IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

<>
  • 特表-水蒸気改質 図1
  • 特表-水蒸気改質 図2
  • 特表-水蒸気改質 図3
  • 特表-水蒸気改質 図4
  • 特表-水蒸気改質 図5
  • 特表-水蒸気改質 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】水蒸気改質
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/40 20060101AFI20230824BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C01B3/40
B01J23/89 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579139
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 GB2021051892
(87)【国際公開番号】W WO2022034284
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】2012614.0
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】カールソン、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、アンドリュー エドワード
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB16
4G140EB42
4G140EB48
4G140EC02
4G140EC03
4G140EC04
4G140EC05
4G140EC08
4G169AA04
4G169AA11
4G169BA01B
4G169BA18
4G169BB02B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169CC17
4G169EA02Y
4G169EA08
4G169EA18
4G169EE06
4G169EE07
4G169FA04
4G169FB15
(57)【要約】

炭化水素供給原料と水蒸気との混合物を、管状水蒸気改質器内の複数の外部加熱管内に配置された1つ以上のニッケル水蒸気改質触媒から構成される触媒床に通すことを含み、各管が、炭化水素と水蒸気との混合物が供給される入口と、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア及びメタンを含有する改質ガスが回収される出口とを有し、少なくとも管の出口における水蒸気改質触媒が、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散したニッケルを含む構造化水蒸気改質触媒であり、金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、1種以上の窒素化合物を含有する炭化水素供給原料を水蒸気改質するためのプロセスが記載されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給原料と水蒸気との混合物を、管状水蒸気改質器内の複数の外部加熱管内に配置された1つ以上のニッケル水蒸気改質触媒から構成される触媒床に通すことを含み、各管が、前記炭化水素と水蒸気との混合物が供給される入口と、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア及びメタンを含有する改質ガスが回収される出口とを有し、少なくとも前記管の前記出口における前記水蒸気改質触媒が、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散したニッケルを含む構造化水蒸気改質触媒であり、前記金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、前記コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、1種以上の窒素化合物を含有する炭化水素供給原料を水蒸気改質するためのプロセス。
【請求項2】
前記非多孔質構造上にニッケルを含有する前記多孔質金属酸化物コーティングの厚さが、10~100マイクロメートルの範囲、好ましくは10~80マイクロメートルの範囲、より好ましくは10~50マイクロメートルの範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記金属酸化物コーティングのニッケル含有量が、10~30重量%、好ましくは10~20重量%の範囲である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
白金、パラジウム、ロジウムもしくはルテニウム、又はそれらの混合物から選択される白金族金属促進剤が前記コーティング中に含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記白金族金属促進剤が、0.05~1重量%の範囲の量で前記コーティング中に存在する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
