(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(54)【発明の名称】自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材、その製造及び使用、並びに該フィルタ材を用いた空気フィルタデバイス
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20230824BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20230824BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20230824BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20230824BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20230824BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20230824BHJP
A61L 9/18 20060101ALI20230824BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20230824BHJP
F24F 8/24 20210101ALI20230824BHJP
D06M 13/35 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
A61L9/01 K
B01D39/14 G
B01D39/16 A
B01D39/20 Z
A61L9/00 C
A61L9/16 F
A61L9/18
A41D13/11 M
F24F8/24
D06M13/35
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509536
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2021071855
(87)【国際公開番号】W WO2022033948
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】102020121204.6
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(72)【発明者】
【氏名】ボッチャー、ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3B211
4C180
4D019
4L033
【Fターム(参考)】
3B211CC00
4C180AA07
4C180CC03
4C180DD04
4C180DD09
4C180EA16X
4C180EA28Y
4C180EA30Y
4C180EA33Y
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4C180EB18X
4C180HH15
4C180HH19
4C180MM03
4C180MM08
4D019AA01
4D019BA01
4D019BA11
4D019BA12
4D019BB03
4D019BB05
4D019BC06
4D019CB04
4D019CB06
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA55
(57)【要約】
自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材10は、通気性担体11と、担体11に接合されている複合材コーティング12であって、抗ウイルス活性を有する少なくとも1つの着色顔料13及び無機マトリックス材料14を含む複合材コーティング12と、を備える。少なくとも1つの着色顔料13は、好ましくはフタロシアニンの群からの少なくとも1つの化合物を含む。マトリックス材料は、好ましくは金属酸化物を含む群から選択されている。自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材を備える空気フィルタデバイス、フィルタ材を製造する方法、及びウイルスを不活性化する方法もまた記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性担体(11)と、
前記担体に接合されている複合材コーティング(12)であって、抗ウイルス活性を有する少なくとも1つの着色顔料(13)及び無機マトリックス材料(14)を含む、複合材コーティング(12)と、
を特徴とする、
自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの着色顔料(13)は、光への曝露時及び酸素の存在下で反応して、抗ウイルス活性を有する一重項酸素を形成するように適合されている、
請求項1に記載のフィルタ材。
