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特表2023-537236結晶性中間体を使用する向上したクロラントラニリプロールプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】結晶性中間体を使用する向上したクロラントラニリプロールプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/40 20060101AFI20230824BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20230824BHJP
   C07C 231/24 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C07C237/40
C07D401/04
C07C231/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503999
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 US2021042679
(87)【国際公開番号】W WO2022020540
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/055,446
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391022452
【氏名又は名称】エフ エム シー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】518259165
【氏名又は名称】エフエムシー アグロ シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】カレ・ソンダーガード
(72)【発明者】
【氏名】キム・ルンドクヴィスト
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・ケイ・ヴィンター
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・リカルド・オーバーホルツァー
(72)【発明者】
【氏名】エリン・ギャラガー・デムコ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ティー・ブース
【テーマコード(参考)】
4C063
4H006
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE05
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB84
4H006BB21
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM72
4H006BU46
4H006BV72
(57)【要約】
式IIの化合物、式IIIの化合物及びアミン塩基を等モル比(1:1:1)で含む三成分系結晶が開示されている。また、式IIの化合物、式IIIの化合物及びアミン塩基を等モル比(1:1:1)で含む三成分系結晶を調製する方法が開示されている。さらに、本開示の三成分系結晶を用いる、クロラントラニリプロールを調製する方法が開示されている。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式IIの化合物:
【化1】
(b)式IIIの化合物;
【化2】
及び
(c)アミン塩基、
を含む三成分系結晶であって、前記成分は、およそ1:1:1の等モル比である、三成分系結晶。
【請求項2】
前記アミンはピリジン塩基である、請求項1に記載の三成分系結晶。
【請求項3】
前記ピリジン塩基は3-ピコリンである、請求項2に記載の三成分系結晶。
【請求項4】
約12.12Å×約15.80Å×約12.28Åの単位胞寸法を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の三成分系結晶。
【請求項5】
(a)式IIの化合物:
【化3】
(b)式IIIの化合物;
【化4】
及び
(c)アミン塩基、
を含む三成分系結晶の調製方法であって、
(i)前記式IIの化合物、前記式IIIの化合物及び前記アミン塩基の混和物を、およそ1:1:1の等モル量で非プロトン性溶剤中に形成するステップ、
(ii)これから前記三成分系結晶を形成するステップ、及び
(iii)前記三成分系結晶を前記極性非プロトン性溶剤から単離するステップ
を含む方法。
【請求項6】
