(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】YTHDF1を阻害するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230824BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20230824BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20230824BHJP
A61K 36/537 20060101ALI20230824BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230824BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230824BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230824BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230824BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230824BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230824BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230824BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230824BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20230824BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230824BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/343 ZNA
A61K31/216
A61K36/537
A61K35/15
A61K39/00 G
A61K45/06
A61K39/395 T
A61P43/00 111
A61P37/04
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/0784
C07K16/28
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501364
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2021105208
(87)【国際公開番号】W WO2022007890
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/101106
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】318018379
【氏名又は名称】中国科学院上海薬物研究所
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】555 Zuchongzhi Road, Zhangjiang, Pudong Shanghai 201203, China
(71)【出願人】
【識別番号】522476716
【氏名又は名称】ハンチョウ リーディング エッジ ファーマシューティカル リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523007384
【氏名又は名称】シャンハイ カンチァン バイオテクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルオ チェン
(72)【発明者】
【氏名】シュー メン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シージエ
(72)【発明者】
【氏名】リー イーリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヤンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ジアン フアリャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン カイシャン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ジャンペン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4C088
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA24
4B065BA30
4B065BD27
4B065BD43
4B065CA44
4B065CA45
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC411
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC23
4C085CC40
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA06
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC41
4C087ZC75
4C088AB12
4C088AB38
4C088AC11
4C088BA08
4C088BA32
4C088CA03
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZB09
4C088ZB26
4C088ZB27
4C088ZC41
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA21
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB09
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC41
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、YTHDF1活性を減弱させるための組成物および方法、ならびに免疫応答を促進するための組成物および方法を提供するものである。例えば、本開示は、YTHDF1に結合する場合に、YTHDF1の少なくとも1つの残基に結合する化合物を含むYTH N6-メチルアデノシンRNA結合タンパク質1(YTHDF1)減弱剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1のアミノ酸残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基に結合する化合物を含む、
YTH N6-メチルアデノシンRNA結合タンパク質1(YTHDF1)減弱剤。
【請求項2】
前記化合物は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480、およびH528に対応する少なくとも1つの残基に結合する、
請求項1に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項3】
前記化合物は、YTHDF1のm
6Aへの結合を遮断することができる、
請求項1~2のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項4】
前記化合物は、YTHDF1への結合について、m
6Aと実質的に競合しない、
請求項1~3のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項5】
前記化合物は、式Iの化合物、前記式Iの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルもしくはアミドを含み、
【化1】
ここで、R
1は、C
1-50ヒドロカルビル、C
1-50置換ヒドロカルビル、C
1-50ヘテロヒドロカルビル、およびC
1-50置換ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択される、
請求項1~4のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項6】
R
1は(CO)-R
2であり、R
2は任意に置換されたアルケニルである、
請求項5に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項7】
R
2はCH=CH-R
3であり、かつ、R
3は任意に置換されたアリールである、
請求項6に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項8】
R
3は式IIであり:
【化2】
ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化3】
であり、かつ、
R
6はヒドロキシルであり、R
5は任意に置換されたアルケニルである、
請求項7に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項9】
Aは
【化4】
であり、R
4は
【化5】
である、
請求項8に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項10】
Aは
【化6】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、R
7は
【化7】
である、
請求項8に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項11】
前記化合物は、少なくとも2つのジヒドロキシフェニル部分を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項12】
前記化合物は、少なくとも3つのジヒドロキシフェニル部分を含む、
請求項1~11のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項13】
前記化合物は、式IIIの化合物、式IIIの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または、前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステル、もしくはアミドを含み、
【化8】
ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化9】
であり、かつ、
R
6はヒドロキシルであり、R
5は任意に置換されたアルケニルである、
請求項1~12のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項14】
Aは
【化10】
であり、R
4は
【化11】
である、
請求項13に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項15】
Aは、
【化12】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、かつ、R
7は
【化13】
である、
請求項13に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項16】
前記化合物は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含む
【化14】
請求項1~15のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項17】
前記化合物は植物に由来する、
請求項1~16のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項18】
前記化合物は、植物抽出物で提供される、
請求項1~17のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項19】
前記植物は、サルビア属である、
請求項17~18のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項20】
前記植物は、サルビア・ミルチオリザ(Danshen)である、
請求項17~19のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤で処理された、
修飾された抗原提示細胞(mAPC)である。
【請求項22】
前記mAPCは、修飾された樹状細胞(mDC)である、
請求項21に記載のmAPC。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、および/または請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および任意に薬学的に許容される担体を含む、
組成物。
【請求項24】
前記組成物は、ワクチン組成物である、
請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
抗癌剤である第2の活性成分をさらに含む、
請求項23~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記第2の活性成分は、癌免疫療法を含む、
請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記第2の活性成分は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、
請求項25~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記第2の活性成分は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、およびIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む、
請求項25~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記第2の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、および/または前記のいずれかのものの抗原結合断片もしくは誘導体を含む、
請求項25~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第2の活性成分は、それを受けた受験者において、1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる、
請求項25~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA、およびそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される、
請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記第2の活性成分は、別個の容器に含まれ、前記mAPCまたは前記YTHDF1減弱剤と混合されない、
請求項25~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
YTHDF1の活性を減弱させるための方法であって、請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤の有効量を投与することを含む、
方法。
【請求項34】
前記方法は、インビボ法、インビトロ法、および/またはエクスビボ法である、
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
候補薬剤がYTHDF1減弱剤であるかどうかを決定するための方法であって、
前記候補薬剤をSEQ ID NO: 1の残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応する1つ以上の残基において、1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含むYTHDF1変異体に接触させることを含む、
方法。
【請求項36】
前記YTHDF1変異体は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480、およびH528から選択される残基に対応する1つ以上の残基において1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含む、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記候補薬剤が前記YTHDF1変異体に特異的に結合するかどうかを決定することをさらに含む、
請求項35~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項35~36のいずれか1項に記載のYTHDF1変異体を含む、
キット。
【請求項39】
YTHDF1減弱剤の製造における化合物の使用であって、
YTHDF1に結合する場合に、前記化合物はSEQ ID NO: 1のアミノ酸残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基に結合する、
使用。
【請求項40】
YTHDF1に結合する場合に、前記化合物は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480およびH528に対応する少なくとも1つの残基に結合する、
請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記化合物は、YTHDF1のm
6Aへの結合を遮断することができる、
請求項39~40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
前記化合物は、YTHDF1への結合について、m
6Aと実質的に競合しない、
請求項39~41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
前記化合物は、式Iの化合物、式Iの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルもしくはアミドを含み、
【化15】
ここで、R
1はC
1-50ヒドロカルビル、C
1-50置換ヒドロカルビル、C
1-50ヘテロヒドロカルビル、およびC
1-50置換ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択される、
請求項39~42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
R
1は(CO)-R
2であり、かつ、R
2は任意に置換されたアルケニルである、
請求項43に記載の使用。
【請求項45】
R
2はCH=CH-R
3であり、かつ、R
3は任意に置換されたアリールである、
請求項44に記載の使用。
【請求項46】
R
3は式IIを有しており、
【化16】
ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化17】
であり、
R
6はヒドロキシルであり、R
5は任意に置換されたアルケニルである、
請求項45に記載の使用。
【請求項47】
Aは
【化18】
であり、R
4は
【化19】
である、
請求項46に記載の使用。
【請求項48】
Aは
【化20】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、かつ、R
7は
【化21】
である、
請求項46に記載の使用。
【請求項49】
前記化合物は、少なくとも2つのジヒドロキシフェニル部分を含む、
請求項39~48のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記化合物は、少なくとも3つのジヒドロキシフェニル部分を含む、
請求項39~49のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
前記化合物は、式IIIの化合物、式IIIの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルもしくはアミドを含み、
【化22】
ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化23】
であり、かつ、
R
6はヒドロキシルであり、R
5は任意に置換されたアルケニルである、
請求項39~50のいずれか1項に記載の使用。
【請求項52】
Aは
【化24】
であり、R
4は
【化25】
である、
請求項51に記載の使用。
【請求項53】
Aは
【化26】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、かつ、R
7は
【化27】
である、
請求項51に記載の使用。
【請求項54】
前記化合物は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含む
【化28】
請求項39~53のいずれか1項に記載の使用。
【請求項55】
前記化合物は、植物に由来する、
請求項39~54のいずれか1項に記載の使用。
【請求項56】
前記化合物は、植物抽出物で提供される、
請求項39~55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
前記植物は、サルビア属植物である、
請求項55~56のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
前記植物はサルビア・ミルチオリザ(Danshen)である、
請求項55~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
APCを活性化する方法であって、
前記APCに請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤を投与することを含む、
方法。
【請求項60】
DCを活性化する方法であって、
前記DCに請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤を投与することを含む、
方法。
【請求項61】
必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療するための方法であって、前記受験者に
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、
請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または
請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項62】
前記抗原は腫瘍抗原である、
請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMAおよびそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される腫瘍抗原である、
請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記疾患、障害または病状は、癌である、
請求項61~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記癌は、血液癌、リンパ腫、および固形腫瘍からなる群から選択される、
請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫、および白血病からなる群から選択される、
請求項64に記載の方法。
【請求項67】
必要のある受験者において癌を治療するための方法であって、前記受験者に
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、
請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または
請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項68】
前記癌は、血液癌、リンパ腫、および固形腫瘍からなる群から選択される、
請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫、および白血病からなる群から選択される、
請求項67に記載の方法。
【請求項70】
必要のある受験者において、癌細胞および/または腫瘍抗原に対するT細胞媒介免疫応答を刺激するための方法であって、前記受験者に、
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、
請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または
請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項71】
前記腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA、およびそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される、
請求項70に記載の方法。
【請求項72】
必要のある受験者において抗腫瘍免疫を与えるための方法であって、前記受験者に
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、
請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または
請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項73】
