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特表2023-537201物質交換プロセスを実施するためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】物質交換プロセスを実施するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/32 20060101AFI20230824BHJP
   B01D 3/26 20060101ALI20230824BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20230824BHJP
   C07C 67/54 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B01D3/32 Z
B01D3/26 A
C07C69/54 Z
C07C67/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022580997
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2021066379
(87)【国際公開番号】W WO2022002608
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20182884.5
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・メッツェン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・クンケルマン
(72)【発明者】
【氏名】オルトムント・ラング
(72)【発明者】
【氏名】マルヴィン・クランプ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ヘヒラー
【テーマコード(参考)】
4D076
4H006
【Fターム(参考)】
4D076AA13
4D076AA24
4D076BA02
4D076BB04
4D076BB05
4D076CA02
4D076CB03
4D076CC06
4D076CC12
4D076CC15
4D076CC22
4D076DA04
4D076EA03Z
4D076EA11Z
4D076EA14Z
4D076EA16Z
4D076EA17Z
4D076HA11
4D076JA03
4H006AA02
4H006AA04
4H006AD11
4H006BD81
4H006KC14
(57)【要約】
本発明は、物質移動プロセスを実施するための装置であって、気相導入のための、少なくとも2本の吸気管を有する塔を備え、分離活性内部構造物が塔内に収容され、塔セクションが少なくとも2本の吸気管から分離活性内部構造物まで伸び、セクション内では、塔の断面積の被覆率が総断面積を基準として25%未満であり、少なくとも2本の吸気管が1つの吸気管径の3倍以下に相当する高さオフセットを有し、少なくとも2本の吸気管が、互いに60°~150°の角度(α)であり、かつ互いに対して非対称性を有する、物質移動プロセスを実施するための装置に関する。本発明は、また、装置の使用、さらに装置を設計するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質移動プロセスを実施するための装置(1)であって、気相導入のための、少なくとも2本の吸気管(3、5)を有する塔(2)を備え、
分離活性内部構造物(9)が前記塔(2)内に収容され、塔セクション(29)が前記少なくとも2本の吸気管(3、5)から前記分離活性内部構造物(9)まで伸び、前記セクション内では、前記塔(2)の断面積の被覆率が総断面積を基準として25%未満であり、
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が1つの吸気管径(6、17)の3倍以下に相当する高さオフセットを有し、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、互いに60°~150°の角度(α)であり、かつ互いに対して非対称性を有する、物質移動プロセスを実施するための装置(1)。
【請求項2】
前記非対称性が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、それぞれ異なる吸気管径(6、17)を有することによって、および/または前記塔(2)の外周(19)上で非対称的に分配されることによって与えられる、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記角度(α)が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の2本間の他の角度βと、少なくとも10°、特に少なくとも30°異なる、請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、前記塔(2)上の同じ高さ(8)に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、前記塔(2)の塔底部に、または前記塔(2)上の側面の吸気口として配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置(1)が、気相導入のための、正確に2本の吸気管(3、5)を備え、前記2本の吸気管(3、5)が吸気管径(6)の3倍以下に相当する高さオフセットを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、前記塔(2)内に放射状に開口している、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記分離活性内部構造物(9)が、規則充填物および/または充填物成分を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記分離活性内部構造物(9)が、流れが導かれないトレイ、例えばデュアルフロートレイ、リップルトレイおよび/またはカスケードトレイを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記分離活性内部構造物(9)がクロスフロートレイを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
蒸発器(20、30)が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)を介して、前記塔(2)に取り付けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
イソシアネート、スチレンまたはアルキルアクリレート、特にブチルアクリレート生成用の、または分解装置における、特にC炭化水素分離用の、請求項1から11のいずれか一項に記載の物質移動プロセスを実施するための装置(1)の使用。
【請求項13】
前記非対称性が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)を通る流速が異なることによって与えられる、請求項12に記載の物質移動プロセスを実施するための装置(1)の使用。
【請求項14】
前記物質移動プロセスを実施するための装置(1)が、アルキルアクリレート(HC=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチル)の連続的生成用のプロセスにおいて精留塔(40)として使用され、水性の3-ヒドロキシプロピオン酸を、適切なブタノール(R-OH)の存在下で、脱水およびエステル化条件の下で、前記精留塔(40)を含む反応器において反応させ、形成されるブチルアクリレート、未反応のブタノール、ならびにさらに使用される水および形成される水が三成分系共沸混合物として塔頂部で蒸留され、それぞれ液体水相および液体有機相に分離後、前記水相および前記有機相がそれぞれ少なくとも部分的に排出され、前記ブチルアクリレートおよび前記ブタノールを含む前記有機相が分別蒸留される、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
液相(12)が、前記精留塔(40)から取り出され、少なくとも部分的に気化され、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)を介して、前記精留塔(40)に少なくとも部分的に再循環される、請求項12から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記液相(12)が、少なくとも2つの蒸発器(20、30)において、少なくとも部分的に気化される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記精留塔(40)の前記塔頂部での圧力が、絶対圧0.2バール~5.0バールの範囲である、請求項12から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記ブチルアクリレートおよび前記ブタノールを含む前記有機相の前記分別蒸留が、追加の精留塔(40)において前記ブタノールを蒸留することと、他の追加の精留塔(40)において得られる塔底液から前記ブチルアクリレートを蒸留することと、によって実施される、請求項14から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
請求項1から11のいずれか一項に記載の物質移動のための装置(1)を設計する方法であって、以下のステップ:
(a)前記塔(2)上で前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の位置および向きを特定するステップと、
(b)流動シミュレーションを使用して前記塔(2)における気体流動を算出するステップと、
(c)前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の様々な位置および向きを用いて、前記工程(a)および前記工程(b)を反復するステップと、
(d)最も均一な流動パターンを示す流れにおいて、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の前記位置および向きを選択するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質移動プロセスを実施するための装置であって、気相を導入するための少なくとも2本の吸気管を有する塔(カラム, column)を備え、少なくとも2本の吸気管が、吸気管径の3倍以下に相当する高さオフセット(hight offset)を有する、物質移動プロセスを実施するための装置に由来する。
【背景技術】
【0002】
