(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】改変されたベータゼオライト添加剤を含む触媒系を用いた流動接触分解
(51)【国際特許分類】
C10G 11/18 20060101AFI20230824BHJP
B01J 29/80 20060101ALI20230824BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C10G11/18
B01J29/80 M
B01J35/10 301A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504548
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 US2021034220
(87)【国際公開番号】W WO2022031345
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301041531
【氏名又は名称】一般財団法人JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オマール レファ
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンズ,ロバート ピーター
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光徳
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
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4H129NA37
(57)【要約】
炭化水素油を分解する方法は、流動接触分解ユニット内で炭化水素油を触媒系と接触させて軽質オレフィンとガソリン燃料とを生成する工程を含む。触媒系は、FCCベース触媒と触媒添加剤とを含む。FCCベース触媒はY-ゼオライトを含む。触媒添加剤は、骨格置換された*BEA型のゼオライトを含む。骨格置換された*BEA型のゼオライトは、改変された*BEA骨格を有する。改変された*BEA骨格は、*BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びそれらの組合せから選択されるベータゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、*BEAアルミノケイ酸塩骨格である。FCCベース触媒は、Y-ゼオライトとして、骨格置換された超安定Y(USY)-ゼオライトを含みうる。骨格置換されたUSY-ゼオライトは、骨格アルミニウム原子の一部を、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、又はそれらの組合せで置換することによって改変された、USYアルミノケイ酸塩骨格を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油を分解する方法であって、
流動接触分解ユニット内で前記炭化水素油を触媒系と接触させて軽質オレフィンとガソリン燃料とを生成する工程
を含み、ここで、
前記触媒系がFCCベース触媒と触媒添加剤とを含み、
前記FCCベース触媒がY-ゼオライトを含み、
前記触媒添加剤が、骨格置換された
*BEA型のゼオライトを含み、かつ
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、改変された
*BEA骨格を有し、該改変された
*BEA骨格が、
*BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より選択されるベータゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、
*BEAアルミノケイ酸塩骨格を含む、
方法。
【請求項2】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含み、かつ
前記ベータゼオライトAl置換原子が、(a)チタン原子及びジルコニウム原子、(b)チタン原子及びハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子及びハフニウム原子、並びに(d)チタン原子、ジルコニウム原子、及びハフニウム原子、からなる群より選択される組合せを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み、かつ
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、
(a)400m
2/gから800m
2/gの比表面積、
(b)10から200のSiO
2のAl
2O
3に対するモル比、
(c)0.2cm
3/gから0.6cm
3/gの細孔容積、並びに
(d)a=1.260nmから1.270nm、b=1.260nmから1.270nm、及びc=2.620から2.650nmの結晶格子定数
を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒系における前記FCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、前記FCCベース触媒と前記触媒添加剤の合計重量に基づいて、2:1から1,000:1である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒系が、前記FCCベース触媒、前記触媒添加剤、触媒マトリクス担体、結合剤、及び充填剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒マトリクス担体がアルミナ又はシリカ-アルミナを含み、
前記結合剤が、アルミナ、シリカ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、及びそれらの組合せからなる群より選択される多孔質無機酸化物のゾルであり、かつ
前記充填剤が、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ベントナイト、及びそれらの組合せからなる群より選択される粘土である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒系が、該触媒系の総重量に基づいて、
1重量%から50重量%のFCCベース触媒、
1重量%から50重量%の触媒添加剤、
0.1重量%から15重量%の結合剤、及び
0.1重量%から15重量%の粘土
を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒系における前記FCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、前記FCCベース触媒と前記触媒添加剤の合計重量に基づいて、6:1から20:1である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記FCCベース触媒が、骨格置換された超安定Y(USY)-ゼオライトを含み、かつ
前記骨格置換されたUSY-ゼオライトが、改変されたUSY骨格を有し、該改変されたUSY骨格が、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、USYアルミノケイ酸塩骨格を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記骨格置換された超安定Y型ゼオライトが、
(a)2.430nmから2.460nmの結晶格子定数a及びb、
(b)600m
2/gから900m
2/gの比表面積、及び
(c)5:1から約100:1のSiO
2のAl
2O
3に対するのモル比
を有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み、
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含み、
前記骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含み、かつ
前記USY-ゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、
請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記炭化水素油が、350℃を超える沸点範囲を有する炭化水素成分を含み、かつ
前記接触が、450℃から700℃の反応温度、1バール(100kPa)から10バール(1,000kPa)の反応圧力、0.1秒から60秒の滞留時間又は接触時間、及び約2:1から30:1の触媒の油に対する比で行われる、
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に援用される、2020年8月5日出願の米国特許出願第16/985,588号の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本出願は、炭化水素の流動接触分解の方法に関し、より詳細には、ゼオライト触媒及びゼオライト触媒添加剤を含む触媒系を用いた炭化水素原料の流動接触分解の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
流動接触分解(FCC)プロセスでは、石油由来の炭化水素は、酸性触媒が連続的に再生される流動状態に維持された酸性触媒を用いて接触分解される。このようなプロセスからの主生成物は、概して、ガソリンである。液体石油ガス及び分解軽油などの他の生成物も、FCCプロセスを介して少量で生成される。触媒上に堆積したコークスは、再生された触媒を反応ゾーンに戻して再生利用する前に、空気の存在下、高温で燃焼除去される。
【0004】
流動接触分解は、ガソリン生産に用いられる最大の精製プロセスであり、世界的生産能力は1日あたり1,420万バレル(約226m3)を超える。このプロセスは、減圧蒸留物、常圧残油、脱アスファルト油などの重質原料を、オレフィン及び芳香族化合物が豊富である、より軽質な生成物へと変換する。FCC触媒系は、典型的には、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、処理粘土(カオリン)、ボーキサイト、及びシリカ-アルミナなどの微粒子の固体酸を含む。
【0005】
ガソリン留分のオクタン価又はプロピレンなどの軽質オレフィンの収率を大幅に向上させるために、FCC触媒系に添加剤を含めることができる。プロピレンの世界的な需要は継続的に増加している。全プロピレンのほぼ60%が、ナフサ、軽油、液化石油ガス(LPG)などのさまざまな炭化水素ストリームの蒸気分解によって生成される。世界で生産されるプロピレンの30%超がFCCプロセスから得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、一般にプロピレンの収率を増加させる触媒系、並びに別の知られている触媒系においてプロピレン収率を増加させる触媒添加剤が、継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の背景に対して、本開示の例示的な実施形態は、炭化水素油を分解する方法を対象とする。該方法は、流動接触分解ユニット内で炭化水素油を触媒系と接触させて軽質オレフィン及びガソリン燃料を生成する工程を含む。該触媒系は、FCCベース触媒と触媒添加剤とを含む。FCCベース触媒はY-ゼオライトを含む。触媒添加剤は、骨格置換された*BEA型のゼオライトを含む。骨格置換された*BEA型のゼオライトは、改変された*BEA骨格を有する。改変された*BEA骨格は、*BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で置換することによって改変されている、*BEAアルミノケイ酸塩骨格でありうる。
