(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】COVID-19患者の疾患重症度を予測するためのGDF-15
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
G01N33/53 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503462
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2021069980
(87)【国際公開番号】W WO2022017980
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】トールビョールン オムランド
(72)【発明者】
【氏名】ウルズラ-ヘンリーケ ビーンフエス-テレン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ツィーグラー
(57)【要約】
本発明は、COVID-19患者の疾患重症度を予測するための方法であって、a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、b)工程a)で決定されたレベルを基準と比較することと、COVID-19患者の疾患重症度を予測することとを含む方法に関する。COVID-19患者の、リスク層別化、疾患進行のモニタリング及び入院のリスク予測のための方法も包含される。さらに、COVID-19患者の、集中治療の必要性、血栓症、肺塞栓症、低酸素症及び死亡のリスクを予測するための方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
COVID-19患者の疾患重症度を予測するための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の前記疾患重症度を予測することと
を含む、方法。
【請求項2】
GDF-15のレベルの増加が、COVID-19患者の疾患重症度の増加を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
COVID-19患者の重度の疾患に進行するリスクの層別化のための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者のリスクを層別化することと
を含む、方法。
【請求項4】
COVID-19患者の疾患進行をモニタリングするための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの第1の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)前記第1の試料の後に得られた前記COVID-19患者からの第2の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
c)前記第1の試料中のGDF-15の前記レベルを前記第2の試料中のGDF-15の前記レベルと比較することと、
d)工程c)の結果に基づいて、COVID-19患者の疾患進行をモニタリングすることと
を含む、方法。
【請求項5】
前記第2の試料中のGDF-15のレベルの増加が、より重度の疾患進行を示す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
GDF-15値が増加している患者がより綿密にモニタリングされる、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
COVID-19患者の入院のリスクを予測する方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の入院のリスクを予測することと
を含む、方法。
【請求項8】
ICUに選択された患者が、次の24時間及び72時間以内に臨床転帰の合併症を有すると予想される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
COVID-19患者の集中治療の必要性を予測するための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の前記集中治療の必要性を予測することと
を含む、方法。
【請求項10】
集中治療室での入院又は処置のためにCOVID-19患者を選択するための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)集中治療室にCOVID-19患者を選択することと
を含む、方法。
【請求項11】
GDF-15のレベルが増加した患者が、ICU入院又は処置のために選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ICUに選択された患者が、24時間及び72時間以内に臨床転帰の合併症を有すると予想される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
COVID-19患者の死亡リスクを予測するための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の前記死亡リスクを予測することと
を含む、方法。
【請求項14】
GDF-15レベルの増加が、COVID-19患者の死亡リスクの増加を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
COVID-19患者の血栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の前記血栓症のリスクを予測することと
を含む、方法。
【請求項16】
COVID-19患者の肺塞栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)前記COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定された前記レベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の前記肺塞栓症のリスクを予測することと
を含む、方法。
【請求項17】
COVID-19患者の疾患重症度を予測するためのコンピュータ実装方法であって、
a)処理ユニットにおいて、COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルの値を受信することと、
b)工程(a)において受信した前記値を前記処理ユニットで処理することであって、前記処理することが、GDF-15の前記レベルについて1つ又は複数の閾値をメモリから検索することと、工程(a)において受信した前記値を前記1つ又は複数の閾値と比較することとを含む、前記値を前記処理ユニットで処理することと、
c)出力装置を介してCOVID-19患者の前記疾患重症度の予測を提供することであって、前記予測が工程(b)の結果に基づく、COVID-19患者の前記疾患重症度の予測を提供することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項18】
a)COVID-19患者の疾患重症度の予測、
b)COVID-19患者のリスク層別化、
c)COVID-19患者の疾患重症度の程度のモニタリング
のための、GDF-15又はGDF-15に結合する薬剤のインビトロ使用。
【請求項19】
I.GDF-15は、GDF-15ポリペプチドであり、
II.前記COVID-19患者は、65歳以上であり、
III.前記COVID-19患者は、糖尿病を有しており、
IV.前記COVID-19患者は、より低い酸素飽和度を有しており、かつ/又は
V.前記COVID-19患者は、入院時の早期警報スコア(National Warning Score)がより高い、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法又は請求項18に記載のインビトロ使用。
【請求項20】
前記COVID-19患者の低酸素症及び不十分な組織酸素化が、臨床的に見られない(「無症候性」又は「無症状低酸素症」)、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法又は請求項17に記載のインビトロ使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COVID-19患者の疾患重症度を予測するための方法であって、a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、b)工程a)で決定されたレベルを基準と比較することと、COVID-19患者の疾患重症度を予測することとを含む方法に関する。
【0002】
リスクの層別化、疾患進行のモニタリング及びCOVID-19患者の入院のリスク予測のための方法も包含される。さらに、COVID-19患者の、集中治療の必要性、血栓症、肺塞栓症、低酸素症及び死亡のリスクを予測する方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
SARS Corona-2ウイルスは、2019年末に中国のウイルス学者によって発見され、それ以来世界中に絶え間なく拡散している。コロナウイルス病2019(COVID-19)の病因物質である、かつてnCoV-19(新規コロナウイルス2019)として知られていたSARS CoV-2は、2020年初期にパンデミックを引き起こし、世界中で公的生活の実質的な制限及び深刻な経済的影響をもたらした。
【0004】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる。この疾患に関連する罹患率及び死亡率は高く、根底にある心血管疾患(CVD)を有する個体は不均衡な影響を受ける。いくつかの研究はまた、COVID-19で入院した患者の中で心不整脈、急性冠動脈症候群及び心不全関連事象の発生率がより高いことを指摘しており、心損傷は非生存者の40%において死因の一因となっていると報告されている。また生存者の中でも、入院患者のかなりの割合(20~30%)が感染中の心損傷の証拠を示す(Guo T,et al.,JAMA Cardiol.2020.Guan W-j,et al.,New England Journal of Medicine.2020;382:1708-1720.Zhou F,et al.,The Lancet.2020;395:1054-1062.Shi S,et al.JAMA Cardiol.2020,doi:10.1001/jamacardio.2020.0950.Ruan Q,et al.,Intensive Care Med.2020;46:846-848)。さらに、COVID-19患者を用いた試験で循環マーカーを測定したところ、呼吸不全患者の増加が示された(Ueland et al.Journal of Infection 81(2020)e41-e43)。
【0005】
提案されている仮説にはサイトカインストーム、動脈低酸素症、低灌流、凝固障害、アドレナリン作動性刺激及びACE-2媒介性傷害が含まれるが(Varga Z,et al.,Lancet(London,England).2020;395:1417-1418)、SARS-CoV-2を心疾患に結び付ける機構はまだ不明である。血管血管形成は、COVID-19の肺病理生物学を同等に重度のインフルエンザウイルス感染症のものと区別した(Ackermann M et al.,N Engl J Med.2020 May 21.doi:10.1056/NEJMoa2015432):臨床的には、多くの患者は、血栓性微小血管障害を示唆する四肢の皮膚変化だけでなく、上昇したd-二量体レベルを有していた。びまん性血管内凝固及び大血管血栓症は、多臓器不全に関連している。(Ackermann M et al.,N Engl J Med.2020 May 21.doi:10.1056/NEJMoa2015432)COVID-19患者の10~20%が重度の症候を有すると推定されているため、無症候性又は軽度から生命を脅かす疾患状態までのCOVID-19症候の悪化に関連するリスク因子の知識が患者の管理に役立つ(Chang MC et al.,BMC Infect Dis.2020;20:445)。
【0006】
したがって、SARS-CoV-2に感染した患者の予後情報を提供し、疾患の進行及び重症度を予測して、症候が軽度から生命を脅かすまで変化し得るこのようなパンデミック疾患における効率的な資源配分を支援するバイオマーカーの必要性が高い。末梢酸素飽和度(SpO2)レベル、COVID-19患者の併存症、及び追加のリスク因子が、ICUへの収容の必要性を判定するために示唆されている。バイオマーカーは、罹患組織及び疾患進行の機構に関する追加の生物学的情報を提供し、したがって、より標的化され、強化された治療層別化の基礎として役立つ。(Velavan TP et al.,Int J Infect Dis.2020;95:304-307
【0007】
COVID-19で必要とされるケアの強度と緊急性をより良く区別するために、疾患の重症度を、無症候性、軽症、中等症、重症、及び重篤という用語を使用することによって分類した(Wang Y et al.,J Med Virol 2020 Jun;92:568-576):軽度の患者は、X線写真上の特徴なしに軽度の症状しか示さない。中等症の患者は、発熱、呼吸器症候及びX線特徴を呈する。重症患者は、以下の3つの基準のうちの1つを満たす:(a)呼吸困難、RRが30回超/分、(b)周囲空気での酸素飽和度が93%未満、及び(c)300mmHg未満のPaO2/FiO2。重篤患者は、以下の3つの基準のうちの1つを満たす:(a)呼吸不全、(b)敗血症性ショック、及び(c)多臓器不全。Wang Y et al.,J Med Virol 2020 Jun;92:568-576)。中国でこれまで行われた最大の疫学試験は、44,672の確認された症例の中で、80.9%が軽症/一般的な肺炎と考えられ、13.8%が重症症例であり、4.7%が重篤症例であり、全体の致死率が2.3%であることを示し(疫学ワーキンググループ;Zhonghua Liu Xing Bing Xue Za Zhi 2020;41:145-151)、患者の約20%が集中治療を必要とすることを示唆した。重篤なCOVID-19患者のカテゴリーにおける多臓器不全は、多臓器不全の早期発症を予測するマーカーの必要性を示唆しており、GDF-15の生物学がそのギャップを埋める可能性がある。
【0008】
増殖分化因子15(GDF-15)は、TGFベータファミリーのメンバーであり、40kDのプロペプチドとして合成され、そのN末端部分の切断を受けて、分泌される活性な30kDジスルフィド結合二量体タンパク質を生成する。GDF-15は、心不全及び心臓再灌流傷害に関連している(Kempf T et al.,2006,Circulation Research,98:351-360)。GDF-15は、虚血、低酸素、炎症、組織低灌流、酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全、及び神経ホルモン活性化などの様々なストレスに応答して多くの組織で誘導されることが示されている。GDF-15の放出は、抗炎症、抗アポトーシス及び抗増殖効果を誘導することができ、それによって血管保護機構を発揮する(Altena R et al.,PLoS One.2015 Jan 15;10:e0115372)。国際公開第2008/015254号は、心不全の治療に適格であるCOVID-19患者を識別するGDF-15検出に基づく方法を開示している。さらに、好ましくは、基準よりも大きいGDF-15のレベル(好ましくは1200pg/ml)が、心不全の治療に適格なCOVID-19患者を示す。
【0009】
GDF-15(マクロファージ阻害性サイトカイン-1としても知られる)は、密接に関連する3つの病態生理学的症状:低酸素症、鉄欠乏、及び炎症における調節因子であることが記載されている。GDF-15は、鉄処理の重要な調節因子である肝臓ヘプシジンのダウンレギュレーターとして作用する(Finkenstedt A et al.,Br J Haematol 2009;144:789-93)。炎症は、鉄の恒常性、腸の鉄吸収の減少、及びマクロファージにおける鉄の捕捉に強力な効果を有する。臨床試験は、無効赤血球生成、貧血、凝固能亢進、及び虚血の組み合わせに起因すると考えられる組織酸素化が低下した患者においてGDF15のレベルが増加したことを見出した(Lakal et al.,BLOOD,2009;113,(7):1555-1563)。深刻な低酸素状態の間、組織傷害はミトコンドリア変性によって引き起こされる。低酸素血症は、肺微小血管系におけるフィブリン形成の増加と共に、全身血管拡張を誘導するが、肺血管収縮も誘導する(Cavezzi A et al.,Clin Pract.2020;doi:10.4081/cp.2020.1271)。したがって、GDF-15は、重度の細胞傷害の徴候としてミトコンドリア機能不全中に放出されるほとんどの器官の細胞酸素欠乏の初期の指標である。
【0010】
COVID-19の無症状低酸素症は、疾患重症度の徴候及び不良な転帰の原因として記載されている(Kashani K et al.,Mayo Clin Proc.2020;95(6):1094-1096)。これらの状況では、無症状低酸素症は、COVID-19患者が息切れしているようには見えず、又は呼吸数の増加を示しておらず、空気の不足を感じていないが、彼らの血中酸素レベルは、通常よりもかなり低い酸素レベルである80%を著しく下回る症状として定義されている。80%未満の動脈血中酸素レベルは、重度の疾患の徴候であり、脳及び心臓などのほとんどの重要な器官の機能を損なう可能性がある。
【0011】
生理学的GDF-15濃度は年齢と共に増加するが、病的状態における発現は、炎症、酸化ストレス及び低酸素を含むいくつかの経路を介して高度に調節される。循環GDF-15の高濃度は、複数の疾患実体、すなわちCVD、敗血症、癌及び糖尿病において同定されており、疾患進行の堅固な予測因子であると思われる。しかしながら、COVID-19におけるGDF-15の役割及び予後の重要性は不明である。通常の生理学的条件下でのGDF-15の半減期は、3時間と短いと報告されている(Xiong Y et al.,Sci Transl Med 2017;9:eaan8732)。COVID-19の潜伏期間は、症候発症への曝露から4~5日の中央値時間、病気又は症候の発症からICU入室まで約10~12日、及び生存者の入院期間の中央値約10~13日と報告されている。(Guan WJ et al.,N Engl J Med 2020;382:1708-20).利用可能な最新のデータに基づいて、最初に心臓病変を有していた患者は、疾患の急性期の回復後1~3ヶ月毎に診察されるべきであることが提案されている(Guzic TJ et al.,Cardiovasc Res.2020,doi:10.1093/cvr/cvaa106)。
【0012】
COVID-19患者の炎症性及び心血管バイオマーカーを評価するパンデミックの初期に中国から発表された研究は、入院患者2-5の非連続的な遡及的シリーズからのデータを報告した。これらの研究は、インターロイキン-6(IL-6)、フェリチン、心筋トロポニン及びD-ダイマーの増加がより悪い転帰に関連することを同定した。そのような試験設計は、バイオマーカーを測定するための指標が処置する医師によって決定されるので、選択バイアスの実質的なリスクを導入する。
【0013】
本発明者らは、SARS-CoV-2に感染した患者の前向き試験において、GDF-15動態と心血管バイオマーカー及び炎症性バイオマーカーとの間の関連を調査することを目的とした。
【0014】
驚くべきことに、本発明者らは、GDF-15がCOVID-19患者の高い割合で上昇し、より高い濃度がSARS-CoV-2ウイルス血症及びより悪い臨床転帰に関連することを示すことができた。GDF-15は、cTnT、NT-proBNP、CRP及びD-ダイマーを含む、COVID-19の既知のリスクマーカーよりも優れた予後情報を提供する。増加したGDF-15レベルは、血中酸素化レベルに反比例していた。入院中のGDF-15のより大きな増加もまた、より悪い転帰と独立して関連している。
【発明の概要】
【0015】
概要
第1の態様では、本発明は、COVID-19患者の疾患重症度を予測するための方法であって、
COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
工程a)で決定されたレベルを基準と比較することと、COVID-19患者の疾患重症度を予測することと
を含む、方法に関する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、COVID-19患者のリスクの層別化のための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
COVID-19患者のリスクを層別化することと
を含む、方法に関する。
【0017】
第3の態様では、本発明は、COVID-19患者の疾患進行をモニタリングするための方法であって、
a)COVID-19患者からの第1の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)第1の試料の後に得られたCOVID-19患者からの第2の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
c)第1の試料中のGDF-15のレベルを第2の試料中のGDF-15のレベルと比較することと、
d)工程c)の結果に基づいて、COVID-19患者の疾患進行をモニタリングすることと
を含む、方法に関する。
【0018】
第4の態様では、本発明は、COVID-19患者の入院のリスクを予測する方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の入院のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0019】
第5の態様では、本発明は、COVID-19患者の集中治療の必要性を予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の集中治療の必要性を予測することと
を含む、方法に関する。
【0020】
第6の態様では、本発明は、集中治療室での入院又は処置のためにCOVID-19患者を選択するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)集中治療室にCOVID-19患者を選択することと
を含む、方法に関する。
【0021】
第7の態様では、本発明は、COVID-19患者の死亡リスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の死亡リスクを予測することと
を含む方法に関する。
【0022】
第8の態様では、本発明は、
a)COVID-19患者の疾患重症度の予測、
b)COVID-19患者のリスクの層別化、
c)COVID-19患者の疾患重症度の程度のモニタリング
のための、GDF-15又はGDF-15に結合する薬剤のインビトロ使用に関する。
【0023】
第9の態様では、本発明は、COVID-19患者の血栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の血栓症のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0024】
第10の態様では、本発明は、COVID-19患者の肺塞栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の肺塞栓症のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0025】
第11の態様では、本発明は、
a)COVID-19患者の疾患重症度の予測、
b)COVID-19患者のリスクの層別化、
c)COVID-19患者の疾患重症度の程度のモニタリング
のための、GDF-15又はGDF-15に結合する薬剤のインビトロ使用のための方法に関する。
【0026】
第12の態様では、本発明は、
a)血中酸素の減少(低酸素症)、
b)無症状低酸素症(患者及び医師が臨床症候に基づいて低酸素症及び疾患重症度を認識していなかったもの)、
c)灌流(虚血)下で、不十分な酸素供給及び組織の壊死(一般的な低酸素症)
