(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ヒトゲノムリモデリングのためのバクテリオファージベースの人工ウイルスの設計
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20230824BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230824BHJP
C12N 15/85 20060101ALN20230824BHJP
C12N 15/33 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N7/01 ZNA
C12N15/85 Z
C12N15/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506012
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 IB2021056248
(87)【国際公開番号】W WO2022023850
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】399128150
【氏名又は名称】ザ・キャソリック・ユニバーシティ・オブ・アメリカ
【氏名又は名称原語表記】THE CATHOLIC UNIVERSITY OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】ラオ,ヴェニガラ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ジンゲン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
(57)【要約】
ヒト細胞に侵入して正確なヒトゲノム改変を実行できる生体分子でプログラムされた「人工ウイルス」(AV)が記載されている。AVは、バクテリオファージT4などの少なくとも1つのウイルスベクター; DNA、RNA、タンパク質およびそれらの複合体などの少なくとも1つの治療用分子; および脂質コーティングを含む。斯かるAVを使用するヒトゲノムの改変方法、および斯かるAVをプログラムする方法もまた記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノム改変能力を有する人工ウイルス (AV) をプログラミングするCRISPRベースの方法であって、以下:
野生型T4ファージからipI遺伝子およびipII遺伝子を欠失させることによりアクセプターファージを作製すること;
標的タンパク質の遺伝子を含むプラスミドと、Cas9またはCpf1、および前記アクセプターファージの欠失領域内のプロトスペーサー配列に対応するCRISPR RNAを発現するスペーサープラスミドとを有する宿主細菌細胞を作製すること;
前記宿主細菌細胞に前記アクセプターファージを感染させること;
前記宿主細菌細胞から操作されたアクセプターファージを回収すること;
前記操作されたアクセプターファージから空の操作されたT4キャプシドを得ること;ならびに
前記操作されたT4キャプシドに少なくとも1つのDNAをパッケージングすること
を含み、ここで、前記標的タンパク質の遺伝子は、C末端でキャプシド標的配列(CTS)およびN末端で核局在化配列(NLS)に隣接して、CTS-遺伝子-NLS配列を形成する、方法。
【請求項2】
HocおよびSocからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を介して、前記操作されたT4キャプシドの外側に少なくとも1つの治療分子を提示することをさらに含み、ここで、少なくとも1つの治療用分子は、DNA、RNA、タンパク質、およびそれらの複合体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
提示される前記治療用分子が、リボ核タンパク質(RNP)複合体、部位特異的リコンビナーゼCre、RNAポリメラーゼ、およびDNAリガーゼからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記RNP複合体が、Cas9タンパク質と、mRNA、siRNAおよびgRNAからなる群から選択される少なくとも1つのRNA分子とを含み、ここで、前記Cas9タンパク質は、HocおよびSocからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を介して前記T4キャプシドに連結される。請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Cas9-Socが配列番号16に記載の配列を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
核局在化配列(NLS)がCas9タンパク質のN末端に融合される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記RNP複合体が、Cpf1タンパク質と、mRNA、siRNAおよびgRNAからなる群から選択される少なくとも1つのRNA分子とを含み、ここで、前記Cpf1タンパク質は、HocおよびSocからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を介して前記T4キャプシドに連結される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
Cpf1-Socが配列番号17に記載の配列を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の利益に関する声明)
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された助成金番号AI111538およびAI081726、ならびに国立科学財団(NSF)によって授与された助成金番号MCB-0923873の下で米国政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(配列表への言及)
本出願は、ASCIIテキスト形式で電子的に提出された配列表を含む。この配列表は、109007-23787US01_sequence listingと命名されている。TXTは2021年6月7日に作成され、サイズは51,445バイトであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
(発明の分野)
本開示は、一般的に、ヒトゲノムリモデリング成分、組成物、メカニズム、およびその方法に関する。
【0004】
(発明の背景)
ヒト細胞に侵入し、正確な分子修復を実行できる生体分子でプログラムされた「人工ウイルス」(AV)を設計することは、医学への幅広い適用をもたらすであろう。しかしながら、治療用遺伝子とタンパク質の両方を標的細胞に効率的かつ安全に送達し、ヒトゲノムを再構築(remodel)できるAV粒子を構築することは、依然として大きな課題である。本出願は、本明細書に記載の従来技術の欠点を克服する。
【発明の概要】
【0005】
(概要)
第1の広範な態様によれば、本開示は、少なくとも1つのウイルスベクター、少なくとも1つの治療用分子、および脂質コーティングを含む、ヒトゲノムリモデリング人工ウイルス(AV)を提供し、該治療用分子の少なくとも1つは、遺伝子改変または遺伝子サイレンシング活性を有する。
【0006】
第2の広範な態様によれば、本開示は、T4キャプシド、Cas9タンパク質、少なくとも1つのRNA、少なくとも1つのDNA、および脂質コーディングを含むヒトゲノムリモデリング人工ウイルス(AV)を提供し、該DNAはT4キャプシド内にパッケージングされ、該RNAはmRNA、siRNAおよびgRNAからなる群から選択され、該脂質コーティングは少なくとも1つのカチオン性脂質を含む。
【0007】
第3の広範な態様によれば、本開示は、動物細胞に人工ウイルス(AV)を感染させる工程を含むゲノム改変方法を提供し、該AVはウイルスベクター、少なくとも1つの治療用分子(該治療用分子の少なくとも1つは、遺伝子改変または遺伝子サイレンシング活性を有する)、および脂質コーディングを含む。
【0008】
第4の広範な態様によれば、本開示は、野生型タイプT4ファージから、ipI遺伝子およびipII遺伝子を欠失させることにより「アクセプター」ファージを作製する工程、標的タンパク質の遺伝子を含むプラスミドと、Cas9またはCpf1、およびアクセプターファージの欠失領域内のプロトスペーサー配列に対応するCRISPR RNAを発現するスペーサープラスミドとを有する宿主細菌細胞を作製する工程、該宿主細菌細胞に「アクセプター」ファージを感染させる工程、該宿主細菌細胞から操作された(engineered)「アクセプター」ファージを回収する工程、該操作された「アクセプター」ファージから空の操作されたT4キャプシドを取得する工程、該操作されたT4キャプシドに少なくとも1つのDNAをパッケージングする工程を含む、ゲノム改変能力を有する人工ウイルス(AV)をプログラミングするCRISPRベースの方法を提供し、該標的タンパク質の遺伝子は、C末端でキャプシドターゲティング配列(capsid targeting sequence)(CTS)と、N末端で核局在化配列(NLS)に隣接し、CTS-gene-NLS配列を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、請求および必要な手数料の支払いに応じて、オフィスによって提供されるであろう。
【0010】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を示し、上記の一般的な説明および以下の詳細な説明とともに、本発明の特徴を説明するのに役立つ。
【
図1】
図1は、本発明の1つの例示的な実施形態による、バクテリオファージT4ベースの人工ウイルスの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4-AVを作製するための連続的な組立ラインの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による、脂質でコーティングされたT4-AVを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つの例示的な実施形態による、様々なDNAとT4との比率での様々なT4-AVについての、パッケージングされたGFPおよびルシフェラーゼDNAの定量化を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(GFP)-AVによりパッケージングされたDNAの293個の細胞への様々な感染多重度(MOI)での送達を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の1つの例示的な実施形態による、DNA送達効率に対するT4および脂質複合体形成量(Complexation Volume)の効果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の1つの例示的な実施形態による、DNA送達効率に対するT4および脂質複合体形成時間(Complexation Time)の効果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の例示的な実施形態による、様々なカチオン性脂質でコーティングされたAVの形質導入効率を示すグラフである。
【
図9】
図9は、本発明の1つの例示的な実施形態による、送達効率および細胞生存率に対する、T4ヘッド粒子とLPF2K濃度との最適比率を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本発明の1つの例示的な実施形態による、送達効率および細胞生存率に対する、T4ヘッド粒子とLPF2K濃度との最適比率を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の1つの例示的な実施形態による、様々なDNAとT4との比率でのT4-AVについての、パッケージングされたVRC01プラスミドの定量化を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の1つの例示的な実施形態による、形質導入された細胞によって分泌されたVRCO1抗体量の定量化を示すグラフである。
【
図13】
図13は、本発明の1つの例示的な実施形態による、様々なDNAとT4との比率でのT4-AVについての、パッケージングされたVRC01プラスミドおよびCH58プラスミドの定量化を示すグラフである。
【
図14】
図14は、本発明の1つの例示的な実施形態による、形質導入された細胞により分泌されるVRCO1抗体およびCH58抗体の量の定量化を示すグラフである。
【
図15】
図15は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4-AVおよびAAVの形質導入効率の比較を示すグラフである。
【
図16】
図16は、本発明の1つの例示的な実施形態による、ルシフェラーゼ発現と様々な化合物の存在との比較を示すグラフである。
【
図17】
図17は、本発明の1つの例示的な実施形態による、GFP発現と様々な化合物の存在との比較を示すグラフである。
【
図18】
図18は、本発明の1つの例示的な実施形態による、TBA治療を用いたT4-AV送達の増強を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4-AVにより運搬されるタンパク質およびDNAカーゴの位置を示す概略図である。
【
図20】
図20は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4キャプシド上でのβ-Gal-Socの提示(ディスプレイ)を示す図である。
【
図21】
図21は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4キャプシド上でのCre-Hocの提示を示す図である。
【
図22】
図22は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4キャプシド上での様々なSoc融合タンパク質およびHoc融合タンパク質の提示を示す図である。
【
図23】
図23は、本発明の1つの例示的な実施形態による、様々なDNAとT4との比率でのT4-AVについての、パッケージングされたmCherryレポータープラスミドの定量化を示す図である。
【
図24】
図24は、本発明の1つの例示的な実施形態による、GFPタンパク質の細胞内移行およびmCherry DNAの発現を示す図である。
【
図25】
図25は、本発明の1つの例示的な実施形態による、処理後3時間でのGFPタンパク質の細胞内移行を示す図である。
【
図26】
図26は、本発明の1つの例示的な実施形態による、mCherry DNAの発現を示す図である。
【
図27】
図27は、本発明の1つの例示的な実施形態による、β-ガラクトシダーゼ酵素活性およびGFP発現を示す図である。
【
図28】
図28は、本発明の1つの例示的な実施形態による、様々な提示されたタンパク質を使用したT4-AV送達の比較を示すグラフである。
【
図29】
図29は、本発明の1つの例示的な実施形態による、キャプシドあたりのTATの様々なコピー数および様々なMOIでのTATが提示されたT4-AVの形質導入を示す図である。
【
図30】
図30は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Soc-TAT修飾(decoration)を有する293細胞へのT4(GFP)-AVの送達効率の増加を示す図である。
【
図31】
図31は、本発明の1つの例示的な実施形態による、インテグリン結合RGDモチーフが提示されたT4-AVによる形質導入の増強を示すグラフである。
【
図32】
図32は、本発明の1つの例示的な実施形態による、NLS-Cas9およびNLS-Cas9-Socの発現および精製を示す概略図である。
【
図33】
図33は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4キャプシド上に提示されたCas9-Soc(配列番号16)の定量化を示す図である。
【
図34】
図34は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4-AVについてのパッケージングされたgRNAの定量化を示す図である。
【
図35】
図35は、本発明の1つの例示的な実施形態による、増強されたGFPレポーター発現を示す顕微鏡画像である。
【
図36】
図36は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cas9-gRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体の形成を示す図である。
【
図37】
図37は、本発明の1つの例示的な実施形態による、標的DNAのgRNA指向性切断を示す図である。
【
図38】
図38は、本発明の1つの例示的な実施形態による、内因性AAVS1遺伝子座の破壊を示す図である。
【
図39】
図39は、本発明の1つの例示的な実施形態による、ゲノム編集の効率を示すグラフである。
【
図40】
図40は、本発明の1つの例示的な実施形態による、ゲノム編集AVを示す概略図である。
【
図41】
図41は、本発明の1つの例示的な実施形態による、キャプシドを修飾するゲノム編集複合体の存在を示すEM写真である。
【
図42】
図42は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(GFP)-Soc-Cas9キャプシドへのgRNAの結合が、Soc結合部位に対するgRNA分子の比率の増大とともに増加することを示す図である。
【
図43】
図43は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Soc結合部位に対するCas9-Soc分子の比率を増加させることによる、gRNAのT4(GFP)-Soc-Cas9への結合が増加することを示す図である。
【
図44】