【0008】
幾つかの実施形態によれば、FCCベース触媒のY-ゼオライトは、骨格置換された超安定Y(USY)ゼオライトでありうる。このような実施形態では、骨格置換されたUSY-ゼオライトは、改変されたUSY骨格を有する。改変されたUSY骨格は、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より独立して選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子で置換することによって改変されている、USYアルミノケイ酸塩骨格でありうる。
【0009】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されよう。
【0010】
本明細書に記載される実施形態のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部には、その説明から当業者には容易に明らかになり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識される。
【0011】
前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、さまざまな実施形態を説明しており、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図しているものと理解されたい。添付の図面は、さまざまな実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載されるさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、特許請求の範囲の主題の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより、炭化水素油を分解する方法の実施形態を詳細に参照する。該方法は、流動接触分解ユニット内で炭化水素油を触媒系と接触させて軽質オレフィン及びガソリン燃料を生成する工程を含む。触媒系は、少なくとも、FCCベース触媒と触媒添加剤とを含む。FCCベース触媒はY-ゼオライトを含む。
【0014】
骨格置換された*BEA型のゼオライト触媒添加剤及びその調製を含む実施形態の触媒系が、これより詳細に説明される。炭化水素の流動接触分解の方法における触媒系の組み込みについては後述する。
【0015】
FCCベース触媒
炭化水素油を分解する方法の実施形態では、炭化水素油が接触する触媒系は、FCCベース触媒を含む。FCCベース触媒は、流動接触分解プロセスでの使用に適していることが知られている任意のゼオライト触媒でありうる。適切なFCCベース分解触媒は、0.5g/mLから1.0g/mLのバルク密度、50μmから90μmの平均粒径、50m2/gから350m2/gの表面積、及び0.05mL/gから0.5mL/gの細孔容積を有しうる。
【0016】
実施形態では、FCCベース触媒は、Y-ゼオライトであるか、又はY-ゼオライトを含む。幾つかの実施形態では、Y-ゼオライトは、超安定Y(USY)ゼオライトでありうる。幾つかの実施形態では、Y-ゼオライトは、骨格置換されたUSY型のゼオライトなどの改変されたUSY-ゼオライトでありうる。骨格置換されたUSY型のゼオライトを含むFCCベース触媒は、乾性ガス及びコークスの生成が少なく、軽質オレフィン及びガソリンの生成に有効な高い分解活性を有する。次に、骨格置換されたUSY型のゼオライトについて詳細に説明する。
【0017】
実施形態による、骨格置換された超安定Y(USY)型のゼオライトは、改変されたUSY骨格を有する。改変されたUSY骨格は、USYアルミノケイ酸塩骨格の標準的な定義によるUSYアルミノケイ酸塩骨格に類似している。標準的な定義によれば、USYアルミノケイ酸塩骨格は、2.430nm以上かつ2.460nm以下の結晶格子定数(UD)、600m2/gから900m2/gの比表面積、並びにシリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)基準で計算して5から100のケイ素のアルミニウムに対するモル比を有する、アルミノケイ酸塩ゼオライトのものである。
【0018】
本開示の実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトに関して、改変されたUSY骨格は、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をUSY-ゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、USYアルミノケイ酸塩骨格である。実施形態では、USY-ゼオライトAl置換原子は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より独立して選択される。
【0019】
本開示で用いられる場合、「Ti-USY」という用語は、置換原子がチタンである、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトを指す。同様に、「Zr-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がジルコニウムを含む、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトを指す。「Hf-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がハフニウムを含む、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトを指す。「(Ti,Zr)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がチタン及びジルコニウムを含む、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトを指す。「(Ti,Hf)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がチタン及びハフニウムを含む、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトを指す。「(Zr,Hf)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がジルコニウム及びハフニウムを含む、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトを指す。「(Ti,Zr,Hf)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がチタン、ジルコニウム、及びハフニウムを含む、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトを指す。
【0020】
実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライトは、前に定義したように、Ti-USY、Zr-USY、Hf-USY、(Ti,Zr)-USY、(Ti,Hf)-USY、(Zr,Hf)-USY、又は(Ti,Zr,Hf)-USYでありうる。USY-ゼオライトAl置換原子は、超安定Y型のゼオライトの骨格を形成するアルミニウム原子を置換し、したがって、超安定Y型のゼオライトの骨格の構成成分として機能する。置換は、紫外、可視、及び近赤外分光光度法(UV-Vis-NIR)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、又は核磁気共鳴分光法(NMR)を含むがこれらに限定されない分析技法によって検証することができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、骨格置換されたUSY型のゼオライトは、骨格置換されたUSY型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%、又は0.1質量%から5質量%、又は0.2質量%から4質量%、又は0.3質量%から3質量%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含む。酸化物基準の計算において、チタン原子はTiO2基準で計算され、ジルコニウム原子はZrO2基準で計算され、ハフニウム原子はHfO2基準で計算される。骨格置換されたUSY型のゼオライト中のチタン、ジルコニウム、及びハフニウムは、例えば、蛍光X線分析、高周波プラズマ発光分析、又は原子吸光分析などの知られている技法によって、定量的に決定することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、アルミニウム骨格で置換された置換原子に加えて、骨格置換されたUSY型のゼオライトは、骨格置換されたUSY型のゼオライトの骨格に結合するか、又は骨格の外側に担持されるか、又は骨格と組み合わされる、ジルコニウム原子、チタン原子、ハフニウム原子、又はそれらの任意の組合せをさらに含みうる。このような実施形態では、ジルコニウム、チタン、又はハフニウム原子は、チタニア粒子、ジルコニア粒子、又はハフニア粒子などの酸化物粒子として結合することができる。酸化物粒子は、50nm以下の粒径を有することができる。定量分析を容易にする目的では、本明細書で企図されるように、骨格置換されたUSY型のゼオライト中の置換原子の質量による量は、酸化物基準で計算され、かつ骨格アルミニウム原子を置換するか、又はゼオライト骨格に結合するか、又はその外側に担持されるか、又はそれと組み合わされる骨格置換されたUSY型のゼオライトの総質量に基づいた、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムの総量を含む。しかしながら、すべての実施形態において、USYアルミノケイ酸塩骨格の少なくとも骨格アルミニウム原子の一部は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、又はそれらの任意の組合せで置換されるものと理解されたい。例となる実施形態では、骨格置換されたUSY型のゼオライト中に存在するチタン、ジルコニウム、及びハフニウム原子の50%超、又は75%超、又は90%超、又は99%超が、ゼオライト骨格中の骨格アルミニウム原子を置換し、これらは、特に粒子として、ゼオライト骨格に単に結合するか、又はその外側に担持されるか、又はそれと組み合わされるだけではない。
【0023】
当業者は、骨格置換されたUSY型のゼオライトが(Ti,Zr)-USY、(Ti,Hf)-USY、(Zr,Hf)-USY、又は(Ti,Zr,Hf)-USYのようにUSY-ゼオライトAl置換原子の組合せを含む場合、酸化物基準で計算される各ゼオライト中の個々の型のUSY-ゼオライトAl置換原子の質量比は制限されないものと認識されたい。実施形態による方法に記載される反応は、チタン対ジルコニウム対ハフニウムの比を調整することによって調整することができるが、チタン対ジルコニウム対ハフニウムの比は、本開示による炭化水素油を分解する方法の実施に有効でありうるものと理解されたい。
【0024】
