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特表2023-537308バイオベースの粗エチレングリコールを精製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】バイオベースの粗エチレングリコールを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/74 20060101AFI20230824BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20230824BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20230824BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230824BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20230824BHJP
   B01J 47/014 20170101ALI20230824BHJP
【FI】
C07C29/74
C07C31/20 A
B01J20/26 G
B01J20/28 Z
B01J41/07
B01J47/014
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506246
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021109536
(87)【国際公開番号】W WO2022028319
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202010766596.1
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519450008
【氏名又は名称】チャンチュン メイヘ サイエンス アンド テクノロジー ディベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,イ
【テーマコード(参考)】
4G066
4H006
【Fターム(参考)】
4G066AC14B
4G066BA26
4G066CA56
4G066DA07
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD19
4H006BD84
(57)【要約】
バイオベースの粗エチレングリコールを精製するための方法であって、本方法は、バイオベースの粗エチレングリコールを原料として使用し、それを水で希釈して、1~95重量%のエチレングリコール濃度にすることと、0~100℃の温度及び0.01~20BV/時の体積空間速度の条件下で、希釈エチレングリコール水溶液を、1つ又は複数のマクロ多孔性吸着樹脂及び任意選択的なイオン交換樹脂が充填された吸着処理用の吸着床に連続的に通過させて、精製エチレングリコール水溶液を得ることと、次にそれを脱水してエチレングリコールを得ることとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオベースの粗エチレングリコールを精製するための方法であって、バイオベースの粗エチレングリコールを原料として使用し、それを水で希釈して、1~95wt%、好ましくは20~90wt%、より好ましくは40~85wt%のエチレングリコール濃度にすることと、0~100℃、好ましくは10~80℃、特に好ましくは10~50℃の温度、及び0.01~20BV/時、好ましくは0.01~10BV/時の体積空間速度の条件下で、前記希釈エチレングリコール水溶液を、1つ又は複数、好ましくは1つ又は2つのマクロ多孔性吸着樹脂及び任意選択的なイオン交換樹脂が充填された吸着処理用の吸着床に連続的に通過させて、精製エチレングリコール水溶液を得ることと、次にそれを脱水してエチレングリコールを得ることとを含む方法。
【請求項2】
前記バイオベースの粗エチレングリコールが紫外線ランプ前処理プロセスを受ける、例えば、前記バイオベースの粗エチレングリコールが、100nm以上、好ましくは180nm以上、より好ましくは180~350nmの波長の紫外光で照射される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記紫外線ランプ前処理プロセスが、以下の手法:0~170℃、好ましくは10~120℃、より好ましくは10~50℃の温度において、100nm以上、好ましくは180nm以上、より好ましくは180~350nmの波長を有する紫外線ランプを含有する容器内に、前記バイオベースの粗エチレングリコールが原料として導入され、0超~2時間、好ましくは0.1~1時間にわたってその中に保持される手法において実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マクロ多孔性吸着樹脂が、スチレン及び/又はジビニルベンゼンを骨格として含有するマクロ多孔性吸着樹脂、より好ましくは、スチレン及び/又はジビニルベンゼンを骨格として含有する比表面積が800m/gよりも大きいマクロ多孔性吸着樹脂である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン交換樹脂が、弱塩基性アニオン交換樹脂、好ましくは、第1級アミン基、第2級アミン基、及び/又は第3級アミン基をその表面に含有する弱塩基性アニオン交換樹脂である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオベースの粗エチレングリコールがバイオマスから調製されたエチレングリコールであり、エチレングリコールに加えて、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含有し、任意選択的に、前記バイオベースの粗エチレングリコールが、
【化1】

の分子式を有する化合物も含有し、ここで、前記ブタンジオールが好ましくは1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールであり、前記ペンタンジオールが好ましくは1,2-ペンタンジオールであり、前記ヘキサンジオールが好ましくは1,2-ヘキサンジオールである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオベースの粗エチレングリコールが、
88~100wt%のエチレングリコール、好ましくは95~100wt%のエチレングリコール、より好ましくは98~100wt%のエチレングリコール(端点100wt%は除外)と、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.5wt%、特に好ましくは0~0.1wt%のブタンジオール(好ましくは1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及び/又は1,4-ブタンジオール、端点0は除外)と、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.5wt%、特に好ましくは0~0.1wt%のペンタンジオール(好ましくは1,2-ペンタンジオール;端点0は除外)と、
0~5wt%、好ましくは0~2wt%、より好ましくは0~1.5wt%のヘキサンジオール(好ましくは1,2-ヘキサンジオール;端点0は除外)と、
任意選択的に、0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.5wt%、特に好ましくは0~0.1wt%の
【化2】

とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオベースの粗エチレングリコールがさらに任意選択的に、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.1wt%の1,2-プロピレングリコールと、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.1wt%のジエチレングリコールと
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水が精留によって達成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオベースの粗エチレングリコール原料の220nm、275nm及び350nmにおける紫外線透過率が、ポリエステルグレードのエチレングリコールの高級グレード製品に対して指定される少なくとも1つの要件を満たすことができない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、エチレングリコールの沸点に近い沸点を有するヒドロキシル不純物、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、及び任意選択的な
【化1】

と、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える微量の不純物、例えば、酸、エーテル、アルデヒド、ケトン、二重結合を含有する化合物、及び/又はアルコールとを含有する、バイオベースの粗エチレングリコール、及び特に、バイオベースの粗エチレングリコールを精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
