IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

<>
  • 特表-蒸気改質 図1
  • 特表-蒸気改質 図2
  • 特表-蒸気改質 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】蒸気改質
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20230824BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20230824BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C01B3/38
B01J35/10 301A
B01J23/78 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579136
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 GB2021051893
(87)【国際公開番号】W WO2022034285
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】2012616.5
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】バボヴィッチ、ミレタ
(72)【発明者】
【氏名】カールソン、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】フォスター、クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ヒントン、グラハム
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、アンドリュー エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン、クレイグ
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB14
4G140EB23
4G140EC02
4G140EC05
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA13A
4G169BA17
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC01A
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB81
4G169CC17
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EA11
4G169EB03
4G169EB07
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC01X
4G169EC01Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC29
4G169EE08
4G169FA08
4G169FB43
4G169FC08
(57)【要約】

炭化水素供給原料を蒸気改質するプロセスであって、管状蒸気改質器内の複数の外部加熱管内に配置された粒子状ニッケル蒸気改質触媒及び構造化ニッケル蒸気改質触媒を含む触媒床に炭化水素供給原料及び蒸気の混合物を通過させることを含み、各管が、炭化水素及び蒸気の混合物が供給される入口と、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気及びメタンを含有する改質ガスが回収される出口と、を有し、管の出口の蒸気改質触媒が構造化蒸気改質触媒であり、粒子状蒸気改質触媒が、NiOとして表される5~30重量%のニッケルを含み、複数の管の内径の最大15%である最大寸法を有し、構造化蒸気改質触媒が、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散されたニッケルを含み、金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、炭化水素供給原料を蒸気改質するプロセスが記載される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給原料を蒸気改質するプロセスであって、管状蒸気改質器内の複数の外部加熱管内に配置された粒子状ニッケル蒸気改質触媒及び構造化ニッケル蒸気改質触媒を含む触媒床に前記炭化水素供給原料及び蒸気の混合物を通過させることを含み、各管が、炭化水素及び蒸気の前記混合物が供給される入口と、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気及びメタンを含有する改質ガスが回収される出口と、を有し、前記管の出口の前記蒸気改質触媒が、前記構造化蒸気改質触媒であり、前記粒子状蒸気改質触媒が、NiOとして表される5~30重量%のニッケルを含み、前記複数の管の内径の最大15%である最大寸法を有し、前記構造化蒸気改質触媒が、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散されたニッケルを含み、前記金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、前記コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、炭化水素供給原料を蒸気改質するプロセス。