を有するCOVID-19患者を診断するためのGDF-15のインビトロ使用のための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】COVID-19で入院した患者における入院心血管及び炎症バイオマーカーの濃度並びに主要評価項目との関連(n=123)。 モデル1:年齢、性別、人種、肥満度指数、心血管疾患及びクレアチニンについて調整 モデル2:モデル1+表中の全ての他のバイオマーカーについて調整 濃度を中央値(Q1、Q3)として報告する。全てのバイオマーカー値を、調整した回帰モデルにおいて対数変換した。 略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子15
【
図2】COVID-19で入院した患者における入院心血管及び炎症バイオマーカーの濃度並びに全ての死因との関連(n=123)。 モデル1:年齢、性別、人種、肥満度指数、心血管疾患及びクレアチニンについて調整 濃度を中央値(Q1、Q3)として報告する。全てのバイオマーカー値を、調整された回帰モデルにおいて対数変換した。略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子1
【
図3】COVID-19で入院した患者の間で主要試験評価項目によって層別化された心血管バイオマーカー及び炎症性バイオマーカーにおける入院から3日目までの濃度の変化(n=96)。 モデル1:年齢、性別、人種、肥満度指数、心血管疾患及びクレアチニンについて調整 モデル2:モデル1+各バイオマーカーのベースライン濃度について調整 濃度を中央値(Q1、Q3)として報告する。全てのバイオマーカーデルタ値を、調整した回帰モデルにおいて対数変換した。 略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子15
【
図4】入院時に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2ウイルス血症を有する患者の割合及び増殖分化因子15(GDF-15)入院濃度の四分位数によって主要評価項目に達した患者の割合。P値は、GDF-15の四分位にわたるウイルス血症の傾向に対するものである。*=年齢、性別、人種、肥満度指数、心血管疾患及びクレアチニンについて調整。
【
図5】SARS-CoV2陽性患者におけるインターロイキン-6、プロカルシトニン、フェリチン、D-ダイマー、心筋トロポニンT、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、及び増殖分化因子子15(GDF-15)濃度の変化。入院から、入院3日目及び9日目に入手可能な試料を有する個体、すなわち9日間以上入院した個体からのデータ(n=49)。値は中央濃度であり;群は、複合主要評価項目「ICU入院又は死亡」対「非ICU入院生存者」によって層別化される。
【
図6】ICU生存で層別化した入院から3日目までのSARS-CoV-2陽性患者間のGDF-15濃度の変化。値は中央値濃度である。
【
図7】ベースラインでのGDF-15と酸素飽和度との間の関連:より低い酸素飽和度とより高いGDF-15との間に有意な関連があった:対数単位GDF-15あたりのβ係数-2.23(95% CI-3.46から-0.99)、p=0.001。この関連は、年齢、性別、人種、肥満(BMI≧30kg/m2)、CVD(以前の心筋梗塞、心不全又は心房細動)及びクレアチニンについて調整した後も持続した。 表1:主要試験評価項目(集中治療室への入院又は死亡)によって層別化された全COVID MECH試験集団(n=123)のベースライン特性。 表2:全集団における中央増殖分化因子15(GDF-15)濃度(2798pg/ml)によって層別化されたベースライン特性。 表3:入院増殖分化因子15濃度の多変量回帰。 表4:バイオマーカーの入院濃度間のスピアマン相関。全ての相関は有意であった(p<0.05)。 略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子15。 表5:全ての変数をモデルに列挙した、入院時の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型ウイルス血症の多変量ロジスティック回帰。 表6:ICUに入院したCOVID-19患者(n=31)のICU死亡率によって層別化されたGDF-15の入院から9日目までの濃度の変化。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法、プロトコル、及び試薬に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0029】
いくつかの文献が本明細書中で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であろうと以下であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。このように組み込まれた参照の定義又は教示と、本明細書に引用された定義又は教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0030】
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態と共に列挙されているが、これらは任意の方法及び任意の数で組み合わせて追加の実施形態を作成することができることを理解されたい。種々の説明された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示、及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、かつ包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列及び組み合わせは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の説明によって開示されていると考えるべきである。
【0031】
本発明の方法は、好ましくは、エクスビボ又はインビトロ法である。さらにそれは、先に明示的に述べられたものに加えて、複数の工程を含んでもよい。例えば、更なる工程は、処置前の試料を採取すること、若しくは上記方法で得られた結果を評価することに関する場合がある。この方法は、手動で実行されてもよく、自動化によって補助されてもよい。好ましくは、工程(a)、(b)及び/又は(c)は、全体的又は部分的に、自動化によって、例えば、工程(a)における決定又は工程(b)におけるコンピュータを実装した比較及び/又は当該比較に基づく予測のため、適切なロボット及び感覚的機器によって、補助されてもよい。
【0032】
定義
単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」のような変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループの包含を意味するが、いかなる他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループの除外を意味しないことが理解されよう。
【0033】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0034】
レベル、濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では「範囲」の形式で表現又は提示され得る。このような範囲の形式は、便宜上及び簡潔にするために単に使用されているにすぎないことが理解され、したがって、その範囲の境界として明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値及び部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを含むことを柔軟に解釈するべきである。例示として、「150mg~600mg」の数値範囲は、150mg~600mgの明示的に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、150、160、170、180、190、...580、590、600mgなどの個々の値、及び150~200、150~250、250~300、350~600などの部分範囲が含まれる。この同じ原理は、1つの数値のみを列挙する範囲にも適用される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅又は記載されている特性にかかわらず、適用すべきである。
【0035】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、かつ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0036】
用語「疾患」及び「障害」は、本明細書では互換的に使用され、異常な症状、特に組織、器官又は個体がもはやその機能を効率的に果たすことができない病気又は損傷などの異常な医学的症状を指す。必ずしもそうとは限らないが、典型的には、疾患は、そのような疾患の存在を示す特定の症候又は兆候に関連する。したがって、そのような症候又は兆候の存在は、疾患に罹患している組織、器官又は個体を示し得る。これらの症候又は兆候の変化は、そのような疾患の進行を示し得る。疾患の進行は、典型的には、疾患の「悪化」又は「好転」を示し得る、そのような症候又は兆候の増加又は減少を特徴とする。疾患の「悪化」は、組織、器官又は生物がその機能を効率的に果たす能力の減少を特徴とするのに対して、疾患の「好転」は、典型的には、組織、器官又は個体がその機能を効率的に果たす能力の増加を特徴とする。疾患の例には、感染性疾患、炎症性疾患、皮膚症状、内分泌疾患、腸疾患、神経障害、関節疾患、遺伝性障害、自己免疫疾患、外傷性疾患、及び様々な種類の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される「疾患重症度」という用語は、疾患プロセスが資源の利用、併存症、及び死亡率に及ぼす影響を特徴付ける。疾患重症度は、医療記録からの臨床データ又は退院/請求データのいずれかに基づいて、患者によって示される病気の程度及び疾患のリスクを反映する。
【0038】
本明細書で使用される「疾患進行」という用語は、疾患の経過を指す。この用語は、ほとんどの場合、その経過が疾患の悪化、成長又は拡大である疾患又は身体的不快を反映する。これは、死亡、重篤な衰弱、又は臓器不全が起こるまで起こり得る。いくつかの進行性疾患は、処置によって停止及び回復させることができる。多くは、医学的治療によって減速され得る。いくつかは、現在の処置によって変更することができない。疾患は、急速進行性(典型的には数日から数週間)又は緩徐進行性(数ヶ月から数年)であり得る。実質的に緩徐進行性の疾患は、時間経過に関して慢性疾患でもあり;これらの多くは変性疾患とも呼ばれる。全ての慢性疾患が進行性であるとは限らない:慢性の非進行性疾患は、静止症状と呼ばれることがある。
【0039】
疾患の「症候」は、そのような疾患を有する組織、器官又は生物によって顕著な疾患の暗示であり、以下に限定されないが、組織、器官又は個体の疼痛、脱力感、圧痛、緊張、硬直及び痙攣を含む。疾患の「兆候」又は「シグナル」には、以下に限定されないが、バイオマーカー若しくは分子マーカーなどの特定のインジケータの有無、増加若しくは上昇、減少若しくは低下などの変化(change)若しくは変化(alteration)、又は症候の発症、存在若しくは悪化が含まれる。疼痛の症候には、以下に限定されないが、持続性又は様々な灼熱痛、拍動痛、かゆみ又は刺痛として感じられ得る不快な感覚が含まれる。
【0040】
「コロナウイルス」という用語は、哺乳動物及び鳥類において疾患を引き起こす関連ウイルスの群を指す。ヒトでは、コロナウイルスは、軽度から致死的までの範囲であり得る気道感染症を引き起こす。軽度の病気には、風邪の一部の症例が含まれるが、より致死的な種類は、「SARS」、「MERS」、及び「COVID-19」を引き起こす可能性がある。コロナウイルスは、プラスセンスの一本鎖RNAゲノムを含有する。
【0041】
ウイルスエンベロープは、膜(M)、エンベロープ(E)及びスパイク(S)構造タンパク質が固定されている脂質二重層によって形成される。エンベロープの内部で、ヌクレオカプシド(N)タンパク質の複数のコピーがヌクレオカプシドを形成し、これは連続的なビーズ-オン-ストリング型の立体配座でプラスセンス一本鎖RNAゲノムに結合している。そのゲノムは、レプリカーゼ/転写酵素ポリタンパク質をコードするOrfs 1a及び1bと、その後に、スパイク(S)-エンベロープタンパク質、エンベロープ(E)-タンパク質、膜(M)-タンパク質及びヌクレオカプシド(N)-タンパク質をコードする配列とを含む。これらのリーディングフレームの間には、異なるウイルス株の間で異なるアクセサリータンパク質のリーディングフレームが散在している。
【0042】
いくつかのヒトコロナウイルスが知られており、そのうちの4つは患者においてかなり軽度の症候をもたらす。
ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、α-CoV
ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、α-CoV
ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、β-CoV
ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、β-CoV
【0043】
3つのヒトコロナウイルスは、潜在的に重度の症候を生じる。
中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、β-CoV
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、β-CoV
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、β-CoV
【0044】
SARS-Cov-2は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こす。この株は中国の武漢で最初に発見されたので、武漢ウイルスと呼ばれることもある。SARS-Cov-2は、ヒトに対して非常に伝染性があり、世界保健機関(WHO)は、まだ進行中のCOVID-19のパンデミックを、国際的懸念の公衆衛生に関する緊急事態に指定している。現在知られている最も早い感染症例は、2019年11月17日に発見されたと考えられている。SARS-Cov-2配列は、2020年1月10日に最初に公表された(Wuhan-Hu-1、GenBankアクセション番号MN908947)。最初の武漢でのアウトブレイク後、このウイルスは中国の全ての省、並びにアジア、欧州、北米、南米、アフリカ及び太平洋の150を超える他の国に拡散した。症候としては、高熱、喉の痛み、乾性咳、及び消耗が挙げられる。重篤な場合、肺炎が発症することがある。
【0045】
「天然コロナウイルス」という用語は、自然界で発生しているコロナウイルス、すなわち上記に開示されている任意のコロナウイルスを指す。天然コロナウイルスは、天然に存在するウイルスに存在する全てのタンパク質及び核酸分子を含むことが理解される。天然コロナウイルスとは異なり、「ウイルス断片」、「ウイルス様粒子」、又はコロナ特異的抗原は、天然に存在するウイルスに存在する全てではないが一部のタンパク質及び核酸分子のみを含む。したがって、そのような「ウイルス断片」、「ウイルス様粒子」、又はコロナ特異的抗原は、感染性ではないが、依然として患者において免疫応答を引き起こすことができる。したがって、コロナ特異的ウイルス断片、コロナ特異的ウイルス様粒子、又はコロナ特異的抗原によるワクチン接種は、患者においてそれらのウイルス断片、ウイルス様粒子、又は抗原に対する抗体の産生を与える。
【0046】
本明細書で使用される「COVID_19」という用語は、以前はnCoV-19(新規コロナウイルス2019)として知られていた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる感染症を指す。
【0047】
コロナウイルス(CoV)は、大きな、エンベロープを有するポジティブセンスRNAウイルスである。ヒトコロナウイルスは、典型的には、気道疾患に関連する。
【0048】
ヒトに感染し得るコロナウイルスとしては、ヒトコロナウイルス(HCoV)-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、MERS-CoV、SARS-CoV-1、及びSARS-CoV-2.が挙げられる。
コロナウイルスは以下の3つの属に分けられる:アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、及び
【0049】
ガンマコロナウイルス。ベータコロナウイルスSARS-CoV-2、SARS-CoV-1、及びMERS-CoVは、ヒトの重度の疾患に関連する(Zubair,JAMA Neurology published online May 29,2020,DOI:10.1001/jamaneurol.2020.2065:Neuropathogenesis and Neurologic Manifestations of the Coronaviruses in the Age of Coronavirus Disease 2019 A Review)。
【0050】
本明細書で使用される「血栓症」という用語は、血管内の血栓の形成又は存在を指す。血管は、例えば、深部静脈血栓症又は冠状動脈(動脈)血栓症のように、任意の静脈又は動脈であり得る。血餅自体は、血栓と呼ばれる。血餅が抜けて血流を通って移動した場合、血栓塞栓症となる。
【0051】
「肺塞栓症」(PE)という用語は当技術分野で公知である。好ましくは、この用語は肺動脈の閉塞を指す。これは通常、血餅が抜けて血流を通って肺に移動するときに起こる。PEは、血管を詰まらせる血液由来の血餅又は異物によって引き起こされる、肺動脈又はその分枝の1つの閉鎖を引き起こし得る重篤な症状である。
【0052】
本明細書で使用される「無症状低酸素症」という用語は、患者が息切れしているようには見えず、又は呼吸数の増加を示しておらず、空気の不足を感じていないが、彼らの血中酸素レベルは80%を著しく下回り、したがって、通常よりも低い酸素レベルであり、重度であると考えられる症状として定義されている。80%未満の動脈血中酸素レベルは、脳及び心臓などのほとんどの重要な器官の機能を損なう可能性がある。COVID-19患者における「無症状低酸素症」という用語は、重度の疾患の徴候及び不良な転帰の原因として記載されている(Mayo Clin Proc.n June 2020;95(6):1094-1096)。
【0053】
「入院(hospital admission)」又は「入院(hospitalization)」という用語は、当業者にはよく理解されており、少なくとも1晩又はそれ以上の病院滞在を伴う病院に患者を入院させるプロセスを指す。病院滞在は、個人の具合が悪すぎて自宅に留まることができず、介護を必要とし、かつ/又は投薬を受けており、病院環境でのみ実行することができる検査及び/又は手術を受けているために行われる。典型的には、必ずしもそうとは限らないが、患者は、疾患の発症、存在、又は進行のために入院する。疾患の軽度の形態がより重度になり、患者のより強力なモニタリング及び/又は処置が必要とされる場合、患者は入院することができる。
【0054】
「集中治療室」という用語は当技術分野で公知である。好ましくは、この用語は、正常な身体機能を維持するために機器及び医薬からの一定の支援を必要とする生命を脅かす症状の患者を処置する医療ユニットを指す。
【0055】
本明細書で使用される「死亡率」という用語は、死ぬ運命にあるか、又は死に至るCOVID-19患者である状態又は症状を指す。死亡率は、疾患又は医学的処置に関連する死亡の割合である。
【0056】
好ましくは、COVID-19患者の心不全による入院のリスクを予測するための方法の文脈で使用される「治療」という用語は、疾患の悪化を完全に防止するか、又は死亡を防止するか若しくは罹患率を制限することなどによって患者に対するその影響を有意に減少させるための、心不全の悪化及び症候の悪化の確率の推定を包含する。
【0057】
本明細書で使用される「モニタリング」という用語は、好ましくは、本明細書の他の箇所で言及される疾患進行の評価に関する。さらに、COVID-19患者に対する治療の有効性をモニタリングすることができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「患者」は、本明細書に記載の診断、予後又は処置から利益を得ることができる任意の哺乳動物、魚、爬虫類又は鳥を意味する。特に、「患者」は、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ又はゼブラフィッシュ)、家畜(例えば、モルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、ラクダ、ネコ、イヌ、タートル、カメ、ヘビ、トカゲ又は金魚を含む)、又はチンパンジー、ボノボ、ゴリラ及びヒトを含む霊長類からなる群から選択される。「患者」はヒトであることが特に好ましい。
【0059】
「試料」又は「目的の試料」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組織、器官若しくは個体の部分又は片を指し、通常、組織、器官又は個体の全体を表すことが意図されているこのような組織、器官又は個体よりも小さい。分析に際して、試料は、組織の状態、又は器官若しくは個体の健康若しくは疾患状態に関する情報をもたらす。体液の試料は、周知の技術によって得ることができる。試料の例としては、血液、血清、血漿、滑液、尿、唾液、痰、腹水、リンパ液などの流体試料、又は組織抽出物、軟骨、骨、滑膜及び結合組織などの固体試料、又は任意の他の身体分泌物若しくはその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。組織又は器官の試料は、例えば生検によって、任意の組織又は器官から入手し得る。分離された細胞を、体液又は組織若しくは器官から、遠心分離又は細胞選別等の分離技術によって得てもよい。例えば、バイオマーカーを発現又は生成する細胞、組織、器官から、細胞、組織、器官の試料を採取してもよい。試料は、凍結、新鮮、固定(例えばホルマリン固定)、遠心分離、及び/又は包埋(例えば、パラフィン包埋)などされ得る。細胞試料は、試料中のバイオマーカー(複数可)のレベルを評価する前に、当然のことながら、種々の周知の収集後調製及び保管技法(例えば、核酸及び/又はタンパク質抽出、固定、保管、冷凍、超濾過、濃縮、蒸発、遠心分離等)に対するCOVID-19患者であり得る。試料の分析は、視覚的又は化学的に達成され得る。視覚的分析には、試料の形態学的評価を可能にする組織、器官又は個体の顕微鏡イメージング又は放射線スキャニングが含まれるが、これらに限定されない。化学的分析には、特定のインジケータの有無又はそれらの量、濃度若しくはレベルの変化の検出が含まれるが、これらに限定されない。試料は、インビトロでの試料であり、インビトロで分析されることになり、体内に戻されることはない。
【0060】
本発明の好ましい一実施形態では、試料は、血液(すなわち、全血)、血清又は血漿の試料である。血清とは、血液を凝血させた後に入手される全血の液体画分である。血清を得るためには、遠心分離によって血餅を除去して、それから上清が収集される。血漿は、血液の無細胞流動部分である。血漿試料を得るために、全血は、抗凝固剤処理されたチューブ(例えば、クエン酸塩処理又はEDTA処理されたチューブ)に収集される。遠心分離により細胞を試料から除去し、上清(すなわち、血漿試料)を入手する。
【0061】
用語「基準」又は「基準試料」又は「対照試料」とは、本明細書で使用される場合、目的の試料と実質的に同一の様式で分析され、その情報が目的の試料の情報と比較される試料を指す。これにより、基準試料により、目的の試料から入手された情報の評価を可能にする基準が提供される。対照試料は、健常な又は正常な組織、器官、又は個体に由来し、それにより、組織、器官、又は個体の健康状態の基準が提供される。正常な基準試料の状態と目的の試料の状態との間の差は、疾患発症のリスク又はそのような疾患若しくは障害の存在若しくはさらなる進行を示し得る。対照試料は、異常な又は疾患を有する組織、器官、又は個体に由来し得、それにより、組織、器官、又は個体の病的状態の基準が提供される。異常な基準試料の状態と目的の試料の状態との間の差は、疾患発症のリスクの低下又はそのような疾患若しくは障害の欠如若しくは改善を示し得る。基準試料はまた、目的の試料と同じ組織、器官、又は個体に由来し得るが、より早い時点で採取されている。以前に採取された基準試料の状態と目的の試料の状態との間の差は、疾患の進行、すなわち経時的な疾患の改善又は悪化を示し得る。
