(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】繊維構造の低侵襲分割のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572690
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2020034686
(87)【国際公開番号】W WO2021242231
(87)【国際公開日】2021-12-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517166712
【氏名又は名称】パヴメド・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PAVMed Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】アクログ,リーシャン
(72)【発明者】
【氏名】デグズマン,ブライアン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ネイサン エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ,ジョシュア ケイ
(72)【発明者】
【氏名】バープランク,サミュエル ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤズベック,リチャード ディ
(72)【発明者】
【氏名】ベンゼル,テイラー
(72)【発明者】
【氏名】オニール,ショーン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK63
(57)【要約】
繊維構造を分割するための装置であって、装置は、カテーテルの遠位端の近くに位置し、伸縮部材が繊維構造を緊張させるために膨張状態と収縮状態の間で偏ることができるようにカテーテルの内腔と流体連通している伸縮部材と、伸縮部材の外側面の上または近位に位置し、張力がかかった繊維構造の分割をもたらすように電気エネルギーおよび熱エネルギーを張力がかかった繊維構造に供給するよう構成される電気外科要素と、を含む。繊維構造の分割方法であって、方法は、電気外科要素を有する伸縮部材を繊維構造の近位に配置し、電気外科要素にわたって繊維構造に張力をかけるように伸縮部材を外側に膨張させて、電気外科要素を起動して張力がかかった繊維構造にエネルギーを供給して張力がかかった繊維構造を分割することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造を分割する装置であって、前記装置は、
近位端と、遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間に延びるルーメンとを有するカテーテルと、
前記カテーテルの前記遠位端に向かって配置され、前記繊維構造に張力をかけるように、膨張状態と収縮状態との間で偏ることができるように、前記カテーテルの前記ルーメンと流体連通している伸縮部材と、
張力がかかった前記繊維構造の分割をもたらすように、前記伸縮部材に沿って張力がかかった前記繊維構造に電気エネルギーを供給するように構成された電気外科要素と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記伸縮部材は、バルーンである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電気外科要素は、セスキポーラである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記伸縮部材の少なくとも一部は、非円形または非対称な断面形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記伸縮部材の遠位部分は、前記伸縮部材の近位部分より大きい直径を有する成形プロファイルを含み、
前記伸縮部材の前記遠位部分の前記成形プロファイルは、分割中の前記装置の移動を最小限に抑えるように前記繊維構造を越えた身体と係合するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記伸縮部材は、細長い縦長のプロファイルを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記伸縮部材は、前記繊維構造に接触し、前記電気外科要素にわたって前記繊維構造に張力をかけるように外側に膨張するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記電気外科要素は、前記装置の長手方向の寸法に沿って配置され、
前記伸縮部材は、前記電気外科要素に対して実質的に横方向に、前記繊維構造に張力をかけるように、半径方向に膨張する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
電気外科リードは、アクティブリードと、パッシブリードとを含み、
前記アクティブリードは、前記アクティブリードと接触する張力がかかった繊維組織の一部に沿って前記繊維組織の分割が生じるように、電気エネルギーを集中させる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記アクティブリードは、実質的に尖った先端エッジを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記尖った先端エッジを除く前記アクティブリードの少なくとも一部は、前記アクティブリードの前記尖った先端エッジに電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給を集中させるように、絶縁材料で覆われる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記パッシブリードは、前記繊維構造に接触してさらに張力をかけるように、搭載される前記装置の表面より突出する、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記電気外科要素は、前記カテーテルの外側面に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記電気外科要素と前記カテーテルの外側面との間に配置された絶縁部材をさらに有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記絶縁部材は、剛性または半剛性であって、前記伸縮部材の上で前記カテーテルと結合する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記絶縁部材は、電気外科リードが装着される溝を含み、
少なくともアクティブリードは、前記絶縁部材の上面を超えて突出する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記電気外科要素は、前記伸縮部材の外側面に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記電気外科要素と前記カテーテルの外側面との間に配置された絶縁部材をさらに含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記絶縁部材は、前記伸縮部材の外側面と結合した可撓性フィルムである、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記伸縮部材の長手軸は、前記カテーテルの長手軸と実質的に同軸上である、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記伸縮部材の長手軸は、前記カテーテルの長手軸からオフセットされる、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記伸縮部材の内圧、前記伸縮部材に対して負荷される外力、電気外科回路のインピーダンス、および電気外科回路の電流の少なくとも1つを測定するセンサをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記繊維構造の完全な分割を示す閾値測定または変化を検出するように測定値を監視するプロセッサをさらに含む、請求項20に記載の装置。
【請求項24】
前記装置の挿入中の使用のための保護ジャケットをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
繊維構造を分割する方法であって、前記方法は、
前記繊維構造の近位に、伸縮部材および電気外科要素を有する装置を配置することと、
前記伸縮部材を外側に膨張させて、前記電気外科要素にわたって前記繊維構造に張力をかけることと、
前記電気外科要素を起動して、張力がかかった前記繊維構造の分割をもたらすように張力がかかった前記繊維構造に電気エネルギーを供給することと、を含む、方法。
【請求項26】
配置するステップは、前記電気外科要素が前記繊維構造に面するように配向することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記電気外科要素を前記繊維構造に対して実質的に横方向に配向させることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
配置するステップは、前記伸縮部材の近位部分の直径よりも大きい直径を有する成形プロファイルを有する前記伸縮部材の一部を、前記繊維構造を越えて配置することを含み、
膨張するステップにおいて、前記伸縮部材の遠位部分の前記成形プロファイルは、前記繊維構造を越えて身体と係合し、分割中の装置の移動を最小にする、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記伸縮部材を膨張させるステップは、前記伸縮部材の近傍に位置する解剖学的構造の位置を操作する役割をさらに果たす、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
起動するステップは、約1秒から約3秒の持続時間を有する短パルスとして電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
起動するステップは、約20Wから約100W、好ましくは20Wから30Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
起動するステップは、約1秒から約3秒の持続時間を有する短パルスとして、約20Wから約100W、好ましくは20Wから60Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
起動するステップは、前記伸縮部材の内圧を監視して、前記繊維構造の完全な分割を示す圧力の変化を検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
起動するステップは、前記伸縮部材に負荷された外力を監視して、前記繊維構造の完全な分割を示す力の変化を検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
起動するステップは、電気外科回路のインピーダンスを監視して、前記繊維構造の完全な分割を示す閾値レベルにインピーダンスが達したときに検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
起動するステップは、電気外科回路のインピーダンスを監視して、前記繊維構造の完全な分割を示すインピーダンス測定値の時間変化率を検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
起動するステップは、電気外科回路の電流を監視して、前記繊維構造の完全な分割を示す電流の減少を検出することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記伸縮部材の形状を透視または超音波によって可視化し、前記繊維構造によって前記伸縮部材に負荷された力によって生じた前記伸縮部材の変形が消失したことを検出し、よって前記繊維構造の完全な分割を示すステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
起動するステップは、前記電気外科要素に近位な任意の神経を刺激するために、約1Wから約2Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記電気外科要素への電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給に応じた痙攣の観察に応じて、装置を再配置することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
神経刺激電気外科要素を起動して、前記神経刺激電気外科要素に近位な任意の神経を刺激するように、約1Wから約2Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記神経刺激電気外科要素に供給された電気エネルギーおよび熱エネルギーに対する電気応答を測定することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記神経刺激電気外科要素への電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給に応じた測定電気応答の変化に応じて、装置を再配置することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記電気外科要素は、前記神経刺激電気外科要素への電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給に応じた測定電気応答の変化に応じて、自動的に無効にされる、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記電気外科要素の近位にある運動神経または知覚神経の存在を検出するように電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給するように構成された神経刺激電気外科要素をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項46】
前記神経刺激電気外科要素は、入力電極と出力電極とを含み、前記入力電極と前記出力電極の間に電気応答を測定する、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記神経刺激電気外科要素は、前記入力電極と前記出力電極にわたるエネルギーの変化を検出するように、測定回路を接続される、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記神経刺激電気外科要素は、前記電気外科要素とは別の発電機に接続される、請求項45に記載の装置。
【請求項49】
前記伸縮部材および前記電気外科要素の周囲に位置し、前記繊維構造を含む場所において、前記カテーテルの前記遠位端の配置を補助するジャケットをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項50】
挿入位置に挿入し、前記繊維構造を含む場所内にジャケット受けて、配置するために、先細りの先端を有するダイレーターをさらに有する、請求項45に記載の装置。
【請求項51】
前記繊維構造を含む場所内にダイレーターおよびジャケットの少なくとも1つを配置するためのガイドワイヤをさらに含む、請求項45に記載の装置。
【請求項52】
ジャケットは、前記装置の前記伸縮部材および前記電気外科要素を含む前記カテーテルの前記遠位端を受け入れるための経路を維持するために十分な構造を有する可撓性材料または剛性材料のいずれかである、請求項45に記載の装置。
【請求項53】
ジャケットは、前記伸縮部材および前記電気外科要素を含む前記カテーテルの前記遠位端から、少なくとも前記装置から遠位側に離れて、または前記装置に向かって近位側に取り外し可能である、請求項45に記載の装置。
【請求項54】
ジャケットは、切開位置内での配置を補助するようにテーパーを有する、請求項45に記載の装置。
【請求項55】
ジャケットは、複数の部分に分割して取り外し可能である、請求項45に記載の装置。
【請求項56】
前記繊維構造の近位に装置を配置することは、
切開位置を形成することと、
前記切開位置にジャケットを挿入することと、
前記伸縮部材および前記電気外科要素を含むカテーテルの遠位端を前記ジャケットに挿入することと、
前記切開位置から前記ジャケットを取り外すことと、を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項57】
前記切開位置にガイドワイヤを挿入することをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記切開位置にダイレーターを挿入することをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
繊維構造を分割する方法であって、前記方法は、
切断装置の伸縮部材を外側に膨張させて前記繊維構造に張力をかけることと、
前記繊維構造に対する前記伸縮部材のウエスト形成を視覚的に確認することと、
張力がかかった前記繊維構造の分割をもたらすように前記繊維構造を分割するための前記切断装置を起動することと、を含む、方法。
【請求項60】
分割を確認するために前記伸縮部材の形状の正規化を視覚的に確認することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
視覚的に確認することは、透視、超音波、内視鏡による視覚的な確認の少なくとも1つを含む、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
身体には、1つまたは複数の繊維壁を有する様々な解剖学的コンパートメントが収容されている。ある病理的な状況では、コンパートメント内の構造物は、構造物の腫れや炎症、またはコンパートメント壁の収縮によって圧迫されることがある。例えば、コンパートメント内を通る血管や神経が圧迫されると、コンパートメント内外の組織における血流の悪化、または神経(感覚や運動)の機能の喪失をもたらす可能性がある。例えば、手根管症候群、足底筋膜炎、筋膜コンパートメント症候群、腹部コンパートメント症候群などが挙げられる。これらの症状の治療は、多くの場合、1つまたは複数の繊維壁を切断して、コンパートメントの解剖学的構造への圧力を解放することを含む。これは、通常、直視下または内視鏡下での開腹手術を要する。これらの疾患には、低侵襲のオプションがほとんど存在しない。
【0002】
