(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】組み合わせ円筒タンクに断熱を施す方法、組み合わせ円筒タンク、およびその使用
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
F17C3/04 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023501401
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 IB2021055604
(87)【国際公開番号】W WO2022009012
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523008200
【氏名又は名称】エルエヌティー マリーン プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコライセン、ペア イヴァル
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB03
3E172DA02
3E172DA13
(57)【要約】
本発明は、液化ガスの貯蔵のための組み合わせ円筒タンクに断熱を施す方法に関する。ポリマーフォーム(2)の1つまたは複数の層は、タンクシェル(1)の外面上に吹き付けられる。クラックバリア(4)はポリマーフォーム(2)の特定の層の上に取り付けられ、クラックバリア(4)はタンクシェル(1)の外面に固定される。本発明は、液化ガスの貯蔵のための対応する組み合わせ円筒タンク、ならびに、液化ガスを貯蔵し、および/または輸送するためのそうした組み合わせ円筒タンクの使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスの貯蔵のための組み合わせ円筒タンクに断熱を施す方法であって、前記方法が、
タンクシェル(1)を備える組み合わせ円筒タンクを設ける工程と、
前記タンクシェル(1)の外面上に、ポリマーフォーム(2)の1つまたは複数の層を吹き付ける工程と、
前記ポリマーフォーム(2)の1つまたは複数の層の上に、1つまたは複数のクラックバリア(4)を取り付ける工程と
を含み、
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、前記タンクシェル(1)の外面に固定される、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、前記タンクシェル(1)に固定されたスタッド(3)により、前記タンクシェル(1)の外面に固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、前記スタッド(3)上の所定の位置に固定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各クラックバリア(4)がメッシュまたは多孔板を含み、前記メッシュまたは前記多孔板は、好ましくは、プラスチック材料、ガラス繊維材料、金属、または複合材料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
吹き付けの完了後、外装材(7)が、前記組み合わせ円筒タンクに取り付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記外装材(7)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、スタッド(3)に固定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各スタッド(3)が、前記スタッド(3)の一体的な部分を形成する熱的断絶部を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外装材(7)が、スタッド(3)に接続されていない状態に留まり、それにより、熱的断絶をもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記組み合わせ円筒タンクが、双胴タンク、三胴タンク、または多胴タンクである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
液化ガスの貯蔵のための組み合わせ円筒タンクであって、前記組み合わせ円筒タンクが、
タンクシェル(1)と、
前記タンクシェル(1)の外面を覆うポリマースプレーフォーム(2)の1つまたは複数の層と、
前記ポリマースプレーフォーム(2)の1つまたは複数の層の上に取り付けられ、前記タンクシェル(1)の外面に固定された、1つまたは複数のクラックバリア(4)と
を備える、組み合わせ円筒タンク。
【請求項11】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、前記タンクシェル(1)に固定されたスタッド(3)により、前記タンクシェル(1)の外面に固定される、請求項10に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項12】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、前記スタッド(3)上の所定の位置に固定される、請求項11に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項13】
