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特表2023-537046生体適合性のインプラントの製造方法及びインプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】生体適合性のインプラントの製造方法及びインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20230823BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20230823BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20230823BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20230823BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61L27/18
A61F2/28
A61L27/44
A61L27/56
A61L27/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508109
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2021071975
(87)【国際公開番号】W WO2022029282
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】102020210038.1
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514094346
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテクニーク ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Karl Leibinger Medizintechnik GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbinger Strasse 10 78570 Muehlheim Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アクス、アデム
(72)【発明者】
【氏名】ライナウアー、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフラム、トビアス
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB04
4C081AB11
4C081BB08
4C081CA18
4C081CB01
4C081CC01
4C081DA01
4C081DA06
4C081DA11
4C081DB04
4C081DB05
4C081DB06
4C081DB07
4C081DC04
4C081EA04
4C081EA12
4C097AA01
4C097BB01
4C097MM02
4C097MM04
(57)【要約】
本発明は、生体適合性のインプラントの製造方法及び対応する生体適合性のインプラントを提供する。前記生体適合性のインプラント(10)は、ポリアリールエーテルケトン樹脂を含むインプラント本体(8)を有する。そして前記インプラント本体(8)は、少なくとも1つの第1の多孔質セクション(12)及び1つの第2の多孔質セクション(13)を有する。そして前記第1の多孔質セクション(12)と、前記第2の多孔質セクションと、はポロシティが異なる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性のインプラント(10)を製造するための方法であって、
S1)ポリアリールエーテルケトンを含む樹脂粉末(2)を提供する工程と、
S2)前記樹脂粉末(2)を加熱するとともにプレスして、1つ以上の中間ピース(4)を形成する工程と、
S3)前記1つ以上の中間ピース(4)を機械的に粉砕して、粒状材料(G1,G2,G3)を形成する工程と、
S4)モールド(20)において前記粒状材料(G1,G2,G3)を熱接合して、インプラント(10)を形成する工程であって、前記1つ以上の粒状材料(G1,G2,G3)は、前記熱接合中に、空間的に一様でない熱分布に対して暴露され、前記インプラント(10)は、少なくとも1つの第1の多孔質セクション(12)及び1つの第2の多孔質セクション(13)を有する、インプラント本体(8)を有し、前記第1の多孔質セクション(12)と、前記第2の多孔質セクションと、はポロシティが異なる、工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記モールド(20)は、前記一様でない熱分布を生成するために、前記粒状材料(G1,G2,G3)の前記熱接合中にそれぞれ別々に作動される複数の加熱デバイス(22a,22b)により加