(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】蒸気生成システム用のカートリッジ
(51)【国際特許分類】
A24F 40/42 20200101AFI20230824BHJP
A24F 40/46 20200101ALI20230824BHJP
A24F 40/40 20200101ALI20230824BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/46
A24F40/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576543
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2021072133
(87)【国際公開番号】W WO2022034006
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/108281
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン, ヒー キエム
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA05
4B162AA22
4B162AB14
4B162AC17
4B162AC22
(57)【要約】
eタバコ等の蒸気生成システム用のカートリッジ(10)は空気流路全体にわたり配置されたメッシュ(50)の層を含み、メッシュ(50)の少なくとも一面が撥水材料を含んでいる。メッシュ(50)は、吸気口(56)又は排気口(32)から漏れる恐れのある凝縮された蒸気生成液の通過を阻止しながら、空気流路に沿った空気の流れを可能にする。撥水材料は、PTFE又はセラミックナノコーティング等のフルオロポリマーの表面コーティングであってよい。好適には、メッシュ(50)の平均細孔サイズは30μm未満である。メッシュ(50)は、吸気口(56)も画定する予め加工されたカートリッジ密閉アセンブリ(11)内で支持された略平面シートであってよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気生成システム用のカートリッジ(10)であって、
吸気口(56)と、
気化チャンバ(30)と、
排気口(32)と、
前記気化チャンバ(30)を通って前記吸気口(56)から前記排気口(32)まで伸長する空気流路と、
前記空気流路全体にわたり配置されたメッシュ(50)と、を含み、
前記メッシュ(50)の少なくとも一面が撥水材料を含んでいる、カートリッジ(10)。
【請求項2】
前記撥水材料がセラミックコーティングである、請求項1に記載のカートリッジ(10)。
【請求項3】
前記セラミックコーティングが二酸化ケイ素を含んでいる、請求項2に記載のカートリッジ(10)。
【請求項4】
前記撥水材料がフルオロポリマーコーティングである、請求項1に記載のカートリッジ(10)。
【請求項5】
前記撥水材料がPTFEである、請求項4に記載のカートリッジ(10)。
【請求項6】
前記気化チャンバ(30)に加熱器(42)を更に含み、前記メッシュ(50)が、前記加熱器(42)の動作中に、前記メッシュ(50)の温度が前記撥水材料の熱劣化を避けるのに充分低く保たれるように配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のカートリッジ(10)。
【請求項7】
前記加熱器(42)の動作中における前記メッシュ(50)の温度が270℃未満に保たれる、請求項6に記載のカートリッジ(10)。
【請求項8】
前記メッシュ(50)の平均細孔サイズが50μm未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカートリッジ(10)。
【請求項9】
前記メッシュ(50)が、前記吸気口(56)と前記気化チャンバ(30)の間で空気流路全体にわたり配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のカートリッジ(10)。
【請求項10】
前記吸気口(56)及び前記メッシュ(50)を含むカートリッジ密閉アセンブリ(11)を更に含んでいる、請求項1~9のいずれか1項に記載のカートリッジ(10)。
【請求項11】
前記カートリッジ密閉アセンブリ(11)が、