石油価格の不確実性、及び持続可能性への意識の高まりのために、近年、バイオマスを原料として使用してエチレングリコールを製造するための技術において急速な開発が行われている。しかしながら、合成経路が異なるために、バイオマス経路に基づくエチレングリコールの製造プロセスでは、石油経路又は石炭経路から生成されるものとは異なるヒドロキシル含有副生成物と、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与え、及び微量で又はさらにはGCの検出限界よりも低いレベルで存在する不純物、例えば、酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールとが生成される。液体化合物の従来の精製方法は、物質をその異なる沸点に基づいて分離する精留プロセスである。しかしながら、これらの不純物の沸点はエチレングリコールの沸点に近く、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与え、及び微量で又はさらにはGCの検出限界よりも低いレベルで存在する不純物、例えば、酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールは、エチレングリコールに類似した物理的特性と、エチレングリコールの沸点に近い沸点とを示す。したがって、これらのアルコール不純物から直接精留によりエチレングリコールを分離すると、エチレングリコールの収率が低くなり、エネルギー消費が高くなり得る。加えて、精留によって得られるエチレングリコールには、まだ微量の不純物が含有され、したがって、エチレングリコールの紫外線透過率は、繊維グレード及びボトルグレードのポリエステルの要件を満たすことができない。
【0003】
米国特許第4935102号、米国特許第4966658号、米国特許第5423955号、及び米国特許第8906205号には、異なる共沸剤の使用によりブタンジオールからエチレングリコールを分離するためのプロセスが記載されている。共沸剤及びエチレングリコールは、共沸点を有する。一般に、共沸点の温度は、エチレングリコールの沸点よりも明らかに低い。したがって、エチレングリコール及び共沸剤を含有する共沸混合物の沸点はブタンジオールなどの不純物の沸点とは著しく異なり、したがって、エチレングリコール及びブタンジオールは、精留によって経済的に分離することができる。
【0004】
バイオマス経路に基づくエチレングリコールの製造プロセスでは、エチレングリコールの沸点に非常に近い沸点を有するブタンジオール以外のアルコール不純物、例えば、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、及び任意選択的に
【化2】

と、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与え、及び微量で又はさらにはGCの検出限界よりも低いレベルで存在する不純物、例えば、酸、エーテル、アルデヒド、ケトン及び/又はアルコールとが生成される。前述の特許出願は、その中のプロセスがこれらの不純物を効果的に分離できることを示していない。
【0005】
中国特許出願公開第106946654A号には、エチレングリコールを精製するために、バイオマスエチレングリコール中の不純物を吸着するための多孔質炭素吸着剤を含有する吸着床の使用が記載されている。この技術はエチレングリコールの紫外線透過率の増大を記載しているだけであり、ブタンジオール、以下の分子式:
【化3】

の化合物、ペンタンジオール又はヘキサンジオールなどのアルコール不純物を分離するためのその使用は示されていない。
【0006】
中国特許出願第201010200038.5号には、吸着剤としてゼオライト及びケイ酸アルミニウムを使用することにより、エチレングリコールを精製するための方法が記載されている。しかしながら、この方法は、吸着剤により1,2-ブタンジオールを効果的に除去できることを記載しているだけであり、吸着剤が紫外線透過率又は他のヒドロキシル不純物を改善できることは示されていない。
【0007】
中国特許出願第201110047173.5号には、エチレングリコールを固定床に含有される吸着剤と接触させて、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える物質を固定床内に保持することにより、エチレングリコールの紫外線透過率を増大させるための方法が記載されている。しかしながら、この方法は、吸着剤床が紫外線透過率を増大させることを記載しているだけであり、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールなどのヒドロキシル含有アルコール不純物を吸着することに関するその効果は示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
石油系エチレングリコール又は石炭系エチレングリコールを製造するために吸着剤を使用する従来の直接吸着プロセスは、バイオベースのエチレングリコール中の特別な不純物を効果的に分離することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、バイオベースの粗エチレングリコールを精製して、エチレングリコールの沸点に近い沸点を有するヒドロキシル含有不純物と、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える微量の不純物、例えば、酸、エーテル、アルデヒド、ケトン、二重結合を含有する化合物、及び/又はアルコールとから、バイオベースの粗エチレングリコールを高収率で費用効率的に分離し、それによりエチレングリコールの純度及び紫外線透過率を増大させるための方法を提供する。
