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特表2023-537072改良されたろ過膜並びにそれを作製及び使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-30
(54)【発明の名称】改良されたろ過膜並びにそれを作製及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/00 20060101AFI20230823BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20230823BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20230823BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20230823BHJP
   A61M 1/22 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B01D69/00
B01D61/14 500
B01D71/02
B01D71/70
A61M1/22 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508571
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 US2021044784
(87)【国際公開番号】W WO2022031993
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/063,038
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/070,999
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】チュイ,ベンジャミン・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,シューボ
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ナタン
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC03
4C077EE01
4C077LL02
4C077MM07
4D006GA06
4D006GA13
4D006MA03
4D006MA27
4D006MC01
4D006MC05
4D006MC24
4D006MC30
4D006MC37
4D006MC65X
4D006NA33
4D006PA01
4D006PB09
4D006PC47
(57)【要約】
本開示は、インビボでの血液のろ過に好適な改良されたろ過膜を提供する。改良されたろ過膜は、膜の裏側に支持体のシステムが存在することに起因して、最小限の面積ペナルティで破損に対する耐性を示す。この最小限の面積ペナルティは、本明細書に開示されるように、2つの異なる高さのリブを含む階層的足場を提供する支持体を使用することによって達成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボで血液をろ過するのに好適なろ過膜であって、
膜部分であって、
複数のナノポアを含み、かつ平面の第1の表面と、
リブ付きの第2の表面と、を含み、前記第1の表面は、前記第2の表面の反対側にあり、
前記リブ付きの表面は、第1の高さのリブと、前記第1の高さよりも高い第2の高さのリブと、を含み、
前記第1の高さの前記リブは、格子パターンに配置された複数の第1の窓を画定し、前記第1の窓は、前記複数のナノポアを含み、
前記第2の高さの前記リブは、格子パターンに配置された複数の第2の窓を画定し、前記複数の第2の窓の各々は、前記複数の第1の窓を含む、膜部分と、
前記複数の第2の窓を含む第3の窓を形成する支持部分であって、前記支持部分は、前記膜部分の周囲において前記膜部分の前記第2の表面に取り付けられ、かつ前記第2の高さの前記リブよりも高い第3の高さを有する、支持部分と、を備え、
前記第3の窓によってむき出しになる前記膜の前記第2の表面の表面積は、0.1mm~10mmの範囲である、ろ過膜。
【請求項2】
前記膜部分は、ポリシリコン、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、グラフェン、若しくはダイヤモンド、又はこれらの組み合わせから形成される、請求項1に記載のろ過デバイス。
【請求項3】
前記支持部分は、シリコンウェハを含む、請求項1又は2に記載のろ過デバイス。
【請求項4】
前記複数のナノポアは、約1μm以下の深さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項5】
前記複数のナノポアは、約0.8μm~10nmの深さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項6】
前記複数のナノポアは、約0.8μm~100nm又は0.8μm~500nmの深さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項7】
前記第3の窓によって囲まれる前記膜の前記第2の表面の前記表面積は、1mm~10mm、2mm~8mm、又は3mm~6mmの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項8】
前記第3の窓は、形状が実質的に矩形である、請求項1に記載のろ過デバイス。
【請求項9】
前記第3の窓は、約2000μm~5000μmの長さ及び500μm~1000μmの幅を有する、請求項8に記載のろ過デバイス。
【請求項10】
前記第3の窓は、約4000μm~5000μmの長さ及び約1000μmの幅を有する、請求項8に記載のろ過デバイス。
【請求項11】
前記第3の高さは、500μm~200μm又は500μm~300μmの範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項12】
前記支持部分は、約20μm~50μm又は30μm~50μmの厚さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項13】
前記第2の高さの前記リブは、20μm~50μm又は30μm~50μmの高さの範囲である、請求項1~12のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項14】
前記第2の高さの前記リブは、20μm~5μm又は15μm~5μmの厚さの範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項15】
前記第1の高さの前記リブは、2μm~10μm、3μm~8μm、又は3μm~6μmの高さの範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項16】
前記第1の高さの前記リブは、0.5μm~5μm又は1μm~2.5μmの厚さの範囲である、請求項1~15のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項17】
前記複数の第2の窓は、50~100個の第2の窓を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項18】
前記複数の第1の窓は、50~20個の第1の窓を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項19】
前記複数のナノポアは、スリット形状のナノポアである、請求項1~18のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項20】
スリット形状の孔は、最大3μmの長さ及び最大0.1μmの幅、又は、最大2μmの長さ及び最大50nmの幅、又は1μm~3μmの長さ及び10nm~100nmの幅を有する、請求項19に記載のろ過デバイス。
【請求項21】
前記ナノポアは、リブを形成するために延在する前記膜部分の領域内に存在せず、かつ/又は前記支持部分によって覆われている、請求項1~20のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項22】
前記膜部分及び支持部分は、中間層を介して接続されている、請求項1~21のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項23】
