(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】がんのための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20230824BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20230824BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230824BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230824BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230824BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230824BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230824BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
A61K45/06 ZNA
A61K31/454
A61K31/506
A61K31/519
A61P35/00
A61P7/02
A61P43/00 121
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506578
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 US2021043197
(87)【国際公開番号】W WO2022026398
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】513171172
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ レプリゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】モーゼー,マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】レオン,ローレンス エル.ケー.
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ,ティモシー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA542
4C084ZA891
4C084ZB261
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086BC82
4C086CB09
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA54
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤を用いた併用療法を使用してがんを治療する方法が開示される。抗凝固剤は、第Xa因子、第XIa因子、又は他の凝固因子の阻害剤等の、トロンビンの直接阻害剤又はトロンビンの間接阻害剤であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オステオポンチン(OPN)関連がんを治療する方法であって、
治療を必要とする対象に、治療有効量の抗凝固剤を、治療有効量のB-Raf阻害剤又はマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トロンビン阻害剤が、ダビガトラン、アルガトロバン、イノガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、及びデシルジンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記B-Raf阻害剤が、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、及びPLX-4720からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗凝固剤が、治療有効量の前記B-Raf阻害剤及び治療有効量の前記MEK阻害剤と組み合わせて投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記MEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、及びPD-325901からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗凝固剤、前記B-Raf阻害剤、又は前記MEK阻害剤が、毎日の投与計画に従って、又は間欠的に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも部分的な腫瘍応答をもたらすために十分な期間、複数サイクルの治療が前記対象に施される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記期間は、少なくとも6ヶ月である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記期間は、少なくとも12ヶ月である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
完全な腫瘍応答がもたらされる、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗凝固剤又は前記B-Raf阻害剤が、経口、静脈内、又は局所投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記OPN関連がんは、黒色腫である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記黒色腫は、B-RAF変異黒色腫である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記B-RAF変異黒色腫は、V600E変異又はV600K変異を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記黒色腫は、転移性である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象は、ヒトである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗凝固剤は、第Xa因子の阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第Xa因子の阻害剤が、リバロキサバン(Xarelto)、アピキサバン(Eliquis)、ベトリキサバン、ダレキサバン(YM150)、エドキサバン(Lixiana)、オタミキサバン、レタキサバン(TAK-442)、エリバキサバン、アンチスタシン、ワルファリン、ヘパリン、及びフォンダパリヌクスからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗凝固剤は、第XIa因子の阻害剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第XIa因子の阻害剤が、BMS-262084((2S,3R)-1-[4-(tert-ブチルカルバモイル)ピペラジン-1-カルボニル]-3-[3-(ジアミノメチリデンアミノ)プロピル]-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、BMS-724296、BMS-654457(2-[3-[(2S,4R)-6-カルバムイミドイル-4-メチル-4-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-キノリン-2-イル]-5-(3-メチルブタノイルアミノ)フェニル]-5-カルバモイル安息香酸)、BMS-986177((9R,13S)-13-[4-[5-クロロ-2-(4-クロロトリアゾール-1-イル)フェニル]-6-オキソピリミジン-1)-イル]-3-(ジフルオロメチル)-9-メチル-3,4,7,15-テトラザトリシクロ[12.3.1.02,6]オクタデカ-1(18),2(6),4,14,16-ペンタエン-8-オン)、EP-7041((2S,3R)-3-([2-アミノピリジン-4-イル]メチル)-1-([{1R}-1-シクロヘキシルエチル]カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、ケトアルギニンベースのペプチド模倣体、クラバタジン、アリールボロン酸、及び環状アルギニン含有ケトチアゾールペプチド模倣体からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
追加の抗がん療法剤を投与することを更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記追加の抗がん療法剤は、化学療法剤、免疫療法剤、生物学的療法剤、ホルモン療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、又は放射性同位体である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
がんは、世界中における主な死因である。黒色腫は、皮膚がんの最も攻撃的な形態である。それは、早期に認識されて治療される場合にはほとんど常に治癒可能であるが、そうでない場合、がんは進行して身体の他の部分に広がり、治療が困難になり、致命的になり得る。黒色腫は、皮膚がんの中で最も一般的なものではないが、最も多くの死亡を引き起こす。
【0002】
標準的な治療は、腫瘍及び正常に見える皮膚の周辺領域を除去するための手術である。手術後に免疫療法、化学療法、放射線療法、又はこれらの治療の組み合わせ等の追加の療法が行われる場合がある。化学療法及び免疫療法は、また、進行性又は再発性黒色腫を治療するために使用される。患者が現在最良の治療法で治療された場合であっても依然として死亡及び罹患は発生するため、患者は黒色腫の新しい治療法の恩恵を受ける。
【0003】
オステオポンチン(OPN)は、広く発現される非コラーゲン性マトリックス細胞タンパク質であり、35個のがんマイクロアレイデータセットのうちの20個中の5%の最も高発現の遺伝子のうちの1つである(Atai et al.(2011)Immunology 132,39-48)。OPNは、乳がん、肺がん、及び卵巣がん、膠芽腫(GBM)、並びに悪性黒色腫の浸潤性及び転移性進行の促進に関与している(Chiodoni et al.(2010)Cancer Metastasis Rev 29,295-307、Kothari et al.(2016)J.Clin.Med.5(4):39、Lamort et al.(2019)Cells 8(8):815、McAllister et al.(2008)Cell 133,994-1005、Shevde and Samant(2014)Journal of the International Society for Matrix Biology 37,131-141、Zhao et al.(2018)Cell Death&Disease 9,356)。OPN発現レベルは、腫瘍ステージと相関し(Coppola et al.(2004)Clinical Cancer Research 10,184-190)、原発性黒色腫におけるOPN発現が増加すると、無再発生存期間の低下が予測される(Conway et al.(2009)Clinical cancer research 15,6939-6946)。纏めると、高レベルのOPNは、より進行したがん及びより悪い予後と関連している(Lamort et al.)。
【0004】
骨マトリックス成分であることに加えて、OPNは、線維芽細胞、造血細胞、及び免疫細胞によって発現され(Clemente et al.(2016)Journal of Immunology Research 2016,7675437、Sodek et al.(2000)Crit.Rev.Oral Biol.Med.11,279-303)、その発現は、がん及び感染症等の炎症性疾患において著しくアップレギュレートされる(Lund et al.(2009)J.Cell Commun.Signal 3,311-322、Uede(2011)Pathol.Int.61,265-280)。OPNは、放出されたときに、多面的なサイトカイン様及びケモカイン様機能を有する(Uede、上記、Wang and Denhardt(2008)Cytokine Growth Factor Rev 19,333-345)。OPNは、白血球の生存及び分化を促進し、白血球の接着、遊走、及び輸送を調節する(Grassinger et al.(2009)Blood 114,49-59、Lund et al.(2009)J.Cell Commun.Signal 3,311-322、Sharif et al.(2009)Arthritis and Rheumatism 60,2902-2912、Weiss et al.(2001)J.Exp.Med.194,1219-1229)。OPNは、IL-17の産生を調節し、いくつかの免疫媒介性疾患における重要なプレーヤーとして同定されている(Rittling and Singh(2015)Journal of Dental Research 94,1638-1645)。宿主及び/又はがんのいずれかに由来するOPNは、細胞増殖、生存、薬剤耐性、及び幹様の挙動に影響を及ぼし得、腫瘍微小環境におけるオートクリン及びパラクリン様式での細胞間クロストークの重要なメディエーターとして作用する(Lamort et al.、上記、McAllister et al.(2008)Cell 133,994-1005、Shevde and Samant(2014)、上記)。B16マウス黒色腫細胞は、OPNが欠損したマウス(OPN-KO、Spp-/-)において抑制され、このことは、腫瘍成長がOPNの存在に依存することを示している(Kale et al.(2014)Oncogene 33,2295-2306、Kale et al.(2015)Oncogene 34,5408-5410、Kumar et al.(2013)PLoS One 8,e69116、Nemoto et al.,(2001)J.Bone Miner Res.16,652-659)。
【0005】
黒色腫等のOPN関連がんを治療するより良い方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤を用いた併用療法を使用してがんを治療する方法が開示される。抗凝固剤は、第Xa因子、第XIa因子、又は他の凝固因子の阻害剤等の、トロンビンの直接阻害剤又はトロンビンの間接阻害剤であり得る。
【0007】
一態様では、オステオポンチン(OPN)関連がんを治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の抗凝固剤を、治療有効量のB-Raf阻害剤及び/又は治療有効量のMEK阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法が提供される。
【0008】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、黒色腫を治療するために使用される。黒色腫は、例えば、V600E変異又はV600K変異を含む黒色腫を含むがこれらに限定されない、B-RAF変異黒色腫であり得る。いくつかの実施形態では、黒色腫は、転移性黒色腫である。
【0009】
特定の実施形態では、抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤である。例示的なトロンビン阻害剤としては、ダビガトラン、アルガトロバン、イノガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、及びデシルジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
他の実施形態では、抗凝固剤は、第Xa因子の阻害剤である。例示的な第Xa因子の阻害剤としては、リバロキサバン(Xarelto)、アピキサバン(Eliquis)、ベトリキサバン、ダレキサバン(YM150)、エドキサバン(Lixiana)、オタミキサバン、レタキサバン(TAK-442)、エリバキサバン、アンチスタシン、ワルファリン、ヘパリン、及びフォンダパリヌクスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
更に他の実施形態では、抗凝固剤は、第XIa因子の阻害剤である。第XIa因子の例示的な阻害剤としては、BMS-262084((2S,3R)-1-[4-(tert-ブチルカルバモイル)ピペラジン-1-カルボニル]-3-[3-(ジアミノメチリデンアミノ)プロピル]-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、BMS-724296、BMS-654457(2-[3-[(2S,4R)-6-カルバムイミドイル-4-メチル-4-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-キノリン-2-イル]-5-(3-メチルブタノイルアミノ)フェニル]-5-カルバモイル安息香酸)、BMS-986177((9R,13S)-13-[4-[5-クロロ-2-(4-クロロトリアゾール-1-イル)フェニル]-6-オキソピリミジン-1)-イル]-3-(ジフルオロメチル)-9-メチル-3,4,7,15-テトラザトリシクロ[12.3.1.02,6]オクタデカ-1(18),2(6),4,14,16-ペンタエン-8-オン)、EP-7041((2S,3R)-3-([2-アミノピリジン-4-イル]メチル)-1-([{1R}-1-シクロヘキシルエチル]カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、ケトアルギニンベースのペプチド模倣体阻害剤、クラバタジン阻害剤、アリールボロン酸阻害剤、及び環状アルギニン含有ケトチアゾールペプチド模倣体阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
例示的なB-Raf阻害剤としては、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、及びPLX-4720が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
例示的なMEK阻害剤としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、及びPD-325901が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
特定の実施形態では、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、又はMEK阻害剤は、毎日の投与計画に従って、又は間欠的に投与される。
