(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】時計又は測時器、並びに該時計又は測時器の巻き上げ及び時刻設定の為の時計機構
(51)【国際特許分類】
G04B 27/04 20060101AFI20230824BHJP
G04B 3/04 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G04B27/04 Z
G04B3/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022573577
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 NL2021050324
(87)【国際公開番号】W WO2021242091
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522286159
【氏名又は名称】フレクサス メカニズムス アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Flexous Mechanisms IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ウィーク,シブレン レナルト
(72)【発明者】
【氏名】ルスティヒ,マールテン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】スプルイト,ヨハネス ヴィルヘルムス ベンヤミン
(57)【要約】
時計又は測時器(1)であって、該時計又は該測時器(1)の機能を設定する為の時計機構を備えており、該時計機構は、該軸(4)に相対的にスライド可能であり且つ回転可能に固定されている冠歯車(6)又はクラッチを備えている長手方向に移動可能な軸(4)と、時刻設定歯車(25)とを備えており、ここで、該長手方向に移動可能な軸(4)は、個々の該歯車(25、6、7)がアイドル構成又は巻き上げ構成に配置される第1の位置と、個々の該歯車(25、6、7)が時間設定構成で配置されている第2の位置とを有する。該時計機構は、入力部(9)及び出力部(10)を有するコンプライアントメカニズム(8)を備えており、ここで、該出力部(10)は該冠歯車(6)又はクラッチに接続しており、該入力部(9)は、縦方向に可動なシャフト(4)の動きによって作動されることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計又は測時器(1)であって、筐体(2)と、該筐体(2)の中に、該時計又は該測時器(1)の機能を設定する為の時計機構を備えており、該時計機構は、該筐体(2)の内部から該筐体(2)の外側に延在している長手方向に移動可能な軸(4)を備えており、該長手方向に移動可能な軸(4)は、該軸(4)に相対的にスライド可能であり且つ回転可能に固定されている冠歯車(6)又はクラッチと、時刻設定歯車(25)とを備えており、該長手方向に移動可能な軸(4)は、該冠歯車(6)及び該時刻設定歯車(25)が該長手方向に移動可能な軸(4)によって第1の構成に配置される第1の位置と、該各歯車(6、25)が該長手方向に移動可能な軸(4)によって第2の構成に配置される第2の位置との少なくとも2つの別個の位置を有し、該第2の構成は、該冠歯車(6)又はクラッチが直接的に又は間接的に該時刻設定歯車(25)に駆動接続する時刻設定構成である、前記時計又は測時器(1)において、該時計機構は、入力部(9)及び出力部(10)を有するコンプライアントメカニズム(8)を更に備えており、該コンプライアントメカニズム(8)は、フレーム(11)と、少なくとも第1の剛体可動部分(12)及び第2の剛体可動部分(13)とを備えており、該各可動部分(12、13)は該フレーム(11)によって支持され、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)は、該コンプライアントメカニズム(8)の該入力部(9)及び該出力部(10)を画定し、該出力部(10)は、該長手方向に移動可能な軸(4)の移動によって該入力部(9)に力がかけられた時に該第1の剛体可動部分(12)及び該第2の剛体可動部分(13)が、互いに調和された複数の運動を実行するように、該冠歯車(6)又はクラッチに接続しており、好ましくは該複数の運動が互いに反対方向を有することを特徴とする、前記時計又は測時器(1)。
【請求項2】
該第1の構成が、水晶時計の場合にアイドル構成であり、機械式時計の場合に該第1の構成が巻き上げ構成であることを特徴とする、請求項1に記載の時計又は測時器(1)。
【請求項3】
該時計機構が、該長手方向に移動可能な軸(4)に回転可能に取り付けられた巻き上げ歯車(7)を更に備えており、ここで、該第1の位置において、個々の該歯車は、該長手方向に移動可能な軸(4)により、該冠歯車(6)又はクラッチが該巻き上げ歯車(7)と係合する該巻き上げ構成に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の時計又は測時器(1)。
【請求項4】
該時刻設定構成において該冠歯車(6)又はクラッチ及び該時刻設定歯車(25)と接触する選択歯車(5)が設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項5】