隣り合わせの構成に配置された複数のろ過ユニットを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のろ過デバイス。
【請求項24】
インビボで血液をろ過するのに好適な生体適合性ろ過膜を生成するための方法であって、
支持基板の第1の表面上に第1のパターンで第1のマスクを堆積させることであって、
前記第1のパターンは、前記第1の表面上の面積をむき出しにし、前記面積は、格子パターンに配置された複数の第1の矩形及び格子パターンに配置された複数の第2の矩形の輪郭を画定し、前記複数の第2の矩形の各々は、前記複数の第1の矩形を含む、堆積させることと、
前記第1のマスク上に第2のマスクを、前記第2のマスクが、第1の矩形窓の輪郭を画定する前記第1の表面上の前記むき出しにされた面積を覆い、かつ第2の矩形窓の輪郭を画定する前記第1の表面上の前記むき出しにされた面積を覆わないように堆積させることであって、それによって、前記第1の表面のエッチングを可能にして、前記第2の矩形窓の前記輪郭に対応する溝を前記支持基板に作成する、堆積させることと、
前記第1の表面をエッチングして前記溝を作成することであって、前記溝は、深さ及び厚さを有する、エッチングすることと、
前記第2のマスクを除去することであって、前記第2のマスクを除去することは、前記複数の第1の矩形の輪郭を画定する前記第1の表面上の面積をむき出しにする、除去することと、
前記第1の表面をエッチングして、前記複数の前記第2の矩形の前記溝の深さを増加させ、前記第2の矩形の前記溝の深さが前記第1の矩形の深さよりも深いように前記複数の前記第1の矩形の前記輪郭に対応する前記溝を前記支持基板に作成することと、
前記第1のマスクを除去することと、
前記支持基板上に中間層を堆積させることと、
前記支持基板に作成された前記第1及び第2の矩形の前記溝を充填するために膜材料を堆積させて、平面の第1の表面と、前記第1の表面の反対側の非平面の第2の表面と、を含む、膜を作成することであって、前記非平面の第2の表面は、前記第1の矩形の前記溝の前記深さに対応する第1の高さを有する複数のリブと、前記第2の矩形の前記溝の前記深さに対応する第2の高さを有する複数のリブと、を含み、前記第2の高さは、前記第1の高さよりも高い、作成することと、
前記膜の領域に微細な溝のパターンを作成することと、
前記膜上に犠牲層を堆積させることと、
前記微細な溝を追加の膜材料で充填することと、
前記微細な溝に堆積していない余分な追加の膜材料を除去することと、
前記膜から犠牲層を除去することと、
前記中間層を除去し、前記支持構造の前記第2の表面に空洞を形成することであって、前記第2の表面は前記第1の表面の反対側にあり、
前記膜内の複数のナノポアと、
前記第1の高さを有する前記複数のリブによって画定される複数の第1の窓と、
前記第2の高さを有する前記複数のリブによって画定される複数の第2の窓であって、前記複数の第2の窓の各々は、前記複数の第1の窓を含む、複数の第2の窓と、
前記支持構造によって画定され、前記空洞の壁によって形成される第3の高さを有する第3の窓であって、前記第3の高さは前記第2の高さよりも高く、前記第3の窓は前記複数の第2の窓を含む、第3の窓と、を提供する、形成することと、を含む、方法。
【請求項25】
前記複数のナノポアは、前記リブを含む前記膜の領域内にない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記複数のナノポアは、前記支持構造と接触している前記膜の領域内にない、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のマスク及び/又は前記第2のマスクを堆積させることは、化学蒸着(CVD)を含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のマスク及び/又は第2のマスクを堆積させることは、熱酸化によって前記マスクを成長させることを含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記膜は、ポリシリコン、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、グラフェン、若しくはダイヤモンド、又はこれらの組み合わせから形成される、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記支持基板は、シリコンウェハを含む、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記複数のナノポアは、約1μm以下の深さを有する、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記複数のナノポアは、約0.8μm~10μmの深さを有する、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記複数のナノポアは、約0.8μm~100nm又は0.8μm~500nmの深さを有する、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第3の窓によって囲まれる前記膜の裏側の表面積は、1mm~10mm、2mm~8mm、又は3mm~6mmの範囲である、請求項24~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第3の窓は、形状が実質的に矩形である、請求項24~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第3の窓は、約2000μm~5000μmの長さ及び500μm~1000μmの幅を有する、請求項24~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第3の窓は、約4000μm~5000μmの長さ及び約1000μmの幅を有する、請求項24~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第3の高さは、500μm~200μm又は500μm~300μmの範囲である、請求項24~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記支持基板は、約20μm~50μm又は30μm~50μmの厚さを有する、請求項24~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の高さの前記リブは、20μm~50μm又は30μm~50μmの高さの範囲である、請求項24~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の高さの前記リブは、20μm~5μm又は15μm~5μmの厚さの範囲である、請求項24~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の高さの前記リブは、2μm~10μm、3μm~8μm、又は3μm~6μmの高さの範囲である、請求項24~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の高さの前記リブは、0.5μm~5μm又は1μm~2.5μmの厚さの範囲である、請求項24~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記複数の第2の窓は、50~100個の第2の窓を含む、請求項24~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記複数の第1の窓は、50~20個の第1の窓を含む、請求項24~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記複数のナノポアは、スリット形状のナノポアである、請求項24~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
