(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】フォロデシンの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
C07D487/04 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506006
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 CN2021107836
(87)【国際公開番号】W WO2022022376
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】202010752502.5
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517105445
【氏名又は名称】スーチュワン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】519255447
【氏名又は名称】アカデミー オブ ミリタリー メディカル サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】チン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウー
(72)【発明者】
【氏名】シュエ フェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ミンチエ
(72)【発明者】
【氏名】ファン シーヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン チーピン
(72)【発明者】
【氏名】リー ソン
【テーマコード(参考)】
4C050
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF10
4C050GG03
4C050HH04
(57)【要約】
本発明は、化学薬品合成の技術分野に関し、具体的には、式VIIで示される化合物を酸で処理して、式Iに示される化合物を作成する工程を含む、式Iに示される化合物を調製する方法に関する。この方法は、合成工程が少なく、原材料が安定しており、調製が容易であり、反応プロセスの制御が容易で、全体の収率と純度が高く、工業的調製に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される化合物の調製方法であって、
式VIIで表される化合物を酸で処理して、式Iで表される前記化合物を作成すること、
【化1】
を含み、
式中、
R
1は、アミノ保護基、例えばカルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、フタロイル(Pht)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシメチル(BOM)であり;
R
2は、メチル又はエチルであり;
R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してヒドロキシル保護基、例えばトリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、2-テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、1-エトキシエチル(EE)であり;
R
6は、アミノ保護基、例えばカルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、フタロイル(Pht)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシメチル(BOM)である、
方法。
【請求項2】
前記酸が濃塩酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式VIIで表される前記化合物が、前記酸を用いて加熱還流条件下で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式VIIで表される前記化合物が、前記酸を用いて還流条件下で、20~100時間、例えば24~96時間、36~84時間、及び48~72時間処理される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式VIIで表される前記化合物が、前記酸を用いて以下の操作:
a)式VIIで表される前記化合物を第1の溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、メタノール、好ましくはテトラヒドロフラン)に溶解して、式VIIで表される前記化合物を含有する溶液を得る工程;
b)式VIIで表される前記化合物を含む溶液に前記酸を加えて、加熱及び還流する工程、
を含む方法によって処理される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
i)前記第1の溶媒を除去し、得られた生成物にエタノールを加え、固体を分離して回収する工程;
ii)任意選択的に、得られた固体を精製する工程;
をさらに含み、
好ましくは、前記得られた固体を精製する方法が、
iii)前記得られた固体を水に溶解して水溶液を得る工程;
iv)前記水溶液に陽イオン交換樹脂を接触させ、希塩酸(例えば2~4M塩酸)で溶出し、溶出液を回収する工程;
v)前記溶出液中の溶媒を除去し、生成物を希塩酸(例えば0.5~1.5M塩酸)に溶解し、40~60℃(例えば45~55℃)に加熱し、室温まで冷却する工程;
vi)v)で得られた生成物にエタノールを加え、室温で6~10時間攪拌し、固体を沈殿させる工程;
vii)0℃まで冷却し、放置する工程;
viii)固体を収集する工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
好ましくは、R
1は、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、又はベンジルオキシメチル(BOM)であり;
好ましくは、R
2は、メチルであり;
好ましくは、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、メトキシメチル(MOM)、又は1-エトキシエチル(EE)であり;
好ましくは、R
6は、カルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、又はエトキシカルボニルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
好ましくは、R
1は、ベンジルオキシメチル(BOM)であり;
好ましくは、R
2は、メチルであり;
好ましくは、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してベンジル(Bn)であり;
好ましくは、R
6は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、
式VIで表される化合物
【化2】