【請求項3】
前記少なくとも1つの着色顔料(13)は、400nm~750nmの波長範囲の可視光への曝露時に反応するように適合されている、
請求項2に記載のフィルタ材。
【請求項4】
前記少なくとも1つの着色顔料(13)は、フタロシアニンの群からの少なくとも1つの化合物を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルタ材。
【請求項5】
前記少なくとも1つの着色顔料(13)は、ZnPc、ClAlPc、FePc、NiPc、CoPc、CuPc、及びC
32H
18N
8を含む群からの少なくとも1つの化合物である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルタ材。
【請求項6】
前記マトリックス材料(14)は、金属酸化物を含む群から選択されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルタ材。
【請求項7】
前記マトリックス材料(14)は、SiO
2、TiO
2、ZnO、MoO
3、及びそれらの混合物を含む群から選択されている、
請求項6に記載のフィルタ材。
【請求項8】
前記複合材コーティング(12)は、気相から堆積された多層又は混合層を形成する、フタロシアニン顔料と、少なくとも1つの金属酸化物とを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルタ材。
【請求項9】
前記担体(11)は、織布、不織布、通気性プラスチック、紙、ボール紙、有機多孔質材料、及び無機多孔質材料から構成された群から選択された少なくとも1つの材料を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルタ材。
【請求項10】
複合材コーティングを有する前記担体(11)は、呼吸可能である、
請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルタ材。
【請求項11】
複合材コーティングを有する前記担体(11)は、柔軟に変形可能である、
請求項1~10のいずれか一項に記載のフィルタ材。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材を備える、空気フィルタデバイス。
【請求項13】
呼吸マスク(21)又は空気浄化デバイス(22)、特に空調システムの空気フィルタを備える、請求項12に記載の空気フィルタデバイス。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載のフィルタ材(10)を製造する方法であって、
前記通気性担体(11)を提供するステップと、
前記担体(11)を少なくとも1つの着色顔料(13)及び無機マトリックス材料(14)でコーティングするステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記担体(11)を前記コーティングするステップは、高真空下での気相からの前記着色顔料(13)及び/又は前記マトリックス材料(14)の堆積によって実現される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記気相からの前記着色顔料(13)の前記堆積及び前記マトリックス材料(14)の前記堆積は、同時に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積は、着色顔料堆積と、後続のマトリックス材料堆積とを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記着色顔料(13)及び前記マトリックス材料(14)の堆積後、前記堆積された材料が焼き戻される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ウイルスを不活性化する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材(10)が、ウイルス又はウイルス含有物と接触させられる、方法。
【請求項20】
前記接触が、光及び酸素の存在下で行われる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材及びそのようなフィルタ材を含む空気フィルタデバイスに関する。本発明は特に、例えば、呼吸マスク用又は空調システムで使用される空気浄化デバイス用のフィルタ材に関する。本発明はまた、フィルタ材を製造する方法及びウイルスを不活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスが流行している場合、適切な空気フィルタデバイスによって感染及びウイルスの更なる蔓延に対する保護を提供することが非常に重要であることが知られている。フィルタリング効果に加えて、空気フィルタデバイスは、可能であれば、抗ウイルス及び自己殺菌効果もまた有するべきである。特に、可撓性の呼吸マスク又はフィルタの装着は個人の保護のために賢明であり、又は必要でさえある。しかしながら、実用上知られている従来のフィルタ材は、抗ウイルス効果を有しないか、又は弱い抗ウイルス効果しか有しない。