スリット形状の孔は、最大3μmの長さ及び最大0.1μmの幅、又は、最大2μmの長さ及び最大50nmの幅、又は1μm~3μmの長さ及び10nm~100nmの幅を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記膜及び支持基板は、前記中間層を介して接続されている、請求項24~47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年8月7日に出願された米国仮特許出願第63/063,038号、及び2020年8月27日に出願された米国仮特許出願第63/070,999号の利益を主張し、これらの出願は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全は世界中で200万人以上の患者を苦しめている[1]。現在の治療法の選択肢は透析と臓器移植である。腎臓移植は最良の臨床転帰を提供するが、ドナー臓器の深刻な不足により、しばしば腎臓患者に長期間(数年ほど)の透析を受け続けることを余儀なくさせており、生活の質の低下と死亡率の上昇に寄与している。加えて、透析センターへの定期的な移動や、透析セッションの間の血流中の尿素及び他の毒素の望ましくない蓄積は、患者の全体的な健康に悪影響を及ぼす傾向がある[2~4]。最も重要な腎機能を果たすことができる、コンパクトで、携帯可能で、大量生産可能で、最終的に埋め込み可能な「バイオ人工腎臓」を得られることは非常に有益であろう。
【0003】
透析治療の主な限界と腎臓移植のための臓器の限られた利用可能性とによって、代替腎置換療法への関心が高まっている。現在開発中のアプローチには、完全に機能する置換臓器を作成することを目的とした細胞ベースの戦略[5~6]、患者が臨床環境外で長期間かつ頻繁な治療を受けることを可能にする透析技術に基づくウェアラブル人工腎臓デバイス[7~8]、及びネイティブネフロンの主要機能を模倣しようとするバイオハイブリッドデバイス[9~10]が含まれる。
【0004】
そのような代替の腎置換療法を達成するためには、破損に対する耐性を示す十分なろ過表面を提供する、サブミクロン厚のろ過膜の開発が必須である。本開示は、これら及び他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、インビボでの血液のろ過に好適な改良されたろ過膜を提供する。改良されたろ過膜は、膜の裏側に支持体のシステムが存在することに起因して、最小限の面積ペナルティで破損に対する耐性を示す。この最小限の面積ペナルティは、本明細書で詳細に説明されるように、少なくとも2つの異なる高さのリブを含む階層的足場を提供する支持体を使用することによって達成される。ろ過膜の作製及び使用方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】埋め込み可能なバイオ人工腎臓の概念。血液ろ過器は血液から毒素を除去し、バイオリアクターは腎細胞をカプセル化して代謝機能を提供する。シリコンナノ多孔性膜は、血液ろ過器とバイオリアクターの両方に基本的な実現技術を提供する。
図2】ナノ多孔性膜を強化するために、血流を妨げないように、一体型リブを裏側にのみ追加する。
図3】Gen1リブ付き膜とGen2リブ付き膜の比較。Gen2では、ウェハフレームの多くは、ポリシリコン膜下でより細長く短い「メガリブ」に置き換えられ、したがって、より多くのフィルタ面積を解放する。
図4】密接に空間を空けた400μmの高さのウェハの厚さの支持体の配列(Gen1、左)と、より短い(h=40μm)メガリブ(Gen2、右)とを通過した流体の流れ(左から右へ)の計算流体力学(CFD)シミュレーション。Gen2の場合、液体の流れはエッチング空洞に入り込むため、毒素の除去が促進される。図示の空洞は、1mmの長さ(L)×400μmの深さ(d)である。シミュレーションの結果、大量輸送係数はほぼ4倍高くなる可能性があることが示された。
図5】様々なサイズ(0.6×4mm、0.8×4mm、及び1.0×4mm)のGen2メガリブ膜について最大のたわみ(「m.d.」)を示す有限要素解析(FEA)結果。シミュレーションを高速化するために、設計の対称性を利用するために1/4膜モデルを使用した。右下の小さなユニットセルは、旧Gen1(リブなし)設計を表している。
図6】メガリブ膜製造プロセスの流れ。以前の研究[21]と比較して、(a)~(d)は、二重深度トレンチの形成を可能にし、したがって異なる高さのリブを可能にする新たに追加されたステップを表す。特に、ステップ(b)は本質的にメガリブモールドを形成し、ステップ(d)はミニリブモールドを形成する。また、ステップ(h)の乾燥酸化は、ナノポアの正確な幅、したがって膜の主なろ過特性を決定する薄酸化物を形成する。
図7】(a)メガリブ膜の上面図、(b)ミニリブ及びメガリブを示す断面図、(c)ナノポアのクローズアップ上面図、(d)シリコンウェハ「フレーム」及びメガリブを示すメガリブ膜の裏側画像、(e)メガリブ及びミニリブを示す更なるクローズアップ、(f)ミニリブ及びナノポアを示す更なるクローズアップの走査型電子顕微鏡写真(SEM)。
図8】ほぼ完璧なデバイス歩留まり(a)を示す、完全に放出された直径100mmのメガリブ付きナノ多孔性膜ウェハのバックリット光学画像、(b~c):Gen1(b)からGen2(c)までの利用可能な膜面積の増加を示す、実際の独立したナノ多孔性膜のバックリット光学顕微鏡画像。
図9】Gen1膜及びGen2膜について測定された気孔率(上部)及び破裂圧力(底部)。各データ点について、少なくとも7つのデバイスを測定した。データから、Gen2デバイス(すなわち、メガリブ膜)は、より低い(が依然として許容可能な)破裂圧力を犠牲にして、大幅に高い気孔率を示すことが分かる。ラベル「A」、「B」、及び「C」は、それぞれ0.6×4mm、0.8×4mm、及び1.0×4mmの膜タイプ(サイズ)を示す。
【0007】
定義
本明細書に引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記にかかわらず、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0008】
本発明を記載することにおいて、以下の用語が用いられ、以下に示すように画定されることが意図される。
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明確にそうでないことを示さない限り、複数の参照を含むことが留意されなければならない。このように、例えば、「膜」への言及は、複数の2つ以上のそのような膜などを含む。特許請求の範囲は、いかなる任意の要素も除外するように立案されることができることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の要素の列挙に関連して「専ら」、「唯一の」などのような排他的な用語の使用又は「否定的な」制限の使用のための先行基準としての役割を果たすことを意図している。
【0010】
「対象」又は「個体」とは、ヒト、並びにチンパンジー並びに他の類人猿並びにサル種などの非ヒト霊長類を含む他の霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの農場動物、イヌ及びネコなどの飼育哺乳類、鳥類、並びにマウス、ラット及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などを含むがこれらに限定されない、脊索動物亜門の任意のメンバーを意味する。この用語は、特定の年齢を示すものではない。このように、成体及び新生個体の両方は、対象となることが意図される。個体は、血液透析が必要な患者、例えば、腎臓機能が低下している、及び/又は透析が必要な、心機能が低下している、及び/又は肝機能が低下している患者であり得る。
【0011】
物理量、時間的時間期間などの測定可能な値を指すときに、本明細書で使用される「約」という用語は、そのような変動が、開示されたデバイスを特徴付ける測定の典型であるか、又は開示された方法を実行するのに適切であるように、指定された値から±20%、±10%など、±5%など、±1%、±0.1%を含む、変量を包含することを意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、関連する基本機能の変化をもたらすことなく許容範囲内で変動する可能性のある定量的表現を修正するために適用され得る。例えば、実質的に平行は、互いにわずかに非平行である構造を包含し得る。
【0013】
「複数」には、少なくとも2つのメンバーが含まれる。特定の場合において、複数は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、又は少なくとも10、又はそれ以上のメンバーを有し得る。
【0014】
本明細書で使用される「生体適合性」は、重大な毒性又は重大な損傷を引き起こすことなく、また、任意選択で材料の重大な損傷又は悪化を引き起こすことなく、対象における組織との長期の接触を可能にする材料の特性を指す。
【0015】