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアリールエーテルケトン(2)は、ポリエーテルエーテルケトンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒状材料(G1,G2,G3)は、丸い断面、角の無い断面、部分的に角ばった断面、又は多角形の断面を有する粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒状材料(G1,G2,G3)は、丸い断面を有する粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂粉末(2)に抗菌性の処理をすること、前記樹脂粉末(2)に生体活性を有する構成要素を混合すること、又はその両方の後に、前記粒状材料(G1,G2,G3)が調製される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒状材料(G1,G2,G3)は、1μm~3000μmの粒子サイズを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モールド(20)は、前記粒状材料(G1,G2,G3)の前記熱接合の前に、粒子サイズ、粒子形状、又はその両方が異なる複数の粒状材料(G1,G2,G3)で充填される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モールド(20)は、前記1つ以上の粒状材料(G1,G2,G3)に、前記粒状材料(G1,G2,G3)の前記熱接合中、予め決定可能な圧力を及ぼす、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記モールド(20)は、前記粒状材料(8)の前記熱接合中に、前記インプラント本体(8)の内部にキャビティ(16)を形成する成形手段を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ポリアリールエーテルケトン樹脂を含むインプラント本体(8)を有する生体適合性のインプラント(10)であって、
前記インプラント本体(8)は、少なくとも1つの第1の多孔質セクション(12)及び1つの第2の多孔質セクション(13)を有し、前記第1の多孔質セクション(12)と、前記第2の多孔質セクションと、はポロシティが異なる、インプラント。
【請求項12】
前記インプラント本体(8)は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される、請求項11に記載のインプラント。
【請求項13】
前記インプラント本体(8)は、前記多孔質セクション(12,13)を形成する複数の層(L1,L2,L3)を有する層状構造である、請求項11に記載のインプラント。
【請求項14】
前記インプラント本体(8)は、少なくとも部分的に前記インプラントの範囲を定める外部層(L1)を有し、前記外部層(L1)は、非多孔質である、請求項11~13のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項15】
前記インプラント本体(8)は、10%~80%の範囲の値のポロシティを有し、特に10-20%、20-40%、40%-60%、及び60-80%のうちの1つ以上のポロシティを有するセクションを有する、請求項11~14のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項16】
前記多孔質セクション(12,13)は、1μm~3500μmの範囲の孔サイズを有する、請求項11~15のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項17】
前記インプラント本体(8)は、生体活性物質(18)を収容するように構成されているキャビティ(16)、又は生体活性物質(18)が収容されているキャビティ(16)を有する、請求項11~16のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項18】
前記キャビティ(16)は、断面が500μm~2mmの範囲のサイズを有する、請求項17に記載のインプラント。
【請求項19】
前記キャビティ(16)は、前記キャビティ(16)を前記インプラント(10)の外部(19)に接続するインターフェースセクション(17)、特に、それを通じて生体活性物質(18)が注入可能であるインターフェースセクション(17)を備える、請求項17又は18に記載のインプラント。
【請求項20】
前記インターフェースセクション(17)は、注入手段の取付、収容、又は位置合わせのためのガイド手段(17a)を備える、請求項19に記載のインプラント。
【請求項21】
前記キャビティ(16)に収容されている又は収容される前記物質(18)は、ヒドロゲル、バイオインク、又は無機リン酸カルシウムベースの材料の形態である、請求項17~20のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項22】