【0003】
有利な、抗ウイルス効果を達成する殺生物剤を含まない方法は、可視光及び(三重項酸素として自然な基底状態にある)大気酸素を介して反応性の高い殺菌性の一重項酸素の形成を増感する色素を使用することであり、これは、癌を治療するためのいわゆる光線力学的療法(PDT)として医学において既に使用されている。フタロシアニンは、可視スペクトル範囲における広域な吸収作用、高い光安定性、及び一重項酸素発生についての高い量子収率(例えば、国際公開第2015/154543号を参照)のために、フィルタ材での使用に適した増感色素として特に興味深い。しかしながら、フィルタ材へのフタロシアニンの使用においては、今まで以下の問題が生じていた。
【0004】
第一に、無置換フタロシアニンは、従来の溶媒中で不溶性顔料であり、溶液から担体をコーティングすることを不可能にする。
【0005】
第二に、国際公開第2015/154543号に記載されているような三次元マスクフィルタの作製のためのフタロシアニンへの可溶化カチオン性アンモニウム基の導入は、非常に複雑な合成に加えて、湿った(呼吸する)空気の存在下において水溶性色素の拡散が遅い(「ブリーディング」)という欠点を有する。国際公開第2017/196961号に記載されているように、可溶化アニオン性スルホン酸基又はカルボン酸基を含有するフタロシアニンの使用にもほぼ同じことが当てはまる。
【0006】
第三に、反応性基を含有し、担体と化学結合を形成するフタロシアニン色素のグラフト化は、高度なプロセス及び合成努力を必要とし、適切なドッキング部位を有する特別な担体の限定された使用のみを可能にする(国際公開第2007/194843号)。
【0007】
最後に、金属フタロシアニンをポリマーに組み込むこと(国際公開第2012/064894号を参照)は、原理上、拡散なしのコーティングを可能にするが、ポリマー表面上に存在する色素分子のみが大気酸素と反応することができるため、一重項酸素形成効率が非常に低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2015/154543号
【特許文献2】国際公開第2017/196961号
【特許文献3】国際公開第2007/194843号
【特許文献4】国際公開第2012/064894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来のフィルタ材の欠点を回避する抗ウイルス効果を有する改良フィルタ材を提供することである。特に、抗ウイルス性フィルタ材は、抗ウイルス成分を異なる担体に適用することにより作製が容易であり、長期間にわたっても高い機械的安定性及び光安定性を有し、室内条件下(大気酸素、日光又は室内光)で高効率で自己消毒し、且つ/又は空気フィルタデバイス、特に個人用マスク又は室内空気清浄用機器での使用に適しているべきである。本発明の更なる目的は、対応する改良空気フィルタデバイスを提供することであり、該空気フィルタデバイスは、フィルタ材を備え、従来の空気フィルタデバイスの欠点を回避する。本発明の他の目的は、フィルタ材の製造の改良方法、及びウイルスを不活性化、特に破壊する改良方法を提供することで構成されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、独立請求項の特徴を有するフィルタ材、空気フィルタデバイス、フィルタ材を製造する方法、及びウイルスを不活性化する方法によってそれぞれ解決される。本発明の好ましい実施形態及び用途は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明の第1の一般的な態様によれば、該目的は、通気性担体と、担体に結合された複合材コーティングであって、抗ウイルス活性を有する少なくとも1つの着色顔料及び無機マトリックス材料を含む複合材コーティングとを有する自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材によって解決される。
【0012】
本発明の第2の一般的な態様によれば、該目的は、本発明の第1の一般的な態様に係るフィルタ材を備える空気フィルタデバイス、特に呼吸マスク又は室内空気フィルタによって解決される。
【0013】
本発明の第3の一般的な態様によれば、該目的は、本発明に係るフィルタ材を製造する方法又はその実施形態のうちの1つによって解決され、該方法は、少なくとも以下のステップを含む。担体が提供される。担体が、少なくとも1つの着色顔料及びマトリックス材料でコーティングされる。コーティングが、例えば、高真空下での堆積によって施される。気相からの堆積の間、少なくとも1つの着色顔料及びマトリックス材料が、同時に(混合蒸着、複合材形成)又は順次(層状複合材形成)、担体上に堆積され得る。