図44は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4上でのCas9-Socの提示に対する、T4(GFP)-Soc-Cas9へのgRNAの結合の影響を示すグラフである。
【
図45】
図45は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(Luci)-AVまたはT4(Luci)-Soc-Cas9-gRNA-AVで処理された細胞における、gRNA結合率を増加させたときのルシフェラーゼ活性の比較を示すグラフである。
【
図46】
図46は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(GFP)-Soc-Cas9-AVまたはT4(GFP)-Soc-Cas9-gRNA-AVで処理された細胞の代表的な蛍光画像を示す図である。
【
図47】
図47は、本発明の1つの例示的な実施形態による、AVナノ粒子の様々な比率で細胞に送達されたRNP-AVによるAAVS1遺伝子座でのゲノム編集を示すグラフである。
【
図48】
図48は、本発明の1つの例示的な実施形態による、様々な構成でT4-AVを使用したAAVS1のインデル効率の比較を示すグラフである。
【
図49】
図49は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(GFP)-Soc-Cas9-HBBgRNA-AVにより媒介されるHBB遺伝子の破壊を示す図である。
【
図50】
図50は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4-AVによるヒトゲノム上の2つの標的部位での同時ゲノム編集を示すグラフである。
【
図51】
図51は、本発明の1つの例示的な実施形態による、AAVS1遺伝子座でのAV媒介ゲノム編集および相同組換えの設計を示す概略図である。
【
図52】
図52は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4-AVについてのパッケージングされたピューロマイシンプラスミドDNAの定量化を示す図である。
【
図53】
図53は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(Puro-donor)-Soc-Cas9-gRNA-AVを用いて形質導入した後のピューロマイシン耐性単一細胞クローンについてのPCRアッセイを示す図である。
【
図54】
図54は、本発明の1つの例示的な実施形態による、各クローンにおける標的部位でのピューロマイシンドナー挿入の存在を確認するPCRアンプリコンのDNAシーケンシングを示す図である。
【
図55】
図55は、本発明の1つの例示的な実施形態による、標的化された挿入を検出するためのPCR増幅プライマーセットの位置を示す概略図である。
【
図56】
図56は、本発明の1つの例示的な実施形態による、増幅された配列の検出を示す図である。
【
図57】
図57は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cre-Hoc-T4(LSL-GFP + mCherry)-Soc-Cas9-gRNA-AVの送達による部位特異的組換えを示す概略図である。
【
図58】
図58は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cre-Hoc発現カセットを示す概略図である。
【
図59】
図59は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cre-Hocタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを示すグラフである。
【
図60】
図60は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cre-Hocの部位特異的組換え活性を示す図である。
【
図61】
図61は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cas9-SocとCre-Hocとの共提示(co-display)を示す図である。
【
図62】
図62は、本発明の1つの例示的な実施形態による、同じキャプシド上のCas9-gRNA RNPの結合に対するCre-Hoc結合の影響を示すグラフである。
【
図63】
図63は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4-AVについてのパッケージングされたLSL-GFPプラスミドDNAの定量化を示す図である。
【
図64】
図64は、本発明の1つの例示的な実施形態による、LSL-GFPとmCherry DNAとの共送達および共発現を示す図である。
【
図65】
図65は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cre-Hoc提示比率を増加させたときのCre-Hoc-T4(LSL-GFP)-Soc-Cas9-gRNA-AVを用いて293細胞へ形質導入した後の代表的なGFP発現画像を示す図である。
【
図66】
図66は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cre-Hoc-T4(Luci)-Soc-Cas9-gRNA-AVのCreレポーター細胞への送達を示す概略図である。
【
図67】
図67は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Creレポーター細胞におけるAV媒介の効率的な部位特異的組換えを示す図である。
【
図68】
図68は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Cre-Hocの提示比率を増加させたときのCre-Hoc-T4(Luci)-RNP-AVで処理した細胞のルシフェラーゼ活性およびAAVS1インデル頻度を示すグラフである。
【
図69】
図69は、本発明の1つの例示的な実施形態による、gRNA/siRNA:Cas9-Soc結合の化学量論を示す図である。
【
図70】
図70は、本発明の1つの例示的な実施形態による、siRNAおよびmRNAのペイロード(payload)を担持するT4-AVを示す概略図である。
【
図71】
図71は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Soc結合部位に対するsiRNA分子の比率を増加させたときの、T4(gRNA-GFP)-Soc-Cas9キャプシドへのsiRNAの結合を示す図である。
【
図72】
図72は、本発明の1つの例示的な実施形態による、AV送達効率についてのsiRNAとT4(Luci)-Soc-Cas9との比率の効果を示すグラフである。
【
図73】
図73は、本発明の1つの例示的な実施形態による、GFPsiRNA-AVで処理した293細胞におけるGFP発現のサイレンシングを示す図である。
【
図74】
図74は、本発明の1つの例示的な実施形態による、形質導入後48時間および72時間でのGFPsiRNA-AVによるGFPタンパク質レベルの定量化を示すグラフである。
【
図75】
図75は、本発明の1つの例示的な実施形態による、提示されたsiRNA量がGFP遺伝子のサイレンシング効率に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図76】
図76は、本発明の1つの例示的な実施形態による、2つのsiRNAを同じAVに組み込むことによって2つの部位での同時遺伝子サイレンシングを示すグラフである。
【
図77】
図77は、本発明の1つの例示的な実施形態による、Soc結合部位に対するmRNA分子の比率を増加させたときのT4(mCherry)-Soc-Cas9キャプシドへのGFP mRNAのローディングを示す図である。
【
図78】
図78は、本発明の1つの例示的な実施形態による、mRNAに対するCas9-Soc分子の比率を増加させたときの、Cas9-Socタンパク質へのmRNAの結合を示す図である。
【
図79】
図79は、本発明の1つの例示的な実施形態による、同じ細胞におけるAVがパッケージングされたmCherryプラスミドDNAおよびAVが提示されたGFP mRNAの遺伝子発現の共局在を示す図である。
【
図80】
図80は、本発明の1つの例示的な実施形態による、対照としてのAV(mCherry)の送達および発現を示す図である。
【
図81】
図81は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(Luci)-Soc-Cas9-mRNA-AVの共送達効率に対する提示されたmRNAの量の影響を示すグラフである。
【
図82】
図82は、本発明の1つの例示的な実施形態による、様々なT4-AVについてのパッケージングされたgRNA発現プラスミドの定量化を示す図である。
【
図83】
図83は、本発明の1つの例示的な実施形態による、gRNAによるCas9-siRNA複合体における結合したsiRNAの置換を示す図である。
【
図84】
図84は、本発明の1つの例示的な実施形態による、soc結合部位に対するsiRNA分子の比率を増加させたときの、T4(AAVS1gRNA-GFP)-Soc-Cas9-siRNA-AVで処理した細胞のAAVS1インデル頻度の定量化を示すグラフである。
【
図85】
図85は、本発明の1つの例示的な実施形態による、キャプシド提示されたCas9に対するmRNA分子の比率を増加させたときの、T4(AAVS1gRNA-mCherry)-Soc-Cas9-GFPmRNA-AVによるAAVS1遺伝子座でのゲノム編集を示すグラフである。
【
図86】
図86は、本発明の1つの例示的な実施形態による、CRISPR操作されたT4-AVを使用したプログラム可能な誘導輸送システム(GIS)を示す概略図である。
【
図87】
図87は、本発明の1つの例示的な実施形態による、CRISPR媒介CLN遺伝子の挿入を示す概略図である。
【
図88】
図88は、本発明の1つの例示的な実施形態による、CRISPR媒介T4ゲノム編集を示す図である。
【
図89】
図89は、本発明の1つの例示的な実施形態による、サイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを示すグラフである。
【
図90】
図90は、本発明の1つの例示的な実施形態による、ヘッドがパッケージングされたCLNタンパク質の発現を示す図である。
【
図91】
図91は、本発明の1つの例示的な実施形態による、CLNタンパク質およびT4(CLN)ヘッドの機能的特性を示す図である。
【
図92】
図92は、本発明の1つの例示的な実施形態による、細胞に対するAVの様々な比率でのT4(CLN)-GIS-AVによる増強されたlacoルシフェラーゼDNAの送達を示すグラフである。
【
図93】
図93は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(CLN)-GIS-AVによる増強されたゲノム編集を示すグラフである。
【
図94】
図94は、本発明の1つの例示的な実施形態による、GFPがパッケージングされたAVの生化学的な特徴付けを示す図である。
【
図95】
図95は、本発明の1つの例示的な実施形態による、CreがパッケージングされたAVの生化学的な特徴付けを示す図である。
【
図96】
図96は、本発明の1つの例示的な実施形態による、機能的なβ-ガラクトシダーゼ四量体の形成を示すグラフである。
【
図97】
図97は、本発明の1つの例示的な実施形態による、T4(GFP)キャプシドのサイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを示すグラフである。
【
図98】
図98は、本発明の1つの例示的な実施形態による、「緑色蛍光ファージ」の蛍光画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
(定義)
用語の定義が一般的に使用される用語の意味から逸脱する場合、出願人は、特に示されない限り、以下に提供される定義を利用することを企図する。
【0012】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、特許請求される主題が属するものとして一般に理解されているものと同じ意味を有する。ここに複数の用語の定義がある場合は、このセクションの定義が優先される。本明細書で参照されるすべての特許、特許出願、刊行物および公開されたヌクレオチドおよびアミノ酸配列(例えば、GenBankまたは他のデータベースで入手可能な配列)は、参照により本明細書に組み込まれる。URLまたはその他のそのような識別子またはアドレスを参照する場合、そのような識別子は変更される可能性があり、インターネット上の特定の情報は行き来する可能性があるが、インターネットを検索することで同等の情報を見つけることができることが理解される。それへの言及は、そのような情報の利用可能性と一般への普及を証明する。
【0013】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示および説明のためだけのものであり、特許請求される主題を限定するものではないことを理解されたい。本出願において、単数形の使用は、特に断りのない限り、複数形を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本出願において、「または(or)」の使用は、別段の記載がない限り、「および(and)/または(or)」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0014】
本開示の目的のために、「含む(comprising)」という用語、「有する(having)」という用語、「含む(including)」という用語、およびこれらの単語のバリエーションは、制限のないものであり、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0015】
本開示の目的のために、「上(top)」、「下(bottom)」、「上(upper)」、「下(lower)」、「上(above)」、「下(below)」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」、「上(up)」、「下(down)」などの方向用語は、本開示の様々な実施形態を説明する際に単に便宜上使用される。本開示の実施形態は、様々な方法で方向付けることができる。例えば、図面に示されているダイアグラム、装置などは、ひっくり返したり、任意の方向に90度回転させたり、反転させたりすることができる。
【0016】
本開示の目的のために、値が、その値、特性、またはその他の要素を使用して数学的計算または論理的決定を実行することによって導出された場合、該値または特性は、特定の値、特性、条件の充足、または他の要因に「基づく」ものである。
【0017】
本開示の目的のために、より簡潔な説明を提供するために、本明細書で与えられる量的表現のいくつかは「約」という用語で修飾されていないことに留意されたい。「約」という用語が明示的に使用されているかどうかにかかわらず、本明細書で与えられるすべての量は、実際に与えられた値を指すことを意味し、それに基づいて合理的に推論されるそのような与えられた値の近似値を指すことも意図されていることが理解される。これには、そのような与えられた値の実験および/または測定条件による近似が含まれる。
【0018】
本発明の目的のために、「細菌ウイルス」、「バクテリオファージ」、および「ファージ」という用語は互換的に使用される。これらの用語は、細菌に感染し得るウイルスまたはウイルス粒子を指す。
【0019】
本発明の目的のために、「キャプシド」という用語および「キャプシドシェル」という用語は、タンパク質のいくつかの構造サブユニットを含むウイルスのタンパク質シェルを指す。キャプシドは、ウイルスの核酸コアを囲んでいる。
【0020】
本発明の目的のために、用語「ベクター」、「ビヒクル」、および「ナノ粒子」は交換可能に使用される。これらの用語は、遺伝子またはタンパク質の送達に使用し得るウイルスまたはハイブリッドウイルス粒子を指す。
【0021】
本発明の目的のために、「結合する(bind)」という用語、「結合する(binding)」という用語、および「結合する(bound)」という用語は、任意の種類の化学的または物理的結合を指し、限定されないが、共有結合、水素結合、静電結合、生物学的テザー(biological tether)、膜貫通付着(transmembrane attachment)、細胞表面付着および発現が挙げられる。
【0022】
発明の目的のために、「核酸」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAが挙げられる。核酸分子を形成する核酸塩基は、塩基A、C、G、TおよびU、ならびにそれらの誘導体であり得る。これらの塩基の誘導体は、当技術分野で周知である。この用語は、等価物として、ヌクレオチド類似体から作製されたDNAまたはRNAのいずれかの類似体を含むと理解されるべきである。この用語はまた、線状および環状DNAの両方を含むと理解されるべきである。本明細書で使用される用語はまた、例えば、逆転写酵素の作用によってRNA鋳型から生成された相補的またはコピーDNAであるcDNAを包含する。
【0023】