手根管症候群(CTS)は、合わせて労働災害の半数以上を占める累積外傷障害(CTD)の最も一般的なものである。賃金や生産性の損失など、社会に大きな経済的負担を与えている。手根管は手首に位置する。手根管は、後方、側方、内方で手根骨に囲まれ、前方で手根横靭帯に囲まれている。屈筋腱と正中神経は手根管を通過する。 累積的な外傷は、手根管内の炎症を引き起こし、正中神経に対する圧迫効果によって臨床的な症状が現れ、手の運動と感覚の機能障害をもたらす。診断は通常、神経伝導検査で確認される。従来の外科的アプローチは有効であるが、侵襲性が高く、外科手術室で行う必要がある。手のひらや手首の上を切開する。手根横靭帯を手術で露出させ、ハサミやメスで分割する。内視鏡的アプローチは、侵襲性は低いものの、技術的な難易度が高く、合併症の発生率も高く、価格も高くなる。内視鏡を手根管に通す前に、1cmの外科的切開と、外科的な初期剥離が依然として必要である。ある装置は、透過照明を使って保護されたナイフの通過を可視化せず(blind)誘導することを試みている。他の装置では、鋸状の切断装置を可視化せず、または超音波ガイドによって手根管に通す。
【背景技術】
【0003】
そのため、手根管症候群を、既存のアプローチよりも低侵襲で、患者の外傷が少なく、回復が早い低侵襲な方法で治療することが望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の例示的な実施の形態によれば、繊維構造を分割するための装置が提供される。装置は、近位端、遠位端、およびその間に延びるルーメンを有するカテーテルと、カテーテルの遠位端に向かって配置され、繊維構造に張力をかけるように、伸縮部材が膨張状態と収縮状態との間で偏ることができるように、カテーテルのルーメンと流体連絡した伸縮部材と、張力がかかった繊維構造の分割をもたらすように、伸縮部材に沿って張力がかかった繊維構造に電気エネルギーを供給するように構成された電気外科要素と、を含む。
【0005】
本発明の態様によると、伸縮部材はバルーンである。電気外科要素はセスキポーラ(sesquipolar)であってもよい。伸縮部材の少なくとも一部は、非円形または非対称の断面形状を有してもよい。伸縮部材の遠位部分は、伸縮部材の近位部分の直径よりも大きい直径を有する成形プロファイルを含んでもよく、伸縮部材の遠位部分の成形プロファイルは、繊維構造を越えた身体に係合し、分割中の装置の移動を最小限に抑えるように構成されてもよい。伸縮部材は、細長い縦長の形状を有してもよい。伸縮部材は、繊維構造に接触し、電気外科要素にわたって繊維構造に張力をかけるように外側に膨張するように構成されてもよい。
【0006】
本発明の態様によると、電気外科要素は、装置の長手方向の寸法に沿って配置され、伸縮部材は、電気外科要素に対して実質的に横方向に、繊維構造に張力をかけるように半径方向に膨張できる。電気外科用リードは、アクティブリードとパッシブリードとを含んでもよく、アクティブリードは、アクティブリードと接触する張力がかかった繊維組織の一部に沿って繊維組織の分割が起こるように電気エネルギーを集中させることができる。アクティブリードは、実質的に尖った先端エッジを有してもよい。尖った先端エッジを除くアクティブリードの少なくとも一部は、アクティブリードの尖った先端エッジに電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給を集中させるように、絶縁材料で覆われてもよい。パッシブリードは、繊維構造に接触してさらに張力をかけるように、搭載される装置の表面より突出してもよい。電気外科要素はカテーテルの外側面に位置してもよい。この装置は、電気外科要素とカテーテルの外側面との間に配置された絶縁部材をさらに含んでもよい。絶縁部材は剛性または半剛性であって、伸縮部材の上のカテーテルと結合する。絶縁部材は、電気外科用リードが装着される溝を含んでもよく、少なくともアクティブリードは、絶縁部材の上面を越えて突出してもよい。
【0007】
本発明の態様によると、電気外科要素は伸縮部材の外側面に位置する。この装置は、電気外科要素とカテーテルの外側面の間に配置された絶縁部材をさらに含んでもよい。絶縁部材は、伸縮部材の外側面と結合した可撓性フィルムである。伸縮部材の長手軸は、カテーテルの長手軸と実質的に同軸上である。伸縮部材の長手軸は、カテーテルの長手軸からオフセットされている。装置は、伸縮部材の内圧、伸縮部材に対して負荷された外力、電気外科回路のインピーダンス、および電気外科回路の電流のうちの少なくとも1つを測定するセンサをさらに含んでもよい。装置は、繊維構造の完全な分割を示す閾値測定または変化を検出するように測定値を監視するプロセッサをさらに含んでもよい。装置は、装置の挿入中の使用のための保護ジャケットをさらに含んでもよい。
【0008】
本発明の態様によると、装置は、電気外科要素の近位にある運動神経または知覚神経の存在を検出するように電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給するように構成された神経刺激電気外科要素をさらに含む。神経刺激電気外科要素は、入力電極と出力電極の間に電気応答を測定するための入力電極と出力電極とを含んでもよい。神経刺激電気外科要素は、入力電極と出力電極にわたるエネルギーの変化を検出するように、測定回路を接続されてもよい。神経刺激電気外科要素は、電気外科要素とは別の発電機に接続されてもよい。本装置は、伸縮部材および電気外科要素の周囲に位置し、繊維構造を含む場所においてカテーテルの遠位端の配置を補助するジャケットをさらに含んでもよい。装置は、挿入位置に挿入し、繊維構造を含む場所内にジャケット受けて、配置するために、先細りの先端を有するダイレーターを含んでもよい。本装置は、繊維構造を含む場所内にダイレーターおよびジャケットの少なくとも1つを配置するためのガイドワイヤをさらに含んでもよい。ジャケットは、装置の伸縮部材および電気外科要素を含むカテーテルの遠位端を受け入れるための経路を維持するために十分な構造を有する可撓性材料または剛性材料のいずれかであってもよい。ジャケットは、伸縮部材および電気外科要素を含むカテーテルの遠位端から、少なくとも装置から遠位側に離れて、または装置に向かって近位側に取り外し可能であってもよい。ジャケットは、切開位置内での配置を補助するようにテーパーを有してもよい。ジャケットは、複数の部分に分割して取り外し可能であってもよい。
【0009】
本発明の例示的な実施の形態によると、繊維構造の分割方法が提供される。方法は、繊維構造の近位に、伸縮部材および電気外科要素を有する装置を配置することと、伸縮部材を外側に膨張させて、電気外科要素にわたって繊維構造に張力をかけることと、電気外科要素を起動して、張力がかかった繊維構造の分割をもたらすように張力がかかった繊維構造に電気エネルギーを供給することと、を含んでいる。
【0010】
本発明の態様によると、配置するステップは、電気外科要素が繊維構造に面するように配向することを含む。方法は、電気外科要素を繊維構造に対して実質的に横方向に配向させることをさらに含んでもよい。配置するステップは、伸縮部材の近位部分の直径よりも大きい直径を有する成形プロファイルを有してもよい伸縮部材の一部を、繊維構造を越えて配置することを含み、膨張するステップにおいて、伸縮部材の遠位部分の成形プロファイルは、繊維構造を越えて身体と係合してもよく、分割中の装置の移動を最小にする。伸縮部材を膨張させるステップは、伸縮部材の近傍に位置する解剖学的構造の位置を操作する役割をさらに果たしてもよい。
【0011】
本発明の態様によると、起動するステップは、約1秒から約3秒の持続時間を有する短パルスとして電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含んでもよい。本発明の態様によると、起動するステップは、約20Wから約100W、好ましくは20Wから30Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含んでもよい。本発明の態様によると、起動するステップは、約1秒から約3秒の持続時間を有する短パルスとして、約20Wから約100W、好ましくは20Wから60Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含んでもよい。本発明の態様によると、起動するステップは、伸縮部材の内圧を監視して、繊維構造の完全な分割を示す圧力の変化を検出することを含んでもよい。
【0012】
本発明の態様によると、起動するステップは、伸縮部材に負荷された外力を監視して、繊維構造の完全な分割を示す力の変化を検出することを含んでもよい。起動するステップは、電気外科回路のインピーダンスを監視して、繊維構造の完全な分割を示す閾値レベルにインピーダンスが達したときに検出することを含んでもよい。起動するステップは、電気外科回路のインピーダンスを監視して、繊維構造の完全な分割を示すインピーダンス測定値の時間変化率を検出することを含んでもよい。起動するステップは、電気外科回路の電流を監視して、繊維構造の完全な分割を示す電流の減少を検出することを含んでもよい。方法は、伸縮部材の形状を透視または超音波によって可視化し、繊維構造によって伸縮部材に負荷された力によって生じた伸縮部材の変形が消失したことを検出し、それによって繊維構造の完全な分割を示すステップをさらに含んでもよい。起動するステップは、電気外科要素に近位な任意の神経を刺激するために、約1Wから約2Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することを含んでもよい。方法は、電気外科要素への電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給に応じた痙攣の観察に応じて、装置を再配置することをさらに含んでもよい。
【0013】
本発明の態様によると、方法は、神経刺激電気外科要素を起動して、神経刺激電気外科要素に近位な任意の神経を刺激するように、約1Wから約2Wの電気エネルギーおよび熱エネルギーを供給することをさらに含んでもよい。方法は、神経刺激電気外科要素に供給された電気エネルギーおよび熱エネルギーに対する電気応答を測定することをさらに含んでもよい。方法は、神経刺激電気外科要素への電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給に応じた測定電気応答の変化に応じて、装置を再配置することをさらに含んでもよい。電気外科要素は、神経刺激電気外科要素への電気エネルギーおよび熱エネルギーの供給に応じた測定電気応答の変化に応じて、自動的に無効にされてもよい。繊維構造の近位に装置を配置することは、切開位置を形成することと、切開位置にジャケットを挿入することと、伸縮部材および電気外科要素を含むカテーテルの遠位端をジャケットに挿入することと、切開位置からジャケットを取り外すことと、を含んでもよい。方法は、切開位置にガイドワイヤを挿入することをさらに含んでもよい。方法は、切開位置にダイレーターを挿入することをさらに含んでもよい。
【0014】
本発明の例示的な実施形態によると、繊維構造の分割方法が提供される。方法は、切断装置の伸縮部材を外側に膨張させて繊維構造に張力をかけることと、繊維構造に対する伸縮部材のウエスト形成を視覚的に確認することと、張力がかかった繊維構造の分割をもたらすように繊維構造を分割するための切断装置を起動することと、を含む。
【0015】
本発明の態様によれば、方法は、分割を確認するために伸縮部材の形状の正規化を視覚的に確認することをさらに含んでもよい。視覚的に確認することは、透視、超音波、内視鏡による視覚的な確認の少なくとも1つを含んでもよい。
【0016】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2A】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための装置のハンドルを示す。
【
図2B】本開示の実施の形態による
図2Aのハンドルの内部部品を示す。
【
図2C】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための装置を示す。
【
図2D】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための
図2Cの装置の断面端面図を示す。
【
図2E】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための装置の断面端面図を示す。
【
図3A】本開示の他の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための装置を示す。
【
図3B】本開示の他の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための
図3Aの装置の上面図を示す。
【
図3C】本開示の他の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための装置の電気外科リード構成を示す。
【
図3D】本開示の他の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための装置の電気外科リード構成を示す。
【
図3E】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割と神経感知のための
図3Bの装置の例示的な断面端面図を示す。
【
図3F】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割と神経感知のための
図3Bの装置の例示的な断面端面図を示す。
【
図3G】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割と神経感知のための
図3Bの装置の例示的な断面端面図を示す。
【
図3H】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割と神経感知のための装置の例示的な上面図を示す。
【
図3I】本開示の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割と神経感知のための装置の例示的な断面端面図を示す。
【
図4A】本開示の他の実施の形態による繊維構造の低侵襲分割のための装置であって、手根管内の膨張状態の装置を模式的に示す。
【
図4B】本開示の他の実施の形態による
図4Aの装置を用いて手根管における手根横靭帯の分割を模式的に示す。
【
図4C】本開示の他の実施の形態による
図4Aの装置によって治療された手根管を模式的に示す。
【
図5A】本開示の他の実施の形態による手根横靭帯による伸縮部材の形状変形(「ウエスト形成」)を模式的に示す。
【
図5B】本開示の他の実施の形態による手根横靭帯の分割の後における伸縮部材の形状戻りを模式的に示す。
【
図6A】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6B】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6C】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6D】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6E】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6F】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6G】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6H】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図6I】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図7A】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図7B】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図7C】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図8A】本開示の例示による処置における装置から外装(sheath)を取り外すための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図8B】本開示の例示による処置における装置から外装を取り外すための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図8C】本開示の例示による処置における装置から外装を取り外すための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図9A】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図9B】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図9C】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図9D】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図9E】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図9F】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【
図9G】本開示の例示による処置における装置の挿入のための例示的なプロセスを示す例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は医療機器、特に繊維構造の低侵襲分割のための装置を対象としている。医療装置は、ある実施の形態において、低侵襲処置中に、限られた空間において腱、靭帯、ファシアなどを分離、切断、切開、分割するなどを提供するように設計されてもよい。例示的な実施の形態において、本開示は、随時、手根管症候群の処理を例示的な応用例として参照してもよい。手根管は、手根骨と手根横靭帯とに囲まれた手首の解剖学的コンパートメントである。手根管症候群の臨床症状は、主に手根管を通過する際に正中神経が圧迫されることによって発生する。手根横靭帯を外科的に分割することで、正中神経の圧迫とそれに関連する症状が緩和される。本開示は、手根管症候群を治療するために手根管内で使用する例を参照してもよいが、本明細書にて説明される装置および方法は、体内または体外の任意の種類の繊維構造の低侵襲分割に関する処置の任意の組み合わせに使用されてもよい。
【0019】
図1Aから
図1Eを参照すると、
図2Aから