【0010】
本発明のバイオベースの粗エチレングリコールを精製するための方法は、バイオベースの粗エチレングリコールを原料として使用し、それを水で希釈して、1~95wt%、好ましくは20~90wt%、より好ましくは40~85wt%のエチレングリコール濃度にすることと、0~100℃、好ましくは10~80℃、特に好ましくは10~50℃の温度、及び0.01~20BV/時、好ましくは0.01~10BV/時の体積空間速度の条件下で、希釈エチレングリコール水溶液を、1つ又は複数、好ましくは1つ又は2つのマクロ多孔性吸着樹脂及び任意選択的なイオン交換樹脂が充填された吸着処理用の吸着床に連続的に通過させて、精製エチレングリコール水溶液を得ることと、次にそれを脱水してエチレングリコールを得ることとを含む。脱水されたエチレングリコールの純度及び紫外線透過率は、ポリエステルグレードのエチレングリコールの高級グレード製品に対する工業規格を満たす。本明細書におけるポリエステルグレードのエチレングリコールの高級グレード製品に対する規格は、純度が99.9%以上であり、220nm、275nm及び350nmの波長における紫外線透過率がそれぞれ75%以上、95%以上及び99%以上であることを指す。
【0011】
樹脂は、紫外線透過率に影響を与える微量の不純物、例えば、酸、エーテル、アルデヒド、ケトン、二重結合を含有する化合物、及び/又はアルコールと、エチレングリコールの純度に影響を与え、及びエチレングリコールの沸点に近い沸点を有するヒドロキシル含有不純物、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、及び任意選択的な
【化4】

のアルコール不純物とから、高収率で費用効率的にエチレングリコールを分離して、エチレングリコールの紫外線透過率及び純度を増大させることができる。
【0012】
任意選択的に、バイオベースの粗エチレングリコールは紫外線ランプ前処理プロセスを受ける、例えば、バイオベースの粗エチレングリコールは、100nm以上、好ましくは180nm以上、より好ましくは180~350nmの波長の紫外光で照射される。部分的にバイオベースの粗エチレングリコール原料では、紫外線透過率に影響を与える不純物がより大量に存在すると、紫外線透過率の低下が起こり、樹脂の再生サイクルが短くなると共に、再生コスト及び樹脂コストが増大する。したがって、樹脂の再生サイクルを延長し、樹脂の運用コストを削減するために、樹脂吸着プロセスの前に制御可能な紫外線ランププロセスを追加して、エチレングリコールの紫外線透過率を増大させることが望ましい。エチレングリコール分子を分解することなく、制御可能な紫外光は、二重結合を含有して適切な紫外光(例えば、180~350nmの紫外光)を吸収する化合物の不純物を、二重結合を含有しない化合物に変換し、それによりエチレングリコールの紫外線透過率を予備的に増大させることができる。
【0013】
紫外線ランプ前処理プロセスは、以下の手法:0~170℃、好ましくは10~120℃、より好ましくは10~50℃の温度において、100nm以上、好ましくは180nm以上、より好ましくは180~350nmの波長を有する紫外線ランプを含有する容器内に、バイオベースの粗エチレングリコール原料が導入され、0超~2時間、好ましくは0.1~1時間にわたってその中に保持される手法において実施され得る。紫外線ランプは、好ましくは、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、LEDランプ、高輝度放電ランプ、又は金属ハロゲン化物ランプである。その紫外線透過率が予備的に増大された後、排出された材料は、樹脂吸着プロセスにおいてさらに処理され得る。
【0014】
マクロ多孔性吸着樹脂は、例えば、好ましくはスチレン及び/又はジビニルベンゼンを骨格として含有するマクロ多孔性吸着樹脂であり、より好ましくは、スチレン及び/又はジビニルベンゼンを骨格として含有する比表面積が800m/gよりも大きいマクロ多孔性吸着樹脂である。
【0015】
イオン交換樹脂は、弱塩基性アニオン交換樹脂、好ましくは、第1級アミン基、第2級アミン基、及び/又は第3級アミン基をその表面に含有する弱塩基性アニオン交換樹脂であり得る。
【0016】
バイオベースの粗エチレングリコールは、バイオマスから調製されるエチレングリコールを指す(本明細書において、バイオマスは、好ましくは、トウモロコシ及びサトウキビを含む第1世代の食用バイオマスと、作物の茎、木材、及びバガスを含む農業及び林業廃棄物から得られる第2世代の非穀物バイオマスとを指す)。エチレングリコールに加えて、バイオベースの粗エチレングリコールは、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールを含有するが、これらに限定されない。任意選択的に、バイオベースの粗エチレングリコールは、以下の分子式:
【化5】