触媒系中の骨格置換されたUSY型のゼオライトは、骨格アルミニウム原子の一部がチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、又はそれらの任意の組合せで置換される、USYアルミノケイ酸塩骨格を有する骨格置換されたUSY型のゼオライトをもたらす任意のゼオライト調製方法によって調製することができる。調製技法の一例では、触媒系中の骨格置換されたUSY型のゼオライトは、2.430nmから2.460nmの結晶格子定数、600m2/gから900m2/gの比表面積、及び5から100のシリカのアルミナに対するモル比を有するUSY型のゼオライトを、500℃から700℃でか焼することによって製造することができる。次に、焼成されたUSY型のゼオライトを含む懸濁液が形成される。懸濁液は、5から15の液体/固体質量比を有しうる。懸濁液のpHを2.0未満に下げるために、無機酸又は有機酸が懸濁液に添加される。懸濁液のpHは、1つ以上の追加の溶液の混合中の沈殿を防ぐために、前もって2.0未満に制御される。具体的には、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、又はそれらの組合せの化合物を含む1つ以上の追加の溶液を懸濁液に混合し、アルミニウム部位で骨格置換を生じさせる。次いで、懸濁液を例えばアンモニア水などの塩基で中和して、例えば、pHを7から7.5の範囲に上昇させる。得られる骨格置換されたUSY型のゼオライトは、濾過し、水で洗浄し、例えば80℃から180℃の乾燥温度で乾燥させることができる。
【0025】
骨格置換されたUSY型のゼオライトの調製において、超安定Y型のゼオライト原材料は、500℃から700℃、又は550℃から650℃でか焼することができる。か焼時間は、骨格置換されたUSY型のゼオライトが得られる限り、特に限定されない。例示的なか焼時間は30分から10時間でありうる。USY型のゼオライト原材料のか焼雰囲気に関しては、か焼は、好ましくは空気中で実施される。か焼されたUSY型のゼオライト原材料は、20℃から30℃の温度を有する水に懸濁されて、懸濁液を形成する。USY型のゼオライトの懸濁液の濃度に関しては、液体/固体質量比は、例えば、5から15、又は8から12でありうる。
【0026】
骨格置換されたUSY型のゼオライトの調製において懸濁液のpHを下げるための無機酸の非限定的な例は、硫酸、硝酸、又は塩酸を含みうる。骨格置換されたUSY型のゼオライトの調製において懸濁液のpHを下げるための有機酸の例は、カルボン酸を含みうる。無機酸又は有機酸の量は、懸濁液のpHを2.0未満の範囲に制御することができる限り、制限されない。酸の量の非限定的な例には、骨格置換されたUSY型のゼオライト中のアルミナのモル量の0.5から4.0倍、又は0.7から3.5倍のモル量の酸が含まれる。
【0027】
骨格置換されたUSY型のゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するチタン化合物の非限定的な例には、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタン、及びチタン原子がゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換するのに十分な懸濁液中での溶解度を有する任意のチタン化合物が含まれる。実施形態では、チタン化合物を水に溶解させることによって調製されたチタン化合物の水溶液が、チタン化合物として好適に用いられる。
【0028】
骨格置換されたUSY型のゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するジルコニウム化合物の非限定的な例には、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、及びジルコニウム原子がゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換するのに十分な懸濁液中での溶解度を有する任意のジルコニウム化合物が含まれる。実施形態では、ジルコニウム化合物を水に溶解させることによって調製されたジルコニウム化合物の水溶液が、ジルコニウム化合物として好適に用いられる。
【0029】
骨格置換されたUSY型のゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するハフニウム化合物の非限定的な例には、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウム、及びハフニウム原子がゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換するのに十分な懸濁液中での溶解度を有する任意のハフニウム化合物が含まれる。実施形態では、ハフニウム化合物を水に溶解させることによって調製されたハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として好適に用いられる。
【0030】
骨格置換されたUSY型のゼオライトの調製において、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、又はチタン化合物の水溶液を超安定Y型のゼオライトの懸濁液と混合する場合、水溶液は懸濁液に徐々に加えてよい。懸濁液への水溶液の添加が完了した後、溶液は、例えば、室温(25℃±10℃)で3時間から5時間撹拌することによって混合することができる。さらには、混合の完了後、上述の混合溶液にアンモニア水などのアルカリを添加することによって中和し、そのpHを7.0から7.5に制御することにより、触媒中の骨格置換されたゼオライトを得ることができる。
【0031】
触媒添加剤
炭化水素油を分解する方法の実施形態では、FCCベース触媒に加えて、炭化水素油が接触する触媒系は、触媒添加剤を含む。触媒添加剤は、骨格置換された*BEA型のゼオライトを含む。骨格置換された*BEA型のゼオライトは、改変された*BEA骨格を有する。
【0032】
改変された*BEA骨格は、*BEAアルミノケイ酸塩骨格の標準的な定義による*BEAアルミノケイ酸塩骨格に類似している。標準的な定義によれば、*BEAアルミノケイ酸塩骨格は、1.260nmから1.270nmの結晶格子定数a及びb(UD)、2.62nmから2.65nmの単位セル長c、400m2/gから800m2/gの比表面積、及びシリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)基準で計算して10から200のケイ素のアルミニウムに対するモル比を有する、結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライトのものである。
【0033】
本開示の実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトに関しては、改変された*BEAアルミノケイ酸塩骨格は、該*BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、及びハフニウム原子、並びにそれらの組合せからなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、*BEAアルミノケイ酸塩骨格である。
【0034】
本開示で用いられる場合、「Ti-*BEA」という用語は、置換原子がチタンである、実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトを指す。同様に、「Zr-*BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がジルコニウムを含む、実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトを指す。「Hf-*BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がハフニウムを含む、実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトを指す。「(Ti,Zr)-*BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がチタン及びジルコニウムを含む、実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトを指す。「(Ti,Hf)-*BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がチタン及びハフニウムを含む、実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトを指す。「(Zr,Hf)-*BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がジルコニウム及びハフニウムを含む、実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトを指す。「(Ti,Zr,Hf)-*BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がチタン、ジルコニウム、及びハフニウムを含む、実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトを指す。
【0035】
実施形態による骨格置換された*BEA型のゼオライトは、前に定義したように、Ti-*BEA、Zr-*BEA、Hf-*BEA、(Ti,Zr)-*BEA、(Ti,Hf)-*BEA、(Zr,Hf)-*BEA、又は(Ti,Zr,Hf)-*BEAでありうる。ベータゼオライトAl置換原子は、*BEA型のゼオライトの骨格を形成するアルミニウム原子を置換し、したがって、*BEA型のゼオライトの骨格の構成成分として機能する。置換は、紫外、可視、及び近赤外分光光度法(UV-Vis-NIR)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、又は核磁気共鳴分光法(NMR)を含むがこれらに限定されない分析技法によって検証することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、骨格置換された*BEA型のゼオライトは、骨格置換された*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%、又は0.1%から5質量%、又は0.2%から4質量%、又は0.3%から3質量%のベータゼオライトAl置換原子を含む。酸化物基準の計算において、チタン原子はTiO2基準で計算され、ジルコニウム原子はZrO2基準で計算され、ハフニウム原子はHfO2基準で計算される。骨格置換された*BEA型のゼオライト中のチタン、ジルコニウム、及びハフニウムは、例えば、蛍光X線分析、高周波プラズマ発光分析、又は原子吸光分析などの知られている技法によって、定量的に決定することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、アルミニウム骨格で置換されたベータゼオライトAl置換原子に加えて、骨格置換された*BEA型のゼオライトは、骨格置換された*BEA型のゼオライトの骨格に結合するか、又その外側に担持されるか、又はそれと組み合わされる、ジルコニウム原子、チタン原子、ハフニウム原子、又はそれらの任意の組合せをさらに含みうる。このような実施形態では、ジルコニウム、チタン、又はハフニウム原子は、チタニア粒子、ジルコニア粒子、又はハフニア粒子などの酸化物粒子として結合することができる。酸化物粒子は、50nm以下の粒径を有することができる。定量分析を容易にする目的では、本明細書で企図されるように、骨格置換された*BEA型のゼオライト中の置換原子の質量による量は、酸化物基準で計算され、かつ骨格アルミニウム原子を置換するか、又はゼオライト骨格に結合するか、又その外側に担持されるか、又はそれと組み合わされる骨格置換された*BEA型のゼオライトの総質量に基づいた、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムの総量を含む。しかしながら、すべての実施形態において、*BEAアルミノケイ酸塩骨格の少なくとも骨格アルミニウム原子の一部が、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、又はそれらの任意の組合せで置換されるものと理解されたい。例となる実施形態では、骨格置換された*BEA型のゼオライト中に存在するチタン、ジルコニウム、及びハフニウム原子の50%超、又は75%超、又は90%超、又は99%超が、ゼオライト骨格中の骨格アルミニウム原子を置換しこれらは、特に粒子として、ゼオライト骨格に結合するか、又その外側に担持されるか、又はそれと組み合わされるだけではない。