ニッケルが分散される前記多孔質金属酸化物が、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、マグネシア、セリア、酸化プラセオジム、イットリア及びランタナ、好ましくはアルミナ、ジルコニア、セリア、ランタナ及びそれらの2種以上の混合物を含む耐火性酸化物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記非多孔質支持構造部上のコーティングの量が、10~150g/m、好ましくは10~80g/m、より好ましくは30~60g/mの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記構造化触媒が、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を有する金属又はセラミック構造を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記構造化触媒が、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を含む、それらが配置される管に相補的な直径を有する円筒形ユニットを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記炭化水素供給原料がメタンを含み、好ましくは予備改質ガス、随伴ガス又は天然ガス、より好ましくは天然ガスである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記供給原料が、10~100バール(絶対圧)、好ましくは15~80バール(絶対圧)、より好ましくは20~50バール(絶対圧)の範囲の圧力に圧縮される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記1種以上の窒素化合物が窒素ガスNを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記炭化水素供給原料の窒素ガス含有量が、0.1~25体積%又は0.5~25体積%、好ましくは1~10体積%、より好ましくは1~5体積%の範囲である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記炭化水素供給原料と水蒸気との混合物が、1.8:1から5:1、好ましくは2.5:1から3.5:1、より好ましくは2.8:1から3.2:1の範囲の水蒸気対炭素比を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記炭化水素供給原料の混合物が、300~650℃、好ましくは450~650℃の範囲の入口温度で前記管の前記入口に供給される、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記管状水蒸気改質器が複数の管を含み、前記炭化水素供給原料と水蒸気との混合物が前記管を通過し、前記管の周囲を流れる燃焼ガス又は合成ガスを含む高温ガスによって前記管に熱が伝達される、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記触媒床が、水蒸気改質触媒の1、2、3又はそれ以上の層から構成され、各場合において、前記管の前記出口に隣接する前記水蒸気改質触媒の層が前記構造化触媒である、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記管内に水蒸気改質触媒の2つ以上の層が存在し、前記構造化触媒層が、前記床の体積の95%~5%、好ましくは前記床の体積の80%~20%、より好ましくは前記床の体積の75%~25%を構成する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記改質ガスのメタン含有量が、乾燥ガス基準で15体積%未満、好ましくは乾燥ガス基準で10体積%未満、より好ましくは乾燥ガス基準で5体積%未満である、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記改質ガスのアンモニア含有量が、乾燥ガス基準で200ppmv未満、好ましくは100ppmv未満、より好ましくは50ppmv未満、最も好ましくは、乾燥ガス基準で、10ppmv未満である、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記プロセスが、前記改質ガスを露点未満に冷却して水蒸気を凝縮させ、前記液体凝縮物を分離させて前記改質ガスから合成ガスを形成することを更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記液体凝縮物のアンモニア含有量が、400mg/リットル未満、好ましくは200mg/リットル未満、より好ましくは100mg/リットル未満、最も好ましくは50mg/リットル未満、最も好ましくは20mg/リットル未満である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記凝縮物の少なくとも一部が再循環され、前記水蒸気改質プロセスで使用される水蒸気を発生させるために使用される、請求項21又は22に記載のプロセス。
【請求項24】
非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散されたニッケルを含み、窒素含有炭化水素供給原料の触媒水蒸気改質中のアンモニア生成を抑制するために、前記金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、前記コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、構造化水蒸気改質触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を水蒸気改質して合成ガスを製造するプロセス及びこのプロセスを実施するための装置に関する。
【0002】
