含む製品の有利な特性を表す。
【0090】
このようにして、例えば、様々な屈折にわたる可変焦点レンズの知覚される設計の類似性(必ずしも一貫性ではない)は、目標関数として定式化されてもよく、それによって、所望の設計が、例えば特に頻繁に生じる単一の効果についてのみ所望の設計が指定されなくてはならず、他の効果を仮定すると、設計は、別個に指定される必要なくそこから結果として得られる。2つ以上の眼科用レンズの差を含むそのような項の利点は、より基本的な原理(例えば、ミンクヴィッツの定理)に起因して一定となり得ないため、オーダ・パラメータ範囲にわたって一定である表面設計を指定することが多くの場合に困難であることである。
【0091】
目標関数は、トレーニング・データ・セットにおいて全てのオーダ・パラメータ・セットにわたるオーダ・パラメータ・セットの各々について配列された項の加重和または非加重和を含んでもよい。和の代わりに、平均値または中央値を計算することも可能である。和の代わりに、より複雑な関数、例えば非線形関数を用いることも同様に可能である。
【0092】
上記で説明したように、様々な最適化アルゴリズム(例えば、単純勾配降下、共役勾配降下、統計勾配降下または類似のアルゴリズム)が、モデル・パラメータの最適セットを決定するために用いられてもよい。例えば、モデル・パラメータの値の最適化は、モデル・パラメータの最適化において用いられる目標関数の正則化を含んでもよい。
【0093】
(例えば、表面モデルとしてのニューラル・ネットワークにおける後方伝播アルゴリズム、または-例えば-勾配降下を仮定して)目標関数の勾配を必要とする最適化方法が、表面モデルのパラメータを最適化するために用いられる場合、これらは、分析的に、数値的に、または分析的方法および数値的方法を組み合わせたものの支援により計算されてもよい。特に、後方伝播アルゴリズムを仮定して、後方伝播ステップにおいて、-通常用いられる残差の代わりに-目標関数の勾配がネットワークを通じて後方に伝播される(通常用いられる残差は、通常用いられる二次目標関数の勾配である)。
【0094】
上記の記述は、モデル・パラメータの決定のための目標関数に関する。明らかに、他の目標関数、例えば、検証目標関数、または表面モデル(試験目標関数)を試験するための目標関数も、同じ方式で確立されるかまたは予め決定されてもよい。
【0095】
目標関数は正規化されてもよい。例えば、単数または複数の眼科用レンズ(レンズ対)の特性にわたる累積和は、目標関数がモデル・パラメータを決定するために、モデルを検証するために、または試験のために用いられるか否かに依拠して、トレーニング、検証または試験データ・セットにおいて、レンズ(レンズ対)の数に対し眼科用レンズ(レンズ対)の数によってそれぞれ除算されてもよい。
【0096】
表面モデルの複雑度の調整
上記で既に述べたように、モデルの最適な複雑度を決定するために、異なる複雑度の少なくとも2つの表面モデルが最初に決定されてもよい。表面モデルの複雑度は、以下の変数のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
- モデルにおいて用いられるオーダ・パラメータのタイプおよび/または数、
- オーダ・パラメータから導出される変数のタイプおよび/または数、
- モデル・パラメータの数、
- モデル・パラメータの最適化において用いられる目標関数の正則化のタイプおよび/または強度。
【0097】
表面モデルの複雑度の調節または最適化は、以下を提供することをも含んでもよい。
- 少なくとも1つの眼科用レンズをオーダするのに必要なパラメータの少なくとも一部分の値をそれぞれ含む複数のオーダ・パラメータ・セットを含む検証データ・セット、
- 検証データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の目標値。
【0098】
更に、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するために表面モデルを取得することは、:
検証目標関数の値、および/またはそれぞれの表面モデルのモデル・パラメータの所与の以前に決定された最適化値について、様々な複雑度の提供された表面モデルの検証目標関数から導出される変数の値を計算することと、
検証目標関数の計算された値に基づいて、および/または検証目標関数から導出される変数の値を用いて、モデル・パラメータの最適化値を用いてパラメータ化される異なる複雑度を有する表面モデルから、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算のための表面モデルを選択または決定することと、
を含んでもよい。
【0099】
上記で既に述べたように、検証目標関数は、提供された目標値に依拠する。検証目標関数は、検証データ・セットにおけるオーダ・パラメータの各々について、それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の提供された目標値が、対応するオーダ・パラメータ・セットのための表面モデルのモデル・パラメータの所与の最適化値について表面モデルを用いて計算可能であるかまたは計算される少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小または最大を仮定する少なくとも1つの項を含む。
【0100】
検証目標関数は、モデル・パラメータの目標関数と同一にまたは同様に構築されてもよい。しかしながら、様々な目標関数を用いることが可能である。
【0101】
例えば、モデル・パラメータの最適化において正則化パラメータが用いられない場合、モデル・パラメータの最適化のための目標関数および検証目標関数は、それぞれの目標値に依拠して(すなわち、それぞれトレーニング・データ・セットまたは検証データ・セットに関して)同じ項を含んでもよい。正則化されている場合、単数または複数の正則化パラメータを含むモデル・パラメータの最適化のための目標関数の項は、検証目標関数の計算について省かれてもよい。同じことは、単数または複数の正則化パラメータが、対応する項が(例えば、正則化パラメータを0に設定することによって)検証目標関数に寄与しないように設定されるという点においても達成され得る。当然ながら、その全てについて、対応する目標値が、トレーニング・データ・セットではなく検証データ・セットに基づくものと交換される。しかしながら、さらに、眼科用レンズの追加のまたは排他的に異なる特性も、検証において(モデル・パラメータの最適化と比較して)利用されてもよい。例えば、最適化において、隆起の差の二乗が最小にされてもよく(すなわち、対応する特性が、眼科用レンズにおける所与の評価点の隆起となる)、検証において、眼科用レンズの効果と対応する目標値との差の二乗(ここで、特性は、例えば、電力ベクトル、球/円筒/軸としての効果、または効果の1つもしくは複数の成分である)が最小にされる。
【0102】
既に計算されたまたは既知の表面を用いたトレーニング
眼科用レンズの既に計算された表面が既に部分的に利用可能である場合(例えば、従来の最適化方法に従って計算された表面またはレンズ)、モデル・パラメータは、表面モデルによって出力された表面が、既に計算された表面(目標表面)と最適に良好に一致するように選択されてもよい。このための可能性のある判断基準は、モデル・パラメータの目標関数において決定されてもよい。最も単純な事例において、目標関数は、表面の隆起の差の(例えば二乗の)凸関数の和である項を含み、この隆起は、所与のモデル・パラメータを有する表面モデルおよび目標表面から計算されるかまたは計算可能である。それによって、合算は、表面モデルを用いて計算されるかまたは計算可能な表面における標的表面の隆起の全ての対にわたって、および基本レンズまたはオーダ・パラメータ・セットにわたって点単位で行う。それによって、基本レンズの既に計算された表面は、関連付けられたオーダ・パラメータおよび/またはそこから導出される変数と合わせて、トレーニング・データ・セットとみなされてもよい。
【0103】
眼科用レンズの隆起にわたって異なる形で加重された和も用いられてもよい。例えば、加重は、本質的に重要であると評価される眼科用レンズの点において、他の点よりも大きくなり得る。例えば、加重は、高い光学的品質を確保するために、より頻繁に見られる眼科用レンズの領域(例えば、眼鏡レンズを仮定して、研磨後のフレーム内に位置する未切削メガネレンズの領域、または可変焦点レンズを仮定して、例えば、残余非点収差が決定された閾値、例えば、0.5dpt未満である領域)においてより大きくなり得る。
【0104】
隆起の差に対する代替として、それらの比または比の対数も用いられてもよい。
【0105】
加えて、目標関数における他の項も、モデル・パラメータのために用いられてもよい。例えば、表面モデルから計算された眼科用レンズが、公称直径と異なる直径を有することが可能である。この事象において、表面モデルのモデル・パラメータの目標関数は、表面モデルによって計算される、または計算結果から暗黙的に得られる直径のずれに(例えば、曲率が過度に高いことに起因して)ペナルティを科す項も含んでもよい(例えば、計算された直径が公称直径よりも小さい場合、目標関数は非常に強力に隆起する)。
【0106】
基本レンズの既に計算された表面および表面モデルによって計算された表面が、異なるパラメータ化において与えられる場合(例えば、隆起は様々な点ラスタにおいて指定される)、基本レンズの既に計算された表面を、例えば補間を介して表面モデルによって出力されたパラメータ化に変換することが有利である。しかしながら、表面のパラメータ化の調節も、逆方向において行ってもよく、または完全に異なるパラメータ化が選択されてもよい(例えば、ゼルニケ多項式による表現)。
【0107】
加えてまたは代替的に、モデル・パラメータの目標関数は、表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの表面と、光学および/または幾何学的特性を用いた基本レンズの表面との差を定量化する他の項も含む。それによって、光学特性または幾何学的特性は、オーダ・パラメータ(例えば、使用位置における残余非点収差のベクトル成分もしくは大きさ、使用位置における屈折誤差、またはガラスの厚みの対応するオーダ値の最小もしくは最大ガラス厚みのずれ)にも依拠してもよい。
【0108】
これらの項は、通常、表面モデルを用いて計算されたレンズまたは基本レンズの光学変数の点ごとの差の和または加重和からなり、そしてこれらは全ての基本レンズにわたって合算される。合算を行う複数の点は、眼科用レンズの評価点のラスタによって、または視認方向のラスタによって予め決定されてもよい。(加重)和の代わりに、他の関数、例えば非線形関数が用いられてもよい。
【0109】
上記で説明したように、目標関数は、(表面モデルの支援により計算された対、および従来の最適化方法に従って計算された対の)2対の眼科用レンズの双眼特性間の差を定量化する項も含んでもよい。
【0110】
目標関数を用いた大域最適化
第2の例において、基本レンズの表面に依拠しないモデル・パラメータの目標関数が用いられる。例えば、これは、これらの表面がモデル・パラメータを決定するためにまだ十分に計算されていない場合、または対応して計算された表面が基本レンズのオーダ・パラメータ・セットに関してまだ存在していない事象において当てはまり得る。
【0111】
そのような目標関数において、表面モデルを用いて計算された表面の所定の特性と、これらの特性の所望の目標値(場合によっては、オーダ・パラメータに依拠する)との差が計算されてもよい。可能性のある特性は、上述した光学特性、例えば、光学特性(例えば、屈折誤差;ベクトル成分;ならびに/もしくは使用位置における非点収差もしくは残余非点収差の大きさおよび/もしくは軸;プリズム、プリズムベース、プリズムのベクトル成分の分布;またはそこから導出される変数の分布)、幾何学的特性、双眼特性、または表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの未来の装着者の視知覚の特性である。
【0112】
モデル・パラメータの目標関数は、所望の湾曲から表面モデルを用いて計算されるまたは計算可能な眼科用レンズの特性の加重されたずれを表す項を含んでもよい。例えば、規格において要求される効果(例えば、眼科レンズを仮定した基準点における高い加重)の充足は、加重により制御されてもよい。縁部における所望の中心厚みまたは厚み分布における最小値を保有する項も、モデル・パラメータの目標関数に含まれてもよい。所望の機械的特性、例えば、実際のまたはシミュレートされた破壊強度も、目標関数の項において表されてもよい。