本発明の目的のために、「ネックタンパク質(neck protein)」という用語および「テールタンパク質(tail protein)」という用語は、ウイルス粒子、特にバクテリオファージのネックまたはテールの任意の部分の集合に関与するタンパク質を指す。テール(尾)のあるバクテリオファージはカウドウイルス目(Caudovirales)に属し、3つのファミリーが含まれる。サイフォウイルス科(Siphoviridae)は長く柔軟な尾を持ち、尾のあるウイルスの大部分を構成する。マイオウイルス科(Myoviridae)は長く硬い尾を持ち、ファージが細菌宿主に付着すると収縮する尾鞘によって完全に特徴付けられる。尾のあるウイルスの最小のファミリーは、ポドウイルス(podoviruses)(短い足のような尾を持つファージ)である。例えば、T4バクテリオファージでは、gp10がgp11と結合してベースプレートのテール-ピンを形成する。テールピンアセンブリは、テールアセンブリの最初のステップである。バクテリオファージT4の尾部は、硬いチューブを取り囲み、ファージの長短の尾部繊維が付着している多タンパク質ベースプレートで終わる収縮性シースで構成されている。ヘッド(頭部)がDNAでパッケージ化されると、gp13、gp14、およびgp15タンパク質が、パッケージ化されたヘッドをシールするネックに集合する。gp13タンパク質は、DNAパッケージングに続いてポータルタンパク質gp20と直接相互作用し、gp14およびgp15は、gp13プラットフォーム上で組み立てられる。T4バクテリオファージのネックおよびテールタンパク質には、限定されないが、タンパク質gp6、gp25、gp53、gp8、gp10、gp11、gp7、gp29、gp27、gp5、gp28、gp12、gp9、gp48、gp54、gp3、gp18、gp19、gp13、gp14、gp15、およびgp63が挙げられる。
【0024】
本発明の目的のために、「MOI」という用語および「感染多重度(multiplicity of infection)」という用語は、病原体(例えば、ファージまたはより一般的にはウイルス、細菌)と感染標的(例えば、細胞)との比率を指す。本開示において、これらの用語は、感染したヒト細胞に対する「人工ウイルス」(AV)粒子の比率を指す。
【0025】
本発明の目的のために、「RNP」という用語および「リボ核タンパク質」という用語は、リボ核酸およびRNA結合タンパク質の複合体(例えば、Cas9タンパク質およびRNAの複合体)を指す。RNAの例としては、gRNA、mRNA、およびsiRNAが挙げられる。
【0026】
本発明の目的のために、用語「複合体形成量(complexation volume)」は、反応が行われる混合物の総体積を指す。例えば、DNA送達効率に対する複合体形成量の影響を評価する場合、複合体形成量は、T4と脂質混合物の総体積であり、
図6に示すように、10~400μlの範囲であり得る。
【0027】
本発明の目的のために、「複合体形成時間(complexation time)」という用語は、反応が行われる総反応時間を指す。例えば、DNA送達効率に対する複合体形成時間の影響を評価する場合、複合体形成時間は、T4を脂質で被覆するためにT4と脂質を混合する総時間であり、
図7に示すように、5~120分の範囲であり得る。
【0028】
本発明の目的のために、用語「N.S.」および「有意ではない(not significant)」という用語と、「有意ではない(not significantly)」という用語は、2つのデータ群間で実行されたスチューデントのt検定のp値が0.05未満の場合を指す。
【0029】
本発明の目的のために、「ノックダウン」という用語および「サイレンシング」という用語は、特定の遺伝子の発現を防止するための細胞における遺伝子発現の調節を指す。この調節は、転写または翻訳中の遺伝子改変またはその他の処理によって発生する可能性があり、研究でしばしば使用される。
【0030】
(説明)
本発明は、様々な修正および代替形態が可能であるが、その特定の実施形態が、例として図面に示され、以下で詳細に説明される。しかし、開示された特定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、逆に、本発明は、本発明の要旨および範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替物を包含することを理解されたい。
【0031】
ウイルスは、地球上で最も数が多く、広く分布している生命体である。それらはまた、最も効率的な生物学的機械でもある38。HIV、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなど、わずか10,000~30,000ヌクレオチドの遺伝子コードを含むサイズ約100 nmの単一のウイルスが、約37兆個の細胞、それぞれのサイズは100μm以上で、30億以上のヌクレオチドの遺伝コードを持っている、からなる人間を傷つけたり殺したりすることができる。これは、ウイルスが、バクテリアウイルスの場合は数分のオーダーという高速な時間スケールで子孫を複製および組み立てる効率的なメカニズムを進化させたためである11、34。感染ごとに数百から数千の子孫ウイルスが出現し、1回の感染から、数十億から数兆の新しいウイルスが急速に蓄積される。これは、新型コロナウイルスSARS-CoV-259によって引き起こされた現在のような世界的大流行を引き起こす可能性がある。試験管内で「人工ウイルス」(AV)を構築し、治療用分子でプログラムすることによって、効率的なウイルスメカニズムの一部を利用できれば、そのようなウイルスは宿主内で複製する代わりに、人間の健康を回復するための有益なタスクを実行し得る。プログラムされている生体分子に応じて、人工ウイルスは欠陥のある遺伝子を機能的な遺伝子に置き換えたり(遺伝子治療)、治療用分子を製造したり(免疫療法)、がん細胞を殺傷したり(がん治療)することができる29、35、62。しかし、何年にもわたる多くの試みにもかかわらず、人工ウイルスの概念は理論的な可能性にとどまっている。
【0032】
研究者が取った別のアプローチは、ゲノムの一部として治療用DNAまたはRNAの断片を送達できるように、天然のヒトウイルスを操作することである。2種類のウイルス、約10 Kbpサイズの一本鎖RNAゲノムを持つレンチウイルスと、約5 Kbpサイズの一本鎖DNAゲノムを持つアデノ随伴ウイルス(AAV)が広く使用されている14、33。このアプローチは成功しているが、固有の制限がある。これらのウイルスはせいぜい1つまたは2つの治療用遺伝子は送達し得るが、ゲノム編集などの複雑な分子操作に不可欠なタンパク質やタンパク質-核酸複合体などの追加の治療用分子を組み込むことは困難である。ヒト細胞への広範な感染性、既存の免疫、毒性、および宿主ゲノムへのインテグレーションの可能性による安全性の懸念は、深刻な懸念を引き起こす30、61。
【0033】
本開示では、バクテリオファージT4を使用する新しいタイプの人工ウイルスプラットフォームが記載される。T4はミオウイルス科(myoviridae family)に属し、大腸菌に感染し、上記の制限や安全上の懸念はない
31。T4は、感染効率がほぼ100%で、増殖速度が約20分であるため、知られている中で最も効率的なウイルスの1つである
60。
図1は、バクテリオファージT4ベースの人工ウイルスの成分を示す。
図1のパネルAは、ファージT4頭部(キャプシド)の構造モデルを示しており、五量体gp24*(124)の頂点を暗赤色で示す。
図2のパネルBは、カプソマー(六量体)を拡大したもので、主要なキャプシドタンパク質gp23*(104)(濃い緑色)、Soc 三量体(108)(薄緑色)、およびHoc ファイバー(106)(シアン)の配置を示す。
図2のパネルCは、gp20(116)12量体(茶色)および5量体DNAパッケージングモーター gp17(118)(黄色)を示す拡大ポータル頂点を示す。
図2のパネルDは、T4キャプシドの周りに分子ケージ(110)を形成する準三重軸で組み立てられた870個のSoc(108)分子を示す。
図2のパネルEは、カプソマーの中心からの155本のHoc繊維(112)を示す。
図1のパネルFは、負電荷(114)の分布を示すT4キャプシドの表面図を示す。各負電荷を赤色で示す。
【0034】
図1に示すように、930個の分子で組み立てられた大きな120 x 86 nmの扁長二十面体キャプシド (頭部) (122)、または主要キャプシドタンパク質gp23* (104) の930コピーの155個の六量体カプソマー (102) (「*」は切断された成熟フォームを示す)、12個の頂点のうち11個でgp24* (124) の55コピー、または11個の五量体、および固有の12番目の頂点でのポータルタンパク質gp20 (116) の12コピー
5、16、34を含む。
【0035】
図1のパネルBに示されるように、各六量体カプソマーは、Hocタンパク質(106)の1コピー、gp23*の6コピー(104)、および隣接するカプソマーと共有されるSocタンパク質の6コピー(108)を含む。したがって、各T4ヘッドには、155コピーのHocタンパク質 (106)、930コピーのgp23* (104)、および870 コピーのSocタンパク質 (108) が含まれる。
【0036】
図1のパネルCに示されるように、12番目の頂点に付着されているものは、12コピーのポータルタンパク質gp20 (116)、5コピーのモータータンパク質gp17 (118)、および約170KbのDNA (120) が輸送される中央チャネルを含むDNAパッケージング マシン (126) である。ポータルの頂点は、約35Åの中央チャネルを備えたリング構造であり、そこに取り付けられたATPを動力源とする五量体分子モーターによってウイルスゲノムがキャプシドに輸送される
15、50。分子モーターには、モータータンパク質gp17の5つのコピーが含まれている(118)。約170 Kbpの直鎖状dsDNA (120) に相当するヘッドフルゲノムがパッケージ化された後
4、42、モーターが解離し、「ネック」タンパク質が組み立てられ、続いて尾部と尾部の繊維が組み立てられ、感染性ビリオンが生成される
26、60。
【0037】
T4キャプシドの表面には、必須ではない2つのアウターキャプシドタンパク質であるSoc (108) (スモールアウターキャプシドタンパク質) (9.1 kDa; キャプシドあたり870コピー) と、Hoc (106) (高抗原性アウターキャプシドタンパク質) (40.4 kDa; 155コピー)が並んでいる
16、21。Soc (108) は、オタマジャクシの形をした分子であり、準三重軸で三量体として結合する。各 Soc (108) サブユニットは、隣接する2つのカプソマーを留めることによって「分子クランプ」として機能する。
図1のパネルDに示されるように、870個のそのようなクランプは、キャプシドの周りに分子ケージを形成し、結晶密度に近づく密集したDNAのために加圧されたキャプシドを大幅に強化する。その結果、キャプシドは、pH 11などの過酷な条件下でも非常に安定している。一方、Hoc (106) は、各gp23*キャプソマー (102) の中心にC末端ドメインが結合した4つのIg様ドメインのストリングを含む170Åの長さの繊維である。対称的に配置された155本のHoc繊維が、T4頭部から出ている
17。Socとは異なり、Hocはキャプシドにわずかな安定性しか提供しない。その主な機能は、ファージがそのIg様ドメインを介して宿主表面に付着できるようにすることである可能性がある
1。
【0038】
ファージT4が、人工ウイルスを構築するための理想的なプラットフォームである理由は多々ある。実際、この概念は、遺伝子、生化学、および構造解析の約40年にわたって進化した。第1に、安定したキャプシド、1,025個の非必須分子を露出する外面、および最大約170 KbpのDNAを収容できる内部容積を備えたT4ファージの構造は、治療用生体分子を組み込むための大量のカーゴスペースを提供する5、54。第2に、人工ウイルスを構築するためのin vitro操作を可能にするヘッドアセンブリとゲノムパッケージングの遺伝的および生化学的メカニズムに関する蓄積された豊富な知識が存在する9、22、41、47。第3に、T4ナノ粒子を設計するための豊富な情報を提供する、ほとんどすべてのキャプシドおよびパッケージング モーター コンポーネントの原子構造が決定された5、15、17、39、49、50。第4に、一連の研究は、SocとHocが、T4キャプシド表面に外来タンパク質をつなぐ優れたアダプターとして機能することを示した27、47。両方ともナノモルの親和性を持ち、T4キャプシドに対する絶妙な特異性を示し、これは、in vitroアセンブリにとって非常に重要な特性である51、65。強力なDNAパッケージングモーターを使用して、安定した「空になった(emptied)」T4キャプシドに外来DNAを再充填できるシステムが開発された18、63。最後に、CRISPRエンジニアリング戦略が最近開発され、これにより、外来DNA断片をファージゲノムに容易に挿入して、独自の表現型特性を持つ組換えファージを生成することが可能になった44、52、53。
【0039】
これらは、T4ファージを使用した人工ウイルスプラットフォームを設計するための並外れた基盤を提供した。本開示における人工ウイルス設計は、3つの最小限に必須のキャプシドタンパク質gp23*(104)、gp24*(124)、およびgp20(116)のみを含み、DNAと、Soc、Hoc、ネック(首)、テール(尾)、および繊維を含む他のすべての構造コンポーネントを欠く空のキャプシドシェルから開始するアセンブリラインアプローチを採用する。このタンパク質の殻(シェル)を基本的な構成要素(ビルディングブロック)として使用して、カーゴ分子の層が順次プロセスによって組み込まれる。シェルの内側と外側の両方が、タンパク質、DNA、RNA、およびそれらの複合体を含むこれらの分子で満たされている。次に、キャプシドは脂質分子でコーティングされ、これらのウイルス様ナノ粒子の周囲に「エンベロープ」を生成する。このように組み立てられた人工ウイルスは、脂質コート、表面分子、キャプシドシェル、およびパッケージ化された「ゲノム」を備えた天然(ヒト)ウイルスを模倣する。本開示の例示的な実施形態および実施例が示すように、これらの人工ウイルスは、天然ウイルスが細胞への侵入および細胞内の目的の場所への輸送に使用するのと同様の経路を使用すると考えられる。
【0040】
この概念の証拠として、特定の分子操作を実行してヒトゲノムを改造するように指示された一連の人工ウイルスのアセンブリが、本開示で実証される。これらには、ゲノム編集、遺伝子組換え、遺伝子置換、遺伝子発現、および遺伝子サイレンシングが含まれる。例えば、ある構成では、人工ウイルスが5つの異なるコンポーネント;Cas9ゲノム編集ヌクレアーゼ、Creリコンビナーゼ、2つのgRNA、ドナー、およびレポータープラスミド、でプログラムされている。これらのAVは、エンドサイトーシスによってヒト細胞に入り、サイトゾルにペイロード分子を送達し、適切な細胞内位置に到達すると、ヒトゲノムの異なる部位でゲノム編集と部位特異的組換えを実行した。このような大容量、オールインワン、マルチプレックス、プログラム可能、およびファージベースの人工ウイルスは、将来のヒトの治療法と個別化医療を潜在的に変革する可能性のあるナノマテリアルの新しいカテゴリーを表す48。
【0041】
(ファージT4人工ウイルスのアセンブリ)
一実施形態では、人工ウイルスは、
図2に示されるように、ウイルス構造模倣体を生成するために、精製された生体材料を連続的に組み込むことによって組み立てられる。ネックとテールがマイナスのT4ファージ変異体に感染した大腸菌
63から単離された空のキャプシドシェル (202) から開始して、(単量体)モータータンパク質gp17(206)を反応混合物に添加するだけで、五量体パッケージングモーター (208) がポータルの頂点に組み立てられた。次いで、キャプシド内部は、線状化されたプラスミドDNAおよびATPをアセンブリ反応に添加することによって、外来DNAで満たされる(
図2のa、b)
50。T4パッケージングモーター(208)は、DNA(204)を捕捉し、DNAを一方の端から他方の端まで連続的にキャプシドに移動させる。これは何度も繰り返されるため、ヘッドがいっぱいになる(ヘッドフルパッケージング)まで一連のDNA分子が連続的にパッケージングされる
25、56。その結果、複数のプラスミドの複数のコピーが約170 Kbp容量のT4ヘッド内にパッケージ化される
63。手順b後のDNAが充填されたT4ヘッド(210)を
図2に示す。モーターは配列特異性を示さないため、パッケージ化された「ゲノム」の組成は、アセンブリ反応に提示されたものと同じになる。
【0042】
次いで、キャプシドの外側を、Soc-(212)および/またはHoc-融合タンパク質(216)分子と、これらのタンパク質を同じ反応混合物に添加することによって配置させた(
図2のc、d)。Soc融合タンパク質(212)は、Socタンパク質またはSocリボ核タンパク質(RNP)であり得る。Hoc融合タンパク質(216)は、Hocタンパク質結合体である。結合部位に対する分子の比率が約20:1の場合、完全な占有率、つまりキャプシドあたり最大870個のSoc- (212) および155個のHoc-融合タンパク質 (216) を達成できる
5、51.それぞれ工程cおよびd後の、Soc(212)および/またはHoc融合タンパク質(216)分子でコーティングされた粒子 (214および218) を
図2に示す。次いで、粒子をカチオン性脂質分子でコーティングし(220)(
図2のe)、最終的な人工ウイルス粒子(222)をもたらす。
【0043】
T4キャプシドは高密度の負電荷を有するので、
図1のパネルFに示されるように、キャプシド当たり約8,700である
5、45。カチオン性脂質は、静電相互作用を介してT4キャプシド上に自発的に集合する。一実施形態では、カチオン性脂質がT4キャプシドに添加されると、広範な脂質結合が起こる。
図3は、T4キャプシド(302)を取り囲む脂質(304)を示す顕微鏡写真を含む。
図3に示すように、ネガティブEM写真(306)は、T4キャプシド(302)の周りの脂質である拡散染色(diffused stain)(304)を示す。フルオロフォアで標識すると、これらの「エンベロープ」粒子 (黄色、Alexa Fluor 594フルオロフォアとNBDフルオロフォアを組み合わせた後) (312) は、T4キャプシド標識Alexa Fluor 594フルオロフォア (赤色) (308)と脂質-標識されたNBDフルオロフォア (緑) (310)の共局在化を示す。このように組み立てられたT4-AVナノ粒子は、脂質コート、表面露出分子(surface-exposed molecule)、キャプシドシェル、およびパッケージ化された「ゲノム」を備えた自然にエンベロープされたウイルスの基本構造を有する。
【0044】
(T4人工ウイルスは遺伝子ペイロードをヒト細胞に効率的に送達する)
正に荷電した脂質コートのおかげで、T4-AVは、ヒト細胞の負に荷電した親油性表面に効率的に結合し、効率的な侵入を可能にする。いくつかのカチオン性脂質および細胞透過性ペプチドは、そのような特性を示すことが十分に実証されている19、66。実際、本開示における一連の実施形態は、脂質でコーティングされたT4-AVが遺伝子ペイロードをヒト細胞に効率的に送達したことを実証した。