前記非プロトン性溶剤はアセトニトリルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アミン塩基はピリジン塩基である、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ピリジン塩基は3-ピコリンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式Iの化合物
【化5】
の調製方法であって:
(a)
(i)式IIの化合物:
【化6】
(ii)式IIIの化合物;
【化7】
及び
(iii)アミン塩基
を含む三成分系結晶の非プロトン性溶剤中の懸濁液と酸活性化剤とを反応させるステップであって、前記成分はおよそ1:1:1の等モル比で存在するステップ、並びに
(b)酸活性化された式II及びIIIの化合物のカップリングを行って、前記式Iの化合物の前記形成を進行させるステップ
を含む、調製方法。
【請求項10】
前記非プロトン性溶剤はアセトニトリルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸活性化剤は塩化スルホニルである、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記塩化スルホニルは塩化メタンスルホニルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミン塩基はピリジン塩基である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ピリジン塩基は3-ピコリンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式Iの化合物
【化8】
の調製方法であって:
(a)
式IIの化合物:
【化9】
式IIIの化合物;
【化10】
アミン塩基
及び非プロトン性溶剤を含む混合物を調製するステップ、
(b)前記混合物を酸活性化剤と組み合わせるステップ;並びに
(c)酸活性化された式II及びIIIの化合物のカップリングを行って、前記式Iの化合物の形成を進行させるステップ
を含み、
式Iの化合物の種結晶を添加するステップをさらに含み、前記種結晶は
(i)ステップ(a)の前記混合物を調製する際に添加され、
(ii)ステップ(b)において、前記混合物に前記酸活性化剤が添加される前に前記混合物に添加され、又は
(iii)ステップ(b)において、前記活性化剤の添加中に添加される
、調製方法。
【請求項16】
前記式Iの化合物のシーディング材料の量は、約0.5mol-%~15mol-%の範囲内である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シーディング材料を含む前記混合物が、約30℃~還流温度の範囲内の温度を有する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度は約40℃~還流温度の範囲内である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書において参照によりその全体が援用される、2020年7月23日に出願の米国仮特許出願第63/055446号明細書に係る利益を主張する。
【0002】
本開示は、クロラントラニリプロールの合成における最終工程において生成される中間体を含む三成分系結晶に関する。本開示はさらに、本開示の三成分系結晶を用いてクロラントラニリプロールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3-ブロモ-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボン酸(式II)及び2-アミノ-5-クロロ-N,3-ジメチルベンズアミド(式III)
【化1】
は、クロラントラニリプロール(式I)の化合物
【化2】
の合成に係る最終工程における重要な中間体である。
【0004】
高純度の式II及びIIIの化合物の生成に係る従来のプロセスには一般に、両方の中間体に対して個別の再結晶化ステップが含まれており、廃棄物の増大及び収率の低下がもたらされている。高純度の式II及びIIIの化合物を生成するための新規方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
(a)式IIの化合物:
【化3】
(b)式IIIの化合物;
【化4】
及び
(c)アミン塩基
を等モル比(1:1:1)で含む三成分系結晶に関する。
【0006】
本開示はさらに、
(a)式IIの化合物:
【化5】
(b)式IIIの化合物;
【化6】
及び
(c)アミン塩基
を等モル比(1:1:1)で含む三成分系結晶を調製する方法に関し、
この方法は:
(i)式IIの化合物、式IIIの化合物及びアミン塩基を極性非プロトン性溶剤中において混合するステップ、並びに
(ii)三成分系結晶を極性非プロトン性溶剤から単離するステップ