の1位にアミノ保護基R
6を導入する工程であって、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の定義は、請求項1~4及び6~8のいずれか一項に記載の定義と同じである、工程、
を含む、式VIIで表される前記化合物を調製する方法をさらに含む、請求項1~4及び6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
式Vで表される化合物
【化3】
を還元する工程であって、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、請求項1~4及び6~8のいずれか一項に記載の定義と同じである、工程、
を含む、式VIで表される前記化合物を調製する方法をさらに含み、
好ましくは、式Vで表される前記化合物は、還元剤(例えば亜鉛粉末、鉄粉末、又はインジウム粉末、好ましくは亜鉛粉末)で還元され;
好ましくは、式Vで表される前記化合物は、第2の溶媒中で還元剤で還元され;
好ましくは、前記第2の溶媒は、酢酸と、メタノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、4~8M(例えば6M)の塩酸、又はNH
4Clの飽和水溶液との混合溶媒であり;
好ましくは、前記第2の溶媒は、酢酸と、メタノールの混合溶媒、好ましくは酢酸とメタノールの体積比が1:3~8の混合溶媒、例えば酢酸とメタノールの体積比が1:4~6の混合溶媒、例えば酢酸とメタノールの体積比が1:5の混合溶媒等であり;
好ましくは、前記還元剤と式Vで表される前記化合物のモル比が15~25:1、例えば18~22:1、20:1である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、
a)式IIで表される化合物を金属リチウム試薬(例えば、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム、sec-ブチルリチウム、好ましくはn-ブチルリチウム)で処理して、式IIIで表される化合物を作成する工程;
b)式IIIで表される前記化合物を式IVで表される化合物と反応させて、式Vで表される化合物を生成する工程、
【化4】
を含む、式Vで表される前記化合物を調製する方法をさらに含み、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、請求項1~4及び6~8のいずれか一項で定義されたとおりであり、Xはハロゲン、好ましくは臭素原子及びヨウ素原子、例えば臭素原子であり、
好ましくは、式IIで表される前記化合物は、第3の溶媒(例えばメチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール、n-ヘキサン又はトルエン、好ましくはメチルtert-ブチルエーテル、例えば無水メチルtert-ブチルエーテル)中の金属リチウム試薬で処理され;
好ましくは、式IIで表される前記化合物は、前記金属リチウム試薬で-60℃~0℃(例えば-40℃、-20℃)の条件下で処理され;
好ましくは、前記金属リチウム試薬と式IIで表される前記化合物のモル比は、1~1.5:1、例えば1.2:1であり;
好ましくは、式IIIで表される前記化合物は、前記第3の溶媒(例えばメチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール、n-ヘキサン又はトルエン、好ましくはメチルtert-ブチルエーテル、例えば無水メチルtert-ブチルエーテル)中の式IVで表される前記化合物と反応し;
好ましくは、式IIで表される前記化合物と式IVで表される前記化合物の供給モル比は、1.4~2.2:1、例えば1.6~2:1、例えば1.8:1であり;
好ましくは、式IIIで表される前記化合物は、式IVで表される前記化合物と、-60℃~0℃(例えば-40℃、-20℃)の条件下で反応する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式V、式VI、又は式VIIで表される化合物であって、
【化5】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、請求項1、7、及び8のいずれか一項で定義されたとおりであり、
好ましくは、前記化合物は、
【化6】
からなる群から選択される、化合物。
【請求項13】
フォロデシン又はその塩の調製方法であって、
a)式Iで表される前記化合物を、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を使用して調製する工程と;
b)式Iで表される前記化合物をフォロデシンの遊離形態に変換するか、又は式Iで表される前記化合物をフォロデシンの所望の塩に変換する工程と、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月30日に提出された中国出願第202010752502.5号に基づく優先権の利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、化学薬品合成の技術分野に属し、フォロデシンの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
BCX-1777としても知られているフォロデシンは、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)阻害剤である。フォロデシンは、米国で2004年に、T細胞非ホジキンリンパ腫及び慢性骨髄性白血病の治療用の希少疾病用医薬品として認可された。欧州連合では、2006年、2007年、2010年に、それぞれ急性リンパ性白血病、皮膚T細胞性リンパ腫、及び慢性リンパ性白血病の治療用の希少疾病用医薬品として認可された。2017年には、フォロデシンは日本で、再発/難治性末梢T細胞リンパ腫の治療用に認可された。
【0004】
末梢T細胞リンパ腫の第1の治療選択肢は、主に多剤併用化学療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾンを含む)及びブレンツキシマブベドチン(アドセトリス(登録商標))である。再発/難治性末梢T細胞リンパ腫の治療の場合、選択肢は限られており、効果も十分ではない。現在、3つのヒストン脱アセチル化阻害剤、すなわちチダミド、ロミデプシン、及びベリノスタット、が一般的に使用されており、ここで、チダミドは中国でのみ認可されており、ロミデプシンとベリノスタットは米国でのみ認可されている。新しいヌクレオシド代謝阻害剤として、フォロデシンは、T細胞機能を効果的に阻害することができ、再発/難治性末梢T細胞リンパ腫の治療に価値のある薬剤である。
【0005】
さらに、フォロデシンは、広域スペクトル抗ウイルス薬ガリデシビル(BCX-4430)の合成に必要な重要な中間体でもあり、BCX-4430の合成に不可欠である。
【0006】
しかし、フォロデシンの工業的製造は非常に困難である。文献の報告(Nature,2014,508,402-405)によると、現在使用されている工業的製造スキームは、次のとおりである。
【0007】