【0045】
一実施形態において、2つの異なるプラスミドと共にパッケージングされた場合、キャプシド当たりGFPレポータープラスミド(5.4 Kbp)およびルシフェラーゼプラスミド(Luci、6.3 Kbp)のそれぞれ平均約5分子である場合、これらのAVは両方のレポータープラスミドを、ほぼ100%の効率でヒト胎児腎臓 HEK293T(293)細胞に形質導入した。
【0046】
図4は、本開示に記載のT4-AVについてのパッケージングされたGFPおよびルシフェラーゼDNAの定量化を示す。
図4に示すように、線状化されたDNAは、パネルの上部に示されているように、DNA対キャプシドの比率を増加させながらT4とインキュベートされる。赤い矢印は、パッケージ化されたGFP (408) およびアガロースゲル電気泳動で分析した、ルシフェラーゼDNAバンド (410) の位置を示す。
図4の上部パネル(402)は、アガロースゲル電気泳動のパッケージされたGFP DNAバンドを示す。
図4の中部パネル(404)は、アガロースゲル電気泳動のパッケージされたルシフェラーゼDNAバンドを示す。
図4下部パネル(406)は、アガロースゲル電気泳動のパッケージされたGFPおよびルシフェラーゼDNAバンドの両方を示す。最大パッケージング容量は、15~20:1の比率で達成される。
【0047】
図5は、10
3、10
4、および10
5のMOIで、T4(GFP)-AVによるパッケージ化されたDNAの293細胞への効率的な送達を示す。送達されたT4(GFP)-AVは、
図5の左欄(502)に示されているように、GFP発現によって決定される。
図5の中欄(504)に示すように、細胞核をヘキストで染色し可視化する。
図5の右欄(506)は、送達されたT4(GFP)-AVと細胞核との共局在を示し、T4(GFP)-AVの効率的な送達を示している。さらに、
図5の上の行(508)は、10
3のMOIでのT4(GFP)-AVの送達を示す。
図5の中央の行(510)は、10
4のMOIでのT4(GFP)-AVの送達を示す。
図5の下の行(512)は、10
5のMOIでのT4(GFP)-AVの送達を示している。
【0048】
図6および7は、ルシフェラーゼ活性によって決定された、DNA送達効率に対するT4および脂質複合体形成量および時間の効果を示す。ルシフェラーゼ活性は相対発光単位(Relative Luminescence Unit)で測定される。
図6に示すように、相対発光単位は複合体形成量の影響を受け、複合体形成量が100μlで最大になる。
図7に示すように、相対発光単位も複合化時間の影響を受け、複合化時間10分で最大になる。
図8は、LPF2K-AV(808)、LPFRNAiMAX-AV(810)、LPF3K-AV(812)、LPFLTX-AV(814)、LPFStem-AV(816)、EXPI-AV (818)、およびFECT-AV (820)を含む、異なるカチオン性脂質でコーティングされたAVの形質導入効率を示す。細胞対照(802)、「ネイキッド」T4 (Luci) キャプシド (804)、および脂質を含まないカチオン性 T4 (Luci) キャプシド (T4 (Luci)-TAT) (806) は比較のために使用する。
【0049】
最適な条件下(複合体容量は100μl、複合体形成時間は10分)では、カチオン性脂質コート (808~820) を持つキャプシドのルシフェラーゼ活性は、カチオン性脂質コートを欠く「ネイキッド」キャプシド (804) よりも約10
5倍高く、カチオン性であるが脂質を欠いたキャプシドよりも約10
2倍高い (806)。後者のキャプシド (806) は、カチオン性細胞透過ペプチド、HIV-TAT (NGYGRKKRRQRRRG)55 を提示することによって調製される。
図8に示すように、LPF2KとLPFRNAiMAXが最高の形質導入効率を示したが、さまざまなカチオン性脂質で大きな違いは観察されなかった。比較的少量の脂質でキャプシドを覆うのに十分であり、有意な細胞毒性は観察されなかった。
図9は、発光活性および細胞生存率によって示される、送達効率に対する、T4ヘッド粒子対LPF2K濃度の最適比を示す。発光活性 (ヒストグラム) と細胞生存率アッセイ (青線) は、形質導入後48時間で実行される。培養中の生存細胞数の定量化は、発光細胞生存率アッセイによって決定されるように、代謝的に活性な細胞の存在を知らせるATP存在の決定に基づいている。生存率は、未処理の対照と比較して計算される。
図9に示すように、送達効率はT4へッド粒子対LPF2K濃度の比率と共に増加するが、細胞生存率は、試験したT4ヘッド粒子対LPF2K濃度のすべての比率で約100%のままである。
図10は、2×10
10 T4(Luci)との複合体形成のためのLPF2K量の最適化(ヒストグラム)および相対細胞生存率(Relative Cell Viability)(青線)を示す。
図10に示すように、LPF2K量が2.5μlを超えない場合、細胞生存率は約100%のままであるが、LPF2K量が2.5μlを超える場合、LPF2K量の増加とともに減少する一方で、LPF2K量とともに複合体形成が増加する。
【0050】
一実施形態では、HIV-1
64に対する強力な広範囲中和抗体であるVRC01抗体の重(H)鎖プラスミドおよび軽(L)鎖プラスミドである2つの治療関連発現プラスミドがパッケージされたAVが組み立てられる。したがって、これらのAVは、1つ以上のプラスミドを共送達できる。
図11は、アガロースゲル電気泳動によって分析された、異なるDNA対T4比でのT4-AVについてのパッケージングされたVRC01プラスミドの定量化を示す。線状化されたDNAは、パネルの上部に示されるように、DNAとキャプシドの比率を上げながらT4とインキュベートされる。
図11に示すように、充填され分析されたDNAは、VRC01重鎖のみ、VRC01軽鎖のみ、VRC01重鎖と軽鎖を1つの分子として、VRC01重鎖と軽鎖を別の分子として、ただし1つのT4-Av粒子に充填されている。最大パッケージング容量は、15~20:1の比率で達成される。したがって、キャプシドあたり平均10~12分子のHおよびLプラスミドがパッケージ化される。
図12は、形質導入された細胞によって分泌されるVRCO1抗体の量の定量化を示す。HIV gp120エンベロープタンパク質特異的ELISAを実施して、T4-AV形質導入の48時間後に293細胞によって分泌されるVRCO1抗体の量を定量化する。挿入図 (1202) は、VRCO1重鎖H (青矢印)、軽鎖L (赤矢印)、H+L鎖、およびH-L単鎖 (緑矢印)のパッケージングを示す。
図12に示すように、これらのVRC01-AVは、機能的な免疫グロブリン(Ig)分子が高レベル(約4.5 mg /リットル)で分泌されることから明らかなように、H鎖とL鎖を効率的に共形質導入および共発現する。これらのレベルは、H鎖とL鎖が脂質コートを欠くカチオンのみ (TAT 表示) のAVによって送達される場合よりも、約20倍高くなる。
図12では、脂質コートを欠くウイルス粒子に感染した形質導入細胞によって分泌されるVRCO1抗体の量が、「細胞対照」、「T4(HL)-HocTSocT」および「T4(H+L)-HocTSocT」と表示された欄に示される。一方、脂質コートを備えたAVで形質導入された細胞のものは、「T4(HL)-AV」、「T4(HL)-SocT-AV」、「T4(H+L)-AV」および「T4(H+L)-SocT-AV」とラベル付けされた欄に示される。カチオン性または親油性のいずれかを欠くネイキッド粒子は、非常に低いレベルの抗体を生成する。
【0051】
別の実施形態では、2つの異なるHIV-1抗体、VRC01およびCH58に属する2つのH鎖および2つのL鎖を含む4つのプラスミドが、同じキャプシドにパックされる。
図13は、アガロースゲル電気泳動によって分析された、異なるDNA対T4比でのT4-AVに対するパッケージングされたVRC01およびCH58プラスミドの定量化を示す。線状化されたDNAは、パネルの上部に示されているように、DNAとキャプシドの比率を上げながらT4とインキュベートされる。
図13では、4つの異なるプラスミドの混合物である約11個の分子が同じキャプシドにパッケージされている。
図14は、形質導入された細胞によって分泌されたVRCO1およびCH58抗体の量の定量化を示す。AV(VRCO1+CH58)形質導入後の293細胞による分泌VRCO1およびCH58抗体産生のELISA力価を決定する。
図14では、これらのAVは、293細胞に同時形質導入された場合、(約3 mg/リットル)およびCH58(約2 mg/リットル)抗体の両方を分泌した。
【0052】
上記の一連のデータは、カチオン性脂質でコーティングされたT4-AVが、ヒト細胞で複数の組換えプラスミドを効率的に同時送達および同時発現し、機能的なIg複合体を組み立てることを示す。ファージベースのプラットフォームであることを考えると、AV送達の効率は非常に高い。
図15は、細胞あたり10
3、10
4、および10
5個のナノ粒子の比率でのルシフェラーゼ活性によって決定される、T4-AVおよびAAVの形質導入効率の直接比較を示す。
図15では、T4-AVは、遺伝子治療に最も効率的で広く使用されているウイルスベクターの1つであるAAVよりもルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現が約10~40倍高かった
33。これは、T4-AVが単一の伝達イベントで遺伝子ペイロードの複数のコピーを提供できるのに対し、AAVやレンチウイルスなどの他のベクターは一度に1つのコピーしか提供できないためである。
【0053】
しかしながら、T4-AVの侵入、コーティング、およびの細胞内輸送に関与するメカニズムは完全には理解されていない。T4-AVが使用する侵入経路と細胞内輸送経路を理解するために、T4(Luci)-AVの細胞内取り込みが、さまざまな阻害剤による処理によって分析される。一実施形態において、細胞は、T4(Luci)-AVへの暴露前に30分間、様々な阻害剤で前処理される。
図16は、異なる化合物の存在下でのルシフェラーゼ発現の比較を示す。スクロースやクロルプロマジン、クラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害剤、メチル-β-シクロデキストリン (M-β-CD)、コレステロール減少剤、およびダイナミン媒介エンドサイトーシス阻害剤であるダイナソールなどの化合物は、AV送達の大幅な減少を引き起こす可能性がある。さらに、
図17に示すように、選択的阻害剤の存在下でのGFP発現も比較する。 GFP発現は送達効率を反映する。
図17では、サイトカラシンDの存在下でのGFP発現のレベルは、薬剤/阻害剤を添加した場合とほぼ同じであるが、クロルプロマジン、M-β-CD、スクロース、およびダイナソールの存在はGFP発現のレベルを低下させる。これは、
図16に示されるルシフェラーゼ発現データと一致する。この証拠は、T4-AVがダイナミンおよびクラスリン依存性エンドサイトーシスを介して取り込まれ、血漿脂質ラフトもおそらく重要な役割を果たしていることを示唆している
12。脂質コートは明らかに、後期エンドソームから細胞質ゾルへのT4-AVの脱出を促進し、そこでコーティングの解除とカーゴの放出が起こった。カチオン性T4-TAT
65のエンドソーム脱出を促進することが知られている化合物であるクロロキンは、カチオン性脂質でコーティングされたT4-AVによる既に非常に効率的な送達をさらに促進しない。さらに、ツバスタチンA (TBA)、微小管を安定化し、サイトゾルから核
3へのDNAの輸送を大幅に促進する微小管結合剤は、AVにパッケージ化されたDNA分子のレポーターシグナルを強化することができる。
図18は、TBAが添加されていない場合(1802)と比較して、TBAの添加量が4μM(1806)、8μM(1804)および16μM(1808)である場合のAVパッケージ化DNA分子のレポーターシグナルの増強を示す。
【0054】
(T4人工ウイルスによる遺伝子とタンパク質の同時送達)
一実施形態では、T4-AVは、遺伝子とともにタンパク質を共送達することができる。一連のAVは、SocまたはHocに融合したタンパク質を表示することによって組み立てられる。
図19は、T4-AVによって運ばれるSoc融合(1902)およびHoc融合タンパク質(1904)およびDNA(1906)カーゴの位置を示す。サイズ、電荷、オリゴマー状態、および機能が異なる一連のタンパク質が組み込まれている。これらを後述の表にまとめる。
【0055】
【0056】
一実施形態において、T4キャプシド上のSocおよびHoc融合タンパク質の提示は、ゲル電気泳動によって分析される。
【0057】
図20および21は、飽和が約15~20:1の比率に達したことを示す異なる比率での結合パターンを示し、これは他の多くのタンパク質を使用して以前に報告されたデータと一致する(図示せず)。
図20は、β-Gal-Soc (2002) および主要キャプシドタンパク質gp23* (2004) の位置を示す。これは、キャプシド粒子あたりの提示されたβ-Gal-Socのコピー数を決定するための内部コントロールとして使用される。
図21は、Cre-Hoc(2102)および主要キャプシドタンパク質gp23*(2104)の位置を示し、これはキャプシド粒子当たりの表示されたCre-Hocのコピー数を決定するための内部対照として使用される。
【0058】
Soc-TAT、GFP-Soc、Cre-Soc(配列番号22)、β-Gal-Soc、Cpf1-Soc、Cas9-Soc(配列番号16)、RGD-Hoc、およびCre-Hocが過剰発現し、精製し、およびSocまたはHoc結合部位に対するタンパク質分子の比率を増加させて、精製されたT4ヘッドとインキュベートした。
図22は、Soc-TAT(2210)、GFP-Soc(2208)、Cre-Soc(2206)、β-Gal-Soc(2204)、Cpf1-Soc(2212)、Cas9-Soc(2214)、RGD-Hoc (2218)、およびCre-Hoc (2216)、ならびにキャプシド粒子あたりの表示タンパク質のコピー数を決定するための内部コントロールとして使用される主要キャプシドタンパク質gp23* (2202)を含む、様々な提示されたタンパク質の位置を示す。
【0059】
一実施形態では、本開示におけるすべてのAVは、表示されたタンパク質およびパッケージ化されたプラスミドを機能的状態で効率的に共送達した。たとえば、293細胞にさらされると、GFP提示されたAVは、最初は細胞表面 (約3時間) で、次に細胞全体 (約20 時間) で強い緑色の蛍光を示す。同じAVもmCherryレポータープラスミドでパッケージ化されている場合、細胞はさらに6時間で赤色蛍光を示し始め、送達されたmCherry遺伝子の発現により、48時間まで増強し続けた。
図23は、T4-AVに対するパッケージ化されたmCherryレポータープラスミド(2302)の定量化、および異なるDNA対T4比でのプラスミドpAAV-mCherry(2304)のパッケージ化されたバックボーンの定量化を示す。線状化されたDNAは、パネルの上部に示されているように、DNAとキャプシドの比率を上げながらT4とインキュベートされる。15~20:1の比率で最大パッケージング容量に達した。
図24は、T4 (mCherry)-Soc-GFP-AVによる送達後の、細胞内に取り込まれたGFPタンパク質(2402)の蛍光およびmCherry(2406)DNAの発現を示す。GFPとmCherryの両方のマージビュー(2404)、ならびに明視野(BF)ビュー(2404)も
図24に示されている。
図25では、Soc-GFP(2502)、Soc-GFP+LPF2K(単純混合物)(2504)、T4-Soc-GFP(2506)、またはT4-Soc-GFP-AV(2508)で処理した3時間後の細胞の代表的な蛍光画像を示す。右側のパネル (2510) は、GFPシグナルと明視野 (BF) のマージされた画像を示しており、提示されたGFPタンパク質がAV形質導入の3時間後に細胞表面に効率的に付着していることを示唆している。
図26は、mCherry発現のみが観察されるT4(mCherry)-AVを使用したmCherry DNA送達を示す。
図26では、GFP発現(対照)(2602)、発現(2604)、GFPとmCherryのマージビュー(2606)、およびBFビュー(2608)が示されている。
【0060】
一実施形態では、
図27および28に示すように、約516 kDaの四量体β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を提示し、LuciまたはGFPレポータープラスミドをパッケージ化したAVで形質導入された細胞は、用量依存的にβ-ガラクトシダーゼ活性およびルシフェラーゼ/GFP活性の両方を示す。
図27は、提示されたSoc-β-ガラクトシダーゼの増加コピー数でのT4(GFP)-Soc-β-Gal-AVによる送達後に試験されたβ-ガラクトシダーゼ酵素活性およびGFP発現を示す。
図27に示されるように、β-ガラクトシダーゼ酵素活性およびGFP発現は、T4キャプシドに対するβ-ガラクトシダーゼタンパク質またはGFPプラスミドのコピーの比率の増加とともに増加する。
【0061】
やや意外なことに、
図28に示すように、Soc-TAT(2806)、GFP-Soc(2808)、Cre-Soc(2810)、β-Gal-Soc(2812)、Cpf1-Soc(2814)(配列番号17)、Cas9-Soc (2816) (配列番号16)、RGD-Hoc (2818) (配列番号19)、及びCre-Hoc (2820) (配列番号18)を含む提示されたタンパク質を有するAVは、対照AV(2804)と比較した場合、ルシフェラーゼ活性によって測定されるように、一般に高められた形質導入効率を示す。これは、おそらく、表示されたタンパク質分子が追加の電荷に寄与し、脂質コーティングおよび/または細胞結合が改善されたためである。この概念と一致して、TAT (2806)、Cas9 (2816)、および Cpf1 (2814) などのより正に帯電したタンパク質は、より大きな増強を示し、TAT-AVは高いコピー数(520コピー) を示し、約3.5倍のTAT の高い正電荷を示す。
図29は、キャプシド当たりのTATの異なるコピー数および細胞当たりのT4-AVナノ粒子の異なる比率でのTAT提示T4-AVの形質導入の増強を表す代表的な蛍光画像を示す。