【0015】
少なくとも部分的な腫瘍応答、又はより好ましくは完全な腫瘍応答をもたらすために十分な期間、複数サイクルの治療が対象に施され得る。いくつかの実施形態では、期間は、少なくとも6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1.5年、2年又はそれ以上である。
【0016】
抗凝固剤又はB-Raf阻害剤及び/若しくはMEK阻害剤、並びに任意選択的に、他の薬剤は、任意の好適な投与様式によって投与され得る。いくつかの実施形態では、抗凝固剤又はB-Raf阻害剤及び/若しくはMEK阻害剤は、経口、静脈内、又は局所投与される。
【0017】
特定の実施形態では、方法は、追加の抗がん療法剤を投与することを更に含む。例示的な抗がん療法剤としては、化学療法剤、免疫療法剤、生物学的療法剤、ホルモン療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、及び放射性同位体が挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むと最もよく理解される。一般的な実施によれば、図面の様々な特徴は、縮尺どおりでないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小される。図面には、以下の図が含まれる。
【0019】
【
図1A】B16腫瘍は、脇腹モデルでは、WTマウスよりもOPN-KO及びOPN-KIにおいて遅く成長する。トロンビン及びカルボキシペプチダーゼN又はB2によるOPN切断及びその機能調節のモデルを示す。OPN-FL=OPN-完全長(配列番号5)、OPN-R=OPN-Arg(配列番号6)、OPN-L=OPN-Leu(配列番号8)であり、DC=樹状細胞である。
【
図1B】大腸菌のトロンビン処理(10nM)の時系変化により、GST-OPN及びGST-OPN
R153Aが産生され、これはSDS-PAGEによって分析された。FL=完全長、NTF=N末端断片、CTF=C末端断片(配列番号7)である。
【
図1C】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスで成長したB16腫瘍の体積の毎日の決定を示す。
【
図1D】犠牲死後のB16腫瘍重量を示す。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図2A】B16腫瘍は、転移モデルでは、WTマウスよりも低いOPN-KO及びOPN-KIにおいて低い腫瘍量(tumor burden)を有する。腫瘍への静脈内注射の13日後に犠牲死させたマウスの肺を示す。
【
図2C】肺のメラニン含量を示す。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図3A】WTにおけるトロンビンの阻害はOPN-KI表現型を模写する。
図3A.DE含有餌食(白色記号)又は対照餌食(塗りつぶし記号)のいずれかを与えられたWTマウスの脇腹に移植されたB16腫瘍成長の毎日の測定を示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、餌食中にDEを含む場合又は含まない場合での各遺伝子型を比較するスチューデントのt検定によって計算された。
【
図3B】DE含有餌食(白色記号)又は対照餌食(塗りつぶし記号)のいずれかを与えられたOPN-KIマウスにおける犠牲死後のB16腫瘍重量を示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、餌食中にDEを含む場合又は含まない場合での各遺伝子型を比較するスチューデントのt検定によって計算された。
【
図3C】犠牲死後のB16腫瘍体積を示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、餌食中にDEを含む場合又は含まない場合での各遺伝子型を比較するスチューデントのt検定によって計算された。
【
図3D】犠牲死後のB16腫瘍重量を示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、餌食中にDEを含む場合又は含まない場合での各遺伝子型を比較するスチューデントのt検定によって計算された。
【
図3E】犠牲死させたときに採取した血液から決定したaPTTを示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、餌食中にDEを含む場合又は含まない場合での各遺伝子型を比較するスチューデントのt検定によって計算された。
【
図3F】DEで処置したWTマウスにおけるaPTT延長及び腫瘍重量の相関を示す。
【
図3G】転移モデルにおいて、DE又は対照のいずれかを与えられたWT及びOPN-KIマウスにおいて、接種の13日後に犠牲死させたマウスの肺で計数した可視結節の数を示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図3H】接種の13日後の肺のメラニン含量を示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図4A】OPN切断生成物は、WTマウスの腫瘍及び血漿並びにB16細胞に対するそれらの効果において検出することできる。OPN-FL、OPN-R、及びOPN-Lを、腫瘍移植前においてELISAによってアッセイした。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。OPN-FL=OPN完全長、OPN-R=OPN-Arg、OPN-L=OPN-Leu、OPN-CTF=OPN-C末端断片である。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。
【
図4B】OPN-FL、OPN-R、及びOPN-Lを、犠牲死後のマウス由来の血漿においてELISAによってアッセイした。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。OPN-FL=OPN完全長、OPN-R=OPN-Arg、OPN-L=OPN-Leu、OPN-CTF=OPN-C末端断片である。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。
【
図4C】OPN-FL、OPN-R、及びOPN-Lを、腫瘍溶解物(
図4C)においてELISAによってアッセイした。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。OPN-FL=OPN完全長、OPN-R=OPN-Arg、OPN-L=OPN-Leu、OPN-CTF=OPN-C末端断片である。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。
【
図4D】B16細胞の接着に対するOPN断片の効果を決定した。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。OPN-FL=OPN完全長、OPN-R=OPN-Arg、OPN-L=OPN-Leu、OPN-CTF=OPN-C末端断片である。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。
【
図4E】B16細胞の成長に対するOPN断片の効果を決定した。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。OPN-FL=OPN完全長、OPN-R=OPN-Arg、OPN-L=OPN-Leu、OPN-CTF=OPN-C末端断片である。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。
【
図4F】B16細胞の遊走に対するOPN断片の効果を決定した。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。OPN-FL=OPN完全長、OPN-R=OPN-Arg、OPN-L=OPN-Leu、OPN-CTF=OPN-C末端断片である。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。
【
図4G】B16細胞のアポトーシスに対するOPN断片の効果を決定した。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。OPN-FL=OPN完全長、OPN-R=OPN-Arg、OPN-L=OPN-Leu、OPN-CTF=OPN-C末端断片である。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。
【
図5A】OPN-KI及びOPN-KOマウス由来のB16腫瘍は、より多くのマクロファージを含む。WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の腫瘍切片のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色を示す。
【
図5B】抗F4/80抗体で染色したWT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の腫瘍切片を示す。
【
図5C】抗CD3抗体で染色したWT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の腫瘍切片を示す。
【
図5D】フローサイトメトリーによって決定された、OPN-KI、OPN-KO、及びWTマウス由来の腫瘍に存在するF4/80
+細胞の割合を示す。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図6A】クロドロネートによるマクロファージの枯渇は、OPN-KIマウスにおけるB16腫瘍抑制表現型を逆転させる。.WTマウスを、クロドロネート(白記号)又は対照(塗りつぶした記号)リポソームのいずれかで処置し、犠牲死後に腫瘍体積を測定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図6B】OPN-KIマウスをクロドロネート又は対照リポソームのいずれかで処置し、犠牲死後に腫瘍体積を測定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図6C】WT又はOPN-KIマウスをクロドロネート又は対照リポソームのいずれかで処置し、犠牲死後に腫瘍重量を測定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図6D】WT又はOPN-KIマウスをクロドロネート又は対照リポソームのいずれかで処置し、犠牲死後に腫瘍重量を測定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図6E】B16細胞の接種の14日後にクロドロネート又は対照リポソームのいずれかで処置したWT又はOPN-KIマウス由来の骨髄において、F4/80
+細胞の割合を決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図6F】クロドロネート又は対照リポソームのいずれかで処置したWT又はOPN-KIマウスの腫瘍において、F4/80
+細胞の割合を決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図6G】B16細胞の接種の14日後にクロドロネート又は対照リポソームのいずれかで処置したWT又はOPN-KIマウスからの血液において、F4/80
+細胞の割合を決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図7A】免疫不全マウスにおけるB16成長は、OPN状態の影響を受けない。脇腹モデルでのNOG-WT(青色の丸)、NOG-OPN-KI(緑色の三角形)、及びNOG-OPN-KO(赤色の四角)マウスにおいて成長したB16腫瘍の体積の毎日の測定を示す。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図7B】脇腹モデルでのNOG-WT、NOG-OPN-KI、及びNOG-OPN-KOマウスにおける犠牲死後のB16腫瘍重量を示す。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図7C】腫瘍静注注射の13日後に犠牲死させたマウスの肺で計数した可視転移性肺結節の数を示す。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図7D】肺のメラニン含量を示す。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8A】WTマウスと比較したOPN-KI及びOPN-KOマウス由来の腫瘍におけるマクロファージの変化を示す。浸潤マクロファージを、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8B】M1マクロファージを、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8C】M2マクロファージを、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8D】M2マクロファージを、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8E】新しい表現型を有するマクロファージを、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8F】好中球を、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8G】B細胞を、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8H】T細胞を、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスの脇腹モデル由来の腫瘍試料においてフローサイトメトリーによって決定した。全てのデータは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの多重比較検定によって計算した。
【
図8I】OPN断片に応答するRAW細胞によるPGE
2の産生を示す。データは、平均値±SEMとして示される。統計的有意性は、一元配置ANOVA、続いてTukeyの事後検定によって計算された。
**:p<0.01対OPN-R、
***:p<0.001対OPN-R、
****:p<0.001対OPN-R、+:p<0.05対OPN-R
RAAである。下付き文字RAAは、そのOPN断片におけるRAAによるRGD配列の置換を示す。OPNのトロンビン+/-CPN/CPB2切断のモデル、並びにマクロファージ、腫瘍成長、及び腫瘍転移に対するそれらの効果を示す。
【
図8J-1】切断OPN断片は、腫瘍におけるマクロファージの浸潤及び組成に影響を与え、WTマウスにおける腫瘍促進M2マクロファージ(緑色の細胞)を維持する。これらのOPN断片は、OPN-KO又はトロンビン耐性OPN-KIマウスでは存在せず、これによりM2マクロファージが減少し、異なる活性化表現型を有するマクロファージ(赤色の細胞)によって置き換えられ、これによって腫瘍抑制がもたらされる。
【
図8J-2】切断OPN断片は、腫瘍におけるマクロファージの浸潤及び組成に影響を与え、WTマウスにおける腫瘍促進M2マクロファージ(緑色の細胞)を維持する。これらのOPN断片は、OPN-KO又はトロンビン耐性OPN-KIマウスでは存在せず、これによりM2マクロファージが減少し、異なる活性化表現型を有するマクロファージ(赤色の細胞)によって置き換えられ、これによって腫瘍抑制がもたらされる。
【
図9A】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中のアルカリホスファターゼのレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9B】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中のALTのレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9C】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中のASTのレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9D】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中のBUNのレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9E】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中のBUN/クレアチニン比のレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9F】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中のコレステロールのレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9G】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中のクレアチニンのレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9H】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図9I】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血漿中の総ビリルビンのレベルを示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定が行われ、群間の差異は示されなかった。
【
図10A】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、WBCの数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図10B】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、リンパ球の数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図10C】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、単球の数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図10D】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、好中球の数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図10E】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、血小板の数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図10F】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、RBCの数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図10G】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、網状赤血球の数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図10H】WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウス由来の血液細胞数として、ヘモグロビン(Hgb)の数を示す。ANOVA、続いてBonferroni事後検定によって分析したデータは、群間の差異は示さなかった。