本明細書で使用される「平面」は、任意の物体の3次元形状を記載するのに適用され得、ここで、互いに実質的に垂直である2つの寸法の長さスケール(例えば、長さと幅)は、他の2つの寸法の両方に実質的に垂直である第3の寸法(例えば、厚さ)の長さスケールよりも長い。2つのより長い寸法のうちの一方の長さスケールは、もう一方のより長い寸法のものと同様であるか又は異なっていてよい。平面は、表面の文脈で使用される場合、突起を含む表面とは対照的に実質的に平坦な表面を指す。本明細書で提供される膜層は、実質的に平坦である、すなわち、長さ及び幅が、有意な突起又は凹みを含まないため滑らかな平面表面を画定する第1の表面と、例えば、突起又はリブが実質的に滑らかな表面によって分離される第2の表面から延在する突起又はリブを有する、非平面であり得る第1の表面の反対側の第2の表面とを含み得る。膜層から形成される膜の第1の表面は、突起が存在する領域からナノポアが存在しない、第1の表面と第2の表面との間に延在する複数のナノポアを有する。
【0016】
本明細書で使用される「ナノポア」は、一方から他方へ膜を貫通する孔を指し、孔は、ナノメートル範囲、例えば、1.0nm~1,000nmの範囲にある、少なくとも1つの横方向寸法(例えば、幅及び/又は長さであるが、基板を横切る孔の高さ/厚さは含まない)である。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ポリシリコン」という用語は、薄いフィルムとして堆積される、シリコンの多結晶形態を指す。それはトランジスタ及び配線のためのマイクロエレクトロニクスで使用される。MEMSにおいて、ポリシリコンは通常、デバイスのための構造材料として使用される。
【0018】
血液回路に関して使用される「ポンプレス」とは、個体の循環系を通って血流を駆動するポンプ機構(例えば、心臓)以外のポンプ機構がないこと指すことを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ろ過」という用語は、微粒子を重大な程度まで通過させない培地を通して流体キャリアを通過することによって、液体のような、流体から粒子状物質を流体から分離するプロセスを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「透析」という用語は、ろ過の形態、又は膜を通る選択的拡散のプロセスを指し、通常、膜を通って拡散する低分子量溶質を、拡散しないコロイド及び高分子量溶質(アルブミン及び免疫グロブリンなど)及び懸濁物質(細胞など)から分離するために使用される。いくつかの実施形態において、流体の供給物は、半透膜を通過し、透析液の供給物は、その膜の反対側を通過し、膜は、片方又は両方の液体で湿り、流体間の溶質の拡散輸送がある。一方の流体である透析液の組成を使用して、他方の流体であるいくつかの分子又は複数の分子の供給流体の組成を枯渇させ得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「限外ろ過」という用語は、加圧下で流体をろ過することを指し、ろ過される材料は、非常に小さく、典型的には、流体には、コロイド状の、溶解溶質、又は非常に微細な固体材料を含まれ、フィルタは、微小多孔性、ナノ多孔性、又は半透性の媒体である。典型的な媒体は、膜である。ろ過される流体は、「供給流体」と称される。限外ろ過中、供給流体は、フィルタを通してろ過された「透過液」又は「ろ過液」又は「限外ろ過液」と、媒体を通ってろ過されなかった供給流体の一部、又は膜内に保持されている「保持物」に分離される。限外ろ過では、膜の反対側に透析液を通過させる必要はない。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「透析液」は、低分子量溶質が最初にこれらの溶質を含む別の流体(典型的には供給流体)から膜を通して拡散する流体を指すために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、インビボでの血液のろ過に好適な改良されたろ過膜を提供する。改良されたろ過膜は、膜の裏側に支持体のシステムが存在することに起因して、最小限の面積ペナルティで破損に対する耐性を示す。この最小限の面積ペナルティは、本明細書で詳細に説明されるように、少なくとも2つの異なる高さのリブを含む階層的足場を提供する支持体を使用することによって達成される。ろ過膜の作製及び使用するための方法も提供される。
【0024】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、特定の材料又はプロセスパラメータに限定されず、当然のことながら変え得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、限定的であることは意図されないこともまた理解されたい。
【0025】
本明細書に記載されるものと同様又は同等のいくつかの方法及び材料を、本発明の実施において使用することができるが、好ましい材料及び方法を本明細書に記載する。
【0026】
ろ過膜
インビボで血液をろ過するのに好適なろ過膜が開示される。ろ過膜は、膜部分及び支持部分を含む。膜部分は、平面の第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、複数のナノポアとを含み、第2の表面は、リブ付き表面を含む。リブ付きの第2の表面は、第1の高さのリブと、第1の高さよりも高い第2の高さのリブとを含む。第1の高さのリブは、格子パターンに配置された複数の第1の窓を画定し、第1の窓は、複数のナノポアを含む。第2の高さのリブは、格子パターンに配置された複数の第2の窓を画定し、複数の第2の窓の各々は、複数の第1の窓を含む。支持部分は、複数の第2の窓を含む第3の窓を形成し、支持部分は、膜部分の周囲において膜部分の第2の表面に取り付けられ、かつ第2の高さのリブよりも高い第3の高さを有する。第3の窓によってむき出しになる膜の第2の表面の表面積は、0.1mm~10mm、例えば、0.5mm~10mm、1mm~10mm、又は1mm~5mmの範囲である。
【0027】
リブ付きの第2の表面は、ナノポアがある平面部分によって分離されるリブを含む。第1の高さ及び第2の高さのリブが記載されているが、第2の表面は、第3の高さのリブ、第4の高さのリブなどのうちの1つ以上を更に含み得ることが理解される。例えば、リブ付きの第2の表面は、第1の高さのリブ、第2の高さのリブ、及び第3の高さのリブを含み得、第3の高さは、第2の高さよりも高く、第2の高さは、第1の高さよりも高い。第1の高さのリブは、格子パターンに配置された複数の第1の窓を画定し、第1の窓は、複数のナノポアを含む。第2の高さのリブは、格子パターンに配置された複数の第2の窓を画定し、複数の第2の窓の各々は、複数の第1の窓を含む。第3の高さのリブは、格子パターンに配置された複数の第3の窓を画定し、複数の第3の窓の各々は、複数の第2の窓を含む。支持部分は、複数の第3の窓を含む第4の窓を形成し、支持部分は、膜部分の周囲において膜部分の第2の表面に取り付けられ、かつ第3の高さのリブよりも高い第4の高さを有する。リブの高さが階層的に増加する追加のリブを含むと、支持部分によって支持される必要のない膜の表面積が更に増加し、ろ過に利用可能な膜の表面積が更に増加する可能性がある。
【0028】
膜部分は、マイクロ又はナノ厚スケールで堆積又は成長されることができる、任意の好適な材料などから形成され得る。例えば、膜は、シリコン、ポリシリコン、炭化シリコン、超ナノ結晶性ダイヤモンド、ダイヤモンド様カルボン、二酸化シリコン、SU-8、チタン、窒化シリコン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シリコン、又は様々な他の材料などの膜材料から作製され得る。膜材料は、低圧化学蒸着(LPCVD)などの任意の好適な手段によって堆積され得る。膜層の厚さは、5μm未満、例えば、5μm~0.5μm、4μm~0.5μm、3μm~0.5μm、2μm~0.5μm、1μm~0.5μm、0.8μm~0.4μm、0.4μm~0.1μm、0.1μm~0.01μm、又は0.05μm~0.01μmであり得る。膜材料の選択例としては、ポリシリコン、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、グラフェン、及びダイヤモンド、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
支持部分は、膜を横切る限外ろ過液のろ過など、水性流体に曝露されたときに詰まらない、任意の不活性材料で形成され得る。場合によっては、シリコンウェハなどの半導体材料を使用して支持部分を形成することもできる。ミラー指数によって列挙されるように、[100]平面配向を含む様々な結晶配向を有し得るシリコンウェハ。他の場合において、支持部分は、ゲルマニウム、周期表のIV族元素、ヒ素化ガリウムを含むIII-V化合物、亜鉛テルリウムを含むII-IV化合物、p及びnドープ化合物等から形成される基板から形成され得る。基板は、実質的に平面であり得、円形又は直線縁部を有し得る。基板は、ろ過膜の形成の後又は前に、矩形片又は円形片に切断され得る。基板の厚さは、約400μm未満、約500μm、約600μm、約700μm、約900μmなど、又はそれ以上であり得る。いくつかの例では、支持部分は、シリコンウェハを使用して形成される。