図9Gに示すような装置200は、様々な実施形態において、
図4Aから4Cに示すように、コンパートメント100内の解剖学的構造120への圧力を緩和するように、手根管の手根横靭帯を分割するように使用されてもよい。手根管は、手根管の後方、外側、内側に境界を作る(
図1C)2列の手根(手首)骨を有する。これらは、12時の位置から時計回りに、頭頂骨、有鉤骨、梨状三角錐、月状骨、舟状骨、僧帽骨、および台形骨を含む。台形骨、僧帽骨、帽状骨、および有鉤骨が遠位手根列を構成し、手根管の遠位境界を構成する。舟状骨、月状骨、三角骨、および豆状骨は、手根骨近位列と手根管の近位境界とを構成する。手根管の近位と遠位の範囲を画定する手根横靭帯(TCL)について、近位境界は、豆状骨への付着部から横方向に舟状骨結節まで延び、遠位境界は、浜骨の鈎部への付着部から横方向に台形上の結節まで延びる。手根管は、手根横靭帯によって前方が画定されており、手根横靭帯は繊維組織の二層膜であって、内側は有鉤骨と豆状骨に、外側は僧帽骨と舟状骨に付着している。手根管の近位および遠位の範囲は、それぞれ豆状骨から舟状骨へのベクトルおよび浜状骨から僧帽骨へのベクトルによってそれぞれ画定される(
図1A)。手根管自体は、前後左右ともに砂時計形状を有し、手根管の近位2/3と遠位1/3との接合部が最も細い部分(ウエスト)になっている。反復的な外傷やその他の病態により手根横靭帯の肥厚や炎症が起こると、正中神経や屈筋腱(
図1A、1C、1D、1E)の圧迫を含む手根管構造の圧迫が起こり、これらの構造の機能に影響を与える可能性がある。正中神経の圧迫損傷を緩和するために、手根横靭帯の外科的分割がしばしば採用される(
図1B)。
【0020】
<低侵襲分割装置200>
ここで
図2Aから
図2Eを参照すると、本開示の低侵襲分割装置200は、一般に、ハンドル210と、カテーテル300と、バルーン400(または他の伸縮部材)と、1つまたは複数の電気外科要素500と、絶縁部材600とを含んでもよい。本発明は電気外科要素の使用について述べているが、組織の分離のために設計された要素の任意の組み合わせ、例えば電気メス要素が使用されてもよい。
【0021】
図4Aから
図4Cの文脈で後述するように、低侵襲分割装置200は、体内に挿入され、手根管などの治療を必要とする解剖学的コンパートメント100に向かって前進してもよい。一旦解剖学的コンパートメント内に適切に配置されると、バルーン400は、繊維壁110に半径方向の力を加えるように膨張し、コンパートメント100の繊維壁110の一部に沿って横方向の張力を発生させてもよい。電気外科要素500は、治療効果のために、繊維壁を分割し、それによって解剖学的コンパートメント100を減圧するように、張力がかかった部分と係合するように構成されてもよい。ある実施の形態では、電気外科要素500は、バイポーラ無線周波数(RF)素子とできる。バイポーラ高周波(RF)素子を用いた電気外科手術を行うために、少なくとも1つの電極と1つの戻り電極とを、標的組織を挟んで、一方の電極の先端から他方の電極に電流を流すことができる構成で提供されてもよい。標的組織に電流が流れると、組織によって抵抗が生じ、その結果、熱が発生し、熱は、所望の治療効果を得るように、組織の切断、凝固、融解など、またはそれらの組み合わせのために使用されてもよい。本開示の範囲を逸脱しない範囲で、例えば、モノポーラ、バイポーラ、セスキポーラなど、電気外科要素500の任意の組み合わせが使用されてもよい。
【0022】
図2Aに示される代表的なハンドル210の上面図を最初に参照すると、ハンドル210は、装置200の近位端に設けられ、装置200の遠位端における構成要素の各種機能を制御するために、1つまたは複数の起動コンポーネント212(例えば、ボタン、スイッチ、トリガー、タッチスクリーンなど)を含んでもよい。例えば、ハンドル210は、バルーン400の膨張/収縮および/または電気外科要素500の起動/停止(例えば、RFエネルギーの適用)を作動させるためのボタンの組合せを含んでもよい。ハンドル210は、ある実施の形態において、バルーン400を膨らませて、しぼませて、または他の方法でバルーン400の膨張および圧縮およびバルーン400の内圧を制御するためのいずれか1つの制御特徴または制御特徴の組み合わせを含んでもよく、ならびに電気外科要素500によって供給される電力の特性、例えば電力の大きさ、周波数、持続時間、間隔(例えばパルス)、および他の関連特性を作動、非作動、調整するための特徴を含んでもよい。
【0023】
ある実施の形態では、ハンドル210は、バルーン400のこれらの特性および電気外科要素500のこれらの特性を監視するためのフィードバック要素214を追加的または代替的に含んでもよい。例えば、フィードバック要素214は、特定の動作状態をユーザに警告するように設計された音声(例えば、スピーカ)、視覚(例えば、照明)、または触覚フィードバック(例えば、振動発生器)の要素の任意の組み合わせであってもよい。ハンドル210は、ある実施の形態において、正中神経の刺激および繊維壁110の完全な分割など、処置中の重要なイベントの発生を検出してユーザに警告するためのフィードバック機能をさらに含んでもよい。例えば、ハンドル210は、後に詳述するように、繊維壁110の完全な分割の指標(例えば、圧力変化、力変化、インピーダンスとその変化率の閾値、電流降下、見かけの電力損失)を検出するために様々な感覚出力(例えば、風船の圧力、風船にかかる力、インピーダンスの大きさと時間変化率、パワーレベル)を監視する視覚、聴覚、または触覚フィードバックの組み合わせを生成するフィードバック要素214を含んでもよい。
【0024】
様々な実施の形態において、制御とフィードバック要素214は、操作時に使いやすい配置と配向でハンドル210に位置してもよい。好ましくは、これらの特徴は、隆起している、または他の方法で、ユーザに触覚的に認識可能(例えば、形状、質感など)であってもよく、よって、ユーザは、ハンドル210を見ることなく、装置200の機能を操作できる。その結果、ユーザは手術そのものに集中でき、より低いリスクとより良いパフォーマンスをもたらす。例示的な実施の形態において、ハンドル210は、上部にインジケータライトフィードバック要素214を含み、側面にボタン作動部品212を含んでもよく、右利きのユーザがハンドル210をその掌で握りながら、手を捻ったり再配置したりする必要なくボタンを作動させるための親指の自由な動きを可能にし、手を捻ったり再配置したりすることは、装置200が身体内の望ましい位置および配向から離れることをもたらす可能性がある。表示灯は、例示的な実施の形態では、様々な色、点滅順序、点滅速度などを用いて、装置状態に関する情報をユーザに提供してもよい。例えば、表示灯は次のようなことを示してもよい。1)電源投入テストに合格、2)作動、3)到達したバルーン圧力の最小値、4)圧力タイムアウト、5)作動回数、その他有用な情報を表示する。
【0025】
図2Aを続けると、様々な実施の形態において、ハンドル210自体は、医療処置中に人間の(または動物の)身体への/からの装置200の挿入、位置決め、および取り外しを容易にするように構成されてもよい。実施の形態において、ハンドル210は、ピストルグリップ形状、逆ピストルグリップ形状、または(図示されているように)電動歯ブラシと同様の細長いハンドル形状などの人間工学的な形状を含んでもよい。これらの形状により、装置200を押す(例えば、治療部位に向かって)、引く(例えば、治療部位から引き込んで)、傾ける(例えば、体内の輪郭の周りで操作するように)、および回転させる(例えば、電気外科要素500を分割する繊維壁に揃えること)際に、安定かつ精密に制御を行うことができる。加えてまたは代替的に、ハンドル210は、ハンドル210が患者の外側面(例えば、前腕に沿って)に平らに載ることを可能にするように構成された実質的に平らな下面を有してもよく、それによって、処置中に安定性を提供し、トルクを排除できる。
【0026】
ここで
図2Bを参照すると、ハンドル210の例示的な実施の態様の分解図が描かれている。ある実施の形態において、ハンドル210は、ハウジング216と、プログラム可能なプリント回路基板(PCB)218と、バッテリーなどの電源220と、起動コンポーネント212と、フィードバック要素214と、電気外科発電機(または他の発電源)から電気手術ケーブル224を受け取るための付属品222と、インフレーションチューブを受け取るための付属品226とを含んでもよい。ハウジング216は、装置200の内部部品を包むために、ハウジング材料および構築方法の任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、
図2Bに示すように、ハウジング216は、複数のファスナー216aを用いて結合される2ピース構造であってもよい。ハウジングを作成するために任意の製造方法の組み合わせを使用されてもよいが、例えば、溶接、接着剤、ファスナー、3Dプリンティング、成形などが挙げられる。ハウジング210は、内部部品が損傷、汚染などされないように、気密/水密シールを形成するように構築されてもよい。
【0027】
ある実施の形態において、PCB218は、ハウジング210に結合され、構成要素間で電力、信号などを伝達するための任意の制御論理とともに、電源220、起動構成要素212、およびフィードバック要素214の組合せに結合するように設計されてもよい。例えば、PCB218は、バルーン400または電気外科要素500のうちの1つの起動をトリガーするために起動コンポーネント212から信号を受信し、それらのコンポーネントからフィードバックを受信して、その情報をユーザに伝えるためにフィードバック要素214に信号を提供するために必要な論理を含んでもよい。同様に、PCB218は、装置200の他の構成要素(例えば、400、500など)に加えて、電源220からPCB218自体のコンポーネント(例えば、212、214など)に、電力を伝達するために必要な導電性要素および/または配線を含んでもよい。電源220は、交換可能な充電式電池源と有線電源の任意の組合せを含んでもよい。ある実施の形態では、PCB218は、電源ケーブル224を介して電気エネルギーを受け取るためのプラグを用いて設計されてもよい。例えば、PCB218は、装置200の1つまたは複数の電極500に印加できるRF電力を提供する電気外科発電機に結合されている電力ケーブル224に結合できる。ある実施の形態では、PCB218は、患者に適用される電極500に電力を供給するための論理回路および制御回路を提供してもよい。PCB218は、電極500に印加されるRF電力が患者の組織を損傷しないように、特定の期間後に電力を遮断するなどの内蔵安全システムのための論理および制御も提供してもよい。
【0028】
ある実施の形態では、PCB218および/またはハンドル210は、例えば、バルーン圧の測定、装置200の遠位端の向きの検出など、装置200の1つまたは複数の態様に対するフィードバックを得るための1つまたは複数のセンサ228を含んでもよい。ある実施の形態では、1つまたは複数のセンサ228は、PCB218内に統合されてもよく、または他の方法でPCB218に結合されてもよい。一例では、ハンドル210は、バルーン400の圧力読み取り値を得るために膨張チューブ216に接続されるPCB218上に圧力センサまたはモニタを含んでもよい。圧力センサは、装置200の1つまたは複数の構成要素(例えば、バルーン400)の過加圧を監視し、防止するために提供されてもよい。この例における圧力センサは、一貫した圧力測定値を提供した閉鎖システムの一部であってもよく、例えば、圧力が両方の点にわたって一貫するように、バルーン400と圧力センサとの間で膨張管を分割するためにY接続またはT接合を使用してもよい。装置200は、測定値、警告、フィードバック、神経感知などをユーザに提供するためのセンサの他の任意の組み合わせも含んでもよい。圧力センサは、PCB218に直接、任意の組み合わせの位置に、例えば、下面に、実装してもよい。
【0029】
ここで
図2Cおよび
図2Dを参照すると、様々な実施の形態のカテーテル300は、剛性、半剛性または可撓性であってもよい。カテーテル300は、プラスチックまたは金属を含む任意の生体適合性材料で作られてもよい。実施の形態において、カテーテル300は、他の適切なプラスチックの中でも、ポリウレタン、ポリエチレン、またはフルオロサーモプラスチックなどの可撓性プラスチック材料で作られてもよい。実施の形態において、カテーテル300は、低侵襲的な挿入を容易にし、装置200を身体を通して治療部位に導くために十分に剛性である一方、手首または他の身体部位の部分的な屈曲に対応するために十分な可撓性を有してもよい。実施の形態において、カテーテル300の遠位端は、組織を通じた装置200の通過を容易にし、組織外傷を最小にするためにテーパー形状を有してもよい。
【0030】
ある実施の形態において、カテーテル300は、代わりに、これらの特性を有する軸部材(図示せず)内に位置し、または他の方法で支持されてもよいことが認識されるべきである。軸部材は、ある実施の形態において、カテーテル300を収容してもよく、またはカテーテル300として機能してもよく、バルーン400の膨張のための流体の通過および電気外科要素500の起動のための電流を提供する。実施の形態において、軸部材は、好ましくは約10Fr~約14Frのサイズを有してよいが、上述した所望のレベルの剛性を提供し、ルーメン340、350および電気外科要素500と通信する任意の必要な電気コンポーネント(例えば、ワイヤ)を収容するために必要なだけ大きくてもよい。実施の形態における軸部材は、プラスチック(例えば、ナイロン、PEBAX)のマルチルーメン押出成形品または絶縁されたステンレス鋼として、構成されてもよい。絶縁は、アクティブ電極とパッシブ電極の短絡を防ぐとともに、使用する場合は金属シャフトへの電流や高周波(RF)の伝達を防ぐ役割を果たす。さらに、断熱材は、バルーン材料に損傷を与え、穿孔をもたらす可能性のあるバルーン400への熱およびエネルギーの伝達を防止できる。手根管症候群の処置のために構成された実施の形態では、軸部材(またはカテーテル300)は、約4インチ~約6インチの長さ、またはバルーン400および電気外科要素500が手根横靭帯の下に経皮的に配置されるときにハンドルを前腕中央位置に配置するために適した他の任意の長さを有してもよい。
【0031】
図2Dを参照すると、様々な実施の形態において、カテーテル300は、バルーン400を膨張および収縮させるために流体が導かれてもよい少なくとも1つのルーメン340を含んでもよい。流体(例えば、気体、液体など)は、ルーメン340の1つまたは複数の開口342を介して、ルーメン340とバルーン400の内側部分410との間に誘導されてもよい。 例えば、実施の形態において、開口342は、ルーメン340とバルーン400の内側部分410との間の流体連通を提供するように、ルーメン340から半径方向に延び、カテーテル300の外側面330を貫く横開口342を含んでもよい。操作において、流体は、近位端310でルーメン340に導入されてもよく、遠位端320に向けられ、そこで、開口342を通って内側部分410に逃げてもよく、バルーン400を膨張させる。同様に、バルーン400を収縮させるために、逆経路に沿ってバルーン400から流体を引き出してもよい。
【0032】
ある実施の形態では、ルーメン340は、外部ソース(例えば、流体キャニスター)から延びる膨張チューブに結合されてもよい。例えば、ルーメンは、ハウジング上のアタッチメント226によって膨張チューブに結合されてもよい。アタッチメント226は、例えばルアーフィッティングのような結合機構の任意の組み合わせを含んでもよい。このような実施例では、膨張チューブは、その後、ルーメン340へのハウジング内への連続的な流路を提供し得るハウジング上の取付具226に結合されてもよい。
【0033】
様々な実施の形態のカテーテル300は、コンパートメント100内でのカテーテル300の位置決めを容易にするためのガイドワイヤを収容するための少なくとも1つのルーメン350をさらに含んでもよい。ある実施の形態では、ガイドワイヤが最初のアクセスに使用され、直接、内視鏡、蛍光透視、または超音波による可視化ガイダンス下で、または当技術分野で既知の方法によって、治療部位に進められてもよい。このようなガイドワイヤは、これらの目的のために十分な剛性を有していてもよいことが理解されるべきである(例えば、身体内の所定の位置に前進および誘導されるのに十分な剛性を有する一方で、身体部分の輪郭および屈曲に対応するのに十分な可撓性を有している)。
【0034】
様々な実施の形態のカテーテル300は、電気外科要素500と関連する電気部品、例えばハンドル210内のものとを接続するワイヤまたは他の電気コネクタを収容するための少なくとも1つのルーメン360(図示せず)をさらに含んでもよい。例えば、電気外科要素510、520のための電源および/または信号線は、電気外科要素500の起動および停止のためにルーメン360を通して位置してもよい。ルーメン340、350、360は、別個のルーメンであってもよく、任意の適切な組み合わせで共有機能を有する1つまたは複数のルーメンであってもよいことが認識されるべきである。
【0035】
当業者であれば、これらはカテーテル300の好適な構成の単なる例示であり、本開示はこれらの例示的な実施の形態にのみ限定されることを意図していないことを認識できる。
【0036】
図2Cおよび
図2Dを続けて参照すると、低侵襲分割装置200は、バルーンまたは同様の拡張可能な構造体などの伸縮部材400を含んでもよい。簡略化のために、伸縮部材400は、低侵襲分割装置200を説明する文脈においてバルーン400と呼ばれることがあるが、バルーン400はそのように限定されることを意図していないことが認識されるべきである。
【0037】
バルーン400は、実施の形態において、非コンプライアントまたはセミコンプライアントであってもよく、薄層または同様の可撓性プラスチック材料で作られてもよい。バルーン400は、後に詳述するように、ある実施の形態において、手根横靭帯の組織面の剥離および上昇を支援するために数気圧の圧力を発揮するのに十分な構造的完全性を有してもよい。非コンプライアントの実施の形態は、例えばPETから作られ、高い破裂圧力耐性と高い局所温度耐性とを提供できる。セミコンプライアントの実施の形態は、例えば、ナイロン(PA)またはナイロンエラストマー(PEBA)から作られてもよく、PETよりも優れた耐穿孔性を有してもよい。セミコンプライアントの実施の形態では、フルサイズから膨張サイズへの圧力上昇に伴い、約2mm~4mmの追加膨張を行うように構成されてもよい。
【0038】
バルーン400は、カテーテル300のルーメン340からの流体をバルーン400の内側部分410内に受容し保持するのに適した方法でカテーテル300に結合されてもよい。このような実施の形態では、バルーン400は、開口342を通じて導かれた流体がバルーン400の内側部分410に入るように、開口342を含む外側面330の部分の周りに配置されてもよい。バルーン400は、外科的処置中にバルーン400を膨張させることを可能にするために、その内側部分410に向けられた流体を保持するようにカテーテル300に接着されてもよい。