【請求項2】
前記炭化水素供給原料がメタンを含み、好ましくは予備改質ガス、随伴ガス又は天然ガス、より好ましくは天然ガスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記管状蒸気改質器が複数の管を含み、前記炭化水素供給原料及び蒸気の混合物が前記管を通過し、前記管の周りを流れる燃焼ガス又は合成ガスを含む高温ガスによって前記管に熱が伝達される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記構造化蒸気改質触媒が、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を有する金属又はセラミック構造を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記構造化蒸気改質触媒が、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を含む、それらが配置される前記管に相補的な直径を有する円筒形ユニットを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粒子状蒸気改質触媒が、アルカリ金属酸化物、好ましくは酸化カリウムを、前記粒子状触媒に対して0.5~7.0重量%の範囲の量で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記粒子状触媒の最大寸法が、それが配置される前記複数の管の内径の3~15%の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記粒子状蒸気改質触媒がペレット化蒸気改質触媒である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記粒子状蒸気改質触媒が、3~10mm又は5~25mmの範囲の直径及び2~15mm又は5~25mmの範囲の長さ及び1:0.5~2:1の範囲のアスペクト比を有する円筒形である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記粒子状蒸気改質触媒が、前記ペレットの周囲に3~10個の貫通孔及び任意選択で3~12個の縦溝彫り又はローブを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記粒子状触媒が0.75~1.0の範囲のアスペクト比を有する円筒形であり、前記複数の管の内径と前記触媒粒子の直径との比(Dt/dp)が5:1~50:1、好ましくは8:1~50:1の範囲である、請求項9又は請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記粒子状触媒が、3~5mmの範囲の、同じ比表面積の球として表される相当球径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記粒子状触媒が、200~2000m/m、好ましくは500~2000m/mの範囲の外部幾何学的表面積を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記触媒床が2層、3層又はそれを超える蒸気改質触媒層からなり、各場合において、前記管の出口に隣接する蒸気改質触媒層が、前記構造化触媒である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記触媒管が2層のニッケル蒸気改質触媒からなり、前記管の出口に隣接する前記触媒層が、前記構造化ニッケル蒸気改質触媒であり、前記管の入口に隣接する前記触媒層が粒子状ニッケル蒸気改質触媒である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒管が、ニッケル蒸気改質触媒の3つの層、前記管の入口における構造化触媒層と、前記管の中間又は第2の領域における粒子状触媒層と、前記管の出口における構造化触媒層と、からなる、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記粒子状触媒が、前記構造化触媒層の間に配置された1つ又は複数のガス透過性容器内に収容されている、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記管内に蒸気改質触媒の2つ以上の層が存在し、前記構造化触媒層が前記床の体積の95%~5%、好ましくは前記床の体積の80%~20%、より好ましくは前記床の体積の75%~25%を構成する、請求項14~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