前記吸気口(56)を含むカートリッジカバー(52)と、
ガスケット(54)と、
前記カートリッジカバー(52)と前記ガスケット(54)の間で載置された前記メッシュ(50)の層と、
を含んでいる、請求項10に記載のカートリッジ(10)。
【請求項12】
前記ガスケット(54)が前記気化チャンバ(30)の周囲を密閉する、請求項11に記載のカートリッジ(10)。
【請求項13】
前記カートリッジカバー(52)が一体化された電極(67)を含んでいる、請求項11又は12に記載のカートリッジ(10)。
【請求項14】
前記カートリッジは、
第1の部品としての前記カートリッジ密閉アセンブリ(11)と、
前記カートリッジ密閉アセンブリ(11)が取り付けられた第2の部品(12)であって、前記気化チャンバ(30)を含む第2の部品(12)と、
前記第2の部品(12)が取り付けられた第3の部品(13)であって、蒸気生成液用の液溜(24)を含む第3の部品(13)と、
を含んでいる3部品カートリッジである、請求項11~13のいずれか1項に記載のカートリッジ(10)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のカートリッジ(10)と電源(80)を含む蒸気生成装置(22)とを含む蒸気生成システムであって、
前記カートリッジ(10)の遠位端が前記蒸気生成装置(22)に着脱可能に接続されていて、
電極(67)が、制御回路(82)を介して、前記電源(80)を前記カートリッジ(10)内の加熱器(42)に結合する、蒸気生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、液体を加熱して蒸気を生成し、当該蒸気が冷却及び凝縮することによりユーザーが吸入するエアロゾルを形成すべく構成された蒸気生成システム用のカートリッジに関する。本開示はまた、蒸気生成装置、及び当該蒸気生成装置で使用されるべく構成されたカートリッジを含む蒸気生成システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気生成システム(又はより一般的に電子タバコ又はeタバコ)という用語は、従来のタバコの喫煙感覚又は体験をシミュレートすることを意図した携帯電子装置を指す。電子タバコは、冷却及び凝縮し、次いでユーザーが吸入するエアロゾルを形成する蒸気を生成する蒸気生成液を加熱することにより機能する。従って、eタバコの使用は「ベーピング(喫蒸)」と称する場合がある。蒸気生成液は、例えば、多価アルコール及びその混合物、例えばグリセリン又はプロピレングリコールを含んでいてよい。蒸気生成液はニコチンを含んでいる場合がある。
【0003】
一般に、蒸気は、臨界温度よりも低い温度で気相の物質であり、これは温度を下げずに圧力を高めることにより蒸気を液体に凝縮できることを意味するのに対し、エアロゾルは空気又はその他の気体中における微細な固体粒子又は液滴の懸濁液である。しかし、用語「エアロゾル」及び「蒸気」が本明細書において、特にユーザーが吸入するために生成された吸入可能な媒体の形状に関して入れ替え可能に使用できることに注意されたい。
【0004】
典型的なeタバコ気化装置、すなわち蒸気生成液を気化させるシステム又はサブシステムは加熱要素を用いて、カプセル、タンク又は液溜に貯蔵された液体から蒸気を生成する。ユーザーがeタバコを操作する場合、液体が液溜から液体移送要素、例えば綿芯又は多孔質セラミックブロックを通って搬送され、加熱要素により加熱されて蒸気を生成し、冷却及び凝縮されて吸入可能なエアロゾルを形成する。eタバコを使い易くすべく、着脱可能なカートリッジを用いる場合が多い。これらのカートリッジは多くの場合、液槽、液体移送要素及び加熱器を含む一体化された要素を意味する「カートマイザ」として構成されている。電気コネクタもまた、加熱要素と電源との間の電気接続を確立すべく設けられていてよい。このようなカートリッジは使い捨てであってよく、すなわち液溜内の液体を消耗した後の再利用の可能性を意図していない。代替的に、これらは蒸気生成液の新たな供給により液溜を補充可能にする手段を備え、再使用可能であってよい。特に使い捨てカートリッジの場合、部品の数及び複雑さを減らすことにより無駄を減らして製造工程をより簡単且つ安価にすることが望ましい。
【0005】