前記インプラント本体(8)は、その表面(30)に1つ以上の粗化されたセクションを有する、請求項11~21のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項23】
前記インプラント本体(8)は、第1の面において少なくとも部分的に疎水性であり、第2の面において少なくとも部分的に親水性である、請求項11~22のいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項24】
前記インプラント本体(8)は、柔軟に形状決定可能であり、特に、食塩水中で加熱することによって柔軟に形状決定可能である、請求項11~23のいずれか一項に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性のインプラントの製造方法に関する。本発明は、さらに、対応する生体適合性のインプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、エーテル基及びケトン基並びにフェニレンユニットのポリマー鎖を含む、高性能なプラスチックである。それらは、比較的高い温度及び変化する負荷の下であっても、その摩耗挙動に関して、優れた機械的性質を有する。加えて、それらは生体適合性のインプラント材料として、非常に優れた適合性を示す。従って、それらはインプラントの製造において既に長い間、用いられている。特許文献1は、レーザ焼結処理によって粒状材料から製造されるインプラント用の、付加製造プロセスを開示する。
【0003】
新たな血管の形成(血管新生)は、インプラントのインテグレーション及び固着の成功のための決定的な過程である。しかしながら、ポリアリールエーテルケトンを含む従来知られている樹脂の場合、柔組織及び骨が決まったように内部成長することは可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第102016110501号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに、本発明の目的は、柔組織及び骨の内部成長をより容易に可能にし、増加した強度を提供するインプラントの製造方法及び対応するインプラントを規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
係る目的は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項11に記載のインプラントと、によって達成される。
本発明によれば、当該の方法は、特に、以下のステップを備える。すなわち、
S1)ポリアリールエーテルケトンを含む樹脂粉末を提供する工程と、
S2)前記樹脂粉末を加熱するとともにプレスして、1つ以上の中間ピースを形成する工程と、
S3)前記1つ以上の中間ピースを機械的に粉砕して、粒状材料を形成する工程と、
S4)モールドにおいて前記粒状材料を熱接合して、インプラントを形成する工程であって、前記粒状材料は、前記熱接合中に、空間的に一様でない熱分布に対して暴露され、前記インプラントは、少なくとも1つの第1の多孔質セクション及び1つの第2の多孔質セクションを有する、インプラント本体を有し、前記第1の多孔質セクションと、前記第2の多孔質セクションと、はポロシティが異なる、工程と、を備える。
【0007】
一様でない熱分布に対する暴露での熱接合によって、次いで、1つ以上の粒状材料からなる粒子配合で、ポロシティが異なる複数の多孔質セクションを有する、ポリアリールエーテルケトン樹脂を含む個々の3次元インプラントを製造することが可能である。本発明によれば、複数の熱的に接合された粒状材料でインプラントを製造することがさらに可能であることは自明である。
【0008】
上記の方法によって製造される製品として、多孔質でトポグラフィーが個別化されて形成されたインプラントによって、環境特異的な手法における柔組織及び骨の内部成長が改善される。係る大規模な血管の内部成長は、重要な細胞をインプラントの中へ深く輸送するのを援助する。そしてその細胞は、感染症と戦って、ゆえに炎症を緩和する能力がある。同時に、生体組織の内部成長によって、インプラントの強度が増加する。インプラントは、多孔質特性を介して、及びその製造プロセスのマクロ構造特性を介して主として特異的に固定される。インプラントは、それゆえに、従って、ミクロ構造とマクロ構造との両方として考えられる。インプラントは、層状に構築されるのではなく、1ピースの構成要素として製造される。
【0009】
有利な実施形態及び変形は、従属項に見出されることが可能である。
単純な手法において製品の差別化を可能にする、本発明に従った方法の有利な変形では、モールドは、一様でない熱分布を生成するように粒状材料の接合中にそれぞれ別々に作動される複数の加熱デバイスにより加熱可能である。加熱デバイスは、例えば、熱接合される粒状材料の周囲において異なる空間方向に配置されることが可能である。さらにまた、熱分布の非一様性は、加熱デバイスを時間に応じてまた出力に関連して作動させることによっても実現可能である。
【0010】