【0062】
対照試料は、内部又は外部対照試料であり得る。内部の対照試料を使用して、すなわち、試験試料並びに同一のCOVID-19患者から採取した1つ以上の他の試料で、マーカーレベルを評価して、該マーカーのレベルに変化があるかどうかを判定する。外部の対照試料については、個体に由来する試料中のマーカーの存在又はレベルを、所与の症状に罹患していることが知られている、若しくはそのリスクがあることが知られている個体;又は所与の症状がないことが知られている個体(すなわち「正常な個体」)中のマーカーの存在又はレベルと比較する。
【0063】
そのような外部対照試料は、単一の個体から得られ得、又は年齢が一致し、交絡疾患がない基準集団から得られ得ることが当業者には理解されよう。典型的には、適切な基準集団からの十分に特徴付けられた100名の個体からの試料を使用して、「基準値」を設定する。しかしながら、基準集団はまた、20、30、50,200、500又は1000名の個体からなるように選択され得る。健康な個体は、対照値を設定するための好ましい基準集団を表す。
【0064】
例えば、患者試料中のマーカー濃度を、特定の疾患の特定の経過に関連することが知られている濃度と比較し得る。通常、試料のマーカー濃度は、診断と直接的又は間接的に相関し、マーカー濃度は、例えば、個体が特定の疾患のリスクがあるかどうかを判定するために使用される。あるいは、試料のマーカー濃度は、例えば、特定の疾患における治療に対する応答、特定の疾患の診断、特定の疾患の重症度の評価、特定の疾患に対する適切な薬物を選択するためのガイダンス、疾患進行のリスクを判定する際、又は患者のフォローアップにおいて関連することが知られているマーカー濃度と比較し得る。意図する診断用途に応じて、適切な対照試料が選択され、その中にマーカーの対照値又は基準値が設定される。当業者にも明らかなように、対照試料で設定された絶対マーカー値は、使用されるアッセイに依存する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「指標」という用語は、症状に対する徴候又はシグナルを指すか、又は症状をモニタリングするために使用される。そのような「症状」は、細胞、組織若しくは器官の生物学的状態を指すか、又は個体の健康及び/若しくは疾患状態を指す。指標は、これらに限定されないが、ペプチド、タンパク質、及び核酸を含む分子の存在又は非存在であり得るか、細胞、又は組織、器官若しくは個体におけるそのような分子の発現レベル又はパターンの変化であり得る。指標は、個体における疾患の発生、発症若しくは存在に対する徴候であるか、又はそのような疾患のさらなる進行に対する徴候であり得る。指標はまた、個体において疾患を発症するリスクに対する徴候であり得る。
【0066】
バイオマーカーのレベルの決定
「決定する」、「測定する」、「測定」、「検出する」又は「検出」という用語は、本明細書では互換的に使用される。明細書でいうバイオマーカーのレベルを「決定する」という用語は、バイオマーカーの定量化を指し、例えば、本明細書の他の箇所に記載されている適切な検出方法を使用して、試料中のバイオマーカーのレベルを測定することである。
【0067】
一実施形態では、バイオマーカーのレベルの決定は、試料をバイオマーカーに特異的に結合する作用物質(本発明の抗体等)と接触させ、それによって作用物質と当該バイオマーカーとの間に複合体を形成すること、形成された複合体のレベルを検出すること、それによって当該バイオマーカーのレベルを測定することを含む。判定は、試料を第2の作用物質と接触させる等の工程を更に含み得る。
【0068】
「検出する」という用語は、好ましくは定性的、半定量的又は定量的測定を含む。「存在を検出する」という用語は、定性的測定を指し、量についての記述なしに存在又は非存在を示す(例えば、イエス又はノーの記述)。
【0069】
本明細書で使用される場合の「レベル」という用語は、本明細書でいうバイオマーカー(例えば、1つ以上のGDF-15ペプチド)の絶対量、該バイオマーカーの相対的な量又は濃度、及びそれらと相関する又はそれらから導き出すことができる何らかの値又はパラメータを包含する。このような値又はパラメータは、直接的な測定により当該ペプチドから得られる、全ての具体的な物理的又は化学的特性に由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトル又はNMRスペクトルにおける強度値を含む。さらに、本明細書の他の箇所で明示される間接測定により得られる値又はパラメータ全て、例えば、特異的に結合したリガンドから得られるペプチド又は強度シグナルに応答して生物学的読み出しシステムにより決定される応答レベルが包含される。上述のレベル又はパラメータと相関する値は、全ての標準的な数学的演算によっても得ることができるということを理解されたい。
【0070】
指標の「低下した」又は「減少した」レベルという用語は、基準又は基準試料と比較して減少している、試料中のそのような指標のレベルを指す。
【0071】
指標の「上昇した」又は「増加した」レベルという用語は、基準又は基準試料と比較して、試料中のそのような指標のレベルが高いことを指す。例えば、所与の疾患に罹患している1個体の流体試料中で、該疾患に罹患していない個体の同じ流体試料中よりも高いレベルで検出可能なタンパク質は、上昇したレベルを有する。
【0072】
本発明の文脈において、用語「バイオマーカー」とは、生物学的システムの生物学的状態のインジケータとして使用される、上記システム内の物質を指す。当技術分野では、用語「バイオマーカー」は、該内因性物質(例えば、抗体、核酸プローブなど、イメージングシステム)の検出手段にも適用されることがある。本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、検出手段ではなく物質にのみ適用されるものとする。したがって、バイオマーカーは、生体内に存在する任意の種類の分子、例えば核酸(DNA、mRNA、miRNA、rRNAなど)、タンパク質(細胞表面受容体、サイトゾルタンパク質など)、代謝産物若しくはホルモン(血糖、インスリン、エストロゲンなど)、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子(例えば、タンパク質上の糖部分又はホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)、又は生物によって内在化された物質若しくはそのような物質の代謝産物であり得る。
【0073】
「増殖分化因子-15」又は「GDF-15」という用語は、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βサイトカインスーパーファミリーのメンバーであるポリペプチドに関する。ポリペプチド、ペプチド及びタンパク質という用語は、本明細書を通して互換的に使用される。GDF-15は、MIC1、MIC-1、NAG-1、PDF、PLAB、PTGFB、増殖/分化因子15、胎盤骨形成タンパク質、胎盤TGF-β、マクロファージ阻害性サイトカイン1、前立腺分化因子、NSAID活性化遺伝子1タンパク質、NSAID調節遺伝子1タンパク質、NRG-1とも呼ばれる。GDF-15は、元々はマクロファージ阻害性サイトカイン-1としてクローニングされ、後に、胎盤トランスフォーミング増殖因子-β、胎盤骨形成タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬活性化遺伝子-1、及び前立腺由来因子としても同定された(Bootcov loc cit;Hromas,1997 Biochim Biophys Acta 1354:40-44;Lawton 1997,Gene 203:17-26;Yokoyama-Kobayashi 1997,J Biochem(Tokyo),122:622-626;Paralkar 1998,J Biol Chem 273:13760-13767)。他のTGF-β関連サイトカインと同様に、GDF-15は、ジスルフィド結合ホモ二量体化を受ける不活性前駆体タンパク質として合成される。N-末端プロペプチドがタンパク質分解的に切断されると、GDF-15は、約28kDaの二量体タンパク質として分泌される(Bauskin 2000,Embo J 19:2212-2220)。GDF-15のアミノ酸配列及び生物学的活性は、以下に開示されている:WO99/06445、WO00/70051、WO2005/113585、Bottner 1999,Gene 237:105-111,Bootcov loc.cit,Tan loc.cit.,Baek 2001,Mol Pharmacol 59:901-908,Hromas loc cit,Paralkar loc cit,Morrish 1996,Placenta 17:431-441又はYokoyama-Kobayashi loc cit.
【0074】
本明細書で使用されるGDF-15は、前述の特定のGDF-15ポリペプチドのバリアントも包含する。そのようなバリアントは、特定のGDF-15ポリペプチドと少なくとも同じ本質的な生物学的及び免疫学的特性を有する。特に、それらが本明細書で言及される同じ特異的アッセイによって、例えば該GDF-15ポリペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用するELISAアッセイによって検出可能である場合、それらは同じ本質的な生物学的及び免疫学的特性を共有する。好ましいアッセイは、添付の実施例に記載されている。さらに、本発明に従って言及されるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加のために異なるアミノ酸配列を有するものとし、バリアントのアミノ酸配列は、依然として、好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、特定のGDF-15ポリペプチドのアミノ酸配列、好ましくはヒトGDF-15のアミノ酸配列、より好ましくは特定のGDF-15、例えばヒトGDF-15の全長にわたって同一であると理解されるべきである。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、上記のように決定することができる。上記で言及したバリアントは、対立遺伝子バリアント又は任意の他の種特異的ホモログ、パラログ若しくはオルソログであり得る。さらに、本明細書で言及されるバリアントは、特定のGDF-15ポリペプチドの断片、又はこれらの断片が上記で言及される本質的な免疫学的及び生物学的特性を有する限り、上述の種類のバリアントを含む。そのような断片は、例えば、GDF-15ポリペプチドの分解産物であり得る。リン酸化又はミリスチル化などの翻訳後修飾のために異なるバリアントがさらに含まれる。
【0075】
本明細書で言及されるバイオマーカー(1つ以上のGDF-15ペプチド等)は、当該技術分野で一般的に知られている方法を使用して検出することができる。検出方法は一般的に、試料中のバイオマーカーのレベルを定量する方法(定量的方法)を包含する。以下の方法のいずれがバイオマーカーの定性的及び/又は定量的検出に適しているかは、当業者に概して公知である。試料は、例えば、ウエスタン法及びELISA、RIA、蛍光及び発光ベースのイムノアッセイのようなイムノアッセイ、並びに市販されている近接拡張アッセイを使用して、タンパク質について簡便にアッセイすることができる。バイオマーカーを検出するためのさらに適切な方法は、ペプチド又はポリペプチドに特異的な物理的又は化学的特性、例えば、その正確な分子量又はNMRスペクトル等を測定することを含む。上記方法は、例えば、バイオセンサー、免疫学的検定法と連関した光学装置、バイオチップ、質量分析計、NMR分析機、又はクロマトグラフィー装置等の分析装置を含む。さらに、方法には、マイクロプレートELISAベースの方法、完全自動化又はロボットイムノアッセイ(Elecsys(商標)アナライザーなどで利用可能)、CBA(酵素的Cobalt Binding Assay、Roche-Hitachi(商標)アナライザーなどで利用可能)、及びラテックス凝集アッセイ(例えば、Roche-Hitachi(商標)アナライザーで使用可能)が含まれる。
【0076】
本明細書で言及するバイオマーカータンパク質の検出については、このようなアッセイ形式を使用する広範な免疫学的検定技術が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号、及び第4,018,653号を参照されたい。これらは、従来の競合結合アッセイだけでなく、非競合タイプの1部位及び2部位又は「サンドイッチ」アッセイの両方を含む。これらのアッセイはまた、標識された抗体の標的バイオマーカーへの直接結合も含む。
【0077】
電気化学発光標識を用いる方法は、周知である。このような方法は、特殊な金属錯体の能力を利用して、酸化によって、励起状態となり、金属錯体は、励起状態から基底状態へ緩和して、電気化学発光を放出する。総説については、Richter,M.M.,Chem.Rev.2004;104:3003-3036を参照のこと。
【0078】
一実施形態では、バイオマーカーのレベルを測定するのに使用される抗体(又はその抗原結合断片)は、ルテニウム化(ruthenylated)又はイリジウム化(iridinylated)されている。そのため、抗体(又はその抗原結合断片)は、ルテニウム標識を含むものとする。一実施形態では、該ルテニウム標識は、ビピリジン-ルテニウム(II)錯体である。あるいは、抗体(又はその抗原結合断片)は、イリジウム標識を含むものとする。一実施形態では、上記イリジウム標識は、国際公開第2012/107419号において開示されているような錯体である。
【0079】
1つ以上のGDF-15ペプチドを決定するためのサンドイッチアッセイの一実施形態では、アッセイは、ビオチン化された第1のモノクローナル抗体(又はその断片)及び1つ以上のGDF-15に特異的に結合するルテニウム化された第2のモノクローナル抗体(又はその断片)を含む。2種の抗体は、試料中、1つ以上のGDF-15ペプチドとサンドイッチイムノアッセイ複合体を形成する。
【0080】
ポリペプチド(例えば、GDF-15)のレベルを測定することは、好ましくは、(a)ポリペプチドを上記ポリペプチドと特異的に結合する薬剤と接触させる工程、(b)(任意に)結合していない薬剤を除去する工程、(c)結合した結合剤、すなわち工程(a)で形成された薬剤の複合体のレベルを測定する工程、を含んでよい。好ましい実施形態によれば、上記接触させる工程、除去する工程及び測定する工程は、分析装置ユニットにより実施し得る。いくつか実施形態によれば、上記工程は、上記システムの単一の分析装置ユニットによって、又は互いに作動可能な通信状態にある複数の分析装置ユニットによって実施し得る。例えば、特定の実施形態によれば、本明細書で開示される上記システムは、上記接触させる工程及び除去する工程を実施するための第1の分析装置ユニット、並びに上記測定する工程を実施する、輸送ユニット(例えば、ロボットアーム)により、上記第1の分析装置ユニットに作動可能に接続された第2の分析装置ユニットを含んでよい。
【0081】
バイオマーカーを特異的に結合する作用物質(本明細書では「結合剤」ともいう)は、結合した作用物質の検出及び測定を可能にする標識に、共有結合又は非共有結合していてもよい。標識化は、直接又は間接的な方法により行ってもよい。直接標識化は、標識を結合剤に直接的に(共有結合又は非共有結合により)結合させることによって行われる。間接標識化は、第2の結合剤を第1の結合剤に(共有結合又は非共有結合により)結合させることによって行われる。第2の結合剤は、第1の結合剤に特異的に結合するものとする。上記第2の結合剤は、適切な標識と結合する、かつ/又は第2の結合剤に結合する第3の結合剤の標的(受容体)となり得る。好適な第2の、及びより高次の結合剤は、抗体、二次抗体、及び周知のストレプトアビジン-ビオチン系(Vector Laboratories,Inc.)を含んでよい。結合剤又は基質はまた、当該技術分野で公知の1つ以上のタグで「タグ付けされ」ていてもよい。そうすることで、このようなタグは、より高次の結合剤の標的となり得る。好適なタグとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン(digoxygenin)、His-タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、myc-タグ、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパク質等が挙げられる。ペプチド又はポリペプチドの場合、タグは、好ましくはN末端及び/又はC末端にある。好適な標識は、適切な検出方法で検出可能な任意の標識である。典型的な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム錯体、イリジウム錯体、酵素的に活性な標識、放射性標識、磁気標識(「例えば磁気ビーズ」、常磁性及び超常磁性標識を含む)、並びに蛍光標識が挙げられる。酵素的に活性な標識としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、及びそれらの誘導体が挙げられる。検出に適した基質としては、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(Roche Diagnostics製の既成の保存溶液として入手可能な4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスファート)、CDP-Star(商標)(Amersham Bio-sciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)が挙げられる。適切な酵素-基質の組み合わせにより、着色された反応産物、蛍光又は化学発光が生じてもよく、これは、当該技術分野で公知の方法によって(例えば感光フィルム又は適切なカメラシステムを使用して)、決定することができる。酵素反応を測定することについては、上記の基準が同様に適用される。典型的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質(例えば、GFP及びその誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセイン、及びAlexa色素(例えばAlexa568)が挙げられる。さらなる蛍光標識が、例えばMolecular Probes(オレゴン州)から入手可能である。また、蛍光標識としての量子ドットの使用が、企図される。放射性標識は、公知かつ適切な、例えば感光膜又はホスホイメージャー(phosphor imager)等の任意の方法により検出され得る。
【0082】
ポリペプチドのレベルはまた、好ましくは、以下の通り:(a)本明細書の別の箇所で説明されるようなポリペプチド用の結合剤を含む固形支持体を、ペプチド又はポリペプチドを含む試料と接触させること、及び(b)支持体に結合したペプチド又はポリペプチドのレベルを測定すること。支持体を製造するための材料は、当該技術分野で周知であり、とりわけ、市販のカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラス及び/又はシリコンのチップ及び表面、ニトロセルロースストリップ、メンブレン、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレイのウェル及び壁、プラスチックチューブ等が挙げられる。
【0083】
更なる一態様では、結合剤と少なくとも1つのマーカーとの間で形成された複合体から、形成された複合体のレベルの測定に先立って、試料が除去される。そのため、一態様において、結合剤は固形支持体上に固定されていてもよい。更なる態様では、洗浄溶液を適用することによって、固体支持体上で形成された複合体から試料が除去され得る。
【0084】
「サンドイッチアッセイ」は、最も有用かつ通常使用されるアッセイに含まれ、サンドイッチアッセイ技術のいくつかのバリエーションを包含する。簡潔に言うと、典型的なアッセイでは、未標識の(捕捉)結合剤が固定化されているか、又は固体基質上に固定化することができ、そして検査される試料を、捕捉結合剤と接触させる。結合剤-バイオマーカー複合体の形成を可能にするのに十分な時間の、適切なインキュベート時間の後、検出可能なシグナルを生成できるレポーター分子で標識した第2の(検出)結合剤を添加し、結合剤-バイオマーカーで標識した結合剤という別の複合体の形成に十分な時間を許容してインキュベートする。未反応の物質は洗い流されてよく、バイオマーカーの存在は、検出結合剤に結合したレポーター分子により生成されるシグナルの観察により、決定される。その結果は、可視シグナルの単純な観察によって定性的であってもよいか、又は既知レベルのバイオマーカーを含有する対照試料との比較によって定量されてもよいかのいずれかである。
【0085】
典型的なサンドイッチアッセイのインキュベーション工程は、必要に応じて適切であるように変更することができる。このような変更には、例えば、2つ以上の結合剤及びバイオマーカーが共インキュベートされる同時インキュベーションが含まれる。例えば、分析される試料及び標識化された結合剤の両方が同時に、固定化された捕捉結合剤に添加される。また、分析される試料及び標識化された結合剤を最初にインキュベートし、その後、固相に結合した抗体、又は固相に結合することができる抗体を添加することもできる。
【0086】
特異的な結合剤とバイオマーカーの間で形成される複合体は、試料中に存在するバイオマーカーのレベルに比例するものとする。適用される結合剤の特異性及び/又は感度が、試料中に含まれる、特異的に結合することができる少なくとも1つのマーカーの比率の程度を規定することは理解されるであろう。測定を実行する方法の詳細については、本明細書の別の箇所にも記載されている。形成された複合体のレベルは、試料中に実際に存在するレベルを反映するバイオマーカーのレベルへと変換されるものとする。
【0087】
「結合剤」、「特異的な結合剤」、「分析対象特異結合剤」、「検出剤」及び「バイオマーカーに特異的に結合する作用物質」という用語は、本明細書では相互互換可能に使用される。好ましくは、それは、対応するバイオマーカーと特異的に結合する結合部分を含む薬剤に関する。「結合剤」、「検出剤」、「及び薬剤」の例は、核酸プローブ、核酸プライマー、DNA分子、RNA分子、アプタマー、抗体、抗体断片、ペプチド、ペプチド核酸(PNA)又は化学物質である。好ましい薬剤は、決定されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体である。本明細書で使用される「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の抗原結合活性を示す限り抗体断片(すなわちその抗原結合断片)を含むが、これらに限定されず、様々な抗体構造を包含する。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体(又は、それに由来する抗原結合断片)である。より好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体(又はその抗原結合断片)であり、したがって、本明細書の他の箇所で説明するように、(サンドイッチ免疫学的検定において)1つ以上のGDF-15ペプチドの異なる位置で結合する2つのモノクローナル抗体が使用されることが想定される。したがって、GDF-15ペプチドのレベルを決定するために少なくとも1つの抗体が使用される。
【0088】
一実施形態では、少なくとも1つの抗体は、マウスモノクローナル抗体である。別の実施形態では、少なくとも1つの抗体は、ウサギモノクローナル抗体である。更なる実施形態では、該抗体は、ヤギポリクローナル抗体である。更に他の実施形態では、本抗体は、ヒツジポリクローナル抗体である。
【0089】
「免疫グロブリン(Ig)」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリンスーパーファミリーの糖タンパク質を付与する免疫を指す。「表面免疫グロブリン」は、それらの膜貫通領域によってエフェクター細胞の膜に付着しており、以下に限定されないが、B細胞受容体、T細胞受容体、クラスI及びII主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、β2ミクログロブリン(約2M)、CD3、CD4及びCDS等の分子を包含する。