の化合物も含有する。ブタンジオールは好ましくは、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールである。ペンタンジオールは好ましくは1,2-ペンタンジオールである。ヘキサンジオールは好ましくは1,2-ヘキサンジオールである。より好ましくは、バイオベースの粗エチレングリコールには、
88~100wt%のエチレングリコール、好ましくは95~100wt%のエチレングリコール、より好ましくは98~100wt%のエチレングリコール(端点100wt%は除外)と、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.5wt%、特に好ましくは0~0.1wt%のブタンジオール(好ましくは、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及び/又は1,4-ブタンジオール、端点0は除外)と、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.5wt%、特に好ましくは0~0.1wt%のペンタンジオール(好ましくは、1,2-ペンタンジオール、端点0は除外)と、
0~5wt%、好ましくは、0~2wt%、より好ましくは0~1.5wt%のヘキサンジオール(好ましくは、1,2-ヘキサンジオール、端点0は除外)と、
任意選択的に、0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.5wt%、特に好ましくは0~0.1wt%の
【化6】

とが含有されるが、これらに限定されない。
【0017】
バイオベースの粗エチレングリコールには、任意選択的に、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.1wt%の1,2-プロピレングリコールと、
0~5wt%、好ましくは0~1wt%、より好ましくは0~0.1wt%のジエチレングリコールと
も含まれる。
【0018】
バイオベースの粗エチレングリコールは特定の親水性ヒドロキシル含有不純物を含有するので、水による希釈は、前述の不純物の吸着を促進する。
【0019】
水は、例えば、脱塩水であり得る。
【0020】
脱水は、例えば、精留によって達成され得る。
【0021】
酸、エーテル、アルデヒド、ケトン、二重結合を含有する化合物、及び/又はアルコールなどの、エチレングリコールの紫外線透過率に影響を与える微量の不純物は、微量レベルでも紫外光を吸収することができるので、これらの不純物は、機器又は化学的方法、例えば、ガスクロマトグラフィ又は液体クロマトグラフィによって検出することができない。したがって、原料中のその含有量は、紫外線透過率によってのみ表すことができる。本出願において、前述の不純物の存在のために、バイオベースの粗エチレングリコール原料の220nm、275nm、及び350nmにおける紫外線透過率は、ポリエステルグレードのエチレングリコールの高級グレード製品に対して指定される少なくとも1つの要件を満たすことができず、このような透過率は、例えば以下のように表すことができる:75%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは10%未満の220nmでの紫外線透過率;95%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは30%未満の275nmでの紫外線透過率;及び/又は99%未満、好ましくは97%未満、より好ましくは96%未満の350nmでの紫外線透過率。
【0022】
本発明の方法を使用することにより、エチレングリコール回収率が99.9%以上の高収率で、エチレングリコールの純度を99.9%以上に高めることができ、220nm、275nm、及び350nmにおける紫外線透過率はそれぞれ、75%以上、95%以上、及び99%以上に増大され得る。加えて、本発明のコストは、従来の精留方法よりも著しく低い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面の説明
図1】実施例1のプロセスフローチャートである。
図2a】実施例1に従うエチレングリコール生成物の紫外線透過率の変化曲線である。
図2b】実施例1に従うエチレングリコール含有量の変化曲線である。
図3】実施例2のプロセスフローチャートである。
図4a】実施例2に従うエチレングリコール生成物の紫外線透過率の変化曲線である。
図4b】実施例2に従うエチレングリコール含有量の変化曲線である。
図5】実施例3のプロセスフローチャートである。
図6a】実施例3に従うエチレングリコール生成物の紫外線透過率の変化曲線である。
図6b】実施例3に従うエチレングリコール含有量の変化曲線である。
図7】比較例1のプロセスフローチャートである。
図8a】比較例2に従うエチレングリコール生成物の紫外線透過率の変化曲線である。
図8b】比較例2に従うエチレングリコール含有量の変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0024】
特定の実施形態
実施例
本発明はさらに以下の実施例を参照して説明されるが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0025】