別の有利な実施形態では、ポリアリールエーテルケトンは、ポリエーテルエーテルケトンである。ポリエーテルエーテルケトンでは、2つのエーテル基と1つのケトン基とが交互に続いており、それによって、バランスの取れた特性プロファイルを有する、特に適合性の高いインプラントを製造することが可能になる。
【0011】
製造されるインプラントでの最適な熱分布及び熱の入力を可能にするために、中間ピースを粉砕した粒状材料は、有利な一変形では、丸い断面、角の無い断面、部分的に角ばった断面又は多角形の断面を有する粒子で形成されることが可能である。この場合、丸いとは、円形の断面だけでなく、例えば、楕円形の断面又は長円の断面、又は不規則に角の無い断面を意味することが理解される。加えて、断面は、ほぼ丸く見えるような半円形又は多角形であることも可能である。少数の辺を有する多角形の断面として考えられるのは、例えば、四角形、五角形、六角形、又は八角形の断面である。さらにまた、形状及びサイズが様々な断面の複数の粒状材料からなる様々な混合物も、例えば、考えられる。
【0012】
インプラントの多孔質セクションがある程度の均一性を有する、好ましい発展形態では、中間ピースを粉砕した1つ以上の粒状材料は、一様に丸い断面を有するように粉砕されることが可能である。しかしながら、インプラントの多孔質セクションが均一になる必要はない。
【0013】
別の好ましい発展形態は、前記粒状材料の調製の前に前記樹脂粉末に抗菌性の処理をすること、前記粒状材料の調製の前に前記樹脂粉末に生体活性を有する構成要素を混合すること、又はその両方を含み得る。その結果、前記粒状材料及び後のインプラントは、元々抗菌活性を有する孔構造を有することが可能である。
【0014】
製造されるインプラントの強度特性を柔軟に調節することが可能になるように、方法の有利な一変形では、粒状材料の粒子サイズは変更されることが可能であり、前記粒状材料は、1μm~3000μmの粒子サイズを有する。
【0015】
製造されるインプラントは、例えば、複数の異なる層で形成されることが可能である。そしてその層は、非多孔質構造又は多孔質構造で形成されることが可能である。このために、方法の有利な一変形では、モールドは、1つ以上の粒状材料の接合の前に、差動的に、すなわち、粒子サイズ及び/又は粒子形状が異なる複数の粒状材料で充填されることが可能である。ここで、それらの異なる粒状材料は、熱接合中に独立した特性を有する層をそれぞれ形成することが可能である。しかし同様に、原理的には、2つ以上の層が同じ元の粒状材料からなることも考えられる。
【0016】
粒状材料の形態の粒子性質を修正するため、また、生体活性を有する構成要素を混合し、製造プロセスにおける構造形態を差動的に充填するために、インプラントは、異なった生体活性を有するベクトル孔分布という意味において構造化されたポロシティを有することも可能である。そのようにして、インプラントの生物学的固着が達成されることが可能である。
【0017】
別の有利な変形では、インプラントの特性の更なる変形のために、モールドは、1つ以上の粒状材料の接合中に、該1つ以上の粒状材料に予め決定可能な圧力を及ぼすことが可能である。それによって、例えば、インプラントの剪断強度が増加することを可能とする。
【0018】
方法の好ましい変形では、モールドは、粒状材料の熱接合中に、個々の3次元インプラントの構造の内部にキャビティを形成する成形手段を備えることが可能である。インプラント本体の巨視的な(マクロ)構造は、ゆえに、例えば、ヒドロゲル又はバイオインクの収容のための中空のチャンバーシステムとして用いられることが可能なように設計される。結果として、インプラント本体は、デポ効果を有する。
【0019】
成形手段は、形成されるキャビティのネガ形態(例えば、インプラントが後に離型されるモールド上に形成されるふくらみ)であってよい。流体で満たされた風船状構造も想定され、例えば、流体は、結果として生じたキャビティから粒状材料の接合の後に除去される。最後に、回転するモールドの形態における成形手段も想定される。
【0020】
その製造中、本発明に従ったインプラントは、人間の体内における収容構造に3次元的に適合される。適合されたインプラントのインプラント本体は、第1の多孔質セクションと、第2の多孔質セクションと、を備える。それら2つのセクションは、ポロシティが異なる。構造内部の多孔質セクションによって、最適化されたオッセオインテグレーション及び可能な生体活性を有する、少なくとも半多孔質のインプラントが確立される。インプラントにおいて関連があるセクション同士は、好ましくは、相互接続する孔構造を備える。そして、それらのセクションが、形成される新骨構造のための供給構造の内部成長を可能にするように構成される結果として、開放された、連続したキャビティが形成される。また、ポロシティは、インプラントにおいて部分的にだけ導入されることも可能である。
【0021】
そのバランスの取れた特性のために、インプラントの有利な一発展形態は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される。