を含む。
【0007】
本開示はさらに、式Iの化合物
【化7】
の調製方法に関し、この方法は:
(a)
(i)式IIの化合物:
【化8】
(ii)式IIIの化合物;
【化9】
及び
(iii)アミン塩基
を等モル比(1:1:1)で含む三成分系結晶の非プロトン性極性溶剤中の懸濁液を、酸活性化剤と反応させるステップ、
(b)酸活性化された式II及びIIIの化合物のカップリングを行って、式Iの化合物の形成を進行させるステップ
を含む。
【0008】
本開示はさらに、式Iの化合物
【化10】
を調製する方法に関し、この方法は:
(a)式IIの化合物:
【化11】
式IIIの化合物;
【化12】
及び、アミン塩基及び極性非プロトン性溶剤を含む混合物を調製するステップ、
(b)酸活性化剤を混合物に徐々に添加するステップ;並びに
(c)酸活性化された式II及びIIIの化合物のカップリングを行って、式Iの化合物の形成を進行させるステップ;
を含み、ここで、式Iの化合物のシーディング材料は
(i)ステップ(a)の混合物を調製する際に添加され、
(ii)ステップ(b)において、酸活性化剤が添加される前に混合物に添加され;又は
(iii)ステップ(b)において、活性化剤の添加中に添加される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において用いられるところ、「を含む(comprises)」、「を含んでいる(comprising)」、「を含む(includes)」、「を含んでいる(including)」、「を有する(has)」、「を有している(having)」、「を含有する(contains)」、「を含有している(containing)」、「~により特徴付けられる」という用語、又は、これらのいずれかの他の変化形は、非排他的な包含をカバーすることが意図されており、明記されているいずれかの限定に従うこととなる。要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセス又は方法は例えば、必ずしもこれらの要素にのみ限定されるものではなく、明示的に列挙されていないか、又は、このような組成物、混合物、プロセス若しくは方法に固有の他の要素が含まれていてもよい。
【0010】
「~からなる(consisting of)」という移行句は、特定されていないいずれかの要素、ステップ又は構成成分を除外する。特許請求の範囲中に記載がある場合、このような句によって、特許請求の範囲は、通常付随する不純物を除き、明記されているもの以外の材料の包含について限定されることとなる。「~からなる(consisting of)」という句が、プリアンブルの直後ではなく特許請求の範囲の本文の一文節中にある場合、これは、該当する文節中に既定されている要素のみを限定するものであり;他の要素は、全体としては、特許請求の範囲から除外されるものではない。
【0011】
「基本的に~からなる(consisting essentially of)」という移行句は、文字通り開示されているものに追加して、材料、ステップ、機構、成分又は要素を包含する組成物又は方法を定義するために用いられているが、ただし、これらの追加の材料、ステップ、機構、成分又は要素は、特許請求の範囲に係る基本的及び新規特徴に著しく影響しない。「基本的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、「を含んでいる(comprising)」と、「からなる(consisting of)」との間の中間を構成する。
【0012】
出願人らが、「を含んでいる(comprising)」などのオープンエンド形式の用語で実施形態又はその一部分を定義している場合、その記載は(別段の定めがある場合を除き)、「基本的に~からなる(consisting essentially of)」又は「~からなる(consisting of)」という用語を用いてこのような実施形態を記載していると解釈されるべきであると、直ちに理解されるべきである。
【0013】
さらに、反する記載が明確になされていない限り、「又は」は、包含的論理和を指し、そして排他的論理和を指さない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在する)、そしてBが偽である(又は存在しない);Aが偽であり(又は存在しない)、そしてBが真である(又は存在する);並びに、A及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0014】
また、本開示の要素又は成分に先行する不定冠詞1つの(「a」及び「an」)は、要素又は成分の事例(すなわち、存在)の数に関して非制限的であることが意図される。従って、「a」又は「an」は、1つ又は少なくとも1つ、を含むと読解されるべきであり、要素又は成分の単数形の語形は、その数が明らかに単数を意味しない限りにおいては複数をも包含する。