該コンプライアントメカニズム(8)が、一体構造である、すなわち単一の部片であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項6】
該選択歯車(5)が該フレーム(11)によって可動に支持されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項7】
該長手方向に移動可能な軸(4)が、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)内に開口を通って延在していることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項8】
該冠歯車(6)又はクラッチが、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)のうちの、該コンプライアントメカニズム(8)の該出力部(10)として機能する一方と係合し、その剛体可動部分に対して位置的に固定されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項9】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)が、1以上のたわみ部、例えば第1及び第2のたわみ部(14、15)、によ直接的に又は間接的に、該フレーム(11)により取り付けられていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項10】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)がそれぞれ、第3のたわみ部(16)及び第4のたわみ部(17)それぞれを介して中間体(18)に接続されており、該中間体(18)は、使用時に該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)が反対方向に移動できるようにする為に、1又は複数の第5のたわみ部(19)を介して該フレーム(11)によって支持されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項11】
該複数の第5のたわみ部が適用される場合、該複数の第5のたわみ部(19)は、該コンプライアントメカニズム(8)の該入力部(9)に力が加えられた時に、該中間体(18)が並進運動を実行することが可能にされるようにする為に、互いに平行であることを特徴とする、請求項10に記載の時計又は測時器。
【請求項12】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)は、該入力部(9)に力が加えられた時に、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)が鏡像回転運動を実行するようにする為に、第6のたわみ部(20)を介して互いに接続されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項13】
該フレーム(11)が2つのフレーム部分(11.1、11.2)を備えており、該2つのフレーム部分が、該長手方向に移動可能な軸(4)の互いに反対の側に位置していることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項14】
該たわみ部(23)のうちの少なくとも1つが座屈能力を有することを特徴とする、請求項9~13のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項15】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)並びに該中間体(18)のうちの少なくとも1つに、該フレーム(11)によって柔軟に支持される停止片(22)を受けるように構成された1以上の溝(21)が設けられていることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の時計又は測時器。
【請求項16】
時計又は測時器(1)の機能を設定する為の時計機構であって、長手方向に移動可能な軸(4)を備えており、該長手方向に移動可能な軸(4)は、該軸(4)に相対的にスライド可能であり且つ回転可能に固定されている冠歯車(6)又はクラッチと、時刻設定歯車(25)とを備えており、該長手方向に移動可能な軸(4)は、該冠歯車(6)及び該時刻設定歯車(25)が該長手方向に移動可能な軸(4)によって第1の構成に配置される第1の位置と、個々の該歯車(6、25)が該長手方向に移動可能な軸(4)によって第2の構成に配置される第2の位置との少なくとも2つの別個の位置を有し、該第2の構成は、該冠歯車(6)又はクラッチが直接的に又は間接的に該時刻設定歯車(25)に駆動接続する時刻設定構成である、前記時計機構において、該時計機構は、入力部(9)及び出力部(10)を有するコンプライアントメカニズム(8)を更に備えており、該コンプライアントメカニズム(8)は、フレーム(11)と、少なくとも第1の剛体可動部分(12)及び第2の剛体可動部分(13)とを備えており、該各可動部分(12、13)は該フレーム(11)によって支持され、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)は、該コンプライアントメカニズム(8)の該入力部(9)及び該出力部(10)を画定し、該出力部(10)は、該長手方向に移動可能な軸(4)の移動によって該入力部(9)に力がかけられた時に該第1の剛体可動部分(12)及び該第2の剛体可動部分(13)が互いに反対方向への運動を実行するように、該冠歯車(6)又はクラッチに接続しており、好ましくは該複数の運動が互いに反対方向を有することを特徴とする、前記時計機構。