インプラントの特性を変化させることを可能とするインプラントの有利な一実施形態では、インプラントは、複数の層を有する層状構造を有することが可能である。それらの層のうちの1つ以上は多孔質セクションを備える。例えば、インプラントは、中実(非多孔質)層と、(場合によっては部分的な)多孔質層とを備えることが可能である。複数の多孔質セクション自身が、そうした層をそれぞれ形成することも可能である。
【0022】
さらにまた、インプラントは、例えば、前記インプラントの範囲を少なくとも部分的に定める、外部層を備えることが可能である。その外部層の構造は、1つ以上の内部層と異なる。外部層は、特に、中実であることが可能である。ここで、インプラントは、さらにまた、外部層に隣接する1つ以上の内部層を備えることが可能である。そしてその内部層は、異なる部分的なポロシティのセクションを備えることが可能である。
【0023】
有利な実施形態では、インプラント本体は、10%~80%の範囲の値の全体のポロシティを有することが可能である。特に、セクションは10%-20%、20%-40%、40%-60%及び/又は60%-80%のポロシティを有するセクションを有することが可能である。それによって、インプラントにおいて柔軟な強度特性を達成することが可能になる。
【0024】
多孔質セクションは、有利には、異なる孔サイズを有することが可能である。孔サイズは1μm~3500μmの範囲内で変化することが可能である。ポロシティ勾配は、異なる孔サイズを用いることで形成されることが可能である。それによって、インプラントでの細胞移動特性と、インプラントでの栄養分及び老廃物の拡散とを改善することが可能になる。前記勾配は、層のとおりに延長するように構成されたり、複数の層にわたって延長するように構成されたりすることが可能である。そして、前記勾配は、プロットにおいて不連続又は連続した曲線であることが可能である。
【0025】
例えば、回復過程をよりよく補助することが可能な、有利な実施形態では、インプラントは、生体活性物質を収容するように構成されている1つ以上のキャビティをその構造内に有する。
【0026】
前記物質は、人体の収容構造の中へのインプラントの導入の前後にキャビティに収蔵されることが可能である。ゆえに形成され得るものは、例えば、無機リン酸カルシウムベースの材料の収容のための巨視的なプレースホルダー構造を有する、多孔質インプラントである。そしてその材料は、注入可能な物質として導入されて、組織再生を改善することが可能である。
【0027】
有利な実施形態では、多孔質の、患者特異的なインプラント(例えば、PEEKを含む)は、500μm~2mmのサイズ範囲における、細胞療法用途を最適化するための、生体活性のヒドロゲル及び/又はバイオインク配合を収容するためのプレースホルダー構造を備えることが可能である。さらにまた、多孔質インプラントは、キャビティの特性を利用して、細胞培養システムのための「バイオケージ(Biokaefig)」として働く。しかしながら、他のサイズのキャビティも、考えられる。
【0028】
本発明に従ったインプラントの別の発展形態では、キャビティは、キャビティをインプラントの外部に接続するインターフェースセクションを備えることが可能である。インプラントが収容構造の中に挿入される前後に、1つ以上の物質がインターフェースセクションを介してキャビティの中に注入されることが可能である。
【0029】
さらに別の発展形態では、有利には、インターフェースセクションは、注入手段の取付、収容、又は位置合わせのためのガイド手段を備えることが可能である。案内の目的のために、インターフェースセクションは、例えば、円筒形であることが可能である。そして、その縁は、注入手段の取付、又は位置合わせのためのフランジのやり方におけるステップを備えることが可能である。しかしながら、他の構成も考えられる。
【0030】
好ましい発展形態では、キャビティに貯蔵され、インプラントに対して割り当てられる物質は、1つ以上のヒドロゲル、1つ以上のバイオインク、1つ以上の無機リン酸カルシウムベースの材料、又は細胞培養物として提供されることが可能である。
【0031】
骨組織の改善された成長は、その表面上に1つ以上の粗化されたセクションを有するインプラントの有利な実施形態によって達成されることが可能である。その重大な拡張のための、そうした活性のあるインプラント表面は、例えば、サンドブラスト又は酸エッチングによって達成されることが可能である。なぜなら、生成された微小粗さは、インプラントの結合を促進するからである。
【0032】
親水性表面セクションは、組織の成長において同様の利点を有する。他方で、疎水性表面セクションは、場合によっては付着特性に、従って、バクテリアの蓄積に影響を及ぼす。有利な一発展形態では、インプラントは、それゆえに、例えば、第1の面において少なくとも部分的に疎水性であり、第2の面において少なくとも部分的に親水性であることが可能である。
【0033】
一発展形態では、インプラントが収容構造に個々に適合することが可能なように、インプラントは、柔軟に形状決定可能であり、特に、食塩水中で加熱することによって柔軟に形状決定可能であり得る。