eタバコ用のカートリッジは典型的に、第1の終端に吸気口を、及び第2の、反対側終端に排気口を含んでいる。(システムのユーザーの観点から考えて、カートリッジの第1の終端は遠位端とも称し、カートリッジの第2の終端も近位端又は口側端と称する場合がある)。カートリッジの第1の終端は、例えば電源及び制御電子要素を含んでいてよい蒸気生成装置に着脱可能に接続されるべく構成されている。ユーザーはカートリッジの第2の終端の吸い口から吸入して空気を空気流路に沿って吸気口から排気口へ送る。空気流路は、加熱要素により気化された液体を空気と混合する気化チャンバを通過する。蒸気は、気化チャンバから排気口に向かって通過する際に冷却し、吸入された空気の流れにエアロゾルを形成する微小液滴に少なくとも部分的に凝縮する。
【0006】
エアロゾルからの液滴は、気化チャンバの壁又は空気流路の他の部分に衝突して付着することができる。気化した液体の一部は、より低温の壁で直接再凝縮する場合がある。液滴が壁に蓄積するにつれて合体して重力又は吸気口又は排気口に向かう移動空気の影響を受けて流れ得る移動液体を形成されていてよい。更に、気化チャンバ内の液体の一部は気化に失敗してチャンバに溜まり、そこから同様に吸気口又は排気口に向けて流れることができる。このような液体が吸気口又は排気口から蒸気生成システムの外部に漏れるのは見苦しく、汚れ又はその他ユーザーが許容できない現象が生じる恐れがあるため望ましくない。追加的又は代替的に、漏れた液体は、蒸気生成装置の電源又は制御電子要素に達して損傷を与える恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蒸気生成システム用のカートリッジを提供するものであり、当該カートリッジは、吸気口、気化チャンバ、排気口、気化チャンバを通って吸気口から排気口まで伸長する空気流路、及び空気流路全体にわたり配置されたメッシュを含み、メッシュの少なくとも一面は撥水材料を含んでいる。
【0008】
メッシュは、空気流路に沿って空気がメッシュを通って流れることを可能にする一方、同時にメッシュの細孔と少なくとも同等のサイズの液滴の通過を防止又は阻止する役割を果たす。メッシュが空気流路全体にわたり配置されているため、メッシュは気化チャンバと吸気口又は排気口のいずれかとの間に位置しており、従ってメッシュは気化チャンバから吸気口又は排気口の各々に向かう凝縮された液体の流れを阻止して、装置からの漏出の防止に役立つ。
【0009】
メッシュは、蒸気生成システム用のカートリッジの暖かく湿った環境で自身の特性を維持できる任意の適当な材料、例えばステンレス鋼から形成されていてよい。メッシュは、空気流路に沿って移動する空気がメッシュを通過できるようにする開口部又は細孔を設ける一方、空気流路の断面を充満できる各種の構造により形成されていてよい。例えば、メッシュは、穴あきシートを含んでいても、又はそれらを例えば所定のパターンに編むか又は織ることにより、或いは不織構造に交絡させることにより網状構造に結合することにより、繊維の配列から各種の仕方で形成されていてよい。従って、空気がメッシュを通過できるようにする細孔は個々に画定されても、又は間に相互接続された通路のネットワークを形成する繊維の無秩序又は半無秩序な配置から生じてもよい。
【0010】
メッシュの層は好適には略平面であるため、加工が容易であり自立的3次元要素を形成できる剛性材料で形成されている必要がない。メッシュの略平面層は従って、可撓性材料から形成されていてよい。カートリッジカバーとガスケットの間に締着されているため、カートリッジ閉包アセンブリ内で撓むのを防止することができる。
【0011】
eタバコの蒸気生成液は典型的に、ニコチン及び香料等が添加されたアルコール等の水性又は極性溶媒に基づいている。液体は表面張力に起因して液滴を形成し、液滴がメッシュの細孔サイズよりも大きければ液体は通過できない。この状況をより詳細に考慮するに、液体の通過は、大きい液滴を変形してより小さい細孔を潜り抜けて進入可能にするのに必要な曲率及び表面積の増大に要するエネルギーに起因して阻害される。しかし、メッシュの表面が親水性であれば状況は変化するであろう。液体は別個の液滴として残らずに表面を濡らし、より容易に細孔を通過できるようになり得る。毛細管作用により細孔に引き込まれる可能性さえある。従って、本発明の場合、メッシュの表面材料は撥水性でなければならない。当該用語は「疎水性」の同義語として通常の意味で用いられ、材料がeタバコの蒸気生成液の主成分である水又はグリセリン又はプロピレングリコール等、他の極性分子に親和性を有していないことを意味する。当該用語は、材料と水又はその他の極性化合物の間で斥力が存在する筈であることを意味しない。