必要のある受験者においてT細胞の疲弊を予防および/または逆転するための方法であって、前記受験者に
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、
請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または
請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項74】
必要のある受験者においてT細胞の活性を増強するための方法であって、前記受験者に
請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、
請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または
請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、
方法。
【請求項75】
前記T細胞は、腫瘍浸潤T細胞を含む、
請求項73~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記T細胞は、腫瘍特異的T細胞を含む、
請求項73~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記受験者は癌患者である、
請求項61~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記癌は、血液癌、リンパ腫、および固形腫瘍からなる群から選択される、
請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫、および白血病からなる群から選択される、
請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記受験者は、抗癌治療を受けた、受けている、および/または受けることになる、
請求項61~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記抗癌治療は、癌免疫療法を含む、
請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記抗癌治療は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、
請求項80~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記抗癌治療は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、およびIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む、
請求項80~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記抗癌治療は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブおよび/または前記のいずれかのものの抗原結合断片または誘導体を含む、
請求項80~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記抗癌治療は、前記受験者において1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる、
請求項80~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA、およびそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される、
請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記方法は、
前記受験者に1つ以上の追加の抗癌治療を施すことをさらに含む、
請求項61~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記追加の抗癌治療は、癌免疫療法を含む、
請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記追加の抗癌治療は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、
請求項87~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記追加の抗癌治療は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、およびIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む、
請求項87~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記追加の抗癌治療は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、および/または前記のいずれかのものの抗原結合断片もしくは誘導体を含む、
請求項87~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記追加の抗癌治療は、前記受験者において、1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる、
請求項87~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA、およびそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される、
請求項92に記載の方法。
【請求項94】
次の
1)APCを活性化すること、
2)DCを活性化すること、
3)増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成すること、
4)免疫細胞(免疫エフェクター細胞、例えばT細胞など)の疲弊を予防、および/または逆転すること、
5)必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療すること、
6)必要のある受験者における癌を治療すること、
7)必要のある受験者における癌細胞および/または腫瘍抗原に対する免疫細胞(例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞)媒介免疫応答を刺激すること、
8)必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えること、
9)免疫細胞(例えば、T細胞、例えば腫瘍浸潤T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、
10)腫瘍特異的免疫細胞(例えば、T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、
11)T細胞のサイトカインの生成を増強すること、
12)癌免疫療法の抗腫瘍反応を増強すること、と
13)腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍細胞の増殖を阻害すること、および/または腫瘍細胞を殺傷することの目的の1つ以上のために使用される組成物および/または医薬品の製造における、請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項95】
前記癌または腫瘍は、血液癌、リンパ腫、および固形腫瘍からなる群から選択される、
請求項94に記載の使用。
【請求項96】
前記癌または腫瘍は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫、および白血病からなる群から選択される、
請求項94~95のいずれか1項に記載の使用。
【請求項97】
次の
1)APCを活性化すること、
2)DCを活性化すること、
3)増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成すること、
4)免疫細胞(免疫エフェクター細胞、例えばT細胞など)の疲弊を予防、および/または逆転すること、
5)必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療すること、
6)必要のある受験者における癌を治療すること、
7)必要のある受験者における癌細胞および/または腫瘍抗原に対する免疫細胞(例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞)媒介免疫応答を刺激すること、
8)必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えること、
9)免疫細胞(例えば、T細胞、例えば腫瘍浸潤T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、
10)腫瘍特異的免疫細胞(例えば、T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、
11)T細胞のサイトカインの産生を増強すること、
12)癌免疫療法の抗腫瘍反応を増強すること、と
13)腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍細胞の増殖を阻害すること、および/または腫瘍細胞を殺傷することの目的の1つ以上のために使用される医薬品の製造における、追加の活性成分と組み合わせた請求項1~20のいずれか1項に記載のYTHDF1減弱剤、請求項21~22のいずれか1項に記載のmAPC、および/または請求項23~32のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項98】
前記追加の活性成分は、癌免疫療法を含む、
請求項97に記載の使用。
【請求項99】
前記追加の活性成分は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、
請求項97~98に記載の使用。
【請求項100】
前記追加の活性成分は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、およびIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む、
請求項97~99のいずれか1項に記載の使用。
【請求項101】
前記追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、および/または前記のいずれかのものの抗原結合断片もしくは誘導体を含む、
請求項97~100のいずれか1項に記載の使用。
【請求項102】
前記追加の活性成分は、それを受けた受験者において、1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる、
請求項97~101のいずれか1項に記載の使用。
【請求項103】
前記腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA、およびそれらの断片と修飾バージョンから選択される、
請求項102に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
腫瘍ネオアンチゲンに対する自発的なT細胞プライミングは、免疫療法の臨床効果にとって不可欠である。しかし、多くの患者では、腫瘍の完全拒絶に必要な持続的なT細胞応答を誘導するには、ネオアンチゲン認識が不十分である。腫瘍ネオアンチゲンに対する免疫反応性に影響を与える分子経路を特定することによって、免疫療法に対する反応を改善するための標的が得られる可能性がある。例えば、最も豊富な内部mRNA修飾であるm6Aは、多様な細胞型におけるmRNAの転写後調節に関与している。さらに、m6Aは、m6A結合タンパク質YTHドメイン含有ファミリータンパク質1(YTHDF1)を介して、mRNAの翻訳効率に影響を与えることができる。以前の研究では、免疫系のさまざまな細胞(例えば、抗原提示細胞)におけるYTHDF1の活性を減弱させることは、十分かつ持続的な抗腫瘍免疫応答を誘導することに役立つ可能性があることが示されている。しかしながら、YTHDF1の活性を減弱させるための有効な組成物および方法が依然として強く望まれている。
【発明の開示】
【0002】
本願は、YTHDF1の活性を減弱させるための組成物および方法を提供する。本願は、増強された活性を有する修飾された樹状細胞などの修飾された抗原提示細胞(mAPC)をさらに提供する。本願の組成物およびmAPCは、次の、APC(例えば、DC)を活性化すること、増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成すること、免疫細胞(T細胞など)の疲弊を防止および/または逆転すること、必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療すること、必要のある受験者における癌を治療すること、必要のある受験者における癌細胞および/または腫瘍抗原に対するT細胞媒介免疫応答を刺激すること、必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えること、腫瘍浸潤T細胞の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、腫瘍特異的T細胞の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、T細胞のサイトカインの生成を増強すること、12)癌免疫療法の抗腫瘍反応を増強すること、13)腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍細胞の増殖を阻害すること、および/または腫瘍細胞を殺傷することの目的の1つ以上のために使用され得る。本願は、本願のYTHDF1減弱剤と免疫チェックポイント阻害剤などの第2の活性剤との組み合わせで免疫応答を増強する方法および組成物をさらに提供する。
【0003】
YTHドメインファミリーのメンバーであるYTHDF1は、m6A修飾の「リーダー」である。例えば、翻訳開始因子と相互作用することにより、YTHDF1はmRNAの翻訳効率を促進するのに役立つ。さらに、YTHDF1の調節不全は、発癌遺伝子と腫瘍抑制因子の間の発現バランスを崩す可能性があり、YTHDF1と腫瘍形成の間の関連を示唆している。YTHDF1の過剰発現は、結腸直腸癌(CRC)や肝細胞癌(HCC)などの悪性腫瘍と関連していることが報告されている。さらに、Ythdf1欠損(Ythdf1-/-)マウスは抗腫瘍免疫応答の上昇を示すことを見出し、YTHDF1が新しい潜在的な治療標的であることが示唆されている。YTHDF1は、T細胞疲弊サイン遺伝子の発現に関連することも見出した。T細胞にYTHDF1を欠くマウスは、リンパ腫、固形腫瘍(黒色腫や結腸癌など)およびそのほかの種類の癌に対して、より優れた抗腫瘍免疫を示している。YTHDF1欠損マウスでは、腫瘍浸潤T細胞の機能が増強した。さらに、T細胞の疲弊の分岐は、メモリー様または幹様CD8+ T細胞の運命に向かって救われた。
【0004】
一方、本願は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1のアミノ酸残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基に結合する化合物を含むYTH N6-メチルアデノシンRNA結合タンパク質1(YTHDF1)減弱剤を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態において、YTHDF1に結合する場合に、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480、およびH528に対応する少なくとも1つの残基に結合する。
【0006】
いくつかの実施形態において、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、YTHDF1のm6Aへの結合を遮断することができる。
【0007】
いくつかの実施形態において、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、YTHDF1への結合について、m6Aと実質的に競合しない。
【0008】
いくつかの実施形態において、YTHDF1減弱剤は、式Iの化合物、式Iの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または前記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み
【化1】
、ここで、R
1はC
1-50ヒドロカルビル、C
1-50置換ヒドロカルビル、C
1-50ヘテロヒドロカルビルおよびC
1-50置換ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態において、式IにおけるR
1は(CO)-R
2であり、R
2は任意に置換されたアルケニルである。いくつかの実施形態において、R
2はCH=CH-R
3であり、R
3は任意に置換されたアリールである。いくつかの実施形態において、R
3は式II
【化2】
であり、ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化3】
であり、R
6はヒドロキシルであり、かつ、R
5は任意に置換されたアルケニルである。
【0010】
いくつかの実施形態において、式IIにおいて、Aは
【化4】
であり、R
4は
【化5】
である。
【0011】
いくつかの実施形態において、式IIにおいて、Aは
【化6】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、かつ、R
7は
【化7】
である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本願のYTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、少なくとも2つのジヒドロキシフェニル部分を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、本願のYTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、少なくとも3つのジヒドロキシフェニル部分を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、YTHDF1減弱剤は、式IIIの化合物、式IIIの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み
【化8】
、ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化9】
であり、R
6はヒドロキシルであり、かつ、R
5は任意に置換されたアルケニルである。
【0015】
いくつかの実施形態において、式IIIにおいて、Aは
【化10】
であり、R
4は
【化11】
である。
【0016】
いくつかの実施形態において、式IIIにおいて、Aは
【化12】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、かつ、R
7は
【化13】
である。
【0017】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含む:
【化14】
【0018】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含む
【化15】
【0019】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含む
【化16】
【0020】
いくつかの実施形態において、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は植物に由来する。
【0021】
いくつかの実施形態において、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、植物抽出物で提供される。いくつかの実施形態において、上記の植物はサルビア属である。いくつかの実施形態において、上記の植物はサルビア・ミルチオリザ(Danshen)である。
【0022】
一方、本願は、本願のYTHDF1減弱剤で処理され、および/または本願のYTHDF1減弱剤を含む修飾された抗原提示細胞(mAPC)を提供する。いくつかの実施形態において、mAPCは修飾された樹状細胞(mDC)である。
【0023】
一方、本願は、本願のYTHDF1減弱剤および/または本願のmAPCを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本願の組成物は、薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態において、上記の組成物はワクチン組成物である。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記の組成物は、第2の活性成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記の第2の活性成分は抗癌剤である。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記の第2の活性成分は、癌免疫療法を含む。いくつかの実施形態において、上記の第2の活性成分は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、上記の第2の活性成分は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、およびIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記の第2の活性成分は、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、ニボルマブ(nivolumab)、セミプリマブ(cemiplimab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)、アベルマブ(avelumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、イピリムマブ(ipilimumab)および/または上記のいずれかのものの抗原結合断片または誘導体を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記の第2の活性成分は、それを受けた受験者において、1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、当該腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMAおよびそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記の第2の活性成分は、別個の容器に含まれ、上記のmAPCまたは上記のYTHDF1減弱剤と混合されていない。
【0030】
一方、本願は、有効量の本願のYTHDF1減弱剤を投与することを含む、YTHDF1の活性を減弱させるための方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記の方法はインビボ法である。いくつかの実施形態において、上記の方法はインビトロ法である。いくつかの実施形態において、上記の方法はエクスビボ法である。
【0032】
一方、本願は、候補薬剤がYTHDF1減弱剤であるかどうかを決定するための方法であって、上記の候補薬剤をSEQ ID NO: 1の残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応する1つ以上の残基において1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含むYTHDF1変異体に接触させることを含む方法を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記のYTHDF1変異体は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480、およびH528から選択される残基に対応する1つ以上の残基において1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、当該方法は、上記の候補薬剤が上記のYTHDF1変異体に特異的に結合するかどうかを決定することをさらに含む。
【0035】
一方、本願は、本願のYTHDF1変異体を含むキットを提供する。
【0036】
一方、本願は、YTHDF1減弱剤の製造における化合物の使用を提供し、当該化合物は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1のアミノ酸残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基に結合する。
【0037】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480、およびH528に対応する少なくとも1つの残基に結合する。
【0038】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、YTHDF1のm6Aへの結合を遮断することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、YTHDF1への結合について、m6Aと実質的に競合しない。
【0040】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、式Iの化合物、式Iの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み