【0034】
上記の構成及び発展形態は、必要に応じて望まれるように、互いに結合されることが可能である。本発明の更なる可能な構成、発展形態、及び実装形態は、さらに、明示的に言及されるに至っていない本発明の特徴の組み合わせを包含する。その特徴は、上記に説明されるに至る、又は例示的な実施形態に関して下記に説明され得る。特に、当業者は、本発明の基礎形態に対する改善又は追加として、個々の態様をさらに追加し得る。
【0035】
本発明は、図面の図における例示的な実施形態を基にして下記にさらに綿密に説明され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】方法ステップS1~S4を備えるインプラントの製造のための本発明に従った方法の一実施形態の概略フローチャート。
図2】粒状材料で充填されている開放しているモールドの断面図。
図3】インプラント本体の製造の後の閉鎖状態における図2に従ったモールドの側面図。
図4】複数の層及び異なる多孔質セクションを有するインプラント本体の第1の実施形態の断面側面図。
図5】中実な外部層を有するインプラント本体の更なる実施形態の断面側面図。
図6】キャビティが形成される構造におけるインプラント本体の更なる実施形態の断面側面図。
図7図6に従った実施形態の部分的な詳細の断面側面図。
図8】混合剤と共に六角形の粒状材料を含む、多孔質表面及び多孔質セクションを有する、インプラントのインプラント本体の一実施形態の断面側面図。
図9】混合剤と共に五角形の粒状材料を含む、多孔質表面及び多孔質セクションを有する、インプラントのインプラント本体の一実施形態の断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
全ての図面では、同一又は機能的に同一の構成要素及びデバイスは、明記しない限り、同じ参照符号で提供されるに至った。
図1は、方法ステップS1~S4を備えるインプラントの製造のための本発明に従った方法の一実施形態の概略フローチャートを示す。
【0038】
図1によれば、PEEK粉末2の形態における樹脂粉末2が第1に提供される(ステップ1)。自由流動性の樹脂粉末2は、次いで、ステップ2によって確認されるように、焼結のような処理によってプレスされる。これにより、1つ以上の1ピースの/まとまった中間ピース4が形成される。特に、中間ピース4は、樹脂粉末2をプレスするとともに、同時に加熱することによって完成される。中間ピース4は、最終的に長方形のプレートを形成する。中間ピース3の係る焼結/主要な成形中の中間ピース4の温度は、用いられる樹脂粉末2の分解温度よりも常に低い(又は、複数の樹脂材料の場合、最低の融点を有する、用いられる樹脂粉末2の材料構成要素の分解温度よりも低い)。好ましくは、ネガ形態は中間ピース4の製造に利用可能である。そしてその中に、樹脂粉末2は第1に充填されて、次いで、加熱されて、そして、押圧力に対する暴露で圧縮される。その結果、最初から中実である中実構造が中間ピース4の形態において形成される。
【0039】
中間ピース4の製造に続いて、各中間ピース4は、ステップS3に従って、決定される手法により粉砕される。中間ピース3は、粒子に粉砕されて、粒状材料G1を形成する。粒状材料G1の粒子は、実質的に一様な形状を有する。そしてそれは、機械粉砕の特定の実装形態によって実現される。係る例示的な実施形態では、球状粒子又は楕円形の断面の粒子の形態の丸い粒子が製造される。
【0040】
ステップS4によれば、次いで続くものは、個々の1ピースの3次元インプラント本体8を形成するための特定の形状の粒状材料4の熱接合である。係る例示的な実施形態では、モールド20からの空間的に一様でない熱分布に対する暴露は、熱接合として働く。その結果、異なるポロシティの2つの多孔質セクション12,13がインプラント本体8上に形成される(本明細書に描写されないモールドを用いて)。
【0041】
係る方法では、ステップS4が実行されるに至った後に、インプラント本体8は、製造されるインプラント10の完成形状を実質的に有する。ここで、インプラント10は、典型的に、骨接合又は骨折治療用のインプラント1の形態である。熱接合は、インプラント10/インプラント本体8が多孔質構造、好ましくは開放孔構造を有するように実行される。あるいは、閉鎖孔構造も実現可能である。
【0042】
さらにまた、制御装置24によって作動する、2つの加熱デバイス22a,22bがモールド20上に配置されていることが図1に見られ得る。粒状材料G1が暴露される熱分布の非一様性は、2つの別々に作動する加熱デバイス22a,22bによって達成される。加熱デバイス22aは、温度T1の熱を放出し、加熱デバイス22bは、温度T2の熱を放出する。その結果、異なるポロシティを有するセクション12,13がインプラント本体8上に形成される。
【0043】
図2は、粒状材料で充填されている開放されているモールドの断面図を示す。