【0039】
様々な実施の形態のバルーン400は、繊維壁110に張力を加える形状にしてもよい。バルーン400が膨張すると、外側に押し出し、壁110の一部に対して半径方向の力を加え、壁110のその部分が横方向に引き伸ばされる。様々な実施の形態において、電気外科要素500は、バルーン400上で長手方向に配向していてもよく、これは、バルーン400によって壁110に生じる横方向の張力が、バルーン400の表面上に位置する長手方向に配向した電気外科要素500に対して実質的に横方向に作用していることを意味している。構成されるように、横方向の張力は、壁110を切断要素500にわたって張った状態にし、それによって、分割を容易にする。特に、電気外科要素が壁110の接触部分を弱めると、バルーン400によって加えられる張力は、弱められた領域に沿って壁110を引き離すことによって、分割を促進する。さらに、壁110をぴんと張ることは、壁110が弛んでいて切断要素500の周りに適合することを許される場合にあり得るような、電気外科要素500のより広い部分ではなく、電気外科要素500の狭い部分(例えば、図示のようにアクティブリード510の尖端)によって接触されることを提供する。別の言い方をすれば、バルーン400によって加えられる張力は、電気外科要素が壁110の小さな部分に高いエネルギー密度で作用することを可能にし、それによって、組織損傷が少ないよりきれいな切断を提供し、その結果、患者の回復期間を短縮できる。
【0040】
実施の形態において、バルーン400は、様々なサイズの解剖学的コンパートメント100を収容し、繊維壁110に必要な張力を提供するように構成された複数のサイズ(例えば、小、中、大など)であってよい。例えば、手根管の処置に用いられる実施の形態では、サイズ小のバルーンは約12mmの膨張直径を有してもよく、サイズ中のバルーンは約16mmの膨張直径を有してもよく、サイズ大のバルーンは約19mmの膨張直径を有してもよい。もちろん、本開示は、これらの代表的なサイズに限定することを意図しておらず、当業者であれば、過度の実験をすることなく、所定の用途に適した直径のバルーン400を認識できる。バルーン400は、実施の形態では、バルーン400に「ウエスト」(後述)を形成し、手根横靭帯に高い局所的張力を提供するために、約2気圧から約10気圧などの内圧の複数の気圧に膨張されてもよい。様々な実施の形態の一体型または付属の圧力インフレゲージは、バルーン400における「ウェイスティング」の程度および位置を評価するために、バルーン400内でX線撮影色素を用いた透視評価と組み合わせて使用されてもよい。
【0041】
様々な実施の形態のバルーン400は、それが展開されるコンパートメント100の特定の解剖学的構造に対応するように、さらに形状および大きさが決められてもよい。これは、例えば、コンパートメント100内に位置する解剖学的構造物120の位置を操作するのに適した方法で、または、かかる圧力を最小にするのに適した方法で、成形およびサイズ調整されることを含んでもよい。これは、これらの解剖学的構造物120を電気外科要素500との接触に起因する損傷から保護すること、および/またはコンパートメント内の組織を解剖してコンパートメント内の解剖学的構造物のためのより多くの空間を作り出すことに役立つ場合がある。実施の形態において、バルーン400は、繊維壁110に対して配置されたとき、バルーン400の細長い側面と繊維壁110との間の接触を可能にし、解剖学的構造物120がその側方端部の周りで、電気外科要素500によって損傷を受け得る分割位置に向かってスライドするのを防止する、実質的に細長い横断面(例えば、卵形)を有してもよい。別の実施の形態では、バルーン400は、膨張したときに近くの腱、神経または他の解剖学的構造120を装置200から外側に押し出すのに十分な大きさの直径を有する実質的に円形の断面を備えてもよい。
【0042】
様々な実施の形態において、バルーン400は、他の様々な断面を備えてもよい。例えば、バルーン400は、限定されないが、壁110および/または解剖学的構造120に対する所望の効果を達成するのを助けるために、実質的に円形、卵形、長方形、または三角形の断面形状を有してよい。ある実施の形態では、バルーン400の全体的な形状を形成するのに役立つように、複数のバルーンまたは形状部材が互いに関連して配置されてもよい。
図2Eを参照すると、このような実施の形態では、カスタム形状のバルーン400を有すること、または複数の異なるサイズおよび形状のバルーンを組み合わせて所望の形状を作成することによって、「平底船」のような構成が作成され得る。例えば、中央の大きなバルーンの反対側に2つの小さなバルーンを配置することで、全体的に卵形の形状を形成できる。バルーンの組み合わせは、形状の組み合わせでもよく、
図2Eに描かれている円形に限定されるものではない。例えば、中央のバルーンは円筒形、両脇の小さなバルーンは楕円形であってもよい。
【0043】
同様に、平底船型のような形状も、バルーンの組み合わせではなく、1つのバルーンから形成できる。様々な実施の形態は、様々な解剖学的特徴を通り抜け、通過する経皮的ナビゲーションを容易にする近位および遠位の円錐を含んでもよい。もちろん、当業者であれば、本開示の範囲内で、この目的のための追加的な構成をいくつでも認識できる。
【0044】
同様に、バルーン400は、コンパートメント100内の特定の周囲の解剖学的構造120との接触を最小限にする(およびその結果として圧力を加える)ように適合されてもよい。例えば、
図4A~
図4Bの細長い断面設計の小さな縦寸法は、分割位置の下に位置する正中神経122に及ぼされる圧力を最小化するのに役立ち、一方、その長い横断面寸法は、繊維壁110に張力を加え、腱124を脇に押すのに依然として役立つことができる。例えば、バルーン400は、18mm~20mmであってもよく、装置200の電気外科要素500から正中神経および尺骨神経との間に測定可能な距離を作ることができる。バルーン400の実施の形態は、同様の目的のために適合された適切な長手方向プロファイルを備えてもよい。
【0045】
図2Cおよび
図2Dをさらに参照すると、バルーン400は、ある実施の形態において、後でより詳細に説明するように、解剖学的コンパートメント100内の身体と係合し、それによって膨張および/または分割中の移動を防ぐのを助けるためにその遠位端において、またはその近くに形状の特徴420を含むことができる。例えば、図示の実施の形態では、バルーン400は、バルーン400の近位部および中央部よりも大きな直径を有する「バルブ」420または他の形状を含んでもよい。追加的にまたは代替的に、手根横靭帯によって加えられる圧力は、膨張したときにバルーン400にウエストを形成してもよく、ウエストは、後でより詳細に説明するように、分割プロセス中にバルーン400の移動を防ぐのを助けるように同様に機能できる。
【0046】
さらに、様々な実施の形態において、装置200は、カテーテル300およびバルーン400のそれぞれの長手方向軸が図示のように互いにオフセットされるように構成されてもよい(本明細書において偏心構成と称される)。例えば、
図2Cおよび
図2Dに示すように、カテーテル300は、中心を通るのではなく、バルーン400の外側部分に沿って延びている。このように構成すると、カテーテル300が備えるバルーン400の内側部分への/内側部分からの出入口は、絶縁体600とより揃っている。これにより、バルーン400の「腹」430が膨らみ、バルーンの「背骨」440(すなわち、カテーテル300に結合された対向部分)から下方に押されて、手根横靭帯を上昇させることができる場合がある。もちろん、後に
図3A~
図3Dに示すように、カテーテル800とバルーン900のそれぞれの長手方向軸は、様々な実施の形態において実質的に同軸であってもよい。
【0047】
図2Cおよび
図2Dをさらに参照すると、低侵襲分割装置200は、1つまたは複数の電気外科要素500をさらに含んでもよい。装置200の様々な実施の形態において、電気外科要素500は、
図2Cおよび
図2Dに最もよく示されるように、カテーテル300上に配置されてもよい。電気外科要素500は、様々な実施の形態において、異なるレベルの電気エネルギーを利用するように構成されてもよく、および/または熱エネルギーにおいて、神経を検出し、および/または繊維壁110を分割するように構成されてもよい。例えば、電気外科要素500は、RFエネルギーを利用して、神経を刺激し、および/または繊維壁110を分割して分離できる。RFエネルギーは、一般的に重要な構造物が存在する狭い空間での組織の切断において安全であると考えられている。実施の形態において、電気外科要素500は、電気外科発電機と電気的に通信するように構成されたセスキポーラリード、ユニポーラリード、バイポーラリードの任意の組合せを含んでもよい。繊維壁110を分離または分割するとき、装置200は高周波の電気エネルギーを供給できる。高周波の電気エネルギーが組織に出会うと、高い抵抗が発生し、電極500と組織との界面で熱が発生し、この熱で組織を切断および分離できる。
【0048】
動作において、バルーン400が膨張され、電気外科リード(複数可)500が繊維壁110と接触できるとき、電気外科発電機は、電気外科リード(複数可)500に高周波エネルギーを送達するように作動されてもよい。バルーン400の膨張レベルおよび形状は、繊維壁110の最適な分割のために、組織、周辺領域、および電気外科要素500を具体的に配置するように設計されてもよい。例えば、バルーン400は、
図4A~
図4Cに示すように、バルーン400の上面と繊維壁110との間に隙間を生じさせるように壁を緊張して引っ張りながら、電気外科要素500を繊維壁110に向けて前進させて分離するような大きさや形状にしてもよい。電気外科発電機に印加する電力量は、処置の異なる段階で異なる望ましい反応/結果を得るために変化してもよい。実施の形態では、全電力を印加する前に、電気外科用リード線500が神経と接触しているかどうかを判断するように発電機に少量の電力を印加してもよい。例えば、手根管の施術中に、リードが神経に接触しているかどうかを、50Wを印加して、親指がピクピクするか観察して判断してもよく、親指がピクピクしたらリードは神経に接触しているので、神経を傷つけることを回避するためには、全電力を印加すべきでない。ピクピクしない場合は、全電力をかけてもよく、繊維壁110を分離する。
【0049】
電気外科発電機が起動すると、繊維壁110の接触した張力部分を加熱して切断するレベルで高周波エネルギーを印加できる。RFエネルギーが印加されると、繊維壁110はバルーン400の圧力を受けて分割され、それによって、後に本開示でより詳細に説明するように、コンパートメント100内の圧力が緩和される。電気ケーブル224または他の電気導管は、ある実施の形態において、電気外科発電機を装置200のハンドルに電気的に接続し、RFエネルギーを提供するために設けられてもよい。
【0050】
ある実施の形態では、装置は、電極の少なくとも一方がアクティブリード510として働き、他方が分散リードまたは戻りリード520(本明細書ではパッシブリードとも称される)として働くバイポーラ2電極構成を備える。ある実施の形態では、電気外科要素500は、アクティブリード510と戻りリード520とを含む構成において構成されてもよい。セスキポーラ構成では、電極500の1つ、例えば、戻り電極520は、他の電極、この例ではアクティブリード510に対してはるかに大きくてもよい。ある実施の形態では、アクティブリード510は、適用されるエネルギーを集中させるように形状が決定されてもよい。例えば、アクティブリード510は、アクティブリード510の隆起部における露出した金属の非常に薄い細片にエネルギー供給を集中させるために、形状が三角形で、側面がコーティングされてもよい。このようにエネルギーを集中的に供給することで、切断時の組織への外傷を最小限に抑え、本明細書でさらに詳しく説明するように、熱の広がりを最小限に抑えることができる。
【0051】
ある実施の形態では、アクティブリード510がエネルギーを組織に供給する(例えば、組織の分割のために)一方で、戻りリード520は電気的な接地として作用する回路を完成させる。リード510、520は、任意の適切な導電性材料から作ることができ、実施の形態では、耐久性と導電性のために、ステンレス鋼のような導電性金属から作られてもよい。ステンレス鋼は低コストであり、製造加工の選択肢が多い。リード線510,520は、互いに平行に、かつ、隙間を空けて隣接して配置されてもよい。隙間が小さすぎると、電流が十分に組織を通らず、組織を分割できないことがある。隙間が大きすぎると、電流が組織内で拡散してしまい、十分な分割を生成できないことがある。このように限定する意図はないが、一部の実施の形態では、高さ(絶縁部材600以上)が0mmから約1mmの範囲で、約1mmから2mm以上の隙間を使用することで、十分な分割を行うことができる。
【0052】
通電されたとき、電気外科要素500は、バイポーラ構成における2つのリードの間とは対照的に、アクティブリード510にRFエネルギーを集中させることができる任意の構成であり得、それによってアクティブリード510が単一の十分に定義された直線経路に沿って切断エネルギーを集中させることができる。この構成により、微細な線に沿って繊維壁を分割でき、組織の外傷が少なく、切断時間が短く、回復時間が早く、繊維壁110をより正確に分割できる。
【0053】
装置200は、様々な実施の形態において、組織分割を行うためのエネルギーの短時間パルスを可能にするように構成されてもよい。実施の形態では、医師による手動制御(即ち、パルスはトリガーを引くのと同じ時間だけ続く)、またはコマンドにより設定された持続時間で自動的にパルスを供給する設定(例えば、PCB218による制御)を介して、1パルスあたり約1秒から3秒のオーダーでパルスが供給されてもよい。これにより、組織を切除するのではなく、切断するための明確で集中的な切断エネルギーが供給され、エネルギーによる熱損傷や熱の広がりが制限される。実施の形態における装置200は、約20Wから約100Wのオーダーのものなど、より低い電力RF設定での最適な使用のために設計されてもよい。死体研究室での試作テストは、テストした実施の形態にとって、より短い持続時間は常に手根横靭帯を切断する結果にならず、より長い持続時間では切断一貫性を増加しなかったため、1から3秒パルスが最適であった。同様に、これらのテストから、テストした実施の形態では、手根横靭帯の完全分割を最も安定して行えるという意味で、20Wから100W程度が最適であることがわかった。エネルギーレベルが低いと手根横靭帯は必ずしも切断できず、エネルギーレベルが高いと切断安定性が向上しない。
【0054】
ある実施の形態では、アクティブリード510を1回だけ通電し、繰り返し通電および/または対象領域に対して前進させて繊維壁110の分割を実行できる。第1の通電および前進工程の後に繊維壁110の完全分割がない実施例では、バルーン400の圧力を評価し(例えば圧力センサを介して)、必要であればその後の通電および前進工程のために調整することが可能である。例えば、処理後にバルーン400の圧力が所定の閾値以下である場合、その後の分割の試行のために目標圧力(例えば、2気圧)まで再膨張させてもよい。
【0055】
第1の例では、バルーン400の初期膨張とアクティブリード510の起動により、繊維壁110の完全分割を実現できる。この場合、追加の手続きは必要ない場合がある。第2の例では、バルーン400の初期膨張およびアクティブリード510の起動は、繊維壁110の部分的な切断分割をもたらす可能性があり、バルーン400は許容範囲内(例えば、約2気圧)の圧力を維持する。この例では、アクティブリード510を所定期間再通電して、分割を進めるおよび/または完了させることができる。第3の例では、バルーン400の初期膨張およびアクティブリード510の起動は、繊維壁110の部分的な分割をもたらす可能性があり、バルーン400は所定の圧力閾値(例えば、<2気圧)を下回る可能性がある。この例では、バルーン400を目標圧力(例えば、約2気圧)まで再膨張させて十分な張力を与え、アクティブリード510を目標分割点に向かって前進させることが可能である。その後、アクティブリード510を再起動させ、分割を進めるおよび/または完了させることができる。これらの例のステップは、繊維壁110の所望の分割が達成されるまで、任意の回数繰り返されてもよい。
【0056】
様々な実施の形態のアクティブリード510は、装置200の上面の上(すなわち、バルーン400上の絶縁部材600の上)に突出してもよく、
図2Cおよび2Dに示すように、三角形のプロファイルなど、鋭い先端を有するプロファイルを備えてもよい。このようなプロファイルは、アクティブ切断リード510の先端にエネルギーを集中させる役割を果たし、よって、分割位置の細線に沿って高濃度のエネルギー密度を提供してもよい。これにより、組織の外傷が少なくなり、切断時間が短くなり、回復時間が早くなり、繊維壁110の分割がより正確に行われると考えられる。特に、装置200は、任意の過渡的な温度上昇を、アクティブ切断リード510の0mmから約1mm以内に制限することによって、温度上昇(例えば、加熱)のリスクを低減させる。さらに、三角形状のリード510の傾斜面は、リーディングエッジ(すなわち、先端)に近位な繊維壁110の部分をさらに広げる(すなわち、張る)役割を果たしてもよく、よって、繊維壁110を分割する装置200の能力をさらに高める。
【0057】
追加的にまたは代替的に、様々な実施の形態において、傾斜面を上に延びるリード510の表面の一部を絶縁材料で覆われてもよく、アクティブリード510の前縁の周りでエネルギー密度をさらに集中させることができる。例えば、絶縁材料は、アクティブリード510の上端(例えば、三角形の頂点)に沿った狭い(例えば、<100ミクロン)スライバーを除いて、実質的にすべてを覆うことができる。アクティブリード510の金属露出部を細く限定することで、組織上の細線にエネルギーを集中および集束させ、その線に沿って標的組織を高速および高精度に切断できる。さらに、この細線を越えて熱エネルギーが広がるのを、細線に沿ったエネルギーの短時間のバーストによって制限できる。別の実施の形態では、アクティブリード510全体を絶縁材料でコーティングしてもよく、エネルギーが先端部に集中するように先端部は薄いコーティングを有する。
【0058】
ある実施の形態では、
図2Dに示すように、絶縁部材600は、後で詳しく説明するように、アクティブリード510を受け入れるためのスロットを備えた形状に構成されてもよく、このエネルギー集中機能を提供するために三角リード510の傾斜表面の一部を覆うことができる。追加的にまたは代替的に、別の実施の形態(図示せず)において、傾斜面の下部を同様の目的のために絶縁材料で被覆してもよい。同様に、絶縁部材600は、パッシブリード520を受けるためのスロットを含んでもよい。