物質移動プロセスを実施するための、気相導入用の少なくとも2本の吸気管を有する塔は、特に高いスループットを実現するべきときに使用され、塔はそれに応じて大きな直径を有する。慣例的な塔径は2 mを超える。吸気管の数は、特に必要となる蒸発器の数に依存し、蒸発器は構造上制限された寸法および異なるエネルギーキャリアー(energy carrier)を有し得る。通常、塔の各蒸発器用に1本の吸気管が設けられる。少なくとも1種の気相を伴い、塔中にて実施される物質移動プロセスは、例えば、蒸留、吸収またはガス洗浄である。
【0003】
米国特許第4,019,964号明細書は、蒸留塔の蒸発器への入熱を制御する方法および2つの蒸発器の使用について記載している。中国実用新案第203861950号明細書もまた、2つの蒸発器の使用について言及している。
【0004】
現在、気相導入のための吸気管は、本質的には塔の同じ高さに据え付けられ、通常、塔の外周上に均等に分配される。これは、2本の吸気管の場合には、例えば吸気管が互いに180°の角度で存在することを意味する。
【0005】
異なる相間の熱および物質の移動を増強するために、通常、分離活性内部構造物(separation-active internals)を備える塔を用いる。一般に、このようなプロセスは、少なくとも1種の気相および少なくとも1種の液相を伴う。本発明の目的のためには、分離活性内部構造物は、少なくとも1種の気相および少なくとも1種の液相が、界面が大きくなるように互いに接触し、少なくとも1種の気相と少なくとも1種の液相との間の物質移動が増強される内部構造物である。分離活性内部構造物としては、例えばトレイが使用され、これは物質移動プレート、規則充填物または充填物成分の層とも称され得る。気相導入のための吸気管は、通常、分離活性内部構造物の下に位置する。吸気管が塔の塔底部領域に配置されるとき、吸気管は、塔に備えられる全ての分離活性内部構造物の下に配置され、一方で側面の吸気口として配置される場合、吸気管は、塔の水平の小領域とも称され得る、分離活性内部構造物を有する2つのセクションの間に位置する。
【0006】
塔の熱力学的設計では、混合物の定められた分離を達成するために、特定の分離性能および特定のエネルギー入力が設定される。この設定は、塔における、液相に対する気相の特定の比率に直接的につながる。塔の断面積上の気相または液相の不均一分配に基づく、液相に対する気相の比率の局所的な偏りは、混合物の定められた分離を達成するために、設計の数字を越えて上昇させたエネルギー入力によって補償しなければならない。
【0007】
したがって集中的な物質移動を得るために、塔内の物質移動プロセスでは、分離有効内部構造物における気相の均一分配が必要であるため、気相が導入される吸気管領域で蒸気流の均一分配が実現されなければならない。しかし、塔の外周上で吸気管を均等に分配しても、特に2本の吸気管の場合には、個々の流れが互いに衝突するため、均一性の喪失につながる、すなわちより均一でない流れが形成され、蒸気流の最適な分配は提供されないことが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、物質移動プロセスを実施するための装置であって、分離活性内部構造物の下方で、気相が導入される吸気管領域において、気相のより均一な分配が得られる装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、エネルギーが節約され得るプロセスにおける上記の装置の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、まず物質移動プロセスを実施するための装置であって、塔および少なくとも2本の、特に正確に2本の気相導入のための吸気管を含み、分離活性内部構造物が塔内に収容され、塔セクションが少なくとも2本の吸気管から分離活性内部構造物まで伸び、塔の断面積の被覆率(coverage)が、塔の総断面積を基準として25%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満であり、少なくとも2本の吸気管が吸気管径の3倍以下に相当する高さオフセットを有し、少なくとも2本の吸気管が、互いに60°~150°、好ましくは80°~130°、より好ましくは90°~120°、例えば95°~115°の角度αであり、かつ互いに対して非対称性を有する装置によって達成される。塔セクションは、特に少なくとも2本の吸気管の最上端から、特に分離活性内部構造物への入口の最下方に伸びている。塔セクションは、好ましくは吸気管径の0~3倍の範囲、より好ましくは吸気管径の0.5~1.5倍の範囲のセクション高さを有する。少なくとも2本の吸気管が異なる吸気管径を有する場合、これらの数字は最大の吸気管径を基準とする。セクション高さは、特に、分離活性内部構造物と少なくとも2本の吸気管のうち1本との間の最短の距離である。塔セクションの断面積全体の被覆率は、塔のそれぞれの総断面積を基準として、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満である。特に、塔の断面積は、少なくとも2本の吸気管と分離活性内部構造物との間で空いている状態であり、これは覆われていないとも称され得る。塔セクションは、好ましくはふさがれた空間であり、いずれの場合も、断面積の被覆率を表し得る分離活性内部構造物および他の内部構造物がなく、その結果、少なくとも2本の吸気管に由来する、妨害されず空間的に均一に分配される流れが、分離活性内部構造物への入口の前に確立され得る。25%を超える被覆率をもたらし、それによって少なくとも2本の吸気管から分離活性内部構造物までの流れを妨げ得る内部構造物は、例えば水平な内部構造物、例えば少なくとも1つのトレイ、例えば回収トレイもしくはプレート、例えば多孔板、および/または垂直な内部構造物、例えば、特に覆うためのキャップの有無にかかわらず少なくとも1本の管、例えば通常、液相と気相との間の、例えば回収トレイ上での接触を防ぐチムニーである。さらに、塔は特に分割壁のない塔である。分離活性内部構造物用に存在し得る任意の締結装置、例えば特に塔内の充填物または充填物成分を固定する働きをするサポート格子、または分離活性トレイのトレイおよび流路、特にダウンカマー(downcomer, 下降管)を安定させるための支持体は、分離活性内部構造物の一部であると考えられる。
【0010】
本発明の目的のために、用語「非対称」は不均等を意味し、例えば吸気管の非対称的配置は、異なる外周部分への配置となる。非対称性は、好ましくは、それぞれ異なる吸気管径を有する少なくとも2本の吸気管、および/または吸気管が塔の外周上で非対称的に分配されることを含む、またはそれらによって与えられる。外周上での非対称的分配は、塔の外周上で不均等に分配される少なくとも2本の吸気管とも説明され得る。
【0011】
少なくとも2本の吸気管の吸気管径は、最小の吸気管径を基準として、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、特に少なくとも25%異なる。吸気管径は、特に、塔への入口における吸気管の平均吸気管径である。
【0012】
角度αは、好ましくは、少なくとも2本の吸気管の間の他の角度βと、少なくとも10°、より好ましくは少なくとも30°、さらにより好ましくは少なくとも60°異なる。正確に2本の吸気管の場合、角度αは、好ましくは、2本の吸気管の間の他の角度βと、少なくとも120°、より好ましくは少なくとも180°異なる。角度αおよび他の角度βは、特に2本の隣接する吸気管の間の角度である。角度αは、好ましくは、2本の吸気管の間の最小の角度である。
【0013】
さらに、非対称性は、少なくとも2本の吸気管を通る平均流速が異なることを含み得る、またはこれによって与えられ得る。少なくとも2本の吸気管における平均速度は、最低速度を基準として、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも30%、特に少なくとも45%異なる。平均速度を決定するために、例えば、特に純粋気体の供給流の場合、流量測定を実施することが可能である。蒸発器の場合には、蒸発させる媒体を加熱するために使用する水蒸気の量は、例えば、吸気管を通って流れる蒸気の量の比例尺度として使用できる。
【0014】
3本以上の吸気管の場合には、吸気管は、好ましくは互いに多様な角度で存在し得る。それゆえ、3本以上の吸気管は、この場合、塔の外周上で非対称に分配される。高さオフセットの測定には、それぞれの吸気管断面の中間の位置が基準として使用されるのが好ましい。
【0015】
少なくとも2本の吸気管は、1本のみの吸気管が使用される場合に可能であるよりも、より多量の気相の導入を可能にする。特に同一量の気相では、気相はより低速で導入されることができ、その結果として、導入される気相の流れの互いに衝突するエネルギーが低下し、より均一な流量分配が達成され得る。
【0016】
より均一な流量分配の結果として、気相に対する液相の比率に関する局所的不均一性が減少する、または回避されるため、装置が使用される物質移動プロセスにおいて、エネルギーが節約され得る。
【0017】
塔の分離活性内部構造物への入口での気相の速度のアキシャル成分は、均一な流量分配の尺度として用いられる。この目的のために、断面積の5%のみで速度が大きくなるような大きさの速度と、断面積の5%のみで速度が小さくなるような大きさの速度との間の差が計算される。平均速度を基準として、この差が小さいほど流量分配は均一である。
【0018】
驚くべきことに、塔の外周上での少なくとも2本の吸気管の均一または対称的な分配の場合とは異なり、少なくとも2本の吸気管が互いに60°~150°の範囲の角度および非対称性を有する吸気管の配置を使用するときに、より均等な流量分配が達成され得ることが見出されている。特に、少なくとも2本の吸気管のこの配置によって、追加の内部構造物のような他の手段を通して、分離活性内部構造物の下で塔に入る気相を運ぶ、および/または導くことが不要となる。少なくとも2本の吸気管、すなわち対応する角度の吸気管からの、目標となる流れの衝突の結果として、流速に関して均一化された流れの場が、分離活性内部構造物にすでに入っているためである。3本以上の吸気管の場合には、気相のより均一な流量分配を得るために、配置は、3本以上の吸気管がいずれの場合も互いに異なる角度となるようなものが好ましい。
【0019】
本発明の装置を使用して実施され得る物質移動プロセスは、少なくとも1種の液相および少なくとも1種の気相が関与するあらゆる物質移動プロセスである。本発明の目的のために、気相という表現は、沸騰している相、すなわち液体部分および気体部分を含む相も包含する。慣習的な物質移動プロセスは、例えば、吸収、蒸留、精留、抽出またはガス洗浄である。
【0020】