【請求項17】
該第1の構成が、水晶時計の場合にアイドル構成であり、機械式時計の場合に該第1の構成が巻き上げ構成であることを特徴とする、請求項15に記載の時計機構。
【請求項18】
該時計機構が、該長手方向に移動可能な軸(4)に回転可能に取り付けられた巻き上げ歯車(7)を更に備えており、ここで、該第1の位置において、個々の該歯車は、該長手方向に移動可能な軸(4)により、該冠歯車(6)又はクラッチが該巻き上げ歯車(7)と係合する該巻き上げ構成に配置されることを特徴とする、請求項16又は17に記載の時計機構。
【請求項19】
該時刻設定構成において該冠歯車(6)又はクラッチ及び該時刻設定歯車(25)と接触する選択歯車(5)が設けられていることを特徴とする、請求項16~18のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項20】
該コンプライアントメカニズム(8)が、一体構造である、すなわち単一の部片であることを特徴とする、請求項16~19のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項21】
該長手方向に移動可能な軸(4)が、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)内に開口を通って延在していることを特徴とする、請求項16~20のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項22】
該冠歯車(6)又はクラッチが、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)のうちの、該コンプライアントメカニズム(8)の該出力部(10)として機能する一方と係合し、その剛体可動部分に対して位置的に固定されていることを特徴とする、請求項16~21のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項23】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)が、1以上のたわみ部、例えば第1及び第2のたわみ部(14、15)、により直接的又は間接的に、該フレーム(11)により取り付けられていることを特徴とする、請求項16~22のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項24】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)がそれぞれ、第3のたわみ部(16)及び第4のたわみ部(17)それぞれを介して中間体(18)に接続されており、該中間体(18)は、使用時に該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)が反対方向に移動できるようにする為に、複数の第5のたわみ部(19)を介して該フレーム(11)によって支持されていることを特徴とする、請求項16~23のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項25】
該複数の第5のたわみ部が適用される場合、該複数の第5のたわみ部(19)は、該コンプライアントメカニズム(8)の該入力部(9)に力が加えられた時に、該中間体(18)が並進運動を実行することが可能にされるようにする為に、互いに平行であることを特徴とする、請求項24に記載の時計機構。
【請求項26】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)は、該入力部(9)に力が加えられた時に、該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)が鏡像回転運動を実行するようにする為に、第6のたわみ部(20)を介して互いに接続されていることを特徴とする、請求項16~25のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項27】
該フレーム(11)が2つのフレーム部分(11.1、11.2)を備えており、該2つのフレーム部分が、該長手方向に移動可能な軸(4)の互いに反対の側に位置していることを特徴とする、請求項16~26のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項28】
該たわみ部(23)のうちの少なくとも1つが座屈能力を有することを特徴とする、請求項23~27のいずれか1項に記載の時計機構。
【請求項29】