合成ガスは、水素及び酸化炭素(一酸化炭素及び二酸化炭素)を含み、窒素ならびにアルゴン及び低レベルのメタンなどの他のガスを含有し得る。合成ガスは、精油所又は燃料電池のための水素製造、アンモニア合成、メタノール合成、ジメチルエーテル合成、又は液体炭化水素の合成のためのフィッシャー・トロプシュ法などの特定の最終用途に適した、より多い又はより少ない量の水素及び酸化炭素を含有してもよい。合成ガスは、水蒸気改質プロセスによって製造されることが多い。
【0003】
従来の水蒸気改質プロセスでは、炭化水素供給原料と水蒸気との混合物、場合によっては二酸化炭素も、高圧で、適切な加熱媒体、一般に高温ガス混合物によって外部から加熱される粒子状触媒を含む管を通過させる。粒子状触媒は、通常、成形ユニット、例えば複数の貫通孔を有する円筒の形態であり、典型的には、ニッケルなどの適切な触媒活性金属を含浸させた、α-アルミナ、アルミン酸カルシウム又はアルミン酸マグネシウムなどの耐火性支持構造部材料から形成される。
【0004】
炭化水素供給原料はしばしば少量の窒素を含み、これは水蒸気改質触媒上でアンモニアに変換される。アンモニアは、合成ガス中で望ましくなく、プロセスに戻されることが望ましいプロセス凝縮物中に可溶性であり、その生成を最小限にしようとするプロセスが提案されている。
【0005】
米国特許第5498404号は、アンモニアの生成が低減された窒素含有炭素質供給原料の触媒水蒸気改質のためのプロセスを開示しており、供給原料を、触媒中のニッケルの量に基づいて計算して0.01~10重量%の量の銅を更に含むニッケル担体触媒と接触させる。銅含有触媒は、好ましくは、従来のニッケル水蒸気改質触媒の固定床における副層として使用され、実施例1は、銅含有量が増加するにつれて、触媒がより低い水蒸気改質活性を有することを示す。
【0006】
国際公開第2009/054830号は、約10%~約25%のニッケルを有する触媒の第1段階、10%未満のニッケルを有する触媒の第2段階、及び2%以下の低濃度ロジウム触媒を有する最終段階を使用することによって、アンモニアを過剰に生成することなく天然ガスを改質することを開示している。アンモニアの生成は、出口に向かう管の最も熱い部分における触媒中のニッケル含有量及び表面積を減少させることによって抑制される。しかしながら、第2段階におけるニッケル含有量の減少のために、転化率は望ましくないほど低く、これは適切な合成ガス生成物を提供するためにロジウム触媒を必要とする。貴金属触媒は、水蒸気改質器における合成ガスの大規模生成には法外に高価であり、混合触媒を使用すると、触媒の装填、操作及び排出にコスト及び複雑さが加わる。更に、混合触媒は、それらの金属回収のための再処理がより困難である。
【0007】
本発明者らは、触媒表面の薄層中にニッケルが存在するニッケル水蒸気改質触媒を使用することによって、ロジウム触媒の使用に頼ることなくアンモニア生成を減少させることができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、炭化水素供給原料と水蒸気との混合物を、管状水蒸気改質器内の複数の外部加熱管内に配置された1つ以上のニッケル水蒸気改質触媒から構成される触媒床に通すことを含み、各管が、炭化水素と水蒸気との混合物が供給される入口と、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア及びメタンを含有する改質ガスが回収される出口とを有し、少なくとも管の出口における水蒸気改質触媒が、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散したニッケルを含む構造化水蒸気改質触媒であり、金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、1種以上の窒素化合物を含有する炭化水素供給原料を水蒸気改質するためのプロセスを提供する。
【0009】
プロセスに供給される炭化水素含有供給原料は、天然ガス、随伴ガス、LPG、石油蒸留物、ディーゼル、ナフサもしくはそれらの混合物などの任意のガス状又は低沸点炭化水素供給原料、又は精製オフガスもしくは予備改質ガスなどの化学プロセスからのオフガスを含んでもよい。炭化水素供給原料は、好ましくはメタンを含み、予備改質ガス、随伴ガス又は天然ガスであってもよい。天然ガスが特に好ましい供給原料である。供給原料は、10~100バール(絶対圧)の範囲の圧力まで圧縮されてもよい。炭化水素供給原料の圧力は、プロセス全体を通して有用に圧力を支配し得る。動作圧力は、好ましくは15~80バール(絶対圧)、より好ましくは20~50バール(絶対圧)の範囲内であり、これは、本プロセスからの性能が向上するためである。
【0010】
炭化水素供給原料が圧縮前又は好ましくは圧縮後に硫黄化合物を含有する場合、供給原料を脱硫に供してもよい。脱硫は、CoMo又はNiMo触媒を使用する水素化脱硫、及び適切な硫化水素吸収剤、例えば酸化亜鉛吸着剤を使用する硫化水素の吸収を含んでもよい。超精製吸着剤は、水蒸気改質触媒を更に保護するために、硫化水素吸着剤の下流で有用に使用してもよい。好適な超精製吸着剤は、銅-酸化亜鉛/アルミナ材料及び銅-ニッケル-酸化亜鉛/アルミナ材料を含み得る。水素化脱硫を容易にするため、及び/又は改質プロセスにおける炭素レイダウンのリスクを低減するために、圧縮炭化水素供給原料に水素を添加してもよい。得られた混合ガス流中の水素の量は、1~20体積%の範囲内であり得るが、好ましくは、1~10体積%の範囲内、より好ましくは1~5体積%の範囲内である。
【0011】
炭化水素供給原料が塩化物又は重金属汚染物質などの他の汚染物質を含有する場合、これらは、改質の前に、従来の吸着剤を用いて任意の脱硫化の上流又は下流で除去されてもよい。塩化物除去に好適な吸着剤は周知であり、アルカリ化アルミナ材料が挙げられる。同様に、水銀又はヒ素などの重金属の吸着剤が知られており、硫化銅(copper sulphide)材料が挙げられる。
【0012】