各クラックバリア(4)がメッシュまたは多孔板を含み、前記メッシュまたは前記多孔板は、好ましくは、プラスチック材料、ガラス繊維材料、金属、または複合材料を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項14】
前記ポリマースプレーフォーム(2)を覆う外装材(7)をさらに備える、請求項10~13のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項15】
前記外装材(7)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、スタッド(3)に固定される、請求項14に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項16】
各スタッド(3)が、前記スタッド(3)の一体的な部分を形成する熱的断絶部を含む、請求項15に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項17】
前記外装材(7)がスタッド(3)に接続されておらず、それにより、熱的断絶をもたらす、請求項14に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項18】
前記組み合わせ円筒タンクが、双胴タンク型、三胴タンク型、または多胴タンク型である、請求項10~17のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項19】
請求項10~18のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンクを含む、船舶などの海洋設備。
【請求項20】
液化天然ガス、液化石油ガス、液化エタンガス、または液化エチレンガスなどの液化ガスを貯蔵し、および/または輸送するための、請求項10~18のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンクの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、海洋設備において利用される、液化ガスの貯蔵および輸送のためのタンクに関する。具体的には、本発明は、組み合わせ円筒タンクに断熱を施す新しい方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の液化ガスは通常、貯蔵中の高圧化を回避するために、沸点に近い低温から超低温で貯蔵される。よって、内部に含まれるガスを低温および液状に保つために、高度な断熱性を有する貯蔵タンクが必要とされている。液化ガスを貯蔵するための一般的なタンクのタイプは、国際海事機関(IMO)の独立型タイプCのタンクなどの、単一の円筒セクションまたは胴(lobe)を備える複数の円筒状タンクである。これらの単一胴円筒タンクは、IMOの「International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk(IGCコード)」に準拠している。円筒タンクは、その形状から、特に、加圧状態に耐えるのに好適である。というのは、円筒状により、タンク構造においてもたらされる応力集中が少ないからである。よって、圧力の増加により、円筒タンクの場合に、よりとがった隅部を含む横断面を有するタンク型の場合よりも、応力ピークが、より制御可能になる。一方、単一胴円筒タンクは通常、タンクスペース、またはタンクが配置される保持スペース内の、もたらされる容積利用率が悪くなる。この態様は、通常、矩形状の横断面を有する保持スペースを有する海洋設備の場合に特に重要である。矩形状の保持スペースの場合、一解決策はしたがって、2つまたは3つ以上の円筒タンクセクションを組み合わせることである。組み合わせ円筒タンクはしたがって、2つまたは3つ以上の円筒タンクセクションであって、たとえば溶接により、それらの長手方向に沿って接続された、2つまたは3つ以上の円筒タンクセクションを含む。この解決策は、単一円筒タンクと比較して、矩形状の断面を有する保持スペース内の容積利用率を増加させる。
【0003】
最も一般的なタイプの組み合わせ円筒タンクは、双胴型(bi-lobe type)タンクである。双胴タンクの横断面は、接続された2つの円筒セクションを含んでおり、および、通常、強度隔壁が2つの円筒タンクセクションを接続する双眼鏡型形状を有する。強度隔壁は、その長手方向に沿って2つの円筒セクションに溶接され得る。矩形状の保持スペース容積内に配置された場合、双胴タンクは、単一胴円筒タンクよりも高い容積利用率をもたらす。同時に、円筒状の強度面の利点はほとんど維持される。あるいは、3つまたは4つ以上の円筒セクションは、双胴型タンクと同様に、たとえば溶接により、接続され得る。接続する強度隔壁は、隣接する2つの円筒セクションそれぞれの間に配置され、液化ガスの貯蔵にも使用され得る。三胴(tri-lobe)タンクが、3つの接続された円筒セクションをそれらの横断面において含んでいる一方、多胴(multi-lobe)タンクは、3つよりも多い、接続された円筒セクションをそれらの横断面において含んでいる。
【0004】