【0015】
本明細書において用いられるところ、「アミン塩基」は、第一級、第二級及び第三級アミンを含む有機塩基及びその塩を指す。例としては、置換アミン、環式アミン、天然アミン等であって、ピリジン塩基(例えば、3-ピコリン)、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、イソプロピルアミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等などが挙げられる。
【0016】
本明細書において用いられるところ、「非プロトン性溶剤」は、プロトン供与能を有さない溶剤のいずれかを指す。例としては、特に限定されないが、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸プロピル(例えば、酢酸イソプロピル)、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド及び炭酸プロピレンが挙げられる。
【0017】
本明細書において用いられるところ、「極性非プロトン性溶剤」という用語は、極性溶剤である非プロトン性溶剤を指す。例としては、特に限定されないが、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0018】
本明細書において用いられるところ、「酸-活性化剤」という用語は、カルボン酸化合物とアントラニルアミドとのカップリングを促進させる反応体を指す。例としては、特に限定されないが、一般式RS(O)Clの化合物(式IV)(式中、Rは、C~Cアルキル;C~Cハロアルキル;又は、ハロゲン、C~Cアルキル及びニトロからなる群から選択される1~3つの置換基で任意に置換されるフェニルなどの炭素系の基である)が挙げられる。例としてはさらに、特に限定されないが、メタンスルホニルクロリド(RはCHである)、塩化プロパンスルホニル(Rは(CHCHである)、ベンゼンスルホニルクロリド(RはPhである)及びp-トルエンスルホニルクロリド(Rは4-CH-Phである)が挙げられる。
【0019】
本明細書において用いられるところ、「およそ」という用語は、例えば、特に限定されないが、個体群%、w/w%、w/v%、v/v%又は粒径などの言及されている基準の±5%、±2.5%、±1%、±0.5%、±0.1%又は±0.05%を指す。
【0020】
本明細書において用いられるところ、「単位胞寸法」という用語は格子パラメータと称され、単位胞はもっとも単純な最小の繰返し単位であり、三本の結晶軸、三本のベクトルの長さ(a、b、c)、及び、軸間角度(α、β、γ)により定義される。
【0021】
発明の概要に記載されている本開示の実施形態は、これらに限定されないが、以下に記載のものを含む。
【0022】
実施形態A.式IIの化合物、式IIIの化合物及びアミン塩基を、およそ等モル比(1:1:1)又は等モル比で含む三成分系結晶。
【0023】
実施形態A.1.アミン塩基がピリジン塩基である、実施形態Aの三成分系結晶。
【0024】
実施形態A.2.ピリジン塩基が3-ピコリンである、実施形態A.1の三成分系結晶。
【0025】
実施形態A.3.およそ12.12Å×15.80Å×12.28Åの単位胞寸法を有する、実施形態A.2の三成分系結晶。
【0026】
実施形態B.式IIの化合物、式IIIの化合物及びアミン塩基をおよそ等モル比(1:1:1)又は等モル比(1:1:1)で含む三成分系結晶の調製方法であって、(i)式IIの化合物、式IIIの化合物及びアミン塩基を、およそ等モル量で、極性非プロトン性溶剤中において混合するステップ、並びに、(ii)三成分系結晶を極性非プロトン性溶剤から単離するステップ、を含む方法。
【0027】
実施形態B.1.非プロトン性極性溶剤がアセトニトリルである、実施形態Bの方法。
【0028】
実施形態B.2.アミン塩基がピリジン塩基である、実施形態B又は実施形態B.1の方法。
【0029】
実施形態B.3.ピリジン塩基が3-ピコリンである、実施形態B.2の方法。
【0030】
実施形態C.式Iの化合物の調製方法であって、(a)式IIの化合物、式IIIの化合物及びアミン塩基をおよそ等モル比(1:1:1)又は等モル比(1:1:1)で含む三成分系結晶の非プロトン性極性溶剤中の懸濁液を酸活性化剤と反応させるステップ、並びに、(b)酸活性化された式II及びIIIの化合物のカップリングを行って、式Iの化合物の形成を進行させるステップ、を含む方法。
【0031】
実施形態C.1.非プロトン性極性溶剤がアセトニトリルである、実施形態Cの方法。
【0032】
実施形態C.2.酸活性化剤が、塩化メタンスルホニルなどの塩化スルホニルである、実施形態C又は実施形態C.1の方法。