塔建築の高さを可能な限り低く保つために、少なくとも2本の吸気管は、好ましい実施形態において、塔の同じ高さに配置される。本明細書において、同じ高さとは、少なくとも2本の吸気管の中間が同じ高さであり、製作公差範囲内の逸脱は起こり得ることを意味する。少なくとも2本の吸気管の同じ高さの配置は、気相が少なくとも2本の吸気管を介して導入され、特に圧力および温度が全ての吸気管で同一である条件では、その結果、少なくとも2本の吸気管の高さのために気相の物理的特性の逸脱が起こらないというさらなる利点を有する。
【0021】
気相が導入される少なくとも2本の吸気管は、通常、塔の塔底部に、または塔の側面の吸気口として配置される。少なくとも2本の吸気管が側面の吸気口として配置される場合、本発明との関連における「分離活性内部構造物」という用語は、少なくとも2本の吸気管の上に、次に配置される分離活性内部構造物を意味する。2相の物質移動プロセスにおいては、液相は通常、塔頂部から下方に流れ、一方で気相は塔底部から上方に流れる。この理由のために、液相は塔の塔頂部で導入され、気相は塔底部でおよび/または側面の吸気口を介して導入される。気相が沸騰している相であるときは、側面の吸気口を介して導入されるのが特に好ましい。続いて、塔内で相分離が起こり、沸騰している相の気体部分は上方に流れ、液体部分は下方に流れる。当然のことながら、沸騰している相を塔の塔底部領域で導入することも可能である。この場合、気体部分は上方に流れ、液体部分は塔底部領域に集まり、塔底部の排出口を介して塔から取り出される。
【0022】
塔内の物質移動を増強するために、分離活性内部構造物、好ましくはトレイ、例えばデュアルフロートレイ、カスケードトレイ、リップルトレイおよびクロスフロートレイ、ならびに規則充填物および不規則充填物、ならびにそれらの組合せから成る群から選択される分離活性内部構造物(sepration-active internal)が塔内に収容される。分離活性内部構造物のために、液相および気相の継続的な分流および再分配が行われ、さらにそれによって相界面が大幅に増加し、その結果、物質移動が起こる極めて大きな相界面が得られる。
【0023】
トレイの場合には、通常、液相の流れが導かれるトレイ、例えばクロスフロートレイと、流れが導かれないトレイとで区別される。一実施形態では、分離活性内部構造物は、好ましくは流れが導かれないトレイ、例えば、デュアルフロートレイ、リップルトレイおよび/またはカスケードトレイを含む。別の実施形態では、分離活性内部構造物はクロスフロートレイを含む。分離活性内部構造物は、より好ましくはトレイのみ、特に流れが導かれないトレイ、例えばデュアルフロートレイ、リップルトレイおよび/またはカスケードトレイを含む。流れが導かれるトレイは、液体用の少なくとも1つのダウンカマーを有し、それを通して液相が下に位置するトレイ上に流れ落ちる。本明細書においてダウンカマー(downcomer, 下降管)は、ダウンカマーの下に置かれるトレイへの供給導管として、同時に作動する。上に置かれたトレイのダウンカマーは、互いに逆の位置に配置され得る。
【0024】
デュアルフロートレイ、リップルトレイおよびカスケードトレイは、液相の流れが導かれないトレイである。リップルトレイは、波形シーブトレイとも称される。液相はトレイの開口部を通って下にあるトレイ上に流れ、気相はトレイ上の開口部を通って下から流れる。本明細書においては、気相のみ、または液相のみ、または気相および液相が開口部を通って流れる、またはいずれの相も開口部を通って流れないことが可能である。トレイから液相が流れ落ちることを許容するには、デュアルフロートレイの開口部はチムニーを備えない。デュアルフロートレイを有する物質移動塔は、例えば国際公開第03/043712号、または国際公開第2004/063138号に記載されている。
【0025】
使用される充填物は、規則充填物または不規則充填物であり得る。不規則充填物は、例えば充填物成分の層であり、当業者に既知である全ての慣習的な充填物成分が充填物成分として使用されることができる。好適な充填物成分は、例えば、リング、メッシャ、螺旋体および/もしくはサドル体、例えばラシヒリング、IMTP(登録商標)もしくはポールリング、バールサドルもしくはインタロックスサドルまたは組物である。規則充填物としては、多様な幾何学形状を有する充填物、例えばシートメタル充填物または金属メッシュ充填物を使用することが可能である。一実施形態では、分離活性内部構造物は、好ましくは、規則充填物および/または充填物成分の層を含み、より好ましくは規則充填物および/または充填物成分の層のみを含む。
【0026】
分離活性内部構造物は、金属、セラミック、ガラス、炭素、グラファイト、ポリマーまたはこれらの混合物を含む材料から作られることが好ましい。分離活性内部構造物は、金属、セラミック、ガラス、炭素、グラファイト、ポリマーまたはこれらの混合物から成ることがより好ましい。
【0027】
物質移動プロセスを実施するための装置内の分離活性内部構造物の有効性は、好ましくは少なくとも2段の理論段数、例えば2~40段の理論段数に相当するべきである。分離性能は、特に好ましくは、10~30段の理論段数である。
【0028】
少なくとも2本の吸気管が塔の側面の吸気口として配置されるとき、吸気管は通常2つのトレイの間に配置される、または分離活性内部構造物が規則充填物または不規則充填物を含む場合、吸気管は分離活性内部構造物を有する2つのセグメントの間に配置される。その結果、気相がトレイまたは充填物の下に導入され、下方からトレイを通って均一に流れることができる、または充填物中に入ることができる。
【0029】
少なくとも2本の吸気管が側面の吸気口として配置されるとき、および塔底部領域に配置されるときの両方の場合に、少なくとも2本の吸気管は、分離活性内部構造物の下に少し離して配置されることが好ましく、この距離がセクション高さに相当する。少なくとも2本の吸気管の吸気管径は、最小の吸気管径を基準として、好ましくは3倍以下、より好ましくは1.5倍異なる。少なくとも2本の吸気管は、同じ吸気管径を有することができる。さらに、塔径に対する吸気管径の比率は、好ましくは0.8以下である。少なくとも2本の吸気管が異なる吸気管径を有する場合、これらの数字は最大の吸気管径に関する。
【0030】
好ましい実施形態では、塔で実施される物質移動プロセスは蒸留または精留であり、塔は蒸留塔または精留塔である。この場合、蒸発器は、気相導入のための少なくとも2本の吸気管を介して塔に取り付けられることが好ましい。より好ましくは、いずれの場合も、吸気管当たり、特に正確に1つの蒸発器が塔に取り付けられる。液体が蒸発器に導入され、その液体が蒸発器中で部分的に、または好ましくは完全に気化され、その蒸気が気相として、吸気管を介して塔内に導入される。液体は外部から蒸発器に供給されることができる、または液相が塔から取り出されて蒸発器に導入される。他の可能性としては、蒸発器中で気化された液体の一部は外部から供給され、一部は塔から取り出される。塔から取り出され、蒸発器に供給される液相は、例えば塔の塔底部で取り出されることができる。蒸発器が中間蒸発器として使用される場合、液相は、側面の排出口、例えば1つのトレイを介して塔から取り出され、蒸発器に供給されるのが好ましい。
【0031】
他の可能性としては、1つの蒸発器は外部から導入される液体を気化させるのに使用され、第2の蒸発器は塔から取り出される液相を気化させるのに使用される。ただし、この場合、外部から導入される液体および塔から取り出される液相を、蒸発器への導入前に混合する、または液体を別々の導管を介して蒸発器に導入し、蒸発器中で混合する、のいずれかで各蒸発器に供給することが好ましい。
【0032】
蒸発器としては、当業者に既知である、物質移動プロセス、特に蒸留または精留に好適な任意のタイプの蒸発器を使用することが可能である。好適な蒸発器は、例えばシェルアンドチューブ蒸発器およびプレート蒸発器である。蒸発器は、液膜降下式蒸発器、強制通風式蒸発器、強制通風式膨張蒸発器、ヘリカル管蒸発器、ケトル型蒸発器、または自然対流式蒸発器として構成され得る。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも2本の吸気管(inlet pipes)は、塔内にラジアル(放射状)に開口している。これは特に、少なくとも2本の吸気管の中心軸の延長が、塔の中心軸と交差する作用であると理解されるべきである。吸気管は塔の壁で終わる、または塔内に伸びることができるが、吸気管は塔の壁で終わることが好ましい。少なくとも2本の吸気管を互いに異なる角度αまたは角度βで配置する、および/または異なる吸気管径もしくは流速を有するというような方法の結果として、供給される蒸気流は、互いに対称的に衝突しない。これによって塔内でより均一な蒸気流がもたらされ、塔の途中で蒸気が集中することがない。
【0034】
ラジアル配置に対する代替として、少なくとも2本の吸気管は、ラジアル方向への開放角で塔内に開口することが可能である。
【0035】
気相が導入される少なくとも2本の吸気管は、任意の断面形状を有し得る。ただし、少なくとも2本の吸気管は、円形または楕円形の断面を有することが好ましい。少なくとも2本の吸気管の断面積は、導入されるべき気相の量に依存する。本質的に同じ高さに配置される少なくとも2本の吸気管の断面積は、本質的に同じであることが可能である。本明細書においては、「本質的に同じ」は、断面積の大きさが製造許容差の結果として異なり得ることを意味する。本質的に同じ高さに配置される少なくとも2本の吸気管の断面形状もまた、同じであることが好ましい。
【0036】
代替として、本質的に同じ高さに配置される少なくとも2本の吸気管の断面積および/または断面形状が異なることも、当然可能である。異なる断面形状によって、局所的な構造条件を考慮することが可能となる。例えばヒートインテグレーション(heat integration)の場合には、異なる断面積は、蒸発器を異なるエネルギー含量を有する異なるエネルギー源に適合させるという働きをする。ヒートインテグレーションでは、他の熱源から必要となる熱の一部が、プロセスから直接取り出される。インテグレーションから利用可能な熱量と、必要とされる残りの熱量とが大きく異なり得るため、それぞれの吸気管は本明細書において異なる断面積を有する。さらに、断面積は、供給される蒸気流の体積の関数として選択され得る。
【0037】
少なくとも2本の吸気管の互いに対する最良の向きを見出すために、少なくとも2本の吸気管の配置を、数学的シミュレーションによって算出するのが有利である。本目的に好適な方法は、以下のステップ:
(a)塔上での少なくとも2本の吸気管の位置および向きを特定するステップと、
(b)流動シミュレーションを使用して塔における気体流動を算出するステップと、
(c)少なくとも2本の吸気管の異なる位置および向きを用いて、ステップ(a)およびステップ(b)を反復するステップと、
(d)最も均一な流動パターンを示す流れで、少なくとも2本の吸気管の位置および向きを選択するステップと、を含む。
【0038】