【0030】
ナノポアは、約1μm以下の深さを有し得る。例えば、ナノポアは、約0.9μm~10nm、0.8μm~100nm、又は0.8μm~500nmの深さを有し得る。特定の実施形態では、複数のナノポアは、1nm~500nm、例えば、1nm~90nm、2nm~50nm、3nm~40nm、4nm~50nm、4nm~40nm、5nm~50nm、5nm~20nm、4nm~20nm、7nm~100nm、12nm~20nm、又は5nm~10nmの直径又は幅をそれぞれ有する円形又はスリット形状の開口部を有する。特定の実施形態において、複数の孔は、スリット形状であり、本明細書に列挙される幅を有し、1μm~10μm、例えば、2μm~3μm、3μm~4μm、4μm~5μm、5μm~6μm、6μm~7μm、7μm~8μm、8μm~9μm、又は9μm~10μmの範囲の長さを有する。特定の場合において、スリット形状は、すなわち、矩形孔は、100~900nmの深さ、3nm~50nmの幅、及び1ミクロン~5ミクロンの長さ、例えば、5nm~50nm×1ミクロン~2ミクロン×200nm~500nmの幅×長さ×深さを有する。孔の深さは、0.01ミクロン~100ミクロンの範囲であり得る、膜の厚さによって画定され得る。特定の態様において、ナノポアは、リブを形成するように延在する膜部分の領域には存在しない。言い換えれば、ナノポアは、第2の表面が非平面であり、リブを形成するように延在する膜の領域には存在しない。特定の態様では、ナノポアは、支持部分で覆われている膜部分の領域には存在しない。
【0031】
第1の高さのリブは、膜の第2の表面から延在し、格子パターンに配置された複数の第1の窓を画定する。複数のナノポアが、第1の窓の各々の中に存在する。例えば、図7のパネル(f)を参照されたい。これは、第1の高さのリブと、リブによって支持されるナノポアを含む膜の領域とを示している。これらのリブは、図7のパネル(e)にも見られるが、ナノポアは、この倍率では見えない。これらのリブは、ミニリブとも呼ばれる。第1の高さのこれらのリブは、第1の窓が2次元構成で隣り合わせの配向で配列されるように、格子状のパターンで配置され得る。第1の窓は、矩形、例えば、正方形であり得る。膜の第2の表面における第1の高さのリブの厚さは、0.5μm~5μm、例えば、1μm~2.5μmであり得る。第1の高さのリブの高さは、2μm~10μm、3μm~8μm、又は3μm~6μmであり得る。第1の窓の各々のサイズは、200~5000μm、例えば、300~5000μm、500~5000μm、800~5000μm、200~1000μm、300~1000μm、500~1000μm、又は100~5000μmであり得る。特定の実施形態では、第1の窓は、形状が矩形であってもよい。第1の窓の長さは、20~100μmであり得る。第1の窓の幅は、10~50μmであり得る。
【0032】
第2の高さのリブは、膜の第2の表面から延在し、格子パターンに配置された複数の第2の窓を画定し、ここで、複数の第1の窓が第2の窓の各々の内に存在している。例えば、図7のパネル(d)及び(e)を参照されたい。これらは、第1の窓の格子状のパターンの周りに存在する第2の高さのリブを示している(パネル(e)を参照されたい。図7のパネル(d)では、個々の第1の窓は見えないが、第2の窓の格子状のパターンは見える。図7のパネル(a)も参照されたい。第2の窓は、形状が矩形、例えば、四角形であってもよい。第2の窓の各々内に存在する第1の窓の数は、約10~100、約10~50、約10~40、約10~30、又は約10~20の第1の窓であり得る。第2の高さのリブは、メガリブとも呼ばれる。第1の高さのリブと第2の高さのリブとの間の高さ差を、図7のパネル(b)に示す。ある特定の実施形態では、第2の高さのリブは、第1のリブの高さの約5~50倍、例えば、第1のリブの高さの5~40倍、5~30倍、5~20倍、又は5~10倍、例えば、第1のリブの高さの最大6倍、7倍、8倍、10倍、15倍、25倍、又は35倍であり得る。特定の実施形態では、第2の高さのリブは、約20~250μm、例えば、20~200μm、20~100μm、20~80μm、20~50μm、又は30~50μmの高さを有することができる。膜の第2の表面における第2の高さのリブの厚さは、1μm~20μm、例えば、1μm~15μm、5μm~20μm、又は5μm~15μmであり得る。
【0033】
リブは、リブの幅が膜から延在するにつれて減少する形状でテーパにされ得る。他の実施形態において、リブは、厚さが均一であり得る。リブは、単一の壁構造であり得るか、又は二重壁であり得る。二重壁リブは、より少ない膜材料を必要とし、したがって、膜材料の体積に関連するコストを削減するために使用され得る。二重壁構造を有するリブの例は、二重壁ミニリブを示す図7のパネル(f)と、二重壁メガリブを示す図7のパネル(a)、(b)、及び(e)とに示されている。
【0034】
支持部分は、第3の窓を形成し、膜の周辺に沿ってある。この第3の窓は、流体がろ過膜の裏側に流れるためのナノポアへのアクセスを提供する。第3の窓は、ろ過膜を作製する方法のセクションで説明されているように、支持部分を形成するために使用される平面基板に空洞を作成することによって形成される。したがって、この第3の窓は、空洞とも呼ばれ得、空洞の壁は、支持部分によって形成される。複数の第2の窓は、例えば、図7のパネル(d)に見えるように、第3の窓内に存在する。
【0035】
実施例のセクションで論じられるように、開示されるろ過膜の主な特徴は、膜の第2の表面上に存在する階層的な支持構造に起因してろ過のために利用可能である膜の増加した表面であり、支持部分は、第2の高さのリブよりも長く、第1の高さのリブよりも長い高さを有する。第1の高さのリブは、第1及び第2の表面上に平坦であり、ナノポアを含む膜の部分を支持する。これらのリブは、本明細書ではミニリブとも呼ばれる。これらのリブは、複数の第1の窓を画定する。複数のこのような第1の窓は、順番に、第1の高さよりも高い第2の高さのリブによって構造的に支持される。これらのリブは、本明細書ではメガリブとも呼ばれる。これらのメガリブは、支持部分によって支持される必要のない膜の面積の増加を可能にする。言い換えれば、メガリブを含むことは、支持部分によって形成される第3の窓が膜の1平方面積当たりに膜の最小表面を占めるように、支持部分の位置付けを可能にする。支持部分によって支持される膜の面積はろ過のために利用可能ではないため、支持部分によって支持される必要のない膜の面積を増加させると、ろ過が生じ得るナノポアを含む膜の面積が増加する。第2の高さのリブは、膜の第2の表面と接触する支持部分よりも実質的に薄く、したがって、支持部分が存在する場合に遮断されるであろうほど多くの膜の表面を遮断しない。図7及び8を参照されたい。加えて、メガリブは、支持部分の高さと比較して実質的に低い高さであり、これは、膜の場合、裏側での流体の流れをより良くすることを可能にする。図4を参照されたい。第1の高さ及び第2の高さのリブの存在は、WO2019/222661に記載されるように、空洞内にむき出しになる膜の面積と比較して、第3の窓によって囲まれ、したがってろ過のために利用可能な膜の面積を実質的に増加させることを可能にする。例えば、空洞によってむき出しになる膜の裏側の面積は、WO2019/222661では、10,000~50,000μmの範囲である。対照的に、空洞内にむき出しになる、すなわち、第3の窓によって囲まれる膜の裏側の面積は、1mm~10mm、2mm~8mm、又は3mm~6mmの範囲である。WO2019/222661に開示される膜内の空洞によってむき出しになる膜の裏側の、本開示の膜との比較が、図8のパネル(b)及び(c)に提供されている。特定の実施形態では、第3の窓は、形状が実質的に矩形(例えば、正方形)であってもよい。特定の実施形態では、第3の窓は、約1cmの長さ及び約1cmの幅を有する。特定の実施形態では、第3の窓は、約2000μm~5000μmの長さ及び500μm~1000μmの幅を有する。特定の実施形態では、第3の窓は、約4000μm~5000μmの長さ及び約1000μmの幅を有する。特定の実施形態では、第3の窓の高さは、支持部分を形成するために使用される基板の厚さに実質的に相当する。第3の高さは、500μm~200μm又は500μm~300μmであり得る。膜部分と接触する支持部分の幅は、約20μm~50μm又は30μm~50μmの厚さを有し得る。第3の窓内の複数の第2の窓は、50~100の第2の窓を含み得る。膜部分及び支持部分は、直接的に接続されていても、より通常は中間層を介して接続されていてもよい。