【0090】
典型的には、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、膜貫通領域を欠き、したがって血流及び体腔に放出され得る分泌型免疫グロブリンを指す。ヒト抗体は、それらが保有する重鎖に基づいて異なるアイソタイプに分類される。ギリシャ文字により示される5種類のヒトIg重鎖:α、γ、δ、ε及びμが存在する。存在する重鎖の種類は、抗体のクラス(すなわち、これらの鎖は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM抗体にそれぞれ見られる)を定義し、それぞれ異なる役割を果たし、異なる種類の抗原に対する適切な免疫応答を指示する。異なる重鎖は大きさ及び組成が異なり、約450アミノ酸を含む(Janewayら、(2001)Immunobiology,Garland Science)。IgAは、腸、気道及び泌尿生殖路などの粘膜領域、並びに唾液、涙及び母乳中に見出され、病原体によるコロニー形成を防止する(Underdown及びSchiff(1986)Annu.Rev.Immunol.4:389-417)。IgDは主に、抗原に曝露されていないB細胞上の抗原受容体として機能し、好塩基球及び肥満細胞を活性化して抗微生物因子を産生することに関与している(Geisbergerら、(2006)Immunology 118:429-437;Chenら(2009)Nat.Immunol.10:889-898)。IgEは、肥満細胞及び好塩基球からのヒスタミン放出を引き起こすアレルゲンへの結合を介してアレルギー反応に関与する。IgEは、寄生虫からの保護にも関与する(Pierら(2004)Immunology,Infection,and Immunity,ASM Press)。IgGは、侵入病原体に対する抗体ベースの免疫の大部分を提供し、胎盤を通過して胎児に受動免疫を与え得る唯一の抗体アイソタイプである(Pierら(2004)Immunology,Infection,and Immunity,ASM Press)。ヒトでは4つの異なるIgGサブクラス(IgG1、2、3、及び4)があり、血清中の存在量の順に命名され、IgG1が最も多く(約66%)、IgG2(約23%)、IgG3(約7%)、及びIgG(約4%)がこれに続く。異なるIgGクラスの生物学的プロファイルは、それぞれのヒンジ領域の構造によって決定される。IgMは、単量体形態、及び非常に高いアビディティーを有する分泌型五量体形態でB細胞の表面に発現される。IgMは、十分なIgGが産生される前のB細胞媒介(体液性)免疫の初期段階で病原体を排除することに関与する(Geisbergerら、(2006)Immunology 118:429-437)。抗体は、単量体として見出されるだけでなく、2つのIgユニットの二量体(例えばIgA)、4つのIgユニットの四量体(例えば、硬骨魚のIgM)、又は5つのIgユニットの五量体(例えば哺乳動物IgM)を形成することもよく知られている。
【0091】
抗体は、典型的には、ジスルフィド結合を介して連結される、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含む4つのポリペプチド鎖から作製され、「Y」形状の巨大分子に類似する。鎖の各々は、いくつかの免疫グロブリンドメインを含み、そのうちのいくつかは定常ドメインであり、他のものは可変ドメインである。
【0092】
免疫グロブリンドメインは、2~シート状に配置された7~9本の逆平行~鎖の2層サンドイッチからなる。典型的には、抗体の重鎖は4つのIgドメインを含み、そのうちの3つは定常(CHドメイン:CHI.CH2.CH3)ドメインであり、そのうちの1つは可変ドメイン(VH)である。軽鎖は、典型的には、1つの定常Igドメイン(CL)及び1つの可変Igドメイン(V L)を含む。例示すると、ヒトIgG重鎖は、N末端からC末端にVwCH1-CH2-CH3の順序(VwCy1-Cy2-Cy3とも称される)で連結された4つのIgドメインで構成されており、一方、ヒトIgG軽鎖は、N末端からC末端にVL-CLの順序で連結された2つの免疫グロブリンドメインで構成されており、カッパ型又はラムダ型のいずれか(VK-CK又はVA-CA)である。例示すると、ヒトIgGの定常鎖は447個のアミノ酸を含む。本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、免疫グロブリンのアミノ酸位置のナンバリングは、Kabat,E.A.、Wu,T.T.、Perry,H.M.、Gottesman,K.S.及びFoeller,C.(1991)Sequences of proteins of immunological interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Service、National Institutes of Health、Bethesda、MDにおけるような「EUインデックス」のナンバリングである。「KabatにおけるようなEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。したがって、IgGの文脈におけるCHドメインは以下の通りである:「CH1」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置118~220位を指し;「CH2」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置237~340位を指し;「CH3」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置341~44 7位を指す。
【0093】
「結合親和性」という用語は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表され得る。親和性は、限定されないが、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(例えば、PCT出願公開WO2005/012359号に記載されているようなBIAcoreアッセイ);酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);及び競合アッセイ(例えば、RIA)を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定し得る。低親和性抗体は、一般に、抗原とゆっくり結合し、容易に解離する傾向にあるが、高親和性抗体は、一般に、抗原と迅速に結合し、より長く結合したままの傾向にある。結合親和性の種々の測定方法が当技術分野で公知であり、これらのいずれも、本発明の目的に対して使用することができる。
【0094】
「タグ」という用語は、抗原が他の分子に結合する能力又は他の分子に結合される能力を提供するエフェクター基を指す。タグの例としては、限定されないが、例えば精製を可能にするために抗原配列に結合したHisタグが挙げられる。タグはまた、抗原が結合対の第2のパートナーによって結合されることを可能にするバイオアフィン結合対のパートナーを含み得る。「バイオアフィン結合対」という用語は、互いに結合する強い親和性を有する2つのパートナー分子(すなわち、1対中の2つのパートナー)を指す。バイオアフィン結合対のパートナーの例は、a)ビオチン又はビオチン類似体/アビジン又はストレプトアビジン;b)ハプテン/抗ハプテン抗体又は抗体断片(例えばジゴキシン/抗ジゴキシン抗体);c)糖類/レクチン;d)相補的オリゴヌクレオチド配列(例えば相補的LNA配列)、及び一般にe)リガンド/受容体である。
【0095】
「標識」という用語は、抗原の検出を可能にするエフェクター基を指す。標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的又は化学的標識が含まれるが、これらに限定されない。例示される適切な標識には、蛍光色素、発光又は電気化学発光錯体(例えば、ルテニウム又はイリジウム錯体)、高電子密度試薬、及び酵素標識が含まれる。
【0096】
本明細書で使用される「粒子」は、体積、質量又は平均サイズなどの物理的特性を帰することができる小さな局在化した物体を意味する。したがって、粒子は、対称、球状、本質的に球状又は球形の形状であってもよく、又は不規則、非対称の形状又は形態であってもよい。粒子のサイズは変化し得る。「微粒子」という用語は、ナノメートル及びマイクロメートル範囲の直径を有する粒子を指す。
【0097】
上記の本明細書で定義される微粒子は、当業者に公知の任意の適切な材料を含んでもよく、又はそれからなってもよく、例えば、無機又は有機材料を含んでもよく、又はそれからなってもよく、又は本質的にそれからなってもよい。典型的には、それらは、金属若しくは金属の合金、又は有機材料を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になり得るか、又は炭水化物要素を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になり得る。微粒子のために想定される材料の例としては、アガロース、ポリスチレン、ラテックス、ポリビニルアルコール、シリカ及び強磁性金属、合金又は混成材料が挙げられる。一実施形態では、微粒子は、磁性又は強磁性金属、合金又は混成である。さらなる実施形態では、材料は特定の特性を有してもよく、例えば疎水性又は親水性であってもよい。そのような微粒子は、典型的には水溶液中に分散され、微粒子を分離したままにし、非特異的なクラスター形成を回避しながら、小さな負の表面電荷を保持する。
【0098】
本発明の一実施形態では、微小粒子は常磁性微小粒子であり、本開示に係る測定方法における該粒子の分離は磁力によって促進される。溶液/懸濁液から常磁性又は磁性粒子を引き抜き、それらを必要に応じて保持するために磁力が印加され、溶液/懸濁液の液体を除去することができ、粒子を例えば洗浄することができる。
【0099】
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば障害の処置のための薬品、又は本発明のバイオマーカー遺伝子若しくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、奨励、流通、又は販売される。典型的には、キットは、厳重な管理下で、バイアル及びチューブなどの1つ以上の容器手段を受容するように区分化された担体手段を更に含み得る。特に、容器手段のそれぞれは、本発明の方法において使用される別個の要素のうちの1つを含む。標識は、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示され得、インビボ使用又はインビトロ使用のいずれかに関する指示も示し得る。キットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、注射器、及び使用説明を伴う添付文書を含むがこれらに限定されない、更なる材料を含む1つ以上の他の容器を更に含んでもよい。これらの説明書は、マニュアルの形式であってもよく、又は本発明の方法でいう計算及び比較を実行して、コンピュータ又はデータ処理装置に実装されるときに適宜、評定又は診断を確立することができるコンピュータプログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)等のデータ記憶媒体若しくは装置上に、又はコンピュータ若しくはデータ処理装置に直接提供されてもよい。さらに、キットは、好ましくは、キャリブレーション目的のGDF-15型ペプチドの標準レベルを含み得る。
【0100】
好ましい実施形態では、キットは、較正の目的で、本明細書でいう少なくとも1つの更なるバイオマーカー(例えば、TnT、NT-proBNP、CRP及びD-ダイマー)の基準レベルを更に含む。
【0101】
「添付文書」は、かかる治療薬若しくは薬品の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、パッケージ製品と組み合わされる他の治療薬、及び/又はその使用に関する警告を含有する、治療薬又は薬品の商用のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
【0102】
本明細書で使用される「比較する」という用語は、COVID-19患者由来の試料中のバイオマーカー(1つ以上のGFD-15型ペプチドなど)のレベルを、本明細書の他の箇所で指定されるバイオマーカーの基準と比較することを指す。比較する、は本明細書で使用される場合、通常、対応するパラメータ又は値の比較を指すということを理解すべきであり、例えば、絶対レベルは絶対基準レベルと比較され、濃度は参照濃度と比較され、試料中のバイオマーカーから得られる強度シグナルは第1の試料から得られる同じタイプの強度シグナルと比較される。比較は、手作業又はコンピュータを利用して実施してもよい。したがって、比較は、コンピューティングデバイスによって実施することができる。COVID-19患者からの試料中のバイオマーカーの決定又は検出レベル、及び基準レベルについての値は、例えば、互いに比較することができ、また該比較は、比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムにより自動的に実施され得る。上記評価を実施するコンピュータプログラムは、適切な出力形式で、所望の評価を提供する。コンピュータを利用した比較のために、決定されたレベルの値は、コンピュータプログラムにより、データベースに保存されている適切な基準に相当する値と比較されてもよい。コンピュータプログラムは、比較の結果をさらに評価してもよく、すなわち、適切な出力形式で所望の評価を自動的に提供してもよい。コンピュータを利用した比較のために、決定されたレベルの値は、コンピュータプログラムにより、データベースに保存されている適切な基準に相当する値と比較されてもよい。コンピュータプログラムは、比較結果を更に評価してもよく、すなわち、好適なアウトプット様式で所望の評定を自動的に提供してもよい。
【0103】
本発明によれば、1つ以上のGDF-15ペプチドのレベルを基準と比較するものとする。基準は、好ましくは基準レベルである。
【0104】
「基準」という用語は、当業者によって十分に理解されている。基準、COVID-19患者の疾患重症度及び疾患進行の本明細書に記載の予測を可能にすることを理解されたい。
【0105】
本明細書で使用される「疾患進行」という用語は、疾患の経過を指す。この用語は、ほとんどの場合、その経過が疾患の悪化、成長又は拡大である疾患又は身体的不快を反映する。これは、死亡、重篤な衰弱、又は臓器不全が起こるまで起こり得る。いくつかの進行性疾患は、処置によって停止及び回復させることができる。多くは、医学的治療によって減速され得る。いくつかは、現在の処置によって変更することができない。疾患は、急速進行性(典型的には数日から数週間)又は緩徐進行性(数ヶ月から数年)であり得る。実質的に緩徐進行性の疾患は、時間経過に関して慢性疾患でもあり;これらの多くは変性疾患とも呼ばれる。全ての慢性疾患が進行性であるとは限らない:慢性の非進行性疾患は、静止症状と呼ばれることがある。
【0106】
例えば、疾患重症度を予測するための方法に関連して、基準は、好ましくは、(i)高い疾患重症度が予測されるCOVID-19患者の群、又は(ii)低い疾患重症度が予測されるCOVID-19患者の群のいずれかへのCOVID-19患者の割り当てを可能にするレベルを指す。好適な基準は、検査試料と共に、すなわち同時に又は続いて分析される第1の試料から決定されてもよい。
【0107】
基準は、原則として、統計学の標準的な方法を適用することによって、所定のバイオマーカーの平均又は平均値に基づいて、先に指定したようなCOVID-19患者のコホートについて算出することができる。特に、事象の診断を目的とする方法などの試験が正確であるか否かは、受信者動作特性(ROC)により最もよく説明される(特に、Zweig MH.et al.,Clin.Chem.1993;39:561-577を参照のこと)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって決定閾値を継続的に変動させることにより生じる、全ての感度対特異性のペアのプロットである。診断方法の臨床成績は、その正確性、すなわちCOVID-19患者を特定の予後又は診断に正確に割り当てる能力に依存する。ROCプロットは、区別を行うのに適した閾値の全範囲について、感度対1-特異性をプロットすることにより、2つの分布間の重複を示す。y軸は、感度、又は真陽性率であり、真陽性の検査結果の数及び偽陰性の検査結果の数の積に対する、真陽性の検査結果の数の比率として定義される。y軸は、影響を受ける下位群からのみ計算される。x軸上は、偽陽性率、又は1-特異性であり、これは、真陰性の数及び偽陽性結果の数の積に対する、偽陽性結果の数の比率として定義される。x軸は、特異性の指標であり、影響を受けない下位群からのみ計算される。真陽性率及び偽陽性率は、2つの異なる下位群からの検査結果を使用することによって完全に別個に計算されるので、ROCプロットはコホートにおける事象の有病率に非依存性である。ROCプロット上の各点は、特定の決定閾値に相当する感度/1-特異性の対を表す。完全な区別のある(結果の2つの分布に重なりがない)検査は、左上隅を通過するROCプロットを有しており、真陽性率は1.0、又は100%(完全な感度)であり、偽陽性率は0(完全な特異性)となる。区別のない(2つの群についての結果の分布が同一である)検査についての理論上のプロットは、左下隅から右上隅への45°の対角線となる。ほとんどのプロットは、これらの2つの極値の間に収まる。ROCプロットが45°対角線を完全に下回って収まる場合、これは、「陽性率」についての基準を「より高い」から「より低い」に入れ替え、逆もまた同様にすることによって、容易に修正される。定性的には、プロットが左上隅に近いほど、試験全体の精度が高くなる。所望の信頼区間に応じて、ROC曲線から閾値を導くことができ、これにより、感度及び特異性の適切な平衡状態をそれぞれ備えた所与の事象についての診断が可能になる。そのため、本発明の方法に使用される基準、すなわち心房細動を評定することを可能にする閾値は、好ましくは、上述のように当該コホートのROCを確立することと、そこから閾値レベルを導くこととによって、生成することができる。診断方法についての所望の感度及び特異性に応じて、ROCプロットは、適切な閾値を導くことができる。
【0108】
特に軽度の症候のみで来院する患者については、COVID-19患者を集中治療室での入院又は処置のために選択する(すなわちルールイン)ために最適な特異度が想定され、一方、例えばCOVID-19患者を集中治療室での入院又は処置から除外して(すなわちルールアウト)治療後の退院のために最適な感度が望ましいことが理解されよう。
【0109】
本明細書で使用される「予後」という用語は、徴候及び症候が改善又は悪化するかどうか、及び経時的にどれだけ迅速に又は安定したままであるかを含む、疾患の起こりそうな又は予想される発症を予測することを指す。この用語は、生活の質、例えば日常活動を行う能力;合併症の可能性及び関連する健康定義の問題;及び平均余命を含む生存の可能性の期待をさらに包含する。予後診断は、診断された疾患の正常な経過、個体の身体的及び精神的症状、利用可能な処置、及び追加の因子に基づいて行われる。予後には、予測される持続期間、機能、及び、進行性の低下、断続的な発症、又は突然の予測不可能な発症などの疾患の経過の説明が含まれる。
【0110】
本明細書で使用される「予測」という用語は、疾患の確率、及び、疾患を完全に予防するため、又は死亡を予防する若しくは罹患率を制限することなどによって患者に対するその影響を有意に減少させるために予防措置を導入することを包含する。この用語はさらに、臨床所見を指し、疾患の自然歴又はその予後に関する知識を有する推定を行うことである。
【0111】
さらに、本明細書で使用される「予測する」という用語は、本発明の方法に従って言及されるCOVID-19患者が高い疾患重症度を有するかどうかを評価することを意味する。特に好ましい実施形態では、疾患重症度が予測される。
【0112】
本発明によれば、「リスクを予測する」という用語は、COVID-19の感染による入院のリスクの予測を支援するものとして理解される。最終予測は、原則として、医師によって行われ、更なる診断結果を含み得る。
【0113】
「有意な」及び「統計的に有意な」という用語は、当業者に公知である。したがって、増加又は減少が有意であるか統計的に有意であるかは、様々な周知の統計評価ツールを使用して当業者によってすぐさま決定することができる。例えば、有意な増加又は減少とは、少なくとも10%の、特に少なくとも20%の増加又は減少である。
【0114】
本明細書で使用される「推奨する」という用語は、COVID-19患者に適用できる治療法の提案を確立することを意味する。しかしながら、実際の治療法を適用することは、どんなものであれ、この用語に含まれないことを理解されたい。推奨される治療法は、本発明の方法によって提供される結果に依存する。
【0115】
実施形態
第1の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者における疾患重症度を予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベル又は濃度を、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の疾患重症度を予測することと
を含む、方法に関する。
【0116】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者における疾患重症度を予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベル又は濃度を、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の疾患重症度を予測することと
を含む方法に関する。
【0117】
複数の実施形態において、COVID-19患者が将来高い疾患重症度を発症するかどうかが予測される。複数の実施形態において、COVID-19患者が次の24~72時間以内に高い疾患重症度を発症するかどうかが予測される。
【0118】
前述の方法の好ましい実施形態では、GDF-15のレベルの増加は、COVID-19患者の疾患重症度の増加を示す。
【0119】
特に、患者の試料中のGDF-15のレベルが基準又は基準試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者の疾患重症度の増加を示す。特に、GDF-15は、重度の疾患進行を有する患者の体液試料において、疾患進行がない又は軽度の個体の同じ体液試料よりも高いレベルで検出可能である。
【0120】
特定の実施形態では、GDF-15のレベルは、基準と比較して増加している。好ましくは、基準は所定の値である。該所定の値は、疾患重症度の予測、リスクの層別化、疾患進行のモニタリング、患者の入院のリスクの予測、集中治療の必要性の予測、集中治療室での入院又は処置のための選択、死亡リスクの予測、血栓症及び肺塞栓症のリスクの予測を可能にするものとする。基準は、予測の種類に基づいて異なることがあることは理解されたい。例えば、死亡リスクを予測するための1つ以上のGDF-15型ペプチドの基準は、通常、COVID-19患者の感染の開始点の基準よりも高いであろう。しかしながら、これは当業者により考慮される。
【0121】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0122】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0123】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0124】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0125】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0126】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0127】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0128】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0129】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0130】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0131】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0132】