該第1及び該第2の剛体可動部分(12、13)並びに該中間体(18)のうちの少なくとも1つに、該フレーム(11)によって柔軟に支持される停止片(22)を受けるように構成された1以上の溝(21)が設けられていることを特徴とする、請求項16~28のいずれか1項に記載の時計機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計又は測時器に関し、該時計又は該測時器は、筐体と、該筐体の中に、該時計又は該測時器の巻き上げ及び/又は時刻設定の為の時計機構とを備えている。
【0002】
本発明は更に、該時計又は測時器の機能を設定する為の該時計機構に関し、該時計機構は、該筐体の内部から該筐体の外側に延在している長手方向に移動可能な軸を備えており、該長手方向に移動可能な軸は、該軸に相対的にスライド可能であり且つ回転可能に固定されている冠歯車(contrate wheel)又はクラッチと、時刻設定歯車(time setting wheel)とを備えており、該長手方向に移動可能な軸は、個々の該歯車が該長手方向に移動可能な軸によって第1の構成に配置される第1の位置と、個々の該歯車が該長手方向に移動可能な軸によって第2の構成に配置される第2の位置との少なくとも2つの別個の位置を有し、該第2の構成は、該冠歯車又はクラッチが直接的に又は間接的に該時刻設定歯車に駆動接続する時刻設定構成である。
【背景技術】
【0003】
そのような時計又は測時器は、米国特許第2,412,493号明細書、中国特許出願公開第154233(A)号明細書、特公昭41-16617(Y1)号明細書、及び米国特許第647544(A)号明細書によって開示されており、慣用的な機械式時計の標準的な構成である。しかしながら、プリアンブルに記載のこの既知の機構は、慣用的な水晶時計にも適用される。該プリアンブルにおいて言及された該第1の構成は、そのような水晶時計の場合、アイドル構成である。慣用的な機械式時計に関する場合、該第1の構成は巻き上げ構成である。
【0004】
そのような慣用的な機械式時計又は水晶時計で必要とされる更なる部品は、時計又は測時器の筐体の外側において、長手方向に移動可能な軸に取り付けられた竜頭を噛み合わせることによって実行される該軸の運動が、所望の運動に変換されることを可能にする為の一連のレバーである。この運動は、個々の該歯車、すなわち、該時計又は測時器の該筐体内部の時刻設定歯車、及びクラッチ又は冠歯車、の係合を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プリアンブルに記載の該時計又は測時器の該時計機構において必要とされる部品の数を減らすことである。
【0006】
本発明の更なる目的は、機械式時計又は測時器のそのような時計機構の堅牢性を向上させることである。
【0007】
以下の開示から明らかになるこれら及び他の目的及び利点は、添付の請求項の1項以上の特徴を有する、時計又は測時器及び時計機構によってもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点において、該水晶時計又は機械式時計の該時計機構は、入力部及び出力部を有するコンプライアントメカニズム(compliant mechanism)を備えており、該コンプライアントメカニズムは、フレームと、少なくとも第1の剛体可動部分及び第2の剛体可動部分とを備えており、該各可動部分は該フレームによって支持され、該第1及び該第2の剛体可動部分は該コンプライアントメカニズムの該入力部及び該出力部を画定し、該出力部は、該長手方向に移動可能な軸の移動によって該入力部に力がかけられた時に該第1の剛体可動部分及び該第2の剛体可動部分が、互いに調和された複数の運動を実行するように、該冠歯車又はクラッチに接続している。それらの運動は、例えば互いに反対方向への運動である。該長手方向に移動可能な軸の移動は、該時計又は測時器の筐体の付近且つ外側において、該軸上の該竜頭を手動で噛み合わせることによって行われる。
【0009】
本明細書において使用される場合、語「コンプライアントメカニズム」は、弾性変形可能な要素によって互いに又は土台に接続される剛体部分を有する機構を云う。本発明に従って使用される該コンプライアントメカニズムは、該筐体の外側で該軸に与えられた手動の入力された力及び変位を、弾性体の変形を通じて、該冠歯車又はクラッチに接続している該筐体内の該出力部の出力される力及び変位に転換することができる。
【0010】
本発明が慣用的な機械式時計に適用される場合、該時計機構は、該長手方向に移動可能な軸に回転可能に取り付けられた巻き上げ歯車(winding wheel)を更に備えており、該第1の位置において、個々の該歯車は、該長手方向に移動可能な軸により、該冠歯車又はクラッチが該巻き上げ歯車と係合する該巻き上げ構成に配置される。
【0011】
好適には、一部の構成において、時刻設定構成において該冠歯車又はクラッチ及び該時刻設定歯車と接触する選択歯車(selection wheel)が設けられる。該選択歯車は、該時計の更なる機能、例えばカレンダー機能の設定、の為に使用されることができる。
【0012】
好ましくは、該コンプライアントメカニズムは、部品数を大幅に減らす為に、一体構造である、すなわち単一の部片である。
【0013】
好ましくは、言及された該選択歯車はフレームによって可動に支持される。