このスキームでは、2級アミン(8)を出発物質として使用し、塩素化及び脱塩素化してイミン(10)を得る。n-ブチルリチウムを作用させて、ブロモプリン誘導体(2)をリチウム化し、次にイミン(10)と付加反応させ、得られた2級アミン中間体をBocで保護して中間体(11)を得て、次にここに水素添加してBOM保護基を除去し、濃塩酸で加熱して他の保護基を除去して、フォロデシン塩酸塩を得て、これをイオン交換樹脂及び再結晶により最終的に精製してフォロデシンを得る。
【0008】
この調製スキームでは、原料の2級アミン(8)の調製が複雑で高価であり、原料のコストが高い。2工程変換によって生成されるイミンは収率が低く、不安定で、保存が容易ではない。複素環のBOM保護基の除去には、水素化が必要であり、これには特別な装置が必要で、特定のリスクがあり、これらすべての要因が工業規模の生産に寄与しない。
【化1】
【0009】
上記スキームを改善するために、特許出願US20180258091A1は、以下に示す新しいプロセスを開示している。このスキームでは、n-ブチルリチウムの代わりにn-ヘキシルリチウムが使用され、ブロモプリン誘導体(2)は-15℃でリチウム化され、これは、反応装置の低温要件を軽減し、さらに、水素化によるBOM保護基の除去方法は、濃塩酸によるBOM保護基の除去に変更され、危険な高圧水素化条件を回避する。
【化2】
【0010】
上記のスキームより、BOM保護基の付加及び除去の方法が改善されたが、n-ヘキシルリチウムは高価で入手が困難であり、そして、この方法は、依然として原料として2級アミン(8)を使用しており、問題点、例えば面倒な調製工程、高いコスト、イミンの不安定性、保存の難しさは、解決されていない。
【0011】
したがって、フォロデシンにとって、原料が入手しやすく、操作が簡単で、低コストであり、工業化の可能性を有する合成スキームを開発することは、大きな意義があり、応用価値が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の内容
本発明の目的は、フォロデシンを調製するための新しい方法を提供することであり、本発明の別の目的は、容易に入手可能な原料を用いてフォロデシンを調製する方法を提供することであり、本発明の別の目的は、より小さな反応スキームでフォロデシンを調製する方法を提供することであり、本発明の別の目的は、操作性が高く、操作の制御が容易で、安全性の高いフォロデシンの調製方法を提供することであり、本発明の別の目的は、低コストのフォロデシンの調製方法を提供することであり、及び本発明の別の目的は、スケールアップ生産に適したフォロデシンの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、式Iで表される化合物を調製する方法を提供し、この方法は、
式VIIで表される化合物を酸(例えば、濃塩酸)で処理して、式Iで表される化合物を作成すること、
【化3】
を含み、式中、
R
1は、アミノ保護基、例えばカルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、フタロイル(Pht)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシメチル(BOM)であり;
R
2は、メチル又はエチルであり;
R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してヒドロキシル保護基、例えばトリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、2-テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、1-エトキシエチル(EE)であり;
R
6は、アミノ保護基、例えばカルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、フタロイル(Pht)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシメチル(BOM)である。
【0014】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、式VIIで表される化合物は、濃塩酸で処理される。
【0015】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、式VIIで表される化合物は、酸を用いて加熱及び還流条件下で処理される。
【0016】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、式VIIで表される化合物は、酸を用いて還流条件下で20~100時間、例えば24~96時間、36~84時間、48~72時間処理される。
【0017】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、式VIIで表される化合物は、酸を用いて以下の操作を含む方法によって処理される:
a)式VIIで表される化合物を第1の溶媒に溶解して、式VIIで表される化合物を含有する溶液を得る工程;
b)式VIIで表される化合物を含む溶液に酸(例えば、濃塩酸)を加えて、加熱及び還流する工程。
【0018】
いくつかの実施態様において、本発明の第1の溶媒はテトラヒドロフラン又はメタノールである。
【0019】
いくつかの実施態様において、本発明の第1の溶媒はテトラヒドロフランである。
【0020】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法は、
i)第1の溶媒を除去し、得られた生成物にエタノールを加え、固体を分離して回収する工程と、
ii)任意選択的に、得られた固体を精製する工程と、
をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、得られた固体を精製する方法は、
iii)得られた固体を水に溶解して水溶液を得る工程と、
iv)水溶液に陽イオン交換樹脂を接触させ、希塩酸(例えば2~4M塩酸)で溶出し、溶出液を回収する工程と、
v)溶出液中の溶媒を除去し、生成物を希塩酸(例えば0.5~1.5M塩酸)に溶解し、40~60℃(例えば45~55℃)に加熱し、室温まで冷却する工程と、
vi)v)で得られた生成物にエタノールを加え、室温で6~10時間攪拌し、固体を沈殿させる工程と、
vii)0℃まで冷却し、放置する工程と、
viii)固体を回収する工程と、
をさらに含む。
【0022】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1は、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、又はベンジルオキシメチル(BOM)である。
【0023】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1は2,4-ジメトキシベンジル(DMB)である。
【0024】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はベンジル(Bn)である。
【0025】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はカルボベンゾキシ(Cbz)である。