第2の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者のリスクの層別化のための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者のリスクを層別化することと
を含む、方法に関する。
【0133】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者のリスクの層別化のための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者のリスクを層別化することと
を含む、方法に関する。
【0134】
前述の方法の好ましい実施形態では、GDF-15のレベルが増加した患者は、より深刻な疾患進行のリスクが高いとして層別化される。さらに、COVID-19患者のリスクを層別化することが想定される。
【0135】
特に、患者の試料中のGDF-15のレベルが基準又は基準試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者の疾患重症度の増加を示す。特に、GDF-15は、重度の疾患進行を有する患者の体液試料において、疾患進行がない又は軽度の個体の同じ体液試料よりも高いレベルで検出可能である。
【0136】
複数の実施形態において、リスクの層別化は、COVID-19患者を特定のリスク状態に、COVID-19患者の試料で測定されたGDF-15のレベルに基づいて分類することを含む。したがって、COVID-19患者のGDF-15レベルの増加は、医師が特定の処置又はICUへの入院を支援することができる。
【0137】
さらに、臨床的特徴、病歴、詳細なCOVID-19提示、処置、合併症及び転帰などの臨床データと組み合わせたGDF-15のレベルの評価は、COVID-19患者のリスクを層別化するためのCOVID-19疾患のガイダンスに役立ち得る。
【0138】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0139】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0140】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0141】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0142】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0143】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0144】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0145】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0146】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0147】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0148】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0149】
第3の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者の疾患進行をモニタリングするための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの第1の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)第1の試料の後に得られたベータウイルス感染患者からの第2の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
c)第1の試料中のGDF-15のレベルを第2の試料中のGDF-15のレベルと比較することと、
d)工程c)の結果に基づいて、ベータウイルス感染患者の疾患進行をモニタリングすることと
を含む、方法に関する。
【0150】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者の疾患進行をモニタリングするための方法であって、
a)COVID-19患者からの第1の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)第1の試料の後に得られたCOVID-19患者からの第2の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
c)第1の試料中のGDF-15のレベルを第2の試料中のGDF-15のレベルと比較することと、
d)工程c)の結果に基づいて、COVID-19患者の疾患進行をモニタリングすることと
を含む、方法に関する。
【0151】
上述の方法は、工程c)において実施した比較工程の結果に基づいて疾患進行をモニタリングする更なる工程を含んでもよい。当業者によって理解されるように、COVID-19患者における疾患重症度の予測は、通常、COVID-19患者の100%について正しいとは意図されていない。ただし、この用語では、統計的に有意なCOVID-19患者の部分を適切かつ正確に予測できる必要がある。したがって、実際の監視は、確認等の更なる工程を含んでもよい。
【0152】
前述の方法の好ましい実施形態では、第1の試料は、COVID-19感染の判定後、又は早くもCofic-19感染の第1の症候として得られる。
【0153】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者からの第1の試料は、入院時に得られる。
【0154】
前述の方法の好ましい実施形態では、COVID-19患者からの第2の試料は、入院後3日目に得られる。
【0155】
前述の方法の好ましい実施形態では、第2の試料は、第1の試料よりも遅い時点で採取される。
【0156】
したがって、第2の試料を第1の試料の後に取得するものとする。第2の試料は、患者のCOVID-19感染の過程に沿って得られるものとすることを理解されたい。
【0157】
疾患重症度の予測に次いで、第2の試料を得て疾患進行をモニタリングし、治療開始前、治療開始中及び治療開始後の疾患の悪化又は改善を確認することも考えられる。
【0158】
さらに、第2の試料は、第1の試料を取得した後、妥当な期間の後に取得されることが特に企図される。本明細書で言及されるGDF-15のレベルは、即座(例えば1分以内又は1時間以内)に変化しないことを理解されたい。したがって、この文脈における「妥当な」とは、バイオマーカーの調整を可能にする第1及び第2の試料を得る間の間隔を指す。
【0159】
したがって、第2の試料は、好ましくは、第第1のサンプルの少なくとも3時間後、該第1のサンプルの少なくとも23時間後、72時間後、及び3日後から最大2週間後に得られる。
【0160】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、第1及び第2の試料を採取する間の時間間隔は、少なくとも1日間、2日間、3日間又は10日間である。
【0161】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、追加の試料(第3、第4、第5の試料)が、より後の時点で採取される。
【0162】
前述の方法の好ましい実施形態では、第3の試料は、第2の試料よりも遅い時点で採取される。
【0163】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、第2及び第3の試料を採取する間の時間間隔は、少なくとも3時間、1日間、3日間、又は10日間である。
【0164】
前述の方法の好ましい実施形態では、第4の試料は、第3の試料よりも遅い時点で採取される。
【0165】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、第3及び第4の試料を採取する間の時間間隔は、少なくとも3時間、1日間、3日間、又は10日間である。
【0166】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、追加の試料(第5の試料)が、より後の時点で採取される。前述の方法のさらに好ましい実施形態では、第4及び第5の試料を採取する間の時間間隔は、少なくとも3時間、1日間、3日間、又は10日間である。
【0167】
前述の方法の好ましい実施形態では、COVID-19患者からの第3の試料は、入院後2日目に得られる。
【0168】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者からICUに送られる試料が毎日得られる。
【0169】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0170】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0171】
好ましくは、本発明の方法を実施することによって、COVID-19患者の疾患進行がより重症であるかどうかを評価することができる。
【0172】
前述の方法の好ましい実施形態では、第2の試料中のGDF-15のレベルの増加は、より重度の疾患進行を示す。
【0173】
特に、患者の第2の試料中のGDF-15のレベルが第1の試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の第2の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者のより重度の疾患進行を示す。特に、GDF-15は、重度の疾患進行を有する患者の第2の試料において、疾患進行がない又は軽度の個体の第2の試料よりも高いレベルで検出可能である。
【0174】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15のレベルが増加したCOVID-19患者がより綿密にモニタリングされる。
【0175】
前述の好ましい実施形態では、第2の試料中のGDF-15のレベルの増加は、COVID-19患者が治療法に反応しないことを示す。
【0176】
さらに、本発明の方法を実施することにより、COVID-19患者の健康状態が一定であるか改善しているかを評価することができる。
【0177】
好ましくは、第1の試料のGDF-15のレベルと比較した、第2の試料のGDF-15のレベルの減少、より好ましくは有意な減少、最も好ましくは統計学的に有意な減少は、疾患重症度が改善するCOVID-19患者又はCOVID-19の治療法に反応するCOVID-19患者を示す。したがって、治療法は効率的である。
【0178】
また好ましくは、第1の試料のGDF-15のレベルと比較して、GDF-15のレベルの変化、又は第2の試料のGDF-15のレベルの増加、より好ましくは有意な増加、最も好ましくは統計学的に有意な増加がないことは、COVID-19患者について、疾患重症度が悪化すること、又はCOVID-19患者が治療法に反応しないことを示す。したがって、治療法は効率的ではない。
【0179】
さらに、本発明の方法を実施することにより、患者の退院時の疾患の進行を予測することができる。
【0180】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0181】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の第1及び第2の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)及びb)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0182】
特定の実施形態では、患者の第1及び第2の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)及びb)は、それぞれ個別に以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0183】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0184】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0185】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0186】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0187】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0188】
特定の実施形態では、第1の試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0189】
特定の実施形態では、第2の試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0190】
その後、第1の試料中のGDF-15のレベルを第2の試料中のGDF-15のレベルと比較する。
【0191】
有利なことに、本発明の根底にある研究において、COVID-19患者の試料中のGDF-15のレベルが、入院のリスクがあるCOVID-19患者を同定することを可能にすることが見出された。
【0192】
したがって、第4の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者の入院のリスクを予測する方法であって、
b)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の入院のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0193】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者の入院のリスクを予測する方法であって、
c)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の入院のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0194】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15レベルが増加した患者に入院が推奨される。したがって、軽度及び中等度の疾患を有する有意なレベルのCOVID-19を有さないCOVID-19患者は、緊急介入又は入院を必要としない場合がある。
【0195】
SARS-CoV-2感染は、呼吸困難のために一部の感染患者に重篤な病気を引き起こす可能性があり、病院でのケアを必要とすることが知られている。SARS-CoV-2に感染した5人に約1人が重度のCOVID-19を発症する。これらのリスクのある患者は、典型的には、60歳を超える年齢であり、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患又は高血圧などの基礎医学的症状を有する人々は、その中でも危険性がより高い。しかしながら、このような臨床的危険因子を有しない若年患者も重度の疾患進行を発症し得ることが記載されている。したがって、これらの高リスクCOVID-19患者を可能な限り早期に同定することが重要であり、これは、進行を予防又は遅延させる治療手段を可能にするためである。
【0196】
複数の実施形態において、患者は病院に入院し、特に患者はSARS-CoV-2患者の感染症のために入院する。
【0197】
上記の方法に従って、SARS-CoV-2感染したことによるCOVID-19患者の入院のリスクを予測するものとする。したがって、GDF-15レベルの増加のために入院のリスクがあるか、又は入院のリスクがないCOVID-19患者を識別することができる。
【0198】
当業者によって理解されるように、リスクの予測は、通常、COVID-19患者の100%について正しいことを意図していない。この用語は、好ましくは、統計的に有意なCOVID-19患者の部分を適切かつ正確に予測できることを意味する。一部が統計的に有意であるかどうかは、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン-ホイットニー検定等の様々な周知の統計評価ツールを使用して、当業者がさらに苦労することなく決定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。
【0199】
好ましくは、特定の時間ウィンドウ内のリスク/確率が予測される。いくつかの実施形態では、当該予測ウィンドウは、本発明の方法の完了から計算される。特に、当該予測ウィンドウは、検査される試料が採取された時点から計算される。
【0200】
本発明の好ましい実施形態では、予測ウィンドウは、好ましくは、少なくとも1日、2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、又は少なくとも10日の間隔、又は任意の間欠時間範囲である。
【0201】
本発明の別の好ましい実施形態では、予測ウィンドウは、好ましくは、最大14日間、より好ましくは最大21日間の期間である。
【0202】
したがって、最大3日、最大5日、又は最大9日の期間内のリスクが予測される。また、予測ウィンドウは1~9日の期間であることが想定されている。あるいは、予測ウィンドウは1~3日の期間であってもよい。
【0203】
好ましくは、本発明の上記方法によって分析されるCOVID-19患者は、COVID-19感染症のために入院のリスクがあるCOVID-19患者の群、又はCOVID-19感染症のために入院のリスクがないCOVID-19患者の群のいずれかに割り当てられる。リスクのある患者は、好ましくは、COVID-19感染症に起因して(特に予測ウィンドウ内で)入院のリスクが上昇している患者である。好ましくは、該リスクは、COVID-19患者のコホート(すなわち、COVID-19患者の群)におけるリスクと比較して上昇している。リスクがない患者では、好ましくは、(特に予測ウィンドウ内で)入院のリスクが低い患者である。好ましくは、該リスクは、COVID-19患者のコホート(すなわち、COVID-19患者の群)における平均リスクと比較して低下している。
【0204】
したがって、本発明の方法は、リスク上昇とリスク低下とを区別することを可能にする。リスクのあるCOVID-19患者は、好ましくは2週間の予測ウィンドウ内で、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上、最も好ましくは20%以上のCOVID-19感染による入院のリスクを有する。
【0205】
リスクがないCOVID-19患者は、好ましくは2週間の予測ウィンドウ内で、好ましくは10%未満、より好ましくは8%未満、又は最も好ましくは7%未満の心不全による入院のリスクを有する。
【0206】
「基準」という用語は、本明細書の他の箇所で定義されている。この定義は適宜、適用される。上記の方法で適用される基準は、COVID-19感染による入院のリスクを予測することを可能にするものとする。いくつかの実施形態では、基準は、入院のリスクがあるCOVID-19患者と入院のリスクがないCOVID-19患者との間の区別を可能にするものとする。いくつかの実施形態では、該基準は、予め定義された値である。
【0207】
好ましくは、基準と比較して増加した、COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者が入院のリスクがあることを示す。また好ましくは、基準と比較して低下した、COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者が入院のリスクがないことを示す。
【0208】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0209】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0210】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0211】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0212】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0213】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0214】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0215】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0216】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0217】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0218】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0219】
本発明の方法は、個別化医療を補助することができる。好ましい実施形態では、上記方法は、COVID-19患者の入院のリスクを予測するためのものであり、COVID-19患者が入院のリスクがあると予測される場合、少なくとも1つの適切な治療を推奨及び/又は開始する工程をさらに含む。したがって、本発明はまた、処置方法に関する。
【0220】
第5の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者の集中治療の必要性を予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の集中治療の必要性を予測することと
を含む、方法に関する。
【0221】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者の集中治療の必要性を予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の集中治療の必要性を予測することと
を含む、方法に関する。
【0222】
複数の実施形態において、COVID-19患者が将来集中治療を必要とするかどうかが予測される。複数の実施形態において、COVID-19患者が次の24~72時間以内に集中治療を必要とするかどうかが予測される。
【0223】
前述の方法の好ましい実施形態では、GDF-15のレベルの増加は、COVID-19患者の集中治療の必要性を示す。
【0224】
特に、患者の試料中のGDF-15のレベルが基準又は基準試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者の集中治療の必要性の増加を示す。特に、GDF-15は、重度の疾患進行を有する患者の体液試料において、疾患進行がない又は軽度の個体の同じ体液試料よりも高いレベルで検出可能である。
【0225】
特定の実施形態では、GDF-15のレベルは、基準と比較して増加している。好ましくは、基準は所定の値である。該所定の値は、疾患重症度の予測、リスクの層別化、疾患進行のモニタリング、患者の入院のリスクの予測、集中治療の必要性の予測、集中治療室での入院又は処置のための選択、死亡リスクの予測、血栓症及び肺塞栓症のリスクの予測を可能にするものとする。基準は、予測の種類に基づいて異なることがあることは理解されたい。例えば、死亡リスクを予測するための1つ以上のGDF-15型ペプチドの基準は、通常、COVID-19患者の感染の開始点の基準よりも高いであろう。しかしながら、これは当業者により考慮される。