【0012】
メッシュ自体の材料が撥水性でない場合、必要とされる撥水性を与えるべく異なる材料でコーティングされてよい。撥水性は、コーティングの化学的性質及び/又は物理的構造から生じ得る。シリコンを主成分とするものを含む各種の撥水コーティングが利用できる。
【0013】
本発明のいくつかの好適な実施形態において、撥水材料はセラミックコーティングである。特に、「ナノコーティング」として知られるセラミックの薄層は、表面の粗さをナノメートル単位で減らすことができるため、水滴の付着を防止するのに役立つ。好適なセラミックコーティングは、撥水性を有する「液体ガラス」としても知られる二酸化ケイ素を含んでいる。
【0014】
本発明の他の好適な実施形態において、撥水材料はフルオロポリマーである。フルオロポリマー族は、本発明の用途に適した撥水材料を含んでいる。特に、撥水材料としての用途に好適なフルオロポリマーは、入手が容易且つ業務用コーティングに広く用いられているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0015】
本発明の好適な実施形態は更に、気化チャンバ内に加熱器を含み、蒸気生成液を気化させるべく温度の上昇に用いられる。フルオロポリマー等の特定の撥水材料は高温にさらされたならば劣化して、装置のユーザーが吸入すべきでないフッ素含有化合物を発する恐れがある。従って、本発明の好適な実施形態によれば、メッシュは、加熱器の動作中にメッシュの温度が撥水材料の熱劣化を避けるのに充分低く保たれるように配置されている。これは典型的に、メッシュが過剰な熱放射を受けないよう加熱器から充分に間隔が空けられていて、且つ加熱器からメッシュへの熱伝導路が一切存在しないことを必要とする。いくつかの設計において、空気流路は加熱器とメッシュの間で方向を変え得ることにより、メッシュは加熱器からの熱放射を直接受けない。多くの蒸気生成装置にはフローセンサが組み込まれており、装置を通して空気が引き込まれていると当該センサが判定した場合のみ加熱器を起動する。従って、メッシュが吸気口と気化チャンバの間に配置されているため、加熱器が動作中の場合は常に、冷気の内向きの流れがメッシュを低温に維持するのに役立つ。
【0016】
撥水材料がPTFEである場合、加熱器の動作中におけるメッシュの温度は270℃未満に保たれる。当該温度未満に維持されていれば、PTFEは蒸気生成装置用カートリッジの典型的な寿命が尽きるまで顕著な熱劣化を示さない筈である。
【0017】
メッシュの平均細孔サイズは当該メッシュの有効性の重要な指標である。細孔のサイズは、当該細孔を介してメッシュを通過できる最大球体の直径として定義することができる。平均細孔サイズは従ってメッシュを通過する全ての細孔の細孔サイズの平均値である。
【0018】
細孔のサイズが小さいほど液滴の通過を阻止するのに効果的であるが、空気の流れもより強く阻止してしまうため、ユーザーにとって装置の重要な特性であるeタバコの「吸引抵抗」(RTD)が上昇する。RTDはまた、メッシュがもたらす固体材料対空間の比率(原理的に細孔サイズとは独立に変化し得る)の影響も受ける。要するに、細孔が小さいほど、受容可能なRTDを維持するためにより多くの細孔が設けられていてよい。実際に、細孔サイズの範囲及びそれらが占める面積の割合はメッシュの形成に用いる材料及び技術により制約され得る。メッシュは典型的に、幅が厚さよりも大きい層状である。ある程度、より大きい細孔サイズを、例えばメッシュの厚さを大きくして、より長い又は巻き込むが多い細孔を形成することにより補償することができる。本発明による任意の特定のカートリッジの設計は、これらの各種の要因と、付随する経済的考慮とのバランスをとることになる。本発明で用いるメッシュの平均細孔サイズは300μm未満であることが望ましい。より好適には、メッシュの平均細孔サイズは30μm未満である。
【0019】
好適な一実施形態において、メッシュは、吸気口と気化チャンバの間の空気流路全体にわたり配置されていてよい。メッシュは従って、電源又は制御電子要素に侵入して損傷を与える恐れがある、吸気口からの液体の漏出を減らすのに役立つ。また、気化チャンバは典型的に排気口よりも吸気口の近くに位置しているため、ここで液体を密閉する必要性が最も大きい。
【0020】