炭化水素供給原料の触媒蒸気改質中の触媒上の炭素形成の抑制のための、NiOとして表される5~30重量%のニッケルを含み、複数の管の内径の最大15%である最大寸法を有する非構造化粒子状蒸気改質触媒と、多孔質金属酸化物の表面上に分散されたニッケルを含み、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する構造化蒸気改質触媒との組み合わせの使用であって、金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、前記コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を蒸気改質して合成ガスを製造するプロセス及びプロセスを実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ガスは、水素及び酸化炭素(一酸化炭素及び二酸化炭素)を含み、窒素並びにアルゴン及び低レベルのメタン等の他のガスを含有し得る。合成ガスは、精油所又は燃料電池のための水素製造、アンモニア合成、メタノール合成、ジメチルエーテル合成又は液体炭化水素の合成のためのフィッシャー・トロプシュ法等の特定の最終用途に適した、より多い又はより少ない量の水素及び酸化炭素を含有してもよい。合成ガスは、蒸気改質プロセスによって製造されることが多い。
【0003】
蒸気改質プロセスでは、炭化水素供給原料及び蒸気の混合物、場合によっては二酸化炭素も、高圧において、適切な加熱媒体、一般的には高温ガス混合物によって外部から加熱される粒子状触媒充填管を通過させる。粒子状触媒は、通常、成形ユニット、例えば複数の貫通孔を有する円筒の形態であり、典型的には、ニッケル等の適切な触媒活性金属を含浸させた、α-アルミナ、アルミン酸カルシウム又はアルミン酸マグネシウム等の耐熱性支持材料から形成される。
【0004】
国際公開第2015132555号は、炭化水素及び蒸気を含む供給ガス混合物のための入口と、改質ガス混合物のための出口と、をそれぞれ有する複数の外部加熱された垂直管を含む蒸気改質器を含む炭化水素の蒸気改質のための装置を開示しており、管は、出口に隣接する粒子状蒸気改質触媒と、入口に隣接する構造化蒸気改質触媒と、を含む。当該装置を使用する炭化水素の蒸気改質プロセスも記載されている。
【0005】
本発明者等は、国際公開第2015132555号における配置とは対照的に、入口に隣接する粒子状触媒と出口に隣接する構造化触媒との組み合わせが、圧力降下と、管状蒸気改質器内の管の入口部分付近で発生する傾向がある炭素形成に対する抵抗との最適なバランスを提供することができることを見出した。更に、粒子状触媒を、それらが構造化触媒によって支持されている配置で使用することにより、粒子状触媒と構造化触媒との間に間隙が形成される望ましくないリスクが除去される。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、炭化水素供給原料を蒸気改質するプロセスを提供し、管状蒸気改質器内の複数の外部加熱された管内に配置された粒子状ニッケル蒸気改質触媒及び構造化ニッケル蒸気改質触媒を含む触媒床に炭化水素供給原料及び蒸気の混合物を通過させることを含み、各管は、炭化水素及び蒸気の混合物が供給される入口と、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気及びメタンを含有する改質ガスが回収される出口と、を有し、管の出口の蒸気改質触媒は構造化蒸気改質触媒であり、粒子状蒸気改質触媒は、NiOとして表される、5~30重量%のニッケルを含み、複数の管の内径の最大15%である最大寸法を有し、構造化蒸気改質触媒は、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散されたニッケルを含み、金属酸化物コーティングのニッケル含有量は5~50重量%の範囲であり、コーティングの厚さは5~150マイクロメートルの範囲である。
【0007】
プロセスに供給される炭化水素含有供給原料は、天然ガス、随伴ガス、LPG、石油蒸留物、ディーゼル、ナフサ若しくはそれらの混合物等の任意のガス状又は低沸点炭化水素供給原料、又は精製オフ・ガス若しくは予備改質ガス等の化学プロセスからのオフ・ガスを含み得る。炭化水素供給原料は、好ましくはメタンを含み、予備改質ガス、随伴ガス又は天然ガスであってもよい。天然ガスが特に好ましい供給原料である。供給原料は、10~100バールabsの範囲の圧力に圧縮することができる。炭化水素供給原料の圧力は、プロセスを通して有用に圧力を制御することができる。操作圧力は、好ましくは15~80バールabsの範囲内であり、より好ましくは20~50バールabsの範囲内であり、これは、プロセスからの向上した性能を提供するからである。
【0008】
炭化水素供給原料が圧縮前又は好ましくは圧縮後に硫黄化合物を含有する場合、供給原料を脱硫に供してもよい。脱硫は、CoMo又はNiMo触媒を使用する水素化脱硫、及び適切な硫化水素吸収剤、例えば酸化亜鉛吸着剤を使用する硫化水素の吸収を含むことができる。超精製吸着剤は、蒸気改質触媒を更に保護するために、硫化水素吸着剤の下流で有用に使用してもよい。好適な超精製吸着剤は、銅-酸化亜鉛/アルミナ材料及び銅-ニッケル-酸化亜鉛/アルミナ材料を含み得る。水素化脱硫を容易にするために、及び/又は改質プロセスにおける炭素レイダウンのリスクを低減するために、圧縮炭化水素供給原料に水素を添加してもよい。得られる混合ガス流中の水素の量は、1~20%体積の範囲内であり得るが、好ましくは1~10%体積の範囲内、より好ましくは1~5%体積の範囲内である。