【0038】
当業者は、骨格置換された*BEA型のゼオライトが、(Ti,Zr)-*BEA、(Ti,Hf)-*BEA、(Zr,Hf)-*BEA、又は(Ti,Zr,Hf)-*BEAのようにベータゼオライトAl置換原子の組合せを含む場合、酸化物基準で計算される、各ゼオライト中の個々のタイプのベータゼオライトAl置換原子の質量比は制限されないものと認識されたい。実施形態による方法に記載される反応は、チタン対ジルコニウム対ハフニウムの比を調整することによって調整することができるが、チタン対ジルコニウム対ハフニウムの比は、本開示による炭化水素油を分解する方法の実施に有効でありうるものと理解されたい。
【0039】
触媒系中の骨格置換された*BEA型のゼオライトは、骨格アルミニウム原子の一部がチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、又はそれらの任意の組合せで置換される*BEAアルミノケイ酸塩骨格を有する骨格置換された*BEA型のゼオライトをもたらす任意のゼオライト調製方法によって調製することができる。調製技法の一例では、触媒系中の骨格置換された*BEA型のゼオライトは、1.260nmから1.270nmの結晶格子定数a及びb、2.62nmから2.65nmの単位セル長c、400m2/gから800m2/gの比表面積、及び10から200、又は10から100、又は30から70のシリカのアルミナに対するモル比を有する、*BEA型のゼオライトを500℃から700℃で焼成することによって製造することができる。次に、焼成された*BEA型のゼオライトを含む懸濁液が形成される。懸濁液は、該懸濁液中に存在する液体及び固体に基づいて、5から15の液体/固体質量比を有しうる。懸濁液のpHを2.0未満に下げるために、無機酸又は有機酸が懸濁液に添加される。懸濁液のpHは、1つ以上の追加の溶液の混合中の沈殿を防ぐために、前もって2.0未満に制御される。具体的には、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、又はそれらの組合せの化合物を含む1つ以上の追加の溶液を懸濁液に混合し、アルミニウム部位で骨格置換を生じさせる。次いで、懸濁液を例えばアンモニア水などの塩基で中和して、例えば、pHを7から7.5の範囲に上昇させる。得られる骨格置換された*BEA型のゼオライトは、濾過し、水で洗浄し、例えば80℃から180℃の乾燥温度で乾燥させることができる。
【0040】
実施形態による(Ti,Zr)-*BEA骨格置換された*BEA型のゼオライトの1つの具体的かつ非限定的な調製例では、28.5のシリカのアルミナに対する比を有する、*BEA骨格を有するゼオライト51.4gを、450gの脱イオン水に懸濁し、40℃に加熱する。次に、14.8gのH2SO4(25重量%)を、1.52gの硫酸チタンを8.48gの脱イオン水(水溶液中の33重量%のTiO2に相当)に加えることによって調製された硫酸チタンの水溶液10.0g(5重量%のTiO2に相当)とともに、加える。この溶液に、追加の硫酸ジルコニウム水溶液(2.8g、18重量%のZrO2を構成)を加える。この混合物を60℃で4時間撹拌し、次いで濾過し、1.5リットルの脱イオン水で洗浄する。得られたゼオライトを110℃で乾燥し、骨格置換されたゼオライト(Ti,Zr)-*BEAを得る。
【0041】
骨格置換された*BEA型のゼオライトの調製において、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、又はチタン化合物の水溶液を*BEA型のゼオライトの懸濁液と混合する場合、水溶液は懸濁液に徐々に加えてよい。懸濁液への水溶液の添加が完了した後、溶液は、例えば、室温(25℃±10℃)で3時間から5時間撹拌することによって混合することができる。さらには、混合の完了後、上述の混合溶液にアンモニア水などのアルカリを添加することによって中和し、そのpHを7.0から7.5に制御することにより、触媒中の骨格置換されたゼオライトを得ることができる。
【0042】
骨格置換された*BEA型のゼオライトの調製では、*BEA型のゼオライト原材料は、500℃から700℃又は550℃から650℃でか焼させることができる。か焼時間は、骨格置換された*BEA型のゼオライトが得られる限り、特に限定されない。例示的なか焼時間は30分から10時間でありうる。*BEA型のゼオライト原材料のか焼雰囲気に関しては、好ましくは空気中で実施される。か焼された*BEA型のゼオライト原材料は、20℃から30℃の温度を有する水に懸濁されて、懸濁液を形成する。*BEA型のゼオライトの懸濁液の濃度に関しては、液体/固体質量比は、例えば、5から15、又は8から12でありうる。
【0043】
骨格置換された*BEA型のゼオライトの調製において懸濁液のpHを下げるための無機酸の非限定的な例は、硫酸、硝酸、又は塩酸を含みうる。骨格置換された*BEA型のゼオライトの調製において懸濁液のpHを下げるための有機酸の例は、カルボン酸を含みうる。無機酸又は有機酸の量は、懸濁液のpHを2.0未満の範囲に制御することができる限り、制限されない。酸の量の非限定的な例には、骨格置換された*BEA型のゼオライト中のアルミナのモル量の0.5から4.0倍、又は0.7から3.5倍のモル量の酸が含まれる。
【0044】
骨格置換された*BEA型のゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するチタン化合物の非限定的な例には、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタン、及びチタン原子がゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換するのに十分な懸濁液中での溶解度を有する任意のチタン化合物が含まれる。実施形態では、チタン化合物を水に溶解させることによって調製されたチタン化合物の水溶液が、チタン化合物として好適に用いられる。
【0045】
骨格置換された*BEA型のゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するジルコニウム化合物の非限定的な例には、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、及びジルコニウム原子がゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換するのに十分な懸濁液中での溶解度を有する任意のジルコニウム化合物が含まれる。実施形態では、ジルコニウム化合物を水に溶解させることによって調製されたジルコニウム化合物の水溶液が、ジルコニウム化合物として好適に用いられる。
【0046】
骨格置換された*BEA型のゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するハフニウム化合物の非限定的な例には、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウム、及びハフニウム原子がゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換するのに十分な懸濁液中での溶解度を有する任意のハフニウム化合物が含まれる。実施形態では、ハフニウム化合物を水に溶解させることによって調製されたハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として好適に用いられる。
【0047】
実施形態によれば、骨格置換された*BEA型のゼオライト触媒添加剤は、(a)400m2/gから800m2/gの比表面積;(b)10から200のSiO2のAl2O3に対するモル比;(c)0.2cm3/gから0.6cm3/gの細孔容積;並びに、(d)a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、及びc=2.62から2.65nmの結晶格子定数を有しうる。骨格置換された*BEA型のゼオライトを含む触媒添加剤は、0.40mL/gから0.75mL/gの、600オングストローム以下(60nm以下)の直径を有する細孔の容積を有しうる。非限定的な例となる実施形態では、骨格置換された*BEA型のゼオライト触媒添加剤は、(a)400m2/gから800m2/gの比表面積;(b)約60のSiO2のAl2O3に対するモル比;(c)0.38cm3/gから0.43cm3/gの細孔容積;並びに、(d)a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、及びc=2.62から2.65nmの結晶格子定数を有する、(Ti,Zr)-*BEAゼオライトを含みうる。*BEA型のゼオライト触媒添加剤は、2nmから100nmの直径を有するメソ孔を有しうる。
【0048】
炭化水素油を分解する方法の実施形態によれば、触媒系は、FCCベース触媒及び触媒添加剤を、FCCベース触媒と触媒添加剤の合計重量に基づいて、2:1から1000:1、又は2:1から100:1、又は4:1から100:1、又は6:1から20:1、又は約9:1のFCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比で含みうる。
【0049】
炭化水素油を分解する方法の非限定的な例となる実施形態では、触媒添加剤は、骨格置換された*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含む、(Ti,Zr)-*BEA骨格置換された*BEA型のゼオライトであり;ベータゼオライトAl置換原子はチタン原子とジルコニウム原子とを含み;FCCベース触媒は、骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含む(Ti,Zr)-USY骨格置換された超安定Y-ゼオライトであり;かつ、USY-ゼオライトAl置換原子はチタン原子とジルコニウム原子とを含む。
【0050】
触媒系の任意選択的な成分
炭化水素油を分解する方法の実施形態では、FCCベース触媒及び触媒添加剤に加えて、炭化水素油が接触する触媒系は、任意選択的に、触媒マトリクス担体、結合剤、充填剤、及び活性金属成分のうちの1つ以上を含みうる。
【0051】
実施形態による方法の触媒系は、FCCベース触媒及び骨格置換された*BEA型のゼオライト触媒添加剤のための担体を含みうる。幾つかの実施形態では、担体は、FCCベース触媒及び骨格置換された*BEA型のゼオライト触媒添加剤のうちの一方又は両方を除く無機酸化物を含みうる。担体の無機酸化物は、造粒剤又は結合剤として機能する物質を含みうる。造粒剤として含む、任意の知られているゼオライト触媒マトリクス担体に含まれる任意の物質を使用することができる。このような無機酸化物の例として、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、及びシリカ-アルミナ-ジルコニアが挙げられるが、これらに限定されない。例となる実施形態では、触媒系は、担体として、アルミナ及びシリカ-アルミナから選択される無機酸化物を含む。シリカ-アルミナ担体は、非晶質でありうる。