本発明の好適な一実施形態は更に、吸気口及びメッシュを含むカートリッジ密閉アセンブリを含んでいる。メッシュが吸気口と気化チャンバの間の空気流路全体にわたり配置されている場合、吸気口及びメッシュの両方を含む予め加工されたアセンブリを提供することによりカートリッジを簡単且つ便利に製造及び組み立てることができる。カートリッジ密閉アセンブリは好適には、吸気口を含むカートリッジカバー、ガスケット、及びカートリッジカバーとガスケットの間に載置されたメッシュの層を含んでいる。ガスケットは、カートリッジ密閉アセンブリの周囲に気密及び水密シールを形成する。ガスケットはまた、気化チャンバの遠位壁を形成していてよい。
【0021】
本発明の更なる好適な実施形態において、カートリッジは3部品カートリッジであり、第1の部品としてカートリッジ密閉アセンブリ、カートリッジ密閉アセンブリが取り付けられた第2の部品であって、気化チャンバの近位壁を形成する第2の部品、第2の部品が取り付けられた第3の部品であって、蒸気生成液用の液溜を含む第3の部品を含んでいる。これはカートリッジの製造工程におけるカートリッジの組み立て及び充填を容易にする便利な構成である。カートリッジ密閉アセンブリのガスケットは好適には、第1と第2の部品の間から空気又は液体が漏れるのを阻止すべく気化チャンバの遠位端に締着されている。
【0022】
本発明は更に、上で定義したようなカートリッジ及び電源を含む蒸気生成装置を含む蒸気生成システムを提供する。カートリッジの遠位端が蒸気生成装置に着脱可能に接続され、電極が制御回路を介して電源をカートリッジ内の加熱器に結合する。メッシュの層がカートリッジの遠位端の吸気口に隣接して空気流路全体にわたり設けられている場合、本発明は従って、気化チャンバからの凝縮された液体が吸気口から漏れて電源又は制御回路に損傷を引き起こすリスクを下げる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態によるカートリッジの分解透視図である。
【
図2】
図1のカートリッジが組み立てられた際の透視図である。
【
図3】本発明によるカートリッジを含む蒸気生成システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
カートリッジ10は3個の主要部分を含んでいる。これらについて以下に更に詳細に記述するが、一般に、第1の部品11はカートリッジ密閉アセンブリとして機能し、第2の部品12は加熱及び蒸発装置が設けられ、第3の部品13は蒸気生成液の備蓄を保持して吸い口が設けられている。カートリッジ10の3部品構成は、カートリッジの製造工程においてカートリッジを組み立て及び充填を容易にする便利な構成である。
図1から分かるように、部品はカートリッジ10の長手軸に沿って順次挿入することにより組み立てられて
図2に示す外観を有する組み立て済みのカートリッジに到達することができる。この設計により、カートリッジの要素の個数を少なく保ち、使用中にこれらの間で空気又は液体が漏れるリスクを減らすべく部品間で密閉を容易にする。
【0025】
カートリッジ10の第3の部品13は、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール(PCT-G)等のプラスチック材料から単体として成形されていてよい筐体16を含んでいる。筐体16の外壁18は、組み立てられたカートリッジ10の近位端に外側を形成する。筐体16の近位端面(図面では隠れている)において、eタバコのユーザーが装置を通して空気を吸い込むことができる従来型の吸い口として機能する開口部がある。筐体16の外側には、
図3に模式的に示すように、カートリッジ10が蒸気生成装置22に取り付けられた際に保持する手段20も設けられている。保持手段は、保持するための任意の適当な手段、例えば摩擦パッド、クリップ、磁石、又は代替的な、円筒の実施形態すなわちねじ山又はバヨネット嵌合を含んでいてよい。筐体16の内側には、蒸気生成液を貯蔵するタンク又は液溜24が形成されている。液溜24の遠位端を開いて液溜に液体を充填して第2の部品12を挿入することができる。
【0026】