流動シミュレーションとしては、当業者に既知である、あらゆるシミュレーションプログラムの使用が可能である。有限要素または有限体積を基準とした、好ましくは有限体積を基準とした数値シミュレーションが、本明細書において特に好適である。好適なシミュレーションプログラムは、例えば商業的に入手できるANSYS Fluent(登録商標)であり、これは有限体積を基準として作動する。流動シミュレーションを用いて、塔内の流れを視覚的に示すことができ、結果に基づいて、少なくとも2本の吸気管の、互いに対する位置を最適化することができる。少なくとも2本の吸気管が異なる断面形状および/または断面積を有する場合、少なくとも2本の吸気管の断面積の最適な寸法および形状は、塔内で最も均一な流量分配をもたらすものであり、これもまた流動シミュレーションを用いて決定され得る。
【0039】
さらに、イソシアネート、スチレンまたはアルキルアクリレート、特にブチルアクリレートの生成、特に連続的生成用としての、または分解装置における、特にC3炭化水素の解離(dissociation)用としての、物質移動プロセスを実施するための装置の使用が提案されている。アルキルアクリレートの連続的生成用としての物質移動プロセスを実施するための装置の使用は、プロセスが高いエネルギー消費量によって特徴づけられるため、特に有利である。
【0040】
物質移動プロセスを実施するための装置は、ブチルアクリレートH2C=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチル、の連続的生成のプロセスにおいて有利に使用される。
【0041】
アルキルアクリレートは、例えば国際公開第2019/034577号に記載されているように、3-ヒドロキシプロピオン酸から生成され得る。代替としては、ブチルアクリレートの生成にアクリル酸が使用され得る。
【0042】
第1の工程で、まず3-ヒドロキシプロピオン酸をアルコールでエステル化することができ、続いて後続の工程で、得られる3-ヒドロキシプロピオン酸エステルを脱水することができ、対応するアルキルアクリレートを得る。代替として、第1の工程で、まず3-ヒドロキシプロピオン酸を脱水することもでき、続いて後続の工程で、得られるアクリル酸をアルコールでエステル化することができる。
【0043】
ブチルアクリレート(H2C=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチル)の連続的生成用のプロセスにおいて、水性の3-ヒドロキシプロピオン酸を、アルコールであるn-ブタノールの存在下で反応させることが好ましい。
【0044】
本発明による、物質移動プロセスを実施するための装置はまた、好ましくは、アルキルアクリレート(H2C=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチル)の連続的生成用のプロセスにおいて、精留塔として使用される。水性の3-ヒドロキシプロピオン酸を、適切なブタノール(R-OH)の存在下で、脱水およびエステル化条件の下で、精留塔を含む反応器において反応させ、形成されるブチルアクリレート、未反応のブタノール、および使用され形成される水が、三成分系共沸混合物として塔頂部で蒸留され、それぞれ液体水相および液体有機相に分離後、水相および有機相はそれぞれ少なくとも部分的に排出され、ブチルアクリレートおよびブタノールを含む有機相は分別蒸留される。
【0045】
実質的にアセテートを含まないブチルアクリレートは、3-ヒドロキシプロピオン酸を使用して生成され得る。本明細書において、「アセテート」は、n-ブチルアセテートまたはイソブチルアセテート[H3C-C(=O)-OR]である。
【0046】
使用される3-ヒドロキシプロピオン酸は、好ましくは生物由来の3-ヒドロキシプロピオン酸である。本発明の目的のために、「生物由来の3-ヒドロキシプロピオン酸」は、再生可能な原料から生成される3-ヒドロキシプロピオン酸である。さらに、生物由来の3-ヒドロキシプロピオン酸は、好ましくは発酵によって、特にグルコース、キシロース、アラビノース、スクロース、フルクトース、セルロース、グルコースのオリゴマーおよび/またはグリセロールから、特に後続の精製を伴う発酵によって生成されている。例えば、糖、例えばグルコースからの発酵および後続の精製による、バイオ3-ヒドロキシプロピオン酸またはバイオHPSとも称される、生物由来の3-ヒドロキシプロピオン酸の生成は、国際公開第2012/074818号により既知である。
【0047】
このようにして生成される水性のバイオ3-ヒドロキシプロピオン酸は、例えば水および本質的に下記構成成分:
35~70重量%の3-ヒドロキシプロピオン酸、
0~20重量%の3-ヒドロキシプロピオン酸オリゴマー、
0~10重量%のアクリル酸、
0~1重量%のアクリル酸オリゴマー、
0.01~0.1重量%のグリコール酸、
0.01~0.1重量%の2-ヒドロキシプロピオン酸、
0.005~0.05重量%のギ酸、
0~0.15重量%、特に0.0~0.05重量%、例えば0.005~0.10重量%の酢酸、
0.005~0.05重量%のコハク酸、
0.005~0.05重量%のフマル酸、
0.0001~0.01重量%のホルムアルデヒド、
0.0001~0.01重量%のアセトアルデヒド、
0.0001~0.01重量%のメタノール、および
0.0001~0.01重量%のエタノールを含む。
【0048】
使用される3-ヒドロキシプロピオン酸に対する使用されるブタノールのモル比は、好ましくは少なくとも1であり、また好ましくは5未満である。使用される3-ヒドロキシプロピオン酸に対する使用されるブタノールのモル比は、特に有利には1:1~3:1の範囲である。1.1:1~1.8:1の範囲のモルの使用比率が、極めて特に好ましい。
【0049】
脱水、および同時にエステル化の条件が、触媒活性量の酸の存在によって提供されることが好ましい。反応器における触媒活性の酸の含有量は、そこに存在する反応混合物を基準として、有利には0.1重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~15重量%、特に7重量%~10重量%である。好ましい酸は、無機酸、例えば硫酸およびリン酸であり、さらに有機スルホン酸もまた好ましい。有機スルホン酸の中では、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸および/またはp-トルエンスルホン酸が好ましい。いずれの場合も、少なくとも1種の有機スルホン酸、および無機酸、例えば硫酸の混合物を使用することも可能である。硫酸および/または有機スルホン酸(複数種含む)を、エステル化および脱水の触媒(複数種含む)として使用することが特に好ましい。
【0050】
反応物、すなわち反応器中の出発物質である3-ヒドロキシプロピオン酸およびブタノールの反応は、好ましくは80℃~170℃の範囲、より好ましくは100℃~155℃の範囲、さらにより好ましくは120℃~140℃の範囲の温度で実施される。反応物、すなわち反応器中の出発物質である3-ヒドロキシプロピオン酸およびブタノールの滞留時間は、好ましくは1時間~20時間、より好ましくは2時間~8時間である。本発明の目的のために、滞留時間は、反応器の下部で取り出されるべき量が、反応器の液体体積中に存在する時間である。
【0051】
最も単純な場合では、精留塔は反応器の上部に直接置かれ、反応器から蒸気、すなわち気相が上昇し、通常ランバック、すなわち液相へ、向流において運搬され、精留塔に供給される。直接重ねておかれる精留塔は、反応器中で上昇する蒸気を、精留塔への追加の配管なしで直接運搬するという利点、および精留塔中で流下する液相を、反応器中に直接運搬するという利点を提供する。
【0052】
代替として、気相を精留塔に供給するための、および精留塔中を流れる液相を反応器中に排出するための適切な配管とともに、反応器と精留塔とを別々に配置することも可能である。間接的に重ねておかれる塔を伴うような実施形態もまた、「精留塔を伴う反応器」という用語によって包含される。
【0053】
精留塔の塔頂部における圧力は、好ましくは0.2バール~5.0バールの範囲、より好ましくは0.3バール~3.0バールの範囲、特に0.5バール~1.2バールの範囲である。
【0054】
水相および有機相への分離は、好ましくはフェーズセパレータによって実施される。このような装置において、互いに均一に混和していない2種の液体を、それらの密度差を用いて分離することができる。得られた水相、これはブタノールおよび場合により微量の他の構成成分とともに水を含み、この少なくとも一部を排出することが好ましい。得られた水相の10重量%~80重量%、とりわけ20重量%~70重量%を排出することが特に好ましい。残部は、いずれの場合も、好ましくは精留塔に再循環される。得られた有機相の一部も、好ましくは精留塔に、好ましくは同様に再循環される。有機相の0重量%~80重量%、例えば1重量%~75重量%、より好ましくは5重量%~50重量%を、好ましくは精留塔に、再循環させることが好ましい。その他の部分は、好ましくは排出され、分別蒸留に送られる。
【0055】
ブチルアクリレートおよびブタノールを含む排出された有機相の分別蒸留は、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第765859号明細書に記載されているように、ブタノールが下流の精留塔において塔頂留出物から分離されるような方法で実施される。本発明の物質移動プロセスを実施するための装置は、排出された有機相の分別蒸留のために使用できる。本発明の物質移動プロセスを実施するための装置に備えられる塔は、下流の精留塔として使用できる。このようにして分離されたブタノールは、好ましくは反応器に再循環される。再循環は、中間容器とともに、またはそれ無しで、有利には連続的に実施される。
【0056】
ブチルアクリレートおよびブタノールを含む有機相の分別蒸留は、追加の精留塔においてブタノールが蒸留され、また他の追加の精留塔において、得られる塔底液からブチルアクリレートが蒸留されるような方法で、好ましくは実施される。
【0057】
追加の精留塔から得られる塔底液は、ブチルアクリレート、および小量の高沸点物質、および使用され、プロセス安定剤とも称され得る、例えばフェノチアジン(PTZ)を含むか、またはそれから成る安定剤から本質的に成る。
【0058】
後続の下流の精留塔においては、ブチルアクリレートは、通常塔頂部で分離される。本発明の物質移動プロセスを実施するための装置は、ブチルアクリレートを分離するために使用できる。本発明の物質移動プロセスを実施するための装置に包含される塔は、他の下流の精留塔として使用できる。凝縮の間、安定剤、特に保管安定剤、例えばp-メトキシフェノール(MeHQ)が、好ましくは添加される。この後続の下流の精留塔からの、比較的高沸点の副生成物を含む塔底液は、有利には、好ましくは連続的に、中間容器とともに、またはそれ無しで反応器に再循環されることが好ましい。
【0059】