【0226】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0227】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0228】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0229】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15のレベルの増加は、COVID-19患者の集中治療の必要性を示す。特に、患者の試料中のGDF-15のレベルが基準又は基準試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者の集中治療の必要性を示す。特に、GDF-15は、集中治療を必要とする患者の体液試料において、集中治療を必要としない個体の同じ体液試料よりも高いレベルで検出可能である。
【0230】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0231】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0232】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0233】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0234】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0235】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0236】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0237】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0238】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0239】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0240】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0241】
第6の態様では、本発明は、
集中治療室での入院又は処置のためにベータウイルス感染症患者を選択するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベル又は濃度を、基準と比較することと、
c)集中治療室にベータウイルス感染患者を選択することと
を含む、方法に関する。
【0242】
一実施形態では、本発明は、集中治療室での入院又は処置のためにCOVID-19患者を選択するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベル又は濃度を、基準と比較することと、
c)集中治療室にCOVID-19患者を選択することと
を含む、方法に関する。
【0243】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15のレベルが増加した患者は、ICU入院又は処置のために選択される。
【0244】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、ICUに選択されたCOVID-19患者は、24時間以内及び72時間以内に臨床転帰の合併症を有すると予想される。
【0245】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19集団の第4四分位にGDF-15レベルを有する患者は、重症及び/又は重篤として分類され、集中治療室に推奨される。好ましくは、GDF-15の上位四分位は、代表的なCOVID-19コホートに由来しており、優先的には少なくとも3000pg/mL、4000pg/mL又は4500pg/mLである。
【0246】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者からの試料は、通常又は集中治療室(ICU)の院内決定を行うために得られる。
【0247】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者からの試料は、ICUへの入院時に得られる。前述の方法の好ましい実施形態では、COVID-19患者からの第2の試料は、ICUへの入院時、又はICUへの入院の1日後(24時間)、2日後(72時間)、3日後に得られる。
【0248】
前述の方法の好ましい実施形態では、第2の試料は、第1の試料よりも遅い時点で採取される。したがって、第2の試料を第1の試料の後に取得するものとする。第2の試料は、患者のCOVID-19感染の開始後又はCOVID-19患者の治療の開始後に得られるものとすることを理解されたい。しかしながら、第2の試料は、疾患の悪化後又は治療の開始後に得られてもよいことが企図される。
【0249】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者からの第3の試料は、ICUへの入院時、又はICUへの入院の1日後(24時間)、2日後(72時間)、3日後に得られる。
【0250】
例えば、ICUへの入院時に既にICUへの入院のために選択されているCOVID-19患者について、又はICUへの入院後1、2、3日目に、次の数日(24時間、72時間)以内の死亡率を含む新興の重度の合併症について早期に知らせるために最適な感度が望ましいことが理解されよう。
【0251】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0252】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0253】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0254】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0255】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0256】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0257】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0258】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0259】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0260】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0261】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0262】
第7の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者の死亡リスクを予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の死亡リスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0263】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者の死亡リスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の死亡リスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0264】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15のレベルの増加は、COVID-19患者の死亡リスクの増加を示す。特に、患者の試料中のGDF-15のレベルが基準又は基準試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者の死亡リスクの増加を示す。特に、GDF-15は、死亡リスクが低い個体の同じ体液試料よりも死亡リスクがより高い患者の体液試料でより高いレベルで検出可能である。
【0265】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、第3及び第4の四分位におけるGDF-15レベルは、死亡のより高いリスクに関連する。
【0266】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0267】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0268】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0269】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0270】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0271】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0272】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0273】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0274】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0275】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0276】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0277】
第8の態様では、本発明は、
a)ベータウイルス感染患者の疾患重症度の予測、
b)ベータウイルス感染患者のリスクの層別化、
c)ベータウイルス感染患者の疾患重症度の程度のモニタリング
のための、GDF-15又はGDF-15に結合する薬剤のインビトロ使用に関する。
【0278】
一実施形態では、本発明は、
a)COVID-19患者の疾患重症度の予測、
b)COVID-19患者のリスクの層別化、
c)COVID-19患者の疾患重症度の程度のモニタリング
のための、GDF-15又はGDF-15に結合する薬剤のインビトロ使用のための方法に関する。
【0279】
本発明は、COVID-19患者の疾患重症度を予測するための、COVID-19患者のリスクの層別化のための、及びCOVID-19患者の疾患重症度の程度をモニタリングするための、GFD-15ペプチド、及び/又はGDF-15ペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの薬剤の使用(特に、例えばCOVID-19患者からの試料におけるインビトロ使用)に関する。
【0280】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0281】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0282】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0283】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0284】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0285】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0286】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0287】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0288】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0289】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0290】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0291】
第9の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者の血栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の血栓症のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0292】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者の血栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の血栓症のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0293】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15のレベルの増加は、COVID-19患者の血栓症のリスクの増加を示す。特に、患者の試料中のGDF-15のレベルが基準又は基準試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者の血栓症のリスクの増加を示す。特に、GDF-15は、血栓症のリスクがより低い個体の同じ体液試料よりも血栓症のリスクがより高い患者の体液試料でより高いレベルで検出可能である。
【0294】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0295】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0296】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される患者は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0297】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0298】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0299】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0300】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0301】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0302】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0303】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0304】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
【0305】
好ましい一実施形態において、COVID-19患者の血栓症のリスクを予測するための方法は、COVID-19患者が血栓症に罹患するリスクがあると特定された場合に、i)抗凝固療法を推奨する工程、又はii)抗凝固療法の強化を推奨する工程をさらに含む。
【0306】
好ましい一実施形態では、COVID-19患者の血栓症のリスクを予測するための方法は、COVID-19患者が血栓症に罹患するリスクがあると特定された場合、i)抗凝固療法を開始する工程、又はii)抗凝固療法を強化する工程を更に含む。
【0307】
試験COVID-19患者が抗凝固療法を受けている場合、及び(本発明の方法によって)COVID-19患者が血栓症に罹患するリスクがないと識別された場合、抗凝固療法の投与量を減らすことができる。したがって、投与量を減らすことが推奨される場合がある。投与量を減らすことで、副作用(出血等)に罹患するリスクが減る可能性がある。
特に、以下が適用される:
【0308】
試験されるCOVID-19患者が抗凝固療法を受けていない場合、COVID-19患者が脳卒中に罹患するリスクがあると識別されていれば、抗凝固療法の開始が推奨される。したがって、抗凝固療法を開始するものとする。
【0309】
試験されるCOVID-19患者が既に抗凝固療法を受けている場合、COVID-19患者が血栓症に罹患するリスクがあると識別されていれば、抗凝固療法の強化が推奨される。したがって、抗凝固療法を強化するものとする。
【0310】
好ましい一実施形態において、抗凝固療法は、抗凝固剤の投与量、すなわち現在投与されている凝固剤の投与量を増やすことにより強化される。
【0311】
特に好ましい一実施形態では、現在投与されている抗凝固剤のより効果的な抗凝固剤への置き換えを増やすことにより、抗凝固療法が強化される。したがって、抗凝固剤の置き換えが推奨される。
【0312】
Hijazi at al.,The Lancet 2016 387,2302-2311,(
図4)に示されているように、高リスク患者のより良い予防は、ビタミンK拮抗薬であるワルファリンと比較して経口抗凝固剤アピキサバンで達成されることが記載されている。
【0313】
したがって、試験されるCOVID-19患者は、ワルファリン又はジクマロール等のビタミンK拮抗薬で処置される患者であることが想定される。COVID-19患者が血栓症に罹患するリスクがあると(本発明の方法により)特定された場合、ビタミンK拮抗薬を経口抗凝固剤、特にダビガトラン、リバーロキサバン又はアピキサバンによる置き換えが推奨される。したがって、ビタミンK拮抗薬による治療が中止されることにより、経口抗凝固剤による治療が開始される。
【0314】
本明細書で使用される場合、「血栓症の治療法を評価する」という用語は、好ましくは、静脈及び動脈血栓症並びに肺塞栓症などのCOVID-19合併症、並びに一連のCOVID-19患者で報告された血栓症の割合の増加を処置することを目的とする治療法の評価を指す。抗凝固療法は特定の出血リスクをもたらすので、抗凝固療法の必要性を評価しなければならない。
【0315】
特定の実施形態では、血栓症の治療法の評価は、静脈血栓症、動脈血栓症、肺塞栓症及び血栓症の割合の増加からなる群から選択される合併症の評価を含む。
【0316】
評定される治療法は、血栓症を処置することを目的とする任意の治療法であり得る。好ましくは、治療は、少なくとも1つの抗凝固剤の投与、すなわち抗凝固療法である。抗凝固療法は、好ましくは、該COVID-19患者における抗凝固のリスクを低減することを目的とする治療である。少なくとも1つの抗凝固剤を投与することは、血液の凝固及び関連する脳卒中を低減又は防止することを目的とする。好ましい一実施形態において、少なくとも1つの抗凝固剤は、ヘパリン、クマリン誘導体(すなわち、ビタミンK拮抗薬)、特にワルファリン又はジクマロール、経口抗凝固剤、特にダビガトラン、リバーロキサバン又はアピキサバン、組織因子経路阻害剤(TFPI)、アンチトロンビンIII、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤、第Va因子と第VIIIa因子の阻害剤、及びトロンビン阻害剤(抗IIa型)からなる群から選択される。したがって、COVID-19患者は上記の少なくともいずれか1つの医薬を服用することが想定される。
【0317】
好ましい実施形態では、上記抗凝固剤は、ワルファリン又はジクマロール等のビタミンK拮抗薬である。ワルファリン又はジクマロール等のビタミンK拮抗薬は、安価であるが、不便で扱いにくく、また治療範囲において時間変動を伴う信頼性の低い処置が多いため、患者のコンプライアンスを改善する必要がある。NOAC(新しい経口抗凝固剤)は、直接第Xa因子阻害剤(アピキサバン、リバーロキサバン、ダレキサバン、エドキサバン)、直接トロンビン阻害剤(ダビガトラン)及びPAR-1拮抗薬(ボラパクサル、アトパキサール)を含む。
【0318】
別の好ましい実施形態では、抗凝固剤及び経口抗凝固剤、特にアピキサバン、リバーロキサバン、ダレキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、ボラパクサル、又はアトパキサール。
【0319】
したがって、検査されるCOVID-19患者は、検査時(すなわち、試料を受け取る時)に、経口抗凝固剤又はビタミンK拮抗薬による治療を受けている可能性がある。
【0320】
第10の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者の肺塞栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の肺塞栓症のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0321】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者の肺塞栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の肺塞栓症のリスクを予測することと
を含む、方法に関する。
【0322】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15のレベルの増加は、COVID-19患者の肺塞栓症リスクの増加を示す。
【0323】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15のレベルの増加は、人工呼吸及び低酸素症の予防の必要性の増加を示す。特に、患者の試料中のGDF-15のレベルが基準又は基準試料中のGDF-15のレベルよりも高い場合、患者の試料中のGDF-15のレベルは、COVID-19患者の人工呼吸及び低酸素症の予防の必要性の増加を示す。特に、GDF-15は、人工呼吸及び低酸素症の予防の必要性が増加した患者の体液試料において、人工呼吸及び低酸素症の予防を必要としない個体の同じ体液試料よりも高いレベルで検出可能である。
【0324】
複数の実施形態において、患者からの試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。複数の実施形態において、試料はインビトロ試料であり、すなわちインビトロで分析され、体内に戻されない。
【0325】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0326】
複数の実施形態において、患者は、ヒト患者である。複数の実施形態において、患者は、任意の年齢である。複数の実施形態において、患者は、50歳以上、特に60歳以上、特に65歳以上である。さらに、検査される対象は、70歳以上であることが想定されている。さらに、検査されるCOVID-19患者は、75歳以上であることが想定されている。また、複数の実施形態において、COVID-19患者は、50~90歳、特に60~90歳、特に70~90歳であり得る。
【0327】
複数の実施形態において、GDF-15のレベルは、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。複数の実施形態において、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、イムノアッセイを実施することを含む。複数の実施形態において、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。複数の実施形態において、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0328】
特定の実施形態では、患者の試料中のGDF-15のレベルを決定する工程a)は、以下の工程:
i)患者の試料を、GDF-15に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とGDF-15との複合体を生成すること、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者からの試料におけるGDF-15のレベルを定量すること、を含む。