【
図11A】異なる数の細胞を接種した雄(塗りつぶした記号)及び雌(白記号)WTマウス(青色の丸)並びにOPN-KIマウス(緑色の三角形)におけるB16成長の比較を示す。2×10
6個の細胞における犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図11B】異なる数の細胞を接種した雄(塗りつぶした記号)及び雌(白記号)WTマウス(青色の丸)並びにOPN-KIマウス(緑色の三角形)におけるB16成長の比較を示す。1×10
6個の細胞における犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図11C】異なる数の細胞を接種した雄(塗りつぶした記号)及び雌(白記号)WTマウス(青色の丸)並びにOPN-KIマウス(緑色の三角形)におけるB16成長の比較を示す。0.5×10
6個の細胞における犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図11D】異なる数の細胞を接種した雄(塗りつぶした記号)及び雌(白記号)WTマウス(青色の丸)並びにOPN-KIマウス(緑色の三角形)におけるB16成長の比較を示す。雄(塗りつぶした記号)及び雌(白記号)WTマウス(青色の丸)並びにOPN-KIマウス(緑色の三角形)における犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図12】アイソタイプ対照と比較した、特異的抗体を使用したフローサイトメトリーによるB16及びRAW細胞上のα9β1及びα4β1インテグリンの発現を示す。
【
図13A】異なる数のB16細胞を接種したNOGマウスでのB16腫瘍成長の比較を示し、B16腫瘍の成長率(WT青色の丸、NOG-OPN-KI緑色の三角形、及びNOG-OPN-KO赤色の四角を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図13B】異なる数のB16細胞を接種したNOGマウスでのB16腫瘍成長の比較を示し、B16腫瘍の成長率(WT青色の丸、NOG-OPN-KI緑色の三角形、及びNOG-OPN-KO赤色の四角を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図13C】異なる数のB16細胞を接種したNOGマウスでのB16腫瘍成長の比較を示し、B16腫瘍の成長率(WT青色の丸、NOG-OPN-KI緑色の三角形、及びNOG-OPN-KO赤色の四角を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図13D】異なる数のB16細胞を接種したNOGマウスでのB16腫瘍成長の比較を示し、それぞれ0.5×10
6個、1×10
6個、及び2×10
6個のB16細胞を接種した後のNOG-WTにおける犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図13E】異なる数のB16細胞を接種したNOGマウスでのB16腫瘍成長の比較を示し、それぞれ0.5×10
6個、1×10
6個、及び2×10
6個のB16細胞を接種した後のNOG-OPN-KIにおける犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図13F】異なる数のB16細胞を接種したNOGマウスでのB16腫瘍成長の比較を示し、それぞれ0.5×10
6個、1×10
6個、及び2×10
6個のB16細胞を接種した後のNOG-OPN-KOにおける犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。ANOVA、続いてTukey事後検定によって分析したデータは、群間の差異を示さなかった。
【
図14A】雄及び雌NOGマウスにおけるB16成長の比較を示し、雄(塗りつぶした記号)又は雌(白記号)NOG-WTマウスにおけるB16腫瘍の成長率を示す。
【
図14B】雄及び雌NOGマウスにおけるB16成長の比較を示し、雄(塗りつぶした記号)又は雌(白記号)NOG-OPN-KIマウスにおけるB16腫瘍の成長率を示す。
【
図14C】雄及び雌NOGマウスにおけるB16成長の比較を示し、雄(塗りつぶした記号)又は雌(白記号)NOG-OPN-KOマウスにおけるB16腫瘍の成長率を示す。
【
図14D】雄及び雌NOGマウスにおけるB16成長の比較を示し、雄(塗りつぶした記号)又は雌(白記号)NOG-WTマウス、NOG-OPN-KIマウス、及びNOG-OPN-KOマウスにおける犠牲死後のB16腫瘍の重量を示す。
【
図15】OPNの異なる断片へのRAW細胞の接着を示す。
【
図16】標的化ベクターの構築を示す。マウス第5染色体由来のSpp1遺伝子配列(ヌクレオチド104,834,137~104,900,066)をWT株(一番上の線)において示す。5’相同性アーム(エクソン1~4)及び3’相同性アーム(エクソン5及び6)を有する1つプラスミドを含む、2つのプラスミドを構築した。ArgからAlaに変異したアミノ酸153のためのコドンを含む、エクソン5(R153A;赤色の矢印)。次いで、これら2つの配列を、LoxP部位に隣接するNeoカセットとともに、標的化ベクターLoxNwCDに挿入した(一番下の線、標的化ベクター)。ATG:開始コドン、DTA:ジフテリア毒素である。
【
図17A】プライマーの位置を示す組換え対立遺伝子地図を示す。
【
図17B】変異R153A遺伝子(淡灰色の文字)についてホモ接合マウスを、PCRスクリーニングによって同定した。
【
図18A】F4/80
+細胞の分析に用いたゲーティング戦略を示す。
【
図18B】腫瘍浸潤マクロファージの分析に用いたゲーティング戦略を示す。
【
図18C】B細胞及びT細胞の分析に用いたゲーティング戦略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤を用いた併用療法を使用してがんを治療する方法が開示される。抗凝固剤は、第Xa因子、第XIa因子、又は他の凝固因子の阻害剤等の、トロンビンの直接阻害剤又はトロンビンの間接阻害剤であり得る。
【0021】
抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤による併用療法を用いたがんを治療するための方法を説明する前に、本発明は、記載される特定の方法又は組成物に限定されるものではなく、したがって、当然に変動し得ると理解されるべきである。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する対象となるためのものであり、限定することが意図されるものではないことも理解されるべきである。
【0022】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の各々の介在する値も、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されていることを理解されたい。任意の記載値又は記載された範囲内の間に介在する値と、任意の他の記載値又はその記載された範囲内の間に介在する値との間の、各々のより小さい範囲が、本発明に包含される。これらの小さい範囲の上限及び下限は、独立して範囲に含まれていても、除外されていてもよく、いずれか、どちらでもない、又は両方の限定が小さい範囲に含まれている各範囲も、記載されている範囲の中で任意の具体的に除外されている限定に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限定の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限定のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0023】
別段の定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるが、ここでは、いくつかの潜在的かつ好ましい方法及び材料を説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本開示は、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先されることを理解されたい。
【0024】
本開示を読むことで当業者に明らかになるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特色から容易に分離され得るか、又はそれと組み合わされ得る別個の構成要素及び特色を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0025】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「抗体(an inhibitor)」への言及は、複数のそのような抗体を含み、「がん細胞(the cancerous cell)」への言及は、当業者に既知のがん細胞、腫瘍細胞、新生物細胞、及び悪性細胞等の、1つ以上のがん細胞及びその同等物への言及を含む。
【0026】
「単離された」とは、ポリペプチドに言及する場合、指示された分子が、その分子が天然に見出される生物全体から分離して、別個であること、又は同じ種類の他の生物学的巨大分子の実質的な非存在下に存在することを意味する。ポリヌクレオチドに関して「単離された」という用語は、天然において通常それに付随する配列の全体若しくは一部を欠く核酸分子、又は天然に存在するが、それに付随する異種配列を有する配列、又は染色体から解離した分子である。
【0027】
本明細書で使用される「B-Raf阻害剤」という用語は、B-Raf活性及び/又はB-Raf発現を阻害する任意の分子(例えば、小分子阻害剤、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸、オリゴヌクレオチド、抗体、又はその断片)を指す。阻害は、完全であってもよいし、又は部分的であってもよい(すなわち、全ての活性、いくつかの活性、又は大部分の活性が、阻害剤によって妨げられる)。B-Raf阻害剤としては、抗B-Raf抗体、B-Rafセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ阻害剤、B-Raf発現のアンチセンス阻害剤、抗B-Rafリボザイム、抗B-Raf siRNA、及び内因性B-Raf阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なB-Raf阻害剤としては、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、及びPLX-4720が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用される「MEK阻害剤」という用語は、MEK活性及び/又はMEK発現を阻害する任意の分子(例えば、小分子阻害剤、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸、オリゴヌクレオチド、抗体、又はその断片)を指す。阻害は、完全であってもよいし、又は部分的であってもよい(すなわち、全ての活性、いくつかの活性、又は大部分の活性が、阻害剤によって妨げられる)。MEK阻害剤としては、抗MEK抗体、MEKセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ阻害剤、MEK発現のアンチセンス阻害剤、抗MEKリボザイム、抗MEK siRNA、及び内因性MEK阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なMEK阻害剤としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、及びPD-325901が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される「トロンビン阻害剤」という用語は、トロンビン活性及び/又はトロンビン発現を阻害する任意の分子(例えば、小分子阻害剤、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸、オリゴヌクレオチド、抗体、又はその断片)を指す。阻害は、完全であってもよいし、又は部分的であってもよい(すなわち、全ての活性、いくつかの活性、又は大部分の活性が、阻害剤によって妨げられる)。トロンビン阻害剤としては、抗トロンビン抗体、トロンビン発現のアンチセンス阻害剤、抗トロンビンリボザイム、抗トロンビンsiRNA、及び内因性トロンビン阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なトロンビン阻害剤としては、ダビガトラン、アルガトロバン、イノガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、及びデシルジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される「第Xa因子阻害剤」という用語は、第Xa因子活性及び/又は第Xa因子発現を阻害する任意の分子(例えば、小分子阻害剤、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸、オリゴヌクレオチド、抗体、又はその断片)を指す。阻害は、完全であってもよいし、又は部分的であってもよい(すなわち、全ての活性、いくつかの活性、又は大部分の活性が、阻害剤によって妨げられる)。第Xa因子阻害剤としては、抗第Xa因子抗体、第Xa因子発現のアンチセンス阻害剤、抗第Xa因子リボザイム、抗第Xa因子siRNA、及び内因性第Xa因子阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な第Xa因子阻害剤としては、リバロキサバン(Xarelto)、アピキサバン(Eliquis)、ベトリキサバン、ダレキサバン(YM150)、エドキサバン(Lixiana)、オタミキサバン、レタキサバン(TAK-442)、エリバキサバン、アンチスタシン、ワルファリン、ヘパリン、及びフォンダパリヌクスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される「第XIa因子阻害剤」という用語は、第XIa因子活性及び/又は第XIa因子発現を阻害する任意の分子(例えば、小分子阻害剤、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸、オリゴヌクレオチド、抗体、又はその断片)を指す。阻害は、完全であってもよいし、又は部分的であってもよい(すなわち、全ての活性、いくつかの活性、又は大部分の活性が、阻害剤によって妨げられる)。第XIa因子阻害剤としては、抗第XIa因子抗体、第XIa因子発現のアンチセンス阻害剤、第XIa因子リボザイム、第XIa因子siRNA、及び内因性第XIa因子阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な第XIa因子阻害剤としては、BMS-262084((2S,3R)-1-[4-(tert-ブチルカルバモイル)ピペラジン-1-カルボニル]-3-[3-(ジアミノメチリデンアミノ)プロピル]-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、BMS-724296、BMS-654457(2-[3-[(2S,4R)-6-カルバムイミドイル-4-メチル-4-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-キノリン-2-イル]-5-(3-メチルブタノイルアミノ)フェニル]-5-カルバモイル安息香酸)、BMS-986177((9R,13S)-13-[4-[5-クロロ-2-(4-クロロトリアゾール-1-イル)フェニル]-6-オキソピリミジン-1)-イル]-3-(ジフルオロメチル)-9-メチル-3,4,7,15-テトラザトリシクロ[12.3.1.02,6]オクタデカ-1(18),2(6),4,14,16-ペンタエン-8-オン)、EP-7041((2S,3R)-3-([2-アミノピリジン-4-イル]メチル)-1-([{1R}-1-シクロヘキシルエチル]カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、ケトアルギニンベースのペプチド模倣体阻害剤、クラバタジン、アリールボロン酸阻害剤、及び環状アルギニン含有ケトチアゾールペプチド模倣体阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。第XIa因子阻害剤の更なる説明については、例えば、Rami et al.(2016)Expert Opin.Ther.Pat.26(3):323-345、Quan et al.(2018)J.Med.Chem.61,17:7425-7447、Wong et al.(2021)Res.Pract.Thromb.Haemost.5(4):e12524、Wong et al.(2015)J Thromb Thrombolysis 40(4):416-23、及びGomez-Outes et al.(2011)Ther.Adv.Cardiovasc.Dis.5(1):33-59(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0032】
「治療」、「治療すること」、「治療する」等の用語は、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指すために本明細書で使用される。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防するという点では予防的であり得、かつ/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全な安定化若しくは治癒という点では治療的であり得る。「治療」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患又は症状の素因を有し得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において、疾患及び/又は症状の発生を防止すること、(b)疾患及び/又は症状を阻害すること、すなわち、それらの発症を阻止すること、又は(c)疾患症状を緩和すること、すなわち、疾患及び/又は症状の退行を引き起こすことを含む。治療を必要とするものとしては、既に罹患しているもの(例えば、がんを有するもの)、並びに予防が所望されるもの(例えば、がんを発症する遺伝的素因に起因するがんに対する感受性が高いもの、発がん性物質への環境曝露を有することが疑われるもの、再発のリスクを有するもの等)が挙げられる。