【0033】
実施形態C.3.アミン塩基がピリジン塩基である、実施形態C又は実施形態C.1~C.2の方法。
【0034】
実施形態C.4.ピリジン塩基が3-ピコリンである、実施形態C.3の方法。
【0035】
実施形態D.式Iの化合物の調製方法であって、(a)式IIの化合物、式IIIの化合物、アミン塩基及び極性非プロトン性溶剤を含む混合物を調製するステップ、(b)酸活性化剤を混合物に徐々に添加するステップ、並びに、(c)酸活性化された式II及びIIIの化合物のカップリングを行って、式Iの化合物の形成を進行させるステップを含む方法であり、ここで、式Iの化合物のシーディング材料は、(i)ステップ(a)の混合物を調製する際に添加され;(ii)ステップ(b)において、酸活性化剤が添加される前に混合物に添加され;又は(iii)ステップ(b)において、活性化剤の添加中に添加される。
【0036】
実施形態D.1.式Iの化合物のシーディング材料の量が0.5~15mol-%の範囲内である、実施形態Dの方法。
【0037】
実施形態D.2.シーディング材料を含む混合物が、約30℃~還流温度、又は、約40℃~還流温度、又は、約45℃~約70℃の範囲内の温度を有する、実施形態D又は実施形態D.1の方法。
【0038】
実施形態D.3.ステップ(a)の混合物を調製する際、又は、ステップ(b)における活性化剤の添加前に、式Iの化合物のシーディング材料が添加される、実施形態D又は実施形態D.1~D.2の方法。
【0039】
実施形態D.4.式Iの化合物のシーディング材料の量が約5~15mol-%の範囲内である、実施形態D.3の方法。
【0040】
実施形態D.5.ステップ(b)において、酸活性化剤の少なくとも約5%などの酸活性化剤の一部が添加された後に、式Iの化合物のシーディング材料の量が添加される、実施形態D又は実施形態D.1~D.2の方法。
【0041】
実施形態D.6.式Iの化合物のシーディング材料の量が約0.5~5mol-%の範囲内である、実施形態D.5の方法。
【0042】
実施形態D.7.非プロトン性極性溶剤がアセトニトリルである、実施形態D又は実施形態D.1~D.6の方法。
【0043】
実施形態D.8.酸活性化剤が塩化メタンスルホニルなどの塩化スルホニルである、実施形態D又は実施形態D.1~D.7の方法。
【0044】
実施形態D.9.アミン塩基が3-ピコリンなどのピリジン塩基である、実施形態D又は実施形態D.1~D.8の方法。
【0045】
実施形態D.10.式Iの化合物のシーディング材料が、既述の反応からの、精製した結晶材料、遠心分離した湿潤結晶材料、式Iの固体材料の有機溶剤中の懸濁液、又は、結晶材料の非失活スラリーの形態である、実施形態D又は実施形態D.1~D.9の方法。
【0046】
注目すべきは、本開示の組成物では、クロラントラニリプロールの調製において、不純物を含む品質の式II及びIIIの化合物の使用が許容されることである。いくつかの実施形態において、実施形態A~Cの1:1:1結晶は、ろ過及び/又は単離して、母液中のすべての不純物を除去し、次いで、反応に供して、不純物を含まないクロラントラニリプロール化合物を生成し得る。いくつかの実施形態においては、1回の結晶化のみで高い純度を達成し得る。いくつかの実施形態において、1:1:1結晶は、反応に必要とされる中間体をそれぞれ正確な理論量で含有していてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、実施形態A~Cの1:1:1結晶を生成することで、クロラントラニリプロールの生成に必要とされる式II及びIIIの化合物の正確な割合で反応を確実に行うことを補助し得ると共に、さらに、このプロセスをより良好な制御下に行うことが可能となり得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、実施形態A~Cの1:1:1結晶を使用することで、クロラントラニリプロールのより小さな結晶の形成が促進される。いくつかの実施形態において、1:1:1結晶は、式Iの化合物の結晶化中において核形成源として作用し得る。いくつかの実施形態において、実施形態Dのシーディング材料は、より大きく、且つ、より均一な結晶の形成をもたらし得る。
【0049】
実施形態Dの種々の実施形態において、ステップ(b)において、酸活性化剤の少なくとも約5%、又は、活性化剤の約10%~約20%、又は、活性化剤の約15%~約20%などの酸活性化剤の一部の添加の後に、式Iの化合物のシーディング材料の量は添加される。
【0050】
種々の実施形態において、好適なアミン塩基としては、第三級アミン(任意に置換されたピリジンを含む)及びその混合物が挙げられる。種々の実施形態において、好適なアミン塩基としては、2-ピコリン、3-ピコリン、2,6-ルチジン、ピリジン、及び、前述のものの混合物が挙げられ得る。