【0009】
炭化水素供給原料が塩化物又は重金属混入物質等の他の混入物質を含有する場合、これらは、改質の前に、従来の吸着剤を用いて任意の脱硫化の上流又は下流で除去してもよい。塩化物除去に好適な吸着剤は周知であり、アルカリ化アルミナ材料が挙げられる。同様に、水銀又はヒ素などの重金属の吸着剤が知られており、硫化銅(copper sulphide)材料が挙げられる。
【0010】
炭化水素含有供給原料がメタンを含有する予備改質ガスである場合、これは、炭化水素/蒸気混合物を断熱低温蒸気改質の工程にかけることによって形成することができる。炭化水素は、リッチ天然ガス、ナフサ、又はメタンより重い炭化水素を含有する他の炭化水素含有供給原料であってもよい。予備改質プロセスは公知である。このようなプロセスにおいて、炭化水素/蒸気混合物は、典型的には400~650℃の範囲の温度に加熱され、次いで、適切な粒子状蒸気改質触媒、通常は高いニッケル含有量、例えばNiOとして表される40重量%を超えるニッケル含有量を有する沈殿触媒の固定床に断熱的に通される。このような断熱低温改質工程の間、メタンよりも高い任意の炭化水素が蒸気と反応して、メタン、酸化炭素及び水素の混合物を含む予備改質ガスを得る。一般に予備改質と呼ばれる断熱改質工程の使用は、管状蒸気改質器への供給物がメタンよりも高い炭化水素を含まず、かなりの量の水素も含むことを確実にするために望ましい。これは、下流の管状蒸気改質器における触媒上での炭素形成のリスクを最小限にするために望ましい。
【0011】
供給原料は予熱されてもよい。圧縮後及び脱硫前に、燃焼加熱器等の適切な熱源で予熱することが好都合であり得る。
【0012】
炭化水素供給原料は蒸気と混合されて改質供給ガスを形成する。蒸気の導入は、蒸気の直接注入によって、及び/又は供給原料を加熱水流と接触させることによって供給原料を飽和させることによって行うことができる。いくつかの実施形態では、炭化水素供給原料は、熱水が供給される飽和器内で飽和して、飽和ガス混合物を形成する。飽和ガス混合物の蒸気含有量は、必要に応じて、蒸気の直接添加によって増加させることができる。水は、好ましくは、改質ガスから回収された凝縮物流、飽和器の底部から回収された水、及びプロセスで生成された他の凝縮物のうちの1つ又は複数を含む。導入される蒸気の量は、望ましくは、少なくとも1.8:1の蒸気と炭素との比、すなわち供給原料中の炭化水素炭素のグラム原子当たり少なくとも1.8モルの蒸気を得るのに十分である。蒸気と炭素との比は、1.8:1~5:1、より好ましくは2.5:1~3.5:1、特に2.8:1~3.2:1の範囲であることが、水素生成と効率の最適なバランスを提供するので好ましい。
【0013】
次いで、改質供給ガス混合物は、望ましくは、改質前に予熱される。好ましい実施形態では、炭化水素/蒸気混合物は、燃焼加熱器を通過させることによって加熱される。望ましくは、混合流は、300~650℃又は450~650℃、好ましくは450~600℃、より好ましくは450~550℃の範囲の入口温度に加熱される。300~550℃の範囲の入口温度は予備改質器がない場合に特に適しており、550~650℃の範囲のより高い入口温度は予備改質器がある場合に特に適している。
【0014】
改質プロセスの間、メタンは蒸気と反応して水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を生成する。存在する2個以上の炭素原子を含有する任意の炭化水素はメタンに変換され、メタンは蒸気改質される。更に、可逆的な水性ガスシフト反応が起こる。全体として、プロセスは吸熱性であり、反応を維持し、所望の転化率を達成するために管及び触媒の加熱を必要とする。蒸気改質器への熱入力は、典型的には、管の出口における生成ガス流の温度が入口温度よりも高く、多くの場合、入口温度よりも100~350℃の範囲高い。
【0015】
管状蒸気改質器は、通常は垂直に配置された複数の管を含み、これらの管をガス混合物が通過することができ、管の外面の周りを流れる高温ガスによって熱がこれらの管に伝達される。高温ガスは、燃焼ガス又は合成ガスを含むことができる。供給ガス混合物が典型的には蒸気改質器の上部に供給され、管を通って下方に流れるように、管入口は典型的には上端にある。
【0016】
したがって、管状蒸気改質器は、改質供給ガス用の入口と、改質ガス混合物用の出口と、入口と連通し、ガス混合物を通過させることができ、熱交換ゾーン内で管の周りを流れる高温ガスによって熱が伝達される複数の垂直管と、を有することができ、管はそれぞれ、管内に層として設けられた蒸気改質触媒を含み、少なくとも出口に隣接する蒸気改質触媒の層は構造化ニッケル蒸気改質触媒である。
【0017】
プロセスにおいて管の出口に隣接する触媒は、構造化蒸気改質触媒である。「構造化蒸気改質触媒」とは、非多孔質構造、典型的には金属又はセラミック構造上の蒸気改質触媒コーティングを意味する。構造化触媒中のニッケルは、多孔質金属酸化物の表面上に分散され、これは非多孔質構造上の表面コーティングとして支持される。
【0018】