【0113】
目標関数は、上記で説明した目標関数のうちの1つであり得る。特に、基本レンズの表面に依拠していない、以前のセクションからのモデル・パラメータの目標関数の全ての例は、オーダ・パラメータに依拠して適用可能な場合、基本レンズの対応する特性の置き換えにより、適切に選択された目標値と共に用いられてもよい。
【0114】
モデル・パラメータの目標関数は、同様に、一般的な最適化方法の支援により、眼科用レンズの最適化において目標関数として既に用いられている項を含んでもよい。このとき、モデル・パラメータの目標関数は、追加の眼科用レンズにわたって最適化方法の目標関数を合算するかまたはそれらの平均値を計算する項を含む。
【0115】
このため、基本レンズの表面に依拠しないモデル・パラメータの目標関数の最適化によりモデル・パラメータを決定することは、計算および/または最適化によりオーダ・パラメータ・セットから取得可能な複数の眼科用レンズの同時最適化に対応する。一般的であるように、全ての単一のレンズの表面のパラメータ化(例えば、隆起またはスプライン係数)を直接変動させる代わりに、表面の湾曲を制御する表面モデルのモデル・パラメータは、それによって、モデル・パラメータの決定において用いるためのオーダ・パラメータ・セットから計算または最適化可能な全ての眼科用レンズの最適化のために個々の目標関数の和を最小にするために変動される。
【0116】
明らかに、眼科用レンズの有利な特性を表す新しいがまだ知られていない目標関数も、個々の眼科用レンズに用いられてもよい。
【0117】
加えて、すなわち、個々の眼科用レンズの目標関数での項に加えて、表面モデルのモデル・パラメータの目標関数は、様々なオーダ・パラメータを有する眼科用レンズ間の設計差を含む項も含むことができる。そのような項の利点は、上記で既に論じた。
【0118】
このため、表面モデルから計算された表面が、連続しているか、またはさらにはオーダ・パラメータのおよび/またはそこから導出される変数の連続して導出可能な関数である場合、表面モデルの適切に設定された複雑度を仮定して、表面モデルから計算された表面と、従来の最適化方法によって同じ目標関数の最適化により計算された表面との間に僅かな差しか存在しないことが予期される。
【0119】
計算された表面の品質を用いた表面モデルの複雑度の決定
トレーニング・データ・セット内に存在しなかったオーダ・パラメータ・セットからであっても、表面モデルを用いて正しい眼科用レンズが計算され得るように表面モデルの複雑度を適切に設定するために、1つまたは複数の異なる要素で加重された追加の項が表面モデルのパラメータの目標関数に加えられる、正則化として知られるものも、表面モデルのモデル・パラメータ(また、オーダ・パラメータおよび/またはそこから導出される変数)の数の直接的な変動に加えてまたはその代わりに用いられてもよい。これらの項は、通常、モデル・パラメータにおける二次項である。しかしながら、他の指数も用いられてもよく(例えば、モデル・パラメータの絶対値が用いられてもよい)、またはモデル・パラメータの他の関数も、モデル・パラメータ自体の代わりに用いられてもよい(例えば、眼科用レンズの表面の表現の隣接スプラインのスプライン係数の差)。
【0120】
モデル・パラメータを調整した後の表面モデルの品質をチェックするために、利用可能なデータ・セット(すなわち、少なくとも、オーダ・パラメータ、適用可能な場合、そこから導出される変数、および適用可能な場合、関連付けられた計算された表面を含むデータ・セット)の全体を用いるのではなく、モデルの検証または最終試験のためにデータ・セットの一部分を用いて、表面モデルのモデル・パラメータをトレーニングすることが提案される。調整されたモデル複雑度の検証および表面モデルの最終試験は、表面モデルのモデル・パラメータを調整するために用いられたモデル・パラメータの同じ目標関数を用いるが、好ましくは正則化から生じる項なしで行ってもよい。表面関数の検証または試験のために、モデル・パラメータの定義のための目標関数と異なる目標関数を用いることも可能である。
【0121】
例えば、トレーニング・データ・セット内に存在しないオーダ・パラメータの十分に異なるセットが、目標表面からの表面モデルから計算された表面の僅かなずれにつながるか否かにチェックが行われてもよい。これは通常、オーダ・データ・セットが、基本レンズの表面と合わせて、トレーニング・データ・セットと、検証および/または試験データ・セットとに細分化される点において達成され得る。上記で説明したように、表面モデルの複雑度は、検証データ・セットを用いて選択されてもよい。
【0122】
したがって、表面モデルを決定するための方法は、以下のステップ:
複数のオーダ・データ・セットを含む検証データ・セットを提供するステップと、
検証データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について、眼科用レンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの目標値を提供するステップと、
検証データ・セットに基づいて少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算のために取得した表面モデルを検証するステップと、
を含んでもよい。
【0123】
代替的にまたは加えて、表面モデルを決定するための方法は、以下のステップ:
複数のオーダ・データ・セットを含む試験データ・セットを提供するステップと、
試験データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について、眼科用レンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの目標値を提供するステップと、
試験データ・セットに基づいて少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算のために取得した表面モデルを試験するステップと、
を含んでもよい。
【0124】
同じデータ・セットの異なる部分が検証および試験のために用いられてもよい。検証の目的は、適切なモデルアーキテクチャ(ここではモデル複雑度とも呼ばれる)または正則化パラメータの適切な値の決定であり得る。試験の目的は、過剰当てはめを回避するための、トレーニングおよび選択されたモデルのチェックであり得る。
【0125】
検証および試験において評価される関数は、同じであり得、例えば、上記で説明した検証関数(試験目標関数とも呼ばれる)であり得る。上記で説明したように、検証目標関数は、通例、正則化パラメータを含む追加の項を含まない。
【0126】
試験において、検証目標関数は、表面モデルの固定モデル・パラメータを仮定して試験データ・セットに対し評価されてもよく、検証データ・セットに対し評価された検証目標関数および/またはモデル・パラメータのための目標関数(ただし、正則化項を有しない)の値と比較されてもよい。試験は、検証データ・セットに対し評価された検証目標関数の値、および試験データ・セットに対し評価された検証目標関数の値が同様に大きい場合に、成功である。これらが互いに実際にどれだけ大きく異なっているかは、それぞれの検証データ・セットまたは試験データ・セット内のデータ(中でも、データの数に対し正規化された目標関数が用いられない場合、大きな影響を有する数)、および基礎をなすモデルに依拠する。
【0127】
データの数に対し正規化されていない検証および試験目標関数の値(例えば、従来の方法を用いて計算されたレンズ、およびレンズ上の決定された評価点において表面モデルを用いて計算されたレンズからの隆起の二次ずれの和)は、試験データ・セットおよび検証データ・セットが同一の量のデータを含むとき、互いに単に比較されてもよい。これらの関数が、データの数によって除算される場合、得られるのは、試験データ・セットおよび検証データ・セットが異なる量のデータ点を含むときであっても比較され得る正規化された目標関数である。
【0128】
正規化された目標関数が用いられる限り、比較される目標関数の値(すなわち、試験データ・セットおよび検証データ・セットを用いた評価における検証目標関数の値)が、互いに過度に大きく異ならないことが有利である(例えば、目標関数の2つの値の差の絶対値が所定の閾値未満であるべきである)。そのような閾値の値は、用いられる目標関数のタイプに大きく依拠し、正則化パラメータの異なるモデルまたは異なる値を用いた評価を仮定した検証目標関数の変動(例えば、最大値-最小値)の僅かな割合(例えば、0.3~0.01倍)であるべきである。正規化されていない目標関数の使用を仮定して、これらは、それぞれのデータ・セットにおいて眼科用レンズ(レンズ対)の数によって予め除算されてもよく、このように正規化されてもよい。
【0129】
オーダ・パラメータに依拠した変数の計算
既に上述したように、上記オーダ・パラメータから導出されるオーダ・パラメータ、例えばサイズに依拠する変数(補助変数)は、表面モデルの入力変数として用いられてもよい。
【0130】
例えば、表面モデルが回帰モデルを含む場合、または表面モデルが回帰モデルからなる場合、表面が計算される回帰モデルの入力変数が、オーダ・パラメータに加えてまたはオーダ・パラメータの代わりにオーダ・パラメータ(補助変数)から計算された1つまたは複数の変数を含むことが有利であり得る。
【0131】
補助変数の例は、以下である:
- 可変焦点レンズを仮定して、好ましくは使用位置における眼の視認方向に依拠した残余非点収差および/または屈折誤差の所望の分布、
- 可変焦点レンズを仮定して、好ましくは最適には使用位置における、眼の視認角度に依拠した、アディションにより正規化された残余非点収差、および/またはアディションにより正規化された屈折誤差の所望の分布、
- 例えば、眼科用レンズの材料および/もしくは層もしくはコーティング、または材料および/もしくは層もしくはコーティングの光学的および/もしくは機械的特性にも依拠し得る、眼科用レンズの1つまたは複数の点における(例えば縁部における)所望の厚み分布、
- 眼科用レンズの材料の光学的および/または機械的特性(例えば、屈折率、弾性率、熱膨張係数)、
- 眼科用レンズのコーティングの光学的および/または機械的特性(例えば、厚み分布、弾性率、熱膨張係数)。
【0132】
それによって、好ましくは、眼科用レンズの表面に対し大きな影響を有するパラメータ、または表面に対する大きな影響が予期されるパラメータが選択される。
【0133】
表面モデルとしてのニューラル・ネットワーク
表面モデルがニューラル・ネットワークを含むか、またはそのようなニューラル・ネットワークからなる場合、ニューラル・ネットワークの入力層は、オーダ・パラメータおよび/またはそこから計算される補助変数でポピュレートされる。
【0134】
それによって、ニューラル・ネットワークの加重(すなわち、ニューロンのリンクの強度)は、モデル・パラメータの少なくとも一部分を表す。
【0135】
出力層は、眼科用レンズの計算された表面全体または計算された表面の一部分を(例えば、所望の、および適用可能な場合、まだ設定されていない分解能を有する決定されたラスタまたはグリッドにおける隆起として)表すことができる。
【0136】
入力および出力層に加えて、ニューラル・ネットワークは1つまたは複数の隠れ層も含んでもよい。
【0137】
ニューラル・ネットワークが構築される方式、例えば層の数、異なる層内のニューロンの数、互いの間の層のリンクのタイプ等は、モデル・パラメータ(例えば、それらの数)によって暗黙的に決定される。
【0138】
特に、オーダ・パラメータに加えてまたはその代わりに、入力層を、オーダ・パラメータから計算された1つまたは複数の変数(補助変数)でポピュレートすることが有利であり得る(例えば、表面モデルの入力変数として用いられ得る補助変数についてのセクション「オーダ・パラメータから導出される変数の計算」を参照)。
【0139】
同様に、これらの補助変数の1つまたは複数が、ネットワークにおいて少なくとも近似的に表現されるかまたはネットワークのトレーニング中に現れるようにニューラル・ネットワークを設計することが有利であり得る。ニューラル・ネットワークの加重として用いられないモデル・パラメータも、補助変数の計算に影響を及ぼしてもよい。
【0140】