【0329】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、GDF-15に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者が容易に認識するように、特異的抗GDF-15抗体及びGDF-15抗原/分析物の間の複合体(=抗GDF-15複合体)、又はGDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及び第2の抗GDF-15抗体(=抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体複合体)を含む二次複合体又はサンドイッチ複合体の形成に適切又は十分な時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0330】
抗GDF-15抗体/GDF-15複合体の検出は、何らかの適切な手段によって実施することができる。第1の抗GDF-15抗体/GDF-15/第2の抗GDF-15抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施し得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0331】
特定の実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識される。
【0332】
一実施形態では、GDF-15に対する第1の抗体、GDF-15(分析物)及びGDF-15に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識され、第1の抗GDF-15抗体は固相に結合することが可能であるか、又は固相に結合している。
【0333】
複数の実施形態において、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0334】
特定の実施形態では、試料中の抗原、ビオチン化モノクローナルGDF-15特異的抗体、及びルテニウム錯体で標識されたモノクローナルGDF-15特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。ストレプトアビジン被覆微粒子を添加した後の第2の工程では、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して三元複合体が固相に結合する。
【0335】
第11の態様では、本発明は、ベータウイルス感染患者における疾患重症度を予測するためのコンピュータ実装方法のための方法であって、
a)処理ユニットにおいて、ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルの値を受信することと、
b)工程(a)において受信した値を処理ユニットで処理することであって、処理することが、GDF-15のレベルについて1つ又は複数の閾値をメモリから検索することと、工程(a)において受信した値を1つ又は複数の閾値と比較することとを含む、値を処理ユニットで処理することと、
c)出力装置を介してベータウイルス感染患者の疾患重症度の予測を提供することであって、予測が工程(b)の結果に基づく、ベータウイルス感染患者の疾患重症度の予測を提供することと
を含む、コンピュータ実装方法に関する。
【0336】
一実施形態では、本発明は、COVID-19患者における疾患重症度を予測するためのコンピュータ実装方法のための方法であって、
a)処理ユニットにおいて、COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルの値を受信することと、
b)工程(a)において受信した値を処理ユニットで処理することであって、処理することが、GDF-15のレベルについて1つ又は複数の閾値をメモリから検索することと、工程(a)において受信した値を1つ又は複数の閾値と比較することとを含む、値を処理ユニットで処理することと、
c)出力装置を介してCOVID-19患者の疾患重症度の予測を提供することであって、予測が工程(b)の結果に基づく、COVID-19患者の疾患重症度の予測を提供することと
を含む、コンピュータ実装方法に関する。
【0337】
上記の方法は、コンピュータ実装方法である。好ましくは、コンピュータ実装方法の全ての工程は、コンピュータ(又はコンピュータネットワーク)の1つ以上の処理ユニットによって実行される。したがって、工程(c)の評定は、処理ユニットによって実行される。好ましくは、当該評定は、工程(b)の結果に基づく。
【0338】
工程(a)で受信した値(複数の場合がある)は、本書の他の場所で説明されているように、COVID-19患者からのバイオマーカーのレベルの決定から導き出されるものとする。好ましくは、値は、バイオマーカーの濃度の値である。値は通常、値を処理ユニットにアップロード又は送信することによって処理ユニットによって受信される。あるいは、ユーザーインターフェースを介して値を入力することにより、処理ユニットが値を受け取ることができる。
【0339】
前述の方法の一実施形態では、工程(b)に示される基準(複数の場合がある)は、メモリから確立される。好ましくは、基準値はメモリから確立される。
【0340】
本発明の前述のコンピュータ実装方法の一実施形態では、工程c)で行われる評定の結果は、結果を提示するように構成されたディスプレイを介して提供される。
【0341】
本発明の前述のコンピュータ実装方法の一実施形態では、この方法は、工程c)で行われた評定に関する情報をCOVID-19患者の電子医療記録に転送する更なる工程を含み得る。
【0342】
第12の態様では、本発明は、
a)血中酸素の減少(低酸素症)、
b)無症状低酸素症(患者及び医師が臨床症候に基づいて低酸素症及び疾患重症度を認識していなかったもの)、
c)灌流(虚血)下で、不十分な酸素供給及び組織の壊死(一般的な低酸素症)
を有するベータウイルス感染患者を診断するためのGDF-15のインビトロ使用のための方法に関する。
【0343】
一実施形態では、本発明は、
a)血中酸素の減少(低酸素症)、
b)無症状低酸素症(患者及び医師が臨床症候に基づいて低酸素症及び疾患重症度を認識していなかったもの)、
c)灌流(虚血)下で、不十分な酸素供給及び組織の壊死(一般的な低酸素症)
を有するCOVID-19患者を診断するためのGDF-15のインビトロ使用のための方法に関する。
【0344】
前述の方法の好ましい実施形態では、低酸素症及び不十分な組織酸素化は、無症状低酸素症と呼ばれる一部のCOVID-19患者においては臨床的に見られない(「無症候性」)。
【0345】
好ましくは、上述の使用は、インビトロ使用である。さらに、検出剤は、好ましくは、モノクローナル抗体(又はその抗原結合断片)等の抗体である。
【0346】
本発明はまた、キットにも関する。一実施形態では、本発明のキットは、GDF-15ペプチドに特異的に結合する少なくとも1つの薬剤を含む。好ましくは、該キットは、本発明の方法、すなわち疾患重症度を予測するための方法、又はリスクの層別化のための方法若しくはCOVID-19患者の疾患進行をモニタリングするための方法を実施するのに適している。任意に、当該キットは、当該方法を実施するための指示を備えている。
【0347】
一実施形態では、該キットは、インビトロで疾患重症度を予測するために使用される。代替の実施形態では、該キットは、インビトロでのリスクの層別化に使用される。代替の実施形態では、該キットは、インビトロでの疾患重症度に使用される。代替の実施形態では、該キットは、インビトロでの血中酸素減少(低酸素症)に使用される。代替の実施形態では、該キットは、患者及び医師が臨床症候に基づいて低酸素症及び疾患重症度を認識していなかったかもしれないインビトロでの無症状低酸素症に使用される。代替の実施形態では、該キットは、インビトロでの灌流(虚血)下で、不十分な酸素供給及び組織の壊死(一般的な低酸素症)に使用される。
【0348】
この説明書は、本明細書に説明する疾患重症度を予測する方法を実行するためのプロトコルを含むものとする。さらに、説明書は、GDF-15ペプチドに対する基準についての少なくとも1つの値と、任意にTnT-hsペプチドについての基準についての少なくとも1つの値とを含むものとする。
【0349】
「アッセイ」は、好ましくは、バイオマーカーのレベルを決定するために適合されたキットである。「キット」という用語については、以下で説明する。例えば、該キットは、GDF-15ペプチドのための少なくとも1つの検出剤と、任意に、cTnT、NT-proBNP、CRP及びD-ダイマーに特異的に結合する薬剤からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる薬剤とを含むものとする。1~5つのバイオマーカーの検出剤は、1つのキット又は別々のキットで提供され得る。
【0350】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、GDF-15はGDF-15ポリペプチドである。
【0351】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者は、65歳以上である。
【0352】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者は、真性糖尿病を有する。
【0353】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者は、より低い酸素飽和度を有する。
【0354】
前述の方法のさらに好ましい実施形態では、COVID-19患者は、入院時の早期警告スコア(National Warning Score)がより高い。
【0355】
さらなる実施形態では、本発明は、以下の項目に関する:
1.ベータウイルス感染9患者の疾患重症度を予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベル又は濃度を、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の疾患重症度を予測することと
を含む、方法。
【0356】
2.COVID-19患者の疾患重症度を予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の疾患重症度を予測することと
を含む、方法。
【0357】
3.GDF-15のレベルの増加が、COVID-19患者の疾患重症度の増加を示す、態様1に記載の方法。
【0358】
4.ベータウイルス感染患者のリスクの層別化のための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者のリスクを層別化することと
を含む、方法。
【0359】
5.COVID-19患者のリスクの層別化のための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者のリスクを層別化することと
を含む、方法。
【0360】
6.GDF-15のレベルが増加した患者が、より深刻な疾患進行のリスクが高いとして層別化される、態様1~5の方法。
【0361】
7.ベータウイルス感染患者の疾患進行をモニタリングするための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの第1の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)第1の試料の後に得られたベータウイルス感染患者からの第2の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
c)第1の試料中のGDF-15のレベルを第2の試料中のGDF-15のレベルと比較することと、
d)工程c)の結果に基づいて、ベータウイルス感染患者の疾患進行をモニタリングすることと
を含む、方法。
【0362】
8.COVID-19患者の疾患進行をモニタリングするための方法であって、
a)COVID-19患者からの第1の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)第1の試料の後に得られたCOVID-19患者からの第2の試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
c)第1の試料中のGDF-15のレベルを第2の試料中のGDF-15のレベルと比較することと、
d)工程c)の結果に基づいて、COVID-19患者の疾患進行をモニタリングすることと
を含む、方法。
【0363】
9.第2の試料が、第1の試料よりも遅い時点で採取される、態様7及び8に記載の方法。
【0364】
10.第1及び第2の試料を採取する間の時間間隔が、少なくとも3時間、1日、3日、10又は20日間である、態様7又は9に記載の方法。
【0365】
11.さらなる試料(第3、第4、第5の試料)がより後の時点で採取され、次の試料を採取する間の時間間隔が前の試料の少なくとも3時間後、1日後、3日後、10日後又は20日後である、態様7~10に記載の方法。
【0366】
12.第2の試料中のGDF-15のレベルの増加が、より重度の疾患進行を示す、態様7~11に記載の方法。
【0367】
13.GDF-15値が増加している患者がより綿密にモニタリングされる、態様7~12に記載の方法。
【0368】
14.COVID-19患者からの第1の試料が入院時に採取され、第2の試料が3日目に採取され、第3の試料が9日目に採取される、態様7~13に記載の方法。
【0369】
15.ベータウイルス感染患者の入院のリスクを予測する方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の入院のリスクを予測することと
を含む、方法。
【0370】
16.COVID-19患者の入院のリスクを予測する方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の入院のリスクを予測することと
を含む、方法。
【0371】
17.GDF-15レベルが増加した患者について入院が推奨される、態様16に記載の方法。
【0372】
18.ベータウイルス感染患者の集中治療の必要性を予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の集中治療の必要性を予測することと
を含む、方法。
【0373】
19.COVID-19患者の集中治療の必要性を予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の集中治療の必要性を予測することと
を含む、方法。
【0374】
20.GDF-15のレベルの増加が、COVID-19患者の集中治療の必要性を示す、態様19に記載の方法。
【0375】
21.集中治療室での入院又は処置のためにベータウイルス感染患者を選択するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベル又は濃度を、基準と比較することと、
c)集中治療室にベータウイルス感染患者を選択することと
を含む、方法。
【0376】
22.集中治療室での入院又は処置のためにCOVID-19患者を選択するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)集中治療室にCOVID-19患者を選択することと
を含む、方法。
【0377】
22.GDF-15のレベルが増加した患者が、ICU入院又は処置のために選択される、態様21に記載の方法。
【0378】
23.ICUに選択された患者が、27時間及び72時間以内に臨床転帰の合併症を有すると予想される、態様21及び22に記載の方法。
【0379】
24.第2、第3及び第4の四分位におけるGDF-15レベルを有する患者が集中治療室に推奨される、態様21~23に記載の方法。
【0380】
25.COVID-19集団の第4四分位にGDF-15レベルを有する患者が、重症及び/又は重篤として分類され、集中治療室に推奨される、態様21~24に記載の方法。
【0381】
26.GDF-15の上位四分位が、代表的なCOVID-19コホートに由来しており、優先的には少なくとも3000pg/mL、4000pg/mL又は4500pg/mLである、態様21~25に記載の方法。
【0382】
27.COVID-19患者からの試料が、通常又は集中治療室(ICU)の院内決定を行うために得られる、態様21~26に記載の方法。
【0383】
28.COVID-19患者からの第1の試料が、ICUへの入院時に得られる、態様21~27に記載の方法。
【0384】
29.COVID-19患者からの第2の試料が、ICUへの入院時、又はICUへの入院の1日後(24時間)、2日後(72時間)、3日後に得られる、態様21~28に記載の方法。
【0385】
30.ベータウイルス感染患者の死亡リスクを予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の死亡リスクを予測することと
を含む、方法。
【0386】
31.COVID-19患者の死亡リスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の死亡リスクを予測することと
を含む、方法。
【0387】
32.GDF-15レベルの増加が、COVID-19患者の死亡リスクの増加を示す、態様31に記載の方法。
【0388】
33.第3及び第4の四分位におけるGDF-15レベルが、死亡のより高いリスクに関連する、態様31~32に記載の方法。
【0389】
34.ベータウイルス感染患者の血栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の血栓症のリスクを予測することと
を含む、方法。
【0390】
35.COVID-19患者の血栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の血栓症のリスクを予測することと
を含む、方法。
【0391】
36.GDF-15レベルの増加が、COVID-19患者の血栓症のリスクの増加を示す、態様35に記載の方法。
【0392】
37.ベータウイルス感染患者の肺塞栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)ベータウイルス感染患者の肺塞栓症のリスクを予測することと
を含む、方法。
【0393】
38.COVID-19患者の肺塞栓症のリスクを予測するための方法であって、
a)COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルを決定することと、
b)工程a)において決定されたレベルを、基準と比較することと、
c)COVID-19患者の肺塞栓症のリスクを予測することとを含む、方法。
【0394】
39.GDF-15レベルの増加が、COVID-19患者の肺塞栓症のリスクの増加を示す、態様38に記載の方法。
【0395】
40.GDF-15のレベルの増加が、人工呼吸及び低酸素症の予防の必要性の増加を示す、態様30~31に記載の方法。
【0396】
41.患者からの試料が体液試料である、態様1~40に記載の方法。
【0397】
42.試料が全血、血清又は血漿試料である、態様1~41に記載の方法。
【0398】
43.ベータウイルス感染9患者の疾患重症度を予測するためのコンピュータ実装方法のための方法であって、
a)処理ユニットにおいて、ベータウイルス感染患者からの試料中のGDF-15のレベルの値を受信することと、
b)工程(a)において受信した値を処理ユニットで処理することであって、処理することが、GDF-15のレベルについて1つ又は複数の閾値をメモリから検索することと、工程(a)において受信した値を1つ又は複数の閾値と比較することとを含む、値を処理ユニットで処理することと、
c)出力装置を介してベータウイルス感染患者の疾患重症度の予測を提供することであって、予測が工程(b)の結果に基づく、ベータウイルス感染患者の疾患重症度の予測を提供することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【0399】
44.COVID-19患者の疾患重症度を予測するためのコンピュータ実装方法であって、
a)処理ユニットにおいて、COVID-19患者からの試料中のGDF-15のレベルの値を受信することと、
b)工程(a)において受信した値を処理ユニットで処理することであって、処理することが、GDF-15のレベルについて1つ又は複数の閾値をメモリから検索することと、工程(a)において受信した値を1つ又は複数の閾値と比較することとを含む、値を処理ユニットで処理することと、
c)出力装置を介してCOVID-19患者の疾患重症度の予測を提供することであって、予測が工程(b)の結果に基づく、COVID-19患者の疾患重症度の予測を提供することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【0400】
45.
a)ベータウイルス感染患者の疾患重症度の予測、
b)ベータウイルス感染患者のリスクの層別化、
c)ベータウイルス感染患者の疾患重症度の程度のモニタリング
のための、GDF-15又はGDF-15に結合する薬剤のインビトロ使用。
【0401】
46.
a)COVID-19患者の疾患重症度の予測、
b)COVID-19患者のリスクの層別化、
c)COVID-19患者の疾患重症度の程度のモニタリング
のための、GDF-15又はGDF-15に結合する薬剤のインビトロ使用。
【0402】
47.
(1)GDF-15は、GDF-15ポリペプチドであり、
(2)COVID-19患者は、65歳以上であり、
(3)COVID-19患者は、糖尿病を有しており、
(4)COVID-19患者は、より低い酸素飽和度を有しており、かつ/又は
(5)COVID-19患者は、入院時の早期警告スコア(National Warning Score)がより高い、項目1~36のいずれか一項に記載の方法、又は項目33のインビトロ使用。
【0403】
48.無症状低酸素症及び不十分な組織酸素化が、臨床的に見られない(「無症候性」)、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法又は請求項45~46に記載のインビトロ使用。
【0404】
49.ベータウイルス感染患者の低酸素症及び不十分な組織酸素化が、臨床的に見られない(「無症候性」又は「無症状低酸素症」)、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法又は請求項45~46に記載のインビトロ使用。
【0405】
50.COVID-19患者の低酸素症及び不十分な組織酸素化が、臨床的に見られない(「無症候性」又は「無症状低酸素症」)、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法又は請求項45~46に記載のインビトロ使用。
【実施例】
【0406】
以下の実施例及び図面は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の思想から逸脱することなく、定められた手順に変更を加えることができると理解される。
【0407】
背景
増殖分化因子15(GDF-15)は、敗血症及び心血管疾患(CVD)における強力な予後マーカーである。COVID-19におけるGDF-15の予後の重要性は不明である。
【0408】
方法
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による検査室で確認された感染症及びCOVID-19の症候を有する連続した入院患者を、前向き観察的COVID MECH試験に登録した。バイオバンク試料を、入院時、3日目及び9日目に収集した。主要評価項目は、集中治療室への入院又は入院中の死亡であった。線形及びロジスティック回帰モデルを使用して、ベースラインでのバイオマーカーの予後値及び入院中の変化を評価した。
【0409】
結果
登録された123人の患者のうち、35人(28%)が主要評価項目に到達した;これらの患者は高齢であり、糖尿病を有することがより多く、入院時に酸素飽和度がより低く、早期警告スコア(National Early Warning Score)がより高かった。入院GDF-15濃度は97人(79%)で上昇し(年齢層別化された健康な個体では>95thパーセンタイル)、より高い濃度は検出可能なSARS-CoV-2ウイルス血症と関連していた。主要評価項目に到達した患者は、より高い濃度のGDF-15(中央値4225[IQR 3197-5972]pg/mL対2187[1344-3620]pg/mL、p<0.001)を有し、C統計値は0.78(95%信頼区間0.70-0.86)であった。GDF-15と転帰との関連は、年齢、性別、人種、BMI、CVD及びクレアチニンについて調整した後も持続し(p<0.001)、インターロイキン-6、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、フェリチン、D-ダイマー、心筋トロポニンT及びN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチドよりも優れており、増加していた。入院から3日目までのGDF-15の増加もまた、主要評価項目に達した患者においてより大きかった(中央値1208[IQR 0-4305]pg/mL対-86[IQR-322-491]pg/mL、p<0.001)。