断熱目的で、ポリウレタン(PU)フォームなどのポリマーフォームを、吹き付けにより、タンクの外面に直接、塗布することがよく知られている。ポリマーフォームは通常、2つの主成分、すなわち、PUフォームの場合、プレミックスポリオールおよびイソシアネート(P-MDI)を備える。塗布中、上記主成分は、混合されて、ポリマーフォーム前駆体を形成し、それは次いで、スプレーガンから分配され、タンクシェル外側に吹き付けられる。塗布されると、ポリマースプレーフォームは、膨張し、およびその後、硬化し、断熱層を形成する。ポリマースプレーフォームは通常、断熱層の、必要な合計厚さを得るために、タンクシェル外側に、10~35mmの厚さのいくつかの層で塗布される。直接、タンクシェル外側に吹き付けることによる、ポリマースプレーフォームの塗布はほとんど、単一胴円筒タンク上で使用される。一旦、タンクに塗布されると、ポリマースプレーフォームは、ポリマースプレーフォームとタンクシェル外面との間の接着により、タンクシェル外面上の所定の位置においてのみ、保持される。この接着は、タンク上のポリマーフォームの硬化中にもたらされる。よって、接着強度は、フォームにおける引張強度に限定される。
【0005】
単一胴タンクと対照的に、双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクは、ポリマースプレーフォーム断熱材の強固な接着が課題である。別個の円筒タンクセクション間の接続領域内の、これらの組み合わせ円筒タンクの横断面の幾何形状は複雑である。よって、タンクの温度変化中に、(複数の)接続領域内のポリマースプレーフォーム断熱材において高い熱応力が集中する。強度隔壁と、別個の円筒タンクセクションとの間の接合セクションにおける多方向表面における熱収縮および応力により、課題が生じる。これらの応力は、タンクの冷却および昇温中に生じ、および、スプレーフォームと、タンクシェル外面との間の剥離のリスクを増加させる。具体的には、タンク材の熱収縮は、フォーム断熱材の熱収縮と異なる。さらに、フォーム材は、タンクシェル近くのその低温側から、その外面上のその高温側への温度勾配により、その厚さにわたり、異なる収縮を受ける。熱収縮における、これらの幾何形状に起因する差の組み合わせにより、フォーム内に多方向の応力が生じ、それは、フォームとタンクシェル表面との間での剥離をもたらし得る。タンク内に含まれる液化ガスが低温であるほど、関係する温度勾配が高くなるため、これらの影響は、より顕著になる。
【0006】
これらの課題が理由で、双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクに、スプレーフォームの代わりに、機械的に固定された断熱パネルを使用することが標準的な手法であった。機械的に固定された断熱パネルはしかし、製造に時間がかかり、および費用もかかる。さらに、機械的に固定された断熱パネルは、施工に手間がかかり、したがって、塗布するのに費用がかかる。
【0007】
よって、組み合わせ円筒タンクの改良された断熱配置、および、組み合わせ円筒タンクに断熱を施す、改良された方法に対する明確な必要性が存在している。
【0008】
国際公開第2020/050515号は、タンクの壁構造に固定された第1の断熱パネルおよび第2の断熱パネルを含む複数のサンドイッチパネルを開示している。国際公開第2018/029613号は、タンクの外面に複数の層を順次、貼り付ける工程を伴う、外航船用の極低温断熱システムを開示している。米国特許出願公開第2017/101163号明細書は、複数の個々のパネルで形成された船舶用極低温防壁を開示している。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、液化ガスの貯蔵のための組み合わせ円筒タンクに断熱を施す方法に関する。上記方法は、タンクシェルを備える組み合わせ円筒タンクを設ける工程と、上記タンクシェルの外面上に、ポリマーフォームの1つまたは複数の層を吹き付ける工程と、ポリマーフォームの特定の層の上にクラックバリアを取り付ける工程とを含み、上記クラックバリアが、上記タンクシェルの外面に固定される。
【0010】
本発明は、液化ガスの貯蔵のための組み合わせ円筒タンクにも関する。組み合わせ円筒タンクは、タンクシェル、およびタンクシェルの外面を覆うポリマースプレーフォームの1つまたは複数の層、ポリマースプレーフォームの特定の層の上に取り付けられ、タンクシェルの外面に固定された1つまたは複数のクラックバリアを備える。
【0011】
最後に、本発明は、液化天然ガス、液化石油ガス、液化エタンガス、または液化エチレンガスなどの液化ガスを貯蔵し、および/または輸送するための、本発明による組み合わせ円筒タンクの使用にも関する。
【0012】
本発明による、組み合わせ円筒タンクに断熱を施す方法、および対応する断熱された組み合わせ円筒タンクは、液化石油ガス(LPG)、液化エタンおよび/もしくはエチレンガス、液化天然ガス(LNG)、または他の極低温液化ガスなどの液化ガスの貯蔵および輸送の分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書中で説明されたような、フォーム断熱材を固定するためのスタッドを含む組み合わせ円筒タンクの接続領域の模式横断面である。
【
図2a】第1の構成によるスタッド構成の模式断面図である。
【
図2b】代替的な構成によるスタッド構成の模式断面図である。
【
図2c】さらに代替的な構成によるスタッド構成の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、組み合わせ円筒タンクの接続領域内のタンクシェル1の一部の横断面図を模式的に示す。組み合わせ円筒タンクは、液化ガスの輸送および貯蔵に好適であり、好ましくはIMO独立型タイプCのタンクである。組み合わせ円筒タンクは、双胴(bi-lobe)、三胴(tri-lobe)、または多胴型(multi-lobe)タンクであり得る。それぞれの場合において、横方向に隣接している複数の円筒セクションは、それらの間に配置された強度隔壁により、接続される。強度隔壁は、隣接する円筒セクションに対して、強度隔壁の長手方向に溶接され得る。