【0014】
好適には、該長手方向に移動可能な軸は、該第1及び該第2の剛体可動部分の開口を通って延在する。そして、該筐体の外側で該入力部にかけられる力が、該長手方向に移動可能な軸を介して、該筐体内部の該機構に伝達されることができる。
【0015】
好ましくは、該冠歯車又はクラッチは、該第1及び該第2の剛体可動部分のうちの、該コンプライアントメカニズムの該出力部として機能する一方と係合し、そのような冠歯車又はクラッチは、その剛体可動部分に対して位置的に固定されている。
【0016】
好適な実施態様において、該第1及び該第2の剛体可動部分は、1以上のたわみ部、例えば第1及び第2のたわみ部、により直接的又は間接的に、該フレームにより取り付けられている。
【0017】
第1の実施態様において、該第1及び該第2の剛体可動部分は各々、1以上のたわみ部、例えば第3のたわみ部及び第4のたわみ部、それぞれを介して中間体に接続されており、該中間体は、使用時に該第1及び該第2の剛体可動部分が反対方向に移動できるようにする為に、第5のたわみ部を介して該フレームによって支持されている。
【0018】
該第1の実施態様において、複数の第5のたわみ部があり、該複数の第5のたわみ部は、該コンプライアントメカニズムの該入力部に力が加えられた時に、該中間体が並進運動を実行することが可能にされるようにする為に、互いに平行であることが好ましい。そして、この並進運動は、該第1及び該第2の剛体可動部分の互いに反対方向への該運動に対して直角となる。
【0019】
第2の実施態様において、該第1及び該第2の剛体可動部分は、該入力部に力が加えられた時に、該第1及び該第2の剛体可動部分が鏡像回転運動を実行するようにする為に、第6のたわみ部を介して互いに接続されていることが好ましい。
【0020】
更に別の実施態様において、フレームが2つのフレーム部分を備えており、該2つのフレーム部分が、該長手方向に移動可能な軸の互いに反対の側に位置していることが好ましい。
【0021】
好ましくは、該時計内の該たわみ部のうちの少なくとも1つが座屈能力を有する。これは双安定の挙動をもたらし、それは、例えば巻き上げ又は時刻設定又はカレンダー機能の設定の為の、本発明の該時計又は測時器の特定の構成を正確に規定及び維持する為に望ましいことがありうる。
【0022】
別の好ましい特徴は、該第1及び該第2の剛体可動部分並びに該中間体のうちの少なくとも1つに、該フレームによって柔軟に支持される停止片を受けるように構成された溝が設けられていることである。これは、該停止片を該溝の1つに置くことにより、本発明の該時計又は測時器の該巻き上げ構成及び/又は時刻設定構成又は他の構成を保証する可能性を更に支援する。
【0023】
本発明は、以降で、添付の特許請求の範囲に関して制限的なものでない、本発明に従う時計又は測時器の時計機構の幾つかの例示的実施態様の図面を参照して、更に解説される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の第1の実施態様を示す。
【
図2】
図2は、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の第1の実施態様を示す。
【
図3】
図3は、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の第1の実施態様を示す。
【
図5】
図5は、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の第2の実施態様を示す。
【
図6】
図6は、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の第2の実施態様を示す。
【
図7】
図7は、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の第2の実施態様を示す。
【
図8】
図8は、座屈するたわみ部を有する、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の実施態様を示す。
【
図9】
図9は、座屈するたわみ部を有する、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の実施態様を示す。
【
図10】
図10は、本発明に従う該時計又は測時器の時計機構の更に別の実施態様を示す。
【
図11】
図11は、本発明に従う該時計又は測時器の文字盤を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図中で同じ参照符号が適用される場合、それらの符号は必ず同じ部分を指す。
【0026】
最初に
図11を見ると、この図は、筐体2を備えた時計又は測時器1を示している。該筐体2の中に、時刻設定の為の時計機構が設けられている。このことは水晶時計と機械式時計の両方に該当する。任意的に、機械式時計に関する場合、該時計機構は、巻き上げの為にも適合する。更に、別の機能、例えば該時計又は測時器1のカレンダー機能、を設定する為の機構がありうる。該時計の該機能の設定は、該筐体2の内部から該筐体2の外側に延在している長手方向に移動可能な軸4に取り付けられた竜頭3を回転させることによって行われる。巻き上げは、該竜頭3が実線で示されている位置にある時に行われることができる。時刻設定は、該竜頭3が点線で示されている位置にある時に行われることができる。該時計又は測時器1がカレンダー(又は他の)機能を備えている場合、該竜頭3は、このカレンダー又は他の機能の設定を定める、更なる中間位置を呈しうる。