【0410】
患者集団
COVIDメカニズム(COVID MECH)試験は、COVID-19で入院した連続患者を登録する専用バイオバンクを用いた前向き観察試験である。アカーシュス大学病院で検査室で確認されたCOVID-19で入院した18歳以上の患者全員を試験に参加するように招待した。この施設は、ノルウェーで最大の病院集患地域である56万人を有する三次医療センターである。COVID-19は、陽性のSARS-CoV-2リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)鼻咽頭スワブ及びCOVID-19症候を入院の主な理由として定義した。登録期間は2020年3月18日~5月4日であり、ノルウェーにおけるパンデミックの最初の波の大部分をカバーしていた。この試験は、患者を含める前にClinicalTrials.gov(NCT04314232)に登録された。試験特有の同意フォームは、全ての参加者によって署名され、又は患者が同意できなかった場合には(すなわち、侵襲的な人工呼吸では)、近親者によって署名された。
【0411】
この試験は、ノルウェー地域倫理委員会(REK South-East C,Ref.no.117589)及び施設内データ保護担当役員(Ref.no.20/02873)によって承認された。
【0412】
臨床データ収集
臨床的特徴、病歴、詳細なCOVID-19提示、処置、合併症及び転帰に関する情報は、研究者によって電子医療記録から抽出された。COVID MECH試験における主要評価項目は、集中治療室(ICU)への入院及び/又は院内死亡率の複合であった。参加者は、彼らがその入院中の任意の時点でICU病棟に入院し、24時間を超える集中治療の処置を受けた場合、ICU患者として分類された。
【0413】
CVDは、心筋梗塞、心不全又は心房細動の既往歴と定義した。肥満は、BMI≧30 kg/m2として定義された。早期警告スコア(National Early Warning Score)(NEWS)を、救急科に入院時の測定値:呼吸数、酸素飽和度、収縮期血圧、脈拍数、体温及び意識レベルから計算した。
【0414】
採血手順及び実験室分析
血液試料を、事前に指定された3つの時点:入院時(救急科)、入院の2~5日目(目標3日目)及び入院の6~12日目(目標9日目)に静脈穿刺によって採取した。血液試料の収集は、個々の診療科の訓練を受けた看護師によって実施された。中央検査室で分析された試料を直ちに分析した。バイオバンク中の試料を4°Cで一時的に保存し、2000Gで10分間遠心分離し、次いでアリコートに移し、これを凍結し、アカーシュス大学病院で-80°Cで保存した。
【0415】
以下のバイオマーカーを、COVID-19で入院した全ての患者の血液試料でアカーシュス大学病院の中央検査室によって体系的に測定した:ヘモグロビン、白血球数(WBC)、リンパ球数、血小板数、D-ダイマー、C反応性タンパク質(CRP)、ナトリウム、カリウム、クレアチニン、アラニントランスアミナーゼ(ALAT)、ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)及び乳酸。
【0416】
以前に解凍されていないバイオバンクからの血清試料を使用して、IL-6、プロカルシトニン(PCT)、フェリチン、心筋トロポニンT(cTnT)、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)及びGDF-15を測定した。これらのバイオマーカーを、Cobas e 801プラットフォーム(Roche Diagnostics,Penzberg,Germany)で電気化学発光免疫アッセイElecsysによって分析した。GDF-15について、製造業者から報告されたCVは、472pg/mLで1.3%及び19368pg/mLで1.1%である。IL-6について、製造業者から報告された変動係数(CV)は、6.4pg/mLで4.9%、189pg/mLで1.4%である。PCTについて、製造業者から報告されたCVは、0.12ng/mLで6.9%、43.3ng/mLで1.8%である。フェリチンについて、製造業者から報告されたCVは、414ng/mLで1.5%、1406ng/mLで2.8%である。cTnTについて、製造業者から報告されたCVは、9.7ng/Lで3.5%、19.8ng/Lで2.1%である。NT-proBNPについて、製造業者から報告されたCVは、127ng/Lで2.5%、1706ng/Lで1.3%である。
基準上限(URL)として、健常志願者におけるGDF-15の濃度(製造業者から報告)の95thパーセンタイルを使用した:
【0417】
<30歳について831pg/mL、30~40歳について852pg/mL、40~50歳について1229pg/mL、50~60歳について1466pg/mL、60~70歳について1476pg/mL、及び≧70歳について2199pg/mL。本発明者らは、cTnTのURLとして14ng/Lを使用し、75歳未満及び75歳以上の参加者のNT-proBNPのURLとしてそれぞれ125ng/L及び450ng/Lを使用し、D-ダイマーのURLとして0.5mg/Lを使用した。
【0418】
SARS-CoV-2ウイルス血症分析のために、MagNA Pure 96システム(Roche,Penzberg,Germany)で50μlの溶出体積を用いて200μlの血漿から全核酸を抽出した。ウイルスE遺伝子を標的とするCormanらのプロトコルに従って、QuantStudio(商標)7 PCRシステム(Thermofisher Scientific,Waltham,Massachussets,USA)でリアルタイムRT-PCRによってSARS-CoV-2 RNAを検出した。
【0419】
SARS-CoV-2 RNAが検出された場合、患者をウイルス血症と分類した。
【0420】
統計分析
値は、別段の記載がない限り、ねじれについてはN(%)及び中央値(四分位1~四分位3)として報告され、正規分布変数については平均±SDとして報告される。カテゴリー型変数及び連続型変数を、二値変数についてはカイ二乗検定、パラメトリック連続型変数についてはANOVA、及びノンパラメトリック連続型変数についてはKruskal-Wallisを使用して比較した。対数変換されたベースラインGDF-15レベルに関連する臨床的因子を、年齢、性別、人種、CVD、肥満度指数(BMI)、収縮期血圧、心拍数、体温、呼吸数、及び対数変換されたクレアチニン、IL-6、CRP、PCT、フェリチン、D-ダイマー、cTnT及びNT-proBNPを含む線形回帰を用いて決定した。
【0421】
バイオマーカー間の相関をスピアマン検定で評価した。線形及びロジスティック回帰モデルを使用して、入院時のSARS-CoV-2ウイルス血症と、GDF-15及び他のバイオマーカーの対数変換レベルとの間の関連を調査した。対数変換された入院バイオマーカー濃度と主要評価項目との間の関連性を、調整されていないロジスティック回帰モデル及び2つの調整されたロジスティック回帰モデルにおいて調べた:年齢、性別、人種、CVD、BMI及び対数変換血清クレアチニンについて調整したモデル1。IL-6、CRP、PCT、フェリチン、D-ダイマー、cTnT及びNT-proBNP濃度に加えて、モデル1の全ての変数について調整したモデル2。
【0422】
受信者動作曲線下面積(ROC AUC)を計算して、各バイオマーカーの性能を評価し、評価項目に到達する患者と到達しない患者を識別した。入院から3日目までのバイオマーカーの変化を、ウィルコクソンのマッチペアの符号順位検定によって評価した。入院から3日目までのバイオマーカーの変化と主要評価項目との間の関連性を、平均への潜在的な回帰を考慮するためにベースライン値をさらに調整して、上記の入院値と同じモデルを使用して評価した。回帰モデルで使用される全てのデルタ値は、対数変換されたベースライン及び3日目の濃度から計算した。
【0423】
全ての統計分析を、Stata Software(バージョン16、Stata Corp.,College Station,TX,USA)を使用して行った。0.05未満の両側P値を統計学的に有意とみなした。
【0424】
結果
ベースライン特性
合計で、試験期間中にCOVID-19で入院した136人の連続患者のうち123人がCOVID MECHバイオバンクで血液試料を採取された。平均年齢は59.6±15.2歳(25~87歳の範囲)であり、72名(59%)が男性であり、68名(55%)が白色であった。全体として、75名(61%)が1つ以上の併存症を有しており、この中には高血圧を有する39名(32%)、肥満35名(29%)、CVDを有する21名(17%)、糖尿病21名(17%)、及びCOPDを有する6名(5%)が含まれた。症候開始から入院までの時間は10±7日であった;100名(81%)が発熱を有し、98名(80%)が咳を有し、86名(70%)が呼吸困難を有していた。入院時の平均体温は38.1±0.9°C、呼吸数は27±9/分、収縮期血圧は132±19 mmHg、酸素飽和度は93±6%、NEWSは5±3点であった。
【0425】
入院中の転帰
入院中、31人の患者がICUに入院した。これらのうち、27人の患者が侵襲的な人工呼吸で処置され、4人の患者が死亡した。残りの88人の患者は内科で処置され、このうち処置制限(すなわち、蘇生禁止命令)を受けた4名が死亡した。ICUに入院した患者又は死亡した患者(主要試験評価項目、n=35)は、より高齢であり、真性糖尿病を有することがより多く、より高いベースライン温度、呼吸数、NEWSスコア、及びより低い酸素飽和度を示した(表1)。
【表1】
【0426】
ICUに入院した患者又は死亡した患者も、入院時に白血球数、クレアチニン、乳酸デヒドロゲナーゼ及び乳酸がより高かった。主要評価項目に関して、性別、人種、BMI、高血圧、基礎心血管疾患又は慢性肺疾患、喫煙、症候の日数、症候、又はレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害剤の使用に差はなかった。
【0427】
入院時のGDF-15及び他の心血管バイオマーカー及び炎症性バイオマーカー
入院時に、中央値(IQR)濃度は、GDF~15について2798(1667~4528)pg/mL、IL~6について40(20~75)pg/mL、CRPについて60(30~130)mg/L、PCTについて1.4(0.7~2.3)ug/L、フェリチンについて477(238~985)ug/L、D-ダイマーについて0.5(0.3~1.0)mg/L、cTnTについて9(5~16)ng/L、及びNT-proBNPについて100(36~285)ng/Lであった。URLを超えるCVDバイオマーカー濃度は、cTnTについて38名(31%)、NT-proBNPについて45名(37%)、D-ダイマーについて72名(61%)、及びGDF-15について97名(79%)で入院時に存在した。
【0428】
表2:GDF-15の中央値を超える濃度を有する患者はより高齢であり、糖尿病、高血圧及び心血管疾患を有することがより多く、より高いレベルのIL-6、CRP、PCT、フェリチン、cTnT、NT-proBNP、クレアチニン、LD、ビリルビン、D-ダイマー、WBC、及びより低いレベルのヘモグロビンを有していた。
【0429】
表2は、全集団における中央増殖分化因子15(GDF-15)濃度(2798pg/ml)によって層別化されたベースライン特性を示す。
【表2】
【0430】
GDF-15濃度による症候の持続時間又は症候の特徴に差はなかった。多変量回帰モデルでは、より高いGDF-15濃度は、より高齢、非白色人種、並びにより高いPCT及びD-ダイマー濃度と関連していた(表3)。
【表3】
【0431】
GDF-15は、他の全ての炎症性バイオマーカー及び心血管バイオマーカーと相関した;0.45から0.64の範囲の相関係数(表4)。
【表4】
【0432】
全ての相関は有意であった(p<0.05)
【0433】
略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子15
【0434】
GDF-15及びSARS-CoV-2ウイルス血症
SARS-CoV-2ウイルス血症は、入院時に48人(39%)の患者に存在していた。入院時のGDF-15濃度の四分位数によって患者をグループ分けすると、より高いGDF-15四分位数はウイルス血症を有する患者のより大きな割合と関連することが分かった(傾向についてp<0.001)(
図4)。
【0435】
入院時のウイルス血症は、GDF-15の最低四分位の13%から最高四分位の60%までの範囲であった。ウイルス血症は、年齢、性別、人種、BMI、CVD、クレアチニンについて調整した後も、GDF-15のより高い四分位と関連したままであった(p=0.001)。IL-6、CRP、PCT、フェリチン、cTnT、NT-proBNP及びGDF-15を含む回帰モデルでは、GDF-15のみが入院時のウイルス血症と関連していた(表5)。
【表5】
【0436】
全てのバイオマーカー値を、調整された回帰モデルにおいてlog-2変換した。
【0437】
略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子1
【0438】
入院時及び転帰時の心血管バイオマーカーと炎症性バイオマーカーとの間の関連
IL-6、CRP、PCT、フェリチン、NT-proBNP及びGDF-15のより高い入院濃度は主要評価項目と関連していたが、cTnT及びD-ダイマーには関連がなかった(
図1)。IL-6、CRP、PCT、フェリチン及びGDF-15は、ベースライン特性(年齢、性別、人種、BMI、CVD及びクレアチニン)について調整した後も主要評価項目と関連したままであった。
【0439】
全てのバイオマーカー及びベースライン特性を含む回帰モデルでは、フェリチン(p=0.03)及びGDF-15(p=0.006)が主要評価項目に関連する唯一のバイオマーカーであった。主要評価項目を有する患者を識別するためのGDF-15のROC AUCは、0.78(95% CI 0.70-0.86)であった(
図1)。
【0440】
図1:COVID-19で入院した患者における入院心血管及び炎症バイオマーカーの濃度並びに主要評価項目との関連(n=123)。
【0441】
モデル1:年齢、性別、人種、肥満度指数、心血管疾患及びクレアチニンについて調整
モデル2:モデル1+表中の全ての他のバイオマーカーについて調整
濃度を中央値(Q1、Q3)として報告する。全てのバイオマーカー値を、調整した回帰モデルにおいて対数変換した。
【0442】
略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子15
【0443】
非生存者は、未調整モデルにおいてより高いIL-6、D-二量体、cTnT、NT-proBNP及びGDF-15を有していた(
図2)。年齢、性別、人種、BMI、CVD及びクレアチニンについて調整した後、GDF-15のみが院内死亡率と関連したままであった。中央値(IQR)GDF-15は、非生存者では7789(4716~9317)pg/mL、生存者では2583(1512~4225)pg/mLであった。院内死亡率の識別因子としてのGDF-15のROC AUCは0.87(95% CI 0.79-0.94)であった。
図2)。8人の非生存者全員及びICUに入院した31人のうち25人(81%)の患者は、中央値を超えるGDF-15濃度を有していた。
【0444】
図2:COVID-19で入院した患者における入院心血管及び炎症バイオマーカーの濃度並びに全ての死因との関連(n=123)
【0445】
モデル1:年齢、性別、人種、肥満度指数、心血管疾患及びクレアチニンについて調整
濃度を中央値(Q1、Q3)として報告する。全てのバイオマーカー値を、調整された回帰モデルにおいて対数変換した。略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子1。
【0446】
入院中のバイオマーカーの転帰に対する変化
入院から3日目までの連続試料が96名(78%)の患者で利用可能であり、全集団においてベースラインから3日目までCRP、PCT、NT-proBNP、GDF-15及びD-ダイマーのレベルの有意な増加があった。主要転帰であるICUへの入院又は死亡は、これらの患者の33名(34%)で発生した。GDF-15は、主要評価項目に達した患者では中央値1208pg/mL(IQR 0-4305]増加し、非ICU生存者では中央値85[IQR-322-491]pg/mL減少した。未調整モデルでは、入院から3日目までのIL-6、PCT、D-ダイマー及びGDF-15のより大きな増加が主要評価項目と関連していた(
図3)。IL-6、D-ダイマー及びGDF-15は、年齢、性別、人種、BMI、CVD及びベースラインのクレアチニンについて調整した後も依然として主要評価項目と関連していた。これらの関連は、各バイオマーカーの入院濃度について調整した場合、有意なままであった。GDF-15のデルタ値に関するROC AUCは、0.69(95% CI 0.57-0.81)であった(
図3)。
【0447】
図3:COVID-19で入院した患者の間で主要試験評価項目によって層別化された心血管バイオマーカー及び炎症性バイオマーカーにおける入院から3日目までの濃度の変化(n=96)。
【0448】
モデル1:年齢、性別、人種、肥満度指数、心血管疾患及びクレアチニンについて調整
モデル2:モデル1+各バイオマーカーのベースライン濃度について調整
濃度を中央値(Q1、Q3)として報告する。全てのバイオマーカーデルタ値を、調整した回帰モデルにおいて対数変換した。
【0449】
略語:IL-6=インターロイキン6;CRP=C反応性タンパク質;PCT=プロカルシトニン;cTnT=心筋トロポニンT;NT-proBNP=N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド;GDF-15=増殖分化因子15
【0450】
入院から9日目までのバイオマーカー濃度の変化は患者の49名(40%)で利用可能であり、主要評価項目はこれらの参加者の26名(53%)で発生した。GDF-15は9日目まで増加し続け(主要評価項目に達した患者では中央値8031[IQR 3589-16003]pg/mL、非ICU生存者では安定したままであった[中央値2238[IQR 1540-3118]pg/mL(
図2)。
【表6】
【0451】
入院から9日目までのバイオマーカー濃度の変化は、ICUに入院した31人の患者についても利用可能であった。これらの参加者のうち4人がICU非生存者であることが観察された。GDF-15濃度を、探索分析において、ICU非生存者対ICU生存者において評価した。GDF-15濃度は、ICU生存者と比較して、サンプリングの各時点でICU非生存者において数値的により高いことが観察された。
【0452】
既にICUに入院したとき(1日目)、数値的により高いGDF-15濃度が、ICU非生存者において観察された(中央値6497.5[IQR 4189.5-9237.5]対ICU生存者[中央値3785[IQR 3096-4597]pg/mL(
図3)。表6に示すデータから、ICUに選択された患者のGDF-15濃度の上昇は、ICUに滞在した後、次の24時間及び72時間以内に臨床転帰の合併症を経験する患者を早期に特定するのに役立ち得ることが予想され得る。
【0453】
考察
COVID-19で入院した連続患者の、この前向き試験では、患者の80%においてGDF-15の入院濃度の上昇が見られた。より高濃度のGDF-15は、入院時のSARS-CoV-2ウイルス血症、集中治療の必要性、及び院内死亡率と関連していた。GDF-15の予後性能は、確立された心血管バイオマーカー及び炎症バイオマーカーよりも優れており、独立していた。入院から3日目までのGDF-15の増加は、より悪い転帰と関連していた。
【0454】
GDF-15濃度がリスクを予測するだけでなく、COVID-19患者について確立されたリスクマーカーよりも優れた予後値を有することが本発明の実施形態である。
【0455】
COVID-19において重要なバイオマーカーは、パンデミックの初期段階にCOVID-19で入院した患者の中国の一連の症例において最初に特定された。これらの試験は、選択された患者からの臨床的特徴及び検査所見を報告し、すなわち、結果は臨床的に示された血液試料からのものであった。多数のバイオマーカーを転帰に関連して評価し、心臓トロポニン、フェリチン及びDダイマーを含む少数の炎症性バイオマーカー及び心血管バイオマーカーを特に強い予後マーカーとして同定した。本発明では、設計が選択バイアスのリスクを軽減するので、COVID-19で入院した選択されていない連続患者の前向きバイオバンク試験は、これらの関連性に重要な洞察を提供する。以前の一連の症例と同様に、本発明の発明者らは、IL-6、CRP、PCT、フェリチン、D-ダイマー、cTnT及びNT-proBNPがより悪い転帰と関連することを見出した。しかしながら、人口統計、BMI、CVD及びクレアチニンについて調整した後、この関連性は、IL-6、D-ダイマー、cTnT及びNT-proBNPについて弱められた。さらに、GDF-15並びにこれらのバイオマーカーを含むモデルでは、GDF-15のみがICU入院又は死亡に関連したままであった。これらの知見に基づいて、市販のアッセイによって容易に入手可能なGDF-15は、COVID-19で入院した患者のリスクの層別化のために考慮され得る。
【0456】
入院中に炎症性バイオマーカー及び心血管バイオマーカーに有意な変化があり、ICUに入院した患者又は死亡した患者の間で異なる軌跡があった。入院から3日目まで、可能性のある交絡因子を調整した後でも、転帰不良の患者においてIL-6、D-ダイマー及びGDF-15のより大きな増加があった。GDF-15は、ICUに入院したか又は死亡した患者では入院から3日目まで中央値1208pg/mL増加したが、非ICU入院生存者では中央値86pg/mLの減少があった。ICUへの入院時(1日目)に、数値的により高いGDF-15濃度が、ICU非生存者(中央値6497.5)対ICU生存者(中央値3785pg/mL)で観察された。ICUに患者の入院時に観察される数値的により高いGDF-15濃度は、ICUで24時間又は72時間以内に臨床転帰の重度の合併症を経験している患者の早期同定を助けることができる。
ベースラインにおいて、より低い酸素飽和度とより高いGDF-15との間に有意な関連があった:β係数は、対数単位GDF-15あたり-2.23(95% CI-3.46から-0.99)、p=0.001であった。この関連は、年齢、性別、人種、肥満(BMI≧30kg/m2)、CVD(以前の心筋梗塞、心不全又は心房細動)及びクレアチニンについて調整した後も持続した
【0457】
GDF-15は、重症患者の転帰不良の堅固な予測因子であることが知られている。動物モデルでは、GDF-15欠損は炎症反応を増強し、リポ多糖によって誘導されて腎臓及び心臓の損傷を悪化させることが知られているが、GDF-15の過剰発現はこれらのエンドトキシン誘導機構から保護する。GDF-15発現は肺損傷によって誘導され、多くの臓器における組織損傷の特徴であることが示唆されている。本発明では、SARS-CoV-2ウイルス血症がより高いレベルのGDF-15と関連することが分かった。全ての心血管バイオマーカー及び炎症性バイオマーカーを含むモデルでは、GDF-15のみがウイルス血症に関連したままであった。この新規な発見は、SARS-CoV-2細胞変性効果と複数の組織におけるGDF-15の発現との間の直接的な関連を示唆し得る。GDF-15は、調査した全ての炎症性バイオマーカー及び心血管バイオマーカーと中程度に相関したが(rho 0.45-0.64)、これを超える予後情報を提供した。本発明は、炎症及び心血管機能障害に関連する一連の病態生理学的効果を反映する、GDF-15に関する現在の統合された理解を支持する。
【0458】
結論
GDF-15は、COVID-19で入院した患者の80%で上昇し、より高い濃度はSARS-CoV-2ウイルス血症及びより悪い臨床転帰に関連する。GDF-15は、cTnT、NT-proBNP、CRP及びD-ダイマーを含む、COVID-19の既知のリスクマーカーよりも優れた予後情報を提供する。入院中のGDF-15のより大きな増加もまた、より悪い転帰と独立して関連している。
【国際調査報告】