【0026】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はtert-ブトキシカルボニル(Boc)である。
【0027】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はメトキシカルボニルである。
【0028】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はエトキシカルボニルである。
【0029】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はフタロイル(Pht)である。
【0030】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R2はメチルである。
【0031】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立してベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、メトキシメチル(MOM)、又は1-エトキシエチル(EE)である。
【0032】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立してp-メトキシベンジル(PMB)である。
【0033】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立してメトキシメチル(MOM)である。
【0034】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立して1-エトキシエチル(EE)である。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立してトリメチルシリル(TMS)である。
【0036】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立してtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)である。
【0037】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立して2-テトラヒドロピラニル(THP)である。
【0038】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6は、カルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、又はエトキシカルボニルである。いくつかの実施態様において、本発明の式IIで表される化合物において、R6はカルボベンゾキシ(Cbz)である。
【0039】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6はメトキシカルボニルである。
【0040】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6はエトキシカルボニルである。
【0041】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6はフタロイル(Pht)である。
【0042】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6は2,4-ジメトキシベンジル(DMB)である。
【0043】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6はベンジル(Bn)である。
【0044】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6はベンジルオキシメチル(BOM)である。
【0045】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はベンジルオキシメチル(BOM)である。
【0046】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R2はエチルである。
【0047】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立してベンジル(Bn)である。
【0048】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R6はtert-ブトキシカルボニル(Boc)である。
【0049】
いくつかの実施態様において、本発明の式VIIで表される化合物において、R1はベンジルオキシメチル(BOM)であり、R2はメチルであり、R3、R4、R5はそれぞれ独立してベンジル(Bn)であり、R6はtert-ブトキシカルボニル(Boc)である。
【0050】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法は、式VIIで表される化合物を調製することをさらに含み、これは、式VI
【化4】
で表される化合物の1位にアミノ保護基R
6を導入することを含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の定義は、式VIIの定義と同じである。
【0051】
式VIで表される化合物は酸化されやすいため、式VIで表される化合物にアミノ保護基を導入することにより、安定した特性を有する式VIIで表される化合物が得られ、その後の分離や精製に便利である。
【0052】
いくつかの実施態様において、式VIIで表される化合物において、R6はtert-ブトキシカルボニル(Boc)であり、R1、R2、R3、R4、及びR5の定義は、本明細書に記載されているとおりであり、これは、式VIで表される化合物をBocで保護することにより得られる。好ましくは、式VIで表される化合物は、塩基性条件下でBoc無水物と反応して、式VIIで表される化合物が得られる。より好ましくは、式VIで表される化合物は、水酸化ナトリウムの存在下でBoc無水物と反応して、式VIIで表される化合物が得られる。
【0053】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法は、式VIで表される化合物を調製することをさらに含み、これは、式V
【化5】
で表される化合物を還元することを含み、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5の定義は、式VIIの定義と同じである。
【0054】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、式Vで表される化合物は、還元剤で還元される。
【0055】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、式Vで表される化合物は、第2の溶媒中の還元剤で還元される。
【0056】
いくつかの実施態様において、本発明の還元剤は、亜鉛粉末、鉄粉末、又はインジウム粉末である。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明の還元剤は亜鉛粉末である。