特定の実施形態は、任意の流入した液滴の除去後、ブタノールを側面の排出口を介して回収するために下流の精留塔からブチルアクリレートを取り出すこと、およびそれを凝縮して純粋なエステルを得ることを含む。安定剤、特に保管安定剤、例えばMeHQが、凝縮においてエステルに添加される。この変形形態では、下流の精留塔からの塔底液は、ブチルアクリレートから本質的に成り、これは反応器に戻されることが好ましい。分離後に得られるブタノールは、特に有利には、少なくとも部分的に反応器中の反応に再循環される。ブタノールの5重量%~100重量%、より好ましくは80重量%~100重量%を再循環させることが好ましい。
【0060】
n-ブチルアクリレートは、特に≧99.0重量%、より好ましくは≧99.5重量%の純度で、≦1000 ppm、とりわけ≦100 ppmのn-ブチルアセテート含有量とともに、ブチルアクリレートH2C=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルの連続的生成用のプロセスによって生成することができる。特に、アクリル酸含有量は<100 ppm、例えば5~80 ppmである。
【0061】
イソブチルアクリレートは、特に≧99.0重量%、とりわけ≧99.5重量%の純度で、≦1000 ppm、とりわけ≦100 ppmのイソブチルアセテート含有量とともに、ブチルアクリレートH2C=CH-C(=O)OR、式中、R=イソブチルの連続的生成用のプロセスによって生成することができる。特に、アクリル酸含有量は<100 ppm、例えば5~80 ppmである。
【0062】
ブチルアクリレートH2C=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチルの連続的生成用のプロセスにおいて、形成されるブチルアクリレートは、望ましくない重合を回避するために、好適な重合防止剤によって好ましくは安定化される。上記プロセスは、有効量の安定剤または複数の安定剤の存在下で実施されるのが好ましい。好適な安定剤は、アクリル酸およびアクリル酸エステルを安定させるための、例えば独国特許出願公開第102005053982号明細書および独国特許出願公開第10258329号明細書において推奨される、原則として全ての重合防止剤である。好適な安定剤は、例えば、N-オキシド(ニトロキシルまたはN-オキシルフリーラジカル、すなわち少なくとも1つのN-O基を有する化合物)、例えば4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(4HT)または4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、フェノールおよびナフトール、例えばp-メトキシフェノール、p-アミノフェノール、p-ニトロソフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-メチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノールまたは4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェノール、キノン、例えばヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテル、芳香族アミン、例えばN,N-ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、例えばN,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミンであり、アルキル基は同一または異なっていることができ、互いに独立してそれぞれ1~4つの炭素原子を有し、直鎖または分枝鎖であることができる、例えばN,N’-ジメチル-p-フェニレンジアミンまたはN,N’-ジエチル-p-フェニレンジアミン、ヒドロキシルアミン、例えばN,N-ジエチルヒドロキシルアミン、イミン、例えばメチルエチルイミンまたはメチレンバイオレット、スルホンアミド、例えばN-メチル-4-トルエンスルホンアミドまたはN-tert-ブチル-4-トルエンスルホンアミド、オキシム、例えばアルドキシム、ケトキシムまたはアミドキシム、例えばジエチルケトオキシム、メチルエチルケトキシムまたはサリチルアルドキシム、リン含有化合物、例えばトリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニルまたは亜リン酸トリエチル、硫黄含有化合物、例えばジフェニルスルフィドまたはフェノチアジン、金属塩、例えばセリウム(III)アセテートまたはセリウム(III)エチルヘキサノエート、また各種の銅塩、例えば銅(II)ジアルキルジチオカルバメート、例えば銅(II)ジブチルジチオカルバメート、さらにまた銅(II)オキシナート(オキシン=4-ヒドロキシキノリン)、さらにマンガン塩、例えばマンガン(II)ジアセテート、またはこれらの混合物であり得る。安定化は、フェノチアジン(PTZ)、MeHQ、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノールまたはこれらの混合物を使用して好ましくは遂行される。フェノチアジン(PTZ)および/またはMeHQおよび/または4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(4HT)を重合防止剤として使用することが、特に極めて好ましい。
【0063】
上記防止剤が純物質として添加できる場合であっても、防止剤を、簡単かつ再現的に調整できる溶液として溶媒中に溶解させて添加するのが有利であり、また単一溶液中の防止剤混合物も原則として可能である。アクリレート合成プロセスにおいていずれの場合にも存在する液体、または精留塔内の混合物に存在する液体を、溶媒として使用するのが好ましい。溶媒として特に好ましい選択は、アクリレート生成物(すなわちブチルアクリレート)それ自体、水、またはアクリレート合成の出発物質の1つ(例えばブタノール)である。
【0064】
特に精留塔の下端では、精留塔中で流下する液体、すなわち液相は、好ましくは少なくとも部分的に精留塔から取り出され、少なくとも1つの蒸発器、好ましくは少なくとも2つの蒸発器、例えば正確に2つの蒸発器において少なくとも部分的に気化され、少なくとも部分的に、少なくとも2本の吸気管を介して精留塔に再循環される。
【0065】
ブチルアクリレートH2C=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチルの連続的生成用のプロセスは、有利には、特定のパラメータを制御するための、特定の手段を使用することによって実施される。このプロセス制御は、好ましくは以下の通り実施される。
【0066】
本明細書のブチルアクリレート、すなわち高純度、特に99重量%を超える純度を有する生成物の生成のために、精留塔におけるブチルアクリレートからのアクリル酸の分離は極めて重要である。本明細書において、有機ランバックと水性ランバックとの間に定義された比率を設定することが有利であることが判明している。流れのこの還流比は、好ましくは0.1~1.0の範囲である。
【0067】
さらに、精留塔、または間接的に上に置いた精留塔を伴う独立型反応器の下部における反応体積は、転化率を決定するものであり、好ましくは一定または実質的に一定に保たれる。本発明の目的のために、実質的に一定とは、最大±10体積%以内の逸脱があることを意味する。これは第1に、反応器中の反応体積から、一定または実質的に一定な液面において、液体流が一定または実質的に一定に排出されることによって達成できる。さらに、下部で取り出される量は、好ましくは流入量に対して特定の比率を有し、好ましくは0.01~0.30の範囲の、流入量に対する下部で取り出される量の比率を有する。
【0068】
第2の手段は、有機蒸留物中のアクリル酸含有量に関する品質管理である。反応空間中の液体体積は水性ランバックの量に急激に反応するため、反応器内の液面は、水相の再循環の量に相当するランバック量によって、好ましくは制御される。
【0069】
水性ランバックによって、高沸点物質であるn-ブチルアクリレートおよびイソブチルアクリレートならびに対応するブタノールが、低沸点共沸混合物が形成されるために蒸留され得ることが確実となる。有機ランバックによって、反応器中で形成されるアクリル酸の濃度が、特に100 ppm未満の濃度で確実に維持される。
【0070】
有機ランバックの量の制御によって、いくつかの効果、例えば蒸留による精製、反応空間における滞留時間の増加、反応空間におけるブタノール濃度の上昇などを組み合わせることが可能となる。この制御戦略によって、反応器および精留塔における特に安定な運転がもたらされる。
【0071】
向上された制御概念の結果として、より低いエネルギー消費量で、さらに向上した品質、特に向上した純度を有するブチルアクリレートが、さらにより高収率で生成できる。
【0072】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の第1の安定剤が精留塔中に存在し、この安定剤は活性な比率で水相および有機相の両方に溶解しているものである。このような安定剤、例えば特に4HTは、特に精留塔の最も上の理論段数の上に導入される。このようにして、精留塔全体が安定剤によって安定化される。
【0073】
さらに、少なくとも1種の他の安定剤、これは水相および有機相の両方に有効な比率で溶解しているものであり、好ましくは凝縮物を回収するフェーズセパレータ中で、および/またはクエンチング循環路の導管中で、および/または凝縮器の上部で導入される。この他の安定剤は、好ましくは第1の安定剤と同じであり、特に4HTである。
【0074】
好ましくは提供されるクエンチング循環路(すなわち凝縮物の一部の液体戻り流、例えば凝縮器への、凝縮物100重量部のうち10~50重量部)は、凝縮器における凝縮の間、特に適切に、本来安定剤を含まない蒸気を安定化させる機能を有する。
【0075】
それぞれの相における、溶液中に存在する有効な安定剤の量は、特に、総量で≧10重量ppm、例えば10~1000重量ppmの範囲である。
【0076】
使用される安定剤がそれぞれの液相に完全に溶解しない場合、安定剤はそれに応じて浮遊状態で存在する。液相または複数の液相において、安定剤が懸濁液として存在する場合、この微粒子状安定剤断片は、経験的にほとんど活性でないまたは活性でないが、安定剤貯蔵物質としてのその作用のために利点を提供することができる。例えば、溶解した安定剤が化学的に分解されると、それは安定剤の有効性を弱めることになるが、活性な安定剤が懸濁した断片からさらに溶液中に新たに溶解し、液相間で適切に密接な接触が存在する場合、それが相間でさえ発生し得、また粒子の粒度分布によって影響を受け得る。
【0077】