【0027】
当業者は、カレンダー機能についての上記の言及は例を与える目的に過ぎず、該時計又は測時器1に属する多数の他の機能がありうることを理解する。その意味で、何が時計又は測時器を構成するかの限定は不確定的である。何故ならば、iPhone(登録商標)の登場後は時計がいつ単に時計であるのかが不明瞭になっている為であり、すなわち、iPhone(登録商標)は、iPod(登録商標)、カメラ、又はインターネットブラウザとも称されることができる。https://www.youtube.com/watch?v=x7qPAY9JqE4を参照されたい。
【0028】
該竜頭3を該実線の位置と該点線の位置との間で移動させると、該竜頭3が取り付けられている該長手方向に移動可能な軸4が、該筐体2の内部で該時計機構の異なる構成間を移動する。本発明は特に、添付の
図1~
図10を参照して更に解説されるように、該筐体2内部の該時計機構に適用される。以下の説明は機械式時計に関連するが、本発明は水晶時計にも適用できることが留意されるべきである。その場合、以降で説明される該巻き上げの機能は存在しない。
【0029】
以降で解説される異なる実施態様に共通するのは、該時計機構が、該筐体1の内部から該筐体1の外部に延在している長手方向に移動可能な軸4を備えており、この長手方向に移動可能な軸4が、該軸4に対してスライド可能であり且つ回転可能に固定されている冠歯車又はクラッチ6を備えていることである。更に、時刻設定歯車25と、該長手方向に移動可能な軸4に回転可能に取り付けられている巻き上げ歯車7と、がある。該長手方向に移動可能な軸4は、個々の該歯車が、該長手方向に移動可能な軸4により、該冠歯車又はクラッチ6が該巻き上げ歯車7と係合する巻き上げ構成(
図1)に配置される第1の位置と、個々の該歯車が、該長手方向に移動可能な軸4により、該冠歯車又はクラッチ6が直接的に又は間接的に該時刻設定歯車25に駆動接続する時刻設定構成に配置される第2の位置との少なくとも2つの別個の位置を有する。
【0030】
任意的に、該時計又は測時器1はカレンダー設定構成を備えている。これは、
図2に示されている。この構成において、該カレンダー機能を設定する為の歯車26を駆動することができる選択歯車5が適用される。
図3の該時刻設定構成にある時のみ、該選択歯車5は、該冠歯車6又はクラッチ及び該時刻設定歯車25と接触する。該選択歯車5が該時刻設定歯車25と接触することを可能にする為に、好ましくは、該選択歯車5が、たわみ部27に取り付けられた選択レバー24を介してフレーム11によって支持されるようにすることにより、該選択歯車5は該フレーム11によって可動に支持される。
【0031】
該巻き上げ構成は、第1の実施態様に関して
図1に、第2の実施態様に関して
図5、
図6及び
図7に、第3の実施態様に関して
図8及び
図9に、そして第4の実施態様に関して
図10に描かれている。該時刻設定構成は、該第1の実施態様について
図3に、該第2の実施態様について
図5に、そして該第3の実施態様について
図9に描かれている。
図2及び
図4は、任意的な機能であるカレンダー機能を描いており、ここでは、カレンダー機能歯車(calendar function wheel)26と係合する選択歯車5が適用され、該カレンダー機能歯車26は、該竜頭3が、例えば
図1に示されている該巻き上げ位置と
図3に示されている該時刻設定位置との間の、日付設定位置に置かれている時に回転されることができる。すでに言及されたように、カレンダー機能の該機能は、任意的なものであるだけでなく、当業者には明らかであるように非制限的な例でもある。例えば、外部デバイス、例えば家庭音声システム、のリモコンの機能を、該竜頭3の設定に含めることができる。
【0032】
各異なる実施態様が共有し、共通に有する特徴は以下である。
【0033】
第1の共通の特徴は、該時計機構が、入力部9及び出力部10を有するコンプライアントメカニズム8を備えており、該出力部10は、該冠歯車又はクラッチ6に接続しており、該入力部9は、該入力部9に接続されている該長手方向に移動可能な軸4を移動させることによって作動されることができることである。これは通常、該時計機構又は測時器1の該筐体2の外部において、該長手方向に移動可能な軸4に設けられている該竜頭3を手動で噛み合わせることによって行われる。
【0034】
好ましくは、該コンプライアントメカニズム8は、一体構造である、すなわち単一の部片から作られる。
【0035】
第2の共通する特徴は、該コンプライアントメカニズム8が、フレーム11と、少なくとも第1の剛体可動部分12及び第2の剛体可動部分13とを備えており、各可動部分12、13は該フレーム11によって支持され、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13は該コンプライアントメカニズムの該入力部9及び該出力部10を画定すると共に、該入力部9に力がかけられた時に該第1の剛体可動部分12及び該第2の剛体可動部分13が、互いに調和された複数の運動、好ましくは互いに反対方向への運動、を実行するように、該第1の剛体可動部分12と該第2の剛体可動部分13とが相互に接続されていることである。