【0059】
パッシブリード520は、様々な実施の形態において、装置200の上面と面一であってもよく、または装置200の上面の上方に突出していてもよい。パッシブリードに切削エネルギーが集中しないため、ある実施の形態において、パッシブリード520の形状はあまり重要でない。例えば、実施の形態において、パッシブリード520は単純な長方形の形状であってもよい。しかしながら、パッシブリード520が装置200の上面から突出する程度は、分割プロセス中の手根横靭帯の張力のかけ方に影響し得ることを認識されたい。例えば、パッシブリード520が上面と面一であるか、または他の方法によってアクティブリード510よりも低いプロファイルを有する実施の形態においては、アクティブリード510の突出によって引き起こされる緊張した手根管横靭帯の形状に対する局所的な「テント張り」効果が少なくなる。逆に、パッシブリード520が装置200の上面からさらに突出している実施の形態では、アクティブリード510上の局所的なテント張り効果に影響を与え、リード510,520上の手根横靭帯に局所的な台地形状が形成される。突出したパッシブリード520によって誘発される台地形状は、リード510の領域で手根横靭帯をさらに緊張させる役割を果たしてもよく、それによってアクティブリード510によって画定される線に沿って靭帯の分割をさらに容易にすることが認識されるべきである。また、台地形状は、TCLへの電極の接触状態を向上し、アクティブリードからパッシブリードへの電流の伝達を向上し、切断方法の性能を向上させる役割も果たしている。
【0060】
パッシブリード520は、様々な実施の形態では、絶縁材料でコーティングしないまま、または他の方法で露出させてもよく、その導電性を最大限に高め、局所的な電界制御を行う。これにより、リード線510,520の間に局所的に強い電界が生じやすくなる可能性があり、よって切断のためのエネルギーが集中するアクティブリード510の切断力が向上する。
【0061】
一方、従来のバイポーラ型は、同じサイズと形状のリード線が2本あるのが一般的である。バイポーラリードは、バイポーラリード間の組織ゾーンにエネルギーが高密度に集中するため、切断する組織の反対側にリードを配置できる場合、組織切断によく使用される。このような構成は、装置200のように片側から手根横靭帯を係合する場合に機能し得るが、バイポーラカットがバイポーラリード間のギャップのどこかで発生する可能性があるため、セスキポーラ構成の場合のように局所的ではない可能性があることが認識されよう。重要な構造物(神経、血管)が近傍にある解剖学的領域では、高周波エネルギーの熱的広がりを制限するために、バイポーラ構成が望ましい場合がある。
【0062】
電気外科要素500は、様々な実施の形態で、装置200のカテーテル300、絶縁材料600等から(または後述の装置700のバルーン400から)破断または剥離せずに曲がることができるように可撓性を有する構造を有してもよい。実施の形態では、要素500は、負荷の存在下で適切な曲げ許容度を提供するために、スカラップ形状のプロファイルを含んでもよい。同様の効果を得るために、他のプロファイルを使用してもよい。追加的にまたは代替的に、様々な実施の形態では、電気外科要素500は、要素500が装置200から脱離せずに屈曲することを可能にする結合機構を用いて装置200と結合されてもよい。このような実施の形態では、図示のように、要素500は、カテーテル300の表面の溝614および/または装置200の固体絶縁部材610(後述)に機械的に取り付けられてもよい。これらの溝614は、要素500の剥離を防止し、発生した屈曲の方向への移動を可能にするのに役立ち得る。別のそのような実施の形態では、要素500は、剥離しない程度に弾性変形できる高コンプライアンス接着剤を用いて、装置200、特に、薄膜絶縁部材620(後で説明)に取り付けられてもよい。例としては、限定されないが、シアノアクリレート(CA)または紫外線硬化を伴うアクリル系ウレタンなどのアクリル系紫外線硬化(UVC)が挙げられる。
【0063】
ある実施の形態では、電気外科要素500は、組織が分割/切断されるまで標的組織の下に固定されたままであり、その時点で装置はアクティブリード510を介してエネルギーを遮断するように構成されてもよい。これにより、装置200は、装置200の横方向への移動(例えば、前後方向への移動)を必要とせず、組織を分割し分離できる。言い換えれば、装置200は、組織を分割し分離するために、バルーン400の膨張によって引き起こされる垂直方向または半径方向の動きを必要とするだけである。リード510の細いエッジで提供されるエネルギーのバーストとリード510の非移動との組み合わせは、標的組織に対する傷害(例えば、分割/切断)の正確なゾーンを実現することが可能である。
【0064】
ある実施の形態では、装置200は、1つ以上の他のセンサからのフィードバックに基づいて、装置200および/または電気外科要素500の電源を自動的にオン/オフするように設計されてもよい。例えば、圧力センサが、組織分割のための好ましい環境のための所定の閾値を超えるか下回ると(例えば、PCB218上のプロセッサによって)判断される圧力レベルを検出した場合、電気外科要素500への電力は切断されてもよい。パラメータが理想的でないときに電気外科要素500の電源を切ることで、より安全に組織の分割を実現できる状況を提供できる。ある実施の形態では、ユーザが装置200またはその構成要素を調整できるように、(例えば、フィードバック要素を介して)ユーザに状況を警告してもよい。例を続けると、バルーン400が所望のレベル以下(例えば、約2気圧以下)の圧力を有することに応じて、電気外科要素500が電源オフにされる場合、バルーン400を適切な圧力まで膨らませる必要があることをユーザに警告してもよい。例えば圧力センサが決定するように、所望の圧力が達成されると、その後、電気外科要素500への電力は、ユーザによる使用のために再起動されてもよい。
【0065】
図2Cおよび
図2Dをさらに参照すると、低侵襲分割装置200は、電気外科要素500が通電されたときにカテーテル300(または後述する装置700のバルーン400)を熱関連の損傷から保護するように、電気外科要素500とカテーテル300との間(または電気外科要素500と後述する装置700のバルーン400との間)に位置する絶縁部材600をさらに含んでもよい。絶縁部材600は、方法の任意の組み合わせでバルーン400と電気外科要素500に結合されてもよい。同様に、電気外科要素500は絶縁部材600に結合し、絶縁部材600内に埋め込まれ、または絶縁部材600を貫通して突出してもよい。例えば、絶縁部材600は、アクティブ電極510とパッシブ電極520との間に十分な間隔を設けて、電極510、520間の短絡を防止するように設計された絶縁電極スペーサーであってもよい。
【0066】
様々な実施の形態の絶縁部材600は、その上に位置する電気外科要素500の間で、その表面を横切る電気追跡に対して高い耐性を有する可撓性高分子材料で構成されてもよい。例えば、実施の形態において、絶縁部材600は、カプトンテープのようなポリイミドフィルムを含んでもよい。もちろん、絶縁部材600は、本開示の範囲から逸脱することなく、電気外科要素500とカテーテル300との間(または電気外科要素500と後述する装置700のバルーン400との間)に熱バリアを設けることに適した任意の材料を含んでもよくまたはそれから構成されてもよい。
【0067】
絶縁部材600は、図示の実施の形態では、剛性部材または半剛性部材610であってもよい。絶縁部材610は、
図2Cに示すように、バルーン400の対向する端部において、カテーテル300(または、先に説明したように、シャフト)と結合するためのクリップ612または他の適切な結合機構を含んでもよい。構成されるように、絶縁部材610は、装置200の対応する部分に追加の剛性を提供してもよく、治療部位へのナビゲーションおよび配置を容易にできる。絶縁部材610の剛性は、体内の標的部位に向かって挿入する間、装置200の遠位端のナビゲーションにおける曲げ/屈曲アシストを最小化するために十分な剛性を提供するようにしてもよい。実施の形態において、絶縁部材610は、先に議論し、
図2Dに示したように、電気外科要素500を受けるための溝614をその上面に含んでもよい。もちろん、電気外科要素500は、溝614なし、または溝514または溝なしの組み合わせで、そこに結合されてもよいことが認識されよう。例えば、アクティブリード510は溝514内に配置されてもよいが、パッシブリード520は溝514内に配置されない。
【0068】
別の実施の形態(図示せず)において、絶縁部材600は、電気外科要素500とカテーテル300との間(または後述のように電気外科要素500と装置700のバルーン400との間)に配置するための薄膜または他の薄い可撓性絶縁材料620を含んでもよい。このような実施の形態は、後に装置700の文脈でより詳細に説明するが、装置200の実施の形態においても同様に利用されてもよい。
【0069】
<低侵襲分割装置700>
ここで、
図3A~3Dを参照すると、本開示は、低侵襲分割装置700をさらに含んでいる。低侵襲分割装置700の実施の形態は、一般に、カテーテル800、伸縮部材900、1つまたは複数の電気外科要素1000、および絶縁部材1100を含んでもよい。低侵襲分割装置200と同様に、装置700は、体内に挿入され、治療を必要とする手根管などの解剖学的コンパートメント100に向かって進められてもよい。一旦解剖学的コンパートメント内に適切に配置されると、伸縮部材900は、繊維壁110に半径方向の力を加えるために拡張されてもよく、コンパートメント100の繊維壁110の一部に沿って横方向の張力を生成する。電気外科要素1000は、繊維壁110を分割するために引張られた部分を係合し、よって治療効果のために解剖学的コンパートメント100を減圧するように構成されてもよい。
【0070】
装置700の様々な構成要素は、装置200の補完的な構成要素と実質的に類似しており、その好適な特性および実施の形態は、ここで装置700の本説明に組み込まれる。例えば、カテーテル300の実施の形態は、身体を通して装置700を前進させ、バルーン900を膨張させるための流体と電気外科要素1000を作動させるための電気配線とを収容するための同様のサイズおよび剛性に関する配慮を有している。同様に、バルーン900の実施の形態は、繊維壁110を緊張させ、周囲の解剖学的構造から分離するための同様の形状、サイズ、圧力に関する考察を有し、電気外科要素1000の実施の形態は、繊維壁110を切断するための同様のタイプ、形状、パワーに関する考察を有している。例えば、バルーン900(またはバルーン400)は、標的組織の分割中に、正中神経、内側神経の反回運動枝、および尺骨神経などの重要な構造をアクティブリード510から変位させて分離するためのサイズおよび形状を有している(例えば、
図4Aおよび4Bに描かれたように)。
【0071】
実施の形態において、カテーテル800および/またはバルーン900の遠位端は、組織を通して装置700の通過を容易にし、よって組織外傷を最小にするためにテーパー形状を有してもよい。カテーテル800および/またはバルーン900のテーパー形状は、身体内の標的部位への装置700の前進を支援するために十分に剛性であってもよい。
図3Bに、装置700の実施の形態の代表的な寸法を示す。ある実施の形態では、
図3Aから
図3Dに示すように、装置700は、装置200の絶縁部材600と同等の剛性または半剛性の絶縁部材1100を備えずに提供されてもよい。代わりに、装置700は、装置200に関して言及した絶縁部材620に匹敵する薄膜様式の絶縁部材1120を含んでもよい。様々な実施の形態の絶縁部材1120は、カテーテル800に結合するのとは対照的に、バルーン900の外側面に直接結合するように構成されてもよい。特に、絶縁部材1120は、バルーン900を絶縁し、熱損傷から保護するのに適した高い誘電強度を有する薄膜を含んでもよい。これらのフィルム1120は、バルーン900と結合するための粘着性バッキングを備えてもよい。絶縁部材1120の代表的な材料としては、PI(カプトン)、PEEK、ナイロンなどがある。
【0072】
次に、
図3Cおよび
図3Dを参照すると、電気外科要素1000の代表的な実施の形態は、バルーン900上の絶縁部材1120に結合されているように示されている。
図3Cを参照すると、アクティブリード1010は上方に突出し、尖った三角形のプロファイルを有してもよく、パッシブリード1020は上方に突出し、矩形のプロファイルを有してもよい。ここで
図3Dを参照すると、代替的な構成では、パッシブリード1020は平坦であるか、または表面と同一平面上にある。これらの構成は、装置200に関連して先に説明したエネルギー密度関連および張力関連の理由のために提供されてもよい。ある実施の形態では、電気外科要素1000は、
図3Cおよび3Dに描かれているように、バルーン900の湾曲について放射状に位置決めされてもよい。
【0073】
<装置200、700を用いた神経刺激および検出のためのシステムおよび方法>
図3Eから
図3Iに関して説明した実施の形態は、装置200とリード510、520に関して説明したが、同じ特徴を、リード1010、1020を有する装置700に適用することも可能である。ある実施の形態では、電気外科要素500は、分割部位付近の神経を損傷する可能性を最小限にするために、電気外科要素500、700付近の神経を刺激および/または検出するように構成されてもよい。特に、電気外科要素500は、近傍の神経が存在する場合、神経電気活動を感知する、神経電気活動を刺激する、またはその両方を行うために設計されてもよい。装置200は、運動神経と知覚神経の任意の組み合わせを刺激し、検出するように設計されてもよい。運動神経は、低エネルギーを加えて刺激され、ぴくぴくする反応を引き起こして、運動神経の存在を示すことで検出できる。
【0074】
ある実施の形態では、装置200のアクティブリード510は、異なる時間に組織の神経感知/刺激および分割のいずれかを提供するために、異なるレベルのエネルギーを適用するように設計してもよい。例えば、ハンドル210は、神経感知モードと繊維分割モードとの間の移行を可能にするために、アクティブリード510に高周波発生装置によって使用されるおよび/または提供される電力を調整するボタンを含んでもよい。また、高周波発生装置での手動または自動調整により、出力レベルを調整できる。ある実施の形態では、アクティブリード510を介して1から5ワットのエネルギーレベルを印加し、運動神経を刺激および検出できる。別の例では、電力レベルは、RF発生器において手動または自動で調整でき、および/または、異なるモード(例えば、感知モードおよび繊維分割モード)を起動するために異なる起動コンポーネント212を使用できる。
【0075】
装置200による神経刺激および検出プロセスに基づいて、装置200は、近くに位置する神経の存在を検出し、その後、神経から離れるように移動および/または調整できる。
図3Eを参照すると、分割される繊維壁110の下に配置された装置200が描かれている。装置200における感知モードは、例えば、アクティブリード510に低い高周波電力(例えば、1から5ワット)を印加することによって、神経がアクティブリード510の範囲内に位置することかどうかを判断するようにトリガーされてもよい。
図3Eに描かれているように、アクティブリード510の近くに神経がない場合(アクティブリード510の作動後に顕著な痙攣が観察されない)、装置200を分割モードに変更することが可能である。
図3Eでは、装置200の下に神経120が存在するが、害はないので、神経感知は負となり、ユーザは繊維壁110の分割を開始できる。分割モードにおいて、繊維壁110を分割するのに十分なエネルギーを提供するために、より大きな高周波電力レベル(例えば、20ワットより大きい)をアクティブリード510に印加してもよい。大きい方のRFパワーは、手動、自動、および/または分割ボタンで調整できる。
【0076】
図3Fは、分割される繊維壁110の下に配置された装置200が描かれている。装置200における感知モードは、アクティブリード510に低い高周波電力を印加することによって、神経がアクティブリード510の範囲内に位置しているかどうかを判断することをトリガーできる。
図3Fに描かれているように、アクティブリード510の近くで神経が感知された場合(アクティブリード510の作動後の顕著な痙攣が観察される)、装置200は、新しい位置および/または配向における神経について検査するために再配置され、再配置されてもよい。
図3Fでは、アクティブリード510の近くに、神経120が存在し、よって神経感知モードがアクティブであれば、顕著な神経の痙攣が起こる。この場合、ユーザは分割モードの作動中に神経損傷を引き起こさないように、装置の位置や場所を変更する必要がある。
【0077】
図3Gを参照すると、ある実施の形態において、神経感知は、装置200の配向を決定するために使用されてもよい。神経が検出された場合(アクティブリード510の起動後に顕著な痙攣が観察された場合)、装置200を再配置して再び神経を検査できる。例えば、電極500と繊維壁110との間に神経が存在してはならないことが分かっている場合、神経感知の起動に応じた目に見える痙攣が起こると、装置200が誤った方向に回転していることを示すことができる。これは、装置を切断のための正しい向きで回転させることができ(例えば、電極510、520が靭帯110に面している)、神経が邪魔にならないように、神経120が靭帯110と電極510、520の間にないことを確認する方法を提供することも可能である。
図3Gには、神経感知モードがアクティブである場合、顕著な神経痙攣が起こるように、電極500が繊維壁110から神経120に向かって離れて配置された繊維壁110の下に配置された装置200が描かれている。この場合、ユーザは、適切な位置に装置を再配置し、分割モードの作動中に神経損傷を引き起こさないようにする必要がある。
【0078】
図3Hおよび
図3Iを参照すると、ある実施の形態において、装置200は、装置200の遠位端にまたはその近くに、アクティブ電極510および戻り電極520とは別の電極アレイ530を含んでもよい。電極アレイ530は、電気信号を送信し、潜在的に筋肉運動を誘発する、および/または、神経を介した信号伝導があるかどうかを決定するように構成されてもよい。この方法は、運動神経だけでなく、知覚神経も捉えるために使用できる。知覚神経の近くで何かを感じたと伝えるためには、通常、被験者が覚醒し、心が澄んでいる必要がある。電気応答(例えば、電気伝導度)を測定できる装置に接続された電極アレイ530を使用して、神経刺激電気外科要素に供給される電気エネルギーおよび/または熱エネルギー、または電極アレイ530への印加エネルギーの他の識別可能な変化は、運動神経および知覚神経の両方の検出のために監視することが可能である。例えば、電極アレイ530にわたる信号伝導度の識別可能な変化は、運動神経または知覚神経のいずれかが電極510、530の位置の近くにあるかどうかを判断するように監視することが可能である。