【0033】
「腫瘍」、「がん」、及び「新生物」という用語は、互換的に使用され、その成長、増殖、又は生存が、対応する正常細胞の成長、増殖、又は生存より大きい哺乳動物の細胞又は細胞集団、例えば、細胞増殖性、過剰増殖性、又は分化障害を指す。典型的には、成長は制御されていない。「悪性腫瘍」という用語は、近傍組織への侵入を指す。「転移」又は二次、再発又は再発腫瘍、がん又は新生物という用語は、腫瘍、がん又は新生物の、対象内の他の部位、位置、又は領域への拡散又は散在を指し、その部位、位置、又は領域は、原発腫瘍又はがんとは異なる。新生物、腫瘍、及びがんは、良性、悪性、転移性、及び非転移性種を含み、新生物、腫瘍、若しくはがん、又は進行中、悪化中、安定した、若しくは寛解中の新生物、腫瘍、がん、若しくは転移の任意の病期(I、II、III、IV、若しくはV)又はグレード(G1、G2、G3等)を含む。特に、「腫瘍」、「がん」、及び「新生物」という用語には、扁平上皮がん、腺がん、腺扁平上皮がん、未分化がん、大細胞がん、及び小細胞がん等のがんが含まれ、限定されないが、頭頸部がん、皮膚がん、乳がん、卵巣がん、黒色腫、膵臓がん、末梢神経腫、膠芽腫、副腎皮質がん、エイズ関連リンパ腫、肛門がん、膀胱がん、髄膜腫、神経膠腫、星状細胞腫、子宮頸がん、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、子宮内膜がん、上皮がん、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、胆嚢がん、胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、妊娠性栄養腫瘍、有毛細胞白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、咽頭下部がん、島細胞がん、カポジ肉腫、喉頭がん、白血病、口唇がん、口腔がん、肝臓がん、男性乳がん、悪性中皮腫、髄芽腫、メルケル細胞がん、転移性子宮頸扁平上皮細胞がん、多発性骨髄腫及び他の形質細胞腫瘍、真菌症ファンゴイド及びセザリー症候群、骨髄異形成症候群、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、中咽頭がん、骨肉腫及び骨の線維性組織球腫を含む骨がん、副鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、小腸がん、軟組織肉腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、松果体芽腫、精巣がん、胸腺腫、胸腺がん、甲状腺がん、腎盂及び尿管の移行上皮がん、尿道がん、子宮肉腫、膣がん、外陰部がん、並びにウィルムス腫瘍及び他の小児腎臓腫瘍が含まれる。
【0034】
特に、「黒色腫」という用語は、転移性黒色腫を含む任意の病期の任意の種類の黒色腫を含む。例えば、「黒色腫」という用語には、悪性黒子、悪性黒子由来黒色腫、表在拡大型黒色腫、末端黒子型黒色腫、粘膜黒色腫、結節性黒色腫、ポリポイド黒色腫、及び線維形成性黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。黒色腫は、黒色腫細胞によってコードされるタンパク質が、患者の体内の他の場所のタンパク質と異なることを意味する、ゲノムDNA配列の変化(変異)を含有し得る。一例として、細胞への成長シグナル伝達に関与するタンパク質であるB-RAFは、変異を有し得る。したがって、この用語は、また、V600E変異又はV600K変異を含む黒色腫を含むが、これらに限定されないB-RAF変異黒色腫も含む。
【0035】
本明細書で使用される「OPN関連がん」という用語は、オステオポンチンの過剰発現若しくはオステオポンチンの過剰活性に関連する、又はオステオポンチンの切断断片に依存する任意のがんを指す。OPN関連がんとしては、黒色腫、乳がん、肺がん(例えば、肺腺がん、肺扁平上皮がん、非小細胞がん)、卵巣がん、膠芽腫、褐色細胞腫、傍神経節腫、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、腎がん(例えば、腎がん、乳頭状腎細胞がん)、肝がん、膵臓がん(例えば、膵管がん)、前立腺がん、直腸がん(例えば、結腸直腸がん)、肉腫、精巣胚細胞がん、胸腺がん、甲状腺がん、及び子宮がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「抗腫瘍活性」とは、細胞増殖率の低下、したがって、既存の腫瘍又は治療中に生じる腫瘍の成長率の低下、及び/又は既存の新生(腫瘍)細胞又は新たに形成された新生細胞の破壊、したがって、治療中の腫瘍の全体的なサイズの減少を意図する。そのような活性は、動物モデルを使用して評価することができる。
【0037】
抗凝固剤(例えば、トロンビン阻害剤、第Xa因子、第XIa因子、若しくは他の凝固因子)、B-Raf阻害剤、又はMEK阻害剤の「治療有効用量又は治療有効量」とは、本明細書に記載されるように、抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤を組み合わせて投与したときに、抗腫瘍活性等の肯定的な治療応答をもたらす量を意図する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「腫瘍応答」という用語は、全ての測定可能な病変の減少又は消失を意味する。腫瘍応答の基準は、WHO報告基準[WHO Offset Publication,48-World Health Organization,Geneva,Switzerland,(1979)]に基づいている。理想的には、全ての一次元的又は二次元的に測定可能な病変は、各評価で測定されるべきである。任意の臓器に複数の病変が存在する場合、そのような測定は不可能である可能性があり、そのような状況下では、可能な場合、最大6つの代表的な病変が選択されるべきである。
【0039】
本明細書で使用される「完全奏効」(CR)という用語は、少なくとも4週間間隔で2つの評価によって決定される、全ての臨床的に検出可能な悪性疾患の完全消失を意味する。
【0040】
本明細書で使用される「部分奏効」(PR)という用語は、評価可能な疾患の進行なしに、かつ少なくとも4週間間隔での少なくとも2つの連続した評価によって決定される任意の新しい病変の証拠なしに、全ての測定可能な疾患の最長垂直径の積の和におけるベースラインからの50%以上の減少を意味する。評価は、溶解性病変のサイズの部分的な減少、溶解性病変の再石灰化、又は芽球性病変の密度の低下を示すべきである。
【0041】
「実質的に精製された」とは、一般に、物質が存在する試料の大部分の割合を該物質が占めるような、物質(抗体、化合物、薬物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド)の単離を指す。典型的には、試料中、実質的に精製された成分は、試料の50%、好ましくは80%~85%、より好ましくは90%~95%を占める。目的の物質を精製するための技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、及び密度に応じた沈降が含まれる。
【0042】
「レシピエント」、「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、診断、治療、又は療法が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。治療の目的のための「哺乳動物」とは、ヒト、家畜及び農場動物、並びにイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の動物園、競技、又は愛玩用の動物を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0043】
「薬学的に許容される賦形剤又は担体」は、任意選択的に本発明の組成物に含まれてもよく、患者に有意な有害な毒性効果を引き起こさない賦形剤を指す。
【0044】
「薬学的に許容される塩」としては、限定されないが、アミノ酸塩、無機酸で調製される塩、例えば、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物、及び硝酸塩、又は前述のいずれかの対応する無機酸形態から調製される塩、例えば、塩酸塩等、又は有機酸で調製される塩、例えば、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸塩及びステアリン酸塩、並びにエストレート、グルセプテート及びラクトビオン酸塩が挙げられる。同様に、薬学的に許容されるカチオンを含有する塩は、限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、及びアンモニウム(置換アンモニウムを含む)を含む。
【0045】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前に専らそれらの開示のために提供されている。本明細書におけるいかなる内容も、本発明が先行発明を理由に、そのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0046】
がん治療のための併用療法
本発明は、OPN関連がんを治療するための新しい治療方法論の発見に基づいている。本方法は、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤(すなわち、直接又は間接トロンビン阻害剤)の送達を利用する。特定の理論に縛られることなく、OPNは、多くの種類のがんの浸潤性及び転移性進行を促進することに関与している。OPNの過剰発現は、がんの進行及び予後不良と関連する。トロンビンは、インビボでOPNを切断し、OPN機能を調節する。OPNのトロンビン切断断片は、腫瘍細胞接着、走化性、及びアポトーシス、並びに宿主抗腫瘍免疫応答に対する効果とともに、がん生物学に対して重大な病態生理学的影響を有する(実施例1を参照)。OPN切断断片のレベルの上昇は、腫瘍の成長及び転移を促進する。したがって、抗凝固剤(すなわち、直接又は間接トロンビン阻害剤)は、OPN関連がんを治療するために使用することができる。
【0047】
現在、いくつかのOPN関連がんは、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤で治療される。OPN関連がんの治療に直接又は間接トロンビン阻害剤を加えることは、転帰を改善し得る。したがって、抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤を用いた併用療法は、OPNが調節不全である様々な種類のがんを治療するために使用することができる。
【0048】
OPN関連がんの治療に使用することができる抗凝固剤の例としては、ダビガトラン、アルガトロバン、イノガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、及びデシルジンが挙げられるが、これらに限定されない、トロンビン阻害剤;リバロキサバン(Xarelto)、アピキサバン(Eliquis)、ベトリキサバン、ダレキサバン(YM150)、エドキサバン(Lixiana)、オタミキサバン、レタキサバン(TAK-442)、エリバキサバン、アンチスタシン、ワルファリン、ヘパリン、及びフォンダパリヌクスが挙げられるが、これらに限定されない、第Xa因子阻害剤;並びにBMS-262084((2S,3R)-1-[4-(tert-ブチルカルバモイル)ピペラジン-1-カルボニル]-3-[3-(ジアミノメチリデンアミノ)プロピル]-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、BMS-724296、BMS-654457(2-[3-[(2S,4R)-6-カルバムイミドイル-4-メチル-4-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-キノリン-2-イル]-5-(3-メチルブタノイルアミノ)フェニル]-5-カルバモイル安息香酸)、BMS-986177((9R,13S)-13-[4-[5-クロロ-2-(4-クロロトリアゾール-1-イル)フェニル]-6-オキソピリミジン-1)-イル]-3-(ジフルオロメチル)-9-メチル-3,4,7,15-テトラザトリシクロ[12.3.1.02,6]オクタデカ-1(18),2(6),4,14,16-ペンタエン-8-オン)、EP-7041((2S,3R)-3-([2-アミノピリジン-4-イル]メチル)-1-([{1R}-1-シクロヘキシルエチル]カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、ケトアルギニンベースのペプチド模倣体阻害剤、クラバタジン阻害剤、アリールボロン酸阻害剤、及び環状アルギニン含有ケトチアゾールペプチド模倣体阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない、第XIa因子の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
OPN関連がんの治療に使用することができるB-Raf阻害剤の例としては、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、及びPLX-4720が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
OPN関連がんの治療に使用することができるMEK阻害剤の例としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、及びPD-325901が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明の方法は、既存の腫瘍の治療を対象とするが、該方法は、治療及び転移中に生じる更なる腫瘍成長を防止するために有用であり得ることが認識される。
【0052】
医薬組成物
抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及びMEK阻害剤は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を任意選択的に含む医薬組成物に製剤化することができる。例示的な賦形剤としては、炭水化物、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。注射用組成物に好適な賦形剤としては、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質、及び界面活性剤が挙げられる。糖、誘導体化された糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化された糖、及び/又は糖ポリマー等の炭水化物が賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤としては、例えば、単糖類、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等;二糖類、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等;多糖類、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等;及びアルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール等が挙げられる。賦形剤は、また、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせ等の無機塩又は緩衝剤も含むことができる。
【0053】
組成物は、また、微生物成長を防止又は抑止するための抗菌剤も含むことができる。本発明に好適な抗菌剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルソール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
抗酸化剤も同様に、組成物中に存在することができる。抗酸化剤は、酸化を防止し、それにより、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、MEK阻害剤、又は調製物の他の成分の劣化を防止するために使用される。本発明で使用するために好適な抗酸化剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
界面活性剤は、賦形剤として存在することができる。例示的な界面活性剤としては、「Tween 20」及び「Tween 80」等のポリソルベート、並びにF68及びF88(BASF、Mount Olive,New Jersey))等のプルロニック(登録商標);ソルビタンエステル;レシチン及び他のホスファチジルコリン等のリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン(但し、好ましくはリポソーム形態ではない)、脂肪酸、並びに脂肪エステル等の脂質;コレステロール等のステロイド;EDTA等のキレート剤;並びに亜鉛、及び他のそのような好適なカチオンが挙げられる。
【0056】
酸又は塩基は、組成物中に賦形剤として存在することができる。使用することができる酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される酸が挙げられる。好適な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
組成物中の抗凝固剤、B-Raf阻害剤、又はMEK阻害剤の量(例えば、薬物送達系に含まれる場合)は、いくつかの要因に応じて異なるが、組成物が単位剤形又は容器(例えば、バイアル)である場合、最適には治療有効用量である。治療有効用量は、どの量が臨床的に所望のエンドポイントとなるのかを決定するために、増加量の組成物を繰り返し投与することにより実験的に決定することができる。
【0058】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の性質及び機能、並びに組成物の特定の必要性に応じて異なる。典型的には、任意の個々の賦形剤の最適量は、日常的な実験を通じて、すなわち、様々な量(低量~高量に及ぶ)の賦形剤を含有する組成物を調製すること、安定性及び他のパラメータを調べること、次いで、有意な副作用なしに最適な性能が達成される範囲を決定することによって決定される。しかしながら、一般的に、賦形剤は、組成物中に、賦形剤の約1重量%~約99重量%、好ましくは約5重量%~約98重量%、より好ましくは約15重量%~約95重量%の量で存在し、最も好ましくは、濃度が30重量%未満である。これらの前述の医薬賦形剤は、他の賦形剤とともに、“Remington:The Science&Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams&Williams,(1995),the“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、及びKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0059】