【0052】
触媒系が触媒マトリクス担体を含む実施形態では、ゼオライトと触媒マトリクス担体の重量比は、触媒活性の所望のレベルに応じて変化させてもよい。例となる実施形態では、触媒系中の触媒マトリクス担体の質量は、触媒系の他の成分に関係なく、触媒系中のゼオライトの質量に対して決定される。例となる実施形態では、触媒系は、該触媒系中のすべてのゼオライトの総質量に基づいて、10質量%から80質量%、20質量%から70質量%、又は25質量%から約65質量%のゼオライトを含みうる。同様に、触媒系は、該触媒系の総質量に基づいて、触媒系の20質量%から90質量%、又は30質量%から80質量%、又は35質量%から75質量%を構成する触媒マトリクス担体を含みうる。
【0053】
さらなる例となる実施形態では、触媒系は、シリカをベースとした結合剤又はアルミナをベースとした結合剤などの結合剤を含みうる。シリカをベースとした結合剤及びアルミナをベースとした結合剤を、無機結合剤として使用することができる。シリカをベースとした結合剤は、シリカゾル、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、ケイ酸液のうちのいずれか1つ又は2つ以上でありうる。例えば、SiO2を10質量%から15質量%の範囲の濃度で含むシリカゾルは、12質量%から23質量%の範囲の濃度のSiO2、及び20質量%から30質量%の範囲の濃度を有する硫酸を含む水ガラスを、同時に、かつ連続的に加えることによって調製することができる。アルミニウム化合物結合剤は、(a)塩基性塩化アルミニウム、(b)重リン酸アルミニウム、又は(c)アルミナゾルでありうる。ギブサイト、バイヤライト、及びベーマイトなどの微結晶アルミナのいずれか又は2つ以上を酸溶液に溶解させることによって得られた溶液を、アルミニウム-化合物結合剤として用いることができる。ここで、塩基性塩化アルミニウムは[Al2(OH)nCl6-n]mで表され、式中、nは整数であり、mは自然数であり、ここで、0<n<6、及び1<m<10であるか、又は、幾つかの実施形態では、4.8<n<5.3及び3<m<7である。
【0054】
実施形態による方法の触媒系は、周期表のIUPAC第7族から第11族までの個々の金属又は金属の組合せから選択される活性金属成分をさらに含むことができる。活性金属の例には、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、及びタングステンが含まれる。金属成分の組合せの非限定的な例には、モリブデンとタングステンの組合せ;コバルトとニッケルの組合せ;及び、モリブデン、タングステン、コバルト、又はニッケルのいずれか1つ以上と、白金、ロジウム、又はパラジウムなどの白金族金属との組合せが含まれる。例となる実施形態では、触媒系は、ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1つの活性相金属を含みうる。理論に束縛されることを意図するものではないが、実施形態による骨格置換されたUSY型のゼオライト中のアルミニウムをチタン、ジルコニウム、又はハフニウムで骨格置換することにより、ゼオライト触媒の表面に、より多くの量の活性金属分布を促進することができると考えられる。
【0055】
活性金属成分が触媒系に含まれる場合、触媒系は、該触媒系の総質量に基づいて、酸化物成分については酸化物基準で又は金属については金属基準で計算して、0超から約40質量%の金属成分を含みうる。例となる実施形態では、触媒系は、該触媒系の総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、又はタングステンなどの金属成分を、3質量%から30質量%含みうる。さらなる例となる実施形態では、触媒系は、該触媒系の総質量に基づいて、金属基準で計算して、0.01質量%から2質量%の、白金、ロジウム、又はパラジウムから選択される金属成分を含みうる。
【0056】
実施形態による方法の触媒系は、FCCベース触媒及び骨格置換された*BEA型のゼオライト触媒添加剤に加えて、追加のFCC触媒を添加剤としてさらに含みうる。このような追加のFCC触媒の例としては、Y型のゼオライトの細孔直径よりも小さい細孔直径を有し、それにより、限定された形状のみを有する炭化水素がその細孔を通ってゼオライトに入ることを可能にするように選択的である、形状選択性ゼオライトが挙げられる。適切な形状選択性ゼオライト成分の例としては、例えば、ZSM-5ゼオライト、ゼオライトオメガ、SAPO-5ゼオライト、SAPO-11ゼオライト、SAPO-34ゼオライト、及びペンタシル型アルミノケイ酸塩が挙げられる。触媒系中に存在する場合、触媒系中の追加の形状選択性ゼオライトの含有量は、触媒系の総重量に基づいて、約0.01重量%から30重量%、又は約0.01重量%から20重量%でありうる。
【0057】
非限定的な例となる実施形態では、炭化水素油を分解する方法において、触媒系は、FCCベース触媒、触媒添加剤、触媒マトリクス担体、結合剤、及び充填剤を含みうる。このような例となる実施形態では、触媒マトリクス担体はアルミナ又はシリカ-アルミナを含んでよく;結合剤は、アルミナ、シリカ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、及びそれらの組合せからなる群より選択される多孔質無機酸化物のゾルであってよく;充填剤は、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ベントナイト、及びそれらの組合せからなる群より選択される粘土でありうる。非限定的な例では、触媒系は、該触媒系の総重量に基づいて、1%から50質量%のFCCベース触媒;1重量%から50重量%の触媒添加剤;0.1重量%から15重量%の結合剤;及び、0.1重量%から15重量%の粘土を含みうる。さらなる非限定的な例では、触媒系は、該触媒系の総重量に基づいて、1重量%から50重量%のFCCベース触媒;1重量%から50重量%の触媒添加剤;0.1重量%から15重量%の結合剤;及び、0.1重量%から15重量%の粘土を含むことができ、触媒系におけるFCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比は、FCCベース触媒と触媒添加剤の合計重量に基づいて、6:1から20:1でありうる。
【0058】
流動接触分解プロセス
炭化水素油を分解する方法では、炭化水素油を、流動接触分解ユニット内で、前述のように触媒系と接触させて、軽質オレフィンとガソリン燃料とを生成する。次に、一体成分として触媒系を含む分解方法を詳細に説明する。
【0059】
本方法のある特定の実施形態では、350℃を超える沸点範囲を有する炭化水素油混合物が提供され、反応器は、450℃から700℃の反応温度範囲、1バール(100kPa)から10バール(1,000kPa)の圧力、約0.1秒から約60秒の滞留時間又は接触時間、及び約2:1から約30:1の触媒の油に対する重量比で動作する。流動接触分解は、ガソリン及び軽質オレフィンの生産を最大化するのに有効な条件下、及び/又は軽質オレフィンの生産を最大化するのに有効な条件下で動作させることができる。
【0060】
本明細書で用いられる場合、「重質炭化水素」とは、減圧軽油(VGO)、水素化分解ユニットの未転化残油又はリサイクル油、溶媒脱アスファルトプロセスから得られる脱アスファルト油(DAO)、脱金属油、コーカプロセスから得られる軽質又は重質のコーカ軽油、別の流動接触分解プロセスから得られるか又は本触媒を使用するFCCプロセスからリサイクルされた循環油、ビスブレーキングプロセスから得られる軽油、又は前述の供給源若しくは油の水素化誘導体のうちの少なくとも1つを含む組合せなど、一般的な製油所のストリームを含む、公称沸点が350℃を超える石油留分を指す。
【0061】
幾つかの実施形態によれば、流動接触分解ユニットは、ライザ反応器又はダウナー反応器を含みうる。本開示で用いられる場合、「ダウナー」という用語は、流動床反応器などの反応器を指し、ここで、反応物は、例えば、反応器の上部に入り、底部から出るなど、ほぼ下向きの方向に流れる。同様に、「ライザ」という用語は、流動床反応器などの反応器を指し、ここで、反応物は、例えば、反応器の底部に入り、反応器の上部から出るなど、ほぼ上向きの方向に流れる。
【0062】
特定の充填及び所望の生成物に適した触媒系を、一又は複数の流動接触分解反応器に運ぶことができる。ある特定の実施形態では、プロピレンを含むがこれに限定されないオレフィンの形成を促進し、水素移動反応などのオレフィン消費反応を最小限に抑えるために、FCCベース触媒とFCC触媒添加剤とを含むFCC触媒混合物が、FCCユニット内で用いられる。
【0063】
本発明による流動接触分解のための触媒に基づいた流動接触分解は、の通常炭化水素油の流動接触分解条件下で行うことができる。例えば、以下に記載の条件を好適に仕様することができる。前述の触媒系は、反応容器に充填し、ガソリン及び/又は、エチレン、プロピレン、及びブチレンを含む軽質オレフィンを製造するための知られているFCCプロセスに従って、炭化水素油の接触分解に適切に使用することができる。
【0064】
流動接触分解では、炭化水素油は、原油、合成原油、瀝青、オイルサンド、シェール油、及び石炭液化油のうちの1つ以上に由来しうる。これらの供給には、ナフサ、ディーゼル、減圧軽油(VGO)、溶媒脱アスファルトプロセスから得られる脱アスファルト油(DAO)、脱金属油、コーカプロセスから得られる軽質又は重質のコーカ軽油、別の流動接触分解プロセスから得られるか又は本触媒を使用するFCCプロセスからリサイクルされた循環油、ビスブレーキングプロセスから得られる軽油、又は前述のものの少なくとも1つを含む組合せなどを含む、350℃を超える標準点を有する石油留分が含まれうる。
【0065】
例えば、接触分解装置に、上述のFCC触媒と、350℃を超える(ある特定の実施形態では約350℃から約850℃の)沸点を有する炭化水素油とを充填し、約450℃から約700℃の反応温度、1バール(100kPa)から10バール(1,000kPa)の圧力、約0.1秒から約60秒の範囲の滞留時間又は接触時間、及び約2:1から約30:1の範囲の触媒の油に対する重量比での流動接触分解を使用して分解させることができる。
【0066】
ある特定の実施形態では、軽質オレフィン、特にプロピレンの形成を促進し、水素移動反応を含む軽質オレフィン消費反応を最小化する条件下で動作する、ライザ反応器を備えた流動接触分解ユニットが提供される。
図1は、ライザ流動接触分解ユニットの簡略化された概略図である。流動接触分解ユニット150は、ライザ反応器を含む。流動接触分解ユニット150は、ライザ部分161、反応ゾーン163、及び分離ゾーン165を有する反応器/分離器160を含む。流動接触分解ユニット150はまた、使用済み触媒を再生するための再生容器167も含む。ある特定の実施形態では原料の霧化のための蒸気又は他の適切なガス(図示せず)とともに、充填物136が反応ゾーンに導入される。充填物136は、再生容器167から導管169を介して運ばれる有効量の加熱された新鮮な又は再生された固体分解触媒粒子と混合され、密接に接触される。供給混合物と分解触媒は、ライザ161に導入される懸濁液を形成する条件下で接触される。連続プロセスでは、分解触媒と炭化水素原料の混合物は、ライザ161を通って上向きに反応ゾーン163へと進む。ライザ161及び反応ゾーン163において、熱分解触媒粒子は、炭素-炭素結合の開裂によって比較的大きい炭化水素分子を触媒的に分解する。
【0067】