炭化水素含有供給原料がメタンを含有する予備改質ガスである場合、これは、炭化水素/水蒸気混合物を断熱低温水蒸気改質の工程にかけることによって形成することができる。炭化水素は、リッチ天然ガス、ナフサ、又はメタンより重い炭化水素を含有する他の炭化水素含有供給原料であってもよい。予備改質プロセスは公知である。このようなプロセスにおいて、炭化水素/水蒸気混合物は、典型的には400~650℃の範囲の温度に加熱され、次に、適切な粒子状水蒸気改質触媒、通常は高いニッケル含有量、例えばNiOとして表される40重量%超を有する沈殿触媒の固定床を断熱的に通過する。このような断熱性低温改質工程の間、メタンよりも高い任意の炭化水素を水蒸気と反応させて、メタン、酸化炭素及び水素の混合物を含む予備改質ガスを得る。一般に予備改質と称される断熱改質工程の使用は、管状水蒸気改質器への供給物がメタンよりも高い炭化水素を含まず、また、かなりの量の水素を含有することを確実にするために望ましい。これは、下流の管状水蒸気改質器における触媒上での炭素生成のリスクを最小限にするために望ましい。
【0013】
本プロセスにおいて、炭化水素供給原料は、0.1~25体積%の1種以上の窒素化合物を含有することができる。炭化水素供給原料中の1種以上の窒素化合物の含有量は、0.5~25体積%、1~10体積%、又は1~5体積%であってもよい。1種以上の窒素化合物は、1種以上のアミンを含んでもよいが、典型的には窒素ガス(N)を含むか、又は窒素ガスから構成される。したがって、炭化水素供給原料の窒素ガス含有量は、0.1~25体積%又は0.5~25体積%、好ましくは1~10体積%、より好ましくは1~5体積%の範囲であってもよい。
【0014】
供給原料は予熱されてもよい。圧縮後、脱硫前に、燃焼加熱器などの適切な熱源で予熱することが好都合であり得る。
【0015】
炭化水素供給原料は水蒸気と混合されて改質供給ガスを形成する。水蒸気導入は、水蒸気の直接注入によって、及び/又は供給原料と加熱水流との接触による供給原料の飽和によって行われてもよい。いくつかの実施形態では、炭化水素供給原料は、熱水が供給される飽和器内で飽和して飽和ガス混合物を形成する。飽和ガス混合物の水蒸気含有量は、必要に応じて、水蒸気の直接添加によって増加させることができる。水は、好ましくは、改質ガスから回収された凝縮物流、飽和器の底部から回収された水、及び本プロセスで生成された他の凝縮物の1つ以上を含む。導入された水蒸気の量は、望ましくは、少なくとも1.8:1の水蒸気対炭素比を与えるのに充分であり、すなわち、供給原料中の炭化水素のグラム原子あたり少なくとも1.8モルの水蒸気を与える。蒸気対炭素比は、1.8:1から5:1、より好ましくは2.5:1から3.5:1、特に2.8:1から3.2:1の範囲であることが好ましく、これは、水素生成と効率の最適なバランスを提供するためである。
【0016】
炭化水素供給原料と水蒸気とを含む改質供給ガスは、水蒸気及び窒素化合物含有量に応じて、0.02~14.0体積%、任意選択で0.1~10.0体積%、又は任意選択で0.2~6.0体積%の1種以上の窒素化合物を含有してもよい。
【0017】
次に、改質供給ガス混合物は、改質前に予熱されることが望ましい。好ましい実施形態では、炭化水素/水蒸気混合物は、燃焼加熱器を通過させることによって加熱される。望ましくは、混合流は、300~650℃又は450~650℃、好ましくは450~600℃、より好ましくは450~550℃の範囲の入口温度に加熱される。予備改質器がない場合、300~550℃の範囲の入口温度が特に好適であり、予備改質器がある場合、550~650℃の範囲のより高い入口温度が特に好適である。
【0018】
改質プロセスの間、メタンは水蒸気と反応して水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を生成する。存在する2個以上の炭素原子を含有する任意の炭化水素はメタンに変換され、メタンは水蒸気改質される。更に、可逆的な水性ガスシフト反応が起こる。全体として、このプロセスは吸熱性であり、反応を維持し、所望の転化率を達成するために管及び触媒の加熱を必要とする。水蒸気改質器への入熱は、典型的には、管の出口における生成ガス流の温度が入口温度よりも高く、多くの場合、入口温度よりも100~350℃又は400℃高い範囲であるような入熱である。
【0019】
管状水蒸気改質器は、通常は垂直に配置された複数の管を含み、これらの管をガス混合物が通過することができ、管の外面の周りを流れる高温ガスによって熱がこれらの管に伝達される。高温ガスは、燃焼ガス又は合成ガスを含むことができる。供給ガス混合物が典型的には水蒸気改質器の上部に供給され、管を通って下方に流れるように、管入口は典型的には上端にある。
【0020】
したがって、管状水蒸気改質器は、改質供給ガス用の入口と、改質ガス混合物用の出口と、入口と連通し、ガス混合物を通過させることができ、熱交換ゾーン内で管の周りを流れる高温ガスによって熱が伝達される複数の垂直管とを有することができ、管は各々、管内に層として設けられた1つ以上の水蒸気改質触媒を含み、少なくとも出口に隣接する水蒸気改質触媒の層は、構造化ニッケル水蒸気改質触媒である。
【0021】
本プロセスにおける管の出口に隣接する触媒は、構造化水蒸気改質触媒である。「構造化水蒸気改質触媒」とは、非多孔質構造、典型的には金属又はセラミック構造上の水蒸気改質触媒コーティングを意味する。構造化触媒中のニッケルは、多孔質金属酸化物の表面上に分散され、これは非多孔質構造上の表面コーティングとして支持される。
【0022】
金属又はセラミック構造は、本質的に非多孔質であり、したがって、形状によって本質的に画定される少ない表面積を有する。充分な活性を提供するために、構造化触媒中のニッケルは、非多孔質金属又はセラミック支持構造部をコーティングした多孔質金属酸化物上に分散される。非多孔質構造上にニッケルを含有する多孔質金属酸化物コーティングの厚さは、5~150マイクロメートルの範囲、好ましくは10~100マイクロメートルの範囲、より好ましくは10~80マイクロメートルの範囲、最も好ましくは10~50マイクロメートルの範囲である。好ましい範囲は、触媒の最適な活性ならびに接着性及び凝集性を提供する。