【0014】
本発明の第4の一般的な態様によれば、該目的は、ウイルスを不活性化する方法によって解決され、本発明又は実施形態のうちの1つに係る自己殺菌抗ウイルス性フィルタ材が、可視光の存在下でウイルス又はウイルス含有物と接触させられる。
【0015】
本発明に係るフィルタ材及び該フィルタ材を備える空気フィルタデバイスは、有利には、例えば空気及び/又は空気中のエアロゾルからフィルタ材上に且つ/又はフィルタ材に入るウイルス粒子と接触すると、ウイルス粒子を非感染状態に変化(不活性化)させ、特に、それらを変性させるか又は破壊する、着色顔料の抗ウイルス性の反応効果によって上述の目的を解決する。したがって、本発明に係るフィルタ材は、自己殺菌及びフィルタ材を通過する空気の殺菌を特徴とする。「殺菌」という用語は、全てのウイルス粒子の非感染状態への移行、又は処理された空気が吸入された場合に感染力がないほどの、ウイルス粒子の大部分の移行を指す。
【0016】
本発明に従って使用される無機マトリックス材料は、少なくとも1つの着色顔料を固定するための特定の利点を有し、3つの重要なタスクを行う:担体への接着性を高め、機械的安定性を改善し、且つ抗ウイルス成分の活性を高める。活性の増加は、例えば、結果として主に分子光活性状態をとる少なくとも1つの着色顔料の分解(着色顔料マトリックスの分解)による一重項酸素形成の効率の増加に基づくことができる。
【0017】
少なくとも1つの着色顔料を固定するための複雑な合成及び少なくとも1つの着色顔料の外方拡散が回避され得る。少なくとも1つの着色顔料と担体との化学結合の形成は、可能であるが、必須ではない。したがって、特定の担体への限定が回避され得る。ポリマー埋込みとは対照的に、無機マトリックス材料は、無機マトリックス材料に包有された色素分子もまた大気酸素と接触することができるため、一重項酸素形成効率の増加を可能にする。
【0018】
本明細書で使用される「着色顔料」という用語は、着色剤、すなわち、電磁スペクトルの可視範囲の光を吸収し、且つ可溶性色素とは対照的に、それぞれの液体適用媒体若しくは周囲環境、又は使用条件下において本質的に不溶性の粒子を含む、着色物質(色素分子)を意味する。
【0019】
本発明に従って使用される抗ウイルス活性を有する着色顔料は、好ましくは、光への曝露及び(三重項状態の)大気酸素の存在下で反応して一重項酸素を形成することができる着色顔料である。一重項酸素の光化学的形成は、特に好ましくは、400nm~750nmの範囲の波長を有する可視光への曝露時に起こる。一重項酸素は、ウイルス粒子が変性又は破壊される強力な酸化剤を有利に形成する。
【0020】
反応性一重項酸素は、ウイルスを死滅させることができることが知られている(A.Dewildeの「J.Photochem.Photobiol.」36(1996)23を参照)。したがって、一重項酸素の形成は、空気中及び日光又は人工光中における本発明に係るフィルタ材の連続的な自己殺菌、及びフィルタ材を通過する空気の殺菌を可能にする。
【0021】
光は、呼吸マスクが着用されている場合、周囲光によって提供されることが有利である。フィルタ材を備える空気フィルタデバイスはまた、フィルタ材を周囲光に曝露するように構成されてもよく、且つ/又はフィルタ材を光に曝露するように適合された、例えば発光ダイオードに基づく照明デバイスを備えてもよい。
【0022】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの着色顔料は、フタロシアニンの群からの少なくとも1つの化合物を含み、この群は、特に無置換フタロシアニン、置換フタロシアニン誘導体及びその錯体、特に金属錯体を含む。特に好ましいのは、無置換フタロシアニン自体(C32HH18N8)、又はZnPc、ClAlPc、FePc、NiPc、CoPc、及びCuPc(ここでPcはフタロシアニンを表す)を含む群から特に選択された金属-フタロシアニン錯体である。本発明に従って使用されるフタロシアニン化合物は、典型的には水不溶性であり、無置換である。しかしながら、好ましくは水不溶性でもある置換フタロシアニンを使用することも可能である。有利には、本発明に従って使用される着色顔料は、特に高い収率の一重項酸素形成を特徴とする。
【0023】
特に好ましい実施形態では、ZnPc又はClAlPcは、高真空蒸着による複合材コーティングのための金属フタロシアニンとして使用され、層厚さは、好ましくは20nm~500nmの間で変動する。
【0024】
「無機マトリックス材料」という用語は、一般に、電磁スペクトルの可視範囲で少なくとも部分的に透明な任意の無機化合物を指す。
【0025】
好ましい実施形態によれば、無機マトリックス材料は、金属酸化物(二酸化ケイ素を含む)を含む群から選択され、特に好ましくは、SiO2、TiO2、ZnO、MoO3、及びそれらの混合物(これらの化合物のうちの少なくとも2つの混合物)を含む群から選択される。これらのマトリックス材料は、作製され、担体上に堆積され、且つコンパクト形態又はナノポーラス形態で使用され得、ナノポーラス形態は、ある特定の実施形態にとって好ましい。