【化17】
、ここで、R
1はC
1-50ヒドロカルビル、C
1-50置換ヒドロカルビル、C
1-50ヘテロヒドロカルビル、およびC
1-50置換ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物において、R1は(CO)-R2であり、かつ、R2は任意に置換されたアルケニルである。いくつかの実施形態において、R2はCH=CH-R3であり、かつR3は任意に置換されたアリールである。
【0042】
いくつかの実施形態において、R
3は式II
【化18】
であり、ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化19】
であり、R
6はヒドロキシルであり、かつ、R
5は任意に置換されたアルケニルである。
【0043】
いくつかの実施形態において、式IIにおいて、Aは
【化20】
であり、R
4は
【化21】
である。
【0044】
いくつかの実施形態において、式IIにおいて、Aは
【化22】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、かつ、R
7は
【化23】
である。
【0045】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、少なくとも2つのジヒドロキシフェニル部分を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、少なくとも3つのジヒドロキシフェニル部分を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、式IIIの化合物、式IIIの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み、
【化24】
、ここで、Aは任意に置換されたフランまたは
【化25】
であり、R
6はヒドロキシルであり、かつ、R
5は任意に置換されたアルケニルである。
【0048】
いくつかの実施形態において、式IIIにおいて、Aは
【化26】
であり、かつ、R
4は
【化27】
である。
【0049】
いくつかの実施形態において、Aは
【化28】
であり、R
6はヒドロキシルであり、R
5はCH=CH-R
7であり、かつ、R
7は
【化29】
である。
【0050】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステル、もしくはアミドを含む
【化30】
【0051】
いくつかの実施形態において、当該化合物は、植物に由来する。いくつかの実施形態において、植物抽出物で当該化合物が提供される。いくつかの実施形態において、当該植物はサルビア属植物である。いくつかの実施形態において、当該植物はサルビア・ミルチオリザ(Danshen)である。
【0052】
一方、本願は、APCを活性化する方法であって、当該APCに本願のYTHDF1減弱剤を投与することを含む方法を提供する。
【0053】
一方、本願は、DCを活性化する方法であって、当該DCに本願のYTHDF1減弱剤を投与することを含む方法を提供する。
【0054】
一方、本願は、必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療するための方法であって、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0055】
当該方法のいくつかの実施形態において、当該抗原は腫瘍抗原である。
【0056】
当該方法のいくつかの実施形態において、当該抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA及びそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される腫瘍抗原である。
【0057】
当該方法のいくつかの実施形態において、当該疾患、障害または病状は、癌である。
【0058】
いくつかの実施形態において、当該癌は、血液癌、リンパ腫及び固形腫瘍からなる群から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態において、当該癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫、および白血病からなる群から選択される。
【0060】
一方、本願は、必要のある受験者において癌を治療する方法であって、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、当該癌は、血液癌、リンパ腫および固形腫瘍からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、当該癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫および白血病からなる群から選択される。
【0061】
一方、本願は、必要のある受験者において癌細胞および/または腫瘍抗原に対するT細胞媒介免疫応答を刺激するための方法であって、当該受験者に、本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、当該腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA及びそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される。
【0062】
一方、本願は、必要のある受験者において抗腫瘍免疫を与えるための方法であって、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0063】
一方、本願は、必要のある受験者において、T細胞の疲弊を予防および/または逆転するための方法であって、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0064】
一方、本願は、必要のある受験者において、T細胞の活性を増強するための方法であって、当該受験者に、本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、当該T細胞は、腫瘍浸潤T細胞を含む。いくつかの実施形態において、当該T細胞は、腫瘍特異的T細胞を含む。
【0065】
本願の方法のいくつかの実施形態において、当該受験者は癌患者である。いくつかの実施形態において、当該癌は、血液癌、リンパ腫および固形腫瘍からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、当該癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫および白血病からなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、当該受験者は、抗癌治療を受けた、受けている、および/または受けることになる。いくつかの実施形態において、当該抗癌治療は、癌免疫療法を含む。いくつかの実施形態において、当該抗癌治療は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、当該抗癌治療は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、及びIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む。いくつかの実施形態において、当該抗癌治療は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブおよび/または上記のいずれかのものの抗原結合断片または誘導体を含む。いくつかの実施形態において、当該抗癌治療は、当該受験者において、1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる。いくつかの実施形態において、当該腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA及びそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態において、当該方法は、当該受験者に、1つ以上の追加の抗癌治療を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態において、当該追加の抗癌治療は、癌免疫療法を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の抗癌治療は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の抗癌治療は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分及びIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の抗癌治療は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブおよび/または上記のいずれかのものの抗原結合断片または誘導体を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の抗癌治療は、当該受験者において1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる。いくつかの実施形態において、当該腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA及びそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される。
【0068】
一方、本願は、以下の、1)APCを活性化すること、2)DCを活性化すること、3)増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成すること、4)免疫細胞(T細胞など)の疲弊を予防および/または逆転すること、5)必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療すること、6)必要のある受験者における癌を治療すること、7)必要のある受験者における癌細胞および/または腫瘍抗原に対するT細胞媒介免疫応答を刺激すること、8)必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えること、9)腫瘍浸潤T細胞の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、10)腫瘍特異的T細胞の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、11)T細胞のサイトカインの生成を増強すること、12)癌免疫療法の抗腫瘍反応を増強すること、及び13)腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍細胞の増殖を阻害すること、および/または腫瘍細胞を殺傷することの目的の1つ以上のために使用される組成物および/または医薬品の製造における本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPCおよび/または本願の組成物の使用を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態において、癌または腫瘍は、血液癌、リンパ腫及び固形腫瘍からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、当該癌または腫瘍は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫和及び白血病からなる群から選択される。
【0070】
一方、本願は、以下の1)APCを活性化すること、2)DCを活性化すること、3)増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成すること、4)免疫細胞(T細胞など)の疲弊を予防および/または逆転すること、5)必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療すること、6)必要のある受験者における癌を治療すること、7)必要のある受験者における癌細胞および/または腫瘍抗原に対するT細胞媒介免疫応答を刺激すること、8)必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えること、9)腫瘍浸潤T細胞の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、10)腫瘍特異的T細胞の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、11)T細胞のサイトカインの生成を増強すること、12)癌免疫療法の抗腫瘍反応を増強すること、及び、13)腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍細胞の増殖を阻害すること、および/または腫瘍細胞を殺傷することの目的の1つ以上のために使用される医薬品の製造における追加の活性成分と組み合わせた本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物の使用を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態において、当該追加の活性成分は、癌免疫療法を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の活性成分は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の活性成分は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、およびIDO阻害剤からなる群から選択される薬剤を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブおよび/または上記のいずれかのものの抗原結合断片または誘導体を含む。いくつかの実施形態において、当該追加の活性成分は、それを受けた受験者において1つ以上の腫瘍抗原の増加を引き起こすことができる。いくつかの実施形態において、当該腫瘍抗原は、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA及びそれらの断片と修飾バージョンからなる群から選択される。
【0072】
本開示の他の態様や利点は、以下の詳細な説明を通じて当該技術分野における当業者には容易に明らかになるであろう。本開示は、例示的な実施形態のみを示し、以下の詳細な説明で説明する。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態で実施することができ、そのいくつかの詳細は、すべて本願から逸脱することなく、様々な明白な点で変更が可能である。したがって、添付の図面および明細書は例示であって、限定的なものではないとみなされるべきである。
【参照による組み込み】
【0073】
本明細書で言及されているすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に表されているのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が採用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明および添付図面(本明細書では「図」および「FIG」でもある)を参照することによって得られる。
【
図1】
図1a~1bは、SAAの阻害活性を示す。
図1cはSACの阻害活性を示す。
図1dはSAAとYTHDF1の結合を示す。
【
図2】
図2a~2cは、YTHDF1へのSAA結合のITC結合曲線を示す。
【
図3】
図3aは、SAAとYTHDF1との間のSPR結合分析の結果を示す。
図3b~3cは、SAAとYTHDF1との間のMST結合分析の結果を示す。
【
図4】
図4a~4bは、SAAとm
6A含有mRNAとの間の競合結合分析の結果を示す。
【
図5】
図5aは、HDX MS実験結果の残差プロットを示す。
図5bは、HDX MS実験結果のバタフライプロットを示す。
【
図6】
図6は、HDX MS実験結果のヒートマップを示す。
【
図7】
図7は、YTHDF1の局所的な重水素取り込み動態を示す。右側では、縦軸は、重水素取り込みの割合を表し、横軸は、HDXプロセスの持続時間を表す。対応t検定を使用して、重水素取り込みの変動を比較し、かつ、P < 0.05(*)が統計的に有意であると見なされた。
【
図8】
図8a~8iは、関連ペプチドの局所交換動力学分析を示す。縦軸は、重水素取り込みの割合を表し、横軸は、HDXプロセスの持続時間を表す。
【
図9】
図9は、YTHDF1変異体および切断体に対するSAAの阻害活性を示す。SAAのIC
50値はFP分析によって決定された。データは平均値±s.e.mとして表された。
【
図10】
図10a~10jは、FP分析によって測定されたYTHDF1変異体およびC-末端切断体のIC50値を示す。SAAは、2倍勾配希釈により100 Mから希釈された。
【
図11】
図11a~11gは、FP分析によって測定されたYTHDF1及びその変異体またはC-末端切断体のK
d値を示す。タンパク質は、2倍勾配希釈により200 Mから希釈された。
【
図12】
図12a~12bは、293T細胞におけるSAAのYTHDF1への結合を示す。CETSA分析は293T細胞株で実施され、温度は示されているように39.0℃から59.0℃の範囲である。YTHDF1の量は、GAPDHを内部参照として、ウエスタンブロットによって検出された。そして、ウエスタンブロット(
図12a)による相対定量は
図12bに示される。
【
図13】
図13a~13bは、T細胞及びDCに依存するSAAの抗腫瘍効果を示す。
【
図14】
図14a~14bは、インビトロでの腫瘍細胞増殖に対するSAAの効果を示す。
【
図15】
図15aは、Rag1
-/-マウスに対するSAAの効果を示す。
図15b~15cは、DCによるT細胞のクロスプライミングを増強するSAAの能力を示す。
【
図16】
図16a~16bは、DCによるT細胞の直接プライミングを増強するSAAの能力を示す。
【
図17】
図17aは、SAAがDCを標的にして腫瘍増殖を阻害することを示す。
図17b~17cは、SAAが腫瘍浸潤T細胞の活性を増強することができることを示す。
【
図18】
図18aは、SAA処理群からのPD-1
low集団が、DMSO群よりもはるかに多くのCXCR5を発現したことを示す。
図18bは、SAA処理マウスにおいて、腫瘍浸潤末期疲弊T細胞(PD-1
+Tim-3
+)の割合が減少したことを示す。
図18cは、抗PD-L1抗体と組み合わせたSAAの抗腫瘍効果を示す。
【
図20】
図20は、SAAとPD-1遮断の併用による抗腫瘍効果を示す。
【
図21】
図21は、養子移入SAA処理FLT3L DCが持続的な抗腫瘍機能を示すことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本明細書では、本発明の様々な実施形態が示され、記述されたが、当業者にとって、これらの実施形態が例として与えられたに過ぎないことが明らかであろう。当業者は、本発明を逸脱しない限り、いろんな変形、変更および置換が想到される。本明細書に記載の本発明の実施形態に様々な置換態様が適用され得ることが理解されたい。
【0076】
一方、本願は、YTH N6-メチルアデノシンRNA結合タンパク質1(YTHDF1)減弱剤を提供する。当該YTHDF1減弱剤は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1のアミノ酸残基372~392、479~494及び526~535から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基に結合することができる化合物を含み得る。
【0077】
一方、本願は、修飾された抗原提示細胞(mAPC)を提供する。当該mAPCは、本願のYTHDF1減弱剤で処理された可能性がある。いくつかの実施形態において、当該mAPCは、本願のYTHDF1減弱剤を含み得る。当該mAPCは、修飾された樹状細胞(mDC)であり得る。
【0078】
一方、本願は組成物(医薬品組成物など)を提供する。当該組成物は、本願のYTHDF1減弱剤を含み得る。あるいは、またはさらに、当該組成物は、本願のmAPCを含み得る。当該組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。場合によっては、当該組成物は、ワクチン組成物であり得る。
【0079】
場合によっては、当該組成物は、追加のまたは第2の活性成分を含み得る。本願において、「追加の活性成分」及び「第2の活性成分」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0080】
当該追加のまたは第2の活性成分は、別個の容器に含まれてよく、かつ、本願のmAPCまたはYTHDF1減弱剤とは混合されない。
【0081】
場合によっては、当該追加の活性成分は、本願のmAPCおよび/またはYTHDF1減弱剤と同じパッケージまたは同じ容器に含まれてもよい。場合によっては、当該追加の活性成分は、別個の容器に含まれてもよく、例えば、当該追加の活性成分は、本願のmAPCおよび/またはYTHDF1減弱剤を含む容器とは異なる容器に含まれてもよい。場合によっては、当該追加の活性成分は、同じ容器または同じパッケージに存在していても、本願のmAPCおよび/またはYTHDF1減弱剤と直接に接触しない(例えば、混合しない)。
【0082】
一方、本願は、YTHDF1の活性を減弱させるための方法であって、本願のYTHDF1減弱剤の有効量を投与することを含み得る方法を提供する。
【0083】
一方、本願は、候補薬剤がYTHDF1減弱剤であるか否かを決定するための方法を提供する。この方法は、当該候補薬剤をYTHDF1変異体と接触させることを含み得る。当該YTHDF1変異体は、SEQ ID NO: 1の残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応する1つ以上の残基において1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含み得る。
【0084】
一方、本願は、キットを提供する。当該キットは、本願のYTHDF1変異体を含み得る。
【0085】
一方、本願は、YTHDF1減弱剤の製造における化合物の使用を提供する。当該化合物は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1のアミノ酸残基372~392、479~494および526~535から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基に結合し得る。
【0086】
一方、本願は、APCを活性化する方法を提供する。この方法は、当該APCに本願のYTHDF1減弱剤を投与することを含み得る。
【0087】
一方、本願は、DCを活性化するための方法を提供する。当該方法は、当該DCに本願のYTHDF1減弱剤を投与することを含み得る。
【0088】
一方、本願は、必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療するための方法を提供する。当該方法は、当該受験者に、本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含み得る。
【0089】
一方、本願は、腫瘍増殖を阻害する、腫瘍細胞の増殖を阻害する、および/または腫瘍細胞を殺傷する方法を提供する。当該方法は、当該腫瘍および/または腫瘍細胞に、本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含み得る。
【0090】
一方、本願は、必要のある受験者において癌を治療するための方法を提供する。当該方法は、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含み得る。
【0091】
一方、本願は、(例えば、必要のある受験者において)癌細胞および/または腫瘍抗原に対するT細胞媒介免疫応答を刺激するための方法を提供する。当該方法は、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含み得る。
【0092】
一方、本願は、必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えるための方法を提供する。当該方法は、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含み得る。
【0093】
一方、本願は、必要のある受験者における免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)などの免疫細胞の疲弊を予防および/または逆転するための方法を提供する。当該方法は、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含み得る。
【0094】
一方、本願は、必要のある受験者における免疫エフェクター細胞(例えばT細胞)などの免疫細胞の活性を増強するための方法を提供する。当該方法は、当該受験者に本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPC、および/または本願の組成物を投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、当該免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞を含む。いくつかの実施形態において、当該免疫細胞は、腫瘍特異的T細胞を含む。
【0095】