【0058】
いくつかの実施態様において、本発明の還元剤は鉄粉末である。
【0059】
いくつかの実施態様において、本発明の還元剤はインジウム粉末である。
【0060】
いくつかの実施態様において、本発明の第2の溶媒は、酢酸と、メタノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、4~8M(例えば6M)の塩酸、又はNH4Clの飽和水溶液との混合溶媒である。
【0061】
いくつかの実施態様において、本発明の第2の溶媒は、酢酸とメタノールの混合溶媒であり、好ましくは体積比が1:3~8の酢酸とメタノールの混合溶媒、例えば体積比が1:4~6の酢酸とメタノールの混合溶媒、例えば体積比が1:5の酢酸とメタノールの混合溶媒である。
【0062】
いくつかの実施態様において、本発明の第2の溶媒は、トリフルオロ酢酸(TFA)、4~8M(例えば6M)の塩酸、又はNH4Clの飽和水溶液である。
【0063】
いくつかの実施態様において、本発明の第2の溶媒はトリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0064】
いくつかの実施態様において、本発明の第2の溶媒は、4~8M(例えば6M)の塩酸である。
【0065】
いくつかの実施態様において、本発明の第2の溶媒は、NH4Clの飽和水溶液である。
【0066】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、還元剤と式Vで表される化合物とのモル比は、15~25:1、例えば18~22:1、20:1である。
【0067】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法は、式Vで表される化合物を調製する方法をさらに含み、これは、
【化6】
a)式IIで表される化合物を金属リチウム試薬で処理して、式IIIで表される化合物を生成する工程と、
b)式IIIで表される化合物を式IVで表される化合物と反応させて、式Vで表される化合物を作成する工程と、
を含み、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5の定義は式VIIの定義と同じであり、Xはハロゲン、好ましくは臭素原子、及びヨウ素原子であり、例えば臭素原子である。
【0068】
式IIIで表される化合物は、式IVで表される化合物と反応して、7:1のジアステレオ選択性を有する異性体の対を生成し、主生成物は、式Vで表される化合物である。式Vで表される化合物は、還元されて式VIで表される化合物になり、この中間体は、容易に酸化される。アミノ保護基が式VIで表される化合物に導入されて、安定した特性を有する式VIIの化合物が得られ、その結果、上記反応工程で作成されたジアステレオ異性体は容易に分離することができる。
【0069】
いくつかの実施態様において、本発明の金属リチウム試薬は、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム、及びsec-ブチルリチウムである。
【0070】
いくつかの実施態様において、本発明の金属リチウム試薬はn-ブチルリチウムである。
【0071】
いくつかの実施態様において、本発明の金属リチウム試薬はtert-ブチルリチウムである。
【0072】
いくつかの実施態様において、本発明の金属リチウム試薬はフェニルリチウムである。
【0073】
いくつかの実施態様において、本発明の金属リチウム試薬はsec-ブチルリチウムである。
【0074】
いくつかの実施態様において、本発明の式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIで表される化合物は、第3の溶媒中の金属リチウム試薬で処理される。
【0075】
いくつかの実施態様において、本発明の第3の溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール、n-ヘキサン、又はトルエンである。
【0076】
いくつかの実施態様において、本発明の第3の溶媒はメチルtert-ブチルエーテルである。
【0077】
いくつかの実施態様において、本発明の第3の溶媒は、無水メチルtert-ブチルエーテルである。
【0078】
いくつかの実施態様において、本発明の第3の溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である。
【0079】
いくつかの実施態様において、本発明の第3の溶媒はアニソールである。
【0080】
いくつかの実施態様において、本発明の第3の溶媒はn-ヘキサンである。
【0081】
いくつかの実施態様において、本発明の第3の溶媒はトルエンである。
【0082】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIで表される化合物は、金属リチウム試薬で-60℃~0℃の条件下(例えば-40℃、-20℃)で処理される。
【0083】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIで表される化合物は、金属リチウム試薬で-40℃~0℃の条件下で処理される。
【0084】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIで表される化合物は、金属リチウム試薬で-60℃~-20℃の条件下で処理される。
【0085】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIで表される化合物は、金属リチウム試薬で-40℃~-20℃の条件下で処理される。
【0086】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、金属リチウム試薬と式IIで表される化合物とのモル比は、1~1.5:1、例えば1.2:1である。
【0087】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIIで表される化合物は、第3の溶媒中の式IVで表される化合物と反応する。
【0088】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIで表される化合物と式IVで表される化合物との供給モル比は、1.4~2.2:1、例えば1.6~2:1、例えば1.8:1である。
【0089】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIIで表される化合物は、式IVで表される化合物と-60℃~0℃(例えば-40℃、-20℃)の条件下で反応する。
【0090】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIIで表される化合物は、式IVで表される化合物と-40℃~0℃の条件下で反応する。
【0091】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIIで表される化合物は、式IVで表される化合物と-60℃~-20℃の条件下で反応する。
【0092】
いくつかの実施態様において、本発明による式Iで表される化合物を調製する方法において、式IIIで表される化合物は、式IVで表される化合物と-40℃~-20℃の条件下で反応する。