【0015】
ポリマースプレーフォーム2の1つまたは複数の層は、タンクシェル1の外側に付着し、タンクシェル1上の断熱材を形成し、ポリマースプレーフォーム2の各層は、いくつかのサブ層からなり得る。好ましくは、ポリマースプレーフォーム2は、ポリウレタン(PU)フォームを備える。ポリマースプレーフォーム2は任意的には、たとえば、強化繊維、イントメッセント添加剤、抗菌剤または抗真菌剤、または体積フィラーなどの添加材を含み得る。
【0016】
複数のスタッド3が、組み合わせ円筒タンクの円筒セクションの接続領域から延在する。好ましくは、スタッド3は、タンクシェル表面の法線方向に局所的に延在する。スタッド3は好ましくは、ねじ山を備えている。好ましくは、スタッド3はタンクシェル1に溶接される。
【0017】
1つまたは複数のクラックバリア4が、スタッド3に接続され、ポリマースプレーフォーム2の特定の層に沿って横方向に延在する。クラックバリア4は、メッシュまたは多孔薄板状であり得る。クラックバリア4は、プラスチック材料、ガラス繊維材料、金属、または複合材料を含み得る。複数のクラックバリア4は、スタッド3に沿って等距離に配置され得る。あるいは、複数のクラックバリア4は、スタッド3に沿って、異なる長さの間隔で配置され得る。
図1を参照されたい。後者の場合、異なる対のクラックバリア間には、異なる数のポリマースプレーフォームの層が存在し得る。あるいは、ポリマースプレーフォーム2の各層は、異なる数のサブ層を備えていてもよく、それにより、異なる厚さを実現し得る。サブ層は、
図2a中、縞状の線で示しており、同じ参照符号は同じ特徴を示す。
図2aは、タンクシェル1、ポリマースプレーフォーム層2、および外装材7の横断面図を模式的に示す。
【0018】
固定バー6、ワッシャおよびナット5は、スタッド3上の所定の位置に、1つまたは複数のクラックバリア4を固定する。固定バー6は、十分に強い材料、たとえば、金属、強化プラスチック、合板、複合材料、またはいずれかの他の好適な強度を有する材料から形成され得る。有利には、固定バー6は、スタッドボルト3からクラックバリア4へと固定力が効果的に伝達移されるように構成される。
【0019】
各クラックバリア4は、ポリマースプレーフォーム2の(複数の)下層をタンクシェルに局所的に固定する。したがって、タンクシェルからスタッド3に沿って外方に移動すると、ポリマースプレーフォーム2の1つまたは複数の層はそれぞれ、クラックバリア4により、所定の位置に局所的に固定されている。それにより、クラックバリア4および固定バー6はポリマースプレーフォーム層をタンクに固定し、ポリマースプレーフォーム2がタンクシェル表面から緩むのを防止し、断熱材の剥離を防止する。
【0020】
塗布中、まず、ポリマースプレーフォーム2の1つまたは複数の第1の層がタンクシェル1の外側に塗布される。ポリマースプレーフォーム2の各層は、1つまたは複数のサブ層を含んでいてもよい。ポリマースプレーフォーム2の1つまたは複数の層の塗布に続いて、クラックバリア4が取り付けられる。ポリマースプレーフォーム2の所望の数の層が実現されるまで、上記プロセスが次いで、繰り返される。クラックバリア4の上に直接塗布されたポリマースプレーフォーム2の各層は、上記クラックバリア4に、および、その下のポリマースプレーフォーム2の複数の層に機械的におよび化学的に固定される。機械的固定は、クラックバリア4を形成するメッシュまたは多孔板の隙間内への、上のフォーム層の膨張により、生じる。化学的固定は、クラックバリア4内の隙間を介して、クラックバリア4の下に位置している、下のフォーム層と、上のフォーム層が結合することにより生じる。よって、ポリマースプレーフォーム2の複数の層間に配置された各クラックバリア4は、ポリマースプレーフォーム2内にしっかりと埋め込まれる。
【0021】
機械的保護材は、ポリマースプレーフォーム2の外側を覆い、それにより、タンクの外面、および周囲環境に対する防壁を形成する。機械的保護材は好ましくは、好ましくは外装材7であり、好ましくは金属材料からなる外装材7である。好ましくは、外装材7は、水密性を有するように構成される。外装材7は、固定バー6、ワッシャおよびナット5(
図1を参照されたい)により、スタッド3上の所定の位置に固定され得る。
【0022】
有利には、クラックバリアは、ポリマースプレーフォームの複数の層を所定の位置に維持し、フォーム内の熱的に誘発された応力による剥離の発生を防止する。さらに、クラックバリアは、有利には、外装材の重量を軽減する。
【0023】
代替的な構成は
図2bおよび2cに示され、それらでは、同じ参照符号は、
図1および2a中のように、同じ特徴を表す。見やすくするために、サブ層は、
図2bおよび2cに示されていない。
図2bに示される1つの代替的な構成によれば、外装材7は、スタッド3に固定されていない。有利には、スタッドと、外装材により形成された外面との間の熱的断絶が生じる。それにより、熱的に誘発される応力が低減し、断熱材の剥離のリスクをさらに低減させる。
【0024】
図2cに示される別の代替的な構成によれば、熱的断絶要素(thermal break element)8が、スタッド3の一体的な部分として形成される。サーマルブレイク要素8は好ましくは、2つのクラックバリア4間に配置される。有利には、熱的断絶要素はそのスタッドを2つの部分に分離し、それにより、スタッドそれ自体において熱的断絶をもたらし、熱的に誘発される応力を低減させる。よって、断熱材の剥離のリスクがさらに低減する。