【0023】
ニッケルは、既知のウォッシュコーティング法によって構造に適用されてもよく、それによって、成分として酸化ニッケルを含んでもよい金属酸化物のスラリーが、浸漬又は噴霧によって金属又はセラミック構造に適用され、次に、乾燥及び熱処理されて、金属酸化物を支持構造部に結合させる。ニッケルはまた、可溶性ニッケル化合物を使用する含浸技術によって金属酸化物被覆支持構造部に適用され、次に乾燥され、か焼されてニッケル化合物を酸化ニッケルに変換してもよい。溶液中のニッケルを金属酸化物支持構造部のスラリーと組み合わせて適用することを含む、これらの技術の組み合わせを使用してもよい。
【0024】
構造上の水蒸気改質触媒はニッケルを含む。金属酸化物コーティングのニッケル含有量は、5~50重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~20重量%の範囲である。必要に応じて、白金、ロジウム、ルテニウムもしくはパラジウム、又はそれらの混合物から選択される白金族金属が、コーティング中に含まれ得る。含まれる場合、白金族金属促進剤は、0.05~1重量%の範囲の量でコーティング中に存在してもよい。コーティングは、10~150g/m、好ましくは10~80g/m、より好ましくは30~60g/mの範囲の量で非多孔質支持構造部に塗布することができる。
【0025】
酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物も、構造上の多孔質金属酸化物コーティング中に存在してもよいが、通常は必要ではない。アルカリ金属酸化物の量は、存在する場合、0.5~7.0重量%の範囲であり得る。
【0026】
ニッケルが分散される多孔質金属酸化物は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、マグネシア、セリア、酸化プラセオジム、イットリア、及びランタナを含む任意の適切な耐火性酸化物であってもよい。好ましい多孔質金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、セリア、ランタナ及びそれらの2種以上の混合物を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、金属又はセラミック構造は、1つ以上の貫通孔を有し得る、球体又は円筒などの固体であってもよい。このような構造化触媒は、従来のペレット化水蒸気改質触媒に匹敵する方法で使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、構造化触媒は、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を有する金属又はセラミック構造を含み得る。このような構造化触媒は、圧力低下の軽減及び熱伝達の改善が必要とされる場合に好ましい。したがって、構造化触媒は、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を含む、構造化触媒が配置される管に相補的な直径を有する円筒形ユニットを含むことができる。「相補的」という用語によって、円筒形ユニットの直径は、円筒形ユニットが配置される管の内径よりも1~20mm小さくてもよく、それにより、円筒形ユニットは管内にきちんと収まる。円筒形ユニットは、プロセス流体がユニットを通過する際に軸方向及び半径方向の両方にプロセス流体を流す穿孔及び/又は内部構造を備えることができる。円筒形ユニットは、互いに容易に積み重ねることができ、管内で自立するように、積み重ね可能であることが好ましい。コーティングされたペレットではなく、プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を有する円筒形ユニットを使用する利点は、触媒コーティングの量が低減され得ることである。例えば、コーティングされた金属又はセラミックペレットの場合、コーティングは、管1立方メートル当たりNiOとして約100~150kgのNiで適用することができる。プロセス流体が順序付けられた非ランダム方向に通過し得る複数の通路を有するコーティングされた円筒形構造の場合、コーティングの量は、管1立方メートル当たりNiOとして約4~7kgのNiであり得る。
【0029】
市販のステンレス鋼金属箔を用いて調製された構造化触媒が好ましい。
【0030】
好ましい構造化触媒は、米国特許出願公開第2012/0195801(A1)号に記載されている。これらの構造化触媒は、中心ロッド上に配置された波形金属ディスクの形態のファンを含む。ファンは、流体流を半径方向に案内して管の内壁に接触させる折り畳まれた金属箔から形成された半径方向流体ダクトを有する。ファンは、半径方向流体ダクトがファンの外径面に沿って終端して管の内壁に面する流体ダクト開口部を形成するように、上面、底面、及び外径面を有し、ファンは、ファンの上面又は底面と接触する平坦又は波形の金属ワッシャを更に有し、ワッシャは、内径及び外径を有するリングの形状であってもよく、ワッシャは、ワッシャの外径がファンの外径面から半径方向外側に延びるようにファンの上面又は底面と接触している。ワッシャは更に、ワッシャがファンの外径面と反応管との間に間隙を作るように、管の内壁からワッシャを分離する、ワッシャの外径から外向きに延在する間隔タブを有してもよい。水蒸気改質触媒が担持され得る別の構造化触媒配置としては、米国特許出願公開第2012/0294779号、同第2012/0288420号、米国特許第8257658号、同第8235361号、同第7976783号、同第7566487号、同第7761994号、同第8178075号及び同第7871579号に記載されているものが挙げられる。