反応中、流動接触分解動作では一般的なように、分解触媒はコークス化し、したがって活性触媒部位へのアクセスが制限されるか又は存在しない。反応生成物は、例えば、反応ゾーン163の上方の反応器160の頂部に位置した、概して流動接触分解ユニット150内の分離ゾーン165と呼ばれる、流動接触分解ユニットにおいて知られている任意の適切な構成を使用して、コークス化触媒から分離される。分離ゾーンは、例えばサイクロンなどの当業者に知られている任意の適切な装置を含みうる。反応生成物は、導管171を通して取り出される。炭化水素原料の流体分解からのコークス堆積物を含む触媒粒子は、導管173を通って再生ゾーン167へと進む。本明細書のプロセスによれば、軽質溶媒原料は原料136として重質原料と組み合わされることから、初期の溶媒脱アスファルト/脱金属プロセスにおける溶媒の油に対する比は、触媒の十分なコーキングを提供して再生中の熱収支を提供するように選択される。
【0068】
再生ゾーン167では、コークス化触媒は、導管175を介して再生ゾーン167に入る酸素含有ガス、例えば純粋な酸素又は空気の流れと接触する。再生ゾーン167は、典型的な流動接触分解動作において知られている構成及び条件下で動作する。例えば、再生ゾーン167は、導管177を通して排出される燃焼生成物を含む再生オフガスを生成する流動床として動作することができる。熱再生触媒は、炭化水素原料との混合のために、上述したように、再生ゾーン167から導管169を通ってライザ161の底部に移送される。
【0069】
概して、本明細書の触媒を使用する適切なライザ流動接触分解ユニットの反応器のための動作条件は次のものを含む:約480℃から約650℃、ある特定の実施形態では約500℃から約620℃、さらなる実施形態では約500℃から約600℃の反応温度;約1kg/cm2から約20kg/cm2、ある特定の実施形態では約1kg/cm2から約10kg/cm2、さらなる実施形態では約1kg/cm2から約3kg/cm2の反応圧力;約0.5秒から約10秒、ある特定の実施形態では約1秒から約5秒、さらなる実施形態では約1秒から約2秒の接触時間(反応器内);並びに、約1:1から約15:1、ある特定の実施形態では約1:1から約10:1、さらなる実施形態では約8:1から約20:1の触媒の原料に対する比。
【0070】
ある特定の実施形態では、軽質オレフィン、特にプロピレンの形成を促進し、水素移動反応を含む軽質オレフィン消費反応を最小化する条件下で動作する、ダウンフロー反応器を備えた流動接触分解ユニットが提供される。
図2は、ダウンフロー流動接触分解ユニットの簡略化された概略図である。流動接触分解ユニット250は、反応ゾーン262及び分離ゾーン264を有する反応器/分離器260を含む。流動接触分解ユニット250はまた、使用済み触媒を再生するための再生ゾーン266も含む。特に、ある特定の実施形態では原料の霧化のための蒸気又は他の適切なガス(図示せず)とともに、充填物236が反応ゾーンに導入される。再生ゾーン266からの有効量の加熱された新鮮な又は高温の再生固体分解触媒粒子は、反応ゾーン262の頂部に運ばれ、例えば、一般に移送ライン又はスタンドパイプと呼ばれる下向きの導管又はパイプ268を介して、反応ゾーン262の上部にある回収ウェル又はホッパー(図示せず)に移送される。反応ゾーン262の混合ゾーン又は原料注入部分に均一に導かれるように、高温の触媒流は典型的には安定化される。充填物236は、典型的には、反応ゾーン262への再生触媒の導入点の近くに配置された原料注入ノズルを通して混合ゾーンに注入される。これらの複数の噴射ノズルにより、触媒と油の完全かつ均一な混合がもたらされる。充填物が高温の触媒に接触すると、分解反応が起こる。
【0071】
炭化水素分解生成物、未反応原料、及び触媒混合物の反応蒸気は、反応ゾーン262の残りの部分を通って急速に流れ、反応器/分離器260の底部において急速分離ゾーン264に入る。分解された炭化水素及び分解されていない炭化水素は、導管又はパイプ270を通って当該技術分野で知られている従来の生成物回収セクションへと導かれ、流動接触分解生成物である軽質オレフィン、ガソリン、及び循環油を、最大化されたプロピレン収率で生成する。温度制御が必要な場合は、分離ゾーン264の直前の反応ゾーン262の底部付近にクエンチ注入を提供することができる。このクエンチ注入は、分解反応を急速に減少又は停止させ、分解の重度を制御するために利用することができる。
【0072】
反応温度、すなわちダウンフロー反応器の出口温度は、再生ゾーン266から反応ゾーン262の頂部への再生触媒の流れを制御する触媒スライドバルブ(図示せず)を開閉することによって制御することができる。吸熱分解反応に必要とされる熱は、再生触媒によって供給される。熱再生触媒の流量を変えることにより、動作の重度又は分解条件を制御して、所望の生成物スレートを生成することができる。再生ゾーン266に移送される触媒から油を分離するために、ストリッパ272も設けられる。分離ゾーン264からの触媒は、蒸気などの適切なストリッピングガスがストリームライン274を介して導入される、触媒セクションを含むストリッパ272の下部セクションへと流れる。ストリッピングセクションには、典型的には、その上を下向きに流れる触媒280が、流れているストリッピングガスに対して向流で通過する、幾つかのバッフル構造化されたパッキン(図示せず)が設けられている。典型的には水蒸気である上向きに流れるストリッピングガスは、触媒の細孔内又は触媒粒子間に残っている追加の炭化水素を「ストリッピング」又は除去するために用いられる。ストリッピングされた又は使用済みの触媒は、燃焼空気流276からの揚力によって、再生ゾーン266のリフトライザを通って運ばれる。追加の燃焼用空気と接触することもできるこの使用済みの触媒は、蓄積されたコークスの燃焼の制御をもたらす。導管278を介して再生器から煙道ガスが除去される。再生器において、副生成コークスの燃焼から生成される熱は、触媒に伝達され、反応ゾーン262における吸熱分解反応のための熱を提供するのに必要な温度を上昇させる。本明細書のプロセスによれば、軽質溶媒原料は原料236として重質原料と組み合わされることから、初期の溶媒脱アスファルト/脱金属プロセスにおける溶媒の油に対する比は、触媒の十分なコーキングを提供して再生中の熱収支を提供するように選択される。
【0073】
ダウンフロー反応器の重要な特性には、反応器の頂部での下降流による原料の導入、ライザ反応器と比較してより短い滞留時間、及び例えば約20:1から約30:1の範囲の高い触媒の油に対する比が含まれる。概して、適切なプロピレン生産ダウンフローFCCユニットの反応器の動作条件には、次のものが含まれる:550℃から650℃、ある特定の実施形態では580℃から630℃、さらなる実施形態では590℃から620℃の反応温度;1kg/cm2から20kg/cm2、ある特定の実施形態では1kg/cm2から10kg/cm2、さらなる実施形態では約1kg/cm2から約3kg/cm2の反応圧力;0.1秒から30秒、ある特定の実施形態では0.1秒から10秒、さらなる実施形態では0.2秒から0.7秒の接触時間(反応器内);並びに、1:1から40:1、ある特定の実施形態では1:1から30:1、さらなる実施形態では10:1から30:1の触媒の原料に対する比。
【0074】
明確にするために、FCCユニットの前述の説明では、多数のバルブ、温度センサ、電子プロセスコントローラ、並びに慣習的に用いられ、溶媒脱アスファルト/脱金属及び流動触媒分解の当業者によく知られている他の機器は、添付の概略図には含まれていない。流動接触分解システムで利用される付属システム、例えば、空気供給、触媒ホッパー、トーチオイル供給、煙道ガス処理及び熱回収、再生器に追加でき又は再生器から除去できるメイクアップ及び使用済み/平衡触媒の貯蔵用の新鮮及び使用済み触媒ホッパーなど、従来の流動触媒分解システムで利用される付属システムは示されていない。
【実施例】
【0075】
本開示に記載される実施形態は、例示として提供され、当業者が認識するであろう以下の実施例を参照することによってよりよく理解されるが、限定することは意味しない。
【0076】
表1に特性及び組成が示されている未変換の水素化分解残油ストリームを、比較のためのベースとして3つの異なる触媒系を使用して、550℃、30秒の滞留時間、及び4:1の触媒の油に対する比の同一条件下で、MAT(マイクロ活性試験)ユニットで接触分解した。実施例1(比較)として、触媒系は、(Ti,Zr)-USYゼオライト触媒を含んでいたが、触媒添加剤は含んでいなかった。実施例2として、触媒系は、追加の添加剤を含まない唯一のゼオライト触媒として(Ti,Zr)-*BEAを含んでいた。実施例3として、触媒系は、実施例1の(Ti,Zr)-USYゼオライト触媒と、触媒添加剤としての実施例2の(Ti,Zr)-*BEAゼオライトとの混合物であり、(Ti,Zr)-USYの(Ti,Zr)-*BEAに対する重量比は9:1であった。3つの実験の結果を表2に提示する。
【0077】
【0078】
【0079】
実施例1は、最大プロピレン収率のために最適化された一般的なFCC触媒の性能を実証した。(Ti,Zr)-USYゼオライト触媒のみからのプロピレン収率は、2.65重量%であった。実施例2は、唯一の触媒ゼオライトとしての本開示の実施形態による(Ti,Zr)-*BEAゼオライトの性能を実証した。(Ti,Zr)-*BEAゼオライトのプロピレン収率は2.56重量%であり、従来の(Ti,Zr)-USYゼオライト触媒のものとほぼ同一であった。実施例3は、従来の(Ti,Zr)-USY触媒と触媒添加剤としての(Ti,Zr)-*BEAゼオライトとの相乗的な組合せを実証したものであり、プロピレン収率が11重量%へと4倍増加したことを示している。したがって、本開示の実施形態による(Ti,Zr)-*BEAゼオライトは、それ自体が許容可能な触媒であることに加えて、従来のFCC触媒に含まれる場合に、特に有望なプロピレン収率をもたらすと考えられる。
【0080】
項目リスト
本開示の実施形態は、少なくとも以下の項目を含むが、これらは、本開示全体又は添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0081】
項目1:炭化水素油を分解する方法であって、流動接触分解ユニット内で炭化水素油を触媒系と接触させて軽質オレフィン及びガソリン燃料を生成する工程を含み、ここで、触媒系がFCCベース触媒と触媒添加剤とを含み;FCCベース触媒がY-ゼオライトを含み;触媒添加剤が、骨格置換された*BEA型のゼオライトを含み;かつ、骨格置換された*BEA型のゼオライトが、改変された*BEA骨格を有し、該改変された*BEA骨格が、*BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、及びハフニウム原子からなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、*BEAアルミノケイ酸塩骨格を含む、方法。
【0082】
項目2:骨格置換された*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含む、項目1に記載の方法。
【0083】
項目3:骨格置換された*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含み;かつ、ベータゼオライトAl置換原子が、(a)チタン原子及びジルコニウム原子、(b)チタン原子及びハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子及びハフニウム原子、並びに(d)チタン原子、ジルコニウム原子、及びハフニウム原子、からなる群より選択される組合せを含む、項目1又は項目2に記載の方法。
【0084】