金属又はセラミック構造は、本質的に非多孔質であり、したがって、それらの形状によって本質的に画定される低い表面積を有する。十分な活性を提供するために、構造化触媒中のニッケルは、多孔質金属酸化物被覆非多孔質金属又はセラミック支持体上に分散される。非多孔質構造上のニッケルを含有する多孔質金属酸化物コーティングの厚さは、5~150μmの範囲、好ましくは10~100μmの範囲、より好ましくは10~80μmの範囲、最も好ましくは10~50μmの範囲である。好ましい範囲は、触媒の活性及び接着及び凝集の最適度を提供する。
【0019】
ニッケルは、既知のウォッシュコーティング法によって構造に適用されてもよく、それによって、成分として酸化ニッケルを含んでもよい金属酸化物のスラリーが、浸漬又は噴霧によって金属又はセラミック構造に適用され、次いで、乾燥及び熱処理されて、金属酸化物が支持体に結合される。ニッケルはまた、可溶性ニッケル化合物を使用する含浸技術によって金属酸化物被覆支持体に適用され、次いで乾燥され、か焼されてニッケル化合物を酸化ニッケルに変換してもよい。溶液中のニッケルを金属酸化物支持体のスラリーと組み合わせて適用することを含む、これらの技術の組み合わせが使用されてもよい。
【0020】
構造上の蒸気改質触媒はニッケルを含む。金属酸化物コーティングのニッケル含有量は、5~50重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~20重量%の範囲である。必要に応じて、白金、ロジウム、ルテニウム若しくはパラジウム、又はそれらの混合物から選択される白金族金属が、コーティング中に含まれ得る。含まれる場合、白金族金属促進剤は、0.05~1重量%の範囲の量でコーティング中に存在してもよい。コーティングは、10~150g/m、好ましくは10~80g/m、より好ましくは30~60g/mの範囲の量で非多孔質支持構造に適用することができる。
【0021】
ニッケルが分散される多孔質金属酸化物は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、マグネシア、セリア、酸化プラセオジム、イットリア、及びランタナを含む任意の適切な耐熱性酸化物であってもよい。好ましい多孔質金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、セリア、ランタナ及びそれらの2種以上の混合物を含む。
【0022】
構造化触媒は、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を有する金属又はセラミック構造を含んでもよい。これは、プロセス流体の流れが本質的に無秩序又はランダムである粒子状触媒とは対照的である。構造化触媒は、粒子状触媒と比較して、圧力降下の低減及び熱伝達の改善を提供する。構造化触媒は、好適には、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を含む、それらが配置される管に相補的な直径を有する円筒形ユニットを含んでもよい。「相補的」という用語により、円筒形ユニットの直径は、それらが管内にぴったりと収まるようにそれらが配置されている管の内径よりも1~20mm小さくてもよい。円筒形ユニットは、プロセス流体がユニットを通過する際に軸方向及び半径方向の両方にプロセス流体を流す穿孔及び/又は内部構造を含むことができる。円筒形ユニットは、好ましくは、それらが互いに容易に積み込まれ得、管内で自立するように積み重ね可能である。プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を有するコーティングされた円筒形構造の場合、コーティングの量は、1立方メートルの管当たりNiOとして約4~7kgのNiであり得る。
【0023】
市販のステンレス鋼金属箔を用いて調製された構造化触媒が好ましい。
【0024】
好ましい構造化触媒は、米国特許第2012/0195801(A1)号に記載されている。これらの構造化触媒は、中心ロッド上に配置された波形金属ディスクの形態のファンを含む。ファンは、管の内壁に接触するように流体流を半径方向に案内する折り畳まれた金属箔から形成された半径方向流体ダクトを有し、ファンは、半径方向流体ダクトがファンの外径面に沿って終端して管の内壁に面する流体ダクト開口部を形成するように、上面、底面、及び外径面を有し、ファンは、ファンの上面又は底面と接触する平坦又は波形の金属ワッシャを更に有し、ワッシャは、内径及び外径を有するリングの形状であってもよく、ワッシャは、ワッシャの外径がファンの外径面から半径方向外側に延びるようにファンの上面又は底面と接触している。ワッシャは、ワッシャがファンの外径面と反応器管との間に隙間を形成するように、管の内壁からワッシャを分離する、ワッシャの外径から外向きに延在するスペーサタブを更に有してもよい。
【0025】
本発明において、管は、構造化触媒のすぐ上流に非構造化粒子状蒸気改質触媒を含む。蒸気改質触媒の相対量は、所望の転化率を得るために厚さを変えることができる。構造化触媒層は、床の体積の95%~5%を構成してもよく、又は床の体積の80%~20%を構成してもよく、又は床の体積の75%~25%を構成してもよく、又は床の体積の70%~50%を構成してもよい。異なる配置は、異なる利点を提供する。構造化触媒が床の容積の70~50%の範囲内にある配置は、活性及び圧力降下の最適範囲、並びに炭素堆積の制御を提供する。