【0079】
ある実施の形態において、電極アレイ530は、
図3Hおよび
図3Iに描かれているように、アクティブ電極510および戻り電極520の少なくとも1つに実質的に平行に位置する1つまたは複数の電極を含んでもよい。電極アレイ530は、電極アレイ530上に加えられた印加エネルギーに対する導電性の変化を監視して神経の存在を判断できるように、入力と出力を含む専用の神経感知電極であってもよい。ある実施の形態では、電極アレイ530は、
図3Iに描かれているように、アクティブ電極510および戻り電極520の両側に実質的に平行に配置された電極530a、530bの組合せを含んでもよい。
図3Iに示すように、電極アレイ530は、電極530a、530b上の信号伝導度の変化を測定するために、一方が入力として働き、一方が出力として働く、2つの別々の電極ライン530a、530aを含んでもよい。電極アレイ530は、アクティブ電極510の近くに神経がないことを最も確実にするために少なくともアクティブ電極510の近くに配置されてもよいが、電極アレイ530および/または電極530a、530bは、神経刺激/検出のために装置200上の任意の組み合わせの位置に配置されてもよい。
【0080】
電極510、520、530の任意の組み合わせは、バルーン400および電気外科要素500が、手根横靭帯などの分割される組織、および正中神経などの妨げられない他の解剖学的構造に対して適切に配置および配向されているかどうかを判断するために利用されてもよい。ある実施の形態では、電極510、520、530が感知、刺激または切断要素として機能するかどうかは、電極510、520、530に適用されるエネルギーのレベルおよび/またはタイプによって決定されてもよい。例えば、電極510、520、530が信号検出器または刺激器と電気的に通信する場合、それらは神経の検出または刺激に使用できる。同様に、電極510、520、530に適用されるRFエネルギーが低ければ、神経の検出または刺激に適用でき、RFエネルギーのレベルが高ければ、組織の分割に適用できる。ある実施の形態では、神経刺激電気外科要素(例えば電極530)は、電気外科要素(例えば電極510、520)とは別の発電機に接続し、その機能を別々に発揮させてもよい。他の実施の形態では、電極アレイ530、アクティブ電極510、および戻り電極520は、共通の電源を共有でぃてもよいが、所望の結果を得るために異なるレベルのエネルギー(例えば、高周波)を受けるように構成されてもよい。例えば、本明細書で説明したように、電極アレイ530に適用される神経検出パワーは、アクティブ電極510に適用される切断パワーより大幅に低くてもよい。
【0081】
図3Aから
図3Iに関して説明した構成の任意の組み合わせを使用して、オペレータは、電気外科要素510、520、530のいくつかの組み合わせからのフィードバックを利用して、電気外科要素が、切断前の手根管の正中神経などの神経の近傍に存在し得るかどうかを決定してもよい。電気外科要素510、520、530は、神経伝導研究が行われる方法と同様に、ベースラインで、または通常の筋収縮(例えば、手の握り)中、若しくは(例えば、前腕部の)神経の電気刺激中の運動神経繊維の活性化から、近くの神経(例えば、正中神経)から発せられる電気信号を検出するように設計されてもよい。正の信号は、神経が電気外科要素510、520、530の少なくとも1つの近くに位置し、再位置決めおよび/または再配向が必要であることを確認することになる。追加的にまたは代替的に、電気外科要素530は、例えば、薬理学的筋関係の成功を評価するために麻酔で使用される一般的に利用される神経刺激装置と類似の方法で、近くの神経を刺激するための電気刺激信号を発するように構成されてもよい。刺激に対する肯定的な応答は、神経が電気外科要素510、520、530の近くに位置することの確認を提供し、再位置決めおよび/または再配向が必要であることを示すであろう。ある実施の形態では、正の読み取りは、たとえハンドル120上で分割ボタンが押されたとしても、装置200が再配置され、電気外科要素510、520、530の近くに位置する神経が存在しないことが確認されるまで、分割レベルRFエネルギーが電極510に伝達できないように分割モードを無効にするトリガー動作を自動的に引き起こしてもよい。
【0082】
<装置200、700を用いた手根管症候群の治療方法>
ここで
図4A~
図4Cを参照すると、装置200、700の実施の形態は、組織または繊維壁110の分割を必要とする様々な状態を治療するのによく適している場合がある。例えば、装置200,700は、手根横靭帯を分割して手根管症候群を治療するのに特に適している場合がある。装置200、700は、完全なシステム若しくは装置、または処置(例えば、手根管症候群の治療)のために構成されるキットの一部として提供されてもよい。手根管は、手根骨と手根横靭帯とに囲まれた手首の解剖学的コンパートメントである。手根管症候群の臨床症状は、主に手根管を通過する際に正中神経が圧迫されることで発生する。手根横靭帯を外科的に分割することで、正中神経の圧迫とそれに伴う症状が緩和される。
【0083】
装置200、700の実施の形態は、手根横靭帯を経皮的に分割することができる。さらに、装置200、700は、動作において、正中神経および腱を手根横靭帯から離して解剖および動員し、それによって手根管の減圧を強化し、潜在的に後期の瘢痕および症状の再発を防止できる。説明を容易にするために、手根管症候群の以下の治療方法は、装置200を使用する文脈で説明されるが、本開示の範囲内で装置700を使用して同様の方法を採用できると認識されるべきである。
【0084】
キットの一部として提供される場合、装置200、700は、梱包を解き、検査され、処置のために構成されてもよい。例えば、無菌技術を使用して、装置200、700を無菌容器から取り出し、損傷の兆候(シャフトの曲がり、ハンドピースの損傷など)を視覚的に検査し外部機器に接続できる。また、装置200、700は、未使用の装置を識別する他の設計要素を有してもよい。例えば、装置200、700は、無傷の電池タブと装置200、700の端部を有し、保護スリーブで覆われてもよい。初期化は、装置を電気外科発電機に差し込むこと、バッテリタブを外すこと、および装置200、700の電源を入れること(例えば、電源ボタンを2秒間押し続けることによって)を含んでもよい。インジケーターランプが点灯(例えば、青色点灯)するまで電源ボタンを押すことに応じて、保護スリーブを(例えば、スリーブをスライドさせることによって)取り外してもよい。電池タブを取り外した後、電源ボタンを押すとインジケーターランプがエラーを示す(例えば、赤色に点灯する)場合、その装置は使用できない可能性があり、交換できる。装置200、700は、装置が使用のために適切に構成されていることを示す任意の組み合わせのインジケータを含んでもよい。例えば、電源ケーブル224が電気外科発電機に正しく結合されていない場合、アラームを鳴らしてもよい。
【0085】
初めに、患者は、例えば、装置200を用いた手根管症候群の治療のために、装置200の適用のために準備してもよい。手根管症候群の処置では、患者は手術室のテーブルの上で仰臥位となり、手術する手のひらを上にしてアームボードに置くことができる。手首の下に丸めたタオルまたは他の支持具を置き、前腕と手を手術台に固定することで、手を少し伸ばした状態にしてもよい。止血帯を使用してもよく、その場合は、止血帯の配置、及ぶ必要に応じてエスマーチ包帯などを用いた手と前腕の失血を可能にするように、無菌状態で腕を準備しドレーピングしなければならない。実施の形態では、全身麻酔、局所麻酔、または局部麻酔を使用してもよい。
【0086】
操作において、バルーン400が収縮した状態の装置200は、体内に挿入され、手根管の中に進められてもよい。装置200は、手根横靭帯に近接した位置にナビゲートされ、電気外科要素500が手根横靭帯の方を向き、正中神経および周囲の屈筋腱などの他の重要な構造から離れるように配向されてもよい。装置200の実施の形態は、手根横靭帯に近接して手根管内に配置するのに適した寸法であってよい。所望の位置になると、装置200は、例えば、
図3Eから
図3Iに関して議論したように、その領域には神経がないことを確認できる。電気外科要素500の配置および配向は、この段階で、本明細書でより詳細に説明する超音波または蛍光透視イメージング技術および/または神経感知と刺激技術を含む任意の適切な技術によって確認されてもよい。電気外科要素500の配置と向きは、電極500が標的組織に面した厳密な前方位置に留まることを保証するように確認できる。装置200は、電極の近位端がTCLの近位端と整列するように、または電極がTCLの全幅にまたがり、標的TCLと向き合ったままであるように配置されてもよい。電極の近位端および遠位端が皮膚または非標的組織に接触していないことを確認する。
【0087】
ここで
図4Aを参照すると、電気外科要素500が手根横靭帯および正中神経や屈筋腱などの周囲の解剖学的構造に対して適切に配置および配向されていることを確認した後、バルーン400を膨らませてもよい。バルーン400は、手根管内での使用に適した寸法に膨張するように構成されてもよい。細長い断面形状、または他の適切な形状を有するバルーン400の実施の形態は、膨張中に手根横靭帯を手根管内容物から切り離し、空間を作り、手根管の減圧を強化するように作用してもよい。このような実施の形態では、バルーン400は、実質的に非コンプライアント材料で作ってもよく、この解剖効果を達成し、その後の分割のために電気外科要素500にわたって手根横靭帯を伸ばすのに十分な径方向の力を提供するように設計された所定の圧力に膨張させてもよい。
図4Aに示すように、膨張したバルーン400は、正中神経と屈筋腱の一部を互いおよび電気外科要素500から離間させる。バルーン400と電気外科要素500の側面と標的組織との間に隙間を作ると、膨らんだバルーン400は、電気外科要素500にわたってピンと張るように手根横靭帯に十分な張力をかけている。
【0088】
バルブ420を含む装置200の実施の形態は、今後の分割プロセスの間、装置200を所定の位置に安定させ、固定するために、周囲の身体に固定されてもよい。特に、様々な実施の形態では、バルーン400の主要部分の拡張の前、同時、または後に、手根横靭帯を超える解剖学的特徴を係合するために、バルブ420を拡張してもよい。例えば、バルブ420は、バルーン400と同じ膨張経路を共有でき(例えば、342)、または、別個の膨張/制御のために独自の膨張経路を有してもよい。このような係合は、装置200が手根管内で所望の位置および配向から移動、回転、または他の方法で移動する任意の傾向を防止または最小化するように作用してもよく、よって、周囲の解剖学的部材(例えば、組織、神経)を誤って傷つける、手根横靭帯を部分的にのみ分割する、またはその不正確または不正な分割を実施することの1つまたは複数の確率を最小化する。
【0089】
バルーン400は、この段落で説明したものと同様の目的のために、目標寸法/目標体積とは対照的に、目標圧力まで膨らませてもよいと認識されよう。バルーン400は、本明細書でより詳細に説明するように、バルーン400に電気外科要素500を横切る靭帯を張らせ、分割が完了したときに後で示すために(例えば、可視化または圧力変化を介して)バルーン内にウエストを形成するために十分な目標圧力の範囲内に膨らませてもよい。例えば、バルーン400は、1気圧を超える目標圧力まで膨張させてもよい。目標圧力にかかわらず、バルーン400の圧力が定格破裂圧力を超えないようにする必要がある。
【0090】
ここで
図4Bを参照すると、電気外科要素500は、緊張した手根横靭帯の接触部分を弱めるために通電されてもよい。この弱体化は、バルーン400によって加えられる張力と相まって、図示するように、手根横靭帯が電気外科要素500に接触する部分に沿って分裂することをもたらすことができる。様々な実施の形態の装置200は、より安全で正確な分割のために、複数回の起動を行うように構成されてもよい。例えば、本明細書で論じるように、装置200は、目標切断領域の周囲の領域に対する過度の加熱/損傷から防ぐために、パルスで起動させられてもよく、および/または短い持続時間にわたって繰り返し起動させられてもよい。複数回の起動は、完全な分割が実現するまで、繊維壁110の少なくとも一部の繰り返しカットを実現するように実行されてもよい。
【0091】
手根横靭帯の完全な分割は、様々な実施の形態において、技術分野で知られている任意の適切な技術によって確認されてもよい。
図5Aおよび
図5Bを先に参照すると、いくつかの実施の形態において、処置中のバルーン400における変形は、完全な分割を確認するために活用されてもよい。特に、バルーン400が膨張して手根横靭帯を張ると、靭帯がバルーン400に反力を及ぼし、よってバルーンを圧迫し、バルーン400の長さに沿って「ウエスト」またはウェイスティング効果を生じさせる。例えば、
図5Aに示すように、中央部分に沿ってウエスト効果を作り、砂時計のような形状を作る。このバルーン(砂時計)のウエスト形状は、靭帯が無傷であることを視覚的に示す/確認できる。視覚的な確認は、例えば、透視、内視鏡、超音波などの視覚的な確認により、任意の方法を組み合わせて提供されてもよい。手根横靭帯が分割されると、バルーン400の中央部に加わっていた圧力が解放され、それにより、
図5Bに示すように、バルーン400の中央部が外側に膨らんで通常の形状(例えば、円柱状、ホットドッグ状等)に復帰することができる。このような実施の形態では、様々な形態のイメージング(例えば、透視、超音波、内視鏡など)により、完全な分割が示され/確認されるように、バルーン400内のウエストが消失したことを外科医が見ることができ、装置200の可視化を可能にする。より具体的には、可視化技術により、挿入された空間(例えば、手根管など)内の解剖学的な変化(例えば、半月状のRMBなど)を識別できる。操作において、臨床医が治療経路内に神経または他の組織がないことを確認すると、装置200を安全に使用して標的組織(例えば、手根管靭帯)を横方向に分割できる。ウエストの一部分だけが膨らみ、他の部分は変形したままの場合は、部分的な分割、つまり変形したままの部分に沿った手根横靭帯の部分がうまく分割されていない可能性がある。
【0092】
先に説明したように、ある実施の形態において、装置200は、測定可能なメトリクスの組み合わせを捕捉する1つまたは複数のセンサを含んでもよい。例えば、
図2Bおよび
図2Cに戻ると、装置200の1つまたは複数の圧力センサは、望ましくない圧力での起動を防ぐためにバルーン400の内圧を監視するために利用されてもよい。例えば、バルーンが靭帯を十分に緊張させるためには低すぎる圧力であるときに電気外科要素500を起動することは望ましくないかもしれない。同様に、バルーンの圧力が高すぎるときに電気外科要素500を起動することは、神経など周囲の重要な構造に損傷を与える、または靭帯を切断するのではなく単に引き裂いてしまう可能性があるため、望ましくない場合がある。例えば、望ましい分離のために、バルーン400は、0.5気圧から10気圧の範囲内で加圧できる。
【0093】
追加的にまたは代替的に、他の実施の形態において、圧力センサは、手根横靭帯の完全な分割に関連する圧力の予想減少に対応するバルーン400内の圧力変化を検出するように構成されてもよい。切断の前に、膨張したバルーン400は、バルーン400を膨張させるために使用される流体と、その上の手根横靭帯の絞り込みとに起因する第1内圧を有する。手根横靭帯が切断されると、ウエストの消失に伴ってバルーン400の体積が増加し、その結果、内圧が、切断前の高い第1圧力から、低い第2内圧に対応するように減少する。部分的な切断では、ウエストが部分的にしか消えないのと同じように、部分的な切断では、内圧が第1圧力から部分的にしか減らない可能性がある。当業者であれば、過度な実験をしなくても、完全な切断に対応する圧力低下の大きさを認識できるだろう。それでも、完全な切断を示す例示的な圧力減少を示すために、牛の組織を切断するために装置200の実施の形態を利用して試験が行われた。試験において、バルーン400は、切断前に約25~150psiの第1圧力範囲に膨張され、計器の測定値は、完全な切断後、圧力が約0~140psiの第2圧力の範囲に低減されることを明らかにした。
【0094】
様々な実施の形態では、このような圧力変化を測定するための1つまたは複数の圧力センサは、ハンドル210、バルーン400と流体連通している気腹器(バルーン400を膨らませるために使用)またはマノメーターなどの別の装置、またはバルーン400自体に配置されてもよい。実施の形態において、ハンドル210(例えば、PCB218に結合された)内の圧力センサの配置は、圧力変化が生じたことを示すことになる圧力スイッチおよびインジケータ信号(例えば、フィードバック要素214)の収容を可能にする。
【0095】
他の実施の形態では、手根横靭帯の完全な分割は、バルーン400にかかる力の変化を測定することで確認されてもよい。張力がかかった手根横靭帯を分割すると内圧が減少するように、切断時にバルーン400に適用される外力に測定可能な変化がある可能性がある。手根横靭帯は、バルーン400の接触部分に沿って局所的な力を加える。実施の形態では、1つまたは複数の力センサが電気外科リード500に近位に配置され、この局所力が減少したときを検出してもよい。手根横靭帯によって加えられる力は、バルーン400の非接触部分を他の解剖学的構造(例えば、正中神経、腱)に対して押すこともでき、それによって局所的な力が加えられる。実施の形態では、1つまたは複数の力センサがバルーン400の対応する部分に配置され、完全な(intact)手根横靭帯によって加えられた力の結果としてこれらの解剖学的構造によってバルーン400に及ぼされる力を検出してもよい。切断されると、これらの力は減少し、切断が成功したことを示す。代表的な実施の形態では、バルーン400は、完全な手根横靭帯で約2atm以上(≧2atm)まで膨らむことができ、切断されると、約25%以上(≧25%)、または約1.5atm以下(≦1.5atm)の圧力まで低下する。
【0096】
さらに別の実施の形態では、手根横靭帯の完全な分割は、例えば、