同様に、出力層が、眼科用レンズの表面の比較的粗いラスタ化(例えば、10×10または20×20の隆起のみのラスタ)を表すという点で、ニューラル・ネットワークのサイズを制限することが有利であり得る。そこから製造に適した眼科用レンズの表面の表現を計算するために、ニューラル・ネットワークから出力された隆起を、より高分解能のラスタに(例えば、線形またはバイキュービック補間の支援により例えば100×100個の点のラスタに)補間し、および適用可能な場合、従来技術による最適化方法のいくつかのステップにより事後最適化することが提案される。この事後最適化は、通例、ニューラル・ネットワークが同じ目標関数を用いた最適化方法の結果を用いてトレーニングされている限り、収束のために僅かな反復しか必要としない。
【0141】
最適化されたモデル・パラメータ、および適用可能な場合、最適化された複雑度を用いて決定または定義された表面モデルは、適切に記憶され、その後、オーダ・パラメータ・セットからの眼科用レンズの計算のために利用可能にされてもよい。例えば、表面モデルまたは表面モデルの一部分(モデル・パラメータ等)は、適切なストレージ、例えばデータベースに記憶されてもよい。表面モデル、またはそれに関連付けられた目標値を決定するのに要求されるオーダ・パラメータ・セットの少なくとも一部分が、同様にストレージに記憶されてもよい。上述したように、目標値は、例えば、少なくとも部分的に、確立された方法に従って既に計算された眼科用レンズ(基本レンズ)の表面値またはそこから導出される変数であり得る。目標値は、同様に、眼科用レンズを最適化するために目標関数(例えば、従来技術による目標関数)に入力する公称値であり得る。
【0142】
上記で説明したように決定された表面モデルは、更に変更されてもよい。方法は、結果として、表面モデルの変更を含んでもよい。変更の例は、ニューラル・ネットワークにおける追加の層の付加、または追加の関数における表面モデルの埋め込みであり、追加の関数は、例えば、表面の隆起を補間または変換する(例えば、ニューラル・ネットワークの、サポート・ベクトル・マシン、決定木または任意の他の回帰モデルへの変換)。
【0143】
本発明の上述の態様による方法および実施形態の変形、ならびにこの表面モデルを用いる方法に従って計算された表面モデルは、好ましくは、以下の特性または利点のうちの少なくとも1つを含む:
- オーダ・パラメータ・セットのための表面モデルの評価が、従来技術による方法による最適化と比較して低い計算コストを有する。
- 通例、表面を計算するための計算能力または計算時間の90%未満、好ましくは、50%、20%、10%、5%、2%、または1%未満が、眼科用レンズの表面の反復的な変更に用いられる。これは、各反復における計算コストが同じままであるが、表面の変更は各反復と共に減少するため、一般的な反復アルゴリズムと比較して有利であり得る、
- 表面モデルは、入力変数として計算に入力し、最適化方法中に変更される入力として、初期表面(開始表面)の提供を必ずしも必要としない、
- オーダ・パラメータに依拠して、表面の変更を予め計算し記憶する必要がない、
-後続の補正(例えば、事後最適化)を用いた表面のハイブリッド計算が可能である。そのようなハイブリッド計算は、より良好な初期表面に起因して、最終的な効果として、より短い最適化時間を有してもよい、
- 表面モデルを連続的に改善することが可能である。
【0144】
このため、上述した態様および実施形態の変形に従って、方法により決定される表面の使用により、顧客の任意のオーダ・パラメータについて迅速かつ効率的に眼科用レンズの表面を計算し、この表面を生成および/または視覚化することが可能である。
【0145】
上述した態様による方法はさらに、2つの異なる系列間で異なるオーダ・パラメータ(例えば、屈折率)またはそれに依拠した変数(例えば、基本湾曲系)が、トレーニング・データ・セット内に存在し、変動を受けた限り、表面モデルが変更されずに用いられ得るため、(個々の眼科用レンズおよび眼科用レンズの対の双方について)眼科用レンズの系列の発展における利点も有する。
【0146】
上述した態様による方法の別の応用は、眼科用レンズの異なる系列間(例えば、異なる意図される使用のために提供される多焦点レンズの系列等の例えば異なる製品間の、または例えば多焦点レンズと単焦点レンズとの間)の補間である。この目的で、オーダセットは、眼科用レンズの系列に対応する1つの変数によって拡張されるのみでよい。N個の系列を所与として、0から1の間のN個の数から構成されるタプル(s,s,…,s)を用いることが提案される。それによって、眼科用レンズiの系列は、タプル(δ1,i,δ2,i,…,δN,i)によって表され、ここでδj,iはクロネッカー・デルタ・シンボルである。このとき、眼科用レンズの異なる系列間の補間は、0から1の間の値sが選択されるという点で可能にされてもよく、ここで、sの和は1である。次に、そのようなタプルが、対応してトレーニングされた表面モデルの支援により、眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するために、現在のオーダ・データ・セットと共に用いられる。
【0147】
更なる態様
本発明の第2の態様は、オーダ・パラメータからおよび/またはそこから導出される変数から以前に決定された表面モデルによって、1つまたは複数の眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するためのコンピュータ実施方法および対応するデバイスに関する。本発明の意味における用語「定義する」は、1つまたは複数の眼科用レンズの少なくとも1つの表面の決定または計算を含む。
【0148】
方法は、
少なくとも1つの眼科用レンズのオーダ・パラメータ・セットを提供することと、
少なくとも1つの眼科用レンズのオーダ・パラメータのセットから、および/またはオーダ・パラメータに依拠する変数から、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するための関数を提供することであって、関数は、表面モデルであるか、または少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面へのオーダ・パラメータ・セットのマッピングを近似的に実施する関数であり、このマッピングは、表面モデルを用いて実施可能である、提供することと、
提供されたオーダ・パラメータ・セットから(反復的にではなく直接)、提供された関数の支援により、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の表面データを決定することと、
を含む。
【0149】
表面モデルは、上記で説明した表面モデル、すなわち、上記で説明した方法に従って決定または確認された表面モデルであり得る。少なくとも1つの表面の表面データは、好ましくは、提供されたオーダ・パラメータ・セットから直接(すなわち、反復的ではない)、またはいくつかの反復ステップ、例えば、30、25、15、10、5、または3回未満の反復ステップを用いて決定される。上述したように、これは、任意のオーダ・パラメータ・セットについて表面またはレンズを計算するのに必要な計算時間の大幅な低減につながる。オーダ・パラメータに依拠して表面の変更を予め計算および記憶することも必要なく、これによって記憶空間要件が低減される。単純な方式で、表面モデルを連続的に更新および改善することも可能である。
【0150】
表面モデルは、少なくとも1つのレンズ表面を計算するために直接用いられてもよい。
【0151】
代替的に、表面モデルの関数、例えば、本発明に従って決定される表面モデルを用いた計算を近似的に実施する関数が用いられてもよい。そのような関数は、表面モデルの単純化の範囲内で、例えば、類似の活性化パターンを有するニューラル・ネットワークのニューロンが組み合わされるという点で、または用いられる表面モデルの異なる変換の範囲内で生成されてもよい。
【0152】
さらに、上述した好ましい実施形態の変形または上述した利点は、このデバイスのためのこの方法に関しても妥当に当てはまる。
【0153】
本方法は、任意選択で、表面の製造に関する他の変数の決定(例えば、レンズが製造されるべきブランクの現在の直径およびタイプ)を更に含み、それによって、そのような方式で計算される表面は、もはや更なる最適化を必要としないか、または比較的僅かな計算労力のみで補正され必要がある。
【0154】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するための方法は、表面モデルを用いて計算された少なくとも1つの表面の補正の実施も含んでもよく、補正は、表面モデルを用いて計算された表面の最適化、および/または重ね合わせ表面との重ね合わせ、および/または眼科用レンズの表面のもしくは光学特性の製造に依拠したずれの補正、および/または製造に要求される眼球用レンズの直径への表面の拡張を含む。表面の拡張のための方法の例がEP 2087396に記載されている。
【0155】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するための方法は、表面モデルを用いて計算され、適用可能な場合、補正および/または拡張された少なくとも1つの表面の表面データの記憶も含んでもよい。表面データは、任意選択で、表面データを決定するために用いられるオーダ・パラメータの少なくとも一部分と共に記憶されてもよい。例えば、表面データは、適切なデータ媒体またはストレージ・デバイス上に記憶されてもよい。ストレージ・デバイスは、同様に、コンピュータ・クラウドまたはデータ・クラウドであってもよい。
【0156】
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するための方法は、同様に、表面モデルを用いて計算され、適用可能な場合、補正され、および/または外部ユニットに、例えば眼科用レンズの製造者、製造ユニット、製造デバイス等に拡張された少なくとも1つの表面の表面データの送信を含んでもよい。表面データは、任意選択で、表面データを決定するために用いられたオーダ・パラメータ・セットの少なくとも一部分と共に送信されてもよい。
【0157】
また、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するための方法は、所望のまたは要求された特性の充足のために表面モデルを用いて計算された少なくとも1つの表面をチェックすることと、表面データを決定するのに用いられたオーダ・パラメータの少なくとも1つの部分、ならびに/または表面モデルを用いて計算され、適用可能な場合、補正および/もしくは拡張された少なくとも1つの表面、ならびに/または本発明の第1の態様による表面モデルの定義における特性の目標値として提供され得る所望のもしくは要求された特定の少なくとも1つの値と共に、要求された特性の充足または非充足に関する情報を記憶することとを含んでもよい。
【0158】
さらに、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するための方法は、全ての表面の決定および/もしくは記憶後、または所定の数の表面が表面モデルを用いて計算され、適用可能な場合、補正された後の、表面モデルのモデル・パラメータの適合を含んでもよい。
【0159】
表面モデルを用いて計算された表面の補正および設計適合性のチェック
表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの少なくとも1つの表面は、例えば、表面モデルを用いて計算された眼科用レンズが、少なくとも1つの所望のまたは要求される光学的および/または幾何学的特性を充足しない場合に、更に補正されてもよい。この目的で、表面モデルを用いて計算された眼科用レンズは、例えば、適切に選択された閾値を上回っているかまたは下回っていることを用いて、所望のまたは要求される特性との適合性についてチェックされてもよい。
【0160】
例えば、多焦点レンズを仮定して、以下の特性のうちの1つまたは複数がチェックされてもよい:
- 一次見通し線に沿った(最適には使用位置における)残余非点収差、
- 基準点における標準的な光学的効果の充足または光学的効果(例えば、球および/または円筒および/またはプリズム)の許容可能なずれ、
- 少なくとも1つのプリズム基準点における所望のまたは許容可能な垂直および/または水平プリズム、