【0026】
粒子状蒸気改質触媒は、ニッケルが粒子全体に分布している従来の粒子状蒸気改質触媒であってもよく、又は粒子の表面にのみニッケル層が存在する卵殻型ニッケル触媒であってもよい。好適な卵殻型ニッケル蒸気改質触媒は、国際公開第2010/125369(A1)号に記載されている。
【0027】
好適な粒子状触媒は、アルミナ又はアルミン酸カルシウム及び/又はアルミン酸マグネシウム等のアルミン酸アルカリ土類金属を含む耐熱性酸化物支持体上に支持された、ニッケル及び任意選択で酸化カリウムを含む。このような粒子状触媒は市販されている。
【0028】
粒子状触媒は、5~30重量%、好ましくは10~30重量%の範囲のNiOとして表されるニッケル含有量を有する。
【0029】
粒子状触媒中に酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物を含むことは、炭素形成を低減するために特に好ましい。酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物は、粒子状触媒上に0.5~7.0重量%の範囲の量で存在することができる。
【0030】
粒子状触媒の粒径は、管の寸法に応じて変化し得る。粒子状触媒は、ランダム充填床として装填され、これは、それらが複数の管内で任意の配向で存在し得ることを意味する。本発明の組み合わせにおける粒子状触媒は、これが引き起こす圧力低下の増大が、粒子状触媒の下流の低圧力低下構造化触媒によって相殺されるので、通常使用されるよりも物理的に小さくてもよい。より小さい粒子は、より大きい粒子よりも高い幾何学的表面積、したがって1m当たりの活性を提供することができるため、有用である。
【0031】
粒子状触媒粒子は、それらが配置される複数の管の内径の最大でも15%である最大寸法を有する。「最大寸法」とは、粒子の最大幅又は直径、長さ、幅又は高さを意味する。粒子状触媒の粒子の最大寸法は、好適には、複数の管の内径の3~15%の範囲であり得る。約3%未満では、圧力低下が許容できないほど高くなる可能性があり、15%を超えると、触媒の性能が低下する可能性がある。
【0032】
粒子状触媒は、ローブ型又は縦溝彫り形状を含む、球、回転楕円体又は円筒の形態であってもよい。粒子状触媒は、ペレット化若しくは押出成形によって、又は付加層製造若しくは3D印刷を含む他の成形方法によって形成することができる。粒子状蒸気改質触媒は、ペレット化された触媒の物理的特性のバランスが他の成形方法によって得られるものよりも一般に優れているので、ペレット化された触媒であることが適切である。
【0033】
粒子状触媒粒子は、円筒形であってもよく、ローブ型又は縦溝彫りであってもよく、幾何学的表面積を増大させ、圧力降下を低減するために1つ以上の貫通孔を含有してもよい。
【0034】
粒子状触媒は、好ましくは、3~10mm又は5~25mmの範囲の直径及び2~15mm又は5~25mmの範囲の長さを有する円筒形である。アスペクト比、すなわち直径/長さは、1:0.5~2:1の範囲であり得る。円筒の端部は、平坦であってもドーム状であってもよい。
【0035】
粒子状蒸気改質触媒は、ペレットの周囲に3~10個の貫通孔及び任意選択で3~12個の縦溝彫り又はローブを含むことができる。貫通孔及びローブ又は縦溝彫りは、有利には、幾何学的表面積を増加させ、粒子状触媒を通る圧力降下を減少させる。
【0036】
0.75~1.0の範囲のアスペクト比を有する円筒形触媒粒子の場合、管の内径と触媒粒子の直径との比(Dt/dp)は、好ましくは5:1~50:1、好ましくは8:1~50:1の範囲である。
【0037】
好適な粒子状触媒の例としては、直径3.3mm×高さ3.4mmの円筒、幅8mm×高さ7mmの4穴クローバーリーフ形状、及び直径10mm×高さ13mmの4穴、4縦溝彫り円筒が挙げられる。後者は、Johnson Matthey PLCからQUADRALOBE(商標)触媒として入手可能である。
【0038】
粒子状触媒のサイズはまた、相当球径(又はequivalent spherical diameter:ESD)によって表されてもよい。不規則な形状の物体のESDは、相当体積の球の直径(ESDv)として表すことができる。粒子状触媒のESDvは、3~15mmの範囲であり得る。あるいは、不規則な形状の物体のESDは、同じ比表面積、すなわち同じ表面積対体積比(ESDa)の球として表されてもよい。このアプローチは、触媒粒子の幾何学的表面積が主なパラメータである複雑な形状に対してより適切であり得る。粒子状触媒のESDaは、3~5mmの範囲であってもよい。
【0039】
粒子状触媒は、200~2000m/m又は500~2000m/mの範囲の外部幾何学的表面積を有し得る。これは、例えば、2~6mmの高さを有する直径3~4.5mmの円筒、3~6mmの高さ及び1~2mmの穴径を有する直径5~9mmの3~7穴円筒を使用することによって得ることができる。他の変形は、一般的な触媒形状から容易に達成することができる。
【0040】
プロセスでは、触媒床は、2つ又は3つ以上の蒸気改質触媒の層からなっていてもよく、いずれの場合も、管の出口に隣接する蒸気改質触媒の層は構造化触媒である。