一方、本願は、以下の1)APCを活性化すること、2)DCを活性化すること、3)増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成すること、4)免疫細胞(免疫エフェクター細胞、例えばT細胞など)の疲弊を予防および/または逆転すること、5)必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療すること、6)必要のある受験者における癌を治療すること、7)必要のある受験者における癌細胞および/または腫瘍抗原に対する免疫細胞(例えば、T細胞などの免疫エフェクター細胞)媒介免疫応答を刺激すること、8)必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えること、9)免疫細胞(例えば、T細胞、例えば腫瘍浸潤T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、10)腫瘍特異的免疫細胞(例えば、T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、11)T細胞のサイトカインの生成を増強すること、12)癌免疫療法の抗腫瘍反応を増強すること、および13)腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍細胞の増殖を阻害することおよび/または腫瘍細胞を殺傷することの目的の1つ以上のために使用される組成物および/または医薬品の製造における本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPCおよび/または本願の組成物の使用を提供する。
【0096】
一方、本願は、以下の1)APCを活性化すること、2)DCを活性化すること、3)増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成すること、4)免疫細胞(例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞)の疲弊を予防および/または逆転すること、5)必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療すること、6)必要のある受験者における癌を治療すること、7)必要のある受験者における癌細胞および/または腫瘍抗原に対する免疫細胞(例えば、T細胞などの免疫エフェクター細胞)媒介免疫応答を刺激すること、8)必要のある受験者に抗腫瘍免疫を与えること、9)免疫細胞(例えば、T細胞、例えば腫瘍浸潤T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、10)腫瘍特異的免疫細胞(例えば、T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善すること、11)T細胞のサイトカインの生成を増強すること、12)癌免疫療法の抗腫瘍反応を増強すること、および、13)腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍細胞の増殖を阻害すること、および/または腫瘍細胞を殺傷することの目的の1つ以上のために使用される医薬品の製造における追加の活性成分と組み合わせた本願のYTHDF1減弱剤、本願のmAPCおよび/または本願の組成物の使用を提供する。
【0097】
本明細書で使用される「含む」、「有する」、「できる」、「含有」という用語、およびそれらの変形は、通常、追加の行為または構造の可能性を排除しないオープンエンド移行句、用語または単語を意味する。単数形「a」、「and」、「the」は、複数の参照語を含む。
【0098】
本明細書における数値範囲の表記については、その間にある各数値を同程度の精度で表現することを明示的に想定している。例えば、6~9の範囲では、6と9に加えて7と8の数字が想定され、6.0~7.0の範囲では、6.0、 6.1、 6.2、 6.3、 6.4、 6.5、 6.6、 6.7、 6.8、 6.9 及び 7.0の数字が明示的に想定されている。したがって、範囲の形態の説明は、単に便宜上および簡略化のためのものであり、本願発明の適用範囲を厳格に限定するものと解釈してはならない。範囲の記述は、その範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能なサブ範囲を具体的に開示したものと理解されるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6のような部分範囲、およびその範囲内の個々の値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、6を具体的に開示すると理解すべきである。また、例えば、95~100%(例えば、95~96%、95~97%、95~98%、95~99%、95~99.5%またはそれ以上)の範囲には、95%、96%、97%、98%または99%の同一性のあるものを含み、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%、98~99%などの部分範囲がある。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0099】
量に関連して使用される「約」という修飾語は、記載された値を含み,文脈を示す意味を持つものである(例えば,特定の量の測定に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。「約」という修飾語は、2つの末端点の絶対値で定義される範囲を開示するものと理解されるべきである。例えば、「約2~約4」という表現も、「2~4」の範囲を開示している。量や時間的持続時間などの測定可能な値について言及する場合、「約」という用語は、規定値から±20%、場合によっては±10%、場合によっては±5%、場合によっては±1%、場合によっては±0.1%の変動を包含し、これらの変動が適切である。
【0100】
本明細書で使用される「被験者」という用語は、通常、ヒトまたは動物を意味する。例えば、、哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス、非ヒト霊長類動物(例えば、カニクイザル、チンパンジーなどのサル)およびヒト)を含む(ただし、これに限定しない)任意の脊椎動物を指す場合がある。いくつかの態様において、被験者はヒトである。
【0101】
「治療(treat/treated/treating)」という用語は、本明細書において互換的に使用することができ、通常、望ましくない生理的状態、障害または疾患を緩和(軽減)すること、または有益なまたは望ましい臨床結果を得ることである治療方法という。本開示のいくつかの態様において、有益なまたは望ましい臨床結果には、症状の緩和、病状、障害または疾患の程度の軽減、病状、障害または疾患の状態の安定化(悪化なし)、病状、障害または疾患の発症の遅延、または病状、障害または疾患の進行の緩和、病状、障害または疾患状態の改善および寛解(部分寛解か完全寛解か、検出可能か非検出可能かを問わず)、または病状、障害または疾患の増強または改善が含まれる(これらに限定されない)。治療には、治療を行わない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも含まれる。
【0102】
「修飾(modified/modify/modification)」という用語は、本明細書において互換的に使用することが可能であり、通常、改変または変更の導入または生成を意味する。遺伝子の文脈で用いられる場合、上記の修飾は、細胞の活性および/または機能に変化を生じさせる任意の従来の方法を含み得る。例えば、細胞(例えば、抗原提示細胞)を、細胞の活性および/または機能を調節できる薬剤に曝露することである。
【0103】
「減弱(attenuating/attenuation/attenuated)」という用語は、互換的に用いられ、本明細書で用いられる場合、標的遺伝子または標的タンパク質(YTHDF1またはYTHDF1のターゲットなど)の量の阻害もしくは減少、または、標的遺伝子または標的タンパク質(YTHDF1またはYTHDF1のターゲットなど)の活性の阻害もしくは減少を指すことがある。上記の減弱は、例えば、抗体またはその誘導体、抗体薬物複合体、融合タンパク質、低分子、アンチセンス分子、dsRNA、siRNA、shRNA、アプタマーおよび/またはgRNA(例えば、遺伝子編集システム(CRIPSR/Cas9など)との組み合わせ)を用いることにより達成され得る。また、例えば、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)を、YTHDF1の阻害剤(本出願の化合物など)と接触させて、YTHDF1によるm6A修飾mRNAの結合および/または認識を阻害/遮断することによって、YTHDF1を減弱させることができる。
【0104】
本明細書で使用される「低分子」という用語は、通常、生物学的プロセス、特にm6A mRNA修飾の調節(例えばYTHDF1の活性)に影響を及ぼすために使用できる、ポリペプチドおよび核酸以外の任意の化学物質または他の成分を意味する。低分子は、現在知られていて使用されている任意の数の治療薬、あるいは生物学的機能をスクリーニングする目的でそのような分子のライブラリーで合成される任意の数の治療薬が含まれ得る。低分子は、サイズによって高分子と区別される。低分子は、約2,500 Da未満、約1,000 Da未満、または約500 Da未満などの約5,000ダルトン(Da)未満の分子量を有していてもよい。低分子は、有機化合物およびそのペプチド模倣体、ならびに複合体を含み得る(これらに限定されない)。
【0105】
本明細書において最も広い意味で使用される「アミノ酸」という用語は、ポリペプチド鎖に組み込むことができる任意の化合物および/または物質を意味する。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、合成アミノ酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸はd-アミノ酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は1-アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然に存在するペプチドによく見られる20個の標準的な1-アミノ酸のいずれかを意味する。「非標準アミノ酸」は、合成的に調製されるか、または天然源から得られるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。本明細書では、「合成アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換が含まれるがこれらに限定はされない化学的に修飾されたアミノ酸を包含する。アミノ酸(ペプチドのカルボキシ末端アミノ酸および/またはアミノ末端アミノ酸を含む)は、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基および/またはペプチドの循環半減期を悪影響を与えることなく変更できる他の化学基との置換によって修飾できる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与し得る。アミノ酸は、1つ以上の化学実体(例えば、メチル基、アセテート基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、炭水化物部分、ビオチン部分など)との結合などの1つ以上の翻訳後修飾を含み得る。「アミノ酸」という用語は「アミノ酸残基」と交換可能に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指す場合がある。
【0106】
本明細書で使用される「YTHDF1」という用語は、一般的に、N6-メチルアデノシン(m6A)含有RNAを特異的に認識して結合し、mRNAの安定性を調節するYTH N6 -メチルアデノシンRNA結合タンパク質1またはその機能的断片を意味する。ヒトおよびマウスのアミノ酸および核酸配列は、GenBank、UniProt、およびSwiss-Protなどの公開データベースで見つけることができる。例えば、ヒトYTHDF1のアミノ酸配列は、アクセッション番号NP_060268.2で見つけることができ、それらをコードするmRNA配列は、アクセッション番号NM_017798.4で見つけることができる。
【0107】
本明細書で使用される「YTHDF1変異体」という用語は、通常、YTHDF1をコードする対応する親または参照(例えば、野生型)核酸分子または対応する親または参照(例えば、野生型)YTHDF1タンパク質に比べて、1つ以上の変異を有する、YTHDF1をコードする核酸分子またはYTHDF1タンパク質を意味する。
【0108】
YTHDF1変異タンパク質に関して、当該変異タンパク質は、親または参照ポリペプチド(野生型YTHDF1ポリペプチドを含むが、これに限定されない)のアミノ酸配列とは異なる少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。変異タンパク質における突然変異は、1つ以上のアミノ酸の欠失、置換および/または付加を含み得る。突然変異は、単一のアミノ酸からポリペプチドの大きな断片までのサイズの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、挿入はポリペプチドの断片を追加することによってポリペプチド中のアミノ酸の数を変化させる。いくつかの実施形態において、欠失は、ポリペプチド断片を除去することによって、アミノ酸の数を変化させる。いくつかの実施形態において、小さな欠失は、ポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸を除去し得る。いくつかの実施形態において、置換は、ポリペプチド中の1つのアミノ酸を異なるアミノ酸で置換する。置換は、保存アミノ酸置換または非保存アミノ酸置換であり得る。「保存アミノ酸置換」とは、一般的に配列に存在するアミノ酸を、サイズ、電荷、極性、および/または化学的性質が類似している異なるアミノ酸で置換することを意味する。保存置換の例として、イソロイシン、バリンおよびロイシンなどの非極性(疎水性)残基の別の非極性残基による置換が含まれ得る。同様に、保存置換の例には、アルギニンとリジン、グルタミンとアスパラギン、およびグリシンのセリンなどの極性(親水性)残基の別の極性残基による置換が含まれる。さらに、リジン、アルギニンまたはヒスチジンなどの塩基性残基の別の塩基性残基による置換、またはアスパラギン酸またはグルタミン酸などの酸性残基の別の酸性残基による置換は、保存置換である。「非保存置換」の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニンなどの非極性(疎水性)アミノ酸残基の、システイン、グルタミン、グルタミン酸またはリジンなどの極性(親水性)残基による置換、および/または極性残基の非極性残基による置換が含まれ得る。
【0109】
「癌」および「腫瘍」は、本明細書において互換的に使用することが可能であり、通常、異常な細胞の無制御な増殖を特徴とする疾患を指すものとする。いずれの用語も、固形腫瘍と、びまん性腫瘍や循環性腫瘍などの液性腫瘍を含んでいる。悪性だけでなく前悪性の癌や腫瘍も含まれる。
【0110】
本明細書に記載の「抗原の発現に関連する疾患、障害または病状」は、通常、抗原の発現に関連する疾患または抗原を発現する細胞に関連する病状、例えば、癌または悪性腫瘍などの増殖性疾患、または骨髄異形成、骨髄異形成症候群または前白血病などの前癌病状、または、細菌、ウイルスまたは細胞、例えば非癌細胞に存在する抗原などの抗原を発現または過剰発現する細胞に関連する非癌関連適応症を含むがこれらに限定されない。本明細書に記載の抗原の発現に関連する非癌関連適応症には、例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患および移植が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書で使用される「腫瘍抗原の発現に関連する疾患、障害または病状」というフレーズは、通常、例えば、癌または悪性腫瘍の増殖性疾患、または脊髄異形成、骨髄異形成症候群や前白血病の前癌症状、または腫瘍抗原を発現する細胞に関連する非癌関連適応症などの、腫瘍抗原の発現に関連する疾患または腫瘍抗原を発現する細胞に関連する病状を含むがこれらに限定されない。一実施形態において、本明細書に記載の腫瘍抗原の発現に関連する癌は、血液学的癌である。一実施形態において、本明細書に記載の腫瘍抗原の発現に関連する癌は、固形癌である。本明細書に記載の腫瘍抗原の発現に関連するさらなる疾患は、例えば、本明細書に記載の腫瘍抗原の発現に関連する非定型および/または非古典的な癌、悪性腫瘍、前癌症状または増殖性疾患を含むがこれらに限定されない。本明細書に記載の腫瘍抗原の発現に関連する非癌関連適応症には、例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患および移植が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原発現細胞は、腫瘍抗原をコードするmRNAを発現するか、または任意の時点で発現する。一実施形態において、腫瘍抗原発現細胞は、腫瘍抗原タンパク質(例えば、野生型または変異型)を産生し、腫瘍抗原タンパク質の量が正常、増加又は減少して存在することができる。
【0112】
本明細書で使用される「活性」および「活性化」という用語は、通常、細胞の特定の機能を意味する。例えば、T細胞の活性は、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又はヘルパー活性であってもよい。
【0113】
本明細書で使用される「免疫エフェクター細胞」という用語は、通常、免疫エフェクター応答などの免疫応答の促進に関与する細胞を意味する。免疫エフェクター細胞の例としては、α/β T細胞やγ/δ T細胞などのT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マスト細胞、および骨髄由来の食細胞が含まれている。本明細書で使用される「免疫エフェクター機能または免疫エフェクター応答」とは、通常、例えば、標的細胞による免疫攻撃を増強または促進する免疫エフェクター細胞の機能または反応を意味する。例えば、免疫エフェクター機能または応答とは、T細胞やNK細胞が標的細胞の殺傷を促進したり、標的細胞の成長や増殖を抑制したりする性質のことである。T細胞の場合、一次刺激と共刺激は、免疫エフェクター機能または応答の一例である。
【0114】
本明細書で使用される「抗原提示細胞」または「APC」という用語は、通常、その、またはそれらの表面に抗原を表示できる細胞(例えば免疫細胞)または細胞群(例えば、免疫細胞群)を意味する。表示された抗原は、主要組織適合性複合体(MHC)と複合する可能性があり、当該抗原は表示される前に処理されている可能性がある。APCの例には、マクロファージ、B細胞および樹状細胞(ランゲルハンス細胞など)が含まれるが、これらに限定されない。細胞免疫応答は、リンパ球(例えばT細胞)がAPCによって提示された抗原を認識した後に開始または増強される可能性がある。APCは、HLAクラスIおよびII分子にロードするために、高分子量の抗原を10~30のアミノ酸断片に分解し得る。
【0115】
本明細書で使用される「樹状細胞」または「DC」という用語は、通常、抗原提示細胞を意味する。DCは、自然免疫系と適応免疫系の間のメッセンジャーとして機能し得る。例えば、DCは、皮膚、鼻の内層、肺、胃、腸など、外部環境と接触している組織に存在する可能性がある。また、血液中で未熟な病状で見つかることもある。活性化されると、リンパ節に移動し、そこでT細胞やB細胞などの他の免疫細胞と相互作用して、適応免疫応答を開始および形成する。未熟な樹状細胞は、ベール細胞とも呼ばれる。DCは、骨髄(BM)由来の白血球である可能性がある。それらは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)やFlt3リガンドなどの成長因子のさまざまな組み合わせを使用して、BMおよび血液からインビトロで増殖することもできる。DCは、抗原を捕捉して処理するように特化されていることにより、T細胞などの他の免疫細胞によって認識される主要組織適合性複合体(MHC)分子上に提示されるペプチドにタンパク質を変換する。DCは、例えば、骨髄様および形質細胞様DCのような異種であってもよい。すべてのDCは、抗原の取り込み、プロセシング、およびナイーブT細胞への提示が可能であるが、DCサブタイプは、異なるマーカーを持ち、かつ、それらの世代に対して、その位置、移動経路、詳細な免疫機能、および感染または炎症刺激への依存が異なる。適応免疫応答の発達中、DCの表現型と機能は、寛容、記憶および/または極性Tヘルパー1 (Th1)、Th2およびTh17分化の開始において重要なな役割を果たす可能性がある。
【0116】
本出願の文脈において、通常存在する核酸塩基の以下の略語を使用する。「A」はアデノシンを、「C」はシトシンを、「G」はグアノシンを、「T」はチミジンを、「U」はウリジンを意味する。
【0117】
本明細書で使用される「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、通常、デオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)、またはそれらのDNAもしくはRNAの組み合わせ、およびそれらの一本鎖または二本鎖の形態のポリマーを意味する。「核酸」という用語は、遺伝子、cDNAまたはmRNAを含む。一実施形態において、核酸分子は、合成(例えば、化学合成)または組換えのものである。この用語は、特に限定されない限り、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然由来のヌクレオチドと同様の方法で代謝される天然ヌクレオチドの類似体または誘導体を含む核酸が包含される。特定の核酸配列は、特に断りのない限り、明示的に示された配列と同様に、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、相補的配列を暗黙的に包含している。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより行われる(Batzerら、Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991)、Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985)、およびRossoliniら、Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0118】
「癌関連抗原」および「腫瘍抗原」という用語は、本明細書において互換的に使用することが可能であり、通常、正常細胞と比較して癌細胞の表面に無傷または断片化した形態(例えば、MHC/ペプチド)で優先的に発現し癌細胞への薬剤の優先的標的化に有用な分子(通常、タンパク質、炭水化物または脂質)を意味する。いくつかの実施形態において、腫瘍抗原は、正常細胞および癌細胞の両方によって発現されるマーカーである。いくつかの実施形態において、癌関連抗原は、正常細胞と比較して、癌細胞で過剰発現される細胞表面分子であり、例えば、正常細胞に比べて1倍、2倍、3倍または3倍以上の過剰発現である。いくつかの実施形態において、癌関連抗原は、正常細胞で発現する分子と比較して欠失、付加または変異を含む分子など、癌細胞において不適切に合成される細胞表面分子である。いくつかの実施形態において、癌関連抗原は、癌細胞の細胞表面上でのみ、無傷または断片化した形態(例えば、MHC/ペプチド)で発現し、正常細胞の表面では合成または発現しないことになる。
【0119】
本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、通常、サンプル中に存在する同族結合リガンドタンパク質を認識して結合するが、サンプル中の他の分子を本質的に認識又は結合しない分子(例えば、低分子、抗体またはリガンド)を意味する。いくつかの実施形態において、本開示の分子は、標的分子に約10-5 M未満(例えば、約9×10-6 M未満、約8×10-6 M未満、約7×10-6 M未満、約6×10-6 M未満、約5×10-6 M未満、約4×10-6 M未満、約3.5×10-6 M未満、約3×10-6 M未満、約2.5×10-6 M未満、約2×10-6 M未満、約1×10-6 M未満、約5×10-7 M未満、約2×10-7 M未満、約10-7 M未満、約5×10-8 M未満、約2×10-8 M未満、約10-8 M未満、約5×10-9 M未満、約4×10-9M未満、約3×10-9M未満、約2×10-9 M未満、または約10-9 M未満)の結合親和性(KD)で特異的に結合する。
【0120】
KDは通常、結合速度に対する解離速度の比(koff/kon)を指し得、表面プラズモン共鳴法、マイクロスケール熱泳動法、HPLC-MS方法およびフローサイトメトリー(FACSなど)方法を含むがこれらに限定されない当該技術分野で公知の任意の従来の方法を使用して決定することができる。いくつかの実施形態において、KD値はフローサイトメトリーを用いることによって適切に決定することができる。
【0121】
本明細書で使用される「抗癌剤」という用語は、通常、腫瘍または癌細胞成長を抑制および/または予防することができる薬剤を意味する。
【0122】