図30は、Soc-TAT修飾がT4(GFP)-AVの293細胞への送達効率を増加させることを示す。Soc-TAT分子は、T4(GFP)キャプシド上に提示され、Soc-TAT分子とSoc結合部位の比率が増加する(0:1~20:1)。
図30に示されるように、送達効率は、Soc結合部位に対するSoc-TAT分子の比率が増加するにつれて増加する。得られたT4(GFP)-Soc-TAT-AVは、細胞あたり10
5個のT4-AVの比率で細胞に形質導入される。GFP蛍光は、形質導入後20時間で観察される。
【0062】
細胞表面結合リガンドである9-aaジスルフィド拘束RGDペプチド (CDCRGDCFC) (2818および3104) は、Hocファイバーの先端に融合すると、対照AV (T4(Luci)-AV) と比較して、さらに大きな増強を示した (2804 および 3102)。
図28の上部の青い線(2802)は、様々な提示されたタンパク質を有するT4-AV粒子で処理された細胞の細胞生存率が、約100%のままであることを示している。
【0063】
このトリペプチドモチーフ (RGD ペプチド) は、ヒト細胞上に豊富に存在するインテグリン分子に結合することが十分に立証されている
8。さらに、Hoc融合RGD (RGD-Hoc-T4(Luci)-AV) (3104) のルシフェラーゼ活性は、
図31に示すように、Soc-RGDのコピー数はRGD-Hocの8.3倍であるが、Soc融合RGD (RGD-Soc-T4(Luci)-AV) (3106) よりも約5倍高くなっている。長さ約17 nmの柔軟なHocファイバーの先端 (N 末端) に結合した標的リガンドは、キャプシド壁に結合したSoc融合RGDよりもはるかに大きな範囲でインテグリン受容体分子を捕捉できるように思われる。
【0064】
(ゲノム編集人工ウイルス)
遺伝子とタンパク質の組み合わせでAVを「プログラム」する能力を使用して、ヒト細胞で複雑な分子操作を実行でき、これにより数々の治療応用が開かれる7、62。
【0065】
一実施形態では、様々なゲノム編集AVが、すべての編集分子を異なる構成で同じAVに組み込むことによって組み立てられ、以下の表に要約される。
【0066】
【0067】
好ましい実施形態では、それぞれCMVおよびU6プロモーターの制御下にある発現可能なCas9およびgRNA遺伝子を運ぶプラスミドがパッケージ化されたAVが組み立てられる。Cas9配列はコドン最適化されており、そのN末端で核局在化配列 (NLS) PKKKRKV と融合されている (NLS-Cas9)。これにより、サイトゾルで送達されたCas9を核内に輸送して、ゲノム編集を行うことができる。gRNAは、AAVS1セーフハーバー遺伝子座としても知られる、ヒトゲノムの19番染色体上のPPP1R12C遺伝子座を標的としている10。平均して、各キャプシドには、両方の発現カセットを含む8.3 Kbpのプラスミドが7分子パッケージ化されている。
【0068】
別の実施形態では、AVは、精製されたCas9をSocに融合された提示タンパク質(NLS-Cas9-Soc)として組み込むことによって組み立てられ、gRNAはパッケージ化されたプラスミドとして供給される。精製されたNLS-Cas9(
図32のパネルA)およびNLS-Cas9-Soc(
図32のパネルB)は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して得られ、そして
図32に示すように、NLS-Cas9およびNLS-Cas9-Socの精製は、SDS-PAGEにより確認した。
【0069】
図32は、それぞれCas9およびCas9-Socの発現カセットの概略図およびサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示す。SocはCas9のC末端に融合している。Cas9とCas9-Socの両方に、N末端SV40核局在化シグナル (NLS) とC末端Hisタグが含まれている。タンパク質は、T7プロモーターを使用して大腸菌で過剰発現させ、HisTrapアフィニティクロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィーで精製する。精製されたCas9およびCas9-Socは、それぞれの溶出量を使用して決定された分子サイズから明らかなように、単量体として存在する。精製されたタンパク質は、挿入図に示すようにSDS-PAGEで分析した。
【0070】
図33に示すように、アセンブリ混合物がCas9(3302)を1つのSoc結合部位に対して10分子の比率で含む場合、約550分子までのCas9を表面上に提示することができた。
図34に示すように、約10コピーのgRNAプラスミド(3402)がキャプシド内にパッケージされている。
図33はまた、Soc結合部位に対するCas9-Soc分子の割合を増加させたときのT4キャプシド上のCas9-Socの提示を示す。SDSゲル上のCas9-Soc (3302) およびgp23* (3304) バンドの位置が示される。
【0071】
別の実施形態では、第2のGFPレポータープラスミドをこれらのAVの両方にパッケージングして、AV形質導入がほぼ100%の効率であることを確認し、これは本開示におけるすべてのT4-AV研究のベンチマークであり、
図35に示す通りである。
図35に示すように、蛍光顕微鏡画像は、提示されたCas9のコピー数の増加に伴うGFPレポーター発現の増強を示す。
【0072】
さらに、
図36および37に示すように、一連の生化学的アッセイを行って、Cas9およびgRNAが完全な機能性、すなわちCas9-gRNAリボ核タンパク質 (RNP) 複合体の形成、および標的DNAのgRNAによる切断を示したことを確認する。ゲル遅延度アッセイによって決定された、AAVS1 gRNA1またはgRNA2へのCas9およびCas9-Socの結合試験。
図37に示すように、Cas9(3702および3706)およびCas9-Soc(3704および3708)は、特定のgRNA標的部位で同程度のレベルのDNA切断活性を示した。これらのAVは、293細胞に形質導入されると、標的のAAVS1遺伝子座に二本鎖切断を導入することによってゲノム編集を実行し、続いて非相同末端結合 (NHEJ) によって修復され、標的部位に短い挿入と欠失 (インデル) が生成し(
図38に示すようにT7エンドヌクレアーゼI(T7EI)によって決定される)、およびDNA配列決定によって確認された(データ未掲載)。
図38は、Cas9タンパク質およびgRNA発現プラスミドDNAのAV媒介送達後の内因性AAVS1遺伝子座の破壊を示す。インデル変異は、形質導入の3日後にT7E1アッセイによって検出される。
図39は、50コピー(3902)、180コピー(3904)、280コピー(3906)および460コピー(3908)を含む様々なコピー数のCas9で提示されたT4-AVのAAVS1インデル効率を示す。T4キャプシドあたりのCas9コピー数が約280 (3906) の場合、ゲノム編集の最適な効率は約12~15%である。
【0073】
別の実施形態では、
図40に示されるように、AVは、予め形成されたリボ核タンパク質(RNP)複合体としてSoc(4006)に融合されたCas9(4002)およびgRNA(4004)を組み込むことによって組み立てられる。
図41に示されるように、ネガティブEMは、キャプシド(4102)を修飾するゲノム編集複合体の存在を示した。約210 kDaのCas9-gRNA RNP複合体の約280コピーが、Socを介してキャプシド上に提示される。
図42に示すように、T4(GFP)-Soc-Cas9キャプシドへのgRNA(4204)の結合は、Soc結合部位に対するgRNA分子の比率の増加とともに増加するが、GFP(4202)の量はすべての比率で一定のままである。
図43に示すように、T4(GFP)-Soc-Cas9へのgRNA(4304)の結合は、Soc結合部位に対するCas9-Soc分子の比率を増加させることによって増加するが、GFP(4302)の量はすべての比率で一定のままである。
図44は、T4(GFP)-Soc-Cas9へのgRNAの結合がT4上のCas9-Socの提示に影響を及ぼさなかったことを示している。これは、相対的なCas9-Soc提示が、gRNAとT4(GFP)-Soc-Cas9の比率のすべてにおいて有意に変化しないためである(N.S.)。
【0074】
別の実施形態では、追加の約7分子のCas9-gRNA発現プラスミドが同じAVにパッケージ化される。
【0075】
上記の実施形態では、GFPまたはLuciレポータープラスミドのいずれかもパッケージングされて、ほぼ100%の形質導入効率を確認する。
図45は、T4(Luci)-AVまたはT4(Luci)-Soc-Cas9-gRNA-AVで処理した細胞における、増加するgRNA結合比(0:1~4:1)でのルシフェラーゼ活性の比較を示す。T4(Luci)-Soc-Cas9-gRNA-AV送達のルシフェラーゼ活性は、T4(Luci)-AVに対して正規化され、倍率変化として表示される。
図45に示すように、T4(Luci)-AVと比較して、T4(Luci)-Soc-Cas9-gRNA-AVは形質導入効率を高めた。
図46は、T4(GFP)-Soc-Cas9-AVおよびT4(GFP)-Soc-Cas9-gRNA-AVで処理された細胞の代表的な蛍光画像を示し、これらは両方とも高い形質導入効率を示す。
【0076】
一実施形態において、soc融合タンパク質を有するAVは、
図47および48に示されるように、リポフェクタミントランスフェクションによって得られるものの約2倍である、AAVS1遺伝子座での約30~35%の破壊およびインデルという最高の編集効率を与える。
図47は、T7E1アッセイを用いて決定された、細胞に対するAVナノ粒子の異なる比率で送達されたRNP-AVによるAAVS1遺伝子座でのゲノム編集を示す。
図48は、T4-AV(4802)、T4(Cas9-gRNA)-AV(4804)、T4(gRNA-GFP)-Cas9-AV(4806)、T4(GFP)-Soc-RNP-AV (4808)、T4(Cas9-gRNA)-Soc-RNP-AV(4810)Cas9-gRNAプラスミド + Lip (4812)を含む、異なる構成のT4-AVを使用するAAVS1インデル効率の比較を示す。空のT4-AVとCas9-gRNA-プラスミドのリポフェクタミン トランスフェクション (Lip) が、それぞれネガティブとポジティブ対照として使用される。
【0077】
一実施形態において、ゲノム編集は、AVをヒトゲノムの11番染色体上のヘモグロビンベータ遺伝子(HBB)に標的化することによって、治療上重要な部位で実施される。
図49に示されるように、Cas9-HBB gRNA RNP複合体で組み立てられたAVは、この部位で約20~25%の編集を行った。
図49において、T7E1アッセイは、T4(GFP)-Soc-Cas9-HBBgRNA-AVによって媒介されるHBB遺伝子破壊(4902)を示す。
【0078】
別の実施形態では、
図50に示されるように、ヒトゲノム上の2つ以上の部位での同時編集は、2つのgRNA(1つはHBBを標的とし、もう1つはAAVS1を標的とする)を同じAV上に提示することによって達成される。これらのAVは、約7分子のCas9およびHBB/AAVS1gRNA発現プラスミドも保持していた。
図50に示すように、これらのマルチプレックスAVは、それぞれの標的部位のゲノム編集に成功し、HBB部位(5002)で約20%、AAVS1部位(5004)で約30%であった。
【0079】
(遺伝子組換え人工ウイルス)
一実施形態では、T4-AVは、同じ細胞内で相同または部位特異的なゲノム編集および遺伝子組換えを行うことができる。以前に、Cas9によって生成されたDNA切断が、切断された部位の近くで相同組換えを促進することが報告されている
6、28。好ましい実施形態では、
図51に示すように、AVは、キャプシド上にAAVS1を標的とするCas9-gRNA RNP複合体 (5102) と、内部にパッケージ化されたプロモーターのないピューロマイシン耐性遺伝子 (Puro) を含むドナープラスミド (5104) を提示することによって組み立てられるAAVS1遺伝子座(5106)でのAV媒介ゲノム編集および相同組換えは、Cas9-gRNA RNP複合体(提示)(5108)およびドナーピューロマイシンプラスミドDNA(パッケージ化)(5110)を送達することによって設計されている。ドナー プラスミドには、Cas9切断部位に隣接する約800 bpの相同アームも有する。
図52は、T4-AVについてのパッケージ化されたピューロマイシンプラスミドDNA(5202)の定量化を示す。
図51に示すように、ピューロマイシン耐性は、Cas9切断後に相同組換えが起こり、Puro遺伝子を上流のAAVS1プロモーターの制御下に置く場合に出現する。実際、これらのAVによる形質導入後にピューロマイシン耐性クローンが生じるのに対し、RNP複合体を欠く対照AVはピューロマイシン耐性を示さなかった。
図53および54(
図S5AとS5B)に示すように、PCRおよびDNA配列決定は、ピューロマイシン耐性を示す15個の単離された単一細胞クローンのうち15個が、Cas9切断部位に正確にPuro遺伝子(5302)挿入を含んでいたことを示している。PCRアッセイでは、隣接するAAVS1遺伝子に対応するプライマーをPCRに使用した。3つの代表的なクローンを
図53に示し、すべて標的部位でのホモ接合組換えを示している。
図55は、標的挿入を検出するためのPCR増幅プライマーセット(P1およびP2、P3およびP4)の位置を示す。プライマーセットの配列は以下とおりである。
【0080】
P1: CTGCCGTCTCTCTCCTGAGT (配列番号12)
【0081】
P2: GTGGGCTTGTACTCGGTCAT (配列番号13)
【0082】
P3: AAAACTGACGCACGGAGGAA (配列番号14)
【0083】
P4: GTGGATTCGGGTCACCTCTC (配列番号15)
【0084】
図55において、SAはスプライスアクセプターサイトの略である。T2Aは、Thosea asignaウイルス キャプシドタンパク質由来の2A切断ペプチドの略である。
図55に示されるプライマーの概略図を使用して、AAVS1遺伝子のPCRアッセイは、T4(Puro-donor)-Soc-Cas9-gRNA-AV処理細胞の単一細胞クローンから単離されたDNAに対して実施される。10の代表的な単一細胞ピューロマイシン耐性クローン (I1からI10) は、各プライマーセットを使用して分析される。PCRアッセイの結果を
図56に示す。これにより、増幅された配列の存在、したがってPuro遺伝子の存在が確認された。
【0085】
一実施形態では、ペイロード分子のさらに複雑なセットでプログラムされたAVが組み立てられる。
図57に示されるように、キャプシドは、部位特異的リコンビナーゼCre (N末端にNLSを持つ) をHoc融合タンパク質として提示し、GFPレポーター遺伝子 (LSL-GFP) の上流にCMVプロモーター-LoxP-ポリA STOP-LoxPカセットを含むプラスミドがキャプシド内にパッケージ化されている。ボックスに示されているT7E1アッセイ (5702) は、独立した標的部位でのCas9-gRNA RNP複合体による効率的かつ同時のゲノム編集を示す。34 bpのLoxPシーケンスは、Creの組換え部位を提供する。
図57に示すように、LoxP部位間で起こる部位特異的組換えの成功は、ポリA転写STOP配列をスプライスアウトし、GFPレポーターを上流のCMVプロモーターの制御下に置く。
図58は、Cre-Hoc発現カセットの模式図である。Hocは、Hexa-HisタグでCreのC末端に融合され、T7プロモーターの制御下で、大腸菌で過剰発現される。
図59は、Cre-Hocタンパク質のサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示す。赤い矢印は、溶出されたCre-Hoc四量体と単量体を示す。内部のハッチングされたボックスは、Cre-Hoc四量体と単量体のSDS-PAGE分析を示す。四量体と単量体の両方が、ファージディスプレイと部位特異的組換えに有効である。Cre-Hocリコンビナーゼは、2つのloxP部位を含むLSL-GFP DNA基質の部位特異的組換えを触媒する。
図60のバンドパターンは、報告されているものと一致している
30。
【0086】
別の実施形態では、
図57に示されるように、これらのAVはまた、表面に提示されたCas9-gRNA RNP複合体および内部にパッケージされたmCherryレポータープラスミド分子を運搬した。
図61は、SDS-PAGE分析によって決定される、増加する比率のCre-Hoc分子でのCas9-Soc(5:1、Cas9-Soc分子対Soc結合部位)およびCre-Hocの同時提示を示す。
図62は、Cas9-gRNA RNPの同じキャプシドへの結合に対するCre-Hoc結合の影響を示す。
図62に示すように、Cas9-gRNA RNPとCre-Hocの両方が同じキャプシドに結合し、Cre-Hoc提示の増加は、Cas9-gRNA RNP結合に影響しなかった。
【0087】
図63は、上記の2つの実施形態に記載されたT4-AVについてのパッケージ化されたLSL-GFPプラスミドDNA(6302)およびmCherryレポータープラスミド(6304)の定量化を示す。線状化されたDNAは、パネルの上部に示されているように、DNAとキャプシドの比率を上げてT4とインキュベートされる。15~20:1の比率で最大パッケージング容量に達した。
【0088】
これらを合わせると、大きなペイロードになる;50分子のCre、270分子のRNP複合体、6分子のGFPドナープラスミド、および5分子のmCherryレポータープラスミドが同じAVに含まれる。驚くべきことには、これらのAVはプログラムされたすべてのタスクを実行した。第1に、RNPはAAVS1サイトでゲノム編集を実行し、編集効率は約30%になる。第2に、
図64に示されるように、強い緑色蛍光が293細胞のほぼ100%で観察され、Creによる効率的な部位特異的組換えを実証しているが、Creを欠く対照AVは有意な蛍光を示さなかった。LSL-GFPおよびmCherry DNAは各細胞で共送達および共発現され、共送達されたCreタンパク質による組換え後にGFP発現がすべて同じAVを介して起こる。