項目4:骨格置換された*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み;かつ、ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、項目1から3のいずれかに記載の方法。
【0085】
項目5:骨格置換された*BEA型のゼオライトが、(a)400m2/gから800m2/gの比表面積;(b)10から200のSiO2のAl2O3に対するモル比;(c)0.2cm3/gから0.6cm3/gの細孔容積;並びに、(d)a=1.260nmから1.270nm、b=1.260nmから1.270nm、及びc=2.620から2.650nmの結晶格子定数を有する、項目1から4のいずれかに記載の方法。
【0086】
項目6:触媒系におけるFCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、FCCベース触媒と触媒添加剤の合計重量に基づいて、2:1から1,000:1である、項目1から5のいずれかに記載の方法。
【0087】
項目7:触媒系におけるFCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、FCCベース触媒と触媒添加剤の合計重量に基づいて、4:1から100:1である、項目1から6のいずれかに記載の方法。
【0088】
項目8:触媒系におけるFCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、FCCベース触媒と触媒添加剤の合計重量に基づいて、6:1から20:1である、項目1から7のいずれかに記載の方法。
【0089】
項目9:触媒系が、FCCベース触媒、触媒添加剤、触媒マトリクス担体、結合剤、及び充填剤を含む、項目1から8のいずれかに記載の方法。
【0090】
項目10:触媒マトリクス担体がアルミナ又はシリカ-アルミナを含み;結合剤が、アルミナ、シリカ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、及びそれらの組合せからなる群より選択される多孔質無機酸化物のゾルであり;かつ、充填剤が、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ベントナイト、及びそれらの組合せからなる群より選択される粘土である、項目9に記載の方法。
【0091】
項目11:触媒系が、該触媒系の総重量に基づいて、1重量%から50重量%のFCCベース触媒;1重量%から50重量%の触媒添加剤;0.1重量%から15重量%の結合剤;及び、0.1重量%から15重量%の粘土を含む、項目9又は項目10に記載の方法。
【0092】
項目12:触媒系におけるFCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、FCCベース触媒と触媒添加剤の合計重量に基づいて、6:1から20:1である、項目1から11のいずれかに記載の方法。
【0093】
項目13:骨格置換された*BEA型のゼオライトが、2nmから100nmの直径を有するメソ孔を有する、項目1から12のいずれかに記載の方法。
【0094】
項目14:Y-ゼオライトが、超安定Y-ゼオライト又は骨格置換された超安定Y-ゼオライトを含む、項目1から13のいずれかに記載の方法。
【0095】
項目15:FCCベース触媒が、骨格置換された超安定Y(USY)-ゼオライトを含み;かつ、骨格置換されたUSY-ゼオライトが、改変されたUSY骨格を有し、該改変されたUSY骨格が、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より独立して選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、USYアルミノケイ酸塩骨格を含む、項目1から14のいずれかに記載の方法。
【0096】
項目16:骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含む、項目14又は項目15に記載の方法。
【0097】
項目17:骨格置換された超安定Y型のゼオライトが、(a)2.430nmから2.460nmの結晶格子定数a及びb;(b)600m2/gから900m2/gの比表面積;及び、(c)5:1から約100:1のSiO2のAl2O3に対するモル比を有する、項目14から16のいずれかに記載の方法。
【0098】
項目18:骨格置換された*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み;ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含み;骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含み;かつ、USY-ゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、項目14から17のいずれかに記載の方法。
【0099】
項目19:炭化水素油が、350℃を超える沸点範囲を有する炭化水素成分を含み;かつ、接触が、450℃から700℃の反応温度、1バール(100kPa)から10バール(1,000kPa)の反応圧力、0.1秒から60秒の滞留時間又は接触時間、及び約2:1から30:1の触媒の油に対する比で行われる、項目1から18のいずれかに記載の方法。
【0100】
項目20:流動接触分解ユニットが、ライザ反応器又はダウナー反応器を含む、項目1から19のいずれかに記載の方法。
【0101】
項目21:骨格置換されたベータ型のゼオライト触媒添加剤が、(a)400m2/gから800m2/gの比表面積;(b)10から200のSiO2のAl2O3に対するモル比;並びに、(c)a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、及びc=2.62nmから2.65nmの結晶格子定数を有する、(Ti,Zr)-*BEAゼオライトである、項目1から20のいずれかに記載の方法。
【0102】
項目22:骨格置換された*BEA型のゼオライト触媒添加剤が、(a)400m2/gから800m2/gの比表面積;(b)50から60のSiO2のAl2O3に対するモル比;(c)0.38cm3/gから0.43cm3/gの細孔容積;並びに、(d)a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、及びc=2.62nmから2.65nmの結晶格子定数を有する、(Ti,Zr)-*BEAゼオライトである、項目1から20のいずれかに記載の方法。
【0103】
項目23:触媒系が、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、又はタングステンを含む活性金属成分をさらに含む、項目1から22のいずれかに記載の方法。
【0104】
他に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の説明に用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することは意図されていない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数形も包含することが意図されている。
【0105】
本開示を説明及び定義する目的では、「約」という用語は、本明細書では、任意の定量的比較、値、測定、又は他の表現に起因しうる固有の不確実性の度合いを表すために利用されることに留意されたい。「約」という用語はまた、本明細書では、問題の主題の基本的な機能に変化を生じさせることなく、記載される参考文献から量的表現が変化しうる度合いを表すためにも利用される。
【0106】
以下の請求項の1つ以上では、「ここで」という用語が移行句として利用されていることに留意されたい。本発明に係る技術を定義する目的で、この用語は、構造の一連の特性に係る説明を導入するために使用されるオープンエンドの移行句として請求項に導入されているのであり、より一般的に使用されるオープンエンドのプリアンブル用語である「含む」と同じように解釈されるべきであることに留意されたい。
【0107】
特性に割り当てられた任意の2つの定量値はその特性の範囲を構成することができ、所与の特性のすべての記載された定量値から形成される範囲のすべての組合せが本明細書において企図されているものと理解されたい。
【0108】
本明細書では特定の実施形態を例示し説明してきたが、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、他のさまざまな変更及び修正を行うことができるものと理解されたい。さらには、特許請求される主題のさまざまな態様を本明細書で説明してきたが、そのような態様を組み合わせて利用する必要はない。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求された主題の範囲内にある、そのようなすべての変更及び修正に及ぶことが意図されている。
【符号の説明】
【0109】
136 原料/充填物
150 流動接触分解ユニット
160 反応器
161 ライザ
163 反応ゾーン
165 分離ゾーン
167 再生ゾーン
169,171,173,175,177 導管
236 原料
250 流動接触分解ユニット
260 反応器/分離器
262 反応ゾーン
264 分離ゾーン
266 再生ゾーン
268 下向きの導管又はパイプ
270 導管又はパイプ
272 ストリッパ
274 ストリームライン
276 燃焼空気流
278 導管
280 触媒
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0108】
本明細書では特定の実施形態を例示し説明してきたが、特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、他のさまざまな変更及び修正を行うことができるものと理解されたい。さらには、特許請求される主題のさまざまな態様を本明細書で説明してきたが、そのような態様を組み合わせて利用する必要はない。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求された主題の範囲内にある、そのようなすべての変更及び修正に及ぶことが意図されている。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
炭化水素油を分解する方法であって、
流動接触分解ユニット内で前記炭化水素油を触媒系と接触させて軽質オレフィンとガソリン燃料とを生成する工程
を含み、ここで、
前記触媒系がFCCベース触媒と触媒添加剤とを含み、
前記FCCベース触媒がY-ゼオライトを含み、
前記触媒添加剤が、骨格置換された
*
BEA型のゼオライトを含み、かつ
前記骨格置換された
*
BEA型のゼオライトが、改変された
*
BEA骨格を有し、該改変された
*
BEA骨格が、
*
BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より選択されるベータゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、
*
BEAアルミノケイ酸塩骨格を含む、
方法。
実施形態2
前記骨格置換された
*
BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*
BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記骨格置換された
*
BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*
BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含み、かつ
前記ベータゼオライトAl置換原子が、(a)チタン原子及びジルコニウム原子、(b)チタン原子及びハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子及びハフニウム原子、並びに(d)チタン原子、ジルコニウム原子、及びハフニウム原子、からなる群より選択される組合せを含む、
実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4
前記骨格置換された
*
BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*
BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み、かつ
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、
実施形態1から3のいずれか一つに記載の方法。
実施形態5
前記骨格置換された
*
BEA型のゼオライトが、
(a)400m
2
/gから800m
2
/gの比表面積、
(b)10から200のSiO
2
のAl
2
O
3
に対するモル比、
(c)0.2cm
3
/gから0.6cm
3
/gの細孔容積、並びに
(d)a=1.260nmから1.270nm、b=1.260nmから1.270nm、及びc=2.620から2.650nmの結晶格子定数
を有する、実施形態1から4のいずれか一つに記載の方法。
実施形態6
前記触媒系における前記FCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、前記FCCベース触媒と前記触媒添加剤の合計重量に基づいて、2:1から1,000:1である、実施形態1から5のいずれか一つに記載の方法。
実施形態7
前記触媒系が、前記FCCベース触媒、前記触媒添加剤、触媒マトリクス担体、結合剤、及び充填剤を含む、実施形態1から6のいずれか一つに記載の方法。
実施形態8
前記触媒マトリクス担体がアルミナ又はシリカ-アルミナを含み、
前記結合剤が、アルミナ、シリカ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、及びそれらの組合せからなる群より選択される多孔質無機酸化物のゾルであり、かつ
前記充填剤が、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ベントナイト、及びそれらの組合せからなる群より選択される粘土である、
実施形態7に記載の方法。
実施形態9
前記触媒系が、該触媒系の総重量に基づいて、
1重量%から50重量%のFCCベース触媒、
1重量%から50重量%の触媒添加剤、
0.1重量%から15重量%の結合剤、及び
0.1重量%から15重量%の粘土
を含む、実施形態7又は8に記載の方法。
実施形態10
前記触媒系における前記FCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、前記FCCベース触媒と前記触媒添加剤の合計重量に基づいて、6:1から20:1である、実施形態1から9のいずれか一つに記載の方法。
実施形態11
前記FCCベース触媒が、骨格置換された超安定Y(USY)-ゼオライトを含み、かつ
前記骨格置換されたUSY-ゼオライトが、改変されたUSY骨格を有し、該改変されたUSY骨格が、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、USYアルミノケイ酸塩骨格を含む、
実施形態1に記載の方法。
実施形態12
前記骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態13
前記骨格置換された超安定Y型ゼオライトが、
(a)2.430nmから2.460nmの結晶格子定数a及びb、
(b)600m
2
/gから900m
2
/gの比表面積、及び
(c)5:1から約100:1のSiO
2
のAl
2
O
3
に対するのモル比
を有する、実施形態11又は12に記載の方法。
実施形態14
前記骨格置換された
*
BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*
BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み、
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含み、
前記骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含み、かつ
前記USY-ゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、
実施形態11から13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態15
前記炭化水素油が、350℃を超える沸点範囲を有する炭化水素成分を含み、かつ
前記接触が、450℃から700℃の反応温度、1バール(100kPa)から10バール(1,000kPa)の反応圧力、0.1秒から60秒の滞留時間又は接触時間、及び約2:1から30:1の触媒の油に対する比で行われる、
実施形態1から14のいずれか一つに記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油を分解する方法であって、
流動接触分解ユニット内で前記炭化水素油を触媒系と接触させて軽質オレフィンとガソリン燃料とを生成する工程
を含み、ここで、
前記触媒系がFCCベース触媒と触媒添加剤とを含み、
前記FCCベース触媒がY-ゼオライトを含み、
前記触媒添加剤が、骨格置換された
*BEA型のゼオライトを含み、かつ
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、改変された
*BEA骨格を有し、該改変された
*BEA骨格が、
*BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より選択されるベータゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、
*BEAアルミノケイ酸塩骨格を含む、
方法。
【請求項2】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%の置換原子を含み、かつ
前記ベータゼオライトAl置換原子が、(a)チタン原子及びジルコニウム原子、(b)チタン原子及びハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子及びハフニウム原子、並びに(d)チタン原子、ジルコニウム原子、及びハフニウム原子、からなる群より選択される組合せを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み、かつ
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、
(a)400m
2/gから800m
2/gの比表面積、
(b)10から200のSiO
2のAl
2O
3に対するモル比、
(c)0.2cm
3/gから0.6cm
3/gの細孔容積、並びに
(d)a=1.260nmから1.270nm、b=1.260nmから1.270nm、及びc=2.620から2.650nmの結晶格子定数
を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒系における前記FCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、前記FCCベース触媒と前記触媒添加剤の合計重量に基づいて、2:1から1,000:1である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒系が、前記FCCベース触媒、前記触媒添加剤、触媒マトリクス担体、結合剤、及び充填剤を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒マトリクス担体がアルミナ又はシリカ-アルミナを含み、
前記結合剤が、アルミナ、シリカ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、及びそれらの組合せからなる群より選択される多孔質無機酸化物のゾルであり、かつ
前記充填剤が、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ベントナイト、及びそれらの組合せからなる群より選択される粘土である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒系が、該触媒系の総重量に基づいて、
1重量%から50重量%のFCCベース触媒、
1重量%から50重量%の触媒添加剤、
0.1重量%から15重量%の結合剤、及び
0.1重量%から15重量%の粘土
を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒系における前記FCCベース触媒の触媒添加剤に対する重量比が、前記FCCベース触媒と前記触媒添加剤の合計重量に基づいて、6:1から20:1である、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記FCCベース触媒が、骨格置換された超安定Y(USY)-ゼオライトを含み、かつ
前記骨格置換されたUSY-ゼオライトが、改変されたUSY骨格を有し、該改変されたUSY骨格が、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、及びそれらの組合せからなる群より選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子で置換することによって改変された、USYアルミノケイ酸塩骨格を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記骨格置換された超安定Y型ゼオライトが、
(a)2.430nmから2.460nmの結晶格子定数a及びb、
(b)600m
2/gから900m
2/gの比表面積、及び
(c)5:1から約100:1のSiO
2のAl
2O
3に対するのモル比
を有する、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記骨格置換された
*BEA型のゼオライトが、該骨格置換された
*BEA型のゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含み、
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含み、
前記骨格置換された超安定Y-ゼオライトが、該骨格置換された超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含み、かつ
前記USY-ゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子とを含む、
請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記炭化水素油が、350℃を超える沸点範囲を有する炭化水素成分を含み、かつ
前記接触が、450℃から700℃の反応温度、1バール(100kPa)から10バール(1,000kPa)の反応圧力、0.1秒から60秒の滞留時間又は接触時間、及び約2:1から30:1の触媒の油に対する比で行われる、
請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】