本明細書で使用される「CTLA-4」という用語は、通常、霊長類(例えば、ヒト、サル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の細胞障害性Tリンパ球関連タンパク質4、ならびにその機能的断片を意味する。ヒトCTLA-4の例示的な配列には、ホモサピエンス(ヒト)CTLA-4タンパク質(NCBI参照配列番号AAL07473.1)が含まれる。CTLA-4の例示的な配列には、カニクイザル(サル)CTLA-4タンパク質(NCBI参照配列番号XP_005574071.1)が含まれる。本明細書で使用される「CTLA-4」という用語は、通常、CTLA-4任意の形態、例えば、1)天然の未加工CTLA-4分子、「完全長」CTLA-4鎖またはスプライス変異体または対立遺伝子変異体等を含む天然に存在するCTLA-4変異体2)細胞内でプロセシングにより産生されたCTLA-4の任意の形態、または3)組換え法により産生されたCTLA-4サブユニットの完全長、断片(例えば、短縮型、細胞外/膜貫通ドメイン)または修飾型(例えば、変異型、グリコシル化/ポリエチレングリコール化、His-タグ/免疫蛍光融合型)を包含することを意図している。
【0123】
「抗-CTLA-4抗体」、「抗-CTLA-4結合ドメイン」または「CTLA-4結合ドメイン」という用語は、CTLA-4(例えば、ヒトまたはサルCTLA-4)に特異的に結合する抗体または抗原結合ドメインを意味する。
【0124】
本明細書で使用される「PD-1」という用語は、通常、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し免疫系を負に制御する共抑制受容体として機能するプログラム細胞死タンパク質を意味する。PD-1は、CD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、PD-L1およびPD-L2を含む2つのリガンドを持っている。ヒトPD-1の代表的なアミノ酸配列はNCBIアクセッション番号NP_005009.2で開示され、ヒトPD-1をコードするの代表的な核酸配列はNCBIアクセッション番号NM_005018.2で示される。
【0125】
本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、通常、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1、例えば、Freemanら、(2000) J. Exp. Med. 192: 1027を参照)を意味する。ヒトPD-L1の代表的なアミノ酸配列は、NCBIアクセッション番号NP_054862.1で開示され、ヒトPD-L1をコードする代表的な核酸配列はNCBIアクセッション番号NM_014143.3で示される。PD-L1は、活性化T細胞、B細胞および骨髄細胞に発現する受容体PD-1またはB7-1に結合する。PD-L1がその受容体に結合することでシグナル伝達が誘導され、TCRを介したサイトカイン産生およびT細胞増殖の活性化が抑制される。したがって、PD-L1は、妊娠、自己免疫疾患、組織同種移植などの特定のイベント時に免疫系を抑制する重要な役割を担っており、腫瘍や癌細胞が免疫チェックポイントを回避し、免疫反応を回避することを可能にすると考えられている。
【0126】
本明細書で使用される「抗-PD-1抗体」、「抗-PD-1結合ドメイン」または「PD-1結合ドメイン」という用語は、通常、診断および/または治療のための使用を提供するのに十分である親和性でPD-1(例えば、ヒトまたはサルPD-1)に特異的に結合することができる抗体または抗原結合ドメインを意味する。
【0127】
本明細書で使用される「抗腫瘍免疫」という用語は、通常、癌抗原が免疫細胞で認識されたときに誘導される免疫応答を意味する。
【0128】
本明細書で使用される「癌免疫療法」という用語は、通常、患者の癌細胞に対する免疫応答を誘発または増強するように設計された任意の療法を意味する。例えば、癌免疫療法には、癌抗原特異的な活性免疫療法、免疫調節剤(例えば、免疫調節剤の活性化剤もしくは阻害剤、またはチェックポイント阻害剤の阻害剤)による治療、または癌細胞もしくは癌細胞由来の抗原の混合物による治療(癌細胞株由来の抗原による治療)を含むがこれらに限定されない。癌免疫療法は、免疫応答を誘導、増強または抑制することにより、癌と闘う免疫系の能力を刺激または回復させる治療法を含む。癌免疫療法は、免疫細胞の標的に対する認識を高めるか、疾患に関連する免疫抑制を軽減することにより、疾患特異的抗原に対する免疫活性を標的化するものである。
【0129】
本明細書で使用される「腫瘍浸潤T細胞」という用語は、通常、腫瘍に浸潤するT細胞を意味する。腫瘍浸潤T細胞は、自己腫瘍抗原に対して自然な反応性を示すことがある。これらの細胞は、腫瘍間質および/または腫瘍自体の中に見出され得る。
【0130】
本明細書で使用される「IDO阻害剤」という用語は、通常、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の活性を阻害し、それによってIDOによって媒介される免疫抑制を逆転させる薬剤を意味する。IDO阻害剤は、IDO1および/またはIDO2(INDOL1)を阻害することができる。IDO阻害剤は、可逆的と不可逆的なIDO阻害剤であり得る。「可逆的IDO阻害剤」とは、触媒部位または非触媒部位のいずれかでIDO酵素活性を可逆的に阻害する化合物であり、「不可逆的IDO阻害剤」とは、酵素と共有結合を形成することによりIDO酵素活性を不可逆的に破壊する化合物である。
【0131】
本明細書で使用される「免疫チェックポイント阻害薬」という用語は、通常、免疫チェックポイント経路を直接または間接的に、あるいは部分的または完全的に阻害する任意の分子を意味する。通常、免疫チェックポイント経路の機能は、免疫系の様々な側面、特にT細胞のほか、例えば骨髄細胞、NK細胞、B細胞などのスイッチをオン・オフすることであると考えられている。T細胞の活性化に続いて、適切なタイミングで免疫反応を抑制するために、多数の抑制性受容体がアップレギュレートされてT細胞の表面に存在することができる。免疫チェックポイント経路の例としては、PD-1/PD-L1、CTLA-4/B7-1、TIM-3、LAG3、B7-H1、H4、HAVCR2、IDO1、CD276およびVTCN1、B7-H3、B7-H4、CD47およびKIRが含まれているが、これらに限定されない。例えば、免疫チェックポイント阻害薬または調節剤の非限定的な例としては、BMS-936558/MDX-1106、BMS-s936559/MDX-1105、イピリムマブ/Yervoy、トレメリムマブ(tremelimumab)、BMS-986016、デュルバルマブ、MEDI4736、ウレルマブ(Urelumab)、CDX-1127およびアベルマブなどの完全ヒトノクローナル抗体、CT-011、IV1K-3475、Hu5F9-G4、CC-90002、MBG453、TSR-022およびアテゾリズマブなどのヒト化抗体、およびAMP-224、TTI-621ならびにその他などの融合タンパク質が含まれる。免疫チェックポイント調節剤(アゴニスト)の他の非限定的な例としては、例えば、CD40、OX40、GITR、CD137(4-1 BB)、CD27、ICOSおよびTRAILに対する抗体が含まれる。本開示によれば、1つ以上の免疫チェックポイント調節剤は、独立して、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸分子であり得、上記のポリペプチドは、アンタゴニスト機能(すなわち、免疫チェックポイント媒介阻害シグナルに拮抗することができる)またはアゴニスト機能(すなわち、免疫チェックポイントを介した刺激シグナルを増強することができる)を発揮するように、標的免疫チェックポイントに結合するおよび/または上記の標的免疫チェックポイントへのリガンドの結合を阻害するドメインを含んでいる。1つ以上の上記の免疫チェックポイント調節剤は、ペプチド(例えば、ペプチドリガンド)、天然受容体の可溶性ドメイン、RNAi、アンチセンス分子、抗体およびタンパク質骨組から独立して選択され得る。例えば、免疫チェックポイント調節剤は抗体であり得る。本開示の文脈において、免疫チェック調節剤抗体は最も広い意味で使用され、例えば、天然のもの、人工的に操作されたもの、標的免疫チェックポイントまたはエピトープに結合できる(したがって、標的結合部分を保持する)完全長抗体またはその機能断片もしくは類似体が含まれる。上記の抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、動物抗体(例えば、げっ歯類またはラクダ抗体)またはキメラ抗体などの任意の起源であり得る。上記の抗体は、任意のアイソタイプであり得、特に好ましくは、IgG1またはlgG4アイソタイプである。また、上記の抗体は、グリコシル化されていても非グリコシル化されていてもよい。免疫チェックポイントに結合する抗体の能力を評価するための当該分野で知られる標準的な分析方法には、例えば、ELISA、ウェスタンブロット(Western blot)、RIAおよびフローサイトメトリー(Flow cytometry)がある。抗体結合動力学(例えば、結合親和性)は、Biacore分析など、当該技術分野で知られている標準的な分析方法によって評価することもできる。本出願において、免疫チェックポイント阻害薬に言及する場合、文脈の文言からそうでないことが明らかな場合を除き、免疫チェックポイント調節剤も使用することができる。
【0132】
本明細書で使用される「疲弊」という用語は、通常、多くの慢性感染症及び癌の間に生じるT細胞機能不全状態であるT細胞疲弊を意味する。T細胞疲弊は、T細胞エフェクター機能の低下、阻害性受容体の持続的発現、及び/又は機能的エフェクター若しくは記憶T細胞とは異なる転写状態によって特徴付けられる。T細胞の疲弊は、感染症や腫瘍の最適な制御を妨げる。T細胞の疲弊は、T細胞機能の段階的かつ進行性の喪失を示しうる。本明細書で使用される「疲弊を逆転させる」とは、通常、疲弊したT細胞の弱められた又は低下した抗腫瘍活性の少なくとも一部を回復させる活性又は能力を意味する。また、疲弊を逆転させることは、T細胞が消耗するのを防ぐことを含む場合もある。
【0133】
本明細書で使用される「T細胞媒介免疫応答」という用語は、通常、T細胞の共刺激の調節によって影響を受ける免疫応答を意味する。例示的な免疫応答として、サイトカイン産生および細胞傷害性などのT細胞応答が含まれる。さらに、T細胞媒介免疫応答には、抗体産生(体液性応答)やサイトカイン応答細胞(マクロファージなど)の活性化など、T細胞の活性化によって間接的に影響を受ける免疫反応も含まれる。
【0134】
本明細書で使用される「腫瘍特異的T細胞」という用語は、通常、腫瘍細胞を特異的に攻撃および/または破壊するTリンパ球を意味する。例えば、それらは、腫瘍関連抗原などの腫瘍細胞の表面に存在する抗原に結合することができる特定の受容体(例えばT細胞受容体)を備えていてもよい。各腫瘍特異的T細胞は、単一の腫瘍抗原を認識することができ、腫瘍特異的T細胞のグループは、さまざまな腫瘍抗原を標的とする多様な受容体を備えている可能性がある。
【0135】
本明細書で使用される「実質的に競合しない」という用語は、通常、ある分子または薬剤の標的への結合が、別の分子または薬剤の同じ標的への結合に有意(例えば、約50 %未満、約40 %未満、約35 %未満、約30 %未満、約25 %未満、約20 %未満、約15 %未満、約14 %未満、約13 %未満、約12 %未満、約11 %未満、約10 %未満、約9 %未満、約8 %未満、約7 %未満、約6 %未満、約5 %未満、約4 %未満、約3 %未満、約2 %未満、約1 %未満、約0.5 %未満、またはそれ以下)な影響を与えないことを意味する。例えば、そのような結合を決定するために通常使用される分析(例えば、本明細書の実施例に記載の分析)で決定される。
【0136】
本明細書で使用される「抗原」または「Ag」という用語は、通常、免疫応答を誘発する分子を意味する。この免疫反応には、抗体産生、特定の免疫学的担当細胞の活性化、あるいはその両方が関与している可能性がある。実質的にあらゆるタンパク質やペプチドを含むあらゆる高分子が抗原として作用しうることは、当業者には理解されよう。さらに、抗原は組換えDNAまたはゲノムDNAに由来してもよい。したがって、当業者であれば、免疫反応を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的ヌクレオチド配列からなる任意のDNAは、本明細書で用いられる用語の「抗原」をコードしていると理解するであろう。さらに、抗原は遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことは、当業者には理解されることだろう。抗原は「遺伝子」によってコード化されている必要はない。抗原は合成されたものでも、生体試料に由来するものでも、また、ポリペプチド以外の高分子であってもよい。このような生体試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞、または他の生体成分を含む流体が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
本明細書で使用される「抗癌」という用語は、または「抗腫瘍」という用語は、通常、例えば、腫瘍サイズの縮小、癌細胞の数の減少、転移の数の減少、余命の延長、癌細胞増殖の減少、癌細胞生存の減少、または癌状態に関連する種々の生理症状の改善を含むがこれに限らない種々の形態で発現され得る生物学的作用を意味する。また、「抗がん」または「抗腫瘍」効果は、がんの発生を未然に防ぐ能力として表現されることもある。
【0138】
本明細書で使用される「ヒドロカルビル」という用語は、通常、水素原子と炭素原子のみからなる部分を意味する。そのような部分は、脂肪族および/または芳香族部分を含み得る。当該部分は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50またはそれ以上の炭素原子を含み得る。ヒドロカルビル基の例として、C1-6アルキル(例えば、C1、C2、C3またはC4アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチル)、アリール(例えば、ベンジル)またはシクロアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)で置換されたC1-6アルキル、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、アリール(例えば、フェニル、ナフチル或フルオレニル)などのアルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
本明細書で使用される「ヘテロヒドロカルビル」という用語は、通常、1つ以上のヘテロ原子を含む任意のヒドロカルビル基を意味する。ヘテロ原子は、O、SまたはNなどのC以外の任意の原子であり得る。
【0140】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、通常、2、3、4、5、6個またはそれ以上の炭素原子を有し、さらに、当てはまる場合に、EまたはZ立体化学の少なくとも1つの二重結合を有する直鎖または分枝鎖アルキル部分を意味する。当該用語は、エテニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニルおよび3-ヘキセニルなどの基を含む。
【0141】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、通常、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個またはそれ以上の環炭素原子を含む芳香族環系を意味する。アリールは、多くの場合、フェニルであるが、少なくとも1つが芳香族である2つ以上の環を有する多環系であってもよい。当該用語は、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、インデニル、アントリルなどの基への言及を含む。
【0142】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、通常、例えば血液中での加水分解によって、インビボで親化合物に急速に変換される化合物を意味する。
【0143】
本明細書で使用される「ワクチン」という用語は、通常、特定の抗原(腫瘍抗原または微生物の抗原など)または上記の抗原の組織、細胞、または生物に対する能動的獲得免疫を提供する調製物を意味する。ワクチンは、予防的(将来の疾患または障害の影響を予防または改善するため)または治療的(がんなど、すでに発生した疾患または障害を治療するため)であり得る。
【0144】
YTHDF1減弱剤
【0145】
本願のYTHDF1減弱剤は、化合物を含み得る。
【0146】
そのような化合物は、高分子であり得る。高分子は、約1000ダルトン以上から約1、2、3、5、7、10兆ダルトン以上の天然または化学合成の有機または無機分子であり得る。高分子は、共有結合、イオン結合、または水素結合、イオン対形成、塩基対形成、または電荷分極によって形成される電荷間の対形成などの他の化学的相互作用によって連結された、2つ以上の単量体サブユニットまたはその誘導体を含み得る。当該単量体サブユニットは、互いに異なっていても、互いに同一であってもよく、いくつかの実施形態において、ポリマーを形成することができる。高分子は、それが複数のサブユニットを持っているか、および/またはポリマーであるかにかかわらず、三次および/または四次構造を形成できる分子であってもよい。高分子の例としては、ポリヌクレオチド、DNA、siRNA、snRNA、tRNA、アンチセンスRNA、およびリボザイムを含むRNA、ペプチド核酸(PNA)を含む核酸分子、ポリペプチド、糖ペプチド、タンパク質、炭水化物、若しくは脂質、または、それぞれペプチド核酸部分を含む核酸分子若しくは糖タンパク質を例とする、それらの誘導体若しくは組み合わせが挙げられる。高分子の例としては、さらに、高分子集合体、例えば、ウイルス、ウイルス粒子、ファージ、ウイロイド、プリオン、ならびにそれらの組み合わせおよびコンジュゲートが挙げられる。
【0147】
このような化合物は、低分子であり得る。低分子は、約1000ダルトン未満、約1000ダルトンから約950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、375、350、325、300、275、250、225、200、175、150、125、100、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5またはそれ以下のダルトンの天然または化学合成の有機または無機分子であり得る。低分子は、タンパク質や核酸など、高分子ではない任意の分子であり得る。「低分子」は、ジペプチドまたはジヌクレオチドなどの2つ以上の単量体サブユニットを含む分子を含むことができる。
【0148】
このような化合物は、ポリペプチドを含むか、またはペプチドであることができる。場合によっては、このような化合物は、核酸分子を含むか、または核酸分子であることができる。例えば、このような化合物は、抗体またはその誘導体、抗体-医薬品コンジュゲートおよび/または融合タンパク質を含み得る。
【0149】
例えば、この化合物は、YTHDF1タンパク質の活性を減弱させることができる可能性がある。例えば、この化合物は、YTHDF1タンパク質の1つ以上の残基に直接または間接的に(例えば、他の分子を介して)結合し得る。このような結合は、YTHDF1タンパク質の構造および/または機能に立体構造の変化を引き起こす可能性がある。
【0150】
この化合物は、YTHDF1(例えばヒトYTHDF1)、その断片または誘導体に特異的に結合し得る。このYTHDF1タンパク質は、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有し得る。場合によっては、このYTHDF1、その断片または誘導体は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480および/またはH528に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み得る。場合によっては、このYTHDF1、その断片または誘導体は、SEQ ID NO: 1の残基372~392、479~494および/または526~535に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み得る。場合によっては、この化合物は、YTHDF1、またはその断片若しくは誘導体に結合する(例えば、特異的に結合する)ことができ、このYTHDF1、その断片または誘導体は、SEQ ID NO: 1~3、9~13および16~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し得る。場合によっては、この化合物は、SEQ ID NO: 4~8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するYTHDF1またはその断片もしくは誘導体に特異的に結合しない(または、実質的に結合しない)。
【0151】
場合によっては、本願の化合物は、SEQ ID NO: 4~8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するYTHDF1およびその断片または誘導体に、約10-6 Mを超える(例えば、約5x10-6 Mを超える、約10-5 Mを超える、約5x10-5 Mを超える、約10-4 Mを超える、約5x10-4 Mを超える、約10-3 Mを超える、約5x10-3 Mを超えるまたはそれ以上)Kd値で結合し得る。このKd値は、等温滴定熱量測定(ITC)分析、表面プラズモン共鳴(SPR)分析、および/またはマイクロスケール熱泳動(MST)分析など、本分野で一般的に使用される任意の方法を使用して決定することができる。
【0152】
場合によっては、本願の化合物は、YTHDF1およびその断片または誘導体(例えば、本願に記載されるように、SEQ ID NO: 1~3、9~13および16~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を含む/有するもの)に、約10-5 M未満(例えば、約9x10-6 M未満、約8x10-6 M未満、約7x10-6 M未満、約6x10-6 M未満、約5x10-6 M未満、約4x10-6 M未満、約3.5 x10-6M未満、約3x10-6 M未満、約2.5 x10-6M未満、約2x10-6 M未満、約1x10-6 M未満、約5x10-7 M未満、約2x10-7 M未満、約10-7 M未満、約5x10-8 M未満、約2x10-8 M未満、約10-8 M未満、約5x10-9 M未満、約4x10-9 M未満、約3x10-9M未満、約2x10-9M未満、または約10-9M未満)のKd値で結合し得る。このKd値は、等温滴定熱量測定(ITC)分析、表面プラズモン共鳴(SPR)分析、および/またはマイクロスケール熱泳動(MST)分析など、本分野で一般に使用される任意の方法を使用して決定することができる。
【0153】
場合によっては、この化合物は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基372-392、479-494、および526-535から選択される残基に対応する少なくとも1つの残基(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、またはそれ以上の残基)に結合し得る(例えば特異的に結合し得る)。場合によっては、化合物がYTHDF1に結合する場合に、この化合物は、複数の残基に結合する可能性があり、結合した残基の少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、またはそれ以上の残基)が、SEQ ID NO: 1のアミノ酸残基372~392、479~494、および526~535から選択される残基に対応し得る。
【0154】
場合によっては、当該化合物は、YTHDF1に結合する場合に、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480、およびH528から選択される少なくとも1つの残基(例えば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ)に結合し得る。
【0155】
YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、YTHDF1(例えば、ヒトYTHDF1)またはその断片若しくは誘導体のm6Aへの結合を遮断することができる可能性がある。このYTHDF1タンパク質は、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列を有し得る。場合によっては、YTHDF1およびその断片または誘導体は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480および/またはH528に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み得る。場合によっては、YTHDF1およびその断片または誘導体は、SEQ ID NO: 1の残基372~392、479~494および/または526~535に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み得る。
【0156】
場合によっては、この化合物は、SEQ ID NO: 1~3、9~13、16~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し得るYTHDF1、およびその断片または誘導体のm6Aへの結合を遮断することができる。
【0157】
場合によっては、この化合物は、SEQ ID NO: 4~8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し得るYTHDF1およびその断片または誘導体のm6Aへの結合を有意にまたは実質的に遮断しない。
【0158】