【0041】
触媒管は、ニッケル蒸気改質触媒の2つの層を含むか、又はそれからなってもよく、管の出口に隣接する触媒層は構造化ニッケル蒸気改質触媒であり、管の入口に隣接する触媒層は粒子状ニッケル蒸気改質触媒である。
【0042】
圧力低下を犠牲にすることなく、炭素形成に対する改質器の耐性を増加させ、改質器性能を向上させるために、触媒の組み合わせを使用することには、様々な利点がある。より低い温度で改質器の「入口」領域において粒子状触媒、特に小粒子を利用することによって、活性を最大化することが可能である。改質器のより高温の出口領域で構造化触媒を同時に利用することにより、触媒充填物の全体的な圧力低下を最小限に抑えることが可能である。
【0043】
いくつかの実施形態では、触媒管は、3層のニッケル蒸気改質触媒である、管の入口における構造化触媒層と、管の中間又は第2の領域における粒子状触媒層と、管の出口における構造化触媒層と、からなり得る。これは、炭素形成のリスクが最も高い点で管に提供される粒子状触媒と共に、低温での高活性、増加した全体的な熱伝達を同時に可能にすることができる。この配置において、粒子状触媒は、構造化触媒層の間に配置された1つ又は複数のガス透過性容器内に収容されてもよい。
【0044】
触媒は、典型的には、酸化形態で管状蒸気改質器の管に供給され、酸化ニッケルの還元によって活性化されて、その場で元素ニッケルを形成する。例えば、酸化形態の触媒を管内に配置し、酸化ニッケルを水素含有ガス等の還元剤で還元することができる。公知の還元技術を用いて、蒸気改質のための活性触媒を生成することができる。
【0045】
あるいは、触媒中の酸化ニッケルをその場で還元し、次いで空気又は窒素希釈空気等の酸素含有ガスを使用して酸化物の薄い不動態化層で元素金属を被覆してもよい。酸素と二酸化炭素と、任意選択で窒素との混合物を使用してもよい。このようにして、還元状態の触媒をユーザに安全に届けることができ、活性触媒を生成する時間及び後続の活性化中に使用される水素の量を低減することができる。
【0046】
様々な管状蒸気改質器配置を使用することができる。管状蒸気改質器は、従来の上部燃焼蒸気改質器又は側部燃焼蒸気改質器であってもよい。このような改質器では、高温ガスは、管の上端に又は管の長さに沿ってのいずれかで配置された複数のバーナを用いて燃料ガスを燃焼させることによって供給される。あるいは、蒸気改質器は、高温ガスが燃焼プロセスからの煙道ガスによって供給され得るガス加熱改質器(GHR)であってもよく、あるいは炭化水素の触媒若しくは非触媒部分酸化によって、又は炭化水素及び/又は改質ガス混合物の自己熱改質によって生成された合成ガスであってもよい。更に、高温ガスは、複数の管を通過した改質ガスと混合されてもよい。
【0047】
管状蒸気改質器内の複数の管は、円形断面を有してもよく、5~15mの長さ及び5~30cm又は5~15cmの範囲内の内径を有してもよい。各管の内径は、ほぼ同じであることが好ましい。
【0048】
使用時には、管は、吸熱蒸気改質反応によって冷却された管の入口端部と共に、それらの長さに沿った温度勾配で作動する。入口における管及び反応ガスの温度は、300~650℃又は450~650℃、好ましくは450~600℃、より好ましくは450~550℃の範囲であり得る。合成ガスを形成するための変換が本質的に完了する管の出口端において、管はより高温である。出口における管及び反応ガスの温度は、600~950℃の範囲であり得る。管内の触媒の温度を、1つ又は複数の管内の触媒床の入口と出口との間の触媒の平均温度である床温度として表すことが可能である。床温度は、望ましくは625~775℃又は640~760℃の範囲であり得る。
【0049】
改質ガス又は粗合成ガスは、管の出口から回収される。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気、アンモニア及びメタンを含む。改質ガスは、プロセスの平衡限界のためにいくらかのメタンを含有する。管状改質器からのメタン含有量又は「メタンスリップ」は、プロセス効率の指標である。更に、改質ガスを使用する下流プロセスにおいてメタンが蓄積する可能性があり、これは望ましくなく、したがって、低いメタンスリップが望ましい。構造化蒸気改質触媒及び反応条件を使用して、プロセスは、低いメタンスリップ、例えば、乾燥ガス基準で15体積%未満を提供することができる。メタンスリップは、好ましくは、乾燥ガス基準で10体積%未満、特に乾燥ガス基準で5体積%未満であり、この場合、粗合成ガスは、その後、二次改質又は自己熱改質を受けない。用語「乾燥ガス基準で」は、改質ガスの蒸気含有量を考慮せず、異なる量の蒸気を有する他の改質ガスとの比較を可能にするために使用される。
【0050】
改質器の低温領域において粒子状触媒を利用することにより、構造化触媒のみを利用した場合よりも活性を増大させることができ、一方で、構造化触媒の利点の一部、例えば圧力低下の低減を維持することができる。更に、アルカリ化された(例えば、酸化カリウム含有)粒子状触媒を使用することは、構造化触媒配置に更なる炭素保護を与えることができることを意味する。構造化触媒コーティング中にカリウムを配合するのではなく、このために粒子状触媒を利用することにより、構造化触媒上のコーティングにカリウムを添加すること単独によって可能になるよりも、改質器中のカリウムのより大きな貯蔵が可能になる。