図65は、増加するCre-Hoc提示比率でのCre-Hoc-T4(LSL-GFP)-Soc-Cas9-gRNA-AVによる293細胞の形質導入後の代表的なGFP発現画像を示す。
図65に示されるように、GFP発現は、Cre-Hoc提示比の増加と共に増加する。第3に、
図64の下段に示されるように、緑色蛍光の強度および分布は、組換えを必要としないレポーター遺伝子の直接発現から生じるmCherry蛍光の強度および分布に匹敵する。これは、Creが、AV侵入および分解後に、その核局在化シグナルによって核に再配置され、ほぼ100%の細胞で、同時に送達され、独立して再配置されたGFPドナープラスミドに対してLoxP組換えを実行することを意味する。そして、これにより、上流のCMVプロモーターからGFPレポーターが効率的に転写される。
【0089】
T4-AVによる部位特異的組換えの高効率は、別のアプローチによっても検証される。プロモーターのないGFPレポーター遺伝子の上流にLoxP-mCherry-LoxP-polyA-STOPカセットを組み込むことにより、安定した293細胞株を構築する。次に、Cre、Cas9-gRNA RNP、およびLuciレポータープラスミドでプログラムされたAVがこれらの細胞に送達され、その結果、いくつかのゲノムが修飾される。検証のステップは、
図66に示され、これは、Creレポーター細胞へのCre-Hoc-T4(Luci)-Soc-Cas9-gRNA-AVの送達の概略図である。最初に、効率的なCreを介した部位特異的組換えが発生する。これは、細胞が強い赤色蛍光を示すが、内因性のmCherry発現により開始時に緑色蛍光を示さず、その後、赤色蛍光が消失しながら強い緑色蛍光に変わる。これは、
図67に示されるように、転写的に活性なmCherry遺伝子が、AVによって送達されたCreによる、隣接するLoxP部位間の分子内組換えによってスプライシングされ、次に、上流のプロモーターの制御下にあるGFPレポーターの発現を活性化することを意味する。第2に、AVは、
図68の左パネルに示されるように、T4(Luci)-Soc-Cas9-gRNAに対するすべてのCre-Hoc比で、高効率で発現されるLuciレポーター遺伝子を共送達した。第3に、これらのAVはまた、
図68の左側のパネルに示されるように、AAVS1遺伝子座での約30%の遺伝子破壊から明らかなように、ヒトゲノム上の別の標的部位で効率的なゲノム編集を行った。
【0090】
(人工ウイルスを運ぶRNA)
別の実施形態では、このシステムは、上記の実施形態で説明したように、Cas9とgRNAとの間に観察される強い相互作用、および結果として得られるRNP複合体のT4-AVによる効率的な送達に照らして、siRNAを含む一般的なRNA送達に適合される。siRNAは、約20~25 bpの二本鎖オリゴヌクレオチドで、翻訳ではなく分解のために同じ配列を持つmRNAを標的にする。このようなsiRNAを介した遺伝子サイレンシングメカニズムは、様々な遺伝病や感染症の治療に広く使用されている13。
【0091】
Cas9は、siRNAに効率的に結合する、In vitroゲル遅延度実験では、gRNAがCas9-siRNA複合体に結合したsiRNAを置換できることを示す。
図69は、gRNA/siRNA:Cas9-Soc結合化学量論を決定する、電気泳動移動度シフトアッセイの結果を示す。電気泳動移動度シフトアッセイでは、一定量のgRNAまたはsiRNAを様々なモル比 (0:1~5:1) のCas9-Soc分子と室温で1時間混合し、アガロースゲル電気泳動で分析する。gRNA/siRNA-Cas9-Soc複合体は、ローディングウェルに残っていた。gRNA/siRNAに対するCas9-Socの比率が増加すると、ローディングウェルに残ったgRNA/siRNA-Cas9-Soc複合体の量が増加する。
【0092】
一実施形態では、T4-AVは、Cas9-siRNA RNPおよび/またはCas9-mRNA RNP複合体で修飾される。好ましい実施形態では、T4-AVは、約280個のCas9-siRNA RNP複合体で修飾される。siRNAおよびmRNAペイロードを運搬するT4-AVの構成を以下の表にまとめる。
図70は、Cas9(7004)、mRNA(7006)またはsiRNA(7008)およびSoc(7010)を含む、T4およびRNP複合体にパッケージ化されたDNA(7002)を有する、siRNAおよびmRNAペイロードを運搬するT4-AVの概略図である。
図71に示すように、T4(gRNA-GFP)-Soc-Cas9キャプシドへのsiRNAの結合は、Soc結合部位に対するsiRNA分子の比率の増加とともに増加する。
【0093】
【0094】
一実施形態では、
図73に示されるように、293細胞に曝露された場合、パッケージ化されたGFPまたはLuciレポータープラスミドも含むこれらのAVは、効率的にsiRNA分子を送達し、GFP発現をサイレンシングしたが、非特異的対照siRNA(NCsiRNA)を送達する対照AVは、効果がなかった。
図72は、siRNA:T4(Luci)-Soc-Cas9比がAV送達効率に影響を与えないことを示す。T4(Luci)-Soc-Cas9-siRNA-AV送達のルシフェラーゼ発現を、T4(Luci)-Soc-Cas9-AV (siRNAを欠く) による対照の形質導入と比較し、倍率変化(fold change)として示す。
図74では、ウェスタンブロッティング定量化は、形質導入後48および72時間でのGFPsiRNA-AVによるGFPタンパク質レベルの抑制を示す。驚くべきことに、
図74に示されるように、T4-AVによって、48時間で最大約90%のサイレンシングが達成され、72時間でほぼ100%のサイレンシングが達成される。GFP抑制パーセンテージは、
図75に定量化されている。
図75は、T4(GFP)-Soc-Cas9に対するsiRNAの割合の増加に伴い、GFP抑制パーセンテージが増加することを示している。
図75にも示されるように、GFP抑制パーセンテージは、3:1のT4(GFP)-Soc-Cas9に対するsiRNAの比率で100%近くに達する。
【0095】
一実施形態では、異なるmRNAをサイレンシングする2つのsiRNAを同時に送達することができる。好ましい実施形態では、同じAVへの2つのsiRNAの一方はGFP遺伝子を標的とし、他方はハウスキーピング遺伝子GAPDHを標的とする。
図76に示すように、GFP-siRNAおよびGAPDH-siRNAを有するAVは、これら両方の遺伝子の発現をそれぞれ約95%および80%ノックダウンする。
【0096】
より長いmRNA分子の送達は、RNA-AVのフットプリントをさらに拡大して、治療用途のための遺伝子の高レベル発現に至る
46。一実施形態では、上記のAVのsiRNAは、in vitroで転写された996 ntのGFP mRNAをCas9-T4キャプシドと単純に混合することによって、mRNAで置換される。
図77に示されるように、Cas9-mRNA複合体は効率的に形成され、約8:1のmRNA対Cas9分子比で飽和に達する。一方、Cas9を欠く対照キャプシドでは有意なmRNA結合は明らかではない。
図77は、T4(mCherry)-Soc-Cas9キャプシドへのGFP mRNAのローディングを、mRNA分子対Soc結合部位の比が増加した場合に示し、これは、mRNA分子対Soc結合部位の比が8:1に達した後も同じままである。
図78に示されるように、この結果は、mRNAに対するCas9-Soc分子の増加する比率(0:1~7:1)におけるmRNAのCas9-Socタンパク質への結合を示す電気泳動移動度シフトアッセイによって確認される。各AVは、約55分子のmRNAのペイロードを持っていた。siRNAと比較してmRNAのコピー数が少ないのは、おそらく、より長いmRNAがCas9のいくつかの分子を調整したためである。
【0097】
図79に示されるように、一実施形態では、上記実施形態で説明したGFPmRNA-AVは、293細胞への形質導入時に細胞内で強い緑色蛍光を発現し、蛍光は細胞全体に均一に分布し、mCherryレポーター遺伝子の共送達によって生成された赤色蛍光と融合する。一方、
図80に示されるように、Cas9-mRNA複合体を欠く対照(mCherry)AVは、赤色蛍光のみを示した。さらに、
図81に示されるように、パッケージ化されたLuciレポーターの発現は、mRNA提示がAVの効率的な形質導入に影響を与えないことを示唆した。ルシフェラーゼ発現は、mRNA提示を欠く対照AVと比較され、倍率変化として表される。
【0098】
別の実施形態では、別のgRNA発現プラスミドを上記のAVにパッケージ化して、RNA-AVの有用性をさらに高める。
図82は、パッケージ化されたgRNA発現プラスミド(AAVS1 gRNA)(8202)の定量化を示す。この構成により、送達時に、提示されたCas9は最初にsiRNAまたはmRNAをサイトゾルに送達し、次に融合したNLS配列によって核に再配置し、共送達されたプラスミドから、細胞から発現したgRNAとゲノム編集複合体を形成し得る。その後、Cas9は、標的部位でのゲノム編集という2番目の機能を実行できる。
【0099】
対照in vitro実験は、
図83の左パネルに示されるように、gRNAがCas9-siRNA複合体中の結合siRNAを置換できることを示している。一方、
図83の右側のパネルに示されるように、Cas9-gRNA複合体におけるgRNAの逆のsiRNA置換は起こらない。一実施形態では、AVは、提示されたCas9-siRNAまたはCas9-mRNA複合体でプログラムされ、siRNAおよびgRNAに対するCas9のこれらの異なる親和性を利用することによって、gRNAおよびmCherryレポータープラスミド内にパッケージ化される。一実施形態では、
図84および85に示すように、293細胞への形質導入の際、これらのAVは、GFP遺伝子サイレンシングまたはGFP mRNA発現、AAVS1でのゲノム編集、およびmCherry発現を同じ細胞で行う。
図84は、soc結合部位に対するsiRNA分子の比率を増加させて、T4(AAVS1gRNA-GFP)-Soc-Cas9-siRNA-AVで処理した細胞のAAVS1インデル頻度の定量化を示す。右側のボックスは、T7E1アッセイを使用したAAVS1遺伝子破壊を示している。
図85は、T4(AAVS1gRNA-mCherry)-Soc-Cas9-GFPmRNA-AVによるAAVS1遺伝子座でのゲノム編集の、キャプシド表示Cas9に対するmRNA分子の割合を増加させたときの定量化を示す。
【0100】
(T4人工ウイルスのプログラム可能性の最大化)
T4-AVのプログラム可能性をさらに増幅するために、内部キャプシド空間をDNAに加えてタンパク質で満たすことを可能にするCRISPR戦略が開発された53。これはカーゴ容量を増加させるだけでなく、T4-AVに新しい特性を付与し、これは、送達後にDNAカーゴの核への輸送を導くことができるナノキャプシドコンパートメント内でDNA-タンパク質複合体をin situで組み立てる能力である。このような誘導輸送システム (GTS) は、カーゴを適切な細胞内の目的地に誘導するために、将来的に適合させることができる。
【0101】
ファージT4の形態形成中、主要なキャプシドタンパク質gp23が、3つの非必須ヒストン様「内部タンパク質」であるIPI、IPII、およびIPIIIを含むタンパク質のクラスターによって形成された足場コアの周りに集合する。集合に続いて、足場タンパク質のほとんどが小さなペプチドに分解され、キャプシドを離れてゲノムのキャプシド化のためのスペースが生成される。ただし、IPは、約10アミノ酸のN末端キャプシド標的配列 (CTS) の隣で一度だけ切断される。CTSがキャプシドを離れる間、合計約1,000分子の高度に塩基性のIPがキャプシド内に留まり、ファージ感染中にDNA-タンパク質複合体が宿主大腸菌に注入された後、ゲノムを保護する。以前の研究では、IPのC末端部分が外来タンパク質で置換されると、N末端CTSが外来タンパク質をコアに向け、CTS除去後もキャプシド空間に残ることが示された32。
【0102】
一実施形態では、CRISPR戦略が開発され、それによって、LacIリプレッサータンパク質分子がキャプシド内にパッケージ化され、次いで、操作されたlacオペレーター配列(LacO)を含むパッケージ化されたDNAと複合体をトランスで形成することができる。「アクセプター」ファージは、ipI遺伝子およびipII遺伝子を欠失させることによって最初に生成される。このファージは、2つのプラスミド;アクセプターファージの欠失領域のプロトスペーサー配列に対応するCas9またはCpf1およびCRISPR RNAを発現するスペーサープラスミドと、N末端でCTS配列およびC末端でNLS配列に融合されたLacIリプレッサー遺伝子(CTS-LacI-NLSまたはCLN)(配列番号20)を含み、約200 bpの相同アームが隣接する第2のドナープラスミド(
図S7A)を含む大腸菌に感染するために使用される。
図86は、CRISPR操作T4-AVを使用するプログラム可能な誘導輸送システム(GIS)を示す概略図である。a. CRISPRゲノム編集によるCTS-LacI-NLS (CLN) 変異ファージの操作。b. 大腸菌におけるCLNパッケージT4ヘッドの調製。c. CLNパッケージのT4ヘッド。d. CLN-DNA複合体は、in vitro DNAパッケージングに続いてCLN頭部に形成される。e. Socおよび/またはHoc提示タンパク質を含むGIS-T4。f. 送達後、CLN-DNA複合体はNLSシグナルによって核に誘導される。Cas9/Cpf1編集複合体によるアクセプターファージゲノムのプロトスペーサー配列内の切断と、それに続く、切断された末端とドナープラスミドの相同アームとの間の組換えにより、
図87に示されるように、アクセプターファージのipIII遺伝子を置換することにより、CLN遺伝子がファージゲノムに導入される。
図87のパネルAは、CRISPR媒介CLN遺伝子挿入(ipIII置換)の概略図である。
図87のパネルBは、ipII遺伝子欠失を示す。
図87のパネルCは、ipI遺伝子(部分)欠失を示す。したがって、レスキューされた組換えファージは、3つのIPすべてを欠いているが、代わりにCLN遺伝子を含んでいる。このCLN変異体ファージ (10am.13am.hoc
-.soc
-.CLN) から調製された空のキャプシドは、シェル内に約370分子のCLNタンパク質を含み、野生型キャプシドと同等のin vitro DNAパッケージ化効率を示す。突然変異体ファージを作製するためのCRISPR媒介T4ゲノム編集の連続ラウンドは、
図88に示されるように、PCRによって確認される。T4(CLN)ヘッドのサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを
図89に示す。矢印は、パッケージング-コンピテント T4(CLN)ヘッドのピーク分画を示す。SDS-PAGEの煮沸済みおよび未煮沸のT4サンプルは、CLNパッケージ化されたT4ヘッドが拡張され、WT (野生型) T4ヘッドと同様に動作することを示す。頭部にパッケージされたCLNタンパク質は、SDS-PAGE(
図90のパネルa)およびウエスタンブロッティング(
図90のパネルb)によって確認され、そのコピー数を定量化する。(E)CLNタンパク質およびT4(CLN)頭部の機能的特徴付けの結果を
図91に示す。
図91のパネルaは、in vitro DNAパッケージ化に使用されるLacO含有プラスミドDNAへのCLNタンパク質の結合を示す。
図91のパネルbのin vitro DNAパッケージングは、変異CLNヘッドがWTヘッドと同等の活性を示すことを示している。
【0103】
一実施形態において、LacO配列は、LuciまたはCas9-gRNAプラスミドに挿入され、CLNキャプシドにパッケージ化される。次いで、
図91に示されるように、パッケージされたLacIリプレッサーおよびLacO-DNAは、インビトロゲル遅延度実験で見られるように、DNA-タンパク質複合体を形成する。
図92に示すように、これらのAVは、ヒト細胞への形質導入により、ルシフェラーゼの発現が約3.5倍まで増強されたことを示した。
図93に示されるように、10
4のMOIで約2倍のCas9媒介ゲノム編集を示した。おそらく、これらは、LacIリプレッサーにNLSシグナルが存在するため、DNA-LacI複合体の核への輸送が促進されることによる。
図93のパネルaは、T7E1アッセイ結果を示し、
図93パネルbは、AAVS1インデルの頻度を示し、T4(CLN)-GIS-AVがゲノム編集を増強することを示唆している。ルシフェラーゼまたは遺伝子破壊の増強は、T4粒子と293細胞の比率が低い場合 約10
3:1~約10
4:1では最も顕著であるが、約10
5:1の高い比率では顕著ではない。これはおそらく、高比率でより多くのDNAコピーを送達することで、低コピー数でのCLNを介した輸送の増強が補償されたためである。
【0104】
一実施形態では、Creリコンビナーゼの遺伝子は、同じ戦略を使用してファージゲノムに挿入される。別の実施形態では、一般にウイルスゲノム工学に有用であり得るGFPおよびβ-ガラクトシダーゼパッケージ化のためのレポーター遺伝子が挿入される。コピー数は様々であるが、これらのタンパク質はすべてT4キャプシドにうまくパッケージ化されている。
【0105】
タンパク質のサイズと構造のバリエーションは、足場コアへの組み込みに影響を与える可能性がある。
図94は、GFPパッケージ化AVの生化学的特徴付けを示す。GFPタンパク質パッケージングは、SDS-PAGE(
図94のパネルa)および488 nm励起(
図94のパネルb)によって確認される。
図95は、Creパッケージ化AVの生化学的特徴付けを示す。Cre-headsはSDS-PAGEによって確認される(
図95のパネルa)。ただし、パッケージ化されたタンパク質はすべて生物学的機能を保持している。例えば、
図96に示されるように、パッケージ化されたβ-ガラクトシダーゼは、オリゴマー化して機能的な四量体になり、グルコシドヒドロラーゼ活性を示すことによって「ブルーファージ(blue phage)」を生成する。