実施例1
Xi’an Sunresin New Materials Co.,Ltd.から購入したXA-1Gマクロ多孔性吸着樹脂200mlを吸着剤として樹脂カラムに充填した。樹脂の骨格はスチレン-ジビニルベンゼンであり、比表面積は1200m/gであった。
【0026】
バイオマスの水素化と、軽質及び重質留分の予備的な除去のための精留とによって得られた粗エチレングリコール生成物を原料として使用した。国家規格GB/T4649-2008で指定される分析方法を使用することにより原料を分析し、種々の成分の含有量は以下の通りであった:99.700wt%のエチレングリコール、0.020wt%の1,2-ペンタンジオール、0.250wt%の1,2-ヘキサンジオール、0.010wt%の1,2-ブタンジオール、0.010wt%の
【化7】

、及び0.010wt%の他の成分。原料の紫外線透過率は、220nmで13.5%、275nmで59.0%、及び350nmで96.8%であった。
【0027】
図1に示されるプロセスの流れに従って、粗エチレングリコール原料及び脱塩水を3:1の質量比で混合して粗エチレングリコール水溶液を得て、次に、これを30℃及び0.5BV/hの体積空間速度で樹脂床に連続的に導入し、樹脂床から排出された材料を、精留塔の使用により脱水した。図2a及び図2bは、吸着及び脱水処理後に得られたエチレングリコール生成物の紫外線透過率及び純度の結果を示す。
【0028】
14時間後に、275nmでの紫外線透過率は、高級グレード製品に対して指定される要件よりも低いレベルまで低下し、吸着剤が無効であることが示された。1140.0gのエチレングリコールを含有する合計1524.6gの粗エチレングリコール水溶液を処理した;1139.7gの許容できるエチレングリコール生成物が最終的に得られた。したがって、精製された許容できるエチレングリコールの収率は99.97%であった。
【0029】
比較例1
バイオマスの水素化と、軽質及び重質留分の予備的な除去のための精留とによって得られた、実施例1に記載される粗エチレングリコール生成物を原料として使用し、図7に示される従来の精留方法を用いることにより分離した。精留塔の総理論段数は90であり、還流比は15:1であり、運転圧力は10kPa(絶対圧力)であった。原料を200g/hの流量で40段目の理論段から精留塔内に導入した。エチレングリコール生成物を195g/hの流量で精留塔の上部から取り出した。エチレングリコール生成物中のエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、及び
【化8】

の含有量はそれぞれ、重量百分率で、99.920%、0.010%、0.020%、0.040%、及び0.010%であった。紫外線透過率は、220nmで20.8%、275nmで63.2%、及び350nmで98.5%であった。エチレングリコールの全精留収率は97.7%であった。
【0030】
試験結果は、従来の精留プロセスが1,2-ヘキサンジオールをエチレングリコールから効果的に分離して、99.90%以上のエチレングリコール純度を達成し得るが、エチレングリコールの収率はわずか97.7%であったことを示す。加えて、還流比が高いことにより、蒸気のエネルギー消費が高くなり、紫外線透過率を効果的に増大させることができなかった;対照的に、本発明の方法は、高収率及び低コストで、エチレングリコールの純度を99.90%以上に増大させることができ、220nm、275nm、及び350nmにおけるエチレングリコールの紫外線透過率はそれぞれ、75%、95%及び99%を超えて増大した。
【0031】
比較例2
バイオマスの水素化と、軽質及び重質留分の予備的な除去のための精留とによって得られた、実施例1に記載される粗エチレングリコール生成物を原料として使用し、実施例1に記載されるものと同じタイプ及び体積の吸着剤を樹脂カラムに充填した。
【0032】
図1に示されるプロセスの流れに従って、粗エチレングリコール原料を水と混合せず、30℃及び0.5BV/hの体積空間速度で樹脂床に連続的に導入した。図8a及び図8bは、吸着処理後に得られたエチレングリコール生成物の紫外線透過率及び純度の結果を示す。
【0033】
試験結果は、比較例2において、実施例1に記載されたものと同じ原料、吸着剤及び運転条件を使用したにもかかわらず、バイオベースの粗エチレングリコールを水と混合しなかったために、バイオベースの粗エチレングリコール中の特別な不純物が吸着剤により効果的に吸着されず、したがって、排出されたエチレングリコールの純度及び紫外線透過率が、高級グレード製品に対する規格で特定されるレベルまで増大しなかったことを示す。
【0034】
実施例2
30mlの容積の紫外線ランプ容器に、254nmの波長及び23Wの出力を有する低圧水銀紫外線ランプを入れた。樹脂カラムAには、Xi’an Sunresin New Materials Co.,Ltd.から購入した、スチレン-ジビニルベンゼンを骨格として有し、第1級アミン基を含有するD303弱塩基性アニオン交換樹脂750mlを吸着剤として充填した。樹脂カラムBには、Dow Chemicalから購入したL493マクロ多孔性吸着樹脂200mlを吸着剤として充填した。マクロ多孔性吸着樹脂の骨格はマクロ多孔性スチレンポリマーであり、その比表面積は1100m/gであった。