- 少なくとも、左レンズと右レンズとの間の1つのプリズム基準点における、垂直および/または水平プリズムの所望のまたは許容可能なずれ、
- 残余非点収差および/または屈折誤差の(それぞれ、最適には使用位置における)最大許容可能勾配、
- 残余非点収差および/または屈折誤差の(それぞれ、最適には使用位置における)分布、
- 良好な視界のゾーンの所望の幅、
- 表面の十分な平滑性、
- 表面の製造能力(例えば、アンダーカットの欠如)、
- 製造能力を確保するための表面のアンダーカットの欠如、
- 破壊強度(例えば、静的付加試験または動的負荷試験を用いて定量化される)を達成するための十分な厚み。
【0161】
他のまたは更なる特性をチェックすることも可能である。
【0162】
しかしながら、表面モデルを用いた計算の前に、表面モデルを用いて計算された表面の補正が必要であるか否かを既に判定していることが有利であり得る。例えば、これは、要求された特性を満たさない表面の割合(例えば、この割合が決定された閾値を超えている場合)を用いて判定されてもよい。
【0163】
同様に、各レンズについて、補正が必要であるか否かを個々に判定するために、所望のまたは要求された特性の充足について、表面モデルを用いて生成された各眼科用レンズを連続的にチェックすることが有利であり得る。そのようなチェックは、好ましくは、計算される眼科用レンズにわたって平均化された、チェックに適用された計算能力が、補正計算(例えば、事後最適化または事後計算)の節減された計算能力未満である場合にのみ適用される。
【0164】
表面モデルを用いて計算された眼科用レンズの補正は、これらの表面から開始して、結果として、眼科用レンズの要求される特性の充足がチェックされるか否かと無関係に行ってもよい。
【0165】
例えば、補正は、従来技術による方法により行ってもよい。例えば、眼科用レンズのための確立された最適化方法のいくつかの最適化を含む事後最適化において眼科用レンズの表面を計算することが可能である。表面モデルによって出力される表面は、事後最適化の開始点(開始表面として知られる)として用いられてもよい。
【0166】
同様に、1つまたは複数の重ね合わせ表面を用いてモデルによって計算された表面の重ね合わせにより、事後計算において眼科用レンズの表面を生成することが可能である。例えば、単純な回転楕円体-環状帯重ね合わせ表面、または、例えばUS 2018/0088353 A1もしくはEP 1 240 541 B1に記載されるようなより複雑な重ね合わせ表面が重ね合わせ表面として用いられてもよい。
【0167】
代替的に、計算は、第2の表面モデルを用いて行われてもよい。第2の表面モデルは、例えば、回帰モデルを含んでもよい。
【0168】
同様に、表面モデルを用いて計算され、場合によっては既に補正された表面の更なる補正を行うことが有利であり得る。例えば、眼科用レンズの表面または光学的特性のいずれの体系的ずれが製造において生じるかがわかっている場合、これらは同様に、確立された方法の支援により、例えば、WO 2014/076155 A1に記載の方法の支援により補正されてもよい。
【0169】
さらに、眼科用レンズの単数または複数の表面は、補正後に所望のまたは要求された特性の充足について再びチェックされてもよい。眼科用レンズが所望のまたは要求された特性を充足しない場合、レンズの製造は、オーダを手動でチェックするために停止されてもよい。これにより、不適切なレンズの製造または更には送達が阻止されることが確実になる。特に、これにより、失敗した事後最適化が発見されてもよい。
【0170】
同様に、要求された特性の充足または非充足に関する情報を、後の評価のためにオーダ・パラメータと共に例えばデータベースに記憶することが有利である。
【0171】
眼科用レンズが、表面モデルを介した計算の後に最終的に事後最適化された場合、その単数または複数の表面は、オーダ・パラメータ、および適用可能な場合、そこから導出される他の変数と共に、データベース内に新たなデータ・セットとして記憶されてもよい。このデータ・セットは、表面モデルが新たに生じたデータの検討下で再決定または再定義されるという点で表面モデルを改善するために利用されてもよい。したがって、本発明による方法のためのデータベースが着実に成長する。また、表面モデルの再定義は、データベースに記憶されたデータ・セットの一部分のみを用いて行ってもよい。このため、表面モデルを用いて計算された表面の品質は、全ての事後最適化されたレンズを用いて改善されてもよい。
【0172】
表面モデルを用いて計算された単数または複数の表面の補正は、例えば、計算されるレンズのオーダ・パラメータ・セットに最も類似した、表面モデルを決定するのに必要なオーダ・パラメータ・セットからの、計算される眼科用レンズのオーダ・パラメータ・セットおよび/またはそこから導出される変数のずれが、所定の閾値未満である場合に省かれてもよい。ずれは、単数または複数の表面の感度がオーダ・パラメータによって考慮に入れられるように選択されてもよい、適切に決定された距離尺度を用いて測定されてもよい。例えば、ずれは、異なるオーダ・パラメータを有する2つの眼科用レンズの隆起差または所望の特性の差の二乗を用いて記載または定量化されてもよい。
【0173】
表面モデルの連続的改善
表面モデルのモデル・パラメータを連続的にまたは定期的間隔でチェックおよび/または変更することが可能である。眼科用レンズが事後最適化または新たに最適化されなくてはならない場合、これに必要な眼科用連続の表面のデータが追加され、モデル・パラメータの適合のために、関連するオーダ・パラメータと共に用いられてもよい。適合のために、データの一部分、例えば統計的勾配効果または制限されたメモリBFGSのみを用いる最適化アルゴリズムが好ましくは用いられてもよい。しかしながら、完全なデータ・セットを必要とする最適化アルゴリズムが同様に用いられてもよい。
【0174】
表面モデルのモデル・パラメータのチェックおよび/または適合は、例えば、全ての再計算もしくは再最適化された眼科用レンズの後、または所定の数の再計算もしくは再最適化された眼科用レンズの後に行ってもよい。最も単純なシナリオにおいて、この数は一定であり得る。
【0175】
別の可能性は、モデルデータの決定のために既に用いられているデータの固定の割合(例えば10%)が、再最適化または事後最適化されているときにのみ適合を行うことである。計算時間が利用可能である場合(例えば、いくつかの眼科用レンズが計算される必要がある場合)、表面モデルのモデル・パラメータの適合を行うことも提案されてもよい。
【0176】
排他的に、事後最適化からの新たなデータ・セットが用いられるという点で、表面モデルのモデル・パラメータが適合されるべきである場合、モデル・パラメータの適合における学習率(すなわち、適合ステップにおけるモデル・パラメータの適合の強度)を、トレーニングのために用いられるデータ・セットの数全体における新たなデータ・セット数の割合に比例するように選択することも可能である。学習率は、各適合においてこのように低減され、モデル・パラメータの収束を確実にする。
【0177】
表面モデルのハイブリッド計算および複雑度の最適な選択
1つの例によれば、1つまたは複数の眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するためのハイブリッド方法が提供されてもよく、この方法は、オーダ・パラメータからおよび/またはそこから導出される変数からの、所定の表面モデルによる、表面のうちの少なくとも1つの決定と、表面モデルを用いて決定された少なくとも1つの表面の後続の補正または事後計算とを含む。補正は、上記で説明した補正のうちの1つであり得る。
【0178】
平均して、表面モデルを用いた眼科用レンズの表面の計算コストが、事後計算または補正の計算コストと合わせて最小にされるように表面モデルの複雑度を調整することが有利であり得る。
【0179】
Z(F_m(a_m))は、表面モデルを用いて計算された表面F_m(a_m)の品質であり、この品質は、目標関数Zの支援により測定される。したがって、Z(F_n(a_n;F_m(a_m)))は、計算コストa_nを有する事後計算により、表面F_m(a_m)から開始して計算される表面F_n(a_n;F_m(a_m))の品質である。計算コストを最小にするために、表面モデルの複雑度は、表面モデルによる計算による目標関数の改善が、追加の計算コストa_mごとに、消失計算コストa_n=0を仮定して表面モデルを用いて計算された表面から開始する事後計算による目標関数の初期改善と厳密に同じだけであるかまたはそれより大きくなるように選択されてもよい。このため、表面モデルの評価は、最も小さな計算コストa_mを有しなくてはならず、これについて、
dZ(F_m(a_m))/da_m(a_m)>=dZ(F_n(a_n;F_m(a_m=0)))/da_n
が当てはまる。
【0180】
この文脈において、目標関数が計算コストの増大と共に小さくなるため、両辺の導関数が負の代数符号を有することに留意されたい。
【0181】
モデルの複雑度を小さく保持し、このようにして全てのオーダされた眼科用レンズにわたって平均された計算コストを最小限にするために、表面モデルが用いられるオーダ・パラメータの範囲を、頻繁なオーダの範囲に制限することが可能である。例えば、これは、オーダ・パラメータの特定のセットが稀に生じ、他のものが非常に頻繁に生じる場合に妥当であり得る。例えば、表面モデルは、主要なオーダ範囲における標準的な個々のパラメータおよび標準的な設計(例えば、-4dptから+4dptの間の球、2dpt未満の円筒の絶対値、1.5dptから2.5dptの間のアディション)を有するレンズについてのみ用いられてもよい。このとき、従来技術による方法は、オーダ・パラメータの残りの範囲において用いられてもよい。
【0182】
また、表面モデルの複雑度は、例えば、眼科用レンズの単数または複数の表面に対する最も大きな影響を有するオーダ・パラメータのみが処理されるように制限されてもよい。表面に対する更なるオーダ・パラメータの影響は、事後計算または事後最適化を用いた事実の後に補正されてもよい。1つの可能な事例において、眼鏡レンズの計算を仮定して、表面モデルにおいて表されるかまたは表面モデルを決定するために用いられるオーダ・パラメータは、パントスコピック傾斜、面形成角、および眼科用レンズの角膜頂点距離と共に、規定値および中心化パラメータに縮約される。それによって、眼科用レンズの単数または複数の表面の計算は、標準的な開始表面に基づいて、以前に実施された最適化よりも効率的なままである。
【0183】
最も極端な例において、屈折のみ、-絶対的な最も極端な例では、球形等価物、および適用可能な場合、アディションのみ-が表面モデルを用いた計算に用いられてもよい。
【0184】
同様に、眼科用レンズに要求される特性の充足または非充足を用いた計算のために表面モデルが用いられる範囲を決定することが提案される。この目的で、これらの特性の充足または非充足に関する情報は、オーダ・パラメータに依拠して記憶されてもよい。表面モデルが用いられる範囲は、例えば、ロジスティック回帰またはサポート・ベクトル・マシン等を用いて確立された分類アルゴリズムの支援により決定されてもよい。
【0185】
表面モデルが表面の計算のために用いられるオーダ・パラメータの範囲は、同様に、連続的に拡張されてもよく、例えば、従来技術による方法を用いて最終的に計算された十分な表面が、表面モデルが計算のために用いられるオーダ・パラメータの範囲外で利用可能である場合、表面モデルのモデル・パラメータは再トレーニングされてもよい。その後、拡張された範囲も、上記で提案されたように再計算されてもよい。
【0186】
最も一般的な事例において、複雑度および/または実施形態の観点で異なる複数の表面モデルが、オーダ・パラメータに依拠して用いられてもよい。
【0187】
特に、個別化または個人化された眼科用レンズを仮定して、平均よりも頻繁なオーダ・パラメータの部分が、オーダ・パラメータの分布における標準値を仮定することが生じ得る。部分的に個別化された眼科用レンズを仮定して、いくつかのオーダ・パラメータは、標準値に設定されてもよく、オーダに応じて変更されなくてもよい。ここで、オーダ・パラメータの一部分が標準値を有する事例において、オーダ・パラメータの一部分の標準値からのずれが表面モデルによって表される必要がないため、より単純で、したがってより高速な計算を可能にする、複雑度の観点で低減された表面モデルを用いることが提案される。残りのオーダは、より高い複雑度の表面モデルを用いて、または従来技術による方法と同一に計算されてもよい。