図3E~3Iに関して議論したように、電気外科要素500からの電気的フィードバックの変化を測定することによって確認されてもよい。例えば、PCB218は、靭帯が切断された後に短時間発生する開回路(例えば、電極500の間)を検出するように構成されてもよい。組織内の水分が失われることにより、インピーダンスの上昇が起こる可能性がある。この組織の乾燥は、手根横靭帯が切断されて、その後、水分含有量がはるかに低く、上にある脂肪組織に電流を流すと、インピーダンスの急激な急上昇の結果として、しばしば組織の死を伴う。例えば、試験において、TCLの切断時のインピーダンスは400~800オームの範囲を有し、TCLが分割され、その上の脂肪組織に電流が流れると、1600~2000オームに急上昇した。他の例では、PCB218は、電気外科回路のインピーダンスの大きさを監視して、切断が発生したときに検出するように構成できる。特に、回路は、インピーダンスの閾値レベル、および/または切断に関連するインピーダンスの閾値変化率を監視してもよい。さらに別の例では、装置200は、電気外科要素500によって供給される電力の大きさを監視し、インピーダンスが増加したために電力の大きさが増加したときに検出し、所定の閾値で電力供給を終了させるように構成された集積回路を含んでもよい。
【0097】
次に
図4Cを参照すると、手根横靭帯の完全な切断(または他の所望のレベルの切断)を確認すると、バルーン400はその後収縮され、装置200は取り外されて、切断された手根横靭帯を通して手根管から圧力を逃し、それによって手根管症候群を緩和できる。
【0098】
<低侵襲分割装置200、700を配置する方法>
ここで、透視法または他のイメージング技術を使用して解剖学的コンパートメント100内に低侵襲分割装置200、700を位置決めするための様々な方法が開示される。従来と同様に、説明を容易にするために、装置200、700の以下の位置決め方法について、装置200を使用する文脈で説明するが、本開示の範囲内で装置700を使用して同様の方法を採用できると認識されるべきである。
【0099】
ある実施の形態において、装置200、700は、完全なシステム、装置、または処置(例えば、手根管症候群を治療するもの)のために構成されるキットの一部として提供されてもよい。ある実施の形態では、キットは、ガイドワイヤ1802、保護ジャケット1804、ゲージ付き圧力膨張エンドフレータ、ヨード化造影剤、生理食塩水、透視、内視鏡、電気外科ユニット、および所定の処置(例えば、手根管処置)の一部として使用できる装置の任意の他の組合せを含んでもよい。
【0100】
代表的な処置としては、
図1Aから
図1Eに示すように、手のひらを上にし、手首を半伸展状態にし、手および手首が配置され固定される。特定の患者の手首の解剖学的構造と手根管は、身体検査、直接視覚化、内視鏡検査、超音波検査、および/または透視検査の技術を使用して決定される。例えば、身体検査で解剖学的構造を定義するには、少なくとも部分的には、橈骨と尺骨の脈を触診し、手首のしわ、および距骨と下腿骨の境界を特定することを含んでもよい。豆状骨と舟状骨の近位範囲を近位限として、浜状骨と僧帽骨の遠位範囲を遠位限として、浜状骨と豆状骨の内側範囲を内側限として、舟状骨と舟状骨の外側範囲を外側限として、手根管を定義できるように、直接可視化、内視鏡可視化、超音波、および/または透視などの可視化手段を用いてもよい。これは、装置200、700を分割部位に進める前に、解剖学的な差異(例えば、靭帯に対する神経の位置の確認)を確認するのに役立つ可能性がある。
【0101】
選択的に、止血帯を挙げる前に以下の解剖学的ランドマークを明確に識別しマークするために、ファインダー針を手首のしわのレベルで、前腕の長軸と平行に、尾骨隆起から約1cm~2cm近位の皮膚に挿入し、ちょうど舟状骨と僧帽骨の内側にある手根横靭帯下で触診と透視の両方を使用して方向付けられてもよい。手首のしわの近位に1~2cmの切開を行うため、入口位置をマークしてもよい。横切開の場合は、長掌筋の橈側端から手首の橈側に向かって延びる。縦切開の場合は、手首のシワを中心に長掌筋の橈骨端に沿って配置される。同様に、出口位置は、例えば薬指(4本目)の付け根に向かって真直ぐ約6cmを測り、出口位置の位置をおおよそ示すように皮膚にマークを付けることによって、入口位置のマークの中心からマークされてもよい。掌底アーチを避けるため、完全に外転した親指の遠位端から掌底の中心を通り、TCLの遠位端と同じレベルで手を横切って線を引くことができ、出口位置が、その線の近位に位置することを保証する。
【0102】
ファインダー針の経路が、針の前方に保たれている手根横靭帯のすぐ下の手根管を通過し、内側神経と屈筋腱がすべてファインダー針の経路より後方に保たれていることを確認するように、超音波ガイドを併用してもよい。
【0103】
針は手根横靭帯より後方で、正中神経と屈筋腱より前方で、手根管と手根横靭帯に対して完全に横向きに進められてもよい。超音波検査で靭帯の遠位範囲を確認し(すなわち、靭帯全体が針より前方にあること)、透視検査で靭帯の遠位範囲を確認すると(すなわち、針は近位骨標識から遠位骨標識を通って移動すること)、針は足底隆起のすぐ遠位と動脈性手掌弓の近位で皮膚から出るように方向付けられてもよく、様々な形の視覚化で確認できる(例:超音波または蛍光透視法)。ある実施の形態では、針を使ってアクセスしワイヤを挿入することに加えて、例えば
図6Aに示すように、手首と掌に切開位置を作り、器具を使って組織を剥離できる。その後、本明細書でより詳細に説明するように、器具を用いて掌部切開位置にガイドワイヤ1802を挿入し、手首切開位置の外に出るまで通過させることができる。
【0104】
その後、任意にガイドワイヤ1802を針に通して配置し、針を除去して、ガイドワイヤ1802をそのままにして手首の皮膚に入り、手根管を横切り、手根横靭帯の後方で、正中神経および屈筋腱の前方で、および手掌弓に近位の掌で皮膚から出てもよい。
【0105】
任意にサイズ調整バルーンをガイドワイヤ1802の上に配置し、カテーテルの先端が手掌表面の皮膚レベルになるまで、および/またはカテーテルの電極が手根横靭帯を完全に横断することが確認されるまで前進させてもよく、これは超音波および蛍光透視によって確認され得る。サイズ調整バルーンは、手根管の大きさ、さらには処置に使用すべきバルーン400の大きさを決定することを支援するために使用されてもよい。次に、サイジングバルーンを約2気圧~10気圧に膨張させ、アワーグラス形状の大きな近位および遠位端を満たすように拡大し、前述のように中間部では手根管の直径が小さいため、中央でより狭いままであるように、バルーンが手根管に適合すると、バルーンが狭くなり、「ウエスト」を形成することを探しながら、透視法を用いて、側面画像を取得してもよい。ウエストが形成されると、バルーンサイズが適切であることが確認される。ウエストが形成されない場合は、ウエストが形成され、正しいバルーンサイズが決定され、ガイドワイヤ1802を所定の位置に残してサイズ調整バルーンを除去するまで、サイズ調整手順に沿ってより大きなバルーンを使用する。
【0106】
任意に、実施の形態では、装置200、700を前進させる前にバルーンカテーテルで手根管空間を予め拡張してもよく、一方で、他の実施の形態では、装置200、700それぞれのバルーン400、900は同様の目的のために位置決め中に部分的に膨張させてもよい。
【0107】
これで、低侵襲性装置200が、手術部位に挿入され、進められてもよい。適切な大きさのバルーン400を任意にガイドワイヤ1802の上に配置し、カテーテル300の先端が掌表面の皮膚レベルになるまで、および/または電極が手根横靭帯を完全に横断することが確認されるまで前進させてもよく、これは超音波および透視によって確認されてもよい。ファインダー針またはガイドワイヤ1802を使用せずに、装置200を手術部位に導くのを助けるように、透視および/または超音波を使用してもよいことが認識されるべきである。
【0108】
代替的には、ガイドワイヤ1802の上に、
図6A~
図6Iおよび
図10A~
図10Gに関してより詳細に議論するように、10-26フランス(f)保護ジャケット1804または外装を逆行方式で配置できる。ガイドワイヤ1802と保護ジャケット1804との挿入を補助するために、挿入のための皮膚入口位置を拡大するために、小さな皮膚切開が必要とする場合がある。入口位置と出口位置は、皮膚からの切開方法を任意に組み合わせて作成することが可能である。入口位置および出口位置の切開は、ガイドワイヤ1802を進めるように使用されてもよく、その後、保護ジャケット1804を、ガイドワイヤ1802の上に、手根管にわたって進めることができる。その後、保護ジャケット1804のオブチュレータを取り外し、前向きの方法で、カテーテル300をガイドワイヤ1802の上に配置し、保護ジャケット1804の中に前進させることができる。カテーテル300は、任意の方法の組み合わせで進めることができ、例えば、透視、超音波、または直接可視化を用いて、カテーテル300上のバルーン400および電極500を適切な位置に移動させる。カテーテル300が所定の位置にあり、しっかりと保持された状態で、カテーテル300のみを残して、保護ジャケット1804を引き抜くことができる。
【0109】
いくつかの例では、条件によって腱(例えば、手根管)または他の周辺組織が狭くなり腫れ、処置のために装置200のカテーテル300を腱の下に挿入することが難しくなる可能性がある。
図6A~
図6Iに関して説明したシステムおよび方法は、処置のための装置200の安全な配置を支援できる。
図6A~
図6Iを参照すると、ある実施の形態において、本開示の低侵襲分割装置200は、ガイドワイヤ1802、保護ジャケット1804、およびダイレーター1806の組み合わせを含んでもよいシステム1800またはキットの一部として使用されてもよい。ガイドワイヤ1802、保護ジャケット1804、およびダイレーター1806の何らかの組み合わせを使用して、装置200の遠位端を挿入するための領域を前処理できる。
図6Aから
図6Iに関して説明した実施の形態は、装置200、カテーテル300、バルーン400、およびリード線510、520に関して説明したが、同じ特徴を、リード線1010、1020を有する装置700、カテーテル800、バルーン900に適用することが可能である。
【0110】
ある実施の形態において、ガイドワイヤ1802は、保護ジャケット1804、およびダイレーター1806、および装置200の切開位置内へ配置するように誘導を提供するために使用されてもよい。切開位置は、あらかじめマーキングした入口位置の皮膚において作ることができ、正確で優しい剥離で形成され、長掌筋の橈骨端、掌筋膜の近位端、尺骨包を特定し、その下の正中神経を可視化することができる。実施の形態では、直視下または内視鏡下で、剥離面が滑液包外にあることを確認しながら、手根横靭帯の近位端が特定されるまで遠位方向に掌側筋膜を持ち上げる。手根管内で遠位に予定されている出口位置のマークに向かって剥離を続ける。このとき、剥離面が滑液包外腔にとどまり、正中神経と滑液包の内容物が後方に反射されるように、腱膜がTCL後面から離脱することに、注意する必要がある。バルーン400の膨張時に、正中神経がバルーン400の下の6時の位置で電気電極500の後方に残り、切断中に最大限に保護されるように、ガイドワイヤ1802およびそれに続く装置200の解剖平面および意図された経路が正中神経の真上に残ることを確認する。
【0111】
ある実施の形態において、ガイドワイヤ1802は、
図6Aおよび
図6Bに描かれているように、第1挿入位置から処置場所を通って第2切開位置または出口位置において、配置され、挿入されてもよい。ガイドワイヤ/k-ワイヤはTCLの直後に配置されてもよく、よって、正中神経はガイドワイヤの直後に配置され、腱と血管構造は尺骨包内に残り、ガイドワイヤ1802(またはk-ワイヤ)から自由で、その後方に残る。ガイドワイヤ1802は、任意に、処置領域への装置200の挿入の任意の段階で取り外すことができる。ある実施の形態において、ガイドワイヤ1802は、処置のアンダーまで定位置に留まり、保護ジャケット1804、およびダイレーター1806、および切開位置から取り出すための装置200の案内を行うために使用してもよい。
【0112】
ある実施の形態において
図6C、
図6D、
図8A、および
図8Bを参照すると、ダイレーター1806(または誘導器)は、処置領域(例えば、掌)の拡張のためにガイドワイヤ1802を越えて挿入されてもよい。例えば、ダイレーター1806は、手根靭帯組織面の初期隆起を作成するために挿入されてもよい。ダイレーター1806は、いずれの方向にも挿入できるように設計されてもよい。例えば、ダイレーター1806は、(
図6C~
図6Dに示すように)指に近い挿入位置に挿入されてもよく、手首に近い別の挿入場所から出すことができ、または、(
図8Aに示すように)ダイレーター1806を手首に近い挿入位置に挿入し、指に近い別の挿入位置から出してもよい。同様に、ダイレーター1806は、処置領域からどちらの方向にも取り外せるように設計されてもよい。例えば、ダイレーター1806は、(
図6Eに示すように)指の近くの挿入位置を介して処置領域から取り外してもよく、または、ダイレーター1806は、(
図8Cに示すように)手首の近くの挿入位置を介して処置領域から取り外してもよい。なお、ダイレーター1806の挿抜は必ずしも同じ方向で行う必要はない。
【0113】
ある実施の形態において、ダイレーター1806の少なくとも一端は、テーパー状の先端を有してもよい。先細りの先端部は、切開位置を通じて、および処置場所を通じて、ダイレーター1806の挿入および/または除去を支援するために使用されてもよく、それによって組織外傷を最小にする。ある実施の形態では、ダイレーター1806は、挿入プロセスを補助するために滑らかな表面を有してもよい。ある実施の形態では、ダイレーター1806は、他の適切なプラスチックの中でも、ポリウレタン、ポリエチレン、またはフルオロサーモプラスチックなどの可撓性プラスチック材料で作られてもよい。ダイレーター1806は、プラスチックや金属を含む任意の生体適合性材料で作られていてもよい。ある実施の形態では、ダイレーター1806は、約12Fr~約16Frの間の適切な大きさであってもよいが、約18Fr~約26Frと同じくらい大きくてもよい。
【0114】
図6Cおよび
図6Dを参照すると、ある実施の形態では、保護ジャケット1804とともに、ダイレーター1806を挿入されてもよい。他の実施の形態では、処置領域内にダイレーター1806を配置した後に、保護ジャケット1804を挿入してもよい。挿入順序にかかわらず、保護ジャケット1804は、ダイレーター1806の上に挿入される大きさおよび形状にできる一方、ダイレーター1806は、保護ジャケット1804が定位置に置かれると保護ジャケット1804内から取り外すことができるようにする。
図6Dおよび
図8Bに示すように、保護ジャケット1804が、例えば、掌の中の所定の位置にあると、ダイレーター1806を取り外すことができる。
【0115】
ある実施の形態では、ジャケット1804を単独で、またはダイレーター1806と組み合わせて使用することで、装置700の所望の場所への挿入および配置を支援するように使用されてもよい。また、保護ジャケット1804は、バルーン400および1つ以上の電気外科要素500(例えば、510、520、530の組み合わせ)を含むカテーテル300の遠位端を囲み、処置領域への挿入のためのチャネルを提供するサイズおよび形状を有してもよい。ある実施の形態では、ジャケット1804は、装置の両端に開放端を有する実質的に円筒形状を有してもよい。ジャケット1804は、本開示の範囲から逸脱しない範囲で、形状や大きさを任意に組み合わせて含んでもよい。例えば、ジャケット1804は、実質的に円筒形、長方形、多角形等であってもよい。
【0116】
ある実施の形態では、保護ジャケット1804は、ダイレーター1806が取り外された後、その形状を維持し、崩壊しないように十分な剛性を持つように設計されてもよい。ジャケット1804は、プラスチックまたは金属を含む任意の生体適合性材料で作られてもよい。実施の形態では、ジャケット1804は、他の適切なプラスチックのうち、ポリウレタン、ポリエチレン、またはフロウサーモプラスチックなどの可撓性プラスチック材料で作られてもよい。実施の形態では、ジャケット1804は、低侵襲な挿入を容易にし、身体を通して装置200を治療部位に導くために十分な剛性を有し、同時に、手首または他の身体部位の部分的な屈曲に対応するために十分に可撓性を有する。
【0117】
動作において、
図6Aから
図6Iを参照すると、ガイドワイヤ1802、保護ジャケット1804、およびダイレーター1806の組み合わせは、手根管処置のために皮膚の下のターゲット処置領域への装置200の安全かつ効率的な挿入を支援するために使用されてもよい。最初は、
図6Aに示すように、患者の掌内に2つの切開を行ってもよい。例えば、手首の近くに1つの切開が行われ、掌の真ん中あたりにもう1つの切開が行われる。切開は、手根管治療を行う標的位置の左右に位置する。ある実施の形態では、ガイドワイヤ1802は、
図6Bに示すように、皮膚の下の処置領域を通じて(例えば、手根管内)、一方の切開部に挿入されてもよく、対向する切開部から出てくる。
【0118】
図6Cを参照すると、ガイドワイヤ1802を配置した状態で、ダイレーター1806の周りに保護ジャケット1804を配置した組み合わせを、ガイドワイヤ1802を挟んで設け、一方の切開部に挿入することが可能である。例えば、
図6Cに示すように、掌の中央付近の切開部内にダイレーター1806と保護ジャケット1804を挿入してもよい。ダイレーター1806と保護ジャケット1804は、
図6Dに示すように、対向する切開部から対象の処置領域を通して挿入して進めてもよい。ダイレーター1806と保護ジャケット1804が皮膚の下にあり、両方の切開部を通って延びている状態で、
図6Eに示すように、保護ジャケット1804を残してダイレーター1806を除去することが可能である。
【0119】
図6Fを参照すると、保護ジャケット1804が装置200の遠位端を受け入れるための経路を維持している状態で、
図6Fおよび6Gに示すように、装置200はガイドワイヤ1802を越えて保護ジャケット1804に前進させられてもよい。保護ジャケット1804は、装置200がそこに進められると、皮膚の下のその位置を維持するように設計されてもよい。装置200の遠位端が保護ジャケット1804内の所定の位置にある場合(
図6Hに示すように)、保護ジャケット1804を取り外すことができる。例えば、保護ジャケット1804は、切開位置の1つを出たガイドワイヤの上に引き抜くことができる。ある実施の形態では、装置200の遠位端を利用して、保護ジャケット1804を処置領域から押し出してもよい。例えば、装置200の遠位端の少なくとも一部は、保護ジャケット1804に接触すると保護ジャケット1804を押すように、保護ジャケット1804内のチャネルの直径より大きくてもよい。
図6A~
図6Hに関して説明したステップの結果、電極500およびバルーン400を含む装置200の遠位端は、