【0035】
バイオマスの水素化と、軽質及び重質留分の予備的な除去のための精留とによって得られた粗エチレングリコール生成物を原料として使用した。国家規格GB/T4649-2008で指定される分析方法を使用することにより原料を分析し、種々の成分の含有量は以下の通りであった:99.753wt%のエチレングリコール、0.036wt%の1,2-ペンタンジオール、0.146wt%の1,2-ヘキサンジオール、0.033wt%の1,2-ブタンジオール、0.010wt%の
【化9】

、0.002wt%の1,4-ブタンジオール、0.010wt%のジエチレングリコール、及び0.010wt%の他の成分。原料の紫外線透過率は、220nmで1.1%、275nmで25.0%、350nmで95.0%であった。
【0036】
図3に示されるプロセスの流れに従って、粗エチレングリコール原料を20℃及び100ml/hの流量で紫外線ランプ容器内に連続的に導入した。紫外線ランプ容器から排出された材料を脱塩水と2:1の質量比で混合して粗エチレングリコール水溶液を得て、次に、これを20℃及び0.2BV/hの体積空間速度で樹脂床Aに連続的に導入した。樹脂床Aから排出された材料を、他の条件は変更しないまま、0.75BV/hの体積空間速度で樹脂床Bに連続的に導入した。樹脂床Bから排出された材料を、精留塔の使用により脱水した。図4a及び図4bは、紫外線ランプ処理並びに吸着及び脱水処理後に得られたエチレングリコール生成物の紫外線透過率及び純度の結果を示す。
【0037】
9.3時間後に、275nmでの紫外線透過率は、高級グレード製品に対して指定される要件よりも低いレベルまで低下し、吸着剤が無効であることが示された。1036.2gのエチレングリコールを含有する合計1038.8gの粗エチレングリコールを処理した;1036.0gの許容できるエチレングリコール生成物が最終的に得られた。したがって、精製されたエチレングリコールの収率は99.98%であった。
【0038】
実施例3
樹脂カラムAには、Xi’an Sunresin New Materials Co.,Ltd.から購入した、スチレン-ジビニルベンゼンを骨格として有し、第1級アミン基を含有するD303弱塩基性アニオン交換樹脂40mlを吸着剤として充填した。樹脂カラムBには、Xi’an Sunresin New Materials Co.,Ltd.から購入した、XA-1Gマクロ多孔性吸着樹脂200mlを吸着剤として充填した。マクロ多孔性吸着樹脂の骨格はスチレン-ジビニルベンゼンであり、その比表面積は1200m/gであった。
【0039】
バイオマスの水素化と、軽質及び重質留分の予備的な除去のための精留とによって得られた粗エチレングリコール生成物を原料として使用した。国家規格GB/T4649-2008で指定される分析方法を使用することにより原料を分析し、種々の成分の含有量は以下の通りであった:98.81wt%のエチレングリコール、0.10wt%の1,2-ペンタンジオール、1.05wt%の1,2-ヘキサンジオール、0.02wt%の1,2-ブタンジオール、0.01wt%の
【化10】

、及び0.01wt%の他の成分。原料の紫外線透過率は、220nmで6.6%、275nmで63.0%、350nmで95.0%であった。
【0040】
図5に示されるように、粗エチレングリコール原料を脱塩水と3:1の質量比で混合して粗エチレングリコール水溶液を得て、次に、これを30℃及び1.0BV/hの体積空間速度で樹脂床Aに連続的に導入した。樹脂床Aから排出された材料を、他の条件は変更しないまま、0.2BV/hの体積空間速度で樹脂床Bに連続的に導入した。樹脂床Bから排出された材料を、精留塔の使用により脱水した。図6a及び図6bは、吸着後に得られたエチレングリコール生成物の紫外線透過率及び純度の結果を示す。
【0041】
5時間後に、純度は、高級グレード製品に対して指定される要件よりも低いレベルまで低下し、吸着剤が無効であることが示された。161.41gのエチレングリコールを含有する合計217.8gの粗エチレングリコール水溶液を処理した;161.38gの許容できるエチレングリコール生成物が最終的に得られた。したがって、精製されたエチレングリコールの収率は99.98%であった。
【0042】
実施形態から、本発明は、紫外線透過率に影響を与える微量の不純物、例えば、酸、エーテル、アルデヒド、ケトン、二重結合を含有する化合物、及び/又はアルコールと、エチレングリコール純度に影響を与え、及びエチレングリコールの沸点に近い沸点を有するヒドロキシル含有不純物とから、エチレングリコールを効果的に分離して、エチレングリコールの紫外線透過率及び純度を高収率で費用効率的に増大させるために使用できることが分かる。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
【国際調査報告】