【0051】
種々の実施形態において、好適な溶剤としては、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、ハロアルカン(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン)、エーテル(例えば、エチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、p-ジオキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン)、第三級アミン(例えば、トリアルキルアミン、ジアルキルアニリン、任意に置換されたピリジン)、及び、前述のものの混合物が挙げられる。
【0052】
種々の実施形態において、酸活性化剤は、式II及びIIIの化合物のカップリングを促進させる反応体として用いられる。酸活性化剤対式IIの化合物の公称モル比は、約1.0~2.5又は1.1~1.4であり得る。好適な酸活性化剤としては、メタンスルホニルクロリド、塩化プロパンスルホニル、ベンゼンスルホニルクロリド及び7-トルエンスルホニルクロリドなどの塩化スルホニル化合物が挙げられる。
【0053】
種々の実施形態において、本開示の方法は広い温度範囲で実施し得るが、通例、-70℃~+100℃、又は、30℃~還流温度、又は、40℃~還流温度、又は、45℃~70℃の範囲の温度で実施される。実施形態Dのいくつかの実施形態において、反応は、約50℃の温度で実施される。
【0054】
種々の実施形態において、式Iの化合物のシーディング材料の量は、0.5~15mol-%、又は、0.5~5mol-%、又は、5~10mol-%、又は、5~15mol-%の範囲内である。
【0055】
種々の実施形態において、本開示の1:1:1結晶は、式IIの化合物、式IIIの化合物及び3-ピコリンを等モル比で含有する三成分系共結晶を含み得る。いくつかの実施形態において、3-ピコリン及び式IIの化合物は、結晶中に塩として存在し得る。一実施形態において、1:1:1結晶は、モノリシック構造、1.512-g/cmの密度、及び、12.12Å×15.80Å×12.28Åの単位胞寸法で現れ得る。種々の実施形態において、1:1:1結晶は、20~55℃の温度範囲にわたる約15~60w/w%の溶解度により特徴付けられ得る。
【0056】
1:1:1結晶は、1-mol当量の式IIの化合物、1mol当量の式IIIの化合物、及び、1-mol当量のピコリンをアセトニトリル中において混合し、次いで、1:1:1結晶の種結晶を得られた過飽和溶液に加えて結晶化を生起させることにより調製し得る。或いは、1:1:1結晶が既に生成されている反応器を用いて、種結晶を使用することなく結晶化を生起させてもよい。冷却及び/又は逆溶剤の添加を用いて、1:1:1結晶の析出をさらに促進してもよい。次いで、1:1:1結晶を回収すると共に、その後、クロラントラニリプロールを調製するためにプロセスにおいて使用し得る。好適な回収プロセスとしては、ろ過等が挙げられる。1:1:1結晶はまた、標準的な量のメタンスルホニルクロリド及びピコリンを用いて直ぐに反応に供して、クロラントラニリプロールを形成してもよい。
【実施例
【0057】
比較例1
3-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6-[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボキサミド(クロラントラニリプロール)の調製
アセトニトリル(54.5g)、3-ブロモ-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボン酸(46.6g、0.15mol)、2-アミノ-5-クロロ-N,3-ジメチルベンズアミド(32.1g、0.16mol)、及び、3-ピコリン(37.3g、0.40mol)を、20℃で、1:1:1種結晶を含有するジャケットを装着した、撹拌容器中において一緒に混合した。得られた混合物は、1:1:1の結晶スラリーを容器中に形成した。次いで、メタンスルホニルクロリド(21.2g、0.19-mol)を、120分間かけて、温度を約32℃に維持しながらゆっくりと添加し、次いで、反応をさらに1時間保持した。次いで、水(46g)を反応器に60分間の期間をかけて添加し、混合物をさらに1時間保持した。得られたスラリーをろ過し、及び、5:1のアセトニトリル及び水混合物で洗浄した。クロラントラニリプロールは、>90%の収率で生成された。得られた粒径中央値は16.3μmであった。
【0058】
実施例2
3-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6-[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボキサミド(クロラントラニリプロール)の調製