カートリッジ10の第2の部品12は、カートリッジ10の第2及び第3の部品12、13が互いに組み立てられた際に液溜24の遠位開口部を覆う近位壁27を有する液溜カバー26を含んでいる。第2及び第3の部品12、13は、気密及び水密閉入を保証し、例えばカートリッジの再使用を意図していないにも拘わらず補充のためユーザーにより液溜24が再び開けられるのを防止すべく互いに超音波溶接されていてよい。液溜カバー26の側壁28は組み立てられたカートリッジ10の遠位端の近くに外側の一部を形成する。これらはまた、後述するように筐体10の第1の部品11に台座を提供する。
【0027】
液溜カバー26の近位壁27の開口部は、本実施形態では軸方向に整列したシリンダの形式である気化チャンバ30内へ開いている。他の形状の気化チャンバ30も可能である。液溜カバー26及び気化チャンバ30は一体部分として成形されていても、又は図示するように組み立て前段階に2個の要素を取り付けることにより形成されていてもよい。これにより2個の要素は異なる材料から形成されていてよく、例えば液溜カバーはPCT-G等のプラスチックから成形されていてよいのに対し、気化チャンバ30はより高温に耐えられるステンレス鋼から形成されていてよい。気化チャンバ30は液溜24内に配置されている。気化チャンバ30の近位端は、気化チャンバ30よりも直径が小さい円筒管31に結合されている。管31は、排気口32が管31の終端で吸い口に隣接して配置されるように液溜24を通って近位方向に伸長している。例えばシリコンゴムの密閉ガスケット34は、液体が液溜24から吸い口まで漏れるのを防止すべく吸い口周辺で密閉しながら、排気口32を吸い口に結合する。
【0028】
円筒気化チャンバ30は、中空の、円筒液体搬送要素38を収容できる。液体搬送要素38は液体に対して浸透性であり、例えば、綿等の織物材料で形成されたセラミック核又は芯を含んでいてよい。1個以上の、好適には2個以上の開口部40が気化チャンバ30の側壁を貫通するが、液体搬送要素38により阻止される。液溜24からの蒸気生成液は従って、液体搬送要素38の材料を通って拡散することによってのみ開口部40を通過して気化チャンバ30内へ入ることができるため、液体の流れを調整して、気化チャンバ30の内側に沿って、及びその周囲に分散させる役割を果たす。
【0029】
筐体10の第2の部品12は更に、本実施形態では軸方向に整列した円筒コイル42の形式である加熱器を含んでいる。2本の導線44は、電流をコイルに伝達できる電気端子として機能すべくコイルの終端から遠位方向に伸長する。他の複数の実施形態において、加熱器は他の形式であってよい。例えば、電気的に接続された異なる形状又は向きの抵抗素子、セラミック流体搬送要素38の表面等の気化チャンバ30内の表面上に設置された電気トレース、又は接続されておらず誘導により加熱されたコイルであってよい。
【0030】
本実施形態の加熱コイル42は、動作時に液体搬送要素38の内面の温度を上昇させるべく液体搬送要素38の内部に密着する。上昇した温度は、要素38を通して拡散した液体をその表面から気化させて気化チャンバ30を通って管31に至る空気の流れにする。空気が管31に沿って流れるに従い、蒸気は冷却して気流内で懸濁した微小液滴に凝縮することにより、ユーザーが吸い口を通して吸入できるエアロゾルを形成する。液滴の一部もまた、管31又は気化チャンバ30の壁に凝縮するか衝突し得る。液体の液滴は合体して吸気口又は排気口32に向かって流れ得るため、液体が装置の外部に漏れ得るリスクが生じる。
【0031】
カートリッジ10の遠位端は、カートリッジ密閉アセンブリとして機能する第1の部品11により形成されている。第1の部品11は、第2の部品12の遠位端に密着し、例えば第2の部品12の液溜カバー26の側壁28の凹部48に嵌合する第1の部品11上の突起46、又は他の任意の適当な手段により保持されている。好適には、第1の部品11は、装置の悪用を防止すべくユーザーが第2の部品12から取り外すのが困難なように設計されている。
【0032】
カートリッジ密閉アセンブリは、カートリッジカバー52とガスケット54の間に挟まれたメッシュの層50を含んでいる。カートリッジ10が組み立てられたならば、カートリッジカバー52は自身の遠位端でカートリッジの外面を形成する。カートリッジカバー52は、気化チャンバ30及び管31を通過してカートリッジ10の近位端の排気口32及び吸い口に至る空気流路の遠位端に空気を取り込む吸気口56を含んでいる。図示する実施形態において、吸気口56は、カートリッジカバー52の遠位面の中心の近くに一対の開口部を含んでいるが、他の形多くの形式であってよい。カートリッジが蒸気生成装置22に取り付けられたならば、吸気口56は、蒸気生成装置内の供給チャネル(図示せず)を介して空気を受容でき、その配置は吸気口56の形式及び位置を画定していてよい。