【0093】
本発明はさらに、式V、式VI、又は式VIIで表される中間体化合物を提供し、
【化7】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の定義は、式VIIの定義と同じである。
【0094】
いくつかの実施態様において、中間体化合物は、以下からなる群から選択される:
【化8】
【0095】
本発明は、
a)本発明の方法を使用して、式Iで表される化合物を調製する工程;
b)式Iで表される化合物をフォロデシンの自由な形に変換する工程、又は
式Iで表される化合物をフォロデシンの所望の塩に変換する工程、
を含む、フォロデシン又はその塩の調製方法をさらに提供する。
【0096】
本発明において、式IVで表される化合物は、ニトロン化合物、例えばIVで表されるニトロン化合物(式中、R3、R4、R5はそれぞれ独立してベンジル(Bn)である)であり、これは、文献(Tetrahedron,2009,65,93-100)の方法を参照して調製することができる。R1がベンジルオキシメチル(BOM)であり、R2がメチルであり、及びXが臭素原子である式IIで表される化合物は、文献(Journal of Organic Chemistry,2001,66(17),5723-5730)の方法を参考にして調製することができる。
【0097】
定義
以下で特に他に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有することを意図している。本明細書で使用される技術への言及は、当技術分野で一般に理解されている技術を指し、当業者に明らかな同等の技術の変形又は置換を含むことを意図している。以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本発明をよりよく説明するために記載される。
【0098】
「含む(包括)」、「含む(包含)」、「備える(具有)」、「含む(含有)」、又は「関連する(渉及)」という用語、及び本明細書におけるその他の変形は、包括的又は無制限であり、他の列挙された要素又は方法工程を排除しない。
【0099】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」基は、F、Cl、Br、又はIを含むと定義される。
【0100】
本明細書において「濃塩酸」という用語は、一般に、質量分率が36%~38%で物質濃度が12mol/Lの塩酸をいう。
【0101】
本明細書で使用される「希塩酸」という用語は、質量分率が20%未満の塩酸を指す。
【0102】
文脈から明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は用語「約」によって修飾され、すなわち本明細書で開示される数値は、数値自体だけでなく、「約」によって修飾される数値も含む。本明細書で使用される特定の値について、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.1%、±0.05%、又は±0.01%以内であると理解されるべきである。
【0103】
本発明の有益な効果:
【0104】
本発明によって提供される式Iで表される化合物フォロデシン塩酸塩を調製する方法は、以下の利点の1つ以上を有する:
1)この方法で使用する原材料と溶媒は、安価で入手が容易である;
2)この方法は、原料としてニトロン化合物を使用し、この原料は安定しており、保存が容易で、大規模な調製が容易で、調製が簡単で便利であり、関連する試薬と溶媒は安価で簡単に取得でき、操作は簡単である;
3)この方法の合成プロセスは操作が容易であり、合成スキームは短く、全体の収率は高く、例えば約30%である;
4)この方法の生産コストは低い;
5)この方法で調製されるフォロデシン塩酸塩は純度が高く、純度は99.8%超、例えば99.9%に達することがある;
6)この方法は工業的生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】本発明のフォロデシン塩酸塩の
1H-NMR核磁気スペクトルを示す。
【
図2】本発明のフォロデシン塩酸塩の
13C-NMR核磁気スペクトルを示す。
【
図3】本発明のフォロデシン塩酸塩のHPLCスペクトル図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
カラム:Agilent ZORBAX SB-C18、4.6×150mm、5μm;
溶媒:0.1% TFA/H
2O=100%;流量:0.3mL/分;
ピーク情報(波長:254nm):
【表1】
【0107】
本発明を実施するための特定のモデル
本発明の技術的効果をさらに説明するために、本発明は、実施例を通じて以下に詳細に説明される。提供される実施例は、単に本発明の方法を例示するためのものであり、決して本発明を限定することを意図するものではない。
【0108】
別段の指定がない限り、本発明で使用される試薬、方法、及び装置は、当技術分野における通常の試薬、方法、及び装置である。
【実施例】
【0109】
実施例:フォロデシン塩酸塩の調製
本発明の実施例の式1で表される化合物、すなわちフォロデシン塩酸塩は、以下の合成スキームによって調製された:
【化9】
【0110】
1)化合物5の調製:
ブロモプリン誘導体(2)(22.5g、64.7mmol)を無水メチルtert-ブチルエーテル(600mL)に溶解し、-20℃に冷却し、n-ブチルリチウム(2.5M、31mL、78mmol)をゆっくり滴加した。滴加終了後、混合物を-20℃で1時間攪拌し、次に室温まで暖めて10分攪拌し、次に-20℃に冷却し、次にメチルtert-ブチルエーテル(50mL)中のニトロン(4)(15.0g、35.9mmol)の溶液をゆっくり滴加した。得られた混合物を-20℃で15時間反応させ、飽和塩化アンモニウム溶液を加えて反応をクエンチした。得られた混合物を室温まで暖め、酢酸エチルを加えて希釈し、有機層と水層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出し、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去してヒドロキシルアミン(5)の粗生成物を得て、これは、分離及び精製せずに直接次の工程で使用した。
【0111】
2)化合物6の調製:
前の工程で得られた粗ヒドロキシルアミン(5)を、酢酸とメタノールの混合溶媒(V/V=1:5、60mL)に溶解し、亜鉛粉末(47.0g、0.72mol)を添加し、混合物を2時間加熱還流した。次に、反応溶液を室温まで冷却し、珪藻土で濾過して不溶物を除去し、濾液を濃縮、脱水して粗2級アミン(6)を得て、これは、分離及び精製せずに直接次の工程で使用した。
【0112】
3)化合物7の調製:
前の工程で得られた粗2級アミン(6)をテトラヒドロフラン(150mL)に溶解し、3M水酸化ナトリウム水溶液(150mL、0.45mol)を加え、溶液のpH値を10に調整し、BOC無水物(15.7g、71.8mmol)を加え、得られた反応溶液を室温で15時間反応させた。LC-MSで反応の終了をモニターした後、反応液を珪藻土で濾過して不溶物を除去した。濾液中のテトラヒドロフランを減圧留去し、残留物を酢酸エチルで希釈し、有機層と水層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出後、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル(V/V)=5:1)で分離精製して淡黄色の油状物(7)(11.0g、40%)を得た。C46H51N4O7[M+H]+のLC-MS m/zは、計算値771.4で実測値771.4であった。
【0113】
4)フォロデシン塩酸塩の調製
化合物7(11.0g)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、濃塩酸(12M(36%~38%)、100mL)を加え、得られた混合物を72時間加熱還流し、濃縮乾固し、濾過し、濾液の溶媒を減圧留去して、赤褐色固体を得て、ここにエタノール(50mL)を加え、反応混合物を粉砕し、濾過し、固体を回収して粗フォロデシン塩酸塩(1)を約78%の収率で得た。
【0114】
5)フォロデシン塩酸塩の精製と改良
固体のフォロデシン塩酸塩を水に溶解し、得られた混合物を陽イオン交換樹脂で濾過し(5Lの3M希塩酸で溶出)、塩酸溶出物を回収し、濃縮乾固し、残留物を1M希塩酸に溶解し、50℃に加熱し、次に室温に冷却し、固体が沈殿するまでエタノールをゆっくり加えた。得られた混合物を20℃で8時間攪拌した後、0℃に冷却して2時間静置した。固体を濾過して回収し、乾燥して白色固体のフォロデシン塩酸塩(約3.0g)を得て、その構造及び純度の特定結果を
図1~3に示し、その純度は約99.9%であった。
【0115】
本例の全体的な収率は約30%であった。
【0116】
1H NMR(400MHz,CD3SOCD3)δ12.38(s,1H),12.18(s,1H),10.47(s,1H),8.45(s,1H),7.89(s,1H),7.65(d,J=4.0Hz,1H),5.60(d,J=4.0Hz,1H),5.50(d,J=4.0Hz,1H),5.46(t,J=4.0Hz,1H),4.63(d,J=8.0Hz,1H),4.44-4.39(m,1H),4.19-4.15(m,1H),3.74-3.71(m,1H),3.50-3.46(m,1 H).13C NMR(100MHz,CD3SOCD3)δ153.5,143.0,142.2,127.5,118.0,109.2,74.0,70.3,65.2,58.4,56.5.LC-MS m/z for C11H15N4O4[M+H]+ 計算値267.1;実測値267.1。
【0117】
前述の例は、本発明の技術的解決法を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の技術的解決法を好ましい実施例を参照して詳細に説明したが、当業者は、本発明の技術的解決法は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、修正又は同等に置き換えることができることを理解すべきであり、これらの変更のすべては、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される化合物の調製方法であって、
式VIIで表される化合物を酸で処理して、式Iで表される前記化合物を作成すること、
【化1】
を含み、
式中、
R
1は、アミノ保護
基であり;
R
2は、メチル又はエチルであり;
R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してヒドロキシル保護
基であり;
R
6は、アミノ保護
基である、
方法。
【請求項2】
以下の項目:
(a)R
1
は、カルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、フタロイル(Pht)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、又はベンジルオキシメチル(BOM)であり;
(b)R
3
、R
4
、R
5
は、それぞれ独立して、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、2-テトラヒドロピラニル(THP)、メトキシメチル(MOM)、又は1-エトキシエチル(EE)であり;
(c)R
6
は、カルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、フタロイル(Pht)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、又はベンジルオキシメチル(BOM)である、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸が濃塩酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式VIIで表される前記化合物が、前記酸を用いて加熱還流条件下で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式VIIで表される前記化合物が、前記酸を用いて還流条件下で、20~100時
間処理される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
式VIIで表される前記化合物が、前記酸を用いて還流条件下で、24~96時間処理される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式VIIで表される前記化合物が、前記酸を用いて以下の操作:
a)式VIIで表される前記化合物を第1の溶
媒に溶解して、式VIIで表される前記化合物を含有する溶液を得る工程;
b)式VIIで表される前記化合物を含む溶液に前記酸を加えて、加熱及び還流する工程、
を含む方法によって処理される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の溶媒が、テトラヒドロフラン又はメタノールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、
i)前記第1の溶媒を除去し、得られた生成物にエタノールを加え、固体を分離して回収する工程;
ii)任意選択的に、得られた固体を精製する工程;
をさらに含
む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記得られた固体が、
iii)前記得られた固体を水に溶解して水溶液を得る工程;
iv)前記水溶液に陽イオン交換樹脂を接触させ、希塩酸で溶出し、溶出液を回収する工程;
v)前記溶出液中の溶媒を除去し、生成物を希塩酸に溶解し、40~60℃に加熱し、室温まで冷却する工程;
vi)v)で得られた生成物にエタノールを加え、室温で6~10時間攪拌し、固体を沈殿させる工程;
vii)0℃まで冷却し、放置する工程;
viii)固体を収集する工程、
を含む方法によって精製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
以下の項目:
(a)iv)における希塩酸は、2~4M塩酸である;
(b)v)における希塩酸は、0.5~1.5M塩酸である;