3-ブロモ-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボン酸(46.6g、0.15mol)、2-アミノ-5-クロロ-N,3-ジメチルベンズアミド(30.6g、0.15mol)、及び、3-ピコリン(14.3g、0.15mol)を、1:1:1結晶で飽和されているアセトニトリル溶液(58.6gアセトニトリル)と一緒に、20℃で、1:1:1種結晶を含有するジャケットを装着した、撹拌容器中において混合する。得られたスラリーをろ過し、及び、1:1:1固形分をアセトニトリルで洗浄し、乾燥する。
【0059】
1:1:1結晶(91.5g)、アセトニトリル(54.5g)及び3-ピコリン(23.0g)を、20℃で、ジャケットを装着した撹拌容器中において混合する。次いで、メタンスルホニルクロリド(21.2g、0.19mol)を120分間かけて、温度を約32℃で維持しながらゆっくりと添加した。次いで、反応をさらに1時間保持する。次いで、水(46g)を反応器に60分間の期間をかけて添加し、混合物をさらに1時間保持する。得られたスラリーをろ過し、5:1のアセトニトリル及び水混合物で洗浄した。クロラントラニリプロールは、>90%の収率で生成された。
【0060】
実施例3
3-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6-[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボキサミド(クロラントラニリプロール)の調製
3-ブロモ-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボン酸(583.0g)、2-アミノ-5-クロロ-N,3-ジメチルベンズアミド(406.5g)、クロラントラニリプロールシーディング材料(94.5g)及びアセトニトリル(684.9g)を、温度計、機械式撹拌機(2×2ブレードピッチ-タイプ)、還流凝縮器(窒素カバー/窒素バブラーを備える)及びシリンジポンプ(プログラム可能)インレットを備えたプログラム可能な加熱/冷却装置により制御されたジャケットを装着した3Lの反応器に仕込んだ。撹拌を200rpmに調節した。混合物を50℃に加熱した。加熱中に温度が40℃に達した後に、3-ピコリン(469.4g)を撹拌混合物に添加した。50mLのシリンジにMSCを仕込み、混合物が50℃に達したら、以下の表1に従って注入を開始した(合計で262.6g)。
【0061】
【表1】
【0062】
MSCの注入が完了したら、追加の1時間の後反応時間の後に、反応を完了とした。水(合計577.5g)を以下の表2に従って注入した。
【0063】
【表2】
【0064】
混合物を、30分間の時間をかけて20℃に冷却した。懸濁液を減圧ろ過に移し、減圧を適用した。フィルタケーキが固まった後、吸引をさらに5分間継続した。フィルタケーキを水(767.3g)で洗浄し、ウェットケーキを、さらに30分間、吸引しながらフィルタ上で放置した。ウェットケーキを50℃で、減圧下で一晩乾燥させた。
【0065】
次いで、乾燥したクロラントラニリプロール結晶を計量し、HPLC及び固体分析用にサンプルを採取した。
【0066】
単離収率:95~98%(種補正後、3-ブロモ-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボン酸基準)
平均純度:+97%
結晶サイズ分布:D[4,3]値は90~200μmの範囲内であり、微粉はごく少量であった
嵩密度:0.62~0.70g/mL(タッピング無し);0.75~0.80g/mL(タッピング後)
上記の反応中に、1:1:1結晶の完全な溶解が観察された。得られたクロラントラニリプロール結晶は大きく、且つ、均一であるように見受けられ、きわめて迅速に遠心分離され、迅速に乾燥し、及び、大きな嵩密度の生成物を最低限微粉の生成でもたらした。
【0067】
実施例4
3-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6-[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]-l-(3-クロロ-2-ピリジニル)-lH-ピラゾール-5-カルボキサミド(クロラントラニリプロール)の調製
クロラントラニリプロール結晶を、以下の表3~5中のパラメータを用いて実験1~12において調製した。表4から分かるとおり、撹拌速度を高めると、粒径及びタッピング無しでの嵩密度の低下がもたらされる。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【国際調査報告】