【0033】
カートリッジカバー52は、自身の近位面から伸長して、カートリッジカバー52とガスケット54を共に締着すべくガスケット54内の対応する一対の孔60に受容される一対のポスト58を含んでいる。ガスケットは、吸気口56から気化チャンバ30に空気流路の一部をなすべく吸気口56に整列した中央開口部62を含んでいる。メッシュの層50は、カートリッジカバー52とガスケット54の間に挟まれてきつく締着されている。メッシュ層50はまた、カートリッジカバー52のポスト58を受容してメッシュ層50が正しく配置及び固定されていることを保証する一対の孔64が設けられていてよい。メッシュの層50は、カートリッジカバー52とガスケット54の間に締着されているため、自立的又は剛構造である必要はない。メッシュの層50は好適には、略平面であり可撓性のシート材料から形成される。図示するように、メッシュ層50は、全領域にわたりメッシュ構造66を含んでいなくてよく、例えば、層50は、孔64をより正確に画定して、メッシュ層50の位置をより確実に特定できるよう孔64を囲む領域で連続的であってよい。しかし、メッシュ層50は、空気流路に沿って吸い込まれた空気がメッシュ構造66及びガスケット開口部62を通って吸気口56から気化チャンバ30まで通過できるように、少なくとも吸気口56及びガスケット開口部62に整列した領域にわたりメッシュ構造66を含んでいなければならない。
【0034】
上述のように、メッシュ構造66の平均細孔サイズ、細孔が占有するメッシュ構造66の面積の割合、及びメッシュ構造66の表面材料が全て相まって、気流とは反対方向、すなわち気化チャンバ30から吸気口56への液体の流れに抵抗する。内部へ流れる空気もまたメッシュ層50を通る液体の外部への流れに抵抗するのを補助できることに注意されたい。本実施形態において、メッシュ層50はPTFEがコーティングされたステンレス鋼から形成されている。メッシュ構造の平均細孔サイズは約10μmである。
【0035】
カートリッジ密閉アセンブリを含む第1の部品11が、液溜カバー26を含む第2の部品12に挿入されたならば、ガスケット54の中央開口部62が気化チャンバ30内へ開く。ガスケット54は好適には、気化チャンバ30の遠位端周辺を密閉して空気又は液体が第1及び第2の部品11、12の間を漏れるのを防止すべく、シリコンゴム等の弾性材料から形成されている。ガスケット54の近位面もまた加熱コイル42の台座をなすべく成形されていてよい。
【0036】
カートリッジカバー52は、自身の遠位面で露出した、加熱コイル42に電流を供給すべく蒸気生成装置に接点を設ける一対の電極67を含んでいる。ガスケット54内の一対の小開口部68により、加熱コイル42の端子導線44がガスケット54を通って電極67と電気接触することができる。メッシュ層50は同様に、加熱器端子導線44を通すための小開口部(図示せず)を備えていても、又は単に導線44をメッシュ層50のメッシュ構造66内を押し通してもよい。図示する実施形態において、電極67にはまた、加熱器端子導線44を通すための開口部70が設けられているため、カートリッジ10の組み立て後の最終段階として端子導線44を電極67に溶接又ははんだ付けできる。代替的に、カートリッジ10を組み立てる前に、接点を加熱器端子44に電気的に接続できるようにすべく電極67に、メッシュ層50及びガスケット54を通して近位方向に伸長する接点(図示せず)が設けられていてよい。
【0037】
図3に、本発明による蒸気生成システムの可能な1つの構成を模式的に示す。蒸気生成装置22は、制御回路82に電力を供給する電源80を収容する。カートリッジ10の遠位端は蒸気生成装置22に着脱可能に接続されている。カートリッジ10の近位端に吸い口84あり、カートリッジ10に取り付けられていても、又は一体的であってもよい。電極67は、制御回路82を介して、カートリッジ10内の加熱器42に電源80を結合する。カートリッジ10及び蒸気生成装置22をエンドツーエンド構成で接続されているように示しているが、本発明の代替的な複数の実施形態においてカートリッジ10は蒸気生成装置22の筐体に着脱可能に挿入できることが理解されよう。その場合、吸い口84はカートリッジ10ではなく蒸気生成装置22取り付けられていても、又は一体的であってもよい。
【国際調査報告】