【0036】
第1の窓、第2の窓、及び/若しくは第3の窓、並びに/又は膜の裏側に存在する任意の追加の窓は、矩形、六角形、台形、円形などの任意の形状を有し得る。例えば、リブ用のモールドは、矩形、六角形、台形、円形、若しくは別の形状、又はこのような形状の組み合わせであってもよい。加えて、第1の窓は、1つの形状であってもよく、第2の窓は、別の形状であってもよく、第3の窓は、第1又は第2の窓と同じ形状又は異なる形状を有してもよい。
【0037】
本明細書に記載されるろ過膜は、隣り合わせの構成に配置された複数のそのようなろ過膜を含むろ過デバイスを作製するために使用され得る。例えば、ろ過デバイスは、複数の膜部分及び支持部分が形成されている単一の基板を使用して形成された複数のろ過膜を含み得る。
【0038】
ろ過膜の作製方法
血液のインビボろ過のための膜を生成するための方法が開示される。方法は、支持基板の第1の表面上に第1のパターンで第1のマスクを堆積させることを含み得る。第1のパターンは、第1の表面の特定の面積を覆い、保護し、第1の表面上の面積をむき出しにし得る。この面積は、格子パターンに配置された複数の第1の矩形及び格子パターンに配置された複数の第2の矩形の輪郭を画定する。一旦形成されると、複数の第2の矩形の各々は、複数の第1の矩形を含む。方法は、第1のマスク上に第2のマスクを、当該第2のマスクが、第1の矩形窓の輪郭を画定する第1の表面上のむき出しにされた面積を覆い、かつ第2の矩形窓の輪郭を画定する第1の表面上のむき出しにされた面積を覆わないように堆積させることを更に含み得る。それによって、第1の表面のエッチングを可能にして、第2の矩形窓の輪郭に対応する溝が支持基板に作成される。例えば、図6のパネル(a)を参照されたい。これは、基板(バルクシリコン「バルクSi」)、第1のマスク(「酸化物)、及び第2のマスク(「フォトレジスト」)を示している。方法は、第1の表面をエッチングして溝を作成することであって、溝は、深さ及び厚さを有する、作成することと、第2のマスクを除去することと、を更に含み得、第2のマスクを除去することは、複数の第1の矩形の輪郭を画定する第1の表面上の面積をむき出しにする。方法は、第1の表面をエッチングして、複数の第2の矩形の溝の深さを増加させて、第2の矩形の溝の深さが第1の矩形の深さよりも深いように複数の第1の矩形の輪郭に対応する支持基板に溝を作成することを更に含み得る。これらの溝は、充填されたモールドを作成するために基板に作成されたトレンチとも称され得る。例えば、メガリブのモールドを示す図6のパネル(b)及び(c)、並びにミニリブのモールドを示す図6のパネル(d)~(e)を参照されたい。
【0039】
方法は、第1のマスクを除去することと、支持基板上に中間層を堆積させることとを、更に含む。中間層は、層の厚さが実質的に均一であるように堆積された薄い層である、例えば、図6のパネル(e)を参照されたい。特定の場合において、中間層は、基板上に酸化物層を作成することによって堆積され得、それによって、基板の表面上に薄いフィルムを形成する。中間層は、誘電体層などの保護層であり得る。場合によっては、中間層は、基板上に酸化物又は窒化物層を堆積させることによって形成され得るか、又は基板上で成長され得る。中間層は、低圧CVD(LPCVD)及び血漿強化CVD(PECVD)を含む化学蒸着(CVD)によって、又はいくつかの他の堆積手段によって堆積され得る。場合によっては、中間層は、熱酸化などの熱プロセスで成長され得る。中間層は、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、炭化シリコン、又は他の誘電体材料及び組み合わせを含むいくつかの他の材料層を含み得る。中間層の厚さは、約2μm以下、例えば、2μm~0.1μm、1μm~0.2μm、1μm~0.5μm、又は0.8μm~0.5μmであり得る。
【0040】
方法は、支持基板に作成された第1及び第2の矩形の溝を充填するために膜材料を堆積させて、平面の第1の表面と、第1の表面の反対側の非平面の第2の表面とを含む膜を作成することを更に含み得、非平面の第2の表面は、第1の矩形の溝の深さに対応する第1の高さを有する複数のリブと、第2の矩形の溝の深さに対応する第2の高さを有する複数のリブとを含み、第2の高さは、第1の高さよりも高い。例えば、図6のパネル(f)(「poly1」)を参照されたい。
【0041】
方法は、膜の領域内に微細な溝のパターンを作成すること(図6のパネル(g)を参照)と、膜上に犠牲層(「薄酸化物」)を堆積させることと、を更に含み得る。犠牲層は、膜材料を酸化することによって形成され得、それによって、膜のむき出しにされた領域上に酸化物の薄い層を形成する。場合によっては、孔構造は、後に除去されて膜層を通して孔を形成し得る、犠牲材料で形成され得る。ナノポア構造は、エッチングプロセス、又は他のリソグラフィプロセスで形成され得る。膜層は、電子ビーム、深部紫外線リソグラフィ、又は本明細書に記載の構造を作製するためのパターン化を形成することができる別のパターン化技術を介して実行され得る、フォトレジストでパターン化され得る。レジストパターンは、反応性イオンエッチング、又は湿式エッチングプロセスを介して、膜層上に転写され得る。パターン化に続いて、材料の犠牲層は、パターン化膜層上又はその内部に形成され得る。犠牲層は、厚さが20nm未満であり得る、熱酸化を介して成長した酸化物であり得る。代替的に、層は、約15nm、10nm、7nm、5nm、3nm、1nm、5オングストロームなど以下の厚さを有し得る。材料の層は、成長時に共形であり得、このように、フィルムは、高密度プラズマCVD(HDPCVD)、又はいくつかの他の共形堆積プロセスを含む、より共形なプロセスを介して形成され得る。層は、酸化シリコン、又はその後膜層から除去してナノポアを有する膜を作成することができる、任意の他の材料であり得る。
【0042】
方法は、微細な溝を追加の膜材料で充填することを更に含み得る。追加の膜材料は、最初に堆積された同じ材料又は異なる材料であり得る。図6のパネル(i)(「poly2」)を参照されたい。次に、方法は、微細な溝に堆積していない余分な追加の膜材料を除去すること(図6、ペイン;(j))と、犠牲層を膜から除去することと、中間層を除去することと、支持構造の第2の表面に空洞を形成することと、を含み得、第2の表面は、膜内の複数のナノポア、第1の高さを有する複数のリブによって画定される複数の第1の窓、第2の高さを有する複数のリブによって画定される複数の第2の窓を提供するように第1の表面の反対側であり、複数の第2の窓の各々は、複数の第1の窓を含み、第3の窓は、支持構造によって画定される第3の高さを有し、空洞の壁によって形成され、第3の高さは、第2の高さよりも高く、第3の窓は、複数の第2の窓を含む。例えば、図6のパネル(k)を参照されたい。本実施形態では、ナノポアを有する膜を形成するための2つの膜材料の使用について説明するが、他の実施形態では、ナノポアは、単一の膜材料から形成される膜内で形成されてもよい。例えば、膜層は、膜材料と、膜層内に直接パターン化及びエッチングすることによって、膜材料の中に形成されたナノポアとから形成され得る。
【0043】
方法の様々なステップは、任意の好適な手段によって実行され得る。一般に、第3の窓の作成までの全てのステップは、基板の前側で継続される。
【0044】
特定の実施形態では、エッチングは、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウム、緩衝フッ化水素酸、EDPなどの、湿式エッチング剤を使用した湿式エッチングであり得る。エッチングプロセスをいつ停止するかの決定は、溝の所望の深さに基づいて行うことができる。湿式エッチングは、等方性又は配向選択的、すなわち、異方性であり得る。エッチングは、真っ直ぐな側面又は傾斜した側面に溝を生成し得る。他の実施形態において、エッチング剤は、より異方性であり、溝壁の傾斜がほとんど、又はまったく生成しないで使用され得る。代替的に、ボッシュプロセスに依存するような、反応性イオンエッチング、例えば、深堀反応性イオンエッチング(DRIE)が実行されてもよい。
【0045】
基板は、膜のための支持部分として機能し得る。例えば、膜の第2の表面は、基板における空洞においてむき出しにされてもよく、空洞の境界を画定する基板の残り、すなわち、第3の窓が、膜に機械的支持を提供する。
【0046】