【0188】
表面モデルがいずれのオーダ・パラメータの範囲で用いられるかのずれは、実験的に決定されてもよい。最適なずれの目標は、眼科用レンズの高速でリソースを節減する計算であり得る。
【0189】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータのメモリにロードされ、このコンピュータ上で実行されると、コンピュータが上記の態様のうちの1つによる方法を実施するという効果を有する、コンピュータ・プログラム製品が提案される。また、コンピュータはコンピュータ・システムであってもよい。
【0190】
上記の態様のうちの任意のものによる方法は、対応して設計されたデバイスによって実施されてもよい。
【0191】
本発明の第4の態様は、少なくとも1つの眼科用レンズ(例えば、コンタクト・レンズまたは眼鏡レンズ)の少なくとも1つの表面を計算するための表面モデルを、眼科用レンズのためのオーダ・パラメータの少なくとも1つのセットから、および/またはオーダ・パラメータに依拠した変数から決定するためのデバイスに関する。デバイスは、本発明の第1の態様による方法を実施するように設計されたコンピューティング・デバイスを備える。
【0192】
表面モデルを決定するためのデバイスは、特に以下を備える:
少なくとも1つの眼科用レンズをオーダするのに必要なパラメータの少なくとも1つの部分の値をそれぞれ含む複数のオーダ・パラメータ・セットを含むトレーニング・データ・セットを提供するためのデバイスと、
トレーニング・データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットの各々について、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの所定の特性の少なくとも1つの目標値を提供するためのデバイスと、
モデル・パラメータによってパラメータ化された少なくとも1つの表面モデルを提供するためのデバイスであって、これを用いて、-モデル・パラメータの所与の値について-少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を、少なくとも、オーダ・パラメータ・セットから、および/またはオーダ・パラメータ・セットに依拠した変数から計算可能である、デバイスと、
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の計算のための表面モデルを取得または決定するように設計されたコンピューティング・デバイスとを備え、表面モデルの取得または決定は、
提供された目標値を用いて、少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータの最適化値を決定することを含む。
【0193】
少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータの最適化値を決定することは、例えば:
モデル・パラメータおよび提供されたターゲット値に依拠して、少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータについて、目標関数を最小化または最大化する目的で、少なくとも1つの表面モデルのモデル・パラメータの値を最適化することを含み、オーダ・パラメータ・セットのそれぞれについてのモデル・パラメータの目標関数は、それぞれのオーダ・パラメータ・セットのための少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの特性の提供された目標値が、対応するオーダ・パラメータ・セットのための表面モデルのモデル・パラメータの所与の値について表面モデルを用いて計算可能であるかまたは計算される少なくとも1つのレンズの同じ特性の値と一致するときに最小または最大を仮定する少なくとも1つの項を含む。
【0194】
本発明の第5の態様は、オーダ・パラメータからおよび/またはオーダ・パラメータに依拠する変数から以前に決定された表面モデルによって、1つまたは複数の眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するためのデバイスに関する。デバイスは、上記の態様のうちの任意のものに従って少なくとも1つの眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するための方法を実施するように設計される。眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するためのデバイスは、特に、
少なくとも1つの眼科用レンズのオーダ・パラメータ・セットを提供するためのデバイスと、
少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を計算するための表面モデルを、1つの眼科用レンズのためのオーダ・パラメータのセットから、および/またはオーダ・パラメータに依拠した変数から提供するためのデバイスと、
提供されたオーダ・パラメータ・セットから、表面モデルの支援により、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の表面データの決定を実施するように設計されたコンピューティング・デバイスと、
を備える。
【0195】
表面モデルは、上記で説明した態様のうちの任意のものによる方法に従って決定または確認された表面モデルであり得る。
【0196】
上述した好ましい実施形態の変形または上述した利点は、上記のデバイスに関しても妥当に当てはまる。
【0197】
本発明の第6の態様は、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面の表面データを含むデータ・セットに関し、少なくとも1つの表面は、上記の態様のうちの任意のものに従って少なくとも1つの眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するための方法に従って決定された。データ・セットは、適切なデータ媒体またはストレージ・デバイス、例えば、データベース、コンピュータ・クラウドまたはデータ・クラウド等に永久的にまたは非永久的に記憶されてもよく、または記憶されていてもよい。
【0198】
表面モデルによって1つまたは複数の眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するための上記で説明した方法および対応するデバイスは、眼科用レンズの製造において、例えば、製造される表面を決定するために、眼科用レンズの設計のプロセスにおいて、または表面の幾何学的特性を用いた眼科用レンズの製造能力をチェックするために用いられてもよい。換言すれば、1つまたは複数の眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するための方法は、眼科用レンズの製造または作製方法の構成要素であり得る。
【0199】
例えば、1つまたは複数の眼科用レンズの未来の装着者に対し、個別化または個人化された眼科用レンズの光学的および幾何学的特性(例えば、明確に見えるゾーンの位置および多焦点レンズを仮定した厚み)を明確にするために、(例えば眼鏡技師との)相談において、表面モデルによってそのようなレンズの表面のうちの少なくとも1つを決定するための方法を用いることも可能である。このため、本発明の更なる態様は、眼科用レンズを製造するための方法および対応するデバイスに関する。
【0200】
眼科用レンズを製造するための方法は、特に以下を含んでもよい:
上記で説明した態様のうちの任意のものによる方法に従って、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定すること、
少なくとも1つの表面を有する眼科用レンズを製造すること。
【0201】
眼科用レンズを製造するためのデバイスは、特に以下を含む:
上記で説明した態様のうちの任意のものに従って、少なくとも1つの眼科用レンズの少なくとも1つの表面を決定するためのデバイス;
少なくとも1つの表面を有する眼科用レンズを製造するための製造デバイス。
【0202】
上述した好ましい実施形態の変形または上述した利点は、この方法またはこのデバイスに関しても妥当に当てはまる。
【0203】
データ(例えば、オーダ・パラメータから導出される変数、モデル・パラメータ、目標値、表面データ、加重等)を提供、決定、決定、または計算し、および/または関数、例えば目標関数を評価するための上述したデバイスは、適切に構成またはプログラムされたデータ処理デバイス(特に、専用ハードウェア・モジュール、コンピュータ、またはコンピュータ・システム、例えばコンピュータ・クラウドまたはデータ・クラウド)により、対応する計算ユニット、電子インタフェース、ストレージおよびデータ送信ユニットと共に実現されてもよい。デバイスは、ユーザがデータを閲覧および/または入力および/または変更することを可能にする少なくとも1つの対話型グラフィカルユーザインタフェース(GUI)も含んでもよい。
【0204】
上述したデバイスは、データ(例えば、オーダ・パラメータ・セット、モデル・パラメータ、目標値、表面データ等)の送信または入力または読み出しを可能にする適切なインタフェースも有してもよい。同様に、デバイスは、用いられるデータ、例えばオーダ・パラメータ・セット、目標値、表面データ、加重等を記憶する、例えばデータベースの形態の少なくとも1つのストレージ・ユニットを含んでもよい。
【0205】
例えば、製造デバイスは、決定された最適化仕様に従うブランクの直接処理のための少なくとも1つのCNCマシンを含んでもよい。代替的に、眼科用レンズは、キャスティング法によって製造されてもよい。完成した処理済みの眼科用レンズは、好ましくは、単純な球面または回転対象の非球面、および表面モデルの支援により本発明による方法の任意の態様に従って決定された表面を有する。単純な球面または回転対象の非球面は、好ましくは、眼科用レンズの前面(すなわち、対物側の表面)である。しかしながら、表面モデルを用いて計算された表面を、眼科用レンズの前面として配置することが自明に可能である。また、眼科用レンズの表面および/またはそれらの互いに対する配置の双方が、表面モデルの支援により決定されてもよい。
【0206】
さらに、本発明は、装着者の屈折異常の補正のために、決定された装着者の眼の正面における眼鏡レンズの所定の平均または理想使用位置において、本発明による製造方法に従って製造される眼科用レンズの使用を提供する。
【0207】
以下において、本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を用いて例として説明される。説明された実施形態の個々の要素は、それぞれの実施形態に限定されない。むしろ、実施形態の要素は、互いに任意に組み合わされてもよく、それによって新たな実施形態が作成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0208】
図1】表面モデルの支援により眼科用レンズを計算するための方法の例を示す図である。
図2】パラメータ化された表面モデルの支援により眼科用レンズを計算するための方法の例を示す図である。
図3】表面モデルの支援および補正により眼科用レンズを計算するための方法の更なる例を示す図である。
図4】表面モデルの支援および任意選択の補正により眼科用レンズを計算するための方法の更なる例を示す図である。
図5】既に計算された眼科用レンズの支援により表面モデルを決定するための方法の例を示す図である。
図6】既に計算された眼科用レンズを用いずに表面モデルを決定するための方法の例を示す図である。
図7】複数のオーダ・パラメータデータ・セットを含むデータ・セットの、トレーニング・データ・セット、検証データ・セットおよび試験データ・セットへの分割の例を示す図である。
図8A】第1の例示的な表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの中心厚みと、試験眼鏡レンズの中心厚みとの相関を示す図である。
図8B】中心厚みの残差の周波数のヒストグラムを示す図である。
図8C】第1の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第1の主断面の後面曲率と、試験眼鏡レンズの第1の主断面の後面曲率との相関を示す図である。