図96の左パネルは、T4(β-gal)ヘッドのサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示す。矢印は、溶出された拡張T4 (β-gal) キャプシドのピーク画分を指している。右側のパネルでは、「ブルーファージ」の観察は、機能的な四量体β-ガラクトシダーゼ酵素分子のパッケージ化の成功と、切断されたX-Gal基質の青色の出現を示している。同様に、
図94のパネルcに示すように、GFPタンパク質およびmCherryプラスミドDNAをパッケージ化したAVは、緑色および赤色蛍光の両方を示し、前者は送達されたタンパク質(「緑色蛍光ファージ」)由来、後者は送達されたDNA由来である。
図97に示すように、緑色蛍光ファージによるタンパク質の送達の成功は、T4(GFP)キャプシドのサイズ排除クロマトグラフィープロファイルによっても確認され、T4(GFP)および対照T4キャプシドの488 nm励起における蛍光画像(
図98)は、T4(GFP)キャプシドにおける機能性GFPのパッケージ化の成功を示している。
図97中の矢印は、溶出された拡張T4(GFP)キャプシドのピーク分画を示している。最後に、
図95のパネルbに示されるように、パッケージ化されたCreリコンビナーゼを含むAVは、LoxP-mCherry-LoxP-polyA-STOP-GFPカセットのLoxPサイト間の効率的な組換えをほぼ100%の効率で実行し、mCherry遺伝子のスプライシングをもたらし、これは、スプライシングされた産物の上流プロモーター由来のGFP遺伝子の発現を可能にする。したがって、GTS戦略は一般に、他のゲノム修飾を実行できるDNA結合タンパク質に適用できる。
【0106】
ヒト細胞で定義された分子操作を実行するように指示できる人工ウイルスを組み立てる能力は、医学の至高の目標として残っている20、29、48。本開示は、そのような概念の証明を説明している。試験管内で人工ウイルスを構築するためのシーケンシャル アセンブリ-ライン アプローチが説明されており、バクテリオファージT4の精製され、そして十分に特徴付けられた構造コンポーネントを使用して、それぞれがヒト細胞で特定のタスクを実行するように設計されている。これらには、細胞への結合と侵入、細胞内輸送、核局在化、およびゲノムリモデリングが含まれる2、37。膨大なエンジニアリングスペースを作成することに加えて、このアセンブリ-ラインアプローチにより、特定の治療能力を備えたさまざまな人工ウイルスを生成するために、コンポーネントを必要な組み合わせで混合および適合させることができる。このようなカスタム構築可能な「プラグ-アンド-プレイ」人工ウイルス プラットフォームは現在存在せず、いくつかの機能により、現在利用可能な他のウイルスまたは合成送達プラットフォームと区別される。
【0107】
T4-AVプラットフォームの特徴の1つは、ナノ粒子構造のさまざまなコンパートメントにタンパク質、DNA、RNA、およびそれらの複合体を含む多くの種類の治療用生体分子を組み込むことができることである。これらの分子は、ヒト細胞に送達されると、独立して、または相互の相互作用を通じて、その機能を忠実に実行する。これは、幅広い分子;本開示における、27 kDa GFPから516 kDa四量体β-ガラクトシダーゼ酵素の範囲のタンパク質、大きな二本鎖プラスミドDNAから小さな一本鎖gRNAまでの範囲の核酸、およびタンパク質-タンパク質、RNA-タンパク質、およびDNA-タンパク質複合体を含む、予め形成された複合体、で実証されている。さらに、天然のウイルスと同様に、AV「感染」時に送達された分子間で形成される機能回路は、カーゴ分子のコピー数を調整することで調整可能であり、治療能力を備えたAVを作成するための多数のオプションを提供する。
【0108】
T4-AVは、モデル細胞株HEK293でほぼ100%の効率でシグナルを一貫して生成した。これは、レポーター遺伝子 (Luci、GFP、mCherryなど) の発現または送達されたタンパク質 (GFP β-Gal、Creなど) の活性によって測定される。高効率に貢献したAVの重要なコンポーネントは、T4キャプシドの高度な陰イオン性を利用して生成された脂質コートである。既製のカチオン性脂質は、自発的にT4キャプシドに結合し、ヒト細胞のアニオン性表面に相補的な親油性およびカチオン性表面を生成する19、23、58、66。このコートがないと、上記の実施形態によって証明されるように、形質導入効率が低下する。カチオン性であるが脂質コートを欠くAVでさえ、100倍低いシグナルを示す。さらに、脂質コートは、SocおよびHoc融合タンパク質分子の表示を損なうことはない。一方、これらの分子、特に正に帯電した分子は、T4-AV形質導入効率をさらに高める。
【0109】
本開示に記載されるT4人工ウイルスは、ヒト細胞への生体分子の送達に関して現在存在する4つの主要な障壁を突破する。まず、T4-AVは、他の送達プラットフォームとは異なり、複数の比較的大きなDNA分子の複数のコピーを1回の伝達イベントで効率的に細胞に送達できる。これは、レポーター遺伝子、抗体遺伝子、およびゲノム編集遺伝子を含む一連のプラスミドを使用して十分に実証されている。これは、T4の大きなカーゴ容量のためだけでなく、配列依存性を示さないT4のパッケージング機構の無差別な性質のためにも可能である43、50、56、63。したがって、ルシフェラーゼ活性によって測定されるレポーターシグナルは、報告された最高値であり、形質導入イベントごとに1つのレポーター分子のみを送達できるAAV形質導入よりもさらに高い値である。
【0110】
T4-AVが突破する2つ目の障壁は、オールインワンの送達である。本発明者らの研究を通じて実証されているように、T4-AVは、DNA、タンパク質、RNA、およびそれらの複合体の組み合わせからなる複雑なカーゴを効率的に送達する。これは、ゲノム編集や複数の生体分子の同時送達を必要とする遺伝子組み換えを含む多くのゲノムリモデリングアプリケーションに不可欠であり、これは現在、他の送達プラットフォームでは不可能であるか、非常に困難である36、62。様々なオールインワン構成が組み立てられ、Cas9ヌクレアーゼとgRNAを、外側に表示される機能的RNA-タンパク質複合体として、および/または内側にパッケージ化された発現可能な遺伝子として運搬する。同様に、遺伝子組換えでは、部位特異的リコンビナーゼCreとドナープラスミドを同時送達する様々なAVが組み立てられる。
【0111】
T4-AVが突破する3つ目の障壁は、多重送達である。T4-AVは、複数の部位 (複数のgRNAやsiRNAなど) をターゲットにするだけでなく、ヒトゲノムで様々な分子操作を実行するためにカーゴ分子を組み込むことによって組み立てられる。1つの組み合わせで、3つの異なる操作;ゲノム編集、遺伝子発現、および部位特異的組換えが、Cas9およびgRNAをRNPとして、GFPまたはLuci遺伝子をパッケージ化されたプラスミドとして、Creリコンビナーゼおよびドナープラスミドを提示およびパッケージ化された分子として、それぞれ組み込むことによって実行される。別の組み合わせでは、siRNA、mRNA、Cas9、およびgRNAを同じ人工ウイルスに組み込むことによって、遺伝子サイレンシング、遺伝子発現、およびゲノム編集が実行される。
【0112】
T4-AVが突破する4つ目の障壁は、プログラム可能性、つまり一連の命令を実行する能力と、ヒト細胞への侵入時に機能を変更する能力である。上記の多くの例は、各AVがプログラムされている一連の命令の実行を示している。エントリー時の機能動作の修飾は、Cas9機能の転用によっても実証されている。Cas9は、一本鎖gRNAと二本鎖siRNAの両方に結合でき、gRNAはCas9に対する親和性が高いため、結合したsiRNAを取り除くことができるというin vitro観察を利用することにより、AVは、Cas9-siRNA複合体を提示することによって組み立てられ、gRNA発現プラスミドをパッケージ化する。侵入すると、これらのAVは、siRNAを細胞質ゾルに送達し、遺伝子サイレンシングをもたらすが、同じCas9は、共送達されたプラスミドから発現したgRNAに結合することにより、核内で機能をゲノム編集に切り替える。
【0113】
T4-AVのプログラム可能性は、CRISPRエンジニアリングによってさらに強化され、ファージキャプシド内に数百のタンパク質分子を組み込むことができる32、53。重要なことに、これにより、パッケージ化されたヘッド内に追加の機能回路を生成する別の手段が作成され、細胞内輸送および/またはより効果的なゲノム改変の誘導に役立つ。これらは、LacIやCreなどのモデルタンパク質を使用して実証されている。キャプシド内にLacIタンパク質を予めパッケージ化することにより、LacIタンパク質とLacOを含むDNAとの間にDNA-タンパク質複合体が形成され、in vitro DNAパッケージ化を通じてトランスでキャプシドに送達される。送達されると、その核局在化シグナルを備えた操作されたLacIは、増強されたレポーター遺伝子発現から明らかなように、DNAを核に誘導する。同様に、キャプシドにパッケージ化されたNLS-Creリコンビナーゼは、ヒトゲノムにおける部位特異的組換えのほぼ100%の効率をもたらす。
【0114】
結論として、アセンブリ-ラインアプローチを使用してテストチューブでカスタムアセンブリできるウイルスナノマテリアル、ファージベースの人工ウイルスの新しいカテゴリーが生成される。これらの人工ウイルスは、天然のウイルスと同様の構造を有し、侵入、分解、および細胞内輸送のために同様の経路をたどるが、正確なメカニズムは知られていないため、さらなる調査が必要である37、48。ただし、重要なことは、テクノロジーの観点からは、このアプローチを使用して実質的に無制限の種類のAVを組み立てることができ、それぞれがプログラムされている機能を忠実に実行し、ゲノムと細胞の代謝を正確に変更できることである。したがって、本開示に記載された系統的研究は、ペイロードを最適化し、幹細胞やCAR T細胞療法、in vivo療法などのex vivo細胞療法に役立つ初代ヒト細胞への効率的な送達のための人工ウイルスを作成するために必要な基礎を提供する。これらの研究は進行中である。このT4-AVプラットフォームは、大きなカーゴ容量、多様なカーゴを組み込む機能、プログラム可能性、カスタマイズ可能性、およびオールインワン送達などの機能を備えており、欠陥のあるヒト細胞、そして最終的には人体の健康を回復するための潜在的な将来のアプリケーションの強力な概念実証を確立した。
【0115】
本開示の多くの実施形態を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく修正および変更が可能であることは明らかである。さらに、本開示のすべての例は、本発明の多くの実施形態を示しているが、非限定的な例として提供されており、したがって、そのように示されたさまざまな態様を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
(組換えタンパク質の発現と精製)
組換えタンパク質(Cas9およびCpf1を除く)を、pET28b発現プラスミドを大腸菌(E.coli)BL21(DE3)RIPL細胞で熱ショック法により形質転換することにより発現させた。形質転換細胞を、50 μg/mlカナマイシンおよび25 μg/mlクロラムフェニコールを含む、Moores培地(トリプトン20 g、酵母エキス15 g、NaCl 8 g、デキストロース2 g、Na2HPO4 2 g、KH2PO4 1 gを1 lのMilli-Q(登録商標)水に溶解)中で、37℃でOD 600が0.5になるまで増殖させ、タンパク質発現を、1 mMイソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド (IPTG) により30℃で3時間、誘導した。誘導後、細胞を遠心分離によって回収し、ペレットをプロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ(登録商標)、USA)およびベンゾナーゼヌクレアーゼ(ミリポアシグマ(登録商標))を含む、結合バッファー (50 mM Tris-HCl、300 mM NaCl、および 20 mM イミダゾール、pH 8.0) に懸濁した。細胞懸濁液をフレンチプレス(Aminco(登録商標))で溶解し、34,000×gで30分間遠心分離することにより、細胞破片から可溶性画分を分離した。ライセートを0.22 ミクロンのフィルター (Millipore(登録商標)、Stericup(登録商標))でろ過し、予め平衡化した(結合バッファー)HisTrapHP カラム(AKTA-Prime(登録商標)、GE(登録商標) Healthcare) にアプライし、結合バッファーで洗浄した。次に、Hisタグ付きタンパク質を、20~500 mMのリニアイミダゾール グラジエントで溶出した。ピーク画分を、製造元の指示にしたがって、GF バッファー (20 mM Tris-HClおよび100 mM NaCl、pH 8.0) 中の、Hi-Load 16/60 Superdex-200 (prep-grade) ゲル濾過カラム (GE(登録商標) Healthcare) を使用したサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。目的のタンパク質を含む画分をプールし、AmiconUltra-4 遠心ろ過 (10 kDaカットオフ; Millipore(登録商標)) によって濃縮し、液体窒素で急速冷凍し、-80℃で保存した。すべてのカラム操作を、4℃で行った。ゲルろ過分子サイズ標準を同じカラムでクロマトグラフィーにかけ、精製タンパク質のおおよそのサイズを計算した。
【0117】
Cas9-SocまたはCpf1-Soc精製のために、この研究で使用した組換えSpCas9またはLbCpf1は、C末端でSocに、N末端で核局在化シグナルペプチドに融合されていた。このタンパク質は、C末端ヘキサヒスチジンタグも有する。簡単に説明すると、RIPL細胞をOD 600 = 0.6になるまで37℃で培養し、20℃で40分間インキュベートした後、1 mM IPTGで誘導した。20時間後、細胞を回収し、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche(登録商標)、USA)およびベンゾナーゼヌクレアーゼ(Millipore Sigma(登録商標))を含む、50 mlの結合緩衝液 (50 mM Tris-HCl、300 mM NaCl、20 mMイミダゾール、および5 mM Tris (2-カルボキシエチル)ホスフィン (TCEP; Soltec Ventures)、pH8.0)に再懸濁した。次いで、Cas9-SocまたはCpf1-Socタンパク質を、上記のようにHisTrapHPおよびSuperdex-200カラムによって精製した。
【0118】
(実施例2)
(T4 CRISPR操作)
T4ファージ操作を、以前に説明された手順に従って実行した53。大腸菌株P301(sup0)およびB40(sup1)を以下に記載する実験で使用した。10-amber 13-amber hoc-del soc-del T4 ファージを、以前に記載されているように、大腸菌B40で増殖させた63。特定のスペーサーを有するCRISPR-Cas9またはCpf1プラスミドを、スペーサー配列をストレプトマイシン耐性プラスミドDS-SPCas(Addgene(登録商標)番号48645)(配列番号21)にクローニングすることによって構築した。スペーサー配列を以下に示す。
【0119】
AAVS1-Cas9-gRNA1:GTCCCCTCCACCCCACAGTG (配列番号2)
【0120】
AAVS1-Cas9-gRNA2:GGGGCCACTAGGGACAGGAT (配列番号3)
【0121】
HBB-Cas9-gRNA: AGTCTGCCGTTACTGCCCTG (配列番号4)
【0122】
ipIII-Cas9-gRNA: GGCCTTTACTACAGAAGCTT (配列番号5)
【0123】
ipI-Cpf1-gRNA1: TTCAGCAGGAGAGATAACGATTG (配列番号6)
【0124】
ipI-Cpf1-gRNA2: TACCATTACCGAAGCTACTCTTA (配列番号7)
【0125】
ipII-Cpf1-gRNA1: CTTCTAAGTTCGGCATGTCTATG (配列番号8)
【0126】
ipII-Cpf1-gRNA2: TTACGGTCTTTATCGGGCAA (配列番号9)
【0127】
ipIII-Cpf1-gRNA1: AAGTCGGAAGCCTTTGTAGCTAA (配列番号10)
【0128】
ipIII-Cpf1-gRNA2: TGCTTGGCAAATTCAAGACCTGC (配列番号11)
【0129】
ドナーDNAをpET28bベクターにクローニングすることにより、相同ドナープラスミドを構築した。CRISPR-Cas9/Cpf1およびドナープラスミドを、大腸菌B40 (sup1) を含むサプレッサーに共形質転換し、その後、ストレプトマイシンおよびカナマイシン抗生物質によって陽性クローンを選択する。CRISPRプラスミドまたはドナープラスミドのいずれかで形質転換した細胞を対照として使用する。細胞をWTまたは10-amber 13-amber hoc-del soc-del T4ファージに感染させた。子孫プラークの操作されたゲノムを増幅し、配列決定して挿入または欠失を確認した。
【0130】
(実施例3)
(T4頭部(ヘッド)の精製)
10-amber 13-amber hoc-del soc-del T4ヘッドまたはタンパク質パッケージGIS-T4を、前述のプロトコールに従って分離した63。簡単に説明すると、変異ファージに感染した大腸菌P301 (sup-) 細胞 (500 mlの培養液) を、10 μg/ml DNase I および 1 ml のクロロホルムを添加した、40 mlのPi-Mgバッファー (26 mM Na2HPO4、68 mM NaCl、22 mM KH2PO4、および 1 mM MgSO4、pH 7.5)に溶解し、続いて37℃で30分間インキュベートしてDNAを消化した。低速 (6,000×g、10分間) および高速 (35,000×g、45分間) の遠心分離を2回行った後、ペレットを200μlのTris・Mg バッファー (10 mM Tris-HCl、50 mM NaCl、および5 mM MgCl2、pH 7.5)に再懸濁し、続いてCsCl密度勾配遠心分離を行った。抽出したT4ヘッドを、Tris・Mg緩衝液で一晩透析し、DEAE-セファロースクロマトグラフィーによってさらに精製した。ピークキャプシド画分を濃縮し、-80℃で保存した。粒子の数を、SDS-PAGEおよびレーザーデンシトメトリーを使用して、既知の量のファージT4と比較して、主要なキャプシドタンパク質gp23*を定量化することによって決定した。