【0025】
本発明による、組み合わせ円筒タンクに断熱を施す方法について次に説明される。
図1に関して前述されたような組み合わせ円筒タンクが提供される。組み合わせ円筒タンクは、複数のスタッド3を備えたタンクシェル1を含む。複数のスタッド3は、円筒セクション間の(1つまたは複数の)長手方向の接続領域に沿って配置される。1つまたは複数のクラックバリア4が、
図1に示されるように、固定バー6、ワッシャおよびナット5により、スタッド3に取り付けられ得る。
【0026】
ポリマースプレーフォーム2が、タンクシェル1の外面上に、別個の複数の層に吹き付けられる。ポリマーフォーム前駆体が、手動操作の、またはロボット操作のスプレーガンであり得るスプレーガンから分配される。スプレーガンの一回の通過により、ポリマースプレーフォーム2のサブ層が形成される。1つまたは複数のサブ層は、ポリマースプレーフォーム2の層を形成する。タンクシェル1に塗布すると、ポリマーフォーム前駆体は膨張し、タンクシェル1の外面に付着する。任意には、ポリマースプレーフォーム2は、膨張により、硬化され得る。クラックバリア4が次いで、スタッド3上に取り付けられて、ポリマースプレーフォーム2の層を局所的に覆う。クラックバリア4の取り付けに続いて、ポリマースプレーフォーム2の次の層が塗布され、その上に、さらなるクラックバリア4が施される。ポリマースプレーフォーム2の次の層は、ポリマースプレーフォーム2の(複数の)下層に付着する。プロセスは、ポリマースプレーフォームの所望の数の層が実現されるまで続く。ポリマースプレーフォーム層2の最外層に対しては、クラックバリア4は施されてもよいし、施されなくてもよい。完了すると、吹き付けられ、膨張させられ、および場合によっては硬化させられたポリマースプレーフォーム2は、タンクシェル1を取り囲む断熱層を形成する。
【0027】
ポリマースプレーフォーム2の次の層のそれぞれの吹き付けおよび膨張中に、ポリマーフォーム前駆体は、クラックバリア4を形成するメッシュまたは多孔板内の隙間を貫通し、上記隙間を通って膨張する。よって、次のフォーム層のそれぞれは、それがその上に塗布されるそのクラックバリア4内に機械的に固定される。さらに、ポリマーフォーム前駆体は、ポリマースプレーフォームの先行層へのクラックバリア4内の隙間を通る膨張中に化学的に結合する。機械的および化学的固定により、ポリマースプレーフォーム2は、クラックバリア4に強固に取り付けられ、それにより、フォーム内の熱応力による剥離を防止する。
【0028】
ポリマースプレーフォーム2の塗布が完了すると、
図1に関して前述された外装材7などの機械的保護材が、ポリマースプレーフォーム断熱材を覆うために設けられ得る。外装材7は、
図2aに示されるように、スタッド3に直接、取り付けられ得る。任意には、スタッド3には、
図2cの代替的な構成において示されるように、熱的断絶要素8が設けられてもよい。
【0029】
あるいは、外装材は、スタッド3に固定されていない状態に留まり、それにより、
図2bの代替的な構成に示されるように、熱的断絶部を形成する場合がある。
【0030】
有利には、本発明の方法は、通常、組み合わせ円筒タンク上のスプレーフォーム断熱材に関連付けられた断熱材の剥離のリスクを同時に回避する一方で、ポリマースプレーフォームタンク断熱プロセスの利便性、および、関連する低減した労力およびコストをもたらす。
【0031】
使用中、本発明による組み合わせ円筒タンクは、液化ガスの貯蔵および/または輸送に利用され得る。それに対して、組み合わせ円筒タンクは、LNGまたはLPG船などの海洋構造物の保持スペース内に取り付けられ得る。
【0032】
組み合わせ円筒タンク内に貯蔵された最低温度の液化ガスは現在、LNGである。有利には、本発明は、剥離の問題点が確実に防止される一方で、LNG用の、および、さらに低温の液化ガス用のポリマースプレーフォーム断熱材により、断熱された組み合わせ円筒タンクを使用することを可能にする。
【0033】
前述の実施形態および実施例は決して限定的なものでなく、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ、画定される。
【符号の説明】
【0034】
1 タンクシェル
2 ポリマースプレーフォーム
3 スタッド
4 クラックバリア
5 ワッシャおよびナット
6 固定バー
7 外装材
8 熱的断絶要素
【手続補正書】
【提出日】2022-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスの貯蔵のための
、双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクに断熱を施す方法であって、前記方法が、
タンクシェル(1)を備える
、双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクを設ける工程と、
前記タンクシェル(1)の外面上に、ポリマーフォーム(2)の1つまたは複数の層を吹き付ける工程と、
前記ポリマーフォーム(2)の1つまたは複数の層の上に、1つまたは複数のクラックバリア(4)を取り付ける工程と
を含み、
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、