図6Iに示すように、経手根靭帯の近位の皮膚の下に位置することになる。装置200が所定の位置にある状態で、処置を行う前に、適切な配置のために視覚的および/または電子的な確認を行うことができる。例えば、ユーザは、透視によって視覚的に確認してもよく、および/または、電気的な確認のために、本明細書で説明する神経感知と検出方法を使用してもよい。さらに、装置200の先端は、ユーザに配置の視覚的な手がかりを提供するために、切開部から延びる大きさおよび形状を有してもよい。
【0120】
図7Aを参照すると、ある実施の形態において、保護ジャケット1804は、処置領域への挿入に先立って、装置200の遠位端の上に配置されるように設計されてもよい。保護ジャケット1804は、装置200の遠位端の上にフィットする可撓性材料であってもよく、その後、組み合わされた保護ジャケット1804および装置200は、処置領域への切開部の1つへのガイドワイヤ1802の上に挿入されてもよい。可撓性保護ジャケット1804は、装置200が組織に引っかからないように、装置200の遠位端の進入を可能にするように十分な可撓性を有してもよい。一度設置すると、保護ジャケット1804は、切開位置のいずれかを介して、例えばテザーを使ったり、または保護ジャケット1804そのものを引っ張ったりして、取り外すことができる。ある実施の形態において、可撓性保護ジャケット1804は、例えばPTFC材料、テフロン(登録商標)コーティングを有するもの、潤滑性を有するものなどの摩擦低減材料の任意の組み合わせから構成されるか、またはそれらでコーティングされてもよい。
【0121】
図7Aおよび
図7Bを参照すると、ある実施の形態において、装置200の遠位端は、処置領域内への装置200および外装1804の前進を支援するためのテーパー付き先端を含んでもよい。先細りの先端は、
図7Aに示すような可撓性保護ジャケット1804を補完してもよく、または
図7Bに示すように、より剛性の高い保護ジャケット1804の端部から延びてもよい。
【0122】
図7Cを参照すると、ある実施の形態において、保護ジャケット1804は、処置領域への挿入に先立って、装置200の遠位端上に位置するテーパー状の先端を有するように設計されてもよい。保護ジャケット1804のテーパー先端は、保護ジャケットとダイレーターの両方として機能できる。本実施例では、保護ジャケット1804はダイレーター1806の助けを借りずに処置領域に挿入されるように設計されてもよい。
【0123】
保護ジャケット1804の異なるデザインは、装置200の遠位端から1つの切開部からいずれかの方向に取り外すことができるように設計されてもよい。ある実施の形態では、保護ジャケット1804は、装置200に向かって処置領域から取り外し可能であって、処置の間、装置200のカテーテル300の上に残ってもよい。任意のガイドワイヤ1802を使用する場合、保護ジャケット1804は、ガイドワイヤ1802の上にシフトできるように左右に穴を含んでもよい。ある実施の形態では、ジャケット1804は、装置200の伸縮性コンポーネントとして設計され、挿入中に装置200の先端を覆うように装置700の本体内から延びることができる。
【0124】
ある実施の形態において、ジャケット1804は、装置200が所定位置にあるときに装置200からジャケット1804を取り外すためのテザーおよび/またはガイドワイヤに結合できる。ある実施の形態において、ジャケット1804が近位方向での取り外しのために設計されている場合、開放端ジャケット1804は、装置700が身体に入った方法(例えば、カテーテルの上)で身体を通してジャケット1804の取り外しを容易にすることを補助するためにも使用されてもよい。
【0125】
図8A~
図8Cを参照すると、ある実施の形態では、保護ジャケット1804は、複数のパーツで処置領域から取り外せるように設計されてもよい。
図8Aの断面正面図に示すように、保護ジャケット1804は、2つの相互接続部品によって構成できる。2つの相互接続部品から構成される保護ジャケット1804は、装置200のダイレーター1806および/または遠位端の上に挿入されるように設計されてもよい。
図8Bおよび
図8Cを参照すると、ある実施の形態では、相互嵌合部品は、処置領域からバラバラに取り外すことができるように設計されてもよい。例えば、
図8Bに示すように、2つの相互接続部品のうちの1つを取り外し、次いで、
図8Cに示すように、2つ目の部品を取り外すことができる。本明細書で取り上げた他の保護ジャケット1804の設計と同様に、保護ジャケット1804の設計で部品が取り外し可能なものは、処置領域からどちらの方向にも取り外すことができる。
【0126】
図9A~
図9Gを参照すると、ある実施の形態において、保護ジャケット1804は、保護ジャケット1804の2つの半分が互いから引き離されるにつれて分離する弱点を有するように、予めスコアリングされ、および/または予め分割されてもよい。動作において、
図9A~9Gを参照すると、ガイドワイヤ1802、保護ジャケット1804、およびダイレーター1806の組み合わせは、手根管処置のために皮膚の下のターゲット処置領域への装置200の安全かつ効率的な挿入を支援するために使用してもよい。最初は、
図9Aに示すように、
図6Aに関して議論したように、患者の掌の中に2つの切開部を形成することができる。ある実施の形態では、ガイドワイヤ1802を一方の切開部に挿入し、皮膚の下の処置領域を通り(例えば、手根管内)、対向する切開部から出すことができる。
【0127】
図9Aを参照すると、ガイドワイヤ1802を配置した状態で、ダイレーター1806の周りに予め分割された保護ジャケット1804との組み合わせをガイドワイヤ1802にわたって、一方の切開部に挿入することができる。例えば、
図6Cに示すように、掌の中央付近の切開部内にダイレーター1806と保護ジャケット1804とを挿入できる。ダイレーター1806と保護ジャケット1804とは、
図9Bに示すように、対向する切開部から対象の処置領域を通して挿入して進めることができる。ダイレーター1806と保護ジャケット1804とが皮膚の下にあり、両方の切開部を通って延びている状態で、
図9Cに示すようにできる、ダイレーター1806を取り除くことができて、保護ジャケット1804をそのまま残すことができる。
【0128】
図9Dを参照すると、保護ジャケット1804が装置200の遠位端を受け入れるための経路を維持している状態で、
図9Dおよび
図9Eに示すように、装置200はガイドワイヤ1802を越えて保護ジャケット1804の中に前進させることができる。保護ジャケット1804は、装置200がそこに進められると、皮膚の下のその位置を維持するように設計されてもよい。装置200の遠位端が保護ジャケット1804内の所定の位置にあるとき、保護ジャケット1804を取り外すことができる。
【0129】
図9Fを参照すると、ある実施の形態では、ジャケット1804の予め分割された対向する端部を引っ張ることにより、保護ジャケット1804を引き抜くことができる。予め分割された端部を互いに引き離すと、ジャケット1804はさらに半分に分割されながら取り出されることになる。
図9A~
図9Fに関して説明したステップの結果、電極500およびバルーン400を含む装置200の遠位端は、
図9Gに示すように、経手根靭帯の近位の皮膚の下に位置することになる。装置200が所定の位置にある状態で、処置を行う前に、適切な配置のために視覚的および/または電子的な確認を行うことができる。例えば、ユーザは、透視による視覚的な確認、および/または、電気的な確認のために、本明細書で説明する神経感知と検出方法を使用できる。さらに、装置200の先端は、ユーザに配置の視覚的な手がかりを提供するために、切開部から延びる大きさおよび形状を有してもよい。
【0130】
装置100を処置領域に挿入するシステムおよび方法にかかわらず、装置200の最終位置が確認されたら、装置200を電気/神経刺激装置ケーブルおよび膨張線に取り付けてもよい。ある実施の形態では、バルーン400は、空気または他の任意の適切な流体で2気圧~10気圧まで膨張させてもよく、透視と同様に超音波ガイドを使用して、バルーンの「ウエスト」の形成が確保され、カテーテルの安定した位置が維持される。膨張の前に、ユーザは、装置200が所望の位置にあること、およびバルーン400のどの部分も入口または出口の切開部の外に出ていないことを確認できる。確認が取れると、バルーン400は、任意の方法の組み合わせを使用して膨張のための準備を行うことができる。例えば、エンドフレータを装置200のルアーフィッティングに取り付け、バルーン400をゆっくりと膨らませ、バルーン400の遠位端を先に膨らませ、適切な圧力範囲(2~10気圧)が達成されるまで装置200の位置を安定させるために使用することが可能である。
【0131】
実施の形態では、バルーン膨張において、自動的かつ義務的な10分の時間制限を有してもよい。このタイマーは、バルーンが所定の閾値(例えば、2気圧より大きい圧力)まで膨らんだら起動し、バルーン圧力が別の所定の閾値(例えば、2気圧より小さい圧力)になったら一時停止する連続動作のタイマーである。 この10分間の制限時間に達した場合、ユーザは、バルーン圧力を2気圧未満に下げて10分間使用できる。10分経過すると、装置を追加で使用できるようになる。10分間の回復タイマーのいずれかの点において、バルーンが所定の閾値(例えば、2気圧より大きい圧力)まで膨らんだ場合、回復タイマーはリセットされる。その後、装置200は、例えば、
図4A~
図4Cに関して議論されるように、処置を実行するために使用されてもよい。
【0132】
様々な実施の形態では、舌圧子やリボンリトラクタに似た細長い平らな道具を挿入して、解剖学的構造(例えば、神経)を電気外科要素500の邪魔にならないように操作するために、または、解剖学的構造がインフレーション中にバルーン400の表面に沿って電気外科要素500に向かってスライドするのを防止するために使用してもよい。道具は、ある実施の形態では、実質的に平らで、剛性または半剛性のいずれかであってよく、異なるサイズの患者および様々な解剖学的構造を有する患者に対応するために様々なサイズを有してもよい。様々な実施の形態では、バルーン400を、道具を設置したまま部分的に膨張させてもよく、その時点で、現在神経などの解剖学的構造が電気外科要素500の上または近傍を移動する危険がもはやないと思われる場合には、道具を除去してもよく、他の実施の形態では、分割中に道具を設置したままにしてもよい。
【0133】
様々な実施の形態では、神経刺激回路を作動させ、正中神経の刺激を評価してもよい。例えば、手根管の外科手術では、電気外科要素510、520、530の任意の組み合わせが手根横靭帯の方に向けられた状態で、手根横靭帯と正中神経との間に装置200を配置することが望まれる場合がある。電気外科要素510、520、530が、神経がその近傍にあることを示すフィードバックを提供する場合、オペレータは、以下のことを推論できる。1)バルーン400は適切に配向されているが、手根横靭帯との間ではなく正中神経の下に不適切に配置されていない、または2)バルーン400は適切に配向されているが、電気外科要素510、520、530が手根横靭帯ではなく正中神経に面していて不適切に配向されている。神経刺激試験が陰性であり、超音波および透視によって電極の適切な位置およびバルーン400のウエスト形成が確認された場合、ハンドル210のスイッチを作動させることによって、切断要素510、520、530を係合させることができる。ある実施の形態において、装置200は、装置200が切断の準備ができているとき、例えば、表示灯を使用して示すことができる。
【0134】
カットの実行中および実行後に、手動および圧力センサを介して圧力が監視されてもよい。実施の形態では、20W-100W、好ましくは20W-30Wで、約1.5秒間のカットが行われる。圧力損失が十分である場合(例えば、約25%超の減少または約1.5気圧より小さい圧力まで)、手根横靭帯が完全に切断されたことを示される。圧力損失パラメータが満たされない場合、追加の切削サイクルを実行してもよく、圧力損失データを観察できる。追加切断サイクルは、実施の形態において、同じ電力設定と時間(例えば、20W-100Wで約1.5秒)であってもよい。ある実施の形態において、バルーン400の形状は、1.5気圧を超える圧力低下を引き起こすことなくTCLが完全に切断された場合に、周辺組織の損傷を防ぐために、各切断サイクルの後に透視を使用して確認することが可能である。圧力監視と透視の組み合わせにより、バルーン400と電極位置500を監視し、必要に応じて調整できる。所定の切断サイクル以上が試みられ、TCLがうまく分割されなかった場合、バルーン400を収縮させ、装置200を取り外して、切断をさらに試みる前に、装置の適切な位置決めを再評価するか、または、処置を放棄して、開放手根管解放に進むことができる。
【0135】
手根横靭帯の完全な分割は、追加的または代替的に、側面図および/または正面図、背面図において、ウエストの喪失を伴うバルーン400の立体構造の変化により確認されてもよい。ある実施の形態では、分割の確認は、装置200の1つまたは複数のセンサからの読み取りによって確認することも可能である。同様に、ある実施の形態では、標的組織の完全な分割を直接的な/内視鏡による可視化で確認できる。
【0136】
手根横靭帯の完全な分割が達成されると、バルーン400を(例えば、エンドフレータを使用して)収縮させることができ、カテーテル300および任意のガイドワイヤ1802は患者の手および手首から取り外すことができ、適切な滅菌ドレッシングおよびスプリントが施される。特に、装置200は、周辺組織の牽引を避けながら、手根管から、そして皮膚から優しく引き抜くことができる。この作業を容易にするために、リトラクターが使用されてもよい。その後、ガイドワイヤ1802を患者から取り外し、十分な止血を確保できる。ある実施の形態では、装置200を廃棄できる。ある実施の形態では、切開部を通常の技術で洗浄・閉鎖できる。
【0137】
追加的にまたは代替的に、様々な実施の形態では、医療処置を行う前に、(例えば、手根管のサイズに基づいて)標的部位に対して適切なサイズの装置200、700を決定するためにサイズ調整ツール(図示せず)が任意に使用されてもよい。実施の形態では、サイズ調整ツールは、装置200、700と同様の構造を有し、平膜力センサまたは圧力センサとともに搭載されたバルーンカテーテルを含んでもよい。サイズ調整ツールを手根管などの標的部位に挿入し、力・圧力を測定できる。ユーザは、先に説明したように手根横靭帯によってバルーンに形成された「ウエスト」に関連するこれらの測定値を評価して、対応するサイズのデバイス200、700を選択してもよい。
【0138】
追加的にまたは代替的に、様々な実施の形態では、処置の前に画像処理技術を使用して、処置の計画に使用するための特定の患者の関連する部位の3Dモデルを生成できる。代表的な画像診断技術としては、X線写真、CTスキャン、MRI検査、超音波検査などがあるが、これらに限定されるものではない。ある実施の形態では、患者の手首、手根管、手根横靭帯の3Dモデルを生成でき、臨床医は、外科的アプローチの事前計画、装置200、700のサイズ調整、および処置のステップを支援するためにモデルを分析できる。
【0139】
代替的には、装置200を使用する手根管に掌側から先に説明した反対方向でアプローチする方が簡単および/または安全である場合もある。これは、人による解剖学的変化と、手根管、手根横靭帯、正中神経、手掌弓血管、および手根横靭帯の安全かつ効果的な分割を達成するために装置200が取るべき適切な経路を特定するために使用する他の重要な解剖学的ランドマークを正確に画像化できる能力に基づいて、一部の患者が該当する可能性がある。
【0140】
この方向で使用するために、装置200のバルーン400および切断要素500は、先に説明した装置と比較して180度向きを変え、バルーン400の球根状ロック部分420が装置200のハンドル側になるようにしてもよい。
【0141】
実施の形態では、超音波検査と透視検査で手根管を定義し、従来通り解剖学的ランドマークを特定するために使用されてもよい。動脈掌部弓が入口位置から安全に離れていることを確認し、手掌腔と小指球腔掌部弓の遠位端から約1cmのところで小さな切開を行うことができる。超音波と透視のガイダンスを用いて、切開部から針や鈍的なディセクタを挿入し、手根横靭帯の下に誘導し、手首に向かって誘導できる。針またはディセクタは、手首の第1または第2の皮膚のしわ付近で手根管を完全に横切ったら、さらに前進して皮膚をテント状にする/抜けるようにしてもよい。超音波は、手根横靭帯が針/ディセクタの前方にある唯一の構造物であり、正中神経や手根管の他の構造物が後方にあることを確認するために使用されてもよい。その後、ガイドワイヤ1802を針/ディセクタを通して配置し、針/ディセクタを除去してもよい。ガイドワイヤ1802の上に、または代替的にディセクタをガイドとして直接配置し、装置200を患者の手掌側面から挿入し、切断電極が手根横靭帯を完全に横断するまで手根管に手首に向かって前進させてもよい。デバイスの正しい位置は、解剖学的ランドマークを用いた超音波や透視画像で確認されてもよい。また、神経刺激プロトコルは、内側神経が装置200の切断要素500およびバルーン400の下および後方に安全に存在するように使用されてもよい。
【0142】
これが確認されると、切断処置の残りの部分は、装置200が前向きのアプローチで使用される前に説明した場合と同じステップを踏む。
【0143】
本明細書で説明する装置の設計と機能とは、従来の装置、システム、および方法と比較して多くの利点を提供する。可視化法と本装置を用いることで、外科医は切開前に慎重に解剖学的評価を行い、安全でない解剖学的変化を可視化した場合には処置を断念することで、神経や他の構造を損傷から保護できる。コーティングされたアクティブリードは、狭いシャープなエッジに沿ってのみ、切断RFエネルギーの短いバーストを非常に正確に集中して行うように設計されている。この設計により、傷害を受ける領域は最大1mmに制限されるが、通常はそれよりもはるかに小さくなる。アクティブリードは、切断操作の間、完全に静止しているため、正確な切断が可能で、損傷の領域を限定し、従来の装置よりも安全性を向上できる。バルーンを使用することで、従来の装置と比較して、切断部と重要な解剖学的構造部との間に大きな隔たりが設けられており、処置の安全性が向上する。正中神経と尺骨神経は、従来の装置よりもはるかに大きく、処置中に損傷の領域を超えて変位する。
【0144】
本開示は、その中の特定の実施の形態を参照して説明したが、本開示の真の精神と範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ、同等物が置換され得ることは、当業者には理解されるものと思われる。さらに、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、特定の状況、表示、材料および組成物、プロセスステップまたはステップに適応するために、多くの修正を行うことができる。このような変更はすべて、本書に添付された特許請求の範囲に含まれることを意図している。
【国際調査報告】