安定剤は、いずれの場合も、特に好適な溶媒、特に上記に示すように、例えばプロセス中で使用されるアルコール、すなわちブタノール、水、対応するブチルアクリレート中の溶液として、例えばいずれの場合も溶液重量に対して1~5重量%の濃度として使用できる。
【0078】
第2の安定剤、特に比較的高温に好適であるPTZ、および第3の安定剤、特にその比較的高い蒸気圧のために、塔の反応空間とより低い部分との間の移行領域も安定させるMeHQが、反応器に有利に導入される。第2のおよび第3の安定剤は、いずれの場合も、特に好適な溶媒、特に上記に示すように、例えばプロセス中で適切に形成されるブチルアクリレート中の、または出発物質3-ヒドロキシプロピオン酸中の、または使用されるブタノール中の溶液として使用できる。
【0079】
酸素含有ガスが、重合を抑制するためにさらに有利に使用される。例えば、4体積%~9体積%の酸素含有量を有する空気/窒素混合物は、特にこの目的に好適である。重合を抑制するために酸素含有ガスが使用される場合、酸素含有ガスは、好ましくは蒸発器の下端または反応器の下端で導入される。
【0080】
ブチルアクリレート(H2C=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチル)の、反応器における反応および精留塔における蒸留を含む連続的生成用のプロセスの始動は、特に各種の流れのランバック量の変化が、全システムに極めて大きく影響するため、問題を被り得る。水性ランバック量の変化は、形成される蒸気量への比較的速い影響を有し、有機ランバック量の変化は、塔の塔頂部におけるアクリル酸濃度への比較的ゆっくりとした影響を有する。しかしながら、2つのランバック量は互いに独立しているわけではない。精密なランバック量が互いに十分に一致しないとき、蒸発が中断され得る、または過剰に多量の蒸気のために精留塔があふれる。その場合、システムを通常の運転状態に戻すことは極めて困難である。
【0081】
この理由のために、反応器は、有利にはまず、ブチルアクリレート、特に前の生成戦略からの塔底液生成物を含む適切な量の好適な反応混合物、または始動のための適切なブチルアクリレートによって充填される。塔底液は、続いて運転温度、すなわち反応温度に加熱され、3-ヒドロキシプロピオン酸、ブタノールおよび触媒の供給流の運転が開始される。
【0082】
さらに高められた収率および/または生成物純度は、特定の始動戦略および/または特定の安定化概念によって達成することができる。
【0083】
示される全ての圧力は絶対圧力である。全てのppm数値は、重量当たりの数値である。
【0084】
本発明の例を図において例示し、以下の記載でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】各種の吸気管配置を有する塔の断面図である。
図2】各種の吸気管配置を有する塔の断面図である。
図3】各種の吸気管配置を有する塔の断面図である。
図4】各種の吸気管配置を有する塔の断面図である。
図5】各種の吸気管配置を有する塔の断面図である。
図6】2本の吸気管を有する塔の三次元描写である。
図7】異なる直径の2本の吸気管を有する塔の三次元描写である。
図8】吸気管を有する塔の縦の断面図である。
図9】充填物の形態の分離活性内部構造物の入口での、相対的速度を示すヒストグラムである。
図10】異なる吸気管配置における、充填物の形態の分離活性内部構造物の入口での、相対的速度の度数関数である。
図11】異なる吸気管配置における、トレイの形態の分離活性内部構造物の入口での、相対的速度の度数関数である。
図12】異なる吸気管配置および吸気管中の不均一な流速における、トレイの形態の分離活性内部構造物の入口での、相対的速度の度数関数である。
図13】異なる吸気管配置および不均等な吸気管径における、トレイの形態の分離活性内部構造物の入口での、相対的速度の度数関数である。
図14】1本および2本の吸気管での相対的速度の度数関数である。
図15】物質移動プロセスを実施するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1~5は、吸気管3、5の各種の配置を有する塔2の断面図を示す。
【0087】
図1において、先行技術に従うと、第1の吸気管3および第2の吸気管5は、塔2上に180°の角度αで配置される。さらに、吸気管3、5は、塔2上でラジアル方向4に方向付けられる。
【0088】
図2および図3に示す塔2もまた、正確に2本の吸気管3、5を有する。本明細書において、2本の吸気管3、5間の角度αは、180°未満である。図2においては角度αは90°であり、図3においては角度αは120°である。2本の吸気管3、5間の他の角度βは、図2においては270°、図3においては240°である。それゆえ、2本の吸気管3、5は、塔2の外周19上での不均等な分配により、異なる長さを有する外周セクションが吸気管3、5間に形成されるために、互いに不均等性を有する。
【0089】
図4においては、気相導入のための3本の吸気管3、5、25が、塔2上に配置される。吸気管3、5、25間の角度αはいずれの場合も120°であり、吸気管3、5は外周19上で均等に分配される。これは、等しい吸気管径6、17および吸気管3、5、25における等しい速度が存在するため、ここまでは先行技術による実施形態である。少なくとも2本の異なる吸気管径6、17および/または図示したように配置される吸気管3、5、25を通る少なくとも2つの異なる速度の場合、本発明の実施形態が存在する。
【0090】
図5は、4本の吸気管3、5、25、27を有する塔2を示す。これらの吸気管は、塔2の外周19状で均等に分配され、吸気管3、5、25、27間の角度αは、いずれの場合も90°である。これは、等しい吸気管径6、17および吸気管3、5、25、27における等しい速度が存在するため、ここまでは先行技術による実施形態と同様である。少なくとも2本の異なる吸気管径6、17および/または図示したように配置される吸気管3、5、25、27を通る少なくとも2つの異なる速度の場合、本発明の実施形態が存在する。
【0091】
図6は、2本の吸気管3、5を有する塔2の三次元描写である。より良好な概観を提供するために、塔2の、吸気管3、5が配置される領域のみを示す。
【0092】
気相導入のための2本の吸気管3、5が、塔2上に配置される。吸気管3、5は、互いに対して60°~150°の範囲の角度αで配置される。本明細書に示す実施形態では、角度αは90°である。特に、吸気管3、5の配置において、吸気パイ3、5は、互いに一直線に反対には配置されない。さらに、3本以上の吸気管3、5が提供される場合、吸気管3、5間の角度が異なることが有利である。この結果として、吸気管3、5を介して導入される気相の直接的な衝突が回避され、このようにしてより均一な流量分配が達成される。
【0093】
気相を導入するための吸気管3、5の上に、入口11を有する、充填物の形態の分離活性内部構造物9が塔2にある。
【0094】
図7は、2本の吸気管3、5を有する塔2の三次元描写を示し、図6による塔2に本質的に相当するものであるが、違いは、この場合、吸気管3、5が異なる吸気管径6、17を有することである。第1の吸気管3は、第2の吸気管5の他の吸気管径17よりも大きい吸気管径6を有する。
【0095】
図8は、図6による塔2の縦の断面図を示し、この塔は塔セクション29および吸気管3、5を有する。塔セクション29は、自由断面積およびセクション高さ28を有する。吸気管3、5は吸気管径6を有し、塔径7を有する塔2上の高さ8にそれぞれ配置される。
【実施例
【0096】
<例1>
塔2の充填物9への入口11での相対的速度の分配を決定した。この算出は、同じ高さで、互いに120°の角度αで配置される2本の吸気管3、5の配置を基準にしている。
【0097】
本明細書で示される蒸気流量の算出のために、高さ1 mおよび1ミリバールの圧力損失を有する充填物を、分離活性内部構造物9として仮定した。算出のために、塔2の塔径7を3200 mm、および2本の吸気管3、5の吸気管径6を1000 mmと仮定した。塔2における圧力を5.5バール、気体密度を16.6 kg/m3、気体粘度を1.3・10-5 Pa・s、吸気管3、5における速度を4.34のF係数を伴う1.07 m/s、および塔2における速度を0.85のF係数を伴う0.21 m/sと、速度の算出のための境界条件として定めた。F係数は、塔2における蒸気処理量に関連し、気相の平均速度(m/s)に気体密度(kg/m3)の平方根を掛けた積である。
【0098】
塔2の内部においては、本明細書においては図示されない複数の渦巻き構造、およびその中を同様に本明細書では図示されない流れ経路が、分離活性内部構造物9、すなわち充填物の方向に上方に走るシステムが設置される。
【0099】
分離活性内部構造物(separation-active internal)9の入口11での垂直の速度成分は、塔2内に設置される誤った分配の尺度である。
【0100】
誤った分配を、流量の均一性の尺度として適切に用いることができるようにするために、塔2の入口11で算出した垂直の速度を、最初にヒストグラムに示すのが有用である。このようなヒストグラムを、一例として図9に示す。
【0101】
ヒストグラムを生成するには、例えば、まず流量算出用の好適なシミュレーションプログラムを用いて算出した、分離活性内部構造物9への入口11での垂直の速度を視覚的にグレースケールによって図示し、グレーの陰影によりヒストグラムを生成することが可能である。ヒストグラムは、それぞれの速度について、この速度が発生する断面積の割合を示す。本明細書において、速度を横軸21上にプロットし、断面積を縦軸23上にプロットしている。
【0102】
<例2>
いずれの場合も図10図14に示すように、異なる吸気管配置、吸気管構造および動作モードの累積度数関数を、図9に示すヒストグラムデータから算出した。断面積の5%のみで速度が大きくなるような大きさの速度と、断面積の5%のみで速度が小さくなるような大きさの速度との間の差を、不均一分配の尺度として算出する。この差が小さいほど、流量分配は均一である。
【0103】
図10は、吸気管3、5の異なる配置における、分離活性内部構造物9、すなわち充填物への入口11での相対的速度の度数関数を示す。ここでは、速度を横軸31上にプロットし、0(累積比率なし)から1(総面積)の累積面積率を縦軸33上にプロットしている。
【0104】
第1の配置においては、吸気管3、5間の角度αは90°である。度数関数の相当する第1の曲線を、参照記号35によって示す。第2の曲線37は、吸気管3、5の120°の角度αでの配置についての度数関数(frequency function)を示し、第3の曲線39は、吸気管3、5の180°の角度αでの配置についての度数関数を示す。
【0105】
図9のヒストグラムとは異なり、図10における速度は、6400 mmの塔径7を有する塔2について算出した。吸気管径6、17をいずれの場合も3000 mm、圧力を0.025バール、気体密度を0.118 kg/m3、気体粘度を7.8・10-6 Pa・s、吸気管3、5における速度をいずれの場合も4のF係数を伴う11.7 m/s、および塔2における速度を1.87のF係数を伴う5.46 m/sと、他の境界条件として定めた。