【0026】
着色顔料とマトリックス材料との複合材コーティングは、好ましくは少なくとも1つの薄層、特に10nm~1000nmの範囲の厚さを有する層である。マトリックス材料中の着色顔料の割合は、典型的には、マトリックス材料基準で1~50体積%の範囲である。
【0027】
複合材コーティングは、通気性担体上に配置される。「通気性担体」という用語は、一般に、複合材コーティングを収容し、且つ空気が通って流れることができる構造、特に細孔又は孔を有する、任意の材料を説明するために使用される。有利には、担体は、複合材コーティングを受容しても通気性のままであり、複合材コーティングは、担体を密閉することなく構造によって担持されており、結果、フィルタ材は、通気性である。担体は、層、片、若しくはシート等の一体材料、及び/或いは適切なホルダ内の粒状物又は複数の層、片、若しくはシート等の複数部分の材料を含み得る。
【0028】
複合材は、好ましくは担体上のコーティングとして使用され、これらは、フタロシアニン、特に金属フタロシアニンの蒸着、特にマルチソース蒸着によって担体上に堆積され、共に、少なくとも1つの金属酸化物が高真空下で同時に又は連続的に適用され、その後の焼き戻しによって付着が有利に改善される。焼き戻し条件は、それぞれの複合材料に応じて変動し得るが、日常的な試験を用いて当業者によって容易に決定され得る。例えば、焼き戻しは、50℃~200℃の範囲の温度で、10分~5時間の範囲の時間行われ得る。
【0029】
更なる特に有利な実施形態では、SiO2、TiO2、又はMoO3が、高真空蒸着による複合材コーティングのための金属酸化物として使用される。MoO3は、有利には、単に熱蒸着によって、例えば高真空中での抵抗加熱によって堆積され得るが、SiO2及びTiO2は、より高温で蒸着させられ得、したがって、典型的には、電子ビーム蒸着(例えば、JaegerらによるAdv.Mat.(1996)93~97に記載されているように)又はスパッタリングによって堆積され得る。
【0030】
本発明の別の利点は、様々な材料が利用可能であり、且つ通気性担体を提供するのに適していることである。担体は、好ましくは、織布、不織布、通気性プラスチック、紙、特に濾紙、ボール紙、有機多孔質材料、及び無機多孔質材料からなる群から選択された層状又はシート状材料の少なくとも1つの層を含む。
【0031】
本発明に係るフィルタ材は、好ましくは、複合材コーティングを有する担体が呼吸可能であり、特にフィルタ材を通して呼吸するのに適していること、及び/又は複合材コーティングを有する担体が柔軟に変形可能であることを特徴とする。
【0032】
本発明に係るフィルタ材は、呼吸マスクにおける又は抗菌性空気フィルタにおける抗ウイルス活性材料として自由に選択可能な形態で使用され得る。
【0033】
本発明に係るフィルタ材は、ウイルスを破壊する方法に有利に適しており、フィルタ材は、ウイルス又はウイルス含有物、例えば、空気含有ウイルス又はウイルス含有物と接触させられる。本発明に係るフィルタ材の抗ウイルス活性を有する着色顔料が、光への曝露及び酸素の存在下で反応して一重項酸素を形成する着色顔料である場合、そのような方法での接触は、従って、光及び酸素の存在下で行われる。
【0034】
本発明の更なる詳細及び利点は、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に係るフィルタ材の一実施形態の断面図である。
【
図2】呼吸マスクにおけるフィルタ材の適用を示す図である。
【
図3】空気浄化デバイスにおけるフィルタ材の適用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
特定の実施形態では、従来の呼吸マスクのフィルタ材10(
図1参照、一定の縮尺ではない)の層は、担体11として提供され、担体11の上に、着色顔料13、例えばZnPcと、マトリックス材料14、例えばSiO
2と、を有する複合材コーティング12が、例えば300nmの層厚さで等しい体積割合で適用される。フィルタ材10は、呼吸マスク21(
図2参照)又は空気浄化デバイス22(
図3参照)内等の空気フィルタデバイスのフィルタレセプタクルのサイズ及び形状に切断することによって、特定の用途に適合される。
【0037】
空気フィルタデバイスが使用されるとき、空気が、露光フィルタ材10を通って引き込まれ、複合材コーティングの上に広げられて複合材コーティングを通過するという事実によって、ウイルスは不活性化される。空気は、例えば、呼吸マスク21上の吸入圧力によって、又は空気浄化デバイス22のポンプ装置によって輸送される。
【0038】
前述の説明、図面、及び特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、様々な実施形態において本発明を実現するために、個別、及び組合せ又は部分的組合せの両方で重要であり得る。
【国際調査報告】