【0131】
(実施例4)
(DNAパッケージ化アッセイ)
In vitro DNAパッケージ化アッセイを、以前に記載した手順に従って実施した24。精製した全長gp17 (約3 μM)、パッケージ化バッファー (30 mM Tris-HCl、100 mM NaCl、3 mM MgCl2、および1 mM ATP、pH 7.5) 中の線状DNA、および精製したT4 ヘッド (約2×1010粒子)を順次添加して、20μlの反応混合物を構成した。混合物を37℃で45分間インキュベートし、続いてベンゾナーゼヌクレアーゼを添加し、37℃で30分間インキュベートして、パッケージ化されていない過剰なDNAを除去した。パッケージ化されたヌクレアーゼ耐性DNAを、0.5μg/μlプロテイナーゼ K (Fermentas(登録商標))、50 mMエチレンジアミン四酢酸 (EDTA)、および0.2%SDSで、65℃で30分間処理することにより放出させた。パッケージ化されたDNAを、1%(wt/vol) アガロースゲル電気泳動を使用して分析した。パッケージ化されたDNAの量は、Quantity Oneソフトウェア (Bio-Rad(登録商標)) によって定量化した。パッケージ化効率は、1つのT4 ヘッドにパッケージ化されたDNA分子の平均数として定義した。
【0132】
(実施例5)
(T4ヘッド上のタンパク質およびRNA提示)
T4ヘッド上のタンパク質ディスプレイを、前述の基本的なプロトコールに従って実行する27。簡単に言えば、上記のように線状にしたDNAをパッケージ化した後、Soc-および/またはHoc-融合タンパク質を異なる比率でパッケージング混合物に添加し、4℃で1時間インキュベートした。混合物を30,000×gで1時間遠心分離して沈降させ、上清中の結合していないタンパク質を除去した。PBSで2回洗浄した後、ペレットをSDS-PAGE分析のためにPBSに、または細胞形質導入のためにOpti-MEMに再懸濁した。Coomassie Blue R250 (Bio-Rad(登録商標)) 染色および脱色後、SDS-PAGEゲル上のタンパク質バンドをレーザーデンシトメトリー (PDSI、GE(登録商標) Healthcare) によって定量化した。各レーンのHoc、Soc、およびgp23*バンドの密度を個別に定量化し、T4あたりの結合したHocまたはSoc融合分子のコピー数を、内部コントロールとして各レーンのgp23*バンドを使用して計算した (T4 キャプシドあたり、930 コピー) )。gRNA/siRNA/mRNA提示では、HocまたはSoc融合タンパク質分子で提示したT4ヘッドを、RNAaseを含まないPBS緩衝液に再懸濁し、RNAとともに4℃で1時間インキュベートした。T4-RNP複合体を30,000×gで1時間遠心分離することにより沈降させ、上清中の結合していないRNAを除去した。PBSで2回洗浄した後、形質導入のためにペレットをOpti-MEMに再懸濁した。RNAの結合を定量化するために、T4-RNP複合体を0.5μg/μlプロテイナーゼ K (Fermentas(登録商標))、50 mMエチレンジアミン四酢酸 (EDTA)、および0.2%SDSで、65℃で30分間処理して、パッケージ化されたDNAを放出した。そして、RNAを提示し、続いて、アガロースゲル電気泳動を行った。
【0133】
(実施例6)
(T4-AV アセンブリ)
上記のように、DNAパッケージおよび/またはタンパク質提示T4ナノ粒子を50μlのOpti-MEMで希釈し、穏やかに混合した。一方、50μlのOpti-MEM培地を別の滅菌チューブに加え、続いてリポフェクタミン2000、リポフェクタミン3000、リポフェクタミンRNAiMAX、リポフェクタミンLTX、リポフェクタミンステム、およびExpiFectamine(登録商標)293 (EXPI) (Thermo Scientific(登録商標))などのカチオン性脂質を適量加えた。5分間のインキュベーション後、T4粒子を添加し、穏やかに混合し、室温で20分間振盪せずにインキュベートして、T4-AVを形成させた。混合物の総量は100μlである。
【0134】
(実施例7)
(細胞培養)
HEK293細胞を、10%ウシ胎児血清 (FBS、Invitrogen(登録商標))、1×HEPES (Gibco(登録商標))、および1%抗生物質 (Gibco(登録商標))(コンプリートDMEM)を添加したダルベッコ変法イーグル培地 (DMEM、Gibco(登録商標)) で培養した。細胞を37℃、5% CO2の加湿雰囲気で維持し、約80~90%コンフルエントになるまで増殖させた。次いで、0.05%トリプシン/EDTA(Gibco(登録商標))を使用して接着表面から細胞を解離させ、1:5の継代培養比で継代した。
【0135】
(実施例8)
(細胞形質導入)
形質導入の1日前に、HEK293細胞を24ウェルプレートに1ウェルあたり2×105細胞でコンプリートDMEMに移した。形質導入の日に、細胞を、抗生物質を含まないOpti-MEMでT4-AVとともに6時間インキュベートした。その後、Opti-MEMを除去し、コンプリートDMEMに置き換えた。さらなる分析のために、細胞をさらに37℃でさらに48時間インキュベートした。GFP/mCherry導入遺伝子発現は、形質導入後48時間で蛍光顕微鏡(Carl Zeiss(登録商標))によって観察され、平均蛍光強度をImageJソフトウェアによって定量化した。核は、Hoechst 33342 (Thermo Scientific(登録商標)) で 37℃で20分間対比染色した。
【0136】
(実施例9)
(ルシフェラーゼ活性の定量化)
T4-AVによる細胞へのルシフェラーゼ遺伝子の送達を分析するために、ルシフェラーゼ活性をLuciferase Assay System (Promega(登録商標)、USA)を用いてメーカーの推奨プロトコールに従って測定した。簡単に言えば、増殖培地を除去し、細胞をPBS緩衝液ですすいだ。洗浄バッファーを除去した後、150μlのパッシブ溶解バッファー(passive lysis buffer)を各ウェルに加え、室温で20分間穏やかに振とうした。次いで、細胞溶解物20マイクロリットルを96ウェル白色不透明プレートに移し、80μlのルシフェラーゼアッセイ試薬と混合し、発光シグナルをGlomax Multi Detection System(Promega(登録商標))によって記録した。各群に、3回の測定を適用した。
【0137】
(実施例10)
(ベータガラクトシダーゼ(β-gal)形質導入)
T4-AVによって細胞内に送達されたSoc-β-gal酵素の活性は、β-ガラクトシダーゼ染色キット(Sigma(登録商標))を使用してX-Galで染色することによって決定した。代表的な染色画像を、ChemiDoc Imaging System (Bio-Rad(登録商標)) によって取得した。
【0138】
(実施例11)
(エンドサイトーシス阻害剤の効果)
細胞を、コンプリートDMEM中のウェルあたり2×105細胞で24ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞を、抗生物質を含まないOpti-MEMで30分間プレインキュベートし、クラスリン媒介エンドサイトーシス用のスクロース/クロルプロマジン、脂質ラフト用のメチル-β-シクロデキストリン(M-β-CD)、ダイナミン媒介エンドサイトーシスのダイナソール、マクロピノサイトーシスのアミロリド、カベオリン媒介エンドサイトーシスのナイスタチン、およびアクチン細胞骨格再編成のサイトカラシンDなどのいくつかの阻害剤を使用した。次に、細胞をルシフェラーゼまたはGFPレポーター遺伝子をパッケージ化したT4-AVに、阻害剤の存在下でさらに6時間曝露した。その後、Opti-MEMを除去し、コンプリートDMEMに置き換えた。ルシフェラーゼまたはGFPシグナル分析のために、細胞をさらに37℃でさらに48時間インキュベートした。
【0139】
(実施例12)
(細胞増殖アッセイ)
細胞生存率を、製造元のプロトコールに従って48時間トランスフェクションした後、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay Kit (Promega(登録商標)) を使用して決定した。簡単に説明すると、等量のCellTiter-Glo(登録商標) Reagentを各ウェルの細胞培養液に加えた。混合物を2分間水平に振とうして細胞溶解を誘導し、室温で10分間インキュベートして発光シグナルを安定させ、Glomax(登録商標) Multi Detection System (Promega(登録商標)) で記録した。未処理の細胞群の生存率を100%に正規化し、各サンプルに3回の測定を適用した。
【0140】
(実施例13)
(ウェスタンブロッティング分析)
簡単に説明すると、形質導入した細胞をローディングバッファーに再懸濁し、10分間煮沸し、12% SDS-PAGEで分離した後、ニトロセルロース膜 (Bio-Rad(登録商標) に転写した。ブロッキングは、5% BSA/PBS-Tバッファー (0.05% Tween-20を含むPBS、pH 7.4) 中、室温で1時間、穏やかに振盪しながら行った。次いで、ブロットをPBS-Tで3回洗浄した。一次抗GFP、抗チューブリン、または抗His6抗体をブロットに添加し、5%BSAを含むPBS中で、4℃で一晩インキュベートした。PBS-Tで3回洗浄した後、二次ヤギ抗マウスHRP結合抗体 (Invitrogen(登録商標)) を5%BSA/PBS-Tで1:10,000希釈して室温で1時間適用し、その後PBS-Tで3回リンスした。BioRad(登録商標)Gel Doc XR+システムおよびImage Labソフトウェア (BioRad(登録商標)、USA) を使用して、強化化学発光基質 (BioRad(登録商標)、USA) でシグナルを可視化した。
【0141】
(実施例14)
(ゲノム改変のためのゲノムDNA抽出およびT7EIアッセイ)
HEK293細胞を、本開示に記載されるように、様々なゲノム編集AVでトランスフェクトした。形質導入後、細胞を37℃で72時間インキュベートした。製造元の指示に従って、GeneJETTM Genomic DNA Purification kit (Thermo Scientific(登録商標)) を使用して、ゲノムDNAを精製した。簡単に言えば、細胞を溶解溶液/プロテイナーゼKに再懸濁し、56℃で10分間インキュベートした後、室温で、10分間RNase Aで処理した。GeneJETTM カラムを使用してゲノムDNAを吸収し、洗浄バッファーで洗浄した。ゲノムDNAを溶出バッファーで溶出し、-20℃で保存した。AAVS1またはHBB標的部位を取り囲むゲノム領域を増幅し、メーカーのプロトコールに従ってQiagen(登録商標) Mini キット (Qiagen(登録商標)) を使用してPCR産物を精製した。合計400 ngまたは200 ngの精製されたPCR産物を、2μlの10X NEB(登録商標)バッファー 2 (NEB(登録商標)) およびヌクレアーゼフリー水と混合して最終容量を20μlにし、アニールして、以下のインキュベーションを使用してヘテロ二本鎖を形成できるようにした。95℃で10分間、95℃から85℃まで -2℃/s でランピング、85℃から25℃まで -0.1℃/s で、4℃で保持。次いで、T7エンドヌクレアーゼIをアニールしたPCR産物に添加し、37℃で30分間インキュベートした。T7EI消化産物を、1.5%(wt/vol)アガロースゲルで分析した。ゲルを、GelDoc(登録商標)ゲルイメージングシステム(Bio-Rad(登録商標))で画像化し、定量化は、ImageJソフトウェアを使用して相対バンド強度に基づいている。推定遺伝子改変を、次の式を使用して計算した: インデル (%) = 100×(1-(1-切断された分画)1/2)36。
【0142】
(実施例15)
(AAVS1 gRNAのin vitro合成)
T7プロモーター、gRNA標的、およびCas9のgRNA足場配列を含むDNAテンプレート (配列番号:1) を、Phusion High-Fidelity PCR Master Mix (Thermo Scientific(登録商標) を使用したPCRによって増幅した。T7-gRNA PCRフラグメントをゲル精製し、HiScribe T7 High Yield RNA Synthesis Kit (NEB(登録商標)) を使用したin vitro転写のテンプレートとして使用した。T7転写を一晩行い、MEGAclear Transcription Clean-Up Kit (Thermo Scientific(登録商標) を使用してRNAを精製した。gRNAをRNaseフリー水で溶出し、アガロースゲル電気泳動で分析し、Nanodrop(登録商標)2000 (Thermo Scientific(登録商標) で定量し、-80℃で保存した。
【0143】
(実施例16)
(In vitro CRISPR RNP結合および切断アッセイ)
Cas9またはCas9-SocのgRNA/siRNA/mRNAへの結合をテストするために、異なる比率の精製タンパク質とRNAを室温で1時間インキュベートし、アガロースゲル電気泳動で分析した。AAVS1標的部位を囲むゲノム領域を、Hot-Start DNAポリメラーゼ (Thermo Scientific(登録商標)) を用いたPCRによって増幅し、Qiagen(登録商標)Mini キット (Qiagen(登録商標)) によって精製し、Cas9切断アッセイの基質として使用した。NEB(登録商標)バッファー 3 (100 mM NaCl、50 mM Tris-HCl、10 mM MgCl2、および 1 mM DTT、pH 7.9) およびPCR産物 (300 ng) を含む20μlの反応量で、精製したCas9またはCas9-Soc ( 50 nM) およびAAVS1gRNA (50 nM) を添加した。37℃で1時間インキュベートした後、DNAを1.5%(wt/vol)アガロースゲル電気泳動で分析した。
【0144】
(実施例17)
(In vitro Cre-Hoc組換えアッセイ)
LSL-GFPプラスミドを、Cre-Hoc組換えをin vitroで試験するための基質として使用した。組換えバッファー (33 mM NaCl、50 mM Tris-HCl、および 10 mM MgCl2、pH 7.5) およびLSL-GFPプラスミドを含む50μlの反応量に、精製されたCre-Hocタンパク質の量を増やして加えた。37℃で30分間、次に70℃で10分間インキュベートした後、DNAを0.8%(wt/vol) アガロースゲル電気泳動で分析した。
【0145】
(実施例18)
(VRCO1抗体およびCH58抗体の定量のための酵素免疫測定法(ELISA))
HEK293細胞に、VRC01および/またはCH58の重鎖および軽鎖を発現する線状化プラスミドをパッケージ化したAVを導入した。3日間培養した後、細胞培養上清を採取し、ELISAにより抗体濃度を分析した。ELISAプレート(Evergreen Scientific(登録商標)、96ウェル)を、コーティング緩衝液(0.05 M炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウム、pH 9.6)中のウェルあたり0.1μgのHIV-1JRFL gp140エンベロープタンパク質で、4℃で一晩コーティングした。PBS緩衝液(pH 7.4)で3回洗浄した後、プレートをPBS-3%BSA緩衝液で、37℃で1時間ブロッキングした。既知量の精製VRCO1またはCH58 モノクローナル抗体を、5倍連続希釈で3連のウェルに加え、開始濃度2000 ng ml-1で標準曲線を作成した。細胞培養培地中のVRCO1またはCH58の濃度を、PBS-1%BSA中の5倍希釈系列を使用して決定した。希釈したサンプルを各ウェルに加え、プレートを37℃で1時間インキュベートし、PBS-T緩衝液(0.05% Tween-20を含むPBS、pH 7.4)で5回洗浄した。次いで、二次ヤギ抗ヒトIgG-HRP抗体を各ウェルに1:5000希釈で添加し、37℃で1時間インキュベートした後、PBS-T緩衝液で5回洗浄した。次に、TMB (3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン) MicrowellTM Peroxidase Substrate System (KPL) を暗所で発色させた。10分後、TMB BlueSTOP(商標)(KPL)溶液を添加することによって酵素反応をクエンチし、プレートをELISAリーダー(VERSA MaxTM、Molecular Devices)を使用して650 nmで30分以内に読み取った。
【0146】
(実施例19)
(統計)
すべての定量化されたデータは、平均 ± 標準偏差 (SD) として表示する。統計分析は、両側スチューデントのt検定によって実行した。2つのグループ間の差は、p < 0.05 の場合は統計的に有意であると見なし、p < 0.01 の場合は非常に有意であると見なした。
【0147】
(参考文献)
以下の参考文献は上記で参照されており、参照により本明細書に組み込まれている。
【0148】
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【0149】
本出願で引用されるすべての文書、特許、雑誌記事、およびその他の資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
本開示は、特定の実施形態を参照して開示されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本開示の範囲および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する多数の修正、変更、および変更が可能である。したがって、本開示は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言およびその等価物によって定義される完全な範囲を有することが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】