図8D】第1の主断面の後面曲率の残差の周波数のヒストグラムを示す図である。
図8E】第1の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第2の主断面の後面曲率と、試験眼鏡レンズの第2の主断面の後面曲率との相関を示す図である。
図8F】第2の主断面の後面曲率の残差の周波数のヒストグラムを示す図である。
図8G】第1の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第1の主断面における頂点屈折力と、試験眼鏡レンズの第1の主断面における頂点屈折力との相関を示す図である。
図8H】第1の表面モデルに従って計算された、第1の主断面における頂点屈折力の、試験眼鏡レンズの第1の主断面における頂点屈折力からのずれの周波数のヒストグラムを示す図である。
図8I】第1の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第2の主断面における頂点屈折力と、試験眼鏡レンズの第2の主断面における頂点屈折力との相関を示す図である。
図8J】第1の表面モデルに従って計算された、第2の主断面における頂点屈折力の、試験眼鏡レンズの第2の主断面における頂点屈折力からのずれの周波数のヒストグラムを示す図である。
図9A】第2の例示的な表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの中心厚みと、試験眼鏡レンズの中心厚みとの相関を示す図である。
図9B】中心厚みの残差の周波数のヒストグラムを示す図である。
図9C】第2の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第1の主断面の後面曲率と、試験眼鏡レンズの第1の主断面の後面曲率との相関を示す図である。
図9D】第1の主断面の後面曲率の残差の周波数のヒストグラムを示す図である。
図9E】第2の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第2の主断面の後面曲率と、試験眼鏡レンズの第2の主断面の後面曲率との相関を示す図である。
図9F】第2の主断面の後面曲率の残差の周波数のヒストグラムを示す図である。
図9G】第2の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第1の主断面における頂点屈折力と、試験眼鏡レンズの第1の主断面における頂点屈折力との相関を示す図である。
図9H】第2の表面モデルに従って計算された、第1の主断面における頂点屈折力の、試験眼鏡レンズの第1の主断面における頂点屈折力からのずれの周波数のヒストグラムを示す図である。
図9I】第2の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第2の主断面における頂点屈折力と、試験眼鏡レンズの第2の主断面における頂点屈折力との相関を示す図である。
図9J】第2の表面モデルに従って計算された、第2の主断面における頂点屈折力の、試験眼鏡レンズの第2の主断面における頂点屈折力からのずれの周波数のヒストグラムを示す図である。
図10】第2の表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズにおける最小縁部厚みおよび中心厚みとの適合性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0209】
オーダ・パラメータ・セットdに関して眼科用レンズLを計算するための従来の方法は、通例、以下のステップを含む:
オーダ・データd(オーダ・パラメータ・セット)を提供する、
眼科用レンズの表面のうちの少なくとも1つを計算または最適化する、および、
オーダ・データdに関して製造される眼科用レンズLの表面を取得する。
【0210】
最適化は、通例、目標関数の最小化または最大化により反復的に行い、この関数に、レンズの少なくとも1つの特性(例えば、光学的特性)の公称値を入力する。目標関数は、通例、計算される表面の決定されたパラメータ化について評価される。表面のパラメータは、所定の判断基準が満たされるまで変更される。
【0211】
図1は、表面モデルの支援、および直接的な非反復的計算、またはいくつかの反復ステップを有する計算によりオーダ・データに関して眼科用レンズまたは一対の眼科用レンズを計算するための方法の例を示す。方法は、以下のステップを含む:
S1-1:単数または複数の眼科用レンズのオーダ・パラメータ・セットdを含むオーダ・データを提供するステップ、
S1-2:表面モデルの支援によりレンズの少なくとも1つの表面を計算/最適化するステップ、
S1-3:オーダ・パラメータ・セットdに関して製造される眼科用レンズLの表面を取得するステップ。
【0212】
表面モデルの支援を用いたレンズの少なくとも1つの表面の計算は、直接的に、非反復的に、または反復的方法によるいくつかの反復ステップを用いて行ってもよい。それによって、表面の計算に必要な時間が大幅に低減される。
【0213】
表面モデルは、以前に説明された態様および実施形態の変形のうちの1つに従って決定されたモデルであり得る。例えば、表面モデルは、パラメトリックに決定されてもよく、モデル・パラメータ(表面モデルのパラメトリック表現のパラメータ)が、オーダ・パラメータおよび/またはそこから導出される変数の少なくとも一部分と共に、眼科用レンズの単数または複数の表面を計算するために用いられる。表面モデルは、線形または非線形回帰モデルであり得る。非線形回帰モデルは、例えばニューラル・ネットワークであり得る。これに関して、上述した好ましい実施形態の変形、または異なる表面モデルの上述した利点を参照する。
【0214】
図2は、パラメトリック表面モデルの支援、および直接的な計算によりオーダ・データに関して眼科用レンズまたは一対の眼科用レンズを計算するための方法の例を示す。方法は、以下のステップを含む:
S2-1:単数または複数の眼科用レンズのオーダ・パラメータ・セットdを含むオーダ・データを提供するステップ、
S2-2:表面モデルのパラメータを提供するステップ、
S2-3:表面モデルの支援により眼科用レンズを計算/最適化するステップ(直接的であるか、非反復的であるか、または反復的方法によるいくつかの反復ステップを伴う)、
S2-4:オーダ・パラメータ・セットdに関して製造される眼科用レンズLの表面を取得するステップ。
【0215】
表面モデルは、既存のオーダ・パラメータ・セットを、関連付けられた目標値と共に用いて決定されてもよい。この目的で、初期複雑度および初期パラメータ化が決定または定義されてもよい。モデル・パラメータは、その後、モデル・パラメータが反復的に変動される最適化方法によって決定されてもよい。最適化方法の目標は、オーダ・パラメータの異なるセットについての表面モデルから出力される表面、および/またはこの表面の特性が、オーダ・パラメータの同じセットの目標値に最適に良好に対応することである。
【0216】
パラメータ化の最適化、および適用可能な場合、表面モデルの複雑度の最適化は、上記で説明したように、モデル・パラメータの目標関数の最小化または最大化により行うことができ、目標関数は、好ましくは、トレーニング・データ・セット内の全てのオーダ・パラメータ・セットにわたって評価される。目標関数は、同じオーダ・パラメータ・セットについてのこの特性の少なくとも1つの目標値からの表面モデルに従って計算された眼科用レンズの少なくとも1つの所定の特性の単数または複数の値の、トレーニング・データ・セット内の各オーダ・パラメータ・セットについて決定された、ずれに依拠する少なくとも1つの項を含む。
【0217】
1つの例において、モデル・パラメータのための目標関数は、以下の項を含んでもよい:
【0218】
【数1】
ここで、
(j)は、第iのオーダ・パラメータ・セットについて表面モデルに従って計算されたレンズの少なくとも1つの特性Zの第jの値を指定し、
(j)Nomionalは、第iのオーダ・パラメータ・セットについて少なくとも1つの特性Zの第jの値を指定し、
(j)は、少なくとも1つの特性Zの第jの値の加重を指定する。
【0219】
レンズの少なくとも1つの特性Zの第jの値は、表面モデルの現在のパラメータ化または現在のモデル・パラメータを用いて決定されてもよい。レンズの少なくとも1つの特性Zの第jの値は、例えば、レンズの第jの評価点におけるこの特性の値であってもよい。
【0220】
関数f=f(Z、ZNominal)は、眼科用レンズの他のまたはより多くの特性に依拠する追加の項も含んでもよい。
【0221】
関数fは、例えば、従来の方法による眼科用レンズの最適化に用いられ、表面モデルの現在のパラメータ化または現在のパラメータについて評価される目標関数であり得る。
【0222】
1つまたは複数の目標値Z(j)Nominalは0に等しくてもよい。このため、例えば、レンズの1つまたは複数の評価点における使用位置における非点収差は、0dptの目標値を有してもよい。
【0223】
表面に関する上記の関数fおよび/またはその導関数は、その後、トレーニング・データ・セット内の全てのオーダ・パラメータ・セットにわたって評価されてもよく、評価は、表面モデルのパラメータ化に依拠して生じる。例えば、全てのオーダ・パラメータ・セットについて決定された、表面に関する関数fおよび/またはその導関数から、加重または非加重和fが計算および評価されてもよい。
【0224】
【数2】
ここで、Nはオーダ・パラメータ・セットの数を指定し(例えば、トレーニング・セット内のオーダ・パラメータの数)、
は、非加重和を仮定して、1と同一であるかまたは1に等しい、第iのオーダ・パラメータ・セットの第iの項の加重を指定する。
【0225】
目標関数fの評価の結果として所定の判断基準がまだ満たされていない場合、モデル・パラメータが変更され、目標関数fが再評価される。これは、所定の判断基準が満たされるまで反復的に繰り返される。
【0226】
そのように決定されたモデル・パラメータを有する表面モデルは、適切に記憶され、新たな眼科用レンズの計算のために上記で説明されたように用いられてもよい。
【0227】
図3は、表面モデルの支援、および直接的な計算によりオーダ・データに関して眼科用レンズまたは一対の眼科用レンズを計算するための方法の更なる例を示す。この方法は、図1に示す方法に類似しており、表面モデルを用いて計算された表面の補正を更に含む。表面の補正は、上記で説明した補正のうちの1つであり得る。方法は、以下のステップを含む:
S3-1:単数または複数の眼科用レンズのオーダ・パラメータ・セットdを含むオーダ・データを提供するステップ、
S3-2:表面モデルの支援により眼科用レンズを計算/最適化するステップ(直接的、非反復的)、
S3-3:表面モデルを用いて計算された表面を補正するステップ(事後計算/事後最適化)、
S3-4:オーダ・パラメータ・セットdに関して製造される眼科用レンズLの表面を取得するステップ。
【0228】
表面モデルを用いて計算された単数または複数の表面の補正は、上記で説明した補正のうちの1つであり得る。事後計算または事後最適化のための最適開始表面に起因して、そのような補正は、通例、1つまたは僅かな数のみの反復を必要とする。それによって、合計計算時間は、大幅に低減されてもよい。
【0229】
図4は、表面モデルの支援、および直接的な計算、ならびに任意選択の補正によりオーダ・データに関して眼科用レンズまたは一対の眼科用レンズを計算するための方法の更なる例を示す。方法は、以下のステップを含む:
S4-1:単数または複数の眼科用レンズの複数のオーダ・パラメータ・セットdを含むオーダ・データを提供するステップ、
S4-2:表面モデルの支援により眼科用レンズを計算/最適化するステップ(直接的であるか、好ましくは非反復的であるか、またはいくつかの反復的ステップを伴う)、
S4-3:補正が必要であるか否かをチェックするステップ、
S4-4:補正が必要である場合、表面モデルを用いて計算された表面の補正を実施するステップ(1つまたは僅かな数のみの反復を伴う事後計算/事後最適化)、
S4-5:オーダ・パラメータ・セットdに関して製造される眼科用レンズLの表面を取得するステップ。
【0230】
図5は、既に計算された眼科用レンズの支援により表面モデルを決定するための方法の例を示す。方法は、以下のステップを含む:
S5-1:複数のオーダ・パラメータ・セット{d}、および複数の眼科用レンズLの複数の既に計算された表面を含むオーダ・データ・セット{d,L}を提供し、データ・セットを、トレーニング・データ・セット(適用可能な場合、検証データ・セット)と試験データ・セットとに分割するステップ。提供される眼科用レンズLは、既知の計算または最適化方法に従ってオーダ・データ・セット内のオーダ・パラメータ・セットについて計算されたレンズである。提供されるレンズは、目標関数fを用いてそれぞれ最適化されたレンズであり得る、
S5-2:表面モデルの初期複雑度およびパラメータ化を提供するステップ、
S5-3:表面モデルが、トレーニング・データ・セット(および適用可能な場合、検証データ・セット)を最適に良好に反映するという目標で、パラメータ化および適用可能な場合、表面モデルの複雑度を(反復的に)最適化するステップ。最適化は、モデル・パラメータについて目標関数Gを用いて行う。それによって、眼科用レンズBLまたはそれらの表面は、オーダ・データdに関して表面モデルを用いて計算される。表面モデルを用いて計算された表面またはレンズは、目標関数Gを用いて、提供されたレンズLの表面または提供されるレンズと比較される。例えば、モデル・パラメータの最適化において、目標関数G(BL,L)の和がiにわたって最小化される。
S5-4:試験データ・セットの再作成を用いて、最適化パラメータ、および適用可能な場合、表面モデルの最適化された複雑度を試験するステップ、
S5-5:オーダ・データから眼科用レンズの直接計算を提供するために、表面モデルの最適化されたパラメータ、および適用可能な場合、表面モデルの最適化された複雑性を取得するステップ。
【0231】
また、上記の方法は、計算された表面に代わりに、測定された表面および/または既に製造されたレンズの表面の間隔を用いて実施されてもよい。
【0232】
図6は、既に計算された眼科用レンズを用いずに表面モデルを決定するための方法の例を示す。方法は、以下のステップを含む:
S6-1:複数の架空の眼科用レンズのためのオーダ・データ・セットdを提供し、データ・セットを、トレーニング・データ・セット(適用可能な場合、検証データ・セット)と試験データ・セットとに分割するステップ;
S6-2:表面モデルの初期複雑度およびパラメータ化を提供するステップ、
S6-3:表面モデルから計算されたレンズLが、個々のレンズの最適化のための目標関数fのトレーニング・データ・セット(および適用可能な場合、検証データ・セット)にわたって累積和を最小にすることを目標に、パラメータ化、および適用可能な場合、表面モデルの複雑度を最適化するステップ。目標関数fは、従来技術から既知の目標関数であり得る、
S6-4:従来技術による個々のレンズの最適化のために、試験データ・セットにわたる目標関数fの累積和を用いて、最適化パラメータ、および適用可能な場合、表面モデルの最適化された複雑度を試験するステップ、ならびに、
S6-5:オーダ・データから眼科用レンズの直接計算を提供するために、表面モデルの最適化されたパラメータ、および適用可能な場合、表面モデルの最適化された複雑性を取得するステップ。
【0233】
上記の例において、オーダ・パラメータ・セットdの各々は、単一の眼科用レンズまたは一対の眼科用レンズに必要な1つまたは複数のオーダ・パラメータを含んでもよい。オーダ・パラメータの例は、眼鏡レンズについて確立された規格に見られる(例えば、医薬品に関するEUガイドライン93/42/EWGを参照)。オーダ・パラメータおよびそこから導出される変数の更なる例に関して、ならびに更なる詳細に関しては、対応するセクションにおける上記の記載を参照されたい。そこに記載される全ての特徴、実施形態の変形および/または利点は、上記の例に妥当に当てはまる。
【0234】
以下において、眼科用レンズ(眼鏡レンズ)の計算が、2つの更なる例を用いて詳細に説明される。
【0235】
回帰モデルを用いたレンズ計算の例
第1の例は、回帰モデルによるガラス計算に関する。この例において、単焦点レンズの後面曲率および中心厚みが、回帰モデルとして設計された表面モデルの支援により、屈折の球および円筒のオーダ値から直接計算される。パラメータおよび回帰モデルの複雑度は、既に計算された眼科用レンズのデータから開始して決定される。ガラス直径は、この例において、65mmにおいて所定である。
【0236】
中心厚みの計算のために、複雑な反復アルゴリズムが従来用いられる。本例において、従来の反復アルゴリズムは、反復なしで評価される回帰モデルと置き換えられる。
【0237】
計算の開始点は、従来技術からの方法に従って既に計算された合計825個のレンズを用いたデータ・セットであり、その球および円筒は0.25dptのステップで変動する。図7に示すように、データ・セットは、425個のレンズを用いたトレーニング・データ・セットと、192個のレンズを用いた検証データ・セットと、208個のレンズを用いた試験データ・セットとに細分化される。データは、球および円筒において等距離のグリッドを形成するため、細分化は、一般的であるように、決定されたパターン(図7を参照)に従い、ランダムではない。しかしながら、初期データ・セットを、トレーニング・データ・セットと、検証データ・セットと、試験データ・セットとにランダムに細分化することが可能である。
【0238】
前面KVFLの曲率の計算を、最初に、球、円筒に依拠して基本曲線が表形式にされた表の支援により行う。当然ながら、前面の曲率は、球、円筒の分類モデル、および適用可能な場合、材料の屈折率、および適用可能な場合、製造に利用可能なガラス・ブランクに関する情報を用いて、より複雑な表面モデルにおいても計算されてもよい。しかしながら、明確にするために、これはこの例において意図的に無視された。
【0239】
屈折の主断面の曲率K1およびK2の決定は、最初に、(正の円筒の慣例を仮定して)最も大きな曲率または最も小さな曲率で行う。
K1=球+円筒およびK2=球
【0240】
回帰モデルの決定が続き、この例では、スプライン関数の支援により設計される。それぞれ、K1、K2またはKVFLにおいて三次スプラインが用いられ、線形インタラクション項が追加で用いられる。スプラインのノード点は、K1、K2およびKVFLの値範囲内でそれぞれ等距離に分散され、ノードが、それぞれのパラメータK1、K2およびKVFLにおいて同一の間隔を有するグリッドを形成することを意味する。スプライン係数は、モデル・パラメータを表す。
【0241】
残差(すなわち、計算される変数からデータ・セット内の対応する値を減算した差)の二乗の和が、モデルが既存のデータをどの程度良好に記述するかの尺度として用いられた。mm単位の中心厚みの二次ずれ、ならびにそれぞれdpt単位の後面の双方の曲率が、別個の適合において最小にされた。
【0242】
トレーニング・データ・セットに適合するために、スプライン・ノード点の数が変動されたという点でモデルの複雑度が変動された。検証データ・セットから開始して計算された、二乗誤差の最小和を有するモデルが最終的に選択された。中心厚みに用いられるモデルは、以下のように要約され得る(表1を参照)。
【0243】
【表1】
【0244】
プロセスは、後面の曲率についても類似して進行してもよい。最終的に、(同じ値範囲内の)それぞれ3つのノード点を有するK1、K2およびKVFLにおけるスプラインが、後面の各曲率が、それぞれ15個のパラメータを有するモデルを用いて適合されるように選択された。
(1(定数)+2(K1)+2(K2)+2(KVFL)+2^3(混合項)=合計15個のパラメータ)
【0245】
この例において、後面の曲率は、1.525の屈折率に対し、ジオプター単位で示される。
【0246】
ここで計算される単焦点レンズは、材料の屈折率(ここでは、1.668)、直径(ここでは65mm)、中心厚み、ならびに前面および後面曲率(これらのレンズは球形前面および球-環状体後面を有するため、後者)によって完全に記述される。この事例では、この例においてプリズム=0dptが所定であり、眼の回転中心の要件に従う中心合わせが存在するため、前面に対する後面の傾きも存在しない。
【0247】
表2に含まれるモデル・パラメータは、トレーニング・データ・セットを用いてスプライン(mm単位のモデル・パラメータ)によって計算された中心厚みからの実際の中心厚みのずれを最小にすることによって決定された。基本スプライン関数は、マルチインデックスを用いて以下で番号を付され、ここで、0は、オーダ・パラメータまたは導出される変数におけるスプライン関数が常に1に等しいことを意味し、より大きなインデックスは、昇順で、それぞれのオーダ・パラメータまたはそこから導出される変数の値範囲において下側縁部の近くから上側縁部までの空間を仮定する三次基本スプライン関数に対応する。
【0248】
【表2】
【0249】
dpt単位の以下のモデル・パラメータは、類似して、後面曲率の第1の主断面の適合の結果として生じる(表3を参照)。
【0250】
【表3】
【0251】
dpt単位の以下のモデル・パラメータは、類似して、後面曲率の第2の主断面の適合の結果として生じる(表4を参照)。
【0252】
【表4】
【0253】
以下において、試験データ・セットからの眼鏡レンズ(試験眼鏡レンズ)を用いて、本発明による方法が、従来技術による方法と比較して、ほぼ同一の特性を保有する眼鏡レンズにつながることが示される。この目的で、眼鏡レンズの中心厚み、後面曲率および頂点屈折力が、互いに対しプロットされるか、またはこれらの変数のずれのヒストグラムが計算される。図8A図8Jは、対応する結果を示す。
【0254】
図8Aは、表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの中心厚みと、および試験眼鏡レンズの測定された中心厚みとの相関を示す。試験データを用いてまたは試験眼鏡レンズを用いて測定された中心厚み(mm単位)が、図8Aの横座標にプロットされ、モデルに従って計算された中心厚み(mm単位)が縦座標にプロットされる。図8Bは、中心厚み(mm単位)の残差の周波数のヒストグラムを示し、これは、試験レンズの測定された中心厚みからの、試験レンズの計算された中心厚みのずれを意味する。
【0255】
図8Cは、表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第1の主断面の後面曲率(後面の第1の主断面の曲率または後面曲率1)と、試験眼鏡レンズの第1の主断面の測定された後面曲率との相関を示す。試験データを用いてまたは試験眼鏡レンズを用いて測定された後面曲率1(dpt単位)が図8Cの横座標にプロットされる。表面モデルに従って計算された後面曲率1(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図8Dは、後面曲率1(dpt単位)の残差の周波数のヒストグラム、すなわち、測定された後面曲率1からの計算された後面曲率1のずれを示す。
【0256】
図8Eは、表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第2の主断面の後面曲率(後面の第2の主断面の曲率または後面曲率1)と、試験眼鏡レンズの第1の主断面の測定された後面曲率との相関を示す。試験データを用いてまたは試験眼鏡レンズを用いて測定された後面曲率2(dpt単位)が図8Eの横座標にプロットされる。表面モデルに従って計算された後面曲率2(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図8Fは、後面曲率2(dpt単位)の残差の周波数のヒストグラム、すなわち、測定された後面曲率2からの計算された後面曲率2のずれを示す。
【0257】
図8Gは、表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第1の主断面における頂点屈折力(主断面1における頂点屈折力)と、試験眼鏡レンズの第1の主断面における測定された頂点屈折力との相関を示す。試験データを用いてまたは試験眼鏡レンズを用いて測定された主断面1における頂点屈折力(dpt単位)が、図8Gの横座標にプロットされ、モデルに従って計算された主断面1における頂点屈折力(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図8Hは、モデルに従って計算された、主断面1における頂点屈折力の、主断面1における測定された頂点屈折力(dpt単位)からのずれの周波数のヒストグラムを示す。
【0258】