(c)工程v)は、前記溶出液中の前記溶媒を除去し、前記生成物を希塩酸に溶解し、45~55℃に加熱し、室温に冷却することを含む、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下の項目:
(a)R
1は、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、ベンジル(Bn)、又はベンジルオキシメチル(BOM)であり;
(b)R
2は、メチルであり;
(c)R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、メトキシメチル(MOM)、又は1-エトキシエチル(EE)であり;
(d)R
6は、カルボベンゾキシ(Cbz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、メトキシカルボニル、又はエトキシカルボニルである、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
以下の項目:
(a)R
1は、ベンジルオキシメチル(BOM)であり;
(b)R
2は、メチルであり;
(c)R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立してベンジル(Bn)であり;
(d)R
6は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)である、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、
式VIで表される化合物
【化2】
の1位にアミノ保護基R
6を導入する工程であって、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の定義は、請求項1~
6及び
9~
13のいずれか一項に記載の定義と同じである、工程、
を含む、式VIIで表される前記化合物を調製する方法をさらに含む、請求項1~
6及び
9~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、
式Vで表される化合物
【化3】
を還元する工程であって、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5は、請求項1~
6及び
9~
13のいずれか一項に記載の定義と同じである、工程、
を含む、式VIで表される前記化合物を調製する方法をさらに含
む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
以下の項目:
(a)式Vで表される前記化合物は、還元剤で還元され;
(b)式Vで表される前記化合物は、第2の溶媒中で還元剤で還元され;
(c)前記還元剤と式Vで表される前記化合物のモル比が15~25:1である、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下の項目:
(a)還元剤は、亜鉛粉末、鉄粉末、又はインジウム粉末であり;
(b)前記第2の溶媒は、酢酸と、メタノール、トリフルオロ酢酸(TFA)、4~8Mの塩酸、又はNH
4
Clの飽和水溶液との混合溶媒であり;
(c)前記還元剤と式Vで表される前記化合物のモル比が18~22:1である、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以下の項目:
(a)前記還元剤は、亜鉛粉末であり;
(b)前記第2の溶媒は、酢酸と、メタノールの混合溶媒であり、酢酸とメタノールの混合溶媒は、酢酸とメタノールの体積比が1:3~8の混合溶媒である、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、
a)式IIで表される化合物を金属リチウム試
薬で処理して、式IIIで表される化合物を作成する工程;
b)式IIIで表される前記化合物を式IVで表される化合物と反応させて、式Vで表される化合物を生成する工程、
【化4】
を含む、式Vで表される前記化合物を調製する方法をさらに含み、
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、請求項1~
6及び
9~
13のいずれか一項で定義されたとおりであり、Xはハロゲ
ンである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
以下の項目:
(a)前記金属リチウム試薬は、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、フェニルリチウム、又はsec-ブチルリチウムであり;
(b)Xは、臭素原子及びヨウ素原子であり;
(c)式IIで表される前記化合物は、第3の溶媒中の金属リチウム試薬で処理され;
(d)式IIで表される前記化合物は、前記金属リチウム試薬で-60℃~0℃の条件下で処理され;
(e)前記金属リチウム試薬と式IIで表される前記化合物のモル比は、1~1.5:1であり;
(f)式IIIで表される前記化合物は、前記第3の溶媒中の式IVで表される前記化合物と反応し;
(g)式IIで表される前記化合物と式IVで表される前記化合物の供給モル比は、1.4~2.2:1であり;
(h)式IIIで表される前記化合物は、式IVで表される前記化合物と、-60℃~0℃の条件下で反応する、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
以下の項目:
(a)前記金属リチウム試薬は、n-ブチルリチウムであり;
(b)Xは、臭素原子であり;
(c)前記第3の溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール、n-ヘキサン又はトルエンであり;
(d)式IIで表される前記化合物は、前記金属リチウム試薬で-40℃又は-20℃の条件下で処理され;
(e)前記金属リチウム試薬と式IIで表される前記化合物のモル比は、1.2:1であり;
(f)式IIで表される前記化合物と式IVで表される前記化合物の供給モル比は、1.6~2:1であり;
(g)式IIIで表される前記化合物は、式IVで表される前記化合物と、-40℃又は-20℃の条件下で反応する、
の1つ以上によって特徴付けられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式V、式VI、又は式VIIで表される化合物であって、
【化5】
式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、請求項1、
12、及び
13のいずれか一項で定義されたとおりであ
る、化合物。
【請求項23】
前記化合物は、
【化6】
からなる群から選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
フォロデシン又はその塩の調製方法であって、
a)式Iで表される前記化合物を、請求項1~
6及び9~13のいずれか一項に記載の方法を使用して調製する工程と;
b)式Iで表される前記化合物をフォロデシンの遊離形態に変換するか、又は式Iで表される前記化合物をフォロデシンの所望の塩に変換する工程と、
を含む方法。
【国際調査報告】