組成物は、全ての種類の製剤、特に、注射に適した製剤、例えば、使用前に溶媒で再構成することができる粉末又は凍結乾燥物、並びに即注射可能な溶液又は懸濁液、使用前にビヒクルと組み合わせるための乾燥不溶性組成物、並びにエマルジョン及び投与前に希釈するための液体濃縮物を包含する。注射前に固体組成物を再構成するために適した希釈剤の例としては、注射用静菌水、5%ブドウ糖水溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、及びそれらの組み合わせが挙げられる。液体医薬組成物に関して、溶液及び懸濁液が想定される。追加の好ましい組成物としては、経口、眼、又は局所送達のための組成物が挙げられる。
【0060】
本明細書における医薬製剤は、意図される送達及び使用の様式に応じて、シリンジ、移植デバイス等に収容することもできる。好ましくは、本明細書に記載の抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及び/又はMEK阻害剤を含む組成物は、単位剤形であり、これは、予め計量された又は予め包装された形態での単回投与に適したコンジュゲート又は組成物の量を意味する。
【0061】
本明細書における組成物は、任意選択的に、がんを治療するための他の薬物、又は状態若しくは疾患について対象を治療するために使用される他の薬剤等の、1つ以上の追加の薬剤を含み得る。配合調製物は、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及び/又はMEK阻害剤、並びに化学療法剤、免疫療法剤、生物学的療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、及び放射性同位体等であるがこれらに限定されない、がんを治療するための1つ以上の他の薬物を含み得る。あるいは、そのような薬剤は、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及び/又はMEK阻害剤を含む組成物とは別個の組成物中に含まれ、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及び/又はMEK阻害剤を含む組成物と同時に、その前に、又はその後に併用投与することができる。
【0062】
投与
少なくとも1つの治療有効用量の抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤が投与される。これらの薬剤の各々の「治療有効用量又は治療有効量」とは、他の薬剤と組み合わせて投与されたときに、がん、特にOPN関連がんのための個体の治療に関して肯定的な治療応答をもたらす量が意図される。
【0063】
OPN関連がんとしては、黒色腫、乳がん、肺がん(例えば、肺腺がん、肺扁平上皮がん、非小細胞がん)、卵巣がん、膠芽腫、褐色細胞腫、傍神経節腫、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、腎がん(例えば、腎がん、乳頭状腎細胞がん)、肝がん、膵臓がん(例えば、膵管がん)、前立腺がん、直腸がん(例えば、結腸直腸がん)、肉腫、精巣胚細胞がん、胸腺がん、甲状腺がん、及び子宮がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
特に興味深いことは、本明細書に定義される抗腫瘍作用を提供する、これらの薬剤の量である。「肯定的な治療応答」とは、本発明による治療を受けている個体が、その個体が治療を受けているがんの1つ以上の症状の改善を示すことを意図する。したがって、例えば、「肯定的な治療応答」は、併用療法に関連する疾患の改善、及び/又は併用療法に関連する疾患の1つ以上の症状の改善である。したがって、例えば、肯定的な治療応答は、疾患における(1)腫瘍サイズの減少、(2)がん細胞数の減少、(3)腫瘍成長の阻害(すなわち、ある程度遅延させること、好ましくは停止)、(4)末梢臓器へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、ある程度遅延させること、好ましくは停止)、(5)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度遅延させること、好ましくは停止)、及び(6)がんに関連する1つ以上の症状のある程度の緩和という改善のうちの1つ以上を指す。そのような治療応答は、改善の程度として更に特徴付けることができる。したがって、例えば、改善は、完全奏効として特徴付けられ得る。「完全奏効」とは、身体検査、臨床検査、核及び放射線による検査(すなわち、CT(コンピュータ断層撮影)並びに/又はMRI(磁気共鳴画像法))、並びに試験に参加した時点で陽性であった全ての初期異常若しくは部位について繰り返された他の非侵襲的手技によって確認された全ての測定可能又は評価可能な疾患の全ての症状及び兆候の消失の証拠である。代替として、疾患の改善は、部分奏効であると分類され得る。「部分奏効」とは、治療前の測定値と比較した場合に、測定可能な全ての病変の垂直径の積の和における50%を超える減少を意図する(評価可能な応答のみを有する患者の場合、部分奏効は適用されない)。
【0065】
特定の実施形態では、抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤の各々の複数の治療有効用量が、毎日の投与計画に従って、又は間欠的に投与される。例えば、治療有効用量は、週に1日、週に2日、週に3日、週に4日、又は週に5日等投与することができる。「間欠的」投与とは、治療有効用量が、例えば、隔日、2日毎、3日毎等に投与することができることが意図される。例えば、いくつかの実施形態では、抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤は、1、2、3、4、5、6、7、8...10...15...24週間等の長期間にわたって、週2回又は週3回投与される。「週2回」又は「1週間当たり2回」とは、当該薬剤の2回分の治療有効用量が、7日間の期間内に、投与の最初の週の1日目から開始して、最短の投与間隔は72時間、最長の投与間隔は96時間で対象に投与されることを意図する。「週3回」又は「1週間当たり3回」とは、3回分の治療有効用量が7日間の期間内に対象に投与され、最短の投与間隔48時間、最長の投与間隔72時間を可能にすることを意図する。本発明の目的のために、この種類の投与は、「間欠的」な療法と称される。本発明の方法によれば、対象は、所望の治療応答が達成されるまで、1回以上の週サイクルの間、間欠的な療法(すなわち、治療有効量の週2回又は週3回の投与)を受けることができる。薬剤は、本明細書で後述する任意の許容される投与経路によって投与することができる。
【0066】
抗凝固剤は、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤の前、それと同時、又はその後に投与することができる。B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と同時に提供される場合、抗凝固剤は、同じ組成物中又は異なる組成物中に提供することができる。したがって、3つの薬剤又は3つの薬剤のうちの2つは、併用療法によって個体に提供することができる。「併用療法」とは、療法を受けている対象において物質の組み合わせの治療効果がもたらされるようなヒト対象への投与を意図する。例えば、併用療法は、特定の投与計画に従って、抗凝固剤を含む少なくとも1つの治療有効用量の医薬組成物と、少なくとも1つのB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤を含む少なくとも1つの治療有効用量の医薬組成物とを投与することによって達成され得る。同様に、B-Raf阻害剤又はMEK阻害剤は、抗凝固剤を含む同じ医薬組成物中又は別個の医薬組成物中において、少なくとも1つの治療用量で投与することができる。療法を受けている対象にこれらの物質の組み合わせの治療効果がもたらされる限り、別個の医薬組成物の投与は、同時(at the same time)(すなわち、同時(simultaneously))又は異なる時間(すなわち、同じ日又は異なる日に、いずれかの順序で、逐次的に)であり得る。
【0067】
特定の実施形態では、抗凝固剤は、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤による治療の間に抗凝固剤レベルが対象において十分であることを確実にするために、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤の投与の前に短期間投与され、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤による治療が中止された後に短期間継続される。例えば、抗凝固剤は、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤の第1の用量の投与の1週間前から投与され、対象へのB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤の最後の用量の投与後1週間継続することができる。
【0068】
他の実施形態では、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及び/又はMEK阻害剤等の薬剤を含む医薬組成物は、徐放性製剤、又は徐放デバイスを使用して投与される製剤である。そのようなデバイスは、当該技術分野において周知であり、例えば、経皮パッチ、及び非徐放性医薬組成物で徐放効果を達成するために、様々な用量で連続した定常状態で経時的に薬物送達を提供することができる小型の埋込型ポンプを含む。
【0069】
医薬製剤は、投与直前には液体溶液又は懸濁液の形態であってもよいが、シロップ、クリーム、軟膏、錠剤、カプセル、粉末、ゲル、マトリックス、坐剤等の別の形態をとってもよい。抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及び/又はMEK阻害剤を含む医薬組成物は、当該技術分野で既知の任意の医学的に許容される方法に従って、同じ又は異なる投与経路を用いて投与され得る。好適な投与経路としては、皮下(SC)、腹腔内(IP)、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、又は注入、経口及び肺、経鼻、局所、経皮、並びに坐剤等の非経口投与が挙げられる。組成物が肺送達によって投与される場合、治療有効用量は、血流中の抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤等の薬剤の可溶性レベルが、非経口、例えば、SC、IP、IM、又はIV投与される治療有効用量を用いて得られるものと等しいように調整される。いくつかの実施形態では、抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤を含む医薬組成物は、IM又はSC注射、特に、がん療法プロトコルで使用される療法剤が投与される領域に局所的にIM又はSC注射によって投与される。いくつかの場合では、組成物は、腫瘍又はがん細胞に直接投与され得る。投与は、局所カテーテルを介した灌流、又は病変内直接注射によって行われ得る。黒色腫の場合、抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤は、例えば、パッチ又はゲル若しくは軟膏で局所投与され得る。
【0070】
別の実施形態では、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、及び/又はMEK阻害剤を含む医薬組成物は、例えば、組織におけるがんの進行又は転移を防止するために、予防的に投与される。そのような予防的使用は、発がん物質への環境曝露又はがんを発症する遺伝的素因に起因するがんを発症するリスクが高い対象にとって特に価値がある。
【0071】
投与される様々な組成物のそれぞれの量に影響を及ぼす要因としては、投与様式、投与頻度(すなわち、毎日、又は週に2回又は3回等の間欠投与)、治療を受けている特定の疾患、疾患の重症度、病歴、個体が別の療法剤との同時治療を受けているか否か、並びに治療を受けている個体の年齢、身長、体重、健康、及び身体状態が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、治療を受けている対象の体重が増加するにつれて、この薬剤のより高い投与量が好ましい。
【0072】
特定の実施形態では、がんを有する患者の治療方法は、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤による治療サイクルに続いて、患者が薬剤の望ましくない効果から「回復」することを可能にするために、抗凝固剤、B-Raf阻害剤、又はMEK阻害剤が投与されない休止期間を含む。B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤の複数回投与は、毎日の投与計画に従って、又は間欠的に投与することができ、続いて休止期間となる。例えば、投与レジメン間の休止期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の期間であり得る。その後、所望の組み合わせ効果を達成するために、新しいスケジュールでの投与が行われ得る。
【0073】
前述の投与計画に従って療法を受ける対象が、部分奏効又は長期間の寛解後に再発を示す場合、疾患の完全な寛解を達成するために、その後の一連の併用療法が必要であり得る。したがって、最初の治療期間からの一定期間後に、対象は、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固療法を含む1つ以上の追加の治療期間を享受し得る。治療期間の間のそのような期間は、本明細書では中止期間と称される。中止期間の長さは、これらの療法剤との任意の以前の治療期間の併用療法により達成された腫瘍応答の程度(すなわち、完全対部分的)に依存することを認識されたい。
【0074】
更に、抗凝固剤並びにB-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤による治療は、手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、又は分子標的療法若しくは生物学的療法等の、がんの他の任意の医学的治療と組み合わせてもよい。これらの他の医学的治療方法と、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤との任意の組み合わせを使用して、対象のがんを効果的に治療することができる。
【0075】
例えば、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤による治療は、アビトレキセート、アドリアマイシン、アドルシル、アムサクリン、アスパラギナーゼ、アントラサイクリン、アザシチジン、アザチオプリン、bicnu、ブレノキサン、ブスルファン、ブレオマイシン、カンプトサール、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン、セルビジン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コスメゲン、シタラビン、サイトサール、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エレンス、エルスパー、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、フルダラ、ゲムシタビン、ジェムザール、ハイカムチン、ヒドロキシウレア、ハイドレア、イダマイシン、イダルビシン、イホスファミド、IFEX、イリノテカン、ランビス、ロイケラン、ロイスタチン、マツラン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、ムタマイシン、ミレラン、ミロサール、ナベルビン、ニペント、ノバントロン、オンコビン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パラプラチン、ペントスタチン、プラチノール、プリカマイシン、プロカルバジン、プリントール、ラルチトレキセド、タキソテール、タキソール、テニポシド、チオグアニン、トムデックス、トポテカン、バルルビシン、ベルバン、ベプシド、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP-16及びブモン等の、これらに限定されない1つ以上の化学療法剤を用いた化学療法と組み合わせてもよい。
【0076】
別の例では、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤による治療は、メシル酸イマチニブ(Gleevec、STI-571としても知られている)、ゲフィチニブ(Iressa、ZD1839としても知られている)、エルロチニブ(Tarcevaとして市販されている)、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、ダサチニブ(Sprycel)、ラパチニブ(Tykerb)、ニロチニブ(Tasigna)、及びボルテゾミブ(Velcade)等のチロシンキナーゼ阻害剤;トファシチニブ等のヤヌスキナーゼ阻害剤;クリゾチニブ等のALK阻害剤;オブクラックス及びゴシポール等のBcl-2阻害剤;イニパリブ及びオラパリブ等のPARP阻害剤;ペリホシン等のPI3K阻害剤;アパチニブ等のVEGF受容体2阻害剤;[D-Lys(6)]-LHRHと連結されたAN-152(AEZS-108)ドキソルビシン;PD-0332991及びLEE011等のCDK阻害剤;サリノマイシン等のHsp90阻害剤;ビンタフォリド等の小分子薬物コンジュゲート;テムシロリムス(Torisel)、エベロリムス(Afinitor)、ベムラフェニブ(Zelboraf)、トラメチニブ(Mekinist)、及びダブラフェニブ(Tafinlar)等のセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤;イマチニブ、ダサチニブ、及びニロチニブ等のC-Kit阻害剤;ビニメチニブ等のNRAS阻害剤;並びにリツキシマブ(MabThera又はRituxanとして市販されている)、トラスツズマブ(Herceptin)、アレムツズマブ、セツキシマブ(Erbituxとして市販されている)、パニツムマブ、ベバシズマブ(Avastinとして市販されている)、及びイピリムマブ(Yervoy)等のモノクローナル抗体等の、これらに限定されない1つ以上の小分子阻害剤又はモノクローナル抗体を用いた標的療法と組み合わせてもよい。
【0077】