【0031】
各管内に単一の種類の構造化触媒が存在してもよく、その場合、管内の触媒床はその構造化触媒のみから構成される。あるいは、管内に水蒸気改質触媒の2つ、3つ、又はそれ以上の層があってもよく、各場合において、少なくとも管の出口に隣接する層が構造化触媒である。
【0032】
したがって、管は、構造化触媒の上流に非構造化水蒸気改質触媒を含むことができる。水蒸気改質触媒の相対量は、所望の転化率を得るために厚さで変化してもよい。非構造化触媒の層及び管の出口に隣接する構造化触媒の層を含むいくつかの実施形態において、構造化触媒層は、床の体積の95%~5%を構成してもよく、又は床の体積の80%~20%を構成してもよく、又は床の体積の75%~25%を構成してもよい。管の残りの部分の触媒床における水蒸気改質触媒の他の層は、ニッケルがペレット全体に分布している従来のペレット化触媒、又はニッケル層が耐火性金属酸化物ペレットの表面にのみ存在するエッグシェルニッケル触媒であってもよい。適切な非構造化触媒は、アルミナ又はアルミン酸カルシウム及び/又はアルミン酸マグネシウムなどのアルミン酸アルカリ土類金属を含む耐火性酸化物担体上に担持されたニッケル、及び任意選択で酸化カリウムのペレットから構成される。
【0033】
触媒床が2層又は3層のニッケル水蒸気改質触媒から構成される場合、管の入口における触媒層は、好ましくは、非構造化ペレット化ニッケル水蒸気改質触媒である。非構造化ペレット化触媒が構造化水蒸気改質触媒の上流で使用される場合、非構造化ペレット化触媒は、好ましくは、10重量%~30重量%の範囲のNiOとして表されるニッケル含有量を有する。したがって、いくつかの実施形態では、触媒管は、ニッケル水蒸気改質触媒の2つの層を含むか、又はそれから構成されてもよく、管の出口に隣接する触媒層は、構造化ニッケル水蒸気改質触媒であり、管の入口に隣接する触媒層は、NiOとして表される10%~30%のニッケルを含有する非構造化ペレット化ニッケル水蒸気改質触媒である。
【0034】
触媒は、典型的には、酸化形態で管状水蒸気改質器の管に供給され、酸化ニッケルの還元によって活性化されて、その場で元素ニッケルを形成する。例えば、酸化形態の触媒を管内に配置し、酸化ニッケルを水素含有ガスなどの還元剤で還元することができる。公知の還元技術を用いて、水蒸気改質のための活性触媒を生成してもよい。
【0035】
あるいは、触媒中の酸化ニッケルをエクスサイチュで還元してもよく、次に、空気又は窒素希釈空気などの酸素含有ガスを使用して、酸化物の薄い不動態化層で元素金属をコーティングしてもよい。酸素と二酸化炭素と、任意選択で窒素との混合物を使用してもよい。このようにして、還元状態の触媒をユーザに安全に届けることができ、活性触媒を生成する時間及び後続の活性化中に使用される水素の量を低減することができる。
【0036】
様々な管状水蒸気改質器構成を使用することができる。管状水蒸気改質器は、従来の上部燃焼水蒸気改質器又は側部燃焼水蒸気改質器であってもよい。このような改質器では、高温ガスは、管の上端に又は管の長さに沿って配置された複数のバーナを用いて燃料ガスを燃焼させることによって供給される。あるいは、水蒸気改質器は、高温ガスが燃焼プロセスからの煙道ガスによって提供され得るガス加熱改質器(GHR)であってもよく、又は炭化水素の触媒もしくは非触媒部分酸化によって、又は炭化水素及び/もしくは改質ガス混合物の自己熱改質によって生成された合成ガスであってもよい。更に、高温ガスは、複数の管を通過した改質ガスと混合されてもよい。管は円形断面を有してもよく、5~15mの長さ、好ましくは5~30cm又は10~15cmの範囲の内径を有してもよい。使用時には、これらの管は、それらの長さに沿って温度勾配を有して動作し、管の入口端部は、吸熱水蒸気改質反応によって冷却される。入口における管及び反応ガスの温度は、300~650℃又は450~650℃、好ましくは450~600℃、より好ましくは450~550℃の範囲であってもよい。合成ガスを形成するための変換が本質的に完了する管の出口端において、管はより高温である。出口での管及び反応ガスの温度は、600~950℃の範囲であってもよい。管内の触媒の温度を床温度として表すことが可能であり、床温度は、管内の触媒床の入口と出口との間の触媒の平均温度である。床温度は、望ましくは625~775℃又は640~760℃の範囲であってもよい。
【0037】
改質ガス又は粗合成ガスは、管の出口から回収される。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア及びメタンを含む。改質ガスは、プロセスの平衡限界のためにいくらかのメタンを含有する。管状改質器からのメタン含有量又は「メタンスリップ」は、プロセス効率の指標である。更に、改質ガスを使用する下流プロセスにおいてメタンが蓄積する可能性があり、これは望ましくなく、したがって、低いメタンスリップが望ましい。構造化水蒸気改質触媒及び反応条件を使用して、プロセスは、低いメタンスリップ、例えば、乾燥ガス基準で15体積%未満を提供することができる。メタンスリップは、好ましくは、乾燥ガス基準で10体積%未満、特に乾燥ガス基準で5体積%未満であり、この場合、粗合成ガスは、その後、二次改質又は自己熱改質を受けない。用語「乾燥ガス基準で」は、改質ガスの水蒸気含有量を考慮せず、異なる量の水蒸気を有する他の改質ガスとの比較を可能にするために使用される。
【0038】