図2によれば、モールド20は、本発明に従った方法を実行するために、充填機26によって2つの粒状材料G1,G2で充填される。丸い断面を有する第1の粒状材料G1は、下方の加熱デバイス22b上に配置されるモールド床23に既に配置される。そして、充填機26は、その時、モールド床23を別の粒状材料G2で差動的に充填している。そしてその材料の粒状形状は、異なる断面、すなわち、六角形の断面を有する。
【0044】
図3は、インプラント本体の製造の後の閉鎖状態における図2に従ったモールドの側面図を示す。
図3では、モールド20は閉鎖されて、インプラント10のインプラント本体8は、制御装置24によって制御される加熱デバイス22a,22bからの一様でない温度分布に対する暴露によって形成されるに至ったことが見ることが可能である。そしてそのインプラント本体8は、モールド20が開放されるに至った後に、モールド20から離型されることが可能である。
【0045】
図4は、複数の層及び異なる多孔質セクションを有するインプラント本体の第1の実施形態の断面側面図を示す。
図4では、インプラント本体8は複数の層L1,L2,L3を有する。それらの層のうち、層L1、すなわち、観測者に対して最下位の層は、中実、従って非多孔質である。本件では、前記層L1は、少なくとも部分的にインプラント本体8の範囲を定め、更なる内部層L2,L3と構造的に異なる、外部層を形成する。観測者に対して上方では、異なるポロシティの更なる前記層L2,L3が続く。その層L2は、10-20%の範囲のポロシティを有し、その層L3は、20-40%の範囲のポロシティを有する。結果として、層L2及びL3は、異なるポロシティのインプラント本体8の多孔質セクション12,13を形成して、従ってポロシティ勾配を形成する。
【0046】
図5は、中実な外部層を有するインプラント本体の更なる実施形態の断面側面図を示す。
インプラント本体8は、第1のセクション13としての多孔質外部領域を有する。そしてそれは、第2のセクション12としての多孔質内部領域のポロシティよりもより低いポロシティで形成される。
【0047】
図6は、キャビティが形成される構造におけるインプラント本体の更なる実施形態の断面側面図を示す。
図6に見ることが可能なものは、インプラント本体8の断面である。そしてそれは、再びセクション13としての多孔質外部領域を有する。そしてそれは、より高いポロシティの内部領域としての別のセクション12を囲む。その構造の内部に、インプラント本体8は、楕円形の断面を有するキャビティ16を備える。キャビティに収容されているのは、組織再生を促進するヒドロゲルの形態における生体活性物質18である。キャビティ16は、数ミリの横断方向の幅を有する。
【0048】
図7は、図6に従った実施形態の部分的な詳細の断面側面図を示す。
図7における詳細は、インプラント本体8のキャビティ16は、キャビティ16をインプラント10の外部19に接続するインターフェースセクション17を備えることを示す。結果として作成されるものは、キャビティ16に対するアクセス部である。それによって、生体活性物質18が所望の時点にキャビティに入れられることが可能である。同様に示されるのは、ガイド手段17a(インターフェースセクションのフランジのような断面狭窄部としての)のインターフェースセクション17上の配置によって、示されていない注入手段(カニューレ等)の取付、収容、又は位置合わせが可能になることである。
【0049】
図8は、混合剤と共に六角形の粒状材料を含む、多孔質表面及び多孔質セクションを有する、インプラントのインプラント本体の一実施形態の断面側面図を示す。そして、図9は、混合剤と共に五角形の粒状材料を含む、多孔質表面及び多孔質セクションを有する、インプラントのインプラント本体の一実施形態の断面側面図を示す。
【0050】
図8によれば、六角形のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)粒状材料G2が用いられた。そして図9によれば、五角形のPEEK粒状材料G3が用いられた。
加えて、粒状材料は、熱接合の前に、異なる添加物とそれぞれ混合されるに至る。図8におけるインプラント本体8の場合では、セラミックス構成要素であり、図9におけるインプラント本体8の場合では、金属としての銀及び銅である。
【0051】
粒状材料の製造のための粉末が、対応する前処理をそれぞれ受けるに至った場合、結果として生じる孔構造は、それぞれ元々生体活性を有し、本件では抗菌活性を有する。インプラント本体8の両方は、多孔質表面30を有する。すなわち、それらは、既に言及されたように、開放孔構造である。それらの多孔質セクション12,13は、およそ数100μmの大きさの孔を有する相互接続孔構造を形成する。そしてそれによって、生体組織の内部成長が援助され、インプラント10の強度が増加する。インプラント10は、その多孔質特性と、その製造プロセスのマクロ構造特性と、を介して主として特に固定される。
【0052】
本発明は好ましい例示的な実施形態を基に上記に説明されるに至ったが、それらに限定されず、様々なやり方で修正可能である。特に、本発明は、本発明の本質から逸脱することなく、多くのやり方で変更又は修正されることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】