犠牲材料の層は、後続のフォトレジストパターン化及びエッチングで、特定の面積において選択的に除去され得る。これは、後続の堆積中に第2の膜層を第1の膜層に固定するための面積を提供し得る。フォトレジストを除去した後、第2の膜材料は、アンカー空洞、並びに第1の膜材料において形成されたトレンチの中及びその周りの犠牲層の周囲の面積に充填することによって堆積され得る。この材料は、前述と同じ又は異なる膜材料であり得る。例えば、第2の膜材料はまた、ポリシリコンであり得る。第2の膜材料層は、犠牲材料が少なくともむき出しになるレベルまで平面化され、それによって孔構造を形成する。平面化は、任意の研磨又はエッチング技術で生じ得、一例において反応性イオンエッチングを含むことができる。更に別の例において、アンカーは、第2の膜材料を堆積させ、平面化を実行した後に形成され、充填され得る。代替的に、プロセスは、追加のリソグラフィステップ、続いて直接エッチング、例えば反応性イオンエッチング、続いてアンカー材料の特定の堆積を実行することによって、実行され得る。
【0047】
ナノポアはまた、一連のパターン化及び堆積プロセスを実行することによって、より密度の高いパターン化がされ得る。例えば、膜材料の初期堆積に続いて、上述のものと同様の二次パターン化ステップが、実行され得る。二次パターン化が実行されると、追加の保護層は、前述の方法で堆積され得る。追加の保護層の形成に続いて、後続の膜材料層は、必要な孔空間度を提供するように、形成され得る。反復処理は、線及び空間パターンを20%以上減少させ得る。代替的に、反復処理は、線及び空間パターンを約30%以上、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%など、又はそれ以上減少させることができる。製造中に孔内の保護材料を維持することによって、孔の完全性は、最終放出が実行されるまで維持され得る。
【0048】
第2の保護層は、基板の裏側エッチングの前に膜材料の上に適用され得、空洞を形成し、膜をむき出しにする。第2の保護層は、その後実行されたエッチング技術に応じて、酸化物、窒化物、又は別の化合物を含み得る。例えば、窒化物層は、水酸化カリウムエッチングが実行された場合、堆積され得、酸化物層は、後続のエッチングが水酸化テトラメチルアンモニウムなどの、窒素に対して選択的な化学物質を含む場合、堆積され得る。
【0049】
ろ過膜の使用方法
ろ過膜は、ろ過デバイスを通って流れる血液のための流路を形成する、ろ過膜と連動して、組み立て式の部分チャネルを含むハウジングに統合され得る。ろ過膜は、組み立て式の部分チャネルを個別に備えるハウジングに挿入され得る。代替的に、間隔を空けた方法においてろ過膜を接合することによって形成されたろ過膜カセットは、部分チャネルの開口部に取り付けられた、ハウジング及びカセットに挿入され得る。
【0050】
ろ過デバイスは、血液のろ過を必要とする患者の血液をろ過するために、インビボ又はエクスビボで使用することができる。
【0051】
実験
以下は、本発明を実行するための具体的な実施形態の実施例である。実施例は、例示的な目的のみのために提供され、本発明の範囲をいかなる方法でも限定することは意図されない。
【0052】
使用された数字(例えば、量、温度など)に対する精度を確保する努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差は、許容されるべきである。
【0053】
実施例1-埋め込み可能なバイオ人工腎臓のための、より大面積、より高い気孔率のナノ多孔性膜のためのスケーラブルな階層的リブ設計
シリコンナノ多孔性膜は、埋め込み可能なバイオ人工腎臓の開発のための基本的な基礎技術を提供する。これらの膜は、名目上10nm幅である微細加工されたスリット孔から構成され、カプセル化細胞のための高効率血液ろ過及び免疫保護を可能にする。本アプローチは、確立された半導体製造技術を利用して、孔幅を正確に寸法制御し、それによって、高度に選択的なろ過機能と更なる小型化への明確な経路を可能にする。この研究は、膜を更に強化するために、大幅に高い「メガリブ」の第2レベルの階層を追加することによって、「リブ付きナノ多孔性膜」に関する以前の結果に基づいている。2段階の深掘反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスに依存して、4μmの深さと40μmの深さのトレンチをシリコン基板にエッチングし、熱酸化物ライナーを成長させ、ポリシリコンの層をこの「モールド」の中に堆積させて膜を形成する。膜は、裏側のDRIEエッチングの後に放出されると、下側に補強リブのネットワークを特徴とする。単位面積当たりの透過率を約2倍にして、これまでの最大14倍の幅の自立膜スパンを製造及び試験した。新しいアーキテクチャは、膜間の質量移動速度を向上させ、チップ製造コストを削減することもできる。
【0054】
バイオハイブリッドアプローチを利用して、最も重要な腎機能を実行し、患者を透析の負担から軽減できる埋め込み可能なバイオ人工腎臓を開発する。このデバイスは、廃棄物を選択的に分離し、塩と水とを再吸収するために協働する、生体適合性のある血液ろ過器と腎細管細胞バイオリアクターとを構築するための基本的な基礎技術としてシリコンナノ多孔性膜を利用する[11~12](図1)。
【0055】
長年にわたり、多くの企業がシリコンベースの微小電気機械システム(MEMS)技術を使用して、生物学的及び治療的用途のための多孔性膜を開発してきている[13~16]。現在のプロジェクトであるバイオ人工腎臓のために、サブミクロン厚のポリシリコン膜で正確に制御されたナノポア(10nmのオーダー)を生成するために薄酸化に依存する信頼性の高い「シリコンナノ多孔性膜」プロセス[17~18]を開発した。しかしながら、本研究が前臨床試験のより高度な段階に進むにつれて、本膜デバイスを絶対的に堅牢にして、インビボでの破損に対する感受性が無視可能であることを確実にする必要がある。
【0056】
膜ベースのデバイスは通常、最も弱い点(膜自体)で故障するため、その部分を補強することが最も重要である。明らかに、最も簡単な解決策は膜全体を厚くすることであるが、これは孔を通る流体抵抗を低減するために薄い膜を持つという目標を達成できなくする。したがって、厚さや質量を過度に追加することなく、構造を強化する方法を見つける必要がある。よく知られている機械的原理に基づいて、「リブ」又はビームを使用して膜を補強するルートを取り[19]、同時に、発生する面積ペナルティを最小限に抑えることにした。
【0057】
本研究は、リブ又はビームが膜の裏側(すなわち、血液側ではなくろ過液側)に位置していなければならないという事実によって複雑化される(図2)。したがって、膜が形成された後にウェハの上側に余分な特徴を単に追加することはできない。すなわち、何をするにしても、本事例では、ポリシリコンの堆積の前でなければならない。ある意味では、これは、デバイスの前側を滑らかに保たなければならない光学ミラーが直面する課題とは異なる[19~20]。
【0058】
「ミニリブ」を有する膜に関する以前の研究[21]は、そのような制約を満たす製造経路を提供した。ウェハ表面をプレエンボス加工し(すなわち、幅1um、深さ4umのトレンチのネットワークを出発シリコン基板にエッチングし)、次いで熱酸化物ライナーを追加した後にポリシリコンを堆積させて膜を形成することによって、バイオ人工腎臓の主な強化である、裏側が強化されたリブを有する発売されている膜を製造することができた。しかしながら、基本的なチップレベルでのろ過効率にまだ改良の余地がある。埋め込み可能なバイオ人工腎臓の開発は、膜の質量移動係数の桁違いの増加から大いに利益を得ることができると確信している。
【0059】
膜設計レベルでは、質量移動効率に直接影響を与える1つの明白な要因は、活性膜面積と全体のチップ面積との比率である。現在の「Gen1」デバイスでは、チップ領域の約40%が、フレームが出発基板の全厚である、深堀反応性イオンエッチング(DRIE)バルクSi「フレーム」(図3左)によって占められるデッドスペースであることに留意されたい。したがって、活性フィルタ用の余地をより多く残す、より薄く軽量の足場(図3右)を有する「Gen2」設計を提案する。しかしながら、(i)DRIEアスペクト比の制限、及び(ii)膜放出湿式エッチング中の支持フレームのアンダーカットを含む様々な理由に起因して、マスク設計上のフレーム線幅を単に縮小するだけでは不十分である。埋め込まれた酸化物層の横方向のエッチングフロントが「壁」の両側から出会うと、膜はその物理的なアンカーを失い、フレームから分離する。
【0060】
イノベーション及び設計