場合によっては、本願の化合物は、SEQ ID NO: 4~8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し得るYTHDF1およびその断片または誘導体のm6Aへの結合を約7.5 μMを超える(例えば、約8 μMを超える、約8.5 μMを超える、約9 μMを超える、約9.5 μMを超える、約10 μMを超える、約10.5 μMを超える、約11 μMを超える、約11.5 μMを超える、約12 μMを超える、またはそれ以上)IC50値で遮断することができる。IC50値は、蛍光偏光(FP)分析、および/またはAlphaScreenベース分析など、本分野で一般に使用される任意の方法を使用して決定することができる。
【0159】
場合によっては、本願の化合物は、SEQ ID NO: 1~3、9~13、16~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し得るYTHDF1、その断片または誘導体のm6Aへの結合を、約7.5 μM未満(例えば、約6.5 μM未満、約6 μM未満、約5.5 μM未満、約5 μM未満、約4.5 μM未満、約4 μM未満、約3.5 μM未満、約3 μM未満、約2.5 μM未満、約2 μM未満、約1.5 μM未満、約1 μM未満、約0.9 μM未満、約0.8 μM未満、約0.7 μM未満、約0.6 μM未満、約0.5 μM未満、約0.4 μM未満、約0.3 μM未満、約0.2 μM未満、約0.1 μM未満またはそれ以下)のIC50値で遮断することができる。IC50値は、蛍光偏光(FP)分析、および/またはAlphaScreenベース分析など、本分野で一般に使用される任意の方法を使用して決定することができる。
【0160】
場合によっては、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、YTHDF1への結合についてm6Aと実質的に競合しない。例えば、YTHDF1およびその断片または誘導体への当該化合物の結合は、例えば、そのような結合を決定するために一般的に使用される分析で決定されるように(例えば、AlphaScreenベース分析で示されるように)、m6Aの添加(約50 %未満、約40 %未満、約35 %未満、約30 %未満、約25 %未満、約20 %未満、約15 %未満、約14 %未満、約13 %未満、約12 %未満、約11 %未満、約10 %未満、約9 %未満、約8 %未満、約7 %未満、約6 %未満、約5 %未満、約4 %未満、約3 %未満、約2 %未満、約1 %未満、約0.5 %未満またはそれ以下)によって影響(例えば減少)を受ける。例えば、m6AのYTHDF1およびその断片または誘導体への結合は、例えば、そのような結合を決定するために一般的に使用される分析で決定されるように(例えば、AlphaScreenベース分析で示されるように)、本願の化合物の添加(約50 %未満、約40 %未満、約35 %未満、約30 %未満、約25 %未満、約20 %未満、約15 %未満、約14 %未満、約13 %未満、約12 %未満、約11 %未満、約10 %未満、約9 %未満、約8 %未満、約7 %未満、約6 %未満、約5 %未満、約4 %未満、約3 %未満、約2 %未満、約1 %未満、約0.5 %未満またはそれ以下)によって、影響(例えば、減少)を受ける。
【0161】
場合によっては、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、サルビアノール酸A(SAA)、サルビアノール酸C(SAC)などのサルビアノール酸、そのプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または、上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドまたはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0162】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、式Iの化合物、式Iの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得、
【化31】
ここで、R
1はC
1-50ヒドロカルビル、C
1-50置換ヒドロカルビル、C
1-50ヘテロヒドロカルビルおよびC
1-50置換ヘテロヒドロカルビルからなる群から選択され得る。
【0163】
場合によっては、式IにおけるR
1は(CO)-R
2であり、R
2は任意に置換されたアルケニルであり得る。場合によっては、R
2はCH=CH-R
3であり、R
3は任意に置換されたアリールであり得る。場合によっては、R
3は式II
【化32】
であり得、ここで、Aは、任意に置換されたフランまたは
【化33】
であり得、R
6はヒドロキシルであり得、かつR
5は任意に置換されたアルケニルであり得る。
【0164】
場合によっては、式IIにおいて、Aは
【化34】
であり得、R
4は
【化35】
であり得る。
【0165】
場合によっては、式IIにおいて、Aは
【化36】
であり得、R
6はヒドロキシルであり得、R
5はCH=CH-R
7であり得、R
7は
【化37】
であり得る。
【0166】
場合によっては、本願のYTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、少なくとも2つのジヒドロキシフェニル部分を含み得る。
【0167】
場合によっては、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、少なくとも3つのジヒドロキシフェニル部分を含み得る。
【0168】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、式IIIの化合物、式IIIの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得
【化38】
、ここで、Aは、任意に置換されたフランまたは
【化39】
であり得、R
6はヒドロキシルであり得、R
5は任意に置換されたアルケニルであり得る。
【0169】
場合によっては、式IIIにおいて、Aは
【化40】
であり得、R
4は
【化41】
であり得る。
【0170】
場合によっては、式IIIにおいて、Aは
【化42】
であり得、R
6はヒドロキシルであり得、R
5はCH=CH-R
7であり得、R
7は
【化43】
であり得る。
【0171】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または、上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得る:
【化44】
【0172】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得る:(E)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-((3-(2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシベンゾフラン-4-イル)アクリロイル)オキシ)プロパン酸、および3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-((E)-3-(2-(((E)-3,4-ジヒドロキシスチリル)-3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロパン酸。
【0173】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得る:
【化45】
【0174】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得る:(R,E)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-((3-(2-(3,4-ジヒドロキシフェニル))-7-ヒドロキシベンゾフラン-4-イル)アクリロイル)オキシ)プロパン酸、および(S)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(((E)-3-(2-((E)-3,4-ジヒドロキシスチリル)-3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロパン酸。
【0175】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得る:
【化46】
【0176】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、以下の化合物のいずれか、以下のいずれかの化合物のプロドラッグ、代謝産物、誘導体、または上記のいずれかのものの薬学的に許容される塩、エステルまたはアミドを含み得る:(S,E)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-((3-(2-(3,4-ジヒドロキシフェニル))-7-ヒドロキシベンゾフラン-4-イル)アクリロイル)オキシ)プロパン酸、および(R)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(((E)-3-(2-((E)-3,4-ジヒドロキシスチリル)-3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリロイル)オキシ)プロパン酸。
【0177】
場合によっては、当該YTHDF1減弱剤は、アキラルまたはキラルであり得、当該YTHDF1減弱剤がキラルである場合に、1つ以上のキラル中心を有し、単一の(R)もしくは(S)鏡像異性体または(R)および(S)鏡像異性体の混合物であり得る。
【0178】
場合によっては、YTHDF1減弱剤に含まれる化合物は、植物に由来し得る。例えば、当該化合物は、例えば植物抽出物の一部として、植物抽出物で提供され得る。例えば、それはサルビア属植物およびその活性成分に由来し得る。
【0179】
当該化合物は、化学的に製造され(例えば、油脂化学物質由来)、生化学的に生成され(例えば、発酵プロセスで)、または植物抽出物から得られ、場合によっては、続いて化学修飾が行われるものであり得る。例えば、当該化合物は、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)乳酸をカルボン酸でエステル化することによって(生)化学的に製造され得る。
【0180】
場合によっては、当該化合物は、植物の根などの植物材料から単離することができる。例えば、この植物は、サルビア属、例えば、サルビア・ミルチオリザ(Salvia miltiorrhiza)、サルビア・キャバレリー(Salvia cavaleriei)、サルビア・フラバ(Salvia fluva)、マルバノアキノタムラソウ(Salvia chinensis)、サルビア・ボウレヤナ(Salvia bowleyana)、サルビア・プリオニティス(Salvia prionitis)、サルビア・オフィシャリス(Salvia officialis)、サルビア・デゼルタ(Salvia deserta)および/またはサルビア・ユンナネンシス(Salvia yunnanensis)に属し得る。場合によっては、当該化合物は、サルビア・ミルチオリザ(Danshen)から得られる。
【0181】
修飾免疫細胞
【0182】
本願は、修飾免疫細胞(例えばDCなどのAPC)を提供する。本願は、免疫細胞(例えば、DCなどのAPC)を修飾する方法も提供する。
【0183】
この免疫細胞は、DCなどのAPCであり得る。このAPC(例えばDC)は、受験者の骨髄および/またはリンパ節に由来し得る。このDCは、以下の1つまたは複数を含み得る:在住CD11b+細胞(例えばCD11b+ DC)、在住CD8α+細胞(例えばCD8α+ DC)、遊走CD11b+細胞(例えばCD11b+ DC)、CD11c+細胞(例えばCD11c+ DC)、および遊走CD103+ 細胞(例えばCD103+ DC)。
【0184】
修飾APC(例えば、修飾DC)は、クロスプライミングT細胞において、対応する修飾されていない対照APC(例えば、対応する修飾されていない対照DC)よりも優れた能力を示し得る。
【0185】
APC(例えばDC)は、1つ以上の腫瘍特異的抗原(例えば、本願で提供される腫瘍/癌関連抗原)を含むまたは発現することができる。場合によっては、APC(例えばDC)は、刺激剤(例えばFLT3L)で共培養するか、処理することができる。
【0186】
場合によっては、この免疫細胞は、受験者(癌患者など)から得られたAPC(例えばDC)であり得、場合によっては、この免疫細胞(例えば、DCなどのAPC)は、腫瘍組織から単離され得る。
【0187】
この免疫細胞(例えば、DCなどのAPC)は、本願の化合物またはYTHDF1減弱剤で修飾されていてもよい。
【0188】
例えば、免疫細胞(例えば、DCなどのAPC)の集団において、1つ以上の細胞が、本願の化合物またはYTHDF1減弱剤で修飾されていてもよい。場合によっては、本願の修飾免疫細胞(例えばmDCなどのmAPC)は、本願の化合物またはYTHDF1減弱剤を含み得る。
【0189】
場合によっては、本願の化合物またはYTHDF1減弱剤は、YTHDF1の発現および/または活性の低下をもたらすのに十分な期間(例えば、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間またはそれ以上)、免疫細胞(例えばmDCなどのmAPC)と接触させることができ、例えば、この化合物または減弱剤は、免疫細胞(例えばmDCなどのmAPC)を培養するための培地中で投与され得る。
【0190】
本願の化合物またはYTHDF1減弱剤は、例えば少なくとも1 μM、少なくとも2 μM、少なくとも3 μM、少なくとも4 μM、少なくとも5 μM、少なくとも6 μM、少なくとも7 μM、少なくとも8 μM、少なくとも9 μM、少なくとも10 μM、少なくとも11 μM、少なくとも12 μMまたはそれ以上の濃度で投与され得る。
【0191】
場合によっては、本願の化合物またはYTHDF1減弱剤は、免疫細胞(例えばAPCまたはDC)自体に直接適用されず、代わりに、この免疫細胞(例えば、DCなどのAPC)は、本願の化合物またはYTHDF1減弱剤を受けた細胞(例えば免疫細胞の前駆細胞)または生物に由来し得る(例えば、そのものから分化したまたはその子孫とするなど)。
【0192】
この免疫細胞は、ヒトAPC(例えばDC)などのヒト細胞であり得る。
【0193】
場合によっては、拡大またはその他の修飾の前に、細胞の供給源、例えば免疫細胞(APC、例えばDCなど)またはその前駆細胞を受験者から得ることができる。本明細書における「受験者」という用語は、免疫応答を引き起こすことができる生物(例えば、哺乳動物)を包含することを意図している。受験者の例として、ヒト、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。免疫細胞またはその前駆細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位組織、腹水、胸水、脾臓組織および/または腫瘍を含む多くの供給源から得ることができる。
【0194】
組成物
【0195】
本願の組成物は、本願のYTHDF1減弱剤および/または本願のmAPCを含み得る。場合によっては、この組成物は、本願の追加の/第2の活性成分をさらに含み得る。
【0196】
場合によっては、この組成物は、ワクチン組成物であり得る。
【0197】
本願の組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。このような薬学的に許容される賦形剤は、本願の1つ以上の活性成分(例えば修飾細胞または減弱剤)と組み合わせる任意の不活性物質を含み得る。
【0198】
例えば、薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、浸透増強剤、抗酸化剤、増粘剤、軟膏基剤、保護剤、吸着剤、粘滑剤、皮膚軟化剤、防腐剤、保湿剤、バッファー、アジュバント、バイオアベイラビリティエンハンサー、担体、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、染料/着色剤、フレーバーエンハンサー、可溶化剤(界面活性剤を含む)、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤および/または等張剤のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0199】
場合によっては、この組成物は、組成物の投与に関連する免疫応答を増強または増加させるために、1つ以上のアジュバントを含み得る。
【0200】
追加の/第2の活性成分
【0201】
本願の化合物、YTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)および/または組成物は、追加の/第2の活性成分をさらに含んでもよく、および/またはそれと組み合わせて使用してもよい。
【0202】
場合によっては、本願の化合物、YTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)および/または組成物は、追加の/第2の活性成分を受けた、受けている、および/または受けることになる受験者に投与され得る。
【0203】
追加の活性成分または療法は、本願のYTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)および/または組成物の投与の前、同時、および/または後に投与され得る。
【0204】
この追加の活性成分は、抗癌剤であり得る。例えば、この追加の活性成分は、癌免疫療法を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、免疫チェックポイント減弱剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分およびIDO減弱剤からなる群から選択される薬剤を含み得る。
【0205】
例えば、当該追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブおよび/または上記のいずれかのものの抗原結合断片または誘導体を含み得る。例えば、この追加の活性成分は、対応する抗原(それぞれPD-1、PD-L1またはCTLA-4である)への結合を、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブと競合することができる抗体(その抗原結合部分を含む)を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのHCDR3を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのLCDR3を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのHCDR2を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのLCDR2を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのHCDR1を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのLCDR1を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのHCDR3、HCDR2およびHCDR1を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかの重鎖可変領域を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかの軽鎖可変領域を含み得る。場合によっては、この追加の活性成分は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、および/またはイピリムマブのいずれかの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み得る。
【0206】
阻害方法
【0207】
本願は、YTHDF1の活性を阻害および/または減弱させる方法を提供する。
【0208】
本願は、免疫細胞(例えば、DCなどのAPC)を活性化し、増強された抗腫瘍活性を有する免疫細胞を生成し、免疫細胞(免疫エフェクター細胞など、例えばT細胞)の疲弊を予防および/または逆転させ、免疫細胞(例えば、T細胞、例えば腫瘍浸潤T細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善し、および/または腫瘍特異的免疫細胞(例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞)の増殖および/または活性を増加および/または改善し、免疫細胞(T細胞など)のサイトカインの生成を増強し、および/または腫瘍増殖を阻害し、腫瘍細胞の増殖を阻害し、および/または腫瘍細胞を死滅させる方法をさらに提供する。
【0209】
このような方法は、本願のYTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)および/または組成物を投与するステップを含み得る。
【0210】
例えば、この方法は、YTHDF1、またはYTHDF1を含む標的細胞(例えば、APCおよび/またはT細胞などの免疫細胞)を、本願のYTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)および/または組成物と接触させることを含み得る。この接触は、エクスビボで行うことができる。場合によっては、この接触は、インビボで行うことができる。
【0211】
場合によっては、この方法は、本願のYTHDF1減弱剤および/または組成物を前記細胞(例えば、APCおよび/またはT細胞などの免疫細胞)に導入することを含み得る。この導入は、エクスビボで行うことができる。場合によっては、この導入は、インビボで行うことができる。場合によっては、この導入は、エクスビボで行うことができる。
【0212】
阻害剤のスクリーニング方法およびキット
【0213】
本願は、候補薬剤がYTHDF1減弱剤であるか否かを決定するための方法を提供する。
【0214】
この方法は、この候補薬剤をYTHDF1変異体と接触させることを含み得る。
【0215】
このYTHDF1変異体は、SEQ ID NO: 1の残基372~392、479~494および526~535から選択される残基に対応する1つ以上の残基において1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含み得る。場合によっては、このYTHDF1変異体は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480およびH528から選択される残基に対応する1つ以上の残基において1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含み得る。場合によっては、このYTHDF1変異体は、SEQ ID NO: 1で表されるアミノ酸配列に基づいて、以下のアミノ酸置換:N378A、F382A、W384A、F480AおよびH528Aに対応する1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。場合によっては、このYTHDF1変異体は、SEQ ID NOs: 4~8のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し得る。
【0216】
この方法は、候補薬剤が本願のYTHDF1変異体に特異的に結合するか否かを決定することをさらに含み得る。
【0217】
この候補薬剤が本願のYTHDF1変異体に特異的に結合する場合に、この候補薬剤はYTHDF1減弱剤ではない可能性がある。
【0218】
この方法は、この候補薬剤を対照YTHDF1、その断片または誘導体と接触させること、およびこの候補薬剤が対照YTHDF1、その断片または誘導体に特異的に結合するかいなかを決定することをさらに含み得る。場合によっては、対照YTHDF1、その断片または誘導体は、SEQ ID NO: 1の残基N378、F382、W384、F480および/またはH528に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み得る。場合によっては、この対照YTHDF1、その断片または誘導体は、SEQ ID NO: 1的残基372~392、479~494および/または526~535に対応するアミノ酸残基を少なくとも含み得る。場合によっては、対照YTHDF1、その断片または誘導体は、SEQ ID NOs: 1~3、9~13および16~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し得る。
【0219】
場合によっては、この方法は、候補薬剤が対照YTHDF1、その断片または誘導体に特異的に結合するか否かを決定することをさらに含み得る。
【0220】
この候補薬剤が、本願の対照YTHDF1、その断片または誘導体に特異的に結合しない場合に、この候補薬剤は、YTHDF1減弱剤ではない可能性がある。
【0221】
この候補薬剤が本願の対照YTHDF1、その断片または誘導体に特異的に結合するが、本願のYTHDF1変異体には特異的に結合しない場合に、この候補薬剤は潜在的なYTHDF1減弱剤と見なされ得る。
【0222】
一方、本願は、例えば、YTHDF1を減弱させる候補薬剤の活性をスクリーニングおよび/または決定するためのYTHDF1変異体(本願に記載のYTHDF1変異体など)を提供する。
【0223】
一方、本願は、本願のYTHDF1変異体を含むキットを提供する。このキットは、例えば、YTHDF1を減弱させる候補薬剤の活性をスクリーニングおよび/または決定するために使用され得る。