更なる例では、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤による治療は、がんワクチン(例えば、E75 HER2由来ペプチドワクチン、nelipepimut-S(NeuVax)、Sipuleucel-T))、抗体療法(例えば、トラスツズマブ、Ado-トラスツズマブエムタンシン、アレムツズマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、又はリツキシマブ)、サイトカイン療法(例えば、I型(IFNα及びIFNβ)、II型(IFNγ)、及びIII型(IFNλ)を含むインターフェロン、並びにインターロイキン-2(IL-2)を含むインターロイキン)、補助免疫療法(例えば、ポリサッカライド-K)、養子T細胞療法、並びに免疫チェックポイント遮断療法(例えば、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ)のいずれかを使用した、これらを含むがこれらに限定されない免疫療法と組み合わせてもよい。
【0078】
更なる例では、B-Raf阻害剤及び/又はMEK阻害剤と組み合わせた抗凝固剤による治療は、ヨウ素-131、ストロンチウム-89、サマリウム-153、及びラジウム-223を含むがこれらに限定されない、放射性同位体を用いる放射線療法と組み合わせてもよい。更に、放射線療法は、限定されないが、シスプラチン、ニモラゾール、及びセツキシマブ等の放射線増感薬の投与と組み合わせてもよい。
【0079】
本開示の非限定的な態様の例
上記の本主題の実施形態を含む態様は、単独で、又は1つ以上の他の態様若しくは実施形態との組み合わせで有益であり得る。上記の説明を限定することなく、番号1~23の本開示の特定の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を読めば当業者には明らかであるように、個々に番号付けされた態様の各々は、先行する又は後に続く個々に番号付けされた態様のいずれかとともに使用し又は組み合わせてもよい。これは、態様の全てのそのような組み合わせにサポートを提供することを意図しており、以下に明示的に提供される態様の組み合わせに限定されない。
1.オステオポンチン(OPN)関連がんを治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の抗凝固剤を、治療有効量のB-Raf阻害剤又はマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法。
2.抗凝固剤は、直接トロンビン阻害剤である、態様1に記載の方法。
3.トロンビン阻害剤が、ダビガトラン、アルガトロバン、イノガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、及びデシルジンからなる群から選択される、態様2に記載の方法。
4.B-Raf阻害剤が、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、LGX818、GDC-0879、及びPLX-4720からなる群から選択される、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.抗凝固剤が、治療有効量のB-Raf阻害剤及び治療有効量のMEK阻害剤と組み合わせて投与される、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.MEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、及びPD-325901からなる群から選択される、態様1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.抗凝固剤、B-Raf阻害剤、又はMEK阻害剤が、毎日の投与計画に従って、又は間欠的に投与される、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.少なくとも部分的な腫瘍応答をもたらすために十分な期間、複数サイクルの治療が対象に施される、態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.期間は、少なくとも6ヶ月である、態様8に記載の方法。
10.期間は、少なくとも12ヶ月である、態様9に記載の方法。
11.完全な腫瘍応答がもたらされる、態様8~10のいずれか1つに記載の方法。
12.抗凝固剤又はB-Raf阻害剤が、経口、静脈内、又は局所投与される、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.OPN関連がんは、黒色腫である、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.黒色腫は、B-RAF変異黒色腫である、態様13に記載の方法。
15.B-RAF変異黒色腫は、V600E変異又はV600K変異を含む、態様14に記載の方法。
16.黒色腫は、転移性である、態様13~15のいずれか1つに記載の方法。
17.対象は、ヒトである、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.抗凝固剤は、第Xa因子の阻害剤である、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.第Xa因子の阻害剤が、リバロキサバン(Xarelto)、アピキサバン(Eliquis)、ベトリキサバン、ダレキサバン(YM150)、エドキサバン(Lixiana)、オタミキサバン、レタキサバン(TAK-442)、エリバキサバン、アンチスタシン、ワルファリン、ヘパリン、及びフォンダパリヌクスからなる群から選択される、態様18に記載の方法。
20.抗凝固剤は、第XIa因子の阻害剤である、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。
21.第XIa因子の阻害剤が、BMS-262084((2S,3R)-1-[4-(tert-ブチルカルバモイル)ピペラジン-1-カルボニル]-3-[3-(ジアミノメチリデンアミノ)プロピル]-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、BMS-724296、BMS-654457(2-[3-[(2S,4R)-6-カルバムイミドイル-4-メチル-4-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-キノリン-2-イル]-5-(3-メチルブタノイルアミノ)フェニル]-5-カルバモイル安息香酸)、BMS-986177((9R,13S)-13-[4-[5-クロロ-2-(4-クロロトリアゾール-1-イル)フェニル]-6-オキソピリミジン-1)-イル]-3-(ジフルオロメチル)-9-メチル-3,4,7,15-テトラザトリシクロ[12.3.1.02,6]オクタデカ-1(18),2(6),4,14,16-ペンタエン-8-オン)、EP-7041((2S,3R)-3-([2-アミノピリジン-4-イル]メチル)-1-([{1R}-1-シクロヘキシルエチル]カルバモイル)-4-オキソアゼチジン-2-カルボン酸)、ケトアルギニンベースのペプチド模倣体、クラバタジン、アリールボロン酸、及び環状アルギニン含有ケトチアゾールペプチド模倣体からなる群から選択される、態様20に記載の方法。
22.追加の抗がん療法剤を投与することを更に含む、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.追加の抗がん療法剤は、化学療法剤、免疫療法剤、生物学的療法剤、ホルモン療法剤、アポトーシス促進剤、血管新生阻害剤、光活性剤、放射線増感剤、又は放射性同位体かである、態様22に記載の方法。
【0080】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が行われ得ることは、当業者には明白である。
【0081】
実験
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0082】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
本発明は、本発明の実施のための好ましいモードを含むように、本発明者によって見出されるか、又は提供される特定の実施形態に関して説明されている。当業者は、本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態で多数の修正及び変更を行うことができることを理解されたい。例えば、コドン冗長性によって、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎となるDNA配列の変更を行うことができる。生物学的機能的等価性を考慮することによって、種類又は量において生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造の変更を行うことができる。かかる修正は全て、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0084】
実施例1
オステオポンチンのトロンビン切断の遮断は、B16腫瘍の成長及び転移を抑制する
トロンビンは、インビボでOPNを切断し、OPN機能を調節する。OPNは、複数のインテグリンに結合するRGD配列、バリアントCD44(vCD44)結合ドメイン、及びヘパラン硫酸塩結合ドメインを含む、複数の保存された機能的ドメインを含む。RGD配列のC末端は、保存されたトロンビン切断部位(ヒトではArg
168、マウスではArg
153)であり、これは切断されたときに、新しいC末端SVVYGLR(配列番号4、Yokosaki et al.,1999)において、以前には不可解であった、α4β1及びα9β1インテグリンのためのインテグリン結合部位を露出させる。トロンビン切断OPN-Arg(OPN-R)は、OPN完全長(OPN-FL)と比較して増強されたα4β1依存性細胞結合活性を有し、これは、OPN-RのC末端アルギニンがカルボキシペプチダーゼN(CPN)又はカルボキシペプチダーゼB2(CPB2、トロンビン活性化線維解阻害剤(thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor)、TAFIとしても知られる)のいずれかによって切断されたときに無効になる(Leung and Morser,2018)。この第2の切断により、OPN-RがOPN-Leu(OPN-L)に変換され、このことは、トロンビン及びCPN又はCPB2によるOPN-FLの連続的な切断が、OPNの細胞接着活性の連続的なアップレギュレーション及びダウンレギュレーションを表すことを示唆している(Myles et al.,2003)(
図1A)。最後に、我々は、C末端OPN断片(OPN-CTF)が樹状細胞(DC)に対する新たなコンフォメーション依存性走化性活性を得ることを示した(Shao et al.,2014)。
【0085】
我々は、OPN-R及びOPN-Lに特異的なELISAを作製し、OPN-R及びOPN-Lのレベルが炎症性関節炎を有する患者の関節液において実質的に上昇することを示したが、このことは、これらの切断がインビボで生じることを示している(Sharif et al.,2009)。過去にはトロンビン切断OPN断片を特異的に測定することができなかったため、がん生物学におけるOPNのトロンビン切断の役割はほとんど見過ごされてきた。我々は、GBM及び非GBM悪性神経膠腫を有する患者の脳脊髄液(CSF)においてOPN-R及びOPN-Lが有意に増加することを示した(Yamaguchi et al.,2013)。OPN及び切断された断片は、ヒトGBM細胞株であるU87MG細胞の運動性及び接着性を促進し、アポトーシスへの耐性を付与し、したがって、切断されたOPN断片は、GBMの発達を促進し得る。
【0086】
インビボでのOPNのトロンビン切断の役割を定義するために、トロンビン切断耐性OPNR153Aノックイン(OPN-KI)マウスを作製し、B16マウス黒色腫の増殖及び転移がこれらのマウスにおいて著しく抑制されることを発見した。
【0087】
結果
OPN-KO及びOPN-KIマウスにおけるB16腫瘍成長の抑制
トロンビン切断部位における変異によって、得られたOPNトロンビン耐性がもたらされたことを確認するために、トロンビン切断部位のアルギニン(R)がアラニン(A)(R153A)に変異した変異OPN(OPN
R153A)を大腸菌で発現させ、これがトロンビン切断に耐性であることを示した(
図1B)。OPN-KI(OPN
R153A)マウスは、OPN-KOマウスと同様に、チャレンジ前には繁殖力があり、健康であり、CBC、肝機能、及び腎機能において観察可能な表現型変化はなかった(
図9及び10)。
【0088】
WTマウスと比較して、マウス黒色腫B16腫瘍の成長がOPN-KOで抑制されるという以前の報告に基づいて(Nemoto et al.,2001、Ohyama et al.,2004)、同じ表現型がOPN-KIマウスで観察されるか否かを試験した。B16腫瘍成長は、OPN-KO又はOPN-KIマウスにおいて抑制された(
図1C)。2週間後、腫瘍重量は、OPN-KIマウス(平均2.7±0.4g、n=23)及びOPN-KOマウス(平均3.0±0.7g、n=19)では、WTマウス(平均5.1±0.5、n=22、OPN-KI対WT p=0.0032及びOPN-KO対WT p=0.0187)よりも低かった(
図1D)。雄及び雌マウスにおける結果の比較は、性別間で、OPN-KIマウス対WTマウスの腫瘍サイズの低下における差異を示さなかった(
図11)。同様に、接種されたB16細胞の数が変動しても、OPN-KIマウス対WTマウスにおける腫瘍サイズの差異はなくならなかった(
図11)。OPN-KOマウスとOPN-KIマウスとの間で腫瘍成長又は体重に差異はなかった。纏めると、トロンビン耐性OPN-KIマウスは、WTマウスよりも小さい腫瘍を有することによっても、B16黒色腫腫瘍モデルにおいてOPN-KOマウスの表現型を模写する。
【0089】
OPN-KOマウスと同様のOPN-KIマウスにおけるB16転移の抑制
原発性腫瘍に加えて、OPN-KOマウスは、また、血液型肺転移モデルにおいて、WTマウスと比較して低下した腫瘍転移を示す(Nemoto et al.,2001)。OPN-KIマウスが同様の表現型を示すか否かを評価するために、このモデルを繰り返した。犠牲死後、臨床検査により、WTマウスと比較して、OPN-KI及びOPN-KOマウスの両方において腫瘍量が低下したことが明らかになった(
図2A)。転移性肺結節を計数することによる定量は、WTマウス(15.8±5.1/肺、n=6;OPN-KI対WT:p=0.0061;OPN-KO対WT:p=0.0016;
図2B)と比較して、OPN-KIマウス(1.4±0.7/肺、n=5)及びOPN-KOマウス(1.5±0.4/肺、n=10)の両方において腫瘍量の同等の減少を示した。肺のメラニン含有量の決定により、含有量は、OPN-KIマウス(1.6±0.2μg/mg肺組織、n=5)及びOPN-KOマウス(1.82±0.11μg/mg肺組織、n=10)では、WTマウス(3.2±0.3μg/mg肺組織、n=6、OPN-KI対WT:p=<0.0001;OPN-KO対WT:p=<0.0001;
図2C)と比較して低いことが示された。転移性肺結節及びメラニン含有量の数は同等に減少し、このことは、B16細胞が血管系から出て血管外コンパートメントに腫瘍を確立するプロセス及びそれらの腫瘍の成長の両方が、OPNのトロンビン切断の防止によって阻害されたことを示唆している。
【0090】
WTマウスにおけるトロンビンの阻害はOPN-KI表現型を模写する
B16腫瘍の成長及び転移が、OPN-KOマウスと同様に、トロンビン耐性OPN-KIマウスにおいて抑制されたため、経口トロンビン阻害剤でトロンビンを阻害することによってOPN切断を遮断することによっても、WTマウスにおいて腫瘍サイズが低下するか否かを調べた。B16接種の4日前から犠牲死するまで、餌食又は対応した対照餌食(Sparkenbaugh et al.,2014)に配合された、経口活性トロンビン阻害剤であるダビガトランエテキシレート(DE)でマウスを処置した。DEで処置したWTマウスは、KIマウスがDEで処置されたか否かにかかわらず、OPN-KIマウスで観察されたものと同様の腫瘍抑制(
図3A)を示した(
図3B)。犠牲死後の腫瘍体積は、DEで処置したWTマウスにおいてより低かった(1.0±0.2cm
3;n=14対2.5±0.4cm
3;p=0.0017;n=21;
図3C)。OPN-KIの腫瘍体積は、DE処置の有無にかかわらず同様であり(0.73±0.3cm
3;n=10対0.77±0.5cm
3、p=0.9999;n=7;
図3C)、DE処置WTとも同様であった。DE処置WTマウスで観察された腫瘍重量(1.0±0.2g対2.5±0.4g、p=0.0018)は、OPN-KIマウスで観察されたもの(0.8±0.9対0.73±0.9、p=0.9716、
図3D)と同様であった。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)(
図3E)を測定することによって、この投与計画がトロンビン活性を遮断することを確認し、腫瘍重量と逆相関する抗凝固の増加の傾向に留意した(
図3F、R=0.37)。したがって、WTマウスにおけるトロンビンの阻害は、トロンビン耐性OPN-KI表現型を再現する。DEによるOPN-KIマウスの処置は、B16腫瘍の重量及び体積を更に減少させなかったが、このことは、OPN切断の防止を超えるトロンビン阻害の追加の効果はなかったことを示唆している。
【0091】
また、肺転移モデルを使用してDE実験を繰り返した。対照のWTマウスと比較して、DE処置マウスは、より少ない転移性結節/肺を示し、メラニン含有量を低下させた(
図3G、3H)。DE処置は、OPN-KIマウス(
図3A)及びOPN-KOマウスにおける局所腫瘍成長には影響を与えなかったが、DE処置のOPN-KIマウス又はOPN-KOマウスは、それぞれ、未処置のOPN-KIマウス又はOPN-KOマウスと比較して、より少ない肺転移、及びメラニン含有量の低下を示す傾向があった(
図3G、3H)。
【0092】
WTマウスにおけるB16腫瘍及び血漿中のOPN切断産物の検出
腫瘍移植前及び移植後のWTマウスにおけるOPN切断産物を評価した。総OPN血漿レベルは、WTマウス(223.5±11.3ng/ml)及びOPN-KIマウス(170.6±34.2ng/ml;p=0.1668)で同様であり、OPN-KOマウス血漿には検出可能なOPNが含まれていなかった。腫瘍移植の前に、全ての遺伝子型においてOPN切断産物は検出されなかった。B16腫瘍移植の14日後、WTマウス及びOPN-KIマウスでは総OPN血漿レベルが増加した。WTマウスでは、低レベルのトロンビン切断生成物、OPN-R、及びOPN-Lが検出されたが、OPN-KIマウスでは検出されなかった(
図4B)。腫瘍溶解物内において、WTマウス由来の試料では、OPN-KIマウス由来の試料と比較して総OPNが約4倍高く(4.5±0.32ng/mg対1.0±0.35ng/mg、p=<0.0001)、OPN-KOマウス由来の腫瘍では検出できなかった。更に、WT腫瘍溶解物では、OPNの80%超が切断されてOPN-R及びOPN-Lとなった(