【0051】
更に、条件が他の場合では炭素形成に有利である管の特定の部分の構造化触媒間で粒子状触媒を利用することが可能である。この配置は、構造化触媒の性能及びそれがもたらす利益(熱伝達の増加、圧力降下の低減、平衡へのより近いアプローチ、及びより高い水素生成)を、炭素形成のリスクにより他の場合では可能ではない場合に、蒸気改質用途において最適化する。
【0052】
したがって、本発明は更に、本明細書に記載されるように、炭化水素供給原料の触媒蒸気改質中の触媒上の炭素形成を抑制するための、複数の管の直径の最大15%である最大寸法を有する、NiOとして表される、5~30%重量のニッケルを含む非構造化粒子状蒸気改質触媒と、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する、多孔質金属酸化物の表面上に分散したニッケルを含む構造化蒸気改質触媒との組み合わせの使用を提供し、金属酸化物コーティングのニッケル含有量は、5~50%重量の範囲にあり、コーティングの厚さは、5~150マイクロメートルの範囲にある。
【0053】
本発明のプロセスは、フィッシャー・トロプシュ合成によって得られる水素、メタノール、ジメチルエーテル、オレフィン、アンモニア、尿素又は炭化水素液体、例えばディーゼル燃料の製造プロセスの一部として使用することができる。したがって、改質ガスは、蒸気の露点未満への冷却の工程、凝縮物の分離の工程、水素分離の工程、二酸化炭素分離の工程、メタノール合成の工程、ジメチルエーテル合成の工程、オレフィン合成の工程、アンモニア合成の工程、又は炭化水素液体合成の工程のうちの1つ以上の工程を含む更なる処理に供されてもよい。これらの工程を達成するために、公知のプロセスを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明を、以下の実施例及び図1図3を参照して更に説明する。
図1】異なる触媒配置についての管の長さに対するR因子の比較の図である。
図2】異なる触媒配置についての管の長さに対する圧力降下の比較の図である。
図3】異なる触媒配置についての管の長さに対する相対的な管壁温度マージンの比較を示す図である。
【実施例
【0055】
それぞれが127mmの内径を有する複数の管を含む蒸気改質器において、CATACEL SSR(商標)構造化蒸気改質触媒よりも市販のペレット化蒸気改質触媒を使用する利点を定量化するために、蒸気改質器モデリングソフトウェアを使用して、様々な触媒構成の間の違いを調べた。粒子状触媒の特性は以下の通りであった。
【0056】
【表1】
【0057】
以下の配置をモデル化した。
【0058】
【表2】
【0059】
モデルは、炭素形成が可能である動作条件下で、それぞれの場合において、固定メタンスリップ及び固定出口圧力で実行された。この評価で使用した重要な性能指標を以下の表に示す。R因子は、炭素ガス化速度と炭素形成速度との間の比を表す。1.0より大きいR因子は、改質器における炭素形成の傾向を示す。管壁温度マージンは、設計管温度と動作温度との間の差であり、このマージンが25℃未満である場合、管破損の可能性を示す。圧力降下は、改質器内の管を通る流れに対する抵抗を示す。
【0060】
【表3】
【0061】
比較例1は、従来のペレット化触媒の使用を表す。より大きなペレットについての圧力低下は適度であるが、R因子は、反応条件下で炭素形成が起こりやすいことを示す。
【0062】
比較例2は、ペレット化触媒の一部を、より小さいカリウムドープペレット化触媒で置き換えている。R因子はより低く、管壁温度マージンはより大きいが、圧力降下ははるかにより大きい。
【0063】
比較例3は、構造化触媒のみを使用する。圧力低下は非常に低く、最小管壁温度マージンはより高いが、R因子は比較例2よりも増加している。
【0064】
構造化触媒の上流の複数の管の内径の約10%の最大寸法を有する小さなペレットを使用する実施例4は、同じ条件下で、炭素形成が比較例2の炭素形成未満に低減されるが、圧力損失が改善されることを示す。比較例3と比較して、R因子も低く、特許請求される組み合わせからの改質器における炭素形成の傾向の減少を示し、管壁温度マージンは比較的高い。
【0065】
R因子、圧力降下及び最小管壁温度マージンの比較を図1~3に示す。これらは、粒子状触媒と構造化触媒とのハイブリッド構成の使用が、信頼性のあるプラント作動及びプラント効率の向上に関して最適な解決策を提供することを示しており、理由は以下の通りである。
(i)増加した炭素マージンは、より低い蒸気対炭素比での動作を可能にし、これは、改善された信頼性及び蒸気流量変動に対する低減された感度を意味する。それはまた、供給原料の柔軟性を改善し、それによってより高い炭化水素含有量を有するガスを処理することができる。
(ii)より低い管壁温度(TWT)は、管破損の可能性を低減し、燃料使用量を低減することによって、より安全で、より信頼性があり、より効率的な炉動作を可能にする。
(iii)圧力低下の低減は、圧縮電力の需要を減少させ、追加の電力需要なしに、同じ圧力低下に対するプラントスループットの増加を可能にする。
図1
図2
図3
【国際調査報告】