【0224】
このキットは、追加の薬剤をさらに含み得る。例えば、このキットは、本願の対照YTHDF1、その断片または誘導体を含み得る。
【0225】
場合によっては、このキットは、候補薬剤の結合親和性を決定するための分析(例えば、等温滴定熱量測定(ITC)分析、表面プラズモン共鳴(SPR)分析および/またはマイクロスケール熱泳動(MST)分析)に用いられるバッファー、または薬剤をさらに含み得る。
【0226】
抗原
【0227】
本願の化合物、YTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)および/または組成物は、必要のある受験者における抗原の発現に関連する疾患、障害または病状を治療するために使用され得、および/または必要のある受験者における抗原(例えば腫瘍抗原)に対するT細胞媒介免疫応答を刺激するために使用され得る。
【0228】
さらに、本願の化合物、YTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)および/または組成物は、追加の/第2の活性成分と組み合わせて使用することができ、この追加の/第2の活性成分は、それを受けた受験者において、1つ以上の抗原(例えば腫瘍抗原)の増加を引き起こすことができる。
【0229】
この抗原は、例えば、ヒト受験者において、免疫応答を誘発することができる任意の分子であり得る。この免疫応答は、抗体産生、または特異的免疫細胞の活性化、またはその両方に関与し得る。事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として機能することができる。この抗原は、生物学的試料に由来および/または存在し得る。このような生物学的試料には、他の生物学的成分を含む組織試料、腫瘍試料、細胞、または流体が含まれるが、これらに限定されない。
【0230】
本願において、癌関連抗原または腫瘍抗原は、癌細胞の表面に発現され得る。場合によっては、癌関連抗原自体が細胞内にある可能性があるが、そのような抗原(ペプチド)の断片がMHC(主要組織適合遺伝子複合体)によって癌細胞の表面に提示される場合もある。
【0231】
癌/腫瘍関連抗原の例としては、例えば、EGFR、HER2/neu、HER3、HER4、Ep-CAM、CEA、TrAIL、TRAIL受容体1、TRAIL受容体2、リンホトキシン-ベータ受容体、CCR4、CD19、CD20、CD22、CD28、CD33、CD40、CD80、CSF-1R、CTLA-4、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、ヘプシン、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、VEGF受容体1、VEGF受容体2、IGF-1R、TSLP-R、TIE-1、TIE-2、TNF-α、および類似したTNFの弱いアポトーシス誘導剤(TWEAK)、IL-1Rが挙げられる。
【0232】
場合によっては、この癌/腫瘍関連抗原の例としては、例えば、CEA、gp100、MAGEファミリータンパク質、DAGE、GAGE、RAGE、NY-ESO 1、Melan-A/MART 1、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、HER-2/neu、MUC-1、p53、KSA、PSA、PSMA、および/またはその断片および修飾バージョンが挙げられる。
【0233】
抗腫瘍免疫の増強
【0234】
本願の化合物、YTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)、方法および/または組成物は、免疫細胞を活性化するため、および/または免疫応答例えば抗腫瘍免疫応答を増強するために使用され得る。
【0235】
例えば、活性化された免疫細胞は、インビボで腫瘍細胞を殺傷したり、腫瘍の増殖を制御したりする能力が向上している(例えば、少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍またはそれ以上)可能性がある。
【0236】
場合によっては、免疫細胞の集団で、CD4+ T細胞の増殖の増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)が観察され得る。場合によっては、免疫細胞の集団で、CD8+ T細胞の増殖の増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)が観察され得る。
【0237】
場合によっては、増強された抗腫瘍免疫応答は、腫瘍部位内またはその周囲のCD8+細胞傷害性T細胞の数の増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる場合がある。
【0238】
場合によっては、増強された抗腫瘍免疫応答が、腫瘍浸潤CD8+T細胞の数の増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる可能性がある。
【0239】
場合によっては、免疫細胞(例えばT細胞)の活性の増加は、免疫細胞によるサイトカイン(例えば、IFN-γおよび/またはIL-2)および/またはグランザイムBの生成の増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる可能性がある。
【0240】
場合によっては、免疫細胞の活性の増加または免疫応答の増強は、CD8+ T細胞の疲弊の遅延および/または逆転(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)など、免疫細胞の疲弊の遅延および/または逆転(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる場合がある。
【0241】
場合によっては、免疫細胞の活性の増加または免疫応答の増強は、CXCR5の発現増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる可能性がある。発現の増加は、細胞内/細胞上のCXCR5の量/レベルの増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって特徴付けられるか、免疫細胞の集団(例えば、T細胞集団などの免疫エフェクター細胞の集団)の中でCXCR5を発現する細胞の数/割合の増加(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって特徴づけられ得る。
【0242】
場合によっては、免疫細胞の活性の増加または免疫応答の増強は、PD-1の発現の減少(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる可能性がある。発現の減少は、細胞内/細胞上のPD-1の量/レベルの減少(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって特徴付けられるか、免疫細胞集団(例えば、T細胞集団などの免疫エフェクター細胞集団)の中でPD-1を発現する細胞の数/割合の減少(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって特徴付けられ得る。
【0243】
場合によっては、免疫細胞の活性の増加または免疫応答の増強は、Tim3の発現の減少(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる可能性がある。発現の減少は、細胞内/細胞上のTim3の量/レベルの減少(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって特徴付けられるか、または免疫細胞の集団(例えば、T細胞の集団など、免疫エフェクター細胞の集団)の中でTim3を発現する細胞の数/割合の減少(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって特徴付けられ得る。
【0244】
場合によっては、免疫細胞の活性の増加または免疫応答の増強は、免疫細胞の集団(例えば、T細胞の集団など、免疫エフェクター細胞の集団)内のPD-1+Tim3+細胞の数および/または割合の減少(例えば少なくとも約1 %、少なくとも約2 %、少なくとも約3 %、少なくとも約4 %、少なくとも約5 %、少なくとも約8 %、少なくとも約10 %、少なくとも約15 %、少なくとも約16 %、少なくとも約17 %、少なくとも約18 %、少なくとも約19 %、少なくとも約20 %、少なくとも約25 %、少なくとも約30 %、少なくとも約35 %、少なくとも約40 %、少なくとも約45 %、少なくとも約50 %、少なくとも約100 %、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、またはそれ以上)によって明らかになる可能性がある。
【0245】
疾患、障害または病状
【0246】
本願の化合物、YTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)、方法および/または組成物は、必要のある受験者における抗原(例えば、本明細書に記載の癌/腫瘍関連抗原)の発現に関連する疾患、障害または病状を治療するなど、疾患、障害または病状を治療するために使用され得る。
【0247】
例えば、この疾患、障害または病状は、癌であり得る。
【0248】
場合によっては、この癌は、血液癌、リンパ腫、および固形腫瘍からなる群から選択され得る。
【0249】
いくつかの実施形態において、この癌は、黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱がん、子宮がん、リンパがん、胃がん、膵臓がん、精巣がん、リンパ腫および白血病からなる群から選択される。
【0250】
受験者
【0251】
本願の化合物、YTHDF1減弱剤、細胞(例えばmAPC、mDC)、方法および/または組成物は、必要のある受験者(例えばヒト)に投与され得る。
【0252】
場合によっては、この受験者は、癌患者であり得る。例えば、この受験者は、血液癌、リンパ腫、および固形腫瘍からなる群から選択される癌患者であり得る。場合によっては、この受験者は、黒色腫、結腸癌、膵臓がん、乳癌、および肺癌からなる群から選択される癌患者であり得る。
【0253】
場合によっては、この受験者は、追加の治療を受けた、受けている、および/または受けることになることがある。この追加の療法は、抗癌治療であり得る。
【0254】
場合によっては、この抗癌治療は、癌免疫療法を含み得る。例えば、この抗癌治療は、免疫チェックポイント減弱剤を含み得るか、または免疫チェックポイント減弱剤であり得る。場合によっては、この抗癌治療は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分、およびIDO減弱剤からなる群から選択される薬剤を含み得る。場合によっては、この抗癌治療は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、および/または上記のいずれかのものの抗原結合断片または誘導体を含み得る。
【0255】
実施例
【0256】
以下の実施例は、当業者に本発明をどのように実施し、使用するかについての完全な開示および説明を提供するために記載されており、本発明者らが発明とみなすものの範囲を限定することを意図したものではなく、以下の実験が実行されたすべての実験または唯一の実験であることを表すことを意図したものでもない。使用される数値(量、温度など)の正確性を確保するために工夫したが、いくつかの実験誤差や偏差を考慮する必要がある。特に断らない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏度、圧力は大気圧または大気圧近傍であることを示す。例えば、bpは塩基対、kbはキロベース、plはピコリットル、sまたはsecは秒、minは分、hまたはhrは時間、aaはアミノ酸、ntはヌクレオチド、i.m.は筋肉内注射、i.p.は腹腔内注射、s.c.は皮下注射であるような標準的な略語を使用。実験の結果(例えば、両側の対応のないスチューデントの t 検定)については、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、***はp<0.0001を示し、かつ、n.s.は有意ではないことを意味している。
【0257】
材料および方法
【0258】
本願の実施例では、以下の材料および方法を使用した。
【0259】
タンパク質の発現と精製
【0260】
タンパク質YTHDF1(361~559)(SEQ ID NO: 2)およびその変異体(SEQ ID NOs: 4~13)をpGEx-6P-1担体(YouBio社から入手、カタログ番号:VT1258)にクローニングし、また、AlphaScreen分析で使用したHis-YTHDF1(361~559)(SEQ ID NO: 3)を修飾pET28a担体(YouBio社から入手、カタログ番号:VT1207)にクローニングした。これらの担体を大腸菌BL21(DE3)細胞に形質転換し、37℃で培養した。OD値が0.6~0.8に達したら、1 mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを添加して、16℃で一晩このタンパク質を過剰発現させた。YTHDF1(361~559)およびその変異体は、最初にグルタチオンアフィニティクロマトグラフィー(GSTrap FF, GE Healthcare)によって精製され、そして、GSTタグを除去するために、PPaseとともに4℃で一晩インキュベートされた。次に、陽イオン交換(HiTrap SP, GE Healthcare)を介して、最後に、Superdex 75 10/300カラム(GE Healthcare)を介してタンパク質をさらに精製した。最後に、精製されたYTHDF1(361~559)および変異体を20 mM Hepes (p H 7.4)および200 mM NaClを含有するバッファーに保持した。His-YTHDF1(361~559)について、タンパク質をNi-NTAクロマトグラフィー(HisTrap FF, GE Healthcare)、続いて陽イオン交換およびSuperdex 75 10/300カラムで順次に精製した。そして、得られたタンパク質を同じ成分を有するバッファーに保持した。
【0261】
蛍光偏光(FP)分析
【0262】
YTHDF1(361~559)、5’-FAM標識されたm6A含有mRNA(5’-FAM-UUCUUCUGUGG (m6A) CUGUG-3’, SEQ ID NO: 14)および候補化合物のすべてを、分析バッファー(20 mM Hepes (pH 7.4), 50 mM NaCl, 0.01% (v/v) tween 20, 5% (v/v) グリセロール)で希釈した。ハイスループットスクリーニング(HTS)について、1.25 μMのYTHDF1(361~559)を80 μMの候補化合物とともに、黒色の384プレート(Corning, 3575)で室温で30分間インキュベートした。次に、40nMの5’-FAM標識されたm6A含有mRNAを混合物に加え、4℃で1時間インキュベートした。非標識のm6A含有mRNAをポジティブコントロールとして使用し、40 nMの5’-FAM標識m6A含有mRNAのみを使用して、ゲインファクターを調整した。最後に、混合物をEnvision Readers (PerkinElmer)で測定した。
【0263】
活性試験について、1.25 μMのYTHDF1(361~559)を所定の濃度に希釈された候補化合物とともに30分間インキュベートした。その後のステップはHTSと同様である。そして、等量のDMSOをネガティブコントロールとして使用した。
【0264】
AlphaScreen分析
【0265】
化合物(例えばSAAまたはSAC)を、分析バッファー(20 mM Hepes (pH 7.4), 150 mM NaCl, 1 mg/ml BSA, 0.01% (v/v) TritonX-100)を使用して2倍勾配法で200 μMから希釈した。次に、100 nMのHis-YTHDF1(361~559)を、SAAまたはSACとともに分析バッファーで、室温で30分間インキュベートした。次に、10 nMのビオチン化されたm6A含有mRNA (5’-ビオチン-UUCUUCUGUGG (m6A) CUGUG-3’) (SEQ ID NO: 15)を加えて、YTHDF1(361~559)と結合させ、非ビオチン化m6A含有mRNAをポジティブコントロールとして使用した。Alphaシグナル検出の前に、ストレプトアビジンドナービーズと抗Hisアクセプタービーズを暗所での白色の分析プレート(OptiPlate(商標)-384, PerkinElmer)に加え、4℃で、1時間インキュベートすることにより、ビオチンタグとストレプトアビジンドナービーズ間およびHisタグと抗Hisアクセプタービーズ間の十分な結合を確保する。次いで、Envision Readers (PerkinElmer)でAlphaシグナルを検出した。
【0266】
競合分析について、化合物(例えば、SAAまたはSAC)を同じ方法で希釈し、非ビオチン化m6A含有mRNAを分析バッファーで400 nM、200 nM、50 nM、および25 nMに希釈した。200 nMのHis-YTHDF1(361~559)を、非ビオチン化m6A含有mRNAとともに4℃で10分間インキュベートした。次いで、m6A含有mRNAと競合してタンパク質と結合するために、化合物(例えばSAAまたはSAC)を添加し、室温でさらに30分間インキュベートした。次に、20 nMのビオチン化されたm6A含有mRNAと2種類のビーズを暗所で添加し、検出前に4℃で1時間インキュベートした。
【0267】
NMR分析
【0268】
極低温冷却プローブを備えるBruker Avance III分光計(プロトン周波数600 MHz)(Bruker biospin、ドイツ)を使用して、25℃でNMR CPMG実験を実施した。YTHDF1(361~559)をリン酸塩緩衝液(20 mM NaH2PO4,20 mM Na2HPO4,150 mM NaCl,pH 7.4,D2O)で20 μM、10 μM、および5μMに希釈した。化合物(例えばSAAまたはSAC)を5%重水素化DMSOに溶解して200 μMの濃度にした。溶媒抑制1D 1H CPMGは、パルスシーケンス(RD-90°-(τ-180°-τ) n-ACQ)を介して得られた。事前飽和手順では、水の共鳴を排除するために、リサイクル遅延(RD)の4sの持続時間で、54.78 dBのパルスが印加された。次に、90°のパルス長は約11.82 μsに変調された。そして、最後に、合計4つのダミースキャンと64の自由誘導減衰(FID)が2.73sの取得時間(ACQ)で12 kHz (20 ppm)のスペクトル幅をカバーした64000の取得点に収集された。
【0269】
等温滴定熱量測定法
【0270】
精製されたYTHDF1(361~559)を、透析バッファー(20 mM Hepes (pH 7.4)および200 mM NaCl)で、4℃で一晩透析した。次に、透析されたタンパク質を透析バッファーで50 μMに希釈した。化合物(例えばSAAまたはSAC)を溶解し、透析バッファーで1 mMに希釈した。等温滴定熱量測定(ITC)は、25℃でMicrocal ITC 200等温滴定熱量計(GE Healthcare)で実施された。200 μLの50 μM YTHDF1(361~559)を試料セルに充填し、750 rpmで絶えずに攪拌した。40 μLの1 mM SAAを注射器に充填した。0.4 μLを1回注射した後、まず、180 s間隔で2 μLを19回注射することにより、化合物(例えばSAAまたはSAC)をYTHDF1(361~559)に滴定した。次に、滴定効果をより明確にするために、計算により、19回の2 μL注射を5回の2.5 μL注射、それから14回の1.9 μL注射に変更した。また、バックグラウンド希釈の熱効果を排除するために、対照として、透析バッファーへの1 mMの化合物(例えばSAAまたはSAC)の滴定も行った。実験データは、Microcal ORIGIN(v7.0)ソフトウェア(Microcal Software)により分析された。
【0271】
SPR結合分析
【0272】
SPR結合分析は、Biacore T200機器(GE Healthcare)で、25℃で実施された。YTHDF1(361~559)は、10 mMの酢酸ナトリウム(pH 5.5)の条件で、標準的なアミン結合手順によってCM5チップ上に共有結合で固定化された。次いで、化合物(例えば、SAAまたはSAC)をHBSバッファー(20 mM Hepes (pH 7.4)、200 mM NaClおよび0.4 % (v/v) DMSO)で勾配希釈した。次に、希釈された化合物(例えば、SAAまたはSAC)を30 μL/minの流速で60秒間注射して、固定化されたYTHDF1(361~559)と結合させ、続いて、HBSバッファーを同じ流速で注射して、600秒間解離させた。化合物(例えば、SAAまたはSAC)の平衡解離定数(Kd)値は、Biacore T200評価ソフトウェア(GE Healthcare)によるデータ分析から生成された。
【0273】
MST分析
【0274】
マイクロスケール熱泳動(MST)分析は、無標識法により、マイクロスケール熱泳動装置(NanoTemper Technologies)で、室温で実行された。化合物(例えば、SAAまたはSAC)を、MSTバッファー(20 mM Hepes (pH 7.4)、200 mM NaClおよび0.1mM Pluronic(商標) F-127)を用いて、2倍勾配法で1 mMから希釈した。そして、YTHDF1(361~559)を、MSTバッファーで4 μMに希釈した。次いで、10 μLの化合物(例えば、SAAまたはSAC)を10μLのYTHDF1(361~559)と混合して、室温で20分間インキュベートした。測定前に、この混合物を4℃で13000 rpmで10分間遠心分離させた。最後に、Monolith NT(商標)自動ラベルフリーキャピラリー(NanoTemper Technologies)で試料を採取し、測定を開始した。化合物(例えば、SAAまたはSAC)のKd値は、MOアフィニティ解析ソフトウェアV2.3(NanoTemper Technologies)によるデータ分析から得られた。
【0275】
水素重水素交換質量分析
【0276】
測定前に、YTHDF1(361~559)を化合物(例えば、SAA)とともに4℃で一晩インキュベートした。水素重水素交換質量分析(HDX MS)では、YTHDF1(361~559)-apoおよびYTHDF1(361~559)-SAAの水素原子を20mM Hepes (pH 7.4)、200mM NaClおよびD2Oを含有するバッファーで、10℃でそれぞれ0秒間、10秒間、30秒間、60秒間、1200秒間、3600秒間および14400秒間重水素で交換した。そして、4 M塩酸グアニジン、0.5 M TCEPおよび100 mMクエン酸(pH 2.3)を含有するバッファーを用いて、0.5℃で反応を停止させた。重水素標識反応後、試料のペプチドを得るために、試料をカラムに固定化されたペプシンによって4℃で消化した。次に、これらのペプチドをそれぞれHPLCで分離し、質量分析で分析した。HDX MSデータをHDExaminerソフトウェア(v2.4.1)で分析し、±5 %を閾値として設定して、有意な変化を伴うペプチドを選択した。
【0277】
細胞の熱シフト分析
【0278】
細胞熱シフト分析(CETSA)は、以前に報告されたプロトコルに従って実施された。分析で使用した293T細胞株(ATCC)は、10 %のウシ胎児血清(Gibco, U.S.A.)、1 %のペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を含有するDMEM培地で、37℃、5 %のCO2で培養した。293T細胞は、対照として、PBSバッファーとインキュベートされ、または100 μMのSAAとインキュベートされ、4時間後に回収され、それぞれ12個の部分に等分された。分割された部分を、39℃から59℃までの一連の温度範囲で3分間加熱され、すぐに4℃で3分間冷却された。次に、液体窒素を用いた凍結融解によって、細胞を溶解し、遠心分離によってタンパク質試料を収集した。SDSを添加し、99℃で5分間沸騰させることにより、ウェスタンブロット検出用に試料を調製した。ウエスタンブロット分析では、GAPDHを内部参照として使用した。また、分析結果の定量分析は、Image Jソフトウェアにより実行された。
【0279】
細胞株およびマウス
【0280】
B16-OVAは、Y.-X. Fu (UT Southwestern)から提供されたマウスメラノーマ細胞株B16由来のトランスフェクションクローンである。
【0281】
E.G7-OVAは、Chen Dong(清華大学)から提供されたマウス胸腺リンパ腫細胞株E.G7由来のトランスフェクションクローンである。
【0282】
Ythdf1-/- マウスは、以前の研究(例えば、Shi, H.ら、 Nature 563, 249-253 (2018)を参照)で説明されているように、発明者によって実験室で生成された。
【0283】
Ythdf1F/F マウスは、Bin Shen(南京医科大学)から提供され、CD11ccreマウスはJackson研究所から購入された。
【0284】
OT-Iマウスは、オボアルブミン特異的CD8+ TCR遺伝子改変マウスであり、Xiaohuan Guo(清華大学)から提供された。
【0285】
腫瘍の接種と治療
【0286】
B6マウスの腫瘍増殖について、5×105個のB16-OVAまたは1×106個のE.G7-OVA腫瘍細胞をマウスの脇腹に皮下(s.c.)接種した。腫瘍の長さ(a)と幅(b)を2日ごとに測定し、腫瘍の体積を式ab2/2で計算した。阻害剤治療について、腫瘍接種後9日目と11日目に、10 μMのSAAまたはDMSOを腹腔内(i.p.)注射した。他のマウスモデル(rag1-/-およびYthdf1条件付き遺伝子破壊)については、阻害剤治療の回数と用量が同じであった。α-PD-L1とSAAの併用治療については、5×105個のB16-OVA腫瘍細胞をマウスの脇腹に皮下接種した。α-PD-L1抗体(クローニング10F.9G2)またはラット免疫グロブリン100 μgを腫瘍接種後9日目に投与した。腫瘍注射後9日目および11日目に、10 μMのSAAまたはDMSOを同様に投与した。