図4C)。対照的に、OPN-KIマウス由来の腫瘍溶解物では、OPN-R及びOPN-Lは検出されなかった。これらのデータは、OPNのトロンビン切断産物がB16腫瘍及びWTマウスの血漿の両方に存在し、腫瘍を局所的に修飾し、かつ、宿主応答を全身的に修飾した可能性があることを示している。
【0093】
B16細胞は、OPNを発現しないが、OPN結合インテグリンを発現する
B16細胞は、検出可能なOPN mRNA発現を有しない(Nemoto et al.,2001)。B16細胞馴化培地においてOPNがELISAによって検出可能ではなかったことが確認された。したがって、B16細胞はOPNを産生せず、WTマウスと比較したOPN-KO及びOPN-KIマウスにおけるB16腫瘍成長の抑制は、宿主OPNのトロンビン切断に起因するものである。トロンビン切断OPNは、不可解であったインテグリンα4β1及びα9β1のためのインテグリン結合部位を明らかにし(Yokosaki et al.,1999)、我々は、B16細胞が細胞表面上にα4β1及びα9β1インテグリンを発現することをFACSによって示した(
図12)。我々は、トロンビン切断OPN断片が、α9β1及びα4β1インテグリンを介してB16腫瘍成長及び転移を直接調節し得ると仮定した。
【0094】
B16細胞に対するOPN断片の影響
B16腫瘍細胞を、OPN-R、OPN-L、及びOPN-CTFを含む異なるトロンビン切断OPN断片(Shao et al.,2014)で処置した。ウシ血清アルブミン(BSA)と比較して、全ての異なるOPN断片は、細胞接着性を増加させた(
図4D)。しかしながら、OPN-Rは、OPN-FLと比較して有意な増加(約3.5倍)を有し、OPNのトロンビン切断の重要性が確認された。OPN-L及びOPN-R
RAA(OPN-R中のRGD配列がRAAに変異している)の両方が、OPN-Rと比較して低い接着性を有しており、このことは、RGD及びOPN-RのC末端におけるトロンビン切断曝露インテグリン結合部位(SVVYGLR)の両方が細胞接着に重要であり、a4インテグリン及びb1インテグリンの両方の関与を示す報告された結果(Cardones et al.,2003、Katagiri et al.,1996)と一致することを示している。OPN切断断片は、B16細胞増殖を増加させなかった(
図4E)。
【0095】
OPNは走化性を増強するので(Hayashi et al.,2007)、B16細胞遊走に対する異なるOPN断片の効果を試験した。BSAと比較して、OPN
-FL、OPN-R、及びOPN-R
RAAの全てが増加した遊走を有した(
図4F)。OPN-FLと比較して、走化性は、OPN-R(約3.5倍)でのみ有意に増加したが、OPN-R
RAA又はOPN-Lでは有意に増加せず、これにより、RGD及びOPN-RのC末端における切断曝露SVVYGLR(配列番号4)の両方が、細胞遊走の増加において役割を果たすことが再び示された。興味深いことに、RGD又はSVVYGLR配列(配列番号4)のいずれかを有しないOPN-CTFは、また、OPN-FLに匹敵する細胞遊走の増加を示したが、このことは、OPN-CTFが機能的に活性であり、B16細胞上の異なる受容体と独立して相互作用し得ることを示唆している。
【0096】
B16細胞アポトーシスに対するOPN及びその断片の効果も研究した。OPN-FL、OPN-R、及びOPN-Lは、BSAと比較してアポトーシスを約3倍均等に減少させたが、OPN-CTF、OPN-FL
RAA、OPN-R
RAA、及びOPN-L
RAAは、抗アポトーシス効果を有さず、このことは、OPNが、RGD部位のみによって媒介されるB16細胞において保護的な抗アポトーシス効果を与え、トロンビンによるその切断による影響を受けないことを示している(
図4G)。したがって、OPN-KIマウスにおけるB16腫瘍抑制は、腫瘍細胞アポトーシスの増加をもたらすOPN
R153Aにおける抗アポトーシス効果の喪失によるものではない。
【0097】
纏めると、トロンビン切断OPN産物は、B16腫瘍細胞接着及び走化性に穏やかに影響を及ぼした。劇的なインビボ表現型を考慮して、我々は、トロンビン切断断片がまた、腫瘍成長及び転移を促進するために宿主抗腫瘍免疫応答を調節すると仮定した。
【0098】
OPN-KO及びOPN-KIマウス由来のB16腫瘍は、より多くのマクロファージを含む
組織学的検査は、異なるマウス遺伝子型からのB16腫瘍間で有意差を示さなかった(
図5A)。免疫組織学的研究では、異なるマウス遺伝子型について増殖したB16腫瘍間で、抗CD3抗体によって決定されたT細胞の数に差異はなかった(
図5B)。しかしながら、免疫組織学的研究及びフローサイトメトリー分析は、OPN-KO及びOPN-KI由来の腫瘍では、WTマウスよりもF4/80
+細胞が有意に多いことを示し(
図5C、5D)、このことは、腫瘍抑制の表現型が、マクロファージ応答の調節を介して部分的に媒介され得ることを示唆している。
【0099】
クロドロネートによるマクロファージの枯渇は、OPN-KIマウスにおけるB16腫瘍抑制表現型を逆転させる
WTマウスの腫瘍ではマクロファージが少ないため、OPN-KIマウスにおける腫瘍抑制が、クロドロネートでそれらを枯渇させることによって食細胞によって媒介されるかを調べた(Van Rooijen and Sanders,1994)。クロドロネートによる処置は、WTマウスにおいてB16腫瘍成長を変化させなかった。OPN-KIマウスにおいて、マクロファージ枯渇は、WT(クロドロネート対対照:3.1±0.15cm
3;n=13対3.15±0.2cm
3、p=9930;n=14;
図6A、6B)と同様に、B16腫瘍体積を増加させ(クロドロネート対対照:2.88±0.2cm
3;n=10対1.0±0.25cm
3、p=<0.0001;n=11)、WTマウスで見出されるレベル(クロドロネート対対照:2.8±0.09g対2.8±0.14g、p=>0.9999;
図6C)と同様に、腫瘍重量を増加させた(クロドロネート対対照:2.25±0.23g対1.0±0.26g、p=<0.003)。マクロファージマーカーであるF4/80
+細胞集団は、対照と比較して、WT及びクロドロネートで処置したOPN-KIマウスの骨髄及び腫瘍コンパートメントの両方で減少したが、血液中のF4/80
+細胞の数は影響を受けなかった(
図6D~6F)。このことは、OPN-KIマウスにおける腫瘍抑制が、腫瘍におけるマクロファージの増加に起因することを示唆している。WTマウスにおいてクロドロネートによってマクロファージが枯渇したが、腫瘍サイズの増加はなかった。
【0100】
B16腫瘍抑制表現型は、免疫不全NOG-OPN-KO及びNOG-OPN-KIマウスでは失われる
重度免疫不全NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull(NOG)マウスにおいてOPN-KOマウス及びOPN-KIマウスを生成し、それぞれNOG-OPN-KOマウス及びNOG-OPN-KIマウスを作製した(Ito et al.,2002)。これらのマウスは、T細胞、B細胞、NK細胞を欠き、マクロファージ及び樹状細胞の機能不全を示す。トロンビン切断OPN断片が宿主の抗腫瘍免疫応答を調節する場合、OPN-KOマウス及びOPN-KIマウスにおける腫瘍抑制表現型は、それらのNOG対応物において失われることが予想される。これらのマウスをB16腫瘍及び転移モデルで試験した。
【0101】
B16接種のサイズを漸増した場合でも、NOG対照マウス、NOG-OPN-KO、及びNOG-OPN-KIの間で、B16腫瘍サイズ又は重量に差異はなかった(
図7A、7B、
図13)。また、性別特異的な差異も見出されなかった(
図14)。肺転移モデルでは、NOG対照マウス、NOG-OPN-KOマウス、及びNOG-OPN-KIマウスの間で、転移性肺結節又はメラニン含有量に差異はなかった(
図7C、
図7D)。纏めると、OPN-KIマウスにおける腫瘍抑制には、無傷の免疫系が必要である。
【0102】
纏めると、マクロファージ及びNOG免疫不全マウスのクロドロネート枯渇の効果に関するデータは、OPN-KIマウス及びOPN-KOマウスにおけるB16腫瘍成長及び転移の抑制が、増加したF4/80+腫瘍関連マクロファージ(TAM)によって媒介される宿主抗腫瘍免疫応答の増強に起因することを示唆している。
【0103】
OPN-KO及びOPN-KIマウス由来のB16腫瘍は、より多くのマクロファージを含む
この免疫効果を局在化するために、蛍光活性化セルソーティング(FACS)及び/又は組織学により、B16腫瘍のB細胞及びT細胞浸潤を評価し、異なるマウス遺伝子型で成長したB16腫瘍間では有意差は見出さなかった(
図7E、7F)。対照的に、免疫組織学及びフローサイトメトリー分析は、OPN-KO及びOPN-KI由来の腫瘍では、WTマウスよりもマクロファージ(F4/80
+)が有意に多いことを示した(
図5B、5C)。したがって、OPN-KIマウスにおける腫瘍抑制は、マクロファージによって媒介され得る。
【0104】
クロドロネートによるマクロファージの枯渇は、OPN-KIマウスにおけるB16腫瘍抑制表現型を逆転させる
OPN-KIマウスにおける腫瘍抑制が食細胞によって媒介されるという仮説を検証するために、クロドロネートでそれらを枯渇させた(Van Rooijen and Sanders,1994)。クロドロネートによる処置は、WTマウスにおけるB16腫瘍成長を変化させなかった。OPN-KIマウスにおいて、マクロファージ枯渇は、WT(クロドロネート対対照:3.1±0.15cm
3、n=13対3.15±0.2cm
3、n=14、p=9930、
図5D、5E)と同様に、B16腫瘍体積を増加させ(クロドロネート対対照:2.88±0.2cm
3、n=10対1.0±0.25cm
3、n=11、p=<0.0001)、WTマウスで見出されるレベル(クロドロネート対対照:2.8±0.09g対2.8±0.14g、p=>0.9999;
図5F)と同様に、腫瘍重量(クロドロネート対対照:2.25±0.23g対1.0±0.26g、p=<0.003)を増加させた。マクロファージマーカーであるF4/80
+細胞集団は、対照と比較して、WT及びクロドロネートで処置したOPN-KIマウスの骨髄及び腫瘍コンパートメントの両方で減少したが、血液中のF4/80
+細胞の数は影響を受けなかった(
図5G~5I)。このことは、OPN-KIマウスでの腫瘍抑制が腫瘍におけるマクロファージの増加に起因することを示唆している。WTマウスでは、マクロファージはクロドロネートによって枯渇したが、腫瘍サイズの増加はなかった。
【0105】
纏めると、マクロファージのクロドロネート枯渇の効果及びNOG免疫不全マウスからの効果に関するデータは、OPN-KIマウス及びOPN-KOマウスにおけるB16腫瘍成長及び転移の抑制が、増加したF4/80+腫瘍関連マクロファージ(TAM)によって媒介される宿主抗腫瘍免疫応答の増強によるものであることを示唆している。
【0106】
WTマウスと比較した、OPN-KI及びOPN-KOマウス由来の腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるマクロファージ表現型の変化
異なる遺伝子由来の腫瘍における浸潤マクロファージ及びリンパ球を分析した。OPN-KIマウス及びOPN-KOマウス由来の腫瘍では、WTマウスと比較して、全腫瘍関連マクロファージ(TAM)(CD45+F4/80+)が増加した(WT:CD45+の50.7±1.6%;OPN-KI:66.5±5.9%、p=0.0168、及びOPN-KO:58.3±1.1%、p<0.05n=5/群、
図8A)。EGR2-CD38+マクロファージとして定義されるM1マクロファージの数に差異はなかった(
図8B)。EGR2+CD38-又はCD206+CD11b+マクロファージのいずれかとして定義されるTAMにおけるM2マクロファージの画分は減少し(
図8C~8D)、CD11b+CD11c-CD206+Ly-6G-マクロファージとして定義されるTAMの画分は増加した(WT:4.7±0.65%、OPN-KI:9.2±1.5%、p=0.0399及びOPN-KO:9.0±1.3%、p=0.0495、n=5/群、
図8E)。したがって、OPN-KIマウス及びOPN-KOマウスのB16腫瘍におけるTAMの総数の増加に加えて、これらの腫瘍では、M2マクロファージから、異なる活性化プロファイルを有するTAMへの切り替えがあった。WTと比較して、OPN-KIマウス及びOPN-KOマウス由来の腫瘍において浸潤性好中球、B細胞及びT細胞の数に差異はなかった(
図8F~
図8H)。
【0107】
異なるOPN形態に対するRAW細胞応答
マウスマクロファージ株であるRAW細胞は、TAMのモデルとして使用されており(Kale et al.,2014,2015)、フローサイトメトリーにより、それらがα9β1及びα4β1インテグリンを発現することを示した(
図12)。異なるOPN断片に対する応答を試験した。全てのOPN断片は、BSAと比較してRAW細胞接着性を増加させ、それらの間に差異はなかった(
図15)。プロスタグランジンE
2(PGE
2)が腫瘍血管新生を誘導し、B16細胞成長を増強することが報告されているメディエーターであるため(Kale et al.,2014,2015、Kawahara et al.,2015)、プロスタグランジンE
2(PGE
2)の産生を調べた。OPN-R及びOPN-R
RAAは両方とも、OPN-FL(
図8G)と比較して、RAW細胞におけるPGE
2分泌を約4.2倍増加させたが、このことは、PGE
2分泌の増加が、トロンビン切断時にOPN-Rにおいて明らかになったα9β1及びα4β1インテグリン結合部位によって媒介されたことを示している。
【0108】
考察
本研究では、OPNのトロンビン切断が、がん生物学において重要な病態生理学的役割を果たすことが示された。WTマウスにおけるB16腫瘍内にOPNの広範な切断があり、トロンビン切断(OPN-R)及びトロンビン-CPN/CPB2二重切断(OPN-L)OPN断片のレベルは、腫瘍試料における総OPNの80%超を占め、これらの切断断片は、腫瘍担持マウスの血漿において検出可能となった(
図4)。トロンビン切断耐性OPN-KIマウスは、OPN-KOマウスで観察されたものと同様の程度まで、B16腫瘍成長及び肺転移の両方の著しい抑制を示した(
図1及び2)。したがって、この腫瘍モデルにおいてOPN-KIはOPN-KOの表現型を模写し、OPN単独のトロンビン切断の防止が、OPN上の他の全ての機能ドメインとは無関係に、観察された表現型を媒介することを示している。KIマウスにおけるこの腫瘍抑制表現型は、重度免疫不全NOG-OPN-KIマウス及びNOG-OPN-KOマウスにおいて複製されなかったため、免疫媒介性である(
図6)。これは、腫瘍におけるF4/80
+TAMの増加と関連し、クロドロネート処置によるマクロファージの枯渇は、KIマウスにおける表現型を逆転させ、このことは、腫瘍抑制表現型がマクロファージによって媒介されることを示している(
図5)。マクロファージ活性化は、大まかには、2つの状態、すなわち、病原体に対する1型ヘルパーT(Th1)細胞の応答に関与する炎症誘発性M1状態、及び体液性免疫及び創傷治癒を含むTh2型応答に関与する「代替的に活性化された」M2状態に定義される(Gordon,2003)。実質的な臨床的及び実験的証拠は、TAMが腫瘍の開始及び進行を促進し(Qian and Pollard,2010)、腫瘍におけるマクロファージがM1からM2へと偏るという考えを支持する(Mantovani and Sica,2010)。より多くの数のM2 TAMが、より悪い臨床予後に関連している(Komohara et al.,2016)。したがって、M2表現型は、M1表現型と比較して、概して、腫瘍を促進するとみなされる(Gordon and Martinez,2010、Mills,2012)。一方で、マクロファージによる刺激及び応答のより非常に広範な複雑性を説明するには、二元M1/M2活性化状態は不十分であることが現在認識されている(Natoli and Monticelli,2014)。異なる刺激は、非常に様々な活性化プログラム(転写モジュール)をもたらし(Xue et al.,2014)、腫瘍微小環境における手がかりに応答して、TAMは、動的な機能的リプログラミングを受けることができる(Netea-Maier et al.,2018)。我々の研究は、TAMの増加に加えて、マクロファージ活性化表現型に有意な変化があり、WTにおける腫瘍促進性M2表現型から、OPN-KI及びOPN-KOマウスにおけるCD45
+F4/80
+CD11c
-によって定義される表現型への切り替えがあったことを示した(
図7)。転移性乳がんの様式では、OPNの欠損は、腫瘍抑制をもたらし、骨髄由来抑制細胞におけるより高い免疫抑制性の細胞サブセットへの切り替えに関連する(Sangaletti et al.,2014)。膠芽腫モデルでは、OPN-KOマウス由来の腫瘍においてM2マクロファージが減少した(Wei et al.,2019)。しかしながら、これらの研究においては、OPNのトロンビン切断について調べていなかった(Mantovani and Sica,2010、Qian and Pollard,2010)。
【0109】
RAW細胞をTAMのモデルとして使用して、OPN-Rは、PGE
2の分泌を有意に増強し(
図8G)、これは、血管新生及びB16腫瘍成長を増強することが報告されている(Kale et al.,2014,2015)。COX-1阻害剤による血小板におけるPGE
2産生の阻害により、B16転移は減少した(Lucotti et al.,2019)。この経路は、OPN-KIマウスでは無効になり、観察される腫瘍抑制に寄与し得る。纏めると、我々のデータにより、OPN-KIマウスにおける腫瘍抑制は、腫瘍促進M2マクロファージの減少とともに機能的に調節され、かつ、活性化状態が変化したマクロファージ集団によって置き換えられた、TAMの増加によって媒介される増強された宿主抗腫瘍免疫応答によって媒介されることが示された(
図8H)。これらのTAMがOPN-R、OPN-L、及び/又はOPN-CTFを介して直接的又は間接的に調節される作用機序、並びにOPN-KO及びOPN-KIマウスにおけるCD45
+F4/80
+CD11c
-マクロファージの増加した集団の機能的特徴は、依然として十分に明らかにされていない。
【0110】