本研究では、幅40μm、高さ400μmのDRIE画定された「壁」の大部分を、4倍狭く、10倍浅いポリシリコン「メガリブ」(図2右)に置き換え、多孔性の領域の充填率を63%から88%(すなわち、40%の増大)に増加させることを目指すことに焦点を当てる。メガリブの高さ(40μm)は、元のミニリブの高さ(4μm)とウェハの全厚(400μm)との幾何平均であるように設計されているため、設計の「階層的」性質となる。
【0061】
流体に関する考慮事項
これらの浅いメガリブの採用は、流体力学によっても部分的に決定される。現在のバイオ人工腎臓設計では、血液は上部(平らな)膜表面に平行に流れ、ろ過液は底部(リブ付き)表面に沿って逆平行に流れる。しかしながら、ウェハフレームの厚さに起因して、活性ろ過液の流れの大部分は、実際には、膜の平面からかなりの距離(数百μm)離れて発生しており、毒素除去を遅らせ、したがって、膜間拡散を妨げている。したがって、計算流体力学(CFD)モデリングを実行して、裏側の支持構造を短くする又はよりまばらにすることに価値があるかどうかを調査した。
【0062】
本シミュレーションの目的のために、ANSYS Fluent19.2ソフトウェアを使用した(図4)。幾何学形状は2Dとして設定され、使用された材料は液体水であった。モデルは、速度入口境界条件が0.02381m/sで、静圧出口がある定常状態であった。入口領域を広げて完全に発達した流れを可能にし、一方で、血液側の膜表面尿素濃度を一定に保った。モデル性能は、水出口濃度(尿素除去)に基づいて評価された。
【0063】
本分析では、ろ過液側の高さ400□mの「障害物」の高さを大幅に下げることで、膜を通る分子の大量輸送がほぼ4倍に高まることが示された。言い換えれば、メガリブを支持構造に組み込むことは、確実にろ過効率を高めるのに役立つ。
【0064】
機械的考慮事項
マイクロ流体性能に加えて、メガリブ膜設計の機械的特性も重要である。以前の研究では、標準的な膜「窓」は100×400μmであったが、今度はメガリブを使用して1000×4000μm(すなわち、面積が100倍大きい)に広げようとしている。その際に、そのような大きな自立スパンが依然として機械的に健全であること、すなわち、膜の剛性が支持体を縮小することによって過度に損なわれないことを確実にしなければならない。
【0065】
したがって、旧設計と新設計とを比較するために、有限要素解析(FEA)に依拠した。この研究では、ANSYS Mechanical 19.2ソフトウェアを全ての機械的モデリングに使用した。全てのモデルに二重対称面が使用され、デバイスの幾何形状の4分の1のみがモデル化されることを可能にした。6面体メッシュ要素を使用した。固定支持体を境界に適用し、膜の血液接触面に300mmHgの圧力を印加した。図5は、一定分布荷重下での単純(非リブ)100×400μm膜対1000×4000μm(メガリブ)膜のFEA結果を示す。結果は、メガリブ膜の剛性は、最大5倍低いが、依然として許容可能であることを示す。
【0066】
製造
以前のミニリブ膜プロセス[17、20]に基づいて、メガリブトレンチが最初に36μm下にエッチングされる最初の隠れた酸化物マスクステップを追加した(図6a~b)。上にあるフォトレジストマスクは酸素プラズマとピラニアで除去され、その後、メガリブとミニリブの両方が更に4μm下にエッチングされる(図6c~d)。このプロセスシーケンスは、二重深度トレンチのネットワーク、したがって2つの異なるリブ高さの形成を可能にする。
【0067】
このステップの後、プロセスは既存の流れに戻り、コンフォーマル熱酸化物ライナー(「埋められた酸化物」)が成長させられ(図6e)、第1のポリシリコン層(「Poly1」)が堆積されてトレンチを充填するとともに膜層を形成し(図6f)、高解像度リソグラフィステップがポリシリコン上に高密度ライン空間配列を印刷する。次に、パターンは、埋められた酸化物までPoly1に異方性エッチングされ、大部分が正方形の断面を有する一連のリッジ及び溝を形成する(図6g)。
【0068】
時限乾燥酸化ステップは、リッジの垂直側壁を含む、Poly1表面上で10nmのオーダー(最終的なナノポアの所望の幅に対応するように調整される)の薄酸化物(「thinOx」)を形成する(図6h)。第2のポリシリコン層(「Poly2」)を堆積させて、Poly1の溝を充填する(図6i)。(ここでは図示されていない周期的なアンカー領域を除いて、Poly1とPoly2とはthinOx層で分離されていることに留意されたい。)プラズマ平面化ステップは、Poly1-thinOx-Poly2スタックを元のPoly1表面を越えてエッチングし、最終的にナノポアになる垂直に配向された埋め込まれたthinOx「壁」をあらわにする(図6j)。
【0069】
最後に、低温酸化物(LTO)のパッシベーション層が堆積された後に裏側DRIE及びフッ化水素酸(HF)湿式エッチングが行われて、埋め込まれた酸化物を除去し、ナノポアの中身を空にする(図6k)。これにより、製造プロセス全体が完了し、ナノ多孔性膜が放出される。図7は、いくつかの完成したデバイスの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【0070】
各メガリブは、過剰な材料を使用せずにポリシリコン充填を容易にするために、実際には一対の狭い平行トレンチ(図7b)で構成されていることに留意されたい。これは、同じビーム剛性を得るために必要なPoly1の量を減少させ、それによって、フィルム応力、ウェハ曲率、及び後続のエッチングステップへの負荷を低減させる。また、上から見ると、膜は、ナノスケールのスリットポアを間に介して、Poly1要素とPoly2要素が交互にされた配列で効果的に構成されていることに留意されたい(図7c)。一方、裏側構造階層(ウェハフレーム→メガリブ→ミニリブ→ナノポア)は、図7d~fの拡大シーケンスに見ることができる。
【0071】
0.8μm厚の自立膜を有する直径100mmのウェハのバックリット光学画像を図8aに示し、ウェハはほぼ完璧な歩留まりを示す。一方、Gen1からGen2への活性フィルタ領域の有意な増加は、より大きな(光透過性)膜領域の形態で光学顕微鏡(図8b~c)下で見ることができる。
【0072】
測定値
水圧気孔率及び破裂強度の測定値(表1及び図9を参照)は、メガリブ膜が、旧設計よりも少なくとも3倍多く多孔性(効率的)である一方で、破裂圧力が5倍低いことを示し、FEA結果と一致している。破裂圧力は依然として安全閾値(5psi)を許容可能に上回っているが、将来の開発努力は、アクティブなフィルタ面積を犠牲にすることなく、膜の機械的堅牢性を更に高めるために、メガリブ設計を高めること(例えば、リブ高さを最適化し、鋭い角及び他の応力集中面積を排除すること)に焦点を当てることになるであろう。
【表1】
【0073】
結論
実績のあるリブベースの設計を拡張して、大幅に高い気孔率及び大量輸送係数を有する大きいスパン、高い充填率のナノ多孔性膜を可能にする、スケーラブルで階層的なリブベースのMEMS製造アプローチが開発された。
【0074】
製作の観点から、このアプローチは、製造歩留まりを維持しながら製造コストを削減することを約束する。設計の観点からは、気孔率と堅牢性とのバランスを最適化するために独立して調整することができる複数の設計パラメータを提供することにより、柔軟性を追加する。
【0075】
したがって、上記の説明は単に本開示の原理を例示するに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載又は図示していないが、本発明の原理を具現化し、その主旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案できることが理解されよう。更に、本明細書に列挙された全ての例及び条件的文言は、主として本発明の原理及び発明者らにより当該技術の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、このような具体的に列挙された例及び条件への限定ではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体的な例を列挙する本明細書における全ての記述は、その構造的及び機能的等価物の両方を包含することを意図している。追加的に、そのような等価物は、現在知られている等価物及び将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たすいかなる開発要素も含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示及び記載の例示的な実施形態に限定されることを意図していない。
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】