更に、改質ガスのアンモニア含有量は驚くべきことに非常に低い。理論に束縛されることを望むものではないが、本出願人らは、ニッケルが構造の表面に薄層としてのみ存在することは、アンモニアが生成される副反応が抑制されることを意味すると考える。したがって、本プロセスにおいて、改質ガスのアンモニア含有量は、乾燥ガス基準で200ppmv未満であり得る。いくつかの実施形態において、改質ガスのアンモニア含有量は、乾燥ガス基準で100ppmv未満、好ましくは50ppmv未満、より好ましくは10ppmv未満であってもよい。
【0039】
したがって、本発明は更に、本明細書に記載されるように、非多孔質金属又はセラミック構造上のコーティングとして存在する多孔質金属酸化物の表面上に分散されたニッケルを含み、窒素含有炭化水素供給原料の触媒水蒸気改質中のアンモニア生成を抑制するために、金属酸化物コーティングのニッケル含有量が5~50重量%の範囲であり、コーティングの厚さが5~150マイクロメートルの範囲である、構造化水蒸気改質触媒の使用を提供する。
【0040】
本プロセスは、改質ガスを露点未満に冷却して水蒸気を凝縮させ、次に液体凝縮物を分離させて改質ガスから合成ガスを形成することを更に含むことができる。凝縮物は、水蒸気改質プロセスで生成されたアンモニアの全てではないにしてもほとんどを捕捉する。凝縮物のアンモニア含有量は、400mg/リットル未満、好ましくは200mg/リットル未満、より好ましくは100mg/リットル未満、最も好ましくは50mg/リットル未満、又は更に20mg/リットルであってもよい。好ましい実施形態では、凝縮物の少なくとも一部が再循環され、水蒸気改質プロセスで使用される水蒸気を発生させるために使用される。
【0041】
本発明のプロセスは、水素、メタノール、ジメチルエーテル、オレフィン、アンモニア、尿素、又はフィッシャー・トロプシュ合成によって得られる例えばディーゼル燃料などの液体炭化水素の製造プロセスの一部として使用することができる。したがって、改質ガスは、水蒸気の露点未満への冷却、凝縮物の分離、水素分離、二酸化炭素分離、メタノール合成、ジメチルエーテル合成、オレフィン合成、アンモニア合成、又は液体炭化水素合成の1つ以上の工程を含む更なる処理に供されてもよい。これらの工程を達成するために、既知のプロセスを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下の図1図6を参照して、本発明を更に説明する。
【0043】
図1図1は、2体積%のNを含有する改質器供給原料を用いた試験における、1秒当たりに生成されるアンモニア対エタン転化率%モルを示すグラフである。
【0044】
図2図2は、5体積%のNを含有する改質器供給原料を用いた試験における、1秒当たりに生成されるアンモニア対エタン転化率%モルを示すグラフである。
【0045】
図3図3は、8体積%のNを含有する改質器供給原料を用いた試験における、1秒当たりに生成されるアンモニア対エタン転化率%モルを示すグラフである。
【0046】
図4図4は、2体積%のNを含有する改質器供給原料を用いた試験における、触媒のエタン転化率%モル対触媒中のNiの1m当たり1秒当たりに生成されるアンモニアを示すグラフである。
【0047】
図5図5は、5体積%のNを含有する改質器供給原料を用いた試験における、触媒のエタン転化率%モル対触媒中のNiの1m当たり1秒当たりに生成されるアンモニアを示すグラフである。
【0048】
図6図6は、8体積%のNを含有する改質器供給原料を用いた試験における、触媒のエタン転化率%モル対触媒中のNiの1m当たり1秒当たりに生成されるアンモニアを示すグラフである。
【0049】
実施例1
試験は、17.6重量%のニッケル又は7.2重量%のニッケルを含有する従来の円筒形ペレット化水蒸気改質触媒、及びステンレス鋼ペレット(3.3×3.3mm円筒)にウォッシュコートとして適用された、安定化酸化アルミニウム上に13重量%のニッケル及び0.25重量%のロジウムを含有する触媒コーティングを含む構造化触媒について行った。触媒コーティング装填量は23mg/インチであった。触媒コーティングの厚さは約30マイクロメートルであった。
【0050】
【表1】
【0051】
触媒を、約25mmの内径及び約2100mmの長さを有する単一の電気的に加熱された改質器管を備えた実験室規模の水蒸気改質器で試験した。反応器は上昇流ベースで動作した。蒸気を発生させるための水を、可変ストロークポンプを介してリグに供給し、反応器の底部に供給し、そこで水を蒸発させた。天然ガスは、熱質量流量制御装置を介して反応器に送達される前に、別個の脱硫容器を通して供給された。必要に応じて、窒素及び水素も独立した質量流量制御装置を介して反応器に供給した。水及びガスは全て、同じ入口パイプを介して反応器に入った。生成物ガスは、管からの出口を介して反応器を出て、周囲温度に冷却されて水蒸気を凝縮し、次にキャッチポットに収集された。少量の乾燥出口ガスをVarian CP490クアッドチャネルマイクロGC分析器に供給した。次に、このガスを出口ガスメータに戻して、改質器からの完全な物質収支を計算できるようにした。
【0052】
触媒の各々について、ペレット寸法を測定して、21080mmの幾何学的表面積(GSA)をもたらすのに必要なペレットの数を決定した。構造化触媒については363個のコーティングされたペレットを充填し、比較触媒については389個のペレットを充填した。反応管に充填したニッケルの量は、構造化触媒については0.07gであり、比較触媒1(a)及び1(b)についてはそれぞれ3.45g及び1.30gであった。ペレットを3.35~4.00mmのアルミナチップで100mLに希釈し、混合物を出口付近の改質器管に充填した。改質器管の残りに3.35~4.75mmのアルミナチップを充填した。
【0053】
触媒を、N中50体積%のHを用いて600°Cで2時間還元した。
【0054】