がんは炎症状態を表し、がん細胞は、凝固カスケードを活性化してトロンビン生成をもたらす、組織因子を含む様々ながん促進物質(procoagulant)を発現する(Hisada and Mackman,2019、Kirszberg et al.,2009)。凝固活性化とがん細胞生物学との間のクロストークに関する様々な文献がある(Lima and Monteiro,2013、Ruf et al.,2016、Wojtukiewicz et al.,2015)。非経口直接トロンビン阻害剤であるヒルジンは、B16細胞の転移を防止した(Niers et al.,2009)。Cochraneの体系的総説は、がん患者、特に、限定された小細胞肺がんを有する患者における非経口ヘパリンの生存利益を示した(Akl et al.,2008a、Akl et al.,2008b、Akl et al.,2008c)が、抗凝固ががん患者の生存に対して直接的な有益な効果を有するか否かは依然として議論の余地がある(O’Rorke et al.,2015)。我々のデータは、OPNのトロンビン切断によって宿主抗腫瘍免疫応答の抑制がもたらされ、がん細胞がこの作用機序を利用して生存率を向上させるという考えを支持している。我々は、直接経口活性抗凝固剤(DOAC)であるダビガトランが、局所腫瘍成長及びWTマウスでの転移の両方において腫瘍抑制表現型を複製することを示した。凝固カスケードにおける第Xa因子を標的化するDOACであるリバロキサバンも、また、TAMにおける第Xa因子-プロテアーゼ活性化受容体2シグナル伝達を遮断することによって抗腫瘍免疫を促進することが示されていることは興味深い(Graf et al.,2019)。DOACは現在、臨床的にますます使用されており、従来のビタミンKアンタゴニストであるワルファリンと比較して優れた治療プロファイルを有することが証明されている(Hakoum et al.,2018、Kahale et al.,2018、Matar et al.,2018)。このように、ダビガトラン及び他のDOACは、これらの観察が他のがんに対して一般化可能である場合、がん治療における従来の化学療法の補助とみなされ得る。一方、抗凝固時のがん患者では出血合併症の発生率が高く、おそらくより漏出性の腫瘍血管系に関連していることもよく認識されている(Schuliga,2015)。したがって、血液凝固カスケードの完全性を損なうことなくOPNのトロンビン切断を効果的に遮断する薬物の開発は、がん治療における新しい補助療法を表す。
【0111】
要約すると、これはインビボでのOPNのトロンビン切断の役割についての最初の直接的な実証である。我々の研究は、トロンビン切断OPN断片ががん生物学に重大な病態生理学的影響を有し、TAMによって媒介される宿主抗腫瘍免疫応答を増強することによってがん治療のための新規の療法剤を開発するためのユニークな機会を提供し得ることを示している。トロンビン切断OPNは、心臓線維芽細胞においてコラーゲン産生を誘導することが報告されており、心臓線維症で役割を果たし得るため、それらの臨床応用はがん療法に限定されなくてもよい(Herum et al.,2020)。
【0112】
材料及び方法
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
トロンビン耐性オステオポンチン(Spp1
R153A/R153A)を発現するマウスの生成
マウスにおいてOPNのトロンビン切断を妨げるオステオポンチン(OPN;分泌型リンタンパク質1、Spp1)をコードする遺伝子においてR153Aノックイン点変異を作製するために、マウス胚幹(ES)細胞における相同組換え及びその後の適切な標的化ES細胞の胚盤胞注入を使用した(
図16)。マウス5番染色体上に位置するSpp1遺伝子配列(ヌクレオチド104,834,137~104,900,066)をEnsemblデータベースから取得し、参照として使用した。マウスRP23-410M1 BAC DNAを用いて、遺伝子標的化ベクターの相同性アームを生成し、サザンプローブを用いて、標的化事象をスクリーニングした。5’相同性アーム(約5.0kb)及び3’相同性アーム(約2.5kb)は、いずれもPCRによって生成された。3’相同性アームのエクソン5に位置するR153A点変異は、部位特異的突然変異誘発によって導入された。これらの断片をLoxNwCDベクターに順次クローニングし、制限消化及び末端配列決定によって確認した。
【0117】
最終ベクターは、また、Neo発現カセットに隣接するloxP配列(ES細胞の正の選択のため)、及びジフテリア毒素A(DTA)発現カセット(潜在的に標的化されたES細胞の負の選択のため)を含んだ。制限エンドヌクレアーゼ分解及び末端配列決定分析の両方により、最終ベクターを確認した。エレクトロポレーションの前に、最終ベクターを線形化するためにNotIを使用した。
【0118】
5’及び3’外部プローブをPCRによって生成し、ES細胞をスクリーニングするためのゲノムサザン分析によって試験した。プローブをpCR4.0骨格中にクローニングし、配列決定によって確認した。
【0119】
NotI線形化最終ベクターDNA(30μg)を約107個のC57BL/6J ES細胞にエレクトロポレーションし、200μg/mLのG418で選択した。PCRベースのスクリーニングのために192のES細胞クローンを選択し、拡張及び更なる分析のために5つの潜在的な標的化クローンを選択した。胚性ESクローン拡張の完了後、追加のサザン及びPCR/配列決定確認分析を行い、2つのクローン(E9及びF8)が正しく標的化され、単一の新しい挿入を有することが示された。
【0120】
クローンE9及びF8を用いて胚盤胞注射を行い、99%(n=1)、90%(n=1)、80%(n=2)、70%(n=2)、60%(n=1)、50%(n=1)、40%(n=1)、30%(n=1)、及び20%(n=1)の雄キメラを生成した。これらの雄キメラを、C57BL/6J WT雌と交配させて、PCR分析によって同定されたヘテロ接合体を生成した。その後、C57BL/6Jマウスとの戻し交配により、表1に記載されるプライマーを使用してPCR分析(
図17A及び17B)によって再び同定された、変異Spp1遺伝子を有するホモ接合マウスが生成された。標的化及びES細胞作業は、Caliper Discovery Alliances and Services(Hanover,MD)によって行われた。
【0121】
これ以降は、ホモ接合性C57BL/6J Spp1R153A/R153Aマウスを「OPN-KI」と称し、Spp1-/-マウスを、「OPN-KO」マウスとして、ジャクソン研究所(Sacramento,CA)から取得した。マウスをスタンフォード大学医学部又は退役軍人局Palo Altoヘルスケアシステム(VAPAHCS)に収容し、スタンフォード大学動物研究委員会又はVAPAHCS動物実験委員会によって承認されたプロトコル下で、NIHのガイドラインに従い、実験を行った。動物を異なる群に無作為化し、分析を盲検化した。全ての実験を少なくとも2回独立して繰り返し、実験に入った全てのマウスを考慮した。
【0122】
OPN-KI遺伝子及びOPN-KO遺伝子を有する免疫不全マウス:NOG-WTマウス、NOG-OPN-KOマウス、及びNOG-OPN-KIマウス(Ito et al.,2002)を実験動物中央研究所(CIEA、Kawasaki,Japan)から取得し、VAPAHCSのノトバイオート(gnotobiotic)施設に収容した。これらのマウスは、無傷のOPN遺伝子(NOG-WT)を有するか、OPN(NOG-OPN-KO)を欠損しているか、又はOPNトロンビン耐性(NOG-OPN-KI)を与えるOPN遺伝子のR153A変異を有する。
【0123】
腫瘍移植の有無にかかわらず、心臓穿刺によって血液をクエン酸ナトリウム比9:1の3.2%クエン酸ナトリウム中に採取することにより、血漿サンプルをマウスから調製した。RIPA緩衝液(Pierce、Carlsbad,CA)中の全ての遺伝子型の腫瘍試料をcompleteプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)で均質化することにより、腫瘍溶解物を調製した。Bio-Radタンパク質アッセイ(Bio-Rad、Hercules,CA)によって、タンパク質濃度を決定した。以前に記載されたようにして(Toda et al.,2013)、骨髄細胞を調製した。
【0124】
臨床化学:12週齢の雄及び雌のWTマウス、OPN-KIマウス、及びOPN-KOマウスの血漿について臨床化学分析を行った。アラニントランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)のレベルを測定することによって肝機能を調べ、血中尿素窒素(BUN)及びクレアチニンレベルを決定することによって腎機能を調べた。これらの測定では、遺伝子型間に差異は見られなかった(
図9)。乳酸脱水素酵素(LDH)、ビリルビン、コレステロールが、これらのサンプルで決定され、それらもまた、遺伝子型間での差異を示さなかった。
【0125】
循環血液細胞:5週~26週齢の異なる年齢の雄及び雌のWT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスについて、全血球計算(CBC)を行った。赤血球、好中球、リンパ球、単球、好塩基球、好酸球、血小板、及び網状赤血球を含む調べた細胞種のうちのいずれにおいても、遺伝子型間での差異は見られなかった。
図10は、12週齢のマウスから取得したCBCデータを示す。異なる遺伝子型の雄と雌との間に差異はなく、異なる年齢で採取された試料もまた、遺伝子型間で差異はなかった。
【0126】
細胞培養:B16(マウス黒色腫)及び生(マウスマクロファージ)細胞株を、ATCC(Manassas,VA)から取得し、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Gibco Life Technologies、Langley,OK)を含む、5%ウシ胎児血清(FBS)の存在下でのDMEM(Corning、NY)中で培養した。Spp1 mRNAを決定するために、Spp1遺伝子を陽性対照として使用するプラスミドを用いて、合流B16細胞をトリプシン化し、RNAを単離し、RT-PCRを実施した。
【0127】
タンパク質及び試薬:変異形態を含むOPNの異なる組換え断片を、以前に記載したように作製した(Shao et al.,2014、Yamaguchi et al.,2013)。BSAはInvitrogen(Carlsbad,CA)から取得した。
【0128】
B16皮下腫瘍接種:B16細胞をコンフルエントになるまで増殖させ、2×106個の細胞をWTマウス、OPN-KIマウス、及びOPN-KOマウスに皮下接種した。腫瘍成長について、マウスを毎日監視した。腫瘍サイズを測定し、式(幅×幅×長さ)/2を使用して体積を計算した。動物をCO2を使用して安楽死させ、心臓穿刺によって血液を採取し、腫瘍を慎重に単離した。血液を2500rpmで20分間遠心分離して血漿を調製し、-80℃で保存した。腫瘍を重量計測し、測定した。腫瘍の一部を免疫組織化学のためにホルムアルデヒド中に保存し、OPN ELISAの腫瘍溶解物の調製のために、その一部を凍結し、-80℃で保存した。
【0129】
ダビガトランエテキシレート(DE)処置:DE(Boehringer Ingelheim、Ridgefield,CT)をWT及びOPN-KIマウスに経口投与した。前述のプロトコル(Sparkenbaugh et al.,2014)に従って、DEを28.61g DE/kgの濃度で餌食(Dyets Inc、Bethlehem,PA)に組み込んだ。簡潔に述べると、2×106個のB16細胞の接種の4日前に、DEを含む餌食又は対応した対照餌食のいずれかをマウスに与えた。動物を毎日監視し、2週間後に犠牲死させた。腫瘍重量及び体積を上述のように測定及び計算した。に血液を3.8%クエン酸ナトリウム中に採取した後に血漿を調製し、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を決定した。
【0130】
クロドロネートによる食細胞の枯渇:150μlのクロドロネート(5mg/ml)又は対照リポソーム(Clodrosome、Brentwood,TN)を後眼窩に2日毎に注入することによって、WT、OPN-KI、及びOPN-KOマウスから食細胞を枯渇させた(Winkler et al.,2010)。クロドロネートを2回投与した後、2×106個のB16細胞を皮下に接種した。その後、犠牲死及びそれらの腫瘍を上述のように処置するまで、マウスにクロドロネート又は対照リポソームを2週間1日置きに与えた。
【0131】
組織学及び免疫組織化学
B16転移モデル:0.5×106個のB16細胞を、尾静脈を介してマウスに注射した。犠牲死後、肺を単離し、表面上の転移性結節の数を両側において計数した後、メラニン決定のために左葉を分析した。各マウスの肺の左葉を1NのNaOH/10% DMSO中で80℃で2時間インキュベートした後、室温で10分間12,000rpmで遠心分離した。上清の470nmでの吸光度を測定し、合成メラニンの標準(Sigma、St.Louis,MO)と比較した。プロセスの開始前に肺を秤量し、メラニン含有量を、肺組織のタンパク質アッセイによって決定されるμg/mgタンパク質として発現させた。
【0132】
OPN ELISA:総OPN、OPN-R、及びOPN-Lの検出のためのELISAは、以前に記載されている(Sharif et al.,2009)。
【0133】
細胞接着アッセイ:96ウェルプレート中のウェルを、BSA又はコーティング緩衝液(Gibco Life Technologies、Langley,OK)中の20nMの濃度の異なるOPN断片のいずれかでコーティングし、4℃で一晩インキュベーションした。次いで、プレートをPBSで3回洗浄した後、3% BSAで1時間ブロッキングした。細胞を、0.2mM MnCl2を含む1×HBSSで3回洗浄した。2×106個のB16又はRAW細胞をウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、細胞を絶対エタノールで20分間固定した後、0.1%結晶バイオレットで染色した。紫色が見えなくなるまで細胞をPBSで繰り返し洗浄し、0.5%のTriton X-100で溶解し、570nmで吸光度を測定した。
【0134】
細胞増殖アッセイ:5×104個のB16細胞を、血清を含まないDMEM中、12ウェルプレートでプレーティングし、1時間沈着させた。次いで、OPN断片又はBSA(10nM)を培地に添加した。37℃で24時間後、細胞をトリプシン処理し、計数し、BSAでの細胞計数に対して正規化することによって増殖比を計算した。
【0135】
アポトーシスアッセイ:1×105個のB16細胞を血清を含まないDMEM中で一晩培養した後、BSA又はOPN断片(10nM)の存在下で20μMのカンプトテシン(Abcam、Burlingame,CA)を添加した。次いで、細胞を4時間インキュベートした後、200μlの結合緩衝液を添加した。プレートを400gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。アネキシンV FITC染色体(Cayman Chemicals、Ann Arbor,MI)を細胞に添加し、暗所で10分間室温でインキュベートした。細胞を上記のように遠心分離し、100μlの結合緩衝液を各細胞に添加し、蛍光強度を485/535nm(励起/放出)で測定した。カンプトテシン処置細胞を未処置細胞で割ることにより、アポトーシス指数を算出した。
【0136】
細胞遊走アッセイ:105個のB16細胞を、8.0μmの孔径を有する6.5mmのトランスウェルの上部チャンバーに入れた(Sigma,XX)。細胞を沈降させた後、下部チャンバーを、0.2mMのMnCl2(Sigma、St Louis,MO)の存在下で、BSA又は種々のOPN断片(10nM)で充填し、37℃で24時間インキュベートした。下部チャンバーに移行した細胞を遠心分離し、10μlのCCK-8染色溶液(Dojindo Molecular Technologies Inc.、Rockville,MD)を含む90ulの1×HBSS(Gibco Life Technologies、Langley,OK)に再懸濁した。細胞を2時間インキュベートした後、450nmで吸光度を測定した。
【0137】
PGE2アッセイ:5×105個のRAW細胞を、BSA又は様々なOPN断片(10nM)のいずれかを含む無血清培地中、6ウェルプレート上でプレーティングした。細胞を一晩培養した後、培地を回収し、ELISA(Enzo、Farmingdale,NY)によってPGE2を測定した。
【0138】
白血球のフローサイトメトリー分析:腫瘍を単離し、重量測定し、同様の重量を処置に使用した。腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)及び加熱器を備えるgentleMACS Octo解離器(Miltenyi Biotec)を用い、製造元の使用説明書に従って、腫瘍を解離した。解離後、細胞懸濁液を40mmフィルターで濾過し、その後に、ACK溶解緩衝液(Lonza、Walkersville,MD)を使用して、細胞を赤血球細胞溶解に供した。10倍体積の血清を含むDMEM培地を添加することにより、溶解緩衝液を不活化した。細胞を遠心分離し(300rcf、10分)、FACS緩衝液(PBS+1% BSA)中に穏やかに再懸濁し、計数した。CD16/32Fcブロッキング抗体でFcを20分間ブロッキングした後、CD45、CD206、CD11c、CD38、Gr-1、EGR-2、CD3、CD19、CD11b、F4/80、MHCII及びCytox greenに対する抗体の混合物(Jablonski et al.,2015、Weichand et al.,2017)、又はCD45、CD3、CD19及びCytox greenに対する抗体の混合物のいずれかを用いて、10
6個の細胞を暗所で4℃で30分間染色した。次いで、細胞をFACS緩衝液で再度洗浄した。補正ビーズ(Invitrogen,XX)及び単一の抗体で染色した試料を対照に使用した。細胞をフローサイトメーター(BD LSR II)で分析し、FlowJo(BD)を使用してデータ分析を行った。ゲーティング戦略を
図18に示す。
【0139】
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【0140】
実施例2
黒色腫治療のためのトロンビン阻害剤とB-Raf阻害剤との併用療法
マウス黒色腫モデル(B16細胞移植又は転移)では、OPNをトロンビン耐性になるようにするオステオポンチン(OPN)遺伝子に変異を有するマウスにおいて、より小さな移植腫瘍及びより少ない転移がある(実施例1)。これは、腫瘍が成長のためにトロンビンに依存することを意味する。これは、トロンビン阻害剤であるダビガトランエテキシレート(DE)でWTマウスを処置することによって確認され、DEの存在下ではB16腫瘍がWTマウスより遅く成長し、OPN-KI及びOPN-KOマウスで見出さられるものと同様の結果をもたらすことが示された。したがって、凝固阻害剤、好ましくはダビガトラン等の直接トロンビン阻害剤と、ダブラフェニブ又はベムラフェニブ等のB-Raf阻害剤との組み合わせを、黒色腫の治療に使用することができる。ダブラフェニブは、変異を有するB-Raf遺伝子(V600E/K)を標的化する。
【0141】
現在、一部の黒色腫患者は、B-Raf阻害剤であるダブラフェニブとMEK阻害剤であるトラメチニブとの組み合わせで治療されている。その併用にトロンビン阻害剤を追加することにより、転帰が改善され得、トラメチニブ単独を受けている黒色腫患者の治療にそれを追加することでも同様である。更に、第Xa因子又は第XIa因子を阻害する他の直接経口抗凝固剤並びにヘパリン又はクマジンが、トロンビン阻害剤の代わりに使用され得る。
【0142】
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された契約HL057530下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【配列表】
【国際調査報告】