【0036】
該入力部9及び該出力部10の調和された複数の運動は、
図1を
図3と比較することによって該第1の実施態様に見ることができ、
図1は該巻き上げ構成を表し、
図3は該時刻設定構成を表している。
図3において、該入力部9と該出力部10とは、
図1よりも離れている。同様の比較が、該第2の実施態様については、該時刻設定構成を表す
図5と該巻き上げ構成を表す
図6との間で、該第3の実施態様については、該時刻設定構成を表す
図9と該巻き上げ構成を表す
図8との間で行われることができる。
【0037】
該異なる実施態様の更に別の共通する特徴は、該長手方向に移動可能な軸4が、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13内に開口を通って延在していることである(図示せず)。
【0038】
更に別の共通する特徴は、該冠歯車又はクラッチ6が、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13の一方、とりわけ、該コンプライアントメカニズムの該出力部10として機能する該剛体可動部分13、と係合していることである。該冠歯車又はクラッチ6は、この剛体可動部分13に対して位置的に固定されている。
【0039】
該異なる示されている実施態様の更に別の共通する特徴は、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13が、1以上のたわみ部、例えば第1及び第2のたわみ部14、15、により直接的に又は間接的に、該フレームにより取り付けられていることである。
【0040】
図1の該第1の実施態様に固有であるのは、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13が各々、1以上のたわみ部、例えば第3及び第4のたわみ部16、17、それぞれを介して、中間体18に接続されており、該中間体18は、使用時に該第1及び該第2の剛体可動部分12、13が反対方向に移動できるようにする為に、第5のたわみ部19を介して該フレーム11によって支持されていることである。
【0041】
また、
図1の該第1の実施態様に固有なのは、該コンプライアントメカニズム8の該入力部9に力が加えられた時に、該中間体18が並進運動を実行することが可能にされるようにする為に、該複数の第5のたわみ部19が互いに平行であることである。
【0042】
図5、
図6及び
図7の該第2の実施態様、及び
図8及び
図9の該第3の実施態様に固有なのは、該入力部9に力が加えられた時に、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13が鏡像回転運動を実行するようにする為に、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13が、(例えば単一の)第6のたわみ部20を介して互いに接続されていることである。
図8及び
図9は、該剛体可動部分13が、座屈するたわみ部23を介して該フレーム11に接続していることを示している。
【0043】
図10に描かれる第4の実施態様に従うと、該フレーム11は、2つのフレーム部分11.1及び11.2を備えており、該2つのフレーム部分は、該長手方向に移動可能な軸4の互いに反対の側に位置している。
【0044】
該第1、第2、及び第3の実施態様を参照すると、該第1及び該第2の剛体可動部分12、13並びに該中間体18のうちの1つに、該フレーム11によって柔軟に支持される停止片22を受けるように構成された複数の溝21が設けられていることが更に示されている。
【0045】
本発明は、上記で本発明の該時計又は測時器の例示的実施態様を参照して解説されたが、本発明は、それら特定の実施態様に制約されず、該実施態様は、本発明から逸脱することなく、多くの方式で更に変更されることができる。それ故に、該解説された例示的実施態様は、それに厳密に従って添付の特許請求の範囲を解釈する為に使用されるべきではない。むしろ、該実施態様は、単に添付の特許請求の範囲の文言を説明することが意図され、請求項をそれらの例示的実施態様に制限する意図はない。それ故に、本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲に従ってのみ解釈されるべきであり、特許請求の範囲の文言に存在しうる曖昧性は、それらの例示的実施態様を使用して解決されるべきである。
【符号の説明】
【0046】
1 時計又は測時器
2 筐体
3 竜頭
4 長手方向に移動可能な軸
5 選択歯車
6 冠歯車又はクラッチ
7 巻き上げ歯車
8 コンプライアントメカニズム
9 入力部
10 出力部
11 フレーム
12 第1の剛体可動部分
13 第2の剛体可動部分
14 第1のたわみ部
15 第2のたわみ部
16 第3のたわみ部
17 第4のたわみ部
18 中間体
19 複数の第5のたわみ部
20 第6のたわみ部
21 複数の溝
22 停止片
23 座屈するたわみ部
24 選択レバー
25 該時刻設定歯車
26 任意の機能歯車
27 第7のたわみ部
【国際調査報告】