【0287】
FLT3L-DC培養と阻害剤治療
【0288】
骨髄を野生型およびYthdf1-/-マウスから分離し、赤血球溶解バッファーで処理して、赤血球を除去した。骨髄細胞を懸濁するために、10 %のウシ胎児血清を含むIMDM培地を使用した。FLT3L-DCを培養するために、細胞濃度を1×106/mLに調整した。細胞を100 ng/mLのFLT3Lで9日培養して、成熟FLT3L-DCを得た。成熟したFLT3L-DCをEasySep Mouse CD11c Positive Selection Kit IIで精製し、IMDM培地(10 %のウシ血清および100 ng/mLのFLT3Lを含有する)中の10 μMのSAAまたはDMSOで10時間処理した。
【0289】
DC抗原-提示機能分析
【0290】
イン・ビトロクロスプレゼンテーション研究について、成熟したFLT3L-DCを9日目に採取し、EasySep Mouse CD11c Positive Selection Kit IIで精製し、IMDM培地(10 %のウシ血清および100 ng/mLのFLT3Lを含有する)中の10 μMのSAAまたはDMSOで10時間処理した。阻害剤(例えば、SAAまたはSAC)処理後、FLT3L-DCを壊死B16-OVA細胞と6時間共培養した。次に、抗原を取得したDCを精製し、OT-1マウスのナイーブT細胞と1:10の比率で96時間共培養した。共培養の培地は、1 μg/mLのOT-1 (OVA 257~264)ペプチドを含むかまたは含まない10 %のウシ胎児血清を含有する1640 RPMIであった。エクスビボDCクロスプレゼンテーション分析について、4種類のDC(遊走CD11b+ DC、遊走CD103+ DC、在住CD11b+ DCおよび在住CD8+ DC)を、12日目にSAA処理B16-OVA担持マウスの流入領域リンパ節から選別した。これらのDCは、OT-1ペプチドの有無にかかわらず、OT-1ナイーブT細胞と1:10の比率で96時間共培養された。上清液のIFN-γ産生は、CBA分析によって検出された。
【0291】
T細胞機能分析
【0292】
腫瘍浸潤白血球は、96ウェルプレートにおいて、1 mLあたり5×106でRPMI 1640培地によって再懸濁された。ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)(2.5 μg/mL)とイオノマイシン(0.5 μg/mL)を使用して、T細胞を刺激するとともに、ブレフェルジンA(brefeldin A)を培地に添加して、37℃で2時間培養した。流入領域リンパ節からの総リンパ球の細胞濃度は、96ウェルプレートで1mLあたり5×106に調整された。1 μg/mLのOT-1 (OVA 257-264)ペプチドをウェルに加え、96時間刺激した。試料を氷上で30分間、CD45およびCD8で染色した。IFN-γおよびグランザイムBの産生を定量化するために、細胞内染色を行った。
【0293】
フローサイトメトリー
【0294】
フローサイトメトリー分析およびDCソーティングのために、腫瘍、流入領域リンパ節をマウスから採取し、100 U/mLのコラゲナーゼIVおよび20 μg/mLのDNアーゼIで、37℃で40分間消化した。消化はFACSバッファー(PBSには2 %のFBSと1 mMのEDTAが含まれている)で停止し、試料は、70 μmのセルストレーナーでろ過した。試料は、氷上で30分間、FACSバッファー中の特異的抗体によって染色された。抗体情報は、以下の表1に記載されている。染色後、すべての試料をFACSバッファーで洗浄し、細胞をBD Fortessaで分析し、AriaIIIでソーティングした。
【表1】
【0295】
CFSE標識
【0296】
ナイーブOT-Iマウスのリンパ節からの1×107個のリンパ球をPBSで2回洗浄し、1 mLのPBSに再懸濁した。1 μLのCFSE Trackerを懸濁液に加え、37℃で5分間インキュベートした。次に、10 %のFBSを含有する5 mLのRPMI-1640培地を加えて、CFSE標識を停止し、室温で5 minインキュベートした。遠心分離後、CFSE標識T細胞を室温で少なくとも10分間、別の5 mLのRPMI-1640培地で懸濁した。
【0297】
実施例1 YTHDF1に対する阻害活性
【0298】
YTHDF1の新規阻害剤を発見するために、蛍光偏光(FP)分析に基づくハイスループットスクリーニング(HTS)アプローチが開発され、サルビアノール酸A(SAA)が効果的な阻害剤であることが見出された。m
6A含有mRNAとYTHDF1との間の相互作用を阻害するSAAの活性は、FP分析で評価された。
図1aに示されているように、得られたIC
50値は2.30±0.11 μMであった。SAAの阻害活性をさらに検証するために、AlphaScreenに基づく分析を実施し、
図1bに示すように、得られたIC
50値は0.86±0.06 Mであり、SAAがm
6AとYTHDF1の間の結合を効果的に遮断することができることが確認された。
【0299】
別のサルビアノール酸であるサルビアノール酸C(SAC)によるYTHDF1活性に対する阻害も、FP分析で評価され、
図1cに示されるように、得られたIC
50値は3.95 μMであった。
【0300】
次に、SAAとYTHDF1の間の結合を調査するために、定性的および定量的実験が行われた。最初に、核磁気共鳴(NMR)Carr-Purcell-Meiboom-Gill (CPMG)実験が行われた。結果は、
図1dに示すように、200 μMのSAAを添加した後、化合物のシグナルがCPMGスペクトルで検出され、5 μM、10 μMおよび20 μMのYTHDF1をそれぞれ添加すると、シグナルが減少し、SAAとYTHDF1との間の直接結合を示した。
【0301】
次に、SAAとYTHDF1との間の結合親和性を評価した。等温滴定熱量測定(ITC)分析を実行して、YTHDF1とSAAの間の平衡解離定数(K
d)を正確にテストした。このITC分析は、Microcal iTC200等温滴定熱量計(GE Healthcare)で3回独立して実施された。簡単に言えば、新たに精製したYTHDF1(50 μM)を20 mM Hepes (pH 7.4)および200 mM NaClを含むバッファーにおいて、25℃で1 mMのSAAで滴定した。
図2a~2cに示されるように、SAAは5.71 μMのK
d値でYTHDF1に結合し、SAAとYTHDF1との間の結合が確認された。さらに、エンタルピー変化(δH = - 3099 ± 144.1 cal/mol)はゼロ未満であり、SAAがYTHDF1と水素結合相互作用を形成できることを示した。さらに、エントロピー変化(δS = 13.6 cal/mol/deg)はゼロ以上であり、SAAの結合がYTHDF1の立体構造変化を誘発する可能性があることを示した。
【0302】
さらに、表面プラズモン共鳴(SPR)分析およびマイクロスケール熱泳動(MST)分析を実施して、SAAとYTHDF1の間の結合強度を確認した。
図3a~3cに示すように、SPR分析から2.52 μMのK
d値が得られ、MST分析から4.70 μMのK
d値が得られ、これらの結果は、ITC実験の結果に一致している。
【0303】
まとめると、本願の化合物(例えば、本願のSAA、SACおよび他の化合物)は、YTHDF1と直接に結合し、イン・ビトロでそのm6A結合活性を遮断することができると結論付けることができる。
【0304】
実施例2 YTHDF1活性の非競合的阻害
【0305】
200 nM YTHDF1および20 nMビオチン化m
6A含有mRNAを使用して、AlphaScreen分析に基づいて、所定の濃度の非ビオチン化m
6A含有mRNAに対して競合結合実験を実施した。結果は、
図4a~4bに示すように、YTHDF1に対するSAAの阻害活性は、非ビオチン化m
6A含有mRNAの非存在下で、0.80 ± 0.08 μMであり、50 nM、100 nM、200 nMまたは400 nMの非ビオチン化m
6A含有mRNAをYTHDF1とプレインキュベートした場合に、この阻害活性は変わらなかった。これらの結果は、SAAがYTHDF1の機能を阻害するが、YTHDF1への結合について、m
6Aと競合しないことを示している。
【0306】
次に、水素重水素交換質量分析(HDX MS)実験を行い、YTHDF1上のSAAの結合部位を決定した。HDX MS分析では、YTHDF1-APOおよびYTHDF1-SAAのHDX挙動が10s、30s、60s、1200s、3600sおよび14400sで調べられ、それらの間の重水素取り込みの変化が残差プロット(
図5a)、バタフライプロット(
図5b)およびヒートマップ(
図6)分析に示された。多くのペプチドは、5 %を超えるHDX割合変化を有し、SAAとYTHDF1の結合が無傷のタンパク質構造の有意な立体構造変化を誘発できることを示している。
【0307】
図7および
図8a~8iに示すように、YTHDF1および関連ペプチドは、顕著な構造変化があり、立体構造変化は、主に次の1)m
6A結合ポケット2)特定の正に荷電したアミノ酸を持つ長くて浅いポケット、3)YTHDF1のC-末端α-ヘリックス(最も顕著な変化を遂げた)という3つの領域で生じた。これらの結果は、SAAがこれら3つの領域のいずれかでYTHDF1に結合して、立体構造の変化を誘発したことを示唆している。
【0308】
次に、YTHDF1変異体およびC-末端切断体(SEQ ID NOs: 4-13で表されるアミノ酸配列を有する)を設計し、これらの変異体および切断体を使用してSAAの阻害活性をテストした。
【0309】
図9および
図10f~10jに示すように、切断体(SEQ ID NO: 13)またはm
6A結合ポケットに変異を有する変異体(例えば、以下の変異K395A (SEQ ID NO: 9)、Y397A (SEQ ID NO: 10)、C412A (SEQ ID NO: 11)またはR506A (SEQ ID NO: 12)を有する変異体)を使用した場合に、FP実験で測定されたように、m
6Aへの結合に対するSAAの阻害活性は、野生型YTHDF1について観察されたものと同様であった。これらの結果は、C末端α-ヘリックス領域とm
6A結合ポケットがSAA結合にとって必需ではないことを示している。逆に、
図9及び
図10a~10eに示されるように、残基372~392、479~494または526~535に1つ以上の突然変異(例えば、突然変異W384A、H528A、N378A、F480AまたはF382A)を有する突然変異体(SEQ ID NOs: 4~8)が存在する場合に、m
6Aへの結合に対するSAAの阻害活性は、野生型YTHDF1に対する阻害活性より有意に弱かった。そして、FP分析によるさらなる研究は、残基372~392、479~494または526~535におけるこれらの変異ならびにC-末端切断体が、YTHDF1とm
6Aとの間の結合親和性に影響を与えないことを示した(
図11a~11g)。
【0310】
したがって、SAAは、アロステリックメカニズムを通じて、および残基372~392、479~494または526~535内の1つ以上の残基とSAAとの間で形成される水素結合相互作用を少なくとも部分的に介して、YTHDF1に対して非競合的阻害活性を発揮することが見出された。
【0311】
実施例3 293TにおけるSAAとYTHDF1の結合
【0312】
さらに、細胞におけるSAAのYTHDF1への結合も調べた。細胞熱シフト分析(CETSA)は、所定の温度下で加熱するために収集された293T細胞株を使用して実行された。これらの細胞を100 μMのSAAで4時間インキュベートした後、インキュベートした293T細胞中のYTHDF1タンパク質をウェスタンブロットで調べた。
図12a~12bに示すように、YTHDF1の安定性は、SAAとのインキュベーション後に改善され、曲線は右に約2度シフトし、SAAが細胞質内のYTHDF1に直接結合できることが確認された。
【0313】
実施例 4インビボでの腫瘍増殖の阻害
【0314】
5×10
5個のオボアルブミン(OVA)を発現するB16メラノーマ細胞を、野生型マウスに皮下接種した。続いて、担癌マウスを、腫瘍接種後9日後および11日後に、10 μM のSAAで処理し、腫瘍増殖をモニターした。
図13aに示すように、SAAを受けたマウスでは、対照群と比較して、腫瘍の増殖がはるかに遅いことが観察された。
【0315】
別の実験では、野生型マウスに、1×10
6個のE.G7-OVA細胞を皮下注射した。次いで、9日目および11日目に、10 μMのSAAを各マウスに注射した。腫瘍増殖をモニターした。同様の阻害傾向がE.G7-OVAリンパ腫モデルにも見られた(
図13b)。
【0316】
図19に示すように、5×10
5個のB16-OVA細胞をC57BL/6マウス(n=17)に皮下接種した。移植の9日後に、マウスを腫瘍サイズによって3群に分けた。DMSO (n=6)、10 μM SAA (n=6)または10 μM SAC (n=5)をそれぞれ静脈注射した。腫瘍増殖をモニターした。データは、平均値±s.e.m.として示されており、そして、「n.s.」は、有意差なしと意味しており、対応のない片側 t 検定によって、「*」p<0.05、「**」p<0.01であった。SAAまたはSACを受けたマウスでは、腫瘍の増殖がはるかに遅いことが観察された。
【0317】
実施例5 イン・ビトロでの腫瘍細胞増殖に対する影響
【0318】
別の実験では、腫瘍細胞をイン・ビトロでSAAで処理した。簡単に言えば、5×10
4個のB16-OVA腫瘍細胞を、96ウェルプレートでそれぞれさまざまな用量のSAAで処理した。前記のSAA処理の12時間後に、細胞数を数えた。腫瘍細胞の増殖は、SAAの用量を増やしても影響を受けないことがわかった(
図14a)。これらの結果は、SAAが腫瘍細胞を直接に殺傷することによって抗腫瘍効果を発揮するものではないことを示唆している。
【0319】
実施例6 SAA抗腫瘍活性には適応免疫が必要である
【0320】
別の実験では、5×10
5個のCFSE標識OT-I T細胞を96ウェルプレートでさまざまな用量のSAAで処理し、次に、細胞を1 μg/mLのOT-Iペプチドで24時間刺激した。分裂したT細胞をFACSで分析した。
図14bに示すように、SAAは、イン・ビトロでのT細胞の増殖に影響を与えることができなかった。
【0321】
T/B細胞欠損Rag1
-/-マウスに1×10
5個のB16-OVA細胞を接種し、7日目から9日目まで、各マウスに10 μMのSAAを注射し、腫瘍の増殖をモニターし、野生型マウスを対照群として使用した。
図15aに示すように、野生型マウスでは、腫瘍増殖が停止したが、T/B細胞欠損Rag1
-/-マウスでは腫瘍増殖が停止しておらず、SAAの最大の抗腫瘍治療効果には、適応免疫が必要であることを示唆している。
【0322】
実施例7 SAAは、APCの交差提示機能を増強した
【0323】
骨髄由来細胞(野生型またはYthdf1遺伝子欠損型)をFLT3Lと9日間共培養して、FLT3L-DCを得、これらのDCを10 μMのSAAで12時間処理した後、FLT3L-DCを壊死B16-OVA腫瘍細胞と6時間共培養した。CD11c+細胞を精製し、OT-I T細胞と72時間共培養した。IFN-γの産生は、IFN-γサイトメトリービーズアレイによって評価された。
【0324】
図15bに示すように、SAAで処理されたFLT3L-DCは、対照群よりも、T細胞のクロスプライミングにおいて優れた能力を示した。SAA処理の有効性をYthdf1遺伝子ノックアウトの有効性と比較するために、Ythdf1遺伝子欠損DC(Ythdf1
-/-骨髄から得られる)をポジティブコントロールとして使用した。興味深いところに、SAAはYthdf1
-/- FLT3L-DCのクロスプレゼンテーション機能も促進する可能性がある。これらの結果は、本願の化合物(例えばSAA)がイン・ビトロで抗原提示細胞(例えばDC)のクロスプライミング機能を促進できることを示している。
【0325】
さらに、12日目に、SAA処理されたB16-OVA担持野生型マウスの流入領域リンパ節から4種類の古典的DC(在住CD11b
+、在住CD8α
+、遊走CD11b
+および遊走CD103
+)を選別した。これらのDCをOT-I T細胞と72時間共培養した。次に、IFN-γの産生をIFN-γサイトメトリービーズアレイによって評価した。
図15cに示すように、DMSO処理群よりも、SAA処理マウスからのこれらすべてのDCサブタイプ、特に在住CD8α
+ DCおよび遊走CD103
+ DCがより優れたT細胞のクロスプライミングを示した。これらの結果は、本願の化合物(例えばSAA)がインビボでも抗原提示細胞(例えばDC)のクロスプライミング機能を促進できることを示している。
【0326】
実施例8 SAAはAPCで機能して免疫応答を強化する
【0327】
樹状細胞は、クロスプライミングおよび/または直接プライミングを通じてT細胞を活性化することができる。直接プライミングプロセスでは、DCは、CD80/CD86またはT細胞活性化に関連するサイトカインなどの表面共刺激分子を介してT細胞を刺激することができる。SAA投与後に、直接プライミング機能も影響を受けるかどうかを評価するために、骨髄由来細胞(野生型またはYthdf1遺伝子欠損型)をFLT3Lとともに、9日間培養してFLT3L-DCが得られ、これらのDCを10 μMのSAAで12時間処理して、次に、FLT3L-DCを壊死性B16-OVA腫瘍細胞と6時間共培養した。CD11c+細胞を精製し、1 μg/mLのOT-Iペプチドを添加したOT-I T細胞と72時間共培養した。IFN-γの産生は、IFN-γサイトメトリービーズアレイによって評価された。さらに、12日目に、SAA処理されたB16-OVA担持野生型マウスの流入領域のリンパ節から4種類の古典的DC(在住CD11b+、在住CD8α+、遊走CD11b+および遊走CD103+)を選別した。これらのDCは、1 μg/mLのOT-Iペプチドを添加したOT-I T細胞と72時間共培養された。次に、IFN-γの産生を、IFN-γサイトメトリービーズアレイによって評価した。
【0328】
図16a~16bに示すように、SAAは、イン・ビトロでFLT3L-DCの直接プライミング機能を増強することができなかったが、4つのDCサブタイプのうち3つがSAA処理後に改善された直接プライミング能力を示し、SAAがDCのインビボでの直接プライミング能力を高めることができることを示した。これらの結果は、本願の化合物(例えばSAA)がAPC(例えば樹状細胞)において機能して免疫応答を強化することができることを示している。
【0329】
実施例9 APCはSAAの主要な標的である
【0330】
DCがSAAの主要な標的であるか否かを判断するために、Ythdf1
F/FおよびCD11c
creYthdf1
F/Fマウスに2×10
6個のB16-OVA細胞を皮下注射した。次いで、9日目および11日目に、10 μMのSAAを各マウスに注射し、腫瘍の増殖をモニターした。
図17aに示すように、SAA処理されたYthdf1
F/F マウスにおける腫瘍増殖は、CD11c
creYthdf1
F/Fマウスで観察されたのと同様の状況を示したが、CD11c
creYthdf1
F/Fマウスでは、腫瘍制御のさらなる明らかな効果は見られず、DCがSAAの主要な標的であることを示している。
【0331】
実施例10 SAA活性化腫瘍特異的T細胞
【0332】
T細胞機能に対するSAA処理の効果を調査するために、SAA処理されたB16-OVA担持マウスを犠牲にして、腫瘍浸潤T細胞(TILs)の機能を調査した。まず、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)とイオノマイシンを使用して、腫瘍浸潤T細胞を非特異的に刺激して、細胞内染色を行って、サイトカイン(例えば、IFN-γ、グランザイムB)の産生をFACSによって定量化した。
図17bに示すように、SAA処理マウスからの腫瘍浸潤T細胞は、DMSO群よりも高いレベルのサイトカインを分泌し、SAAが腫瘍浸潤T細胞のエフェクター機能を増強できることを示している。
【0333】
次に、流入領域のリンパ節からリンパ球を単離し、1 μg/mLのOT1ペプチドで刺激し、IFN-γ産生細胞をFACSで分析した。
図17cに示すように、SAA処理されたマウスからのDLN T細胞は、DMSO群よりもはるかに多くのIFN-γを産生した。結果は、SAA投与後に流入領域のリンパ節において、より多くの腫瘍特異的T細胞が活性化されたことを示した。
【0334】
さらに、SAA処理群からのPD-1
low集団は、DMSO群よりもはるかに多くのCXCR5を発現することが発見され(
図18a)、PD-1
lowCXCR5
high T細胞(前駆体疲弊T細胞)が、SAA処理された場合に、腫瘍接種の14日後に検出された。さらに、SAA処理された場合に、腫瘍接種の14日後に、終末疲弊性T細胞(PD-1およびTim-3二重陽性細胞)を評価し、これらの腫瘍浸潤性終末疲弊性T細胞(PD-1
+Tim-3
+)の頻度が、SAA処理されたマウスで減少したことが観察され(
図18b)、増強された抗腫瘍活性が確認された。
【0335】
これらの結果は、SAA処理後に、T細胞が流入領域のリンパ節においてより良好にプライミングされ、TILのエフェクター機能が有意に改善されたことを示している。
【0336】
実施例11 免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせによる相乗効果
【0337】
野生型マウスに、5×10
5個のB16-OVA細胞を皮下注射した。9日目と11日目に、10 μMのSAAを各マウスに注射した。9日目に、マウスを100 μgの抗PD-L1抗体でも処理した。腫瘍増殖を経時的にモニターした。
図18cに示すように、SAAまたは抗PD-L1抗体単独治療は、B16-OVA腫瘍増殖を部分的に阻害でき、併用治療は、腫瘍を劇的に抑制でき、完全な腫瘍退縮さえ達成できた。これらの結果は、SAAがDCの機能の増強を通じて、改善されたT細胞抗腫瘍能力を誘導でき、免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1抗体など)が、本願の化合物(例えばSAA)と組み合わせることにより、より持続的なT細胞応答を誘発できることをさらに支持している。
【0338】
図20に示すように、5×10
5個のB16-OVA細胞を、C57BL/6マウス(n=23)に皮下接種した。移植の9日後に、マウスを腫瘍のサイズによって2つのグループに分けた。移植後の9日目と11日目に、1つのグループは10 μMのSAA (n=6)で静脈内治療され、もう一つのグループはDMSO (n=6)で治療された。接種後の12日目に、2つの群のそれぞれをさらに別の群に分け、200 μgのPD-1遮断抗体(Bio-X--cell、BE0146、クローニング:RMP1-14)をi.p.注射した。対照群はPBSおよびDMSOによる処理であり、n=6であった。単一治療群には、SAAを含むアイソタイプコントロールまたはDMSOを含むα-PD-1を注射し、n=6であった。併用群はSAAおよびPD-1遮断抗体で治療し、n=5であった。腫瘍増殖をモニターした。データは平均値±s.e.m.として示されており、そして「n.s.」は有意差なしと意味しており、対応のない片側 t 検定によって、「**」p<0.01、「****」p<0.00001であった。これらの結果は、免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1抗体など)が、本願の化合物(例えば、SAA)と組み合わせることにより、より持続的なT細胞応答を誘発できることをさらに支持している。
【0339】
実施例12 SAAがAPCで機能して持続的な抗腫瘍機能を発揮する
【0340】
図21に示すように、成熟FLT3L DCをDMSOまたは10 μMのSAAで10時間前処理し、次いでこれらのDCを壊死性B16-OVAと6時間共培養した。養子移入のためにCD11c
+細胞を精製した。5×10
5個のB16-OVA細胞をC57BL/6マウス(n=17)に皮下接種した。移植の9日後に、マウスを腫瘍のサイズによって3つのグループに分けた。1×10
5個のDMSO処理FLT3L DC (n=6)またはSAA処理FLT3L DC (n=5)を、担癌マウスに静脈移植した。最初の移植の7日後、養子移植の2番目のバッチが実行された。腫瘍増殖をモニターした。データは、平均値±s.e.m.として示されており、そして、「n.s.」は有意差なしと意味しており、対応のない片側 t 検定によって、「**」p<0.01、「****」p<0.00001であった。これらの結果は、本願の化合物(例えばSAA)で処理された養子移入FLT3L DCが持続的な抗腫瘍機能を示すことを支持している。
【0341】
本発明は、好ましい実施形態が本明細書により示して記載されたとしても、当該技術分野における当業者にとって、これらの実施形態が例として与えられたに過ぎないことが明らかであろう。本発明は、本明細書における実施例に限定されない。本発明は、以上の本明細書により記述されたが、本明細書における実施形態の記載と説明が限定的に解釈されない。当業者は、本発明を逸脱しない限り、いろんな変化、改変および置換が想到される。なお、本発明は、あらゆる点で本明細書に記載の様々な条件および変数による具体的記述、配置または相対比率に限定されないことを理解されたい。本発明は、実施される場合に本明細書に記載の実施形態の各種の代替態様を用いることができることを理解されたい。したがって、本発明は、このような代替、変更、変化または同等のものもすべてカバーすることが期待される。以下の請求項は本発明の範囲を限定するものであって、これらの請求項およびその同等の範囲における方法および構造が含まれている。
【配列表】
【国際調査報告】