図8Iは、表面モデルの支援により計算された眼鏡レンズの第2の主断面における頂点屈折力(第2の主断面2における頂点屈折力)と、試験眼鏡レンズの第1の主断面における測定された頂点屈折力との相関を示す。試験データを用いてまたは試験眼鏡レンズを用いて測定された主断面2における頂点屈折力(dpt単位)が、図8Iの横座標にプロットされ、モデルに従って計算された主断面2における頂点屈折力(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図8Jは、モデルに従って計算された、主断面2における頂点屈折力の、主断面2における測定された頂点屈折力(dpt単位)からのずれ(差)の周波数のヒストグラムを示す。
【0259】
球sphおよび円筒cylの任意の値を所与として、中心厚みおよび2つの後面曲率を計算するために、基本スプライン関数が、それぞれ適合から生成されたパラメータ(表を参照)およびそこから計算された和を用いて、反復的な計算が必要とされることなく、KVFL(sph,cyl)、K1(sph,cyl)、K2(sph,cyl)における対応する点において評価された。
【0260】
明らかに、ここで提案される表面モデルは、例として、例えば表面モデルがプリズム自体によって、および導出されるパラメータとして、プリズムベースと非点収差の軸との間の角度によって拡張されたという点において、プリズムおよびプリズムベースのオーダ・パラメータによっても拡張され得る。
【0261】
既に予め計算されたデータを用いることなく回帰モデルを決定するための例
従来の例と異なる形で、以下において、回帰モデルとして設計される表面モデルは、既に計算された眼科用レンズのデータに頼る必要なく決定される。これらの代わりに、表面モデルのパラメータは、複数のレンズの(反復的な)計算のために従来技術から既知の方法に従って用いられる目標関数の和を最小にすることによって直接計算される。したがって、そのような方式で決定される表面モデルは、1つまたは複数の目標関数ならびに所望の効果および直径により排他的に指定された任意の効果を有する単焦点レンズの計算を実施することが可能である。
【0262】
球形前面曲率KVFLおよび直径Dを保有する、頂点屈折力が2つの主断面K1およびK2によって特徴付けられる単一のレンズiのための従来技術による目標関数の例を以下のように示す:
【0263】
【数3】
【0264】
中心厚みはdM,iによって指定され、2つの主断面のオーダ値は、
【0265】
【数4】
によって指定される。最小許容中心および縁部厚みは、
【0266】
【数5】
および
【0267】
【数6】
によって指定される。
【0268】
【数7】
および
【0269】
【数8】
は、主断面の頂点屈折力
【0270】
【数9】
の二乗ずれを指定し、
【0271】
【数10】
および
【0272】
【数11】
は、レンズの直径の二次ずれを指定し、
【0273】
【数12】
【0274】
【数13】
および
【0275】
【数14】
は、後面の2つの主断面における中心厚みおよび縁部厚みにおける二次ずれを指定する。互いの間で異なる項の加重は、ここで以下のように選択された:g=(0,005dpt)-2、g=(0,5mm)-2、およびg=(0,1mm)-2。二次ずれは以下のように計算された:それによって、前面の曲率からの、または後面の曲率からの直径のずれが、それらの2つの主断面において計算されることに留意されたい:
【0276】
【数15】
【0277】
ここで、rVFL,i、rRFL1,iおよびrRFL1,iは、それらの2つの主断面における前面または後面における曲率半径であり、pは、ガラス厚みのアンダーカットにペナルティを科す係数である(ここで、p=100が用いられた)。
【0278】
この例において、全てのレンズの最小許容中心厚みおよび縁部厚みは一定(
【0279】
【数16】
および
【0280】
【数17】
)であるが、更なる尺度を用いることなく、レンズ材料、直径、公称効果または更にはレンズのコーティングに依拠し得る関数でもあり得る。これらの最小許容中心および縁部厚み値は、目標値を表す。
【0281】
明らかに、単独であろうと、追加の項であろうと、それらが例えば、屈折誤差のまたは使用位置における望ましくない非点収差の所望の分布等の眼鏡レンズの所望の特性を具現化する限り、他の目標関数も用いられてもよい。
【0282】
表面モデルのパラメータの最適化のための目標関数は、個々のレンズの目標関数の和から構成され、和は、それぞれのデータ・セット(すなわち、トレーニング・データ・セット、検証データ・セットまたは試験データ・セット)から全てのレンズiにわたって計算され、ここで、後面の中心厚みおよび曲率は、表面モデルのパラメータにパラメータ的に依拠する:
【0283】
【数18】
【0284】
それによって、θ=(θdM,θK1,θK2)は、表面モデルのパラメータを指定し、ここで、パラメータは、後面の中心厚みおよび2つの主要曲率のスプライン係数の3つの別個のパラメータ・セットに分割されてもよい。各レンズについて予め決定された、前面曲率、レンズ直径、頂点屈折力の主要曲率の公称値、ならびに最小中心および縁部厚みの値は、全体として、
【0285】
【数19】
によって指定される。
【0286】
ここで、表面モデルの支援により計算された値は、中心厚み、および2つの後面曲率のために用いられ、それらの部分のための値は、表面モデルの現在のパラメータに依拠する:
【0287】
【数20】
【0288】
トレーニング、検証、およびトレーニングされた回帰モデルの試験のために用いられたデータ・セットは、球および円筒について、従来の例におけるのと同じ値からなる(図7を参照)。同じスプライン・ベースの回帰モデルも用いられるが、これは、最初に、最適化の開始点として、2mmの中心厚みおよびそれぞれ-5dpt(それらの前面曲率と無関係)の後面曲率のレンズに対応するパラメータ・セットを保有する(すなわち、定数に対応するパラメータ、このため、マルチインデックス(スプライン(K1)Nr,スプライン(K2)Nr,スプライン(KVFL)Nr)=(0,0,0)を有するパラメータのみが、2mmでポピュレートされ、または、KVFL、K1およびK2のそれぞれの異なる適合において-5dptでポピュレートされ、全ての他のパラメータは0である)。
【0289】
表面モデルの最適パラメータを決定するために、ここで、ネルダ・ミード・アルゴリズム(20000個の関数評価を用いる)が、比較的ロバストであり、パラメータに関する逸脱なしで済むため、最初に用いられた。その後、200回の反復を用いた最適化が、BFGSアルゴリズム(ブロイデン・フレッチャー・ゴールドファーブ・シャンノ・アルゴリズム)が局所最適値においてより迅速に収束するため、このアルゴリズムを用いて実行された。後者のアルゴリズムの勾配が数値的に計算されたが、これらは、分析的に指定される可能性もあり、この場合再び最適化を加速させる。反復数は、最適化の開始点のより適切な選択により加速されてもよい。例えば、個々のレンズの目標関数が(例えば、最小厚み、項の逆数の加重、または追加の項において)第1の表面モデルの個々のレンズの目標関数と僅かに異なる新たな表面モデルが決定されるべきである場合、既に決定された表面モデルのパラメータが用いられることが有用であり得る。
【0290】
以下のモデル・パラメータθdMが、中心厚み(mm単位)について得られた(表5を参照):
【0291】
【表5】
【0292】
個々の指定に関しては前の例を参照されたい。
【0293】
後面曲率の第1の主断面について、以下のモデル・パラメータθK1が得られた(dpt単位):
【0294】
【表6】
【0295】
後面曲率の第2の主断面について、以下のモデル・パラメータθK2が得られた(dpt単位):
【0296】
【表7】
【0297】
以下において、試験データ・セットからの眼科用レンズを用いて、本発明による方法が、従来技術による方法と比較して、ほぼ同一の特性を保有する眼科用レンズにつながることが示される。この目的で、レンズの中心厚み、後面曲率および頂点屈折力が、互いに対しプロットされるか、またはこれらの変数のずれのヒストグラムが計算される。最小中心厚みおよび最大縁部厚みも同様に適合される。図9A図9Jは、対応する結果を示す。
【0298】
特に、図9Aは、表面モデルに従って計算された中心厚みと、従来技術による眼鏡レンズ(試験眼鏡レンズ)の中心厚みとの相関を示す。従来技術による眼鏡レンズの中心厚み(mm単位)が、図9Aの横座標にプロットされ、モデルに従って計算された中心厚み(mm単位)が縦座標にプロットされる。図9Bは、中心厚み(mm単位)の残差の周波数のヒストグラムを示し、これは、従来技術による眼鏡レンズの中心厚みからの、表面モデルに従って計算された中心厚みのずれを意味する。
【0299】
図9Cは、表面モデルに従って計算された第1の主断面の後面曲率(後面曲率1)と、従来技術による眼鏡レンズ(試験眼鏡レンズ)の後面曲率1との相関を示す。従来技術による眼鏡レンズの後面曲率1(dpt単位)が、図9Cの横座標にプロットされ、モデルに従って計算された後面曲率1(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図9Dは、後面曲率1(dpt単位)の残差の周波数のヒストグラム、すなわち、従来技術による眼鏡レンズの後面曲率1からの、モデルに従って計算された眼鏡レンズの計算された後面曲率1のずれを示す。
【0300】
図9Eは、表面モデルに従って計算された第2の主断面の後面曲率(後面曲率2)と、従来技術による眼鏡レンズ(試験眼鏡レンズ)の後面曲率2との相関を示す。従来技術による眼鏡レンズの後面曲率2(dpt単位)が、図9Eの横座標にプロットされ、表面モデルに従って計算された後面曲率2(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図9Fは、後面曲率2(dpt単位)の残差の周波数のヒストグラム、すなわち、従来技術による眼鏡レンズの後面曲率2からのモデルに従って計算された眼鏡レンズの計算された後面曲率2のずれを示す。
【0301】
図9Gは、第1の主断面における表面モデルに従って計算された頂点屈折力(主断面1における頂点屈折力)と、従来技術による眼鏡レンズ(試験眼鏡レンズ)の第1の主断面における頂点屈折力との相関を示す。従来技術による眼鏡レンズの主断面1における頂点屈折力(dpt単位)が、図9Gの横座標にプロットされ、表面モデルに従って計算された主断面1における頂点屈折力(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図9Hは、モデルに従って計算された、主断面1における頂点屈折力の、従来技術による眼鏡レンズの主断面1における頂点屈折力(dpt単位)からのずれ(差)の周波数のヒストグラムを示す。
【0302】
図9Iは、表面モデルに従って計算された第2の主断面における頂点屈折力(主断面2における頂点屈折力)と、眼鏡レンズ(試験眼鏡レンズ)の第2の主断面における頂点屈折力との相関を示す。従来技術による眼鏡レンズの主断面2における頂点屈折力(dpt単位)が、図9Iの横座標にプロットされ、表面モデルに従って計算された主断面2における頂点屈折力(dpt単位)が縦座標にプロットされる。図9Jは、モデルに従って計算された、主断面2における頂点屈折力の、従来技術による眼鏡レンズの主断面2における頂点屈折力(dpt単位)からのずれの周波数のヒストグラムを示す。
【0303】
図10は、最小縁部および中心厚みとの適合を示す。中心厚み(mm単位)が図10の横座標にプロットされ、縁部厚み(mm単位)が縦座標にプロットされる。
【0304】
球sphおよび円筒cylの任意の値を所与として、中心厚および2つの後面曲率の計算は、表面モデルの支援により、第1の例のように実施される。
【0305】
上記において、本発明の好ましい実施形態の変形が、例を用いて説明された。説明された実施形態の変形形態の個々の要素は、それぞれの実施形態の変形形態に限定されない。むしろ、実施形態の変形形態の要素は、互いに任意に組み合わされてもよく、それによって新たな実施形態の変形形態が作成されてもよい。また、個々の特徴が変更されてもよい。このため、表面モデルを決定するために、他の適切な関数、例えば多項式関数も、スプライン関数の代わりに用いられてもよい。同様に、モデル係数またはモデル・パラメータ(例えば、スプライン係数)の数は変更されてもよい。さらに、計算される表面の他の表現、他のオーダ・パラメータ・セット、目標値、目標関数および/または最適化方法が用いられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図10
【国際調査報告】