【0106】
曲線35、37、39と95%の累積面積率41との交点は、速度が断面積の5%のみでより大きくなるような大きさの速度であり、曲線35、37、39と5%の累積面積率43との交点は、速度が断面積の5%のみでより小さくなるような大きさの速度である。次に、グラフから簡単な方法で差を決定することができる。本明細書で示される全ての曲線35、37、39をグラフに示すと、不均一分配を直接的に読みとることができる。いずれの場合も、1本の曲線35、37、39と直線41または43との交点との間の距離が大きいほど、不均一分配が大きくなる。したがって、2本の吸気管3、5の配置において、吸気管の角度αが180°で最大の不均一分配が起こるため、その結果、より小さな角度αが選択されるべきであることが分かる。90°または120°での吸気管配置の不均一分配の差は、180°での不均一分配と比較して極めて小さく、これは、例えばこの180°という正確な角度が、塔の配管の状況に適合し得るためである。
【0107】
<例3>
図11は、2900 mmの塔径7、およびいずれの場合も900 mmの吸気管3、5の吸気管径6、17を有する塔2の度数分布を示す。分離活性内部構造物9の入口11で3ミリバールの圧力損失を有するトレイ、すなわち最下方のトレイを、塔2内の分離活性内部構造物9として仮定した。この算出は、同じ高さで、いずれの場合も互いに60°、90°、120°または180°の角度αで配置される2本の吸気管3、5の配置を基準とした。
【0108】
塔2における圧力を1.2バール、気体密度を1.63 kg/m3、気体粘度を1.2・10-5 Pa・s、吸気管3、5における速度をいずれの場合も9.4のF係数を伴う7.4 m/s、および塔2における速度を1.43のF係数を伴う1.82 m/sと、速度の算出のための境界条件として定めた。
【0109】
本明細書においては図示されない複数の渦巻き構造、およびその中を同様に本明細書では示されない流れ経路が、トレイの方向に上方に走るシステムが、塔2の内部において設置される。最下方のトレイへの入口11での垂直の速度成分は、塔2内に設置される誤った分配の尺度である。
【0110】
異なる吸気管配置のそれぞれの場合について、本明細書では図示されないヒストグラムデータから、図9に類似の方法で累積度数関数を算出し、図11に示す。
【0111】
断面積の5%のみで速度が大きくなるような大きさの速度と、断面積の5%のみで速度が小さくなるような大きさの速度との間の差を、不均一分配の尺度として算出する。この差が小さいほど、流量分配は均一である。
【0112】
図11は、異なる吸気管配置における、分離活性内部構造物9への、すなわちトレイへの入口11での相対的速度の度数関数を示す。ここでは、速度(m/s)を横軸31上にプロットし、0(累積比率なし)から1(総面積)の累積面積率を縦軸33上にプロットしている。
【0113】
第1の配置においては、吸気管3、5間の角度αは60°である。度数関数の関連する第4の曲線(破線)を、参照記号44によって示す。第2の曲線45(実線)は、互いに90°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示し、第3の曲線46(点線)は、120°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示し、第4の曲線47(破線)は、180°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示す。
【0114】
曲線44、45、46および47と0.95の累積面積率41との交点は、速度が断面積の100部のうち5部のみでより大きくなるような大きさの速度であり、曲線44、45、46および47と0.05の累積面積率43との交点は、速度が断面積の100部のうち5部のみでより小さくなるような大きさの速度である。次に、グラフから簡単な方法で差を決定することができる。本明細書で示すように、全ての曲線44、45、46および47をグラフに示すと、不均一分配を直接的に読みとることができる。いずれの場合も、1本の曲線44、45、46および47と直線41または43との交点間の距離が大きいほど、不均一分配が大きくなる。したがって、2本の吸気管3、5の配置では、本明細書においては、吸気管の180°の角度αで最大の不均一分配が起こることが分かる。図11に示す結果を表1にまとめる。
【0115】
【表1】
【0116】
<例4>
図12は、例3の塔2に本質的に相当する塔2の度数分布を示す。本明細書において、吸気管径6、17がそれぞれ900 mmである2本の吸気管3、5においては、異なる速度が優勢である。
【0117】
第1の吸気管3においては、11.3のF係数を伴う8.9 m/sの速度、および第2の吸気管5においては、7.5のF係数を伴う5.9 m/sの速度を算出用の基準として使用した。
【0118】
図12は、図11に相当する方法で、ここでは吸気管3、5において優勢になっている異なる気体流速を有する異なる吸気管配置について、分離活性内部構造物9への入口11での相対的速度の度数関数を示す。
【0119】
第1の配置においては、吸気管3、5間の角度αは60°である。度数関数の関連する第8の曲線(一点鎖線)を、参照番号60によって示す。第9の曲線62(実線)は、互いに90°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示し、一方で第10の曲線64(点線)は、120°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示し、第11の曲線66(破線)は、180°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示す。
【0120】
最大の不均一分配は吸気管の180°の角度αで優勢であり、分配の均一性は、等しい速度を有する実施形態と比較して、その他の配置でさらに向上する(表1参照)。図12に示す結果を表2にまとめる。
【0121】
【表2】
【0122】
<例5>
図13は、例3の塔2に本質的に相当する塔2の度数分布を示す。本明細書において、異なる吸気管径6、17を有する2本の吸気管3、5は、吸気管3、5においてそれぞれ9.4のF係数を伴う7.4 m/sである気体流速とともに存在する。
【0123】
第1の吸気管3の吸気管径6を794 mm、および第2の吸気管5の他の吸気管径17を995 mmとして、算出用の基準として使用した。
【0124】
図13は、図11に相当する方法で、本明細書で異なる吸気管径6、17を有する吸気管3、5を伴う異なる吸気管配置について、分離活性内部構造物9の入口11での相対的速度の度数関数を示す。
【0125】
第1の配置においては、吸気管3、5間の角度αは60°である。度数関数の関連する第12の曲線(一点鎖線)を、参照番号68によって示す。第13の曲線70(実線)は、互いに90°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示し、一方で第14の曲線72(点線)は、120°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示し、第15の曲線74(破線)は、180°の角度αでの吸気管3、5の配置についての度数関数を示す。
【0126】
最大の不均一分配は吸気管の180°の角度αで優勢であり、分配の均一性は、等しい吸気管径を有する実施形態と比較してさらに向上している(表1を参照されたい)。図13に示す結果を表3にまとめる。
【0127】
【表3】
【0128】
<例6>
図14の境界条件として、吸気管3、5における速度を1.5倍に上昇させ、塔内で同じ速度を得るために、それに応じて吸気管径6、17を小さくしたことを除いて、図9に記載したものと同じ条件を選択した。
【0129】
2本の吸気管3、5についての度数分布を示す曲線55では、吸気管3、5間の角度αを120°と定めた。1本の吸気管3のみを使用する曲線59の算出では、20.5倍大きくした吸気管3の直径を使用した。その結果、塔2におけるF係数および速度、ならびにしたがって分離活性内部構造物9、すなわち充填物における圧力損失もまた、2本の吸気管3、5を介した気相の導入と比較して、一定の状態を維持した。
【0130】
正規化した速度を横軸51にプロットし、面積による比率をここでは縦軸53にプロットした。
【0131】
第1の曲線55は、2本の吸気管3、5の度数分布を示す。第2の曲線59は、1本の吸気管3の度数分布を示す。
【0132】
図14における比較から、2本の吸気管3、5を有する塔2の場合に、より良好な均一な分配が達成されることを明確に見ることができる。
【0133】
<例7>
2つの蒸発器から出る蒸気相の不均一分配の効果を、塔の断面積を基準として、n-ブチルアクリレートの生成用のプラント全体の熱力学的シミュレーションを用いて調査した。
【0134】
ソフトウェアAspen Plus(登録商標)を使用して、熱力学的シミュレーションを実施した。ユニット動作をモデル化するためのモデルデータバンクと、さらに物質データバンクとを、ソフトウェアに実装される特定の物質特性に関してインポートした。混合特性は、純物質の物質データの各種熱力学モデルに基づくソフトウェアによって算出した。
【0135】
<例7a>
均一に分配された気相の場合のエネルギー消費量を決定するために、図15に示すような、同一の体積を有する3つの蒸気流15a、15b、15cを基準として使用した。
【0136】
シミュレーションでは3つの同一のサブカラム2A、2B、2Cを有する精留塔40として塔2を示し、3つのサブカラム2A、2B、2Cをそれぞれ13段の理論段を用いてシミュレーションした。
【0137】
サブカラム2A、2B、2Cの塔頂部で、液相の形態のランバック16は、3つの等しい体積の液体流16a、16b、16cに分割され、3つのサブカラム2A、2B、2Cにわたって分配された。
【0138】
塔の塔底部において、塔底液の排出流12a、12b、12c、および蒸発器20、30から出る液体流14c、14dは統合されて全体の流れ12、すなわち塔2からの液相を形成し、供給流10と混合された。全体の流れ12の小さな副流18はプラントから排出され、全体の流れ12の本流13は2つの同じ体積の流れ13a、13bに分けられ、2つの蒸発器20、30に供給された。
【0139】
蒸発器20、30から出て、例えば塔2に吸気管3、5を通して供給される蒸気流14a、14bは、統合され、蒸気供給流15を形成した。続いて3つの同じ体積の流れ15a、15b、15cに、それぞれの気相の形態で分けられ、3つのサブカラム2A、2B、2C中に導入された。
【0140】
蒸気供給流15の分割は、いずれの場合も蒸気供給流15を基準として均一に遂行した:
蒸気流(15a)33.33重量%、
蒸気流(15b)33.33重量%、
蒸気流(15c)33.33重量%。
【0141】
プラント全体の熱力学的シミュレーションは、蒸発器20、30において必要となる以下の熱量を示した:
蒸発器20:8922 kW、
蒸発器30:8922 kW。
【0142】
<例7b>
不均一に分割した気相の場合のエネルギー消費量を決定するために、図15による3つの不均一な蒸気流15a、15b、15cを基準として使用した。その他の点では、手順は例7aと同様であった。
【0143】
蒸発器20、30から、塔2の断面積上に出る蒸気流14a、14bの不均一分配、これは塔の外周上での吸気管3、5の好適でない配置によって引き起こされたものであるが、この不均一分配を、サブカラム2A、2B、2Cに供給される異なる体積の蒸気流15a、15b、15cによってシミュレーションした。
【0144】
蒸気供給流15の分割は、いずれの場合も蒸気供給流15を基準として不均一に遂行した:
蒸気流(15a)31.33重量%、
蒸気流(15b)33.33重量%、
蒸気流(15c)35.33重量%。
【0145】
他の全ての条件は、例7aと比較して変えなかった。
【0146】
プラント全体の熱力学的シミュレーションは、蒸発器20、30において必要となる以下の熱量を示した:
蒸発器(20): 9237 kW、
蒸発器(30): 9237 kW。
【0147】
例7aと比較して、蒸気の不均一導入の場合、2つの蒸発器において約3.5%多いエネルギーが必要であった。
【0148】
精留塔40における液相および気相の局所的比率は、供給される気相の不均一分配によって変化した。精留塔40において、例7aと同じ分離作業を成し遂げるためには、気相の均一な分配の場合よりも、より多くのエネルギーが必要である。
【0149】
例1~例6を考慮に入れつつ、例7aと例7bとを比較することで、同じ分離性能のためのエネルギー消費量は、塔2、特に精留塔40の断面積上の気相の均一な分配によって低下することが示される。この気相の均一な分配は、本発明による吸気管3、5の構成によって達成される。
【符号の説明】
【0150】
1 物質移動プロセスを実施するための装置
2 塔
2A、2B、2C サブカラム
3 第1の吸気管
4 ラジアル方向
5 第2の吸気管
6 吸気管径
7 塔径
8 高さ
9 分離活性内部構造物
10 供給流
11 入口
12 全体の流れ、液相
12a、12b、12c 塔底液排出流
13 本流
13a、13b 本流の流れ
14a、14b 出ていく蒸気流
14c、14d 出ていく液体流
15 蒸気供給流
15a、15b、15c 蒸気供給流の蒸気流
16 ランバック
16a、16b、16c 液体流
17 他の吸気管径
18 副流
19 外周
20 第1の蒸発器
21 横軸、速度
23 縦軸、断面積
25 第3の吸気管
27 第4の吸気管
28 セクション高さ
29 塔セクション
30 第2の蒸発器
31 横軸、相対的速度
33 縦軸、累積面積率
35 第1の度数関数の曲線
37 第2の度数関数の曲線
39 第3の度数関数の曲線
40 精留塔
41 95%の累積面積率
43 5%の累積面積率
44 第4の度数関数の曲線
45 第5の度数関数の曲線
46 第6の度数関数の曲線
47 第7の度数関数の曲線
51 横軸、正規化した速度
53 縦軸、面積による累積比率
55 第1の度数分布の曲線
59 第2の度数分布の曲線
60 第8の度数関数の曲線
62 第9の度数関数の曲線
64 第10の度数関数の曲線
66 第11の度数関数の曲線
68 第12の度数関数の曲線
70 第13の度数関数の曲線
72 第14の度数関数の曲線
74 第15の度数関数の曲線
α 角度
β 他の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質移動プロセスを実施するための装置(1)であって、気相導入のための、少なくとも2本の吸気管(3、5)を有する塔(2)を備え、
分離活性内部構造物(9)が前記塔(2)内に収容され、塔セクション(29)が前記少なくとも2本の吸気管(3、5)から前記分離活性内部構造物(9)まで伸び、前記セクション内では、前記塔(2)の断面積の被覆率が総断面積を基準として25%未満であり、
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が1つの吸気管径(6、17)の3倍以下に相当する高さオフセットを有し、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、互いに60°~150°の角度(α)であり、かつ互いに対して非対称性を有前記非対称性が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、それぞれ異なる吸気管径(6、17)を有することによって与えられる、物質移動プロセスを実施するための装置(1)。
【請求項2】
前記非対称性が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、前記塔(2)の外周(19)上で非対称的に分配されることによって与えられる、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記角度(α)が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の2本間の他の角度βと、少なくとも10°、特に少なくとも30°異なる、請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、前記塔(2)上の同じ高さ(8)に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、前記塔(2)の塔底部に、または前記塔(2)上の側面の吸気口として配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置(1)が、気相導入のための、正確に2本の吸気管(3、5)を備え、前記2本の吸気管(3、5)が吸気管径(6)の3倍以下に相当する高さオフセットを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも2本の吸気管(3、5)が、前記塔(2)内に放射状に開口している、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記分離活性内部構造物(9)が、規則充填物および/または充填物成分を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記分離活性内部構造物(9)が、流れが導かれないトレイ、例えばデュアルフロートレイ、リップルトレイおよび/またはカスケードトレイを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記分離活性内部構造物(9)がクロスフロートレイを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
蒸発器(20、30)が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)を介して、前記塔(2)に取り付けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
イソシアネート、スチレンまたはアルキルアクリレート、特にブチルアクリレート生成用の、または分解装置における、特にC炭化水素分離用の、請求項1から11のいずれか一項に記載の物質移動プロセスを実施するための装置(1)の使用。
【請求項13】
前記非対称性が、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)を通る流速が異なることによって与えられる、請求項12に記載の物質移動プロセスを実施するための装置(1)の使用。
【請求項14】
前記物質移動プロセスを実施するための装置(1)が、アルキルアクリレート(HC=CH-C(=O)OR、式中、R=n-ブチルまたはイソブチル)の連続的生成用のプロセスにおいて精留塔(40)として使用され、水性の3-ヒドロキシプロピオン酸を、適切なブタノール(R-OH)の存在下で、脱水およびエステル化条件の下で、前記精留塔(40)を含む反応器において反応させ、形成されるブチルアクリレート、未反応のブタノール、ならびにさらに使用される水および形成される水が三成分系共沸混合物として塔頂部で蒸留され、それぞれ液体水相および液体有機相に分離後、前記水相および前記有機相がそれぞれ少なくとも部分的に排出され、前記ブチルアクリレートおよび前記ブタノールを含む前記有機相が分別蒸留される、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
液相(12)が、前記精留塔(40)から取り出され、少なくとも部分的に気化され、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)を介して、前記精留塔(40)に少なくとも部分的に再循環される、請求項12から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記液相(12)が、少なくとも2つの蒸発器(20、30)において、少なくとも部分的に気化される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記精留塔(40)の前記塔頂部での圧力が、絶対圧0.2バール~5.0バールの範囲である、請求項12から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記ブチルアクリレートおよび前記ブタノールを含む前記有機相の前記分別蒸留が、追加の精留塔(40)において前記ブタノールを蒸留することと、他の追加の精留塔(40)において得られる塔底液から前記ブチルアクリレートを蒸留することと、によって実施される、請求項14から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
請求項1から11のいずれか一項に記載の物質移動のための装置(1)を設計する方法であって、以下のステップ:
(a)前記塔(2)上で前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の位置および向きを特定するステップと、
(b)流動シミュレーションを使用して前記塔(2)における気体流動を算出するステップと、
(c)前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の様々な位置および向きを用いて、前記工程(a)および前記工程(b)を反復するステップと、
(d)最も均一な流動パターンを示す流れにおいて、前記少なくとも2本の吸気管(3、5)の前記位置および向きを選択するステップと、を含む、方法。
【国際調査報告】