次に、3:1の水蒸気対炭素比で510~800℃の範囲の床入口温度を使用して27bargの圧力で改質を行った。まず、610℃、685℃、735℃、800℃及び735℃の入口温度で、各々少なくとも8時間、改質器を動作させることによって、比較触媒の触媒コンディショニングを行った。構造化触媒の触媒コンディショニングは、510℃、580℃、610℃、685℃、735℃、800℃、735℃、685℃、610℃、580℃及び510℃の入口温度で、各々少なくとも8時間、改質器を動作させ、続いて、全てのニッケルが活性還元形態であることを確実にするために、再び800℃で16.5時間、Hで処理することによって行った。この追加のコンディショニングは、触媒が完全に還元されることを確実にするためのものであり、その後の試験でアンモニア生成に影響を及ぼすとは考えられない。
【0055】
コンディショニング後、685℃、735℃及び800℃の入口温度で各触媒について試験を行った。
【0056】
供給原料の窒素含有量は、触媒の入口における供給ガス混合物中のNが湿潤ガス基準で2、5及び8体積%となるように調整した。
【0057】
改質ガスを改質器から収集し、露点未満に冷却して水蒸気を凝縮させ、アンモニアを含有する凝縮物を形成した。凝縮物中のアンモニアの量は、水蒸気改質器中の触媒によって生成されるアンモニアに比例する。8時間の試験期間の終わりに5分間にわたって凝縮物サンプル(250mL)を収集し、それらのアンモニア含有量について分析した。
【0058】
改質ガスから回収された凝縮物中のアンモニア濃度は、較正されたイオン選択電極(ISE)を用いて測定した。0.1、1及び10ppm(w/v)アンモニアの標準溶液を調製した。水酸化ナトリウム緩衝溶液をサンプルに添加してアンモニアを遊離させた。ISE電圧測定値が安定したとき、読み取り値を用いて、log10アンモニア濃度に対するISE電圧読み取り値の線形較正曲線を作成した。凝縮物のアンモニア濃度を同じ方法で分析し、ISE測定電圧読み取り値を使用して、較正曲線から導出することによってアンモニア濃度を決定した。
【0059】
異なる量の窒素を含有する供給ガスを用いて、各触媒について試験を繰り返した。これは、窒素供給ラインを介して様々な流量で窒素を導入して、改質器管に供給される供給ガス中に所望のレベルを提供することによって行われた。
【0060】
供給ガス中の異なる窒素含有量について異なる触媒の凝縮物中に生成されたアンモニアの結果を示す表を以下に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
入口温度の範囲にわたって、構造化触媒は、比較例よりも少ない量のアンモニアを生成する。しかしながら、触媒は、異なる量のニッケルを含有し、異なるニッケル表面積を有し、異なる活性を有する。触媒がより活性である場合、消費される水蒸気の量は、より活性の低い触媒の場合よりも多くなる。この未反応水蒸気が凝縮すると、アンモニア濃度に影響を与える。これを説明するために、水蒸気改質器に連結されたGCシステムを使用して得られた改質ガスに関する供給ガス組成及び速度ならびにガスクロマトグラフィーデータの知識から導出された酸素バランスに基づいて、水のモル流量を計算した。システムに出入りする酸素の量の差を使用して、1秒当たりに生成されるアンモニアの量を決定することができる。
【0065】
更に、構造化触媒は、天然ガス中の炭化水素の高い転化率で改質ガスを生成することができた。
【0066】
凝縮物を除去した後の改質ガスをガスクロマトグラフィーによって分析して、炭化水素の水素及び酸化炭素への転化率を確認した。天然ガス中のエタンの転化率は、可逆的であるメタン転化率よりも全体的な触媒活性が良好な測定値である。
【0067】
アンモニア濃度/秒対エタン転化率をプロットすると、活性及びアンモニア生成の点で触媒の有効性が示される。図1図3は、エタン転化率(%)に対する製造されたアンモニア/秒を示す。結果を以下に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
試験した温度での構造化触媒のエタン転化率は、比較触媒よりも低いレベルで開始するが、800℃では、構造化触媒は、比較触媒1(b)よりも高いエタン転化率を提供するが、供給ガスのN含有量が2体積%、5体積%又は8体積%であったかどうかにかかわらず、生成されたアンモニアの一部を伴うことが分かり得る。735℃での比較触媒1(a)は、800℃での構造化触媒に匹敵するエタン転化率を与えるが、後者は、ニッケル含有量の一部を含有する。構造化触媒についてのより高い入口温度での試験は、エタン転化率を更に改善し、低いアンモニア濃度を維持することができた。
【0072】
構造化触媒の活性は、所定の入口温度に対して標準的なペレット化触媒の活性よりも低いが、触媒が同じ炭化水素転化率で動作しているときに生成されるアンモニアを考慮して、使用中に予想される動作をより良く反映することが有用である。更に、構造化触媒において、ニッケル微結晶は、ペレット化触媒におけるものよりも1桁小さく、異なるニッケル表面積を生じさせる(比較触媒1(a)では0.5m/g及び構造化触媒では8m/g)。これを考慮すると、構造化触媒とペレット化触媒との間の性能の差は、更により明確に示される。図4図5及び図6は、ニッケル表面積の関数として、エタン転化率(%)対生成されたアンモニアを示す。これらの図は、構造化触媒を用いて生成されたアンモニアの量が、従来のペレット化触媒を用いた場合よりも著しく少ないことを示している。更に、著しく少ないニッケルを使用しかつ著しく少ないアンモニアを生成しながら、ペレット化触媒に匹敵する活性を得ることが可能である。これは、非多孔質支持部上の薄いコーティング中にニッケルを分散させることによって達成された。これらの結果は、改質器出口付近で構造化触媒を利用することによって、全体的な改質性能に影響を与えることなく、アンモニア生成を減少させることができることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】