前記双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクの円筒セクションの、1つまたは複数の接続領域において前記タンクシェル(1)の外面に固定される、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、前記タンクシェル(1)に固定されたスタッド(3)により、前記タンクシェル(1)の外面に固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、前記スタッド(3)上の所定の位置に固定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各クラックバリア(4)がメッシュまたは多孔板を含み、前記メッシュまたは前記多孔板は、好ましくは、プラスチック材料、ガラス繊維材料、金属、または複合材料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
吹き付けの完了後、外装材(7)が、前記組み合わせ円筒タンクに取り付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記外装材(7)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、スタッド(3)に固定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各スタッド(3)が、前記スタッド(3)の一体的な部分を形成する熱的断絶部を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外装材(7)が、スタッド(3)に接続されていない状態に留まり、それにより、熱的断絶をもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記組み合わせ円筒タンクが、双胴タンク、三胴タンク、または多胴タンクである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
液化ガスの貯蔵のための
、双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクであって、前記
双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクが、
タンクシェル(1)と、
前記タンクシェル(1)の外面を覆うポリマースプレーフォーム(2)の1つまたは複数の層と、
前記ポリマースプレーフォーム(2)の1つまたは複数の層の上に取り付けられ、
前記双胴、三胴、または多胴型の組み合わせ円筒タンクの円筒セクションの、1つまたは複数の接続領域において、前記タンクシェル(1)の外面に固定された、1つまたは複数のクラックバリア(4)と
を備える、組み合わせ円筒タンク。
【請求項11】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、前記タンクシェル(1)に固定されたスタッド(3)により、前記タンクシェル(1)の外面に固定される、請求項10に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項12】
前記1つまたは複数のクラックバリア(4)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、前記スタッド(3)上の所定の位置に固定される、請求項11に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項13】
各クラックバリア(4)がメッシュまたは多孔板を含み、前記メッシュまたは前記多孔板は、好ましくは、プラスチック材料、ガラス繊維材料、金属、または複合材料を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項14】
前記ポリマースプレーフォーム(2)を覆う外装材(7)をさらに備える、請求項10~13のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項15】
前記外装材(7)が、固定バー(6)、ワッシャおよびナット(5)により、スタッド(3)に固定される、請求項14に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項16】
各スタッド(3)が、前記スタッド(3)の一体的な部分を形成する熱的断絶部を含む、請求項15に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項17】
前記外装材(7)がスタッド(3)に接続されておらず、それにより、熱的断絶をもたらす、請求項14に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項18】
前記組み合わせ円筒タンクが、双胴タンク型、三胴タンク型、または多胴タンク型である、請求項10~17のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンク。
【請求項19】
請求項10~18のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンクを含む、船舶などの海洋設備。
【請求項20】
液化天然ガス、液化石油ガス、液化エタンガス、または液化エチレンガスなどの液化ガスを貯蔵し、および/または輸送するための、請求項10~18のいずれか1項に記載の組み合わせ円筒タンクの使用。
【国際調査報告】